説明

HDM2阻害剤複合体およびそれらの使用

本発明は、結晶化HDM2ペプチドならびに結晶のX線回折パターンの記述を含む。回折パターンは、HDM2上のリガンド結合部位が同定できそしてHDM2アミノ酸残基とのリガンドの相互作用をモデル化できるような原子分解においてHDM2の三次元構造の決定を可能とする。かかるマップを用いて作成されたモデルは、MDM2およびHDM2腫瘍タンパク質の阻害剤として作用するものを含み、それらに限定はされない活性作用物質として機能できるリガンドの設計を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【関連出願との関係】
【0001】
本願は、2002年10月16日付出願の出願番号60/418,350号の優先権を主張する。
【連邦政府援助研究開発に関する言明】
【0002】
適用なし。
【技術分野】
【0003】
本発明は、一般的に、合理的薬剤設計に基づく分子生物学、タンパク質結晶化、X線回折解析、三次元構造決定、分子モデル化(modeling)および構造の分野に関する。本発明は、結晶化HDM2ペプチドならびにX線回折パターンの記述を提供する。問題の結晶のX線回折パターンは、HDM2の三次元構造が原子解像において決定でき、HDM2上のリガンド結合部位が同定でき、そしてリガンドとHDM2アミノ酸残基との相互作用がモデル化できるために十分な分解能である。
【0004】
本発明により提供される高分解能マップおよびかかるマップを用いて作成されるモデルは、活性作用物質として機能できるリガンドの設計も可能とする。従って、本発明は、限定はされるものではないが、MDM2およびHDM2腫瘍タンパク質の阻害剤として使用されるものを含む、活性作用物質の設計のための用途を有する。
【発明の背景】
【0005】
HDM2:構造および機能
HDM2(ヒト二重微小2タンパク質(human double minute 2
protein))は、軟組織肉腫、神経膠芽腫および乳癌を含むヒト腫瘍の下位群中で過剰発現される腫瘍遺伝子hdm2の発現産物である(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。
【0006】
この腫瘍遺伝子の機能的特性研究は、HDM2と、細胞成長阻止およびアポトーシスに中心的存在である腫瘍抑制遺伝子のp53との間の相互作用を明らかにした(非特許文献4)。HDM2はp53の転写標的でありそしてそれ自体、HDM2とp53とが正確に調節されたループを形成する(非特許文献5)。HDM2は、ユビキチン化によりおよび核に対してHDM2を隔離するArfとの複合体形成によりさらに調節される(非特許文献6、非特許文献7)。
【0007】
HDM2がp53から独立して機能できると示唆する一連の証拠がある。p53結合ドメインを含まないHDM2のスプライス変種がヒト腫瘍中に発見されそして形質転換能力を有することが示された(非特許文献8)。生体内研究も、HDM2を過剰発現するトランスジェニックマウス中で成長する腫瘍のスペクトルが、p53ヌルマウス中で見られるスペクトルとは異なることおよびHDM2がp53ヌル動物中の肉腫形成を促進できることも証明した(非特許文献9)。最後に、HDM2のその他の結合相手が、腫瘍形成経路、例えば、MTBP誘導でp53から独立のG1阻止のHDM2阻害と一緒にHDM2を支援できた(非特許文献10)。
【0008】
アンチセンスヌクレオチドによるhdm2阻害に続く促進された腫瘍細胞死(非特許文献11、非特許文献12、非特許文献13)およびHDM2結合性ミニタンパク質(非特許文献14)の報告は、HDM2の阻害がp53を活性化しそして他方ではアポトーシスを発生させるという予測を実証した。このアイデアに従って、HDM2のp53結合グルーブに対して生成された小分子阻害剤が、2つのタンパク質の相互作用を防止しそしてp53活性を誘導することが期待される。p53とHDM2との間の相互作用の阻害が新生物の処置における標準化学療法と付加的または相乗的に作用するであろうことがさらに示唆されそしてこれもアンチセンスHDM構築物として用いる研究により支持されている(非特許文献15)。
【0009】
MDM2:構造および機能
HDM2のネズミ相同体であるmdm2は、元々はマウス二重微小染色体上にみいだされそして腫瘍形成性細胞株内で増幅される3種の遺伝子の一つとして最初に同定された(非特許文献16)。そのタンパク質産物は、温度感受性マウスp53遺伝子で予めトランスフェクションされたラット繊維芽細胞細胞株(クローン6)内に最初に観察されたp53と複合体を形成することが引き続いて発見された(非特許文献17)。ラット細胞株は37℃で良く生育したがしかし32℃に低下されるとG1阻止を示し、それはp53の立体配座(conformation)および活性において観察された温度依存性スイッチと完全に一致した。しかしp53−MDM2複合体は、32℃でのみ多量に観察され、その温度でp53は主として機能性、すなわち「野生型」形態が主体であった(非特許文献18、非特許文献19)。ラット細胞株を32℃まで低下しそして新規に(de novo)タンパク質合成を遮断することにより、「野生型」p53のみがmdm2遺伝子の発現を誘導し、それによりp53転写活性に関して該複合体の差異的存在に関係することが示された(非特許文献20)。この説明は、mdm2遺伝子の最初のイントロン内の野生型p53のDNA結合部位の同定によりさらに発展された(非特許文献21)。このp53DNA結合部位を使用するレポーター構築物は、野生型p53がMDM2と同時発現されるとそれらが不活性化されることを明らかにした。
【0010】
p53の転写活性の阻害は、MDM2がp53および/またはDNA結合部位の活性化ドメインを遮断することにより起きるのであろう。その結果、mdm2発現は、野生型p53の転写活性に対するMDM2タンパク質の阻害効果を介して自己調節されると提案された。このp53−mdm2自己調節フィードバックループは、細胞成長がp53によりどのようにして調節されるかに関する新しい洞察をもたらした。ヒト肉腫の3分の1までがmdm2遺伝子の増幅によるp53調節成長制御を克服すると考えられる(非特許文献22)。従って、p53とMDM2との間の相互作用は、鍵となる可能性がある治療標的である。
【0011】
p53:HDM2およびMDM2との相互作用
p53は、アポトーシスによる細胞周期阻止または細胞死を起こす多数のタンパク質、例えばp21、14−3−3σ、およびbaxのための転写因子である。p53のレベルおよび転写活性は、細胞DNAへの損傷により増加する。MDM2タンパク質は、p53の両親媒性N−末端らせんへの結合によりp53機能を阻害し、p53と他のタンパク質との相互作用およびそのトランス活性化活性を妨げる。MDM2との相互作用は、ユビキチン依存性タンパク質分解のためにp53も標的とする。MDM2は、細胞周期に対してもp53とは独立した効果を示し、それはpRBおよびEF2のようないくつかの下流エフェクターとの直接相互作用によるのであろう(非特許文献23中に総説)。
【0012】
p53タンパク質の変異は、すべてのヒト癌の50%中で起きる(非特許文献24に総説、非特許文献25、および非特許文献26中に引用された文献)。正常な環境では、p53は潜在性で非常に壊れやすいタンパク質であり、それは数分間の非常に短い半減期で更新する(非特許文献27)。DNA損傷またはストレスは、p53の安定性に著しい上昇を誘導する(非特許文献28)。さらに、それらのシグナルは、そのトランス活性化ドメインの自己調節阻害により正常では抑止されている機能である、アポトーシス機構の転写活性化因子としてのp53の機能も活性化する。細胞内に存在するp53の量は、p53と腫瘍遺伝子hdm2との間の負フィードバックループにより緊密に調節される。
【0013】
p53は細胞核内に位置しそしてそのトランス活性化ドメインを介してhdm2の発現を誘導する。引き続いて、発現されたhdm2は、p53トランス活性化ドメインの残基19〜26に結合してそれを不活性化し(非特許文献29、非特許文献30、非特許文献19)、そして遺伝子発現のために必要な転写因子の補充を遮断する(非特許文献31、非特許文献32)。さらに、p53−hdm2複合体は、分解が起きる細胞質に往復する。負フィードバックループによるこの緊密な調節は、生物体の生存のために重要である。hdm2ノックアウトマウス内のhdm2の不活性化は、早期の胚の致死に導くが、しかしp53の同時に起きる不活性化により完全に防止される(非特許文献33、非特許文献34)。反対に、hdm2の過剰な発現は、p53の構成的抑制に導くことができそして癌を促進する。過剰のHDM2は、p53とは独立して癌も促進する(非特許文献35、非特許文献36)。
【0014】
上記に考察したように、HDM2とp53との間の相互作用の阻害は癌治療の魅力的な標的である(非特許文献37)。p53とHDM2との間の複合体形成の阻害は細胞内のp53のレベルを上昇することが示された(非特許文献14)。さらに、p53結合からHDM2を遮断することは、癌治療の前線として、HDM2を過剰発現する細胞への細胞周期制御の回復のために治療的に有用であろう。さらに一般的には、HDM2の阻害は、アポトーシスおよび生育阻止シグナル伝達経路を促進することによりp53正常癌における化学治療および照射の有効性を増加するであろう。この方法は、機能性p53を含む癌細胞に対して化学治療剤にさらに可能性を与えるであろう。
【0015】
p53/HDM2タンパク質複合体の阻害剤を同定する一つの方法は、相互作用のためのモデルを確立するために結晶学によりHDM2結合ポケットのアミノ酸特異性を決定する方法である。この方法を用いて、クッシーら(Kussie et al.)は、p53に基づくペプチドアンタゴニストを同定した(非特許文献38)。HDM2の短縮形(残基17〜125)およびp53のN−末端トランス活性化ドメインから誘導される15量体ペプチドの結晶構造は、クッシーらにより公開された(非特許文献38)。クッシーらは、HDM2に対して71%一致を有するアフリカツメガエル(Xenopus laevis)から誘導されたMDM2の結晶構造(残基13−118)も公開した(非特許文献38)。分子モデル化に基づいて、ガルシア−エチェベリアら(Garcia−Echeverria,et al.)は、hdm2のN−末端ドメインに結合する、15量体野生型p53ペプチドから誘導された、8量体ペプチド擬似体(peptidomimetic)のモデルを公開した(非特許文献39)。例えば小分子阻害剤のような阻害性化合物、またはその他のペプチドを伴うHDM2の結晶構造は開示されていないと考る。
【0016】
従って、HDM2(およびその相同体)遺伝子とp53のような天然結合リガンドとの間の相互作用を阻害する強力な小分子を設計および選択するモデル化システムの開発に対する要求がいまだに存在する。
【非特許文献1】Oliner,J.D.et al.,Nature,358(6381):80−83(1992)
【非特許文献2】Reifenberger,G.et al.,Cancer Res.,53:2736−2739(1993)
【非特許文献3】Bueso−Ramos,C.E.et al.,Breast Canc.Res.Treat.,37(2):179−188(1996)
【非特許文献4】Momand,G.P.et al.,Cell,69:1237(1992)
【非特許文献5】Wu,X.et al.,Genes and Dev.,7:1126−1132(1992)
【非特許文献6】Tao,W.and Levine,A.J.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,96(12):6937−6941(1999)
【非特許文献7】Weber,J.D.et al.,Nat.Cell Biol.,1(1):20−26(1999)
【非特許文献8】Sigalas,I.et al.,Nat.Med.2(8):912−917(1996)
【非特許文献9】Jones,S.N.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95(26):15608−15612(1998)
【非特許文献10】Boyd,M.T.et al.,J.Biol.Chem.275(41):31883−31890(2000)
【非特許文献11】Chen,L.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95(1):195−200(1998)
【非特許文献12】Chen,L.et al.,Mol.Med.5(1):21−34(1999);
【非特許文献13】Tortora,G.et al.,Int.J.Cancer,88(5):804−809(2000)
【非特許文献14】Bottger,A.et al.,Curr.Biol.,7(11):860−869(1997)
【非特許文献15】Wang.H.et al.,Clin.Canc.Res.7(11):3613−3624(2001)
【非特許文献16】Cahilly−Snyder.,L.et al.,Somatic Cell Mol.Genet.13:235−244(1987)
【非特許文献17】Michalovitz,D.et al.,Cell 62:671−680(1990)
【非特許文献18】Barak,Y.et al.,EMBO J.11:2115−2121(1992)
【非特許文献19】Momand,J.et al.,Cell 69:1237−1245(1992)
【非特許文献20】Barak,Y.et al.,EMBO J.12:461−468(1993)
【非特許文献21】Wu,X.et al.,Genes Dev.7:1126−1132(1993)
【非特許文献22】Oliner,J.D.et al.,Nature 358:80−83(1992)
【非特許文献23】Zhang,R.and Wang,H.,Cur.Pharm.Des.6:393−416(2000)
【非特許文献24】Agerwal.M.L.,et al.J.Biol.Chem.273:1−4(1998)
【非特許文献25】Levine,A.J.,Cell 88:323−331(1997)
【非特許文献26】Oren,M.J.,Biol.Chem.274:36031−36034(1999)
【非特許文献27】Rogel,A.et al.,Mol.Cell Biol.5:2851−2855(1985)
【非特許文献28】Kastan,M.B.et al.,Cancer Res.51:6304−6311(1991)
【非特許文献29】Chen,J.et al.,Mol.Cell.Biol.16:2445−2452(1996)
【非特許文献30】Haupt,Y.et al.,EMBO J.15:1596−1606(1996)
【非特許文献31】Lu,H.et al.,PNAS 92:5154−5158(1995)
【非特許文献32】Thut,C.J.et al.,Science 267:00−104(1995)
【非特許文献33】Jones,S.N.et al.Nature 378:206−208(1995)
【非特許文献34】Montes de Oca Luna,R.et al.,Nature 378:203−206(1995)
【非特許文献35】Ludgren,K.et al.,Genes and Dev.11:714−725(1997)
【非特許文献36】Sun,P.et al.,Science 282:2270−2272(1998)
【非特許文献37】Lane,D.P.,TIBS 22:372−374(1997)
【非特許文献38】Kussie,P.H.et al.,Science 274:948−953(199)
【非特許文献39】Garcia−Echeverria,C.et al.,J.Med.Chem.43:3205−3208(2000)
【発明の要約】
【0017】
本発明は、ヒトMDM2タンパク質(HDM2)およびHDM2と複合体を形成しp53タンパク質との相互作用からHDM2を防止する阻害性化合物とから誘導される三次元構造情報を提示しそして使用する方法を含む。本発明は、阻害剤−HDM2複合体の結晶を取得するための特定の結晶化条件も含む。該結晶は、引き続いてX線結晶学(またはNMR)を用いて複合体の三次元構造を得るために使用されそして得られたデータはHDM2と阻害剤との間の複合体形成を改善し、そして、p53へのHDM2の結合の阻害を改善する目的で合理的薬剤発見設計のために使用される。
【0018】
本発明は、HDM2、もしくはフラグメント、またはその標的構造モチーフもしくは誘導体、および小分子阻害剤であるリガンドを含む結晶を含む。他の態様では、結晶はP321の三方晶系空間群およびP42の正方晶系空間群から成る群から選択される空間群を有する。本発明は、配列番号2と少なくとも95%の配列一致を有するペプチドを含んでなるHDM2を含んでなる結晶も含む。
【0019】
本発明の別の態様では、本発明は(a)計算機読み取り可能な記憶媒体中に記憶された、HDM2、もしくはフラグメント、またはその標的構造モチーフもしくは誘導体、および小分子阻害剤であるリガンドを含んでなる結晶の三次元構造に関する情報を含むデータベース、および(b)情報を閲覧するためのユーザーインターフェースを含んでなる計算機システムを含む。
【0020】
本発明は、(a)HDM2を作用物質に暴露し、そして(b)HDM2アミノ酸残基Ser17、Ile19、Leu82およびArg97への該作用物質の会合(association)を検出し、それにより電位を評価することを含んでなる、HDM2と会合するための作用物質の電位の評価方法も含む。
【0021】
本発明は、(a)aa16−配列番号2を作用物質に暴露し、そして(b)aa16−配列番号2への該作用物質の会合のレベルを検出しそれにより電位を評価することを含んでなる、aa16−配列番号2を有するペプチドと会合する作用物質の電位の評価方法をさらに含む。
【0022】
さらに本発明中に含まれるのは、(a)可能性があるアゴニストまたはアンタゴニストの設計または選択のために小分子阻害剤と共に同時結晶化されたHDM2の三次元構造を使用することを含んでなる、HDM2に対する可能性があるアゴニストまたはアンタゴニストの同定方法をさらに含む。
【0023】
本発明は、(a)HDM2の結晶のX線回折データを取得し、(b)HDM2と阻害剤との複合体のX線回折データを取得し、(c)段階(a)で得られたX線回折データを段階(b)で得られたX線回折データから差し引いてX線回折データにおける差異を取得し、(d)段階(a)で得られたX線回折データに相当する位相を取得し、(e)段階(d)で得られた位相と段階(c)で得られたX線回折データにおおける差異とを用いて、阻害剤の差フーリエイメージを算出し、そして(f)段階(e)で得られた算出結果に基づいてHDM2に対する阻害剤の付着部位を決定することを含んでなる、HDM2に対する阻害剤の付着部位の決定方法を含んでなる。
【0024】
本発明は、(a)HDM2および阻害剤を含んでなる結晶を取得し、(b)結晶の原子座標を取得し、(c)原子座標および1種もしくはそれ以上の分子モデル化技術を用いて阻害剤とHDM2との相互作用をいかにして改変するかを決定し、そして(d)段階(c
)で得られた決定事項に基づいて阻害剤を改変して改変された阻害剤を作製することを含んでなる、改変された阻害剤の取得方法をさらに含んでなる。
【0025】
本発明の別の態様では、本発明は、HDM2アミノ酸残基Ser17、Ile19、Leu82およびArg97の構造座標により規定される結合ポケットまたは活性部位を含んでなる単離されたタンパク質フラグメントを含む。
【0026】
本発明の別の態様では、本発明は、HDM2アミノ酸残基Ser17、Ile19、Leu82およびArg97の構造座標により規定される結合ポケットまたは活性部位を含んでなるフラグメントをコードする単離された核酸分子を含む。本発明の別の態様では、本発明は、(a)タンパク質分子フラグメントを作用物質に暴露し、そして(b)フラグメントへの作用物質の会合のレベルを検出することを含んでなる、HDM2と会合する作用物質をスクリーニングする方法を含む。本発明の別の態様では、本発明は、タンパク質分子フラグメントを含んでなるキットを含む。
【0027】
本発明は、(a)PEGおよびNaSCNを含んでなる適合する溶液中でHDM2ポリペプチドを該リガンドと接触させ、そして(b)HDM2ポリペプチド−リガンドの該生成複合体を該溶液から結晶化させることを含んでなる、HDM2ポリペプチド−リガンドを含んでなる結晶複合体の作製方法をさらに含んでなる。
【0028】
本発明は、HDM2、および可能性がある阻害剤と一緒に配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号4から成る群から選択される配列を含んでなるペプチドを結晶化することを含んでなる、小分子阻害剤であるリガンドを含んでなる結晶の作製方法をさらに含む。
【0029】
本発明は、a)表1もしくは表2による原子座標により規定されるHDM2の三次元構造を用い、b)該三次元構造中のSer17、Ile19、Leu82およびArg97から選択される1個もしくはそれ以上のHDM2アミノ酸を異なるアミノ酸で置換して改変されたHDM2を作成し、c)該三次元構造を用いて該可能性のある阻害剤を設計または選択し、d)該可能性のある阻害剤を合成し、そしてe)該可能性のある阻害剤を基質の存在下で該改変されたHDM2と接触させて、HDM2または該改変されたHDM2の阻害に関して該可能性のある阻害剤の能力を試験することを含んでなる、HDM2の可能性がある阻害剤を同定する方法を含む、さらに本発明は該方法により同定された阻害剤を含む。本発明にさらに含まれるのは、該方法により同定された阻害剤である。
【発明の詳細な説明】
【0030】
定義
生物工学および化学の場合に一般的であるように、本発明の記述は当該技術分野の多数の用語の使用を必要とする。それを網羅的に行うのは実際的ではないが、いくつかのそれらの用語の定義を参照のためにここに定義する。別途に規定しない限り、本明細書中で使用される技術的よび科学的のすべての用語は、本発明が属する技術分野の通常の技術者により共通して理解されるものと同様の意味を有する。他の用語の定義は本明細書中の別の箇所にも見られるであろう。しかし、本箇所または本明細書中の別の箇所で提供される定義は、定義された用語の意図された範囲および意味を決定する場合に常に考えられるべきである。本明細書中に記載されたものと類似または等価のいずれかの方法または物質が本発明の実施の際に使用できるけれども、好ましい方法および物質が記載される。
【0031】
本明細書中で使用される場合に、「原子座標」または「構造座標」の用語は、各原子に対して、X、Y、ZおよびBを含む、タンパク質データバンク(Protein Data Bank)(PDB)フォーマット中でHDM2の結晶中の原子の位置を記述する数
学的座標を指す。結晶から得られた回折データは、結晶の反復単位の電子密度マップを算出するために使用される。電子密度マップは、結晶内の個々の原子の位置(すなわち座標X、YおよびZ)を確定するために使用されてもよい。当該技術分野の熟練者は、X線結晶学により決定された構造座標の組は標準偏差が避けられないと理解している。本発明の目的のために、表1または表2の相当する原子座標の非水素原子位置上に重ねられた場合に、約1.5Åより小さい非水素原子の二乗平均偏差(root mean square deviation)を有するいずれかの出所からのHDM2の構造座標のいずれかの組は、本質的に同一または相同であると考えられる。さらに好ましい態様では、表1または表2の相当する原子座標の非水素原子位置上に重ねられた場合に、約0.75Åより小さい非水素原子の二乗平均偏差を有するいずれかの出所からのHDM2の構造座標のいずれかの組は、本質的に同一または相同であると考えられる。
【0032】
「原子タイプ」の用語は、その座標が測定された化学元素を指す。表1の行の最初の文字は元素を定義するものである。
【0033】
「X」、「Y」および「Z」の用語は、選択された結晶学的原点から測定された元素の結晶学的に定義された原子位置を指す。「B」の用語は、その平均位置に関して原子位置の平均偏差を評価する熱因子を指す。
【0034】
本明細書中で使用される場合に、「結晶」の用語は、X線を回折する分子のいずれかの三次元配列アレイを指す。
【0035】
本明細書中で使用される場合に、組成物内の「担体」の用語は、それと製品が混合される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。
【0036】
本明細書中で使用される場合に、「組成物」の用語は、全体を形成するための個別の元素または成分の組合わせを指す。組成物は、1種もしくはそれ以上の元素または成分から成る。本発明の目的のために、組成物は担体をしばしば含むが、常にというわけではない。
【0037】
本明細書中で使用される場合に、「mdm2」の用語は、ネズミ二重微少2遺伝子(murine double minute 2 gene)および他の動物内で見いだされる相同遺伝子を意味するとして使用される。
【0038】
本明細書中で使用される場合に、「MDM2」は、mdm2腫瘍遺伝子の発現の結果として得られるタンパク質を意味するとして使用される。該用語の意味の範囲内で、MDM2は、mdm2でコードされるすべてのタンパク質、それらの変異体、同類アミノ酸置換物、それらの代替スプライスタンパク質、およびそれらのリン酸化タンパク質を包含すると理解される。追加的に、本明細書中で使用される場合に、「MDM2」の用語は他の動物のMDM2相同体を含むと理解される。
【0039】
本明細書中で使用される場合に、「hdm2」は、マウスmdm2遺伝子と相同であるヒト遺伝子を意味するとして使用される。
【0040】
本明細書中で使用される場合に、「HDM2」は、hdm2腫瘍遺伝子の発現の結果として得られるタンパク質を意味するとして使用される。本用語の意味の範囲内で、HDM2は、hdmでコードされるすべてのタンパク質、それらの変異体、同類アミノ酸置換、それらの代替スプライスタンパク質、およびそれらのリン酸化タンパク質を包含すると理解される。例として、HDM2は、配列番号2のタンパク質および配列番号2に少なくとも約70%のアミノ酸配列一致、もしくは好ましくは配列番号2に80%、85%、90
%および95%のアミノ酸配列一致、もしくはさらに好ましくは、配列番号2に少なくとも95%もしくはそれ以上の配列一致を含んでなるその変種を含んでなるタンパク質を含む。
【0041】
本明細書中で使用される場合に、構造−活性相関の省略である「SAR」の用語は、化合物の活性/性質とその化学構造との間の相関に関する構造−活性/構造性質関係を集合的に指す。
【0042】
本明細書中で使用される場合に、「分子構造」の用語は、特定の化合物の分子または分子の複合体の三次元配列を指す(例えばHDM2およびHDM2と相互作用するリガンドの三次元構造)。
【0043】
本明細書中で使用される場合に、「分子モデル化(modeling)」の用語は、分子の外観の現実的モデルを作成しそしてリガンドの構造活性相関に関する予測を立てるために、計算方法、好ましくは計算機支援方法の使用を指す。分子モデル化に使用される方法は、分子グラフィックスから計算化学までの範囲がある。
【0044】
本明細書中で使用される場合に、「分子モデル」の用語は、共有結合により連結された分子の原子の三次元配列または1個を越える分子を含んでなる複合体、例えばタンパク質−リガンド複合体の原子の三次元配列を指す。
【0045】
本明細書中で使用される場合に、「分子グラフィックス」の用語は、分子の3D表示、例えば計算機支援の計算方法を用いて作成された3D表示を指す。
【0046】
本明細書中で使用される場合に、「計算化学」の用語は、分子の物理的および化学的性質の計算を指す。
【0047】
本明細書中で使用される場合に、「分子置換」の用語は、未知結晶の観察された回折パターンを説明するために最善であるように、本発明中に記載の原子座標を配置および位置決定することによる、座標が未知のHDM2の結晶の予備的モデルを生成することを含む方法を指す。次いで、このモデルから位相を算出しそして観察された座標と組み合わせて、座標が未知の構造の近似的フーリエ合成を与えることができる。(Rossmann,M.G.,編集,“The Molecular Replacement Method”,Gordon & Breach,New York,1972)。
【0048】
本明細書中で使用される場合に、「相同体」の用語は、第二の出所からのタンパク質、コード核酸分子またはそれらのいずれかの機能性ドメインと、少なくとも約30%、40%、もしくは50%の配列一致、または少なくとも約60%、70%、もしくは75%の配列一致、または少なくとも約80%の配列一致、またはさらに好ましくは少なくとも約85%の配列一致、またはそれよりさらに好ましくは少なくとも約90%の配列一致、そして最も好ましくは少なくとも約95%、97%、もしくは99%のアミノ酸またはヌクレオチド配列一致を有する第一の出所からのHDM2タンパク質分子またはタンパク質、もしくは該タンパク質からの機能性ドメインをコードする核酸分子を指す。第二の出所は、一次アミノ酸もしくはヌクレオチド配列を変化させるいずれかの利用できる手段により遺伝子的に改変された第一の出所からの分子の一つの変形でであってもよくまたは第一の出所のものと同一もしくは異なる種からであってもよい。
【0049】
本明細書中で使用される場合に、「活性部位」の用語は、HDM2またはHDM2の機能もしくは活性に直接関与するHDM2の構造モチーフ上の領域を指す。
【0050】
本明細書中で使用される場合に、「結合部位」または「結合ポケット」の用語は、HDM2の一次アミノ酸配列および/もしくはその三次元形状の結果として、リガンドもしくは阻害剤を含む他の化学的実体もしくは化合物と都合よく会合するHDM2の領域またはHDM2を含んでなる分子複合体を指す。
【0051】
本発明の目的で、HDM2に対する、または表1もしくは表2の相当する原子座標の非水素原子位置上に重ねた場合に、約1.5Åより小さい非水素原子の二乗平均偏差を有するいずれかの出所からのHDM2の相同体に対する構造座標の組により規定されるいずれの活性部位、結合部位または結合ポケットも、本質的に一致または相同と考えられる。さらに好ましい態様では、HDM2、または表1もしくは表2の相当する原子座標の非水素原子位置上に重ねた場合に、約0.75Åより小さい非水素原子の二乗平均偏差を有するいずれかの出所からのHDM2の相同体に対する構造座標のいずれの組も本質的に一致または相同的と考えられる。
【0052】
「二乗平均偏差」の用語は、平均からの偏差の二乗の算術平均の平方根を意味する。
【0053】
本明細書中で使用される場合に、「アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸のL−異性体を指す。天然に存在するアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、メチオニン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、システイン、プロリン、ヒスチジン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、γ−カルボキシルグルタミン酸、アルギニン、オルニチン、およびリシンである。特定して指定しない限り、本出願中で言及されるすべてのアミノ酸はL−形態である。
【0054】
本明細書中で使用される場合に、「非天然アミノ酸」の用語は、タンパク質内に天然には見られないアミノ酸を指す。例えば、セレノメチオニンである。
【0055】
本明細書中で使用される場合に、「正に荷電したアミノ酸」の用語は、正常な生理学的条件下で正に荷電した側鎖を有するいずれかのアミノ酸を含む。正に荷電した天然に存在するアミノ酸の例はアルギニン、リシンおよびヒスチジンである。
【0056】
本明細書中で使用される場合に、「負に荷電したアミノ酸」の用語は、正常な生理学的条件下で正に荷電した側鎖を有するいずれかのアミノ酸を含む。負に荷電した天然に存在するアミノ酸の例はアスパラギン酸およびグルタミン酸である。
【0057】
本明細書中で使用される場合に、「疎水性アミノ酸」の用語は、水に比較的不溶性である非荷電、非極性側鎖を有するいずれかのアミノ酸を含む。天然に存在する疎水性アミノ酸の例は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンである。
【0058】
本明細書中で使用される場合に、「親水性アミノ酸」の用語は、水に比較的可溶性である非荷電、極性側鎖を有するいずれかのアミノ酸を指す。天然に存在する親水性アミノ酸の例は、セリン、トレオニン、チロシン、アスパラギン、グルタミンおよびシステインである。
【0059】
本明細書中で使用される場合に、「水素結合」の用語は、ただ1個の原子に共有結合する水素を共有し、一方で他と相互作用する2個の親水性原子(OまたはN)を指す。
【0060】
本明細書中で使用される場合に、「疎水性相互作用」の用語は、2個の疎水性残基または原子(例えばC)により行われる相互作用を指す。
【0061】
本明細書中で使用される場合に、「共役系」の用語は、電子が全系内で完全に非局在化されている、互いに隣接する2個の二重結合を指す。これは芳香族残基も含む。
【0062】
本明細書中で使用される場合に、「芳香族残基」の用語は、非局在化共役系を有する側鎖を有するアミノ酸を指す。芳香族残基の例は、フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンである。
【0063】
本明細書中で使用される場合に、「結合を阻害」の語句は、1個もしくはそれ以上の分子、ペプチド、タンパク質、酵素、もしくは受容体の直接もしくは間接的な会合を防止もしくは低下すること、または1個もしくはそれ以上の分子、ペプチド、タンパク質、酵素もしくは受容体の正常な活性を防止もしくは低下すること、例えばHDM2およびp53の直接もしくは間接的な会合を防止もしくは低下することを指す。
【0064】
本明細書中で使用される場合に、「競合的阻害剤」の用語は、HDM2にその結合相手(例えばp53)として同一部位に結合し、それにより直接的にそれらと競合する阻害剤を指す。競合的阻害は、いくつかの例では、基質濃度を増加することにより完全に逆転されることがある。
【0065】
本明細書中で使用される場合に、「非(un−)競合的阻害剤」の用語は、その基質、例えば(p53)が結合する部位とは異なる部位に結合することによりHDM2の機能的活性を阻害するものを指す。
【0066】
本明細書中で使用される場合に、「不(non−)競合的阻害剤」の用語は、HDM2の遊離またはp53結合形態のいずれかに結合できるものを指す。
【0067】
当該技術分野の熟練者は、標準的方法を用いる計算機フィッティング酵素速度論的データにより競合的、非競合的または不競合的として阻害剤を同定できるであろう。例えばSegel,I.H.,Enzyme Kinetics,J.Wiley & Sons,(1975)参照。
【0068】
本明細書中で使用される場合に、「RまたはS−異性体」の用語は、純粋および応用科学の国際連合(IUPAC)により採択されたカーン−インゴルド−プレログ系(Cahn−Ingold−Prelog System)に従ってキラル炭素の2種の可能な立体異性体を指す。キラル炭素に結合するそれぞれの基は、キラル炭素に直接結合する原子の原子番号に基づいて順位または優先a、b、c、またはdに先ず割り当てられる。最高の原子番号を有する基が最高の順位aを与えられ、つぎに高い原子番号を有する基が次の順位bを与えられ、以下同様である。次いで、最低の順位(d)の基を対象から外す。aからb次いでcへの経路のトレースが反時計廻りの場合には、該異性体は(S)と命名される。反対方向、すなわち時計廻りの場合に異性体は(R)と命名される。
【0069】
本明細書中で使用される場合に、「リガンド」の用語は、HDM2、HDM2のサブユニット、HDM2のドメイン、HDM2の標的構造モチーフまたはHDM2のフラグメントともしくはそれらに対して結合するいずれかの分子、または化学的実体を指す。従って、リガンドは例えば小分子阻害剤を含むがそれらに限定はされない。
【0070】
本明細書中で使用される場合に、「小分子阻害剤」の用語は、測定可能なMDM2またはHDM2阻害活性を有する本発明で有用な化合物を指す。小さい有機分子に加えて、ペプチド、抗体、環状ペプチドおよびペプチド擬似体も開示された方法に有用であると考えられる。本発明から除外されるのは、クッシーら、ガルシア−エチェベリアらにより開示
されたp53ペプチド、およびp53へのmdm2の結合を阻害するファージディスプレイから誘導されるペプチド(Boettiger,V.A.,et al.,Oncogene 13(10):2141−2147(1996))である。好ましい阻害剤は、好ましくは700ダルトン以下そしてさらに好ましくは450ダルトン以下の小分子である。この性質を有する化合物の類の例は、米国仮出願番号60/275,629号、米国仮出願番号60/331,235号、米国仮出願番号60/379,617号、および米国仮出願番号10/097,249号の各明細書(それらの全体を本明細書中に編入する)中に開示された化合物を含む。
【0071】
本明細書中で使用される場合に、原子、分子、または化学基の会合(association)に関連して使用された場合の「結合(bind)」、「結合(binding)」、「結合(bond)」、または「結合(bonded)」の用語は、2個もしくはそれ以上の原子、分子、または化学基のいずれかの物理的接触または会合を指す。
【0072】
本明細書中で使用される場合に、「共有結合」または「原子価結合」の用語は、結合分子により通常は対を形成して電子を共有して創成される分子内の2個の原子間の化学結合を指す。
【0073】
本明細書中で使用される場合に、「非共有結合」の用語は、原子および/または分子の間の共有結合の形成に関与しない原子および/または分子の間の相互作用を指す。
【0074】
本明細書中で使用される場合に、「本来のタンパク質」の用語は、その天然の出所または生物体から単離されたタンパク質のものと一致するアミノ酸配列を含んでなるタンパク質を指す。
【0075】
特定の態様
詳細な態様
本発明は、HDM2、もしくはフラグメント、またはそれらの標的構造モチーフまたは誘導体、および小分子阻害剤であるリガンドを含んでなる結晶を含む。一つの態様では、それらのフラグメントまた誘導体は、配列番号1(全長HDM2のアミノ酸配列)、配列番号2(配列番号1のアミノ酸残基17〜111)、配列番号3(配列番号1のアミノ酸残基23〜114)、および配列番号4(Gly16−配列番号2)から成る群から選択されるペプチドである。
【0076】
別の態様では、該結晶は、P321の三方晶系空間群およびP42の正方晶系空間群から成る群から選択される空間群である。異なる態様では、結晶は少なくとも約3.0Åの分解能まで原子座標の決定のためのX線を効果的に回折する。好ましい態様では、リガンドは結晶性形態である。非常に好ましい態様では、リガンドは、(4−クロロ−フェニル)−〔3−(4−クロロフェニル)−7−ヨード−2,5−ジオキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−ベンゾ〔e〕〔1,4〕ジアゼピン−4−イル〕−酢酸;〔8−クロロ−3−(4−クロロ−フェニル)−7−ヨード−2,5−ジオキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−ベンゾ〔e〕〔1,4〕ジアゼピン−4−イル〕−(4−クロロ−フェニル)−酢酸);および、それらの誘導体から成る群から選択される。
【0077】
本発明は、配列番号2に少なくとも95%配列一致を有するペプチドを含んでなるHDM2を含んでなる結晶も含む。好ましい態様では、配列番号2を含んでなる結晶は、表1もしくは表2の座標を特徴とする原子構造を含んでなる。別の好ましい態様では、結晶は、約98.6Å、98.6Åおよび74.7Åの寸法、およびほぼアルファ=90°、ベータ=90°およびガンマ=120°を有するセル;および約54.3Å、54.3Åおよび83.3Åの寸法、およびほぼアルファ=90°、ベータ=90°およびガンマ=90°を有するセルから成る群から選択される単位セルを含んでなる。
【0078】
本発明の別の局面では、本発明は(a)計算機読み取り可能な記憶媒体中に記憶された、HDM2、もしくはフラグメント、またはその標的構造モチーフもしくは誘導体、および小分子阻害剤であるリガンドを含んでなる結晶の三次元構造に関する情報を含むデータベース、および(b)情報を閲覧するためのユーザーインターフェース、を含んでなる計算機システムを含む。一つの態様では、情報は配列番号2を含んでなる結晶から得られた回折データを含んでなる。別の態様では、情報は配列番号2を含んでなる結晶形態の電子密度マップを含んでなる。別の態様では、情報が、表1もしくは表2の相当する原子座標の非水素原子位置上に重ねた場合に、約1.5Åより小さい非水素原子の二乗平均偏差を含んでなる、表1もしくは表2の構造座標または相同構造座標を含んでなる。好ましい態様では、情報は、表1もしくは表2の相当する原子座標の非水素原子位置上に重ねた場合に、約0.75Åより小さい非水素原子の二乗平均偏差を含んでなる構造座標を含んでなる。非常に好ましい態様では、情報が、表1もしくは表2の相当する原子座標の非水素原子位置上に重ねた場合に、約1.5Åより小さい非水素原子の二乗平均偏差を含んでなる、アミノ酸Ser17、Ile19、Leu82およびArg97の表1もしくは表2従う構造座標をまたは該アミノ酸に類似の構造座標に含んでなる。別の態様では、情報が、表1もしくは表2の相当する原子座標の非水素原子位置上に重ねた場合に、約1.5Åより小さい非水素原子の二乗平均偏差を含んでなる、アミノ酸Val53、Leu54、Phe55、Leu57、Gly58、Gln59、Ile61、Met62、Tyr67、Gln72、His73、Ile74、Val75、Phe86、Phe91、Val93、Lys94、Glu95、His96、Ile99、Tyr100、Ile103の構造座標または該アミノ酸に類似の構造座標をさらに含んでなる。
【0079】
本発明は、(a)HDM2を作用物質に暴露し、そして(b)HDM2アミノ酸残基Ser17、Ile19、Leu82およびArg97への該作用物質の会合を検出しそれにより電位を評価することを含んでなる、HDM2と会合するための作用物質の電位を評価する方法も含む。本発明の一つの態様では、作用物質が仮想(virtual)化合物である。本発明の別の態様では、段階(a)が化合物の原子構造とHDM2の三次元構造との比較を含んでなる。異なる態様では、比較が、化合物とHDM2の少なくとも1個の結合部位との間のフィッティング操作を行う計算手段を使用することを含んでなる。好ましい態様では、結合部位は、表1もしくは表2の相当する原子座標の非水素原子位置上に重ねた場合に、約1.5Åより小さい非水素原子の二乗平均偏差を含んでなる、該アミノ酸の表1もしくは表2の類似の構造座標に従うアミノ酸Ser17、Ile19、Leu82およびArg97の構造座標により規定される。別の異なる態様では、結合部位は、表1もしくは表2の相当する原子座標の非水素原子位置上に重ねた場合に、約1.5Åより小さい非水素原子の二乗平均偏差を含んでなる、表1もしくは表2に従うアミノ酸Val53、Leu54、Phe55、Leu57、Gly58、Gln59、Ile61、Met62、Tyr67、Gln72、His73、Ile74、Val75、Phe86、Phe91、Val93、Lys94、Glu95、His96、Ile99、Tyr100、Ile103の構造座標または該アミノ酸に類似の構造座標によりさらに規定される。非常に好ましい態様では、作用物質が結晶性配列番号2に暴露され、そして段階(b)の検出が作用物質−配列番号2複合体の三次元構造を決定することを含んでなる。
【0080】
本発明は、(a)aa16−配列番号2を作用物質に暴露し、そして(b)aa16−配列番号2への該作用物質の会合のレベルを検出しそれにより電位を評価することを含んでなる、aa16−配列番号2を有するペプチドと会合する作用物質の電位を評価する方法をさらに含む。一つの態様では、作用物質は仮想化合物である。
【0081】
本発明は、(a)可能性があるアゴニストまたはアンタゴニストの設計または選択のために小分子阻害剤と共に同時結晶化されたHDM2の三次元構造を使用することを含んでなる、HDM2に対する可能性があるアゴニストまたはアンタゴニストを同定する方法を含む。一つの態様では、表1もしくは表2の相当する原子座標の非水素原子位置上に重ねた場合に、三次元構造が、約1.5Åより小さい非水素原子の二乗平均偏差を含んでなる、表1の構造座標または類似の構造座標を特徴とする原子座標に相当する。別の態様では、本方法は、(b)可能性があるアゴニストまたはアンタゴニストを合成し、そして(c)可能性があるアゴニストまたはアンタゴニストをHDM2と接触させる段階をさらに含んでなる。
【0082】
本発明は、(a)HDM2の結晶のX線回折データを取得し、(b)HDM2と阻害剤との複合体のX線回折データを取得し、(c)段階(a)で得られたX線回折データを段階(b)で得られたX線回折データから差し引いてX線回折データにおける差異を取得し、(d)段階(a)で得られたX線回折データに相当する位相を取得し、(e)段階(d)で得られた位相と段階(c)で得られたX線回折データとにおける差異を用いて、阻害剤の差フーリエイメージを算出し、そして(f)段階(e)で得られた算出結果に基づいてHDM2に対する阻害剤の付着部位を決定することを含んでなる、HDM2に対する阻害剤の付着部位の決定方法を含んでなる。
【0083】
本発明は、(a)HDM2および阻害剤を含んでなる結晶を取得し、(b)結晶の原子座標を取得し、(c)原子座標および1種もしくはそれ以上の分子モデル化技術を用いて阻害剤とHDM2との相互作用をいかにして改変するかを決定し、そして(d)段階(c)で得られた決定事項に基づいて阻害剤を改変して改変された阻害剤を作成することを含んでなる、改変された阻害剤の取得方法をさらに含んでなる。一つの態様では、結晶が、配列番号2を有するペプチド、配列番号3を有するペプチドおよび配列番号4を有するペプチドから成る群から選択されるペプチドを含んでなる。異なる態様では、1種もしくはそれ以上の分子モデル化技術が、グラフィック分子モデル化および計算化学から成る群から選択される。好ましい態様では、段階(a)が、阻害剤とHDM2アミノ酸残基Ser17、Ile19、Leu82およびArg97との相互作用を検出することを含んでなる。本発明の別の態様では、本発明は、この方法により同定されるHDM2阻害剤を含む。
【0084】
本発明の別の態様では、本発明は、HDM2アミノ酸残基Ser17、Ile19、Leu82およびArg97の構造座標により規定される結合ポケットまたは活性部位を含んでなる単離されたタンパク質フラグメントを含む。一つの態様では、単離されたフラグメントが固体支持体に結合される。
【0085】
本発明の別の局面では、本発明はHDM2アミノ酸残基Ser17、Ile19、Leu82およびArg97の構造座標により規定される結合ポケットまたは活性部位を含んでなるフラグメントをコードする単離された核酸分子を含む。一つの態様では、ベクターは核酸分子を含んでなる。別の態様では、宿主細胞がベクターを含んでなる。本発明のさらに別の態様では、本発明は、フラグメントが発現される条件下で宿主細胞を培養することを含んでなる、タンパク質フラグメントを産生する方法を含む。本発明の別の態様では、本発明は(a)タンパク質分子フラグメントを作用物質に暴露し、そして(b)フラグメントへの作用物質の会合のレベルを検出することを含んでなる、HDM2と会合する作用物質をスクリーニングする方法を含む。本発明の別の態様では、本発明はタンパク質分子フラグメントを含んでなるキットを含む。
【0086】
本発明の別の態様では、本発明は、(a)PEGおよびNaSCNを含んでなる適合する溶液中でHDM2ポリペプチドを該リガンドと接触させ、そして(b)HDM2ポリペ
プチド−リガンドの該生成複合体を該溶液から結晶化させることを含んでなる、HDM2ポリペプチド−リガンドを含んでなる結晶複合体の作製方法を含む。一つの態様では、HDM2ポリペプチドが配列番号2を有するポリペプチドである。別の態様では、PEGが100〜1000の平均分子量範囲を有し、ここで該PEGが約0.5%w/v〜約10%w/vの範囲で溶液中に存在しそして該NaSCNが約50mM〜約150mMの範囲で溶液中に存在する。好ましい態様では、PEGが約400の平均分子量を有しそして約2%w/vで溶液中に存在しそして該NaSCNが約100mMで溶液中に存在する。非常に好ましい態様では、溶液が、約1.8〜2.4M(NHSOおよび約100mM緩衝液をさらに含んでなる。
【0087】
本発明は、可能性がある阻害剤と一緒に、配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号4から成る群から選択される配列を含んでなるペプチドを結晶化することを含んでなる、HDM2および小分子阻害剤であるリガンドを含んでなる結晶を作製する方法をさらに含む。
【0088】
本発明は、a)表1に従う原子座標により規定されるHDM2の三次元構造を用い、b)該三次元構造中のSer17、Ile19、Leu82およびArg97から選択される1個もしくはそれ以上のHDM2アミノ酸を異なるアミノ酸で置換して改変されたHDM2を作製し、c)該三次元構造を用いて該可能性のある阻害剤を設計または選択し、d)該可能性のある阻害剤を合成し、そしてe)該可能性のある阻害剤を基質の存在下で該改変されたHDM2と接触させて、HDM2または該改変されたHDM2の阻害に関して該可能性のある阻害剤の能力を試験することを含んでなる、HDM2の可能性がある阻害剤を同定する方法を含む。一つの態様では、1個もしくはそれ以上のアミノ酸残基の置換が、Val53、Leu54、Phe55、Leu57、Gly58、Gln59、Ile61、Met62、Tyr67、Gln72、His73、Ile74、Val75、Phe86、Phe91、Val93、Lys94、Glu95、His96、Ile99、Tyr100、およびIle103から成る群から選択される配列番号2アミノ酸を置換することをさらに含んでなる。別の態様では、可能性がある阻害剤はデータベースから選択される。好ましい態様では、可能性がある阻害剤は新規に合成される。別の好ましい態様では、可能性がある阻害剤は公知の阻害剤から設計される。非常に好ましい態様では、該可能性のある阻害剤を設計または選択するために該三次元構造を使用する段階が、a)改変されたHDM2と会合できる化学的実体またはフラグメントを同定し、そしてb)同定された化学的実体またはフラグメントを単一分子内にアセンブルして該可能性のある阻害剤の構造を提供する段階を含んでなる。一つの態様では、可能性がある阻害剤が、配列番号4(Gly16−配列番号2)の競合性阻害剤である。異なる態様では、可能性がある阻害剤が、配列番号4(Gly16−配列番号2)の不競合性または非競合性阻害剤である。さらに別の態様では、阻害剤が該方法により同定される。
【0089】
A.HDM2の三次元構造のモデル化
表1、表2中で提供される原子座標データまたは相同タンパク質から誘導された座標データをHDM2の三次元モデルを構築するために使用してもよい。いずれかの利用できる計算方法を三次元モデルを構築するために使用してもよい。出発点として、HDM2またはHDM2相同体の結晶性バージョンにおける分子または原子の集合体(assemblage)から得たX線回折パターンが、結晶学およびX線回折技術の技術分野の熟練者には周知のツールを用いて電子密度マップ構築に使用できる。次いで、公開された出版物中の回折データおよび/または補足実験からのいずれかから取り出した追加の位相情報を再構築を完成するために使用してもよい。
【0090】
電子密度の構築のためのX線回折データを収集、解析、および利用する基本概念および手順に関して、例えば、Campbell et al.,1984,Biologic
al Spectroscopy,The Benjamin/Cummings Publishing Co.,Inc.,Menlo Park,CA;Cantor et al.,1980,Biophysical Chemistry,Part II:Techniques for the study of biologicalstructure and function,W.H.Freeman and Co.,San Francisco,CA;A.T.Brunger,1993,X−Flor Version 3.1:A System for X−ray crystallography and NMR,Yale Univ.Pr.,New Haven,CT;M.M.Woolfson,1997,An Introduction to X−ray Crystallography,Cambridge Univ.Pr.,Cambridge,UK;J.Drench,1999,Principles of Protein X−ray Crystallography(Springer Advanced Text in Chemistry),Springer
Verlag,Berlin;Tsirelson et al.,1996,Electron Density and Bonding in Crystals:Principles,Theory and X−ray Diffraction Experiments in Solid State Physics and Chemistry,Inst.of Physics Pub.;米国特許第5,942,428号明細書、米国特許第6,037,117号明細書、米国特許第5,200,910号明細書および米国特許第5,365,456号明細書(“Method for Modeling the Electron Density of a Crystal”)参照のこと(これらそれぞれは、その全体を引用することにより本明細書に編入される)。
【0091】
分子モデル化の基本情報として、例えばM.Schlecht,Molecular
Modeling on the PC,1998,John Wiley & Sons:Gans et al.,Fundamental Principals of
Molecular Modeling,1996,Plenum Pub.Corp.:N.C.Cohen(編集者),Guidebook on MolecularModeling in Drug Design,1996,Academic Press;およびW.B.Smith,Introduction to Theoretical Organic Chemistry and Molecular Modeling,1996を参照のこと。分子モデル化の詳細な情報を提供する米国特許には、米国特許第6,093,573号、第6,080,576号、第6,075,014号、第6,075,123号、第6,071,700号、第5,994,503号、第5,612,894号、第5,583,973号、第5,030,103号、第4,906,122号および第4,812,12号の各明細書参照のこと(これらそれぞれは、その全体を引用することにより本明細書に編入される。
【0092】
B.関係するリガンドを同定および設計するための原子座標の利用方法
本発明の原子座標、例えば表1、表2、表3に記載のものまたは表1、表2、もしくは表3のものと本質的に一致もしくは相同的な座標は、HDM2の三次元モデルを作成するためならびにHDM2リガンド、阻害剤もしくはアンタゴニストもしくはアゴニスト分子を同定および設計するために利用できるいずれの方法と一緒に使用してもよい。
【0093】
例えば、三次元モデル化は、X線回折パターンから誘導される実験的に決定される座標、例えば表1もしくは表2中のものを用いて実行してもよく、ここでかかるモデル化には、実際の構造の図の作図、実際の構造の物理的モデルの構築、および座標を用いる関連サブユニットおよびHDM2/リガンドおよびHDM2サブユニット/リガンドの構造の決定を含むがこれらに限定はされない。かかる分子モデル化は、HDM2の三次元構造に相当する原子座標を生成するために公知のX線回折分子モデル化アルゴリズムまたは分子モデル化ソフトウエアを使用できる。
【0094】
上記のように、分子モデル化は、公知の結晶構造に配列として同定できるように関連する分子の実際的なモデルを構築するために、計算方法、好ましくは計算機支援方法の使用を含む。それは、HDM2およびまたは公知のリガンドもしくは阻害剤と複合したHDM2の構造から出発して、HDM2に結合する新規の小分子阻害剤をモデル化することも含む。リガンドモデル化に使用される方法は、分子グラフィックス(すなわち3D表示)からリガンドの結合もしくはリガンドの活性に関する予測を立てるための計算化学(すなわち物理的および化学的性質の計算)に;新規のリガンドの設計に;および化学合成のための薬剤のようなリガンドを含む新規分子の予測に、集合的に合理的薬剤設計と呼ばれる方法にまで及ぶ。
【0095】
合理的薬剤設計への一つの接近方法は、活性部位に結合するであろう既知分子構造の探索である。分子モデル化を用いて、合理的薬剤設計プログラムは、ある酵素の活性部位内に適合するであろう薬剤の一連の各種分子構造を調査でき、そしてどの構造か部位に実際に良く適合するかを決定できる三次元環境内で移動させることができる。例えば、米国特許出願番号60/275,629号;60/331,235号;60/379,617号;および10/097,249号の各明細書参照のこと。例えば表1、2および3内のデータも参照のこと。
【0096】
別ではあるがしかし関連する合理的薬剤設計方法は、HDM2と追加的に有利な相互作用を行うために努力して、小分子リガンドとの複合体の既知構造から出発しそして該小分子の改変されたをモデル化する。
【0097】
本発明は、設計するための分子および計算機モデル化技術の使用および例えば小分子アゴニストもしくはアンタゴニストまたはHDM2と相互作用するその他の治療用作用物質の選択および設計を含む。かかる作用物質は、1,4ベンゾジアゼピン類およびそれらの誘導体を含むがこれらに限定はされない。例えば、本明細書中に記述する本発明は、HDM2の活性部位もしくはその他の領域の全て、もしくはその一部分に結合することにより少なくとも1種のHDM2機能の競合的阻害剤として作用するリガンドの設計を含む。
【0098】
本発明は、HDM2の少なくとも1種の機能の非競合的阻害剤として作用する化合物の設計も含む。それらの阻害剤は、基質にすでに結合しているHDM2の活性部位もしくはその他の領域の全て、またはその一部分に結合してもよく、そしてHDM2活性部位に競合する競合的阻害剤よりもさらに強力でありそして非特異性が低くてもよい。同様に、他の化学的実体に結合されるかどうかにかかわらず、HDM2に結合しそしてその少なくとも一つの機能を阻害する不競合性阻害剤は、本発明のHDM2またはHDM2を含んでなる複合体の原子座標を用いて設計してもよい。
【0099】
本発明の原子座標は、候補阻害剤および/または活性化剤とHDM2との間の相互作用のための最適部位を決定するために、種々の化学的特徴からなる分子とのHDM2の結晶をプローブするために必要な情報も提供する。例えば、溶剤で飽和した結晶から得た高分解能X線回折データは、溶剤分子の各タイプが付着する場所の決定を可能とさせる。次いで、それらの部位に結合する小分子を設計および合成して阻害活性に関して試験できる(Travis,J.,Science 262:1374(1993))。
【0100】
本発明は、HDM2に全体としてまたは部分的に結合できる化学的実体、作用物質、リガンド、または化合物の小分子データベースおよびライブラリーを計算機によりスクリーニングする方法も含む。このスクリーニングにおいて、結合部位または複数の部位へのか
かる実体または化合物の適合の質は、形状相補性によりまたは推定された相互作用エネルギーのいずれかにより判定してもよい(Meng,E.C.,et al.,J.Coma.Chem.13:505−524(1992))。
【0101】
本発明によるHDM2の機能活性を促進または阻害するように結合する化合物の設計は、一般的に二つの因子への考慮を含む。第一には、化合物が、HDM2と物理的および構造的に会合できなければならない。HDM2と化合物との会合に重要な非共有結合分子相互作用は、水素結合、ファンデルワールスおよび疎水性相互作用を含む。第二には、化合物はHDM2との会合を可能とする立体配座を取ることができなければならない。化合物のある部分はHDM2との会合に直接的に関与しないけれども、それらの部分は分子の全体的立体配座に影響するであろう。一方、これは結合親和性、治療効力、薬剤類似品質および力価に著しく影響することもある。かかる立体配座の要求は、HDM2の活性部位またはその他の領域のすべてまたは一部分と関連する化学的実体または化合物の全体的三次元構造および定位、またはHDM2と直接的に相互作用する数種の化学実体を含んでなる化合物の機能性基の間の間隔を含む。
【0102】
HDM2上のリガンドまたはその他の化合物の電位、予測、阻害性アゴニスト、アンタゴニストまたは結合効果は、実際の合成および試験の前に計算機モデル化技術の使用により解析されてもよい。与えられた化合物の理論的構造がそれとHDM2との間の不十分な相互作用および会合を示唆する場合には、化合物の合成および試験を避けてもよい。しかし、計算機モデル化が強い相互作用を示す場合には、分子を合成しそしてHDM2と相互作用するその能力に関して試験されてもよい。この様式で、作用がない化合物の合成を回避してもよい。いくつかの場合には、HDM2の特定部位と相互作用する化合物のためのSAR(構造−活性相関)を発展させるために、不活性化合物をモデル化で予測されたように合成しそして試験してもよい。
【0103】
当該技術分野の熟練者は、HDM2と、さらに特定するとHDM2の個別結合ポケットまたは活性部位と会合するためのそれらの活性に関して化学的実体フラグメント、化合物または作用物質をスクリーニングするための数種の方法の一つを使用してもよい。このプロセスは、例えば、HDM2またはリガンドと複合したHDM2の原子座標に基づく計算機スクリーン上の活性部位の目視検査から開始されてもよい。選択された化学的実体、化合物、または作用物質は、種々の定位で位置されるか、またはHDM2の個別結合ポケット内にドッキングされてもよい。ドッキングは、Quanta and Sybylのようなソフトウエアを用い、次いで標準分子機構力場を用いるエネルギー最小化および分子力学、例えばCHARMMおよびAMBERにより達成されてもよい。
【0104】
専門の計算機プログラムが化学的実体を選択するプロセス中で支援してもよい。それらには下記が含まれるがこれらに限定はされない:GRID(Goodford,P.J.,“A Computational Procedure for Determining Energetically Favorable Binding Sites on Biologically Important Macromolecules,”J.Med.Chem.28:849−857(1985)、Oxford University,Oxford,UKから入手可能);MCSS(Miranker,A.and M.Karplus,“Functionality Maps of Binding Sites:A Multiple Copy Simultaneous Search Method.”Proteins:Structure,Function and Genetics 11:29−34(1991)、Molecular Simulations,Burlington,Massから入手可能);AUTODOCK(Goodsell,D.S.and A.J.Olsen,“Automated Docking of Substrates to Proteins by Simulated Annealing”Proteins:Structure.Function,and Genetics 8:195−202(1990)、Scripps Research Institute,La Jolla,CAから入手可能);およびDOCK(Kuntz,I.D.et al.,“A Geometric Approach to Macromolecule−Ligand Interactions,”J.Mol.Biol.161:269−288(1982)、University of California,San Francisco,CAから入手可能)。
【0105】
種々の官能基特性を有するプローブと巨大分子表面との間の可能性がある相互作用部位を決定するプログラムであるGRIDのようなソフトウエアの使用は、類似の阻害性タンパク質または化合物の構造を決定するために表面部位を解析するために利用される。プローブとして分子上の適当な阻害剤の基または化合物(例えばプロトン化一級アミン)を使用するGRID計算は、適切なエネルギー等高線レベルで接近可能な位置の周囲の電位ホットスポットを同定するために使用される。プログラムDOCKは、活性部位またはリガンド結合部位を解析しそして相補的立体性質を有するリガンドを示唆するために使用されてもよい。
【0106】
適合する化学的実体、化合物または作用物質が選択されると、それらは単一のリガンドまたは化合物または阻害剤または活性化剤内にアセンプルできる。アセンブリーは、三次元イメージ上でフラグメント相互の関連を目視検査して進めてもよい。これは、QuantaまたはSybylのようなプログラムを用いて手作業のモデル構築により続けてもよい。
【0107】
個別の化学的実体、化合物、または作用物質の連結を支援するために有用なプログラムは、下記を含むがこれらに限定はされない:CAVAET(Bartlett,P.A.et al.,“Caveat:A Program to Faciliate the Structure−Derived Design of Biologically Active Molecules.”In Molecular Recognition in Chemical and Biological Problems,Special Pub.,Royal Chem.Soc.,78,pp82−196(1989));三次元DNAベース、例えばMACCS−3D(MDL Information Systems,San Leandro,CAおよびMartin,Y.C.,“3D Database Searching in Drug Design”,J.Med.Chem.35:2145−2154(1992);およびHOOK(Molecular Simulations,Burlington,Massから入手可能)。
【0108】
ファーマコフォア(pharmacophore)仮説を試験しそしてスクリーニングのための化合物を選定する三次元データベースをサーチする数種の方法が利用できる。それらには、プログラムCAVEAT(Bacon et al.,J.Mol.Biol.225:849−858(1992)が含まれる。例えば、CAVEATは、すでに活性位置にあるいずれかの数の化学的フラグメントを結合するための「スペーサー」として作用する環状化合物のデータベースを使用する。これは、緊密な結合に必要と既知または予想されるフラグメントを結合する数百の可能な方法を、当該技術分野の熟練者に迅速のために生成させる。
【0109】
上記のようにHDM2の阻害剤活性化剤、アゴニストまたはアンタゴニストを一回の一つの段階方法により化学的実体として構築に進む代わりに、かかる化合物は、空いた活性化部位または場合により既知化合物のある部分を含むかのどちからを用いて全体として、
または「新規に」設計されてもよい。それらの方法は下記を含む:LUDI(Bohm,H.−J.,“The Computer Program LUDI:A New Method for the De Novo Design of Enzyme Inhibitors”,J.ComR.Aid.Molec.Design,6,pp.61−78(1992)、Biosym Technologies,San Diego,CAから入手可能);LEGEND(Nishibata,Y.and A.Itai,Tetrahedron 47:8985(1991)、Molecular Simulations,Burlingtonから入手可能);およびLeapFrog(Tripolis Associates,St.Louis,Moから入手可能)。
【0110】
例えば、プログラムLUDIは、その中に水素結合および疎水性フラグメントの両者が位置する相互作用部位の表を決定できる。次いで、LUDIは四つの異なる相互作用部位をフラグメントに結合するリンカーのライブラリーを使用する。次いで、より小さい「架橋」基、例えば−CH2−および−COO−がそれらのフラグメントを結合するために使用される。例えば、酵素DHFRに対して、周知の阻害剤メトトレキセート(methotrexate)内の鍵となる官能基の配置がLUDIにより再作成される。Rotstein and Murcko,J.Med.Chem.36:1700−1710(1992)も参照のこと。
【0111】
その他の分子モデル化技術も本発明に従って使用してもよい。例えば、Cohen,N.C.et al.,“Molecular Modeling Software and Methods for Medical Chemistry,J.Med.Chem.33:883−894(1990)を参照のこと。Navia,M.A.and M.A.Murcko,“The Use of Structural Information in Drug Design,”Current Opinions
in Structural Biology,2,pp202−210(1992)も参照のこと。
【0112】
上記の方法により化合物が設計されるかまたは選択されると、化合物がHDM2と結合または会合するであろう親和性が、計算的評価によりおよび/または化合物を合成した後の生物学的活性の試験により試験および最適化されてもよい。阻害剤または化合物は、全体的結合エネルギーが類似する1個より多くの立体配座でHDM2と相互作用してもよい。それらの場合に、結合の変形エネルギーは、遊離化合物のエネルギーと、化合物がHDM2に結合した場合に観察される立体配座の平均エネルギーとの差と考えられる。
【0113】
HDM2を結合または会合するとして設計または選択された化合物は、その結合状態において好ましくはHDM2との反発静電相互作用が欠失するように計算によりさらに最適化されてもよい。かかる非相補性(例えば静電性)相互作用は、反発性電荷−電荷、双極子−双極子および電荷−双極子相互作用を含む。特定すると、阻害剤が結合した場合の阻害剤とHDM2との間のすべての静電気相互作用の和は、好ましくは、結合エンタルピーに対して中立または有利な寄与となる。弱い結合性化合物は、SARを決定するためにそれらの方法によっても設計される。例えば、米国特許出願番号60/275,629号、60/331,235号、60/379,617号、および10/097,249号の各明細書参照。
【0114】
特定の計算機ソフトウエアが化合物変形エネルギーおよび静電相互作用を評価するめに当該技術分野で利用できる。かかる使用のために設計されたプログラムの例は以下である:Gaussian92、改定C(M.J.Frisch,Gaussian Inc.,Pittsburgh,Pa.,COPYRGT 1992);AMBER、バージョン4.0(P.A.Kollman,University of California at San Francisco,COPYRGT 1994);QUANTA/CHARMM(Molecular Simulations,Inc.,Burlington,Mass.COPYRGT 1994);およびInsight II/Discover(Biosysm Technologies Inc.,San Diego,Calif.COPYRGT 1994)。その他のハードウエア システムおよびソフトウエアパッケージは当該技術分野の熟練者には公知である。
【0115】
HDM2と会合する化合物が上記のようにして最適に選択または設計されると、その結合性を改善または変更するためにその原子または側鎖のいくつかで置換を行ってもよい。一般的に、最初の置換は、保存的、すなわち置換基が当初の基とほぼ同じ大きさ、形状、疎水性および電荷を有する。勿論、立体配座を改変すると当該技術分野では公知の成分は回避されることが理解されるべきである。次いで、かかる置換された化学化合物は、上記に詳細に記載したと同じ計算機的方法によりHDM2への適合の効率を解析されてもよい。
【0116】
C.HDM2に対して調節された結合または活性を有するリガンドを設計するための相同構造モデル化の使用
本発明は、出発化合物、例えば(4−クロロ−フェニル)−〔3−(4−クロロ−フェニル)−7−ヨード−2,5−ジオキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−ベンゾ〔e〕〔1,4〕ジアゼピン−4−イル〕−酢酸;〔8−クロロ−3−(4−クロロ−フェニル)−7−ヨード−2,5−ジオキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−ベンゾ〔e〕〔1,4〕ジアゼピン−4−イル〕−(4−クロロ−フェニル)−酢酸;および標的酵素に対してさらに緊密に結合またはさらに特異的に相互作用するそれらの誘導体に対する改変されたを設計するためのHDM2および/または阻害剤と複合したHDM2の原子座標および構造の使用を含む。例えば、化合物1および2およびそれらの誘導体を開示する米国仮出願番号60/275,629号、60/331,235号、60/379,617号、および10/097,249号の各明細書(それらの全体を本明細書に編入する)を参照のこと。
【0117】
化合物1(338437):(4−クロロ−フェニル)−〔3−(4−クロロ−フェニル)−7−ヨード−2,5−ジオキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−ベンゾ〔e〕〔1,4〕ジアゼピン−4−イル〕−酢酸
【0118】
【化1】

【0119】
化合物2(876273):〔8−クロロ−3−(4−クロロ−フェニル)−7−ヨード−2,5−ジオキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−ベンゾ〔e〕〔1,4〕ジアゼピン−4−イル〕−(4−クロロ−フェニル)−酢酸
【0120】
【化2】

【0121】
HDM2と出発化合物との複合体の構造は、適用できる工業界およびその他の使用物(例えば薬剤)のためのその他の望ましい性質、例えば化学的安定性、溶解度または膜透過性を有する新規化合物を作製するためにその化合物の改変されたを誘導するために使用できる。(Lipinski et al.,Adv.Drug Deliv.Rev.23:3(1997))。
【0122】
結合性化合物、アゴニスト、アンタゴニストおよび当該技術分野で公知のものは、p53ペプチドおよび小分子アンタゴニストを含むが、これらに限定はされない。例えば、米国特許出願番号60/275,629号、60/331,235号、60/379,617号および10/097,249号の各明細書(その全体を引用することにより本明細書に編入する)参照のこと。かかる化合物は、HDM2の安定化された結晶内に拡散またはそれで含浸して、X線回折データ採取のための複合体を形成できる。あるいは、当該技術分野で公知または未知の化合物は、沈降の前に化合物とHDM2とを混合してHDM2と共に共結晶化できる。
【0123】
用途に合わせた高親和性そして非常に特異性の化合物を作製するために、HDM2の構造は、選択された非標的分子および非標的分子の同じ位置での残基に対するリガンドの結合部位で残基の構造を変化させて構成したハイブリッドの構造と比較できる。このモデル化が達成されるプロセスは相同性構造モデル化と称される。これは計算により既知構造の分子または標的の側鎖を除去しそして立体的にもっともらしい位置に置かれた未知構造の側鎖でそれらを置換して行われる。この方法で、標的および非標的分子の活性部位キャビティーの形状がどのように異なるかが理解できる。従って、このプロセスは、所望の標的分子に緊密にそして特異的に結合するがしかし同時に非標的分子への結合が立体的に阻止される化合物を作製するために、結合リガンドがいかに化学的に改変できるかに関する情報を提供する。同様に、溶剤に面する結合リガンドの部分の知識は、追加の製薬学的目的のための他の官能基の導入を可能とするであろう。非標的分子に対するよりもさらに緊密に標的分子に新たに結合する分子(リガンド)を設計するための相同構造モデル化の使用は、広範な適用性を有する。
【0124】
D.高処理量アッセイ
いずれの高処理量スクリーニングも、HDM2と相互作用する能力を同定または設計される新規化合物を試験するために利用されてもよい。高処理量スクリーニングに関する一般的情報については、例えば、Devlin,1998,High Throughput Screening,Marcel Dekker;および米国特許第5,763,263号明細書参照のこと。高処理量アッセイは、以下に記載するものを含みこれらに限定はされない1種もしくはそれ以上の種々のアッセイ技術を使用する。
【0125】
免疫診断および免疫アッセイ。それらの相補性抗原に対して適合させて調製および選択された抗体により示される特異性および高い親和性に依存する、生物学的液体のような複合体混合物の通常は低濃度の中の特定の生物化学物質の測定のために使用される技術のグループがある。測定される物質は、必要な場合には、抗原性もしくは免疫原性巨大分子ま
たはハプテン性小分子でなければならない。各試料に対して、既知で限定された量の特異性抗体が加えられそして、多くの場合に結合:遊離比として表される、それと結合する抗原の割合を推定し、それには指示薬として放射性同位元素(放射免疫アッセイ)、蛍光分子(蛍光免疫アッセイ)、安定な遊離基(スピン免疫アッセイ)、酵素(酵素免疫アッセイ)、またはその他の容易に識別できる標識を用いて標識された抗原の形態が用いられる。
【0126】
抗体は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫アッセイ(RIA)、蛍光免疫アッセイ(FIA)、化学発光免疫アッセイ(CLIA)、およびコロイド状金粒子を用いる抗体標識(免疫金法)を含む種々の方法で標識できる。
【0127】
通常のアッセイフォーマットは、サンドイッチアッセイ、競合または競争アッセイ、ラテックス凝固アッセイ、同種アッセイ、マイクロタイタープレートフォーマットおよびミクロ粒子アッセイを含む。
【0128】
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)。ELISAは、放射能化学の危険および蛍光検出系の経費を避ける免疫化学技術である。なかでも、該アッセイは酵素を指示薬として使用する。ELISAは、不溶性担持面上に結合された抗体(または抗原)を使用し、それを次いで試験溶液中の関連する抗原(または抗体)を「捕捉」するために使用することに基づく定量的免疫アッセイの一つの形態である。次いで、予め抗原(または抗体)に共有結合で結合させた適切な酵素の活性を測定して抗原−抗体複合体を検出する。
【0129】
ELISA技術に関する情報については、例えば、Crowther,(1995)ELISA−Theory and Practice(Methods in Molecular Biology),Humana Press:Challacombe
& Kemeny,(1998)ELISA and Other Solid Phase Immunoassays−Theoretical and PracticalAspects,John Wiley;Kemeny,(1991)A Practical Guide to ELISA,Pergamon Preess;Ishikawa,(1991)Ultrasensitive and Rapid Enzyme Immunoassay(Laboratory Techniques in
Biochemistry and Molecular Biology)Elsevierを参照のこと。
【0130】
酵素の比色アッセイ。比色法は、多くの場合に比色計を用いて、化合物の標準および試験量の双方と試薬との反応により発生する色を比較して化合物の濃度または量を決定する定量的化学分析方法である。比色計は、目視または光電的に色強度または色強度の差異を測定する装置である。
【0131】
ベータ−ガラクトシダーゼ酵素活性の標準比色アッセイは、当該技術分野の熟練者には周知である(例えばNorton et al.,Mol.Cell.Biol.5:281−290(1985)参照)。比色アッセイは、標準比色ベータ−ガラクトシダーゼアッセイにおいて、基質としてO−ニトロフェニル−ベータ−D−ガラクトピラノシド(ONPG,Sigma)を用いる全細胞溶解物について行うことができる(Sambrook et al.,(1989)Molecular Cloning−A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press)。自動化された比色アッセイもベータ−ガラクトシダーゼ活性の検出に利用でき、これは米国特許第5,733,720号明細書中に記載されている。
【0132】
免疫蛍光アッセイ。免疫蛍光まさは免疫蛍光顕微鏡検査は、抗原または抗体が蛍光染料
への結合により蛍光性とされそして組織切片または塗抹標本中の相補性抗体または抗原と反応させる技術である。次いで、抗原または抗体の位置は、紫外光下の顕微鏡検査により蛍光を観察して決定できる。
【0133】
免疫蛍光技術の一般的情報としては、例えばKnapp et al.,(1978)Immunofluorescence and Related Staining
Techniques.Elsevier;Allan,(1999)ProteinLocalization by Fluorescent Microscopy−A
Practical Approach(The Practical Approach Series)Oxford University Press:Caul,(1993)Immunofluorescence Antigen Detection Techniques in Diagnostic Microbiology,Cambridge University Pressを参照のこと。本発明に適用できる免疫蛍光技術の詳細説明は、米国特許第5,912,176号明細書、米国特許第5,869,264号明細書、米国特許第5,866,319号明細書、および米国特許第5,861,259号明細書を参照のこと。
【0134】
E.データベースおよび計算機システム
HDM2またはその一部分の計算機分子モデル化に有用なHDM2のアミノ酸配列もしくはヌクレオチド配列および/またはX線回折データは、その使用を容易にするために種々の媒体中で「提供」され得る。本明細書中で使用される場合に、「提供」とは、例えば、本発明のアミノ酸配列もしくはヌクレオチド配列および/またはX線回折データから誘導される原子座標、例えばHDM2、その代表的なフラグメント、もしくはその相同体のアミノ酸またはヌクレオチド配列を含む作成を指す。かかる方法は、そのサブドメインも含めて、HDM2または関連分子の三次元構造を解析および分子モデル化を熟練した技術者に可能とさせる形態でアミノ酸配列および/またはX線回折データを提供する。
【0135】
本態様の一つの適用では、本発明のHDM2、またはその少なくとも1個のサブドメイン、アミノ酸および核酸配列および/またはX線回折データに関連するデータを含んでなるデータベースが計算機で読み取り可能な媒体に記憶される。本明細書中で使用される場合に、「計算機で読み取り可能な媒体」とは、計算機により直接読み取りおよびアクセスできるいずれかの媒体を指す。かかる媒体には、それらに限定はされないが、磁気記憶媒体、例えばフロッピーディスク、ハードディスク記憶媒体、および磁気テープ;光記憶媒体、例えば光ディスクまたはCD−ROM、電気記憶媒体、例えばRAMおよびROM;およびそれらの分類のハイブリッド、例えば磁気/光記憶媒体を含む。熟練者は、いずれかの現在公知の計算機で読み取り可能な媒体が、本発明のアミノ酸配列および/またはX線回折データをその上に記録した計算機で読み取り可能な媒体を含んでなる作製物を創成するためにどのようにして使用できるかを容易に認めることができる。
【0136】
本明細書中で使用される場合に、「記録する」とは、計算機で読み取り可能な媒体上に情報を記憶するためのプロセスを指す。熟練者は、本発明のアミノ酸配列および/または原子座標/X線回折データ情報を含んでなる作製物を生成するために計算機で読み取り可能な媒体上に情報を記録する現在公知の方法のいずれかを容易に採用できる。
【0137】
本発明のアミノ酸配列および/または原子座標/X線回折データをその上に記録された計算機で読み取り可能な媒体を創成するために、熟練者には各種のデータ記憶構造物が利用できる。データ記憶構造体の選択は、記憶されたデータへのアクセスに選択される手段に一般的に基づく。さらに、種々のデータ処理プログラムおよびフォーマットが、計算機で読み取り可能な媒体上の本発明の配列およびX線回折データ情報を記憶するために使用できる。配列情報は、市場で利用できるソフトウエア、例えばWordPerfectお
よびMICROSOFT Word中にフォーマットされたワード処理テキストファイルで表されるか、またはASCIIファイルの形態で表され、データベースアプリケーション、例えばDB2、Sybase、Oracleなど内に記憶されることができる。熟練者は、本発明の情報をその上に記録された計算機で読み取り可能な媒体を得るためにいずれかの数のデータ処理構築フォーマット(例えばテキストファイルまたはデータベース)を容易に採用できる。
【0138】
X線回折データに基づく配列および/または原子座標を有する計算機で読み取り可能な媒体を提供して、熟練者は、関連する分子、サブドメイン、擬似体、またはそのリガンドをモデル化するために配列および原子座標またはX線回折データに日常的にアクセスできる。計算機アルゴリズムは、計算機で読み取り可能な媒体中に提供されるこのデータにアクセスしそして分子モデル化および/またはRDD(合理的薬剤設計)のためにそれを解析することを熟練者に可能とさせるように公開され市場で入手できる。例えばBiotechnology Software Directory,MaryAnn Liebert Publ.New York(1955)参照のこと。
【0139】
本発明は、本明細書中に記載の配列および/または回折データを含むシステム、特には計算機に基づくシステムをさらに提供する。かかるシステムは、HDM2またはその少なくとも一つのサブドメインに対する構造決定およびRDDを実行するために設計されている。限定ではない例は、Unix based、Windows NTまたはIBM OS/2オペレーティングシステムで機能するSilicon Graphics IncorporatedおよびSun Microsystemsから入手できるマイクロ計算機ワークステーションである。
【0140】
本明細書中で使用される場合に、「計算機に基づくシステム」とは、本発明の配列および/またはX線回折データを解析するために使用されるハードウエア手段、ソフトウエア手段、およびデータ記憶手段を指す。本発明の計算機に基づくシステムの最低ハードウエア手段は、中央処理装置(CPU)、入力手段、出力手段、およびデータ記憶手段を含んでなる。熟練者は、本発明において使用するために現在利用できる計算機に基づくどのシステムが適当であるかを容易に認めることができる。可視化システム、例えばモニターは、構造データを可視化するために場合により利用される。
【0141】
上記のように、本発明の計算機に基づくシステムは、本発明の配列および/または原子座標/X線回折データをその中に記憶したデータ記憶手段および解析手段を支援および実行するために必要なハードウエア手段およびソフトウエア手段を含んでなる。本明細書中で使用される場合に、「データ記憶手段」とは、本発明の配列もしくは原子座標/X線回折デーを記憶できる記憶媒体、または本発明の配列もしくはX線データをその上に記録した作製物にアクセスできる記憶媒体アクセス手段を指す。
【0142】
本明細書中で使用される場合に、「サーチ手段」または「解析手段」とは、標的配列または標的構造モチーフをデータ記憶手段内に記憶されている配列またはX線データと比較するための計算機に基づくシステムを実行する1種もしくはそれ以上のプログラムを指す。サーチ手段は、特定の標的配列または標的モチーフとマッチするタンパク質のフラグメントまたは領域を同定するために使用される。各種の公知アルゴリズムが公開して開示されそしてかかるサーチ手段を実行するために市場で入手できる各種のソフトウエアが存在しそして本発明の計算機に基づくシステムで使用できる。熟練者は、計算機解析を実行するために利用できるアルゴリズムまたは実行ソフトウエアパッケージのいずれもこの計算機に基づくシステムに使用されるために採用できることを容易に認めることができる。
【0143】
本明細書中で使用される場合に、「標的構造モチーフ」または「標的モチーフ」とは、
配列が標的モチーフの折り畳みで形成される三次元立体配座または電子密度マップに基づいて選択される配列のいずれかの合理的に選択れた配列または配列の組み合わせを指す。当該技術分野で公知の各種の標的モチーフがある。タンパク質標的モチーフは、それらに限定はされないが、酵素活性部位、阻害剤結合部位、構造サブドメイン、エピトープ、機能ドメインおよびシグナル配列を含む。同様のモチーフはRNAに関しても公知である。入力および出力手段のための各種の構造フォーマットが、本発明の計算機に基づくシステム内の情報の入力および出力のために使用できる。
【0144】
各種の比較手段が、原子座標/X線回折データから一部誘導された構造モチーフまた電子密度マップを同定するために、標的配列もしくは標的モチーフとデータ記憶手段とを比較するために使用できる。熟練者は、公開で利用できる計算機モデル化プログラムのいずれか一つが、本発明の計算機に基づくシステムのためのサーチ手段として使用できることを容易に認めることができる。
【0145】
F.標的分子フラグメントおよび部分
HDM2のフラグメント、例えばSer17、Ile19、Leu82およびArg97から成る群から選択される2個もしくはそれ以上のアミノ酸により決定される活性部位を含んでなるフラグメントは、合成および組換え手段を含むいずれかの利用できる手段により調製されてもよい。次いで、かかるフラグメントは、上記のアッセイ、例えばフラグメント内の予定作用物質と活性部位との間の相互作用を検出するための高処理量アッセイで使用されてもよい。
【0146】
本発明のフラグメントの組換え発現または産生のために、フラグメントをコードする核酸分子が調製されてもよい。本明細書中で使用される場合に、「核酸」とは、上記に定義されたタンパク質またはペプチドをコードするか、またはかかるペプチドをコードする核酸に相補性であるか、または適切なストリンジェンシー条件下でかかる核酸にハイブリダイズしそしてそれに安定して結合を続けるRNAもしくはDNAとして定義される。
【0147】
本発明のフラグメントをコードする核酸分子は、遺伝子コードの縮退の結果、配列が異なってもよく、またはアミノ酸配列が異なるタンパク質もしくはタンパク質フラグメントをコードするので配列が異なってもよい。2個またはそれ以上のかかる核酸分子間の相同性または配列一致は、配列類似性サーチのために適応されているプログラムblastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastx(Karlin
et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264−2268(1990)およびAltschul,et al.,J.Mol.Evol.36:290−300(1993)、引用することにより全体を編入する)により使用されるアルゴリズムを用いるBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)解析により決定される。
【0148】
BLASTプログラムにより使用される方法は、探索配列とデータベース配列との間の類似セグメントを最初に考慮し、次いで同定された完全マッチの統計的有意性を評価し、そして最後に事前に選択された有意性の閾値を満足するマッチを総合するものである。配列データベースの類似定サーチにおける基本的問題の考察に関しては、アルトシュルら(Altschul et al.,Nat.Genet.6,119−129(1994)、引用することにより全体を編入する)を参照のこと。ヒストグラム、デスクリプション、アラインメント、エクスペクト(すなわちデータベース配列に対するマッチを報告する統計的有意閾値)、カットオフ、マトリックスおよびフィルターのサーチパラメーターは、デフォールト設定である。blastp、blastx、tblastnおよびtblastxにより使用されるデフォールト評点マトリックスは、BLOSUM62マトリックスである(Henikoff et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915−10919(1992)、引用することにより全体を編入する)。4個のblastnパラメーターは以下のように調整される:Q=10(ギャップ創成ペナルティー);R=10(ギャップ延長ペナルティー);wink=1(探究に沿ってそれぞれのwinkth位置でのワードヒットを生成する)、およびgapw=16(ギャップド・アラインメントが生成されるウインドウ幅を設定する)。等価のBlastpパラメーター設定は、Q=9;R=2;wink=1;およびgapw=32である。GCGパッケージ・バージョン10.0内で利用できる配列間のBestfit比較は、DNAパラメーターGAP=50(ギャップ創成ペナルティー)およびLEN=3(ギャップ延長ペナルティー)を使用し、そしてタンパク質比較における等価設定はGAP=8およびLEN=2である。
【0149】
「ストリンジェント」条件とは、(1)洗浄のための低イオン強度および高温、例えば0.015M NaCl/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%SDSの50℃における使用または(2)例えばホルムアルデヒドのような改変された剤、例えばpH6.5の0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコル(Ficoll)/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウム緩衝液中の50%アホルムアミドを750mM NaCl、75mMクエン酸ナトリウムと一緒に42℃でハイブリダイゼーションの間に使用するものである。別の例は、50%ホルムアミド、5xSSC、50mMリン酸ナトリウム(pH6.5)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5xデンハート(Denhardt)溶液、音波処理したサケ精液(50mg/ml)、0.1%SDSおよび10%硫酸デキストランを42℃で使用し42℃で0.2xSSCおよび0.1%SDS中で洗浄するものである。熟練者は、透明で検出可能なハイブリダイゼーションシグナルを得るために適当なストリンジェンシー条件を容易に決定および変更できる。
【0150】
本明細書中で使用される場合に、核酸分子が核酸の出所とは別のポリペプチドをコードする混成核酸から本質的に分離されている場合に、核酸分子は「単離」されたと称される。
【0151】
本発明のコード核酸分子(すなわち合成オリゴヌクレオチド)およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のためのプローブまたは特異性プライマーとして、または本発明のタンパク質をコードする遺伝子配列を合成するために使用されるものは、化学技術、例えば、Matteucciら(J.Am.Chem.Soc.103:185−3191(1981)のホスホトリエステル法によりまたは自動化合成方法を用いて容易に合成できる。さらに、より大きいDNAセグメントは、周知の方法、例えば遺伝子の種々の調節セグメントを規定するオリゴヌクレオチドの群の合成、引き続く完全な改変された遺伝子を構築するためのオリゴヌクレオチドの連結により容易に調製できる。
【0152】
本発明のコード核酸分子は、診断およびプローブの目的のための検出可能な標識を含むようにさらに改変されたされてもよい。各種のかかる標識は当該技術分野では公知でありそして本明細書中に記載のコード分子と共に容易に使用できる。適合する標識は、それらに限定はされないが、ビオチン、放射能標識ヌクレオチドなどを含む。熟練者は、標識されたコード核酸分子を得るためにいずれかの当該技術分野で公知の標識を利用できる。
【0153】
本発明は、上記のようなタンパク質フラグメントのコード配列を含む組換えDNA分子(rDNA)をさらに提供する。本明細書中で使用される場合に、rDNA分子は、分子操作されたDNA分子である。rDNA分子を生成する方法は当該技術分野では周知であり、例えばSambrook et al.Molecular Cloning−A
Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)を参照されたい。好ましいrDNA分子において、コードDNA配列は、発現制御配列および/またはベクター配列に操作可能に連結さ
れている。
【0154】
本発明のタンパク質コード配列の一つが操作可能に連結されているベクターおよび発現制御配列の選択は、当該技術分野では周知のように、所望の機能的性質(例えばタンパク質発現、および形質転換される宿主細胞)に直接に依存する。本発明のベクターは、宿主染色体内への複製または挿入、および多分、rDNA分子中に含まれる構造遺伝子の発現も指令できる。
【0155】
操作可能に連結されるタンパク質コード配列の発現を調節するために使用される発現制御要素は、当該技術分野では公知でありそして、それらに限定はされないが、誘導体プロモーター、構成性プロモーター、分泌シグナル、およびその他の調節要素を含む。好ましくは、誘導可能なプロモーターは、例えば宿主細胞の媒体内の栄養物に応答するように容易に制御される。
【0156】
本発明は、本発明のタンパク質フラグメントをコードする核酸分子を用いて形質転換された宿主細胞もさらに提供する。宿主細胞は、原核性または真核性のいずれであってもよい。細胞系統が細胞培養方法と相容性でありそして発現ベクターの増殖および遺伝子産物の発現と相容性である限り、本発明のタンパク質の発現のために有用な真核細胞は限定されない。好ましい真核宿主細胞は、それらに限定はされないが、酵母、昆虫および哺乳動物細胞、好ましくは脊椎動物細胞、例えばマウス、ラット、サルまたはヒト細胞系統からのものである。好ましい真核宿主細胞は、ATCCからCCL61として入手可能なチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ATCCからCRL1685として入手可能なNIHスイスマウス胚細胞NIH−3T3、乳児ハムスター腎臓細胞(BHK)などの真核組織培養細胞系統を含む。
【0157】
本発明の形質転換された宿主細胞は、組換えタンパク質の産生を可能とする条件下で培養されてもよい。場合により、組換えタンパク質は媒体からまたは細胞から単離される。タンパク質の回収および精製は、ある不純物が容認できるような場合には必要ではないであろう。
【0158】
場合により特定のアッセイ、例えば上記のようなアッセイに必要な試薬と共に包装した上記の核酸分子、タンパク質フラグメント、ベクターおよび/または宿主細胞のいずれかを用いてキットを調製してもよい。かかるキット中で、タンパク質フラグメントまたはその他の試薬は、固体担体、例えばガラスまたはプラスチックビーズに付着させてもよい。
【0159】
G.本発明を利用する総合手順
分子モデル化は、HDM2の擬似体およびリガンドの合理的薬剤設計(RDD)のために本発明により提供される。上記のように、薬剤設計の例では、タンパク質上の部位と相互作用することが期待される可能性がある擬似体およびリガンドを決定する計算機モデル化プログラムを使用する。次いで、可能性のある擬似体またはリガンドは、活性および/または結合および/または相互作用に関してスクリーニングされる。HDM2関連擬似体またはリガンドに対して、スクリーニングの方法は、HDM2の少なくとも1種の生物学的活性、例えば公知方法段階によるp53結合の遮断のようなアッセイより選択できる。例えば、Kussie et al.,Science 274:948−953(1996);Bottger et al.,J.Mol.Biol.269:744−756(1997)参照のこと。
【0160】
従って、本発明にり提供されるツールおよび方法論は、標的と望ましい様式で結合するリガンドを同定および設計するための手順中に使用されてもよい。かかる手順は、リガンドが合成、試験および特性決定される反復方法を利用する。新規のリガンドは、最初のリ
ガンドの試験および特性決定で得られた情報に基づいて設計でき、次いでかかる新規に同定されたリガンドは、それ自体を試験および特性決定できる。この一連のプロセスは、所望の結合性質を有するリガンドが得られるまで必要に応じて何回反復されてもよい。
【0161】
下記の段階が全体手順の例である。
【0162】
1.標的の生物学的活性(例えばp53への結合)を選択する。
【0163】
2.選択した生物学的活性となんらかの様式で会合すると考えられるリガンドを同定する(例えばリガンドは既知活性の阻害剤であってもよい)。リガンドの活性は、生体内および/または実験室内的方法により試験されてもよい。
【0164】
本発明のリガンドは、それらに限定はされないが、標識抗体として検出可能に標識できる、脂質、核酸、化合物、タンパク質、元素、抗体、糖類、異性体、炭水化物、イメージング剤、脂タンパク質、糖タンパク質、酵素、検出可能なプローブ、抗体もしくはそれらのフラグメント、またはそれらのいずれかの組み合わせから選択される少なくとも1種であることができる。かかる標識は、それらに限定はされないが、酵素標識、放射性同位元素もしくは放射性化合物もしくは元素、蛍光性化合物もしくは金属、化学発光化合物および生物発光化合物を含む。あるいは、いずれかの他の公知の診断または治療薬剤が、本発明の方法に使用できる。次いで、標的と関連させて活性に関して適合する化合物を試験する。
【0165】
HDM2とリガンドの間の複合体は、同時結晶化またはさらに一般的には結晶内に小分子リガンドを拡散させるかのいずれかで作製される。複合体結晶からのX線回折データを測定しそして差電子密度マップを算出する。このプロセスは、標的分子上の結合リガンドの正確な位置をもたらす。差フーリエ(difference Fourier)は、測定された回折幅と、座標から算出されたそれらの反射の位相を用いて算出される。
【0166】
3.本発明の方法の使用。電子密度マップおよび/またはリガンドと標的分子との相互作用の分子モデルの創成のためにX線結晶学が利用される。
【0167】
以上に考察した計算機プログラム内への標的の座標の入力で、巨大分子の最も可能性がある構造の算出が得られる。それらの構造を組み合わせそしてかかるプログラムを用いる追加の計算により精密化して、リガンドの可能もしくは実際の活性もしくは結合部位を含む標的の可能もしくは実際の三次元構造を決定する。リガンドまたは擬似体の合理的薬剤設計に有用なかかる分子モデル化(および関連する)プログラムも本発明により提供される。
【0168】
4.段階3で得られた電子密度マップおよび/または分子モデルを、リガンドを含まない標的の電子密度マップおよび/または分子モデルと比較し、そして観察/算出された差異を標的またはサブユニット上のリガンドの結合を特異的に位置決定するために使用する。
【0169】
5.モデル化ツール、例えば計算化学および計算機モデル化は、標的と追加または異なる相互作用を行えるようにリガンドの構造を調整または変更するために使用される。
【0170】
リガンド設計は、異なる分子が標的の種々の部位とどのように相互作用するかを算出する計算機モデル化プログラムを使用する。この手順は、可能性があるリガンドまたはリガンドの種々の擬似体を決定する。
【0171】
リガンド設計は、異なる分子が標的、サブユニット、またはそれらのフラグメントの種々の部位とどのように相互作用するかを算出する計算機モデル化プログラムを使用する。従って、この手順は、可能性があるリガンドまたはリガンド擬似体を決定する。
【0172】
6.段階5からの新規に設計されたリガンドは、上記に考察した高処理量スクリーニング法を含む適切な生体内または試験室内試験を用いてその生物学的活性を試験できる。
【0173】
次いで、可能性があるリガンドまたは擬似体をHDM2、または少なくともそのフラグメントに対する活性に関してスクリーニングする。かかるスクリーニング法は、本来の標的の少なくとも1種の生物学的活性に対するアッセイから選択される。
【0174】
本発明の方法により提供され、得られたリガンドまたは擬似体は、動物、例えば哺乳動物(ヒトを含む)および鳥類内の疾患の処置、スクリーニングまたは防止のために有用である。
【0175】
7.当然ながら、上記の段階それぞれは、意図する特定の目的に対して手順を精密化するように当該技術分野の熟練者により望みどおりに変更できる。また、手順のいずれの段階または相でも、追加のX線回折データをHDM2、HDM2/リガンド複合体、HDM2構造標的モチーフおよびHDM2サブユニット/リガンド複合体に関して収集してもよい。かかる追加の回折データは、所望の結合属性を有するリガンドの設計および選択をさらに支援するように電子密度マップおよび分子モデルを再構築するために使用できる。
【0176】
本発明は、本シリーズの選択された化合物、リガンドもしくは擬似体中の構造非対称の結果として生じる、立体異性体ならびに光学異性体、例えば鏡像異性体の混合物ならびに個別の鏡像異性体およびジアステレオマーを含むと考えられると理解されるべきである。
【0177】
本明細書中の方法により開示または発見された化合物または作用物質のいくつかは、1個もしくはそれ以上の不斉中心を含んでもよく、従って鏡像異性体、ジアステレオマー、およびその他の立体異性体形態を生成する。本発明は、すべてのかかる可能な形態ならびにそれらのラセミおよび分割された形態およびそれらの混合物も包含するとも意図する。本明細書中に記載または発見された化合物がオレフィン性二重結合またはその他の幾何学的不斉中心を含む場合、そして別途に特定しな限り、それはEおよびZ幾何異性体を含むと意図する。すべての互変異性体も同様に本発明に包含されると意図する。
【0178】
本明細書中に使用される場合に、「立体異性体」の用語は、空間内のそれらの原子の配置のみが異なる個別の分子のすべての異性体に対する一般用語である。それは、鏡像異性体および相互に鏡像ではない2個以上のキラル中心を有する化合物の異性体(ジアステレオマー)を含む。
【0179】
本明細書中に使用される場合に、「キラル中心」の用語は、4個の異なる基が結合している炭素原子を指す。
【0180】
本明細書中に使用される場合に、「鏡像異性体」または「鏡像異性体的」の用語は、その鏡像上に重ね合わすことができず従って光学的に活性な分子を指し、ここで鏡像異性体は一つの方向に偏光面を回転しそしてその鏡像は偏光面を反対方向に回転する。
【0181】
本明細書中に使用される場合に、「ラセミ体」の用語は、鏡像異性体の等量の混合物であってそして光学的に活性なものを指す。
【0182】
本明細書中に使用される場合に、「分割(resolution)」の用語は、分子の
二つの鏡像異性体形態の一方の分離または濃縮または欠失を指す。本出願の範囲内で、「分解能(resolution)」の用語は、回折実験により分解できる細部の量も指す。言い換えると、タンパク質結晶回折パターンの本来的な不規則性は、いくらかの回折角度θmaxで消失するので、逆格子の相当する距離dminはブラッグの法則により決定される。
【0183】
min λ
2sinθmax
タンパク質結晶学の実際では、タンパク質電子密度の見かけ分解能はdmin、すなわちデータがマップの算出に含まれる最小格子距離を用いて通常記述される。
【0184】
本発明の化合物は、p53とMDMXとの間の相互作用の阻害に有用でもある。MDM4としても知られるMDMXは、細胞周期の調節に関与する細胞タンパク質である。例えば、Riemenschneider et al.,Cancer Res.59(24):6091−6069(1999)を参照のこと。
【0185】
これ以上記述しなくても、当該技術分野の通常の熟練者は、上記の記述および下記の例示的な実施例を用いて、本発明の化合物を作製および使用しそして特許請求する方法を実施できると考える。従って、下記の実際的な実施例は、本発明の好ましい態様を特定して指摘し、そして本開示の残部をいかなる様式でも限定すると考えてはならない。
【0186】
実施例
【実施例1】
【0187】
GST HDM2融合タンパク質構築および発現
HDM2のcDNAコード残基17〜125をクローニングしそして下記のように発現した:鋳型として部分ヒトMDM2配列および下記のプライマー:
前進:5’−CTCTCTCGGATCCCAGATTCCAGCTTCGGAACAAGAG
逆行:5’−TATATATCTCGAGTCAGTTCTCACTCACAGATGTACCTGAG
を含むATCCアイテム番号384988を用いてPCRを行った。
【0188】
次いで、PCR産物をBamHIおよびXhol(プライマー中に下線を付けた配列認識部位)を用いて消化、ゲル精製、そしてBamHIおよびXholを用いて同様に消化したpGEX4t−3中に結合した。精製したプラスミドを大腸菌(E coli)株BL21中に形質転換した。800mlLB(Launa Bertani媒体)+100μg/mlアンピシリンを含み、そして0.2%グリセロールを補足した2L振とうフラスコ中、37℃でタンパク質が産生された。要約すると、媒体を一夜培養物16mlを用いて接種しそして600における吸光度が0.6〜0.8ODに達すると1mM IPTGを用いて誘導した。誘導の5時間後に細胞を採取した。
【0189】
HDM2 23−114に対して、使用したプライマーは下記である:
5’−CGACGGATGGATCCGAACAAAGACCCTG
3’−GGCTACTACTCCGAGTCATTCCTGCTGATTGACTAC
HDM2 17−111に対して、使用したプライマーは下記である:
5’−CTCTCTCGGATCCCAGATTCAGCTTCCGGAACAAGAG
3’−TTCAGCAGCTCGAGTCAATTGACTACTACCAAGTT
C。
【0190】
いくつかの例外を除いて以上のようにしてPCRフラグメントをクローニングしそして発現した。大腸菌株BL21 RILを発現に使用した。A600が0.2に達するまで37℃で培養し、次いで室温としそして0.1mM IPTGを用いて0.6〜0.8のA600で誘導した。誘導の5時間後に細胞を採取し、遠心分離し、そしてPBS中に再懸濁して10ml/g細胞ペーストとした。
【0191】
タンパク質産生
細胞をアヴェスチン・マイクロフルイダイザー(Avestin microfluidizer)中で溶解し、遠心分離し、そして上清をグルタチオン・セファロース4B樹脂(Pharmacia)に結合させた。樹脂をPBSを用いて洗浄しそして関係するHDM2構築物を2μg/mlトロンビン(Enzyme Research Labs)を添加してGST樹脂から切断した。切断したHDM2をSepharose SP Fast Flow樹脂(Pharmacia)上の負荷し、そして20mM HEPES
pH7.5、150mM NaClを用いて溶離した。グルタチオンを5mMまで添加し、そしてタンパク質を−70℃で保管した。得られたタンパク質は、アミノ酸17(セリン)の前にN−末端グリシンを有している。
【0192】
結晶学のためのタンパク質調製
濃度0.7mg/mlで透析して関係する化合物とHDM2 17−111を複合させ、緩衝液は20mM HEPES pH.7.4、100mM NaCl、5mM DTTとし、0.02μmフィルターを用いて濾過し、そして10mg/mlまで濃縮した。
【実施例2】
【0193】
結晶化およびデータ採取
典型的な結晶化実験において、化合物と複合化しそして約10mg/mlまで濃縮したHDM2タンパク質1〜2μgを、ウエル溶液(1.8〜2.4M(NHSO、100mM緩衝液pH6.5〜9.0、2%PEG400,100mM NaSCN)と比率1:1で混合しそしてガラス・カバー・スリップ上に置いた。カバー・スリップを裏返しそしてウエル溶液500〜1000μlの容器上にシールしそして4℃でインキュベーションした。結晶は通常一晩で出現しそして3〜7日後に採取可能となった。結晶をナイロンループを用いて採取し、冷凍溶液(2.2M (NHSO、100mMビス−トリス−プロパンpH7.5、2%PEG400,100mM NaSCN、15%グリセロール)中に30秒間以下置きそして液体窒素または液体プロパン中に浸漬して冷凍した。Bruker AXS M06XCE回転陽極およびSMART 6000 CCD検出装置上、120Kでデータを採取した。回折データは、Proteumスイート(Bruker AXS)を用いて処理した。
【実施例3】
【0194】
アッセイ方法:ペプチド結合アッセイ
p53へのMDM2結合の阻害は、MDM2残基17−125に結合するp53ペプチド類似体を用いて測定した。この複合体の公開された結晶構造(Kussie,P.H.,et al.,Science 274:948−953(1996))は、このフラグメントがp53結合部位を含むことを確認し、そして我々は、MDM2 p53相互作用のペプチド阻害剤として記載されているp53ペプチド類似体MPRFMDYWEGLN(Boettger,A.,et al.,J.Mol.Biol.269:744−756(1997))のX線構造を解明した。該アッセイは、N末端フルオレセインRFMDYWEGLペプチド(Fl 9量体)を用いる。50mM HEPES pH7.5、150mM NaCl、3mMオクチルグルコシド中の30nMフルオレセインペプチドFl 9量体および120nM HDM2 17−125と一緒に化合物を15分間インキュベーションした。フルオレセイン標識の偏極を485nM励起および530nmの発光で測定した。偏極は、Fl 9量体を伴うMDM2がない場合を背景として、化合物対照がない場合に対する百分率として表した。
【実施例4】
【0195】
HDM2原子座標:表1(化合物1)
表1には、化合物1(338437)((4−クロロ−フェニル)−〔3−(4−クロロ−フェニル)−7−ヨード−2,5−ジオキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−ベンゾ〔e〕〔1,4〕ジアゼピン−4−イル〕−酢酸と複合したHDM2および結合水の三次元原子座標を標準pdbフォーマットで記載する。関連する結晶学的データは表1の注記の部分に含まれる。非結晶学的対称性で関連されるHDM2の2分子は、非対称単位内に存在しそして第一の分子に対してはAそして第二の分子に対してはBのCHAINIDにより同定される。該化合物(化合物1)は、残基名称DCBで存在する。同じCHAINIDを共有する化合物1およびHDM2分子は複合体を形成する。
【実施例5】
【0196】
HDM2原子座標:表2(化合物2)
化合物2〔8−クロロ−3−(4−クロロ−フェニル)−7−ヨード−2,5−ジオキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−ベンゾ〔e〕〔1,4〕ジアゼピン−4−イル〕−(4−クロロ−フェニル)−酢酸(876273)およびHDM2タンパク質を上記の実施例2に記載のようにして同時結晶化した。表2は、化合物2(876273)(〔8−クロロ−3−(4−クロロ−フェニル)−7−ヨード−2,5−ジオキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−ベンゾ〔e〕〔1,4〕ジアゼピン−4−イル〕−(4−クロロ−フェニル)−酢酸)と複合されたHDM2の三次元原子座標を記載する。関連する結晶学的データは表2の注記の部分に含まれる。データは上記のようにして採取された。三方晶系結晶型を得るために使用されたと同じ結晶化条件で異なる結晶形態も観察できる。
【実施例6】
【0197】
HDM2原子座標:表3
表3は、化合物1(化合物338437、((4−クロロ−フェニル)−〔3−(4−クロロ−フェニル)−7−ヨード−2,5−ジオキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−ベンゾ〔e〕〔1,4〕ジアゼピン−4−イル〕−酢酸)と複合されたHDM2の構造に整列された正方晶系空間群の化合物2(化合物876273:〔8−クロロ−3−(4−クロロ−フェニル)−7−ヨード−2,5−ジオキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−ベンゾ〔e〕〔1,4〕ジアゼピン−4−イル〕−(4−クロロ−フェニル)−酢酸)と同時結晶化されたHDM2の三次元原子座標を記載する。関連する結晶学的データは表3の注記の部分に含まれる。データは上記のようにして採取された。
【0198】
pdbフォーマットは、ウエブ上に種々のサイトに記載されている。プログラムに依存して、このフォーマットに対する結晶学的適用の小さい変更も見だされるであろう。良いプライマーは、CCP4“www.ccp4.ac.uk/html/pdbformat.html”のこのリンクにより提供される。より詳細な記述は、RCSBホームページで見ることができる。
【実施例7】
【0199】
位相性:モデル構築および精密化
位相は、CNX内のサーチモデルとして公開されたHDM2構造を用いて分子置換により得られた(Brunger,A.T.,et al.,P.D.,Acta Cryst D54:905−921(1998):Accelrys Inc.)。構造精密化
およびモデル構築の交互サイクルは、CNXおよびOを用いる標準プロトコールに従って実行した(Jones,T.A.,et al.,Acta Cryst A47:10−119(1991)。
【実施例8】
【0200】
HDM2の構造的特徴
図1。化合物1(化合物338437、((4−クロロ−フェニル)−〔3−(4−クロロ−フェニル)−7−ヨード−2,5−ジオキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−ベンゾ〔e〕〔1,4〕ジアゼピン−4−イル〕−酢酸)に結合したHDM2のリボン表示。
【0201】
図2。分子表面として表したHDM2の活性部位内への化合物1(化合物338437、((4−クロロ−フェニル)−〔3−(4−クロロ−フェニル)−7−ヨード−2,5−ジオキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−ベンゾ〔e〕〔1,4〕ジアゼピン−4−イル〕−酢酸)のフィッティング。
【0202】
本発明を上記の実施例を参照して詳細に記述したけれども、本発明の精神から離れることなく種々の変更が可能であると理解される。引用されたすべての特許、特許出願および公開および本出願内に引用されたその他の文献は、その全体を引用することにより本明細書に編入される。
【0203】
表1:化合物338437、((4−クロロ−フェニル)−〔3−(4−クロロ−フェニル)−7−ヨード−2,5−ジオキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−ベンゾ〔e〕〔1,4〕ジアゼピン−4−イル〕−酢酸
注記 制限された個別のB因子精密化からの座標
注記 精密化分解能:500.0−2.6Å
注記 出発 r=0.2398 free_r=0.2763
注記 最終 r=0.2390 free_r=0.2765
注記 結合主鎖原子に対する二乗平均B=1.358 標的=1.5
注記 結合側鎖原子に対する二乗平均B=1.887 標的=2.0
注記 角度主鎖原子に対する二乗平均B=2.371 標的=2.0
注記 角度側鎖原子に対する二乗平均B=2.965 標的=2.5
注記 rweight=0.1000(ここでwa=2.71183)
注記 標的=mlf 段階数=30
注記 sg=P3(2)21 a=98.486 b=98.486 c=74.038
アルファ=90 ベータ=90 ガンマ=120
注記 パラメーター・ファイル1:MSI_CNX_TOPPAR:protein_rep.param
注記 パラメーター・ファイル2:dcb.par
注記 パラメーター・ファイル3:MSI_CNX_TOPPAR:water_rep.param
注記 分子構造ファイル:cycle8.psf
注記 入力座標:minimize.pdb
注記 反射ファイル=../M338437_p3221.cv
注記 ncs=none
注記 B−補正分解能:6.0−2.6
注記 fobsに適用された初期B−因子補正:
注記 B11=5.509 B22=5.509 B33=−11.019
注記 B12=0.263 B13=0.000 B23= 0.000
注記 座標アレイBに適用されたB−因子補正:0.036
注記 バルク溶剤:(Mask)密度レベル=0.372649 e/A^3、B−因子=25.2844A^2
注記 |Fobs|を有する反射/シグマ_F<0.0棄却
注記 |Fobs|を有する反射>10000*rms(Fobs)棄却
注記 分解範囲内の反射の理論的全数:13090(100.0%)
注記 非観察反射の数(入力なしまたは|F|=0):176(1.3%)
注記 棄却された反射の数:0(0.0%)
注記 使用した反射の全数:12914(98.7%)
注記 作業セット内の反射の数:11964(91.4%)
注記 試験セット内の反射の数:950(7.3%) CRYST1 98.486 98.486 74.038 90.00 90.00 120.00 p32 2 1
注記 FILENAME=“bindvidual.pbd”
注記 CNXバージョン:2000.12により記述
【0204】
【表1】

【0205】
【表2】

【0206】
【表3】

【0207】
【表4】

【0208】
【表5】

【0209】
【表6】

【0210】
【表7】

【0211】
【表8】

【0212】
【表9】

【0213】
【表10】

【0214】
【表11】

【0215】
【表12】

【0216】
【表13】

【0217】
【表14】

【0218】
【表15】

【0219】
【表16】

【0220】
【表17】

【0221】
【表18】

【0222】
【表19】

【0223】
【表20】

【0224】
【表21】

【0225】
【表22】

【0226】
【表23】

【0227】
【表24】

【0228】
【表25】

【0229】
【表26】

【0230】
【表27】

【0231】
【表28】

【0232】
【表29】

【0233】
【表30】

【0234】
【表31】

【0235】
【表32】

【0236】
【表33】

【0237】
【表34】

【0238】
【表35】

【0239】
【表36】

【0240】
【表37】

【0241】
【表38】

【0242】
【表39】

【0243】
【表40】

【0244】
【表41】

【0245】
【表42】

【0246】
【表43】

【0247】
【表44】

【0248】
【表45】

【0249】
【表46】

【0250】
【表47】

【0251】
【表48】

【0252】
【表49】

【0253】
【表50】

【0254】
【表51】

【0255】
【表52】

【0256】
【表53】

【0257】
【表54】

【0258】
【表55】

【0259】
【表56】

【0260】
【表57】

【0261】
【表58】

【0262】
表2:化合物876273:(〔8−クロロ−3−(4−クロロ−フェニル)−7−ヨード−2,5−ジオキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−ベンゾ〔e〕〔1,4〕ジアゼピン−4−イル〕−(4−クロロ−フェニル)−酢酸)
注記 制限された個別のB因子精密化からの座標
注記 精密化分解能:25−2.6Å
注記 出発 r=0.2563 free_r=0.2787
注記 最終 r=0.2553 free_r=0.2761
注記 結合主鎖原子に対する二乗平均B=1.483 標的=1.5
注記 結合側鎖原子に対する二乗平均B=1.740 標的=2.0
注記 角度主鎖原子に対する二乗平均B=2.593 標的=2.0
注記 角度側鎖原子に対する二乗平均B=2.780 標的=2.5
注記 rweight=0.1000(ここでwa=3.71696)
注記 標的=mlf 段階数=30
注記 sg=P4(3)2(1)2 a=54.3 b=54.3 c=83.3 アルファ=90 ベータ=90 ガンマ=90
注記 パラメーター・ファイル1:MSI_CNX_TOPPAR:protein_rep.param
注記 パラメーター・ファイル2:../cid.par
注記 分子構造ファイル:recycle.psf
注記 入力座標:anneal_9.pdb
注記 反射ファイル=../M876273_2_p43212.cv
注記 ncs=none
注記 B−補正分解能:6.0−2.6
注記 fobsに適用された初期B−因子補正:
注記 B11=−1.189 B22=−1.189 B33=2.379
注記 B12=0.000 B13=0.000 B23= 0.000
注記 座標アレイBに適用されたB−因子補正:−0.119
注記 バルク溶剤:(Mask)密度レベル=0.341945 e/A^3、B−因子=22.3925A^2
注記 |Fobs|を有する反射/シグマ_F<0.0棄却
注記 |Fobs|を有する反射>10000*rms(Fobs)棄却
注記 分解範囲内の反射の理論的全数:4173(100.0%)
注記 非観察反射の数(入力なしまたは|F|=0):9(0.2%)
注記 棄却された反射の数:0(0.0%)
注記 使用した反射の全数:4164(99.8%)
注記 作業セット内の反射の数:3737(89.6%)
注記 試験セット内の反射の数:427(10.2%) CRYST1 54.300
54.300 83.300 90.00 90.00 90.00 p43 21 2注記 FILENAME=“bindvidual.pbd”
注記 CNXバージョン:2000.12により記述
【0263】
【表59】

【0264】
【表60】

【0265】
【表61】

【0266】
【表62】

【0267】
【表63】

【0268】
【表64】

【0269】
【表65】

【0270】
【表66】

【0271】
【表67】

【0272】
【表68】

【0273】
【表69】

【0274】
【表70】

【0275】
【表71】

【0276】
【表72】

【0277】
【表73】

【0278】
【表74】

【0279】
【表75】

【0280】
【表76】

【0281】
【表77】

【0282】
【表78】

【0283】
【表79】

【0284】
【表80】

【0285】
【表81】

【0286】
【表82】

【0287】
【表83】

【0288】
【表84】

【0289】
【表85】

【0290】
【表86】

【0291】
表3 重ね:三方晶系および正方晶系結晶型
注記 /xray1/hmdm2/PDB/M338437.pdb上に重ねる
注記 19原子は0.249ÅのRMS距離を有する
注記 RMSデルタB=6.724A2
注記 2ランダムタンパク質に推定されたRMSD=5.398 A
注記 相対RMSD =0.04621
注記 正規化RMSD =1.471 A
注記 制限された個別のB因子精密化からの座標
注記 精密化分解能:25−2.6Å
注記 出発 r=0.2563 free_r=0.2787
注記 最終 r=0.2553 free_r=0.2761
注記 結合主鎖原子に対する二乗平均B=1.483 標的=1.5
注記 結合側鎖原子に対する二乗平均B=1.740 標的=2.0
注記 角度主鎖原子に対する二乗平均B=2.593 標的=2.0
注記 角度側鎖原子に対する二乗平均B=2.780 標的=2.5
注記 rweight=0.1000(ここでwa=3.71696)
注記 標的=mlf 段階数=30
注記 sg=P4(3)2(1)2 a=54.3 b=54.3 c=83.3 アル
ファ=90 ベータ=90 ガンマ=90
注記 パラメーター・ファイル1:MSI_CNX_TOPPAR:protein_rep.para
注記 パラメーター・ファイル2:../cid.par
注記 分子構造ファイル:recycle.psf
注記 入力座標:anneal_9.pdb
注記 反射ファイル=../M876273_2_p43212.cv
注記 ncs=none
注記 B−補正分解能:6.0−2.6
注記 fobsに適用された初期B−因子補正:
注記 B11=−1.189 B22=−1.189 B33=2.379
注記 B12=0.000 B13=0.000 B23= 0.000
注記 座標アレイBに適用されたB−因子補正:−0.119
注記 バルク溶剤:(Mask)密度レベル=0.341945 e/A^3、B−因子=22.3925A^2
注記 |Fobs|を有する反射/シグマ_F<0.0棄却
注記 |Fobs|を有する反射>10000*rms(Fobs)棄却
注記 分解範囲内の反射の理論的全数:4173(100.0%)
注記 非観察反射の数(入力なしまたは|F|=0):9(0.2%)
注記 棄却された反射の数:0(0.0%)
注記 使用した反射の全数:4164(99.8%)
注記 作業セット内の反射の数:3737(89.6%)
注記 試験セット内の反射の数:427(10.2%)
注記 FILENAME=“bindvidual/pdb”
注記 CNXバージョン:2000.12により記述
【0292】
【表87】

【0293】
【表88】

【0294】
【表89】

【0295】
【表90】

【0296】
【表91】

【0297】
【表92】

【0298】
【表93】

【0299】
【表94】

【0300】
【表95】

【0301】
【表96】

【0302】
【表97】

【0303】
【表98】

【0304】
【表99】

【0305】
【表100】

【0306】
【表101】

【図面の簡単な説明】
【0307】
【図1】化合物338437に結合したHDM2のリボン表示。
【図2】分子表面として表されたHDM2の活性部位内への化合物338437のフィット状態。
【図3】三方晶系内および正方晶系内のhdm2間の重なりのリボン表示。−アルファ原子位置の中のRMS偏差は0.25Åである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HDM2、もしくはそのフラグメント、またはその標的構造モチーフもしくは誘導体、および小分子阻害剤であるリガンドを含んでなる結晶。
【請求項2】
請求項1の結晶であって、該フラグメントまたは誘導体が、配列番号1(全長HDM2のアミノ酸配列)、配列番号2(配列番号1のアミノ酸残基17〜111)、配列番号3(配列番号1のアミノ酸残基23〜114)、および配列番号4(Gly16−配列番号2)から成る群から選択されるペプチドである、上記結晶。
【請求項3】
請求項1の結晶であって、P321の三方晶系空間群およびP42の正方晶系空間群から成る群から選択される空間群を有する、上記結晶。
【請求項4】
請求項1の結晶であって、少なくとも約3.0Åの分解能まで、原子座標の決定のためのX線を効果的に回折する、上記結晶。
【請求項5】
請求項1の結晶であって、該リガンドが結晶形態にある、上記結晶。
【請求項6】
請求項1の結晶であって、該リガンドが、(4−クロロ−フェニル)−〔3−(4−クロロ−フェニル)−7−ヨード−2,5−ジオキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−ベンゾ〔e〕〔1,4〕ジアゼピン−4−イル〕−酢酸;〔8−クロロ−3−(4−クロロ−フェニル)−7−ヨード−2,5−ジオキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−ベンゾ〔e〕〔1,4〕ジアゼピン−4−イル〕−(4−クロロ−フェニル)−酢酸);およびそれらの誘導体から成る群から選択される、上記結晶。
【請求項7】
請求項1の結晶であって、該HDM2が、配列番号2に少なくとも95%配列一致を有するペプチドを含んでなる、上記結晶。
【請求項8】
表1もしくは表2の座標を特徴とする原子構造を含んでなる、配列番号2を含んでなる結晶。
【請求項9】
約98.6Å、98.6Åおよび74.7Åの寸法、およびほぼアルファ=90°、ベータ=90°およびガンマ=120°;および、約54.3Å、54.3Åおよび83.3Åの寸法、およびほぼアルファ=90°、ベータ=90°およびガンマ=90°から成る群から選択される寸法を有する単位セルを含んでなる、請求項1の結晶。
【請求項10】
(a)計算機読み取り可能な記憶媒体中に記憶された、HDM2、もしくはフラグメント、またはその標的構造モチーフもしくは誘導体および小分子阻害剤であるリガンドを含んでなる結晶の三次元構造に関する情報を含むデータベース、および
(b)情報を閲覧するためのユーザーインターフェース
を含んでなる、計算機システム。
【請求項11】
請求項10の計算機システムであって、該情報が、配列番号2を含んでなる結晶から得られた回折データを含んでなる、上記計算機システム。
【請求項12】
請求項10の計算機システムであって、該情報が、配列番号2を含んでなる結晶形態の電子密度マップを含んでなる、上記計算機システム。
【請求項13】
請求項10の計算機システムであって、表1もしくは表2の相当する原子座標の非水素原子位置上に重ねた場合に、該情報が、約1.5Åより小さい非水素原子の二乗平均偏差
を含んでなる、表1もしくは表2の構造座標または相同構造座標を含んでなる、上記計算機システム。
【請求項14】
請求項13の計算機システムであって、表1もしくは表2の相当する原子座標の非水素原子位置上に重ねた場合に、該情報が、約0.75Åより小さい非水素原子の二乗平均偏差を含んでなるアミノ酸残基の構造座標を含んでなる、上記計算機システム。
【請求項15】
請求項10の計算機システムであって、表1もしくは表2の相当する原子座標の非水素原子位置上に重ねた場合に、該情報が、約1.5Åより小さい非水素原子の二乗平均偏差を含んでなる、表1もしくは表2に従うアミノ酸Ser17、Ile19、Leu82、およびArg97の構造座標、または該アミノ酸に類似の構造座標を含んでなる、上記計算機システム。
【請求項16】
請求項15の計算機システムであって、表1もしくは表2の相当する原子座標の非水素原子位置上に重ねた場合に、該情報が、約1.5Åより小さい非水素原子の二乗平均偏差を含んでなる、表1もしくは表2に従うアミノ酸Val53、Leu54、Phe55、Leu57、Gly58、Gln59、Ile61、Met62、Tyr67、Gln72、His73、Ile74、Val75、Phe86、Phe91、Val93、Lys94、Glu95、His96、Ile99、Tyr100、Ile103の構造座標、または該アミノ酸に類似の構造座標をさらに含んでなる、上記計算機システム。
【請求項17】
(a)HDM2を作用物質に暴露し、そして
(b)HDM2アミノ酸残基Ser17、Ile19、Leu82およびArg97への該作用物質の会合を検出しそれにより電位を評価する
ことを含んでなる、HDM2と会合するための作用物質の電位の評価方法。
【請求項18】
作用物質が仮想化合物である、請求項17の方法
【請求項19】
(a)aa16−配列番号2を作用物質に暴露し、そして
(b)aa16−配列番号2への該作用物質の会合のレベルを検出し、それにより電位を評価する
ことを含んでなる、aa16−配列番号2を有するペプチドと会合するための作用物質の電位の評価方法。
【請求項20】
作用物質が仮想化合物である、請求項19の方法
【請求項21】
請求項17の方法であって、該段階(a)が、化合物の原子構造とHDM2の三次元構造との比較を含んでなる、上記方法。
【請求項22】
請求項17の方法であって、該比較が、化合物とHDM2の少なくとも1個の結合部位との間のフィッティング操作を行う計算手段を使用することを含んでなる、上記方法。
【請求項23】
請求項22の方法であって、表1もしくは表2の相当する原子座標の非水素原子位置上に重ねた場合に、該結合部位が、約1.5Åより小さい非水素原子の二乗平均偏差を含んでなる、表1もしくは表2に従うアミノ酸Ser17、Ile19、Leu82およびArg97の構造座標または該アミノ酸に類似の構造座標により規定される、上記方法。
【請求項24】
請求項23の方法であって、表1もしくは表2の相当する原子座標の非水素原子位置上に重ねた場合に、該結合部位が、約1.5Åより小さい非水素原子の二乗平均偏差を含んでなる、表1もしくは表2に従うアミノ酸Val53、Leu54、Phe55、Leu
57、Gly58、Gln59、Ile61、Met62、Tyr67、Gln72、His73、Ile74、Val75、Phe86、Phe91、Val93、Lys94、Glu95、His96、Ile99、Tyr100、Ile103の構造座標または該アミノ酸に類似の構造座標によりさらに規定される、上記方法。
【請求項25】
請求項17の方法であって、該作用物質が結晶性配列番号2に暴露され、そして段階(b)の検出が作用物質−配列2複合体の三次元構造を決定することを含んでなる、上記方法。
【請求項26】
(a)可能性があるアゴニストまたはアンタゴニストの設計または選択のために小分子阻害剤と一緒に同時結晶化されるHDM2の三次元構造を使用する
ことを含んでなる、HDM2に対する可能性があるアゴニストまたはアンタゴニストの同定方法。
【請求項27】
請求項26の方法であって、表1もしくは表2の相当する原子座標の非水素原子位置上に重ねた場合に、該三次元構造が、約1.5Åより小さい非水素原子の二乗平均偏差を含んでなる、表1もしくは表2の座標または類似の構造座標を特徴とする原子構造に相当する、上記方法。
【請求項28】
(b)可能性があるアゴニストまたはアンタゴニストを合成し、そして(c)可能性があるアゴニストまたはアンタゴニストをHDM2と接触させる
段階をさらに含んでなる、請求項26の方法。
【請求項29】
(a)HDM2の結晶のX線回折データを取得し、
(b)HDM2と阻害剤との複合体のX線回折データを取得し、
(c)段階(a)で得られたX線回折データを段階(b)で得られたX線回折データから差し引いてX線回折データにおける差異を取得し、
(d)段階(a)で得られたX線回折データに相当する位相を取得し、
(e)段階(d)で得られた位相と段階(c)で得られたX線回折データにおける差異とを用いて、阻害剤の差フーリエイメージを算出し、そして
(f)段階(e)で得られた算出結果に基づいてHDM2に対する阻害剤の付着部位を決定する
ことを含んでなる、HDM2に対する阻害剤の付着部位の決定方法。
【請求項30】
(a)HDM2および阻害剤を含んでなる結晶を取得し、
(b)結晶の原子座標を取得し、
(c)原子座標および1種もしくはそれ以上の分子モデル化技術を用いて阻害剤とHDM2との相互作用をいかにして改変するかを決定し、そして
(d)段階(c)で得られた決定事項に基づいて阻害剤を変性して改変された阻害剤を作成する
ことを含んでなる、改変された阻害剤の取得方法。
【請求項31】
請求項30の方法であって、該結晶が、配列番号2を有するペプチド、配列番号3を有するペプチドおよび配列番号4を有するペプチドから成る群から選択されるペプチドを含んでなる、上記方法。
【請求項32】
請求項30の方法であって、該1種もしくはそれ以上の分子モデル化技術が、グラフィック分子モデル化および計算化学から成る群から選択される、上記方法。
【請求項33】
請求項30の方法であって、該段階(a)が、阻害剤とHDM2アミノ酸残基Ser
、Ile19、Leu82およびArg97との相互作用を検出することを含んでなる、上記方法。
【請求項34】
請求項30の方法により同定されるHDM2阻害剤。
【請求項35】
HDM2アミノ酸残基Ser17、Ile19、Leu82およびArg97の構造座標により規定される結合ポケットまたは活性部位を含んでなる単離されたタンパク質フラグメント。
【請求項36】
固体支持体に結合された請求項35の単離されたフラグメント。
【請求項37】
請求項35のフラグメントをコードする単離された核酸分子。
【請求項38】
請求項37の核酸分子を含んでなるベクター。
【請求項39】
請求項38のベクターを含んでなる宿主細胞。
【請求項40】
フラグメントが発現される条件下で請求項39の宿主細胞を培養することを含んでなる、タンパク質フラグメントの産生方法。
【請求項41】
(a)請求項35のタンパク質分子フラグメントを作用物質に暴露し、そして
(b)フラグメントへの作用物質の会合のレベルを検出する
ことを含んでなる、HDM2と会合する作用物質のスクリーニング方法。
【請求項42】
請求項35のタンパク質分子フラグメントを含んでなるキット。
【請求項43】
(a)PEGおよびNaSCNを含んでなる適合する溶液中でHDM2ポリペプチドを該リガンドと接触させ、そして
(b)HDM2ポリペプチド−リガンドの該生成複合体を該溶液から結晶化させる
ことを含んでなる、HDM2ポリペプチド−リガンドを含んでなる結晶複合体の作製方法。
【請求項44】
請求項43の方法であって、該HDM2ポリペプチドが配列番号2を有するポリペプチドである、上記方法。
【請求項45】
請求項43の方法であって、該PEGが100〜1000の平均分子量範囲を有し、ここで該PEGが約0.5%w/v〜約10%w/vの範囲で溶液中に存在しそして該NaSCNが約50mM〜約150mMの範囲で溶液中に存在する、上記方法。
【請求項46】
請求項45の方法であって、該PEGが約400の平均分子量を有しそして約2%w/vで溶液中に存在しそして該NaSCNが約100mMで溶液中に存在する、上記方法。
【請求項47】
請求項46の方法であって、該溶液が、約1.8〜2.4M(NHSOおよび約100mM緩衝液をさらに含んでなる、上記方法。
【請求項48】
可能性がある阻害剤と一緒に、配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号4から成る群から選択される配列を含んでなるペプチドを結晶化することを含んでなる、請求項1の結晶の作製方法。
【請求項49】
a)表1もしくは表2による原子座標により規定されるHDM2の三次元構造を用い、
b)該三次元構造中のSer17、Ile19、Leu82およびArg97から選択される1個もしくはそれ以上のHDM2アミノ酸を異なるアミノ酸で置換して改変されたHDM2作製し、
c)該三次元構造を用いて該可能性のある阻害剤を設計または選択し、
d)該可能性のある阻害剤を合成し、そして
e)該可能性のある阻害剤を基質の存在下で該改変されたHDM2と接触させて、HDM2または該改変されたHDM2の阻害とに関して該可能性のある阻害剤の能力を試験することを含んでなる、HDM2の可能性がある阻害剤の同定方法。
【請求項50】
請求項49の方法であって、1個もしくはそれ以上のアミノ酸残基の該置換が、Val53、Leu54、Phe55、Leu57、Gly58、Gln59、Ile61、Met62、Tyr67、Gln72、His73、Ile74、Val75、Phe86、Phe91、Val93、Lys94、Glu95、His96、Ile99、Tyr100、およびIle103から成る群から選択される配列番号2のアミノ酸を置換することをさらに含んでなる、上記方法。
【請求項51】
請求項49の方法であって、該可能性のある阻害剤がデータベースから選択される、上記方法。
【請求項52】
請求項49の方法であって、該可能性のある阻害剤が新規に設計される、上記方法。
【請求項53】
請求項49の方法であって、該可能性のある阻害剤が既知の阻害剤から設計される、上記方法。
【請求項54】
請求項49の方法であって、該可能性のある阻害剤を設計または選択するために該三次元構造を使用する該段階が、
a)改変されたHDM2と会合できる化学的実体またはフラグメントを同定し、そして
b)同定された化学的実体またはフラグメントを単一分子にアセンブルして該可能性のある阻害剤の構造を提供する
段階を含んでなる、上記方法。
【請求項55】
可能性がある阻害剤が、配列番号4(Gly16−配列番号2)の競合性阻害剤である、請求項49の方法。
【請求項56】
請求項49の方法であって、該可能性のある阻害剤が、配列番号4(Gly16−配列番号2)の不競合性または非競合性阻害剤である、上記方法。
【請求項57】
請求項49の方法により同定された阻害剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−501315(P2008−501315A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509437(P2007−509437)
【出願日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/012347
【国際公開番号】WO2005/114173
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
2.UNIX
3.WINDOWS
【出願人】(598093026)オーソ−マクニール・フアーマシユーチカル・インコーポレーテツド (25)
【Fターム(参考)】