説明

F−18ラベルされたPETトレーサーのための新規前駆体分子

本発明は、F-18ラベルされた陽電子放射断層(PET)トレーサーの調製のための前駆体として適切な新規化合物に関する。さらに、本発明は、そのような前駆体分子の調製、及びそのような前駆体のF-18ラベリングによるPETトレーサーの調製に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、F-18ラベルされた陽電子放射断層(PET)トレーサーの調製のための前駆体として適切な新規化合物に関する。さらに、本発明は、そのような前駆体分子の調製、及びそのような前駆体のF-18ラベリングによるPETトレーサーの調製に関する。
【背景技術】
【0002】
分子イメージングは、腫瘍学、神経学及び心臓学の分野において、ほとんどの従来の方法よりも早く、疾病の進行又は治療有効性を検出する能力を有する。光学イメージングMRI、 SPECT 及び PETとして開発されて来たいくつかの有望な分子イメージング技法のうち、PETは、定量的及び運動学的データを供給するためのその高い感度及び能力のために、薬物開発のために特に興味あるものである。
【0003】
例えば、陽電子放射性同位体は、炭素、ヨウ素、窒素及び酸素を包含する。それらの同位体は、生成物学的に機能し、そしてPETイメージングのために元の分子と化学的に同一であるトレーサーを生成するために、標的化合物におけるそれらの非放射性対応物を置換することができるか、又はそれぞれの親エフェクター分子の近い類似体を得るために前記対応物に結合され得る。それらの同位体の中で、18Fは、診断用トレーサーの調製及び続く生化学工程の研究を可能にするその比較的長い半減期(110分)のために、最も便利なラベリング同位体である。さらに、その低いβ+エネルギー(634keV)がまた好都合である。
【0004】
求核性芳香族及び脂肪族[18F]−フルオロ−弗素化反応は、疾病、例えば固形腫瘍又は脳患者を標的化し、そして可視化するインビボイメージング剤として使用される[18F]−フルオロ−ラベルされた放射性医薬物のために非常に重要なものである。[18F]−フルオロ−ラベルされた放射性医薬物を用いることにおける非常に重要な技術的目標は、放射性化合物のすばやい調製及び投与である。
【0005】
モノアミンオキシダーゼ(MAO, EC, 1. 4. 3. 4)は、異なった種類のアミンオキシダーゼである。MAOは次の2種の形で存在する:MAO A及びMAO B (Med. Res. Rev. 1984, 4, 323-358)。リガンドにより複合体化されたMAO A及びMAO Bの結晶構造が報告されている(J. Med. Chem. 2004, 47, 1767-1774 及びProc. Nat. Acad. Sci. USA, 2005, 102, 12684-12689)。
【0006】
いずれかのイソ酵素に対して選択的であるインヒビターが同定され、そして研究されて来た(例えば、J. Med. Chem. 2004, 47, 1767-1774及びProc. Nat. Acad. Sci. USA, 2005, 102, 12684-12689)。デプレミル(A)(Biochem Pharmacol. 1972, 5, 393-408)及びクロルギリン(B)は、酵素の不可逆的阻害を誘発するモノアミンオキシダーゼの有能なインヒビターである。デプレニル(C)のL−異性体は、D−異性体よりもより有能なインヒビターである。
【0007】
【化1】

【0008】
MAOインヒビターについての神経保護及び他の医薬効果もまた、記載されている(Nature Reviews Neuroscience, 2006, 295, 295-309, Br. J. Pharmacol., 2006, 147, 5287- 5296)。MAO Bインヒビターは、例えば、CNSにおいてDOPAレベルを高めるために使用され(Progr. Drug Res. 1992, 38, 171-297)、そしてそれらは、高めたられたレベルのMAO Bがアルツハイマープラークに関連する星状膠細胞に包含される事実に基づいて、アルツハイマー病の処理のための臨床試験に使用されて来た(Neuroscience, 1994, 62, 15-30)。
【0009】
弗素化されたMAO インヒビターは、合成されており、そして生化学的に評価されている(Kirk et al., Fluorine and Health, A. Tressaud and G. Haufe (editors), Elsevier 2008, pp 662-699)。 F-18及びC−11ラベルされたMAOインヒビターは、インビボで研究されて来た(Journal of the Neurological Science, (2007), 255, 17-22; 再考: Methods 2002, 27, 263- 277)。F-18ラベルされたデプレニル及びデプレニル類似体(D)及び(E)もまた報告されている(それぞれ、int. J. Radiat. Appl. instrument. Part A, Applied Radiat isotopes, 1991, 42, 121, J. Med. Chem. 1990, 33, 2015-2019 及び Nucl. Med. Biol. 1990, 26, 111-116)。
【0010】
【化2】

【0011】
特許出願WO2009/052970号は、中でも、CNSの疾病、特にモノアミンオキシダーゼ(MAO)の高められたレベルに関連する疾病の診断のために有用な化合物の調製のためへのスキーム1に示されるような異性体混合物(構造体I及びII)の適用を教授している。構造的に幾分関連する化合物が、中間体アジリジニウムイオンを包含する転位を容易に受けることが知られており(例えば、P. Gmeiner et al., J. Org. Chem. 1994, 59, 6766を参照のこと)、これが、熱力学的に安定したIIの類似体への動力学的に制御されたIの類似体の転移により、非常に暖かな条件下でIIの純粋類似体の形成を導く。
【0012】
本発明者は、式IIの最も純粋な位置異性体を得るために、WO2009/052970号に開示される前記異性体混合物のために適用できるこの転移を見出した。驚くべきことには、及び窒素置換の立体的要求が上記引例に記載されるシステムに比較して、本明細書に開示される化合物において明らかに低い事実にもかかわらず、これは実質的に厳しい条件(室温での撹拌の代わりに、70℃〜130℃、好ましくは80℃〜120℃、さらにより好ましくは90℃〜110℃の温度範囲への加熱)を必要とした。
【0013】
スキーム1に示されるような位置異性体的に純粋な化合物IIの使用は、WO2009/052970号に示される位置異性体混合物に比較して、促進された特徴化、品質制御及び規則的進行の利点を提供する。さらに、一般式IIの化合物は、一般式Iの化合物に比較して、より高い安定性を特徴とする。従って、驚くべきことには、一般式Ifの放射性トレーサーのための一般式IIの二次前駆体の利用は、一般式Iの構造的により関連する一次前駆体の使用として、より好都合である。
【0014】
【化3】

【0015】
スキーム1:WO2009/052970号に開示されるような位置異性体化合物の一般構造:
発明の特定の記載
第1の観点においては、本発明は、下記一般式I及びII:
【0016】
【化4】

【0017】
[式中、Wは、-C(U1)(U2)-C≡CH及びシクロプロピルを含んで成る群から選択され、ここでU1及びU2は水素及び重水素から独立して選択され、
Aは、置換されているか又は置換されていないアリール、置換されているか又は置換されていないヘテロアリール、(C1-C10)‐アルキル、(C2-C4)-アルキニル、(C1-C4)-アルコキシを含んで成る群から選択され、
R1は、(C1-C6)-アルキル、好ましくはメチルから選択され、
【0018】
R2は、脱離基であり、ここで好ましい脱離基は、ハロゲン、C1-C6-アルキルスルホニルオキシ(任意には弗素により置換される)、及びアリールスルホニルオキシ(任意には水素、メチル、ハロ及びニトロにより置換される)から選択され、そして特に好ましい脱離基は、クロロ、ブロモ、メタンスルホニルオキシ及びp-トルエンスルホニルオキシである]で表される化合物(前記化合物のすべての異性体形は鏡像異性体及びジアステレオマー、及びセラミ混合物を包含するが、但しそれらだけには限定されない)、及び有機又は無機酸とのいずれかの適切な塩、エステル、複合体又は溶媒化合物に向けられる。
1つの態様においては、本発明は、下記一般式II:
【0019】
【化5】

【0020】
[式中、Wは、-C(U1)(U2)-C≡CH及びシクロプロピルを含んで成る群から選択され、ここでU1及びU2は水素及び重水素から独立して選択され、
Aは、置換されているか又は置換されていないアリール、置換されているか又は置換されていないヘテロアリール、(C1-C10)‐アルキル、(C2-C4)-アルキニル、(C1-C4)-アルコキシを含んで成る群から選択され、
R1は、(C1-C6)-アルキル、好ましくはメチルから選択され、
【0021】
R2は、脱離基であり、ここで好ましい脱離基は、ハロゲン、C1-C6-アルキルスルホニルオキシ(任意には弗素により置換される)、及びアリールスルホニルオキシ(任意には水素、メチル、ハロ及びニトロにより置換される)から選択され、そして特に好ましい脱離基は、クロロ、ブロモ、メタンスルホニルオキシ及びp-トルエンスルホニルオキシである]で表される化合物(前記化合物のすべての異性体形は鏡像異性体及びジアステレオマー、及びセラミ混合物を包含するが、但しそれらだけには限定されない)、及び有機又は無機酸とのいずれかの適切な塩、エステル、複合体又は溶媒化合物に向けられる。
【0022】
好ましい態様においては、本発明は、
Wが、2-プロピニルであり、
Aが、置換されているか又は置換されていないアリール、置換されているか又は置換されていないヘテロアリール、(C1-C10)‐アルキル、(C2-C4)-アルキニル、(C1-C4)-アルコキシを含んで成る群から選択され、
R1が、メチルであり、
【0023】
R2が、脱離基であり、ここで好ましい脱離基は、ハロゲン、C1-C6-アルキルスルホニルオキシ(任意には弗素により置換される)、及びアリールスルホニルオキシ(任意には水素、メチル、ハロ及びニトロにより置換される)から選択され、そして特に好ましい脱離基は、クロロ、ブロモ、メタンスルホニルオキシ及びp-トルエンスルホニルオキシである、一般式IIの化合物(前記化合物のすべての異性体形は鏡像異性体及びジアステレオマー、及びセラミ混合物を包含するが、但しそれらだけには限定されない)、及び有機又は無機酸とのいずれかの適切な塩、エステル、複合体又は溶媒化合物に向けられる。
【0024】
より好ましい態様においては、本発明は、
Wが2−プロピルであり、
Aがフェニルであり、
R1がメチルであり、
R2がクロロである、一般式IIの化合物(前記化合物のすべての異性体形は鏡像異性体及びジアステレオマー、及びセラミ混合物を包含するが、但しそれらだけには限定されない)、及び有機又は無機酸とのいずれかの適切な塩、エステル、複合体又は溶媒化合物に向けられる。
【0025】
第2の観点においては、本発明は、一般式Ia及びIIaの化合物と、それらの化合物により置換されるヒドロキシ基の脱離基への転換をもたらすのに適切な試薬とを反応することにより、一般式Ia及びIIaのアルコール(但し、それらだけには限定されない)を含んで成る適切な出発材料から一般式IIの化合物の標的化された合成に向けられる:
【0026】
【化6】

【0027】
そのような転換は、適切な溶媒、例えば任意にハロゲン化された炭化水素、例えばジクロロメタン、又はエーテル、例えばテトラヒドロフラン中、適切な塩基、例えばトリアルキルアミン、例えばトリエチルアミン、又は例えば複素芳香族塩基、例えば2,6-ルチジンの存在下で、スルホニルハロゲン化物、例えばメタンスルホニル塩化物又はp-トリエンスルホニル塩化物との反応を包含するが、但しそれらだけには限定されない。
【0028】
前記合成方法はさらに、R2がスルホン酸エステルである式IIの化合物を得るために、前述のスルホニルハロゲン化物の代わりに無水スルホニル、例えば無水メタンスルホン酸の使用を包含するが、但しそれらだけには限定されない。前記合成方法はさらに、一般式IIの化合物への一般式IIaのアルコールの転換のためへの四ハロゲン化炭素、例えばテトラクロロメタン又はテトラブロモメタン、及び適切な有機リン試薬、例えばトリフェニルホスファン又はトリ−n−ブチルホスファンの使用を包含することができる。
【0029】
好ましい態様においては、本発明は、一般式Iaのアルコールと、式Iaの化合物により置換されるヒドロキシ基の脱離基への転換をもたらすのに適切な試薬とを反応せしめることによる、一般式Iaのアルコールからの一般式IIの化合物の標的化された合成に向けられる。そのような転換は、適切な溶媒、例えばハロゲン化された炭化水素、例えばジクロロメタン、又はエーテル、例えばテトラヒドロフラン中、適切な塩基、例えばトリアルキルアミン、例えばトリエチルアミンの存在下で、スルホニルハロゲン化物、例えばメタンスルホニル塩化物又はp-トリエンスルホニル塩化物との反応を包含するが、但しそれらだけには限定されない。
【0030】
前記合成方法はさらに、R2がスルホン酸エステルである式IIの化合物を得るために、前述のスルホニルハロゲン化物の代わりに無水スルホニル、例えば無水メタンスルホン酸の使用を包含するが、但しそれらだけには限定されない。
【0031】
より好ましい態様においては、本発明は、一般式Iaのアルコールと、式Iaの化合物により置換されるヒドロキシ基の脱離基への転換をもたらすのに適切な試薬とを反応せしめることによる、一般式Iaのアルコールからの一般式IIの化合物の標的化された合成に向けられ、
上記式中、Wは、2-プロピニルであり、
Aは、置換されているか又は置換されていないアリール、置換されているか又は置換されていないヘテロアリール、(C1-C10)‐アルキル、(C2-C4)-アルキニル、(C1-C4)-アルコキシを含んで成る群から選択され、
【0032】
R1は、メチルであり、
R2は、脱離基であり、ここで好ましい脱離基は、ハロゲン、C1-C6-アルキルスルホニルオキシ(任意には弗素により置換される)、及びアリールスルホニルオキシ(任意には水素、メチル、ハロ及びニトロにより置換される)から選択され、そして特に好ましい脱離基は、クロロ、ブロモ、メタンスルホニルオキシ及びp-トルエンスルホニルオキシであり、そして最も好ましい脱離基はクロロである。
【0033】
より好ましい態様においては、本発明は、一般式Iaのアルコールから一般式IIの化合物の標的化された化合に向けられ、
上記式中、
Wは2−プロピニルであり、
Aはフェニルであり、
R1はメチルであり、
R2はクロロである。
【0034】
最も好ましい態様においては、本発明は、式Iaの化合物により置換されるヒドロキシ基のクロロ基への転換をもたらすために、適切な溶媒、例えばハロゲン化された炭化水素、例えばジクロロメタン中、適切な塩基、例えばトリアルキルアミン、例えばトリエチルアミンの存在下で、スルホニル塩化物、例えばメタンスルホニル塩化物又はp−トルエンスルホニル塩化物と式Iaの化合物とを反応することによる、一般式Iaのアルコールからの一般式IIの化合物の標的化された合成に向けられ、
上記式中、
Wは2−プロピニルであり、
Aはフェニルであり、
R1はメチルであり、
R2はクロロである。
【0035】
すべての反応体を一緒にすることに起因する反応混合物は、最初に、−50℃〜+30℃、好ましくは−30℃〜+30℃、さらにより好ましくは−10℃〜+25℃で、5分〜6時間、好ましくは15分〜4時間、さらにより好ましくは30分〜2時間、反応せしめられ、続いて、70℃〜130℃、好ましくは80℃〜120℃、さらにより好ましくは90℃〜110℃の範囲の温度に、5分〜6時間、好ましくは15分〜4時間、さらにより好ましくは30分〜2時間の範囲の適切な時間、加熱される。前記加熱期間は、一般式IIの所望する異性体への一般式I及びIIの異性体の最初に形成された異性体混合物の転換をもたらす。
【0036】
第3の観点においては、本発明は、R218Fにより置換されている化合物を得るために、一般式I又はIIの化合物と、F−弗素化剤(F=18F)との反応による化合物の合成方法に向けられる。
【0037】
第4の観点においては、本発明は、R218Fにより置換されている化合物を得るために、一般式I又はIIの化合物と、F−弗素化剤との反応による化合物の合成方法に向けられ、ここで前記F−弗素化剤は、F−アニオンを含んで成る化合物、好ましくは4,7,13,16,21, 24−ヘキサオキサ−1,10−ジアザビシクロ[8.8.8]−ヘキサコサンKF、すなわちクラウンエーテル塩Kryptofix KF、KF、HF、KH F2、CsF、NaF及びFのテトラアルキルアンモニウム塩、例えばテトラブチルアンモニウム弗化物を含んで成る群から選択された化合物であり、そしてFは18Fである。
【0038】
第5の観点においては、本発明は、18Fラベルされた診断用イメージング剤、又はPET適用のためのイメージング剤としてのイメージング剤の調製のためへの一般式I及びIIの化合物の使用に向けられる。
【0039】
より好ましくは態様においては、前記PET適用は、CNS疾患のイメージングのために使用される。CNS疾患は、炎症及び自己免疫疾患、アレルギー、感染及び毒素−誘発性及び虚血−誘発性疾患、病理生理学的相応物を有する薬理学的誘発性炎症、神経炎症、神経変性疾患を包含するが、但しそれらだけには限定されない。
【0040】
より好ましくは、CNS疾患は、多発性硬化症、 アルツハイマー病、前頭側頭骨性痴呆、 レーヴィ小体病を有する痴呆、白質脳症、癲癇、神経因性疼痛、筋萎縮性側索硬化症、 パーキンソン病、脳症、 脳腫瘍、鬱病、薬物乱用、アテローム、アテローム硬化症、薬理学的に誘発された炎症、 不明瞭な起源の全身性炎症から選択される。
【0041】
本発明はまた、式I又はIIの化合物を含んで成るキットにも関する。そのようなキットは、式I又はIIの化合物を含む少なくとも1つの密封されたバイアルを含むことができる。キットはまた、本明細書に開示される反応を実施するために適切な試薬を含むことができる。本明細書に開示される試薬はまた、そのようなキットに含まれ、そして密封されたバイアルに貯蔵され得る。キットはまた、F−18ラベリング試薬も含むことができる。さらに、キットはその使用のための説明書を含むことができる。
特に、本発明は、下記にも関する:
【0042】
1.下記一般式II:
【化7】

【0043】
[式中、Wは、-C(U1)(U2)-C≡CH及びシクロプロピルを含んで成る群から選択され、ここでU1及びU2は水素及び重水素から独立して選択され、
Aは、置換されているか又は置換されていないアリール、置換されているか又は置換されていないヘテロアリール、(C1-C10)‐アルキル、(C2-C4)-アルキニル、(C1-C4)-アルコキシを含んで成る群から選択され、
R1は、(C1-C6)-アルキルから選択され、
R2は、脱離基である]で表される化合物(前記化合物のすべての立体異性体形を包含する)、及び有機又は無機酸とのいずれかの適切な塩、エステル、複合体又は溶媒化合物。
【0044】
2.下記一般式II:
【化8】

【0045】
[式中、Wは、-C(U1)(U2)-C≡CH及びシクロプロピルを含んで成る群から選択され、ここでU1及びU2は水素及び重水素から独立して選択され、
Aは、置換されているか又は置換されていないアリール、置換されているか又は置換されていないヘテロアリール、(C1-C10)‐アルキル、(C2-C4)-アルキニル、(C1-C4)-アルコキシを含んで成る群から選択され、
R1は、(C1-C6)-アルキルから選択され、
R2は、脱離基である]で表される化合物。
【0046】
3.R2がクロロである、1又は2記載の化合物。
【0047】
4.下記式II:
【化9】

【0048】
[式中、Wは、-C(U1)(U2)-C≡CH及びシクロプロピルを含んで成る群から選択され、ここでU1及びU2は水素及び重水素から独立して選択され、
Aは、置換されているか又は置換されていないアリール、置換されているか又は置換されていないヘテロアリール、(C1-C10)‐アルキル、(C2-C4)-アルキニル、(C1-C4)-アルコキシを含んで成る群から選択され、
R1は、(C1-C6)-アルキルから選択され、
R2は、脱離基である]で表される化合物の標的化された合成方法であって、
下記式Ia又はIIa:
【0049】
【化10】

【0050】
[式中、Wは、-C(U1)(U2)-C≡CH及びシクロプロピルを含んで成る群から選択され、ここでU1及びU2は水素及び重水素から独立して選択され、
Aは、置換されているか又は置換されていないアリール、置換されているか又は置換されていないヘテロアリール、(C1-C10)‐アルキル、(C2-C4)-アルキニル、(C1-C4)-アルコキシを含んで成る群から選択され、
R1は、(C1-C6)-アルキルから選択され]で表される化合物と、式Ia又はIIaのヒドロキシル基の脱離基への転換をもたらすのに適切な試薬とを反応せしめることを包含する方法。
【0051】
5.下記式II:
【化11】

【0052】
[式中、Wは、-C(U1)(U2)-C≡CH及びシクロプロピルを含んで成る群から選択され、ここでU1及びU2は水素及び重水素から独立して選択され、
Aは、置換されているか又は置換されていないアリール、置換されているか又は置換されていないヘテロアリール、(C1-C10)‐アルキル、(C2-C4)-アルキニル、(C1-C4)-アルコキシを含んで成る群から選択され、
R1は、(C1-C6)-アルキルから選択され、
R2は、脱離基である]で表される化合物の標的化された合成方法であって、
下記式Ia:
【0053】
【化12】

【0054】
[式中、Wは、-C(U1)(U2)-C≡CH及びシクロプロピルを含んで成る群から選択され、ここでU1及びU2は水素及び重水素から独立して選択され、
Aは、置換されているか又は置換されていないアリール、置換されているか又は置換されていないヘテロアリール、(C1-C10)‐アルキル、(C2-C4)-アルキニル、(C1-C4)-アルコキシを含んで成る群から選択され、
R1は、(C1-C6)-アルキルから選択され]で表される化合物と、式Iaのヒドロキシル基の脱離基への転換をもたらすのに適切な試薬とを反応せしめることを包含する方法。
【0055】
6.Wが2−プロピニルであり、
Aがフェニルであり、
R1がメチルであり、
R2がクロロである、4又は5記載の方法。
【0056】
7.Wが2−プロピニルであり、
Aがフェニルであり、
R1がメチルであり、
R2がクロロであり、
そして反応混合物が、その混合物が低温でインキュベートされた後、70℃〜130℃の温度に加熱される、6記載の方法。
【0057】
8.下記式If:
【化13】

【0058】
[式中、Wは、-C(U1)(U2)-C≡CH及びシクロプロピルを含んで成る群から選択され、ここでU1及びU2は水素及び重水素から独立して選択され、
Aは、置換されているか又は置換されていないアリール、置換されているか又は置換されていないヘテロアリール、(C1-C10)‐アルキル、(C2-C4)-アルキニル、(C1-C4)-アルコキシを含んで成る群から選択され、
R1は、(C1-C6)-アルキルから選択される]で表される化合物の合成方法であって、
下記式II:
【0059】
【化14】

【0060】
[式中、Wは、-C(U1)(U2)-C≡CH及びシクロプロピルを含んで成る群から選択され、ここでU1及びU2は水素及び重水素から独立して選択され、
Aは、置換されているか又は置換されていないアリール、置換されているか又は置換されていないヘテロアリール、(C1-C10)‐アルキル、(C2-C4)-アルキニル、(C1-C4)-アルコキシを含んで成る群から選択され、
R1は、(C1-C6)-アルキルから選択され、
R2は、脱離基である]で表される化合物と、F−弗素化剤(F=F-18)とを反応せしめることを包含する方法。
【0061】
9.Wが2−プロピニルであり、
Aがフェニルであり、
R1がメチルであり、
R2がクロロである、8記載の方法。
【0062】
10.1,2又は3記載の化合物を含む密封されたバイアルを含んで成るキット。
【0063】
定義
本明細書において使用される場合、脱離基とは、ハロ、特にクロロ、ブロモ、ヨード、又は任意に置換されたスルホニルオキシ基、例えばメタンスルホニルオキシ、p−トルエンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ、ノナフルオロブタンスルホニルオキシ、(4−ブロモ−ベンゼン)スルホニルオキシ、(4−ニトロ−ベンゼン)スルホニルオキシ、(2−ニトロ−ベンゼン)スルホニルオキシ、(4−イソプロピル−ベンゼン)スルホニルオキシ、(2,4,6−トリ−イソプロピル−ベンゼン)スルホニルオキシ、(2,4,6−トリメチル−ベンゼン)スルホニルオキシ、(4−tert−ブチル−ベンゼン)スルホニルオキシ、ベンゼンスルホニルオキシ、及び(4−メトキシ−ベンビン)スルホニルオキシを含んで成る群から選択された官能基を意味する。
【0064】
用語“アリール”とは、単独で又は他の基の一部として、本明細書において使用される場合、環部分に6〜12個の炭素、好ましくは6〜10個の炭素を含む単環式又は二環芳香族基、例えばフェニル、ナフチル又はテトラヒドロナフチルを言及し、それらの基自体は、ハロ、ニトロ(C1-C6)カルボニル、シアノ、ニトリル、ヒドロキシル、トリフルオロメチル、(C1-C6)スルホニル、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルコキシ及び(C1-C6)スルファニルを含んで成る群から、独立して及び個々に選択された1,2又は3個の置換基により置換され得る。上記に概略されるように、そのような“アリール”はさらに、1又はいくつかの置換基により置換され得る。
【0065】
用語“ヘテロアリール”とは、本明細書において使用される場合、5〜14個の環原子;環状アレイにおいて共有される、6,10又は14個のπ電子を有し;そして炭素原子(ハロ、ニトロ(C1-C6)カルボニル、シアノ、ニトリル、トリフルオロメチル、(C1-C6)スルホニル、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルコキシ及び(C1-C6)スルファニルにより置換され得る)及び、1,2,3又は4個の酸素、窒素又は硫黄へテロ原子(ヘテロアリール基の例は、次のものを包含する:チェニル、ベンゾ[b]チェニル、ナフト[2,3−b]チェニル、チアントレニル、フリル、フラニル、ピラニル、イソベンゾフラニル、ベンズオキサゾリル、クロメニル、キサンテニル、フェノキシチリニル、2H−ピロリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、3H−インドリル、インドリル、インダゾリル、プリニル、4H−キノリジニル、イソキノリル、キノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キンナゾリニル、シンノリニル、プラリジニル、4aH−カルバゾリル、カルバゾリル、カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ペリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、イソチアゾリル、フェノチアジニル、イソキサゾリル、フラザニル及びフェノキサジニル)を含む基を意味する。
【0066】
ヘテロアリールは、ハロ、ニトロ(C1-C6)カルボニル、シアノ、ニトリル、ヒドロキシル、トリフルオロメチル、(C1-C6)スルホニル、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルコキシ及び(C1-C6)スルファニルを含んで成る群から、独立して及び個々に選択された1,2又は3個の置換基により置換され得る。上記に概略されるように、そのような“ヘテロアリール”はさらに、1又はいくつかの置換基により置換され得る。
【0067】
発明の記載及び請求項に使用される場合、用語“アルキル”とは、単独で又は他の基の一部として、1〜10個の炭素原子を有する、直鎖又は枝分れ鎖のアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘプチル、ヘキシル、デシルを言及する。アルキル基はまた、例えばハロゲン原子、ヒドロキシル基、C1-C4−アルコキシ基又はC6-C12−アリール基(また、例えば1〜3個のハロゲン原子により置換され得る)により置換され得る。より好ましくは、アルキルは、C1-C10アルキル、C1-C6アルキル又はC1-C4アルキルである。
【0068】
本発明の記載及び請求項において使用される場合、用語“アルキニル”は、アルキルについてと類似して定義されるが、しかしそれぞれ、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合又は三重結合を含み、より好ましくはC3-C4アルキニルである。
本発明の記載及び請求項において使用される場合、用語“アルコキシ(又はアルキルオキシ)”とは、酸素原子により、それぞれ結合されるアルキル基を言及し、そしてアルキル部分は上記に定義される通りである。
【0069】
用語、“置換される”が使用される場合、“置換された”を用いる表現において示される原子上の1又は複数の水素が示される基からの選択により置換され、但し示される原子の通常の原子価は越えず、そして置換が化学的に安定した化合物、すなわち反応混合物からの有用な程度の純度への単離及び医薬組成物への配合を生存するのに十分に強い化合物をもたらすことを示すことを意味する。前記置換基は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ、(C1-C6)カルボニル、シアノ、ニトリル、トリフルオロメチル、(C1-C6)スルホニル、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルコキシ及び(C1-C6)スルファニルから選択され得る。
【0070】
発明の記載及び請求項に使用される場合、用語 “無機酸”及び“有機酸”とは、それぞれ、鉱酸、例えば次のもの(但し、それらだけには限定されない):酸、例えばカルボン酸、硝酸、リン酸、塩酸、過塩素酸又は硫酸、又はその酸性塩、例えば硫酸水素カリウム、又は次の適切な有機酸(但し、それらだけには限定されない):酸、例えば脂肪族酸、脂環式酸、カルボン酸及びスルホン酸(それらの例は、キ酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、琥珀酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、フマル酸、ピルビン酸、安息香酸、アントラニル酸、メシル酸、フマル酸、サリチル酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボニック酸(embonic)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パントテン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸及びスルファニル酸である)を言及する。
【0071】
本発明の化合物は、溶媒化合物、例えば水和物として存在することができ、ここで本発明の化合物は、化合物の結晶格子の構造要素として有機溶媒又は水を含むことができる。前記溶媒の量は、理論的又は非理論的比で存在することができる。理論的溶媒化合物、例えば水和物の場合、1/2、1、1・1/2、2、3、4、5、等の溶媒化合物又は水和物が可能である。
【0072】
異性中心のキラル中心又はもう1つの形が本発明の化合物において存在する場合、そのような異性体のすべての形、例えば、鏡像異性及びジアステレオマーが、転換されることが意図される。キラル中心を含む化合物は、ラセミ混合物として、又は鏡像異性的に富化された混合物として使用され得、又はラセミ混合物は、良く知られている技法を用いて分離され得、そして個々の鏡像異性体は単独で使用され得る。化合物が不飽和の炭素−炭素二重結合を有する場合、E-異性体及びZ-異性体の両者は、本発明の範囲内にある。化合物が互異性形、例えばケト−エノール互異性体で存在する場合、個々の互異性形は、平衡下で又は1つの形で優先的に存在しても、本発明の範囲内に包含されるものとして企画される。
【0073】
用語“ハロゲン”、又は“ハロ”とは、弗素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)又はヨウ素(I)を言及し;用語“ハロゲン化物”とは、弗化物、塩化物、臭化物又はヨウ化物を言及する。
【0074】
本発明の化合物の一般的合成
本発明の化合物は、種々の方法、中でも、一般式Ia及びIIaのアルコールから容易に調製され得る。そのような化合物は、良く知られており、そして/又は市販の出発材料から出発し、そして当業者に良く知られている合成方法を用いてアプローチされ得る。
【0075】
【化15】

【0076】
スキーム2:本発明の化合物の調製のための適切な出発材料、ここでA、R1及びWは本発明の請求項及び明細書に定義される通りである:
【0077】
従って、一般式IIIのN−アルキルアミノ酸が、複雑な水素化物試薬、例えばリチウムアルミニウム水素化物を用いて還元され、それぞれのアミノアルコールIVが得られ、これが、一般式W−R2の試薬、例えば臭化プロパルギルを用いてのアルキル化又はプロパルギル化により、一般式Iaの中間体に転換され得る。他方では、IbへのIVの調製は、IV、W−OH、適切なホスファン試薬、例えばトリフェニルホスファン又はトリ−n−ブチルホスファン、及び適切なジアゾジカルボキシラート、例えばジエチルジアゾカルボキシレートを用いて、Mitsunobu型カップリング反応により達成され得る。両鏡像異性体形でのアミノ酸の広範囲の利用性のために、本明細書に記載される方法は、Iaのいずれかの鏡像異性体形を選択的に得るための機会を提供する。
【0078】
【化16】

【0079】
スキーム3:N−アルキルアミノ酸IIIからの中間体Iaの調製、ここでA、R1及びWは本発明の請求項及び明細書に定義される通りである:
一般構造体IIaのアルコールは、例えば一般式Vのエポキシドから出発して得られる。そのような化合物は、当業者に良く知られており、一部市販されており、そして例えば、それぞれの末端アルケンのエポキシド化により用意に入手できる。そのようなエポキシドVは、アミンR1−NH−Wにより開環され、一般式IIaの所望するアミノアルコールが得られる(例えば、H. Lindsay et al., Synthesis 2007, (6), 902を参照のこと)。単一の鏡像異性体は、出発材料としてのエナンチオ純粋エポキシドの使用により、又はキラルHPLC分離又はエナンチオ純粋酸への前記アミノアルコールIIaの暴露により形成される塩の選択的結晶化によるアミン段階上の鏡像異性体の分離により得られる。
【0080】
【化17】

【0081】
スキーム4:エポキシドVからの中間体IIaの調製、ここでA、R1及びWは本発明の請求項及び明細書に定義される通りである。
式Ia及びIIaの化合物は、適切な溶媒、例えばジクロロメタン中、適切な塩基、例えば第三脂肪族アミン、例えばトリエチルアミン又はHuenig塩基の存在下での塩化スルホニル、例えば塩化メタンスルホニルとの反応により、本発明の化合物に転換され得る。
【0082】
文献に公開される初期発見によれば(例えば、P. Gmeiner et al., J. Org. Chem. 1994, 59, 6676を参照のこと)、スルホネートVIをもたらすIaの初期スルホニル化、続いてアジリジニウムイオンVIIの形成、このイオンは初期反応段階において形成される塩化物カウンターイオンにより開環されることが仮定される。運動的制御下で、ハロゲン化物カウンターイオンによる、置換基を欠くアジリジニウム環炭素の攻撃を通しての一次ハロゲン化物の形成が好ましい。熱力学的制御は、二次ハロゲン化物IIbの形成を支持する。Gmeinerの出版物は、室温での高いN, N−ジベンジル置換を特徴とする関連するハロゲン化物の形成を報告しているが、本発明は驚くべきことには、高められた温度が、二次ハロゲン化物IIbへの再配置をもたらすために本発明の化合物について必要とされることを見出した。
【0083】
【化18】

【0084】
スキーム5:中間体スルホネート及びアジリジニウムイオンを通して塩化物Ib及びIIbの調製、ここでA、R1及びWは本発明の請求項及び明細書に定義される通りである、そしてR3は弗素により任意に置換され、そして弗素により任意に置換されるC1-C6−アルキル、及び任意に置換されたアリールから選択され、ここで水素、メチル、ハロ及びニトロが前記アリール成分の好ましい置換基である。
【0085】
他方では、一般式I及びより好ましくはIIの化合物の形成は、適切な出発材料、例えばアルコールIa及びIbと、水素スルホン酸(それぞれのスルホネートを供給するための)、又は適切なリン試薬、例えばトリフェニルホスファンとの反応により達成され得る(例えば、R. Appel et al, Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 1975, 14, 801を参照のこと)。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】図1は、中間体1BのキラルHPLCを示す。
【図2】図2は、中間体1Bの光学対掌体のキラルHPLCを示す。
【図3】図3は、例1のキラルHPLCを示す。
【図4】図4は、例1の光学対掌体のキラルHPLCを示す。
【図5−1】図5−1は、例4の予備HPLCを示す。
【図5−2】図5−2は、例4の予備HPLCを示す。
【0087】
【図6−1】図6−1は、キラルHPLCにおける例4の所望するF−18ラベルされた生成物及びその非放射性対照化合物の同時注入を示す。
【図6−2】図6−2は、キラルHPLCにおける例4の所望するF−18ラベルされた生成物及びその非放射性対照化合物の同時注入を示す。
【図7−1】図7−1は、キラルHPLCにおける例4の所望するF−18ラベルされた生成物及びその非放射性対照化合物の光学対掌体の同時注入を示す。
【図7−2】図7−2は、キラルHPLCにおける例4の所望するF−18ラベルされた生成物及びその非放射性対照化合物の光学対掌体の同時注入を示す。
【図8】図8は、キラルHPLCにおける例4のF−18ラベルされた副産物及びその非放射性対照化合物の同時注入を示す。
【実施例】
【0088】
実験セクション
一般:すべての溶媒及び化学薬品は、市販源から入手され、そしてさらなる精製を伴わないで使用された。次の表は、それらの略語がテキスト内に説明されない限り、この段落及び例に使用される略語を列挙する。NMRピークの形は、それらがスペクトルで出現する場合、表され、可能なより高いオーダーの効果を考慮するものではない。
【0089】
マイクロ波照射を用いる反応は、ロボットユニットを備えたBiotage Initator(商標)電子レンジにより実施され得る。本発明の方法に従って生成される化合物及び中間体は、精製を必要とする。有機化合物の精製は、当業者に良く知られており、そして同じ化合物を精製するいくつかの手段が存在する。多くの場合、精製は必要とされない。ある場合、化合物は結晶化により精製され得る。多くの場合、不純物は、適切な溶媒を用いて、粉砕により除去され得る。多くの場合、化合物は、クロマトグラフィーにより、特にSepartisからの予備パックされたシリカゲルカートリッジ、例えばIsolute(商標)Flashシリカゲル又はIsolute(商標)Flash NH2シリカゲル、並びに例えばFlashMaster II 自動精製機 (Argonaut/Biotage)及び溶離剤、例えばヘキサン/EtOAc又はジクロロメタン/エタノールのグラジエントを用いて、フラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製され得る。
【0090】
多くの場合、化合物は、ダイオードアレイ検出器及び/又はオンラインエレクトロスプレイイオン化質量分光計、並びに適切な予備パックされた逆相カラムを備えたWaters自動精製機、及び溶離剤、例えば添加剤、例えばトリフルオロ酢酸又は水性アンモニアを含むことができる、水及びアセトニトリルのグラジエントを用いて、分離用HPLCにより精製され得る。多くの場合、上記精製方法は、塩、例えば十分に塩基性である本発明の化合物の場合、例えばトリフルオロアセテート又はホルメート塩の形で十分に塩基性の官能基を有する本発明のそれらの化合物を供給することができる。このタイプの塩は、当業者に知られている種々の方法により、それぞれその遊離塩基形に転換され得る。
略語
【0091】
【表1】

【0092】
中間体1A: (2S)-2-(メチルアミノ)-3-フェニルプロパン-1-オール
【化19】

【0093】
−10℃に冷却されたTHF(1200ml)中、N−メチル−L−フェニルアラニン(20g、112mモル)の懸濁液に、水素化アルミニウムリチウム(6.35g、167mモル)を少しずつ添加した。初期発熱反応の停止の後、冷却浴を除去し、そして反応混合物を一晩、還流下で加熱した。続いて、もう1つの部分の水素化アルミニウムリチウム(4.24g、112mモル)を、−10℃に冷却した後、添加し、続いて、さらに3時間、還流した。その反応混合物を−40℃に冷却し、そして2Nの水性水酸化ナトリウムを注意して添加した。RTに暖めた後、その混合物を濾過し、残渣をMTBにより洗浄し、そして濾液を蒸発し、粗標的化合物(17.7g、96%の収率)を得、これをさらに精製しないで使用した。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 2.26 (s, 3 H), 2.51 - 2.62 (m, 3 H) 3.16 -3.30 (m, 3 H), 7.11 - 7.25 (m, 5 H)。 MS (ESI): [M + H]+ = 166。
【0094】
中間体1B(2S)-2-[メチル(プロプ-2-イン-1-イル)アミノ]-3-フェニルプロパン-1-オール
【0095】
【化20】

【0096】
THF(355ml)中、(2S)-2-(メチルアミノ)-3-フェニルプロパン-1-オール(17.7g、107mモル)の溶液に、RTで炭酸カリウム(70.8g、512mモル)を添加した。得られる混合物を30分間、撹拌した後、3−ブロモプロピン(9.32ml、124mモル)を添加し、続いてRTで60分間、撹拌した。水(1300ml)を添加し、有機層を分離し、そして水性層をジクロロメタン(3×500ml)により抽出した。組合わされた水性層を、水性炭酸水素ナトリウムにより洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、そして蒸発した。粗生成物を、シリカゲル(グラジエントヘキサン→ヘキサン/EtOA 1:3)上でのカラムクロマトグラフィーにより精製し、所望する生成物(10.3g、47%の収率)を得た。
1H NMR (400 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 2.29 (t, 1 H) 2.34 - 2.46 (m, 1 H) 2.43 (s, 3 H) 2.83 - 2.95 (s br, 1 H) 3.03 - 3.13 (m, 2 H) 3.32 - 3.38 (m, 1 H) 3.39 - 3.47 (m, 3 H) 7.15 - 7.32 (m, 5 H)。MS (ESI): [M + H]+ = 204。
【0097】
例1N-[(2R)-2-クロロ-3-フェニルプロピル]-N-メチルプロプ-2-イン-1 -アミン
【化21】

【0098】
ジクロロメタン(10ml)中、(2S)-2-[メチル(プロプ-2-イン-1-イル)アミノ]-3-フェニルプロパン-1-オール(200mg、0.98mモル)の溶液に、トリエチルアミン(206μl、1.48mモル)を添加し、そしてその混合物を0℃に冷却した。塩化メタンスルホニル(99μl、1.28mモル)を添加し、そして冷却浴を除いた。RTでの1時間の撹拌の後、反応混合物を、マイクロ波オーブンにおいて1時間、100℃に加熱した。RTへの冷却の後、混合物を水性炭酸水素ナトリウム、続いてブラインにより抽出した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、そして蒸発した。シリカゲル(ヘキサン中、EtOAc 2%→16%)上でのカラムクロマトグラフィー処理により、微量のその応答する一次位置異性体を含む標記化合物(140mg、64%の収率)を得た。
【0099】
1H NMR (400 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 2.21 (t, 1 H) 2.38 (s, 3 H) 2.74 (d, 2 H) 2.94 (dd, 1 H) 3.23 (dd, 1 H) 3.43 (dd, 2 H) 4.10 - 4.18 (m, 1 H) 7.22 - 7.35 (m, 5 H)。MS (ESI): [M + H]+ = 222。
【0100】
例2中間体1Bの例1の化合物への転換の立体特異性の分析資料化
これは、中間体1B及びその光学対掌体、(2R)−2−[メチル(プロプ−2−イン−1−イル)アミノ]−3−フェニルプロパン−1−オール、キラルHPLCによるそれらのeeの決定(図1及び2を参照のこと)、及び例1の調製について記載される合成プロトコールへのお互い独立して両アルコールの提供、得られる塩化物、すなわち例1のee及びその光学対掌体の決定(図3及び4を参照のこと)により達成された。例1の絶対配置が文献の研究に従って割り当てられていることを示すことは価値がある(例えば、P. Gmeiner et al., J. Org. Chem. 1994, 59, 6676,又はJ. Cossy et al., Chem. Eur. J. 2009, 15, 1064を参照のこと)。
中間体1B及びその光学対掌体の分析キラルHPLCを、Chiralpak IA 5μ 150x4.6 mmカラムを用いて実施した。溶離剤として、0.1%ジエチルアミンを緩衝液として含むヘキサン/エタノールの定組成90/10混合物を使用した。
【0101】
【表2】

【0102】
例1及びその光学対掌体の分析キラルHPLCを、Chiralcel OJ-H 5μ 150x4.6 mmカラム及び溶離剤としてのヘキサン/イソ−プロパノールの定組成95/5混合物を用いて実施した。
【0103】
【表3】

【0104】
例3N-[(2R)-2-クロロ-3-フェニルプロピル]-N-メチルプロプ-2-イン-1-アミンの[18F]-弗素化
【化22】

【0105】
水性[18F]弗化物(0.9GBq)を、QMAカートリッジ(Waters, Sep Pak Light QMA Part.No.: WAT023525)上にトラップし、そして0.95mlのアセトニトリル中、5mgのK2.2.2+50μlの水中、1mgの炭酸カリウムにより、Wheatonバイアル(5ml)中に溶出した。溶媒を、窒素流下で120℃での10分間、加熱することにより除去した。無水アセトニトリル(1ml)を添加し、そして前記のようにして蒸発した。500μlの無水DMSO中、前駆体(例1)(2mg)の溶液を添加した。120℃での20分間の加熱の後、粗反応混合物を、水により希釈し、5mlの合計体積にし、そして分離用HPLC(図3を参照のこと)により精製した:ACE 5-C18-HL 250mm x 10mm,Advanced Chromatography Technologies;カタログ番号: ACE 321-2510; 0.01 Mのリン酸/アセトニトリル(85:15)、定組成、流速: 4 mL/分。
【0106】
集められたHPLC画分(tR=18.8分)を、40mlの水により希釈し、そしてSep-Pak light C18 カートリッジ (Waters, WAT023501)上に固定し、これを5mlの水により洗浄し、そして1mlのエタノールにより溶出し、86MBqの生成物(18%、崩壊のために修正された;放射化学的純度>99%)を得た。放射性生成物をキラルHPLC(Chiralcel OJ-H 5 μm 150x4.6; A): ヘキサン、 B): エタノール、 30分、 1% B; 定組成; 1 mL/分)により分析し、そして当業界において良く知られている標的弗素化方法の化合物、例えば中間体1B上への適用により、当業者に入手できるそれぞれの19F標準による同時溶出を示した(図4、6−1及び6−2を参照のこと)。
【0107】
例3において調製されたような所望するF−18ラベルされた異性体(tR=5.2分)の分析キラルHPLCは、非放射性対照化合物(tR=4.99分)との同時溶出を示す(図4を参照のこと)。
【0108】
例3において調製されたような所望するF−18レベルされた異性体(tR=5.3分)の分析キラルHPLCは、その非放射性F−19対照の光学対掌体が異なって溶出する(tR=4.75分)ことを明確に示す(図5−1及び5−2を参照のこと)。
【0109】
tR=21.9分での放射性副産物(図3)を集め、そしてまた、キラルHPLCにより特徴づけた(tR=8.8分)。それは、その非放射性対照化合物(tR=8.6分)と同時溶出を示す(図6−1及び6−2を参照のこと)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式II:
【化1】

[式中、Wは、-C(U1)(U2)-C≡CH及びシクロプロピルを含んで成る群から選択され、ここでU1及びU2は水素及び重水素から独立して選択され、
Aは、置換されているか又は置換されていないアリール、置換されているか又は置換されていないヘテロアリール、(C1-C10)‐アルキル、(C2-C4)-アルキニル、(C1-C4)-アルコキシを含んで成る群から選択され、
R1は、(C1-C6)-アルキルから選択され、
R2は、脱離基である]で表される化合物(前記化合物のすべての立体異性体形を包含する)、及び有機又は無機酸とのいずれかの適切な塩、エステル、複合体又は溶媒化合物。
【請求項2】
Wが2−プロピニルである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R1がメチルである、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
R2がClである、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
Aがフェニルである、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
Wが2−プロピニルであり、R1がメチルであり、R2がClであり、そしてAがフェニルである、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
下記式II:
【化2】

[式中、Wは、-C(U1)(U2)-C≡CH及びシクロプロピルを含んで成る群から選択され、ここでU1及びU2は水素及び重水素から独立して選択され、
Aは、置換されているか又は置換されていないアリール、置換されているか又は置換されていないヘテロアリール、(C1-C10)‐アルキル、(C2-C4)-アルキニル、(C1-C4)-アルコキシを含んで成る群から選択され、
R1は、(C1-C6)-アルキルから選択され、
R2は、脱離基である]で表される請求項1記載の化合物の標的化された合成方法であって、
下記式Ia又はIIa:
【化3】

[式中、Wは、-C(U1)(U2)-C≡CH及びシクロプロピルを含んで成る群から選択され、ここでU1及びU2は水素及び重水素から独立して選択され、
Aは、置換されているか又は置換されていないアリール、置換されているか又は置換されていないヘテロアリール、(C1-C10)‐アルキル、(C2-C4)-アルキニル、(C1-C4)-アルコキシを含んで成る群から選択され、
R1は、(C1-C6)-アルキルから選択され]で表される化合物と、式Ia又はIIaのヒドロキシル基の脱離基への転換をもたらすのに適切な試薬とを反応せしめることを包含する方法。
【請求項8】
Wが2−プロピニルである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
Aがフェニルである、請求項7記載の方法。
【請求項10】
R1がメチルである、請求項7記載の方法。
【請求項11】
R2がClである、請求項7記載の方法。
【請求項12】
Wが2−プロピニルであり、R1がメチルであり、R2がClであり、そしてAがフェニルである、請求項7記載の方法。
【請求項13】
下記式If:
【化4】

[式中、Wは、-C(U1)(U2)-C≡CH及びシクロプロピルを含んで成る群から選択され、ここでU1及びU2は水素及び重水素から独立して選択され、
Aは、置換されているか又は置換されていないアリール、置換されているか又は置換されていないヘテロアリール、(C1-C10)‐アルキル、(C2-C4)-アルキニル、(C1-C4)-アルコキシを含んで成る群から選択され、
R1は、(C1-C6)-アルキルから選択される]で表される化合物の合成方法であって、
下記式II:
【化5】

[式中、Wは、-C(U1)(U2)-C≡CH及びシクロプロピルを含んで成る群から選択され、ここでU1及びU2は水素及び重水素から独立して選択され、
Aは、置換されているか又は置換されていないアリール、置換されているか又は置換されていないヘテロアリール、(C1-C10)‐アルキル、(C2-C4)-アルキニル、(C1-C4)-アルコキシを含んで成る群から選択され、
R1は、(C1-C6)-アルキルから選択され、
R2は、脱離基である]で表される化合物と、F−弗素化剤(F=F-18)とを反応せしめることを包含する方法。
【請求項14】
Wが2−プロピニルである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
Aがフェニルである、請求項13記載の方法。
【請求項16】
R1がメチルである、請求項13記載の方法。
【請求項17】
R2がClである、請求項13記載の方法。
【請求項18】
Wが2−プロピニルであり、R1がメチルであり、R2がClであり、そしてAがフェニルである、請求項13記載の方法。
【請求項19】
前記反応混合物が、その混合物が低温でインキュベートされた後、70℃〜130℃の温度に加熱される、請求項12記載の方法。
【請求項20】
請求項1,2,3,4,5又は6記載の化合物を含む密封されたバイアルを含んで成るキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−524737(P2012−524737A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506368(P2012−506368)
【出願日】平成22年4月10日(2010.4.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002237
【国際公開番号】WO2010/121719
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(300049958)バイエル ファーマ アクチエンゲゼルシャフト (357)
【Fターム(参考)】