説明

FGFR4抗体

本発明は、その断片または誘導体を含めたFGFR4抗体、および抗体をコードするポリヌクレオチドに関する。前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクターおよび宿主細胞が提供される。さらに、本発明は、前記FGFR4抗体を含む医薬組成物、およびFGFR4の発現に関連する障害を治療、予防または診断する方法も対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その断片または誘導体を含めたFGFR4抗体、および抗体をコードするポリヌクレオチドに関する。前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクターおよび宿主細胞が提供される。さらに、本発明は、前記FGFR4抗体を含む医薬組成物、およびFGFR4の発現に関連する障害を治療、予防または診断する方法も対象とする。
【0002】
線維芽細胞増殖因子受容体4(FGFR4)は、FGFR1、FGFR2およびFGFR3をも含めたFGF受容体ファミリーに属する。FGF受容体ファミリーのその他のメンバーと同様に、この膜貫通受容体FGFR4は、細胞外リガンド結合ドメイン(ECD)、膜貫通ドメイン、細胞内タンパク質チロシンキナーゼドメイン(TKD)、およびC末端リン酸化ドメインからなる(Klint P et al.,1998)。
【0003】
FGF受容体は、現在までに23のメンバーを含む繊維芽細胞増殖因子(FGF)ファミリーによって活性化される(Eswarakumar et al.,2005、Yamashita,2005)。2つのスプライス変異体のみが知られているFGFR4とは対照的に、FGFR1、FGFR2およびFGFR3などのその他のファミリーメンバーは、複数のスプライス変異により、種々のFGFに対する親和性を変化させることができる(van Heumen et al.,1999)。
【0004】
FGFR4は、FGF1、FGF2、FGF4、FGF6、FGF8およびFGF9により活性化されるが、その効率は低下していき(Ornitz et al.,1996)、これらはすべて他のファミリーメンバーも活性化するものの、FGF19は、FGFR4に特異的である(Xie et al.,1999)。FGFにより受容体を活性化するには、リガンドをヘパリンに結合することが必要であり、興味深いことに、FGFR4は、ヘパリンのみによっても活性化することができる(Gao and Goldfarb,1995)。多くのFGFは広域のマイトジェンであるが、中には細胞運動性を誘導するものもあれば、細胞分化状態を変化させるものもある(レビューについては、McKeehan WL,et al.,1998)。in vivoでは、強力な血管形成特性を有するFGFもあれば、創傷修復に必要となるものなど、組織リモデリングに関与しているものもある(Werner S,et al.,1994)。
【0005】
FGFR4の細胞外ドメインにリガンドを結合させると、受容体の二量化とその後のチロシンキナーゼ残基のリン酸化によって、シグナル伝達分子と受容体との結合の誘導によるシグナル経路の活性化が生じる(Vainikka et al.,1992)、(Vainikka et al.,1994)。例えば、FGFR4はPLC−γ1と会合し、FGFの刺激によるMAPキナーゼの活性化とDNA合成の増加が認められている。また、他のヒトFGF増殖因子受容体ファミリーメンバーとのさらなる相互作用によって、FGFR4のシグナル伝達の可能性が拡大する場合があり、シグナルの多様化だけでなく、シグナルの増幅のための手段である(McKeehan WL,&Kan M,1994)。85kDaセリンキナーゼは、FGFR4のチロシンリン酸化を負に調節することが明らかになっているが、その正確な機能については未だ解明されていない(Vainikka et al.,1996)。FGFR4とNCAMの会合は、インテグリン依存性接着を媒介することが示されており(Cavallaro et al.,2001)、この接着は、腫瘍の転移において決定的な役割を果たす可能性がある。
【0006】
FGFR4は、筋原性の分化を阻害することが報告されており(Shaoul et al.,1995)、FGFR4ノックアウト動物における筋発生は正常であるように思われるものの(Weinstein et al.,1998)、心臓毒により損傷が誘導された後の筋再生は損なわれることが示されている(Zhao et al.,2006)。FGFR3/FGFR4ダブルノックアウト動物は、肺胞形成時に二次中隔が損なわれ、未熟な肺ができる(Weinstein et al.,1998)。FGFR3ノックアウトマウスには欠陥が認められず、骨格欠陥のみが示されている。FGFR4シングルノックアウトマウスの表現型は、高コレステロール食餌下での肝腫大を伴う胆汁酸合成の増加である(Yu et al.,2000)。
【0007】
FGFR4は、黒色腫(Streit et al.,2006)、乳癌(Jaakola et al.,1993)、前立腺癌(Wang et al.,2004)、甲状腺癌(Bernard et al.,2005)、および膵臓癌(Leung et al.,1994)などの数種類の癌において発現され、および/または予後に影響を及ぼしていることが明らかになっている。さらに、ポリペプチド配列の388位にある多形は、黒色腫(Streit et al.,2006)、乳癌(Bange et al.,2002)、前立腺癌(Wang et al.,2004)、HNSCC(Streit et al.,2004)、肺腺癌(Spinola et al.,2005)、および軟部組織肉腫(Morimoto et al.,2003)におけるより攻撃的な疾患状態に関連している。
【0008】
興味深いことに、筋肉特異的プロモーターの制御下でFGFR4特異的リガンドのFGF19を遺伝子導入によりマウスに発現すると、肝細胞癌が発生することが明らかになっている(Nicholes et al.,2002)。
【0009】
従って、FGFR4により媒介されるシグナル伝達を妨げる薬剤が望ましい。FGFR4抗体については、国際特許公開第03/063893号および国際特許公開第99/37299号などで報告されている。
【0010】
腫瘍発生機序の発見に基づく、腫瘍細胞を標的とするのに好適な方法は、モノクローナル抗体を使用する方法である。例えば、受容体チロシンキナーゼHER2を対象とする抗体であるHerceptin(登録商標)は、化学療法単独の場合と比べて乳癌患者の中央生存率を約25%改善し、きわめて軽度の副作用しか生じない。腫瘍治療においてモノクローナル抗体を使用するその他の方法には、Mylotarg(登録商標)のような抗毒素、カリケアマイシンに共役した組換えIgG4カッパ抗体、および例えばZevalin(登録商標)などのラジオ放射性同位元素で標識した抗体が含まれる。
【0011】
診断および/または治療用途にさらなる産物を提供するためには、細胞外ドメインに特異的に結合し、FGFR4により媒介されるシグナル伝達を遮断するFGFR4抗体を有するのが望ましい。
【0012】
従って、本発明の基礎となる技術的課題は、FGFR4の発現に関連する疾患を診断、予防および/または治療するのに適切な新規FGFR4抗体および前記抗体の使用方法を提供することであった。
【0013】
上述の課題の解決法は、特許請求の範囲に特徴を記載した実施形態を提供することにより達成される。
【0014】
本発明の第1の態様は、FGFR4、特にヒトFGFR4の細胞外ドメインに結合し、FGFR4の活性を少なくとも部分的に阻害する、その断片または誘導体を含めた抗体に関する。
【0015】
好ましくは、抗体は、少なくとも1つの抗原結合部位(例えば、1つまたは2つの抗原結合部位)を有する。さらに、抗体は、好ましくは少なくとも1つの免疫グロブリン重鎖と少なくとも1つの免疫グロブリン軽鎖を含む。免疫グロブリン鎖は、可変ドメインと場合により定常ドメインを含む。可変ドメインは、相補性決定領域(CDR)(例えば、CDR1、CDR2および/またはCDR3領域)とフレームワーク領域を含む場合がある。「相補性決定領域」(CDR)という用語は、当該技術分野で詳細に定義されており(例えば、Harlow and Lane,"Antibodies,a laboratory manual",CSH Press,Cold Spring Harbour,1988を参照)、主に抗原と接触する抗体の可変領域内におけるアミノ酸のストレッチを指す。
【0016】
本発明の第2の態様は、FGFR4の細胞外ドメインに結合し、
(a)配列番号9もしくは15に示すCDRH1、または1つもしくは2つのアミノ酸がこれと異なるCDRH1配列、
(b)配列番号10もしくは16に示すCDRH2、または1つもしくは2つのアミノ酸がこれと異なるCDRH2配列、および
(c)配列番号11もしくは17に示すCDRH3、または1つもしくは2つのアミノ酸がこれと異なるCDRH3配列
からなる群から選択される少なくとも1つのCDRを含む少なくとも1つの重鎖アミノ酸配列、ならびに/あるいは
(d)配列番号12もしくは18に示すCDRL1、または1つもしくは2つのアミノ酸がこれと異なるCDRL1配列、
(e)配列番号13もしくは19に示すCDRL2、または1つもしくは2つのアミノ酸がこれと異なるCDRL2配列、および
(f)配列番号14もしくは20に示すCDRL3、または1つもしくは2つのアミノ酸がこれと異なるCDRL3配列
からなる群から選択される少なくとも1つのCDRを含む少なくとも1つの軽鎖アミノ酸配列、
あるいはFGFR4の細胞外ドメイン上で同じエピトープを認識する抗体
を含む、その断片または誘導体を含めた抗体に関する。
【0017】
好適な実施形態において、抗体は、
(a)配列番号9に示すCDRH1、または1つもしくは2つのアミノ酸がこれと異なるCDRH1配列、
(b)配列番号10に示すCDRH2、または1つもしくは2つのアミノ酸がこれと異なるCDRH2配列、および
(c)配列番号11に示すCDRH3、または1つもしくは2つのアミノ酸がこれと異なるCDRH3配列
からなる群から選択される少なくとも1つのCDRを含む少なくとも1つの重鎖、ならびに/あるいは
(d)配列番号12に示すCDRL1、または1つもしくは2つのアミノ酸がこれと異なるCDRL1配列、
(e)配列番号13に示すCDRL2、または1つもしくは2つのアミノ酸がこれと異なるCDRL2配列、および
(f)配列番号14に示すCDRL3、または1つもしくは2つのアミノ酸がこれと異なるCDRL3配列
からなる群から選択される少なくとも1つのCDRを含む軽鎖、
あるいはFGFR4の細胞外ドメイン上で同じエピトープを認識する抗体を含む。
【0018】
さらに好適な実施形態において、抗体は、
(a)配列番号15に示すCDRH1、または1つもしくは2つのアミノ酸がこれと異なるCDRH1配列、
(b)配列番号16に示すCDRH2、または1つもしくは2つのアミノ酸がこれと異なるCDRH2配列、および
(c)配列番号17に示すCDRH3、または1つもしくは2つのアミノ酸がこれと異なるCDRH3配列
からなる群から選択される少なくとも1つのCDRを含む重鎖、ならびに/あるいは
(d)配列番号18に示すCDRL1、または1つもしくは2つのアミノ酸がこれと異なるCDRL1配列、
(e)配列番号19に示すCDRL2、または1つもしくは2つのアミノ酸がこれと異なるCDRL2配列、および
(f)配列番号20に示すCDRL3、または1つもしくは2つのアミノ酸がこれと異なるCDRL3配列
からなる群から選択される少なくとも1つのCDRを含む軽鎖、
あるいはFGFR4の細胞外ドメイン上で同じエピトープを認識する抗体を含む。
【0019】
別の実施形態において、本発明は、配列番号5および7からなる群から選択される重鎖アミノ酸配列、または少なくともその可変ドメイン、またはこれに対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列、ならびに/あるいは配列番号6および8からなる群から選択される軽鎖アミノ酸配列、または少なくともその可変ドメイン、またはこれに対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む抗体、あるいはFGFR4の細胞外ドメイン上で同じエピトープを認識する抗体に関する。
【0020】
特定の好適な実施形態において、抗体は、9A5および10F10、またはFGFR4の細胞外ドメイン上で同じエピトープを認識する抗体からなる群から選択される。
【0021】
抗体は、天然源および/または合成源のいずれかの抗体(例えば、哺乳動物源の抗体)である場合がある。好ましくは、定常ドメイン(存在する場合)は、ヒトの定常ドメインである。可変ドメインは、好ましくは哺乳動物の可変ドメイン(例えば、ヒト化可変ドメインまたはヒトの可変ドメイン)である。より好ましくは、抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である。
【0022】
本発明の抗体は、IgA型、IgD型、IgE型、IgG型またはIgM型の抗体である場合があり、好ましくは、IgG1型、lgG2型、lgG3型、lgG4型、IgM1型およびlgM2型を含むがこれらに限定されないIgG型またはIgM型の抗体である場合がある。最も好適な実施形態において、抗体は、ヒトのlgG1型、lgG2型またはlgG4型の抗体である。
【0023】
抗体という用語は、抗体の少なくとも1つの抗原結合部位を有する「断片」または「誘導体」を包含する。抗体断片には、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、およびFv断片が含まれる。抗体の誘導体には、一本鎖抗体、ナノボディ、およびダイアボディが含まれる。抗体の誘導体にはまた、FGFR4に結合する抗体様結合活性を有する骨格タンパク質も含まれるものとする。
【0024】
本発明の文脈において、本明細書で使用される「骨格タンパク質」という用語は、アミノ酸の挿入、置換または欠失が大いに許容される、露出した表面積を有するポリペプチドまたはタンパク質を意味する。本発明に基づいて使用することができる骨格タンパク質の例には、黄色ブドウ球菌に由来するプロテインA、ピエリスブラシカまたはその他のリポカリンに由来するビリン結合タンパク質、アンキリン反復タンパク質、およびヒトのフィブロネクチンがある(Binz and Pluckthun,Curr Opin Biotechnol,16,459−69で考察)。骨格タンパク質工学は、安定して折り畳まれたタンパク質の構造的枠組への親和性機能の移植または統合と見なすことができる。親和性機能は、本発明に基づくタンパク質結合親和性を意味する。骨格は、結合特異性を付与するアミノ酸配列から構造的に分離することができる。一般的に、このような人工親和性試薬の開発に適すると考えられるタンパク質は、合理的であるか、または最も一般的にはコンビナトリアルなタンパク質工学法(例えば、in vitroにて示される人工骨格ライブラリにおける結合剤のために、精製されたタンパク質または細胞表面に示されたタンパク質のいずれかを、FGFR4に対してパンニングする技法)により得られ、これらの技術は、当該技術分野で既知である(Skerra,J.Mol.Recog.,2000、Binz and Plucktun,2005)。さらに、抗体様結合活性を有する骨格タンパク質は、骨格ドメインを含むアクセプターポリペプチドから得られ、ドナーポリペプチドの結合ドメインを移植して、アクセプターポリペプチドを含む骨格ドメインにドナーポリペプチドの結合特異性を付与することができる。この挿入された結合ドメインは、例えば、抗FGFR4抗体の少なくとも1つのCDR、好ましくは配列番号9〜20の群から選択される少なくとも1つを含む場合がある。挿入は、例えば、ポリペプチド合成、同様に当業者に周知の種々の形態の組換え法によるコードアミノ酸の核酸合成を含めた、当業者に既知の種々の方法により達成することができる。
【0025】
上に記載の通り、抗体、抗体断片、その誘導体の特異性は、CDRのアミノ酸配列にある。抗体の可変ドメイン(重鎖VHおよび軽鎖VL)は、好ましくは、4つの相対的に保存されたフレームワーク領域(「FR」)によってフランキングされた3つの相補性決定領域(超可変領域と呼ばれることもある)を含む。多くの場合、抗体の特異性は、VH鎖のCDRまたは複数のCDRなどのCDRによって決定されるか、または大部分が決定される。当業者であれば、上述のCDRを有する抗体、抗体断片またはその誘導体の可変ドメインを、特異性と生体機能がさらに改善された抗体の構築に使用できることを容易に理解するであろう。この範囲において、本発明は、上述の可変ドメインの少なくとも1つのCDRを含み、添付の実施例に記載する抗体と実質的に同じか、類似するか、改善された結合特性を好都合に有する、抗体、抗体断片またはその誘導体を包含する。当業者は、添付の配列一覧に列挙され、本発明の主な実施形態で規定される少なくとも1つのCDRを含む抗体から始めて、特異性および/または親和性を向上させるために、元来同定されているモノクローナル抗体または異なる抗体から得られるさらなるCDRを結合することができる。CDR移植は、当該技術分野で周知であり、元の特異性が維持される限り、本発明の抗体、断片またはその誘導体のその他の特性における特異的親和性を微調整するのにも使用することができる。抗体、断片または誘導体が、元のドナー抗体の少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つ、さらにより好ましくは少なくとも4つ、例えば少なくとも5つ、特に好ましくは6つすべてのCDRを含むのが好都合である。本発明のさらなる代替例では、元来同定されている異なるモノクローナル抗体から得られるCDRを、新規の抗体内で結合する場合もある。こうした場合には、重鎖の3つのCDRが同じ抗体に由来するのに対して、軽鎖の3つのCDRがすべて異なる(但し、すべてが同じものに由来)抗体に由来するのが好ましい。本発明の抗体またはこれらの対応する免疫グロブリン鎖は、当該技術分野で既知の従来の技法を使用して(例えば、アミノ酸の欠失、挿入、置換、付加および/もしくは組換え、ならびに/または当該技術分野で既知のその他いずれかの修飾を単独でまたは組み合わせて使用することにより)さらに修飾することができる。免疫グロブリン鎖のアミノ酸配列の基礎となるDNA配列にこのような修飾を導入する方法は、当業者に周知である(例えば、Sambrook,Molecular Cloning A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory(1989)N.Y.を参照)。
【0026】
抗体、抗体断片またはその誘導体は、場合により治療の目的で非免疫化される。非免疫化(例えば、ヒト化)した結合タンパク質の製造は、米国特許第6054297号、第5886152号および第5877293号に記載の通りに実施される場合がある。
【0027】
治療の目的で、抗体は、治療エフェクター基(例えば、放射性基または細胞傷害性基)と共役する場合がある。
【0028】
診断の目的で、抗体は、酵素標識される場合がある。適切な標識には、放射性標識、蛍光性標識または酵素標識が含まれる。
【0029】
本発明の抗体は、結合特異性および/または生物活性に関して好都合な特性を有する。
【0030】
好ましくは、FGFR4抗体は、以下の特性の少なくとも1つを示す:
−FGFR4(具体的には、ヒトFGFR4)に対する高い特異性:抗体は、その他のファミリーメンバー(例えば、FGFR1、FGFR2および/またはFGFR3)をあまり認識しない;
−細胞外ドメイン上のエピトープへの結合;
−FGFR4チロシンリン酸化の遮断または減少;
−FGFR4により媒介されるシグナル伝達の遮断または減少;
−細胞増殖の減少または阻害;
−細胞移動の減少または阻害。
【0031】
さらなる好適な態様において、抗体は、エフェクター機能を有する定常ドメインを有し、これにより、細胞表面上の抗体、抗体断片またはその誘導体を結合したFGFR4発現細胞が、免疫系機能の攻撃を受ける場合がある。例えば、抗体は、補体を固定し、補体依存性細胞障害(CDC)に関与することが可能である場合がある。さらに、抗体は、単球およびナチュラルキラー(NK)細胞などのエフェクター細胞上のFc受容体に結合し、抗体依存性細胞障害(ADCC)に関与することが可能である場合もある。
【0032】
上述の通り、換言すると、本発明の抗体は、結合特異性および生物活性に関して、具体的には、FGFR4のエピトープを認識し、細胞増殖および細胞移動を減少させる能力、さらなる抗腫瘍薬を活性化させ、かつ/または腫瘍細胞を治療療法に感作させる能力に関して好都合な特性を示す。
【0033】
本発明の抗体は、これらを試験する選択手順によって(例えば、細胞結合特性、シグナル伝達経路または細胞機能のいずれかに対する活性、およびFGFR4とその他のFGFRファミリーメンバーの間の選択性についてのELISA、FACSおよびウェスタンブロット分析によって)得られる場合がある。好適な実施形態において、抗体は、特に、哺乳動物のFGFR4(具体的にはヒトのFGFR4)の細胞外ドメインの少なくとも1つのエピトープと結合/相互作用し、その他のFGFRファミリーとは結合/相互作用しない。「細胞外ドメイン」という用語は、細胞外環境へ広がるFGFR4の一部に関する。このドメインは、ヒト(?)FGFR4分子のアミノ酸1〜360位を含む。
【0034】
本発明はまた、哺乳動物のFGFR4の細胞外ドメイン上で同じエピトープを結合するに当たって、9A5および10F10からなる群から選択される抗体と競合する抗体も包含する。
【0035】
抗体によって認識されるFGFR4上のエピトープを決定するために、細胞外FGFR4ドメインのアミノ酸配列に由来する短いペプチドに由来する、化学的に製造された一連のタンパク質配列を使用して、抗体エピトープを特定し同定することができる(Reinicke W.,Methods Mol Biol.2004;248:443−63)。本発明の抗体により結合されるFGFR4細胞外ドメインのエピトープをマッピングするさらなる方法は、Snaps/SELDI(Wang et al.,Int J Cancer.2001 Jun 15;92(6):871−6)を含み、あるいはAntibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Ed Harlow and David Lane(1988)に記載のような通常のクロスブロッキングアッセイを実施することができる。
【0036】
本発明のFGFR4抗体の親和性測定は、間接的なFACSスキャッチャード分析により実施される場合がある。好ましくは、この分析は、適切な数の対象細胞を採取し、緩衝液で洗浄し、プレートに播種することを含む。これらの細胞は、遠心分離して上清を除去した後、α−FGFR4抗体で、または例えば20μg/mLの抗体から開始し、例えば1:2の希釈ステップで希釈した抗体希釈液(例えば、100μL/ウェル)で再懸濁する場合がある。抗体を含む細胞懸濁液はインキュベートして、緩衝液で洗浄し、二次抗体でインキュベートする。これらの細胞懸濁液をインキュベートして、緩衝液で洗浄し、分析する(FACS、Beckman Coulter製)。FACSスキャッチャード分析では、それぞれの測定において蛍光平均を算出する。それぞれの蛍光平均からバックグラウンド染色(=一次抗体なし)を差し引く。そしてx値=蛍光平均およびy値=蛍光平均/抗体濃度のスキャッチャードグラフを作成する。
【0037】
リガンドにより誘導されるFGFR4のリン酸化を減少させる抗体を選択するため、細胞を緩衝液(対照)または抗体で事前にインキュベートした後、リガンドまたは対照緩衝液で処理することができる。次いで、細胞を溶解し、粗溶解物を遠心分離して不溶性物質を除去することができる。効率的な沈殿を可能にするために、上清をFGFR4およびプロテイン−A−セファロースに特異的な抗体でインキュベートする場合がある。洗浄後、これらの免疫沈殿物をSDS−PAGEにより分離する場合がある。次いで、ゲルのウェスタンブロットを、抗ホスホチロシン抗体でプローブする。可視化後、これらのブロットをストリッピングして、抗FGFR4抗体で再度プローブする場合がある。HRGにより誘導される複合体形成に対して当該抗体が及ぼす効果を定量化するために、ゲルの反射率走査濃度測定を行うことができる。こうして、対照(未処理細胞)に比べてFGFR4のリン酸化を減少させる抗体が選択される。
【0038】
リガンド刺激性細胞増殖を阻害する本発明の抗体の能力を測定するために、in vitro実験を行うことができる。適切な数の対象細胞を、適切な培地で希釈した抗体でインキュベートする。抗体溶液にリガンドを直接添加することによって細胞を刺激した後、72時間増殖のために放置する。AlamarBlue(登録商標)(BIOSOURCE)を添加し、37℃の暗室でインキュベートする。そして30分毎に590nmにて吸光度を測定する。
【0039】
FGFR4により媒介される細胞移動を減少させる抗体を選択するために、移動実験を行うことができる。血清飢餓細胞を抗体でインキュベートする。そして適切な数の細胞を、コーティングされたトランスウェル(BD Falcon製、孔径8μm)の上部チャンバーに配置する場合がある。刺激する場合は、培地単独か、走化性物質を含有する培地を下部チャンバーで使用する。細胞を移動させるために放置した後、染色し、染色された核を計数する。阻害率は、対照抗体と比較した阻害として表される。
【0040】
FGFR4に結合するリガンドに対する抗体の効果は、FGFR4抗体の非存在下(対照)または存在下において、この受容体(例えば、MDA−MB 453乳癌細胞)を発現する細胞を放射性標識リガンド(例えば、FGF1またはFGF19)でインキュベートすることにより測定することができる。こうして、FGFR4受容体に対するリガンドの結合親和性を減少させ、リガンドとFGFR4の結合を遮断する抗体を同定することができる。
【0041】
治療抗体の抗腫瘍効果は、ヒト異種移植片腫瘍試験で評価される場合がある。これらの試験では、ヒト腫瘍を免疫不全マウス内で異種移植片として増殖し、腫瘍増殖の阻害度によって治療効果を測定する。本発明のFGFR4抗体がヌードマウス内におけるヒト癌細胞の腫瘍増殖を妨げるか否かを判定するため、細胞をヌード/ヌードマウスに移植する。腫瘍は動物の背部皮下で増殖する。治療は、直ちに開始する場合もあれば、あるいは腫瘍の平均容積が20〜50mm3に達した段階で開始する場合もある。最初の治療を行う前に、マウスを無作為化し、治療群間の開始腫瘍容積の均一性(平均値、中央値および標準偏差)を保証するために統計的検定を行う。最初は50mg/kg、その後25mg/kgの負荷量で治療を週一回腹腔内注入により開始する。対照群には、既知の抗腫瘍薬(例えば、ドキソルビシン(医薬品グレード))を投与する。
【0042】
本発明の好適な実施形態において、抗体はモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体は、例えば、当該技術分野で開発された免疫化哺乳動物に由来する修飾された脾臓細胞にラット骨髄腫細胞を融合することを含む、Koehler and Milstein,Nature 256(1975),495、およびGalfre,Meth.Enzymol.73(1981),3に最初に記載された、十分に確立された技法により製造することができる。
【0043】
本発明のさらに好適な実施形態において、抗体は、Fab断片、F(ab2)’断片、単鎖抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、二価抗体構築物、ヒト化抗体、ヒト、合成抗体、もしくはその化学的に修飾された誘導体、多重特異性抗体、ダイアボディ、ナノボディ、Fv断片、または別の型の組換え抗体である場合がある。
【0044】
上述のエピトープを対象とする上述の抗体の断片または誘導体は、例えば、Harlow and Lane"Antibodies,A Laboratory Manual",CSH Press,Cold Spring Harbor,1988に記載される方法を使用することによって得ることができる。ファージディスプレイ法によって前記抗体の誘導体が得られる場合は、BIAcore系で使用される表面プラズモン共鳴を使用して、FGFR4のエピトープに結合するファージ抗体の効率を向上させることができる(Schier,Human Antibodies Hybridomas 7(1996),97−105、Malmborg,J.Immunol.Methods 183(1995),7−13)。
【0045】
所望の生物活性を示す限り、本明細書における抗体には、具体的には、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来するか、特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一であるか、相同的であると同時に、前記鎖の残りの部分が、別の種に由来するか、別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一であるか、相同的である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、ならびにこのような抗体の断片が含まれる(米国特許第4816567号、Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851−6855(1984))。キメラ抗体の産生については、例えば、国際特許公開第89/09622号に記載されている。
【0046】
ヒト化された形態の抗体は、キメラ化またはCDR移植などの当該技術分野で既知の方法により生成される場合がある。ヒト化抗体を産生する方法は、当該技術分野で既知であり、例えば、欧州特許出願第10239400(A1)号および国際特許公開第90/07861号に記載されている。一般的に、ヒト化抗体は、非ヒトの供給源からヒト化抗体に導入される1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、典型的には「輸入」可変ドメインから採取される「輸入」残基と呼ばれることが多い。基本的にヒト化は、Winter and co−workers(Jones et al.,Nature,321:522−525(1986)、Riechmann et al.,Nature,332:323−327(1988)、Verhoeyen et al.,Science,239:1534−1536(1988))の方法に従って、ヒト抗体の対応する配列を齧歯類のCDRまたはCDR配列で置換することにより行うことができる。従って、このような「ヒト化」抗体は、実質的に完全とは言えないヒト可変ドメインが非ヒト種由来の対応する配列で置換されているキメラ抗体(米国特許第4816567号)である。実際、ヒト化抗体は、典型的には、いくつかのCDR残基およびおそらくはいくつかのFR残基が齧歯類抗体内の類似部位に由来する残基で置換されるヒト化抗体である。
【0047】
非免疫化抗体は、Tヘルパーリンパ球により認識することができるエピトープが欠如するか、減少したタンパク質である。前記エピトープを同定する方法の例は、Tangri et al.,(J Immunol.2005 Mar 15;174(6):3187−96)に示されている。
【0048】
本発明に基づいて使用されるさらなる抗体は、いわゆる異種抗体である。マウスのヒト化抗体などの異種抗体を産生するための一般原則については、例えば、国際特許公開第91/10741号、第94/02602号、第96/34096号および第96/33735号に記載されている。
【0049】
上述の通り、本発明の抗体は、例えばFv、FabおよびF(ab)2を含めた完全抗体以外の種々の形態で、ならびに単鎖(例えば、国際特許公開第88/09344号を参照)で存在する場合がある。
【0050】
所望の場合は、本発明の抗体を重鎖および/または軽鎖の可変ドメインで突然変異させて、抗体の結合特性を変化させる場合もある。例えば、1つ以上のCDR領域で突然変異体を作製し、FGFR4に対する抗体のKdを増減させる場合もあれば、抗体の結合特異性を変化させる場合もある。特定部位の突然変異誘発の技法は、当該技術分野で周知である(例えば、Sambrook et al.およびAusubel et al.,supraを参照)。さらに、FGFR4抗体の可変領域内の生殖細胞系と比べて変更することが知られるアミノ酸残基で、突然変異体を作製する場合もある。別の態様においては、フレームワーク領域の1つ以上に突然変異体を導入する場合がある。フレームワーク領域または定常ドメインで突然変異体を作製して、FGFR4抗体の半減期を増加させる場合がある(例えば、国際特許公開第00/09560号を参照)。また、フレームワーク領域または定常ドメインで突然変異体を作製して、抗体の免疫原性を変化させる場合もあれば、別の分子との共有結合もしくは非共有結合のための部位を提供する場合もあり、補体固定などの特性を変化させる場合もある。単一の突然変異抗体のフレームワーク領域、定常ドメインおよび可変ドメインのそれぞれに突然変異体を作製する場合もあれば、あるいは、単一の突然変異抗体のフレームワーク領域、可変ドメインまたは定常ドメインの1つのみに突然変異体を作製する場合もある。
【0051】
本発明はさらに、本発明の抗体、抗体断片またはその誘導体をコードする核酸分子にも関する。上述の抗体、抗体断片またはその誘導体をコードする本発明の核酸分子は、例えば、DNA、cDNA、RNA、または合成により産生されるDNAもしくはRNA、またはこれらの核酸分子のいずれかを単独でもしくは組み合わせて含む組換えにより産生されるキメラ核酸分子である場合がある。また、核酸分子は、遺伝子全体に対応するゲノムDNA、またはその実質的な一部、またはその断片および誘導体である場合がある。ヌクレオチド配列は、天然のヌクレオチド配列に対応する場合もあれば、単一または複数のヌクレオチド置換、欠失または付加を含む場合もある。本発明の特に好適な実施形態において、核酸分子はcDNA分子である。
【0052】
好ましくは、本発明は、
(a)配列番号5〜20のポリペプチドをコードする核酸配列、
(b)配列番号1〜4に示す核酸配列、
(c)(a)または(b)の配列のいずれかに相補的な核酸、および
(d)ストリンジェントな条件下で(a)、(b)または(c)にハイブリダイズする核酸配列
からなる群から選択される、単離核酸分子に関する。
【0053】
「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」という用語は、2個の核酸断片が、例えば、Sambrook et al.,"Expression of cloned genes in E.coli"in Molecular Cloning:A laboratory manual(1989),Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York,USAに記載される、標準化されたハイブリダイゼーション条件下で、互いにハイブリダイズすることを意味する。このような条件は、例えば、6.0×SSC、45℃にてハイブリダイズした後、2.0×SSC、50℃(好ましくは、2.0×SSC、65℃)または0.2×SSC、50℃(好ましくは、0.2×SSC、65℃)で洗浄ステップを行う条件である。
【0054】
本発明はまた、本発明の核酸分子を含むベクターにも関する。前記ベクターは、例えば、ファージ、プラスミド、ウイルス、またはレトロウイルスベクターである場合がある。レトロウイルスベクターは複製可能である場合もあれば、複製不能である場合もある。後者の場合は、一般的に相補宿主/細胞内でのみウイルス増殖が生じる。
【0055】
本発明の核酸分子は、宿主における増殖のために、選択マーカーを含むベクターに結合させる場合がある。一般的には、リン酸カルシウム沈殿物もしくは塩化ルビジウム沈殿物などの沈殿物、または荷電脂質を含む複合体、またはフラーレンなどの炭素系クラスターにプラスミドベクターを導入する。ベクターがウイルスである場合は、宿主細胞に適用する前に、適切なパッケージング細胞系を使用して、in vitroでベクターをパッケージングする場合がある。
【0056】
好ましくは、本発明のベクターは、核酸分子が1つ以上の制御配列に作用的に結合して、原核生物および/または真核生物の宿主細胞における転写および場合により発現が可能となる、発現ベクターである。前記核酸分子の発現は、好ましくは翻訳可能なmRNAへの核酸分子の転写を含む。真核細胞(好ましくは、哺乳動物細胞)における発現を実現する調節因子は、当業者に周知である。これらは通常、転写の開始を実現する調節配列、ならびに場合により転写の終了および転写の安定化を実現するポリ−Aシグナルを含む。さらなる調節因子には、転写および翻訳エンハンサーが含まれる場合がある。原核宿主細胞における発現を可能にする見込まれる調節因子は、例えば、大腸菌のlac、trpまたはtacプロモーターを含み、真核生物の宿主細胞における発現を可能にする調節因子の例には、酵母のAOXIもしくはGAL1プロモーター、または哺乳動物およびその他の動物細胞のCMV、SV40もしくはRSVプロモーター(ラウス肉腫ウイルス)、CMVエンハンサー、SV40エンハンサー、もしくはグロビンイントロンがある。このような調節因子は、転写の開始に関与する因子の他に、SV40−ポリ−A部位またはtk−ポリ−A部位などの、ポリヌクレオチド下流の転写終結シグナルを含む場合もある。この文脈において、適切な発現ベクターは、Okayama−Berg cDNA発現ベクターpcDV1(Pharmacia)、pCDM8、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(Invitrogen)またはpSPORTI(GIBCO BRL)など、当該技術分野で既知である。好ましくは、前記ベクターは、発現ベクターであり、かつ/または遺伝子導入または遺伝子ターゲッティングベクターである。レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、またはウシパピローマウイルスなどのウイルスに由来する発現ベクターは、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを標的細胞群に送達するために使用される場合がある。組換えウイルスベクターの構築には、当業者に周知の方法を使用することができる(例えば、Sambrook,Molecular Cloning A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory(2001,Third Edition)N.Y.、およびAusubel,Current Protocols in Molecular Biology,Green Publishing Associates and Wiley Interscience,N.Y.(1994)に記載の技法を参照)。あるいは、標的細胞に送達するために、本発明の核酸分子をリポソームに再構築することもできる。
【0057】
本発明はさらに、本発明のベクターを含む宿主にも関する。前記宿主は、原核細胞もしくは真核細胞である場合もあれば、非ヒトトランスジェニック動物である場合もある。宿主内に存在する本発明のポリヌクレオチドまたはベクターは、宿主のゲノムに統合される場合もあれば、染色体外に維持される場合もある。この点については、変異遺伝子を修復するか、または相同組換えにより突然変異遺伝子を作製するために、「遺伝子ターゲティング」および/または「遺伝子置換」に本発明の核酸分子を使用できることも理解されるであろう(例えば、Mouellic,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87(1990),4712−4716、Joyner,Gene Targeting,A Practical Approach,Oxford University Pressを参照)。
【0058】
宿主は、細菌、昆虫、真菌、植物、動物、哺乳動物または好ましくはヒトの細胞などのいずれの原核細胞または真核細胞であってもよい。好適な真菌細胞は、例えば、サッカロミセス属の真菌細胞、具体的にはサッカロミセスセレビシエ種の真菌細胞である。「原核」という用語は、本発明の変異ポリペプチドを発現するためにポリヌクレオチドで形質転換またはトランスフェクトすることができるすべての細菌を含むものとして意図される。原核宿主には、例えば、大腸菌、ネズミチフス菌、セラチアマルセッセンスおよび枯草菌などのグラム陰性菌およびグラム陽性菌が含まれる場合がある。本発明の突然変異形態の変異ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを使用することにより、当業者に周知の技法のいずれかを使用して宿主を形質転換またはトランスフェクトすることができる。融合し、作用的に結合した遺伝子を製造し、これらを細菌または動物細胞内で発現させる方法は、当該技術分野で周知である(Sambrook,Molecular Cloning A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory(2001,Third Edition)。前記文献に記載の遺伝子構築物および方法は、例えば原核宿主において本発明の変異抗体、抗体断片またはその誘導体を発現させるのに使用することができる。一般的に、挿入された核酸分子の効果的な転写を促進するプロモーター配列を含有する発現ベクターは、宿主に関連して使用される。この発現ベクターは典型的には、複製起点、プロモーター、およびターミネーター、ならびに形質転換細胞の表現型選択を提供することができる特異遺伝子を含有する。形質転換された原核宿主は、最適な細胞増殖を達成するために、発酵槽内で増殖させ、当該技術分野で既知の技法に基づき培養することができる。次いで、本発明の抗体、抗体断片またはその誘導体を、増殖培地、細胞溶解物または細胞膜画分から単離することができる。微生物でまたはその他の方法で発現させた本発明の抗体、抗体断片またはその誘導体の単離および精製は、例えば、モノクローナルまたはポリクローナル抗体の使用を伴うものなどの分取クロマトグラフィー分離および免疫学的分離などのいずれの従来の手段によっても行われる場合がある。
【0059】
本発明の好適な実施形態において、宿主は、細菌、真菌、植物、両生類または動物の細胞である。好適な動物細胞には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、3T3細胞、NSO細胞、およびヒト細胞を含めたその他いくつかの細胞系が含まれるが、これらに限定されない。別の好適な実施形態において、前記動物細胞は昆虫細胞である。好適な昆虫細胞には、SF9細胞系の細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0060】
本発明のより好適な実施形態において、前記宿主は、ヒト細胞またはヒト細胞系である。前記ヒト細胞には、ヒト胎児腎臓細胞(HEK293、293T、293自由型)が含まれるが、これらに限定されない。さらに、前記ヒト細胞系には、HeLa細胞、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、A549細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
本発明は、本発明の抗体を産生するのに使用される場合がある、本発明の1つ以上の核酸分子を含むトランスジェニック非ヒト動物も提供する。抗体は、ヤギ、ウシ、ウマ、ブタ、ラット、マウス、ウサギ、ハムスターまたはその他の哺乳動物のミルク、血液または尿などの組織または体液内で産生し、そこから回収することができる(例えば、米国特許第5827690号、第5756687号、第5750172号および第5741957号を参照)。上述の通り、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含む非ヒトトランスジェニック動物は、FGFR4またはその一部で免疫化することにより産生することができる。
【0062】
本発明はさらに、抗体を製造する方法であって、前記抗体の合成を可能にする条件下で本発明の宿主を培養すること、および前記培養物から前記抗体を回収することを含む、方法にも関する。
【0063】
形質転換した宿主は、最適な細胞増殖を達成するために、発酵槽内で増殖させ、当該技術分野で既知の技法に基づき培養することができる。発現させた全抗体、これらの二量体、個々の軽鎖および重鎖、または本発明のその他の免疫グロブリン形態は、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などを含めた当該技術分野の標準的な手順に基づき精製することができる(Scopes,"Protein Purification",Springer−Verlag,N.Y.(1982)を参照)。次いで、本発明の抗体またはその対応する免疫グロブリン鎖を、増殖培地、細胞溶解物または細胞膜画分から単離することができる。例えば、微生物で発現させた本発明の抗体または免疫グロブリン鎖の単離および精製は、例えば、本発明の抗体の定常領域を対象とするモノクローナルまたはポリクローナル抗体の使用を伴うものなどの分取クロマトグラフィー分離および免疫学的分離などのいずれの従来の手段によっても行われる場合がある。
【0064】
本発明の抗体はさらに、例えば薬剤ターゲッティングや画像化用途のために、その他の部分とカップリングさせることもできることが、当業者には明らかになるであろう。このようなカップリングを、抗体または抗原の発現後に、付着部位に対して化学的に行う場合もあれば、カップリング産物をDNAレベルで操作して本発明の抗体または抗原にする場合もある。次いで、適切な宿主系でDNAを発現させ、発現させたタンパク質を必要に応じて採取および復元する。
【0065】
本発明の好適な実施形態においては、抗体を放射性同位元素または中毒性化学療法剤などのエフェクターとカップリングされている。好ましくは、これらの抗体共役物は、細胞(例えば、FGFR4を発現する癌細胞)を除去するためにターゲッティングするのに有用である。本発明の抗体/抗体断片を放射性同位元素と結合することにより、例えば、腫瘍治療に利点がもたらされる。化学療法およびその他の形態の癌治療とは異なり、放射免疫療法、または放射性同位元素と抗体の組み合わせを投与する方法は、周囲の正常で健康な組織の損傷を最小限に抑えて癌細胞を直接ターゲティングする。好適な放射性同位元素には、例えば、3H、14C、15N、35S、90Y、111In、125I、131Iなどが含まれる。
【0066】
さらに、本発明の抗体は、ゲルダナマイシン(Mandler et al.,J.Natl.Cancer Inst.,92(19),1549−51(2000))、およびメイタンシン(例えば、メイタンシノイド剤、DM1(Liu et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.93:8618−8623(1996))、およびオーリスタチン−Eもしくはモノメチルオーリスタチン−E(Doronina et al.,Nat.Biotechnol.21:778−784(2003))、またはカリケアマイシンなどの中毒性化学療法剤で共役する場合に、癌治療にも使用することができる。この技術とともに、酸性条件もしくは還元条件下で、または特異的なプロテアーゼに暴露する際に薬剤を放出する種々のリンカーが使用される。本発明の抗体は、当該技術分野に記載の通り共役される場合がある。
【0067】
本発明はさらに、本発明の抗体、核酸分子、ベクター、宿主、または本発明の方法により得られる抗体を含む医薬組成物にも関する。
【0068】
本明細書で使用される「組成物」という用語は、本発明の少なくとも1つの化合物を含む。好ましくは、このような組成物は医薬組成物であるか、診断用組成物である。
【0069】
前記医薬組成物は製剤学的に認容性の担体および/または希釈剤を含むのが好適である。本明細書に開示される医薬組成物は、EGFR4の発現、過剰発現または活性亢進に関連するか、これらに付随するか、これらにより引き起こされる障害(例えば、過増殖症、炎症性疾患、または代謝性疾患)の治療に一部有用である場合がある。前記障害には、乾癬、肥満症、癌(例えば、乳癌、肺癌、大腸癌、腎臓癌、リンパ癌、皮膚癌、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、食道癌、バレット癌、胃癌、膀胱癌、子宮頚癌、肝臓癌、甲状腺癌、黒色腫、もしくはその他の増殖性もしくは腫瘍性疾患)、またはFGFR4を発現もしくは過剰発現するその他の疾患が含まれるが、これらに限定されない。
【0070】
適切な医薬担体、賦形剤および/または希釈剤の例は、当該技術分野で既知であり、これらの例には、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、乳化剤(例えば、油水乳化剤)、各種湿潤剤、滅菌溶液などが含まれる。このような担体を含む組成物は、周知の従来の方法により配合することができる。これらの医薬組成物は、適切な用量で被験体に投与することができる。適切な組成物の投与は、種々の方法(例えば、静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、筋肉内投与、局所投与、皮内投与、鼻腔内投与、または気管支内投与)により行われる場合がある。本発明の組成物はまた、例えば、脳のような外部または内部標的部位へのバイオリスティック法による送達によって、標的部位に直接投与される場合もある。投与計画は、主治医および臨床的因子によって決定されるであろう。医療技術分野で周知の通り、いずれの患者への投与量も、患者の体格、体表面積、年齢、投与する特定の化合物、性別、投与時間および投与経路、全身の健康状態、ならびに同時に投与されるその他の薬剤を含めた多くの因子により変動する。タンパク質の医薬活性物質は、1回につき1μg〜100mg/体重kgの量で含まれる場合があるが、この範囲例を下回るか、上回る用量も、特に上述の因子を考慮の上、想定される。また、投与計画が持続注入である場合は、毎分1pg〜100mg/体重kgの範囲でなければならない。
【0071】
進行は、定期的な評価によって監視することができる。本発明の組成物は、局所投与される場合もあれば、全身投与される場合もある。非経口投与用の製剤には、滅菌水溶液または非水溶液、懸濁液、および乳化剤が含まれる。非水溶媒の例には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油)、および注射用有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)がある。水性担体には、生理食塩水および緩衝培地を含めた、水、アルコール/水溶液、乳化剤、または懸濁液が含まれる。非経口賦形剤には、塩化ナトリウム溶液、ブドウ糖リンゲル液、ブドウ糖および塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液、または固定油が含まれる。静脈内注射用ビヒクルには、液体および栄養補充剤、電解質補充剤(例えば、ブドウ糖リンゲル液系の補充剤)などが含まれる。また、例えば、抗菌剤、酸化防止剤、キレート剤、および不活性ガスなどの、防腐剤およびその他の添加剤が含まれる場合もある。さらに、本発明の医薬組成物は、医薬組成物の所期の用途に応じてさらなる薬剤を含む場合もある。本医薬組成物は、例えばさらなる抗腫瘍薬、小分子阻害剤、抗癌剤または化学療法剤のようなさらなる活性剤を含むのが特に好適である。
【0072】
本発明はまた、少なくとも1つのさらなる抗腫瘍薬と組み合わせて本発明の抗体を含む医薬組成物にも関する。前記組み合わせは、例えば、異常な細胞増殖を阻害するのに効果的である。
【0073】
現在、多くの抗腫瘍薬が当該技術分野で知られている。一実施形態において、抗腫瘍薬は、抗体または免疫調節タンパク質を含むがこれらに限定されない治療タンパク質の群から選択される。別の実施形態において、抗腫瘍薬は、分裂阻害剤、キナーゼ阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗薬、挿入抗生物質、増殖因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、抗生存剤、生体応答調節剤、抗ホルモン(例えば、抗アンドロゲン)、および抗血管形成剤からなる小分子阻害剤または化学療法剤の群から選択される。
【0074】
さらに別の実施形態において、医薬組成物は、抗体、およびEGFRファミリーメンバーの阻害剤(例えば、EGFR、HER2、HER3またはHER4阻害剤、具体的にはHER2阻害剤(例えば、アンタゴニスト抗体または小分子阻害剤))を含む。
【0075】
本発明の医薬組成物は、人間医学で使用することができ、また獣医学の目的にも使用することができる。
【0076】
さらに、本発明は、本発明の抗体、核酸分子、ベクター、本発明の宿主、または過増殖症、炎症性疾患もしくは代謝性疾患、具体的にはFGFR4の発現、過剰発現もしくは活性亢進に関連するか、これらに付随するか、これらにより引き起こされる障害を診断、予防もしくは治療する医薬組成物を製造する本発明の方法により得られる抗体の使用にも関する。
【0077】
上述の過増殖症には、いずれの新生物形成(すなわち、いずれの異常なおよび/または抑制されない新規の組織増殖)も含まれる。本明細書で使用される「抑制されない新規の組織増殖」という用語は、増殖調節の異常および/または喪失により異なる場合がある。過増殖性疾患には、転移性または侵襲性癌などの腫瘍疾患および/または癌が含まれる。
【0078】
本発明の使用の好適な実施形態において、前記過増殖性疾患には、具体的には、乳癌、肺癌、大腸癌、腎臓癌、リンパ癌、皮膚癌、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、食道癌、バレット癌、胃癌、膀胱癌、子宮頸癌、肝臓癌、甲状腺癌、黒色腫、増殖性もしくは腫瘍性疾患、またはFGFR4を発現もしくは過剰発現するその他の過増殖性疾患がある。
【0079】
さらに別の実施形態において、本発明は、本発明の抗体、核酸分子、ベクター、本発明の宿主、または本発明の方法により得られる抗体、および場合により製剤学的に認容性の担体を含む診断用組成物に関する。
【0080】
本発明の診断用組成物は、種々の細胞、組織または別の適切な試料における哺乳動物のFGFR4の望ましくない発現、過剰発現または活性亢進を検出する方法であって、試料と本発明の抗体とを接触させ、試料中のFGFR4の存在を検出することを含む、方法において有用である。従って、本発明の診断用組成物は、過増殖性疾患の発症または疾患状態を評価するのに使用される場合がある。
【0081】
さらには、FGFR4を発現する癌細胞などの悪性細胞も、本発明の抗体を用いてターゲティングすることができる。そのため、本発明の抗体を結合した細胞は、補体系などの免疫系の機能または細胞媒介性細胞障害の攻撃を受け、それにより癌細胞の数が減少するか、癌細胞が根絶する可能性がある。これらの考察は、転移および再発性腫瘍の治療にも等しく適用される。
【0082】
本発明の別の態様においては、本発明の抗体を標識基とカップリングさせる。このような抗体は診断用途に特に適している。本明細書で使用される「標識基」という用語は、検出マーカー(例えば、マーキングされたアビジンによって検出することができる、放射性標識アミノ酸、またはビオチニル部分)を指す。抗体などのポリペプチドおよび糖タンパク質を標識する種々の方法は、当該技術分野で既知であり、本発明を実施する際に使用される場合がある。適切な標識基の例には、以下が含まれるがこれらに限定されない:放射性同位元素または放射性核種(例えば、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光基(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド発光体)、酵素基(例えば、ホースラディシュペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリフォスファターゼ)、化学発光基、ビオチニル基、または二次レポーターにより認識される予め決定されたポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)。
【0083】
特定の態様においては、種々の長さのスペーサーアームによって標識基を結合し、起こり得る立体障害を減少させるのが望ましい場合もある。
【0084】
本発明の上述の実施形態は特に重要である。本発明の抗体は、治療可能な種々の哺乳動物種に対する広範な適用可能性を示すことから、本発明の診断用組成物はまた、種々の哺乳動物種に有用であり、適用される。
【0085】
別の実施形態において、本発明は、FGFR4発現細胞の存在を評価する方法であって、本発明の抗体と、表面にFGFR4を保持する疑いがある細胞または組織とを接触させることを含む方法にも関する。試料中のFGFR4の発現を検出する適切な方法は、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)である場合もあれば、免疫組織化学法(IHC)である場合がある。
【0086】
ELISAアッセイは、例えば、マイクロタイタープレートのウェルにFGFR4抗体を吸着させる、マイクロタイタープレートの形式で行われる場合がある。前記ウェルは、乳タンパク質またはアルブミンなどの遮断剤ですすぎ、処理して、分析物の非特異的な吸着を防止する。次いで、ウェルを試験試料で処理する。試験試料または標準試料を洗い流したら、例えばビオチンとの共役によって標識した二次FGFR4抗体でウェルを処理する。余分な二次抗体を洗い流した後、例えば、アビジン共役ホースラディシュペルオキシダーゼ(HRP)および適切な色素基質で標識を検出する。試験試料中のFGFR4抗原の濃度は、標準試料により作成した標準曲線と比較することによって測定する。
【0087】
IHCにはパラフィン包埋組織が使用される場合があり、この場合は、組織を例えば最初にキシレン中で脱パラフィン化した後、例えばエタノールで脱水し、蒸留水ですすぐ。ホルマリン固定およびパラフィン包埋によりマスキングされた抗原エピトープを、エピトープの脱マスキング、酵素消化またはサポニンによって暴露する場合もある。エピトープの脱マスキングでは、例えば2NのHCl溶液(pH1.0)などのエピトープ回収溶液中で、パラフィン切片を蒸し器、水浴または電子レンジで20〜40分間加熱する場合がある。酵素消化の場合は、プロテイナーゼK、トリプシン、プロナーゼ、ペプシンなどの種々の酵素溶液中で、組織切片を37℃にて10〜30分間インキュベートする場合がある。
【0088】
エピトープ回収溶液または余分な酵素を洗い流した後、組織切片をブロッキング緩衝液で処理して、非特異的な相互作用を防止する。一次FGFR4抗体を適切な濃度で添加する。余分な抗体は洗い流し、切片をペルオキシダーゼブロッキング溶液中で室温にて10分間インキュベートする。洗浄ステップを繰り返した後、例えば、酵素のアンカーとして機能する可能性がある基で標識した二次標識抗体で組織切片をインキュベートする。従って、例としては、ストレプトアビジン結合ホースラディシュペルオキシダーゼにより認識されるビオチン標識二次抗体がある。抗体/酵素複合体の検出は、適切な色素基質でインキュベートすることにより行われる。
【0089】
さらなる実施形態において、本発明は、FGFR4の機能を遮断する方法であって、FGFR4の機能を遮断することができる本発明の抗体と、表面にFGFR4を保持する疑いがある細胞または組織とを接触させることを含む方法にも関する。前記接触は、in vitroにて行われる場合もあれば、in vivoにて行われる場合もある。
【0090】
本発明はまた、過増殖性疾患、代謝性疾患または炎症性疾患を治療する方法であって、前記治療を必要とする患者に、適切な用量の本発明の抗体、抗体断片またはその誘導体を投与することを含む方法にも関する。過増殖性疾患は、好ましくは、EGFR4の発現、過剰発現または活性亢進に関連するか、これらに付随するか、これらにより引き起こされる障害(例えば、癌(例えば、乳癌、肺癌、大腸癌、腎臓癌、リンパ癌、皮膚癌、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、食道癌、バレット癌、胃癌、膀胱癌、子宮頚癌、肝臓癌、甲状腺癌、ならびに増殖性および腫瘍性疾患)、またはFGFR4を発現もしくは過剰発現するその他の疾患)から選択される。
【0091】
本発明はさらに、疾患を治療する方法であって、本発明の抗体が哺乳動物に投与され、前記疾患が、異常なレベルのFGFR4の発現またはFGFR4の活性と直接的または間接的に関連する、方法にも関する。
【0092】
最後に、本発明は、本発明の抗体、抗体断片もしくはその誘導体、前記成分をコードする核酸分子、および/または本発明のベクターを含むキットにも関する。
【0093】
本明細書に開示される化合物を網羅する実施形態はすべて、医薬品を製造するために、単一の化合物としてまたは組み合わせて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】抗FGFR4抗体の10F10および9A5は、当該ファミリーのその他のメンバーであるFGFR1〜FGFR3に結合しない。FGFR1〜FGFR4の細胞外ドメインは、mycタグを有する組換えタンパク質として発現した。組換えタンパク質またはBSAに結合する抗体は、同等のコーティングを制御する抗myc抗体を使用して、ELISAにより検出した。
【図2】L6−FGFR4細胞によるFACSスキャッチャード実験における10F10抗体親和性の測定。
【図3】抗FGFR4抗体の10F10および9A5は、FGF1により誘導されるFGFR4チロシンリン酸化を阻害する。L6−FGFR4細胞を、飢餓状態にして、抗体で1時間インキュベートし、10ngのFGF1で10分間刺激した。FGFR4は、C−19抗体を用いて細胞溶解物から沈殿させ、抗ホスホチロシン抗体4G10を用いてウェスタンブロットをプロービングし、C−19を用いてブロットを再度プロービングした。
【図4】抗FGFR4抗体の10F10および9A5は、FGFR4でトランスフェクトしたL6筋芽細胞内におけるFGF1またはFGF19により刺激されるErkのリン酸化を阻害する。FGFR4で安定してトランスフェクトしたL6細胞を、飢餓状態にして、FGFR4抗体の10F10もしくは9A5または対照抗体の11B7でインキュベートし、FGF1またはFGF19で刺激した。Erkのリン酸化は、実施例2に記載する細胞ELISAにより測定した。
【図5】10F10抗体は、ZR−75−1乳癌細胞におけるFGF19により刺激されるErkのリン酸化を阻害する。実験条件は図2の条件と類似していた。
【0095】
実施例1:抗体の生成
FGFR4に特異的に結合する抗体を生成するため、ヒトFGFR−4細胞外ドメイン(FGFR−4 ex)を含む組換えグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)(Smith&Johnson,1988)融合タンパク質を製造した。本発明者等は、日本住血吸虫のグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)(Pharmacia Biotech、ドイツ フライブルク)をコードする完全DNA配列をpCDNA3のXholおよびApal部位に挿入することによって、真核生物の発現および組換え融合タンパク質の分泌用に設計された、pCDNA3クローニングベクター(Invitrogen、オランダ フローニンゲン)に由来するクローニングベクターpSj26(mod)(Seiffert et al.,1999)を使用した。
【0096】
ヒトFGFR−4の細胞外ドメインを、以下のプライマーを使用してPCRにより増幅した:
センス:5’−GAATTCGCCACCATGCGGCTGCTGCTGGCCCTGTTG−3’、
アンチセンス:5’−CGAGGCCAGGTATACGGACATCATCCTCGAGTT−3’。
【0097】
PCR産物をEcoRIおよびXholで消化し、pSj26(mod)にクローンニングした。得られたpSj26(mod)−FGFR−4ex発現プラスミドを、リン酸カルシウムDNA共沈法により293細胞(ATCC CRL−1573)にトランスフェクトした。細胞を、10%のFCSを補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)内で増殖させた。1mg/mLのG418(Sigma、ドイツ ダイセンホーフェン)を用いて2週間選択した後、GSTに対する抗体を用いたウェスタンブロット分析により、融合タンパク質の発現および分泌に関して生存クローンを試験した。高発現細胞を使用して、FGFR−4exを産生した。培地を融合性培養物から2日おきに採取した。採取した1リットルの培地を無菌濾過し、1mLのグルタチオンセファロース(Pharmacia Biotech、ドイツ フライブルク)で4℃にて一晩インキュベートした。このセファロースを分離し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し。5mLの10mmol/Lグルタチオンを用いて20℃にて溶出を行った。溶出した融合タンパク質を、PBS/10%グリセロール中で1:106(容積/容積)に透析した。タンパク濃度は、MicroBCAタンパク質測定キット(Pierce、米国イリノイ州ロックフォード)を使用して測定した。
【0098】
CPG2006(TIB MOLBIOL)またはフロイント不完全アジュバントをアジュバントとして使用して、Lou/Cまたはロングエバンスラットに約50μgのFGFR4−ECD−GST融合タンパク質を腹腔内および皮下の両方で注入することにより、モノクローナル抗体を発生させた。8週間の間隔を置いた後、融合の3日前に最終ブーストを腹腔内および皮下注入した。骨髄腫細胞系P3X63−Ag8.653とラット免疫脾臓細胞との融合は、標準的な手順に従って行った。ハイブリドーマ上清をアイソタイプおよびサブクラスに関してELISAにより分析し、CHO−FGFR4細胞への結合に関してFACSにより試験した。
【0099】
上で生成した抗体をコードするヌクレオチド配列を決定した結果、配列番号1および2は、10F10抗体の重鎖または軽鎖領域のヌクレオチド配列を示し、配列番号3および4は、9A5抗体の重鎖または軽鎖可変領域のヌクレオチド配列を示している。重鎖および軽鎖領域それぞれのアミノ酸配列は、配列番号5〜8に示されている。
【0100】
配列番号9〜14は、10F10抗体のアミノ酸配列HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3を示し、配列番号15〜20は、9A5抗体のアミノ酸配列HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3を示している。
【0101】
実施例2:抗FGFR4抗体の10F10および9A5は、当該ファミリーのその他のメンバーであるFGFR1〜FGFR3に結合しない
組換えFGFR1〜FGFR4のECDまたはBSAを、12.5nM(1ウェル当たり100μL)にてMaxisorpプレート(Nunc、x)に4℃にて一晩コーティングした。洗浄用緩衝液(PBS pH7.4、0.05%のTween−20)で1回洗浄した後、プレートを、1%のBSAを含む洗浄用緩衝液(ブロッキング緩衝液)中で室温にて2時間遮断した。実施例1に記載したFGFR4抗体の10F10および9A5、非結合対照抗体13F2、または抗myc抗体9E10(Abcam)を、ブロッキング緩衝液(1ウェル当たり100μL)中に1μg/mL添加し、室温にて2時間インキュベートした。プレートを洗浄用緩衝液で6回洗浄し、適切なPOD結合二次抗体で室温にて45分間インキュベートした。洗浄用緩衝液で6回、PBSで1回洗浄した後、1ウェル当たり100μLのTMB POD基質(Calbiochem)を用いて室温にて5分間インキュベートして、停止液(100mLの250mM HCl)を添加することにより、POD活性を測定した。吸光度を450nmにてELISAリーダーで定量化した(図1)。
【0102】
実施例3:FGFR4を過剰発現する細胞の生成
標準的なプロトコル(Current Protocols)に従い、適切なFGFR−4 cDNAをK562細胞(ATCC CCL−243)から増幅させ、Bluescript I KSベクター(Stratagene)にサブクローニングした。次いで、FGFR4 cDNAをpLXSNベクター(Stratagene)にクローニングした。エコトロピックウィルスを産生するパッケージング細胞系GF+E 86(Markowitz et al.,1988)を、リン酸カルシウムDNA共沈法によりこのベクターでトランスフェクトした。トランスフェクトしたGF+E 86細胞の上清を採取し、0.45μmフィルターで濾過した。pLXSNベクターのみで感染させた細胞を対照として使用した。検出できるほどの量のFGFR−4を発現しないラットL6筋芽細胞を感染させるため、細胞をウイルス上清で24時間インキュベートした。48時間後、培地を400pg/mLのG418を含有する培地と交換し、さらにG418で14日間選択した。
【0103】
従って、FGFR4を発現するCHO細胞は、pcDNA3ベクターにクローニングしたFGFR4 cDNAを用いて親CHO細胞をトランスフェトすることにより生成した。クローン細胞系は限定希釈法により生成し、FGFR−4の発現はウェスタンブロット分析により測定した。
【0104】
実施例4:L6−FGFR4細胞によるFACSスキャッチャード実験における10F10および9A5抗体親和性の測定
L6−FGFR4細胞を、10mM EDTAを含むPBSでインキュベートするにより採取し、FACS緩衝液(PBS pH7.4、3%のFCS、0.1%のNaN3)中で600万個/mLの濃度に再懸濁した。丸底マイクロタイタープレート内で、FACS緩衝液中に31.25〜0.01μg/mLの濃度で10F10または9A5抗体を含有する100μLの抗体溶液に、100μLの細胞懸濁液を添加した。抗体結合を氷上で2時間進行させた後、細胞を1ウェルにつき250μLのFACS緩衝液で2回洗浄し、FACS緩衝液中で1:50に希釈した200μLの二次抗体(抗ラットPE、Jackson)中で再懸濁させた。45分間インキュベーションを行った後、細胞をFACS緩衝液中で再度2回洗浄し、次いでFACS分析を行うために500mLのPBS中で再懸濁させた。分析はBeckman−Coulter FACSで行った。見かけの親和性定数KDappを測定するため、平均蛍光と対応する抗体濃度との比率([M])に照らして平均蛍光値を示した。算出されたKDappは、直線の逆傾斜から得たものである(図2)。
【0105】
実施例5:抗FGFR4抗体の10F10および9A5は、FGF1により誘導されるFGFR4チロシンリン酸化を阻害する
1.5×106のL6−FGFR4細胞を、10cm培養皿に播種し、翌日、無血清培地で24時間飢餓状態にした。次いで、10F10または9A5抗体を用いて10μg/mLにて1時間細胞をインキュベートし、10ng/mLのFGF1(R&D Systems、x)で10分間刺激した。細胞を、氷上の1mLの溶解用緩衝液(50mMのTris−HCl、pH 7.4、1%のTriton−X−100、150mMのNaCl、1mMのEDTA、1mMのPMSF、アプロチニン/ロイペプチン、ペプスタチン(それぞれ1μg/mL)、1mMのNa3VO4、1mMのNaF)中でこすり取り、4℃にて10分間10,000xgの遠心分離にかけた。1mLの上清を、回転ホイール上で、プロテインA−セファロースビーズと1μgのポリクローナル抗FGFR4抗体C16(Santa Cruz)からなる20μLの懸濁液を用いて、4℃にて一晩インキュベートした。ビーズを、HNTG緩衝液(20mMのHEPES pH7.5、150mMのNaCl、0.1%のTriton−X−100、10%のグリセロール)で3回洗浄し、40μLのLaemmli緩衝液中で沸騰させた。SDS−PAGEを行った後、タンパク質をニトロセルロース膜上にブロットし、次いで、この膜を遮断して、抗ホスホチロシン抗体4G10(Upstate)で一晩インキュベートした。3回洗浄した後、この膜をHRP結合二次抗体中で室温にて2時間インキュベートし、再度3回洗浄した。そして、ECL系(GE Healthcare)を使用して検出を行った(図3)。
【0106】
実施例6:抗FGFR4抗体の10F10および9A5は、FGFR4でトランスフェクトしたL6筋芽細胞におけるFGF1またはFGF19により刺激されるErkのリン酸化を阻害する
L6−FGFR4細胞を、DMEM/10%FCS中で10,000個/ウェルの濃度にて96ウェルプレートに播種した。細胞を無血清培地中で24時間飢餓状態にした後、新鮮な無血清培地中に10μg/mLの濃度で10F10、9A5またはI11B7抗体を添加した。1時間インキュベーションを行った後、10ng/mLのFGF1または600ng/mLのFGF19を添加することによって細胞を刺激した。FGF19は、Strepタグを有する組換えタンパク質としてHEK−293細胞から発現させた後、StrepTactinアフィニティークロマトグラフィー(IBA)により精製した。発現構築物を構築するため、FGF19のコード配列をpcDNA3ベクターに挿入し、Lipofectamine 2000(Invitrogen)および500μg/mLのG418による選択を使用して、HEK−293を安定してトランスフェクトさせた。
【0107】
刺激後、PBS中に4%のホルムアルデヒドを添加し、室温にて1時間インキュベートすることによって、細胞を固定した。洗浄用緩衝液(PBS pH7.4、0.1%のTween 20)でそれぞれ5分間2回洗浄した後、このプレートを、1ウェル当たり100μLのクエンチング緩衝液(洗浄用緩衝液中1%のH22および0.1%のNaN3)でインキュベートした。さらに2回洗浄した後、1ウェル当たり100μLのブロッキング緩衝液(PBS、0.5%のBSA)を添加し、プレートを4℃にて一晩インキュベートした。翌日、希釈用緩衝液(PBS、0.5%のBSA、0.05%のTween−20、5mMのEDTA)中で、抗phosphoErk抗体(Cell Signaling Technologies)を1:3000の希釈度で添加し、室温にて4時間インキュベートした。細胞を1ウェル当たり200μLの洗浄用緩衝液で3回洗浄し、室温にて90分間POD共役二次抗体でインキュベートした。洗浄用緩衝液で3回およびPBSで1回洗浄した後、100μLのTMBを添加し、プレートを室温にて20分間インキュベートした。1ウェル当たり100μLの停止液を添加した後、吸光度を450nmにてELISAリーダーで測定した(図4)。
【0108】
実施例7:10F10抗体は、ZR−75−1乳癌細胞におけるFGF19により刺激されるErkのリン酸化を阻害する
ZR−75−1細胞をATCCから入手し、RPMI/10%FCS中で慣例的に培養した。抗体のインキュベーション、刺激、およびPhosphoErk−ELISAの実験条件は、実施例6に記載した条件と同じであった。10F10抗体はFGF19により刺激されるErkのリン酸化を遮断する能力を有することが明らかになった(図5)。






【特許請求の範囲】
【請求項1】
FGFR4の細胞外ドメインに結合し、FGFR4活性を少なくとも部分的に阻害する抗体。
【請求項2】
(a)配列番号9もしくは15に示すCDRH1、または1つもしくは2つのアミノ酸がこれと異なるCDRH1配列、
(b)配列番号10もしくは16に示すCDRH2、または1つもしくは2つのアミノ酸がこれと異なるCDRH2配列、および
(c)配列番号11もしくは17に示すCDRH3、または1つもしくは2つのアミノ酸がこれと異なるCDRH3配列
からなる群から選択される少なくとも1つのCDRを含む少なくとも1つの重鎖アミノ酸配列、ならびに/あるいは
(d)配列番号12もしくは18に示すCDRL1、または1つもしくは2つのアミノ酸がこれと異なるCDRL1配列、
(e)配列番号13もしくは19に示すCDRL2、または1つもしくは2つのアミノ酸がこれと異なるCDRL2配列、および
(f)配列番号14もしくは20に示すCDRL3、または1つもしくは2つのアミノ酸がこれと異なるCDRL3配列
からなる群から選択される少なくとも1つのCDRを含む少なくとも1つの軽鎖アミノ酸配列、
あるいはFGFR4の細胞外ドメイン上で同じエピトープを認識する抗体
を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
(a)配列番号9に示すCDRH1、または1つもしくは2つのアミノ酸がこれと異なるCDRH1配列
(b)配列番号10に示すCDRH2、または1つもしくは2つのアミノ酸がこれと異なるCDRH2配列、および
(c)配列番号11に示すCDRH3、または1つもしくは2つのアミノ酸がこれと異なるCDRH3配列
からなる群から選択される少なくとも1つのCDRを含む重鎖、ならびに/あるいは
(d)配列番号12に示すCDRL1、または1つもしくは2つのアミノ酸がこれと異なるCDRL1配列、
(e)配列番号13に示すCDRL2、または1つもしくは2つのアミノ酸がこれと異なるCDRL2配列、および
(f)配列番号14に示すCDRL3、1つもしくは2つのアミノ酸がこれと異なるCDRL3配列
からなる群から選択される少なくとも1つのCDRを含む軽鎖、
あるいはFGFR4の細胞外ドメイン上で同じエピトープを認識する抗体
を含む、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項4】
(a)配列番号15に示すCDRH1、または1つもしくは2つのアミノ酸がこれと異なるCDRH1配列、
(b)配列番号16に示すCDRH2、または1つもしくは2つのアミノ酸がこれと異なるCDRH2配列、
(c)配列番号17に示すCDRH3、または1つもしくは2つのアミノ酸がこれと異なるCDRH3配列
からなる群から選択される少なくとも1つのCDRを含む重鎖、ならびに/あるいは
(d)配列番号18に示すCDRL1、または1つもしくは2つのアミノ酸がこれと異なるCDRL1配列、
(e)配列番号19に示すCDRL2、または1つもしくは2つのアミノ酸がこれと異なるCDRL2配列、
(f)配列番号20に示すCDRL3、1つもしくは2つのアミノ酸がこれと異なるCDRL3配列
からなる群から選択される少なくとも1つのCDRを含む軽鎖、
あるいはFGFR4の細胞外ドメイン上で同じエピトープを認識する抗体
を含む、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項5】
配列番号5および7からなる群から選択される重鎖アミノ酸配列もしくは少なくともこれらの可変ドメイン、または前記重鎖アミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列、ならびに/あるいは配列番号6および8からなる群から選択される軽鎖アミノ酸配列もしくは少なくともこれらの可変ドメイン、または前記軽鎖アミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列、またはFGFR4の細胞外ドメイン上で同じエピトープを認識する抗体を含む、請求項1から4までのいずれか1項に記載の抗体。
【請求項6】
FGFR4により媒介されるシグナル伝達を減少させるか、遮断する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の抗体。
【請求項7】
リガンド結合を減少させるか、遮断する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の抗体。
【請求項8】
FGFR4のリン酸化を減少させるか、遮断する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の抗体。
【請求項9】
細胞増殖を減少させるか、遮断する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の抗体。
【請求項10】
細胞移動を減少させるか、遮断する、請求項1から9までのいずれか1項に記載の抗体。
【請求項11】
モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、多重特異的抗体、またはこれらの断片である、請求項1から10までのいずれか1項に記載の抗体。
【請求項12】
Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、ダイアボディ、または単鎖抗体分子である、請求項1から11までのいずれか1項に記載の抗体。
【請求項13】
IgG1型、IgG2型、IgG3型またはIgG4型の抗体である、請求項1から12までのいずれか1項に記載の抗体。
【請求項14】
標識基とカップリングされている、請求項1から12までのいずれか1項に記載の抗体。
【請求項15】
標識基が、放射性同位元素もしくは放射性核種、蛍光基、酵素基、化学発光基、ビオチニル基、または所定のポリペプチドエピトープである、請求項14に記載の抗体。
【請求項16】
エフェクター基とカップリングされている、請求項1から13までのいずれか1項に記載の抗体。
【請求項17】
エフェクター基が放射性同位元素もしくは放射性核種、毒素、または治療基もしくは化学療法基である、請求項16に記載の抗体。
【請求項18】
治療基または化学療法基が、カリケアマイシン、オーリスタチン−PE、ゲルダナマイシンおよびメイタンシンの誘導体からなる群から選択される、請求項17に記載の抗体。
【請求項19】
骨格タンパク質である、請求項1から18までのいずれか1項に記載の抗体。
【請求項20】
(a)請求項1から19までのいずれかに記載の抗体、抗体断片またはその誘導体をコードする核酸配列、
(b)配列番号1〜4に示す核酸配列、
(c)(a)または(b)の配列のいずれかに相補的な核酸、および
(d)ストリンジェントな条件下で(a)、(b)または(c)にハイブリダイズすることができる核酸配列
からなる群から選択される、単離核酸分子。
【請求項21】
請求項20に記載の核酸配列を含むベクター。
【請求項22】
発現ベクターであり、核酸配列が制御配列に作用的に結合されている、請求項21に記載のベクター。
【請求項23】
請求項21または22に記載のベクターを含む宿主。
【請求項24】
ヒト細胞、細菌細胞、動物細胞、真菌細胞、両生類細胞、または植物細胞である、請求項23に記載の宿主。
【請求項25】
非ヒトトランスジェニック動物である、請求項23に記載の宿主。
【請求項26】
請求項1から19までのいずれか1項に記載の抗体を製造する方法であって、請求項23、24または25に記載の宿主から前記ポリペプチドを得るステップを含む製造方法。
【請求項27】
請求項1から19までのいずれか1項に記載の抗体、請求項20に記載の核酸分子、請求項21もしくは22に記載のベクター、請求項23、24もしくは25に記載の宿主、または請求項26に記載の方法により生成されるポリペプチドを含む医薬組成物。
【請求項28】
製剤学的に認容性の担体、希釈剤および/またはアジュバントを含む、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
場合によりさらなる活性剤も含む、請求項27または28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
過増殖性疾患を診断、予防または治療するための、請求項27から29までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記過増殖性疾患が、FGFR4の発現、過剰発現および/または活性亢進に関連する、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記過増殖性疾患が、乳癌、消化管癌、膵臓癌、前立腺癌、卵巣癌、胃癌、子宮内膜癌、唾液腺癌、肺癌、腎臓癌、大腸癌、結腸直腸癌、甲状腺癌、膀胱癌、神経膠腫、黒色腫、FGFR4を発現または過剰発現するその他の癌、および腫瘍転移形成からなる群から選択される、請求項30または31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
過増殖性疾患を診断、予防または治療するための医薬組成物を製造するための、請求項1から19までのいずれか1項に記載の抗体の使用。
【請求項34】
前記過増殖性疾患が、請求項31から32までのいずれか1項に記載の過増殖性疾患である、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
FGFR4の発現に関連する病態を診断する方法であって、試料と請求項1から19までのいずれか1項に記載の抗体とを接触させること、およびFGFR4の存在を検出することを含む方法。
【請求項36】
病態が請求項31から32までのいずれか1項に記載の過増殖性疾患である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
患者におけるFGFR4の発現に関連する病態を予防または治療する方法であって、前記治療を必要とする患者に、有効量の少なくとも請求項1から19までのいずれか1項に記載の抗体を投与することを含む方法。
【請求項38】
病態が請求項31から32までのいずれか1項に記載の過増殖性疾患である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
患者が、哺乳動物の患者、具体的にはヒトの患者である、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
請求項1から19までのいずれか1項に記載の抗体、請求項20に記載の核酸配列、または請求項21もしくは22に記載のベクターを含むキット。
【請求項41】
さらなる抗腫瘍薬もさらに含む、請求項40に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図5−4】
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【図5−5】
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【公表番号】特表2010−508037(P2010−508037A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535031(P2009−535031)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【国際出願番号】PCT/EP2007/009530
【国際公開番号】WO2008/052796
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(509125903)ユースリー ファーマ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【氏名又は名称原語表記】U3 Pharma GmbH
【住所又は居所原語表記】Bunsenstrasse 1, D−82152 Martinsried, Germany
【Fターム(参考)】