説明

EEGモニタリング装置およびそこにメッセージを提示する方法

【構成】モニタされる人物によって連続して持ち運ばれるように構成されるEEGモニタリング装置(2)である。上記装置(2)は上記装置を持ち運ぶ人物から少なくとも一のEEG信号を計測するように構成される手段,および上記少なくとも一のEEG信号を解析し,上記解析に基づいて上記人物における所定の生物学的事象を識別または予測するように構成される信号処理手段を備える。上記EEGモニタリング装置(2)はさらに,情報が上記人物に提示されるべきときを決定するように構成される決定手段,上記人物に情報を提供する音声メッセージを選択するメッセージ選択手段,および選択された音声メッセージを上記人物に提示するように構成される音響トランスデューサを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,携帯型の(portable)EEGモニタリング装置に関し,限定するものではないが,特にはモニタ(監視)される人物によって連続して持ち運ばれるのに適する携帯型EEGモニタリング装置に関する。この発明はさらに,このような携帯型EEGモニタリング装置にメッセージを提示する方法(a method of presenting messages)に関する。
【背景技術】
【0002】
EEGは脳波(Electro Encephalo-Gram)の略語として頻繁に用いられており,一般には人の脳活動を電気的にモニタリングする方法を言う。EEGをモニタリングするシステムは長年にわたって知られている。一般的な技術開発では,モニタリングされるべき人によって連続して持ち運ばれるまたは装着されることが可能なEEGモニタリング・システムが開発されている。
【0003】
このようなシステムの一つが国際特許公開第2006/066577から知られており,そこでは糖尿病を煩っている人の血糖値がモニタされ,低血糖発作(hypoglycaemic attacks)に対して警告される。低血糖値は脳活動に重大な影響を及ぼし,低すぎる血糖値は意識喪失や死にさえ至ることもある。国際特許公開第2006/066577に記載のシステムは完全埋込み型皮下システム(a fully implanted subcutaneous system)である。電線を介して,埋込み電極(複数)が,切迫した低血糖発作についての脳波特性(the brainwaves characteristic)を検出可能なモニタリング装置に接続され,上記皮下モニタリング装置の振動の形で警告が発せられる。国際特許公開第2006/066577にはさらに,埋没物(implant)が,より大きな電力を要求する電子機器部材を含む外部ユニットと無線通信可能であり,したがって上記埋込み皮下部材の長い電池寿命が得られることが記載されている。音警告(an acoustic warning)が可能であることも述べられているが,国際特許公開第2006/066577はやり方(how)について詳細を開示していない。
【発明の開示】
【0004】
この従来技術に基づき,この発明の全体的な目的は,上記従来技術のシステムに相対する,特に装置を持ち運ぶ人の音警告に関する先進的なシステムを提供することにある。
【0005】
この発明の第1の側面によると,この目的は携帯型EEGモニタリング装置によって達成され,上記装置は,上記装置を持ち運ぶ人から少なくとも一のEEG信号を計測(測定)するように構成されるEEGピックアップ手段,上記少なくとも一のEEG信号を解析し,上記解析に基づいて上記人物における所定の生物学的事象(インシデント)(biological incidents)を識別(特定)または予測する(identify or predict)ように構成される信号処理手段,情報が上記人物に提示されるべきとき(時)(when)を決定するように構成される決定手段,上記人物に情報を提供する音声メッセージを選択するメッセージ選択手段,および上記選択された音声メッセージを上記人物に提示するように構成される音響トランスデューサを備えている。
【0006】
この発明の第2の側面によると,携帯型EEGモニタリング装置において音声メッセージを提示する方法が提供され,この方法は,EEGピックアップ手段を用いて上記装置を持ち運ぶ人から少なくとも一のEEG信号を計測し,信号処理手段を用いて上記少なくとも一のEEG信号を解析して上記解析に基づいて上記人物における所定の生物学的事象を識別または予測し,決定手段を用いて上記人物に情報を提示すべきときを決定し,メッセージ選択手段を用いて上記人物に情報を提供する音声メッセージを選択し,音響トランスデューサを用いて上記選択された音声メッセージを上記人物に提示する。
【0007】
たとえば単純な警告音(a simple warning tone)でなく音声メッセージを用いることには多くの利点がある。大きな利点としては,話し言葉による警告(a spoken warning)のような音声メッセージは,話しかけられる人の注意を喚起するように広く浸透し(far more pervasive),かつ正しく反応することが上記人物にとってはるかに簡単になることである。上記EEGモニタリングの目的が,逼迫した低血糖発作のような脅威的な生物学的事象(インシデント)について上記人物に警告する最初のインスタンスにあることを考慮すると,上記装置によって発せられる警告は,上記人物がすでにもはや完全な精神的能力がなく,あるいは無意識の危機に瀕しているときに発せられやすい。この状況において,音声メッセージは上記人物に警告するときに非常に効果的であるのみならず,さらには危機的状況を避けるために実施されるべき是正措置に関する直接的な指示を実際に含むことができる。このように,すでに部分的に精神的に能力を失った人物は,その者がもはや正しい是正処理を思い出すことができずそのやり方を思い出すことができないときに,アラームを得るだけではなく,正しい是正処理を思い出させる音声メッセージを得ることができる。すなわち,好ましい実施態様では,上記音声メッセージは上記生物学的事象に関するものである。
【0008】
この発明の第1の側面の好ましい実施態様によると,上記音声メッセージは上記装置中に記憶される。上記装置に音声メッセージを記憶することで,別の装置(any further devices)を持ち運ぶ必要性または合成音声ジェネレータ(synthetic voice generator)の必要性がなくなる。
【0009】
この発明の第1の側面のさらに好ましい実施態様によると,上記音声メッセージは上記装置中において記憶および再生に適するフォーマットに変換(フォーマット)されている。保存領域の必要性が削減され,したがって全体的なサイズの削減または非常に多くの様々な音声メッセージの記憶が可能になる。
【0010】
この発明の第1の側面の他の実施態様によると,上記音声メッセージは上記人物の聴能にしたがって編集されたものである。上記音声メッセージを編集することで,上記人物の特定の聴覚損失に対して上記メッセージを固有適合(built-in adaptation)することができる。上記音声メッセージの明瞭性が上昇する。
【0011】
この発明の第1の側面のさらに他の実施態様によると,上記装置は,上記メッセージを提示するときに,現在の周囲音響雑音レベル(the current ambient acoustic noise level)に対して上記提示される音声メッセージを調節する手段を備える。上記メッセージの明瞭性がさらに増強される。
【0012】
この発明の第1の側面のさらなる実施態様によると,上記装置は,上記装置を持ち運ぶ上記人物が上記人物自身の選択にしたがって装置中にメッセージを記憶することができるようにする手段を備える。上記装置を持ち運ぶ人物に理解が容易なメッセージを直接に選択させることができる。
【0013】
この発明の第1の側面のさらなる実施態様によると,上記装置は上記人物の耳内に上記音声メッセージを提示するように構成される。ユーザの耳内に直接にメッセージを提示することによって,環境雑音のような外部阻害(妨害)が低められるという利点が得られる。さらに,上記EEGモニタリング装置に補聴器の機能をさらに含ませる,または補聴器の一部を形成することができるという利点が得られる。
【0014】
この発明の第1の側面の他の実施態様によると,上記装置は,上記装置を持ち運ぶ人物に提示されたメッセージを確認させる手段を含む。これによって,上記装置を持ち運ぶ人物が実際に上記メッセージを聞いたことを保証することが可能となり,必要であれば確認が行われるまで,必要に応じて大きな音で(possibly with increased volume),上記メッセージが繰り返される。
【0015】
この発明の第1の側面の他の実施態様によると,上記装置はさらに上記装置の取扱い(the handling)に関する音声メッセージを提示するように構成される。操作およびその使用において,たとえば耳内に上記装置を配置するときに,上記装置を持ち運ぶ人物が補助される。
【0016】
この発明の第2の側面による方法の実施態様は,概略的には第1の側面による実施態様と同一の利点を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明によるEEGモニタリング装置を持つ人物の頭部を示す。
【図2】図1によるEEGモニタリング装置のブロック図を示す。
【図3】図2のEEGモニタリング装置におけるメッセージの記憶および検索を示す。
【図4】図2によるEEGモニタリング装置のユーザ・インターフェースの状態図を示す。
【実施例】
【0018】
以下,非限定の実施態様および図面に基づいてこの発明を詳細に説明する。
【0019】
図1はこの発明によるEEGモニタリング装置を持ち運ぶ人物の頭部1を模式的に示している。上記EEGモニタリング装置2は,EEGを計測(測定)するための埋込みユニット(implant unit)3を備えている。上記埋込みユニット3は人の耳4の後ろの皮下に(subcutaneously)配置される。上記埋込みユニット3は,電子部品(electronics part)5および上記人物の脳からの電気的EEG信号をピックアップするための少なくとも2つの電極(図示略)を備えるプローブのようなEEPピックアップ手段6を備えている。上記埋込みユニット3の上記電子部品5は,上記EEGピックアップ手段6の電極によって計測されたEEG信号をサンプリングし,それらを上記EEGモニタリング装置2の一部を形成する外部ユニット7に無線で送信するために必要な電子機器(electronics)を備えている。好ましくは,上記埋込みユニット3へのエネルギー供給は上記外部ユニット7から誘導的に受付けられ,したがって上記埋込みユニット3は長いサービス寿命を持ち,電池容量によって束縛されることがない。電池交換では埋込ユニット3全体を交換するために外科的処置を必要とするから,このことは利点である。
【0020】
見て取れるように,上記外部ユニット7は耳掛け型補聴器(Behind-The-Ear hearing aid)(BTE補聴器)に似たものとすることができ,通常使用時において上記EEGモニタリング装置2を持ち運ぶ人物の耳4の後ろに配置されるハウジング部8を備えている。BTE補聴器のように,上記ハウジング部8は中間接続部材10を介して上記人物の耳道内のイヤプラグ9と接続される。中間接続部材は,イヤプラグにつながる従来の音チューブであっても,または耳内レシーバ型イヤプラグ(Receiver In The Ear type earplug)(RITEイヤプラグ)につながる電気コードであってもよい。これによって,上記外部ユニット7は上記EEGモニタリング装置2を持ち運ぶ人物の耳4内に向けて,アラームまたは警告(alarms or warnings)のようなメッセージを出すことができる。
【0021】
図示するように,上記EEGモニタリング装置2は,後述するような,付加的かつおそらくより多くのエネルギーを消費する,データ用電子記憶スペース(electronic storage space for data)を備える周辺装置11を選択的に含むことができる。
【0022】
図2を参照して,図2は上記EEGモニタリング装置2の上記外部ユニット7の内部詳細を模式的に示している。上記外部ユニット7は上記埋込みユニット3から無線で受信したEEG信号を解析し,かつ上記EEG信号中の異変(anomalies)を検出する手段を有する健康状態モニタ(a health state monitor)12を備え,たとえば低血糖(症)発作またはてんかん発作といった健康を脅かす条件(状態)(health threatening conditions)に対して,上記EEGモニタリング装置2を持ち運ぶ人物を警告する。この解析がどのように実行されるかについてはこの発明に関係はなく,これ以上扱わないことにする。
【0023】
健康を脅かす状態が検出されると,上記健康状態モニタ12は機器作動コントローラ(device operating controller)13に適切な信号を送信する。上記機器作動コントローラ13は,上記EEGモニタリング装置2に供給される電池15を監視する電池モニタ14からの低電池レベルを示す信号,およびたとえば電気機械式キー・スイッチ(electromechanical key switch)17を含むユーザ・ボタン16からのユーザ入力信号のような他の入力を受付けるようにも構成されている。
【0024】
上記機器作動コントローラ13は適切なメッセージおよび上記メッセージのための設定を選択し,スピーカ20のような出力トランスデューサのための出力信号を生成するDACのような出力コンバータ19のためのメッセージ信号を生成するオーディオジェネレータ(audio generator)18へ対応する信号を送信する。上記したように,上記スピーカは,上記外部装置の上記ハウジング8内に配置することができるし,または上記イヤプラグ9内に配置することもできるが,この発明はBTE型の装置における使用に限定されることはなく,耳内イヤプラグ(In-The-Ear earplug)(ITEイヤプラグ)またはたとえば補聴器から知られている他のタイプのイヤプラグに実装することもできることに留意されたい。上記メッセージ信号またはそれに関連するデータは,EEPROM21のような不揮発性メモリに事前に記憶(保存)することができる。
【0025】
好ましくは,上記EEGモニタリング装置2は周囲音圧レベルをモニタリングする手段も備えている。図示する実施態様において,この手段はADCのような入力コンバータ23に信号を伝達するモニタ・マイクロフォン22を含む。上記入力コンバータ23は信号を音圧レベル・モニタ24に伝達する。上記音圧レベル・モニタ24は周囲音圧レベルを検出して,対応する信号を上記オーディオジェネレータ18に伝達し,上記オーディオジェネレータが上記周囲音圧レベルにしたがって上記出力コンバータ19への上記信号についての音量設定を適合できるようにする。このようにして,上記スピーカ20によって伝達される上記メッセージ信号が,上記EEGモニタリング装置2を持ち運ぶ人物によって容易に聞き取ることができる音量レベルとなることが保証される。同時に,上記EEGモニタリング装置2を持ち運ぶ人にとって邪魔となりかつ不快となる可能性のある,静かな環境における過度な音量でメッセージが提示されないことが保証される。明らかであるが,上記音圧レベル・モニタは常時動作する必要はない。上記メッセージが提示される前の短い時間にだけ,現在の(current)音圧レベルをサンプリングすれば充分である。これにより省電力化が図られる。
【0026】
図3は不揮発性メモリ21に記憶されている様々なメッセージを示している。5つのメッセージ,すなわちメッセージ#1から#4および最後のメッセージ#Nのみが示されており,これらは典型的な警告,すなわち「システムOK」(System OK),「低血糖警告」(Hypoglycaemia Warning),「電池不足」(low battery),「確認のためにボタンを押してください」(Press button to acknowledge)および「システム障害」(System Failure)を含む。これらのメッセージは上記機器作動コントローラ13における論理制御およびアドレス発生器(a control logic and address generator)25によって上記不揮発性メモリ21から検索され,上記不揮発性メモリにおいて所望のメッセージまたはそれを規定するデータが呼出され,上記オーディオジェネレータ18に送信されるべき対応するメッセージ・データが生じ,これに基づいて上記出力コンバータ19への出力信号が生成される。
【0027】
利用可能な記憶領域,消費電力などの考慮に依存して,上記所望メッセージを規定するデータおよび上記不揮発性メモリに記憶されるデータを異なるものとすることができる(may differ)。
【0028】
上記メッセージを記憶するやり方の一つは,非圧縮ディジタル音を記憶することであり,この場合上記出力コンバータ19への信号を生成する上記オーディオジェネレータ18に必要な,全体のデータ・ストリーム(the entire data stream)が記憶される。この場合,上記出力コンバータ19のためのパルス・コード変調信号が上記オーディオジェネレータ18によって生成され,出力コンバータ19はパルス・コード変調信号をアナログ信号に変換する。しかしながら,会話のダイナミック・レンジはかなり大きいことから,上記パルス・コード変調信号をA−lawまたはMU−law重付け信号のような重付け信号とすることができ,記憶の前に上記ダイナミック・レンジが圧縮される。この場合上記オーディオジェネレータ18は上記メッセージ信号の対応する伸張を実行することもできる。
【0029】
これに変えて,音声または音コーデック(speech or audio codecs)から知られるような圧縮音とすることもでき,この場合圧縮データ信号が上記メモリ中にデータとして記憶される。このような音声または音コーデックの例としては,標準ISO/IEC-11172第3部(the standard ISO/IEC-11172 part 3)に記載されているMPEG-I(mp3),標準ITU G.726に記載のDPCM(差分パルス符号変調,Differential Pulse Code Modulation),ADPCM(適応的差分パルス符号変調,Adaptive Differential Pulse Code Modulation),標準ITU G.722に記載のサブバンドADPCM,または標準ITU G.729またはITU G.728に記載の音声コーデックがある。
【0030】
また,実会話信号(a real speech signal)に基づく圧縮音に代えて,人工(合成)音声(synthetic speech)を用いることもできる。人工音声は,音素のようなシンボル言語表現(symbol-linguistic representations)から,または音声信号の基本構成ブロックの他のシンボル表現(other symbol representations of basic building blocks of a speech signal)から,生成することができる。この場合,これらのシンボルが上記不揮発性メモリ21中に記憶され,合成器(シンセサイザ)を備えるオーディオジェネレータが上記シンボル(複数)に基づいて波形信号を合成する。このような合成は典型的には上記シンボル表現からサンプル会話信号のセグメントに基づく波形信号へのマッピングに基づくものである。
【0031】
上述の方法に加えて,または適当であればこれに組合わせて,上記EEGモニタリング装置は,非音声音,たとえば純音(pure tones),「ポロン」,「ボロン」,「ピー」といった音,または楽器に似た音のようなサンプル音を生成する手段を備えてもよい。このような音は,一または複数のトーンジェネレータおよび/または,たとえばインパルス応答フィルタもしくはシンプル・フィルタを備えたオーディオジェネレータ18によって,生成することができる。
【0032】
図4はこの発明による上記EEGモニタリング装置のユーザ・インターフェースの状態図を示している。この図は最も本質的なメッセージのみを示すために簡単化されているが,図3から理解されるように,インターフェースの複雑さを増すことでより多くのメッセージを含むことができる。
【0033】
図4において以下の文字情報(テキスト)が用いられる。
【0034】
【表1】

【0035】
図4の状態図について以下記述する。しかしながら,全体説明のために図4中に示されていない装置部材も参照して以下記述する。図4に示されていない参照符号に関しては図1および図2を参照されたい。
【0036】
図4の頂部を開始位置として,上記EEGモニタリング装置2は電源オンされたときにボックス100において起動する。起動中,上記EEGモニタリング装置2は複数の自己テスト(self-tests),たとえば上記EEGピックアップ手段6の電極,ならびに上記埋込みユニット3および上記外部装置7間の通信リンクの機能性テストを実行する。上記自己テストが成功すると,真フラグ(a true flag)がセットされ,ボックス101において,上記機器作動コントローラ13はSysOKを上記オーディオジェネレータ18へ送信し,オーディオジェネレータは不揮発性メモリにおいてメッセージ「システムOK」(システム オーケー)を検索してそれを上記出力コンバータ19およびスピーカ20を通して,上記EEGモニタリング装置2を持ち運ぶ人物に提示する。このようにして,上記EEGモニタリング装置2を持ち運ぶ人物は上記EEGモニタリング装置2が動作しかつ機能していることの確証を得る。「システムOK」メッセージの送信を終えると,上記EEGモニタリング装置2はボックス102において通常状態に入る。ボックス102において,上記EEGモニタリング装置2を装着している人物は上記キー・スイッチ17を押下することによっていつでもユーザ押ボタン(the user push button)16を作動させることができ,これによってボックス101における新たな自己テストおよびメッセージに至る。
【0037】
電池モニタ14が電池不足(低電池)を検出すると,いつでも(at any time),上記電池モニタは電池不足信号LowBatを上記機器作動コントローラ13に送信する,または好ましくは上記装置動作コントローラ13がそれを検出するためのフラグをハイ(high)に設定する。設けられているタイマT3が作動していない場合,上記機器作動コントローラ13はLowBatを上記オーディオジェネレータ18に送信し,オーディオジェネレータ18は上記不揮発性メモリにおいて「電池不足」を検索して,ボックス103において,それを上記出力コンバータ19およびスピーカ20を通して上記EEGモニタリング装置2を持ち運ぶ人物に提示する。同時に上記タイマT3がスタートする。上記タイマT3が作動中である場合,すなわちタイム・アウトしていない場合には,LowBatは上記オーディオジェネレータへ送信されない。T3の時間値を適切に選択することによって,上記EEGモニタリング装置を持ち運ぶ人物は「電池不足」メッセージを頻繁に聞かされることが防止され,それにより煩わされることがない。したがって,T3に対応する間隔で,上記EEGモニタリング装置を持ち運ぶ人物は上記電池の交換を繰返し促される(reminded)。上記人物が最終的にそうした場合には,上記EEGモニタリング装置2はボックス100において再起動する。
【0038】
上記健康状態モニタ12が切迫した低血糖を検出するといつでも,上記健康状態モニタは低血糖警告信号HealthStateSigを上記機器作動コントローラ13に送信するか,または上記装置動作コントローラ13がそれを検出するためのフラグをハイに設定する。設けられているタイマT2が作動していない場合,上記機器作動コントローラ13はHealthStateWarnを上記オーディオジェネレータ18に送信し,オーディオジェネレータ18は上記不揮発性メモリにおいてメッセージ「低血糖警告」を検索し,ボックス104において,それを上記出力コンバータ19およびスピーカ20を通して上記EEGモニタリング装置2を持ち運ぶ人物に提示する。同時にタイマT1がスタートする。上記EEGモニタリング装置2を持ち運ぶ人物が上記キー・スイッチ17を押下することで上記ユーザ押ボタンを作動させると,上記機器作動コントローラは入力UserKeyPressを受信し,上記ユーザがその者に提示された上記メッセージを聞いたことを認識する。同時に上記タイマT2がボックス105においてスタートする。ボックス102において上記タイマT2が作動中である場合,すなわちタイム・アウトしていない場合,上記ユーザ・インターフェースはボックス102から104へ進まずに,上記EEGモニタリング装置を持ち運ぶ人物は「低血糖警告」メッセージを頻繁に聞かされることが防止され,それにより煩わされることがない。上記人物がまだ特段の措置をとる必要がない,または上記人物がそのような措置をとる状態にないことを自覚している場合である。
【0039】
上記EEGモニタリング装置2を持ち運ぶ人物がメッセージ「低血糖警告」を確認しない場合,上記タイマT1は最終的にタイム・アウトし,上記インターフェースはボックス104から106へと進む。ボックス106において,上記機器作動コントローラ13はHealthStatWarnおよびKeyToAckを上記オーディオジェネレータ18に送信し,オーディオジェネレータ18は順次,メッセージ「低血糖警告」および「確認のためにキーを押して下さい」を検索して,それらを上記出力コンバータ19およびスピーカ20を通して上記EEGモニタリング装置2を持ち運ぶ人物に提示する。同時に上記タイマT1が再スタートする。上記EEGモニタリング装置2を持ち運ぶ人物が最終的に上記キー・スイッチ17を押下することでユーザ押ボタン16を作動させるか,またはたとえば上記EEGモニタリング装置を持ち運ぶ人物が適切な措置を取ったためにHealthStateWarnの信号またはフラグがロー(low)になるまで,これらの2つのメッセージは,好ましくはT2に比較して短いT1の値に対応する間隔で,繰返される。前者の場合,上記インターフェースはボックス105へ進み,そこでタイマT2がスタートし,ボックス102へ戻ってそこで上述したようにT2がタイムアウトするまで維持される。HealthStateSigがローになる後者の場合には,危険はもはや 無くなったのであるから,上記インターフェースはボックス102へ戻り,変化が生じるまで,すなわち,フラグHealthStateSigまたはLowBatが再びハイになるまで,または自己テストを実行するために上記ユーザが上記キー・スイッチ17を押下することで押ボタン16が作動するまで,維持される。
【0040】
このようなユーザ・インターフェースを用いて,上記EEGモニタリング装置2はアラームまたは警告を上記EEGモニタリング装置2を装着している人物に発し,上記人物が聞いて上記警告に応答するまで,上記アラームまたは警告が繰返される。上記アラームまたは警告は生命を脅かす状態に関するものであるから,上記メッセージを頻繁に繰返すことが重要であろう。T1についての典型的な値は,したがって1分未満たとえば15秒とすることができる。上記EEGモニタリング装置2を持ち運ぶ人物が上記メッセージを確認し,かつ適切な措置をとることが期待されるT2についての典型的な値は,より長い時間,たとえば数分とすべきである。T2についての典型的な値は10〜15分とすることができる。電池(バッテリ)アラームについてのT3は,電池アラームについて選択される基準(criteria)に依存することができ,より長い時間たとえば1〜2時間以上とすることができる。
【0041】
上記メッセージが聞こえず上記EEGモニタリング装置2を持ち運ぶ人物が単に上記メッセージに気付かないことを避けるために,確認が行われるまで,各繰返しにおいて音量を増加させることができる。
【0042】
上記インターフェースについて,数個の警告メッセージを持つ簡単な構成に関連してのみ記載したが,たとえば,上記キー・スイッチ17を2回または複数回繰返し押下して上記押ボタン16を作動することで,さらに別のメッセージへのアクセスを提供する手段(means for providing access to further messages)が実現され得ることを,当業者であれば気付くであろう。押しボタン16から上記機器作動コントローラ13に送信される信号は上記キー・スイッチ17を押下した回数に依存する。これによって,メニューポイントおよびメッセージへのアクセス(access to menu points and messages)を得ることができ,より多くのデータをEEGモニタリング装置2を持ち運ぶ人物に提供することができる。これは,上記EEGデータが経時的に(over time)ログされる場合に特に注目に値する。このような場合,ユーザは,典型的に多くの警告等を持つとき(時)(when)を詳細に学ぶことができる。また,上記EEGモニタリング装置2の設定へのアクセスを提供することもでき,たとえば,ユーザが,アラーム閾値,警告間隔,音量設定等を変更することができる。さらに,上記ユーザは,大きな記憶容量を持つ周辺機器11に外部的に情報をアップロードするためにメニューを使用することさえ可能であり,これにより血糖に関する上記ユーザの日常的行動についての情報を記憶し,事象等に関するダイアリーを保持し,またはユーザの行動の修正のやり方を学習するための事象を保持することができる。
【0043】
様々な実施態様に関してこの発明を記載した。しかしながら,当業者であれば容易に気付くように,この発明の範囲内において,添付する特許請求の範囲によって規定されるような上述した実施態様以外の態様も同様に可能である。特に当業者であれば,皮下埋め込み物を用いるのに代えて,完全外部型のEEGモニタリング装置,たとえば皮膚に接触する外部電極を用いたイヤプラグまたはBTE装置や上記埋込み物にワイヤ接続される外部EEGモニタリング装置においてメッセージを実行することが可能であることも気付くであろう。
【0044】
当業者はまた一般的な会話メッセージを記憶するために十分な電子的保存容量を上記EEGモニタリング装置に設けることができ,携帯電話のような周辺機器11の手段によって,他のメッセージに変更または交換可能であることに気付くであろう。
【0045】
取付け処理を経て上記EEGモニタリング装置を配置しかつその持ち運びを始めるときに,上記EEGモニタリング装置を持ち運ぶ人物をガイドするために,メッセージを提供することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯型EEGモニタリング装置であって,
上記装置を持ち運ぶ人物から少なくとも一のEEG信号を計測するように構成されるEEGピックアップ手段,
上記少なくとも一のEEG信号を解析し,上記解析に基づいて上記人物における所定の生物学的事象を識別または予測するように構成される信号処理手段,
情報を上記人物に提示すべきときを決定するように構成される決定手段,
上記人物に情報を提供する音声メッセージを選択するメッセージ選択手段,および
上記選択されたメッセージを上記人物に提示するように構成される音響トランスデューサを備える,
携帯型EEGモニタリング装置。
【請求項2】
上記選択される音声メッセージは上記生物学的事象に関するものである,請求項1に記載のEEGモニタリング装置。
【請求項3】
上記音声メッセージは上記装置中に記憶されている,請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
上記音声メッセージは上記装置中における記憶および再生に適するフォーマットに変換されている,上記請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
上記音声メッセージは上記人物の聴力にしたがって編集されたものである,上記請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
上記メッセージを提示するときに,現在の周囲音響雑音レベルに対して上記提示される音声メッセージを調節する手段を備えている,上記請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
上記装置を持ち運ぶ人物が上記人物自身の選択にしたがって装置中にメッセージを記憶することを許す手段を備えている,上記請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
上記装置は上記人物の耳内に上記音声メッセージを提示するように構成されている,上記請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
上記装置は,上記装置を持ち運ぶ人物に提示されたメッセージを確認させる手段を備えている,上記請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
上記装置の取扱いに関する音声メッセージを提示するようにさらに構成されている,上記請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
携帯型EEGモニタリング装置において音声メッセージを提示する方法であって,
EEGピックアップ手段を用いて上記装置を持ち運ぶ人物から少なくとも一つのEEG信号を計測し,
信号処理手段を用いて上記少なくとも一のEEG信号を解析して上記解析に基づいて上記人物における所定の生物学的事象を識別または予測し,
決定手段を用いて上記人物に情報を提示すべきときを決定し,
メッセージ選択手段を用いて上記人物に情報を提示する音声メッセージを選択し,
音響トランスデューサを用いて上記選択された音声メッセージを上記人物に提示する,
方法。
【請求項12】
上記選択される音声メッセージは上記生物学的事象に関するものである,請求項11に記載の方法。
【請求項13】
上記音声メッセージは上記装置内に記憶されている,請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
上記音声メッセージは上記装置中における記憶および再生に適するフォーマットに変換されている,請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
上記人物の聴力にしたがって編集されている,請求項11から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
上記メッセージを提示するときに,現在の周囲音響雑音レベルに対して上記提示される音声メッセージが調節される,請求項11から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
上記メッセージが上記人物自身の選択にしたがって記憶されている,請求項11から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
上記音声メッセージが上記人物の耳内に提示される,請求項11から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
上記装置を持ち運ぶ人物に上記提示されたメッセージの確認を要求する,請求項11から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
上記装置の取扱いに関する音声メッセージも提示される,請求項11から19のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−529939(P2012−529939A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515354(P2012−515354)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【国際出願番号】PCT/DK2009/050147
【国際公開番号】WO2010/149157
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(500011045)ヴェーデクス・アクティーセルスカプ (99)
【Fターム(参考)】