EPHA2T−細胞エピトープアゴニストおよびその使用
本明細書中では、EphA2 T細胞エピトープアゴニストが提供される。アゴニストには、1またはそれ以上のT細胞エピトープを含有するヒトEphA2タンパク質の特異的断片、およびその保存的誘導体に対応するペプチドが含まれる。EphA2 T細胞エピトープアゴニストは、EphA2に対する患者の免疫応答性を決定しおよび/または定量するために使用することができる、ELISPOTアッセイなどのアッセイにおいて有用である。アゴニストもまた、EphA2に対する患者の免疫応答性を修飾する方法において有用であり、これはEphA2を過剰発現する癌、例えば腎臓細胞癌腫(RCC)、の治療としての、実質的な有用性を有する。EphA2アゴニストを使用して、in vivo法またはex vivo法により、EphA2に対して患者をワクチン化するために使用することもできる。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
背景
Eph2A T細胞エピトープアゴニストを提供する。Eph2A T細胞エピトープアゴニストは、癌を診断するための方法において、患者においてEphA2-応答性T-細胞を定量するための方法において、そしてEphA2に対する免疫応答を誘導しそして癌性細胞を認識するために免疫システムを修飾する際に、有用である。
【0002】
免疫システムにより認識される腫瘍抗原の分子同定は、癌の治療のための新たな免疫療法戦略を開発するための道を開いた。多数の細胞傷害性Tリンパ球(CTL)-で定義された腫瘍関連エピトープが、癌ワクチンにおいて臨床的に応用されたが(Coulie PG, et al. Proc Natl Acad Sci USA 98: 10290-1295, 2001;Yu JS, et al. Cancer Res 61: 842-847, 2001;Jager E, et al. Proc Natl Acad Sci USA 97: 12198-12203, 2000;およびNestle FO, et al. Nat Med 4: 328-332, 1998)、同定され、そしてこれまでのところ臨床的に組織化されたCD4+ T細胞により認識されたクラスII-拘束性エピトープは、比較的わずかしかない(Topalian SL, et al. Proc Natl Acad Sci USA 91: 9461-9465, 1994 ;Chaux P, et al. J Exp Med 189: 767-777, 1999;Pieper R, et al. J Exp Med 189: 757-765, 1999;Wang RF, et al. Science 284: 1351-1354, 1999;Topalian SL, et al. J Exp Med 183: 1965-1971, 1996;Jager E, et al J Exp Med 191: 625-630, 2000;Zarour HM, et al. Cancer Res 60: 4946-4952, 2000;およびZarour HM, et al. Proc Natl Acad Sci USA 97: 400-405, 2000)。現在の理論的枠組みから、CD4+ T細胞(少なくともTh1-型)は、臨床的に有用な腫瘍免疫の最適な誘導および維持において重要な働きをしていることが示唆される(Pardoll DM, et al. Curr Opin Immunol 10: 588-594, 1998およびToes RE, et al. J Exp Med 189: 753-756, 1999)。このように、腫瘍細胞に特徴的な抗原または腫瘍細胞で過剰発現されている抗原に由来するCD4+ T細胞エピトープおよびCD8+ T細胞エピトープが、有効なワクチン構成要素を提供する可能性がある。
【0003】
Ephファミリーの分子は、ヒトゲノム中で、受容体チロシンキナーゼの最大のファミリーを構成する。Ephキナーゼには、2種類の主要なクラス(EphAとEphB)が含まれ、これらはそれぞれリガンドephrin-Aとephrin-Bに対して特異性を有することにより識別される(Eph Nomenclature Committee. Unified nomenclature for Eph family receptors and their ligands. The ephrins. Cell. 403-404, 1997)。神経発達におけるEph受容体の役割については大部分既知であるが、最近の報告では、Eph受容体が発ガンにおいて役割を果たしていることが示唆される。例えば、EphA2は、播種性疾患の発症を促進する様である多数の様々な癌において、過剰に発現されそして機能的に変化している。正常細胞において、EphA2は、細胞-細胞接触部位に局在して、そこで細胞増殖の負の制御因子として機能している可能性がある。対照的に、EphA2は、進行性癌においてしばしば過剰発現し、そしてしばしば機能的に無調節状態になっており、その場合、悪性形質の多数の様々な側面に寄与する。EphA2におけるこれらの変化は、メラノーマ、前立腺腫瘍、乳腺腫瘍および肺腫瘍を含む多様な固型癌において観察された。腫瘍の中でもっとも高い程度のEphA2発現は、転移病巣においてもっとも一般的に見いだされる。
【0004】
臨床的設定において、いくつかの知見から、T細胞-媒介性免疫が、腎臓細胞癌腫(RCC)の発生および進行に対する防御作用を提供し、そして確立病巣の回復を効率的に媒介する可能性があることが示唆される。RCC病巣には、典型的には、多数の白血球が浸潤している。しかしながら、有益な臨床的結果に対する白血球浸潤の有益性は、未だ明らかになっていない。このことは、これらの浸潤物中におけるCD4+ T細胞とCD8+ T細胞の機能的サブセットの多様性を反映している可能性があるが、RCC患者においてTh1/Tc1のバイアスがかかった免疫とTh2/Tc2のバイアスがかかった免疫との予後の有益性を指向するデータは、不確かなものであった。RCC患者におけるCD8+ T細胞応答とCD4+ T細胞応答の構造的特性および特異性をよりよく理解することにより、より効果的な治療オプションを設計し、実施しそしてモニターするために必要な知見を提供する可能性がある。
【0005】
発明の概要
新規EphA2 T細胞エピトープアゴニスト、および診断方法および予後決定方法、EphA2に対する免疫応答を誘導する方法および癌を治療する方法を含む、その使用を、本明細書中で提供する。アゴニストは、RCCの検出および病期の段階付けにおいて有用である。高レベルのEphA2発現が、腎臓細胞癌腫(RCCの病期を段階付ける方法)の設定において見いだされ、そしてRCCを有する患者は、新規EphA2-誘導性エピトープに対するCD8+ T細胞応答およびCD4+ T細胞応答を両方とも示すことが、示される。さらに、EphA2に対するT細胞の応答性は、疾患状態および結果を識別する際に有用であり、そして本明細書中で記載されたEphA2 T細胞エピトープアゴニストは、癌治療と同様に、EphA2に対する免疫応答を誘導する際に有用である。
【0006】
一態様において、EphA2 T細胞エピトープを含むEphA2 T細胞エピトープアゴニストが提供される。EphA2 T細胞エピトープアゴニストは、EphA2 T細胞エピトープを含むペプチドであってもよい。特定の態様において、ペプチドは、約9〜約35アミノ酸、約9〜約25アミノ酸、または約20未満のアミノ酸からなる。ペプチドは、天然ヒトEphA2(SEQ ID NO: 2)の部分または断片であってもよく、そして典型的にはSEQ ID NO: 2の少なくとも約9個の連続したアミノ酸、またはSEQ ID NO: 2の部分の保存的誘導体を含み、ここで、MHC分子に対する保存的誘導体の結合が、MHC分子に対するEphA2またはその断片の結合と比較して、実質的に同等かまたは向上している限りにおいて、1またはそれ以上のアミノ酸残基がSEQ ID NO: 2のペプチド中に挿入されるか、または1またはそれ以上のアミノ酸がSEQ ID NO: 2のペプチドから削除されるか、または1またはそれ以上の異なるアミノ酸残基で置換される。
【0007】
EphA2 T細胞エピトープアゴニストは、1またはそれ以上のN-末端修飾、C-末端修飾、内部修飾、または非-標準残基(例えば、ただし限定的なものではないが、可溶性基;疎水基;脂質基;親水基;タグ;蛍光タグ;ポリペプチドタグ;膜貫通シグナル配列またはその部分;アミノ酸エナンチオマー;およびアセチル、ベンジルオキシカルボニル、ビオチン、シンナモイル、Dabcyl、ダブシル(dabsyl)、ダンシル、ジニトロフェニル、シアニン、フルオレセイン、fmoc、ホルミル、リサミン(lissamine)ローダミン、ミリストイル、n-メチル、パルミトイル、steroyl、7-メトキシクマリン酢酸、ビオチン、Dabcyl、ダブシル(dabsyl)、ダンシル、ジスルフィド、アセトアミドメチル、アミノヘキサン酸、アミノイソ酪酸、βアラニン、シクロヘキシルアラニン、d-シクロヘキシルアラニン、e-アセチルリジン、γアミノ酪酸、ヒドロキシプロリン、ニトロ-アルギニン、ニトロ-フェニルアラニン、ニトロ-チロシン、ノルロイシン、ノルバリン、オクタヒドロインドールカルボン酸、オルニチン、ペニシラミン、フェニルグリシン、ホスホセリン、ホスホトレオニン、ホスホチロシン、L-マロニルチロシン、ピログルタメート、テトラヒドロイソキノリン、アミド、N-置換グリシン;非-アミノアシル、およびN-アセチルグリシン基の一つ)を含む修飾ペプチドであってもよい。特定の態様において、EphA2 T細胞エピトープアゴニストは、EphA2 T細胞エピトープを含むペプチドまたはペプチド模倣体である。
【0008】
特定の態様において、EphA2 T細胞エピトープアゴニストは、1またはそれ以上の以下のEphA2エピトープ配列に含有されるT細胞エピトープを含む:TLADFDPRV(SEQ ID NO: 2、残基883-891);VLLLVLAGV(SEQ ID NO: 2、残基546-554);VLAGVGFFI(SEQ ID NO: 2、残基550-558);IMNDMPIYM(SEQ ID NO: 2、残基58-66);SLLGLKDQV(SEQ ID NO: 2、残基961-969);WLVPIGQCL(SEQ ID NO: 2、残基253-261);LLWGCALAA(SEQ ID NO: 2、残基12-20);GLTRTSVTV(SEQ ID NO: 2、残基391-399);NLYYAESDL(SEQ ID NO: 2、残基120-128);KLNVEERSV(SEQ ID NO: 2、残基162-170);IMGQFSHHN(SEQ ID NO: 2、残基666-674);YSVCNVMSG(SEQ ID NO: 2、残基67-75);MQNIMNDMP(SEQ ID NO: 2、残基55-63);および図5〜17の1またはそれ以上に示した配列。
【0009】
非限定的な事例として、EphA2 T細胞エピトープアゴニストは、1またはそれ以上の以下のアミノ酸配列:TLADFDPRV(SEQ ID NO: 2、残基883-891);VLLLVLAGV(SEQ ID NO: 2、残基546-554);VLAGVGFFI(SEQ ID NO: 2、残基550-558);IMNDMPIYM(SEQ ID NO: 2、残基58-66);SLLGLKDQV(SEQ ID NO: 2、残基961-969);WLVPIGQCL(SEQ ID NO: 2、残基253-261);LLWGCALAA(SEQ ID NO: 2、残基12-20);GLTRTSVTV(SEQ ID NO: 2、残基391-399);NLYYAESDL(SEQ ID NO: 2、残基120-128);KLNVEERSV(SEQ ID NO: 2、残基162-170);IMGQFSHHN(SEQ ID NO: 2、残基666-674);YSVCNVMSG(SEQ ID NO: 2、残基67-75);MQNIMNDMP(SEQ ID NO: 2、残基55-63);および図5〜17の1またはそれ以上に示した配列、またはそれらの保存的誘導体、を含むペプチドまたはその修飾版を含んでもよい。一態様において、EphA2 T細胞エピトープアゴニストは、スペーサーにより分離された2またはそれ以上のEphA2 T細胞エピトープを含む。
【0010】
上述の1またはそれ以上のEphA2 T細胞エピトープアゴニストおよび医薬的に許容可能な担体を含む組成物が提供される。別の態様において、患者におけるEphA2-応答性T細胞の数および/または状態をモニターする方法が提供され、この方法は、上述した1またはそれ以上のEphA2 T細胞エピトープを含有するEphA2 T細胞エピトープアゴニストを含有する化合物または組成物に対する患者の免疫応答性を決定する方法を含む。一態様において、この方法は、ELISPOTアッセイを使用して、1またはそれ以上のEphA2 T細胞エピトープを含有する化合物または組成物に対する患者の免疫応答性を決定することを含む。ELISPOTアッセイは、MHCクラスIタンパク質-提示EphA2エピトープまたはその保存的誘導体に対するCD8+応答性を検出することができる。MHCクラスIタンパク質は、HLA-A2タンパク質であってもよい。ELISPOTアッセイはまた、MHCクラスIIタンパク質-提示EphA2エピトープまたはその保存的誘導体に対するCD4+応答を検出することもできる。MHCクラスIIタンパク質は、HLA-DR4タンパク質であってもよい。
【0011】
さらなる態様において、EphA2を過剰発現する癌患者における癌の増殖を阻害する方法であって、前記患者に対して、患者においてEphA2に対する免疫応答を誘導するために有効な量の上述したEphA2 T細胞エピトープアゴニストを投与することを含む、前記方法が提供される。一態様において、この方法は、患者の抗原提示細胞をEphA2 T細胞エピトープアゴニストと接触させることを含む。別の態様において、この方法は:患者から抗原提示細胞を含む細胞を単離すること;この抗原提示細胞をEphA2 T細胞エピトープアゴニストと接触させること;そしてEphA2 T細胞エピトープアゴニストと接触させた抗原提示細胞を患者体内に再導入すること;を含むex vivo方法である。この方法は、患者に対してEphA2に対して結合することができる結合性試薬など(これに限定されない)のEphA2リガンドまたはそのアゴニスト;そしてephrinA1またはそのアゴニスト;を投与することを、さらに含んでいてもよい。
【0012】
5'から3'方向で機能可能に連結したプロモータ、1またはそれ以上のEphA2 T細胞エピトープおよびポリアデニル化シグナルを含むペプチドをコードする全長EphA2コーディング配列以外のコーディング配列、を含む、単離核酸もまた提供される。核酸は、EphA2 T細胞アゴニストをin vivoで生成するため、組換え方法によりおよび/またはex vivoかin vivoかのいずれかで、核酸を患者細胞中に輸送することにより、EphA2 T細胞アゴニストを調製する際に有用である。
【0013】
別の態様において、細胞表面にEphA2を発現する腫瘍細胞を、EphA2に対して結合することができる結合性試薬;およびephrinA1またはそのアゴニスト;の一つを含む、EphA2リガンドまたはそのアゴニストと接触させることを含む方法を提供する。
【0014】
詳細な説明
EphA2 T細胞エピトープアゴニストが本明細書中で提供される。アゴニストは、EphA2の1またはそれ以上のT細胞エピトープを含有する化合物であり、そして典型的にはEphA2アミノ酸配列(図1、SEQ ID NO: 2)の部分に対応するペプチドである。アゴニストを作製する方法およびアゴニストを生成するための組換えシステムもまた、提供される。EphA2 T細胞エピトープアゴニストは、患者におけるEphA2-応答性T細胞数を定量することにより、患者の免疫状態、あるいはEphA2に対する免疫応答性を決定する方法において有用である。アゴニストはまた、癌治療として、EphA2に対する患者の免疫応答性を修飾する際に有用でもある。
【0015】
本明細書中で使用する場合、用語“アゴニスト”は、細胞上の受容体と組合わさり(結合し)そして天然リガンド、本明細書の開示の文脈においては図1に示される天然のEphA2、の活性を模倣する応答または活性を誘導することができるリガンドのことである。EphA2 T細胞エピトープアゴニストの場合、それらのアゴニストは、天然のEphA2のT細胞エピトープ活性を模倣する。用語“エピトープ”は、抗原決定基を含有しおよび/または定義する物理的構造のことをいう。“ペプチドアゴニスト”は、天然に存在するリガンド、すなわち本明細書の開示の文脈においてはEphA2 T細胞エピトープ、を模倣する、ペプチド、ペプチド誘導体、またはペプチド類似体である。EphA2 T細胞エピトープペプチドアゴニストは、従って、EphA2 T細胞エピトープを含有するペプチド、ペプチド誘導体、またはペプチド類似体である。EphA2 T細胞エピトープペプチドアゴニストは、EphA2タンパク質の断片または部分であってもよいが、EphA2タンパク質の断片または部分の保存的誘導体(以下に定義する)であってもよい。EphA2 T細胞エピトープアゴニストは、“結合性試薬”であってもよく、典型的には抗体である。
【0016】
用語“結合性試薬”および同様の用語は、免疫-認識の場合にはエピトープを含有する別の化合物または分子に対して特異的にまたは実質的に特異的に(限定的な交叉反応性を有するものである)結合することができるいずれかの化合物、組成物または分子のことをいう。典型的には、結合性試薬は抗体であり、好ましくはモノクローナル抗体、またはその誘導体または類似体であり、以下のもの:Fv断片;一本鎖Fv(scFv)断片;Fab'断片;F(ab')2断片;ヒト化抗体および抗体断片;ラクダ化抗体および抗体断片;および上記のものの多価版、を含むが、これらには限定されない。以下のもの:例えば、典型的には共有結合しているかまたはそうでなければ安定化された(すなわち、ロイシンジッパーまたはヘリックス安定化)scFv断片などの、ジスルフィド安定化Fv断片、scFvタンデム((scFv)2断片);二重特異性抗体(diabody);三重特異性抗体(tribody);四重特異性抗体(tetrabody)などの、単一特異性抗体または二特異性抗体(これらには限定されない)を含む、多価結合性試薬を所望により使用することもできる。“結合性試薬”はまた、当該技術分野において記載されたアプタマーもまた含む。
【0017】
抗体およびその誘導体および類似体およびアプタマーを含む抗原特異的結合性試薬を作製する方法は、当該技術分野において周知である。ポリクローナル抗体を、動物を免疫することにより作製することができる。モノクローナル抗体を、標準的な(ハイブリドーマ)法に従って調製することができる。モノクローナル抗体をコードするDNAからDNA断片を単離し、そして標準的な方法に従って適切なV領域を適切な発現ベクター中にサブクローニングすることにより、ヒト化抗体を含む抗体誘導体および類似体を組換え的に調製することができる。ファージディスプレイおよびアプタマー技術が文献中に記載され、そして非常に低い親和性交叉反応性を有する抗原特異的結合性試薬のin vitroクローン性増幅を可能にする。ファージディスプレイ試薬およびシステムが商業的に利用可能であり、そしてAmershamPharmacia Biotech, Inc.(Piscataway, New Jersey)から商業的に入手可能なRecombinant Phage Antibody System(RPAS)およびMoBiTec, LLC(Marco Island, Florida)から商業的に入手可能なpSKAN Phagemid Display Systemが含まれる。アプタマー技術は、例えば、U.S.特許5,270,163、5,475096、5,840867および6,544,776中に記載されているが、これらには限定されない。
【0018】
“遺伝子”は、もっとも幅広い意味において、機能的な遺伝的決定要素である。遺伝子には、タンパク質をコードし、または機能的なRNA生成物に転写される“発現配列”、例えば、オープンリーディングフレーム(ORF)、が含まれる。典型的な遺伝子には、プロモータ、エンハンサ、転写因子結合配列、オペレータ、およびターミネータ(例えば、poly(A)配列)を含む(これらには限定されない)を含む機能可能に連結した制御配列と共にある発現配列が含まれる。プロモータは、例えば、構成的または半構成的プロモータ(例えば、CMVプロモータおよびRSVプロモータ)、組織特異的プロモータ(例えば、筋肉クレアチニンキナーゼ(MCK)プロモータ)または誘導可能プロモータ(例えば、BD Biosciences Clontech(Palo Alto, California)から商業的に入手可能なBD Tet-OnTMおよびBD Tet-OffTM遺伝子発現システムなどのテトラサイクリン-制御可能システム(これらに限定されない))であってもよい(これらに限定されない)。2種類の配列が、cisに配列されて、予想された様式で互いに関連して作用する場合、2種類の配列は“機能可能に連結した”状態であると考えられる。遺伝子において、制御配列は、細胞内での発現配列の正しい転写および/または所望の転写を誘導するために十分な様式で、機能可能に連結する。用語 “発現”または“遺伝子発現”、および同様の用語および言い回しは、核酸、典型的には遺伝子、においてコードされる情報が、リボ核酸および/またはタンパク質、またはそれらの転写後修飾版、および/または観察可能な表現型に変換される、全体のプロセスのことを意味する。
【0019】
本明細書中で使用される場合、“核酸”は、いずれのポリヌクレオチドまたはポリデオキシヌクレオチドであってもよい(これらには限定されない)。限定することなく、核酸は一本鎖であっても二本鎖であってもよい。本明細書中に開示されるヒトEphA2ペプチドおよびヌクレオチド配列(それぞれ、図1、SEQ ID NO: 2および図2、SEQ ID NO: 1)の文脈において、保存的誘導体について言及する。“保存的誘導体”は、核酸の場合、コドン縮重をもたらすヌクレオチド塩基の置換、例えば、Alaコドンについて言及する場合、GCCまたはGCGがGCAに置換されること(これに限定されない)、核酸およびペプチドの両方の場合、保存的置換グループ:SerとThr;Leu、IleとVal;GluとAsp;およびGlnとAsnを含む(これらには限定されない)、保存的アミノ酸置換を示すもの、を含む、保存的置換を含有する核酸またはペプチドである。保存的置換を、その他の方法、例えばBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)アルゴリズムにより使用されるもの、例えばBLOSUM置換スコアマトリクス、例えばBLOSUM 62マトリクス(これらに限定されない)、により決定することもできる。重要なことには、保存的誘導体は、保存的誘導体が対応する天然の核酸またはペプチドの機能を実質的に保持する。EphA2 T細胞エピトープアゴニストの文脈において、すべての“誘導体”と同様に、保存的誘導体は、本明細書中で記載するアッセイにおいて、EphA2に対して適切な免疫応答を誘導する能力を、実質的に保持する。
【0020】
2種の核酸またはタンパク質配列のあいだでの類似性は、様々な方法により決定することができる。例えば、類似性を、アルゴリズム、例えば、本明細書中で標準的に使用されるものである、BLASTアルゴリズム、により、in silicoで決定することができる。2種の核酸配列のあいだでの類似性は、特異的ハイブリダイゼーションにより決定することができる。このことは、核酸が、ゲノム中で参照核酸(すなわち、本明細書中で提示されるEphA2配列またはその部分)に対して特異的にハイブリダイゼーションすることを意味している。特異性を達成するためのハイブリダイゼーション条件は、それぞれの核酸の配列オーバーラップの長さ、その(溶融温度)Tm、特異的ゲノム、およびアッセイ条件を含む因子(これらに限定されない)に依存して、通常は変化する。
【0021】
“誘導体”には、EphAヌクレオチドまたはアミノ酸配列の部分およびそれらの保存的誘導体に対応する、化学的に修飾された核酸またはペプチドが含まれる。核酸またはペプチド、またはそれらの保存的誘導体は、例えば:例えば、PEG基を追加することにより、核酸またはペプチドの溶解性を修飾する化学的基;例えば、ビオチンまたはポリ(his)タグを追加することにより、ペプチドまたは核酸の親和性精製を可能にする化学的基;または例えば、核酸、ペプチドまたはそれらの誘導体のin vitroまたはin vivo検出および位置特定のための、フルオレセインイソチオシアネート、Cy3またはCy5などの蛍光色素との抱合または放射性核種-含有基またはケージ基(caging基)との抱合により、化合物を検出することができる化学的基;を含有する様に誘導することができる。修飾核酸およびペプチド、およびこれらの使用のこれらの事例は、当該技術分野において既知である核酸およびペプチドの多数の有用な修飾の限定的ではない事例である。このような修飾のより完全なしかし完全ではないリストには、1またはそれ以上の以下のもの:N-末端修飾、C-末端修飾、内部修飾、または非標準的残基(例えば、以下の基および/または残基:可溶性基(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)基(これには限定されない))、疎水基、脂質基、親水基、タグ(例えば:蛍光タグ(例えば、フルオレセイン(例えばFITC)またはシアニン色素(例えば、Cy3またはCy5)(これには限定されない))またはポリペプチドタグ(例えば、親和性精製のためのポリ-ヒスチジン))、膜貫通シグナル配列またはその部分、アミノ酸エナンチオマー、アセチル、ベンジルオキシカルボニル、ビオチン、シンナモイル、Dabcyl、ダブシル(dabsyl)、ダンシル、ジニトロフェニル、シアニン、フルオレセイン、fmoc、ホルミル、リサミン(lissamine)、ローダミン、ミリストイル、n-メチル、パルミトイル、steroyl、7-メトキシクマリン酢酸、ビオチン、Dabcyl、ダブシル(dabsyl)、ダンシル、ジスルフィド、アセトアミドメチル、アミノヘキサン酸、アミノイソ酪酸、βアラニン、シクロヘキシルアラニン、d-シクロヘキシルアラニン、e-アセチルリジン、γアミノ酪酸、ヒドロキシプロリン、ニトロ-アルギニン、ニトロ-フェニルアラニン、ニトロ-チロシン、ノルロイシン、ノルバリン、オクタヒドロインドールカルボン酸、オルニチン、ペニシラミン、フェニルグリシン、ホスホセリン、ホスホトレオニン、ホスホチロシン、L-マロニルチロシン、ピログルタメート、テトラヒドロイソキノリン、アミド、N-置換グリシンおよび/または非-アミノアシル基(ペプトイド)、N-アセチルグリシンである(これらには限定されない))が含まれる。
【0022】
“誘導体”には、1またはそれ以上の修飾塩基および/または修飾ペプチドバックボーン(以下の構造:...-NH-CR-CO-NH-CR-CO-NH-CR-CO-...を有する典型的なまたは正常のペプチドバックボーン)を含有するペプチドである、ペプチド類似体もまた含まれる。ペプチド類似体は、天然の親ペプチドの(1または複数の)生物学的作用を模倣するかもしくはアンタゴナイズすることができる1またはそれ以上の非-ペプチド性構造要素を含有する化合物である“ペプチド模倣体”を含む。ペプチド模倣体は、酵素的に切れやすいペプチド結合などの、古典的なペプチド特性を有さない。一般的なペプチド模倣体は、1またはそれ以上のN-置換アミノ酸残基、例えばN-置換グリシンを含むポリマーである“ペプトイド”である。ペプトイド、ペプトイド合成法、ペプトイドについての使用、およびペプトイドを使用する方法に関する限定的ではない例は、以下の文献において提示され(Simon, R. et al. (1992), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 9367-9371;Murphy, J. E. et al., (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95: 1517-1522、および米国特許5,811,387、5,877,278、5,965,695、および6,075,121)、これらの文献は、ペプトイド構造、ペプトイド合成法、ペプトイドの使用、およびペプトイドを使用する方法を教示するものとして、参考文献として本明細書中に援用する。
【0023】
実施例において、EphA2の特定のT細胞エピトープが記載され、そしてEphA2-特異的免疫応答を誘導する能力について解析される。それらのエピトープは、MHCクラスIIアリルHLA-DRβ1*0401(DR4)またはクラスIアリルHLA-A0201(HLA-A2)の文脈において、in silicoで同定された。HLA-DRβ1*0401およびHLA-A0201は、多数のうちの2種類のアリルである。その他のクラスII HLA-DRアリルの限定的ではない例は、図3において示され、それらにはHLA-DR1アリル、HLA-DR3アリル、HLA-DR4アリル、HLA-DR7アリル、HLA-DR8アリル、HLA-DR9アリル、HLA-DR11アリル、HLA-DR12アリル、HLA-DR13アリル、HLA-DR14アリルおよびHLA-DR15アリルが含まれる(www.anthonynolan.org.uk/HIG/lists/class2list.html)。より一般的なクラスIIアリルには:HLA-DR2アリル、HLA-DR3アリル、HLA-DR4アリルおよびHLA-DR5アリルが含まれるが、これらには限定されない。Southwoodら(1998)、Honeymanら(1998)およびDe Grootら(Vaccine(2001)19: 4385-4395)は、様々なHLA-DRβ1アリルに関連して、アルゴリズム、コンセンサス配列およびMHC-結合配列を同定するためのその他の方法を記載する。それらの文献に記載されたアルゴリズムまたはコンセンサスMHC-II結合配列を検索するその他のアルゴリズム(例えば、本明細書中では、ProPredソフトウェア/アルゴリズム)を適用することにより、HLA-DRβ1*0401またはHLA-A0201以外のアリルに対して特異的なその他のEphA2 MHC-II-含有断片を、同定することができる。一旦コンセンサスMHC II結合配列が同定されると、プロテアソーム切断生成物を同定するために使用するための以下に記載するアルゴリズムまたは類似のアルゴリズムを使用して、同一のMHCハプロタイプを有する患者由来のEphA2-応答性PBLにおける免疫賦活活性について、本明細書中で記載するELISPOTアッセイおよびELISAアッセイ、または類似のアッセイでスクリーニングすることを試験する候補物を選択することができる。
【0024】
上述したクラスIIアリルと同様に、HLA-A0201以外の多数のMHCクラスIアリルもまた同定され、そしてそれらのアリルに対して特異的なEphA2 T細胞エピトープを同様の方法で決定することができる。MHCクラスI HLA-AアリルまたはHLA-Bアリルの限定的ではない例を、図4に提示する(www.anthonynolan.org.uk/HIG/lists/class1list.html)。より一般的なアリルには、HLA-A1、HLA-A2、HLA-A3、HLA-B7およびHLA-B44が含まれるが、これらには限定されない。
【0025】
上述したように、コンセンサス結合配列が、図3および図4に提示された多数のMHCクラスIアリルおよびIIアリルについて決定された。図5〜8は、それぞれクラスIアリルHLA-A1、HLA-A3、HLA-B7およびHLA-B44に対するEphA2アミノ酸配列内における、in silicoで予想されたMHCクラスI結合ペプチドを提示する。図9〜17は、それぞれクラスIIアリルHLA-DRβ1*0101、HLA-DRβ1*0301、HLA-DRβ1*0401、HLA-DRβ1*0701、HLA-DRβ1*0801、HLA-DRβ1*1101、HLA-DRβ1*1301、HLA-DRβ1*1501およびHLA-DRβ5*0101に対するEphA2アミノ酸配列内における、in silicoで予想されたMHCクラスII結合ペプチドを提示する。
【0026】
MHC-コンセンサス結合領域を同定する際に有用な利用可能なソフトウェアは、多数のMHCクラスIアリルおよびクラスIIアリルについてのコンセンサス配列を含有するが(NIH BIMAS“HLA Peptide Binding Predictions”ソフトウェア(例えば、http://bimas.dcrt.nih.gov/molbio/hla_bind/)中を検索するために利用可能な、HLA-A1アリル、HLA-A24アリルおよびHLA-B7アリルを含む39種類のクラスIアリル、および49種類のHLA-DRβ1アリルおよび2種類のHLA-DRβ5アリルを含む51種類のクラスIIアリルを含むが、これらには限定されない、Singh et al.,ProPred: prediction of HLA-DR binding sites Bioinformatics (2001) Dec; 17 (12): 1236-7;両方とも、図5〜17の1またはそれ以上において特定される推定EphA2クラスIおよびクラスIIT細胞エピトープを同定するために有用であった)、コンセンサス結合配列を同定する方法は、文献に十分記載されている。例えば、Luckey et al., 2001は、クラスI結合配列を同定する方法を記載する-簡単に述べると、細胞を酸で処理してクラスI分子を溶出し、様々なアリルをアフィニティ精製し、結合ペプチドをアフィニティ-精製HLA分子から溶出し、そして溶出したペプチドを配列決定することによる。各アリルについてコンセンサス結合配列を同定する方法、および多数のアリルが同一のまたは非常に類似するペプチド配列レパートリー(HLAスーパータイプ)に結合することができるという認識は、Southwoodらの文献(Southwood et al., 1998)中で検討されている。それにもかかわらず、全体の目標は、特異的EphA2 T細胞エピトープを同定することであり、それは、十分に確立した方法に従って、いずれかのMHCアリルについては、APC(抗原提示細胞)などの細胞から精製したいずれかのMHC分子から処理されたEphA2ペプチド断片を溶出し、そして溶出したペプチドを配列決定することにより、実現することができる。これにより、in silico工程を完全に回避する。
【0027】
本明細書中で記載するEphA2 T細胞エピトープアゴニストをELISPOTまたは類似するアッセイにおいて使用して、患者のEphA2に対する免疫応答性について患者をスクリーニングすることができ、そしてそれを使用してEphA2に対する患者の免疫応答を刺激することができる。この方法において、免疫原性組成物または免疫原性カクテルを、所定の患者について、その患者のHLA-DRハプロタイプに依存して調製することができる。本明細書中でも言及しているように、準優位EphA2 T細胞エピトープに対する免疫応答を患者において誘導することができ、それが1またはそれ以上の優位エピトープに対する患者の耐性を上回る場合がある。
【0028】
EphA2 T細胞エピトープアゴニスト化合物は、EphA2に対する患者の現存する免疫性を確認するためのアッセイにおいて有用である。本明細書中で記載したように、患者のPBL集団を、本明細書中で記載したように、1またはそれ以上のEphA2 T細胞エピトープを含有する化合物により刺激することができる。1またはそれ以上のEphA2 T細胞エピトープを、患者のMHCハプロタイプに適合する様に選択する。このように、患者がHLA-DRβ1*0701アリルを有する場合、1またはそれ以上のEphA2 HLA-DRβ1*0701-結合性ペプチドを含有する化合物を選択する。一旦十分な期間(典型的には6時間〜48時間)化合物を用いて刺激したのち、PBL集団を抗原による刺激について試験する。様々な方法により、例えば、IFN-γまたはIL-5産生を決定するためにはELISPOTにより、あるいは抗原特異的抑制の指標であるといわれているTGF-βまたはIL-10産生を決定するためにはELISAにより、この試験を行うことができる。
【0029】
多数のアッセイを使用して、抗原特異的免疫応答を検出する(Keilholz, U. et al.,“ImmunologicMonitoring of Cancer Vaccine Therapy: Results of a Workshop Sponsored by the Society for Biological Therapy,”J. Immunother., (2002) 25 (2): 97-138を参照)。本明細書中で記載されるELISPOTアッセイは、極めて感度が高くそして正確である。代替として期待されているその他のアッセイには:1)サイトカイン産生を細胞集団中で細胞内にあるままに検出し、そしてわずか約6時間の刺激期間のみを必要とする、サイトカインフローサイトメトリー(CFC);2)単離MHC-ペプチド四量体を使用してPBLにおける抗原特異的応答を刺激し、そして結合細胞をフローサイトメトリーにより計数することができる、MHC-ペプチド四量体解析;そして3)サイトカインなどの1またはそれ以上の遺伝子標的の発現をモニターすることができ、それによりわずかな細胞サンプルから発現レベルを迅速に定量することができる、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(QRT-PCR)アッセイ;が含まれるが、これらには限定されない。これらの各アッセイは、Keilholz et al., 2002中や文献中にさらに詳細に記載されている。患者のPBLが適切な抗原特異的応答を産生することができるかどうかを決定するため、記載されたアッセイのいずれも、単独で使用することができ、またはその他の方法と組み合わせて使用することができる。注目すべきことに、本明細書中で記載したEphA2 T細胞エピトープを含有する化合物は、上述したELISPOTアッセイ、CFCアッセイおよび四量体アッセイにおいて有用であるが、確立した方法に従って適切なPCRプライマーおよびプローブセットを設計することが必要なQRT-PCRアッセイにおいては有用ではない。
【0030】
画像解析-支援サイトカインELISPOTアッセイは、抗原特異的CD4+細胞またはCD8+ T細胞の直接的ex vivoモニタリングのための、感度が高い方法である。この方法では、新たに単離した細胞材料において、抗原特異的T細胞の頻度およびサイトカイン特性の両方を測定する。このアッセイは、T細胞免疫性の様々なパラメータ、例えばクローンサイズ(程度)およびT細胞プールのTh1/Th2エフェクタークラスなど、を決定する。ELISPOTは、優れた方法であり、それを通じて、個体の薬理学的に操作されていない細胞の実際の分泌性プロセスを研究することができる。この技術は、非破壊性のものであり、白血球をさらなる解析のために保存することができる。ELISPOT技術の下では、サイトカイン放出を単一細胞レベルで検出することができ、これによりサイトカイン-産生性細胞頻度を決定することが可能になる。ELISPOTアッセイでは、抗体、典型的には抗サイトカイン抗体、でコートしたプレートを使用する。以下の実施例において、IL-5(Th2サイトカインプロフィール)およびIFN-γ(Th1サイトカインプロフィール)を用いて、プレートをコートする。ELISPOTアッセイには、PBLなどのサイトカイン産生性細胞を、抗体でコートしたプレート中で抗原存在下にてインキュベーションする工程が含まれる。この細胞を洗い流し、抗体のみを残す。このうちあるものは、そのサイトカインリガンドに結合しているだろう。タグを付加したかまたは標識を付けた抗-サイトカイン抗体を、事前に結合させたサイトカインに対して結合させ、そして標準的な方法により、例えば、標準的なビオチン-アビジン-HRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)法により検出する、標準的な“サンドイッチアッセイ”を、次に行う。従って、結合したサイトカインは、複合体の部位でスポットとしてプレート上で示される。次に、発色したスポットを計数し、そしてそれらのサイズを、視覚的にまたはより一般的にはコンピュータ解析により解析してデータを提示し、続いてそれを使用してサイトカイン分泌頻度を計算する。
【0031】
ELISPOTアッセイおよびELISAの両方とも、サンドイッチアッセイの事例である。用語“サンドイッチアッセイ”は、抗原を2種類の結合性試薬(典型的には抗体である)、すなわち表面に結合させた第一の結合性試薬/抗体、および検出可能な基を含む第二の結合性試薬/抗体、のあいだでサンドイッチする、免疫アッセイのことをいう。検出可能な基の例としては、例えば、蛍光色素、酵素、第二の結合性試薬を結合するためのエピトープ(例えば、蛍光標識抗-マウス抗体により検出される第二の結合性試薬/抗体がマウス抗体である場合)、例えば、抗原またはビオチンなどの結合対の構成分子、が含まれるが、これらには限定されない。表面は、本明細書中で記載する様なELISPOTアッセイまたは典型的なグリッド型アッセイの場合などは平面的な表面であってもよく、またはビーズのそれぞれの“種”が例えば、蛍光色素(U. S.特許6,599,331、6,592,822、および6,268,222に記載されるようなLuminex技術など)または量子ドット(例えば、U.S.特許6,306.610に記載されるもの)により標識されているコート化ビーズアレイ技術の様に、非-平面的表面であってもよい。
【0032】
本明細書中で記載されるアゴニストは、1またはそれ以上のEphA2 T細胞エピトープを含有する化合物である。例えば、HLA-A2およびHLA-DR4に対するそれらの結合により規定されるT細胞エピトープに関して、アゴニストは:
1)以下のアミノ酸配列の一つを有するペプチド:TLADFDPRV(SEQ ID NO: 2、残基883-891);VLLLVLAGV(SEQ ID NO: 2、残基546-554);VLAGVGFFI(SEQ ID NO: 2、残基550-558);IMNDMPIYM(SEQ ID NO: 2、残基58-66);SLLGLKDQV(SEQ ID NO: 2、残基961-969);WLVPIGQCL(SEQ ID NO: 2、残基253-261);LLWGCALAA(SEQ ID NO: 2、残基12-20);GLTRTSVTV(SEQ ID NO: 2、残基391-399);NLYYAESDL(SEQ IDNO: 2、残基120-128);KLNVEERSV(SEQ ID NO: 2、残基162-170);IMGQFSHHN(SEQ ID NO: 2、残基666-674);YSVCNVMSG(SEQ ID NO: 2、残基67-75);MQNIMNDMP(SEQ ID NO: 2、残基55-63);または図5〜17の1またはそれ以上に列挙された配列、またはそれらの配列を含有するより長いペプチド;
2)1またはそれ以上のアミノ酸が、欠失するかまたは1またはそれ以上の異なるアミノ酸により置換されている、それらのペプチド配列の誘導体または保存的誘導体を含有するペプチドであって、ここで誘導体または保存的誘導体は、上述したペプチド配列により規定されるT細胞エピトープを含有するものを含有するペプチド;
3)2またはそれ以上のそれらのペプチド配列またはその誘導体であって、それらのペプチド配列により規定されるT細胞エピトープを含有するEphA2の断片を含むペプチド、またはそれらのペプチド配列により規定される1またはそれ以上のT細胞エピトープを含有するペプチド類似体またはその他の化合物;
であってもよい。
【0033】
一態様において、アゴニストは、以下のT細胞エピトープを含有する2またはそれ以上のアミノ酸配列を含有する単一のペプチドである:TLADFDPRV(SEQ ID NO: 2、残基883-891);VLLLVLAGV(SEQ ID NO: 2、残基546-554);VLAGVGFFI(SEQ ID NO: 2、残基550-558);IMNDMPIYM(SEQ ID NO: 2、残基58-66);SLLGLKDQV(SEQ ID NO: 2、残基961-969);WLVPIGQCL(SEQ ID NO: 2、残基253-261);LLWGCALAA(SEQ ID NO: 2、残基12-20);GLTRTSVTV(SEQ ID NO: 2、残基391-399);NLYYAESDL(SEQ ID NO: 2、残基120-128);KLNVEERSV(SEQ ID NO: 2、残基162-170);IMGQFSHHN(SEQ ID NO: 2、残基666-674);YSVCNVMSG(SEQ ID NO: 2、残基67-75);MQNIMNDMP(SEQ ID NO: 2、残基55-63);または図5〜17の1またはそれ以上にて列挙された配列。各配列は、ペプチドスペーサーにより他のものとは分離され、スペーサーはどのような長さのものであってもよいが、典型的には0〜10アミノ酸の長さの範囲である。Veldersらの文献(Velders et al. J. Immunol.(2001)166: 5366-5373)においては、AAY三量体スペーサーが、ヒトパピローマウィルス(HPV16)多価エピトープのストリングワクチンの効率を非常に向上させた。プロテアーゼ切断部位をエピトープ配列間に局在させてペプチドの適切なプロセッシングを確実に行わせることを確実に行わせる様に、ペプチドを操作することができる。この“一連のビーズ”構造には、どのような数のエピトープおよびどのような組み合わせのエピトープを含有させてもよい。De Grootらの文献(De Groot et al. 2001)、Veldersらの文献(Velders et al.2001)、およびLing-Lingらの文献(Ling-Ling et al. J. Virol.(1997)71: 2292-2302)は、この構造を有するペプチド、そのような構築物を作製しそして最適化する方法、候補エピトープを同定する方法、およびそのようなワクチンを作製する際に有用な組換えシステムを記載する。“一連のビーズ”アプローチを使用する利点は、準優位のエピトープまたは複数コピーの同一のエピトープを単一のペプチド中に含ませることができ、それにより天然の(すなわち、EphA2)ペプチドに対する応答においては通常は免疫性が誘導されない1または複数のエピトープに対して免疫応答を誘導することができる。そのような陰性のエピトープまたは準優位のエピトープに対する免疫応答を誘導する概念は、“エピトープ拡大(epitope spreading)”と呼ばれ、そして天然のペプチドに対する典型的な免疫応答よりも、より頑健な免疫応答を誘導することができる。
【0034】
1または複数のエピトープを、キメラペプチド中で、所望の官能基を有する第二のアミノ酸配列と組み合わせることもできる。官能基は、現実に免疫原性であってもよく、ペプチドのアフィニティ精製を可能にする。プロテアーゼ切断部位は、EphA2 T細胞エピトープアゴニストペプチドと免疫原性部分とのあいだに含まれていてもよい。官能基はまた、ペプチドの送達を促進するアミノ酸配列を含ませることにより、EphA2 T細胞エピトープアゴニストペプチドの送達を促進することができる。これの一例は、エキソソームなどの膜小胞またはナノ粒子において、樹状細胞に対するペプチドの提示を促進するために、ラクタドヘリンまたはその他のタンパク質の部分を含ませることである。膜小胞中に組み込むためにキメラペプチドを修飾しそして発現させる方法は、国際特許出願国際公開WO 03/016522中に記載されている。
【0035】
患者においてワクチン接種するため、あるいはそうでなければ免疫応答を誘導するための、いずれかの有用な経路により、上述したいずれかの形態でのアゴニストを投与することができる。一態様において、場合によりフロイントの不完全アジュバント、フロイントの完全アジュバント、または上述したエキソソームなどのアジュバントと共に、アゴニストを患者体内に注射する。アゴニストを、アゴニストおよびいずれかの好ましい薬理学的に許容可能な担体を含む、様々な組成物中で送達することができる。“キャリア”には、クラスとして、本明細書中に記載される活性成分の保存、安定性、投与および/または送達を促進する際に有用ないずれかの化合物または組成物が含まれ(これらには限定されない)、医薬分野において広く知られている、適切なビヒクル、溶媒、希釈剤、賦形剤、pH調整剤、バッファ類、塩類、着色剤、着香剤、流動性修飾剤、潤滑剤、コーティング、充填剤、消泡剤、浸食性(erodeable)ポリマー、ヒドロゲル、サーファクタント、乳化剤、アジュバント、保存剤、リン脂質、脂肪酸、モノ-、ジ-およびトリ-グリセリドおよびそれらの誘導体、ロウ、油脂、および水が含まれる(これらには限定されない)。アゴニストをリンパ球様細胞に対して送達する限りは、経路は重要ではない。典型的な投与経路は、筋肉注射である。アゴニストを所望の期間にわたり1回または所望の時間間隔で複数回投与し、所望の免疫応答を誘導することができる。複数容量を投与するための適切な間隔は、典型的には1週間に1回から1年に1回の範囲であるが、しかしながら典型的には7日ごとから90日ごとの範囲であり、そしてより典型的には7日ごとから30日ごとの範囲である。最適な投与間隔は、患者の免疫応答および患者の症状の重症度により評価することができる。投与するアゴニスト量は、他のパラメータの中でも、アゴニストの構造、送達経路、および患者の健康状態に依存して、大幅に変化していてもよい。どのような場合にも、アゴニストに対する免疫応答を誘導する時はいつでも、投与するアゴニスト量は、そうするために有効な量である。同様に、アゴニストの投与回数および複数投与の投与間隔は、アゴニストに対する免疫応答を誘導するために有効な数および間隔である。
【0036】
アゴニストを、リポソームにより患者に対して送達することもできる。リポソームは、リンパ球様細胞の部位に指向することができ、そこで次にリポソームは選択されたアゴニスト組成物を送達する。使用するためのリポソームは、中性リン脂質およびマイナス荷電のリン脂質およびコレステロールなどの5-ステロールを含む、典型的な小胞-形成性脂質から形成される。脂質の選択は、一般的に例えば、リポソームサイズ、血流中のリポソームの酸不安定性および安定性を考慮することにより、誘導される。Szokaらの文献(Szoka et al., Ann. Rev. Biophys. Bioeng. 9: 467 (1980))およびU.S.特許4,235,871、4,501,728、4,837,028、および5,019,369に記載されている様に、リポソームを調製するための様々な方法が利用可能である。
【0037】
アゴニストはまた、熱ショックタンパク質の存在下で送達することもできる。熱ショックタンパク質は、細胞中では分子シャペロンとして作用し、発生期のペプチドがタンパク質に適切にフォールディングすることを保証し、そして新しいタンパク質および古いタンパク質を細胞中で往復させる。
【0038】
熱ショックタンパク質は、細胞表面上のペプチドを提示する際に役割を果たして、免疫システムが疾患の細胞を認識することを補助すると考えられている。米国特許5,935,576、6,007,821および6,017,540は、熱ショックタンパク質に関するそのような使用、熱ショックタンパク質複合体の作製方法、および治療方法を記載する。
【0039】
効果的な免疫応答もまた、ex vivo法により誘導することができる。そのような方法においては、抗原は、患者からin vitroで入手される樹状細胞などの抗原提示細胞のPBL集団(しばしば、パルス性APCと呼ばれる)に対して提示され、そして免疫-活性化細胞が患者に対して戻される。この方法により、アゴニストがAPCに対して送達され、そしてペプチドの患者に対する何らかの潜在的な毒性を回避し、そして典型的には必要とされるアゴニストの量をより少なくすることを保証する。PBL、APC、およびDCを単離する方法は周知であり、そしてアゴニスト単独でまたは熱ショックタンパク質または適切なサイトカインなどの追加的な因子の存在下で、本明細書中で前述したように、アゴニストを細胞上に直接置くことによるか、またはリポソームまたはエキソソーム送達によるか、を含むいずれかの形式で、アゴニストをin vitroでAPCに対して送達することができる。
【0040】
最近の報告では、リガンドアゴニストによる腫瘍細胞の細胞表面上のEphA2の架橋が、EphA2リン酸化、内部移行および分解を引き起こすことが示唆される(Walker-Daniels et al., Mol. Cancer Res. 1: 79-87,2002)。この誘導されたEphA2タンパク質の分解は、結果としてMHCクラスIおよび/またはクラスIIタンパク質により提示されるEphA2エピトープの急性の生成を引き起こすと考えられ、腫瘍がより容易にEphA2-特異的T細胞により認識され、そして潜在的には結果としてin vivoでのガン細胞臨床的な根絶を改善することをもたらす。このことにより、ガン患者におけるエフェクター抗-EphA2 T細胞をEphA2-リガンドアゴニストを用いて増殖させそして活性化して、組み合わせ免疫療法アプローチにおけるワクチン-誘導性リンパ球による腫瘍細胞の増殖性の生産的認識の可能性を増大させるためにEphA2-ベースのワクチンを協奏的に利用することがサポートされる。EphA2リガンドアゴニストは、治療された腫瘍細胞におけるEphA2タンパク質の分解を誘導する抗-EphA2抗体、EphrinA1-Ig構造物または合成ペプチド(これらには限定されないが)の形態を取ることができた。
【0041】
一態様において、患者は、EphA2リガンドあるいはそのアゴニストを投与される。EphA2リガンドまたはそのアゴニストは、抗体(例えば、モノクローナル抗体、または以下のもの:Fv断片;一本鎖Fv(scFv)断片;Fab'断片;F(ab')2断片;ラクダ化抗体および抗体断片;上記のものの多価版;ジスルフィド安定化Fv断片、scFvタンデム((scFv)2断片)、抗体多量体(例えば、これらは、ロイシンジッパー安定化またはヘリックス安定化などを含むが、これらには限定されない、典型的には共有結合されるかあるいは安定化されたものである)などの単一特異性抗体または二特異性抗体;scFv断片;組換え抗体または抗体断片、またはアプタマーやファージディスプレイ選択および増殖方法により生成された化合物などのin vitro-生成EphA2-特異的化合物(これらには限定されない)を含む、抗体の誘導体または類似体、などの結合性試薬であってもよい。EphA2リガンドまたはそのアゴニストは、ephrinA1またはそのアゴニストであってもよい。
【0042】
EphA2リガンドまたはそのアゴニストを、EphA2 T細胞受容体アゴニストについて言及する際に上述した様に、いずれかの効果的な経路により、いずれかの効果的な量で、そしていずれかの効果的な間隔により、患者に対して送達することができる。EphA2リガンドまたはそのアゴニストの送達は、EphA2 T細胞受容体アゴニスト-含有化合物の送達、および典型的にはEphA2 T細胞受容体アゴニストの送達とEphA2リガンドまたはそのアゴニストの送達とを交互に行う(必ずしも必須であるわけではないが)治療計画とを組み合わせるものである。一態様において、EphA2 T細胞受容体アゴニストは、上述した直接的方法またはex vivo方法のいずれかにより直接的に患者に対して送達し、および1週間後に、EphA2リガンドまたはそのアゴニストを投与する。EphA2 T細胞受容体アゴニストとEphA2リガンドまたはそのアゴニストとを交互にしながら、このことを、1週間に1回の治療と共に、所望されそして有効ないずれかの回数繰り返す。
【0043】
本明細書中に記載するいずれかのペプチドを、ペプチドを産生するための多数の既知の組換え方法のいずれかにより製造することができ、あるいは広く知られている固相化学などの一般的なタンパク質合成方法により合成することができる。組換え方法において、適切なプロモータ、ターミネータ、および所望のペプチドをコードするコード領域を含有する遺伝子を調製する。コード領域は、細胞によるペプチドの分泌を可能にするシグナル配列および/またはペプチドの親和性精製を可能にする、好ましくは切断可能な、適切なタグ、をコードすることもできる。
【0044】
ヒト細胞中でEphA2アゴニストを発現するための遺伝子を含有する核酸は、患者の細胞がアゴニストを発現し、それにより免疫応答を引き起こす様に、患者に対して直接的に送達しても、または患者の細胞に対してex vivoで送達してもよい(患者体内に戻すため)。単にアゴニストではなく、遺伝子を送達することにより、結果として患者の細胞中での遺伝子発現の拡大の結果生じるより頑健な免疫応答を引き起こすことができる。ウィルス-媒介性送達方法(組換えアデノウィルス、アデノ-関連ウィルスまたはワクシニアウィルスによるものなど)により、または非-ウィルス-媒介性送達方法(リポソームまたはむき出しの核酸を例えば筋肉中に直接注入することなど)により、核酸を送達することができる。
【実施例】
【0045】
実施例1:EphA2 T細胞アゴニストペプチドに対するPBLの応答性
末梢血および腫瘍試料
末梢血サンプルを、RCCと診断された40人の患者および正常な14人の個体から静脈穿刺により取得し、そしてヘパリン化チューブ中に採取した。末梢血リンパ球(PBL)を、Ficoll-Hypaque勾配(LSM, Organon-Teknika, Durham, NC)上での遠心処理により単離した。RCC腫瘍病変および対応する正常腎臓組織を外科的に切除し、そしてパラフィン包埋した。サンプル取得の前にすべての患者からIRB-承認プロトコルのもとでのインフォームド・コンセントを得た。患者および正常ドナーの情報は、表1中に提示する。HLA-A2-特異的抗体(BB7.2およびMA2.1)およびHLA-DR4-特異的抗体(抗-HLA-DR4モノクローナル抗体クローン359-13F10、IgG、Dr. Janice Blum(Indiana University School of Medicine, Indianapolis, IN)からご厚意により提供を受けた)を使用して蛍光-活性化細胞ソーター解析により決定した場合、含まれるすべての個体は、HLA-A2陽性および/またはHLA-DR4陽性であった。RCC患者および正常個体の中で、9人の患者および6人の正常個体が、HLA-A2およびHLA-DR4の両方ともの主要組織適合性抗原を発現した。
【0046】
【表1】
【0047】
表1において、個々のCCF表記は、採取した日付に基づく試料番号を反映する。5つの症例において、治療前血液試料および治療後(6週間)血液試料の両方が、示された様に、解析のために利用可能であった。示した場合、治療後の末梢血単離の時点(月)を提示する。使用した省略記号は:C、化学療法;IFN-γ、組換えインターフェロンα治療;IL-2、組換えインターロイキン-2治療;Mets、転移性疾患;NED、疾患の所見なし;R、放射線療法;S、外科的;であった。
【0048】
HLA-A2状態およびDR4状態を、材料と方法において記載する様に、末梢血単球に対してアリル-特異的モノクローナル抗体およびフローサイトメトリー選択(gating)を使用することにより決定する。
【0049】
細胞株および培養液
T2. DR4(HLA-A2+/-DRβ1 *0401 +;Pratt, R. L. et al. Oncogene 21 : 7690-7699 (2002))細胞株(Dr. Janice Blum(Indiana University School of Medicine, Indianapolis, IN)からご厚意により提供を受けた)を、ELISPOTアッセイにおいてペプチド-提示細胞として使用した。以下のSLR20-SLR26明細胞RCC株を、ウェスタンブロット解析で評価した。正常ヒト近位尿細管上皮腎臓細胞株HK-2(American Type Tissue Collection, ATCC, Rockville, MD)もまた、これらの解析において評価した。仮定では、HPV-16 E6/E7遺伝子(Ryan MJ, et al. Kidney Int. 45: 48-57 (1994))でトランスフェクションすることによりHK-2を形質転換したが、HK-2は正常対照細胞株を示す。EphA2+ PC-3前立腺癌細胞株が、ウェスタンブロット用の陽性対照として含まれた(Walker-Daniels J, et al. Prostate 41: 275-280 (1999))。すべての細胞株を、10%加熱不活性化ウシ胎児血清、100 U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、および10 mM L-グルタミン(すべての試薬は、GIBCO/Life Technologies, Grand Island, New Yorkより入手)を添加したRPMI-1640培養液中で、5%CO2の加湿雰囲気下にて37℃で維持した。
【0050】
ペプチドの選択と合成
EphA2タンパク質のタンパク質配列は、GENBANK(アクセッション番号AAH37166;図1)から入手し、そしてHLA-A0201およびHLA-DRβ1*0401結合ペプチドについて、ニューラルネットワークアルゴリズム(Honeyman MC, Brusic V, Stone NL, Harrison LC., “Neural network-based prediction of candidate T cell epitopes,”Nat Biotechnol.(1998)16: 966-969およびSouthwood S, Sidney J, Kondo A, del guercio M-F, Appella E, Hoffman S, Kubo RT, Chesnut RW, Grey HM, Sette A., “Several common HLA-DR types share largely overlapping peptide binding repertoires”, J.Immunol. (1998) 160: 3363-3383)を使用して、解析した。次に、上位10個の候補HLA-A2結合ペプチドについて、PAProC予測アルゴリズム(C. Kuttler, A. K. Nussbaum, T. P. Dick, H. -G. Rammensee, H. Schild, K. P. Hadeler, “An algorism for the prediction of proteasomal cleavages, ”J. Mol. Biol.(2000)298: 417-429;A. K. Nussbaum, C. Kuttler, K. P. Hadeler, H. -G. Rammensee, H. Schild, PAProC: A Prediction Algorithm for Proteasomal Cleavages available on the WWW, Immunogenetics 53 (2001), 87-94;およびA. K. Nussbaum, “From the test tube to the World Wide Web-The cleavage specificity of the proteasome,”博士論文, University of Tuebingen, Germany, 2001(www. uni-tuebingen. de/uni/kxi/))を、合成のために選択したプロテアソームにより処理することができるそれらのペプチドのみと共に使用して、プロテアソーム切断により生成される能力について解析した。すべてのペプチドを、Fmoc化学により合成した。ペプチドは、HPLC特性およびMS/MS質量分光解析に基づき、>90%純粋であった。全体としては、本研究において高い結合スコアを得た5個のHLA-0201および3個のHLA-DR0401予想結合ペプチド(表2)を、評価した。
【0051】
【表2】
【0052】
PBLの抗原刺激
PBLを、AIM-V培地(GIBCO/Life Technologies)中で107/mlで再懸濁し、そして加湿5%CO2インキュベータ中で37℃にて60分間インキュベートした。非接着性(T細胞-濃縮)細胞を、PBSで穏やかに洗浄し、そしてその後冷凍した。プラスチック接着性細胞を、1000 units/ml rhGM-CSF(ImmunexCorporation, Seattle, WA)および1000 units/ml rhIL-4(Schering-Plough, Kenilworth, NJ)を添加したAIM-V培地中で培養した。7日後、樹状細胞(DC)を回収し、そして自己由来CD8+またはCD4+ T細胞を刺激するために使用した。非-接着性自己由来細胞を、T細胞応答細胞の“濃縮”供給源として使用した。CD8+ T細胞(HLA-A2-陽性患者および健康ドナーにおいて)またはCD4+ T細胞(HLA-DR4-陽性患者および健康ドナーにおいて)を、特異的磁気ビーズ(MACS;Miltenyi Biotec, Auburn, CA)を使用して、>98%の精製度まで積極的に単離した。200000個のDCを、10μg/mlペプチドを用いて1週間、2×106個のCD8+またはCD4+ T細胞と共に培養した。in vitro刺激の7日目に、応答性CD8+ T細胞またはCD4+T細胞を回収し、ELISPOTアッセイにおいて解析した。
【0053】
ペプチド-応答性CD8+ T細胞およびCD4+ T細胞応答についてのIFN-γおよびIL-5 ELISPOTアッセイ
ペプチドエピトープを認識する末梢血T細胞の頻度を評価するため、IFN-γおよびIL-5についてのELISPOTアッセイを、以前に記載されたように行った(Tatsumi T, et al. J. Exp. Med. 196;619-628, 2002)。CD8+ T細胞応答をIFN-γELISPOTアッセイのみにより評価したのに対して、CD4+T細胞応答をIFN-γ(Th1)およびIL-5(Th2)ELISPOTアッセイの両方により評価した。ELISPOTアッセイのため、96-ウェルマルチスクリーン血球凝集素抗原プレート(Millipore, Bedford, MA)を、PBS(GIBCO/Life Technologies)中、10μg/mlの抗ヒトIFN-γmAb(1-D1 K;Mabtech, Stockholm, Sweden)または5μg/mlの抗ヒトIL-5(Pharmingen-BD, San Diego, CA)を用いて、4℃にて一晩コーティングした。非結合抗体を、PBSを用いて4回連続して洗浄することにより取り除いた。RPMI-1640/10%ヒト血清を用いてプレートをブロッキングしたのち(37℃にて1時間)、105個CD8+T細胞またはCD4+ T細胞および10μg/ml合成ペプチドでパルス化したT2.DR4細胞(2×104細胞)を、マルチスクリーン血球凝集素抗原プレート中に、3重にして播いた。対照ウェルは、それぞれHIV-nef190-198ペプチド(AFHHVAREL, SEQ ID NO: 3)またはMalaria-CS326-345ペプチド(EYLNKIQNSLSTEWSPCSVT ;SEQ ID NO: 4)を用いてパルス化したT2.DR4細胞と共にCD8+またはCD4+ T細胞、またはT2.DR4細胞のみ、を含有した。培養液は、200μl/ウェルの最終容量のAIM-V(GIBCO/Life Technologies)であった。プレートを、IFN-γ評価用には24時間、IL-5評価用には40時間、5%CO2中37℃にてインキュベートした。インキュベーションの後、培養ウェルの上清をELISA解析用に回収し、そしてPBS/0.05%Tween 20(PBS/T)を用いて洗浄することにより細胞を除去した。PBS/0.5%BSA中2μg/mlのビオチン化mAb抗-ヒトIFN-γ(7-B6-1;Mabtec)またはPBS/0.5%BSA中2μg/mlのビオチン化mAb抗-ヒトIL-5(Pharmingen)と共に、2時間インキュベーションすることにより、捕捉したサイトカインを、それらの分泌部位で検出した。プレートをPBS/Tにより6回洗浄し、そしてアビジン-ペルオキシダーゼ複合体(1:100に希釈;Vectastain Elite Kit;Vector Laboratories, Burlingame, CA)を1時間添加した。PBS/Tを用いて3回連続して洗浄し、次いでPBSのみを用いて3回洗浄することにより、非結合複合体を取り除いた。IFN-γELISPOTアッセイ用には、AEC基質(Sigma, St. Louis, MO)を添加し、そして5分間インキュベートし、そしてIL-5 ELISPOTアッセイ用には、ペルオキシダーゼ用のTMB基質(Vector Laboratories)を添加し、そして10分間インキュベートした。スポットをZeiss Autolmagerを使用して画像化した(そしてStudentの両側性T-テスト解析を使用して統計的比較をおこなった)。データは、解析した100,000個のCD4+ T細胞当たりの、平均IFN-γまたはIL-5スポット数として示される。
【0054】
ELISA
CD4+ T細胞ELISPOTプレートから得られた上清を、TGF-βおよびIL-10のELISAにおいて解析した。上清を、培養期間の最後の時点でELISPOTプレートから単離し、そして特異的サイトカインのELISAで解析するまで、-20℃で凍結した。サイトカイン捕捉・検出抗体および組換えサイトカインを、BD-Pharmingen(San Diego, CA)から購入し、そして製造者の指示に従ってELISAアッセイにおいて使用した。TGF-βおよびIL-10アッセイについての検出限界は、それぞれ60 pg/mlおよび7 pg/mlであった。
【0055】
ウェスタンブロット解析
腫瘍細胞(5〜10×106)を、抗-ヒトEphA2ポリクローナル抗体(クローン:H-77)(Santa Cruz Biotechnology, Inc., Santa Cruz, CA)を使用したウェスタンブロットにより、EphA2発現について解析した。細胞ペレットを、プロテアーゼ阻害剤(Complete, Boehringer Mannheim, Indianapolis, IN)を含有するPBS中200μlの1%NP-40を使用して、氷上にて1時間、溶解した。13,500×gで30分間遠心処理した後、上清をSDS-PAGE泳動バッファーと1:1で混合し、そしてタンパク質を10%PAGEゲル上で分離し、その後ニトロセルロースメンブレン(Millipore, Bedford, MA)上にエレクトロブロッティングした。ブロットは、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)-抱合ヤギ抗-ウサギIg(Biorad, Hercules, CA)およびECL化学発光検出キット(NEN Life Science Products)を使用して、Kodak X-Omat Blue XB-1フィルム(NEN Life Science Products, Boston, MA)上に画像化した。
【0056】
RCC組織中のEphA2についての免疫組織化学
RCC腫瘍試料を、IRB-承認プロトコルの下で外科的に取得し、そしてパラフィン包埋した。5μm切片を脱パラフィンし、そしてddH2O中でそして次にPBS中で、再水和した。抗-EphA2 mAb(Ab 208;mIgG1)または同位体-適合対照mAbを、室温にて1時間、切片上でインキュベートした。PBSで洗浄した後、切片を、ビオチン化ヤギ抗-ウサギIgG(Vector Laboratories)を用いて、室温にて20分間インキュベートし、そしてその後、洗浄後にアビジン-ビオチン-複合化ペルオキシダーゼ(Vectastain ABC kits, Vector Laboratories)と共にインキュベートした。その後に洗浄した後、反応生成物をNova Red基質キット(Vector Laboratories)により発色し、そして核をヘマトキシリンにより対比染色した。EphA2の発現を、40×倍率で、2回顕微鏡観察することにより、独立して評価した。
【0057】
統計解析
2群のあいだでの統計的な有意差は、各群を均等な分散について試験した後、Studentのtテストまたは2サンプルtテストをWelch補正と共に適用することにより決定した。統計的な有意性は、0.05未満のp値として定義した。
【0058】
結果
腫瘍細胞株およびRCC組織中でのEphA2発現
EphA2を、悪性腎臓上皮細胞中で過剰発現させた。ウェスタンブロット解析を使用してRCC細胞株中でのEphA2タンパク質レベルを評価した(図18)。転移性RCC株は、初代RCC株よりもEphA2をより強力に発現する傾向にあり、前立腺癌PC-3に関して以前に注目された強力な染色に近いものであった(Walker-Daniels J, et al. Prostate 41;275-280,1999)。正常近位腎臓上皮細胞のモデルとして使用する一方、HK-2細胞株はHPV-16 E6/E7-により形質転換され、そしてEphA2の発現レベルは初代RCC株に関して観察されたものと一致していた。正常PBLは、検出可能なレベルのEphA2タンパク質を発現できなかった。これらの知見と一致して、パラフィン包埋RCC試料について行った免疫組織化学的解析(図19)も、EphA2の強力な発現を確認した。
【0059】
図18において、抗-EphA2および対照抗-βアクチン抗体を、表示したRCC細胞株、正常腎臓尿細管上皮細胞株HK2、および正常末梢血リンパ球(PBL)(陰性対照)から生成した溶解物のウェスタンブロット解析を行う際に使用した。初代明細胞RCC株および転移性明細胞RCC株を、示された様に評価した。PC3前立腺細胞株および正常ドナーPBLが、陽性対照および陰性対照として機能した。図19A〜Dにおいて、初代RCCパラフィン組織切片(図19Aおよび19B)および転移性RCCパラフィン組織切片(図19Cおよび19D)を、免疫組織化学的解析において、抗-EphA2抗体(Ab 208;図19Aおよび19C)または同位体対照抗体(図19Bおよび19D)を使用して染色した(40×拡大)。
【0060】
T細胞により認識されるEphA2エピトープの同定
潜在的T細胞エピトープを同定するため、EphA2タンパク質配列を、推定HLA-A2結合モチーフおよびプロテアソーム切断部位を同定するために設計されたアルゴリズムに供した。同様に、ニューラルネットワークアルゴリズムを使用して、HLA-DR4に結合すると予想され、そしてCD4+ T細胞エピトープを提示する潜在能力を有すると予想される、EphA2ペプチド配列を同定した(Honeyman M et al., 1998)。全体として、8個のペプチドを、引き続いて行う解析のために合成した:このうち、5個のペプチドはCTLエピトープとして機能するものと推定され、そして3個のペプチドはThエピトープとして機能すると推定された(表2)。
【0061】
末梢血T細胞を、正常HLA-A2+および/またはHLA-DR4+ドナーから単離し、そして対応する合成ペプチドにより事前に負荷した自己由来DCにより刺激した。応答性T細胞を、ペプチド-パルス化T2. DR4(HLA-A2+/DR4+)抗原提示細胞およびEphA2抗原およびHLA-A2および/またはHLA-DR4を共に発現する腎臓細胞癌腫細胞株に対する特異的応答性について、引き続き評価した。IFN-γELISPOTアッセイを使用して、5個の推定CTLエピトープに対する8個のHLA-A2+ドナーCD8+ T細胞応答および3個の潜在的Thエピトープに対する7個のHLA-DR4+ドナーCD4+ T細胞応答性を評価した。
【0062】
各ペプチドは、少なくとも1個の正常ドナー(表3)により認識され、そしてただ一つの(HLA-DR4+)ドナーは、EphA2(Th)エピトープのいずれに対しても応答することができなかった。HLA-A2ドナーの中で、EphA2546-554ペプチドおよびEphA2883-891ペプチドは、最も一般的に反応し(それぞれ、評価したドナー8個のうち6個において)、EphA2883-891に対する応答が典型的には高頻度であった。評価したHLA-DR4+ドナーのうち、7個のドナーのうち6個が、少なくとも1つの予想EphA2-由来Thエピトープに対して反応し、EphA63-75およびEphA2663-677に対する応答が最も一般的であった。クローニングしたT細胞が応答性T細胞のこれらのバルク集団に由来する場合、それらは適切なHLAクラスI-またはクラスII-(HLA-A2またはHLA-DR4)拘束性の様式で、EphA2+ RCC株を認識することができた(データは示さず)。
【0063】
【表3】
【0064】
ELISPOTアッセイにおける、末梢血CD8+ T細胞による、ペプチド-特異的IFN-γ放出の解析
29人のHLA-A2+ RCC患者(表1)および10人のHLA-A2+正常ドナーにおいて末梢血CD8+ T細胞応答を、これらの配列に対して評価した。CD8+T細胞を、すべての実験について、98%の純度まで濃縮した。応答を、“初回”in vitro刺激の7日後、IFN-γELISPOTアッセイを使用して評価した。
【0065】
図20において、末梢血CD8+ T細胞をHLA-A2+正常ドナーまたはRCCを有する患者から単離し、そして個々のEphA2-由来エピトープにより予めパルス化した未成熟な自己由来樹状細胞により、材料と方法において概説するように刺激した。1週間後、応答性T細胞を、表示されたEphA2エピトープによりパルス化したT2. DR4(HLA-A2+)細胞に対する応答性について、IFN-γELISPOTアッセイにおいて解析した。データは、IFN-γスポット数/100,000 CD8+ T細胞として報告し、そして3回の測定値の平均を示す。HLA-A2-提示HIV-nef190-198エピトープによりパルス化したT2. DR4細胞に対するT細胞応答性は、すべての事例において陰性対照として機能し、そしてEphA2-特異的スポット数を決定するため、この値をすべての実験決定値から差し引いた。パネル中の各シンボルは、個々のドナーの反応を示す。
【0066】
図20において示されるように、外科手術前のHLA-A2+患者(Pre-Op)または外科手術後に残留疾患を有する患者(Post-RD)におけるEphA2ペプチドに対するCD8+ T細胞反応の頻度は、正常HLA-A2+ドナーにおいて見いだされたものと同程度に低かった。対照的に、EphA2エピトープに対するELISPOT応答性の上昇が、外科手術後疾患を有さない(疾患の証拠無し:NED)(Post-NED)ものとして分類されたRCC患者において見いだされた。興味深いことに、長期生存を示すRCC患者由来のCD8+ T細胞(Post-LTS;外科手術後>2年生存)はまた、ある程度の活性な疾患を有するにも関わらず、EphA2 CTLエピトープに対するELISPOT応答性が上昇していた。Stage Iを有する患者とStage IVを有する患者とを比較した場合、患者が活性な疾患を有していても、抗-EphA2 CD8+ T細胞応答において有意差は存在しなかった(図21、図20において報告されたデータを、疾患段階の関数として再プロットしたものを示す)。疾患を有さなかった(すなわち、疾患の証拠無し、NED)場合または長期生存者である場合に解析された患者のみが、EphA2エピトープに対する応答性が上昇したCD8+ T細胞を示した(図21)。
【0067】
4人のHLA-A2+患者において、治療前および治療後のEphA2ペプチドに対するCD8+ T細胞応答性の変化を、評価した。図22において、末梢血CD8+T細胞をRCCを有する患者から、外科手術前、および外科手術後(6週間)に単離し、そして図20の上記記載に概説したように、IFN-γELISPOTアッセイにおいて、EphA2エピトープに対する応答性に関して評価した。3人のStage I RCC患者(●、○、▼)は、外科的処置の結果として疾患が存在しない状態になったが、一方一人のStage IV RCC患者(▽)は、外科手術後に残留疾患を有していた。パネル中の各シンボルは、個々の患者の反応を示す。これらの個体のうち3人は、外科的処置の前に局所的な疾患を有していたStage I患者であり、一方残りの患者は、Stage IV疾患を有していた。注目すべきことに、EphA2ペプチドに対するCD8+ T細胞応答性は、4人のRCC患者すべてにおいて外科手術前には非常に低かった。疾患を取り除いたところ、EphA2-由来CTLエピトープに対するCD8+ T細胞応答性は、3人のStage I患者のそれぞれにおいて有意に増加していた。正反対に、外科手術後に残留腫瘍負荷を有していた一人の評価可能なStage IV RCC患者は、EphA2 ペプチドに対してあまり応答性ではないままであった(図22)。
【0068】
ELISPOTアッセイにおけるCD4+ T細胞による、ペプチド-特異的IFN-γおよびlL-5放出
IFN-γ(Th1-型)およびIL-5(Th2-型)ELISPOTアッセイを使用して、EphA2ペプチドに対する患者-由来Th細胞の頻度の変化および機能的バイアスを識別した。CD4+ T細胞単離およびELISPOT解析の前に、末梢血T細胞を、ペプチド-パルス化未成熟自己由来DCにより1週間刺激した(Th1/Th2バランスを崩してはいないようである、参考文献47)。EphA2ペプチドに対するCD4+ T細胞応答細胞の頻度が、19人のHLA-DR4+RCC患者において評価された(表1)。
【0069】
EphA2に対するT細胞応答性の機能的性質は、疾患の進行に関連していた。Stage I疾患を有する患者は、EphA2ペプチドに対して強力なTh1-二極化応答性を示したが、一方、より進行した段階の疾患を有する患者は、強力なTh2応答性に対して二極化された。図23において、末梢血を19人のHLA-DR4+患者から入手し(表1)、そしてCD4+ T細胞を、以下の材料と方法において記載する様に、ポジティブMACSTM-ビーズ選択により単離した。EphA2 Thペプチド-パルス化、自己由来DCによるin vitro刺激の1週間後、応答性CD4+ T細胞を、示したEphA2エピトープでパルス化したT2.DR4細胞に対して、IFN-γ ELISPOTアッセイおよびIL-5 ELISPOTアッセイにおいて評価した。データは、IFN-γスポット数/100,000 CD4+ T細胞として報告し、そして3回繰り返しの測定値の平均を示す。HLA-DR4-提示Malarial circumsporozooite(CS)326-345エピトープでパルス化したT2.DR4細胞に対するT細胞応答性は、すべてのケースで陰性対照として機能し、そしてこの値をEphA2-特異的スポット数を決定するため、すべての実験測定値から差し引いた。パネル中の各表示は、個々の患者の応答を示す。患者のすべてが各ペプチドに対して反応したわけではないが、それらの応答は、患者の疾患状態に従って一定の二極化を示した。
【0070】
手術前および手術後のHLA-DR4+患者由来の1セットの適合血液サンプルが、幸運にも利用可能であった。この個体は、手術後は疾患を有さなかった。このドナー由来のCD4+ T細胞が手術前および手術後にTh1のバイアスがかかったものであった一方、EphA253-68およびEphA263-75(しかしEphA2663-677ではない)エピトープに対するT細胞応答に関連するIFN-γスポット数の頻度は、処置後に増加した。図24において、手術前および手術後の末梢血は、Stage Iの疾患を有する一人のRCC患者について利用可能であった。CD4+T細胞が単離され、図23の記載において概説される様にEphA2 Thエピトープに対する応答性について解析された。手術後のTh1-型CD4+T細胞応答(IFN-γ)の統計的に有意な増加およびTh2-型CD4+T細胞応答(IL-5)の統計的に有意な減少が、EphA253-68エピトープに関して注目された。EphA263-75エピトープに対するCD4+ T細胞応答の治療により誘導された変化は同様であり、IFN-γの結果は0.05のp値に近づき、そしてIL-5応答の有意な減少が注目された(p<0.001)。手術前/手術後のEphA2663-677エピトープに対するT細胞応答には、有意な相違が存在しなかった。治療前および治療後のTh1型/Th2型応答の比も、ペプチドEphA253-68およびEphA263-75に関して示される。有意差についてのp値が示される。
【0071】
このドナーもまたHLA-A2であり、そしてEphA2に対するTh1-型CD4+ T細胞-媒介性免疫の増加が、この患者における循環性IFN-γ-分泌性抗-EphA2 CD8+ T細胞の頻度が増加することと一致して生じたことが観察された(図22;黒丸)。
【0072】
EphA2ペプチドに対するRCC患者CD4+ T細胞由来のTGF-βおよびIL-10の産生
Th3/Tr1 CD4+ T細胞がRCC患者の末梢血中に存在するかどうかを評価するため、in vitroペプチド刺激後のTGF-βおよびIL-10産生を測定した。図25において、上清をIFN-γELISPOTアッセイの培養ウェルから回収し、そして商業的なELISA法を使用してTGF-β1レベルについて解析した。評価した19人のHLA-DR4患者のうち、3人の(評価した8人のうち)Stage IV RCCを有する患者の上清のみが、検出可能な量のTGF-β1を含有した。これらの患者のCD4+ T細胞についての対応するIFN-γおよびIL-5 ELISPOTデータも提供される。パネル中の各表示は、個々の患者の応答を示す。応答性CD4+ T細胞によるTGF-β産生は、Stage IV患者の一部(すなわち、8人中3人)においてのみ観察され、そしてとりわけ、これら同一の患者は、協調的に弱いEphA2ペプチドに対するTh1-型またはTh2-型(IFN-γおよびIL-5 ELISPOT)CD4+ T細胞応答性を示した。IL-10産生(ELISAの検出限界以上の)が、試験したどの試料についても観察された。
【0073】
腫瘍-関連抗原の分子的定義は、癌患者における腫瘍-特異的T細胞応答を準備しそして促進するために設計された免疫療法の開発を促進した。これらの進歩と共に、サイトカイン放出アッセイは、治療前、治療中、および治療後の患者の末梢血における抗-腫瘍CD8+ T細胞応答およびCD4+ T細胞応答を発生する特異性および程度をモニターするための強力な手段を提供する(Keilholz U, et al. J Immunother 25;97-138,2002)。本実施例において、RCCを有する患者におけるT細胞が、どのようにして、どの程度まで、新規のEphA2-由来エピトープを認識するか、を、サイトカイン-特異的ELISPOTアッセイおよびELISAを使用して評価した。
【0074】
本実施例の主要な知見は、腎臓細胞癌腫患者が、RCC腫瘍において高い頻度で異常に発現されている受容体チロシンキナーゼEphA2に対する、検出可能なCD4+ T細胞応答性およびCD8+ T細胞応答性を示すことを示すものである。EphA2-特異的CD8+ T細胞活性は、これらの患者における活性な疾患の存在と反比例し、治療的介入後6週間後以内に増加して、そして結果として疾患のない状態になる。興味深いことに、Stage IV疾患を有する2人のHLA-A2+患者が、手術後長期生存者(>40ヶ月)であったことが同定された。これらの個体は両方とも、EphA2-由来エピトープに対して応答性のIFN-γ-分泌性CD8+ T細胞の末梢血頻度の上昇を示した(図20)。これらの患者において高い抗-EphA2 CD8+ T細胞活性が持続的に維持されることは、活性な疾患を有しつつ生存し続けることと関連している可能性がある。
【0075】
CD8+ T細胞の結果とは多少対照的に、EphA2ペプチドに対する患者のTh1-型CD4+T細胞応答とTh2-型CD4+ T細胞応答との微妙なバランスにより、疾患の段階を識別することが、本明細書中でも示される。特に、最も進行した型のRCCは、Th2-型抗-EphA2応答またはTr-型抗-EphA2応答のあいだで二極化される傾向にある。機能的CD4+ T細胞応答性におけるこの二極化は、Stage IV疾患を有する患者におけるT制御細胞により媒介される潜在的な抑制活性と組合わさって、疾患の進行において、促進性の作用を有する可能性がある。
【0076】
これらの知見は独自なものである。というのも、EphA2が、腎臓細胞癌腫に対する免疫療法を設計するために非常に必要とされる標的抗原であることがこれらの知見により示されたことが一部の理由である。第一に、EphA2は、それぞれ、24個のRCC細胞株のうち22個(92%)および30個のRCCバイオプシーサンプルうち29個(97%)を含む多数のRCC試料中で過剰発現される(図18およびデータは示さず)。これらの知見は、乳癌、結腸癌、頭部癌、および頸部癌(Tatsumi et al.、未公開データ)、前立腺癌および肺癌、ならびにメラノーマを含む多数の癌に対して、高レベルのEphA2を適用することが示される、他の腫瘍型の研究から得られる証拠と一致している。本研究がこれらのその他の臨床的症候に対して拡張できる場合、EphA2-特異的T細胞活性により、これらの腫瘍型についても、治療的介入の機会がもたらされるだろう。
【0077】
興味深いことに、EphA2ペプチドに対するCD8+ T細胞応答性(IFN-γELISPOTアッセイにおいて決定するもの)は、活性な疾患を有するRCC患者と疾患を有さない患者とのあいだで大きく異なっていた。しかし、抗-EphA2 CD8+ T細胞応答性は、RCC疾患状態を識別しなかった。この知見についての一つの可能性のある説明は、RCC腫瘍が、EphA2に対するin situでのCD8+ T細胞応答の生成、機能性、および耐久力を抑制する可能性があるというものである。この仮説は、以前に報告されたものと同様に(Kiessling R, et al. Cancer Immunol lmmunother48 ;353-362, 1999)、末梢CTLおよびNK細胞活性の一般的な腫瘍関連免疫抑制と一致している。とりわけ、EphA2-由来CTLエピトープに対するCD8+ T細胞応答性は、Stage I RCCを有する3人のHLA-A2+患者の末梢血中で、これらの患者における疾患がない状態にする外科手術後に、有意に増加した。対照的に、Stage IV患者において、“治癒”を伴わない外科的介入により、EphA2ペプチドに対するCD8+ T細胞応答性の頻度の低さは変化しなかった。これらの結果は、RCC腫瘍のin situでのクリアランス(すなわち、慢性の(腫瘍)抗原刺激の終了)に関する要件と一致し、機能的Tc1-様抗-腫瘍CD8+ T細胞応答の上昇をもたらす(Liu H, et al. J Immunol 168 : 3477-3483,2002およびMoser JM, et al. Viral Immunol 14: 199-216,2001)。EphA2-特異的CD8+T細胞活性の拡大または維持に関する代わりの説明には、特に進行性癌設定(Tatsumi et al.,J. Exp. Med. 2002)における、特異的Th1-型応答、または存在する患者Th2-型またはT抑制型からTh1-型免疫へのシフトの協調的サポートが必要とされる可能性がある。
【0078】
Th1-型バイアスがかかったCD4+T細胞応答が、Stage I RCC患者の一部においても観察され、そしてTh2-型またはTr-型バイアスがかかったCD4+T細胞応答が、Stage IV RCC患者においてはほぼ必ず観察された。進行性病期の疾患を有する患者におけるTh1-型免疫から離れた二極化が、腫瘍-特異的であったことを強調することは重要である。というのも、Stage IV疾患を有する個体が、“正常な”Th1のバイアスがかかった方法において、インフルエンザ由来-およびEBV由来-Tヘルパーエピトープに対して応答するためである(Tatsumi et al., J. Exp. Med. 2002およびデータは示さず)。
【0079】
Stage I疾患を有する唯一のHLA-DR4+患者について長期的なデータが利用可能であったが(図24)、少なくともいくつかのEphA2エピトープに対するTh1-型免疫が強調され、そしてEphA2-特異的なTh2-型応答が、患者の腫瘍を外科的切除した後に減少した。これらの結果は、ほとんどの癌において、進行性病期の癌患者においては免疫応答が抑制される(または道筋からはずれる)と考えられるという以前の報告と一致している。これらの結果もまた、“後期”EphA2ペプチドに対するCD4+ T細胞応答の性質が、RCC病期と相関していることを示唆する。この知見は、病期は注目されたが病期相関は注目されなかった“初期段階”MAGE-6エピトープに対するCD4+ T細胞応答についてのこれらの過去の知見とは対照的である。
【0080】
Th3/Tr CD4+ T細胞サブセットが、抗原特異的T“抑制性”細胞として優勢な役割を果たす可能性がある。これは部分的には、例えばTGF-βおよび/またはIL-10などの免疫抑制性サイトカインの分泌のためである(Krause I, et al. Crit Rev Immunol 20 ;1-16,2000)。Stage IV疾患を有する8人の患者のうち3人(38%)においてTGF-β産生が検出された(しかしながらIL-10産生は検出されなかった)ことに基づいて、ヒトCD4+CD25+ T抑制細胞の集団は、EphA2-過剰発現腫瘍を生産的に除去する患者の能力を妨害する可能性がある(Levings MK, et a/. J Exp Med. 196;1335-1346,2002)。これらの同一の患者は、EphA2ペプチドに対する識別可能なTh1-型応答性またはTh2-型応答性を示すことができず、このことからTh1型応答またはTh2型応答に対するEphA2-特異的T抑制-型免疫の全体的な抑制性優勢度が支持される。これらの結果から、Th2-型応答またはT抑制-型応答が、進行性病期のRCC患者においてEphA2エピトープに対して一般的であり、そしてこれらの個体において注目された腫瘍-特異的細胞免疫の反応性低下に寄与している可能性があることが示唆される。将来的な研究によりフローサイトメトリー解析を使用してこの仮説を試験し、HLA-DR4/EphA2ペプチド四量体結合、ならびにCD25、CTLA-4、またはグルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体の同時発現(T抑制細胞のマーカーとして、Levings et al., J Exp Med. 2002)を検出することができるだろう。
【0081】
免疫療法
様々な治療用ワクチンが、様々な形態の癌について現在利用され、あるいは企図されている。構築されている免疫学的情報は、すべての進行中の試行から得られ、改良されたデザインの基礎を提供するに違いない。このように、臨床的に重要なT細胞応答の免疫学的モニタリングについては、革新的な方法を開発する大きな要請が存在し、それは究極的には“代わりの”目的として機能しうる。十分に包括的であることが証明されそうな単一のアッセイは存在しないが、IFN-γおよびIL-5 ELISPOTアッセイやTGF-β ELISAを組み合わせることにより、RCCまたはメラノーマを有する患者由来の機能性T細胞応答を評価する感度の高い手段を提供されることが、本明細書中で示される(Tatsumi et al., J. Exp. Med. 2002)。これらのアッセイは、腫瘍-関連抗原に特異的なCD8+ T細胞およびCD4+ T細胞の両方とものin vitro検出および頻度の測定の可能性がある。そのような技術を使用して、本発明者らの新規なEphA2-由来T細胞エピトープが、EphA2過剰発現が記載された多数の様々な癌-型における腫瘍-特異的免疫を評価する際に有用であることが証明される可能性がある。
【0082】
これらの同一のエピトープは、明らかに、癌ワクチンの構成成分として機能する可能性も有している。初期病期においてTh2-型応答に対してゆがめられるMAGE-6応答性T細胞とは異なり(Tatsumi et al.,J. Exp. Med. 2002)、EphA2に関連するTh応答性におけるアンバランスは、後期病期までには生じないようである。このように、Stage I患者のEphA2-ベースのアジュバントワクチン化は、疾患の再発のリスクが高い患者における防御的免疫を誘導するため、または予想される転移を防止するため、有用性を有する可能性がある。EphA2-由来CD4+ およびCD8+ T細胞エピトープの両方を用いてワクチン化することにより、特異的Th1-型 CD4+ T細胞の同時活性化により安定化される高頻度の抗-EphA2 CTL誘導が促進される可能性がある。あるいは、適切な再分極または活性化の条件下では(Vieira PL, et aL J Immunol 164 ;4507-4512, 2000)、EphA2ペプチドを取り込んだ樹状細胞(DC)ベースのワクチンにより、進行性病期を有する患者において、事前に変化したTh1-型免疫が機能的に復活することができ、それにより潜在的な治療的有益性を得ることができる。
【0083】
様々な組織構造の進行性病期の腫瘍の中で、幅広いEphA2過剰発現を前提とすると、EphA2などの抗原に基づくワクチンは、乳癌、前立腺癌、結腸癌および肺癌などの高い発生率の腫瘍型において、そして膵臓癌(これに関して、100%のEphA2過剰発現率を最近観察した、データは示さず)などの極めて攻撃的な癌において、多大な潜在性を有している。自己由来DC-EphA2ワクチンは、現在、RCC、メラノーマ、前立腺癌、頭部癌、および頸部癌または膵臓癌を有する患者を治療するために開発途上である。
【0084】
実施例2:リガンドアゴニストを用いて治療した後の、EphA2腫瘍の特異的CD8+T細胞認識のin vitroおよびin vivoでの条件誘導
細胞株および培地
T2.DR4(HLA-A2+/-DRβ1*0401) +細胞株を、ELISPOTアッセイにおいてペプチド-提示細胞として使用した。EphA2+ HLA-A2-PC-3前立腺癌細胞株を、EphA2タンパク質発現のウェスタンブロット解析についての陽性対照として使用し、そしてELISPOTアッセイにおける陰性対照標的としても使用した。SLR24、すなわちEphA2+ HLA-A2+細胞株(Tatsumi, T., et al. Cancer Res, 63 : 4481-4489, 2003)を、ウェスタンブロットおよびELISPOTアッセイにおいて試験し、そしてHu-SCID治療モデルにも利用した。すべての細胞株は、10%加熱不活性化ウシ胎児血清(FBS)、100 U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、および10 mM L-グルタミンを添加したRPMI-1640培養液中で(すべての試薬は、GIBCO/Life Technologies, Grand Island, New Yorkから入手)、加湿雰囲気下、5%CO2条件下で37℃にて維持した。
【0085】
マウス
6〜8週齢メスC.B-17scid/scidマウスを、Taconic Labs(Germantown, NY)から購入し、そしてマイクロアイソレーターケージ中で維持した。動物は、Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC)の承認を受けたプロトコルの下、研究室動物についての適切な飼育および利用に関する推奨に従って、無菌条件下にて飼育した。
【0086】
ウェスタンブロット解析
腫瘍細胞を、80〜90%コンフルエントまで増殖させ、血清を一晩枯渇させ、その後示されたアゴニストにより処置した。さらに、切除されたSLR24病変を、以下に概説するように、B61-Igの腫瘍内注射前および腫瘍内注射後24時間の時点で取得した。腫瘍サンプルを、ウサギ抗-ヒトEphA2ポリクローナル抗体(クローン:C-20)(Santa Cruz Biotechnology, Inc., Santa Cruz, CA)を使用して、ウェスタンブロットによりEphA2発現に関して解析した。いくつかの実験において、サンプルを、Axl(クローンC-20、Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA)タンパク質含量に関しても解析した。コンフルエントな組織培養フラスコから単離したか、または切除病変の酵素消化から単離した単一の腫瘍細胞懸濁物を、プロテアーゼ阻害剤(Complete, Roche Diagnostic, Mannheim, Germany)を含有するPBS中500μlの溶解バッファー(1% Triton-X、150 nM NaCl、10 mMTris pH7.4、1 mM EDTA、0.2 mM SOV、0.5% NP-40)を使用して、4℃にて30分間、溶解した。13,500×gにて20分間の遠心処理の後、上清をSDS-PAGE泳動用バッファーと1:1で混合し、そしてタンパク質を7.5%のPAGEゲル上で分離し、その後ニトロセルロース膜(Millipore, Bedford, MA)上にエレクトロブロッティングした。ブロットを、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)-抱合化ヤギ抗-ウサギIg(Biorad, Hercules, CA)およびWestern LightingTM化学発光検出キット(Perkin Elmer, Boston, MA)を使用した後、Kodak X-Omat Blue XB-1フィルム(NEN Life Science Products, Boston, MA)上に画像化した。EphA2についての免疫沈降を、抗-EphA2抗体D7(Upstate Biotech, Inc.)を使用して行った。抗-ホスホチロシン抗体(クローンpy99、Santa Cruz Biotechnology, San Diego, CA)を使用して、pEphA2含量を評価した。マウス抗-βアクチン抗体(クローンAC-15、Abcam, Cambridge, MA)をロード対照として使用した。
【0087】
EphA2アゴニスト
B61.IgおよびmAb208は、MedImmune(Gaithersburg, MD)からご厚意により提供を受けた。B61.Igは、マウスIgG抗体のFc部分と融合したephrin-A1のリガンド結合ドメインからなるキメラタンパク質であり、そして表示する場合30μg/mlでin vitroアッセイにおいて使用された。mAb208は、EphA2に対して特異的なマウスモノクローナル抗体であり、そして表示する場合8μg/mlでin in vitroアッセイにおいて使用された。
【0088】
抗-EphA2 CD8+ T細胞クローン
CL.142およびEphA2883-891に対して特異的なHLA-A2-拘束性CD8+ ヒトT細胞クローンE883を、以前に記載された様に(Tatsumi, T., et al. Cancer Res. 2003)作製した。
【0089】
ELISPOTアッセイ
In vitro T細胞応答を、以前に記載された様に(Tatsumi, T., et al. Cancer Res. 2003)、IFN-γELISPOTアッセイにより評価した。簡単に述べると、96-ウェルマルチスクリーン血球凝集素抗原プレート(Millipore, Bedford, MA)を、PBS(GIBCO/Life Technologies)中10μg/mlの抗-ヒトIFN-γmAb(1-D1 K;Mabtech, Stockholm, Sweden)を用いて4℃にて一晩コーティングした。非結合抗体を、PBSを用いて4回連続して洗浄することにより除去した。プレートをRPMI-1640/10%ヒト血清を用いてブロッキングした後(37℃にて1時間)、10μg/mlのEphA2883-891ペプチド(TLADFDPRV、SEQ ID NO: 2、残基883-891)を用いてパルス化した105個のCD8+ T細胞およびT2.DR4細胞(2×104細胞)またはB61.Igにより一晩処置したSLR24 +/-を、マルチスクリーン血球凝集素抗原プレート中に3つずつにして播いた。対照ウェルは、HIV-nef190-198ペプチド(AFHHVAREL、SEQ ID NO: 3)を用いてパルス化したT2.DR4細胞またはPC3を伴うCD8+、HLA-A2-EphA2+ 腫瘍細胞株またはT2.DR4細胞単独、を含有した。培養液(AIM-V;GIBCO/Life Technologies)を添加し、200μl/wellの最終容量とした。プレートを、IFN-γ評価のため、37℃、5%CO2にて24時間インキュベートした。PBS/0.05% Tween 20(PBS/T)により洗浄することにより、ELISPOTウェルから細胞を除去した。PBS/0.5%中2μg/mlのビオチン化mAb抗-ヒトIFN-γ(7-B6-1;Mabtec)により2時間インキュベーションすることにより、捕捉されたサイトカインをそれらの分泌部位にて検出した。プレートをPBS/Tを用いて6回洗浄し、そしてアビジン-ペルオキシダーゼ複合体(1:100希釈;Vectastain Elite Kit;Vector Laboratories, Burlingame, CA)を1時間添加した。PBS/Tを用いて3回連続的に洗浄し、その後PBSのみで3回すすぐことにより、非結合複合体を除去した。AEC基質(3-アミノ-9-エチルカルバゾール;Sigma, St. Louis, MO)を添加し、そしてIFN-γELISPOTに関しては、5分間インキュベートした。スポットをZeiss Autolmagerを使用して画像化した。
【0090】
フローサイトメトリー
対照またはリガンドアゴニストで処置した腫瘍細胞の表現型解析のため、HLAクラスIに対するPE-またはFITC-抱合化モノクローナル抗体(W6/32;汎-クラスI特異的;Serotec Inc., Raleigh, NC)またはヒトCD40に対するPE-またはFITC-抱合化モノクローナル抗体(Ancell Corp. , Bayport, MN)および適切な同位体対照(BD Biosciences, San Jose, CAから購入)を使用して、そしてフローサイトメトリー解析をFACscan(Becton Dickinson, San Jose, CA)フローサイトメーターを使用して行った。フローサイトメトリー解析の結果は、任意平均蛍光強度(MFI)単位で報告する。
【0091】
Hu-SCID腫瘍モデル
C.B17-scid/scidマウスの右側皮下に、1×106 SLR24 RCC細胞を注射し、そして腫瘍を約30 mm2のサイズにまで定着させた(すなわち注射後18日)。次に、腫瘍を有するマウスを4つの群にランダムに分け(同じ程度の腫瘍サイズを有する5匹ずつの動物)、無処置、18日に50μgのB61-Ig(50μl塩類溶液中)を腫瘍内に1回注射、19日目に100μl塩類溶液中5×106個のクローン化E883(抗-EphA2883-891特異的)CD8+ T細胞を尾静脈から1回注射、またはd18処方(B61-Ig)とd19処方(E883養子移植)との組み合わせ、のいずれかにより処置した。動物を3〜4日ごとに腫瘍サイズを評価し、腫瘍接種後40日に腫瘍のない状態に注目した。B61-Igの投与前および投与後のSLR24腫瘍病変中のEphA2含量を解析するため、腫瘍を麻酔したマウスから外科的に切除し、以前に記載されたように(Itoh, T., et al. J Immunol. 153: 1202-1215,1994)、DNAse、ヒアルロニダーゼ、DNAseカクテルを使用して一細胞懸濁物に消化し、そしてNitexメッシュ(Tetko, Kansas City, MO)を通して濾過した後、腫瘍細胞を可溶化しそして上述したようにウェスタンブロットに供した。
【0092】
統計解析
群間での統計的な差異は、両側Student'のTテストを使用して評価し、p値<0.05を有意とみなした。
【0093】
結果
B61.IgおよびmAb208は、EphA2リン酸化および分解を誘導する
以前の研究により、腫瘍細胞が不安定な細胞-細胞接触を有し、そしてこのことが、EphA2が隣接する細胞上でそのリガンドと相互作用する能力を低下させることが示された。結果的に、悪性細胞におけるEphA2は、一般的に、それ自体チロシンリン酸化されない。このことと一致して、悪性細胞(例えばPC3)中のEphA2は、わずかにリン酸化されることが、ウェスタンブロット解析により確認された。図26において、PC3(2〜4×106)細胞を、所定の時間点(分)にてB61.Ig(30μg/ml)またはmAb208(8μg/ml)のいずれかにより処理した。B61.Igは、ヒトFcドメインと融合したephrin-A1(EphA2の主要なリガンド)のEphA2結合ドメインからなる融合タンパク質である。細胞溶解物をSDS-PAGEにより分離し、そしてEphA2タンパク質を抗-EphA2抗体D7を使用して、プルダウンアッセイにおいて免疫沈降した。それぞれ抗-EphA2および抗-ホスホチロシン抗体を使用して、ウェスタンブロット解析を行った。データは、3回の独立して行われた実験の代表的なものである。しかしながら、安定な細胞内接触(アゴニスト性モノクローナル抗体および人工リガンド)が存在しない場合であっても、EphA2に結合することができる試薬によりこれらの細胞を処理することは、EphA2ホスホチロシン含量を増加させるために十分である。この処置がその後にEphA2タンパク質分解を誘導することを、細胞溶解物のイムノブロッティングにより確認した。等量がローディングされていることを確認するため、メンブレンをEphA2アゴニスト処理に反応して変化しないβ-アクチンに対して特異的な抗体によりプローブ化した。Axl受容体チロシンキナーゼレベルがEphA2-特異的試薬に反応して変化しないことを示すことにより、EphA2に対する特異性をさらに確認した。図27において、PC3細胞(左パネル)およびSLR24細胞(右パネル)を、B61.Ig(30μg/ml)またはmAb208(8μg/ml)のいずれかにより、37℃にて6時間処理した。細胞溶解物を12.5%SDS-PAGEにより分離し、そしてウェスタンブロット解析をポリクローナル抗-EphA2抗体および対照抗-βアクチン抗体を使用して行った。抗-AXL抗体を使用して、同様にして調製した溶解物を、これらの実験における特異性対照として画像化した。データは、各腫瘍細胞株について行った3回の独立した実験の代表的なものである。乳房細胞癌腫、肺細胞癌腫、膵臓細胞癌腫、および腎臓細胞癌腫の細胞モデルを含む、複数の様々なEphA2-過剰発現細胞システムにおいて、同様の知見が観察された(図27およびデータは示さず)。
【0094】
EphA2のリガンド-媒介性刺激は、受容体の内在化およびプロテアソームにおける分解を誘導するという証拠に基づいて、これらの知見を確認し、そして抗体刺激が同様にEphA2のプロテアソーム切断を誘導することを示す様に拡張した。図28Aおよび28Bにおいて、図26に関して既に記載したように、PC3細胞を処理しないか、またはB61.Ig(図28A)またはmAb208(図28B)を用いて処置した。MG-132(50μM)およびクロロキン(Chl.;100μM)も培養中に添加し、示す場合には、その30分後にEphA2アゴニストを添加し、24時間の実験時間培養中に残存させた。細胞溶解物を作製し、SDS-PAGEを使用して分離した。次に、抗-EphA2抗体および陰性対照抗-βアクチン抗体を使用してウェスタンブロット解析を行った。データは、3回の独立して行った実験の代表的なものである。EphA2分解を、26Sプロテアソーム阻害剤、MG-132により処置することにより阻害した。対照的に、エンドソーム/リソソーム阻害剤クロロキンを添加することにより、EphA2分解は阻害されず、従ってEphA2のプロテアソーム分解がEphA2分解の原因となる主要なメカニズムであり、リソソーム分解はそうではないことが示唆される。
【0095】
EphA2アゴニスト処理は、in VitroでのEphA2+腫瘍のCD8+ T細胞認識を亢進する
アゴニスト性抗体がEphA2のプロテアソーム分解を誘導したため、このことによりEphA2ペプチドのHLAクラスI複合体に対する提示を増大させることができるとの仮説が立てられた。これが正しいならば、EphA2のアゴニズムにより、EphA2-特異的CD8+ T細胞による認識を亢進することができると論理的には考えられる。この問題に対処するため、EphA2+ SLR24 RCC細胞をB61-Igを用いてインキュベートし、その後それらがEphA2883-891特異的CTLクローン142(CL.142)により認識される能力を評価した。T細胞活性化の読み出しのため、サンプルをIFN-γ-ベースのELISPOTアッセイに供した。図29において、抗-EphA2 CTLクローンCL142(Dobrzanski, P., et al. Cancer Res. 64: 910-919,2004)を、EphA2883-891ペプチドエピトープを用いてパルス化したT2.DR4(A2+)細胞に対する応答性、または標的としての非処置またはアゴニスト-誘導化HLA-A2+/EphA2+ SLR24細胞に対する応答性を、IFN-γELISPOTアッセイにおいて解析した。対照標的細胞には、HLA-A2-提示HIV-nef190-198(ペプチド特異性についての陰性対照)によりパルス化したT2.DR4細胞、およびPC3(HLA-A2-/EphA2+)前立腺癌細胞が含まれる。B61.Ig処置(30μg/ml)を一晩行い、EphA2分解およびHLA抗原プロセッシングとEphA2エピトープの提示とを確実に行った。データは、IFN-γ特異的スポット数/10,000 CL.142細胞で報告され、そして3回行った実験のうち1回の代表的な実験に由来する。
【0096】
SLR24をB61.Igを用いて事前処理すると、SLR24のCL.142認識が、非処置対照細胞と比較して、有意に亢進した。腫瘍細胞認識の上昇が、HLAクラスIまたは同時刺激性分子の腫瘍細胞発現が変化するためである可能性が考えられた。これに対処するため、SLR24細胞をアゴニスト性抗体で処置し、そしてHLAクラスIおよびCD40の表面レベルをフローサイトメトリーにより評価した。注目すべきことに、HLAクラスIおよびCD40の両方の染色強度は、EphA2のアゴニズムにより有意には変化しなかった(表4)。この作用の選択性に関するさらなる対照として、HLA-A2アロ反応性CTLによるSLR24腫瘍細胞の認識が、EphA2アゴニストでの処置前と処置後とで変化しないことが観察された(データは示さず)。
【0097】
【表4】
【0098】
上述の図28Aおよび28Bの記載において概説したように、SLR24 RCC細胞株を処置しないか、またはmAb208(10μg/ml)により処置した。次いで、処置細胞を、材料と方法において記載した様に、フローサイトメトリーによりHLAクラスI分子およびCD40分子の発現について解析した。示したデータは、示されたマーカーについての発現の平均蛍光強度である。
【0099】
EphA2アゴニスト処置により、Hu-SCID腫瘍モデルにおいて、養子移植された抗-EphA2 CD8+ T細胞の効率が亢進される
EphA2+ 腫瘍に対する抗-EphA2 CD8+ T細胞応答性の条件付きの(アゴニスト誘導性の)上昇が臨床的に潜在的に有意であるかどうかを調べるため、Hu-SCID腫瘍モデルシステムを確立した。SLR24腫瘍をC.B-17 scid/scidマウスに注射し、そして約30 mm2のサイズまで進行させ、その時点で動物を非処置のままにするかまたはB61-Igを腫瘍内に注射するか(腫瘍接種後18日)および/またはHLA-A2-拘束性抗-EphA2883-891CD8+ T細胞クローン(E883)を静脈内に送達するかにより処置した。図30Aにおいて;メスCB17-scid/scidマウスの右側皮下に、1×106個のヒトSLR24(HLA-A2+/EphA2+)RCC細胞を注射し、そして約30 mm2のサイズに成長させた(すなわちd18)。次いで、動物を、治療なし(対照)、EphA2分解とプロテアソーム処理を誘導するためd18にB61-Igの腫瘍内注射(50μg)、d19に5×106個のクローン化E883抗-EphA2883-891CD8+ T細胞の静脈内(尾静脈)注射、またはB61-Ig注射(d18)とCD8+ T細胞注射(d19)の両方を受ける4群のコホート(各5頭の動物)にランダムに分けた。動物を腫瘍サイズに関して3〜4日ごとに評価し、腫瘍接種後40日に腫瘍のない状態に注目した。矢印は、処理日を示す。図30Bにおいて、繰り返しの実験において、腫瘍を19日目に動物から切除し(すなわち、B61-Ig投与から24時間後)、そしてウェスタンブロットを行って、EphA2分解をin situで確認した。
【0100】
図30Aに示すように、B61-IgまたはE883 T細胞のいずれかを投与することにより、SLR24腫瘍の増殖遅延を促進するが、一方これらの治療により治癒した動物はいなかった。正反対に、B61-Ig送達を含む組み合わせ治療(in situでEphA2プロセッシングを促進した、図30B)および抗-EphA2 CD8+ T細胞の養子移植により、5匹の治療したマウスのうち5匹において、疾患が急速に解決した。B61-Ig処置のみの場合と比較して、対照のコホート群においては、B61-Ig処置とHLA-A2-提示インフルエンザマトリクス58-66エピトープに特異的なクローン化CD8+ T細胞の養子移植とを組み合わせることにより、有益性が向上しなかった(データは示さず)。
【0101】
本研究の主要な知見は、EphA2自己リン酸化およびプロテアソーム処理を促進するアゴニストにより腫瘍細胞を処置することによっても、in vitroおよびin vivoの両方において、EphA2-特異的CD8+ T-細胞による認識が向上する、ということである。結果として、EphA2-応答性CD8+ T細胞は、腫瘍病変の退縮をin situで媒介する際により有効にする。
【0102】
正常上皮において、EphA2は、細胞-細胞境界に局在し、そこでは構成的にそのリガンドに対して結合する。結果的に、非-形質転換細胞におけるEphA2は、チロシンリン酸化され、そして上皮細胞の増殖を制限する様に機能するシグナルを媒介する。特に、リン酸化EphA2分子は、SH2ドメインを含有するアダプタータンパク質(例えば、c-Cbl、SHC、SLAP、およびGRB2)と共にシグナル伝達複合体を形成し、そして選択された下流エフェクター(例えばFAK、SHP-2、PI 3-キナーゼ、LMW-PTP)の酵素活性を変化させる。次いで、これらのシグナルにより、EphA2+ 上皮細胞が周囲の細胞外マトリクス(ECM)と安定的な接触を確立する能力または維持する能力が減少する。
【0103】
c-Cblとの相互作用は、本発明の知見と特に関連している。c-Cblは、ユビキチン-E3リガーゼを含有し、そしてプロテアソームを介した分解に関してタンパク質を標的とする。プロテアソーム分解が、おそらくはEphA2を、引き続いて生じるエフェクターT細胞に対する抗原提示に関してHLA複合体中に負荷されるペプチドへと切断することにより、EphA2のT細胞認識を増加させることが、この結果から本明細書中で示される。
【0104】
腫瘍細胞は一般的に、不安定な細胞-細胞接触を有しており、それがEphA2がその膜に固定されたリガンドへ接近することを妨害する様である。このことは、腫瘍細胞中のEphA2が過剰発現されるが、リン酸化されないという実験的証拠と一致している。リガンド結合の減少と併せて、腫瘍細胞により発現されたEphA2分子は、特定の発ガン性ホスファターゼの基質として機能し、それがEphA2ホスホチロシン含量を減少させる追加的な手段を提供する。原因にかかわらず、ホスホチロシン含量の減少は、腫瘍細胞におけるEphA2がそれらの悪性特性を増大させることを引き起こす。部分的には、侵襲性の増大が、腫瘍細胞とECMとの相互作用の増大と関連している。これらの変化は、癌の臨床的試料においてしばしば観察される。そのような条件下では、EphA2リガンドアゴニストは、接触阻害を受けた増殖のパターンを正常な状態に回復させ、そしてEphA2+ 腫瘍細胞の侵襲性を減少させることができる。
【0105】
アゴニスト性試薬が条件的にそして特異的にEphA2分解を誘導する能力により、EphA2+ 癌を有する患者を治療するための新たな治療戦略を開発するための機会が提供される。特に、これらの結果から、受動的および能動的EphA2-特異的免疫療法を組み合わせることにより、内在性の抗-EphA2 T細胞-媒介性免疫の臨床的インパクトを向上させることができることが示唆される。以前の研究においては、ガン患者から単離されたT細胞サブセットを、HLA分子上のEphA2ペプチドを提示することにより、刺激することができることが示された(Tatsumi, T., Cancer Res. 2003およびAlves, P. M. et al., Cancer Res. 63: 8476-8480, 2003)。これらの研究は、臨床において確実に利用することができたDC-ベースのワクチン化アプローチを使用して、T細胞のex vivo刺激を使用して行った。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】図1は、ヒトEphA2のアミノ酸配列(SEQ ID NO: 2)(GenBankアクセッション番号AAH37166(同様にNM_004431))を提供する。
【図2】図2は、ヒトEphA2の核酸配列(SEQ ID NO: 1)(GenBankアクセッション番号BC037166(同様にNM_004431))を提供する。
【図3】図3は、ヒトMHCクラスIIアリルの限定的ではないリストを提供する。
【図4】図4は、ヒトMHCクラスIアリルの限定的ではないリストを提供する。
【図5】図5は、クラスIアリルHLA-A1(示したように、SEQ ID NO: 2の部分)に対するEphA2アミノ酸配列中のin silico予測されたMHCクラスI結合ペプチドを提供する。図5〜8において、“スコア”は、リストに記載された配列を含有する分子の半減期(T1/2)の推定に付いて言及する。
【図6】図6は、クラスIアリルHLA-A3(示したように、SEQ ID NO: 2の部分)に対するEphA2アミノ酸配列中のin silico予測されたMHCクラスI結合ペプチドを提供する。
【図7】図7は、クラスIアリルHLA-B7(示したように、SEQ ID NO: 2の部分)に対するEphA2アミノ酸配列中のin silico予測されたMHCクラスI結合ペプチドを提供する。
【図8】図8は、クラスIアリルHLA-B44(示したように、SEQ ID NO: 2の部分)に対するEphA2アミノ酸配列中のin silico予測されたMHCクラスI結合ペプチドを提供する。
【図9】図9は、クラスIIアリルHLA-DRβ1*0101(示したように、SEQ ID NO: 2の部分)に対するEphA2アミノ酸配列中のin silico予測されたMHCクラスII結合ペプチドを提供する。図9〜17において、“スコア”は、ペプチドを同定するために使用されるソフトウェアにより生成された理論的陽性対照に対して結合することについての比較について言及する。
【図10】図10は、クラスIIアリルHLA-DRβ1*0301(示したように、SEQ ID NO: 2の部分)に対するEphA2アミノ酸配列中のin silico予測されたMHCクラスII結合ペプチドを提供する。
【図11】図11は、クラスIIアリルHLA-DRβ1*0401(示したように、SEQ ID NO: 2の部分)に対するEphA2アミノ酸配列中のin silico予測されたMHCクラスII結合ペプチドを提供する。
【図12】図12は、クラスIIアリルHLA-DRβ1*0701(示したように、SEQ ID NO: 2の部分)に対するEphA2アミノ酸配列中のin silico予測されたMHCクラスII結合ペプチドを提供する。
【図13】図13は、クラスIIアリルHLA-DRβ1*0801(示したように、SEQ ID NO: 2の部分)に対するEphA2アミノ酸配列中のin silico予測されたMHCクラスII結合ペプチドを提供する。
【図14】図14は、クラスIIアリルHLA-DRβ1*1101(示したように、SEQ ID NO: 2の部分)に対するEphA2アミノ酸配列中のin silico予測されたMHCクラスII結合ペプチドを提供する。
【図15】図15は、クラスIIアリルHLA-DRβ1*1301(示したように、SEQ ID NO: 2の部分)に対するEphA2アミノ酸配列中のin silico予測されたMHCクラスII結合ペプチドを提供する。
【図16】図16は、クラスIIアリルHLA-DRβ1*1501(示したように、SEQ ID NO: 2の部分)に対するEphA2アミノ酸配列中のin silico予測されたMHCクラスII結合ペプチドを提供する。
【図17】図17は、クラスIIアリルHLA-DRβ5*0101(示したように、SEQ ID NO: 2の部分)に対するEphA2アミノ酸配列中のin silico予測されたMHCクラスII結合ペプチドを提供する。
【図18】図18は、示されたRCC細胞株から生成された溶解物の解析を示すウェスタンブロットである。
【図19】図19は、RCC細胞株におけるEphA2の発現を示す顕微鏡写真である。
【図20】図20は、EphA2-由来エピトープに対するRCC患者CD8+ T細胞応答と疾患状態の関係に付いてのIFN-γELISPOT(酵素-結合免疫スポット)解析を示すグラフを提供する。
【図21】図21は、EphA2-由来エピトープに対するRCC患者CD8+ T細胞応答と疾患状態の関係についてのIFN-γELISPOT解析を示すグラフを提供する。
【図22】図22は、EphA2 エピトープに対する4人のRCCを有するHLA-A2+患者における手術前と手術後とを比較した末梢血CD8+ T細胞応答における観察された変化をしメスグラフを提供する。
【図23】図23は、活性な疾患を有するHLA-DR4+RCC患者におけるEphA2 Thエピトープに対する機能的CD4+ T細胞応答の疾患状態のゆがみを示すグラフを提供する。
【図24】図24は、Th1-型の治療関連増強、およびTh2-型の減少、Stage I RCCを有するHLA-A2+/DR4+患者EphA2 Th エピトープに対するCD4+ T細胞応答を示すグラフを提供する。
【図25】図25は、Stage IV RCCを有するHLA-DR4+患者における、EphA2 Thエピトープに対する抑制的CD4+ T細胞応答を示すグラフを提供する。
【図26】図26は、EphA2アゴニストがEphA2のリン酸化を誘導することを示すウェスタンブロットである。
【図27】図27は、EphA2アゴニストが、EphA2の分解を誘導することを示す。
【図28】図28Aおよび28BはEphA2アゴニスト-誘導分解が、MG132により阻害されるが、クロロキニンによっては阻害されないことを示す。
【図29】図29は、EphA2アゴニストが、抗-EphA2 CD8+ T細胞クローンCL 142による認識に対してRCC細胞株SLR24を感作ことを示すグラフである。
【図30】図30Aおよび30Bは、insituでの腫瘍細胞EphA2の“アゴニスト性”誘導が、養子移植された抗-EphA2特異的CD8+ T細胞の治療高率を向上させることを示す。
【発明の詳細な説明】
【0001】
背景
Eph2A T細胞エピトープアゴニストを提供する。Eph2A T細胞エピトープアゴニストは、癌を診断するための方法において、患者においてEphA2-応答性T-細胞を定量するための方法において、そしてEphA2に対する免疫応答を誘導しそして癌性細胞を認識するために免疫システムを修飾する際に、有用である。
【0002】
免疫システムにより認識される腫瘍抗原の分子同定は、癌の治療のための新たな免疫療法戦略を開発するための道を開いた。多数の細胞傷害性Tリンパ球(CTL)-で定義された腫瘍関連エピトープが、癌ワクチンにおいて臨床的に応用されたが(Coulie PG, et al. Proc Natl Acad Sci USA 98: 10290-1295, 2001;Yu JS, et al. Cancer Res 61: 842-847, 2001;Jager E, et al. Proc Natl Acad Sci USA 97: 12198-12203, 2000;およびNestle FO, et al. Nat Med 4: 328-332, 1998)、同定され、そしてこれまでのところ臨床的に組織化されたCD4+ T細胞により認識されたクラスII-拘束性エピトープは、比較的わずかしかない(Topalian SL, et al. Proc Natl Acad Sci USA 91: 9461-9465, 1994 ;Chaux P, et al. J Exp Med 189: 767-777, 1999;Pieper R, et al. J Exp Med 189: 757-765, 1999;Wang RF, et al. Science 284: 1351-1354, 1999;Topalian SL, et al. J Exp Med 183: 1965-1971, 1996;Jager E, et al J Exp Med 191: 625-630, 2000;Zarour HM, et al. Cancer Res 60: 4946-4952, 2000;およびZarour HM, et al. Proc Natl Acad Sci USA 97: 400-405, 2000)。現在の理論的枠組みから、CD4+ T細胞(少なくともTh1-型)は、臨床的に有用な腫瘍免疫の最適な誘導および維持において重要な働きをしていることが示唆される(Pardoll DM, et al. Curr Opin Immunol 10: 588-594, 1998およびToes RE, et al. J Exp Med 189: 753-756, 1999)。このように、腫瘍細胞に特徴的な抗原または腫瘍細胞で過剰発現されている抗原に由来するCD4+ T細胞エピトープおよびCD8+ T細胞エピトープが、有効なワクチン構成要素を提供する可能性がある。
【0003】
Ephファミリーの分子は、ヒトゲノム中で、受容体チロシンキナーゼの最大のファミリーを構成する。Ephキナーゼには、2種類の主要なクラス(EphAとEphB)が含まれ、これらはそれぞれリガンドephrin-Aとephrin-Bに対して特異性を有することにより識別される(Eph Nomenclature Committee. Unified nomenclature for Eph family receptors and their ligands. The ephrins. Cell. 403-404, 1997)。神経発達におけるEph受容体の役割については大部分既知であるが、最近の報告では、Eph受容体が発ガンにおいて役割を果たしていることが示唆される。例えば、EphA2は、播種性疾患の発症を促進する様である多数の様々な癌において、過剰に発現されそして機能的に変化している。正常細胞において、EphA2は、細胞-細胞接触部位に局在して、そこで細胞増殖の負の制御因子として機能している可能性がある。対照的に、EphA2は、進行性癌においてしばしば過剰発現し、そしてしばしば機能的に無調節状態になっており、その場合、悪性形質の多数の様々な側面に寄与する。EphA2におけるこれらの変化は、メラノーマ、前立腺腫瘍、乳腺腫瘍および肺腫瘍を含む多様な固型癌において観察された。腫瘍の中でもっとも高い程度のEphA2発現は、転移病巣においてもっとも一般的に見いだされる。
【0004】
臨床的設定において、いくつかの知見から、T細胞-媒介性免疫が、腎臓細胞癌腫(RCC)の発生および進行に対する防御作用を提供し、そして確立病巣の回復を効率的に媒介する可能性があることが示唆される。RCC病巣には、典型的には、多数の白血球が浸潤している。しかしながら、有益な臨床的結果に対する白血球浸潤の有益性は、未だ明らかになっていない。このことは、これらの浸潤物中におけるCD4+ T細胞とCD8+ T細胞の機能的サブセットの多様性を反映している可能性があるが、RCC患者においてTh1/Tc1のバイアスがかかった免疫とTh2/Tc2のバイアスがかかった免疫との予後の有益性を指向するデータは、不確かなものであった。RCC患者におけるCD8+ T細胞応答とCD4+ T細胞応答の構造的特性および特異性をよりよく理解することにより、より効果的な治療オプションを設計し、実施しそしてモニターするために必要な知見を提供する可能性がある。
【0005】
発明の概要
新規EphA2 T細胞エピトープアゴニスト、および診断方法および予後決定方法、EphA2に対する免疫応答を誘導する方法および癌を治療する方法を含む、その使用を、本明細書中で提供する。アゴニストは、RCCの検出および病期の段階付けにおいて有用である。高レベルのEphA2発現が、腎臓細胞癌腫(RCCの病期を段階付ける方法)の設定において見いだされ、そしてRCCを有する患者は、新規EphA2-誘導性エピトープに対するCD8+ T細胞応答およびCD4+ T細胞応答を両方とも示すことが、示される。さらに、EphA2に対するT細胞の応答性は、疾患状態および結果を識別する際に有用であり、そして本明細書中で記載されたEphA2 T細胞エピトープアゴニストは、癌治療と同様に、EphA2に対する免疫応答を誘導する際に有用である。
【0006】
一態様において、EphA2 T細胞エピトープを含むEphA2 T細胞エピトープアゴニストが提供される。EphA2 T細胞エピトープアゴニストは、EphA2 T細胞エピトープを含むペプチドであってもよい。特定の態様において、ペプチドは、約9〜約35アミノ酸、約9〜約25アミノ酸、または約20未満のアミノ酸からなる。ペプチドは、天然ヒトEphA2(SEQ ID NO: 2)の部分または断片であってもよく、そして典型的にはSEQ ID NO: 2の少なくとも約9個の連続したアミノ酸、またはSEQ ID NO: 2の部分の保存的誘導体を含み、ここで、MHC分子に対する保存的誘導体の結合が、MHC分子に対するEphA2またはその断片の結合と比較して、実質的に同等かまたは向上している限りにおいて、1またはそれ以上のアミノ酸残基がSEQ ID NO: 2のペプチド中に挿入されるか、または1またはそれ以上のアミノ酸がSEQ ID NO: 2のペプチドから削除されるか、または1またはそれ以上の異なるアミノ酸残基で置換される。
【0007】
EphA2 T細胞エピトープアゴニストは、1またはそれ以上のN-末端修飾、C-末端修飾、内部修飾、または非-標準残基(例えば、ただし限定的なものではないが、可溶性基;疎水基;脂質基;親水基;タグ;蛍光タグ;ポリペプチドタグ;膜貫通シグナル配列またはその部分;アミノ酸エナンチオマー;およびアセチル、ベンジルオキシカルボニル、ビオチン、シンナモイル、Dabcyl、ダブシル(dabsyl)、ダンシル、ジニトロフェニル、シアニン、フルオレセイン、fmoc、ホルミル、リサミン(lissamine)ローダミン、ミリストイル、n-メチル、パルミトイル、steroyl、7-メトキシクマリン酢酸、ビオチン、Dabcyl、ダブシル(dabsyl)、ダンシル、ジスルフィド、アセトアミドメチル、アミノヘキサン酸、アミノイソ酪酸、βアラニン、シクロヘキシルアラニン、d-シクロヘキシルアラニン、e-アセチルリジン、γアミノ酪酸、ヒドロキシプロリン、ニトロ-アルギニン、ニトロ-フェニルアラニン、ニトロ-チロシン、ノルロイシン、ノルバリン、オクタヒドロインドールカルボン酸、オルニチン、ペニシラミン、フェニルグリシン、ホスホセリン、ホスホトレオニン、ホスホチロシン、L-マロニルチロシン、ピログルタメート、テトラヒドロイソキノリン、アミド、N-置換グリシン;非-アミノアシル、およびN-アセチルグリシン基の一つ)を含む修飾ペプチドであってもよい。特定の態様において、EphA2 T細胞エピトープアゴニストは、EphA2 T細胞エピトープを含むペプチドまたはペプチド模倣体である。
【0008】
特定の態様において、EphA2 T細胞エピトープアゴニストは、1またはそれ以上の以下のEphA2エピトープ配列に含有されるT細胞エピトープを含む:TLADFDPRV(SEQ ID NO: 2、残基883-891);VLLLVLAGV(SEQ ID NO: 2、残基546-554);VLAGVGFFI(SEQ ID NO: 2、残基550-558);IMNDMPIYM(SEQ ID NO: 2、残基58-66);SLLGLKDQV(SEQ ID NO: 2、残基961-969);WLVPIGQCL(SEQ ID NO: 2、残基253-261);LLWGCALAA(SEQ ID NO: 2、残基12-20);GLTRTSVTV(SEQ ID NO: 2、残基391-399);NLYYAESDL(SEQ ID NO: 2、残基120-128);KLNVEERSV(SEQ ID NO: 2、残基162-170);IMGQFSHHN(SEQ ID NO: 2、残基666-674);YSVCNVMSG(SEQ ID NO: 2、残基67-75);MQNIMNDMP(SEQ ID NO: 2、残基55-63);および図5〜17の1またはそれ以上に示した配列。
【0009】
非限定的な事例として、EphA2 T細胞エピトープアゴニストは、1またはそれ以上の以下のアミノ酸配列:TLADFDPRV(SEQ ID NO: 2、残基883-891);VLLLVLAGV(SEQ ID NO: 2、残基546-554);VLAGVGFFI(SEQ ID NO: 2、残基550-558);IMNDMPIYM(SEQ ID NO: 2、残基58-66);SLLGLKDQV(SEQ ID NO: 2、残基961-969);WLVPIGQCL(SEQ ID NO: 2、残基253-261);LLWGCALAA(SEQ ID NO: 2、残基12-20);GLTRTSVTV(SEQ ID NO: 2、残基391-399);NLYYAESDL(SEQ ID NO: 2、残基120-128);KLNVEERSV(SEQ ID NO: 2、残基162-170);IMGQFSHHN(SEQ ID NO: 2、残基666-674);YSVCNVMSG(SEQ ID NO: 2、残基67-75);MQNIMNDMP(SEQ ID NO: 2、残基55-63);および図5〜17の1またはそれ以上に示した配列、またはそれらの保存的誘導体、を含むペプチドまたはその修飾版を含んでもよい。一態様において、EphA2 T細胞エピトープアゴニストは、スペーサーにより分離された2またはそれ以上のEphA2 T細胞エピトープを含む。
【0010】
上述の1またはそれ以上のEphA2 T細胞エピトープアゴニストおよび医薬的に許容可能な担体を含む組成物が提供される。別の態様において、患者におけるEphA2-応答性T細胞の数および/または状態をモニターする方法が提供され、この方法は、上述した1またはそれ以上のEphA2 T細胞エピトープを含有するEphA2 T細胞エピトープアゴニストを含有する化合物または組成物に対する患者の免疫応答性を決定する方法を含む。一態様において、この方法は、ELISPOTアッセイを使用して、1またはそれ以上のEphA2 T細胞エピトープを含有する化合物または組成物に対する患者の免疫応答性を決定することを含む。ELISPOTアッセイは、MHCクラスIタンパク質-提示EphA2エピトープまたはその保存的誘導体に対するCD8+応答性を検出することができる。MHCクラスIタンパク質は、HLA-A2タンパク質であってもよい。ELISPOTアッセイはまた、MHCクラスIIタンパク質-提示EphA2エピトープまたはその保存的誘導体に対するCD4+応答を検出することもできる。MHCクラスIIタンパク質は、HLA-DR4タンパク質であってもよい。
【0011】
さらなる態様において、EphA2を過剰発現する癌患者における癌の増殖を阻害する方法であって、前記患者に対して、患者においてEphA2に対する免疫応答を誘導するために有効な量の上述したEphA2 T細胞エピトープアゴニストを投与することを含む、前記方法が提供される。一態様において、この方法は、患者の抗原提示細胞をEphA2 T細胞エピトープアゴニストと接触させることを含む。別の態様において、この方法は:患者から抗原提示細胞を含む細胞を単離すること;この抗原提示細胞をEphA2 T細胞エピトープアゴニストと接触させること;そしてEphA2 T細胞エピトープアゴニストと接触させた抗原提示細胞を患者体内に再導入すること;を含むex vivo方法である。この方法は、患者に対してEphA2に対して結合することができる結合性試薬など(これに限定されない)のEphA2リガンドまたはそのアゴニスト;そしてephrinA1またはそのアゴニスト;を投与することを、さらに含んでいてもよい。
【0012】
5'から3'方向で機能可能に連結したプロモータ、1またはそれ以上のEphA2 T細胞エピトープおよびポリアデニル化シグナルを含むペプチドをコードする全長EphA2コーディング配列以外のコーディング配列、を含む、単離核酸もまた提供される。核酸は、EphA2 T細胞アゴニストをin vivoで生成するため、組換え方法によりおよび/またはex vivoかin vivoかのいずれかで、核酸を患者細胞中に輸送することにより、EphA2 T細胞アゴニストを調製する際に有用である。
【0013】
別の態様において、細胞表面にEphA2を発現する腫瘍細胞を、EphA2に対して結合することができる結合性試薬;およびephrinA1またはそのアゴニスト;の一つを含む、EphA2リガンドまたはそのアゴニストと接触させることを含む方法を提供する。
【0014】
詳細な説明
EphA2 T細胞エピトープアゴニストが本明細書中で提供される。アゴニストは、EphA2の1またはそれ以上のT細胞エピトープを含有する化合物であり、そして典型的にはEphA2アミノ酸配列(図1、SEQ ID NO: 2)の部分に対応するペプチドである。アゴニストを作製する方法およびアゴニストを生成するための組換えシステムもまた、提供される。EphA2 T細胞エピトープアゴニストは、患者におけるEphA2-応答性T細胞数を定量することにより、患者の免疫状態、あるいはEphA2に対する免疫応答性を決定する方法において有用である。アゴニストはまた、癌治療として、EphA2に対する患者の免疫応答性を修飾する際に有用でもある。
【0015】
本明細書中で使用する場合、用語“アゴニスト”は、細胞上の受容体と組合わさり(結合し)そして天然リガンド、本明細書の開示の文脈においては図1に示される天然のEphA2、の活性を模倣する応答または活性を誘導することができるリガンドのことである。EphA2 T細胞エピトープアゴニストの場合、それらのアゴニストは、天然のEphA2のT細胞エピトープ活性を模倣する。用語“エピトープ”は、抗原決定基を含有しおよび/または定義する物理的構造のことをいう。“ペプチドアゴニスト”は、天然に存在するリガンド、すなわち本明細書の開示の文脈においてはEphA2 T細胞エピトープ、を模倣する、ペプチド、ペプチド誘導体、またはペプチド類似体である。EphA2 T細胞エピトープペプチドアゴニストは、従って、EphA2 T細胞エピトープを含有するペプチド、ペプチド誘導体、またはペプチド類似体である。EphA2 T細胞エピトープペプチドアゴニストは、EphA2タンパク質の断片または部分であってもよいが、EphA2タンパク質の断片または部分の保存的誘導体(以下に定義する)であってもよい。EphA2 T細胞エピトープアゴニストは、“結合性試薬”であってもよく、典型的には抗体である。
【0016】
用語“結合性試薬”および同様の用語は、免疫-認識の場合にはエピトープを含有する別の化合物または分子に対して特異的にまたは実質的に特異的に(限定的な交叉反応性を有するものである)結合することができるいずれかの化合物、組成物または分子のことをいう。典型的には、結合性試薬は抗体であり、好ましくはモノクローナル抗体、またはその誘導体または類似体であり、以下のもの:Fv断片;一本鎖Fv(scFv)断片;Fab'断片;F(ab')2断片;ヒト化抗体および抗体断片;ラクダ化抗体および抗体断片;および上記のものの多価版、を含むが、これらには限定されない。以下のもの:例えば、典型的には共有結合しているかまたはそうでなければ安定化された(すなわち、ロイシンジッパーまたはヘリックス安定化)scFv断片などの、ジスルフィド安定化Fv断片、scFvタンデム((scFv)2断片);二重特異性抗体(diabody);三重特異性抗体(tribody);四重特異性抗体(tetrabody)などの、単一特異性抗体または二特異性抗体(これらには限定されない)を含む、多価結合性試薬を所望により使用することもできる。“結合性試薬”はまた、当該技術分野において記載されたアプタマーもまた含む。
【0017】
抗体およびその誘導体および類似体およびアプタマーを含む抗原特異的結合性試薬を作製する方法は、当該技術分野において周知である。ポリクローナル抗体を、動物を免疫することにより作製することができる。モノクローナル抗体を、標準的な(ハイブリドーマ)法に従って調製することができる。モノクローナル抗体をコードするDNAからDNA断片を単離し、そして標準的な方法に従って適切なV領域を適切な発現ベクター中にサブクローニングすることにより、ヒト化抗体を含む抗体誘導体および類似体を組換え的に調製することができる。ファージディスプレイおよびアプタマー技術が文献中に記載され、そして非常に低い親和性交叉反応性を有する抗原特異的結合性試薬のin vitroクローン性増幅を可能にする。ファージディスプレイ試薬およびシステムが商業的に利用可能であり、そしてAmershamPharmacia Biotech, Inc.(Piscataway, New Jersey)から商業的に入手可能なRecombinant Phage Antibody System(RPAS)およびMoBiTec, LLC(Marco Island, Florida)から商業的に入手可能なpSKAN Phagemid Display Systemが含まれる。アプタマー技術は、例えば、U.S.特許5,270,163、5,475096、5,840867および6,544,776中に記載されているが、これらには限定されない。
【0018】
“遺伝子”は、もっとも幅広い意味において、機能的な遺伝的決定要素である。遺伝子には、タンパク質をコードし、または機能的なRNA生成物に転写される“発現配列”、例えば、オープンリーディングフレーム(ORF)、が含まれる。典型的な遺伝子には、プロモータ、エンハンサ、転写因子結合配列、オペレータ、およびターミネータ(例えば、poly(A)配列)を含む(これらには限定されない)を含む機能可能に連結した制御配列と共にある発現配列が含まれる。プロモータは、例えば、構成的または半構成的プロモータ(例えば、CMVプロモータおよびRSVプロモータ)、組織特異的プロモータ(例えば、筋肉クレアチニンキナーゼ(MCK)プロモータ)または誘導可能プロモータ(例えば、BD Biosciences Clontech(Palo Alto, California)から商業的に入手可能なBD Tet-OnTMおよびBD Tet-OffTM遺伝子発現システムなどのテトラサイクリン-制御可能システム(これらに限定されない))であってもよい(これらに限定されない)。2種類の配列が、cisに配列されて、予想された様式で互いに関連して作用する場合、2種類の配列は“機能可能に連結した”状態であると考えられる。遺伝子において、制御配列は、細胞内での発現配列の正しい転写および/または所望の転写を誘導するために十分な様式で、機能可能に連結する。用語 “発現”または“遺伝子発現”、および同様の用語および言い回しは、核酸、典型的には遺伝子、においてコードされる情報が、リボ核酸および/またはタンパク質、またはそれらの転写後修飾版、および/または観察可能な表現型に変換される、全体のプロセスのことを意味する。
【0019】
本明細書中で使用される場合、“核酸”は、いずれのポリヌクレオチドまたはポリデオキシヌクレオチドであってもよい(これらには限定されない)。限定することなく、核酸は一本鎖であっても二本鎖であってもよい。本明細書中に開示されるヒトEphA2ペプチドおよびヌクレオチド配列(それぞれ、図1、SEQ ID NO: 2および図2、SEQ ID NO: 1)の文脈において、保存的誘導体について言及する。“保存的誘導体”は、核酸の場合、コドン縮重をもたらすヌクレオチド塩基の置換、例えば、Alaコドンについて言及する場合、GCCまたはGCGがGCAに置換されること(これに限定されない)、核酸およびペプチドの両方の場合、保存的置換グループ:SerとThr;Leu、IleとVal;GluとAsp;およびGlnとAsnを含む(これらには限定されない)、保存的アミノ酸置換を示すもの、を含む、保存的置換を含有する核酸またはペプチドである。保存的置換を、その他の方法、例えばBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)アルゴリズムにより使用されるもの、例えばBLOSUM置換スコアマトリクス、例えばBLOSUM 62マトリクス(これらに限定されない)、により決定することもできる。重要なことには、保存的誘導体は、保存的誘導体が対応する天然の核酸またはペプチドの機能を実質的に保持する。EphA2 T細胞エピトープアゴニストの文脈において、すべての“誘導体”と同様に、保存的誘導体は、本明細書中で記載するアッセイにおいて、EphA2に対して適切な免疫応答を誘導する能力を、実質的に保持する。
【0020】
2種の核酸またはタンパク質配列のあいだでの類似性は、様々な方法により決定することができる。例えば、類似性を、アルゴリズム、例えば、本明細書中で標準的に使用されるものである、BLASTアルゴリズム、により、in silicoで決定することができる。2種の核酸配列のあいだでの類似性は、特異的ハイブリダイゼーションにより決定することができる。このことは、核酸が、ゲノム中で参照核酸(すなわち、本明細書中で提示されるEphA2配列またはその部分)に対して特異的にハイブリダイゼーションすることを意味している。特異性を達成するためのハイブリダイゼーション条件は、それぞれの核酸の配列オーバーラップの長さ、その(溶融温度)Tm、特異的ゲノム、およびアッセイ条件を含む因子(これらに限定されない)に依存して、通常は変化する。
【0021】
“誘導体”には、EphAヌクレオチドまたはアミノ酸配列の部分およびそれらの保存的誘導体に対応する、化学的に修飾された核酸またはペプチドが含まれる。核酸またはペプチド、またはそれらの保存的誘導体は、例えば:例えば、PEG基を追加することにより、核酸またはペプチドの溶解性を修飾する化学的基;例えば、ビオチンまたはポリ(his)タグを追加することにより、ペプチドまたは核酸の親和性精製を可能にする化学的基;または例えば、核酸、ペプチドまたはそれらの誘導体のin vitroまたはin vivo検出および位置特定のための、フルオレセインイソチオシアネート、Cy3またはCy5などの蛍光色素との抱合または放射性核種-含有基またはケージ基(caging基)との抱合により、化合物を検出することができる化学的基;を含有する様に誘導することができる。修飾核酸およびペプチド、およびこれらの使用のこれらの事例は、当該技術分野において既知である核酸およびペプチドの多数の有用な修飾の限定的ではない事例である。このような修飾のより完全なしかし完全ではないリストには、1またはそれ以上の以下のもの:N-末端修飾、C-末端修飾、内部修飾、または非標準的残基(例えば、以下の基および/または残基:可溶性基(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)基(これには限定されない))、疎水基、脂質基、親水基、タグ(例えば:蛍光タグ(例えば、フルオレセイン(例えばFITC)またはシアニン色素(例えば、Cy3またはCy5)(これには限定されない))またはポリペプチドタグ(例えば、親和性精製のためのポリ-ヒスチジン))、膜貫通シグナル配列またはその部分、アミノ酸エナンチオマー、アセチル、ベンジルオキシカルボニル、ビオチン、シンナモイル、Dabcyl、ダブシル(dabsyl)、ダンシル、ジニトロフェニル、シアニン、フルオレセイン、fmoc、ホルミル、リサミン(lissamine)、ローダミン、ミリストイル、n-メチル、パルミトイル、steroyl、7-メトキシクマリン酢酸、ビオチン、Dabcyl、ダブシル(dabsyl)、ダンシル、ジスルフィド、アセトアミドメチル、アミノヘキサン酸、アミノイソ酪酸、βアラニン、シクロヘキシルアラニン、d-シクロヘキシルアラニン、e-アセチルリジン、γアミノ酪酸、ヒドロキシプロリン、ニトロ-アルギニン、ニトロ-フェニルアラニン、ニトロ-チロシン、ノルロイシン、ノルバリン、オクタヒドロインドールカルボン酸、オルニチン、ペニシラミン、フェニルグリシン、ホスホセリン、ホスホトレオニン、ホスホチロシン、L-マロニルチロシン、ピログルタメート、テトラヒドロイソキノリン、アミド、N-置換グリシンおよび/または非-アミノアシル基(ペプトイド)、N-アセチルグリシンである(これらには限定されない))が含まれる。
【0022】
“誘導体”には、1またはそれ以上の修飾塩基および/または修飾ペプチドバックボーン(以下の構造:...-NH-CR-CO-NH-CR-CO-NH-CR-CO-...を有する典型的なまたは正常のペプチドバックボーン)を含有するペプチドである、ペプチド類似体もまた含まれる。ペプチド類似体は、天然の親ペプチドの(1または複数の)生物学的作用を模倣するかもしくはアンタゴナイズすることができる1またはそれ以上の非-ペプチド性構造要素を含有する化合物である“ペプチド模倣体”を含む。ペプチド模倣体は、酵素的に切れやすいペプチド結合などの、古典的なペプチド特性を有さない。一般的なペプチド模倣体は、1またはそれ以上のN-置換アミノ酸残基、例えばN-置換グリシンを含むポリマーである“ペプトイド”である。ペプトイド、ペプトイド合成法、ペプトイドについての使用、およびペプトイドを使用する方法に関する限定的ではない例は、以下の文献において提示され(Simon, R. et al. (1992), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 9367-9371;Murphy, J. E. et al., (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95: 1517-1522、および米国特許5,811,387、5,877,278、5,965,695、および6,075,121)、これらの文献は、ペプトイド構造、ペプトイド合成法、ペプトイドの使用、およびペプトイドを使用する方法を教示するものとして、参考文献として本明細書中に援用する。
【0023】
実施例において、EphA2の特定のT細胞エピトープが記載され、そしてEphA2-特異的免疫応答を誘導する能力について解析される。それらのエピトープは、MHCクラスIIアリルHLA-DRβ1*0401(DR4)またはクラスIアリルHLA-A0201(HLA-A2)の文脈において、in silicoで同定された。HLA-DRβ1*0401およびHLA-A0201は、多数のうちの2種類のアリルである。その他のクラスII HLA-DRアリルの限定的ではない例は、図3において示され、それらにはHLA-DR1アリル、HLA-DR3アリル、HLA-DR4アリル、HLA-DR7アリル、HLA-DR8アリル、HLA-DR9アリル、HLA-DR11アリル、HLA-DR12アリル、HLA-DR13アリル、HLA-DR14アリルおよびHLA-DR15アリルが含まれる(www.anthonynolan.org.uk/HIG/lists/class2list.html)。より一般的なクラスIIアリルには:HLA-DR2アリル、HLA-DR3アリル、HLA-DR4アリルおよびHLA-DR5アリルが含まれるが、これらには限定されない。Southwoodら(1998)、Honeymanら(1998)およびDe Grootら(Vaccine(2001)19: 4385-4395)は、様々なHLA-DRβ1アリルに関連して、アルゴリズム、コンセンサス配列およびMHC-結合配列を同定するためのその他の方法を記載する。それらの文献に記載されたアルゴリズムまたはコンセンサスMHC-II結合配列を検索するその他のアルゴリズム(例えば、本明細書中では、ProPredソフトウェア/アルゴリズム)を適用することにより、HLA-DRβ1*0401またはHLA-A0201以外のアリルに対して特異的なその他のEphA2 MHC-II-含有断片を、同定することができる。一旦コンセンサスMHC II結合配列が同定されると、プロテアソーム切断生成物を同定するために使用するための以下に記載するアルゴリズムまたは類似のアルゴリズムを使用して、同一のMHCハプロタイプを有する患者由来のEphA2-応答性PBLにおける免疫賦活活性について、本明細書中で記載するELISPOTアッセイおよびELISAアッセイ、または類似のアッセイでスクリーニングすることを試験する候補物を選択することができる。
【0024】
上述したクラスIIアリルと同様に、HLA-A0201以外の多数のMHCクラスIアリルもまた同定され、そしてそれらのアリルに対して特異的なEphA2 T細胞エピトープを同様の方法で決定することができる。MHCクラスI HLA-AアリルまたはHLA-Bアリルの限定的ではない例を、図4に提示する(www.anthonynolan.org.uk/HIG/lists/class1list.html)。より一般的なアリルには、HLA-A1、HLA-A2、HLA-A3、HLA-B7およびHLA-B44が含まれるが、これらには限定されない。
【0025】
上述したように、コンセンサス結合配列が、図3および図4に提示された多数のMHCクラスIアリルおよびIIアリルについて決定された。図5〜8は、それぞれクラスIアリルHLA-A1、HLA-A3、HLA-B7およびHLA-B44に対するEphA2アミノ酸配列内における、in silicoで予想されたMHCクラスI結合ペプチドを提示する。図9〜17は、それぞれクラスIIアリルHLA-DRβ1*0101、HLA-DRβ1*0301、HLA-DRβ1*0401、HLA-DRβ1*0701、HLA-DRβ1*0801、HLA-DRβ1*1101、HLA-DRβ1*1301、HLA-DRβ1*1501およびHLA-DRβ5*0101に対するEphA2アミノ酸配列内における、in silicoで予想されたMHCクラスII結合ペプチドを提示する。
【0026】
MHC-コンセンサス結合領域を同定する際に有用な利用可能なソフトウェアは、多数のMHCクラスIアリルおよびクラスIIアリルについてのコンセンサス配列を含有するが(NIH BIMAS“HLA Peptide Binding Predictions”ソフトウェア(例えば、http://bimas.dcrt.nih.gov/molbio/hla_bind/)中を検索するために利用可能な、HLA-A1アリル、HLA-A24アリルおよびHLA-B7アリルを含む39種類のクラスIアリル、および49種類のHLA-DRβ1アリルおよび2種類のHLA-DRβ5アリルを含む51種類のクラスIIアリルを含むが、これらには限定されない、Singh et al.,ProPred: prediction of HLA-DR binding sites Bioinformatics (2001) Dec; 17 (12): 1236-7;両方とも、図5〜17の1またはそれ以上において特定される推定EphA2クラスIおよびクラスIIT細胞エピトープを同定するために有用であった)、コンセンサス結合配列を同定する方法は、文献に十分記載されている。例えば、Luckey et al., 2001は、クラスI結合配列を同定する方法を記載する-簡単に述べると、細胞を酸で処理してクラスI分子を溶出し、様々なアリルをアフィニティ精製し、結合ペプチドをアフィニティ-精製HLA分子から溶出し、そして溶出したペプチドを配列決定することによる。各アリルについてコンセンサス結合配列を同定する方法、および多数のアリルが同一のまたは非常に類似するペプチド配列レパートリー(HLAスーパータイプ)に結合することができるという認識は、Southwoodらの文献(Southwood et al., 1998)中で検討されている。それにもかかわらず、全体の目標は、特異的EphA2 T細胞エピトープを同定することであり、それは、十分に確立した方法に従って、いずれかのMHCアリルについては、APC(抗原提示細胞)などの細胞から精製したいずれかのMHC分子から処理されたEphA2ペプチド断片を溶出し、そして溶出したペプチドを配列決定することにより、実現することができる。これにより、in silico工程を完全に回避する。
【0027】
本明細書中で記載するEphA2 T細胞エピトープアゴニストをELISPOTまたは類似するアッセイにおいて使用して、患者のEphA2に対する免疫応答性について患者をスクリーニングすることができ、そしてそれを使用してEphA2に対する患者の免疫応答を刺激することができる。この方法において、免疫原性組成物または免疫原性カクテルを、所定の患者について、その患者のHLA-DRハプロタイプに依存して調製することができる。本明細書中でも言及しているように、準優位EphA2 T細胞エピトープに対する免疫応答を患者において誘導することができ、それが1またはそれ以上の優位エピトープに対する患者の耐性を上回る場合がある。
【0028】
EphA2 T細胞エピトープアゴニスト化合物は、EphA2に対する患者の現存する免疫性を確認するためのアッセイにおいて有用である。本明細書中で記載したように、患者のPBL集団を、本明細書中で記載したように、1またはそれ以上のEphA2 T細胞エピトープを含有する化合物により刺激することができる。1またはそれ以上のEphA2 T細胞エピトープを、患者のMHCハプロタイプに適合する様に選択する。このように、患者がHLA-DRβ1*0701アリルを有する場合、1またはそれ以上のEphA2 HLA-DRβ1*0701-結合性ペプチドを含有する化合物を選択する。一旦十分な期間(典型的には6時間〜48時間)化合物を用いて刺激したのち、PBL集団を抗原による刺激について試験する。様々な方法により、例えば、IFN-γまたはIL-5産生を決定するためにはELISPOTにより、あるいは抗原特異的抑制の指標であるといわれているTGF-βまたはIL-10産生を決定するためにはELISAにより、この試験を行うことができる。
【0029】
多数のアッセイを使用して、抗原特異的免疫応答を検出する(Keilholz, U. et al.,“ImmunologicMonitoring of Cancer Vaccine Therapy: Results of a Workshop Sponsored by the Society for Biological Therapy,”J. Immunother., (2002) 25 (2): 97-138を参照)。本明細書中で記載されるELISPOTアッセイは、極めて感度が高くそして正確である。代替として期待されているその他のアッセイには:1)サイトカイン産生を細胞集団中で細胞内にあるままに検出し、そしてわずか約6時間の刺激期間のみを必要とする、サイトカインフローサイトメトリー(CFC);2)単離MHC-ペプチド四量体を使用してPBLにおける抗原特異的応答を刺激し、そして結合細胞をフローサイトメトリーにより計数することができる、MHC-ペプチド四量体解析;そして3)サイトカインなどの1またはそれ以上の遺伝子標的の発現をモニターすることができ、それによりわずかな細胞サンプルから発現レベルを迅速に定量することができる、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(QRT-PCR)アッセイ;が含まれるが、これらには限定されない。これらの各アッセイは、Keilholz et al., 2002中や文献中にさらに詳細に記載されている。患者のPBLが適切な抗原特異的応答を産生することができるかどうかを決定するため、記載されたアッセイのいずれも、単独で使用することができ、またはその他の方法と組み合わせて使用することができる。注目すべきことに、本明細書中で記載したEphA2 T細胞エピトープを含有する化合物は、上述したELISPOTアッセイ、CFCアッセイおよび四量体アッセイにおいて有用であるが、確立した方法に従って適切なPCRプライマーおよびプローブセットを設計することが必要なQRT-PCRアッセイにおいては有用ではない。
【0030】
画像解析-支援サイトカインELISPOTアッセイは、抗原特異的CD4+細胞またはCD8+ T細胞の直接的ex vivoモニタリングのための、感度が高い方法である。この方法では、新たに単離した細胞材料において、抗原特異的T細胞の頻度およびサイトカイン特性の両方を測定する。このアッセイは、T細胞免疫性の様々なパラメータ、例えばクローンサイズ(程度)およびT細胞プールのTh1/Th2エフェクタークラスなど、を決定する。ELISPOTは、優れた方法であり、それを通じて、個体の薬理学的に操作されていない細胞の実際の分泌性プロセスを研究することができる。この技術は、非破壊性のものであり、白血球をさらなる解析のために保存することができる。ELISPOT技術の下では、サイトカイン放出を単一細胞レベルで検出することができ、これによりサイトカイン-産生性細胞頻度を決定することが可能になる。ELISPOTアッセイでは、抗体、典型的には抗サイトカイン抗体、でコートしたプレートを使用する。以下の実施例において、IL-5(Th2サイトカインプロフィール)およびIFN-γ(Th1サイトカインプロフィール)を用いて、プレートをコートする。ELISPOTアッセイには、PBLなどのサイトカイン産生性細胞を、抗体でコートしたプレート中で抗原存在下にてインキュベーションする工程が含まれる。この細胞を洗い流し、抗体のみを残す。このうちあるものは、そのサイトカインリガンドに結合しているだろう。タグを付加したかまたは標識を付けた抗-サイトカイン抗体を、事前に結合させたサイトカインに対して結合させ、そして標準的な方法により、例えば、標準的なビオチン-アビジン-HRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)法により検出する、標準的な“サンドイッチアッセイ”を、次に行う。従って、結合したサイトカインは、複合体の部位でスポットとしてプレート上で示される。次に、発色したスポットを計数し、そしてそれらのサイズを、視覚的にまたはより一般的にはコンピュータ解析により解析してデータを提示し、続いてそれを使用してサイトカイン分泌頻度を計算する。
【0031】
ELISPOTアッセイおよびELISAの両方とも、サンドイッチアッセイの事例である。用語“サンドイッチアッセイ”は、抗原を2種類の結合性試薬(典型的には抗体である)、すなわち表面に結合させた第一の結合性試薬/抗体、および検出可能な基を含む第二の結合性試薬/抗体、のあいだでサンドイッチする、免疫アッセイのことをいう。検出可能な基の例としては、例えば、蛍光色素、酵素、第二の結合性試薬を結合するためのエピトープ(例えば、蛍光標識抗-マウス抗体により検出される第二の結合性試薬/抗体がマウス抗体である場合)、例えば、抗原またはビオチンなどの結合対の構成分子、が含まれるが、これらには限定されない。表面は、本明細書中で記載する様なELISPOTアッセイまたは典型的なグリッド型アッセイの場合などは平面的な表面であってもよく、またはビーズのそれぞれの“種”が例えば、蛍光色素(U. S.特許6,599,331、6,592,822、および6,268,222に記載されるようなLuminex技術など)または量子ドット(例えば、U.S.特許6,306.610に記載されるもの)により標識されているコート化ビーズアレイ技術の様に、非-平面的表面であってもよい。
【0032】
本明細書中で記載されるアゴニストは、1またはそれ以上のEphA2 T細胞エピトープを含有する化合物である。例えば、HLA-A2およびHLA-DR4に対するそれらの結合により規定されるT細胞エピトープに関して、アゴニストは:
1)以下のアミノ酸配列の一つを有するペプチド:TLADFDPRV(SEQ ID NO: 2、残基883-891);VLLLVLAGV(SEQ ID NO: 2、残基546-554);VLAGVGFFI(SEQ ID NO: 2、残基550-558);IMNDMPIYM(SEQ ID NO: 2、残基58-66);SLLGLKDQV(SEQ ID NO: 2、残基961-969);WLVPIGQCL(SEQ ID NO: 2、残基253-261);LLWGCALAA(SEQ ID NO: 2、残基12-20);GLTRTSVTV(SEQ ID NO: 2、残基391-399);NLYYAESDL(SEQ IDNO: 2、残基120-128);KLNVEERSV(SEQ ID NO: 2、残基162-170);IMGQFSHHN(SEQ ID NO: 2、残基666-674);YSVCNVMSG(SEQ ID NO: 2、残基67-75);MQNIMNDMP(SEQ ID NO: 2、残基55-63);または図5〜17の1またはそれ以上に列挙された配列、またはそれらの配列を含有するより長いペプチド;
2)1またはそれ以上のアミノ酸が、欠失するかまたは1またはそれ以上の異なるアミノ酸により置換されている、それらのペプチド配列の誘導体または保存的誘導体を含有するペプチドであって、ここで誘導体または保存的誘導体は、上述したペプチド配列により規定されるT細胞エピトープを含有するものを含有するペプチド;
3)2またはそれ以上のそれらのペプチド配列またはその誘導体であって、それらのペプチド配列により規定されるT細胞エピトープを含有するEphA2の断片を含むペプチド、またはそれらのペプチド配列により規定される1またはそれ以上のT細胞エピトープを含有するペプチド類似体またはその他の化合物;
であってもよい。
【0033】
一態様において、アゴニストは、以下のT細胞エピトープを含有する2またはそれ以上のアミノ酸配列を含有する単一のペプチドである:TLADFDPRV(SEQ ID NO: 2、残基883-891);VLLLVLAGV(SEQ ID NO: 2、残基546-554);VLAGVGFFI(SEQ ID NO: 2、残基550-558);IMNDMPIYM(SEQ ID NO: 2、残基58-66);SLLGLKDQV(SEQ ID NO: 2、残基961-969);WLVPIGQCL(SEQ ID NO: 2、残基253-261);LLWGCALAA(SEQ ID NO: 2、残基12-20);GLTRTSVTV(SEQ ID NO: 2、残基391-399);NLYYAESDL(SEQ ID NO: 2、残基120-128);KLNVEERSV(SEQ ID NO: 2、残基162-170);IMGQFSHHN(SEQ ID NO: 2、残基666-674);YSVCNVMSG(SEQ ID NO: 2、残基67-75);MQNIMNDMP(SEQ ID NO: 2、残基55-63);または図5〜17の1またはそれ以上にて列挙された配列。各配列は、ペプチドスペーサーにより他のものとは分離され、スペーサーはどのような長さのものであってもよいが、典型的には0〜10アミノ酸の長さの範囲である。Veldersらの文献(Velders et al. J. Immunol.(2001)166: 5366-5373)においては、AAY三量体スペーサーが、ヒトパピローマウィルス(HPV16)多価エピトープのストリングワクチンの効率を非常に向上させた。プロテアーゼ切断部位をエピトープ配列間に局在させてペプチドの適切なプロセッシングを確実に行わせることを確実に行わせる様に、ペプチドを操作することができる。この“一連のビーズ”構造には、どのような数のエピトープおよびどのような組み合わせのエピトープを含有させてもよい。De Grootらの文献(De Groot et al. 2001)、Veldersらの文献(Velders et al.2001)、およびLing-Lingらの文献(Ling-Ling et al. J. Virol.(1997)71: 2292-2302)は、この構造を有するペプチド、そのような構築物を作製しそして最適化する方法、候補エピトープを同定する方法、およびそのようなワクチンを作製する際に有用な組換えシステムを記載する。“一連のビーズ”アプローチを使用する利点は、準優位のエピトープまたは複数コピーの同一のエピトープを単一のペプチド中に含ませることができ、それにより天然の(すなわち、EphA2)ペプチドに対する応答においては通常は免疫性が誘導されない1または複数のエピトープに対して免疫応答を誘導することができる。そのような陰性のエピトープまたは準優位のエピトープに対する免疫応答を誘導する概念は、“エピトープ拡大(epitope spreading)”と呼ばれ、そして天然のペプチドに対する典型的な免疫応答よりも、より頑健な免疫応答を誘導することができる。
【0034】
1または複数のエピトープを、キメラペプチド中で、所望の官能基を有する第二のアミノ酸配列と組み合わせることもできる。官能基は、現実に免疫原性であってもよく、ペプチドのアフィニティ精製を可能にする。プロテアーゼ切断部位は、EphA2 T細胞エピトープアゴニストペプチドと免疫原性部分とのあいだに含まれていてもよい。官能基はまた、ペプチドの送達を促進するアミノ酸配列を含ませることにより、EphA2 T細胞エピトープアゴニストペプチドの送達を促進することができる。これの一例は、エキソソームなどの膜小胞またはナノ粒子において、樹状細胞に対するペプチドの提示を促進するために、ラクタドヘリンまたはその他のタンパク質の部分を含ませることである。膜小胞中に組み込むためにキメラペプチドを修飾しそして発現させる方法は、国際特許出願国際公開WO 03/016522中に記載されている。
【0035】
患者においてワクチン接種するため、あるいはそうでなければ免疫応答を誘導するための、いずれかの有用な経路により、上述したいずれかの形態でのアゴニストを投与することができる。一態様において、場合によりフロイントの不完全アジュバント、フロイントの完全アジュバント、または上述したエキソソームなどのアジュバントと共に、アゴニストを患者体内に注射する。アゴニストを、アゴニストおよびいずれかの好ましい薬理学的に許容可能な担体を含む、様々な組成物中で送達することができる。“キャリア”には、クラスとして、本明細書中に記載される活性成分の保存、安定性、投与および/または送達を促進する際に有用ないずれかの化合物または組成物が含まれ(これらには限定されない)、医薬分野において広く知られている、適切なビヒクル、溶媒、希釈剤、賦形剤、pH調整剤、バッファ類、塩類、着色剤、着香剤、流動性修飾剤、潤滑剤、コーティング、充填剤、消泡剤、浸食性(erodeable)ポリマー、ヒドロゲル、サーファクタント、乳化剤、アジュバント、保存剤、リン脂質、脂肪酸、モノ-、ジ-およびトリ-グリセリドおよびそれらの誘導体、ロウ、油脂、および水が含まれる(これらには限定されない)。アゴニストをリンパ球様細胞に対して送達する限りは、経路は重要ではない。典型的な投与経路は、筋肉注射である。アゴニストを所望の期間にわたり1回または所望の時間間隔で複数回投与し、所望の免疫応答を誘導することができる。複数容量を投与するための適切な間隔は、典型的には1週間に1回から1年に1回の範囲であるが、しかしながら典型的には7日ごとから90日ごとの範囲であり、そしてより典型的には7日ごとから30日ごとの範囲である。最適な投与間隔は、患者の免疫応答および患者の症状の重症度により評価することができる。投与するアゴニスト量は、他のパラメータの中でも、アゴニストの構造、送達経路、および患者の健康状態に依存して、大幅に変化していてもよい。どのような場合にも、アゴニストに対する免疫応答を誘導する時はいつでも、投与するアゴニスト量は、そうするために有効な量である。同様に、アゴニストの投与回数および複数投与の投与間隔は、アゴニストに対する免疫応答を誘導するために有効な数および間隔である。
【0036】
アゴニストを、リポソームにより患者に対して送達することもできる。リポソームは、リンパ球様細胞の部位に指向することができ、そこで次にリポソームは選択されたアゴニスト組成物を送達する。使用するためのリポソームは、中性リン脂質およびマイナス荷電のリン脂質およびコレステロールなどの5-ステロールを含む、典型的な小胞-形成性脂質から形成される。脂質の選択は、一般的に例えば、リポソームサイズ、血流中のリポソームの酸不安定性および安定性を考慮することにより、誘導される。Szokaらの文献(Szoka et al., Ann. Rev. Biophys. Bioeng. 9: 467 (1980))およびU.S.特許4,235,871、4,501,728、4,837,028、および5,019,369に記載されている様に、リポソームを調製するための様々な方法が利用可能である。
【0037】
アゴニストはまた、熱ショックタンパク質の存在下で送達することもできる。熱ショックタンパク質は、細胞中では分子シャペロンとして作用し、発生期のペプチドがタンパク質に適切にフォールディングすることを保証し、そして新しいタンパク質および古いタンパク質を細胞中で往復させる。
【0038】
熱ショックタンパク質は、細胞表面上のペプチドを提示する際に役割を果たして、免疫システムが疾患の細胞を認識することを補助すると考えられている。米国特許5,935,576、6,007,821および6,017,540は、熱ショックタンパク質に関するそのような使用、熱ショックタンパク質複合体の作製方法、および治療方法を記載する。
【0039】
効果的な免疫応答もまた、ex vivo法により誘導することができる。そのような方法においては、抗原は、患者からin vitroで入手される樹状細胞などの抗原提示細胞のPBL集団(しばしば、パルス性APCと呼ばれる)に対して提示され、そして免疫-活性化細胞が患者に対して戻される。この方法により、アゴニストがAPCに対して送達され、そしてペプチドの患者に対する何らかの潜在的な毒性を回避し、そして典型的には必要とされるアゴニストの量をより少なくすることを保証する。PBL、APC、およびDCを単離する方法は周知であり、そしてアゴニスト単独でまたは熱ショックタンパク質または適切なサイトカインなどの追加的な因子の存在下で、本明細書中で前述したように、アゴニストを細胞上に直接置くことによるか、またはリポソームまたはエキソソーム送達によるか、を含むいずれかの形式で、アゴニストをin vitroでAPCに対して送達することができる。
【0040】
最近の報告では、リガンドアゴニストによる腫瘍細胞の細胞表面上のEphA2の架橋が、EphA2リン酸化、内部移行および分解を引き起こすことが示唆される(Walker-Daniels et al., Mol. Cancer Res. 1: 79-87,2002)。この誘導されたEphA2タンパク質の分解は、結果としてMHCクラスIおよび/またはクラスIIタンパク質により提示されるEphA2エピトープの急性の生成を引き起こすと考えられ、腫瘍がより容易にEphA2-特異的T細胞により認識され、そして潜在的には結果としてin vivoでのガン細胞臨床的な根絶を改善することをもたらす。このことにより、ガン患者におけるエフェクター抗-EphA2 T細胞をEphA2-リガンドアゴニストを用いて増殖させそして活性化して、組み合わせ免疫療法アプローチにおけるワクチン-誘導性リンパ球による腫瘍細胞の増殖性の生産的認識の可能性を増大させるためにEphA2-ベースのワクチンを協奏的に利用することがサポートされる。EphA2リガンドアゴニストは、治療された腫瘍細胞におけるEphA2タンパク質の分解を誘導する抗-EphA2抗体、EphrinA1-Ig構造物または合成ペプチド(これらには限定されないが)の形態を取ることができた。
【0041】
一態様において、患者は、EphA2リガンドあるいはそのアゴニストを投与される。EphA2リガンドまたはそのアゴニストは、抗体(例えば、モノクローナル抗体、または以下のもの:Fv断片;一本鎖Fv(scFv)断片;Fab'断片;F(ab')2断片;ラクダ化抗体および抗体断片;上記のものの多価版;ジスルフィド安定化Fv断片、scFvタンデム((scFv)2断片)、抗体多量体(例えば、これらは、ロイシンジッパー安定化またはヘリックス安定化などを含むが、これらには限定されない、典型的には共有結合されるかあるいは安定化されたものである)などの単一特異性抗体または二特異性抗体;scFv断片;組換え抗体または抗体断片、またはアプタマーやファージディスプレイ選択および増殖方法により生成された化合物などのin vitro-生成EphA2-特異的化合物(これらには限定されない)を含む、抗体の誘導体または類似体、などの結合性試薬であってもよい。EphA2リガンドまたはそのアゴニストは、ephrinA1またはそのアゴニストであってもよい。
【0042】
EphA2リガンドまたはそのアゴニストを、EphA2 T細胞受容体アゴニストについて言及する際に上述した様に、いずれかの効果的な経路により、いずれかの効果的な量で、そしていずれかの効果的な間隔により、患者に対して送達することができる。EphA2リガンドまたはそのアゴニストの送達は、EphA2 T細胞受容体アゴニスト-含有化合物の送達、および典型的にはEphA2 T細胞受容体アゴニストの送達とEphA2リガンドまたはそのアゴニストの送達とを交互に行う(必ずしも必須であるわけではないが)治療計画とを組み合わせるものである。一態様において、EphA2 T細胞受容体アゴニストは、上述した直接的方法またはex vivo方法のいずれかにより直接的に患者に対して送達し、および1週間後に、EphA2リガンドまたはそのアゴニストを投与する。EphA2 T細胞受容体アゴニストとEphA2リガンドまたはそのアゴニストとを交互にしながら、このことを、1週間に1回の治療と共に、所望されそして有効ないずれかの回数繰り返す。
【0043】
本明細書中に記載するいずれかのペプチドを、ペプチドを産生するための多数の既知の組換え方法のいずれかにより製造することができ、あるいは広く知られている固相化学などの一般的なタンパク質合成方法により合成することができる。組換え方法において、適切なプロモータ、ターミネータ、および所望のペプチドをコードするコード領域を含有する遺伝子を調製する。コード領域は、細胞によるペプチドの分泌を可能にするシグナル配列および/またはペプチドの親和性精製を可能にする、好ましくは切断可能な、適切なタグ、をコードすることもできる。
【0044】
ヒト細胞中でEphA2アゴニストを発現するための遺伝子を含有する核酸は、患者の細胞がアゴニストを発現し、それにより免疫応答を引き起こす様に、患者に対して直接的に送達しても、または患者の細胞に対してex vivoで送達してもよい(患者体内に戻すため)。単にアゴニストではなく、遺伝子を送達することにより、結果として患者の細胞中での遺伝子発現の拡大の結果生じるより頑健な免疫応答を引き起こすことができる。ウィルス-媒介性送達方法(組換えアデノウィルス、アデノ-関連ウィルスまたはワクシニアウィルスによるものなど)により、または非-ウィルス-媒介性送達方法(リポソームまたはむき出しの核酸を例えば筋肉中に直接注入することなど)により、核酸を送達することができる。
【実施例】
【0045】
実施例1:EphA2 T細胞アゴニストペプチドに対するPBLの応答性
末梢血および腫瘍試料
末梢血サンプルを、RCCと診断された40人の患者および正常な14人の個体から静脈穿刺により取得し、そしてヘパリン化チューブ中に採取した。末梢血リンパ球(PBL)を、Ficoll-Hypaque勾配(LSM, Organon-Teknika, Durham, NC)上での遠心処理により単離した。RCC腫瘍病変および対応する正常腎臓組織を外科的に切除し、そしてパラフィン包埋した。サンプル取得の前にすべての患者からIRB-承認プロトコルのもとでのインフォームド・コンセントを得た。患者および正常ドナーの情報は、表1中に提示する。HLA-A2-特異的抗体(BB7.2およびMA2.1)およびHLA-DR4-特異的抗体(抗-HLA-DR4モノクローナル抗体クローン359-13F10、IgG、Dr. Janice Blum(Indiana University School of Medicine, Indianapolis, IN)からご厚意により提供を受けた)を使用して蛍光-活性化細胞ソーター解析により決定した場合、含まれるすべての個体は、HLA-A2陽性および/またはHLA-DR4陽性であった。RCC患者および正常個体の中で、9人の患者および6人の正常個体が、HLA-A2およびHLA-DR4の両方ともの主要組織適合性抗原を発現した。
【0046】
【表1】
【0047】
表1において、個々のCCF表記は、採取した日付に基づく試料番号を反映する。5つの症例において、治療前血液試料および治療後(6週間)血液試料の両方が、示された様に、解析のために利用可能であった。示した場合、治療後の末梢血単離の時点(月)を提示する。使用した省略記号は:C、化学療法;IFN-γ、組換えインターフェロンα治療;IL-2、組換えインターロイキン-2治療;Mets、転移性疾患;NED、疾患の所見なし;R、放射線療法;S、外科的;であった。
【0048】
HLA-A2状態およびDR4状態を、材料と方法において記載する様に、末梢血単球に対してアリル-特異的モノクローナル抗体およびフローサイトメトリー選択(gating)を使用することにより決定する。
【0049】
細胞株および培養液
T2. DR4(HLA-A2+/-DRβ1 *0401 +;Pratt, R. L. et al. Oncogene 21 : 7690-7699 (2002))細胞株(Dr. Janice Blum(Indiana University School of Medicine, Indianapolis, IN)からご厚意により提供を受けた)を、ELISPOTアッセイにおいてペプチド-提示細胞として使用した。以下のSLR20-SLR26明細胞RCC株を、ウェスタンブロット解析で評価した。正常ヒト近位尿細管上皮腎臓細胞株HK-2(American Type Tissue Collection, ATCC, Rockville, MD)もまた、これらの解析において評価した。仮定では、HPV-16 E6/E7遺伝子(Ryan MJ, et al. Kidney Int. 45: 48-57 (1994))でトランスフェクションすることによりHK-2を形質転換したが、HK-2は正常対照細胞株を示す。EphA2+ PC-3前立腺癌細胞株が、ウェスタンブロット用の陽性対照として含まれた(Walker-Daniels J, et al. Prostate 41: 275-280 (1999))。すべての細胞株を、10%加熱不活性化ウシ胎児血清、100 U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、および10 mM L-グルタミン(すべての試薬は、GIBCO/Life Technologies, Grand Island, New Yorkより入手)を添加したRPMI-1640培養液中で、5%CO2の加湿雰囲気下にて37℃で維持した。
【0050】
ペプチドの選択と合成
EphA2タンパク質のタンパク質配列は、GENBANK(アクセッション番号AAH37166;図1)から入手し、そしてHLA-A0201およびHLA-DRβ1*0401結合ペプチドについて、ニューラルネットワークアルゴリズム(Honeyman MC, Brusic V, Stone NL, Harrison LC., “Neural network-based prediction of candidate T cell epitopes,”Nat Biotechnol.(1998)16: 966-969およびSouthwood S, Sidney J, Kondo A, del guercio M-F, Appella E, Hoffman S, Kubo RT, Chesnut RW, Grey HM, Sette A., “Several common HLA-DR types share largely overlapping peptide binding repertoires”, J.Immunol. (1998) 160: 3363-3383)を使用して、解析した。次に、上位10個の候補HLA-A2結合ペプチドについて、PAProC予測アルゴリズム(C. Kuttler, A. K. Nussbaum, T. P. Dick, H. -G. Rammensee, H. Schild, K. P. Hadeler, “An algorism for the prediction of proteasomal cleavages, ”J. Mol. Biol.(2000)298: 417-429;A. K. Nussbaum, C. Kuttler, K. P. Hadeler, H. -G. Rammensee, H. Schild, PAProC: A Prediction Algorithm for Proteasomal Cleavages available on the WWW, Immunogenetics 53 (2001), 87-94;およびA. K. Nussbaum, “From the test tube to the World Wide Web-The cleavage specificity of the proteasome,”博士論文, University of Tuebingen, Germany, 2001(www. uni-tuebingen. de/uni/kxi/))を、合成のために選択したプロテアソームにより処理することができるそれらのペプチドのみと共に使用して、プロテアソーム切断により生成される能力について解析した。すべてのペプチドを、Fmoc化学により合成した。ペプチドは、HPLC特性およびMS/MS質量分光解析に基づき、>90%純粋であった。全体としては、本研究において高い結合スコアを得た5個のHLA-0201および3個のHLA-DR0401予想結合ペプチド(表2)を、評価した。
【0051】
【表2】
【0052】
PBLの抗原刺激
PBLを、AIM-V培地(GIBCO/Life Technologies)中で107/mlで再懸濁し、そして加湿5%CO2インキュベータ中で37℃にて60分間インキュベートした。非接着性(T細胞-濃縮)細胞を、PBSで穏やかに洗浄し、そしてその後冷凍した。プラスチック接着性細胞を、1000 units/ml rhGM-CSF(ImmunexCorporation, Seattle, WA)および1000 units/ml rhIL-4(Schering-Plough, Kenilworth, NJ)を添加したAIM-V培地中で培養した。7日後、樹状細胞(DC)を回収し、そして自己由来CD8+またはCD4+ T細胞を刺激するために使用した。非-接着性自己由来細胞を、T細胞応答細胞の“濃縮”供給源として使用した。CD8+ T細胞(HLA-A2-陽性患者および健康ドナーにおいて)またはCD4+ T細胞(HLA-DR4-陽性患者および健康ドナーにおいて)を、特異的磁気ビーズ(MACS;Miltenyi Biotec, Auburn, CA)を使用して、>98%の精製度まで積極的に単離した。200000個のDCを、10μg/mlペプチドを用いて1週間、2×106個のCD8+またはCD4+ T細胞と共に培養した。in vitro刺激の7日目に、応答性CD8+ T細胞またはCD4+T細胞を回収し、ELISPOTアッセイにおいて解析した。
【0053】
ペプチド-応答性CD8+ T細胞およびCD4+ T細胞応答についてのIFN-γおよびIL-5 ELISPOTアッセイ
ペプチドエピトープを認識する末梢血T細胞の頻度を評価するため、IFN-γおよびIL-5についてのELISPOTアッセイを、以前に記載されたように行った(Tatsumi T, et al. J. Exp. Med. 196;619-628, 2002)。CD8+ T細胞応答をIFN-γELISPOTアッセイのみにより評価したのに対して、CD4+T細胞応答をIFN-γ(Th1)およびIL-5(Th2)ELISPOTアッセイの両方により評価した。ELISPOTアッセイのため、96-ウェルマルチスクリーン血球凝集素抗原プレート(Millipore, Bedford, MA)を、PBS(GIBCO/Life Technologies)中、10μg/mlの抗ヒトIFN-γmAb(1-D1 K;Mabtech, Stockholm, Sweden)または5μg/mlの抗ヒトIL-5(Pharmingen-BD, San Diego, CA)を用いて、4℃にて一晩コーティングした。非結合抗体を、PBSを用いて4回連続して洗浄することにより取り除いた。RPMI-1640/10%ヒト血清を用いてプレートをブロッキングしたのち(37℃にて1時間)、105個CD8+T細胞またはCD4+ T細胞および10μg/ml合成ペプチドでパルス化したT2.DR4細胞(2×104細胞)を、マルチスクリーン血球凝集素抗原プレート中に、3重にして播いた。対照ウェルは、それぞれHIV-nef190-198ペプチド(AFHHVAREL, SEQ ID NO: 3)またはMalaria-CS326-345ペプチド(EYLNKIQNSLSTEWSPCSVT ;SEQ ID NO: 4)を用いてパルス化したT2.DR4細胞と共にCD8+またはCD4+ T細胞、またはT2.DR4細胞のみ、を含有した。培養液は、200μl/ウェルの最終容量のAIM-V(GIBCO/Life Technologies)であった。プレートを、IFN-γ評価用には24時間、IL-5評価用には40時間、5%CO2中37℃にてインキュベートした。インキュベーションの後、培養ウェルの上清をELISA解析用に回収し、そしてPBS/0.05%Tween 20(PBS/T)を用いて洗浄することにより細胞を除去した。PBS/0.5%BSA中2μg/mlのビオチン化mAb抗-ヒトIFN-γ(7-B6-1;Mabtec)またはPBS/0.5%BSA中2μg/mlのビオチン化mAb抗-ヒトIL-5(Pharmingen)と共に、2時間インキュベーションすることにより、捕捉したサイトカインを、それらの分泌部位で検出した。プレートをPBS/Tにより6回洗浄し、そしてアビジン-ペルオキシダーゼ複合体(1:100に希釈;Vectastain Elite Kit;Vector Laboratories, Burlingame, CA)を1時間添加した。PBS/Tを用いて3回連続して洗浄し、次いでPBSのみを用いて3回洗浄することにより、非結合複合体を取り除いた。IFN-γELISPOTアッセイ用には、AEC基質(Sigma, St. Louis, MO)を添加し、そして5分間インキュベートし、そしてIL-5 ELISPOTアッセイ用には、ペルオキシダーゼ用のTMB基質(Vector Laboratories)を添加し、そして10分間インキュベートした。スポットをZeiss Autolmagerを使用して画像化した(そしてStudentの両側性T-テスト解析を使用して統計的比較をおこなった)。データは、解析した100,000個のCD4+ T細胞当たりの、平均IFN-γまたはIL-5スポット数として示される。
【0054】
ELISA
CD4+ T細胞ELISPOTプレートから得られた上清を、TGF-βおよびIL-10のELISAにおいて解析した。上清を、培養期間の最後の時点でELISPOTプレートから単離し、そして特異的サイトカインのELISAで解析するまで、-20℃で凍結した。サイトカイン捕捉・検出抗体および組換えサイトカインを、BD-Pharmingen(San Diego, CA)から購入し、そして製造者の指示に従ってELISAアッセイにおいて使用した。TGF-βおよびIL-10アッセイについての検出限界は、それぞれ60 pg/mlおよび7 pg/mlであった。
【0055】
ウェスタンブロット解析
腫瘍細胞(5〜10×106)を、抗-ヒトEphA2ポリクローナル抗体(クローン:H-77)(Santa Cruz Biotechnology, Inc., Santa Cruz, CA)を使用したウェスタンブロットにより、EphA2発現について解析した。細胞ペレットを、プロテアーゼ阻害剤(Complete, Boehringer Mannheim, Indianapolis, IN)を含有するPBS中200μlの1%NP-40を使用して、氷上にて1時間、溶解した。13,500×gで30分間遠心処理した後、上清をSDS-PAGE泳動バッファーと1:1で混合し、そしてタンパク質を10%PAGEゲル上で分離し、その後ニトロセルロースメンブレン(Millipore, Bedford, MA)上にエレクトロブロッティングした。ブロットは、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)-抱合ヤギ抗-ウサギIg(Biorad, Hercules, CA)およびECL化学発光検出キット(NEN Life Science Products)を使用して、Kodak X-Omat Blue XB-1フィルム(NEN Life Science Products, Boston, MA)上に画像化した。
【0056】
RCC組織中のEphA2についての免疫組織化学
RCC腫瘍試料を、IRB-承認プロトコルの下で外科的に取得し、そしてパラフィン包埋した。5μm切片を脱パラフィンし、そしてddH2O中でそして次にPBS中で、再水和した。抗-EphA2 mAb(Ab 208;mIgG1)または同位体-適合対照mAbを、室温にて1時間、切片上でインキュベートした。PBSで洗浄した後、切片を、ビオチン化ヤギ抗-ウサギIgG(Vector Laboratories)を用いて、室温にて20分間インキュベートし、そしてその後、洗浄後にアビジン-ビオチン-複合化ペルオキシダーゼ(Vectastain ABC kits, Vector Laboratories)と共にインキュベートした。その後に洗浄した後、反応生成物をNova Red基質キット(Vector Laboratories)により発色し、そして核をヘマトキシリンにより対比染色した。EphA2の発現を、40×倍率で、2回顕微鏡観察することにより、独立して評価した。
【0057】
統計解析
2群のあいだでの統計的な有意差は、各群を均等な分散について試験した後、Studentのtテストまたは2サンプルtテストをWelch補正と共に適用することにより決定した。統計的な有意性は、0.05未満のp値として定義した。
【0058】
結果
腫瘍細胞株およびRCC組織中でのEphA2発現
EphA2を、悪性腎臓上皮細胞中で過剰発現させた。ウェスタンブロット解析を使用してRCC細胞株中でのEphA2タンパク質レベルを評価した(図18)。転移性RCC株は、初代RCC株よりもEphA2をより強力に発現する傾向にあり、前立腺癌PC-3に関して以前に注目された強力な染色に近いものであった(Walker-Daniels J, et al. Prostate 41;275-280,1999)。正常近位腎臓上皮細胞のモデルとして使用する一方、HK-2細胞株はHPV-16 E6/E7-により形質転換され、そしてEphA2の発現レベルは初代RCC株に関して観察されたものと一致していた。正常PBLは、検出可能なレベルのEphA2タンパク質を発現できなかった。これらの知見と一致して、パラフィン包埋RCC試料について行った免疫組織化学的解析(図19)も、EphA2の強力な発現を確認した。
【0059】
図18において、抗-EphA2および対照抗-βアクチン抗体を、表示したRCC細胞株、正常腎臓尿細管上皮細胞株HK2、および正常末梢血リンパ球(PBL)(陰性対照)から生成した溶解物のウェスタンブロット解析を行う際に使用した。初代明細胞RCC株および転移性明細胞RCC株を、示された様に評価した。PC3前立腺細胞株および正常ドナーPBLが、陽性対照および陰性対照として機能した。図19A〜Dにおいて、初代RCCパラフィン組織切片(図19Aおよび19B)および転移性RCCパラフィン組織切片(図19Cおよび19D)を、免疫組織化学的解析において、抗-EphA2抗体(Ab 208;図19Aおよび19C)または同位体対照抗体(図19Bおよび19D)を使用して染色した(40×拡大)。
【0060】
T細胞により認識されるEphA2エピトープの同定
潜在的T細胞エピトープを同定するため、EphA2タンパク質配列を、推定HLA-A2結合モチーフおよびプロテアソーム切断部位を同定するために設計されたアルゴリズムに供した。同様に、ニューラルネットワークアルゴリズムを使用して、HLA-DR4に結合すると予想され、そしてCD4+ T細胞エピトープを提示する潜在能力を有すると予想される、EphA2ペプチド配列を同定した(Honeyman M et al., 1998)。全体として、8個のペプチドを、引き続いて行う解析のために合成した:このうち、5個のペプチドはCTLエピトープとして機能するものと推定され、そして3個のペプチドはThエピトープとして機能すると推定された(表2)。
【0061】
末梢血T細胞を、正常HLA-A2+および/またはHLA-DR4+ドナーから単離し、そして対応する合成ペプチドにより事前に負荷した自己由来DCにより刺激した。応答性T細胞を、ペプチド-パルス化T2. DR4(HLA-A2+/DR4+)抗原提示細胞およびEphA2抗原およびHLA-A2および/またはHLA-DR4を共に発現する腎臓細胞癌腫細胞株に対する特異的応答性について、引き続き評価した。IFN-γELISPOTアッセイを使用して、5個の推定CTLエピトープに対する8個のHLA-A2+ドナーCD8+ T細胞応答および3個の潜在的Thエピトープに対する7個のHLA-DR4+ドナーCD4+ T細胞応答性を評価した。
【0062】
各ペプチドは、少なくとも1個の正常ドナー(表3)により認識され、そしてただ一つの(HLA-DR4+)ドナーは、EphA2(Th)エピトープのいずれに対しても応答することができなかった。HLA-A2ドナーの中で、EphA2546-554ペプチドおよびEphA2883-891ペプチドは、最も一般的に反応し(それぞれ、評価したドナー8個のうち6個において)、EphA2883-891に対する応答が典型的には高頻度であった。評価したHLA-DR4+ドナーのうち、7個のドナーのうち6個が、少なくとも1つの予想EphA2-由来Thエピトープに対して反応し、EphA63-75およびEphA2663-677に対する応答が最も一般的であった。クローニングしたT細胞が応答性T細胞のこれらのバルク集団に由来する場合、それらは適切なHLAクラスI-またはクラスII-(HLA-A2またはHLA-DR4)拘束性の様式で、EphA2+ RCC株を認識することができた(データは示さず)。
【0063】
【表3】
【0064】
ELISPOTアッセイにおける、末梢血CD8+ T細胞による、ペプチド-特異的IFN-γ放出の解析
29人のHLA-A2+ RCC患者(表1)および10人のHLA-A2+正常ドナーにおいて末梢血CD8+ T細胞応答を、これらの配列に対して評価した。CD8+T細胞を、すべての実験について、98%の純度まで濃縮した。応答を、“初回”in vitro刺激の7日後、IFN-γELISPOTアッセイを使用して評価した。
【0065】
図20において、末梢血CD8+ T細胞をHLA-A2+正常ドナーまたはRCCを有する患者から単離し、そして個々のEphA2-由来エピトープにより予めパルス化した未成熟な自己由来樹状細胞により、材料と方法において概説するように刺激した。1週間後、応答性T細胞を、表示されたEphA2エピトープによりパルス化したT2. DR4(HLA-A2+)細胞に対する応答性について、IFN-γELISPOTアッセイにおいて解析した。データは、IFN-γスポット数/100,000 CD8+ T細胞として報告し、そして3回の測定値の平均を示す。HLA-A2-提示HIV-nef190-198エピトープによりパルス化したT2. DR4細胞に対するT細胞応答性は、すべての事例において陰性対照として機能し、そしてEphA2-特異的スポット数を決定するため、この値をすべての実験決定値から差し引いた。パネル中の各シンボルは、個々のドナーの反応を示す。
【0066】
図20において示されるように、外科手術前のHLA-A2+患者(Pre-Op)または外科手術後に残留疾患を有する患者(Post-RD)におけるEphA2ペプチドに対するCD8+ T細胞反応の頻度は、正常HLA-A2+ドナーにおいて見いだされたものと同程度に低かった。対照的に、EphA2エピトープに対するELISPOT応答性の上昇が、外科手術後疾患を有さない(疾患の証拠無し:NED)(Post-NED)ものとして分類されたRCC患者において見いだされた。興味深いことに、長期生存を示すRCC患者由来のCD8+ T細胞(Post-LTS;外科手術後>2年生存)はまた、ある程度の活性な疾患を有するにも関わらず、EphA2 CTLエピトープに対するELISPOT応答性が上昇していた。Stage Iを有する患者とStage IVを有する患者とを比較した場合、患者が活性な疾患を有していても、抗-EphA2 CD8+ T細胞応答において有意差は存在しなかった(図21、図20において報告されたデータを、疾患段階の関数として再プロットしたものを示す)。疾患を有さなかった(すなわち、疾患の証拠無し、NED)場合または長期生存者である場合に解析された患者のみが、EphA2エピトープに対する応答性が上昇したCD8+ T細胞を示した(図21)。
【0067】
4人のHLA-A2+患者において、治療前および治療後のEphA2ペプチドに対するCD8+ T細胞応答性の変化を、評価した。図22において、末梢血CD8+T細胞をRCCを有する患者から、外科手術前、および外科手術後(6週間)に単離し、そして図20の上記記載に概説したように、IFN-γELISPOTアッセイにおいて、EphA2エピトープに対する応答性に関して評価した。3人のStage I RCC患者(●、○、▼)は、外科的処置の結果として疾患が存在しない状態になったが、一方一人のStage IV RCC患者(▽)は、外科手術後に残留疾患を有していた。パネル中の各シンボルは、個々の患者の反応を示す。これらの個体のうち3人は、外科的処置の前に局所的な疾患を有していたStage I患者であり、一方残りの患者は、Stage IV疾患を有していた。注目すべきことに、EphA2ペプチドに対するCD8+ T細胞応答性は、4人のRCC患者すべてにおいて外科手術前には非常に低かった。疾患を取り除いたところ、EphA2-由来CTLエピトープに対するCD8+ T細胞応答性は、3人のStage I患者のそれぞれにおいて有意に増加していた。正反対に、外科手術後に残留腫瘍負荷を有していた一人の評価可能なStage IV RCC患者は、EphA2 ペプチドに対してあまり応答性ではないままであった(図22)。
【0068】
ELISPOTアッセイにおけるCD4+ T細胞による、ペプチド-特異的IFN-γおよびlL-5放出
IFN-γ(Th1-型)およびIL-5(Th2-型)ELISPOTアッセイを使用して、EphA2ペプチドに対する患者-由来Th細胞の頻度の変化および機能的バイアスを識別した。CD4+ T細胞単離およびELISPOT解析の前に、末梢血T細胞を、ペプチド-パルス化未成熟自己由来DCにより1週間刺激した(Th1/Th2バランスを崩してはいないようである、参考文献47)。EphA2ペプチドに対するCD4+ T細胞応答細胞の頻度が、19人のHLA-DR4+RCC患者において評価された(表1)。
【0069】
EphA2に対するT細胞応答性の機能的性質は、疾患の進行に関連していた。Stage I疾患を有する患者は、EphA2ペプチドに対して強力なTh1-二極化応答性を示したが、一方、より進行した段階の疾患を有する患者は、強力なTh2応答性に対して二極化された。図23において、末梢血を19人のHLA-DR4+患者から入手し(表1)、そしてCD4+ T細胞を、以下の材料と方法において記載する様に、ポジティブMACSTM-ビーズ選択により単離した。EphA2 Thペプチド-パルス化、自己由来DCによるin vitro刺激の1週間後、応答性CD4+ T細胞を、示したEphA2エピトープでパルス化したT2.DR4細胞に対して、IFN-γ ELISPOTアッセイおよびIL-5 ELISPOTアッセイにおいて評価した。データは、IFN-γスポット数/100,000 CD4+ T細胞として報告し、そして3回繰り返しの測定値の平均を示す。HLA-DR4-提示Malarial circumsporozooite(CS)326-345エピトープでパルス化したT2.DR4細胞に対するT細胞応答性は、すべてのケースで陰性対照として機能し、そしてこの値をEphA2-特異的スポット数を決定するため、すべての実験測定値から差し引いた。パネル中の各表示は、個々の患者の応答を示す。患者のすべてが各ペプチドに対して反応したわけではないが、それらの応答は、患者の疾患状態に従って一定の二極化を示した。
【0070】
手術前および手術後のHLA-DR4+患者由来の1セットの適合血液サンプルが、幸運にも利用可能であった。この個体は、手術後は疾患を有さなかった。このドナー由来のCD4+ T細胞が手術前および手術後にTh1のバイアスがかかったものであった一方、EphA253-68およびEphA263-75(しかしEphA2663-677ではない)エピトープに対するT細胞応答に関連するIFN-γスポット数の頻度は、処置後に増加した。図24において、手術前および手術後の末梢血は、Stage Iの疾患を有する一人のRCC患者について利用可能であった。CD4+T細胞が単離され、図23の記載において概説される様にEphA2 Thエピトープに対する応答性について解析された。手術後のTh1-型CD4+T細胞応答(IFN-γ)の統計的に有意な増加およびTh2-型CD4+T細胞応答(IL-5)の統計的に有意な減少が、EphA253-68エピトープに関して注目された。EphA263-75エピトープに対するCD4+ T細胞応答の治療により誘導された変化は同様であり、IFN-γの結果は0.05のp値に近づき、そしてIL-5応答の有意な減少が注目された(p<0.001)。手術前/手術後のEphA2663-677エピトープに対するT細胞応答には、有意な相違が存在しなかった。治療前および治療後のTh1型/Th2型応答の比も、ペプチドEphA253-68およびEphA263-75に関して示される。有意差についてのp値が示される。
【0071】
このドナーもまたHLA-A2であり、そしてEphA2に対するTh1-型CD4+ T細胞-媒介性免疫の増加が、この患者における循環性IFN-γ-分泌性抗-EphA2 CD8+ T細胞の頻度が増加することと一致して生じたことが観察された(図22;黒丸)。
【0072】
EphA2ペプチドに対するRCC患者CD4+ T細胞由来のTGF-βおよびIL-10の産生
Th3/Tr1 CD4+ T細胞がRCC患者の末梢血中に存在するかどうかを評価するため、in vitroペプチド刺激後のTGF-βおよびIL-10産生を測定した。図25において、上清をIFN-γELISPOTアッセイの培養ウェルから回収し、そして商業的なELISA法を使用してTGF-β1レベルについて解析した。評価した19人のHLA-DR4患者のうち、3人の(評価した8人のうち)Stage IV RCCを有する患者の上清のみが、検出可能な量のTGF-β1を含有した。これらの患者のCD4+ T細胞についての対応するIFN-γおよびIL-5 ELISPOTデータも提供される。パネル中の各表示は、個々の患者の応答を示す。応答性CD4+ T細胞によるTGF-β産生は、Stage IV患者の一部(すなわち、8人中3人)においてのみ観察され、そしてとりわけ、これら同一の患者は、協調的に弱いEphA2ペプチドに対するTh1-型またはTh2-型(IFN-γおよびIL-5 ELISPOT)CD4+ T細胞応答性を示した。IL-10産生(ELISAの検出限界以上の)が、試験したどの試料についても観察された。
【0073】
腫瘍-関連抗原の分子的定義は、癌患者における腫瘍-特異的T細胞応答を準備しそして促進するために設計された免疫療法の開発を促進した。これらの進歩と共に、サイトカイン放出アッセイは、治療前、治療中、および治療後の患者の末梢血における抗-腫瘍CD8+ T細胞応答およびCD4+ T細胞応答を発生する特異性および程度をモニターするための強力な手段を提供する(Keilholz U, et al. J Immunother 25;97-138,2002)。本実施例において、RCCを有する患者におけるT細胞が、どのようにして、どの程度まで、新規のEphA2-由来エピトープを認識するか、を、サイトカイン-特異的ELISPOTアッセイおよびELISAを使用して評価した。
【0074】
本実施例の主要な知見は、腎臓細胞癌腫患者が、RCC腫瘍において高い頻度で異常に発現されている受容体チロシンキナーゼEphA2に対する、検出可能なCD4+ T細胞応答性およびCD8+ T細胞応答性を示すことを示すものである。EphA2-特異的CD8+ T細胞活性は、これらの患者における活性な疾患の存在と反比例し、治療的介入後6週間後以内に増加して、そして結果として疾患のない状態になる。興味深いことに、Stage IV疾患を有する2人のHLA-A2+患者が、手術後長期生存者(>40ヶ月)であったことが同定された。これらの個体は両方とも、EphA2-由来エピトープに対して応答性のIFN-γ-分泌性CD8+ T細胞の末梢血頻度の上昇を示した(図20)。これらの患者において高い抗-EphA2 CD8+ T細胞活性が持続的に維持されることは、活性な疾患を有しつつ生存し続けることと関連している可能性がある。
【0075】
CD8+ T細胞の結果とは多少対照的に、EphA2ペプチドに対する患者のTh1-型CD4+T細胞応答とTh2-型CD4+ T細胞応答との微妙なバランスにより、疾患の段階を識別することが、本明細書中でも示される。特に、最も進行した型のRCCは、Th2-型抗-EphA2応答またはTr-型抗-EphA2応答のあいだで二極化される傾向にある。機能的CD4+ T細胞応答性におけるこの二極化は、Stage IV疾患を有する患者におけるT制御細胞により媒介される潜在的な抑制活性と組合わさって、疾患の進行において、促進性の作用を有する可能性がある。
【0076】
これらの知見は独自なものである。というのも、EphA2が、腎臓細胞癌腫に対する免疫療法を設計するために非常に必要とされる標的抗原であることがこれらの知見により示されたことが一部の理由である。第一に、EphA2は、それぞれ、24個のRCC細胞株のうち22個(92%)および30個のRCCバイオプシーサンプルうち29個(97%)を含む多数のRCC試料中で過剰発現される(図18およびデータは示さず)。これらの知見は、乳癌、結腸癌、頭部癌、および頸部癌(Tatsumi et al.、未公開データ)、前立腺癌および肺癌、ならびにメラノーマを含む多数の癌に対して、高レベルのEphA2を適用することが示される、他の腫瘍型の研究から得られる証拠と一致している。本研究がこれらのその他の臨床的症候に対して拡張できる場合、EphA2-特異的T細胞活性により、これらの腫瘍型についても、治療的介入の機会がもたらされるだろう。
【0077】
興味深いことに、EphA2ペプチドに対するCD8+ T細胞応答性(IFN-γELISPOTアッセイにおいて決定するもの)は、活性な疾患を有するRCC患者と疾患を有さない患者とのあいだで大きく異なっていた。しかし、抗-EphA2 CD8+ T細胞応答性は、RCC疾患状態を識別しなかった。この知見についての一つの可能性のある説明は、RCC腫瘍が、EphA2に対するin situでのCD8+ T細胞応答の生成、機能性、および耐久力を抑制する可能性があるというものである。この仮説は、以前に報告されたものと同様に(Kiessling R, et al. Cancer Immunol lmmunother48 ;353-362, 1999)、末梢CTLおよびNK細胞活性の一般的な腫瘍関連免疫抑制と一致している。とりわけ、EphA2-由来CTLエピトープに対するCD8+ T細胞応答性は、Stage I RCCを有する3人のHLA-A2+患者の末梢血中で、これらの患者における疾患がない状態にする外科手術後に、有意に増加した。対照的に、Stage IV患者において、“治癒”を伴わない外科的介入により、EphA2ペプチドに対するCD8+ T細胞応答性の頻度の低さは変化しなかった。これらの結果は、RCC腫瘍のin situでのクリアランス(すなわち、慢性の(腫瘍)抗原刺激の終了)に関する要件と一致し、機能的Tc1-様抗-腫瘍CD8+ T細胞応答の上昇をもたらす(Liu H, et al. J Immunol 168 : 3477-3483,2002およびMoser JM, et al. Viral Immunol 14: 199-216,2001)。EphA2-特異的CD8+T細胞活性の拡大または維持に関する代わりの説明には、特に進行性癌設定(Tatsumi et al.,J. Exp. Med. 2002)における、特異的Th1-型応答、または存在する患者Th2-型またはT抑制型からTh1-型免疫へのシフトの協調的サポートが必要とされる可能性がある。
【0078】
Th1-型バイアスがかかったCD4+T細胞応答が、Stage I RCC患者の一部においても観察され、そしてTh2-型またはTr-型バイアスがかかったCD4+T細胞応答が、Stage IV RCC患者においてはほぼ必ず観察された。進行性病期の疾患を有する患者におけるTh1-型免疫から離れた二極化が、腫瘍-特異的であったことを強調することは重要である。というのも、Stage IV疾患を有する個体が、“正常な”Th1のバイアスがかかった方法において、インフルエンザ由来-およびEBV由来-Tヘルパーエピトープに対して応答するためである(Tatsumi et al., J. Exp. Med. 2002およびデータは示さず)。
【0079】
Stage I疾患を有する唯一のHLA-DR4+患者について長期的なデータが利用可能であったが(図24)、少なくともいくつかのEphA2エピトープに対するTh1-型免疫が強調され、そしてEphA2-特異的なTh2-型応答が、患者の腫瘍を外科的切除した後に減少した。これらの結果は、ほとんどの癌において、進行性病期の癌患者においては免疫応答が抑制される(または道筋からはずれる)と考えられるという以前の報告と一致している。これらの結果もまた、“後期”EphA2ペプチドに対するCD4+ T細胞応答の性質が、RCC病期と相関していることを示唆する。この知見は、病期は注目されたが病期相関は注目されなかった“初期段階”MAGE-6エピトープに対するCD4+ T細胞応答についてのこれらの過去の知見とは対照的である。
【0080】
Th3/Tr CD4+ T細胞サブセットが、抗原特異的T“抑制性”細胞として優勢な役割を果たす可能性がある。これは部分的には、例えばTGF-βおよび/またはIL-10などの免疫抑制性サイトカインの分泌のためである(Krause I, et al. Crit Rev Immunol 20 ;1-16,2000)。Stage IV疾患を有する8人の患者のうち3人(38%)においてTGF-β産生が検出された(しかしながらIL-10産生は検出されなかった)ことに基づいて、ヒトCD4+CD25+ T抑制細胞の集団は、EphA2-過剰発現腫瘍を生産的に除去する患者の能力を妨害する可能性がある(Levings MK, et a/. J Exp Med. 196;1335-1346,2002)。これらの同一の患者は、EphA2ペプチドに対する識別可能なTh1-型応答性またはTh2-型応答性を示すことができず、このことからTh1型応答またはTh2型応答に対するEphA2-特異的T抑制-型免疫の全体的な抑制性優勢度が支持される。これらの結果から、Th2-型応答またはT抑制-型応答が、進行性病期のRCC患者においてEphA2エピトープに対して一般的であり、そしてこれらの個体において注目された腫瘍-特異的細胞免疫の反応性低下に寄与している可能性があることが示唆される。将来的な研究によりフローサイトメトリー解析を使用してこの仮説を試験し、HLA-DR4/EphA2ペプチド四量体結合、ならびにCD25、CTLA-4、またはグルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体の同時発現(T抑制細胞のマーカーとして、Levings et al., J Exp Med. 2002)を検出することができるだろう。
【0081】
免疫療法
様々な治療用ワクチンが、様々な形態の癌について現在利用され、あるいは企図されている。構築されている免疫学的情報は、すべての進行中の試行から得られ、改良されたデザインの基礎を提供するに違いない。このように、臨床的に重要なT細胞応答の免疫学的モニタリングについては、革新的な方法を開発する大きな要請が存在し、それは究極的には“代わりの”目的として機能しうる。十分に包括的であることが証明されそうな単一のアッセイは存在しないが、IFN-γおよびIL-5 ELISPOTアッセイやTGF-β ELISAを組み合わせることにより、RCCまたはメラノーマを有する患者由来の機能性T細胞応答を評価する感度の高い手段を提供されることが、本明細書中で示される(Tatsumi et al., J. Exp. Med. 2002)。これらのアッセイは、腫瘍-関連抗原に特異的なCD8+ T細胞およびCD4+ T細胞の両方とものin vitro検出および頻度の測定の可能性がある。そのような技術を使用して、本発明者らの新規なEphA2-由来T細胞エピトープが、EphA2過剰発現が記載された多数の様々な癌-型における腫瘍-特異的免疫を評価する際に有用であることが証明される可能性がある。
【0082】
これらの同一のエピトープは、明らかに、癌ワクチンの構成成分として機能する可能性も有している。初期病期においてTh2-型応答に対してゆがめられるMAGE-6応答性T細胞とは異なり(Tatsumi et al.,J. Exp. Med. 2002)、EphA2に関連するTh応答性におけるアンバランスは、後期病期までには生じないようである。このように、Stage I患者のEphA2-ベースのアジュバントワクチン化は、疾患の再発のリスクが高い患者における防御的免疫を誘導するため、または予想される転移を防止するため、有用性を有する可能性がある。EphA2-由来CD4+ およびCD8+ T細胞エピトープの両方を用いてワクチン化することにより、特異的Th1-型 CD4+ T細胞の同時活性化により安定化される高頻度の抗-EphA2 CTL誘導が促進される可能性がある。あるいは、適切な再分極または活性化の条件下では(Vieira PL, et aL J Immunol 164 ;4507-4512, 2000)、EphA2ペプチドを取り込んだ樹状細胞(DC)ベースのワクチンにより、進行性病期を有する患者において、事前に変化したTh1-型免疫が機能的に復活することができ、それにより潜在的な治療的有益性を得ることができる。
【0083】
様々な組織構造の進行性病期の腫瘍の中で、幅広いEphA2過剰発現を前提とすると、EphA2などの抗原に基づくワクチンは、乳癌、前立腺癌、結腸癌および肺癌などの高い発生率の腫瘍型において、そして膵臓癌(これに関して、100%のEphA2過剰発現率を最近観察した、データは示さず)などの極めて攻撃的な癌において、多大な潜在性を有している。自己由来DC-EphA2ワクチンは、現在、RCC、メラノーマ、前立腺癌、頭部癌、および頸部癌または膵臓癌を有する患者を治療するために開発途上である。
【0084】
実施例2:リガンドアゴニストを用いて治療した後の、EphA2腫瘍の特異的CD8+T細胞認識のin vitroおよびin vivoでの条件誘導
細胞株および培地
T2.DR4(HLA-A2+/-DRβ1*0401) +細胞株を、ELISPOTアッセイにおいてペプチド-提示細胞として使用した。EphA2+ HLA-A2-PC-3前立腺癌細胞株を、EphA2タンパク質発現のウェスタンブロット解析についての陽性対照として使用し、そしてELISPOTアッセイにおける陰性対照標的としても使用した。SLR24、すなわちEphA2+ HLA-A2+細胞株(Tatsumi, T., et al. Cancer Res, 63 : 4481-4489, 2003)を、ウェスタンブロットおよびELISPOTアッセイにおいて試験し、そしてHu-SCID治療モデルにも利用した。すべての細胞株は、10%加熱不活性化ウシ胎児血清(FBS)、100 U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、および10 mM L-グルタミンを添加したRPMI-1640培養液中で(すべての試薬は、GIBCO/Life Technologies, Grand Island, New Yorkから入手)、加湿雰囲気下、5%CO2条件下で37℃にて維持した。
【0085】
マウス
6〜8週齢メスC.B-17scid/scidマウスを、Taconic Labs(Germantown, NY)から購入し、そしてマイクロアイソレーターケージ中で維持した。動物は、Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC)の承認を受けたプロトコルの下、研究室動物についての適切な飼育および利用に関する推奨に従って、無菌条件下にて飼育した。
【0086】
ウェスタンブロット解析
腫瘍細胞を、80〜90%コンフルエントまで増殖させ、血清を一晩枯渇させ、その後示されたアゴニストにより処置した。さらに、切除されたSLR24病変を、以下に概説するように、B61-Igの腫瘍内注射前および腫瘍内注射後24時間の時点で取得した。腫瘍サンプルを、ウサギ抗-ヒトEphA2ポリクローナル抗体(クローン:C-20)(Santa Cruz Biotechnology, Inc., Santa Cruz, CA)を使用して、ウェスタンブロットによりEphA2発現に関して解析した。いくつかの実験において、サンプルを、Axl(クローンC-20、Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA)タンパク質含量に関しても解析した。コンフルエントな組織培養フラスコから単離したか、または切除病変の酵素消化から単離した単一の腫瘍細胞懸濁物を、プロテアーゼ阻害剤(Complete, Roche Diagnostic, Mannheim, Germany)を含有するPBS中500μlの溶解バッファー(1% Triton-X、150 nM NaCl、10 mMTris pH7.4、1 mM EDTA、0.2 mM SOV、0.5% NP-40)を使用して、4℃にて30分間、溶解した。13,500×gにて20分間の遠心処理の後、上清をSDS-PAGE泳動用バッファーと1:1で混合し、そしてタンパク質を7.5%のPAGEゲル上で分離し、その後ニトロセルロース膜(Millipore, Bedford, MA)上にエレクトロブロッティングした。ブロットを、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)-抱合化ヤギ抗-ウサギIg(Biorad, Hercules, CA)およびWestern LightingTM化学発光検出キット(Perkin Elmer, Boston, MA)を使用した後、Kodak X-Omat Blue XB-1フィルム(NEN Life Science Products, Boston, MA)上に画像化した。EphA2についての免疫沈降を、抗-EphA2抗体D7(Upstate Biotech, Inc.)を使用して行った。抗-ホスホチロシン抗体(クローンpy99、Santa Cruz Biotechnology, San Diego, CA)を使用して、pEphA2含量を評価した。マウス抗-βアクチン抗体(クローンAC-15、Abcam, Cambridge, MA)をロード対照として使用した。
【0087】
EphA2アゴニスト
B61.IgおよびmAb208は、MedImmune(Gaithersburg, MD)からご厚意により提供を受けた。B61.Igは、マウスIgG抗体のFc部分と融合したephrin-A1のリガンド結合ドメインからなるキメラタンパク質であり、そして表示する場合30μg/mlでin vitroアッセイにおいて使用された。mAb208は、EphA2に対して特異的なマウスモノクローナル抗体であり、そして表示する場合8μg/mlでin in vitroアッセイにおいて使用された。
【0088】
抗-EphA2 CD8+ T細胞クローン
CL.142およびEphA2883-891に対して特異的なHLA-A2-拘束性CD8+ ヒトT細胞クローンE883を、以前に記載された様に(Tatsumi, T., et al. Cancer Res. 2003)作製した。
【0089】
ELISPOTアッセイ
In vitro T細胞応答を、以前に記載された様に(Tatsumi, T., et al. Cancer Res. 2003)、IFN-γELISPOTアッセイにより評価した。簡単に述べると、96-ウェルマルチスクリーン血球凝集素抗原プレート(Millipore, Bedford, MA)を、PBS(GIBCO/Life Technologies)中10μg/mlの抗-ヒトIFN-γmAb(1-D1 K;Mabtech, Stockholm, Sweden)を用いて4℃にて一晩コーティングした。非結合抗体を、PBSを用いて4回連続して洗浄することにより除去した。プレートをRPMI-1640/10%ヒト血清を用いてブロッキングした後(37℃にて1時間)、10μg/mlのEphA2883-891ペプチド(TLADFDPRV、SEQ ID NO: 2、残基883-891)を用いてパルス化した105個のCD8+ T細胞およびT2.DR4細胞(2×104細胞)またはB61.Igにより一晩処置したSLR24 +/-を、マルチスクリーン血球凝集素抗原プレート中に3つずつにして播いた。対照ウェルは、HIV-nef190-198ペプチド(AFHHVAREL、SEQ ID NO: 3)を用いてパルス化したT2.DR4細胞またはPC3を伴うCD8+、HLA-A2-EphA2+ 腫瘍細胞株またはT2.DR4細胞単独、を含有した。培養液(AIM-V;GIBCO/Life Technologies)を添加し、200μl/wellの最終容量とした。プレートを、IFN-γ評価のため、37℃、5%CO2にて24時間インキュベートした。PBS/0.05% Tween 20(PBS/T)により洗浄することにより、ELISPOTウェルから細胞を除去した。PBS/0.5%中2μg/mlのビオチン化mAb抗-ヒトIFN-γ(7-B6-1;Mabtec)により2時間インキュベーションすることにより、捕捉されたサイトカインをそれらの分泌部位にて検出した。プレートをPBS/Tを用いて6回洗浄し、そしてアビジン-ペルオキシダーゼ複合体(1:100希釈;Vectastain Elite Kit;Vector Laboratories, Burlingame, CA)を1時間添加した。PBS/Tを用いて3回連続的に洗浄し、その後PBSのみで3回すすぐことにより、非結合複合体を除去した。AEC基質(3-アミノ-9-エチルカルバゾール;Sigma, St. Louis, MO)を添加し、そしてIFN-γELISPOTに関しては、5分間インキュベートした。スポットをZeiss Autolmagerを使用して画像化した。
【0090】
フローサイトメトリー
対照またはリガンドアゴニストで処置した腫瘍細胞の表現型解析のため、HLAクラスIに対するPE-またはFITC-抱合化モノクローナル抗体(W6/32;汎-クラスI特異的;Serotec Inc., Raleigh, NC)またはヒトCD40に対するPE-またはFITC-抱合化モノクローナル抗体(Ancell Corp. , Bayport, MN)および適切な同位体対照(BD Biosciences, San Jose, CAから購入)を使用して、そしてフローサイトメトリー解析をFACscan(Becton Dickinson, San Jose, CA)フローサイトメーターを使用して行った。フローサイトメトリー解析の結果は、任意平均蛍光強度(MFI)単位で報告する。
【0091】
Hu-SCID腫瘍モデル
C.B17-scid/scidマウスの右側皮下に、1×106 SLR24 RCC細胞を注射し、そして腫瘍を約30 mm2のサイズにまで定着させた(すなわち注射後18日)。次に、腫瘍を有するマウスを4つの群にランダムに分け(同じ程度の腫瘍サイズを有する5匹ずつの動物)、無処置、18日に50μgのB61-Ig(50μl塩類溶液中)を腫瘍内に1回注射、19日目に100μl塩類溶液中5×106個のクローン化E883(抗-EphA2883-891特異的)CD8+ T細胞を尾静脈から1回注射、またはd18処方(B61-Ig)とd19処方(E883養子移植)との組み合わせ、のいずれかにより処置した。動物を3〜4日ごとに腫瘍サイズを評価し、腫瘍接種後40日に腫瘍のない状態に注目した。B61-Igの投与前および投与後のSLR24腫瘍病変中のEphA2含量を解析するため、腫瘍を麻酔したマウスから外科的に切除し、以前に記載されたように(Itoh, T., et al. J Immunol. 153: 1202-1215,1994)、DNAse、ヒアルロニダーゼ、DNAseカクテルを使用して一細胞懸濁物に消化し、そしてNitexメッシュ(Tetko, Kansas City, MO)を通して濾過した後、腫瘍細胞を可溶化しそして上述したようにウェスタンブロットに供した。
【0092】
統計解析
群間での統計的な差異は、両側Student'のTテストを使用して評価し、p値<0.05を有意とみなした。
【0093】
結果
B61.IgおよびmAb208は、EphA2リン酸化および分解を誘導する
以前の研究により、腫瘍細胞が不安定な細胞-細胞接触を有し、そしてこのことが、EphA2が隣接する細胞上でそのリガンドと相互作用する能力を低下させることが示された。結果的に、悪性細胞におけるEphA2は、一般的に、それ自体チロシンリン酸化されない。このことと一致して、悪性細胞(例えばPC3)中のEphA2は、わずかにリン酸化されることが、ウェスタンブロット解析により確認された。図26において、PC3(2〜4×106)細胞を、所定の時間点(分)にてB61.Ig(30μg/ml)またはmAb208(8μg/ml)のいずれかにより処理した。B61.Igは、ヒトFcドメインと融合したephrin-A1(EphA2の主要なリガンド)のEphA2結合ドメインからなる融合タンパク質である。細胞溶解物をSDS-PAGEにより分離し、そしてEphA2タンパク質を抗-EphA2抗体D7を使用して、プルダウンアッセイにおいて免疫沈降した。それぞれ抗-EphA2および抗-ホスホチロシン抗体を使用して、ウェスタンブロット解析を行った。データは、3回の独立して行われた実験の代表的なものである。しかしながら、安定な細胞内接触(アゴニスト性モノクローナル抗体および人工リガンド)が存在しない場合であっても、EphA2に結合することができる試薬によりこれらの細胞を処理することは、EphA2ホスホチロシン含量を増加させるために十分である。この処置がその後にEphA2タンパク質分解を誘導することを、細胞溶解物のイムノブロッティングにより確認した。等量がローディングされていることを確認するため、メンブレンをEphA2アゴニスト処理に反応して変化しないβ-アクチンに対して特異的な抗体によりプローブ化した。Axl受容体チロシンキナーゼレベルがEphA2-特異的試薬に反応して変化しないことを示すことにより、EphA2に対する特異性をさらに確認した。図27において、PC3細胞(左パネル)およびSLR24細胞(右パネル)を、B61.Ig(30μg/ml)またはmAb208(8μg/ml)のいずれかにより、37℃にて6時間処理した。細胞溶解物を12.5%SDS-PAGEにより分離し、そしてウェスタンブロット解析をポリクローナル抗-EphA2抗体および対照抗-βアクチン抗体を使用して行った。抗-AXL抗体を使用して、同様にして調製した溶解物を、これらの実験における特異性対照として画像化した。データは、各腫瘍細胞株について行った3回の独立した実験の代表的なものである。乳房細胞癌腫、肺細胞癌腫、膵臓細胞癌腫、および腎臓細胞癌腫の細胞モデルを含む、複数の様々なEphA2-過剰発現細胞システムにおいて、同様の知見が観察された(図27およびデータは示さず)。
【0094】
EphA2のリガンド-媒介性刺激は、受容体の内在化およびプロテアソームにおける分解を誘導するという証拠に基づいて、これらの知見を確認し、そして抗体刺激が同様にEphA2のプロテアソーム切断を誘導することを示す様に拡張した。図28Aおよび28Bにおいて、図26に関して既に記載したように、PC3細胞を処理しないか、またはB61.Ig(図28A)またはmAb208(図28B)を用いて処置した。MG-132(50μM)およびクロロキン(Chl.;100μM)も培養中に添加し、示す場合には、その30分後にEphA2アゴニストを添加し、24時間の実験時間培養中に残存させた。細胞溶解物を作製し、SDS-PAGEを使用して分離した。次に、抗-EphA2抗体および陰性対照抗-βアクチン抗体を使用してウェスタンブロット解析を行った。データは、3回の独立して行った実験の代表的なものである。EphA2分解を、26Sプロテアソーム阻害剤、MG-132により処置することにより阻害した。対照的に、エンドソーム/リソソーム阻害剤クロロキンを添加することにより、EphA2分解は阻害されず、従ってEphA2のプロテアソーム分解がEphA2分解の原因となる主要なメカニズムであり、リソソーム分解はそうではないことが示唆される。
【0095】
EphA2アゴニスト処理は、in VitroでのEphA2+腫瘍のCD8+ T細胞認識を亢進する
アゴニスト性抗体がEphA2のプロテアソーム分解を誘導したため、このことによりEphA2ペプチドのHLAクラスI複合体に対する提示を増大させることができるとの仮説が立てられた。これが正しいならば、EphA2のアゴニズムにより、EphA2-特異的CD8+ T細胞による認識を亢進することができると論理的には考えられる。この問題に対処するため、EphA2+ SLR24 RCC細胞をB61-Igを用いてインキュベートし、その後それらがEphA2883-891特異的CTLクローン142(CL.142)により認識される能力を評価した。T細胞活性化の読み出しのため、サンプルをIFN-γ-ベースのELISPOTアッセイに供した。図29において、抗-EphA2 CTLクローンCL142(Dobrzanski, P., et al. Cancer Res. 64: 910-919,2004)を、EphA2883-891ペプチドエピトープを用いてパルス化したT2.DR4(A2+)細胞に対する応答性、または標的としての非処置またはアゴニスト-誘導化HLA-A2+/EphA2+ SLR24細胞に対する応答性を、IFN-γELISPOTアッセイにおいて解析した。対照標的細胞には、HLA-A2-提示HIV-nef190-198(ペプチド特異性についての陰性対照)によりパルス化したT2.DR4細胞、およびPC3(HLA-A2-/EphA2+)前立腺癌細胞が含まれる。B61.Ig処置(30μg/ml)を一晩行い、EphA2分解およびHLA抗原プロセッシングとEphA2エピトープの提示とを確実に行った。データは、IFN-γ特異的スポット数/10,000 CL.142細胞で報告され、そして3回行った実験のうち1回の代表的な実験に由来する。
【0096】
SLR24をB61.Igを用いて事前処理すると、SLR24のCL.142認識が、非処置対照細胞と比較して、有意に亢進した。腫瘍細胞認識の上昇が、HLAクラスIまたは同時刺激性分子の腫瘍細胞発現が変化するためである可能性が考えられた。これに対処するため、SLR24細胞をアゴニスト性抗体で処置し、そしてHLAクラスIおよびCD40の表面レベルをフローサイトメトリーにより評価した。注目すべきことに、HLAクラスIおよびCD40の両方の染色強度は、EphA2のアゴニズムにより有意には変化しなかった(表4)。この作用の選択性に関するさらなる対照として、HLA-A2アロ反応性CTLによるSLR24腫瘍細胞の認識が、EphA2アゴニストでの処置前と処置後とで変化しないことが観察された(データは示さず)。
【0097】
【表4】
【0098】
上述の図28Aおよび28Bの記載において概説したように、SLR24 RCC細胞株を処置しないか、またはmAb208(10μg/ml)により処置した。次いで、処置細胞を、材料と方法において記載した様に、フローサイトメトリーによりHLAクラスI分子およびCD40分子の発現について解析した。示したデータは、示されたマーカーについての発現の平均蛍光強度である。
【0099】
EphA2アゴニスト処置により、Hu-SCID腫瘍モデルにおいて、養子移植された抗-EphA2 CD8+ T細胞の効率が亢進される
EphA2+ 腫瘍に対する抗-EphA2 CD8+ T細胞応答性の条件付きの(アゴニスト誘導性の)上昇が臨床的に潜在的に有意であるかどうかを調べるため、Hu-SCID腫瘍モデルシステムを確立した。SLR24腫瘍をC.B-17 scid/scidマウスに注射し、そして約30 mm2のサイズまで進行させ、その時点で動物を非処置のままにするかまたはB61-Igを腫瘍内に注射するか(腫瘍接種後18日)および/またはHLA-A2-拘束性抗-EphA2883-891CD8+ T細胞クローン(E883)を静脈内に送達するかにより処置した。図30Aにおいて;メスCB17-scid/scidマウスの右側皮下に、1×106個のヒトSLR24(HLA-A2+/EphA2+)RCC細胞を注射し、そして約30 mm2のサイズに成長させた(すなわちd18)。次いで、動物を、治療なし(対照)、EphA2分解とプロテアソーム処理を誘導するためd18にB61-Igの腫瘍内注射(50μg)、d19に5×106個のクローン化E883抗-EphA2883-891CD8+ T細胞の静脈内(尾静脈)注射、またはB61-Ig注射(d18)とCD8+ T細胞注射(d19)の両方を受ける4群のコホート(各5頭の動物)にランダムに分けた。動物を腫瘍サイズに関して3〜4日ごとに評価し、腫瘍接種後40日に腫瘍のない状態に注目した。矢印は、処理日を示す。図30Bにおいて、繰り返しの実験において、腫瘍を19日目に動物から切除し(すなわち、B61-Ig投与から24時間後)、そしてウェスタンブロットを行って、EphA2分解をin situで確認した。
【0100】
図30Aに示すように、B61-IgまたはE883 T細胞のいずれかを投与することにより、SLR24腫瘍の増殖遅延を促進するが、一方これらの治療により治癒した動物はいなかった。正反対に、B61-Ig送達を含む組み合わせ治療(in situでEphA2プロセッシングを促進した、図30B)および抗-EphA2 CD8+ T細胞の養子移植により、5匹の治療したマウスのうち5匹において、疾患が急速に解決した。B61-Ig処置のみの場合と比較して、対照のコホート群においては、B61-Ig処置とHLA-A2-提示インフルエンザマトリクス58-66エピトープに特異的なクローン化CD8+ T細胞の養子移植とを組み合わせることにより、有益性が向上しなかった(データは示さず)。
【0101】
本研究の主要な知見は、EphA2自己リン酸化およびプロテアソーム処理を促進するアゴニストにより腫瘍細胞を処置することによっても、in vitroおよびin vivoの両方において、EphA2-特異的CD8+ T-細胞による認識が向上する、ということである。結果として、EphA2-応答性CD8+ T細胞は、腫瘍病変の退縮をin situで媒介する際により有効にする。
【0102】
正常上皮において、EphA2は、細胞-細胞境界に局在し、そこでは構成的にそのリガンドに対して結合する。結果的に、非-形質転換細胞におけるEphA2は、チロシンリン酸化され、そして上皮細胞の増殖を制限する様に機能するシグナルを媒介する。特に、リン酸化EphA2分子は、SH2ドメインを含有するアダプタータンパク質(例えば、c-Cbl、SHC、SLAP、およびGRB2)と共にシグナル伝達複合体を形成し、そして選択された下流エフェクター(例えばFAK、SHP-2、PI 3-キナーゼ、LMW-PTP)の酵素活性を変化させる。次いで、これらのシグナルにより、EphA2+ 上皮細胞が周囲の細胞外マトリクス(ECM)と安定的な接触を確立する能力または維持する能力が減少する。
【0103】
c-Cblとの相互作用は、本発明の知見と特に関連している。c-Cblは、ユビキチン-E3リガーゼを含有し、そしてプロテアソームを介した分解に関してタンパク質を標的とする。プロテアソーム分解が、おそらくはEphA2を、引き続いて生じるエフェクターT細胞に対する抗原提示に関してHLA複合体中に負荷されるペプチドへと切断することにより、EphA2のT細胞認識を増加させることが、この結果から本明細書中で示される。
【0104】
腫瘍細胞は一般的に、不安定な細胞-細胞接触を有しており、それがEphA2がその膜に固定されたリガンドへ接近することを妨害する様である。このことは、腫瘍細胞中のEphA2が過剰発現されるが、リン酸化されないという実験的証拠と一致している。リガンド結合の減少と併せて、腫瘍細胞により発現されたEphA2分子は、特定の発ガン性ホスファターゼの基質として機能し、それがEphA2ホスホチロシン含量を減少させる追加的な手段を提供する。原因にかかわらず、ホスホチロシン含量の減少は、腫瘍細胞におけるEphA2がそれらの悪性特性を増大させることを引き起こす。部分的には、侵襲性の増大が、腫瘍細胞とECMとの相互作用の増大と関連している。これらの変化は、癌の臨床的試料においてしばしば観察される。そのような条件下では、EphA2リガンドアゴニストは、接触阻害を受けた増殖のパターンを正常な状態に回復させ、そしてEphA2+ 腫瘍細胞の侵襲性を減少させることができる。
【0105】
アゴニスト性試薬が条件的にそして特異的にEphA2分解を誘導する能力により、EphA2+ 癌を有する患者を治療するための新たな治療戦略を開発するための機会が提供される。特に、これらの結果から、受動的および能動的EphA2-特異的免疫療法を組み合わせることにより、内在性の抗-EphA2 T細胞-媒介性免疫の臨床的インパクトを向上させることができることが示唆される。以前の研究においては、ガン患者から単離されたT細胞サブセットを、HLA分子上のEphA2ペプチドを提示することにより、刺激することができることが示された(Tatsumi, T., Cancer Res. 2003およびAlves, P. M. et al., Cancer Res. 63: 8476-8480, 2003)。これらの研究は、臨床において確実に利用することができたDC-ベースのワクチン化アプローチを使用して、T細胞のex vivo刺激を使用して行った。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】図1は、ヒトEphA2のアミノ酸配列(SEQ ID NO: 2)(GenBankアクセッション番号AAH37166(同様にNM_004431))を提供する。
【図2】図2は、ヒトEphA2の核酸配列(SEQ ID NO: 1)(GenBankアクセッション番号BC037166(同様にNM_004431))を提供する。
【図3】図3は、ヒトMHCクラスIIアリルの限定的ではないリストを提供する。
【図4】図4は、ヒトMHCクラスIアリルの限定的ではないリストを提供する。
【図5】図5は、クラスIアリルHLA-A1(示したように、SEQ ID NO: 2の部分)に対するEphA2アミノ酸配列中のin silico予測されたMHCクラスI結合ペプチドを提供する。図5〜8において、“スコア”は、リストに記載された配列を含有する分子の半減期(T1/2)の推定に付いて言及する。
【図6】図6は、クラスIアリルHLA-A3(示したように、SEQ ID NO: 2の部分)に対するEphA2アミノ酸配列中のin silico予測されたMHCクラスI結合ペプチドを提供する。
【図7】図7は、クラスIアリルHLA-B7(示したように、SEQ ID NO: 2の部分)に対するEphA2アミノ酸配列中のin silico予測されたMHCクラスI結合ペプチドを提供する。
【図8】図8は、クラスIアリルHLA-B44(示したように、SEQ ID NO: 2の部分)に対するEphA2アミノ酸配列中のin silico予測されたMHCクラスI結合ペプチドを提供する。
【図9】図9は、クラスIIアリルHLA-DRβ1*0101(示したように、SEQ ID NO: 2の部分)に対するEphA2アミノ酸配列中のin silico予測されたMHCクラスII結合ペプチドを提供する。図9〜17において、“スコア”は、ペプチドを同定するために使用されるソフトウェアにより生成された理論的陽性対照に対して結合することについての比較について言及する。
【図10】図10は、クラスIIアリルHLA-DRβ1*0301(示したように、SEQ ID NO: 2の部分)に対するEphA2アミノ酸配列中のin silico予測されたMHCクラスII結合ペプチドを提供する。
【図11】図11は、クラスIIアリルHLA-DRβ1*0401(示したように、SEQ ID NO: 2の部分)に対するEphA2アミノ酸配列中のin silico予測されたMHCクラスII結合ペプチドを提供する。
【図12】図12は、クラスIIアリルHLA-DRβ1*0701(示したように、SEQ ID NO: 2の部分)に対するEphA2アミノ酸配列中のin silico予測されたMHCクラスII結合ペプチドを提供する。
【図13】図13は、クラスIIアリルHLA-DRβ1*0801(示したように、SEQ ID NO: 2の部分)に対するEphA2アミノ酸配列中のin silico予測されたMHCクラスII結合ペプチドを提供する。
【図14】図14は、クラスIIアリルHLA-DRβ1*1101(示したように、SEQ ID NO: 2の部分)に対するEphA2アミノ酸配列中のin silico予測されたMHCクラスII結合ペプチドを提供する。
【図15】図15は、クラスIIアリルHLA-DRβ1*1301(示したように、SEQ ID NO: 2の部分)に対するEphA2アミノ酸配列中のin silico予測されたMHCクラスII結合ペプチドを提供する。
【図16】図16は、クラスIIアリルHLA-DRβ1*1501(示したように、SEQ ID NO: 2の部分)に対するEphA2アミノ酸配列中のin silico予測されたMHCクラスII結合ペプチドを提供する。
【図17】図17は、クラスIIアリルHLA-DRβ5*0101(示したように、SEQ ID NO: 2の部分)に対するEphA2アミノ酸配列中のin silico予測されたMHCクラスII結合ペプチドを提供する。
【図18】図18は、示されたRCC細胞株から生成された溶解物の解析を示すウェスタンブロットである。
【図19】図19は、RCC細胞株におけるEphA2の発現を示す顕微鏡写真である。
【図20】図20は、EphA2-由来エピトープに対するRCC患者CD8+ T細胞応答と疾患状態の関係に付いてのIFN-γELISPOT(酵素-結合免疫スポット)解析を示すグラフを提供する。
【図21】図21は、EphA2-由来エピトープに対するRCC患者CD8+ T細胞応答と疾患状態の関係についてのIFN-γELISPOT解析を示すグラフを提供する。
【図22】図22は、EphA2 エピトープに対する4人のRCCを有するHLA-A2+患者における手術前と手術後とを比較した末梢血CD8+ T細胞応答における観察された変化をしメスグラフを提供する。
【図23】図23は、活性な疾患を有するHLA-DR4+RCC患者におけるEphA2 Thエピトープに対する機能的CD4+ T細胞応答の疾患状態のゆがみを示すグラフを提供する。
【図24】図24は、Th1-型の治療関連増強、およびTh2-型の減少、Stage I RCCを有するHLA-A2+/DR4+患者EphA2 Th エピトープに対するCD4+ T細胞応答を示すグラフを提供する。
【図25】図25は、Stage IV RCCを有するHLA-DR4+患者における、EphA2 Thエピトープに対する抑制的CD4+ T細胞応答を示すグラフを提供する。
【図26】図26は、EphA2アゴニストがEphA2のリン酸化を誘導することを示すウェスタンブロットである。
【図27】図27は、EphA2アゴニストが、EphA2の分解を誘導することを示す。
【図28】図28Aおよび28BはEphA2アゴニスト-誘導分解が、MG132により阻害されるが、クロロキニンによっては阻害されないことを示す。
【図29】図29は、EphA2アゴニストが、抗-EphA2 CD8+ T細胞クローンCL 142による認識に対してRCC細胞株SLR24を感作ことを示すグラフである。
【図30】図30Aおよび30Bは、insituでの腫瘍細胞EphA2の“アゴニスト性”誘導が、養子移植された抗-EphA2特異的CD8+ T細胞の治療高率を向上させることを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
EphA2 T細胞エピトープを含む、EphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項2】
本質的にEphA2 T細胞エピトープからなる、請求項1に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項3】
EphA2 T細胞エピトープを含むペプチドを含む、請求項1に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項4】
ペプチドが約9〜約35アミノ酸からなる、請求項3に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項5】
ペプチドが約9〜約25アミノ酸からなる、請求項3に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項6】
ペプチドが約20アミノ酸未満である、請求項3に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項7】
ペプチドが、SEQ ID NO: 2の少なくとも約9個の連続したアミノ酸を含む、請求項3に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項8】
ペプチドがSEQ ID NO: 2の約9〜約25個の連続したアミノ酸を含む、請求項7に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項9】
a. 1またはそれ以上のアミノ酸残基がペプチド中に挿入されたペプチドの保存的誘導体、または
b. 1またはそれ以上のペプチドのアミノ酸残基が、1またはそれ以上の異なるアミノ酸残基により置換されたペプチドの保存的誘導体、であって
ここで保存的誘導体のMHC分子への結合が、EphA2またはその断片のMHC分子に対する結合と比較して、実質的に同等かもしくは亢進されているもの、
を含む、請求項7に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項10】
ペプチド断片をプロテアソーム切断部位でのプロテアソーム切断により生成することができる、請求項3に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項11】
プロテアソーム切断部位が、プロテアソーム切断予測アルゴリズムにしたがって決定される、請求項10に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項12】
アゴニストが1またはそれ以上のN-末端修飾、C-末端修飾、内部修飾、または非標準残基を含む修飾ペプチドである、請求項1に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項13】
N-末端修飾、C-末端修飾、内部修飾、または非標準残基が、可溶性基;疎水基;脂質基;親水基;タグ;蛍光タグ;ポリペプチドタグ;膜貫通シグナル配列またはその部分;アミノ酸エナンチオマーおよびアセチル、ベンジルオキシカルボニル、ビオチン、シンナモイル、Dabcyl、ダブシル(dabsyl)、ダンシル、ジニトロフェニル、シアニン、フルオレセイン、fmoc、ホルミル、リサミン(lissamine)ローダミン、ミリストイル、n-メチル、パルミトイル、steroyl、7-メトキシクマリン酢酸、ビオチン、Dabcyl、ダブシル(dabsyl)、ダンシル、ジスルフィド、アセトアミドメチル、アミノヘキサン酸、アミノイソ酪酸、βアラニン、シクロヘキシルアラニン、d-シクロヘキシルアラニン、e-アセチルリジン、γアミノ酪酸、ヒドロキシプロリン、ニトロ-アルギニン、ニトロ-フェニルアラニン、ニトロ-チロシン、ノルロイシン、ノルバリン、オクタヒドロインドールカルボン酸、オルニチン、ペニシラミン、フェニルグリシン、ホスホセリン、ホスホトレオニン、ホスホチロシン、L-マロニルチロシン、ピログルタメート、テトラヒドロイソキノリン、アミド、N-置換グリシン、の一つ;非-アミノアシルおよびN-アセチルグリシン基;からなる群から選択される、請求項12に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項14】
アゴニストが、EphA2 T細胞エピトープを含む、ペプチドまたはペプチド模倣体ペプチド模倣体である、請求項1に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項15】
1またはそれ以上の以下のEphA2エピトープ配列:TLADFDPRV(SEQ ID NO: 2、残基883-891);VLLLVLAGV(SEQ ID NO: 2、残基546-554);VLAGVGFFI(SEQ ID NO: 2、残基550-558);IMNDMPIYM(SEQ ID NO: 2、残基58-66);SLLGLKDQV(SEQ ID NO: 2、残基961-969);WLVPIGQCL(SEQ ID NO: 2、残基253-261);LLWGCALAA(SEQ ID NO: 2、残基12-20);GLTRTSVTV(SEQ ID NO: 2、残基391-399);NLYYAESDL(SEQ ID NO: 2、残基120-128);KLNVEERSV(SEQ ID NO: 2、残基162-170);IMGQFSHHN(SEQ ID NO: 2、残基666-674);YSVCNVMSG(SEQ ID NO: 2、残基67-75);MQNIMNDMP(SEQ ID NO: 2、残基55-63);および図5〜17の1またはそれ以上に示した配列を含有するT細胞エピトープを含む、請求項1に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項16】
1またはそれ以上の以下のアミノ酸配列:TLADFDPRV(SEQ ID NO: 2、残基883-891);VLLLVLAGV(SEQ ID NO: 2、残基546-554);VLAGVGFFI(SEQ ID NO: 2、残基550-558);IMNDMPIYM(SEQ ID NO: 2、残基58-66);SLLGLKDQV(SEQ ID NO: 2、残基961-969);WLVPIGQCL(SEQ ID NO: 2、残基253-261);LLWGCALAA(SEQ ID NO: 2、残基12-20);GLTRTSVTV(SEQ ID NO: 2、残基391-399);NLYYAESDL(SEQ ID NO: 2、残基120-128);KLNVEERSV(SEQ ID NO: 2、残基162-170);IMGQFSHHN(SEQ ID NO: 2、残基666-674);YSVCNVMSG(SEQ ID NO: 2、残基67-75);MQNIMNDMP(SEQ ID NO: 2、残基55-63);および図5〜17の1またはそれ以上において示される配列、またはそれらの保存的誘導体を含む、ペプチドまたはその修飾版を含む、請求項1に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項17】
本質的に1またはそれ以上の以下のアミノ酸配列:TLADFDPRV(SEQ ID NO: 2、残基883-891);VLLLVLAGV(SEQ ID NO: 2、残基546-554);VLAGVGFFI(SEQ ID NO: 2、残基550-558);IMNDMPIYM(SEQ ID NO: 2、残基58-66);SLLGLKDQV(SEQ ID NO: 2、残基961-969);WLVPIGQCL(SEQ ID NO: 2、残基253-261);LLWGCALAA(SEQ iD NO : 2、残基12-20);GLTRTSVTV(SEQ ID NO: 2、残基391-399);NLYYAESDL(SEQ ID NO: 2、残基120-128);KLNVEERSV(SEQ ID NO : 2、残基162-170);IMGQFSHHN(SEQ ID NO: 2、残基666-674);YSVCNVMSG(SEQ ID NO: 2、残基67-75);MQNIMNDMP(SEQ ID NO: 2、残基55-63);および図5〜17の1またはそれ以上で示される配列、またはそれらの保存的誘導体からなる、ペプチドまたはその修飾版を含む、請求項1に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項18】
以下のペプチド:TLADFDPRV(SEQ ID NO: 2、残基883-891);VLLLVLAGV(SEQ ID NO: 2、残基546-554);VLAGVGFFI(SEQ ID NO: 2、残基550-558);IMNDMPIYM(SEQ ID NO: 2、残基58-66);SLLGLKDQV(SEQ ID NO: 2、残基961-969);WLVPIGQCL(SEQ ID NO: 2、残基253-261);LLWGCALAA(SEQ ID NO: 2、残基12-20);GLTRTSVTV(SEQ ID NO: 2、残基391-399);NLYYAESDL(SEQ ID NO: 2、残基120-128);KLNVEERSV(SEQ ID NO: 2、残基162-170);IMGQFSHHN(SEQ ID NO: 2、残基666-674);YSVCNVMSG(SEQ ID NO: 2、残基67-75);MQNIMNDMP(SEQ ID NO: 2、残基55-63);および図5〜17の1またはそれ以上で示される配列、またはそれらの保存的誘導体、の一つからなる、請求項1に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項19】
以下のペプチド:TLADFDPRV(SEQ ID NO: 2、残基883-891);VLLLVLAGV(SEQ ID NO: 2、残基546-554);VLAGVGFFI(SEQ ID NO: 2、残基550-558);IMNDMPIYM(SEQ ID NO: 2、残基58-66);SLLGLKDQV(SEQ ID NO: 2、残基961-969);WLVPIGQCL(SEQ ID NO: 2、残基253-261);LLWGCALAA(SEQ ID NO: 2、残基12-20);GLTRTSVTV(SEQ ID NO: 2、残基391-399);NLYYAESDL(SEQ ID NO: 2、残基120-128);KLNVEERSV(SEQ ID NO: 2、残基162-170);IMGQFSHHN(SEQ ID NO: 2、残基666-674);YSVCNVMSG(SEQ ID NO: 2、残基67-75);MQNIMNDMP(SEQ ID NO: 2、残基55-63);EAGIMGQFSHHNIIR(SEQ ID NO: 2、残基663-677);PIYMYSVCNVMSG(SEQ ID NO: 2、残基63-75);およびDLMQNIMNDMPIYMYS(SEQ ID NO: 2、残基53-68);の一つからなる、請求項1に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項20】
天然EphA2タンパク質の約9〜約100個の連続したアミノ酸からなるペプチドを含む、請求項1に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項21】
EphA2タンパク質の約9〜約25個の連続したアミノ酸からなるペプチドを含む、請求項1に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項22】
EphA2 T細胞エピトープが、SEQ ID NO: 2のEphA2アミノ酸残基12〜20;53〜75;120〜128;162〜170;253〜261;391〜399;546〜558;663〜677;883〜891;または961〜969に実質的に含有されるT細胞エピトープである、請求項1に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項23】
スペーサーにより分離された2またはそれ以上のEphA2 T細胞エピトープを含む、請求項1に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項24】
図3および図4に列挙されたMHCアリルにより示されるペプチドを含有するT細胞エピトープを含む、請求項1に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項25】
請求項1に記載の1またはそれ以上のEphA2 T細胞エピトープアゴニストおよび薬学的に許容可能な賦形剤、担体、希釈剤、アジュバントまたはビヒクルを含む組成物。
【請求項26】
アミノ酸配列TLADFDPRV(SEQ ID NO: 2、残基883-891)を含む、EphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項27】
アミノ酸配列VLLLVLAGV(SEQ ID NO: 2、残基546-554)を含む、EphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項28】
アミノ酸配列VLAGVGFFI(SEQ ID NO: 2、残基550-558)を含む、EphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項29】
アミノ酸配列IMNDMPIYM(SEQ ID NO: 2、残基58-66)を含む、EphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項30】
アミノ酸配列SLLGLKDQV(SEQ ID NO: 2、残基961-969)を含む、EphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項31】
アミノ酸配列WLVPIGQCL(SEQ ID NO: 2、残基253-261)を含む、EphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項32】
アミノ酸配列LLWGCALAA(SEQ ID NO: 2、残基12-20)を含む、EphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項33】
アミノ酸配列GLTRTSVTV(SEQ ID NO: 2、残基391-399)を含む、EphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項34】
アミノ酸配列NLYYAESDL(SEQ ID NO: 2、残基120-128)を含む、EphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項35】
アミノ酸配列KLNVEERSV(SEQ ID NO: 2、残基162-170)を含む、EphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項36】
アミノ酸配列IMGQFSHHN(SEQ ID NO: 2、残基666-674)を含む、EphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項37】
アミノ酸配列YSVCNVMSG(SEQ ID NO: 2、残基67-75)を含む、EphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項38】
アミノ酸配列MQNIMNDMP(SEQ ID NO: 2、残基55-63)を含む、EphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項39】
1またはそれ以上のEphA2 T細胞エピトープを含有するEphA2 T細胞エピトープアゴニストを含有する化合物または組成物に対する患者の免疫応答性を決定することを含む、患者におけるEphA2-反応性T-細胞の数および/または状態をモニターする方法。
【請求項40】
1またはそれ以上のEphA2 T細胞エピトープを含有する化合物または組成物に対する患者の免疫応答性を、ELISPOTアッセイを用いて調べることを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
ELISPOTアッセイが、MHCクラスIタンパク質-提示EphA2エピトープまたはその保存的誘導体に対するCD8+応答を検出する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
MHCクラスIタンパク質が、HLA-A2タンパク質である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
ELISPOTアッセイが、IFN-γの産生を検出する、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
ELISPOTアッセイが、MHCクラスIIタンパク質-提示EphA2エピトープまたはその保存的誘導体に対するCD4+応答を検出する、請求項37に記載の方法。
【請求項45】
MHCクラスIIタンパク質がHLA-DR4タンパク質である、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
ELISPOTアッセイがIL-5の産生を検出する、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
T細胞および抗原提示細胞を含有する細胞集団を、1またはそれ以上のEphA2 T細胞エピトープアゴニストを含有する化合物または組成物と接触させることを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項48】
EphA2 T細胞エピトープアゴニストが、以下の配列:TLADFDPRV(SEQ ID NO: 2、残基883-891);VLLLVLAGV(SEQ ID NO: 2、残基546-554);VLAGVGFFI(SEQ ID NO: 2、残基550-558);IMNDMPIYM(SEQ ID NO: 2、残基58-66);SLLGLKDQV(SEQ ID NO: 2、残基961-969);WLVPIGQCL(SEQ ID NO: 2、残基253-261);LLWGCALAA(SEQ ID NO: 2、残基12-20);GLTRTSVTV(SEQ ID NO: 2、残基391-399);NLYYAESDL(SEQ ID NO: 2、残基120-128);KLNVEERSV(SEQ ID NO: 2、残基162-170);IMGQFSHHN(SEQ ID NO: 2、残基666-674);YSVCNVMSG(SEQ ID NO: 2、残基67-75);MQNIMNDMP(SEQ ID NO: 2、残基55-63);および図5〜17の1またはそれ以上で示される配列、の一つに含有されるT細胞エピトープを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
EphA2 T細胞エピトープアゴニストが、以下の配列:TLADFDPRV(SEQ ID NO: 2、残基883-891);VLLLVLAGV(SEQ ID NO: 2、残基546-554);VLAGVGFFI(SEQ ID NO: 2、残基550-558);IMNDMPIYM(SEQ ID NO: 2、残基58-66);SLLGLKDQV(SEQ ID NO: 2、残基961-969);WLVPIGQCL(SEQ ID NO: 2、残基253-261);LLWGCALAA(SEQ ID NO: 2、残基12-20);GLTRTSVTV(SEQ ID NO: 2、残基391-399);NLYYAESDL(SEQ ID NO: 2、残基120-128);KLNVEERSV(SEQ ID NO: 2、残基162-170);IMGQFSHHN(SEQ ID NO: 2、残基666-674);YSVCNVMSG(SEQ ID NO: 2、残基67-75);MQNIMNDMP(SEQ ID NO: 2、残基55-63);EAGIMGQFSHHNIIR(SEQ ID NO: 2、残基663-677);PIYMYSVCNVMSG(SEQ ID NO: 2、残基63-75);およびDLMQNIMNDMPIYMYS(SEQ ID NO: 2、残基53-68);および図5〜17の1またはそれ以上で示される配列、からなる群から選択される1またはそれ以上の配列を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
EphA2が過剰発現されている患者に対して、患者におけるEphA2に対する免疫応答を誘導するために有効な量の請求項1に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニストを投与することを含む、前記患者における癌の増殖を阻害する方法。
【請求項51】
患者の抗原提示細胞をEphA2 T細胞エピトープアゴニストと接触させることを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
患者の抗原提示細胞をEphA2 T細胞エピトープアゴニストと接触させることを、2回またはそれ以上繰り返す、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
a)患者から抗原提示細胞を含む細胞を単離し;
b)その抗原提示細胞をEphA2 T細胞エピトープアゴニストと接触させ;そして
c)EphA2 T細胞エピトープアゴニスト-接触抗原提示細胞を患者に再導入する;
ことを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
EphA2 T細胞エピトープアゴニストが、以下のEphA2 エピトープ配列:TLADFDPRV(SEQ ID NO: 2、残基883-891);VLLLVLAGV(SEQ ID NO: 2、残基546-554);VLAGVGFFI(SEQ ID NO: 2、残基550-558);IMNDMPIYM(SEQ ID NO: 2、残基58-66);SLLGLKDQV(SEQ ID NO: 2、残基961-969);WLVPIGQCL(SEQ ID NO: 2、残基253-261);LLWGCALAA(SEQ ID NO: 2、残基12-20);GLTRTSVTV(SEQ IDNO: 2、残基391-399);NLYYAESDL(SEQ ID NO: 2、残基120-128);KLNVEERSV(SEQ ID NO: 2、残基162-170);IMGQFSHHN(SEQ ID NO: 2、残基666-674);YSVCNVMSG(SEQ ID NO: 2、残基67-75);MQNIMNDMP(SEQ ID NO: 2、残基55-63);および図5〜17の1またはそれ以上で示される配列、の一つに含有されるT細胞エピトープを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
EphA2 T細胞エピトープアゴニストが、以下の配列:TLADFDPRV(SEQ ID NO: 2、残基883-891);VLLLVLAGV(SEQ ID NO: 2、残基546-554);VLAGVGFFI(SEQ ID NO: 2、残基550-558);IMNDMPIYM(SEQ ID NO: 2、残基58-66);SLLGLKDQV(SEQ ID NO: 2、残基961-969);WLVPIGQCL(SEQ ID NO: 2、残基253-261);LLWGCALAA(SEQ ID NO: 2、残基12-20);GLTRTSVTV(SEQ ID NO: 2、残基391-399);NLYYAESDL(SEQ ID NO: 2、残基120-128);KLNVEERSV(SEQ ID NO: 2、残基162-170);IMGQFSHHN(SEQ ID NO: 2、残基666-674);YSVCNVMSG(SEQ ID NO: 2、残基67-75);MQNIMNDMP(SEQ ID NO: 2、残基55-63);および図5〜17の1またはそれ以上で示される配列、からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項56】
患者に対してEphA2リガンドまたはそのアゴニストを投与することをさらに含む、請求項50に記載の方法。
【請求項57】
EphA2リガンドまたはそのアゴニストが、
(a)EphA2に結合することができる結合試薬;および
(b)ephrinA1またはそのアゴニスト;
の一つである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
患者の抗原提示細胞をEphA2 T細胞エピトープアゴニストと接触させることと、患者に対してEphA2リガンドまたはそのアゴニストを投与することの少なくとも一方を、2回またはそれ以上繰り返す、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
患者の抗原提示細胞をEphA2 T細胞エピトープアゴニストと接触させることと、患者に対してEphA2リガンドまたはそのアゴニストを投与することとを、交互に行う、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
EphA2 T細胞エピトープアゴニストを、患者体内に直接的に導入する、請求項50に記載の方法。
【請求項61】
EphA2 T細胞エピトープアゴニストを患者体内に筋肉内注射する、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
EphA2 T細胞エピトープアゴニストを、EphA2 T細胞エピトープアゴニストを発現するための遺伝子を、患者の細胞内に導入することにより投与する、請求項50に記載の方法。
【請求項63】
5'から3'方向へ機能可能に連結した、プロモーター、1またはそれ以上のEphA2 T細胞エピトープおよびポリアデニル化シグナルを含むペプチドをコードする、全長EphA2コーディング配列以外のコーディング配列、を含む、単離された核酸。
【請求項64】
プロモーターが、構成的なもの、組織特異的なもの、または誘導可能なもののいずれかである、請求項63に記載の核酸。
【請求項65】
EphA2 T細胞エピトープアゴニストを含むペプチドをコードする配列が、親和性選択タグをコードする配列を含む、請求項63に記載の核酸。
【請求項66】
タグが、ポリヒスチジンタグである、請求項65に記載の核酸。
【請求項67】
細胞中で核酸を増幅させるための配列をさらに含む、請求項63に記載の核酸。
【請求項68】
細胞中の核酸の増幅のための配列が、プラスミド骨格である、請求項67に記載の核酸。
【請求項69】
EphA2 T細胞エピトープアゴニストを含むペプチドをコードする配列が、膜貫通シグナル配列をコードする配列を含む、請求項63に記載の核酸。
【請求項70】
ペプチドをコードする配列が、EphA2 T細胞エピトープをコードする2またはそれ以上の配列を含むペプチドをコードし、ここで複数のEphA2 T細胞エピトープは場合により、スペーサーにより、好ましくは1〜約10アミノ酸のスペーサーにより、分離されている、請求項69に記載の核酸。
【請求項71】
表面上にEphA2を発現する腫瘍細胞と、
(a)EphA2に対して結合することができる結合試薬;および
(b)ephrinA1またはそのアゴニスト;
の一つを含むEphA2リガンドまたはそのアゴニストとを接触させることを含む、EphA2に対する患者の免疫応答を修飾する方法。
【請求項72】
結合試薬が、Fv断片;一本鎖Fv(scFv)断片;Fab'断片;F(ab')2断片;ラクダ化(camelized)抗体および抗体断片;上記のものの多価版;単一特異性抗体または二特異性抗体;ジスルフィド安定化Fv断片、scFvタンデム;二重特異性抗体(diabody);三重特異性抗体(tribody);四重特異性抗体(tetrabody);ロイシンジッパーまたはヘリックス安定化scFv断片;組換え抗体またはその断片;アプタマーおよびファージディスプレイ生成物からなる群から選択される、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
EphA2リガンドまたはそのアゴニストが、ephrinA1またはそのアゴニストである、請求項71に記載の方法。
【請求項1】
EphA2 T細胞エピトープを含む、EphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項2】
本質的にEphA2 T細胞エピトープからなる、請求項1に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項3】
EphA2 T細胞エピトープを含むペプチドを含む、請求項1に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項4】
ペプチドが約9〜約35アミノ酸からなる、請求項3に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項5】
ペプチドが約9〜約25アミノ酸からなる、請求項3に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項6】
ペプチドが約20アミノ酸未満である、請求項3に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項7】
ペプチドが、SEQ ID NO: 2の少なくとも約9個の連続したアミノ酸を含む、請求項3に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項8】
ペプチドがSEQ ID NO: 2の約9〜約25個の連続したアミノ酸を含む、請求項7に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項9】
a. 1またはそれ以上のアミノ酸残基がペプチド中に挿入されたペプチドの保存的誘導体、または
b. 1またはそれ以上のペプチドのアミノ酸残基が、1またはそれ以上の異なるアミノ酸残基により置換されたペプチドの保存的誘導体、であって
ここで保存的誘導体のMHC分子への結合が、EphA2またはその断片のMHC分子に対する結合と比較して、実質的に同等かもしくは亢進されているもの、
を含む、請求項7に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項10】
ペプチド断片をプロテアソーム切断部位でのプロテアソーム切断により生成することができる、請求項3に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項11】
プロテアソーム切断部位が、プロテアソーム切断予測アルゴリズムにしたがって決定される、請求項10に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項12】
アゴニストが1またはそれ以上のN-末端修飾、C-末端修飾、内部修飾、または非標準残基を含む修飾ペプチドである、請求項1に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項13】
N-末端修飾、C-末端修飾、内部修飾、または非標準残基が、可溶性基;疎水基;脂質基;親水基;タグ;蛍光タグ;ポリペプチドタグ;膜貫通シグナル配列またはその部分;アミノ酸エナンチオマーおよびアセチル、ベンジルオキシカルボニル、ビオチン、シンナモイル、Dabcyl、ダブシル(dabsyl)、ダンシル、ジニトロフェニル、シアニン、フルオレセイン、fmoc、ホルミル、リサミン(lissamine)ローダミン、ミリストイル、n-メチル、パルミトイル、steroyl、7-メトキシクマリン酢酸、ビオチン、Dabcyl、ダブシル(dabsyl)、ダンシル、ジスルフィド、アセトアミドメチル、アミノヘキサン酸、アミノイソ酪酸、βアラニン、シクロヘキシルアラニン、d-シクロヘキシルアラニン、e-アセチルリジン、γアミノ酪酸、ヒドロキシプロリン、ニトロ-アルギニン、ニトロ-フェニルアラニン、ニトロ-チロシン、ノルロイシン、ノルバリン、オクタヒドロインドールカルボン酸、オルニチン、ペニシラミン、フェニルグリシン、ホスホセリン、ホスホトレオニン、ホスホチロシン、L-マロニルチロシン、ピログルタメート、テトラヒドロイソキノリン、アミド、N-置換グリシン、の一つ;非-アミノアシルおよびN-アセチルグリシン基;からなる群から選択される、請求項12に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項14】
アゴニストが、EphA2 T細胞エピトープを含む、ペプチドまたはペプチド模倣体ペプチド模倣体である、請求項1に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項15】
1またはそれ以上の以下のEphA2エピトープ配列:TLADFDPRV(SEQ ID NO: 2、残基883-891);VLLLVLAGV(SEQ ID NO: 2、残基546-554);VLAGVGFFI(SEQ ID NO: 2、残基550-558);IMNDMPIYM(SEQ ID NO: 2、残基58-66);SLLGLKDQV(SEQ ID NO: 2、残基961-969);WLVPIGQCL(SEQ ID NO: 2、残基253-261);LLWGCALAA(SEQ ID NO: 2、残基12-20);GLTRTSVTV(SEQ ID NO: 2、残基391-399);NLYYAESDL(SEQ ID NO: 2、残基120-128);KLNVEERSV(SEQ ID NO: 2、残基162-170);IMGQFSHHN(SEQ ID NO: 2、残基666-674);YSVCNVMSG(SEQ ID NO: 2、残基67-75);MQNIMNDMP(SEQ ID NO: 2、残基55-63);および図5〜17の1またはそれ以上に示した配列を含有するT細胞エピトープを含む、請求項1に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項16】
1またはそれ以上の以下のアミノ酸配列:TLADFDPRV(SEQ ID NO: 2、残基883-891);VLLLVLAGV(SEQ ID NO: 2、残基546-554);VLAGVGFFI(SEQ ID NO: 2、残基550-558);IMNDMPIYM(SEQ ID NO: 2、残基58-66);SLLGLKDQV(SEQ ID NO: 2、残基961-969);WLVPIGQCL(SEQ ID NO: 2、残基253-261);LLWGCALAA(SEQ ID NO: 2、残基12-20);GLTRTSVTV(SEQ ID NO: 2、残基391-399);NLYYAESDL(SEQ ID NO: 2、残基120-128);KLNVEERSV(SEQ ID NO: 2、残基162-170);IMGQFSHHN(SEQ ID NO: 2、残基666-674);YSVCNVMSG(SEQ ID NO: 2、残基67-75);MQNIMNDMP(SEQ ID NO: 2、残基55-63);および図5〜17の1またはそれ以上において示される配列、またはそれらの保存的誘導体を含む、ペプチドまたはその修飾版を含む、請求項1に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項17】
本質的に1またはそれ以上の以下のアミノ酸配列:TLADFDPRV(SEQ ID NO: 2、残基883-891);VLLLVLAGV(SEQ ID NO: 2、残基546-554);VLAGVGFFI(SEQ ID NO: 2、残基550-558);IMNDMPIYM(SEQ ID NO: 2、残基58-66);SLLGLKDQV(SEQ ID NO: 2、残基961-969);WLVPIGQCL(SEQ ID NO: 2、残基253-261);LLWGCALAA(SEQ iD NO : 2、残基12-20);GLTRTSVTV(SEQ ID NO: 2、残基391-399);NLYYAESDL(SEQ ID NO: 2、残基120-128);KLNVEERSV(SEQ ID NO : 2、残基162-170);IMGQFSHHN(SEQ ID NO: 2、残基666-674);YSVCNVMSG(SEQ ID NO: 2、残基67-75);MQNIMNDMP(SEQ ID NO: 2、残基55-63);および図5〜17の1またはそれ以上で示される配列、またはそれらの保存的誘導体からなる、ペプチドまたはその修飾版を含む、請求項1に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項18】
以下のペプチド:TLADFDPRV(SEQ ID NO: 2、残基883-891);VLLLVLAGV(SEQ ID NO: 2、残基546-554);VLAGVGFFI(SEQ ID NO: 2、残基550-558);IMNDMPIYM(SEQ ID NO: 2、残基58-66);SLLGLKDQV(SEQ ID NO: 2、残基961-969);WLVPIGQCL(SEQ ID NO: 2、残基253-261);LLWGCALAA(SEQ ID NO: 2、残基12-20);GLTRTSVTV(SEQ ID NO: 2、残基391-399);NLYYAESDL(SEQ ID NO: 2、残基120-128);KLNVEERSV(SEQ ID NO: 2、残基162-170);IMGQFSHHN(SEQ ID NO: 2、残基666-674);YSVCNVMSG(SEQ ID NO: 2、残基67-75);MQNIMNDMP(SEQ ID NO: 2、残基55-63);および図5〜17の1またはそれ以上で示される配列、またはそれらの保存的誘導体、の一つからなる、請求項1に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項19】
以下のペプチド:TLADFDPRV(SEQ ID NO: 2、残基883-891);VLLLVLAGV(SEQ ID NO: 2、残基546-554);VLAGVGFFI(SEQ ID NO: 2、残基550-558);IMNDMPIYM(SEQ ID NO: 2、残基58-66);SLLGLKDQV(SEQ ID NO: 2、残基961-969);WLVPIGQCL(SEQ ID NO: 2、残基253-261);LLWGCALAA(SEQ ID NO: 2、残基12-20);GLTRTSVTV(SEQ ID NO: 2、残基391-399);NLYYAESDL(SEQ ID NO: 2、残基120-128);KLNVEERSV(SEQ ID NO: 2、残基162-170);IMGQFSHHN(SEQ ID NO: 2、残基666-674);YSVCNVMSG(SEQ ID NO: 2、残基67-75);MQNIMNDMP(SEQ ID NO: 2、残基55-63);EAGIMGQFSHHNIIR(SEQ ID NO: 2、残基663-677);PIYMYSVCNVMSG(SEQ ID NO: 2、残基63-75);およびDLMQNIMNDMPIYMYS(SEQ ID NO: 2、残基53-68);の一つからなる、請求項1に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項20】
天然EphA2タンパク質の約9〜約100個の連続したアミノ酸からなるペプチドを含む、請求項1に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項21】
EphA2タンパク質の約9〜約25個の連続したアミノ酸からなるペプチドを含む、請求項1に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項22】
EphA2 T細胞エピトープが、SEQ ID NO: 2のEphA2アミノ酸残基12〜20;53〜75;120〜128;162〜170;253〜261;391〜399;546〜558;663〜677;883〜891;または961〜969に実質的に含有されるT細胞エピトープである、請求項1に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項23】
スペーサーにより分離された2またはそれ以上のEphA2 T細胞エピトープを含む、請求項1に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項24】
図3および図4に列挙されたMHCアリルにより示されるペプチドを含有するT細胞エピトープを含む、請求項1に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項25】
請求項1に記載の1またはそれ以上のEphA2 T細胞エピトープアゴニストおよび薬学的に許容可能な賦形剤、担体、希釈剤、アジュバントまたはビヒクルを含む組成物。
【請求項26】
アミノ酸配列TLADFDPRV(SEQ ID NO: 2、残基883-891)を含む、EphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項27】
アミノ酸配列VLLLVLAGV(SEQ ID NO: 2、残基546-554)を含む、EphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項28】
アミノ酸配列VLAGVGFFI(SEQ ID NO: 2、残基550-558)を含む、EphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項29】
アミノ酸配列IMNDMPIYM(SEQ ID NO: 2、残基58-66)を含む、EphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項30】
アミノ酸配列SLLGLKDQV(SEQ ID NO: 2、残基961-969)を含む、EphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項31】
アミノ酸配列WLVPIGQCL(SEQ ID NO: 2、残基253-261)を含む、EphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項32】
アミノ酸配列LLWGCALAA(SEQ ID NO: 2、残基12-20)を含む、EphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項33】
アミノ酸配列GLTRTSVTV(SEQ ID NO: 2、残基391-399)を含む、EphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項34】
アミノ酸配列NLYYAESDL(SEQ ID NO: 2、残基120-128)を含む、EphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項35】
アミノ酸配列KLNVEERSV(SEQ ID NO: 2、残基162-170)を含む、EphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項36】
アミノ酸配列IMGQFSHHN(SEQ ID NO: 2、残基666-674)を含む、EphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項37】
アミノ酸配列YSVCNVMSG(SEQ ID NO: 2、残基67-75)を含む、EphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項38】
アミノ酸配列MQNIMNDMP(SEQ ID NO: 2、残基55-63)を含む、EphA2 T細胞エピトープアゴニスト。
【請求項39】
1またはそれ以上のEphA2 T細胞エピトープを含有するEphA2 T細胞エピトープアゴニストを含有する化合物または組成物に対する患者の免疫応答性を決定することを含む、患者におけるEphA2-反応性T-細胞の数および/または状態をモニターする方法。
【請求項40】
1またはそれ以上のEphA2 T細胞エピトープを含有する化合物または組成物に対する患者の免疫応答性を、ELISPOTアッセイを用いて調べることを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
ELISPOTアッセイが、MHCクラスIタンパク質-提示EphA2エピトープまたはその保存的誘導体に対するCD8+応答を検出する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
MHCクラスIタンパク質が、HLA-A2タンパク質である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
ELISPOTアッセイが、IFN-γの産生を検出する、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
ELISPOTアッセイが、MHCクラスIIタンパク質-提示EphA2エピトープまたはその保存的誘導体に対するCD4+応答を検出する、請求項37に記載の方法。
【請求項45】
MHCクラスIIタンパク質がHLA-DR4タンパク質である、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
ELISPOTアッセイがIL-5の産生を検出する、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
T細胞および抗原提示細胞を含有する細胞集団を、1またはそれ以上のEphA2 T細胞エピトープアゴニストを含有する化合物または組成物と接触させることを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項48】
EphA2 T細胞エピトープアゴニストが、以下の配列:TLADFDPRV(SEQ ID NO: 2、残基883-891);VLLLVLAGV(SEQ ID NO: 2、残基546-554);VLAGVGFFI(SEQ ID NO: 2、残基550-558);IMNDMPIYM(SEQ ID NO: 2、残基58-66);SLLGLKDQV(SEQ ID NO: 2、残基961-969);WLVPIGQCL(SEQ ID NO: 2、残基253-261);LLWGCALAA(SEQ ID NO: 2、残基12-20);GLTRTSVTV(SEQ ID NO: 2、残基391-399);NLYYAESDL(SEQ ID NO: 2、残基120-128);KLNVEERSV(SEQ ID NO: 2、残基162-170);IMGQFSHHN(SEQ ID NO: 2、残基666-674);YSVCNVMSG(SEQ ID NO: 2、残基67-75);MQNIMNDMP(SEQ ID NO: 2、残基55-63);および図5〜17の1またはそれ以上で示される配列、の一つに含有されるT細胞エピトープを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
EphA2 T細胞エピトープアゴニストが、以下の配列:TLADFDPRV(SEQ ID NO: 2、残基883-891);VLLLVLAGV(SEQ ID NO: 2、残基546-554);VLAGVGFFI(SEQ ID NO: 2、残基550-558);IMNDMPIYM(SEQ ID NO: 2、残基58-66);SLLGLKDQV(SEQ ID NO: 2、残基961-969);WLVPIGQCL(SEQ ID NO: 2、残基253-261);LLWGCALAA(SEQ ID NO: 2、残基12-20);GLTRTSVTV(SEQ ID NO: 2、残基391-399);NLYYAESDL(SEQ ID NO: 2、残基120-128);KLNVEERSV(SEQ ID NO: 2、残基162-170);IMGQFSHHN(SEQ ID NO: 2、残基666-674);YSVCNVMSG(SEQ ID NO: 2、残基67-75);MQNIMNDMP(SEQ ID NO: 2、残基55-63);EAGIMGQFSHHNIIR(SEQ ID NO: 2、残基663-677);PIYMYSVCNVMSG(SEQ ID NO: 2、残基63-75);およびDLMQNIMNDMPIYMYS(SEQ ID NO: 2、残基53-68);および図5〜17の1またはそれ以上で示される配列、からなる群から選択される1またはそれ以上の配列を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
EphA2が過剰発現されている患者に対して、患者におけるEphA2に対する免疫応答を誘導するために有効な量の請求項1に記載のEphA2 T細胞エピトープアゴニストを投与することを含む、前記患者における癌の増殖を阻害する方法。
【請求項51】
患者の抗原提示細胞をEphA2 T細胞エピトープアゴニストと接触させることを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
患者の抗原提示細胞をEphA2 T細胞エピトープアゴニストと接触させることを、2回またはそれ以上繰り返す、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
a)患者から抗原提示細胞を含む細胞を単離し;
b)その抗原提示細胞をEphA2 T細胞エピトープアゴニストと接触させ;そして
c)EphA2 T細胞エピトープアゴニスト-接触抗原提示細胞を患者に再導入する;
ことを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
EphA2 T細胞エピトープアゴニストが、以下のEphA2 エピトープ配列:TLADFDPRV(SEQ ID NO: 2、残基883-891);VLLLVLAGV(SEQ ID NO: 2、残基546-554);VLAGVGFFI(SEQ ID NO: 2、残基550-558);IMNDMPIYM(SEQ ID NO: 2、残基58-66);SLLGLKDQV(SEQ ID NO: 2、残基961-969);WLVPIGQCL(SEQ ID NO: 2、残基253-261);LLWGCALAA(SEQ ID NO: 2、残基12-20);GLTRTSVTV(SEQ IDNO: 2、残基391-399);NLYYAESDL(SEQ ID NO: 2、残基120-128);KLNVEERSV(SEQ ID NO: 2、残基162-170);IMGQFSHHN(SEQ ID NO: 2、残基666-674);YSVCNVMSG(SEQ ID NO: 2、残基67-75);MQNIMNDMP(SEQ ID NO: 2、残基55-63);および図5〜17の1またはそれ以上で示される配列、の一つに含有されるT細胞エピトープを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
EphA2 T細胞エピトープアゴニストが、以下の配列:TLADFDPRV(SEQ ID NO: 2、残基883-891);VLLLVLAGV(SEQ ID NO: 2、残基546-554);VLAGVGFFI(SEQ ID NO: 2、残基550-558);IMNDMPIYM(SEQ ID NO: 2、残基58-66);SLLGLKDQV(SEQ ID NO: 2、残基961-969);WLVPIGQCL(SEQ ID NO: 2、残基253-261);LLWGCALAA(SEQ ID NO: 2、残基12-20);GLTRTSVTV(SEQ ID NO: 2、残基391-399);NLYYAESDL(SEQ ID NO: 2、残基120-128);KLNVEERSV(SEQ ID NO: 2、残基162-170);IMGQFSHHN(SEQ ID NO: 2、残基666-674);YSVCNVMSG(SEQ ID NO: 2、残基67-75);MQNIMNDMP(SEQ ID NO: 2、残基55-63);および図5〜17の1またはそれ以上で示される配列、からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項56】
患者に対してEphA2リガンドまたはそのアゴニストを投与することをさらに含む、請求項50に記載の方法。
【請求項57】
EphA2リガンドまたはそのアゴニストが、
(a)EphA2に結合することができる結合試薬;および
(b)ephrinA1またはそのアゴニスト;
の一つである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
患者の抗原提示細胞をEphA2 T細胞エピトープアゴニストと接触させることと、患者に対してEphA2リガンドまたはそのアゴニストを投与することの少なくとも一方を、2回またはそれ以上繰り返す、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
患者の抗原提示細胞をEphA2 T細胞エピトープアゴニストと接触させることと、患者に対してEphA2リガンドまたはそのアゴニストを投与することとを、交互に行う、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
EphA2 T細胞エピトープアゴニストを、患者体内に直接的に導入する、請求項50に記載の方法。
【請求項61】
EphA2 T細胞エピトープアゴニストを患者体内に筋肉内注射する、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
EphA2 T細胞エピトープアゴニストを、EphA2 T細胞エピトープアゴニストを発現するための遺伝子を、患者の細胞内に導入することにより投与する、請求項50に記載の方法。
【請求項63】
5'から3'方向へ機能可能に連結した、プロモーター、1またはそれ以上のEphA2 T細胞エピトープおよびポリアデニル化シグナルを含むペプチドをコードする、全長EphA2コーディング配列以外のコーディング配列、を含む、単離された核酸。
【請求項64】
プロモーターが、構成的なもの、組織特異的なもの、または誘導可能なもののいずれかである、請求項63に記載の核酸。
【請求項65】
EphA2 T細胞エピトープアゴニストを含むペプチドをコードする配列が、親和性選択タグをコードする配列を含む、請求項63に記載の核酸。
【請求項66】
タグが、ポリヒスチジンタグである、請求項65に記載の核酸。
【請求項67】
細胞中で核酸を増幅させるための配列をさらに含む、請求項63に記載の核酸。
【請求項68】
細胞中の核酸の増幅のための配列が、プラスミド骨格である、請求項67に記載の核酸。
【請求項69】
EphA2 T細胞エピトープアゴニストを含むペプチドをコードする配列が、膜貫通シグナル配列をコードする配列を含む、請求項63に記載の核酸。
【請求項70】
ペプチドをコードする配列が、EphA2 T細胞エピトープをコードする2またはそれ以上の配列を含むペプチドをコードし、ここで複数のEphA2 T細胞エピトープは場合により、スペーサーにより、好ましくは1〜約10アミノ酸のスペーサーにより、分離されている、請求項69に記載の核酸。
【請求項71】
表面上にEphA2を発現する腫瘍細胞と、
(a)EphA2に対して結合することができる結合試薬;および
(b)ephrinA1またはそのアゴニスト;
の一つを含むEphA2リガンドまたはそのアゴニストとを接触させることを含む、EphA2に対する患者の免疫応答を修飾する方法。
【請求項72】
結合試薬が、Fv断片;一本鎖Fv(scFv)断片;Fab'断片;F(ab')2断片;ラクダ化(camelized)抗体および抗体断片;上記のものの多価版;単一特異性抗体または二特異性抗体;ジスルフィド安定化Fv断片、scFvタンデム;二重特異性抗体(diabody);三重特異性抗体(tribody);四重特異性抗体(tetrabody);ロイシンジッパーまたはヘリックス安定化scFv断片;組換え抗体またはその断片;アプタマーおよびファージディスプレイ生成物からなる群から選択される、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
EphA2リガンドまたはそのアゴニストが、ephrinA1またはそのアゴニストである、請求項71に記載の方法。
【図1】
【図2−1】
【図2−2】
【図3−1】
【図3−2】
【図4−1】
【図4−2】
【図4−3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図19D】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2−1】
【図2−2】
【図3−1】
【図3−2】
【図4−1】
【図4−2】
【図4−3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図19D】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公表番号】特表2007−527225(P2007−527225A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521960(P2006−521960)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/023931
【国際公開番号】WO2005/012350
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(501102988)ユニバーシティ オブ ピッツバーグ オブ ザ コモンウェルス システム オブ ハイヤー エデュケイション (24)
【出願人】(506031845)メドイミューン・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/023931
【国際公開番号】WO2005/012350
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(501102988)ユニバーシティ オブ ピッツバーグ オブ ザ コモンウェルス システム オブ ハイヤー エデュケイション (24)
【出願人】(506031845)メドイミューン・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】
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