説明

Fc−融合タンパク質の精製法

本発明は、プロテインA又はGアフィニティークロマトグラフィー、カチオン交換クロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィー及びヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーを含む、6.9〜9.5のpHを有するFc-融合タンパク質の精製のための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、タンパク質精製の分野に関する。より具体的には、プロテインA又はプロテインGアフィニティークロアトグラフィー、カチオン交換クロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィー、及びヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーによるFc-融合タンパク質の精製に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
タンパク質は、一般的に「生物製剤」と称される薬物として商業的に重要となっている。最も大きな挑戦は、商業的スケールでのタンパク質の精製のための費用有効的及び効率的な方法の開発である。大-スケールでのタンパク質の製造のために今日多くの方法が利用できるが、細胞培養上清のような粗生成物は、所望の生成物のみならず、所望の生成物から分離が困難な不純物をも含む。細胞発現組換えタンパク質産物の細胞培養上清は、細胞が血清無しの培地で増殖する場合には、不純物がほとんどないことがあるが、宿主細胞タンパク質(HCP)は、精製過程で依然として除去されてしまう。更に、保険機関は、ヒト投与を意図したタンパク質の高い純度標準を要求している。
【0003】
多くの精製方法は、低又は高いpH、高い塩濃度、又は所与のタンパク質の生物活性を脅かすかもしれない他の極端な条件の適用を要求するステップを含む。従って、任意のタンパク質にとって、十分な純度と同時にタンパク質の生物活性を維持することができる精製方法を確立することは挑戦である。
【0004】
タンパク質精製のために広く使用されている多数のクロマトグラフ装置が知られている。
【0005】
イオン交換クロマトグラフィー装置は、電荷の差に主に基づくタンパク質の分離のために使用されている。イオン交換クロマトグラフィーにおいて、溶質の表面に電荷されたパッチは、周囲の緩衝液のイオン強度が低いことを条件に、クロマトグラフィーマトリックスに結合された反対の電荷によって引き付けられる。溶出液は、一般的に、緩衝液のイオン強度(すなわち、電導度)を増加させて、イオン交換マトリックスの電荷部位について溶質と競争することによって達成される。pHの変化及びそれによって溶質の電荷を変えることは、溶質の溶出を達成する別の方法である。電導度又はpHの変化は、徐々に(グラジエント溶出)でも又は段々と(段階溶出)でもよい。
【0006】
アニオン交換体は、弱いか又は強いかによって分類される。アニオン交換体上の電荷基は、脱プロトン化されよって高いpHでその電荷を失う、弱い塩基である。DEAE-セファロースは、アミノ基がpH 9未満で正に電荷され、徐々に高いpH値でその電荷を失う、弱いアニオン交換体の例である。ジエチルアミノエチル(DEAE)又はジエチル-(2-ヒドロキシ-プロピル)アミノエチル(QAE)は、例えば、対イオンとしての塩化物を有する。一方、強いアニオン交換体は、イオン交換クロマトグラフィーのために通常使用されるpHの範囲(pH 1〜14)に渡って正に荷電されたままである、強い塩基を含む。Q-セファロース(Qは第四級アンモニウムを示す)は、強いアニオン交換体の例である。
【0007】
カチオン交換体も弱いか又は強いかによって分類される。強いカチオン交換体は、pH 1〜14に荷電されたままである強い酸(例えばスルホプロピル基)を含む;一方、弱いカチオン交換体は、pHが4又は5に減少するのでその電荷を徐々に失う弱酸(例えばカルボキシメチル基)を含む。カルボキシメチル(CM)及びスルホプロピル(SSP)は、例えば対イオンとしてナトリウムを有する。
【0008】
異なったクロマトグラフィー樹脂は、ヒドロキシアパタイトと称される不溶性ヒドロキシル化リン酸カルシウムマトリックスに基づく。ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーは、マトリックス及びリガンドを形成する、不溶性ヒドロキシル化リン酸カルシウム(Ca5(PO4)3OH)2を利用するタンパク質の精製法である。官能基は、正に荷電したカルシウムイオン(C-部位)の対と、負に荷電したリン酸基(P-部位)のクラスタからなる。ヒドロキシアパタイトとタンパク質との相互作用は、複雑でかつ多数の形式である。相互作用の1つの方法では、タンパク質上の正に荷電したアミノ基は、負に荷電したP-部位と関連し、タンパク質のカルボキシル基は、C-部位への配位複合体形成によって相互作用する(Shepard et al., 2000)。
【0009】
結晶ヒドロキシアパタイトは、クロマトグラフィーで使用されるヒドロキシアパタイトの第1の種類であった。セラミックのヒドロキシアパタイト(CHA)クロマトグラフィーは、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーにおける更なる発展である。セラミックのヒドロキシアパタイトは、高い耐久性、優れたタンパク質結合能を有し、結晶ヒドロキシアパタイトよりも高い流速及び圧力において使用できる(Vola et al., 1993)。
【0010】
ヒドロキシアパタイトは、タンパク質、核酸及び抗体のクロマトグラフ分離において使用されてきた。ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーにおいて、カラムは、通常、平衡化され、試料は低濃度のリン酸緩衝液で適用され、次いで吸着されたタンパク質はリン酸緩衝液の濃度勾配で溶出される(Giovannini et al., 2000)。
【0011】
タンパク質を精製する更なる方法は、クロマトグラフィー樹脂に固定されている別のタンパク質に対する対象のタンパク質の親和性に基づく。かかる固定されたリガンドの例は、ある免疫グロブリンのFc部分に特異性を有する、細菌細胞壁タンパク質であるプロテインA及びプロテインGである。プロテインA及びプロテインGはIgG抗体に対して強い親和性を有するが、それらは他の免疫グロブリン種及びアイソタイプに対して様々な親和性を有する。
【0012】
プロテインAは、細菌スタフィロコッカス・オウレウス(Staphylococcus aureus)によって産生され、IgGのFc部位に対する4つの結合部位を含む、43,000ダルトンタンパク質である。プロテインGは、G ストレプトコッキィ(G Streptococci)から産生され、IgGのFc部位に対して2つの結合部位を有する。2つのタンパク質は、様々な種類の免疫グロブリンに対するその親和性によって広く特徴付けられている。プロテインLは、免疫グロブリン及びIg軽鎖を含むその断片に結合するペプトストレプトコッカス属(Peptostreptococcus)から産する更なる細菌タンパク質である(Akerstrom and Bjork, 1989)。
【0013】
プロテインA、プロテインG及びプロテインLのアフィニティークロマトグラフィーは、免疫グロブリンの単離及び精製のために広く使用されている。
【0014】
プロテインA及びプロテインGの結合部位が免疫グロブリンのFc部位にあるので、プロテインA及びプロテインGのアフィニティークロマトグラフィーもいわゆるFc-融合タンパク質の精製を可能にする。
【0015】
Fc-融合タンパク質は、例えば一般的に免疫グロブリンG(IgG)である免疫グロブリンのFc部位に融合された、受容体の結合部位のようなタンパク質のエフェクタ部位からなるキメラタンパク質である。Fc-融合タンパク質は、Fc部位によって与えられる効果を与える治療薬として広く使用されている、例えば;
−IgGのアイソタイプによって変化する親和性を有するプロテインA又はプロテインGのアフィニティークロマトグラフィーを用いる、精製の可能性。IgG1、IgG2及びIgG4はプロテインAに強く結合し、IgG3を含むすべてのヒトIgGはプロテインGに強く結合する;
−Fc部位はリソソーム分解から保護する救助受容体FcRnに結合するので、循環系において半減期が増加する;
−Fc-融合タンパク質の医薬的使用によっては、Fcエフェクタ機能は望ましいことがある。このようなエフェクタ機能は、Fc受容体(FcγRs)との相互作用を介する抗体-依存的細胞毒性(ADCC)、及び補体成分1q(C1q)に結合することによる補体-依存的毒性(CDC)を含む。IgGアイソフォームは、様々なレベルのエフェクタ機能を発揮する。ヒトIgG1及びIgG3は強いADCC及びCDC効果を有するが、ヒトIgG2は弱いADCC及びCDC効果を発揮する。ヒトIgG4は弱いADCC及びCDC効果を示す。
【0016】
血清半減期及びエフェクタ機能は、Fc-融合タンパク質についての意図した治療的使用に依拠して、それぞれ、FcRn、FcγRs及びC1qへのその結合を増加又は減少するためのFc領域を設計することによって調節され得る。
【0017】
ADCCにおいて、抗体のFc領域は、標的細胞の食作用又は溶解をもたらす、ナチュラルキラー及びマクロファージのような免疫エフェクタ細胞の表面上のFc受容体(FcγRs)二結合する。
【0018】
CDCにおいて、抗体は、細胞表面上の補体カスケードを誘導することによって標的細胞を殺傷する。IgGアイソフォームは、IgG4<IgG2<IgG1<IgG3の順に増えるエフェクタ機能の異なったレベルを発揮する。ヒトIgG1は、高いADCC及びCDCを示し、病原体及び癌細胞に対する治療的用途に最も好適である。
【0019】
ある環境下において、例えば標的細胞の削除が望ましい場合には、エフェクタ機能の破壊又は減少が必要とされることがある。反対に、癌の研究的使用を意図した抗体の場合には、エフェクタ機能の増加は、その治療的活性を改善することがある(Carter et al., 2006)。
【0020】
エフェクタ機能の修飾は、FcγRs又は補体因子へのその結合を改善し又は減少させるために、Fc領域を設計することによって達成される。
【0021】
IgGの、活性化(FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIIa及びFcγRIIIb)及び阻害(FcγRIIb)FcγRs、又は補体(C1q)の第1成分への結合は、ヒンジ領域及びCH2ドメインに位置する残基に依拠する。CH2ドメインの2つの領域は、FcγRs及び補体C1q結合には重要であり、IgG2及びIgG4において唯一の配列を有する。例えば、位置233〜236のIgG2残基の、ヒトIgG1への置換はADCC及びCDCを相当に減少させた(Armour et al., 1999、及びShields et al., 2001)。
【0022】
多数の変異は、IgGのCH2ドメインにおいて作製されており、ADCC及びCDCに対するその効果をvitroで試験した(Shields et al., 2001, Idusogie et al., 2001 and 2000, Steurer et al., 1995)。特に、E333でのアラニンへの変異は、ADCC及びCDCを増加させることが報告された(Idusogie et al., 2001 and 2000)。
【0023】
治療抗体の血清半減期の増加は、その効率を改善する別の方法であり、より高い循環レベル、頻度の少ない投与及び投薬量の減少を可能にする。このことは、新生児FcR(FcRn)へのFc領域の結合を亢進することによって達成される。FcRnは、内皮細胞の表面上に発現し、pH-依存的方法でIgGと結合し、それを分解から保護する。CH2とCH3ドメインとの間の境界にある数個の変異は、IgG1の半減期を増加させることが明らかになっている(Hinton et al., 2004、及びVaccaro et al., 2005)。
【0024】
以下の表1は、IgG Fc領域のいくつかの公知の変異を纏めたものである(Invivogenのウェブサイトから入手)。
【0025】
【表1】

【0026】
治療的有用性を有するある公知のFc-融合タンパク質において、Fc-領域は、腫瘍壊死因子受容体(TNF-R)スーパーファミリーに属するある受容体の細胞外ドメインに融合されている(Locksley et al., 2001 , Bodmer et al., 2002, Bossen et al., 2006)。TNFRファミリーのメンバーの顕著な特徴は、例えばNaismith and Sprang, 1998に記載のように、細胞外ドメインにおけるシステイン-豊富な擬似反復の存在である。
【0027】
2つの受容体、p55(TNFR1)及びp75 TNFR(TNFR2)は、TNFRスーパーファミリーのこのようなメンバーの例である。エタネルセプトは、p75 TNFRの溶解性部分を含むFc-融合タンパク質である(例えば、WO91/03553、WO 94/06476)。商標名エンブレル(登録商標)の下で、子宮内膜症、C型肝炎感染、HIV感染、乾癬性関節炎、乾癬、リウマチ様関節炎、喘息、強直性脊椎炎、心不全、移植片対宿主病、肺線維症、クローン病の治療のために市販されている。レネルセプトは、ヒトp55 TNF受容体の細胞外成分及びヒトIgGのFc部分を含む融合タンパク質であり、重度の敗血症及び多発性硬化症の可能な治療を目的としている。
【0028】
OX40もまた、TNFRスーパーファミリーのメンバーである。OX40-IgG1及びOX40-hlG4mut融合タンパク質は、クローン病のような炎症性及び自己免疫疾患の治療のために製造されている。
【0029】
BAFF-RのFc-融合タンパク質は、BR3-Fcを表わすBR3とも称され、BAFF(TNFファミリーのB-細胞活性化因子)の一連の阻害剤からの溶解性おとり受容体であり、リウマチ様関節炎(RA)及び全身性紅斑性狼瘡(SLE)のような自己免疫疾患の可能な治療のために開発されている。
【0030】
BCMAは、TNFRスーペーファミリーに属する更なる受容体である。BCMA-Ig融合タンパク質は、自己免疫疾患を阻害することが記載されている(Melchers, 2006)。
【0031】
TNF-Rスーパーファミリーの別の受容体は、膜貫通型活性化因子及びCAML-インターカレーターであるTACIであり(von Bulow and Bram, 1997; 米国特許第5,969,102号明細書, Gross et al., 2000)、これは、2対のシステイン-豊富な擬似反復を含む細胞外ドメインを有する。TACIは、腫瘍壊死因子(TNF)リガンドファミリーの2つのメンバーに結合する。1つのリガンドは、BLyS、BAFF、ニュートロカイン-α、TALL-1、zTNF4、又はTHANKと称される(Moore et al., 1999)。他のリガンドは、PRIL、NRF死亡リガンド-1又はZTNF2と称されている(Hahne et al., J. Exp. Med. 188: 1185 (1998))。
【0032】
IgG Fc領域に融合されたTACI受容体の溶解形態を含む融合タンパク質は、周知であり、TACI-Fcと称される(WO 00/40716、WO 02/094852)。TACI-Fcは、B-細胞へのBLyS及びAPRILの結合を阻害する(Xia et al., 2000)。全身性紅斑性狼瘡(SLE)、リウマチ様関節炎(RA)及び血液悪性腫瘍を含む自己免疫疾患の治療、並びに多発性硬化症(MS)の治療にために開発されている。これに加えて、TACI-Fcは、多発性骨髄腫(MM)において(Novak et al., 2004; Moreau et al., 2004)、並びに非-ホジキンリンパ腫(NHL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)及びワルデンシュトレームマクログロブリン血症(WM)において開発されている。
【0033】
Fc-融合タンパク質、特にTNFRスーパーファミリーの細胞外部分を含むそのタンパク質の治療的有用性を考慮すると、ヒト投与のために十分である高度に精製されたタンパク質のかなりの量が必要である。
【0034】
WO 02/094852は、プロテインAクロマトグラフィー、次いでS-200サイズ排除クロマトグラフィーを含む、TACI-Fcの部分的な精製法を記載している。WO 03/059935は、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーとプロテインAに対するアフィニティークロマトグラフィーとの組み合わせを用いる、p75 TN FR: Fc-融合タンパク質の精製法を開示している。しかしながら、WO 03/059935に記載の方法において、Fc-融合タンパク質は、ヒドロキシアパタイトに結合せず、よってヒドロキシアパタイトカラムのフロースルーに含まれる。これに加えて、イオン交換クロマトグラフィーの使用は、p75 TNFR: Fc-融合タンパク質の精製のためには記載されていない。
【0035】
WO 2005/044856は、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーによって抗体精製から高分子量凝集体を除く方法を開示している。プロテインA、アニオン交換クロマトグラフィー及びヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーを用いる精製法も同様に開示されている。しかしながら、まず、この方法は、抗体について専ら記載されており、第二に、プロテインAアフィニティー間のカチオン交換クロマトグラフィーステップ及びアニオン交換ステップの使用の開示がない。
【0036】
WO 94/06476は、TNF又はレクチンアフィニティークロマトグラフィー、アニオン又はカチオン交換クロマトグラフィー及び逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)に基づく組換え溶解性TNF受容体のための仮想的な精製プロトコールを提案している。ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーは、溶解性TNF受容体のための好適な精製ステップとしてこの文献には記載されていない。
【0037】
米国特許出願第2002/0115175号は、TNFαコンバターゼ酵素のようなメタロプロテアーゼの精製を記載している。TACEは、例えばインターネット上で入手可能な「EMBL WWW Gateway to Isoelectric Point Service」を用いて計算された、約5.4の理論上等電点を有する。TACEは、(プロ-)TNFαに結合された膜のN-末端で8個のアミノ酸を切り離すプロテアーゼである。よって、サイトカインTNFαは、細胞膜から放出され、よって活性化される。米国特許出願第2002/0115175号に開示されたTACEの精製法は、小麦胚凝集素アガロースについてのステップを含む。TACEのFc-融合タンパク質もこの文献に記載されているが、精製はされていない。
【0038】
EP 1 561 756は、プロテインA又はG型クロマトグラフィーのみではタンパク質からのDNA汚染物の分離のために十分ではなく、そして、タンパク質を精製するために、アニオンもしくはカチオン交換クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー又はそれらの組み合わせのような更なるステップが使用できる、ことを開示している。これらのクロアトグラフィーステップについては特定の順が提案されていない。更に、EP 1 561 756が言及するタンパク質は、造血因子、サイトカイン及び抗体である。Fc-融合タンパク質はEP 1 561 756には記載されていない。
【0039】
EP 1 614 693は、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィー及びカチオン交換クロマトグラフィーに基づく抗体の精製方法を開示している。この文献では、アニオン交換クロマトグラフィー及びカチオン交換クロマトグラフィーをこの順で、あるいは、カチオン交換クロマトグラフィーに次いで疎水性クロマトグラフィーによって、抗体を精製することが記載されている。疎水性クロマトグラフィーは、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーを含む任意の他の種類のクロマトグラフィーによって置き換えてもよい。Fc-融合タンパク質は、EP 1 614 693では言及されていない。
【0040】
Feng等(2005)は、プロテインAでの最初の捕獲ステップ、次いで疎水性相互作用クロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィー、カチオン交換クロマトグラフィー又はヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーでよい洗練ステップに基づく、抗体の精製法を開示している。しかしながら、Feng等は、抗体精製法を開示しているにすぎず、Fc-融合タンパク質のための方法については開示していない。このことに加えて、最初のプロテインAアフィニティーステップとは別に、宿主細胞タンパク質(HCP)、凝集体、DNA、ウイルス汚染物質及び浸出されたプロテインAのようなすべての望ましくない不純物を系統的に除くために、特定の順序が示唆されていない。
【0041】
従って、ヒト投与に好適であるような純度を生じるFc-融合タンパク質の効率的な精製法が未だ見出されていない。
【発明の概要】
【0042】
発明の概要
本発明は、Fc-融合タンパク質の精製法の開発に基づく。
【0043】
従って、第1の局面では、本発明は、
a. Fc-融合タンパク質を含む液体をプロテインA又はプロテインGアフィニティークロマトグラフィーに供し;
b. ステップ(a)の溶出液をカチオン交換クロマトグラフィーに供し;
c. ステップ(b)の溶出液をアニオン交換クロマトグラフィーに供し;並びに
d. ステップ(c)のフロースルーをヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーに供し、及び溶出液を集めて精製されたFc-融合タンパク質を得ること、
を含むFc-融合タンパク質の精製法に関する。
【0044】
本方法は、7.0〜9.5の範囲の等電点(pl)を有するFc-融合タンパク質を精製するために使用される。
【0045】
本方法は、好ましくは、治療的Fc-融合タンパク質、ヒト投与を目的としてFc-融合タンパク質を精製するために使用される。それは、より好ましくは、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーのメンバーの細胞外タンパク質、特に細胞外部分に結合し場合によりそれを阻害するリガンドを含むFc-融合タンパク質、のために使用される。
【0046】
ステップ(b)は、いわゆる遊離のFc、すなわち、TNFRファミリーのメンバーのリガンド結合細胞外部分のような完全な治療的部分に融合されない免疫グロブリン重鎖ドメインの除去に好適であることが、驚くべきことに明らかになっている。
【0047】
第2の局面では、本発明は、遊離のFcタンパク質の1 %又は0.5 %又は0.2 %又は0.1 %未満を含む、精製されたFc-融合タンパク質、好ましくは治療的Fc-融合タンパク質、より好ましくは腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーのメンバーの細胞外部分、特にリガンド結合細胞外部分を含むFc-融合タンパク質に関する。
【0048】
ステップ(a)、(c)及び(d)の組み合わせが、治療上不活性でヒト投与のために望ましくない、Fc-融合タンパク質の凝集体を顕著に除いた、ことが更に明らかになっている。
【0049】
従って、第3の局面では、本発明は、Fcタンパク質凝集体の1 %未満又は0.5 %未満、及び/又は遊離Fcタンパク質の0.5 %未満又は0.2 %未満又は0.1 %未満を含む、精製されたFc-融合タンパク質の組成物、好ましくは治療的Fc-融合タンパク質、より好ましくは腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーのメンバーの細胞外部分、特にリガンド結合細胞外部分を含むFc-融合タンパク質に関する。
【0050】
本発明の更なる局面は、Fc-融合タンパク質調製物、好ましくは治療的Fc-融合タンパク質調製物、より好ましくは腫瘍壊死因子受容体ファミリーのメンバーの細胞外部分を含むFc-融合タンパク質又はその断片に結合し場合によりそれを阻害するリガンドを含む調製物、における遊離Fcの除去のためのカチオン交換クロマトグラフィーの使用に関する。
【0051】
本発明の更なる局面は、Fc-融合タンパク質の調製物、好ましくは治療的Fc-融合タンパク質の調製物、より好ましくは腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーのメンバーの細胞外部分を含むFc-融合タンパク質又はそのリガンド結合断片の調製物、における凝集体の除去のためのヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、実施例2に記載のカチオン交換クロマトグラフィーから生じた異なった分画の非-還元型銀染色SDS-PAGEを示す。レーン1:分子量マーカー、レーン2:精製されたTACI-Fc、レーン3:ロード、レーン4:洗浄2、レーン:溶出液2、レーン6:洗浄3、レーン7:溶出液3、レーン8:洗浄1、レーン9:溶出液1、レーン10:精製された遊離Fc。
【図2】図2は、実施例2に記載のカチオン交換クロマトグラフィーのクロマトグラフ的プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
発明の詳細な説明
本発明は、ヒト投与に好適である高度に精製されたTACI-Fc調製物をもたらす、TACI-Fcと称される模範的な治療的Fc-融合タンパク質のための精製法の開発に基づく。
【0054】
従って、本発明は、以下のステップ:
a. Fc-融合タンパク質を含む液体をプロテインA又はプロテインGアフィニティークロマトグラフィーに供し;
b. ステップ(a)の溶出液をカチオン交換クロマトグラフィーに供し;
c. ステップ(b)の溶出液をアニオン交換クロマトグラフィーに供し;
d. ステップ(c)のフロースルーをヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーに供し、及び溶出液を集めて、精製されたFc-融合タンパク質を得ること、
を含むFc-融合タンパク質の精製法に関する。
【0055】
本発明の1つの実施態様では、該精製法は、レクチンアフィニティークロマトグラフィーについてのステップ、特に小麦胚凝集素アガロースについてのステップを含まない。
【0056】
本発明の方法は、6.9〜9.5の範囲のplを有するFc-融合タンパク質を精製するために使用される。タンパク質の「等電点」又は「pl」は、タンパク質が0に等しい正味総電荷を有するpHすなわち、タンパク質が等しい数の正電荷及び負電荷を有するpH、である。任意の所与のタンパク質のplの決定は、等電点電気泳動法のような定評のある技術によって行うことができる。
【0057】
従って本発明に従って精製されるFc-融合タンパク質のplは、例えば、6.9、6.95、7.0、7.05、7.1、7.15、7.2、7.25、7.3、7.35、7.4、7.45、7.5、7.55、7.6、7.65、7.7、7.75、7.8、7.85、7.9、7.95、8.0、8.05、8.1、8.15、8.2、8.25、8.3、8.35、8.4、8.45、8.5、8.55、8.6、8.65、8.7、8.75、8.8、8.85、8.9、8.95、9.0、9.05、9.1、9.15、9.2、9.25、9.3、9.35、9.4、9.45、9.5のいずれかである。好ましくは、本発明に従って精製されるFc-融合タンパク質のplは、8〜9又は8.0〜9.0、より好ましくは8.3〜8.6である。
【0058】
本発明の方法は、好ましくは、治療的Fc-融合タンパク質、すなわち、動物の疾患の治療又は予防、好ましくはヒトの治療を意図したFc-融合タンパク質、の精製のためのものである。より好ましくは、本発明の方法は、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーのメンバーの細胞外部分を含むFc-融合タンパク質の精製のためのものである。該細胞外部分は、好ましくは細胞外部分又はそれぞれの受容体のドメインのリガンド結合断片である。本発明に従って精製できる好ましいFc-融合タンパク質は、リガンドに結合し、そしてリガンド機能、例えば受容体活性化を阻害又は遮断する。
【0059】
本明細書で使用する用語「Fc-融合タンパク質」は、タンパク質、特に、本明細書で「Fc-部分」と称される免疫グロブリン-由来の部分、及び疾患の治療を意図しているか否かにかかわらず、本明細書で「治療的部分」と称される第2の非-免疫グロブリンタンパク質由来の部分を含む、治療的タンパク質、を包含することを意味する。
【0060】
本明細書で用いる用語「遊離のFc」は、本発明の方法に従って精製されるFc-融合タンパク質の任意の部分を包含することを意味し、Fc-融合タンパク質の免疫グロブリンから得られ、そしてFc-融合タンパク質の治療的部分の重要な部分を含まない。従って、遊離のFcは、例えばパパイン開裂によって生じるFc部分に対応する治療的部分の重要部分に連結しない又は結合しない、IgGヒンジ、CH2及びCH3ドメインの二量体を含んでもよい。Fc-部分から得られる単量体は、遊離のFc分画に含まれてもよい。当然のことながら、遊離のFcは、Fc-部分に融合された治療的部分に属する例えば1〜10(例えば、2、3、4、5、6、7、8又は9)アミノ酸のような、治療的部分由来の多数のアミノ酸残基を更に含んでもよい。
【0061】
Fc-部分は、好ましくはIgGであるヒト又は動物の免疫グロブリン(Ig)から得られてもよい。IgGは、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4でよい。Fc-部分は、免疫グロブリン好ましくはIgGの重鎖から得られることも好ましい。より好ましくは、Fc-部分は、免疫グロブリン重鎖定常領域のドメインのような部分を含む。かかるIg定常領域は、好ましくは、ヒンジ、CH2、CH3ドメイン又はそれらの任意の組み合わせから選ばれる少なくとも1つのIg定常ドメインを含む。Fc-部分は、少なくともCH2及びCH3ドメインを含むことが好ましい。Fc-部分はIgGヒンジ領域、CH2及びCH3ドメインを含むことが更に好ましい。
【0062】
本発明のFc-融合タンパク質は、単量体でも又は二量体でもよい。Fc-融合タンパク質は、その内の1つが治療的部分に融合された二量性のFc-部分を含む「偽-二量体」(例えば、2つのジスルフィド-架橋ヒンジ-CH2-CH3-構造体の二量体)でもよい。
【0063】
Fc-融合タンパク質は、2つの異なった治療的部分、又は単一の治療的部分の2つのコピーを含むホモダイマーを含むヘテロダイマーでもよい。
【0064】
本発明に従って、Fc-部分は、エフェクタ機能を調節するために修飾されていてもよい。例えば、Fc-部分がIgG1から得られる場合に、EU位置指数(EU index position)(Kabat et al., 1991)に従う以下のFc変異:
T250Q/M428L
M252Y/S254T/T256E + H433K/N434F
E233P/L234V/L235A/ΔG236 + A327G/A330S/P331S
E333A; K322A
が導入され得る。
【0065】
更に、Fc変異は、例えば、330、331、234もしくは235又はそれら組み合わせから選ばれるEU位置指数の置換体であってもよい。CH2ドメインに位置するEU位置指数297でのアミノ酸置換は、本発明の文脈において、N-連結糖類結合の可能性のある部位を除いて、Fc-部分に導入されてもよい。EU位置指数220でのシステイン残基は、免疫グロブリン軽鎖定常領域とのジスルフィド結合を一般的に形成するシステイン残基が除かれて、セリンと置換されてもよい。
【0066】
本発明に従って、Fc-部分は、配列番号3を含むか又はからなり、あるいは配列番号6を含むポリヌクレオチドによってコードされることが好ましい。本発明の治療的部分は、例えば、EPO、TPO、成長ホルモン、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、PDGF-β、VEGF、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-8、IL-10、IL-12、IL-18、IL-18結合タンパク質、TGF-β、TNF-α、又はTNF-βでもよく、あるいはこれらから得られてもよい。
【0067】
本発明の治療的部分は、受容体、例えば膜貫通型受容体から得られてもよく、好ましくは受容体の細胞外ドメインでも又はそれから得られてもよく、特に、所与の受容体の細胞外部分又はドメインのリガンド結合及び場合により阻害断片でもよい。治療上興味深い受容体の例は、CD2、CD3、CD4、CD8、CD11a、CD14、CD18、CD20、CD22、CD23、CD25、CD33、CD40、CD44、CD52、CD80、CD86、CD147、CD164、IL-2受容体、IL-4受容体、IL-6受容体、IL-12受容体、IL-18受容体サブユニット(IL-18R-α、IL-18R-β)、EGF受容体、VEGF受容体、インテグリンα4 10 β 7、インテグリンVLA4、B2インテグリン、TRAIL受容体1、2、3及び4、RANK、RANKリガンド、上皮細胞接着分子(EpCAM)、細胞内接着分子-3(ICAM-3)、CTLA4(細胞傷害性Tリンパ球-関連抗原である)、Fc-γ-1受容体、HLA-DR 10β、HLA-DR抗原、L-セレクチンである。
【0068】
本発明の治療的部分はTNFRスーパーファミリーに属する受容体から得られることが極めて好ましい。治療的部分は、例えば、TNFR1(p55)、TNFR2(p75)、OX40、オステオプロテグリン、CD27、CD30、CD40、RANK、DR3、Fasリガンド、TRAIL-R1、TRAIL-R2、TRAIL-R3、TAIL-R4、NGFR、AITR、BAFFR、BCMA、TACIの細胞外ドメインでもよく、あるいはそれらから得られてもよい。
【0069】
本発明に従って、TNFRスーパーファミリーのメンバーから得られる治療的部分は、好ましくは、TNFRのメンバーの細胞外ドメインのすべてもしくは一部を含んでも又はから成ってもよく、より好ましくはTNFRのかかるメンバーのリガンド結合及び場合により阻害断片を含む。
【0070】
以下の表5は、本発明に従う治療的部分が得られるTNFRスーパーファミリーのメンバー、及びそれらの各々のリガンドを列挙している。TNFRファミリーのメンバーの「リガンド結合断片」は、例えば、所与の受容体のタンパク質断片と各々のリガンドとの結合を測定するin vitroアッセイで、ある試料において、当業者によって容易に決定することができる。かかるアッセイは、例えば、簡便なin vitroでのRIA-又はELISA-型のサンドウィッチアッセイでよい。そのサンドウィッチアッセイでは、タンパク質の1つ、例えば受容体断片が担体(例えばELISAプレート)に固定され、担体上のタンパク質結合部位の好適な切断によって第2タンパク質例えばリガンドでインキュベートされる。インキュベーション後に、好適な洗浄後にシンチレーションカウンタで、リガンドの放射活性標識の方法及び結合された放射活性の測定によって、リガンド結合が検出される。リガンドの結合は、標識抗体、あるいは第1リガンド-特異的抗体及び第1抗体の定常部分に対する第2の標識抗体で測定されることもできる。従って、例えば呈色反応中で使用される標識によってリガンド結合は容易に測定される。リガンド結合機能の切断又は阻害は、好適な細胞-系アッセイで試験される。好ましくは、本発明の方法は、表5に記載のメンバーから選択されるTNFRスーパーファミリーのメンバーから得られる治療的部分を含むFc-融合タンパク質を精製するためのものである。
【0071】
【表2】

【0072】
【表3】

【0073】
好ましい実施態様では、Fc-融合タンパク質は、TNFR1、TNFR2又はそれらのTNF結合及び場合により阻害断片の細胞外ドメインから選ばれる治療的部分を含む。更なる好ましい実施態様では、Fc-融合タンパク質は、BAFF-R、BCMAもしくはTACI、又は少なくとも1つのBlys又はAPRILに結合するそれらの断片の細胞外ドメインから選ばれる治療的部分を含む。
【0074】
Blys又はAPRILへの結合能力を試験するためのアッセイは、Hymowitz et al., 2006に記載されている。
【0075】
TACIは好ましくはヒトTACIである。配列番号2は、ヒト完全長TACI受容体のアミノ酸配列に対応する(SwissProtエントリー014836でもある)。より好ましくは、治療的部分は、好ましくはTACIの細胞外ドメインから得られたTACIの溶解性部分を含む。好ましくは、TACI-由来の治療的部分は、配列番号2の少なくともアミノ酸33〜67及び/又は配列番号2の少なくともアミノ酸70〜104を含む。好ましい実施態様では、本発明に従う治療的部分に含まれるTACI細胞外ドメインは、配列番号2のアミノ酸1〜166、又は配列番号2のアミノ酸30〜166、又は配列番号のアミノ酸30〜119、又は配列番号のアミノ酸30〜110を含むか、あるいはこれからなる。これらの治療的部分のすべてが、本発明の方法によって精製されるFc-融合タンパク質の調製のために好ましく、上で詳述したFc-部分、特に配列番号3を含むか又はからなるFc-部分と組み合わされる。本発明に従って精製される非常に好ましいFc-融合タンパク質は、配列番号4を含むか又はこれからなり、あるいは配列番号7のポリヌクレオチドによってコードされる。
【0076】
従って、Fc-融合タンパク質は以下:
(a) 配列番号2のアミノ酸34〜66;
(b) 配列番号2のアミノ酸71〜104;
(c) 配列番号2のアミノ酸34〜104;
(d) 配列番号2のアミノ酸30〜110;
(e) 配列番号3;
(f) 配列番号4;
(g) 高ストリンジェントな条件下で配列番号5、6又は7の補体とハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド;及び
(h) (c)、(d)、(e)又は(f)のポリペプチドと少なくとも80 %、85 %、90 %又は95 %の配列同一性を有する(c)、(d)、(e)又は(f)のいずれかの変異タンパク質、
から選ばれるポリペプチドから選択されるポリペプチドであって;
ここで、該ポリペプチドは少なくとも1つのBlys又はAPRILに結合する、ポリペプチドを含むことが非常に好ましい。
【0077】
更に好ましい実施態様では、Fc-融合タンパク質は、免疫グロブリンの重鎖定常領域を、より好ましくはヒト定常領域を含む。本発明の実施態様では、免疫グロブリンはIgG1である。該定常領域はヒンジ、CH2及びCH3ドメインを含むことも好ましい。
【0078】
更なる実施態様では、治療的部分は、配列番号1のシステイン豊富偽-反復を含む。本発明に従って、Fc-融合タンパク質を含む流体を、プロテインA又はプロテインGクロマトグラフィーに最初に供す。該流体は、好ましくは、細胞培養物質、例えば溶解された細胞、より好ましくは細胞培養上清でもよい。本明細書で使用される用語「細胞培養上清」は、好適な細胞シグナル、いわゆるシグナルペプチドを含む場合には、そこで細胞が培養され及びそこにタンパク質が分泌される培地を意味する。Fc-融合タンパク質発現細胞は血清無しの培養条件下で培養されることが好ましい。従って、細胞培養上清は、動物-血清由来成分が欠けている。最も好ましくは、細胞培養上清培地は、化学的に特定された培地である。
【0079】
アフィニティークロマトグラフィーに使用されるプロテインAは、例えば組換え体でよい。その性質(例えば、GE Healthcareから商業的に入手可能なMabSelect SuReと称される樹脂における)を改善するために修飾してもよい。好ましい実施態様では、ステップ(a)は、組換えプロテインAで修飾された架橋アガロースを含む樹脂で実行される。Mabselect Xtra(GE Healthcare製)という名称の下で商業的に入手可能なカラムは、本発明のステップ(a)に特に好適であるアフィニティー樹脂の例である。
【0080】
プロテインA又はGアフィニティークロマトグラフィーは、好ましくは捕獲ステップとして使用され、よってFc-融合タンパク質の精製、特に宿主細胞タンパク質及びFc-融合タンパク質凝集体の除去に役立ち、及びFc-融合タンパク質調製物の濃縮に役立つ。
【0081】
本明細書で使用する用語「凝集体」は、タンパク質凝集体を意味する。それは、精製されるFc-融合タンパク質の多量体(例えば、二量体、四量体又はより高いオーダーの凝集体)を包含し、例えば高分子量の凝集体を生じることがある。
【0082】
アフィニティークロマトグラフィーは、凝集体レベルを2〜4倍減らすという更なる利点を有する。
【0083】
プロテインA又はGアフィニティークロマトグラフィーを用いると、宿主細胞タンパク質レベルは100〜300倍減少することがある。
【0084】
本発明の好ましい実施態様では、ステップ(a)の溶出は、2.8〜4.5の範囲のpH、好ましくは3.0〜4.0の範囲のpH、より好ましくは3.5、3.55、3.6、3.65、3.7、3.75、3.8、3.85、3.9、3.95、4.0、4.05、4.1又は4.15のpHで実行される。ステップ(a)の溶出は、pHグラジエント、好ましくはpH 4.5〜2.8のグラジエントで実行してもよい。
【0085】
更なる好ましい実施態様では、ステップ(a)の溶出は、酢酸ナトリウム又はクエン酸ナトリウムから選択される緩衝液で実行される。好適な緩衝液濃度は、例えば、50 mM又は100 mM又は150 mM又は200 mM又は250 mMから選択される。
【0086】
本発明に従って、プロテインA又はプロテインGクロマトグラフィーからの溶出液をカチオン交換クロマトグラフィーに供する。カチオン交換クロマトグラフィーは、発明の背景で説明したように例えば弱い又は強いカチオン交換体任意の好適なカチオン交換樹脂で実行してもよい。
【0087】
好ましくは、ステップ(b)は、強いカチオン交換樹脂で実行される。より好ましくは、カチオン交換物質は、SO3-基で修飾された架橋メタクリレートを含む。Fractogel EMD SO3-(Merck製)の名称の下で商業的に入手可能なカラムは、本発明の方法のステップ(b)に特に好適であるカチオン交換樹脂の例である。好ましくは、プロテインA溶出液は、カチオン交換カラムに直接添加される。添加は、精製されるFc-融合タンパク質のpl未満の少なくとも1つの単位のpHで実行されることが好ましい。
【0088】
添加後、6〜10 mS/cmの導電率、例えば6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8又は9.9 mS/cmの導電率を有する緩衝液でカラムを洗浄することが更に好ましい。より好ましくは、導電率は、7.6〜9.2、すなわち8.4±0.8 mS/cmの範囲である。洗浄ステップは、好ましくは5.5〜7.5の範囲のpH、好ましくは6.0〜7.0の範囲のpHで実行される。更なる好ましい実施態様では、カチオン交換カラムは、7.0〜8.5の範囲のpH、好ましくは7.25又は7.3又は7.35又は7.4又は7.45又は7.5又は7.55又は7.6又は7.65又は7.7又は7.7又は7.75又は7.8又は7.85又は7.9又は7.95又は8.0又は8.05又は8.1又は8.15又は8.2又は8.25又は8.3又は8.35又は8.4又は8.45又は8.5のpHで溶出される。
【0089】
溶出は、好ましくは15〜22 mS/cmの範囲の導電率で行ってもよい。例えば、導電率は、16、17、18、19、20、21又は22 mS/cmから選択できる。好ましい溶出用緩衝液はリン酸緩衝液である。
【0090】
非常に好ましい実施態様では、ステップ(b)は、以下の更なるステップを含む:
b.1. 6.0〜7.0の範囲のpH及び6〜10 mS/cmの範囲の導電率を有する緩衝液でカチオン交換樹脂を洗浄し;並びに
b.2. 7.0〜8.5の範囲のpH及び15〜22 mS/cmの範囲の導電率を有する緩衝液でカラムを溶出すること。
【0091】
ステップ(b.1)のための好ましい緩衝液は、75〜125 mMのリン酸塩である。
ステップ(b)が遊離のFcを効率的に除くことは驚くべきことに本発明の範囲内にある。そのため、本発明に従って、カチオン交換クロマトグラフィーは、好ましくは、5〜15倍の範囲の遊離Fcの除去又は減少のために使用できる。
【0092】
有利なことに、本発明の方法のステップ(b)は、Fc-融合タンパク質調製物からの宿主細胞タンパク質の濃縮を例えば1〜2倍の範囲で減じ、これは宿主細胞タンパク質(HCP)クリアランスに顕著に役立っている。
【0093】
本発明に従って、カチオン交換ステップからの溶出液は、次いでアニオン交換クロマトグラフィーに供される。該アニオン交換クロマトグラフィーは、発明の背景で説明したように弱い又は強いアニオン交換体のような任意の好適なアニオン交換樹脂で実行してもよい。好ましくは、ステップ(c)は、強いアニオン交換樹脂で行われる。より好ましくは、アニオン交換樹脂は、N+(CH3)3で修飾されたポリスチレン/ジビニルベンゼンを含む。Source 3OQ(GE Healthcare製)の名称の下で商業的に入手可能なカラムは、本発明の方法のステップ(c)に特に好適であるアニオン交換樹脂の例である。
【0094】
好ましくは、ステップ(b)の溶出液は、アニオン交換カラム上にそれを添加する前に好適なローディングバッファーで希釈されるか又は透析される。アニオン交換カラムはまた、好ましくはローディングバッファーで平衡化される。
【0095】
ローディングバッファーの好ましいpHは、pl未満の1単位である。好適なpH値は、6.0〜8.5の範囲、好ましくは7.0〜8.0の範囲、例えば7.0、7.05、7.1、7.15、7.2、7.25、7.3、7.35、7.4、7.45、7.5、7.55、7,6、7.65、7.7、7.75、7.8、7.85、7.9、7.95又は8.0である。ローディングバッファーのための好ましい導電率は、3.0〜4.6 mS/cmの範囲にある。
【0096】
好適な平衡/ローディングバッファーは、例えば、5〜35 mM、好ましくは20〜30 mMの範囲の濃度のリン酸ナトリウムでよい。緩衝液濃度は、例えば10、15、20、25、30 mMでよい。本発明の範囲内で、興味あるFc-融合タンパク質を含むアニオン交換クロマトグラフィーのフロースルー(ブレークスルーとも言われる)は回収される。本発明の方法のステップ(c)は凝集体を3〜5倍、及び宿主細胞タンパク質を30〜70倍更に減少させる。
【0097】
本発明に従って、ステップ8(c)のアニオン交換クロマトグラフィーのフロースルーは、次いで、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーによって更に精製するために使用される。任意のヒドロキシアパタイト樹脂は、本発明に従う方法のステップ(d)を実行するために使用できる。好ましい実施態様では、ステップ(d)は、I型又はII型ヒドロキシアパタイト樹脂のようなセラミックのヒドロキシアパタイト樹脂で実行される。ヒドロキシアパタイト樹脂は、20、40又は80 μmのような任意のサイズの粒子を有してもよい。非常に好ましい実施態様では、セラミックのヒドロキシアパタイト樹脂は、40 μmのサイズを有する粒子を含む。本発明の方法のステップ(d)に特に好適なヒドロキシアパタイト樹脂は、CHT Ceramic Hydroxyapatite Type I、40 μmの名称の下で商業的に入手可能なカラムである。
【0098】
好ましい実施態様では、ステップ(c)からのフロースルーは、ヒドロキシアパタイト樹脂に直接、すなわち、好適なローディングバッファーへの先の希釈又は透析せずに、添加される。添加は、好ましくは、6.5〜7のpH、例えば6.6、6.7、6.8、6.9、7.1、7.2、7.3又は7.4、好ましくは7.0で実行される。
【0099】
更に好ましい実施態様では、ステップ(d)における溶出は、2〜10 mMの範囲、好ましくは1.75〜5.25 mMの範囲、例えば2、2,25、2.5、2,75、3、3.25、3.5、3.75、4、4.25、4.5、4.75、5のリン酸ナトリウムの存在下で実行される。
【0100】
なお更に好ましい実施態様では、ステップ(d)における溶出は、6.0〜7.0のpHの範囲、例えば6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9で実行される。
【0101】
別の好ましい実施態様では、ステップ(d)における溶出は、0.4〜1 Mの範囲、好ましくは0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95 Mの間、より好ましくは0.6 Mの塩化カリウムの存在下で実行される。
【0102】
本発明に従って、最終的に精製されたFc-融合タンパク質調製物を含むステップ(d)における溶出液を回収する。
【0103】
好適なマトリックス物質、すなわち本発明に関連して使用してもよいステップ(a)〜(c)で使用されるクロマトグラフ用樹脂のための担体物質は、例えば、アガロース(セファロース、スペロース)デキストラン(セファデックス)、ポリプロピレン、メタクリレートセルロース、ポリスチレン/ジビニルベンゼン等でよい。樹脂物質は、特定の用途によって異なった架橋形態で存在してもよい。
【0104】
樹脂の容積、使用されるカラムの長さ及び径、並びに動的容量及び流速は、処理される流体の容積、本発明の方法に供される流体中のタンパク質濃度などのような数個のパラメータに依拠している。各ステップにおけるこれらのパラメータの決定は、当業者の平均的な技術の範囲内で実行できる。
【0105】
本発明の精製法の好ましい実施態様では、1以上の限界濾過ステップが実行される。限界濾過は、大量の緩衝液中のFc-融合タンパク質を平衡化し、又はFc-融合タンパク質を所望の濃度に濃縮するために、先のクロマトグラフステップから得られる溶出液中の小有機分子及び塩の除去に有用である。かかる限界濾過は、例えば5 kDa未満、10 kDa、15 kDa、20 kDa、25 kDa、30 kDa以上の分子量を有する成分の除去を可能にする孔サイズを有する限界濾過膜上で実行される。
【0106】
好ましくは、限界濾過は、ステップ(b)とステップ(c)との間、及び/又はステップ(d)の後に行われる。より好ましくは、2つの限界濾過ステップが行われ、ステップ(b)とステップ(c)との間に1つのステップが行われ、及びステップ(d)の後に1つのステップが行われる。
【0107】
本発明の方法に従って精製されたタンパク質がヒトへの投与を意図する場合には、その方法におけるウイルス除去の1以上のステップを含むという利点がある。好ましくは、ウイルス除去濾過ステップはステップ(d)の後に行われる。より好ましくは、ウイルス除去濾過ステップは、フィルターが20 nmの見かけ孔サイズを有するナノ濾過ステップである。本発明の方法及び特にナノ濾過と組み合わせたステップ(a)、(c)、(d)は、ウイルスロードを最大約15〜25の混合LRV(log減少値)に効率的に減少させる。
【0108】
保存又輸送を助けるために、例えば、物質は、冷凍してもよく、そして本発明の任意の精製ステップの前及び/又は後に解凍してもよい。
【0109】
本発明に従って、組換えFc-融合タンパク質は、真核発現系、例えば酵母、昆虫又は哺乳動物細胞中で産生してもよく、その結果グリコシル化Fc-融合タンパク質を生じる。
【0110】
本発明に従って、動物細胞株のような哺乳動物細胞中又はヒト細胞株中でFc-融合タンパク質を発現することが最も好ましい。チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)又はネズミ骨髄腫細胞数NSOは、精製されるFc-融合タンパク質の発現のために特に好適な細胞株の例である。Fc-融合タンパク質はまた、ヒト細胞株、例えばヒト線維肉腫HT1080細胞株、ヒト網膜芽細胞腫細胞株PERC6、ヒト膜胎児腎細胞株293、又は例えばEP 1 230 354に記載の永続的羊膜細胞において好ましく産生される。
【0111】
精製されるFc-融合タンパク質がそれを分泌する哺乳動物細胞によって発現される場合には、本発明の精製法の出発物質は、細胞培養上清であり、ハーベスト又は粗ハーベストとも称される。細胞が動物血清を含む培地で培養される場合には、細胞培養上清は不純物として血清タンパク質をも含む。
【0112】
好ましくは、細胞を発現し及び分泌するFc-融合タンパク質は、血清なしの条件下で培養される。Fc-融合タンパク質はまた、化学的に特定された培地において産生される。この場合には、本発明の精製法の出発物質は、不純物として宿主細胞タンパク質を主に含む血清無しの細胞培養上清である。インシュリンのような成長因子が細胞培養培地に添加される場合、これらのタンパク質も精製過程において除去されることになる。
【0113】
細胞培養上清に放出される溶解性の分泌Fc-融合タンパク質をつくるために、Fc-融合タンパク質の治療的部分の天然シグナルペプチド、又は好ましくは異種のシグナルペプチド、すなわち使用される特定の発現系において効率的である別の分泌タンパク質から得られたシグナルペプチド、例えばウシもしくはヒト成長ホルモンシグナルペプチド又は免疫グロブリンシグナルペプチドが使用される。
【0114】
上記のように、本発明に従って精製される好ましいFc-融合タンパク質は、ヒトTACI(配列番号2)由来の治療的部分を有する融合タンパク質、特にその細胞外ドメインから得られた断片(配列番号2のアミノ酸1〜165)である。好ましい断片は、配列番号2のアミノ酸30〜110を含む。以下において、TACIの細胞外ドメインから得られた治療的部分は、「溶解性TACI」又は「sTACI」と称される。好ましいFc-部分は、配列番号4に従うFc-融合タンパク質を生じる配列番号3を含む。以下、「TACI-Fc」と称される。本明細書で使用される用語「TACI-Fc」はまた、TACI-Fcの突然変異タンパク質を包含する。
【0115】
本明細書で使用される用語「突然変異タンパク質」は、sTACI又はTACI-Fcのアミノ酸残基の1以上が異なったアミノ酸残基によって置換され、削除され、あるいはもとのsTACI又はTACI-Fcと比べて得られる産物の活性をかなり変化させることなく、1以上のアミノ酸残基がsTACI又はTACI-Fcのもとの配列に付加されている、sTACI又はTACI-Fcのアナログを意味する。これら突然変異タンパク質は、公知の合成及び/又は部位指向型突然変異技術によって、あるいはそのための公知の好適な技術によって調製される。
【0116】
本発明に従う突然変異タンパク質は、DNA又はRNAの補体にハイブリダイズし、ストリンジェントな条件下で配列番号2又は4のいずれかに従うsTACI又はTACI-Fcをコードする、DNA又はRNAのような核酸によってコードされるタンパク質を含む。TACI-FcをコードするDNA配列の例は、配列番号7である。
【0117】
用語「ストリンジェントな条件」とは、当業者が「ストリンジェント」と称するような、イブリダイゼーション及び次の洗浄条件を意味する。Ausubel等, Current Protocols in Molecular Biology, supra, Interscience, N. Y., §6.3 and 6.4 (1987, 1992) を参照。限定されることなく、ストリンジェントな条件の例は、研究中である、計算されたハイブリッドのTm未満の12〜20℃の洗浄条件、例えば、2 x SSC及び0.5% SDSを5分、2 x SSC及び0.1 % SDSを15分;37℃で0.1 x SSC及び0.5 % SDSを30〜60分、次いで68℃で0.1 x SSC及び0.5 % SDSを30〜60分、を含む。当業者は、ストリンジェントな条件が、DNA配列、オリゴヌクレオチドポリペプチドローブ(例えば10〜40塩基)又は混合オリゴヌクレオチドプローブの長さにも依拠することを理解している。混合プローブが使用される場合には、SSCの代わりに、塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)を用いることが好ましい。Ausubel、前掲を参照。
【0118】
別の実施態様では、任意のかかる突然変異タンパク質は、もとのタンパク質と、少なくとも50 %、少なくとも60 %、少なくとも70 %、少なくとも75 %、少なくとも80 %、少なくとも85 %、少なくとも90 %、又は少なくとも95 %の同一性又はホモロジーを有する。
【0119】
同一性は、配列を比較することによって決定される、2以上のポリペプチド配列間又は2以上のポリヌクレオチド配列間の関係を反映している。一般的に、同一性は、比較される配列の長さに渡って、2つのポリヌクレオチド又は2つのポリペプチド配列の、それぞれ正確なヌクレオチド対ヌクレオチドの一致、又はアミノ酸対アミノ酸の一致を意味する。正確な一致が存在しない配列に関しては、「%同一性」が決定される。一般的に、比較される2つの配列は、配列間の最大相関関係を与えるように並べられる。このことは、アラインメントの程度を増加させるために、1つ又は2つの配列における「ギャップ」の挿入を含むことがある。%同一性は、同一又は非常に類似の長さの配列に特に好適である、比較される配列の各々の全体的長さに渡って決定される(いわゆる全体的なアラインメント)か、あるいは等しくない長さの配列により好適である、より短い特定された長さに渡って決定される(いわゆる部分的アラインメント)。
【0120】
2以上の配列の同一性及びホモロジーを比較する方法は当該分野でよく知られている。
従って、例えば、Wisconsin Sequence Analysis Package, version 9.1 (Devereux J et al., 1984)で利用できるプログラム、例えばプログラムBESTFIT及びGAPは、2つのポリヌクレオチド間の%同一性、並びに2つのポリペプチド配列間の%同一性及び%ホモロジーを決定するために使用される。BESTFITは、Smith and Waterman (1981) の「部分的ホモロジー」アルゴリズムを使用し、2つの配列間の類似性の最良の単一部位を見つける。配列間の同一性及び/類似性を決定するための他のプログラム、例えば、プログラムのBLASTファミリー(Altschul S F et al, 1990, Altschul S F et al, 1997, NCBI at www.ncbi.nlm.nih.govのホームページからアクセス可能)及びFASTA(Pearson W R, 1990)、も当該分野で知られている。
【0121】
任意のこのような突然変異タンパク質は、好ましくは、sTACI又はTACI-Fcのアミノ酸配列と十分に重複したアミノ酸配列、例えば配列番号2又は4のタンパク質として実質的に同様のリガンド結合活性を有するもの、を有する。例えば、TACIの1つの活性は、Blys又はAPRILに結合するその能力である(Hymowitz et al., 2006)。突然変異タンパク質が実質的なAPRIL又はBlys結合活性を有する限り、TACIと実質的に同様な活性を有すると考えられる。従って、任意の所与の突然変異タンパク質が、定型の実験手段によって配列番号2又は4のタンパク質と実質的に同一の活性を有するか否かを当業者によって容易に決定される。
【0122】
本発明に従う突然変異タンパク質の好ましい変更は、「保存的」置換として知られているものである。sTACI又はTACI-Fcの保存的アミノ酸置換は、グループのメンバー間の置換が分子の生物的機能を保持するという実質的に類似の物理化学的性質を有するそのグループ内での同義のアミノ酸を含んでもよい(Grantham, 1974)。アミノ酸の挿入及び削除もまた、特に、挿入又は削除が数個、例えば30未満、20未満、好ましくは10未満のアミノ酸に関連するのみであり、そして機能的構造、例えばシステイン残基に重要であるアミノ酸を削除又は置換しない場合には、その機能を変化させることなく上記の配列においてなされることは明らかである。かかる削除及び/又は挿入によって産生されるタンパク質及び突然変異タンパク質は、本発明の範囲内にある。
【0123】
好ましくは、保存的アミノ酸のグループは、表2で特定されるものである。より好ましくは、同義アミノ酸のグループは、表3で特定されるものであり;最も好ましくは同義のアミノ酸のグループは、表4で特定されるものである。
【0124】
【表4】

【0125】
【表5】

【0126】
【表6】

【0127】
機能性誘導体は、本発明に従って精製されたFc-融合タンパク質から調製できる。本明細書で使用される「機能性誘導体」は、本発明に従って精製されるFc-融合タンパク質の誘導体をカバーする。それは、当該分野で公知の手段によって残基上の側鎖又はN-もしくはC-末端基として生じる機能性基から調製され、そして、薬学的に許容される限り、すなわち上記の非修飾Fc-融合タンパク質の活性と実質的に同様であるタンパク質の活性を破壊せず、それを含む組成物に対して毒性を与えない限り、本発明に含まれる。
【0128】
Fc-融合タンパク質の機能性誘導体は、安定性、半減期、生物学的利用性、ヒトの体による寛容又は免疫原性のようなタンパク質の性質を改善するために、例えばポリマーに複合化される。この目標を達成するために、TACI-Fcは、例えばポリエチレングリコール(PEG)に連結される。PEG化は、例えばWO 92/13095に記載の公知の方法によって実行される。
【0129】
機能性誘導体はまた、例えば、カルボキシル基の脂肪族エステル、アンモニア又は第1級アミンもしくは第2級アミンとの反応によるカルボキシル基のアミド、アシル部分(例えば、アルカノイル又は炭素環式アロイル基)によって形成されたアミノ酸残基の遊離アミノ基のN-アシル誘導体、あるいはアシル部分によって形成された遊離水酸基(例えば、セリル又はスレオニル残基)のO-アシル誘導体を含んでもよい。第3の局面では、本発明は、本発明に従う精製法によって精製されるタンパク質に関する。次に、かかるタンパク質は「精製Fc-融合タンパク質」とも称される。
【0130】
かかる精製Fc-融合タンパク質は、好ましくは、高度に精製されたFc-融合タンパク質である。高度に精製されたFc-融合タンパク質は、例えば、2 mcg/レーンの量でタンパク質をローディングした後に銀染色された非-還元型SDS-PAGE-ゲルにおいて単一バンドの存在によって決定される。精製Fc-融合タンパク質は、HPLCにおける単一ピークとしての溶出として定義してもよい。
【0131】
本発明の精製法から得られたFc-融合タンパク質調製物は、20 %未満の不純物、好ましくは10 %、5 %、3 %、2 %又は1 %未満の不純物を含んでもよく、あるいは均一に、すなわち、例えば上記の銀染色SDS-PAGE又はHPLCによって決定される任意の検出可能なタンパク質性汚染物がないように精製されてもよい。
【0132】
精製Fc-融合タンパク質は、治療的使用、特にヒト患者への投与を目的としてもよい。精製Fc-融合タンパク質が患者に投与される場合には、好ましくは全身的に、好ましくは皮下的にもしくは筋肉内に又は局所に、すなわち局所的に投与される。精製Fc-融合タンパク質の特定の医薬的使用によって、直腸又は鞘内の投与も好適である。
【0133】
この目的のために、本発明の好ましい実施態様では、精製Fc-融合タンパク質は、すなわち薬学的に許容される担体、賦形剤等と共に医薬組成物に調合される。
【0134】
「薬学的に許容される」の定義は、活性成分の生物的活性の効能を妨害しない、そしてそれが投与される宿主に対して毒性がない、任意の担体を包含することを意味する。例えば、非経口的投与のためには、活性タンパク質(複数)は、生理食塩水、ブドウ糖溶液、血清アルブミン及びリンゲル液のようなビヒクルでの注入のための単位投薬剤形で調合される。
【0135】
本発明に従う医薬組成物の活性成分は、様々な方法で個体に投与される。投与経路は、皮内、経皮的(例えば、徐放製剤として)、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下的、経口的、頭蓋内、硬膜外、局所的、直腸的、及び鼻腔内経路を含む。任意の他の治療上の効率的な投与経路、例えば、上皮又は内皮組織による吸収、あるいは活性剤をコードするDNA分子が患者に(ベクターを介して)投与される遺伝子療法、その療法では活性剤をin vivoで発現及び分泌させる、が使用できる。加えて、本発明に従うタンパク質(複数)は、薬学的に許容される界面活性剤、賦形剤、担体、希釈剤及びビヒクルのような生物的に活性な薬剤の他の成分と共に投与される。
【0136】
非経口的(例えば、静脈内、皮下的、筋肉内)投与のためには、活性タンパク質(複数)は、薬学的に許容されるビヒクル(例えば、水、生理食塩水、ブドウ糖溶液)、及び等張性(例えば、マンニトール)又は化学的安定性(例えば、保存料及び緩衝剤)を維持する添加剤と共に、液剤、懸濁剤、エマルション剤又は凍結粉剤として調合される。調合物は、一般的に使用される方法によって殺菌される。
【0137】
活性タンパク質(複数)の治療上有効量は、Fc-融合タンパク質の種類、Fc-融合タンパク質のそのリガンドに対する親和性、投与経路、患者の臨床的状態を含む多くの変数の1つの機能である。
【0138】
「治療上有効量」は、上で説明した、特に上の表5で言及したように、投与された時に、Fc-融合タンパク質がFc-融合タンパク質の治療的部分のそのリガンドの阻害をもたらすような量である。
【0139】
単一又は複数の用量として個体に投与された投薬量は、Fc-融合タンパク質の薬物動態学的性質、投与経路、患者の状態及び特徴(性別、年齢、体重、健康、体格)、症状の程度、同時治療、治療の頻度及び望ましい効果を含む様々な要素に依拠して変化することになる。確立された投薬量の範囲の調整及び取り扱いは、当業者の能力、並びに個体における治療的部分のそのリガンドの阻害を決定するin vitro及びin vivoでの方法の範囲内である。
【0140】
精製Fc-融合タンパク質は、0.001〜100 mg/kg体重又は0.01〜10 mg/kg体重、又は0.1〜5 mg/kg体重もしくは1〜3 mg/kg体重もしくは2 mg/kg体重の量で使用される。
【0141】
更に好ましい実施態様では、精製Fc-融合タンパク質は、毎日又は隔日又は週に3回又は週に1回、投与される。
【0142】
日量は、通常、所望の結果を得るために効果的な分割用量で又は徐放形態で与えられる。第2又は次の投与は、個体に投与された開始又は前の用量と同一であるか、それよりも少ないか又は多い投薬量で実行される。第2又は次の投与は、疾患の間、又は疾患の開始前に投与される。
【0143】
本発明は、上で詳細に説明した本発明に従う方法によって得られた腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーのメンバーの細胞外部分を含む精製Fc-融合タンパク質組成物であって、タンパク質凝集体の2 %未満又は1.5 %未満又は1 %未満又は0.7 %未満又は0.6 %未満、あるいは好ましくは0.5 %未満を含む、前記組成物にも関する。本発明の組成物は、好ましくは、そのN-又はC-末端の1又は2を超えるアミノ酸を欠かない、より好ましくはそのN-又はC-末端の任意のアミノ酸を欠かない、完全にもとのままのFc-融合タンパク質を含む。
【0144】
本発明は、更に、本発明に従う方法によって得られた腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーのメンバーの細胞外部分を含む精製Fc-融合タンパク質組成物であって、上記の遊離のFcの1 %未満又は0.8 %未満又は0.5 %未満又は0.1 %未満を含む、前記組成物に関する。
【0145】
かかるFc-融合タンパク質は、例えばTNFRスーパーファミリーのメンバーであるOX40から得てもよい。かかるOX40-機能性タンパク質、例えばOX40-IgG1及びOX40-hIG4mutは、クローン病のような炎症性及び自己免疫疾患の治療及び/又は予防のために好ましく使用される。
【0146】
治療的部分を含むFc-融合タンパク質は、好ましくは、TNFR1、TNFR2の細胞外ドメイン又はそのTNF結合断片から選ばれる。
【0147】
好ましい実施態様では、かかるFc-融合タンパク質は、エタネルセプト、すなわちp75 TNFRの溶解性部分を含むFc-融合タンパク質である (例えば、WO 91/03553, WO 94/06476)。本発明に従って精製されたエタネルセプトは、例えば、子宮内膜症、C型肝炎感染症、HIV感染症、乾癬性関節炎、乾癬、リウマチ様関節炎、喘息、強直性脊椎炎、心臓麻痺、移植-対-宿主疾患、肺線維症、クローン病の治療及び/予防のために使用される。レネルセプトは、ヒトp55 TNF受容体及びヒトIgGのFc部分の細胞外成分を含む融合タンパク質であり、重度の敗血症及び多発性関節炎の潜在的な治療を意図している。
【0148】
更に好ましい実施態様では、Fc-融合タンパク質は、BAFF-R、BCMA又はTACIの細胞外ドメイン又はBlys又はAPRILの少なくとも1つに結合するその断片から選ばれる治療的部分を含む。
【0149】
本発明に従って精製されたBAFF-Rから得られたFc-融合タンパク質は、好ましくは、リウマチ様関節炎(RA)及び全身性紅斑性狼瘡(SLE)のような自己免疫疾患の治療及び/又は予防のために使用される。
【0150】
本発明に従って精製されたBCMA-Ig融合タンパク質は、好ましくは、自己免疫疾患の治療及び/又は予防のために使用される。
【0151】
TACI (TACI-Fc) から得られたFc-融合タンパク質は、好ましくは、以下:
a.配列番号2のアミノ酸34〜66;
b. 配列番号2のアミノ酸71〜104;
c. 配列番号2のアミノ酸34〜104;
d. 配列番号2のアミノ酸30〜110;
e. 配列番号3;
f. 配列番号4;
g. 高ストリンジェントな条件下で配列番号5、6又は7の補体とハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド;及び
h. (c)、(d)、(e)又は(f)のポリペプチドと少なくとも80 %、85 %、90 %又は95 %の配列同一性を有する(c)、(d)、(e)又は(f)のいずれかの変異タンパク質、
から選ばれるポリペプチドを含み;
ここで、該ポリペプチドは少なくとも1つのBlys又はAPRILに結合する。
【0152】
精製TACI-Fcは、好ましくは、多数の疾患又は症状の治療及び/又は予防のための医薬の製造のために使用される。かかる疾患又は症状は、好ましくは、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、リウマチ様関節炎(RA)のような自己免疫疾患から選択され、多発性関節炎(MS)の治療のために使用される。精製TACI-Fcは、癌、例えば血液悪性腫瘍例えば多発性骨髄腫(MM)及び/又は非-ホジキンリンパ腫(NHL)、慢性リンパ性白血病(CLL)及びワルデンストローム・マクログロブリン血症(WM)、の治療のためにも使用される。
【0153】
本発明を十分に記載してきたが、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく及び過度な実験をすることなく、同一のものが広い範囲の等価のパラメータ、濃度及び条件内で実行できることは当業者によって理解されるだろう。
【0154】
本発明をその特定の実施態様と関連させて記載してきたが、更なる変更ができることは理解できるだろう。本願は、一般的に本発明の原則に従って本発明の任意の変更、使用又は適合をカバーすることを意図しており、そして本発明が追求する当該分野内の公知又は慣用的な実施内にあり、かつ添付のクレームの範囲に従う前記の本質的な特徴に適用され得る、本開示からのそのような逸脱を含む。
【0155】
学術論文又はアブストラクト、公表もしくは未公表の米国又は外国特許出願、発行された米国もしくは外国特許又は他の任意の参考文献を含む本明細書に記載のすべての参考文献は、引用文献に示されたすべてのデータ、表、図及びテキストを含み、本明細書に参考文献として全体的に援用される。更に、本明細書で引用された参考文献内で引用された参考文献の内容全体もまた、文献として全体が援用される。
【0156】
公知の方法のステップ、慣用的方法のステップ、公知の方法又は慣用的方法の参照は、本発明の任意の局面、記載又は実施態様が関連する技術に開示、教示又は示唆されていることを承認するものではない。
【0157】
特定の実施態様の先の記載は、(本明細書で引用された参考文献の内容を含む)当該分野の技術内の知識を適用することによって、他の者が、過度な実験をすることなく及び本発明の一般的概念から逸脱することなく、このような特定の実施態様を様々な適用のために容易に修飾し及び/又は適合することができるという、本発明の一般的性質を十分に明らかにするだろう。従って、このような適合及び修飾は、本明細書で示された教示及び指針に基づいて開示された実施態様の等価物の範囲の意義内にあると意図される。本明細書の専門用語又は用語は当業者の知識と組み合わせて本明細書で示した教示及び指針の点から当業者によって解釈されるように、本明細書の用語又は専門用語は記載の目的であり、限定するものではことを理解されたい。
【実施例】
【0158】
血清無しのCHO細胞上清からの組換え体、ヒトTACI-Fcの精製
用語解説
【0159】
BV: 総体積
CHO: チャイニーズハムスター卵巣
DSP: ダウンストリームプロセス
EDTA: エチレンジアミン四酢酸
ELISA: 酵素結合免疫吸着法
HAC: ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー
HCP: 宿主細胞タンパク質
HPLC: 高速液体クロマトグラフィー
id: 内径
K: カリウム
kD: キロダルトン
MES: 2-モルホリノエタンスルホン酸
Na: ナトリウム
NaAc: 酢酸ナトリウム
n/d: 非決定
PA-SE-HPLC: プロテインAサイズ排除高速液体クロマトグラフィー
ppm: パーツ・パー・ミリオン
RO: 逆浸透
RT: 室温
SDS-PAGE: ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動
SE-HPLC: サイズ排除高速液体クロマトグラフィー
T℃: 温度
TMAC: テトラメチルアンモニウムクロリド
UV: 紫外線
WFI: 注入用水
WRO: 逆浸透水
【0160】
実施例1:捕獲ステップ:プロテインAでのアフィニティー精製
出発物質は、血清無しの条件下で培養したTACI-Fc発現CHO細胞クローンの浄化ハーベストであり、使用するまで冷凍保存した。MabSelect Xtra(商標)カラム(GE Healthcare 17-5269-03)での捕獲ステップを、17 cmのベッド高を有するカラムで以下のプロトコールに従って実施した。15℃未満の温度を維持したロード溶液を除いて、すべての操作を室温で行った。280 nmでのUVシグナルを記録した。
【0161】
浄化:
250 cm/時間での逆流で、少なくとも3BVの0.1 M酢酸+20%エタノールでカラムを浄化した。フローを1時間停止した。
洗浄ステップ:
250 cm/時間での逆流で、少なくとも2BVのRO水で該カラムを洗浄した。
平衡化:
450 cm/時間での下降流で、少なくとも5BVの25 mMリン酸ナトリウム+15O mM NaCl、pH 7.0で(導電率及びpHパラメータが特定の範囲:pH 7.0±0.1、導電率 18±2 mS/cmとなるまで)該カラムを平衡化した。
ローディング:
350 cm/時間の流速で充填樹脂のml当たりのBiacoreアッセイによって決定した最大15 mgの総TACI-Fcの容量まで、15℃未満の温度で維持した浄化ハーベストでカラムをロードした。
洗浄ステップ:
350 cm/時間で少なくとも2BVの平衡緩衝液、次いで(UVシグナルがベースラインに戻るまで)450 cm/時間で少なくとも4BVの平衡緩衝液で該カラムを洗浄した。
溶出:
350 cm/時間の流速で表Iに記載の異なった溶出緩衝液で物質を溶出した。最初から6.0±0.5BVの溶出までのUVシグナル増加まで、溶出液フラクションを回収した。溶出液を室温で4.1未満のpH(必要ならば、クエン酸溶液の添加によって調整)で1時間インキュベートし、次いでpHを32% NaOH溶液の添加によって5.0±0.1に調整した。
再生:
450 cm/時間の逆流で、少なくとも3BVの5O mM NaOH+1 M NaClでカラムを再生し、15分間フローを停止し、次いで少なくとも3BVで450 cm/時間でのフローを再開した(UVシグナルがベースラインに戻るまで)。
このステップから、カラムを逆流モードで操作した。
洗浄ステップ:
450 cm/時間で少なくとも2BVのRO水でカラムを洗浄した。
浄化:
250 cm/時間で少なくとも3BVの浄化緩衝液でカラムを浄化し、フローを停止し、カラムを60分間インキュベートした。
最終洗浄ステップ:
250 cm/時間で少なくとも1BVのRO水でカラムを洗浄し、次いで250 cm/時間で少なくとも3BVの平衡緩衝液でカラムを洗浄し、最後に250 cm/時間で少なくとも2BVのRO水でカラムを洗浄した。
最後に、250 cm/時間で少なくとも3BVの20%エタノールでカラムをフラッシュした後に保存した。
【0162】
結果
【0163】
【表7】

【0164】
【表8】

【0165】
【表9】

【0166】
結論
350 cm/時間の流速で充填樹脂のL当たり15 gの総TACI-Fc5の動的容量でMabSelect Xtraカラムに、浄化されたハーベスト中のTACI-Fc5を直接捕獲した。生成物の回収を最大にし、同時に凝集レベルで顕著な減少を提供するために、溶出条件、特にpHを最適化した。浄化されたハーベスト中で約25〜40 %から開始して約5〜10%の凝集レベルを与え、濁りが観察されない、0.1 Mクエン酸ナトリウム(pH 3.9)の溶出緩衝液を選択した。HCPレベルは典型的に1500〜2000 ppmであった。HCPレベルは、ポリクローナル抗体を用いてELISAによって測定した。抗体混合物は、非-トランスフェクトCHO細胞の浄化かつ濃縮された細胞培養上清から得られる宿主細胞タンパク質に対して産生した。
【0167】
実施例2:カチオン交換クロマトグラフィー
好適なローディングバッファーに透析したプロテインAでの捕獲ステップからの溶出液は、カチオン交換クロマトグラフィーのための出発物質として使用した。
【0168】
10 cmのベッド高を有するFractogel EMD SO3-カラム(Merck 1.16882.0010)をこのステップで使用した。15 cmのベッド高を有するFractogel SO3-カラムも同様に使用した。後者の場合には、動的容量及び流速は、当業者の通常の知識内にある適合を必要とすることがある。
【0169】
すべての操作は室温で行い、流速を150 cm/時間で一定に維持した。280 nmでのUVシグナルを常時記録した。
【0170】
洗浄ステップ:
少なくとも1BVのWRO(逆浸透浄水)でカラムを洗浄した。
浄化:
次いで、カラムをアップ-フローモードで少なくとも3BVの0.5 M NaOH+1.5 M NaClで浄化した。
リンス:
カラムを少なくとも4BVのダウン-フローモードでリンスした。
平衡化:
少なくとも4BVの100 mMクエン酸ナトリウム(pH 5.0)で(あるいは、標的導電率 12±1 mS/cm及びpH 5.0±0.1となるまで)カラムを平衡化した。
【0171】
ローディング:
充填樹脂のml当たりのSE-HPLCアッセイによって決定した、pH 5.0(pH 5.0±0.1及び導電率 12±1 mS/cm)及び最大50 mgのTACI-Fcの容量で捕獲した捕獲後の物質で、カラムをロードした。
洗浄ステップ:
少なくとも5BVの10O mM リン酸ナトリウム(pH 6.5)でカラムを洗浄した。
溶出:
異なった緩衝液、及び以下の表II〜IVの異なった条件下でカラムを溶出した。
再生及び浄化:
アップ-フローモードで4BVの0.5 M NaOH+1.5 M NaClでカラムを再生及び浄化した。次いで、フローを30分間停止した。
リンス:
カラムを少なくとも4BVのWROでリンスした。
保存:
カラムを少なくとも3BVの20 %エタノールで保存した。
【0172】
結果
【0173】
【表10】

【0174】
表IIIは、10及び32 mg TACI-Fc/mlの樹脂の容量でローディングし、12〜33 mS/cmの導電率のリン酸緩衝液で溶出した時の、TACI-Fc回収及びHCPクリアランスを示す。ピークの回収は、10±0.5 BVのUV増加の開始から行った。
【0175】
【表11】

【0176】
表IVは、TACI-Fc回収及びHCPクリアランスに対する50、100又は150 mMのリン酸ナトリウム(pH 6.5)による洗浄ステップの効果を示す。
【0177】
【表12】

【0178】
100 mMのリン酸ナトリウム(pH 6.5)を含む洗浄2で使用した緩衝液は、8.4 mS/cmの導電率を有した。
【0179】
図1は、遊離のFcクリアランスに対する表IVに記載に3つの洗浄ステップ条件を用いる実験から得られるサンプルの銀染色した非-還元型SDS-PAGEゲルを示す。図2は、異なった濃度でのリン酸ナトリウムでの洗浄ステップ実験の重複クロマトグラフを示す。
【0180】
洗浄ステップは、リン酸ナトリウムの高い濃度(50〜15O mM)でpH 6.5で最適化した。図1から明らかなように、15O mMの洗浄緩衝液濃度(洗浄3、レーン6)は、TACI-Fcの損失をもたらした。50 mMの洗浄緩衝液濃度(洗浄1、レーン8)は、純粋なTACI-Fcのピークをもたらしたが、溶出液には遊離Fcの痕跡が含まれていた。10O mMリン酸ナトリウムpH 6.5による洗浄ステップは、主の溶出ピークにおいて98 %の回収をもたらし、洗浄ステップでは2 %損失したのみであった(図2)。HCPクリアランスは、3.2倍であった。洗浄及び溶出液フラクションのSDS-PAGEによる分析は、100 mM以上の緩衝液濃度で、そのままのTACI-Fcと共に洗浄ステップが遊離のFcを含有することを示した(図1、レーン4及び6)。100 mM以上の濃度は、溶出液フラクションから遊離のFcを完全に除くために必要である(図1、レーン5及び7)。
【0181】
結論
カチオン交換ステップは、捕獲ステップの後に、第2精製ステップとして行った。捕獲溶出液は低pH (5.0) でかつ低導電性であり、カチオン交換体に直接的にロードすることができた。50 mg/mlのローディング容量を有するFractogel EMD SO3-樹脂を選択した。非-生物活性分解物遊離Fcは、0.1 Mリン酸ナトリウムpH 6.5で洗浄ステップにおいて効率的に除いた。HCPの最大のクリアランス及び高いTACI-Fc回収(179 mMリン酸ナトリウムpH 8.0、導電率20.7 mS/cm)のために溶出条件を最適化した。
【0182】
あるいは、溶出は、280 nmでの吸収の上昇から始めて、10 BVの20 mMリン酸ナトリウム及180 mM NaCl pH 8.0で行った。
【0183】
実施例3:アニオン交換クロマトグラフィー
この精製ステップのために使用した出発物質は、好適なローディングバッファーに透析し又はそれで希釈した、Fractogel SO3-でのカチオン交換ステップからの溶出液であった(実施例2)。
【0184】
このアニオン交換クロマトグラフィーステップは、10 cmのベッド高を有するSOURCE 3OQカラム(GE Healthcare 17-1275-01)で実行した。15 cmのベッド高を有するSOURCE 3OQカラムもこのステップで同様に使用した。後者の場合には、動的容量及び流速は、当業者の通常の知識内にある適合を必要とすることがある。
【0185】
すべての操作は室温で行い、280 nmでのUVシグナルを記録した。ステップは、150又は200 cm/時間のいずれかの流速で行った。
【0186】
リンス:
最初に、カラムを150 cm/時間の流速で少なくとも1BVのRO水でリンスした。
浄化:
次いで、カラムを少なくとも3BVの0.5 M NaOH+1.5 M NaClで浄化した。
洗浄ステップ:
カラムを200 cm/時間の流速で少なくとも3BV、少なくとも4〜10BVの0.5 M リン酸ナトリウム(pH 7.5)で洗浄した。
平衡化:
カラムを少なくとも5BVの10、15、20、25又は30 mM リン酸ナトリウム(pH 7.5)で平衡化した。場合により、カラムを3BVの0.5 M リン酸ナトリウム(pH 7.5)で予備平衡化できる。
ローディング、洗浄、及びフロースルーでのTACI-Fcの同時回収:
UV増加の開始から洗浄ステップの最後までの、4±0.5 BVの平衡緩衝液で実行されるフロースルーを回収して、充填樹脂のml当たりのSE-HPLCアッセイによって決定された50 mg TACI-Fc以下の容量で10〜30 mM、pH 7.5のリン酸塩濃度を得るために、希釈されたカチオン交換後の物質でカラムをロードした。
再生/浄化:
150 cm/時間の流速で逆流モードで(UVシグナルがベースラインに戻るまで)、カラムを少なくとも3BVの0.5M NaOH + 1.5M NaClで再生及び浄化した。再生の最後に、ポンプを30分間停止した。
洗浄ステップ:
200 cm/時間の流速で少なくとも3BVのRO水でカラムを洗浄した。
保存:
150 cm/時間の流速で少なくとも3BVの20 %エタノール (v/v) でカラムを保存する。
【0187】
結果
以下の表Vは、上記の精製法によって得られた結果を纏める。
【0188】
【表13】

【0189】
結論
フロースルーモードにおけるSource 3OQカラムでのアニオン交換ステップは、HCP及び凝集体のクリアランスを最大限にするたるために最適化した。2O mMリン酸ナトリウム緩衝液pH 7.5で希釈又はダイアフィルターされたカチオン交換溶出液をローディングすることは、生成物回収(90%)と、HCP(約2000 ppm〜44 ppm)及び凝集体(約25 %〜5.6 %)のクリアランスとの妥協を与えた。150〜200 cm/時間での50 mg TACI-Fc/充填樹脂のmlの動的容量を用いた。
【0190】
実施例4:ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー
この精製ステップのために使用した出発物質は、アニオン-交換クロマトグラフィー・フロースローであった(実施例3参照)。
【0191】
I型CHTヒドロキシアパタイト、ベッド高10 cmの40 μmカラム (Biorad 157-0040) を使用した。
【0192】
すべての操作は室温で行った。流速を175 cm/時間で一定に維持し、280 nmでのUVシグナルを記録した。使用前に、すべての溶液を殺菌濾過し、機器を水酸化ナトリウムで浄化した。カラムを使用しない場合には0.5M NaOH溶液で保存した。
【0193】
最初の洗浄ステップ(リンス及び予備平衡化):
少なくとも1BVの20 mMリン酸ナトリウムpH 7.5緩衝液でカラムを洗浄し、次いで少なくとも3BVの0.5 Mリン酸ナトリウム緩衝液pH 7.5でpHを下げた。
【0194】
平衡化:
少なくとも5BVの20 mMリン酸ナトリウムpH 7.5緩衝液で(又は、標的導電性3.0±0.3 mS/cm及びpH 7.5±0.1に到達するまで)カラムを平衡化した。
ローディング:
充填樹脂のml当たりのSE-HPLCアッセイによって決定されたNMT 50 mg TACI-Fcの容量で、0.5 Mのストック溶液からの0.1 mM終濃度まで加えられた塩化カルシウム、及び85 %のオルトリン酸を添加することによって7.0に調整したpHをで、SOURCE 3OQフロースルーでカラムをロードした。ヒドロキシアパタイトカラム上でpH 7.0に調整された、塩化カルシウムを含まないSOURCE 3OQフロースルーも可能である。
洗浄ステップ:
少なくとも4BVの3、4又は5 mMのリン酸ナトリウム、1O mM MES、0.1 mM CaCl2 pH6.5でカラムを洗浄した。これらのステップでは、塩化カルシウムを含まない同一の緩衝液を使用することも可能である。
溶出:
異なったBVについてのUV増加の開始から(表VI及びVII参照)、カラムを5、4、3又は2 mMのリン酸ナトリウムで溶出し(表VI参照)、1O mM MES、0.1 mM CaCl2、及び0.6、0.7、0.8又は0.9 M KCl pH 6.5緩衝液で溶出した(表VII参照)。溶出のために塩化カルシウムを含まない同一緩衝液を使用することも可能である。
リンス:
カラムを少なくとも1BVの2O mMリン酸ナトリウムpH 7.5緩衝液;少なくとも3BVの0.5 Mリン酸ナトリウムpH 7.5緩衝液;及び少なくとも1BVの20 mMリン酸ナトリウムpH 7.5緩衝液でリンスした。
保存:
カラムを少なくとも3BVの0.5 M NaOHで保存した。
【0195】
結果
表VIは、凝集体クリアランス及び生成物回収に対する、溶出緩衝液のリン酸塩濃度(2〜5 mM)の効果を示す。溶出ピークフラクションを集め、TACI-Fc濃度及び凝集体レベルについてSE-HPLCによって分析した。
【0196】
【表14】

【0197】
表VIIは、凝集体クリアラン及び生成物回収に対する、溶出緩衝液のKCl濃度の効果を示す。2つのリン酸ナトリウム濃度2及び3 mMを評価した。溶出ピークフラクションを集め、TACI-Fc濃度及び凝集体レベルについてSE-HPLCによって分析した。
【0198】
【表15】

【0199】
結論
ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーは、TACI-Fc凝集レベルを減少させる信頼性のある効率的な方法を提供する。約5〜8 %の凝集レベルを有するアニオン交換クロマトグラフィー精製物質から始めて(実施例3参照)、ヒドロキシアパタイトクトマトグラフィーは、このレベルを0.8 %未満に減少させることができ、85〜90 %のTACI-Fcの回収を伴う。
【0200】
全体的な結果:
1 %未満(5つの実験で0.2〜0.8 %)までの凝集体の全体的な減少、約5〜10 ppmまでのHCPの全体的な減少及び0.5 %未満(5つの実験で0.2、0.1 %)までの遊離Fcレベルの全体的な減少をもたらす、高度に精製されたTACI-Fcを与えるTACI-Fcの4ステップ精製法を開発した。
【0201】
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【0202】
配列表の簡単な説明
配列番号1は、TNFRスーパーファミリーのメンバーに共通のシステイン フィンガープリント配列(システイン豊富な偽反復)であり;
配列番号2は、ヒトTACI受容体の完全長配列であり(例えば、WO 98/39361に記載されている);
配列番号3は、本発明のヒトFc配列の例であり(例えば、WO 02/094852に記載されている);
配列番号4は、TACIの細胞外部分及びヒトIgG1 Fc部分から得られる配列を含む本発明の好ましいFc-融合タンパク質であり(例えば、WO 02/094852に記載されている);
配列番号5は、配列番号2のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであり(例えば、WO 02/094852に記載されている);
配列番号6は、配列番号3のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであり(例えば、WO 02/094852に記載されている);
配列番号7は、配列番号4のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである(例えば、WO 02/094852に記載されている)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
6.9〜9.5の等電点(pl)を有するFc-融合タンパク質の精製方法であって、以下のステップ:
a. Fc-融合タンパク質を含む流体をプロテインA又はプロテインGアフィニティークロマトグラフィーに供し;
b. ステップ(a)の溶出液をカチオン交換クロマトグラフィーに供し;
c. ステップ(b)の溶出液をアニオン交換クロマトグラフィーに供し;
d. ステップ(c)のフロースルーをヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーに供し、及び溶出液を集めて、精製されたFc-融合タンパク質を得ること、
を含む、前記方法。
【請求項2】
ステップ(a)の溶出液が2.8〜4.5の範囲のpHで実行される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(b)が、
1. 充填後のカチオン交換樹脂を6〜7の範囲のpH及び6〜10 mS/cmの範囲の導電率を有する緩衝液で洗浄し;及び
2. カラムを7.3〜8.2の範囲のpH及び15〜22 mS/cmの範囲の導電率を有する緩衝液で溶出すること、
を更に含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ(c)において、平衡化及び充填が、3〜4.6 mS/cmの範囲の導電率及びFc-融合タンパク質のpl値未満の1単位のpHを有する緩衝液で行われる、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ(d)における溶出が、3〜10 mMの範囲の濃度のリン酸ナトリウムの存在下で行われる、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ(d)における溶出が、0.4〜1 Mの範囲の塩化カルシウムの存在下で行われる、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記ステップ(d)における溶出が、6〜7の範囲のpHで行われる、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記ステップ(a)が、組換えプロテインA又はプロテインGで修飾された架橋アガロースを含む樹脂上で行われる、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記ステップ(b)が強力なカチオン交換樹脂上で行われる、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記樹脂が、SO3-基で修飾された架橋メタクリレートを含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記ステップ(c)が、強力なアニオン交換樹脂上で行われる、請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記樹脂が、N+(CH3)3で修飾されたポリスチレン/ジビニルベンゼンを含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記ステップ(d)がセラミック性ヒドロキシアパタイト樹脂上で行われる、請求項1〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記セラミック性ヒドロキシアパタイト樹脂が、40 μmのサイズを有する粒子を含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
限界濾過の少なくとも1つのステップを更に含む、請求項1〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記限界濾過ステップが、ステップ(b)と(c)との間、及び/又はステップ(d)の後で行われる、請求項15記載の方法。
【請求項17】
Fc-融合タンパク質の医薬組成物への調合を更に含む、請求項1〜16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記Fc-融合タンパク質が8〜9のplを有する、請求項1〜17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記Fc-融合タンパク質が8.3〜8.6のplを有する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記Fc-融合タンパク質が腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーのメンバーのリガンド結合タンパク質を含む、請求項1〜19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
前記リガンド結合タンパク質が、TNFR1、TNFR2、又はそのTNFの結合断片の細胞外ドメインから選ばれる、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記リガンド結合部分が、BAFF-R、BCMA、TACIの細胞外ドメイン、又はBlys又はAPRILの少なくとも1つと結合するその断片から選ばれる、請求項20記載の方法。
【請求項23】
前記Fc-融合タンパク質が、以下:
(a) 配列番号2のアミノ酸34〜66;
(b) 配列番号2のアミノ酸71〜104;
(c) 配列番号2のアミノ酸34〜104;
(d) 配列番号2のアミノ酸30〜110;
(e) 配列番号3;
(f) 配列番号4;
(g) 高ストリンジェントな条件下で配列番号5、6又は7の補体とハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド;及び
(h) (c)、(d)、(e)又は(f)のポリペプチドと少なくとも80 %、85 %、90 %又は95 %の配列同一性を有する(c)、(d)、(e)又は(f)のいずれかの変異タンパク質、
から選ばれるポリペプチドを含み;
ここで、該ポリペプチドは少なくとも1つのBlys又はAPRILに結合する、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記Fc-融合タンパク質が免疫グロブリンの重鎖定常領域を含む、請求項1〜23のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
前記定常領域がヒト定常領域である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記免疫グロブリンがIgG1である、請求項24又は25記載の方法。
【請求項27】
前記定常領域が、ヒンジ、CH2及びCH3ドメインを含む、請求項23〜25のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
前記Fc-融合タンパク質が、以下:
(a) 配列番号2のアミノ酸34〜66;
(b) 配列番号2のアミノ酸71〜104;
(c) 配列番号2のアミノ酸34〜104;
(d) 配列番号2のアミノ酸30〜110;
(e) 配列番号3;
(f) 配列番号4;
(g) 高ストリンジェントな条件下で配列番号5、6又は7の補体とハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド;及び
(h) (c)、(d)、(e)又は(f)のポリペプチドと少なくとも80 %、85 %、90 %又は95 %の配列同一性を有する(c)、(d)、(e)又は(f)のいずれかの変異タンパク質、
から選ばれるポリペプチドを含み;
ここで、該ポリペプチドは少なくとも1つのBlys又はAPRILに結合する、請求項1〜27のいずれか1項記載の方法によって得られた精製Fc-融合タンパク質組成物であって、
タンパク質凝集体の1 %未満又は0.5 %未満を含み、遊離のFcタンパク質の1 %未満、0.5 %未満又は0.1 %未満を含む、前記組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−501622(P2010−501622A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526067(P2009−526067)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【国際出願番号】PCT/EP2007/058886
【国際公開番号】WO2008/025747
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(504104899)アレス トレーディング ソシエテ アノニム (59)
【Fターム(参考)】