説明

HIF−1α発現を調節するオリゴマー化合物

【課題】本発明の目的は、HIF−1αの機能を効果的に阻害し、例えば癌や子癇前症の治療に用いる薬剤を提供することである。
【解決手段】本発明は、低酸素症誘導因子1αに対抗するオリゴヌクレオチドを供する。(HIF−
1α)遺伝子が、HIF−1αの発現を調節するために供される。組成物は、HIF−1
αをコードする核酸を標的とするオリゴヌクレオチド、特にアンチセンスオリゴヌクレオ
チドを含む。HIF−1α発現の調節、及び低酸素症誘導因子1αに関連する疾病の治療
にこれら化合物を使用する方法が提供される。疾病の例としては、ガン及び子癇前症であ
る。オリゴヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオシド、核酸アナログ、又は構造的にロ
ックされた核酸[Locked Nucleic Acid(LNA)]又はこれらの組
合せから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本特許出願は2002年4月5日に出願された米国仮出願第60/370,126号の継
続出願であり、当該仮出願の全文が本明細書中に参照として取り込まれている。
【0002】
本発明は、HIF−1αの発現を調節するための組成物及び方法を提供するものである
。特に、本発明はオリゴマー化合物に関するもので、その好ましい化合物にはオリゴヌク
レオチドがあり、HIF−1αをコードする核酸と特異的にハイブリッドを形成し得る。
このオリゴヌクレオチド化合物がHIF−1αの発現を調節することが示されており、そ
のの医薬製剤及び癌や子癇前症治療への使用が開示されている。
【背景技術】
【0003】
固形癌が2,3ミリメートル以上に増殖するのには血液供給を確立し、グルコース代謝
を増進する必要がある。癌が低酸素症をどのようにして感知し、低酸素症-誘導性の遺伝
子を活性化し、血液システムを確立するために血管新生因子を選択することによってこれ
に如何に応答するかが腫瘍生物学の中心課題である。多くの腫瘍は低酸素状態の微小環境
を含み、それが悪性化、転移、並びに放射線療法及び化学療法に対する抵抗性に関係して
いる。
【0004】
低酸素症-誘導性因子-1(HIF−1)が見出されたことにより低酸素症-誘導性遺伝
子の制御についてのある程度の洞察が与えられた(米国特許第5882914号及び国際
公開第WO96/39426号及び同第WO99/48916号公報)。HIF−1は2
個のサブユニット、HIF−1α及びHIF−1βから構成され、VEGFの様な血管新
生因子並びに解糖系酵素及びグルコーストランスポーター1又は3(GLU−1又は3)
のような解糖関連蛋白質をコードする遺伝子のエンハンサー中にある低酸素症-応答成分
(HREs)と結合する。
【0005】
アンチセンスHIF−1αプラスミドを腫瘍内に遺伝子移入してHIF−1αの負の制
御を組込むことにより、VEGF産生が抑制され腫瘍内の微細血管密度が減少することが
示されている(国際公開第WO00/76497号公報;Sun Xら、Gene Th
erapy(2001)8,638−645)。プラスミドにはHIF−1α(ヌクレオ
チド152−454;Genebank AF003698)の5’−末端をコードする
320−bpのcDNAフラグメントが含まれていた。さらに、上記国際出願には、発現
ベクターが免疫治療剤と併せて使われるべきであるという事に基づく方法が述べられてい
る。しかし、この発現プラスミドからのアプローチの主たる弱点は、プラスミドの大きさ
及び発現生成物の核酸分解酵素感受性ゆえに、治療剤として適切ではないという点である

【0006】
HIF−1αフラグメント発現プラスミド以外に、HIF−1αを標的としたアンチセ
ンスの2,3のオリゴヌクレオチドが、特定の生物学的メカニズム又は生物学的標的を研
究する道具として設計されている。例えば、低酸素下の外植片のHIF−1α発現をアン
チセンスで阻害するとTGFβの発現が阻害されることが示されている(Caniggi
a,I.ら,J.of Clinical Investigation,March
2000,105,577−587)。この特殊な研究では、ただ1種のアンチセンスオ
リゴヌクレオチドが合成され、それはHIF−1αのmRNAの開始コドンAUGと隣接
する配列を標的とするホスホロチオエートであった。その配列はHIF−1α 5’−G
CCGGCGCCCTCCAT−3’であり、HIF−1αの負の調節がmRNAレベル
で明らかにされた。このオリゴは過絨毛性栄養芽細胞の発生と浸潤におけるHIF−1α
の役割を研究するために使われており、子癇前症におけるHIF−1αの潜在的な役割に
関連付けられた(Caniggia,I.ら,Placenta(2000),21,S
upplement A,,Trophoblast Research 14,S25
−S30)。
【0007】
上記と同じオリゴヌクレオチド配列を使った他の研究では、HIF−1αのアンチセン
ス阻害によりペルオキシソームの増殖活性受容体(PPARs)が減少することが示され
た(Narravula,S.and Colgan,S.P.,J.of Immun
ology,166,7543−7548(2001))。上記のオリゴは、HIF−1
αのプラスミノーゲン アクチベーター インヒビター−1(PAI−1)の誘導にニッ
ケルが必要であること示すことにも使われた(Andrew、A.S.,Klei L.
R.,Barchowsky,A.,Am.J.Physiol.Lung Cell
Mol.Physiol.,281,L607−L615(2001))。
【0008】
また、単一のアンチセンスのオリゴヌクレオチドも、神経細胞内ARNT2二量体の潜
在的なパートナーとして低酸素症誘発性因子HIF−1αの2つのスプライシング変異型
の研究に使われている。アンチセンスのオリゴヌクレオチドは5’−TCTTCTCGT
TCTCGCC−3’配列のホスホロチオエート修飾体であった。細胞をこのオリゴヌク
レオチドで処理することにより、[H]チミジン組込みが抑制されたが、正常酸素圧細胞
におけるアポトーシス効果はなかった(Drutelら、Eur.J.Neurosci
.,12,3701−3708(2000))。
さらに、HIF−1αに対する単一のアンチセンスのオリゴヌクレオチドは心臓エンド
セリン(ET)−1の遺伝子発現を阻害することが明らかにされており、HIF−1αが
心臓障害における心筋内ET−1遺伝子発現増進に関与しているという仮説が立てられた
(非特許文献1)。このアンチセンスオリゴヌクレオチドは次のような配列であった:CCTCCATGGCGAATCGGTGC。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Kakinuma,Y.ら,Circulation,103,2387−2394(2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
現在、HIF−1αの合成を効果的に阻害し、疾病治療に使うことができる治療用のア
ンチセンス剤は知られていない。従って,HIF−1αの機能を効果的に阻害し、例えば
癌や子癇前症の治療に用いる薬剤が望まれる。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
HIF−1αを調節する、長さが8から50核酸塩基の化合物で、配列番号 2、3、
4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、1
9、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32
、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、
46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、5
9、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72
、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、
86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、9
9、100、101、102、103、104、105、106、107、108、10
9、110、111、112、113、114又は115の少なくとも8核酸塩基部分を
含む配列を有する化合物。
(項目2)
HIF−1αをコードする核酸分子を標的とする、長さが8から50核酸塩基の化合物
であって、当該化合物は、HIF−1αをコードする核酸と特異的にハイブリダイズし、
HIF−1αの発現を阻害し、そして該化合物は、配列番号 2、3、4、5、6、7、
8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、
22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、3
5、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48
、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、
62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、7
5、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88
、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、10
1、102、103、104、105、106、107、108、109、110、11
1、112、113、114又は115の少なくとも8核酸塩基部分を含む配列を有する
化合物。
(項目3)
アンチセンスオリゴヌクレオチドである、項目1又は2のいずれか1項に記載の化合
物。
(項目4)
少なくとも一つのヌクレオチドが、少なくとも一つの核酸類縁体を含む、項目1から
3のいずれか1項に記載の化合物。
(項目5)
少なくとも一つのヌクレオチドが、少なくとも一つのロックされた核酸(LNA)単位
を含む、項目1から4のいずれか1項に記載の化合物。
(項目6)
LNA単位が、スキーム2の一般式の構造を有する、項目1から5に記載の化合物。
【化1】


(項目7)
少なくとも一つのヌクレオチドが、スキーム3のいずれか一つの式で表されるLNA単
位を含む、項目1から6に記載の化合物:
【化2】


式中、Xは独立して−O−、−S−、−NH−及びN(R)から選ばれ、
Z及びZは独立してヌクレオシド間結合、末端基又は保護基からなる群より選ばれ、
Bは、天然又は非天然の核酸塩基を構成する。
(項目8)
ヌクレオシド間結合が、−O−P(O)2−O−、−O−P(O,S)−O−、−O−
P(S)2−O−、−S−P(O)2−O−、−S−P(O,S)−O−、−S−P(S
)2−O−、−O−P(O)2−S−、−O−P(O,S)−S−、−S−P(O)2−
S−、−O−PO(R)−O−、−O−PO(OCH3)−O−、−O−PO(NR
)−O−、−O−PO(OCH2CH2S−R)−O−、−O−PO(BH3)−O−、
−O−PO(NHR)−O−、−O−P(O)2NR−、−NR−P(O)2−O
−、−NR−CO−O−(式中、Rは水素及びC1−4アルキルから選ばれたもので
ある)からなる群より選ばれる、項目4から7に記載の化合物。
(項目9)
修飾されたヌクレオシド間結合が、ホスホロチオエート結合である、項目8に記載の
化合物。
(項目10)
核酸塩基が、5−メチルシトシン、イソシトシン、シュードイソシトシン、5−ブロモ
ウラシル、5−プロピニルウラシル、6−アミノプリン、2−アミノプリン、イノシン、
ジアミノプリン、2−クロロ−6−アミノプリンからなる群より選ばれた修飾核酸塩基で
ある、項目4から9に記載の化合物。
(項目11)
LNA単位が、D−β又はL−α立体配置のいずれかのオキシLNA、チオLNA、ア
ミノLNAである、項目4から10のいずれか1項に記載の化合物。
(項目12)
アンチセンスオリゴヌクレオチドが、キメラオリゴヌクレオチドである、項目1から
11のいずれか1項に記載の化合物。
(項目13)
アンチセンスオリゴヌクレオチドが、ギャップマー(gapmer)、ヘッドマー(headmer
)又はテールマー(tailmer)である、項目12に記載の化合物。
(項目14)
アンチセンスオリゴヌクレオチドが、13、14、15、16、17、18、19、2
0又は21−マー(-mer)である、項目1から13のいずれか1項に記載の化合物。
(項目15)
LNA単位の数が、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14
、15、16、17、18、19、20又は21である、項目1から14のいずれか1
項に記載の化合物。
(項目16)
少なくとも、4ヌクレオチドがLNAである、項目1から15のいずれか1項に記載
の化合物。
(項目17)
HIF−1αをコードする核酸分子を標的とする、長さが8から50核酸塩基の化合物
であって、当該化合物は、HIF−1αをコードする核酸と特異的にハイブリダイズし、
HIF−1αの発現を阻害するものであり、そして当該化合物は、配列番号 2、3、1
2、22、23、53、54、55、56、59、60、61、89、90、93、94
、95、97、100、105、106、107、108、109、110、111、1
12、114又は115の少なくとも8核酸塩基部分を含む配列を有する化合物。
(項目18)
項目1から17に記載の化合物及び薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む組成物

(項目19)
薬学的に許容される担体を更に含む、項目1から18のいずれか1項に記載の化合物
を含む医薬組成物。
(項目20)
化合物が薬学的に許容される塩として使用される、項目1から18のいずれか1項に
記載の化合物を含む医薬組成物。
(項目21)
抱合体又は調剤を更に含む、項目1から18のいずれか1項に記載の化合物を含む医
薬組成物。
(項目22)
化合物がプロドラッグである、項目1から18のいずれか1項に記載の化合物を含む
医薬組成物。
(項目23)
他のオリゴマー化合物、化学療法化合物、抗炎症性化合物及び/又は抗ウイルス性化合
物を更に含む、項目1から18のいずれか1項に記載の化合物を含む医薬組成物。
(項目24)
HIF−1αの発現を阻害するために、細胞又は組織を、項目1から23のいずれか
1項に記載の化合物と接触させることを含む、細胞又は組織において、HIF−1αの発
現を阻害する方法。
(項目25)
遺伝子又は遺伝子からのRNAを、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10、
11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、2
4、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37
、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、
51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、6
4、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77
、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、
91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、1
03、104、105、106、107、108、109、110、111、112、1
13、114又は115の少なくとも8核酸塩基部分を含む配列を有するオリゴマー化合
物と接触させて遺伝子の発現を調節することよりなる、疾病に関係する遺伝子の発現を調
節する方法。
(項目26)
化合物が、一つ又はそれ以上のLNA単位を含む、項目25に記載の方法。
(項目27)
化合物が、遺伝子のメッセンジャーRNAとハイブリダイズし、その発現を阻害する、
項目25又は26に記載の方法。
(項目28)
一つ又はそれ以上のLNA単位を含むHIF−1αを標的とするオリゴヌクレオチドの
治療上有効な量を哺乳動物に投与することよりなる、ガン疾病に罹患している、又は罹り
やすい哺乳動物を治療する方法。
(項目29)
疾病が、普通のガン、例えば、原発性及び転移性の、乳腺、結腸直腸、前立腺、膵臓、
その他の胃腸(GI)癌、肺、子宮頚、卵巣、脳、頭頚部、頚部、大腸(colon)、肝臓、
甲状腺、腎、精巣、胃、腸、大腸(bowel)、食道、脊髄、静脈洞、膀胱又は尿管癌、ま
た子癇前症、炎症性腸疾患及びアルツハイマー病、である項目25から28のいずれか
1項に記載の方法。
(項目30)
細胞を調節するために、細胞を項目1から18のアンチセンス化合物と接触させるこ
とよりなる、血管形成及び赤血球増殖、細胞増殖、鉄代謝、グルコース及びエネルギー代
謝、pH調節、組織浸潤、アポトーシス、多剤耐性、細胞ストレス応答又はマトリックス
代謝を調節する方法。
(項目31)
細胞をインビトロで項目1から18に記載のアンチセンス化合物の有効量と接触させ
、それによって細胞の増殖を阻害することよりなる、細胞の増殖を阻害する方法。
(項目32)
細胞がガン細胞である項目31に記載の方法。
(項目33)
アポトーシスを調節するために、細胞を項目1から18に記載のアンチセンス化合物
と接触させることよりなる、細胞におけるアポトーシスを調節する方法。
(項目34)
アポトーシスの調節が、アポトーシス刺激に対する感作である項目33に記載の方法

(項目35)
アポトーシス刺激が細胞傷害性化学療法剤である項目33又は34に記載の方法。
(項目36)
細胞を化学療法剤と接触させることを更に含む、項目35に記載の方法。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の概要)
本発明は、オリゴマー化合物、特にLNAアンチセンスオリゴヌクレオチドを対象にし
たもので、それらはHIF−1αをコードする核酸を標的にし、HIF−1αの発現を調
節する。本発明のオリゴマー化合物を含有する医薬及び他の組成物も供される。さらに、
当該細胞又は組織を本発明のオリゴマー化合物又は組成物の1種又はそれ以上と接触させ
ることよりなる、細胞又は組織内でのHIF−1α発現を調節する方法が供される。また
、本発明のオリゴマー化合物又は組成物の1種又はそれ以上の治療又は予防に有効な量を
投与することにより、HIF−1αの発現に関連する病気又は症状があるか又はその傾向
にある動物又はヒトを治療する方法も開示されている。さらに、HIF−1αの発現阻害
及びこれらHIF−1αに関連した病気の治療のためのオリゴマー化合物の使用法が供さ
れる。そのような病気の例には、異なった種類の癌、特に一般的な例えば原発性及び転移
性の乳癌、結腸直腸癌、前立腺癌、膵臓癌、他の胃腸癌、肺癌、子宮頸癌、卵巣癌、及び
脳腫瘍が、さらに子癇前症、炎症性内臓疾患及びアルツハイマー病も同様に挙げられる。
他の癌の例には、大腸癌、肝臓癌、胸腺癌、腎臓癌、睾丸腫瘍、胃癌、小腸癌、腸癌、食
道癌、脊髄癌、血脈洞癌、膀胱癌又は尿路癌などがある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、HIF−1α蛋白質のウェスタンブロットを示す。細胞を種々の100nMのオリゴで4時間処理した。これらの細胞を18時間増殖させた後、厳密な低酸素状態に6時間曝した。
【図2】図2は、HIF−1α蛋白質のウェスタンブロットを示す。U87細胞を200nMの3種類のオリゴで4時間処理した。これらの細胞を、処理後直ちに厳密な低酸素状態に18時間曝した。
【図3】図3は、オリゴCur0813で処理したU87細胞中のHIF−1α、VEGF、Glut1及びチューブリン蛋白質のウェスタンブロットを示す。これらの細胞を100nM,200nM,300nM及び400nMのオリゴで24時間処理した。これらの細胞を、処理後直ちに厳密な低酸素状態に18時間曝した。
【図4】図4は、不一致(ミスマッチ)オリゴ(Cur0960とCur0961)で処理したU87細胞中のHIF−1α及びチューブリン蛋白質のウェスタンブロットを示す。これらの細胞を100nM,200nM,300nM及び400nMのオリゴで24時間処理した。これらの細胞を、処理後直ちに厳密な低酸素状態に18時間曝した。
【図5】図5は、オリゴCur813で処理した15PC3細胞中のHIF−1α、VEGF及びチューブリン蛋白質のウェスタンブロットを示す。これらの細胞を125nM,25nM,5nM及び1nMのオリゴで16時間処理した。これらの細胞を、処理後直ちに厳密な低酸素状態に6時間曝した。
【図6】図6は、5nMの種々のオリゴで16時間処理した15PC3細胞中のHIF−1α及びチューブリン蛋白質のウェスタンブロットを示す。これらの細胞を、処理後直ちに厳密な低酸素状態に6時間曝した。
【図7】図7は、100nMの種々のオリゴで6時間処理したU373細胞中のHIF−1α及びチューブリン蛋白質のウェスタンブロットを示す。これらの細胞を、処理後直ちに厳密な低酸素状態に20時間曝した。
【図8】図8は、100nMの種々のオリゴで6時間処理したU373細胞中のHIF−1α及びチューブリン蛋白質のウェスタンブロットを示す。これらの細胞を、処理後直ちに厳密な低酸素状態に20時間曝した。
【図9】図9は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)又はCur813を5mg/kg/日の投与量、1日1回腹腔内投与で7日間処理したときの、異種移植U373腫瘍の増殖曲線を示す。縦棒は標準誤差を示す。
【図10−1】図10−1は、GenBankの受け入れ番号NM_001530を用いて示したヒトHIF−1αの遺伝子配列で、SEQ ID NO:1として本明細書に組込まれているものである。
【図10−2】図10−2は、GenBankの受け入れ番号NM_001530を用いて示したヒトHIF−1αの遺伝子配列で、SEQ ID NO:1として本明細書に組込まれているものであり、図10−1の続きである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(定義)
本明細書で使われる用語「標的核酸」は、低酸素症誘発性因子又は低酸素症誘発性因子
-1α(HIF−1α)をコードするDNA、このようなDNAから翻訳されたRNA(
pre−mRNA及びmRNAを含む)、及びこのようなRNAから誘導されるcDNA
を包含する。
本明細書で使われる用語「遺伝子」は、エクソン、イントロン、非コードの5’末端及
び3’末端領域及び調節領域を含めた遺伝子、及び現在知られているそれらのすべての変
異体及び今後解明されるいかなる変異体をも意味する。
【0014】
本明細書で使われる用語「オリゴマー化合物」とは、例えば、水素結合によって標的遺
伝子である“キメラプラスト”及び“TFO”への結合、標的遺伝子である“アンチセン
ス阻害剤”、“siRNA”、“リボザイム”及び“オリゴザイム”のRNA転写物への
結合、又は標的遺伝子である“アプタマー”、“スピーゲルマー”又は“デコイ”にコー
ドされている蛋白質への結合を介して、ヒトへの望まれた治療効果を誘導できるオリゴヌ
クレオチドを言う。
【0015】
本明細書で使われる用語「mRNA」とは、現在知られている標的遺伝子のmRNA転
写物、さらに同定できるいかなる転写物をも意味する。
【0016】
本明細書で使われる用語「調節」とは、遺伝子発現の増加(刺激)又は減少(阻害)の
いずれかを意味する。本発明では、阻害が遺伝子発現の調節の好ましい形態であり、mR
NAが好ましい標的である。
【0017】
本明細書で使われる、アンチセンス化合物が特定の標的核酸を「標的にする」とは、ア
ンチセンス化合物が結合しその標的物の機能を調節するように、アンチセンスオリゴヌク
レオチドを細胞、動物あるいはヒトに与えることを意味する。
【0018】
本明細書で使われる用語「ハイブリッド形成」とは、ワトソン−クリック、フーグステ
ィーン、逆フーグスティーン水素結合など、相補的なヌクレオシド又はヌクレオチド塩基
間の水素結合を意味する。約50年前ワトソンとクリックは、デオキシリボ核酸(DNA
)が二重鎖から成り、二重鎖は対面する相補的な核酸塩基の間に形成される水素結合によ
りへリックス構造をとって互いに保持し合っていることを示した。DNA中に一般に見い
出される4種の核酸塩基は、グアニン(G)、アデニン(A)、チミン(T)及びシトシ
ン(C)で、このうち核酸塩基GはCと対を成し、核酸塩基AはTと対を成している。R
NAでは、核酸塩基チミンが核酸塩基ウラシル(U)に置換され、核酸塩基Tと同じよう
にAと対を成す。標準二重らせん形成に関与する核酸塩基中の化学基がワトソン−クリッ
ク面を構成している。2年後フーグスティーンは、ワトソン−クリック面に加えて、プリ
ン核酸塩基(G及びA)が二重らせんの外側から確認できるフーグスティーン面を有して
おり、水素結合を介してピリミジン核酸塩基と結合するために使われて三重螺旋構造が形
成されることを示した。
【0019】
本発明との関連で、「相補的な」とは、2つのヌクレオチド又はヌクレオシド配列の間
で互いに正確な対をつくる能力を言う。例えば、オリゴヌクレオチドのある位置の1つの
ヌクレオチドがDNA又はRNAの対応する位置のヌクレオチドと水素結合することが出
来るなら、そのオリゴヌクレオチドとDNA又はRNAはその位置において互いに相補的
であると見なされる。DNA又はRNAとオリゴヌクレオチドが互いに相補的であると見
なされるのは、オリゴヌクレオチド内の十分な数のヌクレオチドが標的のDNA又はRN
A内の相当するヌクレオチドと水素結合を作り、安定な複合体(コンプレックス)を形成
することが出来る場合である。生体内又は生体外で安定であるためには、アンチセンス化
合物の配列がその標的核酸と100%相補的である必要はない。従って用語の「相補的」
及び「特異的ハイブリッド形成性」は、アンチセンス化合物が標的化合物と十分な強さで
特異的に結合し、非標的mRNAの機能に影響を与えずに、標的の正常な機能を希望通り
に妨害することを意味する。
【0020】
用語「核酸類縁体」とは、非天然の核酸を結合した化合物を言う。核酸類縁体について
は、例えばFreier & Altmann(Nucl.Acid Res.,25,
4429−4443(1997))及びUhlmann(Curr.Opinion i
n Drug & Development,3(2),293−213(2000))
らの報告がある。スキーム1は選択した例を示す。
【0021】
【化3】

【0022】
用語「LNA」とは、1個以上の二環式のヌクレオシド類縁体を含むオリゴヌクレオチ
ドのことで、LNAモノマーとも呼ばれる。LNAモノマーについては、国際公開第WO
99/14226号公報及び続く出願の国際公開第WO00/56746号、同第WO0
0/56748号、同第WO00/66604号、同第WO00/125248号、同第
WO02/28875号、同第WO02/094250号公報及び国際出願第PCT/D
K02/00488号に記載されている。個別の例として挙げられるチミジンLNAモノ
マーは、(1S,3R,4R,7S)−7−ヒドロキシ−1−ヒドロキシメチル−5−メ
チル−3−(チミン−1−イル)−2,5−ジオキサ−ビシクロ[2:2:1]ヘプタンで
ある。
【0023】
用語「オリゴヌクレオチド」とは、本発明との関連において、オリゴマー(オリゴとも
呼ぶ)、又は核酸ポリマー(たとえば、リボ核酸(RNA)又はデオキシリボ核酸(DN
A))、又は既知の核酸類縁体で、好ましくは固定された核酸(Locked Nucl
eic Acid:LNA)、又はその混合物を指す。この用語には、同じように機能す
るか或いは改良された特異的な機能の非天然部分を有するオリゴヌクレオチドと同様、天
然の核酸塩基、糖及びヌクレオシド間連結合(骨格)からなるオリゴヌクレオチドが含ま
れる。全面的に又は部分的に修飾又は置換されたオリゴヌクレオチドは、例えば、細胞膜
の透過性、細胞内及び細胞外の核酸分解酵素に対する望ましい抵抗性、標的核酸に対する
高い親和性のような、いくつかの望ましい特異性を有するためしばしば天然の形よりも好
ましい。上記の特性を示すLNA類縁体は特に好ましい。
【0024】
用語「ユニット」はモノマーと理解する。
【0025】
用語「少なくとも1」は、たとえば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11
、12、13、14、15、16、17等のような、1以上の整数を意味する。
用語「チオ−LNA」は、スキーム2中のX又はYの少なくとも1つがS又は−CH
−S−から選択される固定されたヌクレオチドを意味する。チオ−LNAはベータ−D及
びアルファ−Lの両方の配位をとることができる。
【0026】
用語「アミノ−LNA」は、スキーム2中のX又はYの少なくとも1つが−N(H)−
、−N(R)−、−CH−N(H)−又は−CH−N(R)−から選択され、Rが水
素原子及びC1−4のアルキル基から選択される固定されたヌクレオチドを意味する。ア
ミノ−LNAはベータ−D及びアルファ−Lの両方の配位をとることができる。
【0027】
用語「オキシ−LNA」は、スキーム2中のX又はYの少なくとも1つがO又は−CH
−O−に相当する固定されたヌクレオチドを意味する。オキシ−LNAはベータ−D及
びアルファ−Lの両方の配位をとることができる。
用語「エナ−LNA」は、スキーム2中のYが−CH−O−の固定されたヌクレオチ
ドを意味する。
【0028】
用語「アルファ−L−LNA」は、スキーム3に代表される固定されたヌクレオチドを
意味する。
用語「LNA誘導体」は、スキーム2のベータ−D−メチレンLNAを除くすべての固
定されたヌクレオチド、例えば、チオ−LNA、アミノ−LNA、アルファ−L−オキシ
−LNA及びエナ−LNAを意味する。
【0029】
(発明の詳細な説明)
本発明には、HIF−1αをコードする核酸分子の機能の調節に用いるオリゴマー化合
物、特にアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いる。調節は最終的には産生されるHIF
−1αの量の変化である。一つの実施態様において、これはHIF−1αをコードする核
酸と特異的にハイブリッドを形成するアンチセンス化合物を提供することにより達成され
る。調節は、好ましくはHIF−1αの発現の阻害であり、生産される機能性蛋白質の数
を減少させることである。HIF−1は、赤血球増殖、細胞増殖、鉄代謝、グルコース及
びエネルギー代謝、pH制御、組織浸潤、アポトーシス、多剤耐性、細胞ストレス応答又
は間充質代謝に関与すると同じように、血管新生にも関与する。
【0030】
本発明の、標的物の発現を調節するアンチセンス及び他のオリゴマー化合物は、実験に
より或いは標的物に関する配列情報及び希望の標的に対する最適なオリゴマー化合物設計
のノウ・ハウを基にした具体的な設計により同定される。これらの化合物の配列は本発明
の好ましい実施態様である。同じように、これらの好ましいオリゴマー化合物が相補的で
ある標的物中の配列モチーフ(ホットスポットと呼ぶ)が標的としての好ましいサイトで
ある。
【0031】
本発明に基づく好ましいオリゴマー化合物は、配列番号 2、3、4、5、6、7、8
、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、2
2、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35
、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、
49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、6
2、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75
、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、
89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101
、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111
、112、113、114又は115であり、それらの配列を表1及び表2に示す。本発
明に基づくオリゴマー化合物は標的物の強力な調節剤である。これは生体外及び生体内で
実験的に示される。3種の違った腫瘍細胞株を使った標的物の生体外阻害作用を表1及び
図1〜8に示す。図9は、生体内における標的物の負の調節(ダウンレギュレーション)
を示す。さらに、オリゴマー化合物は、例えばホスホロチオエートを有するポリヌクレオ
チドアンチセンスの標準的条件に比べてより低い濃度で強力な阻害剤であることが示され
ている。図5及び6は、本発明化合物の濃度を5nMまで下げた場合の阻害作用を示す。
本発明のオリゴマー化合物によるHIF−1αの阻害作用は、図3及び5に示すように、
血管新生に関与する血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の発現及びグルコース組込みに関
与するグルコーストランスポーター−1(GULT−1)の発現をも阻害する。2つの配
列モチーフを標的とする各種設計のオリゴマー化合物(表2)は、図1及び7に示した通
り標的の強力な阻害剤であることが確認された。表1からのオリゴマー化合物を使って遺
伝子歩行を行った。そして有力なオリゴマー化合物の効果を図8に示す。上記のすべての
実験的な観察結果は、本発明に基づく化合物が医薬組成物の活性化合物になり得ることを
示すものである。
【0032】
さらに、本発明に基づくオリゴマー化合物は、正常酸素圧及び酸素圧低下の状態でHI
F−1αを阻害する。
本発明の1つの実施態様において、オリゴマー化合物は少なくとも1ユニットのLNA
(固定された核酸:Locked Nucleic Acid)と命名された化合物を含
んでいる。
LNAモノマーの代表的な引用は、国際公開第WO99/14226号公報及び続く出
願の国際公開第WO00/56746号、同第WO00/56748号、同第WO00/
66604号、同第WO00/125248号、同第WO02/28875号、同第WO
02/094250号公報及び国際出願第PCT/DK02/00488号に記載されて
いる二環式ヌクレオシド類縁体であり、これらの特許はすべて参照としてここに取り込ま
れる。好ましいLNAモノマー構造をスキーム2に例示する。
【0033】
【化4】

【0034】
X及びYは次のグループの中から独立に選択される:−O−、−S−、−N(H)−、
−N(R)−、−CH−又は−CH−(二重結合の一部分の場合)、−CH−O−、
−CH−S−、−CH−N(H)−、−CH−N(R)−、−CH−CH−又
は−CH−CH−(二重結合の一部分の場合)、−CH=CH−、ここでRは水素原子
及びC1−4のアルキル基から選択される。非対称のグループはどちらの立体配置にも見
られる。
【0035】
スキーム2には、4個の不斉中心が、固定した1つの立体配置に示されている。しかし
、本発明に含まれるのはスキーム2の一般式で表される化合物であり、不斉中心は違った
立体配置をとっている。従ってスキーム2の各々の不斉中心はR又はSのいずれかの立体
配置で存在する。R(rectus)及びS(sinister)の定義は“IUPAC
1974 Recommendations,Section E,Fundamen
tal Stereochemistry”に説明されている。これらの規定は、“Pu
re Appl.Chem.45,13−30(1976)”及び“Nomenclat
ure of Organic Chemistry,Pergamon,New Yo
rk,1979”に記載されている。
【0036】
Z及びZはヌクレオシド間結合、末端グループ又は保護グループの中から独立して選
択される。
【0037】
ヌクレオシド間の結合様式は、‐O‐P(O)‐O‐、‐O‐P(O,S)‐O‐、
‐O‐P(S)‐O‐、‐S‐P(O)‐O‐、‐S‐P(O,S)‐O‐、‐S‐
P(S)‐O‐、‐O‐P(O)‐S‐、‐O‐P(O,S)‐S‐、‐S‐P(O
‐S‐、‐O‐PO(R)‐O‐、‐O‐PO(OCH)‐O‐、‐O‐PO(
NR)‐O‐、‐O‐PO(OCHCHS‐R)‐O‐、‐O‐PO(BH)‐
O‐、‐O‐PO(NHR)‐O‐、‐O‐P(O)‐NR‐、‐NR‐P(O
‐O‐、‐NR‐CO‐O‐、‐NR‐CO‐NR‐、‐O‐CO‐O‐、‐
O‐CO‐NR‐、‐NR‐CO‐CH‐、‐O‐CH‐CO‐NR‐、‐O
‐CH‐CH‐NR‐、‐CO‐NR‐CH‐、‐CH‐NR‐CO‐、
‐O‐CH‐CH‐S‐、‐S‐CH‐CH‐O‐、‐S‐CH‐CH‐S
‐、‐CH‐SO‐CH‐、‐CH‐CO‐NR‐、‐O‐CH‐CH
NR‐CO‐、‐CH‐NCH‐O‐CH‐等であってよい。ここで、R基は
水素と、C1‐4アルキル基から選ばれる。
【0038】
末端基はそれぞれ、水素、アジド基、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基
、Prot‐O‐基、Act‐O‐基、メルカプト基、Prot‐S‐基、Act‐S‐
基、C1‐6‐アルキルチオ基、アミノ基、Prot‐N(R)‐基、Act‐N(R
)‐基、モノ又はジ(C1‐6‐アルキル)アミノ基、置換されていてもよいC1‐6
‐アルコキシ基、置換されていてもよいC1‐6‐アルキル基、置換されていてもよいC
2‐6‐アルケニル基、置換されていてもよいC2‐6‐アルケニルオキシ基、置換され
ていてもよいC2‐6‐アルキニル基、置換されていてもよいC2‐6‐アルキニルオキ
シ基、モノリン酸エステル基又は保護されたモノリン酸エステル基、モノチオリン酸エス
テル基又は保護されたモノチオリン酸エステル基、ジリン酸エステル基又は保護されたジ
リン酸エステル基、ジチオリン酸エステル基又は保護されたジチオリン酸エステル基、ト
リリン酸エステル基又は保護されたトリリン酸エステル基、トリチオリン酸エステル基又
は保護されたトリチオリン酸エステル基から独立して選ばれる。リン酸エステル残基に付
くそのような保護基の例としては、S‐アセチルチオエチル(SATE)基、又は、S‐
ピバロイルチオエチル(t‐ブチル‐SATE)基、DNAインターカレーター、光化学
的活性基、熱化学的活性基、キレート基、レポーター基、配位子、カルボキシル基、スル
ホノ基、ヒドロキシメチル基、Prot‐O‐CH‐基、Act‐O‐CH‐基、ア
ミノメチル基、Prot‐N(R)‐CH‐基、Act‐N(R)‐CH‐基、
カルボキシメチル基、スルホノメチル基がある。ここで、Prot基は各々、‐OH、‐
SH、‐NH(R)の保護基を、Act基は各々、‐OH、‐SH、‐NH(R)対
する活性基であり、そしてR基は水素及びC1‐6‐アルキル基から選ばれる。
【0039】
ヒドロキシ置換基の保護基には、4、4′‐ジメトキシトリチルオキシ基(DMT)、
4‐モノメトキシトリチルオキシ基(MMT)、及びトリチルオキシ基等の置換トリチル
基、置換されていてもよい9‐(9‐フェニル)キサンテニルオキシ基(pixyl)、
置換されていてもよいメトキシテトラヒドロピラニルオキシ基(mthp)、トリメチル
シリルオキシ基(TMS)、トリイソプロピルシリルオキシ基(TIPS)、tert‐
ブチルジメチルシリルオキシ基(TBDMS)、トリエチルシリルオキシ基、及びフェニ
ルジメチルシリルオキシ基等のシリルオキシ基、tert‐ブチルエーテル類、アセター
ル類(2個のヒドロキシ基を含む)、アセチル基又はハロゲン置換アセチル基(クロロア
セチルオキシ基、フルオロアセチルオキシ基などの)、イソブチリルオキシ基、ピバロイ
ルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、及び置換ベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基、メ
トキシメチルオキシ基(MOM)、ベンジルオキシ類又は2、6‐ジクロロベンジルオキ
シ基(2、6‐ClBzl)のような置換ベンジルオキシ類が含まれる。替わりに、Z
又はZがヒドロキシル基の場合、これらは、所望ならば結合手を介して固体支持体に付
着することによって保護されてもよい。
【0040】
Z又はZがアミノ基の場合、その保護アミノ基の例は、フルオレニルメトキシカルボ
ニルアミノ基(Fmoc)、tert‐ブチルオキシカルボニルアミノ基(BOC)、ト
リフルオロアセチルアミノ基、アリルオキシカルボニルアミノ基(alloc、AOC)
、ベンジルオキシカルボニルアミノ基(Z、Cbz)、2‐クロロベンジルオキシカルボ
ニルアミノ基(2‐ClZ)のような置換ベンジルオキシカルボニルアミノ基、モノメト
キシトリチルアミノ基(MMT)、ジメトキシトリチルアミノ基(DMT)、フタロイル
アミノ基及び9‐(9‐フェニル)キサンテニルアミノ基(pixyl)である。
【0041】
上記態様において、Actは‐OH、‐SH及び‐NH(R)対する活性基である。
好ましい態様において、そのような活性基が、他の残基や単量体へのカップリングを媒介
する。そのようなカップリングが成功した後、この活性基はヌクレオチド間の結合に変換
される。そのような活性基は、置換されていてもよいO‐ホスホロアミダイト基、置換さ
れていてもよいO‐燐酸トリエステル基、置換されていてもよいO‐燐酸ジエステル基、
置換されていてもよいH‐燐酸エステル基、置換されていてもよいO‐燐酸エステル基か
ら選ばれる。
【0042】
本特許における「ホスホロアミダイト基」とは、式‐P(OR)‐N(R‐で
表される基を意味し、ここでR基は、例えばメチル基、2‐シアノエチル基、又はベン
ジル基などの置換されていてもよいアルキル基を、そして各々のR基はエチル基、イソ
プロピル基などでの置換されていてもよいアルキル基を意味し、又は‐N(R‐基
はモルホリノ基(‐N(CHCH)O)を形成する。R基としては2‐シアノ
エチル基が好ましく、そして2つのR基は好ましくは同一であり、かつイソプロピル基
を示す。このように、特に適切なホスホロアミダイト基は、N、N‐ジイソプロピル‐O
‐(2‐シアノエチル)ホスホロアミダイト基である。
【0043】
Bは天然の又は非天然のヌクレオ塩基を構成し、アデニン、シトシン、5‐メチルシトシ
ン、イソシトシン、プソイドイソシトシン、グアニン、チミン、ウラシル、5‐ブロモウ
ラシル、5‐プロピニルウラシル、5‐プロピニル‐6‐フルオロウラシル、5‐メチル
チアゾールウラシル、6‐アミノプリン、2‐アミノプリン、イノシン、ジアミノプリン
、7‐プロピン‐7‐デアザアデニン、7‐プロピン‐7‐デアザグアニン、2‐クロロ
‐6‐アミノプリンから選ばれる。
【0044】
特に好ましい二環式の構造体を以下のスキーム3に示す:
【0045】
【化5】

【0046】
Xが−O−、−S−、−NH−及びN(R)の場合、ZとZは独立して、ヌクレオ
チド間結合、末端基又は保護基の中から選ばれる。
このヌクレオチド間結合は、‐O‐P(O)‐O‐、‐O‐P(O,S)‐O‐、‐O
‐P(S)‐O‐、‐S‐P(O)‐O‐、‐S‐P(O,S)‐O‐、‐S‐P(
S)‐O‐、‐O‐P(O)‐S‐、‐O‐P(O,S)‐S‐、‐S‐P(O)
‐S‐、‐O‐PO(R)‐O‐、‐OPO(OCH)‐O‐、‐O‐PO(NR
)‐O‐、‐O‐PO(OCHCHS‐R)‐O‐、‐O‐PO(BH)‐O‐、
‐O‐PO(NHR)‐O‐、‐O‐P(O)‐NR‐、‐NR‐P(O)
O‐、‐NR‐CO‐O‐であってよく、ここで、R基は水素とC1‐4‐アルキル
基から選ばれる。
末端基は、水素、アジド基、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、Pr
ot‐O‐基、Act‐O‐基、メルカプト基、Prot‐S‐基、Act‐S‐基、C
1‐6‐アルキルチオ基、アミノ基、Prot‐N(R)‐基、Act‐N(R)‐
基、モノ又ジ(C1‐6‐アルキル)アミノ基、置換されていてもよいC1‐6‐アルコ
キシ基、置換されていてもよいC1‐6‐アルキル基、置換されていてもよいモノリン酸
エステル基、モノチオリン酸エステル基、ジリン酸エステル基、ジチオリン酸エステル基
、トリリン酸エステル基、トリチオリン酸エステル基の中から独立して選ばれる。ここで
Prot基は各々、‐OH基、‐SH基、及び‐NH(R)基に対する保護基であり、
Act基は各々、‐OH基、‐SH基、及び‐NH(R)基に対する活性基でありそし
て、R基は水素とC1‐6‐アルキル基から選ばれる。
【0047】
ヒドロキシル置換基の保護基としては、4、4′‐ジメトキシトリチルオキシ基(DM
T)、4‐モノメトキシトリチルオキシ基(MMT)等の置換トリチル基、置換されてい
てもよい9‐(9‐フェニル)キサンテニルオキシ基(pixyl)、置換されていても
よいメトキシテトラヒドロピラニルオキシ基(mthp)、トリメチルシリルオキシ基(
TMS)、トリイソプロピルシリルオキシ基(TIPS)、tert‐ブチルジメチルシ
リルオキシ基(TBDMS)、トリエチルシリルオキシ基、及びフェニルジメチルシリル
オキシ基などのシリルオキシ基、tert‐ブチルエーテル類、アセタール類(2個のヒ
ドロキシル基を含む)アセチル基のようなアシルオキシ基を含む。替わりに、Z又はZ
がヒドロキシル基の場合、これらは、所望ならば結合手を介して固体支持体に付着するこ
とによって保護されてもよい。
【0048】
Z又はZがアミノ基の場合、保護アミノ基の例としては、フルオレニルメトキシカル
ボニルアミノ基(Fmoc)、tert‐ブチルオキシカルボニルアミノ基(BOC)、
トリフルオロアセチルアミノ基、アリルオキシカルボニルアミノ基(alloc、AOC
)、モノメトキシトリチルアミノ基(MMT)、ジメトキシトリチルアミノ基(DMT)
、フタロイルアミノ基等がある。
【0049】
上記態様において、Actは‐OH、‐SH及び‐NH(R)対する活性基である。
好ましい態様において、そのような活性基が、他の残基や単量体へのカップリングを媒介
する。そのようなカップリングが成功した後、この活性基はヌクレオチド間の結合に変換
される。そのような活性基は、例えば置換されていてもよいO‐ホスホロアミダイト基、
置換されていてもよいO‐燐酸トリエステル基、置換されていてもよいO‐燐酸ジエステ
ル基、置換されていてもよいH‐ホスホン酸エステル基及び置換されていてもよいO‐ホ
スホン酸エステル基である。
【0050】
本明細書における「ホスホロアミダイト基」は、式‐P(OR)‐N(R‐を
意味する。ここでR基は、置換されていてもよいメチル基、2‐シアノエチル基のよう
なアルキル基を、また各々のR基は置換されていてもよいアルキル基を、R基は好ま
しいくは、2‐シアノエチル基をそして2つのR基は好ましくは同一であり、かつイソ
プロピル基を示す。このように、特に適切な基は、N、N‐ジイソプロピル‐O‐(2‐
シアノエチル)ホスホロアミダイト基である。
【0051】
Bは天然又は非天然のヌクレオ塩基を構成し、アデニン、シトシン、5‐メチルシトシ
ン、イソシトシン、プソイドイソシトシン、グアニン、チミン、ウラシル、5‐ブロモウ
ラシル、5‐プロピニルウラシル、6‐アミノプリン、2‐アミノプリン、イノシン、ジ
アミノプリン、2‐クロロ‐6‐アミノプリンから選ばれる。
【0052】
治療の原理
当業者は、LNAを含むオリゴマー化合物が多くの異なる原理によるHIF−1α関連
疾病の治療に使うことが出来ることを理解するであろうし、従ってそれは本発明の意図す
るところである。
【0053】
例えば、LNAオリゴマー化合物はアンチセンス阻害剤として設計することができ、そ
れは病気を引起こす蛋白質の生産をmRNAの段階で阻止する一重鎖の核酸である。また
、それらはアンチセンスオリゴヌクレオチドであるリボザイムあるいはオリゴザイムとし
て設計され、標的物への結合ドメインに加えて標的mRNAを分解する触媒活性を有し(
リボザイム)、又は標的mRNAを分解するエンドヌクレアーゼ(RNase P)を引
込む外部誘導配列(EGS)を含んでいる(オリゴザイム)。
【0054】
同じように、LNAオリゴマー化合物はsiRNAとして設計することが出来る。それ
らは細胞に使われ、内在性あるいは外来性の特定の遺伝子を未だ良く理解されていない“
アンチセンス様”メカニズムで静止させる小さな二重鎖のRNA分子である。
【0055】
LNAオリゴマー化合物は同じようにアプタマー(及びスピーゲルマーと呼ばれる、そ
の変異体)として設計することが出来る。それらは3次元構造から分子間水素結合を形成
することにより高い親和性と特異性を有して生物学的な標的物と結合しその機能を阻止す
る核酸である。また、LNAオリゴマー化合物はデコイ(おとり)として設計することが
出来る。それらは小さな二重鎖の核酸で、細胞性転写因子のDNA結合部位を選択的に妨
害することで標的遺伝子の転写促進を阻害する。
【0056】
さらに、LNAオリゴマー化合物はキメラプラストとして設計することが出来る。それ
らは、標的遺伝子配列と特異的に対合して変換させる小さな一重鎖の核酸である。従って
、この原理を使ったLNAを含むオリゴマー化合物は、特にHIF−1α遺伝子の変異に
よって起こるHIF−1α関連疾病の治療に対して有用である。
【0057】
最後に、LNAオリゴマー化合物はTFO(3重鎖形成オリゴヌクレオチド)として設
計することが出来る。それらは、二重鎖DNAと結合し病気を引起こす蛋白質の生産をR
NAの転写の段階で阻止する核酸である。
【0058】
オリゴヌクレオチドを作動させる治療原理に書かれるべきことは、本発明に基づいたL
NAオリゴマー化合物が好ましくは約8から約60の核酸塩基、すなわち約8から約60
の連結したヌクレオシドからなることである。特に好ましい化合物は約12から約30の
核酸塩基からなるアンチセンスヌクレオシドで、最も好ましくは約12−20核酸塩基か
らなるアンチセンス化合物である。
【0059】
LNAオリゴマー化合物の治療的作用を導き出す上記の原理を参考にすると、本発明の
標的物はHIF−1α遺伝子、mRNA又は蛋白質ということになる。最も好ましい実施
態様において、LNAオリゴマー化合物はHIF−1αのpre−mRNA又はHIF−
1αのmRNAに対するアンチセンス阻害剤として設計される。オリゴヌクレオチドはH
IF−1αのpre−mRNA又はmRNAに沿ったどのサイト、例えば、5’非翻訳リ
ーダー配列、エクソン、イントロン及び3’非翻訳末端ともハイブリッドを形成すること
ができる。
【0060】
好ましい態様において、オリゴヌクレオチドはヒトHIF−1αのpre−mRNA又
はmRNAの翻訳阻害サイトを含む部分とハイブリッドを形成する。より好ましくは、H
IF−1αオリゴヌクレオチドはCAT配列を含んでおり、それはHIF−1αのpre
−mRNA又はmRNAのAUG開始配列と相補的である。他の実施態様においては、H
IF−1αオリゴヌクレオチドが、ヒトHIF−1αのpre−mRNAのスプライス供
与サイト(splice donor site)の部分とハイブリッドを形成する。さ
らに他の実施態様においては、HIF−1αオリゴヌクレオチドが、ヒトHIF−1αの
pre−mRNAのスプライス受容サイト(splice acceptor site
)の部分とハイブリッドを形成する。他の実施態様においては、HIF−1αオリゴヌク
レオチドが、ヒトHIF−1αのpre−mRNA又はmRNAのポリアデニル化、輸送
又は分解に関与する部分とハイブリッドを形成する。
【0061】
当業者は、好ましいオリゴヌクレオチドがHIF−1αのpre−mRNA又はmRN
Aの1部分で、その配列が無関係の遺伝子からの転写では一般に生じない部分とハイブリ
ッドを形成し、治療の特異性が保たれるようになることを理解できるであろう。
【0062】
本発明のオリゴマー化合物は、期待する臨床的な応答があるよう標的物に対して十分に
相補的であるように設計される。すなわち、オリゴマー化合物は期待する効果を出すため
に、標的に対して十分な強さと特異性を有して結合しなければならない。1つの実施態様
においては、HIF−1αを調節する当該化合物が、HIF−1αをコードする核酸では
ない他の特定の核酸も調節するように設計される。
【0063】
好ましくは、本発明に基づくオリゴマー化合物が、分子内及び分子間のオリゴヌクレオ
チドのハイブリッド形成を抑えるよう設計される。
【0064】
多くの場合、生体内又は臨床的にHIF−1α活性の調節に効果があるLNAオリゴマ
ー化合物の確認は、標的遺伝子についての配列情報に基づいて行われる。しかし、通常の
当業者はそのようなオリゴマー化合物が実験的な試験によっても確認できることを理解で
きるであろう。HIF−1αオリゴマー化合物が好ましい実施態様と比べて、例えば、配
列ホモロジーの低さ、ヌクレオチド修飾の多少、又は長さの長短はあっても、臨床的な治
療において応答を示すものは本発明の範囲に含まれる。
【0065】
アンチセンス薬剤
本発明の1つの実施態様において、オリゴマー化合物は適切なアンチセンス薬剤である
。強力で安全なアンチセンス薬剤の設計に求められることは、様々なパラメーターの微調
節、例えば、親和性/特異性、体液中での安定性、細胞の組込み、作用機作、薬物動態学
的特性及び毒性などである。
【0066】
親和性及び特異性:オキシメチレン2’−O,4’−C結合を有するLNA(β−D−
オキシ−LNA)はDNA及びRNA標的配列に対して新規な結合性を示す。同じように
、LNA誘導体、例えばアミノ−、チオ−及びα−L−オキシ−LNAは相補的なRNA
及びDNAに対して新規な親和性を示し、チオ−LNAの場合、RNAに対する親和性は
β−D−オキシ−LNAよりもさらに高い。
【0067】
これらの顕著なハイブリッド形成性に加え、LNAモノマーはDNA及びRNAモノマ
ー及び2’−Oアルキル化RNAモノマーのような他の核酸類縁体と混合するとそれらと
協調的に作用する。従って、本発明のオリゴヌクレオチドはβ−D−オキシ−LNAモノ
マーだけで構成することが出来、又はβ−D−オキシ−LNAとDNA、RNA又は例え
ばアミノ−、チオ−及びα−L−オキシ−LNAのようなLNA誘導体を含む現状の核酸
類縁体との組合せで構成することが出来る。DNA又はRNAの標的配列に対するLNA
の新規な結合親和性、及びそのDNA、RNA及び現状範囲の核酸類縁体との自由な混合
性は、本発明に基づく効果的で安全なアンチセンス化合物を開発するために重要な意義を
有する。
【0068】
最初に、本発明の1つの実施態様において、薬理学的に必要な活性を低めることなく
アンチセンスオリゴの通常の長さを著しく短く(20−25merから例えば12−15
merに)することが出来る。オリゴ固有の特異性はその長さに対して逆の相関性がある
ので、このような短縮はRNA標的に対するアンチセンス化合物の特異性を著しく高める
。本発明の1つの実施態様は、ヒトゲノムの配列が入手できてしかもその遺伝子コード解
析が急速に進んでいるので、可能な限り短くてユニークな配列として標的mRNA内に確
認することである。
【0069】
別の実施態様において、オリゴのサイズを縮めるためにLNAを使用すると、製造工程
を著しく簡略化することが出来、その結果アンチセンス療法が病気の多様性に対して市場
競争力のある治療法を提供するための基盤を提供する。
【0070】
別の実施態様において、LNAの新規な親和性は、アンチセンスオリゴが生体内で標的
mRNAとハイブリッドを形成する能力を実質的に増強するために使われ、その結果、活
性化合物を確認するために要する時間と労力は他の化学反応による場合に比べて著しく低
減する。
【0071】
別の実施態様において、LNAの新規な親和性はアンチセンスオリゴヌクレオチドの力
価を増強させるために使われ、現在の治験に比べてより有利な治療の可能性を有する化合
物の開発を可能にする。
【0072】
アンチセンス阻害剤として設計した場合、本発明のオリゴヌクレオチドは標的の核酸に
結合しその同族体蛋白質の発現を調節する。好ましくは、その調節が正常の発現量にくら
べて少なくとも10%又は20%の発現阻害であり、より好ましくは正常の発現量に比較
して少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%の発現阻
害である。
【0073】
主として、本発明のLNAオリゴヌクレオチドは、β−D−オキシ−LNA残基以外に
、例えば天然のDNAモノマー、RNAモノマー、N3’−P5’ホスホロアミダイト、
2’−F、2’−O−Me、2’−O−メトキシエチル(MOE)、2’−O−(3−ア
ミノプロピル)(AP)、ヘキシトール核酸(HNA)、2’−F−アラビノ核酸(2’
−F−ANA)及びD−シクロヘキセニルヌクレオシド(CeNA)などを含む。また、
β−D−オキシ−LNA修飾のオリゴヌクレオチドは、オキシ−LNAグループに加えて
又は代わりに別のLNAユニットを含むことが出来る。特に、追加の好ましいLNAユニ
ットには、立体配置がD−βかL−αか又はそれらの組合せを有するチオ−LNA又はア
ミノ−LNAモノマー、又はエナ−LNAが含まれる。通常は、LNA修飾のオリゴヌク
レオチドには、オリゴヌクレオチド内の全ヌクレオチドを基準に、少なくとも約5,10
,15,20%のLNAユニットが含まれ、より一般的には、オリゴヌクレオチド内の全
ヌクレオチドを基準に、少なくとも約20,25,30,40,50,60,70,80
又は90%のLNAユニットが含まれる。
【0074】
体液中の安定性:本発明の1つの実施態様には、得られるオリゴマー化合物の体液中で
の安定性、例えばヌクレアーゼ(エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼ)に対する
抵抗性を高めるために、標準DNA又はRNAオリゴヌクレオチドにLNAモノマーを組
込むことが含まれる。安定性の程度は使用したLNAモノマーの数、オリゴヌクレオチド
内の位置、及び使用したLNAモノマーの種類に依存する。DNA及びホスホロチオエー
トとの比較から、核酸の分解的変性に対するオリゴヌクレオチド安定化の能力の順序は次
のように確定できる:DNA<<ホスホロチオエート〜オキシ−LNA<α−L−LNA
<アミノ−LNA<チオ−LNA。
【0075】
LNAが標準のDNA合成に適合し、多くの現状の核酸類縁体と自由に混合するという
事実により、LNA−オリゴマー化合物のヌクレアーゼ(核酸分解酵素)耐性はヌクレア
ーゼ安定性の高い他の類縁体を取込むか又はヌクレアーゼ抵抗性のヌクレオシド間結合、
例えばホスホロモノチオエート、ホスホロジチオエート及びメチルホスホネート結合など
のを利用することにより本発明によってさらに高められる。

【0076】
作用機作:本発明に基づくアンチセンス化合物から多様なメカニズムを介した治療的な
作用を引出すことができ、そして同じ化合物中にいくつかの作用を結びつけることが出来
る。1つの筋書きでは、オリゴヌクレオチドの標的(pre−mRNA又はmRNA)へ
の結合により、標的物の適正な機能に必要な他の因子(蛋白質、他の核酸など)の結合を
阻止する、つまり、立体的障害によって阻止するように働く。例えば、アンチセンスオリ
ゴヌクレオチドは、以下の事に関与する処理因子の認識及びそれとの結合に重要なpre
−mRNA又はmRNAのどちらかの配列モチーフと結合する:スプライシング、ポリア
デニル化、細胞輸送、RNA中のヌクレオシドの翻訳後修飾、5’-末端キャッピング、
翻訳など。pre−mRNAのスプライシングの場合、オリゴヌクレオチドとその標的物
との反応の結果は、不要な蛋白質発現の抑制か或いは必要な蛋白質をコードする代わりの
スプライスしたmRNAの生成、又はその両方である。他の実施態様において、オリゴヌ
クレオチドとその標的物との結合は、リボゾーム機構に物理的な障害すなわち翻訳停止を
起こし、翻訳工程を阻止する。
【0077】
さらに他の実施態様において、オリゴヌクレオチドの標的物への結合は、RNAが適切
な機能を発揮するのに重要な二次構造及び高次構造をとる能力を妨害する、すなわち構造
妨害を起こす。例えば、オリゴヌクレオチドは、いろいろな機能に極めて重要な役割を演
じるステム・ループ構造の形成を妨害する。その機能は例えば、RNAをさらに安定化し
たり、種々の蛋白質に対する基本的認識モチーフを取込むようなことである。
【0078】
さらに他の実施態様において、オリゴヌクレオチドの結合で標的物を不活化し、その先
のmRNAを分解する細胞内酵素を集めることにより細胞内代謝工程を阻害する。例えば
、オリゴヌクレオチドは、DNA/RNA二重螺旋のRNA部分を分解するリボヌクレア
ーゼH(RNaseH)を集めるヌクレオシド区分を含む。同様に、オリゴヌクレオチド
は、例えばRNAseIIIのような二重鎖RNAseを集めるヌクレオシド区分を含む
か、又は標的mRNAを分解する内在性の酵素(RNaseP)を集める外部誘導配列(
EGS)を含むことが出来る。また、オリゴヌクレオチドは、RNAse触媒活性を示す
配列モチーフ、又はオリゴヌクレオチドに付着する部分を含むことが出来、これはハイブ
リッド形成で標的物に接近すると標的物のその先の代謝活性を無効にする。
【0079】
β−D−オキシ−LNAはRNaseH活性を支援しないことが知られている。しかし
、本発明に基づいてβ−D−オキシ−LNAとDNAからなるキメラ体オリゴヌクレオチ
ド(ギャップマーと呼ぶ)を形成させることによりこれを変更することが出来る。ギャッ
プマーは中心伸長が4−12ntDNA、又はRNaseH(ギャップ)が認識し解裂す
る特に1〜6残基のβ−D−オキシ−LNA(フランク)に挟まれた修飾モノマーを基盤
とする。フランクはLNA誘導体で構築しても良い。本発明に基づく他のキメラ構築体が
あり、それはRNaseHが介在するメカニズムを経由して作用する。ヘッドマーはβ−
D−オキシ−LNAの連続した伸長又は5’末端のLNA誘導体によって、続いてDNA
の連続した伸長又はRNaseHが認識し解裂する3’-末端の修飾モノマーによって規
定され、テイルマーはDNAの連続した伸長又はRNaseHが認識し解裂する5’-末
端の修飾モノマーによって、続いてβ−D−オキシ−LNAの連続した伸長又は3’末端
のLNA誘導体によって規定される。本発明に基づく他のキメラ体はミックスマーと呼ば
れ、入替わりの組成であるDNA又はRNaseHが認識し解裂する修飾モノマー、及び
β−D−オキシ−LNA及び/又はRNaseHの結合と開裂を仲介するかもしれないL
NA誘導体からなる。α−L−LNAはある程度RNaseH活性を補充するので、ギャ
プマー構築のため小さなDNAギャップ又はRNaseHが認識し開裂する修飾モノマー
が必要になり、ミックスマー構築ではより柔軟性が導入される。図1は本発明に基づく種
々の設計の概略を示す。
【0080】
薬物動態学的性質
アンチセンスオリゴヌクレオチドの臨床的な効果は、薬物動態学、例えば吸収、分配、
細胞組込み、代謝及び排泄に大きく左右される。次に、これらのパラメーターはオリゴヌ
クレオチドの基礎を成す化学物質、サイズと3次元構造からはっきりと導き出される。
【0081】
前述のように、本発明に記載のLNAは単一でなく、いくつかの関係する成分から成り
、分子的に違うにもかかわらず全てが相補的なDNA及びRNAに対して驚くべき親和性
を示す。従って、LNA化学成分は本発明に基づくオリゴの開発に独自的に適合しており
、そのオリゴは活性化合物のサイズを調節するLNAの高い親和性、又は活性化合物の厳
密な分子組成を調節する種々のLNA化学成分のいずれかを利用する制御された薬物動態
学的性質を有している。後者の場合、例えばオキシ−LNAではなくアミノ−LNAを使
うとオリゴ全体の電荷が変わり、組込み及び分配の挙動に影響を与える。同じように、オ
キシ−LNAの代りにチオ−LNAを使用するとオリゴヌクレオチドの親油性が高まり、
例えば細胞膜のような親油性の障壁の透過性に影響を与える。
【0082】
本発明に基づくLNAオリゴヌクレオチドの動態学的な性質の調節は、さらに多種多様
な部分の付着によって行われる。例えば、オリゴヌクレオチドの細胞膜透過性は、例えば
、コレステロール部分、チオエーテル、脂肪族鎖、リン脂質又はポリアミンのような脂質
部分をオリゴヌクレオチドに付着させることによって高められる。同じように、細胞内へ
のLNAオリゴヌクレオチドの組込みは、部分をLNAオリゴヌクレオチドに共役させ、
サイトプラズマへの輸送を仲介する膜内分子に作用することによって増大できる。
【0083】
薬理学的性質
薬理学的性質は、オリゴマー組込の改善、オリゴマーの分解に対する抵抗性増大などに
より生物学的安定性の増大、及び/又は、例えばmRNA配列のような標的配列とオリゴ
ヌクレオチドとのハイブリッド形成の特異性及び親和性の向上などをもたらすことにより
本発明に従って強化される。
【0084】
毒物学
アンチセンスオリゴに伴う毒性には基本的に2つの種類、すなわち塩基配列を含む配列
依存の毒性と配列非依存性でクラス関連の毒性がある。生来のCpG配列モチーフによる
免疫刺激に関する問題を除いては、アンチセンスオリゴヌクレオチド由の開発において最
も顕著な毒性は、配列には関係のない、例えばオリゴヌクレオチドの化学的性質及び投与
の量、方法、頻度及び期間に関するものである。オリゴヌクレオチドのホスホロチオエー
ト部類は特によく特性評価がされており、補体活性化、PPT(部分的トロンボプラスチ
ン時間)の延長、血小板減少症、肝毒性(肝酵素の上昇)、心臓毒性、脾腫及び細網内皮
細胞の過形成など多くの副作用を誘導することが知られている。
【0085】
前に述べたように、LNA化学成分は、新規な親和性、非常に高い生物学的安定性及び
オリゴヌクレオチドの厳密な分子組成を調節する能力を発揮する。本発明の1つの実施態
様において、LNAを含む化合物は、高い力価と、もしあれば少量のホスホロチオエート
連結を併せ有するオリゴヌクレオチドの開発を可能にし、従って、それは現在のアンチセ
ンス化合物よりもより効果的で高い安全性を示す可能性が高い。
【0086】
製造
本発明のオリゴ−及びポリヌクレオチドは、有機化学の当業者によく知られた核酸化学
の重合方法を使って製造することが出来る。一般に、ホスホロアミダイト法の標準のオリ
ゴメリゼーションサイクルが用いられる(S.L.Beaucage and R.P.
Iyer,Tetrahedron,49、6123(1993);S.L.Beauc
age and R.P.Iyer,Tetrahedron,48、2223(199
2))、しかし、例えば、H−ホスホネートやホスホロトリエステルの化学反応も使うこ
とが出来る。
【0087】
本発明の或るモノマーに対しては、長いカップリング時間、及び/又は新鮮な試薬での
繰返しカップリング、及び/又はより濃縮されたカップリング試薬が使われた。
【0088】
ホスホロアミダイトを使ったカップリングでは、段階的なカップリングの収率が98%
を超える満足できるものであった。リン酸エステルのチオール化は、ホスホロジエステル
オリゴマーの合成に使われる通常の例えばヨード/ピリジン/水による酸化反応をBea
ucag試薬(市販品)を使う酸化反応に交換することで実施できるし、他の硫黄化試薬
によっても達成される。ホスホロチオエートLNAオリゴマーは段階的カップリングの収
率が98%以上で効果的に合成された。
【0089】
β−D−アミノ−LNA、β−D−チオ−LNAオリゴヌクレオチド、α−L−LNA
及びβ−D−メチルアミノ−LNAオリゴヌクレオチドもまたホスホロアミダイト法を用
いた段階的カップリング反応により、98%以上の収率で効果的に合成できた。
【0090】
LNAオリゴマー化合物の精製は、使い捨ての逆相精製カートリッジ及び/又は逆相H
PLC(高速液体クロマトグラフ)及び/又はエタノール又はブタノールからの沈殿法を
使って行った。合成したオリゴヌクレオチドの純度の確認にはゲル電気泳動、逆相HPL
C、MALDI−MS(レーザーイオン化質量分析)、及びESI−MS(エレクトロス
プレーイオン化質量分析)を用いた。さらに、核酸塩基及び5’−OHが所望ならば保護
されているLNAが固定化される固体の支持材は、LNA含有オリゴマーで3’末端にL
NAモノマーを含む化合物を合成するための材料として特に興味がある。この例で、固体
の支持材は好ましくはCPG、例えば容易に入手できる(市販の)CPG材又はポリスチ
レンで、その表面に、3’が機能化され、核酸塩基及び5’−OHが所望ならば保護され
ているLNAを、販売元が推奨する条件を使って連結される。
【0091】
適応
本発明に基づく医薬組成物は多くの異なる病気の治療に使われる。例えば、種々のヒト
の固形癌及びそれらの転移癌、例えば乳房、結腸直腸、前立腺、膵臓、脳、肺、卵巣、胃
腸、頭頚部、肝臓、膀胱及び子宮頚部などの癌において、HIF−1αが過剰発現されて
いることが見出されている(Zhong,H.ら,Cancer Research,5
9,5830−5835(1999);Talks,K.L.ら、American J
ournal of Pathology,157(2)、411−421(2000)
)。
【0092】
本発明の方法は 好ましくは癌によって引起こされる病気の治療又は予防、特に次のよ
うな組織に発生する癌の治療に使われる:肺、乳房、大腸、前立腺、膵臓、肝臓、脳、睾
丸、胃、小腸、腸、脊髄、血脈洞、子宮、尿路及び卵巣。
【0093】
本発明はさらに、治療を必要とするヒトに効果があるHIF−1α調節オリゴマー化合
物の量で、オリゴマーの高用量を含めるがこれに限定されない量からなる癌の予防又は治
療法を包含する。本発明はさらに、HIF−1α調節オリゴマー化合物の短い投与期間で
の使用を包含する。正常な非癌性の細胞は、その細胞種固有の頻度特性で分裂する。細胞
が癌状態に形質転換すると、無制御の細胞増殖と細胞死の減少をもたらすため、無秩序の
細胞分裂又は細胞増殖は癌性細胞の証明でもある。癌の種類の例には、限定はされないが
、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、白血病(例えば、急性リンパ球性白血病、急
性骨髄性白血病のような急性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、多発性
骨髄腫)、結腸癌、直腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌
、絨毛癌、子宮頸癌、睾丸腫瘍、肺癌、膀胱癌、メラノーマ(悪性黒色腫)、頭頸部癌、
脳腫瘍、原発部位未確認の癌、新生物、末梢神経系の癌、中枢神経系の癌、腫瘍類(例え
ば、繊維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉
腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜性腫瘍、中皮腫、エビング腫瘍、平滑筋肉腫
、横紋筋肉腫、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺腫、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭腺癌、
のう胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、小細胞肺癌
、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、隋芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、松果体腫、血
管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、神経芽細胞腫及び網膜芽細胞腫)、H鎖病
、転移、又は無秩序又は異常な細胞増殖が特徴の病気又は疾患が挙げられる。
【0094】
医薬組成物
本発明は、活性成分として少なくとも1つの本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド
構成物を含有する医薬組成物にも関連することであると理解される。本発明に基づく医薬
組成物は所望ならば薬剤担体を含有し、そして医薬組成物はさらに所望ならばアンチセン
ス化合物、化学療法化合物、抗炎症化合物、抗ウイルス化合物及び/又は免疫調節化合物
を含有すると理解される。
【0095】
塩類
本発明に包含されるオリゴマー化合物は、製薬上許容される種々の塩として用いること
が出来る。本明細書で使われる用語の塩類とは、本発明で確認された化合物の必要な生物
学的活性を保ち、好ましくない毒性作用が最少である塩を指す。限定されない例として、
このような塩は有機アミノ酸で形成され、そして塩基付加塩は例えば亜鉛、カルシウム、
ビスマス、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、銅、コバルト、ニッケル、カドミウ
ム、ナトリウム、カリウムなどの金属カチオンで、又はアンモニア、N,N−ジベンジル
エチレン−ジアミン、D−グルコサミン、テトラエチルアンモニウム又はエチレンジアミ
ン由来のカチオンで;又は(a)及び(b)を組合せた(c)の例えばタンニン酸亜鉛な
どで形成される。
【0096】
プロドラッグ
本発明の1つの実施態様において、オリゴマー化合物はプロドラッグの形態をとること
が出来る。オリゴヌクレオチド類は幸いに負に荷電したイオンである。細胞膜は親油性で
あるため、オリゴヌクレオチドの細胞内組込みは、中性又は親油性のものに比べて低い。
この極性障害は、プロドラッグ法により排除できる(例えば、Crooke,R.M.(
1998)in Crooke,S.T,Antisense Research an
d Application.Springer−Verlag,Germany,vo
l.131,pp.103−140を参照))。この方法では、オリゴヌクレオチドは保
護された形で調製されるので、投与されるときのオリゴは中性である。それらの保護グル
ープは除かれた後、オリゴが細胞に組込まれる様に設計される。その様な保護基の例とし
て、S−アセチルチオエチル基(SATE)又はS−ピバロイルチオエチル基(t−ブチ
ル−SATE)が挙げられる。これらの保護基はヌクレアーゼに抵抗性であり、細胞内で
選択的に除去される。
【0097】
抱合体
本発明の1つの実施態様において、オリゴマー化合物は配位子/抱合体と連結される。
それはアンチセンスオリゴヌクレオチドの細胞内組込みを増すための方法である。この抱
合は5’/3’−OHの末端位置で起きるが、配位の場合は糖及び/又は塩基部位で起こ
る。特に、アンチセンスオリゴヌクレオチドと抱合する増殖因子はトランスフェリン又は
葉酸がよい。トランスフェリン−ポリリジン−オリゴヌクレオチド複合体又は葉酸−ポリ
リジン−オリゴヌクレオチド複合体は高レベルのトランスフェリン又は葉酸受容体を発現
している細胞による組込みのために調製され得る。他の抱合体/配位子の例には、コレス
テロール部分、アクリジン及びポリ−L−リジンのような二重挿入体、1個以上の例えば
ホスホロモノチオエートなどのようなヌクレアーゼ抵抗の連結グループを有する末端キャ
ッピングなどが挙げられる。
【0098】
細胞内へのオリゴヌクレオチド組込みの担体として、トランスフェリン複合体の調製が
Wagnerらによって報告されている(Wagnerら、Proc.Natl.Aca
d.Sci.USA,87,3410−3414(1990))。葉酸受容体のエンドサ
イトーシスを経由した、アンチセンスオリゴヌクレオチドの移送を含めた、葉酸−巨大分
子抱合体の細胞内輸送がLowらによって報告されている(Lowら、米国特許第5,1
08,921号公報;Leamonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA
,88,5572(1991)も参照)。
【0099】
製剤
本発明には、ここに開示する1つ以上のオリゴヌクレオチド化合物の製剤が含まれる。
医薬品として容認される結合剤及びアジュバントは製剤した薬品の一部に含まれる。カプ
セル、錠剤、丸薬などは、例えば次のような化合物を含んでいる:微細結晶セルロース、
結合剤としてのガム又はゼラチン;賦形剤としてのデンプン又は乳糖;潤滑剤としてのス
テアリン酸塩、種々の甘味又は香味剤。カプセルには、処方単位に脂肪油のような液状の
担体が含まれる。同じように、糖衣剤又は腸溶剤は処方単位の一部である。オリゴヌクレ
オチド製剤は、薬剤活性成分と脂肪でミセル状のエマルジョンを形成した乳剤とすること
が出来る。
【0100】
本発明のオリゴヌクレオチドは、求められる作用を損なわない如何なる素材、又は求め
られる作用を補完する素材とも混合することができる。これらには、他のヌクレオシド化
合物を含めた他の薬剤を含めることが出来る。
【0101】
非経口、皮下、皮内又は局所投与用の製剤には無菌の希釈剤、緩衝液、等張制御剤及び
抗菌剤が含まれる。活性化合物は、変性又は体内からの迅速な排除から保護する担体を使
って調製することができ、その中にはインプラント又はコントロールされた溶出特性を有
するマイクロカプセルが含まれる。静脈投与のための好ましい担体は生理食塩水又はリン
酸緩衝生理食塩水である。
【0102】
好ましくは、オリゴマー化合物が一つのユニット製剤であり、例えば医薬品として容認
される担体又は希釈剤中に、治療に有効な量で重篤な副作用を起こすことなく患者に届く
十分な量が含まれるユニット製剤である。
【0103】
投与
本発明の医薬組成物は、局所的な治療か全身的か、及び治療すべき部位がどこかによっ
て、いろいろな投与方法がとられる。投与法には、(a)経口、(b)経肺、例えば吸入
、又は噴霧器による気管内又は鼻腔内吹込みを含めた粉末あるいはエアゾールの吹込み、
(c)局所で、表皮、皮内、眼、膣を含めた粘膜及び直腸送達、又は(d)非経口で、静
脈内、動脈内、皮下、腹腔内、又は筋肉内注射又は注入が含まれる。又は頭蓋内例えば鞘
内又は脳内室投与が挙げられる。1つの実施態様において、活性のあるオリゴは、静脈内
(iv)、腹腔内(ip)、経口、局所又は静脈ボーラスとして投与されるか、又は標的
器官に直接投与される。
【0104】
局所投与のための医薬組成物及び製剤には、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム
、ゲル、点滴剤、スプレー剤、座剤、液剤及び粉剤が含まれる。従来の医薬の担体である
、水性、粉末又は油性の基材、増粘剤などは必要であるか又は望ましい。皮膜したコンド
ームや手袋なども有用である。好ましい局所製剤には、本発明のオリゴヌクレオチドが局
所送達剤、例えば脂質、リポソーム、脂肪酸エステル、ステロイド、キレート剤及び界面
活性剤などとの混合剤が含まれる。経口投与のための組成物及び製剤には、粉末又は顆粒
、微粒子、ナノ粒子、水又は非水系溶媒の懸濁液又は溶液、カプセル、ゲル状カプセル、
香粉、錠剤又はミニ錠剤が含まれるがこれらに限定されるものではない。非経口、鞘内又
は脳室内投与のための組成物及び製剤は、緩衝液、希釈剤及び他の適切な添加物を含む無
菌の水溶液であり、その添加物には、限定はされないが例えば、透過促進剤、担体化合物
及び製薬上許容される担体又は賦形剤が含まれる。
【0105】
送達
本発明の医薬組成物には、溶液、乳剤、及びリポソーム含有製剤が含まれるが、これら
に限定されない。これらの組成物は、前調製液体、自己乳化固形物及び自己乳化半固形物
を含むがこれに限定されない種々の成分から生成される。腫瘍組織への薬剤の送達は担体
が介在する輸送により促進され、その担体にはカチオン性リポゾーム、シクロデキストリ
ン、ポルフィリン誘導体、分岐鎖デンドリマー、ポリエチレンイミン ポリマー、ナノ粒
子及びミクロスフェアー(Dass, G.R.,J.Pharm.Pharmacol
,54(1),3−27(2002))が含まれるがこれらに限定されるものではない。
【0106】
本発明の医薬品製剤は、剤形単位で簡易に提供でき、医薬品業界でよく知られた従来の
方法に従って調製することができる。そのような技術には、活性成分と医薬用担体また賦
形剤を会合させる段階が含まれる。一般に、製剤は 均一且つ密に活性成分と液状担体又
は細かく粉砕した固形担体又はその両方と会合させ、次に必要なら、製品の形削りをして
調製される。
【0107】
本発明の組成物は、どのような剤形、例えば、錠剤、カプセル、ゲルカプセル、液状シ
ロップ、ソフトゲル及び座剤にも製剤することができるが、これらに限定されるものでは
ない。本発明の組成物はまた、水、非水系又は混合溶媒の懸濁剤として製剤することがで
きる。水性懸濁液にはさらに粘度を増すための物質、例えばカルボキシメチルセルロース
ナトリウム、ソルビトール及び/又はデキストランなどが含まれる。懸濁液には安定化剤
も含まれる。
【0108】
配合剤
本発明のオリゴヌクレオチドは、前立腺癌のアンドロゲン回収療法で起こる急性低酸素
症によって誘導されるHIF−1αの影響を排除するために使用できる。
【0109】
本発明のオリゴヌクレオチドはまた、活性のある薬剤、例えばアスピリン、イブプロフ
ェン、サルファ剤、抗糖尿病薬、抗バクテリア剤又は抗生物質等と配合させることができ
る。
【0110】
LNA含有オリゴマー化合物は、上記のように多くの治療的利用に有用である。一般的
に、本発明の治療法は、LNA修飾オリゴヌクレオチドの治療的な有効量を哺乳類、特に
ヒトに投与することを含む。
【0111】
特定の実施態様において、本発明は(a)1つ以上のアンチセンス化合物及び(b)1
つ以上のアンチセンスメカニズムでない他の化学療法剤を含む医薬組成物を提供する。化
学療法剤が本発明の化合物と共に使われる場合、個別に(例えば、ミトラマイシンとオリ
ゴヌクレオチド)、逐次的に(例えば、一定期間はミトラマイシンとオリゴヌクレオチド
、続いて別な薬剤とオリゴヌクレオチド)、又は1つ以上のこのような化学療法剤との組
合せで、又は放射線療法との組合せで使われる。当業者に公知の全ての化学療法剤は、本
発明に基づく化合物との配合治療として包含される。
【0112】
これらに限定はされないが、非ステロイド系抗炎症剤及びコルチコステロイドを含む抗
炎症剤、抗ウイルス剤、及び免疫調節剤も同様に本発明の組成物中に配合される。2つ以
上を配合した化合物が一緒に又は逐次的に使われる。
【0113】
他の実施態様において、本発明の組成物は、最初の核酸を標的にする1つ以上の特にオ
リゴヌクレオチドのアンチセンス化合物、及び第2の核酸を標的にする付加的な1つ以上
のアンチセンス化合物を含む。2つ以上を配合した化合物が一緒に又は逐次的に使われる

【0114】
投与量
投与量は、治療する病状の重篤度と感応性、及び数日から数ヶ月間にわたる治療過程、
又は回復又は病気状態がなくなるまでの期間に依存する。最適な投薬計画は、患者体内の
薬剤蓄積量の測定から計算される。
【0115】
最適な投与量は、個別のオリゴヌクレオチドの相対力価によって変わる。一般に、それ
は生体外及び動物モデルの生体内実験で有効性が認められるEC50を基準に推定される
。概して、投与量は体重1kg当たり0.01μgから1gであり、1回以上を毎日、1
週間毎、1ヶ月毎又は1年毎、さらに2年から10年に1回、又は数時間から数ヶ月間の
連続注入で投与される。投与の繰返し率は、体液又は組織内の薬剤の滞留時間と濃度測定
結果に基づき推定される。治療に成功した後、病気の再発を防ぐために患者に維持療法を
受けさせることが望ましい。
【0116】
用途
本発明のLNA含有オリゴマー化合物は、診断薬、治療薬及び予防薬のための研究試薬
として使用することができる。研究では、アンチセンスオリゴヌクレオチドが細胞内及び
実験動物内のHIF−1α遺伝子合成の特異的阻害剤として使われ、それによって標的物
の機能解析又は治療的介入のための標的としての有用性評価が容易になる。診断薬におい
ては、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、細胞内及び組織内のHIF−1α発現をノー
ザンブロット法、ハイブリッド形成法又は類似の技術によって検出及び定量するために使
われる。治療薬としては、HIF−1α発現の調節により治療できる病気又は疾患の疑い
のある動物又はヒトが、本発明に基づくアンチセンス化合物の投与によって治療を受ける
。さらに、HIF−1α発現に伴う病気又は状態の疑いのある又はそれに罹りやすいヒト
の治療又は動物、特にマウス及びラットの治療に、治療的又は予防的に有効な量の1つ以
上の本発明のアンチセンス化合物又は組成物を投与する方法が提供される。
【0117】
方法
本発明の方法は、好ましくは、1つの病気によって引起こされる病気の治療又は予防の
ために利用される。本発明の1つの実施態様は、細胞又は組織内のHIF−1αの発現を
阻害する方法で、HIF−1αの発現が阻害されるように当該細胞又は組織を本発明の化
合物と接触することよりなる。さらに、他の実施態様は、病気に関与する遺伝子の発現を
調節する方法で、遺伝子のDNA又はRNAをオリゴマー化合物と接触させることからな
る。当該オリゴマー化合物は配列番号 2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、
12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、2
5、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38
、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、
52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、6
5、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78
、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、
92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、
104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、
114又は115の少なくとも8核酸塩基部分を含む配列を有し、それによって遺伝子発
現が調節される。これらの化合物は1つ以上のLNAユニットを含む。その化合物は遺伝
子のメッセンジャーRNAとハイブリッドを形成しその発現を阻害する。他の実施態様は
、癌疾患に罹っているか罹りやすい哺乳類の治療法で、HIF−1αを標的とし1個以上
のLNAユニットを含むオリゴヌクレオチドの治療的に有効な量を哺乳類に投与すること
からなる。上記記載の方法は子癇前症、炎症性腸疾患及びアルツハイマー病と同様、一般
の癌、例えば原発性及び転移性の乳癌、結腸直腸癌、前立腺癌、膵臓癌、他の胃腸癌、肺
癌、子宮癌、卵巣癌、脳腫瘍、頭頸部癌、子宮頸癌、大腸癌、肝臓癌、胸腺癌、腎臓癌、
睾丸腫瘍、胃癌、小腸癌、腸癌、食道癌、脊髄癌、血脈洞癌、膀胱癌、及び尿路癌などを
標的にすることができる。記載の方法は、赤血球増殖、細胞増殖、鉄代謝、グルコース及
びエネルギー代謝、pH制御、組織侵害、アポトーシス、多剤耐性、細胞ストレス応答又
は間充質代謝に関与すると同じように血管新生を調節する方法で、細胞が本発明の請求範
囲のアンチセンス化合物と接触し、その結果細胞が調節されることからなる。
【0118】
ここで述べた全ての文書が本明細書中に参照として取り込まれている。
【実施例】
【0119】
実施例
本発明が、いくつかの好ましい実施態様に従って特異性と共に記載される。それゆえに
、以下の実施例は、本発明を例示するためにのみ役立つものであって、これらに限定する
ことを意図するものではない。
【実施例1】
【0120】
モノマーの合成
Y及びXが−O−、及びZ及びZが保護されている−O−である、スキーム2に示し
たモノマーの製造が、文献に詳細に記載されている。Koshkinら、J.Org.C
hem.2001,66,8504−8512;Sorensenら、J.Am.Che
m.Soc.2002,124(10),2164−2176;Pedersenら、S
ynthesis,2002,6,802−809及びこれらに見出される引用文献に示
されている。ここにおいて、Z及びZの保護基は、それぞれ、オキシ−N,N−ジイソ
プロピル−O−(2−シアノエチル)ホスホロアミダイト及びジメトキシトリチルオキシ
である。Xが−O−で、Yが−S−及びN(CH)−であるスキーム2のモノマーの製
造が、Rosenbohmら、Org.Biomol.Chem.2003,1,655
−663に記載されている。
【実施例2】
【0121】
LNAオリゴヌクレオチド合成
全てのオリゴヌクレオチド合成は、MOSS Expedite機器プラットホームに
おいて1μモルスケールで実行される。合成手順は、本質的には機器のマニュアルに記載
されたようにして実行される。使用されたLNAモノマーは、Koshin,A.A.ら
、J.Org.Chem.2001,66,8504−8512に従って合成された。
【0122】
LNAスクシニルヘミエステルの調整
5’−O−Dmt−3’−ヒドロキシ−LNAモノマー500mg)、無水コハク酸(
1.2当量)及びDMAP(1.2当量)を、DCM(35ml)に溶解した。反応液を
一夜室温で撹拌した。NaHPO、0.1M、pH5.5(2回)及び食塩水(1回
)で抽出した後、有機層をさらに無水NaSOで乾燥し、濾過し、蒸発した。ヘミエ
ステル誘導体が収率95%で得られ、さらに精製することなく使用された。
【0123】
LNA−CPG樹脂の調製
上記で調製されたヘミエステル誘導体(90μモル)を、DMFの最小量に溶解し、D
IEA及びpyBOP(90μモル)を加え、共に1分間混合した。この前もって活性化
した混合物を手動合成機内で、LCAA−CPG(500Å、80−120メッシュ、3
00mg)と混合し、撹拌した。室温で1.5時間おいた後、支持体を濾過して除き、D
MF、DCM及びMeOHで洗浄した。乾燥後、充填物を定量した結果、57μモル/g
であった。
【0124】
ホスホロチオエートサイクル
CPG(多孔質ガラスビーズの固相担体、controlled pore glas
s)に結合した5’−O−Dmt[A(bz)、C(bz)、G(ibu)及びT]を、
ジクロロメタン溶液中の3(v/v)%トリクロロ酢酸を用いて脱保護した。樹脂をアセ
トニトリルで洗浄した。ホスホロアミダイト[A(bz)、G(ibu)、5−メチル−
C(bz)又はT−β−シアノエチルホスホロアミダイト]のカップリングは、アセトニ
トリル中5’−O−Dmt保護アミダイトの0.08M溶液を使用することによって実行
され、活性化は、アセトニトリル(0.25M)中DCI(4,5−ジシアノイミダゾー
ル)を使用することによって行われた。カップリングは2分間行われた。チオール化は、
Beaucage試薬(アセトニトリル中0.05M)を使用することによって実行され
、3分間反応させた。支持体をアセトニトリルで完全に洗浄し、続いてキャップ形成は、
無水酢酸のTHF溶液(CAP A)及びN−メチルイミダゾール/ピリジン/THF(
1:1:8)(CAP B)を用いて未反応の5’−ヒドロキシル基にキャップ形成した
。キャップ形成ステップを繰り返し、アセトニトリル洗浄でサイクルを終了した。
【0125】
LNAサイクル
CPG(controlled pore glass)に結合した5’−O−Dmt
[locA(bz)、locC(bz)、locG(ibu)又はlocT]を、上記と
同じ手順を用いて脱保護した。カップリングは、5’−O−Dmt[locA(bz)、
locC(bz)、locG(ibu)又はlocT]−β−シアノエチルホスホロアミ
ダイト(アセトニトリル中0.1M)を使用して実行され、活性化はDCI(アセトニト
リル中0.25M)によって行われた。カップリングは、7分間に延長された。キャップ
形成は、無水酢酸のTHF溶液(CAP A)及びN−メチルイミダゾール/ピリジン/
THF(1:1:8)の溶液(CAP B)を用いて30秒間行われた。亜リン酸トリエ
ステルは、I及びピリジンのTHF溶液を30秒間使用することによって、より安定な
リン酸トリエステルに酸化される。支持体は、アセトニトリルで洗浄され、キャッピング
ステップが繰り返される。サイクルは、アセトニトリル洗浄によって終了した。略語:D
mt:ジメトキシトリチル、DCI:4,5−ジシアノイミダゾール。
【0126】
オリゴヌクレオチド切断及び脱保護
オリゴマーは、支持体から切断され、β−シアノエチル保護基は、室温にて1時間、3
5%NHOHで支持体を処理することによって除かれた。支持体は、濾去され、塩基の
保護基は、65℃で4時間加熱することによって除かれた。次いで、オリゴ溶液が蒸発乾
固された。
【0127】
オリゴヌクレオチドの精製
オリゴ体は、(逆相)RP−HPLC又は(アニオン交換)AIEによって精製される

RP−HPLC:
カラム: VYDACTM、カタログNo.218TP1010(vydac)
流速: 3mL/分
バッファー: A 0.1M酢酸アンモニウム、pH7.6
B アセトニトリル
グラジエント:
時間 0 10 18 22 23 28
B% 0 5 30 100 100 0
IE:
カラム: ResourceTM15Q(Amersham Pharmacia Bi
otech社製)
流速: 1.2mL/分
バッファー: A 0.1M NaOH
B 0.1M NaOH、2.0M NaCl
グラジエント:
時間 0 1 27 28 32 33
B% 0 25 55 100 100 0
略語
Dmt: ジメトキシトリチル
DCI: 4,5−ジシアノイミダゾール
DMAP: 4−ジメチルアミノピリジン
DCM: ジクロロメタン
DMF: ジメチルホルムアミド
THF: テトラヒドロフラン
DIEA: N,N−ジイソプロピルエチルアミン
PyBOP: ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニ
ウムヘキサフルオロリン酸
Bz: ベンゾイル
Ibu: イソブチリル
Beaucage: 3H−1,2−ベンゾジチオール−3−オン−1,1−ジオキサイ

A(bz)、C(bz)、G(ibu)又はT:LNA−単量体(LNA:ロックされた
核酸)
【実施例3】
【0128】
細胞培養
アンチセンス化合物及び標的核酸の発現におけるそれらの効果は、標的核酸又はタンパ
ク質が測定し得るレベルにあるように供された細胞の種々の型の何れにおいても測定する
ことができる。これは、例えば、RT−PCR又はノーザン・ブロット又はウエスタンブ
ロット分析を用いて常法で測定することができる。以下の細胞型は、図示の目的のために
提供されるものであるが、しかし、その他の型も通常に使用することができる。ただし標
的が、選ばれた細胞型において発現されることが条件である。
【0129】
細胞株は、以下に記載されたようにして、適当な条件下で培養され、37℃、湿度95
−98%及び5%COで維持された。細胞は、通常、週2−3回継代された。
U87−MG:ヒト神経膠芽細胞腫細胞株U87−MGは、エール塩(Earle's salt)及
び10%ウシ胎仔血清(FCS)を含む改変イーグル培地(MEM)で培養された。
U373:ヒト神経膠芽細胞腫細胞株U373は、エール塩及び10%ウシ胎仔血清(F
CS)を含む改変イーグル培地(MEM)で培養された。
15PC3:ヒト前立腺癌細胞株15PC3は、Dr.F.Baas、Neurozin
tuigen Laboratory、AMC、オランダ国によって供与され、DMEM
(Sigma)+10%ウシ胎仔血清(FBS)+GlutamaxI+ゲンタマイシン
中で培養された。
【0130】
嫌気的細胞培養
低酸素条件下でのHIF発現の変化を監視するため、細胞を、化学的にOを結合する
ために加えたAnaerocult(Merck)と共にインキュベーションバッグ(M
erck)中で、0.1−1.5%のOレベルでの嫌気的条件下で培養した。嫌気的条
件は、1−2時間内に得られた。細胞を、6又は18時間、無酸素にした。
【実施例4】
【0131】
アンチセンスオリゴヌクレオチドでの処理
(上記した)細胞を、トランスフェクション伝達手段として陽イオン性リポソーム処方
LipofectAMINE2000(Gibco)を用いてオリゴヌクレオチドで処理
した。細胞を100mm×20mm細胞培養ペトリ皿(Corning)又は6穴プレー
ト(NUNC)に播種し、90%コンフルエントまで処理した。使用したオリゴ濃度は、
1nMから400nM最終濃度までの範囲であった。オリゴ−脂質複合体の処方は、無血
清MEM及び総容積6ml中5μg/mlの最終脂質濃度を用い、メーカーの指示書に従
って行った。細胞を、37℃、4又は24時間インキュベートし、オリゴ含有培地を除去
することによって処理を停止した。細胞を洗浄し、血清含有MEMを加えた。オリゴ処理
の後、細胞を6時間の低酸素処理する前18時間回復させるか、直接18時間の低酸素処
理した。
【実施例5】
【0132】
総RNAの抽出
総RNAは、RNeasyミニキット(例えば、QiagenカタログNo.7410
4)を使用するか、又はTrizol試薬(例えば、Life Technologie
sカタログNo.15596)を使用するか、のいずれかで単離された。細胞株からRN
Aを単離するために、RNeasyは好ましい方法であり、組織サンプルには、Triz
olは好ましい方法である。総RNAは、メーカーによって提供されたプロトコールに従
ってRNeasyミニキット(Qiagen)を使用して、細胞株から単離された。組織
サンプルは、UltraTurraxT8ホモジナイザー(例えば、IKA Analy
sen Technik)を使用してホモジナイズされ、総RNAは、メーカー提供のT
rizol試薬プロトコールを使用して単離された。
【実施例6】
【0133】
第一鎖cDNAの合成
第一鎖cDNAの合成は、メーカーの指示書に従ってOmniScript逆転写酵素
キット(カタログ#205113、Qiagen)を使用して実施された。各サンプルに
つき、総RNA0.5μgを、RNaseフリーHOで各12μlに調節し、ポリ(d
T)12−18(2.5μg/ml)(Life Technologies,Gibc
oBRL,Roskilde,DK)2μl、dNTPmix(dNTP各5mM)2μ
l、10×バッファRT2μl、RNAguardTMRnaseINHIBITOR(
33.3U/ml)(カタログ#27−0816−01、Amersham Pharm
acia Biotech,Hoersholm,DK)1μl、及びOmniScri
pt逆転写酵素(4U/μl)1μlと混合し、次いで、37℃、60分のインキュベー
ション及び酵素の加熱不活化を93℃、5分間行った。
【実施例7】
【0134】
HIF−1α発現のアンチセンス調節の解析
HIF−1α発現のアンチセンス調節は、公知の種々の方法でアッセイすることができ
る。例えば、HIF−1αmRNAレベルは、ノーザン・ブロット法、拮抗ポリメラーゼ
連鎖反応(PCR)、又はリアルタイムPCRによって定量化することができる。リアル
タイム定量PCRが、現在では好ましい。RNA分析は、総細胞RNA又はmRNAにつ
いて実行することができる。
【0135】
RNA分離の方法及びノーザン・ブロット法のようなRNA分析は、通常の技術であり
、例えば、Current Protocols in Molecular Biol
ogy,John Wiley and Sonsに教示されている。
【0136】
リアルタイム定量(PCR)は、市販のiQ多色リアルタイムPCR検出システム(B
ioRADより入手可能)を使用して都合よく実行することができる。
【0137】
Ha−ras mRNAレベルのリアルタイム定量PCR分析
mRNAレベルの定量化は、メーカーの指示書に従って、iQ多色リアルタイムPCR
検出システム(BioRAD)を使用するリアルタイム定量PCRによって決定された。
【0138】
リアルタイム定量PCRは、周知技術であり、例えば、Heidら、Real tim
e quantitative PCR、Genome Research(1996)
,6:986−994に教示されている。
【0139】
プラチナ定量PCRスーパーミックスUDG2×PCRマスターミックスは、Invi
trogenカタログ#11730から得られた。プライマー及びTaqManTMプロ
ーブは、MWG−Biotech AG,Ebersberg、ドイツから得られた。
【0140】
ヒトHIF−1αに対するプローブ及びプライマーは、公開されている配列情報(Ge
nBankアクセスナンバーNM_00135、ここにおいて配列番号1として取込まれ
ている)を使用してヒトHa−ras配列にハイブリダイズするように設計された。
【0141】
ヒトHIF−1αに対するPCRプライマーは:
前進プライマー:5’CTCATCCAAGAAGCCCTAACGTGTT3’(アッ
セイにおける最終濃度:0.9μM)(配列番号116)、逆行プライマー:5’GCT
TTCTCTGAGCATTCTGCAAAGC3’(アッセイにおける最終濃度:0.
9μM)(配列番号117)、及びPCRプローブは:5’FAM−CCTCAGGAA
CTGTAGTTCTTTGACTCAAAGCGACA−TAMRA3’ (アッセイ
における最終濃度:0.1μM)(配列番号118)であった。
【0142】
グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)mRNA量は、サン
プル調製における変動を正常化するための内部対照として使用された。ヒトGAPDH・
mRNAのサンプル含量は、メーカーの指示書に従って、ヒトGAPDH ABI Pr
ism Pre−Developed TaqManアッセイ試薬(Applied B
iosystemsカタログNo.4310884E)を使用して定量された。
【0143】
マウスGAPDH・mRNAの定量用に、以下のプライマー及びプローブが設計された
:センスプライマー5’aaggctgtgggcaaggtcatc3’(最終濃度0
.3μM)、アンチセンスプライマー5’gtcagatccacgacggacaca
tt(最終濃度0.6μM)、TaqManプローブ5’FAM−gaagctcact
ggcatggcatggccttccgtgttc−TAMRA3’ (最終濃度0.
2μM)。
【0144】
リアルタイムPCR
実施例8に記載されたようにして実行された第一鎖合成からのcDNAは、2から20
回希釈され、リアルタイム定量PCRによって分析された。プライマー及びプローブを、
2×プラチナ定量PCRスーパーミックスUDG(カタログ#11730、Invitr
ogen)と混合し、最終容積25μlになるようcDNA3.3μlを加えた。各サン
プルは、三回分析された。関係するRNAを発現する細胞株から精製された材料について
調製されたcDNAの2倍希釈をアッセイして、アッセイ用標準曲線を作成した。滅菌水
が、鋳型のない対照としてcDNAの代わりに使用された。PCRプログラム:50℃2
分、95℃10分その後続いて95℃で40サイクル、15秒、60℃、1分。
【0145】
標的mRNA配列の相対量は、iCycler iQリアルタイム検出システムソフト
ウエアを使用して計算された閾サイクルから決定された。
【実施例8】
【0146】
HIF−1αタンパク質レベルのウェスタンブロット分析
HIF−1αタンパク質レベルは、免疫沈降、ウェスタンブロット分析(免疫ブロッテ
ィング)、ELISA、RIA(ラジオイムノアッセイ)又は蛍光標示式細胞分取(FA
CS)のような、周知技術の種々の方法で定量することができる。HIF−1α指向の抗
体は、Upstate Biotechnologies(Lake Placid,U
SA)、Novus Biologicals(Littleton, Colorad
o)、 Snata Cruz Biotechnology(Santa Cruz,
California)のような、種々のソースから同定され、得ることができ、又は通
常の抗体生成法により調製することができる。
【0147】
HIF−1αに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドでの処理効果を計るために、処
理及び非処理細胞におけるHIF−1αのタンパク質レベルを、ウェスタンブロット法を
用いて測定した。
【0148】
上に記載したようにオリゴヌクレオチドで処理後、細胞をゴム製ポリスマンで、プロテ
アーゼインヒビター、フェニルメチルフッ化スルホニル(PMSF)を0.37mg/m
l含有する氷冷リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に掻き取ることによって収得した。
【0149】
収得した細胞は、上に記載したようなPMSF含有PBS1mlで洗浄し、細胞ペレッ
トを−80℃で冷凍して保存した。
【0150】
タンパク質の抽出には、凍結細胞ペレットを、3倍量の氷冷した溶解バッファ[50m
Mトリス、pH7.5、150mM・NaCl、1%Non−idet P40(Np−
40)、0.1%SDS、1%(w/v)デオキシコール酸ナトリウム、1mMジチオト
レイトール(DTT)、完全タンパク質阻害剤カクテル(Complete prote
in inhibitor cocktail、Boehringer Mannhei
m)]に溶解した。サンプルをVibraCell50ソニケーター(Sonics&M
aterials Inc.)にて、5−10秒、2−3回超音波処理した。溶解物は使
用時まで−80℃で貯蔵された。
【0151】
タンパク質溶解物のタンパク濃度を、メーカーの指示書の通りにBCAタンパク質アッ
セイキット(Pierce)を用いて測定した。
【0152】
SDSゲル電気泳動
上記により調製されたタンパク質サンプルを、氷で解凍後、10分間70℃で変性した

【0153】
サンプルを1.0mmの10%NuPageBis−Trisゲル(NOVEX)に負
荷し、ゲルを、XcellIIミニセル電気泳動モジュール(NOVEX)を使用したタ
ンパク質を所望の分離をするために、NuPage MES SDS Running
Buffer又はNuPage MOPS SDS Running Buffer(両
者ともNOVEX)のいずれかのランニングバッファ中で泳動処理した。
【0154】
電気泳動モジュールの内部チャンバーに、NuPageAntioxidant(NO
VEX)をランニングバッファに、最終濃度が2.5μl/mlになるよう加えた。サイ
ズの対照標準として、SeeBluePlus2PrestainedStandard
(Invitrogen)をゲルに負荷した。電気泳動は、160V、2時間行った。
【0155】
セミドライブロッティング
電気泳動後、分離されたタンパク質を、セミドライブロッティングによってポリ二フッ
化ビニリデン(PVDF)膜に転移した。膜に吸着されるまで、膜をNuPageTra
nsferBufferで平衡化させた。ブロッティング処理は、メーカーの指示書に従
ってTrans−blotSDSemi−Dry転移細胞(BioRAD)中で行われた
。膜を、次の使用まで4℃で保存した。
【0156】
免疫検出
所望のタンパク質を検出するために、膜をタンパク質に対するポリクローナル又はモノ
クローナル抗体とインキュベートした。膜を、ブロッキングバッファ[TSバッファ(1
50mMNaCl、10mMトリス塩基、pH7.4)に溶解した2.5%脱脂乳粉末及
び5%BSA]で、1時間撹拌してブロックした。次いで、膜を室温にてTSバッファで
2×15分洗浄し、0.1%NaNを含むTS−Tween20バッファ中、4℃にて
一夜、一次抗体とともにインキュベートした。以下の一次モノクローナル抗体及び濃度/
希釈が使用された:マウス抗Glut1(T.Ploug,The Panum Ins
titute,Copenhagenより入手)1:20、マウス抗HIF−1α(H7
2320、Transduction Laboratories)1μg/ml、マウ
ス抗α−チューブリン(T−9026,Sigma)1:10,000。一次抗体とイン
キュベーションの後、膜をTS−Tween20バッファで15分洗浄し、次いで室温で
撹拌しつつ各5分間の2回追加洗浄を行った。引き続いて、膜を、二次抗体、ペルオキシ
ダーゼ共役ポリクローナルヤギ抗マウス免疫グロブリン(P0447,DAKO A/S
)、の1:5000希釈で、室温にて1時間インキュベートした。次いで、膜をTS−T
ween20バッファで15分間洗浄し、さらに撹拌しつつ室温で5分間の3回追加洗浄
を行った。最終洗浄の後、膜を、ECLPlus(Amersham)で5分間インキ
ュベートし、引き続いてSTORM840(Molecular Dynamics I
nc.)で直ちにスキャンした。膜を除去バッファ(stripping buffer
)(100mMの2−メルカプトエタノール、2%のSDS、62.5mMのトリス塩基
)pH6.7で、50℃、30分間低撹拌のインキュベーションによって除去処置をした
。室温で2×10分間、TS−Tween20バッファで洗浄後、膜を乾燥し、プラスチ
ックバッグに封入して、4℃で保存した。タンパク質発現レベルを、ImageQuan
t、ver5.0ソフトウエア(MolecularDynamics Inc.)を使
用して、ハウスキーピングタンパク質の発現に関して定量した。
【実施例9】
【0157】
オリゴヌクレオチドによるヒトHIF−1α発現のアンチセンス阻害
本発明に従って、一連のオリゴヌクレオチドが、公開されている配列(GenBank
アクセスNo.NM_001530、ここにおいて配列番号1及び図7として取入れられ
ている)を用いて、ヒトHIF−1αRNAの異なった領域を標的とするために設計され
た。長さ16ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドが表1に示され、配列番号を有している
。オリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドとして、特にLNA又はホス
ホロチオエートなどのような人工ヌクレオチドを使用して合成されたとき、とくに効力が
あるように設計されている。「標的部位」は、オリゴヌクレオチドが結合している特定の
標的配列上の第一のヌクレオチド番号を指している。化合物は、ここで他の実施例におい
て記載されているようにウエスタンブロット分析によるHIF−1αタンパク質に対する
効果について解析された。
【0158】
【表1】





【0159】
本実験において、HIF−1α発現の少なくとも20%阻害を示した配列が好ましい(
図1−9も参照せよ)。これら好ましい配列が相補性である標的部位は、ここにおいて、
「ホットスポット」と呼び、それゆえに、本発明の化合物によって標的とされるに好まし
い部位である。
【実施例10】
【0160】
ホスホロチオエート、オリゴヌクレオチドを含有するLNA、又は少なくとも一つのL
NAセグメント及び少なくとも一つのホスホロチオエートセグメントを有するキメラオリ
ゴヌクレオチドによるHIF−1αのアンチセンス阻害
本発明に従って、アンチセンスオリゴヌクレオチドの第二シリーズも合成された(表2
)。これらの化合物シリーズは、完全修飾ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド、完全
修飾LNAオリゴヌクレオチド、又は二つの異なった部位を標的とする長さが16ヌクレ
オチドのキメラオリゴヌクレオチドである。キメラオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオ
エート(PS)から構成される領域で、一方又は両方の部位でLNAセグメントに隣接し
ている領域からなる、「ギャップマー」(GM)、「ヘッドマー」(WM5)又は「テー
ルマー」(WM3)である。これらの領域はオキシLNAヌクレオチドからなる。オリゴ
ヌクレオチドには蛍光色素(FAM)で標識されたものもある。ミスマッチオリゴヌクレ
オチドもまた設計された(MM)。オキシ−LNAの全てのシトシンは核酸塩基のC5部
位でメチル化されている。化合物は、他の実施例に記載のようにウェスタンブロット分析
によってHIF−1αタンパク質レベルに対する効果が分析された。「標的部位」は、オ
リゴヌクレオチドが結合する特定の標的配列での第一のヌクレオチド番号を示している。
【0161】
表2.ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド、LNA含有オリゴヌクレオチド、又は
1つ又は2つのLNAセグメント及び一つのホスホロチオエートセグメントを有するキメ
ラオリゴヌクレオチドによるヒトHIF−1αタンパク質レベルの阻害(特に指示しない
限り主鎖結合はP=Oである。s:P=S結合、小文字:デオキシ核酸、大文字:オキシ
LNA)。
【0162】
【表2】

【0163】
表2及び図1−6に示したように、配列番号89−104の大部分は、本実験において
HIF−1α発現の少なくとも20%阻害を実証した、そして、それゆえに好ましいもの
である。これら好ましい配列が相補性である標的部位は、ここでは「ホットスポット」と
呼ばれ、それゆえに本発明の化合物による標的として好ましい部位である。
【実施例11】
【0164】
HIF−1αを標的とするオリゴマー化合物のインビボにおける有効性
ヌードマウスにおける腫瘍異種移植片の増殖に対するオリゴヌクレオチド治療の効果が
、異なった腫瘍細胞株を使用して測定することができる。そのような細胞株の例としては
、ヒト腫瘍細胞株U87(神経膠芽細胞腫)、U373(神経膠芽細胞腫)、15PC3
(前立腺癌)及びCPH54A(小細胞肺癌)、及びネズミ腫瘍細胞株B16(メラノー
マ)がある。
【0165】
LNA含有オリゴを使用したヌードマウスにおける皮下腫瘍異種移植片の治療
腫瘍細胞を皮下移植し、次いで3連続移植による連続継代した。腫瘍断片1mmを、N
MRIヌードマウスにトロカール針を使って皮下に移植した。別に、癌細胞を典型的には
、マトリゲル(BD Bioscience)300μlに懸濁した10細胞をNMR
Iヌードマウスのわき腹に皮下注射した。
【0166】
マウスは、種々の投与量、最大投与量5mg/kg/日、でオリゴヌクレオチドを腹腔
内投与もしくは皮下注射によって、又は皮下移植したALZET浸透圧ポンプを使用して
28日まで、5mg/kg/日まで投与することによって、治療された。マウスの個々の
治療は、腫瘍容積が50mmに達したときに開始した。対照群の平均腫瘍容積が50m
に達したときに、PBSでの治療が開始された。実験は、いずれかの群の腫瘍が最大
許容容積に達したときに、終了された。全てのマウスの腫瘍サイズは、ノギスでの測定に
よって毎日測定された。治療効果は、腫瘍サイズ及び腫瘍増殖率として測定された。オリ
ゴヌクレオチド治療マウスは、最後のオリゴヌクレオチド注射後24時間に処分した。
【0167】
治療期間の最後に、マウスを麻酔し、腫瘍を摘出して、直ちに液体窒素で凍結し、標的
分析とした。
【0168】
結果:U373異種移植片腫瘍を持ったマウスは、Cur813(配列番号97)の5
mg/kg/日、一日一回7日間、腹腔内(i.p.)投与、又はPBSの100μl/
10g/日、一日一回7日間、腹腔内(i.p.)投与、で治療された。各群、5匹のマ
ウスが治療された。腫瘍評価は、上記に概説したようにして実行された。腫瘍増殖曲線は
図9に示される。
【0169】
腫瘍サイズの比較(t検定)
日 P値
4 0.0477
5 0.0156
6 0.0354
7 0.0461
カプラン・マイヤー解析
最終結果: 腫瘍サイズ150mm
群 No. 打ち切り 結果 平均生存日数
PBS 5 0 5 5
Cur813 5 1 4 7
生存分布の同等性についてのログランク検定: P=0.0138
【0170】
LNA含有オリゴを使用したヌードマウスにおける頭蓋内腫瘍異種移植片の治療
腫瘍細胞を、NMRIヌードマウスに頭蓋内移植し、オリゴヌクレオチド治療を移植後
1週間に開始する。マウスを、オリゴヌクレオチドの種々の投与量、最大投与量2mg/
kgの腹腔内又は皮下注射で、又はPBS投与によって治療する。治療回数は、対照群に
おける腫瘍増殖によって決められる。実験は、いずれかの群の腫瘍が最大許容サイズに達
するか、又はいずれかの群において死亡が確実になるときに終了される。治療効果は、慢
性神経損傷に至るまでの時間として測定される。オリゴヌクレオチド治療マウスは、最終
オリゴヌクレオチド注射後24時間に殺処分される。
【実施例12】
【0171】
インビトロ解析:アンチセンスオリゴヌクレオチドのインビボ全身治療において増殖し
たヒト腫瘍細胞でのHIF−1αタンパク質レベルの阻害
腫瘍を、溶解バッファ[20mMトリスC1(pH7.5);2%TritonX−1
00;1/100容プロテアーゼインヒビターカクテルセットIII(Calbioch
em);1/100容プロテアーゼインヒビターカクテルセットII(Calbioch
em)]中で、4℃にてモーター駆動ホモジナイザーを使用してホモジナイズした。腫瘍
組織100mg当たり溶解バッファ500μlを適用した。腫瘍溶解物を、13,000
Gで5分間、4℃にて遠心分離し、組織砕片を分離した。腫瘍抽出物のタンパク質濃度は
、BCAタンパク質アッセイ試薬キット(Pierce,Rockford)を使用して
測定された。標的タンパク質発現のウェスタンブロット分析は、実施例8に記載されたよ
うにして実行された。
【0172】
本発明は、ある種のその好適な実施態様に従って特異的に記載された。それゆえに、以
下の例は、本発明の例示に過ぎず、それのみに限定することを意図するものではない。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載のオリゴヌクレオチド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【公開番号】特開2009−189372(P2009−189372A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125880(P2009−125880)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【分割の表示】特願2003−582288(P2003−582288)の分割
【原出願日】平成15年4月4日(2003.4.4)
【出願人】(504013269)サンタリス ファーマ アー/エス (29)
【氏名又は名称原語表記】SANTARIS PHARMA A/S
【出願人】(508018141)エンゾン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】