説明

FFPE材料におけるインテグリン複合体検出のための抗体

本発明は、インテグリンの細胞外ドメインと結合することのできる抗体に関する。本発明の別の目的は、アーカイブ保管したホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織におけるインテグリンを検出するための前記抗体の使用に関する。本発明は、また、免疫原が昆虫の発現培養物由来の組換え細胞外インテグリンドメインであるモノクローナルウサギ抗体を調製するための方法と、最も近縁のインテグリンホモログ間を識別し、特にFFPE材料における免疫組織化学検査に適した抗インテグリン抗体をスクリーニングするための別の方法とに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インテグリンの細胞外ドメインと結合することのできる抗体に関する。本発明の別の目的は、アーカイブ保管した(archival)ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織におけるインテグリンを検出するための前記抗体の使用に関する。本発明は、また、免疫原が昆虫の発現培養物由来の組換え細胞外インテグリンドメインであるモノクローナルウサギ抗体を調製するための方法と、最も近縁のインテグリンホモログ間を識別し、特にFFPE材料における免疫組織化学検査に適した抗インテグリン抗体をスクリーニングするための別の方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
インテグリンは、2本の非共有結合鎖で構成された細胞接着分子ファミリーである。インテグリンの複雑な多ドメイン構造は、その僅かな変化に対して感受性である。インテグリンは、翻訳および転写、翻訳後糖鎖付加、細胞表面への送達、細胞内刺激による細胞表面活性化ならびに細胞外刺激による細胞表面活性化等、多くのレベルで制御される。アルファおよびベータ鎖は両者共に膜を横断し、細胞外マトリックスと細胞内区画を統合し、これにより最終的に接着、増殖、生存、遊走および浸潤の制御をもたらすシグナルのための経路を提供するクラスI膜貫通タンパク質である。
【0003】
インテグリンは、多くのヒトの疾病における治療標的である。例えば、癌において、アルファ−vシリーズのインテグリン(αvβ1、αvβ3、αvβ5、αvβ6およびαvβ8)は、血管新生、化学および放射線療法から腫瘍細胞の保護、腫瘍生存ならびに局所免疫抑制と様々に関連付けられる。α5β1およびα4β1もまた血管新生と関連付けられ、一方α2β1およびα6β4は、腫瘍増殖と関連付けられてきた。αvβ3過剰発現はヒトメラノーマの浸潤期と相関し、αvβ3とαvβ5は両者共に腫瘍浸潤内皮において特異的に上方制御され、そこでこれらが内皮表面における血管新生増殖因子の機能を制御すると考えられる。インテグリンの正確な発現パターンは、所定の腫瘍クラス間とクラス内の両方で高度に変動し、機能生物学を反映する。したがって、これらは腫瘍状態のバイオマーカーでもあり、その発現パターンは治療成績の予後であり、治療機会を定めることができる。
【0004】
αvインテグリン鎖に対して作製されたモノクローナル抗体DI−17E6ならびにインテグリンαvβ3およびαvβ5を抑制する環化RGD含有ペンタペプチドであるシレンジタイド(cilengitide)が臨床開発されている。しかし、一部には病理学的状態におけるインテグリン発現パターンの全体像が著しく不完全であるため、インテグリンを標的とする治療法の十分な治療における潜在能力は、依然として達成すべき課題である。インテグリン分布の病理学的特性評価は、新鮮凍結組織における実験に依存する。生細胞と凍結染色との連関は十分に確立されており、凍結組織はインテグリン染色の優れた基質であるが、その保存レベルおよび超微細構造の忠実性は、FFPE材料におけるルーチン手順によるものよりはるかに低い。これは、複雑な組織における染色の解釈に決定的な影響を及ぼす。さらに、ルーチンの診療ならびに一般および商業利用されている組織バンクは、FFPE材料を提供する。凍結臨床材料の獲得は、ロジスティックかつ多くの場合、臨床上−培養上の課題である、あるいは特定の腫瘍や稀少かつ貴重な臨床試料を取り扱う場合、これは単純に不可能となる。
【0005】
先行技術においてFFPE材料における明解なインテグリン検出が阻害されるのは、古典的組織学とインテグリン構造との相反する要求のためである。組織学は、必要に応じて熱処理を加えた、ホルムアルデヒド溶液、段階的アルコールおよびパラフィンワックス等、疎水性不溶化試薬による軟部親水性組織の広範なクロスリンク、浸透および安定化に関与する、組織構造の優れた強固な形態学的保存を必要とする。特に臨床組織学的実験において行われる場合、固定および包埋は、エピトープを隠す、あるいは破壊までも行う可能性があることが知られている。非天然条件は、むしろ抽出も分解もされていないが、主として閉塞されたインテグリンを生じる。立体構造的に活性を有する真正(obligate)インテグリンヘテロ二量体はこのような立体構造変化に対して感受性であり、これはFFPE手順において生じるため閉塞から直ちに回復することはできない。
【0006】
組織固定および包埋に関与する化学作用は、インテグリン構造に重大な影響を及ぼすため、当業者によって用いられる典型的で入手可能なモノクローナル抗体は、FFPE処理後にインテグリンを確実に認識しない。インテグリン細胞質ドメインを認識する抗体は、必然的に単一インテグリン鎖に限定され、これはインタクトなインテグリンヘテロ二量体の分布を報告しないため、FFPE材料において曖昧な染色パターンをもたらす。さらに、短いペプチドエピトープに対して作製されたこのような抗体は立体構造非依存的となる傾向があり、これは単一鎖または分解産物を検出し、インタクトなインテグリン複合体を検出し得る抗体よりも低い特異性および親和性をもたらす。
【0007】
マウスモノクローナル抗インテグリンavβ3抗体LM609等、数種類のマウスモノクローナル抗体は、FACSまたは凍結組織によりαvβ3およびαvβ5インテグリンを検出するが、FFPE材料においてそのエピトープの有意なまたは再現性のある標識を示さない。その限定的なエピトープ認識におけるマウスモノクローナルの欠陥および低い親和性は広く認識されている。このような抗体がFFPE材料に用いられる際に観察される分布パターンは、新鮮凍結の凍結切片材料において観察されるパターンとは異なるが、この後者の発現プロファイルは、このような組織から単離された生細胞のプロファイルと密接に一致する。このような抗体によるFFPE染色は、疑わしい起源のものとして観察されなければならず、抗原復旧技術を開発してFFPE材料からこのような決定基を回復しなければならない。
【0008】
現在、FFPE患者腫瘍組織におけるインテグリンの特性評価を可能にするような、FFPE組織におけるαvβ3またはαvβ5細胞外エピトープを強く認識する利用可能なモノクローナル抗体はない。この状況の最終結果は、数十年間の病理学的標本が、インテグリンを標的とする治療法の恩恵が受けられる可能性のあった患者集団を明らかにし得るインテグリン発現プロファイルに関して解析できないことである。出現する治療の見通しにおいて、このような欠陥は、不幸なことに、効果的な治療がそれを必要とする者に届かないことを意味し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の基礎をなす技術的な課題は、FFPE材料、特にルーチンのFFPE腫瘍生検における、インテグリン複合体の信頼のおける明解な検出を可能にする抗体を提供することである。別の課題は、FFPE材料の免疫組織化学検査においてインテグリンホモログ間で効果的な識別挙動を示す抗インテグリン抗体をスクリーニングするための方法を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】αvβ3外部ドメインに対して作製されたサブクローンE3528−2−12の上清による、FFPE癌細胞系(左)および異種移植片(右)の免疫組織化学染色を示す図である。
【図2】精製抗αvβ3インテグリン抗体クローンE3528−2−7による、異種移植片におけるM21細胞の細胞膜染色を示す図である。
【図3】精製抗αvβ3インテグリン抗体E3528−2−7、E3528−2−11およびE3528−2−12による、癌細胞系M21(左)およびM21異種移植片(右)の免疫組織化学染色を示す図である。
【図4】画像解析(Ariol SL−50)およびSpotfireによるグラフ表示を活用した、抗αvβ3抗体E3528−2−7、E3528−2−11およびE3528−2−12による免疫組織化学染色の解析を示す図である。
【図5】画像解析(Ariol SL−50)を活用した、抗体αvβ3_E3528−2−7およびマウスモノクローナル抗体20H9による免疫組織化学染色の解析を示す図である。クローン20H9は、β3インテグリン鎖に対して作製された。「発現(%max)」は、M21の発現に対して正規化される。
【図6】精製抗αvβ3インテグリン抗体E3531−227−3およびE3531−229−3による、異種移植片におけるM21細胞の細胞膜染色を示す図である。
【図7】マルチクローン227(E3531−227−3、E3531−227−3およびE3531−227−6)の精製抗αvβ3インテグリン抗体による、癌細胞系M21(左)およびM21異種移植片(右)の免疫組織化学染色を示す図である。
【図8−1】M21細胞における発現の%として算出した、クローンE3531−227の抗αvβ3抗体による免疫組織化学染色の解析の比較を示す図である。発現は、画像解析(Ariol SL−50)を活用して解析した。
【図8−2】M21細胞における発現の%として算出した、マウスモノクローナル抗β3抗体20H9とによる免疫組織化学染色の解析の比較を示す図である。発現は、画像解析(Ariol SL−50)を活用して解析した。
【図9】αvβ5外部ドメインに対して作製されたサブクローンE3536−99−3の上清による、FFPE癌細胞系(左)および異種移植片(右)の免疫組織化学染色を示す図である。
【図10】インテグリンαvβ3およびαvβ5の組換えヒト細胞外ドメインならびに全長精製血小板gpiibiiiaに対する、精製モノクローナルハイブリドーマ抗体E3531−227−3、E3531−229−3およびE3536−99−2のELISAプロファイルを示す図である。
【図11】精製抗αvβ5インテグリン抗体クローンE3536−99−3による、異種移植片におけるA431およびHCT116細胞の細胞膜染色を示す図である。
【図12】精製抗αvβ5インテグリン抗体E3536−99−1、E3536−99−2およびE3536−99−3による、癌細胞系U87MG(左)ならびにU87MGおよびA431異種移植片の免疫組織化学染色を示す図である。
【図13】画像解析(Ariol SL−50)およびSpotfireによるグラフ表示を活用した、抗αvβ5抗体E3536−99−1、E3536−99−2およびE3536−99−3による免疫組織化学染色の解析を示す図である。
【図14】サブクローンE3866−52−1の上清による、FFPE癌細胞系(左)および異種移植片(右)の免疫組織化学染色を示す図である。
【図15−1】サブクローンE3866−52−1の精製抗体によるFFPE癌細胞系の免疫組織化学染色を示す図である。
【図15−2】サブクローンE3866−52−1の精製抗体によるFFPE癌細胞系の免疫組織化学染色を示す図である。
【図16】組換え抗αvβ6インテグリン抗体による癌細胞系および異種移植片の免疫組織化学染色を示す図である。
【図17】組換え抗αvβ6インテグリン抗体による、異種移植片における前立腺(prostate)癌細胞(上)およびHT29結腸癌細胞の細胞膜染色を示す図である。
【図18】画像解析(Ariol SL−50)を活用した、抗αvβ6抗体による免疫組織化学染色(run3421)の解析を示す図である。
【図19】抗avβ6組換え抗体によるスライド間および実験間の再現性を示す図である。
【図20】抗αvβ8サブクローン133−9の上清による、FFPE癌細胞系および異種移植片の免疫組織化学染色を示す図である。
【図21−1】抗αvβ8サブクローンE3875−133−9の精製抗体によるFFPE癌細胞系の免疫組織化学染色を示す図である。
【図21−2】抗αvβ8サブクローンE3875−133−9の精製抗体によるFFPE癌細胞系の免疫組織化学染色を示す図である。
【図22】組換え抗αvβ8インテグリン抗体EM13309による癌細胞系および異種移植片の免疫組織化学染色を示す図である。
【図23】組換え抗αvβ8インテグリン抗体EM13309によるヒト組織の免疫組織化学染色を示す図である。
【図24】組換え抗αvβ8インテグリン抗体による、異種移植片における前立腺癌細胞(上)およびH1975肺癌細胞の細胞膜染色を示す図である。
【図25】画像解析(Ariol SL−50)を活用した、抗αvβ8抗体EM13309による免疫組織化学染色(run3422)の解析を示す図である。
【図26】抗avβ8組換え抗体EM13309によるスライド間および実験間の再現性を示す図である。
【図27】抗αvサブクローンE3875−13−9の上清によるFFPE癌細胞系および異種移植片の免疫組織化学染色を示す図である。
【図28−1】サブクローンE3875−13−9の精製抗αv抗体によるFFPE癌細胞系の免疫組織化学染色を示す図である。
【図28−2】サブクローンE3875−13−9の精製抗αv抗体によるFFPE癌細胞系の免疫組織化学染色を示す図である。
【図29】組換え抗αv抗体EM01309による癌細胞系および異種移植片の免疫組織化学染色を示す図である。
【図30】組換え抗αv抗体EM01309による異種移植片におけるDU−145(上)およびHT29細胞の細胞膜染色を示す図である。
【図31】画像解析(Ariol SL−50)を活用した組換え抗αv抗体EM01309による免疫組織化学染色の解析を示す図である。
【図32】抗αv組換え抗体EM01309によるスライド間および実験間の再現性を示す図である。
【図33】精製抗β3インテグリン抗体クローンE3592−2−12による、異種移植片におけるM21細胞の細胞膜染色を示す図である。
【図34】精製抗β3インテグリン抗体E3592−2−4、E3592−2−10およびE3592−2−12による癌細胞系M21(左)およびM21異種移植片(右)の免疫組織化学染色を示す図である。
【図35】画像解析(Ariol SL−50)およびSpotfireによるグラフ表示を活用した、抗β3抗体E3592−2−4、E3592−2−10およびE3592−2−12による免疫組織化学染色の解析を示す図である。
【図36】画像解析(Ariol SL−50)を活用した、抗体β3_E3592−2−12およびマウスモノクローナル抗体20H9による免疫組織化学染色の解析を示す図である。
【図37】組換えヒトαvインテグリン細胞外ドメインおよび全長精製血小板gpiibiiiaに対する、ウサギ抗インテグリン由来の精製モノクローナルハイブリドーマ抗体E3875−133−9、E3866−052−1およびE3875−013−9のELISAプロファイルを示す図である。
【図38】組換えヒトαvインテグリン細胞外ドメインおよび全長精製血小板gpiibiiiaに対する、EBNA組換えウサギ抗インテグリンモノクローナル抗体EM22703、EM09902、EM00212、EM05201、EM13309およびEM01309のELISAプロファイルを示す図である。
【図39】ビオチンビトロネクチンをリガンドとして用いたRabMab抗体EM22703、EM09902、EM00212の受容体阻害アッセイを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、各鎖がL鎖(V)および/またはH鎖(V)の可変領域におけるウサギ起源の1または複数の相補性決定領域(CDR)および必要に応じてフレームワーク領域(FR)を含む、1または複数のL鎖および/またはH鎖を含む抗体であって、インテグリンの細胞外または細胞内ドメインと結合する能力を有する抗体を提供することによって第一の課題を解決する。すなわち、抗体は、各領域がウサギ起源の少なくとも1個の相補性決定領域(CDR)および必要に応じて1または複数のフレームワーク領域(FR)を含む、少なくとも1個のL鎖可変領域(V)および/または少なくとも1個のH鎖可変領域(V)を含み、抗体はインテグリンの細胞外または細胞内ドメインと結合する能力を有する。
【0012】
より詳細には、本発明は、抗体またはその断片が少なくともL鎖可変領域(V)およびH鎖可変領域(V)を含み、抗体が細胞外インテグリンドメイン、細胞外インテグリン鎖ドメインまたは細胞内インテグリン鎖ドメインの非閉塞(non−occluded)エピトープに対する抗原結合特異性を有し、抗体がホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)材料におけるならびにELISAの単離型におけるおよび/または生細胞の自然状態におけるインテグリンのインタクトなヘテロ二量体と実質的に同じ特異性で結合できる、昆虫由来の糖鎖付加パターンを有するインテグリンと任意の他の真核生物糖鎖付加パターンを有するインテグリンとの両方に対するモノクローナルウサギ抗体またはその断片を提供することによって第一の課題を解決する。
【0013】
驚いたことに、FFPEにおいて使用可能な抗体が、インテグリンまたはインテグリン鎖の細胞外または細胞内ドメインをウサギにおける免疫原として用いることによって容易に作製できることが、本発明者らによって実証された。最良の結果は、有利には組換えによって発現できるインタクトなドメインによって得られる。具体的には、昆虫細胞において調製される場合、細胞外ヘテロ二量体インテグリンドメインが効果的な免疫原であることが判明した。本発明に係る切断型インテグリン免疫原の提供は、エピトープの接触性を有意に増強し、抗原に対して優れた感受性および特異性の抗体をもたらす。モノクローナルウサギ抗体は、選択的に抗原と結合するが、これは糖鎖付加パターンとは非依存的である。本発明の活性抗体が昆虫由来の組換えタンパク質に対して産生されたとしても、これは抗原の糖鎖付加パターンの観点から多機能であり、したがって昆虫由来の組換え抗原の認識に適切であると考えられるが、このパターンに限定されるものではない。本発明の抗体は、任意の真核生物糖鎖付加パターンである特定のインテグリンの細胞外ドメインまたはその一部の認識に良く適している。糖鎖付加パターンは、混合状態ではなく、それぞれ別個の真核細胞または生物に由来することを理解するべきである。その際、作製された抗体は、複合体FFPEマトリックス内の標的構造を特に認識することができる。本発明者らは、これらの抗体のFFPE組織におけるインテグリン検出に対する予想外の適合性を示した。適合性は、その結果生じる抗体がFFPE材料において非常に特異的で活性を有する限りにおいて実証される。FFPE材料におけるインテグリン複合体が本発明の抗体により容易に検出できることは、圧倒的な効果を有する。古典的なモノクローナル抗体は、FFPE材料において機能しないが、本発明の抗体は、同じ特異性でFFPE材料および生細胞におけるその抗原と実質的に結合する。後者は、生細胞フローサイトメトリー(例えば蛍光標識細胞分取、すなわちFACS)において証明されるが、これに限定されない。本発明の抗体は、同じ特異性で、FFPE材料およびELISAの単離型におけるその抗原と実質的に結合することもできる。後者は、本明細書の流れに沿って説明され、例3.3に詳述されている標準ELISAにおいて証明されているが、これに限定されない。これにより達成されるFFPE組織における染色パターンは、先行技術の抗体から必然的に得られる曖昧な結果に優る明らかな利点である。
【0014】
現在まで少なくとも24種のインテグリン複合体の組成が説明されてきた。インテグリンは、2本の非共有結合鎖で構成された細胞接着分子ファミリーである。両方のサブユニットであるアルファ(α)およびベータ(β)は、膜を横断し、細胞外マトリックスと細胞内区画を統合して細胞接着、増殖、遊走および浸潤を制御する細胞外シグナルを伝達する。それぞれの組成に基づき、細胞外および細胞内インテグリンドメインが割り当てられ、知られており、これらは従来の工程により調製することができる。天然起源のドメインが生物試料から単離されるか、あるいはドメインは組換えにより発現された後に精製される。特に、試料は、インテグリン分布パターンを解析する哺乳動物からin−vivo採取される。試料の回収(withdrawal)は、適正な医療行為の後に行われるものとする。生物試料は、対象インテグリンを有するいかなる種類の生物種から採取されてもよいが、試料は特に実験動物またはヒト、より好ましくはラット、マウス、ウサギまたはヒトから採取される。下流のインテグリンプロセシングは、本技術分野において公知の任意の工程により行われ、続いてドメインの開裂および細胞外または細胞内ドメインの分離が行われる。細胞溶解は、浸透圧ショックを起こして細胞膜を穿孔できる適切なよく知られた溶解バッファー中で行うことができる。細胞構造の安定性は、また、ボールミル、フレンチプレス、超音波等の機械力によって、それぞれ細胞壁および細胞膜の酵素分解によって、および/または界面活性剤(tenside)の作用によって破壊してもよい。インテグリンは、撹乱物質を除去するようさらに精製することができる、あるいはインテグリンは、試料中で濃縮することができる。下流のプロセシングおよび/または濃縮は、好ましくは、沈殿、透析、ゲル濾過、ゲル溶出またはHPLCもしくはイオン交換クロマトグラフィー等のクロマトグラフィーの方法によって行われる。さらに収量を上げるため、数種類の方法を組み合わせることが推奨される。
【0015】
好ましくは、細胞外インテグリンドメインは組換えにより発現されて精製される。タンパク質配列をコードするDNAは、当業者にとって公知の技法によって獲得、増幅、必要に応じて改変または合成することができる。DNAは、ベクターに導入し、細胞内で転写および翻訳することができる。ドメインは、Strep−タグ、His−タグ、GST−タグ、Arg−タグまたはカルモジュリン結合タンパク質等、アフィニティークロマトグラフィーのためのタグと融合、あるいは確立された抗体親和性精製技法を用いて精製することができる。カラムにタンパク質懸濁液を充填し、タグを欠くあらゆる構成成分は直ちに溶出される。洗浄ステップによる非特異的結合体の除去後、タグと融合した構成物がカラムから取り出される。タグが抗体の誘導に影響を与える場合、免疫化の前に開裂除去する。
【0016】
数種類の発現系は本技術水準(state of the art)である。興味深いことに、昆虫由来の組換えインテグリンドメインが適用される場合、免疫原のタンパク質成分に対する力価は有利に上昇し得る。昆虫由来の組換え哺乳動物糖タンパク質は不完全に糖化され、末端の糖プロセシングおよび伸長を欠き、これは、非組換えタンパク質または従来の真核生物発現の組換えタンパク質と比較してタンパク質エピトープが高度に露出していることを意味する。したがって、免疫原インテグリンドメインが、昆虫由来の糖鎖付加パターン、好ましくは細胞外ドメインを有することが好ましい。さらに、タンパク質または多糖類等、大型の担体と抗原を結合する場合、免疫応答を誘発またはむしろ上昇させる抗原特性が影響され得る。担体は、それ自身が免疫応答を誘発しないものとなることができる。
【0017】
好ましい一実施形態は、インテグリンドメインがヒトの一次構造を有することであり、すなわち、アミノ酸配列は、配列データベースSwiss−Protの受託番号等、マッチングデータベースにおけるヒトエントリーと合致する。当業者であれば、本明細書に適用される配列を抜粋するためのこのような分子生物学的データベースを知っている。本発明のより好ましい一実施形態において、細胞外インテグリンドメインは、ヒトの一次構造および昆虫の糖鎖付加パターンを有する。
【0018】
本発明の抗体は、免疫グロブリン遺伝子またはその断片によってコードされたポリペプチドを表す。抗体は、これらのそれぞれが下文に定義されている少なくとも1個のL鎖および/または少なくとも1個のH鎖、好ましくは少なくとも1個のL鎖および少なくとも1個のH鎖、より好ましくは2個のL鎖および2個のH鎖を含む。これは、L鎖が、前記L鎖の可変領域(V)における少なくとも単一のCDR、特にウサギ起源のCDRと、必要に応じて前記L鎖の可変領域(V)における少なくとも単一のFR、好ましくは少なくとも前記CDRおよび少なくとも前記FRを含むことを意味する。H鎖は、前記H鎖の可変領域(V)における少なくとも単一のCDR、特にウサギ起源のCDRおよび/または前記H鎖の可変領域(V)における少なくとも単一のFR、好ましくは少なくとも前記CDRおよび少なくとも前記FRを含む。抗体の抗原結合部分内において、CDRは抗原のエピトープと直接的に相互作用し、一方FRはパラトープの三次構造を維持する。免疫グロブリンのL鎖とH鎖の両方において、それぞれ3個の相補性決定領域(CDR−1からCDR−3)によって隔てられた3〜4個のフレームワーク領域(FR−1からFR−4)が存在する。CDRまたは高頻度可変領域、具体的にはCDR−3領域、より具体的にはH鎖CDR−3は、主として抗体親和性および特異性の原因である。
【0019】
本発明の別の好ましい一実施形態において、L鎖可変領域(V)は、2個のCDR、より好ましくは3個のCDRを、最も好ましくは同数のFRまたはさらに1個多いFRと共に含む。本発明のさらに別の好ましい一実施形態において、H鎖可変領域(V)は、2個のCDR、より好ましくは3個のCDRを、最も好ましくは同数のFRまたはさらに1個多いFRと共に含む。別のより好ましい一実施形態において、本発明の抗体は、各領域が2個のCDR、最も好ましくは3個のCDRを、非常に好ましくは同数のFRまたはさらに1個多いFRと共に含む、L鎖可変領域(V)およびH鎖可変領域(V)を含む。
【0020】
すなわち、本発明の抗体は、それぞれ任意のインテグリンドメインまたは特に細胞外ドメインに結合能を付与する、少なくとも単一鎖の可変領域由来のこの最小限のスキャフォールドを含むであろう。本発明において、抗体は、前述の最小限のスキャフォールドを持っているのであれば、多くの他の十分に特徴付けられた免疫グロブリン断片として、あるいはいっそインタクトな免疫グロブリンとして存在してもよい。断片は、好ましくはH鎖(H)、L鎖(L)、可変領域(V)、単鎖可変断片(scFv)、共有結合した抗体L鎖および抗体H鎖の一部分(F)からなるFab断片等を含む群から選択される。
【0021】
抗体のL鎖は、L鎖定常領域(C)を追加的に含むことができる。同様に、抗体のH鎖は、H鎖定常領域(C)または特にF領域内の定常領域を意味するその一部分を追加的に含むことができる。F断片は抗体特異性の主要な決定基であり、エピトープ結合能を単独で保持する。本発明の抗体は、抗原結合には関与しない、補体カスケードのエフェクターとしてのF断片によって完成され得る。FabおよびF断片等の断片は、様々なペプチダーゼを用いた開裂により作製することができる。さらに、断片は、遺伝子操作して組換えにより発現することができ、これは好ましくはscFvである。
【0022】
本発明の範囲において、抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナル起源となることができる。免疫応答が、生物にとって未知の、3.000g/molを超える分子量を有する抗原に起因する場合、哺乳類生物において通常、ポリクローナル抗体が産生される。好ましくは、本発明の抗体はモノクローナルである。モノクローナル抗体の大きな利点として、不死の試薬源、安定した抗体特性および正確な特異性が挙げられる。ハイブリドーマ技術等、モノクローナル抗体産生のための一般的な技法もまた、当業者によく知られている。
【0023】
ポリクローナルおよび/またはモノクローナル抗体産生のための好ましい宿主生物種は、ラット、ヤギ、ウサギおよびマウスを含み、より好ましくはウサギである。ウサギ抗体、より好ましくはウサギモノクローナル抗体(RabMab)は、マウスモノクローナルよりも広い範囲のエピトープ認識と共により高い親和性を示すが、免疫系における多様性および延長したCDRのため、マウス応答と比べてエピトープ、好ましくはヒトエピトープに対するより強い応答をもたらし得る。キメラ抗体は、1または複数のCDRがウサギ源である限りにおいて、CDR、FRおよび/または定常領域が異なる哺乳類源に由来するよう遺伝子操作されてよいことを理解するべきである。したがって、キメラ抗体は、CDRのみならず、非ウサギ起源のL鎖およびH鎖の全可変領域を交換することによって得られる。あるいは、抗原結合部位の親和性は、可変領域内の一部のアミノ酸を選択的に交換することによって影響され得る。
【0024】
モノクローナルウサギ抗体作製の基本原理(basic principal)は、マウスモノクローナルと同様のものであった。ウサギの免疫化に続いて、ポリクローナル血清を産生するウサギから脾臓が摘出される。免疫化されたウサギから単離されたウサギB細胞は、ウサギ形質細胞腫細胞系と融合されて、安定的なハイブリドーマを産生する。ハイブリドーマ細胞は、免疫原特異的な抗体分泌に関して検査され、その後クローニングされてよい。元来のウサギハイブリドーマ融合パートナー細胞系の確立は、Spieker−Poletら、PNAS USA 1995、92(20):9348〜9352によって記載されている。融合パートナー細胞系のさらなる開発は、米国特許第7,429,487(B2)号明細書に開示されている。さらに別の方法は、米国特許出願第10/705,109号、第10/266,387号、第10/313,881号、第10/350,841号および第11/476,277号明細書に刊行されている。抗体をコードするインサートcDNAは、好ましくはクローニングされ、配列決定され、発現ベクターに挿入されて完全に定義された抗体を産生する。当業者であれば、Phamら、Biotech Bioeng 2003、84(3):332〜342に従ったEBNA細胞発現系における等、組換え抗体産生の適切な技法を知っている。前記刊行物は、本発明の開示においてその全体を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
【0025】
抗体またはその断片は、特に、インテグリンαvβ3、αvβ5、αvβ6またはαvβ8の細胞外ドメインに対して作製される。
【0026】
本発明の好ましい特定の一実施形態において、抗体またはその断片は、インテグリンαvβ3の細胞外ドメインに対して作製される。Vにおける適切なCDRは、配列番号81(CDR−1−V−αvβ3)、配列番号82(CDR−2−V−αvβ3)および/または配列番号83(CDR−3−V−αvβ3)のアミノ酸配列を含み、および/またはVにおける適切なCDRは、配列番号84(CDR−1−V−αvβ3)、配列番号85(CDR−2−V−αvβ3)および/または配列番号86(CDR−3−V−αvβ3)のアミノ酸配列を含む。好ましくは、VにおけるCDRは、配列番号81(CDR−1−V−αvβ3)、配列番号82(CDR−2−V−αvβ3)および配列番号83(CDR−3−V−αvβ3)のアミノ酸配列を含み、および/またはVにおけるCDRは、配列番号84(CDR−1−V−αvβ3)、配列番号85(CDR−2−V−αvβ3)および配列番号86(CDR−3−V−αvβ3)のアミノ酸配列を含む。より好ましくは、VにおけるCDRは、配列番号81(CDR−1−V−αvβ3)、配列番号82(CDR−2−V−αvβ3)および配列番号83(CDR−3−V−αvβ3)のアミノ酸配列を含み、VにおけるCDRは、配列番号84(CDR−1−V−αvβ3)、配列番号85(CDR−2−V−αvβ3)および配列番号86(CDR−3−V−αvβ3)のアミノ酸配列を含む。
【0027】
抗αvβ3抗体の構成をさらに参照すると、Vにおける適切なFRは、配列番号87(FR−1−V−αvβ3)、配列番号88(FR−2−V−αvβ3)および/または配列番号89(FR−3−V−αvβ3)のアミノ酸配列を含み、および/またはVにおける適切なFRは、配列番号91(FR−1−V−αvβ3)、配列番号92(FR−2−V−αvβ3)、配列番号93(FR−3−V−αvβ3)および/または配列番号94(FR−4−V−αvβ3)のアミノ酸配列を含む。好ましくは、VにおけるFRは、配列番号87(FR−1−V−αvβ3)、配列番号88(FR−2−V−αvβ3)および配列番号89(FR−3−V−αvβ3)のアミノ酸配列を含み、および/またはVにおけるFRは、配列番号91(FR−1−V−αvβ3)、配列番号92(FR−2−V−αvβ3)、配列番号93(FR−3−V−αvβ3)および配列番号94(FR−4−V−αvβ3)のアミノ酸配列を含む。より好ましくは、VにおけるFRは、配列番号87(FR−1−V−αvβ3)、配列番号88(FR−2−V−αvβ3)および配列番号89(FR−3−V−αvβ3)のアミノ酸配列を含み、VにおけるFRは、配列番号91(FR−1−V−αvβ3)、配列番号92(FR−2−V−αvβ3)、配列番号93(FR−3−V−αvβ3)および配列番号94(FR−4−V−αvβ3)のアミノ酸配列を含む。
【0028】
抗αvβ3抗体の構成における別の組み合わせの一実施形態は、Vにおける適切なCDRが、配列番号81(CDR−1−V−αvβ3)、配列番号82(CDR−2−V−αvβ3)および/または配列番号83(CDR−3−V−αvβ3)のアミノ酸配列を含み、Vにおける適切なFRが、配列番号87(FR−1−V−αvβ3)、配列番号88(FR−2−V−αvβ3)および/または配列番号89(FR−3−V−αvβ3)のアミノ酸配列を含むことである。好ましくは、VにおけるCDRは、配列番号81(CDR−1−V−αvβ3)、配列番号82(CDR−2−V−αvβ3)および配列番号83(CDR−3−V−αvβ3)のアミノ酸配列を含み、VにおけるFRは、配列番号87(FR−1−V−αvβ3)、配列番号88(FR−2−V−αvβ3)および配列番号89(FR−3−V−αvβ3)のアミノ酸配列を含む。
【0029】
抗αvβ3抗体の構成におけるさらに別の組み合わせの一実施形態は、Vにおける適切なCDRが、配列番号84(CDR−1−V−αvβ3)、配列番号85(CDR−2−V−αvβ3)および/または配列番号86(CDR−3−V−αvβ3)のアミノ酸配列を含み、Vにおける適切なFRが、配列番号91(FR−1−V−αvβ3)、配列番号92(FR−2−V−αvβ3)、配列番号93(FR−3−V−αvβ3)および/または配列番号94(FR−4−V−αvβ3)のアミノ酸配列を含む。好ましくは、VにおけるCDRは、配列番号84(CDR−1−V−αvβ3)、配列番号85(CDR−2−V−αvβ3)および配列番号86(CDR−3−V−αvβ3)のアミノ酸配列を含み、VにおけるFRは、配列番号91(FR−1−V−αvβ3)、配列番号92(FR−2−V−αvβ3)、配列番号93(FR−3−V−αvβ3)および配列番号94(FR−4−V−αvβ3)のアミノ酸配列を含む。
【0030】
抗αvβ3抗体の構成における別の好ましい一実施形態において、Vは配列番号95(V−αvβ3)のアミノ酸配列を含み、および/またはVは配列番号96(V−αvβ3)のアミノ酸配列を含み、より好ましくは、Vは配列番号95(V−αvβ3)のアミノ酸配列からなり、および/またはVは配列番号96(V−αvβ3)のアミノ酸配列からなり、最も好ましくは、抗体は抗αvβ3 scFvとして生成される。
【0031】
抗αvβ3抗体は、L鎖定常領域(C)および/またはH鎖定常領域(C)によって完成され得る。好ましくは、Cは配列番号97(C−αvβ3)のアミノ酸配列を含み、および/またはCは配列番号98(C−αvβ3)のアミノ酸配列を含む。
【0032】
したがって、抗αvβ3抗体は、より好ましくは、L鎖が配列番号99(L−αvβ3)のアミノ酸配列を含み、および/またはH鎖が配列番号100(H−αvβ3)のアミノ酸配列を含む、L鎖および/またはH鎖を含む。最も好ましくは、L鎖は配列番号99(L−αvβ3)のアミノ酸配列からなり、および/またはH鎖は配列番号100(H−αvβ3)のアミノ酸配列からなる。本発明の非常に好ましい一実施形態において、L鎖は配列番号99(L−αvβ3)のアミノ酸配列からなり、H鎖は配列番号100(H−αvβ3)のアミノ酸配列からなる。
【0033】
本発明の別の好ましい特定の一実施形態において、抗体またはその断片は、インテグリンαvβ5の細胞外ドメインに対して作製される。Vにおける適切なCDRは、配列番号1(CDR−1−V−αvβ5)、配列番号2(CDR−2−V−αvβ5)および/または配列番号3(CDR−3−V−αvβ5)のアミノ酸配列を含み、および/またはVにおける適切なCDRは、配列番号4(CDR−1−V−αvβ5)、配列番号5(CDR−2−V−αvβ5)および/または配列番号6(CDR−3−V−αvβ5)のアミノ酸配列を含む。好ましくは、VにおけるCDRは、配列番号1(CDR−1−V−αvβ5)、配列番号2(CDR−2−V−αvβ5)および配列番号3(CDR−3−V−αvβ5)のアミノ酸配列を含み、および/またはVにおけるCDRは、配列番号4(CDR−1−V−αvβ5)、配列番号5(CDR−2−V−αvβ5)および配列番号6(CDR−3−V−αvβ5)のアミノ酸配列を含む。より好ましくは、VにおけるCDRは、配列番号1(CDR−1−V−αvβ5)、配列番号2(CDR−2−V−αvβ5)および配列番号3(CDR−3−V−αvβ5)のアミノ酸配列を含み、VにおけるCDRは、配列番号4(CDR−1−V−αvβ5)、配列番号5(CDR−2−V−αvβ5)および配列番号6(CDR−3−V−αvβ5)のアミノ酸配列を含む。
【0034】
抗αvβ5抗体の構成をさらに参照すると、Vにおける適切なFRは、配列番号7(FR−1−V−αvβ5)、配列番号8(FR−2−V−αvβ5)および/または配列番号9(FR−3−V−αvβ5)のアミノ酸配列を含み、および/またはVにおける適切なFRは、配列番号11(FR−1−V−αvβ5)、配列番号12(FR−2−V−αvβ5)、配列番号13(FR−3−V−αvβ5)および/または配列番号14(FR−4−V−αvβ5)のアミノ酸配列を含む。好ましくは、VにおけるFRは、配列番号7(FR−1−V−αvβ5)、配列番号8(FR−2−V−αvβ5)および配列番号9(FR−3−V−αvβ5)のアミノ酸配列を含み、および/またはVにおけるFRは、配列番号11(FR−1−V−αvβ5)、配列番号12(FR−2−V−αvβ5)、配列番号13(FR−3−V−αvβ5)および配列番号14(FR−4−V−αvβ5)のアミノ酸配列を含む。より好ましくは、VにおけるFRは、配列番号7(FR−1−V−αvβ5)、配列番号8(FR−2−V−αvβ5)および配列番号9(FR−3−V−αvβ5)のアミノ酸配列を含み、VにおけるFRは、配列番号11(FR−1−V−αvβ5)、配列番号12(FR−2−V−αvβ5)、配列番号13(FR−3−V−αvβ5)および配列番号14(FR−4−V−αvβ5)のアミノ酸配列を含む。
【0035】
抗αvβ5抗体の構成における別の組み合わせの一実施形態は、Vにおける適切なCDRが、配列番号1(CDR−1−V−αvβ5)、配列番号2(CDR−2−V−αvβ5)および/または配列番号3(CDR−3−V−αvβ5)のアミノ酸配列を含み、Vにおける適切なFRが、配列番号7(FR−1−V−αvβ5)、配列番号8(FR−2−V−αvβ5)および/または配列番号9(FR−3−V−αvβ5)のアミノ酸配列を含むことである。好ましくは、VにおけるCDRは、配列番号1(CDR−1−V−αvβ5)、配列番号2(CDR−2−V−αvβ5)および配列番号3(CDR−3−V−αvβ5)のアミノ酸配列を含み、VにおけるFRは、配列番号7(FR−1−V−αvβ5)、配列番号8(FR−2−V−αvβ5)および配列番号9(FR−3−V−αvβ5)のアミノ酸配列を含む。
【0036】
抗αvβ5抗体の構成におけるさらに別の組み合わせの一実施形態は、Vにおける適切なCDRが、配列番号4(CDR−1−V−αvβ5)、配列番号5(CDR−2−V−αvβ5)および/または配列番号6(CDR−3−V−αvβ5)のアミノ酸配列を含み、Vにおける適切なFRが、配列番号11(FR−1−V−αvβ5)、配列番号12(FR−2−V−αvβ5)、配列番号13(FR−3−V−αvβ5)および/または配列番号14(FR−4−V−αvβ5)のアミノ酸配列を含むことである。好ましくは、VにおけるCDRは、配列番号4(CDR−1−V−αvβ5)、配列番号5(CDR−2−V−αvβ5)および配列番号6(CDR−3−V−αvβ5)のアミノ酸配列を含み、VにおけるFRは、配列番号11(FR−1−V−αvβ5)、配列番号12(FR−2−V−αvβ5)、配列番号13(FR−3−V−αvβ5)および配列番号14(FR−4−V−αvβ5)のアミノ酸配列を含む。
【0037】
抗αvβ5抗体の構成における別の好ましい一実施形態において、Vは配列番号15(V−αvβ5)のアミノ酸配列を含み、および/またはVは配列番号16(V−αvβ5)のアミノ酸配列を含み、より好ましくは、Vは配列番号15(V−αvβ5)のアミノ酸配列からなり、および/またはVは配列番号16(V−αvβ5)のアミノ酸配列からなり、最も好ましくは、抗体は、抗αvβ5 scFvとして生成される。
【0038】
抗αvβ5抗体は、L鎖定常領域(C)および/またはH鎖定常領域(C)によって完成され得る。好ましくは、Cは配列番号17(C−αvβ5)のアミノ酸配列を含み、および/またはCは配列番号18(C−αvβ5)のアミノ酸配列を含む。
【0039】
したがって、抗αvβ5抗体は、より好ましくは、L鎖が配列番号19(L−αvβ5)のアミノ酸配列を含み、および/またはH鎖が配列番号20(H−αvβ5)のアミノ酸配列を含む、L鎖および/またはH鎖を含む。最も好ましくは、L鎖は配列番号19(L−αvβ5)のアミノ酸配列からなり、および/またはH鎖は配列番号20(H−αvβ5)のアミノ酸配列からなる。本発明の非常に好ましい一実施形態において、L鎖は配列番号19(L−αvβ5)のアミノ酸配列からなり、H鎖は配列番号20(H−αvβ5)のアミノ酸配列からなる。
【0040】
本発明のさらに別の好ましい特定の一実施形態において、抗体またはその断片は、インテグリンαvβ6の細胞外ドメインに対して作製される。Vにおける適切なCDRは、配列番号121(CDR−1−V−αvβ6)、配列番号122(CDR−2−V−αvβ6)および/または配列番号123(CDR−3−V−αvβ6)のアミノ酸配列を含み、および/またはVにおける適切なCDRは、配列番号124(CDR−1−V−αvβ6)、配列番号125(CDR−2−V−αvβ6)および/または配列番号126(CDR−3−V−αvβ6)のアミノ酸配列を含む。好ましくは、VにおけるCDRは、配列番号121(CDR−1−V−αvβ6)、配列番号122(CDR−2−V−αvβ6)および配列番号123(CDR−3−V−αvβ6)のアミノ酸配列を含み、および/またはVにおけるCDRは、配列番号124(CDR−1−V−αvβ6)、配列番号125(CDR−2−V−αvβ6)および配列番号126(CDR−3−V−αvβ6)のアミノ酸配列を含む。より好ましくは、VにおけるCDRは、配列番号121(CDR−1−V−αvβ6)、配列番号122(CDR−2−V−αvβ6)および配列番号123(CDR−3−V−αvβ6)のアミノ酸配列を含み、VにおけるCDRは、配列番号124(CDR−1−V−αvβ6)、配列番号125(CDR−2−V−αvβ6)および配列番号126(CDR−3−V−αvβ6)のアミノ酸配列を含む。
【0041】
抗αvβ6抗体の構成をさらに参照すると、Vにおける適切なFRは、配列番号127(FR−1−V−αvβ6)、配列番号128(FR−2−V−αvβ6)および/または配列番号129(FR−3−V−αvβ6)のアミノ酸配列を含み、および/またはVにおける適切なFRは、配列番号131(FR−1−V−αvβ6)、配列番号132(FR−2−V−αvβ6)、配列番号133(FR−3−V−αvβ6)および/または配列番号134(FR−4−V−αvβ6)のアミノ酸配列を含む。好ましくは、VにおけるFRは、配列番号127(FR−1−V−αvβ6)、配列番号128(FR−2−V−αvβ6)および配列番号129(FR−3−V−αvβ6)のアミノ酸配列を含み、および/またはVにおけるFRは、配列番号131(FR−1−V−αvβ6)、配列番号132(FR−2−V−αvβ6)、配列番号133(FR−3−V−αvβ6)および配列番号134(FR−4−V−αvβ6)のアミノ酸配列を含む。より好ましくは、VにおけるFRは、配列番号127(FR−1−V−αvβ6)、配列番号128(FR−2−V−αvβ6)および配列番号129(FR−3−V−αvβ6)のアミノ酸配列を含み、VにおけるFRは、配列番号131(FR−1−V−αvβ6)、配列番号132(FR−2−V−αvβ6)、配列番号133(FR−3−V−αvβ6)および配列番号134(FR−4−V−αvβ6)のアミノ酸配列を含む。
【0042】
抗αvβ6抗体の構成における別の組み合わせの一実施形態は、Vにおける適切なCDRが、配列番号121(CDR−1−V−αvβ6)、配列番号122(CDR−2−V−αvβ6)および/または配列番号123(CDR−3−V−αvβ6)のアミノ酸配列を含み、Vにおける適切なFRが、配列番号127(FR−1−V−αvβ6)、配列番号128(FR−2−V−αvβ6)および/または配列番号129(FR−3−V−αvβ6)のアミノ酸配列を含むことである。好ましくは、VにおけるCDRは、配列番号121(CDR−1−V−αvβ6)、配列番号122(CDR−2−V−αvβ6)および配列番号123(CDR−3−V−αvβ6)のアミノ酸配列を含み、VにおけるFRは、配列番号127(FR−1−V−αvβ6)、配列番号128(FR−2−V−αvβ6)および配列番号129(FR−3−V−αvβ6)のアミノ酸配列を含む。
【0043】
抗αvβ6抗体の構成におけるさらに別の組み合わせの一実施形態は、Vにおける適切なCDRが、配列番号124(CDR−1−V−αvβ6)、配列番号125(CDR−2−V−αvβ6)および/または配列番号126(CDR−3−V−αvβ6)のアミノ酸配列を含み、Vにおける適切なFRが、配列番号131(FR−1−V−αvβ6)、配列番号132(FR−2−V−αvβ6)、配列番号133(FR−3−V−αvβ6)および/または配列番号134(FR−4−V−αvβ6)のアミノ酸配列を含むことである。好ましくは、VにおけるCDRは、配列番号124(CDR−1−V−αvβ6)、配列番号125(CDR−2−V−αvβ6)および配列番号126(CDR−3−V−αvβ6)のアミノ酸配列を含み、VにおけるFRは、配列番号131(FR−1−V−αvβ6)、配列番号132(FR−2−V−αvβ6)、配列番号133(FR−3−V−αvβ6)および配列番号134(FR−4−V−αvβ6)のアミノ酸配列を含む。
【0044】
抗αvβ6抗体の構成における別の好ましい一実施形態において、Vは配列番号135(V−αvβ6)のアミノ酸配列を含み、および/またはVは配列番号136(V−αvβ6)のアミノ酸配列を含み、より好ましくは、Vは配列番号135(V−αvβ6)のアミノ酸配列からなり、および/またはVは配列番号136(V−αvβ6)のアミノ酸配列からなり、最も好ましくは、抗体は抗αvβ6 scFvとして生成される。
【0045】
抗αvβ6抗体は、L鎖定常領域(C)および/またはH鎖定常領域(C)によって完成され得る。好ましくは、Cは配列番号137(C−αvβ6)のアミノ酸配列を含み、および/またはCは配列番号138(C−αvβ6)のアミノ酸配列を含む。
【0046】
したがって、抗αvβ6抗体は、より好ましくは、L鎖が配列番号139(L−αvβ6)のアミノ酸配列を含み、および/またはH鎖が配列番号140(H−αvβ6)のアミノ酸配列を含む、L鎖および/またはH鎖を含む。最も好ましくは、L鎖は配列番号139(L−αvβ6)のアミノ酸配列からなり、および/またはH鎖は配列番号140(H−αvβ6)のアミノ酸配列からなる。本発明の非常に好ましい一実施形態において、L鎖は配列番号139(L−αvβ6)のアミノ酸配列からなり、H鎖は配列番号140(H−αvβ6)のアミノ酸配列からなる。
【0047】
本発明のさらに別の好ましい特定の一実施形態において、抗体またはその断片は、インテグリンαvβ8の細胞外ドメインに対して作製される。Vにおける適切なCDRは、配列番号161(CDR−1−V−αvβ8)、配列番号162(CDR−2−V−αvβ8)および/または配列番号163(CDR−3−V−αvβ8)のアミノ酸配列を含み、および/またはVにおける適切なCDRは、配列番号164(CDR−1−V−αvβ8)、配列番号165(CDR−2−V−αvβ8)および/または配列番号166(CDR−3−V−αvβ8)のアミノ酸配列を含む。好ましくは、VにおけるCDRは、配列番号161(CDR−1−V−αvβ8)、配列番号162(CDR−2−V−αvβ8)および配列番号163(CDR−3−V−αvβ8)のアミノ酸配列を含み、および/またはVにおけるCDRは、配列番号164(CDR−1−V−αvβ8)、配列番号165(CDR−2−V−αvβ8)および配列番号166(CDR−3−V−αvβ8)のアミノ酸配列を含む。より好ましくは、VにおけるCDRは、配列番号161(CDR−1−V−αvβ8)、配列番号162(CDR−2−V−αvβ8)および配列番号163(CDR−3−V−αvβ8)のアミノ酸配列を含み、VにおけるCDRは、配列番号164(CDR−1−V−αvβ8)、配列番号165(CDR−2−V−αvβ8)および配列番号166(CDR−3−V−αvβ8)のアミノ酸配列を含む。
【0048】
抗αvβ8抗体の構成をさらに参照すると、Vにおける適切なFRは、配列番号167(FR−1−V−αvβ8)、配列番号168(FR−2−V−αvβ8)および/または配列番号169(FR−3−V−αvβ8)のアミノ酸配列を含み、および/またはVにおける適切なFRは、配列番号171(FR−1−V−αvβ8)、配列番号172(FR−2−V−αvβ8)、配列番号173(FR−3−V−αvβ8)および/または配列番号174(FR−4−V−αvβ8)のアミノ酸配列を含む。好ましくは、VにおけるFRは、配列番号167(FR−1−V−αvβ8)、配列番号168(FR−2−V−αvβ8)および配列番号169(FR−3−V−αvβ8)のアミノ酸配列を含み、および/またはVにおけるFRは、配列番号171(FR−1−V−αvβ8)、配列番号172(FR−2−V−αvβ8)、配列番号173(FR−3−V−αvβ8)および配列番号174(FR−4−V−αvβ8)のアミノ酸配列を含む。より好ましくは、VにおけるFRは、配列番号167(FR−1−V−αvβ8)、配列番号168(FR−2−V−αvβ8)および配列番号169(FR−3−V−αvβ8)のアミノ酸配列を含み、VにおけるFRは、配列番号171(FR−1−V−αvβ8)、配列番号172(FR−2−V−αvβ8)、配列番号173(FR−3−V−αvβ8)および配列番号174(FR−4−V−αvβ8)のアミノ酸配列を含む。
【0049】
抗αvβ8抗体の構成における別の組み合わせの一実施形態は、Vにおける適切なCDRが、配列番号161(CDR−1−V−αvβ8)、配列番号162(CDR−2−V−αvβ8)および/または配列番号163(CDR−3−V−αvβ8)のアミノ酸配列を含み、Vにおける適切なFRが、配列番号167(FR−1−V−αvβ8)、配列番号168(FR−2−V−αvβ8)および/または配列番号169(FR−3−V−αvβ8)のアミノ酸配列を含むことである。好ましくは、VにおけるCDRは、配列番号161(CDR−1−V−αvβ8)、配列番号162(CDR−2−V−αvβ8)および配列番号163(CDR−3−V−αvβ8)のアミノ酸配列を含み、VにおけるFRは、配列番号167(FR−1−V−αvβ8)、配列番号168(FR−2−V−αvβ8)および配列番号169(FR−3−V−αvβ8)のアミノ酸配列を含む。
【0050】
抗αvβ8抗体の構成におけるさらに別の組み合わせの一実施形態は、Vにおける適切なCDRが、配列番号164(CDR−1−V−αvβ8)、配列番号165(CDR−2−V−αvβ8)および/または配列番号166(CDR−3−V−αvβ8)のアミノ酸配列を含み、Vにおける適切なFRが、配列番号171(FR−1−V−αvβ8)、配列番号172(FR−2−V−αvβ8)、配列番号173(FR−3−V−αvβ8)および/または配列番号174(FR−4−V−αvβ8)のアミノ酸配列を含むことである。好ましくは、VにおけるCDRは、配列番号164(CDR−1−V−αvβ8)、配列番号165(CDR−2−V−αvβ8)および配列番号166(CDR−3−V−αvβ8)のアミノ酸配列を含み、VにおけるFRは、配列番号171(FR−1−V−αvβ8)、配列番号172(FR−2−V−αvβ8)、配列番号173(FR−3−V−αvβ8)および配列番号174(FR−4−V−αvβ8)のアミノ酸配列を含む。
【0051】
抗αvβ8抗体の構成における別の好ましい一実施形態において、Vは配列番号175(V−αvβ8)のアミノ酸配列を含み、および/またはVは配列番号176(V−αvβ8)のアミノ酸配列を含み、より好ましくは、Vは配列番号175(V−αvβ8)のアミノ酸配列からなり、および/またはVは配列番号176(V−αvβ8)のアミノ酸配列からなり、最も好ましくは、抗体は、抗αvβ8 scFvとして生成される。
【0052】
抗αvβ8抗体は、L鎖定常領域(C)および/またはH鎖定常領域(C)によって完成され得る。好ましくは、Cは配列番号177(C−αvβ8)のアミノ酸配列を含み、および/またはCは配列番号178(C−αvβ8)のアミノ酸配列を含む。
【0053】
したがって、抗αvβ8抗体は、より好ましくは、L鎖が配列番号179(L−αvβ8)のアミノ酸配列を含み、および/またはH鎖が配列番号180(H−αvβ8)のアミノ酸配列を含む、L鎖および/またはH鎖を含む。最も好ましくは、L鎖は配列番号179(L−αvβ8)のアミノ酸配列からなり、および/またはH鎖は配列番号180(H−αvβ8)のアミノ酸配列からなる。本発明の非常に好ましい一実施形態において、L鎖は配列番号179(L−αvβ8)のアミノ酸配列からなり、H鎖は配列番号180(H−αvβ8)のアミノ酸配列からなる。
【0054】
本発明のさらに別の好ましい特定の一実施形態において、抗体またはその断片は、インテグリンαvの細胞外ドメインに対して作製される。Vにおける適切なCDRは、配列番号201(CDR−1−V−αv)、配列番号202(CDR−2−V−αv)および/または配列番号203(CDR−3−V−αv)のアミノ酸配列を含み、および/またはVにおける適切なCDRは、配列番号204(CDR−1−V−αv)、配列番号205(CDR−2−V−αv)および/または配列番号206(CDR−3−V−αv)のアミノ酸配列を含む。好ましくは、VにおけるCDRは、配列番号201(CDR−1−V−αv)、配列番号202(CDR−2−V−αv)および配列番号203(CDR−3−V−αv)のアミノ酸配列を含み、および/またはVにおけるCDRは、配列番号204(CDR−1−V−αv)、配列番号205(CDR−2−V−αv)および配列番号206(CDR−3−V−αv)のアミノ酸配列を含む。より好ましくは、VにおけるCDRは、配列番号201(CDR−1−V−αv)、配列番号202(CDR−2−V−αv)および配列番号203(CDR−3−V−αv)のアミノ酸配列を含み、VにおけるCDRは、配列番号204(CDR−1−V−αv)、配列番号205(CDR−2−V−αv)および配列番号206(CDR−3−V−αv)のアミノ酸配列を含む。
【0055】
抗αv抗体の構成をさらに参照すると、Vにおける適切なFRは、配列番号207(FR−1−V−αv)、配列番号208(FR−2−V−αv)および/または配列番号209(FR−3−V−αv)のアミノ酸配列を含み、および/またはVにおける適切なFRは、配列番号211(FR−1−V−αv)、配列番号212(FR−2−V−αv)、配列番号213(FR−3−V−αv)および/または配列番号214(FR−4−V−αv)のアミノ酸配列を含む。好ましくは、VにおけるFRは、配列番号207(FR−1−V−αv)、配列番号208(FR−2−V−αv)および配列番号209(FR−3−V−αv)のアミノ酸配列を含み、および/またはVにおけるFRは、配列番号211(FR−1−V−αv)、配列番号212(FR−2−V−αv)、配列番号213(FR−3−V−αv)および配列番号214(FR−4−V−αv)のアミノ酸配列を含む。より好ましくは、VにおけるFRは、配列番号207(FR−1−V−αv)、配列番号208(FR−2−V−αv)および配列番号209(FR−3−V−αv)のアミノ酸配列を含み、VにおけるFRは、配列番号211(FR−1−V−αv)、配列番号212(FR−2−V−αv)、配列番号213(FR−3−V−αv)および配列番号214(FR−4−V−αv)のアミノ酸配列を含む。
【0056】
抗αv抗体の構成における別の組み合わせの一実施形態は、Vにおける適切なCDRが、配列番号201(CDR−1−V−αv)、配列番号202(CDR−2−V−αv)および/または配列番号203(CDR−3−V−αv)のアミノ酸配列を含み、Vにおける適切なFRが、配列番号207(FR−1−V−αv)、配列番号208(FR−2−V−αv)および/または配列番号209(FR−3−V−αv)のアミノ酸配列を含むことである。好ましくは、VにおけるCDRは、配列番号201(CDR−1−V−αv)、配列番号202(CDR−2−V−αv)および配列番号203(CDR−3−V−αv)のアミノ酸配列を含み、VにおけるFRは、配列番号207(FR−1−V−αv)、配列番号208(FR−2−V−αv)および配列番号209(FR−3−V−αv)のアミノ酸配列を含む。
【0057】
抗αv抗体の構成におけるさらに別の組み合わせの一実施形態は、Vにおける適切なCDRが、配列番号204(CDR−1−V−αv)、配列番号205(CDR−2−V−αv)および/または配列番号206(CDR−3−V−αv)のアミノ酸配列を含み、Vにおける適切なFRが、配列番号211(FR−1−V−αv)、配列番号212(FR−2−V−αv)、配列番号213(FR−3−V−αv)および/または配列番号214(FR−4−V−αv)のアミノ酸配列を含むことである。好ましくは、VにおけるCDRは、配列番号204(CDR−1−V−αv)、配列番号205(CDR−2−V−αv)および配列番号206(CDR−3−V−αv)のアミノ酸配列を含み、VにおけるFRは、配列番号211(FR−1−V−αv)、配列番号212(FR−2−V−αv)、配列番号213(FR−3−V−αv)および配列番号214(FR−4−V−αv)のアミノ酸配列を含む。
【0058】
抗αv抗体の構成における別の好ましい一実施形態において、Vは配列番号215(V−αv)のアミノ酸配列を含み、および/またはVは配列番号216(V−αv)のアミノ酸配列を含み、より好ましくは、Vは配列番号215(V−αv)のアミノ酸配列からなり、および/またはVは配列番号216(V−αv)のアミノ酸配列からなり、最も好ましくは、抗体は抗αv scFvとして生成される。
【0059】
抗αv抗体は、L鎖定常領域(C)および/またはH鎖定常領域(C)によって完成され得る。好ましくは、Cは配列番号217(C−αv)のアミノ酸配列を含み、および/またはCは配列番号218(C−αv)のアミノ酸配列を含む。
【0060】
したがって、抗αv抗体は、より好ましくは、L鎖が配列番号219(L−αv)のアミノ酸配列を含み、および/またはH鎖が配列番号220(H−αv)のアミノ酸配列を含む、L鎖および/またはH鎖を含む。最も好ましくは、L鎖は配列番号219(L−αv)のアミノ酸配列からなり、および/またはH鎖は配列番号220(H−αv)のアミノ酸配列からなる。本発明の非常に好ましい一実施形態において、L鎖は配列番号219(L−αv)のアミノ酸配列からなり、H鎖は配列番号220(H−αv)のアミノ酸配列からなる。
【0061】
本発明の別の一実施形態において、インテグリン細胞質ドメインが、一次免疫原として用いられる。前記細胞質ドメインは、細胞内ドメインとも言う。これは、特にN末端融合タンパク質として発現する。融合のパートナーは、後述のディファレンシャルスクリーニングを行えるように変動(例えば、GST、MBP、KLH等)し得る、あるいは一次および二次スクリーニングを省略して細胞系アレイにおける三次スクリーニングへと直接進むことができる。細胞質ドメインの立体構造は細胞外ドメインよりも定義されておらず、対になる鎖に対して相対的に非依存的である、すなわち、例えばβ3に対して作製された抗体は、αvβ3と会合(associate)したβ3とαiibβ3と会合したβ3の両方を認識するであろう。これは事実上、αvと会合している場合、スクリーニングしてβ3のみを認識する抗体を得ることのできるDTM−αvβ3複合体に対して作製された抗体と比べて特異性が低下している。αvβ5に対して作製された抗体に同様の考察が適用される。しかし、利点は、インテグリン細胞質ドメインが哺乳類中で完全に保存されていることであり、したがって広範な種間交差反応が生じ得ることである。
【0062】
具体的には、抗体またはその断片は、インテグリンβ3鎖の細胞質ドメインに対して作製される。このような抗β3抗体の特定の一実施形態は、Vにおける適切なCDRが、配列番号41(CDR−1−V−β3)、配列番号42(CDR−2−V−β3)および/または配列番号43(CDR−3−V−β3)のアミノ酸配列を含み、および/またはVにおける適切なCDRが、配列番号44(CDR−1−V−β3)、配列番号45(CDR−2−V−β3)および/または配列番号46(CDR−3−V−β3)のアミノ酸配列を含むことである。好ましくは、VにおけるCDRは、配列番号41(CDR−1−V−β3)、配列番号42(CDR−2−V−β3)および配列番号43(CDR−3−V−β3)のアミノ酸配列を含み、および/またはVにおけるCDRは、配列番号44(CDR−1−V−β3)、配列番号45(CDR−2−V−β3)および配列番号46(CDR−3−V−β3)のアミノ酸配列を含む。より好ましくは、VにおけるCDRは、配列番号41(CDR−1−V−β3)、配列番号42(CDR−2−V−β3)および配列番号43(CDR−3−V−β3)のアミノ酸配列を含み、VにおけるCDRは、配列番号44(CDR−1−V−β3)、配列番号45(CDR−2−V−β3)および配列番号46(CDR−3−V−β3)のアミノ酸配列を含む。
【0063】
抗β3抗体の構成をさらに参照すると、Vにおける適切なFRは、配列番号47(FR−1−V−β3)、配列番号48(FR−2−V−β3)および/または配列番号49(FR−3−V−β3)のアミノ酸配列を含み、および/またはVにおける適切なFRは、配列番号51(FR−1−V−β3)、配列番号52(FR−2−V−β3)、配列番号53(FR−3−V−β3)および/または配列番号54(FR−4−V−β3)のアミノ酸配列を含む。好ましくは、VにおけるFRは、配列番号47(FR−1−V−β3)、配列番号48(FR−2−V−β3)および配列番号49(FR−3−V−β3)のアミノ酸配列を含み、および/またはVにおけるFRは、配列番号51(FR−1−V−β3)、配列番号52(FR−2−V−β3)、配列番号53(FR−3−V−β3)および配列番号54(FR−4−V−β3)のアミノ酸配列を含む。より好ましくは、VにおけるFRは、配列番号47(FR−1−V−β3)、配列番号48(FR−2−V−β3)および配列番号49(FR−3−V−β3)のアミノ酸配列を含み、VにおけるFRは、配列番号51(FR−1−V−β3)、配列番号52(FR−2−V−β3)、配列番号53(FR−3−V−β3)および配列番号54(FR−4−V−β3)のアミノ酸配列を含む。
【0064】
抗β3抗体の構成における別の組み合わせの一実施形態は、Vにおける適切なCDRが、配列番号41(CDR−1−V−β3)、配列番号42(CDR−2−V−β3)および/または配列番号43(CDR−3−V−β3)のアミノ酸配列を含み、Vにおける適切なFRが、配列番号47(FR−1−V−β3)、配列番号48(FR−2−V−β3)および/または配列番号49(FR−3−V−β3)のアミノ酸配列を含むことである。好ましくは、VにおけるCDRは、配列番号41(CDR−1−V−β3)、配列番号42(CDR−2−V−β3)および配列番号43(CDR−3−V−β3)のアミノ酸配列を含み、VにおけるFRは、配列番号47(FR−1−V−β3)、配列番号48(FR−2−V−β3)および配列番号49(FR−3−V−β3)のアミノ酸配列を含む。
【0065】
抗β3抗体の構成におけるさらに別の組み合わせの一実施形態は、Vにおける適切なCDRが、配列番号44(CDR−1−V−β3)、配列番号45(CDR−2−V−β3)および/または配列番号46(CDR−3−V−β3)のアミノ酸配列を含み、Vにおける適切なFRが、配列番号51(FR−1−V−β3)、配列番号52(FR−2−V−β3)、配列番号53(FR−3−V−β3)および/または配列番号54(FR−4−V−β3)のアミノ酸配列を含むことである。好ましくは、VにおけるCDRは、配列番号44(CDR−1−V−β3)、配列番号45(CDR−2−V−β3)および配列番号46(CDR−3−V−β3)のアミノ酸配列を含み、VにおけるFRは、配列番号51(FR−1−V−β3)、配列番号52(FR−2−V−β3)、配列番号53(FR−3−V−β3)および配列番号54(FR−4−V−β3)のアミノ酸配列を含む。
【0066】
抗β3抗体の構成における別の好ましい一実施形態において、Vは配列番号55(V−β3)のアミノ酸配列を含み、および/またはVは配列番号56(V−β3)のアミノ酸配列を含み、より好ましくは、Vは配列番号55(V−β3)のアミノ酸配列からなり、および/またはVは配列番号56(V−β3)のアミノ酸配列からなり、最も好ましくは、抗体は抗β3 scFvとして生成される。
【0067】
抗β3抗体は、L鎖定常領域(C)および/またはH鎖定常領域(C)によって完成され得る。好ましくは、Cは配列番号57(C−β3)のアミノ酸配列を含み、および/またはCは配列番号58(C−β3)のアミノ酸配列を含む。
【0068】
したがって、抗β3抗体は、より好ましくはL鎖が配列番号59(L−β3)のアミノ酸配列を含み、および/またはH鎖が配列番号60(H−β3)のアミノ酸配列を含む、L鎖および/またはH鎖を含む。最も好ましくは、L鎖は配列番号59(L−β3)のアミノ酸配列からなり、および/またはH鎖は配列番号60(H−β3)のアミノ酸配列からなる。本発明の非常に好ましい一実施形態において、L鎖は配列番号59(L−β3)のアミノ酸配列からなり、H鎖は配列番号60(H−β3)のアミノ酸配列からなる。
【0069】
CDR、FR、V、V、C、Lおよび/またはHの組み合わせは下文に詳述する通り尽きることはないが、前記構成要素は任意の他の仕方で組み合わせることができることを理解するべきである。各組み合わせは、その結果生ずる抗体またはその断片がインテグリンの細胞外ドメインを認識する限りにおいて、本発明の範囲において理解するものと考えるべきである。
【0070】
前記アミノ酸配列または同じ機能を有する相同配列の変種、変異体、部分が、定義および保護の範囲に含まれることも理解するべきである。オリジナル配列とその誘導体との間の変化の程度は、特にFFPE材料における構造上の背景内の抗原認識の必要によって必然的に限定される。均等のペプチドおよびタンパク質、すなわち本発明の利益を広い範囲で理解することにより本発明が教示するところの配列と機能が類似のアミノ酸配列を作製するための数通り(a couple of)の方法が、当業者に知られている。したがって、本発明は本明細書において列挙されている変化も含む。本発明の抗体の基礎をなすアミノ酸配列の変種は、修飾(例えば、少なくとも1個のアミノ酸のアルキル化、アリール化またはアセチル化)、鏡像異性体の取り込み、少なくとも1個のアミノ酸の付加および/または別のペプチドもしくはタンパク質との融合から生じ得る。可能性のある変異は、欠失、挿入、置換、転座および/または逆位を含む。アミノ酸配列および抗体それぞれの一部とは、特定の機能の発現に十分な領域への制限に関する。例えば、細胞外インテグリンドメインに関する抗原とも結合するパラトープの特性評価のため、抗体の一部は非常に小さくなり得る。本発明の意義において、任意のサイズの部分と相同配列との間を明確に区別するべきである。後者の相同性は、配列全体に関する。好ましくは、オリジナル配列と、同じ特徴を有するその誘導体との間の相同性は、少なくとも80%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%に相当する。同様に、前述の任意のサイズの一部が変種または変異体に変化する場合、相同性を考慮するべきである。この教示は、本発明の課題を解決するのであれば、このような手順により本構成要素に基づいて開発されるあらゆるペプチド誘導体に及ぶ。
【0071】
さらに、先行技術において、同じ機能を有する非相同ペプチドを作製するための数種類の技法が説明されている。本明細書において、非相同ペプチドは、上述の好ましい程度の相同性よりも低い相同性を有するアミノ酸配列を表す。例えば、本発明の目的の達成に関する活性に悪影響を与えることなく、単一のアミノ酸または複数のアミノ酸を置換することが可能である。このようなアミノ酸の置換のため、適切で標準的な生化学および遺伝学の教科書が参照される。当業者によく知られているように、一部のアミノ酸は、類似の物理化学的特性を有し、したがって、これらのアミノ酸は互いに有利に置換され得る。これらは、アミノ酸グループ(a)グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン、(b)セリンおよびスレオニン、(c)アスパラギンおよびグルタミン、(d)アスパラギン酸およびグルタミン酸、(e)リジンおよびアルギニン、ならびに(f)フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンを含む。(a)から(f)のある同一グループ内のアミノ酸同士は、互いに置換することができる。機能的に類似のアミノ酸配列を作製する一方法について記載する、Schneiderら、PNAS 1998、95:12179〜12184、国際公開第1999/62933号パンフレットおよび/または国際公開第2002/38592号パンフレットの教示に従ったさらなる変化も可能である。該参考文献は、これにより本明細書の一部を構成するものとして本発明の開示に援用する。引用されている方法を用い、本発明の任意のアミノ酸配列から開始して設計されるあらゆるアミノ酸配列、配列部分または配列を含む構造は、本発明の意義における配列であると考えられ、これは、本発明の目的を達成する限りにおいて、本発明に係る教示に含まれるであろう。
【0072】
本発明の目的はまた、本発明に係る抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドである。用語「ポリヌクレオチド」は、DNAまたはRNAポリマーに取り込まれ得る合成、非天然または修飾ヌクレオチドを代替的に含む、一本鎖または二本鎖DNAまたはRNAの天然または合成ポリマーを意味する。各ヌクレオチドは、糖部分と、リン酸部分と、プリンまたはピリミジン残基とからなる。核酸は、ホスホロチオエートDNA、ロックト核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)またはシュピーゲルマー(spiegelmer)として必要に応じて修飾されてよい。用語「コードするポリヌクレオチド」は、タンパク質、ポリペプチドまたはそれらの一部を暗号化する遺伝子の一部を意味する。転写開始または終結を制御する制御配列および/またはエレメントは含まれない。コード配列および/または制御エレメントは、一般に、細胞に存在していてよく、この場合自家性または内因性であると言い、あるいは細胞に存在していなくてもよく、この場合異種であると言う。用語「遺伝子」は、特定のタンパク質をコードするDNA配列および前記DNA配列の発現を制御する制御エレメントを表す。
【0073】
異種遺伝子は、遺伝子が導入された細胞において通常は見られない順序および/または配向性で配置された自家エレメントで構成されていてもよい。異種遺伝子は、細菌もしくはウイルスゲノムもしくはエピソーム、真核生物の核もしくはプラスミドDNA、cDNAまたは化学合成DNA等、本技術分野において公知の任意のソースに完全にまたは部分的に由来してよい。構造遺伝子は、連続的なコード領域を構成することができる、あるいは適切なスプライスジャンクションに接する1または複数のイントロンを含むことができる。構造遺伝子は、様々な自然発生または合成ソースに由来する部分からなってよい。
【0074】
本発明の好ましい一実施形態において、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドは、配列番号21〜29および31〜40、配列番号61〜69および71〜80、配列番号101〜109および111〜120、配列番号141〜149および151〜160、配列番号181〜189および191〜200ならびに配列番号221〜229および231〜240の群から選択された、1または複数の核酸配列を含む。抗体およびその特定のアミノ酸配列に関する本明細書の従前の教示は妥当であり、好都合であれば、ポリヌクレオチドおよび特定の核酸配列に制限されることなく適用できると考えられる。
【0075】
本発明の別の目的は、上述の本発明に係る抗体コードポリヌクレオチドを含むベクターに関する。用語「ベクター」は、多くのヌクレオチド配列が連結または組換えられて独自の構成を形成し、プロモーター断片および選択された遺伝子産物のDNA配列をセンスまたはアンチセンスの配向性で適切な非翻訳3’配列と共に細胞に導入することのできる、直鎖状または環状の、一本鎖または二本鎖DNAまたはRNAからなるプラスミド、ウイルス、自己複製配列、ファージまたはヌクレオチド配列となり得る組換えDNA構築物を表す。
【0076】
プラスミドは、特に本発明の抗体またはその断片の組換え遺伝子をクローニングして発現するために、本発明の抗体コードポリヌクレオチドを含むことが好ましい。本発明の意義において、プラスミドは、その宿主細胞の染色体の一部となることなく安定的に遺伝する遺伝的エレメントである。これは、DNAまたはRNAを含むことができ、直鎖状と環状のどちらであってもよい。プラスミドは、細胞複製におけるその複製および安定的な遺伝を確実にする分子をコードする。本明細書において開示される出発材料プラスミドは、市販、一般公開、または入手可能なプラスミドからよく知られた公表された方法のルーチン利用により構築されてよい。本発明に従って利用することのできる多くのプラスミドならびに他のクローニングおよび発現ベクターは、当業者によく知られており、容易に手に入れることができる。さらに、当業者であれば、本発明における使用に適した任意の数の他のプラスミドを容易に構築することができる。
【0077】
ベクターは、宿主細胞への導入に適切となるべきである。したがって、抗体コードポリヌクレオチドを有するベクターを含む宿主細胞は、本発明のさらに別の目的である。本発明は、好ましくは単離された原核または真核細胞に関するが、細胞培養物、組織、器官等、さらには上述のベクターを有する本発明の宿主細胞を含む生物も包含するべきである。用語「宿主細胞」は、キメラ、異種もしくは自家核酸配列または前記配列をその時点で有するそれらの誘導体の導入によって遺伝子組換えされた細胞を表す。このような細胞は、トランスジェニック細胞とも言う。自家核酸配列が導入される場合、宿主細胞におけるこの配列のコピー数は、自然発生の配列のコピー数よりも多い。
【0078】
本発明はまた、昆虫由来の糖鎖付加パターンを有する細胞外インテグリンドメインからなる組換え免疫原に関する。細胞外ドメインは、好ましくはデルタ膜貫通(DTM)型として結合する。本発明の前記免疫原は、ウサギ等、最適な哺乳類生物種にそのまま注射すると、適応免疫応答を誘発することができる。より好ましくは、本発明の免疫原は、配列番号10、90、130、170もしくは210のアミノ酸配列、または該アミノ酸配列もしくは同じ機能を有する少なくとも95%相同な配列の変種、変異体、部分を有する。本発明の目的はまた、本発明の前記免疫原をコードするポリヌクレオチドである。好ましい一実施形態において、免疫原コードポリヌクレオチドは、配列番号30、110、150、190もしくは230のヌクレオチド配列、または該アミノ酸配列もしくは同じ機能を有する少なくとも95%相同な配列の変種、変異体、部分を有する。本発明の別の目的は、本発明に係る免疫原コードポリヌクレオチドを含むベクターに関する。さらに別の目的は、本発明に係る免疫原コードポリヌクレオチドを有するベクターを含む宿主細胞である。宿主生物種が本発明の本保護範囲に含まれることを理解するべきである。抗体、またはその配列もしくはその相同配列の変種、変異体、部分、抗体コードポリヌクレオチドまたはベクター、宿主細胞等に関する本明細書の従前の教示は妥当であり、適切であれば前記または他の抗体を産生するための免疫原に制限されることなく適用できる。
【0079】
本発明はまた、(a)昆虫細胞において細胞外インテグリンドメインまたはその断片を組換えにより発現させるステップと、(b)発現した細胞外ドメインを精製するステップと、(c)精製した細胞外ドメインによりウサギを免疫化するステップと、(d)ウサギからポリクローナル抗体を含むポリクローナル抗血清を採取するステップと、必要に応じて(e)モノクローナル抗体を調製するステップと、を含む、ウサギ抗体を調製するための方法に関する。
【0080】
好ましくは、モノクローナル抗体を調製するための方法は、次のステップ、(a)昆虫細胞において細胞外インテグリンドメインを組換えにより発現させるステップと、(b)発現した細胞外インテグリンドメインを精製するステップと、(c)精製した細胞外インテグリンドメインによりウサギを免疫化するステップと、(d)ウサギからポリクローナル抗体を含むポリクローナル抗血清を採取するステップと、(e)モノクローナル抗体を調製するステップと、を含む。より好ましくは、該方法は、上に詳述した本発明の前記モノクローナル抗体の調製を意味する。
【0081】
ステップ(a)のタンパク質発現は、数種類の適切な昆虫細胞、昆虫細胞系を入手でき、その遺伝子導入方法を知っている当業者にとってはルーチンの作業である。例えば、組換えバキュロウイルスで感染したBTI−Tn5B1−4(High Five)昆虫細胞系は、Sf9等、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)由来細胞系よりも大幅に速い速度で多くの分泌組換えタンパク質が産生されるため、バキュロウイルス/昆虫細胞発現系において広く普及している。バキュロウイルス/昆虫細胞発現系から得られる細胞外インテグリンドメインの収量を最適化するため、High Five細胞の懸濁液適応培養物を用いて、宿主細胞の状態、感染多重度、感染時の細胞密度および培地への栄養分および酸素の補給の効果を検査するための実験を容易に行うことができる。このような手順は、本分野の技術水準であり、例えば、Vallazza & Petri、Cytotechnology 1999、29: 85〜92またはMehtaら、Biochem J 1998、330: 861〜869によって刊行されている。
【0082】
抗体または免疫原の変化に関する従前の教示は妥当であり、好都合であればステップ(a)の変化した免疫原に制限されることなく適用できると考えられる。当業者には明らかなことであるが、本発明は、インテグリンの全長細胞外ドメインに限定されるものと解釈するべきではない。細胞外ドメインの生理的または人工断片、細胞外ドメインの二次修飾、種依存的変化および細胞外ドメインの対立遺伝子変種もまた、本発明に包含される。この点において、「対立遺伝子変種」は、遺伝的に単一の遺伝子座に存在し得る2以上の異なる種類の遺伝子またはDNA配列の内1個の遺伝子産物を表すものとして理解されている。人工断片は、好ましくは、診断対象のエピトープを少なくとも含む、合成的にまたは組換え技法により産生されたペプチドを包含する。
【0083】
ステップ(e)に従って昆虫細胞において発現される場合、細胞外インテグリンドメインは、成熟哺乳動物細胞における糖鎖付加パターンとは異なる欠損型付着(abherent)糖鎖付加パターンを有する。インテグリンは広範に糖化されている、すなわち質量で10%を超えるため、このことは、昆虫タンパク質が、哺乳動物系において産生されるウサギ天然インテグリンとはさらに異なっていることを意味する。昆虫由来の免疫原は、前記免疫原のタンパク質要素に対して非常に増強された免疫原性およびより強い抗体応答をもたらす。
【0084】
ステップ(b)〜(d)のタンパク質精製、哺乳動物免疫化および血清抽出は、本明細書および例の中に記載されている等、よく知られた技法および適切な研究室業務に従う。次に、ステップ(d)の血清は、ポリクローナルの存在に関して検査され、検出された抗体は抗原認識に対してスクリーニングされる。適切な検査およびスクリーニングは、当業者であれば利用できる。
【0085】
必要に応じて、抗体の調製は、単一特異性の種類の同一抗体、すなわちステップ(e)のモノクローナルまで続けられる。モノクローナル抗体は通常、ミエローマ細胞をステップ(c)に従って免疫化された哺乳動物から得られた脾細胞と融合することによって作製される。ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含有する、融合細胞のみが増殖できる選択HAT培地が特に用いられる。次に、いわゆるハイブリドーマが希釈され、マイクロタイターウェルにおいて単一の親細胞からクローンが増殖する。異なるクローンによって分泌される抗体は、細胞外インテグリンドメインの抗原と結合するその能力に対して検査される。したがって、本発明の抗体は特に下文の方法によって調製される。
【0086】
当然のことながら、抗体は、本発明の前記方法によって細胞内インテグリンドメインを用いて同様に調製することができる。方法は、適宜変更しつつ(mutatis mutandis)適用するべきである。
【0087】
本発明の目的はまた、昆虫細胞において組換えにより発現したインテグリンの細胞外または細胞質ドメインによるウサギの免疫化によって得られる抗体である。本発明の免疫原は抗体生成に用いることができるため、本発明は、特にそのそれぞれが本発明に係る免疫原および/またはポリヌクレオチドによりウサギを免疫化し、ポリクローナル抗体を含むポリクローナル抗血清を採取し、モノクローナル抗体を調製することによって得られるモノクローナル抗体に関する。免疫原およびウサギ抗体を調製するための方法に関する本明細書の従前の教示は妥当であり、適切であればこの工程によって産生される抗体産物に制限されることなく適用できると考えるべきである。
【0088】
最も生産的かつ安定的なクローンは、培地中で高容量になるよう増殖させてよいが、最適なモノクローナルは、好ましくは組換え様式において発現される。これは、抗体コードインサートのcDNAクローニング、配列決定および発現ベクターへと挿入して完全に定義された抗体を産生することを必要とする。続いて、本発明はまた、(a)配列番号21〜29および31〜40、配列番号61〜69および71〜80、配列番号101〜109および111〜120、配列番号141〜149および151〜160、配列番号181〜189および191〜200および/または配列番号221〜229および231〜240の核酸配列(単数または複数)を含むベクター(単数または複数)を宿主細胞に導入するステップと、(b)培地中で宿主細胞を培養し、これによりコードされた抗体またはその断片を発現するステップと、(c)発現した抗体またはその断片を精製するステップと、を含む、組換えモノクローナル抗体またはその断片を製造するための方法に関する。
【0089】
ベクターは、形質転換、トランスフェクションまたは形質導入等、本技術分野の任意の方法によって導入することができる。大腸菌属(Escherichia)の種またはバチルス属(Bacillus)の種等、細菌および古細菌を含む原核細胞は特に形質転換され、一方、CHO、HeLaその他等、真核細胞は特にトランスフェクトされることを理解するべきである。3ドメイン系は、また、ウイルス媒体によって形質導入されてもよい。ベクターは、モノクローナル抗体またはその断片をコードする1または複数の核酸配列のいずれかを含むことができる。
【0090】
ステップ(a)のさらに別の好ましい一実施形態において、導入されるベクター(単数または複数)は、配列番号115(V−αvβ3)および/または配列番号116(V−αvβ3)の核酸配列を含む。ステップ(a)のより好ましい一実施形態において、導入されるベクター(単数または複数)は、配列番号119(L−αvβ3)および/または配列番号120(H−αvβ3)の核酸配列を含む。
【0091】
ステップ(a)の好ましい一実施形態において、導入されるベクター(単数または複数)は、配列番号35(V−αvβ5)および/または配列番号36(V−αvβ5)の核酸配列を含む。ステップ(a)のより好ましい一実施形態において、導入されるベクター(単数または複数)は、配列番号39(L−αvβ5)および/または配列番号40(H−αvβ5)の核酸配列を含む。
【0092】
ステップ(a)の好ましい一実施形態において、導入されるベクター(単数または複数)は、配列番号155(V−αvβ6)および/または配列番号156(V−αvβ6)の核酸配列を含む。ステップ(a)のより好ましい一実施形態において、導入されるベクター(単数または複数)は、配列番号159(L−αvβ6)および/または配列番号160(H−αvβ6)の核酸配列を含む。
【0093】
ステップ(a)の好ましい一実施形態において、導入されるベクター(単数または複数)は、配列番号195(V−αvβ8)および/または配列番号196(V−αvβ8)の核酸配列を含む。ステップ(a)のより好ましい一実施形態において、導入されるベクター(単数または複数)は、配列番号199(L−αvβ8)および/または配列番号200(H−αvβ8)の核酸配列を含む。
【0094】
ステップ(a)の好ましい一実施形態において、導入されるベクター(単数または複数)は、配列番号235(V−αv)および/または配列番号236(V−αv)の核酸配列を含む。ステップ(a)のより好ましい一実施形態において、導入されるベクター(単数または複数)は、配列番号239(L−αv)および/または配列番号240(H−αv)の核酸配列を含む。
【0095】
ステップ(a)の別の好ましい一実施形態において、導入されるベクター(単数または複数)は、配列番号75(V−β3)および/または配列番号76(V−β3)の核酸配列を含む。ステップ(a)のより好ましい一実施形態において、導入されるベクター(単数または複数)は、配列番号79(L−β3)および/または配列番号80(H−β3)の核酸配列を含む。
【0096】
好ましい一態様において、本発明は、(a)(i)配列番号115(V−αvβ3)および配列番号116(V−αvβ3)、(ii)配列番号35(V−αvβ5)および配列番号36(V−αvβ5)、(iii)配列番号155(V−αvβ6)および配列番号156(V−αvβ6)、(iv)配列番号195(V−αvβ8)および配列番号196(V−αvβ8)または(v)配列番号235(V−αv)および配列番号236(V−αv)の核酸配列を含む1または複数のベクターを宿主細胞に導入するステップと、(b)培地中で宿主細胞を培養し、これによりコードされた抗体を発現させるステップと、(c)発現した抗体を精製するステップとを有する、L鎖可変領域(V)およびH鎖可変領域(V)を含む組換えモノクローナル抗体を製造するための方法に関する。数種類のベクターが、上述の前記配列番号の内一配列のみを有することにより有利に異なることを理解するべきである。ステップ(a)において、そのそれぞれが上述の前記配列番号の内一配列を保有する2種のベクターを導入することが好ましい。
【0097】
さらに、抗体、アミノ酸配列およびそれらの変化、それらをコードするポリヌクレオチドならびにウサギ抗体の調製に関する本明細書の従前の教示は妥当であり、好都合であれば組換えモノクローナルの製造に制限されることなく適用できると考えられる。
【0098】
ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)材料におけるインテグリンの検出のための本発明の抗体またはその断片の使用は、さらに別の目的である。現在まで、インテグリンに対して作製され、FFPE材料における複合体と特異的かつ確実に反応する古典的モノクローナル抗体は存在しない。本発明の抗体、特にウサギモノクローナルのみがこのように高い親和性および特異性を有し、インテグリンの非閉塞エピトープの検出を可能にする。本明細書において互換的に用いられている用語「非閉塞」および「露出」は、エピトープが抗体によって認識され得る抗原の分子確認を意味すると解釈される。したがって、FFPE材料における本発明の抗体と凍結材料におけるマウスモノクローナルとを比較すると、同じ染色パターンが観察される。さらに、FFPE材料における本発明の抗体と、ELISAにおける単離型インテグリンおよび/または生細胞における天然インテグリンの状態を比較、好ましくはFFPE材料における本発明の抗体と生細胞におけるそれを比較すると、実質的に同じ染色パターンが観察される。
【0099】
本発明の好ましい一実施形態において、FFPE材料は組織である。FFPE組織は、先ず解剖または生検によって動物標本から分離された組織の一部である。次に、この組織は、その劣化または変性を防ぎ、組織学的、病理学的または細胞学的実験のために顕微鏡下で明確に検査するため固定される。固定は、それにより組織が固定化、死滅および保存される、染色および顕微鏡観察のための工程である。固定後プロセシングは組織の染色試薬に対する透過性を高め、その高分子をクロスリンクして安定化し所定の位置に固定化する。多くの固定液、例えばブアン(Bouine)固定液、ホルマリンまたは液体窒素は、この目的のために用いられる。次に、この固定された組織をワックスに包埋して、その薄切片を作製し、ヘマトキシリン・エオシン染色により染色するのを可能にする。その後、ミクロトームによる切片作製が行われて微細な切片が作製され、抗体による染色を顕微鏡下で検査される。
【0100】
本発明のより好ましい一実施形態において、FFPE組織は腫瘍組織であり、最も好ましくはヒト腫瘍組織である。腫瘍は、具体的には、扁平上皮、膀胱、胃、腎臓、頭部、頸部、食道、子宮頸部、甲状腺、腸、肝臓、脳、前立腺、泌尿生殖路、リンパ系、胃、喉頭および/または肺の腫瘍の群から選択される。腫瘍は、さらに具体的には、肺腺癌、小細胞肺癌、膵癌、神経膠芽腫、結腸癌および乳癌の群から選択される。さらに、血液および免疫系の腫瘍、より具体的には、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病および/または慢性リンパ性白血病の群から選択された腫瘍が好ましい。このような腫瘍は、本発明の意義においては癌とも言う。
【0101】
本発明の抗体は、インテグリン検出のためにFFPE材料とインキュベートされる。用語「インキュベーション」は、材料、抗体および/または抗原の種類に応じたある明確な期間におけるFFPE材料と本発明の抗体との接触を表す。インキュベーション工程は、その最適化が当業者にとって公知のルーチンの手順に従った様々な他のパラメータ、例えば検出感度にも依存する。化学溶液の添加および/または物理的手順の適用、例えば熱による衝撃は、試料中の標的構造の接触性を改善することができる。インキュベーションの結果、特異的なインキュベーション産物が形成される。
【0102】
形成された抗体/抗原複合体の適切な検出試験は、当業者にとって公知のものである、あるいはルーチン業務として容易に設計することができる。多くの異なる種類のアッセイが知られており、その例を下に説明する。本発明に係るアッセイは、インテグリン発現の検出および/または定量化に適したいずれのアッセイであってもよいが、後者は、好ましくは本発明の一次抗体と特異的に相互作用する物質によって決定される。
【0103】
本明細書における用語「特異物質」は、信頼のおける結合を確実にするため本発明の抗インテグリン抗体に対して高親和性を有する分子を含む。該物質は、好ましくは抗体の一部、例えば定常領域、具体的にはウサギの定常領域、場合によってより具体的にはF断片に対し特異的である。ウサギ抗体に対して明確な数の特異抗体が存在する。一部とは、特定の機能の発現、すなわち認識のための構造上の決定基の提供に十分な領域への限定を表す。本発明の文脈において、用語「認識」は、特異物質と標的抗体との間の任意の種類の相互作用、特に、共有結合、疎水性/親水性相互作用、ファンデルワールス力、イオン対、水素結合、リガンド−受容体相互作用、エピトープと抗体結合部位との間の相互作用、ヌクレオチド塩基対形成その他等、共有結合性または非共有結合性の結合または会合に関するが、これらに限定されるものではない。このような会合は、ペプチド、タンパク質または他のヌクレオチド配列等、他の分子の存在も包含することができる。
【0104】
特異物質は、認識、結合および相互作用を可能にする仕方で標的分子と相互作用することのできる生物学的および/または化学的構造で構成される。具体的には、物質は、タンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物、ポリマーおよび50〜1.000Daの間の分子量を有する小分子、好ましくはタンパク質および核酸の群から選択される。特異物質は、信頼のおける検出を確実にするために十分な感受性および特異性を発現する。特異物質は、抗インテグリン抗体に対して少なくとも10−7Mの親和性を有する。特異物質は、その標的分子に対して好ましくは10−8M、さらに好ましくは10−9Mの親和性を有する。当業者であれば、特異という用語は、試料中に存在する他の生体分子が、抗インテグリン抗体に対する特異物質とは有意に結合しないことを示すよう用いられていることを理解するであろう。好ましくは、標的分子以外の生体分子との結合のレベルが、標的分子の親和性の僅か10%、より好ましくは僅か5%以下の結合親和性を生じる。最も好ましくは、物質は、本発明の一次抗インテグリン抗体との排他的かつ方向性を持った相互作用を保証するため、単一特異性である。非常に好ましい特異物質は、親和性と特異性に関する上述の最小限の判断基準の両方を満たすであろう。
【0105】
タンパク質またはペプチドは、好ましくは、抗体、サイトカイン、リポカリン、受容体、レクチン、アビジン、リポタンパク質、糖タンパク質、オリゴペプチド、ペプチドリガンドおよびペプチドホルモンからなる群から選択される。より好ましくは、特異物質として抗体が用いられる。核酸は、好ましくは一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNA、プライマー、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、DNA酵素、アプタマーおよび/またはsiRNA、あるいはそれらの一部である。より好ましい核酸プローブはアプタマーであり、RNAにおいて利用できる2'−ヒドロキシル基は、数通りの分子内および分子間接触を促進するため、最も好ましくはRNAアプタマーである。アプタマーは、標準的なホスホラミダイト化学反応を用いて合成することができる。さらに、約30ヌクレオチドを超えるRNAアプタマーは、in−vitro転写によって有利に大量合成することができる。アプタマーの選択、合成および精製は、当業者によく知られている。
【0106】
特異物質は標識することができる。その際、標識は、特異物質固有の特徴、モニタリングされる特異的インキュベーション産物および適用される検出方法、すなわち、必要とされる感度、コンジュゲーションの容易さ、安定性要件ならびに利用できる器具使用および処理規定に依存する。標識方法は、標識が容易に検出されるのであれば、特に限定されるものではない。「標識された特異物質」は、標識の存在を検出することによって本発明の抗インテグリン抗体の存在が検出できるように、標識と、リンカーまたは化学結合により共有結合した、あるいはイオン、ファンデルワールス、静電、疎水性相互作用または水素結合により非共有結合した物質である。
【0107】
抗体とタンパク質との特異的な免疫学的結合は、直接的または間接的に検出することができる。下文において、抗体−タンパク質ペアは、インテグリンに対して作製された本発明の一次抗体か、一次抗インテグリン抗体に対して作製された二次抗体のいずれかを包含することを理解するべきである。本発明に係る適切な検出方法の好ましい例は、発光、特に蛍光、さらにはVIS発色および/または放射性発光である。
【0108】
発光は、化学発光、生物発光またはフォトルミネセンスの結果生じる光放射に関する。化学発光は化学反応の結果生じる可視光の放射に関し、一方、生物発光はルシフェラーゼの活性を必要とする。現在好ましいのは、蛍光刺激としても知られているフォトルミネセンスであり、これは光子の吸収によって生じ、好ましくは、波長が30〜50nmに変化し、約10−8秒の時間内に光子として再度放出される放射線によって提供される。蛍光検出のための装置は、通常の卓上蛍光光度計、蛍光マルチウェルプレートリーダー、光ファイバ蛍光光度計、蛍光顕微鏡および蛍光検出と一体型のマイクロチップ/マイクロ流体システムを含むが、これらに限定されるものではない。
【0109】
VIS発色は、肉眼で目視できるように任意の無彩色物質を可視化することを表す。好ましくは、発色強度は光度計によって測定される。
【0110】
放射性同位元素の放射線は、シンチレーションによって測定される。液体シンチレーションの工程は、シンチレーションカクテルと呼ばれる有機溶媒および溶質の系におけるβ放射の捕捉による、試料内のβ崩壊の検出に関与する。試料中のH、14C、32P、33Pおよび35S等、放射性同位元素によって放射されるβ崩壊電子は溶媒分子を励起し、次にエネルギーを溶質に移動させる。溶質のエネルギー放射(光量子)は、シンチレーションカウンター内の光電子増倍管によって電気シグナルに変換される。カクテルは、試料の均一な懸濁液を維持する溶解補助剤としても作用しなければならない。多くの場合、ガンマ線光子は他の崩壊過程の結果生じ(系列崩壊)、新たに形成された原子核の余剰エネルギーを取り除く。これらは質量を持たず、その経路に沿った衝突による直接電離を、あるとしても殆ど生じない。ガンマ光子は、3種の機序、コンプトン効果、光電効果および対生成の内1または複数により、検出および量子化のために吸収される。本発明の好ましいガンマ崩壊同位元素は125Iである。
【0111】
直接標識は、抗体と結合した蛍光または発光タグ、金属、色素、放射性核種等を含む。ヨウ素−125(125I)で標識した抗体を用いてもよい。タンパク質に特異的な化学発光抗体を用いた化学発光アッセイは、タンパク質レベルの高感度非放射性検出に適している。蛍光色素で標識した抗体も適している。蛍光色素の例として、DAPI、フルオレセイン、ヘキスト33258、R−フィコシアニン、B−フィコエリトリン、R−フィコエリトリン、ローダミン、テキサスレッド(Texas red)およびリサミン(lissamine)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0112】
間接標識は、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、β−ガラクトシダーゼ、ウレアーゼその他等、本技術分野においてよく知られた様々な酵素を含む。抗インテグリン抗体と酵素との共有結合は、グルタルアルデヒドとのカップリング等、様々な方法により行うことができる。酵素と抗体の両方は、遊離アミノ基を経由してグルタルアルデヒドと連結され、ネットワーク状になった酵素および抗体の副産物は除去される。別の方法において、糖タンパク質の場合、ペルオキシダーゼ等の酵素は糖残基を経由して抗体とカップリングする。酵素は、過ヨウ素酸ナトリウムによって酸化され、抗体のアミノ基と直接連結される。炭水化物を含有する他の酵素も、この仕方によって抗体とカップリングすることができる。酵素カップリングは、スクシンイミジル6−(N−マレイミド(maleimido))ヘキサン酸塩等、へテロ二官能性リンカーを用いて、抗体のアミノ基とβ−ガラクトシダーゼ等の酵素の遊離チオール基を連結することによって行われてもよい。西洋わさびペルオキシダーゼ検出系は、例えば、過酸化水素の存在下において、450nmで検出できる可溶性産物を生成する発色基質テトラメチルベンジジン(TMB)と共に用いることができる。アルカリホスファターゼ検出系は、例えば、405nmで直ちに検出できる可溶性産物を生成する発色基質p−ニトロフェニルリン酸と共に用いることができる。同様に、β−ガラクトシダーゼ検出系は、410nmで検出できる可溶性産物を生成する発色基質o−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノキシド(galactopyranoxide)(ONPG)と共に用いることができる。ウレアーゼ検出系は、ウレア−ブロモクレゾールパープル等の基質と共に用いることができる。
【0113】
本発明の好ましい一実施形態において、抗体は、放射性核種や、例えばフルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、オレゴングリーン(Oregon Green)(商標)、ローダミン、テキサスレッド、テトラローダミン(tetrarhodimine)イソチオシアネート(TRITC)、Cy3、Cy5等の蛍光色素や、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)、フィコエリトリン等の蛍光マーカーや、腫瘍関連プロテアーゼによって活性化される自動消光蛍光化合物や、例えばルシフェラーゼ、HRP、AP等の酵素や、ナノ粒子、ビオチン、ジゴキシゲニンその他を含むが、これらに限定されない検出可能成分で標識される。
【0114】
本発明の別の好ましい一実施形態において、核酸は、その全てが本技術分野においてよく知られた、ジゴキシゲニン、ビオチン、化学発光物質、蛍光色素、磁気ビーズ、金属ビーズ、コロイド粒子、高電子密度試薬、酵素で標識、または放射性同位元素で標識される。本発明の範囲において、核酸を標識するための好ましい同位元素は、H、14C、32P、33P、35Sまたは125Iであり、より好ましくは32P、33Pまたは125Iである。
【0115】
競合および非競合免疫測定法等、種々の免疫測定法の技法を用いることができる。用語「免疫測定法」は、フローサイトメトリー、FACS、競合的酵素免疫分析法(EMIT)、酵素結合免疫吸着測定法(ELlSA)、IgM抗体捕捉ELISA(MAC ELISA)および微粒子酵素免疫測定法(MEIA)等の酵素免疫測定法(EIA)、さらにキャピラリー電気泳動免疫測定法(CEIA)、放射免疫測定法(RIA)、免疫放射定量測定法(IRMA)、蛍光偏光免疫測定法(FPIA)ならびに化学発光アッセイ(CL)を含むが、これらに限定されない技法を包含する。必要に応じて、このような免疫測定法は自動化されてよい。免疫測定法はレーザー誘起蛍光と併せて用いてもよい。フローインジェクションリポソーム免疫測定法およびリポソーム免疫センサー等、リポソーム免疫測定法もまた、本発明における使用に適している。さらに、タンパク質/抗体複合体の形成がマーカー濃度に応じてピーク比シグナルに変換される光散乱増加をもたらす比濁分析アッセイは、本発明の方法における使用に適している。本発明の好ましい一実施形態において、インキュベーション産物は、ELISA、RIA、蛍光免疫測定法(FIA)または可溶性粒子免疫アッセイ(SPIA)によって検出される。
【0116】
ELISAの構成成分は、免疫学的反応の一方のパートナーと結合する酵素である。インテグリンのトレーサー抗原(分析物誘導体)は、好ましくは単一の捕捉用抗体(以下一次とする)を用いた競合ELISAにおいて標識され、一方、抗体は、好ましくは第二の抗体(以下二次とする)による抗原−抗体複合体の沈殿を含む非競合ELISAにおいて好ましくは標識される。抗原および2種類の抗体からなる複合体は、サンドイッチ複合体とも呼ばれる。検出は、その後の酵素による、基質から、視覚的発色、生物発光、蛍光または電気シグナルの測定(酵素電極)によって認識される産物、好ましくは呈色産物への変換を含む。ペルオキシダーゼ(例えばHRP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼおよびAP等、本発明における標識に好ましい酵素は、当業者にとって公知のものである。
【0117】
追加的に好ましくは、合成中に免疫試薬に取り込まれるか、あるいはその後にアッセイの免疫試薬、好ましくは抗体とカップリングされる、放射性同位元素を利用する放射性免疫測定法である。
【0118】
フルオロフォアで有利に標識される抗体は、FIAに用いられる。
【0119】
SPIAは、凝集の結果生じる銀粒子の変色を利用する。二次抗体も指標反応も必要ないため、本発明の範囲において特に有用である。同様に有利であるのは、呈色したラテックス粒子と結合した抗体を用いたラテックス凝集試験である。しかし、これは、前の洗浄ステップにおいて非結合および/または非特異的に結合した抗原を除去するために、インテグリンの強力な固定化を必要とする。
【0120】
一般に、検出するためのあらゆる方法は、非結合抗体をインテグリン/抗体複合体から分離するための徹底的な洗浄ステップを含む。さらに、いずれの検出方法の実験手順も当業者によく知られている。
【0121】
直接または間接標識から生じたシグナルは、例えば、発色基質由来の呈色を検出するための分光光度計を用いて、あるいは125Iを検出するためのガンマカウンター等、放射線を検出するための放射線カウンターを用いて、あるいは特定波長の光の存在下で蛍光を検出するための蛍光光度計を用いて解析することができる。酵素結合抗体を検出するため、EMAXマイクロプレートリーダー(Molecular Devices、カリフォルニア州メンロパーク)等、分光光度計をメーカーの取扱説明書に従って用いて定量解析を行うことができる。本発明のアッセイは、必要に応じて自動化することができる、あるいはロボット制御により行うことができ、複数の試料由来のシグナルを同時検出することができる。
【0122】
観察され、必要に応じてカメラまたは他の記録装置(例えば、光ダイオードおよびデータ記憶装置)によって記録された光学像は、本明細書における実施形態のいずれかにおいて、例えば画像をデジタル化し、画像をコンピュータに保存および解析することによって必要に応じてさらに加工される。種々の市販の周辺機器およびソフトウェアは、デジタル化、デジタル化したビデオまたはデジタル化した光学像の保存および解析のために利用できる。従来のシステムの一つは、標本視野から得られた光を、本技術分野において一般に使用されている冷却電荷結合素子(CCD)カメラへと送る。CCDカメラは、画素(ピクセル)の配列を含む。標本から来た光は、CCDにおいて撮像される。標本の領域に対応する特定のピクセルが標本抽出されて、各位置の光強度読み取りをなす。複数のピクセルを並行処理して速度を上げる。本発明の装置および方法は、例えば、蛍光または暗視野顕微鏡技法による任意の試料の観察に容易に用いられる。
【0123】
本発明の好ましい一実施形態において、配列番号90のDTM−αvβ3に対して作製された、配列番号99(L−αvβ3)および配列番号100(H−αvβ3)のアミノ酸配列からなるウサギハイブリドーマクローンは、FFPE組織に適した抗体を産生する。これはαvβ3と選択的に結合する。本発明の別の好ましい一実施形態において、配列番号10のDTM−αvβ5に対して作製された、配列番号19(L−αvβ5)および配列番号20(H−αvβ5)のアミノ酸配列からなるウサギハイブリドーマクローンは、FFPE組織に適した抗体を産生する。これはαvβ5と選択的に結合する。本発明のさらに別の好ましい一実施形態において、配列番号130のDTM−αvβ6に対して作製された、配列番号139(L−αvβ6)および配列番号140(H−αvβ6)のアミノ酸配列からなるウサギハイブリドーマクローンは、FFPE組織に適した抗体を産生する。これはαvβ6と選択的に結合する。本発明のさらに別の好ましい一実施形態において、配列番号170のDTM−αvβ8に対して作製された、配列番号179(L−αvβ8)および配列番号180(H−αvβ8)のアミノ酸配列からなるウサギハイブリドーマクローンは、FFPE組織に適した抗体を産生する。これはαvβ8と選択的に結合する。本発明のさらに別の好ましい一実施形態において、配列番号210のDTM−αvに対して作製された、配列番号219(L−αv)および配列番号220(H−αv)のアミノ酸配列からなるウサギハイブリドーマクローンは、FFPE組織に適した抗体を産生する。これはαvと選択的に結合する。本発明のさらに別の好ましい一実施形態において、配列番号50のβ3免疫原に対して作製された、配列番号59(L−β3)および配列番号60(H−β3)のアミノ酸配列からなるウサギハイブリドーマクローンは、FFPE組織に適した抗体を産生する。これはβ3と選択的に結合する。しかし、本明細書において記載されているいずれの代替的な配列またはその組み合わせを、本発明の使用に適用してもよいことを理解するべきである。抗体およびそのアミノ(amino)配列に関する本明細書の従前の教示は妥当であり、好都合であれば用途に制限されることなく適用できると考えられる。
【0124】
さらに、FFPE材料におけるインテグリン検出において発明の使用を実施するため、本発明は、そのそれぞれが本発明に係る抗体、ポリヌクレオチド、ベクターまたは宿主細胞を含むキットとして実施することができる。具体的には、抗体は、腫瘍または他のヒト疾病の、特にアーカイブ保管したFFPE材料におけるインテグリンプロファイル、例えば、αvインテグリンまたは他のインテグリンの発現プロファイルの特性評価のための診断検出キットに取り込まれてよい。本発明のキットは、本発明の方法を実施するための書面の取扱説明書を含むまたはユーザーを書面の取扱説明書へと導く物品を含むことができる。一実施形態において、キットは、レポーター成分またはレポーター装置をさらに含む。キット成分およびその使用に関する本明細書の従前の教示は妥当であり、好都合であればキットに制限されることなく適用できると考えられる。
【0125】
本発明は、(a)選択されたインテグリンと結合することのできる抗体の試料を提供するステップと、(b)インテグリン配列を整列させて、選択されたインテグリンのαサブユニットおよび/またはβサブユニットの最も近縁のホモログを同定するステップと、(c)抗体試料を用いて、選択されたインテグリンの天然型およびその最も近縁のホモログ(単数または複数)についてディファレンシャルELISAを実施し、これにより選択されたインテグリンに対する抗体を蓄積させるステップ(一次スクリーニング)と、(d)ステップc)の蓄積された抗体を用いて、選択されたインテグリンの天然型および別のインテグリンについて別のディファレンシャルELISAを実施し、これにより選択されたインテグリンに対する抗体をさらに蓄積させるステップ(二次スクリーニング)と、(e)少なくとも1種類の細胞系は選択されたインテグリンを発現でき、必要に応じて別の細胞系は選択されたインテグリンを発現できない、FFPE細胞系の免疫組織化学検査をステップd)の蓄積された抗体を用いて実施し、これにより選択されたインテグリンに対する抗体をさらに蓄積させるステップ(三次スクリーニング)と、(f)細胞系が哺乳動物において異種移植腫瘍として増殖される、ステップe)のFFPE細胞系の免疫組織化学検査をステップe)の蓄積された抗体を用いて実施し、これにより選択されたインテグリンに対する抗体をさらに蓄積させるステップ(四次スクリーニング)と、(g)ステップf)の蓄積された抗体を用いて、アーカイブ保管したFFPE腫瘍の免疫組織化学検査を実施し、これにより選択されたインテグリンに対する抗体をさらに蓄積させるステップ(五次(quintenary)スクリーニング)と、を含む、インテグリンαサブユニットおよび/またはβサブユニットそれぞれの最も近縁のホモログ間を識別することができ、FFPE材料における免疫組織化学検査に適した抗インテグリン抗体をスクリーニングするための方法を教示することによって、第二の課題を解決する。
【0126】
一次スクリーニングは、免疫原の天然、生物活性、未変性型におけるディファレンシャルELISAによって実施される(Mehtaら、1998、Biochem J 330: 861〜869)。標的免疫原がαvβ3である場合、例えば一次スクリーニングは、αvβ3対αvβ5で行われる。このことは、一次スクリーニングが、一次標的と最も近縁の配列相同性を有するインテグリンにおけるカウンタースクリーニングを利用することを意味する。β3鎖と最も近縁のホモログはβ5であり、一方αvは両方の複合体に共通である。このようにして、最も識別能力のある抗体が得られる。同様に、αvβ5は対αvβ8によりスクリーニングすることができる。アルファ鎖特異抗体のスクリーニングは同じ手順に従ってよく、すなわち、αvβ1はα5β1特異抗体のカウンタースクリーニングとして用いることができる。二次スクリーニングは、ELISAにおいて組換えインテグリンのより広範な一組を検査し、さらなる特異性を確認、例えばαiibβ3は、αvβ3抗体、好ましくはαvβ3モノクローナルのβ3鎖単独ではなくむしろαv複合体に対する特異性の確認に用いることができる。ステップ(d)において、ステップ(c)の蓄積された抗体を用いて、選択されたインテグリンの天然型および別の近縁インテグリンにおけるディファレンシャルスクリーニングが実施されることが好ましい。三次スクリーニングは、そのインテグリン発現プロファイルに対して生化学的特性評価されたFFPE細胞系のIHCにおける抗体染色を検査する。四次スクリーニングは、ヌードマウスにおいて異種移植腫瘍として増殖した同じ細胞系におけるFFPE−IHCを利用する。五次スクリーニングは、アーカイブ保管したFFPEヒト腫瘍を検査する。例えば、三次および四次スクリーニングは、陽性スクリーニング標的としてM21、U87MGおよびM24メラノーマにおいて行われる。これらの系統は全て、本出願人ら(in house)および文献によるαvβ3を発現するプロファイリングから判明しており、一方A549、NSCLC、RajiおよびHT29は陰性スクリーニング標的である。これらの系統は全て、本出願人らおよび文献によるαvβ3を発現しないプロファイリングから判明している。五次スクリーニングは、好ましくはαvβ3陽性として悪性メラノーマおよび神経膠芽腫において、またαvβ3陰性ヒト腫瘍としてNSCLCおよびCRCにおいて行われる。
【0127】
スクリーニング方法の一実施形態において、ステップ(c)〜(g)の内いずれかは、蓄積された抗体の識別能力および/または特異性を検出するさらなるステップを含む。
【0128】
本発明の範囲において、腫瘍生検等、FFPEアーカイブ保管した患者材料における、また生細胞フローサイトメトリー(FACS)による、インテグリンの有効な検出を可能にする抗体が初めて提供された。FACSにおける染色パターンは、当業者にとって公知の関連モノクローナル抗体(例えば、αvβ3に対しLM609、αvβ5に対しP1F6)により得られたパターンと一致する。本発明の抗体が、FFPE材料のみならず生細胞におけるその天然状態においても各インテグリンを検出することが示された。インテグリン、特にαvβ3、αvβ5、αvβ6またはαvβ8は、本願の出願以前ではルーチンのFFPE生検材料において確実に可視化することができなかった、一次療法の標的である。本発明の強力な抗体は、アーカイブ保管したFFPE材料におけるそのインテグリン標的を、凍結保存材料において公知のαvβ3、αvβ5またはαvβ6特異的モノクローナル抗体により観察された分布と同じ染色パターンで認識するが、凍結組織学的検査材料に対して、FFPEで典型的な、よく知られた、より高い空間分解能および形態保存品質で認識する潜在能力を有する。非常に適切な抗体はウサギモノクローナルであるが、これは単純に別の種に由来するというわけではなく、これらのRabMabは特異性、再現性および永続性を有する(すなわち、同じ試薬および同じ特異性で永続的である)と有利に証明されている。αvβ3またはαvβ5クローンを用いて作製されるRabMabは、アーカイブ保管したヒト腫瘍におけるαvβ3またはαvβ5を、古典的抗αvβ3抗体LM609または抗avβ5抗体PIF6で染色された凍結固定材料と同じ染色パターンで認識する。β3細胞質ドメインを用いて作製されたRabMabは、標的細胞の公知のαvβ3発現プロファイルに対応するパターンで異種移植片アレイを染色する。産生され、必要に応じて下文で明らかになる方法のスクリーニングにより選抜される抗体は、主にFFPEインテグリンにおいて機能するが、これは単離型インテグリンにおけるELISA、生細胞集団におけるフローサイトメトリーに用いてもよいし、あるいはさらに他の標準的な生化学的適用に付してもよい。抗体は、観察されるヒト疾病と受容体の生化学特性との間に、一般的でないが有用な妥当性確認の橋を提供する。
【0129】
本発明は、精製インテグリンドメイン、具体的には精製インテグリン細胞外ドメイン、より具体的にはヒト起源のそれを用いて抗インテグリン抗体の作製を教示する。本発明の免疫原は、短期間の免疫化で高い抗体価を生じる。高い抗体価は、免疫化の後に得られてアッセイに用いられる血清の高い希釈率によって反映される。同時に、他の血清成分によって生じ得る有害効果は、その存在が希釈されるため大幅に低減される。力価は、内在性かつ高度に相同なウサギインテグリンから糖鎖付加において多様性を生じる昆虫組換え免疫原産生によって、有利にさらに上昇し得る。抗体およびその誘導体は、工業生産規模の哺乳動物発現系における高い特異性、安定性および発現、低い製造コストならびに簡便な取り扱いによって特徴付けられる。これらの特徴は、交差反応性および有害効果の欠如を含む、再現性のある作用のための、またその適合するインテグリン構造との信頼のおける安全な相互作用のための基礎を構成する。抗体は発現ベクターにクローニングできるため、基礎研究および診断のための絶対的に安定的かつ再現性のある材料ソースを提供する。さらに、適切なキットは費用効率的に生産される。
【0130】
本明細書に引用されているあらゆる参考文献は、これにより本発明の開示において本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
【0131】
本明細書に記載されている特異抗体、特定の方法、使用およびキットは当然のことながら変化する可能性があるため、本発明はこれらに限定されないことを理解するべきである。本明細書に用いられている専門用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ規定される本発明の範囲の限定を企図していないことも理解するべきである。添付の特許請求の範囲を含む本明細書において、文脈が明らかにそれ以外を指示しない限り、単数形はその対応する複数の指示対象を含む。したがって、例えば「単数形の抗体」の言及は、単数または複数の異なる抗体を含み、一方「複数形の抗体」の言及は、適宜変更しつつ適用できる筈であり、「単数形の方法」の言及は、当業者にとって公知の均等のステップおよび方法その他諸々の言及を含む。他に規定がなければ、本明細書に用いられているあらゆる技術および科学用語は、本発明が属する分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を持つ。
【0132】
本発明に係る重要な技法は、本明細書において詳細に説明されている。詳細に説明されていない他の技法は、当業者によく知られた公知の標準方法に相当する、あるいは、該技法は、引用されている参考文献、特許出願または標準的な文献においてより詳細に説明されている。本願において言及されていない他の微生物、細胞系、プラスミド、プロモーター、耐性マーカー、複製開始点等は、市販されている。本願において他のヒントが与えられていなければ、それはほんの一例として用いられたものであり、本発明において重要であるとは考えられず、他の適切なツールや生物材料に置き換えることができる。本明細書に記載されている方法および材料と類似または均等のものは、本発明の実施または試験において用いることができるが、適切な例が下に記載される。次の例は、具体例として提供されるものであって、限定を目的とするものではない。例において、汚染活性物を含まない標準試薬およびバッファー(実用的であれば)が用いられる。例は、特に、特徴の明示された組み合わせに限定されず、本発明の技術的な課題が解決されるのであれば、例示的な特徴が非限定的に再度組み合わされてよいと解釈するべきである。
【0133】
図1は、αvβ3外部ドメインに対して作製されたサブクローンE3528−2−12の上清による、FFPE癌細胞系(左)および異種移植片(右)の免疫組織化学染色を示す。
【0134】
図2は、精製抗αvβ3インテグリン抗体クローンE3528−2−7による、異種移植片におけるM21細胞の細胞膜染色を示す。
【0135】
図3は、精製抗αvβ3インテグリン抗体E3528−2−7、E3528−2−11およびE3528−2−12による、癌細胞系M21(左)およびM21異種移植片(右)の免疫組織化学染色を示す。
【0136】
図4は、画像解析(Ariol SL−50)およびSpotfireによるグラフ表示を活用した、抗αvβ3抗体E3528−2−7、E3528−2−11およびE3528−2−12による免疫組織化学染色の解析を示す。
【0137】
図5は、画像解析(Ariol SL−50)を活用した、抗体αvβ3_E3528−2−7およびマウスモノクローナル抗体20H9による免疫組織化学染色の解析を示す。クローン20H9は、β3インテグリン鎖に対して作製された。「発現(%max)」は、M21の発現に対して正規化される。
【0138】
図6は、精製抗αvβ3インテグリン抗体E3531−227−3およびE3531−229−3による、異種移植片におけるM21細胞の細胞膜染色を示す。
【0139】
図7は、マルチクローン227(E3531−227−3、E3531−227−3およびE3531−227−6)の精製抗αvβ3インテグリン抗体による、癌細胞系M21(左)およびM21異種移植片(右)の免疫組織化学染色を示す。
【0140】
図8は、M21細胞における発現の%として算出した、クローンE3531−227の抗αvβ3抗体(上)およびマウスモノクローナル抗β3抗体20H9(下)とによる免疫組織化学染色の解析の比較を示す。発現は、画像解析(Ariol SL−50)を活用して解析した。
【0141】
図9は、αvβ5外部ドメインに対して作製されたサブクローンE3536−99−3の上清による、FFPE癌細胞系(左)および異種移植片(右)の免疫組織化学染色を示す。
【0142】
図10は、インテグリンαvβ3およびαvβ5の組換えヒト細胞外ドメインならびに全長精製血小板gpiibiiiaに対する、精製モノクローナルハイブリドーマ抗体E3531−227−3、E3531−229−3およびE3536−99−2のELISAプロファイルを示す。
【0143】
図11は、精製抗αvβ5インテグリン抗体クローンE3536−99−3による、異種移植片におけるA431およびHCT116細胞の細胞膜染色を示す。
【0144】
図12は、精製抗αvβ5インテグリン抗体E3536−99−1、E3536−99−2およびE3536−99−3による、癌細胞系U87MG(左)ならびにU87MGおよびA431異種移植片の免疫組織化学染色を示す。
【0145】
図13は、画像解析(Ariol SL−50)およびSpotfireによるグラフ表示を活用した、抗αvβ5抗体E3536−99−1、E3536−99−2およびE3536−99−3による免疫組織化学染色の解析を示す。
【0146】
図14は、サブクローンE3866−52−1の上清による、FFPE癌細胞系(左)および異種移植片(右)の免疫組織化学染色を示す。
【0147】
図15は、サブクローンE3866−52−1の精製抗体によるFFPE癌細胞系の免疫組織化学染色を示す。
【0148】
図16は、組換え抗αvβ6インテグリン抗体による癌細胞系および異種移植片の免疫組織化学染色を示す。
【0149】
図17は、組換え抗αvβ6インテグリン抗体による、異種移植片における前立腺(prostate)癌細胞(上)およびHT29結腸癌細胞の細胞膜染色を示す。
【0150】
図18は、画像解析(Ariol SL−50)を活用した、抗αvβ6抗体による免疫組織化学染色(run3421)の解析を示す。
【0151】
図19は、抗avβ6組換え抗体によるスライド間および実験間の再現性を示す。
【0152】
図20は、抗αvβ8サブクローン133−9の上清による、FFPE癌細胞系および異種移植片の免疫組織化学染色を示す。
【0153】
図21は、抗αvβ8サブクローンE3875−133−9の精製抗体によるFFPE癌細胞系の免疫組織化学染色を示す。
【0154】
図22は、組換え抗αvβ8インテグリン抗体EM13309による癌細胞系および異種移植片の免疫組織化学染色を示す。
【0155】
図23は、組換え抗αvβ8インテグリン抗体EM13309によるヒト組織の免疫組織化学染色を示す。
【0156】
図24は、組換え抗αvβ8インテグリン抗体による、異種移植片における前立腺癌細胞(上)およびH1975肺癌細胞の細胞膜染色を示す。
【0157】
図25は、画像解析(Ariol SL−50)を活用した、抗αvβ8抗体EM13309による免疫組織化学染色(run3422)の解析を示す。
【0158】
図26は、抗avβ8組換え抗体EM13309によるスライド間および実験間の再現性を示す。
【0159】
図27は、抗αvサブクローンE3875−13−9の上清によるFFPE癌細胞系および異種移植片の免疫組織化学染色を示す。
【0160】
図28は、サブクローンE3875−13−9の精製抗αv抗体によるFFPE癌細胞系の免疫組織化学染色を示す。
【0161】
図29は、組換え抗αv抗体EM01309による癌細胞系および異種移植片の免疫組織化学染色を示す。
【0162】
図30は、組換え抗αv抗体EM01309による異種移植片におけるDU−145(上)およびHT29細胞の細胞膜染色を示す。
【0163】
図31は、画像解析(Ariol SL−50)を活用した組換え抗αv抗体EM01309による免疫組織化学染色の解析を示す。
【0164】
図32は、抗αv組換え抗体EM01309によるスライド間および実験間の再現性を示す。
【0165】
図33は、精製抗β3インテグリン抗体クローンE3592−2−12による、異種移植片におけるM21細胞の細胞膜染色を示す。
【0166】
図34は、精製抗β3インテグリン抗体E3592−2−4、E3592−2−10およびE3592−2−12による癌細胞系M21(左)およびM21異種移植片(右)の免疫組織化学染色を示す。
【0167】
図35は、画像解析(Ariol SL−50)およびSpotfireによるグラフ表示を活用した、抗β3抗体E3592−2−4、E3592−2−10およびE3592−2−12による免疫組織化学染色の解析を示す。
【0168】
図36は、画像解析(Ariol SL−50)を活用した、抗体β3_E3592−2−12およびマウスモノクローナル抗体20H9による免疫組織化学染色の解析を示す。クローン20H9は、β3インテグリン鎖に対して作製された。「発現(%max)」は、M21の発現に対して正規化された。
【0169】
図37は、組換えヒトαvインテグリン細胞外ドメインおよび全長精製血小板gpiibiiiaに対する、ウサギ抗インテグリン由来の精製モノクローナルハイブリドーマ抗体E3875−133−9、E3866−052−1およびE3875−013−9のELISAプロファイルを示す。
【0170】
図38は、組換えヒトαvインテグリン細胞外ドメインおよび全長精製血小板gpiibiiiaに対する、EBNA組換えウサギ抗インテグリンモノクローナル抗体EM22703、EM09902、EM00212、EM05201、EM13309およびEM01309のELISAプロファイルを示す。
【0171】
図39は、ビオチンビトロネクチンをリガンドとして用いたRabMab抗体EM22703、EM09902、EM00212の受容体阻害アッセイを示す。
【0172】
図40は、M21におけるEM022703のFACS滴定を示す。
【0173】
図41は、A549におけるEM009902のFACS滴定を示す。
【0174】
図42は、HT29におけるEM05202のFACS滴定を示す。
【0175】
図43は、M24−met細胞におけるEM13309のFACS滴定を示す。
【実施例】
【0176】
例1:免疫原の作製
例1.1:細胞外ドメインαvβ3、αvβ5、αvβ6およびαvβ8vの作製
バキュロウイルス感染により、昆虫細胞系(Hive Five)において組換えヒトインテグリン細胞外ドメイン、αvβ3、αvβ5、αvβ6およびαvβ8を生成した。昆虫系列の陰性対照としての利用は適切であった。発酵(fermentation)後、その下流の工程は次の要素を含んだ。<Mab 14D9>Toyopearlアフィニティーカラムにおけるクロマトグラフィー、Spectra/POR透析チューブ(DTM−αvβ3およびDTM−αvβ5に対し6〜8kDa、DTM−αvβ8に対し25kDa)による透析、カットオフ値30kDaを有するMillipore TFF Labscaleによる濃縮(DTM−αvβ5およびDTM−αvβ8のみ)、カットオフ値30kDaを有するAmicon Ultra−15遠心フィルターユニットによる濃縮ならびにMillex GVによる0.2μm濾過(DTM−αvβ3、DTM−αvβ6、DTM−αvβ8のみ)。
【0177】
2.0mg/mlのタンパク質濃度が得られるよう、50mM Na(CHCOO)、0.2mM MnCl、pH7.4のバッファー中に22mgのDTM−αvβ3を溶解した。次に、原液を22本の500μlバイアルに分注した。2.36mg/mlのタンパク質濃度が得られるよう、50mM Na(CHCOO)、0.2mM MnCl、pH7.4のバッファー中に10.6mgのDTM−αvβ5を溶解した。次に、原液を9本の500μlバイアルに分注した。2.36mg/mlのタンパク質濃度が得られるよう、50mM Na(CHCOO)、0.2mM MnCl、pH7.4のバッファー中に15mgのDTM−αvβ6を溶解した。2.78mg/mlのタンパク質濃度が得られるよう、50mM Na(CHCOO)、0.2mM MnCl、pH7.4のバッファー中に16.6mg DTM−αvβ8を溶解した。
【0178】
液体窒素中でアリコートを凍結し、−80℃で保存した。ルーチン実験の実行によりBCAアッセイし、クーマシー染色を用いたSDS pageまたはウエスタンブロッティングにより分析を行った。次の抗体をウエスタンブロッティングによるDTM−αvβ3検出に用いた。一次Mab AP3 EMD330515/CH000、5μg/ml、2時間RT、および二次ヤギ(gout)抗マウスIgG(H+L)×AP、Dianova、115−055−062、1:1000、1時間RT、続いてPrecision Step Tractin×AP、BioRad、161−0382、1:5000。次の抗体は、ウエスタンブロッティングによるDTM−αvβ5検出に用いた。一次Mab<11D1>−CH004、2.5μg/ml、1時間RT、および二次ヤギ抗マウスIgG(H+L)×AP、Dianova、115−055−062、1:1000、1時間RT、続いてPrecision Step Tractin×AP、BioRad、161−0382、1:5000。次の抗体をウエスタンブロッティングによるDTM−αvβ6検出に用いた。一次Mab 442−5C4×ビオチン<hu−インテグリンβ6>330510/CH001、2μg/ml、2時間RT、および二次抗ビオチン×AP、Sigma A−7064、1:2500、2時間RT、続いてPrecision Step Tractin×AP、BioRad、161−0380、1:5000。次の抗体をウエスタンブロッティングによるDTM−αvβ8検出に用いた。一次Mab LM142×ビオチンPool A 269A07H1.G01、5μg/ml、2時間RT、および二次ヤギ抗マウスIgG(H+L)×AP、Dianova、115−055−062、1:1000、1時間RT、続いてPrecision Step Tractin×AP、BioRad、161−0382、1:5000、1時間RT。
【0179】
免疫原は、その同種基質、例えばビトロネクチン(αvβ3およびαvβ5)ならびにフィブロネクチン(αvβ3)と結合するその能力によって、生物活性および特異性を有するものとして特徴付けた。これらの調製は、インテグリンの構造上の忠実性に対する優れた標準(gold−standard)として認められた(Mehtaら、Biochem J 1998、330: 861〜869、Xiongら、Science 2001、294: 339〜345)。組換えヒトインテグリン細胞外ドメインDTM−αvβ3、DTM−αvβ5、DTM−αvβ6およびDTM−αvβ8を免疫原として用いた。
【0180】
例1.2:細胞質ドメインβ3の作製
大腸菌(E.coli)BL21においてGSTと融合したヒトβ3インテグリン細胞質ドメインを産生し、免疫原としての組換え融合タンパク質として精製した。発酵後、下流の工程は次の要素を含んだ。細胞溶解、フレンチプレス、封入体の調製、透析によるリフォールディングおよび濃縮。1.27mg/mlのタンパク質濃度が得られるよう、0.1M炭酸ナトリウム、5mM DTT、pH9.5のバッファー中に55mgのタンパク質を溶解した。次に、原液を2本の10mlバイアル、4本の5mlバイアルおよび4本の1mlバイアルに分注した。アリコートを濾過(0.2μm)し、液体窒素中で凍結し、−80℃で保存した。ルーチン実験の実行によりBradfordアッセイし、クーマシー染色を用いたSDS pageまたはウエスタンブロッティングにより分析を行った。次の抗体をウエスタンブロッティングによるβ3検出に用いた。一次ヤギ抗GST、Amersham、No.27−4577−01、1:5000、1時間RT、および二次F(ab’)断片ウサギ抗ヤギIgG(H+L)×AP、Dianova、305−056−045、1:1000、1時間RT、続いてPrecision Strep Tactin−APコンジュゲート、BioRad、Nr.161−0382、1:5000。
【0181】
例1.3:gpiibiiiaの作製
以前に詳述した通り、オクチルグルコシドを用いて、古くなったヒト血小板から全長ヒトgpiibiiiaを抽出した(Mitjansら、J Cell Sci 1995、108(Pt 8):2825〜38)。
【0182】
例2:抗体の作製
ウサギモノクローナル抗体の作製は、4段階の手順に従った。(A)ウサギの免疫化およびポリクローナル血清のスクリーニング、(B)ハイブリドーマ細胞を作製するための融合およびマルチクローン上清のスクリーニング、(C)サブクローニングおよびサブクローン上清のスクリーニング、ならびに(D)抗体コードインサートのcDNAクローニング、配列決定および完全に定義された抗体を産生するためのEBNA発現ベクターへの挿入。ウサギ採血(bleeds)、ハイブリドーマ上清および精製抗体を、標準プロトコールに従ってELISAにおいて固定化した精製免疫原に対して解析した。送達におけるαvβ3、αvβ5、αvβ6およびαvβ8の組換え細胞外ドメインに対するディファレンシャルスクリーニングによって陽性クローンを再試験し、特異性および活性を確認した。
【0183】
ステップ(A)において、免疫原当たり数匹のウサギが免疫化され、抗血清の力価をモニタリングした。FFPE材料において全ウサギの予備採血は低希釈率(1:50)であってもシグナルを生じなかったが、融合前の一次採血(ポリクローナル血清)では、既にはっきりとした曖昧でないシグナルが得られ、細胞表面タンパク質に対する特異性を強く示唆した。各ウサギにつき3回の採血が行われ、8〜12週間後、免疫原当たり1匹の陽性ウサギを融合用に選抜した。
【0184】
ステップ(B)において、血清陽性ウサギからB細胞を単離し、単離したウサギB細胞とウサギ融合パートナー細胞系240E−Wを融合してウサギハイブリドーマ細胞を作製した。96ウェルプレートにおいてELISAにより融合をスクリーニングした。10〜100個の陽性クローンの上清が得られ、5〜6週間後に免疫原当たり3個のマルチクローンを選抜した。
【0185】
ステップ(C)において、ハイブリドーマをクローニングし、スクリーニングして適切な特異抗原認識する抗体を分泌するクローンを選抜し、種々の方法(ウエスタンブロッティング、IHC、ICC、フローサイトメトリー等)を用いて抗体を特徴付けた。サブクローンの上清は、特にELISAにより特異抗原認識に対してスクリーニングした。陽性の試験したサブクローン上清を凍結し、使用まで−80℃で保存した。その後、サブクローン上清は、第一段階は癌細胞系アレイにおいて、第二段階は第一のスクリーニングを検証するための癌細胞系アレイと並行した異種移植片組織において行う、例3の2段階工程でスクリーニングした。
【0186】
ステップ(D)において、選抜された抗体クローンのDNA配列を切り出し、EBNA発現ベクターにクローニングし、自動cDNAサンガー色素配列決定法により配列決定した。Phamら、Biotech Bioeng 2003、84(3):332〜342に従って組換え抗体をEBNA細胞発現系において産生したが、一過性トランスフェクション系のためにHEK293−6E細胞とpTT5ベクターを用いる際は、それを僅かに修正した。抗体産生は、ELISAおよびIHCにより確認した。TuboCaptureキット(Qiagen)を用いて、メーカーの指示に従ってハイブリドーマ細胞からmRNAを単離し、続いてオリゴdTプライマーを用いてcDNAに逆転写した。専売(proprietary)のプライマーOYZ64−2およびOYZvh3を用いて、H鎖の可変領域(V)をPCR増幅した。専用のプライマーOYZ62およびOYZ71を用いて、L鎖(L)全体をPCR増幅した。制限酵素HindIIIおよびKpnIを用いて、PCR断片のV領域を消化した。HindIIIおよびNotIを用いて、L PCR断片を消化した。Qiagen PCRクリーンアップキットを用いて、全消化産物を精製した。精製後、VまたはL断片を対応するHまたはL鎖専用の発現ベクターにライゲーションし、コンピテント細胞DH5α(MC Lab)に形質転換した。形質転換コロニーを突いて採取し、対応する制限酵素を用いてインサートの確認を行った(予想されるサイズにより確認:Vは約440bp、Lは740bp)。予想サイズのインサートを含むプラスミドは、プライマーにTT5を用いて配列決定した。対応するベクターからHindIIIおよびNotIによりL鎖全体またはH鎖断片を切り出し、その後Qiagen PCRクリーンアップキットを用いて精製した。約50〜100ngのcDNAインサートを保存した。
【0187】
例3:抗体のスクリーニングおよび特性評価のための方法
例3.1 アレイ組成
27種類の癌細胞系および1種類の昆虫細胞系を、リン酸緩衝した4%パラホルムアルデヒド、pH7中で、16〜24時間にわたって室温で固定し、パラフィンに包埋し、28種類の細胞系パラフィンブロック(CAX05)に準備した。アレイに用いた細胞系の一部のインテグリン細胞表面発現プロファイルは、それぞれαvβ3およびαvβ5インテグリン複合体に対して作製されたLM609(Cheresh & Spiro、JBC 1987、262:17703〜17712)およびP1F6(Varner & Cheresh、Important Adv Oncol 1996、87:69)等、定義されたマウスモノクローナル抗体を用いたフローサイトメトリーによって予め特徴付けられている(Mitjansら、J Cell Sci 1995、108(Pt8):2825〜38)。
CAX05:
A431 扁平上皮癌(squams cancer oes)
A549 肺癌
A2780ADR 卵巣癌
C8161 メラノーマ
Calu6 肺腺癌(lung adeno)
Colo205 結腸癌
DU145 前立腺癌
HCT116 結腸癌
HT29 結腸癌
Igrov1 卵巣癌
Kyse30 扁平上皮癌
Lox メラノーマ
M21 メラノーマ
M24−met メラノーマ
MCF7 乳癌
MDA−MB23 乳癌
MDA−MB468 乳癌
MiaPaCa2 膵癌
NCI−H460LC 肺癌
Ovcar−3 卵巣癌
PC3 前立腺癌
Raji BuBVLtt’s Lym
Sf9 昆虫細胞
SKOV3 卵巣癌
Suit7 膵癌
SW707 結腸癌
U87MG 神経膠芽腫
WM164 メラノーマ。
【0188】
異なる実験的研究から得られたアレイ(Xeno−08−A、Xeno−08−Mu1)は、賦形剤(vehicle)処理マウス由来の異種移植片を用いることによって構成される。
Xeno−08−A:
M21 マウス
U87MG マウス
HCT116 CD1 nu/nuマウス
A549(ヒト肺癌) CD1 nu/nuマウス
Calu6 CD1 nu/nuマウス
Xeno−08−Mu1:
A549、HCT116、U87MG、M21、Calu6、A431、BT474、Colo205、H1975、MDA MB−231、Mes−Sa/Dx5、PC3、SW707、A2780、A2780ADR。
【0189】
正電荷を帯びたSuperFrost(登録商標)Plusスライド(Menzel−Glaeser、ドイツ、ブラウンシュワイク)上に、癌細胞系アレイおよび異種移植片アレイの3μm切片をマウントし、乾燥剤と共に−80℃で保存した。
【0190】
例3.2:IHC手順
切片の脱パラフィン化から始まる免疫組織化学染色手順は、染色装置Discovery(商標)またはDiscovery(登録商標)XT(Ventana Medical Systems、Inc.、米国トゥーソン)を用いて行われた。脱パラフィン化の後、エピトープ回復のために、切片をTris−EDTAバッファーpH8中で加熱、あるいはプロテアーゼと37℃で8分間(プロテアーゼ1)または12分間(プロテアーゼ2)インキュベートした。3%過酸化水素(OmniMap(商標)またはUltraMap(商標)キットの一部、Ventana Medical Systems)中でインキュベーションすることにより、内在性ペルオキシダーゼをブロッキングした。第一の免疫組織化学的実験の日に上清を室温で温めた後、終濃度0.01%(w/v)になるようアジ化ナトリウムを添加し、上清を4℃で保存した。一系列の上清は常に同じ装置で染色した。切片をマルチクローンおよびサブクローンの上清と、あるいは組換えにより発現した抗体(2〜10μg/ml;1スライド当たり100μl)とインキュベートし、次にOmniMapまたはUltraMapキットのHRPコンジュゲートポリマー等、適切な二次抗体と16分間37℃でインキュベートした。西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)は、3,3'−ジアミノベンジジン四塩酸塩(DAB)/H反応を触媒し、目視できる不溶性の暗褐色沈殿物を生成する。切片をヘマトキシリンで対比染色した。スライドを水道水中で洗浄し、脱水し、永久マウント剤Entellan(登録商標)Neu(VWR、ドイツ)中にガラスカバースリップでマウントした。スライドは室温で保存し、パラフィンブロックは6℃で保存した。
【0191】
免疫組織化学染色手順の図式:
A.前処理
・脱パラフィン化(温度:75℃、8分間、続いてEZ Prepバッファーで75℃、8分間)
・細胞馴化(Tris EDTAバッファーpH8、時間:48分間;温度:95℃)
あるいは、
・プロテアーゼ馴化(プロテアーゼ1:0.5U/mlまたはプロテアーゼ2:0.1U/ml;時間:8または12分間;温度:37℃)
B.検出
・一次抗体(容量:100μl;時間:32分間;温度:37℃)
・二次抗体(OmniMapまたはUltraMap、HRPコンジュゲート;容量:100μl;時間:16分間;温度:37℃)
・検出(ChromoMap DAB)
・対比染色(ヘマトキシリンII;時間:8分間)
・対比染色後(ブルーイング(Bluing)試薬)
・スライドクリーニング。
【0192】
細胞系アレイを×20倍(目盛りx/y:1ピクセル=0.38×0.38μm)で自動顕微鏡Ariol SL−50を用いて走査した。0.1mmの円形領域(インプット領域面積)を各組織スポットに設定した。陽性免疫組織化学的標識の褐色を、Ariol SL−50の画像解析ソフトウェアを活用して「色調」、「色相」および「彩度」の閾値を設定することにより定量化した。インプット領域面積における陽性面積は、褐色に標識された組織の分率である。陽性面積の強度は、赤色、青色および緑色フィルターを用いて撮像された3枚の白黒画像において測定された褐色の平均濃淡値であった。濃淡値は、0(黒)から白(255)の範囲に及ぶ。発現は、陽性面積分率(255−強度)に従って算出した。データは、Spotfire(登録商標)DecisionSite(商標)(バージョン9.0、Spotfire Inc.)を用いて表示した。
【0193】
例3.3:ELISAプロトコール
コーティングバッファー(150mM NaCl;1mM CaCl;1mM MgCl;10μM MnCl;50mM Tris−Cl;pH7.5)から吸着(4℃;16時間)させることにより、マイクロタイタープレートに組換えインテグリン(1μg/ml)をコーティングした。プレートを洗浄(洗浄バッファー:0.5%BSA;0.05%Tween20、PBS中に溶解)し、ブロッキング(1時間;4℃;5%BSA、PBS中に溶解)し、洗浄バッファー中に段階的に希釈した一次抗体とインキュベート(1時間;37℃)した。洗浄後、二次検出用抗体(ヤギ抗ウサギHRP;1:5000)を添加し(1時間;37℃)、続いて洗浄し、クエン酸−リン酸バッファー(pH5.0)中テトラメチルベンジジン(100μg/ml)を用いて検出し、硫酸で発色し、試薬ブランクを対照として450nmで読み取った。結果は、通常陽性対照値の<5%であるブランク値を引いた後に表した。
【0194】
例3.4:FACS解析
トリプシン(0.5μg/ml)/EDTA(0.2μg/ml)を用いて対数増殖期の細胞を採取し、FACSバッファー(PBSプラス0.9mM CaCl;0.5mM MgCl;0.5%w/v BSA)中で洗浄し、抗インテグリン抗体とインキュベート(60分間;4℃;FACSバッファー中に10μg/ml)した。洗浄後、細胞をAlexa−488標識抗ウサギIgG(Invitrogen)またはヤギ抗マウスIgG FITC(Becton−Dikinson)で染色(30分間;4℃)し、FACSバッファー(500μl/チューブ)中で洗浄、再懸濁した。細胞をFACScan(Becton−Dickinson)で解析し、陰性対照(一次抗体を用いずPIおよび二次標識抗体で染色した細胞)のMIFに対して平均強度蛍光(MIF)を正規化した。
【0195】
例3.5:評価および統計
グラフィックソフトウェアパッケージGraphpad Prism(Ver5.0:GraphPad Software、Inc.カリフォルニア州ラホヤ)に適合した非線形曲線により、3回複製したデータポイントからELISAにおける抗体結合のIC50を決定した。BD Facs走査プログラム(CellQuest MacOS8.6)を用いてフローサイトメトリーを解析した。
【0196】
例4:抗αvβ3クローンおよび抗αvβ3抗体の特性評価
例4.1:E3528−2−7、E3528−2−11およびE3528−2−12の特性評価
ウサギE3528のマルチクローン2および63から得られた24個のサブクローン由来の上清を、癌細胞系CAX05のFFPE細胞系アレイにおいて無希釈でスクリーニングした。明確な膜輪郭を欠く細胞質シグナルは、非インテグリン特異的として除外した。マルチクローン2のサブクローンは、細胞膜染色を示す(図1)。特定の細胞型に関するサブクローンの選択性を、マウス モノクローナルIgGクローン20H9と比較した。クローン20H9は、FFPEにおいて交差反応する抗β3鎖抗体(Mitjansら、J Cell Sci 1995、108(Pt 8)2825〜38)であるが、これは低い結合親和性を有する。異種移植片アレイXeno−08−Aにおける2回目の実験において陽性サブクローンを試験し、腫瘍組織における交差反応性を確認した(表1)。
【0197】
【表1】



【0198】
染色強度、公知のαvβ3インテグリン陽性細胞に関する選択性および細胞膜染色の質に基づき、3個のサブクローン、2−7、2−11および2−12を最終クローンとして選抜した。3個の抗αvβ3クローンは、明瞭な細胞膜染色を示しつつ類似の染色特性を示した(図2)。異種移植片アレイXeno−08−Mu1において、M21異種移植片は唯一陽性であった(図3)。サブクローンは、αvβ3を発現しないことが知られているA549およびHCT116を含む様々な範囲の癌腫(表2)ならびに足場非依存的Raji−T細胞リンパ腫において陰性であった。これらのデータは、抗体のαvβ3インテグリンエピトープと一致した。癌細胞系アレイにおける3種の抗体による染色の選択性および強度は、ほぼ同一であった(図4)。3種の抗体の染色の選択性をモノクローナル抗β3インテグリン抗体クローン20H9と比較した(図5、クローンE3528−2−7を示す)。細胞選択性に関し、3個のクローンはクローン20H9と同様の特性を示し、これは3種の抗体のエピトープがαvβ3エピトープであることを示した。M21細胞系におけるαvβ3の高い発現は、以前にクローンLM609を用いたFACS解析によって示されている(表2;Mitjansら、Int J Cancer 2000、87(5)716〜723)。
【0199】
【表2】



【0200】
例4.2:E3531−227およびE3531−229の特性評価
ウサギE3531のBリンパ球の第二の融合実験の後、例4.1と同様にサブクローン227−3を得た。癌細胞系CAX05のFFPE細胞系アレイにおいて、マルチクローン227および229から得られた18個のサブクローン由来の上清を、無希釈でスクリーニングした。明確な膜輪郭を欠く細胞質シグナルは、非インテグリン特異的として除外した。両方のマルチクローンのサブクローンは優れた細胞膜染色を示した。特定の細胞型に関するサブクローンの選択性をマウスモノクローナルIgGクローン20H9と比較した。異種移植片アレイXeno−08−Aにおける2回目の実験において陽性サブクローンを試験し、腫瘍組織における交差反応性を確認した。染色強度、公知のαvβ3インテグリン陽性細胞に関する選択性および細胞膜染色の質に基づき、6個のサブクローンE3531−227−2、−227−3、227−6、−229−3、229−9および−229−11を最終クローンとして選抜した。
【0201】
選抜した最終クローンを培養し、抗体を精製した。6個の抗αvβ3クローンは、明瞭な細胞膜染色を示しつつ同様の染色特性を示した(図6)。異種移植片アレイXeno−08−Mu1において、M21異種移植片は唯一陽性であった(図7)。U87MGは陰性であった。癌細胞系アレイCAX08における3種の抗体E3531−227−2、E3531−227−3およびE3531−227−6による染色の選択性は、ほぼ同一であった(図8)。抗αvb3抗体の染色の選択性をモノクローナル抗β3インテグリン抗体クローン20H9と比較し、クローンE3531−227−3を示した(図8)。細胞選択性に関し、クローンはクローン20H9と同様の特性を示し、これは6種の抗体のエピトープがαvβ3エピトープであったことを示唆した。M21細胞系におけるαvβ3の高い発現は、クローンLM609を用いたFACS解析によって以前に示された(表3; Mitjansら、Int J Cancer 2000、87(5):716〜723)。最大量のIgGを産生するクローンE3531−227−3およびE3531−229−3を配列決定したところ、同一の配列を示した(下記を参照のこと)。
【0202】
【表3】



【0203】
「細胞膜染色」およびM21細胞における強いシグナル等(as are)、6個のクローンE3531−227−2、−227−3、227−6、−229−3、229−9および−229−11の染色特性は、抗体のαvβ3インテグリンエピトープと一致した。抗体は、ホルムアルデヒド固定パラフィン包埋組織においてαvb3インテグリンを検出した。EM22703をさらに開発した。これは、インタクトなαiibβ3において等しく良好に反応し(IC50はELISAにおいて同一であった)、これが両方のパートナーとの複合体におけるβ3鎖を検出していることを示す。このことは、スクリーニングされる対象を正確に検出するモノクローナル抗体の能力を反映する。実際には交差反応性は、αvβ3のin situにおける検出に重大な不利益を実証するべきではない。αiibβ3は、マクロファージ/巨核球血液骨系列単独で発現し、αvβ3に特徴的な組織内の位置における観察はほとんど予想されない。
【0204】
例5:抗αvβ5クローンおよび抗αvβ5抗体の特性評価
ウサギE3536のマルチクローン13、40および99から得られた27個のサブクローン由来の上清を、癌細胞系CAX05のFFPE細胞系アレイにおいて無希釈でスクリーニングした。3個のサブクローン99−1、99−2および99−3は、細胞膜染色を示した(図9)。これらハイブリドーマ上清は、αvβ3よりもαvβ5に対して高度に特異的であり(見かけ上のKdにおける係数>100)、免疫原における50pMのEC50を有する(図10)。異種移植片アレイにおいて陽性サブクローンを試験し、腫瘍組織における交差反応性を確認した(図9、右カラム)。細胞系は、異種移植片組織と比較すると、培養において増殖した場合に様々な程度のαvβ5発現を示した。
【0205】
【表4】



【0206】
染色強度、公知のαvβ5インテグリン陽性細胞に関する選択性および細胞膜染色の質に基づき、3個のサブクローン99−1、99−2および99−3を最終クローンとして選抜した(表4)。3個の抗αvβ5クローンは、細胞膜を標識した(図11)。異種移植片アレイXeno−08−Mu1において、数種類の異種移植片、特にA431は陽性であった(図12)。3個の抗αvβ5クローンE3536−99−1、−99−2および−99−3は、細胞選択性および画像解析によって測定された染色強度に関して非常に類似した染色特性を示した(図13)。高度なαvβ5_E3536−99−1(または−99−2もしくは−99−3)シグナルを示した細胞系(すなわち、HT−29、HCT116、Kyse30、A549およびNCI−H460)は、クローンP1F6を用いたFACSにより解析した高度なαvβ5発現を示した(Kempermanら、Exp Cell Res 1997、234(1):156〜164、Mitjansら、Int J Cancer 2000、87(5):716〜723)。M21細胞系は、免疫組織化学検査による低いシグナルおよびFACS解析による対応する低いシグナルを示した(表5)。αv陰性であるRajiリンパ腫細胞は、免疫組織化学検査を用いた癌細胞系アレイにおいてシグナルを示さなかった。
【0207】
【表5】



【0208】
サブクローン特性は、αvβ5インテグリンの分布に関してFACSおよび生化学データと一致し、サブクローン99をαvβ5インテグリンエピトープと反応するものとして支持した。cDNA配列決定から明らかになった通り、クローン99は独自のハイブリドーマ細胞に由来した(下記を参照のこと)。
【0209】
例6:抗αvβ6クローンおよび抗αvβ6抗体の特性評価
これらのマルチクローンから得られた33個のサブクローン由来の上清を、無希釈で癌細胞系CAX08のFFPE細胞系アレイにおいてスクリーニングした。明確な膜輪郭を欠く細胞質シグナルは、非インテグリン特異的であるとして除外した。癌細胞系において試験した多くのサブクローン上清は、加熱およびプロテアーゼ前処理後に陽性であった。マルチクローン52(図14)、106および118のサブクローンは、優れた細胞膜染色を示した。異種移植片アレイXeno−08−Mu1における2回目の実験において陽性サブクローンを試験し、腫瘍組織における交差反応性を確認した。プロテアーゼ前処理は、サブクローン52および106に対してより強いシグナルを生じた。したがって、プロテアーゼ前処理した異種移植片のみにおいてこれらのサブクローン上清を試験した。マルチクローン52の異なるサブクローンは、それらの染色選択性および特異性において同一であった。マルチクローン52および118のサブクローンとは対照的に、クローン106−1はSW707において陰性であった(表6)。
【0210】
【表6】



【0211】
異種移植片組織において、非小細胞肺癌細胞系(NSCLC)H1975は最高の染色強度を示した(図14H)。癌細胞系アレイにおいては2種の扁平上皮癌Kyse30(図14I)およびA431(図14A)が、また異種移植片アレイにおいてはA431異種移植片(図14B)が、強いシグナルを示した。癌細胞系アレイにおいて高度な染色強度を有する細胞系は、HT29(図14G)、MDA−MB468、Colo205およびA431であった。このことは、これらの細胞系における高度なβ6インテグリンmRNAと一致する。マルチクローン52、106および118のサブクローン上清の選択性および特異性は、抗体によって認識されるαvβ6エピトープと一致する。染色強度、公知のαvβ6インテグリン陽性細胞に関する選択性および細胞膜染色の質に基づき、9個のサブクローン52−1、52−2、52−3、52−4、52−6、52−8、52−9、106−1および118−1を最終クローンとして選抜した(表6)。同一染色のサブクローンの内、最高のIgG濃度を有するサブクローンを最終クローンとして選抜した。
【0212】
最高のIgG濃度を有するクローンであるクローンE3866−52−1を培養し、標準プロトコールに従って抗体を精製した。抗体の活性は、癌細胞系アレイにおけるIHCによって示した(図15)。組換え抗体を用いて、癌細胞系アレイおよび異種移植片の数枚のスライドを染色した(図16)。HT29結腸癌、H1975肺癌および患者前立腺腫瘍外植片PRXF MRIH(Oncotest GmbH、フライブルク)の異種移植片において、抗αvβ6組換え抗体は顕著なシグナルを示し、一方β6 mRNAを発現しないM21メラノーマ異種移植片は陰性であった(図16)。抗αvβ6組換え抗体は明瞭な細胞膜染色を示した(図17)。画像解析を活用して癌細胞系アレイにおけるシグナルを定量化した(図18)。HT29、Colo205またはMDA−MB468等、強い抗体染色シグナルを有する細胞系は、β6インテグリンmRNAの高いmRNAレベルを有する細胞系と一致した。組換え抗αvβ6抗体は、自動染色手順により高度なスライド間(r=0.996)および実験間(r=0.991、図19)再現性を示した。
【0213】
αvβ6インテグリンペプチドに対して作製されたウサギIgG組換え抗体αvβ6(EM05201)は、FFPE組織に適切であった。「細胞膜染色」および高度なβ6インテグリンmRNAを発現する細胞系における強いシグナル等、組換え抗体αvβ6(EM05201)のELISA特異性および染色特性は、抗体のαvβ6インテグリンエピトープと一致した。
【0214】
例7:抗αvβ8クローンおよび抗αvβ8抗体の特性評価
これらのマルチクローンから得られた36個のサブクローン由来の上清を、癌細胞系CAX08のFFPE細胞系アレイにおいて無希釈でスクリーニングした。36個のサブクローン全てが膜シグナルを示し、非インテグリン特異的細胞質染色のために除外されたものはない。癌細胞系において試験した多くのサブクローン上清は、加熱およびプロテアーゼ前処理後に陽性であった。異種移植片アレイXeno−08−Mu1においてさらに試験して、腫瘍組織における交差反応性を確認するため、各マルチクローンにつき最高IgG濃度を有する4個のサブクローンを選抜した(図20)。プロテアーゼ前処理は、サブクローンに対しより強いシグナルをもたらした。マルチクローン6のサブクローンは、異種移植片において陰性であった。Ovcar−3、M24met、MDA−MB468およびA431等、癌細胞系アレイにおいて高度な染色強度を有する細胞系は、最高のβ8インテグリンmRNA発現を示した(表7)。公知のβ8 mRNA発現に関する選択性および細胞膜染色の質に基づき、サブクローン40−4、40−10、40−11、133−5、133−8および133−9を最終クローンとして選抜した。同一染色であったサブクローンの内、最高IgG濃度を有するサブクローンを最終クローンとして選抜した。
【0215】
【表7】



【0216】
最高IgG濃度を有するクローンであるクローンE3875−133−9を培養し、標準プロトコールに従って抗体を精製した。癌細胞系アレイにおけるIHCによって抗体の活性を示した(図21)。
【0217】
組換え抗体を用いて、癌細胞系アレイ、異種移植片および正常ヒト組織から生じたアレイの数枚のスライドを染色した。その全てがβ8 mRNAを発現する癌細胞系Ovcar−3(卵巣癌)、M24−met(メラノーマ)およびMDA−MB468(乳癌)は陽性であり、一方β8 mRNAを持たないMCF−7細胞(乳癌)は陰性であった(図22)。これらの細胞系から異種移植片を利用することはできない。H1975肺癌異種移植片およびより強力な前立腺腫瘍外植片PRXF MRIH(Oncotest GmbH、フライブルク)異種移植片において、抗αvβ8組換え抗体はある程度のシグナルを示した(図22)。ヒト末梢神経において最も強いシグナルが観察された(図23)。抗αvβ8組換え抗体は明瞭な細胞膜染色を示した(図24)。画像解析を活用して癌細胞系アレイにおけるシグナルを定量化した(図25)。Ovcar−3、M24−metおよびMDA−MB468等、強い抗体染色シグナルを有する細胞系は、β8インテグリンmRNAの高度なmRNAレベルを有する細胞系と一致した。組換え抗αvβ8抗体は、高度なスライド間(r=0.982)および実験間(r=0.986、図26)再現性を示した。
【0218】
αvβ8インテグリンペプチドに対して作製されたウサギIgG組換え抗体αvβ8(EM13309)は、FFPE組織に適切であった。「細胞膜染色」、高度なβ8インテグリンmRNAを発現する細胞系における強いシグナルおよび有髄末梢神経の強い標識等、組換え抗体αvβ8(EM13309)のELISA特異性および染色特性は、抗体のαvβ8インテグリンエピトープと一致した。
【0219】
例8:抗αvクローンおよび抗αv抗体の特性評価
予め選抜されたαvβ8だけではなくαvβ6と結合するマルチクローンは、マルチクローンE3866−68およびE3875−13であった。これらのマルチクローンから得られた24個のサブクローン由来の上清を、癌細胞系CAX08のFFPE細胞系アレイにおいて無希釈でスクリーニングした。24個のサブクローンは全て強い細胞膜シグナルを示したが、ある程度の細胞質シグナルも示した(図27)。9個のサブクローン、すなわちマルチクローンE3875−13から5個およびマルチクローンE3866−68から4個を異種移植片組織における試験のため選抜し、腫瘍組織における交差反応性を確認した。非常に強いシグナルのために、クローン13−3、13−9および68−7の上清を1:5および1:10希釈した。希釈した上清13−3および13−9は、Rajiリンパ腫細胞およびSf9昆虫細胞を除いた癌細胞系アレイにおける全細胞を染色した。異種移植片は強い細胞膜シグナルを示し、ある程度の細胞質染色も示す(図27)。1:5希釈した後、サブクローン68−7は、サブクローン13−3に陽性の細胞系であるMiaPaca2を染色しなかった。マルチクローンE3688−68のサブクローンのエピトープは、E3875−13とは異なる可能性がある。それらの最高IgG濃度に基づき、サブクローンE3875−13−3および−13−9を最終クローンとして選抜した(表8)。
【0220】
【表8】



【0221】
最高IgG濃度を有するクローンであるクローンE3875−13−9を培養し、標準プロトコールに従って抗体を精製した(プロテインGセファロース、HiLoad Superdex 200pg)。癌細胞系アレイにおけるIHCにより抗体の活性を示した(図28)。
【0222】
組換え抗体を用いて癌細胞系アレイおよび異種移植片アレイの数枚のスライドを染色した(図29)。癌細胞系および異種移植片において、抗αv組換え抗体は顕著なシグナルを示した。陰性であったのは、αvインテグリンmRNAを発現しないRajiおよびPfeifferリンパ腫等、リンパ腫細胞系であった。抗αv組換え抗体は明瞭な細胞膜染色を示した(図30)。画像解析を活用して癌細胞系アレイにおけるシグナルを定量化した(図31)。組換え抗αv抗体は、スライド間(r=0.947)および実験間(r=0.924、図32)再現性を示した。
【0223】
αvβ8インテグリンペプチドに対して作製されたウサギIgG組換え抗体αv(EM01309)は、FFPE組織に適切であった。「細胞膜染色」、αvインテグリンmRNAを発現する細胞系における強いシグナル、およびαvインテグリンを発現しないリンパ腫細胞系においてシグナルがない等、組換え抗体αv(EM01309)のELISA特異性および染色特性は、抗体のαv鎖エピトープと一致した。
【0224】
例9:抗β3細胞質ドメインインテグリンクローンおよび抗β3細胞質ドメインインテグリン抗体の特性評価
マルチクローン2および67から得られた24個のサブクローン由来の上清を、癌細胞系CAX05のFFPE細胞系アレイにおいて無希釈でスクリーニングした。明確な膜輪郭を欠く細胞質シグナルは、非インテグリン特異的として除外した。マルチクローン2のサブクローンは、優れた細胞膜染色を示した。特定の細胞型に関するサブクローンの選択性をマウスモノクローナルIgG、クローン20H9と比較した。異種移植片アレイXeno−08−Aにおける第二の実験において陽性サブクローンを試験し、腫瘍組織における交差反応性を確認した。染色強度、公知のαvβ3インテグリン陽性細胞に関する選択性および細胞膜染色の質に基づき、3個のサブクローン、2−4、2−10および2−12を最終クローンとして選抜した(表9)。
【0225】
【表9】



【0226】
選抜した最終クローンを培養し、抗体を精製した。3個の抗β3クローン、E3592−2−4、−2−10および−2−12は、明瞭な細胞膜染色を示しつつ同様の染色特性を示した(図33)。異種移植片アレイXeno−08−Mu1において、M21異種移植片は陽性であった(図34)。U87MGは陰性であった。癌細胞系アレイCAX08における3種の抗体による染色の選択性は、ほぼ同一であった(図35)。染色の強度は変化し、クローンE3592−2−12に対して最も強かった。3種の抗体の染色の選択性をモノクローナル抗β3細胞外ドメインインテグリン抗体クローン20H9と比較し、クローンE3592−2−12について示した(図36)。細胞選択性に関し、3個のクローンはクローン20H9と同様の特性を示し、これは3種の抗体のエピトープがβ3エピトープであることを示唆した。M21細胞系における高度なαvβ3発現は、クローンLM609を用いたFACS解析によって以前に示された(表10;Mitjansら、Int J Cancer 2000、87(5):716〜723)。
【0227】
【表10】



【0228】
「細胞膜染色」およびM21における強いシグナル等、3個のクローンE3592−2−4、−2−10および−2−12の染色特性は、抗体のβ3インテグリンエピトープと一致した。β3インテグリンペプチドに対して作製されたウサギハイブリドーマクローンE3592−2−4、2−10および−2−12は、FFPE組織に適した抗体を産生した。それらのエピトープ認識は、それらの結合するβ3細胞質ドメインエピトープと一致した。最も強く染色する抗体E3592−2−12を産生するクローン由来の抗体鎖をcDNAクローニングし、抗体コード領域を複数回配列決定した(下記を参照のこと)。
【0229】
例10:配列決定および配列リスト
数個のクローンをcDNA配列決定により評価した(表11)。コンピュータ可読形式に記録された情報は、書面の配列リストと同一である。
【0230】
【表11】



【0231】
クローン由来の各H鎖およびL鎖につき一次配列決定を3回行い、Lasergeneソフトウェア(DNAstar Inc.)を用いてコンティグに組み立て、ClustalWマルチプルアライメントツールを用いて解析した。クローンE3531−227−3および−229−3は同一のH鎖およびL鎖配列を有し、抗体集団の単クローン性が確認された。クローンE3536−99−1、−99−2および−99−3は、同一のH鎖およびL鎖配列を有し、抗体集団の単クローン性が確認された。
【0232】
例11:組換えRabMabは、ELISAによりそのリガンドに特異的である
プレートにインテグリンが1μg/mlコーティングされた標準ELISA条件において、抗体は、gpiibiiiaとαvβ3の両方と交差反応性(IC50が約(〜)100倍低い)を示すEM09902を例外として、4 log濃度を超えて定義されるように基本的にその免疫原に対して単一特異性であり、最も近縁のインテグリン鎖と有意に交差反応せず(図10、37、38)、よって複合体のβ5鎖とβ3鎖の両方における関連エピトープを明らかに認識した。αvβ5の発現はαvβ3よりも高頻度に見られ、EM09902由来のシグナルはIHCにおいて非常に強いため、これはFFPE利用に重大には影響しないであろう。他の組換え抗体の特異性は、ハイブリドーマ上清およびそれに由来する抗体とELISAおよびIHC染色において区別できなかった(図10、37、38)。実際に、cDNA配列決定において、抗αvβ3抗体の2種、EM22703およびEM22903は、単一クローンに由来することが判明した。ELISAにおける特異性およびELISAにおいて、IC50として表す見かけ上の結合親和性を表12に示す。
【0233】
【表12】



【0234】
例12:組換えRabMabは、その受容体とのリガンド結合に影響を及ぼさない
抗体と小分子は両者共にインテグリン活性を抑制または増強することができるが、本明細書において選抜されたRabMabは、リガンド結合に効果がなかった(図39)。予測通りに反応したαvb3およびαvb5の阻害剤は、陽性(シレンジタイド)および陰性(c(RβA−DfV))であった。
【0235】
例13:生細胞フローサイトメトリー(「FACS」)における組換えRabMab
FACSにおいて、天然インテグリンは、それらの天然糖鎖付加パターンをin situで示し、そのためこれらは特異性の「優れた標準」を表す。標準的な十分に特徴付けられたマウスモノクローナル抗体と比較して、FACSにおいてRabMabを評価した。αvβ8に対する抗体は市販されていない。抗体はFACSにおいて細胞型依存的様式で反応し、FACSプロファイルは、抗体のELISAプロファイルと密接に一致した。これらの結果を、第二層(second layer)の対照抗体に対して正規化した蛍光の平均強度としてまとめた(表13)。RabMabとマウスMabとの間の発現の絶対レベルの差は、第二層の抗体の変化する親和性によるものである可能性があった。
【0236】
【表13】



【0237】
マウス抗体は、HUVEC細胞が高レベルのαv、αvβ3およびαvβ5を発現し、αvβ6またはαvβ8を発現しないことを示した。これらの細胞において、RabMab EM01309は強く、17E6マウス抗αv比較体に匹敵するレベルで反応した。マウス抗体は、HT−29CRC細胞において高レベルのαvを示し、αvβ3はなく、高レベルのαvβ5およびある程度のαvβ6を示した。RabMabはこれを裏づけ、高度のαvβ8インテグリン発現も示した。RabMab EM01309は、弱く反応した。マウス抗体は、A549 NSCLC細胞において高レベルのαvを示し、αvβ3は示さず、高レベルのαvβ5を示し、αvβ6は示さなかった。RabMab結合はこれを裏づけ、αvβ8インテグリンの発現も示さなかった。RabMab EM01309は反応しなかった。マウス抗体は、高レベルのαv、αvβ3およびαvβ5を示し、αvβ6を示さず、M24 Metメラノーマ細胞におけるβ1の強い発現を示した。RabMabはこれを裏づけ、EM13309の強い結合も示し、αvβ8インテグリンの発現を明らかにした。RabMab EM01309は反応しなかった。マウス抗体は、高レベルのαv、αvβ3およびαvβ5を示し、αvβ6を示さず、M21メラノーマ細胞においてβ1の強い発現を示した。RabMabはこれを裏づけ、高レベルのEM13309結合も示し、αvβ8発現を示した。RabMab EM01309は反応しなかった。マウス抗体は、M21−Lメラノーマ細胞においてαv、αvβ3、αvβ5またはαvβ6を示さず、β1の強い発現を示した。バックグラウンドを超えて有意に結合するRabMabはない。マウス抗体は、M21−gpiibメラノーマ細胞においてαv、αvβ3、αvβ5またはαvβ6を示さなかったが、β1およびβ3の強い発現を示した。RabMab EM05201、EM13309およびEM01309は結合しなかった。しかし、EM22703とEM09902は両方共に反応し、EM22703の反応は強かった。このことは、EM22703がαiibβ3と交差反応でき、EM09902がαvβ3とαiibβ3の両方と弱く交差反応できた、ELISAデータ(例11を参照のこと)を支持する。
【0238】
生細胞フローサイトメトリーは明解であった。抗体は、αv欠損M21−L細胞系ではバックグラウンドを超えて反応しなかった。EM22703およびEM09902によって、ならびにEM05201およびEM13309によって得られた正規化MIFは100に近いため、これは、標準的なLM609およびP1F6試薬によって得られるものより相当に大きい、基礎的なルーチンで得られる抗体のシグナル・ノイズ比を示唆する。これが一次RabMabそれ自身の特性ではなく、より高度な親和性の第二層蛍光発生(fluorescinated)試薬の結果であるかは依然として明らかではなく、いかなる理由であれ、RabMabはFACSのための優れた試薬であった。
【0239】
EM22703は、FACSにおいてLM609に匹敵する染色を生じ、これがαvβ3複合体を認識するがM21−gpiibとも強く反応することを確認し、EM22703により認識されているのがインテグリン複合体におけるβ3鎖であることを示した。
【0240】
EM09902染色は、一般にP1F6染色に匹敵するが、β3鎖およびβ5鎖と弱く反応する。これは、EM09902の予想標的であるαvβ5を発現しないM21−gpiib細胞のFACSにおいて可視化した。抗体の力価決定によって、ELISAデータから予想される強力なαvβ5シグナルを保持しつつ試薬の最適濃度を選択してαvβ3交差反応性を最小限に抑えることができ、これはFACSにおいては0.3〜1μg/mlであった。
【0241】
b3細胞質ドメインに対して作製されたEM00212は、FACSおよびELISAにおいて陰性であった。これは種、アイソタイプおよび標的対照であるため、それは特異性の優れた指標であり、100:1の優れたシグナル・ノイズ比がFACSにおいて得られていることを示唆する。
【0242】
EM05201は、αvβ6に対し非常に特異的であり、このタンパク質のみが、それが発現することが知られているHT29細胞上に存在することを明らかにした。
【0243】
EM13309は、αvβ8インテグリンの生細胞FACSを可能にする初めての試薬であり、HT29癌腫ならびにM21およびM24 metメラノーマにおいて、αvβ8がαvβ6よりも広範に発現するという驚くべき情報を提供した。星状神経細胞系列においてαvβ8が報告されているため、神経外胚葉性系列の染色は意外ではないと思われるが、癌腫の染色は予想外であり、生物学を反映している可能性がある。最近のαvβ8解析は、腸APCにおけるその発現が該部位における炎症反応を制御することを示した。おそらく、CRC系列のHT29もこのような機序を反映している。
【0244】
αv細胞外ドメインに対するEM01309は、HUVECを除いて一様に陰性であった。
【0245】
要約すると、RabMab抗体は、生細胞フローサイトメトリーにおいて機能することを示した。このことは、生化学と腫瘍検証および特性評価のための組織IHCとの間に、有用な橋を提供する。特に、αvβ6およびαvβ8試薬は、インテグリン研究の重要なソースであり、RabMabにおけるこれらの反応性プロファイルを備えるこのような抗体を作製する能力は、最終的にアーカイブ保管した組織におけるインテグリン発現パターンの厳密な解析の扉を開放する。
【0246】
例14:滴定実験
FACSにおける滴定実験を行って、適切な染色濃度を検査した(図40〜43)。曲線形は飽和を示唆しないが、1mg/mlを超えると平坦になり始めた。ウサギモノクローナル抗体は、FACSにおける強力な結合体である。特に、EM09902は高い親和性を有し、0.1μg/ml抗体濃度において強力な結合が観察され、したがって、<1ug/ml染色濃度で良好に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともL鎖可変領域(V)およびH鎖可変領域(V)を含み、昆虫由来の糖鎖付加パターンを有するインテグリンおよび別の真核生物糖鎖付加パターンを有するインテグリンに対する、モノクローナルウサギ抗体またはその断片であって、該抗体が細胞外インテグリンドメインまたは細胞外インテグリン鎖ドメインの非閉塞エピトープに対する抗原結合特異性を有し、該抗体がホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)材料および生細胞におけるインテグリンのインタクトなヘテロ二量体と実質的に同じ特異性で結合できる、モノクローナルウサギ抗体またはその断片。
【請求項2】
前記抗体がインテグリンαvβ3の細胞外ドメインと結合し、好ましくはVが配列番号95(V−αvβ3)のアミノ酸配列を含み、Vが配列番号96(V−αvβ3)のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体がインテグリンαvβ5の細胞外ドメインと結合し、好ましくはVが配列番号15(V−αvβ5)のアミノ酸配列を含み、Vが配列番号16(V−αvβ5)のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
前記抗体がインテグリンαvβ6の細胞外ドメインと結合し、好ましくはVが配列番号135(V−αvβ6)のアミノ酸配列を含み、Vが配列番号136(V−αvβ6)のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項5】
前記抗体がインテグリンαvβ8の細胞外ドメインと結合し、好ましくはVが配列番号175(V−αvβ8)のアミノ酸配列を含み、Vが配列番号176(V−αvβ8)のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項6】
前記抗体がインテグリン鎖αvの細胞外ドメインと結合し、好ましくはVが配列番号215(V−αv)のアミノ酸配列を含み、Vが配列番号216(V−αv)のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の、抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチド。
【請求項8】
必要に応じてデルタ膜貫通型として結合した、昆虫由来の糖鎖付加パターンを有する細胞外インテグリンドメインからなる組換え免疫原。
【請求項9】
配列番号10、90、130、170もしくは210のアミノ酸配列、または該アミノ酸配列もしくは同じ機能を有する少なくとも95%相同な配列の変種、変異体、部分を有する、請求項9に記載の免疫原。
【請求項10】
請求項9に記載の免疫原をコードするポリヌクレオチド。
【請求項11】
請求項8もしくは9に記載の免疫原および/または請求項10に記載のポリヌクレオチドでウサギを免疫化し、ポリクローナル抗体を含むポリクローナル抗血清を採取し、モノクローナル抗体を調製することによって得られるモノクローナル抗体。
【請求項12】
(a)昆虫細胞において細胞外インテグリンドメインを組換えにより発現させるステップと、
(b)発現した細胞外インテグリンドメインを精製するステップと、
(c)精製した細胞外インテグリンドメインによりウサギを免疫化するステップと、
(d)ウサギからポリクローナル抗体を含むポリクローナル抗血清を採取するステップと、
(e)モノクローナル抗体を調製するステップと、
を含む、モノクローナルウサギ抗体を調製する方法。
【請求項13】
(a)(i)配列番号115(V−αvβ3)および配列番号116(V−αvβ3)、
(ii)配列番号35(V−αvβ5)および配列番号36(V−αvβ5)、
(iii)配列番号155(V−αvβ6)および配列番号156(V−αvβ6)、
(iv)配列番号195(V−αvβ8)および配列番号196(V−αvβ8)または
(v)配列番号235(V−αv)および配列番号236(V−αv)
の抗体コード核酸配列を含む、少なくとも1種類のベクターを宿主細胞に導入するステップと、
(b)培地中で該宿主細胞を培養し、コードされた抗体を発現させるステップと、
(c)発現した抗体を精製するステップと、
を有する、L鎖可変領域(V)およびH鎖可変領域(V)を含む組換えモノクローナル抗体を製造するための方法。
【請求項14】
ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)材料においてインテグリンを検出するための、請求項1〜6および11のいずれかに記載の抗体またはその断片の使用。
【請求項15】
(a)選択されたインテグリンと結合することのできる抗体の試料を提供するステップと、
(b)インテグリン配列を整列させて、選択されたインテグリンのαサブユニットおよび/またはβサブユニットの最も近縁のホモログを同定するステップと、
(c)抗体試料を用いて、選択されたインテグリンの天然型およびその最も近縁のホモログ(単数または複数)についてディファレンシャルELISAを実施し、選択されたインテグリンに対する抗体を蓄積させるステップ(一次スクリーニング)と、
(d)ステップ(c)の蓄積された抗体を用いて、選択されたインテグリンの天然型および別のインテグリンについて別のディファレンシャルELISAを実施し、選択されたインテグリンに対する抗体をさらに蓄積させるステップ(二次スクリーニング)と、
(e)少なくとも1種類の細胞系は選択されたインテグリンを発現でき、必要に応じて別の細胞系は該選択されたインテグリンを発現できない、FFPE細胞系の免疫組織化学検査をステップ(d)の蓄積された抗体を用いて実施し、これにより選択されたインテグリンに対する抗体をさらに蓄積させるステップ(三次スクリーニング)と、
(f)細胞系が哺乳動物において異種移植腫瘍として増殖される、ステップ(e)のFFPE細胞系の免疫組織化学検査をステップ(e)の蓄積された抗体を用いて実施し、選択されたインテグリンに対する抗体をさらに蓄積させるステップ(四次スクリーニング)と、
(g)ステップ(f)の蓄積された抗体を用いて、アーカイブ保管したFFPE腫瘍の免疫組織化学検査を実施し、選択されたインテグリンに対する抗体をさらに蓄積させるステップ(五次スクリーニング)と、
を含む、インテグリンαサブユニットおよび/またはβサブユニットそれぞれの最も近縁のホモログ間を識別することができ、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)材料における免疫組織化学検査に適した抗インテグリン抗体をスクリーニングするための方法。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図10】
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【図13】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図15−1】
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【図15−2】
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【図16】
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【図20】
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【図21−1】
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【図21−2】
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【図22】
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【図23】
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【図27】
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【図28−1】
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【図28−2】
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【図29】
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【図34】
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【公表番号】特表2013−502205(P2013−502205A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525056(P2012−525056)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004313
【国際公開番号】WO2011/020529
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】