Fn14/TRAIL融合タンパク質
TWEAKおよびTRAILのシグナル伝達軸に対して作用する融合タンパク質を提供する。該タンパク質は、自己免疫疾患、特に多発性硬化症、ならびに同種免疫疾患および癌などの他の疾患の治療または改善に有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、Fn14/TRAIL融合タンパク質および関連融合タンパク質、ならびにこれらのタンパク質によって自己免疫疾患および癌などのある種の疾患を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景情報
正および負のシグナルの複雑な相互作用が、T細胞の活性化およびT細胞エフェクター機能の維持を調節している。TNFリガンド/TNF受容体スーパーファミリーのメンバーは、このシグナルのマトリクッスの中で重要な位置を占めており、免疫系の細胞同士の橋渡し、ならびにそれらと他の臓器系の細胞との橋渡しをする。その際に、TNFスーパーファミリーのメンバーは、細胞の生存および死、細胞分化ならびに炎症に対する影響を介して、組織ホメオスタシスおよび組織病理発生の両方に寄与する。自己免疫病理発生の観点から、興味深いTNFリガンドスーパーファミリーのメンバーは、TNF関連アポトーシス誘導性リガンド(TNF-related apoptosis-inducing ligand)(TRAIL)およびTWEAK(TNF関連アポトーシス弱誘導因子(TNF-related weak inducer of apoptosis))である。
【0003】
TRAILは、TNF受容体スーパーファミリーのいくつかの異なるコグネイト受容体と結合し、それらの中には、細胞内シグナル伝達経路のトリガーとなることにつながるものもあれば、単にデコイ受容体として作用するものもある。ヒトにおけるトリガー受容体はTRAIL-R1、TRAIL-R2およびオステオプロテグリンであり、マウスにおける唯一のトリガー受容体はDR5である。免疫系の事実上すべての細胞(Tリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、単球、顆粒球)は、インターフェロンおよび他の活性化シグナルに応答して、表面TRAILを上方制御する、および/または分泌小胞内に貯蔵された可溶性TRAILを放出する。TRAILはいくつかの動物モデルにおいて自己免疫を抑制する。MSのマウスモデルにおいて実験的自己免疫性脳炎(EAE)を抑制する能力がTRAILにあるという証拠は、TRAIL-/-ノックアウトマウス、TRAILの機能を阻止しうる可溶性TRAIL受容体(sDR5)または中和性抗TRAIL mAb、および、TRAILと病原性MOG(ミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質ペプチド)とを共発現する胚性幹細胞由来の樹状細胞を利用した実験から得られている。興味深いことに、MS患者では、可溶性TRAILがIFN-β療法に対する反応マーカーであることが明らかになってきており、治療に反応する可能性が最も高い者は治療法の後に早期でかつ持続的な可溶性TRAILの誘導を示す。しかしながら、MS/EAEに及ぼすTRAILの影響はより複雑である可能性があり、例えば、TRAILは脳細胞アポトーシスを促す可能性があるという示唆がある。TRAILおよびFasLはいずれもT細胞の負の調節と関係づけられている。
【0004】
TWEAKおよびその対抗受容体であるFn14(線維芽細胞成長因子誘導型14kDaタンパク質)は、NK細胞、マクロファージ、樹状細胞、ミクログリア細胞、グリア細胞および内皮細胞を含むさまざまな免疫細胞種ならびに非免疫性細胞種で発現される、別のTNFファミリーリガンド-受容体ペアである。TWEAKは、いくつかの細胞種(星状膠細胞、内皮細胞およびある種のヒト腫瘍細胞株)の増殖を促進し、別のもの(赤芽球、腎細胞、メサンギウム細胞、神経細胞、NK細胞、単球)のそれを抑制する。TWEAKは、さまざまな炎症性サイトカイン、ケモカインおよび接着分子の産生を刺激する。しかし、TWEAK:Fn14シグナル伝達軸は、細胞増殖およびサイトカイン産生の範囲を超えた作用も有する。興味深いことに、長年にわたってTWEAKと関連づけられたより多くの一連の機能の中には、自己免疫につながるものが含まれる。TWEAKは神経血管ユニット(neurovascular unit)の透過性を増大させ、EAEおよび急性脳虚血の際にはCNSにおいてその内因性発現が亢進している。その上、TWEAKは血管新生誘発活性も有しており、このことは血管新生と自己免疫病理発生との関連を考慮に入れれば興味深い。TWEAKはEAEの重症度および随伴する神経変性を増大させる。TWEAKまたはFn14のいずれかの細胞外ドメインを用いたワクチン接種による阻害性抗TWEAKまたはFn14 Abの誘導は、ラットおよびマウスのモデルにおいてEAEの症状発現を改善する。
【0005】
多発性硬化症(MS)は、衰弱性の神経疾患であり、治療選択肢が増えているにもかかわらず、より有効な治療薬が依然として早急に求められている。MSの正確な病因は不明であるものの、その病理発生および臨床的進展の重要な特色が明らかになってきている。病原性エフェクターT細胞はこの疾患の進展に極めて重要と考えられており、このため、多くの治療的方針が、それらの活性化および再活性化を阻止すること、それらをより大きいT細胞リザーバから除去すること、ならびにCNS内部の発生病理部位へのそれらの移行を妨げることなどを目標として、これらの細胞に集中している。
【0006】
TWEAK/Fn14およびTRAIL/TRAILRシグナル伝達軸はいずれも癌と関係づけられている。例えば、"TRAIL receptor signalling and modulation: Are we on the right TRAIL?", Cancer Treatment Reviews 35 (2009) 280-288;および"The TWEAK-Fn14 cytokine-receptor axis: discovery, biology and therapeutic targeting", Nature 7 (2008) 411-425を参照されたい。
【発明の概要】
【0007】
したがって、1つの局面において、本発明は、第1のドメインがTWEAKリガンドと結合するポリペプチドであり、第2のドメインがTRAIL受容体と結合するポリペプチドである、第1のドメインおよび第2のドメインを含む融合タンパク質を提供する。
【0008】
1つのその他の局面において、本発明は、第1のドメインがFn14タンパク質の細胞外ドメインの少なくとも一部分であり、第2のドメインがTRAILタンパク質の細胞外ドメイン少なくとも一部分である、第1のドメインおよび第2のドメインから本質的になる融合タンパク質を提供する。
【0009】
別の局面において、本発明は、第1のドメインがTWEAKリガンドと結合するポリペプチドであり、第2のドメインが阻害機能を有するポリペプチドである、第1のドメインおよび第2のドメインを含む融合タンパク質を提供する。
【0010】
これらの融合タンパク質を含む薬学的組成物、ならびに本発明の融合タンパク質によって自己免疫疾患および癌などのさまざまな疾病を治療する方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明を、添付の図面によってさらに説明する。
【図1A】Fn14-TRAILの発現および機能分析である。Fn14、Fn14-TRAIL、Fn14-IgG1(突然変異型)およびTRAILに対する発現構築物をトランスフェクトした293細胞による馴化培地に対してウエスタンブロット分析を行った。観察されたバンドは、それぞれ8.7kD、27.5kD、34.1kDおよび19.0kDという予想されたサイズに一致した。
【図1B】Fn14-TRAILの発現および機能分析である。CHO細胞にマウスTWEAK cDNA発現構築物を一過性にトランスフェクトし、48時間後に、アジ化ナトリウムを含む緩衝液中で精製Fn14-TRAILまたはrTRAILとともに4℃でインキュベートした。トランスフェクタント上の膜結合型TWEAKの存在、およびそれらに対するFn14-TRAILの結合が、それぞれ抗マウスTWEAK Ab(B.1)および抗マウスTRAIL Ab(B.2〜5)を検出用Abとして用いたフローサイトメトリーによって実証された。(B.1)TWEAKは、抗TWEAK Ab(黒の実線)をアイソタイプ対照(網掛けヒストグラム)と対比して用いた検出によれば、トランスフェクトされたCHO細胞上で発現される。(B.2)TRAILは、抗TRAIL Ab(黒の実線)をアイソタイプ対照(網掛けヒストグラム)と対比して用いて分析した場合、CHO細胞上では検出されない。(B.3およびB.4)TWEAKを発現するCHO細胞にFn14-TRAILを添加した場合には、TWEAK陰性のCHO細胞の場合と異なり、TRAILエピトープが強化される。抗TRAIL Abおよびアイソタイプ対照はそれぞれ、黒の実線および網掛けヒストグラムによって表されている。(B.5)TWEAKがトランスフェクトされた細胞は、rTRAILの存在下では抗TRAIL Ab(黒の実線)と結合しない。アイソタイプ対照は網掛けヒストグラムとして示されている。
【図1C】Fn14-TRAILの発現および機能分析である。L929細胞を、平底96ウェルプレートの中で、2×104個/ウェルで、100μlのAIM-V培地中にて培養した。16時間後に、アクチノマイシンDを培養物に1mg/ウェルで添加し、細胞をもう2時間培養した。続いて、Fn14-TRAIL、または陽性対照としてのrTRAILを添加し、培養物をさらに5時間維持した。死細胞のパーセンテージを、材料および方法の項に記載した通りにMTTアッセイ法によって決定した。
【図2A】二重カセットpSBC21ベクターの機能的検証である。模式的に描写したように、pSBC21プラスミドは、トランスポゾンカセット(トランスシグナル再方向づけ(redirecting)タンパク質‐TSRPを作動させるEF1αプロモーターを備える)およびトランスポザーゼ発現カセット(UBCプロモーターによって作動する)を縦列に組み込んでいる。
【図2B】二重カセットpSBC21ベクターの機能的検証である。マウスに対して、pSBC21ベクターのみ(右のパネル)または図示した濃度のpルシフェラーゼ・SBC21のいずれかのハイドロダイナミックインジェクションを行った。プラスミド注入から22日後に、D-ルシフェラーゼの腹腔内投与後に生物発光画像を収集した。カラーバーは生物発光シグナルを放射輝度(p/sec/cm2/sr)で表している。
【図2C】二重カセットpSBC21ベクターの機能的検証である。5μg、10μgまたは20μgのFn14-TRAIL・pSBC21プラスミドの注入から20日後にFn14-TRAILの血清レベルをELISAによって決定した。
【図3A】Fn14-TRAILは、MOG誘導自己免疫性脳脊髄炎を抑制する。pSBC21をベースとする各々の発現プラスミド50μgのハイドロダイナミックインジェクションから20日後に、Fn14、Fn14-TRAIL、Fn14-IgG1(突然変異型)およびTRAILの血清レベルをELISAによって測定した。
【図3B】Fn14-TRAILは、MOG誘導自己免疫性脳脊髄炎を抑制する。マウスに対して、材料および方法の項に記載した通りに、結核菌(M. tuberculosis)を加えたCFA中のMOGによる負荷刺激を行った。MOG負荷刺激から48時間後に、マウスに対して、pSBC21をベースとする図示した発現構築物50μgのハイドロダイナミックインジェクションを行った。個々のマウスを、材料および方法の項に記載した臨床的尺度に従ってスコア化した。評価したパラメーターには、平均臨床スコア(上のパネル)、および疾患発生率(下のパネル)が含まれる。Fn14-TRAILを投与した群とベクターのみの対照群との間の差はMann-Whitney U検定により統計学的に有意であり(p<0.05)、一方、示した他の群とベクターのみの群との間の差は有意ではなかった。
【図3C】Fn14-TRAILは、MOG誘導自己免疫性脳脊髄炎を抑制する。マウスに対して、材料および方法の項に記載した通りに、結核菌(M. tuberculosis)を加えたCFA中のMOGによる負荷刺激を行った。MOG負荷刺激から48時間後に、マウスに対して、pSBC21をベースとする図示した発現構築物50μgのハイドロダイナミックインジェクションを行った。個々のマウスを、材料および方法の項に記載した臨床的尺度に従ってスコア化した。評価したパラメーターには、累積平均臨床スコアが含まれる。Fn14-TRAILを投与した群とベクターのみの対照群との間の差はMann-Whitney U検定により統計学的に有意であり(p<0.05)、一方、示した他の群とベクターのみの群との間の差は有意ではなかった。
【図3D】Fn14-TRAILは、MOG誘導自己免疫性脳脊髄炎を抑制する。マウスに対して、材料および方法の項に記載した通りに、結核菌(M. tuberculosis)を加えたCFA中のMOGによる負荷刺激を行った。MOG負荷刺激から48時間後に、マウスに対して、pSBC21をベースとする図示した発現構築物50μgのハイドロダイナミックインジェクションを行った。個々のマウスを、材料および方法の項に記載した臨床的尺度に従ってスコア化した。評価したパラメーターには、35日目の平均臨床スコアが含まれる。Fn14-TRAILを投与した群とベクターのみの対照群との間の差はMann-Whitney U検定により統計学的に有意であり(p<0.05)、一方、示した他の群とベクターのみの群との間の差は有意ではなかった。
【図4】Fn14およびTRAILの組み合わせでは、Fn14-TRAILの治療効力は達成されない。(A)〜(C)MOG負荷刺激から48時間後に、マウスに対して、Fn14-TRAIL・pSBC21プラスミドの単回用量(25μg/マウス)、またはFn14・pSBC21プラスミドおよびTRAIL・pSBC21プラスミドの混合物の単回用量(各25μg/マウス)のハイドロダイナミックインジェクションを行った。図示した群について40日間(A)ならびに16日目、23日目および40日目(B)の平均臨床スコアを示している。図示した群の40日目の時点の累積MCSも示している(C)。Fn14-TRAILを投与した群とベクターのみの対照群との間の差はMann-Whitney U検定により統計学的に有意であり(p<0.05)、一方、示した他の群とベクターのみの群との間は有意ではない。(D)Fn14-TRAILの血清レベルを、Fn14・pSBC21(25μg)+TRAIL・pSBC21(25μg)の組み合わせ、またはFn14-TRAIL・pSBC21(25μg)の注入から30日後にELISAによって決定した。(E)pSBC21ベクターのみ、またはFn14-TRAIL・pSBC21のハイドロダイナミックインジェクションを行ったMOG負荷刺激マウスを、治療薬の投与を受けてから43日後に殺処理した。各マウスからの脾細胞を、種々の濃度のMOG38_50ペプチドの存在下または非存在下で培養し、増殖を材料および方法の項に記載した通りに評価した。結果は、各群当たり合計9匹のマウスの平均±SDとして示している。
【図5A】Fn14-TRAIL・pSBC21は、MOG負荷刺激マウスにおけるサイトカイン産生を阻害する。マウスに対して、結核菌を加えたCFA中のMOGによる負荷刺激を行い、pSBC21ベクターのみまたはFn14-TRAIL・pSBC21のハイドロダイナミックインジェクションを行った。治療薬の投与を受けてから43日後に動物を殺処理し、各マウスからの脾細胞を種々の濃度のM0G38-50ペプチドの存在下または非存在下で培養した。培養した培地を40時間後に回収し、図示したサイトカインの濃度をELISAによって決定した。
【図5B】Fn14-TRAIL・pSBC21は、MOG負荷刺激マウスにおけるサイトカイン産生を阻害する。マウスに対して、結核菌を加えたCFA中のMOGによる負荷刺激を行い、pSBC21ベクターのみまたはFn14-TRAIL・pSBC21のハイドロダイナミックインジェクションを行った。治療薬の投与を受けてから43日後に動物を殺処理し、各マウスからの脾細胞を種々の濃度のM0G38-50ペプチドの存在下または非存在下で培養した。培養した培地を40時間後に回収し、図示したサイトカインの濃度をELISAによって決定した。
【図5C】Fn14-TRAIL・pSBC21は、MOG負荷刺激マウスにおけるサイトカイン産生を阻害する。マウスに対して、結核菌を加えたCFA中のMOGによる負荷刺激を行い、pSBC21ベクターのみまたはFn14-TRAIL・pSBC21のハイドロダイナミックインジェクションを行った。治療薬の投与を受けてから43日後に動物を殺処理し、各マウスからの脾細胞を種々の濃度のM0G38-50ペプチドの存在下または非存在下で培養した。培養した培地を40時間後に回収し、図示したサイトカインの濃度をELISAによって決定した。
【図6】Fn14-TRAIL・pSBC21投与は、MOG負荷刺激マウスの脊髄内の活性化されかつサイトカインを産生する細胞を減少させる。pSBC21ベクターのみを投与したマウスおよびFn14-TRAIL・pSBC21を投与したマウスの脊髄から浸潤細胞を単離し、材料および方法の項に記載した通りに分析した。細胞の数は、生細胞の総数に図示した各細胞種の%を乗算することによって計算した。細胞のパーセンテージおよび数は、3匹のマウスの群から収集した、図示した細胞種のパーセンテージおよび数の代表である。(A)〜(B)MOG負荷刺激後の7日目の時点での活性化(CD69+)炎症細胞のパーセンテージおよび絶対数。(C)〜(D)MOG負荷刺激後の7日目の時点での(活性化CD69+細胞または全細胞プールの中での)CD4+細胞およびCD8+細胞、ならびにIFNγ、IL-17およびIL-10発現細胞のパーセンテージおよび絶対数。(D)〜(E)MOG負荷刺激後の14日目の時点でのCD8+細胞、ならびにIFNγ、IL-17およびIL-10発現細胞のパーセンテージおよび絶対数
【図7A】Fn14-TRAIL・pSBC21投与は、MOG負荷刺激マウスにおける脊髄炎症を軽減する。SBC21ベクターのみまたはFn14-TRAIL・pSBC21のハイドロダイナミックインジェクションを行ったMOG負荷刺激マウスに対して、PBSおよび10%ホルマリンリン酸による経心臓的な灌流を行った。脊髄を取り出して6つの小片に切断し、パラフィン中に包埋して、5μmずつ横断的に切片化した上で、ルクソールファストブルーおよびクレシルバイオレットで染色した。上のパネルは、左から右の順に最大疾患スコアがそれぞれ2、3.5および1の、ベクターのみを投与したマウスの代表的な脊髄切片を示している。下のパネルは、左から右の順に最大疾患スコアがそれぞれ0、1および3の、Fn14-TRAILを投与したマウスの代表的な脊髄切片を示している。
【図7B】Fn14-TRAIL・pSBC21投与は、MOG負荷刺激マウスにおける脊髄炎症を軽減する。SBC21ベクターのみまたはFn14-TRAIL・pSBC21のハイドロダイナミックインジェクションを行ったMOG負荷刺激マウスに対して、PBSおよび10%ホルマリンリン酸による経心臓的な灌流を行った。脊髄を取り出して6つの小片に切断し、パラフィン中に包埋して、5μmずつ横断的に切片化した上で、ルクソールファストブルーおよびクレシルバイオレットで染色した。6つの脊髄区域のそれぞれからの組織切片を各動物に関して分析した。個々の切片に対して、以下の基準に従って炎症スコアを指定した:0、炎症なし;1、白質の5%未満;2、5〜20%;3、20〜50%および4、50%超に白血球が浸潤している。各マウスに関する組織学的スコアは、6つの脊髄切片のスコアの合計である。Fn14-TRAILを投与した群と対照群との間の差は、Mann-Whitney U検定により統計学的に有意である(p<0.05)。
【図8A】Fn14-TRAIL投与は血液脳関門透過性を低下させる。SBC21ベクターのみまたはFn14-TRAIL・pSBC21のハイドロダイナミックインジェクションを行ったMOG負荷刺激マウスに対して、MOG負荷刺激後の6日目にエバンスブルー色素を注入した。図示した組織の抽出物中のエバンスブルーを、材料および方法の項に記載した通りに定量的に分析した。結果は、ng/組織 gとして計算した630nmでのエバンスブルーの比吸光度を表している。星印は、その差がStudentのt検定による判定で統計学的に有意(p<0.05)であることを指し示している。
【図8B】Fn14-TRAIL投与は血液脳関門透過性を低下させる。SBC21ベクターのみまたはFn14-TRAIL・pSBC21のハイドロダイナミックインジェクションを行ったMOG負荷刺激マウスに対して、MOG負荷刺激後の13日目にエバンスブルー色素を注入した。図示した組織の抽出物中のエバンスブルーを、材料および方法の項に記載した通りに定量的に分析した。結果は、ng/組織 gとして計算した630nmでのエバンスブルーの比吸光度を表している。星印は、その差がStudentのt検定による判定で統計学的に有意(p<0.05)であることを指し示している。
【図8C】Fn14-TRAIL投与は血液脳関門透過性を低下させる。SBC21ベクターのみまたはFn14-TRAIL・pSBC21のハイドロダイナミックインジェクションを行ったMOG負荷刺激マウスに対して、MOG負荷刺激後の6日目(図8A)または13日目(図8B)にエバンスブルー色素を注入した。図示した組織の抽出物中のエバンスブルーを、材料および方法の項に記載した通りに定量的に分析した。結果は、ng/組織 gとして計算した630nmでのエバンスブルーの比吸光度を表している。星印は、その差がStudentのt検定による判定で統計学的に有意(p<0.05)であることを指し示している。図8Cは、平均臨床スコア(0または1)を一致させたベクターのみを投与したマウスとFn14-TRAILを投与したマウスの脊髄における、MOG負荷刺激後の13日目の時点での吸収された色素の濃度である。
【図9】TWEAK:Fn14-TRAIL;DR5複合体の構造モデルである。材料および方法の項に記載した通りにして生成した三次元モデルを、単量体単位としてのFn14-TRAIL(A、Fn14が青色で、TRAILが白色)、Fn14-TRAIL三量体(B、リボンモデルとして;C、空間充填モデルとして)およびTWEAK:Fn14-TRAIL:DR5複合体(D、Fn14-TRAILは空間充填モデルとして、TWEAK三量体はリボンモデルとして上方に、DR5三量体はリボンモデルとして下方に)について示している。
【図10】ヒトFn14-TRAIL融合タンパク質のウエスタンブロット分析である。
【図11】Fn14-TRAIL精製過程における種々の逐次段階での産物を示しているSDS-PAGE分析である。
【図12A】Fn14-Trailが、MOG免疫処置マウスから採取された脾細胞の総数を減少させることを指し示しているグラフである。
【図12B】Fn14-Trailが、MOG免疫処置マウスから採取された脾細胞の総数を減少させることを指し示しているグラフである。
【図13】インビボでのFn14-Trail投与が、リンパ節から回収されたリンパ球のエクスビボ抗原再刺激に対するエクスビボでのリコール応答を低下させることを示しているデータのグラフである。
【図14A】Fn14-Trailが、MOG負荷刺激マウスにおけるEAE疾患の進行を緩和することを示しているデータのグラフである。
【図14B】Fn14-Trailが、MOG負荷刺激マウスにおけるEAE疾患の進行を緩和することを示しているデータのグラフである。
【図15】Fn14-Trailが、DBA1マウスにおけるコラーゲン誘導関節炎を抑制することを指し示しているデータのグラフである。
【図16A】種々の濃度のFn14-TRAILの存在下で24時間培養したSK-HEP1ヘパトーマ細胞株からのデータのグラフである。インキュベーション後に細胞を収集し、トリパンブルーで染色して、生細胞および死細胞を計数した。示したデータは2件の独立した実験の代表である。
【図16B】種々の濃度のFn14-TRAILの存在下で24時間培養したRaji悪性B細胞株からのデータのグラフである。インキュベーション後に細胞を収集し、トリパンブルーで染色して、生細胞および死細胞を計数した。示したデータは2件の独立した実験の代表である。
【図16C】種々の濃度のFn14-TRAILの存在下で24時間培養した非悪性肝細胞株NKNT3からのデータのグラフである。インキュベーション後に細胞を収集し、トリパンブルーで染色して、生細胞および死細胞を計数した。示したデータは2件の独立した実験の代表である。
【図16D】種々の濃度のFn14-TRAILの存在下で24時間培養した非悪性肝細胞株FH-Bからのデータのグラフである。インキュベーション後に細胞を収集し、トリパンブルーで染色して、生細胞および死細胞を計数した。示したデータは2件の独立した実験の代表である。
【図17】種々の濃度(図示した通り)のFn14-TRAIL、sTrail、Fn14-Fcまたは後者2つの組み合わせの存在下で培養したSK-HEP1ヘパトーマ細胞株からのデータのグラフである。24時間のインキュベーション後に細胞を収集し、トリパンブルーで染色して、生細胞および死細胞を計数した。示したデータは、3件の独立した実験の代表である。
【図18】種々の濃度のFn14-TRAIL、sTRAIL、Fn14-Fcまたは後者2つの組み合わせの存在下で培養したSK-HEP1ヘパトーマ細胞株からのデータのグラフである。24時間のインキュベーション後に細胞を収集し、洗浄して、アネキシンV/PI染色およびフローサイトメトリーによってアポトーシスに関して検査した。示したデータは、2件の独立した実験の代表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
実施例において用いる場合を含め、本明細書および特許請求の範囲において用いる場合には、別に明示的に特定する場合を除き、すべての数は、「約」という語が、たとえその用語が明示的に現れていなくても、あたかも前置されているかのように読むことができる。同じく、本明細書に記載した任意の数値範囲は、その中に包含されるすべての部分範囲も含むものとする。任意のアミノ酸配列をSwiss Prot.またはNCBIアクセッション番号によって具体的に参照している場合、その配列は参照により本明細書に組み入れられる。
【0013】
本発明は、1つの局面において、TWEAKおよびTRAILシグナル伝達軸に対して作用する融合タンパク質、例えば、TWEAKリガンドと結合するポリペプチドを含む第1のドメイン;およびTRAIL受容体と結合するポリペプチドを含む第2のドメインを有する融合タンパク質を提供する。
【0014】
特に、第1のドメインは、TWEAKがそのFn14受容体を介してトリガーを引く能力を妨げる能力を有するポリペプチドであり、第2のドメインは、T細胞またはTRAIL受容体を保有する他の細胞上のコグネイト受容体を介して阻害性シグナルを方向づける(direct)ことのできるポリペプチドである。
【0015】
TWEAKおよびTRAILシグナル伝達軸の状況において適した第1のドメインには、例えば、Fn14タンパク質、野生型Fn14タンパク質の変種もしくは誘導体、またはTWEAKと結合してこのリガンドがそのFn14受容体を介してシグナル伝達を行うのを防ぐように特に適合化された他のポリペプチドもしくはタンパク質、例えば、TWEAKと結合する抗体、TWEAKと結合する抗体の一部、およびTWEAKと結合するように人工的に操作されたリポカリン誘導体などが含まれる。好ましくは、この態様の融合タンパク質の第1のドメインは、Fn14タンパク質の細胞外ドメインの少なくとも一部分、特に、TWEAKリガンドと結合して、それが膜結合型Fn14受容体と結合してそのトリガーを引く能力を妨げるために必要な細胞外ドメインの部分である。TWEAK結合の原因となる細胞外ドメインまたは細胞外ドメインの部分の野生型形態の変種も、その変種が野生型タンパク質と同程度のレベルの生物活性を与える限り、本発明に含まれる。
【0016】
したがって、「TWEAKリガンドと結合するポリペプチド」という用語は、本明細書で用いる場合、Fn14タンパク質;Fn14タンパク質の細胞外ドメイン;Fn14タンパク質の細胞外ドメインの少なくとも一部分であり、その部分がTWEAKリガンドとの結合の原因となるポリペプチド;TWEAKに対する抗体または抗体の一部;リポカリン誘導体;ならびにこれらの任意のものの変種および/または誘導体を含む。「Fn14」という用語は、細胞質ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞外ドメインを含むFn14タンパク質の完全アミノ酸配列に対応するポリペプチドのほか、タンパク質のより小さい部分、例えば細胞外ドメインまたは細胞外ドメインの部分などに対応するポリペプチドも含むものと解釈される。1つの態様において、Fn14/TRAIL融合タンパク質の第1のドメインは、ヒトFn14タンパク質の細胞外ドメインの少なくとも一部分である。
【0017】
TWEAKおよびTRAILシグナル伝達軸において適した第2のドメインには、例えば、TRAILタンパク質それ自体、TRAILタンパク質の変種もしくは誘導体、または、T細胞もしくは他の細胞の活性化を阻害するように、および/またはTRAIL受容体を介したアポトーシスを誘導するように特に設計された他のポリペプチドもしくはタンパク質、例えばアゴニスト抗TRAIL Abなど、ならびにこれらの任意のものの変種および/または誘導体が含まれる。
【0018】
好ましくは、この態様における融合タンパク質の第2のドメインは、TRAILタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも一部分、特にTRAIL受容体との結合のために必要な部分である。TRAIL受容体の結合の原因となるTRAILタンパク質の細胞外ドメインまたは細胞外ドメインの部分の変種も、その変種が野生型タンパク質と同程度のレベルの生物活性を与える限り、本発明に含まれる。
【0019】
したがって、「TRAIL受容体と結合するポリペプチド」という用語は、本明細書で用いる場合、TRAILタンパク質;TRAILタンパク質の細胞外ドメイン;TRAILタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも一部分であり、その部分がTRAIL受容体との結合の原因となるポリペプチド;TRAIL受容体に対する抗体(および抗体の一部);ならびにこれらの任意のものの変種および/または誘導体を含む。「TRAIL」という用語は、細胞質ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞外ドメインを含むTRAILタンパク質の完全アミノ酸配列に対応するポリペプチドのほか、タンパク質のより小さい部分、例えば細胞外ドメインまたは細胞外ドメインの部分などに対応するポリペプチドも含むものと解釈される。1つの態様において、Fn14-TRAIL融合タンパク質の第2のドメインは、ヒトTRAILタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも一部分である。
【0020】
1つの態様において、本発明は、Fn14/TRAIL融合タンパク質を含む。別の態様において、「Fn14/TRAIL融合タンパク質」という用語は、SEQ ID NO:1によって識別される特定の融合タンパク質のことを指す。
SEQ ID NO:1 ヒトFn14-TRAIL
【0021】
別の態様において、「Fn14/TRAIL融合タンパク質」という用語は、SEQ ID NO:2によって識別される特定の融合タンパク質のことを指す。
SEQ ID NO:2 ヒトFn14-TRAIL
【0022】
SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:2はいずれも、元のシグナルペプチドを含む。これらのシグナルペプチドは、使用者の要求、発現システム、および、当業者が理解しているであろう他の要因に応じて異なりうる。シグナルペプチドは当技術分野において周知であり、当業者に公知の公的に入手可能なシグナルペプチド認識ソフトウエアによって認識/予測された任意の所望のシグナルペプチドを用いることができる。
【0023】
その他の態様において、Fn14/TRAIL融合タンパク質は、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:2に示されたアミノ酸配列の変種および/または誘導体である。
【0024】
本発明のさらにその他の局面において、本明細書に記載した融合タンパク質の任意のもののTRAIL構成要素を、別の阻害タンパク質によって、すなわち、免疫応答の活性化を防ぐ、かつ/またはT細胞もしくは他の細胞種、例えばB細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、NKT細胞、リンパ前駆細胞、樹状細胞、単球/マクロファージ、組織をベースとする抗原提示能力を備えるマクロファージ系列細胞など、ならびにさまざまな非専門的な抗原提示細胞の任意のもの、例えば内皮細胞におけるアポトーシスを誘導する、タンパク質によって置換することができる。阻害タンパク質の例には、FasL、TNF、PDL-1、PDL-2、B7x、B7-H3およびCD31が非限定的に含まれる。
【0025】
例えば、BTLAは重要な阻害性受容体であり、B7xは、まだ発見されていない他のリガンドに加えて、そのリガンドである可能性がある。同様に、CTLA-4は別の重要な阻害性受容体であり、この阻害性CTLA-4受容体を作動させるリガンドには、B7分子のいくつか、ならびにアゴニストAbが含まれる。この場合には、融合タンパク質はそれぞれFn14/B7xおよびFn14/B7アゴニスト融合タンパク質であると考えられる。
【0026】
B細胞も自己免疫を作動させる上で非常に重要であるという評価が高まっている。B細胞の阻害性受容体を作動させる(Fn14と融合された)その他の阻害性リガンド、例えば、CD100(CD72と結合)、CD5(同じくCD72と結合)、CD72(CD5と結合)、Ep-CAM(LAIR-1と結合)、FcγRIIに対するアゴニスト、CD22、PDL-1、PDL-2、CD66aおよびPIR-Bなども、本発明の範囲に含まれる。
【0027】
文献にはその他の例も豊富に記載されており、これには例えば、いずれも参照により本明細書に組み入れられる、Sinclair, N. "Why so Many Coinhibitory Receptors?, Scand. J. Immunol. 50, 10-13 (1999);Melero, I. et al. "Immunostimulatory monoclonal antibodies for cancer therapy", Nature Rev. Cancer 7:95-106 (2007);および、Zang, X. et al., "The B7 Family and Cancer Therapy: Costimulation and Coinhibition", Clin. Cancer Res. 13: 5271-5279 (2007)に挙げられたものなどがある。上述の阻害タンパク質の任意のものが本発明の融合タンパク質および方法に含まれ、これらは本明細書において「阻害機能を有するポリペプチド」と総称される。
【0028】
したがって、その他の態様において、本発明は、Fn14/阻害タンパク質融合ペア、例えば、Fn14/FasL、Fn14/PDL-1、Fn14/PDL-2、Fn14/TNF、Fn14/CD100、Fn14/CD5、Fn14/CD72、Fn14/Ep-CAM、Fn14/Fcγ-RII、Fn14/CD22、Fn14/CD66a、Fn14/PIR-B、Fn14/B7x、Fn14/B7-H3およびFn14/CD31などを提供する。TWEAK/TRAILシグナル伝達軸の状況における上記の第1のドメインの任意のもの、例えば、TWEAKリガンドと結合するポリペプチドは、これらの態様において適した第1のドメインであると考えられる。
【0029】
1つの態様において、本発明の融合タンパク質は、ミエリン特異的T細胞の増殖および分化を防止または低下させることによって、免疫系の活性化を阻害する。いくつかの態様において、本発明の融合タンパク質は、炎症誘発性サイトカインおよびケモカイン、例えばIL-6、IL-8、RANTES、IP-10およびMCP-1などの産生を阻害するか、または他のサイトカイン/ケモカイン、例えばTNF-αおよびIL-1βの増強を阻害するか;または、MMP-1およびMMP-9などのマトリックスメタロプロテイナーゼの誘導を阻害するか;または、線維芽細胞および滑膜細胞からのプロスタグランジンE2分泌を阻害する。本発明は、TWEAKリガンドによって促進されるかまたはTRAILリガンドによって下方制御を受けるかのいずれかである任意およびすべてのサイトカインの阻害/下方調節を含む。
【0030】
他の態様において、本発明の融合タンパク質は、自己反応性T細胞の増殖、自己反応性抗体の産生および炎症反応を阻害する。
【0031】
その他の態様において、本発明の融合タンパク質は、炎症誘発物質が動物に局所的または全身的に導入される、炎症のインビボモデル系、例えばEAEおよびコラーゲン誘導関節炎、ならびに遅延型過敏性および他のモデルなどの自己免疫疾患のモデルにおいて、炎症誘発性サイトカインおよびケモカインの産生の阻害、ならびに/または抗炎症性サイトカイン産生の亢進を測定する、インビトロおよびインビボのアッセイ法における判定で、炎症を軽減する。これらのインビボモデルにおいて、炎症は、炎症組織の組織学的検査、罹患組織からの炎症細胞の単離、および罹患動物における疾患症状発現の測定によって評価される。本発明の融合タンパク質は、他の態様において、自己反応性CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞などの病原性T細胞、ならびにB細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、NKT細胞、リンパ前駆細胞、樹状細胞、単球/マクロファージなどの他の病原性免疫細胞の増殖、分化および/またはエフェクター機能を阻害し;病原性免疫細胞におけるアポトーシスを誘導し;調節特性を備える免疫細胞の生成を促進し(CD4+CD25+調節性T細胞、Tr1細胞、CD8+細胞、NK NKT細胞、および免疫抑制活性を備える樹状細胞);血液脳関門の透過性を低下させ、それによって炎症細胞のCNSへの到達を制限し;炎症細胞の他の疾患部位の到達を減少させ;かつ、炎症に伴う血管新生を低下させる。
【0032】
上記のように、TWEAKリガンドは、NK細胞、マクロファージ、樹状細胞、ミクログリア細胞、グリア細胞および内皮細胞を含む、さまざまな免疫細胞種および非免疫性細胞種の表面で発現される。それ故に、これらの細胞からのTWEAKシグナルを妨げることにより、Fn14保有融合タンパク質は、これらの細胞種のそれぞれによってそれらが相互作用するさまざまなFn14保有細胞へと方向づけられる、TWEAKを介したシグナルを阻止する。同じく上述したように、TWEAKは、いくつかのFn14保有細胞種、例えば星状膠細胞、内皮細胞およびある種のヒト腫瘍細胞株などの増殖を促進し、かつ他のもの、例えば赤芽球、腎細胞、メサンギウム細胞、神経細胞、NK細胞、単球などのそれを抑制し、それ故に、Fn14含有融合タンパク質はTWEAKにより作動される生物学的作用に対して逆方向に働く。さらに、Fn14/TRAIL融合タンパク質は細胞間シグナルの交換および再方向づけ(re-direct)に働くため、他の細胞標的には、T細胞などの能動的に阻害されるTRAIL受容体保有細胞、ならびに、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、結腸癌、骨髄腫、膠芽腫および白血病などの種々の腫瘍細胞種を含む他のTRAIL-R保有細胞がある。
【0033】
Fn14
Fn14は129アミノ酸長の原形質膜係留タンパク質であり、TNFR(TNF受容体)スーパーファミリーのメンバーである(Swiss Protアクセッション番号Q9CR75(マウス)およびQ9NP84(ヒト)。Swiss Prot. Isoform ID No. Q9NP84.1およびQ9NP84.2(NCBIアクセッション番号はそれぞれNP_057723およびBAB17850である)によって識別される、Fn14の2つの変種が公知である。Fn14配列はまた、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)(NCBIアクセッション番号AAR21225)およびラット(NCBIアクセッション番号NP_851600]を含む、他の多くの種でも見つけ出されている。
【0034】
TNFRスーパーファミリーのほとんどのメンバーは、1〜6個のシステインリッチドメイン(CRD)の存在によって構造的に特徴づけられる1つの細胞外ドメインを含む。典型的なCRDはおよそ40アミノ酸長であり、3つの鎖内ジスルフィド架橋を形成する保存された6個のシステイン残基を含む。CRDそれ自体は、典型的には2つの別個の構造モジュールで構成される。
【0035】
Fn14は、1個のCRDを備える、アミノ酸28〜80という53アミノ酸の細胞外ドメインを含むI型膜貫通タンパク質である。このCRDの内部のいくつかの荷電アミノ酸残基は、有効なTWEAK-Fn14相互作用のために特に不可欠であることが示されている。Brown, S.A. et al., Tweak binding the Fn14 cysteine-rich domain depends on charded residues located in both the Al and D2 modules, J. Biochem. 397: 297-304 (2006)、これは参照により本明細書に組み入れられる。
【0036】
Brownらの論文で提示されている情報に基づき、例えば、当業者は、Fn14タンパク質のどの変種がTWEAK結合活性を保っており、どのものが保っていないと考えられるかを判定することができる。例えば、進化的に保存されなかった位置に部位特異的変異によって調製したいくつかの特定の変種はTWEAK結合活性を有することが見いだされている。対照的に、CRD領域内の少なくとも3個のアミノ酸は、TWEAK結合のために不可欠であった。種々の種におけるFn14タンパク質のアミノ酸配列を比較することにより、どのアミノ酸位置がそれほど高度には保存されておらず、置換/付加/欠失のための優れた候補であると考えられるかを明らかにすることができる。高度に保存された領域、特にTNFR相同性領域における置換/欠失/付加は、本発明による変種の調製のための可能性の高い候補ではないと考えられる。
【0037】
TRAIL
TRAILは291アミノ酸を有するII型膜タンパク質であり、以下のものを非限定的に含むさまざまな種でシークエンシングが行われている:マウス:Swiss Prot.アクセッション番号P50592:ヒト:Swiss Prot.アクセッション番号P50591;ドブネズミ(Rattus norvegicus):NCBIアクセッションNP_663714;ケツギョ(Siniperca Chuatsi)(桂魚):NCBIアクセッションAAX77404;ニワトリ(Gallus Gallus)(鶏):NCBIアクセッションBAC79267;イノシシ(Sus Scrofa)(豚):NCBIアクセッションNP_001019867;ソウギョ(Ctenopharyngodon Idella)(草魚):NCBIアクセッションAAW22593;およびボース・タウルス(Bos Taurus)(ウシ):NCBIアクセッションXP_001250249。
【0038】
TNF相同性モデルに基づくと、TRAILの細胞外ドメインはアミノ酸39〜281を含み、受容体結合の原因となるTNFドメインはアミノ酸121〜280である。活性を付与するために特に重要なタンパク質の部分が同定されている。例えば、TRAILのその受容体との結合および活性のために最も重要なアミノ酸は、アミノ酸(191-201-205-207-236-237)およびアミノ酸(150-216)などのジンク領域の周りのアミノ酸であることを報告している、参照により本明細書に組み入れられる、"Triggering cell death: The crystal structure of Apo2L/TRAIL in a complex with death receptor", Hymowitz SG, et al., Am.Mol.Cell. 1999 Oct; 4(4):563-71)を参照されたい。また、1)アポトーシス活性を備えていない2つのヒトTRAIL変種であるTRAIL-γおよびTRAILβを記載しているKrieg A et al 2003 Br. J of Cancer 88: 918-927;2)"Enforced covalent trimerization increases the activity of the TNF ligand family members TRAIL and CD95L", D Berg et al., Cell death and differentiation (2007)14,2021-2034;および3)"Crystal Structure of TRAIL-DR5 complex identifies a critical role of the unique frame insertion in conferring recognition specificity", S. Cha et al., J. Biol. Chem. 275: 31171-31177 (2000)も参照されたく、これらはすべて参照により本明細書に組み入れられる。
【0039】
TRAILは、TRAIL誘導アポトーシスのトリガーとなるデス受容体およびこの経路を阻害する可能性があるデコイ受容体という2種類の受容体を連結させることが知られている。TRAILに対するヒト受容体は、TRAILR1、TRAILR2、TRAILR3およびTRAILR4という4種が同定されている。TRAILはまた、オステオプロテジェリン(OPG)とも結合する。これらの受容体のそれぞれに対する結合は詳細に特徴づけられている。例えば、"The TRAIL apoptotic pathway in cancer onset, progression and therapy", Nature Reviews Cancer Volume 8 (2008) 782-798を参照されたい。
【0040】
その他の定義
本明細書で用いる場合、「融合タンパク質」という用語は、2種またはそれ以上の異なるタンパク質のアミノ酸配列を含むキメラタンパク質のことを指す。典型的には、融合タンパク質は、当技術分野において周知のインビトロ組換え手法によって得られる。
【0041】
本明細書で用いる場合、「生物学的活性のある、または免疫学的活性のある」とは、本発明の融合タンパク質の構成単位である個々の野生型タンパク質と類似の構造的機能(しかし必ずしも同じ度合いでなくともよい)、および/または類似の調節的機能(しかし必ずしも同じ度合いでなくともよい)、および/または類似の生化学的機能(しかし必ずしも同じ度合いでなくともよい)、および/または免疫学的活性(しかし必ずしも同じ度合いでなくともよい)を有する、本発明による融合タンパク質のことを指す。
【0042】
本明細書で用いる場合、「欠失」は、野生型タンパク質と比較して1つまたは複数のアミノ酸残基が欠けている、アミノ酸配列の変化と定義される。
【0043】
本明細書で用いる場合、「挿入」または「付加」とは、野生型タンパク質と比較して1つまたは複数のアミノ酸残基の追加をもたらす、アミノ酸配列の変化のことである。
【0044】
本明細書で用いる場合、「置換」は、野生型タンパク質と比較して1つまたは複数のアミノ酸のそれぞれ異なるアミノ酸による置き換えによって生じる。
【0045】
本明細書で用いる場合、「変種」という用語は、結果的に生じる変種融合タンパク質が本発明に用いられる野生型タンパク質に比較して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、99%またはそれ以上の生物活性または免疫学的活性を保っている限り、野生型タンパク質と比較して、配列からの、または配列に対して、アレルの差異を含む1つ(またはそれ以上)のアミノ酸の置換、欠失または付加(またはこれらの任意の組み合わせ)を有する任意のポリペプチドのことを意味する。典型的には、本発明に含まれるFN14/TRAIL融合タンパク質の変種は、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:2に対して、少なくとも80%またはそれ以上の配列同一性または相同性を、それらの用語の当技術分野における理解の通りに有すると考えられ、より好ましくは、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:2に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%またはさらには99%の配列同一性を有すると考えられる。
【0046】
配列同一性または相同性は、当技術分野において公知の標準的な手法、例えば、Devereux et al., Nucl. Acid Res. 12:387-395 (1984)によって記載されたBest Fit配列プログラム、またはBLASTXプログラム(Altschul et al., J. Mol. Biol. 215, 403-410)などを用いて決定することができる。アラインメントは、アラインメントを行おうとする配列中へのギャップの導入を含みうる。加えて、本明細書で開示したタンパク質よりも多数または少数のアミノ酸を含む配列の場合、相同性のパーセンテージは、アミノ酸の総数に比しての相同アミノ酸の数に基づいて決定されると考えられる。
【0047】
さらに、変種は所与の分子に対する結合に関して能力の強化を示すことが一般に望ましいが、いくつかの態様においては、例えば神経毒性を弱めるために、意図的に活性を減弱させようとする場合に、変種を、本発明の他の融合タンパク質と比較して幾分低い活性を有するように設計することもできる。その上、TRAIL受容体変種(ヒトには3種のTRAIL受容体がある)の1つとより選択的に結合すると考えられる変種または誘導体を作製することもできる。さらに、変化した多量体化特性を有すると考えられる変種または誘導体を作製することもできる。変種を人工的に操作する場合には、これをTRAIL細胞外ドメイン全体に対して行うことも、または融合タンパク質それ自体の内部に組み込まれた細胞外ドメインの構成要素に対して行うことも可能と考えられる。
【0048】
好ましくは、本発明の融合タンパク質の変種または誘導体は、アミノ酸配列の疎水性/親水性を維持している。保存的アミノ酸置換は、修飾された配列が本発明による融合タンパク質として作用する能力を保っているという前提の下で、例えば、1、2または3個から10、20または30個までの置換を含みうる。アミノ酸置換には、例えば血漿半減期を延長させるための、天然に存在しない類似体の使用が含まれうる。
【0049】
保存的置換は当技術分野において公知であり、例えば、以下の表の通りである。第2の列の同じブロックの中にある、好ましくは第3の列の同じ行の中にあるアミノ酸は、互いに置換することができる。
【0050】
「誘導体」という用語は、アミノ酸配列に関して本明細書で用いる場合、本発明の融合タンパク質の化学修飾のことを意味する。
【0051】
そのような修飾の非限定的な例には、カルボキシ末端またはカルボキシ側鎖を含む残基の脂肪族エステルまたはアミド、ヒドロキシル基含有残基のO-アシル誘導体、および、アミノ末端アミノ酸またはアミノ基含有残基、例えばリジンもしくはアルギニンのN-アシル誘導体が非限定的に含まれうる。
【0052】
その他の修飾には、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)とコンジュゲートされた融合タンパク質の生成、または本発明のポリペプチドの化学合成の際のPEGの付加が含まれうる。
【0053】
またポリペプチドまたはそれらの部分の修飾には、還元/アルキル化;適切な担体との化学的カップリング、または穏やかなホルマリン処理も含まれうる。
【0054】
本発明の融合タンパク質の他の誘導体には、非天然アミノ酸残基、またはホスホチロシン、ホスホセリンもしくはホスホトレオニン残基などのリン酸化アミノ酸残基の組み込みが含まれる。考えられる他の修飾には、スルホン化、ビオチン化、または他のモイエティ、特にリン酸基に類似した分子形状を有するものの付加が含まれる。
【0055】
誘導体にはまた、グリコシル化によって修飾されたポリペプチドも含まれる。これらは、さまざまな代替的な真核生物宿主発現システムにおける合成およびプロセシングの際に、またはさらなるプロセシング段階の際にグリコシル化パターンを修飾することによって作製することができる。グリコシル化修飾物を産生させるための方法には、融合タンパク質を、そのようなプロセシングを通常は行わない細胞に由来するグリコシル化酵素、例えば哺乳動物グリコシル化酵素などに曝露させることが含まれる。または、真核生物発現システムにおける産生の際に結び付けられた糖質を除去するために脱グリコシル化酵素を用いることもできる。さらに、グリコシル化部位が付加されるように、またはグリコシル化部位が欠失もしくは無効化するようにコード配列を修飾することもできる。さらに、グリコシル化を全く望まない場合には、タンパク質を原核生物宿主発現システムにおいて産生させることもできる。
【0056】
本発明の融合タンパク質の変種および/または誘導体は、化学合成によって、または、完全な受容体をコードする核酸を修飾するための、部位指定突然変異誘発[Giliman et al., Gene 8:81 (1979);Roberts et al., Nature 328:731 (1987)またはInnis (Ed.), 1990, PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Academic Press, New York, N.Y.J.]、もしくはDaugherty et al.[Nucleic Acids Res. 19:2471 (1991)]によって例示されているようなポリメラーゼ連鎖反応法[PCR; Saiki et al., Science 239:487 (1988)]を用いることによって調製することができる。
【0057】
その他の修飾、例えばTRAIL三量体をさらに安定化するものおよび/またはTRAIL受容体に対する結合の親和性を高めるものを導入することもでき;かつ、融合タンパク質の2つの構造要素間の距離を変更するために、ならびにこの領域の柔軟性を変更するために、スペーサー/リンカーを付加することができる。
【0058】
その他の態様において、本発明の融合タンパク質は、タンパク質精製を促進するために、組換えタンパク質の発現を増加させるために、または組換えタンパク質の溶解性を高めるために付加された、1つまたは複数の追加のポリペプチドドメインをさらに含む。そのような精製/発現/溶解性を促進するドメインには、金属とキレート化するペプチド、例えば、固定化された金属上での精製を可能にするヒスチジン-トリプトファンモジュール(Porath J (1992) Protein Expr Purif 3-.26328 1)、固定化された免疫グロブリン上での精製を可能にするプロテインAドメイン、および、FLAGSエクステンション/アフィニティー精製システム(FLAGS extension/affinity purification system)(Immunex Corp, Seattle, Wash.)で利用されるドメインが非限定的に含まれる。精製ドメインとFn14/TRAILとの間に、第Xa因子またはエンテロキナーゼ(Invitrogen, San Diego, Calif.)などの切断可能なリンカー配列を含めることも、精製を促進するために有用である。
【0059】
その他の融合発現ベクターには、それぞれグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、マルトースB結合タンパク質またはプロテインAを標的組換えタンパク質と融合させる、pGEX(Pharmaci, Piscataway, N.J.)、pMAL(New England Biolabs, Beverly, Mass.)およびpRITS(Pharmacia, Piscataway, N.J.)が含まれる。また、EBV、BKVおよび他のエピソーム性発現ベクター(Invitrogen)を用いることもできる。加えて、レトロウイルス性およびレンチウイルス性の発現ベクターを用いることもできる。さらに、生物体の内部での組換えタンパク質の高レベル発現のために設計されたさまざまなインビボ発現システムの任意のものを、本明細書で特定した融合タンパク質を産生させるために利用することもできる。
【0060】
別の態様において、本発明の融合タンパク質は、そのN末端に異種シグナル配列を含みうる。ある種の宿主細胞(例えば、哺乳動物宿主細胞)では、異種シグナル配列の使用を通じて、融合タンパク質の発現および/または分泌を増加させることができる。シグナル配列は典型的には疎水性アミノ酸のコアによって特徴づけられ、これらは一般に、1つまたは複数の切断イベントにおいて分泌の際に成熟タンパク質から切断される。そのようなシグナルペプチドは、成熟タンパク質が分泌経路を経る間にそれらからのシグナル配列の切断を可能にするプロセシング部位を含む。したがって、本発明は、シグナル配列を有する記載したポリペプチドに、ならびにシグナル配列がタンパク質分解的に切断されたポリペプチド(すなわち、切断産物)に関する。
【0061】
安定性および/または反応性を高める目的で、本発明の融合タンパク質を、天然のアレル差異に起因するアミノ酸配列中の1つまたは複数の多型を組み込むように修飾することもできる。さらに、D-アミノ酸、非天然アミノ酸または非アミノ酸性類似体による置換または付加により、本発明の範囲内にある修飾された融合タンパク質を作製することもできる。
【0062】
本発明のアミノ酸配列は、それをコードするヌクレオチド配列の、適した発現システムにおける発現によって、産生させることができる。
【0063】
追加的または代替的に、融合タンパク質それ自体を、所望のアミノ酸配列を合成するための化学的方法を用いて全体的または部分的に生成させることもできる。例えば、ポリペプチドを固相手法によって合成し、樹脂から切断させて、調製用高速液体クロマトグラフィーによって精製することができる(例えば、Creighton (1983) Proteins Structures And Molecular Principles, WH Freeman and Co, New York N.Y.を参照)。合成ポリペプチドの組成は、アミノ酸分析またはシークエンシング(例えば、エドマン分解手順)によって確かめることができる。さらに、本発明の融合タンパク質またはその任意の一部のアミノ酸配列を、直接合成の際に変更すること、および/または化学的方法を用いて他のサブユニット由来の配列またはその任意の一部と組み合わせることで、変種ポリペプチドを生成させることもできる。
【0064】
本発明の任意の融合タンパク質の任意の相同体、誘導体または変種の免疫学的活性を測定するためのアッセイ法は、当技術分野において周知である。
【0065】
例えば、サイトカイン産生をモニターするためのいくつかの従来のアッセイ法の任意のものを、免疫細胞の活性化および分化の尺度として利用することができる。例えば、T細胞活性化を追跡するためにインターロイキン-2をマーカーとして用いることができ、それはProc. Natl. Acad. Sci. USA. 86:1333 (1989)に記載された通りにアッセイすることができ、その関連部分は参照により本明細書に組み入れられる。インターフェロンの産生に関するアッセイ法のためのキットも、Genzyme Corporation(Cambridge, Mass.)から入手可能である。また、サイトカイン産生を細胞毎にモニターするために、ならびに細胞の活性化および/または分化の状態を反映する細胞表面マーカーをモニターするために、免疫蛍光およびフローサイトメトリーを用いることもできる。そのようなマーカーの宿主は公知であり、検出用抗体は広く市販されており、これらのマーカーは当技術分野において周知である。
【0066】
T細胞増殖に関する一般的なアッセイ法は、トリチウムチミジンの取り込みを測定することを必然的に伴う。T細胞の増殖は、培養細胞の複製中のDNA中に取り込まれた3H標識チミジンの量を決定することによってインビトロで測定することができる。このため、DNA合成の速度、ひいては細胞分裂の速度を定量することができる。
【0067】
T細胞の増殖をモニターするための別のアッセイ法は、T細胞にCFSE色素を添加し、その後に、継代的な細胞分裂に伴うこの色素の希釈をモニターすることに基づく。T細胞増殖の阻害をモニターすることに加えて、TRAIL受容体のトリガーを引くことがアポトーシスを招くTRAIL受容体陽性腫瘍細胞株においてそれがアポトーシスを誘導する能力を評価することによって、融合タンパク質の生物活性をモニターすることもできる。これらの細胞を、TWEAKを表面上に有する他の細胞と組み合わせることにより、新たな融合タンパク質誘導体がいずれもTWEAKに係留し、それによってアポトーシス誘発性TRAILにより作動される活性がこの様式で強化されるか否かを評価することができる。
【0068】
薬学的組成物および投与計画
本発明の組成物の投与は、典型的には、静脈内、皮下、筋肉内もしくは腹腔内注射による、または輸注によるかもしくは任意の他の許容される全身的方法による、非経口的なものである。典型的には約1〜5時間の時間経過をかけた静脈内輸注による投与が好ましい。加えて、治療用タンパク質の投与のための種々の経口的な送達方法があり、これらを本発明の治療用融合タンパク質に適用することもできる。
【0069】
多くの場合、治療投与量は、安全性および効力を最適化するために、低レベルから増加させながら微調整する。一般に、1日投与量は、1kg体重当たり約0.01〜20mgのタンパク質の範囲に収まると考えられる。典型的には、投与量の範囲は、1kg体重当たり約0.1〜5mgのタンパク質の範囲であると考えられる。
【0070】
ポリエチレングリコール鎖の付加(PEG化)などの融合タンパク質のさまざまな修飾物または誘導体を、その薬物動態学的および/または薬力学的特性に影響を及ぼすように作製することもできる。
【0071】
融合タンパク質を非経口的投与以外によって投与するためには、タンパク質を、その不活性化を防ぐための材料でコーティングすること、またはタンパク質をそれと共投与することが必要な場合がある。例えば、タンパク質を不完全アジュバント中にて投与すること、酵素インヒビターと共投与すること、またはリポソーム中にある状態で投与することができる。酵素インヒビターには、膵トリプシンインヒビター、ジイソプロピルフルオロリン酸(DEP)およびトラシロールが含まれる。リポソームには、従来のリポソームのほかに水中油中水型CGFエマルションが含まれる(Strejan et al., (1984) J. Neuroimmunol. 7:27)。
【0072】
本発明の組成物の「有効量」とは、多発性硬化症などの自己免疫疾患によって引き起こされる病的状態を特徴づける周知のパラメーターの1つまたは複数を改善すると考えられる量のことである。多くのそのようなパラメーターおよび状態が記載されている。多発性硬化症の状況における有効量とは、以下の1つまたは複数を達成するのに十分な融合タンパク質の量であると考えられる:症状の重症度を軽減すること;疾患増悪の持続時間を減少させること;疾患寛解/無症状期間の頻度および持続時間を増加させること;固定された障害および能力障害を予防すること;ならびに/または疾患の慢性的進行を予防/減弱すること。臨床的には、これは視覚症状(視力低下、複視)、歩行障害(筋力低下、軸不安定性(axial instability)、感覚消失、痙縮、反射亢進、巧緻性の欠如(loss of dexterity))、上肢機能不全(筋力低下、痙縮、感覚消失)、膀胱機能不全(尿意切迫、失禁、排尿躊躇、残尿)、抑鬱、情緒不安定および認知障害の改善をもたらすと考えられる。病理学的には、本発明の融合タンパク質による治療は、以下の1つまたは複数を軽減する:ミエリン喪失、血液脳関門の崩壊、単核細胞の血管周囲浸潤、免疫学的異常、神経膠斑の形成および星状膠細胞の増殖、メタロプロテイナーゼ産生、ならびに伝導速度障害。
【0073】
本発明の組成物は単純溶液の状態で投与することができるが、それらはより典型的には、担体、好ましくは薬学的担体などの他の材料と組み合わせて用いられる。有用な薬学的担体は、本発明の組成物を患者に送達するために適した、適合性のある任意の非毒性物質でありうる。滅菌水、アルコール、脂肪、蝋状物質および不活性固体が担体中に含まれうる。また、薬学的に許容されるアジュバント(緩衝剤、分散剤)を薬学的組成物に組み込むこともできる。一般に、そのような薬物の非経口的投与のために有用な組成物は周知である。例えば、Remington's Pharmaceutical Science, 17th Ed.(Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1990)を参照。または、本発明の組成物を、植込み型の薬物送達システムによって患者の体内に導入することもできる[Urquhart et al., Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 24:199 (1984)]。
【0074】
治療用製剤は、数多くの従来の投与製剤の形で投与することができる。製剤は典型的には、少なくとも1つの有効成分を、1つまたは複数の薬学的に許容される担体とともに含む。製剤には、経口、直腸、鼻腔内または非経口的(皮下、筋肉内、静脈内および皮内を含む)投与のために適したものが含まれうる。
【0075】
製剤は単位剤形で提供することが好都合であり、これは薬学の技術分野で周知の任意の方法によって調製することができる。例えば、Gilman et al. (eds.) (1990), The Pharmacological Bases of Therapeutics, 8th Ed., Pergamon Press;および、Remington's Pharmaceutical Sciences, 前記, Easton, Pa.;Avis et al. (eds.) (1993) Pharmaceutical Dosage Forms: Parenteral Medications Dekker, N.Y.;Lieberman et al. (eds.) (1990) Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets Dekker, N.Y.;および、Lieberman et al. (eds.) (1990), Pharmaceutical Dosage Forms: Disperse Systems Dekker, N.Y.を参照のこと。
【0076】
その他の態様において、本発明は、遺伝子治療法による融合タンパク質の投与、例えば、関心対象の融合タンパク質をコードする単離された核酸の投与を想定している。本発明の融合タンパク質のタンパク質構成単位(例えば、第1および第2のドメイン)は、タンパク質をコードする核酸配列および結果的に生じるタンパク質のアミノ酸配列のいずれに関しても詳細に特徴づけられている。組換えDNA法によるそのような単離された核酸の人工的操作は、十分に当業者の能力の範囲内にある。特定の細胞バックグラウンドにおける組換えタンパク質の収量を最大にすることを目的とするコドン最適化も、十分に当業者の能力の範囲内にある。融合タンパク質をコードする単離された核酸の投与は、「本発明の融合タンパク質の治療的有効量を投与すること」という表現の範囲に含まれる。遺伝子治療法は当技術分野において周知である。例えば、細胞内抗体を作製するための遺伝子治療法の使用を開示しているWO96/07321を参照のこと。遺伝子治療法はまた、ヒト患者においても成功裏に示されている。例えば、Baumgartner et al., Circulation 97: 12, 1114-1123 (1998)、およびより最近の、Fatham, C.G. 'A gene therapy approach to treatment of autoimmune diseases', Immun. Res. 18:15-26 (2007);ならびに米国特許第7,378089号を参照されたく、これらはいずれも参照により本明細書に組み入れられる。同じく、Bainbridge JWB et al. "Effect of gene therapy on visual function in Leber's congenital Amaurosis". N Engl J Med 358:2231-2239, 2008;およびMaguire AM et al. "Safety and efficacy of gene transfer for Leber's Congenital Amaurosis". N Engl J Med 358:2240-8, 2008も参照されたい。
【0077】
融合タンパク質をコードする核酸(任意でベクター中に含まれる)を患者の細胞に導入するためのアプローチには、主にインビボおよびエクスビボの2通りがある。インビボ送達のためには、核酸を患者に直接、通常は融合タンパク質が必要とされる部位に注入する。エクスビボ治療のためには、患者の細胞を取り出して、核酸をこれらの単離された細胞に導入し、改変された細胞を患者に直接投与するか、または例えば、患者の体内に植え込まれる多孔性膜の内部に封入する(例えば、米国特許第4,892,538号および同第5,283,187号を参照)。核酸を生細胞に導入するためには種々の手法を使用することができる。手法は、核酸をインビトロで培養細胞内に移入するか、それともインビボで意図する宿主の細胞内に移入するかに応じて異なる。インビトロでの哺乳動物細胞への核酸の移入のために適した手法には、リポソームの使用、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE-デキストラン、リン酸カルシウム沈降法などが含まれる。遺伝子のエクスビボ送達のために一般的に用いられるベクターは、レトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクターである。
【0078】
好ましいインビボ核酸移入手法には、ウイルスベクターによるトランスフェクション(アデノウイルス、単純ヘルペスウイルスI型、アデノ随伴ウイルス)、脂質をベースとするシステム(脂質を介した遺伝子の移入のために有用な脂質には、例えば、DOTMA、DOPEおよびDC-Cholがある)、裸のDNA、およびトランスポゾンをベースとする発現システムが含まれる。現在知られている遺伝子マーキングおよび遺伝子治療プロトコールの概説については、Anderson et al., Science 256:808-813 (1992)を参照のこと。また、WO 93/25673およびこの文献中に引用されている参考文献も参照されたい。
【0079】
「遺伝子治療」は、単回の治療によって持続的な効果が達成される従来の遺伝子治療、および治療的に有効なDNAまたはmRNAの1回限りの投与または反復投与を伴う遺伝子治療薬の投与の両方を含む。
【0080】
オリゴヌクレオチドは、例えば、負に荷電したホスホジエステル基を非荷電基によって置換することにより、それらの取り込みが強化されるように修飾することができる。本発明のFn14/TRAIL融合タンパク質は、遺伝子治療法を用いて、例えば、腫瘍床の中に局所的に、髄腔内または全身的(例えば、特定の組織型を選択的に標的とするベクター、例えば組織特異的アデノ随伴ウイルスベクターを介して)に送達することができる。いくつかの態様においては、個体からの初代細胞(リンパ球または幹細胞)に、本発明の融合タンパク質のいずれかをコードする遺伝子をエクスビボでトランスフェクトし、続いて、トランスフェクトされた細胞をその個体の体内に戻すことができる。
【0081】
いくつかの態様において、本発明の融合タンパク質は、以下のものを非限定的に含む、免疫系疾患または障害の治療のために適している:自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性新生児血小板減少症、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性好中球減少症、自己免疫性血球減少症、溶血性貧血、抗リン脂質抗体症候群、皮膚炎、グルテン過敏性腸症、アレルギー性脳脊髄炎、心筋炎、再発性多発性軟骨炎、リウマチ性心疾患、糸球体腎炎(例えば、IgA腎症)、多発性硬化症、神経炎、ブドウ膜炎、眼炎、多腺性内分泌障害、紫斑病(例えば、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病)、ライター病、全身硬直症候群、自己免疫性肺炎症、心筋炎、IgA糸球体腎炎、デンスデポジット病、リウマチ性心疾患、ギラン-バレー症候群、インスリン依存性糖尿病および自己免疫性眼炎、自己免疫性甲状腺炎、甲状腺機能低下症(すなわち、橋本甲状腺炎)、全身性エリテマトーデス、円板状ループス、グッドパスチャー症候群、天疱瘡、例えば(a)グレーブス病、(b)重症筋無力症および(c)インスリン抵抗性などの受容体自己免疫、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少性紫斑病、関節リウマチ、抗コラーゲン抗体を伴う強皮症、混合性結合組織病、多発性筋炎/皮膚筋炎、悪性貧血、特発性アジソン病、不妊症、原発性糸球体腎炎およびIgA腎症などの糸球体腎炎、水疱性類天疱瘡、シェーグレン症候群、糖尿病、およびアドレナリン作動性アゴニスト抵抗性(喘息または嚢胞性線維症を伴うアドレナリン作動性アゴニスト抵抗性を含む)、慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、他の内分泌腺不全、白斑、血管炎、心筋梗塞後 心術後症候群(post-MI, cardiotomy syndrome)、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、喘息、炎症性ミオパチー、ならびに他の炎症性、肉芽腫性、変性性および萎縮性の障害)。
【0082】
1つの態様において、本発明の融合タンパク質は、多発性硬化症を治療するために用いられる。
【0083】
その他の態様において、本発明の融合タンパク質は、さまざまな種類の癌を治療するために用いることができる。可溶性TRAILは、ある種の腫瘍細胞におけるアポトーシスの誘導と関連づけられている。その上、ある種類の腫瘍では、炎症が実際に腫瘍誘発性である可能性がある。それ故に、TRAIL融合タンパク質は腫瘍細胞を直接死滅させるため、腫瘍誘発性炎症を阻止するために用いることができ、さらに血管新生を阻止するために用いることもできる。Fn14構成要素(第1のドメイン)は、この場合、TRAILをTWEAK陽性細胞に(例えば、腫瘍内皮および/または腫瘍細胞それ自体の表面に)局在させると考えられる。
【0084】
「癌」および「癌性」という用語は、典型的には、調節されない細胞成長によって特徴づけられる哺乳動物における生理的状態のことを指すか、またはそれを記述する。本明細書で用いる場合、「患者」という用語は、癌または他の自己免疫疾患を有しており、そのために本発明の方法による治療を必要とする、排他的ではないものの典型的にはヒトである哺乳動物のことを指す。「治療を必要とする哺乳動物」という用語は、「患者」と互換的に用いられる。
【0085】
癌の例には、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病またはリンパ性悪性腫瘍が非限定的に含まれる。そのような癌のより詳細な例には、腎癌(kidney cancer)または腎臓癌(kidney cancer)、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌および肺扁平上皮癌を含む肺癌、扁平細胞癌(例えば、上皮扁平細胞癌)、子宮頸癌、卵巣癌、前立腺癌、肝臓癌、膀胱癌、腹膜の癌、肝細胞癌、胃腸癌、胃腸間質性腫瘍(GIST)を含む胃癌(gastric cancer)または胃癌(stomach cancer)、膵癌、頭頸部癌、膠芽腫、網膜芽細胞腫、星状膠細胞腫、莢膜細胞腫、男性化細胞腫、ヘパトーマ、非ホジキンリンパ腫(NHL)、多発性骨髄腫および急性血液悪性腫瘍を含む血液悪性腫瘍、子宮内膜癌または子宮癌、子宮内膜症、線維肉腫、絨毛癌、唾液腺癌、膣癌、甲状腺癌、食道癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、鼻咽頭癌、喉頭癌、カポジ肉腫、黒色腫、皮膚癌、神経鞘腫、乏突起細胞腫、神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、骨原性肉腫、平滑筋肉腫、尿路癌、甲状腺癌、ウィルムス腫瘍、およびB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHLを含む);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL;巨大病変NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;およびワルデンシュトレームマクログロブリン血症を含む);慢性リンパ球性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);ヘアリー細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病;ならびに移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、および母斑症に伴う異常血管増殖、浮腫(脳腫瘍に伴うものなど)、ならびにメイグス症候群。「腫瘍」は、本明細書で用いる場合、悪性であるか良性であるかにかかわらずすべての新生物性細胞成長および増殖、ならびにすべての前癌性および癌性の細胞および組織のことを指す。
【0086】
「治療すること」または「治療」または「緩和」は、治療的処置、および予防的(prophylactic)または防止的な手段の両方を指し、ここでその目的は、標的とする病的状態または障害を防ぐこと、または遅らせる(和らげる)ことである。本発明の融合タンパク質の治療量が本発明の方法に従って投与された後に、対象が特定の疾患の1つまたは複数の徴候および症状の観察可能および/もしくは測定可能な軽減、または欠如を示すならば、対象は成功裏に「治療」されている。例えば、癌の場合には、癌細胞の数の減少または欠如;腫瘍サイズの減少;腫瘍転移の阻害(すなわち、ある程度遅らせ、好ましくは停止させる);腫瘍成長のある程度の阻害;特定の癌に伴う症状のうちの1つまたは複数の寛解期間の延長、および/またはある程度の除去;罹患率および死亡率の低下、ならびに生活の質の問題の改善。疾患の徴候または症状の軽減は、患者によっても感知されうる。治療は、癌のすべての徴候の消失として定義される完全奏効、または腫瘍のサイズが好ましくは50%を超えて、より好ましくは75%減少する部分奏効を達成することができる。患者が安定した疾患を経験した場合も、患者は治療されたとみなされる。1つの好ましい態様において、癌患者は1年後、好ましくは15カ月後も依然として癌に関して無増悪(progression-free)である。治療の成果および疾患の改善を評価するためのこれらのパラメーターは、適切な技能を有する医師にはよく知られている定型的な手順によって容易に測定可能である。本発明の融合タンパク質は、癌の治療の成果を判断するために用いられる上記のパラメーターのいずれかの改善をもたらすのに有効な量で投与され、それは当業者によって容易に決定されうる。例えば、有効量は、一部の癌細胞、または大半の癌細胞、または患者の癌細胞の実質的にすべてにおいてアポトーシスを誘導するのに有効な量である。有効量の他の例には、腫瘍細胞の増殖を低下させる、他の組織の浸潤を介した腫瘍進行を停止させる、血管新生を低下させる、または炎症を軽減するのに有効な量が含まれる。
【0087】
癌の治療の状況において、本発明の融合タンパク質を、任意で、他の化学療法薬と組み合わせて患者に投与することができる。適した化学療法薬には、例えば、チオテパおよびシクロホスファミド(CYTOXAN(商標))などのアルキル化剤;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)およびウレドーパ(uredopa)などのアジリジン類;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド(triethylenethiophosphaoramide)およびトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類およびメチラメラミン類;ナイトロジェンマスタード、例えばクロランブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノブエンビキン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなど;ニトロソウレア類、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなど;抗生物質、例えばアクラシノマイシン類、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン類、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン類、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン類、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシンなど;メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗剤;デノプテリン(denopterin)、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5-FUなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン類;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎剤(anti-adrenal);フロリン酸(frolinic acid)などの葉酸補充薬;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトレキサート;デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジコン(diaziquone);エルフォルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキサン類、例えばパクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, N.J)およびドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロランブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチンおよびカルボプラチンなどの白金類似体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イフォスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼインヒビターRFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラミシン類;カペシタビン;ならびに上記の任意のものの薬学的に許容される塩、酸または誘導体が含まれる。
【0088】
同じくこの定義に含まれるものには、腫瘍に対するホルモン作用を調節または阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼを阻害する4(5)-イミダゾール類、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストーン、およびトレミフェン(フェアストン)などを含む抗エストロゲン剤;ならびにフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリドおよびゴセレリンなどの抗アンドロゲン剤;ならびに上記の任意のものの薬学的に許容される塩、酸または誘導体がある。
【0089】
同じくこの定義に含まれるものには、TRAILに対する腫瘍細胞の感受性を高めて、TRAIL耐性を克服することを可能にする化学療法薬、例えば、プロテアソームインヒビターおよびヒストンデアセチラーゼ(HDAC)インヒビター、シクロヘキシミド、メシル酸イマチニブおよび他のプロテインチロシンキナーゼインヒビター、17-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン、三酸化ヒ素およびX連鎖アポトーシス阻害タンパク質低分子アンタゴニスト;ならびにこれらの任意のものの薬学的に許容される塩、酸または誘導体がある。
【0090】
癌治療の方法に関するその他の情報は米国特許第7,285,522号に提示されており、これはその全体が参照により組み入れられる。
【0091】
したがって、1つの好ましい態様において、本発明の融合タンパク質は、乳癌を治療するために用いることができる。別の好ましい態様において、本発明の融合タンパク質は、結腸癌を治療するために用いることができる。別の態様において、本発明の融合タンパク質は、肝臓癌を治療するために用いることができる。別の好ましい態様において、本発明の融合タンパク質は、卵巣癌を治療するために用いることができる。別の態様において、本発明の融合タンパク質は、白血病を治療するために用いることができる。別の態様において、本発明の融合タンパク質は、黒色腫を治療するために用いることができる。
【0092】
さらなる態様において、本発明の融合タンパク質は、同種免疫疾患、例えば移植片拒絶反応または移植片対宿主病または宿主対移植片病を治療するために用いることができる。
【0093】
さらなる態様において、本発明の融合タンパク質は、上記のように、融合タンパク質の有効量を投与することにより、血管新生を調節するために用いることができる。TWEAKおよび他のFn14アゴニストの使用は、例えば米国特許第7,208,151号に記載されており、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0094】
本発明において、TWEAKを保有するさまざまな免疫細胞種および非免疫性細胞種から発せられた炎症誘発性TWEAKシグナルは、Fn14-TRAILによって阻害性TRAILシグナルに変換される。重要なこととして、この反対方向の(抗炎症性TRAIL)新規シグナルは定義上、TWEAKを保有する細胞が目を向ける先を変更させ、実際上、シグナル伝達を、Fn14+TRAIL-R-のものから、自己免疫発生病理を進展させるFn14-TRAIL-R+活性化T細胞へと再方向づける。数々の免疫細胞種および非免疫性細胞種に及ぶ、TWEAK:Fn14およびTRAIL:TRAIL-Rシグナル伝達軸、特に前者の機能的多義性(Burkly LC, Michaelson JS, Hahm K, Jakubowski A, Zheng TS: TWEAKing tissue remodeling by a multifunctional cytokine: role of TWEAK/ Fn14 pathway in health and disease, Cytokine 2007, 40:1-16;Winkles JA: The TWEAKFn14 cytokine-receptor axis: discovery, biology and therapeutic targeting, Nat Rev Drug Discov 2008;.Zauli G, Secchiero P: The role of the TRAIL/TRAIL receptors system in hematopoiesis and endothelial cell biology, Cytokine Growth Factor Rev 2006, 17:245-257;Vince JE, Silke J: TWEAK shall inherit the earth, Cell Death Differ 2006, 13:1842-1844;Cretney E, Shanker A, Yagita H, Smyth MJ, Sayers TJ: TNF-related apoptosis-inducing ligand as a therapeutic agent in autoimmunity and cancer, Immunol Cell Biol 2006, 84:87-98)は、細胞のネットワーク形成に影響を及ぼしてそれを拡張させるFn14-TRAILの広範な機能的可能性に本来備わっているものである。
【0095】
単純なTWEAKブロッカー(Fn14-IgG1(突然変異型)など)とは異なり、Fn14-TRAIL融合タンパク質は、TWEAK炎症誘発性シグナルを抗炎症性TRAIL新規シグナルで置換する。このため、表面TWEAKを有する細胞は実質上、TWEAKにより作動される炎症を促進することが妨げられ、その代わりに、通常であれば相互作用しないであろうTRAIL-R保有細胞(例えば、活性化エフェクターT細胞)を阻害するように再方向づけられる。TRAIL:TRAIL-Rシグナル伝達軸が炎症イベントに及ぼす影響は主として、さまざまな免疫機能、つまり、T細胞周期の進行、自己反応性T細胞の増殖、炎症誘発性サイトカインの産生、Ab産生および炎症反応、の阻害を介する。Hilliard B, Wilmen A, Seidel C, Liu TS, Goke R, Chen Y: Roles of TNF-related apoptosis-inducing ligand in experimental autoimmune encephalomyelitis, J Immunol 2001, 166:1314-1319;Lamhamedi-Cherradi SE, Zheng S, Tisch RM, Chen YH: Critical roles of tumor necrosis factor-related apoptosis-inducing ligand in type 1 diabetes, Diabetes 2003, 52:2274-2278;Cretney E, McQualter JL, Kayagaki N, Yagita H, Bernard CC, Grewal IS, Ashkenazi A, Smyth MJ: TNF-related apoptosis-inducing ligand (TRAIL) / Apo2 L suppresses experimental autoimmune encephalomyelitis in mice, Immunol Cell Biol 2005, 83:511-519;Hirata S, Senju S, Matsuyoshi H, Fukuma D, Uemura Y, Nishimura Y: Prevention of experimental autoimmune encephalomyelitis by transfer of embryonic stem cell-derived dendritic cells expressing myelin oligodendrocyte glycoprotein peptide along with TRAIL or programmed death-1 ligand, J Immunol 2005, 174:1888-1897;Lamhamedi-Cherradi SE, Zheng SJ, Maguschak KA, Peschon J, Chen YH: Defective thymocyte apoptosis and accelerated autoimmune diseases in TRAIL-/- mice, Nat Immunol 2003, 4:255-260;Song K, Chen Y, Goke R, Wilmen A, Seidel C, Goke A, Hilliard B, Chen Y: Tumor necrosis factor-related apoptosis-inducing ligand (TRAIL) is an inhibitor of autoimmune inflammation and cell cycle progression, J Exp Med 2000, 191:1095-1104;Mi QS, Ly D, Lamhamedi-Cherradi SE, Salojin Ky, Zhou L, Grattan M, Meagher C, Zucker P, Chen YH, Nagle J, Taub D, Delovitch TL: Blockade of tumor necrosis factor-related apoptosis-inducing ligand exacerbates type 1 diabetes in NOD mice, Diabetes 2003, 52:1967-1975。この免疫抑制作用の範囲は、CD4+ T細胞それ自体を明らかに超えて広がっており、CD8+ T細胞、B細胞 単球、およびDCを範囲に含んでいる。Zauli G, Secchiero P: The role of the TRAIL/TRAIL receptors system in hematopoiesis and endothelial cell biology, Cytokine Growth Factor Rev 2006, 17:245-257;Kayagaki N, Yamaguchi N, Abe M, Hirose S, Shirai T, Okumura K, Yagita H: Suppression of antibody production by TNF-related apoptosis-inducing ligand (TRAIL), Cell Immunol 2002, 219:82-91;Hayakawa Y, Screpanti V, Yagita H, Grandien A, Ljunggren HG, Smyth MJ, Chambers BJ: NK cell TRAIL eliminates immature dendritic cells in vivo and limits dendritic cell vaccination efficacy, J Immunol 2004, 172:123-129;Janssen EM, Droin NM, Lemmens EE, Pinkoski MJ, Bensinger SJ, Ehst BD, Griffith TS, Green DR, Schoenberger SP: CD4+ T-cell help controls CD8+ T-cell memory via TRAIL-mediated activation-induced cell death, Nature 2005, 434:88-93;You RI, Chang YC, Chen PM, Wang WS, Hsu TL, Yang CY, Lee CT, Hsieh SL: Apoptosis of dendritic cells induced by decoy receptor 3 (DcR3), Blood 2008, 111:1480-1488。TRAILがある特定の条件下でマクロファージおよび好中球のアポトーシス性細胞死を誘導しうるという証拠はあるものの(Smyth MJ, Takeda K, Hayakawa Y, Peschon JJ, van den Brink MR, Yagita H: Natures TRAIL--on a path to cancer immunotherapy, Immunity 2003, 18:1-6;Kaplan MJ, Ray D, Mo RR, Yung RL, Richardson BC: TRAIL (Apo2 ligand) and TWEAK (Apo3 ligand) mediate CD4+ T cell killing of antigen-presenting macrophages, J Immunol 2000, 164:2897-2904;Renshaw SA, Parmar JS, Singleton V, Rowe SJ, Dockrell DH, Dower SK, Bingle CD, Chilvers ER, Whyte MK: Acceleration of human neutrophil apoptosis by TRAIL, J Immunol 2003, 170:1027-1033)、そのアポトーシス誘発活性はT細胞についてはそれほど明らかではない。Lunemann JD, Waiczies S, Ehrlich S, Wendling U, Seeger B, Kamradt T, Zipp F: Death ligand TRAIL induces no apoptosis but inhibits activation of human (auto)antigen-specific T cells, J Immunol 2002, 168:4881-4888;Zhang XR, Zhang LY, Devadas S, Li L, Keegan AD, Shi YF: Reciprocal expression of TRAIL and CD95L in Th 1 and Th2 cells: role of apoptosis in T helper subset differentiation, Cell Death Differ 2003, 10:203-210。
【0096】
単一の融合タンパク質の内部のFn14およびTRAIL構成要素をキメラ化することにより、2つの構成要素の効力を増強させ、通常であればそれらの治療的有用性を制約しているかもしれない一方またはもう一方の負の影響を覆い隠して、特別な利点を付与する、特別な、時には相補的であるような機能特性が誘発される可能性がある。これらには以下が含まれる。
【0097】
1)天然では単量体のタンパク質であるFn14をTRAIL(天然では三量体)と連結させることにより、Fn14の三量体変種が実質的に作製される。そうしたところ、構造モデル化により、このFn14新規三量体は、Fn14の天然では三量体性であるTWEAK対抗受容体と適切にドッキングしうることが示唆された(図9)。その上、Fn14-TRAIL融合タンパク質のもう一方の末端で、三量体TRAILは、TRAILに対する三量体DR5受容体とドッキングしている。それ故に、単量体Fn14を三量体TRAILとキメラ化することによってデノボに生成されたこれらの構造的相補性は、TWEAKを遮断して細胞上のDR5を相互に向かい合わせる能力を高める、比類なく安定なTWEAK-Fn14-TRAIL-DR5分子架橋を実際に作り出していると考えられる。さらに、このモデル化により、キメラ体は剛性がかなり高く、そのため(約60Åの)スペーサーとして作用して、TWEAK保有細胞と活性化エフェクターT細胞との間の細胞間接触を局所的に限定する可能性があることも示唆された。60Åという局所的分離が、例えば免疫シナプスの内部で、炎症性反応を作動させる他の共刺激分子の妨げになりうることは想定可能である。
【0098】
2)TRAILリガンドは実際上、Fn14「架橋」を介して細胞表面に係留されており、それは実際上、その有効結合価を増強させている。ある意味でこれは、EAEを抑制するのに有効なことが示されている、表面TRAILを新規に発現するDCの状況を再現している。Hirata S, Senju S, Matsuyoshi H, Fukuma D, Uemura Y, Nishimura Y: Prevention of experimental autoimmune encephalomyelitis by transfer of embryonic stem cell-derived dendritic cells expressing myelin oligodendrocyte glycoprotein peptide along with TRAIL or programmed death-1 ligand, J Immunol 2005, 174:1888-1897。
【0099】
3)TRAILを介した阻害は、EAEの初回刺激期(T細胞のトリガリングおよび増量の際)に主として働くと考えられるが(Cretney E, McQualter JL, Kayagaki N, Yagita H, Bernard CC, Grewal IS, Ashkenazi A, Smyth MJ: TNF-related apoptosis-inducing ligand (TRAIL)/ Apo2L suppresses experimental autoimmune encephalomyelitis in mice, Immunol Cell Biol 2005, 83:511-519)、一方、TWEAK遮断の恩恵は下流の炎症誘発イベント(血液脳関門の崩壊の防止を含む)により集中しているように思われる。Desplat-Jego S, Creidy R, Varriale S, Allaire N, Luo Y, Bernard D, Hahm K, Burkly L, Boucraut J: Anti-TWEAK monoclonal antibodies reduce immune cell infiltration in the central nervous system and severity of experimental autoimmune encephalomyelitis, Clin Immunol 2005, 117:15-23。このため、この2つを組み合わせることにより、疾患の初回刺激期およびより後期の両方に影響を及ぼしうると原理的には考えられる単一の作用物質が手に入る。
【0100】
4)TRAILは、初回刺激期の後のニューロンの死滅に寄与している可能性があり(Nitsch R, Pohi EE, Smorodchenko A, Infante-Duarte C, Aktas 0, Zipp F: Direct impact of T cells on neurons revealed by two-photon microscopy in living brain tissue, J Neurosci 2004, 24:2458-2464;Aktas O, Smorodchenko A, Brocke S, Infante-Duarte C, Topphoff US, Vogt J, Prozorovski T, Meier S, Osmanova V, Pohi E, Bechmann I, Nitsch R, Zipp F: Neuronal damage in autoimmune neuroinflammation mediated by the death ligand TRAIL, Neuron 2005, 46:421-432)、これは初代ヒトニューロン(Nitsch R, Bechmann I, Deisz RA, Haas D, Lehmann TN, Wendling U, Zipp F: Human brain-cell death induced by tumour-necrosis-factor-related apoptosis-inducing ligand (TRAIL), Lancet 2000, 356:827-828)および乏突起膠細胞(Matysiak M, Jurewicz A, Jaskoiski D, Selmaj K: TRAIL induces death of human oligodendrocytes isolated from adult brain, Brain 2002, 125:2469-2480)がいずれも、TRAILで誘導される細胞死に対する感受性を持つことを示した以前の研究に一致する。Fn14をTRAILとカップリングさせることにより、血液脳関門の完全性を(TWEAK遮断を介して)持続させ、それによってTRAILのCNSへの到達を減じさせる作用物質が得られる。さらに、TWEAKは神経細胞死のトリガーを引くことが報告されているため(Potrovita I, Zhang W, Burkly L, Hahm K, Lincecum J, Wang MZ, Maurer MH, Rossner M, Schneider A, Schwaninger M: Tumor necrosis factor-like weak inducer of apoptosis-induced neurodegeneration, J Neurosci 2004, 24:8237-8244)、Fn14-TRAILはこのTWEAK活性も同じく阻止することによってニューロンを保護することが期待される。
【0101】
5)EAEの際に、血管の数は、疾患スコア、ならびに炎症、白血球浸潤および脱髄に関する病的尺度の両方と相関する。Kirk SL, Karlik SJ: VEGF and vascular changes in chronic neuroinflammation, J Autoimmun 2003, 21:353-363。TWEAKは血管新生を促進し(Jakubowski A, Browning B, Lukashev M, Sizing I, Thompson JS, Benjamin CD, Hsu YM, Ambrose C, Zheng TS, Burkly LC: Dual role for TWEAK in angiogenic regulation, J Cell Sci 2002, 115:267-274)、かつTRAILはそれを阻害するため(Cantarella G, Risuglia N, Delleva R, Lempereur L, Albini A, Pennisi G, Scoto GM, Noonan DN, Bernardini R: TRAIL inhibits angiogenesis stimulated by VEGF expression in human glioblastoma cells, Br J Cancer 2006, 94:1428-1435)、Fn14-TRAILは炎症部位での血管新生を、二重の機序、すなわちTWEAKの血管新生誘発活性に拮抗すること、およびTRAILの抗血管新生活性を通じてこの作用を相乗的に補強することによって阻害する可能性がある。
【0102】
6)さらに別の相乗効果が、内皮細胞機能およびケモカイン発現の調節によって生じる可能性がある。上述したように、TWEAKの遮断は、内皮細胞によるケモカイン発現、およびそれに対する白血球接着の妨げになる可能性がある。TRAILはこれらの過程ともつながりがある。TRAILは、CCL8およびCXCL1Oケモカインの発現および放出の下方調節を行うことにより、TNF-αで誘導される白血球と内皮細胞との接着を打ち消すように作用する。Secchiero P, Corallini F, di Iasio MG, Gonelli A, Barbarotto E, Zauli G: TRAIL counteracts the proadhesive activity of inflammatory cytokines in endothelial cells by down-modulating CCL8 and CXCL1O chemokine expression and release, Blood 2005, 105:3413-3419。このため、Fn14-TRAILは、そのFn14末端およびTRAIL末端の両方を通じて白血球の誘引および接着に影響を及ぼしうると考えられる。
【実施例】
【0103】
以下の実施例は本発明を例示することを意図しており、本発明を何ら限定するものとはみなされるべきでない。
【0104】
材料および方法
マウス
4〜6週齡のC57BL/6雌性マウスをJackson Laboratory(Bar Harbor, Maine)から購入し、University of Pennsylvaniaの実験動物施設(Animal Facility)において無菌条件下で飼育した。動物実験はすべて、University of Pennsylvaniaの動物管理使用委員会(Animal Care and Use Committee)による承認を受けた。
【0105】
試薬
プラスミドpT2/BHおよびpNEB193 UbC-SB11は、Dr. Perry Hacket(University of Minnesota, Minneapolis)により提供され、マウスTRAILおよびTWEAKのcDNAは、Dr. Hideo Yagita(Juntendo University School of Medicine, Tokyo, Japan)から入手した。プラスミドpMFneoは、Dr. Herman Waldmann(University of Oxford, Oxford, UK)から入手した。マウスMOG 38-50ペプチド(GWYRSPFSRVVHL)は、Invitrogen Life Technologies(Carlsbad, CA)にて、F-moc固相法を用いて合成され、HPLCにより精製された。百日咳毒素はEMD Biosciences(San Diego, CA)から購入した。以下の試薬はBD Pharmingen(San Diego, CA)から購入した:マウスIL-2、IL-4、IL-6、IFN-γおよび組換えマウスIL-2、IL-4、IL-6、IFN-γに対するELISA用Abペア。IL-17のELISA用AbペアはSouthern Biotech(Alabama, USA)から入手し、組換えマウスIL-17はBiosource(Camarillo, CA)から購入した。PE-抗マウスTRAILおよびPE-抗マウスTWEAKは、eBioscience(San Diego ,CA)から購入した。組換えTRAIL(Super Killer TRAIL(商標))は、Axxora Platform(San Diego, CA)から購入した。
【0106】
プラスミドの構築
キメラ性Fn14-TRAILおよびFn14-IgG1(突然変異型)をコードするカセットは、部分的に重なり合う合成オリゴヌクレオチドを用いて、PCRにより構築した。マウスFn14(Swiss-protアクセッション番号Q9CR75)のアミノ酸(aa)1〜79をコードするcDNAを、マウスTRAIL(Swiss-protアクセッション番号P50592)のaa 118〜291または突然変異したヒトIgG1 Fc(Fcγ1)セグメントのいずれかをコードするcDNAのそれぞれと連結させた。後者については、ヒトFcγ1をコードするcDNA(Brunschwig EB, Levine E, Trefzer U, Tykocinski ML: Glycosylphosphatidylinositol-modified murine B7-1 and B7-2 retain costimulator function, J Immunol 1995, 155:5498-5505)を、C220→S、C226→S、C229→S、N297→A、E233→P、L234→VおよびL235→Aを突然変異させるように構成されたオリゴヌクレオチドを用いた、PCRベースの部位指定突然変異誘発によって修飾した。可溶性TRAILを発現させるためには、マウスTRAILのaa 118〜291をコードするcDNAを用いた。これらのcDNAセグメントをすべて、pMFneo真核生物発現ベクター中の、EF1αプロモーター領域の下流にサブクローニングした。ルシフェラーゼのコード配列を、Hind3-およびBamH1によってpTAL-Luc(BD Biosciences;San Jose, CA)から動かし、pMFneoの各々の部位にサブクローニングした。完全長マウスTWEAKをコードするcDNAをPCRによって作製し、pcDNA3真核生物発現ベクター(Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, CA)中にサブクローニングした。
【0107】
同じプラスミドの内部にトランスポゾンカセットおよびトランスポザーゼカセットの両方を組み込んだ誘導体スリーピング・ビューティ(Sleeping Beauty)発現ベクターを作製するためには、ユビキチンCプロモーターが上流に隣接したトランスポザーゼコード配列をpNEB193 UbC-SB11(b.p.432-2958)からPCRによって作製し、続いて、トランスポゾンカセットを含むpT2/BHベクターのApal部位とXho1部位との間に連結させた。トランスポザーゼおよびトランスポゾン発現カセットの両方を組み込んだこの新たな発現ベクターをpSBC21と命名した。次に、Fn14-TRAIL、可溶性Fn14、Fn14-IgGl(突然変異型)、可溶性TRAILまたはルシフェラーゼに対応するcDNAがそれぞれEF1αプロモーターとつながったものを、各々のpMFneo発現構築物から、pSBC21のトランスポゾンカセット中のトランスポザーゼ発現モジュールの下流にサブクローニングした。サブクローニングするcDNAはすべて、トランスポザーゼと同じ向きに配置した。
【0108】
細胞培養およびトランスフェクション
ヒト293腎細胞およびCHO細胞は、100μg/mlペニシリン、100U/mlストレプトマイシン、2%および10%熱非働化ウシ胎仔血清を加えた、それぞれDMEMおよびHAM'S F-12中で培養した。293細胞に対して、LipofectAMINE(商標)試薬(Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, CA)を用いて、Fn14-TRAIL、可溶性Fn14、Fn14-IgG1(突然変異型)および可溶性TRAILのpMFneo発現プラスミドを一過性にトランスフェクトした。馴化培地中のタンパク質をSDS-PAGEによって分離し、ウエスタンブロット分析によって検出した。Fn14およびTRAILを検出するための抗マウスAbは、それぞれeBioscienceおよびR&D(Minneapolis, MN)から購入した。CHO細胞に対しては、pcDNA3をベースとするマウスTWEAK発現構築物を一過性にトランスフェクトした。トランスフェクト体上のTWEAK発現は免疫蛍光およびフローサイトメトリーによって確かめた。
【0109】
EAEの誘導および疾患の評価
EAEは、標準的な誘導プロトコールに従って誘導した。Stromnes IM, Goverman JM: Active induction of experimental allergic encephalomyelitis, Nat Protoc 2006, 1:1810-1819。手短に述べると、雌性C57BL/6マウスに対して、4mg/ml結核菌H37RA(Difco, Detroit, MI)を含む等容積のCFA中に乳化させた0.1ml PBS中の合計300μgのMOG38-50ペプチド(背部側腹のそれぞれ一方ずつへの2回の皮下注射に分割)による負荷刺激を行った。これらのマウスに同時に、0.2ml PBS中の100ngの百日咳毒素を静脈内注入した。百日咳毒素(100ng/マウス)の2回目の静脈内注射を48時間後に行った。マウスをEAEの徴候に関して毎日検査し、以下のようにスコア化した:0、疾患なし;1、尾部の麻痺;2、後肢の筋力低下;3、後肢の麻痺;4、後肢+前肢の麻痺;5、瀕死または死亡。
【0110】
サイトカインアッセイ法および増殖アッセイ法
サイトカインアッセイ法に関しては、脾細胞を1ウェル当たり1.5×106細胞で、10% FBSを加えた0.2mlのDMEM中にて、種々の濃度のMOG38-50ペプチドまたは1μg/ml Con A(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)の存在または非存在下で培養した。馴化培地を40時間後に収集し、サイトカイン濃度を、対応するサイトカインに対して特異的なペアのmAbを製造元の推奨(BD Pharmingen,(San Diego, CA)に従って用いる定量的ELISAによって測定した。増殖アッセイ法は、96ウェルプレートで1ウェル当たり0.5×106細胞を用いて行った。[3H]チミジンを48時間の時点で培養物に添加し、細胞を16時間後に収集した。放射能を平面型β計数器(Wallac)を用いて測定した。
【0111】
ハイドロダイナミックインジェクション
マウスに対して、pSBC21ベクターのみ、またはFn14-TRAIL、可溶性Fn14、Fn14-IgG1(突然変異型)、可溶性TRAILもしくはルシフェラーゼのコード配列を組み込んだpSBC21をベースとする発現構築物を注入した。発現プラスミドは体重の10%(グラム単位)に等しい容積(ml単位)の食塩水に溶解させた。各動物に対する全容積を、出版掲載されたプロトコールに従い、尾静脈経由で5秒以内に注入した。Liu F, Song Y, Liu D: Hydrodynamics-based transfection in animals by systemic administration of plasmid DNA, Gene Ther 1999, 6:1258-1266。ヘパリン処理したガラス毛管を用いて後眼窩血液試料を収集した。遠心処理の後に血漿を回収し、ELISAアッセイ法を行うまで-20℃に保った。
【0112】
血清中の組換えタンパク質の測定
ELISAアッセイ法は、96ウェル微量測定プレートで行った。Fn14-TRAIL、可溶性Fn14およびFn14-IgG1(突然変異型)に対しては、eBioscience(San Diego, CA)製の精製抗ヒト/マウスFn14/TWEAK受容体Abを捕捉用Abとして用いた;可溶性TRAILに対しては、R&D Systems(Minneapolis, MN)製の抗マウスTRAIL Abを捕捉用Abとして用いた。検出用Abは以下のものとした:Fn14に対してはeBioscience製のビオチン-抗マウスTWEAK受容体Ab;Fn14-TRAILおよび可溶性TRAILに対してはeBioscience製のビオチン-抗マウスTRAIL Ab;Fn14-IgG1(突然変異型)に対してはJackson ImmunoResearch Laboratories(West Grove, PA)製の抗ヒトIgG、Fcγ断片特異的Ab。
【0113】
コーティングバッファー(0.1M炭酸塩、pH 8.2)中に希釈した捕捉用Abを微量測定プレートに配分し、4℃で一晩インキュベートした。PBS中の0.05% Tween-20で2回洗浄した後に、ウェルを再び、非特異的結合部位をブロックするためのPBS-3%アルブミンとともに室温で2時間インキュベートした。再び2回洗浄した後に、100μlの血清試料を添加し、4℃で一晩インキュベートした。インキュベーションの後に、ウェルを4回すすぎ洗いし、ビオチン化した検出用Abとともに1時間インキュベートした。酵素反応のために、アビジンペルオキシダーゼおよびTMB Microwellペルオキシダーゼ基質(KPL, Gaithersburg, Maryland)を逐次的に適用した。
【0114】
インビボ生物発光の画像化
画像化の作業はすべて、University of Pennsylvaniaの放射線科(Department of Radiology)のSmall Animal Imaging Facility(SAIF)で行った。画像はルシフェラーゼ発現プラスミドの注入から5時間後、24時間後、5日後、22日後、34日後、51日後および1年後に収集した。画像化の際にはマウスをケタミン/キシラジンで麻酔した。D-ルシフェラーゼ(Biotium, Hayward, CA)を食塩水中に希釈し、撮像の前に腹腔内注射を介して送達した。続いてマウスを、温度を33℃に保っている撮像チャンバーに入れた。生物発光画像は、XenogenインビボImaging System(IVIS;Xenogen Corp, Alameda, CA)を用いて収集した。撮像パラメーターは、視野8cmまたは10cm、露出時間4分、ビニング数16およびf1/stop 1とした。表示に際しては、発光画像(擬似カラー)を、解剖学的ランドマークが描写されている写真画像と重ね合わせた。
【0115】
血液脳関門(BBB)透過性の測定
BBB透過性は、若干の変更を加えた上で、本質的には記載されている通りに評価した(Prasad R, Gin S, Nath N, Singh I, Singh AK: 5-aminoimidazole-4-carboxamide-1-beta-4-ribofuranoside attenuates experimental autoimmune encephalomyelitis via modulation of endothelial-monocyte interaction, J Neurosci Res 2006, 84:614-625)。手短に述べると、MOG負荷刺激後の6日目および13日目に、C57BL/6マウスの尾静脈に4%エバンスブルー色素(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を注入した。1時間後に動物に麻酔を施し、血管内の色素を除去するために食塩水を用いて経心臓的な灌流を行った。安楽死させた後に、脊髄、小脳/脳幹および脳を収集した。定量的測定のために、脊髄を1ml PBS中でホモジネート化した。試料を一度、15,800gで30分間遠心した。続いて、上清の600μlアリコートを収集し、600ulの100% TCA(Sigma Aldrich St. Louis, MO)に添加した。この溶液を一晩インキュベートし、15,800gで30分間遠心した。上清中のエバンスブルーの血管外漏出を分光測定で定量した(励起630nmおよび発光680nm)。
【0116】
脊髄からの浸潤性細胞の調製および分析
脊髄の単細胞懸濁液を以前の記載の通りに調製した。Hilliard B, Samoilova EB, Liu TS, Rostami A, Chen Y: Experimental autoimmune encephalomyelitis in NF-kappa B-deficient mice:roles of NF-kappa B in the activation and differentiation of autoreactive T cells, J Immunol 1999, 163:2937-2943。手短に述べると、マウスを殺処理して脊髄を取り出し、27% Percollを含む氷冷RPMI培地中に入れた上で、加圧して70μm Falconセルストレーナーに通した。その結果得られた細胞懸濁液を追加の27% Percollと合わせて容積50mlにし、混合して、300×gで15分間遠心した。ペレットを氷上に保ち、その間にミエリン層および上清を新たな50ml管に移し、振盪によってホモジネート化した上で、再び300×gで15分間遠心した。続いて細胞ペレットをまとめて、4℃のRPMI培地中で3回洗浄した。フローサイトメトリー分析に関しては、回収した細胞の単細胞懸濁液を以下のAbとともに45分間インキュベートした:FITC-抗マウス-IFNγ、PE-抗マウスIL-10、APC-抗マウスIL-17、APC-Alexa flour 750-抗マウスCD4、Percp-cy5.5-抗マウスCD8およびPE-cy7-抗マウスCD69、これらはすべてeBioscienceから購入した。
【0117】
キメラFn14-TRAILタンパク質の分子モデル化
Fn14-TRAILタンパク質の三次元モデルを、TRAILの結晶構造(pdbコード:1DOG)(Hymowitz SG, Christinger HW, Fuh G, Ultsch M, O'Connell M, Kelley RF, Ashkenazi A, de Vos AM: Triggering cell death: the crystal structure of Apo2L/TRAIL in a complex with death receptor 5, Mol Cell 1999, 4:563-571)およびモデル化されたFn14分子を用いて作成した。Fn14のリガンド結合ドメイン(LBD)の三次元モデルは、MODELLERを用いて作成した。Marti-Renom MA, Stuart AC, Fiser A, Sanchez R, Melo F, Sali A: Comparative protein structure modeling of genes and genomes, Annu Rev Biophys Biomol Struct 2000, 29:291-325。手短に述べると、Fn14のLBDの出発モデルを、ヒトTACI(1XU1)およびBCMA(1XU2)のテンプレート構造に基づいて得た。Hymowitz SG, Patel DR, Wallweber HJ, Runyon 5, Yan M, Yin J, Shriver SK, Gordon NC, Pan B, Skelton NJ, Kelley RF, Starovasnik MA: Structures of APRIL-receptor complexes: like BCMA, TACI employs only a single cysteine-rich domain for high affinity ligand binding, J Biol Chem 2005, 280:7218-7227。Fn14の伸長領域をFn14とTRAILとの間のリンカーとして扱った。立体化学的およびエネルギー的に有利なモデルを得るために、リンカーの立体構造を、以前に記載されたInsightII(Accelrys, Inc. San Diego, CA)を用いる短分子シミュレーション研究によって最適化した。Swaminathan P, Hariharan M, Murali R, Singh CU: Molecular structure, conformational analysis, and structure-activity studies of Dendrotoxin and its homologues using molecular mechanics and molecular dynamics techniques, J Med Chem 1996, 39:2141-2155。
【0118】
フローサイトメトリーおよびMTTアッセイ法
免疫染色は、0.5% BSAおよび0.05%アジ化ナトリウム(NaN3)を含むPBS中に懸濁させた特定のAbを用いて4℃で行った。フローサイトメトリー分析はすべて、Cell Questソフトウエアおよびデュアルレーザー(488nmおよび633nm)励起を備えたFACS Calibur装置(BD Biosciences)で行った。MTTアッセイ法は、製造元のプロトコール(ATCC, Manassas, VA)に従って行った。
【0119】
統計学的分析
差の統計学的有意性の判定にはStudentのt検定またはMann-Whitney U検定を用いた。0.05未満のp値を統計学的に有意とみなした。
【0120】
結果
機能的Fn14-TRAILタンパク質の産生
組換えFn14-TRAILは、関連する対照タンパク質(可溶性Fn14、Fn14-IgG1(突然変異型)、可溶性TRAIL)とともに、pMFneo真核生物発現システムを用いて産生させた。キメラFn14-TRAILコード配列はFn14 I型およびTRAIL II型膜タンパク質の全細胞外ドメインと連結されており、それによって、ハイブリッド型の可溶性I型・II型融合タンパク質が作製された。Fn14-IgG1(突然変異型)コード配列を作製するために、FcγR結合(およびその結果としてのリンパ球の非特異的枯渇)を阻止するように、およびN-グリコシル化(これはヒトIgG1のインビボでのエフェクター機能のために重要である)を妨げるように、ヒトIgG1構成要素の内部のいくつかのアミノ酸を突然変異させた(材料および方法の項を参照)。Isaacs JD, Greenwood J, Waldmann H: Therapy with monoclonal antibodies. II. The contribution of Fc gamma receptor binding and the influence of C(H)1 and C(H)3 domains on in vivo effector function, J Immunol 1998, 161:3862-3869。pMFneoをベースとするさまざまな発現構築物を293細胞に一過的にトランスフェクトさせたところ、各々のタンパク質の発現および分泌が馴化培地のウエスタンブロット分析で実証された(図1A)。
【0121】
発現したFn14-TRAILの実体を検証するために、それがFn14のリガンドであるTWEAKと結合する能力を評価した。この目的のために、CHO細胞にマウスTWEAK cDNA発現構築物(pcDNA3ベクター中)を一過性にトランスフェクトし、48時間後に、トランスフェクタントを精製Fn14-TRAILまたは可溶性TRAILとともに4℃でインキュベートした。抗マウスTWEAKおよび抗マウスTRAILを検出用Abとして用いた、これらの細胞の免疫蛍光およびフローサイトメトリー分析により、トランスフェクタント上の細胞表面TWEAKに、Fn14-TRAILは有意に結合するが、可溶性TRAILは結合しないことが示された(図1B)。
【0122】
Fn14-TRAILのTRAIL構成要素の機能性については、それがL929細胞におけるアポトーシスを誘導する能力をMTTアッセイ法を用いて評価することによって判定した。図1Cに示したように、Fn14-TRAILは、アクチノマイシンDの存在下でL929細胞のアポトーシスを用量依存的な様式で誘導する。この実験では組換えTRAIL(Super Killer TRAIL(商標))を陽性対照として用いた。注目すべきは、免疫蛍光およびフローサイトメトリーによってこれらのL929細胞上においてTWEAKは全く検出されなかったことであり(図示せず)、このことはFn14-TRAILのFn14構成要素が表面TWEAKを介したある種の逆シグナル伝達(back-signaling)を通じてアポトーシスを作動させる可能性の反証となったことである。
【0123】
Fn14-TRAILの持続的インビボ発現のためのトランスポゾンをベースとする発現システムの開発
Fn14-TRAIL(および対照タンパク質)の持続的インビボ発現を可能にするために、トランスポゾンをベースとする「スリーピング・ビューティ(SB)」発現システムを利用した。このシステムは、プラスミドを介した遺伝子送達の利点と、染色体内に組み込まれて持続的な導入遺伝子発現をもたらす能力とを兼ね備えている。この発現システムの効率を最適化するために、単一のプラスミドの内部にトランスポゾン(関心対象の導入遺伝子を収容している)およびトランスポザーゼ発現カセットの両方を備える誘導体発現ベクターを作製し、pSBC21と命名した(図2A)。2つのカセットからの相対的発現レベルが重要であるため、いくつかのプロモーターの組み合わせをスクリーニングしたところ、UBCプロモーター(トランスポザーゼを作動させる)およびEF1αプロモーター(トランスポゾンカセットを作動させる)を縦列に並べた組み合わせが、導入遺伝子の強力な発現をもたらすことが明らかになった(図示せず)。
【0124】
この独自の二重カセットトランスポゾン/トランスポザーゼベクター誘導体(UBC/EF1αプロモーターの組み合わせを伴う)の機能性を、ルシフェラーゼレポーターを用いて検証した。さまざまな濃度のpルシフェラーゼ・SBC21プラスミドをハイドロダイナミックインジェクションによってC57BL/6マウスに投与した。トランスポゾンをベースとする発現構築物のハイドロダイナミックインジェクションは、インビボのマウス肝細胞において持続的な遺伝子発現をもたらしている。Liu F, Song Y, Liu D: Hydrodynamics-based transfection in animals by systemic administration of plasmid DNA, Gene Ther 1999, 6:1258-1266。ルシフェラーゼの基質であるD-ルシフェラーゼの投与後に収集した生物発光画像では、22日の時点でルシフェラーゼの発現が明らかに認められ(図2B)、6カ月後にも依然として顕著なレベルが検出された(図示せず)。
【0125】
この誘導体発現ベクターの機能性がルシフェラーゼレポーターを用いて実証されたことを受け、このベクターを、特に血清中のFn14-TRAILのレベルが、注入したpFn14-TRAIL・SBC21プラスミドの用量と相関するか否かを明らかにする目的で、Fn14-TRAILを発現させるために利用した。C57BL/6マウス(4匹ずつの実験群)に対してそれぞれ、pFn14-TRAIL・SBC21プラスミドの種々の用量(5、10または20μgのプラスミド)での単回ハイドロダイナミックインジェクションを行った。Fn14-TRAILの血清レベルをプラスミド投与の20日後にELISAによって測定したところ、Fn14-TRAIL血清レベルの用量依存的な上昇が、10μgのプラスミド用量以降で観察された(図2C)。
【0126】
Fn14-TRAILはMOG誘導自己免疫脳脊髄炎を抑制する
次に、マウスEAE疾患モデルにおけるFn14-TRAILの治療能力を調べた。この目的のために、単回の脳炎誘発用量のMOG38-50ペプチドをC57BL/6マウスに投与した。ペプチド注射から2日後に、単回用量のpFn14-TRAIL・SBC21プラスミド(50μg/マウス)または4種の対照プラスミドの一方(pFn14・SBC21、pFn14-IgG1(突然変異型)・SBC21、pTRAIL・SBC21およびpSBC21)をハイドロダイナミックインジェクションによって注入した。ELISAにより、各プラスミドのそれぞれのハイドロダイナミックインジェクションを受けた動物個体において同等な血清レベルの発現タンパク質(図3A)が検出された。投与を受けたマウスの疾患進行は、身体診察および回収した脊髄の組織学的分析の両方によってモニターした。Fn14-TRAILの発現はEAE症状発現を有意に減弱させ、平均臨床スコア(MOG投与後の43日間の期間にわたり算出;図3B、上のパネル)および累積平均臨床スコア(MOG投与後の40日間の期間にわたり算出;表1および図3C)の両方が低下した。平均最大疾患スコアも、さまざまな対照と比較して、Fn14-TRAIL投与群において有意に低かった(表1)。同様に、35日目の時点の疾患スコアもFn14-TRAIL群が有意に低かった(表1;図3D)。
【0127】
Fn14-TRAILの治療的有用性は、疾患発病日および疾患発生率の分析からも明白に認められた。Fn14-TRAILは、エンプティベクターを投与された対照マウス(12.8±4日)と比較して、平均疾患発病日(14.8±4.7日)を先に延ばし、典型的には後者のマウスはMOGペプチド投与のおよそ10日後にEAEを発症した(表1)。pFn14・SBC21、pFn14-IgG1(突然変異型)・SBC21、pTRAIL・pSBC21プラスミドを投与されたマウスの平均疾患発病日は、それぞれ13.63±2.72日、11.66±1.2日および13.42±2.2日であった。発現されたタンパク質はいずれも疾患発生率をある程度低下させたものの、Fn14-TRAILを投与した動物のうち、この実験の過程において疾患の徴候を示したのは50%に過ぎなかった(図3B、下のパネル)。
【0128】
Fn14-TRAILはその構成要素部分の組み合わせよりも有効である
Fn14-TRAILの構成要素がいずれも、可溶性物質として1つずつ投与した場合には、EAEを抑制する上でFn14-TRAILほど有効ではないことが示されたことを受け、Fn14-TRAIL融合タンパク質の治療的効力が、可溶性Fn14およびTRAILタンパク質を同時に投与することによって再現されうるか否かという問題について、同じEAEモデルを用いて評価した。C57BL/6マウスにMOG38-50ペプチドの単回の脳炎誘発性負荷刺激の投与を行った2日後に、pFn14-TRAIL・SBC21プラスミド(25μg/マウス)またはpFn14・SBC21およびpTRAIL・SBC21プラスミドの混合物(各25μg/マウス)のいずれかの単回用量のハイドロダイナミックインジェクションをこれらの動物に行った。Fn14-TRAILは前と同じくEAEを有意に抑制し、平均臨床スコア(図4Aおよび4B)および累積平均臨床スコア(図4C)をいずれも低下させたが、可溶性Fn14および可溶性TRAILの組み合わせは有意な治療効果を示さなかった。トランスポゾンをベースとする各発現プラスミドのハイドロダイナミックインジェクションによって発現されたこれらのさまざまなタンパク質の血清レベルは、ELISAによる測定では同等であった(図4D)。以上を総合すると、これらのデータは、Fn14-TRAILがEAE誘導を防止する実質的な治療的有用性を有しており、この効果をこの融合タンパク質の2つの構成要素を可溶性物質として単に組み合わせて投与することによって再現することはできないことを立証している。
【0129】
Fn14-TRAILは自己反応性T細胞の増殖および分化を阻止する
投与した動物から回収したミエリン特異的T細胞の増殖および分化に対するFn14-TRAILの効果について評価した。この目的のために、Fn14-TRAILを投与したマウスおよびベクターのみの投与を受けた対照マウスの両方から、MOG負荷刺激の43日後に脾細胞を回収した。これらの脾細胞を、MOG38-50ペプチドに応答した増殖およびサイトカイン産生に関してインビトロで評価した。対照動物からの脾細胞はMOGペプチドに応答して活発に増殖し(図4E)、かつ著しい量のTh1(IL-2およびIFN-γ)、Th2(IL-10、IL-4およびIL-6)およびTh17(IL-17)サイトカインを産生した(図5)。対照的に、Fn14-TRAILを投与した動物からの脾細胞は、MOG刺激に応じてより低い程度でしか増殖せず(図4E)、かつこれらのさまざまなサイトカインを有意に少なく産生した(図5)。以上を総合すると、これらの結果は、T細胞増殖および数々のT細胞サイトカインの発現の両方が、Fn14-TRAILのインビボ投与によって減弱することを指し示している。
【0130】
Fn14-TRAILは炎症細胞のCNS内への浸潤を減少させる
EAEの重要な病理学的特徴は、炎症細胞のCNS内への浸潤である。この浸潤プロセスに対するFn14-TRAILの効果を評価した。この目的のために、Fn14-TRAILを投与したEAEマウスとベクターを投与したEAEマウスとのMOG負荷刺激後の7日目および14日目の脊髄内における、初期活性化CD4+細胞およびCD8+細胞のパーセンテージならびにIFNγ発現細胞、IL-17発現細胞およびIL-10発現細胞のパーセンテージに沿った炎症細胞の絶対数の比較を行った。7日目の時点では、これらのパラメーターはすべて、Fn14-TRAIL投与群において顕著に低下していた(図6A〜D)。14日目(疾患のピーク)の時点でも、Fn14-TRAILに伴うサイトカイン発現細胞の絶対数の減少は依然として明らかであった(図6E〜F)。
【0131】
脊髄から回収した炎症細胞に関するこれらの所見は、MOG負荷刺激の43日後に回収した脊髄組織の組織病理学的検査と一致した。対照ベクターのみを投与した動物では脊髄内に多数の炎症性病巣が均一に認められたが、Fn14-TRAILを投与したマウスは脊髄内の炎症細胞の浸潤の劇的な減少を呈した(図7A〜B)。
【0132】
Fn14-TRAILは血液脳関門の透過性を減弱させる
TWEAKは、MMP-9(メタロプロテイナーゼ-9)の発現を誘導することにより、神経血管膜ユニットの透過性を増大させることが知られている。Polavarapu R, Gongora MC, Winkles JA, Yepes M: Tumor necrosis factorlike weak inducer of apoptosis increases the permeability of the neurovascular unit through nuclear factor-kappa B pathway activation, J Neurosci 2005, 25:10094-10100。Fn14-TRAILを投与したマウスで認められたCNS内への炎症細胞の浸潤の減少は、少なくとも部分的には、血液脳関門(BBB)透過性のTWEAK依存的な増大の結果であると考えられる。BBBの完全性を、静脈内に導入したエバンスブルー色素のCNSへの浸透をモニターする従来のアプローチによって評価した。Prasad R, Gin S, Nath N, Singh I, Singh AK: 5-arninoimidazole-4-carboxamide-1-beta-4-ribofuranoside attenuates experimental autoimmune encephalomyelitis via modulation of endothelial-monocyte interaction, J Neurosci Res 2006, 84:614-625。EAEマウスのCNS内のエバンスブルーを、疾患ピークの前(MOG投与の6日後)または最中(MOG投与の13日後)に測定した。切離したさまざまなCNS構造物のホモジネート中の色素を定量した。対照ベクターのみを投与した動物とFn14-TRAILを投与した動物との脳の間では、いずれの時点でも検出可能な色素に関して有意差はなかったものの(図8Aおよび8B)、他のCNS構造物(脊髄および小脳/脳幹)では、6日目(図8A)および13日目(図8B)のいずれにおいても、ベクターのみを投与した動物で有意に多くの色素が検出された。
【0133】
脊髄内に浸透した色素の濃度は、色素適用日の各々のEAE平均臨床スコアと相関した。重要なこととして、13日目のEAE平均臨床スコアが同じ(0または1)であったマウスであっても、対照ベクターのみを投与したマウスでは、Fn14-TRAILを投与したマウスと比較してより高濃度の色素が認められた(図8C)。この所見を、Fn14-TRAILを投与した脊髄における炎症細胞浸潤の低下という所見と総合することにより、Fn14-TRAILは脳脊髄炎に付随するBBB透過性の進行性増大を抑制することにより、内皮BBBを越える炎症細胞の浸潤を減弱させるという証拠が得られる。
【0134】
キメラFn14-TRAILタンパク質の分子モデル
Fn14-TRAILの顕著な治療的効力が、少なくとも部分的には、それがTWEAKリガンド分子およびTRAIL受容体(DR5)分子を係合させて架橋させる様式に端を発するのではないかという問題について評価した。この目的のために、Fn14-TRAILタンパク質を、単量体(図9A)および三量体(図9B〜C)の両方としてモデル化した。三量体性Fn14-TRAILの反対側末端での、TWEAKおよびDR5のそれぞれとの間で推定される相互作用についても描出した(図9D)。重要なこととして、モデル化されたTWEAK:Fn14-TRAIL:DR5複合体は、以下のことを示した:(1)Fn14のTWEAK結合ドメインは、キメラ化された天然では三量体性であるTRAIL構成要素により、人工的な「三量体」配置に拘束されると、三量体性TWEAKの内部のそのコグネイトパートナーと相互作用するのに有利な位置をとること;(2)三量体性TRAILのDR5結合ドメインは、三量体性DR5の内部のそのコグネイトパートナーと相互作用するのに有利な位置をとること;および(3)融合タンパク質の内部のFn14構成要素のカルボキシ末端は、Fn14およびTRAILドメインをつぶれないようにして隔てて保つのに十分な剛性のある代用「リンカー」としての役を果たすこと。興味深いことに、Fn14およびTRAILのリガンド結合ドメインには約60Åの隔たりがあり、このことは、この融合タンパク質が、相互作用する細胞間でスペーサーのように作用して、局所的な細胞間接触を限定しうるという可能性を提起する。以上を総合すると、このモデル化解析により、このFn14-TRAILキメラが実際に、向かい合う細胞上のTWEAKおよびDR5の両方を同時に係合させうることが実証された。その上、拘束されたFn14「新規三量体」は、天然のTWEAK三量体との結合を可能にする配置をとり、おそらく特に安定な高次構造を作り出す。
【0135】
(表1)EAEの臨床的特徴
* 発病日は、免疫処置後にマウスがEAEの徴候を示した最初の日である(EAEを発症したマウスのみを含めた)。
** 累積スコアは各マウスの臨床スコアの合計である。
【0136】
ヒトFn14-TRAILタンパク質の産生および精製
クローンの構築
ヒトFn14-TRAILを産生させるために用いる発現カセットには、ヒトウロキナーゼシグナルペプチドのコード配列の後にヒトFn14-TRAILのコード配列を含めた。コード配列は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株における発現強化のためにコドン最適化を行った。DNAコード配列を合成し、続いて、染色体組込みのために設計され、CHO細胞における高レベル発現のために最適化された哺乳動物発現ベクター中にサブクローニングした。
【0137】
Fn14-TRAIL発現ベクターをCHO-S細胞にトランスフェクトし、クローンプールを初期発現分析のために単離した。このクローンプールの中から、単一の高産生クローンを単離し、Fn14-TRAILタンパク質の発現をELISA、SDS-PAGEおよびウエスタンブロットなどのさまざまな方法によって分析した(図10参照)。産生レベルは、発酵培地1リットル当たりおよそ100mgのFn14-TRAILに到達するまで最適化された。
【0138】
ウエスタンブロット分析を、さまざまな培地配合物(種々のレーンに示した)中で成長させたFn14-TRAILクローンから入手した振盪フラスコ培地試料に対して行った。ウエスタンブロットのプロービングは、市販の抗ヒトTRAIL/TNFSF10 Abを一次検出用抗体として用いて行った。Fn14-TRAILの算出分子量は24.6kDである。
【0139】
高収量の多段階クロマトグラフィー精製工程を開発し、これには効率的な捕捉段階、陰イオン交換クロマトグラフィー段階およびその後の最終的なバッファー交換段階を含み、この後者では産物を製剤化バッファー中に移した。この精製工程は高度に精製されたFn14-TRAILタンパク質の単離を可能にする。精製の最終段階で採取した試料のウエスタンブロット分析(図11に対応、右端レーン)により、精製されたタンパク質が主として単量体であり、一部がホモ二量体であることが示された(図示せず)。SDS-PAGEゲル上に認められた少量の分解産物は、Fn14特異的Abによっては検出されなかったが、TRAIL特異的Abによって検出された。
【0140】
7リットルでの産生用発酵に続いて上記の精製プロセスを行ったところ、およそ300mgの精製Fn14-TRAILが得られ、これを以下に示した一連のインビトロ実験およびインビボ実験に用いた。
【0141】
ヒトFn14-Trailを用いたEAE実験‐実験手順
8週齡の雌性C57BL/6マウスにおいて、5mg/mlの熱殺菌結核菌を含む完全フロイントアジュバント(CFA)中に乳化させた125□gのミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質35-55(MOG 35-55)ペプチド(Sigma Laboratories, Israelにより合成)を左側腰部付近領域に皮下注射することにより、EAEを誘導した。その直後および再び48時間後に、マウスに300ngの百日咳毒素を接種した。CFA中のMOG 35-55ペプチドの追加注射を、7日後に右側腰部付近領域に行った。0日目から8日目までは、1日に50、100または200μgのFn14-Trailまたはビヒクルを、2回の同じ用量でマウスに皮下注射した(各群でn=4)。9日目にマウスに最後の投与を行い、1時間後に殺処理した。脾臓を採取して秤量した。Fn14-TRAIL投与とともにまたはそれを伴わずにCFA中のMOG 35-55ペプチドを9日前に接種されたマウスの鼠径リンパ節、腋窩リンパ節および腸間膜リンパ節からまたは脾臓から、プールされたリンパ節細胞(LNC)を調製した。リンパ球のエクスビボ応答を、96ウェル平底プレートの3つずつのウェルでアッセイした。1%ペニシリン ストレプトマイシン、1%グルタミンおよび5%ウシ胎仔血清(FCS)およびβ-メルカプト-エタノールを加えた0.2ml RPMI中に懸濁させた合計2×105個の細胞を、各ウェルに添加した。48時間後に、1μCiの3(H)チミジン(Amersham, UK)を各ウェルに添加し、プレートをさらに18時間インキュベートした。続いてプレートを半自動式収穫器を用いてガラス繊維フィルター上に集め、放射能を液体シンチレーションによって測定した。結果は、式:SI=刺激細胞の平均cpm/非刺激細胞の平均cpmに従って、刺激指数(SI)として表した。
【0142】
Fn14-Trailを投与したMOG免疫処置マウス(各群でn=4匹)から9日目に、プールされた脾臓リンパ球をフィコール-ハイパック勾配を用いて単離した。回収した細胞をメチレンブルーで染色して計数した。各群の脾臓当たりのリンパ球の数を提示している。
【0143】
2回の繰り返し実験のデータ(図12Aおよび12B)から、50ugから200ugの範囲で、脾細胞数の有意な用量依存的減少が示された。
【0144】
MOG免疫処置マウス(各群でn=4)においてFn14-Trail投与後の9日目に回収したリンパ節から単離したプールされたリンパ球を、MOGペプチドで72時間刺激した。インキュベーション終了の18時間前に、培養物に[3H]チミジンでパルス刺激した。増殖を[3H]チミジン取り込みによって評価し、刺激指数(刺激細胞の平均cpm/非刺激細胞の平均cpm;SI>2は有意な刺激を表す)として表した。
【0145】
そのデータ(図13に示した)は、MOGペプチドの再負荷刺激に対するリコール応答の、Fn14-Trailを介した有意な阻害を示しており、100μg/日/マウスを投与したマウスで最大の効果が得られた。
【0146】
EAEは上記のようにMOG負荷刺激によって誘導した。MOG投与後の10日目に、マウス(各群で10匹)に対して、ビヒクルまたは25、50および100μg/日のFn14-Trailを、2回に分けた用量として投与した。臨床的疾患スコアの評価のためにマウスの経過を毎日観察した。マウスの臨床的状態は以下のように等級化した:0、疾患の徴候なし;1、尾部の筋力低下;2、立ち直りに障害を生じさせるのに十分な後肢の筋力低下;3、後肢の不全麻痺;4、前肢の筋力低下を伴う対麻痺;5、四肢麻痺;6、死亡。投与は疾患誘導後の26日目(Fn14-Trailから16日)に終了した。A:すべての実験群の平均臨床スコア;B:対照群および100μg/日群の平均臨床スコア、この場合にはS.D.を示している。
【0147】
このデータ(図14A〜14Bに示した)は、明らかな閾値用量効果を伴う、EAE疾患の進行を軽減するFn14-Trailの有意な治療効果を示している。
【0148】
Fn14-Trailを用いたコラーゲン誘導関節炎‐実験手順
DBA1雄性マウスに対して、ウシ関節軟骨から調製して完全フロイントアジュバント(CFA:Difco Labs)中に懸濁させた200□gのII型コラーゲンによる負荷刺激を2回(3週間の間隔で)、尾の付け根への皮内注射によって行った。マウスの経過を毎日観察し、1つまたは複数の肢における腫脹および/または紅斑についてモニターした。疾患発病日に、マウスを対照群(ビヒクルのみを投与)および治療群(100または200□g/マウス/日のFn14-Trailを1日1回投与)に無作為に割り付けた。ビヒクルおよびFn14-Trailは皮下投与した。注射は対照群および100ug群に対しては14日間、200ug群に対しては7日間行った。マウスの経過を毎日、疾患発病から14日間にわたって観察し、その後は3日毎に観察した。四肢のすべてにおける腫脹をマイクロキャリパーを用いて測定し、齢を一致させた健康なマウスと比較した。各肢における腫脹の増分(delta)を算出し、これらの増分を合計してスコア(疾患指数)とした。
【0149】
このデータ(図15に示した)は、200ug/日用量のFn14-Trail投与による有意な治療効果を示している。特に注目されることとして、疾患指数の低下はFn14-Trail投与の中止後も少なくとも7日間持続している。
【0150】
ヒトFn14-TRAILタンパク質はアポトーシスを介して癌細胞死を誘導する
Fn14-TRAILにより作動される、癌細胞に対する細胞傷害性は、高効率的かつ特異的である
タグ付加していない精製ヒトFn14-TRAILタンパク質によって媒介される腫瘍細胞の細胞傷害性を、いくつかのヒト腫瘍細胞種を用いて検討した。TWEAK依存性でありかつTRAIL受容体(DR5)を発現することが知られているヒトヘパトーマ癌細胞株SK-Hep1は、Fn14-TRAILに対する感受性が非常に高く、この腫瘍株に対する死滅効果が極めて高い(EC50=0.04nM)ことが示された(図16A)。同様の効力は、他の2つの肝腫瘍細胞株であるHuh 7およびHepG2でも実証された(データは図示せず)。これらの肝腫瘍株に対する効果とは対照的に、同一濃度のFn14-TRAILと非癌性細胞株または非肝臓性細胞株とのインキュベーションでは、死滅効果は全く示されなかった。例えば、発明者らのFn14-TRAILは、表面TRAIL受容体を持たないヒト悪性B細胞株Rajiに対しても(図16B)、TRAIL受容体DR5を発現する非悪性ヒト肝細胞株NKNT3に対しても(図16C)、ヒト胎児肝細胞株FH-Bに対しても(図16D)死滅効果を示さなかった。これらの結果は、Fn14-TRAILが癌細胞を効率的かつ特異的に死滅させることを立証している。
【0151】
Fn14-TRAILの殺腫瘍活性を、その構成要素部分の組み合わせを単に送達することによって達成することはできない
Fn14-TRAIL融合タンパク質の殺腫瘍効果を、その構成要素部分を組み合わせて加えた場合の効果と比較した。この目的のために、同程度のモル濃度の精製Fn14-TRAIL、TRAILの可溶性細胞外ドメイン(sTRAIL)のみ、可溶性Fn14をIgG1のFcドメインと融合させたもの(Fn14-Fc)、またはこの両者の組み合わせ(Fn14-Fc+sTRAIL)のいずれかとのインキュベーション後に、ヘパトーマ癌細胞株SK-Hep1の細胞生存度を測定した。Fn14-Fcはこの癌細胞株に対して全く殺腫瘍活性を示さなかったが、sTRAILはある程度の死滅効果を示した。しかし、Fn14-FcおよびsTRAILの両方の組み合わせでさえも、融合タンパク質の殺腫瘍効果は達成しなかった(図17)。
【0152】
Fn14-TRAILはアポトーシスを誘導することによって癌細胞を死滅させる
Fn14-TRAILの死滅効果を機序に関して探るために、ヒトヘパトーマ癌細胞株SK-Hep1の細胞を、種々の濃度の精製Fn14-TRAIL、可溶性Fn14をIgGのFcドメインと融合させたもの(Fn14-Fc)のみ、TRAILの可溶性細胞外ドメイン(sTRAIL)のみ、またはこの両者の組み合わせ(Fn14-Fc+sTRAIL)とともにインキュベートした。各々のタンパク質とのインキュベーションの後に、アポトーシスを来した細胞のパーセンテージをアネキシンV/PI染色による評価で決定するために、処理した細胞をFACSによって分析した(図18)。この分析により、Fn14-TRAILの死滅効果はアポトーシスに基づくことが指し示された。注目されることに、可溶性TRAIL(sTRAIL)のみでもアポトーシス誘発活性は示されたが、これは最も高濃度の場合に限られ、30ng/ml濃度では融合タンパク質が構成要素のみまたはその組み合わせよりも大幅に優れていた。
【0153】
本発明の特定の態様を例示の目的で説明してきたが、当業者には、添付した特許請求の範囲において定義されている本発明を逸脱することなく、本発明の細部のさまざまな変更を加えうることは明白であると考えられる。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、Fn14/TRAIL融合タンパク質および関連融合タンパク質、ならびにこれらのタンパク質によって自己免疫疾患および癌などのある種の疾患を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景情報
正および負のシグナルの複雑な相互作用が、T細胞の活性化およびT細胞エフェクター機能の維持を調節している。TNFリガンド/TNF受容体スーパーファミリーのメンバーは、このシグナルのマトリクッスの中で重要な位置を占めており、免疫系の細胞同士の橋渡し、ならびにそれらと他の臓器系の細胞との橋渡しをする。その際に、TNFスーパーファミリーのメンバーは、細胞の生存および死、細胞分化ならびに炎症に対する影響を介して、組織ホメオスタシスおよび組織病理発生の両方に寄与する。自己免疫病理発生の観点から、興味深いTNFリガンドスーパーファミリーのメンバーは、TNF関連アポトーシス誘導性リガンド(TNF-related apoptosis-inducing ligand)(TRAIL)およびTWEAK(TNF関連アポトーシス弱誘導因子(TNF-related weak inducer of apoptosis))である。
【0003】
TRAILは、TNF受容体スーパーファミリーのいくつかの異なるコグネイト受容体と結合し、それらの中には、細胞内シグナル伝達経路のトリガーとなることにつながるものもあれば、単にデコイ受容体として作用するものもある。ヒトにおけるトリガー受容体はTRAIL-R1、TRAIL-R2およびオステオプロテグリンであり、マウスにおける唯一のトリガー受容体はDR5である。免疫系の事実上すべての細胞(Tリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、単球、顆粒球)は、インターフェロンおよび他の活性化シグナルに応答して、表面TRAILを上方制御する、および/または分泌小胞内に貯蔵された可溶性TRAILを放出する。TRAILはいくつかの動物モデルにおいて自己免疫を抑制する。MSのマウスモデルにおいて実験的自己免疫性脳炎(EAE)を抑制する能力がTRAILにあるという証拠は、TRAIL-/-ノックアウトマウス、TRAILの機能を阻止しうる可溶性TRAIL受容体(sDR5)または中和性抗TRAIL mAb、および、TRAILと病原性MOG(ミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質ペプチド)とを共発現する胚性幹細胞由来の樹状細胞を利用した実験から得られている。興味深いことに、MS患者では、可溶性TRAILがIFN-β療法に対する反応マーカーであることが明らかになってきており、治療に反応する可能性が最も高い者は治療法の後に早期でかつ持続的な可溶性TRAILの誘導を示す。しかしながら、MS/EAEに及ぼすTRAILの影響はより複雑である可能性があり、例えば、TRAILは脳細胞アポトーシスを促す可能性があるという示唆がある。TRAILおよびFasLはいずれもT細胞の負の調節と関係づけられている。
【0004】
TWEAKおよびその対抗受容体であるFn14(線維芽細胞成長因子誘導型14kDaタンパク質)は、NK細胞、マクロファージ、樹状細胞、ミクログリア細胞、グリア細胞および内皮細胞を含むさまざまな免疫細胞種ならびに非免疫性細胞種で発現される、別のTNFファミリーリガンド-受容体ペアである。TWEAKは、いくつかの細胞種(星状膠細胞、内皮細胞およびある種のヒト腫瘍細胞株)の増殖を促進し、別のもの(赤芽球、腎細胞、メサンギウム細胞、神経細胞、NK細胞、単球)のそれを抑制する。TWEAKは、さまざまな炎症性サイトカイン、ケモカインおよび接着分子の産生を刺激する。しかし、TWEAK:Fn14シグナル伝達軸は、細胞増殖およびサイトカイン産生の範囲を超えた作用も有する。興味深いことに、長年にわたってTWEAKと関連づけられたより多くの一連の機能の中には、自己免疫につながるものが含まれる。TWEAKは神経血管ユニット(neurovascular unit)の透過性を増大させ、EAEおよび急性脳虚血の際にはCNSにおいてその内因性発現が亢進している。その上、TWEAKは血管新生誘発活性も有しており、このことは血管新生と自己免疫病理発生との関連を考慮に入れれば興味深い。TWEAKはEAEの重症度および随伴する神経変性を増大させる。TWEAKまたはFn14のいずれかの細胞外ドメインを用いたワクチン接種による阻害性抗TWEAKまたはFn14 Abの誘導は、ラットおよびマウスのモデルにおいてEAEの症状発現を改善する。
【0005】
多発性硬化症(MS)は、衰弱性の神経疾患であり、治療選択肢が増えているにもかかわらず、より有効な治療薬が依然として早急に求められている。MSの正確な病因は不明であるものの、その病理発生および臨床的進展の重要な特色が明らかになってきている。病原性エフェクターT細胞はこの疾患の進展に極めて重要と考えられており、このため、多くの治療的方針が、それらの活性化および再活性化を阻止すること、それらをより大きいT細胞リザーバから除去すること、ならびにCNS内部の発生病理部位へのそれらの移行を妨げることなどを目標として、これらの細胞に集中している。
【0006】
TWEAK/Fn14およびTRAIL/TRAILRシグナル伝達軸はいずれも癌と関係づけられている。例えば、"TRAIL receptor signalling and modulation: Are we on the right TRAIL?", Cancer Treatment Reviews 35 (2009) 280-288;および"The TWEAK-Fn14 cytokine-receptor axis: discovery, biology and therapeutic targeting", Nature 7 (2008) 411-425を参照されたい。
【発明の概要】
【0007】
したがって、1つの局面において、本発明は、第1のドメインがTWEAKリガンドと結合するポリペプチドであり、第2のドメインがTRAIL受容体と結合するポリペプチドである、第1のドメインおよび第2のドメインを含む融合タンパク質を提供する。
【0008】
1つのその他の局面において、本発明は、第1のドメインがFn14タンパク質の細胞外ドメインの少なくとも一部分であり、第2のドメインがTRAILタンパク質の細胞外ドメイン少なくとも一部分である、第1のドメインおよび第2のドメインから本質的になる融合タンパク質を提供する。
【0009】
別の局面において、本発明は、第1のドメインがTWEAKリガンドと結合するポリペプチドであり、第2のドメインが阻害機能を有するポリペプチドである、第1のドメインおよび第2のドメインを含む融合タンパク質を提供する。
【0010】
これらの融合タンパク質を含む薬学的組成物、ならびに本発明の融合タンパク質によって自己免疫疾患および癌などのさまざまな疾病を治療する方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明を、添付の図面によってさらに説明する。
【図1A】Fn14-TRAILの発現および機能分析である。Fn14、Fn14-TRAIL、Fn14-IgG1(突然変異型)およびTRAILに対する発現構築物をトランスフェクトした293細胞による馴化培地に対してウエスタンブロット分析を行った。観察されたバンドは、それぞれ8.7kD、27.5kD、34.1kDおよび19.0kDという予想されたサイズに一致した。
【図1B】Fn14-TRAILの発現および機能分析である。CHO細胞にマウスTWEAK cDNA発現構築物を一過性にトランスフェクトし、48時間後に、アジ化ナトリウムを含む緩衝液中で精製Fn14-TRAILまたはrTRAILとともに4℃でインキュベートした。トランスフェクタント上の膜結合型TWEAKの存在、およびそれらに対するFn14-TRAILの結合が、それぞれ抗マウスTWEAK Ab(B.1)および抗マウスTRAIL Ab(B.2〜5)を検出用Abとして用いたフローサイトメトリーによって実証された。(B.1)TWEAKは、抗TWEAK Ab(黒の実線)をアイソタイプ対照(網掛けヒストグラム)と対比して用いた検出によれば、トランスフェクトされたCHO細胞上で発現される。(B.2)TRAILは、抗TRAIL Ab(黒の実線)をアイソタイプ対照(網掛けヒストグラム)と対比して用いて分析した場合、CHO細胞上では検出されない。(B.3およびB.4)TWEAKを発現するCHO細胞にFn14-TRAILを添加した場合には、TWEAK陰性のCHO細胞の場合と異なり、TRAILエピトープが強化される。抗TRAIL Abおよびアイソタイプ対照はそれぞれ、黒の実線および網掛けヒストグラムによって表されている。(B.5)TWEAKがトランスフェクトされた細胞は、rTRAILの存在下では抗TRAIL Ab(黒の実線)と結合しない。アイソタイプ対照は網掛けヒストグラムとして示されている。
【図1C】Fn14-TRAILの発現および機能分析である。L929細胞を、平底96ウェルプレートの中で、2×104個/ウェルで、100μlのAIM-V培地中にて培養した。16時間後に、アクチノマイシンDを培養物に1mg/ウェルで添加し、細胞をもう2時間培養した。続いて、Fn14-TRAIL、または陽性対照としてのrTRAILを添加し、培養物をさらに5時間維持した。死細胞のパーセンテージを、材料および方法の項に記載した通りにMTTアッセイ法によって決定した。
【図2A】二重カセットpSBC21ベクターの機能的検証である。模式的に描写したように、pSBC21プラスミドは、トランスポゾンカセット(トランスシグナル再方向づけ(redirecting)タンパク質‐TSRPを作動させるEF1αプロモーターを備える)およびトランスポザーゼ発現カセット(UBCプロモーターによって作動する)を縦列に組み込んでいる。
【図2B】二重カセットpSBC21ベクターの機能的検証である。マウスに対して、pSBC21ベクターのみ(右のパネル)または図示した濃度のpルシフェラーゼ・SBC21のいずれかのハイドロダイナミックインジェクションを行った。プラスミド注入から22日後に、D-ルシフェラーゼの腹腔内投与後に生物発光画像を収集した。カラーバーは生物発光シグナルを放射輝度(p/sec/cm2/sr)で表している。
【図2C】二重カセットpSBC21ベクターの機能的検証である。5μg、10μgまたは20μgのFn14-TRAIL・pSBC21プラスミドの注入から20日後にFn14-TRAILの血清レベルをELISAによって決定した。
【図3A】Fn14-TRAILは、MOG誘導自己免疫性脳脊髄炎を抑制する。pSBC21をベースとする各々の発現プラスミド50μgのハイドロダイナミックインジェクションから20日後に、Fn14、Fn14-TRAIL、Fn14-IgG1(突然変異型)およびTRAILの血清レベルをELISAによって測定した。
【図3B】Fn14-TRAILは、MOG誘導自己免疫性脳脊髄炎を抑制する。マウスに対して、材料および方法の項に記載した通りに、結核菌(M. tuberculosis)を加えたCFA中のMOGによる負荷刺激を行った。MOG負荷刺激から48時間後に、マウスに対して、pSBC21をベースとする図示した発現構築物50μgのハイドロダイナミックインジェクションを行った。個々のマウスを、材料および方法の項に記載した臨床的尺度に従ってスコア化した。評価したパラメーターには、平均臨床スコア(上のパネル)、および疾患発生率(下のパネル)が含まれる。Fn14-TRAILを投与した群とベクターのみの対照群との間の差はMann-Whitney U検定により統計学的に有意であり(p<0.05)、一方、示した他の群とベクターのみの群との間の差は有意ではなかった。
【図3C】Fn14-TRAILは、MOG誘導自己免疫性脳脊髄炎を抑制する。マウスに対して、材料および方法の項に記載した通りに、結核菌(M. tuberculosis)を加えたCFA中のMOGによる負荷刺激を行った。MOG負荷刺激から48時間後に、マウスに対して、pSBC21をベースとする図示した発現構築物50μgのハイドロダイナミックインジェクションを行った。個々のマウスを、材料および方法の項に記載した臨床的尺度に従ってスコア化した。評価したパラメーターには、累積平均臨床スコアが含まれる。Fn14-TRAILを投与した群とベクターのみの対照群との間の差はMann-Whitney U検定により統計学的に有意であり(p<0.05)、一方、示した他の群とベクターのみの群との間の差は有意ではなかった。
【図3D】Fn14-TRAILは、MOG誘導自己免疫性脳脊髄炎を抑制する。マウスに対して、材料および方法の項に記載した通りに、結核菌(M. tuberculosis)を加えたCFA中のMOGによる負荷刺激を行った。MOG負荷刺激から48時間後に、マウスに対して、pSBC21をベースとする図示した発現構築物50μgのハイドロダイナミックインジェクションを行った。個々のマウスを、材料および方法の項に記載した臨床的尺度に従ってスコア化した。評価したパラメーターには、35日目の平均臨床スコアが含まれる。Fn14-TRAILを投与した群とベクターのみの対照群との間の差はMann-Whitney U検定により統計学的に有意であり(p<0.05)、一方、示した他の群とベクターのみの群との間の差は有意ではなかった。
【図4】Fn14およびTRAILの組み合わせでは、Fn14-TRAILの治療効力は達成されない。(A)〜(C)MOG負荷刺激から48時間後に、マウスに対して、Fn14-TRAIL・pSBC21プラスミドの単回用量(25μg/マウス)、またはFn14・pSBC21プラスミドおよびTRAIL・pSBC21プラスミドの混合物の単回用量(各25μg/マウス)のハイドロダイナミックインジェクションを行った。図示した群について40日間(A)ならびに16日目、23日目および40日目(B)の平均臨床スコアを示している。図示した群の40日目の時点の累積MCSも示している(C)。Fn14-TRAILを投与した群とベクターのみの対照群との間の差はMann-Whitney U検定により統計学的に有意であり(p<0.05)、一方、示した他の群とベクターのみの群との間は有意ではない。(D)Fn14-TRAILの血清レベルを、Fn14・pSBC21(25μg)+TRAIL・pSBC21(25μg)の組み合わせ、またはFn14-TRAIL・pSBC21(25μg)の注入から30日後にELISAによって決定した。(E)pSBC21ベクターのみ、またはFn14-TRAIL・pSBC21のハイドロダイナミックインジェクションを行ったMOG負荷刺激マウスを、治療薬の投与を受けてから43日後に殺処理した。各マウスからの脾細胞を、種々の濃度のMOG38_50ペプチドの存在下または非存在下で培養し、増殖を材料および方法の項に記載した通りに評価した。結果は、各群当たり合計9匹のマウスの平均±SDとして示している。
【図5A】Fn14-TRAIL・pSBC21は、MOG負荷刺激マウスにおけるサイトカイン産生を阻害する。マウスに対して、結核菌を加えたCFA中のMOGによる負荷刺激を行い、pSBC21ベクターのみまたはFn14-TRAIL・pSBC21のハイドロダイナミックインジェクションを行った。治療薬の投与を受けてから43日後に動物を殺処理し、各マウスからの脾細胞を種々の濃度のM0G38-50ペプチドの存在下または非存在下で培養した。培養した培地を40時間後に回収し、図示したサイトカインの濃度をELISAによって決定した。
【図5B】Fn14-TRAIL・pSBC21は、MOG負荷刺激マウスにおけるサイトカイン産生を阻害する。マウスに対して、結核菌を加えたCFA中のMOGによる負荷刺激を行い、pSBC21ベクターのみまたはFn14-TRAIL・pSBC21のハイドロダイナミックインジェクションを行った。治療薬の投与を受けてから43日後に動物を殺処理し、各マウスからの脾細胞を種々の濃度のM0G38-50ペプチドの存在下または非存在下で培養した。培養した培地を40時間後に回収し、図示したサイトカインの濃度をELISAによって決定した。
【図5C】Fn14-TRAIL・pSBC21は、MOG負荷刺激マウスにおけるサイトカイン産生を阻害する。マウスに対して、結核菌を加えたCFA中のMOGによる負荷刺激を行い、pSBC21ベクターのみまたはFn14-TRAIL・pSBC21のハイドロダイナミックインジェクションを行った。治療薬の投与を受けてから43日後に動物を殺処理し、各マウスからの脾細胞を種々の濃度のM0G38-50ペプチドの存在下または非存在下で培養した。培養した培地を40時間後に回収し、図示したサイトカインの濃度をELISAによって決定した。
【図6】Fn14-TRAIL・pSBC21投与は、MOG負荷刺激マウスの脊髄内の活性化されかつサイトカインを産生する細胞を減少させる。pSBC21ベクターのみを投与したマウスおよびFn14-TRAIL・pSBC21を投与したマウスの脊髄から浸潤細胞を単離し、材料および方法の項に記載した通りに分析した。細胞の数は、生細胞の総数に図示した各細胞種の%を乗算することによって計算した。細胞のパーセンテージおよび数は、3匹のマウスの群から収集した、図示した細胞種のパーセンテージおよび数の代表である。(A)〜(B)MOG負荷刺激後の7日目の時点での活性化(CD69+)炎症細胞のパーセンテージおよび絶対数。(C)〜(D)MOG負荷刺激後の7日目の時点での(活性化CD69+細胞または全細胞プールの中での)CD4+細胞およびCD8+細胞、ならびにIFNγ、IL-17およびIL-10発現細胞のパーセンテージおよび絶対数。(D)〜(E)MOG負荷刺激後の14日目の時点でのCD8+細胞、ならびにIFNγ、IL-17およびIL-10発現細胞のパーセンテージおよび絶対数
【図7A】Fn14-TRAIL・pSBC21投与は、MOG負荷刺激マウスにおける脊髄炎症を軽減する。SBC21ベクターのみまたはFn14-TRAIL・pSBC21のハイドロダイナミックインジェクションを行ったMOG負荷刺激マウスに対して、PBSおよび10%ホルマリンリン酸による経心臓的な灌流を行った。脊髄を取り出して6つの小片に切断し、パラフィン中に包埋して、5μmずつ横断的に切片化した上で、ルクソールファストブルーおよびクレシルバイオレットで染色した。上のパネルは、左から右の順に最大疾患スコアがそれぞれ2、3.5および1の、ベクターのみを投与したマウスの代表的な脊髄切片を示している。下のパネルは、左から右の順に最大疾患スコアがそれぞれ0、1および3の、Fn14-TRAILを投与したマウスの代表的な脊髄切片を示している。
【図7B】Fn14-TRAIL・pSBC21投与は、MOG負荷刺激マウスにおける脊髄炎症を軽減する。SBC21ベクターのみまたはFn14-TRAIL・pSBC21のハイドロダイナミックインジェクションを行ったMOG負荷刺激マウスに対して、PBSおよび10%ホルマリンリン酸による経心臓的な灌流を行った。脊髄を取り出して6つの小片に切断し、パラフィン中に包埋して、5μmずつ横断的に切片化した上で、ルクソールファストブルーおよびクレシルバイオレットで染色した。6つの脊髄区域のそれぞれからの組織切片を各動物に関して分析した。個々の切片に対して、以下の基準に従って炎症スコアを指定した:0、炎症なし;1、白質の5%未満;2、5〜20%;3、20〜50%および4、50%超に白血球が浸潤している。各マウスに関する組織学的スコアは、6つの脊髄切片のスコアの合計である。Fn14-TRAILを投与した群と対照群との間の差は、Mann-Whitney U検定により統計学的に有意である(p<0.05)。
【図8A】Fn14-TRAIL投与は血液脳関門透過性を低下させる。SBC21ベクターのみまたはFn14-TRAIL・pSBC21のハイドロダイナミックインジェクションを行ったMOG負荷刺激マウスに対して、MOG負荷刺激後の6日目にエバンスブルー色素を注入した。図示した組織の抽出物中のエバンスブルーを、材料および方法の項に記載した通りに定量的に分析した。結果は、ng/組織 gとして計算した630nmでのエバンスブルーの比吸光度を表している。星印は、その差がStudentのt検定による判定で統計学的に有意(p<0.05)であることを指し示している。
【図8B】Fn14-TRAIL投与は血液脳関門透過性を低下させる。SBC21ベクターのみまたはFn14-TRAIL・pSBC21のハイドロダイナミックインジェクションを行ったMOG負荷刺激マウスに対して、MOG負荷刺激後の13日目にエバンスブルー色素を注入した。図示した組織の抽出物中のエバンスブルーを、材料および方法の項に記載した通りに定量的に分析した。結果は、ng/組織 gとして計算した630nmでのエバンスブルーの比吸光度を表している。星印は、その差がStudentのt検定による判定で統計学的に有意(p<0.05)であることを指し示している。
【図8C】Fn14-TRAIL投与は血液脳関門透過性を低下させる。SBC21ベクターのみまたはFn14-TRAIL・pSBC21のハイドロダイナミックインジェクションを行ったMOG負荷刺激マウスに対して、MOG負荷刺激後の6日目(図8A)または13日目(図8B)にエバンスブルー色素を注入した。図示した組織の抽出物中のエバンスブルーを、材料および方法の項に記載した通りに定量的に分析した。結果は、ng/組織 gとして計算した630nmでのエバンスブルーの比吸光度を表している。星印は、その差がStudentのt検定による判定で統計学的に有意(p<0.05)であることを指し示している。図8Cは、平均臨床スコア(0または1)を一致させたベクターのみを投与したマウスとFn14-TRAILを投与したマウスの脊髄における、MOG負荷刺激後の13日目の時点での吸収された色素の濃度である。
【図9】TWEAK:Fn14-TRAIL;DR5複合体の構造モデルである。材料および方法の項に記載した通りにして生成した三次元モデルを、単量体単位としてのFn14-TRAIL(A、Fn14が青色で、TRAILが白色)、Fn14-TRAIL三量体(B、リボンモデルとして;C、空間充填モデルとして)およびTWEAK:Fn14-TRAIL:DR5複合体(D、Fn14-TRAILは空間充填モデルとして、TWEAK三量体はリボンモデルとして上方に、DR5三量体はリボンモデルとして下方に)について示している。
【図10】ヒトFn14-TRAIL融合タンパク質のウエスタンブロット分析である。
【図11】Fn14-TRAIL精製過程における種々の逐次段階での産物を示しているSDS-PAGE分析である。
【図12A】Fn14-Trailが、MOG免疫処置マウスから採取された脾細胞の総数を減少させることを指し示しているグラフである。
【図12B】Fn14-Trailが、MOG免疫処置マウスから採取された脾細胞の総数を減少させることを指し示しているグラフである。
【図13】インビボでのFn14-Trail投与が、リンパ節から回収されたリンパ球のエクスビボ抗原再刺激に対するエクスビボでのリコール応答を低下させることを示しているデータのグラフである。
【図14A】Fn14-Trailが、MOG負荷刺激マウスにおけるEAE疾患の進行を緩和することを示しているデータのグラフである。
【図14B】Fn14-Trailが、MOG負荷刺激マウスにおけるEAE疾患の進行を緩和することを示しているデータのグラフである。
【図15】Fn14-Trailが、DBA1マウスにおけるコラーゲン誘導関節炎を抑制することを指し示しているデータのグラフである。
【図16A】種々の濃度のFn14-TRAILの存在下で24時間培養したSK-HEP1ヘパトーマ細胞株からのデータのグラフである。インキュベーション後に細胞を収集し、トリパンブルーで染色して、生細胞および死細胞を計数した。示したデータは2件の独立した実験の代表である。
【図16B】種々の濃度のFn14-TRAILの存在下で24時間培養したRaji悪性B細胞株からのデータのグラフである。インキュベーション後に細胞を収集し、トリパンブルーで染色して、生細胞および死細胞を計数した。示したデータは2件の独立した実験の代表である。
【図16C】種々の濃度のFn14-TRAILの存在下で24時間培養した非悪性肝細胞株NKNT3からのデータのグラフである。インキュベーション後に細胞を収集し、トリパンブルーで染色して、生細胞および死細胞を計数した。示したデータは2件の独立した実験の代表である。
【図16D】種々の濃度のFn14-TRAILの存在下で24時間培養した非悪性肝細胞株FH-Bからのデータのグラフである。インキュベーション後に細胞を収集し、トリパンブルーで染色して、生細胞および死細胞を計数した。示したデータは2件の独立した実験の代表である。
【図17】種々の濃度(図示した通り)のFn14-TRAIL、sTrail、Fn14-Fcまたは後者2つの組み合わせの存在下で培養したSK-HEP1ヘパトーマ細胞株からのデータのグラフである。24時間のインキュベーション後に細胞を収集し、トリパンブルーで染色して、生細胞および死細胞を計数した。示したデータは、3件の独立した実験の代表である。
【図18】種々の濃度のFn14-TRAIL、sTRAIL、Fn14-Fcまたは後者2つの組み合わせの存在下で培養したSK-HEP1ヘパトーマ細胞株からのデータのグラフである。24時間のインキュベーション後に細胞を収集し、洗浄して、アネキシンV/PI染色およびフローサイトメトリーによってアポトーシスに関して検査した。示したデータは、2件の独立した実験の代表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
実施例において用いる場合を含め、本明細書および特許請求の範囲において用いる場合には、別に明示的に特定する場合を除き、すべての数は、「約」という語が、たとえその用語が明示的に現れていなくても、あたかも前置されているかのように読むことができる。同じく、本明細書に記載した任意の数値範囲は、その中に包含されるすべての部分範囲も含むものとする。任意のアミノ酸配列をSwiss Prot.またはNCBIアクセッション番号によって具体的に参照している場合、その配列は参照により本明細書に組み入れられる。
【0013】
本発明は、1つの局面において、TWEAKおよびTRAILシグナル伝達軸に対して作用する融合タンパク質、例えば、TWEAKリガンドと結合するポリペプチドを含む第1のドメイン;およびTRAIL受容体と結合するポリペプチドを含む第2のドメインを有する融合タンパク質を提供する。
【0014】
特に、第1のドメインは、TWEAKがそのFn14受容体を介してトリガーを引く能力を妨げる能力を有するポリペプチドであり、第2のドメインは、T細胞またはTRAIL受容体を保有する他の細胞上のコグネイト受容体を介して阻害性シグナルを方向づける(direct)ことのできるポリペプチドである。
【0015】
TWEAKおよびTRAILシグナル伝達軸の状況において適した第1のドメインには、例えば、Fn14タンパク質、野生型Fn14タンパク質の変種もしくは誘導体、またはTWEAKと結合してこのリガンドがそのFn14受容体を介してシグナル伝達を行うのを防ぐように特に適合化された他のポリペプチドもしくはタンパク質、例えば、TWEAKと結合する抗体、TWEAKと結合する抗体の一部、およびTWEAKと結合するように人工的に操作されたリポカリン誘導体などが含まれる。好ましくは、この態様の融合タンパク質の第1のドメインは、Fn14タンパク質の細胞外ドメインの少なくとも一部分、特に、TWEAKリガンドと結合して、それが膜結合型Fn14受容体と結合してそのトリガーを引く能力を妨げるために必要な細胞外ドメインの部分である。TWEAK結合の原因となる細胞外ドメインまたは細胞外ドメインの部分の野生型形態の変種も、その変種が野生型タンパク質と同程度のレベルの生物活性を与える限り、本発明に含まれる。
【0016】
したがって、「TWEAKリガンドと結合するポリペプチド」という用語は、本明細書で用いる場合、Fn14タンパク質;Fn14タンパク質の細胞外ドメイン;Fn14タンパク質の細胞外ドメインの少なくとも一部分であり、その部分がTWEAKリガンドとの結合の原因となるポリペプチド;TWEAKに対する抗体または抗体の一部;リポカリン誘導体;ならびにこれらの任意のものの変種および/または誘導体を含む。「Fn14」という用語は、細胞質ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞外ドメインを含むFn14タンパク質の完全アミノ酸配列に対応するポリペプチドのほか、タンパク質のより小さい部分、例えば細胞外ドメインまたは細胞外ドメインの部分などに対応するポリペプチドも含むものと解釈される。1つの態様において、Fn14/TRAIL融合タンパク質の第1のドメインは、ヒトFn14タンパク質の細胞外ドメインの少なくとも一部分である。
【0017】
TWEAKおよびTRAILシグナル伝達軸において適した第2のドメインには、例えば、TRAILタンパク質それ自体、TRAILタンパク質の変種もしくは誘導体、または、T細胞もしくは他の細胞の活性化を阻害するように、および/またはTRAIL受容体を介したアポトーシスを誘導するように特に設計された他のポリペプチドもしくはタンパク質、例えばアゴニスト抗TRAIL Abなど、ならびにこれらの任意のものの変種および/または誘導体が含まれる。
【0018】
好ましくは、この態様における融合タンパク質の第2のドメインは、TRAILタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも一部分、特にTRAIL受容体との結合のために必要な部分である。TRAIL受容体の結合の原因となるTRAILタンパク質の細胞外ドメインまたは細胞外ドメインの部分の変種も、その変種が野生型タンパク質と同程度のレベルの生物活性を与える限り、本発明に含まれる。
【0019】
したがって、「TRAIL受容体と結合するポリペプチド」という用語は、本明細書で用いる場合、TRAILタンパク質;TRAILタンパク質の細胞外ドメイン;TRAILタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも一部分であり、その部分がTRAIL受容体との結合の原因となるポリペプチド;TRAIL受容体に対する抗体(および抗体の一部);ならびにこれらの任意のものの変種および/または誘導体を含む。「TRAIL」という用語は、細胞質ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞外ドメインを含むTRAILタンパク質の完全アミノ酸配列に対応するポリペプチドのほか、タンパク質のより小さい部分、例えば細胞外ドメインまたは細胞外ドメインの部分などに対応するポリペプチドも含むものと解釈される。1つの態様において、Fn14-TRAIL融合タンパク質の第2のドメインは、ヒトTRAILタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも一部分である。
【0020】
1つの態様において、本発明は、Fn14/TRAIL融合タンパク質を含む。別の態様において、「Fn14/TRAIL融合タンパク質」という用語は、SEQ ID NO:1によって識別される特定の融合タンパク質のことを指す。
SEQ ID NO:1 ヒトFn14-TRAIL
【0021】
別の態様において、「Fn14/TRAIL融合タンパク質」という用語は、SEQ ID NO:2によって識別される特定の融合タンパク質のことを指す。
SEQ ID NO:2 ヒトFn14-TRAIL
【0022】
SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:2はいずれも、元のシグナルペプチドを含む。これらのシグナルペプチドは、使用者の要求、発現システム、および、当業者が理解しているであろう他の要因に応じて異なりうる。シグナルペプチドは当技術分野において周知であり、当業者に公知の公的に入手可能なシグナルペプチド認識ソフトウエアによって認識/予測された任意の所望のシグナルペプチドを用いることができる。
【0023】
その他の態様において、Fn14/TRAIL融合タンパク質は、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:2に示されたアミノ酸配列の変種および/または誘導体である。
【0024】
本発明のさらにその他の局面において、本明細書に記載した融合タンパク質の任意のもののTRAIL構成要素を、別の阻害タンパク質によって、すなわち、免疫応答の活性化を防ぐ、かつ/またはT細胞もしくは他の細胞種、例えばB細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、NKT細胞、リンパ前駆細胞、樹状細胞、単球/マクロファージ、組織をベースとする抗原提示能力を備えるマクロファージ系列細胞など、ならびにさまざまな非専門的な抗原提示細胞の任意のもの、例えば内皮細胞におけるアポトーシスを誘導する、タンパク質によって置換することができる。阻害タンパク質の例には、FasL、TNF、PDL-1、PDL-2、B7x、B7-H3およびCD31が非限定的に含まれる。
【0025】
例えば、BTLAは重要な阻害性受容体であり、B7xは、まだ発見されていない他のリガンドに加えて、そのリガンドである可能性がある。同様に、CTLA-4は別の重要な阻害性受容体であり、この阻害性CTLA-4受容体を作動させるリガンドには、B7分子のいくつか、ならびにアゴニストAbが含まれる。この場合には、融合タンパク質はそれぞれFn14/B7xおよびFn14/B7アゴニスト融合タンパク質であると考えられる。
【0026】
B細胞も自己免疫を作動させる上で非常に重要であるという評価が高まっている。B細胞の阻害性受容体を作動させる(Fn14と融合された)その他の阻害性リガンド、例えば、CD100(CD72と結合)、CD5(同じくCD72と結合)、CD72(CD5と結合)、Ep-CAM(LAIR-1と結合)、FcγRIIに対するアゴニスト、CD22、PDL-1、PDL-2、CD66aおよびPIR-Bなども、本発明の範囲に含まれる。
【0027】
文献にはその他の例も豊富に記載されており、これには例えば、いずれも参照により本明細書に組み入れられる、Sinclair, N. "Why so Many Coinhibitory Receptors?, Scand. J. Immunol. 50, 10-13 (1999);Melero, I. et al. "Immunostimulatory monoclonal antibodies for cancer therapy", Nature Rev. Cancer 7:95-106 (2007);および、Zang, X. et al., "The B7 Family and Cancer Therapy: Costimulation and Coinhibition", Clin. Cancer Res. 13: 5271-5279 (2007)に挙げられたものなどがある。上述の阻害タンパク質の任意のものが本発明の融合タンパク質および方法に含まれ、これらは本明細書において「阻害機能を有するポリペプチド」と総称される。
【0028】
したがって、その他の態様において、本発明は、Fn14/阻害タンパク質融合ペア、例えば、Fn14/FasL、Fn14/PDL-1、Fn14/PDL-2、Fn14/TNF、Fn14/CD100、Fn14/CD5、Fn14/CD72、Fn14/Ep-CAM、Fn14/Fcγ-RII、Fn14/CD22、Fn14/CD66a、Fn14/PIR-B、Fn14/B7x、Fn14/B7-H3およびFn14/CD31などを提供する。TWEAK/TRAILシグナル伝達軸の状況における上記の第1のドメインの任意のもの、例えば、TWEAKリガンドと結合するポリペプチドは、これらの態様において適した第1のドメインであると考えられる。
【0029】
1つの態様において、本発明の融合タンパク質は、ミエリン特異的T細胞の増殖および分化を防止または低下させることによって、免疫系の活性化を阻害する。いくつかの態様において、本発明の融合タンパク質は、炎症誘発性サイトカインおよびケモカイン、例えばIL-6、IL-8、RANTES、IP-10およびMCP-1などの産生を阻害するか、または他のサイトカイン/ケモカイン、例えばTNF-αおよびIL-1βの増強を阻害するか;または、MMP-1およびMMP-9などのマトリックスメタロプロテイナーゼの誘導を阻害するか;または、線維芽細胞および滑膜細胞からのプロスタグランジンE2分泌を阻害する。本発明は、TWEAKリガンドによって促進されるかまたはTRAILリガンドによって下方制御を受けるかのいずれかである任意およびすべてのサイトカインの阻害/下方調節を含む。
【0030】
他の態様において、本発明の融合タンパク質は、自己反応性T細胞の増殖、自己反応性抗体の産生および炎症反応を阻害する。
【0031】
その他の態様において、本発明の融合タンパク質は、炎症誘発物質が動物に局所的または全身的に導入される、炎症のインビボモデル系、例えばEAEおよびコラーゲン誘導関節炎、ならびに遅延型過敏性および他のモデルなどの自己免疫疾患のモデルにおいて、炎症誘発性サイトカインおよびケモカインの産生の阻害、ならびに/または抗炎症性サイトカイン産生の亢進を測定する、インビトロおよびインビボのアッセイ法における判定で、炎症を軽減する。これらのインビボモデルにおいて、炎症は、炎症組織の組織学的検査、罹患組織からの炎症細胞の単離、および罹患動物における疾患症状発現の測定によって評価される。本発明の融合タンパク質は、他の態様において、自己反応性CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞などの病原性T細胞、ならびにB細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、NKT細胞、リンパ前駆細胞、樹状細胞、単球/マクロファージなどの他の病原性免疫細胞の増殖、分化および/またはエフェクター機能を阻害し;病原性免疫細胞におけるアポトーシスを誘導し;調節特性を備える免疫細胞の生成を促進し(CD4+CD25+調節性T細胞、Tr1細胞、CD8+細胞、NK NKT細胞、および免疫抑制活性を備える樹状細胞);血液脳関門の透過性を低下させ、それによって炎症細胞のCNSへの到達を制限し;炎症細胞の他の疾患部位の到達を減少させ;かつ、炎症に伴う血管新生を低下させる。
【0032】
上記のように、TWEAKリガンドは、NK細胞、マクロファージ、樹状細胞、ミクログリア細胞、グリア細胞および内皮細胞を含む、さまざまな免疫細胞種および非免疫性細胞種の表面で発現される。それ故に、これらの細胞からのTWEAKシグナルを妨げることにより、Fn14保有融合タンパク質は、これらの細胞種のそれぞれによってそれらが相互作用するさまざまなFn14保有細胞へと方向づけられる、TWEAKを介したシグナルを阻止する。同じく上述したように、TWEAKは、いくつかのFn14保有細胞種、例えば星状膠細胞、内皮細胞およびある種のヒト腫瘍細胞株などの増殖を促進し、かつ他のもの、例えば赤芽球、腎細胞、メサンギウム細胞、神経細胞、NK細胞、単球などのそれを抑制し、それ故に、Fn14含有融合タンパク質はTWEAKにより作動される生物学的作用に対して逆方向に働く。さらに、Fn14/TRAIL融合タンパク質は細胞間シグナルの交換および再方向づけ(re-direct)に働くため、他の細胞標的には、T細胞などの能動的に阻害されるTRAIL受容体保有細胞、ならびに、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、結腸癌、骨髄腫、膠芽腫および白血病などの種々の腫瘍細胞種を含む他のTRAIL-R保有細胞がある。
【0033】
Fn14
Fn14は129アミノ酸長の原形質膜係留タンパク質であり、TNFR(TNF受容体)スーパーファミリーのメンバーである(Swiss Protアクセッション番号Q9CR75(マウス)およびQ9NP84(ヒト)。Swiss Prot. Isoform ID No. Q9NP84.1およびQ9NP84.2(NCBIアクセッション番号はそれぞれNP_057723およびBAB17850である)によって識別される、Fn14の2つの変種が公知である。Fn14配列はまた、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)(NCBIアクセッション番号AAR21225)およびラット(NCBIアクセッション番号NP_851600]を含む、他の多くの種でも見つけ出されている。
【0034】
TNFRスーパーファミリーのほとんどのメンバーは、1〜6個のシステインリッチドメイン(CRD)の存在によって構造的に特徴づけられる1つの細胞外ドメインを含む。典型的なCRDはおよそ40アミノ酸長であり、3つの鎖内ジスルフィド架橋を形成する保存された6個のシステイン残基を含む。CRDそれ自体は、典型的には2つの別個の構造モジュールで構成される。
【0035】
Fn14は、1個のCRDを備える、アミノ酸28〜80という53アミノ酸の細胞外ドメインを含むI型膜貫通タンパク質である。このCRDの内部のいくつかの荷電アミノ酸残基は、有効なTWEAK-Fn14相互作用のために特に不可欠であることが示されている。Brown, S.A. et al., Tweak binding the Fn14 cysteine-rich domain depends on charded residues located in both the Al and D2 modules, J. Biochem. 397: 297-304 (2006)、これは参照により本明細書に組み入れられる。
【0036】
Brownらの論文で提示されている情報に基づき、例えば、当業者は、Fn14タンパク質のどの変種がTWEAK結合活性を保っており、どのものが保っていないと考えられるかを判定することができる。例えば、進化的に保存されなかった位置に部位特異的変異によって調製したいくつかの特定の変種はTWEAK結合活性を有することが見いだされている。対照的に、CRD領域内の少なくとも3個のアミノ酸は、TWEAK結合のために不可欠であった。種々の種におけるFn14タンパク質のアミノ酸配列を比較することにより、どのアミノ酸位置がそれほど高度には保存されておらず、置換/付加/欠失のための優れた候補であると考えられるかを明らかにすることができる。高度に保存された領域、特にTNFR相同性領域における置換/欠失/付加は、本発明による変種の調製のための可能性の高い候補ではないと考えられる。
【0037】
TRAIL
TRAILは291アミノ酸を有するII型膜タンパク質であり、以下のものを非限定的に含むさまざまな種でシークエンシングが行われている:マウス:Swiss Prot.アクセッション番号P50592:ヒト:Swiss Prot.アクセッション番号P50591;ドブネズミ(Rattus norvegicus):NCBIアクセッションNP_663714;ケツギョ(Siniperca Chuatsi)(桂魚):NCBIアクセッションAAX77404;ニワトリ(Gallus Gallus)(鶏):NCBIアクセッションBAC79267;イノシシ(Sus Scrofa)(豚):NCBIアクセッションNP_001019867;ソウギョ(Ctenopharyngodon Idella)(草魚):NCBIアクセッションAAW22593;およびボース・タウルス(Bos Taurus)(ウシ):NCBIアクセッションXP_001250249。
【0038】
TNF相同性モデルに基づくと、TRAILの細胞外ドメインはアミノ酸39〜281を含み、受容体結合の原因となるTNFドメインはアミノ酸121〜280である。活性を付与するために特に重要なタンパク質の部分が同定されている。例えば、TRAILのその受容体との結合および活性のために最も重要なアミノ酸は、アミノ酸(191-201-205-207-236-237)およびアミノ酸(150-216)などのジンク領域の周りのアミノ酸であることを報告している、参照により本明細書に組み入れられる、"Triggering cell death: The crystal structure of Apo2L/TRAIL in a complex with death receptor", Hymowitz SG, et al., Am.Mol.Cell. 1999 Oct; 4(4):563-71)を参照されたい。また、1)アポトーシス活性を備えていない2つのヒトTRAIL変種であるTRAIL-γおよびTRAILβを記載しているKrieg A et al 2003 Br. J of Cancer 88: 918-927;2)"Enforced covalent trimerization increases the activity of the TNF ligand family members TRAIL and CD95L", D Berg et al., Cell death and differentiation (2007)14,2021-2034;および3)"Crystal Structure of TRAIL-DR5 complex identifies a critical role of the unique frame insertion in conferring recognition specificity", S. Cha et al., J. Biol. Chem. 275: 31171-31177 (2000)も参照されたく、これらはすべて参照により本明細書に組み入れられる。
【0039】
TRAILは、TRAIL誘導アポトーシスのトリガーとなるデス受容体およびこの経路を阻害する可能性があるデコイ受容体という2種類の受容体を連結させることが知られている。TRAILに対するヒト受容体は、TRAILR1、TRAILR2、TRAILR3およびTRAILR4という4種が同定されている。TRAILはまた、オステオプロテジェリン(OPG)とも結合する。これらの受容体のそれぞれに対する結合は詳細に特徴づけられている。例えば、"The TRAIL apoptotic pathway in cancer onset, progression and therapy", Nature Reviews Cancer Volume 8 (2008) 782-798を参照されたい。
【0040】
その他の定義
本明細書で用いる場合、「融合タンパク質」という用語は、2種またはそれ以上の異なるタンパク質のアミノ酸配列を含むキメラタンパク質のことを指す。典型的には、融合タンパク質は、当技術分野において周知のインビトロ組換え手法によって得られる。
【0041】
本明細書で用いる場合、「生物学的活性のある、または免疫学的活性のある」とは、本発明の融合タンパク質の構成単位である個々の野生型タンパク質と類似の構造的機能(しかし必ずしも同じ度合いでなくともよい)、および/または類似の調節的機能(しかし必ずしも同じ度合いでなくともよい)、および/または類似の生化学的機能(しかし必ずしも同じ度合いでなくともよい)、および/または免疫学的活性(しかし必ずしも同じ度合いでなくともよい)を有する、本発明による融合タンパク質のことを指す。
【0042】
本明細書で用いる場合、「欠失」は、野生型タンパク質と比較して1つまたは複数のアミノ酸残基が欠けている、アミノ酸配列の変化と定義される。
【0043】
本明細書で用いる場合、「挿入」または「付加」とは、野生型タンパク質と比較して1つまたは複数のアミノ酸残基の追加をもたらす、アミノ酸配列の変化のことである。
【0044】
本明細書で用いる場合、「置換」は、野生型タンパク質と比較して1つまたは複数のアミノ酸のそれぞれ異なるアミノ酸による置き換えによって生じる。
【0045】
本明細書で用いる場合、「変種」という用語は、結果的に生じる変種融合タンパク質が本発明に用いられる野生型タンパク質に比較して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、99%またはそれ以上の生物活性または免疫学的活性を保っている限り、野生型タンパク質と比較して、配列からの、または配列に対して、アレルの差異を含む1つ(またはそれ以上)のアミノ酸の置換、欠失または付加(またはこれらの任意の組み合わせ)を有する任意のポリペプチドのことを意味する。典型的には、本発明に含まれるFN14/TRAIL融合タンパク質の変種は、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:2に対して、少なくとも80%またはそれ以上の配列同一性または相同性を、それらの用語の当技術分野における理解の通りに有すると考えられ、より好ましくは、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:2に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%またはさらには99%の配列同一性を有すると考えられる。
【0046】
配列同一性または相同性は、当技術分野において公知の標準的な手法、例えば、Devereux et al., Nucl. Acid Res. 12:387-395 (1984)によって記載されたBest Fit配列プログラム、またはBLASTXプログラム(Altschul et al., J. Mol. Biol. 215, 403-410)などを用いて決定することができる。アラインメントは、アラインメントを行おうとする配列中へのギャップの導入を含みうる。加えて、本明細書で開示したタンパク質よりも多数または少数のアミノ酸を含む配列の場合、相同性のパーセンテージは、アミノ酸の総数に比しての相同アミノ酸の数に基づいて決定されると考えられる。
【0047】
さらに、変種は所与の分子に対する結合に関して能力の強化を示すことが一般に望ましいが、いくつかの態様においては、例えば神経毒性を弱めるために、意図的に活性を減弱させようとする場合に、変種を、本発明の他の融合タンパク質と比較して幾分低い活性を有するように設計することもできる。その上、TRAIL受容体変種(ヒトには3種のTRAIL受容体がある)の1つとより選択的に結合すると考えられる変種または誘導体を作製することもできる。さらに、変化した多量体化特性を有すると考えられる変種または誘導体を作製することもできる。変種を人工的に操作する場合には、これをTRAIL細胞外ドメイン全体に対して行うことも、または融合タンパク質それ自体の内部に組み込まれた細胞外ドメインの構成要素に対して行うことも可能と考えられる。
【0048】
好ましくは、本発明の融合タンパク質の変種または誘導体は、アミノ酸配列の疎水性/親水性を維持している。保存的アミノ酸置換は、修飾された配列が本発明による融合タンパク質として作用する能力を保っているという前提の下で、例えば、1、2または3個から10、20または30個までの置換を含みうる。アミノ酸置換には、例えば血漿半減期を延長させるための、天然に存在しない類似体の使用が含まれうる。
【0049】
保存的置換は当技術分野において公知であり、例えば、以下の表の通りである。第2の列の同じブロックの中にある、好ましくは第3の列の同じ行の中にあるアミノ酸は、互いに置換することができる。
【0050】
「誘導体」という用語は、アミノ酸配列に関して本明細書で用いる場合、本発明の融合タンパク質の化学修飾のことを意味する。
【0051】
そのような修飾の非限定的な例には、カルボキシ末端またはカルボキシ側鎖を含む残基の脂肪族エステルまたはアミド、ヒドロキシル基含有残基のO-アシル誘導体、および、アミノ末端アミノ酸またはアミノ基含有残基、例えばリジンもしくはアルギニンのN-アシル誘導体が非限定的に含まれうる。
【0052】
その他の修飾には、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)とコンジュゲートされた融合タンパク質の生成、または本発明のポリペプチドの化学合成の際のPEGの付加が含まれうる。
【0053】
またポリペプチドまたはそれらの部分の修飾には、還元/アルキル化;適切な担体との化学的カップリング、または穏やかなホルマリン処理も含まれうる。
【0054】
本発明の融合タンパク質の他の誘導体には、非天然アミノ酸残基、またはホスホチロシン、ホスホセリンもしくはホスホトレオニン残基などのリン酸化アミノ酸残基の組み込みが含まれる。考えられる他の修飾には、スルホン化、ビオチン化、または他のモイエティ、特にリン酸基に類似した分子形状を有するものの付加が含まれる。
【0055】
誘導体にはまた、グリコシル化によって修飾されたポリペプチドも含まれる。これらは、さまざまな代替的な真核生物宿主発現システムにおける合成およびプロセシングの際に、またはさらなるプロセシング段階の際にグリコシル化パターンを修飾することによって作製することができる。グリコシル化修飾物を産生させるための方法には、融合タンパク質を、そのようなプロセシングを通常は行わない細胞に由来するグリコシル化酵素、例えば哺乳動物グリコシル化酵素などに曝露させることが含まれる。または、真核生物発現システムにおける産生の際に結び付けられた糖質を除去するために脱グリコシル化酵素を用いることもできる。さらに、グリコシル化部位が付加されるように、またはグリコシル化部位が欠失もしくは無効化するようにコード配列を修飾することもできる。さらに、グリコシル化を全く望まない場合には、タンパク質を原核生物宿主発現システムにおいて産生させることもできる。
【0056】
本発明の融合タンパク質の変種および/または誘導体は、化学合成によって、または、完全な受容体をコードする核酸を修飾するための、部位指定突然変異誘発[Giliman et al., Gene 8:81 (1979);Roberts et al., Nature 328:731 (1987)またはInnis (Ed.), 1990, PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Academic Press, New York, N.Y.J.]、もしくはDaugherty et al.[Nucleic Acids Res. 19:2471 (1991)]によって例示されているようなポリメラーゼ連鎖反応法[PCR; Saiki et al., Science 239:487 (1988)]を用いることによって調製することができる。
【0057】
その他の修飾、例えばTRAIL三量体をさらに安定化するものおよび/またはTRAIL受容体に対する結合の親和性を高めるものを導入することもでき;かつ、融合タンパク質の2つの構造要素間の距離を変更するために、ならびにこの領域の柔軟性を変更するために、スペーサー/リンカーを付加することができる。
【0058】
その他の態様において、本発明の融合タンパク質は、タンパク質精製を促進するために、組換えタンパク質の発現を増加させるために、または組換えタンパク質の溶解性を高めるために付加された、1つまたは複数の追加のポリペプチドドメインをさらに含む。そのような精製/発現/溶解性を促進するドメインには、金属とキレート化するペプチド、例えば、固定化された金属上での精製を可能にするヒスチジン-トリプトファンモジュール(Porath J (1992) Protein Expr Purif 3-.26328 1)、固定化された免疫グロブリン上での精製を可能にするプロテインAドメイン、および、FLAGSエクステンション/アフィニティー精製システム(FLAGS extension/affinity purification system)(Immunex Corp, Seattle, Wash.)で利用されるドメインが非限定的に含まれる。精製ドメインとFn14/TRAILとの間に、第Xa因子またはエンテロキナーゼ(Invitrogen, San Diego, Calif.)などの切断可能なリンカー配列を含めることも、精製を促進するために有用である。
【0059】
その他の融合発現ベクターには、それぞれグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、マルトースB結合タンパク質またはプロテインAを標的組換えタンパク質と融合させる、pGEX(Pharmaci, Piscataway, N.J.)、pMAL(New England Biolabs, Beverly, Mass.)およびpRITS(Pharmacia, Piscataway, N.J.)が含まれる。また、EBV、BKVおよび他のエピソーム性発現ベクター(Invitrogen)を用いることもできる。加えて、レトロウイルス性およびレンチウイルス性の発現ベクターを用いることもできる。さらに、生物体の内部での組換えタンパク質の高レベル発現のために設計されたさまざまなインビボ発現システムの任意のものを、本明細書で特定した融合タンパク質を産生させるために利用することもできる。
【0060】
別の態様において、本発明の融合タンパク質は、そのN末端に異種シグナル配列を含みうる。ある種の宿主細胞(例えば、哺乳動物宿主細胞)では、異種シグナル配列の使用を通じて、融合タンパク質の発現および/または分泌を増加させることができる。シグナル配列は典型的には疎水性アミノ酸のコアによって特徴づけられ、これらは一般に、1つまたは複数の切断イベントにおいて分泌の際に成熟タンパク質から切断される。そのようなシグナルペプチドは、成熟タンパク質が分泌経路を経る間にそれらからのシグナル配列の切断を可能にするプロセシング部位を含む。したがって、本発明は、シグナル配列を有する記載したポリペプチドに、ならびにシグナル配列がタンパク質分解的に切断されたポリペプチド(すなわち、切断産物)に関する。
【0061】
安定性および/または反応性を高める目的で、本発明の融合タンパク質を、天然のアレル差異に起因するアミノ酸配列中の1つまたは複数の多型を組み込むように修飾することもできる。さらに、D-アミノ酸、非天然アミノ酸または非アミノ酸性類似体による置換または付加により、本発明の範囲内にある修飾された融合タンパク質を作製することもできる。
【0062】
本発明のアミノ酸配列は、それをコードするヌクレオチド配列の、適した発現システムにおける発現によって、産生させることができる。
【0063】
追加的または代替的に、融合タンパク質それ自体を、所望のアミノ酸配列を合成するための化学的方法を用いて全体的または部分的に生成させることもできる。例えば、ポリペプチドを固相手法によって合成し、樹脂から切断させて、調製用高速液体クロマトグラフィーによって精製することができる(例えば、Creighton (1983) Proteins Structures And Molecular Principles, WH Freeman and Co, New York N.Y.を参照)。合成ポリペプチドの組成は、アミノ酸分析またはシークエンシング(例えば、エドマン分解手順)によって確かめることができる。さらに、本発明の融合タンパク質またはその任意の一部のアミノ酸配列を、直接合成の際に変更すること、および/または化学的方法を用いて他のサブユニット由来の配列またはその任意の一部と組み合わせることで、変種ポリペプチドを生成させることもできる。
【0064】
本発明の任意の融合タンパク質の任意の相同体、誘導体または変種の免疫学的活性を測定するためのアッセイ法は、当技術分野において周知である。
【0065】
例えば、サイトカイン産生をモニターするためのいくつかの従来のアッセイ法の任意のものを、免疫細胞の活性化および分化の尺度として利用することができる。例えば、T細胞活性化を追跡するためにインターロイキン-2をマーカーとして用いることができ、それはProc. Natl. Acad. Sci. USA. 86:1333 (1989)に記載された通りにアッセイすることができ、その関連部分は参照により本明細書に組み入れられる。インターフェロンの産生に関するアッセイ法のためのキットも、Genzyme Corporation(Cambridge, Mass.)から入手可能である。また、サイトカイン産生を細胞毎にモニターするために、ならびに細胞の活性化および/または分化の状態を反映する細胞表面マーカーをモニターするために、免疫蛍光およびフローサイトメトリーを用いることもできる。そのようなマーカーの宿主は公知であり、検出用抗体は広く市販されており、これらのマーカーは当技術分野において周知である。
【0066】
T細胞増殖に関する一般的なアッセイ法は、トリチウムチミジンの取り込みを測定することを必然的に伴う。T細胞の増殖は、培養細胞の複製中のDNA中に取り込まれた3H標識チミジンの量を決定することによってインビトロで測定することができる。このため、DNA合成の速度、ひいては細胞分裂の速度を定量することができる。
【0067】
T細胞の増殖をモニターするための別のアッセイ法は、T細胞にCFSE色素を添加し、その後に、継代的な細胞分裂に伴うこの色素の希釈をモニターすることに基づく。T細胞増殖の阻害をモニターすることに加えて、TRAIL受容体のトリガーを引くことがアポトーシスを招くTRAIL受容体陽性腫瘍細胞株においてそれがアポトーシスを誘導する能力を評価することによって、融合タンパク質の生物活性をモニターすることもできる。これらの細胞を、TWEAKを表面上に有する他の細胞と組み合わせることにより、新たな融合タンパク質誘導体がいずれもTWEAKに係留し、それによってアポトーシス誘発性TRAILにより作動される活性がこの様式で強化されるか否かを評価することができる。
【0068】
薬学的組成物および投与計画
本発明の組成物の投与は、典型的には、静脈内、皮下、筋肉内もしくは腹腔内注射による、または輸注によるかもしくは任意の他の許容される全身的方法による、非経口的なものである。典型的には約1〜5時間の時間経過をかけた静脈内輸注による投与が好ましい。加えて、治療用タンパク質の投与のための種々の経口的な送達方法があり、これらを本発明の治療用融合タンパク質に適用することもできる。
【0069】
多くの場合、治療投与量は、安全性および効力を最適化するために、低レベルから増加させながら微調整する。一般に、1日投与量は、1kg体重当たり約0.01〜20mgのタンパク質の範囲に収まると考えられる。典型的には、投与量の範囲は、1kg体重当たり約0.1〜5mgのタンパク質の範囲であると考えられる。
【0070】
ポリエチレングリコール鎖の付加(PEG化)などの融合タンパク質のさまざまな修飾物または誘導体を、その薬物動態学的および/または薬力学的特性に影響を及ぼすように作製することもできる。
【0071】
融合タンパク質を非経口的投与以外によって投与するためには、タンパク質を、その不活性化を防ぐための材料でコーティングすること、またはタンパク質をそれと共投与することが必要な場合がある。例えば、タンパク質を不完全アジュバント中にて投与すること、酵素インヒビターと共投与すること、またはリポソーム中にある状態で投与することができる。酵素インヒビターには、膵トリプシンインヒビター、ジイソプロピルフルオロリン酸(DEP)およびトラシロールが含まれる。リポソームには、従来のリポソームのほかに水中油中水型CGFエマルションが含まれる(Strejan et al., (1984) J. Neuroimmunol. 7:27)。
【0072】
本発明の組成物の「有効量」とは、多発性硬化症などの自己免疫疾患によって引き起こされる病的状態を特徴づける周知のパラメーターの1つまたは複数を改善すると考えられる量のことである。多くのそのようなパラメーターおよび状態が記載されている。多発性硬化症の状況における有効量とは、以下の1つまたは複数を達成するのに十分な融合タンパク質の量であると考えられる:症状の重症度を軽減すること;疾患増悪の持続時間を減少させること;疾患寛解/無症状期間の頻度および持続時間を増加させること;固定された障害および能力障害を予防すること;ならびに/または疾患の慢性的進行を予防/減弱すること。臨床的には、これは視覚症状(視力低下、複視)、歩行障害(筋力低下、軸不安定性(axial instability)、感覚消失、痙縮、反射亢進、巧緻性の欠如(loss of dexterity))、上肢機能不全(筋力低下、痙縮、感覚消失)、膀胱機能不全(尿意切迫、失禁、排尿躊躇、残尿)、抑鬱、情緒不安定および認知障害の改善をもたらすと考えられる。病理学的には、本発明の融合タンパク質による治療は、以下の1つまたは複数を軽減する:ミエリン喪失、血液脳関門の崩壊、単核細胞の血管周囲浸潤、免疫学的異常、神経膠斑の形成および星状膠細胞の増殖、メタロプロテイナーゼ産生、ならびに伝導速度障害。
【0073】
本発明の組成物は単純溶液の状態で投与することができるが、それらはより典型的には、担体、好ましくは薬学的担体などの他の材料と組み合わせて用いられる。有用な薬学的担体は、本発明の組成物を患者に送達するために適した、適合性のある任意の非毒性物質でありうる。滅菌水、アルコール、脂肪、蝋状物質および不活性固体が担体中に含まれうる。また、薬学的に許容されるアジュバント(緩衝剤、分散剤)を薬学的組成物に組み込むこともできる。一般に、そのような薬物の非経口的投与のために有用な組成物は周知である。例えば、Remington's Pharmaceutical Science, 17th Ed.(Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1990)を参照。または、本発明の組成物を、植込み型の薬物送達システムによって患者の体内に導入することもできる[Urquhart et al., Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 24:199 (1984)]。
【0074】
治療用製剤は、数多くの従来の投与製剤の形で投与することができる。製剤は典型的には、少なくとも1つの有効成分を、1つまたは複数の薬学的に許容される担体とともに含む。製剤には、経口、直腸、鼻腔内または非経口的(皮下、筋肉内、静脈内および皮内を含む)投与のために適したものが含まれうる。
【0075】
製剤は単位剤形で提供することが好都合であり、これは薬学の技術分野で周知の任意の方法によって調製することができる。例えば、Gilman et al. (eds.) (1990), The Pharmacological Bases of Therapeutics, 8th Ed., Pergamon Press;および、Remington's Pharmaceutical Sciences, 前記, Easton, Pa.;Avis et al. (eds.) (1993) Pharmaceutical Dosage Forms: Parenteral Medications Dekker, N.Y.;Lieberman et al. (eds.) (1990) Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets Dekker, N.Y.;および、Lieberman et al. (eds.) (1990), Pharmaceutical Dosage Forms: Disperse Systems Dekker, N.Y.を参照のこと。
【0076】
その他の態様において、本発明は、遺伝子治療法による融合タンパク質の投与、例えば、関心対象の融合タンパク質をコードする単離された核酸の投与を想定している。本発明の融合タンパク質のタンパク質構成単位(例えば、第1および第2のドメイン)は、タンパク質をコードする核酸配列および結果的に生じるタンパク質のアミノ酸配列のいずれに関しても詳細に特徴づけられている。組換えDNA法によるそのような単離された核酸の人工的操作は、十分に当業者の能力の範囲内にある。特定の細胞バックグラウンドにおける組換えタンパク質の収量を最大にすることを目的とするコドン最適化も、十分に当業者の能力の範囲内にある。融合タンパク質をコードする単離された核酸の投与は、「本発明の融合タンパク質の治療的有効量を投与すること」という表現の範囲に含まれる。遺伝子治療法は当技術分野において周知である。例えば、細胞内抗体を作製するための遺伝子治療法の使用を開示しているWO96/07321を参照のこと。遺伝子治療法はまた、ヒト患者においても成功裏に示されている。例えば、Baumgartner et al., Circulation 97: 12, 1114-1123 (1998)、およびより最近の、Fatham, C.G. 'A gene therapy approach to treatment of autoimmune diseases', Immun. Res. 18:15-26 (2007);ならびに米国特許第7,378089号を参照されたく、これらはいずれも参照により本明細書に組み入れられる。同じく、Bainbridge JWB et al. "Effect of gene therapy on visual function in Leber's congenital Amaurosis". N Engl J Med 358:2231-2239, 2008;およびMaguire AM et al. "Safety and efficacy of gene transfer for Leber's Congenital Amaurosis". N Engl J Med 358:2240-8, 2008も参照されたい。
【0077】
融合タンパク質をコードする核酸(任意でベクター中に含まれる)を患者の細胞に導入するためのアプローチには、主にインビボおよびエクスビボの2通りがある。インビボ送達のためには、核酸を患者に直接、通常は融合タンパク質が必要とされる部位に注入する。エクスビボ治療のためには、患者の細胞を取り出して、核酸をこれらの単離された細胞に導入し、改変された細胞を患者に直接投与するか、または例えば、患者の体内に植え込まれる多孔性膜の内部に封入する(例えば、米国特許第4,892,538号および同第5,283,187号を参照)。核酸を生細胞に導入するためには種々の手法を使用することができる。手法は、核酸をインビトロで培養細胞内に移入するか、それともインビボで意図する宿主の細胞内に移入するかに応じて異なる。インビトロでの哺乳動物細胞への核酸の移入のために適した手法には、リポソームの使用、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE-デキストラン、リン酸カルシウム沈降法などが含まれる。遺伝子のエクスビボ送達のために一般的に用いられるベクターは、レトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクターである。
【0078】
好ましいインビボ核酸移入手法には、ウイルスベクターによるトランスフェクション(アデノウイルス、単純ヘルペスウイルスI型、アデノ随伴ウイルス)、脂質をベースとするシステム(脂質を介した遺伝子の移入のために有用な脂質には、例えば、DOTMA、DOPEおよびDC-Cholがある)、裸のDNA、およびトランスポゾンをベースとする発現システムが含まれる。現在知られている遺伝子マーキングおよび遺伝子治療プロトコールの概説については、Anderson et al., Science 256:808-813 (1992)を参照のこと。また、WO 93/25673およびこの文献中に引用されている参考文献も参照されたい。
【0079】
「遺伝子治療」は、単回の治療によって持続的な効果が達成される従来の遺伝子治療、および治療的に有効なDNAまたはmRNAの1回限りの投与または反復投与を伴う遺伝子治療薬の投与の両方を含む。
【0080】
オリゴヌクレオチドは、例えば、負に荷電したホスホジエステル基を非荷電基によって置換することにより、それらの取り込みが強化されるように修飾することができる。本発明のFn14/TRAIL融合タンパク質は、遺伝子治療法を用いて、例えば、腫瘍床の中に局所的に、髄腔内または全身的(例えば、特定の組織型を選択的に標的とするベクター、例えば組織特異的アデノ随伴ウイルスベクターを介して)に送達することができる。いくつかの態様においては、個体からの初代細胞(リンパ球または幹細胞)に、本発明の融合タンパク質のいずれかをコードする遺伝子をエクスビボでトランスフェクトし、続いて、トランスフェクトされた細胞をその個体の体内に戻すことができる。
【0081】
いくつかの態様において、本発明の融合タンパク質は、以下のものを非限定的に含む、免疫系疾患または障害の治療のために適している:自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性新生児血小板減少症、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性好中球減少症、自己免疫性血球減少症、溶血性貧血、抗リン脂質抗体症候群、皮膚炎、グルテン過敏性腸症、アレルギー性脳脊髄炎、心筋炎、再発性多発性軟骨炎、リウマチ性心疾患、糸球体腎炎(例えば、IgA腎症)、多発性硬化症、神経炎、ブドウ膜炎、眼炎、多腺性内分泌障害、紫斑病(例えば、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病)、ライター病、全身硬直症候群、自己免疫性肺炎症、心筋炎、IgA糸球体腎炎、デンスデポジット病、リウマチ性心疾患、ギラン-バレー症候群、インスリン依存性糖尿病および自己免疫性眼炎、自己免疫性甲状腺炎、甲状腺機能低下症(すなわち、橋本甲状腺炎)、全身性エリテマトーデス、円板状ループス、グッドパスチャー症候群、天疱瘡、例えば(a)グレーブス病、(b)重症筋無力症および(c)インスリン抵抗性などの受容体自己免疫、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少性紫斑病、関節リウマチ、抗コラーゲン抗体を伴う強皮症、混合性結合組織病、多発性筋炎/皮膚筋炎、悪性貧血、特発性アジソン病、不妊症、原発性糸球体腎炎およびIgA腎症などの糸球体腎炎、水疱性類天疱瘡、シェーグレン症候群、糖尿病、およびアドレナリン作動性アゴニスト抵抗性(喘息または嚢胞性線維症を伴うアドレナリン作動性アゴニスト抵抗性を含む)、慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、他の内分泌腺不全、白斑、血管炎、心筋梗塞後 心術後症候群(post-MI, cardiotomy syndrome)、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、喘息、炎症性ミオパチー、ならびに他の炎症性、肉芽腫性、変性性および萎縮性の障害)。
【0082】
1つの態様において、本発明の融合タンパク質は、多発性硬化症を治療するために用いられる。
【0083】
その他の態様において、本発明の融合タンパク質は、さまざまな種類の癌を治療するために用いることができる。可溶性TRAILは、ある種の腫瘍細胞におけるアポトーシスの誘導と関連づけられている。その上、ある種類の腫瘍では、炎症が実際に腫瘍誘発性である可能性がある。それ故に、TRAIL融合タンパク質は腫瘍細胞を直接死滅させるため、腫瘍誘発性炎症を阻止するために用いることができ、さらに血管新生を阻止するために用いることもできる。Fn14構成要素(第1のドメイン)は、この場合、TRAILをTWEAK陽性細胞に(例えば、腫瘍内皮および/または腫瘍細胞それ自体の表面に)局在させると考えられる。
【0084】
「癌」および「癌性」という用語は、典型的には、調節されない細胞成長によって特徴づけられる哺乳動物における生理的状態のことを指すか、またはそれを記述する。本明細書で用いる場合、「患者」という用語は、癌または他の自己免疫疾患を有しており、そのために本発明の方法による治療を必要とする、排他的ではないものの典型的にはヒトである哺乳動物のことを指す。「治療を必要とする哺乳動物」という用語は、「患者」と互換的に用いられる。
【0085】
癌の例には、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病またはリンパ性悪性腫瘍が非限定的に含まれる。そのような癌のより詳細な例には、腎癌(kidney cancer)または腎臓癌(kidney cancer)、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌および肺扁平上皮癌を含む肺癌、扁平細胞癌(例えば、上皮扁平細胞癌)、子宮頸癌、卵巣癌、前立腺癌、肝臓癌、膀胱癌、腹膜の癌、肝細胞癌、胃腸癌、胃腸間質性腫瘍(GIST)を含む胃癌(gastric cancer)または胃癌(stomach cancer)、膵癌、頭頸部癌、膠芽腫、網膜芽細胞腫、星状膠細胞腫、莢膜細胞腫、男性化細胞腫、ヘパトーマ、非ホジキンリンパ腫(NHL)、多発性骨髄腫および急性血液悪性腫瘍を含む血液悪性腫瘍、子宮内膜癌または子宮癌、子宮内膜症、線維肉腫、絨毛癌、唾液腺癌、膣癌、甲状腺癌、食道癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、鼻咽頭癌、喉頭癌、カポジ肉腫、黒色腫、皮膚癌、神経鞘腫、乏突起細胞腫、神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、骨原性肉腫、平滑筋肉腫、尿路癌、甲状腺癌、ウィルムス腫瘍、およびB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHLを含む);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL;巨大病変NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;およびワルデンシュトレームマクログロブリン血症を含む);慢性リンパ球性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);ヘアリー細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病;ならびに移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、および母斑症に伴う異常血管増殖、浮腫(脳腫瘍に伴うものなど)、ならびにメイグス症候群。「腫瘍」は、本明細書で用いる場合、悪性であるか良性であるかにかかわらずすべての新生物性細胞成長および増殖、ならびにすべての前癌性および癌性の細胞および組織のことを指す。
【0086】
「治療すること」または「治療」または「緩和」は、治療的処置、および予防的(prophylactic)または防止的な手段の両方を指し、ここでその目的は、標的とする病的状態または障害を防ぐこと、または遅らせる(和らげる)ことである。本発明の融合タンパク質の治療量が本発明の方法に従って投与された後に、対象が特定の疾患の1つまたは複数の徴候および症状の観察可能および/もしくは測定可能な軽減、または欠如を示すならば、対象は成功裏に「治療」されている。例えば、癌の場合には、癌細胞の数の減少または欠如;腫瘍サイズの減少;腫瘍転移の阻害(すなわち、ある程度遅らせ、好ましくは停止させる);腫瘍成長のある程度の阻害;特定の癌に伴う症状のうちの1つまたは複数の寛解期間の延長、および/またはある程度の除去;罹患率および死亡率の低下、ならびに生活の質の問題の改善。疾患の徴候または症状の軽減は、患者によっても感知されうる。治療は、癌のすべての徴候の消失として定義される完全奏効、または腫瘍のサイズが好ましくは50%を超えて、より好ましくは75%減少する部分奏効を達成することができる。患者が安定した疾患を経験した場合も、患者は治療されたとみなされる。1つの好ましい態様において、癌患者は1年後、好ましくは15カ月後も依然として癌に関して無増悪(progression-free)である。治療の成果および疾患の改善を評価するためのこれらのパラメーターは、適切な技能を有する医師にはよく知られている定型的な手順によって容易に測定可能である。本発明の融合タンパク質は、癌の治療の成果を判断するために用いられる上記のパラメーターのいずれかの改善をもたらすのに有効な量で投与され、それは当業者によって容易に決定されうる。例えば、有効量は、一部の癌細胞、または大半の癌細胞、または患者の癌細胞の実質的にすべてにおいてアポトーシスを誘導するのに有効な量である。有効量の他の例には、腫瘍細胞の増殖を低下させる、他の組織の浸潤を介した腫瘍進行を停止させる、血管新生を低下させる、または炎症を軽減するのに有効な量が含まれる。
【0087】
癌の治療の状況において、本発明の融合タンパク質を、任意で、他の化学療法薬と組み合わせて患者に投与することができる。適した化学療法薬には、例えば、チオテパおよびシクロホスファミド(CYTOXAN(商標))などのアルキル化剤;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)およびウレドーパ(uredopa)などのアジリジン類;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド(triethylenethiophosphaoramide)およびトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類およびメチラメラミン類;ナイトロジェンマスタード、例えばクロランブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノブエンビキン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなど;ニトロソウレア類、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなど;抗生物質、例えばアクラシノマイシン類、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン類、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン類、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン類、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシンなど;メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗剤;デノプテリン(denopterin)、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5-FUなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン類;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎剤(anti-adrenal);フロリン酸(frolinic acid)などの葉酸補充薬;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトレキサート;デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジコン(diaziquone);エルフォルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキサン類、例えばパクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, N.J)およびドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロランブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチンおよびカルボプラチンなどの白金類似体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イフォスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼインヒビターRFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラミシン類;カペシタビン;ならびに上記の任意のものの薬学的に許容される塩、酸または誘導体が含まれる。
【0088】
同じくこの定義に含まれるものには、腫瘍に対するホルモン作用を調節または阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼを阻害する4(5)-イミダゾール類、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストーン、およびトレミフェン(フェアストン)などを含む抗エストロゲン剤;ならびにフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリドおよびゴセレリンなどの抗アンドロゲン剤;ならびに上記の任意のものの薬学的に許容される塩、酸または誘導体がある。
【0089】
同じくこの定義に含まれるものには、TRAILに対する腫瘍細胞の感受性を高めて、TRAIL耐性を克服することを可能にする化学療法薬、例えば、プロテアソームインヒビターおよびヒストンデアセチラーゼ(HDAC)インヒビター、シクロヘキシミド、メシル酸イマチニブおよび他のプロテインチロシンキナーゼインヒビター、17-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン、三酸化ヒ素およびX連鎖アポトーシス阻害タンパク質低分子アンタゴニスト;ならびにこれらの任意のものの薬学的に許容される塩、酸または誘導体がある。
【0090】
癌治療の方法に関するその他の情報は米国特許第7,285,522号に提示されており、これはその全体が参照により組み入れられる。
【0091】
したがって、1つの好ましい態様において、本発明の融合タンパク質は、乳癌を治療するために用いることができる。別の好ましい態様において、本発明の融合タンパク質は、結腸癌を治療するために用いることができる。別の態様において、本発明の融合タンパク質は、肝臓癌を治療するために用いることができる。別の好ましい態様において、本発明の融合タンパク質は、卵巣癌を治療するために用いることができる。別の態様において、本発明の融合タンパク質は、白血病を治療するために用いることができる。別の態様において、本発明の融合タンパク質は、黒色腫を治療するために用いることができる。
【0092】
さらなる態様において、本発明の融合タンパク質は、同種免疫疾患、例えば移植片拒絶反応または移植片対宿主病または宿主対移植片病を治療するために用いることができる。
【0093】
さらなる態様において、本発明の融合タンパク質は、上記のように、融合タンパク質の有効量を投与することにより、血管新生を調節するために用いることができる。TWEAKおよび他のFn14アゴニストの使用は、例えば米国特許第7,208,151号に記載されており、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0094】
本発明において、TWEAKを保有するさまざまな免疫細胞種および非免疫性細胞種から発せられた炎症誘発性TWEAKシグナルは、Fn14-TRAILによって阻害性TRAILシグナルに変換される。重要なこととして、この反対方向の(抗炎症性TRAIL)新規シグナルは定義上、TWEAKを保有する細胞が目を向ける先を変更させ、実際上、シグナル伝達を、Fn14+TRAIL-R-のものから、自己免疫発生病理を進展させるFn14-TRAIL-R+活性化T細胞へと再方向づける。数々の免疫細胞種および非免疫性細胞種に及ぶ、TWEAK:Fn14およびTRAIL:TRAIL-Rシグナル伝達軸、特に前者の機能的多義性(Burkly LC, Michaelson JS, Hahm K, Jakubowski A, Zheng TS: TWEAKing tissue remodeling by a multifunctional cytokine: role of TWEAK/ Fn14 pathway in health and disease, Cytokine 2007, 40:1-16;Winkles JA: The TWEAKFn14 cytokine-receptor axis: discovery, biology and therapeutic targeting, Nat Rev Drug Discov 2008;.Zauli G, Secchiero P: The role of the TRAIL/TRAIL receptors system in hematopoiesis and endothelial cell biology, Cytokine Growth Factor Rev 2006, 17:245-257;Vince JE, Silke J: TWEAK shall inherit the earth, Cell Death Differ 2006, 13:1842-1844;Cretney E, Shanker A, Yagita H, Smyth MJ, Sayers TJ: TNF-related apoptosis-inducing ligand as a therapeutic agent in autoimmunity and cancer, Immunol Cell Biol 2006, 84:87-98)は、細胞のネットワーク形成に影響を及ぼしてそれを拡張させるFn14-TRAILの広範な機能的可能性に本来備わっているものである。
【0095】
単純なTWEAKブロッカー(Fn14-IgG1(突然変異型)など)とは異なり、Fn14-TRAIL融合タンパク質は、TWEAK炎症誘発性シグナルを抗炎症性TRAIL新規シグナルで置換する。このため、表面TWEAKを有する細胞は実質上、TWEAKにより作動される炎症を促進することが妨げられ、その代わりに、通常であれば相互作用しないであろうTRAIL-R保有細胞(例えば、活性化エフェクターT細胞)を阻害するように再方向づけられる。TRAIL:TRAIL-Rシグナル伝達軸が炎症イベントに及ぼす影響は主として、さまざまな免疫機能、つまり、T細胞周期の進行、自己反応性T細胞の増殖、炎症誘発性サイトカインの産生、Ab産生および炎症反応、の阻害を介する。Hilliard B, Wilmen A, Seidel C, Liu TS, Goke R, Chen Y: Roles of TNF-related apoptosis-inducing ligand in experimental autoimmune encephalomyelitis, J Immunol 2001, 166:1314-1319;Lamhamedi-Cherradi SE, Zheng S, Tisch RM, Chen YH: Critical roles of tumor necrosis factor-related apoptosis-inducing ligand in type 1 diabetes, Diabetes 2003, 52:2274-2278;Cretney E, McQualter JL, Kayagaki N, Yagita H, Bernard CC, Grewal IS, Ashkenazi A, Smyth MJ: TNF-related apoptosis-inducing ligand (TRAIL) / Apo2 L suppresses experimental autoimmune encephalomyelitis in mice, Immunol Cell Biol 2005, 83:511-519;Hirata S, Senju S, Matsuyoshi H, Fukuma D, Uemura Y, Nishimura Y: Prevention of experimental autoimmune encephalomyelitis by transfer of embryonic stem cell-derived dendritic cells expressing myelin oligodendrocyte glycoprotein peptide along with TRAIL or programmed death-1 ligand, J Immunol 2005, 174:1888-1897;Lamhamedi-Cherradi SE, Zheng SJ, Maguschak KA, Peschon J, Chen YH: Defective thymocyte apoptosis and accelerated autoimmune diseases in TRAIL-/- mice, Nat Immunol 2003, 4:255-260;Song K, Chen Y, Goke R, Wilmen A, Seidel C, Goke A, Hilliard B, Chen Y: Tumor necrosis factor-related apoptosis-inducing ligand (TRAIL) is an inhibitor of autoimmune inflammation and cell cycle progression, J Exp Med 2000, 191:1095-1104;Mi QS, Ly D, Lamhamedi-Cherradi SE, Salojin Ky, Zhou L, Grattan M, Meagher C, Zucker P, Chen YH, Nagle J, Taub D, Delovitch TL: Blockade of tumor necrosis factor-related apoptosis-inducing ligand exacerbates type 1 diabetes in NOD mice, Diabetes 2003, 52:1967-1975。この免疫抑制作用の範囲は、CD4+ T細胞それ自体を明らかに超えて広がっており、CD8+ T細胞、B細胞 単球、およびDCを範囲に含んでいる。Zauli G, Secchiero P: The role of the TRAIL/TRAIL receptors system in hematopoiesis and endothelial cell biology, Cytokine Growth Factor Rev 2006, 17:245-257;Kayagaki N, Yamaguchi N, Abe M, Hirose S, Shirai T, Okumura K, Yagita H: Suppression of antibody production by TNF-related apoptosis-inducing ligand (TRAIL), Cell Immunol 2002, 219:82-91;Hayakawa Y, Screpanti V, Yagita H, Grandien A, Ljunggren HG, Smyth MJ, Chambers BJ: NK cell TRAIL eliminates immature dendritic cells in vivo and limits dendritic cell vaccination efficacy, J Immunol 2004, 172:123-129;Janssen EM, Droin NM, Lemmens EE, Pinkoski MJ, Bensinger SJ, Ehst BD, Griffith TS, Green DR, Schoenberger SP: CD4+ T-cell help controls CD8+ T-cell memory via TRAIL-mediated activation-induced cell death, Nature 2005, 434:88-93;You RI, Chang YC, Chen PM, Wang WS, Hsu TL, Yang CY, Lee CT, Hsieh SL: Apoptosis of dendritic cells induced by decoy receptor 3 (DcR3), Blood 2008, 111:1480-1488。TRAILがある特定の条件下でマクロファージおよび好中球のアポトーシス性細胞死を誘導しうるという証拠はあるものの(Smyth MJ, Takeda K, Hayakawa Y, Peschon JJ, van den Brink MR, Yagita H: Natures TRAIL--on a path to cancer immunotherapy, Immunity 2003, 18:1-6;Kaplan MJ, Ray D, Mo RR, Yung RL, Richardson BC: TRAIL (Apo2 ligand) and TWEAK (Apo3 ligand) mediate CD4+ T cell killing of antigen-presenting macrophages, J Immunol 2000, 164:2897-2904;Renshaw SA, Parmar JS, Singleton V, Rowe SJ, Dockrell DH, Dower SK, Bingle CD, Chilvers ER, Whyte MK: Acceleration of human neutrophil apoptosis by TRAIL, J Immunol 2003, 170:1027-1033)、そのアポトーシス誘発活性はT細胞についてはそれほど明らかではない。Lunemann JD, Waiczies S, Ehrlich S, Wendling U, Seeger B, Kamradt T, Zipp F: Death ligand TRAIL induces no apoptosis but inhibits activation of human (auto)antigen-specific T cells, J Immunol 2002, 168:4881-4888;Zhang XR, Zhang LY, Devadas S, Li L, Keegan AD, Shi YF: Reciprocal expression of TRAIL and CD95L in Th 1 and Th2 cells: role of apoptosis in T helper subset differentiation, Cell Death Differ 2003, 10:203-210。
【0096】
単一の融合タンパク質の内部のFn14およびTRAIL構成要素をキメラ化することにより、2つの構成要素の効力を増強させ、通常であればそれらの治療的有用性を制約しているかもしれない一方またはもう一方の負の影響を覆い隠して、特別な利点を付与する、特別な、時には相補的であるような機能特性が誘発される可能性がある。これらには以下が含まれる。
【0097】
1)天然では単量体のタンパク質であるFn14をTRAIL(天然では三量体)と連結させることにより、Fn14の三量体変種が実質的に作製される。そうしたところ、構造モデル化により、このFn14新規三量体は、Fn14の天然では三量体性であるTWEAK対抗受容体と適切にドッキングしうることが示唆された(図9)。その上、Fn14-TRAIL融合タンパク質のもう一方の末端で、三量体TRAILは、TRAILに対する三量体DR5受容体とドッキングしている。それ故に、単量体Fn14を三量体TRAILとキメラ化することによってデノボに生成されたこれらの構造的相補性は、TWEAKを遮断して細胞上のDR5を相互に向かい合わせる能力を高める、比類なく安定なTWEAK-Fn14-TRAIL-DR5分子架橋を実際に作り出していると考えられる。さらに、このモデル化により、キメラ体は剛性がかなり高く、そのため(約60Åの)スペーサーとして作用して、TWEAK保有細胞と活性化エフェクターT細胞との間の細胞間接触を局所的に限定する可能性があることも示唆された。60Åという局所的分離が、例えば免疫シナプスの内部で、炎症性反応を作動させる他の共刺激分子の妨げになりうることは想定可能である。
【0098】
2)TRAILリガンドは実際上、Fn14「架橋」を介して細胞表面に係留されており、それは実際上、その有効結合価を増強させている。ある意味でこれは、EAEを抑制するのに有効なことが示されている、表面TRAILを新規に発現するDCの状況を再現している。Hirata S, Senju S, Matsuyoshi H, Fukuma D, Uemura Y, Nishimura Y: Prevention of experimental autoimmune encephalomyelitis by transfer of embryonic stem cell-derived dendritic cells expressing myelin oligodendrocyte glycoprotein peptide along with TRAIL or programmed death-1 ligand, J Immunol 2005, 174:1888-1897。
【0099】
3)TRAILを介した阻害は、EAEの初回刺激期(T細胞のトリガリングおよび増量の際)に主として働くと考えられるが(Cretney E, McQualter JL, Kayagaki N, Yagita H, Bernard CC, Grewal IS, Ashkenazi A, Smyth MJ: TNF-related apoptosis-inducing ligand (TRAIL)/ Apo2L suppresses experimental autoimmune encephalomyelitis in mice, Immunol Cell Biol 2005, 83:511-519)、一方、TWEAK遮断の恩恵は下流の炎症誘発イベント(血液脳関門の崩壊の防止を含む)により集中しているように思われる。Desplat-Jego S, Creidy R, Varriale S, Allaire N, Luo Y, Bernard D, Hahm K, Burkly L, Boucraut J: Anti-TWEAK monoclonal antibodies reduce immune cell infiltration in the central nervous system and severity of experimental autoimmune encephalomyelitis, Clin Immunol 2005, 117:15-23。このため、この2つを組み合わせることにより、疾患の初回刺激期およびより後期の両方に影響を及ぼしうると原理的には考えられる単一の作用物質が手に入る。
【0100】
4)TRAILは、初回刺激期の後のニューロンの死滅に寄与している可能性があり(Nitsch R, Pohi EE, Smorodchenko A, Infante-Duarte C, Aktas 0, Zipp F: Direct impact of T cells on neurons revealed by two-photon microscopy in living brain tissue, J Neurosci 2004, 24:2458-2464;Aktas O, Smorodchenko A, Brocke S, Infante-Duarte C, Topphoff US, Vogt J, Prozorovski T, Meier S, Osmanova V, Pohi E, Bechmann I, Nitsch R, Zipp F: Neuronal damage in autoimmune neuroinflammation mediated by the death ligand TRAIL, Neuron 2005, 46:421-432)、これは初代ヒトニューロン(Nitsch R, Bechmann I, Deisz RA, Haas D, Lehmann TN, Wendling U, Zipp F: Human brain-cell death induced by tumour-necrosis-factor-related apoptosis-inducing ligand (TRAIL), Lancet 2000, 356:827-828)および乏突起膠細胞(Matysiak M, Jurewicz A, Jaskoiski D, Selmaj K: TRAIL induces death of human oligodendrocytes isolated from adult brain, Brain 2002, 125:2469-2480)がいずれも、TRAILで誘導される細胞死に対する感受性を持つことを示した以前の研究に一致する。Fn14をTRAILとカップリングさせることにより、血液脳関門の完全性を(TWEAK遮断を介して)持続させ、それによってTRAILのCNSへの到達を減じさせる作用物質が得られる。さらに、TWEAKは神経細胞死のトリガーを引くことが報告されているため(Potrovita I, Zhang W, Burkly L, Hahm K, Lincecum J, Wang MZ, Maurer MH, Rossner M, Schneider A, Schwaninger M: Tumor necrosis factor-like weak inducer of apoptosis-induced neurodegeneration, J Neurosci 2004, 24:8237-8244)、Fn14-TRAILはこのTWEAK活性も同じく阻止することによってニューロンを保護することが期待される。
【0101】
5)EAEの際に、血管の数は、疾患スコア、ならびに炎症、白血球浸潤および脱髄に関する病的尺度の両方と相関する。Kirk SL, Karlik SJ: VEGF and vascular changes in chronic neuroinflammation, J Autoimmun 2003, 21:353-363。TWEAKは血管新生を促進し(Jakubowski A, Browning B, Lukashev M, Sizing I, Thompson JS, Benjamin CD, Hsu YM, Ambrose C, Zheng TS, Burkly LC: Dual role for TWEAK in angiogenic regulation, J Cell Sci 2002, 115:267-274)、かつTRAILはそれを阻害するため(Cantarella G, Risuglia N, Delleva R, Lempereur L, Albini A, Pennisi G, Scoto GM, Noonan DN, Bernardini R: TRAIL inhibits angiogenesis stimulated by VEGF expression in human glioblastoma cells, Br J Cancer 2006, 94:1428-1435)、Fn14-TRAILは炎症部位での血管新生を、二重の機序、すなわちTWEAKの血管新生誘発活性に拮抗すること、およびTRAILの抗血管新生活性を通じてこの作用を相乗的に補強することによって阻害する可能性がある。
【0102】
6)さらに別の相乗効果が、内皮細胞機能およびケモカイン発現の調節によって生じる可能性がある。上述したように、TWEAKの遮断は、内皮細胞によるケモカイン発現、およびそれに対する白血球接着の妨げになる可能性がある。TRAILはこれらの過程ともつながりがある。TRAILは、CCL8およびCXCL1Oケモカインの発現および放出の下方調節を行うことにより、TNF-αで誘導される白血球と内皮細胞との接着を打ち消すように作用する。Secchiero P, Corallini F, di Iasio MG, Gonelli A, Barbarotto E, Zauli G: TRAIL counteracts the proadhesive activity of inflammatory cytokines in endothelial cells by down-modulating CCL8 and CXCL1O chemokine expression and release, Blood 2005, 105:3413-3419。このため、Fn14-TRAILは、そのFn14末端およびTRAIL末端の両方を通じて白血球の誘引および接着に影響を及ぼしうると考えられる。
【実施例】
【0103】
以下の実施例は本発明を例示することを意図しており、本発明を何ら限定するものとはみなされるべきでない。
【0104】
材料および方法
マウス
4〜6週齡のC57BL/6雌性マウスをJackson Laboratory(Bar Harbor, Maine)から購入し、University of Pennsylvaniaの実験動物施設(Animal Facility)において無菌条件下で飼育した。動物実験はすべて、University of Pennsylvaniaの動物管理使用委員会(Animal Care and Use Committee)による承認を受けた。
【0105】
試薬
プラスミドpT2/BHおよびpNEB193 UbC-SB11は、Dr. Perry Hacket(University of Minnesota, Minneapolis)により提供され、マウスTRAILおよびTWEAKのcDNAは、Dr. Hideo Yagita(Juntendo University School of Medicine, Tokyo, Japan)から入手した。プラスミドpMFneoは、Dr. Herman Waldmann(University of Oxford, Oxford, UK)から入手した。マウスMOG 38-50ペプチド(GWYRSPFSRVVHL)は、Invitrogen Life Technologies(Carlsbad, CA)にて、F-moc固相法を用いて合成され、HPLCにより精製された。百日咳毒素はEMD Biosciences(San Diego, CA)から購入した。以下の試薬はBD Pharmingen(San Diego, CA)から購入した:マウスIL-2、IL-4、IL-6、IFN-γおよび組換えマウスIL-2、IL-4、IL-6、IFN-γに対するELISA用Abペア。IL-17のELISA用AbペアはSouthern Biotech(Alabama, USA)から入手し、組換えマウスIL-17はBiosource(Camarillo, CA)から購入した。PE-抗マウスTRAILおよびPE-抗マウスTWEAKは、eBioscience(San Diego ,CA)から購入した。組換えTRAIL(Super Killer TRAIL(商標))は、Axxora Platform(San Diego, CA)から購入した。
【0106】
プラスミドの構築
キメラ性Fn14-TRAILおよびFn14-IgG1(突然変異型)をコードするカセットは、部分的に重なり合う合成オリゴヌクレオチドを用いて、PCRにより構築した。マウスFn14(Swiss-protアクセッション番号Q9CR75)のアミノ酸(aa)1〜79をコードするcDNAを、マウスTRAIL(Swiss-protアクセッション番号P50592)のaa 118〜291または突然変異したヒトIgG1 Fc(Fcγ1)セグメントのいずれかをコードするcDNAのそれぞれと連結させた。後者については、ヒトFcγ1をコードするcDNA(Brunschwig EB, Levine E, Trefzer U, Tykocinski ML: Glycosylphosphatidylinositol-modified murine B7-1 and B7-2 retain costimulator function, J Immunol 1995, 155:5498-5505)を、C220→S、C226→S、C229→S、N297→A、E233→P、L234→VおよびL235→Aを突然変異させるように構成されたオリゴヌクレオチドを用いた、PCRベースの部位指定突然変異誘発によって修飾した。可溶性TRAILを発現させるためには、マウスTRAILのaa 118〜291をコードするcDNAを用いた。これらのcDNAセグメントをすべて、pMFneo真核生物発現ベクター中の、EF1αプロモーター領域の下流にサブクローニングした。ルシフェラーゼのコード配列を、Hind3-およびBamH1によってpTAL-Luc(BD Biosciences;San Jose, CA)から動かし、pMFneoの各々の部位にサブクローニングした。完全長マウスTWEAKをコードするcDNAをPCRによって作製し、pcDNA3真核生物発現ベクター(Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, CA)中にサブクローニングした。
【0107】
同じプラスミドの内部にトランスポゾンカセットおよびトランスポザーゼカセットの両方を組み込んだ誘導体スリーピング・ビューティ(Sleeping Beauty)発現ベクターを作製するためには、ユビキチンCプロモーターが上流に隣接したトランスポザーゼコード配列をpNEB193 UbC-SB11(b.p.432-2958)からPCRによって作製し、続いて、トランスポゾンカセットを含むpT2/BHベクターのApal部位とXho1部位との間に連結させた。トランスポザーゼおよびトランスポゾン発現カセットの両方を組み込んだこの新たな発現ベクターをpSBC21と命名した。次に、Fn14-TRAIL、可溶性Fn14、Fn14-IgGl(突然変異型)、可溶性TRAILまたはルシフェラーゼに対応するcDNAがそれぞれEF1αプロモーターとつながったものを、各々のpMFneo発現構築物から、pSBC21のトランスポゾンカセット中のトランスポザーゼ発現モジュールの下流にサブクローニングした。サブクローニングするcDNAはすべて、トランスポザーゼと同じ向きに配置した。
【0108】
細胞培養およびトランスフェクション
ヒト293腎細胞およびCHO細胞は、100μg/mlペニシリン、100U/mlストレプトマイシン、2%および10%熱非働化ウシ胎仔血清を加えた、それぞれDMEMおよびHAM'S F-12中で培養した。293細胞に対して、LipofectAMINE(商標)試薬(Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, CA)を用いて、Fn14-TRAIL、可溶性Fn14、Fn14-IgG1(突然変異型)および可溶性TRAILのpMFneo発現プラスミドを一過性にトランスフェクトした。馴化培地中のタンパク質をSDS-PAGEによって分離し、ウエスタンブロット分析によって検出した。Fn14およびTRAILを検出するための抗マウスAbは、それぞれeBioscienceおよびR&D(Minneapolis, MN)から購入した。CHO細胞に対しては、pcDNA3をベースとするマウスTWEAK発現構築物を一過性にトランスフェクトした。トランスフェクト体上のTWEAK発現は免疫蛍光およびフローサイトメトリーによって確かめた。
【0109】
EAEの誘導および疾患の評価
EAEは、標準的な誘導プロトコールに従って誘導した。Stromnes IM, Goverman JM: Active induction of experimental allergic encephalomyelitis, Nat Protoc 2006, 1:1810-1819。手短に述べると、雌性C57BL/6マウスに対して、4mg/ml結核菌H37RA(Difco, Detroit, MI)を含む等容積のCFA中に乳化させた0.1ml PBS中の合計300μgのMOG38-50ペプチド(背部側腹のそれぞれ一方ずつへの2回の皮下注射に分割)による負荷刺激を行った。これらのマウスに同時に、0.2ml PBS中の100ngの百日咳毒素を静脈内注入した。百日咳毒素(100ng/マウス)の2回目の静脈内注射を48時間後に行った。マウスをEAEの徴候に関して毎日検査し、以下のようにスコア化した:0、疾患なし;1、尾部の麻痺;2、後肢の筋力低下;3、後肢の麻痺;4、後肢+前肢の麻痺;5、瀕死または死亡。
【0110】
サイトカインアッセイ法および増殖アッセイ法
サイトカインアッセイ法に関しては、脾細胞を1ウェル当たり1.5×106細胞で、10% FBSを加えた0.2mlのDMEM中にて、種々の濃度のMOG38-50ペプチドまたは1μg/ml Con A(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)の存在または非存在下で培養した。馴化培地を40時間後に収集し、サイトカイン濃度を、対応するサイトカインに対して特異的なペアのmAbを製造元の推奨(BD Pharmingen,(San Diego, CA)に従って用いる定量的ELISAによって測定した。増殖アッセイ法は、96ウェルプレートで1ウェル当たり0.5×106細胞を用いて行った。[3H]チミジンを48時間の時点で培養物に添加し、細胞を16時間後に収集した。放射能を平面型β計数器(Wallac)を用いて測定した。
【0111】
ハイドロダイナミックインジェクション
マウスに対して、pSBC21ベクターのみ、またはFn14-TRAIL、可溶性Fn14、Fn14-IgG1(突然変異型)、可溶性TRAILもしくはルシフェラーゼのコード配列を組み込んだpSBC21をベースとする発現構築物を注入した。発現プラスミドは体重の10%(グラム単位)に等しい容積(ml単位)の食塩水に溶解させた。各動物に対する全容積を、出版掲載されたプロトコールに従い、尾静脈経由で5秒以内に注入した。Liu F, Song Y, Liu D: Hydrodynamics-based transfection in animals by systemic administration of plasmid DNA, Gene Ther 1999, 6:1258-1266。ヘパリン処理したガラス毛管を用いて後眼窩血液試料を収集した。遠心処理の後に血漿を回収し、ELISAアッセイ法を行うまで-20℃に保った。
【0112】
血清中の組換えタンパク質の測定
ELISAアッセイ法は、96ウェル微量測定プレートで行った。Fn14-TRAIL、可溶性Fn14およびFn14-IgG1(突然変異型)に対しては、eBioscience(San Diego, CA)製の精製抗ヒト/マウスFn14/TWEAK受容体Abを捕捉用Abとして用いた;可溶性TRAILに対しては、R&D Systems(Minneapolis, MN)製の抗マウスTRAIL Abを捕捉用Abとして用いた。検出用Abは以下のものとした:Fn14に対してはeBioscience製のビオチン-抗マウスTWEAK受容体Ab;Fn14-TRAILおよび可溶性TRAILに対してはeBioscience製のビオチン-抗マウスTRAIL Ab;Fn14-IgG1(突然変異型)に対してはJackson ImmunoResearch Laboratories(West Grove, PA)製の抗ヒトIgG、Fcγ断片特異的Ab。
【0113】
コーティングバッファー(0.1M炭酸塩、pH 8.2)中に希釈した捕捉用Abを微量測定プレートに配分し、4℃で一晩インキュベートした。PBS中の0.05% Tween-20で2回洗浄した後に、ウェルを再び、非特異的結合部位をブロックするためのPBS-3%アルブミンとともに室温で2時間インキュベートした。再び2回洗浄した後に、100μlの血清試料を添加し、4℃で一晩インキュベートした。インキュベーションの後に、ウェルを4回すすぎ洗いし、ビオチン化した検出用Abとともに1時間インキュベートした。酵素反応のために、アビジンペルオキシダーゼおよびTMB Microwellペルオキシダーゼ基質(KPL, Gaithersburg, Maryland)を逐次的に適用した。
【0114】
インビボ生物発光の画像化
画像化の作業はすべて、University of Pennsylvaniaの放射線科(Department of Radiology)のSmall Animal Imaging Facility(SAIF)で行った。画像はルシフェラーゼ発現プラスミドの注入から5時間後、24時間後、5日後、22日後、34日後、51日後および1年後に収集した。画像化の際にはマウスをケタミン/キシラジンで麻酔した。D-ルシフェラーゼ(Biotium, Hayward, CA)を食塩水中に希釈し、撮像の前に腹腔内注射を介して送達した。続いてマウスを、温度を33℃に保っている撮像チャンバーに入れた。生物発光画像は、XenogenインビボImaging System(IVIS;Xenogen Corp, Alameda, CA)を用いて収集した。撮像パラメーターは、視野8cmまたは10cm、露出時間4分、ビニング数16およびf1/stop 1とした。表示に際しては、発光画像(擬似カラー)を、解剖学的ランドマークが描写されている写真画像と重ね合わせた。
【0115】
血液脳関門(BBB)透過性の測定
BBB透過性は、若干の変更を加えた上で、本質的には記載されている通りに評価した(Prasad R, Gin S, Nath N, Singh I, Singh AK: 5-aminoimidazole-4-carboxamide-1-beta-4-ribofuranoside attenuates experimental autoimmune encephalomyelitis via modulation of endothelial-monocyte interaction, J Neurosci Res 2006, 84:614-625)。手短に述べると、MOG負荷刺激後の6日目および13日目に、C57BL/6マウスの尾静脈に4%エバンスブルー色素(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を注入した。1時間後に動物に麻酔を施し、血管内の色素を除去するために食塩水を用いて経心臓的な灌流を行った。安楽死させた後に、脊髄、小脳/脳幹および脳を収集した。定量的測定のために、脊髄を1ml PBS中でホモジネート化した。試料を一度、15,800gで30分間遠心した。続いて、上清の600μlアリコートを収集し、600ulの100% TCA(Sigma Aldrich St. Louis, MO)に添加した。この溶液を一晩インキュベートし、15,800gで30分間遠心した。上清中のエバンスブルーの血管外漏出を分光測定で定量した(励起630nmおよび発光680nm)。
【0116】
脊髄からの浸潤性細胞の調製および分析
脊髄の単細胞懸濁液を以前の記載の通りに調製した。Hilliard B, Samoilova EB, Liu TS, Rostami A, Chen Y: Experimental autoimmune encephalomyelitis in NF-kappa B-deficient mice:roles of NF-kappa B in the activation and differentiation of autoreactive T cells, J Immunol 1999, 163:2937-2943。手短に述べると、マウスを殺処理して脊髄を取り出し、27% Percollを含む氷冷RPMI培地中に入れた上で、加圧して70μm Falconセルストレーナーに通した。その結果得られた細胞懸濁液を追加の27% Percollと合わせて容積50mlにし、混合して、300×gで15分間遠心した。ペレットを氷上に保ち、その間にミエリン層および上清を新たな50ml管に移し、振盪によってホモジネート化した上で、再び300×gで15分間遠心した。続いて細胞ペレットをまとめて、4℃のRPMI培地中で3回洗浄した。フローサイトメトリー分析に関しては、回収した細胞の単細胞懸濁液を以下のAbとともに45分間インキュベートした:FITC-抗マウス-IFNγ、PE-抗マウスIL-10、APC-抗マウスIL-17、APC-Alexa flour 750-抗マウスCD4、Percp-cy5.5-抗マウスCD8およびPE-cy7-抗マウスCD69、これらはすべてeBioscienceから購入した。
【0117】
キメラFn14-TRAILタンパク質の分子モデル化
Fn14-TRAILタンパク質の三次元モデルを、TRAILの結晶構造(pdbコード:1DOG)(Hymowitz SG, Christinger HW, Fuh G, Ultsch M, O'Connell M, Kelley RF, Ashkenazi A, de Vos AM: Triggering cell death: the crystal structure of Apo2L/TRAIL in a complex with death receptor 5, Mol Cell 1999, 4:563-571)およびモデル化されたFn14分子を用いて作成した。Fn14のリガンド結合ドメイン(LBD)の三次元モデルは、MODELLERを用いて作成した。Marti-Renom MA, Stuart AC, Fiser A, Sanchez R, Melo F, Sali A: Comparative protein structure modeling of genes and genomes, Annu Rev Biophys Biomol Struct 2000, 29:291-325。手短に述べると、Fn14のLBDの出発モデルを、ヒトTACI(1XU1)およびBCMA(1XU2)のテンプレート構造に基づいて得た。Hymowitz SG, Patel DR, Wallweber HJ, Runyon 5, Yan M, Yin J, Shriver SK, Gordon NC, Pan B, Skelton NJ, Kelley RF, Starovasnik MA: Structures of APRIL-receptor complexes: like BCMA, TACI employs only a single cysteine-rich domain for high affinity ligand binding, J Biol Chem 2005, 280:7218-7227。Fn14の伸長領域をFn14とTRAILとの間のリンカーとして扱った。立体化学的およびエネルギー的に有利なモデルを得るために、リンカーの立体構造を、以前に記載されたInsightII(Accelrys, Inc. San Diego, CA)を用いる短分子シミュレーション研究によって最適化した。Swaminathan P, Hariharan M, Murali R, Singh CU: Molecular structure, conformational analysis, and structure-activity studies of Dendrotoxin and its homologues using molecular mechanics and molecular dynamics techniques, J Med Chem 1996, 39:2141-2155。
【0118】
フローサイトメトリーおよびMTTアッセイ法
免疫染色は、0.5% BSAおよび0.05%アジ化ナトリウム(NaN3)を含むPBS中に懸濁させた特定のAbを用いて4℃で行った。フローサイトメトリー分析はすべて、Cell Questソフトウエアおよびデュアルレーザー(488nmおよび633nm)励起を備えたFACS Calibur装置(BD Biosciences)で行った。MTTアッセイ法は、製造元のプロトコール(ATCC, Manassas, VA)に従って行った。
【0119】
統計学的分析
差の統計学的有意性の判定にはStudentのt検定またはMann-Whitney U検定を用いた。0.05未満のp値を統計学的に有意とみなした。
【0120】
結果
機能的Fn14-TRAILタンパク質の産生
組換えFn14-TRAILは、関連する対照タンパク質(可溶性Fn14、Fn14-IgG1(突然変異型)、可溶性TRAIL)とともに、pMFneo真核生物発現システムを用いて産生させた。キメラFn14-TRAILコード配列はFn14 I型およびTRAIL II型膜タンパク質の全細胞外ドメインと連結されており、それによって、ハイブリッド型の可溶性I型・II型融合タンパク質が作製された。Fn14-IgG1(突然変異型)コード配列を作製するために、FcγR結合(およびその結果としてのリンパ球の非特異的枯渇)を阻止するように、およびN-グリコシル化(これはヒトIgG1のインビボでのエフェクター機能のために重要である)を妨げるように、ヒトIgG1構成要素の内部のいくつかのアミノ酸を突然変異させた(材料および方法の項を参照)。Isaacs JD, Greenwood J, Waldmann H: Therapy with monoclonal antibodies. II. The contribution of Fc gamma receptor binding and the influence of C(H)1 and C(H)3 domains on in vivo effector function, J Immunol 1998, 161:3862-3869。pMFneoをベースとするさまざまな発現構築物を293細胞に一過的にトランスフェクトさせたところ、各々のタンパク質の発現および分泌が馴化培地のウエスタンブロット分析で実証された(図1A)。
【0121】
発現したFn14-TRAILの実体を検証するために、それがFn14のリガンドであるTWEAKと結合する能力を評価した。この目的のために、CHO細胞にマウスTWEAK cDNA発現構築物(pcDNA3ベクター中)を一過性にトランスフェクトし、48時間後に、トランスフェクタントを精製Fn14-TRAILまたは可溶性TRAILとともに4℃でインキュベートした。抗マウスTWEAKおよび抗マウスTRAILを検出用Abとして用いた、これらの細胞の免疫蛍光およびフローサイトメトリー分析により、トランスフェクタント上の細胞表面TWEAKに、Fn14-TRAILは有意に結合するが、可溶性TRAILは結合しないことが示された(図1B)。
【0122】
Fn14-TRAILのTRAIL構成要素の機能性については、それがL929細胞におけるアポトーシスを誘導する能力をMTTアッセイ法を用いて評価することによって判定した。図1Cに示したように、Fn14-TRAILは、アクチノマイシンDの存在下でL929細胞のアポトーシスを用量依存的な様式で誘導する。この実験では組換えTRAIL(Super Killer TRAIL(商標))を陽性対照として用いた。注目すべきは、免疫蛍光およびフローサイトメトリーによってこれらのL929細胞上においてTWEAKは全く検出されなかったことであり(図示せず)、このことはFn14-TRAILのFn14構成要素が表面TWEAKを介したある種の逆シグナル伝達(back-signaling)を通じてアポトーシスを作動させる可能性の反証となったことである。
【0123】
Fn14-TRAILの持続的インビボ発現のためのトランスポゾンをベースとする発現システムの開発
Fn14-TRAIL(および対照タンパク質)の持続的インビボ発現を可能にするために、トランスポゾンをベースとする「スリーピング・ビューティ(SB)」発現システムを利用した。このシステムは、プラスミドを介した遺伝子送達の利点と、染色体内に組み込まれて持続的な導入遺伝子発現をもたらす能力とを兼ね備えている。この発現システムの効率を最適化するために、単一のプラスミドの内部にトランスポゾン(関心対象の導入遺伝子を収容している)およびトランスポザーゼ発現カセットの両方を備える誘導体発現ベクターを作製し、pSBC21と命名した(図2A)。2つのカセットからの相対的発現レベルが重要であるため、いくつかのプロモーターの組み合わせをスクリーニングしたところ、UBCプロモーター(トランスポザーゼを作動させる)およびEF1αプロモーター(トランスポゾンカセットを作動させる)を縦列に並べた組み合わせが、導入遺伝子の強力な発現をもたらすことが明らかになった(図示せず)。
【0124】
この独自の二重カセットトランスポゾン/トランスポザーゼベクター誘導体(UBC/EF1αプロモーターの組み合わせを伴う)の機能性を、ルシフェラーゼレポーターを用いて検証した。さまざまな濃度のpルシフェラーゼ・SBC21プラスミドをハイドロダイナミックインジェクションによってC57BL/6マウスに投与した。トランスポゾンをベースとする発現構築物のハイドロダイナミックインジェクションは、インビボのマウス肝細胞において持続的な遺伝子発現をもたらしている。Liu F, Song Y, Liu D: Hydrodynamics-based transfection in animals by systemic administration of plasmid DNA, Gene Ther 1999, 6:1258-1266。ルシフェラーゼの基質であるD-ルシフェラーゼの投与後に収集した生物発光画像では、22日の時点でルシフェラーゼの発現が明らかに認められ(図2B)、6カ月後にも依然として顕著なレベルが検出された(図示せず)。
【0125】
この誘導体発現ベクターの機能性がルシフェラーゼレポーターを用いて実証されたことを受け、このベクターを、特に血清中のFn14-TRAILのレベルが、注入したpFn14-TRAIL・SBC21プラスミドの用量と相関するか否かを明らかにする目的で、Fn14-TRAILを発現させるために利用した。C57BL/6マウス(4匹ずつの実験群)に対してそれぞれ、pFn14-TRAIL・SBC21プラスミドの種々の用量(5、10または20μgのプラスミド)での単回ハイドロダイナミックインジェクションを行った。Fn14-TRAILの血清レベルをプラスミド投与の20日後にELISAによって測定したところ、Fn14-TRAIL血清レベルの用量依存的な上昇が、10μgのプラスミド用量以降で観察された(図2C)。
【0126】
Fn14-TRAILはMOG誘導自己免疫脳脊髄炎を抑制する
次に、マウスEAE疾患モデルにおけるFn14-TRAILの治療能力を調べた。この目的のために、単回の脳炎誘発用量のMOG38-50ペプチドをC57BL/6マウスに投与した。ペプチド注射から2日後に、単回用量のpFn14-TRAIL・SBC21プラスミド(50μg/マウス)または4種の対照プラスミドの一方(pFn14・SBC21、pFn14-IgG1(突然変異型)・SBC21、pTRAIL・SBC21およびpSBC21)をハイドロダイナミックインジェクションによって注入した。ELISAにより、各プラスミドのそれぞれのハイドロダイナミックインジェクションを受けた動物個体において同等な血清レベルの発現タンパク質(図3A)が検出された。投与を受けたマウスの疾患進行は、身体診察および回収した脊髄の組織学的分析の両方によってモニターした。Fn14-TRAILの発現はEAE症状発現を有意に減弱させ、平均臨床スコア(MOG投与後の43日間の期間にわたり算出;図3B、上のパネル)および累積平均臨床スコア(MOG投与後の40日間の期間にわたり算出;表1および図3C)の両方が低下した。平均最大疾患スコアも、さまざまな対照と比較して、Fn14-TRAIL投与群において有意に低かった(表1)。同様に、35日目の時点の疾患スコアもFn14-TRAIL群が有意に低かった(表1;図3D)。
【0127】
Fn14-TRAILの治療的有用性は、疾患発病日および疾患発生率の分析からも明白に認められた。Fn14-TRAILは、エンプティベクターを投与された対照マウス(12.8±4日)と比較して、平均疾患発病日(14.8±4.7日)を先に延ばし、典型的には後者のマウスはMOGペプチド投与のおよそ10日後にEAEを発症した(表1)。pFn14・SBC21、pFn14-IgG1(突然変異型)・SBC21、pTRAIL・pSBC21プラスミドを投与されたマウスの平均疾患発病日は、それぞれ13.63±2.72日、11.66±1.2日および13.42±2.2日であった。発現されたタンパク質はいずれも疾患発生率をある程度低下させたものの、Fn14-TRAILを投与した動物のうち、この実験の過程において疾患の徴候を示したのは50%に過ぎなかった(図3B、下のパネル)。
【0128】
Fn14-TRAILはその構成要素部分の組み合わせよりも有効である
Fn14-TRAILの構成要素がいずれも、可溶性物質として1つずつ投与した場合には、EAEを抑制する上でFn14-TRAILほど有効ではないことが示されたことを受け、Fn14-TRAIL融合タンパク質の治療的効力が、可溶性Fn14およびTRAILタンパク質を同時に投与することによって再現されうるか否かという問題について、同じEAEモデルを用いて評価した。C57BL/6マウスにMOG38-50ペプチドの単回の脳炎誘発性負荷刺激の投与を行った2日後に、pFn14-TRAIL・SBC21プラスミド(25μg/マウス)またはpFn14・SBC21およびpTRAIL・SBC21プラスミドの混合物(各25μg/マウス)のいずれかの単回用量のハイドロダイナミックインジェクションをこれらの動物に行った。Fn14-TRAILは前と同じくEAEを有意に抑制し、平均臨床スコア(図4Aおよび4B)および累積平均臨床スコア(図4C)をいずれも低下させたが、可溶性Fn14および可溶性TRAILの組み合わせは有意な治療効果を示さなかった。トランスポゾンをベースとする各発現プラスミドのハイドロダイナミックインジェクションによって発現されたこれらのさまざまなタンパク質の血清レベルは、ELISAによる測定では同等であった(図4D)。以上を総合すると、これらのデータは、Fn14-TRAILがEAE誘導を防止する実質的な治療的有用性を有しており、この効果をこの融合タンパク質の2つの構成要素を可溶性物質として単に組み合わせて投与することによって再現することはできないことを立証している。
【0129】
Fn14-TRAILは自己反応性T細胞の増殖および分化を阻止する
投与した動物から回収したミエリン特異的T細胞の増殖および分化に対するFn14-TRAILの効果について評価した。この目的のために、Fn14-TRAILを投与したマウスおよびベクターのみの投与を受けた対照マウスの両方から、MOG負荷刺激の43日後に脾細胞を回収した。これらの脾細胞を、MOG38-50ペプチドに応答した増殖およびサイトカイン産生に関してインビトロで評価した。対照動物からの脾細胞はMOGペプチドに応答して活発に増殖し(図4E)、かつ著しい量のTh1(IL-2およびIFN-γ)、Th2(IL-10、IL-4およびIL-6)およびTh17(IL-17)サイトカインを産生した(図5)。対照的に、Fn14-TRAILを投与した動物からの脾細胞は、MOG刺激に応じてより低い程度でしか増殖せず(図4E)、かつこれらのさまざまなサイトカインを有意に少なく産生した(図5)。以上を総合すると、これらの結果は、T細胞増殖および数々のT細胞サイトカインの発現の両方が、Fn14-TRAILのインビボ投与によって減弱することを指し示している。
【0130】
Fn14-TRAILは炎症細胞のCNS内への浸潤を減少させる
EAEの重要な病理学的特徴は、炎症細胞のCNS内への浸潤である。この浸潤プロセスに対するFn14-TRAILの効果を評価した。この目的のために、Fn14-TRAILを投与したEAEマウスとベクターを投与したEAEマウスとのMOG負荷刺激後の7日目および14日目の脊髄内における、初期活性化CD4+細胞およびCD8+細胞のパーセンテージならびにIFNγ発現細胞、IL-17発現細胞およびIL-10発現細胞のパーセンテージに沿った炎症細胞の絶対数の比較を行った。7日目の時点では、これらのパラメーターはすべて、Fn14-TRAIL投与群において顕著に低下していた(図6A〜D)。14日目(疾患のピーク)の時点でも、Fn14-TRAILに伴うサイトカイン発現細胞の絶対数の減少は依然として明らかであった(図6E〜F)。
【0131】
脊髄から回収した炎症細胞に関するこれらの所見は、MOG負荷刺激の43日後に回収した脊髄組織の組織病理学的検査と一致した。対照ベクターのみを投与した動物では脊髄内に多数の炎症性病巣が均一に認められたが、Fn14-TRAILを投与したマウスは脊髄内の炎症細胞の浸潤の劇的な減少を呈した(図7A〜B)。
【0132】
Fn14-TRAILは血液脳関門の透過性を減弱させる
TWEAKは、MMP-9(メタロプロテイナーゼ-9)の発現を誘導することにより、神経血管膜ユニットの透過性を増大させることが知られている。Polavarapu R, Gongora MC, Winkles JA, Yepes M: Tumor necrosis factorlike weak inducer of apoptosis increases the permeability of the neurovascular unit through nuclear factor-kappa B pathway activation, J Neurosci 2005, 25:10094-10100。Fn14-TRAILを投与したマウスで認められたCNS内への炎症細胞の浸潤の減少は、少なくとも部分的には、血液脳関門(BBB)透過性のTWEAK依存的な増大の結果であると考えられる。BBBの完全性を、静脈内に導入したエバンスブルー色素のCNSへの浸透をモニターする従来のアプローチによって評価した。Prasad R, Gin S, Nath N, Singh I, Singh AK: 5-arninoimidazole-4-carboxamide-1-beta-4-ribofuranoside attenuates experimental autoimmune encephalomyelitis via modulation of endothelial-monocyte interaction, J Neurosci Res 2006, 84:614-625。EAEマウスのCNS内のエバンスブルーを、疾患ピークの前(MOG投与の6日後)または最中(MOG投与の13日後)に測定した。切離したさまざまなCNS構造物のホモジネート中の色素を定量した。対照ベクターのみを投与した動物とFn14-TRAILを投与した動物との脳の間では、いずれの時点でも検出可能な色素に関して有意差はなかったものの(図8Aおよび8B)、他のCNS構造物(脊髄および小脳/脳幹)では、6日目(図8A)および13日目(図8B)のいずれにおいても、ベクターのみを投与した動物で有意に多くの色素が検出された。
【0133】
脊髄内に浸透した色素の濃度は、色素適用日の各々のEAE平均臨床スコアと相関した。重要なこととして、13日目のEAE平均臨床スコアが同じ(0または1)であったマウスであっても、対照ベクターのみを投与したマウスでは、Fn14-TRAILを投与したマウスと比較してより高濃度の色素が認められた(図8C)。この所見を、Fn14-TRAILを投与した脊髄における炎症細胞浸潤の低下という所見と総合することにより、Fn14-TRAILは脳脊髄炎に付随するBBB透過性の進行性増大を抑制することにより、内皮BBBを越える炎症細胞の浸潤を減弱させるという証拠が得られる。
【0134】
キメラFn14-TRAILタンパク質の分子モデル
Fn14-TRAILの顕著な治療的効力が、少なくとも部分的には、それがTWEAKリガンド分子およびTRAIL受容体(DR5)分子を係合させて架橋させる様式に端を発するのではないかという問題について評価した。この目的のために、Fn14-TRAILタンパク質を、単量体(図9A)および三量体(図9B〜C)の両方としてモデル化した。三量体性Fn14-TRAILの反対側末端での、TWEAKおよびDR5のそれぞれとの間で推定される相互作用についても描出した(図9D)。重要なこととして、モデル化されたTWEAK:Fn14-TRAIL:DR5複合体は、以下のことを示した:(1)Fn14のTWEAK結合ドメインは、キメラ化された天然では三量体性であるTRAIL構成要素により、人工的な「三量体」配置に拘束されると、三量体性TWEAKの内部のそのコグネイトパートナーと相互作用するのに有利な位置をとること;(2)三量体性TRAILのDR5結合ドメインは、三量体性DR5の内部のそのコグネイトパートナーと相互作用するのに有利な位置をとること;および(3)融合タンパク質の内部のFn14構成要素のカルボキシ末端は、Fn14およびTRAILドメインをつぶれないようにして隔てて保つのに十分な剛性のある代用「リンカー」としての役を果たすこと。興味深いことに、Fn14およびTRAILのリガンド結合ドメインには約60Åの隔たりがあり、このことは、この融合タンパク質が、相互作用する細胞間でスペーサーのように作用して、局所的な細胞間接触を限定しうるという可能性を提起する。以上を総合すると、このモデル化解析により、このFn14-TRAILキメラが実際に、向かい合う細胞上のTWEAKおよびDR5の両方を同時に係合させうることが実証された。その上、拘束されたFn14「新規三量体」は、天然のTWEAK三量体との結合を可能にする配置をとり、おそらく特に安定な高次構造を作り出す。
【0135】
(表1)EAEの臨床的特徴
* 発病日は、免疫処置後にマウスがEAEの徴候を示した最初の日である(EAEを発症したマウスのみを含めた)。
** 累積スコアは各マウスの臨床スコアの合計である。
【0136】
ヒトFn14-TRAILタンパク質の産生および精製
クローンの構築
ヒトFn14-TRAILを産生させるために用いる発現カセットには、ヒトウロキナーゼシグナルペプチドのコード配列の後にヒトFn14-TRAILのコード配列を含めた。コード配列は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株における発現強化のためにコドン最適化を行った。DNAコード配列を合成し、続いて、染色体組込みのために設計され、CHO細胞における高レベル発現のために最適化された哺乳動物発現ベクター中にサブクローニングした。
【0137】
Fn14-TRAIL発現ベクターをCHO-S細胞にトランスフェクトし、クローンプールを初期発現分析のために単離した。このクローンプールの中から、単一の高産生クローンを単離し、Fn14-TRAILタンパク質の発現をELISA、SDS-PAGEおよびウエスタンブロットなどのさまざまな方法によって分析した(図10参照)。産生レベルは、発酵培地1リットル当たりおよそ100mgのFn14-TRAILに到達するまで最適化された。
【0138】
ウエスタンブロット分析を、さまざまな培地配合物(種々のレーンに示した)中で成長させたFn14-TRAILクローンから入手した振盪フラスコ培地試料に対して行った。ウエスタンブロットのプロービングは、市販の抗ヒトTRAIL/TNFSF10 Abを一次検出用抗体として用いて行った。Fn14-TRAILの算出分子量は24.6kDである。
【0139】
高収量の多段階クロマトグラフィー精製工程を開発し、これには効率的な捕捉段階、陰イオン交換クロマトグラフィー段階およびその後の最終的なバッファー交換段階を含み、この後者では産物を製剤化バッファー中に移した。この精製工程は高度に精製されたFn14-TRAILタンパク質の単離を可能にする。精製の最終段階で採取した試料のウエスタンブロット分析(図11に対応、右端レーン)により、精製されたタンパク質が主として単量体であり、一部がホモ二量体であることが示された(図示せず)。SDS-PAGEゲル上に認められた少量の分解産物は、Fn14特異的Abによっては検出されなかったが、TRAIL特異的Abによって検出された。
【0140】
7リットルでの産生用発酵に続いて上記の精製プロセスを行ったところ、およそ300mgの精製Fn14-TRAILが得られ、これを以下に示した一連のインビトロ実験およびインビボ実験に用いた。
【0141】
ヒトFn14-Trailを用いたEAE実験‐実験手順
8週齡の雌性C57BL/6マウスにおいて、5mg/mlの熱殺菌結核菌を含む完全フロイントアジュバント(CFA)中に乳化させた125□gのミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質35-55(MOG 35-55)ペプチド(Sigma Laboratories, Israelにより合成)を左側腰部付近領域に皮下注射することにより、EAEを誘導した。その直後および再び48時間後に、マウスに300ngの百日咳毒素を接種した。CFA中のMOG 35-55ペプチドの追加注射を、7日後に右側腰部付近領域に行った。0日目から8日目までは、1日に50、100または200μgのFn14-Trailまたはビヒクルを、2回の同じ用量でマウスに皮下注射した(各群でn=4)。9日目にマウスに最後の投与を行い、1時間後に殺処理した。脾臓を採取して秤量した。Fn14-TRAIL投与とともにまたはそれを伴わずにCFA中のMOG 35-55ペプチドを9日前に接種されたマウスの鼠径リンパ節、腋窩リンパ節および腸間膜リンパ節からまたは脾臓から、プールされたリンパ節細胞(LNC)を調製した。リンパ球のエクスビボ応答を、96ウェル平底プレートの3つずつのウェルでアッセイした。1%ペニシリン ストレプトマイシン、1%グルタミンおよび5%ウシ胎仔血清(FCS)およびβ-メルカプト-エタノールを加えた0.2ml RPMI中に懸濁させた合計2×105個の細胞を、各ウェルに添加した。48時間後に、1μCiの3(H)チミジン(Amersham, UK)を各ウェルに添加し、プレートをさらに18時間インキュベートした。続いてプレートを半自動式収穫器を用いてガラス繊維フィルター上に集め、放射能を液体シンチレーションによって測定した。結果は、式:SI=刺激細胞の平均cpm/非刺激細胞の平均cpmに従って、刺激指数(SI)として表した。
【0142】
Fn14-Trailを投与したMOG免疫処置マウス(各群でn=4匹)から9日目に、プールされた脾臓リンパ球をフィコール-ハイパック勾配を用いて単離した。回収した細胞をメチレンブルーで染色して計数した。各群の脾臓当たりのリンパ球の数を提示している。
【0143】
2回の繰り返し実験のデータ(図12Aおよび12B)から、50ugから200ugの範囲で、脾細胞数の有意な用量依存的減少が示された。
【0144】
MOG免疫処置マウス(各群でn=4)においてFn14-Trail投与後の9日目に回収したリンパ節から単離したプールされたリンパ球を、MOGペプチドで72時間刺激した。インキュベーション終了の18時間前に、培養物に[3H]チミジンでパルス刺激した。増殖を[3H]チミジン取り込みによって評価し、刺激指数(刺激細胞の平均cpm/非刺激細胞の平均cpm;SI>2は有意な刺激を表す)として表した。
【0145】
そのデータ(図13に示した)は、MOGペプチドの再負荷刺激に対するリコール応答の、Fn14-Trailを介した有意な阻害を示しており、100μg/日/マウスを投与したマウスで最大の効果が得られた。
【0146】
EAEは上記のようにMOG負荷刺激によって誘導した。MOG投与後の10日目に、マウス(各群で10匹)に対して、ビヒクルまたは25、50および100μg/日のFn14-Trailを、2回に分けた用量として投与した。臨床的疾患スコアの評価のためにマウスの経過を毎日観察した。マウスの臨床的状態は以下のように等級化した:0、疾患の徴候なし;1、尾部の筋力低下;2、立ち直りに障害を生じさせるのに十分な後肢の筋力低下;3、後肢の不全麻痺;4、前肢の筋力低下を伴う対麻痺;5、四肢麻痺;6、死亡。投与は疾患誘導後の26日目(Fn14-Trailから16日)に終了した。A:すべての実験群の平均臨床スコア;B:対照群および100μg/日群の平均臨床スコア、この場合にはS.D.を示している。
【0147】
このデータ(図14A〜14Bに示した)は、明らかな閾値用量効果を伴う、EAE疾患の進行を軽減するFn14-Trailの有意な治療効果を示している。
【0148】
Fn14-Trailを用いたコラーゲン誘導関節炎‐実験手順
DBA1雄性マウスに対して、ウシ関節軟骨から調製して完全フロイントアジュバント(CFA:Difco Labs)中に懸濁させた200□gのII型コラーゲンによる負荷刺激を2回(3週間の間隔で)、尾の付け根への皮内注射によって行った。マウスの経過を毎日観察し、1つまたは複数の肢における腫脹および/または紅斑についてモニターした。疾患発病日に、マウスを対照群(ビヒクルのみを投与)および治療群(100または200□g/マウス/日のFn14-Trailを1日1回投与)に無作為に割り付けた。ビヒクルおよびFn14-Trailは皮下投与した。注射は対照群および100ug群に対しては14日間、200ug群に対しては7日間行った。マウスの経過を毎日、疾患発病から14日間にわたって観察し、その後は3日毎に観察した。四肢のすべてにおける腫脹をマイクロキャリパーを用いて測定し、齢を一致させた健康なマウスと比較した。各肢における腫脹の増分(delta)を算出し、これらの増分を合計してスコア(疾患指数)とした。
【0149】
このデータ(図15に示した)は、200ug/日用量のFn14-Trail投与による有意な治療効果を示している。特に注目されることとして、疾患指数の低下はFn14-Trail投与の中止後も少なくとも7日間持続している。
【0150】
ヒトFn14-TRAILタンパク質はアポトーシスを介して癌細胞死を誘導する
Fn14-TRAILにより作動される、癌細胞に対する細胞傷害性は、高効率的かつ特異的である
タグ付加していない精製ヒトFn14-TRAILタンパク質によって媒介される腫瘍細胞の細胞傷害性を、いくつかのヒト腫瘍細胞種を用いて検討した。TWEAK依存性でありかつTRAIL受容体(DR5)を発現することが知られているヒトヘパトーマ癌細胞株SK-Hep1は、Fn14-TRAILに対する感受性が非常に高く、この腫瘍株に対する死滅効果が極めて高い(EC50=0.04nM)ことが示された(図16A)。同様の効力は、他の2つの肝腫瘍細胞株であるHuh 7およびHepG2でも実証された(データは図示せず)。これらの肝腫瘍株に対する効果とは対照的に、同一濃度のFn14-TRAILと非癌性細胞株または非肝臓性細胞株とのインキュベーションでは、死滅効果は全く示されなかった。例えば、発明者らのFn14-TRAILは、表面TRAIL受容体を持たないヒト悪性B細胞株Rajiに対しても(図16B)、TRAIL受容体DR5を発現する非悪性ヒト肝細胞株NKNT3に対しても(図16C)、ヒト胎児肝細胞株FH-Bに対しても(図16D)死滅効果を示さなかった。これらの結果は、Fn14-TRAILが癌細胞を効率的かつ特異的に死滅させることを立証している。
【0151】
Fn14-TRAILの殺腫瘍活性を、その構成要素部分の組み合わせを単に送達することによって達成することはできない
Fn14-TRAIL融合タンパク質の殺腫瘍効果を、その構成要素部分を組み合わせて加えた場合の効果と比較した。この目的のために、同程度のモル濃度の精製Fn14-TRAIL、TRAILの可溶性細胞外ドメイン(sTRAIL)のみ、可溶性Fn14をIgG1のFcドメインと融合させたもの(Fn14-Fc)、またはこの両者の組み合わせ(Fn14-Fc+sTRAIL)のいずれかとのインキュベーション後に、ヘパトーマ癌細胞株SK-Hep1の細胞生存度を測定した。Fn14-Fcはこの癌細胞株に対して全く殺腫瘍活性を示さなかったが、sTRAILはある程度の死滅効果を示した。しかし、Fn14-FcおよびsTRAILの両方の組み合わせでさえも、融合タンパク質の殺腫瘍効果は達成しなかった(図17)。
【0152】
Fn14-TRAILはアポトーシスを誘導することによって癌細胞を死滅させる
Fn14-TRAILの死滅効果を機序に関して探るために、ヒトヘパトーマ癌細胞株SK-Hep1の細胞を、種々の濃度の精製Fn14-TRAIL、可溶性Fn14をIgGのFcドメインと融合させたもの(Fn14-Fc)のみ、TRAILの可溶性細胞外ドメイン(sTRAIL)のみ、またはこの両者の組み合わせ(Fn14-Fc+sTRAIL)とともにインキュベートした。各々のタンパク質とのインキュベーションの後に、アポトーシスを来した細胞のパーセンテージをアネキシンV/PI染色による評価で決定するために、処理した細胞をFACSによって分析した(図18)。この分析により、Fn14-TRAILの死滅効果はアポトーシスに基づくことが指し示された。注目されることに、可溶性TRAIL(sTRAIL)のみでもアポトーシス誘発活性は示されたが、これは最も高濃度の場合に限られ、30ng/ml濃度では融合タンパク質が構成要素のみまたはその組み合わせよりも大幅に優れていた。
【0153】
本発明の特定の態様を例示の目的で説明してきたが、当業者には、添付した特許請求の範囲において定義されている本発明を逸脱することなく、本発明の細部のさまざまな変更を加えうることは明白であると考えられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のドメインがTWEAKリガンドと結合するポリペプチドであり、かつ第2のドメインがTRAIL受容体と結合するポリペプチドである、該第1のドメインおよび該第2のドメインを含む融合タンパク質。
【請求項2】
前記第1のドメインがFn14タンパク質の細胞外ドメインの少なくとも一部分であり、かつ前記第2のドメインがTRAILタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも一部分である、請求項1記載の融合タンパク質。
【請求項3】
SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:2である、請求項1記載の融合タンパク質。
【請求項4】
第1のドメインがFn14タンパク質の細胞外ドメインの少なくとも一部分であり、かつ第2のドメインがTRAILタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも一部分である、該第1のドメインおよび該第2のドメインから本質的になる融合タンパク質。
【請求項5】
前記第1のドメインがヒトFn14であり、かつ前記第2のドメインがヒトTRAILである、請求項1記載の融合タンパク質。
【請求項6】
SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:2に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、融合タンパク質。
【請求項7】
請求項1記載の融合タンパク質を含む、薬学的組成物。
【請求項8】
自己免疫疾患を有する患者において自己免疫疾患を治療または改善する方法であって、
請求項7記載の融合タンパク質を投与する段階を含む方法。
【請求項9】
前記自己免疫疾患が多発性硬化症である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
投与が非経口的である、請求項8記載の方法。
【請求項11】
患者においてT細胞の増殖および分化を阻害する方法であって、
そのような治療を必要とする患者にFn14/TRAIL融合タンパク質を投与する段階を含む方法。
【請求項12】
第1のドメインがTWEAKリガンドと結合するポリペプチドであり、かつ第2のドメインが阻害機能を有するポリペプチドである、該第1のドメインおよび該第2のドメインを含む融合タンパク質。
【請求項13】
阻害機能を有する前記ポリペプチドが、FasL、TNF、PDL-1、PDL-2、B7x、B7-H3、B7アゴニスト、CD100、Cd5、Cd72、Ep-CAM、Fcγ-RII、CD22、CD66a、PIR-BおよびCD31からなる群より選択される、請求項12記載の融合タンパク質。
【請求項14】
阻害タンパク質がFasLである、請求項12記載の融合タンパク質。
【請求項15】
自己免疫疾患を有する患者において同種免疫疾患を治療または改善する方法であって、
請求項7記載の融合タンパク質を投与する段階を含む方法。
【請求項16】
癌を有する患者において癌を治療または改善する方法であって、
請求項7記載の融合タンパク質を投与する段階を含む方法。
【請求項17】
前記癌が乳癌である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記癌が結腸癌である、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記癌が肺癌である、請求項16記載の方法。
【請求項20】
前記癌が黒色腫である、請求項16記載の方法。
【請求項21】
前記癌が血液悪性腫瘍である、請求項16記載の方法。
【請求項22】
前記癌が卵巣癌である、請求項16記載の方法。
【請求項23】
前記癌が肝臓癌である、請求項16記載の方法。
【請求項24】
請求項7記載の融合タンパク質をコードする遺伝子配列の有効量を患者に投与することによって、該患者において自己免疫疾患、同種免疫疾患または癌を治療または改善する方法。
【請求項1】
第1のドメインがTWEAKリガンドと結合するポリペプチドであり、かつ第2のドメインがTRAIL受容体と結合するポリペプチドである、該第1のドメインおよび該第2のドメインを含む融合タンパク質。
【請求項2】
前記第1のドメインがFn14タンパク質の細胞外ドメインの少なくとも一部分であり、かつ前記第2のドメインがTRAILタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも一部分である、請求項1記載の融合タンパク質。
【請求項3】
SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:2である、請求項1記載の融合タンパク質。
【請求項4】
第1のドメインがFn14タンパク質の細胞外ドメインの少なくとも一部分であり、かつ第2のドメインがTRAILタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも一部分である、該第1のドメインおよび該第2のドメインから本質的になる融合タンパク質。
【請求項5】
前記第1のドメインがヒトFn14であり、かつ前記第2のドメインがヒトTRAILである、請求項1記載の融合タンパク質。
【請求項6】
SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:2に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、融合タンパク質。
【請求項7】
請求項1記載の融合タンパク質を含む、薬学的組成物。
【請求項8】
自己免疫疾患を有する患者において自己免疫疾患を治療または改善する方法であって、
請求項7記載の融合タンパク質を投与する段階を含む方法。
【請求項9】
前記自己免疫疾患が多発性硬化症である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
投与が非経口的である、請求項8記載の方法。
【請求項11】
患者においてT細胞の増殖および分化を阻害する方法であって、
そのような治療を必要とする患者にFn14/TRAIL融合タンパク質を投与する段階を含む方法。
【請求項12】
第1のドメインがTWEAKリガンドと結合するポリペプチドであり、かつ第2のドメインが阻害機能を有するポリペプチドである、該第1のドメインおよび該第2のドメインを含む融合タンパク質。
【請求項13】
阻害機能を有する前記ポリペプチドが、FasL、TNF、PDL-1、PDL-2、B7x、B7-H3、B7アゴニスト、CD100、Cd5、Cd72、Ep-CAM、Fcγ-RII、CD22、CD66a、PIR-BおよびCD31からなる群より選択される、請求項12記載の融合タンパク質。
【請求項14】
阻害タンパク質がFasLである、請求項12記載の融合タンパク質。
【請求項15】
自己免疫疾患を有する患者において同種免疫疾患を治療または改善する方法であって、
請求項7記載の融合タンパク質を投与する段階を含む方法。
【請求項16】
癌を有する患者において癌を治療または改善する方法であって、
請求項7記載の融合タンパク質を投与する段階を含む方法。
【請求項17】
前記癌が乳癌である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記癌が結腸癌である、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記癌が肺癌である、請求項16記載の方法。
【請求項20】
前記癌が黒色腫である、請求項16記載の方法。
【請求項21】
前記癌が血液悪性腫瘍である、請求項16記載の方法。
【請求項22】
前記癌が卵巣癌である、請求項16記載の方法。
【請求項23】
前記癌が肝臓癌である、請求項16記載の方法。
【請求項24】
請求項7記載の融合タンパク質をコードする遺伝子配列の有効量を患者に投与することによって、該患者において自己免疫疾患、同種免疫疾患または癌を治療または改善する方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図17】
【図18】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2011−526891(P2011−526891A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516335(P2011−516335)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/003886
【国際公開番号】WO2010/005519
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(503278795)ユニバーシティ オブ ペンシルベニア (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/003886
【国際公開番号】WO2010/005519
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(503278795)ユニバーシティ オブ ペンシルベニア (2)
【Fターム(参考)】
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