説明

HIVに対する免疫のためのgp120と、Nef及び/又はTatを含むワクチン

【課題】 本発明は、HIVに対するヒトの予防用又は治療用免疫のためのワクチンを提供することに関する。
【解決手段】
本発明は、HIVに対するヒトの予防用又は治療用免疫のための初回免疫−追加免疫送達に適したワクチンの製造における、
a)HIV Tatタンパク質若しくはポリヌクレオチド;又は
b)HIV Nefタンパク質若しくはポリヌクレオチド;又は
c)HIV Nefタンパク質若しくはポリヌクレオチドと結合したHIV Tatタンパク質若しくはポリヌクレオチド;
及びHIV gp120タンパク質若しくはポリヌクレオチド、
の使用であって、上記タンパク質若しくはポリヌクレオチドがボンバートメント手法により送達される、上記使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HIVタンパク質の新規な医薬用途及びかかるHIVタンパク質を含有するワクチン組成物に関する。特に本発明は、HIV Tatタンパク質とHIV gp120タンパク質の組み合わせの使用に関する。さらに本発明は、HIV Nefタンパク質とHIV gp120タンパク質の組み合わせの使用に関する。本発明はまた、HIV Tat及び/又はNefをコードするDNA(以下、Tat DNA及び/又はNef DNAという)、HIV gp120をコードするDNA(以下、gp120 DNAという)、並びにかかるDNAを含むベクターに関する。本発明は特に、粒子ボンバートメント手法を用いた初回免疫−追加免疫計画におけるタンパク質及び/又はDNAの投与に関する。
【背景技術】
【0002】
HIV−1は、世界の主な健康問題の1つとされている後天性免疫不全症候群(AIDS)の主因である。ワクチンを作製するために世界中で広範な研究が行われてきたが、このような努力は未だ成功を収めていない。
【0003】
HIVのエンベロープ糖タンパク質gp120は、宿主細胞への付着のために使用されるウイルスタンパク質である。この付着は、ヘルパーT細胞及びマクロファージの2つの表面分子(これらは、CD4、及び2つのケモカイン受容体CCR−4又はCXCR−5のうちの1つとして知られるものである)に結合することによって媒介される。gp120タンパク質は、はじめに大きな前駆分子(gp160)として発現された後、翻訳後切断されてgp120及びgp41を生じる。gp120タンパク質は、gp41分子との結合によりビリオンの表面上に保持され、ウイルス膜の中に挿入される。
【0004】
gp120タンパク質は、中和抗体の主な標的であるが、残念なことに、そのタンパク質の最も免疫原性の高い領域(V3ループ)は、そのタンパク質の最も可変な部分でもある。従って、中和抗体を誘導するためのワクチン抗原としてのgp120(又はその前駆体であるgp160)の使用は、防御範囲の広いワクチンとしての使用に限定されると考えられる。gp120タンパク質は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)により認識されるエピトープも含む。これらのエフェクター細胞は、ウイルス感染細胞を排除することができるので、2番目に重要な抗ウイルス性免疫機構を構成する。中和抗体の標的領域とは対照的に、幾つかのCTLエピトープは、異なるHIV株の間で比較的保存されているようである。このため、gp120及びgp160は、細胞性免疫応答(特にCTL)を引き出すことを目的としたワクチンにおける有用な抗原性成分であると考えられる。
【0005】
HIV−1の非エンベロープタンパク質が記載されており、例えばgag遺伝子やpol遺伝子の産物などの内部構造タンパク質、並びにRev、Nef、Vif及びTatなどの他の非構造タンパク質等が挙げられる(非特許文献1、Greeneら, New England J. Med, 324,5,308以下参照(1991)、及び非特許文献2、Bryantら(Pizzo編), Pediatr. Infect. Dis. J., 11, 5, 390以下参照(1992))。
【0006】
HIV Tat及びNefタンパク質は初期タンパク質である。つまり、これらは感染初期に、構造タンパク質の不在下で発現される。
【0007】
非特許文献3、学会発表(C. David Pauza, Immunization with Tat toxoid attenuates SHIV89.6PD infection in rhesus macaques, 12th Cent Gardes meeting, Marnes-La-Coquette, 26.10.1999)において、アカゲザル(rhesus macaques)を、Tatトキソイド単独又はエンベロープ糖タンパク質gp160との組み合わせの組み合わせワクチン(1用量の組換えワクシニアウイルスと1用量の組換えタンパク質)で免疫した実験が記載されている。しかしながら、観察結果は、エンベロープ糖タンパク質の存在は、Tat単独で行った実験よりも利点はなかったことを示していた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Greeneら, New England J. Med, 324,5,308 et seq(1991)
【非特許文献2】Bryantら(Pizzo編), Pediatr. Infect. Dis. J., 11, 5, 390 et seq(1992)
【非特許文献3】C. David Pauza, Immunization with Tat toxoid attenuates SHIV89.6PD infection in rhesus macaques, 12th Cent Gardes meeting, Marnes-La-Coquette, 26.10.1999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、本発明者は、キメラヒト−サル免疫不全ウイルス(SHIV)による病原体の攻撃からのアカゲサルの防御において、Tat及び/又はNef含有免疫原(特にNef−Tat融合タンパク質)がgp120と相乗的に作用することを見出した。現在まで、アカゲザルのSHIV感染は、ヒトAIDSの最も関連性のある動物モデルと考えられている。従って、本発明者は、gp120抗原、並びにNef及びTat含有抗原を単独又は組み合わせで含有するワクチンの防御効力を評価するためにこの前臨床モデルを使用した。ウイルス感染症と病原性の2つのマーカーの分析、すなわち末梢血におけるCD4陽性細胞率(%)及びサルの血漿における遊離SHIV RNAゲノムの濃度は、2つの抗原が相乗的に作用していることを示した。gp120又はNef Tat+SIV Nefのいずれか単独で免疫した場合には、アジュバント単独で免疫した場合と比較して差異はなかった。対照的に、gp120とNef Tat+SIV Nefの抗原を組み合わせて投与することにより、特定の実験群の動物全てにおいて上記2つのパラメーターが顕著に改善された。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述したように、NefTatタンパク質、SIV Nefタンパク質及びgp120タンパク質は一緒に、NefTat+SIV Nef又はgp120を単独で使用する場合に観察される応答よりも強力な応答を生じる。この強力な応答又は相乗作用は、これらの組み合わせタンパク質によるワクチン接種の結果として、ウイルス負荷の低減に観察されうる。あるいは又はさらに、強力な応答はそれ自体として、HIV NefTat、SIV Nef及びHIV gp120でのワクチン接種の不在下で観察されるレベルを超えたCD4+レベルの維持により現れる。この相乗作用は、gp120とTatの組み合わせ、又はgp120とNefの組み合わせ、あるいはgp120とNef及びTatの両方の組み合わせにより生じる。
【0011】
Nef、Tat又はNefTatタンパク質をgp120タンパク質と組み合わせる又は共に投与することだけが有利なわけではないことが見出されている。Nef、Tat又はNefTatをコードするDNAをgp120(タンパク質又は対応するDNA)と共に投与した場合に同様に利点があることがわかっている。
【0012】
上記タンパク質、又は上記タンパク質をコードするDNAは、初回免疫−追加免疫手法により投与することが有利であり得ることが見出されている。一態様において、本発明は、ボンバートメント手法による上記のような投与に関する。従って本発明は、HIVに対するヒトの予防用又は治療用免疫のための初回免疫−追加免疫送達に適したワクチンの製造における、
a)HIV Tatタンパク質若しくはポリヌクレオチド;又は
b)HIV Nefタンパク質若しくはポリヌクレオチド;又は
c)HIV Nefタンパク質若しくはポリヌクレオチドと結合したHIV Tatタンパク質若しくはポリヌクレオチド;
及びHIV gp120タンパク質若しくはポリヌクレオチド、
の使用を提供し、上記タンパク質若しくはポリヌクレオチドは、ボンバートメント手法により送達される。
【0013】
粒子ボンバートメント手法を行うための多数の方法が知られている。例えば、WO91/07487号を参照されたい。1つの例においては、ガスにより駆動される粒子加速を、Powderject Pharmaceuticals PLC(Oxford, UK)及びPowderject Vaccines Inc.(Madison, WI)により製造された装置などを用いて行うことができ、その例が、米国特許第5,846,796号、同第6,010,478号、同第5,865,796号、同第5,584,807号、及びEP特許第0500 799号に記載されている。これは、ポリヌクレオチドなどの物質でコーティングされた微粒子の乾燥粉末製剤を、手持ち式装置により発生したヘリウムガス気流内で高速に加速し、目的の標的組織(典型的には皮膚)中に粒子を推進させる、針を使用しない送達手法である。粒子は、好ましくは直径0.4〜4.9μm、より好ましくは0.6〜2.0μmの金ビーズであり、ポリヌクレオチド、好ましくはDNAをこれら粒子にコーティングした後、「遺伝子ガン」に導入するためのカートリッジ内に入れる。
【0014】
他のHIVタンパク質又はそれらをコードするDNAの添加は、さらに相乗的効果を増強させうるものであり、これは、gp120とTat及び/又はNefとの間で観察されている。これらの他のタンパク質は、完全な元の抗原の組み合わせの存在を必要とせずに、gp120、Tat及び/又はNef含有ワクチンの個々の成分と相乗的に作用しうる。別のタンパク質は、HIVの調節タンパク質、例えばRev、Vif、Vpu及びVprなどでありうる。これらはまた、HIV gag又はpol遺伝子から誘導された構造タンパク質である。
【0015】
HIV gag遺伝子は前駆体タンパク質p55をコードし、このp55は自発的に集合して未成熟なウイルス様粒子(VLP)となることができる。次にこの前駆体はタンパク質分解によって主たる構造タンパク質p24(キャプシド)及びp18(マトリックス)並びに幾つかのより小さなタンパク質へと切断される。前駆体タンパク質p55並びにその主要な誘導体p24及びp18の両方が、gp120とTat及び/又はNefとの間で観察された相乗効果をさらに高め得る適当なワクチン抗原であると考えられる。前駆体p55及びキャプシドタンパク質p24は、VLPとして又は単量体タンパク質として用い得る。
【0016】
本発明において使用するためのHIV Tatタンパク質は、場合により、例えば融合タンパク質としてHIV Nefタンパク質と結合させてもよい。
【0017】
本発明において用いるためのHIV Tatタンパク質、HIV Nefタンパク質、又はNefTat融合タンパク質は、好ましくは5〜10のヒスチジン残基を含むC末端ヒスチジンテールを有してもよい。ヒスチジン(すなわち「His」)テールの存在によって、精製が容易になる。
【0018】
好適な実施形態において、これらのタンパク質は、5〜10個、好ましくは6個のヒスチジン残基を含むヒスチジン・テールを有して発現される。これらは、精製を助けるのに有利である。酵母(サッカロミセス・セレビシエ)内でのNef(Macreadie I.G.ら, 1993, Yeast 9 (6) 565-573)及びTat(Braddock Mら, 1989, Cell 58 (2) 269-79)の分離発現が報告されている。Nefタンパク質、並びにGagタンパク質p55及びp18はミリストイル化されている。ピヒア発現系におけるNef及びTatの別々の発現(Nef−His及びTat−His構築物)、並びに融合構築物Nef−Tat−Hisの発現は、国際公開第WO99/16884号に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】Nef−His;Tat−His;Nef−Tat−His融合体及び変異型TatのDNA及びアミノ酸配列を示す。
【図1B】Nef−His;Tat−His;Nef−Tat−His融合体及び変異型TatのDNA及びアミノ酸配列を示す。
【図1C】Nef−His;Tat−His;Nef−Tat−His融合体及び変異型TatのDNA及びアミノ酸配列を示す。
【図1D】Nef−His;Tat−His;Nef−Tat−His融合体及び変異型TatのDNA及びアミノ酸配列を示す。
【図1E】Nef−His;Tat−His;Nef−Tat−His融合体及び変異型TatのDNA及びアミノ酸配列を示す。
【図1F】Nef−His;Tat−His;Nef−Tat−His融合体及び変異型TatのDNA及びアミノ酸配列を示す。
【図1G】Nef−His;Tat−His;Nef−Tat−His融合体及び変異型TatのDNA及びアミノ酸配列を示す。
【図1H】Nef−His;Tat−His;Nef−Tat−His融合体及び変異型TatのDNA及びアミノ酸配列を示す。
【図2】pRIT14597組込みベクターのマップを示す。
【図3】SDS−PAGE(Nef−Tat−his融合タンパク質)を示す。
【図4】SDS−PAGE(Nef−Tat−his融合タンパク質)を示す。
【図6】SDS−PAGE分析(還元条件;14%ポリアクリルアミドプレキャストゲル−Novex)を示す。
【図7】SDS−PAGE分析(4〜20%ポリアクリルアミドプレキャストゲル−Novex)を示す。
【図8】SDS−PAGE分析(4〜20%ポリアクリルアミドプレキャストゲル−Novex)を示す。
【図9】SDS−PAGE分析(還元条件;14%ポリアクリルアミドプレキャストゲル−Novex)を示す。
【図10】SDS−PAGE分析(還元条件;14%ポリアクリルアミドプレキャストゲル−Novex)を示す。
【図11】pRIT14908組込みベクターのマップを示す。
【図12】ピヒア発現SIV−NEF−Hisタンパク質の配列を示す。
【図13】組換えピヒア・パストリスSIV/NEF発現株のクーマシーブルー染色SDS−PAGEを示す。
【図14】サル試験1(SHIVによる免疫前及び後のPBMCにおけるCD4陽性細胞の分析)の結果を示す。
【図15】サル試験1(SHIVによる免疫後のSHIV血漿ウイルス負荷の分析)の結果を示す。
【図16】サル試験2(SHIVによる免疫前及び後のPBMCにおけるCD4陽性細胞の分析)の結果を示す。
【図17】サル試験2(SHIVによる免疫後のSHIV血漿ウイルス負荷の分析)の結果を示す。
【図18】293T細胞抽出物において検出されたNef、並びに細胞抽出物及び上清培地中のgp120のレベルを示すウエスタンブロットを示す。
【図19】293T細胞抽出物において検出されたNef、及び上清中のgp120のレベルを示すウエスタンブロットを示す。
【図20】プラスミドマップを示す。
【図21】gp120のコドン最適化及び配列決定のためのオリゴ、最適化gp120の配列決定用プライマー、及び野生型gp120の配列決定用プライマーを示す。
【図22】p7313のマップを示す。
【図23】抗原のための典型的な発現プラスミドを示す。
【図24】追加免疫後5日目においてIFNγELIspotにより測定した、免疫感作F1(Balb/c×C3H)マウスのgp120ペプチドに対する応答を示す。
【図25】追加免疫後5日目においてIFNγELIspotにより測定した、20merのNefペプチドライブラリーに対する応答を示す。
【図26】追加免疫後7日目においてIFNγELIspotにより測定した、免疫感作Balb/cマウスのgp120ペプチドプールに対する応答を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
代表的なNef−His(配列番号8及び9)、Tat−His(配列番号10及び11)、及びNef−Tat−His融合タンパク質(配列番号12及び13)のDNA及びアミノ酸配列を図1に示す。
【0021】
HIVタンパク質は、その天然のコンホメーションで用いることができ、又はより好ましくはワクチン用途のために改変してもよい。これらの改変は、精製方法に関連する技術的理由のために必要であるか、又はTat若しくはNefタンパク質の1以上の機能的性質を生物学的に不活化するために用い得る。従って、本発明は、例えば、変異型でありうるHIVタンパク質又はポリヌクレオチド、特にDNAの誘導体の使用を包含する。「変異型」という用語は、部位特異的突然変異誘発のための周知の技法又は任意の他の慣用法を用いて得られる、1以上のヌクレオチド又はアミノ酸の欠失、置換又は付加を有するDNA又はタンパク質分子を意味する。
【0022】
例えば、変異型Tatタンパク質は、生物学的に不活性であるが、それでもなお免疫原性エピトープを維持するように変異させうる。D.Clements(Tulane University)により構築された1つの可能性ある変異型tat遺伝子(BH10分子クローンに由来する)は、活性部位領域(Lys41→Ala)及びRGDモチーフ(Arg78→Lys及びAsp80→Glu)に変異を有する(Virology 235: 48-64, 1997)。
【0023】
変異型Tatを図1(配列番号22及び23)に記載するが、これはNef−Tat Mutant−His(配列番号24及び25)と同じである。
【0024】
本発明において使用するためのHIV Tat又はNefタンパク質は、そのタンパク質を安定かつ単量体にするために、精製過程において化学的方法により修飾してもよい。Tat又はNefなどのタンパク質の酸化的凝集を防ぐための1つの方法においては、タンパク質のチオール基の化学的修飾を利用する。最初のステップでは、DTT、βメルカプトエタノール又はグルタチオンなどの還元剤を用いた処理によってジスルフィド架橋を還元する。第2ステップでは、生じたチオールをアルキル化剤を用いた反応によりブロッキングする(例えば、タンパク質をヨードアセトアミドと反応させうる)。かかる化学的修飾は、細胞結合アッセイ、ヒト末梢血単核球のリンパ増殖の阻害により評価されるTat又はNefの機能的性質を改変するものではない。
【0025】
本発明がまた、少なくとも1つの免疫原性エピトープを含むことを条件に全長タンパク質のフラグメントの使用も包含することは理解されるだろう。
【0026】
HIV Tatタンパク質及びHIV gp120タンパク質は、本明細書の実施例に概説した方法により精製しうる。
【0027】
本発明において使用するためのTat及び/若しくはNef、又はNefTatと、gp120成分(タンパク質又はDNA)の免疫防御量又は免疫治療量は、慣例的な方法により調製しうる。
【0028】
ワクチンの調製は、New Trends and Developments in Vaccines, Vollerら編, University Park Press, Baltimore, Maryland, U.S.A. 1978に一般的に記載されている。リポソーム中へのカプセル封入は、例えばFullertonの米国特許第4,235,877号に記載されている。高分子へのタンパク質の結合は、例えばLikhiteの米国特許第4,372,945号及びArmorらの米国特許第4,474,757号に開示されている。
【0029】
ワクチン用量中のタンパク質の量は、通常のワクチン被接種者において重大かつ有害な副作用を引き起こすことなく免疫防御応答を誘導する量として選択される。このような量は、具体的にどの免疫原を使用するかによって異なる。一般に、各用量は、Tat、Nef又はNefTatの各タンパク質を1〜1000μg、好ましくは2〜200μg、最も好ましくは4〜40μg含み、gp120を好ましくは1〜150μg、最も好ましくは2〜25μg含むと予測される。特定のワクチンに対して最適な量は、被験者における抗体力価及び他の応答の観察を含む標準的な検査によって確かめることができる。ワクチン用量の1つの具体的な例は、NefTat20μgとgp120の5又は20μgを含みうる。最初のワクチン接種を行った後、被験者に約4週間で追加免疫を行うことができ、その後2回目の追加免疫を行ってもよい。
【0030】
本発明のタンパク質は、好ましくは本発明のワクチン製剤においてアジュバントが添加されているものである。本発明において用いられるポリヌクレオチドは、場合によりアジュバントを使用してもよく、アジュバントと共に製剤として、又はアジュバントとは別々であるが同時に若しくは連続して送達することができる。アジュバントは、一般的にはVaccine Design − the Subunit and Adjuvant Approach, Powell及びNewman編, Plenum Press, New York, 1995に記載されている。
【0031】
好適なアジュバントとしては、アルミニウム塩、例えば水酸化アルミニウムゲル(ミョウバン)又はリン酸アルミニウムが挙げられるが、カルシウム、鉄又は亜鉛の塩であってもよいし、あるいは、アシル化チロシン、若しくはアシル化糖、カチオン又はアニオンに誘導体化した多糖、又はポリホスファゼン(polyphosphazene)の不溶性懸濁液であってもよい。
【0032】
本発明において使用するためのワクチン製剤においては、アジュバント組成物が選択的なTh1応答を誘導することが好ましい。しかしながら、他の応答(例えば他の体液性応答)を排除するものではないことが理解されよう。
【0033】
免疫応答は、抗原と免疫系細胞との相互作用により抗原に対して生じる。生じる免疫応答は、2つの極端なカテゴリー、つまり体液性免疫応答又は細胞性免疫応答(伝統的に、防御のための抗体によるエフェクター機能及び細胞によるエフェクター機構をそれぞれ特徴とする)に大きく分けることができる。これらの応答のカテゴリーは、Th1型応答(細胞媒介性応答)及びTh2型免疫応答(体液性応答)と名付けられている。
【0034】
極端なTh1型免疫応答は、抗原特異的なハプロタイプ拘束性細胞傷害性Tリンパ球の産生及びナチュラルキラー細胞応答を特徴とする。マウスにおいて、Th1型応答はしばしばIgG2aサブタイプの抗体の生成を特徴とするが、ヒトにおいては、これらはIgG1型抗体に相当する。Th2型免疫応答は、マウスにおけるIgG1、IgA及びIgMを含む広範囲の免疫グロブリンアイソタイプの生成を特徴とする。
【0035】
これら2つのタイプの免疫応答の生起の背後にある駆動力はサイトカイン(免疫系細胞を補助し、結果として生じる免疫応答をTh1又はTh2応答のいずれかに導く働きをする、多数の同定されたタンパク質メッセンジャー)であると考えられる。高レベルのTh1型サイトカインは、所与の抗原に対する細胞性免疫応答の誘導を促進する傾向があるが、高レベルのTh2型サイトカインは、抗原に対する体液性免疫応答の誘導を促進する傾向がある。
【0036】
Th1型及びTh2型免疫応答の区別は絶対的なものではないことに留意することが重要である。現実には、個体は、Th1型優位又はTh2型優位といわれる免疫応答を保持する。しかし、Mosmann及び Coffman(Mosmann, T.R. and Coffman, R.L. (1989) TH1 and TH2 cells: different patterns of lymphokine secretion lead to different functional properties. Annual Review of Immunology, 7, p145-173)によりマウスCD4+ve T細胞クローンの場合に記載された観点で、サイトカインのファミリーを考慮することがしばしば便利である。伝統的に、Th1型応答は、Tリンパ球によるINF−γサイトカインの産生と関連付けられている。Th1型免疫応答の誘導としばしば直接関連付けられる他のサイトカインは、IL−12等のT細胞によって産生されない。これに対し、Th2型応答は、IL−4、IL−5、IL−6、IL−10及び腫瘍壊死因子−β(TNF−β)の分泌と関連付けられている。
【0037】
特定のワクチンアジュバントはTh1型若しくはTh2型のいずれかのサイトカイン応答の刺激に特に適していることが分かっている。伝統的に、ワクチン接種後又は感染後の免疫応答のTh1:Th2バランスを最も良く示す指標としては、抗原で再刺激した後にin vitroでのTリンパ球によるTh1若しくはTh2サイトカインの産生を直接測定すること、及び/又は抗原特異的抗体反応のIgG1:IgG2a比を測定すること、が挙げられる。
【0038】
このように、Th1型アジュバントは、単離されたT細胞集団を、in vitroにて抗原で再刺激したときに高レベルのTh1型サイトカインを産生するよう刺激して、Th1型アイソタイプに関連付けられる抗原特異的免疫グロブリン反応を誘導するものである。
【0039】
好ましいTh1型免疫刺激剤は、本発明に使用するのに好適なアジュバントを生成するように製剤化されていてもよく、限定するものではないが以下が挙げられる。
【0040】
モノホスホリルリピドA、特に3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D−MPL)は、本発明において用いるための好ましいTh1型免疫刺激剤である。3D−MPLはRibi Immunochem(Montana)により製造される周知のアジュバントである。化学的にはこれは3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドAと4−、5−若しくは6−アシル化鎖との混合物として供給されることが多い。これは、GB2122204Bに教示される方法により精製及び調製することができ、この文献は、ジホスホリルリピドA及びその3−O−脱アシル化変異体の調製も開示している。他の精製及び合成リポ多糖類が記載されている(米国特許第6,005,099号及びEP0 729 473B1;Hilgersら, 1986, Int.Arch.Allergy.Immunol., 79(4):392-6;Hilgersら, 1987, Immunology, 60(1):141-6;並びにEP0 549 074B1)。3D−MPLの好適な形態は、直径0.2μm未満の小さな粒径を有する粒状製剤の形態であり、その製造方法はEP0 689 454に開示されている。
【0041】
サポニンはまた、本発明において好ましいTh1免疫刺激剤である。サポニンは周知のアジュバントであり、Lacaille−Dubois,M及びWagner H.(1996. A review of the biological and pharmacological activities of saponins. Phytomedicine vol 2 pp 363-386)に教示されている。例えば、QuilA(南米の樹木キラハ・サポナリア・モリナ(Quillaja Saponaria Molina)の樹皮から得られる)及びその画分は、米国特許第5,057,540号、「Saponins as vaccine adjuvants」 Kensil, C. R., Crit Rev Ther Drug Carrier Syst, 1996, 12 (1-2): 1-55、及びEP0 362 279B1に記載されている。溶血性サポニンQS21及びQS17(QuilAをHPLCで精製した画分)は、強力な全身性アジュバントとして記載されており、それらの製造方法は米国特許第5,057,540号及びEP0 362 279B1に開示されている。これらの参考文献には、全身性ワクチンのための強力なアジュバントとして作用するQS7(QuilAの非溶血性画分)の使用も記載されている。QS21の使用は、Kensilら(1991. J. Immunology vol 146, 431-437)にさらに記載されている。またQS21とポリソルベート又はシクロデキストリンとの組み合わせが知られている(WO99/10008号)。QuilAの画分を含む粒子アジュバント系(QS21及びQS7など)はWO96/33739号及びWO96/11711号に記載されている。
【0042】
別の好ましい免疫刺激剤は、非メチル化CpGジヌクレオチド(CpG)を含む免疫刺激性オリゴヌクレオチドである。CpGは、DNAに存在するシトシン−グアノシンジヌクレオチドモチーフの略称である。CpGは、当技術分野においては、全身及び経粘膜経路の両方により投与した場合にアジュバントとして知られている(WO96/02555号、EP468520号、Davisら, J.Immunol, 1998, 160(2):870-876;McCluskie及びDavis, J.Immunol., 1998, 161(9):4463-6)。従来、BCGのDNA画分が抗腫瘍作用を発揮しうることが観察されていた。さらなる研究においては、BCG遺伝子配列から誘導された合成オリゴヌクレオチドが免疫刺激作用を誘導しうる(in vitro及びin vivoの両方で)ことが示された。これらの研究の著者は、中心のCGモチーフを含む特定のパリンドローム配列がこの活性を担っていると結論付けている。免疫刺激におけるCGモチーフの中心的な役割は、後にKrieg, Nature 374, p546 1995による刊行物において解明された。詳細な分析により、CGモチーフが特定の配列に存在する必要があり、その配列が細菌DNAでは共通するが哺乳動物DNAでは稀少であることが示された。免疫刺激性配列は、プリン、プリン、C、G、ピリミジン、ピリミジン(ここでCGモチーフはメチル化されてない)であることが多いが、他の非メチル化CpG配列も免疫刺激性であることが知られており、本発明において用いることができる。
【0043】
上記6ヌクレオチドの特定の組み合わせにおいては、パリンドローム配列が存在する。これらのモチーフのいくつかは、1つのモチーフの繰返し又は異なるモチーフの組み合わせのいずれかとして、同じオリゴヌクレオチドに存在しうる。オリゴヌクレオチドを含む1以上のこれらの免疫刺激性配列の存在が、ナチュラルキラー細胞(インターフェロンγを産生し、細胞溶解活性を有する)及びマクロファージ(Wooldrigeら、Vol 89 (no. 8), 1977)を含む種々の免疫細胞集団を活性化しうる。このコンセンサス配列を含まない他の非メチル化CpG含有配列もまた免疫調節性であることが示されている。
【0044】
CpGはワクチンとして製剤化される場合、一般に、遊離抗原と一緒にした(WO96/02555号、McCluskie及びDavis(前掲))又は抗原に共有結合させた(WO98/16247号)自由溶液(free solution)として、あるいは水酸化アルミニウム等の担体と一緒に製剤化して((Hepatitis surface antigen) Davisら(前掲); Brazolot-Millanら, Proc.Natl.Acad.Sci., USA, 1998, 95(26), 15553-8)、投与される。
【0045】
上述したような免疫刺激剤は、担体、例えばリポソーム、水中油型エマルジョン又は金属塩(例えばアルミニウム塩(水酸化アルミニウムなど))と共に製剤化しうる。例えば、3D−MPLは、水酸化アルミニウム(EP0 689 454)又は水中油エマルジョン(WO95/17210号)と共に製剤化しうる。QS21は、コレステロール含有リポソーム(WO96/33739号)、水中油型エマルジョン(WO95/17210号)又はミョウバン(WO98/15287号)と共に製剤化することが有利でありうる。CpGは、ミョウバン(Davisら、前掲;Brazolot-Millan 前掲)又は他のカチオン性担体と共に製剤化しうる。
【0046】
免疫刺激剤の組み合わせもまた好ましく、特にモノホスホリルリピドAとサポニン誘導体(WO94/00153号;WO95/17210号;WO96/33739号;WO98/56414号;WO99/12565号;WO99/11241号)、さらに具体的には、QS21と3D−MPLの組み合わせ(WO94/00153号)が好ましい。あるいは、CpGとサポニン(QS21など)の組み合わせもまた本発明において使用するための強力なアジュバントを形成する。
【0047】
従って、好適なアジュバント系としては、例えば、モノホスホリルリピドA、好ましくは3D−MPLとアルミニウム塩との組み合わせが挙げられる。強力な系は、モノホスホリルリピドAとサポニン誘導体の組み合わせ、特にQS21と3D−MPLとの組み合わせ(WO94/00153号に記載)、又は、QS21がコレステロール含有リポソームにおいてクエンチされている反応原性の低い組成物(DQ;WO96/33739号に記載)を含む。
【0048】
水中油型エマルジョン中にQS21、3D−MPL及びトコフェロールを含む特に効力の高いアジュバント製剤は、WO95/17210号に記載されており、これは本発明において使用するための別の好ましい製剤である。
【0049】
別の好ましい製剤は、CpGオリゴヌクレオチドを単独で又はアルミニウム塩と共に含む。
【0050】
特に好ましいアジュバント及び/又は担体の組み合わせは以下のとおりである:
i)3D−MPL+DQ中のQS21
ii)ミョウバン+3D−MPL
iii)ミョウバン+DQ中のQS21+3D−MPL
iv)ミョウバン+CpG
v)3D−MPL+DQ中のQS21+水中油型エマルジョン
vi)CpG
【0051】
既に記載したように、ワクチンは、1以上のTat、Nef及びgp120ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、好ましくはDNAを含むことができ、そのポリペプチドはin situで生成される。
【0052】
DNA構築物自体、特に本明細書に記載ものもまた、本発明の一部を構成するものである。
【0053】
ポリヌクレオチドは、当業者に公知の種々の送達系、例えば核酸発現系(例えばプラスミドDNA、細菌及びウイルス発現系)の任意のものに存在させることができる。多数の遺伝子送達技法が当技術分野で周知であり、Rolland, Crit. Rev. Therap. Drug Carrier Systems 15:143-198, 1998及びこれに引用される参考文献(参照により本明細書に組み入れる)に記載された技法がある。
【0054】
プラスミドに基づく遺伝子送達は、特に免疫感作又は遺伝子治療の目的のための遺伝子送達が知られている。例えば、マウス筋肉への注射によるDNAそのままの投与がVicalの国際特許出願第WO90/11092号に概説されている。
【0055】
Johnstonら(WO91/07487号)は、目的の遺伝子をコードするポリヌクレオチドでコーティングし、微粒子が標的細胞を透過するよう微粒子を加速するマイクロ弾道を利用して、遺伝子を哺乳動物細胞に移入する方法を記載している。
【0056】
DNAワクチンは、通常、強力なウイルスプロモーター、抗原ペプチドをコードする目的遺伝子、及びポリアデニル化/転写終結配列が挿入された細菌プラスミドベクターから構成される。目的遺伝子は、全長タンパク質、種々の抗原を含む融合タンパク質、又は単に防御しようとする目的の病原体、腫瘍若しくは他の因子に関連する抗原ペプチド配列をコードするものである。従って、プラスミドは、全長タンパク質の少なくとも1つの免疫原性エピトープを含むことを条件に全長タンパク質のフラグメントをコードするものであってもよい。プラスミドは、細菌、例えば大腸菌で増殖させることができ、その後、単離し、宿主への投与前に、意図する投与経路に応じて適当な媒質中で調製しうる。投与後、宿主細胞によりプラスミドが取り込まれ、そこでコードされたペプチドが産生される。プラスミドベクターは、哺乳動物宿主においてプラスミドが複製し、動物の染色体DNA内に組み込まれることを防止するため、真核細胞において機能する複製起点を含まないよう作製することが好ましい。これらの特徴は全て単独で又は組み合わせて本発明に適用しうる。
【0057】
典型的なワクチン技法に関連するDNAワクチン接種の利点はいくつかある。第1には、DNA配列によりコードされるタンパク質が宿主において合成されるため、該タンパク質の構造又はコンホメーションは疾患状態に関連する天然タンパク質と類似することが予測される。また、DNAワクチン接種は、保存されたタンパク質に由来するエピトープを認識する細胞傷害性Tリンパ球応答を引き起こすことにより、種々のウイルス株に対する防御を付与する可能性もある。さらに、プラスミドは宿主細胞によって取り込まれ、そこで抗原タンパク質が産生されるため、長期間持続する免疫応答が誘発されうる。この技術はまた、いくつかの疾患状態に関連する同時免疫感作を行うために単一調製物中に多様な免疫原を組み合わせることの可能性を提供しうる。
【0058】
DNAワクチン接種に関連する有用な背景情報は、Donnellyら“DNA vaccines” Ann. Rev Immunol. 1997 15: 617-648に記載されており、この開示内容を参照によりその全文を本明細書に含めるものとする。
【0059】
好ましい一実施形態においては、DNAは、粒子ボンバートメント手法、例えば、上述した「遺伝子ガン」手法により送達しうる。
【0060】
適当な核酸発現系は、患者における発現に必要なDNA配列(適当なプロモーター及び終結シグナル等)を含む。発現系が、ウイルスや細菌等の組換え生微生物である場合、目的の遺伝子は組換え生ウイルス又は組換え生細菌のゲノムの中に挿入することができる。この生ベクターを接種及びin vivo感染させると、その抗原のin vivo発現及び免疫応答の誘導につながる。この目的で使用されるウイルス及び細菌としては、例えばポックスウイルス(例えばワクシニアウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、又は、改変型ウイルスアンカラ(Modified Virus Ankara;MVA)等の改変型ポックスウイルス)、アルファウイルス(シンドビスウイルス、セムリキ森林熱ウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、フラビウイルス(黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、日本脳炎ウイルス)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ピコルナウイルス(ポリオウイルス、ライノウイルス)、ヘルペスウイルス(水痘-帯状疱疹ウイルス等)、リステリア、サルモネラ、赤痢菌、ナイセリア、BCGなどが挙げられる。これらのウイルス及び細菌は、有毒なものであってもよいし、生ワクチンを得るために様々な方法で弱毒化されたものであってもよい。
【0061】
従って、本発明に係る好ましいワクチンのNef、Tat及びgp120成分は、所望のタンパク質をコードするポリヌクレオチド又は組換えDNAの形態で提供しうる。本発明において使用するポリヌクレオチドは、全長タンパク質、種々の抗原を含む融合タンパク質、又は1以上の抗原ペプチド配列をコードしうる。従って、ポリヌクレオチドは、全長タンパク質の少なくとも1つの免疫原性エピトープを含むという条件で全長タンパク質のフラグメントをコードするものであってもよい。
【0062】
Nef、Tat、NefTat又はgp120のDNAの少なくとも1つは、例えば、Andre S. Seed B. Eberle J. Schraut W. Bultmann A. Haas J. (1998): Increased immune response elicited by DNA vaccination with a synthetic gp120 sequence with optimized codon usage, Journal of Virology. 72(2):1497-503に記載のようにコドン最適化されていることが好ましい。一つの好ましい態様において、gp120をコードするDNAをコドン最適化する。
【0063】
コドン最適化は、哺乳動物細胞における発現のためにポリヌクレオチド配列を最適化するために用いる。すなわち、哺乳動物細胞における遺伝子のコドン使用頻度と類似するように配列が最適化される。
【0064】
本発明の一実施形態において、Nef、Tat、NefTat又はgp120ポリヌクレオチド配列は、高発現哺乳動物遺伝子、特にヒト遺伝子のコドン使用頻度パターンと類似するコドン使用頻度パターンを有する。好ましくは、ポリヌクレオチド配列はDNA配列である。望ましくは、ポリヌクレオチド配列のコドン使用頻度パターンは、高発現ヒト遺伝子に典型的なものである。
【0065】
DNAコードは4文字(A、T、C及びG)あり、これらを用いて3文字の「コドン」を形成する。これらの「コドン」は、生物の遺伝子中にコードされるタンパク質のアミノ酸を表す。DNA分子に沿ったコドンの直鎖状配列は、これらの遺伝子によりコードされるタンパク質(1種若しくは複数)の中のアミノ酸の直鎖状配列に翻訳される。このコードは高度に縮重しており、61種類のコドンは20種類の天然アミノ酸をコードし、3種類のコドンは「停止」シグナルを表す。このように、多くのアミノ酸は2種類以上のコドンによってコードされる。事実、幾つかのアミノ酸は4つ以上の異なるコドンによってコードされる。
【0066】
所与のアミノ酸をコードするために2種類以上のコドンが利用される場合、生物のコドン使用頻度パターンは、常にランダムにあるわけではないことが分かった。種が異なると、そのコドン選択は異なった偏りを見せ、更に、単一の種において高レベルで発現される遺伝子と低レベルで発現される遺伝子との間では、コドンの利用が大きく異なる場合がる。この偏りは、ウイルス、植物、細菌、及び哺乳動物細胞において異なるものであり、幾つかの種は、他の種に比べて、ランダムなコドン選択とはかけ離れた非常に大きな偏りを見せる。例えば、ヒト及び他の哺乳動物は、ある種の細菌又はウイルスに比べて偏りが少ない。これらの理由により、大腸菌中で発現される哺乳動物遺伝子又は哺乳動物細胞中で発現されるウイルス遺伝子が効率の良い発現に適さないコドン分布を有する、という可能性が大いにある。異種DNA配列の中に、発現が起こる宿主において稀にしか見られないコドンからなるクラスターが存在すると、その宿主中において異種遺伝子の発現レベルが低くなる可能性が高い、と予想される。
【0067】
本発明のポリヌクレオチドにおいて、コドン使用頻度パターンは、ヒト免疫不全ウイルスに典型的なものから標的生物(例えば哺乳動物、特にヒト)のコドン偏りとより類似したものに改変する。「コドン使用頻度係数」とは、所定のポリヌクレオチド配列のコドンパターンが標的種のものとどの程度近似して類似しているかを表す尺度である。コドン頻度は、多くの種の高発現遺伝子についての文献群から導きうる(例えば、Nakamuraら、Nucleic Acids Research 1996, 24:214-215参照)。61種のコドンの各々についてのコドン頻度(選択した遺伝子クラスの1000コドン当たりの発生数として表す)を、20種の天然アミノ酸の各々について正規化する。その結果、各アミノ酸について最も高頻度に使用されるコドンの値を1と設定し、最も低い共通コドンの頻度を0〜1の間に存在するよう比率を設定する。従って、61種のコドンの各々が、標的種の高発現遺伝子について1又はそれ以下の値を割り当てられる。ある種の高発現遺伝子に関して特定のポリヌクレオチドについてコドン使用頻度係数を計算するために、特定のポリヌクレオチドの各コドンについて一定比率の値を記録し、これらの値全ての幾何平均を求める(これらの値の自然対数の合計をコドンの総数で割り、逆対数をとる)。係数は、0〜1の値を有し、係数が高いほど、ポリヌクレオチドにおける高頻度に使用されるコドン数が多い。ポリヌクレオチド配列がコドン使用頻度係数1を有する場合には、コドンは全て、標的種の高発現遺伝子について「最も高頻度な」コドンである。
【0068】
本発明においては、ポリヌクレオチドのコドン使用頻度パターンは、標的生物の高発現遺伝子におけるアミノ酸についてコドン使用頻度が10%未満を示す稀少コドンを排除することが好ましい。別の好ましい実施形態において、ポリヌクレオチドは、標的生物の高発現遺伝子における0.2未満のRSCU値を有するコドンを排除しうる。比較的同義のコドン使用頻度(RSCU)値は、観察されたコドン数を全コドンがそのアミノ酸について同じ頻度で使用される場合に予測される数で割った値である。本発明のポリヌクレオチドは、高発現ヒト遺伝子のコドン使用頻度係数が0.3以上、好ましくは0.4以上、最も好ましくは0.5以上を有するものである。ヒトについてのコドン使用頻度表はGenebankで見出し得る。
【0069】
比較すると高発現βアクチン遺伝子はRSCUが0.747である。ホモ・サピエンスのコドン使用頻度表を以下に示す。
【0070】
コドン使用頻度表:
Homo sapiens [gbpri]: 27143 CDS (12816923コドン)
標準コドン使用頻度表

フィールド:[トリプレット] [1000当たりの頻度] ([数])

UUU 17.0(217684) UCU 14.8(189419) UAU 12.1(155645) UGU 10.0(127719)
UUC 20.5(262753) UCC 17.5(224470) UAC 15.8(202481) UGC 12.3(157257)
UUA 7.3( 93924) UCA 11.9(152074) UAA 0.7( 9195) UGA 1.3( 16025)
UUG 12.5(159611) UCG 4.5( 57572) UAG 0.5( 6789) UGG 12.9(165930)

CUU 12.8(163707) CCU 17.3(222146) CAU 10.5(134186) CGU 4.6( 59454)
CUC 19.3(247391) CCC 20.0(256235) CAC 14.9(190928) CGC 10.8(137865)
CUA 7.0( 89078) CCA 16.7(214583) CAA 12.0(153590) CGA 6.3( 80709)
CUG 39.7(509096) CCG 7.0( 89619) CAG 34.5(441727) CGG 11.6(148666)

AUU 15.8(202844) ACU 12.9(165392) AAU 17.0(218508) AGU 12.0(154442)
AUC 21.6(277066) ACC 19.3(247805) AAC 19.8(253475) AGC 19.3(247583)
AUA 7.2( 92133) ACA 14.9(191518) AAA 24.0(308123) AGA 11.5(147264)
AUG 22.3(285776) ACG 6.3( 80369) AAG 32.6(418141) AGG 11.3(145276)

GUU 10.9(139611) GCU 18.5(236639) GAU 22.4(286742) GGU 10.8(138606)
GUC 14.6(187333) GCC 28.3(362086) GAC 26.1(334158) GGC 22.7(290904)
GUA 7.0( 89644) GCA 15.9(203310) GAA 29.1(373151) GGA 16.4(210643)
GUG 28.8(369006) GCG 7.5( 96455) GAG 40.2(515485) GGG 16.4(209907)

コードGC 52.51% 第1文字GC 56.04% 第2文字GC 42.35% 第3文字GC 59.13%.
【0071】
本発明のさらなる態様においては、発現ベクターは、本発明の第1の態様に従ってNef及び/若しくはTat又はNefTatと、gp120ポリヌクレオチド配列を含み、該配列の発現を指令可能なように提供され、特に、Nef、Tat、NefTat又はgp120ポリヌクレオチド配列、特にgp120配列の少なくとも1つのコドン使用頻度パターンが、高発現哺乳動物遺伝子、好ましくは高発現ヒト遺伝子に典型的なものとなっている。ベクターは、哺乳動物細胞、特にヒト細胞において異種DNAの発現を駆動するために好適である。一実施形態において、発現ベクターはp7313(図22参照)である。
【0072】
さらなる態様において、本発明は、gp120と、nef及び/若しくはtat又はneftatをコードする1以上のベクターを含むDNAでコーティングされた複数の粒子(好ましくは金ビーズ)を提供する。好ましくは、粒子は、gp120と、nef及びtatをコードする単一ベクターでコーティングされ、最も好ましくはnefとtatがNefTat融合タンパク質の形態である。最も好ましくは、上記配列の1以上がヒト細胞での発現のためにコドン最適化されている。
【0073】
好ましい態様において、nef、tat及びgp120をコードするDNAは単一ベクター上に存在する。
【0074】
好ましくは、ベクターは、効率的な発現のために強化HCMV IE1プロモーターの3’側に挿入されたnef、tat及びgp120配列を含む。これは、好ましくはイントロンAを含まないがエキソン1を含むHCMV極初期プロモーターである。
【0075】
本発明に係る1つの好適なベクターは、さらに後述するp7313と称するものである。
【0076】
本明細書に記載のヌクレオチド配列を含むベクターは、予防又は治療上有効となるような量で投与される。投与する量は、一般的には、本明細書に記載する粒子媒介送達については1ピコグラムから1ミリグラム、好ましくは1ピコグラムから10マイクログラムの範囲内である。正確な量は、免疫しようとする患者の体重、及び正確な投与経路に応じて異なり得る。
【0077】
本発明の免疫は、タンパク質及びDNAをベースとした製剤の組合せを用いて実施することができる。アジュバントを加えたタンパク質ワクチンは、主に抗体及びTヘルパー免疫応答を誘導するが、プラスミド若しくは生ベクターとしてDNAを送達すると、強力な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答が誘導される。このように、タンパク質及びDNAワクチン接種の組合せは、様々な免疫応答をもたらす。これは特に、HIVの場合に関して言えることである。なぜなら、HIVに対する免疫防御では、中和抗体及びCTLの両方が重要であると考えられるからである。
【0078】
DNAは、プラスミドDNAとして又は組換え生ベクター(例えばポックスウイルスベクター、若しくは本明細書に記載するような他の任意の好適な生ベクター)の形態で送達しうる。タンパク質抗原を1回又は複数回注射し、その後1回以上DNAを投与することができ、あるいは、DNAを最初に1回以上投与した後、1回以上タンパク質で免疫してもよい。
【0079】
本発明の初回免疫−追加免疫の具体的な例は、改変ポックスウイルスベクターなどの組換え生ベクター、例えば改変ウイルスアンカラ(MVA)又は継代若しくは遺伝子操作によるその誘導体、又はアルファウイルスベクター(例えばベネズエラウマ脳炎ウイルス)の形態でのDNAの初回免疫、続いて、タンパク質、好ましくはアジュバント添加タンパク質を用いた追加免疫を含む。場合により、当技術分野で公知の好適なDNAワクチンアジュバントをDNAに添加してもよい。
【0080】
本発明はさらに、予防又は治療用免疫方法を提供し、該方法は、初回免疫−追加免疫送達において、以下:
a)HIV Tatタンパク質若しくはポリヌクレオチド;又は
b)HIV Nefタンパク質若しくはポリヌクレオチド;又は
c)HIV Nefタンパク質若しくはポリヌクレオチドと結合したHIV Tatタンパク質若しくはポリヌクレオチド;
及びHIV gp120タンパク質若しくはポリヌクレオチドを含む組成物を、その必要がある被験者に投与することを含むものであり、該タンパク質若しくはポリヌクレオチドは、ボンバートメント手法により送達される。
【0081】
さらなる態様において、本発明は、a)本明細書に記載のgp120と、nef及び/若しくはtat又はneftatをコードするDNAでコーティングされた複数の粒子を含む組成物、並びにb)本明細書に記載のgp120と、nef及び/若しくはtat又はneftatのDNA又はタンパク質を含む組成物(ここで、b)のDNA又はタンパク質は粒子上にコーティングされていない)を含む、少なくとも2種のワクチン組成物を含むキットを提供する。
【0082】
(実施例)
本発明の以下の実施例及び添付の図面において説明する。
【0083】
一般
本実験の構築物のために、Bru/Lai単離物由来のNef遺伝子(Cell 40:9-17, 1985)を選択した。この遺伝子がコンセンサスNefに最も密接に関連するものだからである。
【0084】
Bru/Lai Nef遺伝子の出発材料は、哺乳動物発現ベクターpcDNA3にクローニングした1170bpのDNA断片(pcDNA3/Nef)であった。
【0085】
Tat遺伝子はBH10分子クローンに由来する。この遺伝子をpCV1と呼ばれるHTLV III cDNAとして入手した。これはScience, 229, p69-73, 1985に記載されている。
【0086】
Nef及びTat遺伝子は、ピヒア属又は他の任意の宿主で発現させることができた。
【実施例1】
【0087】
ピヒア・パストリスにおけるHIV−1 nef及びtat配列の発現
Nefタンパク質、Tatタンパク質及び融合Nef−Tatを、誘導性アルコールオキシダーゼ(AOX1)プロモーターの制御下にメチロトローフ酵母ピヒア・パストリスで発現させた。
【0088】
これらのHIV−1遺伝子を発現させるために、改変型の組込みベクターPHIL−D2(INVITROGEN)を用いた。このベクターを、異種タンパク質の発現がAOX1遺伝子の天然ATGコドンの直後から始まり、そして1個のグリシン及び6個のヒスチジン残基のテールを有する組換えタンパク質を産生するように改変した。このPHIL−D2−MODベクターを、PHIL−D2ベクターに隣接するAsuII部位とEcoRI部位の間にオリゴヌクレオチドリンカーをクローニングすることによって構築した(配列番号26及び27を含む図2参照)。Hisテールに加えて、このリンカーはNcoI、SpeI及びXbaI制限部位を有し、これらの間にnef、tat及びnef−tat融合体を挿入した。
【0089】
1.1 組込みベクターpRIT14597(Nef−Hisタンパク質をコードする)、pRIT14598(Tat−Hisタンパク質をコードする)及びpRIT14599(Nef−Tat−His融合体をコードする)の構築
nef遺伝子を、PCRによってプライマー01及び02を用いてpcDNA3/Nefプラスミドから増幅した。
【0090】

【0091】
得られたPCR断片及び組込みベクターPHIL−D2−MODを、両方ともNcoI及びSpeIで制限消化し、アガロースゲル上で精製し、連結して組込みプラスミドpRIT14597を作製した(図2参照)。
【0092】
tat遺伝子を、PCRによってプライマー05及び04を用いてpCV1プラスミドの誘導体から増幅した:

【0093】
NcoI制限部位をPCR断片の5’末端に導入した一方で、SpeI部位を3’末端にプライマー04を用いて導入した。得られたPCR断片及びPHIL−D2−MODベクターを、両方ともNcoI及びSpeIで制限消化し、アガロースゲル上で精製し、連結して組込みプラスミドpRIT14598を作製した。
【0094】
pRIT14599を構築するために、nef−tat−Hisコード配列に相当する910bpのDNA断片を、PHIL−D2−MODベクターの平滑化EcoRI(T4ポリメラーゼ)及びNcoI部位間で連結した。pRIT14596の平滑化XbaI(T4ポリメラーゼ)及びNcoI消化によって、nef−tat−Hisコード断片を得た。
【0095】
1.2 ピヒア・パストリス株GS115(his4)の形質転換
Nef−His、Tat−His及び融合Nef−Tat−Hisを発現するピヒア・パストリス株を得るために、それぞれの発現カセット及びHIS4遺伝子を有する線状NotI断片を用いて、株GS115を形質転換し、宿主ゲノム中のhisを補完した。NotI線状断片によるGS115の形質転換は、AOXI座での組換えを容易にする。
【0096】
複数コピー組込みクローンを定量ドットブロット分析によって選択し、そして組込み、挿入(Mut表現型)又は転位(transplacement;Mut表現型)の種類を決定した。
【0097】
各形質転換体から、組換えタンパク質の高産生レベルを示す1つの形質転換体を選択した。
【0098】
Nef−Hisタンパク質を産生する株Y1738(Mut表現型)、以下を含む215アミノ酸のミリスチル化タンパク質:
o ミリスチン酸
o PHIL−D2−MODベクターのNcoIクローニング部位を用いて作製した1個のメチオニン
o Nefタンパク質の205アミノ酸(アミノ酸2から始まり、アミノ酸206まで伸びる)
o クローニング手順(PHIL−D2−MODベクターのSpeI部位でのクローニング)によって作製した1個のスレオニン及び1個のセリン
o 1個のグリシン及び6個のヒスチジン。
【0099】
Tat−Hisタンパク質を産生する株Y1739(Mut表現型)、以下を含む95アミノ酸のタンパク質:
o NcoIクローニング部位を用いて作製した1個のメチオニン
o Tatタンパク質の85アミノ酸(アミノ酸2から始まり、アミノ酸86まで伸びる)
o クローニング手順によって導入した1個のスレオニン及び1個のセリン
o 1個のグリシン及び6個のヒスチジン。
【0100】
組換えNef−Tat−His融合タンパク質を産生する株Y1737(Mut表現型)、以下を含む302アミノ酸のミリスチル化タンパク質:
o ミリスチン酸
o NcoIクローニング部位を用いて作製した1個のメチオニン
o Nefタンパク質の205アミノ酸(アミノ酸2から始まり、アミノ酸206まで伸びる)
o クローニング手順によって作製した1個のスレオニン及び1個のセリン
o Tatタンパク質の85アミノ酸(アミノ酸2から始まり、アミノ酸86まで伸びる)
o クローニング手順によって導入した1個のスレオニン及び1個のセリン
o 1個のグリシン及び6個のヒスチジン。
【実施例2】
【0101】
ピヒア・パストリスにおけるHIV−1 Tat変異体の発現
変異型組換えTatタンパク質も発現させた。変異型Tatタンパク質は生物学的に不活性である必要がある一方で、その免疫原性エピトープを維持している必要がある。
【0102】
これらの構築物のために、D.Clements(Tulane University)によって構築された二重変異体tat遺伝子を選択した。
【0103】
このtat遺伝子(BH10分子クローンに由来する)は、活性部位領域の変異(Lys41→Ala)及びRGDモチーフの変異(Arg78→Lys及びAsp80→Glu)を有する(Virology 235:48-64, 1997)。
【0104】
変異体tat遺伝子を、CMV発現プラスミド内のEcoRI部位とHindIII部位の間でサブクローニングしたcDNA断片(pCMVLys41/KGE)として得た。
【0105】
2.1 組込みベクターpRIT14912(Tat変異体−Hisタンパク質をコードする)及びpRIT14913(融合Nef−Tat変異体−Hisタンパク質をコードする)の構築
tat変異体遺伝子をPCRによってプライマー05及び06を用いてpCMVLys41/KGEプラスミドから増幅した(1.1章、pRIT14598の構築を参照)。
【0106】
NcoI制限部位をPCR断片の5’末端に導入した一方で、SpeI部位をプライマー04を用いて3’末端に導入した。得られたPCR断片及びPHIL−D2−MODベクターを、両方ともNcoI及びSpeIで制限消化し、アガロースゲル上で精製し、連結して組込みプラスミドpRIT14912を作製した。
【0107】
pRIT14913を構築するために、tat変異体遺伝子をPCRによってプライマー03及び04を用いてpCMVLys41/KGEプラスミドから増幅した。
【0108】

【0109】
得られたPCR断片及びプラスミドpRIT14597(Nef−Hisタンパク質を発現する)を、両方ともSpeI制限酵素で消化し、アガロースゲル上で精製し、連結して組込みプラスミドpRIT14913を作製した。
【0110】
2.2 ピヒア・パストリス株GS115の形質転換
上記1.2章に記載した組込み及び組換え株の選択方法を応用することによって、Tat変異体−Hisタンパク質及び融合Nef−Tat変異体−Hisを発現するピヒア・パストリス株を得た。
【0111】
Tat変異体−Hisタンパク質(95アミノ酸タンパク質)を産生する2つの組換え株を選択した:Y1775(Mut表現型)及びY1776(Mut表現型)。
【0112】
Nef−Tat変異体−His融合タンパク質、302アミノ酸のタンパク質を発現する1つの組換え株を選択した:Y1774(Mut表現型)。
【実施例3】
【0113】
組換えTat−Hisを産生するピヒア・パストリスの発酵
典型的な方法を以下の表に記載する。
【0114】
発酵は、高細胞密度培養物に導く増殖期(適切な曲線に従ってグリセロールベースの培地を供給する)及び誘導期(メタノール及び塩/微量元素溶液を供給する)を含む。発酵中に、サンプルを採り、それらの620nmでの吸光度を測定することによって増殖を追跡する。誘導期中に、メタノールをポンプから加え、その濃度をガスクロマトグラフィー(培養サンプルについて)及び質量分析計を用いるオンラインガス分析によってモニターした。発酵ののち、2〜8℃で5020gにて30秒間遠心することによって細胞を回収し、そして細胞ペーストを−20℃で保存する。さらに作業するために、細胞ペーストを解凍し、緩衝液(NaHPO pH7 50mM、PMSF5%、イソプロパノール4mM)中にOD=150(620nm)で再懸濁させ、そしてDynoMill(空間0.6L、3000rpm、6L/H、ビーズ直径0.40〜0.70mm)に4回通過させて破壊した。
【0115】
発現を評価するために、誘導中にサンプルを取り出し、破壊し、SDS−Page又はウエスタンブロット法によって分析した。クーマシーブルー染色SDSゲル上で、組換えTat−hisは、約72〜96時間の誘導後に最大強度を示す強いバンドとして明確に同定された。
【表1】

【0116】
発酵に用いた培地:
【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【実施例4】
【0117】
Nef−Tat−His融合タンパク質(ピヒア・パストリス)の精製
精製スキームは、組換えピヒア・パストリス細胞(湿重量)146g又はDyno−mill均質化物OD55の2Lから開始した。クロマトグラフィーステップは室温で行う。ステップ間でNef−Tat陽性分画を寒冷室(+4℃)に一夜保存し、より長時間のためにはサンプルを−20℃で凍結する。
【表7】

【0118】

【0119】
純度
SDS−PAGEで評価した純度レベルを、Daiichi銀染色によるものを図3に、クーマシーブルーG250によるものを図4に示す。
【0120】
Superdex200ステップ後: >95%
透析及び滅菌濾過ステップ後: >95%
【0121】
回収
組換えピヒア・パストリス細胞(=Dyno−mill均質化物OD55の2L)146gから、Nef−Tat−hisタンパク質51mgを精製する。
【実施例5】
【0122】
ピヒア・パストリス中の酸化Nef−Tat−His融合タンパク質の精製
精製スキームは、組換えピヒア・パストリス細胞73g(湿重量)又はDyno−mill均質化物OD55の1Lから開始した。クロマトグラフィーステップを室温で行う。ステップ間でNef−Tat陽性分画を寒冷室(+4℃)に一夜保存し;より長時間のためにはサンプルを−20℃で凍結する。
【表8】

【0123】

【0124】
SDS−PAGEにより評価した純度レベルを図6に示す(Daiichi銀染色、クーマシーブルーG250、ウェスタンブロッティング)
透析及び滅菌濾過ステップ後: >95%
回収(比色タンパク質アッセイにより評価:DOC TCA BCA)
組換えピヒア・パストリス細胞73mg(湿重量)又はDyno−mill均質化物OD50の1Lから、酸化Nef−Tat−hisタンパク質2.8mgを精製する。
【実施例6】
【0125】
還元Tat−Hisタンパク質(ピヒア・パストリス)の精製
精製スキームは、組換えピヒア・パストリス細胞160g(湿重量)又はDyno−mill均質化物OD66の2Lから開始した。クロマトグラフィーステップを室温で行う。ステップ間でTat陽性分画を寒冷室(+4℃)に一夜保存し、より長時間のためにはサンプルを−20℃で凍結する。
【表9】

【0126】

【0127】
SDS−PAGEにより評価した純度レベルを図7に示す(Daiichi銀染色、クーマシーブルーG250、ウェスタンブロッティング)
透析及び滅菌濾過ステップ後: >95%
回収(比色タンパク質アッセイにより評価:DOC TCA BCA)
組換えピヒア・パストリス細胞160g(湿潤重量)又はDyno−mill均質化物OD66の2Lから、還元Tat−hisタンパク質48mgを精製する。
【実施例7】
【0128】
酸化Tat−hisタンパク質(ピヒア・パストリス)の精製
精製スキームは、組換えピヒア・パストリス細胞74g(湿重量)又はDyno−mill均質化物OD60の1Lから開始した。クロマトグラフィーステップを室温で行う。ステップ間でTat陽性分画を寒冷室(+4℃)に一夜保存し、より長時間のためにはサンプルを−20℃で凍結する。
【表10】


【0129】
SDS−PAGEにより評価した純度レベルを図8に示す(Daiichi銀染色、クーマシーブルーG250、ウェスタンブロッティング)
透析及び滅菌濾過ステップ後: >95%
回収(比色タンパク質アッセイにより評価:DOC TCA BCA)
組換えピヒア・パストリス細胞74g(湿重量)又はDyno−mill均質化物OD60の1Lから、酸化Tat−hisタンパク質19mgを精製する。
【実施例8】
【0130】
SIV還元Nef−Hisタンパク質(ピヒア・パストリス)の精製
精製スキームは、組換えピヒア・パストリス細胞340g(湿重量)又はDyno−mill均質化物OD100の4Lから開始した。クロマトグラフィーステップを室温で行う。ステップ間でNef陽性分画を寒冷室(+4℃)に一夜保存し、より長時間のためにはサンプルを−20℃で凍結する。
【表11】


【0131】
SDS−PAGEにより評価した純度レベルを図9に示す(Daiichi銀染色、クーマシーブルーG250、ウェスタンブロッティング)
透析及び滅菌濾過段階後: >95%
回収(比色タンパク質アッセイにより評価:DOC TCA BCA)
組換えピヒア・パストリス細胞340g(湿重量)又はDyno−mill均質化物OD100の4Lから、SIV還元Nef−hisタンパク質20mgを精製する。
【実施例9】
【0132】
HIV還元Nef−Hisタンパク質(ピヒア・パストリス)の精製
精製スキームは、組換えピヒア・パストリス細胞160g(湿重量)又はDyno−mill均質化物OD50の3Lから開始した。クロマトグラフィーステップを室温で行う。ステップ間でNef陽性分画を寒冷室(+4℃)に一夜保存し、より長時間のためにはサンプルを−20℃で凍結する。
【表12】


【0133】
SDS−PAGEにより評価した純度レベルを図10に示す(Daiichi銀染色、クーマシーブルーG250、ウェスタンブロッティング)
透析及び滅菌濾過段階後: >95%
回収(比色タンパク質アッセイにより評価:DOC TCA BCA)
組換えピヒア・パストリス細胞160g(湿重量)又はDyno−mill均質化物OD50の3Lから、HIV還元Nef−hisタンパク質20mgを精製する。
【実施例10】
【0134】
ピヒア・パストリスにおけるSIV nef配列の発現
病原性SHIVチャレンジ(challenge)モデルにおいてNef及びTat抗原を評価するために、マカーク(アカゲザル)のサル免疫不全ウイルス(SIV)のNefタンパク質、SIVmac239を発現させた(Aids Research and Human Retroviruses, 6:1221-1231, 1990)。
【0135】
Nefコード領域に、SIVmac239は、92アミノ酸の後にリーディングフレーム内の停止コドンを有し、僅か10kDの末端切断産物が予測される。Nefリーディングフレームの残りはオープンリーディングフレームであり、そして263アミノ酸(30kD)のタンパク質をその完全なオープンリーディングフレームの形態でコードすると予測されるであろう。
【0136】
SIVmac239nef遺伝子のための出発材料は、LX5Nプラスミドにクローニングした完全コード配列に相当するDNA断片であった(Dr R.C.Desrosiers,Southborough, MA, USAより提供を受けた)。
【0137】
完全長SIVmac239Nefタンパク質を発現させるために、このSIVnef遺伝子を、成熟前の停止コドンにおいて変異させる(位置9353のヌクレオチドGが元のTヌクレオチドに取って代わる)。
【0138】
このSIVnef遺伝子をピヒア・パストリスにおいて発現させるために、(HIV−1 nef及びtat配列の発現のために前に用いた)PHIL−D2−MODベクターを用いた。誘導アルコールオキシダーゼ(AOX1)プロモーターの制御下で組換えタンパク質を発現させ、そしてこのタンパク質のC末端をヒスチジンアフィニティテール(これは精製を容易にする)によって伸長する。
【0139】
10.1 組込みベクターpPIT14908の構築
pPIT14908を構築するために、SIV nef遺伝子をpLX5N/SIV−NEFプラスミドからプライマーSNEF1及びSNEF2を用いてPCRにより増幅した:

【0140】
増幅したSIV nef DNA領域は、ヌクレオチド9077で始まり、そしてヌクレオチド9865で終わる(Aids Research and Human Retroviruses, 6:1221-1231, 1990)。
【0141】
(nef遺伝子のATGコドンを有する)NcoI制限部位をPCR断片の5’末端に導入した一方で、SpeI部位を3’末端に導入した。得られたPCR断片及び組込みPHIL−D2−MODベクターを、両方ともNcoI及びSpeIで制限消化した。SIV nef増幅配列には(位置9286に)1つのNcoI制限部位が存在するので、それぞれ±200bp及び±600bpの2つの断片が得られ、アガロースゲル上で精製し、そしてPHIL−D2−MODベクターに連結した。得られた組換えプラスミドに、自動配列決定によりnef増幅領域を確認したのち、pRIT14908という名称を与えた。
【0142】
10.2 ピヒア・パストリス株GS115の形質転換(his4)
SIV nef−Hisを発現するピヒア・パストリス株を得るために、発現カセット及びHIS4遺伝子だけを有する線状NotI断片を用いて株GS115を形質転換した(図11参照)。
【0143】
両末端でAOX1存在(resident)ピヒア・パストリス遺伝子との相同性を有するこの線状NotIDNA断片は、AOX1座での組換えを容易にする。
【0144】
多コピー組込みクローンを定量ドットブロット分析によって選択した。
【0145】
最良の組換えタンパク質産生レベルを示す1つ形質転換物を選択し、そしてY1772という名称を与えた。
【0146】
株Y1772は組換えSIV Nef−Hisタンパク質(272アミノ酸を含むタンパク質)を産生し、これは以下から構成されるであろう:
o ミリスチン酸
o PHIL−D2−MODベクターのNcoIクローニング部位を用いて作成した1個のメチオニン
o 262アミノ酸のNefタンパク質(アミノ酸2から始まり、アミノ酸263まで伸長する、図12参照)
o クローニング手順(PHIL−D2−MODベクターのSpeI部位でのクローニング)によって作製した1個のスレオニン及び1個のセリン(図11参照−配列番号29を含む)
o 1個のグリシン及び6個のヒスチジン。
【0147】
核酸及びタンパク質配列を図12に示す(配列番号30及び31)。
【0148】
10.3 株Y1772の発現産物の特性決定
発現レベル
炭素源として1%メタノールを含む培地で16時間誘導したのち、組換えNef−Hisタンパク質の存在量を全タンパク質の10%と推定した(図13、レーン3−4)。
【0149】
溶解性
Nef−Hisタンパク質を産生する組換え株Y1772の誘導培養物を遠心した。細胞ペレットを破壊緩衝液に再懸濁させ、0.5mmガラスビーズで破壊し、細胞抽出物を遠心した。不溶性ペレット(P)及び可溶性上清液(S)に含まれたタンパク質をクーマシーブルー染色SDS−PAGE10%で比較した。
【0150】
図13に示すように、株Y1772由来の組換えタンパク質の大部分(レーン3−4)は、不溶性分画に関連した。
【0151】
十分な組換えタンパク質発現レベルを示す株Y1772を、SIV Nef−Hisタンパク質の産生及び精製のために用いる。
【実施例11】
【0152】
CHOにおけるGP120の発現
組換えgP120糖タンパク質を産生する安定CHO−K1細胞系を確立した。組換えgP120糖タンパク質は、HIV−1単離物W61DのgP120エンベロープタンパク質の組換え末端切断形態である。タンパク質を細胞培養培地に分泌させ、次いで、これからタンパク質を精製する。
【0153】
gp120トランスフェクションプラスミドpRIT13968の構築
HIV−1単離物W61DのエンベロープDNAコード配列(tat及びrevの5’エクソンを含む)を、ゲノムgp169エンベロープ含有プラスミドW61D(Nco−XhoI)として入手した(Dr.Tersmette,CCB, Amsterdam)。このプラスミドをpRIT13965と命名した。
【0154】
gp120発現カセットを構築するために、プライマーオリゴヌクレオチド配列(DIR131)及びPCR技術を用いて、停止コドンをpRIT13965のgp160コード配列のアミノ酸glu515コドンに挿入する必要がある。プライマーDIR131は、3つの停止コドン(全てオープンリーディングフレーム中)及び1つのSalI制限部位を含む。
【0155】
次いで、pRIT13965から誘導したgp160プラスミドサブクローンpW61d env(pRIT13966)のN末端BamH1−DraI断片(170bp)から完全gp120エンべローブ配列を再構築し、そしてPCRによりpRIT13965からDraI−SalI断片(510bp)を作製した。両方の断片をゲル精製し、そして一緒に大腸菌プラスミドpUC18に連結し、最初にSalIで切断し(クレノウ処理)、次いでBamH1で切断した。これによりプラスミドpRIT13967が生じた。gp120コードカセットを含むXmaI−SalI断片(1580bp)の遺伝子配列を配列決定し、そして推定配列と一致することを見出した。最初にBclIで切断し(クレノウ処理)、次いでXmaIで切断することにより、プラスミドpRIT13967をCHO GS−発現ベクターpEE14(Celltech Ltd., UK)に連結した。生成したプラスミドをpRIT13968と命名した。
【0156】
マスター細胞バンクの調製
典型的なCaPO沈殿/グリセロールショック手順によって、gp120−構築物(pRIT13968)をCHO細胞にトランスフェクトした。2日後に、CHOK1細胞を、選択的増殖培地(GMEM+メチオニンスルホキシイミン(MSX)25μM+グルタメート+アスパラギン+10%ウシ胎児血清)に供した。3つのトランスフェクタントクローンを175mフラスコ中でさらに増幅し、そして数本の細胞バイアルを−80℃で保存した。さらなる実験のために、C−env23,9を選択した。
【0157】
小さい細胞予備バンクを調製し、そして20のアンプルを凍結した。予備バンク及びMCBを調製するために、7.5%ウシ胎児血清を添加し、かつ50μM MSXを含むGMEM培地で細胞を増殖させた。これらの細胞培養物を無菌性及びマイコプラズマについて試験し、そして陰性であることを証明した。
【0158】
予備マスター細胞バンクから誘導した細胞を用いて、マスター細胞バンクCHOK1 env23.9(12継代)を調製した。簡単に述べると、7.5%透析ウシ胎児血清を添加した培地に、2アンプルの予備マスター種を接種した。細胞を4本の培養フラスコに分配し、そして37℃で培養した。細胞が付着したのち、培地を、50μM MSXを添加した新たな培地と交換した。コンフルエントに達したとき、細胞をトリプシン処理により集め、そしてT−フラスコ−ローラービン−細胞製造ユニットにおいて、1/8分割比で継代培養した。細胞製造ユニットからトリプシン処理して細胞を集め、そして遠心した。低温保存剤としてDMSOを添加した培地に細胞ペレットを再懸濁させた。アンプルを予め標識し、オートクレーブ処理し、そして加熱密封した(250バイアル)。それらを漏れについて試験し、そして−70℃で一夜保存したのち、液体窒素中で保存した。
【0159】
細胞培養及び粗回収物の製造
マスター細胞バンクからの2本のバイアルを急速解凍する。細胞をプールし、そして7.5%透析ウシ胎児血清(FBS)を添加した適切な培地を入れた2つのT−フラスコに37±1℃で接種する。コンフルエントに達したとき(13継代)、細胞をトリプシン処理により集め、プールし、そして10のT−フラスコで上記のように増殖させる。コンフルエントに達した細胞(14継代)をトリプシン処理し、2つの細胞製造ユニット(それぞれ6000cm;15継代)、次いで10の細胞製造ユニット(16継代)で連続的に増殖させる。増殖培地に7.5%透析ウシ胎児血清(FBS)及び1%MSXを添加する。細胞がコンフルエントに達したとき、増殖培地を捨て、そして1%透析ウシ胎児血清(FBS)だけを含みMSXを含まない「製造培地」と交換する。2日ごとに(48時間の間隔で)32日まで上清液を集める。回収した培養液を直ちに1.2−0.22μmフィルターユニットに通して清澄化し、そして−20℃で保存したのち、精製する。
【実施例12】
【0160】
細胞培養液からのHIV gp120(W61D CHO)の精製
全ての精製ステップを2−8℃の寒冷室内で行う。緩衝液のpHをこの温度で調節し、そして0.2μmフィルターで濾過する。それらを発熱物質含有量について試験する(LALアッセイ)。カラム溶出物の280nmでの光学濃度、pH及び伝導率を連続的にモニターする。
【0161】
(i)清澄化培養液
回収した清澄化細胞培養液(CCF)をフィルター滅菌し、そしてトリス緩衝液、pH8.0を30mM最終濃度まで加える。精製するまでCCFを−20℃で凍結保存する。
【0162】
(ii)疎水性相互作用クロマトグラフィー
解凍したのち、清澄化培養液に硫酸アンモニウムを1Mまで加える。この溶液を、30mMトリス緩衝液−pH8.0−1M硫酸アンモニウムで平衡化したTSK/TOYOPEARL−BUTYL 650M(TOSOHAAS)カラムに一夜通過させる。これらの条件下で、抗原はゲルマトリックスに結合する。段階的に低下する硫酸アンモニウム勾配でカラムを洗浄する。30mMトリス緩衝液−pH8.0−0.25M硫酸アンモニウムで抗原を溶出させる。
【0163】
(iii)陰イオン交換クロマトグラフィー
溶液の伝導率を5〜6mS/cmに低下させたのち、分画のgP120プールをQ−Sepharose Fast Flow(Pharmacia)カラムに導入し、トリス−生理食塩水−pH8.0で平衡化する。カラムを陰性形式で操作し、すなわちgP120はゲルに結合しないが、不純物の大部分は保持される。
【0164】
(iv)濃縮及び限外濾過による透析濾過
タンパク質濃度を高めるために、gP120プールをFILTRON膜”Omega Screen Channel” 、50kDaカットオフに導入する。濃縮が終了したのち、緩衝液の透析濾過により、CaCl 0.3mM、pH7.0を含む5mMリン酸緩衝液と交換する。さらなる処理を直ちに行わない場合には、gP120プールを−20℃で凍結保存する。解凍したのち、不溶性物質を除去するために、この溶液を0.2μM膜で濾過する。
【0165】
(v)ヒドロキシアパタイトでのクロマトグラフィー
5mMリン酸緩衝液+CaCl 0.3mM、pH7.0で平衡化したmacro−Prep Ceramic Hydroxyapatite、II型(BioRad)カラムにgP120UFプールを導入する。カラムを同じ緩衝液で洗浄する。抗原はカラムを通過し、そして不純物はカラムに結合する。
【0166】
(vi)陽イオン交換クロマトグラフィー
酢酸塩緩衝液20mM、pH5.0で平衡化したCM/TOYOPEARL−650S(TOSOHAAS)カラムにgP120プールを導入する。カラムを同じ緩衝液、次いで酢酸塩20mM、pH5.0及びNaCl 10mMで洗浄する。次いで80mM NaClを含む同じ緩衝液で抗原を溶出させる。
【0167】
(vii)限外濾過
精製方法のウイルスクリアランス能を示すために、さらなる限外濾過ステップを行う。gP120プールをFILTRON膜 ”Omega Screen Channel”、150kDaカットオフでの限外濾過に供する。この孔サイズ膜は抗原を保持しない。処理したのち、同じ種類の膜(Filtron)であるが50kDaのカットオフを有するもので希釈抗原を濃縮する。
【0168】
(viii)サイズ排除ゲルクロマトグラフィー
緩衝液を交換し、かつ残留夾雑物を除去するために、gP120プールをSUPERDEX200(PHARMACIA)カラムにアプライする。カラムをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で溶出させる。
【0169】
(ix)滅菌濾過及び保存
0.2μM PVDF膜(Millipore)で濾過することにより、画分を滅菌する。滅菌濾過したのち、精製バルクを製剤化するまで−20℃で凍結保存する。精製スキームを以下のフローシートにまとめる。
【0170】
→SDS−PAGE分析により評価した精製バルクの純度レベル(銀染色/クーマシーブルー/ウェスタンブロット法)は95%以上である。
【0171】
→製造収率は約2.5mg/L CCFである(Lowryアッセイによる)− 全体的収率は約25%である(Elisaアッセイによる)。
【0172】
→精製材料は37℃で約1週間安定である(WB分析による)。
【表13】

【実施例13】
【0173】
ワクチン調製物
本発明により製造されるワクチンは、抗原をコードする1以上のDNA組換え体の発現産物を含む。さらに、製剤は、水中油型エマルジョン中に担体としての3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D−MPL)及びQS21の混合物、又は非メチル化CpGジヌクレオチドモチーフを含むオリゴヌクレオチド及び水酸化アルミニウムを含む。
【0174】
3D−MPL:グラム陰性細菌サルモネラ・ミネソタ(Salmonella minnesota)のリポ多糖(LPS)の化学的解毒形態である。
【0175】
実験は、種々のビヒクルと組み合わせた3D−MPLが体液性免疫及びTH1型細胞性免疫の両方を強く増強することを示した。
【0176】
QS21:強いアジュバント活性を有するキラハ・サポナリア(Quillaja Saponaria)の樹皮の粗製抽出物から精製したサポニンである。抗原特異的リンパ球増殖、及び幾つかの抗原に対するCTLの両方を誘導する。
【0177】
実験は、体液性及びTH1型細胞性免疫応答の両方の誘導において、3D−MPL及びQS21の組み合わせの明確な相乗効果を示した。
【0178】
水中油型エマルジョンは、2つの油(トコフェロール及びスクワレン)、及び乳化剤としてのTween80を含むPBSからなる。このエマルジョンは、5%スクワレン、5%トコフェロール、2%Tween80を含み、そして180nmの平均粒径を有する(WO95/17210号参照)。
【0179】
行った実験は、このO/Wエマルジョンを3D−MPL/QS21に添加すると、それらの免疫刺激特性をさらに増大させることを示した。
【0180】
水中油型エマルジョン(2倍濃縮)の製造
Tween80をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解してPBS中2%溶液を得る。2倍濃縮エマルジョン100mlを得るために、DLαトコフェロール5g及びスクワレン5mlを回転させてよく混合する。PBS/Tween溶液90mlを加えてよく混合する。次いで、生成したエマルジョンをシリンジに通し、そして最後にM110S Microfluidics機を用いて微細流動化する。生成した油滴は約180nmの大きさを有する。
【0181】
水中油型製剤の製造
抗原(100μg gp120、20μg NEFTat及び20μg SIV Nef、単独又は組み合わせ)を10倍濃縮PBS pH6.8及びHOで希釈したのち、水中油型エマルジョン、3D−MPL(50μg)、QS21(50μg)及び保存剤としての1μg/mlチオメルサールを順次に5分間隔で加える。エマルジョン容量は全容量の50%(投与量500μlにつき250μl)である。
【0182】
全てのインキュベーションを室温で撹拌しながら行う。
【0183】
CpGオリゴヌクレオチド(CpG)は、1以上のCpG配列モチーフを含む合成の非メチル化オリゴヌクレオチドである。混合TH1/TH2型応答を主に誘導する水中油型製剤と比較して、CpGはTH1型免疫の極めて強力な誘導因子である。CpGは、水中油型製剤よりも低レベルの抗体及び良好な細胞媒介免疫応答を誘導する。CpGは、低い局所反応原性を誘導すると予想される。
【0184】
CpGオリゴヌクレオチド溶液の製造:CpG乾燥粉末をHOに溶解して5mg/ml CpG溶液を得る。
【0185】
CpG製剤の製造
3つの抗原をNaCl 150mMに対して透析して水酸化アルミニウムへのgp120の吸着を阻害するリン酸イオンを除去する。
【0186】
Oに希釈した抗原(100μg gp120、20μg NefTat及び20μg SIV NEF)を、CpG溶液(500μg CpG)とともに30分間インキュベートしたのち、Al(OH)に吸着させて、NefTat及びNef抗原のHisテールとオリゴヌクレオチドとの間の潜在的相互作用を容易にする(抗原に結合した場合は遊離CpGと比較してCpGの免疫刺激効果が強いことが記載されている)。次いで、Al(OH)(500μg)、10倍濃縮NaCl及び保存剤としての1μg/mlチオメルサールを順次に5分間隔で加える。
【0187】
全てのインキュベーションを室温で撹拌しながら行う。
【実施例14】
【0188】
アカゲザルにおける免疫感作及びSHIVチャレンジの実験
第1研究
アカゲザル4匹のグループを、0、1及び3ヶ月に下記ワクチン組成物の筋肉内投与により免疫した:
グループ1: アジュバント2 +gp120
グループ2: アジュバント2 +gp120 +NefTat +SIV Nef
グループ3: アジュバント2 +NefTat +SIV Nef
グループ4: アジュバント6 +gp120 +NefTat +SIV Nef
グループ5: アジュバント2 +NefTat +SIV Nef
グループ6: アジュバント2
アジュバント2はスクワレン/トコフェロール/Tween80/3D−MPL/QS21を含み、そして
アジュバント6はミョウバン及びCpGを含む
Tatは変異型Tatを示し、Lys41→Ala並びにRGDモチーフ中にArg78→Lys及びAsp80→Gluの変異を有する(Virology 235:48-64, 1997)。
【0189】
最後に免疫処置した1ヶ月後に、全ての動物に病原性SHIV(株89.6p)をチャレンジした。チャレンジしたその週(wk16)から、所定の時点で周期的に血液サンプルを採取し、FACS分析によって末梢血液単核球中のCD4陽性細胞の%(図14)、及びbDNAアッセイによって血清中のRNAウイルスゲノム濃度(図15)を決定した。
【0190】
結果
全ての動物はSHIV89.6pのチャレンジ後に感染状態になる。
【0191】
CD4陽性細胞は、チャレンジ後に、グループ1及び6(対照グループ)のそれぞれで1匹の動物を除き、グループ1、3、5及び6の全ての動物で低下する。グループ2の全ての動物はCD4陽性細胞のわずかな減少を示し、そして経時的に基線値レベルに回復する。同様の傾向はグループ4の動物でも観察される(図14)。
【0192】
ウイルス負荷データは、ほとんどがCD4データと逆である。ウイルス負荷は、グループ2の動物の3/4(及びそのCD4陽性細胞を維持している1匹の対照動物)で、検出レベル未満に低下し、そして第4の動物は境界的ウイルス負荷のみを示す。他の動物の大部分は高いか又は中等度のウイルス負荷を維持する(図15)。
【0193】
驚くべきことに、ELISAによって測定した抗Tat及び抗Nef抗体力価は、研究過程全体を通して、グループ3(変異型Tatを有する)ではグループ5(非変異型Tatを有する同等のグループ)よりも2〜3倍高かった。
【0194】
68週目(チャレンジ後56週)に、完全な混合抗原を投与したグループ(グループ2及び4)の全ての動物は依然として生存したが、他のグループの動物の大部分は、AIDS様症状のために安楽死させねばならなかった。グループ当たりの生存動物は下記のとおりであった:
グループ1: 2/4
グループ2: 4/4
グループ3: 0/4
グループ4: 4/4
グループ5: 0/4
グループ6: 1/4
【0195】
結論
(SIV Nefの存在下の)gp12及びNefTatの組み合わせは、CD4陽性細胞の損失を防止し、病原性SHIV89.6pに感染した動物のウイルス負荷を減少させ、そしてAIDS様疾患症状の発生を遅らせるか又は防止するが、gp120又はNefTat/SIV Nef単独はSHIVチャレンジの病理学的結果から動物を防御しない。
【0196】
スクワレン、トコフェロール及びTween80を3D−MPL及びQS21と一緒に含む水中油型エマルジョンであるアジュバント2は、研究の終点で、ミョウバン/CpGアジュバントよりも強い効果を有するようである。
【0197】
第2研究
第2のアカゲザルSHIVチャレンジ研究を行って、候補ワクチンgp120/NefTat+アジュバントの効力を確認し、そしてTatに基づく種々の抗原を比較した。この研究は異なる実験室で行った。
【0198】
研究計画は下記のとおりであった。
【0199】
アカゲザル6匹のグループを、0、4及び12週に筋肉内注射により免疫し、そして16週に病原性SHIV89.6pの標準用量をチャレンジした。
【0200】
グループ1は第1研究のグループ2の繰り返しである。
【0201】
グループ1: アジュバント2 +gp120 +NefTat +SIV Nef
グループ2: アジュバント2 +gp120 +Tat(酸化)
グループ3: アジュバント2 +gp120 +Tat(還元)
グループ4: アジュバント2
追跡/終点は、この場合にもCD4陽性細胞率(%)、RT−PCRによるウイルス負荷、罹患率及び致死率とした。
【0202】
結果
グループ2の1匹を除き、全ての動物はSHIV89.6pのチャレンジ後に感染状態になる。CD4陽性細胞は、対照グループ4及びグループ3の全ての動物、並びにグループ2の動物1匹を除き、全ての動物において、チャレンジ後に有意に低下する。グループ1の動物の1匹だけがCD4陽性細胞の顕著な減少を示す。第1研究の動物とは異なり、第2実験のサルは、ウイルスチャレンジ後1ヶ月に、種々のレベルでCD4陽性細胞の安定化を示す(図16)。この安定化はCD4陽性細胞の初期%よりも一般的に低いが、該細胞の完全喪失には決して導かないと考えられる。これは、第2実験に用いたサル母集団においてSHIV誘導疾患に対する感受性が低いことを示す可能性がある。それにもかかわらず、gp120/NefTat/SIV Nefワクチン及び2つのgp120/Tatワクチンの有益な効果を実証できる。20%を超えるCD4陽性細胞を有する動物数はワクチン接種動物で5匹であるが、アジュバントグループの何れの対照動物も、このレベル以上を維持するものはいない。
【0203】
RNA血漿ウイルス負荷の分析は、実験動物の比較的低い感受性を確証する(図17)。対照動物6匹のうち2匹だけが高いウイルス負荷を維持するが、他の動物の血漿からウイルスが消失する。このように、ウイルス負荷パラメーターについてワクチン効果を実証することは困難である。
【0204】
結論
CD4陽性細胞の分析は、(SIV Nefの存在下の)ワクチンgp120/NefTat+アジュバントが、大部分のワクチン接種動物のCD4陽性細胞の低下を防止することを示す。これは、第1のSHIV研究で得られた結果の確認である。実験動物が感受性を欠いているために、ウイルス負荷パラメーターを用いてワクチン効果を実証することはできないだろう。併せて考えると、gp120とTat及びNef HIV抗原の組み合わせは、SHIVモデルで証明されたように、HIV感染の病理学的結果に対する防御を付与する。
【0205】
gp120と組み合わせたTat単独抗原も、CD4陽性細胞の低下に対して若干の防御を付与する。この効果は、gp120/NefTat/SIV Nef抗原の組み合わせよりも顕著でないが、gp120及びTatはSHIV誘導疾患の発症に対して若干の防御効力を仲介できることを実証する。
【0206】
第2のSHIVチャレンジ研究は、第1研究の動物源とはとは全く無関係の源に由来するアカゲザルを用いて行った。両方のパラメーター、すなわちCD4陽性細胞率%及び血漿ウイルス負荷は、第2研究の動物がSHIV誘導疾患に対して感受性が低いこと、及び動物間にかなり大きな変動があることを示唆する。それにもかかわらず、CD4陽性細胞の維持に対するgp120/NefTat/SIV Nefワクチンの有益な効果が、gp120/NefTat及びSIV Nefを含む実験ワクチンで見られた。これは、このワクチン効果が別の研究で繰り返されただけでなく、さらに無関係なサル母集団でも実証されたことを示す。
【実施例15】
【0207】
gp120及びNef/TatのためのPMIDベクターの作製
発現ベクターを下記のように構築した。エンドトキシン不含のプラスミド調製物を調製し、そしてLipofectamine2000を用いて、DNA 1μgを含む24ウェル組織培養プレートで半コンフルエント状態の293T細胞単層をトランスフェクトするために用いた。トランスフェクション後24時間にサンプルを集め、そしてウェスタンブロット法により検査して発現レベルを評価した(図18及び19)。
【0208】
gp120のコドン最適化は、REV非依存的発現を実質的に増加させた。
【0209】
プラスミドの作製
図20〜23も参照されたい。
【0210】
gp120:
野生型及び最適化gp120の両者を比較した。
【0211】

【0212】
遺伝子をベクターp7313−ieにNotI−BamHI断片としてクローニングし、そして配列決定した。参照配列に対して単一の塩基変化(保存性)が見出されたが、この変化はpRIT13968の配列決定でも見出された(gp120のT1170C)。
【0213】
最適化したコドン(pgp120c)
遺伝子配列はpRIT13968由来のgp120配列に基づいていた。これはRSCU値が0.297だった。最適化は、SYnGene2dを用いて行い、RSCU値が0.749となるようにした。この配列を40の重複オリゴヌクレオチドに分割し、そして最終プライマーを用いてPCRで構成し、再生させた。遺伝子をベクターp7313−ieにNotI−BamHI断片としてクローニングし、そして配列決定した。3つの初期クローンに由来する制限断片を結合して単一の正確なクローンを作製した。
【0214】
Nef/Tat(pNTm及びptrNTm)
Nef/Tat融合タンパク質のための遺伝子をプラスミドpRIT15244に準備した。プラスミドpRIT15244は、Hisテールが欠失している以外は上記のpRIT14913と同一である。このプラスミドのTatは上記のような3つの変異を含む。融合物は、免疫調節機能を有する完全長Nefを含み(Collins及びBaltimore (1999))、これはN末端切断によって排除できる。従って、完全長Nef/変異型Tat(pNTm)、及びNefの最初の65アミノ酸が除去された末端切断Nef/変異型Tat(ptrNTm)の両者のための構築物を作製した。これらの配列をpRIT15244から、下記のプライマーを用いてPCR増幅した:

【0215】
遺伝子をベクターp7313−ieにNotI−BamHI断片としてクローニングし、そして配列決定した。
【0216】
二重発現ベクター:(pRIX1及びpRIX2)
Nef/Tat及びtrNef/Tat発現カセットをClaI−XmnI制限断片として切り出し、そしてコドン最適化gp120を含むベクターのClaI及び平滑化Sse8387 I部位に連結して、両方のタンパク質を発現させるための単一プラスミド(それぞれpRIX1及びpRIX2)を得た。
【0217】
プラスミドp7313−ieの構成
このプラスミドは、pUC19のEam1105I−Pst1断片を含むβラクタマーゼ遺伝子(Amersham Pharmacia Biotech UK Ltd., Amersham Place,Little Chalfont,Bucks,HP7 9NAから入手可能)を、カナマイシン耐性遺伝子を含むpUC4KのEcoRI断片(Amersham-Pharmacia)と置換して、構築した。Dr Harriet Robinson(University of Massachusetts)から得たプラスミドJW4303から、ヒトサイトメガロウイルスIE1プロモーター/エンハンサー、イントロンAを誘導し、そしてpUC19のSal1部位にXhoI−Sal1断片として挿入し、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルを導入した。プロモーターから5’SalI−BanI断片を削除してベクターに用いる最小プロモーターを作製した(WO00/23592号、Powderject Vaccines Inc.)。B型肝炎ウイルス血清型adwから、ベクターpAM6にHBV表面抗原3’UTRを誘導した(Moriartyら, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 78, 2606-10, 1981)。pAM6(pBR322に基づくベクター)は、American Type Culture Collection、カタログ番号ATCC45020から得た。3’UTRを、挿入のために平滑末端化した1.4kgのBamHI断片としてポリアデニル化シグナルの5’側に挿入してBamHI部位を除去した。一連のステップ(BglII消化、クレノウポリメラーゼ処理、BstXI消化、NcoI消化、突出末端を除去するためのマングビーンヌクレアーゼ処理、及びさらなるBstXI消化を含む)において、HBV S遺伝子の3’非翻訳エンハンサー領域とbGHpAシグナルとの間の領域に改変を加えて、X遺伝子プロモーターとbGHpAシグナルとの間の5コドンより大きい全てのオープンリーディングフレームを除去した。これは、Xタンパク質の翻訳可能な部分(9アミノ酸)及びX遺伝子開始コドンをコードする配列の欠失を生じた。ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルをウサギβグロビンポリアデニル化シグナルで置換した。S抗原の5’非コード配列及びコード配列を切除し
、そしてオリゴヌクレオチドリンカーと交換して、示すようなマルチクローニング部位を得、プラスミドp7313−PLを作製した。
【0218】

【0219】
このポリリンカーは、KpnIとSalI部位の間に別のオリゴヌクレオチドリンカーが挿入されてさらに伸長されていた。
【0220】

【0221】
David Hodgeson(Warwick University)から入手したプラスミドpDAH212由来のサブクローンから、ColE1 cer配列を得、そしてプライマーを用いたPCRによって増幅して、配列の末端にEcoRI制限部位を配置した。次いで、cer配列をp7313−PLのEcoRI部位に挿入してプラスミドp7313−PLcを生成した。増幅したcer配列をGenBank登録番号M11411について確認した。
【0222】
下記プライマーを用いたポリアデニル化シグナルのPCR増幅によって、プロモーターとポリアデニル化シグナルとの間のHBV 3’UTR配列を切り出した:

【0223】
生成した産物をBamHI及びXmnIで切断し、そしてポリアデニル化シグナル及び3’UTRの両者を含む相当する断片を交換するために用いた。下記プライマーを用いたCMVプロモーター/エンハンサーのPCR増幅によって、プラスミドからイントロンA配列を切り出した:

【0224】
生成した産物をSse8387I及びNotIで切断し、そして親ベクターのSse8387I及びNotI部位に挿入し戻した。
【実施例16】
【0225】
免疫原性研究
粒子媒介免疫治療送達(PMID)によって送達されたgp120及びNefTat構築物の免疫原性を試験して、該構築物がin vivoで免疫応答を生じさせうることを示すために、マウス免疫原性研究を行うことができる。DNA構築物をタンパク質と組み合わせて用いて、個々の成分での免疫処置と比較して、組み合わせ手法の利点があるかどうかを判定することができる。その目的は、タンパク質での初回免疫及びDNAでの追加免疫(PMID)、又はDNAでの初回免疫(PMID)及びタンパク質での追加免疫によって、マウスにおける細胞性及び体液性免疫応答を検出し、そして定量することである。
【0226】
DNAを金微粒子上に凝集させ、これらをtefzelカートリッジ内壁のコーティングに用いる。カートリッジ当たり約0.5μgのDNAを与えるDNA負荷率2を用いて、PMIDカートリッジを調製する。
【0227】
gp120又はNefTatを含む2回のショットを与えることによって、PMIDでマウスの腹部に免疫する。PMID追加免疫したのち、脾臓を取り出し、そして脾臓細胞を用いて個々の構築物の免疫原性を決定する。IFN−γ ELIspotアッセイを用いて応答を評価する。このアッセイでは、gp120及びNef由来のペプチドを用いて、脾臓細胞をIFNγ分泌に対して刺激し、これを抗体に基づく検出系によって捕捉する。gp120及びNefに対する体液性応答をELISAによって測定して測定値を得る。
【0228】
gp120/NefTat初回免疫、追加免疫研究
この研究の目的は、タンパク質での初回免疫及びDNAでの追加免疫(PMID)、又はDNAでの初回免疫(PMID)及びタンパク質での追加免疫によって、マウスにおける細胞性及び体液性免疫応答を検出し、そして定量することである。
【0229】
カートリッジの調製
カートリッジ当たり約0.5μgのDNAを与えるDNA負荷率(DLR)2を用いて、遺伝子ガンカートリッジを好適に調製する。
【0230】
in vivo免疫原性
1つの実験(実験I)を下記表に示すようにして好適に行うことができる。この実験のための読み取りは、細胞性応答を測定する場合にはBalb/cのgp120及びNef由来のペプチドに対してIFN−γ ELIspotによって行い、そして体液性応答の場合にはELISAによるgp120及びNefに対する抗体の検出によって行う。
【表14】

【0231】
さらなる実験(実験II)を以下のように実施し得る。
【表15】

【0232】
サンプルプロトコール
雌Balb/cマウスを用いる。実験開始前に、全てのマウスから前採血する(尾静脈)。初回免疫したのち、1グループ当たりマウス3匹のグループを選び、脾臓を採取し、そしてgp120及びNefK拘束ペプチドを用いるELIspotアッセイによってIFN−γ産生CD8細胞を計数する。
【0233】
2回目の免疫後、少なくとも2つの時点で1グループ当たりマウス3匹のグループを選び、心血液サンプルを採取する。これらを、ELISAアッセイを用いてgp120及びNefに対する抗体について分析する。また、脾臓を採取し、そしてgp120及びNefK拘束ペプチドを用いるELIspotアッセイによってIFN−γ産生CD8細胞を計数する。
【0234】
免疫学的アッセイ
ELIspotアッセイ
インターフェロン−γELIspotアッセイを用いて細胞性応答を検出する。グループ当たり3匹のマウスから、それぞれの選択された時点で(初回免疫後に1回及び追加免疫後に最低2回)脾細胞を単離し、そしてα−インターフェロン−γで被覆したプレートを用いて、既知CD8エピトープ(K(Balb/c)バックグラウンド拘束)ペプチドと共にインキュベートする。脾細胞を溶解し、そして第2のα−インターフェロン−γ抗体及びビオチン−ストレプトアビジン増幅系を用いてプレートを現像する。
【0235】
ELISAアッセイ
標準抗体ELISAアッセイを用いて体液性応答を検出する。96ウェル平底マイクロタイタープレートをタンパク質で被覆し、そしてブロッキングする。免疫処置の前及び追加免疫の後に採取した血清の連続希釈物を集め、そしてプレートでインキュベートする。抗−マウス抗体と共にインキュベートしたのち、プレートを現像する。gp120、Nef及びTatに対する応答を分析する。
【実施例17】
【0236】
免疫原性研究
プロトコール
標準法を用いた遺伝子ガンを用いて、粒子媒介送達のためのカートリッジを調製した。約0.5μgのDNA/カートリッジを与えるDNA負荷率2を用いた。
【0237】
F1(C3H×Balb/c)マウスに、アジュバント中のgp120タンパク質及びNefTat(筋肉内経路で投与)で、又は実施例15に記載したようにしてコドンを最適化し、かつベクターp7317−ieにクローニングしたgp120DNA及びNef融合タンパク質を発現するベクター(DNAが金ビーズ上にコーティングされている粒子媒介送達を用いて)のいずれかで、初回免疫を行った。23日後、アジュバント中のタンパク質で(筋肉内経路で投与)、又はDNAで(DNAが金ビーズ上に被覆されている粒子媒介送達を使用)、マウスを追加免疫した。5日後にマウスを選び、そして脾臓を採取した。脾細胞をかき取って回収して、白血球を溶解し、そして脾細胞を洗浄して計数した。(インターフェロン−γ捕捉抗体で被覆し、そしてブロッキングした)特殊ELIspotプレートを用いた。これらのプレートに脾細胞を移し、そして中程度の対照gp120E7ペプチド又は種々のnefペプチドの存在下に37℃/5%COで一夜インキュベートした。脾細胞を溶解し、そして標準手順を用いてプレートを現像して、存在するインターフェロン−γ分泌細胞の数を確認した。
【0238】
結論
最適以下の濃度のgp120E7ペプチドを用いてELIspotアッセイを行ったにもかかわらず、結果は、マウスを、アジュバント中のタンパク質で初回免疫(筋肉内投与)し、次いでDNAで追加免疫(粒子媒介送達により投与)することが、最も有効なスケジュールであることを示した。図24を参照されたい。類似の結果はnefの場合にも得られ、タンパク質で初回免疫され、そしてDNAで追加免疫されたマウスによって、2つのペプチドNef19及び20のみが認識された。これら2つのペプチドの配列は、Nef29:HIV−1 Bru(171−190)GMDDPEREVLEWRFDSRLAF(配列番号43)、及びNef20:HIV−1 Bru(181−200)EWRFDSRLAFHHVARELHPE(配列番号44)であった。図25を参照されたい。
【実施例18】
【0239】
免疫原性研究
プロトコール
PMID免疫処置(DNA)のために、標準法を用いてカートリッジを調製した。約0.5μgのDNA/カートリッジを与えるDNA負荷率2を用い、そして各免疫処置は2ショットとした。使用直前に、スクワレン/トコフェロール/Tween80/3D−MPL/QS21を含むアジュバント中にタンパク質を製剤化した。Balb/cマウスに、アジュバント中のgp120(筋肉内経路で投与)で、又は実施例15に記載したようにして調製したgp120コドン最適化DNA(PMIDを用いて)で初回免疫を行った。21日後、アジュバント中のタンパク質(筋肉内経路で投与)で、又はDNA(PMIDを使用)でマウスを追加免疫した。7日後にマウスを選び、そして脾臓を採取した。脾臓細胞をかきとって脾細胞を回収し、白血球を溶解化した。脾細胞を洗浄して計数した。(インターフェロン−γ捕捉抗体で被覆し、そしてブロッキングした)特殊ELIspotプレートを用いた。これらのプレートに脾細胞を移し、そしてgp120 15量体ペプチドのプールの存在下にて37℃/5%COで一夜インキュベートした。脾細胞を溶解し、そして標準手順を用いてプレートを現像して、存在するインターフェロン−γ分泌細胞の数を確認した。結果を図26に示す。
【0240】
結論
gp120 15量体ペプチドの3つのプールは、タンパク質で初回免疫され、そしてDNAで追加免疫されたマウスによって認識された。これら3つのプールに対するgp120 15量体の応答は、DNAで初回免疫され、そしてタンパク質で追加免疫されたか、あるいはタンパク質又はDNAの何れかで2回免疫された動物では検出されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HIVに対するヒトの予防用又は治療用免疫のための初回免疫−追加免疫送達に適したワクチンの製造における、
a)HIV Tatタンパク質若しくはポリヌクレオチド;又は
b)HIV Nefタンパク質若しくはポリヌクレオチド;又は
c)HIV Nefタンパク質若しくはポリヌクレオチドと結合したHIV Tatタンパク質若しくはポリヌクレオチド;
及びHIV gp120タンパク質若しくはポリヌクレオチド、
の使用であって、上記タンパク質若しくはポリヌクレオチドがボンバートメント手法により送達される、上記使用。
【請求項2】
ボンバートメント手法が、目的の標的組織中、典型的には皮膚中への粒子の推進を含む、請求項1記載の使用。
【請求項3】
粒子が、前記タンパク質若しくはポリヌクレオチドがコーティングされた金ビーズである、請求項2記載の使用。
【請求項4】
粒子がヘリウムガス気流により高速に加速される、請求項2又は3記載の使用。
【請求項5】
金ビーズが直径0.4〜4.0μmである、請求項2〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
金ビーズが直径0.6〜2.0μmである、請求項5記載の使用。
【請求項7】
nef、tat又はgp120をコードするポリヌクレオチドがコドン最適化DNAである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
nef、tat及びgp120をコードするポリヌクレオチドが単一ベクター上に存在する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
ベクターが、強化HCMV IE1プロモーターの3’側に挿入されたnef、tat及びgp120ポリヌクレオチドを含む、請求項8記載の使用。
【請求項10】
ベクターがp7313である、請求項9記載の使用。
【請求項11】
ワクチン製剤中に、HIVの別の調節若しくは構造タンパク質(Rev、Vif、Vpu、及びVprなど)、又はHIV gag若しくはpol遺伝子から誘導されたタンパク質、(及び/又はかかる調節若しくは構造タンパク質をコードするポリヌクレオチド)が含まれる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
ベクター中にNef及び/若しくはTat、並びに/又はgp120遺伝子を含み、目的遺伝子が強化HCMV IE1プロモーターの3’側に挿入されている組換えDNA分子。
【請求項13】
ベクターがp7313である、請求項12記載の組換えDNA分子。
【請求項14】
目的遺伝子の少なくとも1つがコドン最適化されている、請求項12又は13記載の組換えDNA分子。
【請求項15】
gp120 DNAがコドン最適化されている組換えDNA分子。
【請求項16】
ヒトの予防用又は治療用免疫のためのHIVワクチンの製造における、請求項12〜15のいずれか1項に記載の組換えDNA分子の使用。
【請求項17】
ベクター中にNef及び/若しくはTat、並びに/又はgp120遺伝子を含む組換えDNAでコーティングされた複数の粒子(好ましくは金粒子)。
【請求項18】
単一ベクター中にNef、Tat及びgp120遺伝子(好ましくはNef及びTatがNefTat融合物の形態である)を含むDNAでコーティングされた、請求項17記載の粒子。
【請求項19】
Nef、Tat又はgp120の少なくとも1つをコードするDNAが、ヒト細胞における発現のためにコドン最適化されている、請求項17又は18記載の粒子。
【請求項20】
1以上の目的遺伝子が強化HCMV IE1プロモーターの3’側に挿入されている、請求項17〜19のいずれか1項に記載の粒子。
【請求項21】
ベクターがP7313である、請求項17〜20のいずれか1項に記載の粒子。
【請求項22】
a)本明細書に記載のgp120と、nef及び/若しくはtat又はneftatをコードするDNAでコーティングされた複数の粒子を含む組成物、並びにb)本明細書に記載のgp120と、nef及び/若しくはtat又はneftatのDNA又はタンパク質を含む組成物であって、b)のDNA又はタンパク質は粒子上にコーティングされていない組成物を含む、少なくとも2種のワクチン組成物を含むキット。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図1G】
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【図1H】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2010−187681(P2010−187681A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68532(P2010−68532)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【分割の表示】特願2003−516564(P2003−516564)の分割
【原出願日】平成14年7月26日(2002.7.26)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】