説明

EL素子及びその製造方法、並びに、色変換フィルタ及びその製造方法

【課題】生産性に優れ、且つ安価なガラス基板やプラスチック基板、フィルム等を用いて、高輝度、高信頼性のEL素子を提供する。
【解決手段】EL素子は、少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、前記電極間に挟まれて設けられた層であって、平均粒径が5nm〜500nmの範囲の誘電体結晶粒と、平均粒径が5nm〜500nmの範囲の無機蛍光体結晶粒とが混在しており、前記各結晶粒が、平均厚さが0.5nm〜5nmの範囲の粒界を介して接して構成された複合層とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機蛍光体結晶粒を含む複合層を有するEL素子及びその製造方法、並びに、色変換フィルタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報・通信、医療、エネルギー関連分野等でセラミック材料の高機能化が求められている。従来、セラミック材料の成膜技術としては、ゾルゲル法や、PVD、CVD等の蒸着法、溶射法、静電コーティング法、さらにガスデポジション法(例えば、特許文献1参照。)等が用いられてきたが、近年、これらに代わる成膜技術としてエアロゾルデポジション法(例えば、特許文献2参照。)が注目されている。
【0003】
このエアロゾルデポジション法(或いは、ジェットプリンティングシステムと呼ばれる。)は、セラミック材料等の脆性材料の微粒子をエアロゾル化して、キャリアガスと共に基板等に衝突させて、基板表面に脆性材料の固体構造物を形成する方法である。従来のガスデポジション法と前記エアロゾルデポジション法とは、前者が熱エネルギーを利用して微粒子を焼結させているのに対して、後者は、粒子径、基板等への衝突速度、プロセス雰囲気等のある条件下においては、室温にて特異な構造の脆性材料固体構造物を形成できる点での大きく相違する。この固体構造物は、微結晶の集合体であり、結晶同士の界面の粒界層が極めて薄くしか存在しないという特徴を有する。また、この固体構造物は、従来の窯業プロセスで使用されてきた安価な原料粒子を用いながら、従来の窯業プロセスでは常識とされていた1000℃前後の焼結工程を必要としないにもかかわらず、高温焼結したバルク焼結体と同様にボイドレスで緻密な構造を実現できるため、セラミックス薄膜として幅広い応用が期待できる。さらに、従来の蒸着法等の薄膜形成技術と比較して、10倍以上の成膜速度が得られるため、産業的にも高い可能性を秘めている。
【0004】
ところで、従来の平面型の表示装置や面光源といった発光素子の中で、EL素子に期待が集まっている。このEL素子は、自発発光性を有し視認性に優れ、視野角が広く、応答性が速いなどの特徴を持ち、これまでも様々な構成のEL素子が提案されてきた。
【0005】
また、EL素子には、発光体として無機材料を用いた無機EL素子と、発光体として有機材料を用いた有機EL素子とがある。硫化亜鉛等の無機蛍光体を発光体とする無機EL素子は、10V/cmもの高電界で加速された電子が蛍光体の発光中心を衝突励起し、それらが緩和する際に発光する。無機EL素子には、蛍光体粉末を高分子有機材料等に分散させ、上下に電極を設けた構造の分散型EL素子と、一対の電極間に二層の誘電体層と、更に誘電体層の間に挟まれた薄膜発光層とを設けた薄膜型EL素子とがある。分散型EL素子は、製造が容易ではあるが、輝度が低く寿命が短いため、その利用は液晶ディスプレイのバックライト光源や店頭ディスプレイ等に限られてきた。一方の薄膜型EL素子は、1974年に猪口らによって提案された二重絶縁構造の素子(例えば、特許文献4参照。)が高い輝度と長寿命を持つことを示し、車載用ディスプレイ等への実用化がなされた。
【0006】
ここで、上記分散型EL素子の典型的な構成について、図6を用いて説明する。図6は、分散型EL素子100の発光面に垂直な断面図である。このEL素子100は、透明基板101上に透明電極102と、発光層103と、誘電体層104と、背面電極105とが、この順に積層された構成となっている。発光層103は、蛍光体微粒子103aをバインダ樹脂103c中に分散して、50μmから100μmの厚さに形成されている。背面電極105と透明電極102との間に交流電圧を印加することにより、発光層103から発光が生じ、透明電極102側より外部へ発光を取り出すことができる。また、誘電体層104は、発光層103内を流れる電流を制限する機能を有し、EL素子100の絶縁破壊を抑えることが可能であり、且つ安定な発光特性が得られるように作用する。なお、背面電極105を透明電極として形成することにより、両面から発光を取り出すこともできる。また、上記構成に加えて、EL素子100の全部又は一部を封止するカバー層106をさらに備えていてもよい。
【0007】
このEL素子100の発光色は、発光層103を形成する蛍光体微粒子103aによって決定される。蛍光体微粒子103aとして代表的なものには、ZnS等の12族−16族化合物を母体材料とし、CuやMn等の金属元素を賦活剤として用いたものがある。この蛍光体微粒子103aの粒径は、5〜30μm程度である。蛍光体微粒子103aは、さらに防湿などを目的とした被膜103bで覆われていてもよい。バインダ樹脂103cとしては、比較的誘電率の大きい有機物であるシアノエチルセルロース等が用いられている。一般的には、これら蛍光体微粒子103aとバインダ樹脂103cとに任意の有機溶剤を加えてペースト化し、スクリーン印刷法等により塗布形成する。また、誘電体層104としては、高誘電率で絶縁抵抗、耐電圧が高いことが好ましく、一般的には、BaTiO、SrTiO、PbTiO、CaTiO、Sr(Zr、Ti)O等のペロブスカイト構造を有する誘電体材料が用いられる。これらの誘電体微粒子104aは、バインダ樹脂104c中に分散して成膜される。
【0008】
このようなEL素子においては、実用上、いくつかの問題点がある。第1に、発光素子として輝度が不十分な点である。また、蛍光体微粒子103aとバインダ樹脂103cとの混合ペーストを良好に塗布形成するには、蛍光体微粒子103aの混合比に限界があり、発光に寄与する蛍光体微粒子の充填密度を十分に上げることができない。さらに、蛍光体微粒子103aの粒径が5〜30μmであるので、発光層の膜厚が薄いと絶縁耐圧が低下してしまうことから、発光層の膜厚は、厚さ50〜100μm程度とせざるを得ない。その結果、電界強度を十分に上げられないため、輝度が低くなってしまう。第2に、絶縁耐圧等、長期に渡る信頼性が不十分な点である。発光層103の塗布、乾燥時に形成される層中のボイドや異物混入による欠陥を広い面積に渡って皆無にすることは困難であり、絶縁破壊の起点となってしまう。またさらに、使用中の自己発熱や湿気等の環境ストレスにより蛍光体微粒子103aとバインダ樹脂103cとの界面等でバインダ樹脂の分解が進むことで、絶縁破壊を起こしやすくなるといった問題がある。
【0009】
これらの問題点を解決するために、特許文献3では、誘電体層をエアロゾルデポジション法で形成したEL素子が提案されている。この方法によって形成された誘電体層は、緻密で絶縁耐圧が高く、それによって信頼性の高いEL素子を実現している。しかしながら、このようなEL素子においても、いくつかの実用上の問題がある。EL素子では、駆動のために印加する外部電圧と発光層に配分される電圧との関係について次式(1)のように記述される。EL素子に印加する外部電圧をV’とし、誘電体層の比誘電率をεi、膜厚をdi、発光層の比誘電率をεp、膜厚をdpとすると、発光層に配分される電圧Vは次式(1)で与えられる。
【0010】
V=εi・dp/(εi・dp+εp・di)・V’ (1)
【0011】
上記式(1)からも明らかなように、発光層に有効に電圧を配分するには、誘電体層の比誘電率の大きな材料を用いて、薄膜化することが望ましい。一方、エアロゾルデポジション法では、数μmから数十μmの比較的厚い膜は良好に得られるが、薄膜を形成するのは困難であり、結果として発光層に有効に電圧を配分しているとは言えず、発光開始電圧の上昇、発光効率の低下といった問題が生じる。
【0012】
ところで、近年、液晶ディスプレイ用のバックライトとして、EL素子やLED素子といった新しい白色光源の利用が注目されている。これらの新しい白色光源は、従来の冷陰極管に比べて、応答性がよく、調光性や演色性等に優れた特徴を有しており、これまでも様々な構成の白色光源素子が提案されてきた。白色光を得る原理としては、青色や近紫外領域で単色発光する光源に、光源色を色変換する他の蛍光体を組み合わせて白色とする方式が一般的である。例えば、青色発光のLED素子に、赤色、緑色の色変換用蛍光体を組み合わせることで、LED素子の青色発光を赤色、緑色の色変換用蛍光体が吸収し、赤色、緑色を同時に発光することで白色発光が得られる。
【0013】
ここで、上記色変換型白色LEDの典型的な構成について、図7を用いて説明する。図7は、白色LED110の発光取出し面に垂直な断面図である。この白色LED110は、筐体111内に近紫外LEDチップ112を配置するとともに、筐体121内に赤色色変換蛍光体微粒子113Rと、緑色色変換蛍光体微粒子113Gと、青色色変換蛍光体微粒子113Bとを、内在するバインダ樹脂113aで形成した色変換層113を設けた構造の白色LEDを備える。近紫外LEDチップ112としては、GaN系やZnSe系化合物を母材とする発光材料が用いられる。また、バインダ樹脂113cは、近紫外LEDチップ112を封止、保護する役割も担っており、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ユリア樹脂、シリコン樹脂等の樹脂が用いられる。
【0014】
【特許文献1】特開2000−212766号公報
【特許文献2】特開2001−3180号公報
【特許文献3】特開2004−311422号公報
【特許文献4】特公昭54−8080号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記のような白色光源素子においては、実用上、いくつかの問題点がある。第1に、色変換層113内の蛍光体微粒子113R、113G、113Bの濃度が不均一になるため、白色の色温度がバラつく点である。色変換層は、一般的には、色変換用蛍光体微粒子113R、113Gと、113Bと、バインダ樹脂113cとに任意の有機溶剤を加えてペースト化し、スクリーン印刷法等により塗布形成される。この一連の工程における分散の不均一性が問題視されている。第2に、発光時の自己発熱と短波長の光照射により封止樹脂等が劣化し、素子寿命が短くなる点である。一般的に供されているエポキシ樹脂等は、450nm以下の短波長の光で劣化しやすく、高出力品では樹脂劣化による短寿命化がより顕著に現れる。また、白色光を得る原理や色変換層の機能、並びにそこに内在する課題等については、近紫外LEDチップ112の代わりに近紫外発光、若しくは青色発光するEL素子を用いた場合でも同様である。
【0016】
本発明の目的は、生産性に優れ、且つ安価なガラス基板やプラスチック基板、フィルム等を用いて、高輝度、高信頼性のEL素子を提供することである。また、発光色のユニフォミティが良好で、且つ、高信頼性の色変換フィルタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係るEL素子は、少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、
前記電極間に挟まれて設けられた層であって、平均粒径が5nm〜500nmの範囲の誘電体結晶粒と、平均粒径が5nm〜500nmの範囲の無機蛍光体結晶粒とが混在しており、前記各結晶粒が、平均厚さが0.5nm〜5nmの範囲の粒界を介して接して構成された複合層と
を備えることを特徴とする。
【0018】
また、前記誘電体粒は、ペロブスカイト構造を有するものであってもよい。
【0019】
本発明に係るEL素子は、少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、
前記電極間に挟まれて設けられた発光層と、
前記電極間に挟まれて設けられ、前記発光層からの光を色変換する色変換層であって、前記発光層からの光を第1の波長の光に変換する、平均粒径が5nm〜500nmの範囲の第1蛍光体結晶粒と、前記発光層からの光を第2の波長の光に変換する平均粒径が5nm〜500nmの範囲の第2蛍光体結晶粒とが混在して平均厚さが0.5nm〜5nmの範囲の粒界を接して構成された色変換層と
を備えることを特徴とする。
【0020】
また、前記色変換層は、前記発光層からの光を第3の波長の光に変換する、平均粒径が5nm〜500nmの範囲の第3蛍光体結晶粒をさらに含んでもよい。
【0021】
本発明に係るEL素子の製造方法は、基板を準備する工程と、
第1電極を設ける工程と、
平均粒径が10nm〜1000nmの範囲の誘電体結晶粒と、平均粒径が10nm〜1000nmの範囲の無機蛍光体結晶粒との混合物のエアロゾルを、ノズルから噴射させて、前記第1電極の上に前記誘電体結晶粒と前記無機蛍光体結晶粒との混合物を堆積させて、複合層を形成する工程と、
前記複合層の上に第2電極を設ける工程と
を含むことを特徴とする。
【0022】
また、前記誘電体結晶粒は、ペロブスカイト構造を有するものを用いてもよい。
【0023】
本発明に係るEL素子の製造方法は、基板を準備する工程と、
第1電極を設ける工程と、
前記第1電極の上に発光層を形成する工程と、
前記発光層からの光を第1の波長の光に変換する、平均粒径が10nm〜1000nmの範囲の第1蛍光体結晶粒と、前記発光層からの光を第2の波長の光に変換する、平均粒径が10nm〜1000nmの範囲の第2蛍光体結晶粒との混合物のエアロゾルを、ノズルから噴射させて、前記発光層の上に前記第1蛍光体結晶粒と前記第2蛍光体結晶粒との混合物を堆積させて、色変換層を形成する工程と、
前記色変換層の上に第2電極を設ける工程と
を含むことを特徴とする。
【0024】
また、前記色変換層を形成する工程において、前記混合物にさらに、前記発光層からの光を第3の波長の光に変換する、平均粒径が10nm〜1000nmの範囲の第3蛍光体結晶粒を含ませてもよい。
【0025】
本発明に係る色変換フィルタは、透明又は半透明である支持基板と、
前記支持基板の上に設けられ、入射光を色変換する色変換層であって、前記入射光を第1の波長の光に変換する、平均粒径が5nm〜500nmの範囲の第1蛍光体結晶粒と、前記入射光を第2の波長の光に変換する平均粒径が5nm〜500nmの範囲の第2蛍光体結晶粒とが混在して平均厚さが0.5nm〜5nmの範囲の粒界を接して構成された色変換層と
を備えることを特徴とする。
【0026】
本発明に係る色変換フィルタの製造方法は、透明又は半透明である支持基板を準備する工程と、
入射光を第1の波長の光に変換する、平均粒径が10nm〜1000nmの範囲の第1蛍光体結晶粒と、前記入射光を第2の波長の光に変換する、平均粒径が10nm〜1000nmの範囲の第2蛍光体結晶粒との混合物のエアロゾルを、ノズルから噴射させて、前記支持基板の上に、前記第1蛍光体結晶粒と前記第2蛍光体結晶粒との混合物を堆積させて、色変換層を形成する工程と
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係るEL素子では、蛍光体微粒子と誘電体微粒子の複数種の微結晶が混在する薄膜であって、バインダレス、ボイドレスで充填密度の高い複合膜を形成することによって、個々の蛍光体微粒子に効率的に電界が加わり、高輝度、高効率、且つ高信頼性のEL素子を安価に提供できる。また、本発明に係る色変換フィルタの場合、バインダレス、ボイドレスで複数種の色変換材料の複合膜を形成することによって、高品位で且つ信頼性の高い白色LED又は白色EL素子を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態に係るEL素子及びその製造方法、色変換フィルタ及びこれを用いたEL素子について添付図面を用いて説明する。なお、図面において実質的に同一の部材には同一の符号を付している。
【0029】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係るEL素子について、図1から図3を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係るEL素子10の発光面に垂直な断面図である。このEL素子10は、透明基板11の上に、透明電極12と、発光層13と、背面電極14とが、順次積層されている。さらに詳細には、発光層13は、無機蛍光体結晶粒13aと誘電体結晶粒13bとが隙間なく混在して成る。無機蛍光体結晶粒13aからの発光は、透明電極12の側から取り出される。なお、前記構成に加えて、EL素子10の全部又は一部を封止する構造(カバー層15)を更に備えていてもよい。これによって、湿気や有害なイオン等の汚染から発光層を保護し、素子寿命を延ばすことが可能となる。
【0030】
次に、EL素子10の各構成部材について詳細に説明する。
まず、透明基板11について説明する。透明基板11は、その上に形成する各層を支持できるもので、且つ、電気絶縁性の高い材料であればよい。更には透明電極12との密着性に優れていることが好ましい。透明基板11としては、コーニング1737等のガラス基板を用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、通常のガラスに含まれるアルカリイオン等が発光層へ影響しないように、無アルカリガラスや、ガラス表面にイオンバリア層としてアルミナ等をコートしたソーダライムガラスであってもよい。さらに、ポリエステル等の樹脂基板を用いてもよい。樹脂基板は耐久性、柔軟性、電気絶縁性、防湿性の材料を用いればよく、別例の樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリアリレート(PAR)、ポリサイクリックオレフィン(PCO)、ポリイミド(PI)、アクリル樹脂、フッ素樹脂等を用いることができる。また、透明基板11は、板状の他、シート状、フィルム状等の形状であってよい。
【0031】
また、図1において、背面電極14を透明電極とすれば、基板11の反対側へ発光を取り出すことも可能となる。この場合、基板11は、透明であっても非透明であってもよい。非透明の基板としては、アルミナ等のセラミックス基板やシリコンウェハ、表面に絶縁層を有する金属基板等を用いることができる。別例のセラミックス材料としては、フォルステライト(2MgO・SiO)、ステアタイト(MgO・SiO)、ムライト(3Al・2SiO)、ベリリア(BeO)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化シリコン(Si)、炭化シリコン(SiC+BeO)、ジルコニア(ZrO)、マコール(登録商標)、ホトベール(登録商標)、マセライト(登録商標)等が挙げられる。これらの基板材料は、加熱処理等の製造プロセス条件や用途に応じて使い分けることが望ましい。なお、基板11の反対側から発光を取り出す場合は、反射率の高い基板を用いることで、発光の外部取り出し効率を高めることができる。
【0032】
次に、透明電極12について説明する。透明電極12としては、透過性を有し、低抵抗で、且つ透明基板11との密着性に優れている材料であれば、特に材料を限定するものではない。さらには、透明電極12は、製造プロセス中や使用中に隣接する発光層13と相互作用を起こさないことが好ましい。特に好適な例としては、ITOやSnO、ZnO、SrRuO等の金属酸化物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ITOは、その透明性を向上させる目的、あるいは抵抗率を低下させる目的で、スパッタリング法、エレクトロンビーム蒸着法、イオンプレーティング法等の公知の成膜方法で成膜できる。また、透明電極12は、成膜後に、抵抗率制御の目的でプラズマ処理などの表面処理を施してもよい。透明電極12の膜厚は、必要とされるシート抵抗値と可視光透過率から決定される。好ましくは、透明電極12の膜厚は100〜500nmが適当である。さらに、透明電極12には、ポリアニリン、ポリピロール、PEDOT/PSS等の高分子材料や、カーボン等を用いてもよい。これらの材料を用いる場合は、インクジェット法、ディッピング法、スピンコート法、スクリーン印刷法、バーコート法等公知の成膜方法を使用することができる。
【0033】
次に、発光層13について説明する。前述のように、発光層13は無機蛍光体の結晶粒13aと誘電体の結晶粒13bとが隙間なく混在して成る。この発光層13は、前述のエアロゾルデポジション法を用いて、無機蛍光体微粒子と誘電体微粒子とを基板表面に衝突させて形成した複合膜である。また、発光層13の膜厚は、1μm〜50μmが好ましく、さらに3μm〜10μmがより好ましい。
【0034】
ここで用いられる無機蛍光体微粒子としては、表面にキズや欠陥が少ないことが好ましく、前述のMnをドープしたZnSに代表される第12族−第16族間化合物等公知の蛍光体材料が使用できるが、特にこれらに限定されるものではない。蛍光体微粒子の母材として他の好適な例には、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe等の第12族−第16族間化合物、CaS、SrS、CaSe、SrSe等の第2族−第16族間化合物蛍光材料、ZnMgS、CaSSe、CaSrS等の前記化合物の混晶、又は部分的に偏析していてもよい混合物がある。さらに、別の蛍光体微粒子の母材としては、CaGa、SrGa、BaGa等のチオガレート系蛍光材料、CaAl、SrAl、BaAl等のチオアルミネート蛍光材料、Ga、Y、CaO、GeO、SnO等の金属酸化物蛍光材料、あるいは、ZnSiO、ZnGeO、ZnGa、CaGa、CaGeO、MgGeO、YGeO、YGeO、YGe、YSiO、BeGa、SrGa、(ZnSiO−ZnGeO)、(Ga−Al)、(CaO−Ga)、(Y−GeO)等の多元酸化物蛍光材料等がある。これらの蛍光体微粒子の母材には、それぞれ、Mn、Cu、Ag、Sn、Pb、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Ce、Ti、Cr、Al等の金属元素から選ばれる少なくとも1種類の元素が賦活されている。また、共賦活物質としては、Al等の金属元素、Cl、Iのような非金属元素や、TbF、PrF等のフッ化物を用いてもよい。またさらに、融剤若しくはその他の助剤として、NaCl、CaCl、BaF等のアルカリ若しくはアルカリ土類金属の塩化物若しくはフッ化物、さらには金属Ir、Irハロゲン化物、Ir酸化物等を用いてもよい。さらに、上記の賦活物質、共賦活物質、融剤、助剤等のうち2種類以上を同時に導入してもよい。蛍光体微粒子の合成製法としては、焼成法や共沈法、ソルボサーマル法、逆ミセル法、爆発法等、公知の合成方法を適用することができる。蛍光体微粒子の粒径としては、平均粒径で0.1μm〜5μmが好ましく、さらには0.5μm〜1μmがより好ましい。
【0035】
一方、発光層13で用いられる誘電体微粒子としては、電気絶縁性が高く、誘電率が高いものが好ましい。この誘電体微粒子として好適な例には、チタン酸バリウムや、チタン酸ストロンチウム、チタン酸鉛、チタン酸ビスマス、タンタル酸バリウム、ジルコンチタン酸鉛、ニオブ酸鉛、ジルコンチタン酸ストロンチウム、チタン酸ビスマスナトリウム、ビスマスタンタル酸ストロンチウム、ビスマスニオブ酸ストロンチウム、ビスマスタンタル酸バリウム、ビスマスニオブ酸バリウム、ビスマスタンタル酸鉛、ビスマスニオブ酸鉛、ビスマスチタン酸カルシウム、ビスマスチタン酸ストロンチウム、ビスマスチタン酸バリウム、ビスマスチタン酸鉛、ビスマスチタン酸ナトリウム、ビスマスチタン酸カリウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化タンタル、酸化サマリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸窒化珪素等の誘電体材料、及びこれらの複合材料等があるが、特にこれらに限定されるものではない。誘電体微粒子の粒径としては、平均粒径で0.1μm〜5μmが好ましく、さらには0.5μm〜1μmがより好ましい。
【0036】
次に、発光層13の成膜方法について説明する。図2は、エアロゾルデポジション法を用いた成膜装置20の一例の構成を示す部分模式図である。この成膜装置20は、原材料微粒子のエアロゾルを発生し、供給する部分と、成膜室とから構成されている。さらに詳細には、原材料エアロゾルの供給部分は、エアロゾル発生容器21と、キャリアガス導入管22と、搬送管23と、ノズル24とを含んでいる。キャリアガス導入管22は、原材料微粒子29を搬送するためのガス(キャリアガス)を供給し、且つ、エアロゾル発生容器21内で原材料微粒子29を浮遊させるため、その先端が原材料微粒子29内に埋没するように配置されている。搬送管23は、原材料微粒子29をキャリアガスと共に吸引し、ノズル24に搬送する。ノズル24は、搬送管23によって搬送された原材料微粒子を、基板に向けて噴射する。ノズル24の出射端部の形状は、成膜のパターンに応じて変更してもよい。なお、混合する原材料微粒子が2種類の場合には、これらのエアロゾルの供給部分が2組必要となる。一方、成膜室は、チャンバー26と、XYステージ27と、真空ポンプ28からなり、前述のエアロゾル供給部分の搬送管23及びノズル24がチャンバー26内に挿入されている。チャンバー26内は、予め真空ポンプ28によって成膜環境の調整がなされる。XYステージ27は、ノズル24とXYステージ27上に配置された基板30との相対位置を制御するため、3次元に移動可能なステージとなっている。可動ステージ27を移動させながら、ノズル24から原材料微粒子を噴射させることにより、基板30上に所望のパターンを形成する。なお、図2に示す成膜装置20では、ノズル24を固定し、XYステージ27を移動させる構成となっているが、これに限定されず、ステージ側を固定し、ノズル側を移動させても、あるいはノズルとステージの両方を可動としてもよい。さらに、成膜装置20ではノズル24の噴射方向は、基板30の法線方向と平行に配置されているが、両者に角度を設けて配置してもよい。このように噴射方向と基板の法線方向との間に角度を設けることによって、原材料微粒子が基板30に衝突する際の衝突エネルギーを調整することができる。またさらに、XYステージ27や搬送管23等に加熱機構を設けていてもよい。
【0037】
また、発光層13の成膜の際は、エアロゾル発生容器21に原材料微粒子29を投入する。キャリアガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスや、乾燥空気、酸素ガス、水素ガス等を用いることができる。原材料微粒子の噴射速度としては、50m/s〜500m/sに調整されることが好ましく、キャリアガスの吐出圧やノズル24の形状等で調整する。
【0038】
このようなエアロゾルデポジション法によって成膜された発光層13は、蛍光体結晶粒13aと誘電体結晶粒13bとが、各々の結晶型を維持した微結晶の集合体として構成されており、その結晶粒の平均粒径が5nm〜500nmの膜となっている。さらに、微結晶間の粒界は、非常に薄く、その平均厚さが0.5nm〜5nmである。一般的に、蛍光体を物理的に小径化していくと、小型化の過程で結晶型が破壊され、これらの欠陥がキラーサイトとなって輝度が低下してしまう。しかし、本実施形態のEL素子によれば、蛍光体の結晶構造が成膜後も維持されるため、輝度の低下が生じない。さらに、蛍光体と誘電体の微結晶が高密度で混在することにより、個々の蛍光体微結晶に効率的に電界が加わるため、発光効率も向上する。また、一般的にスパッタリング法等で幅の広い粒界が形成されると、リーク電流のパスとなってしまい、絶縁耐圧低下の原因の一つとなっていたが、本実施形態のEL素子によれば、粒界が非常に薄いため、絶縁耐圧を向上させることもできる。以上の作用により、高輝度、高効率、且つ高信頼性のEL素子を実現した。
【0039】
次に、背面電極14について説明する。背面電極14としては、導電性であって、しかも発光層13との密着性に優れている材料であれば特に限定されない。さらには、製造プロセス中や使用中に隣接する発光層13と相互作用を起こさないことが好ましい。好適な例としては、Pt、Au、Ir、Pd、Ag、Ni、Al、Cu、Cr、Mo、W、Ta、Nb等の金属やこれらの合金が挙げられる。背面電極14の形成方法としては、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、めっき法、インクジェット法、ディッピング法、スピンコート法、スクリーン印刷法、バーコート法等公知の成膜方法が用いられ、膜厚は100〜500nmが好ましい。また、前述のように基板11の反対側から光を取り出す場合、透過性の材料を用いることが好ましく、前述の透明電極と同様の材料を用いることができる。またさらに、背面電極14は黒色を呈していてもよく、これによって透明電極12側からEL素子10内に入射してきた外光が背面電極14の表面で反射することを防止することが可能となり、外光コントラストを良好にすることができる。
【0040】
次に、本発明の実施の形態1に係るEL素子の製造方法について説明する。図3は、本発明の実施の形態1に係るEL素子の製造方法を示すフローチャートである。
(a−1)透明基板として、ガラス基板11を準備する(S01)。
(b−1)ガラス基板11上に、透明電極12としてITO電極をスパッタリング法により形成した(S02)。膜厚は200nmとした。ITO電極はメタルマスクによりくし型パターンとした。フォトリソグラフィ法及びドライエッチング法によるパターン形成であってもよい。
(a−2)蛍光体微粒子を準備した(S03)。蛍光体微粒子13aとしては、ZnS:Cu,Clを、誘電体微粒子13bとしてはBaTiOを用いた。
(b−2)蛍光体微粒子13aと誘電体微粒子13bとは、成膜直前に十分乾燥させ、ボールミルを用いて2次凝集の解砕を行うと共に、蛍光体微粒子13aと誘電体微粒子13bとの混合を行った(S04)。
(c)透明電極12が形成されたガラス基板11上に、蛍光体微粒子13aと誘電体微粒子13bとの混合物を用いて、前述のエアロゾルデポジション法によって、蛍光体微粒子13aと誘電体微粒子13bとの混合物からなる発光層13を形成した(S05)。なお、発光層13の膜厚は5μmとした。
(d)発光層13上に、背面電極14としてPt電極をスパッタリング法により形成した(S06)。膜厚は400nmとした。Pt電極はメタルマスクにより透明電極12と直交する、「くし型パターン」とした。なお、スパッタリング法に限られず、フォトリソグラフィ法及びドライエッチング法によってパターン形成を行ってもよい。
(e)透明電極12と背面電極14との端部が露出するように、ポリイミド系の感光樹脂を塗布、硬化させてカバー層15を形成した(S07)。
【0041】
前記手順で作製したEL素子に、150V/1kHzの正弦波交流電圧を印加したところ、発光輝度は約700cd/mを示した。この値は、従来の分散型EL素子の発光輝度を上回っていた。また、300V以上の電圧を印加しても、絶縁破壊は起こらなかった。
【0042】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る白色EL素子について、図4を用いて説明する。図4は、本発明の実施の形態2に係る白色EL素子の光取り出し面に垂直な断面図である。この白色EL素子40は、青色発光するEL素子41の透明基板42の外側の面に色変換層48を積層した構成となっている。さらに詳細には、色変換層48は、青色EL素子41から入射する青色光を吸収して赤色発光する赤色蛍光体の結晶粒48Rと、青色EL素子41から入射する青色光を吸収して緑色発光する緑色蛍光体の結晶粒48Gとが隙間なく混在して成る。また、青色EL素子41は、透明基板42の上に、透明電極43と、青色発光層44と、誘電体層45と、背面電極46とが、順次積層されている。青色発光層44からの発光は透明電極43と、透明基板42と、色変換層48とを通って外部に取り出される。なお、前記構成に加えて、青色EL素子41や色変換層48の全部又は一部を封止する構造(カバー層47及び49)を更に備えていてもよい。これによって、湿気や有害なイオン等の汚染から色変換層48等を保護し、素子寿命を延ばすことが可能となる。また、赤色蛍光体の結晶粒48Rは、緑色光を吸収して赤色発光するものであってもよい。またさらに、透明電極43と青色発光層44との間に透明の誘電体層を追加した構成であってもよい。なお、白色光を得る別例の方法としては、後述する別例のように、青色LEDに、赤色蛍光体と緑色蛍光体とを含む色変換層を組み合わせるものでもよい。
【0043】
次に、白色EL素子40の各構成部材について詳細に説明する。まず、透明基板42については、実施の形態1における基板11と実質的に同一であって、且つ透過性を有するものであればよく、詳細の説明は省略する。また、透明電極42、背面電極46も、実施の形態1における透明電極14、背面電極12と実質的に同一であるため、詳細の説明は省略する。
【0044】
また、青色発光層44について説明する。青色発光層44は、実施の形態1における無機蛍光体微粒子と実質的に同一であって、且つ、その発光色が青色である蛍光材料を用いることができる。また、その形態については、蛍光体薄膜であっても、蛍光体微粒子の樹脂分散膜であってもよい。薄膜型の青色発光層の場合は、スパッタリング法や電子ビーム蒸着法等の公知の成膜方法を用いることができる。薄膜型の場合には、膜厚は、0.1μm〜1μmが好ましい。一方、分散型の青色発光層の場合は、スクリーン印刷法、バーコート法、インクジェット法、ディッピング法、スピンコート法等公知の成膜方法を用いることができる。分散型の場合には、膜厚は10μm〜100μmが好ましい。
【0045】
さらに、誘電体層45について説明する。誘電体層45は、実施の形態1における誘電体微粒子と実質的に同一であって、同様の誘電体材料を用いることができるよい。また、その形態については、誘電体薄膜であっても、誘電体微粒子の樹脂分散膜であってもよい。薄膜型の誘電体層の場合は、スパッタリング法や電子ビーム蒸着法、ゾルゲル法等の公知の成膜方法を用いることができる。薄膜型の場合には、膜厚は0.1μm〜1μmの範囲が好ましい。一方、分散型の誘電体層の場合は、スクリーン印刷法、バーコート法、インクジェット法、ディッピング法、スピンコート法等の公知の成膜方法を用いることができる。分散型の場合には、膜厚は1μm〜100μmの範囲が好ましい。
【0046】
またさらに、色変換層48について説明する。前述のように、色変換層48は、赤色蛍光体の結晶粒48Rと緑色蛍光体の結晶粒48Gとが隙間なく混在して成る。この色変換層48は、前述のエアロゾルデポジション法を用いて、赤色蛍光体微粒子と緑色蛍光体微粒子とを透明基板表面に衝突させて形成した複合膜である。この色変換層48の膜厚は、1μm〜50μmが好ましく、さらに3μm〜10μmがより好ましい。
【0047】
ここで用いられる赤色蛍光体微粒子としては、実施の形態1における無機蛍光体微粒子と実質的に同一であって、且つ青色波長域若しくは緑色波長域に吸収を持ち、その発光色が赤色である蛍光材料を用いることができる。また、赤色蛍光体微粒子の粒径としては、平均粒径で0.1μm〜5μmが好ましく、さらには0.5μm〜1μmがより好ましい。またさらに、青色光若しくは緑色光を赤色光に変換する効率は高い方が好ましい。一方、緑色蛍光体微粒子としては、実施の形態1における無機蛍光体微粒子と実質的に同一であって、且つ青色波長域に吸収を持ち、その発光色が緑色である蛍光材料を用いることができる。また、緑色蛍光体微粒子の粒径としては、平均粒径で0.1μm〜5μmが好ましく、さらには0.5μm〜1μmがより好ましい。またさらに、青色光を緑色光に変換する効率は高い方が好ましい。
【0048】
次に、色変換層48の成膜方法について説明する。色変換層48の成膜方法は、実施の形態1における発光層13の成膜方法と実質的に同一であり、無機蛍光体微粒子と誘電体微粒子に替えて、赤色蛍光体微粒子と緑色蛍光体微粒子とを使用する点で相違する。従って、詳細の説明は省略する。
【0049】
このようなエアロゾルデポジション法によって成膜された色変換層48は、赤色蛍光体の結晶粒48Rと緑色蛍光体の結晶粒48Gとが、各々の結晶型を維持した微結晶の集合体となっており、その結晶粒の平均粒径が5nm〜500nmの膜となっている。さらに、微結晶間の粒界は非常に薄く、その平均厚さが0.5nm〜5nmである微結晶集合体が実現できる。一般的に、蛍光体を物理的に小径化していくと、その過程で結晶型が破壊され、これらの欠陥がキラーサイトとなって輝度が低下してしまう。しかし、本実施形態のEL素子によれば、蛍光体の結晶構造が成膜後も維持されるため、輝度の低下が生じない。さらに、蛍光体と誘電体の微結晶が高密度で混在することにより、個々の蛍光体微結晶に効率的に電界が加わるため、発光効率も向上する。また、一般的にスパッタリング法等で幅の広い粒界が形成されると、リーク電流のパスとなってしまい、絶縁耐圧低下の原因の一つとなっていた。本実施形態の白色EL素子によれば、色変換層48において、各蛍光体微結晶の粒界が非常に薄いため、絶縁耐圧を向上させることもできる。以上の作用により、高輝度、高効率、且つ高信頼性の白色EL素子を実現した。
【0050】
(実施の形態3)
また、本発明の実施の形態3に係る白色LEDについて、図5を用いて説明する。図4は、この白色LEDの光取り出し面に垂直な断面図である。この白色LED50は、前述の白色EL素子40と比べると、青色発光するEL素子41の代わりに近視外発光するLEDチップ51を用いている点で相違する。また、白色EL素子40の色変換層48は、2種類の結晶粒48R、48Gより構成されたものであったが、白色LED50の色変換層55は、3種類の結晶粒55R、55G、55Bより構成されている点で相違する。さらに詳細には、色変換層55は、透明基板54上にエアロゾルデポジション法によって形成され、近紫外LEDチップ51から透明基板54を通過して入射する近視外光を吸収して青色発光する青色蛍光体の結晶粒55Bと、近紫外LEDチップ51から入射する近紫外光、若しくは、青色蛍光体結晶粒55Bが発する青色光を吸収して緑色発光する緑色蛍光体の結晶粒55Gと、近紫外LEDチップ51から入射する近紫外光、若しくは、青色蛍光体結晶粒55Bが発する青色光、若しくは、緑色蛍光体結晶粒55Gが発する緑色光を吸収して赤色発光する赤色蛍光体結晶粒55Rとが、隙間なく混在して成る。なお、近紫外LEDチップ51は、LEDチップとして代表的な構造であり、筐体53内に近紫外LED52を配置した構成となっている。また、カバー層56をさらに備えてもよい。
【0051】
近紫外LED52は、波長350nm〜410nm、好ましくは波長350nm〜400nmの領域に発光ピークを有するものであり、GaN系化合物半導体、SiC系化合物半導体、ZnSe系化合物半導体、ZnS系化合物半導体材料を用いて製作される。
【0052】
なお、透明又は半透明の支持基板の上に、実施の形態2の白色EL素子又は実施の形態3の白色LEDに用いられた色変換層を設けることによって、色変換フィルタを構成してもよい。この色変換フィルタを青色EL素子や青色LEDと組み合わせることによって白色EL素子や白色LEDを構成することができる。
【0053】
なお、前述の各実施形態は一例を示したものであり、本発明の構成は各実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、実施の形態2において、青色若しくは近紫外の光源として有機EL素子等の単色光源を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係るEL素子は、特に平面型ディスプレイ装置やバックライト等の面光源に利用されるディスプレイデバイスや、通信、照明等に利用される各種光源として有用である。また、本発明に係る色変換フィルタは、青色発光素子と組み合わせて白色光源を得る色変換フィルタとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態1に係るEL素子の発光面に垂直な断面図である。
【図2】エアロゾルデポジション法の成膜装置の一例の構成を示す部分模式図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るEL素子の製造方法のフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態2に係る白色EL素子の発光面に垂直な断面図である。
【図5】本発明の実施の形態3に係る白色LEDの発光面に垂直な断面図である。
【図6】従来例のEL素子の発光面に垂直な断面図である。
【図7】従来例の白色LEDの発光面に垂直な断面図である。
【符号の説明】
【0056】
10 EL素子、11 透明基板、12 透明電極、13 発光層、
13a 蛍光体結晶粒、13b 誘電体結晶粒、14 背面電極、15 カバー層、
20 成膜装置、21 エアロゾル発生容器、22 キャリアガス導入管、
23 搬送管、24 ノズル、25 チャンバー、26 XYステージ、
27 真空ポンプ、28a、28b 原材料微粒子、29 基板、40 白色EL素子、
41 青色EL素子、42 透明基板、43 透明電極、44 発光層、
45 誘電体層、46 背面電極、47、49 カバー層、48 色変換層、
48R 赤色蛍光体結晶粒、48G 緑色蛍光体結晶粒、50 白色LED、
51 近紫外LEDチップ、52 近紫外LED、53 筐体、54 透明基板、
55 色変換層、55R 赤色蛍光体結晶粒、55G 緑色蛍光体結晶粒、
55B 青色蛍光体結晶粒、56 カバー層、100 EL素子、101 透明基板、
102 透明電極、103 発光層、103a 蛍光体微粒子、103b 防湿被膜、
103c バインダ樹脂、104 誘電体層、104a 誘電体微粒子、
104c バインダ樹脂、105 背面電極、106 カバー層、
111 筐体、112 近紫外LEDチップ、113 色変換層、
113R 赤色蛍光体微粒子、113G 緑色蛍光体微粒子、
113B 青色蛍光体微粒子、113c バインダ樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、
前記電極間に挟まれて設けられた層であって、平均粒径が5nm〜500nmの範囲の誘電体結晶粒と、平均粒径が5nm〜500nmの範囲の無機蛍光体結晶粒とが混在しており、前記各結晶粒が、平均厚さが0.5nm〜5nmの範囲の粒界を介して接して構成された複合層と
を備えることを特徴とするEL素子。
【請求項2】
前記誘電体粒は、ペロブスカイト構造を有することを特徴とする請求項1に記載のEL素子。
【請求項3】
少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、
前記電極間に挟まれて設けられた発光層と、
前記電極間に挟まれて設けられ、前記発光層からの光を色変換する色変換層であって、前記発光層からの光を第1の波長の光に変換する、平均粒径が5nm〜500nmの範囲の第1蛍光体結晶粒と、前記発光層からの光を第2の波長の光に変換する平均粒径が5nm〜500nmの範囲の第2蛍光体結晶粒とが混在して平均厚さが0.5nm〜5nmの範囲の粒界を接して構成された色変換層と
を備えることを特徴とするEL素子。
【請求項4】
前記色変換層は、前記発光層からの光を第3の波長の光に変換する、平均粒径が5nm〜500nmの範囲の第3蛍光体結晶粒をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載のEL素子。
【請求項5】
基板を準備する工程と、
第1電極を設ける工程と、
平均粒径が10nm〜1000nmの範囲の誘電体結晶粒と、平均粒径が10nm〜1000nmの範囲の無機蛍光体結晶粒との混合物のエアロゾルを、ノズルから噴射させて、前記第1電極の上に前記誘電体結晶粒と前記無機蛍光体結晶粒との混合物を堆積させて、複合層を形成する工程と、
前記複合層の上に第2電極を設ける工程と
を含むことを特徴とするEL素子の製造方法。
【請求項6】
前記誘電体結晶粒は、ペロブスカイト構造を有することを特徴とする請求項5に記載のEL素子の製造方法。
【請求項7】
基板を準備する工程と、
第1電極を設ける工程と、
前記第1電極の上に発光層を形成する工程と、
前記発光層からの光を第1の波長の光に変換する、平均粒径が10nm〜1000nmの範囲の第1蛍光体結晶粒と、前記発光層からの光を第2の波長の光に変換する、平均粒径が10nm〜1000nmの範囲の第2蛍光体結晶粒との混合物のエアロゾルを、ノズルから噴射させて、前記発光層の上に前記第1蛍光体結晶粒と前記第2蛍光体結晶粒との混合物を堆積させて、色変換層を形成する工程と、
前記色変換層の上に第2電極を設ける工程と
を含むことを特徴とするEL素子の製造方法。
【請求項8】
前記色変換層を形成する工程において、前記混合物にさらに、前記発光層からの光を第3の波長の光に変換する、平均粒径が10nm〜1000nmの範囲の第3蛍光体結晶粒を含ませることを特徴とする請求項7に記載のEL素子の製造方法。
【請求項9】
透明又は半透明である支持基板と、
前記支持基板の上に設けられ、入射光を色変換する色変換層であって、前記入射光を第1の波長の光に変換する、平均粒径が5nm〜500nmの範囲の第1蛍光体結晶粒と、前記入射光を第2の波長の光に変換する平均粒径が5nm〜500nmの範囲の第2蛍光体結晶粒とが混在して平均厚さが0.5nm〜5nmの範囲の粒界を接して構成された色変換層と
を備えることを特徴とする色変換フィルタ。
【請求項10】
透明又は半透明である支持基板を準備する工程と、
入射光を第1の波長の光に変換する、平均粒径が10nm〜1000nmの範囲の第1蛍光体結晶粒と、前記入射光を第2の波長の光に変換する、平均粒径が10nm〜1000nmの範囲の第2蛍光体結晶粒との混合物のエアロゾルを、ノズルから噴射させて、前記支持基板の上に、前記第1蛍光体結晶粒と前記第2蛍光体結晶粒との混合物を堆積させて、色変換層を形成する工程と
を含むことを特徴とする色変換フィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−9711(P2009−9711A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−167247(P2007−167247)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】