説明

ESD保護デバイス

【課題】複数のESD保護素子を備えたESD保護デバイスにおいて、あるESD保護素子を流れた静電気がグランドラインを介して他のESD保護素子に流れることを抑制できるESD保護素子を提供する。
【解決手段】絶縁体層20,22,24,26,28が積層された本体12内に、2組の入力端子14a,14cと出力端子16a,16cの間に接続された第1及び第2の信号ライン30,32と、第1及び第2のグランド電極40,42との間に、一定以上の電圧が加わると導通する第1及び第2のESD保護素子部60a,60cが形成されている。第1及び第2のグランド電極40,42の間を接続するグランド電極間配線58のインダクタンスは、グランド電極40,42とグランド端子18s,18tとを接続する第1及び第2のグランド配線50,52のインダクタンスよりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はESD保護デバイスに関し、詳しくは、複数個のESD保護素子を備えたESD保護デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ESD(Electro-Static Discharge;静電気放電)とは、帯電した導電性の物体(人体等)が、他の導電性の物体(電子機器等)に接触、あるいは充分接近したときに、激しい放電が発生する現象である。ESDにより電子機器の損傷や誤作動などの問題が発生する。これを防ぐためには、放電時に発生する過大な電圧が電子機器の回路に加わらないようにする必要がある。このような用途に使用されるのがESD保護デバイスであり、サージ吸収素子やサージアブソーバとも呼ばれている。
【0003】
ESD保護デバイスは、例えば回路の信号線路とグランド(接地)との間に配置する。ESD保護デバイスは、一対の放電電極を離間して対向させた構造であるので、通常の使用状態では高い抵抗を持っており、信号がグランド側に流れることはない。一方、例えば携帯電話等のアンテナから静電気が加わる場合のように、過大な電圧が加わると、ESD保護デバイスの放電電極間で放電が発生し、静電気をグランド側に導くことができる。これにより、ESDデバイスよりも後段の回路には、静電気による電圧が印加されず、回路を保護することができる。
【0004】
ESD保護デバイスについて、複数のESD保護素子を備える構成が提案されている。
【0005】
図6の外観図と図7の組立斜視図は、このようなESD保護デバイスの一例を示す。図6に示すように、このESD保護デバイス119は、本体123の一対の側面に、3組の入出力端子124,125と、2組のグランド端子126,127とが交互に配置されている。図7に示すように、本体は複数の絶縁体層104,108,114,120が積層された積層体であり、本体の内部において、各組の入出力端子124,125間をそれぞれ接続する内部導体パターン(信号ライン)121と、グランド端子126,127に接続された共通グランド電極(グランドライン)103とが、絶縁体層104,120を介して対向することにより、ESD保護素子が形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
図8の外観図と図9の分解斜視図は、ESD保護デバイスの他の例を示す。図8に示すように、このESD保護デバイスは、本体210Bの一対の側面にグランド端子221が配置され、他の一対の側面には4組の入出力端子222,223が配置されている。図9に示すように、絶縁体層201,202,203,208,209が積層された本体の内部において、各組の入出力端子222,223同士を接続する内部電極膜(信号ライン)212と、グランド端子221同士を接続する内部電極膜(グランドライン)211とが、絶縁体層203に形成された空洞213を介して対向することにより、ESD保護素子が形成されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−204314号公報
【特許文献2】特開2004−214005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
いずれのESD保護デバイスも、共通のグランドラインに複数のESD保護素子が接続された構成となっている。そのため、あるESD保護素子を流れて共通のグランドラインに達した静電気が、共通のグランドラインを介して他のESD保護素子を流れ、他の信号ラインに静電気が伝搬し、他の信号ラインにノイズを加えるなどの影響を及ぼすことがある。
【0009】
本発明は、かかる実情に鑑み、複数のESD保護素子を備えたESD保護デバイスにおいて、あるESD保護素子を流れた静電気がグランドラインを介して他のESD保護素子に流れることを抑制できるESD保護素子を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成したESD保護デバイスを提供する。
【0011】
ESD保護デバイスは、(a)互いに隣接する第1、第2の絶縁体層を含む複数の絶縁体層が積層された本体と、(b)前記本体の表面に形成されている第1、第2のグランド端子と、(c)前記本体の表面に形成されている第1の入力端子及び第1の出力端子と、(d)前記本体の表面に形成されている第2の入力端子及び第2の出力端子と、(e)前記第1の入力端子と前記第1の出力端子とを接続する第1の信号ラインと、前記第2の入力端子と前記第2の出力端子とを接続する第2の信号ラインとを含み、前記第1、第2の絶縁体層間に配置される第1の信号側電極層と、(f)前記第1のグランド端子に第1のグランド配線を介して接続される第1のグランド電極と、前記第2のグランド端子に第2のグランド配線を介して接続される第2のグランド電極と、前記第1のグランド電極と前記第2のグランド電極とを接続する第1のグランド電極間配線とを含み、前記第2の絶縁体層の主面のうち前記第1の絶縁体層とは反対側の主面に配置される第1のグランド電極層と、(g)前記第1の信号ラインと前記第1のグランド電極との間に形成され、一定以上の電圧が加わると導通する第1のESD保護素子部と、(h)前記第2の信号ラインと前記第2のグランド電極との間に形成され、一定以上の電圧が加わると導通する第2のESD保護素子部とを備える。前記第1のグランド電極間配線のインダクタンスが、前記第1のグランド配線のインダクタンスと前記第2のグランド配線のインダクタンスのいずれよりも大きい。
【0012】
上記構成において、第1及び第2のグランド配線と、第1及び第2のグランド電極と、第1のグランド電極間配線とによって、第1のESD保護素子部と第2のESD保護素子部に対して共通のグランドラインが形成される。第1、第2のグランド配線の全部又は一部が、第2の絶縁体層の主面のうち第1の絶縁体層とは反対側の主面以外に形成されてもよい。
【0013】
上記構成において、ある信号ライン、例えば第1の信号ラインに印加された静電気が、第1のESD保護素子部を流れ、第1のグランド電極に達したとき、静電気の低周波側の成分は、第1のグランド電極からグランドラインの両側に流れる。すなわち、第1のグランド電極から、第1のグランド配線を経てグランド端子の一方に流れ、かつ、第1のグランド電極間配線、第2のグランド電極、第2のグランド配線を経て、グランド端子の他方に流れる。低周波におけるグランドラインの誘導性のインピーダンスは低周波における第2のESD保護素子の容量性のインピーダンスより低い。静電気の低周波側の成分が、第1のグランド電極から、第1のグランド電極間配線を経て第2のグランド電極を流れても、第2のESD保護素子部には流れない。
【0014】
一方、静電気の高周波側の成分は、インダクタンスが相対的に大きい第1のグランド電極間配線には流れにくく、インダクタンスが相対的に小さい第1のグランド配線には流れやすいため、第1のグランド電極から、主にグランドラインの片側、すなわち第1のグランド配線を流れ、第1のグランド電極間配線を経て第2のグランド電極には、ほとんど流れない。また、第1のグランド電極間配線を流れるときに、第1のグランド電極間配線のインダクタンスにより電圧が低下する。そのため、静電気の高周波側の成分は、第2のESD保護素子部には流れない。
【0015】
したがって、第1のESD保護素子部を流れた静電気が、グランドラインを介して第2のESD保護素子部を流れることを抑制できる。同様に、第2のESD保護素子部を流れた静電気が、グランドラインを介して第1のESD保護素子部を流れることを抑制できる。
【0016】
好ましい一態様において、(i)前記第2の絶縁体層の前記第1の絶縁体層とは反対側に順に積層され、前記第2の絶縁体層と互いに隣接する第3、第4の絶縁体層と、(j)前記本体の表面に形成されている第3の入力端子及び第3の出力端子と、(k)前記第3の入力端子と前記第3の出力端子とを接続する第3の信号ラインを含み、前記第4の絶縁体層の主面のうち前記第3の絶縁体層とは反対側の主面に形成された第2の信号側電極層と、(l)前記第1のグランド端子に第3のグランド配線を介して接続され、前記第2のグランド端子に第4のグランド配線を介して接続される第3のグランド電極を含み、前記第3、第4の絶縁体層間に配置される第2のグランド電極層と、(m)前記第3の信号ラインと前記第3のグランド電極との間に形成され、一定以上の電圧が加わると導通する第3のESD保護素子部とを、さらに備える。
【0017】
この場合、第3のグランド電極と、第3及び第4のグランド配線とにより形成されるグランドラインに、第3のESD保護素子部が接続される。第3のESD保護素子部が接続されるグランドラインは、第1及び第2のESD保護素子部が接続されるグランドラインとは、それぞれ別個にグランド端子に接続され、接地されるため、第3のESD保護素子部を流れた静電気が第1又は第2のESD保護素子部に流れたり、第1又は第2のESD保護素子部を流れた静電気が第3のESD保護素子部を流れたりすることを抑制できる。
【0018】
第1の入力端子及び第1の出力端子と第2の入力端子及び第2の出力端子との間に第3の入力端子及び第3の出力端子が配置されるため、積層方向から透視すると、第1及び第2の信号ラインの間に第3の信号ラインが配置される。また、第1及び第2の信号ラインと第3の信号ラインとの間に、グランドラインが配置される。これにより、本体の内部において信号ライン同士をできるだけ離し、グランドラインで分断して寄生容量の発生を抑え、信号ライン間の独立性を高めることができる。
【0019】
好ましい他の態様において、(i)前記第2の絶縁体層の前記第1の絶縁体層とは反対側に順に積層され、前記第2の絶縁体層と互いに隣接する第3、第4、第5の絶縁体層と、(j)前記本体の表面に形成されている第3の入力端子及び第3の出力端子と、(k)前記本体の表面に形成されている第4の入力端子及び第4の出力端子と、(l)前記第3の前記入力端子と前記第3の出力端子とを接続する第3の信号ラインと、前記第4の入力端子と前記第4の出力端子とを接続する第4の信号ラインとを含み、前記第4、第5の絶縁体層間に配置される第2の信号側電極層と、(m)前記第1のグランド端子に第3のグランド配線を介して接続される第3のグランド電極と、前記第2のグランド端子に第4のグランド配線を介して接続される第4のグランド電極と、前記第3のグランド電極と前記第4のグランド電極とを接続する第2のグランド電極間配線とを含み、前記第3、第4の絶縁体層間に配置される第2のグランド電極層と、(n)前記第3の信号ラインと前記第3のグランド電極との間に形成され、一定以上の電圧が加わると導通する第3のESD保護素子部と、(o)前記第4の信号ラインと前記第4のグランド電極との間に形成され、一定以上の電圧が加わると導通する第4のESD保護素子部とを、さらに備える。前記第2のグランド電極間配線のインダクタンスが、前記第3のグランド配線のインダクタンスと前記第4のグランド配線のインダクタンスのいずれよりも大きい。
【0020】
この場合、第3及び第4のグランド配線と、第3及び第4のグランド電極と、第2のグランド電極間配線とによって形成されるグランドラインに、第3及び第4のESD保護素子部が接続される。第3及び第4のESD保護素子部が接続されるグランドラインは、第1及び第2のESD保護素子部が接続されるグランドラインとは、それぞれ別個にグランド端子に接続され、接地される。そのため、第1又は第2のESD保護素子部を流れた静電気が第3又は第4のESD保護素子部を流れたり、第3又は第4のESD保護素子部を流れた静電気が第1又は第2のESD保護素子部を流れたりすることを抑制できる。
【0021】
第1及び第2の信号ラインと第3及び第4の信号ラインとの間にグランドラインが配置される。これによって、第1及び第2の信号ラインと第3及び第4の信号ラインとをグランドラインで分断して寄生容量の発生を抑え、第1及び第2の信号ラインと第3及び第4の信号ラインとの間の独立性を高めることができる。
【0022】
好ましくは、前記第1のグランド電極間配線の幅は、前記第1、第2のグランド配線の幅のいずれよりも小さい。
【0023】
この場合、第1のグランド電極間配線のインダクタンスを、第1及び第2のグランド配線のインダクタンスのいずれよりも大きくすることが、容易である。
【0024】
好ましくは、前記第2のグランド電極間配線の幅は、前記第3、第4のグランド配線の幅のいずれよりも小さい。
【0025】
この場合、第2のグランド電極間配線のインダクタンスを、第3及び第4のグランド配線のインダクタンスのいずれよりも大きくすることが、容易である。
【0026】
好ましくは、前記第1の信号ラインのインダクタンスと前記第1のESD保護素子部のキャパシタンス、または前記第2の信号ラインのインダクタンスと前記第2のESD保護素子部のキャパシタンスにより、低域通過フィルタを形成する。
【0027】
この場合、第1又は第2の信号ラインを流れる信号帯域の周波数を通過させ信号帯域より高い周波数帯域の信号を減衰させることができる。
【0028】
好ましくは、前記絶縁体層が磁性フェライトで構成されている。
【0029】
この場合、信号ラインのインダクタンスを大きくし低い周波数の信号帯域に対応することができる。
【0030】
好ましくは、前記第1のESD保護素子部は、前記第1の信号ラインと前記第1のグランド電極とが連通するように前記第1の絶縁体層に形成された第1の空洞内に配置された、無機材料でコーティングされた金属粒子及び半導体粒子を含む。前記第2のESD保護素子部は、前記第2の信号ラインと前記第2のグランド電極とが連通するように前記第1の絶縁体層に形成された第2の空洞内に配置された、無機材料でコーティングされた金属粒子及び半導体粒子を含む。
【0031】
この場合、ショートの防止や、放電開始電圧等のESD特性の調整が容易である。
【0032】
具体的な一態様において、前記絶縁体層が矩形板形状を有する。前記本体が直方体形状を有する。前記第1、第2のグランド端子が形成されている前記本体の表面が、前記絶縁体層の互いに対向する一対の辺に沿って形成された前記本体の一対の側面である。前記第1、第2の入力端子及び前記第1、第2の出力端子が形成されている前記本体の表面が、前記絶縁体層の互いに対向する他の一対の辺に沿って形成された前記本体の他の一対の側面である。前記第1、第2のグランド電極間配線の幅と前記第1〜第4のグランド配線の幅とは、前記絶縁体層の互いに対向する前記一対の辺に平行な方向の寸法である。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、複数のESD保護素子を備えたESD保護デバイスにおいて、あるESD保護素子を流れた静電気が、グランドラインを介して他のESD保護素子に流れることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】ESD保護デバイスの(a)組立斜視図、(b)分解斜視図である。(実施例1)
【図2】ESD保護デバイスの(a)断面図、(b)拡大断面図である。(実施例1)
【図3】ESD保護デバイスの電気回路図である。(実施例1)
【図4】ESD保護デバイスの等価回路図である。(実施例1)
【図5】ESD保護デバイスの(a)断面図、(b)等価回路図である。(実施例2)
【図6】ESD保護デバイスの外観図である。(従来例1)
【図7】ESD保護デバイスの本体の分解斜視図である。(従来例1)
【図8】ESD保護デバイスの外観図である。(従来例2)
【図9】ESD保護デバイスの本体の分解斜視図である。(従来例2)
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図5を参照しながら説明する。
【0036】
<実施例1> 実施例1のESD保護デバイス10について、図1〜図4を参照しながら説明する。
【0037】
図1(a)は、ESD保護デバイス10の組立斜視図である。図1(b)は、ESD保護デバイス10の本体12の分解斜視図である。図1(a)及び(b)において、導電性を有する部分には斜線を付している。図2(a)は、図1(a)の線X−Xに沿って切断した断面図である。図2(b)は、図2(a)の拡大断面図である。
【0038】
図1及び図2に示すように、ESD保護デバイス10は、絶縁性を有する矩形の複数の絶縁体層20,22,24,26,28が積層された本体12の外面に、互いに対向する3組の入力端子14a〜14c及び出力端子16a〜16cと、第1と第2のグランド端子18s,18tとが形成されている。ESD保護デバイス10は、3つの信号線路に対応可能なアレイタイプの3チャンネルのESD保護デバイスである。
【0039】
本体12の各絶縁体層20,22,24,26,28は、1層又は積層された2層以上のセラミックグリーンシートが焼成されたフェライト等の磁性体セラミック層である。入力端子14a〜14c及び出力端子16a〜16cとグランド端子18s,18tは、Ag等を主成分とする導電性ペーストを焼成することによって形成され、導電性を有する。
【0040】
グランド端子18s,18tは、絶縁体層20,22,24,26,28の互いに対向する一対の短辺20s,20t;22s,22t;24s,24t;26s,26t;28s,28tに沿って形成された本体12の一対の側面(端面)12s,12t及びその近傍の側面12p,12q、上面12a及び下面12bを覆うように形成されている。
【0041】
入力端子14a〜14cは、絶縁体層20,22,24,26,28の互いに対向する一対の長辺20p,20q;22p,22q;24p,24q;26p,26q;28p、28qの一方20p,22p,24p,26p,28pに沿って形成された本体12の他の一対の側面12p,12qの一方12p及びその近傍の上面12a及び下面12bに、断面コ字状に形成されている。出力端子16a〜16cは、絶縁体層20,22,24,26,28の互いに対向する一対の長辺20p,20q;22p,22q;24p,24q;26p,26q;28p、28qの他方20q,22q,24q,26q,28qに沿って形成された本体12の他の一対の側面12p,12qの他方12q及びその近傍の上面12a及び下面12bに、断面コ字状に形成されている。
【0042】
図1(b)に示すように、本体12の互いに隣接する絶縁体層26と絶縁体層28との間には、第1の入力端子14aと第2の出力端子16aとを接続する第1の信号ライン30と、第2の入力端子14cと第2の出力端子16cとを接続する第2の信号ライン32が、絶縁体層28の短辺28s,28tと平行に形成されている。
【0043】
本体12の互いに隣接する絶縁体層24と絶縁体層26との間には、(a)第1の信号ライン30と対向する第1のグランド電極40と、(b)第2の信号ライン32と対向する第2のグランド電極42と、(c)第1のグランド端子18sと第1のグランド電極40とを接続する第1のグランド配線50と、(d)第2のグランド端子18tと第2のグランド電極42とを接続する第2のグランド配線52と、(e)第1のグランド電極40と第2のグランド電極42とを接続する第1のグランド電極間配線58とが形成されている。グランド配線50,52とグランド電極間配線58は、絶縁体層26の長辺26p,26qと平行に形成され、グランド電極40,42とともにグランドラインを形成する。
【0044】
本体12の互いに隣接する絶縁体層20と絶縁体層22との間には、第3の入力端子14bと第3の出力端子16bとを接続する第3の信号ライン34が、絶縁体層22の短辺22s,22tと平行に形成されている。
【0045】
本体12の互いに隣接する絶縁体層22と絶縁体層24との間には、(a)第3の信号ライン34と対向する第3のグランド電極44と、(b)第1のグランド端子18sと第3のグランド電極44とを接続する第3のグランド配線54aと、(d)第2のグランド端子18tと第3のグランド電極44とを接続する第4のグランド配線54bとが形成されている。グランド配線54a,54bは、絶縁体層24の長辺24p,24qと平行に形成され、グランド電極44とともにグランドラインを形成する。
【0046】
信号ライン30,32,34と、グランド電極40,42,44と、グランド配線50,52,54a,54bと、グランド電極間配線58は、Ag等を主成分とする導電性ペーストを焼成することによって形成され、導電性を有する。
【0047】
図2に示すように、第1の信号ライン30と第1のグランド電極40との間には、第1のESD保護素子部60aが形成されている。第2の信号ライン32と第2のグランド電極42との間には、第2のESD保護素子部60bが形成されている。第3の信号ライン34と第3のグランド電極44との間には、第3のESD保護素子部60cが形成されている。
【0048】
絶縁体層20,22,24,26,28が積層された積層方向(図2において上下方向)から透視すると、第1及び第2の信号ライン30,32の間に第3の信号ライン34が配置され、各信号ライン30,32,34とグランド電極40,42,44とが重なっている部分に、第1乃至第3のESD保護素子部60a,60b,60cが形成されている。第1乃至第3のESD保護素子部60a,60b,60cは、積層方向から透視したときに、少なくとも、それぞれの中心部分が互いに重ならないように配置されている。第1乃至第3のESD保護素子部60a,60b,60cは、積層方向から透視したときに、互いに離れ、重なり合う部分がないように配置することが好ましい。
【0049】
ESD保護素子部60a〜60cは、互いに対向する信号ライン30,32,34とグランド電極40,42,44とが連通するように絶縁体層26,22に形成された空洞26x,26y,22x内に、図2(b)に示すように、Cu等の金属粒子64の表面がアルミナ等の無機材料66でコーティングされたコーティング粒子62と、SiC等の半導体材料の粒子(半導体粒子)68とが分散して配置されている。分散している粒子62,68の間には、空隙69が形成されている。コーティング粒子62と半導体粒子68とを分散させることによって、ショートの防止や、放電開始電圧等のESD特性の調整が容易である。
【0050】
ESD保護素子は、ESD保護素子部60a〜60cと、ESD保護素子部60a〜60cを介して対向する信号ライン30,32,34及びグランド電極40,42,44とで構成される。ESD保護素子部60a〜60cは、ESD保護素子部60a〜60cを介して対向する信号ライン30,32,34とグランド電極40,42,44との間、すなわち放電電極の間に一定以上の電圧が加わると、導通する。
【0051】
図3の電気回路に示すように、信号ライン30,32,34は、それぞれ、所定の大きさのインダクタンスL1〜L3を有し、信号ライン30,32,34のインダクタンスL1〜L3と、ESD保護素子E1〜E3の容量(C)とにより、低域通過フィルタ(LCフィルタ)を構成している。この低域通過フィルタは、入力端子14a〜14cから信号ライン30,32,34を流れる信号帯域の周波数を通過させ信号帯域より高い周波数帯域の信号を減衰させることができる。
【0052】
なお、図3において、インダクタンスL1〜L3は信号ライン30,32,34の入力端子14a〜14c側に図示されている。実際のESD保護デバイスにおいては信号ライン30,32,34の出力端子16a〜16b側もインダクタンスを有しており、ESD保護デバイス10は入力端子と出力端子とを入れ替えることができ、ESD保護デバイス10の方向性をなくすことができる。
【0053】
第1のグランド電極間配線58は、第1のグランド電極40と第2のグランド電極42との間の誘導性結合部(L性結合電極)となっている。すなわち、第1のグランド電極間配線58のインダクタンスL0は、第1のグランド配線50のインダクタンスと第2のグランド配線52のインダクタンスのいずれよりも大きくなるように形成されている。例えば、第1のグランド電極間配線58の線幅(図1(b)において、絶縁体層26の短辺26s,26tに平行な方向の寸法)を、第1及び第2のグランド配線50,52の線幅(図1(b)において、絶縁体層26の短辺26s,26tに平行な方向の寸法)よりも細くして、L性を付与してもよいし、ミアンダ線路やスパイラル線路として構成することにより、所定値のL性を付与してもよい。
【0054】
第1のグランド電極間配線58のインダクタンスL0が、第1のグランド配線50のインダクタンスと第2のグランド配線52のインダクタンスのいずれよりも大きいため、第1又は第2の信号ライン30,32の一方に入った静電気が、ESD保護素子E1,E2の一方を流れても、グランドラインからESD保護素子E1,E2の他方に流れ、第1又は第2の信号ライン30,32の他方に静電気が伝搬することを抑制できる。
【0055】
例えば、静電気が第1の信号ライン30から第1のESD保護素子部60aを流れたとき、第1のグランド電極40に達した静電気成分のうち低周波側の成分は、第1のグランド配線50から一方のグランド端子18sに流れ、かつ、第1のグランド電極間配線58、第2のグランド電極42、第2のグランド配線52を経て、他方のグランド端子18tに流れる。低周波におけるグランドラインの誘導性インピーダンスは低周波における第2のESD保護素子の容量性インピーダンスより低い。静電気の低周波側の成分は、第2のグランド電極42を流れても、第2のESD保護素子部60bには流れない。静電気の低周波側の成分は、グランドラインの両側を通り、短時間でグランド端子18s,18tからアースに逃がすことができる。
【0056】
一方、第1のグランド電極40に達した静電気のうち高周波側の成分は、インダクタンスが相対的に大きい第1のグランド電極間配線58には流れにくく、インダクタンスが相対的に小さい第1のグランド配線50には流れやすい。そのため、第1のグランド電極間配線58から第2のグランド電極42に流れ込む静電気の高周波側の成分は少ない。また、第1のグランド電極間配線58を流れるときに、第1のグランド電極間配線58のインダクタンスにより電圧が低下する。そのため、静電気の高周波側の成分は、第2のESD保護素子部60bを流れない。
【0057】
したがって、第1又は第2の信号ライン30,32の一方に入った静電気が、ESD保護素子E1,E2の一方を流れても、グランドラインから、ESD保護素子E1,E2の他方に流れ、第1又は第2の信号ライン30,32の他方に静電気が伝搬することを抑制できる。これにより、第1又は第2の信号ライン30,32の一方に入った静電気が放電されても、第1又は第2の信号ライン30,32の他方にノイズを加えるなどの影響を及ぼさないようにすることができる。
【0058】
第3の信号ライン34から第3のESD保護素子部60cを流れ、第3のグランド電極44に達した静電気は、第3及び第4のグランド配線54a,54bからグランド端子18s,18tに流れる。
【0059】
第1及び第2のESD保護素子E1,E2のグランドラインと、第3のESD保護素子E3のグランドラインとは、それぞれ別々にグランド端子18s,18tに接続され、接地される。そのため、第1又は第2のESD保護素子E1,E2を流れた静電気が第3のESD保護素子E3を流れたり、第3のESD保護素子E3を流れた静電気が第1又は第2のESD保護素子E1,E2を流れたりすることを抑制できる。
【0060】
つまり、図4のESD保護デバイス10の等価回路図において矢印80,82,84,86で示すように、各ESD保護素子E1〜E3を流れた静電気の大部分は、直ちにアースに逃がすことができる。
【0061】
積層方向から透視すると、第1及び第2の信号ライン30,32の間に第3の信号ライン34が配置される。また、第1及び第2信号ライン30,32と第3の信号ライン34との間にグランドラインが配置される。これにより、本体12の内部において信号ライン30,32,34同士をできるだけ離し、グランドラインで分断して寄生容量の発生を抑え、信号ライン30,32,34間の独立性を高めることができる。
【0062】
したがって、各ESD保護素子E1〜E3の独立性が高まり、クロストークが少なく、ESD保護性能に優れた3チャンネルのESD保護デバイス(アレイ)を実現できる。
【0063】
次に、ESD保護デバイス10の作製方法について説明する。
【0064】
(1)材料の準備
まず、本体12の絶縁体層20,22,24,26,28になるセラミックグリーンシートを準備する。
【0065】
セラミック材料には、Ba、Al、Siを中心とした組成からなる材料を用いる。各素材を所定の組成になるよう調合、混合し、800℃〜1000℃で仮焼する。得られた仮焼粉末をジルコニアボールミルで粉砕し、セラミック粉末を得る。このセラミック粉末に、トルエン・エキネンなどの有機溶媒を加え混合する。さらにバインダー、可塑剤を加え混合し、スラリーを得る。このようにして得られたスラリーをドクターブレード法により成形し、厚さ50μmのセラミックグリーンシートを得る。
【0066】
また、信号ライン30,32,34と、グランド電極40,42,44と、グランド配線50,52,54a,54bと、グランド電極間配線58を形成するための電極ペーストを準備する。平均粒径約1.5μmのCu粉80wt%とエチルセルロース等からなるバインダー樹脂に溶剤を添加し、ロールで攪拌、混合することで電極ペーストを得る。
【0067】
また、ESD保護素子部60a〜60cを形成するための混合ペーストを準備する。混合ペーストは、固形成分と空隙形成用材料とを含む。混合ペーストは、平均粒径約3μmのアルミナコートCu粒と、平均粒径約1μmの炭化ケイ素(SiC)と、空隙形成用材料であるアクリルビーズを所定の割合で調合し、バインダー樹脂と溶剤を添加し、ロールで攪拌、混合することで得る。Cu粒及びSiCとアクリル樹脂ビーズは、体積比率で1:1とする。混合ペースト中の樹脂と溶剤の比率は、40wt%とする。アルミナコートCu粒とSiCは固形成分であり、焼成後も絶縁性を保つ。アクリルビーズは、焼成中に消失する空隙形成用材料である。
【0068】
(2)スクリーン印刷による混合ペースト、電極ペーストの塗布
ESD保護素子部60a〜60cを形成するため、絶縁体層22,26になるセラミックグリーンシートに、レーザや金型を用いて空洞22x,26x,26yを形成した後、スクリーン印刷により、空洞22x,26x,26yに混合ペーストを充填する。
【0069】
また、信号ライン30,32,34と、グランド電極40,42,44と、グランド配線50,52,54a,54bと、グランド電極間配線58が接する絶縁体層20の下面20bと、絶縁体層24の上面24a及び下面24bと、絶縁体層28の上面28aとになるセラミックグリーンシート上に、電極ペーストをスクリーン印刷にて塗布して、信号ライン30,32,34と、グランド電極40,42,44と、グランド配線50,52,54a,54bと、グランド電極間配線58になる部分を形成する。信号ライン30,32,34と、グランド電極40,42,44と、グランド配線50,52,54a,54bと、グランド電極間配線58に接する他方の絶縁体層22の上面22a及び下面22bと、絶縁体層26の上面26a及び下面26bになるセラミックグリーンシート上に、電極ペーストをスクリーン印刷にて塗布して、電極ペーストが、空洞22x,26x,26yに充填された混合ペーストに重なるようにしても構わない。
【0070】
(3)積層、圧着
通常のセラミック多層基板と同様に、セラミックグリーンシートを積層し、圧着する。
【0071】
(4)カット、端面電極塗布
LCフィルタのようなチップタイプの電子部品と同様に、マイクロカッタでカットして、各チップに分ける。その後、外面に電極ペーストを塗布し、外部端子、すなわち、入力端子14a〜14cと出力端子16a〜16cとグランド端子18s,18tを形成する。
【0072】
(5)焼成
次いで、通常のセラミック多層基板と同様に、N雰囲気中で焼成する。酸化しない電極材料(Agなど)の場合には、大気雰囲気でも構わない。焼成により、セラミックグリーンシート中の有機溶剤や、混合ペースト中のバインダー樹脂、溶剤及びアクリルビーズが消失する。これにより、AlコートCuのコーティング粒子62と、SiCの半導体粒子68と、空隙69とが分散したESD保護素子部60a〜60cが形成される。
【0073】
(6)めっき
LCフィルタのようなチップタイプの電子部品と同様に、外部端子上に電解Ni−Snメッキを行う。
【0074】
以上により、断面が図2のように構成されたESD保護デバイス10が完成する。
【0075】
なお、ESD保護素子部60a〜60cの半導体粒子68の半導体材料は、特に上記の材料に限定されるものではない。例えば、シリコン、ゲルマニウム等の金属半導体、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化モリブデン、炭化タングステン等の炭化物、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化クロム、窒化バナジウム、窒化タンタル等の窒化物、ケイ化チタン、ケイ化ジルコニウム、ケイ化タングステン、ケイ化モリブデン、ケイ化クロム、ケイ化クロム等のケイ化物、ホウ化チタン、ホウ化ジルコニウム、ホウ化クロム、ホウ化ランタン、ホウ化モリブデン、ホウ化タングステン等のホウ化物、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム等の酸化物を用いることができる。特に、比較的安価で、かつ、各種粒径のバリエーションが市販されていることから、炭化ケイ素や酸化亜鉛が特に好ましい。これらの半導体材料は、適宜、単独又は2種類以上を混合して使用してもよい。また、半導体材料は、適宜、アルミナやBAS材等の抵抗材料と混合して使用してもよい。
【0076】
ESD保護素子部60a〜60cのコーティング粒子62の金属粒子64の金属材料は、特に上記の材料に限定されるものではない。Cu、Ag、Pd、Pt、Al、Ni、W、Moや、これらの合金、これらの組合せでもよい。
【0077】
空隙形成用材料としてはアクリルビーズ以外に、PET、ポリプロピレン、エチレンセルロースなどからなるビーズや、これらの組合せでもよい。
【0078】
<実施例2> 実施例2のESD保護デバイス10kについて、図5を参照しながら説明する。
【0079】
実施例2のESD保護デバイス10kは、実施例1のESD保護デバイス10と略同様に構成され、実施例1と同様の方法で製造することができる。以下では、実施例1と同じ構成部分には同じ符号を用い、実施例1との相違点を中心に説明する。
【0080】
図5(a)は、実施例2のESD保護デバイス10kの断面図である。図5(b)は、実施例2のESD保護デバイス10kの等価回路図である。
【0081】
実施例2のESD保護デバイス10kは、4つの信号ラインに対応可能なアレイタイプの4チャンネルのESD保護デバイスである。すなわち、実施例1と同様に本体12kの外面に形成された第1〜第3の入力端子及び出力端子に加え、第4の入力端子及び出力端子が、第1〜第3の入力端子及び出力端子と同様に、互いに対向するように形成されている。
【0082】
図5(a)に示すように、実施例1と同じく、本体12kの互いに隣接する絶縁体層26と絶縁体層28との間には、第1の信号ライン32と第2の信号ライン34が形成されている。本体12kの第2組の互いに隣接する絶縁体層24と絶縁体層26との間には、第1のグランド電極40と、第2のグランド電極42と、第1のグランド配線50と、第2のグランド配線52と、第1のグランド電極間配線58とが形成されている。
【0083】
実施例1と異なり、本体12kの互いに隣接する絶縁体層20と絶縁体層22kとの間には、第3の入力端子と出力端子とを接続する第3の信号ライン34に加え、第4の入力端子と出力端子とを接続する第4の信号ライン36が形成されている。
【0084】
また、実施例1と異なり、本体12kの互いに隣接する絶縁体層22kと絶縁体層24との間には、(a)第3の信号ライン34と対向する第3のグランド電極44と、(b)第4の信号ライン36と対向する第4のグランド電極46と、(c)第1のグランド端子18sと第3のグランド電極44とを接続する第3のグランド配線54と、(d)第2のグランド端子18tと第4のグランド電極46とを接続する第4のグランド配線56と、(e)第3のグランド電極44と第4のグランド電極46とを接続する第4のグランド電極間配線59とが形成されている。
【0085】
互いに対向する信号ライン30,32,34,36とグランド電極40,42,44,46との間に、実施例1と同様に、ESD保護素子部60a〜60dが形成され、ESD保護素子部60a〜60dとESD保護素子部60a〜60dを介して互いに対向する信号ライン30,32,34,36及びグランド電極40,42,44,46とによってESD保護素子が形成される。
【0086】
第1及び第2の入力端子及び出力端子と、第3及び第4の入力端子及び出力端子とは、交互に配置されており、積層方向から透視すると、第1及び第2のESD保護素子部60a,60bと第3及び第4のESD保護素子部60c,60dとは、それぞれの中心部が重ならないように、交互に配置されている。第1乃至第4のESD保護素子部60a〜60dは、積層方向から透視したときに、互いに離れており、重なる部分がないように配置されることが好ましい。
【0087】
図5(b)に示すように、実施例1と同じく、第1のグランド電極間配線58のインダクタンスL01は、第1のグランド配線50のインダクタンスと第2のグランド配線52のインダクタンスのいずれよりも大きい。また、実施例1と同様に、第2のグランド電極間配線59のインダクタンスL02は、第3のグランド配線54のインダクタンスと第4のグランド配線56のインダクタンスのいずれよりも大きい。
【0088】
また、第1及び第2のESD保護素子E1,E2がグランド端子18s,18tに接続されるグランドラインと、第3及び第4のESD保護素子E3,E4がグランド端子18s,18tに接続されるグランドラインとは、それぞれ別々にグランド端子18s,18tに接続され、接地される。
【0089】
そのため、ESD保護素子E1〜E4を流れた静電気の高周波側の大部分の成分は、矢印90,92,94,94で示すように、インダクタンスL01,L02が相対的に大きいグランド電極間配線58,59に流れることなく、第1乃至第4のグランド配線50,52,54,56からグランド端子18s,18tを経て、アースに逃がすことができる。そのため、あるESD保護素子E1〜E4を流れた静電気の高周波側の成分は、他のESD保護素子E1〜E4には流れない
一方、ESD保護素子E1〜E4を流れた静電気の低周波側の成分は、グランド電極間配線58,59にも流れるため、グランドラインの両側から短時間でアースに逃がすことができる。このとき、あるESD保護素子E1〜E4を流れた静電気の低周波側の成分は、共通のグランドラインを流れても、他のESD保護素子E1〜E4には流れない。
【0090】
積層方向から透視すると、第1及び第2の信号ライン30,32の間に第3及び第4の信号ライン34,36が配置されている。また、第1及び第2信号ライン30,32と第3及び第4の信号ライン34,36との間にグランドラインが配置されている。これにより、本体12の内部において信号ライン30,32,34,36同士をできるだけ離し、グランドラインで分断して寄生容量の発生を抑え、信号ライン30,32,34,36間の独立性を高めることができる。
【0091】
したがって、各ESD保護素子E1〜E4の独立性が高まり、クロストークが少なく、ESD保護性能に優れた4チャンネルのESD保護デバイス(アレイ)を実現できる。
【0092】
<まとめ> 以上に説明したように、複数のESD保護素子を備えたESD保護デバイス10,10kは、ある信号ラインに入り、ESD保護素子を流れた静電気が、グランドラインを介して他のESD保護素子に流れ、他の信号ラインに回り込むことを抑制でき、ESD保護素子の独立性を高めることができる。
【0093】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変更を加えて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0094】
10,10k ESD保護デバイス
12,12k 本体
12a 上面
12b 下面
12p,12q 側面
12s,12t 側面(端面)
14a〜14c 入力端子
16a〜16c 出力端子
18s,18t グランド端子
20 絶縁体層
22,22k 絶縁体層
22x 空洞
24 絶縁体層
26 絶縁体層
26x,26y 空洞
28 絶縁体層
30,32,34,36 信号ライン
40,42,44,46 グランド電極
50,52,54,54a,54b,56 グランド配線
58,59 グランド電極間配線
60a〜60c ESD保護素子部
62 コーティング粒子
64 金属粒子
66 無機材料
68 半導体粒子
69 空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに隣接する第1、第2の絶縁体層を含む複数の絶縁体層が積層された本体と、
前記本体の表面に形成されている第1、第2のグランド端子と、
前記本体の表面に形成されている第1の入力端子及び第1の出力端子と、
前記本体の表面に形成されている第2の入力端子及び第2の出力端子と、
前記第1の入力端子と前記第1の出力端子とを接続する第1の信号ラインと、前記第2の入力端子と前記第2の出力端子とを接続する第2の信号ラインとを含み、前記第1、第2の絶縁体層間に配置される第1の信号側電極層と、
前記第1のグランド端子に第1のグランド配線を介して接続される第1のグランド電極と、前記第2のグランド端子に第2のグランド配線を介して接続される第2のグランド電極と、前記第1のグランド電極と前記第2のグランド電極とを接続する第1のグランド電極間配線とを含み、前記第2の絶縁体層の主面のうち前記第1の絶縁体層とは反対側の主面に配置される第1のグランド電極層と、
前記第1の信号ラインと前記第1のグランド電極との間に形成され、一定以上の電圧が加わると導通する第1のESD保護素子部と、
前記第2の信号ラインと前記第2のグランド電極との間に形成され、一定以上の電圧が加わると導通する第2のESD保護素子部と、
を備え、
前記第1のグランド電極間配線のインダクタンスが、前記第1のグランド配線のインダクタンスと前記第2のグランド配線のインダクタンスのいずれよりも大きいこと特徴とするESD保護デバイス。
【請求項2】
前記第2の絶縁体層の前記第1の絶縁体層とは反対側に順に積層され、前記第2の絶縁体層と互いに隣接する第3、第4の絶縁体層と、
前記本体の表面に形成されている第3の入力端子及び第3の出力端子と、
前記第3の入力端子と前記第3の出力端子とを接続する第3の信号ラインを含み、前記第4の絶縁体層の主面のうち前記第3の絶縁体層とは反対側の主面に形成された第2の信号側電極層と、
前記第1のグランド端子に第3のグランド配線を介して接続され、前記第2のグランド端子に第4のグランド配線を介して接続される第3のグランド電極を含み、前記第3、第4の絶縁体層間に配置される第2のグランド電極層と、
前記第3の信号ラインと前記第3のグランド電極との間に形成され、一定以上の電圧が加わると導通する第3のESD保護素子部と、
をさらに備えたことを特徴とする、請求項1に記載のESD保護デバイス。
【請求項3】
前記第2の絶縁体層の前記第1の絶縁体層とは反対側に順に積層され、前記第2の絶縁体層と互いに隣接する第3、第4、第5の絶縁体層と、
前記本体の表面に形成されている第3の入力端子及び第3の出力端子と、
前記本体の表面に形成されている第4の入力端子及び第4の出力端子と、
前記第3の前記入力端子と前記第3の出力端子とを接続する第3の信号ラインと、前記第4の入力端子と前記第4の出力端子とを接続する第4の信号ラインとを含み、前記第4、第5の絶縁体層間に配置される第2の信号側電極層と、
前記第1のグランド端子に第3のグランド配線を介して接続される第3のグランド電極と、前記第2のグランド端子に第4のグランド配線を介して接続される第4のグランド電極と、前記第3のグランド電極と前記第4のグランド電極とを接続する第2のグランド電極間配線とを含み、前記第3、第4の絶縁体層間に配置される第2のグランド電極層と、
前記第3の信号ラインと前記第3のグランド電極との間に形成され、一定以上の電圧が加わると導通する第3のESD保護素子部と、
前記第4の信号ラインと前記第4のグランド電極との間に形成され、一定以上の電圧が加わると導通する第4のESD保護素子部と、
をさらに備え、
前記第2のグランド電極間配線のインダクタンスが、前記第3のグランド配線のインダクタンスと前記第4のグランド配線のインダクタンスのいずれよりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載のESD保護デバイス。
【請求項4】
前記第1のグランド電極間配線の幅は、前記第1、第2のグランド配線の幅のいずれよりも小さいことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一つに記載のESD保護デバイス。
【請求項5】
前記第2のグランド電極間配線の幅は、前記第3、第4のグランド配線の幅のいずれよりも小さいことを特徴とする、請求項3に記載のESD保護デバイス。
【請求項6】
前記第1の信号ラインのインダクタンスと前記第1のESD保護素子部のキャパシタンスまたは、
前記第2の信号ラインのインダクタンスと前記第2のESD保護素子部のキャパシタンスにより、
低域通過フィルタを形成することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一つに記載のESD保護デバイス。
【請求項7】
前記絶縁体層が磁性フェライトで構成されていることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一つに記載のESD保護デバイス。
【請求項8】
前記第1のESD保護素子部は、
前記第1の信号ラインと前記第1のグランド電極とが連通するように前記第1の絶縁体層に形成された第1の空洞内に配置された、無機材料でコーティングされた金属粒子及び半導体粒子を含み、
前記第2のESD保護素子部は、
前記第2の信号ラインと前記第2のグランド電極とが連通するように前記第1の絶縁体層に形成された第2の空洞内に配置された、無機材料でコーティングされた金属粒子及び半導体粒子を含むことを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一つに記載のESD保護デバイス。
【請求項9】
前記絶縁体層が矩形板形状を有し、
前記本体が直方体形状を有し、
前記第1、第2のグランド端子が形成されている前記本体の表面が、前記絶縁体層の互いに対向する一対の辺に沿って形成された前記本体の一対の側面であり、
前記第1、第2の入力端子及び前記第1、第2の出力端子が形成されている前記本体の表面が、前記絶縁体層の互いに対向する他の一対の辺に沿って形成された前記本体の他の一対の側面であり、
前記第1、第2のグランド電極間配線の幅と前記第1〜第4のグランド配線の幅とは、前記絶縁体層の互いに対向する前記一対の辺に平行な方向の寸法であることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一つに記載のESD保護デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−74460(P2012−74460A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216855(P2010−216855)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】