EL装置、EL装置の製造方法
【課題】マスクを用いることなく補助陰極配線を形成して表示品質の向上したEL装置を得る。
【解決手段】基板10の一方の面に形成された第1の電極25を囲む上面75と側面76とを有する隔壁77と、隔壁77で囲まれた領域に形成されたEL層を含む発光機能層26と、隔壁77及び発光機能層26を覆う第2の電極27と、隔壁77の少なくとも上面75に形成された第3の電極20と、を備えるEL装置の製造方法であって、第3の電極20は導電材料粒子発生源40から導電材料粒子48を基板10に向けて飛翔させて、導電材料粒子48を隔壁77の少なくとも上面75に堆積させる微粒子成膜法により形成された電極であり、微粒子成膜法は、導電材料粒子発生源40を、導電材料粒子発生源40と手前側の隔壁77とを結ぶ線の延長線が、奥側の隔壁77の側面76と交差するように配置して行なう微粒子成膜法であることを特徴とするEL装置の製造方法。
【解決手段】基板10の一方の面に形成された第1の電極25を囲む上面75と側面76とを有する隔壁77と、隔壁77で囲まれた領域に形成されたEL層を含む発光機能層26と、隔壁77及び発光機能層26を覆う第2の電極27と、隔壁77の少なくとも上面75に形成された第3の電極20と、を備えるEL装置の製造方法であって、第3の電極20は導電材料粒子発生源40から導電材料粒子48を基板10に向けて飛翔させて、導電材料粒子48を隔壁77の少なくとも上面75に堆積させる微粒子成膜法により形成された電極であり、微粒子成膜法は、導電材料粒子発生源40を、導電材料粒子発生源40と手前側の隔壁77とを結ぶ線の延長線が、奥側の隔壁77の側面76と交差するように配置して行なう微粒子成膜法であることを特徴とするEL装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EL装置、及びEL装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機等の電子機器の表示部に用いる表示装置として、表示領域内に規則的に配置されたEL素子を発光させて画像を形成するEL(エレクトロルミネッセンス)装置の実用化が進んでいる。EL素子は、駆動素子が形成された素子基板側に配置された陽極(画素電極)と、該陽極と対向する陰極(共通電極)と、の一対の電極と、該一対の電極間に挟持される少なくともEL層(EL材料層)を含む発光機能層とからなる。近年、EL材料に有機系のEL材料を用いた有機EL装置の採用が進んでおり、また、発光を有効に利用して輝度を向上させるために、陰極側から発光を射出するトップエミッション型の有機EL装置の採用が進んでいる。
【0003】
トップエミッション型の有機EL装置における問題の一つに、電極の抵抗による電圧降下がある。上記一対の電極の少なくとも一方は、透光性と導電性を両立させるために、層厚数nm乃至数十nmの極薄い金属層、あるいは金属に比較して高抵抗のITO(酸化インジウム・錫合金)等で形成されており、比較的高い面抵抗(シート抵抗)又は配線抵抗を有している。したがって、表示領域の中央近傍においては、電圧降下により有機EL素子に対する電流の供給量が低下して、表示品質が劣化する現象が生じ得る。
そのため、特許文献1には、有機EL素子間を区画する隔壁上にフォトリソグラフィー法を用いて補助陰極(補助陰極配線)を形成して、陰極の面抵抗を低減する態様が提示されている。
また、特許文献2には、パッシブマトリクス型(単純マトリクス型)の有機EL装置において、陰極(データ線)群と直交する、陽極(走査線)群に、導電体層を何らかの手法でパターニングして補助配線を積層する態様が提示されている。
また、特許文献3には、有機EL素子間を区画する隔壁上にインクジェット法を用いて補助陰極を形成して、陰極の面抵抗を低減する態様が提示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−123988号公報
【特許文献2】特開2001−345185号公報
【特許文献3】特開2006−278312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の態様はいずれも導電体層のパターニング工程、又は導電材料を含む液体材料を滴下する滴下工程等が必要である。したがって、製造コストを増加させるという課題がある。また、工程数の増加に起因する不良が増加して、歩留りの低下をもたらし得るという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]基板の一方の面に形成された島状の第1の電極と、上記第1の電極を囲む様に形成された、上記基板に対して略平行な上面と上記上面と上記第1の電極との間を繋ぐ側面とを有する隔壁と、上記隔壁で囲まれた領域を少なくとも含む領域に形成された少なくともEL層を含む発光機能層と、上記隔壁及び上記発光機能層を覆うように形成された透明性を有する第2の電極と、上記隔壁の少なくとも上面に形成された第3の電極と、を備えており、上記EL層の発光を上記第2の電極を介して射出するEL装置の製造方法であって、上記第3の電極は導電材料粒子発生源から導電材料粒子を上記基板に向けて飛翔させて、該導電材料粒子を上記隔壁の少なくとも上面に堆積させる微粒子成膜法により形成された電極であり、該微粒子成膜法は、上記導電材料粒子発生源を、該導電材料粒子発生源と手前側の上記隔壁とを結ぶ線の延長線が、奥側の上記隔壁の側面と交差するように配置して行なう微粒子成膜法であることを特徴とするEL装置の製造方法。
【0008】
上記導電材料粒子は略直線的に飛翔するため、主として上記隔壁の上面と側面に堆積し、上記隔壁で囲まれた領域内には殆んど堆積しない。したがって、上記第3の電極は、上記第2の電極を介しての発光の射出を妨げることなく上記第2の電極側の面抵抗を軽減でき、補助陰極として機能する。したがって、このような製造方法であればマスクを用いずに補助陰極を形成でき、表示品質の向上したトップエミッション型のEL装置を製造コストの増加及び歩留りの低下等を抑制しつつ得ることができる。
【0009】
[適用例2]上述のEL装置の製造方法であって、上記第3の電極の形成は、上記第2の電極の形成後に実施されることを特徴とするEL装置の製造方法。
【0010】
このような製造方法であれば、上記第3の電極の周縁部の段差により上記第2の電極に切れ目等が生じることを回避できる。したがって、先に上記第3の電極を形成する場合に比べて、歩留りの低下あるいは表示品質の劣化等を抑制できる。
【0011】
[適用例3]上述のEL装置の製造方法であって、上記微粒子成膜法は、蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、イオンビーム法のいずれかであることを特徴とするEL装置の製造方法。
【0012】
上述の成膜法は、いずれも上記導電材料粒子を直線的に飛翔させることができる。したがって、上記隔壁で囲まれた領域内に上記導電材料粒子が堆積することをより一層抑制でき、より一層表示品質の向上したトップエミッション型のEL装置を得ることができる。
【0013】
[適用例4]上述のEL装置の製造方法であって、上記微粒子成膜法は、2つ以上の上記導電材料粒子発生源を、平面視で上記基板を囲むように配置して行なう微粒子成膜法であることを特徴とするEL装置の製造方法。
【0014】
このような製造方法であれば、上記導電材料粒子を複数の方向から飛翔させることができるので、上記隔壁の表面に満遍なく堆積させることができる。したがって、層厚の均一性が向上した補助陰極を形成でき、より一層表示品質の向上したトップエミッション型のEL装置を得ることができる。
【0015】
[適用例5]上述のEL装置の製造方法であって、上記微粒子成膜法は、上記基板を、該基板と上記導電材料粒子発生源とを結ぶ線とは異なる線を軸として回転させつつ上記導電材料粒子を堆積させる微粒子成膜法であることを特徴とするEL装置の製造方法。
【0016】
このような製造方法であれば、上記導電材料粒子発生源を1つのみ用いる場合においても上記隔壁の表面に満遍なく堆積させることができる。したがって、層厚の均一性が向上した補助陰極を形成でき、より一層表示品質の向上したトップエミッション型のEL装置を得ることができる。なお、上述の「該基板と上記導電材料粒子発生源とを結ぶ線とは異なる線」とは、好ましくは基板の法線である。
【0017】
[適用例6]上述のEL装置の製造方法であって、上記微粒子成膜法は、上記基板と、該基板と上記導電材料粒子発生源とを結ぶ線と、が成す角度を上記基板の回転に合わせて周期的に変化させつつ上記導電材料粒子を堆積させる微粒子成膜法であることを特徴とするEL装置の製造方法。
【0018】
このような製造方法であれば、同一方向から見た場合における上記手前側の隔壁と上記奥側の隔壁との間隔が上記基板の回転により大きく変化するEL装置、すなわち上記隔壁で囲まれた領域の平面形状が縦横比が大きい長方形であるEL装置において、上記導電材料粒子を上記隔壁の表面、特に側面により一層満遍なく堆積させることができる。したがって、上記EL層の発光の射出に影響を与えることなく、より一層低抵抗の補助陰極を形成でき、表示品質をより一層向上できる。
【0019】
[適用例7]上述のEL装置の製造方法であって、上記微粒子成膜法は、上記第3の電極を、遮光性を有する導電材料の粒子を堆積させて形成する微粒子成膜法であることを特徴とするEL装置の製造方法。
【0020】
このような製造方法であれば、上記第3の電極に、隣り合うEL層の発光が互いに混じり合う現象を抑制する機能を付与できる。したがって、より一層表示品質が向上したEL装置を得ることができる。
【0021】
[適用例8]上述のEL装置の製造方法であって、上記遮光性を有する導電材料は光吸収性を有する導電材料であることを特徴とするEL装置の製造方法。
【0022】
このような製造方法であれば、上記第3の電極に、EL装置内に照射された外光が、該EL装置内で反射されて再度上記第2の電極を介して射出される現象を抑制する機能を付与できる。したがって、より一層表示品質が向上したEL装置を得ることができる。
【0023】
[適用例9]上述のEL装置の製造方法であって、上記微粒子成膜法は、上記第3の電極を、複数の種類の導電材料の粒子を順次堆積させて形成する微粒子成膜法であることを特徴とするEL装置の製造方法。
【0024】
このような製造方法であれば、上記第3の電極に、光吸収性と低い抵抗性とのような異なる機能を付与できる。したがって、より一層表示品質が向上したEL装置を得ることができる。
【0025】
[適用例10]上述の製造方法により製造されたEL装置。
【0026】
このような構成によれば、上記基板の中央部と外縁部との間における上記EL層の発光強度の差が少なく、かつ外光の反射が抑制されたEL装置を得ることができる。
【0027】
[適用例11]基板の一方の面の、画像が形成される領域である表示領域内に形成された島状の第1の電極と、上記第1の電極を囲む様に形成された、上記基板に対して略平行な上面と上記上面と上記第1の電極との間を繋ぐ側面とを有する隔壁と、上記隔壁で囲まれた領域を少なくとも含む領域に形成された、少なくともEL層を含む発光機能層と、上記隔壁及び上記発光機能層を覆うように形成された透明性を有する第2の電極と、を備えており、上記第1の電極と上記第2の電極との間に電圧を印加することにより生じる上記EL層の発光を上記第2の電極を介して射出するEL装置であって、上記隔壁の上面と、上記側面の内の少なくとも一部であって上記上面から連続している領域と、を覆う第3の電極を備えることを特徴とするEL装置。
【0028】
このような構成であれば、上記第3の電極により上記第2の電極を補完させて、上述の電圧印加時における電圧降下を低減できる。したがって、上記表示領域の周辺部と中央部との間において上述の印加電圧が不均一になることを抑制でき、品質の向上した表示が可能となる。
【0029】
[適用例12]上述のEL装置であって、上記隔壁の側面は上記第1の電極の外側の方向に向けての傾きを有しており、上記第3の電極は、平面視で上記隔壁と上記第1の電極との境界線の外側にのみ形成されていることを特徴とするEL装置。
【0030】
このような構成であれば、上記第3の電極は上記第2の電極を介して射出される上記EL層の発光を妨げることがない。したがって、上記第3の電極の形成材料の選択の幅を広げることができる。
【0031】
[適用例13]上述のEL装置であって、上記第3の電極は材質の異なる複数の材料層を積層して形成されており、該複数の材料層の内の少なくとも一層は遮光性材料からなることを特徴とするEL装置。
【0032】
このような構成であれば、上述のEL層の発光が上記隔壁を透過して、隣り合う第1の電極と対向する領域から射出されることを抑制できる。したがって、このようなEL装置であればより一層品質の向上した表示が可能となる。
【0033】
[適用例14]上述のEL装置であって、上記遮光性材料は光吸収性材料であることを特徴とするEL装置。
【0034】
このような構成であれば、上記第2の電極を介して該EL装置内に滲入した外光が該EL装置の内部で乱反射することを抑制できる。したがって、このようなEL装置であればより一層品質の向上した表示が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、図面を参照し、EL装置としての有機EL装置及び有機EL装置の製造方法の実施形態について説明する。なお、以下に示す各図においては、各構成要素を図面上で認識され得る程度の大きさとするため、各構成要素の寸法や比率を実際のものとは適宜に異ならせてある。
【0036】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態にかかる有機EL装置1、及び後述する第2〜4の各実施形態にかかる有機EL装置の回路構成図である。有機EL装置1は、表示領域100と外周部とを備えている。表示領域100には、X方向に延在する複数の走査線102と、Y方向に延在する複数の信号線104と、同じくY方向に延在する複数の容量線106と、が形成されている。X方向が信号線104と容量線106とで規定され、Y方向が走査線102の中心線で規定される区画毎に有機EL画素30が形成されている。
【0037】
有機EL画素30は射出する光の色により、赤色有機EL画素30Rと緑色有機EL画素30Gと青色有機EL画素30Bとに区別されており、かかる3種類の有機EL画素30が表示領域100内に規則的に形成されている。なお、上述の各符号の末尾のアルファベットは、それぞれR=赤、G=緑、B=青を表わしている。以下の記載において、対応する色を区別しない場合、すなわち総称を示す場合にはアルファベットを省略して表記する。
【0038】
各々の有機EL画素30は、走査線102を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT(薄膜トランジスタ)108と、スイッチング用TFT108を介して信号線104から供給される画素信号を保持する保持容量110と、保持容量110によって保持された画像信号がゲート電極に供給される駆動用TFT112と、駆動用TFT112を介して容量線106から駆動電流が流れ込む有機EL素子29(図3参照)等からなる。
【0039】
有機EL素子29も、射出する光の色により3種類あり、上述の3種類の有機EL画素30(R,G,B)にそれぞれ対応している。本実施形態の有機EL装置1においては、上述の射出光の色は、発光機能層26(図2参照)内の有機EL層の形成材料によって決定されている。上述の3種類の有機EL画素30(R,G,B)は、有機EL素子29以外の要素は互いに共通である。
【0040】
表示領域100の周辺の領域である外周部には、走査線駆動回路120、及び信号線駆動回路130が形成されている。走査線駆動回路120は、図示しない外部回路より供給される各種信号に応じて、走査線102に走査信号を順次供給する。信号線駆動回路130は、信号線104に画像信号を供給する。容量線106には、図示しない外部回路から画素駆動電流が供給される。走査線駆動回路120の動作と信号線駆動回路130の動作とは、同期信号線140を介して外部回路から供給される同期信号により相互に同期が図られている。
【0041】
走査線102が駆動されスイッチング用TFT108がオン状態になると、その時点の信号線104の電位が保持容量110に保持され、保持容量110の状態に応じて駆動用TFT112のレベルが決まる。そして、駆動用TFT112を介して容量線106から画素電極25(図2参照)に駆動電流が流れ、有機EL素子29は駆動電流の大きさに応じて発光する。
【0042】
図2は、本実施形態の有機EL装置1の模式断面図である。所定の間隔をおいて互いに対向する様に貼り合わされた基板としての素子基板10と対向基板11、及び該素子基板上に形成された有機EL素子29等を示している。
本実施形態の有機EL装置1は、隣り合う有機EL素子29の間を区画する隔壁77の対向基板11側の面に形成された第3の電極としての補助陰極配線20に特徴がある。そこで、本図では隔壁77と、該隔壁によって区画される3種類の有機EL素子29(R,G,B)と、該有機EL素子を駆動する駆動用TFT(以下、単に「TFT」と称する。)112等の断面を表示し、スイッチング用TFT108と保持容量110は図示を省略する。以下、素子基板10側から順に説明する。なお、以下の記載において、素子基板10の対向基板11側の面を「上面」と表記して、素子基板10の対向基板11側を「上」又は「上層」と表記する。
【0043】
素子基板10上には、TFT112が、上述する図示しないスイッチング用TFT108及び保持容量110等とともに形成されている。TFT112は、半導体層31と、走査線102と同一の層をパターニングして形成されたゲート電極33、及び、半導体層31とゲート電極33との間に形成されたゲート絶縁層70等からなる。半導体層31のうち、ゲート電極33と重なる領域がチャネル領域38であり、該チャネル領域の両側にソース領域35とドレイン領域36とが形成されている。
【0044】
TFT112の上層には、窒化シリコン、又は酸化シリコンからなる層間絶縁層71が形成されている。ソース領域35は、層間絶縁層71を局所的にエッチングして形成されたコンタクトホール(符号無し)を介してソース電極53と電気的に接続されており、同様にドレイン領域36は層間絶縁層71を局所的にエッチングして形成されたコンタクトホール(符号無し)を介してドレイン電極54と電気的に接続されている。ソース電極53とドレイン電極54との上層には、窒化シリコンからなる第1の保護層73と平坦化層72とが順に積層されている。
【0045】
平坦化層72の上層における所定の領域には反射層28が形成されている。上記「所定の領域」とは、将来的に有機EL素子29が形成される領域を含む領域である。有機EL素子29の発光は上方向と下方向とに半々に射出される。一方で、本実施形態の有機EL装置1はトップエミッション型であり、対向基板11側にのみ表示領域100(図1参照)を有している。そこで、反射層28により、有機EL素子29の発光を上層方向に反射させて発光を有効に利用している。したがって、反射層28が形成される領域は、将来的に有機EL素子29が形成される領域を少なくとも含む必要がある。
【0046】
反射層28の形成材料は、反射率が高く加工性(パターニング性)に優れた材料が好ましい。有機EL装置1では、反射層28は、Al(アルミニウム)を用いている。反射層28の上面は、窒化シリコンからなる第2の保護層74で覆われている。該第2の保護層は、後述する画素電極25の形成時に反射層28を保護する機能を果たしている。
【0047】
反射層28の形成領域を含む平坦化層72の上面には、該反射層を覆うように、ITO(酸化インジウム・錫合金)層を島状にパターニングしてなる第1の電極としての画素電極25が形成されている。画素電極25は個々の有機EL画素30(図1参照)毎に形成されており、隣り合う画素電極25間は隔壁77で区画されている。したがって、平面視では画素電極25は隔壁77で囲まれており、画素電極25の外縁部は画素電極25と隔壁77とが互いに重なり合う環状の領域となっている。そして該画素電極は、平坦化層72を局所的にパターニングして形成されたコンタクトホール51を介して、ドレイン電極54と導通している。
【0048】
かかる隔壁77の態様を、図3に模式的に示す。図3(a)は、隔壁77と該隔壁に囲まれた、有機EL素子29(R,G,B)を示している。図3(b)は、陰極27を形成する前の段階、すなわち隔壁77で囲まれた領域に後述する発光機能層26(R,G,B)を形成した段階を示している。隔壁77は、層厚(Z方向の寸法)が略2.0μmの感光性の樹脂層を上層に向けて狭まるように、すなわちテーパーがつくようにパターニングして形成されている。したがって、隔壁77は図示するように素子基板10の基板面に略平行な上面75と、該基板面に対して角度を有する側面76と、を有しており、台形状の断面(隔壁77の延在方向に垂直な面における断面)を有している。なお、上述の角度は基板面に対して30度乃至80度が好ましい。
【0049】
図3(a)に示すように、有機EL素子29は平面視で矩形である。そして、図3(b)に示すように、隔壁77は発光機能層26が形成される領域、すなわち将来的に有機EL素子29が形成される矩形の領域を囲んでいる。したがって、該領域は2組の略平行に延在する一対の隔壁77、すなわち計4本の隔壁77で囲まれていることとなる。かかる一対の隔壁77は、一方が「手前側」とすると他方が「奥側」となる。
【0050】
図2に示すように、隔壁77で囲まれた領域、すなわち画素電極25の上層には、3種類の有機EL素子29(R,G,B)毎に夫々異なる発光機能層26が形成されている。具体的には、赤色有機EL素子29Rには赤色発光機能層26Rが形成され、緑色有機EL素子29Gには緑色発光機能層26Gが形成され、青色有機EL素子29Bには青色発光機能層26Bが形成されている。夫々の発光機能層26は、素子基板10側から順に正孔注入層と正孔輸送層と有機EL層と電子輸送層と電子注入層との計5層が積層されて形成されており、上述の各々の発光色は有機EL層の形成材料により得られている。
【0051】
発光機能層26が形成された素子基板10の少なくとも表示領域100には、発光機能層26の上層と隔壁77の上面75と隔壁77の側面76とを覆うように、第2の電極としての陰極27が形成されている。本実施形態にかかる有機EL装置1はトップエミッション型の有機EL装置であるため、陰極27は導電性と共に、透明性又は半透過反射性を有することが必要である。一方で、陰極27は画素電極25の形成材料よりも仕事係数が低い材料で形成される必要がある。また耐環境性等も考慮する必要がある。したがって陰極27は、Ca(カルシウム)、Mg(マグネシウム)、Ba(バリウム)、Cs(セシウム)、Al(アルミニウム)、Ag(銀)、Li(リチウム)、Na(ナトリウム)、K(カリウム)、等の材料を適宜積層して形成することが好ましい。本実施形態における陰極27は、層厚数nm〜十数nmの極薄いAlあるいはMgAg(マグネシウム・銀)合金等で形成されている。
【0052】
陰極27は素子基板10の全面に形成されるため、隔壁77で囲まれた領域内において画素電極25と発光機能層26と陰極27の積層体が形成される。かかる積層体が、有機EL素子29(R,G,B)である。陰極27は少なくとも表示領域100(図1参照)の全域に形成されており、0電位となっている。したがって、画素電極25に電圧が印加されると該電圧に応じた電流が発光機能層26に流れて、発光機能層26に含まれる有機EL層は、該電流量に応じて発光する。
【0053】
隔壁77の上面75、及び側面76の少なくとも上面75から連続する部分には陰極27の導電性を補なうための第3の電極としての補助陰極配線20が形成されている。上述の「上面75から連続する部分」とは、対向基板11に近い側である。本実施形態にかかる有機EL装置の補助陰極配線20は隔壁77の上面75から側面76にかけて連続的に形成されているため、その断面形状は帽子状となる。後述するように、本実施形態の補助陰極配線20はその形成(成膜)方法により、側面76のうち対向基板11に近い側が厚く素子基板10に近づくにつれて薄くなっている。したがって、素子基板10に近い領域では形成(成膜)されていない場合があり得る。
【0054】
上述したように陰極27は極薄い金属材料で形成されているため、高い面抵抗を有している。そのため、表示領域100の中央近傍においては、電圧降下により画素電極25との間に印加する電圧が低下し、上述の発光量が低下する現象が発生し得る。補助陰極配線20はかかる電圧降下を抑制するために形成される要素であり、隔壁77の上面75及び側面76における陰極27、すなわち有機EL素子29の発光を妨げない領域における陰極27の層厚を実質的に厚膜化して面抵抗を低減する機能を果たしている。
【0055】
上述したように補助陰極配線20は側面76にも形成されるが、隔壁77の側面76はテーパーが付いており、素子基板10の基板面に対して垂直にはなっていない。したがって、補助陰極配線20を上述したように素子基板10に近づくにつれて薄くなるように形成することで、補助陰極配線20は有機EL素子29と平面視で重ならないようにできる。したがって、補助陰極配線20は側面76にも形成するにもかかわらず透明性を要せず、少なくとも上面75においては任意の厚さに形成(成膜)できる。そのため、充分な厚さに成膜して面抵抗を低減できる。また、補助陰極配線20の形成材料は、仕事係数を考慮することなく定めることができる。したがって、陰極27の形成材料とは異なる材料を用いることができる。本実施形態にかかる補助陰極配線20は、単層のAl層により形成されている。
【0056】
また、本実施形態にかかる有機EL装置の補助陰極配線20は、隣り合う有機EL素子29間の混色を抑制する遮光層としての機能も果たすことができる。上述したように補助陰極配線20は隔壁77の側面76にも形成されているため、1つの有機EL素子29の発光が隔壁77を透過して隣り合う有機EL素子29の平面視での形成領域から射出されることが抑制される。したがって、本実施形態の有機EL装置1は、上述の電圧降下の低減効果と並んで混色も抑制されており、表示品質が向上している。
【0057】
陰極27の上層には、有機EL素子29等を保護するためにパシベーション層85が形成されている。パシベーション層85は、無機材料層と有機材料層と無機材料層との3層構造が好ましい。そして、該パシベーション層まで形成された素子基板10は、接着層78及び図示しない周辺シール材を介して対向基板11と貼り合わされている。本実施形態にかかる有機EL装置1はトップエミッション型であるため、対向基板11は透明性材料からなる。
【0058】
有機EL装置1は発光機能層26として有機EL素子29毎に異なる有機EL層を含む発光機能層26(R,G,B)を用いているため、対向基板11側にカラーフィルタは形成していない。しかし、上述の有機EL素子29毎に異なる発光色を補完して色純度を一層向上させるためにカラーフィルタ層を形成してもよい。また、有機EL装置1では、上述したように補助陰極配線20に遮光層としての機能も果たさせている。したがって、対向基板11側に、平面視で有機EL素子29を区画する遮光層も形成していない。しかし、補助陰極配線20の遮光機能を補完するために、対向基板11側に別途遮光層を形成してもよい。
【0059】
さらには、対向基板11の素子基板10と対向する側の反対側の面に、外光反射を抑制するための円偏光板を配置してもよい。円偏光板は直線偏光板と1/4波長補正板(直交する偏光成分間に1/4波長の位相差を与える素子。)との積層体である。光が反射する際に、偏光の回転方向が逆転する性質を利用して、有機EL装置内に入射した外光が内部で反射して表示領域100から射出されることを抑制している。
【0060】
続いて、補助陰極配線20の態様にかかる第2〜第4の実施形態について説明する。図4は、第2の実施形態にかかる補助陰極配線20の態様を示す図であり、図5は、第3の実施形態にかかる補助陰極配線20の態様を示す図であり、図6は、第4の実施形態にかかる補助陰極配線20の態様を示す図である。以下、順に説明する。
【0061】
(第2の実施形態)
第2の実施形態にかかる補助陰極配線20は、隔壁77の上面75は完全に覆うように形成されているが、側面76については上側(対向基板11側)の略半分のみを覆うように形成されていることが特徴である。したがって、上述の第1の実施形態にかかる補助陰極配線20に比べて、形成される領域が若干狭くなっている。しかし、上面における層厚を、第1の実施形態にかかる補助陰極配線20の層厚に比べて若干厚くすることで、陰極27の面抵抗の低減効果は略同等に得ることができる。
【0062】
詳しくは後述するが、第1〜第4の実施形態の補助陰極配線20は、導電材料粒子(本実施形態においてはAlの粒子)を素子基板10の基板面に対して斜めの方向から飛翔させて、隔壁77の表面(上面75と側面76)に堆積させる手法で形成されている。したがって、形成時にいわゆる蒸着マスクを用いていない。
【0063】
本実施形態の補助陰極配線20は、側面76の下側(素子基板10側)には該粒子を堆積させないため、導電材料粒子の後述する飛翔角度(図8参照)をより一層浅い角度に設定できる。上述したように本実施形態の補助陰極配線20の上面75における層厚は、第1の実施形態の補助陰極配線20の層厚に比べて厚くなっているが、かかる構成は導電材料粒子を浅い角度で飛翔させることで得ることができる。
【0064】
(第3の実施形態)
第3の実施形態にかかる補助陰極配線20は、第1の補助陰極配線21と第2の補助陰極配線22との2層で形成されている。双方の補助陰極配線は夫々異なる材料で形成されている。かかる構成により、本実施形態の補助陰極配線20は複数の機能を果たすことができる。本実施形態においては、第1の補助陰極配線21はAlで形成されており、該第1の補助陰極配線を覆う第2の補助陰極配線22はCr(クロム)で形成されている。Alは比較的低抵抗な材料であるため、第1の補助陰極配線21は陰極27の面抵抗を充分に低減できる。
【0065】
Crは、Alに比べて光をあまり反射せず、吸収する性質が強い。かかるCrでAlを覆うことで、対向基板11を介して有機EL装置内に入射した外光が該有機EL装置の内部で乱反射することを抑制できる。また、Alが側面76については上側にのみ形成されている場合において、有機EL層の発光が隔壁77を透過して隣り合う有機EL素子29内に達することを抑制できる。したがって、第2の補助陰極配線22は、混色及び外光反射を抑制できる。
【0066】
以上述べたように、本実施形態にかかる補助陰極配線20は、第1の補助陰極配線21による陰極27の面抵抗の低減効果と第2の補助陰極配線22による混色及び外光反射を抑制効果との双方の機能を果たすことができる。したがって、本実施形態にかかる補助陰極配線20を備える有機EL装置は、より一層品質の向上した表示が可能となる。なお、材料の積層数は2層に限定されるものではなく、3層以上の材料層を積層して補助陰極配線20を形成してもよい。
【0067】
(第4の実施形態)
第4の実施形態にかかる補助陰極配線20は、上述の第1〜第3の実施形態の補助陰極配線20とは異なり、陰極27の下層に形成されている。したがって、補助陰極配線20の形成時には隔壁77の表面には陰極27が形成されておらず、上述の第1〜第3の実施形態の補助陰極配線の形成時と比べると、隔壁77の寸法が実質的に縮小していることとなる。
【0068】
上述したように、補助陰極配線20は蒸着マスクを用いずに形成される。かかる場合において、隔壁77の寸法が縮小していると補助陰極配線20の形成材料(導電材料粒子)が発光機能層26上に堆積する可能性が低減される。したがって、本実施形態にかかる補助陰極配線20は、上述の第1〜第3の実施形態の補助陰極配線20の形成時に比べて余裕を持って形成できる。また、余裕をもって形成できるため、補助陰極配線20の層厚を多少なりとも増加させることができ、有機EL装置の表示品質を向上させることが可能となる。
【0069】
続いて、有機EL装置の製造方法に含まれる補助陰極配線20の形成方法にかかる、第5〜第9の実施形態について説明する。
【0070】
(第5の実施形態)
図7〜図9は、第5の実施形態にかかる補助陰極配線20の形成方法を示す図である。以下、順に説明する。本実施形態にかかる補助陰極配線20、及び後述する第6〜第9の実施形態にかかる補助陰極配線20の形成方法は、微粒子成膜法としての蒸着法を用いる方法である。そして、蒸着マスクを用いずに隔壁77の表面に限定される局所的な領域に補助陰極配線20を形成している点に特徴がある。なお、微粒子成膜法としては、蒸着法以外にイオンプレーティング法、スパッタリング法、イオンビーム法等がある。かかる成膜法のいずれにも、本実施形態及び後述する第6〜第9の実施形態にかかる形成方法を適用することができる。
【0071】
図7は、補助陰極配線20が形成される基板としての素子基板10と導電材料粒子発生源としての蒸着源40との相互の位置関係を示す図である。蒸着源40は、素子基板10の基板面に対して法線方向ではなく、「θ」で示す所定の角度を有する位置に配置されている。かかる角度を、以下「飛翔角度θ」と称する。
上述の飛翔角度θは、蒸着源40の中心線と素子基板10の基板面とがなす角度である。蒸着源40からは、蒸着材料(本実施形態においては導電材料粒子)が円錐状に飛翔する。かかる円錐の中心軸が上述の「中心線」である。素子基板10に形成された隔壁77の表面には、かかる飛翔角度θの方向から飛翔してくる導電材料粒子が堆積する。素子基板10上には隔壁77及び陰極27までが形成されている。かかる状態の素子基板10に飛翔角度θの方向から、すなわち斜め方向から導電材料粒子が飛翔してきた場合、隔壁77の陰となる領域には該導電材料粒子は堆積しない。かかる現象を図8に示す。
【0072】
なお、蒸着源40は導電材料としてのAlを加熱するコイル等の加熱手段を備えたるつぼと、該るつぼから蒸発するAl粒子を所定の角度範囲内に飛翔させるためのノズル等を備えている。また、本実施形態、及び後述する各実施形態においては、蒸着源40を備える蒸着装置については、真空ポンプ、真空チャンバー、及び素子基板10の保持機構等を含めて図示を省略している。
【0073】
図8(a)は、素子基板10に向かって飛翔するAl粒子48を示す図である。図8(a)においては、素子基板10に向かって飛翔するAl粒子48と飛翔線49、及び素子基板10上に形成された有機EL素子29と画素電極25を区画する隔壁77等を示し、TFT112等は図示を省略している。なお、「飛翔線49」とは、図示しない蒸着源40(図7参照)から飛翔するAl粒子48の軌跡である。所定の範囲における複数の飛翔線49は、素子基板10と蒸着源40との間の距離が充分にある場合、近似的には互い平行になる。図示するように、飛翔線49は素子基板10の基板面に対して垂直ではなく、飛翔角度θを有しているため、Al粒子48は隔壁77の上面75のみでなく側面76の一部にも堆積する。一方で、有機EL素子29の形成領域のうちの少なくとも一部の領域は、手前側の隔壁77の陰となりAl粒子48が堆積しない。
【0074】
図8(b)は、斜め方向から飛翔するAl粒子48によって隔壁77の表面に(陰極27を介して)形成された補助陰極配線20を示す図である。隔壁77の上面75には、Al粒子48の堆積により補助陰極配線20が形成される。また、側面76の一方の面、すなわち飛翔線49と交わる側の面にも、上面75から連続した補助陰極配線20が形成されている。本図においては、飛翔線49と素子基板10の基板面とがなす飛翔角度θが小さめに設定されているため、隔壁77で囲まれている領域、すなわち平面視で有機EL素子29が形成されている領域(有機EL素子29の上面)にはAl粒子48が堆積せず、補助陰極配線20は形成されない。また、側面76においても、素子基板10に近い領域には補助陰極配線20は形成されていない。
【0075】
飛翔線49と素子基板10の基板面とがなす角度である飛翔角度θを適切に設定すると、隔壁77の表面にのみAl粒子48を堆積させて補助陰極配線20を形成し、かつ有機EL素子29の上面にはAl粒子48を堆積させず該有機EL素子の発光の射出を確保できる。すなわち、蒸着マスクを用いずに補助陰極配線20を形成して、製造コストの増加を抑制しつつ、有機EL装置の表示品質を向上できる。また、隔壁77の上面75に蒸着マスクを密着させることによる歩留りの低下も回避できる。
【0076】
図9は、かかる飛翔角度θの設定方法を示す図である。上述の適切な飛翔角度θは、以下の式に基づいて設定される。
tanθ=T×tanδ/W×tanδ+T・・・・・・・・・(1)
ここで、
δ=隔壁77の側面76と素子基板10の基板面とが成す角度、
W=有機EL素子29の幅、すなわち対向する一対の隔壁77の間の距離、
T=隔壁77の高さ、(隔壁77の上面75と発光機能層26の上面との間の距離)、
である。
【0077】
飛翔線49と素子基板10の基板面とがなす角度である飛翔角度θが式(1)で設定される角度となるように蒸着源40を配置することにより、蒸着マスクを用いずに、隔壁77の表面に限定してAl粒子を堆積させることができる。したがって、有機EL素子29の発光の射出を妨げない範囲内において充分に低抵抗の補助陰極配線20を形成して、陰極27の面抵抗を低減できる。
【0078】
(第6の実施形態)
図10(a)〜図10(c)は、第6の実施形態、及び該実施形態の変形例にかかる補助陰極配線20の形成方法を示す図である。本実施形態にかかる補助陰極配線20の形成方法は、複数の蒸着源を用いている点に特徴がある。図10(a)は、第1の蒸着源41と第2の蒸着源42との2つの蒸着源を用いる場合における斜視図であり、図10(b)は、かかる場合を素子基板10の法線方向から見た平面図である。図10(b)に示すように、平面視において第1の蒸着源41と第2の蒸着源42とは対称となる位置に配置されている。そして、図10(a)に示すように第1の蒸着源41と第2の蒸着源42とは、双方の飛翔角度θが式(1)で算出される値となるように配置されている。
【0079】
本実施形態の補助陰極配線20の形成方法は、かかる対称位置からAl粒子48(不図示)を飛翔させることで、隔壁77の両側の側面76に対して略均等にAl粒子48を堆積させている。したがって、有機EL素子29の発光を妨げることなく、陰極27の面抵抗をより一層低減して表示品質をより一層向上できる。また、複数の蒸着源から同時にAl粒子を飛翔させるため、補助陰極配線20の形成に要する時間を短縮できる。
【0080】
図10(c)は、上述の形成方法の変形例として、第1の蒸着源41〜第4の蒸着源44の計4つの蒸着源を用いる補助陰極配線20の形成方法を示す図である。素子基板10を挟んで対向する様に配置された一対の蒸着源が、縦方向と横方向とにそれぞれ配置されている。上述したように有機EL素子29(の形成領域)は平面視で矩形であり、4方を隔壁77で囲まれている。本変形例によれば、かかる4辺の隔壁77が夫々有する計8つの側面76に満遍なくAl粒子を堆積させることができる。したがって、陰極27の面抵抗をより一層低減できる。
【0081】
かかる変形例における飛翔角度θは、上述の一対の蒸着源では同一に設定し、縦方向の一対の蒸着源(第3の蒸着源43と第4の蒸着源44)と横方向の一対の蒸着源(第1の蒸着源41と第2の蒸着源42)とでは異なる値に設定することが好ましい。図3に示すように、有機EL素子29の形成領域は細長い矩形状である。したがって、有機EL素子29の幅Wの値が縦方向と横方向とで大きく異なっている。かかるWの値に合わせて飛翔角度θを夫々設定することで、上述の8つの側面76により一層満遍なくAl粒子を堆積させることができる。
【0082】
(第7の実施形態)
図11(a)〜図11(c)は、第7の実施形態、及び該実施形態の変形例にかかる補助陰極配線20の形成方法を示す図である。本実施形態にかかる補助陰極配線20の形成方法は、一列に並べて配置された複数の第1の蒸着源41と同じく一列に並べて配置された複数の第2の蒸着源42とを用いて、素子基板10の両側から連続的にAl粒子48を飛翔させていることが特徴である。
【0083】
図11(a)の斜視図に示すように全ての蒸着源(41及び42)は、同一の飛翔角度θとなるように配置されている。また、図11(b)の平面図に示すように、第1の蒸着源41と第2の蒸着源42は、素子基板10の中心線を挟んで互いに対称な位置に配置されている。多数の蒸着源を用いるため補助陰極配線20の形成時間を短縮でき、また素子基板10の基板面内における層厚等の均一性の向上効果も得ることができる。
【0084】
図11(c)は、上述の形成方法の変形例として、複数の蒸着源を間隔を空けて配置し、該複数の蒸着源から夫々異なる蒸着材料を飛翔させつつ素子基板10を矢印の方向に移動させて補助陰極配線20を形成する方法を示す図である。本変形例では、素子基板10の進行方向、すなわち矢印の方向に沿って、蒸着材料としてAlを備える第5の蒸着源45と蒸着材料としてCrを備える第6の蒸着源46とを配置している。そして、素子基板10を移動させつつ蒸着源(45及び46)から蒸着材料(導電材料粒子)を飛翔させて、Al粒子48からなる第1の補助陰極配線21(図5参照)と導電材料粒子としてのCr粒子47からなる第2の補助陰極配線22(図5参照)を連続的に形成している。かかる形成方法であれば、夫々異なる材料で形成された複数の補助陰極配線からなる多層構造の補助陰極配線20を容易に形成でき、表示品質の向上した有機EL装置をより一層低コストで製造できる。
【0085】
(第8の実施形態)
図12は、第8の実施形態にかかる補助陰極配線20の形成方法を示す図である。本実施形態の形成方法は、素子基板10を、該素子基板の法線方向を軸として回転させつつ、蒸着源40からAl粒子48を飛翔させる点に特徴がある。
【0086】
上述したように有機EL素子29(の形成領域)を囲む4辺の隔壁77は計8つの側面76を有している。したがって、1つの蒸着源40を用いて、かつ、素子基板10と蒸着源40との双方を固定して双方の位置を相対的に変化させずにAl粒子48を飛翔させ場合、上記8つの側面76の内の、蒸着源40と対向する2つの側面76にのみ充分なAl粒子48が堆積する。
【0087】
本実施形態にかかる補助陰極配線20の形成方法によれば、上記8つの側面76の全てが順次に蒸着源40と対向するため、蒸着源40を1つのみ備える蒸着装置を用いて該8つの側面76に満遍なくAl粒子を堆積させることができる。したがって、有機EL素子29の発光の射出を妨げない範囲内において充分に広い断面積を有する補助陰極配線20を形成できる。したがって、陰極27の面抵抗をより一層低減でき、表示品質が向上した有機EL装置を製造コストを増加させることなく得ることができる。
【0088】
(第9の実施形態)
図13(a)〜図13(c)は、第9の実施形態にかかる補助陰極配線20の形成方法を示す図である。本実施形態の形成方法は上述の第8の実施形態を発展させたものであり、素子基板10の回転に合わせて蒸着源40を移動させて、飛翔角度θを変化させることに特徴がある。
【0089】
図3に示すように、有機EL素子29の平面形状(平面視での形状)は長辺と短辺とを有する長方形である。したがって、上記長辺の方向と上記短辺の方向とでは、向かい合う一対の隔壁77間の距離が大きく異なる。そして、上述したように飛翔角度θの最適値は、手前側の隔壁77(具体的には手前側の隔壁77の上面75と奥側の側面76との境界)と奥側の隔壁77(具体的には奥側の隔壁77の手前側の側面76の立ち上がり部)とを結ぶ線と、素子基板10の基板面と、が成す角度である。
【0090】
かかる最適値(最適角度)は、長辺方向と短辺方向とでは、上述の一対の隔壁77間の距離(図9に示す「W」)の変化に伴い大きく変化する。本実施形態にかかる補助陰極配線20の形成方法は、飛翔角度θの最適値の変化に合せて蒸着源40の位置を上下させることで、長方形の平面形状を有する有機EL素子29を備える有機EL装置の製造において、長辺側の隔壁77の側面76と短辺側の隔壁77の側面76とに同等のAl粒子48を堆積させることで、有機EL素子29の発光の射出を妨げずに陰極27の面抵抗をできる限り低減させている。
【0091】
具体的には、有機EL素子29の長辺方向に蒸着源40が位置しているときは、図13(b)に示すように蒸着源40の位置を下げて(素子基板10に近づけて)、長辺側の飛翔角度θ1を手前側の隔壁77と奥側の隔壁77とを結ぶ線と一致させる。そして、短辺方向に蒸着源40が位置しているときは、図13(c)に示すように蒸着源40の位置を上げて、短辺側の飛翔角度θ2を手前側の隔壁77と奥側の隔壁77とを結ぶ線と一致させる。
【0092】
このように、素子基板10を回転させると共に、該回転に同調させて蒸着源40の位置を変化させることで、蒸着源40を1つのみ備える蒸着装置を用いて有機EL素子29を囲む4つの隔壁77が有する8つの側面76に略均一にAl粒子を堆積させることができる。したがって、陰極27の面抵抗をより一層低減でき、表示品質がより一層向上した有機EL装置を製造コストを増加させることなく得ることができる。なお、上記の実施形態では蒸着源の位置を上下させているが、蒸着源40の中心線が常に素子基板10の中央を指向するように該蒸着源を円弧状に移動させることも可能である。また、蒸着源40を移動させずに基板面に水平な軸を中心に回転させて、飛翔線49の方向(角度)を変えることもできる。
【0093】
(変形例)
図14は、変形例にかかる補助陰極配線20の形成方法を示す図である。本変形例にかかる形成方法は、蒸着源40と素子基板10との間に該素子基板から所定の間隔をおいてAl粒子の飛翔角度を制限する補助マスク50を配置していることが特徴である。
上述したように、蒸着源40からは、Al粒子48が円錐状(円錐状の範囲内)に飛翔する。したがって、上述の飛翔角度は上記円錐の頂角の範囲内のばらつきを有している。素子基板10が小さい場合、あるいは蒸着源40と素子基板10との間隔が充分広い場合には、飛翔線49は平行線に近似できる。したがって、飛翔角度のばらつきは低減される。しかし、蒸着源40と素子基板10との間隔を充分には取れない場合は飛翔角度のばらつきが増加する。その結果、隔壁77の側面76における補助陰極配線20の層厚にばらつきが生じ得る。また、有機EL素子29上にAl粒子が堆積することを回避するためには、蒸着源40の位置を下げて飛翔角度を小さくする必要がある。しかし、飛翔角度をあまり小さくすると隔壁77の表面、特に側面76に対するAl粒子の堆積速度が低下する。
【0094】
本変形例では、図示するように補助マスク50により飛翔角度が極端に大きな値となることを回避している。そして、素子基板10を矢印の方向に移動させて、限定された飛翔角度の範囲内でAl粒子を堆積させている。かかる態様により、素子基板10の面積が大きい場合、若しくは素子基板10と蒸着源40との間の距離をあまり取れない場合において、有機EL素子29上にAl粒子が堆積することを抑制しつつ、効率的に補助陰極配線20を形成している。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】第1の実施形態にかかる有機EL装置の回路構成図。
【図2】第1の実施形態の有機EL装置の模式断面図。
【図3】隔壁の態様を模式的に示す図。
【図4】第2の実施形態にかかる補助陰極配線を示す図。
【図5】第3の実施形態にかかる補助陰極配線を示す図。
【図6】第4の実施形態にかかる補助陰極配線を示す図。
【図7】第5の実施形態にかかる補助陰極配線の形成方法の概略を示す図。
【図8】導電材料粒子の堆積の態様を示す図。
【図9】導電材料粒子の飛翔線の角度の設定方法を示す図。
【図10】第6の実施形態にかかる補助陰極配線の形成方法を示す図。
【図11】第7の実施形態にかかる補助陰極配線の形成方法を示す図。
【図12】第8の実施形態にかかる補助陰極配線の形成方法を示す図。
【図13】第9の実施形態にかかる補助陰極配線の形成方法を示す図。
【図14】変形例にかかる補助陰極配線の形成方法を示す図。
【符号の説明】
【0096】
1…第1の実施形態の有機EL装置、10…基板としての素子基板、11…対向基板、20…第3の電極としての補助陰極配線、21…第1の補助陰極配線、22…第2の補助陰極配線、25…第1の電極としての画素電極、26R…赤色発光機能層、26G…緑色発光機能層、26B…青色発光機能層、27…第2の電極としての陰極、28…反射層、29R…赤色有機EL素子、29G…緑色有機EL素子、29B…青色有機EL素子、30R…赤色有機EL画素、30G…緑色有機EL画素、30B…青色有機EL画素、31…半導体層、33…ゲート電極、35…ソース領域、36…ドレイン領域、38…チャネル領域、40…導電材料粒子発生源としての蒸着源、41…第1の蒸着源、42…第2の蒸着源、43…第3の蒸着源、44…第4の蒸着源、45…第5の蒸着源、46…第6の蒸着源、47…導電材料粒子としてのCr粒子、48…導電材料粒子としてのAl粒子、49…飛翔線、50…補助マスク、51…コンタクトホール、53…ソース電極、54…ドレイン電極、70…ゲート絶縁層、71…層間絶縁層、72…平坦化層、73…第1の保護層、74…第2の保護層、75…上面、76…側面、77…隔壁、78…接着層、85…パシベーション層、100…表示領域、102…走査線、104…信号線、106…容量線、108…スイッチング用TFT、110…保持容量、112…駆動用TFT、120…走査線駆動回路、130…信号線駆動回路、140…同期信号線、θ…飛翔角度、θ1…長辺側の飛翔角度、θ2…短辺側の飛翔角度。
【技術分野】
【0001】
本発明は、EL装置、及びEL装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機等の電子機器の表示部に用いる表示装置として、表示領域内に規則的に配置されたEL素子を発光させて画像を形成するEL(エレクトロルミネッセンス)装置の実用化が進んでいる。EL素子は、駆動素子が形成された素子基板側に配置された陽極(画素電極)と、該陽極と対向する陰極(共通電極)と、の一対の電極と、該一対の電極間に挟持される少なくともEL層(EL材料層)を含む発光機能層とからなる。近年、EL材料に有機系のEL材料を用いた有機EL装置の採用が進んでおり、また、発光を有効に利用して輝度を向上させるために、陰極側から発光を射出するトップエミッション型の有機EL装置の採用が進んでいる。
【0003】
トップエミッション型の有機EL装置における問題の一つに、電極の抵抗による電圧降下がある。上記一対の電極の少なくとも一方は、透光性と導電性を両立させるために、層厚数nm乃至数十nmの極薄い金属層、あるいは金属に比較して高抵抗のITO(酸化インジウム・錫合金)等で形成されており、比較的高い面抵抗(シート抵抗)又は配線抵抗を有している。したがって、表示領域の中央近傍においては、電圧降下により有機EL素子に対する電流の供給量が低下して、表示品質が劣化する現象が生じ得る。
そのため、特許文献1には、有機EL素子間を区画する隔壁上にフォトリソグラフィー法を用いて補助陰極(補助陰極配線)を形成して、陰極の面抵抗を低減する態様が提示されている。
また、特許文献2には、パッシブマトリクス型(単純マトリクス型)の有機EL装置において、陰極(データ線)群と直交する、陽極(走査線)群に、導電体層を何らかの手法でパターニングして補助配線を積層する態様が提示されている。
また、特許文献3には、有機EL素子間を区画する隔壁上にインクジェット法を用いて補助陰極を形成して、陰極の面抵抗を低減する態様が提示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−123988号公報
【特許文献2】特開2001−345185号公報
【特許文献3】特開2006−278312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の態様はいずれも導電体層のパターニング工程、又は導電材料を含む液体材料を滴下する滴下工程等が必要である。したがって、製造コストを増加させるという課題がある。また、工程数の増加に起因する不良が増加して、歩留りの低下をもたらし得るという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]基板の一方の面に形成された島状の第1の電極と、上記第1の電極を囲む様に形成された、上記基板に対して略平行な上面と上記上面と上記第1の電極との間を繋ぐ側面とを有する隔壁と、上記隔壁で囲まれた領域を少なくとも含む領域に形成された少なくともEL層を含む発光機能層と、上記隔壁及び上記発光機能層を覆うように形成された透明性を有する第2の電極と、上記隔壁の少なくとも上面に形成された第3の電極と、を備えており、上記EL層の発光を上記第2の電極を介して射出するEL装置の製造方法であって、上記第3の電極は導電材料粒子発生源から導電材料粒子を上記基板に向けて飛翔させて、該導電材料粒子を上記隔壁の少なくとも上面に堆積させる微粒子成膜法により形成された電極であり、該微粒子成膜法は、上記導電材料粒子発生源を、該導電材料粒子発生源と手前側の上記隔壁とを結ぶ線の延長線が、奥側の上記隔壁の側面と交差するように配置して行なう微粒子成膜法であることを特徴とするEL装置の製造方法。
【0008】
上記導電材料粒子は略直線的に飛翔するため、主として上記隔壁の上面と側面に堆積し、上記隔壁で囲まれた領域内には殆んど堆積しない。したがって、上記第3の電極は、上記第2の電極を介しての発光の射出を妨げることなく上記第2の電極側の面抵抗を軽減でき、補助陰極として機能する。したがって、このような製造方法であればマスクを用いずに補助陰極を形成でき、表示品質の向上したトップエミッション型のEL装置を製造コストの増加及び歩留りの低下等を抑制しつつ得ることができる。
【0009】
[適用例2]上述のEL装置の製造方法であって、上記第3の電極の形成は、上記第2の電極の形成後に実施されることを特徴とするEL装置の製造方法。
【0010】
このような製造方法であれば、上記第3の電極の周縁部の段差により上記第2の電極に切れ目等が生じることを回避できる。したがって、先に上記第3の電極を形成する場合に比べて、歩留りの低下あるいは表示品質の劣化等を抑制できる。
【0011】
[適用例3]上述のEL装置の製造方法であって、上記微粒子成膜法は、蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、イオンビーム法のいずれかであることを特徴とするEL装置の製造方法。
【0012】
上述の成膜法は、いずれも上記導電材料粒子を直線的に飛翔させることができる。したがって、上記隔壁で囲まれた領域内に上記導電材料粒子が堆積することをより一層抑制でき、より一層表示品質の向上したトップエミッション型のEL装置を得ることができる。
【0013】
[適用例4]上述のEL装置の製造方法であって、上記微粒子成膜法は、2つ以上の上記導電材料粒子発生源を、平面視で上記基板を囲むように配置して行なう微粒子成膜法であることを特徴とするEL装置の製造方法。
【0014】
このような製造方法であれば、上記導電材料粒子を複数の方向から飛翔させることができるので、上記隔壁の表面に満遍なく堆積させることができる。したがって、層厚の均一性が向上した補助陰極を形成でき、より一層表示品質の向上したトップエミッション型のEL装置を得ることができる。
【0015】
[適用例5]上述のEL装置の製造方法であって、上記微粒子成膜法は、上記基板を、該基板と上記導電材料粒子発生源とを結ぶ線とは異なる線を軸として回転させつつ上記導電材料粒子を堆積させる微粒子成膜法であることを特徴とするEL装置の製造方法。
【0016】
このような製造方法であれば、上記導電材料粒子発生源を1つのみ用いる場合においても上記隔壁の表面に満遍なく堆積させることができる。したがって、層厚の均一性が向上した補助陰極を形成でき、より一層表示品質の向上したトップエミッション型のEL装置を得ることができる。なお、上述の「該基板と上記導電材料粒子発生源とを結ぶ線とは異なる線」とは、好ましくは基板の法線である。
【0017】
[適用例6]上述のEL装置の製造方法であって、上記微粒子成膜法は、上記基板と、該基板と上記導電材料粒子発生源とを結ぶ線と、が成す角度を上記基板の回転に合わせて周期的に変化させつつ上記導電材料粒子を堆積させる微粒子成膜法であることを特徴とするEL装置の製造方法。
【0018】
このような製造方法であれば、同一方向から見た場合における上記手前側の隔壁と上記奥側の隔壁との間隔が上記基板の回転により大きく変化するEL装置、すなわち上記隔壁で囲まれた領域の平面形状が縦横比が大きい長方形であるEL装置において、上記導電材料粒子を上記隔壁の表面、特に側面により一層満遍なく堆積させることができる。したがって、上記EL層の発光の射出に影響を与えることなく、より一層低抵抗の補助陰極を形成でき、表示品質をより一層向上できる。
【0019】
[適用例7]上述のEL装置の製造方法であって、上記微粒子成膜法は、上記第3の電極を、遮光性を有する導電材料の粒子を堆積させて形成する微粒子成膜法であることを特徴とするEL装置の製造方法。
【0020】
このような製造方法であれば、上記第3の電極に、隣り合うEL層の発光が互いに混じり合う現象を抑制する機能を付与できる。したがって、より一層表示品質が向上したEL装置を得ることができる。
【0021】
[適用例8]上述のEL装置の製造方法であって、上記遮光性を有する導電材料は光吸収性を有する導電材料であることを特徴とするEL装置の製造方法。
【0022】
このような製造方法であれば、上記第3の電極に、EL装置内に照射された外光が、該EL装置内で反射されて再度上記第2の電極を介して射出される現象を抑制する機能を付与できる。したがって、より一層表示品質が向上したEL装置を得ることができる。
【0023】
[適用例9]上述のEL装置の製造方法であって、上記微粒子成膜法は、上記第3の電極を、複数の種類の導電材料の粒子を順次堆積させて形成する微粒子成膜法であることを特徴とするEL装置の製造方法。
【0024】
このような製造方法であれば、上記第3の電極に、光吸収性と低い抵抗性とのような異なる機能を付与できる。したがって、より一層表示品質が向上したEL装置を得ることができる。
【0025】
[適用例10]上述の製造方法により製造されたEL装置。
【0026】
このような構成によれば、上記基板の中央部と外縁部との間における上記EL層の発光強度の差が少なく、かつ外光の反射が抑制されたEL装置を得ることができる。
【0027】
[適用例11]基板の一方の面の、画像が形成される領域である表示領域内に形成された島状の第1の電極と、上記第1の電極を囲む様に形成された、上記基板に対して略平行な上面と上記上面と上記第1の電極との間を繋ぐ側面とを有する隔壁と、上記隔壁で囲まれた領域を少なくとも含む領域に形成された、少なくともEL層を含む発光機能層と、上記隔壁及び上記発光機能層を覆うように形成された透明性を有する第2の電極と、を備えており、上記第1の電極と上記第2の電極との間に電圧を印加することにより生じる上記EL層の発光を上記第2の電極を介して射出するEL装置であって、上記隔壁の上面と、上記側面の内の少なくとも一部であって上記上面から連続している領域と、を覆う第3の電極を備えることを特徴とするEL装置。
【0028】
このような構成であれば、上記第3の電極により上記第2の電極を補完させて、上述の電圧印加時における電圧降下を低減できる。したがって、上記表示領域の周辺部と中央部との間において上述の印加電圧が不均一になることを抑制でき、品質の向上した表示が可能となる。
【0029】
[適用例12]上述のEL装置であって、上記隔壁の側面は上記第1の電極の外側の方向に向けての傾きを有しており、上記第3の電極は、平面視で上記隔壁と上記第1の電極との境界線の外側にのみ形成されていることを特徴とするEL装置。
【0030】
このような構成であれば、上記第3の電極は上記第2の電極を介して射出される上記EL層の発光を妨げることがない。したがって、上記第3の電極の形成材料の選択の幅を広げることができる。
【0031】
[適用例13]上述のEL装置であって、上記第3の電極は材質の異なる複数の材料層を積層して形成されており、該複数の材料層の内の少なくとも一層は遮光性材料からなることを特徴とするEL装置。
【0032】
このような構成であれば、上述のEL層の発光が上記隔壁を透過して、隣り合う第1の電極と対向する領域から射出されることを抑制できる。したがって、このようなEL装置であればより一層品質の向上した表示が可能となる。
【0033】
[適用例14]上述のEL装置であって、上記遮光性材料は光吸収性材料であることを特徴とするEL装置。
【0034】
このような構成であれば、上記第2の電極を介して該EL装置内に滲入した外光が該EL装置の内部で乱反射することを抑制できる。したがって、このようなEL装置であればより一層品質の向上した表示が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、図面を参照し、EL装置としての有機EL装置及び有機EL装置の製造方法の実施形態について説明する。なお、以下に示す各図においては、各構成要素を図面上で認識され得る程度の大きさとするため、各構成要素の寸法や比率を実際のものとは適宜に異ならせてある。
【0036】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態にかかる有機EL装置1、及び後述する第2〜4の各実施形態にかかる有機EL装置の回路構成図である。有機EL装置1は、表示領域100と外周部とを備えている。表示領域100には、X方向に延在する複数の走査線102と、Y方向に延在する複数の信号線104と、同じくY方向に延在する複数の容量線106と、が形成されている。X方向が信号線104と容量線106とで規定され、Y方向が走査線102の中心線で規定される区画毎に有機EL画素30が形成されている。
【0037】
有機EL画素30は射出する光の色により、赤色有機EL画素30Rと緑色有機EL画素30Gと青色有機EL画素30Bとに区別されており、かかる3種類の有機EL画素30が表示領域100内に規則的に形成されている。なお、上述の各符号の末尾のアルファベットは、それぞれR=赤、G=緑、B=青を表わしている。以下の記載において、対応する色を区別しない場合、すなわち総称を示す場合にはアルファベットを省略して表記する。
【0038】
各々の有機EL画素30は、走査線102を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT(薄膜トランジスタ)108と、スイッチング用TFT108を介して信号線104から供給される画素信号を保持する保持容量110と、保持容量110によって保持された画像信号がゲート電極に供給される駆動用TFT112と、駆動用TFT112を介して容量線106から駆動電流が流れ込む有機EL素子29(図3参照)等からなる。
【0039】
有機EL素子29も、射出する光の色により3種類あり、上述の3種類の有機EL画素30(R,G,B)にそれぞれ対応している。本実施形態の有機EL装置1においては、上述の射出光の色は、発光機能層26(図2参照)内の有機EL層の形成材料によって決定されている。上述の3種類の有機EL画素30(R,G,B)は、有機EL素子29以外の要素は互いに共通である。
【0040】
表示領域100の周辺の領域である外周部には、走査線駆動回路120、及び信号線駆動回路130が形成されている。走査線駆動回路120は、図示しない外部回路より供給される各種信号に応じて、走査線102に走査信号を順次供給する。信号線駆動回路130は、信号線104に画像信号を供給する。容量線106には、図示しない外部回路から画素駆動電流が供給される。走査線駆動回路120の動作と信号線駆動回路130の動作とは、同期信号線140を介して外部回路から供給される同期信号により相互に同期が図られている。
【0041】
走査線102が駆動されスイッチング用TFT108がオン状態になると、その時点の信号線104の電位が保持容量110に保持され、保持容量110の状態に応じて駆動用TFT112のレベルが決まる。そして、駆動用TFT112を介して容量線106から画素電極25(図2参照)に駆動電流が流れ、有機EL素子29は駆動電流の大きさに応じて発光する。
【0042】
図2は、本実施形態の有機EL装置1の模式断面図である。所定の間隔をおいて互いに対向する様に貼り合わされた基板としての素子基板10と対向基板11、及び該素子基板上に形成された有機EL素子29等を示している。
本実施形態の有機EL装置1は、隣り合う有機EL素子29の間を区画する隔壁77の対向基板11側の面に形成された第3の電極としての補助陰極配線20に特徴がある。そこで、本図では隔壁77と、該隔壁によって区画される3種類の有機EL素子29(R,G,B)と、該有機EL素子を駆動する駆動用TFT(以下、単に「TFT」と称する。)112等の断面を表示し、スイッチング用TFT108と保持容量110は図示を省略する。以下、素子基板10側から順に説明する。なお、以下の記載において、素子基板10の対向基板11側の面を「上面」と表記して、素子基板10の対向基板11側を「上」又は「上層」と表記する。
【0043】
素子基板10上には、TFT112が、上述する図示しないスイッチング用TFT108及び保持容量110等とともに形成されている。TFT112は、半導体層31と、走査線102と同一の層をパターニングして形成されたゲート電極33、及び、半導体層31とゲート電極33との間に形成されたゲート絶縁層70等からなる。半導体層31のうち、ゲート電極33と重なる領域がチャネル領域38であり、該チャネル領域の両側にソース領域35とドレイン領域36とが形成されている。
【0044】
TFT112の上層には、窒化シリコン、又は酸化シリコンからなる層間絶縁層71が形成されている。ソース領域35は、層間絶縁層71を局所的にエッチングして形成されたコンタクトホール(符号無し)を介してソース電極53と電気的に接続されており、同様にドレイン領域36は層間絶縁層71を局所的にエッチングして形成されたコンタクトホール(符号無し)を介してドレイン電極54と電気的に接続されている。ソース電極53とドレイン電極54との上層には、窒化シリコンからなる第1の保護層73と平坦化層72とが順に積層されている。
【0045】
平坦化層72の上層における所定の領域には反射層28が形成されている。上記「所定の領域」とは、将来的に有機EL素子29が形成される領域を含む領域である。有機EL素子29の発光は上方向と下方向とに半々に射出される。一方で、本実施形態の有機EL装置1はトップエミッション型であり、対向基板11側にのみ表示領域100(図1参照)を有している。そこで、反射層28により、有機EL素子29の発光を上層方向に反射させて発光を有効に利用している。したがって、反射層28が形成される領域は、将来的に有機EL素子29が形成される領域を少なくとも含む必要がある。
【0046】
反射層28の形成材料は、反射率が高く加工性(パターニング性)に優れた材料が好ましい。有機EL装置1では、反射層28は、Al(アルミニウム)を用いている。反射層28の上面は、窒化シリコンからなる第2の保護層74で覆われている。該第2の保護層は、後述する画素電極25の形成時に反射層28を保護する機能を果たしている。
【0047】
反射層28の形成領域を含む平坦化層72の上面には、該反射層を覆うように、ITO(酸化インジウム・錫合金)層を島状にパターニングしてなる第1の電極としての画素電極25が形成されている。画素電極25は個々の有機EL画素30(図1参照)毎に形成されており、隣り合う画素電極25間は隔壁77で区画されている。したがって、平面視では画素電極25は隔壁77で囲まれており、画素電極25の外縁部は画素電極25と隔壁77とが互いに重なり合う環状の領域となっている。そして該画素電極は、平坦化層72を局所的にパターニングして形成されたコンタクトホール51を介して、ドレイン電極54と導通している。
【0048】
かかる隔壁77の態様を、図3に模式的に示す。図3(a)は、隔壁77と該隔壁に囲まれた、有機EL素子29(R,G,B)を示している。図3(b)は、陰極27を形成する前の段階、すなわち隔壁77で囲まれた領域に後述する発光機能層26(R,G,B)を形成した段階を示している。隔壁77は、層厚(Z方向の寸法)が略2.0μmの感光性の樹脂層を上層に向けて狭まるように、すなわちテーパーがつくようにパターニングして形成されている。したがって、隔壁77は図示するように素子基板10の基板面に略平行な上面75と、該基板面に対して角度を有する側面76と、を有しており、台形状の断面(隔壁77の延在方向に垂直な面における断面)を有している。なお、上述の角度は基板面に対して30度乃至80度が好ましい。
【0049】
図3(a)に示すように、有機EL素子29は平面視で矩形である。そして、図3(b)に示すように、隔壁77は発光機能層26が形成される領域、すなわち将来的に有機EL素子29が形成される矩形の領域を囲んでいる。したがって、該領域は2組の略平行に延在する一対の隔壁77、すなわち計4本の隔壁77で囲まれていることとなる。かかる一対の隔壁77は、一方が「手前側」とすると他方が「奥側」となる。
【0050】
図2に示すように、隔壁77で囲まれた領域、すなわち画素電極25の上層には、3種類の有機EL素子29(R,G,B)毎に夫々異なる発光機能層26が形成されている。具体的には、赤色有機EL素子29Rには赤色発光機能層26Rが形成され、緑色有機EL素子29Gには緑色発光機能層26Gが形成され、青色有機EL素子29Bには青色発光機能層26Bが形成されている。夫々の発光機能層26は、素子基板10側から順に正孔注入層と正孔輸送層と有機EL層と電子輸送層と電子注入層との計5層が積層されて形成されており、上述の各々の発光色は有機EL層の形成材料により得られている。
【0051】
発光機能層26が形成された素子基板10の少なくとも表示領域100には、発光機能層26の上層と隔壁77の上面75と隔壁77の側面76とを覆うように、第2の電極としての陰極27が形成されている。本実施形態にかかる有機EL装置1はトップエミッション型の有機EL装置であるため、陰極27は導電性と共に、透明性又は半透過反射性を有することが必要である。一方で、陰極27は画素電極25の形成材料よりも仕事係数が低い材料で形成される必要がある。また耐環境性等も考慮する必要がある。したがって陰極27は、Ca(カルシウム)、Mg(マグネシウム)、Ba(バリウム)、Cs(セシウム)、Al(アルミニウム)、Ag(銀)、Li(リチウム)、Na(ナトリウム)、K(カリウム)、等の材料を適宜積層して形成することが好ましい。本実施形態における陰極27は、層厚数nm〜十数nmの極薄いAlあるいはMgAg(マグネシウム・銀)合金等で形成されている。
【0052】
陰極27は素子基板10の全面に形成されるため、隔壁77で囲まれた領域内において画素電極25と発光機能層26と陰極27の積層体が形成される。かかる積層体が、有機EL素子29(R,G,B)である。陰極27は少なくとも表示領域100(図1参照)の全域に形成されており、0電位となっている。したがって、画素電極25に電圧が印加されると該電圧に応じた電流が発光機能層26に流れて、発光機能層26に含まれる有機EL層は、該電流量に応じて発光する。
【0053】
隔壁77の上面75、及び側面76の少なくとも上面75から連続する部分には陰極27の導電性を補なうための第3の電極としての補助陰極配線20が形成されている。上述の「上面75から連続する部分」とは、対向基板11に近い側である。本実施形態にかかる有機EL装置の補助陰極配線20は隔壁77の上面75から側面76にかけて連続的に形成されているため、その断面形状は帽子状となる。後述するように、本実施形態の補助陰極配線20はその形成(成膜)方法により、側面76のうち対向基板11に近い側が厚く素子基板10に近づくにつれて薄くなっている。したがって、素子基板10に近い領域では形成(成膜)されていない場合があり得る。
【0054】
上述したように陰極27は極薄い金属材料で形成されているため、高い面抵抗を有している。そのため、表示領域100の中央近傍においては、電圧降下により画素電極25との間に印加する電圧が低下し、上述の発光量が低下する現象が発生し得る。補助陰極配線20はかかる電圧降下を抑制するために形成される要素であり、隔壁77の上面75及び側面76における陰極27、すなわち有機EL素子29の発光を妨げない領域における陰極27の層厚を実質的に厚膜化して面抵抗を低減する機能を果たしている。
【0055】
上述したように補助陰極配線20は側面76にも形成されるが、隔壁77の側面76はテーパーが付いており、素子基板10の基板面に対して垂直にはなっていない。したがって、補助陰極配線20を上述したように素子基板10に近づくにつれて薄くなるように形成することで、補助陰極配線20は有機EL素子29と平面視で重ならないようにできる。したがって、補助陰極配線20は側面76にも形成するにもかかわらず透明性を要せず、少なくとも上面75においては任意の厚さに形成(成膜)できる。そのため、充分な厚さに成膜して面抵抗を低減できる。また、補助陰極配線20の形成材料は、仕事係数を考慮することなく定めることができる。したがって、陰極27の形成材料とは異なる材料を用いることができる。本実施形態にかかる補助陰極配線20は、単層のAl層により形成されている。
【0056】
また、本実施形態にかかる有機EL装置の補助陰極配線20は、隣り合う有機EL素子29間の混色を抑制する遮光層としての機能も果たすことができる。上述したように補助陰極配線20は隔壁77の側面76にも形成されているため、1つの有機EL素子29の発光が隔壁77を透過して隣り合う有機EL素子29の平面視での形成領域から射出されることが抑制される。したがって、本実施形態の有機EL装置1は、上述の電圧降下の低減効果と並んで混色も抑制されており、表示品質が向上している。
【0057】
陰極27の上層には、有機EL素子29等を保護するためにパシベーション層85が形成されている。パシベーション層85は、無機材料層と有機材料層と無機材料層との3層構造が好ましい。そして、該パシベーション層まで形成された素子基板10は、接着層78及び図示しない周辺シール材を介して対向基板11と貼り合わされている。本実施形態にかかる有機EL装置1はトップエミッション型であるため、対向基板11は透明性材料からなる。
【0058】
有機EL装置1は発光機能層26として有機EL素子29毎に異なる有機EL層を含む発光機能層26(R,G,B)を用いているため、対向基板11側にカラーフィルタは形成していない。しかし、上述の有機EL素子29毎に異なる発光色を補完して色純度を一層向上させるためにカラーフィルタ層を形成してもよい。また、有機EL装置1では、上述したように補助陰極配線20に遮光層としての機能も果たさせている。したがって、対向基板11側に、平面視で有機EL素子29を区画する遮光層も形成していない。しかし、補助陰極配線20の遮光機能を補完するために、対向基板11側に別途遮光層を形成してもよい。
【0059】
さらには、対向基板11の素子基板10と対向する側の反対側の面に、外光反射を抑制するための円偏光板を配置してもよい。円偏光板は直線偏光板と1/4波長補正板(直交する偏光成分間に1/4波長の位相差を与える素子。)との積層体である。光が反射する際に、偏光の回転方向が逆転する性質を利用して、有機EL装置内に入射した外光が内部で反射して表示領域100から射出されることを抑制している。
【0060】
続いて、補助陰極配線20の態様にかかる第2〜第4の実施形態について説明する。図4は、第2の実施形態にかかる補助陰極配線20の態様を示す図であり、図5は、第3の実施形態にかかる補助陰極配線20の態様を示す図であり、図6は、第4の実施形態にかかる補助陰極配線20の態様を示す図である。以下、順に説明する。
【0061】
(第2の実施形態)
第2の実施形態にかかる補助陰極配線20は、隔壁77の上面75は完全に覆うように形成されているが、側面76については上側(対向基板11側)の略半分のみを覆うように形成されていることが特徴である。したがって、上述の第1の実施形態にかかる補助陰極配線20に比べて、形成される領域が若干狭くなっている。しかし、上面における層厚を、第1の実施形態にかかる補助陰極配線20の層厚に比べて若干厚くすることで、陰極27の面抵抗の低減効果は略同等に得ることができる。
【0062】
詳しくは後述するが、第1〜第4の実施形態の補助陰極配線20は、導電材料粒子(本実施形態においてはAlの粒子)を素子基板10の基板面に対して斜めの方向から飛翔させて、隔壁77の表面(上面75と側面76)に堆積させる手法で形成されている。したがって、形成時にいわゆる蒸着マスクを用いていない。
【0063】
本実施形態の補助陰極配線20は、側面76の下側(素子基板10側)には該粒子を堆積させないため、導電材料粒子の後述する飛翔角度(図8参照)をより一層浅い角度に設定できる。上述したように本実施形態の補助陰極配線20の上面75における層厚は、第1の実施形態の補助陰極配線20の層厚に比べて厚くなっているが、かかる構成は導電材料粒子を浅い角度で飛翔させることで得ることができる。
【0064】
(第3の実施形態)
第3の実施形態にかかる補助陰極配線20は、第1の補助陰極配線21と第2の補助陰極配線22との2層で形成されている。双方の補助陰極配線は夫々異なる材料で形成されている。かかる構成により、本実施形態の補助陰極配線20は複数の機能を果たすことができる。本実施形態においては、第1の補助陰極配線21はAlで形成されており、該第1の補助陰極配線を覆う第2の補助陰極配線22はCr(クロム)で形成されている。Alは比較的低抵抗な材料であるため、第1の補助陰極配線21は陰極27の面抵抗を充分に低減できる。
【0065】
Crは、Alに比べて光をあまり反射せず、吸収する性質が強い。かかるCrでAlを覆うことで、対向基板11を介して有機EL装置内に入射した外光が該有機EL装置の内部で乱反射することを抑制できる。また、Alが側面76については上側にのみ形成されている場合において、有機EL層の発光が隔壁77を透過して隣り合う有機EL素子29内に達することを抑制できる。したがって、第2の補助陰極配線22は、混色及び外光反射を抑制できる。
【0066】
以上述べたように、本実施形態にかかる補助陰極配線20は、第1の補助陰極配線21による陰極27の面抵抗の低減効果と第2の補助陰極配線22による混色及び外光反射を抑制効果との双方の機能を果たすことができる。したがって、本実施形態にかかる補助陰極配線20を備える有機EL装置は、より一層品質の向上した表示が可能となる。なお、材料の積層数は2層に限定されるものではなく、3層以上の材料層を積層して補助陰極配線20を形成してもよい。
【0067】
(第4の実施形態)
第4の実施形態にかかる補助陰極配線20は、上述の第1〜第3の実施形態の補助陰極配線20とは異なり、陰極27の下層に形成されている。したがって、補助陰極配線20の形成時には隔壁77の表面には陰極27が形成されておらず、上述の第1〜第3の実施形態の補助陰極配線の形成時と比べると、隔壁77の寸法が実質的に縮小していることとなる。
【0068】
上述したように、補助陰極配線20は蒸着マスクを用いずに形成される。かかる場合において、隔壁77の寸法が縮小していると補助陰極配線20の形成材料(導電材料粒子)が発光機能層26上に堆積する可能性が低減される。したがって、本実施形態にかかる補助陰極配線20は、上述の第1〜第3の実施形態の補助陰極配線20の形成時に比べて余裕を持って形成できる。また、余裕をもって形成できるため、補助陰極配線20の層厚を多少なりとも増加させることができ、有機EL装置の表示品質を向上させることが可能となる。
【0069】
続いて、有機EL装置の製造方法に含まれる補助陰極配線20の形成方法にかかる、第5〜第9の実施形態について説明する。
【0070】
(第5の実施形態)
図7〜図9は、第5の実施形態にかかる補助陰極配線20の形成方法を示す図である。以下、順に説明する。本実施形態にかかる補助陰極配線20、及び後述する第6〜第9の実施形態にかかる補助陰極配線20の形成方法は、微粒子成膜法としての蒸着法を用いる方法である。そして、蒸着マスクを用いずに隔壁77の表面に限定される局所的な領域に補助陰極配線20を形成している点に特徴がある。なお、微粒子成膜法としては、蒸着法以外にイオンプレーティング法、スパッタリング法、イオンビーム法等がある。かかる成膜法のいずれにも、本実施形態及び後述する第6〜第9の実施形態にかかる形成方法を適用することができる。
【0071】
図7は、補助陰極配線20が形成される基板としての素子基板10と導電材料粒子発生源としての蒸着源40との相互の位置関係を示す図である。蒸着源40は、素子基板10の基板面に対して法線方向ではなく、「θ」で示す所定の角度を有する位置に配置されている。かかる角度を、以下「飛翔角度θ」と称する。
上述の飛翔角度θは、蒸着源40の中心線と素子基板10の基板面とがなす角度である。蒸着源40からは、蒸着材料(本実施形態においては導電材料粒子)が円錐状に飛翔する。かかる円錐の中心軸が上述の「中心線」である。素子基板10に形成された隔壁77の表面には、かかる飛翔角度θの方向から飛翔してくる導電材料粒子が堆積する。素子基板10上には隔壁77及び陰極27までが形成されている。かかる状態の素子基板10に飛翔角度θの方向から、すなわち斜め方向から導電材料粒子が飛翔してきた場合、隔壁77の陰となる領域には該導電材料粒子は堆積しない。かかる現象を図8に示す。
【0072】
なお、蒸着源40は導電材料としてのAlを加熱するコイル等の加熱手段を備えたるつぼと、該るつぼから蒸発するAl粒子を所定の角度範囲内に飛翔させるためのノズル等を備えている。また、本実施形態、及び後述する各実施形態においては、蒸着源40を備える蒸着装置については、真空ポンプ、真空チャンバー、及び素子基板10の保持機構等を含めて図示を省略している。
【0073】
図8(a)は、素子基板10に向かって飛翔するAl粒子48を示す図である。図8(a)においては、素子基板10に向かって飛翔するAl粒子48と飛翔線49、及び素子基板10上に形成された有機EL素子29と画素電極25を区画する隔壁77等を示し、TFT112等は図示を省略している。なお、「飛翔線49」とは、図示しない蒸着源40(図7参照)から飛翔するAl粒子48の軌跡である。所定の範囲における複数の飛翔線49は、素子基板10と蒸着源40との間の距離が充分にある場合、近似的には互い平行になる。図示するように、飛翔線49は素子基板10の基板面に対して垂直ではなく、飛翔角度θを有しているため、Al粒子48は隔壁77の上面75のみでなく側面76の一部にも堆積する。一方で、有機EL素子29の形成領域のうちの少なくとも一部の領域は、手前側の隔壁77の陰となりAl粒子48が堆積しない。
【0074】
図8(b)は、斜め方向から飛翔するAl粒子48によって隔壁77の表面に(陰極27を介して)形成された補助陰極配線20を示す図である。隔壁77の上面75には、Al粒子48の堆積により補助陰極配線20が形成される。また、側面76の一方の面、すなわち飛翔線49と交わる側の面にも、上面75から連続した補助陰極配線20が形成されている。本図においては、飛翔線49と素子基板10の基板面とがなす飛翔角度θが小さめに設定されているため、隔壁77で囲まれている領域、すなわち平面視で有機EL素子29が形成されている領域(有機EL素子29の上面)にはAl粒子48が堆積せず、補助陰極配線20は形成されない。また、側面76においても、素子基板10に近い領域には補助陰極配線20は形成されていない。
【0075】
飛翔線49と素子基板10の基板面とがなす角度である飛翔角度θを適切に設定すると、隔壁77の表面にのみAl粒子48を堆積させて補助陰極配線20を形成し、かつ有機EL素子29の上面にはAl粒子48を堆積させず該有機EL素子の発光の射出を確保できる。すなわち、蒸着マスクを用いずに補助陰極配線20を形成して、製造コストの増加を抑制しつつ、有機EL装置の表示品質を向上できる。また、隔壁77の上面75に蒸着マスクを密着させることによる歩留りの低下も回避できる。
【0076】
図9は、かかる飛翔角度θの設定方法を示す図である。上述の適切な飛翔角度θは、以下の式に基づいて設定される。
tanθ=T×tanδ/W×tanδ+T・・・・・・・・・(1)
ここで、
δ=隔壁77の側面76と素子基板10の基板面とが成す角度、
W=有機EL素子29の幅、すなわち対向する一対の隔壁77の間の距離、
T=隔壁77の高さ、(隔壁77の上面75と発光機能層26の上面との間の距離)、
である。
【0077】
飛翔線49と素子基板10の基板面とがなす角度である飛翔角度θが式(1)で設定される角度となるように蒸着源40を配置することにより、蒸着マスクを用いずに、隔壁77の表面に限定してAl粒子を堆積させることができる。したがって、有機EL素子29の発光の射出を妨げない範囲内において充分に低抵抗の補助陰極配線20を形成して、陰極27の面抵抗を低減できる。
【0078】
(第6の実施形態)
図10(a)〜図10(c)は、第6の実施形態、及び該実施形態の変形例にかかる補助陰極配線20の形成方法を示す図である。本実施形態にかかる補助陰極配線20の形成方法は、複数の蒸着源を用いている点に特徴がある。図10(a)は、第1の蒸着源41と第2の蒸着源42との2つの蒸着源を用いる場合における斜視図であり、図10(b)は、かかる場合を素子基板10の法線方向から見た平面図である。図10(b)に示すように、平面視において第1の蒸着源41と第2の蒸着源42とは対称となる位置に配置されている。そして、図10(a)に示すように第1の蒸着源41と第2の蒸着源42とは、双方の飛翔角度θが式(1)で算出される値となるように配置されている。
【0079】
本実施形態の補助陰極配線20の形成方法は、かかる対称位置からAl粒子48(不図示)を飛翔させることで、隔壁77の両側の側面76に対して略均等にAl粒子48を堆積させている。したがって、有機EL素子29の発光を妨げることなく、陰極27の面抵抗をより一層低減して表示品質をより一層向上できる。また、複数の蒸着源から同時にAl粒子を飛翔させるため、補助陰極配線20の形成に要する時間を短縮できる。
【0080】
図10(c)は、上述の形成方法の変形例として、第1の蒸着源41〜第4の蒸着源44の計4つの蒸着源を用いる補助陰極配線20の形成方法を示す図である。素子基板10を挟んで対向する様に配置された一対の蒸着源が、縦方向と横方向とにそれぞれ配置されている。上述したように有機EL素子29(の形成領域)は平面視で矩形であり、4方を隔壁77で囲まれている。本変形例によれば、かかる4辺の隔壁77が夫々有する計8つの側面76に満遍なくAl粒子を堆積させることができる。したがって、陰極27の面抵抗をより一層低減できる。
【0081】
かかる変形例における飛翔角度θは、上述の一対の蒸着源では同一に設定し、縦方向の一対の蒸着源(第3の蒸着源43と第4の蒸着源44)と横方向の一対の蒸着源(第1の蒸着源41と第2の蒸着源42)とでは異なる値に設定することが好ましい。図3に示すように、有機EL素子29の形成領域は細長い矩形状である。したがって、有機EL素子29の幅Wの値が縦方向と横方向とで大きく異なっている。かかるWの値に合わせて飛翔角度θを夫々設定することで、上述の8つの側面76により一層満遍なくAl粒子を堆積させることができる。
【0082】
(第7の実施形態)
図11(a)〜図11(c)は、第7の実施形態、及び該実施形態の変形例にかかる補助陰極配線20の形成方法を示す図である。本実施形態にかかる補助陰極配線20の形成方法は、一列に並べて配置された複数の第1の蒸着源41と同じく一列に並べて配置された複数の第2の蒸着源42とを用いて、素子基板10の両側から連続的にAl粒子48を飛翔させていることが特徴である。
【0083】
図11(a)の斜視図に示すように全ての蒸着源(41及び42)は、同一の飛翔角度θとなるように配置されている。また、図11(b)の平面図に示すように、第1の蒸着源41と第2の蒸着源42は、素子基板10の中心線を挟んで互いに対称な位置に配置されている。多数の蒸着源を用いるため補助陰極配線20の形成時間を短縮でき、また素子基板10の基板面内における層厚等の均一性の向上効果も得ることができる。
【0084】
図11(c)は、上述の形成方法の変形例として、複数の蒸着源を間隔を空けて配置し、該複数の蒸着源から夫々異なる蒸着材料を飛翔させつつ素子基板10を矢印の方向に移動させて補助陰極配線20を形成する方法を示す図である。本変形例では、素子基板10の進行方向、すなわち矢印の方向に沿って、蒸着材料としてAlを備える第5の蒸着源45と蒸着材料としてCrを備える第6の蒸着源46とを配置している。そして、素子基板10を移動させつつ蒸着源(45及び46)から蒸着材料(導電材料粒子)を飛翔させて、Al粒子48からなる第1の補助陰極配線21(図5参照)と導電材料粒子としてのCr粒子47からなる第2の補助陰極配線22(図5参照)を連続的に形成している。かかる形成方法であれば、夫々異なる材料で形成された複数の補助陰極配線からなる多層構造の補助陰極配線20を容易に形成でき、表示品質の向上した有機EL装置をより一層低コストで製造できる。
【0085】
(第8の実施形態)
図12は、第8の実施形態にかかる補助陰極配線20の形成方法を示す図である。本実施形態の形成方法は、素子基板10を、該素子基板の法線方向を軸として回転させつつ、蒸着源40からAl粒子48を飛翔させる点に特徴がある。
【0086】
上述したように有機EL素子29(の形成領域)を囲む4辺の隔壁77は計8つの側面76を有している。したがって、1つの蒸着源40を用いて、かつ、素子基板10と蒸着源40との双方を固定して双方の位置を相対的に変化させずにAl粒子48を飛翔させ場合、上記8つの側面76の内の、蒸着源40と対向する2つの側面76にのみ充分なAl粒子48が堆積する。
【0087】
本実施形態にかかる補助陰極配線20の形成方法によれば、上記8つの側面76の全てが順次に蒸着源40と対向するため、蒸着源40を1つのみ備える蒸着装置を用いて該8つの側面76に満遍なくAl粒子を堆積させることができる。したがって、有機EL素子29の発光の射出を妨げない範囲内において充分に広い断面積を有する補助陰極配線20を形成できる。したがって、陰極27の面抵抗をより一層低減でき、表示品質が向上した有機EL装置を製造コストを増加させることなく得ることができる。
【0088】
(第9の実施形態)
図13(a)〜図13(c)は、第9の実施形態にかかる補助陰極配線20の形成方法を示す図である。本実施形態の形成方法は上述の第8の実施形態を発展させたものであり、素子基板10の回転に合わせて蒸着源40を移動させて、飛翔角度θを変化させることに特徴がある。
【0089】
図3に示すように、有機EL素子29の平面形状(平面視での形状)は長辺と短辺とを有する長方形である。したがって、上記長辺の方向と上記短辺の方向とでは、向かい合う一対の隔壁77間の距離が大きく異なる。そして、上述したように飛翔角度θの最適値は、手前側の隔壁77(具体的には手前側の隔壁77の上面75と奥側の側面76との境界)と奥側の隔壁77(具体的には奥側の隔壁77の手前側の側面76の立ち上がり部)とを結ぶ線と、素子基板10の基板面と、が成す角度である。
【0090】
かかる最適値(最適角度)は、長辺方向と短辺方向とでは、上述の一対の隔壁77間の距離(図9に示す「W」)の変化に伴い大きく変化する。本実施形態にかかる補助陰極配線20の形成方法は、飛翔角度θの最適値の変化に合せて蒸着源40の位置を上下させることで、長方形の平面形状を有する有機EL素子29を備える有機EL装置の製造において、長辺側の隔壁77の側面76と短辺側の隔壁77の側面76とに同等のAl粒子48を堆積させることで、有機EL素子29の発光の射出を妨げずに陰極27の面抵抗をできる限り低減させている。
【0091】
具体的には、有機EL素子29の長辺方向に蒸着源40が位置しているときは、図13(b)に示すように蒸着源40の位置を下げて(素子基板10に近づけて)、長辺側の飛翔角度θ1を手前側の隔壁77と奥側の隔壁77とを結ぶ線と一致させる。そして、短辺方向に蒸着源40が位置しているときは、図13(c)に示すように蒸着源40の位置を上げて、短辺側の飛翔角度θ2を手前側の隔壁77と奥側の隔壁77とを結ぶ線と一致させる。
【0092】
このように、素子基板10を回転させると共に、該回転に同調させて蒸着源40の位置を変化させることで、蒸着源40を1つのみ備える蒸着装置を用いて有機EL素子29を囲む4つの隔壁77が有する8つの側面76に略均一にAl粒子を堆積させることができる。したがって、陰極27の面抵抗をより一層低減でき、表示品質がより一層向上した有機EL装置を製造コストを増加させることなく得ることができる。なお、上記の実施形態では蒸着源の位置を上下させているが、蒸着源40の中心線が常に素子基板10の中央を指向するように該蒸着源を円弧状に移動させることも可能である。また、蒸着源40を移動させずに基板面に水平な軸を中心に回転させて、飛翔線49の方向(角度)を変えることもできる。
【0093】
(変形例)
図14は、変形例にかかる補助陰極配線20の形成方法を示す図である。本変形例にかかる形成方法は、蒸着源40と素子基板10との間に該素子基板から所定の間隔をおいてAl粒子の飛翔角度を制限する補助マスク50を配置していることが特徴である。
上述したように、蒸着源40からは、Al粒子48が円錐状(円錐状の範囲内)に飛翔する。したがって、上述の飛翔角度は上記円錐の頂角の範囲内のばらつきを有している。素子基板10が小さい場合、あるいは蒸着源40と素子基板10との間隔が充分広い場合には、飛翔線49は平行線に近似できる。したがって、飛翔角度のばらつきは低減される。しかし、蒸着源40と素子基板10との間隔を充分には取れない場合は飛翔角度のばらつきが増加する。その結果、隔壁77の側面76における補助陰極配線20の層厚にばらつきが生じ得る。また、有機EL素子29上にAl粒子が堆積することを回避するためには、蒸着源40の位置を下げて飛翔角度を小さくする必要がある。しかし、飛翔角度をあまり小さくすると隔壁77の表面、特に側面76に対するAl粒子の堆積速度が低下する。
【0094】
本変形例では、図示するように補助マスク50により飛翔角度が極端に大きな値となることを回避している。そして、素子基板10を矢印の方向に移動させて、限定された飛翔角度の範囲内でAl粒子を堆積させている。かかる態様により、素子基板10の面積が大きい場合、若しくは素子基板10と蒸着源40との間の距離をあまり取れない場合において、有機EL素子29上にAl粒子が堆積することを抑制しつつ、効率的に補助陰極配線20を形成している。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】第1の実施形態にかかる有機EL装置の回路構成図。
【図2】第1の実施形態の有機EL装置の模式断面図。
【図3】隔壁の態様を模式的に示す図。
【図4】第2の実施形態にかかる補助陰極配線を示す図。
【図5】第3の実施形態にかかる補助陰極配線を示す図。
【図6】第4の実施形態にかかる補助陰極配線を示す図。
【図7】第5の実施形態にかかる補助陰極配線の形成方法の概略を示す図。
【図8】導電材料粒子の堆積の態様を示す図。
【図9】導電材料粒子の飛翔線の角度の設定方法を示す図。
【図10】第6の実施形態にかかる補助陰極配線の形成方法を示す図。
【図11】第7の実施形態にかかる補助陰極配線の形成方法を示す図。
【図12】第8の実施形態にかかる補助陰極配線の形成方法を示す図。
【図13】第9の実施形態にかかる補助陰極配線の形成方法を示す図。
【図14】変形例にかかる補助陰極配線の形成方法を示す図。
【符号の説明】
【0096】
1…第1の実施形態の有機EL装置、10…基板としての素子基板、11…対向基板、20…第3の電極としての補助陰極配線、21…第1の補助陰極配線、22…第2の補助陰極配線、25…第1の電極としての画素電極、26R…赤色発光機能層、26G…緑色発光機能層、26B…青色発光機能層、27…第2の電極としての陰極、28…反射層、29R…赤色有機EL素子、29G…緑色有機EL素子、29B…青色有機EL素子、30R…赤色有機EL画素、30G…緑色有機EL画素、30B…青色有機EL画素、31…半導体層、33…ゲート電極、35…ソース領域、36…ドレイン領域、38…チャネル領域、40…導電材料粒子発生源としての蒸着源、41…第1の蒸着源、42…第2の蒸着源、43…第3の蒸着源、44…第4の蒸着源、45…第5の蒸着源、46…第6の蒸着源、47…導電材料粒子としてのCr粒子、48…導電材料粒子としてのAl粒子、49…飛翔線、50…補助マスク、51…コンタクトホール、53…ソース電極、54…ドレイン電極、70…ゲート絶縁層、71…層間絶縁層、72…平坦化層、73…第1の保護層、74…第2の保護層、75…上面、76…側面、77…隔壁、78…接着層、85…パシベーション層、100…表示領域、102…走査線、104…信号線、106…容量線、108…スイッチング用TFT、110…保持容量、112…駆動用TFT、120…走査線駆動回路、130…信号線駆動回路、140…同期信号線、θ…飛翔角度、θ1…長辺側の飛翔角度、θ2…短辺側の飛翔角度。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の一方の面に形成された島状の第1の電極と、
前記第1の電極を囲む様に形成された、前記基板に対して略平行な上面と前記上面と前記第1の電極との間を繋ぐ側面とを有する隔壁と、
前記隔壁で囲まれた領域を少なくとも含む領域に形成された少なくともEL層を含む発光機能層と、
前記隔壁及び前記発光機能層を覆うように形成された透明性を有する第2の電極と、
前記隔壁の少なくとも上面に形成された第3の電極と、
を備えており、前記EL層の発光を前記第2の電極を介して射出するEL装置の製造方法であって、
前記第3の電極は導電材料粒子発生源から導電材料粒子を前記基板に向けて飛翔させて、該導電材料粒子を前記隔壁の少なくとも上面に堆積させる微粒子成膜法により形成された電極であり、
該微粒子成膜法は、前記導電材料粒子発生源を、該導電材料粒子発生源と手前側の前記隔壁とを結ぶ線の延長線が、奥側の前記隔壁の側面と交差するように配置して行なう微粒子成膜法であることを特徴とするEL装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のEL装置の製造方法であって、
前記第3の電極の形成は、前記第2の電極の形成後に実施されることを特徴とするEL装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のEL装置の製造方法であって、
前記微粒子成膜法は、蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、イオンビーム法のいずれかであることを特徴とするEL装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のEL装置の製造方法であって、
前記微粒子成膜法は、2つ以上の前記導電材料粒子発生源を、平面視で前記基板を囲むように配置して行なう微粒子成膜法であることを特徴とするEL装置の製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載のEL装置の製造方法であって、
前記微粒子成膜法は、前記基板を、該基板と前記導電材料粒子発生源とを結ぶ線とは異なる線を軸として回転させつつ前記導電材料粒子を堆積させる微粒子成膜法であることを特徴とするEL装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のEL装置の製造方法であって、
前記微粒子成膜法は、前記基板と、該基板と前記導電材料粒子発生源とを結ぶ線と、が成す角度を前記基板の回転に合わせて周期的に変化させつつ前記導電材料粒子を堆積させる微粒子成膜法であることを特徴とするEL装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のEL装置の製造方法であって、
前記微粒子成膜法は、前記第3の電極を、遮光性を有する導電材料の粒子を堆積させて形成する微粒子成膜法であることを特徴とするEL装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載のEL装置の製造方法であって、
前記遮光性を有する導電材料は光吸収性を有する導電材料であることを特徴とするEL装置の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のEL装置の製造方法であって、
前記微粒子成膜法は、前記第3の電極を、複数の種類の導電材料の粒子を順次堆積させて形成する微粒子成膜法であることを特徴とするEL装置の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法により製造されたEL装置。
【請求項11】
基板の一方の面の、画像が形成される領域である表示領域内に形成された島状の第1の電極と、
前記第1の電極を囲む様に形成された、前記基板に対して略平行な上面と前記上面と前記第1の電極との間を繋ぐ側面とを有する隔壁と、
前記隔壁で囲まれた領域を少なくとも含む領域に形成された、少なくともEL層を含む発光機能層と、
前記隔壁及び前記発光機能層を覆うように形成された透明性を有する第2の電極と、
を備えており、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加することにより生じる前記EL層の発光を前記第2の電極を介して射出するEL装置であって、
前記隔壁の上面と、前記側面の内の少なくとも一部であって前記上面から連続している領域と、を覆う第3の電極を備えることを特徴とするEL装置。
【請求項12】
請求項11に記載のEL装置であって、前記隔壁の側面は前記第1の電極の外側の方向に向けての傾きを有しており、前記第3の電極は、平面視で前記隔壁と前記第1の電極との境界線の外側にのみ形成されていることを特徴とするEL装置。
【請求項13】
請求項12に記載のEL装置であって、前記第3の電極は材質の異なる複数の材料層を積層して形成されており、該複数の材料層の内の少なくとも一層は遮光性材料からなることを特徴とするEL装置。
【請求項14】
請求項13に記載のEL装置であって、前記遮光性材料は光吸収性材料であることを特徴とするEL装置。
【請求項1】
基板の一方の面に形成された島状の第1の電極と、
前記第1の電極を囲む様に形成された、前記基板に対して略平行な上面と前記上面と前記第1の電極との間を繋ぐ側面とを有する隔壁と、
前記隔壁で囲まれた領域を少なくとも含む領域に形成された少なくともEL層を含む発光機能層と、
前記隔壁及び前記発光機能層を覆うように形成された透明性を有する第2の電極と、
前記隔壁の少なくとも上面に形成された第3の電極と、
を備えており、前記EL層の発光を前記第2の電極を介して射出するEL装置の製造方法であって、
前記第3の電極は導電材料粒子発生源から導電材料粒子を前記基板に向けて飛翔させて、該導電材料粒子を前記隔壁の少なくとも上面に堆積させる微粒子成膜法により形成された電極であり、
該微粒子成膜法は、前記導電材料粒子発生源を、該導電材料粒子発生源と手前側の前記隔壁とを結ぶ線の延長線が、奥側の前記隔壁の側面と交差するように配置して行なう微粒子成膜法であることを特徴とするEL装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のEL装置の製造方法であって、
前記第3の電極の形成は、前記第2の電極の形成後に実施されることを特徴とするEL装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のEL装置の製造方法であって、
前記微粒子成膜法は、蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、イオンビーム法のいずれかであることを特徴とするEL装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のEL装置の製造方法であって、
前記微粒子成膜法は、2つ以上の前記導電材料粒子発生源を、平面視で前記基板を囲むように配置して行なう微粒子成膜法であることを特徴とするEL装置の製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載のEL装置の製造方法であって、
前記微粒子成膜法は、前記基板を、該基板と前記導電材料粒子発生源とを結ぶ線とは異なる線を軸として回転させつつ前記導電材料粒子を堆積させる微粒子成膜法であることを特徴とするEL装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のEL装置の製造方法であって、
前記微粒子成膜法は、前記基板と、該基板と前記導電材料粒子発生源とを結ぶ線と、が成す角度を前記基板の回転に合わせて周期的に変化させつつ前記導電材料粒子を堆積させる微粒子成膜法であることを特徴とするEL装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のEL装置の製造方法であって、
前記微粒子成膜法は、前記第3の電極を、遮光性を有する導電材料の粒子を堆積させて形成する微粒子成膜法であることを特徴とするEL装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載のEL装置の製造方法であって、
前記遮光性を有する導電材料は光吸収性を有する導電材料であることを特徴とするEL装置の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のEL装置の製造方法であって、
前記微粒子成膜法は、前記第3の電極を、複数の種類の導電材料の粒子を順次堆積させて形成する微粒子成膜法であることを特徴とするEL装置の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法により製造されたEL装置。
【請求項11】
基板の一方の面の、画像が形成される領域である表示領域内に形成された島状の第1の電極と、
前記第1の電極を囲む様に形成された、前記基板に対して略平行な上面と前記上面と前記第1の電極との間を繋ぐ側面とを有する隔壁と、
前記隔壁で囲まれた領域を少なくとも含む領域に形成された、少なくともEL層を含む発光機能層と、
前記隔壁及び前記発光機能層を覆うように形成された透明性を有する第2の電極と、
を備えており、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加することにより生じる前記EL層の発光を前記第2の電極を介して射出するEL装置であって、
前記隔壁の上面と、前記側面の内の少なくとも一部であって前記上面から連続している領域と、を覆う第3の電極を備えることを特徴とするEL装置。
【請求項12】
請求項11に記載のEL装置であって、前記隔壁の側面は前記第1の電極の外側の方向に向けての傾きを有しており、前記第3の電極は、平面視で前記隔壁と前記第1の電極との境界線の外側にのみ形成されていることを特徴とするEL装置。
【請求項13】
請求項12に記載のEL装置であって、前記第3の電極は材質の異なる複数の材料層を積層して形成されており、該複数の材料層の内の少なくとも一層は遮光性材料からなることを特徴とするEL装置。
【請求項14】
請求項13に記載のEL装置であって、前記遮光性材料は光吸収性材料であることを特徴とするEL装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−153071(P2010−153071A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327072(P2008−327072)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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