説明

GDF−8およびBMP−11をモジュレーションするためのフォリスタチンの使用

【課題】成長および分化因子8(GDF−8)および骨形態形成蛋白11(BMP−11)からなる群より選択される蛋白の細胞に対する影響をモジュレーションし、非変性性の神経系疾患を治療するための組成物の提供。
【解決手段】アクチビンに結合しうる分子として同定されたフォリスタチンまたはその機能的フラグメントを含む非変性性の神経系疾患を治療するための組成物。該疾患として、脊髄、神経系または筋肉系に対する外傷性または慢性の傷害であり、特に、感染、血管の疾病、外傷、代謝障害、先天性奇形または腫瘍に関連したものである組成物であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、GDF−8として知られる成長および分化因子(GDF)の活性をモジュレーションするためのフォリスタチンの使用に関する。より詳細には、本発明は、神経および筋肉に対するフォリスタチンの使用、すなわち、GDF−8あるいはGDF−11としても知られる骨形態形成蛋白−11(BMP−11)を包含する密接に関連した因子のレベルまたは活性のモジュレーションに関連した疾病に対するフォリスタチンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
骨形態形成蛋白(BMPs)および成長/分化因子(GDFs)は、骨、軟骨、腱/靭帯、筋肉、神経を包含する種々の組織ならびに種々の器官の成長、形成、分化および維持を誘導する能力があると同定されている蛋白のファミリーの一部である。BMPsおよびGDFsはTGF−βスーパーファミリー中のサブファミリーである。
TGF−βスーパーファミリーの蛋白は、セリン/スレオニンキナーゼ受容体に結合することが示されている。非特許文献1〜4。同様に、アクチビン受容体が単離され、推定膜貫通セリンキナーゼとして特徴づけられている。非特許文献5および6。非特許文献7には、IおよびII型TGF−β受容体の存在、ならびにII型受容体へのTGF−βの結合に対するI型受容体の影響が記載されている。
【0003】
フォリスタチンは、TGF−βスーパーファミリーの別のメンバーであるアクチビンに結合しうる分子として、およびアクチビンに対する可能なアンタゴニストとして同定された。特許文献1。したがって、フォリスタチンは、早産の予想および/または予防、および脳下垂体からのFSH分泌抑制に使用可能であることが示唆され(特許文献1)、インヒビン様活性を有することも示唆され(特許文献2)、さらにリューマチ性関節炎における使用も示唆されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5545616号
【特許文献2】米国特許第5041538号
【特許文献3】AU9675056, Kaneka Corp
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Massague, Cell, 69: 1067-1070 (1992)
【非特許文献2】Attisano et al., Cell 68: 97-108 (1992)
【非特許文献3】Lin et al., Cell, 68: 775-785 (1992)
【非特許文献4】Wang et al., Cell 67: 797-805 (1991)
【非特許文献5】Mathews et al., Cell 65: 973-982 (1991)
【非特許文献6】Nakamura et al., J. Biol. Chem. 267: 18924-18928 (1992)
【非特許文献7】Ebner et al., Science, 260: 1344-1348 (1993)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、成長および分化因子8(GDF−8)および骨形態形成蛋白11(BMP−11)からなる群より選択される蛋白の細胞に対する影響をモジュレーションする方法を提供し、該方法は、有効量のフォリスタチンを細胞に投与することを含む。さらに本発明は、GDF−8またはBMP−11の細胞に対する影響をブロックする方法、ならびにGDF−8またはBMP−11の神経または筋肉に対する影響に関連した疾病を治療する方法を提供し、該方法は、有効量のフォリスタチンを細胞に投与することを含む。
【0007】
1の具体例において、本発明は、フォリスタチン蛋白またはフォリスタチン蛋白をコードするDNA分子を用いてGDF−8またはBMP−11の産生および/または活性をモジュレーションし、そのことにより細胞の成長、形成、分化および維持に影響を及ぼす方法を包含する。さらに本発明は、GDF−8またはBMP−11の産生、代謝および活性に関連した疾病の治療を包含する。好ましい具体例は、神経またはニューロンおよび筋肉細胞および組織に関連した疾患および疾病の治療を包含する。これらの疾病は、筋肉または神経の消耗、筋肉または神経の萎縮、筋委縮性側索硬化、アルツハイマー病、パーキンソン病およびキンジストロフィーのごとき神経変性および筋肉変性疾病を包含する。さらに本発明は、脊髄または神経もしくは筋肉系に対する外傷性または慢性の傷害の治療のためのフォリスタチンの使用も包含する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
発明の詳細な説明
BMPsおよびGDFsのごときTGF−β蛋白は、骨、軟骨、腱/靭帯、筋肉、神経を包含する種々の組織ならびに種々の器官の成長、形成、分化および維持を促進、刺激または誘導する能力により特徴づけられる。GDF−8は、筋肉、脂肪細胞および神経組織に対して特別な活性を示すことが示されている。BMP−11は神経細胞、特にニューロン細胞に対して活性を示すことが示されている。
【0009】
2つの形態のフォリスタチン(FS)が、別形態のスプライシング(alternative splicing)の結果として産生される。これらの形態はFS−288およびFS−315である。FS−315形態は、蛋白分解的にプロセッシングされてFS−303を生じることも示されている(Sugino et al., J. Biol. Chem. 268: 15579 (1993))。組換え型のこれらの分子は異なる特性を有すると考えられ(Sumitomo et al., Biochem. Biophys. Acta 208: 1 (1995))、GDF−8およびBMP−11の作用を阻害することに有用であると予想される。
【0010】
現在示されている事項からすれば、予想されるフォリスタチンの特性は、細胞表面と相互作用して分化させる能力、ならびにヘパリンおよびヘパラン硫酸プロテオグリカンへの結合能を包含する(Nakamura et al., J. Biol. Chem. 266: 19432 (1991); Sumitomo et al., Biochem. Biophys. Acta 208: 1 (1995))。これらの特性は治療用途のFSにおいては次善のものであるかもしれない。結果的に、部位特異的突然変異を用いてこの特性を変化させてもよい。特別には、部位特異的突然変異は、残基72〜86におけるヘパリン結合に関与する塩基性残基(Inouye et al., Mol. Cell. Endocrinol. 90: 1 (1992))を変化または欠失させることを包含してもよい。
【0011】
フォリスタチンは、とりわけ、BMPsの同定、さらなるBMP受容体の同定、ならびにBMPsの結合特性を模倣しうる、抗体を包含するリガンドまたは分子の同定に有用である。これらのリガンドは、それぞれアゴニストまたはアンタゴニストとして作用する可能性がある。GDF−8およびBMP−11の活性をブロックまたはモジュレーションするフォリスタチンの能力を、下記実施例2に記載のアニマルキャップアッセイ(animal cap assay)のごときBMP活性用アッセイにおいて特徴づけてもよい。フォリスタチン分子は、阻害が必要な場合にGDF−8およびBMP−11の効果を阻害することにおいても有用である。
【0012】
GDF−8およびBMP−11の活性が知られているため、本発明は、筋肉に関連した疾病、神経系の疾患(感染を包含)、血管の疾病、外傷、代謝障害、脱鞘性の疾病(多発性硬化症を包含)、神経の疾病(アルツハイマー病、パーキンソン病およびハンチントン舞踏病、ならびに運動ニューロンの疾病(筋委縮性側索硬化、原発性側索硬化およびWerdning-Hoffmann病のごとき)を包含)、てんかん、脊髄空洞症、末梢ニューロパシー、先天性奇形および腫瘍の治療における使用を見出すこととする。治療すべき筋肉関連症状は、筋ジストロフィー(重症および良性のX連鎖筋ジストロフィー、肢帯ジストロフィー、顔面肩甲上腕ジストロフィー、筋強直性ジストロフィー、末梢筋ジストロフィー、進行性のジストロフィー性眼筋まひ、眼球咽頭ジストロフィーおよびFukuyama型先天性筋ジストロフィーのごとき)、先天性筋障害、強直性、先天性、家族性の周期性まひ、けいれん性ミオグロビン尿症、重症筋無力症、Eaton-Lambert症候群、続発性筋無力症、脱神経性萎縮を包含するが、これらに限らない。
【0013】
本発明において有用なフォリスタチン蛋白は、Shimasaki et al., PNAS: USA 85: 4218-4222 (1988)に開示されたヒトフォリスタチン、Ueno et al., PNAS: USA 84: 8282-8286 (1987)に開示されたブタフォリスタチン、Robertson et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 149: 744-749 (1987)に開示のウシフォリスタチンを包含する。これらの刊行物の各開示を参照により本明細書に記載されているものとみなす。さらに、フォリスタチンポリペプチド全体の部分フラグメントを含み、GDF−8およびBMP−11への結合能を保持している末端切断ポリペプチドも本発明に有用である。特に、GDF−8および/またはBMP−11活性をモジュレーションし、ブロックし、あるいは影響を及ぼす能力を維持しているフォリスタチン配列の機能的フラグメントは本発明方法に有用である。フォリスタチンの機能的フラグメントとしての部分フォリスタチンポリペプチドの同定を、例えば、実施例2記載のアッセイを用いて容易に行うことができる。
【0014】
また本発明は、フォリスタチンと他の分子との融合物も包含する。これには、FS−288、FS−315またはFS−303配列と、ヒト免疫グロブリンガンマイソタイプ、例えばガンマ1または4のヒンジ、CH2およびCH3ドメインとの融合物が包含される。かかる融合蛋白は、免疫グロブリンFc融合蛋白に関して期待される改善された薬剤動力学特性を有するダイマー分子を生じると考えられる。さらに、アルファまたはミュー免疫グロブリン重鎖の不変ドメインまたは分泌テイルピース(tailpieces)をFSと融合させてポリマー形態のFSを得てもよい。
【0015】
GDF−8およびBMP−11との相互作用に関与するFSの構成部分を同定し、これを用いて機能的FSフラグメント、融合蛋白を得てもよく、あるいは他の治療用途への基礎として用いてもよい。ヒトFS遺伝子は、N末端シグナル配列をコードする1のエキソン上にコードされているドメインおよびC末端伸長部分をコードする1のエキソン(FS−315を生じる)上にコードされているドメインの他に、別個のエキソン上にコードされている4つのドメインを含む(Shimasaki et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 4218 (1995))。GDF−8および/またはBMP−11への結合に関与する領域を決定し、実施例3記載の方法により製造することができる。
【0016】
本発明方法において使用するために、天然の組織から精製することにより、あるいは上記刊行物のいすれかに記載されたDNAコーディング配列を含むDNA配列で形質転換された宿主を培養することによる組換え法により、精製フォリスタチン蛋白およびその機能的フラグメントを製造してもよい。本来のDNAコーディング配列のほかに、使用できるコーディング配列は、上記のものをコードしているが遺伝暗号の縮重または対立遺伝子変異(自然に生じる塩基変化であってアミノ酸の変化を有する種を生じるものであっても、そうでなくてもよい)のためにコドン配列が異なっている配列、ならびにストリンジェントな条件下(T. Maniatis et al., Molecular Cloning (A Laboratory Manual), Cold Spring Harbor Laboratory (1982), 387〜389ページ参照)で上記刊行物に記載のDNA配列にハイブリダイゼーションし、GDF−8またはBMP−11への結合能を有する蛋白をコードしているDNA配列を包含する。点突然変異あるいは該DNA配列によりコードされるフォリスタチンポリペプチドの活性、半減期またはフォリスタチンポリペプチドの産生を向上させるために誘発された修飾(挿入、欠失および置換を包含)により得られる、上記刊行物に開示されたDNA配列の変異体も本発明に有用である。
【0017】
本発明は遺伝子治療を包含してもよく、遺伝子治療において、フォリスタチンまたはその機能的フラグメントをコードするDNA分子で細胞をトランスフェクションして、トランスフェクション細胞中またはトランスフェクション細胞の環境中に存在するGDF−8および/またはBMP−11にフォリスタチンを結合させ、そのことにより、それらの細胞に対するGDF−8および/またはBMP−11の影響をモジュレーションまたはブロックする。例えば、フォリスタチン蛋白を発現する細胞は、生物または細胞において過剰のGDF−8またはBMP−11の影響を減少または除去する可能性がある。増加したフォリスタチンはGDF−8またはBMP−11の負の効果を最小化するのに望ましいかもしれず、あるいはGDF−8またはBMP−11との複合体として作用して活性を増強または増大させる可能性がある。
【0018】
フォリスタチン蛋白またはその機能的フラグメントは、精製プロセスにおけるGDF−8またはBMP−11を単離するプロセスにおいて有用である可能性がある。かかるプロセスにおいて、フォリスタチンをカラムまたは樹脂に含ませて、組織試料または組換え法によるGDF−8またはBMP−11の商業的生産に使用してもよい。フォリスタチンまたはその機能的フラグメントを用いてGDF−8またはBMP−11を結合させ、その後、該結合蛋白を遊離させる条件に付す。
【0019】
本発明は、フォリスタチン含有組成物を局所的に、全身的に、あるいはインプラントまたはデバイスとして局部的に投与することを含む治療方法を包含する。投与する場合、好ましくは、本発明に使用する治療組成物はパイロジェン不含の、生理学的に許容される形態である。さらに、望ましくは、組成物は所望部位へのデリバリーのためにカプセル封入されたものであってもよく、あるいは粘性のある形態として注射されるものであってもよい。本発明方法において、成長因子(例えば、BMPs、TGF−β、FGF、IGF)、サイトカイン(例えば、インターロイキンおよびCSFs)および抗生物質のごとき治療上有用な作用剤をフォリスタチン組成物に含有させ、あるいは同時投与または逐次投与してもよい。
【0020】
フォリスタチン蛋白を発現する細胞を、GDF−8またはBMP−11応答をモジュレーションするための部位にデリバリーする方法は様々である。本発明の1の具体例において、フォリスタチン蛋白を発現する細胞を、直接適用により、例えばかかる細胞の試料を組織ダメージ部位に直接注射することによりデリバリーすることができる。特別な具体例において、これらの細胞を精製することができる。好ましい具体例において、フォリスタチン蛋白発現細胞を、その移動を部分的に妨害する媒体またはマトリックスにデリバリーして、細胞を傷害部位に局在化させることができる。かかる媒体またはマトリックスはパスタまたはゲルのごとき半固体であってもよく、ゲル様ポリマーを包含する。別法として、媒体またはマトリックスは固体であってもよく、好ましくは、固体マトリックス中への細胞の移動を可能にし、細胞を保持しつつ増殖させることのできる多孔性固体である。
【0021】
本発明方法において、フォリスタチン発現細胞を上記のごとき所望部位に適用し、GDF−8またはBMP−11を適用する。当該因子をフォリスタチン発現細胞と同時適用してもよく、あるいはフォリスタチン発現細胞適用直後に適用してもよい。上記ならびに米国特許第5171579号(参照により本明細書に記載されているものとみなす)に記載されたような当該分野において知られた方法でBMPを適用してもよい。
【0022】
フォリスタチン蛋白の発現
フォリスタチン蛋白を製造するために、慣用的な遺伝子工学的手法により、所望蛋白をコードするDNAを適当な発現ベクター中に移し、哺乳動物細胞または他の好ましい真核または原核宿主中に導入する。生物学的に活性のある組み換えフォリスタチン蛋白を得るための目下好ましい発現系は安定に形質転換された哺乳動物細胞である。
【0023】
下記実施例は本発明の目下好ましい具体例を詳述するものである。本発明の実施において、当業者はこれらの記載を考慮して多くの修飾および変更を思い付くと考えられる。これらの修飾および変更は添付した請求の範囲に包含されると確信する。
【実施例】
【0024】
実施例1 BIAcore結合アッセイ:
製造者の説明書に準じた標準的なカップリング法を用いてBiacore 2000装置上のCM5研究グレードのチップのカルボキシメチルデキストラン層に精製フォリスタチンをカップリングさせた。固定化に使用するバッファーは10mM酢酸ナトリウムpH4であった。典型的には、この方法により約7000応答単位(RU)のフォリスタチンを固定化した。2μl/分で10分かけて精製BMPおよびGDF蛋白をそれぞれ固定化フォリスタチン上に注入した。スクリーニングに使用するランニングバッファーは10mMリン酸ナトリウムpH7.4、300Mm塩化ナトリウム、3.4Mmエチレンジアミン四酢酸、0.005%(v/v)Tween20であり、温度を22℃に維持した。注入20秒前に確立されたベースラインと比較した場合の、注入終了60秒後におけるRUの増加として結合を定量した。可溶性フォリスタチンならびにBMP−11およびGDF−8蛋白の同時注入により特異的結合が示された。
結果:
BIAcoreスクリーンから得た結果は、GDF−8およびBMP−11の両方がフォリスタチンに結合することを示した。この結合は陽性対照アクチビンに匹敵するものであった。GDF−8またはBMP−11をプレインキュベーションし、過剰の可溶性フォリスタチンと同時注入した場合に結合が観察されなかったという事実により示されるように、結合は特異的であった。
【0025】
実施例2 アニマルキャップアッセイ法
アフリカツメガエルのアニマルキャップアッセイを用いてBMP蛋白の生物学的活性を評価した。アフリカツメガエルの卵子をインビトロで受精させ、胞胚段階まで発達させた。胚の外胚葉またはアニマルキャップを切り取り、目的蛋白を含有する培地中で5〜6時間培養した。次いで、当該エクスプラントを蛋白不含の新鮮培地に移した。アニマルキャップを一晩培養し、翌日、形態学、組織学ならびに中胚葉、神経組織および内胚葉の分子マーカーを用いるRT−PCRにより蛋白活性を評価した。
アニマルキャップアッセイの結果
GDF−8およびBMP−11は両方とも、これらの組織を誘導することが以前示されていた因子(例えば、アクチビン)の用量に匹敵する用量で、アニマルキャップを伸長させ、背側中胚葉(筋肉)および神経組織を誘導した。フォリスタチンはアニマルキャップにおいてGDF−8およびBMP−11の伸長および中胚葉組織を誘導する能力を阻害することができた。GDF−8は5倍過剰量のフォリスタチン(100ng/ml GDF−8および500ng/ml フォリスタチン)によりブロックされ、BMP−11は10倍過剰量のフォリスタチン(BMP−11 50ng/mlおよび500ng/ml フォリスタチン)によりブロックされた。Biacore結合の結果およびアフリカツメガエルアニマルキャップアッセイの結果を一緒にすると、フォリスタチンはGDF−8およびBMP−11のアンタゴニストであり、これら2種の因子の活性をモジュレーションできることが示される。
【0026】
実施例3 フォリスタチンの機能的フラグメントの決定
フォリスタチンの機能的フラグメント、およびその調製に必要なフォリスタチンの構成成分を、3’末端からエキソンを欠失した一連のFS変異体を得ることにより決定する。FSの6個のエキソンに1から6までの番号を付ける。変異体はエキソン1〜5、1〜4、1〜3および1〜2からなっており、各形態の結合を野生型FS(1〜6)と比較する。これにより、リガンド結合に関与するドメイン(複数の場合あり)が同定される。次いで、部位特異的突然変異法を用いて、リガンドへの結合に重要である特定の残基を同定する。
オリゴヌクレオチドプライマーおよびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて1〜5、1〜4、1〜3および1〜2形態を得る。この増幅のための鋳型はFS cDNAであり、プラスミドクローンまたは一次組織ポリA+RNAからの(例えば、卵巣RNAからの)ランダムヘキサマープライムされた第1鎖cDNA合成の結果物である。FSのスタートコドンに基づく順方向(5’)プライマーを増幅に使用し、最後のエキソン(例えば、1〜5形態ではエキソン5)の3’コーディング配列にアニールし、最後のエキソンの直後にストップコドンを導入する逆方向(3’)プライマーと組み合わせる。制限エンドヌクレアーゼ認識配列も各プライマーの5’末端に付加して、PCR生成物の発現ベクター中への分子クローニングを容易ならしめる。点突然変異を最少化するようにPCR条件および成分を選択し、生じたクローンをヌクレオチド配列決定により分析して、正しいFS配列が各構築物に存在することを確認する。
順方向プライマーをFS−順方向と称する。1〜5を得るための逆方向プライマーをFS−逆方向5と;1〜4を得るためのものをFS−逆方向4と;1〜3を得るためのものをFS−逆方向3と;1〜2を得るためのものをFS−逆方向2と称する。これらのプライマーの可能な配列を下に示す。GDF−8、BMP−11およびアクチビンとの相互作用に関与するFS配列は同一であるかもしれない。結合部位が別個または重複している場合、突然変異法を用いて特定のFSリガンドへの結合を無くすことができる。このことは、アラニン−スキャンニング突然変異法を行って、3種のリガンドそれぞれへの結合に関して各変異体を試験することにより成し遂げられる。
FS−順方向:5’‐dCCAGGATGGTCCGCGCGAGG‐3’(配列番号:1)
FS−逆方向5:5’‐dTCAGTTGCAAGATCCGGAGT‐3’(配列番号:2)
FS−逆方向4:5’‐dTCATTTGATACACTTTCCCTCAT‐3’(配列番号:3)
FS−逆方向3:5’‐dTCACTTTTTACATCTGCCTTGGT‐3’(配列番号:4)
FS−逆方向2:5’‐dTCATTCTTTACAGGGGATGCAGT‐3’(配列番号:5)
上記と同様の方法およびプライマーを用いて、5’末端からエキソンを欠失した一連のFS変異体を得て、フォリスタチン蛋白のN末端部分がフォリスタチンの機能的フラグメントに必要かどうかを調べる。これらの変異体はエキソン3〜6、4〜6、5〜6および6からなり、各形態の結合を野生型FS(1〜6)と比較する。シグナル配列を含む第1エキソンを各構築物に含ませて、各分子の正しい分泌を容易ならしめる。
【配列表フリーテキスト】
【0027】
SEQ ID NO:1: FS-forward
SEQ ID NO:2: FS-reverse 5
SEQ ID NO:3: FS-reverse 4
SEQ ID NO:4: FS-reverse 3
SEQ ID NO:5: FS-reverse 2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非変性性の神経系疾患を治療するための組成物であって、有効量のフォリスタチンまたはその機能的フラグメントを含む組成物。
【請求項2】
疾患が脊髄、神経系または筋肉系に対する外傷性または慢性の傷害である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
疾患が外傷性の傷害である請求項2記載の組成物。
【請求項4】
疾患が慢性の傷害である請求項2記載の組成物。
【請求項5】
傷害が脊髄に対するものである請求項3または4記載の組成物。
【請求項6】
傷害が神経系に対するものである請求項3または4記載の組成物。
【請求項7】
傷害が筋肉系に対するものである請求項3または4記載の組成物。
【請求項8】
傷害が感染、血管の疾病、外傷、代謝障害、先天性奇形または腫瘍から選択される請求項2〜7のいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
疾患がてんかん、脊髄空洞症、末梢ニューロパシー、先天性奇形または腫瘍から選択される請求項1記載の組成物。
【請求項10】
疾患が感染、血管の疾病、外傷、代謝障害、先天性奇形または腫瘍に関連したものである請求項1〜9のいずれか1項記載の組成物。
【請求項11】
組織または細胞に対する成長および分化因子8(GDF−8)の影響に関連した疾患を治療するための組成物であって、フォリスタチンまたはその機能的フラグメントを含む組成物。
【請求項12】
組織または細胞に対する骨形態形成蛋白11(BMP−11)の影響に関連した疾患を治療するための組成物であって、フォリスタチンまたはその機能的フラグメントを含む組成物。
【請求項13】
細胞が神経細胞、ニューロン細胞および筋肉細胞から選択される請求項11または12記載の組成物。
【請求項14】
組織が骨、軟骨、腱、靱帯、筋肉、脂肪細胞、神経およびニューロン組織から選択される請求項11または12記載の組成物。
【請求項15】
組織または細胞が筋肉性である請求項11記載の組成物。
【請求項16】
組織または細胞が神経性またはニューロン性である請求項12記載に組成物。
【請求項17】
フォリスタチンまたはその機能的フラグメントがヒトフォリスタチンまたはその機能的フラグメントである請求項1〜16のいずれか1項記載の組成物。
【請求項18】
フォリスタチンがヒトフォリスタチンである請求項17記載の組成物。
【請求項19】
ヒトフォリスタチンがFS−288、FS−315およびFS−303から選択される請求項18記載の組成物。
【請求項20】
インビトロにおいて組織または細胞に対する成長および分化因子8(GDF−8)の影響をモジュレーションする方法であって、フォリスタチンまたはその機能的フラグメントを与えることを含む方法。
【請求項21】
インビトロにおいて組織または細胞に対する骨形態形成蛋白11(BMP−11)の影響をモジュレーションする方法であって、フォリスタチンまたはその機能的フラグメントを与えることを含む方法。
【請求項22】
インビトロにおいて組織または細胞に対する成長および分化因子8(GDF−8)の影響をブロックする方法であって、フォリスタチンまたはその機能的フラグメントを与えることを含む方法。
【請求項23】
インビトロにおいて組織または細胞に対する骨形態形成蛋白11(BMP−11)の影響をブロックする方法であって、フォリスタチンまたはその機能的フラグメントを与えることを含む方法。
【請求項24】
細胞が神経細胞、ニューロン細胞または筋肉細胞から選択される請求項20〜23のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
組織が骨、軟骨、腱、靱帯、筋肉、脂肪細胞、神経およびニューロン組織から選択される請求項20〜23のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
フォリスタチンまたはその機能的フラグメントがヒトフォリスタチンまたはその機能的フラグメントである請求項20〜25のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
フォリスタチンがヒトフォリスタチンである請求項26記載の方法。
【請求項28】
ヒトフォリスタチンがFS−288、FS−315およびFS−303から選択される請求項26または27記載の方法。
【請求項29】
非変性性の神経系疾患を治療するための医薬の製造におけるフォリスタチンまたはその機能的フラグメントの使用。
【請求項30】
疾患が脊髄、神経系または筋肉系に対する外傷性または慢性の傷害である請求項29記載の使用。
【請求項31】
傷害が感染、血管の疾病、外傷、代謝障害、先天性奇形または腫瘍から選択される請求項30記載の使用。
【請求項32】
組織または細胞に対する成長および分化因子8(GDF−8)の影響に関連した疾患を治療するための医薬の製造におけるフォリスタチンまたはその機能的フラグメントの使用。
【請求項33】
組織または細胞に対する骨形態形成蛋白11(BMP−11)の影響に関連した疾患を治療するための医薬の製造におけるフォリスタチンまたはその機能的フラグメントの使用。
【請求項34】
細胞が神経細胞、ニューロン細胞および筋肉細胞から選択される請求項32または33記載の使用。
【請求項35】
組織が骨、軟骨、腱、靱帯、筋肉、脂肪細胞、神経およびニューロン組織から選択される請求項32または33記載の使用。
【請求項36】
フォリスタチンまたはその機能的フラグメントがヒトフォリスタチンまたはその機能的フラグメントである請求項29〜35のいずれか1項記載の使用。
【請求項37】
フォリスタチンがヒトフォリスタチンである請求項36記載の使用。
【請求項38】
ヒトフォリスタチンがFS−288、FS−315およびFS−303から選択される請求項37記載の使用。

【公開番号】特開2010−43099(P2010−43099A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222855(P2009−222855)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【分割の表示】特願2000−535362(P2000−535362)の分割
【原出願日】平成11年2月24日(1999.2.24)
【出願人】(501418214)ジェネティクス インスティテュート,エルエルシー (35)
【Fターム(参考)】