Gタンパク質共役型受容体及びその標的のようなリガンド/受容体対の生物学的相互作用を評価するための、並びに薬物のスクリーニングのための、アフィニティーキャピラリー電気泳動法
本発明は、親和性リガンド、特に弱い結合のリガンドのための化合物ライブラリーをスクリーニングするためのキャピラリー電気泳動に基く方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特別な標的に対するリガンドのための化合物ライブラリーをスクリーニングするための、特に弱い結合のリガンドのためのスクリーニングをするためのキャピラリー電気泳動法に関する。
【背景技術】
【0002】
新規な化合物及び既存の化合物のライブラリーのスクリーニングのために使用可能な多くのアッセイが存在し、そのそれぞれは特別な利益及び情報を提供するために考案されている。結合アッセイは、化学的骨格又は特異的化学成分が、関心のある標的に結合するものであるか否かを確認するために良好な出発点である。このようなアッセイにおいて、関心のある標的は、ビーズ、クロマトグラフィーの支持体又はマイクロタイターウェルの壁面のような固体の基質上に不動化することができる。別の方法として、標的は、細胞の膜上に発現させることができ、これは、次いで不動化される。次いで不動化された標的は、試験化合物と共にインキュベートされ、そして結合は、熱量測定法又は蛍光法を使用して検出される。熱量測定又は蛍光法を使用する結合の相互作用は、更に溶液相中のタンパク質を使用して決定することもできる(例えば、蛍光偏光法)。
【0003】
高処理能力、頑強性及び単純性の全ての必要性を提供する別のスクリーニングの方法は、キャピラリー電気泳動法である。キャピラリー電気泳動法は、適用された電場の影響下の細い毛細管を通るイオンのシフトに依存する。電位のいずれかの末端の電極に対して逆の電荷のイオンは、その電極に対して移動するものである。従って、陰に荷電したイオンは、正に荷電した電極に対してシフト又は移動するものであり、そして正に荷電したイオンに対しては逆である。これは、“電気泳動移動度”として知られている。キャピラリー電気泳動法は、それぞれのイオンが、その相対的水力学的大きさと比較した電荷のイオン量、即ちその質量対電荷比のために、高い分解能を伴って異なった速度で移動するものであるために、強力な手段である。イオンの実際の移動度は、イオンがキャピラリー電気泳動中に存在する環境を考慮に入れる。例えば、電気泳動移動度は、粘度が変化し、そして異なった電位が適用された場合、実際の移動度とは異なるものである。イオンは、更に毛細管の内部ガラス表面上の陰の電荷がカソードに向かう液体の総体流を生じる場合に起こる、荷電していないリガンドの移動及び検出を可能にする電気浸透流の影響下でシフトすることができる。
【0004】
典型的なキャピラリー電気泳動装置は、カソード、アノード、高電位電力供給源、及び毛細管を満たし、そして毛細管のそれぞれの末端の緩衝室中に存在する緩衝水溶液を含む。アノード及びカソードは、毛細管末端の二つの緩衝室中に浸漬される。装置は、更に検出器並びにデータ出力及び処理装置を含む。
【0005】
試料は、二つの異なった方法によって毛細管に導入される。電気運動注入は、電荷を保有する分析物を導入するために使用することができ、そして毛細管の一端を注入される試料に入れ、そして電場を短時間適用することによって達成される。このような条件下で、試料の分析物(類)は、その電気泳動移動度に基づいて毛細管中に移動する。水力学的注入は、更に一般的な方法であり、そして毛細管の一端への圧力又は真空の適用を必要とする。毛細管の二つの逆末端間の圧力差は、分析物を、その後の電気泳動分析のために、毛細管に導入する。
【0006】
注入後、次いで分析物の移動は、毛細管のそれぞれの末端の緩衝室間に適用され、そして高電位電力供給源によって電極に供給される電場によって開始される。電気泳動の方向は、分析物の電荷によって、アノード(注入端)からカソード(出口端)へ、又はその逆のいずれかであることができる。十分な電気浸透流が存在する場合、正又は負の全てのイオンは、アノード(注入端)からカソード(出口端)へ同じ方向で毛細管を通って移動する。分析物は、これらがその移動度の差によって移動する間に分離し、そして毛細管の出口端の近辺で検出される。検出器の出力は、積分器又はコンピューターのようなデータ出力及び処理装置に送られる。次いでデータは、検出器の反応を時間の関数として報告する電気泳動図として表示される。分離された成分は、電気泳動図中で、異なった移動時間、ピーク形状、及びピーク面積を持つピークとして出現することができる。
【0007】
キャピラリー電気泳動法によって分離された分析物は、UV又はUV−可視光吸光度或いは蛍光(天然の蛍光、導入された蛍光標識に対する化学的修飾又はレーザー誘導蛍光)によって検出することができる。毛細管は、典型的には安定性を増加するために不透明なポリマーで外部から被覆される。従って、小さい窓を被覆に食刻しなければならず、そして次いで検出器(UV又はLIF)はその窓に並べられる。
【0008】
試料の成分の同一性を得るために、キャピラリー電気泳動は、質量分光計に直接接続することができる。この目的のために、毛細管の出口は、通常エレクトロスプレーイオン化を使用するイオン供給源に導入される。次いで得られたイオンは質量分光計によって分析される。
【0009】
化合物のスクリーニングのためのキャピラリー電気泳動法の使用は、他社によって開発されている。例えば米国特許第6,299,747号、米国特許第6,524,866号、米国特許第6,432,651号及び米国特許第6,837,977号(Cetek Corporation)は、複雑な生物学的物質の試料からの潜在的治療リガンドを確認し、そして順位づけするためのキャピラリー電気泳動法の使用を記載している。四つの特許の全てに記載されている方法は、関心のある標的を複雑な生物学的物質と共にインキュベートすることを本質的に必要とする。次いで、競合するリガンドが混合物に加えられる。更なるインキュベーション後、標的/物質/リガンドの混合物は、キャピラリー電気泳動装置に注入され、そして標的又は競合的リガンドの移動度が追跡される。記載されている全ての方法の目的は、関心のある標的に対してある程度の親和性(結合強度)を伴って結合する化合物を確認することである。この特許権所有者は、化合物に強力に結合する化合物に特に関心があり、そしてこの方法は、弱い結合の化合物、特にこのような弱い結合の化合物が生物学的混合物中に高い濃度で存在する場合、それを上回って、このようなリガンドの確認を最大にするように設計されている。
【0010】
一般的に、弱い結合の化合物又はリガンドは、10μMより大きい解離定数(Kd)及び1.0秒−1より大きい解離速度定数(off−rate)(Koff)を有するとして確認される。中程度ないし緊密な結合のリガンドは、10nMないし10μMのKd及び0.01ないし1.0秒−1のKoffを有する。強い結合のリガンドは、10nMより小さいKd及び0.01秒−1より小さいKoffを有する。
【0011】
特に、Cetekの方法は、複雑な生物学的混合物中に存在する化合物の解離、及び競合的リガンドによる置換に依存している。弱い結合の化合物が毛細管中への注入において標的に結合したとしても、低い親和性による速い解離速度定数は、標的/弱い化合物複合体が、キャピラリー泳動実行(run)の最後に検出されないことを意味する。
【0012】
然しながら、時には、弱い結合の化合物を検出することは好ましいことである。特に、弱い化合物は、これらが、主導的な薬物化合物への更なる最適化のための優れた化学的出発点を提供し、そして潜在的な薬物の可能性のある化合物の減少する集団を拡大することができるために、多くの今日の薬物発見のスクリーニングプログラムにおいて好まれる。例えば、“断片ベースのスクリーニング”は、治療標的に対する弱い結合を持つ低分子量の化合物を確認するための一次スクリーニングアッセイから出発する通常の技術である。これらの弱い化合物は、その後生物物理学的及び合成化学的方法の組合せにより最適化される。一次断片ベースのアッセイは、弱い親和性を検出するために非常に高い化合物濃度でスクリーニングすることが可能でなければならない。然しながら、殆どの標準的な生化学及び細胞ベースのアッセイは、基質干渉効果及び他の理由によりこの目的のために使用することができない。従って、現時点の断片ベースの方法は、NMR、X線結晶学、及び等温熱量測定のような生物物理学的方法を、これらの方法が高濃度の試験化合物に許容性を示すことが可能であるためにスクリーニングアッセイとして使用している。
【0013】
然しながら、全てのこれらの方法は、大規模なアッセイの開発時間、大量の試薬(例えば、標的及び試験化合物の試料)量の必要性、及び低い処理量のような欠点及び制約を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第6,299,747号
【特許文献2】米国特許第6,524,866号
【特許文献3】米国特許第6,432,651号
【特許文献4】米国特許第6,837,977号
【発明の概要】
【0015】
従って、現時点で既知の方法の欠点を経験しない、そしてアッセイの基本的要求、即ち高処理量、頑強性及び単純性を満たす、弱い結合の化合物を確認するための別の方法に対する必要性が存在する。
【0016】
本発明は、先に記載した現時点の方法の不利益を実質的に克服し、そして弱いリガンドを検出する能力、高濃度の試験化合物に対する許容性、迅速及び単純なアッセイ開発、生理学的試験条件、低い試薬消費量、及び自動化に対する潜在性を含むリガンドのスクリーニングのための利益を提供する、キャピラリー電気泳動法に基づく競合的結合アッセイを提供する。
【0017】
特に、本発明はキャピラリー電気泳動法に関し、その方法は以下の工程を含んでなる:
i.毛細管を、電気泳動緩衝液及び関心のある生物学的標的で満たし;
ii.所望により試験化合物を、電気泳動緩衝液に加え;
iii.注入緩衝液及び競合リガンド、並びに所望により試験化合物を含んでなる注入試料を調製し;
iv.注入試料を、毛細管の一端に導入し;
v.注入試料を、キャピラリー電気泳動にかけ;
vi.競合リガンドの移動特性を決定し;そして
vii.試験化合物の非存在及び存在における、競合リガンドの移動特性を比較すること。
【0018】
従って、本発明は、関心のある標的に対する化合物の結合を、そして特に弱い結合の化合物の結合を検出するための単純な、そして頑強な方法を提供する。Cerekの方法は、弱い結合の化合物の、これらが検出されないことを確実にするために、その解離に依存しているが、本発明の方法は、弱い結合の化合物の解離の問題を、化合物を電気泳動緩衝液中に加え、そして標的、競合リガンド、及び試験化合物間で完全な平衡に到達させないことによって克服している。
【0019】
更に、本発明の方法は、複雑な長いアッセイの開発に対する要求、又はアッセイを最適化するための異なった親和性の既知の試験化合物の必要性を克服している。多くの場合、このような既知の化合物は入手不可能である。
【0020】
更に詳細には、この方法は、“競合リガンド”の電気泳動移動度を、キャピラリー電気泳動法の高い分解能の技術を使用してモニターする。競合リガンドは、関心のある治療標的に対する親和性を有することに基づいて選択される既知のリガンドである。図1に示すように、競合リガンドの試料は、試験化合物を伴う又は伴わない、標的を含有する電気泳動緩衝液で満たされた毛細管に注入(水力学的又は電気運動的注入)される。試験化合物は、更に、強力にUV吸収性の化合物において起こることができる空席ピークを減少するために、注入試料中に含まれることもできる。高い電場が適用され、そして競合リガンドは、その質量と電荷の比に基づいて毛細管を通って移動する。非荷電の競合リガンドにおいて、電気浸透性は、競合リガンドの移動を容易にするために使用することができる。毛細管を通る競合リガンドの移動度は、注入が行われる末端から最も離れて位置する毛細管の末端の近辺に置かれた検出器により、UV吸収法又はレーザー誘導蛍光法(LIF)のいずれかによってモニターすることができる。別の方法として、質量分光法を毛細管の末端の検出器として使用することができる。検出器のデータは、電気泳動図として表示される。
【0021】
キャピラリー電気泳動装置は、細い開放端の毛細管を含んでなり、その中に標的及び試験化合物が電気泳動緩衝液中に導入され、そして競合リガンドがその後注入される。毛細管は、理想的には概略2μmないし250μmの範囲の内径を持つ溶融石英ガラスで構成される。毛細管の内部壁面は、被覆されていないか又はポリアクリルアミドのようなポリマーで、分析物の吸着を減少するために被覆されている。典型的な毛細管の全長は、約7cmないし約20cmの範囲である。より長い毛細管を、分解能を改良するために使用することができる。この方法は、更に溶融石英又はポリマーのマイクロチップのような平坦な面中の解放溝又はチャンネルの形態の毛細管で行うことができる。
【0022】
毛細管は、理想的には標的、試験化合物及び競合リガンドと適合性である電気泳動緩衝液で満たされる。特異的標的のために適当な特別な緩衝液の条件は、当業者にとって公知の方法による実験によって決定することができる。理想的には、電気泳動緩衝液は、制約されるものではないが、HEPES、MES、TAPS、CAPSO、TES、及びTrisのような生理学的緩衝液である。これらの緩衝液は、これらが、生物学的活性のために生理学的に関連するアッセイ条件を提供し、そして標的をその機能的に活性な状態でスクリーニングされることを可能にするような、タンパク質のような生物学的分析物のためにしばしば使用される。キャピラリー電気泳動法のために使用される生理学的緩衝液は、更にこの方法のために適合性の電気泳動条件(低い電流、高い電場強度)を提供する。多くの他の種類の緩衝液及び塩、界面活性剤、動的被覆及び補因子のような添加物も、更に使用することができ、そしてこのような緩衝液及び添加物は、当業者にとって公知であるものである。電気泳動緩衝液を選択する場合に考慮する因子は、それが比較的低い電流(例えば、<100μA)を与えて、生物学的標的に対して有害であり得るジュール熱を防止すべきことである。別の方法として、毛細管のカラムを冷却して、加熱を減少することができる。
【0023】
本発明の方法において使用するための標的は、純粋又は不純な、それに対する親和性リガンドが望まれるいずれもの生物学的分子、分子複合体又は他の生物学成分として定義される。標的は、制限されるものではないが、酵素、受容体、レポーター、Gタンパク質、トランスポーター、イオンチャンネル、機能性タンパク質、調節タンパク質、核酸、全細胞及び膜標本を含む。
【0024】
特に関心のあるものは、制約されるものではないが、Gタンパク質共役受容体(GPCR)を含む膜結合型タンパク質及び膜結合性タンパク質である。このような膜結合型タンパク質及び膜結合性タンパク質は、細胞標本、膜標本のようなその天然の形態で、又はそれによってタンパク質がもはや膜と結合していない、そして制約されるものではないが、変異誘発、界面活性剤、アジュバント、ミセル形成及び脂質小胞形成を含む技術によって安定化された形態で使用することができる。
【0025】
小分子の、膜タンパク質との直接の相互作用を証明するために使用可能な非常に僅かな生物物理学的技術が存在する。典型的には、断片のスクリーニングは、表面プラズモン共鳴法(SPR)及び標的不動化NMRスクリーニング(TINS)を使用して行われる。これらの両方の技術の不利益は、これらが、タンパク質標的の不動化を必要とすることである。これは、しばしば標的の活性の維持を確実にするための長い最適化を必要とする。然しながら、本発明のキャピラリー電気泳動法の利点は、タンパク質が不動化又は繋留を必要とせず、反応を生理学的緩衝液中の溶液中で行うことができ、そしてその結果、アッセイの開発時間は迅速である。
【0026】
本発明の方法のもう一つの利点は、標的の修飾を必要としないか又は最小であることであり、これによって標的をその実質的に天然の立体構造で、修飾又は結合を必要としないか又は最小で使用することを可能にする。対照的に、他のスクリーニングアッセイは、標的の化学的修飾又は標的の固体基質への不動化を必要とする。これらの工程は、高価であり、時間がかかり、タンパク質の活性を減少又は変化することができ、そして異常な結果を生じることができる。
【0027】
キャピラリー電気泳動法は、微小規模の技術であるために、スクリーニングのために、少量の標的、試験化合物及び競合リガンドのみを必要とする(典型的にはアッセイ当たり1マイクログラムより少ない)。対照的に、NMR及び等温熱量測定法のような別の技術は、大量の生物学的物質を消費することができる。従って、標的は、理想的にはキャピラリー電気泳動アッセイの泳動当たり、約0.1nM及び100μM間の濃度で存在する。
【0028】
化学的、生物学的、合成の生物学的な又は前記のいずれもの混合物から誘導された試験化合物を使用することができる。理想的には、試験化合物は、断片、特に化学的断片である。化合物が概略100ないし400ダルトン、好ましくは概略100ないし300ダルトンの分子量の範囲である場合、断片が、大きい分子より高いリガンド効率を有することができるため、好都合である。リガンド効率は、その大きさに対して正規化されたリガンドの結合エネルギーであり、そして高いリガンド効率を持つ化合物は、化学的最適化のための出発点として更に適していることができる。この方法は、関心のある標的に対して中程度又は強力な親和性を有する試験化合物及び断片を検出することが可能であるが、弱い親和性(例えば、Kd>10μM)を有する化合物の研究が、特に好ましい。これは、殆どの現時点で既知の方法が、中程度及び強力な親和性を持つ化合物のみを検出するために最適化されるために、潜在的な治療剤の有用な小集団を研究することを可能にする。表1は、概略のリガンドの親和性を提供する:
【0029】
【表1】
キャピラリー電気泳動緩衝液は、殆どの生化学的及び細胞ベースアッセイとは異なり、出力に不都合な影響を伴うことなく、又は最小で、非常に高い濃度(2mM迄)の試験化合物を許容することが可能である。これは、キャピラリー電気泳動法の分離の構成要素が、人為的結果の偽の正/負を防止することを援助するためであると信じられる。従って、試験化合物は、理想的には約2mMまでの濃度で緩衝液中に存在する。
【0030】
本発明の方法において使用される競合リガンドは、化学成分(entity)、ペプチド、タンパク質、天然の産物、核酸又は合成の生物学的分子のようないずれもの適した分子であることができる。競合リガンドは、標的に結合し、そしてキャピラリー電気泳動によって泳動された場合、検出可能な標的のピークの複合体、競合リガンドのピークのシフト、又は減少した未結合の競合リガンドのピーク面積を生じなければならない。競合リガンドの結合部位は知る必要はないが、結合部位の知識は好ましい。競合リガンドは、試験化合物と同じ部位に結合することができるか、又は標的上のアロステリック部位に結合することができる。好ましくは、競合リガンドは、水性条件中で可溶であり、そしてKd=10μMより強力な標的に対する親和性を有する。競合リガンド又は競合リガンド/標的複合体は、更にUV/可視光吸光法、レーザー誘導蛍光法、又は質量分光法のようなキャピラリー電気泳動法に適合性の方法によって検出可能でなければならない。好都合には、競合リガンドは、0.1nM又はそれより大きい、好ましくは約10μM及び2mM間の濃度で、毛細管に注入される。
【0031】
本発明の方法の有意な利点は、試験化合物より強い親和性を有する競合リガンドを使用し、そして高濃度で注入する場合(検出のために、高濃度の競合リガンドを必要とすることができる)でさえ、弱い結合の試験化合物を検出する能力である。全ての成分の正常な平衡状態において、競合リガンドは、弱い試験化合物を完全に置換するものであり、そして従って試験化合物は検出不可能であるものである。実際に、これは、Cerekによって記載されている方法において見られる。然しながら、本発明の方法において使用される高い電場及び速い泳動時間は、電気泳動緩衝液による競合リガンドの急速な移動をもたらし、そして従って競合リガンドは、試験化合物を完全に置換するために十分な時間を有しない。従って、標的に対して弱い親和性を有する試験化合物は、検出可能となる。
【0032】
本発明の方法の原理は、次のとおりである。緩衝液中に試験化合物を含まない場合、標的は、移動する競合リガンドと相互作用し、そしてリガンドの質量と電荷の比を変化し、競合リガンドの移動度の変化を生じる。観察される結果は、標的に対する競合リガンドの親和性に依存する。高親和性の競合リガンドにおいて、相互作用のオン−オフ反応速度が、泳動時間に対して遅い場合、いずれもの未結合競合リガンドに加えて、競合リガンド/標的複合体のピークが観察されるものである。弱い親和性を持つ競合リガンドにおいて、相互作用のオン−オフ反応速度が泳動時間に対して速い場合、リガンドが標的と急速な平衡で相互作用するために、未結合の競合リガンドのピークは移動時間中でシフトするものである(非常に僅かな安定な複合体が形成されるものである)。第三の可能性は、競合リガンドのあるものが、電気泳動中に標的と結合し、観察可能な競合リガンド/標的複合体のピークを生じることなく、減少した未結合競合リガンドのピーク面積をもたらす。これらは、親和性キャピラリー電気泳動法の良く知られた原理である。
【0033】
次いで試験化合物が、標的を伴う緩衝液に加えられる。試験化合物及び標的間に結合が起こる場合、あるパーセントの標的が、試験化合物の親和性及び濃度によるが、いずれの時点においても結合するものである。結果として、より少ない標的が注入された競合リガンドと、これが毛細管を通る間に結合するために使用可能である。結果としての競合リガンド/標的複合体のピーク、競合リガンドのピークのシフト、又は競合リガンドのピーク面積の減少は、減少又は排除されるものである。従って、二つの電気泳動図(試験化合物を伴う及び伴わない)が比較される。
【0034】
競合リガンドの検出は、理想的にはUV/可視光吸光法又はレーザー誘導蛍光検出を使用することにより達成される。標準的なキャピラリー電気泳動装置において、検出器は、分析物(類)の移動をモニターするために毛細管の末端の近辺に置かれる。典型的には、小さい窓が、毛細管を破損から保護するために典型的に存在する外部のポリアミド被覆に食刻される。UV/可視光又はLIF検出器が、この窓に並べられる。競合リガンド又は競合リガンド/標的複合体は、それが検出されることを可能にする特質を必要とする。例えば、リガンドは、UV/可視光吸光法によるその検出を可能にする発色団を含有することができる。別の方法として、リガンドは、LIF検出器が使用される場合、レーザーによって励起された場合に蛍光を発する蛍光性分子(共有的に結合された蛍光染料のような)を含むことができる。次いで競合リガンドの移動度は、電気泳動中モニターすることができる。
【0035】
UV/可視光吸光法又はレーザー誘導蛍光法の出力は、典型的には電気泳動図として表示される。電気泳動図は、検出の単位に対する時間がプロットされるHPLCクロマトグラムと非常に似ている(例えば、吸光単位又は蛍光強度)。クロマトグラムのように、分析物は、特徴的な移動時間、ピーク面積、ピーク高さ、ピーク形状等を伴うピークによって表される。未結合競合リガンドのピークは、標的に結合したピーク又はシフトしたピークと比較して異なったピーク特性を有し、操作者が、得られたピークを、一つ又はそれより多い試験化合物を含む電気泳動の泳動から得られるピークと比較することによって、結合の程度を決定することを可能にする。
【0036】
質量分光法(MS)を、検出器として使用することも可能である。商業的なキャピラリー電気泳動−MS装置及び適したインターフェースは入手可能である。UV及びLIF検出とは異なり、MS検出器は、毛細管の末端に置かれ、そして分析物は、通常、MSと適合性の緩衝液を提供するシース(sheath)フローのようなインターフェースを経由して、毛細管からMSへ直接流れる。
【0037】
本発明の方法を行うために、競合リガンドは、表1にによって定義したとおりの、標的に対して中程度ないし強力な親和性を有するものが選択される。競合リガンドは、使用される検出法によるが、UV/可視光吸光法、LIF検出法又は質量分光法によって検出可能でなければならない。
【0038】
最適なキャピラリー電気泳動条件は、検出可能な競合リガンドのピークを得るように決定される(例えば、電気泳動及び注入緩衝液の組成並びにpH、温度、電位、注入時間、競合リガンド濃度、UV/LIF検出、被覆された対被覆されない毛細管、等)。これらの条件を最適化することは、良好な(例えば、>3Xのシグナルと雑音の比、ピーク幅<1分)、再現性のある(例えば、CV<10%)競合リガンドのピークを生じるための、緩衝液、泳動条件、及び毛細管の種類の一団の試験を含む。全てのこれらのパラメーターは、キャピラリー電気泳動法の当業者にとって公知である。
【0039】
次いで、容易に検出可能な、競合リガンド/標的複合体のピーク、競合リガンドの移動のシフト、又は未結合競合リガンドのピーク面積の減少を与える電気泳動緩衝液に加えられる標的の最適濃度(通常標的の消費を減少するために最低の濃度)が決定される。この目的のために、標的濃度は、再現性(例えば、CV<10%)の特性が達成されるまで、電気泳動緩衝液中で滴定される。
【0040】
試験化合物(類)は、所望するスクリーニング濃度(例えば、500μM)で、電気泳動緩衝液に加えられる。試験化合物は、電気泳動緩衝液中に存在する標的と平衡に達するものである。化合物が十分に可溶性であることを条件に、より高い処理量のために、多数の試験化合物を混合することができる。試験化合物は、更に結果を不明瞭にすることができる空席(負の)ピークを減少するために、注入試料中に加える必要があり得る。空席ピークは、試験化合物が強力なUV吸光を有し、そして電気泳動緩衝液中にのみ存在し、そして注入試料中に存在しない場合に、UV検出に伴って起こることができる。
【0041】
標的/試験化合物の平衡が達成された後、競合リガンドが毛細管に加えられ、そして競合リガンド/標的複合体のピーク又は競合リガンドの移動がモニターされる。競合リガンド/標的複合体のピークの減少、競合リガンドの移動時間のシフト、又は未結合競合リガンドのピーク面積の増加が観察された場合、これは、試験化合物が、競合リガンドの(又はアロステリックな)結合部位で標的に結合したことを示す。
【0042】
次いで、異なった濃度の試験化合物を試験し、そして競合リガンド/標的複合体のピーク面積、未結合の競合リガンドのピーク面積、又は競合リガンドの移動度のシフト時間のいずれかに対する試験化合物の濃度をプロットすることによって、用量反応曲線を作成することができる。
【0043】
本発明は、ここで以下の図面によって例示される非制約的実施例によって記載される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、標的及び試験化合物で予備処理された電気泳動緩衝液を伴うキャピラリー電気泳動装置を示す。競合リガンドは、図の左側で毛細管中に注入され、そして電場が適用された後、競合リガンドを、試験化合物及び標的を含有する電気泳動緩衝液により駆動する。検出は、図の右手側の毛細管の末端の近辺の窓で行われる。
【図2】図2は、キャピラリー電気泳動ベースの方法が、高濃度でスクリーニングされた場合、弱い結合の試験化合物を検出することを示す。下部のプロットにおいて、500μMの弱い結合の試験化合物が、競合リガンド/標的(CL/TG)複合体のピークを有意に減少し、標的(ヒトシクロフィリンA)に対する弱い試験化合物の結合を示す。下部の三つのプロットにおいて、未結合の競合リガンドのピークは、毛細管の壁面との標的の相互作用の結果としての減少した電気浸透流のために、僅かに遅れて移動している。下部の二つのプロットにおける1.25分の大きい空席(vacancy)(負の)ピークは、電気泳動緩衝液中に存在するUV吸収性の試験化合物のためである。
【図3】図3は、ヒトHsp90に結合する既知のリガンド(CCT018159)の検出を示す。上部の波形は、競合リガンドのラディシコール単独の泳動を示す。二番目の波形は、標的Hsp90が電気泳動緩衝液に加えられた場合の、ラディシコールのピークの非常に遅い移動時間へのシフトを示す。増加された量の試験化合物CCT−1018159の添加(三番目及び四番目の波形)は、より少ないHsp90が、ラディシコールを結合するために使用可能となるために、ラディシコールのシフトの滴定可能な阻害をもたらす。
【図4】図4は、二つの化学的断片を含む三つの更なる弱い結合のHsp90リガンドの検出を示す。上部の波形は、競合リガンドのラディシコール単独の泳動を示す。二番目の波形は、Hsp90が電気泳動緩衝液に加えられた場合の、ラディシコールのピークの非常に遅い移動時間へのシフトを示す。三番目の波形は、50μMで試験された場合の、既知のリガンドSEL−100506の検出を示す。三番目及び四番目の波形は、500μMで試験された場合の二つの化学的断片SEL−100509及びSEL−100508の検出を示す。
【図5】図5は、被覆された毛細管中の280nmにおけるマレイン酸チモロール(300μM)の電気泳動図を示す。チモロールは、3.3分で、続いてDMSOは10.6分で移動する。条件:泳動緩衝液はTrisHCl(1−mM、pH7.5)、分離は15kVであった。電流は、細線(clean line)で示す(約7.5μA)。
【図6】図6は、Tris緩衝液を異なった緩衝液濃度で含有する溶液に、15kVの分離電位を適用した場合の被覆された毛細管中で発生された電流(μA)を示す。
【図7】図7は、TrisHCl(pH7.5)緩衝液の濃度を変化させたときの280nmにおけるチモロールの移動時間の変化を示す。最下部(10mM)から上部(100mM)は、15kVの分離電位を使用した3.33分から4.33分へのMTを示す。
【図8】図8は、Tris緩衝液(20mM、pH7.5)及び各種の塩の濃度を含有する溶液に5、10又は15kVの分離電位を適用した場合の被覆された毛細管中で発生した電流(μA)を示す。
【図9】図9は、n−デシル−β−D−マルトピラノシド(DM)が、280nmにおけるチモロールの移動時間に対して影響を有しないことを示す。20mMのTris緩衝液は40mMの塩を含有していた。出口端からの注入による逆極性、5kVの分離電位。
【図10】図10は、泳動緩衝液中のAGPを(a)伴う、及び(b)伴わない競合リガンドのアルプレノロール(150μM)の200nmにおける電気泳動図を示す。AGPの非存在において、アルプレノロールは5.7分で溶出する。挿入グラフは、AGPが3及び5分の間に基線の低下を起こすためにピーク領域の拡大である。AGPの存在は、アルプレノロールのピーク面積の減少を、そして更に未結合のアルプレノロールの移動時間のその後のシフトをもたらす。条件:泳動緩衝液は、TrisHCl(10mM、pH7.5、及びNaCl(20mM)±AGP(17.1μM)であり、正常極性で、分離は10kVであった。
【図11】図11は、被覆された毛細管に注入された各種の濃度の±AGPを伴うアルプレノロール(75μM)の未結合ピーク面積に対する影響を示す。条件:泳動緩衝液は、TrisHCl(10mM、pH7.5、及びNaCl(20mM)±AGPであり、分離は10kVであった。
【発明を実施するための形態】
【0045】
実施例1
ヒトシクロフィリンA(CypA)及び専売の競合リガンド(リガンドA)を、標的及び競合リガンド間に安定な複合体が形成される、本発明の側面を証明するために使用した。弱い結合の試験化合物の存在は、標的/競合リガンド複合体のピークの減少又は消失によって検出される。
【0046】
50mMのリガンドA(MW約400、Kd約400nM;競合リガンド)の原液を、100%のDMSO中で調製し、そして電気泳動緩衝液(10mMのHEPES、pH8.0、0.1mMのDTT)中で250μMに希釈した。これは、注入のための試料であった。
【0047】
20cmの全長、50μmの内径及び破損を防止するためのポリアミドの外部被覆を有する、裸の石英毛細管(Polymicro Technologies,AZ)を使用した。小さい0.5cmの窓を、毛細管の一端から概略15cmの被覆に彫って、検出器を並べた。毛細管を、製造業者の説明書通りに、Beckman P/ACE MDQキャピラリー電気泳動装置に設置した。毛細管の内部壁面は被覆されず、電気浸透流が起こることを可能にし、そしてカソードに向かう全ての分析物の正味の移動を可能にした。それぞれの泳動に先立ち、毛細管を、1NのNaOH、水及び電気泳動緩衝液でそれぞれ2分間連続して洗浄した。標準的な泳動条件は、10kVで、毛細管温度を25℃に、そしてUV検出を254nmに設定した。
【0048】
最初の泳動(図2、上部の記録)において、リガンドAは、水力学的に注入し(約0.035kg/cm2(0.5psi)で5秒)、そして電気泳動をカソードに向かう極性で適用した。リガンドAのピークは、概略1.8分に観察された。注入試料中に存在するDMSOのための空席(負の)ピークは、概略1.2分に観察され、そして電気浸透流に伴う未変化の種の移動を表した。
【0049】
二番目の泳動(図2、二番目の波形)において、1μMのCypA(Sigma−Aldrich)を電気泳動緩衝液に加え、そして泳動を先のように繰り返した。電気泳動中のリガンドA及びCypA間の複合体の形成による、顕著な新しい、幅広のピークが概略2.3−2.8分に観察された。
【0050】
三番目の泳動(図2、三番目の波形)において、50μMの専売の弱い試験化合物(Kd>30μM)を、注入試料及び電気泳動緩衝液の両方の中に加えた。図に示すように、特性に有意な変化はなく、弱い試験化合物がこの濃度では検出されないことを示し、これは、その低い親和性から予測されていた。
【0051】
然しながら、四番目の泳動(図2、最下部の波形)において、弱い試験化合物を、注入試料及び電気泳動緩衝液中に10×の高い濃度の500μMで加えた。リガンドA−CypA複合体のピークの有意な減少が見られた。従って、弱い試験化合物のこの濃度は、CypAの有意な部分と結合するために十分に高く、リガンドAに結合するその能力を防止した。要約すれば、本発明を使用すれば、弱い試験化合物は、高い濃度において検出可能であった。
【0052】
非常に高い濃度(500μM)における試験化合物に伴う、系に対する不都合な影響はなかった。これは、このような濃度が、高いバックグラウンド干渉、シグナルの消光、及び他の人工的問題のために高い偽の正の読取りを生じる傾向があるために、化合物をこのような高い濃度で試験することができない殆どの生化学的アッセイとは異なる。キャピラリー電気泳動法の独特な分離能力は、このような課題を解決することを援助する。
【0053】
実施例2
ヒト熱ショックタンパク質90(Hsp90)を標的として、そしてラディシコールを競合リガンドとして使用して、競合リガンドが、電気泳動中の標的との相互作用により移動時間がシフトする本発明の側面を証明した。弱い試験化合物の存在は、競合リガンドの移動時間の変化によって検出される。
【0054】
30mMのラディシコール(Tocris Biosciences,MO;MW364.8、Kd=20nM)の原液を、100%のDMSO中で調製し、そして電気泳動緩衝液(10mMのTris(7.5)、5mMのMgCl2、0.001%のTween−20)中で150μMに希釈した。これは、注入試料であった。
【0055】
毛細管を、実施例1のように調製し、そして洗浄した。この実験において、キャピラリー電気泳動法の唯一の差は、適用された電位が15kVであったことである。
図3は、既知のHsp90リガンドを検出するこの系の能力を証明する。一番目の泳動(図3、最上部の波形)において、ラディシコールは、水力学的に注入され(約0.035kg/cm2(0.5psi)で5秒)、そして先のように、電気泳動をカソードに向かう極性で適用した。ラディシコールのピークは、概略4.1分に観察された。注入された試料中に存在するDMSOのための小さい空席(負の)ピークは、概略1.4分に観察された。
【0056】
二番目の泳動(図3、二番目の波形)において、50nMのHsp90(Assay Designs,MI)を電気泳動緩衝液に導入し、そして先のようにラディシコールを注入し、そして電気泳動した。これが毛細管を通って移動するのに従って、ラディシコールのHsp90との相互作用のための、概略12−13分へのラディシコールの大きな移動のシフトが観察された。Hsp90は、低い等電点(pI約5.5)を有し、そして従ってこれらの条件(pH8.0)下で高度に負に荷電し、これは、二つの成分が相互作用するのに従って、ラディシコールの電気泳動的移動はゆっくりとなる。実施例1とは異なって、標的及びラディシコール間の安定な複合体は観察されず、この系において起こる更に急速な平衡結合反応速度を示す。
【0057】
三番目の泳動(図3、三番目の波形)において、10μMの中程度の親和性の試験化合物のCCT018159(Tocris Biosciences,MO;報告されたIC50=5.7μM;表2)を、注入試料及び電気泳動緩衝液の両方に加えた。図に示すように、概略10−11分へのラディシコールの移動時間のより早期へのシフトがあり、結合したCCT018159の存在のために、より少ないHsp90がラディシコールに結合するために使用可能であったことを示した。
【0058】
四番目の泳動(図3、最下部の波形)において、そのIC50より遥かに上の濃度の100μMのCCT018159は、概略6分へのラディシコールのなお更に早い移動をもたらし、ここでなお更に少ないHsp90がラディシコールを結合するために使用可能であったことを示した。従って、中程度の親和性のリガンドの結合は、そのIC50近辺の試験濃度において検出可能であり、そして活性は、滴定可能である。
【0059】
実施例3
Hsp90/ラディシコール系を、第2の既知の阻害剤及び二つの弱い結合の断片(表2)を含む、三つの更なる試験化合物を検出する能力に対して試験した。
【0060】
【表2】
SEL−100506、SEL−100508、及びSEL−100509(全てDMSO中で可溶化)を、実施例2中でCCT018159のために記載したような基本的設定で個別に試験した。
【0061】
図4において、最上部の波形は、ラディシコール単独を示す。二番目の波形は、先のようにHsp90を毛細管中の電気泳動緩衝液に加えた場合の、予測された顕著に遅れたシフトを示す。三番目の波形は、50μMの既知のリガンドSEL−100506が、ラディシコールのピークに生じた中の早期のシフトとして検出可能であることを示す。同様に、三番目及び四番目の波形は、二つの弱い結合の断片のSEL−100509及びSEL−100508も、更に競合リガンドのより速い移動に基づき、それぞれ500μMの試験濃度で容易に検出可能であることを示す。再び、このような高い濃度の試験リガンドの存在において、系に対する不都合な影響は観察されず、弱い結合のリガンドをスクリーニングするための他の生化学的方法に対するこの系の優位性を証明した。
【0062】
実施例4
本発明のキャピラリー電気泳動(CE)法の適応性を評価し、そして塩、緩衝液、及び界面活性剤の濃度における変化に対する、この方法の許容性を調査するために、実験を行った。
【0063】
この一式の実験において使用された毛細管は、次の寸法:50μm(内径)×375μm(外径)×30cmを有していた。内部壁面は、ポリビニルアルコール(PVA)の永久的に吸着された層で被覆されていた。この被覆は、疎水性及び静電気的溶質/壁面の相互作用を最小化し、そして電気浸透流(EOF)を減少する荷電されない表面を有するCE毛細管を作製した。これらの毛細管は、タンパク質を水で容易に洗浄し、そしてカラムを水及び緩衝液で容易に再生することができるために、被覆されていない毛細管より好ましい。全ての実験は、単一波長UV又は光ダイオードアレイ検出器を持つBeckman MDQキャピラリー電気泳動装置を使用して行った。データは、Beckman Coulterからの32KaratソフトウェアVersion5.0を使用して解析した。系は、毎日使用前に調整し、そして入口及び出口末端のいずれかからの注入による順方向又は逆方向極性のいずれかとして設定し、そして使用した。
【0064】
毛細管温度は、15℃に設定した。全ての緩衝液は、Millipore級の水中で調製し、そして使用に先だって0.22μmのフィルターを通して濾過した。競合リガンド及び阻害剤原液を、DMSO中で作成した。使用される注入緩衝液(100μl)は、Tris−HCl緩衝液(Sigma T87602;pH7.5)、足すDMSO又は阻害剤[1μl、最終濃度(f/c/)1%]であった。電気泳動緩衝液(200μl)は、Tris−HCl(pH7.5)DMSO又は阻害剤(1μl、f/c/0.5%)を含有していた。毛細管は、水で2分間、緩衝液で2分間、続いて泳動緩衝液で1分間の洗浄サイクルを有していた。電気泳動は、15分間(0.17分の段階)の15kVの逆方向極性の分離電圧行われ、一方競合リガンドは、約0.035kg/cm2(0.5psi)で5秒間注入された。注入後、毛細管を水で1分間洗浄した。
【0065】
4.1 キャピラリー電気泳動によるマレイン酸チモロールの検出
最初の実験は、β1−アドレナリン受容体リガンドが、CEを伴うUVによって検出することができるか否かを決定するために行った。pH7.5のTris緩衝液を、これがβ1−アドレナリン受容体アッセイのために一般的に使用される緩衝液であるために使用した(Serrano−Vega et al,Proc.Natl.Acad.Sci.105:877−882)。
【0066】
マレイン酸チモロール((S)−Timolol,Tocris0649)を、電気泳動緩衝液を含有する毛細管に注入し、そして観察された得られた電気泳動図を図5に示す。この泳動の分離条件下で、チモロールは3.3分の、そしてDMSOは10.6分の移動時間(MT)を有していた。中性のDMSOの存在は、ある程度のEOFの存在があることを示す。このピーク特性は、移動時間及びピーク面積において高度に再現可能であった(結果は示されていない)。アルプレノロール(Tocris 2806;後で使用)は、異なった移動時間を伴うが、同様な再現可能な特性を与えた(示されていない)。
【0067】
結果は、マレイン酸チモロールが、異なった緩衝液、塩及び界面活性剤濃度に対するCEの許容性を試験するための適したリガンドであることを証明する。
4.2 緩衝液濃度の影響
ジュール加熱(抵抗加熱)は、電流が電解質を通過する場合、不可避である(Enenhuis CJ & Haddad PR,(2009)Electrophoresis.30(5):897−909;Cetin B & Li D(2008)Electrophoresis.29(5):994−1005)。キャピラリー電気泳動において、過剰なジュール加熱は回避される必要があり、さもなければ、泡の形成、タンパク質の変性、ピークの広がり及び競合リガンドの移動時間の変化のような有害な影響が毛細管に起こる。何れものジュール加熱の影響を回避するために、30μAの電流の上限値を設定した。泳動緩衝液中に存在するいずれものイオンは、電流の増加を起こすことができるため、CEにおける緩衝液の濃度及び塩の制約を決定することが賢明である。
【0068】
4.2.1 電流に対する緩衝液濃度の影響
10及び100mM間のTris−HCl緩衝液(pH7.5)を試験した。適当な緩衝液を、CE装置のバイアル中に入れ、そして定常電流が得られるまで15kVで電気分解した(リガンドは存在しない)。電流を記録した。
【0069】
【表3】
表3及び図6に示すように、緩衝液濃度及び発生した電流間に線形の関係が観察された(R2=0.99)。測定値から、表3の全ての灰色の網掛け部分は、高すぎる電流を与え、ジュール加熱効果を与える。これは、15kVにおいて、40mMまでのTris緩衝液(pH7.5)が、30μAの電流の制約に達する前に安全に使用することができることを示す。
【0070】
4.2.2 チモロールの移動時間に対する緩衝液濃度の影響
マレイン酸チモロールを、異なった濃度の電気泳動緩衝液を含有する毛細管に注入し、そして観察された得られた電気泳動図を図7に示す。チモロールの移動時間(MT)は、10mM緩衝液による3.33分から100mM緩衝液による4.33分に変化した。基線は、60mM又はそれより大きい緩衝液を使用した場合に悪化した。チモロールのピーク面積は、試験した緩衝液の範囲で一定であった。
【0071】
要約として、競合リガンドのチモロールの移動時間は、緩衝液の濃度によって影響された。40mMまでのTris−HCl(pH7.5)は、30μAの電流の閾値に達する前は、15kVの分離電位を許容することができる。
【0072】
4.3 電流に対する塩濃度の影響
CE系の塩の許容度を調査した。20mMのTris−HCl(pH7.5)の緩衝液を、塩の非存在における15μAの電流及び15kVの分離電位(表3を参照されたい)、即ち、ジュール効果が起こる前に許される最大値の半分と共に選択した。この緩衝液の溶液を、変化する塩の濃度(0−100mMのNaCl(Fischer BP358−1))で調製した。溶液を、各種の分離電位で定常電流が得られるまで電気分解した。電流を記録した。
【0073】
予測されるように、電流は、増加する塩濃度に伴って増加した。適用された全ての分離電位に対して、加えられた塩の濃度及び発生した電流間に線形の相関が、R2>0.99で観察された(表4及び図8を参照されたい)。表4の灰色の網掛け部分は、30μAの電流の閾値が超過したものを示す。
【0074】
【表4】
分離電位は、より高い塩濃度を使用することを可能にするために、必要な場合減少することができる。最初、40mMのNaClを伴うTris緩衝液(20mM、pH7.5)を、幾つかの実験のために使用したが、しかしこれは、使用することができる最高の分離電位が7.5kVに制約されるために、制約することが見いだされた。従って、10mMの緩衝液濃度を使用して、塩濃度を再び測定した。これらの結果を表5に示し、これは、10mMのTris−HCl緩衝液(pH7.5)と共に、各種の分離電位及び塩濃度を使用した場合に発生した電流(μA)を示す。
【0075】
【表5】
予測されるように、電流は、塩濃度の増加に伴い増加し、そして電位を減少し、より大きい塩濃度が、30μAの電流の閾値を超過する前に許容されることを可能にした。表5の灰色の網掛け部分は、30μAの電流の閾値を超過したものを示す。太字の条件(10mMのTris及び20mMのNaCl)は、以下の4.5項に概略記載される結合実験において使用されたものである。
【0076】
要約として、塩の添加は電流に影響するが、しかし必要な分離電位にもよるが、各種の緩衝液及び塩濃度を使用することができる。したがって、本発明のCEシステムは広範囲の緩衝液および塩濃度に対処できる。
【0077】
4.4 界面活性剤の影響
n−デシル−β−D−マルトピラノシド(DM;Anatrace D322)及びn−ドデシルβ−D−マルトピラノシド(DDM;Anatrace D310)のような界面活性剤の、電流及び競合リガンドの移動時間に対する影響を、GPCRのような膜結合型タンパク質のスクリーニングのためのCE法の使用に対する準備行為として調査した。界面活性剤の濃度は、それぞれの界面活性剤に対する臨界ミセル濃度(CMC)の上及び下で使用した。DDMの水中のCMC(0.0087%)は、DMのそれ(0.087%)より10倍低い。
【0078】
界面活性剤のDM及びDDMを、最初、水中で20重量/容量%で調合し、サブアリコートし、そして冷凍庫中で−80℃で保存した。一つのアリコートを取出し、使用前に解凍し、そして適当な実験溶液濃度まで緩衝液で希釈した。界面活性剤の残りのアリコートを再度冷凍した。実験溶液は、一般的に48時間使用してから、廃棄した。
【0079】
4.4.1 電流に対するDMの影響
DMの異なった界面活性剤濃度(0−0.5%)を伴う40mMのNaCl(表4を参照されたい)を含有するTris緩衝液(20mM、pH7.5)を、各種の分離電位で定常電流が得られるまで電気分解した。電流を記録した。
【0080】
【表6】
表6は、各種の分離電位が、Tris緩衝液(20mM、pH7.5)及び40mMのNaCl及びDMを各種の濃度で含有する溶液に適用された場合に発生した電流(μA)を示す。灰色の網掛け部分は、30μAの電流の閾値を超過したものを示す。DMの添加は、そのCMCの約5倍においてさえ電流に僅かな影響しか有しなかった。
【0081】
4.4.2 電流に対するDDMの影響
40mMのNaCl及びDDMの異なった界面活性剤濃度(0−0.05%)を伴うTris緩衝液(20mM、pH7.5)を、各種の分離電位で定常電流が得られるまで電気分解した。電流を記録した。
【0082】
【表7】
表7は、各種の分離電位が、Tris緩衝液(20mM、pH7.5)及び40mMのNaCl並びに各種の濃度のDDMを含有する溶液に適用された場合に発生した電流(μA)を示す。灰色の網掛け部分は、30μAの電流の閾値を超過したものを示す。DDMは、そのCMCの約5倍においてさえ電流に僅かな影響しか有しなかった。
【0083】
4.4.3 競合リガンドの移動時間に対する界面活性剤の影響
40mMのNaClを含有する20mMのTris−HCl(pH7.5)緩衝液を使用して、チモロールの移動時間に対する0.05及び0.1%(CMCのすぐ上及び下)におけるDMの影響を観察した。
【0084】
図9に示すように、界面活性剤は、チモロールの移動時間又はピーク面積に僅かな影響しか有さず、移動時間は全ての試料に対して概略6.4分で一定であった。同様に、DMは、競合リガンドのアルプレノロールの移動時間又はピーク面積に、0.01%の僅かな影響しか有しなかった(データは示されていない)。
【0085】
要約として、DM及びDDMは、そのそれぞれのCMCの5倍までの濃度において電流に有意ではない影響を有していた。概略CMCの異なった界面活性剤において、競合リガンドの移動時間に対する影響は、観察されなかった。これは、CEが、膜結合型タンパク質及び界面活性剤の存在を必要とする他の標的の分析のために必要な緩衝条件を許容することができることを示唆する。
【0086】
4.5 CEにおける競合リガンドの結合
CE技術の原理を証明するために、アルプレノロールの移動度のシフトを、アルファ−1−酸性糖タンパク質(AGP)の存在中で決定することができるか否かを決定するための実験を行った。AGPは、アルプレノロール及びチモロールを含む多くの薬物を結合することが知られている(Fournier T et al(2000)Biochim Biophys Acta.1482(1−2):157−71;Belpaire FM et al(1982)Eur J Clin Pharmacol.22(3):253−256)。
【0087】
99%純粋なAGPの試料を、Sigma(G9885)から入手し、そして2.23mMの原液を水中で調合した。これを、緩衝液/NaClで10倍に希釈し、そして得られた溶液を実験に使用した。図10は、泳動緩衝液中に存在するAGPを伴って又は伴わずに、毛細管中に注入された競合リガンドのアルプレノロール(150μM)を示す。
【0088】
アルプレノロールのピークは、AGPの存在中において5.75から9.3分への移動時間の明確なシフトを示す(図10)。アルプレノロールのピークの面積も、更に50952から9185AUに減少した。これは、親ピーク面積の概略18%であり、ある程度のアルプレノロールが電気泳動緩衝液中に存在するAGPに結合したことを示す。
【0089】
表8及び図11は、移動時間、及び各種の濃度のAGPを含有する電気泳動緩衝液に、アルプレノロール(75μM)の試料を注入した後に残った親ピークのパーセントを示す。AGPの濃度が増加するに従い、アルプレノロールのピークは、AGPを伴わない場合の5.7分から17.1μMのAGPを伴う場合の9.3分にシフトした。AGPに結合したアルプレノロールは、用量依存であることが示され、6.8μMのAGPが十分なアルプレノロールを結合して、約0.8分の観察されたシフトを伴ってピークを親の約18%まで減少した。
【0090】
更に、ピーク面積は、AGP濃度の増加に伴い減少し、あるパーセントのアルプレノロールが、電気泳動中にAGPに結合したことを示した。遊離のアルプレノロールのピーク面積は、17.1μMのAGPでは完全に消滅しなかったが、しかし約18%が残った。遊離のまま残ったアルプレノロールのパーセントは、血漿タンパク質結合から得られた参考値と非常に類似であった:79%結合−即ち21%遊離(Burchholz L et al(2002).Euro J Pharmacol Sci.15(2):209−215)。
【0091】
【表8】
結果は、CEが、β−アドレナリン受容体の競合リガンド及びAGP間の相互作用を検出することができることを示す。これは、適した競合リガンド/標的系を、GPCRのような膜結合型タンパク質の分析のために計画されるものと同様な緩衝液及び塩の条件下で、開発することができることを示唆する。界面活性剤は、これらが、非−GPCRの標的AGPを変性してしまう可能性があるものであるために、この系で試験されなかった。
【0092】
スクリーニングのプログラムにおいて、試験化合物は、CE緩衝液系中に加えられるものであり、そして“的中”は、標的の結合部位に対するアルプレノロールとの競合のための、競合リガンドのシフトの消滅又は減少、及び競合リガンドのピーク面積の予測された増加によって検出されるものである。
【0093】
4.6 結論
この実施例において行われた実験は、キャピラリー電気泳動が、広範囲の治療標的のために有用な広範囲の各種の塩、緩衝液及び界面活性剤の条件中でリガンドを検出するために受け入れられることを示している。30μAより低い電流を保って、ジュール加熱を防止するために、電位を調節することは、各種の緩衝液/塩の組合せを使用することを、表2及び3に示すように可能にする。そのそれぞれのCMCの直ぐ上又は下の界面活性剤のDM或いはDDMの系への添加は、発生する電流又は探査リガンドの移動時間に有意には影響しない。
【0094】
AGPは、モデルタンパク質として調査され、これは、更にβ−アドレナリン受容体短鎖リガンドを結合することが知られていた。AGPの存在において、競合リガンドの移動時間のシフトは、濃度依存であることが見いだされ、CEが、競合リガンド及びタンパク質間の相互作用を検出することが可能であることを示唆していた。
【0095】
蛍光性競合リガンドも更に使用することができることは認識されるものである。蛍光性競合リガンドを使用する利点は、1000倍少ない競合リガンドを必要とすること、並びに恐らくは必要な標的タンパク質の量の減少である。表12は、本発明のキャピラリー電気誘導法を使用するスクリーニングの異なった相のために必要であることが予測される最小の必要量を示す。
【0096】
【表9】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特別な標的に対するリガンドのための化合物ライブラリーをスクリーニングするための、特に弱い結合のリガンドのためのスクリーニングをするためのキャピラリー電気泳動法に関する。
【背景技術】
【0002】
新規な化合物及び既存の化合物のライブラリーのスクリーニングのために使用可能な多くのアッセイが存在し、そのそれぞれは特別な利益及び情報を提供するために考案されている。結合アッセイは、化学的骨格又は特異的化学成分が、関心のある標的に結合するものであるか否かを確認するために良好な出発点である。このようなアッセイにおいて、関心のある標的は、ビーズ、クロマトグラフィーの支持体又はマイクロタイターウェルの壁面のような固体の基質上に不動化することができる。別の方法として、標的は、細胞の膜上に発現させることができ、これは、次いで不動化される。次いで不動化された標的は、試験化合物と共にインキュベートされ、そして結合は、熱量測定法又は蛍光法を使用して検出される。熱量測定又は蛍光法を使用する結合の相互作用は、更に溶液相中のタンパク質を使用して決定することもできる(例えば、蛍光偏光法)。
【0003】
高処理能力、頑強性及び単純性の全ての必要性を提供する別のスクリーニングの方法は、キャピラリー電気泳動法である。キャピラリー電気泳動法は、適用された電場の影響下の細い毛細管を通るイオンのシフトに依存する。電位のいずれかの末端の電極に対して逆の電荷のイオンは、その電極に対して移動するものである。従って、陰に荷電したイオンは、正に荷電した電極に対してシフト又は移動するものであり、そして正に荷電したイオンに対しては逆である。これは、“電気泳動移動度”として知られている。キャピラリー電気泳動法は、それぞれのイオンが、その相対的水力学的大きさと比較した電荷のイオン量、即ちその質量対電荷比のために、高い分解能を伴って異なった速度で移動するものであるために、強力な手段である。イオンの実際の移動度は、イオンがキャピラリー電気泳動中に存在する環境を考慮に入れる。例えば、電気泳動移動度は、粘度が変化し、そして異なった電位が適用された場合、実際の移動度とは異なるものである。イオンは、更に毛細管の内部ガラス表面上の陰の電荷がカソードに向かう液体の総体流を生じる場合に起こる、荷電していないリガンドの移動及び検出を可能にする電気浸透流の影響下でシフトすることができる。
【0004】
典型的なキャピラリー電気泳動装置は、カソード、アノード、高電位電力供給源、及び毛細管を満たし、そして毛細管のそれぞれの末端の緩衝室中に存在する緩衝水溶液を含む。アノード及びカソードは、毛細管末端の二つの緩衝室中に浸漬される。装置は、更に検出器並びにデータ出力及び処理装置を含む。
【0005】
試料は、二つの異なった方法によって毛細管に導入される。電気運動注入は、電荷を保有する分析物を導入するために使用することができ、そして毛細管の一端を注入される試料に入れ、そして電場を短時間適用することによって達成される。このような条件下で、試料の分析物(類)は、その電気泳動移動度に基づいて毛細管中に移動する。水力学的注入は、更に一般的な方法であり、そして毛細管の一端への圧力又は真空の適用を必要とする。毛細管の二つの逆末端間の圧力差は、分析物を、その後の電気泳動分析のために、毛細管に導入する。
【0006】
注入後、次いで分析物の移動は、毛細管のそれぞれの末端の緩衝室間に適用され、そして高電位電力供給源によって電極に供給される電場によって開始される。電気泳動の方向は、分析物の電荷によって、アノード(注入端)からカソード(出口端)へ、又はその逆のいずれかであることができる。十分な電気浸透流が存在する場合、正又は負の全てのイオンは、アノード(注入端)からカソード(出口端)へ同じ方向で毛細管を通って移動する。分析物は、これらがその移動度の差によって移動する間に分離し、そして毛細管の出口端の近辺で検出される。検出器の出力は、積分器又はコンピューターのようなデータ出力及び処理装置に送られる。次いでデータは、検出器の反応を時間の関数として報告する電気泳動図として表示される。分離された成分は、電気泳動図中で、異なった移動時間、ピーク形状、及びピーク面積を持つピークとして出現することができる。
【0007】
キャピラリー電気泳動法によって分離された分析物は、UV又はUV−可視光吸光度或いは蛍光(天然の蛍光、導入された蛍光標識に対する化学的修飾又はレーザー誘導蛍光)によって検出することができる。毛細管は、典型的には安定性を増加するために不透明なポリマーで外部から被覆される。従って、小さい窓を被覆に食刻しなければならず、そして次いで検出器(UV又はLIF)はその窓に並べられる。
【0008】
試料の成分の同一性を得るために、キャピラリー電気泳動は、質量分光計に直接接続することができる。この目的のために、毛細管の出口は、通常エレクトロスプレーイオン化を使用するイオン供給源に導入される。次いで得られたイオンは質量分光計によって分析される。
【0009】
化合物のスクリーニングのためのキャピラリー電気泳動法の使用は、他社によって開発されている。例えば米国特許第6,299,747号、米国特許第6,524,866号、米国特許第6,432,651号及び米国特許第6,837,977号(Cetek Corporation)は、複雑な生物学的物質の試料からの潜在的治療リガンドを確認し、そして順位づけするためのキャピラリー電気泳動法の使用を記載している。四つの特許の全てに記載されている方法は、関心のある標的を複雑な生物学的物質と共にインキュベートすることを本質的に必要とする。次いで、競合するリガンドが混合物に加えられる。更なるインキュベーション後、標的/物質/リガンドの混合物は、キャピラリー電気泳動装置に注入され、そして標的又は競合的リガンドの移動度が追跡される。記載されている全ての方法の目的は、関心のある標的に対してある程度の親和性(結合強度)を伴って結合する化合物を確認することである。この特許権所有者は、化合物に強力に結合する化合物に特に関心があり、そしてこの方法は、弱い結合の化合物、特にこのような弱い結合の化合物が生物学的混合物中に高い濃度で存在する場合、それを上回って、このようなリガンドの確認を最大にするように設計されている。
【0010】
一般的に、弱い結合の化合物又はリガンドは、10μMより大きい解離定数(Kd)及び1.0秒−1より大きい解離速度定数(off−rate)(Koff)を有するとして確認される。中程度ないし緊密な結合のリガンドは、10nMないし10μMのKd及び0.01ないし1.0秒−1のKoffを有する。強い結合のリガンドは、10nMより小さいKd及び0.01秒−1より小さいKoffを有する。
【0011】
特に、Cetekの方法は、複雑な生物学的混合物中に存在する化合物の解離、及び競合的リガンドによる置換に依存している。弱い結合の化合物が毛細管中への注入において標的に結合したとしても、低い親和性による速い解離速度定数は、標的/弱い化合物複合体が、キャピラリー泳動実行(run)の最後に検出されないことを意味する。
【0012】
然しながら、時には、弱い結合の化合物を検出することは好ましいことである。特に、弱い化合物は、これらが、主導的な薬物化合物への更なる最適化のための優れた化学的出発点を提供し、そして潜在的な薬物の可能性のある化合物の減少する集団を拡大することができるために、多くの今日の薬物発見のスクリーニングプログラムにおいて好まれる。例えば、“断片ベースのスクリーニング”は、治療標的に対する弱い結合を持つ低分子量の化合物を確認するための一次スクリーニングアッセイから出発する通常の技術である。これらの弱い化合物は、その後生物物理学的及び合成化学的方法の組合せにより最適化される。一次断片ベースのアッセイは、弱い親和性を検出するために非常に高い化合物濃度でスクリーニングすることが可能でなければならない。然しながら、殆どの標準的な生化学及び細胞ベースのアッセイは、基質干渉効果及び他の理由によりこの目的のために使用することができない。従って、現時点の断片ベースの方法は、NMR、X線結晶学、及び等温熱量測定のような生物物理学的方法を、これらの方法が高濃度の試験化合物に許容性を示すことが可能であるためにスクリーニングアッセイとして使用している。
【0013】
然しながら、全てのこれらの方法は、大規模なアッセイの開発時間、大量の試薬(例えば、標的及び試験化合物の試料)量の必要性、及び低い処理量のような欠点及び制約を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第6,299,747号
【特許文献2】米国特許第6,524,866号
【特許文献3】米国特許第6,432,651号
【特許文献4】米国特許第6,837,977号
【発明の概要】
【0015】
従って、現時点で既知の方法の欠点を経験しない、そしてアッセイの基本的要求、即ち高処理量、頑強性及び単純性を満たす、弱い結合の化合物を確認するための別の方法に対する必要性が存在する。
【0016】
本発明は、先に記載した現時点の方法の不利益を実質的に克服し、そして弱いリガンドを検出する能力、高濃度の試験化合物に対する許容性、迅速及び単純なアッセイ開発、生理学的試験条件、低い試薬消費量、及び自動化に対する潜在性を含むリガンドのスクリーニングのための利益を提供する、キャピラリー電気泳動法に基づく競合的結合アッセイを提供する。
【0017】
特に、本発明はキャピラリー電気泳動法に関し、その方法は以下の工程を含んでなる:
i.毛細管を、電気泳動緩衝液及び関心のある生物学的標的で満たし;
ii.所望により試験化合物を、電気泳動緩衝液に加え;
iii.注入緩衝液及び競合リガンド、並びに所望により試験化合物を含んでなる注入試料を調製し;
iv.注入試料を、毛細管の一端に導入し;
v.注入試料を、キャピラリー電気泳動にかけ;
vi.競合リガンドの移動特性を決定し;そして
vii.試験化合物の非存在及び存在における、競合リガンドの移動特性を比較すること。
【0018】
従って、本発明は、関心のある標的に対する化合物の結合を、そして特に弱い結合の化合物の結合を検出するための単純な、そして頑強な方法を提供する。Cerekの方法は、弱い結合の化合物の、これらが検出されないことを確実にするために、その解離に依存しているが、本発明の方法は、弱い結合の化合物の解離の問題を、化合物を電気泳動緩衝液中に加え、そして標的、競合リガンド、及び試験化合物間で完全な平衡に到達させないことによって克服している。
【0019】
更に、本発明の方法は、複雑な長いアッセイの開発に対する要求、又はアッセイを最適化するための異なった親和性の既知の試験化合物の必要性を克服している。多くの場合、このような既知の化合物は入手不可能である。
【0020】
更に詳細には、この方法は、“競合リガンド”の電気泳動移動度を、キャピラリー電気泳動法の高い分解能の技術を使用してモニターする。競合リガンドは、関心のある治療標的に対する親和性を有することに基づいて選択される既知のリガンドである。図1に示すように、競合リガンドの試料は、試験化合物を伴う又は伴わない、標的を含有する電気泳動緩衝液で満たされた毛細管に注入(水力学的又は電気運動的注入)される。試験化合物は、更に、強力にUV吸収性の化合物において起こることができる空席ピークを減少するために、注入試料中に含まれることもできる。高い電場が適用され、そして競合リガンドは、その質量と電荷の比に基づいて毛細管を通って移動する。非荷電の競合リガンドにおいて、電気浸透性は、競合リガンドの移動を容易にするために使用することができる。毛細管を通る競合リガンドの移動度は、注入が行われる末端から最も離れて位置する毛細管の末端の近辺に置かれた検出器により、UV吸収法又はレーザー誘導蛍光法(LIF)のいずれかによってモニターすることができる。別の方法として、質量分光法を毛細管の末端の検出器として使用することができる。検出器のデータは、電気泳動図として表示される。
【0021】
キャピラリー電気泳動装置は、細い開放端の毛細管を含んでなり、その中に標的及び試験化合物が電気泳動緩衝液中に導入され、そして競合リガンドがその後注入される。毛細管は、理想的には概略2μmないし250μmの範囲の内径を持つ溶融石英ガラスで構成される。毛細管の内部壁面は、被覆されていないか又はポリアクリルアミドのようなポリマーで、分析物の吸着を減少するために被覆されている。典型的な毛細管の全長は、約7cmないし約20cmの範囲である。より長い毛細管を、分解能を改良するために使用することができる。この方法は、更に溶融石英又はポリマーのマイクロチップのような平坦な面中の解放溝又はチャンネルの形態の毛細管で行うことができる。
【0022】
毛細管は、理想的には標的、試験化合物及び競合リガンドと適合性である電気泳動緩衝液で満たされる。特異的標的のために適当な特別な緩衝液の条件は、当業者にとって公知の方法による実験によって決定することができる。理想的には、電気泳動緩衝液は、制約されるものではないが、HEPES、MES、TAPS、CAPSO、TES、及びTrisのような生理学的緩衝液である。これらの緩衝液は、これらが、生物学的活性のために生理学的に関連するアッセイ条件を提供し、そして標的をその機能的に活性な状態でスクリーニングされることを可能にするような、タンパク質のような生物学的分析物のためにしばしば使用される。キャピラリー電気泳動法のために使用される生理学的緩衝液は、更にこの方法のために適合性の電気泳動条件(低い電流、高い電場強度)を提供する。多くの他の種類の緩衝液及び塩、界面活性剤、動的被覆及び補因子のような添加物も、更に使用することができ、そしてこのような緩衝液及び添加物は、当業者にとって公知であるものである。電気泳動緩衝液を選択する場合に考慮する因子は、それが比較的低い電流(例えば、<100μA)を与えて、生物学的標的に対して有害であり得るジュール熱を防止すべきことである。別の方法として、毛細管のカラムを冷却して、加熱を減少することができる。
【0023】
本発明の方法において使用するための標的は、純粋又は不純な、それに対する親和性リガンドが望まれるいずれもの生物学的分子、分子複合体又は他の生物学成分として定義される。標的は、制限されるものではないが、酵素、受容体、レポーター、Gタンパク質、トランスポーター、イオンチャンネル、機能性タンパク質、調節タンパク質、核酸、全細胞及び膜標本を含む。
【0024】
特に関心のあるものは、制約されるものではないが、Gタンパク質共役受容体(GPCR)を含む膜結合型タンパク質及び膜結合性タンパク質である。このような膜結合型タンパク質及び膜結合性タンパク質は、細胞標本、膜標本のようなその天然の形態で、又はそれによってタンパク質がもはや膜と結合していない、そして制約されるものではないが、変異誘発、界面活性剤、アジュバント、ミセル形成及び脂質小胞形成を含む技術によって安定化された形態で使用することができる。
【0025】
小分子の、膜タンパク質との直接の相互作用を証明するために使用可能な非常に僅かな生物物理学的技術が存在する。典型的には、断片のスクリーニングは、表面プラズモン共鳴法(SPR)及び標的不動化NMRスクリーニング(TINS)を使用して行われる。これらの両方の技術の不利益は、これらが、タンパク質標的の不動化を必要とすることである。これは、しばしば標的の活性の維持を確実にするための長い最適化を必要とする。然しながら、本発明のキャピラリー電気泳動法の利点は、タンパク質が不動化又は繋留を必要とせず、反応を生理学的緩衝液中の溶液中で行うことができ、そしてその結果、アッセイの開発時間は迅速である。
【0026】
本発明の方法のもう一つの利点は、標的の修飾を必要としないか又は最小であることであり、これによって標的をその実質的に天然の立体構造で、修飾又は結合を必要としないか又は最小で使用することを可能にする。対照的に、他のスクリーニングアッセイは、標的の化学的修飾又は標的の固体基質への不動化を必要とする。これらの工程は、高価であり、時間がかかり、タンパク質の活性を減少又は変化することができ、そして異常な結果を生じることができる。
【0027】
キャピラリー電気泳動法は、微小規模の技術であるために、スクリーニングのために、少量の標的、試験化合物及び競合リガンドのみを必要とする(典型的にはアッセイ当たり1マイクログラムより少ない)。対照的に、NMR及び等温熱量測定法のような別の技術は、大量の生物学的物質を消費することができる。従って、標的は、理想的にはキャピラリー電気泳動アッセイの泳動当たり、約0.1nM及び100μM間の濃度で存在する。
【0028】
化学的、生物学的、合成の生物学的な又は前記のいずれもの混合物から誘導された試験化合物を使用することができる。理想的には、試験化合物は、断片、特に化学的断片である。化合物が概略100ないし400ダルトン、好ましくは概略100ないし300ダルトンの分子量の範囲である場合、断片が、大きい分子より高いリガンド効率を有することができるため、好都合である。リガンド効率は、その大きさに対して正規化されたリガンドの結合エネルギーであり、そして高いリガンド効率を持つ化合物は、化学的最適化のための出発点として更に適していることができる。この方法は、関心のある標的に対して中程度又は強力な親和性を有する試験化合物及び断片を検出することが可能であるが、弱い親和性(例えば、Kd>10μM)を有する化合物の研究が、特に好ましい。これは、殆どの現時点で既知の方法が、中程度及び強力な親和性を持つ化合物のみを検出するために最適化されるために、潜在的な治療剤の有用な小集団を研究することを可能にする。表1は、概略のリガンドの親和性を提供する:
【0029】
【表1】
キャピラリー電気泳動緩衝液は、殆どの生化学的及び細胞ベースアッセイとは異なり、出力に不都合な影響を伴うことなく、又は最小で、非常に高い濃度(2mM迄)の試験化合物を許容することが可能である。これは、キャピラリー電気泳動法の分離の構成要素が、人為的結果の偽の正/負を防止することを援助するためであると信じられる。従って、試験化合物は、理想的には約2mMまでの濃度で緩衝液中に存在する。
【0030】
本発明の方法において使用される競合リガンドは、化学成分(entity)、ペプチド、タンパク質、天然の産物、核酸又は合成の生物学的分子のようないずれもの適した分子であることができる。競合リガンドは、標的に結合し、そしてキャピラリー電気泳動によって泳動された場合、検出可能な標的のピークの複合体、競合リガンドのピークのシフト、又は減少した未結合の競合リガンドのピーク面積を生じなければならない。競合リガンドの結合部位は知る必要はないが、結合部位の知識は好ましい。競合リガンドは、試験化合物と同じ部位に結合することができるか、又は標的上のアロステリック部位に結合することができる。好ましくは、競合リガンドは、水性条件中で可溶であり、そしてKd=10μMより強力な標的に対する親和性を有する。競合リガンド又は競合リガンド/標的複合体は、更にUV/可視光吸光法、レーザー誘導蛍光法、又は質量分光法のようなキャピラリー電気泳動法に適合性の方法によって検出可能でなければならない。好都合には、競合リガンドは、0.1nM又はそれより大きい、好ましくは約10μM及び2mM間の濃度で、毛細管に注入される。
【0031】
本発明の方法の有意な利点は、試験化合物より強い親和性を有する競合リガンドを使用し、そして高濃度で注入する場合(検出のために、高濃度の競合リガンドを必要とすることができる)でさえ、弱い結合の試験化合物を検出する能力である。全ての成分の正常な平衡状態において、競合リガンドは、弱い試験化合物を完全に置換するものであり、そして従って試験化合物は検出不可能であるものである。実際に、これは、Cerekによって記載されている方法において見られる。然しながら、本発明の方法において使用される高い電場及び速い泳動時間は、電気泳動緩衝液による競合リガンドの急速な移動をもたらし、そして従って競合リガンドは、試験化合物を完全に置換するために十分な時間を有しない。従って、標的に対して弱い親和性を有する試験化合物は、検出可能となる。
【0032】
本発明の方法の原理は、次のとおりである。緩衝液中に試験化合物を含まない場合、標的は、移動する競合リガンドと相互作用し、そしてリガンドの質量と電荷の比を変化し、競合リガンドの移動度の変化を生じる。観察される結果は、標的に対する競合リガンドの親和性に依存する。高親和性の競合リガンドにおいて、相互作用のオン−オフ反応速度が、泳動時間に対して遅い場合、いずれもの未結合競合リガンドに加えて、競合リガンド/標的複合体のピークが観察されるものである。弱い親和性を持つ競合リガンドにおいて、相互作用のオン−オフ反応速度が泳動時間に対して速い場合、リガンドが標的と急速な平衡で相互作用するために、未結合の競合リガンドのピークは移動時間中でシフトするものである(非常に僅かな安定な複合体が形成されるものである)。第三の可能性は、競合リガンドのあるものが、電気泳動中に標的と結合し、観察可能な競合リガンド/標的複合体のピークを生じることなく、減少した未結合競合リガンドのピーク面積をもたらす。これらは、親和性キャピラリー電気泳動法の良く知られた原理である。
【0033】
次いで試験化合物が、標的を伴う緩衝液に加えられる。試験化合物及び標的間に結合が起こる場合、あるパーセントの標的が、試験化合物の親和性及び濃度によるが、いずれの時点においても結合するものである。結果として、より少ない標的が注入された競合リガンドと、これが毛細管を通る間に結合するために使用可能である。結果としての競合リガンド/標的複合体のピーク、競合リガンドのピークのシフト、又は競合リガンドのピーク面積の減少は、減少又は排除されるものである。従って、二つの電気泳動図(試験化合物を伴う及び伴わない)が比較される。
【0034】
競合リガンドの検出は、理想的にはUV/可視光吸光法又はレーザー誘導蛍光検出を使用することにより達成される。標準的なキャピラリー電気泳動装置において、検出器は、分析物(類)の移動をモニターするために毛細管の末端の近辺に置かれる。典型的には、小さい窓が、毛細管を破損から保護するために典型的に存在する外部のポリアミド被覆に食刻される。UV/可視光又はLIF検出器が、この窓に並べられる。競合リガンド又は競合リガンド/標的複合体は、それが検出されることを可能にする特質を必要とする。例えば、リガンドは、UV/可視光吸光法によるその検出を可能にする発色団を含有することができる。別の方法として、リガンドは、LIF検出器が使用される場合、レーザーによって励起された場合に蛍光を発する蛍光性分子(共有的に結合された蛍光染料のような)を含むことができる。次いで競合リガンドの移動度は、電気泳動中モニターすることができる。
【0035】
UV/可視光吸光法又はレーザー誘導蛍光法の出力は、典型的には電気泳動図として表示される。電気泳動図は、検出の単位に対する時間がプロットされるHPLCクロマトグラムと非常に似ている(例えば、吸光単位又は蛍光強度)。クロマトグラムのように、分析物は、特徴的な移動時間、ピーク面積、ピーク高さ、ピーク形状等を伴うピークによって表される。未結合競合リガンドのピークは、標的に結合したピーク又はシフトしたピークと比較して異なったピーク特性を有し、操作者が、得られたピークを、一つ又はそれより多い試験化合物を含む電気泳動の泳動から得られるピークと比較することによって、結合の程度を決定することを可能にする。
【0036】
質量分光法(MS)を、検出器として使用することも可能である。商業的なキャピラリー電気泳動−MS装置及び適したインターフェースは入手可能である。UV及びLIF検出とは異なり、MS検出器は、毛細管の末端に置かれ、そして分析物は、通常、MSと適合性の緩衝液を提供するシース(sheath)フローのようなインターフェースを経由して、毛細管からMSへ直接流れる。
【0037】
本発明の方法を行うために、競合リガンドは、表1にによって定義したとおりの、標的に対して中程度ないし強力な親和性を有するものが選択される。競合リガンドは、使用される検出法によるが、UV/可視光吸光法、LIF検出法又は質量分光法によって検出可能でなければならない。
【0038】
最適なキャピラリー電気泳動条件は、検出可能な競合リガンドのピークを得るように決定される(例えば、電気泳動及び注入緩衝液の組成並びにpH、温度、電位、注入時間、競合リガンド濃度、UV/LIF検出、被覆された対被覆されない毛細管、等)。これらの条件を最適化することは、良好な(例えば、>3Xのシグナルと雑音の比、ピーク幅<1分)、再現性のある(例えば、CV<10%)競合リガンドのピークを生じるための、緩衝液、泳動条件、及び毛細管の種類の一団の試験を含む。全てのこれらのパラメーターは、キャピラリー電気泳動法の当業者にとって公知である。
【0039】
次いで、容易に検出可能な、競合リガンド/標的複合体のピーク、競合リガンドの移動のシフト、又は未結合競合リガンドのピーク面積の減少を与える電気泳動緩衝液に加えられる標的の最適濃度(通常標的の消費を減少するために最低の濃度)が決定される。この目的のために、標的濃度は、再現性(例えば、CV<10%)の特性が達成されるまで、電気泳動緩衝液中で滴定される。
【0040】
試験化合物(類)は、所望するスクリーニング濃度(例えば、500μM)で、電気泳動緩衝液に加えられる。試験化合物は、電気泳動緩衝液中に存在する標的と平衡に達するものである。化合物が十分に可溶性であることを条件に、より高い処理量のために、多数の試験化合物を混合することができる。試験化合物は、更に結果を不明瞭にすることができる空席(負の)ピークを減少するために、注入試料中に加える必要があり得る。空席ピークは、試験化合物が強力なUV吸光を有し、そして電気泳動緩衝液中にのみ存在し、そして注入試料中に存在しない場合に、UV検出に伴って起こることができる。
【0041】
標的/試験化合物の平衡が達成された後、競合リガンドが毛細管に加えられ、そして競合リガンド/標的複合体のピーク又は競合リガンドの移動がモニターされる。競合リガンド/標的複合体のピークの減少、競合リガンドの移動時間のシフト、又は未結合競合リガンドのピーク面積の増加が観察された場合、これは、試験化合物が、競合リガンドの(又はアロステリックな)結合部位で標的に結合したことを示す。
【0042】
次いで、異なった濃度の試験化合物を試験し、そして競合リガンド/標的複合体のピーク面積、未結合の競合リガンドのピーク面積、又は競合リガンドの移動度のシフト時間のいずれかに対する試験化合物の濃度をプロットすることによって、用量反応曲線を作成することができる。
【0043】
本発明は、ここで以下の図面によって例示される非制約的実施例によって記載される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、標的及び試験化合物で予備処理された電気泳動緩衝液を伴うキャピラリー電気泳動装置を示す。競合リガンドは、図の左側で毛細管中に注入され、そして電場が適用された後、競合リガンドを、試験化合物及び標的を含有する電気泳動緩衝液により駆動する。検出は、図の右手側の毛細管の末端の近辺の窓で行われる。
【図2】図2は、キャピラリー電気泳動ベースの方法が、高濃度でスクリーニングされた場合、弱い結合の試験化合物を検出することを示す。下部のプロットにおいて、500μMの弱い結合の試験化合物が、競合リガンド/標的(CL/TG)複合体のピークを有意に減少し、標的(ヒトシクロフィリンA)に対する弱い試験化合物の結合を示す。下部の三つのプロットにおいて、未結合の競合リガンドのピークは、毛細管の壁面との標的の相互作用の結果としての減少した電気浸透流のために、僅かに遅れて移動している。下部の二つのプロットにおける1.25分の大きい空席(vacancy)(負の)ピークは、電気泳動緩衝液中に存在するUV吸収性の試験化合物のためである。
【図3】図3は、ヒトHsp90に結合する既知のリガンド(CCT018159)の検出を示す。上部の波形は、競合リガンドのラディシコール単独の泳動を示す。二番目の波形は、標的Hsp90が電気泳動緩衝液に加えられた場合の、ラディシコールのピークの非常に遅い移動時間へのシフトを示す。増加された量の試験化合物CCT−1018159の添加(三番目及び四番目の波形)は、より少ないHsp90が、ラディシコールを結合するために使用可能となるために、ラディシコールのシフトの滴定可能な阻害をもたらす。
【図4】図4は、二つの化学的断片を含む三つの更なる弱い結合のHsp90リガンドの検出を示す。上部の波形は、競合リガンドのラディシコール単独の泳動を示す。二番目の波形は、Hsp90が電気泳動緩衝液に加えられた場合の、ラディシコールのピークの非常に遅い移動時間へのシフトを示す。三番目の波形は、50μMで試験された場合の、既知のリガンドSEL−100506の検出を示す。三番目及び四番目の波形は、500μMで試験された場合の二つの化学的断片SEL−100509及びSEL−100508の検出を示す。
【図5】図5は、被覆された毛細管中の280nmにおけるマレイン酸チモロール(300μM)の電気泳動図を示す。チモロールは、3.3分で、続いてDMSOは10.6分で移動する。条件:泳動緩衝液はTrisHCl(1−mM、pH7.5)、分離は15kVであった。電流は、細線(clean line)で示す(約7.5μA)。
【図6】図6は、Tris緩衝液を異なった緩衝液濃度で含有する溶液に、15kVの分離電位を適用した場合の被覆された毛細管中で発生された電流(μA)を示す。
【図7】図7は、TrisHCl(pH7.5)緩衝液の濃度を変化させたときの280nmにおけるチモロールの移動時間の変化を示す。最下部(10mM)から上部(100mM)は、15kVの分離電位を使用した3.33分から4.33分へのMTを示す。
【図8】図8は、Tris緩衝液(20mM、pH7.5)及び各種の塩の濃度を含有する溶液に5、10又は15kVの分離電位を適用した場合の被覆された毛細管中で発生した電流(μA)を示す。
【図9】図9は、n−デシル−β−D−マルトピラノシド(DM)が、280nmにおけるチモロールの移動時間に対して影響を有しないことを示す。20mMのTris緩衝液は40mMの塩を含有していた。出口端からの注入による逆極性、5kVの分離電位。
【図10】図10は、泳動緩衝液中のAGPを(a)伴う、及び(b)伴わない競合リガンドのアルプレノロール(150μM)の200nmにおける電気泳動図を示す。AGPの非存在において、アルプレノロールは5.7分で溶出する。挿入グラフは、AGPが3及び5分の間に基線の低下を起こすためにピーク領域の拡大である。AGPの存在は、アルプレノロールのピーク面積の減少を、そして更に未結合のアルプレノロールの移動時間のその後のシフトをもたらす。条件:泳動緩衝液は、TrisHCl(10mM、pH7.5、及びNaCl(20mM)±AGP(17.1μM)であり、正常極性で、分離は10kVであった。
【図11】図11は、被覆された毛細管に注入された各種の濃度の±AGPを伴うアルプレノロール(75μM)の未結合ピーク面積に対する影響を示す。条件:泳動緩衝液は、TrisHCl(10mM、pH7.5、及びNaCl(20mM)±AGPであり、分離は10kVであった。
【発明を実施するための形態】
【0045】
実施例1
ヒトシクロフィリンA(CypA)及び専売の競合リガンド(リガンドA)を、標的及び競合リガンド間に安定な複合体が形成される、本発明の側面を証明するために使用した。弱い結合の試験化合物の存在は、標的/競合リガンド複合体のピークの減少又は消失によって検出される。
【0046】
50mMのリガンドA(MW約400、Kd約400nM;競合リガンド)の原液を、100%のDMSO中で調製し、そして電気泳動緩衝液(10mMのHEPES、pH8.0、0.1mMのDTT)中で250μMに希釈した。これは、注入のための試料であった。
【0047】
20cmの全長、50μmの内径及び破損を防止するためのポリアミドの外部被覆を有する、裸の石英毛細管(Polymicro Technologies,AZ)を使用した。小さい0.5cmの窓を、毛細管の一端から概略15cmの被覆に彫って、検出器を並べた。毛細管を、製造業者の説明書通りに、Beckman P/ACE MDQキャピラリー電気泳動装置に設置した。毛細管の内部壁面は被覆されず、電気浸透流が起こることを可能にし、そしてカソードに向かう全ての分析物の正味の移動を可能にした。それぞれの泳動に先立ち、毛細管を、1NのNaOH、水及び電気泳動緩衝液でそれぞれ2分間連続して洗浄した。標準的な泳動条件は、10kVで、毛細管温度を25℃に、そしてUV検出を254nmに設定した。
【0048】
最初の泳動(図2、上部の記録)において、リガンドAは、水力学的に注入し(約0.035kg/cm2(0.5psi)で5秒)、そして電気泳動をカソードに向かう極性で適用した。リガンドAのピークは、概略1.8分に観察された。注入試料中に存在するDMSOのための空席(負の)ピークは、概略1.2分に観察され、そして電気浸透流に伴う未変化の種の移動を表した。
【0049】
二番目の泳動(図2、二番目の波形)において、1μMのCypA(Sigma−Aldrich)を電気泳動緩衝液に加え、そして泳動を先のように繰り返した。電気泳動中のリガンドA及びCypA間の複合体の形成による、顕著な新しい、幅広のピークが概略2.3−2.8分に観察された。
【0050】
三番目の泳動(図2、三番目の波形)において、50μMの専売の弱い試験化合物(Kd>30μM)を、注入試料及び電気泳動緩衝液の両方の中に加えた。図に示すように、特性に有意な変化はなく、弱い試験化合物がこの濃度では検出されないことを示し、これは、その低い親和性から予測されていた。
【0051】
然しながら、四番目の泳動(図2、最下部の波形)において、弱い試験化合物を、注入試料及び電気泳動緩衝液中に10×の高い濃度の500μMで加えた。リガンドA−CypA複合体のピークの有意な減少が見られた。従って、弱い試験化合物のこの濃度は、CypAの有意な部分と結合するために十分に高く、リガンドAに結合するその能力を防止した。要約すれば、本発明を使用すれば、弱い試験化合物は、高い濃度において検出可能であった。
【0052】
非常に高い濃度(500μM)における試験化合物に伴う、系に対する不都合な影響はなかった。これは、このような濃度が、高いバックグラウンド干渉、シグナルの消光、及び他の人工的問題のために高い偽の正の読取りを生じる傾向があるために、化合物をこのような高い濃度で試験することができない殆どの生化学的アッセイとは異なる。キャピラリー電気泳動法の独特な分離能力は、このような課題を解決することを援助する。
【0053】
実施例2
ヒト熱ショックタンパク質90(Hsp90)を標的として、そしてラディシコールを競合リガンドとして使用して、競合リガンドが、電気泳動中の標的との相互作用により移動時間がシフトする本発明の側面を証明した。弱い試験化合物の存在は、競合リガンドの移動時間の変化によって検出される。
【0054】
30mMのラディシコール(Tocris Biosciences,MO;MW364.8、Kd=20nM)の原液を、100%のDMSO中で調製し、そして電気泳動緩衝液(10mMのTris(7.5)、5mMのMgCl2、0.001%のTween−20)中で150μMに希釈した。これは、注入試料であった。
【0055】
毛細管を、実施例1のように調製し、そして洗浄した。この実験において、キャピラリー電気泳動法の唯一の差は、適用された電位が15kVであったことである。
図3は、既知のHsp90リガンドを検出するこの系の能力を証明する。一番目の泳動(図3、最上部の波形)において、ラディシコールは、水力学的に注入され(約0.035kg/cm2(0.5psi)で5秒)、そして先のように、電気泳動をカソードに向かう極性で適用した。ラディシコールのピークは、概略4.1分に観察された。注入された試料中に存在するDMSOのための小さい空席(負の)ピークは、概略1.4分に観察された。
【0056】
二番目の泳動(図3、二番目の波形)において、50nMのHsp90(Assay Designs,MI)を電気泳動緩衝液に導入し、そして先のようにラディシコールを注入し、そして電気泳動した。これが毛細管を通って移動するのに従って、ラディシコールのHsp90との相互作用のための、概略12−13分へのラディシコールの大きな移動のシフトが観察された。Hsp90は、低い等電点(pI約5.5)を有し、そして従ってこれらの条件(pH8.0)下で高度に負に荷電し、これは、二つの成分が相互作用するのに従って、ラディシコールの電気泳動的移動はゆっくりとなる。実施例1とは異なって、標的及びラディシコール間の安定な複合体は観察されず、この系において起こる更に急速な平衡結合反応速度を示す。
【0057】
三番目の泳動(図3、三番目の波形)において、10μMの中程度の親和性の試験化合物のCCT018159(Tocris Biosciences,MO;報告されたIC50=5.7μM;表2)を、注入試料及び電気泳動緩衝液の両方に加えた。図に示すように、概略10−11分へのラディシコールの移動時間のより早期へのシフトがあり、結合したCCT018159の存在のために、より少ないHsp90がラディシコールに結合するために使用可能であったことを示した。
【0058】
四番目の泳動(図3、最下部の波形)において、そのIC50より遥かに上の濃度の100μMのCCT018159は、概略6分へのラディシコールのなお更に早い移動をもたらし、ここでなお更に少ないHsp90がラディシコールを結合するために使用可能であったことを示した。従って、中程度の親和性のリガンドの結合は、そのIC50近辺の試験濃度において検出可能であり、そして活性は、滴定可能である。
【0059】
実施例3
Hsp90/ラディシコール系を、第2の既知の阻害剤及び二つの弱い結合の断片(表2)を含む、三つの更なる試験化合物を検出する能力に対して試験した。
【0060】
【表2】
SEL−100506、SEL−100508、及びSEL−100509(全てDMSO中で可溶化)を、実施例2中でCCT018159のために記載したような基本的設定で個別に試験した。
【0061】
図4において、最上部の波形は、ラディシコール単独を示す。二番目の波形は、先のようにHsp90を毛細管中の電気泳動緩衝液に加えた場合の、予測された顕著に遅れたシフトを示す。三番目の波形は、50μMの既知のリガンドSEL−100506が、ラディシコールのピークに生じた中の早期のシフトとして検出可能であることを示す。同様に、三番目及び四番目の波形は、二つの弱い結合の断片のSEL−100509及びSEL−100508も、更に競合リガンドのより速い移動に基づき、それぞれ500μMの試験濃度で容易に検出可能であることを示す。再び、このような高い濃度の試験リガンドの存在において、系に対する不都合な影響は観察されず、弱い結合のリガンドをスクリーニングするための他の生化学的方法に対するこの系の優位性を証明した。
【0062】
実施例4
本発明のキャピラリー電気泳動(CE)法の適応性を評価し、そして塩、緩衝液、及び界面活性剤の濃度における変化に対する、この方法の許容性を調査するために、実験を行った。
【0063】
この一式の実験において使用された毛細管は、次の寸法:50μm(内径)×375μm(外径)×30cmを有していた。内部壁面は、ポリビニルアルコール(PVA)の永久的に吸着された層で被覆されていた。この被覆は、疎水性及び静電気的溶質/壁面の相互作用を最小化し、そして電気浸透流(EOF)を減少する荷電されない表面を有するCE毛細管を作製した。これらの毛細管は、タンパク質を水で容易に洗浄し、そしてカラムを水及び緩衝液で容易に再生することができるために、被覆されていない毛細管より好ましい。全ての実験は、単一波長UV又は光ダイオードアレイ検出器を持つBeckman MDQキャピラリー電気泳動装置を使用して行った。データは、Beckman Coulterからの32KaratソフトウェアVersion5.0を使用して解析した。系は、毎日使用前に調整し、そして入口及び出口末端のいずれかからの注入による順方向又は逆方向極性のいずれかとして設定し、そして使用した。
【0064】
毛細管温度は、15℃に設定した。全ての緩衝液は、Millipore級の水中で調製し、そして使用に先だって0.22μmのフィルターを通して濾過した。競合リガンド及び阻害剤原液を、DMSO中で作成した。使用される注入緩衝液(100μl)は、Tris−HCl緩衝液(Sigma T87602;pH7.5)、足すDMSO又は阻害剤[1μl、最終濃度(f/c/)1%]であった。電気泳動緩衝液(200μl)は、Tris−HCl(pH7.5)DMSO又は阻害剤(1μl、f/c/0.5%)を含有していた。毛細管は、水で2分間、緩衝液で2分間、続いて泳動緩衝液で1分間の洗浄サイクルを有していた。電気泳動は、15分間(0.17分の段階)の15kVの逆方向極性の分離電圧行われ、一方競合リガンドは、約0.035kg/cm2(0.5psi)で5秒間注入された。注入後、毛細管を水で1分間洗浄した。
【0065】
4.1 キャピラリー電気泳動によるマレイン酸チモロールの検出
最初の実験は、β1−アドレナリン受容体リガンドが、CEを伴うUVによって検出することができるか否かを決定するために行った。pH7.5のTris緩衝液を、これがβ1−アドレナリン受容体アッセイのために一般的に使用される緩衝液であるために使用した(Serrano−Vega et al,Proc.Natl.Acad.Sci.105:877−882)。
【0066】
マレイン酸チモロール((S)−Timolol,Tocris0649)を、電気泳動緩衝液を含有する毛細管に注入し、そして観察された得られた電気泳動図を図5に示す。この泳動の分離条件下で、チモロールは3.3分の、そしてDMSOは10.6分の移動時間(MT)を有していた。中性のDMSOの存在は、ある程度のEOFの存在があることを示す。このピーク特性は、移動時間及びピーク面積において高度に再現可能であった(結果は示されていない)。アルプレノロール(Tocris 2806;後で使用)は、異なった移動時間を伴うが、同様な再現可能な特性を与えた(示されていない)。
【0067】
結果は、マレイン酸チモロールが、異なった緩衝液、塩及び界面活性剤濃度に対するCEの許容性を試験するための適したリガンドであることを証明する。
4.2 緩衝液濃度の影響
ジュール加熱(抵抗加熱)は、電流が電解質を通過する場合、不可避である(Enenhuis CJ & Haddad PR,(2009)Electrophoresis.30(5):897−909;Cetin B & Li D(2008)Electrophoresis.29(5):994−1005)。キャピラリー電気泳動において、過剰なジュール加熱は回避される必要があり、さもなければ、泡の形成、タンパク質の変性、ピークの広がり及び競合リガンドの移動時間の変化のような有害な影響が毛細管に起こる。何れものジュール加熱の影響を回避するために、30μAの電流の上限値を設定した。泳動緩衝液中に存在するいずれものイオンは、電流の増加を起こすことができるため、CEにおける緩衝液の濃度及び塩の制約を決定することが賢明である。
【0068】
4.2.1 電流に対する緩衝液濃度の影響
10及び100mM間のTris−HCl緩衝液(pH7.5)を試験した。適当な緩衝液を、CE装置のバイアル中に入れ、そして定常電流が得られるまで15kVで電気分解した(リガンドは存在しない)。電流を記録した。
【0069】
【表3】
表3及び図6に示すように、緩衝液濃度及び発生した電流間に線形の関係が観察された(R2=0.99)。測定値から、表3の全ての灰色の網掛け部分は、高すぎる電流を与え、ジュール加熱効果を与える。これは、15kVにおいて、40mMまでのTris緩衝液(pH7.5)が、30μAの電流の制約に達する前に安全に使用することができることを示す。
【0070】
4.2.2 チモロールの移動時間に対する緩衝液濃度の影響
マレイン酸チモロールを、異なった濃度の電気泳動緩衝液を含有する毛細管に注入し、そして観察された得られた電気泳動図を図7に示す。チモロールの移動時間(MT)は、10mM緩衝液による3.33分から100mM緩衝液による4.33分に変化した。基線は、60mM又はそれより大きい緩衝液を使用した場合に悪化した。チモロールのピーク面積は、試験した緩衝液の範囲で一定であった。
【0071】
要約として、競合リガンドのチモロールの移動時間は、緩衝液の濃度によって影響された。40mMまでのTris−HCl(pH7.5)は、30μAの電流の閾値に達する前は、15kVの分離電位を許容することができる。
【0072】
4.3 電流に対する塩濃度の影響
CE系の塩の許容度を調査した。20mMのTris−HCl(pH7.5)の緩衝液を、塩の非存在における15μAの電流及び15kVの分離電位(表3を参照されたい)、即ち、ジュール効果が起こる前に許される最大値の半分と共に選択した。この緩衝液の溶液を、変化する塩の濃度(0−100mMのNaCl(Fischer BP358−1))で調製した。溶液を、各種の分離電位で定常電流が得られるまで電気分解した。電流を記録した。
【0073】
予測されるように、電流は、増加する塩濃度に伴って増加した。適用された全ての分離電位に対して、加えられた塩の濃度及び発生した電流間に線形の相関が、R2>0.99で観察された(表4及び図8を参照されたい)。表4の灰色の網掛け部分は、30μAの電流の閾値が超過したものを示す。
【0074】
【表4】
分離電位は、より高い塩濃度を使用することを可能にするために、必要な場合減少することができる。最初、40mMのNaClを伴うTris緩衝液(20mM、pH7.5)を、幾つかの実験のために使用したが、しかしこれは、使用することができる最高の分離電位が7.5kVに制約されるために、制約することが見いだされた。従って、10mMの緩衝液濃度を使用して、塩濃度を再び測定した。これらの結果を表5に示し、これは、10mMのTris−HCl緩衝液(pH7.5)と共に、各種の分離電位及び塩濃度を使用した場合に発生した電流(μA)を示す。
【0075】
【表5】
予測されるように、電流は、塩濃度の増加に伴い増加し、そして電位を減少し、より大きい塩濃度が、30μAの電流の閾値を超過する前に許容されることを可能にした。表5の灰色の網掛け部分は、30μAの電流の閾値を超過したものを示す。太字の条件(10mMのTris及び20mMのNaCl)は、以下の4.5項に概略記載される結合実験において使用されたものである。
【0076】
要約として、塩の添加は電流に影響するが、しかし必要な分離電位にもよるが、各種の緩衝液及び塩濃度を使用することができる。したがって、本発明のCEシステムは広範囲の緩衝液および塩濃度に対処できる。
【0077】
4.4 界面活性剤の影響
n−デシル−β−D−マルトピラノシド(DM;Anatrace D322)及びn−ドデシルβ−D−マルトピラノシド(DDM;Anatrace D310)のような界面活性剤の、電流及び競合リガンドの移動時間に対する影響を、GPCRのような膜結合型タンパク質のスクリーニングのためのCE法の使用に対する準備行為として調査した。界面活性剤の濃度は、それぞれの界面活性剤に対する臨界ミセル濃度(CMC)の上及び下で使用した。DDMの水中のCMC(0.0087%)は、DMのそれ(0.087%)より10倍低い。
【0078】
界面活性剤のDM及びDDMを、最初、水中で20重量/容量%で調合し、サブアリコートし、そして冷凍庫中で−80℃で保存した。一つのアリコートを取出し、使用前に解凍し、そして適当な実験溶液濃度まで緩衝液で希釈した。界面活性剤の残りのアリコートを再度冷凍した。実験溶液は、一般的に48時間使用してから、廃棄した。
【0079】
4.4.1 電流に対するDMの影響
DMの異なった界面活性剤濃度(0−0.5%)を伴う40mMのNaCl(表4を参照されたい)を含有するTris緩衝液(20mM、pH7.5)を、各種の分離電位で定常電流が得られるまで電気分解した。電流を記録した。
【0080】
【表6】
表6は、各種の分離電位が、Tris緩衝液(20mM、pH7.5)及び40mMのNaCl及びDMを各種の濃度で含有する溶液に適用された場合に発生した電流(μA)を示す。灰色の網掛け部分は、30μAの電流の閾値を超過したものを示す。DMの添加は、そのCMCの約5倍においてさえ電流に僅かな影響しか有しなかった。
【0081】
4.4.2 電流に対するDDMの影響
40mMのNaCl及びDDMの異なった界面活性剤濃度(0−0.05%)を伴うTris緩衝液(20mM、pH7.5)を、各種の分離電位で定常電流が得られるまで電気分解した。電流を記録した。
【0082】
【表7】
表7は、各種の分離電位が、Tris緩衝液(20mM、pH7.5)及び40mMのNaCl並びに各種の濃度のDDMを含有する溶液に適用された場合に発生した電流(μA)を示す。灰色の網掛け部分は、30μAの電流の閾値を超過したものを示す。DDMは、そのCMCの約5倍においてさえ電流に僅かな影響しか有しなかった。
【0083】
4.4.3 競合リガンドの移動時間に対する界面活性剤の影響
40mMのNaClを含有する20mMのTris−HCl(pH7.5)緩衝液を使用して、チモロールの移動時間に対する0.05及び0.1%(CMCのすぐ上及び下)におけるDMの影響を観察した。
【0084】
図9に示すように、界面活性剤は、チモロールの移動時間又はピーク面積に僅かな影響しか有さず、移動時間は全ての試料に対して概略6.4分で一定であった。同様に、DMは、競合リガンドのアルプレノロールの移動時間又はピーク面積に、0.01%の僅かな影響しか有しなかった(データは示されていない)。
【0085】
要約として、DM及びDDMは、そのそれぞれのCMCの5倍までの濃度において電流に有意ではない影響を有していた。概略CMCの異なった界面活性剤において、競合リガンドの移動時間に対する影響は、観察されなかった。これは、CEが、膜結合型タンパク質及び界面活性剤の存在を必要とする他の標的の分析のために必要な緩衝条件を許容することができることを示唆する。
【0086】
4.5 CEにおける競合リガンドの結合
CE技術の原理を証明するために、アルプレノロールの移動度のシフトを、アルファ−1−酸性糖タンパク質(AGP)の存在中で決定することができるか否かを決定するための実験を行った。AGPは、アルプレノロール及びチモロールを含む多くの薬物を結合することが知られている(Fournier T et al(2000)Biochim Biophys Acta.1482(1−2):157−71;Belpaire FM et al(1982)Eur J Clin Pharmacol.22(3):253−256)。
【0087】
99%純粋なAGPの試料を、Sigma(G9885)から入手し、そして2.23mMの原液を水中で調合した。これを、緩衝液/NaClで10倍に希釈し、そして得られた溶液を実験に使用した。図10は、泳動緩衝液中に存在するAGPを伴って又は伴わずに、毛細管中に注入された競合リガンドのアルプレノロール(150μM)を示す。
【0088】
アルプレノロールのピークは、AGPの存在中において5.75から9.3分への移動時間の明確なシフトを示す(図10)。アルプレノロールのピークの面積も、更に50952から9185AUに減少した。これは、親ピーク面積の概略18%であり、ある程度のアルプレノロールが電気泳動緩衝液中に存在するAGPに結合したことを示す。
【0089】
表8及び図11は、移動時間、及び各種の濃度のAGPを含有する電気泳動緩衝液に、アルプレノロール(75μM)の試料を注入した後に残った親ピークのパーセントを示す。AGPの濃度が増加するに従い、アルプレノロールのピークは、AGPを伴わない場合の5.7分から17.1μMのAGPを伴う場合の9.3分にシフトした。AGPに結合したアルプレノロールは、用量依存であることが示され、6.8μMのAGPが十分なアルプレノロールを結合して、約0.8分の観察されたシフトを伴ってピークを親の約18%まで減少した。
【0090】
更に、ピーク面積は、AGP濃度の増加に伴い減少し、あるパーセントのアルプレノロールが、電気泳動中にAGPに結合したことを示した。遊離のアルプレノロールのピーク面積は、17.1μMのAGPでは完全に消滅しなかったが、しかし約18%が残った。遊離のまま残ったアルプレノロールのパーセントは、血漿タンパク質結合から得られた参考値と非常に類似であった:79%結合−即ち21%遊離(Burchholz L et al(2002).Euro J Pharmacol Sci.15(2):209−215)。
【0091】
【表8】
結果は、CEが、β−アドレナリン受容体の競合リガンド及びAGP間の相互作用を検出することができることを示す。これは、適した競合リガンド/標的系を、GPCRのような膜結合型タンパク質の分析のために計画されるものと同様な緩衝液及び塩の条件下で、開発することができることを示唆する。界面活性剤は、これらが、非−GPCRの標的AGPを変性してしまう可能性があるものであるために、この系で試験されなかった。
【0092】
スクリーニングのプログラムにおいて、試験化合物は、CE緩衝液系中に加えられるものであり、そして“的中”は、標的の結合部位に対するアルプレノロールとの競合のための、競合リガンドのシフトの消滅又は減少、及び競合リガンドのピーク面積の予測された増加によって検出されるものである。
【0093】
4.6 結論
この実施例において行われた実験は、キャピラリー電気泳動が、広範囲の治療標的のために有用な広範囲の各種の塩、緩衝液及び界面活性剤の条件中でリガンドを検出するために受け入れられることを示している。30μAより低い電流を保って、ジュール加熱を防止するために、電位を調節することは、各種の緩衝液/塩の組合せを使用することを、表2及び3に示すように可能にする。そのそれぞれのCMCの直ぐ上又は下の界面活性剤のDM或いはDDMの系への添加は、発生する電流又は探査リガンドの移動時間に有意には影響しない。
【0094】
AGPは、モデルタンパク質として調査され、これは、更にβ−アドレナリン受容体短鎖リガンドを結合することが知られていた。AGPの存在において、競合リガンドの移動時間のシフトは、濃度依存であることが見いだされ、CEが、競合リガンド及びタンパク質間の相互作用を検出することが可能であることを示唆していた。
【0095】
蛍光性競合リガンドも更に使用することができることは認識されるものである。蛍光性競合リガンドを使用する利点は、1000倍少ない競合リガンドを必要とすること、並びに恐らくは必要な標的タンパク質の量の減少である。表12は、本発明のキャピラリー電気誘導法を使用するスクリーニングの異なった相のために必要であることが予測される最小の必要量を示す。
【0096】
【表9】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含んでなる、キャピラリー電気泳動法:
i)毛細管を、電気泳動緩衝液及び関心のある生物学的標的で満たし;
ii)所望により試験化合物を、電気泳動緩衝液に加え;
iii)注入緩衝液及び競合リガンド、並びに所望により試験化合物を含んでなる注入試料を調製し;
iv)注入試料を、毛細管の一端に導入し;
v)競合リガンドを、キャピラリー電気泳動にかけ;
vi)競合リガンドの移動特性を決定し;そして
vii)試験化合物の非存在及び存在における、競合リガンドの移動特性を比較すること。
【請求項2】
前記毛細管が、約2μm及び約250μm間の内径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電気泳動緩衝液が、生理学的緩衝液である、請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記標的が、その実質的に天然の立体構造で電気泳動緩衝液中に存在する、請求項1、2又は3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記標的が、実質的に修飾されていなく及び/又は会合されていない、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記標的が、キャピラリー電気泳動アッセイの泳動当たり、約0.1nM及び100μM間の濃度で電気泳動緩衝液中に存在する、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記試験化合物が、概略100から2,000ダルトンの分子量を有する、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記試験化合物が、概略100から300ダルトンの分子量を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記生物学的標的が、膜結合型又は膜結合性タンパク質である、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記膜結合型又は膜結合性タンパク質が、細胞標本、膜標本として、又はそれによってタンパク質がもはや膜と会合せず、そして変異誘発、界面活性剤、アジュバント、ミセル形成及び脂質小胞形成を含む技術によって安定化された形態で、その実質的に天然の立体構造で電気泳動緩衝液中に存在する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記生物学的標的が、Gタンパク質共役型受容体である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記試験化合物が、約2mMまでの濃度で電気泳動緩衝液中に存在する、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、更に試験化合物が前記電気泳動緩衝液中に存在する場合、前記試験化合物を、前記競合リガンドと共に前記注入緩衝液に加えることを含む、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記競合リガンドが、約10μMより少ない標的に対する解離定数を有する、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記競合リガンドが、約0.1nM又はそれより大きい濃度で注入される、請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記競合リガンドが、約10μMから約2mMの間の濃度で注入される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記試験化合物の解離定数が概略20μMより大きい、標的に対する弱い結合を有する試験化合物を検出するための、請求項1から16のいずれか1項に記載の方法の使用。
【請求項1】
以下の工程を含んでなる、キャピラリー電気泳動法:
i)毛細管を、電気泳動緩衝液及び関心のある生物学的標的で満たし;
ii)所望により試験化合物を、電気泳動緩衝液に加え;
iii)注入緩衝液及び競合リガンド、並びに所望により試験化合物を含んでなる注入試料を調製し;
iv)注入試料を、毛細管の一端に導入し;
v)競合リガンドを、キャピラリー電気泳動にかけ;
vi)競合リガンドの移動特性を決定し;そして
vii)試験化合物の非存在及び存在における、競合リガンドの移動特性を比較すること。
【請求項2】
前記毛細管が、約2μm及び約250μm間の内径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電気泳動緩衝液が、生理学的緩衝液である、請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記標的が、その実質的に天然の立体構造で電気泳動緩衝液中に存在する、請求項1、2又は3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記標的が、実質的に修飾されていなく及び/又は会合されていない、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記標的が、キャピラリー電気泳動アッセイの泳動当たり、約0.1nM及び100μM間の濃度で電気泳動緩衝液中に存在する、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記試験化合物が、概略100から2,000ダルトンの分子量を有する、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記試験化合物が、概略100から300ダルトンの分子量を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記生物学的標的が、膜結合型又は膜結合性タンパク質である、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記膜結合型又は膜結合性タンパク質が、細胞標本、膜標本として、又はそれによってタンパク質がもはや膜と会合せず、そして変異誘発、界面活性剤、アジュバント、ミセル形成及び脂質小胞形成を含む技術によって安定化された形態で、その実質的に天然の立体構造で電気泳動緩衝液中に存在する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記生物学的標的が、Gタンパク質共役型受容体である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記試験化合物が、約2mMまでの濃度で電気泳動緩衝液中に存在する、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、更に試験化合物が前記電気泳動緩衝液中に存在する場合、前記試験化合物を、前記競合リガンドと共に前記注入緩衝液に加えることを含む、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記競合リガンドが、約10μMより少ない標的に対する解離定数を有する、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記競合リガンドが、約0.1nM又はそれより大きい濃度で注入される、請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記競合リガンドが、約10μMから約2mMの間の濃度で注入される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記試験化合物の解離定数が概略20μMより大きい、標的に対する弱い結合を有する試験化合物を検出するための、請求項1から16のいずれか1項に記載の方法の使用。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図9】
【図10】
【図1】
【図6】
【図8】
【図11】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図9】
【図10】
【図1】
【図6】
【図8】
【図11】
【公表番号】特表2013−505455(P2013−505455A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530338(P2012−530338)
【出願日】平成22年9月20日(2010.9.20)
【国際出願番号】PCT/GB2010/051574
【国際公開番号】WO2011/036476
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(512072108)セルシア・リミテッド (1)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月20日(2010.9.20)
【国際出願番号】PCT/GB2010/051574
【国際公開番号】WO2011/036476
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(512072108)セルシア・リミテッド (1)
[ Back to top ]