説明

FSK復調器

【課題】温度変化による誤動作を防止することができるFSK復調器を提供する。
【解決手段】FSK変調信号をFSK検波しFSK検波信号を出力するFSK検波部1と、前記FSK検波信号又は前記FSK検波信号に基づく信号と基準電位との比較結果に応じた1ビットデジタル信号を出力するコンパレータ2と、前記1ビットデジタル信号の単位パルス幅を測定し、その測定結果に応じて、前記1ビットデジタル信号の単位パルス幅の変動を抑えるように前記基準電位を変化させるパルス幅測定部34およびD/Aコンバータ35とを備えるFSK復調器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FSK(Frequency Shift Keying)変調信号を復調するFSK復調器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のFSK復調器の一構成例を図4に示す。図4に示す従来のFSK復調器は、FSK検波部1と、コンパレータ2と、MCU(Micro Controller Unit)3’と、コンデンサC1とを備えている。コンデンサC1の一端はコンパレータ2の反転入力端子に接続され、コンデンサC1の他端はグランド電位に接続される。
【0003】
FSK検波部1は、移相器11と、検波用混合器12とを有している。移相器11は、FSK変調信号を90°移相して検波用混合器12に出力する。検波用混合器12は、FSK変調信号と、移相器11の出力信号(90°移相されたFSK変調信号)とを混合し、その混合によって得られたFSK検波信号をコンパレータ2の非反転入力端子に出力する。
【0004】
コンパレータ2は、非反転入力端子に入力されるFSK検波信号と、反転入力端子の電位(基準電位)とを比較し、FSK検波信号が基準電位よりも大きいときにHighレベルになりFSK検波信号が基準電位よりも小さいときにLowレベルになる二値化信号を生成し、その生成した二値化信号をMCU3’に出力する。
【0005】
MCU3’は、シリアル受信部31と、コマンド認識部32とを有している。シリアル受信部31は、MCU3’の内部で生成される同期クロック信号を用いて、コンパレータ2から出力される二値化信号をシリアル信号として受信する。コマンド認識部32は、シリアル受信部31から出力されるシリアル信号を処理して、そのシリアル信号に対応するコマンドを認識し、その認識したコマンドを出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−49876号公報(段落0003、第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
移相器11では、温度変化に弱いセラミックディスクリミネータが一般的に用いられている。そのため、図5に示すように、温度変化によって、検波用混合器12から出力されるFSK検波信号S1の中心電位Vcとコンパレータ2の基準電位VREFとの間にずれが生じて、コンパレータ2から出力される二値化信号S2の単位パルス幅Wが変動し、その結果、コマンド認識部32がコマンドを誤認識してしまうおそれがあった。すなわち、図4に示す従来のFSK復調器は温度変化によって誤動作するおそれがあった。
【0008】
なお、特許文献1には、FSK受信機内部に設けられ、二値化信号を生成するコンパレータに関する記載があるが、そのコンパレータの基準電位に関する開示や示唆は全くない。
【0009】
本発明は、上記の状況に鑑み、温度変化による誤動作を防止することができるFSK復調器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明に係るFSK復調器は、FSK変調信号をFSK検波しFSK検波信号を出力するFSK検波手段と、前記FSK検波信号又は前記FSK検波信号に基づく信号と基準電位との比較結果に応じた二値化信号を出力する比較手段と、前記二値化信号の単位パルス幅を測定し、その測定結果に応じて、前記二値化信号の単位パルス幅の変動を抑えるように前記基準電位を変化させる基準電位変化手段とを備える構成とする。
【0011】
このような構成によると、比較手段の基準電位の変化によって二値化信号の単位パルス幅の変動を抑えられるので、温度変化に伴って二値化信号の単位パルス幅が変動することを抑えることができ、温度変化による誤動作を防止することができる。
【0012】
また、前記基準電位変化手段が、前記二値化信号の単位パルス幅を測定し、その測定結果に応じたデジタル電圧を生成するデジタル電圧生成手段と、前記デジタル電圧をアナログ電圧に変換する変換手段とを有し、前記アナログ電圧の値を前記基準電位とするようにしてもよい。
【0013】
また、前記FSK検波手段がセラミックディスクリミネータを有する構成であってもよい。この場合、前記FSK検波手段が温度変化に弱くなるので、本発明の効果の意義がより顕著なものとなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るFSK復調器によると、温度変化に伴って二値化信号の単位パルス幅が変動することを抑えることができ、温度変化による誤動作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るFSK復調器の構成を示す図である。
【図2】図1に示す本発明の一実施形態に係るFSK復調器における、FSK検波信号の中心電位とコンパレータの基準電位との関係を示す図である。
【図3】CATV用光伝送システムの一構成例を示す図である。
【図4】従来のFSK復調器の一構成例を示す図である。
【図5】図4に示す従来のFSK復調器における、FSK検波信号の中心電位とコンパレータの基準電位との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について図面を参照して以下に説明する。本発明の一実施形態に係るFSK復調器の構成を図1に示す。なお、図1において、図4と同一の部分には同一の符号を付す。
【0017】
図1に示す本発明の一実施形態に係るFSK復調器は、FSK検波部1と、コンパレータ2と、MCU3とを備えている。
【0018】
FSK検波部1は、移相器11と、検波用混合器12とを有している。移相器11は、FSK変調信号を90°移相して検波用混合器12に出力する。検波用混合器12は、FSK変調信号と、移相器11の出力信号(90°移相されたFSK変調信号)とを混合し、その混合によって得られたFSK検波信号をコンパレータ2の非反転入力端子に出力する。
【0019】
コンパレータ2は、非反転入力端子に入力されるFSK検波信号と、反転入力端子の電位(基準電位)とを比較し、FSK検波信号が基準電位よりも大きいときにHighレベルになりFSK検波信号が基準電位よりも小さいときにLowレベルになる1ビットデジタル信号を生成し、その生成した1ビットデジタル信号をMCU3に出力する。なお、コンパレータ2の基準電位は、後述するD/Aコンバータ35から出力されるアナログ電圧の値になる。
【0020】
MCU3は、シリアル受信部31と、コマンド認識部32と、割込入力部33と、パルス幅測定部34と、D/Aコンバータ35とを有している。なお、本実施形態においては、パルス幅測定部34およびD/Aコンバータ35が、請求項に記載している基準電位変化手段に相当し、コンパレータ2から出力される1ビットデジタル信号が、請求項に記載している二値化信号に相当する。ここで、1ビットデジタル信号とは、あらかじめ設定した単位パルス幅のデータを意味する。
【0021】
シリアル受信部31は、MCU3の内部で生成される同期クロック信号を用いて、コンパレータ2から出力される1ビットデジタル信号をシリアル信号として受信する。コマンド認識部32は、シリアル受信部31から出力されるシリアル信号を処理して、そのシリアル信号に対応するコマンドを認識し、その認識したコマンドを出力する。
【0022】
割込入力部33は、コンパレータ2から出力される1ビットデジタル信号を常時監視しており、コンパレータ2から出力される1ビットデジタル信号をシリアル信号として受信してパルス幅測定部34に送る。なお、シリアル受信部31の少なくとも一部と割込入力部33の少なくとも一部とが共用している構成であってもよい。パルス幅測定部34は、割込入力部33から送られてくるシリアル信号の単位パルス幅を測定する。パルス幅測定部34は、単位パルス幅の理想値を予め記憶している記憶部(不図示)を有しており、当該記憶部が記憶している理想値と測定した単位パルス幅の値との間のずれを演算し、その演算結果に応じた値のデジタル電圧を生成してD/Aコンバータ35に出力する。なお、単位パルス幅の理想値は、標準温度(例えば20℃)におけるシリアル信号の単位パルス幅の設計値(理論値)にするとよい。また、上記「その演算結果に応じた値のデジタル電圧」は、標準温度(例えば20℃)からの温度変化によってシリアル信号の単位パルス幅が変化することを抑制するような値のデジタル電圧にするとよい。D/Aコンバータ35は、パルス幅測定部34から出力されるデジタル電圧をアナログ電圧に変換してコンパレータ2の反転入力端子に供給する。
【0023】
ここで、移相器11において温度変化に弱いセラミックディスクリミネータが用いられており、図2に示すように、温度変化によって、検波用混合器12から出力されるFSK検波信号S1の中心電位Vcが変化した場合について考察する。
【0024】
このような場合でも、上述した構成の図1に示す本発明の一実施形態に係るFSK復調器においては、コンパレータ2の基準電位VREFが検波用混合器12から出力されるFSK検波信号S1の中心電位Vcの変化に追随することができる。したがって、コンパレータ2から出力される1ビットデジタル信号s2の単位パルス幅Wが変動することを防止することができ、その結果、コマンド認識部32がコマンドを誤認識することを防止することができる。すなわち、図1に示す本発明の一実施形態に係る復調器は温度変化による誤動作を防止することができる。
【0025】
なお、図1に示す本発明の一実施形態に係るFSK復調器の動作開始直後において、シリアル信号の単位パルス幅の第1回目の測定において、単位パルス幅が理想値からずれているのか、同じ値のデータが連続しているのかの判定をパルス幅測定部34が誤った場合、1ビットデジタル信号の単位パルス幅は、一旦標準温度(例えば20℃)での設計値(理論値)から大きくずれてしまう。しかしながら、パルス幅測定部34での測定を重ねることにより最終的には標準温度(例えば20℃)での設計値(理論値)に近づくので、上記のように動作開始直後において、シリアル信号の単位パルス幅の第1回目の測定において、単位パルス幅が理想値からずれているのか、同じ値のデータが連続しているのかの判定をパルス幅測定部34が誤る場合を想定しても、図1に示す本発明の一実施形態に係るFSK復調器は、図4に示す従来のFSK復調器に比べて、誤動作が起こりにくい。
【0026】
本発明に係るFSK復調器はFSK復調器全般に適用可能であるが、例えば、CATV(Cable Television)用光伝送システムの光受信端末や告知端末に設けられるFSK復調器に適用することができる。
【0027】
ここで、CATV用光伝送システムの一構成例を図3に示す。図3に示す光伝送システムは、コマンド送信用パーソナルコンピュータ(以下、コマンド送信用パソコンという)101と、FSK変調器102と、混合器103と、光送信器104と、光ファイバ105と、光分岐器106と、複数の光ファイバ107と、複数の光受信端末108と、複数の告知端末109とを備えている。光受信端末108には例えば図3に示すようにテレビ受信機110が接続され、告知端末109には例えば図3に示すようにスピーカ111が接続される。光受信端末108および告知端末109はそれぞれFSK復調器(図3において不図示)を有している。
【0028】
コマンド送信用パソコン101と、FSK変調器102と、混合器103と、光送信器104とはセンタ局に設置され、光分岐器106は伝送線路中に設置され、光受信端末108および告知端末109は各加入者宅に設置される。尚、光分岐器106はセンタ局側に設置してもよい。
【0029】
コマンド送信用パソコン101は、コマンド送信用ソフトウェアを内部の記憶部(不図示)に格納しており、そのコマンド送信用ソフトウェアを実行することで、コマンド信号を常時または周期的に生成し、そのコマンド信号をFSK変調器102に出力する。なお、コマンド送信用パソコン101が生成するコマンド信号には、光受信端末108を遠隔制御するためのコマンド信号や告知端末109に地震発生などの告知を実行させるためのコマンド信号などが含まれる。
【0030】
FSK変調器102は、コマンド送信用パソコン101からのコマンド信号をFSK変調して混合器103に送出する。混合器103は、TV信号であるRF信号と、FSK変調器102からのFSK変調されたコマンド信号とを混合した混合信号を光送信器104に出力する。光送信器104は、混合器103からの混合信号を光信号に変換し、その光信号を光ファイバ105経由で光分岐器106に伝送する。光送信器104は、例えば、混合器103からの混合信号の変化に応じて光変調度を調整した後、レーザーダイオードにより混合器103からの混合信号を光信号に変換している。
【0031】
光分岐器106は、光ファイバ105によって伝送されてきた光信号を分岐して各光ファイバ107経由で各加入者宅の各光受信端末108および各告知端末109に伝送する。
【0032】
光受信端末108は、受け取った光信号を電気信号に変換し、その電気信号に含まれているRF信号を同軸ケーブル経由でテレビ受信機110に伝送し、また、その電気信号に含まれているFSK変調されたコマンド信号をFSK復調器(図3において不図示)によって復調してコマンドを認識し、認識したコマンドに従って遠隔制御が実行される。
【0033】
告知端末109は、受け取った光信号を電気信号に変換し、その電気信号に含まれているFSK変調されたコマンド信号をFSK復調器(図3において不図示)によって復調してコマンドを認識し、認識したコマンドに従って告知が実行される。
【0034】
図3に示す光伝送システムでは、センタ局に設置されたFSK変調器102が通常温度管理されているので、FSK変調器102において温度変化によりコマンド信号の単位パルス幅が変動する可能性は極めて低い。
【0035】
また、図3に示す光伝送システムでは、コマンド信号が常時または周期的に生成されるので、光受信端末108および告知端末109に設けるFSK復調器を図1に示す本発明の一実施形態に係るFSK復調器にした場合、図1に示す本発明の一実施形態に係るFSK復調器において、常時または周期的にシリアル信号の単位パルス幅が修正されるので、シリアル信号の単位パルス幅が理想値から大きくずれることがない。これに対して、図1に示す本発明の一実施形態に係るFSK復調器にコマンド信号が長時間送信されないようなシステムでは、コマンド信号が長時間送信されていない期間に、シリアル信号の単位パルス幅が理想値から大きくずれてしまっても、単位パルス幅が理想値からずれているのか、同じ値のデータが連続しているのかをパルス幅測定部34が判定できない。したがって、このように判別不能になった場合は、パルス幅測定部34が、予め設定した基準デジタル電圧(例えば、パルス幅測定部34の記憶部が予め記憶している単位パルス幅の理想値と測定した単位パルス幅の値との間のずれが無い場合に生成されるデジタル電圧と同一値のデジタル電圧)をD/Aコンバータ35に出力するようにするとよい。
【0036】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実行することができる。
【0037】
例えば、上述した実施形態では、検波用混合器12の出力側とコンパレータ2の非反転入力端子とが直接接続される構成であるが、検波用混合器12の出力側とコンパレータ2の非反転入力端子との間にローパスフィルタなどを設けてもよい。
【0038】
なお、パルス幅測定部34に入力されるシリアル信号のデータフレーム構成は特に限定されない。すなわち、シリアル信号のデータフレームのビット数は特に限定されない。
【0039】
また、低コスト化および小型化の観点から、FSK検波部1およびコンパレータ2を含む回路の一部を集積化することが好ましい。
【符号の説明】
【0040】
1 FSK検波部
2 コンパレータ
3、3’ MCU
11 移相器
12 検波用混合器
31 シリアル受信部
32 コマンド認識部
33 割込入力部
34 パルス幅測定部
35 D/Aコンバータ
101 コマンド送信用パソコン
102 FSK変調器
103 混合器
104 光送信器
105、107 光ファイバ
106 光分岐器
108 光受信端末
109 告知端末
110 テレビ受信機
111 スピーカ
C1 コンデンサ
S1 FSK検波信号
S2 二値化信号
s2 1ビットデジタル信号
Vc FSK検波信号の中心電位
REF コンパレータの基準電位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
FSK変調信号をFSK検波しFSK検波信号を出力するFSK検波手段と、
前記FSK検波信号又は前記FSK検波信号に基づく信号と基準電位との比較結果に応じた二値化信号を出力する比較手段と、
前記二値化信号の単位パルス幅を測定し、その測定結果に応じて、前記二値化信号の単位パルス幅の変動を抑えるように前記基準電位を変化させる基準電位変化手段とを備えることを特徴とするFSK復調器。
【請求項2】
前記基準電位変化手段が、
前記二値化信号の単位パルス幅を測定し、その測定結果に応じたデジタル電圧を生成するデジタル電圧生成手段と、
前記デジタル電圧をアナログ電圧に変換する変換手段とを有し、
前記アナログ電圧の値を前記基準電位としている請求項1に記載のFSK復調器。
【請求項3】
前記FSK検波手段がセラミックディスクリミネータを有する請求項1または請求項2に記載のFSK復調器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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