説明

HIV/エイズの受動免疫治療用ループス抗体

【課題】ウイルス抗原を認識し、ウイルスの感染能力を中和する、自己免疫疾患の生物から得られたモノクローナル抗体、特にヒト内在性レトロウイルス配列(HERV)によってコードされる抗原性プリペプチド産物及びホモログを認識するモノクローナル抗体を提供する。
【解決手段】HERV(ヒト内在性レトロウイルス配列)のDNAでコードされる抗原を認識するモノクローナル抗体及び抗体断片並びに製造方法であって、HIVを中和する抗体を作るループス患者のリンパ系細胞由来の組換え抗体断片を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
合衆国法典タイトル35セクション202(c)に従い、米国政府は、一部については国立保健研究所の基金(付与番号:HL59746、AI31268及びAI46029)でなされた本明細書記載の本発明において一定の権利を有することを承認する。
【0002】
微生物抗原と結合する抗体、より詳細にはgp120の保存された決定基と結合し、HIVを中和する抗体の調製と使用であって、HIVに対する免疫治療及び免疫予防の目的のためのものである。
【背景技術】
【0003】
抗体(Ab)は抗原との接触が確立される可変(V)ドメインを含む。この接触(点)の性質と数が抗体の結合特異性を決定する。異なるVドメイン配列を有する抗体の数として定義されるヒト抗体レパートリーは、1011〜1012と推定されており、それぞれ潜在的に異なる抗原結合特異性を有している。
【0004】
分子生物学における最近の発展により新規な方法の開発が可能になったため、医療上有用な抗体が天然のヒトレパートリーから単離され、更にタンパク質工学技術により改良され得る。抗体構造組織の正しい理解は、本発明の範囲を理解するのに役立ち、以下に概要を簡単に記す。
【0005】
抗原エピトープとの接触は、主に抗体の相補性決定領域(CDR)で、またそれより少ない程度ではあるがフレームワーク領域(FR)で起こる(図1)。抗体多様性は以下の過程によって生じる:(a)2つの抗体サブユニット、軽鎖(L)及び重鎖(H)のそれぞれのVドメインをコードする約50の生殖細胞系列遺伝子の継承;(b)抗体構造内の異なるL鎖とH鎖の連結によって引き起こされるコンビナトリアル多様性;(c)L鎖のV及び接合(J)遺伝子セグメント、並びにH鎖のV、多様性(D)及びJ遺伝子セグメントの組換え中に生じる接合多様性;及び(d)B細胞受容体(BCR)の構成要素として発現された抗体に対する抗原の結合を伴い、最も高い結合親和性を有するBCRを発現するB細胞の分裂の刺激に至る過程であるB細胞クローン選択の間に相補性決定領域に起こる急速な突然変異。別のレベルの多様性は、抗体によって異なる不変ドメイン、すなわち、H鎖のμ、δ、γ、α及びε領域及びL鎖のκ及びλ鎖が使用されることによって生じる。免疫応答の発生の初期に抗体はμ又はδ不変領域を含む。後に、アイソタイプのスイッチングが起こり、より分化した抗体ではμ/δ領域がγ/α/εに置換されている。
【0006】
健常な免疫系によって作られる抗体の目的は、病原体に対して防護することである。このような抗体応答は通常、外来抗原への暴露に際して、例えば微生物感染において始まる。しかしながら、場合によって、ヒト免疫系は外来抗原に事前に暴露されなくても、ある種の外来抗原に反応する抗体を作る。例えば、ウイルス抗原に対する抗体は、感染の証拠がない自己免疫疾患の患者に見出される。例として、ループス患者のヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV-1)に対する抗体及び多発性硬化症におけるレトロウイルス抗原に対する抗体がある。HIV-1の場合、未感染のループス患者又は混合結合組織病の患者は、ウイルスの外皮タンパク質に対する抗体を発現することが知られている(1,2)。
【0007】
多くの場合、感染した対象の微生物に対する感染防御免疫応答は、感染を抑えるのに不十分である。これは、例えば免疫不全のヒトに起こる。さらに、多くの微生物は感染を確立するために免疫破壊メカニズムを使い、その結果、感染した個体は感染の拡大に十分に防御しない抗体を産生する。このような個体に受動免疫治療剤として投与され得る微生物タンパク質に対するモノクローナル抗体は、感染に対する防御を提供することができた。
【0008】
本発明において、自己免疫疾患の患者がこのようなモノクローナル抗体の供給源として確認される。自己免疫疾患の患者から得られた抗微生物抗体の固有の特性は、それらの固有の起源にある程度起因しているようである。これらの抗体は増大した自己反応性免疫学的応答が原因で生産される。免疫応答の標的となる自己抗原は、高等生物の遺伝性ゲノムに見出される内在性レトロウイルス(ERV)配列由来のポリペプチドを含み、そのいくつかは今日の微生物抗原に対して配列が相同である。ヒトゲノムの1%から8%はERV(HERV)で構成されており、進化の過程で徐々に取得されて来たたと考えられる。ヒトゲノムは約30億の塩基を含み、その約3%が発現される。ヒトレトロウイルス配列は自己免疫疾患において発現されるという多数の証拠があり、このプロセスは発病させる自己免疫応答に内在するメカニズムとして提案されている(3、4の概説参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Bermas, B.L., Petri, M., Berzofsky, J.A., Waisman, A., Shearer, G.M. and Mozes, E. Binding of glycoprotein120 and peptides from the HIV-1 envelope by autoantibodies in mice with experimentally induced systemic lupus erythematosus and in patients with the disease. AIDS Res Hum Retroviruses. 10:1071-1077,1994
【非特許文献2】Douvas, A., Takehana, Y., Ehresmann, G., Chernyovskiy, T. and Darr, E.S. Neutralization of HIV type 1 infectivity by serum antibodies from a subset of autoimmune patients with mixed connective tissue disease. AIDS Res Hum Retroviruses. 12:1509-1517,1996
【非特許文献3】Nelson,P.N., Carnegie, P.R., Martin, J., Davari Ejtehadi, H., Hooley, P., Roden, D., Rowland-Jones, S., Warren, P., Astley, J. and Murray, P.G. Demystified-Human endogenous retroviruses. Mol Pathol. 56:11-18, 2003
【非特許文献4】Urnovitz, H.B. and Murphy, W.H.Human endogenous retroviruses: nature, occurrence, and clinical implications in human disease. Clin. Microbiol Rev. 9:72-99,1996
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の1つの目的は、ウイルス抗原を認識し、ウイルスの感染能力を中和する、自己免疫疾患の生物から得られたモノクローナル抗体又はその断片を提供することである。
【0011】
別の目的は、ヒト内在性レトロウイルス配列(HERV)によってコードされる抗原性ポリペプチド産物及びそれらのホモログを認識するモノクローナル抗体又はその断片を提供することである。
【0012】
別の目的は、全身性エリテマトーデスの患者に由来し、HIV-1を中和するモノクローナル抗体又はその断片を提供することである。
【0013】
別の目的は、HIV-1を中和するHERVポリペプチドに相同的なHIV-1の抗原性エピトープを認識するモノクローナル抗体又はその断片を提供することである。
【0014】
別の目的は、HIV-1を中和するHERVポリペプチドに相同的なHIV-1の抗原性エピトープに結合する抗体を産生する、ループス患者のリンパ球由来の細胞株を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題解決のため、以下の発明を提供する。
【0016】
(1)残基421-436を含む高度に保存されたエピトープgp120に結合し、それによって超抗原として高度に保存された決定基を有する標的HIV抗原を中和することのできるモノクローナル抗体又はその断片を製造する方法であって、全身性エリテマトーデスに罹患しているが、標的gp120(421-436)ペプチドを発現するHIVによる感染症状は見られない個体の発現された抗体レパートリーを、ファージ粒子の表面で又は細菌発現宿主において可溶性形態で調製するステップ、前記高度に保存された決定基に結合するクローンをスクリーニングすることによって、目的の抗体又は抗体断片クローンを前記ファージ粒子又は細菌発現宿主から単離するステップ、目的の前記抗体又は抗体断片クローンを発現し、精製するステップ、gp120(421-436)ペプチドと結合する目的の前記精製された抗体又は抗体断片クローンの前記HIVを中和する能力をアッセイするステップ、及び前記HIV中和アッセイから抗体又は抗体断片を選択するステップを含む前記製造方法。
【0017】
(2)残基421-436を含む高度に保存されたエピトープgp120に結合し、HIVの遺伝学的に分岐した株を中和することのできるモノクローナル抗体断片を製造する方法であって、
(a)VL及びVHドメインを含む単鎖Fv構築物又は
(b)軽鎖サブユニットを含む、全身性エリテマトーデスに罹患した個体の発現された抗体レパートリーを、複数の前記個体からプールされたリンパ球のmRNAを得た後、前記レパートリーにおいて前記単鎖Fv構築物又は前記軽鎖サブユニットに対応するcDNAを逆転写酵素ポリメラーゼ反応によって得て、ファージ粒子の表面上で又は細菌発現宿主において可溶性形態で、前記抗体断片の発現を可能にするファージミドベクターにより前記cDNAをクローン化することによって調製するステップ、固定化されたgp120、合成gp120(421-436)ペプチド、固定化されたHIV、gp120のオリゴマー、又は残基414‐439の範囲の任意の長さの合成gp120ペプチドに結合するクローンをスクリーニングすることによって、目的の抗体断片クローンを前記ファージ粒子又は細菌発現宿主から単離するステップ、目的の前記抗体断片クローンを可溶性形態で発現し、精製し、さらに前記クローンのgp120(421−436)ペプチドとの結合能を確認するステップ、gp120(421−436)ペプチドに結合して複数の主要なHIV分離株を中和する、目的の前記抗体断片クローンの能力をアッセイするステップ、及び前記HIV中和アッセイから抗体断片を選択するステップを含む前記製造方法。
【0018】
(3)残基421-436を含む高度に保存されたエピトープgp120に結合し、それによってHIVの遺伝学的に分岐した株を中和することのできるモノクローナル抗体断片であって、配列番号46に示すアミノ酸配列を含むVLドメイン及び配列番号47に示すアミノ酸配列を含むVHドメイン、配列番号44に示すアミノ酸配列を含むVLドメイン及び配列番号45に示すアミノ酸配列を含むVHドメイン、又は配列番号43に示すアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、前記抗体断片。
【0019】
(4)(3)に記載のモノクローナル抗体断片を少なくとも一つ含有する医薬組成物。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】IgG抗体(A)及びIgM(B)の説明図 CDRは抗原と接触するアミノ酸の大部分を含む。突然変異をCDRに導入して抗原結合親和性を高めることができる。VL-VHコンビナトリアル多様化は抗原認識特性を高める付加的な手段である。重鎖不変領域ドメインは抗原刺激されたエフェクター機能を担う。クローン化された抗体Vドメインレパートリーに由来するcDNAを、重鎖及び軽鎖不変ドメインを含むベクターに挿入すると、完全長抗体分子の発現が可能になる。IgM抗体は全部で10個の抗原結合部位を提示する5量体構造である。単量体同士はS-S及びJ(接合)鎖によって共に保持されている。IgA抗体(図示せず)は4個の抗原結合部位を含む2量体構造であり、S(分泌)片により共に保持されている。
【図2】gp120残基 422-432をコードするコンセンサスヌクレオチド配列とHERVrv_85283との相同性 同一を(|)で示す。
【図3】HERVペプチド産物に対する寛容性の機能停止による自己免疫疾患の患者における微生物に対する防御抗体応答の概念
【図4】gp120ドメイン構造及びgp120三量体のモデル 決定基421-436は抗体標的として強調されている。Kwong,P.D.ら、J.Virol.74(4):1961-72,2000より。
【図5】A、gp120のCD4結合部位の構造 CD4結合部位の接触部及び近接した残基が赤と緑で示されている。残基421-436は藍色及び緑で示されている。Kwongら、Nature 393:648-659,1998より。B、選択されたグループM HIVサブタイプの残基421-436における相同性 C、エンベロープ相同性分析によって決定されたクレード間のHIV-1の関係。
【図6】単鎖Fv(scFv)及びその工学処理された変異体の例 IgGのVL及びVH構成要素、すなわち設計されたFv(A)。M13ファージの表面に融合タンパク質として発現したFv(B)。細菌のペリプラズム又は培養上清から単離された可溶性Fvであって、そのいくつかは分子間集合を形成できるもの(C)。4価の束として集合したFv(D)、又は再クローン化されて結合活性が増加したIgM(E)。必要に応じて、改善された界面VL-VH対合ができるように、また凝集が減少するように最適化されたリンカーを含むFv(F)。インビトロにおいて組合わせのVL-VH多様化及びCDRH3突然変異誘発によって得られた親和性成熟Fv(G)。
【図7】ファージミドベクターpHEN2及びpCT5his6でそれぞれクローン化されたヒトループスFv及び軽鎖ライブラリーの特徴 PBLすなわち末梢血白血球。それぞれランダムに選択した10及び9のFv及び軽鎖クローンのジデオキシヌクレオチド配列決定により決定された挿入長及び多様性(固有配列を有するクローンの%)。ライブラリーサイズは細菌へのDNAの電気穿孔後に回収されたクローンの全数である。発現レベルはペリプラズム抽出物を使用したc-mycタグのドットブロットによって決定された。左下に、ループスFvファージ、軽鎖ファージ及びpHEN2を持つ細菌由来のパッケージされたコントロールファージ(12pmol)のSDS(2%)抽出物のSDSゲルの抗c-myc染色ブロット。融合タンパク質及びその分解産物は、異常に移動性の99kD及び72-90kDバンドとして見える。pHEN2ファージは、72kD融合タンパク質(N末端で23アミノ酸ペプチドを発現するp3)を示す。方法は、Paulら、J.Biol.Chem.276:28314-28320,2001を参照のこと。
【図8】ループスライブラリーからのファージ抗gp120抗体断片の選択(A);及び完全長gp120及び合成gp120(421-436)に対するループス抗体断片の相関した結合(B) 固定化されたgp120及び合成gp120にファージ粒子をあらかじめ結合させることによってそれぞれ単離したFc及びL鎖クローンのELISA価(選択されたクローン)、又は分画されていない供給源ライブラリーからランダムに取り上げられたFc及びL鎖クローンのELISA価(未選択クローン)を示す。N=独立したクローンの数。A、上段、固定化合成gp120(421-436)-BSAコンジュゲート。A、下段、固定化完全長gp120。B、プロットは、図1でA490>0.3を示す選択されたFv及びL鎖クローンである。示されたFvクローンは、JL409、JL413、JL437(黒塗りダイヤ)及びJL427(黒塗り四角)である。L鎖クローンは、SK18、SK45、SK41、SK51(黒塗り三角)である。回帰線のP=0.0004(Fv JL427を除いて計算;r2=0.24、このFvを含めてP=0.15)。データは、抗体挿入なしのベクターを持つ細菌のぺリプラスム抽出物による結合に対して修正された[gp120(421-436)及びgp120結合において、それぞれA490 0.10及び0.14]。10個のクローンに対して測定された組換え抗体発現は、1.9±0.5(s.e.m.)mg/l細菌培地であった。
【図9】ループス抗体断片による固定化gp120(421-436)(黒塗り四角)及び完全長単量体gp120(黒塗りダイヤ)の濃度依存性結合(A-C)、並びに固定化gp120(421-436)への結合の特異性(D) 金属アフィニティークロマトグラフィーで精製された抗体断片。Dにおいて、Fv JL427(46μg/ml)を、可溶性gp120(421-436)、ウシ血清アルブミン(BSA)、サイログロブリン(Tg)及びカルモジュリン(CaM)(1μM)の存在下で、結合についてアッセイした。挿入図;銀染色SDSポリアクリルアミド電気泳動ゲル(8-25%)が27kDの精製抗体断片(各パネルの右列)及びマーカータンパク質(左列;上から下へ、94,67,43,30,20,14kD;ファルマシア)を示す。
【図10A】ループス患者から単離されたgp120結合クローンscFv JL413の推測されるVLドメイン(配列番号46)及びVHドメイン(配列番号47)のアミノ酸配列。相補的決定領域(CDR)が強調されている。
【図10B】ループス患者から単離されたgp120結合クローンscFv JL427の推測されるVLドメイン(配列番号44)及びVHドメイン(配列番号45)のアミノ酸配列。相補的決定領域(CDR)が強調されている。
【図10C】ループス患者から単離されたgp120結合クローンSK18の推測されるVLドメイン(配列番号43)のアミノ酸配列。相補的決定領域(CDR)が強調されている。
【図11】精製されたループス抗体断片による濃度依存HIV-1中和。A及びB、HIV-1株ZA009(クレードC)。C、HIV-1株BR004(クレードC)。宿主細胞:PBMC。値は、抗体(PBS中)の代わりに希釈液で処理したHIVを含むウェルのp24濃度のパーセントである。4つの培養レプリケートのp24濃度を個々に分析した(平均、標準誤差)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1.自己免疫疾患における外来抗原に対する抗体の刺激物としての内在性レトロウイルス抗原
HIVgp120に対するポリクローナル抗体は、ループス及び混合結合組織病の患者の血清中に存在し、検出された(1,2)。ループス患者の血清中に見出される抗体は、gp120の残基421-436で構成されている比較的保存された決定基(以後gp120(421-436)とする)に結合するので、HIV感染に対する防御因子として興味がある。しかしながら、実験動物で免疫原としてgp120(421-436)に対応する合成ペプチドを使った研究では、このペプチドに対する抗体がHIV-1中和活性を示さないと報告された(3)。その結果、HIV-1感染の受動免疫治療用にこのような抗体を開発することにはほとんど興味が失われた。
【0022】
合成ペプチドは、大きめのタンパク質の構成要素として見出される対応するペプチドエピトープが採る形態に折り畳まれるとは限らない。したがって、gp120(421-436)に対して実験的に誘発された抗体の結果は、ループス患者に見られるgp120のこの領域に対する天然の抗体の特性を予測させない。臨床的文献はHIV-1感染とループス間の負の相関の可能性を示唆する事例証拠を含んでいる(4,5)。しかしながら、ループスの患者がHIV-1に感染するか又はAIDSを発症するリスクがより低いかどうかを確認するためにコントロールされた疫学的研究はこれまで実施されていない。
【表1】

【0023】
内在性レトロウイルス(ERV)配列ポリペプチドに対する免疫応答は、自己免疫疾患の患者にしばしば起こる。ループス患者によるgp120に対する抗体の形成を誘発する免疫原は知られていない。本発明者は、gp120残基421-436、即ちループス抗体によって認識されるエピトープをコードするヌクレオチド配列で、内在性ヒト抗原発現相同性のデータベース検索を行った。従来のヒト抗原で検出できる相同性は検出されなかった。いくつかの自己抗原[HLAクラスI重鎖、VIP及びニューロライキン(neurolikin)]間の相同性は知られているが(6-8)、これらの相同性は、gp120残基431-436の範囲に入らない。新たに利用できるヒト内在性レトロウイルス(HERV)配列データベース(9)での検索は、gp120の422-432領域で疑う余地のない相同性を示す配列を同定した。このHERVは染色体Xに位置する。ヒト内在性レトロウイルス(HERV)配列データベース(9)を検索することにより、本発明者は、このgp120の領域と相同性を示す染色体Xに位置するHERV配列を同定した(GenBank番号AL592563.7;表1;図2)。gp120の421-436領域に対する相同性を持つ2つの更なるHERV配列が明らかになった。これらの配列は、HERV-Lファミリーメンバーのヌクレオチド1394-1433及び別のHERV-Lファミリーメンバーのヌクレオチド1254-1304に対応するが、アラインメントは、それぞれ1つ及び4つのヌクレオチドのギャップを含んでいた。ポリペプチド配列に翻訳されると、図2に示されたHERV要素は、15個のgp120アミノ酸位置の8個で同一性を示し、グランサムのスケール(24)によれば7つの突然変異の5つが化学的に類似のアミノ酸を含む。gp120残基429-436はHERV要素rv_062846と相同性を示した(GenBank AL391989.9;4/8アミノ酸同一;2/4突然変異は化学的に類似のアミノ酸を含む;gp120のこの領域に対応するヌクレオチド同一性、17/24)。
【0024】
ほとんどのHERVはそもそも、たったいくつかの個体のDNAを配列決定したヒトゲノムシーケンスプロジェクトによって同定された。HERVは異なるヒト亜集団における配列の相違に非常に影響されやすい。さらに、非発現HERVは自己免疫疾患における突然変異及び転位事象によって発現し得るようになることが知られている(10,11)。このことはループス患者が一般集団から区別できるgp120関連HERVを発現できる可能性を開く。HERVはセンス及びアンチセンス配向でゲノムに組み込まれて見出される。これらは断片又は完全長ウイルス遺伝子であり得る(12)。HERVはしばしば発現した遺伝子に近接して位置し、調節的機能を果たす。HERV配列に特徴的な長い末端反復配列はしばしばプロモーター及びエンハンサーを含む(10,11)。他のHERV配列はポリペプチドとして発現され、必須の生物学的機能を果たし、例えばシンシチン(sincytin)は、胎盤においてシンシチウム(合胞体)栄養膜への栄養膜細胞の融合を仲介するHERVコードタンパク質である。HERV配列の大部分はその生物学的機能がまだ特定されていない。ナンセンスコドンを含むHERV配列は、置換変異、欠失及び挿入などのストップコドン不活性化メカニズムにより、ループス患者で発現可能な遺伝子に変わりうる(14)。異なる個体のPBMCにおけるHERVの発現は非常に変わりやすく(15)、HERV発現は組織選択的でありうる(10)。ループスで増加したHERV発現が報告され(16)、ループス患者のHERVコードポリペプチドに対する抗体の産生が記載されている(17)。これらの抗体はSm及びsnRNPなどの自己抗原と交差反応し得る(18);HERV配列はT細胞超抗原として機能することが示唆されている(19)。HIV及びHERV間の関連はこれらの観察結果から明らかである:接合部HIVgp41-gp120 env 領域と相同なHERV要素との間の配列相同性(20);HERV-KポリペプチドとHIV Rev タンパク質との間の配列・機能相同性(21);及びERVにコードされていると考えられるヒヒ胎盤のポリペプチドに対する抗HIV抗体の結合。
【0025】
進化的な観点からみて、HERV配列は、これらの配列の転位及び突然変異が新しい機能を有するタンパク質の発生を容易にする可能性が高いという点で、有益な役割を果たし得る。一方、自己免疫疾患における頻繁なHERVの関与は、新しいタンパク質に対する免疫寛容の欠如によるのであろう。相対的に、古来のタンパク質に対する免疫寛容は進化の過程でゆっくりと発達してきたのであろう。HERV配列は従来の発現されたタンパク質よりも「遺伝的浮動(genetic drift)」に対してより感受性であり、異なる被験者における異なるHERV産生物の生成は可能なままである。先に述べたように、HERV発現は一般集団と比較して自己免疫疾患の患者で増加することが多い。これは、例えばストップコドン不活性化メカニズムを経由して非発現から発現要素にHERV配列を変換する個々の胚細胞における遺伝的変化によって説明することができる。
【0026】
2.gp120残基421-436に対する均一な抗体断片の単離
前述の検討事項から見て、本発明者は、HIVに対する抗体の標的として残基421-436からなる決定基を検討した。表2はこのエピトープのアミノ酸配列が多様なHIV-1株で保存されている程度を示す。各位置のコンセンサスアミノ酸の頻度は残基424、429及び432を除いて80%より高い。gp120のこの領域は、抗体の最も良く保存されている可能性のある標的のひとつである。
【0027】
表2.gp120残基421-436におけるコンセンサスアミノ酸の頻度 コンセンサスが由来する菌株の番号を示す(すべての株はLos Alamosデータベースで入手可能)。頻度は:(示された残基を発現する株の#×100/株の全#)
残基 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436
Lys Gln Ile Ile Asn Met Trp Gln Glu Val Gly Lys Ala Met Tyr Ala

株,# 349 380 355 251 331 319 379 367 158 333 373 161 366 324 382 377
頻度,% 91 99 92 65 86 83 99 96 41 87 97 42 95 84 99 98
【0028】
実施例Iはgp120のこの領域に対するヒトモノクローナル抗体の供給源としてループス患者を使用する本発明者の推論を説明する。本明細書で説明するように、HIV-1感染個体は、HIV-1による感染がgp120の非常に超可変領域に対する免疫応答によって支配されるので、所望の抗体の好適な供給源ではない。本発明者はループス患者から得られたgp120に対する均一な抗体を調製することを求めた。なぜならば既に研究されたポリクローナルループス抗体調製物はエピトープ特異性の明白な決定が出来ないからである。さらにポリクローナル抗体はさまざまな抗原特異性を有する個々の抗体種の混合物であり、受動免疫療法に使用できない。
【0029】
ループス患者から得られるgp120に対する均一な抗体を開発するため本発明で使用された手順を、実施例IIに詳細に説明する。簡単に言えば、これらの手順は以下からなる。
【0030】
・ループス患者の発現された抗体のレパートリーの調製。この目的のためにレパートリーの2つのタイプ、VL及びVHドメインを含む単鎖Fv構築物と、軽鎖サブユニットとを調製した。両方の場合において、数人のループス患者からプールされたリンパ球のmRNAを出発物質とした。所望のVLドメイン、VHドメイン及び軽鎖レパートリーに対応するcDNAを逆転写酵素ポリメラーゼ反応によって得て、ファージ粒子の表面上で又は細菌発現宿主中に可溶性形態で抗体断片の発現を可能にするファージミドベクターによりクローン化した。
【0031】
・gp120に特異的なFv及び軽鎖クローンを、固定化したgp120にこれらの抗体断片を示すファージを結合させることにより単離した。次にFv及び軽鎖を可溶性形態で発現させ、電気泳動的に均一に精製した。
【0032】
実施例IIは結果として生じる抗体断片の機能的性質及び分子特性に関する詳細を提供する。これらの手順により得られたFv及び軽鎖のスクリーニングで、ELISA法によって決定されるgp120に対する結合を示す幾つかのクローンが同定された。一般的に、gp120の結合は合成gp120(421-436)ペプチドに対する結合と相関していた。これは、残基421-436がループス抗体断片に対する主要エピトープを構成していることを示していた。
【0033】
これらの抗体断片のVドメインcDNAの配列決定により、高度に変異したCDRの存在が示された。このことにより、抗体断片が、抗原の特異的認識に至る抗原により促進された成熟過程の産物である証拠が得られた。
【0034】
本発明の抗体断片の機能的有用性は、一次HIV-1アイソレートによるヒト末梢血単核球(PBMC)の感染を遮断する能力から明らかである。方法と結果の詳細は実施例IIで示す。PBMCはTリンパ球及びHIV-1に感染したマクロファージを含む。細胞の感染は酵素免疫測定法でp24抗原を測定することによりモニターされる。2つのループスFv断片による処理は、クレードB、C及びDから得られたHIV-1の3つの多様な株の感染を遮断した(表3)。ループス軽鎖断片はクレードC及びDから得られた2つの株による感染を遮断したが、クレードB株には効果がなかった。これらの抗体断片によるHIV-1の中和の用量反応曲線を実施例IIに示す。
【0035】
表3.ループス抗体断片によるHIV-1の中和 値は50%(IC50%)及び90%(IC90)中和するμg抗体断片/mlで示す。括弧の中はそれぞれ、方程式:%HIV中和=100%/[1+10(logIC50.抗体濃度)×傾き]に適合したカーブの傾き(Hill Slope)及び2乗相関係数である。カーブは開始点を通らせた(ゼロ中和)。傾き値は変化するパラメーターとして使用した。ntはテストなし。
【表2】

【0036】
本発明の抗体断片は、以下のように当業者に知られたさまざまなタンパク質工学技術により容易に改善しうる。実施例IIIはこれらの方法の幾つかを述べる。簡単に言えば、工学手法は以下からなる。
【0037】
・増加したインビボでの半減期及び増加したウイルス認識の結合活性を提供するために完全長IgG、IgM及びIgAとしてFv構築物を再クローニングする。動物に投与した場合、Fv構築物は血中で時間オーダーの半減期を示す。これに対して、血中の完全長抗体の半減期は2〜3週間ほどになり得る。IgG、IgM及びIgAとして一価のFvを再クローニングすることにより2、10及び4の抗原結合価がそれぞれ得られる。このことは幾つかの事例に有用である。なぜならば多価の結合は当業界で結合活性という用語で知られている見かけ上の抗原結合強度を改善するからである。
【0038】
・VL、VH及びリンカードメインの配列を突然変異誘発により変化させて、抗体断片の生物学的活性を改善することができる。次に突然変異体を前述した表示ベクターの表面に発現させ、ウイルス又は純粋なウイルス抗原に結合させる。これにより、最も高いウイルス結合親和性を有する突然変異体の分離が可能になり、次には改善されたウイルス中和能を生じることが予想される。抗原との改善された接触の確立により、VL及びVHドメインにおける突然変異誘発過程は抗原結合強度を改善する。VL及びVHドメインを結ぶリンカーペプチドの突然変異誘発は、VL及びVHドメインの界面接触を改善するように設計され、その結果これらのドメインが優れた抗原結合キャビティーを形成することが可能になる。
【0039】
・ループス抗体から得られたVLドメインは、gp120に対する他の抗体、例えば既知のヒト抗体クローンb12、S1-1及びF105のVHドメインと対をなすことができる。これはウイルスに対する結合強度を改善し、またエピトープ特異性に変化を生じさせてウイルス中和活性を改善することができる。
【0040】
3.HERV結合のスクリーニングによる新規な抗体の同定
本明細書に開示されているように、HERVポリペプチドを認識する抗体は、今日の微生物に対して防御機能を果たし得る。この予測に対する理論的な根拠は、HERV配列の発現が進化の過程で宿主−微生物関係の不可欠な構成要素になったということである。この理論において、本発明者は、宿主生物が防御免疫応答をすることができるポリペプチドをコードする微生物の重要な核酸配列が、破壊メカニズムとして宿主ゲノムの中に組み込まれると考えた。宿主ゲノムに組み込まれると、発現されたHERV配列は自己抗原として宿主免疫系によって処理され、発達途上の免疫系において、HERV抗原(及び重要な微生物抗原エピトープ)に対する寛容が、自己抗原に対する免疫応答を制限する通常の寛容メカニズムの過程で発達する。これらのメカニズムは、自己免疫疾患を妨げる方向に向けられる、さまざまな抗原に対するT及びB細胞のクローナルサイレンシング(clonal silencing)及び失敗の事象からなる。したがって、自己免疫疾患のない生物の生理学的環境下では、HERVの存在は、微生物によって、宿主細胞の免疫応答を損ない、感染をより簡単に起こすために使われるメカニズムとして考えられる。
【0041】
一方、自己免疫疾患では自己抗原に対する寛容に機能停止がある。その結果、HERVポリペプチド産物に対する寛容もまた機能停止し、防御抗体は自己免疫疾患の患者においては明白である。これらの概念を図3に概略的に示す。
【0042】
したがって、HERVポリペプチドに特異的に結合する抗体の同定は、免疫治療用途に有用な防御性抗微生物抗体を得る新規なルートである。これらの抗体の好ましい供給源は自己免疫疾患の患者である。抗HERV抗体を同定するいくつかの方法を実施例IVで説明する。同じ結果が得られる他の方法も考えられる。ストラテジーのアウトラインは以下の通りである。
【0043】
・今日の微生物タンパク質に対して相同性を有するHERV配列を、入手可能な例えばBlastn及びHERVデータベース、http://herv.img.cas.cz.のデータベース検索で同定する。抗原エピープの最小の長さは一般的に5-7アミノ酸(15-21ヌクレオチド)であると考えられるので、微生物抗原標的の抗原エピトープ5-7に対応するDNA配列を最初に同定する。標的とされるエピトープは一般的にその機能的重要性に基づいて選択される。例えばHIVの場合、遮断されると、宿主細胞CD4受容体への結合が抑制される結果宿主細胞へのウイルス侵入が抑制されることが予想される抗原エピトープを選択することが有利である。クエリー配列との相同性の決定の統計的有意性のレベルは、クエリーと同一のヌクレオチドの数及びその同一部分におけるギャップの数を始めとする幾つかの要因に依存する。幾つかのソフトウエアプログラムが相同性の有意を判断するのに利用可能である(例えば、文献23)。相同を評価するときに同様に重要なのはクエリーペプチドエピトープとHERVペプチドエピトープ間の構造的類似の可能性である。例えば、ある種のアミノ酸の相違は大きな構造的変化を生じさせ得、例えばPro残基の導入はエピトープのらせん構造を乱し得る。文献24はペプチドの構成要素アミノ酸の化学的類似に基づいてペプチド配列を評価するアルゴリズムを記載している。このアルゴリズムは抗体の単離のための最もよいHERV候補抗原を特定するために使用できる。
【0044】
・HERV抗原ペプチドに結合する抗体は、前のセクションで説明したように、適切なベクター上に表示された抗体レパートリーを使用して単離される。これとは別に、ドナー生物のリンパ球から、Epstein-Barrウイルスでの形質転換又はミエローマ細胞株を使ったハイブリドーマの形成により、細胞株を調製することができ、その細胞株によって分泌された抗体の、HERVペプチドとの結合を従来のイムノアッセイ方法でテストすることができる。
【0045】
・HERVペプチド結合抗体が単離されたら、その抗体の微生物感染を遮断する能力を分析する。例えばHIVの場合、PBMCが宿主として使われ、感染はHIV抗原p24の測定に基づいて測定される。
【0046】
4.抗体の投与
本明細書に記載した抗体は、医薬品として患者に一般的に投与される。
【0047】
本発明の医薬品は、例えば水、緩衝化生理食塩水、エタノール、多価アルコール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、油、界面活性剤、懸濁化剤、又はこれらの適切な混合物のような許容できる媒質と共に投与に都合がよいように処方される。選択された媒質中の抗体濃度は、媒質の疎水性又は親水性、及び抗体の他の性質に依存する。溶解限度は当業者が容易に決定し得る。
【0048】
本明細書で使用される、「生物学的に許容できる媒質」は、上に例示した医薬品の所望の投与ルートに適当であり得るすべての溶剤、分散媒などを含む。このような製薬的活性物質用の媒質の使用は当業界で公知である。従来の媒質又は物質は投与されるべき抗体に不適合である場合を除いていずれも本医薬品で使用されると考えられる。
【0049】
従来の受動免疫法は抗体を投与するときに使用される。好ましい態様において、抗体は患者に静脈内注入される。特定の内科的疾患の治療においては、生物学的効果を発揮するのに十分な量の分子が標的細胞に届くのを確実にするような措置をとらなければならない。
【0050】
分子又は分子を送達するための医薬品の親油性は、分子が標的の位置に到達できるように増大しなければならないかも知れない。さらに、本発明の抗体は、十分な数の分子が標的細胞に届くように細胞標的キャリアーに入れて送達しなければならないかも知れない。親油性の増大及び治療分子のターゲティングの方法は、本発明の抗体をカプセル化して抗体がちりばめられたリポソームにすることを含み、当業界で公知である。
【0051】
本発明の対象である抗体は抗体断片又は抗体全体として使用されるか、又は組換え分子に組み込まれるかポリエチレングリコール等のキャリアーにコンジュゲートされ得る。加えて、このような断片又は抗体全体は、前述したように細胞膜を通過して抗体又は断片の移動を起こすことのできるキャリアーに結合され得る。
【0052】
医薬品は投与の容易さ及び投薬量の均一性のため単位投与形態で処方される。本明細書で使用される単位投与形態は、治療を受けている患者に適した医薬品の物理的に分離した単位形態をいう。各投与量は所望の効果を生じるように計算された一定量の活性成分を選択された薬剤キャリアーと共に含むべきである。適切な単位投与量を決定する方法は当業者に周知である。
【0053】
抗体を含む医薬品は適切な間隔で投与され得、例えば、病的症状が低減又は軽減されるまでは1週間に2度投与され得、その後投与量は維持レベルまで低減し得る。個々のケースの適切な間隔は、通常、患者の状態及び治療しようとする病的状態に依存するであろう。
【0054】
受動免疫治療に適切な抗体は、許容される予防薬又は治療薬の標準的な基準を満たす:(1)抗体による標的ペプチド抗原の結合は、標的ペプチド抗原を機能的に不活性化することにより病理学的過程に有益な変化を導き;(2)前記抗体の投与は、得られる臨床的利益が副作用に関連した疾病率を超えるような、有利な治療指数を示す。このような基準が予防薬又は治療薬の受容性に対してどのように確立されるかの議論は当業界で一般的であり、Bert Spilker, Raven Press, New York, 1991のGuide to Clinical Trailsのテキスト等にみられる。有効性の実証における許容基準には、例えば、腫瘍治療の場合、腫瘍体積の減少、進行までの時間及び改善された生存率がある。HIV免疫治療の場合、有効性は血中のウイルス量(viral burden)の測定、CD4+ T細胞の数及び日和見感染の発生によって決定される。
【0055】
特定の標的分子の機能を抑制するように作用する従来のモノクローナル抗体は、バイオテクノロジー及び製薬会社による臨床的使用のための開発の下で最も一般的なタイプの治療剤のひとつである。これらの幾つかは実質的な臨床見込みを示した。例えば、臓器移植の分野において、T細胞受容体に結合する抗体(OKT3)はT細胞を激減させるためにインビボで使用されている。さらに、抗体は移植片対宿主病を治療するのに使用されており、ある程度成功している。多発性硬化症の治療で一部のT細胞を激減する抗CD4抗体の能力を評価する臨床試験が確立されている。従って、抗体の投与方法は当業界で通常の知識を有する臨床医に周知である。
【0056】
本発明で開示されるHERVペプチドはまた、所望の抗原に対する防御抗体応答を引き出すように設計された予防ワクチンとして使用できるであろう。例えば、ペプチドはミョウバンなどの適切なアジュバントと混合することができ、最大の抗体合成に最適化された投与量で筋肉内に投与することができる。そして血清中の抗体濃度がプラトーレベルに到達するまで、2回又は3回のブースター注射を4週間の間隔で投与できる。このように生じた防御免疫は数年間もつと推測される。なぜならばワクチン接種は、加害生物への暴露で抗体を生産するよう刺激され得る、特異的で、長く生きる記憶細胞の形成を生じさせるだろうからである。抗体濃度を決定する説明及び方法は実施例に述べる。ほとんどの抗原に対する抗体合成応答はT細胞依存であり、適切なT細胞エピトープはペプチド合成により免疫原に組み込まれ得る。これとは別に、キーホールリンペットヘモシアニン等のキャリアーは、必要に応じて抗体応答を最大にするために、Lys側鎖アミノ基又はCys側鎖スルフヒドリル基を介するカップリングを経由してHERVペプチドワクチンとコンジュゲートされうる。
【0057】
以上、本発明の好ましい態様のいくつかについて説明し具体的に例示して来たが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。本発明の範囲及び精神から逸脱することなくさまざまな修正を行うことができる。以下の実施例は本発明の理解を容易にするために提供されるものである。
【0058】
文献
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【実施例1】
【0059】
[HIV免疫治療に適切な抗体の供給源の同定]
HIV感染の治療の進歩にもかかわらず、効果的な免疫療法及びHIV用ワクチンの開発が相変らず急務である。アジドチミジンやレトロウイルスタンパク質分解酵素抑制剤などの薬剤はウイルス量(viral burden)を減少させる。しかしながら、これらの薬剤に耐性のウイルス変異株が生じ得、投薬中止は再感染を起こし得、しかも重大な副作用がある。最近、適応可能な免疫応答の効果的な武器、すなわち抗体及び細胞溶解性T細胞の両方がHIVに対する防御を達成するのに重要であるというコンセンサスが生まれた(1,2)。細胞傷害性T細胞応答はHIVに感染した対象の減少したウイルス量に一時的に一致する。しかしながら、細胞溶解性T細胞応答に依存するワクチン接種のストラテジーでは、HIVの回避変異体の発生が認められている(3、4)。細胞溶解性T細胞は感染した宿主細胞を溶解するが、細胞フリーのビリオンを不活性化しないので、無菌化免疫の可能性は示さない。体液免疫系がHIVに対して防御できるということは、SHIVマカク属サルモデルにおいて侵入抑制剤としての機能を果たし感染を抑えるモノクローナル中和抗体、例えばgp120のCD4結合部位(CD4b)に対するb12抗体、gp120のマンノース依存エピトープに対する2G12抗体及びgp41に対する2F5抗体の同定によって示唆される(5-7)。これらの抗体はHIV-1株の多くを中和するがすべてではなく、動物防御実験においてカクテル療法としての使用が奨められる(8)。
【0060】
HIV感染対象の抗体応答の考慮は、HIV免疫治療ストラテジーの開発に有益である。宿主細胞のタンパク質分解酵素によるgp160前駆物質のArg511-Ala512でのタンパク質分解切断はgp120及び不可欠な膜タンパク質gp41を生成する。gp120はウイルス表面に非共有結合の三量体として発現する(図4)。gp120が宿主細胞CD4受容体に結合した結果、ケモカインコレセプターが関与して感染が始まる。ほとんどのHIV感染個体において、抗体の応答は感染を抑えるのに効果がない。これはウイルスがもっている様々な免疫陽動テクニックのためである。またenvタンパク質の免疫優性エピトープは最も変異し易い領域である。感染した個体又は単量体のgp120で免疫化することによって産生されるgp120に対する抗体のほとんどは、V3ループ内の線状の決定基、すなわちいわゆる主要な中和決定基に対するものである(9、10)。抗V3抗体は通常株特異的である。すなわち、抗V3抗体は、感染過程で発生した変化したV3配列を有するHIV-1株又は異なる地理的位置由来の多岐にわたる株を中和しない。加えて、gp120は宿主細胞CD4受容体/ケモカインコレセプターとの相互作用で立体構造変化を受け得る。幾つかの研究では、gp120がCD4と結合した後に誘発されるネオエピトープを認識する抗体が記載されている(例えば11)。CCR5結合に関係している、より保存された残基に対する抗体の異なるクラスは、より広範囲の中和活性を発現することができる(12)。
【0061】
(a)中和抗体のFab断片(クローン17b)及びCD4と複合体を形成した末端切断型gp120の三元複合体のX線構造(図5A)及び(b)gp120の関連セグメントにおける部位特異的突然変異誘発(13-16)から、CD4-gp120の複合体化に対する洞察が得られた。CD5結合部位(CD4bs)は2番目、3番目及び4番目の保存されたセグメントに位置するアミノ酸、すなわち残基256、257、368-370、421-427及び457から構成される不連続の決定基である。CD4bsに対する抗体は感染した個体にまれに存在するが、gp120で免疫化することによって時々誘発される(17、18)。CD4bsはgp120三量体が単量体に分解するときの立体構造変化に影響されやすく(19)、単量体のCD4bsに対する幾つかの抗体による広範囲の中和を欠如する原因となる可能性がある。残基421-436を含む幾つかの線状のペプチドが抗体を生じさせる免疫原としてテストされている(20-24)。この決定基は異なるHIV株で完全ではないが概ね保存されている。立体傷害メカニズムに依存する抗体による効果的な中和は、CD4bsの完全に近い遮断を必要とするであろうことに注意することが重要である。抗体の抗原結合部位が占めるCD4bsの表面積が大きくなるほど、立体構造の遮蔽は多くなり、CD4bsの構造的違いによるウイルス回避の可能性は少なくなる。
【0062】
gp120の比較的保存された残基421-436を含む合成ペプチド(図5B)による免疫化で生じた抗体は、可能性あるHIV-1中和試薬として考えられていた。これらの抗体は、完全長gp120及びgp160(20-24)並びに多様なHIV分離株に感染した細胞表面に発現したgp120(21)を常に認識する。そのHIV感染を抑制する能力は一貫性がより小さい(20、21)。これらの抗体のいくつかは、細胞表面に発現したCD4によるのではなく、可溶性CD4によるgp120の結合を抑制する(22、23)。抗体中和活性のばらつきは、上で議論されたように、抗体の抗原結合部位とCD4bs間の接触点の細かな違いに起因するのであろう。このような違いは、全くありそうもないことではない。なぜならば、小さいペプチド免疫原は、キャリアータンパク質との接触点を始めとする微小環境によって立体配置を変えると想定されうるからである。本発明者の研究では、合成gp120(421-436)に対する抗体の完全長gp120との反応性に対する著しいキャリアータンパク質効果に注目した(24)。さらに、CD4bsの全体構造はCD4への結合を確実にするように十分に保存されているが、異なるHIV-1株との抗体の反応性はCD4bs内及び外の配列多型性によって影響され得る。
【0063】
侵入抑制メカニズムに加えて、抗HIV-1抗体は、その抗体が感染細胞内に入ったとき、ウイルスの複製及びパッケージングを妨げ得る。カルモジュリンアンタゴニストの効果によって明らかにされたように、細胞内カルモジュリンによるgp120の結合はウイルス増殖に必要である(25)。gp120のV1とV2領域間に位置するAsp180はウイルス複製にとって重要である(26)。ある完全長抗体は細胞膜を横断すると説明されている。小さいサイズのため、抗HIV-1抗体の工学処理された断片は、完全長抗体よりももっと容易に細胞に侵入できる。
【0064】
ループスとHIVは相互に関連している可能性がある。いくつかの文献がループス患者のHIV感染のまれな診断にコメントしている(27-32)。あるレポートは、アメリカでループスとHIV-1感染とが共存すると予測される症例数が400であると見積もっているが、たった20例しか見られていない(27)。ループスとHIVの関係の解釈は、2つの疾患のある共通した臨床的及び血清学的特徴によって複雑にされている(33)。同様に、ループス患者の人口統計的及び行動的パターンは、HIVのより少ない発生に寄与し得る(ループスは主に女性に発生する。ループス患者の静脈への薬物使用及び安全でない性的習癖は厳しくモニターされていなかった。しかし、公表された研究でこれらの要因を取り入れようとするいくつかの努力がなされている(文献27-32))。これらの不確定性を軽減するのは、血液スクリーニング手法の制度に先立つ1978年から1983年の間に、輸血によるHIV感染した既知のループス患者はいなかったという事実である〔たとえばループス患者は溶血症状の発見後に輸血を受ける〕(28)。これはループス患者の特異的な耐性因子の存在を示唆する。HIV感染後のループスの臨床的回復は、はっきりと一般に認められた現象である(29-31)。同様の結果がレトロウイルス感染に暴露されたループスのマウスモデルに報告されている(34)。
【0065】
ループスの細胞性免疫応答の変化は記載されているが、これらの変化とHIV感染に対する感受性の単純な関係は見られていない。ループス患者のCD4+細胞は若干減少し、CD8+細胞は増加する(35)。CD4+細胞はHIVの宿主であり、HIV特異的CD8+細胞はHIV感染固体において防御的役割を果たすのに関係していると考えられている。未感染のループス患者のHIV特異的CD8+細胞の存在について可能な情報はない。増強された抗体の産生、すなわちループスの顕著な特徴は可能性のある耐性要因である。重要なことに、gp120と結合できるポリクローナル抗体は、ループス患者及びループスのマウスモデルの両方で記載されている(13、14)。前に述べたように、HIF中和に影響を与える重要な要因はエピトープの特異性である。ループス抗体はHIV感染個体で見つかった抗gp120HIV抗体と別個のエピトープ特異性を示す。前者は残基421-436から構成される線状のペプチドを認識する(36、37)。この決定基はCD4に結合するgp120に重要であり、抗体は宿主細胞へのHIV侵入を妨害できる。
【0066】
これらの考察に基づいて、HIV免疫治療に適切な抗体の供給源としてループスレパートリーを検討した。
【0067】
文献
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【実施例2】
【0068】
自己免疫疾患患者から得られたgp120に対する組換え抗体
受動免疫療法には、充分に特徴付けられた抗体の再生可能な均質の供給源が必要とされる。ヒト由来の抗体をクローン化する今までの方法では、末梢血(又は手術によって得られたリンパ系組織)由来のリンパ球を、例えばエプスタインバーウイルスでの形質転換により不死化した後、ミエローマ細胞株と融合させる。生じたハイブリドーマ細胞株が所望の抗体を産生するか否か、例えばELISAにより結合を測定することでスクリーニングする。
【0069】
また、抗体の発現されたVドメインレパートリーを、適切な表面に表示されたライブラリーの形でクローン化する方法も利用可能である。抗体断片は単鎖Fv断片(図6)としてクローン化したり、軽鎖(L鎖)サブユニットとしてクローン化したりすることができる。Fv構築物は通常、完全長IgG抗体の結合活性を正確に再生する(例えば1)。以前のレポートで、天然抗体と比較して減少した力価ではあったが、H鎖パートナーとは関係なく、L鎖サブユニットの抗原結合活性が立証された(2、3)。Fv断片のVドメインは通常S-S結合又はペプチドリンカーによって結合される。Fvレパートリーのクローニングは通常リンパ球からmRNAを回収して逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応によって増幅することにより行われる。同様の手順をハイブリドーマ細胞によって産生された個々の抗体のVドメインをクローニングするのに用いることができる。プライマーの混合物を用いて、発現されたレパートリーを可能な限り多くの割合で獲得する(例えば4)。これらのプライマーは、Vドメインの5’及び3’末端にそれぞれ位置する比較的保存されたFR1及びFR4ヌクレオチドストレッチにアニーリングし、多様なV遺伝子ファミリーに属するVドメインの増幅が可能になる。発現可能なFv構築物を得るため、VL及びVHドメインを短い可撓性ペプチドと誘導性プロモーターを含む適切なベクターにクローン化する。このベクターで細菌を形質転換した後、(例えばベクターがlacオペロンを含む場合にはIPTGを使用して)組換えタンパク質を誘導すると、所望のFvレパートリーの産生が可能になる。幾つかの分子工学技術手技により、この系の実用有用性が高められた。N末端にリーダーペプチドを含めることにより細菌ペリプラズムへの抗体断片の分泌が可能になり、細胞内封入体の形成に付属する変性問題を避けるのに役立つ。his6タグ等のペプチドタグをタンパク質に組み込んで、金属アフィニティークロマトグラフィーによる迅速な精製を可能にする。ペプチドリンカーの長さと構造は、適切な分子内VL-VH相互作用を確実にするのに重要な可変量である。あるリンカーで、分子間VL-VH対合が起きると、Fv集合体の形成が生じる(図6)。またVドメインは、重鎖のVH-CH1断片へジスルフィド結合により連結した完全長軽鎖を含むFab断片の形成で発現され得る。Fv及びFab構築物の抗原結合活性は、完全長抗体のFV及びFab構築物に近づけることができるが、天然の抗体構造がないことによる親和性の欠如がときどき観察される。
【0070】
細菌でクローン化された抗体レパートリーが入手可能になったら、次の課題は所望の抗原認識特性を有する少数の個々の抗体を単離することである。これは表示技術を使用して達成できる(4)。ファージ、レトロウイルス、細菌及び酵母の表面に組換えタンパク質の表示を可能にするベクターが開発された。例えばファージコートタンパク質に連結された抗体断片から構成される融合タンパク質は、細菌のファージミド又はファージベクターから発現する。次に複製能力のないヘルパーファージを添加すると、表面に提示された機能的抗体を有する組換えファージのパッケージングが可能になる。M13線維状ファージはこの目的に一般的に使用され、コートタンパク質p3又はp8は抗体融合タンパク質のC末端に位置する。パッケージされたファージは抗体融合タンパク質をコードする一本鎖のDNAを含む。従って、固定された抗原への提示された抗体の結合に基づくファージの分画により、所望の特異性を有する抗体のVL/VH遺伝子が得られる。ルーチンのアフィニティークロマトグラフィーと同様、次第に増強するストリンジェンシー条件下でファージを結合させると、徐々に増強する親和性を有する抗体を得ることができる。ファージミドベクターは有用である。なぜならば抗体とファージコートタンパク質遺伝子の接合部のコドンが、ファージをパッケージするのに用いられる細菌によってはセンスコドンとして読まれ、かつファージコートタンパク質配列のない可溶性抗体断片を得るのに用いられる細菌によっては停止コドンとして読まれるからである。
【0071】
ループス抗gp120抗体断片
ループス患者由来の抗gp120抗体断片を単離する前記の技術を使用した。以下のファージ表示ライブラリーを調製した(図7、文献5):(a)pCANTAB5his6ベクターでクローン化されたヒトループスL鎖(3患者より)及び(b)pHEN2(イギリス、MRC、タンパク質工学のセンターによって快く提供されたベクター、国際公開WO9201047-A、GenBank登録1926701)のヒトループス単鎖Fv構築物(2患者より)。FvライブラリーをVL-リンカー-VH[リンカー:SS(GGGGS)2GGSA]構築物としてクローン化し、赤血球の低張溶解後、末梢血白血球(血液100mlから)において、全RNAを単離し、cDNA複製物をフォワードプライマーを使用して調製し、完全長L鎖と、VH、Vκ及びVλドメインのcDNAをPCRで調製した(残基1-124;1-123;1-107及び1-107にそれぞれ対応する;カバット(Kabat)の番号付け)。使用したプライマーは以下の通りである:
(a) ヒト完全長L鎖
VLκ バック (Sfi I 部位下線あり)-
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCCGACATCCAGATGACCCAGTCTCC,
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCCGATGTTGTGATGACTCAGTCTCC,
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCCGAAATTGTGTTGACGCAGTCTCC,
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCCGACATCGTGATGACCCAGTCTCC,
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCCGAAACGACACTCACGCAGTCTCC,
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCCGAAATTGTGCTGACTCAGTCTCC;

Cκ フォワード(Not I 部位下線あり) -- CCATCCTGCGGCCGCACACTCTCCCCTGTTGAAGCTCTT;

(b) ヒト単鎖 Fv:
VLκ バック- バックプライマー参照, 完全長L鎖; VLκ フォワード (Xho I 部位下線あり)-
GCCTGAACCGCCTCCACCACTCGAGCGTTTGATTTCCACCTTGGTCCC,
GCCTGAACCGCCTCCACCACTCGAGCGTTTGATCTCCAGCTTGGTCCC,
GCCTGAACCGCCTCCACCACTCGAGCGTTTGATATCCACTTTGGTCCC,
GCCTGAACCGCCTCCACCACTCGAGCGTTTGATCTCCACCTTGGTCCC,
GCCTGAACCGCCTCCACCACTCGAGCGTTTAATCTCCAGTCGTGTCCC;

VLλ バック (Sfi I 部位下線あり)-
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCCCAGTCTGTGTTGACGCAGCCGCC,
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCCCAGTCTGCCCTGACTCAGCCTGC,
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCCTCCTATGTGCTGACTCAGCCACC,
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCCTCTTCTGAGCTGACTCAGGACCC,
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCCCACGTTATACTGACTCAACCGCC,
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCCCAGGCTGTGCTCACTCAGCCGTC,
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCCAATTTTATGCTGACTCAGCCCCA;

VLλ フォワード (Xho I 下線あり) -
GCCTGAACCGCCTCCACCACTCGAGCCTAGGACGGTGACCTTGGTCCC,
GCCTGAACCGCCTCCACCACTCGAGCCTAGGACGGTCAGCTTGGT CCC,
GCCTGAACCGCCTCCACCACTCGAGCCTAAAACGGTGAGCTGGGTCCC;
CLλ フォワード - TGAAGATTCTGTAGGGGCCACTGTCTT;

VH バック (ApaL 部位下線あり)-
CATGACCACAGTGCACTTCAGGTGCAGCTGGTGCAGTCTGG,CATGACCACAGTGCACTTCAGGTCAACTTAAGGGAGTCTGG,
CATGACCACAGTGCACTTGAGGTGCAGCTGGTGGAGTCTGG,CATGACCACAGTGCACTTCAGGTGCAGCTGCAGGAGTCGGG,
CATGACCACAGTGCACTTCAGGTGCAGCTGTTGCAGTCTGC,CATGACCACAGTGCACTTCAGGTACAGCTGCAGCAGTCAGG;

VH フォワード (Not I 部位下線あり)-
GAGTCATTCTGCGGCCGCGGGGAAGACSGATGGGCCCTTGGT,GAGTCATTCTGCGGCCGCGGGGAAAAGGGTTGGGGCGGATGC;
【0072】
pHEN2のヒトFvライブラリーのクローニングは2ステップ法による−ApaLI/Not I部位経由のVHcDNA挿入、及びSfiI/XhoI部位経由のVLcDNA挿入であった。ライブラリーのサイズは−ヒトL鎖、1.2×106;ヒトFv、1.4×107であった。ランダムに選定されたクローン(各ライブラリーから少なくとも5つ)をジデオキシヌクレオチドシーケンス法で配列決定した。クローンの100%及び60%がそれぞれ、完全長で、停止コドンがなく、同一でない配列を含有していた。
【0073】
ファージ選択の2つのタイプを以下のようにループスライブラリーを使って行った:完全長gp120へのFvファージの結合、及び合成gp120(421-436)へのL鎖ファージの結合である。Fvライブラリーを提示するファージをM13K07ヘルパーファージ(1013粒子)を使ってTG1細胞からパッケージし、Lys側鎖を介してAffigel-10(Biorad)に固定化した組換えgp120(株SF2:Austral Biologicals)のクロマトグラフィー(1mlゲル;47μg gp120/mlゲル)で、結合ファージの溶出用にpH2.7バッファーを使って選択した(6)。同様の方法を、ライブラリーをホスホン酸ジエステルハプテン(文献5の化合物II)に結合することにより前もって選択したこと以外は、L鎖ライブラリーに適用した;(この工程は求核活性を有する抗体を豊富にする。文献5の討議セクションを参照のこと)。ファージ選択を、合成gp120(421-436)(KQIINMWQEVGKAMYA、クレードB株の決定基のコンセンサス配列に対応する;22)の「パンニング(panning)」によって行った。ペプチドを固定化し(Nunc Maxisorpチューブ;10μgペプチド)、5%BSAでブロックし、1時間ファージとインキュベートし、0.05%Tween20含有の10mMリン酸ナトリウム、137mM NaCl、及び2.7mM KCl、pH7.4(PBS-Tween)で洗浄して未結合ファージを除去した。結合したファージを0.1Mグリシン-HCl、pH2.7で溶出し、1M Tris 塩基を使って中和した。HB2151細胞を溶出されたファージに感染させ、可溶性抗体断片の発現を可能にした。
【0074】
選択されたファージミドDNAをHB2151細菌で発現させることにより得られた可溶性抗体断片についてELISAでgp120及びgp120(421-436)への結合をスクリーニングした。ウシ血清アルブミン(BSA;10molペプチド/mol BSA;230ngペプチド当量/ウェル)にコンジュゲートされた固定化Cys-gp120(421-436)または完全長単量体gp120(100ng/ウェル、MN株Immunodiagnostics社)をMaxisorp 96ウェルマイクロタイタープレートにコートした(Nunc;1時間)(6)。プレートを5%スキムミルクでブロックし、0.1%ミルク含有PBS-Tween中でトリプリケートで抗体断片と共にインキュベートした。結合した抗体断片をマウス抗-c-myc抗体(クローン9E10;1:500の脱脂された腹水)を使って、続いてペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗マウスIgG(1:1000;Fc特異的、Sigma)で検出した。選択されたFv及びL鎖クローンの54%及び26%がそれぞれ完全長gp120によって結合され、31%及び17%がそれぞれgp120(421-436)によって結合された(図8A)。1つのFvクローンの場合を除いて、2つの抗原の結合は高い相関を示した(図8B)。
【0075】
2つのFvクローン(JL413、JL427)及び1つのL鎖クローン(SK18)をさらに特徴づけした。ペリプラズム抽出物をイソプロピル-β-D-チオガラクトシドで誘導後に調製して、組換えタンパク質を金属アフィニティークロマトグラフィーで電気泳動均一に精製した(抗体断片はhis6タグを含む;文献5)。SDS-ポリアクリルアミド電気泳動を8-25%ゲルで行い、タンパク質の同一性は先に述べた抗-cmyc抗体を使ってイムノブロッテイングにより確認した(5)(抗体断片はC末端近くに10残基のc-mycペプチドを含む)。これらのクローンから得られた電気泳動的に純粋なFv及びL鎖はgp120及びgp120(421-436)に濃度依存結合を示した(図9A-C)。競合ELISAの検討では、組換え抗体を希釈液または競合タンパク質(1μM;カルモジュリン、BSA、サイログロブリン;Sigma)で1時間前処理した後、gp120(421-435)への結合をELISAで分析した。gp120(421-436)と無関係のタンパク質とFv JL427との反応性は明らかになかった(図9D)。
【0076】
表4 Vドメイン配列から推論されたループス抗体断片の特徴
R−置換変異;S-サイレント変異。、アミノ酸の数。生殖細胞系列対応物はhttp://www.ncbi.nim.nih.gov/igblastから同定した。CDRはカバットデータベースで比較して同定した。突然変異の計数はV遺伝子の3’末端に限定した。FR1残基1-7はPCRバックプライマーによってコードされているので考慮しなかった。ファミリー及びサブグループの指定はhttp://immuno.bme.nwu.edu/による。5’及び3’方向で決定されたcDNA配列は同一であった。生殖細胞系列V及びJ遺伝子のアラインメントはV-(D)-J組換えによる広い多様性を示唆した。この理由のため生殖細胞系列D遺伝子は指定できなかった。Fv JL413はVH遺伝子3’末端及びJ遺伝子5’末端に、それぞれ20及び17の欠失を含んでいた。
【表3】

【0077】
Fv及びL鎖クローンを標準のジデオキシヌクレオチドシーケンス法で配列決定した(図10)。Fv JL413及びFv JL427のcDNA配列とそれらに最も近い生殖細胞系列V遺伝子対応物との比較により、VL及びVH遺伝子が関与する領域において多くの置換変異が明らかになった(表4)。突然変異は相補性決定領域(CDR)に群がる傾向があった。各Fvクローンで6つのCDRにおけるサイレント変異に対する置換の割合は、フレームワーク領域(FR)におけるものよりも大きく、体細胞超変異過程によるV遺伝子の適応成熟を示唆していた(8)。L鎖クローンSK18のVLドメインは4つの置換変異を含み、CDRでは1つの置換があった。それにもかかわらず、CDRに対する置換/サイレント変異比はFRの場合よりも大きく、すべてのサイレント変異はFRに位置する。
【0078】
T細胞及びマクロファージ培養物のHIV感染の抗体による中和の研究は、免疫治療の適用における可能な有用性を分析するのに確立された方法である。古い文献では株IIIB及びMN等の実験室で採用されるHIV-1株がアッセイのインジケーター株として通常用いられた。しかしながら、これらの株は宿主細胞の中へ侵入するのにCXR4ケモカインコレセプターをCDレセプターとともに利用し、一般的に、CCR5ケモカインコレセプター一次HIV-1アイソレートよりも抗体によってずっと容易に中和される。同様に、宿主細胞としての末梢血単核球(PBMC)の使用は、これがインビボでの感染過程をより正確に予測するので、細胞株宿主と比較して好ましい。最近、抗体の侵入抑制効果を測定するように設計された単一周期感染性(signal-cycle infectivity)アッセイが利用可能になった。これらのアッセイは、規定されたウイルス株由来のgp120を発現する複製不全ウイルスのシュードタイプと、規定されたCD4及びケモカイン受容体を発現する宿主細胞株を利用する。これらのアッセイは確立された抗HIV抗体の中和効果を決定するのに有用であるとわかったが、新規なエピトープ特異性を有する抗体のスクリーニングに適切であるかは明確ではない。従って、本発明者の研究では、一次HIV-1アイソレート及びPBMC宿主を用いて、ループス患者から単離された組換えFv及びL鎖の中和活性を研究した。
【0079】
末梢血単核球(PBMC)宿主を使用するHIV中和アッセイを(9)に記載されているように行なったが、感染の目安としてはp24の定量化を行った。以下のHIV-1の一次アイソレートをNIH AIDS Research and Reference Reagent Programから得た: ZA009(コレセプター CCR5、クレードC)、BR004(コレセプター CCR5、クレードC)、Ug046(コレセプターCXCR4、クレードD)及びSF-162(コレセプターCCR5、クレードB)。HIV-1一次アイソレート株23135(コレセプターは不明、クレードB)をDr.Sanda Levin(南カルフォルニア大学)から得た。各ウイルスストックを予備研究でドナーPBMCの各バッチで滴定し、最適なTCID50を与える作用希釈度を決定した。作用希釈は、4日後のp24アッセイの直線範囲内で再現性よく測定するべく十分量のp24シグナルを与えるように調節した。RPMI中のウイルスを、PBS中の金属アフィニティー精製されたFv又はL鎖の濃度を上げながら(50μg/mlまで)等容量で4重で処理した(1時間;ウイルスのTCID50=100)。健康なヒトドナー(25万人)から得られたフィトヘムアグルチニン刺激PBMCをウイルス抗体断片混合物に添加し、3日間インキュベートし(37℃)、細胞をPBSで2回、RPMI1640で1回洗浄し、新しいRPMIで24時間インキュベートし、Triton X-100で溶解させ、上清中のp24を酵素免疫測定キット(Beckman Coulter p24アッセイキット;直線範囲50-3200pg/ml)で測定した。陰性コントロールは、(a)希釈液、(b)(組換え抗体調製と同一に処理された)pHEN2ベクターをもつ細菌の金属アフィニティー精製抽出物、(c)軽鎖クローンGG63及びSK161(11μg/ml、文献5)、及び(d)FvクローンJL610及びJL611(2.5μg/ml)で処理したウイルス(株ZA009)を含んでいた。IgGクローンb12は、基準抗体としてDr. Dennis Burtonから快く提供された。
【0080】
Fv JL413、Fv JL427及びL鎖SK18の濃度を上げることによって株ZA009の中和が徐々に上がることが観察された(図11)。対照(コントロール)研究において、HIV感染性(株ZA009、クレードC)が失われていないのは、同様に精製された無関係なFv及びL鎖(図11に示したコントロールFvクローンJL610及びL鎖クローンGG63;図に示していない、コントロールFvクローンJL611、2.5μg/ml;コントロールL鎖クローンSK161、11μg/ml)及び抗体挿入の欠けているベクターを持つ細菌の精製された抽出物の存在下で明らかであった。前述のコントロールクローンの濃度で、ZA009株の>75%中和が、Fv JL413、Fv JL427及びL鎖SK18の存在下で常に確認された。
【0081】
HIV-1の不存在下でFv JL413、Fv JL427又はL鎖SK18と共にインキュベーションした後のPBMCの生存度判定において、アクリジンオレンジ(2μg/ml)及びエチジウムブロマイド(1μg/ml)で染色し、血球計算板及びUV顕微鏡を使った生菌(グリーン蛍光)をカウントした。感染の抑制は細胞傷害効果によるものではなかった。すなわち、細胞生存度は、HIV不存在下での抗体断片とのインキュベーション後に失われていないことが観察されたからである。希釈液で処理した後のPBMC生存度は、Fv JL413、Fv JL427及びL鎖SK18(抗体断片濃度、27μg/ml)でそれぞれ、81.2±2.8%、76.8±3.9%、82.1±4.0%及び79.0±2.8%であった(150-200細胞計算)。
【0082】
精製されたFvクローンによるクレードB、C及びDから得られた一次HIV-1アイソレートの投与量依存中和が観察された(表2)。株ZA009、SF-162及びBR004はコレセプターCCR5、及びクレードD株Ug046、コレセプターCXCR4を利用する。L鎖クローンは、分析された3つの株の2つを中和した。抗体断片の独立した調製物を使用したアッセイでは再現可能な中和活性が示された[株ZA009、N=3、L鎖SK18L鎖、Fv JL413及びFv JL427のIC50:それぞれ0.4 0.3、0.2 0.1及び0.3 0.1(s.d.)μg/ml;株Ug046、N=2、L鎖SK18及びFv JL413のIC50:それぞれ11.6-13.5及び2.1-5.5μg/ml]。並んでいる比較は、Fv JL413の中和可能性がIgG b12すなわちCD4bsに対する広範囲の中和抗体に匹敵していることを示唆していた。
【0083】
これらの観察は、ループスFvクローンが残基421-436で構成された比較的保存されたgp120決定基を認識することを表す。ファージFvクローンは完全長gp120に結合することによって単離されたので、合成された決定基421-436に結合するその能力はこれがループス抗体によって認識される主要エピトープであることを示唆する。ファージL鎖クローンは合成gp120(421-436)に結合することにより単離されたので、完全長gp120とそれらの反応性は、このペプチドが完全長gp120の対応するエピトープに類似の立体配置とりうることを表す。結合活性はgp120に特異的であり、抗体断片のVドメインは、適応成熟に特徴的な広範囲にわたる突然変異を含んでいた。観察された抗体断片のHIV中和特性はHIV感染に対する防御的役割を反映しえる。しかしながら、この点は、ループス患者のより大きなグループで評価して、抗体がHIVを中和するのに十分な量で蓄積したかどうか、及びFvライブラリーにおいて対合するコンビナトリアルVL/VHドメインが完全な抗体で見られる天然の対合をどの程度反復するかを決定しなければならない。ループスの機能的役割に関する注意に関係なく、広範囲に中和する抗体の均質な調製物が入手できることは、可能性のある免疫治療の有用性に見合う価値がある。
【0084】
FvクローンはR5及びX4コレセプターに依存する一次HIVアイソレートの交差クレード中和を示した。この特性は、様々なHIV-1株の決定基421-436の比較的保存された性質と宿主細胞CD4受容体結合の重要な接触部位の決定基421-436による寄与とに一致する。Los Alamosデータベースに挙げられた384のHIV-1株の決定基421-436のコンセンサスアミノ酸の頻度パーセントは以下の通りである(括弧内の値;CRF及びCPZ分類と同様、全クレードA、B、C、D、F、G、H、J、U、N及びOが含まれる);Lys(91), Gln(99), Ile(92), Ile(65), Asn(86), Met(83),Trp(99),Gln(96), Glu(41), Val(87),Gly(97), Lys(42), Ala(95), Met(84), Tyr(99), Ala(98)。配列多型は主に残基429(Glu)及び432(Lys)に位置する。このような多型から生じる微細な構造的違いは抗体中和活性に潜在的に影響を与え得るであろう。配列多型にもかかわらず抗体がHIV-1を中和する程度の評価についてさらなる研究が求められる。しかしながら、一定の初期の結論は可能である。2つのFvクローンは、株ZA009及びUg046を、位置429での配列が異なるにもかかわらず(それぞれLys及びGly)中和した。同様に、株SF2由来の合成された決定基421-436への抗体断片の結合は、株MN由来の完全長gp120への結合に、位置429で配列が異なるにもかかわらず(それぞれGlu及びLys)一般的に関係していた。明らかに、抗体結合と中和活性はこれらの違いにもかかわらず維持される。
【0085】
Fvクローンのエピトープ特異性、即ち線状の決定基421-436の認識は、CD4bsの不連続セグメントを認識する他のモノクローナル抗体とは異なるこれらFvクローンの特徴である。CD4bsに対する種々の抗体のHIV中和活性の変異は以前に注目された(例えば文献)。抗体の繊細な特異性は、中和活性を支配する重要な因子である。本研究において、合成決定基421-436への結合は抗体の初期同定に有用であったが、結合の程度は中和の有効性に完全には関連していなかった。例えば、L鎖SK18は前述の2つのFvクローンと比較して低い結合レベルを表したが、すべての3つの抗体断片は匹敵する有効性でHIV株ZA009及びUg046を中和した(表2)。また、個々の抗体断片の株反応性の違いもあきらかであり、例えば、株ZA009及びUg046の中和とL鎖による株23135の中和である。また、合成ペプチドを使っての実験的免疫によって生じた抗体の報告は、抗体の繊細な特異性の重要性を示唆する。ある報告によると、ポリクローナル中和抗体が残基418-445に対応する合成ペプチドを用いた免疫によって得られた(11)。別の報告によると、決定基421-438を用いた免疫によって生じたモノクローナル抗体はHIVに感染した細胞に発現されたgp120と結合したにもかかわらず、HIV-1を中和しなかった(12)。これらの抗体の異なる特性は、短いペプチドを免疫原として使用することによって取り入れられた区別可能な立体構造によって説明することができる(ペプチドはその微小環境及び長さの違いに依存して異なる構造をとり得る)。抗体が十分な立体障害を生じてCD4の結合を妨害する場合に限り、抗体はHIV-1を中和することが予想されよう。gp120-CD4結合に含まれる重要な残基のところで十分に強い結合を確立する抗体は、全体のCD4bs表面を占領することことがなくても後者の相互作用をブロックするであろう。相対的に、CD4との相互作用に直接関与しないCD4bs残基で結合する抗体は、宿主細胞受容体へのウイルス接着の可能性をオープンにする。
【0086】
文献
1.Pantoliano, M.W., Bird, R.E., Johnson, S., Asel, E.D., Dodd, S.W., Wood, J.F. and Hardman, K.D. Conformational stability, folding, and ligand-binding affinity of single-chain Fv immunoglobulin fragments expressed in Escherichia coli. Biochemistry. 22:10117-10125, 1991.
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8.Nossal, G.J. B lymphocyte physiology: the beginning and the end. Ciba Found Symp. 204:220-230, 1997.
9.Karle, S., Planque, S., Nishiyama, Y., Taguchi, H., Zhou, Y.X., Salas, M., Lake, D., Thiagarajan, P., Arnett, F., Hanson, C.V. and Paul, S. Cross-clade HIV-1 neutralization by an antibody fragment from a lupus phage display library. AIDS. 18:329-331, 2004.
10.Lake, D.F., Kawamura, T., Tomiyama, T., Robinson, W.E., Matsumoto, Y., Masuho, Y. and Hersh, E.M. Generation and characterization of a human monoclonal antibody that neutralizes diverse HIV-1 isolates in vitro. AIDS. 6:17-24, 1992.
11.Neurath, R.A., Strick, N. and Lee, E.S. B cell epitope mapping of human immunodeficiency virus envelope glycoproteins with long (19- to 36-residue) synthetic peptides. J Gen Virol. 71:85-95, 1990.
12.Morrow, W.J., Williams, W.M., Whalley, A.S., Ryskamp, T., Newman, R., Kang, C.Y., Chamat, S., Kohler, H. and Kieber-Emmons, T. Synthetic peptides from a conserved region of gp120 induce broadly reactive anti-HIV responses. Immunology. 75:557-564, 1992.
【実施例3】
【0087】
[工学処理により改良された抗HIV-1抗体]
抗原結合の目的のため、Vドメインは最小の機能ユニットであると考えられる。正しい特異性を有する抗HIV抗体断片が得られると、これらの抗体断片を標準の抗体工学処理法で改善することができる。治療グレード抗体を改変する実行可能性は、免疫されていないヒト患者から調製されたファージライブラリーを使った腫瘍壊死因子に対するヒトFv構築物の開発によって支持される。完全長IgGとして再クローン化されたこの構築物はリウマチ様関節炎の治療によいと最近認められた(1)。
【0088】
前述した抗原結合活性レベルをモニターすることは、改変された抗体断片の活性における改善を判断する有用な方法である。また、HIV中和テストを行ってクローンの活性が改善されたことを確認する。これは重要である。なぜならば分子操作はエピトープの特異性に意図しない変化を誘発する可能性があるからである。同様に、完全長抗体として再クローニングした後のFv特性のわずかな変化を排除することはできない。したがって、Fv Vドメインを含む完全長IgG/IgM抗体の挙動の注意深いモニターが行われる。抗原認識における可能な変化はVL-VHリンカーセグメントが原因で生じ得る。いくつかのFv構築物は分子間相互作用による凝集を起こす傾向がある(これは分子内VL-VH対合がうまくいかない場合に起きる)。そういった場合には、Fv構築物におけるVL及びVHドメインの順番を変えることが、細胞内の制約を軽減し、予測された性質を回復させる助けになる。ここで説明したFv発現方法は不変性系である。万一正しい折りたたみ又は低い発現レベルの問題にに遭遇した場合、代わりの発現系、例えばバキュロウイルス発現系を用いることができる。
【0089】
本発明者は、自身の実験室でのファージ技術の最適化を行い、いくつかの抗原に対する高親和性ファージ抗体を同定した。タンパク質発現または増加率の偏りによる傾斜したライブラリー多様性を最小限にするように注意する。例えばファージライブラリーは可能な限り連続的に増殖させない。溶出pHを徐々に低くしてファージを溶出する際に低及び高親和性結合剤の一段階回収を可能にするアフィニティークロマトグラフィー等の代わりの手順を使用することにより、選択の数を最小限にする。フルサイズの挿入物を有するファージの割合は、しばしば連続濃縮サイクルで減少する。完全長挿入物が確実に維持されるように、選択ステップ間のFv挿入物のサイズをPCRでモニターする。新規のハイパーファージパッケージングシステムの使用により、従来のヘルパーファージパッケージングシステムに通常見られた、表示されたFvを欠く裸の粒子のないファージの回収が可能になる。
【0090】
ドメイン結合と拡張
ループスFvクローンの中和能力は、HIV免疫治療の候補として提案されている一価のFab断片及び二価のIgG抗体に匹敵する。可能性のある更なる進歩は一価のFvクローンを二価のIgGとして再クローニングすることによって実現される。一価のFabのIgGバージョンは結合活性を増強することにより400倍に増加した中和される可能性を提示すると既に報告された(2)。一価のFvの十価の発現はHIV-1結合活性をさらに増加するはずである。
【0091】
もうひとつの重要な因子は完全長抗体対Fv及びFab断片の薬物動力学である。Fv及びFab構築物の半減期は通常時間オーダーであるが、IgG及びIgM抗体はそれぞれ数週間から数日の範囲の半減期を表す。従って、抗原の持続的な中和を達成するには、好ましい試薬は完全長抗体である。一方、より小さいFv構築物は完全長抗体よりも優れている組織進入能力を提供できる。例えば、HIV免疫治療用を意図するFv構築物は完全長抗体よりも効果的に組織ウイルスリザーバーに浸透できる。
【0092】
不変ドメインは抗体に一定のエフェクター機能、例えば補体を固定する能力をもたらし、抗体依存細胞傷害活性を仲介し、抗原提示細胞に発現したFc受容体に結合させる。さらに、IgA抗体としてFvを再クローニングすることにより、IgA抗体は上皮表面を通過することができるので、粘膜液中のHIV-1に対する防御が可能になる。
【0093】
完全長抗体は哺乳類の細胞発現ベクターの中に再クローニングすることによってFv構築物から得られる。このベクターは所望の抗体クラスとサブクラスの不変ドメインをコードするcDNAを含む(3)。IgG1及びIgM構築物としてFvを再クローニングすることは、標準の方法論によって行われる(4)。ベクターは市販で入手可能であり、例えばLonzaからである。ベクターは外来Vドメインの挿入のための制限酵素認識部位を両端に有するヒト抗体不変ドメインを含む。VL及びVHドメインcDNAは、ベクターに存在する適切な制限酵素認識部位を含むバック/フォワードプライマーを使用してpHEN2プラスミドDNAから増幅される。FvのVLドメインは、ベクターの中にκ不変領域の5’側で、またVHドメインは適切な重鎖ドメインの5’側でクローン化される(例えばγ1、α及びμ不変領域)。ベクターは選択用の抗生物質耐性遺伝子を有する。安定な形質移入体をCHO細胞又は別の哺乳動物細胞株で調製する(抗体収率、5-30μg/ml)。IgG、IgA及びIgMの精製を固定化したタンパク質G、抗IgA及び抗IgM抗体を使用して行う。
【0094】
また、HIV-1結合の増大した結合活性をFvの多量体を形成することにより得ることができる。例えば、GNC4タンパク質由来の33アミノ酸自己集合性ペプチドをFv構築物のC末端に配置することによって四価の抗体断片を産生する(文献5で検討された)。このペプチドは4-らせん状束に非共有結合し、ホモ四量体により多価の発現が可能になる。多価結合の全体の結合強さ(結合活性)は個々の複合部位の結合強さの合計よりも実質的に大きいので、事実上不可逆の結合をこれらの手段で得ることができる。またリンカー方法論は、二重特異性抗体、すなわち異なる抗原特異性を有する2つのFv構成要素から成る抗体を産生するのに適用できる(5)。この場合、ゴールは2つの区別可能な抗原を標的にすることであり、例えばトランスフェリン受容体及びCD3に対する二重特異性構築物はCD3+ T細胞に指向してトランスフェリン受容体を発現する細胞を溶解させることが示される。
【0095】
また、ドメイン連結技術は、感染した細胞の死を誘発するリシン及びシュードモナス外毒素などの毒素を伴う抗体のコンジュゲートを調製するのに適用できる。改変された構築物の抗体構成要素は個々の標的分子に対する特異性を与える。例えば、腫瘍に関連した抗原に対する抗体毒素コンジュゲートの特異性は、毒素の一般化されたマイナス効果を制限するのに役立った(6)。同様に、β-ラクタム分解酵素の抗体コンジュゲートの腫瘍細胞への結合は、腫瘍細胞の付近でのドキソルビシンプロドラッグの活性化を可能にする(5)。
【0096】
インビトロでの親和性成熟
既に述べたように、抗原の結合親和性の強さは抗体の中和能の重要な決定因子である。最大の結合親和性を発現するB細胞受容体(Igα及びIgβサブユニットに複合された表面抗体)に対する抗原の選択的結合は、B細胞の増殖を促進する。従って、結合親和性を増強するVドメイン突然変異が選択される。親和性成熟と称される過程である。この過程はインビトロで以下のようにシュミレートされる。突然変異体を、変異原性プライマーを使ったCDRに導入して、変異分子をファージの表面に発現させる。抗原結合を、最も大きな結合親和性を有するファージを分別するのに用いる。この工程を数回繰り返し、更なる突然変異体が各サイクルで導入され、続いて抗原結合によるファージ分離を行う。1010-1011-1(Ka)の大きさの結合親和性を有する抗原特異的Fvクローンが、未免疫のヒトドナーによって発現されたFvレパートリーを出発物質として使用して、得られた。VL及びVHドメインの6つのCDRは約100アミノ酸を含む。20の天然アミノ酸のそれぞれを用いてこれらの残基で包括的に変異させた抗体の研究は、結果として生じる突然変異ライブラリーの大きなサイズのため(〜10020クローン)非現実的である。CDRH3での抗原接触は抗原-抗体相互作用に対する特異性を付与すると考えられるので、VHドメインのCDR3が突然変異を導入するのにしばしば選択される。幾つかのグループは、VH CDR3の構造の最適化は抗原結合特性を改善すると報告している(7-10)。このストラテジーによって改善されたHIV-1認識の例を以下に示す。
【0097】
VH CDR3は長さが23残基までであり得る。各CDR3残基を、他のグループで既に用いられたCDR歩行変異誘発手順を使用してすべての可能な20アミノ酸で置換する(7、8)。〜108クローンよりも大きいファージライブラリーを使用することは非実用的であるため(ファージ可溶性及び形質移入により強要される制約が原因)、突然変異誘発は段階を追う方法で行われる。例えば、5 N末端CDR残基を最初にランダム化して、生じたファージライブラリー(ライブラリー1)を、前述のようにgp120(又はHIV全体)への結合用に選択する。そして、次の5 CDR3残基をランダム化し(ライブラリー2)、抗原結合選択を再度続ける。この工程は完全なCDRが得られるまで繰り返される。このスキームにおいて、ライブラリー1は6.4×107クローン、即ち容易に操作しうるクローンの数から構成される。それぞれのステップで、好ましい性質を有する幾つかの選択されたクローン(後述のスクリーニング手順を参照)は、付加変異誘発と特定される。この工程により、gp120結合及びHIV-1中和性質の最適化が達成される。
【0098】
VH CDR3残基のランダム化は、文献8に説明される方法により行われ、重複伸展による変異誘発からなる。基本的に2つの分離したPCR増幅が行われ、突然変異体が導入されるべきでないVH cDNA領域の増幅と、突然変異されるべきcDNA領域のもうひとつの増幅とに対応する。後者のPCRでは、変異原性のバックプライマーを使用し、バックプライマーは変更されるべき各位置に全4塩基を含む。2つの非変異及び変異したPCR生成物が用意されると、これらが重複伸展により連結される(2つのPCR反応のバック及びフォワードプライマーに組み込まれた短い相補的なオリゴヌクレオチド領域のアニーリングによる)。次に完全VH領域を含むcDNAは、pHEN2ベクターのVHの本来の位置に挿入され、変異したVHドメインに連結された非変異のVLドメインを含むライブラリーを得る。cDNAライブラリーをTG1細胞に電気穿孔して、Fvを提示するファージを、ヘルパーファージを使用してパッケージする。ファージ濃度は、100mM NaHCO3 pH8.6で希釈されたファージサンプル100μl/ウェルを、45分間37℃でコーティングすることにより測定される。ファージ標準物質を用いる(0.5pM〜20pMファージの検量線範囲)。ウェルを洗浄し、次にバッファーに入ったスキムミルクでブロックする。ウェルを各インキュベーション間で洗浄した。コートされたファージの検出はウサギ抗Fd(1:1000)、続いてヤギ抗ウサギホースラディッシュペルオキシダーゼ(1:1000)で行う。色をOPD(o-フェニレンジアミン;Sigma)で発色させ、反応を10N H2SO4で停止した。プレートを490nmで読む(BioRadプレートリーダー)。
【0099】
次にファージ(〜1012)がgp120への結合のための選択の対象となる。選択されたファージをスクリーニングするため、Nunc Maxisorpプレートをgp120で直接コートするか、又は10μg/mlのストレプトアビジン(Sigma)に続いて100mM NaHCO3 pH9.5中のビオチン化gp120で1時間37℃でコートする。プレートをスキムミルクでブロックし、3回2分ずつ、各インキュベーションステップ間に0.1%スキムミルク含有PBSで洗浄する。次にFvクローンを1時間37℃でウェル中でインキュベートする。検出は抗-c-myc抗体で、続いて抗マウスIgGで行う。競合ELISAを、可溶性ポリペプチドの存在下でFvインキュベーションを行うことにより実行する。
【0100】
生じたFv構築物のVL及びVHドメインを配列決定して、配列を親のFvクローンと比較して、改変クローンの改善された生物学的活性と関連するVドメイン変異体を同定する。フローサイトメトリー分析は天然のHIVとFvの反応性を確認するのに有用である。HIV感染細胞をこの実験に使用する。感染細胞の染色は、標準方法を用いて行う。簡単にいえば、5×105のHIV感染及び非感染のPHA活性化PBMC(陰性細胞コントロール)を第一抗体又は抗体断片と45分間氷の上でインキュベートし、PBSで2回洗浄する。次に適切な蛍光プローブで標識した第二抗体を添加し、さらに氷の上で45分間インキュベートして2回PBSで洗浄する。次に染色された細胞をPBS中の0.1%ホルマリンで固定し、分析するまで暗所に4℃で保存する。フローサイトメトリー分析を、側方/前方散乱光測定を使用する常用の方法で行い、生細胞を同定する。コントロールは非免疫性の抗体と、非感染細胞を含む。フローサイトメトリー分析は感染した細胞に発現された三量体gp120に対する見かけ上の抗体結合親和性を測定するのに役立つ。濃度を上げた抗体を感染細胞株に添加して(実験室用に適合した株に感染したH9又は様々なクレードに感染したPBMC)、続いて結合した抗体の検出を行う。フローサイトメトリーを行い、平均蛍光強度を各抗体濃度から得る。データをワンサイドリバーシブルバインディングモデルに適合させて、見かけ上の結合親和性を決定する。
【0101】
gp120結合の結合活性は表面プラズモン共鳴方法によって決定される。簡単にいえば、BiacoreのセンサーChip SAはストレプトアビジンで予め固定化されたカルボキシメチル化デキストランマトリックスを有する。Bt-gp120をストレプトアビジン-センサーチップと共にインキュベートする。次に抗体を、センサーチップを横切るように流す。センサーグラムを、異なる単量体のタンパク質と多価のタンパク質間で比較して、どの分子が最も高い結合活性で結合するかを決定する。
【0102】
前述したストラテジーに加えて、好ましい突然変異体はまた理論的根拠に基づいてVドメインに導入されて結合親和性を改善することができる(最近の例、文献11)。特に抗原-抗体複合物について構造的情報が入手可能な場合である。例えば、突然変異誘発に適切な候補アミノ酸を、分子モデリング又はX線結晶構造解析の情報により特定できる。抗体Vドメインの分子モデリングを、ホモロジー及び最初からのアルゴリズムを併用して行う。ペプチドバックボーントポグラフィーをトレースするための強い予測値を使うコンピュータープログラムが開発されたが、側鎖位置は予測するのがもっと難しい。モデリングはデータベースFab/Fv構造を最大の配列相同性に従って同定することによって開始される。FR、VL CDR1-3及びVH CDR1-2の標準構造が入手可能である。可変性の最も大きい領域(特にVH CDR3ループ構造)は、適切な力場の下で反復的にエネルギー最小化される。理論的変異誘発に適切な候補残基を特定するため、リガンドを仮定の結合部位に位置を合わせることができる。例えば、小さい中性アミノ酸の同じようなサイズの荷電残基での置換を、更に静電気的に安定化する相互作用を導入する手段として試みることができる。このような試みの結果に関する不確定性は、タンパク質-タンパク質相互作用の強固でない性質に関係する。抗原の結合は、抗体と同様、抗原の構造変化を伴う。誘導された立体構造的遷移は、接触残基の近傍ではもっと意味深いと思われるが、もっと長距離の立体構造的変化を除外することはない。
【0103】
VL-VHハイブリダイゼーション
Fvクローンの他に、gp120に対する正しい特異性を提示するループスライブラリーから得られたL鎖クローンを、工学的方法による改善に利用可能である。抗体Vドメインは、VL及びVHドメインにより形成された生来の結合部位と比較して減少した結合親和性を有するにもかかわらず、互いに関係なく抗原を認識できる。抗HIV L鎖を含む個々のVLドメインの結合活性は、適切なVHライブラリーから適合するVHドメインを検索することによって改善される。このアプローチの可能性は以下の検討事項によって示唆される:(a)VL及びVHドメインは、独立に抗原と結合することができ(12、13)、VHドメインは全抗原結合特異性に主要な寄与を提供する(14)。この一例は、VIP認識L鎖をそのパートナーVHドメインと対合することによって改善された抗原VIPの認識である(15)。原則としてこのようなアプローチは天然の抗原特異的抗体よりも優れた抗体を得るのに用いることができるであろう。インビトロでの親和性改善の繰り返されるラウンドに対する障害は何もない。相対的に、B細胞発達を支配する生物学的な力によってインビボでの抗体特異性及び親和性に上限が強いられる。一方、2つのVドメインを別々に操る能力は、有用な目標に活用され得る。
【0104】
確立されたgp120認識活性を有する抗体由来の個々のVHドメイン、例えば抗体クローンS1-1又はb12を、ループスVLドメインパートナーとして用いることができる。それとは別に、VHドメインのライブラリーを用いて、適合性のあるVL-VH分子界面(即ち、機能的触媒部位を形成するためにCDRを十分な空間近接に持ち込む界面)を形成することができる適切なVHドメインを見つける可能性を高める。次に最も好ましい対合したVL-VHドメインを、これらのドメインが全組合わせの中の少数であるとしても、ファージ選択方法で同定する。適切なVHドメイン供給源はHIV-1に感染していて大量の特異的抗gp120抗体を産生する個体である。VHドメインの別の適切な供給源は、gp120又は合成gp120(421-436)で免疫したヒト抗体を発現するトランスジェニックマウス、例えばAbgenix Inc.が作成したXenomouseTMマウスである。これらのマウスの免疫方法は既に本発明者が記載したとおりであり(16)、キャリアータンパク質にコンジュゲートしたgp120又は合成gp120(421-436)の投与による。HIV-1感染個体及びトランスジェニックマウスからのFvライブラリーの調製は基本的に前述したとおりである。従来どおり、Fvを発現するファージは、gp120又は合成gp120(421-436)への結合による選択の対象とされ、VHドメインの供給源としてFvクローンの回収を可能にする。これらのFvクローンから得られたVHドメインの大部分は、VHドメインは非共有の抗原認識に主要な寄与を与えるという研究によって示唆されるように、gp120を独立に認識することが予測され得る。このようなVHドメインはループス患者から単離された抗HIV L鎖に対するパートナーとして好適である。
【0105】
ハイブリッドFvを産生する方法は本発明者の実験室で行われる(15)。基本的に、VL cDNAのcDNAを、Fv構築物を含むpHEN2ベクターにクローニングするために必要な好適な制限酵素認識部位を含むプライマーを使ってベクターから増幅する。リンカー配列はベクターに含まれる。制限酵素の消化による内在性VLドメインcDNAの除去に続いて、所望のVLドメインをベクターに連結する。次に、上で説明したように(HIV-1感染個体及びトランスジェニックマウスから)選択されたファージDNAから得られたVHドメインを、ベクターに連結し、ハイブリッドFvファージをパッケージする。ハイブリッドFvを発現するハイブリッドファージは選択の対象とされ、好適なgp120抗原の調製物の結合についてスクリーニングする。このストラテジーの成功は、親のL鎖と比較したFvクローンのgp120結合及びHIV-1中和の増加として示される。
【0106】
VL-VHの配向性
必要であればFvのVドメインの配向性を変える。Fv結合を詳細に調べているいくつかのグループは、どちらの配向であっても(VH-VL又はVL-VH)抗原に結合するFvの能力に、有意な違いを見つけなかった(17、18)。簡単にいえば、オリゴヌクレオチドプライマーを合成して、5’位置に連結し得るように、Sfi IとXho I 制限酵素認識部位を有するVHをPCR増幅する。同様に合成して、Apa LI部位及びNot I部位にリンカーの3’を連結させるためにVLを増幅する。両方の配向性のFvを精製してgp120への結合とHIV中和をテストする。
【0107】
リンカー効果
既に述べたように、Fv構築物は分子間凝集を起こすことができる(19-21)。このような効果を測定するため、Fvをゲルろ過カラムで分析する。各多量体種に対応するピークを、標準タンパク質の滞留時間とで比較することにより特定し、単量体及び凝集した状態で存在するFvの割合を計算する。ELISA調査を可溶性Fv濃度の関数として行い、その結果を凝集現象の濃度依存性と比較する。
【0108】
リンカーペプチドの長さ及び構造により重要な効果を発揮できる。リンカーの最適化を行うことができ、例えばリンカー配列をランダム化し、続いて所望の挙動を示す変異体を同定することによってできる。この目的の好ましいストラテジーのひとつの例を以下に示す。リンカーの可撓性の保持が必要なので、リンカー中のグリシンを維持して、リンカーの2、7、12及び15位のセリンを、Tangらのランダム化方法(22)の変形を使用して、全20アミノ酸で置換する。これはVL-VH界面相互作用の多様性を提示する効果を有し、その幾つかは凝集効果を軽減し、機能的挙動を改善する。簡単にいえば、オリゴの5’末端のNco I制限酵素認識部位及び3’末端のXho I部位を有するオリゴヌクレオチドを合成して、セリン2,7,12及び15に対応するコドンをランダム化して全20アミノ酸の取り込みを可能にする。このリンカーライブラリーの多様性は3.2×106である。Xho I部位を含むプライマーの3’末端との相補的アンチセンス15-merハイブリッド形成を使用して、二重鎖リンカーを生成する。この突然変異誘発されたリンカーライブラリーをS1-1 VL及びVHを含むpHEN2に連結し、これを使用してTG-1細胞を形質転換し、続いてファージを産生させる。このリンカーライブラリーを、gp120又は合成gp120ペプチドの結合について選択する。HIV中和のスクリーニングを従来どおりに行い、最もよい変異体を同定する。
【0109】
文献
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【実施例4】
【0110】
[抗原性HERVの同定]
ループス患者における、gp120の残基421-436に対して相同性を有する発現可能な内在性配列の同一性を決定することは、gp120を認識する抗体の合成を促進するHERV成分を同定すること及び新規なワクチン候補を開発することを含む幾つかの目的に有用である。この目的に用いられるストラテジーの例を以下に示す。
【0111】
gp120に相同的な内在性ヒト配列
残基422-432に相同的な内在性レトロウイルス配列に対する増加した発現及び/又は増加した免疫反応性は、gp120を認識する抗体の合成を促進すると信じられる。これは、残基421-432がループス抗体認識に対するコアエピトープを形成することを示唆する先の研究及びgp120残基422-432に対して部分的な相同性を有するゲノムHERV-L配列を同定する新しいデータベース分析に基づいている。残基422-432と公知のヒトタンパク質との間の配列相同性は明らかになっていないが、gp120の他の領域はいくつかのタンパク質に相同的である(1-3)。
【0112】
発現可能なgp120関連配列の初期の研究はPBMCから得られたmRNAを使用して行う。PBMCの主な利点は健康なドナーとループス患者間の比較におけるその有用性である。いくつかのHERV mRNA種が既にPBMCで同定されている。HERV発現は組織特異的である可能性がある。PBMCがgp120関連配列をコードするmRNA種を含まない場合、追加の組織をスクリーニングすることができる。別の供給源は、プールされたヒト組織(例えば脳、肝臓、肺;ClonTechから入手可能)から得られたmRNAを使用して調製された市販のcDNAライブラリーである。興味深い代案は健康な及びループス患者の胎盤から得られたmRNAの使用である。HERV配列は胎盤に高レベルで発現し(4-6)、妊娠は自己免疫疾患の臨床的症状に影響を与えることが知られている。他の組織は死体解剖又はまれな生検から集めらなければならないのに対し、満期の胎盤は、出産後最小限の遅れで健康な及びループス被験者から入手できる。
【0113】
健康な個体及び残基422-432でgp120と結合する抗体に対して陽性の未感染ループス患者(各N=20)から得られた全RNA及びmRNAを、標準的なフェノール抽出とオリゴ-dT精製法でRNAのRNA分解酵素消化を最小限にするように注意しながら調製する。逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を所望のcDNAを増幅するのに使用する。フォワードプライマーはオリゴ-dTである(15mer)。例として、以下の2つのバックプライマーをテストする:(a)gp120残基422-432のコンセンサス配列に対応するプライマー[caaattataaacatgtggcaggaagtaggaaaa];及び(b)gp120残基422-432に相同的なHERV-L領域の配列に対応するプライマー[caaattaaaaactttttaaagaaagtaggaaaa]。HIV+被験者から得られたPBMCで行われたRT-PCRは陽性コントロールとして役立つ。これは、感染した細胞におけるgp120遺伝子の発現のため明確なPCR産生物を生成する。並行してゲノムDNAを分析し、残基422-432に相同な発現できない配列が存在するかどうかを決定する。非発現遺伝子配列(例えばイントロン配列)に相補的なプライマーを陰性コントロールとして使用して増幅の特異性を保証する。アニーリング許容度を変えるため、かつ鋳型との部分的ミスマッチにもかかわらずアニーリングを可能にするため、反応を幾つかの温度とMgCl2濃度で行う。cDNA産生物のサイズはgp120 422-432領域からポリAテイルを分離しているmRNA中のヌクレオチドの数に依存する。本発明者は以前に、同様の変性させたアニーリング方法を、相同であるが同一でない5’末端を含む抗体V配列を増幅するために適用した。明確なPCR産生物が明らかになったら配列決定する。この目的のため、PCR産生物を好適なベクターでクローン化する(例えばSfi I及びNot I制限酵素認識部位を介してpCANTAB5His6にクローニングし、続いて従来のジデオキシヌクレオチド配列決定を行う)。相同性分析は、PCR産生物を生じた元の遺伝子を同定する(Blastn;HERVデータベース、http://herv.img.cas.cz;前述したように、PCR産生物は遺伝子断片に対応する)。
【0114】
前述のストラテジーは残基422-432に相同なペプチド決定基をコードする内在性mRNAの検出を可能にする。別のアプローチはHERV成分にもっぱら集中することである。多数のHERV配列がヒトゲノムプロジェクトから明らかになり、データベースに入ったHERV配列の最初の系統的構成が入手可能になっている。HERV配列の5’末端の近くに、レトロウイルスtRNA結合部位に相同な短いヌクレオチド配列が見つけられる(プライマー結合部位又はPBSといわれる;おそらくこれらの部位はかつてウイルス遺伝子の逆転写用プライマーとして働いていた)。22のHERVファミリーは、それらと公知のレトロウイルスとの類似点に基づいて区別される(例えば、HERV-LメンバーはtRNALeuに相同なPBSを含み、pol配列は泡沫状ウイルスの配列に似ている)。従って、代わりの実験アプローチは、PBSに対応するフォワードプライマー及びバックプライマーとしてgp120残基422-432を用いる。この方法は他の発現可能なHERV成分を同定するのに適用された(4、5、7)。このアプローチの利点は、正しい発現可能なHERV配列が同定されると、所定のmRNAに対応する完全長遺伝子を容易に、即ちポリAテイルにアニールするoligo-dTプライマーと組合わせたHERV特異的バックプライマーを使用することにより、クローン化できることである。不利な点はgp120 422-432ホモログの発現が別の遺伝子に挿入されたHERV断片として生じ得ることである(この場合PBSは発現した遺伝子に存在しないであろう)。
【0115】
発現可能なmRNAの定量
gp120残基422-432に対応するPCR産生物の同一性が確認されたら、健康な個体とループス患者のmRNAレベルの比較測定は、同時定量できるRT-PCRによることが好ましい(つまり発現がループス患者に限定されない場合)。簡単にいえば、蛍光標識したプライマーを用い、各PCRサイクルで蛍光の増加が生じ(増幅された産生物の加水分解によって測定される)、この蛍光増加は産生分子の数に直接比例し、従って、鋳型のアンプリコンの数の直接的尺度となる。少なくとも各20の健康な及びループス患者から得られた全RNAをRNaseフリーDNase Iで処理し、鋳型とする。プライマー配列は上記で得られたcDNA配列情報に基づく。初めの数サイクルは比較的低い融解温度(Tm)でプライマーセットを使用して実施する。PCRの第二段階では、蛍光プライマーをより高い融解温度でアニールするように設計する。信頼性のあるシグナルを得るために必要なPCRサイクルの数を標準化する。β-アクチン又はサイクロフィリンmRNAに類似のmRNAの増幅を並行して行う。
【0116】
更なる免疫学的及び遺伝学的分析
更なる実験手技が先の研究の結果により決定される。例えば上で同定されたcDNAを既に特徴づけされた完全長HERVタンパク質に対応させることができよう。別の筋書きは、残基422-432に相同な比較的短いHERV成分が非HERVタンパク質をコードする遺伝子に挿入されるということである。例として、以下、ある一般的な方法について簡単に説明する。gp120に相同であると同定される遺伝子断片を、市販で入手可能なキットを使って[32P]dCTPで放射能標識し、ハイブリダイゼーションプローブとして適用して、Clontechから入手可能なλファージミドのヒト白血球発現ライブラリー(585人の白人からプールされたヒトRNAから得られ、>3k塩基の長いcDNA挿入物を含み、完全長遺伝子にほとんど対応する)等のcDNAライブラリーをスクリーニングする。所望の遺伝子がループス患者にのみ発現されることが分かったら、(8)にあるように、ループス患者のPBMCに由来する新たなcDNAライブラリーを構築する。標準的なハイブリダイゼーション方法を、プローブとアニーリングするクローンを同定して配列決定するのに適用でき、gp120残基422-432に相同なペプチド決定基をコードする完全長遺伝子を同定するのに役立つ。オープンリーディングフレームの存在の確認に続いて(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gorf/gorf.html)、完全長に対応するcDNAを適切な発現ベクター(例えば適切な翻訳後プロセッシングを確実にするバキュロウイルス系;his6タグを導入して迅速な精製を可能にする)で再クローニングする。
【0117】
この時点で抗原性及び免疫原性の研究が実現可能になる。2つのタイプの研究が行われる:(a)Aim 2で述べたFvクローン及び完全長抗体による精製された組換えタンパク質の特異的認識の実証(クローンJL413、JL427、GL2、GL59);及び(b) gp120残基422-432の特異的認識の故にHIVを中和するモノクローナル抗体を誘発するための免疫原としての組換えタンパク質の使用。この目的のための方法は、基本的に前に説明したとおりである。モノクローナル抗体の産生は、本発明者の以前の発表で説明されている(例えば文献9)。
【0118】
代わりのストラテジーは、ループス患者から単離されたmRNAを発現するcDNAファージディスプレイライブラリーの使用である。このストラテジーではループス患者から単離されたgp120特異的抗体と反応する抗原に関してライブラリーをスクリーニングすることが可能になる。しかしながら、このアプローチは幾つかの技術的な落とし穴をもち、例えばファージ表面に天然の立体構造をもつ大きな完全長タンパク質を確実に発現させるのが難しい。
【0119】
ループス抗体の固有な特性からみて、合成を支配する根底にある免疫原の同定は抗HIVワクチン設計を進歩させるのに役立つだろう。このような免疫原は特異的な抗体合成を担うB細胞の成熟を支持するために存在するに違いないと仮定することが妥当である。これは、(FRと比較して)gp120を認識するループス抗体のCDRに密集した広範囲の置換変異の存在、即ち適応的に成熟したV遺伝子の顕著な特徴によって支持される。
【0120】
文献
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
残基421-436を含む高度に保存されたエピトープgp120に結合し、それによって超抗原として高度に保存された決定基を有する標的HIV抗原を中和することのできるモノクローナル抗体又はその断片を製造する方法であって、
全身性エリテマトーデスに罹患しているが、標的gp120(421-436)ペプチドを発現するHIVによる感染症状は見られない個体の発現された抗体レパートリーを、ファージ粒子の表面で又は細菌発現宿主において可溶性形態で調製するステップ、
前記高度に保存された決定基に結合するクローンをスクリーニングすることによって、目的の抗体又は抗体断片クローンを前記ファージ粒子又は細菌発現宿主から単離するステップ、
目的の前記抗体又は抗体断片クローンを発現し、精製するステップ、
gp120(421-436)ペプチドと結合する目的の前記精製された抗体又は抗体断片クローンの前記HIVを中和する能力をアッセイするステップ、及び
前記HIV中和アッセイから抗体又は抗体断片を選択するステップ
を含む前記製造方法。
【請求項2】
残基421-436を含む高度に保存されたエピトープgp120に結合し、HIVの遺伝学的に分岐した株を中和することのできるモノクローナル抗体断片を製造する方法であって、
(a)VL及びVHドメインを含む単鎖Fv構築物又は
(b)軽鎖サブユニットを含む、全身性エリテマトーデスに罹患した個体の発現された抗体レパートリーを、複数の前記個体からプールされたリンパ球のmRNAを得た後、前記レパートリーにおいて前記単鎖Fv構築物又は前記軽鎖サブユニットに対応するcDNAを逆転写酵素ポリメラーゼ反応によって得て、ファージ粒子の表面上で又は細菌発現宿主において可溶性形態で、前記抗体断片の発現を可能にするファージミドベクターにより前記cDNAをクローン化することによって調製するステップ、
固定化されたgp120、合成gp120(421-436)ペプチド、固定化されたHIV、gp120のオリゴマー、又は残基414‐439の範囲の任意の長さの合成gp120ペプチドに結合するクローンをスクリーニングすることによって、目的の抗体断片クローンを前記ファージ粒子又は細菌発現宿主から単離するステップ、
目的の前記抗体断片クローンを可溶性形態で発現し、精製し、さらに前記クローンのgp120(421−436)ペプチドとの結合能を確認するステップ、
gp120(421−436)ペプチドに結合して複数の主要なHIV分離株を中和する、目的の前記抗体断片クローンの能力をアッセイするステップ、及び
前記HIV中和アッセイから抗体断片を選択するステップ
を含む前記製造方法。
【請求項3】
残基421-436を含む高度に保存されたエピトープgp120に結合し、それによってHIVの遺伝学的に分岐した株を中和することのできるモノクローナル抗体断片であって、
配列番号46に示すアミノ酸配列を含むVLドメイン及び配列番号47に示すアミノ酸配列を含むVHドメイン、
配列番号44に示すアミノ酸配列を含むVLドメイン及び配列番号45に示すアミノ酸配列を含むVHドメイン、又は
配列番号43に示すアミノ酸配列を含むVLドメイン
を含む、前記抗体断片。
【請求項4】
請求項3に記載のモノクローナル抗体断片を少なくとも一つ含有する医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−137013(P2011−137013A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24292(P2011−24292)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【分割の表示】特願2006−509464(P2006−509464)の分割
【原出願日】平成16年3月29日(2004.3.29)
【出願人】(507283665)
【Fターム(参考)】