説明

GPS受信器

【課題】本発明は、RTC回路を用いることなく、ローカル時間基準を計算することができ、不揮発性記憶ユニットを用いてバックアップ航法データ格納するGPS受信器を提供し、前記ローカル時間基準およびバックアップ航法データは、GPS受信器のTTFFを低減するために使用される。
【解決手段】本発明のGPS受信器は、不揮発性記憶ユニットと測位ユニットとを備える。測位ユニットは、不揮発性記憶ユニットからバックアップ航法データを読み出し、GPS受信器の電源が投入された後にローカル時間基準を計算する機能を有する。測位ユニットは、更に、バックアップ航法データとローカル時間基準を用いて、GPSの位置を計算する機能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPS受信器に関し、詳しくは、GPS受信器における初期位置算出時間(TTFF; Time To First Fix)の低減に関する。
【背景技術】
【0002】
全地球測位システム(GPS; Global Positioning System)は、世界のあらゆる場所でGPS受信器に位置情報を提供するために米国防総省によって開発された衛星(satellite)ベースのシステムである。従って、正しく装備されたGPS受信器は、位置が所望されるときに位置情報を提供するために使用される。GPSシステムは、約2時間周期で地球の周回軌道を回る24個以上の衛星と複数の地上管制局(ground control station)とによって可能とされる。上述の衛星は、星座(constellation)を形成し、6枚の軌道面(orbiting plane)に配置される。ここで、軌道面は、60度だけ離して配置され、赤道面に対して約55度だけ傾いている。この種の配置は、地球上でいつでもどこでも、山や高層ビルのような障害物を無視して、GPS受信器が4ないし11個のGPS衛星から信号を受信することを保証する。
【0003】
任意のGPS衛星によって送信(broadcast)されたデータは、航法メッセージ(navigation message)として知られる。航法メッセージは、エフェメリス(ephemeris)、アルマナック(almanac)、GPS衛星ベースの時間基準(GPS satellite based time reference)のような複数の情報を含む。ここで、エフェメリスは、GPS衛星の位置を示すデータのセットを指す。アルマナックは、動作中の一式のGPS衛星群(fleet)の軌道を示すデータのセットを指す。GPS衛星ベースの時間基準は、各GPS衛星上の原子時計によって発生された高精度の時間基準である。
【0004】
通常、航法メッセージは、1秒あたり50ビットのデータレートを有する狭帯域の二相位相変調(BPSK; Binary Phase Shift Keyed)信号である。GPSシステムの性能を強化するために、各衛星の航法メッセージは広帯域信号に拡散される必要がある。従って、航法メッセージは、高レートの繰り返しの擬似ランダムノイズ(PRN; Pseudo-Random Noise)コードで1次変調される。送信前に、変調された航法メッセージは、高周波の搬送波で更に変調される必要がある。
【0005】
GPS受信器の三次元(3D)位置を判定するために、このGPS受信器は、少なくとも4つのGPS衛星の位置と擬似距離(pseudo range)を取得する必要がある。ここで、擬似距離は、GPS衛星とGPS衛星との間の距離を言う。GPS衛星の位置はエフェメリスから計算することができる。そして、擬似距離は、GPS衛星がGPS衛星信号を送信した時刻と、そのGPS衛星信号がGPS受信器に受信された時刻との間の時間間隔から計算することができる。従って、位置および擬似距離は、航法メッセージに基づいて計算することができる。上記航法メッセージを取得するために、GPS受信器は、GPS衛星信号を取得(acquire)し追尾(track)する必要がある。
【0006】
GPS衛星信号の取得段階において、GPS受信器は、最初に、局部搬送波(local carrier)を生成し、その局部搬送波を用いてGPS信号を復調する。しかしながら、衛星は、高速で地球の周回軌道を回り、且つGPS受信器も移動しており、従ってGPS衛星信号の搬送波周波数は、ドップラー効果の結果、シフトする。ドップラー効果によって引き起こされるGPS衛星信号の搬送波周波数シフトは、搬送波ドップラー周波数シフトとして知られている。従来、最大搬送波ドップラー周波数シフトは約±10kHzであると推測することは妥当である。従って、GPS受信器は、±10kHzの範囲でGPS衛星信号の搬送波周波数を取得する必要がある。
【0007】
更に、GPS衛星信号の取得段階において、GPS受信器は、また、GPS衛星信号のPRNコード位相を求めてPRNコード位相誤差を取り除く必要がある。ここで、PRNコード位相誤差は、GPS衛星によって使用されるPRNコードと、GPS受信器によって生成されるPRNコードとの間のコード位相差を言う。上記の搬送波ドップラー周波数シフトおよびPRNコード位相誤差の他にも、局部発振器によって供給される基準周波数と、GPS受信器のローカル時間基準(local time reference)は、正確ではなく、誤差を含んでいるかもしれない。GPS受信器は、また、上記基準周波数の誤差とローカル時間基準の誤差を取り除く必要がある。GPS衛星信号の追尾段階では、上述の全ての誤差は取り除かれ、航法メッセージが取得される。理論上、GPS受信器は、ユーザーの位置を計算するのに最小でも約18秒を要する。しかしながら、各GPS衛星の信号は、GPS受信器に同時には到着せず、GPS受信器は各GPS衛星信号を取得するのに時間を必要とする。従って、従来、GPS受信器がGPS衛星信号の取得と追尾を完了し、ユーザーの位置を計算するのに、30秒から数分の時間がかかる。
【0008】
GPS受信器の性能を評価するのに、多くのパラメータが使用される。そのパラメータの一つは、GPS受信器の電源が投入された時刻から、GPS受信器がこのGPS受信器の現在位置を判定する時刻までの時間遅延である。このパラメータは、初期位置算出時間(TTFF; Time To First Fix)として知られる。一般に、最も短いTTFFを有するGPS受信器が望ましい。GPS受信器のTTFFは、そのGPS受信器の個々のハードウェアおよびソフトウェアの影響を受ける。上述したように、従来のGPS受信器のTTFFは、30秒から数分の範囲である。
【0009】
GPS受信器のTTFFを低減するために、多くの解決策が提案された。或る解決策では、GPS受信器の電源がオフにされたときに、メモリにバックアップ航法データを格納する機能を有するGPS受信器が提供され、上記バックアップ航法データは、GPS受信器のTTFFを低減させるために使用される。バックアップ航法データは、各GPS衛星のGPS衛星ベースの時間基準、エフェメリス、アルマナックを含む。バックアップ航法データは、また、ユーザーの位置やタイムマーク(time mark)などのような他の情報を含んでもよい。タイムマークは、バックアップ航法データが生成された時刻を示す。
【0010】
GPS受信器の電源が再び投入されると、GPS受信器は、バックアップ航法データからのエフェメリスを使用して、任意のGPS衛星の搬送波ドップラー周波数シフトと位置を判定する。GPS受信器は、また、アルマナックを使用して、GPS衛星のおおよその位置を判定する。GPS衛星のおおよその位置が判定されると、GPS受信器は、GPS衛星のおおよその位置を用いて、各GPS衛星の搬送波ドップラー周波数シフトを見積もることができる。GPS受信器は、また、GPS衛星ベースの時間基準を用いてローカル時間基準を同期させる。GPS受信器がGPS衛星の位置、またはGPS衛星信号の搬送波ドップラー周波数シフトを得ると、GPS受信器は、広い範囲でGPS衛星の搬送波周波数を取得する必要がない。従って、GPS受信器のTTFFが著しく低減される。
【0011】
しかしながら、上述の複数の地上管制局の制御下で、エフェメリスおよびアルマナックが時折変化する。エフェメリスは数時間ごとに一度更新される一方でアルマナックは数日ごとに更新される。従って、GPS受信器は、メモリに格納されたバックアップ航法データが電源投入後に有効(valid)であるかどうかを検証する必要がある。従って、上述の解決策では、また、バッテリーによって給電されて、GPS受信器の電源がオフにされている間にローカル時間基準を提供する機能を有する実時間クロック(RTC; Real Time Clock)回路が備えられる。GPS受信器の電源が再び投入されると、上記RTC回路によって提供されるローカル時間基準は、バックアップ航法データを検証するために使用されることができる。
【0012】
図1は、従来技術に係るGPS受信器のブロック図である。このGPS受信器106は、バッテリー給電されたRAMを用いてバックアップ航法データを格納すると共に、バッテリー給電されたRTC回路を用いてローカル時間基準を提供している。図1に示されるようなGPS受信器106は、バックアップ航法データとローカル時間基準を用いて、GPS受信器についての位置の判定中のTTFFを低減することができる。
【0013】
GPS受信器106は、GPS信号を処理してGPS受信器についての位置を計算する機能を有する測位ユニット(positioning unit)100と、測位ユニット100と連通して情報のやり取りが可能なRAM102と、測位ユニットにローカル時間基準を提供するためのRTC回路104と、RAM102およびRTC回路104に電力を供給するためのバッテリー108とから構成される。
【0014】
GPS受信器106の電源が投入されると、測位ユニット100は、到来するGPS信号を処理し、航法メッセージとGPS衛星ベースの時間基準を取得し、GPS受信器についての位置を継続して計算する。GPS受信器106のローカル時間基準は誤差を含んでいるので、測位ユニット100は、ローカル時間基準をGPS衛星ベースの時間基準に同期させる必要がある。TTFFを低減させるために、測位ユニット100は、また、所定の時間間隔でバックアップ航法データを生成してRAM102に格納する。RAM102は、バックアップ航法データを格納し、GPS受信器106の電源がオフにされたときには、引き続き電源が供給されてバックアップ航法データの喪失を防止することができる。
【0015】
GPS受信器106の電源がオフにされたとき、またはGPS受信器106に供給される電力が誤って中断されたとき、バッテリー108が、RAM102とRTC回路104に電力を供給する。従って、GPSに対する電力供給が中断されたときには、バッテリ108が、RAM102に格納されたバックアップ航法データが保存され、RTC回路104が動作を継続することを保証する。
【0016】
GPS受信器106の電源が再び投入されると、測位ユニット100は、RAM102に格納されたバックアップ航法データを読み出すと共に、RTC回路104によって提供されるローカル時間基準を取得する。RTC回路104によって提供されるローカル時間基準は誤差を含むが、このローカル時間基準は、RAM102に格納されたバックアップ航法データを検証するのに用いることができる。バックアップ航法データを検証するためには、測位ユニット100は、ローカル時間基準と、バックアップ航法データからのタイムマークとの間の時間間隔を計算する必要がある。もし、この時間間隔が、所定期間(predetermined period)を超えていれば、バックアップ航法データは無効と見なされ、GPS受信器106は、広い周波数範囲でGPS衛星信号を取得することを開始する。その結果、GPS衛星信号の取得に多くの時間がかかる。バックアップ航法データが有効であれば、測位ユニット100は、GPS受信器の電源が投入された後にバックアップ航法データを用いてGPS受信器についての位置を判定し、広い周波数範囲でGPS衛星信号を取得することを回避する。従ってGPS受信器106のTTFFが低減される。
【0017】
上述の解決策では、TTFFを低減するために、RTC回路とRAMの両方が必要であり、RTC回路とRAMに対する電力供給は中断されてはならない。しかしながら、バッテリー108が消耗し、またはバッテリー108がRAM102またはRTC回路104から切断される状況が存在する。従って、GPS受信器の電源が再び投入された後に、RTC回路104は、GPS受信器106にローカル時間基準を提供することができない。従って、バックアップ航法データは、バッテリーが消耗し尽くされ、または一時期の間、取り外された状況下では、TTFFを低減する目的でGPS受信器の位置を判定するのに使用できない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従って、RTC回路を使用することなくGPS受信器のTTFFを低減することができると共に停電に影響されることのないシステムが求められ、それは、本発明が主として指向するシステムである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、有利には、RTC回路を用いることなく、ローカル時間基準を計算することができ、不揮発性記憶ユニットにバックアップ航法データを格納することができるGPS受信器を提供する。結果として、停電に影響されず、且つRTC回路を有することなくGPS受信器のTTFFを低減するという目標が達成される。
【0020】
本発明の一実施形態では、不揮発性記憶ユニットと測位ユニットとを備えたGPS受信器が提供される。不揮発性記憶ユニットは、GPS受信器のTTFFを低減するために使用できるバックアップ航法データを格納する機能を有する。GPS受信器の電源が投入された後、測位ユニットは、RTC回路を用いることなくローカル時間基準を計算すると共に、不揮発性記憶ユニットからバックアップ航法データを読み取る機能を有する。測位ユニットは、更に、上記ローカル時間基準とバックアップ航法データを用いて、GPS受信器についての位置を判定する間のTTFFを低減することができる。
【0021】
本発明の他の実施形態では、また、バックアップ航法データを用いてGPS受信器のTTFFを低減する方法が提供される。本方法は、不揮発性記憶ユニットに前記バックアップ航法データを格納するステップと、前記バックアップ航法データを検証するためのローカル時間基準を計算するステップと、前記GPS受信器の電源が投入されたときに前記不揮発性記憶ユニットから前記バックアップ航法データを読み出すステップと、前記ローカル時間基準と前記バックアップ航法データとに基づき、前記GPS受信器についての位置を計算するステップとを含む。
【0022】
本発明の特徴および利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明が進むにつれて明らかになるであろう。図面において同様の要素には同様の符号を付す。
【0023】
図1は、従来技術に係るGPS受信器のブロック図である。
【0024】
図2は、本発明の一実施形態による典型的なGPS受信器のブロック図である。
【0025】
図3は、本発明の他の実施形態による典型的なGPS受信器のブロック図である。
【0026】
図4は、本発明の一実施形態による典型的なGPS受信器の動作のフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図2は、本発明による典型的なGPS受信器204のブロック図であり、このGPS受信器204は、不揮発性記憶ユニット202、好ましくは不揮発性メモリ(NVM; Non-Volatile Memory)を用いてバックアップ航法データを格納し、RTC回路を用いることなくローカル時間基準を計算する。図2に示されたGPS受信器204は、測位ユニット200とNVM202を備える。測位ユニット200は、NVM202と連通して情報のやり取りが可能になっている。測位ユニット200は、GPS衛星信号を取得(acquiring)し追尾(tracking)する機能と、GPS衛星信号から航法メッセージを復調する機能と、GPS受信器についての位置を判定(determine)する機能を有する任意の種々のプロセッサを含んでもよい。測位ユニット200は、バックアップ航法データを用いて、GPS受信器204の電源が投入された後にGPS受信器についての位置を判定する機能を有する。測位ユニット200は、更に、バックアップ航法データとローカル時間基準を用いて、目に見える受信可能な各GPS衛星(visible GPS satellite)の搬送波ドップラー周波数シフトを見積もる機能を有する。加えて、測位ユニット200は、GPS受信器204の局部発振器の周波数誤差を見積もる機能を有する。バックアップ航法データは、NVM202に格納され、NVM202は、電力がなくてもバックアップ航法データを保存することができる。NVM202は、フラッシュメモリ、強誘電体RAM(FRAM)、或いは磁気抵抗RAM(MRAM)のような任意の種々の不揮発性メモリであることができる。NVM202は、消去可能であると共にプログラム可能である。従って、NVM202の内容は、測位ユニット200によって消去されプログラムされることができる。
【0028】
GPS受信器204の電源が投入されると、測位ユニット200はGPS衛星信号を取得し追尾する。上述の処理の後、航法メッセージは、これらのGPS信号から復調される。測位ユニット200は、航法メッセージからGPS衛星ベースの時間基準を抽出し、更に、それを用いて、GPS受信器のローカル時間基準を同期させると共に、少なくとも4つのGPS衛星の擬似距離と各GPS衛星の位置を計算する。測位ユニット200は、また、バックアップ航法データを読み出す機能を有する。測位ユニット200から得られたバックアップ航法データは、NVM202に選択的に格納される。一実施形態において、測位ユニット200は、読み出されたバックアップ航法データをNVM202に格納する必要があり、測位ユニット200は、NVMに格納されたバックアップ航法データを読み出して、NVMに格納されたそのバックアップ航法データを、測位ユニット200から読み出されたバックアップ航法データと比較する必要がある。もし、NVMに格納されたバックアップ航法データが測位ユニット200から読み出されたバックアップ航法データと異なれば、NVM202に格納されたバックアップ航法データは消去され、そして測位ユニット200から読み出されたバックアップ航法データがNVM202にプログラムされる。他の実施形態において、測位ユニット200は、NVMに格納されたバックアップ航法データを直接的に消去し、そして測位ユニット200から読み出されたバックアップ航法データをNVM202にプログラムする。通常、RAMは、バックアップ航法データを保持するには一定のバッテリー電源を必要とする。もし、そのバッテリーの電力が消耗し、またはそのバッテリーがRAMから取り外されれば、RAMに格納されたデータは失われる。従って、バックアップ航法データは、GPS受信器のTTFFを低減させるために利用することはできない。本発明は、バックアップ航法データを格納するためにNVM202を備える。従って、GPS受信器204の電源がオフにされたときに、NVM202は、依然としてバックアップ航法データを保持する。従って、GPS受信器204はバックアップ航法データの喪失に影響されない。GPS受信器204の電源が投入されると、測位ユニット200は、NVM202からバックアップ航法データを読み出す。バックアップ航法データが読み出されると、測位ユニット200は、バックアップ航法データを検証するためにローカル時間基準を取得する必要がある。本実施形態では、RTC回路が存在しないので、測位ユニット200は、RTC回路からローカル時間基準を取得することができない。その代わりに、測位ユニット200は、時刻粗同期(time coarse synchronization)を実施することによりローカル時間基準を計算する。時刻粗同期において、測位ユニット200は、GPS衛星ベースの時間基準に対して大まかに同期されたローカル時間基準を計算する。時刻粗同期を実施するために、測位ユニット200は、最初に、GPS衛星信号を取得し追尾する。そして、GPS衛星信号を復調することにより航法メッセージが得られ、GPS衛星ベースの時間基準が航法メッセージから取得されることができる。上述の処理の後、測位ユニット200は、GPS衛星ベースの時間基準に基づき、時刻粗同期の実施を継続する。ローカル時間基準は、GPS衛星ベースの時間基準に送信遅延(transmission delay)を加算することにより決定されることができる。ここで、送信遅延は、GPS衛星がGPS衛星信号を送信した時刻と、上記GPS衛星信号をGPS受信器が受信した時刻との間の時間間隔を指す。当業者であれば、地球の表面にあるGPS受信器とGPS受信器に見える任意のGPS衛星との間の距離は、20192キロメートルから25785キロメートルの範囲内であることが分かる。従って、送信遅延を見積もることができる。通常、送信遅延は、67.3msから86msまで変化し、平均送信遅延は約76msである。従って、平均送信遅延をGPS衛星ベースの時間基準に加算することにより、ローカル時間基準を大まかに判定することができる。平均送信遅延は実際の送信遅延ではないので、ローカル時間基準は、GPS衛星ベースの時間基準に正確に同期されない。一般に、GPSベースの時間基準とローカル時間基準との間の誤差が存在し、その誤差は±10msの範囲内である。通常、時刻粗同期は数ミリ秒内で完了する。
【0029】
時刻粗同期の後、測位ユニット200は、ローカル時間基準を用いて、NVM202から取得されたバックアップ航法データを検証する。このバックアップ航法データを検証するために、測位ユニット200は、バックアップ航法データからのタイムマークとローカル時間基準との間の時間間隔を計算する必要がある。上述したように、もし、その時間間隔が所定の時間期間(predetermined time period)を超えていなければ、バックアップ航法データは有効(valid)と見なされ、更にGPS受信器のTTFFを低減させるために採用することができる。そうでなければ、バックアップ航法データは無効(invalid)である。もし、バックアップ航法データが無効であれば、測位ユニット200は、そのバックアップ航法データを廃棄し、広い周波数範囲でGPS信号を取得することを開始する。
【0030】
もし、エフェメリスが有効であれば、測位ユニット200は、エフェメリスから各GPS衛星の位置を直接的に計算してもよい。そして、測位ユニット200は、目に見える各GPS衛星の搬送波ドップラー周波数と、局部発振器の周波数誤差を見積もる。目に見える各GPS衛星の見積もられた搬送波ドップラー周波数シフトに基づき、即位ユニット200は、狭い周波数範囲でGPS信号を取得することができる。従って、GPS受信器のTTFFを低減できる。
【0031】
もし、エフェメリスが有効でなければ、測位ユニット200は、各GPS衛星の位置を直接的に計算することはできない。しかしながら、アルマナックが有効であれば、アルマナック、ローカル時間基準、目に見える衛星に基づき、大よその搬送波ドップラー周波数シフトと、目に見えるGPS衛星の大よその位置が見積もられてもよい。測位ユニット200は、また、狭い周波数範囲でGPS衛星信号を取得してもよい。有利には、GPS受信器は、RTC回路からローカル時間基準を取得する必要がなく、NVMを用いて、NVMに格納されたバックアップ航法データは、電源またはバッテリーが取り外されたときに失われないであろう。従って、GPS受信器は、GPS衛星信号を取得してはじめから位置情報を得る必要がなく、その代わり、GPS受信器は、GPS受信器の電源が再び投入された後、バックアップ航法データに含まれるバックアップ航法データを使用することができる。
【0032】
図3は、オプションのRTC回路を備えた本発明の他の実施形態の代表的なブロック図である。図3に、GPS受信器306が示されている。GPS受信器306は、図2のGPS受信器204に基いている。GPS受信器306は、測位ユニット300と、この測位ユニット300と連通して情報のやり取りが可能なNVM302とを備えるのみならず、測位ユニット300にローカル時間基準を提供するためのバッテリー給電されたRTC回路304と、バッテリー308とを備える。バッテリー308は、GPS受信器306の電源がオフにされたときにRTC回路304に電力を供給するために使用される。バッテリー308は、リチウムイオン、ニッケルカドミウム、ニッケル水素バッテリーなどのような種々のバッテリーであってもよい。
【0033】
GPS受信器306の電源が投入された後、測位ユニット300は、RTC回路304からローカル時間基準が取得できるかどうかを検出する。もし、RTC回路304からローカル時間基準が取得できれば、GPS受信器は時刻粗同期を回避する。もし、RTC回路304からローカル時間基準が得られなければ、測位ユニット300は、時刻粗同期を実施することによりローカル時間基準の計算を開始する。有利には、この実施形態では、GPS受信器306のTTFFは、RTC回路の存在に関係なく、影響されない。
【0034】
図4は、バックアップ航法データを用いてGPS受信器のTTFFを低減する代表的なフローチャートである。GPS受信器の電源が投入された後、GPS受信器は、最初に、GPS衛星信号を取得し追尾し、GPS衛星信号からGPS衛星ベースの時間基準を取得し、そして、GPS受信器は、GPS衛星ベースの時間基準に基づき時刻粗同期を実施し、ローカル時間基準を取得する(ステップ400)。或いは、GPS受信器の電源が投入された後、GPSは、最初に、RTC回路からローカル時間基準を取得することを試みてもよい。もし、RTC回路から時間基準が得られなければ、GPS受信器は、GPS信号に基づき時刻粗同期の実施を継続し、ローカル時間基準を取得する。そして、GPS受信器は、不揮発性記憶ユニットに格納されたバックアップ航法データの取得を継続する(ステップ402)。一旦、ローカル時間基準とバックアップ航法データが得られると、GPS受信器は、そのローカル時間基準を用いてバックアップ航法データを検証する(ステップ404)。バックアップ航法データを検証するために、GPS受信器は、最初に、バックアップ航法データからのタイムマークとローカル時間基準との間の時間間隔を計算する。もし、その時間間隔が所定期間を超えていれば、バックアップ航法データは無効であり、GPS受信器のTTFFを低減するのには使用できない。そして、GPS受信器は、そのバックアップ航法データを廃棄し、広い周波数範囲でGPS衛星信号の取得を開始する。もし、その時間間隔が所定期間の範囲内であれば、そのバックアップ航法データは有効である。そして、GPS受信器は、目に見える各GPS衛星の搬送波ドップラー周波数シフトを見積もるためにバックアップ航法データの使用を継続する(ステップ406)。そして、GPS受信器は、GPS受信器の局部発振器の基準周波数誤差の見積もりを継続する(ステップ408)。上述のステップの後、GPS受信器は、GPS衛星信号の搬送波周波数とローカル搬送波(local carrier)との間の周波数差を修正する(ステップ410)。そして、GPS受信器は、GPS衛星信号を取得し追尾する(ステップ412)。GPS受信器は、また、バックアップ航法データを生成する一方で、GPS受信器についての位置を継続して判定する(ステップ414)。バックアップ航法データのセットが生成されると、GPS受信器は、生成されたバックアップ航法データが不揮発性記憶ユニットにプログラムされる必要があるか否かを問い合わせる(ステップ416)。生成されたバックアップ航法データが不揮発性記憶ユニットに格納されたバックアップ航法データと異なれば、GPS受信器は、生成されたバックアップ航法データを不揮発性記憶ユニットにプログラムする(ステップ418)。そうでなければ、生成されたバックアップ航法データは廃棄され、GPS受信器はステップ412,414を繰り返す。
【0035】
図4との関連では、示されたステップは如何なる特定の順序のアクションを必要とするものではなく、それを意味するものではない。アクションは、順番に実行されてもよく、並列に実行されてもよい。本方法は、例えば、一連のマシン読み取り可能な命令を実行するユーザー装置またはネットワークサーバーの一部を動作させることにより実施されてもよい。命令は、信号ベアリング(signal bearing)またはデータ記憶の一次、二次、三次媒体に常駐することができる。媒体は、例えば、ネットワーク装置のコンポーネントによりアクセス可能な、またはネットワーク装置のコンポーネント内に備えられたRAM(図示なし)を含んでもよい。RAM、ディスケット、或いは他の二次記憶媒体に含まれようがなかろうが、命令は、DASD記憶(例えば、従来の“ハードドライブ”またはRAIDアレー)、磁気テープ、電子的な読み出し専用メモリ(例えば、ROM,EPROM,EEPROM)、フラッシュメモリカード、光記憶装置(例えば、CD−ROM,WORM,DVD,デジタル光テープ)、紙“パンチ”カード、またはデジタル及びアナログ伝送媒体を含む他の適切なデータ記憶媒体のような、種々のマシン読み取り可能なデータ記憶媒体上に格納されてもよい。
【0036】
本明細書で用いられる用語および表現は、説明の表現として使用されるものであり、制限を意図したものではなく、このような用語および表現の使用において、示され記述された特徴(または、その部分)の如何なる均等物も排除することを意図するものではなく、種々の変形は本特許請求の範囲内であることが理解される。他の変形、バリエーション、代替物もまた可能である。従って、特許請求の範囲は、このような全ての均等物に及ぶ。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】従来技術に係るGPS受信器のブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態による典型的なGPS受信器のブロック図である。
【図3】本発明の他の実施形態による典型的なGPS受信器のブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態による典型的なGPS受信器の動作のフローチャートである。
【符号の説明】
【0038】
200 測位ユニット
202 不揮発性記憶ユニット
204 GPS受信器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPS受信器であって、バックアップ航法データを用いて、当該GPS受信器の位置を判定する初期位置算出時間(TTFF)を低減するGPS受信器において、
前記バックアップ航法データを格納するための不揮発性記憶ユニットと、
前記不揮発性記憶ユニットと情報のやり取りが可能なように連通し、前記不揮発性記憶ユニットから前記バックアップ航法データを読み出し、当該GPS受信器の電源が投入されたときにRTC回路を用いることなくローカル時間基準を計算する機能を有し、更に、前記バックアップ航法データと前記ローカル時間基準とを用いて当該GPS受信器についての位置の判定期間中の前記TTFFを低減する機能を有する測位ユニットと
を備えたGPS受信器。
【請求項2】
前記測位ユニットは、時刻粗同期を実施することにより前記ローカル時間基準を計算する機能を有する請求項1記載のGPS受信器。
【請求項3】
当該GPS受信器の電源が投入された後、前記測位ユニットが、前記ローカル時間基準を用いて前記バックアップ航法データを検証する機能を有する請求項2記載のGPS受信器。
【請求項4】
前記バックアップ航法データが検証された場合、前記測位ユニットは、前記バックアップ航法データを用いて当該GPS受信器の位置を判定する機能を更に有する請求項3記載のGPS受信器。
【請求項5】
前記測位ユニットは、前記バックアップ航法データと前記ローカル時間基準とを用いて、各GPS衛星の搬送波ドップラー周波数シフトを見積もる機能を更に有する請求項4記載のGPS受信器。
【請求項6】
前記測位ユニットは、前記GPS受信器の基準周波数誤差を見積もる機能を更に有する請求項4記載のGPS受信器。
【請求項7】
前記測位ユニットは、前記GPS受信器の前記基準周波数誤差と前記搬送波ドップラー周波数シフトとを用いてGPS信号を取得する機能を有する請求項6記載のGPS受信器。
【請求項8】
バックアップ航法データを用いて、GPS受信器の初期位置算出時間(TTFF)を低減する方法であって、
前記バックアップ航法データを不揮発性記憶ユニットに格納するステップと、
前記GPS受信器の電源が投入されたときに、前記バックアップ航法データを検証するためのローカル時間基準を計算するステップと、
前記不揮発性記憶ユニットから前記バックアップ航法データを読み取るステップと、
前記ローカル時間基準と前記バックアップ航法データとに基づき前記GPS受信器についての位置を計算するステップと
を含む方法。
【請求項9】
前記ローカル時間基準を取得するステップは、
前記GPS受信器の電源が投入された後にGPS衛星信号を取得するステップと、
前記GPS衛星信号を追尾するステップと、
前記GPS衛星信号からGPS衛星ベースの時間基準を取得するステップと、
前記GPS衛星ベースの時間基準に基づき前記ローカル時間基準を計算するステップと
を含む請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記バックアップ航法データが有効である場合、前記バックアップ航法データに基づき各GPS衛星の搬送波ドップラー周波数シフトを見積もるステップを更に含む請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記GPS受信器の基準周波数誤差を見積もるステップを更に含む請求項8記載の方法。
【請求項12】
前記GPS受信器の前記基準周波数誤差と前記搬送波ドップラー周波数シフトとを用いることによりGPS信号を取得するステップを更に含む請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記バックアップ航法データを生成するステップと、
前記不揮発性記憶ユニットに前記バックアップ航法データを格納するステップと
を更に含む請求項10記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−197084(P2008−197084A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283655(P2007−283655)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FRAM
【出願人】(500521843)オーツー マイクロ, インコーポレーテッド (138)
【Fターム(参考)】