HIVCON:HIV免疫原及びその使用
【課題】抗HIV免疫応答を導き出すように設計された人工融合タンパク質(AFP)、並びにそれらのタンパク質をコードする核酸分子及び発現ベクターの提供。
【解決手段】AFPは、様々なHIVタンパク質、例えば部分配列であるGag、Pol、Vif及びEnvタンパク質由来のドメインを含むことができる。HIVCONは、HIVドメインがいくつかのHIVクレードコンセンサス配列由来のものであり、例えば発現レベル又は実験動物の免疫応答の監視で役立つことができる、更なるドメインを含んでもよいAFPである。細胞性免疫応答を誘導するために、好ましくはDNAプライム―MVAブースト手法により、対象で抗HIV免疫応答を誘導する組成物及び方法を含むことができる。
【解決手段】AFPは、様々なHIVタンパク質、例えば部分配列であるGag、Pol、Vif及びEnvタンパク質由来のドメインを含むことができる。HIVCONは、HIVドメインがいくつかのHIVクレードコンセンサス配列由来のものであり、例えば発現レベル又は実験動物の免疫応答の監視で役立つことができる、更なるドメインを含んでもよいAFPである。細胞性免疫応答を誘導するために、好ましくはDNAプライム―MVAブースト手法により、対象で抗HIV免疫応答を誘導する組成物及び方法を含むことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2005年2月24日に出願の米国特許仮出願第60/655764号の権益を主張する。
【0002】
前述の出願、及びそこで引用されている全ての文書(「出願引用文書」)及びその出願引用文書中で引用又は参照されている全ての文書、及び本明細書で引用又は参照されている全ての文書(「本明細書引用文書」、及び本明細書引用文書中で引用又は参照されている全ての文書は、本明細書で指摘されているいかなる製品のための、又は本明細書で参照により組み込まれたいかなる文書中のいかなる製造元の指示書、説明書、製品規格及び製品シートとともに、本明細書で参照により組み込まれ、本発明の実施に際して使用することができる。
【0003】
この研究は、一部、英国のMedical Research Councilからの補助金によって助成された。
【0004】
本発明は、対象で抗HIV免疫応答を導き出すように設計された人工融合タンパク質(AFP)、並びにそれらのタンパク質をコードする核酸分子及び発現ベクターに関する。AFP並びにこれらのタンパク質をコードする核酸及び発現ベクターは、抗HIV免疫応答を起こすために、対象に単独で、又は組み合わせで投与することができる。本発明のAFPは、様々なHIVタンパク質、例えばGag、Pol、Env及びVifタンパク質からのドメインを含むことができる。ドメインを形成するHIVタンパク質は、部分タンパク質配列であり、それらのタンパク質の正常活性の1つ又は複数に関して生物学的に不活性化されている。HIVCONは、HIVドメインが複数のHIVクレードコンセンサス配列由来であるAFPである。HIVCONは、例えばタンパク質発現レベル又は実験動物免疫応答をモニター(monitor)する際に役立つ、更なるドメインを含むこともできる。そのようなドメインは、任意選択でAFPに含まれる。本発明の他の態様は、好ましくはDNAプライム―MVAブースト手法を用いて、好ましくは細胞性免疫応答を誘導するために、対象で抗HIV免疫応答を誘導するための組成物及び方法を含む。
【背景技術】
【0005】
エイズ又は後天性免疫不全症候群はヒト免疫不全ウイルス(HIV)に起因し、消耗症候群、中枢神経系変性及び、日和見感染症及び悪性腫瘍をもたらす重大な免疫抑制を含む、いくつかの臨床像を特徴とする。HIVは、ヒツジ及びウシ、ネコのビスナウイルス並びにサルの免疫不全ウイルス(SIV)を含む、動物レトロウイルスのレンチウイルスファミリーのメンバーである。HIV―1及びHIV―2と命名された2種類の密接に関連したHIVが今までに同定され、その内、HIV―1はエイズの断然と最も一般的な原因である。しかし、ゲノム構造及び抗原性が異なるHIV―2は、類似した臨床症候群を引き起こす。
【0006】
感染性のHIV粒子は、ウイルスタンパク質のコア内に詰められた、それぞれ長さが約9.2kbの2つの同一のRNA鎖からなる。このコア構造は、宿主細胞膜に由来するリン脂質二重層エンベロープによって囲まれ、それは、ウイルスによってコードされた膜タンパク質も含む(Abbas et al., Cellular and Molecular Immunology, 4th edition, W.B. Saunders Company, 2000, p. 454)。HIVゲノムは、レトロウイルスファミリーの特有の5’―LTR―Gag―Pol―Env―LTR―3’構成を有する。ウイルスゲノムの各末端の末端反復配列(LTR)は、宿主からの転写調節タンパク質のための結合部位の役目を果たし、宿主ゲノムへのウイルスの組込み、ウイルスの遺伝子発現及びウイルス複製を調節する。
【0007】
HIVゲノムは、いくつかの構造調節タンパク質をコードする。Gag遺伝子は、ヌクレオカプシドコア及びマトリックスのコア構造タンパク質をコードする。Pol遺伝子は、ウイルス複製に必要な逆転写酵素、インテグラーゼ及びウイルスのプロテアーゼ酵素をコードする。tat遺伝子は、ウイルス転写産物の伸長のために必要なタンパク質をコードする。rev遺伝子は、スプライシングが不完全かスプライシングされていないウイルスRNAの核外移行を促進するタンパク質をコードする。Vif遺伝子産物は、ウイルス粒子の感染性を強化する。vpr遺伝子産物は、ウイルスDNAの核内移行を促進して、G2細胞周期停止を調節する。vpu及びnef遺伝子は、宿主細胞CD4発現をダウンレギュレートして感染細胞由来のウイルスの放出を増強するタンパク質をコードする。Env遺伝子は、160キロダルトン(kDa)前駆体(gp160)として翻訳され、細胞プロテアーゼによって切断されて細胞感染のために必要である外部120kDaエンベロープ糖タンパク質(gp120)及び膜貫通41kDaエンベロープ糖タンパク質(gp41)を生じる、ウイルスエンベロープ糖タンパク質をコードする(Abbas, pp. 454-456)。
【0008】
HIV感染は、ウイルス粒子上のgp120が、標的細胞、例えばCD4+T細胞、マクロファージ及び樹状細胞の細胞膜上のCD4及びケモカイン受容体分子(例えばCXCR4、CCR5)と結合することから開始する。結合したウイルスは標的細胞と融合し、RNAゲノムを逆転写する。結果として生じるウイルスDNAは細胞ゲノムに組み込まれ、新しいウイルスRNAの生産、したがってウイルスタンパク質及び新しいビリオンの生産を指示する。これらのビリオンは感染細胞膜から出芽して、他の細胞で増殖性感染を確立する。この過程は、当初に感染した細胞も殺傷する。非感染性T細胞上のCD4受容体は感染細胞の表面で発現されるgp120と強い親和性を有するので、HIVは間接的に細胞を殺すこともできる。この場合、非感染細胞はCD4受容体―gp120相互作用を通して感染細胞に結合し、融合して、生存することができないシンシチウムを形成する。免疫防御に重要であるCD4+Tリンパ球の破壊は、エイズ疾患進行の証明である進行性免疫機能障害の主な原因である。CD4+T細胞の消失はほとんどの侵入者と闘う体の能力を深刻に害するが、そのことは、ウイルス、真菌類、寄生虫、及びマイコバクテリウムを含むある種の細菌に対する防御に特に重大な影響を及ぼす。
【0009】
HIV―1の異なる分離株が、3グループM(主)、O(外れ値)及びN(非M、非O)に分類された。HIV―1 Mグループは、HIVの世界的流行を支配する(Gaschen et al., (2002) Science 296: 2354-2360)。HIV―1 Mグループは、約70年前にヒトでその拡大を開始してから(Korber et al., Retroviral Immunology, Pantaleo et al., eds., Humana Press, Totowa, NJ, 2001, pp. 1-31)、急速に多様化した(Jung et al., (2002) Nature 418: 144)。HIV―1 Mグループは、いくつかの異なるクレード(サブタイプとしても知られる)、並びに循環組換え態(CRF)として知られる、2つ以上のクレードの組み合わせから生じる変異体からなる。サブタイプは、少なくとも25%独自のゲノムを有するものと定義される(AIDS epidemic update, December 2002)。11のクレードが同定され、各サブタイプは1文字で指定される。個体が2つの異なるHIVサブタイプに感染したときに見られるように、クレードが互いに結合して環境中での確立に成功すると、結果として生じるウイルスはCRFとして知られる。これまでに、約13のCRFが同定された。HIV―1クレードは、地理的好みも示す。例えば、2番目に最も一般的なクレードであるクレードAは西アフリカで一般的であり、クレードBはヨーロッパ、米国及びオーストラリアで一般的である。最も一般的なサブタイプであるクレードCは、南アフリカ、インド及びエチオピアで広範囲に分布している(AIDS epidemic update, December 2002)。
【0010】
HIVのこの遺伝的変異性は、ワクチン開発上の科学的難問となっている。HIV―1は、高度に変異するウイルスであり、サブタイプ内の変異が20%と高く、サブタイプ間の差がアミノ酸配列の35%に達する(Thomson, M.M. et al (2002) Lancet Infect Dis. 2: 461-471)。一部の報告書はクレード交差免疫応答が検出されることを証明している(Cao, H. et al. (1997) J. Virol. 71: 8615-8623、Ferrari, G. et al. (1997) Blood 90: 2406-2416、Walker, B.D. et al. (2001) Nat. Immunol. 2: 473-475)が、他の研究はそれと一致していない(Burrows, S.R. et al. (1992) Eur. J. Immunol. 22: 191-195、McMichael, A.J. et al (2002) Nat. Rev. Immunol. 2: 283-291)。したがって、非常に広いクレード交差反応性の明白な証拠が入手できるようになり、ワクチンが多くのエピトープに対して強いT細胞応答を誘導することが示されない限り、標的集団内でワクチンの免疫原をクレード及び/又はCRFと一致させることは慎重になる。
【0011】
生の弱毒化ウイルス、殺滅ウイルス又はウイルスサブユニットによる免疫化などのワクチン開発の伝統的な手法は、HIVに適当であると証明されていない。例えば、マカク―SIVモデルにおいて、生の弱毒ワクチンは持続感染を引き起こし、一部のマカクはエイズを起こす。更に、ウイルスの臨床分離株に有効な中和抗体を生成することは、困難であった。従来の及び新しい手法と液性及び/又は細胞性の免疫を導き出すように設計された新規免疫原との組み合わせが必要なことが判明する可能性があり、それらは活発に探索されている。
【0012】
中和抗体で問題点に遭遇したので、HIVワクチン開発の他の手法は、細胞性免疫応答を誘導することである。そのような応答は、主に、細胞傷害性T細胞(CTL)によって媒介される。CD8+T細胞としても知られるCTLは、少なくとも2つの異なる方法で生物の防御に関与する。ウイルス感染細胞を殺滅すること、及び、直接的又は間接的にウイルス複製の抑制に寄与する様々なサイトカイン及びケモカインを分泌することである。強いCD8+T細胞応答の誘導及び維持は、CD4+Tリンパ球(ヘルパーT細胞)によって提供される「援助」を必要とする。
【0013】
CTLは、表面及び内部の両方の構造的及び非構造的HIVタンパク質から生じるペプチドを認識する。抗体と異なり、それらは無細胞HIVが宿主細胞に感染することを予防することはできない。したがって、ワクチンによって誘導される予防的CTLは、迅速に作用しなければならない。そのためには、それらは十分な数でなければならない場合があり、そのことは、持続的なワクチン刺激又は規則的な再ワクチン接種を必要とする場合があり、又は必要としない場合がある。好ましくは、ワクチンによって誘導されたCTLは、伝達するウイルス/クレードの初期の及び/又は大量のHIVタンパク質を認識し、HIVが逃れるのを困難にするために機能的に保存されたタンパク質領域内の複数のCTLエピトープを標的とし、標的細胞を効率的に殺滅しなければならない。
【0014】
CTLを誘導するために、初回抗原刺激免疫化として免疫原をコードするプラスミドDNAを使用し、続いて同じ免疫原をコードする組換えウイルスによるブースティング免疫化を行うプライムブースト(prime-boost)免疫化手法は、マウスでCD8+T細胞応答を刺激する効力を証明した(Hanke et al., (1998a) Vaccine 16:439-445、Schneider et al., (1998) Nat. Med.4: 397-402、Kent et al., (1998) J. Virol. 72:10180-10188)。この手法は確認されて、ヒト以外の霊長類(Hanke et al, (1999) J. Virol 73:7524-7532、Allen et al., (2000a) J. Immunol. 164: 4968-4978、Amara et al., (2001) Science 292:69-74、Allen et al., (2002) J. Virol. 76:10507-10511、Shiver et al., (2002) Nature 415:331-335)及びヒト(McConkey et al., (2003) Nat. Med. 9: 729-35)のために拡張された。国際公開98/56919は、マラリア及び他の抗原、例えばウイルス及び腫瘍の抗原に対してCTL媒介性の免疫応答を起こすためのプライムブースト免疫化手法を開示する。この免疫化手法は異なるベクターで同じCTLエピトープを送達する初回抗原刺激及びブースティング組成物を使い、ブースティング組成物のためのベクターは、複製に欠陥があるポックスウイルスベクターである。
【0015】
ワクチン開発の他の態様は、複数のHIVエピトープに特異的なCTL応答を誘導することができる製剤を見出すことである。そのようなワクチンはHIVが逃れることを比較的困難にすることができ、HIV複製を抑制するより高い可能性を提供するであろう。理論的に、別々のワクチンベクターによって個々に送達されるいくつかのより小さな免疫原は、単一のベクターから発現される1つの大きな複遺伝子性タンパク質よりも有利であり、その理由は、前者の免疫原は別々の抗原提示細胞に達することができ、それぞれは少なくとも1つの免疫優勢応答を誘導するからである(Singh, R.A. et al., (2002) J. Immunol. 168:379-391)。複遺伝子性タンパク質では、交差初回抗原刺激が免疫刺激で役割を果たさない限り、各成分は1つの細胞によって生産されるので提示を巡って他の成分と競合する。それ故に、導き出された免疫応答の幅及びワクチン開発及び生産の実際性の間で均衡が必要であり、前者はワクチン成分の数を増加させ、後者は減少させる。
【0016】
ワクチン開発の他の態様は、HIV変動性に対処することである。最初に、ワクチンはそれらの製剤で各クレード由来の1つのタンパク質を使って、HIVクレードを交替させることができた。第2に、免疫系は多くの異なるエピトープに応答する能力を有するので、2つ又は3つの最も一般的なHIVクレードに由来する全ての免疫原の混合を用いることができた。しかし、他のワクチンの手法に関しては、エピトープの「免疫優勢」は、T細胞応答の幅を狭くすること、及びウイルス感染に応じた予防免疫を防ぐことができた(Yewdell, J.W. et al. (1999) Ann. Rev. Immunol. 17: 51-88)。
【0017】
ウイルス感染の過程で、CTL応答は、エピトープ認識のそれらのパターンにおける予測可能な偏向を発達させる。エピトープ認識の階層が発達し、大部分のCTL応答は非常に限定された数のエピトープを標的にする。この現象は、「免疫優勢」としても知られる。実験から得た証拠は、免疫優勢が、関連する細胞受容体、即ち主要組織適合複合体(MHC)クラスI分子に対する多様なエピトープ親和性、ウイルスによって生産されるエピトープの様々なコピー数、及び宿主細胞機構によるエピトープの処理における差など、多くの因子の結果として発達することを示唆する。したがって、エピトープ偏向の階層を回避することができるワクチン手法は、ウイルス感染に対して防御免疫応答を提供する広いCTL応答をもたらすことができた。
【0018】
2、3の例外があるが、大部分の既知のCTLエピトープは慢性感染個体で特定され、これらのエピトープへの応答はHIV感染から保護することがこれまでできなかった。しかし、他の研究は、支配的な応答が必ずしも最も保護的であるというわけではないことを示す(Gallimore, A. et al (1998) J. Exp. Med. 187: 1647-1657)。したがって、定義上全てのクレードに共通する保存タンパク質領域に基づいてHIV免疫原を開発することは、当技術分野で非常に望ましい進歩である(Wilson, C.C. et al. (2003) J. Immunol. 171: 5611-5623)。そのような免疫原は、自然界ではHIV感染細胞によって処理されるエピトープを必ずしも含まないが、保護的である可能性がある亜優占的又は隠れたエピトープを含む、保存タンパク質領域を含むことができた。亜優占的なエピトープに対して強い応答を誘導することができる免疫原は、免疫優性の問題を避けることができ、したがって、広いT細胞応答を誘導することができた。更に、クレード交差性又はクレード遍在性のCTL反応性は、そのような免疫原の局在化程度のより低い地理的使用を可能にすることができた。
【0019】
この出願でのいかなる文書の引用又は特定も、そのような文書が本出願の先行技術として利用可能であることを承認するものではない。
【特許文献1】米国特許仮出願第60/655764号
【特許文献2】国際公開98/56919
【非特許文献1】Abbas et al., Cellular and Molecular Immunology, 4th edition, W.B. Saunders Company, 2000, p. 454
【非特許文献2】Gaschen et al., (2002) Science 296: 2354-2360
【非特許文献3】Korber et al., Retroviral Immunology, Pantaleo et al., eds., Humana Press, Totowa, NJ, 2001, pp. 1-31
【非特許文献4】Jung et al., (2002) Nature 418: 144
【非特許文献5】AIDS epidemic update, December 2002
【非特許文献6】Thomson, M.M. et al (2002) Lancet Infect Dis. 2: 461-471
【非特許文献7】Cao, H. et al. (1997) J. Virol. 71: 8615-8623
【非特許文献8】Ferrari, G. et al. (1997) Blood 90: 2406-2416
【非特許文献9】Walker, B.D. et al. (2001) Nat. Immunol. 2: 473-475
【非特許文献10】Burrows, S.R. et al. (1992) Eur. J. Immunol. 22: 191-195
【非特許文献11】McMichael, A.J. et al (2002) Nat. Rev. Immunol. 2: 283-291
【非特許文献12】Hanke et al., (1998a) Vaccine 16:439-445
【非特許文献13】Schneider et al., (1998) Nat. Med.4: 397-402
【非特許文献14】Kent et al., (1998) J. Virol. 72:10180-10188
【非特許文献15】Hanke et al, (1999) J. Virol 73:7524-7532
【非特許文献16】Allen et al., (2000a) J. Immunol. 164: 4968-4978
【非特許文献17】Amara et al., (2001) Science 292:69-74
【非特許文献18】Allen et al., (2002) J. Virol. 76:10507-10511
【非特許文献19】Shiver et al., (2002) Nature 415:331-335
【非特許文献20】McConkey et al., (2003) Nat. Med. 9: 729-35
【非特許文献21】Singh, R.A. et al., (2002) J. Immunol. 168:379-391
【非特許文献22】Yewdell, J.W. et al. (1999) Ann. Rev. Immunol. 17: 51-88
【非特許文献23】Gallimore, A. et al (1998) J. Exp. Med. 187: 1647-1657
【非特許文献24】Wilson, C.C. et al. (2003) J. Immunol. 171: 5611-5623
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
現在、意外にも、選択されたHIVタンパク質、例えばGag、Pol、Vif及びEnvの最も高度に保存された領域から選択された配列は、HIVクレード及びCRFによって限定されないHIVに対する免疫応答を誘導することができることが発見された。本発明は、したがって、ある実施形態では、Gag、Pol、Vif及びEnv由来のHIV配列を含む人工融合タンパク質(以下、「AFP」)を提供し、それらの配列はGag、Pol、Vif及びEnvの最も高度に保存された領域を含むことができ、それらはクレード、CRF並びに支配的なCTLエピトープの存在及び存在量にかかわりなく選択される。また、AFPを発現する単離された核酸、AFPを発現する核酸を含むことができる発現ベクター及び宿主細胞、AFPの発現方法、並びに対象でAFPに対して免疫応答を誘導するための方法も提供される。
【課題を解決するための手段】
【0021】
したがって、本発明の一態様は、HIV Gagドメイン、1つ又は複数のHIV Polドメイン、HIV Vifドメイン及び1つ又は複数のHIV Envドメインを含むAFPを提供する。一実施形態では、AFPが所定のHIVクレードに対して免疫応答を誘導するように、HIVのGag、Pol、Vif及びEnvのそれぞれを選択することができる。代替の実施形態において、HIVのGag、Pol、Vif及びEnvドメインのそれぞれのアミノ酸配列は、異なるHIVクレードのHIVコンセンサス配列から選択することができる。好ましくは、HIVクレードは、クレードA、A1、A2、B、C及びDからなる群から選択することができる。
【0022】
他の実施形態はHIVのGag、Pol、Vif及びEnvのそれぞれのアミノ酸配列に関し、それらはHIVクレードの間で約0%から約10%異なることができる。好ましくは、配列はクレードの間で約0%から約8%、より好ましくはクレードの間で約0%から約6%変動する。
【0023】
他の実施形態において、ドメインはNからC末端の間に、天然のタンパク質を再現しない任意の順序で存在することができる。好ましくは、ドメインはNからC末端の間に、HIV Gagドメイン、第1のHIV Polドメイン、HIV Vifドメイン、第2のHIV Polドメイン、第1のHIV Envドメイン、第3のHIV Polドメイン及び第2のHIV Envドメインの順序で存在することができる。ドメインは、介在配列に伴い、又は伴わず結合することができる。
【0024】
HIV Gagドメインは、好ましくは、配列番号2のアミノ酸1〜135に対応する、HIV単離株由来のアミノ酸配列又はHIVコンセンサス配列を含むことができる。HIV Gagドメインは3つのHIV Gagサブドメインを含むことができ、それらは同じHIVクレード由来でも又は異なるHIVクレード由来でもよい。好ましい一実施形態において、最初のHIV Gagサブドメインは配列番号2のアミノ酸1〜56を含むことができ、その配列はHIVクレードC由来である。第2のHIV Gagサブドメインは好ましくは配列番号2のアミノ酸57〜96を含み、その配列はHIVクレードD由来でよい。第3のHIV Gagサブドメインは好ましくは配列番号2のアミノ酸97〜135を含み、その配列はHIVクレードA由来でよい。
【0025】
HIV Polドメインは好ましくは3つのHIV Polドメインを含むことができ、最初のHIV Polドメインは好ましくは配列番号2のアミノ酸136〜393を含むことができ、第2のHIV Polドメインは好ましくは配列番号2のアミノ酸422〜484を含むことができ、第3のHIV Polドメインは好ましくは配列番号2のアミノ酸522〜723を含むことができる。好ましくは、各HIV Polドメインは、少なくとも2つのHIV Polサブドメインを含むことができる。この少なくとも2つのHIV Polサブドメインは、同じか異なるHIVクレード由来であることができる。第1のHIV Polドメインの第1のHIV Polサブドメインは、好ましくは配列番号2のアミノ酸136〜265を含むことができ、その配列はHIVクレードB由来でよい。第1のHIV Polドメインの第2のHIV Polサブドメインは、好ましくは配列番号2のアミノ酸266〜393を含むことができ、その配列はHIVクレードC由来でよい。第2のHIV Polドメインの第1のHIV Polサブドメインは、好ましくは配列番号2のアミノ酸432〜467を含むことができ、その配列はHIVクレードA由来でよい。第2のHIV Polドメインの第2のHIV Polサブドメインは、好ましくは配列番号2のアミノ酸468〜494を含むことができ、その配列はHIVクレードB由来でよい。第3のHIV Polドメインの第1のHIV Polサブドメインは、好ましくは配列番号2のアミノ酸522〜556を含むことができ、その配列はHIVクレードD由来でよい。第3のHIV Polドメインの第2のHIV Polサブドメインは、好ましくは配列番号2のアミノ酸557〜629を含むことができ、その配列はHIVクレードA由来でよい。第3のHIV Polドメインの第3のHIV Polサブドメインは、好ましくは配列番号2のアミノ酸630〜676を含むことができ、その配列はHIVクレードB由来でよい。第3のHIV Polドメインの第4のHIV Polサブドメインは、好ましくは配列番号2のアミノ酸677〜723を含むことができ、その配列はHIVクレードC由来でよい。
【0026】
HIV Vifドメインは好ましくは配列番号2のアミノ酸394〜421を含み、その配列はHIVクレードD由来でよい。第1のHIV Envドメインは好ましくは配列番号2のアミノ酸485〜521を含むことができ、第2のHIV Envドメインは好ましくは配列番号2のアミノ酸724〜777を含むことができる。第1のHIV Envドメインは好ましくはHIVクレードC由来であることができ、第2のHIV Envドメインは好ましくはHIVクレードD由来であることができる。
【0027】
本発明は、配列番号2のアミノ酸1〜777を含むAFPも提供する。本発明のAFPは、実験動物でAFPに対する免疫応答をモニターするために、1つ又は複数のヒト以外のCTLドメイン、例えばSIV tat CTLエピトープ、pb9エピトープ、P18―I10エピトープ及びSIV gag p27エピトープからなる群から選択されるものを更に含むこともできる。本発明のAFPは、Pk、Flag、HA、myc、GST又はHisエピトープからなる群から選択されるマーカードメインを更に含むこともできる。本発明の更なる態様は、配列番号2のアミノ酸1〜806を含むAFPを提供する。
【0028】
本発明の他の態様は、本発明のAFPをコードするヌクレオチド配列を有することができる、単離された核酸を提供する。更に、本発明は、少なくとも1つの核酸制御配列に作動可能に結合し、本発明のAFPをコードするヌクレオチド配列を有する核酸を含む発現ベクターも提供する。本発明の核酸及びベクターは、遺伝子ワクチン、即ちヒトなどの対象に本発明のAFPをコードする核酸を送達し、その結果AFPが次に対象で発現されて免疫応答を導き出すワクチンを提供するために特に役立つ。
【0029】
発現ベクターは、プラスミドベクター、ウイルスベクター、媒介昆虫、酵母ベクター又は細菌ベクターでよい。好ましくは、プラスミドベクターはpTH又はpTHrである。
【0030】
ウイルスベクターは、アルファウイルスレプリコンベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、又は他の任意の適当なウイルスベクターでもよい。ベクターがポックスウイルスベクターである場合、ポックスウイルスベクターはワクシニアウイルス及びアビポックスウイルスからなる群から選択される。ポックスウイルスは、MVA、NYVAC、TROVAC又はALVACなどの弱毒化ポックスウイルスでよい。
【0031】
発現ベクターは、生きている弱毒化サルモネラ又は赤痢菌のベクターなどの細菌ベクターでもよい。
【0032】
好ましい実施形態において、核酸制御配列は、サイトメガロウイルス(CMV)の前初期プロモーターでよい。
【0033】
好ましくは、本発明のAFPをコードするコドンは、AFPが発現される標的対象又は宿主細胞の高発現遺伝子のものでよい。対象は、有利にはヒトである。ある実施形態において、発現ベクターpTH又はpTHrはHIVCONコード配列を含むことができ、それぞれ、pTH.HIVCON又はpTHr.HIVCONと呼ばれる。代わりに発現ベクターMVAを用いることができ、その結果MVA.HIVCONと呼ばれる核酸が生じる。
【0034】
本発明の更なる態様は、本発明の発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0035】
本発明は、AFPを調製する方法も提供し、その方法は、(a)AFPを発現する時間及び条件下で本発明の宿主細胞を培養すること、及び(b)AFPを回収することを含むことができる。
【0036】
他の態様はAFPを動物に導入し、動物で発現させる方法を提供し、その方法は、動物内に本発明の発現ベクターを送達することによって、動物でAFPの発現を得ることを含むことができる。
【0037】
動物細胞でAFPを発現するための方法も提供され、その方法は、(a)本発明の発現ベクターを動物細胞に導入すること、及び(b)AFPを発現するのに十分な条件下でそれらの細胞を培養することを含むことができる。
【0038】
本発明の更なる態様は動物で免疫応答を誘導する方法を提供し、その方法は、動物内に本発明の発現ベクターを送達することを含むことができ、AFPはAFPに対する免疫応答を誘導するのに十分なレベルで発現される。
【0039】
ヒト対象でHIVに対して免疫応答を誘導する方法も提供され、その方法は、対象に1回又は複数回免疫原を投与することを含むことができ、その免疫原は(i)本発明のAFP、(ii)AFPをコードする核酸、及び(iii)AFPをコードする発現ベクターからなる群から選択され、AFPは、対象でHIV特異CTL免疫応答を誘導するのに十分な量で投与されるか十分なレベルで発現される。好ましくは、対象は免疫原、又は免疫原をコードするベクター若しくは核酸を、少なくとも2週又は少なくとも4週の間隔で少なくとも2回投与される。他の実施形態は、全体の免疫化療法の一部として同時に、又は異なる時間に投与される他のHIV免疫原を提供する。
【0040】
本発明の他の態様はヒト対象でHIVに対して免疫応答を誘導する方法を提供し、その方法は対象にHIV免疫原の少なくとも1つの初回抗原刺激量及びHIV免疫原の少なくとも1つのブースティング用量を投与することを含むことができ、各用量の免疫原は同じでも異なってもよく、但し、免疫原の少なくとも1つは本発明のAFPであるか、又はAFPをコードする核酸若しくは発現ベクターであり、それらの免疫原は対象でHIV特異T細胞免疫応答を誘導するのに十分な量で投与されるか、又は十分なレベルで発現される。
【0041】
各用量の間隔は、少なくとも2週又は少なくとも4週でよい。好ましくは、pTHr.HIVCONは初回抗原刺激用量として1回又は複数回投与され、MVA.HIVCONはブースティング用量として1回又は複数回投与される。代替の実施形態は、初回抗原刺激の2用量を投与すること及びブースティングの2用量を投与することを含み、初回抗原刺激用量のために使用する免疫原はプラスミドベクターであり、ブースティング用量のために使用する免疫原はウイルスベクターである。ウイルスベクターは、MVAベクターでよい。各初回抗原刺激用量は、pTHr.HIVA、pTHr.RENTA及びpTHr.HIVCONからなる群から選択されるベクターの混合物でよく、各ブースティング用量はMVA.RENTA、MVA.HIVA及びMVA.HIVCONからなる群から選択されるベクターの混合物でよい。
【0042】
本発明の他の態様は、本発明のAFP、又はAFPをコードする核酸、又はAFPをコードする発現ベクター、及び薬剤として許容される担体を含む免疫原性組成物を提供する。組成物は、無機塩類、ポリヌクレオチド、ポリアルギニン、ISCOM、サポニン、一リン酸化リピドA、イミキモド(imiquimod)、CCR―5阻害剤、毒素、ポリホスファゼン、サイトカイン、免疫調節タンパク質、免疫賦活性融合タンパク質、共刺激分子及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるアジュバントを更に含むことができる。そのような組成物は、HIVに対するワクチンとして役立つことができる。本発明の核酸及びベクターは、遺伝子ワクチン、即ちヒトなどの対象に本発明のAFPをコードする核酸を送達し、その結果AFPが次に対象で発現されて免疫応答を導き出すワクチンを提供するために特に役立つ。
【0043】
本発明は、配列番号2又は配列番号4の少なくとも8〜15の連続したアミノ酸を含む複数のポリペプチドを含む免疫原性ポリペプチドのライブラリーも提供し、各免疫原性ポリペプチドは配列番号2又は配列番号4の断片の少なくとも一部と対応する。一実施形態では、複数の免疫原性ポリペプチドは、合計で配列番号2又は配列番号4の全長に対応する。好ましくは、ライブラリー内の各ポリペプチドの一部は、特に少なくとも11アミノ酸がオーバーラップするアミノ酸配列を含む。
【0044】
本発明の他の態様は、MHCクラスIタンパク質を発現する細胞で本発明の免疫原性ポリペプチドのライブラリーからHIVに対するCTLエピトープを特定する方法を提供し、その方法は、本発明のライブラリーと細胞を接触させる段階と、ライブラリーを細胞のMHCタンパク質と選択的に結合する段階と、MHCと選択的に結合するライブラリーのポリペプチドを単離する段階と、ポリペプチドの配列決定をすることによってCTLエピトープを特定する段階とを含むことができる。細胞は、抗原提示細胞、好ましくは脾細胞でよい。細胞は、ヒト細胞でよい。細胞がヒト細胞である場合、MHCクラスIタンパク質はヒト白血球抗原(HLA)である。一実施形態では、選択的結合は、フローサイトメトリーで測定される。他の実施形態において、ポリペプチドはクロマトグラフィーによって単離される。
【0045】
この開示、及び特に請求項及び/又はパラグラフにおいて、「含む(comprises)」、「含まれる(comprised)」、「含んでいる(comprising)」のような用語は、米国特許法でそれに帰属された意味を有することができ、例えば、それらは「含む(includes)」、「含まれる(included)」、「含んでいる(including)」のようなものを意味することができること、並びに、「基本的にそれからなっている(consisting essentially of)」及び「基本的にそれからなる(consists essentially of)」などの用語は、米国特許法でそれらに帰属された意味を有し、例えば、それらは明示的に引用されていない要素を許容するが、先行技術で見られる要素、又は本発明の基本的若しくは新規な特性に影響を及ぼす要素を排除することに注意する。
【0046】
これら及び他の実施形態が開示されているか、以下の詳細な説明から明らかであり、及びそれに含まれる。
【0047】
例示のために示すが、本発明を記載されている特定の実施形態に限定するものではない以下の詳細な説明は、添付の図面とともに最も良く理解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
「免疫原」は、免疫系によって認識されて免疫応答を誘導する物質を指す。この文脈において使用される類似用語は、「抗原」である。
【0049】
本発明との関連で「対象」は、脊椎動物、例えば哺乳動物、鳥類、爬虫類、両生類又は魚類でよく、より有利には、ヒト、或いはウシ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ又はブタ、又はウマ、又は七面鳥、カモ若しくはニワトリなどの鳥類さえ含む、伴生種、又は家畜、又は食物生産動物、又は飼料生産動物、又は畜産動物、又は獲物、又はレース用動物、又はスポーツ用動物である。好ましくは、脊椎動物はヒトである。
【0050】
用語「タンパク質」、「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「ポリペプチド断片」は、本明細書で互換的に使用することができ、任意の長さのアミノ酸残基のポリマーを指す。ポリマーは線状でも分枝状でもよく、修飾されたアミノ酸又はアミノ酸アナログを含むことができ、また、アミノ酸以外の化学分子が介在してもよい。それらの用語は、自然に又はインターベンションによって、例えばジスルフィド結合形成、グリコシル化、リピデーション、アセチル化、リン酸化又は他の任意の操作若しくは修飾、例えば標識又は生理活性成分とのコンジュゲーションによって修飾されたアミノ酸ポリマーも含む。
【0051】
「単離された」ポリヌクレオチド又はポリペプチドは、その自然環境でそれが結合する物質を実質的に含まないものであってよい。実質的に含まないとは、これらの物質を少なくとも50%、有利には少なくとも70%、より有利には少なくとも80%、更により有利には少なくとも90%含まないことを意味する。
【0052】
本発明は、ヒト対象でHIVに対する免疫応答を促進するためのAFPに関する。これらのAFPは、複数のHIVドメインを含む非天然のタンパク質である。本発明のAFPは、細胞又は実験動物でAFPの発現レベルを、及び/又は実験動物でAFPに対する免疫応答をモニターするために役立つ1つ又は複数の更なるドメインを任意選択で含んでもよい。
【0053】
詳細には、本発明のAFPは、Gag、Pol、Vif及びEnv配列を含む。これらの配列は、(a)HIV Gagドメイン、(b)1つ又は複数のHIV Polドメイン、(c)HIV Vifドメイン及び(d)1つ又は複数のHIV Envドメインを含む。HIVドメインのアミノ酸配列は、AFPが主に所定のHIVクレードに対して免疫応答を誘導するように選択することができる。例えば、HIVクレードAに対する免疫応答を所望する場合は、Gag、Pol、Vif及びEnvのアミノ酸配列は、好ましくは、それらの各タンパク質のクレードAコンセンサス配列である。好ましくは、本発明のAFPは、HIVに対するクレード交差性又はクレード遍在性の免疫原を提供するために、いくつかの異なるクレードの中から選択されるHIVドメインを含む。
【0054】
より詳しくは、本明細書で使用される「人工融合タンパク質」又は「AFP」は天然のものではないタンパク質又はポリペプチド(これらの用語は、互換的に使用される)であり、即ち、AFPは設計工程の産物であり、設計されたAFP全体は本来生物のゲノム中にコードされない。本発明のAFPは、非天然の様式で配列される少なくとも2つの異なるタンパク質ドメインを有する必要があり、即ち、2つのドメインは単一タンパク質で通常見られない様式で配列される(又は、互いに融合される)。異なるタンパク質に由来するドメインについては、配列(又は、結合順序)は弾力的である。2つのドメインが同じタンパク質又は単一のポリタンパク質、例えばウイルスのポリタンパク質由来である場合、それらのドメインはそれらのドメインが由来する生物のゲノム中のタンパク質にコードされているので、それらのドメインと結合する元の一次構造と異なる一次線状構造を提供する方法で結合される。例えば、単一タンパク質からの連続ドメインは、逆順に結合することができるか、又は介在ドメインによって分離することができる。例えば、AFPは、例えばタンパク質を半分に切断し、それらの断片のコード配列を再配置する(又は融合する)ことによって作ることができ、その結果、タンパク質のカルボキシ末端で通常見られる配列が今はAFPのアミノ末端にあり、元のアミノ末端アミノ酸はタンパク質の中にある。
【0055】
AFPのドメインは、共有結合、例えばペプチド結合により、又は化学リンカーの挿入により、又は非共有結合、例えばイオン結合を含めた任意の手段で連結することができるが、これらに限定されない。好ましくは、AFPのドメインは共有結合で連結される。本明細書で使用されるように、「ドメイン」はタンパク質又はポリペプチドからのアミノ酸の領域又は配列を意味するが、その領域又は配列が特定の構造的又は機能的単位を形成するかどうかとは関係ない。「ドメイン」は、1つ又は複数の「サブドメイン」を含むこともでき、それらはタンパク質の部分又はタンパク質若しくはペプチドの断片を含むことができる。しかし、ドメイン又はサブドメインとして特定のアミノ酸を選択することは、そのドメイン又はサブドメインがタンパク質又はポリペプチドの構造的及び/又は機能的単位でもあること、又は、その構造若しくは機能に基づいて選択されることを妨げない。
【0056】
ドメインの大きさは、2、3(10未満)から数百のアミノ酸でよく、実際のドメインサイズは特定のドメインがAFPに含まれることを根拠にする。例えば、スペーサの役目を果たすドメインは2〜3個のアミノ酸から10〜15個のアミノ酸であることができ、アミノ酸の正確な数は必要に応じて、例えば、クローニング部位を促進するために、コード配列の読み枠内でのフレームシフトを避けるために、ドメイン間に特定の距離を提供するために、又は、これら若しくは他の理由の任意の組み合わせのために決定される。他の例として、単一のエピトープをコードする場合は、その機能がCTLエピトープをコードするドメインは5から12のアミノ酸でよく、複数のエピトープをコードする場合は数百のアミノ酸でよい。所望により、AFP中のドメインはタンパク質全体又はタンパク質全体の修飾バージョンからなることができ、これも、そのドメインがAFPに含まれる理由によって決定される。
【0057】
ドメインのアミノ酸配列は、本発明の個々のドメインの性質で決定され、以下で詳細に記載される。この点に関しては、それらの配列としては、天然の配列、修飾された配列、コンセンサス配列などがある。配列の修飾は、1つ又は複数のアミノ酸の削除、挿入又は変更によって達成することができる。新しいドメインは、アミノ酸の正常な配置を変えることによって、例えばタンパク質の異なる部分を移すことによって、作製することができる。
【0058】
本発明のAFP中のGag、Pol、Vif及びEnvドメインのアミノ酸配列は、特定のクレードに対する免疫応答を優先的に起こさせるために、その特定のクレードのコンセンサス配列由来でよい。代わりに、ドメインのアミノ酸配列は、選択されたクレード内で保存され、それに特有のアミノ酸配列を用いて、他のHIVクレードのいずれかに対する免疫応答を起こさせるように選択することができる。HIVクレードには、クレードA、B、C、D、H、F、G、H、I、J及びKが含まれる。CRF由来のコンセンサス配列も使用できる。
【0059】
コンセンサス配列の最も単純な形態は、一組の整列したタンパク質配列中のタンパク質の各位置で、最も頻繁に起こるアミノ酸を選択することによって作製することができる。このように、比較されるタンパク質の数が増加するにつれて、コンセンサス配列も変わる。異なるクレード由来のHIVタンパク質のコンセンサス配列は、Los AlamosのHIVデータベースによって定期的に更新され、一般人は容易に利用できる。更なるHIV分離株が分析され、クレード分類が変化するにつれて、これらの編集物は経時的に変化する可能性があるが、この変化は本発明でのコンセンサス配列の使用に影響を及ぼさない。これらの発表されたコンセンサスの配列のいずれか、又は所望の配列群に由来する任意のコンセンサス配列を、本発明で使用することができる。
【0060】
本発明のドメインについて、同等の、対応する又は相関する(これらの用語は、互換的に使用される)アミノ酸を選択するために、当業者は、候補HIV分離株又はコンセンサス配列を配列番号2の示されたアミノ酸と一列に並べることによって、対応する配列を決定することができ、配列のその領域でのアミノ酸の削除及び挿入が可能になる。そのような整列は、既知のHIV変動のために、正確に同じ長さのアミノ酸配列を与えることができないことは、公知である。したがって、同等配列のドメインは、小さな挿入及び欠失に対応するために、大きさが一般的に1〜15個のアミノ酸(又はより少なく、好ましくは1〜10個若しくは1〜5個のアミノ酸、より好ましくは1、2若しくは3個のアミノ酸)である。そのような挿入及び欠失は同等配列の内部又は末端で起こることができるが、但し、そのような長さの変更は、当業者が候補HIV配列及び配列番号1の示された部分の間の整列を最大にする際に得るであろうものである。手動の方法又はコンピュータ化アルゴリズムを含む整列手法は、当業者に公知である(Altschul, S.F. et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-410)。
【0061】
AFPのドメインは、AFPの免疫原性にかなりの影響を及ぼすことなく、様々な異なる方法で配列することができる(例えば、N末端からC末端への線状順序で、又は化学的架橋を通して)。したがって、AFPは、免疫原性を保存し、個々のドメインの必要な特性を保存し(例えば、関連した生物的活性を廃棄する)、天然のタンパク質を再形成しない、任意の順序で配列されたドメインを有することができる。
【0062】
AFPは、従来の化学的手法、例えば固相合成によって合成することができ、又は組換えDNA技術によって生産することができるが、後者が好ましい。個々に生産されたドメインは、精製して、化学的架橋又は当技術分野で知られている他のいかなる方法によっても結合することができる。タンパク質を生産するための合成方法、組換えDNA技術、及び化学架橋方法は、当業者に公知である。それ故に、本発明は、AFPを発現させてAFPを回収するのに十分な時間及び条件下で、本発明の発現ベクターを含む宿主細胞を培養することによって(下記参照)AFPを調製する方法を含む。AFPを回収し、且つ/又は均一に精製するために有用な方法は、当業者が決定することができる。そのような方法としては、中でも塩化セシウム遠心、オリゴヌクレオチドアフィニティークロマトグラフィ、エタノール沈殿がある。
【0063】
本発明のAFPのドメイン及び介在配列は、以下で詳細に記載する。また、本発明の好ましい一実施形態であるHIVCONの記載を以下に記す。
【0064】
AFPのHIV Gagドメインは好ましくは3つのサブドメインを含むが、Gag配列が天然のタンパク質を形成しない限り、1つ、2つ又は任意の数のサブドメインを含むことができる。HIV Gagサブドメインは、好ましくは4つの最も一般的なHIVクレードA〜Dの間で、Gagタンパク質の最も高度に保存された領域の配列と相関し、HIVクレードA〜D全域にわたる変動は約6%未満である。HIV Gag配列は支配的なCTLエピトープを含む必要はないが、当業者は、標的の細胞性免疫応答を導き出すか刺激するために、支配的なCTLエピトープが豊富である配列を容易に特定して組み込むことができる。理論に縛られるものではないが、亜優占エピトープの存在が、支配的なエピトープの使用で観察される免疫優性効果をおそらく誘導することなく、防御免疫応答を導き出すか刺激することができると思われる。好ましい一実施形態において、本発明のHIV Gag配列は、支配的なCTLエピトープの存在及び存在度にかかわりなく選択される。
【0065】
HIV Gag配列は同じクレードから選択することもでき、それによって本発明のAFPの標的を、特定のクレードが一般的である特定の標的集団にする。HIV Gagドメインは、クレード全域にわたって約6%を超えるかそれ未満の変動を示す配列を含む1つ又は複数のGagサブドメインを含むことができる。Gag配列は、約0〜10%、好ましくは約0〜8%、より好ましくは約0〜6%異なることができる。HIVクレード及び送達される標的集団の間でGag配列が高度に保存されて所望の変動を示し、且つ、所望の免疫原性を保存する限り、本発明のAFPでは任意のHIV Gag配列を使用することができる。更に、HIV Gag配列は、AFP内で天然のGagタンパク質を生成するような構造又は配置にするべきでない。
【0066】
本発明の好ましい一実施形態であるHIVCONは、配列番号2又は配列番号4のアミノ酸1〜135を有するHIV Gagドメインを含む。本発明のHIV Gagドメインは、3つのサブドメインをHIVCONに含む。HIVCON中の3つのGagサブドメインのそれぞれは、下記アミノ酸を含む。Gagサブドメイン1は、配列番号2又は配列番号4のアミノ酸1〜56を含む。Gagサブドメイン2は、配列番号2又は配列番号4のアミノ酸57〜96を含む。Gagサブドメイン3は、配列番号2又は配列番号4のアミノ酸97〜135を含む(表1も参照)。
【0067】
本発明のAFPは好ましくは3つのPolドメインを含むが、選択されたPol配列が天然のタンパク質を形成しない限り、又はそれに加えて若しくはその代わりに、それらの配列がそれらの所望の免疫原性を保持し、それらの配列がPol酵素活性を修復しない限り、任意の数のドメイン(したがって、ドメイン内のサブドメイン)を含むことができる。そのような酵素活性には、逆転写酵素、インテグラーゼ、プロテアーゼ及びRNアーゼHが含まれる。第1及び第2のPolドメインは、それぞれ好ましくは2つのPolサブドメインを含み、第3のPolドメインは好ましくは4つのPolサブドメインを含む。好ましくは、Pol配列は最も高度に保存され、HIVクレードA〜Dにわたって6%未満異なる配列と相関する。HIV Polドメインは支配的なCTLエピトープを含む必要はないが、本発明は支配的なCTLエピトープが豊富である配列を選択することも企図する。好ましくは、HIV Polドメインは、支配的なCTLエピトープの存在及び存在度にかかわりなく選択される。
【0068】
HIV Pol配列は同じクレード及び/又はCRFから選択することもでき、それによって本発明のAFPの標的を特定の標的集団にする。代わりに、HIV Pol配列は、異なるクレード又はCRFから選択することもできる。HIV Polドメインは、HIVクレード全域にわたって約6%を超えるかそれ未満の変動を示す配列を含む1つ又は複数のGagサブドメインを含むことができる。HIV Pol配列は、約0〜10%、好ましくは約0〜8%、より好ましくは約0〜6%異なることができる。HIVクレード及び送達される標的集団の間でHIV Pol配列が高度に保存されて所望の変動を示す限り、本発明のAFPでは任意のHIV Pol配列を使用することができる。更に、選択されたHIV Pol配列は、プロテアーゼ、インテグラーゼ、RNアーゼ及び逆転写酵素の1つ又は全ての酵素活性が欠けていなければならない。
【0069】
本発明の好ましい一実施形態であるHIVCONは、対応する3つのHIV Polドメインを含む。第1のPolドメインは配列番号2又は配列番号4のアミノ酸136〜393に相関する2つのサブドメインを含み、第2のPolドメインは配列番号2又は配列番号4のアミノ酸422〜484に相関する2つのサブドメインを含み、第3のPolドメインは配列番号2又は配列番号4のアミノ酸522〜723に相関する4つのサブドメインを含む。各Polサブドメインのアミノ酸は、表1にまとめて示す。
【0070】
本発明のAFPのHIV Vifドメインは、好ましくは4つの最も一般的なHIVクレードA〜Dの間で、最も高度に保存された領域又はVifの領域の配列から選択され、クレード全体の変動は約6%未満である。HIV Vif配列は支配的なCTLエピトープを含む必要はなく、代わりに亜優占的なCTLエピトープを含むことができる。当業者は、特定の標的集団で細胞性免疫応答を標的にするために、支配的なCTLエピトープが豊富であるVif領域を容易に置換することができる。好ましくは、本発明のHIV Vif配列は、支配的なCTLエピトープの存在及び存在度にかかわりなく選択される。
【0071】
本発明のAFPに存在する他のHIV配列と比較して、HIV Vif配列は、多岐にわたるHIVクレード及びCRFから選択することができる。HIV Vifドメインは、HIVクレード全体で約6%を超えるかそれ未満の変動を示す配列を含むことができる。好ましくは、HIV Vif配列は、約0〜10%、好ましくは約0〜8%、より好ましくは約0〜6%異なることができる。HIVクレード及び送達される標的集団の間でVif配列が高度に保存されて所望の変動を示す限り、本発明のAFPでは任意のHIV Vif配列を使用することができる。選択されたHIV Vif配列は、所望の免疫原性も保存するべきである。
【0072】
本発明の好ましい一実施形態であるHIVCONは、配列番号2又は配列番号4のアミノ酸394〜421を有するHIV Vifドメインを含む。
【0073】
好ましくは本発明のAFPは、少なくとも2つのEnvドメインを含む。好ましくはEnvドメインは、最も高度に保存され、HIVクレードA〜Dにわたって6%未満の変動を示す配列と相関する。HIV Envドメインは支配的なCTLエピトープを含む必要はないが、本発明は支配的なCTLエピトープが豊富であるEnv配列を選択することも企図する。そのような置換は、特定のクレード又はCRFが支配的である特定の集団を標的にすることができる強化された細胞性免疫応答を起こすことができた。好ましくは、HIV Envドメインは、支配的なCTLエピトープの存在及び存在度にかかわりなく選択される。
【0074】
特定のHIVクレードを標的にしたAFPの設計では、HIV Env配列はそのHIVクレード又はCRFから選択することもでき、それによって本発明のAFPの標的を特定の標的集団にする。HIV Env配列は、HIVクレード全体で約6%未満の変動を示す配列を含むことができる。Env配列は、約0〜10%、好ましくは約0〜8%、より好ましくは約0〜6%異なることができる。HIVクレード及び送達される標的集団の間でEnv配列が高度に保存されて所望の変動を示し、且つ、所望の免疫原性を保存する限り、本発明のAFPでは任意のHIV Env配列を使用することができる。
【0075】
表1は、本発明の好ましい一実施形態であるHIVCONの各HIVドメインを示し、各ドメインのサブドメイン及び配列番号2に対応する適当なアミノ酸を含む。同じアミノ酸配列が、配列番号2の同じ位置で見られる。
【0076】
【表1】
【0077】
本発明のAFPは、AFPの特性評価及びモニターに役立つように、更なる非HIVドメインを有することができる。好ましくは、そのようなドメインはAFPのN末端及び/又はC末端にあるが、それらはAFPのHIVドメインの間に挿入することもできる。例えば、更なるドメインは、ポリペプチドの処理に影響を及ぼす細胞内又は細胞外のシグナル若しくは部位(例えば、プロテアーゼ切断部位、細胞内局在化若しくは輸送のためのシグナル配列、又はそのような他の配列)、タンパク質精製を助ける部位、及び/又はタンパク質局在化を助ける部位をコードすることができる。タンパク質精製又は局在化に有用な部位としては、親和性結合を可能にする配列がある。例えば、当技術分野で公知である抗体によって認識されるエピトープ(例えば、それらには限定されないが、Pk、Flag、HA、myc、GST又はHis)を含めることができる(Harlow et al., Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1998)。本発明のある実施形態では、例えば配列番号4のHIVCON免疫原においては、Pkエピトープタグが使用される。これは、モノクローナル抗体(mAB)によって結合されるエピトープである。このエピトープはPk又はPkタグと呼ばれ(mAbクローン「k」から)、SV5ウイルスリンタンパク質P由来である。Pkエピトープのアミノ酸配列は、IPNPLLGLD(配列番号6)であり、配列番号4の最後の9個のアミノ酸(アミノ酸798〜806)である。更なるドメインは実験動物(例えばサル又はマウスのCTLエピトープ)で免疫原性であることもでき、それによって、発達研究、前臨床試験、及び、おそらく、臨床応用の間にAFPをモニターする更なる方法を提供する。そのような更なる免疫原性ドメインを使用する場合、HIV特異免疫応答の刺激に対する干渉又は競合を避けるために、そのようなドメインの数は最小にするべきであり、好ましくは多くても3つ又は4つにする。
【0078】
好ましい一実施形態において、AFPは1つ又は複数の実験動物、例えばマウス、ヒト以外の霊長類(チンパンジー、アカゲザル及び他の猿などを含む)、ウサギ、ラット又は他の適当な実験動物の免疫系によって認識される少なくとも1つのヒト以外のCTLエピトープを有するドメインを有する。主要組織適合複合体(MHC)分子は、これらのエピトープペプチドをT細胞に提示する。アカゲザル(Macaca mulata)については、MHC分子はMamuと呼ばれ、マウスの場合、それは伝統的にH―2と呼ばれ、ヒトの場合は、それはHLAと呼ばれる。ヒト以外のCTLエピトープが含有することは、実験試験動物を使った、異なるバッチのAFPの特質、再現性及び/又は安定性の評価を可能にする。そのようなエピトープの例としてはアミノ酸配列STPESANL(配列番号7)があり、それは、アカゲザルCTLによって認識されるサル免疫不全ウイルス(SIV)tatタンパク質由来のMamu―A*01制限エピトープ(以下、「SIV tat CTLエピトープ」、Allen et al., (2000b) Nature 407:386-390)である。他の例はSYIPSAEKI(配列番号8)であり、それはPlasmodium berghei由来のマウスH―2Kd制限CTLエピトープであって、pb9エピトープとも呼ばれる(Romero et al., (1989) Nature 341: 323-326)。他の適当なエピトープが知られており、アミノ酸配列ACTPYDINQML(配列番号9)がその例であって、アカゲザルCTLによって認識されるSIV Gag p27由来のエピトープ(本明細書では「SIV Gag p27エピトープ」と呼ぶ)を含む。ACTPYDINQML(配列番号9)エピトープは、配列番号4のHIVCON免疫原に存在する(アミノ酸位置778〜788。図5を参照)。他の適当なエピトープはCTPYDINQM(配列番号10)(p11C、C―M)であり、Mamu―A*01 MHCによってCD8T細胞に提示されるSIV gag p27エピトープである。CTPYDINQM(配列番号10)エピトープは、配列番号4のHIVCON免疫原に存在する(アミノ酸位置779〜787。図5を参照)。他の適当なエピトープは配列RGPGRAFVTI(配列番号11)を有し、それは、P18―I10エピトープとしても知られるHIV gp41タンパク質由来のマウスH―2k制限CTLエピトープであり、本明細書では「P18―I10エピトープ」と呼ぶ。RGPGRAFVTI(配列番号11)エピトープは、配列番号4のHIVCON免疫原に存在する(アミノ酸位置790〜798。図5を参照)。適当なヒト以外のCTLエピトープは既知であるか、又は、実験動物でCTLを特定することが知られている手法を使って、当業者が容易に決定することができる。
【0079】
AFPは、発現の検出、位置確認、AFP量の定量及び/又はAFPの精製を可能にするために、小さなタグ又はマーカーであるドメインを含むこともできる。適当なタグとしては、それらには限定されないが、mAbによって認識されるエピトープ、例えばPk mAbによって認識されるエピトープIPNPLLGLD(配列番号6)がある(Hanke et al., (1992) J. Gen. Virol. 73:653-660)。IPNPLLGLD(配列番号6)エピトープは、配列番号4のHIVCON免疫原に存在する(アミノ酸位置799〜8―6。図5を参照)。他の適当なタグとしては、HA抗体によって認識されるエピトープYPYDVPDYA(配列番号12)、Flag抗体によって認識されるエピトープDYKDDDDK(配列番号13)、VSV―G Tag抗体によって認識されるエピトープYTDIEMNRLGK(配列番号14)、及びGlu―Glu抗体によって認識されるエピトープEYMPME(配列番号15)がある。当業者は、AFPに含有させるために、適当なタグ及びマーカーを容易に選択することができる。
【0080】
AFPのHIVドメインは、タンパク質中で連続していてもよい。代わりに、それらは介在アミノ酸配列によって分離されていてもよい。介在アミノ酸配列は、通常、非HIV配列であるが、少数の更なるHIVアミノ酸を含むこともできる。存在する場合、介在配列は長さが介在配列ドメインにつき1〜20個のアミノ酸であって、好ましくは10個未満のアミノ酸、より好ましくは2〜5個のアミノ酸である。例えば、介在配列はAFPの発現レベルを最適化するリンカー、スペーサ又は他の配列であってもよい。介在配列は、免疫原性の最適化のために用いることができる。介在配列は、有用な制限部位を含ませるために、又はAFPのドメインが間違いなく「インフレーム」(例えば、組換えで生産されたAFPのために)で連結されるために、便利な手段として加えることもできる。
【0081】
本発明のAFPの1例は、HIVCONである。HIVCONは777個のアミノ酸を有するAFPであり、7つのHIVドメイン(配列番号2、図3)及び、任意選択で、3つの更なるドメイン(配列番号4、図5、の場合のように)を有する。HIVCONの概略図を図1に示す。HIVCONタンパク質は、アミノ末端からカルボキシル末端にかけて、HIV Gagドメイン、第1のHIV Polドメイン(2つのHIV Polサブドメインを含む)、HIV Vifドメイン、第2のHIV Polドメイン(2つのHIV Polサブドメインを含む)、第1のHIV Envドメイン、第3のHIV Polドメイン(4つのHIV Polサブドメインを含む)、第2のHIV Envドメイン及び、任意選択で、SIV p27 CTLエピトープ、マウスCTLエピトープP10―I18及びmAbエピトープPkを含む。HIVCONは、介在配列を含まない。HIVCON配列番号4(及び、最後の3つのドメインを除く配列番号2)の806個のアミノ酸のためのドメインの相互関係は、N末端からC末端にかけて以下の通りである。
・アミノ酸1〜135、HIV Gagドメイン
・アミノ酸136〜393、第1のHIV Polドメイン(両方のサブドメインを含む)
・アミノ酸394〜421、HIV Vifドメイン
・アミノ酸422〜484、第2のHIV Polドメイン(両方のサブドメインを含む)
・アミノ酸485〜521、第1のHIV Envドメイン
・アミノ酸522〜723、第3のHIV Polドメイン(4つ全てのサブドメインを含む)
・アミノ酸724〜777、第2のHIV Envドメイン
・アミノ酸778〜788、SIV Gag p27 CTLエピトープ
・アミノ酸789〜798、マウスCTLエピトープP18―I10、及び
・アミノ酸799〜806、mAbエピトープPk
【0082】
HIVCON内のHIVドメインは、HIV―1クレードA〜Dコンセンサス配列由来である。各ドメイン中の各サブドメインを含む各ドメインに対応するアミノ酸、並びにそれらの対応するHIVクレードは、表1で示す。
【0083】
本発明の他の態様は、全体で本発明のAFPの全長に、有利には配列番号2又は配列番号4に対応する配列を含むポリペプチド及びポリペプチドライブラリーに関する。代わりに、ポリペプチド又はポリペプチドのライブラリーが、本発明のAFPの、有利には配列番号2又は配列番号4の一部又は断片に対応することができる。本発明のポリペプチドライブラリーは、とりわけ、抗原提示細胞の主要組織適合複合体(MHC)クラスIなどの細胞受容体と結合する、AFPの特定の配列又はエピトープを詳細に解明して更に定義するために使用することができる。ポリペプチドライブラリーは短いアミノ酸配列のプールを含むことができ、それらは単一アミノ酸から100個のアミノ酸の大きさ、又はそれよりも長くてよい。しかし、MHC受容体は長さが約8〜15アミノ酸の短いアミノ酸配列を認識することは、当技術分野で公知である。したがって、配列番号2又は配列番号4の8から15個のアミノ酸、好ましくは15個の連続したアミノ酸であるポリペプチドを合成することが好ましい。
【0084】
各ポリペプチドは、重複する配列を伴い、又は伴わず合成することができる。一部の応用では、特にエピトープの特定の配列が所望のとき、ポリペプチド中の重複配列の存在は、配列番号2又は配列番号4の全てのアミノ酸配列がポリペプチドライブラリーに含まれることを確実とすることができる。重複する配列は、ポリペプチドの長さに応じて1〜15個のアミノ酸を含むことができる。本発明の好ましい実施形態では、各ポリペプチドは15個の連続したヌクレオチドを含み、アミノ酸のうちの11個は重複する。
【0085】
ポリペプチドの合成は、化学的ペプチド合成、固相合成などによるインビトロでよく、又は、短いアミノ酸配列をコードするRNAの無細胞インビトロ翻訳(例えば、それらには限定されないが、ウサギ網状赤血球溶解物、小麦麦芽抽出物)を通してもよい。代わりに、ポリペプチドはプロデューサー細胞内で、関心のポリペプチドをコードする核酸配列から組換えで合成することができる。ポリペプチドの精製は、当技術分野で公知の方法、例えば逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、アフィニティークロマトグラフィー、既知のエピトープがポリペプチド配列中に含まれて利用できるモノクローナル及び/又はポリクローナル抗体によって認識される場合は免疫沈降反応、イオン交換クロマトグラフィー、硫酸アンモニウム若しくはエタノール沈殿、酸抽出、アニオン若しくはカチオン交換クロマトグラフィー、リン酸セルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、免疫アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、レクチンクロマトグラフィー、分子篩クロマトグラフィー、等電集束法、ゲル電気泳動、又は各精製段階でポリペプチドを追跡するモニター手法を使うこれらの方法の組み合わせによって実行することができる。
【0086】
各ポリペプチドは、配列番号2又は配列番号4の特定の部分又は断片に対応し、ライブラリー内の全てのポリペプチドの総計は配列番号2又は配列番号4の全長に対応する。このことは、関心のCTLエピトープを特定するためにアミノ酸配列全体を「スキャンする」ために、配列番号2又は配列番号4の全てのアミノ酸配列がライブラリー内のポリペプチドに包含されることを確実にするためである。ポリペプチドは合成されて、それらの配列類似性に従ってプールされる。次いでプールされたポリペプチドのライブラリーを使用して、本発明のAFPを投与された細胞若しくは対象で、又は感染細胞若しくは感染した対象で、HIVに対するCTL反応の特異性を決定することができる。
【0087】
したがって、本発明は、MHCクラスIタンパク質を発現する細胞で本発明のポリペプチドライブラリーからHIVに対するCTLエピトープを特定する方法も提供し、その方法は、本発明のライブラリーと細胞を接触させる段階と、ライブラリーを細胞のMHCタンパク質と選択的に結合する段階と、MHCと選択的に結合するライブラリーのポリペプチドを単離する段階と、ポリペプチドの配列決定をすることによってCTLエピトープを特定する段階とを含む。
【0088】
本発明の方法で役立つ細胞は、抗原提示細胞である。抗原提示細胞はMHCクラスIタンパク質を発現し、それらは主に感染に対してTリンパ球媒介反応を導き出すエピトープの結合及び制限に関係する。MHCクラスI分子は通常ウイルスである病原体由来のペプチドをCD8+CTLに提示するが、それらは、それらが特異的に認識するいかなる細胞も殺すように特殊化される。そのような抗原提示細胞としては、それらには限定されないが、樹状細胞、マクロファージ、単球、単核細胞、CD8+T細胞及び脾細胞がある。それらの細胞はHIVに感染した対象に由来することもでき、又は、インビトロでウイルス又はウイルス配列に感染又はトランスフェクションした細胞でもよい。好ましくは、細胞は本発明のAFPを免疫接種又は投与されている。既にAFP又は他のHIV配列又はウイルスを投与されたこれらの細胞は、好ましくは細胞又は組織培養条件下で、本発明のライブラリーと接触させる。ヒト細胞を使用するときは、MHCクラスI受容体はヒト白血球抗原又はHLAである。本発明は、ヒト以外の、好ましくは実験用の動物種の細胞、例えば、それらには限定されないが、ヒトMHC又はHLAで一過性又は安定的にトランスフェクションされるサル細胞、ラット細胞又はマウス細胞も包含する。ヒトHLAを発現する実験動物の例は、Carmon, L., et al (2002) J. Clin. Invest. 110: 453-462で記載されるHHD遺伝子導入マウスである。異なるHLA/MHCサブタイプ及び対立遺伝子は、本発明の免疫原性ポリペプチド及び関心の特定集団で支配的であることが知られている特定のHLA/MHC対立遺伝子の間の相互作用の性質を更に解明するために使用することができる。代わりに、それぞれMHCの異なる対立遺伝子を発現する多くの異なる対象に由来する細胞を、本発明の方法で使用することができる。
【0089】
次に本発明のライブラリーは、通常、培地へのライブラリーの添加によって、細胞表面に存在するMHCクラスI受容体と選択的に結合することが可能になる。ライブラリーの特定のポリペプチドの選択的な結合の後、MHCクラスIと結合するポリペプチドが単離及び配列決定され、それによってCTLエピトープが特定される。細胞のMHCクラスI受容体への関心のポリペプチドの選択的結合は、フローサイトメトリーによってモニターすることができるが、受容体―ポリペプチド相互作用の結合定数を求めることによってもモニターすることができる。このことは、当技術分野で知られている標準の酵素反応速度アッセイによって達成することができる。好ましくは、フローサイトメトリー(当技術分野では蛍光活性化細胞選別、FACSとしても知られている)が使用される。細胞表面MHC受容体へのペプチド結合を測定するために間接的FACSを使う方法は、Carmon, L., et al (2002) J. Clin. Invest. 110: 453-462で記載されている。簡潔には、本発明のポリペプチドライブラリーを加えた細胞は、抗MHC抗体とインキュベートされる。洗浄後、蛍光タグ(即ち、とりわけフルオレセインイソチオシアネート)を有する二次抗体を抗MHC抗体に結合した後、結合抗体の量をFACS分析で測定する。
【0090】
得られた関心のポリペプチドは当技術分野で公知の手法によって、例えば、それらには限定されないが、逆相高速液体クロマトグラフィー、アセトン沈殿、硫安塩析、トリフルオロ酢酸沈殿、及び本明細書で述べられているクロマトグラフィー方法で単離することができる。次いで単離されたポリペプチドは、MHCに対する結合配列の正確な境界を決定するために、配列決定を施す。当技術分野で公知の配列決定方法としては、それらには限定されないが、エドマン分解(N末端配列決定としても知られている)、タンデム型質量分析、及びマトリックスアシスティドレーザ脱離イオン化(MALDI)がある。
【0091】
本発明は、本発明のライブラリーを使用してCTLエピトープを特定する方法のハイスループットな自動化も包含する。免疫蛍光法による抗MHC抗体の結合の以降の検出のために、1つ又は複数のポリペプチドライブラリーを、固体支持体、例えばセルロース、又はシリコンアレイの上で合成することができる。MHCクラスI受容体とのポリペプチドの結合に対応する相対蛍光は自動的に測定することができるので、適当なCTLエピトープについて何百又は何千のポリペプチド配列を効率的にスクリーニングすることが可能になる。
【0092】
本発明の免疫原性ポリペプチドは、例えば、本発明のAFPに対してモノクローナル及びポリクローナル抗体を宿主動物内で生産するために、体液性反応を導き出すための免疫原又は抗原として使用することもできる。このような宿主動物としては、それらには限定されないが、ウサギ、マウス及びラットを挙げることができる。免疫性応答を増加させるために宿主種に従って様々なアジュバントを使用することができ、例としては、それらには限定されないが、フロイント(完全及び不完全な)アジュバント、水酸化アルミニウムなどの鉱物ゲル、界面活性物質、例えばリゾレシチン、プルロン酸ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳濁液、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、及びBCG(カルメットゲラン菌)などの潜在的に有用なヒトアジュバント及びCorynebacterium parvumがある。
【0093】
本発明の他の態様は、本発明のAFPをコードする核酸分子に関する。本明細書で使用される「核酸分子」又は「核酸」は、任意のデオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)を意味し、メッセンジャーRNA(mRNA)、DNA/RNAハイブリッド又は合成核酸を含むが、これらには限定されない。核酸は一本鎖、又は、部分的若しくは完全に二本鎖(二重鎖)でよい。二重鎖核酸は、ホモ二本鎖でもヘテロ二本鎖でもよい。本発明の核酸分子はAFPをコードするヌクレオチド配列を有し、AFP遺伝子が発現される(又は発現される予定の)対象の高度に発現される遺伝子で使用されるコドンを用いるように設計することができる。一般的に、核酸は単一の読取り枠(ORF)として、つまり、イントロンを含まない、AFPのコード配列全体を有する。
【0094】
異なる細胞は、特定のコドンのそれらの使用法が異なる。このコドンバイアスは、特定の細胞型内の特定の転移RNA(tRNA)の相対存在度における偏りに対応する。HIV及び他のレンチウイルスを含む多くのウイルスは多数の稀なコドンを使い、一般的に用いられる哺乳類のコドンに対応させるためにこれらを変化させることによって、細胞内での免疫原の発現増強を達成することができる。対応するtRNAの相対存在度と一致させるために配列中のコドンを変化させることによって、AFPの発現を増加させることが可能である。同様に、対応するtRNAが特定の細胞型で稀であることが知られているコドンを故意に選択することによって、AFPの発現を減少させることが可能である。このように、ある程度の更なる翻訳調節が利用できる。コドン最適化の全体的な影響は、例えばAFPがウイルスベクターから発現される場合はウイルスの力価の増加、及び、対象での安全性の改善がある。コドン利用表は、哺乳動物細胞並びに様々な他の生物体について、当技術分野で公知である。
【0095】
好ましい一実施形態において、AFPをコードするコドンは「ヒト化」コドンであり、即ち、コドンはHIVによって多用されるコドンの代わりに、高度に発現されるヒト遺伝子中にしばしば現れるそれらである(Andre et al., J. Virol. 72:1497-1503, 1998)。そのようなコドン利用は、ヒト細胞でのAFPの効率的な発現を可能にする。他の実施形態では、例えば、AFPが細菌、酵母又は他の発現系で発現される場合、コドン利用パターンが変更されて、AFPが発現している生物体で高度発現遺伝子に対するコドンバイアスを表す。コドン利用パターンは、多くの種の高度発現遺伝子について文献で知られている(例えば、Nakamura et al., (1996) Nucl. Acids Res. 24: 214-215、Wang et al, (1998) Mol. Biotechnol 10: 103-106、McEwan et al. (1998) Biotechniques 24:131-136)。
【0096】
HIVCONの核酸配列を、最後の3つの更なるドメインをコードするヌクレオチドを有する代替形態(配列番号3)及び有さない代替形態(配列番号1又は配列番号5)で提供する。本発明の一実施形態では、本発明の核酸は、配列番号1又は配列番号5で提供されるHIVCONコード配列をコードするヌクレオチドを含む(配列番号1のヌクレオチド1又は配列番号5のヌクレオチド30から始まって、終止コドンまで続く)。本発明の他の実施形態では、本発明の核酸は、配列番号3で提供されるHIVCONコード配列をコードするヌクレオチドを含み、それは3つの更なるエピトープを含むヌクレオチドを含む(配列番号3のヌクレオチド1から始まって、終止コドンまで続く)。本発明の他の実施形態では、本発明の核酸は、それぞれ図2、4及び6で示すように、基本的に配列番号1、配列番号3又は配列番号5の配列からなる。
【0097】
本発明のAFPをコードする核酸分子を発現ベクターに組み込んで、対象を免疫接種するために、又は、一般的にタンパク質生産又はRNA生産のためにタンパク質をインビトロで発現させるために使用することができる。
【0098】
本明細書で使用されるように、「ベクター」は、1つの環境から別の環境への実体の移動を可能にするか助長する手段である。例示のために、組換えDNA技術で使用する一部のベクターは、DNAの断片(例えば異種DNA又はcDNA部分)などの実体の標的細胞への移動を可能にする。本発明は、ウイルスベクター、細菌ベクター、原生動物ベクター、DNAプラスミドベクター又はそれらの組換え体を含むことができる組換えベクターを包含する。
【0099】
ベクター内での発現のための外来性DNA(例えば、関心のエピトープ及び/又は抗原及び/又は治療剤をコードする)及びそのような外来性DNAを提供する文書に関し、並びに核酸分子の発現を強化するための転写及び/又は翻訳因子の発現に関し、及び、とりわけ「関心のエピトープ」、「治療的」、「免疫応答」、「免疫学的応答」、「防御免疫応答」、「免疫組成物」、「免疫原性組成物」及び「ワクチン組成物」などの用語に関して、1999年11月23日発行の米国特許第5990091号、並びに国際公開98/00166及び国際公開99/60164、並びにその中で引用されている文書、並びにその特許及びそれらのPCT出願の手続きの記録文書が参照され、それらの全ては本明細書で参照により組み込まれている。このように、米国特許第5990091号並びに国際公開98/00166及び国際公開99/60164、並びにその中で引用されている文書、並びにその特許及びそれらのPCT出願の手続きの文書又は記録、並びに本明細書で引用されるか、さもなければ参照により組み込まれる他の文書は、本発明の実施に際して参考にすることができ、また、その中で引用されている全ての外来性の核酸分子、プロモーター及びベクターは、本発明の実施に際して使用することができる。この点に関しては、米国特許第6706693号、同第6716823号、同第6348450号、米国特許出願10/424409、10/052323、10/116963、10/346021、及びPCT/US98/16739から1999年2月25日に公開された国際公開9908713にも言及している。
【0100】
発現ベクターは当技術分野で公知であり、本発明については、タンパク質の転写及び翻訳を指示する調節又は核酸制御配列に「作動可能に結合した」タンパク質コード配列を有するという共通した特徴を共有する。本明細書で使用されるように、AFPコード配列及び核酸制御配列は、それらがAFPコード配列の発現又は転写及び/又は翻訳を核酸制御配列の影響下又は制御下に置くように共有結合している場合、「作動可能に結合した」と言われる。「核酸制御配列」は任意の核酸要素でよく、例えば、それらには限定されないが、プロモーター、エンハンサー、IRES、イントロン、及び、核酸配列又はそれに作動可能に結合したコード配列の発現を指示する本明細書記載の他の要素でよい。5’遺伝子発現配列の核酸制御配列、例えばプロモーターの誘導がAFP配列の転写をもたらし、また、2つのDNA配列の間の結合の性質が(1)フレームシフト突然変異の導入をもたらさず、(2)抗原配列の転写を指示するプロモーター領域の能力に干渉せず、(3)タンパク質に翻訳される対応RNA転写物の能力に干渉しないならば、2つのDNA配列は作動可能に結合していると言われる。このように、核酸制御配列がそのAFP核酸配列の転写をもたらすことができ、得られた転写産物が所望のタンパク質又はポリペプチドに翻訳されるならば、その核酸制御配列はそのAFP核酸配列に作動可能に結合するであろう。
【0101】
発現ベクター中のプロモーター、エンハンサーなどの核酸制御配列は、宿主に対してしばしば異種性である。用語「プロモーター」は、本明細書では、RNAポリメラーゼIIの開始部位のまわりに集まり、また、作動可能にAFPに結合されたときにAFP発現へ導く、一群の転写調節モジュールに言及するために使用する。プロモーターは、通常、それぞれ約7〜20bpのDNAから成り、転写性活性化タンパク質のために1つ又は複数の認識部位を含む、別々の機能モジュールから構成される。プロモーター中の少なくとも1つのモジュールが転写開始点の位置を決める働きをすることができ、他のモジュールは転写開始の頻度を調節することができる。「エンハンサー」は、同じDNA分子内の離れた所に位置するプロモーターからの転写を増加させる、遺伝因子と説明することができる。プロモーターと同様に、エンハンサーは多くの個々のモジュールから構成されることができ、それぞれは1つ又は複数の転写タンパク質と結合する。プロモーター及びエンハンサーは細胞内で転写を活性化するという同じ一般機能を有するが、それらの機能の間には明らかな相違がある。エンハンサーは、定義上、離れた所の転写を刺激し、特定の部位での転写開始を指示する必要はない。一方、プロモーターのモジュールは、特定の部位からの特定の向きの転写開始を指示しなければならない。
【0102】
発現ベクター内でのAFPヌクレオチド配列の発現は、このように構成プロモーター又は誘導性プロモーターの管理下にあることができるが、それは宿主細胞がいくつかの特定の外部刺激、例えば、それらには限定されないが、テトラサイクリンのような抗生物質、エクジソンのようなホルモン類又は重金属にさらされたときだけ転写を開始する。動物などの多細胞生物の場合、プロモーターは特定の組織又は臓器に特異的であってもよい。本発明の様々な実施形態としての、ベクターの構築で用いることができる様々なプロモーター及びエンハンサー因子は、米国特許第6835866号で述べられ、その内容は本明細書で参照により組み込まれている。更に、Eukaryotic Promoter Database(EPDB)に従う任意のプロモーター/エンハンサーの組み合わせを、本発明のAFPの発現を促進するために使用することができる。
【0103】
発現ベクターは、細菌、真菌類、酵母、動物(哺乳動物、特にヒトを含む)、鳥類、昆虫、植物などを含む多くの生物体について公知であり、利用することができる。動物には、それらには限定されないが、哺乳動物(ヒト、霊長類、その他)、商用の又は飼育動物(魚類、ニワトリ、乳牛、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、七面鳥、その他)、研究動物(マウス、ラット、ウサギ、その他)及びペット(イヌ、ネコ、インコ及び他のペット用の鳥類、魚類、その他)が含まれる。
【0104】
したがって、本発明の発現ベクターは、タンパク質が発現されるかRNAが生産されるかに従って転写及び/又は翻訳の核酸制御配列に作動可能に結合した、本発明のAFPのコード配列を有する。本発明の発現ベクターは、AFPをコードするDNA又はRNAの生産を含む、特定の宿主細胞でAFP又はAFPをコードする核酸の発現を達成するために役立つ。同様に、本発明の発現ベクターとしては、宿主対象にAFP(タンパク質又は核酸として)を送達するために役立つ、プラスミド、リポソーム、微生物及びウイルスのベクターが挙げられる。
【0105】
本発明の発現ベクターとしては、プラスミド、ウイルスベクター、細菌ベクター、原生動物ベクター、昆虫ベクター、酵母ベクター、哺乳動物細胞ベクターなどがある。発現ベクターが複製又は自己増幅できるかは、使用するベクター及びその選択理由次第である。特定された状況下でAFPを発現するための要件を考慮すると、そのような特性は当業者が容易に決定することができる。
【0106】
本発明の発現ベクターとしては、実験動物、哺乳動物、好ましくはヒト対象でのAFPの発現のために使用されるものがある。これらのベクターは、コードされたAFPに対して免疫応答を刺激するために、動物、哺乳動物又はヒト対象に免疫接種をするために特に役立つ。この点に関して有用な発現ベクターとしては、細菌ベクター、ウイルスベクター、プラスミド、及び核酸(プラスミド又はウイルス由来の)を使うリポソーム製剤がある。細菌ベクターについては、好ましいベクターは、宿主内での細菌担体の増殖を予防するために、又は疾患若しくは他の有害な病理学的影響につながることのない自己制御増殖だけを可能にするように弱毒化される。死菌も役立つ。宿主内での使用安全性を提供するためにも、ウイルスベクターは好ましくは弱毒化されるか、又は複製に欠陥がある。プラスミドを使用するときは、ヒトで機能する複製起点が欠けていてもよい。
【0107】
ある好ましい実施形態において、pTH又はpTHrベクターが使用される。pTHベクターの構築は、Hanke et al, 1998 Vaccine 16, 426-435で記載される。pTHは、ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)系統AD169ゲノムの発現効率的エンハンサー/プロモーター/イントロンAカセットを含む(Whittle et al, 1987 Protein Eng. 1, 499-505、Bebbington 1991 Methods 2, 136-145)。プロモーター領域の後には、ウシ成長ホルモン遺伝子のpRc/CMV(Invitrogen社製)由来のポリリンカー及びポリアデニル化シグナルが続く。形質転換細菌にアンピシリン抵抗性を付与するベータラクタマーゼ遺伝子及び原核生物の二本鎖DNA複製起点Co1E1の両方は、プラスミドpUC19に由来する。pTHベクターは、哺乳動物細胞の複製起点を含まない。
【0108】
pTHrベクターは、ベータラクタマーゼ/アンピシリン耐性遺伝子の削除によって、pTHに由来する。そのベクターは、Cobra Pharmaceuticals社(Keele, UK)によって開発された、プラスミド上の抗生物質耐性遺伝子の存在の必要なしでプラスミド運搬細菌を選択するリプレッサ―滴定系を使って、細菌内で増殖させられる(米国特許第5972708号及びWilliams et al, 1998 Nucl. Acids Res. 26, 2120-2124を参照)。pTHrベクターは抗生物質耐性遺伝子の多数のコピーを、ワクチン接種を受けた人に導入しないので、特にヒトでの使用に最適である。したがって、一実施形態では、本発明のHIVCON免疫原をコードするヌクレオチド配列は、DNAワクチンとしてヒトにベクターを投与するために、pTHrベクターに組み込まれる。
【0109】
ヒト、哺乳動物又は実験動物での使用に安全ないかなるプラスミドベクターも、並びに、原核生物又は真核生物の発現系からのタンパク質精製に役立ついかなるプラスミドベクターも、本発明に従う使用が企図される。
【0110】
ウイルスの発現ベクターは当業者に公知であり、例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アルファウイルス、レトロウイルス及びポックスウイルス、例えばアビポックスウイルス、弱毒化ポックスウイルス、ワクシニアウイルス、及び、特に、修飾された種痘疹アンカラウイルス(MVA、ATCCアクセッション番号VR―1566)などのウイルスがある。そのようなウイルスは、発現ベクターとして使用されたとき、選択されたヒト宿主では生来非病原性であるか、又は、選択された宿主でそれらを非病原性にするために変更されている。例えば、複製に欠陥があるアデノウイルス及びアルファウイルスは公知であり、遺伝子送達ベクターとして使用することができる。好ましいウイルスベクターはMVAであり、それはほとんどの哺乳動物細胞で複製することのない、高度に弱毒化されたワクシニア株である(Mayr et al., (1975) Infection 105:6-14)。AFPはMVAの多くの部位にクローニングすることができ、対象、特にヒト対象に免疫接種をして、コードされたAFPに対してHIV特異免疫応答を起こさせるために使用することができる。役立つMVAクローニング部位としては、例えば、チミジンキナーゼ及び欠失III座がある(Chakrabarti et al., (1985) Mol. Cell. Biol. 5: 3403-3409、Meyer, H. et al (1991) J. Gen. Virol. 72: 1031-8、Altenburger, W. et al (1989) Arch. Virol. 105(1-2): 15-27)。
【0111】
ある種のポックスウイルス、例えばMVA、NYVAC及びアビポックスウイルスは、鳥類の種又は鳥類の細胞系、例えばニワトリの胚の線維芽細胞でのみ生産的に複製することができるか、継代培養することができる点に注意しなければならない。鳥類の宿主細胞から収集された組換えポックスウイルスは、ワクシニアウイルスによる哺乳動物の接種に類似した方法で鳥類外の脊椎動物、例えば哺乳動物に接種されたときに接種病変を生じるが、アビポックスウイルスの生産的な複製はない。そのような接種された鳥類外の脊椎動物でMVA、NYVAC及びアビポックスウイルスなどのある種のポックスウイルスが生産的に複製することができないにもかかわらず、接種動物が組換えポックスウイルスの抗原決定基に、更に、その中の外来性の遺伝子にコードされた抗原決定基に対しても免疫学的に応答するのに十分なウイルス発現は起こる。このように、一実施形態では、ある種のポックスウイルス又はウイルスベクター(上で開示されるような)を使用するときは、ニワトリの胚の線維芽細胞がウイルスベクター複製を許容する細胞として好ましい。
【0112】
組換えウイルスベクター及び組換えウイルスは、本発明のAFPに作動可能に結合したプロモーターを含むことができる。ポックスウイルスのベクターに含まれるとき、プロモーターは有利にはポックスウイルス起源であり、特に、ワクシニアウイルスのプロモーター7.5K、I3Lポックスウイルスプロモーター、11Kポックスウイルスプロモーター(米国特許第5017487号)、42Kポックスウイルスプロモーター、H6ポックスウイルスプロモーター、チミジンキナーゼポックスウイルスプロモーター、E3Lポックスウイルスプロモーター、K3Lポックスウイルスプロモーター又は合成ポックスウイルスプロモーターであることができる。プロモーターは、有利には「初期の」プロモーターでよい。「初期の」プロモーターは当技術分野で公知であり、デノボタンパク質合成がない場合、迅速且つ一過性に発現される遺伝子の発現を促進するプロモーターと定義される。プロモーターは、「強力な」又は「弱い」プロモーターでもよい。用語「強力なプロモーター」及び「弱いプロモーター」は当技術分野で公知であり、プロモーターでの転写開始の相対頻度(1分あたりの回数)によって定義することができる。「強力な」又は「弱い」プロモーターは、ポックスウイルスRNAポリメラーゼとのその親和性によっても定義される。
【0113】
本発明は、突然変異したウイルスプロモーターも提供する。理論に束縛されないが、ウイルスベクターから発現される潜在的に毒性の異種配列の高レベルの発現は、安定したウイルス組換え体の形成を排除することができると思われる。したがって、本発明は、突然変異ウイルスプロモーターの使用も包含し、その例としては、ウイルスベクターから発現したAFP配列の発現レベルが野生型プロモーターの下での異種配列の発現レベルと比較して低くなるように、ポックスウイルス組換え体が所望の場合に役立つ突然変異H6ポックスウイルスプロモーターがある。突然変異H6プロモーターは、弱いプロモーターと考えられる。
【0114】
突然変異プロモーターは、点突然変異を含むことができる。本発明は、野生型プロモーターと比較して転写開始の頻度を減らす点突然変異を含む、H6以外のプロモーターを使用することもできる。更に、他のタイプの突然変異プロモーターが、本発明で使用するために適当である(Davison, A. et al (1989) J. Mol. Biol. 210: 749-769、Taylor J. et al., Vaccine, 1988, 6, 504-508、Guo P. et al. J. Virol., 1989, 63, 4189-4198、Perkus M. et al., J. Virol., 1989, 63, 3829-3836も参照)。
【0115】
本発明のウイルスベクター又はウイルスは、AFPの転写及び翻訳を制御するために、追加の配列を更に含むことができる。例えば、ポックスウイルスベクターに含まれる場合、そのような配列はT5NT終結認識シグナルを含むことができ、それは初期RNA転写の終結のためのポックスウイルスRNAポリメラーゼによって認識され得る。
【0116】
本発明のAFPはアデノウイルス組換え体としても送達することができ、その例としては、E1が欠陥体であるか削除された、E3が欠陥体であるか削除された、及び/若しくはE4が欠陥体であるか削除されたアデノウイルスベクター、又は、全てのウイルス遺伝子が削除された「ガットレス」アデノウイルスベクターがある。アデノウイルスベクターは、E1、E3又はE4遺伝子の突然変異、又はこれら若しくは全てのアデノウイルス遺伝子の欠失を含むことができる。E1に欠陥があるアデノウイルス突然変異体は非許容細胞で複製に欠陥があると言われており、また少なくとも高度に弱毒化されているので、E1突然変異はベクターの安全域を上昇させる。E3突然変異は、アデノウイルスがMHCクラスI分子を下方制御するメカニズムを崩壊させることによって、抗原の免疫原性を強化する。E4突然変異は後期遺伝子発現を抑制することによってアデノウイルスベクターの免疫原性を低減し、それによって、反復再接種で同じベクターを利用することを可能にする。本発明は、E1、E3、E4、E1及びE3、並びにE1及びE4に欠失又は突然変異のあるアデノウイルスベクターを包含する。本発明は、ヒトAd5系統のアデノウイルスも包含する。
【0117】
「ガットレス」アデノウイルスベクターは、本発明のAFPを発現するために使用することもできる。その複製は、ヘルパーウイルス及びE1a及びCreを発現する特別なヒト293細胞系を必要とするが、この条件は自然環境中では存在しない。ベクターからは全てのウイルス遺伝子が奪われているので、ワクチン担体としてのベクターは非免疫原性であって、再ワクチン接種のために複数回接種をすることができる。「ガットレス」アデノウイルスベクターは、導入遺伝子を収容するために36kbの空間も含むので、細胞への多数の異種遺伝子の同時送達を可能にする。RGDモチーフなどの特定の配列モチーフは、その感染性を強化するために、アデノウイルスベクターのH―Iループに挿入することができる。この配列は、ある種の細胞間マトリックス及び接着タンパク質とインテグリンと呼ばれる細胞表面受容体のスーパーファミリーとの相互作用のために、必須であることが示された。RGDモチーフの挿入は、免疫不全状態の対象に有利に役立つ可能性がある。アデノウイルス組換え体は、上述のものなど、アデノウイルスベクターのいずれかに、特定の導入遺伝子又は導入遺伝子の断片をクローニングすることによって構築される。
【0118】
AFPの送達に役立つ他のウイルスベクターとしては、アルファウイルスベクター、特にセムリキ森林熱ウイルス(SFV)、シンドビスウイルス及びベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)のレプリコンに基づくものがある(例えば、Smerdou et al., (2000) Gene. Ther. Regul. 1:33-63、Lundstrom et al., (2002) Technol. Cancer Res. Treat. 1: 83-88、Hanke 2003を参照)。アルファウイルスレプリコンは有用な発現ベクターであって、転写及び一次RNA転写産物の細胞核から細胞質への輸送、輸送されたRNAの細胞質内増幅、及び本発明のAFPなどの異種核酸配列のRNA発現のために必須である、アルファウイルスゲノムRNAの部分を含むRNA又はDNAを指すことができる。このように、レプリコンは、アルファウイルスRNAの細胞質内増幅と下位ゲノムRNA及び本発明のAFPの発現のために必要とされる非構造タンパク質をコード及び発現する。更に、アルファウイルスレプリコンは、キャプシドに包まれてアルファウイルス粒子又はビリオンを生成することができないことが好ましい。このことは、アルファウイルス構造遺伝子の1つ又は複数が、好ましくは、例えば1ヘルパー又は2ヘルパーのアルファウイルスベクター系で起こるように、構造遺伝子の全てが欠けているレプリコンによって達成することができる。好ましい一実施形態において、アルファウイルスレプリコンは、真核生物の発現カセットから転写し、真正のアルファウイルス様5’及び3’末端を有するRNA分子にプロセシングすることができる。
【0119】
アルファウイルスレプリコン及びそれらを含んでいる発現ベクターは当技術分野で公知であり、広範囲にわたるアルファウイルスレプリコンを含む多くのベクターが記載されている。そのようなレプリコンの例は、例えば、米国特許第5739026号、同第5766602号、同第5789245号、同第5792462号、同第5814482号、同第5843723号及び同第6531313号、並びにPolo et al., (1998) Nature Biotechnol. 16: 517-518及びBerglund et al., (1998) Nature Biotechnol. 16: 562-565で見られる。アルファウイルスレプリコンは、任意のアルファウイルス又はアルファウイルス核酸配列の任意の混合物から調製することができる。この点に関しては、好ましいアルファウイルスレプリコンは、シンドビスウイルス、SFV、VEE又はロスリバーウイルスに由来する。
【0120】
他のウイルス発現ベクターとしては、フラビウイルス(国際公開02/072835)、例えば黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス及び日本脳炎ウイルス、ワクシニアウイルスなどのポックスウイルス(米国特許第5505941号)、鶏痘ウイルス(Kent)及びカナリア痘ウイルスなどのアビポックスウイルス(Clements-Mann et al., (1998) J. Infect. Dis. 177: 1230-1246、Egan et al., (1995) J. Infect. Dis. 171: 1623-1627、米国特許第6340462号)、例えば弱毒化アビポックスウイルス、例えばTROVAC(米国特許第5766599号)及びTROVAC(米国特許第7756103号)、ポリオウイルス(米国特許第6780618号、同第6255104号、国際公開92/014489)及びライノウィルスなどのピコルナウイルス、ヘルペスウイルス(国際公開87/000862、国際公開87/04463、国際公開97/014808)、例えば水痘帯状ヘルペスウイルス(VZV;国際公開97/004804)、NYVAC(病原性を低減するために18個の遺伝子欠失が選択されたニューヨークワクシニアウイルス)(Hel et al., (2001) J. Immunol. 167: 7180-7191、米国特許第5494807号、同第5762938号、同第5364773号)、アデノウイルス(AdV;国際公開95/02697、国際公開95/11984、国際公開95/27071、国際公開95/34671)、アデノ随伴ウイルス(AAV;米国特許第4797368号、同第5474935号)、インフルエンザウイルス(国際公開03/068923、国際公開02/008434、国際公開00/053786)、カリフラワーモザイクウイルス(米国特許第4407956号)、タバコモザイクウイルス(TMV)(Palmer et al, (1999) Arch. Virol. 144: 1345-1360、国際公開93/003161)及びブルータングウイルスのNS1小管(Adler et al., (1998) Med. Microbial. Immunol. (Berl) 187: 91-96)がある。これらのベクターの多くは直ちに利用でき、それらの使用に適用できる条件は当業者に公知である。
【0121】
本発明の発現ベクターには、実験動物、哺乳動物又はヒト対象への投与のための細菌性発現ベクターも含まれる。そのような細菌性発現ベクター(弱毒化された浸潤性細菌)は、本発明のAFPをコードするプラスミド又は発現カセットを含む細菌である。発現カセットは、細菌又は真核細胞で発現を促進することができる。前者では、発現は細菌細胞を宿主に導入する前に達成され、後者においては発現は宿主内で起こり、宿主細胞の機構によって促進される。米国特許第5877159号、同第6150170号、同第6500419号及び同第6531313号は、増殖性感染を確立するか疾患を引き起こすことなく動物細胞に侵入し、このように、AFPの発現を得るために真核細胞へのAFPをコードする発現カセットの導入を可能にする細菌ベクターを記載する。
【0122】
適当な細菌性発現ベクターとしては、ウシ結核菌、バシラスカルメットゲラン(BCG)、及びサルモネラ(特に下痢症状のためのワクチンとして開発中のサルモネラの「二重aro」突然変異体)、赤痢菌(Shata et al., (2000) Mol. Med. Today 6: 66-71を参照)、ナイセリア及びリステリア・モノサイトゲネスの弱毒株がある。好ましいチフス菌株には、CVD908Δasd、CVD908ΔhtraA及びCVD915が含まれる。CVD908Δasdサルモネラ株は、アスパラギン酸からのジアミノピメリン酸(DAP)の合成のために必要な酵素であるアスパラギン酸b―セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(asd)をコードするasd遺伝子の欠失によって、CVD908(Tacket et al., (1992) Vaccine 10: 443-446)に由来する。CVD908ΔhtrAは、htrA遺伝子が削除されたチフス菌株である。この突然変異は、その株を更に弱毒化する熱ショック遺伝子をノックアウトする(Tacket et al., (1997) Infect. Immunol. 65:452-456)。CVD915はguaBA遺伝子座の欠失を有してその弱毒化を引き起こしている、弱毒化チフス菌株である(Pasetti et al., Clin. Immunol. 92:76-89, 1999)。この株は、動物試験で、DNAワクチンの送達のために優れていることが示された。好ましい赤痢菌株は、S.flexneri CVD1207である。この株は、その免疫原性を保存しながらもそれを十分に弱毒化するsen、set、virG及びguaBA遺伝子の欠失を有する(Kotloff et al., Infect. Immunol. 68:1034-1039, 2000)。
【0123】
本発明の発現ベクターは、本発明のAFPの調製及び精製のためにも使用する。ベクターは、この点に関しては一般的に細菌、酵母、昆虫又は哺乳動物の細胞で使用する。AFPをコードする核酸分子の発現を指示する核酸制御配列は、そこから発現が指示される宿主細胞(例えば、細菌、酵母、昆虫、又は哺乳動物の細胞)に基づいて選択される。特定の宿主細胞及び発現ベクターのための適当な核酸制御配列は公知である。AFPを含む発現ベクターは、当技術分野で公知の方法によってこれらの細胞に導入することができるが、それらはとりわけ、細胞型及び発現の期間が一時的であるか又は安定しているかどうかによって決まる。例えば、塩化カルシウムトランスフェクションは原核細胞のために通常利用されるが、リン酸カルシウム処理、リポフェクション、マイクロインジェクション、微粒子銃又はエレクトロポレーションは多くの真核細胞のために使用される。当業者に公知である、任意のトランスフェクション、感染、形質転換、又は、原核生物若しくは真核生物であるにせよ細胞に発現ベクターを導入するための適当な手法を使用することができる。
【0124】
本発明のAFPの発現に役立つ、当業者に公知の多数の大腸菌ベクター及び細胞がある。使用に適した他の微生物宿主としては、枯草菌などの桿菌、サルモネラ属、セラチア属などの他の腸内細菌、並びに様々なシュードモナス種がある。これらの原核生物宿主は、主に宿主細胞で作動可能な発現制御配列を一般に含む発現ベクターを支持することができる。ラクトースプロモーター系、トリプトファン(Trp)プロモーター系、βラクタマーゼプロモーター系又はファージλからのプロモーター系などの様々な公知のプロモーターは、任意の数存在してもよい。プロモーターは一般的に発現を制御し、それはオペレータ配列と共同でよく、また、例えば転写及び翻訳の開始及び完了のためのリボソーム結合部位配列を有する。必要に応じて、アミノ末端メチオニンは、タンパク質の5’及びインフレームでのMetコドンの挿入によって提供することができる。細菌での使用に好ましいベクターとしては、QIAGEN社からはpQE70、pQE60及びpQE9が、Stratagene Cloning Systems社からはpBluescriptベクター、Phagescript(商標)ベクター、pNH8A、pNH16a、pNF118A、pNH46Aが、Pharmacia Biotech社からはptrc99a、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、pRIT5がある。他の発現ベクター系は、βガラクトシダーゼ(p-gal;pEX)、マルトース結合タンパク質(pMAL)及びグルタチオンSトランスフェラーゼ(pGST)(例えば、Smith, (1988) Gene 67: 31-40及びAbath. (1990) Peptide Research 3: 167-168を参照)に基づいている。
【0125】
本発明のAFPの発現を指示するために、酵母細胞を使用することもできる。ある状況下で望ましい酵母系を利用する酵母発現系にはいくつかの利点があり、例としては、ジスルフィド対合、翻訳後修飾、タンパク質分泌、及びプロテアーゼ切断部位がAFPコード配列の上流側に挿入されるときの容易な単離がある。Saccharomyces cerevisiaeのプレ―プロα因子リーダー部位(MFa―I遺伝子によってコードされる)は、酵母からのタンパク質分泌を指示するために常用される(Brake et al., (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 4642-4646、米国特許第4870008号)。プレ―プロα因子のリーダー部位は、シグナルペプチド及び、KEX2遺伝子によってコードされる酵母プロテアーゼのための認識配列を含むプロ部分を含む。この酵素は、Lys―Argジペプチド切断シグナル配列のカルボキシル側で、前駆体タンパク質を切断する。AFPコード配列は、プレ―プロα因子リーダー部位に、インフレームで融合することができる。この構築物は、次に強い転写プロモーター、例えばアルコールデヒドロゲナーゼIプロモーター、アクチン又は糖分解プロモーターの管理下に置くことができる。代わりに、金属イオン(即ち、メタロチオネインプロモーターとも呼ばれるCUP1プロモーター)、グルコース、ガラクトース(即ち、GAL1、GAL10)、又は他の糖類の有無に依存するものなど、誘導可能なプロモーターを使用することもできる。融合タンパク質コード配列の後に翻訳終止コドンが来ることができ、その後には転写終止シグナルが来ることができる。酵母での発現に役立つベクターとしては、2環状プラスミド(Broach, J.R. et al, (1979) Gene 8(1): 121-33)及び動原体性プラスミド(Hsiao, C.L. and Carbon, J. (1981) Proc. Natl. Acad. Sci. 78(6): 3760-4)があるが、これらに限定されるものではない。
【0126】
組換え体タンパク質の効率的な翻訳後修飾及び発現は、昆虫細胞のバキュロウイルス系において達成することもできる("Baculovirus Expression Protocols," Humana Press Inc.、国際公開92/005264)。これらの系は、当技術分野においては公知である。
【0127】
特に哺乳動物対象への投与のためにタンパク質を精製するときは、哺乳動物細胞は本発明のAFPの発現及び精製のために役立つ。哺乳動物細胞内でのタンパク質の発現に役立つベクターは、発現を指示するためにしばしば強いウイルスプロモーターを有するが、ヒト細胞で発現を指示することに役立つ他の配列、例えばエンハンサー、ポリアデニル化シグナル及び、本発明のAFPの転写、翻訳、即ち内部リボソームの導入部位(IRES)、及び/又はプロセシングを促進するための他のシグナル配列を含むこともできる。IRES要素の使用が必要となる可能性がある本発明のある実施形態では、IRES要素はウイルスに、例えばピコルナウイルスファミリー(ポリオ及び脳心筋炎)のIRES及びC型肝炎ウイルスのIRESに、又は、哺乳類のBiP IRESなどの哺乳動物のmRNAに由来することができる。その代わりに又はそれに加えて、DNAワクチン又は免疫原性組成物中のプラスミドは、対象宿主細胞で、異種tPAシグナル配列、例えばヒトtPA及び/又は安定化イントロン、例えばウサギβグロビン遺伝子のイントロンIIをコードするヌクレオチド配列を、更に含有及び発現することができる。
【0128】
インビトロ精製のために使用するとき、ベクターに応じて、それらには限定されないが、とりわけアンピシリン、テトラサイクリン、ネオマイシン、ゼオシン、カナマイシン、ブレオマイシン、ハイグロマイシン、クロラムフェニコールなどの抗生物質耐性をコードする選択マーカーが存在してもよい。抗生物質耐性遺伝子を用いない選択系も、発現ベクター及び哺乳動物宿主系で使用することができる。AFPの発現の指示のために使用することができるプロモーター配列としては、それらには限定されないが、強いウイルスプロモーター、例えばヒトサイトメガロウイルス(CMV)からのプロモーター、単純疱疹ウイルス(HSV)のチミジンキナーゼ遺伝子からのプロモーター、アデノウイルス5E2コラゲナーゼプロモーターのようなアデノウイルスからのプロモーター、βアクチンプロモーター、筋肉クレアチンキナーゼプロモーター、並びに複合プロモーター、例えば、とりわけEF―la/HTLVプロモーター(InVitrogen社製)及びFerH又はFerLコアプロモーターで構成されるフェリチン複合プロモーター(InVitrogen社製)がある。好ましい真核生物発現ベクターの中には、Stratagene社から入手可能なpWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXTI及びpSGが、Pharmacia社から入手可能なpSVK3、pBPV、pMSG及びpSVLがある。AFPコード配列は、無傷のタンパク質を合成することができる哺乳動物細胞系に導入することができ、それらは当技術分野で開発されており、例としては、それらには限定されないが、CHO、COS、293、293T、HeLa、NIH 3T3、Jurkat、骨髄腫及びPER.C6細胞系がある。トランスフェクション細胞内の発現ベクター由来のRNAの存在は、ノーザンブロット分析によって確認することができ、cDNA又はタンパク質コード配列に対応する反対側の鎖RNAの生産は、それぞれサザン及びノーザンブロット分析によって確認することができる。
【0129】
細胞形質転換手法及び遺伝子送達方法(遺伝子を送達するためにインビボで使用されるものなど)は、当技術分野で公知である。そのようないかなる手法も、本発明のAFPをコードする核酸又は発現ベクターをそれぞれ細胞又は対象に送達するために使用することができる。
【0130】
本発明のAFPは、細菌、酵母、昆虫又は哺乳動物の細胞から、当技術分野で公知の手法で精製することができる。例えばAFPの精製又は濃縮は、硫酸アンモニウム若しくはエタノール沈殿、酸抽出、アニオン若しくはカチオン交換クロマトグラフィー、リン酸セルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、免疫アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、レクチンクロマトグラフィー、分子篩クロマトグラフィー、等電集束法、ゲル電気泳動、又は各精製段階でAFPの分布を並びにAFPの純度を追跡するモニター手法を使うこれらの方法の組み合わせによって実行することができる。前述の精製段階のいくつか又は全部は、様々な組み合わせで、又は、他の公知の方法と併用して、実質的に精製、単離された本発明のAFPを提供するために使用することもできる。AFPがモノクローナル又はポリクローナル抗体によって認識されるエピトープを含む場合は、免疫親和性精製を単独で、又は、上記の手法と併用することができる。免疫アフィニティークロマトグラフィーについては、AFP(又は、AFPを含む細胞抽出物若しくは他の混合物)は、抗原性ペプチドに特異的な抗体をAFPと結合させる樹脂を含むカラムを通すことによって精製することができる。免疫親和性精製は、親和性試薬が固体支持体に結合しているときは、一括して行うこともできる。これらの手法は当技術分野においては公知である。
【0131】
IV. 免疫原性組成物及びアジュバント
他の態様において、本発明は、本発明のAFP、核酸又は発現ベクターを薬剤として許容される担体との混合で含む、免疫原性組成物を提供する。そのような担体は、免疫学的な使用のためにも許容される。本発明の免疫原性組成物は、エイズの予防、改善又は治療のためのHIVに対する予防的又は治療的なワクチンの1つ又は複数の成分として、HIVに対して免疫応答を刺激するために役立つ。本発明の核酸及びベクターは、遺伝子ワクチン、即ちヒトなどの対象に本発明のAFPをコードする核酸を送達し、その結果AFPが次に対象で発現されて免疫応答を導き出すワクチンを提供するために特に役立つ。
【0132】
本発明の組成物は、注射可能な懸濁液、溶液、スプレー剤、シロップ剤又はエリキシルでよい。そのような組成物を調製するために、所望の程度の純度を有する本発明のAFP、核酸又は発現ベクターを、1つ又は複数の薬剤として許容される担体及び/又は賦形剤と混合する。担体及び賦形剤は、組成物の他の成分と適合するという意味において「許容される」ものでなければならない。許容される担体、賦形剤又は安定剤は使用される投薬量及び濃度でレシピエントに非毒性であり、その例としては、それらには限定されないが、水、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水、ブドウ糖、グリセリン、エタノール若しくはそれらの組み合わせ、リン酸、クエン酸及び他の有機酸などの緩衝液、アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤、保存料(例えば塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチル若しくはベンジルアルコール、アルキルパラベン、例えばメチル若しくはプロピルパラベン、カテコール、レソルシノール、シクロヘキサノール、3―ペンタノール及びm―クレゾール)、低分子量(約10未満の残基)ポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン若しくは免疫グロブリンなどのタンパク質、ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン若しくはリジンなどのアミノ酸、グルコース、マンノース若しくはデキストリンを含む単糖、二糖及び他の炭水化物、EDTAなどのキレート化剤、ショ糖、マンニトール、トレハロース若しくはソルビトールなどの糖類、ナトリウムなどの塩形成対イオン、金属錯体(例えばZn―タンパク質複合体)、及び/又はTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)若しくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性活性剤がある。
【0133】
免疫原性又は免疫学的な組成物は、水中油型乳濁液の形で製剤化することもできる。水中油型乳濁液は、例えば、軽質流動パラフィン油(European Pharmacopea型)、スクアラン、スクアレン、EICOSANE(商標)若しくは四テトラコンタンなどのイソプレノイド油、アルケンのオリゴマー化から生じる油、例えばイソブテン若しくはデセン、線状アルキル基を含む酸若しくはアルコール類のエステル、例えば植物油、オレイン酸エチル、プロピレングリコールジ(カプリレート/カプラート)、グリセリルトリ(カプリレート/カプラート)若しくはプロピレングリコールジオレアート、分枝脂肪酸若しくはアルコール類のエステル、例えばイソステアリン酸エステル、をベースにすることができる。油は、乳濁液をつくるために、有利には乳化剤と併用する。乳化剤は、非イオン性界面活性剤、例えばソルビタン、マンニドのエステル(例えば無水マンニトールオレアート)、グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、及び、エトキシル化されてもよいオレイン酸、イソステアリン酸、リシノール酸又はヒドロキシステアリン酸、及び、ポリオキシプロピレン―ポリオキシエチレンコポリマーブロック、例えばL121などのPluronic(登録商標)製品でよい。アジュバントは、Provax(登録商標)(IDEC Pharmaceuticals社製、San Diego、CA)という商品名で市販されているものなどの、乳化剤、ミセル形成剤及び油の混合物でよい。
【0134】
本発明の免疫原性組成物は、追加の物質、例えば湿潤剤若しくは乳化剤、緩衝剤又はワクチンの効果を強化するアジュバントを含むことができる(Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th edition, Mack Publishing Company, (ed.) 1980)。
【0135】
アジュバントとしては、それらには限定されないが、無機塩類(例えば、AlK(SO4)2、AlNa(SO4)2、AlNH(SO4)2、シリカ、ミョウバン、Al(OH)3、Ca3(PO4)2、カオリン又は炭素)、免疫刺激複合体(ISCOM)を含むか含まないポリヌクレオチド(例えば、CpGオリゴヌクレオチド、例えばChuang, T.H. et al, (2002) J. Leuk. Biol. 71(3): 538-44、Ahmad-Nejad, P. et al (2002) Eur. J. Immunol. 32(7): 1958-68に記載されているもの)、ポリIC若しくはポリAU酸、CpGを含むか含まないポリアルギニン(当技術分野ではIC31としても知られる、Schellack, C. et al (2003) Proceedings of the 34th Annual Meeting of the German Society of Immunology、Lingnau, K. et al (2002) Vaccine 20(29-30): 3498-508を参照)、JuvaVax(商標)(米国特許第6693086号)、ある種の天然物質(例えば結核菌からのワックスD、Cornyebacterium parvum、百日咳菌若しくはブルセラ菌属のメンバーで見られる物質)、フラゲリン(Toll様受容体5リガンド、McSorley, S.J. et al (2002) J. Immunol. 169(7): 3914-9を参照)、QS21、QS17及びQS7などのサポニン(米国特許第5057540号、同第5650398号、同第6524584号、同第6645495号)、一リン酸化リピドA、特に、3―デ―O―アシル化一リン酸化リピドA(3D―MPL)、イミキモド(imiquimod)(当技術分野ではIQMとしても知られ、Aldara(登録商標)として市販されている、米国特許第4689338号、同第5238944号、Zuber, A.K. et al (2004) 22(13-14): 1791-8)、並びにCCR5阻害剤CMPD167(Veazey, R.S. et al (2003) J. Exp. Med. 198: 1551-1562を参照)がある。
【0136】
水酸化アルミニウム又はリン酸塩(ミョウバン)は、一般的に0.05〜0.1%のリン酸緩衝食塩水溶液で用いられる。特にDNAワクチンと併用することができる他のアジュバントは、コレラトキシン、特にCTA1―DD/ISCOM(Mowat, A.M. et al (2001) J. Immunol. 167(6): 3398-405を参照)、ポリホスファゼン(Allcock, H.R. (1998) App. Organometallic Chem. 12(10-11): 659-666、Payne, L.G. et al (1995) Pharm. Biotechnol. 6: 473-93)、サイトカイン、例えば、それらには限定されないが、IL―2、IL―4、GM―CSF、IL―12、IGF―1、IFN―α、IFN―β及びIFN―γ(Boyer et al., (2002) J. Liposome Res. 121: 137-142、国際公開01/095919)、免疫調節タンパク質、例えばCD40L(ADX40、例えば国際公開03/063899を参照)及びナチュラルキラー細胞のCD1aリガンド(CRONY又はα―ガラクトシルセラミドとしても知られる、Green, T.D. et al, (2003) J. Virol. 77(3): 2046-2055を参照)、免疫グロブリンのFc断片に融合したIL―2などの免疫賦活融合タンパク質(Barouch et al., Science 290:486-492, 2000)、並びに共刺激分子B7.1及びB7.2(Boyer)であり、これらの全てはタンパク質として、又はDNAの形で、本発明のAFPをコードするものと同じ発現ベクターに、又は別の発現ベクターに投与することができる。
【0137】
本発明で使用することができるサイトカインとしては、それらには限定されないが、顆粒球コロニー刺激因子(G―CSF)、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM―CSF)、インターフェロンα(IFNα)、インターフェロンβ(IFNβ)、インターフェロンγ(IFNγ)、インターロイキン1α(IL―1α)、インターロイキン1β(IL―1β)、インターロイキン2(IL―2)、インターロイキン3(IL―3)、インターロイキン4(IL―4)、インターロイキン5(IL―5)、インターロイキン6(IL―6)、インターロイキン7(IL―7)、インターロイキン8(IL―8)、インターロイキン9(IL―9)、インターロイキン10(IL―10)、インターロイキン11(IL―11)、インターロイキン12(IL―12)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、腫瘍壊死因子β(TNFβ)及び形質転換成長因子β(TGFβ)がある。サイトカインは、本発明の免疫原性又はワクチンの組成物と同時投与及び/又は逐次投与することができると理解される。このように、例えば、本発明において増殖されるウイルスは、外来性の核酸分子を含むことができ、適当なサイトカイン、例えばワクチン接種をするか又は免疫学的応答を導き出す宿主に適合させたサイトカイン(例えばヒトに投与される組成物のためのヒトサイトカイン)を、インビボで発現することができる。
【0138】
免疫原性組成物はAFP、核酸又は発現ベクターを所望の作用点へ導入して、適当で制御可能な速度でそれを放出するように設計することができる。徐放性製剤の調製法は、当技術分野で公知である。例えば、徐放性製剤は、免疫原及び/又は免疫原性組成物を複合又は吸収するポリマーを用いて生産することができる。徐放性製剤は、所望の放出制御特性又は放出プロフィールを提供することが知られている、適当な巨大分子(例えば、ポリエステル類、ポリアミノ酸、ポリビニル、ピロリドン、エチレンビニルアセテート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース又は硫酸プロタミン)を使って調製することができる。徐放性製剤による作用の持続時間を制御する他の可能な方法は、有効成分をポリエステル類、ポリアミノ酸、ヒドロゲル、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、これらの酸のコポリマー又はエチレンビニルアセテートコポリマーなどのポリマー材の粒子に組み込むことである。代わりに、これらの有効成分をポリマー粒子に組み込む代わりに、コロイド薬剤送達系(例えばリポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルジョンで、例えばコアセルベーション手法又は界面重合によって調製されたマイクロカプセルに、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ(メタアクリル酸メチル)マイクロカプセルに、これらの材料を閉じ込めることが可能である。そのような手法は、New Trends and Developments in Vaccines, Voller et al. (eds.), University Park Press, Baltimore, Md., 1978及びRemington's Pharmaceutical Sciences, 16th editionで開示されている。
【0139】
本発明の免疫原性組成物中の本発明のAFP、核酸及び発現ベクター(まとめて、免疫原)の適当な投薬量は、当業者ならば容易に決定することができる。例えば、免疫原の投薬量は、投与経路及び対象の大きさに従い異なることができる。本発明のAFPの適当な用量は、とりわけAFPの分子量、送達経路、送達手段及びレシピエントの体重に従って、約1〜10μgから約5000mgの範囲にあることができ、一般的には約500pgから約100mgの範囲である。本発明の核酸の適当な用量は、とりわけ、タンパク質送達で評価される要因に加えて核酸分子の大きさに従って、約1μg〜約100mgの範囲であることができ、より一般的には約10〜100μgから約1〜10mgの範囲である。本発明の発現ベクターの送達のための投薬量は、更に発現ベクターの性質に依存する。ベクターがRNA又はDNA分子(脂質又は他の送達粒子に組み込まれた1つ又は複数のプラスミドを含む)であるならば、投薬量中の発現ベクターの量は本発明の核酸のそれと類似する。細菌の発現ベクターの投薬量は、コロニー形成単位(cfu)によって都合よく表される。用量は好ましくは約104〜約1010cfuの範囲、より好ましくは約106〜約1010cfu、並びに約108〜約109cfuの範囲である。ウイルスの発現ベクターの投薬量は、ベクターの性質、例えばベクターがアルファウイルス、アデノウイルス、AAV、ポックスウイルス、レトロウイルス、その他であるかどうかによって決まる。これらの用量のいずれも、単位投薬量に基づいて、又は、対象のキログラム体重あたりの量として計算することができる。
【0140】
ウイルスベクターの投与用量は公知であり、必要に応じて当業者が決定することができる。例示すると、剤が複製欠陥アデノウイルスなどのウイルスベクターである場合、投薬量は約106〜約1012プラーク形成単位(pfu)の範囲であることができ、好ましくは約108〜約1010pfuの間である。組換え体AAVを使う安定して効率的なトランスダクションについては、投薬量はグラム体重につき約1×105IU(感染単位)のAAVからグラム体重につき約1×109IUのAAV、好ましくはグラム体重につき約1×106IUのAAVからグラム体重につき約1×107IUのAAVであることができる。ポックスウイルス及びMVAについては、約105〜約1010pfuの投薬量が役立ち、約107〜約108pfuの投薬量がしばしば使用される。
【0141】
他の適当な用量は、当業者が決定することができる。適当な用量を決定するために、当業者は対象の免疫応答を従来の免疫学的手法で判定して、投薬量を適宜調節することができる。そのような手法としては、例えば、それらには限定されないが、クロム放出試験、四量体結合アッセイ、IFN―γ ELISPOTアッセイ及び細胞内サイトカインアッセイ、並びに他の免疫学的な検出アッセイ、例えばHarlowで詳述されるものがある。
【0142】
本発明は、本発明の発現ベクターを動物細胞に導入してAFPを発現するのに十分な条件下でそれらの細胞を培養することによる、動物細胞で本発明のAFPを発現させる方法を提供する。発現ベクターは、トランスフェクション、形質転換、マイクロインジェクション、感染、エレクトロポレーション、微粒子銃、その他などを含む任意の適当な方法によって導入することができるが、これらに限定されない。そのような手法は、当技術分野で標準である。発現ベクターを導入した後に、少なくともAFPが発現されるまで細胞生存能力を維持するために、細胞は適当な培養条件(即ち、暫くの間適当な条件で)の下で維持される。場合によっては、例えばアルファウイルスレプリコンベクターでは、AFPの発現はAFPをコードするRNA分子の生産を含む。
【0143】
更に、本発明は、動物内に本発明の発現ベクターを送達することによって動物でAFPの発現を得ることによる、本発明のAFPを動物に導入し、発現させる方法を提供する。腸管外、皮下、表皮、口内、経口、筋肉内、静脈内、皮内、鼻腔内、粘膜、局所、又は他の送達方法、例えばPowderjectによる微粒子銃方法(ヘリウムガスによって実行される皮膚への無針送達系)を含む任意の送達方法を使用することができる。そのような技術は、当業者には周知である。発現ベクターは、安定性及び送達効率を改善するために必要に応じて製剤化することができる。発現ベクターが送達されると、AFPのORFは転写(必要な場合)、翻訳されて、コードされたAFPを発現する。当業者は、インビトロ及びインビボでの転写及び翻訳の方法に精通している。
【0144】
動物細胞及び動物でAFPを発現するためのそのような方法は、例えばAFP発現のメカニズム、AFPの局在化、AFP発現に応じて影響又は誘導されるシグナル伝達経路のメカニズム及び様々な核酸調節因子のAFP発現及び局在化に及ぼす影響を研究するための臨床用、診断用又は他の研究用手段として役立つ。
【0145】
本発明に従い、本発明のAFP、核酸及び発現ベクターは、動物で免疫応答を、特に、HIV特異CTL免疫応答を誘導するための免疫原の役目を果たすことができる。それ故に、本明細書で使用されるように、免疫原は動物内に送達されて、直接又は間接的に免疫応答(液性又は細胞性の)を誘導する分子である。HIV免疫原はHIVに対する応答を誘導し、その応答は細胞性でも液性でもよい。HIVCON、RENTA及びHIVAは、HIVタンパク質免疫原の例である(HIVAについては国際公開01/47955を、RENTAについては国際出願/US2004/037699を参照)。pTHr.HIVCON、pTHr.RENTA及びpTHr.HIVAは、DNA又はプラスミドベクターのHIV免疫原の例である。MVA.HIVCON、MVA.RENTA及びMVA.HIVAは、ウイルスベクターのHIV免疫原の例である。
【0146】
本方法は、これらの免疫原を単独使用した場合、又は他のHIV免疫原と併用した場合、並びにアジュバントと併用した場合若しくはしなかった場合の免疫応答を研究するために、実験動物を免疫接種するときの研究手段として役立つ。より詳しくは、本方法はヒトのHIVの予防的又は治療的な阻止、改善又は治療のためのものである。予防的に提供されるとき、特に高リスク対象においては、本方法は理想的にはHIV感染症のいかなる徴候にも先立って、又は、エイズによるいかなる症状にも先立って対象に投与される。免疫原の予防的投与は、ヒト対象においてエイズを阻止又は弱毒化する役目を果たすことができる。治療的に提供される場合は、本方法はエイズ症状の改善及び治療の役目を果たすことができ、有利には感染後できるだけ早い時期に、好ましくはエイズのいかなる症状の出現前に使用されるが、病徴の開始時に(又は、後に)も使用することができる。
【0147】
組換え体ベクターは、本発明のAFPをコードする核酸分子を発現する。詳細には、AFPを単離して特徴を明らかにし、ベクター組換え体に挿入することができる。得られた組換え体ベクターは、対象に免疫接種又は予防接種をするために使用される。対象内でのAFPの発現は、AFPの発現産物に対する免疫応答を対象内で起こすことができる。このように、本発明の組換え体ベクターは、保護的であることができるがその必要はない免疫応答を誘導する手段を提供する、免疫組成物又はワクチンで使用することができる。
【0148】
免疫応答を誘導又は刺激するために、本発明のAFP若しくは発現ベクター又は本発明のAFPは、コードされたAFPがAFPに対する免疫応答を誘導するのに十分なレベルで発現されるように、又は、AFPがAFPに対する免疫応答を誘導するのに十分な量で提供されるように、対象に1回又は複数回送達される。それらに限定されないが筋肉内、静脈内、皮内、粘膜及び局所の送達を含む、いかなる送達方法を使用することができる。そのような技術は、当業者には周知である。送達方法のより具体的な例は、筋肉内注射、皮内注射及び皮下注射である。しかし、送達は注入法に限定される必要はない。更に、動物組織へのDNAの送達は、カチオンのリポソーム(Watanabe et al., (1994) Mol. Reprod. Dev. 38: 268-274、及び国際公開96/20013)、動物筋組織への裸のDNAの直接注入(Robinson et al., (1993) Vaccine 11:957-960、Hoffman et al., (1994) Vaccine 12: 1529-1533、Xiang et al., (1994) Virology 199: 132-140、Webster et al., (1994) Vaccine 12: 1495-1498、Davis et al., (1994) Vaccine 12: 1503-1509及びDavis et al., (1993) Hum. Mol. Gen. 2: 1847-1851)、又は「遺伝子銃」技術を用いたDNAの皮内注射(Johnston et al., (1994) Meth. Cell Biol. 43:353-365)によって達成された。代わりに、送達経路(特に細菌の発現ベクター、例えば弱毒化サルモネラ菌又は赤痢菌種について)は、経口、鼻腔内、又は他の任意の適当な経路によるものでよい。送達は、肛門、膣又は口の粘膜などの粘膜表面を通しても達成される。
【0149】
免疫化スケジュール(又は、体系)は、動物(ヒトを含む)については公知であり、特定の対象及び免疫原(AFPであるにせよ発現ベクターであるにせよ)について容易に決定することができる。それ故に、免疫原は対象に1回又は複数回投与することができる。好ましくは、免疫原の投与の間に設定された時間的間隔がある。この間隔は各対象で異なるが、一般的に、10日〜数週間の範囲であり、しばしば2、4、6又は8週である。ヒトについては、間隔は一般的に2〜6週である。免疫化体系は、一般的に1〜6回の免疫原の投与を有するが、1回又は2回又は4回と少ない回数でもよい。免疫応答を誘導する方法は、免疫原と一緒にアジュバントを投与することを含むこともできる。場合によっては、年1回、年2回、又は他の長い間隔(5〜10年)の追加免疫で、最初の免疫化プロトコルを補うことができる。
【0150】
本方法は、様々なプライムブースト体系、特にDNAプライムMVAブースト体系を含む。これらの方法では、1回又は複数回の初回刺激免疫化の後に、1回又は複数回のブースティング免疫化が続く。実際の抗原は各免疫化について同じでも異なってもよく、免疫原の種類(例えばタンパク質又は発現ベクター)、経路及び免疫原の製剤は変えることができる。例えば、発現ベクターが初回刺激及びブースティング段階で使用される場合、それは同じか異なる種類でよい(例えばDNA又は細菌又はウイルスの発現ベクター)。役立つプライムブースト体系の1つは4週間隔で2回の初回刺激免疫化を提供し、続いて最後の初回刺激免疫化の4及び8週間後に2回のブースティング免疫化が提供される。初回刺激及びブースティング体系を提供するために本発明のDNA、細菌及びウイルスの発現ベクターを用いて包含される、いくつかの置換及び組み合わせがあることは、当業者にとって容易に明らかとなるはずである。
【0151】
本発明の具体的な実施形態は、本発明のAFP、本発明の核酸及び/又は本発明の発現ベクターを対象に1回又は複数回投与することによってヒトでHIVに対して免疫応答を誘導する方法を提供し、AFPは、対象でHIV特異CTL免疫応答を誘導するのに十分な量で投与されるか十分なレベルで発現される。そのような免疫化は、所望の免疫化体系に従って少なくとも2、4又は6週(又は、それ以上)の時間的間隔で複数回繰り返すことができる。
【0152】
この方法は、そのような他の抗原をコードするタンパク質又は発現ベクターなどと組み合わせて用いることができる。組成物は単独で投与することができ、又は、他のHIV免疫原及び/又はHIV免疫原性組成物と、例えば、「他」の免疫学的、抗原性又はワクチン又は治療的な組成物と同時投与若しくは逐次投与することによって、本発明の多価性又は「混合」又は組み合わせの組成物及びそれらを使用する方法を提供する。また、投与の成分及び方法(逐次的又は同時投与)、並びに投薬量は、特定の対象の年齢、性別、体重、種及び状態、投与経路などの要因を考慮に入れて決定することができる。
【0153】
併用するときは、他のHIV免疫原は全体の免疫化体系の一部として、例えば、プライムブースト体系又は他の免疫化プロトコルの一部として、同時に、又は異なる時間に投与することができる。他の多くのHIV免疫原は当技術分野で公知であり、そのような好ましい免疫原の1つはHIVA(国際公開01/47955で記載される)であり、それはプラスミドの上の(例えばpTHr.HIVA)、又はウイルスベクター中の(例えばMVA.HIVA)タンパク質として投与することができる。他のそのようなHIV免疫原はRENTA(国際出願US2004/037699で記載される)であり、それもプラスミド上の(例えばpTHr.RENTA)、又はウイルスベクター内の(例えばMVA.RENTA)タンパク質として投与することができる。
【0154】
例えば、ヒト対象でHIVに対して免疫応答を誘導する1方法は、HIV免疫原の少なくとも1つの初回抗原刺激量及びHIV免疫原の少なくとも1つのブースティング用量を投与することを含み、各用量の免疫原は同じでも異なってもよく、但し、免疫原の少なくとも1つは本発明のAFP、本発明のAFPをコードする核酸又は本発明のAFPをコードする発現ベクターであり、それらの免疫原は対象でHIV特異免疫応答を誘導するのに十分な量で投与されるか、又は十分なレベルで発現される。HIV特異免疫応答は、HIV特異CTL免疫応答を含むことができる。そのような免疫化は、間隔を置いて、好ましくは少なくとも2〜6週の間隔で行うことができる。
【0155】
この方法に従い、pTHr.HIVCONは初回抗原刺激用量として1回又は複数回投与されるか、又は、MVA.HIVCONはブースティング用量として1回又は複数回投与され、初回抗原刺激用量はpTHr.HIVCONであってもそうでなくてもよい。この方法で他のHIV免疫原を使う例として、初回抗原刺激量はpTHr.HIVCONでよく、ブースティング用量はMVA.HIVCON、MVA.RENTA、MVA.HIVA、又はMVA.HIVCON、MVA.RENTA及びMVA.HIVAの混合物、及びそれらの組み合わせでよい。初回刺激又はブースティング用量で混合物が使用される場合、投与のために成分は調合することができるか、別々に投与することができる。別々に投与される場合、成分は互いに2〜6週の間隔で投与される複数の別個の初回刺激又はブースティング用量として、逐次的に投与することもできる。この方法の免疫化体系の1例は、0週時及び4週時に2つの初回抗原刺激量を投与することであり、各用量はpTHr.HIVCON及びpTHr.RENTA又はpTHr.HIVAの混合物であり、続いて、8週時及び12週時に2つのブースティング用量が投与され、各用量はMVA.HIVCON、MVA.RENTA及びMVA.HIVAの混合物である。
【0156】
本発明の方法によって誘導される免疫応答は、当技術分野で公知の標準手法によって評価することができる。CTL応答については、そのような手法としては、それらには限定されないが、細胞内IFN染色アッセイ、四量体アッセイ、ELISPOTアッセイ(Beattie, T. et al (2004) AIDS 18(11): 1595-8)及び51Cr放出アッセイがある。CTL検出法の体系的比較は、Sun, Y. et al (2003) J. Immunol. Meth. 272(1-2): 23-34及びShacklett, B.L. (2002) J. Clin. Immunol. 130(2): 172-82で見られる。他の免疫応答は、Harlowで記載されているように調査することができる。
【0157】
本発明は、インビボ及び/又はインビトロ及び/又はエキソビボで(例えば、後者の2つは、例えばそこから単離後、本発明に従う投与を受けた細胞、宿主から、例えば、そのような細胞の任意選択での拡大の後)遺伝子産物及び/又は免疫学的生成物及び/又は抗体を生産するための方法を含む、ベクターを作製、使用するための組成物及び方法、並びにそのような遺伝子及び/又は免疫学的生成物及び/又は抗体の、特にHIVに対する中和抗体(Haigwood, N.L. and Stamatatos, L. (2003) 17 (Suppl 4: S67-71でレビューされる)の、例えば診断法(Truong, H.M. and Klausner, J.D. (2004) MLO Med Lab Obs. 36(7): 12-13, 16, 18-20でレビューされる)、アッセイ、療法、治療法、などでの使用を包含する。得られた中和抗体は、HIV、SIV又はSIV/HIVハイブリッドに対する免疫原性又は免疫学的な応答を強化又は調整するために、別々に、又は本発明のAFPと併用することができる。中和抗体は特定のクレード又はCRFに特異的に仕立てることができ、又はクレード遍在性であってもよい。本発明のAFPは、より詳細には、特定のHIVタンパク質配列に対するクレード交差性又はクレード遍在性の中和抗体を開発する際に、使用することができる。
【0158】
本発明は、研究場面でのAFP発現ベクターの使用も含む。ベクターは、例えば、関心の異種配列から発現した遺伝子産物に対する細胞応答を、又は、関心の異種配列によってコードされたタンパク質によって媒介されるシグナル伝達経路を研究するために、関心の細胞又は細胞系をトランスフェクト又は感染させるために使用することができる。そのようなシグナル伝達経路としては、HIVタンパク質の発現に応答して、サイトカイン発現、又は遺伝子、例えばそれらには限定されないが、細胞受容体又は細胞表面マーカータンパク質、即ちCD4、CCR5、CXCR5、MHCクラスI及びIIのアップレギュレーション又はダウンレギュレーションを挙げることができる。
【0159】
研究場面では、実験アッセイ及び手法によって容易に検出することができるリポーター遺伝子を含む組換え体ベクター又はウイルスを設計することがしばしば有利である。リポーター遺伝子は当技術分野で公知であり、それらには限定されないが、とりわけアンピシリン、テトラサイクリン、ネオマイシン、ゼオシン、カナマイシン、ブレオマイシン、ハイグロマイシン、クロラムフェニコールなどの抗生物質に対する耐性遺伝子を含むことができる。リポーター遺伝子は、緑色蛍光タンパク質、lacZ遺伝子(β―ガラクトシダーゼをコードする)、ルシフェラーゼ及びβ―グルクロニダーゼを含むこともできる。
【0160】
本発明は、更に、例えばインビトロでタンパク質を生産するための、又は、治療、予防、診断若しくは試験のための抗原性、免疫学的若しくはワクチンの組成物を生成するための、AFPの発現生成物及びその使用に関し、加えて、DNAプローブ、アンチセンスRNA分子、小さな干渉RNA分子(siRNA)、リボザイム及びPCRプライマーの構築で役立つ組換え体ベクターからのDNAに関する。本発明は、本明細書で記載されるAFP(上記参照)を使って合成ペプチドを生産することも包含する。本発明は、環境中に、即ち循環集団又は地域で、又は単一個体中で見られる新規の又は既存のHIVの単離株、クレード及びCRFを特定するためのAFPの使用を含むことができる(Ito, Y. et al (2003) J. Clin. Microbiol. 41(5): 2126-31)。また、本発明のAFPを使用して、例えば、HIVに感染した細胞又は対象において、今日利用できる抗HIV薬剤及び療法に対しての応答の特異性又は抵抗性のメカニズムを判定することができる。抗HIV薬剤の効力は、対象又は対象の個体群に存在するHIVのクレード又はCRFにしばしば依存する。このように、本発明のクレード交差性又はクレード遍在性のAFPを有利に利用して、全てのHIVクレード又はCRFに適用することができる新規の又は最適化された抗HIV薬剤又は療法を開発することができる。更に、今日利用できる抗HIV薬剤及び療法、例えば、なかでもAZT、プロテアーゼ阻害剤、融合阻害剤及びそれらの併用療法の効力は、とりわけ、AFPを発現する細胞又は対象に薬剤又は療法を投与することによって調整又は最適化することができる。
【0161】
本発明のAFPは、別々に、又は、HAART(高活性抗レトロウイルス療法)、中和抗体などの薬剤治療体系又は療法を含む既存の抗HIV療法と並行して使用することができるが、これらの例に限定されない。
【0162】
本発明のAFPは、ヒト以外の霊長類で治療的又は予防的な免疫原性又は免疫学的な応答を起こすために、SIV又はSIV/HIVハイブリッドからの配列を含むように変更又は修飾することもできる。本発明のAFPは、HIVのヒト以外の動物モデルに含まれるように修飾することができる。当業者は、保護的であることができるがその必要はない免疫応答を誘導するために、SIV配列及びCTLエピトープを含むように、本発明のAFPを容易に修飾することができる。
【0163】
例示的な実施形態により本明細書で開示される発明の原理の変更を当業者が加えることができることは理解及び予想することができ、そのような修飾、変更及び置換は本発明の範囲内に含まれるものとする。本明細書で引用した全ての特許及び刊行物は、本明細書で参照により組み込まれる。
【0164】
以下の実施例は本発明の様々な実施形態を例示する目的で提示され、いかなる様式でも本発明を限定するものではない。
[実施例]
【実施例1】
【0165】
HIVCONプラスミドの構築
HIVCON ORF(配列番号1、図2及び配列番号5、図6を参照)を、HIVタンパク質の高度保存ドメインに由来するキメラタンパク質をコードするように設計した。HIVCONキメラタンパク質はHIVの14個の最も保存されたタンパク質ドメインを含み、ドメインは4つの主要なHIVクレードA〜Dの間で6%未満の変動を有する。HIVCON ORFは、Mamu―A*01(SIV Gag p27)エピトープ、マウスP18―I10(H―2K)エピトープ及びmAbエピトープPkを含むこともできる、HIVCON遺伝子断片中に含まれる。HIVCON遺伝子断片(geneART社製、ドイツ)は、好ましいヒトアミノ酸コドン利用を用いて合成した(Andre, S. et al (1998) J. Virol. 72(2): 1497-1503)。HIVCON ORFは、12ヌクレオチドのコンセンサスコザック配列の後にくる(Kozak, (1987) Nucleic Acid Res. 15: 8125-8148)(配列番号5、図6を参照)。14個の保存されたHIVタンパク質ドメインをコードするヌクレオチド配列を、Mamu―A*01エピトープ、H―2K(Romero et al)によって提示されるP18―I10エピトープ、及びC末端の保存タンパク質断片と融合したmAbエピトープPkと互いに直接融合して、配列番号3のHIVCONコード配列を形成した(図4)。遺伝子合成の正確度を検査するために、全体の合成遺伝子断片の配列決定をした。合成エラーが検出された場合は、部位特異的突然変異誘発を使って不適切なヌクレオチドを正しいヌクレオチドで置換した。pTH発現ベクターを生成するために、HIVCON遺伝子断片をプラスミドpTH(Hanke 1998a)に挿入した。全ての組換えDNA操作は、標準手順を使って実施した(Sambrook et al., Molecular Cloning; A Laboratory Manual (2nd ed.), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY 1989)。
【0166】
本明細書で提示した実験では、pTH.HIVCONベクターを使用した。しかし、ヒト患者での使用のためには、pTHr.HIVCON発現ベクターを生成するために、pTHからのβラクタマーゼ遺伝子(アンピシリン耐性遺伝子)が除去される(例えば、BspHI部位でプラスミドを切り取って、HIVCONを含む線状断片を再連結することによって)ことが好ましい点に留意する必要がある。pTHr.HIVCONプラスミドは細菌の選択のために栄養要求性リプレッサ−滴定系を使い、いかなる抗生物質耐性遺伝子も有していない(Williams et al., (1998) Nucleic Acid Res. 26: 2120-2124、米国特許第5972708号)。pTHrベクターでは、HIVCON転写は、ヒトサイトメガロウイルス株AD 169に由来する効率的なエンハンサー/プロモーター/イントロンAカセット(Whittle et al., (1987) Protein Eng. 1: 499-505)及びウシのポリアデニル化部位(Goodwin et al., (1992) J. Biol. Chem. 267: 16330-16334)によって制御される。そのようなpTHr.HIVCONベクターは、特にヒトに用いられるベクターとして、即ちGMP臨床ワクチンに役立つ。
【0167】
HIVCONΔHは、HIVCON遺伝子の免疫優勢マウスP18―I10エピトープ(そのコード配列は配列番号3に存在し、そのアミノ酸配列は配列番号4のヌクレオチド位置789〜798のものである)がPCRによって削除されたHIVCON遺伝子のバージョンである。HIVCONと同様に、HIVCONΔHをpTHプラスミドに挿入してpTH.HIVCONΔH発現ベクターが得られた。
【実施例2】
【0168】
MVA.HIVCON及びMVA.HIVCONΔHの調製
HIVCON断片を、XmaIを使ってpTHr.HIVCONから切り取り、組換えMVA.HIVCONの調製で使用するベクターpSC11.HIVCONを生産するために、トランスファーベクターpSC11(Chakrabarti)のXmaI部位に連結する。プラスミドpSC11.HIVCONは、β―ガラクトシダーゼ遺伝子を有する。
【0169】
HIVCONΔH断片をXmaIを使ってpTHr.HIVCONΔHから切り取り、組換え体MVA.HIVCONΔHの調製で使用するベクターpSC11.HIVCONΔHを生産するために、トランスファーベクターpSC11(Chakrabarti)のXmaI部位に連結する。プラスミドpSC11.HIVCONΔHは、β―ガラクトシダーゼ遺伝子を有する。
【0170】
HIVCON又はHIVCONΔHをコードする断片を、組換え体MVA.HIVCON又はMVA.HIVCONΔH(Chakrabarti)のスクリーニング、滴定及び安定性試験を促進するためにβ―ガラクトシダーゼ遺伝子を同時送達するプラスミドpSC11を使って、p7.5初期/後期ワクシニアプロモーターの下のウイルスゲノムのチミジンキナーゼ遺伝子座に挿入する。このマーカー酵素はヒト腸内細菌によって通常発現され、MVA.HIVAのワクチン接種を受けた健康なHIV非感染ボランティアが含まれたいくつかの治験で、安全であることが示された。
【0171】
簡潔には、組換え体MVA.HIVCON又はMVA.HIVCONΔHビリオンは、感染多重度(MOI)1の親のMVAに感染させた、10%ウシ胎仔血清(FCS)、ペニシリン/ストレプトマイシン及びグルタミンを添加した(DMEM10)Dulbeco's Modified Eagle's Medium(DMEM)で増殖させたニワトリ胚線維芽細胞(CEF)細胞から作製し、Superfectin(Qiagen社製、ドイツ)を使ってエンドトキシンを含まない3μgのpSC11.HIVCONでトランスフェクションする。組換え体は、X―gal(5―ブロモ―4―クロロ―3―インドリル―bD―ガラクトシド)の存在下で、β―ガラクトシダーゼの青色呈色反応によって同定される。組換え体は5ラウンドのプラーク精製にかけ、その後マスターウイルス株を増殖させ、36%ショ糖クッションで精製、滴定して、使用するまで−80℃で保存する。HIVCON又はHIVCONΔHの正しいORFの存在は、MVA.HIVCON又はMVA.HIVCONΔH感染細胞中のタンパク質の配列決定及び免疫蛍光法検出によって確認される。
【実施例3】
【0172】
ヒト細胞内のHIVCON及びHIVCONΔHの発現
HIVCON及びHIVCONΔHの発現は、pTH.HIVCON又はpTH.HIVCONΔHで一過性にトランスフェクションさせたヒトの293T細胞又はHEK293細胞で評価した。HIVCON及びHIVCOΔdHの発現は、MOIが5のMVA.HIVCON又はMVA.HIVCONΔHに感染させたヒト293T細胞で評価した。
【0173】
免疫蛍光法研究については、ポリ―L―リジン(70,000〜150,000の分子質量;Sigma社製)で前処理した無菌のスライドを含む6穴プレートに、293T細胞を接種した(スライドにつき2×105細胞)。24時間後に、細胞単層はpTH.HIVCON又はpTH.HIVCONΔHでトランスフェクションした。MVA構築物からの発現をモニターするためには、細胞単層はMOIが5のMVA.HIVCON又はMVA.HIVCONΔHに感染させる。5%CO2及び37℃での24時間のインキュベーションの後、細胞を洗浄してそれらの膜を穿孔した。スライドはFCSの2%リン酸緩衝食塩水(PBS)溶液により4℃で1時間ブロックし、指定の一次mAbの1:200希釈溶液と一晩、4℃でインキュベートした。mAbは、Pkタグ(Serotec社製、オックスフォード、英国)に対するものであった。インキュベーションの後、スライドはPBSで一度洗浄して、Alexa Fluor(登録商標)594コンジュゲート抗マウス二次抗体の1:500希釈溶液(Molecular Probes社製、オレゴン、アメリカ合衆国)と一晩、4℃でインキュベートした。スライドは再びPBSで一度洗浄し、DAPI(4、6―ジアミジノ―2―フェニルインドール2HCl)核染色液(Vectashield(登録商標)封入剤、Vector Laboratories、米国、に溶解)で染色して、ツァイス社製の免疫蛍光顕微鏡で40×の倍率で撮影した。
【0174】
免疫蛍光の結果は、HIVCON及びHIVCONΔHの発現はPkエピトープに対するmAbを使ってヒト細胞で検出可能であることを示す。図7は、293T細胞内でのHIVCON及びHIVCONΔHの発現を示す。ヒト293T(A、B、C及びD)又はHEK 293(E)細胞における、pTH.HIVCONプラスミドDNA(A)、pTH.HIVCONΔHプラスミドDNA(B)、MVA.HIVCON(C)、MVA.HIVCONΔH(D)、及びAd.HIVCON(E)由来のHIVCONタンパク質の発現は、免疫蛍光法及びHIVCONのPkタグに対するmAbを使用して検出した。核は青(白黒では淡灰色に見える)で示され、Pkは緑(白黒ではブライト/白色に見える)(A、B、C及びD)又は赤(白黒ではブライト/白色に見える)(E)で示される。
【実施例4】
【0175】
MVA.HIVCON及びMVA.HIVCONΔHの遺伝的安定性
挿入されたHIVCON又はHIVCONΔHのORF及びβ―gal遺伝子の遺伝的安定性は、CEF細胞でのMVA.HIVCON及びMVA.HIVCONdHの7回のブラインド逐次継代培養によって確認される。元の(継代培養0)及び最終的な(継代培養7)ウイルス株を次に用いて2反復のウェルを感染させ、その1つのウェルはいかなるMVAプラーク(空のMVA及びMVA.HIVCON又はMVA.HIVCONdH)を検出するためにニュートラルレッドで染色し、他のウェルは、挿入されたβ―gal遺伝子(MVA.HIVCON又はMVA.HIVCONdH)を検出するために、5―ブロモ―4―クロロ―3―インドリル―β―D―ガラクトピラノシド(X―gal)でそれぞれ染色する。2つの力価の比較は、MVA.HIVCON及びMVA.HIVCONdHがこのアッセイの感度より上で安定していることを示唆する。継代培養0及び7からのウイルス株に感染させたCEF細胞の免疫蛍光分析は、HIVCON又はHIVCONdHの発現レベルが同等であることを示す。
【実施例5】
【0176】
組換えhuAd5-GFP.HIVCONベクターの構築
HIVCONワクチン遺伝子を、pAdEasy1アデノウイルスベクター系(Hermeking, H. (1997) Mol. Cell 1: 3-11、He, T.C. et al (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. 95(5): 2509-14)を使ってAd5に挿入する。この系は大腸菌BJ5183細菌細胞の効率的な相同組換え機構を使用して(Nakamura, N. et al (2000) Mol. Cell Biol. 20(23): 8969-8982)、同時形質転換されたアデノウイルス骨格プラスミドベクターpAdEasy1及び関心の遺伝子を有するシャトルベクターpAd-TrackCMVの間の二重組換え事象によって、組換えアデノウイルスゲノムを生成する。ウイルスの生産は、ウイルス骨格に組み込まれた遺伝子によってコードされる緑色蛍光タンパク質(GFP)の助けを借りて、便利に追跡される。この系は、このように空のアデノウイルスによる汚染のリスクなしで、均質なウイルスの作製を可能にする。
【0177】
GFP及びHIVCON遺伝子を有するいくつかのPmeI線状化組換えアデノウイルスDNAを用いて、6穴プレートの70〜80%の集密度のHEK293細胞にトランスフェクションする。トランスフェクションから8日後に、ウェルを削り取り、遠心分離して、2mlのハンクス均衡塩類溶液(HBSS、Sigma社製)で再懸濁する。次に細胞はドライアイス/メタノール浴槽中で凍結融解を4回繰返し、各ウイルス上清の50%を用いて、HEK293細胞の50〜70%集密度のT―25フラスコを再感染させる。再感染の2〜3日後に、ウイルスを同じように再び収集して、T―75フラスコ、その後、T―175フラスコを感染させるために用いる。精製前にこれを10日間にわたって数ラウンド繰り返す。
【0178】
AdGFP-HIVCONの精製は、メーカーの説明書に従ってAdenopure1精製キット(Puresyn社製、米国)を使用して実施する。手短に言えば、AdGFP-HIVCONに感染させた4つのT―175cm2フラスコを削り取り、ドライアイス/メタノール浴槽中で凍結融解を3回繰返し、細胞破片のペレット化後に得られた上清を独自の緩衝液製剤で吸収装置膜を通して高度精製アデノウイルス調製物を単離する。ウイルスの力価は、70〜80%集密度のHEK293細胞を接種した6穴プレート内の精製されたAdGFP-HIVCONの連続希釈、及び感染後24時間のGFP発現細胞の計数によって決定される。
【実施例6】
【0179】
マウスにおけるHIVCON免疫原性
pTH.HIVCONの免疫原性は、P18―I10エピトープを使ってマウスで評価した。5〜6週齢の雌のBALB/cマウスの2群に対し、全身麻酔の下でエンドトキシンを含まないpTH.HIVCONのPBS溶液の50gを、前脛骨筋に注入した。10日後に動物を屠殺して、それらの脾臓を取り出した。個々の脾臓は、2ml注射器ゴムプランジャーを使い、細胞ストレーナ(Falcon社製)を通して処理した。各動物由来の脾細胞を2回洗浄して、10mlのリンパ球培地(10%FCSペニシリン/ストレプトマイシン、20mMのHEPES及び15mMの2―メルカプトエタノールを加えたRPMI1640)で懸濁した。一括CTL培養のために8mlの脾細胞懸濁液を使用した。
【0180】
一括CTL培養物を調製するために、8mlの脾細胞懸濁液を加湿インキュベーター内で2pg/mlのP18―I10ペプチドと37℃、5%CO2で5日間インキュベートした。CTLアッセイの当日、細胞をRPMIで3回洗浄し、51Cr放出アッセイでエフェクター細胞として用いるためにR10(10%FCS及びペニシリン/ストレプトマイシンを加えたRPMI1640)で1mlにつき107細胞の密度で再懸濁した。
【0181】
各バッチの脾細胞について、標的細胞の添加後のエフェクター対標的の比率を200:1と3:1の間にするために、エフェクター細胞はR10培地を使って96穴プレート(Costar社製)のU底ウェル内で2倍に希釈した。2pg/mlのP18―I10ペプチドを含むか含まないR10培地中の五千の51Cr標識P815標的細胞をエフェクターに加えて、混合物を37℃で5時間インキュベートした。自然発生及び全体のクロミウム放出は、それぞれ培地単独、又は5%Triton X―100添加培地内に標的細胞を含むウェルから推定した。比溶解率は、((試料放出−自然発生放出)/(全体の放出−自然発生放出))×100として計算した。自然発生放出は、毎分の全体のカウント数の5%未満であった。
【0182】
図8において、左パネルはペプチドパルス化(充実円)又は非パルス化(開放円)標的細胞による51Cr放出アッセイにおいて対照としてpTHr.HIVAで免疫化したマウスの結果を示し、右パネルはpTHr.HIVCONで免疫化したマウスの結果を示す。全ての動物は免疫化に応答し、相対的に高いレベルの溶解活性が検出された。
【実施例7】
【0183】
HIVCON免疫原に対するマウスT細胞応答の実証
pTH.HIVCONをBALB/cマウスに投与したときの、HIVCON免疫原に対して誘導されたT細胞応答を検討した。HIVCONのP18―I10エピトープに対する特異免疫応答の誘導は、エキソビボ細胞内サイトカイン染色アッセイを使って証明された。このアッセイのために、HIVA又はHIVCONで処理したマウスから単離されたマウス脾細胞を、抗CD28/抗CD49d mAbの存在下で、適当なP18―I10ペプチドパルス化P815細胞で、5%CO2及び37℃で90分間刺激した。次にブレフェルジンAを加えてサイトカイン分泌を阻止し、試料は更なる6時間インキュベートした後に、EDTA及びFACS固定液で反応を終了した。細胞を透過性化し、フィコエリトリン(PE)コンジュゲート抗CD8及びフルオレセインイソチオシアネート(FITC)コンジュゲート抗IFN―γ mAb(BD PharMingen社製)とインキュベートして、FACSを用いて分析した。
【0184】
図9の結果は、HIVCON免疫原によって誘導されたCTL応答を実証する。IFN―γを生産するCD8+脾細胞の割合を、HIVA又はHIVCON免疫原で処理したマウスから単離されてP18―I10ペプチドで刺激したマウス脾細胞について示す。結果は、HIVCON免疫原によって誘導されたIFN―γ生産CD8+細胞の割合は、対照の免疫原HIVAで免疫化された動物と比較してpTH.HIVCONで免疫化された動物で約2倍高いことを更に実証する。グラフのConAカラムのCD8+細胞の割合は、CTL誘導のための陽性対照としての役目を果たす。
【実施例8】
【0185】
HIVCONに対する広いマウスT細胞応答の実証
pTH.HIVCON、pTHr.HIVCON、MVA.HIVCON若しくはhuAd5-GFP.HIVCONの形のHIVCONが、又は、pTH.HIVCONΔH、pTHr.HIVCONΔH若しくはMVA.HIVCONdΔHの形のHIVCONΔHがBALB/cマウスに投与されたときの、HIVCON又はHIVCONΔH免疫原に対して誘導されるT細胞応答の幅を検討する。HIVCONのP18―I10エピトープ又は特定のエピトープに対する特異免疫応答の誘導は、エキソビボ細胞内サイトカイン染色アッセイを使って証明される。このアッセイのために、HIVCON又はHIVCONdHで処理したマウスからマウス脾細胞を単離し、その後、抗CD28/抗CD49d mAbの存在下で、適当なP18―I10ペプチド又はペプチドプールパルス化P815細胞で、5%CO2及び37℃で90分間刺激する。次にブレフェルジンAを加えてサイトカイン分泌を阻止し、試料は更なる6時間インキュベートした後に、EDTA及びFACS固定液で反応を終了する。細胞を透過性化し、PEコンジュゲート抗CD8及びFITCコンジュゲート抗IFN―γ mAb(BD PharMingen社製)とインキュベートして、FACSを用いて分析する。
【0186】
結果は、複数のCTL特異性が免疫原によって誘導され、HIVCON又はHIVCONdHで免疫化したマウス由来のIFN―γを生産するCD8+脾細胞の割合は、ナイーヴな(非免疫化)マウス由来のIFN―γを生産するCD8+脾細胞の割合よりも有意に高いことを実証する。
【0187】
ペプチドプールは、HIVCON免疫原の全長にわたって11個のアミノ酸が重複する15量体ペプチドからなる。各プールは、HIVCON免疫原全長からの約50〜100個のアミノ酸をカバーするペプチドを含むことができる。
【実施例9】
【0188】
インビトロCFSE増殖アッセイ
pTH.HIVA又はpTH.HIVCONで免疫化したマウス由来の、P18―I10ペプチドで再刺激した脾細胞の増殖能をモニターするために、カルボキシフルオレセイン二酢酸スクシンイミジルエステル(CFSE)染色アッセイを用いた。BALB/cマウスは、100μgのDNAの筋肉内への単回投与で免疫化した。脾細胞を10日後に収集し、単離した脾細胞は最終濃度2μMのCFSE(Molecular Probes社製)により、37℃で10分間染色した。反応は、ウシ胎仔血清の添加によって中止した。細胞は3回洗浄し、リンパ球培地で再懸濁して、2μg/mlのP18―I10ペプチドで再刺激した。脾細胞培養物は37℃及び5%CO2で5日間インキュベートし、FACScan(BD社製)で分析し、データ分析はCellQuestソフトウェア(BD社製)を使用して実施した。図10で提示される結果は、pTH.HIVCONで免疫化されたマウス由来の脾細胞は、pTH.HIVA又はConA(陽性対照)で再刺激された脾細胞と同様に、及び、P18―I10(陰性対照パネル)で再刺激されなかった脾細胞と対照的に、培養内で複数世代にわたって増殖し続けることを実証する。
【実施例10】
【0189】
ヒトHLAを発現するトランスジェニックHHDマウスにおけるHIVCONの免疫原性
種間HLA―A2モノ鎖を発現するトランスジェニックHHDマウスは、以前に記載されている(Pascolo et al. (1997) J Exp Med 185:2043-2051)。これらのマウスは、潜在的なヒトワクチンのHLA―A2.1制限CTL応答の研究のための、応用自在のマウスモデルを構成する。HHDトランスジェニック動物は、二重ノックアウトバックグラウンドH―2Db−/−β2m−/−で、種間組換えトランスジェニック分子、N末端ヒトβ2m―HLA―A2.1(α1α2)―マウスH―2Db(α3)、膜貫通、及び細胞質ドメインC末端を発現する。HIVCON AFPに特異的な新規HLA―A2制限CTLエピトープを特定するために、2つの手法がとられる。第1に、HLA―A2タンパク質とよく結合することのできる潜在的ペプチドを特定するために、予測アルゴリズムが用いられる(Tourdot et al. (2000) Eur J Immunol 30:3411-3421)。第2に、11個のアミノ酸が重複し、HIVCON AFPの全長にわたる15量体ペプチドのライブラリーを設計する。15量体ペプチドのライブラリーは、配列重複に基づいて、実施される機能性アッセイの数を低減するいくつかのペプチドプールに分配される。予測に基づくペプチド及び15量体ライブラリーペプチドの両方を合成して、標準のタンパク質合成手法によって精製する。これらのペプチドは、細胞表面MHC分子の安定化によってペプチド結合を測定するアッセイで、HHD単鎖と結合するそれらの能力を試験する(Carmon et al. (2002) J Clin Invest 110:453-462)。所望のCTL応答を誘導するペプチドプールの同定後、ペプチドプールの分画によりCTL応答を誘導する個々のペプチドが特定される。
【0190】
HHDマウスは、全身麻酔の下でpTH.HIVCONのPBS溶液により筋肉注射で免疫化する。一括CTL培養のための脾細胞は、基本的に実施例5で記載されているように調製する。広いCTL応答を誘導する予測ベースのペプチド及びライブラリーペプチドの能力は、エキソビボ細胞内サイトカイン染色アッセイ(基本的に実施例6で記載されるもの)及びCTL誘導性の標的細胞の細胞溶解を測定するインビトロ細胞傷害性アッセイ(基本的に実施例5で記載されるもの)を含む、様々な方法で評価される。
【0191】
最初に、BALB/cにおけるpTH.HIVCON及びMVA.HIVCONワクチンの免疫原性を、C末端のH―2Dd制限エピトープRGPGRAFVTI(Hと呼ばれる)を使って確認する。HIVCONタンパク質全域にわたって重複するペプチドを使って、様々なマウス系統で免疫原性エピトープの出現頻度を推定する。上記エピトープはH―2dハプロタイプでは免疫優勢が強いので、Hエピトープが削除されたHIVCONdHワクチンを使用してBALB/cマウスでの実験を実施する(実施例1)。HLA―A2(HHD)及びHLA―B27トランスジェニックマウス由来の免疫脾細胞も、重複するHIVCONペプチドでパルス化した適当なHLA分子と一致させた標的細胞で試験する。代わりに、HLAトランスジェニックマウス由来のHIVCON誘導T細胞を、HLAと一致させ、植物性凝集素(PHA)でブラストしたHIV―1感染ヒトCD4+細胞で試験する。第2に、ヒト以外の霊長類におけるDNA―MVA/HIVCONの免疫原性を検討する。第3に、重要な実験は、HIVに感染した個体がHIVCON由来のペプチドを認識することができる応答を示すかどうか評価することである。このことは、新鮮な又は培養拡張のIFN―γELISPOT、細胞内サイトカイン染色又は、自家B―LCLが利用できる場合はキリング(殺滅)アッセイで実施される。HIVに感染した個体の陽性応答は、HIV感染細胞が実際に保存HIV領域由来のエピトープを処理して提示することを実証するであろう。
【実施例11】
【0192】
ヒト以外の霊長類における免疫原性
MHCクラスIのMamu―A*01対立遺伝子に陽性のアカゲザル(Macaca mulatta)を、DNAプライム―MVAブースト体系で免疫化する。3頭のマカク(サル1〜3)は0週時及び4週時にプラスミドpTHr.HIVCONによる免疫化を受け、続いて20週時及び24週時に組換えMVA.HIVCONによる免疫化を受ける。2頭のマカク(サル4及び5)は同じ初回刺激免疫化を受けるが、8週時及び12週時に組換えMVA.HIVCONでブーストされる。免疫化は、筋肉内送達される0.5mlの140mM NaCl、0.5mMトリス塩酸、pH7.7、及び0.05mM EDTA中の各1mgのプラスミド、又は皮内送達(i.d.)される0.1mlの140mM NaCl及び10mMトリス塩酸、pH7.7、中の各5×107pfuのMVAからなる。HIVCONワクチンは、動物の腕に送達される。全ての免疫化及び静脈穿刺はケタミンによる鎮静下で実施され、動物は定期的に臨床検査を受ける。
【0193】
サルのPBMCは、Lymphoprep(商標)クッション遠心(Nycomed Pharma AS社製)を使ってヘパリン添加血から単離される。PBMCは、ペプチド特異拡張のために、SIV Gag(CTPDYNQM)タンパク質に由来するペプチドと2週間培養する。Mamu―A*01/Gagのための四量体MHC/ペプチド複合体は、ほかで記載されているように調製する。免疫原性は、day3にhuIL―2を添加して、37℃及び5%CO2で2週間Gagペプチドで再刺激したPBMCを用いて評価した。アッセイ当日に、細胞をフィコエリトリン(PE)コンジュゲートMamu―A*01/ペプチド四量体複合体及びマウス抗huCD8―PerCP mAb(BD PharMingen社製)と反応させて、FACSによって分析する。
【0194】
HIVA及びRENTA免疫原に由来するMamu―A*01制限及び重複ペプチドを使って、IFN―γELISPOTアッセイでHIVCONワクチンに対する多重特異的応答をエキソビボで検出する。IFN―γELISPOTアッセイは、Mamu―A*01制限エピトープペプチド及びHIVCONタンパク質全域にわたって重複するペプチドプールのために新たに単離されたPBMC(22週時に引き抜かれる)を使って、DNA初回抗原刺激―MVAブースト動物で実施される。MABTECHキット(Mabtech社製)の手順及び試薬を使用する。簡潔には、PBMCをLymphoprepクッションで単離して、示されたペプチド又はペプチドプールと37℃及び5%CO2で24時間インキュベートする。放出されたIFN―γはアッセイウェルの底で固定化されたmAbによって捕獲され、酵素に結合した第2のmAb及び発色基質の組み合わせによって可視化される。スポットはELISPOTリーダー(Autoimmun Diagnostika社製、ドイツ)を使って数え、106個の脾細胞あたりのスポット形成単位として表す。
【0195】
サルの一括CTL培養のために、8×106個の単離PBMCを37℃及び5%CO2で1時間、100μlのR20中の10μmのペプチド(又は、ペプチドプール)で再刺激し、2つの24穴プレートウェル内の25ng/mlのhuIL―7を添加した合計4mlのR20で再懸濁する。day3に、Lymphocult-T(Biotest社製)を、10%(v/v)の最終濃度で加える。day8に、5×106個のペプチドパルス化照射自家Bリンパ芽細胞系(B―LCL)を培養物に加え、続いてday11にLymphocult-Tを加える。細胞溶解性試験をday14に実施した。
【0196】
51Cr放出アッセイについては、エフェクター細胞をU底ウェル96穴プレート(Costar社製)内で順番に2倍希釈して、エフェクター対標的の比率を50:1、25:1及び12:1にする。ペプチド(Gag)又はペプチドプール(HIVCONのために)でパルス化した(2μg/ml)かパルス化していない五千個の51Cr標識自家B―LCLをエフェクターに加えて、37℃で6時間インキュベートする。比溶解率をマウス溶解アッセイに関して計算する。自然発生放出は、全体のカウントの20%未満の全ての試料のためのものである。
【実施例12】
【0197】
BALB/cマウスにおけるHIVCONワクチンの免疫原性。
個々のワクチン成分の免疫原性を示す図11(A)を参照。個々の動物由来の脾細胞は、RGPGRAFVTIエピトープを使うELISPOTアッセイで、IFN―γの生産についてエキソビボで試験した。実験は、高い用量のMVA.HIVCON及びAd.HIVCONワクチンを用いた以外は、上記(図11(B)のデータ)のように実施された図11(B)を参照。図11(C)は、上と同様にIFN―γELISPOTアッセイを用いて、様々なプライム―ブーストワクチン接種療法と比較した個々のワクチン成分の免疫原性を実証する。図11(D)は、DNAプライム―MVAブーストワクチン接種療法と比較した、個々のワクチン成分の免疫原性を実証する。個々の動物由来の脾細胞をRGPGRAFVTIペプチドとの培養で5日間再刺激し、ペプチドパルス化(充実)又は非パルス化(開放)標的について51Cr放出アッセイで試験した。
【実施例13】
【0198】
BALB/cマウスにおけるHIVCON及びHIVCONΔHワクチンの免疫原性。
個々の動物由来の脾細胞は、HIVCON配列全体にわたる重複ペプチドのプールを使うELISPOTアッセイで、IFN―γの生産についてエキソビボで試験した。動物は、0週時に100μgのpTH.HIVCONで、2週時に108PFUのAd.HIVCONで、8週時に107PFUのMVA.HIVCONで免疫化した。動物は、10週時に屠殺した。結果を図12(A)に示す。0週時に100μgのpTH.HIVCONΔHで、2週時に107PFUのMVA.HIVCONμHで免疫化した動物を用いた以外は、類似の実験を実施した。動物は、4週時に屠殺した。結果を図12(B)に示す。プール1、3及び4中の反応性ペプチド類が特定された。
【実施例14】
【0199】
HLA―A2トランスジェニックマウスHHDにおけるHIVCONワクチンの免疫原性。
個々の動物由来の脾細胞は、HIVCON配列全体にわたる重複ペプチドのプールを使うELISPOTアッセイで、IFN―γの生産についてエキソビボで試験した。動物は、0週時に100μgのpTH.HIVCONで、2週時に108PFUのAd.HIVCONで、8週時に107PFUのMVA.HIVCONで免疫化した。動物は、10週時に屠殺した。結果を図13に示す。プール3及び4中の反応性ペプチド類が特定された。
【0200】
このように本発明の好ましい実施形態を詳細に記載したが、その精神又は範囲から逸脱することなくその多くの明らかな変更が可能であるので、添付の請求項によって規定される本発明は、上の記載で示した特定の詳細によって限定されるものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0201】
【図1】HIVCON免疫原の概略図である。HIVCON免疫原は、HIVタンパク質の高度に保存されたドメインに由来するキメラタンパク質である。各配列ドメインの起源遺伝子はボックス内に示し、(コンセンサス配列の)起源クレードは下で示す。Ga=Gag、Po=Pol、Vi=Vif、En=Env。図で示すHIVCONのバージョンは、最後のEnvドメインに続いて1つのサルCTLエピトープ(Mamu)、1つのマウスCTLエピトープ(P18―I10、以下で説明し、図ではH―2で示す)及びモノクローナル抗体(mAb)エピトープ(Pk)を有する。本明細書で記載されているHIVCON免疫原の他のバージョンは、これらの最後の3つの更なるドメインを有することができず、代わりに最後のEnvドメインで終わる。
【図2】配列番号1のヌクレオチド配列であり、最後のEnvドメインに続いて3つの更なるエピトープ(サルCTLエピトープ(Mamu)、マウスCTLエピトープ(P18―I10/H2)及びmAbエピトープPk)を含まないHIVCON免疫原をコードする2334個のヌクレオチドの配列を示す図。配列番号1は第1のATG(第1のメチオニンをコードする)で始まり、最後のEnvドメインの最後のアミノ酸をコードするヌクレオチドの後の終止コドン(TAG)で終わる。
【図3】配列番号2のアミノ酸配列であり、配列番号1によってコードされる777個のアミノ酸の免疫原を示す図。このHIVCON免疫原は、最後のEnvドメインに続いて3つの更なるエピトープ(サルCTLエピトープ(Mamu)、マウスCTLエピトープ(P18―I10/H2)及びmAbエピトープPk)を含まない。
【図4】配列番号3のヌクレオチド配列であり、最後のEnvドメインに続いてサルCTLエピトープ(Mamu)、マウスCTLエピトープ(P18―I10/H2)及びmAbエピトープ(Pk)を含むHIVCON免疫原をコードする2421bpのヌクレオチド配列を示す図。最初の2331個のヌクレオチドは、配列番号1の2331個のコードヌクレオチドと同じである(即ち、最後の終止コドンを除いた配列番号1の配列)。最後の90ヌクレオチドは、サルCTLエピトープ(Mamu)、マウスCTLエピトープ(P18―I10/H2)及びmAbエピトープ(Pk)をコードするヌクレオチドである。
【図5】配列番号4のアミノ酸配列であり、最後のEnvドメインに続いてサルCTLエピトープ(Mamu)、マウスCTLエピトープ(P18―I10/H2)及びmAbエピトープ(Pk)を含むHIVCON免疫原をコードする806個のアミノ酸の免疫原を示す図。最初の777アミノ酸は、配列番号2と同じである。最後の29個のアミノ酸は、サルCTLエピトープ(Mamu)、マウスCTLエピトープ(P18―I10/H2)及びmAbエピトープ(Pk)をコードするアミノ酸である。
【図6】配列番号5のヌクレオチド配列であり、HIVCON免疫原をコードする2382個のヌクレオチドの配列を示す図。最初の18ヌクレオチドは、2つの制限部位(SmaI/XmaI部位及びXbaI部位)を含む。これらの部位は、本明細書で記載されるpTH又はpTHrベクターなどのベクターに対して、HIVCONコード配列を挿入/除去するために使用することができる。次の12個のヌクレオチドは、コザックコンセンサスリーダー配列CACCATG(下線付き)を含む。ヌクレオチド30〜2364は図2(配列番号1)のHIVCONコード配列であり、図3(配列番号4)のHIVCON免疫原をコードし、即ち、更なる3つのエピトープは加えられない。ヌクレオチド30〜2364は、太字体で示す。最後の18個のヌクレオチドは、本明細書で記載されるpTH又はpTHrベクターなどの様々なベクターに対して、HIVCONコード配列を挿入/除去するために用いることができる、2つの制限部位(SmaI/XmaI部位及びXbaI部位)を含む。
【図7】293T細胞内でのHIVCON及びHIVCONΔHの発現を示す図である。ヒト293T(A、B、C及びD)又はHEK 293(E)細胞における、pTH.HIVCONプラスミドDNA(A)、pTH.HIVCONΔHプラスミドDNA(B)、MVA.HIVCON(C)、MVA.HIVCONΔH(D)、及びAd.HIVCON(E)由来のHIVCONタンパク質の発現は、免疫蛍光法及びHIVCONのPkタブに対するmAbを使用して検出した。核は青(白黒では淡灰色に見える)で示され、Pkは緑(白黒ではブライト/白色に見える)(A、B、C及びD)又は赤(白黒ではブライト/白色に見える)(E)で示される。
【図8】HIVCONのP18―I10エピトープに対するT細胞応答の惹起によって評価された、pTHr.HIVCONの免疫原性を示すキリングアッセイを示す図である。BALB/cマウスは、100μgのDNAの筋肉内への単回投与で免疫接種した。脾細胞を10日後に収集し、P18―I10ペプチドとの培養で5日間再刺激し、51Cr放出アッセイで試験した。図は、P18―I10ペプチドパルス化(充実円)又は非パルス化(開放円)標的細胞を使ってpTHr.HIVA(左パネル)又はpTHr.HIVCON(右パネル)で免疫接種したマウスについての、51Cr放出アッセイにおけるエフェクター標的細胞比の関数としての比溶解パーセンテージをグラフィカルに例示する。
【図9】HIVA又はHIVCON免疫原で処理され、P18―I10ペプチドで刺激された(充実バー)か刺激されなかった(開放バー)マウスから単離されたマウス脾細胞における、IFN―γを生産するCD8+脾細胞のパーセンテージのFACS分析の棒グラフ。
【図10】インビトロ増殖アッセイの結果を示す図。BALB/cマウスは、100μgのDNAの筋肉内への単回投与で免疫接種した。脾細胞を10日後に収集し、CFSEで染色し、P18―I10ペプチドとの培養で5日間再刺激して、FACSカリバー(Calibur)で分析した。FACSデータ収集は、リンパ球及びCD8+集団でゲートされた。代表的なマウスからのデータを示す。
【図11】BALB/cマウスにおけるHIVCONワクチンの免疫原性を示す図。(A)個々のワクチン成分の免疫原性。個々の動物由来の脾細胞は、RGPGRAFVTIエピトープを使うELISPOTアッセイで、IFN―γの生産についてエキソビボで試験した。(B)Aと同様であるが、MVA.HIVCON及びAd.HIVCONワクチンに関しては高い用量。(C)上と同様にIFN―γELISPOTアッセイを用いて、様々なプライム―ブーストワクチン接種療法と比較した個々のワクチン成分の免疫原性。(D)DNAプライム―MVAブーストワクチン接種療法と比較した、個々のワクチン成分の免疫原性。個々の動物由来の脾細胞をRGPGRAFVTIペプチドとの培養で5日間再刺激し、ペプチドパルス化(充実)又は非パルス化(開放)標的について51Cr放出アッセイで試験した。
【図12】BALB/cマウスにおけるHIVCON及びHIVCONΔHワクチンの免疫原性を示す図。(A)個々の動物由来の脾細胞は、HIVCON配列全体にわたる重複ペプチドのプールを使うELISPOTアッセイで、IFN―γの生産についてエキソビボで試験した。動物は、0週時に100μgのpTH.HIVCONで、2週時に108PFUのAd.HIVCONで、8週時に107PFUのMVA.HIVCONで免疫接種した。動物は、10週時に屠殺した。(B)(A)と同様であるが、0週時に100μgのpTH.HIVCONΔHで、2週時に107PFUのMVA.HIVCONμHで免疫接種した動物を用いた。動物は、4週時に屠殺した。プール1、3及び4中の反応性ペプチド類が特定された。
【図13】HLA―A2トランスジェニックマウスHHDにおけるHIVCONワクチンの免疫原性を示す図。個々のHHD動物由来の脾細胞は、HIVCON配列全体にわたる重複ペプチドのプールを使うELISPOTアッセイで、IFN―γの生産についてエキソビボで試験した。動物は、0週時に100μgのpTH.HIVCONで、2週時に108PFUのAd.HIVCONで、8週時に107PFUのMVA.HIVCONで免疫接種した。動物は、10週時に屠殺した。プール3及び4中の反応性ペプチド類が特定された。
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2005年2月24日に出願の米国特許仮出願第60/655764号の権益を主張する。
【0002】
前述の出願、及びそこで引用されている全ての文書(「出願引用文書」)及びその出願引用文書中で引用又は参照されている全ての文書、及び本明細書で引用又は参照されている全ての文書(「本明細書引用文書」、及び本明細書引用文書中で引用又は参照されている全ての文書は、本明細書で指摘されているいかなる製品のための、又は本明細書で参照により組み込まれたいかなる文書中のいかなる製造元の指示書、説明書、製品規格及び製品シートとともに、本明細書で参照により組み込まれ、本発明の実施に際して使用することができる。
【0003】
この研究は、一部、英国のMedical Research Councilからの補助金によって助成された。
【0004】
本発明は、対象で抗HIV免疫応答を導き出すように設計された人工融合タンパク質(AFP)、並びにそれらのタンパク質をコードする核酸分子及び発現ベクターに関する。AFP並びにこれらのタンパク質をコードする核酸及び発現ベクターは、抗HIV免疫応答を起こすために、対象に単独で、又は組み合わせで投与することができる。本発明のAFPは、様々なHIVタンパク質、例えばGag、Pol、Env及びVifタンパク質からのドメインを含むことができる。ドメインを形成するHIVタンパク質は、部分タンパク質配列であり、それらのタンパク質の正常活性の1つ又は複数に関して生物学的に不活性化されている。HIVCONは、HIVドメインが複数のHIVクレードコンセンサス配列由来であるAFPである。HIVCONは、例えばタンパク質発現レベル又は実験動物免疫応答をモニター(monitor)する際に役立つ、更なるドメインを含むこともできる。そのようなドメインは、任意選択でAFPに含まれる。本発明の他の態様は、好ましくはDNAプライム―MVAブースト手法を用いて、好ましくは細胞性免疫応答を誘導するために、対象で抗HIV免疫応答を誘導するための組成物及び方法を含む。
【背景技術】
【0005】
エイズ又は後天性免疫不全症候群はヒト免疫不全ウイルス(HIV)に起因し、消耗症候群、中枢神経系変性及び、日和見感染症及び悪性腫瘍をもたらす重大な免疫抑制を含む、いくつかの臨床像を特徴とする。HIVは、ヒツジ及びウシ、ネコのビスナウイルス並びにサルの免疫不全ウイルス(SIV)を含む、動物レトロウイルスのレンチウイルスファミリーのメンバーである。HIV―1及びHIV―2と命名された2種類の密接に関連したHIVが今までに同定され、その内、HIV―1はエイズの断然と最も一般的な原因である。しかし、ゲノム構造及び抗原性が異なるHIV―2は、類似した臨床症候群を引き起こす。
【0006】
感染性のHIV粒子は、ウイルスタンパク質のコア内に詰められた、それぞれ長さが約9.2kbの2つの同一のRNA鎖からなる。このコア構造は、宿主細胞膜に由来するリン脂質二重層エンベロープによって囲まれ、それは、ウイルスによってコードされた膜タンパク質も含む(Abbas et al., Cellular and Molecular Immunology, 4th edition, W.B. Saunders Company, 2000, p. 454)。HIVゲノムは、レトロウイルスファミリーの特有の5’―LTR―Gag―Pol―Env―LTR―3’構成を有する。ウイルスゲノムの各末端の末端反復配列(LTR)は、宿主からの転写調節タンパク質のための結合部位の役目を果たし、宿主ゲノムへのウイルスの組込み、ウイルスの遺伝子発現及びウイルス複製を調節する。
【0007】
HIVゲノムは、いくつかの構造調節タンパク質をコードする。Gag遺伝子は、ヌクレオカプシドコア及びマトリックスのコア構造タンパク質をコードする。Pol遺伝子は、ウイルス複製に必要な逆転写酵素、インテグラーゼ及びウイルスのプロテアーゼ酵素をコードする。tat遺伝子は、ウイルス転写産物の伸長のために必要なタンパク質をコードする。rev遺伝子は、スプライシングが不完全かスプライシングされていないウイルスRNAの核外移行を促進するタンパク質をコードする。Vif遺伝子産物は、ウイルス粒子の感染性を強化する。vpr遺伝子産物は、ウイルスDNAの核内移行を促進して、G2細胞周期停止を調節する。vpu及びnef遺伝子は、宿主細胞CD4発現をダウンレギュレートして感染細胞由来のウイルスの放出を増強するタンパク質をコードする。Env遺伝子は、160キロダルトン(kDa)前駆体(gp160)として翻訳され、細胞プロテアーゼによって切断されて細胞感染のために必要である外部120kDaエンベロープ糖タンパク質(gp120)及び膜貫通41kDaエンベロープ糖タンパク質(gp41)を生じる、ウイルスエンベロープ糖タンパク質をコードする(Abbas, pp. 454-456)。
【0008】
HIV感染は、ウイルス粒子上のgp120が、標的細胞、例えばCD4+T細胞、マクロファージ及び樹状細胞の細胞膜上のCD4及びケモカイン受容体分子(例えばCXCR4、CCR5)と結合することから開始する。結合したウイルスは標的細胞と融合し、RNAゲノムを逆転写する。結果として生じるウイルスDNAは細胞ゲノムに組み込まれ、新しいウイルスRNAの生産、したがってウイルスタンパク質及び新しいビリオンの生産を指示する。これらのビリオンは感染細胞膜から出芽して、他の細胞で増殖性感染を確立する。この過程は、当初に感染した細胞も殺傷する。非感染性T細胞上のCD4受容体は感染細胞の表面で発現されるgp120と強い親和性を有するので、HIVは間接的に細胞を殺すこともできる。この場合、非感染細胞はCD4受容体―gp120相互作用を通して感染細胞に結合し、融合して、生存することができないシンシチウムを形成する。免疫防御に重要であるCD4+Tリンパ球の破壊は、エイズ疾患進行の証明である進行性免疫機能障害の主な原因である。CD4+T細胞の消失はほとんどの侵入者と闘う体の能力を深刻に害するが、そのことは、ウイルス、真菌類、寄生虫、及びマイコバクテリウムを含むある種の細菌に対する防御に特に重大な影響を及ぼす。
【0009】
HIV―1の異なる分離株が、3グループM(主)、O(外れ値)及びN(非M、非O)に分類された。HIV―1 Mグループは、HIVの世界的流行を支配する(Gaschen et al., (2002) Science 296: 2354-2360)。HIV―1 Mグループは、約70年前にヒトでその拡大を開始してから(Korber et al., Retroviral Immunology, Pantaleo et al., eds., Humana Press, Totowa, NJ, 2001, pp. 1-31)、急速に多様化した(Jung et al., (2002) Nature 418: 144)。HIV―1 Mグループは、いくつかの異なるクレード(サブタイプとしても知られる)、並びに循環組換え態(CRF)として知られる、2つ以上のクレードの組み合わせから生じる変異体からなる。サブタイプは、少なくとも25%独自のゲノムを有するものと定義される(AIDS epidemic update, December 2002)。11のクレードが同定され、各サブタイプは1文字で指定される。個体が2つの異なるHIVサブタイプに感染したときに見られるように、クレードが互いに結合して環境中での確立に成功すると、結果として生じるウイルスはCRFとして知られる。これまでに、約13のCRFが同定された。HIV―1クレードは、地理的好みも示す。例えば、2番目に最も一般的なクレードであるクレードAは西アフリカで一般的であり、クレードBはヨーロッパ、米国及びオーストラリアで一般的である。最も一般的なサブタイプであるクレードCは、南アフリカ、インド及びエチオピアで広範囲に分布している(AIDS epidemic update, December 2002)。
【0010】
HIVのこの遺伝的変異性は、ワクチン開発上の科学的難問となっている。HIV―1は、高度に変異するウイルスであり、サブタイプ内の変異が20%と高く、サブタイプ間の差がアミノ酸配列の35%に達する(Thomson, M.M. et al (2002) Lancet Infect Dis. 2: 461-471)。一部の報告書はクレード交差免疫応答が検出されることを証明している(Cao, H. et al. (1997) J. Virol. 71: 8615-8623、Ferrari, G. et al. (1997) Blood 90: 2406-2416、Walker, B.D. et al. (2001) Nat. Immunol. 2: 473-475)が、他の研究はそれと一致していない(Burrows, S.R. et al. (1992) Eur. J. Immunol. 22: 191-195、McMichael, A.J. et al (2002) Nat. Rev. Immunol. 2: 283-291)。したがって、非常に広いクレード交差反応性の明白な証拠が入手できるようになり、ワクチンが多くのエピトープに対して強いT細胞応答を誘導することが示されない限り、標的集団内でワクチンの免疫原をクレード及び/又はCRFと一致させることは慎重になる。
【0011】
生の弱毒化ウイルス、殺滅ウイルス又はウイルスサブユニットによる免疫化などのワクチン開発の伝統的な手法は、HIVに適当であると証明されていない。例えば、マカク―SIVモデルにおいて、生の弱毒ワクチンは持続感染を引き起こし、一部のマカクはエイズを起こす。更に、ウイルスの臨床分離株に有効な中和抗体を生成することは、困難であった。従来の及び新しい手法と液性及び/又は細胞性の免疫を導き出すように設計された新規免疫原との組み合わせが必要なことが判明する可能性があり、それらは活発に探索されている。
【0012】
中和抗体で問題点に遭遇したので、HIVワクチン開発の他の手法は、細胞性免疫応答を誘導することである。そのような応答は、主に、細胞傷害性T細胞(CTL)によって媒介される。CD8+T細胞としても知られるCTLは、少なくとも2つの異なる方法で生物の防御に関与する。ウイルス感染細胞を殺滅すること、及び、直接的又は間接的にウイルス複製の抑制に寄与する様々なサイトカイン及びケモカインを分泌することである。強いCD8+T細胞応答の誘導及び維持は、CD4+Tリンパ球(ヘルパーT細胞)によって提供される「援助」を必要とする。
【0013】
CTLは、表面及び内部の両方の構造的及び非構造的HIVタンパク質から生じるペプチドを認識する。抗体と異なり、それらは無細胞HIVが宿主細胞に感染することを予防することはできない。したがって、ワクチンによって誘導される予防的CTLは、迅速に作用しなければならない。そのためには、それらは十分な数でなければならない場合があり、そのことは、持続的なワクチン刺激又は規則的な再ワクチン接種を必要とする場合があり、又は必要としない場合がある。好ましくは、ワクチンによって誘導されたCTLは、伝達するウイルス/クレードの初期の及び/又は大量のHIVタンパク質を認識し、HIVが逃れるのを困難にするために機能的に保存されたタンパク質領域内の複数のCTLエピトープを標的とし、標的細胞を効率的に殺滅しなければならない。
【0014】
CTLを誘導するために、初回抗原刺激免疫化として免疫原をコードするプラスミドDNAを使用し、続いて同じ免疫原をコードする組換えウイルスによるブースティング免疫化を行うプライムブースト(prime-boost)免疫化手法は、マウスでCD8+T細胞応答を刺激する効力を証明した(Hanke et al., (1998a) Vaccine 16:439-445、Schneider et al., (1998) Nat. Med.4: 397-402、Kent et al., (1998) J. Virol. 72:10180-10188)。この手法は確認されて、ヒト以外の霊長類(Hanke et al, (1999) J. Virol 73:7524-7532、Allen et al., (2000a) J. Immunol. 164: 4968-4978、Amara et al., (2001) Science 292:69-74、Allen et al., (2002) J. Virol. 76:10507-10511、Shiver et al., (2002) Nature 415:331-335)及びヒト(McConkey et al., (2003) Nat. Med. 9: 729-35)のために拡張された。国際公開98/56919は、マラリア及び他の抗原、例えばウイルス及び腫瘍の抗原に対してCTL媒介性の免疫応答を起こすためのプライムブースト免疫化手法を開示する。この免疫化手法は異なるベクターで同じCTLエピトープを送達する初回抗原刺激及びブースティング組成物を使い、ブースティング組成物のためのベクターは、複製に欠陥があるポックスウイルスベクターである。
【0015】
ワクチン開発の他の態様は、複数のHIVエピトープに特異的なCTL応答を誘導することができる製剤を見出すことである。そのようなワクチンはHIVが逃れることを比較的困難にすることができ、HIV複製を抑制するより高い可能性を提供するであろう。理論的に、別々のワクチンベクターによって個々に送達されるいくつかのより小さな免疫原は、単一のベクターから発現される1つの大きな複遺伝子性タンパク質よりも有利であり、その理由は、前者の免疫原は別々の抗原提示細胞に達することができ、それぞれは少なくとも1つの免疫優勢応答を誘導するからである(Singh, R.A. et al., (2002) J. Immunol. 168:379-391)。複遺伝子性タンパク質では、交差初回抗原刺激が免疫刺激で役割を果たさない限り、各成分は1つの細胞によって生産されるので提示を巡って他の成分と競合する。それ故に、導き出された免疫応答の幅及びワクチン開発及び生産の実際性の間で均衡が必要であり、前者はワクチン成分の数を増加させ、後者は減少させる。
【0016】
ワクチン開発の他の態様は、HIV変動性に対処することである。最初に、ワクチンはそれらの製剤で各クレード由来の1つのタンパク質を使って、HIVクレードを交替させることができた。第2に、免疫系は多くの異なるエピトープに応答する能力を有するので、2つ又は3つの最も一般的なHIVクレードに由来する全ての免疫原の混合を用いることができた。しかし、他のワクチンの手法に関しては、エピトープの「免疫優勢」は、T細胞応答の幅を狭くすること、及びウイルス感染に応じた予防免疫を防ぐことができた(Yewdell, J.W. et al. (1999) Ann. Rev. Immunol. 17: 51-88)。
【0017】
ウイルス感染の過程で、CTL応答は、エピトープ認識のそれらのパターンにおける予測可能な偏向を発達させる。エピトープ認識の階層が発達し、大部分のCTL応答は非常に限定された数のエピトープを標的にする。この現象は、「免疫優勢」としても知られる。実験から得た証拠は、免疫優勢が、関連する細胞受容体、即ち主要組織適合複合体(MHC)クラスI分子に対する多様なエピトープ親和性、ウイルスによって生産されるエピトープの様々なコピー数、及び宿主細胞機構によるエピトープの処理における差など、多くの因子の結果として発達することを示唆する。したがって、エピトープ偏向の階層を回避することができるワクチン手法は、ウイルス感染に対して防御免疫応答を提供する広いCTL応答をもたらすことができた。
【0018】
2、3の例外があるが、大部分の既知のCTLエピトープは慢性感染個体で特定され、これらのエピトープへの応答はHIV感染から保護することがこれまでできなかった。しかし、他の研究は、支配的な応答が必ずしも最も保護的であるというわけではないことを示す(Gallimore, A. et al (1998) J. Exp. Med. 187: 1647-1657)。したがって、定義上全てのクレードに共通する保存タンパク質領域に基づいてHIV免疫原を開発することは、当技術分野で非常に望ましい進歩である(Wilson, C.C. et al. (2003) J. Immunol. 171: 5611-5623)。そのような免疫原は、自然界ではHIV感染細胞によって処理されるエピトープを必ずしも含まないが、保護的である可能性がある亜優占的又は隠れたエピトープを含む、保存タンパク質領域を含むことができた。亜優占的なエピトープに対して強い応答を誘導することができる免疫原は、免疫優性の問題を避けることができ、したがって、広いT細胞応答を誘導することができた。更に、クレード交差性又はクレード遍在性のCTL反応性は、そのような免疫原の局在化程度のより低い地理的使用を可能にすることができた。
【0019】
この出願でのいかなる文書の引用又は特定も、そのような文書が本出願の先行技術として利用可能であることを承認するものではない。
【特許文献1】米国特許仮出願第60/655764号
【特許文献2】国際公開98/56919
【非特許文献1】Abbas et al., Cellular and Molecular Immunology, 4th edition, W.B. Saunders Company, 2000, p. 454
【非特許文献2】Gaschen et al., (2002) Science 296: 2354-2360
【非特許文献3】Korber et al., Retroviral Immunology, Pantaleo et al., eds., Humana Press, Totowa, NJ, 2001, pp. 1-31
【非特許文献4】Jung et al., (2002) Nature 418: 144
【非特許文献5】AIDS epidemic update, December 2002
【非特許文献6】Thomson, M.M. et al (2002) Lancet Infect Dis. 2: 461-471
【非特許文献7】Cao, H. et al. (1997) J. Virol. 71: 8615-8623
【非特許文献8】Ferrari, G. et al. (1997) Blood 90: 2406-2416
【非特許文献9】Walker, B.D. et al. (2001) Nat. Immunol. 2: 473-475
【非特許文献10】Burrows, S.R. et al. (1992) Eur. J. Immunol. 22: 191-195
【非特許文献11】McMichael, A.J. et al (2002) Nat. Rev. Immunol. 2: 283-291
【非特許文献12】Hanke et al., (1998a) Vaccine 16:439-445
【非特許文献13】Schneider et al., (1998) Nat. Med.4: 397-402
【非特許文献14】Kent et al., (1998) J. Virol. 72:10180-10188
【非特許文献15】Hanke et al, (1999) J. Virol 73:7524-7532
【非特許文献16】Allen et al., (2000a) J. Immunol. 164: 4968-4978
【非特許文献17】Amara et al., (2001) Science 292:69-74
【非特許文献18】Allen et al., (2002) J. Virol. 76:10507-10511
【非特許文献19】Shiver et al., (2002) Nature 415:331-335
【非特許文献20】McConkey et al., (2003) Nat. Med. 9: 729-35
【非特許文献21】Singh, R.A. et al., (2002) J. Immunol. 168:379-391
【非特許文献22】Yewdell, J.W. et al. (1999) Ann. Rev. Immunol. 17: 51-88
【非特許文献23】Gallimore, A. et al (1998) J. Exp. Med. 187: 1647-1657
【非特許文献24】Wilson, C.C. et al. (2003) J. Immunol. 171: 5611-5623
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
現在、意外にも、選択されたHIVタンパク質、例えばGag、Pol、Vif及びEnvの最も高度に保存された領域から選択された配列は、HIVクレード及びCRFによって限定されないHIVに対する免疫応答を誘導することができることが発見された。本発明は、したがって、ある実施形態では、Gag、Pol、Vif及びEnv由来のHIV配列を含む人工融合タンパク質(以下、「AFP」)を提供し、それらの配列はGag、Pol、Vif及びEnvの最も高度に保存された領域を含むことができ、それらはクレード、CRF並びに支配的なCTLエピトープの存在及び存在量にかかわりなく選択される。また、AFPを発現する単離された核酸、AFPを発現する核酸を含むことができる発現ベクター及び宿主細胞、AFPの発現方法、並びに対象でAFPに対して免疫応答を誘導するための方法も提供される。
【課題を解決するための手段】
【0021】
したがって、本発明の一態様は、HIV Gagドメイン、1つ又は複数のHIV Polドメイン、HIV Vifドメイン及び1つ又は複数のHIV Envドメインを含むAFPを提供する。一実施形態では、AFPが所定のHIVクレードに対して免疫応答を誘導するように、HIVのGag、Pol、Vif及びEnvのそれぞれを選択することができる。代替の実施形態において、HIVのGag、Pol、Vif及びEnvドメインのそれぞれのアミノ酸配列は、異なるHIVクレードのHIVコンセンサス配列から選択することができる。好ましくは、HIVクレードは、クレードA、A1、A2、B、C及びDからなる群から選択することができる。
【0022】
他の実施形態はHIVのGag、Pol、Vif及びEnvのそれぞれのアミノ酸配列に関し、それらはHIVクレードの間で約0%から約10%異なることができる。好ましくは、配列はクレードの間で約0%から約8%、より好ましくはクレードの間で約0%から約6%変動する。
【0023】
他の実施形態において、ドメインはNからC末端の間に、天然のタンパク質を再現しない任意の順序で存在することができる。好ましくは、ドメインはNからC末端の間に、HIV Gagドメイン、第1のHIV Polドメイン、HIV Vifドメイン、第2のHIV Polドメイン、第1のHIV Envドメイン、第3のHIV Polドメイン及び第2のHIV Envドメインの順序で存在することができる。ドメインは、介在配列に伴い、又は伴わず結合することができる。
【0024】
HIV Gagドメインは、好ましくは、配列番号2のアミノ酸1〜135に対応する、HIV単離株由来のアミノ酸配列又はHIVコンセンサス配列を含むことができる。HIV Gagドメインは3つのHIV Gagサブドメインを含むことができ、それらは同じHIVクレード由来でも又は異なるHIVクレード由来でもよい。好ましい一実施形態において、最初のHIV Gagサブドメインは配列番号2のアミノ酸1〜56を含むことができ、その配列はHIVクレードC由来である。第2のHIV Gagサブドメインは好ましくは配列番号2のアミノ酸57〜96を含み、その配列はHIVクレードD由来でよい。第3のHIV Gagサブドメインは好ましくは配列番号2のアミノ酸97〜135を含み、その配列はHIVクレードA由来でよい。
【0025】
HIV Polドメインは好ましくは3つのHIV Polドメインを含むことができ、最初のHIV Polドメインは好ましくは配列番号2のアミノ酸136〜393を含むことができ、第2のHIV Polドメインは好ましくは配列番号2のアミノ酸422〜484を含むことができ、第3のHIV Polドメインは好ましくは配列番号2のアミノ酸522〜723を含むことができる。好ましくは、各HIV Polドメインは、少なくとも2つのHIV Polサブドメインを含むことができる。この少なくとも2つのHIV Polサブドメインは、同じか異なるHIVクレード由来であることができる。第1のHIV Polドメインの第1のHIV Polサブドメインは、好ましくは配列番号2のアミノ酸136〜265を含むことができ、その配列はHIVクレードB由来でよい。第1のHIV Polドメインの第2のHIV Polサブドメインは、好ましくは配列番号2のアミノ酸266〜393を含むことができ、その配列はHIVクレードC由来でよい。第2のHIV Polドメインの第1のHIV Polサブドメインは、好ましくは配列番号2のアミノ酸432〜467を含むことができ、その配列はHIVクレードA由来でよい。第2のHIV Polドメインの第2のHIV Polサブドメインは、好ましくは配列番号2のアミノ酸468〜494を含むことができ、その配列はHIVクレードB由来でよい。第3のHIV Polドメインの第1のHIV Polサブドメインは、好ましくは配列番号2のアミノ酸522〜556を含むことができ、その配列はHIVクレードD由来でよい。第3のHIV Polドメインの第2のHIV Polサブドメインは、好ましくは配列番号2のアミノ酸557〜629を含むことができ、その配列はHIVクレードA由来でよい。第3のHIV Polドメインの第3のHIV Polサブドメインは、好ましくは配列番号2のアミノ酸630〜676を含むことができ、その配列はHIVクレードB由来でよい。第3のHIV Polドメインの第4のHIV Polサブドメインは、好ましくは配列番号2のアミノ酸677〜723を含むことができ、その配列はHIVクレードC由来でよい。
【0026】
HIV Vifドメインは好ましくは配列番号2のアミノ酸394〜421を含み、その配列はHIVクレードD由来でよい。第1のHIV Envドメインは好ましくは配列番号2のアミノ酸485〜521を含むことができ、第2のHIV Envドメインは好ましくは配列番号2のアミノ酸724〜777を含むことができる。第1のHIV Envドメインは好ましくはHIVクレードC由来であることができ、第2のHIV Envドメインは好ましくはHIVクレードD由来であることができる。
【0027】
本発明は、配列番号2のアミノ酸1〜777を含むAFPも提供する。本発明のAFPは、実験動物でAFPに対する免疫応答をモニターするために、1つ又は複数のヒト以外のCTLドメイン、例えばSIV tat CTLエピトープ、pb9エピトープ、P18―I10エピトープ及びSIV gag p27エピトープからなる群から選択されるものを更に含むこともできる。本発明のAFPは、Pk、Flag、HA、myc、GST又はHisエピトープからなる群から選択されるマーカードメインを更に含むこともできる。本発明の更なる態様は、配列番号2のアミノ酸1〜806を含むAFPを提供する。
【0028】
本発明の他の態様は、本発明のAFPをコードするヌクレオチド配列を有することができる、単離された核酸を提供する。更に、本発明は、少なくとも1つの核酸制御配列に作動可能に結合し、本発明のAFPをコードするヌクレオチド配列を有する核酸を含む発現ベクターも提供する。本発明の核酸及びベクターは、遺伝子ワクチン、即ちヒトなどの対象に本発明のAFPをコードする核酸を送達し、その結果AFPが次に対象で発現されて免疫応答を導き出すワクチンを提供するために特に役立つ。
【0029】
発現ベクターは、プラスミドベクター、ウイルスベクター、媒介昆虫、酵母ベクター又は細菌ベクターでよい。好ましくは、プラスミドベクターはpTH又はpTHrである。
【0030】
ウイルスベクターは、アルファウイルスレプリコンベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、又は他の任意の適当なウイルスベクターでもよい。ベクターがポックスウイルスベクターである場合、ポックスウイルスベクターはワクシニアウイルス及びアビポックスウイルスからなる群から選択される。ポックスウイルスは、MVA、NYVAC、TROVAC又はALVACなどの弱毒化ポックスウイルスでよい。
【0031】
発現ベクターは、生きている弱毒化サルモネラ又は赤痢菌のベクターなどの細菌ベクターでもよい。
【0032】
好ましい実施形態において、核酸制御配列は、サイトメガロウイルス(CMV)の前初期プロモーターでよい。
【0033】
好ましくは、本発明のAFPをコードするコドンは、AFPが発現される標的対象又は宿主細胞の高発現遺伝子のものでよい。対象は、有利にはヒトである。ある実施形態において、発現ベクターpTH又はpTHrはHIVCONコード配列を含むことができ、それぞれ、pTH.HIVCON又はpTHr.HIVCONと呼ばれる。代わりに発現ベクターMVAを用いることができ、その結果MVA.HIVCONと呼ばれる核酸が生じる。
【0034】
本発明の更なる態様は、本発明の発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0035】
本発明は、AFPを調製する方法も提供し、その方法は、(a)AFPを発現する時間及び条件下で本発明の宿主細胞を培養すること、及び(b)AFPを回収することを含むことができる。
【0036】
他の態様はAFPを動物に導入し、動物で発現させる方法を提供し、その方法は、動物内に本発明の発現ベクターを送達することによって、動物でAFPの発現を得ることを含むことができる。
【0037】
動物細胞でAFPを発現するための方法も提供され、その方法は、(a)本発明の発現ベクターを動物細胞に導入すること、及び(b)AFPを発現するのに十分な条件下でそれらの細胞を培養することを含むことができる。
【0038】
本発明の更なる態様は動物で免疫応答を誘導する方法を提供し、その方法は、動物内に本発明の発現ベクターを送達することを含むことができ、AFPはAFPに対する免疫応答を誘導するのに十分なレベルで発現される。
【0039】
ヒト対象でHIVに対して免疫応答を誘導する方法も提供され、その方法は、対象に1回又は複数回免疫原を投与することを含むことができ、その免疫原は(i)本発明のAFP、(ii)AFPをコードする核酸、及び(iii)AFPをコードする発現ベクターからなる群から選択され、AFPは、対象でHIV特異CTL免疫応答を誘導するのに十分な量で投与されるか十分なレベルで発現される。好ましくは、対象は免疫原、又は免疫原をコードするベクター若しくは核酸を、少なくとも2週又は少なくとも4週の間隔で少なくとも2回投与される。他の実施形態は、全体の免疫化療法の一部として同時に、又は異なる時間に投与される他のHIV免疫原を提供する。
【0040】
本発明の他の態様はヒト対象でHIVに対して免疫応答を誘導する方法を提供し、その方法は対象にHIV免疫原の少なくとも1つの初回抗原刺激量及びHIV免疫原の少なくとも1つのブースティング用量を投与することを含むことができ、各用量の免疫原は同じでも異なってもよく、但し、免疫原の少なくとも1つは本発明のAFPであるか、又はAFPをコードする核酸若しくは発現ベクターであり、それらの免疫原は対象でHIV特異T細胞免疫応答を誘導するのに十分な量で投与されるか、又は十分なレベルで発現される。
【0041】
各用量の間隔は、少なくとも2週又は少なくとも4週でよい。好ましくは、pTHr.HIVCONは初回抗原刺激用量として1回又は複数回投与され、MVA.HIVCONはブースティング用量として1回又は複数回投与される。代替の実施形態は、初回抗原刺激の2用量を投与すること及びブースティングの2用量を投与することを含み、初回抗原刺激用量のために使用する免疫原はプラスミドベクターであり、ブースティング用量のために使用する免疫原はウイルスベクターである。ウイルスベクターは、MVAベクターでよい。各初回抗原刺激用量は、pTHr.HIVA、pTHr.RENTA及びpTHr.HIVCONからなる群から選択されるベクターの混合物でよく、各ブースティング用量はMVA.RENTA、MVA.HIVA及びMVA.HIVCONからなる群から選択されるベクターの混合物でよい。
【0042】
本発明の他の態様は、本発明のAFP、又はAFPをコードする核酸、又はAFPをコードする発現ベクター、及び薬剤として許容される担体を含む免疫原性組成物を提供する。組成物は、無機塩類、ポリヌクレオチド、ポリアルギニン、ISCOM、サポニン、一リン酸化リピドA、イミキモド(imiquimod)、CCR―5阻害剤、毒素、ポリホスファゼン、サイトカイン、免疫調節タンパク質、免疫賦活性融合タンパク質、共刺激分子及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるアジュバントを更に含むことができる。そのような組成物は、HIVに対するワクチンとして役立つことができる。本発明の核酸及びベクターは、遺伝子ワクチン、即ちヒトなどの対象に本発明のAFPをコードする核酸を送達し、その結果AFPが次に対象で発現されて免疫応答を導き出すワクチンを提供するために特に役立つ。
【0043】
本発明は、配列番号2又は配列番号4の少なくとも8〜15の連続したアミノ酸を含む複数のポリペプチドを含む免疫原性ポリペプチドのライブラリーも提供し、各免疫原性ポリペプチドは配列番号2又は配列番号4の断片の少なくとも一部と対応する。一実施形態では、複数の免疫原性ポリペプチドは、合計で配列番号2又は配列番号4の全長に対応する。好ましくは、ライブラリー内の各ポリペプチドの一部は、特に少なくとも11アミノ酸がオーバーラップするアミノ酸配列を含む。
【0044】
本発明の他の態様は、MHCクラスIタンパク質を発現する細胞で本発明の免疫原性ポリペプチドのライブラリーからHIVに対するCTLエピトープを特定する方法を提供し、その方法は、本発明のライブラリーと細胞を接触させる段階と、ライブラリーを細胞のMHCタンパク質と選択的に結合する段階と、MHCと選択的に結合するライブラリーのポリペプチドを単離する段階と、ポリペプチドの配列決定をすることによってCTLエピトープを特定する段階とを含むことができる。細胞は、抗原提示細胞、好ましくは脾細胞でよい。細胞は、ヒト細胞でよい。細胞がヒト細胞である場合、MHCクラスIタンパク質はヒト白血球抗原(HLA)である。一実施形態では、選択的結合は、フローサイトメトリーで測定される。他の実施形態において、ポリペプチドはクロマトグラフィーによって単離される。
【0045】
この開示、及び特に請求項及び/又はパラグラフにおいて、「含む(comprises)」、「含まれる(comprised)」、「含んでいる(comprising)」のような用語は、米国特許法でそれに帰属された意味を有することができ、例えば、それらは「含む(includes)」、「含まれる(included)」、「含んでいる(including)」のようなものを意味することができること、並びに、「基本的にそれからなっている(consisting essentially of)」及び「基本的にそれからなる(consists essentially of)」などの用語は、米国特許法でそれらに帰属された意味を有し、例えば、それらは明示的に引用されていない要素を許容するが、先行技術で見られる要素、又は本発明の基本的若しくは新規な特性に影響を及ぼす要素を排除することに注意する。
【0046】
これら及び他の実施形態が開示されているか、以下の詳細な説明から明らかであり、及びそれに含まれる。
【0047】
例示のために示すが、本発明を記載されている特定の実施形態に限定するものではない以下の詳細な説明は、添付の図面とともに最も良く理解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
「免疫原」は、免疫系によって認識されて免疫応答を誘導する物質を指す。この文脈において使用される類似用語は、「抗原」である。
【0049】
本発明との関連で「対象」は、脊椎動物、例えば哺乳動物、鳥類、爬虫類、両生類又は魚類でよく、より有利には、ヒト、或いはウシ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ又はブタ、又はウマ、又は七面鳥、カモ若しくはニワトリなどの鳥類さえ含む、伴生種、又は家畜、又は食物生産動物、又は飼料生産動物、又は畜産動物、又は獲物、又はレース用動物、又はスポーツ用動物である。好ましくは、脊椎動物はヒトである。
【0050】
用語「タンパク質」、「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「ポリペプチド断片」は、本明細書で互換的に使用することができ、任意の長さのアミノ酸残基のポリマーを指す。ポリマーは線状でも分枝状でもよく、修飾されたアミノ酸又はアミノ酸アナログを含むことができ、また、アミノ酸以外の化学分子が介在してもよい。それらの用語は、自然に又はインターベンションによって、例えばジスルフィド結合形成、グリコシル化、リピデーション、アセチル化、リン酸化又は他の任意の操作若しくは修飾、例えば標識又は生理活性成分とのコンジュゲーションによって修飾されたアミノ酸ポリマーも含む。
【0051】
「単離された」ポリヌクレオチド又はポリペプチドは、その自然環境でそれが結合する物質を実質的に含まないものであってよい。実質的に含まないとは、これらの物質を少なくとも50%、有利には少なくとも70%、より有利には少なくとも80%、更により有利には少なくとも90%含まないことを意味する。
【0052】
本発明は、ヒト対象でHIVに対する免疫応答を促進するためのAFPに関する。これらのAFPは、複数のHIVドメインを含む非天然のタンパク質である。本発明のAFPは、細胞又は実験動物でAFPの発現レベルを、及び/又は実験動物でAFPに対する免疫応答をモニターするために役立つ1つ又は複数の更なるドメインを任意選択で含んでもよい。
【0053】
詳細には、本発明のAFPは、Gag、Pol、Vif及びEnv配列を含む。これらの配列は、(a)HIV Gagドメイン、(b)1つ又は複数のHIV Polドメイン、(c)HIV Vifドメイン及び(d)1つ又は複数のHIV Envドメインを含む。HIVドメインのアミノ酸配列は、AFPが主に所定のHIVクレードに対して免疫応答を誘導するように選択することができる。例えば、HIVクレードAに対する免疫応答を所望する場合は、Gag、Pol、Vif及びEnvのアミノ酸配列は、好ましくは、それらの各タンパク質のクレードAコンセンサス配列である。好ましくは、本発明のAFPは、HIVに対するクレード交差性又はクレード遍在性の免疫原を提供するために、いくつかの異なるクレードの中から選択されるHIVドメインを含む。
【0054】
より詳しくは、本明細書で使用される「人工融合タンパク質」又は「AFP」は天然のものではないタンパク質又はポリペプチド(これらの用語は、互換的に使用される)であり、即ち、AFPは設計工程の産物であり、設計されたAFP全体は本来生物のゲノム中にコードされない。本発明のAFPは、非天然の様式で配列される少なくとも2つの異なるタンパク質ドメインを有する必要があり、即ち、2つのドメインは単一タンパク質で通常見られない様式で配列される(又は、互いに融合される)。異なるタンパク質に由来するドメインについては、配列(又は、結合順序)は弾力的である。2つのドメインが同じタンパク質又は単一のポリタンパク質、例えばウイルスのポリタンパク質由来である場合、それらのドメインはそれらのドメインが由来する生物のゲノム中のタンパク質にコードされているので、それらのドメインと結合する元の一次構造と異なる一次線状構造を提供する方法で結合される。例えば、単一タンパク質からの連続ドメインは、逆順に結合することができるか、又は介在ドメインによって分離することができる。例えば、AFPは、例えばタンパク質を半分に切断し、それらの断片のコード配列を再配置する(又は融合する)ことによって作ることができ、その結果、タンパク質のカルボキシ末端で通常見られる配列が今はAFPのアミノ末端にあり、元のアミノ末端アミノ酸はタンパク質の中にある。
【0055】
AFPのドメインは、共有結合、例えばペプチド結合により、又は化学リンカーの挿入により、又は非共有結合、例えばイオン結合を含めた任意の手段で連結することができるが、これらに限定されない。好ましくは、AFPのドメインは共有結合で連結される。本明細書で使用されるように、「ドメイン」はタンパク質又はポリペプチドからのアミノ酸の領域又は配列を意味するが、その領域又は配列が特定の構造的又は機能的単位を形成するかどうかとは関係ない。「ドメイン」は、1つ又は複数の「サブドメイン」を含むこともでき、それらはタンパク質の部分又はタンパク質若しくはペプチドの断片を含むことができる。しかし、ドメイン又はサブドメインとして特定のアミノ酸を選択することは、そのドメイン又はサブドメインがタンパク質又はポリペプチドの構造的及び/又は機能的単位でもあること、又は、その構造若しくは機能に基づいて選択されることを妨げない。
【0056】
ドメインの大きさは、2、3(10未満)から数百のアミノ酸でよく、実際のドメインサイズは特定のドメインがAFPに含まれることを根拠にする。例えば、スペーサの役目を果たすドメインは2〜3個のアミノ酸から10〜15個のアミノ酸であることができ、アミノ酸の正確な数は必要に応じて、例えば、クローニング部位を促進するために、コード配列の読み枠内でのフレームシフトを避けるために、ドメイン間に特定の距離を提供するために、又は、これら若しくは他の理由の任意の組み合わせのために決定される。他の例として、単一のエピトープをコードする場合は、その機能がCTLエピトープをコードするドメインは5から12のアミノ酸でよく、複数のエピトープをコードする場合は数百のアミノ酸でよい。所望により、AFP中のドメインはタンパク質全体又はタンパク質全体の修飾バージョンからなることができ、これも、そのドメインがAFPに含まれる理由によって決定される。
【0057】
ドメインのアミノ酸配列は、本発明の個々のドメインの性質で決定され、以下で詳細に記載される。この点に関しては、それらの配列としては、天然の配列、修飾された配列、コンセンサス配列などがある。配列の修飾は、1つ又は複数のアミノ酸の削除、挿入又は変更によって達成することができる。新しいドメインは、アミノ酸の正常な配置を変えることによって、例えばタンパク質の異なる部分を移すことによって、作製することができる。
【0058】
本発明のAFP中のGag、Pol、Vif及びEnvドメインのアミノ酸配列は、特定のクレードに対する免疫応答を優先的に起こさせるために、その特定のクレードのコンセンサス配列由来でよい。代わりに、ドメインのアミノ酸配列は、選択されたクレード内で保存され、それに特有のアミノ酸配列を用いて、他のHIVクレードのいずれかに対する免疫応答を起こさせるように選択することができる。HIVクレードには、クレードA、B、C、D、H、F、G、H、I、J及びKが含まれる。CRF由来のコンセンサス配列も使用できる。
【0059】
コンセンサス配列の最も単純な形態は、一組の整列したタンパク質配列中のタンパク質の各位置で、最も頻繁に起こるアミノ酸を選択することによって作製することができる。このように、比較されるタンパク質の数が増加するにつれて、コンセンサス配列も変わる。異なるクレード由来のHIVタンパク質のコンセンサス配列は、Los AlamosのHIVデータベースによって定期的に更新され、一般人は容易に利用できる。更なるHIV分離株が分析され、クレード分類が変化するにつれて、これらの編集物は経時的に変化する可能性があるが、この変化は本発明でのコンセンサス配列の使用に影響を及ぼさない。これらの発表されたコンセンサスの配列のいずれか、又は所望の配列群に由来する任意のコンセンサス配列を、本発明で使用することができる。
【0060】
本発明のドメインについて、同等の、対応する又は相関する(これらの用語は、互換的に使用される)アミノ酸を選択するために、当業者は、候補HIV分離株又はコンセンサス配列を配列番号2の示されたアミノ酸と一列に並べることによって、対応する配列を決定することができ、配列のその領域でのアミノ酸の削除及び挿入が可能になる。そのような整列は、既知のHIV変動のために、正確に同じ長さのアミノ酸配列を与えることができないことは、公知である。したがって、同等配列のドメインは、小さな挿入及び欠失に対応するために、大きさが一般的に1〜15個のアミノ酸(又はより少なく、好ましくは1〜10個若しくは1〜5個のアミノ酸、より好ましくは1、2若しくは3個のアミノ酸)である。そのような挿入及び欠失は同等配列の内部又は末端で起こることができるが、但し、そのような長さの変更は、当業者が候補HIV配列及び配列番号1の示された部分の間の整列を最大にする際に得るであろうものである。手動の方法又はコンピュータ化アルゴリズムを含む整列手法は、当業者に公知である(Altschul, S.F. et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-410)。
【0061】
AFPのドメインは、AFPの免疫原性にかなりの影響を及ぼすことなく、様々な異なる方法で配列することができる(例えば、N末端からC末端への線状順序で、又は化学的架橋を通して)。したがって、AFPは、免疫原性を保存し、個々のドメインの必要な特性を保存し(例えば、関連した生物的活性を廃棄する)、天然のタンパク質を再形成しない、任意の順序で配列されたドメインを有することができる。
【0062】
AFPは、従来の化学的手法、例えば固相合成によって合成することができ、又は組換えDNA技術によって生産することができるが、後者が好ましい。個々に生産されたドメインは、精製して、化学的架橋又は当技術分野で知られている他のいかなる方法によっても結合することができる。タンパク質を生産するための合成方法、組換えDNA技術、及び化学架橋方法は、当業者に公知である。それ故に、本発明は、AFPを発現させてAFPを回収するのに十分な時間及び条件下で、本発明の発現ベクターを含む宿主細胞を培養することによって(下記参照)AFPを調製する方法を含む。AFPを回収し、且つ/又は均一に精製するために有用な方法は、当業者が決定することができる。そのような方法としては、中でも塩化セシウム遠心、オリゴヌクレオチドアフィニティークロマトグラフィ、エタノール沈殿がある。
【0063】
本発明のAFPのドメイン及び介在配列は、以下で詳細に記載する。また、本発明の好ましい一実施形態であるHIVCONの記載を以下に記す。
【0064】
AFPのHIV Gagドメインは好ましくは3つのサブドメインを含むが、Gag配列が天然のタンパク質を形成しない限り、1つ、2つ又は任意の数のサブドメインを含むことができる。HIV Gagサブドメインは、好ましくは4つの最も一般的なHIVクレードA〜Dの間で、Gagタンパク質の最も高度に保存された領域の配列と相関し、HIVクレードA〜D全域にわたる変動は約6%未満である。HIV Gag配列は支配的なCTLエピトープを含む必要はないが、当業者は、標的の細胞性免疫応答を導き出すか刺激するために、支配的なCTLエピトープが豊富である配列を容易に特定して組み込むことができる。理論に縛られるものではないが、亜優占エピトープの存在が、支配的なエピトープの使用で観察される免疫優性効果をおそらく誘導することなく、防御免疫応答を導き出すか刺激することができると思われる。好ましい一実施形態において、本発明のHIV Gag配列は、支配的なCTLエピトープの存在及び存在度にかかわりなく選択される。
【0065】
HIV Gag配列は同じクレードから選択することもでき、それによって本発明のAFPの標的を、特定のクレードが一般的である特定の標的集団にする。HIV Gagドメインは、クレード全域にわたって約6%を超えるかそれ未満の変動を示す配列を含む1つ又は複数のGagサブドメインを含むことができる。Gag配列は、約0〜10%、好ましくは約0〜8%、より好ましくは約0〜6%異なることができる。HIVクレード及び送達される標的集団の間でGag配列が高度に保存されて所望の変動を示し、且つ、所望の免疫原性を保存する限り、本発明のAFPでは任意のHIV Gag配列を使用することができる。更に、HIV Gag配列は、AFP内で天然のGagタンパク質を生成するような構造又は配置にするべきでない。
【0066】
本発明の好ましい一実施形態であるHIVCONは、配列番号2又は配列番号4のアミノ酸1〜135を有するHIV Gagドメインを含む。本発明のHIV Gagドメインは、3つのサブドメインをHIVCONに含む。HIVCON中の3つのGagサブドメインのそれぞれは、下記アミノ酸を含む。Gagサブドメイン1は、配列番号2又は配列番号4のアミノ酸1〜56を含む。Gagサブドメイン2は、配列番号2又は配列番号4のアミノ酸57〜96を含む。Gagサブドメイン3は、配列番号2又は配列番号4のアミノ酸97〜135を含む(表1も参照)。
【0067】
本発明のAFPは好ましくは3つのPolドメインを含むが、選択されたPol配列が天然のタンパク質を形成しない限り、又はそれに加えて若しくはその代わりに、それらの配列がそれらの所望の免疫原性を保持し、それらの配列がPol酵素活性を修復しない限り、任意の数のドメイン(したがって、ドメイン内のサブドメイン)を含むことができる。そのような酵素活性には、逆転写酵素、インテグラーゼ、プロテアーゼ及びRNアーゼHが含まれる。第1及び第2のPolドメインは、それぞれ好ましくは2つのPolサブドメインを含み、第3のPolドメインは好ましくは4つのPolサブドメインを含む。好ましくは、Pol配列は最も高度に保存され、HIVクレードA〜Dにわたって6%未満異なる配列と相関する。HIV Polドメインは支配的なCTLエピトープを含む必要はないが、本発明は支配的なCTLエピトープが豊富である配列を選択することも企図する。好ましくは、HIV Polドメインは、支配的なCTLエピトープの存在及び存在度にかかわりなく選択される。
【0068】
HIV Pol配列は同じクレード及び/又はCRFから選択することもでき、それによって本発明のAFPの標的を特定の標的集団にする。代わりに、HIV Pol配列は、異なるクレード又はCRFから選択することもできる。HIV Polドメインは、HIVクレード全域にわたって約6%を超えるかそれ未満の変動を示す配列を含む1つ又は複数のGagサブドメインを含むことができる。HIV Pol配列は、約0〜10%、好ましくは約0〜8%、より好ましくは約0〜6%異なることができる。HIVクレード及び送達される標的集団の間でHIV Pol配列が高度に保存されて所望の変動を示す限り、本発明のAFPでは任意のHIV Pol配列を使用することができる。更に、選択されたHIV Pol配列は、プロテアーゼ、インテグラーゼ、RNアーゼ及び逆転写酵素の1つ又は全ての酵素活性が欠けていなければならない。
【0069】
本発明の好ましい一実施形態であるHIVCONは、対応する3つのHIV Polドメインを含む。第1のPolドメインは配列番号2又は配列番号4のアミノ酸136〜393に相関する2つのサブドメインを含み、第2のPolドメインは配列番号2又は配列番号4のアミノ酸422〜484に相関する2つのサブドメインを含み、第3のPolドメインは配列番号2又は配列番号4のアミノ酸522〜723に相関する4つのサブドメインを含む。各Polサブドメインのアミノ酸は、表1にまとめて示す。
【0070】
本発明のAFPのHIV Vifドメインは、好ましくは4つの最も一般的なHIVクレードA〜Dの間で、最も高度に保存された領域又はVifの領域の配列から選択され、クレード全体の変動は約6%未満である。HIV Vif配列は支配的なCTLエピトープを含む必要はなく、代わりに亜優占的なCTLエピトープを含むことができる。当業者は、特定の標的集団で細胞性免疫応答を標的にするために、支配的なCTLエピトープが豊富であるVif領域を容易に置換することができる。好ましくは、本発明のHIV Vif配列は、支配的なCTLエピトープの存在及び存在度にかかわりなく選択される。
【0071】
本発明のAFPに存在する他のHIV配列と比較して、HIV Vif配列は、多岐にわたるHIVクレード及びCRFから選択することができる。HIV Vifドメインは、HIVクレード全体で約6%を超えるかそれ未満の変動を示す配列を含むことができる。好ましくは、HIV Vif配列は、約0〜10%、好ましくは約0〜8%、より好ましくは約0〜6%異なることができる。HIVクレード及び送達される標的集団の間でVif配列が高度に保存されて所望の変動を示す限り、本発明のAFPでは任意のHIV Vif配列を使用することができる。選択されたHIV Vif配列は、所望の免疫原性も保存するべきである。
【0072】
本発明の好ましい一実施形態であるHIVCONは、配列番号2又は配列番号4のアミノ酸394〜421を有するHIV Vifドメインを含む。
【0073】
好ましくは本発明のAFPは、少なくとも2つのEnvドメインを含む。好ましくはEnvドメインは、最も高度に保存され、HIVクレードA〜Dにわたって6%未満の変動を示す配列と相関する。HIV Envドメインは支配的なCTLエピトープを含む必要はないが、本発明は支配的なCTLエピトープが豊富であるEnv配列を選択することも企図する。そのような置換は、特定のクレード又はCRFが支配的である特定の集団を標的にすることができる強化された細胞性免疫応答を起こすことができた。好ましくは、HIV Envドメインは、支配的なCTLエピトープの存在及び存在度にかかわりなく選択される。
【0074】
特定のHIVクレードを標的にしたAFPの設計では、HIV Env配列はそのHIVクレード又はCRFから選択することもでき、それによって本発明のAFPの標的を特定の標的集団にする。HIV Env配列は、HIVクレード全体で約6%未満の変動を示す配列を含むことができる。Env配列は、約0〜10%、好ましくは約0〜8%、より好ましくは約0〜6%異なることができる。HIVクレード及び送達される標的集団の間でEnv配列が高度に保存されて所望の変動を示し、且つ、所望の免疫原性を保存する限り、本発明のAFPでは任意のHIV Env配列を使用することができる。
【0075】
表1は、本発明の好ましい一実施形態であるHIVCONの各HIVドメインを示し、各ドメインのサブドメイン及び配列番号2に対応する適当なアミノ酸を含む。同じアミノ酸配列が、配列番号2の同じ位置で見られる。
【0076】
【表1】
【0077】
本発明のAFPは、AFPの特性評価及びモニターに役立つように、更なる非HIVドメインを有することができる。好ましくは、そのようなドメインはAFPのN末端及び/又はC末端にあるが、それらはAFPのHIVドメインの間に挿入することもできる。例えば、更なるドメインは、ポリペプチドの処理に影響を及ぼす細胞内又は細胞外のシグナル若しくは部位(例えば、プロテアーゼ切断部位、細胞内局在化若しくは輸送のためのシグナル配列、又はそのような他の配列)、タンパク質精製を助ける部位、及び/又はタンパク質局在化を助ける部位をコードすることができる。タンパク質精製又は局在化に有用な部位としては、親和性結合を可能にする配列がある。例えば、当技術分野で公知である抗体によって認識されるエピトープ(例えば、それらには限定されないが、Pk、Flag、HA、myc、GST又はHis)を含めることができる(Harlow et al., Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1998)。本発明のある実施形態では、例えば配列番号4のHIVCON免疫原においては、Pkエピトープタグが使用される。これは、モノクローナル抗体(mAB)によって結合されるエピトープである。このエピトープはPk又はPkタグと呼ばれ(mAbクローン「k」から)、SV5ウイルスリンタンパク質P由来である。Pkエピトープのアミノ酸配列は、IPNPLLGLD(配列番号6)であり、配列番号4の最後の9個のアミノ酸(アミノ酸798〜806)である。更なるドメインは実験動物(例えばサル又はマウスのCTLエピトープ)で免疫原性であることもでき、それによって、発達研究、前臨床試験、及び、おそらく、臨床応用の間にAFPをモニターする更なる方法を提供する。そのような更なる免疫原性ドメインを使用する場合、HIV特異免疫応答の刺激に対する干渉又は競合を避けるために、そのようなドメインの数は最小にするべきであり、好ましくは多くても3つ又は4つにする。
【0078】
好ましい一実施形態において、AFPは1つ又は複数の実験動物、例えばマウス、ヒト以外の霊長類(チンパンジー、アカゲザル及び他の猿などを含む)、ウサギ、ラット又は他の適当な実験動物の免疫系によって認識される少なくとも1つのヒト以外のCTLエピトープを有するドメインを有する。主要組織適合複合体(MHC)分子は、これらのエピトープペプチドをT細胞に提示する。アカゲザル(Macaca mulata)については、MHC分子はMamuと呼ばれ、マウスの場合、それは伝統的にH―2と呼ばれ、ヒトの場合は、それはHLAと呼ばれる。ヒト以外のCTLエピトープが含有することは、実験試験動物を使った、異なるバッチのAFPの特質、再現性及び/又は安定性の評価を可能にする。そのようなエピトープの例としてはアミノ酸配列STPESANL(配列番号7)があり、それは、アカゲザルCTLによって認識されるサル免疫不全ウイルス(SIV)tatタンパク質由来のMamu―A*01制限エピトープ(以下、「SIV tat CTLエピトープ」、Allen et al., (2000b) Nature 407:386-390)である。他の例はSYIPSAEKI(配列番号8)であり、それはPlasmodium berghei由来のマウスH―2Kd制限CTLエピトープであって、pb9エピトープとも呼ばれる(Romero et al., (1989) Nature 341: 323-326)。他の適当なエピトープが知られており、アミノ酸配列ACTPYDINQML(配列番号9)がその例であって、アカゲザルCTLによって認識されるSIV Gag p27由来のエピトープ(本明細書では「SIV Gag p27エピトープ」と呼ぶ)を含む。ACTPYDINQML(配列番号9)エピトープは、配列番号4のHIVCON免疫原に存在する(アミノ酸位置778〜788。図5を参照)。他の適当なエピトープはCTPYDINQM(配列番号10)(p11C、C―M)であり、Mamu―A*01 MHCによってCD8T細胞に提示されるSIV gag p27エピトープである。CTPYDINQM(配列番号10)エピトープは、配列番号4のHIVCON免疫原に存在する(アミノ酸位置779〜787。図5を参照)。他の適当なエピトープは配列RGPGRAFVTI(配列番号11)を有し、それは、P18―I10エピトープとしても知られるHIV gp41タンパク質由来のマウスH―2k制限CTLエピトープであり、本明細書では「P18―I10エピトープ」と呼ぶ。RGPGRAFVTI(配列番号11)エピトープは、配列番号4のHIVCON免疫原に存在する(アミノ酸位置790〜798。図5を参照)。適当なヒト以外のCTLエピトープは既知であるか、又は、実験動物でCTLを特定することが知られている手法を使って、当業者が容易に決定することができる。
【0079】
AFPは、発現の検出、位置確認、AFP量の定量及び/又はAFPの精製を可能にするために、小さなタグ又はマーカーであるドメインを含むこともできる。適当なタグとしては、それらには限定されないが、mAbによって認識されるエピトープ、例えばPk mAbによって認識されるエピトープIPNPLLGLD(配列番号6)がある(Hanke et al., (1992) J. Gen. Virol. 73:653-660)。IPNPLLGLD(配列番号6)エピトープは、配列番号4のHIVCON免疫原に存在する(アミノ酸位置799〜8―6。図5を参照)。他の適当なタグとしては、HA抗体によって認識されるエピトープYPYDVPDYA(配列番号12)、Flag抗体によって認識されるエピトープDYKDDDDK(配列番号13)、VSV―G Tag抗体によって認識されるエピトープYTDIEMNRLGK(配列番号14)、及びGlu―Glu抗体によって認識されるエピトープEYMPME(配列番号15)がある。当業者は、AFPに含有させるために、適当なタグ及びマーカーを容易に選択することができる。
【0080】
AFPのHIVドメインは、タンパク質中で連続していてもよい。代わりに、それらは介在アミノ酸配列によって分離されていてもよい。介在アミノ酸配列は、通常、非HIV配列であるが、少数の更なるHIVアミノ酸を含むこともできる。存在する場合、介在配列は長さが介在配列ドメインにつき1〜20個のアミノ酸であって、好ましくは10個未満のアミノ酸、より好ましくは2〜5個のアミノ酸である。例えば、介在配列はAFPの発現レベルを最適化するリンカー、スペーサ又は他の配列であってもよい。介在配列は、免疫原性の最適化のために用いることができる。介在配列は、有用な制限部位を含ませるために、又はAFPのドメインが間違いなく「インフレーム」(例えば、組換えで生産されたAFPのために)で連結されるために、便利な手段として加えることもできる。
【0081】
本発明のAFPの1例は、HIVCONである。HIVCONは777個のアミノ酸を有するAFPであり、7つのHIVドメイン(配列番号2、図3)及び、任意選択で、3つの更なるドメイン(配列番号4、図5、の場合のように)を有する。HIVCONの概略図を図1に示す。HIVCONタンパク質は、アミノ末端からカルボキシル末端にかけて、HIV Gagドメイン、第1のHIV Polドメイン(2つのHIV Polサブドメインを含む)、HIV Vifドメイン、第2のHIV Polドメイン(2つのHIV Polサブドメインを含む)、第1のHIV Envドメイン、第3のHIV Polドメイン(4つのHIV Polサブドメインを含む)、第2のHIV Envドメイン及び、任意選択で、SIV p27 CTLエピトープ、マウスCTLエピトープP10―I18及びmAbエピトープPkを含む。HIVCONは、介在配列を含まない。HIVCON配列番号4(及び、最後の3つのドメインを除く配列番号2)の806個のアミノ酸のためのドメインの相互関係は、N末端からC末端にかけて以下の通りである。
・アミノ酸1〜135、HIV Gagドメイン
・アミノ酸136〜393、第1のHIV Polドメイン(両方のサブドメインを含む)
・アミノ酸394〜421、HIV Vifドメイン
・アミノ酸422〜484、第2のHIV Polドメイン(両方のサブドメインを含む)
・アミノ酸485〜521、第1のHIV Envドメイン
・アミノ酸522〜723、第3のHIV Polドメイン(4つ全てのサブドメインを含む)
・アミノ酸724〜777、第2のHIV Envドメイン
・アミノ酸778〜788、SIV Gag p27 CTLエピトープ
・アミノ酸789〜798、マウスCTLエピトープP18―I10、及び
・アミノ酸799〜806、mAbエピトープPk
【0082】
HIVCON内のHIVドメインは、HIV―1クレードA〜Dコンセンサス配列由来である。各ドメイン中の各サブドメインを含む各ドメインに対応するアミノ酸、並びにそれらの対応するHIVクレードは、表1で示す。
【0083】
本発明の他の態様は、全体で本発明のAFPの全長に、有利には配列番号2又は配列番号4に対応する配列を含むポリペプチド及びポリペプチドライブラリーに関する。代わりに、ポリペプチド又はポリペプチドのライブラリーが、本発明のAFPの、有利には配列番号2又は配列番号4の一部又は断片に対応することができる。本発明のポリペプチドライブラリーは、とりわけ、抗原提示細胞の主要組織適合複合体(MHC)クラスIなどの細胞受容体と結合する、AFPの特定の配列又はエピトープを詳細に解明して更に定義するために使用することができる。ポリペプチドライブラリーは短いアミノ酸配列のプールを含むことができ、それらは単一アミノ酸から100個のアミノ酸の大きさ、又はそれよりも長くてよい。しかし、MHC受容体は長さが約8〜15アミノ酸の短いアミノ酸配列を認識することは、当技術分野で公知である。したがって、配列番号2又は配列番号4の8から15個のアミノ酸、好ましくは15個の連続したアミノ酸であるポリペプチドを合成することが好ましい。
【0084】
各ポリペプチドは、重複する配列を伴い、又は伴わず合成することができる。一部の応用では、特にエピトープの特定の配列が所望のとき、ポリペプチド中の重複配列の存在は、配列番号2又は配列番号4の全てのアミノ酸配列がポリペプチドライブラリーに含まれることを確実とすることができる。重複する配列は、ポリペプチドの長さに応じて1〜15個のアミノ酸を含むことができる。本発明の好ましい実施形態では、各ポリペプチドは15個の連続したヌクレオチドを含み、アミノ酸のうちの11個は重複する。
【0085】
ポリペプチドの合成は、化学的ペプチド合成、固相合成などによるインビトロでよく、又は、短いアミノ酸配列をコードするRNAの無細胞インビトロ翻訳(例えば、それらには限定されないが、ウサギ網状赤血球溶解物、小麦麦芽抽出物)を通してもよい。代わりに、ポリペプチドはプロデューサー細胞内で、関心のポリペプチドをコードする核酸配列から組換えで合成することができる。ポリペプチドの精製は、当技術分野で公知の方法、例えば逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、アフィニティークロマトグラフィー、既知のエピトープがポリペプチド配列中に含まれて利用できるモノクローナル及び/又はポリクローナル抗体によって認識される場合は免疫沈降反応、イオン交換クロマトグラフィー、硫酸アンモニウム若しくはエタノール沈殿、酸抽出、アニオン若しくはカチオン交換クロマトグラフィー、リン酸セルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、免疫アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、レクチンクロマトグラフィー、分子篩クロマトグラフィー、等電集束法、ゲル電気泳動、又は各精製段階でポリペプチドを追跡するモニター手法を使うこれらの方法の組み合わせによって実行することができる。
【0086】
各ポリペプチドは、配列番号2又は配列番号4の特定の部分又は断片に対応し、ライブラリー内の全てのポリペプチドの総計は配列番号2又は配列番号4の全長に対応する。このことは、関心のCTLエピトープを特定するためにアミノ酸配列全体を「スキャンする」ために、配列番号2又は配列番号4の全てのアミノ酸配列がライブラリー内のポリペプチドに包含されることを確実にするためである。ポリペプチドは合成されて、それらの配列類似性に従ってプールされる。次いでプールされたポリペプチドのライブラリーを使用して、本発明のAFPを投与された細胞若しくは対象で、又は感染細胞若しくは感染した対象で、HIVに対するCTL反応の特異性を決定することができる。
【0087】
したがって、本発明は、MHCクラスIタンパク質を発現する細胞で本発明のポリペプチドライブラリーからHIVに対するCTLエピトープを特定する方法も提供し、その方法は、本発明のライブラリーと細胞を接触させる段階と、ライブラリーを細胞のMHCタンパク質と選択的に結合する段階と、MHCと選択的に結合するライブラリーのポリペプチドを単離する段階と、ポリペプチドの配列決定をすることによってCTLエピトープを特定する段階とを含む。
【0088】
本発明の方法で役立つ細胞は、抗原提示細胞である。抗原提示細胞はMHCクラスIタンパク質を発現し、それらは主に感染に対してTリンパ球媒介反応を導き出すエピトープの結合及び制限に関係する。MHCクラスI分子は通常ウイルスである病原体由来のペプチドをCD8+CTLに提示するが、それらは、それらが特異的に認識するいかなる細胞も殺すように特殊化される。そのような抗原提示細胞としては、それらには限定されないが、樹状細胞、マクロファージ、単球、単核細胞、CD8+T細胞及び脾細胞がある。それらの細胞はHIVに感染した対象に由来することもでき、又は、インビトロでウイルス又はウイルス配列に感染又はトランスフェクションした細胞でもよい。好ましくは、細胞は本発明のAFPを免疫接種又は投与されている。既にAFP又は他のHIV配列又はウイルスを投与されたこれらの細胞は、好ましくは細胞又は組織培養条件下で、本発明のライブラリーと接触させる。ヒト細胞を使用するときは、MHCクラスI受容体はヒト白血球抗原又はHLAである。本発明は、ヒト以外の、好ましくは実験用の動物種の細胞、例えば、それらには限定されないが、ヒトMHC又はHLAで一過性又は安定的にトランスフェクションされるサル細胞、ラット細胞又はマウス細胞も包含する。ヒトHLAを発現する実験動物の例は、Carmon, L., et al (2002) J. Clin. Invest. 110: 453-462で記載されるHHD遺伝子導入マウスである。異なるHLA/MHCサブタイプ及び対立遺伝子は、本発明の免疫原性ポリペプチド及び関心の特定集団で支配的であることが知られている特定のHLA/MHC対立遺伝子の間の相互作用の性質を更に解明するために使用することができる。代わりに、それぞれMHCの異なる対立遺伝子を発現する多くの異なる対象に由来する細胞を、本発明の方法で使用することができる。
【0089】
次に本発明のライブラリーは、通常、培地へのライブラリーの添加によって、細胞表面に存在するMHCクラスI受容体と選択的に結合することが可能になる。ライブラリーの特定のポリペプチドの選択的な結合の後、MHCクラスIと結合するポリペプチドが単離及び配列決定され、それによってCTLエピトープが特定される。細胞のMHCクラスI受容体への関心のポリペプチドの選択的結合は、フローサイトメトリーによってモニターすることができるが、受容体―ポリペプチド相互作用の結合定数を求めることによってもモニターすることができる。このことは、当技術分野で知られている標準の酵素反応速度アッセイによって達成することができる。好ましくは、フローサイトメトリー(当技術分野では蛍光活性化細胞選別、FACSとしても知られている)が使用される。細胞表面MHC受容体へのペプチド結合を測定するために間接的FACSを使う方法は、Carmon, L., et al (2002) J. Clin. Invest. 110: 453-462で記載されている。簡潔には、本発明のポリペプチドライブラリーを加えた細胞は、抗MHC抗体とインキュベートされる。洗浄後、蛍光タグ(即ち、とりわけフルオレセインイソチオシアネート)を有する二次抗体を抗MHC抗体に結合した後、結合抗体の量をFACS分析で測定する。
【0090】
得られた関心のポリペプチドは当技術分野で公知の手法によって、例えば、それらには限定されないが、逆相高速液体クロマトグラフィー、アセトン沈殿、硫安塩析、トリフルオロ酢酸沈殿、及び本明細書で述べられているクロマトグラフィー方法で単離することができる。次いで単離されたポリペプチドは、MHCに対する結合配列の正確な境界を決定するために、配列決定を施す。当技術分野で公知の配列決定方法としては、それらには限定されないが、エドマン分解(N末端配列決定としても知られている)、タンデム型質量分析、及びマトリックスアシスティドレーザ脱離イオン化(MALDI)がある。
【0091】
本発明は、本発明のライブラリーを使用してCTLエピトープを特定する方法のハイスループットな自動化も包含する。免疫蛍光法による抗MHC抗体の結合の以降の検出のために、1つ又は複数のポリペプチドライブラリーを、固体支持体、例えばセルロース、又はシリコンアレイの上で合成することができる。MHCクラスI受容体とのポリペプチドの結合に対応する相対蛍光は自動的に測定することができるので、適当なCTLエピトープについて何百又は何千のポリペプチド配列を効率的にスクリーニングすることが可能になる。
【0092】
本発明の免疫原性ポリペプチドは、例えば、本発明のAFPに対してモノクローナル及びポリクローナル抗体を宿主動物内で生産するために、体液性反応を導き出すための免疫原又は抗原として使用することもできる。このような宿主動物としては、それらには限定されないが、ウサギ、マウス及びラットを挙げることができる。免疫性応答を増加させるために宿主種に従って様々なアジュバントを使用することができ、例としては、それらには限定されないが、フロイント(完全及び不完全な)アジュバント、水酸化アルミニウムなどの鉱物ゲル、界面活性物質、例えばリゾレシチン、プルロン酸ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳濁液、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、及びBCG(カルメットゲラン菌)などの潜在的に有用なヒトアジュバント及びCorynebacterium parvumがある。
【0093】
本発明の他の態様は、本発明のAFPをコードする核酸分子に関する。本明細書で使用される「核酸分子」又は「核酸」は、任意のデオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)を意味し、メッセンジャーRNA(mRNA)、DNA/RNAハイブリッド又は合成核酸を含むが、これらには限定されない。核酸は一本鎖、又は、部分的若しくは完全に二本鎖(二重鎖)でよい。二重鎖核酸は、ホモ二本鎖でもヘテロ二本鎖でもよい。本発明の核酸分子はAFPをコードするヌクレオチド配列を有し、AFP遺伝子が発現される(又は発現される予定の)対象の高度に発現される遺伝子で使用されるコドンを用いるように設計することができる。一般的に、核酸は単一の読取り枠(ORF)として、つまり、イントロンを含まない、AFPのコード配列全体を有する。
【0094】
異なる細胞は、特定のコドンのそれらの使用法が異なる。このコドンバイアスは、特定の細胞型内の特定の転移RNA(tRNA)の相対存在度における偏りに対応する。HIV及び他のレンチウイルスを含む多くのウイルスは多数の稀なコドンを使い、一般的に用いられる哺乳類のコドンに対応させるためにこれらを変化させることによって、細胞内での免疫原の発現増強を達成することができる。対応するtRNAの相対存在度と一致させるために配列中のコドンを変化させることによって、AFPの発現を増加させることが可能である。同様に、対応するtRNAが特定の細胞型で稀であることが知られているコドンを故意に選択することによって、AFPの発現を減少させることが可能である。このように、ある程度の更なる翻訳調節が利用できる。コドン最適化の全体的な影響は、例えばAFPがウイルスベクターから発現される場合はウイルスの力価の増加、及び、対象での安全性の改善がある。コドン利用表は、哺乳動物細胞並びに様々な他の生物体について、当技術分野で公知である。
【0095】
好ましい一実施形態において、AFPをコードするコドンは「ヒト化」コドンであり、即ち、コドンはHIVによって多用されるコドンの代わりに、高度に発現されるヒト遺伝子中にしばしば現れるそれらである(Andre et al., J. Virol. 72:1497-1503, 1998)。そのようなコドン利用は、ヒト細胞でのAFPの効率的な発現を可能にする。他の実施形態では、例えば、AFPが細菌、酵母又は他の発現系で発現される場合、コドン利用パターンが変更されて、AFPが発現している生物体で高度発現遺伝子に対するコドンバイアスを表す。コドン利用パターンは、多くの種の高度発現遺伝子について文献で知られている(例えば、Nakamura et al., (1996) Nucl. Acids Res. 24: 214-215、Wang et al, (1998) Mol. Biotechnol 10: 103-106、McEwan et al. (1998) Biotechniques 24:131-136)。
【0096】
HIVCONの核酸配列を、最後の3つの更なるドメインをコードするヌクレオチドを有する代替形態(配列番号3)及び有さない代替形態(配列番号1又は配列番号5)で提供する。本発明の一実施形態では、本発明の核酸は、配列番号1又は配列番号5で提供されるHIVCONコード配列をコードするヌクレオチドを含む(配列番号1のヌクレオチド1又は配列番号5のヌクレオチド30から始まって、終止コドンまで続く)。本発明の他の実施形態では、本発明の核酸は、配列番号3で提供されるHIVCONコード配列をコードするヌクレオチドを含み、それは3つの更なるエピトープを含むヌクレオチドを含む(配列番号3のヌクレオチド1から始まって、終止コドンまで続く)。本発明の他の実施形態では、本発明の核酸は、それぞれ図2、4及び6で示すように、基本的に配列番号1、配列番号3又は配列番号5の配列からなる。
【0097】
本発明のAFPをコードする核酸分子を発現ベクターに組み込んで、対象を免疫接種するために、又は、一般的にタンパク質生産又はRNA生産のためにタンパク質をインビトロで発現させるために使用することができる。
【0098】
本明細書で使用されるように、「ベクター」は、1つの環境から別の環境への実体の移動を可能にするか助長する手段である。例示のために、組換えDNA技術で使用する一部のベクターは、DNAの断片(例えば異種DNA又はcDNA部分)などの実体の標的細胞への移動を可能にする。本発明は、ウイルスベクター、細菌ベクター、原生動物ベクター、DNAプラスミドベクター又はそれらの組換え体を含むことができる組換えベクターを包含する。
【0099】
ベクター内での発現のための外来性DNA(例えば、関心のエピトープ及び/又は抗原及び/又は治療剤をコードする)及びそのような外来性DNAを提供する文書に関し、並びに核酸分子の発現を強化するための転写及び/又は翻訳因子の発現に関し、及び、とりわけ「関心のエピトープ」、「治療的」、「免疫応答」、「免疫学的応答」、「防御免疫応答」、「免疫組成物」、「免疫原性組成物」及び「ワクチン組成物」などの用語に関して、1999年11月23日発行の米国特許第5990091号、並びに国際公開98/00166及び国際公開99/60164、並びにその中で引用されている文書、並びにその特許及びそれらのPCT出願の手続きの記録文書が参照され、それらの全ては本明細書で参照により組み込まれている。このように、米国特許第5990091号並びに国際公開98/00166及び国際公開99/60164、並びにその中で引用されている文書、並びにその特許及びそれらのPCT出願の手続きの文書又は記録、並びに本明細書で引用されるか、さもなければ参照により組み込まれる他の文書は、本発明の実施に際して参考にすることができ、また、その中で引用されている全ての外来性の核酸分子、プロモーター及びベクターは、本発明の実施に際して使用することができる。この点に関しては、米国特許第6706693号、同第6716823号、同第6348450号、米国特許出願10/424409、10/052323、10/116963、10/346021、及びPCT/US98/16739から1999年2月25日に公開された国際公開9908713にも言及している。
【0100】
発現ベクターは当技術分野で公知であり、本発明については、タンパク質の転写及び翻訳を指示する調節又は核酸制御配列に「作動可能に結合した」タンパク質コード配列を有するという共通した特徴を共有する。本明細書で使用されるように、AFPコード配列及び核酸制御配列は、それらがAFPコード配列の発現又は転写及び/又は翻訳を核酸制御配列の影響下又は制御下に置くように共有結合している場合、「作動可能に結合した」と言われる。「核酸制御配列」は任意の核酸要素でよく、例えば、それらには限定されないが、プロモーター、エンハンサー、IRES、イントロン、及び、核酸配列又はそれに作動可能に結合したコード配列の発現を指示する本明細書記載の他の要素でよい。5’遺伝子発現配列の核酸制御配列、例えばプロモーターの誘導がAFP配列の転写をもたらし、また、2つのDNA配列の間の結合の性質が(1)フレームシフト突然変異の導入をもたらさず、(2)抗原配列の転写を指示するプロモーター領域の能力に干渉せず、(3)タンパク質に翻訳される対応RNA転写物の能力に干渉しないならば、2つのDNA配列は作動可能に結合していると言われる。このように、核酸制御配列がそのAFP核酸配列の転写をもたらすことができ、得られた転写産物が所望のタンパク質又はポリペプチドに翻訳されるならば、その核酸制御配列はそのAFP核酸配列に作動可能に結合するであろう。
【0101】
発現ベクター中のプロモーター、エンハンサーなどの核酸制御配列は、宿主に対してしばしば異種性である。用語「プロモーター」は、本明細書では、RNAポリメラーゼIIの開始部位のまわりに集まり、また、作動可能にAFPに結合されたときにAFP発現へ導く、一群の転写調節モジュールに言及するために使用する。プロモーターは、通常、それぞれ約7〜20bpのDNAから成り、転写性活性化タンパク質のために1つ又は複数の認識部位を含む、別々の機能モジュールから構成される。プロモーター中の少なくとも1つのモジュールが転写開始点の位置を決める働きをすることができ、他のモジュールは転写開始の頻度を調節することができる。「エンハンサー」は、同じDNA分子内の離れた所に位置するプロモーターからの転写を増加させる、遺伝因子と説明することができる。プロモーターと同様に、エンハンサーは多くの個々のモジュールから構成されることができ、それぞれは1つ又は複数の転写タンパク質と結合する。プロモーター及びエンハンサーは細胞内で転写を活性化するという同じ一般機能を有するが、それらの機能の間には明らかな相違がある。エンハンサーは、定義上、離れた所の転写を刺激し、特定の部位での転写開始を指示する必要はない。一方、プロモーターのモジュールは、特定の部位からの特定の向きの転写開始を指示しなければならない。
【0102】
発現ベクター内でのAFPヌクレオチド配列の発現は、このように構成プロモーター又は誘導性プロモーターの管理下にあることができるが、それは宿主細胞がいくつかの特定の外部刺激、例えば、それらには限定されないが、テトラサイクリンのような抗生物質、エクジソンのようなホルモン類又は重金属にさらされたときだけ転写を開始する。動物などの多細胞生物の場合、プロモーターは特定の組織又は臓器に特異的であってもよい。本発明の様々な実施形態としての、ベクターの構築で用いることができる様々なプロモーター及びエンハンサー因子は、米国特許第6835866号で述べられ、その内容は本明細書で参照により組み込まれている。更に、Eukaryotic Promoter Database(EPDB)に従う任意のプロモーター/エンハンサーの組み合わせを、本発明のAFPの発現を促進するために使用することができる。
【0103】
発現ベクターは、細菌、真菌類、酵母、動物(哺乳動物、特にヒトを含む)、鳥類、昆虫、植物などを含む多くの生物体について公知であり、利用することができる。動物には、それらには限定されないが、哺乳動物(ヒト、霊長類、その他)、商用の又は飼育動物(魚類、ニワトリ、乳牛、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、七面鳥、その他)、研究動物(マウス、ラット、ウサギ、その他)及びペット(イヌ、ネコ、インコ及び他のペット用の鳥類、魚類、その他)が含まれる。
【0104】
したがって、本発明の発現ベクターは、タンパク質が発現されるかRNAが生産されるかに従って転写及び/又は翻訳の核酸制御配列に作動可能に結合した、本発明のAFPのコード配列を有する。本発明の発現ベクターは、AFPをコードするDNA又はRNAの生産を含む、特定の宿主細胞でAFP又はAFPをコードする核酸の発現を達成するために役立つ。同様に、本発明の発現ベクターとしては、宿主対象にAFP(タンパク質又は核酸として)を送達するために役立つ、プラスミド、リポソーム、微生物及びウイルスのベクターが挙げられる。
【0105】
本発明の発現ベクターとしては、プラスミド、ウイルスベクター、細菌ベクター、原生動物ベクター、昆虫ベクター、酵母ベクター、哺乳動物細胞ベクターなどがある。発現ベクターが複製又は自己増幅できるかは、使用するベクター及びその選択理由次第である。特定された状況下でAFPを発現するための要件を考慮すると、そのような特性は当業者が容易に決定することができる。
【0106】
本発明の発現ベクターとしては、実験動物、哺乳動物、好ましくはヒト対象でのAFPの発現のために使用されるものがある。これらのベクターは、コードされたAFPに対して免疫応答を刺激するために、動物、哺乳動物又はヒト対象に免疫接種をするために特に役立つ。この点に関して有用な発現ベクターとしては、細菌ベクター、ウイルスベクター、プラスミド、及び核酸(プラスミド又はウイルス由来の)を使うリポソーム製剤がある。細菌ベクターについては、好ましいベクターは、宿主内での細菌担体の増殖を予防するために、又は疾患若しくは他の有害な病理学的影響につながることのない自己制御増殖だけを可能にするように弱毒化される。死菌も役立つ。宿主内での使用安全性を提供するためにも、ウイルスベクターは好ましくは弱毒化されるか、又は複製に欠陥がある。プラスミドを使用するときは、ヒトで機能する複製起点が欠けていてもよい。
【0107】
ある好ましい実施形態において、pTH又はpTHrベクターが使用される。pTHベクターの構築は、Hanke et al, 1998 Vaccine 16, 426-435で記載される。pTHは、ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)系統AD169ゲノムの発現効率的エンハンサー/プロモーター/イントロンAカセットを含む(Whittle et al, 1987 Protein Eng. 1, 499-505、Bebbington 1991 Methods 2, 136-145)。プロモーター領域の後には、ウシ成長ホルモン遺伝子のpRc/CMV(Invitrogen社製)由来のポリリンカー及びポリアデニル化シグナルが続く。形質転換細菌にアンピシリン抵抗性を付与するベータラクタマーゼ遺伝子及び原核生物の二本鎖DNA複製起点Co1E1の両方は、プラスミドpUC19に由来する。pTHベクターは、哺乳動物細胞の複製起点を含まない。
【0108】
pTHrベクターは、ベータラクタマーゼ/アンピシリン耐性遺伝子の削除によって、pTHに由来する。そのベクターは、Cobra Pharmaceuticals社(Keele, UK)によって開発された、プラスミド上の抗生物質耐性遺伝子の存在の必要なしでプラスミド運搬細菌を選択するリプレッサ―滴定系を使って、細菌内で増殖させられる(米国特許第5972708号及びWilliams et al, 1998 Nucl. Acids Res. 26, 2120-2124を参照)。pTHrベクターは抗生物質耐性遺伝子の多数のコピーを、ワクチン接種を受けた人に導入しないので、特にヒトでの使用に最適である。したがって、一実施形態では、本発明のHIVCON免疫原をコードするヌクレオチド配列は、DNAワクチンとしてヒトにベクターを投与するために、pTHrベクターに組み込まれる。
【0109】
ヒト、哺乳動物又は実験動物での使用に安全ないかなるプラスミドベクターも、並びに、原核生物又は真核生物の発現系からのタンパク質精製に役立ついかなるプラスミドベクターも、本発明に従う使用が企図される。
【0110】
ウイルスの発現ベクターは当業者に公知であり、例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アルファウイルス、レトロウイルス及びポックスウイルス、例えばアビポックスウイルス、弱毒化ポックスウイルス、ワクシニアウイルス、及び、特に、修飾された種痘疹アンカラウイルス(MVA、ATCCアクセッション番号VR―1566)などのウイルスがある。そのようなウイルスは、発現ベクターとして使用されたとき、選択されたヒト宿主では生来非病原性であるか、又は、選択された宿主でそれらを非病原性にするために変更されている。例えば、複製に欠陥があるアデノウイルス及びアルファウイルスは公知であり、遺伝子送達ベクターとして使用することができる。好ましいウイルスベクターはMVAであり、それはほとんどの哺乳動物細胞で複製することのない、高度に弱毒化されたワクシニア株である(Mayr et al., (1975) Infection 105:6-14)。AFPはMVAの多くの部位にクローニングすることができ、対象、特にヒト対象に免疫接種をして、コードされたAFPに対してHIV特異免疫応答を起こさせるために使用することができる。役立つMVAクローニング部位としては、例えば、チミジンキナーゼ及び欠失III座がある(Chakrabarti et al., (1985) Mol. Cell. Biol. 5: 3403-3409、Meyer, H. et al (1991) J. Gen. Virol. 72: 1031-8、Altenburger, W. et al (1989) Arch. Virol. 105(1-2): 15-27)。
【0111】
ある種のポックスウイルス、例えばMVA、NYVAC及びアビポックスウイルスは、鳥類の種又は鳥類の細胞系、例えばニワトリの胚の線維芽細胞でのみ生産的に複製することができるか、継代培養することができる点に注意しなければならない。鳥類の宿主細胞から収集された組換えポックスウイルスは、ワクシニアウイルスによる哺乳動物の接種に類似した方法で鳥類外の脊椎動物、例えば哺乳動物に接種されたときに接種病変を生じるが、アビポックスウイルスの生産的な複製はない。そのような接種された鳥類外の脊椎動物でMVA、NYVAC及びアビポックスウイルスなどのある種のポックスウイルスが生産的に複製することができないにもかかわらず、接種動物が組換えポックスウイルスの抗原決定基に、更に、その中の外来性の遺伝子にコードされた抗原決定基に対しても免疫学的に応答するのに十分なウイルス発現は起こる。このように、一実施形態では、ある種のポックスウイルス又はウイルスベクター(上で開示されるような)を使用するときは、ニワトリの胚の線維芽細胞がウイルスベクター複製を許容する細胞として好ましい。
【0112】
組換えウイルスベクター及び組換えウイルスは、本発明のAFPに作動可能に結合したプロモーターを含むことができる。ポックスウイルスのベクターに含まれるとき、プロモーターは有利にはポックスウイルス起源であり、特に、ワクシニアウイルスのプロモーター7.5K、I3Lポックスウイルスプロモーター、11Kポックスウイルスプロモーター(米国特許第5017487号)、42Kポックスウイルスプロモーター、H6ポックスウイルスプロモーター、チミジンキナーゼポックスウイルスプロモーター、E3Lポックスウイルスプロモーター、K3Lポックスウイルスプロモーター又は合成ポックスウイルスプロモーターであることができる。プロモーターは、有利には「初期の」プロモーターでよい。「初期の」プロモーターは当技術分野で公知であり、デノボタンパク質合成がない場合、迅速且つ一過性に発現される遺伝子の発現を促進するプロモーターと定義される。プロモーターは、「強力な」又は「弱い」プロモーターでもよい。用語「強力なプロモーター」及び「弱いプロモーター」は当技術分野で公知であり、プロモーターでの転写開始の相対頻度(1分あたりの回数)によって定義することができる。「強力な」又は「弱い」プロモーターは、ポックスウイルスRNAポリメラーゼとのその親和性によっても定義される。
【0113】
本発明は、突然変異したウイルスプロモーターも提供する。理論に束縛されないが、ウイルスベクターから発現される潜在的に毒性の異種配列の高レベルの発現は、安定したウイルス組換え体の形成を排除することができると思われる。したがって、本発明は、突然変異ウイルスプロモーターの使用も包含し、その例としては、ウイルスベクターから発現したAFP配列の発現レベルが野生型プロモーターの下での異種配列の発現レベルと比較して低くなるように、ポックスウイルス組換え体が所望の場合に役立つ突然変異H6ポックスウイルスプロモーターがある。突然変異H6プロモーターは、弱いプロモーターと考えられる。
【0114】
突然変異プロモーターは、点突然変異を含むことができる。本発明は、野生型プロモーターと比較して転写開始の頻度を減らす点突然変異を含む、H6以外のプロモーターを使用することもできる。更に、他のタイプの突然変異プロモーターが、本発明で使用するために適当である(Davison, A. et al (1989) J. Mol. Biol. 210: 749-769、Taylor J. et al., Vaccine, 1988, 6, 504-508、Guo P. et al. J. Virol., 1989, 63, 4189-4198、Perkus M. et al., J. Virol., 1989, 63, 3829-3836も参照)。
【0115】
本発明のウイルスベクター又はウイルスは、AFPの転写及び翻訳を制御するために、追加の配列を更に含むことができる。例えば、ポックスウイルスベクターに含まれる場合、そのような配列はT5NT終結認識シグナルを含むことができ、それは初期RNA転写の終結のためのポックスウイルスRNAポリメラーゼによって認識され得る。
【0116】
本発明のAFPはアデノウイルス組換え体としても送達することができ、その例としては、E1が欠陥体であるか削除された、E3が欠陥体であるか削除された、及び/若しくはE4が欠陥体であるか削除されたアデノウイルスベクター、又は、全てのウイルス遺伝子が削除された「ガットレス」アデノウイルスベクターがある。アデノウイルスベクターは、E1、E3又はE4遺伝子の突然変異、又はこれら若しくは全てのアデノウイルス遺伝子の欠失を含むことができる。E1に欠陥があるアデノウイルス突然変異体は非許容細胞で複製に欠陥があると言われており、また少なくとも高度に弱毒化されているので、E1突然変異はベクターの安全域を上昇させる。E3突然変異は、アデノウイルスがMHCクラスI分子を下方制御するメカニズムを崩壊させることによって、抗原の免疫原性を強化する。E4突然変異は後期遺伝子発現を抑制することによってアデノウイルスベクターの免疫原性を低減し、それによって、反復再接種で同じベクターを利用することを可能にする。本発明は、E1、E3、E4、E1及びE3、並びにE1及びE4に欠失又は突然変異のあるアデノウイルスベクターを包含する。本発明は、ヒトAd5系統のアデノウイルスも包含する。
【0117】
「ガットレス」アデノウイルスベクターは、本発明のAFPを発現するために使用することもできる。その複製は、ヘルパーウイルス及びE1a及びCreを発現する特別なヒト293細胞系を必要とするが、この条件は自然環境中では存在しない。ベクターからは全てのウイルス遺伝子が奪われているので、ワクチン担体としてのベクターは非免疫原性であって、再ワクチン接種のために複数回接種をすることができる。「ガットレス」アデノウイルスベクターは、導入遺伝子を収容するために36kbの空間も含むので、細胞への多数の異種遺伝子の同時送達を可能にする。RGDモチーフなどの特定の配列モチーフは、その感染性を強化するために、アデノウイルスベクターのH―Iループに挿入することができる。この配列は、ある種の細胞間マトリックス及び接着タンパク質とインテグリンと呼ばれる細胞表面受容体のスーパーファミリーとの相互作用のために、必須であることが示された。RGDモチーフの挿入は、免疫不全状態の対象に有利に役立つ可能性がある。アデノウイルス組換え体は、上述のものなど、アデノウイルスベクターのいずれかに、特定の導入遺伝子又は導入遺伝子の断片をクローニングすることによって構築される。
【0118】
AFPの送達に役立つ他のウイルスベクターとしては、アルファウイルスベクター、特にセムリキ森林熱ウイルス(SFV)、シンドビスウイルス及びベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)のレプリコンに基づくものがある(例えば、Smerdou et al., (2000) Gene. Ther. Regul. 1:33-63、Lundstrom et al., (2002) Technol. Cancer Res. Treat. 1: 83-88、Hanke 2003を参照)。アルファウイルスレプリコンは有用な発現ベクターであって、転写及び一次RNA転写産物の細胞核から細胞質への輸送、輸送されたRNAの細胞質内増幅、及び本発明のAFPなどの異種核酸配列のRNA発現のために必須である、アルファウイルスゲノムRNAの部分を含むRNA又はDNAを指すことができる。このように、レプリコンは、アルファウイルスRNAの細胞質内増幅と下位ゲノムRNA及び本発明のAFPの発現のために必要とされる非構造タンパク質をコード及び発現する。更に、アルファウイルスレプリコンは、キャプシドに包まれてアルファウイルス粒子又はビリオンを生成することができないことが好ましい。このことは、アルファウイルス構造遺伝子の1つ又は複数が、好ましくは、例えば1ヘルパー又は2ヘルパーのアルファウイルスベクター系で起こるように、構造遺伝子の全てが欠けているレプリコンによって達成することができる。好ましい一実施形態において、アルファウイルスレプリコンは、真核生物の発現カセットから転写し、真正のアルファウイルス様5’及び3’末端を有するRNA分子にプロセシングすることができる。
【0119】
アルファウイルスレプリコン及びそれらを含んでいる発現ベクターは当技術分野で公知であり、広範囲にわたるアルファウイルスレプリコンを含む多くのベクターが記載されている。そのようなレプリコンの例は、例えば、米国特許第5739026号、同第5766602号、同第5789245号、同第5792462号、同第5814482号、同第5843723号及び同第6531313号、並びにPolo et al., (1998) Nature Biotechnol. 16: 517-518及びBerglund et al., (1998) Nature Biotechnol. 16: 562-565で見られる。アルファウイルスレプリコンは、任意のアルファウイルス又はアルファウイルス核酸配列の任意の混合物から調製することができる。この点に関しては、好ましいアルファウイルスレプリコンは、シンドビスウイルス、SFV、VEE又はロスリバーウイルスに由来する。
【0120】
他のウイルス発現ベクターとしては、フラビウイルス(国際公開02/072835)、例えば黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス及び日本脳炎ウイルス、ワクシニアウイルスなどのポックスウイルス(米国特許第5505941号)、鶏痘ウイルス(Kent)及びカナリア痘ウイルスなどのアビポックスウイルス(Clements-Mann et al., (1998) J. Infect. Dis. 177: 1230-1246、Egan et al., (1995) J. Infect. Dis. 171: 1623-1627、米国特許第6340462号)、例えば弱毒化アビポックスウイルス、例えばTROVAC(米国特許第5766599号)及びTROVAC(米国特許第7756103号)、ポリオウイルス(米国特許第6780618号、同第6255104号、国際公開92/014489)及びライノウィルスなどのピコルナウイルス、ヘルペスウイルス(国際公開87/000862、国際公開87/04463、国際公開97/014808)、例えば水痘帯状ヘルペスウイルス(VZV;国際公開97/004804)、NYVAC(病原性を低減するために18個の遺伝子欠失が選択されたニューヨークワクシニアウイルス)(Hel et al., (2001) J. Immunol. 167: 7180-7191、米国特許第5494807号、同第5762938号、同第5364773号)、アデノウイルス(AdV;国際公開95/02697、国際公開95/11984、国際公開95/27071、国際公開95/34671)、アデノ随伴ウイルス(AAV;米国特許第4797368号、同第5474935号)、インフルエンザウイルス(国際公開03/068923、国際公開02/008434、国際公開00/053786)、カリフラワーモザイクウイルス(米国特許第4407956号)、タバコモザイクウイルス(TMV)(Palmer et al, (1999) Arch. Virol. 144: 1345-1360、国際公開93/003161)及びブルータングウイルスのNS1小管(Adler et al., (1998) Med. Microbial. Immunol. (Berl) 187: 91-96)がある。これらのベクターの多くは直ちに利用でき、それらの使用に適用できる条件は当業者に公知である。
【0121】
本発明の発現ベクターには、実験動物、哺乳動物又はヒト対象への投与のための細菌性発現ベクターも含まれる。そのような細菌性発現ベクター(弱毒化された浸潤性細菌)は、本発明のAFPをコードするプラスミド又は発現カセットを含む細菌である。発現カセットは、細菌又は真核細胞で発現を促進することができる。前者では、発現は細菌細胞を宿主に導入する前に達成され、後者においては発現は宿主内で起こり、宿主細胞の機構によって促進される。米国特許第5877159号、同第6150170号、同第6500419号及び同第6531313号は、増殖性感染を確立するか疾患を引き起こすことなく動物細胞に侵入し、このように、AFPの発現を得るために真核細胞へのAFPをコードする発現カセットの導入を可能にする細菌ベクターを記載する。
【0122】
適当な細菌性発現ベクターとしては、ウシ結核菌、バシラスカルメットゲラン(BCG)、及びサルモネラ(特に下痢症状のためのワクチンとして開発中のサルモネラの「二重aro」突然変異体)、赤痢菌(Shata et al., (2000) Mol. Med. Today 6: 66-71を参照)、ナイセリア及びリステリア・モノサイトゲネスの弱毒株がある。好ましいチフス菌株には、CVD908Δasd、CVD908ΔhtraA及びCVD915が含まれる。CVD908Δasdサルモネラ株は、アスパラギン酸からのジアミノピメリン酸(DAP)の合成のために必要な酵素であるアスパラギン酸b―セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(asd)をコードするasd遺伝子の欠失によって、CVD908(Tacket et al., (1992) Vaccine 10: 443-446)に由来する。CVD908ΔhtrAは、htrA遺伝子が削除されたチフス菌株である。この突然変異は、その株を更に弱毒化する熱ショック遺伝子をノックアウトする(Tacket et al., (1997) Infect. Immunol. 65:452-456)。CVD915はguaBA遺伝子座の欠失を有してその弱毒化を引き起こしている、弱毒化チフス菌株である(Pasetti et al., Clin. Immunol. 92:76-89, 1999)。この株は、動物試験で、DNAワクチンの送達のために優れていることが示された。好ましい赤痢菌株は、S.flexneri CVD1207である。この株は、その免疫原性を保存しながらもそれを十分に弱毒化するsen、set、virG及びguaBA遺伝子の欠失を有する(Kotloff et al., Infect. Immunol. 68:1034-1039, 2000)。
【0123】
本発明の発現ベクターは、本発明のAFPの調製及び精製のためにも使用する。ベクターは、この点に関しては一般的に細菌、酵母、昆虫又は哺乳動物の細胞で使用する。AFPをコードする核酸分子の発現を指示する核酸制御配列は、そこから発現が指示される宿主細胞(例えば、細菌、酵母、昆虫、又は哺乳動物の細胞)に基づいて選択される。特定の宿主細胞及び発現ベクターのための適当な核酸制御配列は公知である。AFPを含む発現ベクターは、当技術分野で公知の方法によってこれらの細胞に導入することができるが、それらはとりわけ、細胞型及び発現の期間が一時的であるか又は安定しているかどうかによって決まる。例えば、塩化カルシウムトランスフェクションは原核細胞のために通常利用されるが、リン酸カルシウム処理、リポフェクション、マイクロインジェクション、微粒子銃又はエレクトロポレーションは多くの真核細胞のために使用される。当業者に公知である、任意のトランスフェクション、感染、形質転換、又は、原核生物若しくは真核生物であるにせよ細胞に発現ベクターを導入するための適当な手法を使用することができる。
【0124】
本発明のAFPの発現に役立つ、当業者に公知の多数の大腸菌ベクター及び細胞がある。使用に適した他の微生物宿主としては、枯草菌などの桿菌、サルモネラ属、セラチア属などの他の腸内細菌、並びに様々なシュードモナス種がある。これらの原核生物宿主は、主に宿主細胞で作動可能な発現制御配列を一般に含む発現ベクターを支持することができる。ラクトースプロモーター系、トリプトファン(Trp)プロモーター系、βラクタマーゼプロモーター系又はファージλからのプロモーター系などの様々な公知のプロモーターは、任意の数存在してもよい。プロモーターは一般的に発現を制御し、それはオペレータ配列と共同でよく、また、例えば転写及び翻訳の開始及び完了のためのリボソーム結合部位配列を有する。必要に応じて、アミノ末端メチオニンは、タンパク質の5’及びインフレームでのMetコドンの挿入によって提供することができる。細菌での使用に好ましいベクターとしては、QIAGEN社からはpQE70、pQE60及びpQE9が、Stratagene Cloning Systems社からはpBluescriptベクター、Phagescript(商標)ベクター、pNH8A、pNH16a、pNF118A、pNH46Aが、Pharmacia Biotech社からはptrc99a、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、pRIT5がある。他の発現ベクター系は、βガラクトシダーゼ(p-gal;pEX)、マルトース結合タンパク質(pMAL)及びグルタチオンSトランスフェラーゼ(pGST)(例えば、Smith, (1988) Gene 67: 31-40及びAbath. (1990) Peptide Research 3: 167-168を参照)に基づいている。
【0125】
本発明のAFPの発現を指示するために、酵母細胞を使用することもできる。ある状況下で望ましい酵母系を利用する酵母発現系にはいくつかの利点があり、例としては、ジスルフィド対合、翻訳後修飾、タンパク質分泌、及びプロテアーゼ切断部位がAFPコード配列の上流側に挿入されるときの容易な単離がある。Saccharomyces cerevisiaeのプレ―プロα因子リーダー部位(MFa―I遺伝子によってコードされる)は、酵母からのタンパク質分泌を指示するために常用される(Brake et al., (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 4642-4646、米国特許第4870008号)。プレ―プロα因子のリーダー部位は、シグナルペプチド及び、KEX2遺伝子によってコードされる酵母プロテアーゼのための認識配列を含むプロ部分を含む。この酵素は、Lys―Argジペプチド切断シグナル配列のカルボキシル側で、前駆体タンパク質を切断する。AFPコード配列は、プレ―プロα因子リーダー部位に、インフレームで融合することができる。この構築物は、次に強い転写プロモーター、例えばアルコールデヒドロゲナーゼIプロモーター、アクチン又は糖分解プロモーターの管理下に置くことができる。代わりに、金属イオン(即ち、メタロチオネインプロモーターとも呼ばれるCUP1プロモーター)、グルコース、ガラクトース(即ち、GAL1、GAL10)、又は他の糖類の有無に依存するものなど、誘導可能なプロモーターを使用することもできる。融合タンパク質コード配列の後に翻訳終止コドンが来ることができ、その後には転写終止シグナルが来ることができる。酵母での発現に役立つベクターとしては、2環状プラスミド(Broach, J.R. et al, (1979) Gene 8(1): 121-33)及び動原体性プラスミド(Hsiao, C.L. and Carbon, J. (1981) Proc. Natl. Acad. Sci. 78(6): 3760-4)があるが、これらに限定されるものではない。
【0126】
組換え体タンパク質の効率的な翻訳後修飾及び発現は、昆虫細胞のバキュロウイルス系において達成することもできる("Baculovirus Expression Protocols," Humana Press Inc.、国際公開92/005264)。これらの系は、当技術分野においては公知である。
【0127】
特に哺乳動物対象への投与のためにタンパク質を精製するときは、哺乳動物細胞は本発明のAFPの発現及び精製のために役立つ。哺乳動物細胞内でのタンパク質の発現に役立つベクターは、発現を指示するためにしばしば強いウイルスプロモーターを有するが、ヒト細胞で発現を指示することに役立つ他の配列、例えばエンハンサー、ポリアデニル化シグナル及び、本発明のAFPの転写、翻訳、即ち内部リボソームの導入部位(IRES)、及び/又はプロセシングを促進するための他のシグナル配列を含むこともできる。IRES要素の使用が必要となる可能性がある本発明のある実施形態では、IRES要素はウイルスに、例えばピコルナウイルスファミリー(ポリオ及び脳心筋炎)のIRES及びC型肝炎ウイルスのIRESに、又は、哺乳類のBiP IRESなどの哺乳動物のmRNAに由来することができる。その代わりに又はそれに加えて、DNAワクチン又は免疫原性組成物中のプラスミドは、対象宿主細胞で、異種tPAシグナル配列、例えばヒトtPA及び/又は安定化イントロン、例えばウサギβグロビン遺伝子のイントロンIIをコードするヌクレオチド配列を、更に含有及び発現することができる。
【0128】
インビトロ精製のために使用するとき、ベクターに応じて、それらには限定されないが、とりわけアンピシリン、テトラサイクリン、ネオマイシン、ゼオシン、カナマイシン、ブレオマイシン、ハイグロマイシン、クロラムフェニコールなどの抗生物質耐性をコードする選択マーカーが存在してもよい。抗生物質耐性遺伝子を用いない選択系も、発現ベクター及び哺乳動物宿主系で使用することができる。AFPの発現の指示のために使用することができるプロモーター配列としては、それらには限定されないが、強いウイルスプロモーター、例えばヒトサイトメガロウイルス(CMV)からのプロモーター、単純疱疹ウイルス(HSV)のチミジンキナーゼ遺伝子からのプロモーター、アデノウイルス5E2コラゲナーゼプロモーターのようなアデノウイルスからのプロモーター、βアクチンプロモーター、筋肉クレアチンキナーゼプロモーター、並びに複合プロモーター、例えば、とりわけEF―la/HTLVプロモーター(InVitrogen社製)及びFerH又はFerLコアプロモーターで構成されるフェリチン複合プロモーター(InVitrogen社製)がある。好ましい真核生物発現ベクターの中には、Stratagene社から入手可能なpWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXTI及びpSGが、Pharmacia社から入手可能なpSVK3、pBPV、pMSG及びpSVLがある。AFPコード配列は、無傷のタンパク質を合成することができる哺乳動物細胞系に導入することができ、それらは当技術分野で開発されており、例としては、それらには限定されないが、CHO、COS、293、293T、HeLa、NIH 3T3、Jurkat、骨髄腫及びPER.C6細胞系がある。トランスフェクション細胞内の発現ベクター由来のRNAの存在は、ノーザンブロット分析によって確認することができ、cDNA又はタンパク質コード配列に対応する反対側の鎖RNAの生産は、それぞれサザン及びノーザンブロット分析によって確認することができる。
【0129】
細胞形質転換手法及び遺伝子送達方法(遺伝子を送達するためにインビボで使用されるものなど)は、当技術分野で公知である。そのようないかなる手法も、本発明のAFPをコードする核酸又は発現ベクターをそれぞれ細胞又は対象に送達するために使用することができる。
【0130】
本発明のAFPは、細菌、酵母、昆虫又は哺乳動物の細胞から、当技術分野で公知の手法で精製することができる。例えばAFPの精製又は濃縮は、硫酸アンモニウム若しくはエタノール沈殿、酸抽出、アニオン若しくはカチオン交換クロマトグラフィー、リン酸セルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、免疫アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、レクチンクロマトグラフィー、分子篩クロマトグラフィー、等電集束法、ゲル電気泳動、又は各精製段階でAFPの分布を並びにAFPの純度を追跡するモニター手法を使うこれらの方法の組み合わせによって実行することができる。前述の精製段階のいくつか又は全部は、様々な組み合わせで、又は、他の公知の方法と併用して、実質的に精製、単離された本発明のAFPを提供するために使用することもできる。AFPがモノクローナル又はポリクローナル抗体によって認識されるエピトープを含む場合は、免疫親和性精製を単独で、又は、上記の手法と併用することができる。免疫アフィニティークロマトグラフィーについては、AFP(又は、AFPを含む細胞抽出物若しくは他の混合物)は、抗原性ペプチドに特異的な抗体をAFPと結合させる樹脂を含むカラムを通すことによって精製することができる。免疫親和性精製は、親和性試薬が固体支持体に結合しているときは、一括して行うこともできる。これらの手法は当技術分野においては公知である。
【0131】
IV. 免疫原性組成物及びアジュバント
他の態様において、本発明は、本発明のAFP、核酸又は発現ベクターを薬剤として許容される担体との混合で含む、免疫原性組成物を提供する。そのような担体は、免疫学的な使用のためにも許容される。本発明の免疫原性組成物は、エイズの予防、改善又は治療のためのHIVに対する予防的又は治療的なワクチンの1つ又は複数の成分として、HIVに対して免疫応答を刺激するために役立つ。本発明の核酸及びベクターは、遺伝子ワクチン、即ちヒトなどの対象に本発明のAFPをコードする核酸を送達し、その結果AFPが次に対象で発現されて免疫応答を導き出すワクチンを提供するために特に役立つ。
【0132】
本発明の組成物は、注射可能な懸濁液、溶液、スプレー剤、シロップ剤又はエリキシルでよい。そのような組成物を調製するために、所望の程度の純度を有する本発明のAFP、核酸又は発現ベクターを、1つ又は複数の薬剤として許容される担体及び/又は賦形剤と混合する。担体及び賦形剤は、組成物の他の成分と適合するという意味において「許容される」ものでなければならない。許容される担体、賦形剤又は安定剤は使用される投薬量及び濃度でレシピエントに非毒性であり、その例としては、それらには限定されないが、水、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水、ブドウ糖、グリセリン、エタノール若しくはそれらの組み合わせ、リン酸、クエン酸及び他の有機酸などの緩衝液、アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤、保存料(例えば塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチル若しくはベンジルアルコール、アルキルパラベン、例えばメチル若しくはプロピルパラベン、カテコール、レソルシノール、シクロヘキサノール、3―ペンタノール及びm―クレゾール)、低分子量(約10未満の残基)ポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン若しくは免疫グロブリンなどのタンパク質、ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン若しくはリジンなどのアミノ酸、グルコース、マンノース若しくはデキストリンを含む単糖、二糖及び他の炭水化物、EDTAなどのキレート化剤、ショ糖、マンニトール、トレハロース若しくはソルビトールなどの糖類、ナトリウムなどの塩形成対イオン、金属錯体(例えばZn―タンパク質複合体)、及び/又はTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)若しくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性活性剤がある。
【0133】
免疫原性又は免疫学的な組成物は、水中油型乳濁液の形で製剤化することもできる。水中油型乳濁液は、例えば、軽質流動パラフィン油(European Pharmacopea型)、スクアラン、スクアレン、EICOSANE(商標)若しくは四テトラコンタンなどのイソプレノイド油、アルケンのオリゴマー化から生じる油、例えばイソブテン若しくはデセン、線状アルキル基を含む酸若しくはアルコール類のエステル、例えば植物油、オレイン酸エチル、プロピレングリコールジ(カプリレート/カプラート)、グリセリルトリ(カプリレート/カプラート)若しくはプロピレングリコールジオレアート、分枝脂肪酸若しくはアルコール類のエステル、例えばイソステアリン酸エステル、をベースにすることができる。油は、乳濁液をつくるために、有利には乳化剤と併用する。乳化剤は、非イオン性界面活性剤、例えばソルビタン、マンニドのエステル(例えば無水マンニトールオレアート)、グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、及び、エトキシル化されてもよいオレイン酸、イソステアリン酸、リシノール酸又はヒドロキシステアリン酸、及び、ポリオキシプロピレン―ポリオキシエチレンコポリマーブロック、例えばL121などのPluronic(登録商標)製品でよい。アジュバントは、Provax(登録商標)(IDEC Pharmaceuticals社製、San Diego、CA)という商品名で市販されているものなどの、乳化剤、ミセル形成剤及び油の混合物でよい。
【0134】
本発明の免疫原性組成物は、追加の物質、例えば湿潤剤若しくは乳化剤、緩衝剤又はワクチンの効果を強化するアジュバントを含むことができる(Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th edition, Mack Publishing Company, (ed.) 1980)。
【0135】
アジュバントとしては、それらには限定されないが、無機塩類(例えば、AlK(SO4)2、AlNa(SO4)2、AlNH(SO4)2、シリカ、ミョウバン、Al(OH)3、Ca3(PO4)2、カオリン又は炭素)、免疫刺激複合体(ISCOM)を含むか含まないポリヌクレオチド(例えば、CpGオリゴヌクレオチド、例えばChuang, T.H. et al, (2002) J. Leuk. Biol. 71(3): 538-44、Ahmad-Nejad, P. et al (2002) Eur. J. Immunol. 32(7): 1958-68に記載されているもの)、ポリIC若しくはポリAU酸、CpGを含むか含まないポリアルギニン(当技術分野ではIC31としても知られる、Schellack, C. et al (2003) Proceedings of the 34th Annual Meeting of the German Society of Immunology、Lingnau, K. et al (2002) Vaccine 20(29-30): 3498-508を参照)、JuvaVax(商標)(米国特許第6693086号)、ある種の天然物質(例えば結核菌からのワックスD、Cornyebacterium parvum、百日咳菌若しくはブルセラ菌属のメンバーで見られる物質)、フラゲリン(Toll様受容体5リガンド、McSorley, S.J. et al (2002) J. Immunol. 169(7): 3914-9を参照)、QS21、QS17及びQS7などのサポニン(米国特許第5057540号、同第5650398号、同第6524584号、同第6645495号)、一リン酸化リピドA、特に、3―デ―O―アシル化一リン酸化リピドA(3D―MPL)、イミキモド(imiquimod)(当技術分野ではIQMとしても知られ、Aldara(登録商標)として市販されている、米国特許第4689338号、同第5238944号、Zuber, A.K. et al (2004) 22(13-14): 1791-8)、並びにCCR5阻害剤CMPD167(Veazey, R.S. et al (2003) J. Exp. Med. 198: 1551-1562を参照)がある。
【0136】
水酸化アルミニウム又はリン酸塩(ミョウバン)は、一般的に0.05〜0.1%のリン酸緩衝食塩水溶液で用いられる。特にDNAワクチンと併用することができる他のアジュバントは、コレラトキシン、特にCTA1―DD/ISCOM(Mowat, A.M. et al (2001) J. Immunol. 167(6): 3398-405を参照)、ポリホスファゼン(Allcock, H.R. (1998) App. Organometallic Chem. 12(10-11): 659-666、Payne, L.G. et al (1995) Pharm. Biotechnol. 6: 473-93)、サイトカイン、例えば、それらには限定されないが、IL―2、IL―4、GM―CSF、IL―12、IGF―1、IFN―α、IFN―β及びIFN―γ(Boyer et al., (2002) J. Liposome Res. 121: 137-142、国際公開01/095919)、免疫調節タンパク質、例えばCD40L(ADX40、例えば国際公開03/063899を参照)及びナチュラルキラー細胞のCD1aリガンド(CRONY又はα―ガラクトシルセラミドとしても知られる、Green, T.D. et al, (2003) J. Virol. 77(3): 2046-2055を参照)、免疫グロブリンのFc断片に融合したIL―2などの免疫賦活融合タンパク質(Barouch et al., Science 290:486-492, 2000)、並びに共刺激分子B7.1及びB7.2(Boyer)であり、これらの全てはタンパク質として、又はDNAの形で、本発明のAFPをコードするものと同じ発現ベクターに、又は別の発現ベクターに投与することができる。
【0137】
本発明で使用することができるサイトカインとしては、それらには限定されないが、顆粒球コロニー刺激因子(G―CSF)、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM―CSF)、インターフェロンα(IFNα)、インターフェロンβ(IFNβ)、インターフェロンγ(IFNγ)、インターロイキン1α(IL―1α)、インターロイキン1β(IL―1β)、インターロイキン2(IL―2)、インターロイキン3(IL―3)、インターロイキン4(IL―4)、インターロイキン5(IL―5)、インターロイキン6(IL―6)、インターロイキン7(IL―7)、インターロイキン8(IL―8)、インターロイキン9(IL―9)、インターロイキン10(IL―10)、インターロイキン11(IL―11)、インターロイキン12(IL―12)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、腫瘍壊死因子β(TNFβ)及び形質転換成長因子β(TGFβ)がある。サイトカインは、本発明の免疫原性又はワクチンの組成物と同時投与及び/又は逐次投与することができると理解される。このように、例えば、本発明において増殖されるウイルスは、外来性の核酸分子を含むことができ、適当なサイトカイン、例えばワクチン接種をするか又は免疫学的応答を導き出す宿主に適合させたサイトカイン(例えばヒトに投与される組成物のためのヒトサイトカイン)を、インビボで発現することができる。
【0138】
免疫原性組成物はAFP、核酸又は発現ベクターを所望の作用点へ導入して、適当で制御可能な速度でそれを放出するように設計することができる。徐放性製剤の調製法は、当技術分野で公知である。例えば、徐放性製剤は、免疫原及び/又は免疫原性組成物を複合又は吸収するポリマーを用いて生産することができる。徐放性製剤は、所望の放出制御特性又は放出プロフィールを提供することが知られている、適当な巨大分子(例えば、ポリエステル類、ポリアミノ酸、ポリビニル、ピロリドン、エチレンビニルアセテート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース又は硫酸プロタミン)を使って調製することができる。徐放性製剤による作用の持続時間を制御する他の可能な方法は、有効成分をポリエステル類、ポリアミノ酸、ヒドロゲル、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、これらの酸のコポリマー又はエチレンビニルアセテートコポリマーなどのポリマー材の粒子に組み込むことである。代わりに、これらの有効成分をポリマー粒子に組み込む代わりに、コロイド薬剤送達系(例えばリポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルジョンで、例えばコアセルベーション手法又は界面重合によって調製されたマイクロカプセルに、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ(メタアクリル酸メチル)マイクロカプセルに、これらの材料を閉じ込めることが可能である。そのような手法は、New Trends and Developments in Vaccines, Voller et al. (eds.), University Park Press, Baltimore, Md., 1978及びRemington's Pharmaceutical Sciences, 16th editionで開示されている。
【0139】
本発明の免疫原性組成物中の本発明のAFP、核酸及び発現ベクター(まとめて、免疫原)の適当な投薬量は、当業者ならば容易に決定することができる。例えば、免疫原の投薬量は、投与経路及び対象の大きさに従い異なることができる。本発明のAFPの適当な用量は、とりわけAFPの分子量、送達経路、送達手段及びレシピエントの体重に従って、約1〜10μgから約5000mgの範囲にあることができ、一般的には約500pgから約100mgの範囲である。本発明の核酸の適当な用量は、とりわけ、タンパク質送達で評価される要因に加えて核酸分子の大きさに従って、約1μg〜約100mgの範囲であることができ、より一般的には約10〜100μgから約1〜10mgの範囲である。本発明の発現ベクターの送達のための投薬量は、更に発現ベクターの性質に依存する。ベクターがRNA又はDNA分子(脂質又は他の送達粒子に組み込まれた1つ又は複数のプラスミドを含む)であるならば、投薬量中の発現ベクターの量は本発明の核酸のそれと類似する。細菌の発現ベクターの投薬量は、コロニー形成単位(cfu)によって都合よく表される。用量は好ましくは約104〜約1010cfuの範囲、より好ましくは約106〜約1010cfu、並びに約108〜約109cfuの範囲である。ウイルスの発現ベクターの投薬量は、ベクターの性質、例えばベクターがアルファウイルス、アデノウイルス、AAV、ポックスウイルス、レトロウイルス、その他であるかどうかによって決まる。これらの用量のいずれも、単位投薬量に基づいて、又は、対象のキログラム体重あたりの量として計算することができる。
【0140】
ウイルスベクターの投与用量は公知であり、必要に応じて当業者が決定することができる。例示すると、剤が複製欠陥アデノウイルスなどのウイルスベクターである場合、投薬量は約106〜約1012プラーク形成単位(pfu)の範囲であることができ、好ましくは約108〜約1010pfuの間である。組換え体AAVを使う安定して効率的なトランスダクションについては、投薬量はグラム体重につき約1×105IU(感染単位)のAAVからグラム体重につき約1×109IUのAAV、好ましくはグラム体重につき約1×106IUのAAVからグラム体重につき約1×107IUのAAVであることができる。ポックスウイルス及びMVAについては、約105〜約1010pfuの投薬量が役立ち、約107〜約108pfuの投薬量がしばしば使用される。
【0141】
他の適当な用量は、当業者が決定することができる。適当な用量を決定するために、当業者は対象の免疫応答を従来の免疫学的手法で判定して、投薬量を適宜調節することができる。そのような手法としては、例えば、それらには限定されないが、クロム放出試験、四量体結合アッセイ、IFN―γ ELISPOTアッセイ及び細胞内サイトカインアッセイ、並びに他の免疫学的な検出アッセイ、例えばHarlowで詳述されるものがある。
【0142】
本発明は、本発明の発現ベクターを動物細胞に導入してAFPを発現するのに十分な条件下でそれらの細胞を培養することによる、動物細胞で本発明のAFPを発現させる方法を提供する。発現ベクターは、トランスフェクション、形質転換、マイクロインジェクション、感染、エレクトロポレーション、微粒子銃、その他などを含む任意の適当な方法によって導入することができるが、これらに限定されない。そのような手法は、当技術分野で標準である。発現ベクターを導入した後に、少なくともAFPが発現されるまで細胞生存能力を維持するために、細胞は適当な培養条件(即ち、暫くの間適当な条件で)の下で維持される。場合によっては、例えばアルファウイルスレプリコンベクターでは、AFPの発現はAFPをコードするRNA分子の生産を含む。
【0143】
更に、本発明は、動物内に本発明の発現ベクターを送達することによって動物でAFPの発現を得ることによる、本発明のAFPを動物に導入し、発現させる方法を提供する。腸管外、皮下、表皮、口内、経口、筋肉内、静脈内、皮内、鼻腔内、粘膜、局所、又は他の送達方法、例えばPowderjectによる微粒子銃方法(ヘリウムガスによって実行される皮膚への無針送達系)を含む任意の送達方法を使用することができる。そのような技術は、当業者には周知である。発現ベクターは、安定性及び送達効率を改善するために必要に応じて製剤化することができる。発現ベクターが送達されると、AFPのORFは転写(必要な場合)、翻訳されて、コードされたAFPを発現する。当業者は、インビトロ及びインビボでの転写及び翻訳の方法に精通している。
【0144】
動物細胞及び動物でAFPを発現するためのそのような方法は、例えばAFP発現のメカニズム、AFPの局在化、AFP発現に応じて影響又は誘導されるシグナル伝達経路のメカニズム及び様々な核酸調節因子のAFP発現及び局在化に及ぼす影響を研究するための臨床用、診断用又は他の研究用手段として役立つ。
【0145】
本発明に従い、本発明のAFP、核酸及び発現ベクターは、動物で免疫応答を、特に、HIV特異CTL免疫応答を誘導するための免疫原の役目を果たすことができる。それ故に、本明細書で使用されるように、免疫原は動物内に送達されて、直接又は間接的に免疫応答(液性又は細胞性の)を誘導する分子である。HIV免疫原はHIVに対する応答を誘導し、その応答は細胞性でも液性でもよい。HIVCON、RENTA及びHIVAは、HIVタンパク質免疫原の例である(HIVAについては国際公開01/47955を、RENTAについては国際出願/US2004/037699を参照)。pTHr.HIVCON、pTHr.RENTA及びpTHr.HIVAは、DNA又はプラスミドベクターのHIV免疫原の例である。MVA.HIVCON、MVA.RENTA及びMVA.HIVAは、ウイルスベクターのHIV免疫原の例である。
【0146】
本方法は、これらの免疫原を単独使用した場合、又は他のHIV免疫原と併用した場合、並びにアジュバントと併用した場合若しくはしなかった場合の免疫応答を研究するために、実験動物を免疫接種するときの研究手段として役立つ。より詳しくは、本方法はヒトのHIVの予防的又は治療的な阻止、改善又は治療のためのものである。予防的に提供されるとき、特に高リスク対象においては、本方法は理想的にはHIV感染症のいかなる徴候にも先立って、又は、エイズによるいかなる症状にも先立って対象に投与される。免疫原の予防的投与は、ヒト対象においてエイズを阻止又は弱毒化する役目を果たすことができる。治療的に提供される場合は、本方法はエイズ症状の改善及び治療の役目を果たすことができ、有利には感染後できるだけ早い時期に、好ましくはエイズのいかなる症状の出現前に使用されるが、病徴の開始時に(又は、後に)も使用することができる。
【0147】
組換え体ベクターは、本発明のAFPをコードする核酸分子を発現する。詳細には、AFPを単離して特徴を明らかにし、ベクター組換え体に挿入することができる。得られた組換え体ベクターは、対象に免疫接種又は予防接種をするために使用される。対象内でのAFPの発現は、AFPの発現産物に対する免疫応答を対象内で起こすことができる。このように、本発明の組換え体ベクターは、保護的であることができるがその必要はない免疫応答を誘導する手段を提供する、免疫組成物又はワクチンで使用することができる。
【0148】
免疫応答を誘導又は刺激するために、本発明のAFP若しくは発現ベクター又は本発明のAFPは、コードされたAFPがAFPに対する免疫応答を誘導するのに十分なレベルで発現されるように、又は、AFPがAFPに対する免疫応答を誘導するのに十分な量で提供されるように、対象に1回又は複数回送達される。それらに限定されないが筋肉内、静脈内、皮内、粘膜及び局所の送達を含む、いかなる送達方法を使用することができる。そのような技術は、当業者には周知である。送達方法のより具体的な例は、筋肉内注射、皮内注射及び皮下注射である。しかし、送達は注入法に限定される必要はない。更に、動物組織へのDNAの送達は、カチオンのリポソーム(Watanabe et al., (1994) Mol. Reprod. Dev. 38: 268-274、及び国際公開96/20013)、動物筋組織への裸のDNAの直接注入(Robinson et al., (1993) Vaccine 11:957-960、Hoffman et al., (1994) Vaccine 12: 1529-1533、Xiang et al., (1994) Virology 199: 132-140、Webster et al., (1994) Vaccine 12: 1495-1498、Davis et al., (1994) Vaccine 12: 1503-1509及びDavis et al., (1993) Hum. Mol. Gen. 2: 1847-1851)、又は「遺伝子銃」技術を用いたDNAの皮内注射(Johnston et al., (1994) Meth. Cell Biol. 43:353-365)によって達成された。代わりに、送達経路(特に細菌の発現ベクター、例えば弱毒化サルモネラ菌又は赤痢菌種について)は、経口、鼻腔内、又は他の任意の適当な経路によるものでよい。送達は、肛門、膣又は口の粘膜などの粘膜表面を通しても達成される。
【0149】
免疫化スケジュール(又は、体系)は、動物(ヒトを含む)については公知であり、特定の対象及び免疫原(AFPであるにせよ発現ベクターであるにせよ)について容易に決定することができる。それ故に、免疫原は対象に1回又は複数回投与することができる。好ましくは、免疫原の投与の間に設定された時間的間隔がある。この間隔は各対象で異なるが、一般的に、10日〜数週間の範囲であり、しばしば2、4、6又は8週である。ヒトについては、間隔は一般的に2〜6週である。免疫化体系は、一般的に1〜6回の免疫原の投与を有するが、1回又は2回又は4回と少ない回数でもよい。免疫応答を誘導する方法は、免疫原と一緒にアジュバントを投与することを含むこともできる。場合によっては、年1回、年2回、又は他の長い間隔(5〜10年)の追加免疫で、最初の免疫化プロトコルを補うことができる。
【0150】
本方法は、様々なプライムブースト体系、特にDNAプライムMVAブースト体系を含む。これらの方法では、1回又は複数回の初回刺激免疫化の後に、1回又は複数回のブースティング免疫化が続く。実際の抗原は各免疫化について同じでも異なってもよく、免疫原の種類(例えばタンパク質又は発現ベクター)、経路及び免疫原の製剤は変えることができる。例えば、発現ベクターが初回刺激及びブースティング段階で使用される場合、それは同じか異なる種類でよい(例えばDNA又は細菌又はウイルスの発現ベクター)。役立つプライムブースト体系の1つは4週間隔で2回の初回刺激免疫化を提供し、続いて最後の初回刺激免疫化の4及び8週間後に2回のブースティング免疫化が提供される。初回刺激及びブースティング体系を提供するために本発明のDNA、細菌及びウイルスの発現ベクターを用いて包含される、いくつかの置換及び組み合わせがあることは、当業者にとって容易に明らかとなるはずである。
【0151】
本発明の具体的な実施形態は、本発明のAFP、本発明の核酸及び/又は本発明の発現ベクターを対象に1回又は複数回投与することによってヒトでHIVに対して免疫応答を誘導する方法を提供し、AFPは、対象でHIV特異CTL免疫応答を誘導するのに十分な量で投与されるか十分なレベルで発現される。そのような免疫化は、所望の免疫化体系に従って少なくとも2、4又は6週(又は、それ以上)の時間的間隔で複数回繰り返すことができる。
【0152】
この方法は、そのような他の抗原をコードするタンパク質又は発現ベクターなどと組み合わせて用いることができる。組成物は単独で投与することができ、又は、他のHIV免疫原及び/又はHIV免疫原性組成物と、例えば、「他」の免疫学的、抗原性又はワクチン又は治療的な組成物と同時投与若しくは逐次投与することによって、本発明の多価性又は「混合」又は組み合わせの組成物及びそれらを使用する方法を提供する。また、投与の成分及び方法(逐次的又は同時投与)、並びに投薬量は、特定の対象の年齢、性別、体重、種及び状態、投与経路などの要因を考慮に入れて決定することができる。
【0153】
併用するときは、他のHIV免疫原は全体の免疫化体系の一部として、例えば、プライムブースト体系又は他の免疫化プロトコルの一部として、同時に、又は異なる時間に投与することができる。他の多くのHIV免疫原は当技術分野で公知であり、そのような好ましい免疫原の1つはHIVA(国際公開01/47955で記載される)であり、それはプラスミドの上の(例えばpTHr.HIVA)、又はウイルスベクター中の(例えばMVA.HIVA)タンパク質として投与することができる。他のそのようなHIV免疫原はRENTA(国際出願US2004/037699で記載される)であり、それもプラスミド上の(例えばpTHr.RENTA)、又はウイルスベクター内の(例えばMVA.RENTA)タンパク質として投与することができる。
【0154】
例えば、ヒト対象でHIVに対して免疫応答を誘導する1方法は、HIV免疫原の少なくとも1つの初回抗原刺激量及びHIV免疫原の少なくとも1つのブースティング用量を投与することを含み、各用量の免疫原は同じでも異なってもよく、但し、免疫原の少なくとも1つは本発明のAFP、本発明のAFPをコードする核酸又は本発明のAFPをコードする発現ベクターであり、それらの免疫原は対象でHIV特異免疫応答を誘導するのに十分な量で投与されるか、又は十分なレベルで発現される。HIV特異免疫応答は、HIV特異CTL免疫応答を含むことができる。そのような免疫化は、間隔を置いて、好ましくは少なくとも2〜6週の間隔で行うことができる。
【0155】
この方法に従い、pTHr.HIVCONは初回抗原刺激用量として1回又は複数回投与されるか、又は、MVA.HIVCONはブースティング用量として1回又は複数回投与され、初回抗原刺激用量はpTHr.HIVCONであってもそうでなくてもよい。この方法で他のHIV免疫原を使う例として、初回抗原刺激量はpTHr.HIVCONでよく、ブースティング用量はMVA.HIVCON、MVA.RENTA、MVA.HIVA、又はMVA.HIVCON、MVA.RENTA及びMVA.HIVAの混合物、及びそれらの組み合わせでよい。初回刺激又はブースティング用量で混合物が使用される場合、投与のために成分は調合することができるか、別々に投与することができる。別々に投与される場合、成分は互いに2〜6週の間隔で投与される複数の別個の初回刺激又はブースティング用量として、逐次的に投与することもできる。この方法の免疫化体系の1例は、0週時及び4週時に2つの初回抗原刺激量を投与することであり、各用量はpTHr.HIVCON及びpTHr.RENTA又はpTHr.HIVAの混合物であり、続いて、8週時及び12週時に2つのブースティング用量が投与され、各用量はMVA.HIVCON、MVA.RENTA及びMVA.HIVAの混合物である。
【0156】
本発明の方法によって誘導される免疫応答は、当技術分野で公知の標準手法によって評価することができる。CTL応答については、そのような手法としては、それらには限定されないが、細胞内IFN染色アッセイ、四量体アッセイ、ELISPOTアッセイ(Beattie, T. et al (2004) AIDS 18(11): 1595-8)及び51Cr放出アッセイがある。CTL検出法の体系的比較は、Sun, Y. et al (2003) J. Immunol. Meth. 272(1-2): 23-34及びShacklett, B.L. (2002) J. Clin. Immunol. 130(2): 172-82で見られる。他の免疫応答は、Harlowで記載されているように調査することができる。
【0157】
本発明は、インビボ及び/又はインビトロ及び/又はエキソビボで(例えば、後者の2つは、例えばそこから単離後、本発明に従う投与を受けた細胞、宿主から、例えば、そのような細胞の任意選択での拡大の後)遺伝子産物及び/又は免疫学的生成物及び/又は抗体を生産するための方法を含む、ベクターを作製、使用するための組成物及び方法、並びにそのような遺伝子及び/又は免疫学的生成物及び/又は抗体の、特にHIVに対する中和抗体(Haigwood, N.L. and Stamatatos, L. (2003) 17 (Suppl 4: S67-71でレビューされる)の、例えば診断法(Truong, H.M. and Klausner, J.D. (2004) MLO Med Lab Obs. 36(7): 12-13, 16, 18-20でレビューされる)、アッセイ、療法、治療法、などでの使用を包含する。得られた中和抗体は、HIV、SIV又はSIV/HIVハイブリッドに対する免疫原性又は免疫学的な応答を強化又は調整するために、別々に、又は本発明のAFPと併用することができる。中和抗体は特定のクレード又はCRFに特異的に仕立てることができ、又はクレード遍在性であってもよい。本発明のAFPは、より詳細には、特定のHIVタンパク質配列に対するクレード交差性又はクレード遍在性の中和抗体を開発する際に、使用することができる。
【0158】
本発明は、研究場面でのAFP発現ベクターの使用も含む。ベクターは、例えば、関心の異種配列から発現した遺伝子産物に対する細胞応答を、又は、関心の異種配列によってコードされたタンパク質によって媒介されるシグナル伝達経路を研究するために、関心の細胞又は細胞系をトランスフェクト又は感染させるために使用することができる。そのようなシグナル伝達経路としては、HIVタンパク質の発現に応答して、サイトカイン発現、又は遺伝子、例えばそれらには限定されないが、細胞受容体又は細胞表面マーカータンパク質、即ちCD4、CCR5、CXCR5、MHCクラスI及びIIのアップレギュレーション又はダウンレギュレーションを挙げることができる。
【0159】
研究場面では、実験アッセイ及び手法によって容易に検出することができるリポーター遺伝子を含む組換え体ベクター又はウイルスを設計することがしばしば有利である。リポーター遺伝子は当技術分野で公知であり、それらには限定されないが、とりわけアンピシリン、テトラサイクリン、ネオマイシン、ゼオシン、カナマイシン、ブレオマイシン、ハイグロマイシン、クロラムフェニコールなどの抗生物質に対する耐性遺伝子を含むことができる。リポーター遺伝子は、緑色蛍光タンパク質、lacZ遺伝子(β―ガラクトシダーゼをコードする)、ルシフェラーゼ及びβ―グルクロニダーゼを含むこともできる。
【0160】
本発明は、更に、例えばインビトロでタンパク質を生産するための、又は、治療、予防、診断若しくは試験のための抗原性、免疫学的若しくはワクチンの組成物を生成するための、AFPの発現生成物及びその使用に関し、加えて、DNAプローブ、アンチセンスRNA分子、小さな干渉RNA分子(siRNA)、リボザイム及びPCRプライマーの構築で役立つ組換え体ベクターからのDNAに関する。本発明は、本明細書で記載されるAFP(上記参照)を使って合成ペプチドを生産することも包含する。本発明は、環境中に、即ち循環集団又は地域で、又は単一個体中で見られる新規の又は既存のHIVの単離株、クレード及びCRFを特定するためのAFPの使用を含むことができる(Ito, Y. et al (2003) J. Clin. Microbiol. 41(5): 2126-31)。また、本発明のAFPを使用して、例えば、HIVに感染した細胞又は対象において、今日利用できる抗HIV薬剤及び療法に対しての応答の特異性又は抵抗性のメカニズムを判定することができる。抗HIV薬剤の効力は、対象又は対象の個体群に存在するHIVのクレード又はCRFにしばしば依存する。このように、本発明のクレード交差性又はクレード遍在性のAFPを有利に利用して、全てのHIVクレード又はCRFに適用することができる新規の又は最適化された抗HIV薬剤又は療法を開発することができる。更に、今日利用できる抗HIV薬剤及び療法、例えば、なかでもAZT、プロテアーゼ阻害剤、融合阻害剤及びそれらの併用療法の効力は、とりわけ、AFPを発現する細胞又は対象に薬剤又は療法を投与することによって調整又は最適化することができる。
【0161】
本発明のAFPは、別々に、又は、HAART(高活性抗レトロウイルス療法)、中和抗体などの薬剤治療体系又は療法を含む既存の抗HIV療法と並行して使用することができるが、これらの例に限定されない。
【0162】
本発明のAFPは、ヒト以外の霊長類で治療的又は予防的な免疫原性又は免疫学的な応答を起こすために、SIV又はSIV/HIVハイブリッドからの配列を含むように変更又は修飾することもできる。本発明のAFPは、HIVのヒト以外の動物モデルに含まれるように修飾することができる。当業者は、保護的であることができるがその必要はない免疫応答を誘導するために、SIV配列及びCTLエピトープを含むように、本発明のAFPを容易に修飾することができる。
【0163】
例示的な実施形態により本明細書で開示される発明の原理の変更を当業者が加えることができることは理解及び予想することができ、そのような修飾、変更及び置換は本発明の範囲内に含まれるものとする。本明細書で引用した全ての特許及び刊行物は、本明細書で参照により組み込まれる。
【0164】
以下の実施例は本発明の様々な実施形態を例示する目的で提示され、いかなる様式でも本発明を限定するものではない。
[実施例]
【実施例1】
【0165】
HIVCONプラスミドの構築
HIVCON ORF(配列番号1、図2及び配列番号5、図6を参照)を、HIVタンパク質の高度保存ドメインに由来するキメラタンパク質をコードするように設計した。HIVCONキメラタンパク質はHIVの14個の最も保存されたタンパク質ドメインを含み、ドメインは4つの主要なHIVクレードA〜Dの間で6%未満の変動を有する。HIVCON ORFは、Mamu―A*01(SIV Gag p27)エピトープ、マウスP18―I10(H―2K)エピトープ及びmAbエピトープPkを含むこともできる、HIVCON遺伝子断片中に含まれる。HIVCON遺伝子断片(geneART社製、ドイツ)は、好ましいヒトアミノ酸コドン利用を用いて合成した(Andre, S. et al (1998) J. Virol. 72(2): 1497-1503)。HIVCON ORFは、12ヌクレオチドのコンセンサスコザック配列の後にくる(Kozak, (1987) Nucleic Acid Res. 15: 8125-8148)(配列番号5、図6を参照)。14個の保存されたHIVタンパク質ドメインをコードするヌクレオチド配列を、Mamu―A*01エピトープ、H―2K(Romero et al)によって提示されるP18―I10エピトープ、及びC末端の保存タンパク質断片と融合したmAbエピトープPkと互いに直接融合して、配列番号3のHIVCONコード配列を形成した(図4)。遺伝子合成の正確度を検査するために、全体の合成遺伝子断片の配列決定をした。合成エラーが検出された場合は、部位特異的突然変異誘発を使って不適切なヌクレオチドを正しいヌクレオチドで置換した。pTH発現ベクターを生成するために、HIVCON遺伝子断片をプラスミドpTH(Hanke 1998a)に挿入した。全ての組換えDNA操作は、標準手順を使って実施した(Sambrook et al., Molecular Cloning; A Laboratory Manual (2nd ed.), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY 1989)。
【0166】
本明細書で提示した実験では、pTH.HIVCONベクターを使用した。しかし、ヒト患者での使用のためには、pTHr.HIVCON発現ベクターを生成するために、pTHからのβラクタマーゼ遺伝子(アンピシリン耐性遺伝子)が除去される(例えば、BspHI部位でプラスミドを切り取って、HIVCONを含む線状断片を再連結することによって)ことが好ましい点に留意する必要がある。pTHr.HIVCONプラスミドは細菌の選択のために栄養要求性リプレッサ−滴定系を使い、いかなる抗生物質耐性遺伝子も有していない(Williams et al., (1998) Nucleic Acid Res. 26: 2120-2124、米国特許第5972708号)。pTHrベクターでは、HIVCON転写は、ヒトサイトメガロウイルス株AD 169に由来する効率的なエンハンサー/プロモーター/イントロンAカセット(Whittle et al., (1987) Protein Eng. 1: 499-505)及びウシのポリアデニル化部位(Goodwin et al., (1992) J. Biol. Chem. 267: 16330-16334)によって制御される。そのようなpTHr.HIVCONベクターは、特にヒトに用いられるベクターとして、即ちGMP臨床ワクチンに役立つ。
【0167】
HIVCONΔHは、HIVCON遺伝子の免疫優勢マウスP18―I10エピトープ(そのコード配列は配列番号3に存在し、そのアミノ酸配列は配列番号4のヌクレオチド位置789〜798のものである)がPCRによって削除されたHIVCON遺伝子のバージョンである。HIVCONと同様に、HIVCONΔHをpTHプラスミドに挿入してpTH.HIVCONΔH発現ベクターが得られた。
【実施例2】
【0168】
MVA.HIVCON及びMVA.HIVCONΔHの調製
HIVCON断片を、XmaIを使ってpTHr.HIVCONから切り取り、組換えMVA.HIVCONの調製で使用するベクターpSC11.HIVCONを生産するために、トランスファーベクターpSC11(Chakrabarti)のXmaI部位に連結する。プラスミドpSC11.HIVCONは、β―ガラクトシダーゼ遺伝子を有する。
【0169】
HIVCONΔH断片をXmaIを使ってpTHr.HIVCONΔHから切り取り、組換え体MVA.HIVCONΔHの調製で使用するベクターpSC11.HIVCONΔHを生産するために、トランスファーベクターpSC11(Chakrabarti)のXmaI部位に連結する。プラスミドpSC11.HIVCONΔHは、β―ガラクトシダーゼ遺伝子を有する。
【0170】
HIVCON又はHIVCONΔHをコードする断片を、組換え体MVA.HIVCON又はMVA.HIVCONΔH(Chakrabarti)のスクリーニング、滴定及び安定性試験を促進するためにβ―ガラクトシダーゼ遺伝子を同時送達するプラスミドpSC11を使って、p7.5初期/後期ワクシニアプロモーターの下のウイルスゲノムのチミジンキナーゼ遺伝子座に挿入する。このマーカー酵素はヒト腸内細菌によって通常発現され、MVA.HIVAのワクチン接種を受けた健康なHIV非感染ボランティアが含まれたいくつかの治験で、安全であることが示された。
【0171】
簡潔には、組換え体MVA.HIVCON又はMVA.HIVCONΔHビリオンは、感染多重度(MOI)1の親のMVAに感染させた、10%ウシ胎仔血清(FCS)、ペニシリン/ストレプトマイシン及びグルタミンを添加した(DMEM10)Dulbeco's Modified Eagle's Medium(DMEM)で増殖させたニワトリ胚線維芽細胞(CEF)細胞から作製し、Superfectin(Qiagen社製、ドイツ)を使ってエンドトキシンを含まない3μgのpSC11.HIVCONでトランスフェクションする。組換え体は、X―gal(5―ブロモ―4―クロロ―3―インドリル―bD―ガラクトシド)の存在下で、β―ガラクトシダーゼの青色呈色反応によって同定される。組換え体は5ラウンドのプラーク精製にかけ、その後マスターウイルス株を増殖させ、36%ショ糖クッションで精製、滴定して、使用するまで−80℃で保存する。HIVCON又はHIVCONΔHの正しいORFの存在は、MVA.HIVCON又はMVA.HIVCONΔH感染細胞中のタンパク質の配列決定及び免疫蛍光法検出によって確認される。
【実施例3】
【0172】
ヒト細胞内のHIVCON及びHIVCONΔHの発現
HIVCON及びHIVCONΔHの発現は、pTH.HIVCON又はpTH.HIVCONΔHで一過性にトランスフェクションさせたヒトの293T細胞又はHEK293細胞で評価した。HIVCON及びHIVCOΔdHの発現は、MOIが5のMVA.HIVCON又はMVA.HIVCONΔHに感染させたヒト293T細胞で評価した。
【0173】
免疫蛍光法研究については、ポリ―L―リジン(70,000〜150,000の分子質量;Sigma社製)で前処理した無菌のスライドを含む6穴プレートに、293T細胞を接種した(スライドにつき2×105細胞)。24時間後に、細胞単層はpTH.HIVCON又はpTH.HIVCONΔHでトランスフェクションした。MVA構築物からの発現をモニターするためには、細胞単層はMOIが5のMVA.HIVCON又はMVA.HIVCONΔHに感染させる。5%CO2及び37℃での24時間のインキュベーションの後、細胞を洗浄してそれらの膜を穿孔した。スライドはFCSの2%リン酸緩衝食塩水(PBS)溶液により4℃で1時間ブロックし、指定の一次mAbの1:200希釈溶液と一晩、4℃でインキュベートした。mAbは、Pkタグ(Serotec社製、オックスフォード、英国)に対するものであった。インキュベーションの後、スライドはPBSで一度洗浄して、Alexa Fluor(登録商標)594コンジュゲート抗マウス二次抗体の1:500希釈溶液(Molecular Probes社製、オレゴン、アメリカ合衆国)と一晩、4℃でインキュベートした。スライドは再びPBSで一度洗浄し、DAPI(4、6―ジアミジノ―2―フェニルインドール2HCl)核染色液(Vectashield(登録商標)封入剤、Vector Laboratories、米国、に溶解)で染色して、ツァイス社製の免疫蛍光顕微鏡で40×の倍率で撮影した。
【0174】
免疫蛍光の結果は、HIVCON及びHIVCONΔHの発現はPkエピトープに対するmAbを使ってヒト細胞で検出可能であることを示す。図7は、293T細胞内でのHIVCON及びHIVCONΔHの発現を示す。ヒト293T(A、B、C及びD)又はHEK 293(E)細胞における、pTH.HIVCONプラスミドDNA(A)、pTH.HIVCONΔHプラスミドDNA(B)、MVA.HIVCON(C)、MVA.HIVCONΔH(D)、及びAd.HIVCON(E)由来のHIVCONタンパク質の発現は、免疫蛍光法及びHIVCONのPkタグに対するmAbを使用して検出した。核は青(白黒では淡灰色に見える)で示され、Pkは緑(白黒ではブライト/白色に見える)(A、B、C及びD)又は赤(白黒ではブライト/白色に見える)(E)で示される。
【実施例4】
【0175】
MVA.HIVCON及びMVA.HIVCONΔHの遺伝的安定性
挿入されたHIVCON又はHIVCONΔHのORF及びβ―gal遺伝子の遺伝的安定性は、CEF細胞でのMVA.HIVCON及びMVA.HIVCONdHの7回のブラインド逐次継代培養によって確認される。元の(継代培養0)及び最終的な(継代培養7)ウイルス株を次に用いて2反復のウェルを感染させ、その1つのウェルはいかなるMVAプラーク(空のMVA及びMVA.HIVCON又はMVA.HIVCONdH)を検出するためにニュートラルレッドで染色し、他のウェルは、挿入されたβ―gal遺伝子(MVA.HIVCON又はMVA.HIVCONdH)を検出するために、5―ブロモ―4―クロロ―3―インドリル―β―D―ガラクトピラノシド(X―gal)でそれぞれ染色する。2つの力価の比較は、MVA.HIVCON及びMVA.HIVCONdHがこのアッセイの感度より上で安定していることを示唆する。継代培養0及び7からのウイルス株に感染させたCEF細胞の免疫蛍光分析は、HIVCON又はHIVCONdHの発現レベルが同等であることを示す。
【実施例5】
【0176】
組換えhuAd5-GFP.HIVCONベクターの構築
HIVCONワクチン遺伝子を、pAdEasy1アデノウイルスベクター系(Hermeking, H. (1997) Mol. Cell 1: 3-11、He, T.C. et al (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. 95(5): 2509-14)を使ってAd5に挿入する。この系は大腸菌BJ5183細菌細胞の効率的な相同組換え機構を使用して(Nakamura, N. et al (2000) Mol. Cell Biol. 20(23): 8969-8982)、同時形質転換されたアデノウイルス骨格プラスミドベクターpAdEasy1及び関心の遺伝子を有するシャトルベクターpAd-TrackCMVの間の二重組換え事象によって、組換えアデノウイルスゲノムを生成する。ウイルスの生産は、ウイルス骨格に組み込まれた遺伝子によってコードされる緑色蛍光タンパク質(GFP)の助けを借りて、便利に追跡される。この系は、このように空のアデノウイルスによる汚染のリスクなしで、均質なウイルスの作製を可能にする。
【0177】
GFP及びHIVCON遺伝子を有するいくつかのPmeI線状化組換えアデノウイルスDNAを用いて、6穴プレートの70〜80%の集密度のHEK293細胞にトランスフェクションする。トランスフェクションから8日後に、ウェルを削り取り、遠心分離して、2mlのハンクス均衡塩類溶液(HBSS、Sigma社製)で再懸濁する。次に細胞はドライアイス/メタノール浴槽中で凍結融解を4回繰返し、各ウイルス上清の50%を用いて、HEK293細胞の50〜70%集密度のT―25フラスコを再感染させる。再感染の2〜3日後に、ウイルスを同じように再び収集して、T―75フラスコ、その後、T―175フラスコを感染させるために用いる。精製前にこれを10日間にわたって数ラウンド繰り返す。
【0178】
AdGFP-HIVCONの精製は、メーカーの説明書に従ってAdenopure1精製キット(Puresyn社製、米国)を使用して実施する。手短に言えば、AdGFP-HIVCONに感染させた4つのT―175cm2フラスコを削り取り、ドライアイス/メタノール浴槽中で凍結融解を3回繰返し、細胞破片のペレット化後に得られた上清を独自の緩衝液製剤で吸収装置膜を通して高度精製アデノウイルス調製物を単離する。ウイルスの力価は、70〜80%集密度のHEK293細胞を接種した6穴プレート内の精製されたAdGFP-HIVCONの連続希釈、及び感染後24時間のGFP発現細胞の計数によって決定される。
【実施例6】
【0179】
マウスにおけるHIVCON免疫原性
pTH.HIVCONの免疫原性は、P18―I10エピトープを使ってマウスで評価した。5〜6週齢の雌のBALB/cマウスの2群に対し、全身麻酔の下でエンドトキシンを含まないpTH.HIVCONのPBS溶液の50gを、前脛骨筋に注入した。10日後に動物を屠殺して、それらの脾臓を取り出した。個々の脾臓は、2ml注射器ゴムプランジャーを使い、細胞ストレーナ(Falcon社製)を通して処理した。各動物由来の脾細胞を2回洗浄して、10mlのリンパ球培地(10%FCSペニシリン/ストレプトマイシン、20mMのHEPES及び15mMの2―メルカプトエタノールを加えたRPMI1640)で懸濁した。一括CTL培養のために8mlの脾細胞懸濁液を使用した。
【0180】
一括CTL培養物を調製するために、8mlの脾細胞懸濁液を加湿インキュベーター内で2pg/mlのP18―I10ペプチドと37℃、5%CO2で5日間インキュベートした。CTLアッセイの当日、細胞をRPMIで3回洗浄し、51Cr放出アッセイでエフェクター細胞として用いるためにR10(10%FCS及びペニシリン/ストレプトマイシンを加えたRPMI1640)で1mlにつき107細胞の密度で再懸濁した。
【0181】
各バッチの脾細胞について、標的細胞の添加後のエフェクター対標的の比率を200:1と3:1の間にするために、エフェクター細胞はR10培地を使って96穴プレート(Costar社製)のU底ウェル内で2倍に希釈した。2pg/mlのP18―I10ペプチドを含むか含まないR10培地中の五千の51Cr標識P815標的細胞をエフェクターに加えて、混合物を37℃で5時間インキュベートした。自然発生及び全体のクロミウム放出は、それぞれ培地単独、又は5%Triton X―100添加培地内に標的細胞を含むウェルから推定した。比溶解率は、((試料放出−自然発生放出)/(全体の放出−自然発生放出))×100として計算した。自然発生放出は、毎分の全体のカウント数の5%未満であった。
【0182】
図8において、左パネルはペプチドパルス化(充実円)又は非パルス化(開放円)標的細胞による51Cr放出アッセイにおいて対照としてpTHr.HIVAで免疫化したマウスの結果を示し、右パネルはpTHr.HIVCONで免疫化したマウスの結果を示す。全ての動物は免疫化に応答し、相対的に高いレベルの溶解活性が検出された。
【実施例7】
【0183】
HIVCON免疫原に対するマウスT細胞応答の実証
pTH.HIVCONをBALB/cマウスに投与したときの、HIVCON免疫原に対して誘導されたT細胞応答を検討した。HIVCONのP18―I10エピトープに対する特異免疫応答の誘導は、エキソビボ細胞内サイトカイン染色アッセイを使って証明された。このアッセイのために、HIVA又はHIVCONで処理したマウスから単離されたマウス脾細胞を、抗CD28/抗CD49d mAbの存在下で、適当なP18―I10ペプチドパルス化P815細胞で、5%CO2及び37℃で90分間刺激した。次にブレフェルジンAを加えてサイトカイン分泌を阻止し、試料は更なる6時間インキュベートした後に、EDTA及びFACS固定液で反応を終了した。細胞を透過性化し、フィコエリトリン(PE)コンジュゲート抗CD8及びフルオレセインイソチオシアネート(FITC)コンジュゲート抗IFN―γ mAb(BD PharMingen社製)とインキュベートして、FACSを用いて分析した。
【0184】
図9の結果は、HIVCON免疫原によって誘導されたCTL応答を実証する。IFN―γを生産するCD8+脾細胞の割合を、HIVA又はHIVCON免疫原で処理したマウスから単離されてP18―I10ペプチドで刺激したマウス脾細胞について示す。結果は、HIVCON免疫原によって誘導されたIFN―γ生産CD8+細胞の割合は、対照の免疫原HIVAで免疫化された動物と比較してpTH.HIVCONで免疫化された動物で約2倍高いことを更に実証する。グラフのConAカラムのCD8+細胞の割合は、CTL誘導のための陽性対照としての役目を果たす。
【実施例8】
【0185】
HIVCONに対する広いマウスT細胞応答の実証
pTH.HIVCON、pTHr.HIVCON、MVA.HIVCON若しくはhuAd5-GFP.HIVCONの形のHIVCONが、又は、pTH.HIVCONΔH、pTHr.HIVCONΔH若しくはMVA.HIVCONdΔHの形のHIVCONΔHがBALB/cマウスに投与されたときの、HIVCON又はHIVCONΔH免疫原に対して誘導されるT細胞応答の幅を検討する。HIVCONのP18―I10エピトープ又は特定のエピトープに対する特異免疫応答の誘導は、エキソビボ細胞内サイトカイン染色アッセイを使って証明される。このアッセイのために、HIVCON又はHIVCONdHで処理したマウスからマウス脾細胞を単離し、その後、抗CD28/抗CD49d mAbの存在下で、適当なP18―I10ペプチド又はペプチドプールパルス化P815細胞で、5%CO2及び37℃で90分間刺激する。次にブレフェルジンAを加えてサイトカイン分泌を阻止し、試料は更なる6時間インキュベートした後に、EDTA及びFACS固定液で反応を終了する。細胞を透過性化し、PEコンジュゲート抗CD8及びFITCコンジュゲート抗IFN―γ mAb(BD PharMingen社製)とインキュベートして、FACSを用いて分析する。
【0186】
結果は、複数のCTL特異性が免疫原によって誘導され、HIVCON又はHIVCONdHで免疫化したマウス由来のIFN―γを生産するCD8+脾細胞の割合は、ナイーヴな(非免疫化)マウス由来のIFN―γを生産するCD8+脾細胞の割合よりも有意に高いことを実証する。
【0187】
ペプチドプールは、HIVCON免疫原の全長にわたって11個のアミノ酸が重複する15量体ペプチドからなる。各プールは、HIVCON免疫原全長からの約50〜100個のアミノ酸をカバーするペプチドを含むことができる。
【実施例9】
【0188】
インビトロCFSE増殖アッセイ
pTH.HIVA又はpTH.HIVCONで免疫化したマウス由来の、P18―I10ペプチドで再刺激した脾細胞の増殖能をモニターするために、カルボキシフルオレセイン二酢酸スクシンイミジルエステル(CFSE)染色アッセイを用いた。BALB/cマウスは、100μgのDNAの筋肉内への単回投与で免疫化した。脾細胞を10日後に収集し、単離した脾細胞は最終濃度2μMのCFSE(Molecular Probes社製)により、37℃で10分間染色した。反応は、ウシ胎仔血清の添加によって中止した。細胞は3回洗浄し、リンパ球培地で再懸濁して、2μg/mlのP18―I10ペプチドで再刺激した。脾細胞培養物は37℃及び5%CO2で5日間インキュベートし、FACScan(BD社製)で分析し、データ分析はCellQuestソフトウェア(BD社製)を使用して実施した。図10で提示される結果は、pTH.HIVCONで免疫化されたマウス由来の脾細胞は、pTH.HIVA又はConA(陽性対照)で再刺激された脾細胞と同様に、及び、P18―I10(陰性対照パネル)で再刺激されなかった脾細胞と対照的に、培養内で複数世代にわたって増殖し続けることを実証する。
【実施例10】
【0189】
ヒトHLAを発現するトランスジェニックHHDマウスにおけるHIVCONの免疫原性
種間HLA―A2モノ鎖を発現するトランスジェニックHHDマウスは、以前に記載されている(Pascolo et al. (1997) J Exp Med 185:2043-2051)。これらのマウスは、潜在的なヒトワクチンのHLA―A2.1制限CTL応答の研究のための、応用自在のマウスモデルを構成する。HHDトランスジェニック動物は、二重ノックアウトバックグラウンドH―2Db−/−β2m−/−で、種間組換えトランスジェニック分子、N末端ヒトβ2m―HLA―A2.1(α1α2)―マウスH―2Db(α3)、膜貫通、及び細胞質ドメインC末端を発現する。HIVCON AFPに特異的な新規HLA―A2制限CTLエピトープを特定するために、2つの手法がとられる。第1に、HLA―A2タンパク質とよく結合することのできる潜在的ペプチドを特定するために、予測アルゴリズムが用いられる(Tourdot et al. (2000) Eur J Immunol 30:3411-3421)。第2に、11個のアミノ酸が重複し、HIVCON AFPの全長にわたる15量体ペプチドのライブラリーを設計する。15量体ペプチドのライブラリーは、配列重複に基づいて、実施される機能性アッセイの数を低減するいくつかのペプチドプールに分配される。予測に基づくペプチド及び15量体ライブラリーペプチドの両方を合成して、標準のタンパク質合成手法によって精製する。これらのペプチドは、細胞表面MHC分子の安定化によってペプチド結合を測定するアッセイで、HHD単鎖と結合するそれらの能力を試験する(Carmon et al. (2002) J Clin Invest 110:453-462)。所望のCTL応答を誘導するペプチドプールの同定後、ペプチドプールの分画によりCTL応答を誘導する個々のペプチドが特定される。
【0190】
HHDマウスは、全身麻酔の下でpTH.HIVCONのPBS溶液により筋肉注射で免疫化する。一括CTL培養のための脾細胞は、基本的に実施例5で記載されているように調製する。広いCTL応答を誘導する予測ベースのペプチド及びライブラリーペプチドの能力は、エキソビボ細胞内サイトカイン染色アッセイ(基本的に実施例6で記載されるもの)及びCTL誘導性の標的細胞の細胞溶解を測定するインビトロ細胞傷害性アッセイ(基本的に実施例5で記載されるもの)を含む、様々な方法で評価される。
【0191】
最初に、BALB/cにおけるpTH.HIVCON及びMVA.HIVCONワクチンの免疫原性を、C末端のH―2Dd制限エピトープRGPGRAFVTI(Hと呼ばれる)を使って確認する。HIVCONタンパク質全域にわたって重複するペプチドを使って、様々なマウス系統で免疫原性エピトープの出現頻度を推定する。上記エピトープはH―2dハプロタイプでは免疫優勢が強いので、Hエピトープが削除されたHIVCONdHワクチンを使用してBALB/cマウスでの実験を実施する(実施例1)。HLA―A2(HHD)及びHLA―B27トランスジェニックマウス由来の免疫脾細胞も、重複するHIVCONペプチドでパルス化した適当なHLA分子と一致させた標的細胞で試験する。代わりに、HLAトランスジェニックマウス由来のHIVCON誘導T細胞を、HLAと一致させ、植物性凝集素(PHA)でブラストしたHIV―1感染ヒトCD4+細胞で試験する。第2に、ヒト以外の霊長類におけるDNA―MVA/HIVCONの免疫原性を検討する。第3に、重要な実験は、HIVに感染した個体がHIVCON由来のペプチドを認識することができる応答を示すかどうか評価することである。このことは、新鮮な又は培養拡張のIFN―γELISPOT、細胞内サイトカイン染色又は、自家B―LCLが利用できる場合はキリング(殺滅)アッセイで実施される。HIVに感染した個体の陽性応答は、HIV感染細胞が実際に保存HIV領域由来のエピトープを処理して提示することを実証するであろう。
【実施例11】
【0192】
ヒト以外の霊長類における免疫原性
MHCクラスIのMamu―A*01対立遺伝子に陽性のアカゲザル(Macaca mulatta)を、DNAプライム―MVAブースト体系で免疫化する。3頭のマカク(サル1〜3)は0週時及び4週時にプラスミドpTHr.HIVCONによる免疫化を受け、続いて20週時及び24週時に組換えMVA.HIVCONによる免疫化を受ける。2頭のマカク(サル4及び5)は同じ初回刺激免疫化を受けるが、8週時及び12週時に組換えMVA.HIVCONでブーストされる。免疫化は、筋肉内送達される0.5mlの140mM NaCl、0.5mMトリス塩酸、pH7.7、及び0.05mM EDTA中の各1mgのプラスミド、又は皮内送達(i.d.)される0.1mlの140mM NaCl及び10mMトリス塩酸、pH7.7、中の各5×107pfuのMVAからなる。HIVCONワクチンは、動物の腕に送達される。全ての免疫化及び静脈穿刺はケタミンによる鎮静下で実施され、動物は定期的に臨床検査を受ける。
【0193】
サルのPBMCは、Lymphoprep(商標)クッション遠心(Nycomed Pharma AS社製)を使ってヘパリン添加血から単離される。PBMCは、ペプチド特異拡張のために、SIV Gag(CTPDYNQM)タンパク質に由来するペプチドと2週間培養する。Mamu―A*01/Gagのための四量体MHC/ペプチド複合体は、ほかで記載されているように調製する。免疫原性は、day3にhuIL―2を添加して、37℃及び5%CO2で2週間Gagペプチドで再刺激したPBMCを用いて評価した。アッセイ当日に、細胞をフィコエリトリン(PE)コンジュゲートMamu―A*01/ペプチド四量体複合体及びマウス抗huCD8―PerCP mAb(BD PharMingen社製)と反応させて、FACSによって分析する。
【0194】
HIVA及びRENTA免疫原に由来するMamu―A*01制限及び重複ペプチドを使って、IFN―γELISPOTアッセイでHIVCONワクチンに対する多重特異的応答をエキソビボで検出する。IFN―γELISPOTアッセイは、Mamu―A*01制限エピトープペプチド及びHIVCONタンパク質全域にわたって重複するペプチドプールのために新たに単離されたPBMC(22週時に引き抜かれる)を使って、DNA初回抗原刺激―MVAブースト動物で実施される。MABTECHキット(Mabtech社製)の手順及び試薬を使用する。簡潔には、PBMCをLymphoprepクッションで単離して、示されたペプチド又はペプチドプールと37℃及び5%CO2で24時間インキュベートする。放出されたIFN―γはアッセイウェルの底で固定化されたmAbによって捕獲され、酵素に結合した第2のmAb及び発色基質の組み合わせによって可視化される。スポットはELISPOTリーダー(Autoimmun Diagnostika社製、ドイツ)を使って数え、106個の脾細胞あたりのスポット形成単位として表す。
【0195】
サルの一括CTL培養のために、8×106個の単離PBMCを37℃及び5%CO2で1時間、100μlのR20中の10μmのペプチド(又は、ペプチドプール)で再刺激し、2つの24穴プレートウェル内の25ng/mlのhuIL―7を添加した合計4mlのR20で再懸濁する。day3に、Lymphocult-T(Biotest社製)を、10%(v/v)の最終濃度で加える。day8に、5×106個のペプチドパルス化照射自家Bリンパ芽細胞系(B―LCL)を培養物に加え、続いてday11にLymphocult-Tを加える。細胞溶解性試験をday14に実施した。
【0196】
51Cr放出アッセイについては、エフェクター細胞をU底ウェル96穴プレート(Costar社製)内で順番に2倍希釈して、エフェクター対標的の比率を50:1、25:1及び12:1にする。ペプチド(Gag)又はペプチドプール(HIVCONのために)でパルス化した(2μg/ml)かパルス化していない五千個の51Cr標識自家B―LCLをエフェクターに加えて、37℃で6時間インキュベートする。比溶解率をマウス溶解アッセイに関して計算する。自然発生放出は、全体のカウントの20%未満の全ての試料のためのものである。
【実施例12】
【0197】
BALB/cマウスにおけるHIVCONワクチンの免疫原性。
個々のワクチン成分の免疫原性を示す図11(A)を参照。個々の動物由来の脾細胞は、RGPGRAFVTIエピトープを使うELISPOTアッセイで、IFN―γの生産についてエキソビボで試験した。実験は、高い用量のMVA.HIVCON及びAd.HIVCONワクチンを用いた以外は、上記(図11(B)のデータ)のように実施された図11(B)を参照。図11(C)は、上と同様にIFN―γELISPOTアッセイを用いて、様々なプライム―ブーストワクチン接種療法と比較した個々のワクチン成分の免疫原性を実証する。図11(D)は、DNAプライム―MVAブーストワクチン接種療法と比較した、個々のワクチン成分の免疫原性を実証する。個々の動物由来の脾細胞をRGPGRAFVTIペプチドとの培養で5日間再刺激し、ペプチドパルス化(充実)又は非パルス化(開放)標的について51Cr放出アッセイで試験した。
【実施例13】
【0198】
BALB/cマウスにおけるHIVCON及びHIVCONΔHワクチンの免疫原性。
個々の動物由来の脾細胞は、HIVCON配列全体にわたる重複ペプチドのプールを使うELISPOTアッセイで、IFN―γの生産についてエキソビボで試験した。動物は、0週時に100μgのpTH.HIVCONで、2週時に108PFUのAd.HIVCONで、8週時に107PFUのMVA.HIVCONで免疫化した。動物は、10週時に屠殺した。結果を図12(A)に示す。0週時に100μgのpTH.HIVCONΔHで、2週時に107PFUのMVA.HIVCONμHで免疫化した動物を用いた以外は、類似の実験を実施した。動物は、4週時に屠殺した。結果を図12(B)に示す。プール1、3及び4中の反応性ペプチド類が特定された。
【実施例14】
【0199】
HLA―A2トランスジェニックマウスHHDにおけるHIVCONワクチンの免疫原性。
個々の動物由来の脾細胞は、HIVCON配列全体にわたる重複ペプチドのプールを使うELISPOTアッセイで、IFN―γの生産についてエキソビボで試験した。動物は、0週時に100μgのpTH.HIVCONで、2週時に108PFUのAd.HIVCONで、8週時に107PFUのMVA.HIVCONで免疫化した。動物は、10週時に屠殺した。結果を図13に示す。プール3及び4中の反応性ペプチド類が特定された。
【0200】
このように本発明の好ましい実施形態を詳細に記載したが、その精神又は範囲から逸脱することなくその多くの明らかな変更が可能であるので、添付の請求項によって規定される本発明は、上の記載で示した特定の詳細によって限定されるものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0201】
【図1】HIVCON免疫原の概略図である。HIVCON免疫原は、HIVタンパク質の高度に保存されたドメインに由来するキメラタンパク質である。各配列ドメインの起源遺伝子はボックス内に示し、(コンセンサス配列の)起源クレードは下で示す。Ga=Gag、Po=Pol、Vi=Vif、En=Env。図で示すHIVCONのバージョンは、最後のEnvドメインに続いて1つのサルCTLエピトープ(Mamu)、1つのマウスCTLエピトープ(P18―I10、以下で説明し、図ではH―2で示す)及びモノクローナル抗体(mAb)エピトープ(Pk)を有する。本明細書で記載されているHIVCON免疫原の他のバージョンは、これらの最後の3つの更なるドメインを有することができず、代わりに最後のEnvドメインで終わる。
【図2】配列番号1のヌクレオチド配列であり、最後のEnvドメインに続いて3つの更なるエピトープ(サルCTLエピトープ(Mamu)、マウスCTLエピトープ(P18―I10/H2)及びmAbエピトープPk)を含まないHIVCON免疫原をコードする2334個のヌクレオチドの配列を示す図。配列番号1は第1のATG(第1のメチオニンをコードする)で始まり、最後のEnvドメインの最後のアミノ酸をコードするヌクレオチドの後の終止コドン(TAG)で終わる。
【図3】配列番号2のアミノ酸配列であり、配列番号1によってコードされる777個のアミノ酸の免疫原を示す図。このHIVCON免疫原は、最後のEnvドメインに続いて3つの更なるエピトープ(サルCTLエピトープ(Mamu)、マウスCTLエピトープ(P18―I10/H2)及びmAbエピトープPk)を含まない。
【図4】配列番号3のヌクレオチド配列であり、最後のEnvドメインに続いてサルCTLエピトープ(Mamu)、マウスCTLエピトープ(P18―I10/H2)及びmAbエピトープ(Pk)を含むHIVCON免疫原をコードする2421bpのヌクレオチド配列を示す図。最初の2331個のヌクレオチドは、配列番号1の2331個のコードヌクレオチドと同じである(即ち、最後の終止コドンを除いた配列番号1の配列)。最後の90ヌクレオチドは、サルCTLエピトープ(Mamu)、マウスCTLエピトープ(P18―I10/H2)及びmAbエピトープ(Pk)をコードするヌクレオチドである。
【図5】配列番号4のアミノ酸配列であり、最後のEnvドメインに続いてサルCTLエピトープ(Mamu)、マウスCTLエピトープ(P18―I10/H2)及びmAbエピトープ(Pk)を含むHIVCON免疫原をコードする806個のアミノ酸の免疫原を示す図。最初の777アミノ酸は、配列番号2と同じである。最後の29個のアミノ酸は、サルCTLエピトープ(Mamu)、マウスCTLエピトープ(P18―I10/H2)及びmAbエピトープ(Pk)をコードするアミノ酸である。
【図6】配列番号5のヌクレオチド配列であり、HIVCON免疫原をコードする2382個のヌクレオチドの配列を示す図。最初の18ヌクレオチドは、2つの制限部位(SmaI/XmaI部位及びXbaI部位)を含む。これらの部位は、本明細書で記載されるpTH又はpTHrベクターなどのベクターに対して、HIVCONコード配列を挿入/除去するために使用することができる。次の12個のヌクレオチドは、コザックコンセンサスリーダー配列CACCATG(下線付き)を含む。ヌクレオチド30〜2364は図2(配列番号1)のHIVCONコード配列であり、図3(配列番号4)のHIVCON免疫原をコードし、即ち、更なる3つのエピトープは加えられない。ヌクレオチド30〜2364は、太字体で示す。最後の18個のヌクレオチドは、本明細書で記載されるpTH又はpTHrベクターなどの様々なベクターに対して、HIVCONコード配列を挿入/除去するために用いることができる、2つの制限部位(SmaI/XmaI部位及びXbaI部位)を含む。
【図7】293T細胞内でのHIVCON及びHIVCONΔHの発現を示す図である。ヒト293T(A、B、C及びD)又はHEK 293(E)細胞における、pTH.HIVCONプラスミドDNA(A)、pTH.HIVCONΔHプラスミドDNA(B)、MVA.HIVCON(C)、MVA.HIVCONΔH(D)、及びAd.HIVCON(E)由来のHIVCONタンパク質の発現は、免疫蛍光法及びHIVCONのPkタブに対するmAbを使用して検出した。核は青(白黒では淡灰色に見える)で示され、Pkは緑(白黒ではブライト/白色に見える)(A、B、C及びD)又は赤(白黒ではブライト/白色に見える)(E)で示される。
【図8】HIVCONのP18―I10エピトープに対するT細胞応答の惹起によって評価された、pTHr.HIVCONの免疫原性を示すキリングアッセイを示す図である。BALB/cマウスは、100μgのDNAの筋肉内への単回投与で免疫接種した。脾細胞を10日後に収集し、P18―I10ペプチドとの培養で5日間再刺激し、51Cr放出アッセイで試験した。図は、P18―I10ペプチドパルス化(充実円)又は非パルス化(開放円)標的細胞を使ってpTHr.HIVA(左パネル)又はpTHr.HIVCON(右パネル)で免疫接種したマウスについての、51Cr放出アッセイにおけるエフェクター標的細胞比の関数としての比溶解パーセンテージをグラフィカルに例示する。
【図9】HIVA又はHIVCON免疫原で処理され、P18―I10ペプチドで刺激された(充実バー)か刺激されなかった(開放バー)マウスから単離されたマウス脾細胞における、IFN―γを生産するCD8+脾細胞のパーセンテージのFACS分析の棒グラフ。
【図10】インビトロ増殖アッセイの結果を示す図。BALB/cマウスは、100μgのDNAの筋肉内への単回投与で免疫接種した。脾細胞を10日後に収集し、CFSEで染色し、P18―I10ペプチドとの培養で5日間再刺激して、FACSカリバー(Calibur)で分析した。FACSデータ収集は、リンパ球及びCD8+集団でゲートされた。代表的なマウスからのデータを示す。
【図11】BALB/cマウスにおけるHIVCONワクチンの免疫原性を示す図。(A)個々のワクチン成分の免疫原性。個々の動物由来の脾細胞は、RGPGRAFVTIエピトープを使うELISPOTアッセイで、IFN―γの生産についてエキソビボで試験した。(B)Aと同様であるが、MVA.HIVCON及びAd.HIVCONワクチンに関しては高い用量。(C)上と同様にIFN―γELISPOTアッセイを用いて、様々なプライム―ブーストワクチン接種療法と比較した個々のワクチン成分の免疫原性。(D)DNAプライム―MVAブーストワクチン接種療法と比較した、個々のワクチン成分の免疫原性。個々の動物由来の脾細胞をRGPGRAFVTIペプチドとの培養で5日間再刺激し、ペプチドパルス化(充実)又は非パルス化(開放)標的について51Cr放出アッセイで試験した。
【図12】BALB/cマウスにおけるHIVCON及びHIVCONΔHワクチンの免疫原性を示す図。(A)個々の動物由来の脾細胞は、HIVCON配列全体にわたる重複ペプチドのプールを使うELISPOTアッセイで、IFN―γの生産についてエキソビボで試験した。動物は、0週時に100μgのpTH.HIVCONで、2週時に108PFUのAd.HIVCONで、8週時に107PFUのMVA.HIVCONで免疫接種した。動物は、10週時に屠殺した。(B)(A)と同様であるが、0週時に100μgのpTH.HIVCONΔHで、2週時に107PFUのMVA.HIVCONμHで免疫接種した動物を用いた。動物は、4週時に屠殺した。プール1、3及び4中の反応性ペプチド類が特定された。
【図13】HLA―A2トランスジェニックマウスHHDにおけるHIVCONワクチンの免疫原性を示す図。個々のHHD動物由来の脾細胞は、HIVCON配列全体にわたる重複ペプチドのプールを使うELISPOTアッセイで、IFN―γの生産についてエキソビボで試験した。動物は、0週時に100μgのpTH.HIVCONで、2週時に108PFUのAd.HIVCONで、8週時に107PFUのMVA.HIVCONで免疫接種した。動物は、10週時に屠殺した。プール3及び4中の反応性ペプチド類が特定された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のポリペプチドを含み、各ポリペプチドが少なくとも配列番号2又は配列番号4の一部若しくは断片に対応する、免疫原性ポリペプチドのライブラリー。
【請求項2】
複数の免疫原性ポリペプチドが、全体で配列番号2又は配列番号4の全長に対応することを特徴とする、請求項1に記載のライブラリー。
【請求項3】
各ポリペプチドの一部が、重複するアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載のライブラリー。
【請求項4】
重複するアミノ酸が、少なくとも11個のアミノ酸であることを特徴とする、請求項3に記載のライブラリー。
【請求項5】
ポリペプチドが、合成ポリペプチドであることを特徴とする、請求項1に記載のライブラリー。
【請求項6】
さらにアジュバントを含むことを特徴とする、請求項1に記載のライブラリー。
【請求項7】
アジュバントが、無機塩類、ポリヌクレオチド、ポリアルギニン、ISCOM、サポニン、一リン酸化リピドA、イミキモド、CCR−5阻害剤、毒素、ポリホスファゼン、サイトカイン、免疫調節タンパク質、免疫賦活性融合タンパク質、共刺激分子及びそれらの組合せからなる群より選択されることを特徴とする、請求項6に記載のライブラリー。
【請求項8】
動物で免疫応答を誘導する方法であって、1又は2以上の請求項1に記載の免疫原性ポリペプチドを、ライブラリーに対する免疫応答を誘導するための十分な量で前記動物に送達することを含む方法。
【請求項9】
ヒト対象にHIVに対する免疫応答を誘導する方法であって、対象に1又は2回以上免疫原を投与することを含み、前記免疫原が、1又は2以上の請求項1に記載の免疫原性ポリペプチドを含み、ライブラリーが、前記対象においてHIV特異的CTL免疫応答を誘導する十分な量で投与されるか、十分なレベルで発現することを特徴とする方法。
【請求項10】
対象に少なくとも1回のHIV免疫原の初回用量と少なくとも1回のHIV免疫原のブースティング用量とを投与することを含み、少なくとも免疫原の1つが、1又は2以上の請求項1に記載の免疫原性ポリペプチドであれば各用量中の免疫原が同一であっても異なってもよく、前記免疫原が、前記対象においてHIV特異的T細胞免疫応答を誘導するための十分な量で投与されるか、十分なレベルで発現することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項1】
複数のポリペプチドを含み、各ポリペプチドが少なくとも配列番号2又は配列番号4の一部若しくは断片に対応する、免疫原性ポリペプチドのライブラリー。
【請求項2】
複数の免疫原性ポリペプチドが、全体で配列番号2又は配列番号4の全長に対応することを特徴とする、請求項1に記載のライブラリー。
【請求項3】
各ポリペプチドの一部が、重複するアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載のライブラリー。
【請求項4】
重複するアミノ酸が、少なくとも11個のアミノ酸であることを特徴とする、請求項3に記載のライブラリー。
【請求項5】
ポリペプチドが、合成ポリペプチドであることを特徴とする、請求項1に記載のライブラリー。
【請求項6】
さらにアジュバントを含むことを特徴とする、請求項1に記載のライブラリー。
【請求項7】
アジュバントが、無機塩類、ポリヌクレオチド、ポリアルギニン、ISCOM、サポニン、一リン酸化リピドA、イミキモド、CCR−5阻害剤、毒素、ポリホスファゼン、サイトカイン、免疫調節タンパク質、免疫賦活性融合タンパク質、共刺激分子及びそれらの組合せからなる群より選択されることを特徴とする、請求項6に記載のライブラリー。
【請求項8】
動物で免疫応答を誘導する方法であって、1又は2以上の請求項1に記載の免疫原性ポリペプチドを、ライブラリーに対する免疫応答を誘導するための十分な量で前記動物に送達することを含む方法。
【請求項9】
ヒト対象にHIVに対する免疫応答を誘導する方法であって、対象に1又は2回以上免疫原を投与することを含み、前記免疫原が、1又は2以上の請求項1に記載の免疫原性ポリペプチドを含み、ライブラリーが、前記対象においてHIV特異的CTL免疫応答を誘導する十分な量で投与されるか、十分なレベルで発現することを特徴とする方法。
【請求項10】
対象に少なくとも1回のHIV免疫原の初回用量と少なくとも1回のHIV免疫原のブースティング用量とを投与することを含み、少なくとも免疫原の1つが、1又は2以上の請求項1に記載の免疫原性ポリペプチドであれば各用量中の免疫原が同一であっても異なってもよく、前記免疫原が、前記対象においてHIV特異的T細胞免疫応答を誘導するための十分な量で投与されるか、十分なレベルで発現することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−189397(P2010−189397A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63450(P2010−63450)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【分割の表示】特願2007−556690(P2007−556690)の分割
【原出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(597166578)メディカル リサーチ カウンシル (60)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【分割の表示】特願2007−556690(P2007−556690)の分割
【原出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(597166578)メディカル リサーチ カウンシル (60)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]