説明

ELパネル用のゼロ・オフ電流を有するACスイッチ

ELパネルを駆動する電源は、極性反転電圧を1対の出力端子に生成するインバータを含む。出力端子及び少なくとも1つのELランプ(32)に結合されたスイッチング回路は、オン状態で交流を少なくとも1つのELランプに印加し、オフ状態でELランプからの電流を阻止する。スイッチング回路が、ELランプの第1の端子を第1の出力端子に接続する第1の双方向スイッチ(46,47,51)と、ELランプの第2の端子を第2の出力端子に接続する第2の双方向スイッチ(48,49,52)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリで動作するインバータに関し、詳細には、ELパネルを電源に選択的に結合し且つELパネルに実質的にゼロ・オフ電流を与えるスイッチング回路に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書で用いられているように、ブリッジは、4つのアームを有し、2対のアームが第1の対の端子間に並列に接続される回路である。各対のアームでは、アームは、直列に接続される。各直列の対の中のアーム同士の接続点は、第2の対の端子である。アームの中の一方向性電流素子、及び同時に導通する交互のアームを用いて、ブリッジは、DCを1対の端子の対角線間に有し、そしてACを第2の対の端子の対角線間に有する。
【0003】
本明細書において用いられているように、そして当業者に理解されるように、「厚膜」は、1つのタイプのELランプを意味し、「薄膜」は、別のタイプのELランプを意味する。それらの用語は、実際の厚さに広く関連するのみで、そして実際には別個の学問領域を特定する。一般的には、薄膜ELランプは、通常、ガラス基板の上又は前の層の上に、様々な層の真空蒸着により作られる。厚膜ELランプは、一般的に、インクの層を基板上に被着する、例えば、ロール塗布、吹き付け、又は様々な印刷技術により作られる。インクを被着する技術は、排他的ではなく、幾つかのランプ層が典型的には同じ要領で、例えば、スクリーン印刷により被着される。薄膜厚膜ELランプは、或る観点で矛盾してなく、そしてそのようなランプは、薄膜ELランプより相当に厚い。
【0004】
本明細書において用いられているように、EL「パネル」は、1又はそれより多い発光範囲を含む単一のシートであり、そこにおいては、各発光範囲は、EL「ランプ」である。ELランプは、本質的に、誘電性層を2つの導電性電極間に有するキャパシタであって、それら2つの導電性電極の1つが透明であるキャパシタである。誘電性層は、蛍光体粒子を含むことができるか、又は誘電性層の隣に蛍光体粒子の別々の層が存在する。蛍光体粒子は、比較的小さい電流を用いて、強い電界の存在下で光を放射する。
【0005】
厚膜ELランプの文脈において、及び当業者により理解されるように、「無機」は、シリコン又はガリウムを母体結晶として含まない結晶性発光材料を意味する。(結晶は、不純物でもって、偶発的に又は故意にドーピングされ得る。「母体」は、ドーパントではなく、結晶それ自体を意味する。)用語「無機」は、ELランプを作る他の材料と関連しない。
【0006】
EL蛍光体粒子は、典型的には、硫化亜鉛ベースの材料であり、硫化亜鉛結晶構造内に固溶体で、又は粒子構造内の第2相又はドメインとして硫化銅(CuS)、セレン化亜鉛(ZnSe)及び硫化カドミウム(CdS)のような1又はそれより多い化合物を含む。EL蛍光体は、典型的には、色中心として、又は活性剤として、或いは蛍光体の特性を希望するように変更するため粒子格子の欠陥を変更するため、ドーパント、例えば、臭素、塩素、マグネシウム、銀等のような他の材料を中程度の量含む。放出される光の色は、ドーピング・レベルにより決定される。原理的には理解されているが、EL蛍光体粒子の輝度は、詳細には理解されていない。蛍光体の輝度は、時間及び使用と共に劣化し、蛍光体が湿気又は高周波数(1000Hzより高い)の交流にさらされる場合一層劣化が大きい。
【0007】
電源が低電圧バッテリである携帯型電子装置、自動車用ディスプレイ、及び他の応用においては、ELランプは、直流を交流に変換するインバータにより給電される。ELランプが十分に光るため、約120ボルトを超えたピーク・ツー・ピーク電圧が必要である。実際の電圧は、ランプの構成に依存し、そして、特に、蛍光体粉体内の電界強度に依存する。ELランプを通る交流の周波数は、ランプの寿命に影響を与え、200Hzと1000Hzとの間の周波数が好適である。イオン移動が、蛍光体内で200Hzより下の周波数で生じる。1000Hzより上では、蛍光体の寿命は、周波数に反比例する。
【0008】
適切な電圧は、トランスフォーマを用いたインバータから得ることができる。小さいパネルの場合、トランスフォーマは、比較的高価である。従来技術は、インダクタがELランプを通って又は蓄積キャパシタの中に放電されるにつれ、インダクタに蓄積されるエネルギがELランプへ高電圧小電流として供給される幾つかのタイプのインバータを開示する。蓄積キャパシタの電圧は、インバータからの一連の高周波数パルスによりポンプアップされる。容量性ポンプ回路はまた、既知であるが、しかし商業的には広く用いられてはいない。
【0009】
インバータにより生成される直流は、ELランプに給電するため交流に変換されねばならない。米国特許No.4,210,848(Suzuki他)は、この目的のためのスイッチング・ブリッジを開示する。そのブリッジは、ELランプを通る電流を低周波数で交番させるための二極双投スイッチとして働く。米国特許No.5,313,141(Kimball)は、AC電圧を直接生成するインバータを開示する。いずれかの技術を用いた複数のインバータは、商業的に入手可能である。
【0010】
複数のELランプを単一の電源にスイッチにより結合することは、米国特許No.5,313,141(Kimball)のように、当該技術において既知である。この米国特許No.5,313,141(Kimball)で言及されているように、ELランプが「オフ」状態である(これは理論的には電源からの接続が切られている。)ときでさえELランプを流れる極微の電流が存在する。非常に小さいDCバイアスに対応するこの極微の電流は、イオン移動を生じさせることが分かった。小さいDCバイアスでさえ有害であり、適正に駆動されるELランプと比較して寿命が短くなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、上記のことに鑑みて、本発明の課題は、DCバイアスをELパネル上に生じること無しに、ELパネルをバッテリから駆動する電源を提供することにある。
【0012】
本発明の別の課題は、ELパネルのための対称型駆動を提供することにある。
【0013】
本発明の更に別の課題は、複数のランプに対して個別の制御を与えるための経済的に複製されることができる対称型スイッチング回路を提供することにある。
【0014】
本発明の別の課題は、ELランプを通るゼロ・オフ電流を有する対称型スイッチング回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題は、ELパネルを駆動する電源が極性反転電圧を1対の出力端子に生成するインバータを含む本発明において達成される。出力端子及び少なくとも1つのELパネルに結合されたスイッチング回路は、オン状態で交流を少なくとも1つのELパネルに印加し、そしてオフ状態でELランプからの電流を阻止する。スイッチング回路は、ELランプの第1の端子を第1の出力端子に接続する第1の双方向スイッチと、ELランプの第2の端子を第2の出力端子に接続する第2の双方向スイッチとを含む。
【0016】
本発明のより完全な理解は、添付図面と関係した以下の詳細な説明を考慮することにより得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
上記で言及したように、エレクトロルミネセント・ランプは、動作用の交流を必要とする。直流源が入手可能である全てであるとき、ELランプと直流源との接続を交互に反転することにより、交流が生じるであろう。図1に示されるように、ELランプ11の両端子は、二極双投(DPDT)スイッチ12のそれぞれの極に抵抗13及び14を介して結合される。スイッチ12の投入は、キャパシタ16に接続され、そのキャパシタ16は、高電圧DCを適切な電源(図示せず)から蓄積する。スイッチ12が左側で閉成されるとき、第1の極での電圧が、ELランプ11に印加される。スイッチ12が右側で閉成されるとき、ELランプ11に印加される電圧の極性が、反転され、従って、連続したサイクルの間に、ELランプ11を通る交流を生じる。
【0018】
図2は、DPDTスイッチの電子的類似物を含む商業的に入手可能なインバータの概略図である。インバータ20は、キャパシタ23を高電圧に充電するための周知のブースト構成で動作するインダクタ21及びスイッチング・トランジスタ22を含む。ブリッジ回路は、SCR25、SCR26、スイッチング・トランジスタ27、及びスイッチング・トランジスタ28を含む。ELランプ24は、ブリッジのAC対角線部に出力端子A及びBで接続される。キャパシタ23は、ブリッジのDC対角線間に接続される。SCR25及びスイッチング・トランジスタ28は、電流を第1の方向でELランプ24に通すよう同時に導通する。SCR26及びスイッチング・トランジスタ27は、電流を第2の方向でELランプ24に通すよう同時に導通して、SCR25及びスイッチング・トランジスタ28と交番する。
【0019】
図3は、ELパネルの中のランプを選択的に起動させる回路の概略図である。入力端子A及びBは、図2における出力端子A及びBに結合される。ELランプ31は、電力がインバータ20(図2)に印加されている限り点灯される。ELランプ32及び33は、それぞれが接続されるそれぞれのスイッチング回路により選択的に点灯される。これらは、複製の回路であり、そしてELランプ32の動作のみを説明する。スイッチング回路は、ELランプをオン又はオフにし、そしてオフであるとき、ELランプからの全ての電流を阻止する。
【0020】
ELランプ32は、トランジスタ51と直列に結合されたダイオード46により形成され且つ反対極性のダイオード47によりバイパスされる双方向スイッチにより端子Aに結合される。ELランプ32は、トランジスタ52と直列に結合されたダイオード48により形成され且つ反対極性のダイオード49によりバイパスされる双方向スイッチにより端子Bに結合される。反対極性によりとは、電流経路が逆並列(逆平行)であることを意味し、即ち、経路が一方向性でありそして反対方向に流れることを意味する。
【0021】
抵抗41、42、43及び44は、トランジスタ51及び52を動作させるためのバイアスを与える。スイッチング回路は、ELランプ32に対して対称である。即ち、スイッチング回路をいずれの方向に流れる電流は、同じ数のダイオード電圧降下及び同じタイプのトランジスタに遭遇する。
【0022】
端子35は、論理レベル入力である。「正」論理を用いる。即ち、ほぼ+5ボルトが「真」又は「ハイ」或いは「オン」であり、一方、ほぼ0ボルトは、「偽」又は「ロー」或いは「オフ」である。図2の検分から分かることができるように、端子A及びBは、ランプ動作電圧を受け取り、制御信号又は論理レベル電圧を受け取らない。そういうことで、「ハイ」は、80VDCより高い電圧を意味し、そして「ロー」は、(接地の2又は3個のダイオード順方向電圧降下内の)実質的な接地電位を意味する。正確な電圧は、重要ではない。端子A及びBは、決して同時にハイとはならない。
【0023】
端子Aがハイであるとき、電流は、端子AからELランプ31を通り端子Bへ流れる。端子Bがハイであるとき、電流は、端子BからELランプ31を通り端子Aへ流れる。
【0024】
入力35がローであるとき、電流は、端子A及びBの状態に拘わらず、ELランプ32を流れない。端子Aがハイであるとき、小さい電流が、ダイオード47、トランジスタ51のコレクタ−ベース接合部、及び抵抗42を通って入力35における接地へ流れる。この小さい電流は、ダイオード47を順方向にバイアスし、ELランプ32の上側端子を端子Aに結合する。ELランプ32の下側端子は、トランジスタ52及びダイオード49により接地から分離される。電流は、ELランプ32を介して接地へ流れない。同様に、端子Bがハイであるとき、小さい電流は、ダイオード49に流れるが、しかし電流は、ELランプ32を通って流れない。
【0025】
入力35がハイであるとき、トランジスタ51及び52は、必ずしも導通していないにも拘わらずイネーブルされる。端子Aがローであるとき、トランジスタ51が、導通する。端子Bがローであるとき、トランジスタ52が、導通する。
【0026】
入力35がハイであり且つ端子Aがハイであるとき、電流は、ダイオード47、ELランプ32、トランジスタ52及びダイオード48を通って端子Bへ流れる。入力35がハイであり且つ端子Bがハイであるとき、電流は、ダイオード49、ELランプ32、トランジスタ51及びダイオード46を通って端子Aへ流れる。従って、交流が、ELランプ32に与えられる。第1の半サイクルにおける電流は、第2の半サイクルにおける電流と対称である。それは、スイッチング回路がELランプ32に対して対称であるからである。ランプ動作からの正味のDCはなく、そしてスイッチング回路がオフであるとき(入力35がローであるとき)に極微の電流が無い。
【0027】
従って、本発明は、ELパネルの中のランプを選択的に駆動する一方オフ状態で電流を阻止するスイッチを提供する。スイッチは、トランジスタ・タイプを含んで対称であり、そして複数のランプのための個々の制御を与えるよう経済的に複製されることができる。スイッチング回路は、既存のドライバに追加することができ、そして新しいドライバ用の単一の集積回路に組み込むことができる。
【0028】
このように本発明を説明したが、様々な変更が本発明の範囲内で行うことができることが当業者に明らかであろう。例えば、米国特許No.6,204,609(Kimball)に記載された放電回路もまた、ドライバ回路に組み込むことができる。2以上のELランプを単一のスイッチング回路により動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、ブリッジ回路の動作を示す。
【図2】図2は、ブリッジ出力を有する商業的に入手可能なインバータの概略図である。
【図3】図3は、本発明の好適な実施形態に従って構成されたスイッチング回路の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ELパネルを駆動する電源であって、極性反転電圧を1対の出力端子に生成するインバータを含む電源において、
ELランプを前記電源に結合するスイッチング回路を備え、
前記スイッチング回路が、ELランプの第1の端子を第1の出力端子に接続する第1の双方向スイッチと、前記ELランプの第2の端子を第2の出力端子に接続する第2の双方向スイッチとを含む、電源。
【請求項2】
各双方向スイッチが、
第1のトランジスタと直列に結合された第1のダイオードと、
前記第1のダイオード及び前記第1のトランジスタと逆並列に結合された第2のダイオードと
を含む請求項1記載の電源。
【請求項3】
各双方向スイッチが、前記双方向スイッチをオン又はオフにする論理レベル入力を含む請求項1記載の電源。
【請求項4】
各双方向スイッチが、前記双方向スイッチがオフ状態にあるとき少なくとも1つのELランプからの電流を阻止する請求項3記載の電源。
【請求項5】
前記出力端子に結合された複数のスイッチング回路であって、各スイッチング回路がELランプを選択的に点灯させるため前記ELパネルの中の前記ELランプに結合される、前記複数のスイッチング回路を備える請求項1記載の電源。
【請求項6】
各双方向スイッチが、
第1のトランジスタと直列に結合された第1のダイオードと、
前記第1のダイオード及び前記第1のトランジスタと逆並列に結合された第2のダイオードと
を含む請求項5記載の電源。
【請求項7】
各双方向スイッチが、前記双方向スイッチをオン又はオフにする論理レベル入力を含む請求項5記載の電源。
【請求項8】
各双方向スイッチが、前記双方向スイッチがオフ状態にあるとき前記少なくとも1つのELランプからの電流を阻止する請求項7記載の電源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−512993(P2009−512993A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537893(P2008−537893)
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【国際出願番号】PCT/US2006/041551
【国際公開番号】WO2007/050652
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(500105311)ワールド・プロパティーズ・インコーポレイテッド (23)
【Fターム(参考)】