説明

HLA−A24分子結合性副甲状腺ホルモン関連蛋白由来ペプチドを含有する医薬組成物

【課題】 骨転移を有する癌患者に対するペプチド基盤免疫療法を可能とする医薬組成物を提供すること。
【解決手段】
本発明は、HLA-A24分子結合性副甲状腺ホルモン関連蛋白由来ペプチドまたは機能的に同等の性質を有するその誘導体を含む、癌(但し前立腺癌を除く)を処置または予防するための医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、各種癌タイプのHLA-A24分子陽性癌患者においてPTH-rPペプチド特異的癌反応性CTLを誘導し、癌を処置または予防しうる。本発明は、多くの癌患者、中でも骨転移を有する癌患者に対するペプチド基盤免疫療法を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HLA-A24分子結合性副甲状腺ホルモン関連蛋白由来ペプチドを含有する、癌、特に胃癌、腎癌、大腸癌または子宮頸癌を処置または予防するための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
初期段階の癌患者の多くにとって外科的切除と化学療法は有効な治療方法である。しかしながら現在利用可能な治療方法は、再発時や進行期の癌にはそれほど有効ではない。遠隔転移を有する癌患者の予後は非常に悪く、そのような患者のための新しい治療方法の提供が急務である。現在検討されている方法の1つが特異的免疫療法であり、なかでもペプチド基盤ワクチンは、癌に対する全身性免疫のための簡便かつ魅力的な方法を提供すると考えられる。
【0003】
副甲状腺ホルモン関連蛋白 (PTH-rP)は、副甲状腺ホルモン (PTH)と構造的に類似することからそのように名付けられた (非特許文献1)。PTH-rPは、悪性高カルシウム血症に関与すると考えられている (非特許文献2)。さらにPTH-rPは、初期前立腺癌の90%に発現し、かつ骨転移の発症に重要な分子であることが知られている (非特許文献3、4)。それゆえこの分子は、骨転移を有する癌患者に対する免疫療法的治療において有望な標的分子と考えられている(非特許文献3)。本発明者らは、HLA-A24またはHLA-A2分子陽性前立腺癌患者に対するペプチド基盤免疫療法に利用可能なPTH-rP由来ペプチドを同定している(非特許文献5、6)。
【非特許文献1】Kemp, B.E., Moseley, J. M., Rodda, C. P., et al., Parathyroid hormone-related protein of malignancy: active synthetic fragments. Science 1987; 238(4833): 1568-70.
【非特許文献2】Guise, T.A., Parathyroid hormone-related protein and bone metastases. Cancer 1997; 80(8 Suppl): 1572-80.
【非特許文献3】Francini, G., Scardino, A., Kosmatopoulos, K., et al., High-affinity HLA-A(*)02.01 peptides from parathyroid hormone-related protein generate in vitro and in vivo antitumor CTL response without autoimmune side effects. J Immunol 2002; 169(9): 4840-9.
【非特許文献4】Deftos, L.J., Barken, I., Burton, D. W., R.M. Hoffman, and J. Geller, Direct evidence that PTHrP expression promotes prostate cancer progression in bone. Biochem Biophys Res Commun 2005; 327(2): 468-72.
【非特許文献5】Yao, A., Harada, M., Matsueda, S., et al., Identification of parathyroid hormone-related protein-derived peptides immunogenic in human histocompatibility leukocyte antigen-A24+ prostate cancer patients. Br J Cancer 2004; 91(2): 287-96.
【非特許文献6】Yao, A., Harada, M., Matsueda, S., et al., New epitope peptides derived from parathyroid hormone-related protein which have the capacity to induce prostate cancer-reactive cytotoxic T lymphocytes in HLA-A2+ prostate cancer patients. Prostate 2005; 62(3): 233-42.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前立腺癌だけでなく、骨転移を有する各種癌タイプの癌患者に対するペプチド基盤免疫療法を可能とする医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、PTH-rPが様々な癌タイプの患者に対する特異的免疫療法において共通の標的分子と成りうるかについて検討した。はじめに、各種腫瘍細胞株のPTH-rPのmRNAおよびタンパク質レベルでの発現を、RT-PCR、フローサイトメトリーおよび免疫細胞化学によって検討した。PTH-rP mRNAは、胃癌、腎癌、大腸癌、子宮頸癌、肺癌および乳癌細胞株の大部分に発現しており、フローサイトメトリーおよび免疫細胞化学によりタンパク質レベルでの発現も確認できた。次に、HLA-A24分子陽性の胃癌、腎癌、大腸癌および子宮頸癌患者の末梢血単核細胞(PBMC)を2種類のPTH-rPペプチド(PTH-rP102-111およびPTH-rP110-119ペプチド)でin vitro刺激し、癌反応性の細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を誘導できるかについて検討した。これらペプチドは、各種癌タイプのHLA-A24分子陽性患者のPBMCからPTH-rPペプチド特異的癌反応性CTLを誘導することができた。以上の結果に基づき本発明が完成した。
【0006】
本発明は、以下のものを提供する:
(1)HLA-A24分子結合性副甲状腺ホルモン関連蛋白由来ペプチドまたは機能的に同等の性質を有するその誘導体を含む、癌(但し前立腺癌を除く)を処置または予防するための医薬組成物;
(2)癌が胃癌、腎癌、大腸癌および子宮頸癌よりなる群から選択される、(1)記載の医薬組成物;
(3)癌が骨転移性である、(1)または(2)記載の医薬組成物;
(4)ペプチドが配列番号1または2に示すアミノ酸配列を有する、(1)から(3)までのいずれかに記載の医薬組成物;
(5)癌の転移性骨病変を処置または予防するためのものである、(1)から(4)までのいずれかに記載の医薬組成物;
(6)HLA-A24分子結合性副甲状腺ホルモン関連蛋白由来ペプチドまたは機能的に同等の性質を有するその誘導体を発現するベクターを含む、癌(但し前立腺癌を除く)を処置または予防するための医薬組成物;
(7)HLA-A24分子結合性副甲状腺ホルモン関連蛋白由来ペプチドまたは機能的に同等の性質を有するその誘導体とHLA-A24分子陽性癌患者(但し前立腺癌患者を除く)より採取された末梢血単核細胞とを接触させることを含む、癌反応性細胞傷害性T細胞を誘導する方法;
(8)HLA-A24分子結合性副甲状腺ホルモン関連蛋白由来ペプチドまたは機能的に同等の性質を有するその誘導体を含む、癌(但し前立腺癌を除く)反応性細胞傷害性T細胞を誘導するためのキット;
(9)HLA-A24分子結合性副甲状腺ホルモン関連蛋白由来ペプチドまたは機能的に同等の性質を有するその誘導体をHLA-A24分子陽性癌患者(但し前立腺癌患者を除く)に由来する抗原提示能を有する細胞に取り込ませることを含む、癌反応性細胞傷害性T細胞を誘導可能な抗原提示細胞を調製する方法;
(10)HLA-A24分子結合性副甲状腺ホルモン関連蛋白由来ペプチドもしくは機能的に同等の性質を有するその誘導体または該ペプチドもしくは誘導体を発現するベクターを含む、癌(但し前立腺癌を除く)反応性細胞傷害性T細胞を誘導可能な抗原提示細胞を調製するためのキット。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、各種癌タイプのHLA-A24分子陽性癌患者においてPTH-rPペプチド特異的癌反応性CTLを誘導することにより癌を処置または予防しうる医薬組成物が提供された。HLA-A24アレルは日本人の60%、コーカサス人の20%およびアフリカ人の12%に見られる(Imanishi, T., Akazawa, T., Kimura, A., K. Tokunaga, and T. Gojobori, Allele and haplotype frewuencies for HLA and completment loci in various ethnic groups. In HLA1991, Tsuji, K., Aizawa, M., Sasazuki, T. (eds). Oxford: Oxford Scientific Publications 1992; Vol. 1: 1065-220)。したがって本発明は、多くの癌患者に対するペプチド基盤免疫療法を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明において「副甲状腺ホルモン関連蛋白由来ペプチド」、「PTH-rP由来ペプチド」または「PTH-rPペプチド」とは、副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTH-rP)の一部より成り、HLA-A24拘束性にペプチド特異的CTLを誘導可能なペプチドである。そのようなペプチドは、例えば前述の非特許文献5に記載の方法によって同定することができる。説明すると、まずPTH-rPのアミノ酸配列に基づきHLA-A24分子結合モチーフを有するペプチドを合成し、そのペプチドでHLA-A24分子陽性癌患者から採取したPBMCを刺激する。そして、ペプチド刺激PBMCが対応ペプチドをパルスした抗原提示細胞に応答してIFN-γのようなサイトカインを産生するか否かをELISA法等により測定して、CTL誘導能を判断する。誘導されたCTLの細胞傷害活性は、51Cr放出測定法等により確認することができる。副甲状腺ホルモン関連蛋白由来ペプチドは、アミノ酸残基数が8〜14個の範囲内であることが好ましく、より好ましくは8〜11個、特に好ましくは9または10個である。本発明では、配列番号1または2に示すアミノ酸配列を有するペプチドが好適に用いられる。
【0009】
本発明において「ペプチドの誘導体」とは、ペプチドのアミノ酸配列に1または2個の置換、欠失および/または付加を導入したペプチドをいう。「機能的に同等の性質を有する」とは、HLA-A24拘束性に特異的CTLを誘導可能な性質を備えることを意味する。「機能的に同等の性質を有する」か否かは、前記方法に従い判断することができる。
【0010】
アミノ酸の置換、欠失および/または付加は、HLA分子結合モチーフ上許容されるものが好ましい。他のアミノ酸による置換または付加を含む場合、他のアミノ酸は天然のアミノ酸またはアミノ酸アナログであってよく、アミノ酸アナログとしては、アミノ酸のN-アシル化物、O-アシル化物、エステル化物、酸アミド化物、アルキル化物等が挙げられる。ペプチドの性質を変化させない観点から、同族アミノ酸(極性アミノ酸、非極性アミノ酸、疎水性アミノ酸、親水性アミノ酸、陽性荷電アミノ酸、陰性荷電アミノおよび芳香族アミノ酸等)の間での置換が好ましい。
【0011】
本発明におけるペプチドおよび誘導体は、機能を著しく損なわない限りにおいてその構成アミノ酸またはカルボキシル基などが修飾されていてもよい。修飾は、N末端や遊離のアミノ基にホルミル基、アセチル基、t-ブトキシカルボニル基等を結合するものや、C末端や遊離のカルボキシル基にメチル基、エチル基、t-ブチル基、ベンジル基等を結合するものが挙げられる。
【0012】
本発明におけるペプチドおよび誘導体は、通常のペプチド合成により製造することができる。そのような方法として、例えば、Peptide Synthesis, Interscience, New York,1966; The Proteins, Vol2, Academic Press Inc.,New York, 1976;ペプチド合成、丸善(株)、1975;ペプチド合成の基礎と実験、丸善(株)、1985;医薬品の開発続 第十四巻・ペプチド合成、広川書店、1991)などに記載されている方法が挙げられる。
【0013】
本発明は、PTH-rP由来ペプチドまたはその誘導体のアミノ酸配列を含み、細胞内で断片化されて前記ペプチドまたは誘導体をHLA分子との複合体として提供することができるペプチドを含む医薬組成物をも包含する。PTH-rP由来ペプチドまたはその誘導体を提供できる限り、ペプチドのアミノ酸残基数およびアミノ酸配列は任意である。
【0014】
本発明の医薬組成物は、1種類のペプチドまたは誘導体を含むものであってもよく、2種類以上のペプチドおよび/または誘導体を組み合わせて含んでも良い。癌患者のCTLは相異なる癌抗原ペプチドを認識する細胞の集合体なので、複数種類のペプチドおよび/また誘導体を組み合わせて使用するとさらに効果的である。本発明で使用するペプチド以外の癌抗原ペプチドと組み合わせても良い。
【0015】
本発明の医薬組成物は、ペプチドまたは誘導体に加えて、製薬的に許容される担体などを含むことができる。担体としては、セルロース、重合アミノ酸、アルブミン等が使用できる。リポソーム製剤、直径数μmのビーズに結合させた粒子状の製剤、リピッドを結合させた製剤などにしてもよい。また、免疫応答が効果的に成立するように従来からワクチン投与に用いられることが知られているアジュバントとともに投与することもできる。投与方法は、例えば皮内投与または皮下投与などである。
【0016】
本発明の医薬組成物は、癌ワクチンとして使用可能である。投与量は、疾患の状態、個々の患者の年齢、体重等により適宜調整することができるが、通常医薬組成物中のペプチドまたは誘導体の量として0.0001mg〜1000mg、好ましくは0.0001mg〜100mg、より好ましくは0.001mg〜10mg、0.01〜10mg、0.1〜5mgまたは0.5〜3mgである。これを数日、数週または数ヶ月に1回、1〜3年間継続して投与することが好ましい。
【0017】
本発明の医薬組成物は、PTH-rP発現癌細胞を特異的に傷害するCTLを効率的に増殖させ、癌を処置または予防することができる。本発明の医薬組成物は、癌が、胃癌、腎癌、大腸癌、子宮頸癌、肺癌および乳癌よりなる群、特に胃癌、腎癌、大腸癌および子宮頸癌よりなる群から選択される場合に好適である。PTH-rPは、骨芽細胞の受容体に結合して骨の形成と再吸収を刺激する因子である。癌細胞が産生したPTH-rPは、癌に伴う高カルシウム血症や転移性骨病変に関与すると考えられている。それゆえ本発明の医薬組成物は、骨転移を伴う癌に特に有用である。本発明の医薬組成物は、骨転移の予防にも有効である。
【0018】
本発明の医薬組成物は、癌の転移性骨病変を処置または予防するためにも用いうる。「転移性骨病変」とは、癌細胞の骨への転移により骨に生じる破壊的または増殖的変化を意味する。本発明の医薬組成物は、PTH-rP発現癌細胞の傷害を促進することにより、癌細胞の骨への転移を予防し、転移性骨病変の形成および進行を抑制する。
【0019】
本発明はまた、HLA-A24分子結合性PTH-rP由来ペプチドまたは機能的に同等の性質を有するその誘導体を発現するベクターを含む、癌を処置または予防するための医薬組成物を提供する。前記ベクターが抗原提示細胞内で発現すると、HLA-A24拘束性に特異的CTLを誘導可能なPTH-rP由来ペプチドまたは誘導体がHLA-A24分子と複合体を形成して細胞表面に提示される。この抗原提示細胞は、PTH-rP発現癌細胞に反応するCTLを効率的に増殖させることができる。当該医薬組成物は、癌の転移性骨病変を処置または予防するために使用することもできる。当該医薬組成物は、胃癌、腎癌、大腸癌、子宮頸癌、肺癌および乳癌よりなる群、特に胃癌、腎癌、大腸癌および子宮頸癌よりなる群から選択される癌に好適に用いられる。ペプチドは、配列番号1または2に示すアミノ酸配列を有するものが好適である。
【0020】
ベクターとしては、各種プラスミドおよびウィルスベクター、例えばアデノウィルス、アデノ関連ウィルス、レトロウィルス、ワクシニアウィルス等が挙げられる(Liu M, Acres B, Balloul JM, Bizouarne N, Paul S, Slos P, Squiban P. Gene-based vaccines and immunotherapeutics. Proc Natl Acad Sci U S A 101 Suppl, 14567-71, 2004)。ベクターの調製方法は当業界にて周知である(Molecular Cloning: A laboraroy manual, 2nd edn. New York, Cold Spring Harbor Laboratory)。
【0021】
前記ベクターを含む本発明の医薬組成物は、患者体内の抗原提示細胞において前記ペプチドまたは誘導体を発現させるため患者に投与してもよく、あるいは体外で適当な細胞、例えば患者由来の樹状細胞、において前記ペプチドまたは誘導体を発現させるために使用しても良い。これらの方法は当業界において周知である(Hrouda D, Dalgleish AG. Gene therapy for prostate cancer. Gene Ther 3: 845-52, 1996)。
【0022】
投与量は、疾患の状態、個々の患者の年齢、体重等により変化するが、DNA含量として0.1μg〜100mg、好ましくは1μg〜50mgである。投与方法には、静脈注射、皮下投与、皮内投与等が挙げられる。
【0023】
本発明のCTL誘導方法は、PTH-rPを発現するHLA-A24分子陽性癌細胞を特異的に傷害するCTLを提供するものである。本発明において「癌反応性」とは、癌細胞上のPTH-rP由来ペプチドとHLA-A24分子との複合体を認識し、その細胞を傷害しうる性質を有することを意味する。好ましい態様として、癌は、胃癌、腎癌、大腸癌、子宮頸癌、肺癌および乳癌よりなる群、特に胃癌、腎癌、大腸癌および子宮頸癌よりなる群から選択される。本発明のCTL誘導方法は、例えば、HLA-A24拘束性にペプチド特異的CTLを誘導可能なPTH-rP由来ペプチドの存在下、in vitroでHLA-A24分子陽性癌患者から採取されたPBMCを培養することにより行う。本方法は、PBMCを採取した患者体内に誘導したCTLを戻して癌細胞を傷害する養子免疫療法に有用である。
【0024】
本発明のCTL誘導キットは、前記CTL誘導方法を実施するために用いられる。本発明のキットは、HLA-A24拘束性にペプチド特異的CTLを誘導可能なPTH-rP由来ペプチドまたはその誘導体を1または2種類以上含み、さらに適当な緩衝液や培地などを含むこともできる。
【0025】
本発明の抗原提示細胞調製方法は、PTH-rPを発現するHLA-A24分子陽性癌細胞を傷害するCTLを誘導するための抗原提示細胞を提供するものである。本方法は、癌が胃癌、腎癌、大腸癌、子宮頸癌、肺癌および乳癌よりなる群、特に胃癌、腎癌、大腸癌および子宮頸癌よりなる群から選択される場合に好適である。本発明の抗原提示細胞調製方法は、例えば、HLA-A24拘束性にペプチド特異的CTLを誘導可能なPTH-rP由来ペプチドを、HLA-A24分子陽性癌患者由来の抗原提示能を有する細胞にパルスすることより行う。あるいはそのようなペプチドを発現可能なベクターを、前記細胞に導入し発現させてもよい。ペプチドは、配列番号1または2に示すアミノ酸配列を有するものが好適である。抗原提示能を有する細胞は例えば樹状細胞であり、患者より採取したPBMCから培養プレート接着細胞を分離し、IL-4およびGM-CSFの存在下で約1週間培養することにより調製することができる。本発明の方法により調製された抗原提示細胞は、その細胞表面に提示するペプチドまたは誘導体とHLA分子との複合体を特異的に認識するCTLを誘導することができ、患者に投与されると患者体内でPTH-rPを発現するHLA-A24分子陽性癌細胞を傷害するCTLの誘導を促進することができる。
【0026】
本発明の抗原提示細胞調製キットは、前記抗原提示細胞調製方法を行うために用いられる。本発明のキットは、HLA-A24拘束性にペプチド特異的CTLを誘導可能なPTH-rP由来ペプチドまたはその誘導体を1または2種類以上含み、さらに適当な緩衝液や培地などを含むこともできる。
【0027】
本発明はさらに、治療上有効量のHLA-A24分子結合性PTH-rP由来ペプチドまたは機能的に同等の性質を有するその誘導体を患者に投与することを含む、癌(但し前立腺癌を除く)を処置または予防する方法を提供する。また、本発明は、HLA-A24分子結合性PTH-rP由来ペプチドまたは機能的に同等の性質を有するその誘導体の、癌(但し前立腺癌を除く)を処置または予防するための医薬組成物を製造するための使用を提供する。
【実施例】
【0028】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はいかなる意味においてもこれら実施例により制限されるものではない。
I.材料と方法
細胞株
MKN-7、MKN-28およびMKN-45 (胃腺癌); RERF-LC-AIおよびQG56 (肺扁平上皮癌); 11-18、1-87、LK87およびLC-1 (肺腺癌); R-27およびCRL1500 (乳癌); KUR-11、RC30-14、Caki-1、MAMIYAおよびVMRC-RCW (腎細胞癌);およびCOLO201、COLO205、COLO320およびSW480 (大腸腺癌)細胞は、10% FCS含有RPMI-1640にて培養した。MDA-MB-231 (乳癌); HCT116 (大腸腺癌); SKG-I、SKG-II、OMC-1およびSKG-IIIb (子宮頸部扁平上皮癌); SKG-IIIaおよび OMC-4 (子宮頸部腺癌); およびOMC-3 (卵巣癌)細胞は、10% FCS含有DMEMにて培養した。KWS (胃腺癌)、MCF-7およびYMB-1-E (乳癌)およびSW620 (大腸腺癌)細胞は、10% FCS 含有EMEMにて、37℃、5% CO2加湿環境下で培養した。
【0029】
RT-PCR
RNAzolTM B (Tel-Test Inc., Friendswood, TX, USA)を用いて、癌細胞株からトータルRNA(Total RNA)を単離した。SuperScriptTM Preamplification System for First Strand cDNA Synthesis (Invitrogen)を用いてcDNAを調製し、それをPTH-rP については 5’-TCTTCCTTCACCATCTGATCG-3’(センス) および 5’-TGTCCTTGGAAGGTCTCTGC-3’(アンチセンス)を、β-アクチンについては 5’-CTTCGCGGGCGACGATGC-3’(センス)および5’-CGTACATGGCTGGGGTGTTG-3’(アンチセンス)をプライマーとして用いて増幅した。Taq DNA ポリメラーゼを使用し、DNAサーマルサイクラー(iCycler, Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA, USA)で、95℃1分、60℃1分、72℃1分、30サイクル、のPCRを行った。PCR産物は、2%アガロースゲルにおける電気泳動により分離した。β-アクチン mRNAについてのRT-PCRは、解析に使用したRNAの質を評価するために行った。
【0030】
免疫蛍光顕微鏡解析
35-mm 培養ディッシュ上の細胞をTBS (10 mM Tris, pH 7.4, 100 mM NaCl)ですすぎ、3.7 % ホルムアルデヒドを室温で5分間処置して固定し、TBSで洗浄し、その後3% BSAを15分間処置してブロックした。マウス抗PTH-rPモノクローナル抗体(mAb) (1:100希釈, Ab-1; Oncogene Research Products)を室温で1時間処置して細胞を染色した。TBSで洗浄した後、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)結合抗マウスイムノグロブリンG(IgG) (1:200希釈; Molecular Probes)で細胞を染色し、ヨードプロピジウム (PI)で対比染色した。染色細胞に1, 4-ジアザビシクロ-[2, 2, 2]-オクタン/グリセロールをのせ、共焦点レーザー走査顕微鏡(Fluoview; Olympus)により観察した。
【0031】
フローサイトメトリー解析
PTH-rPタンパク質の発現を調べるため、トリプシン処理して細胞を回収し、10% FCS-RPMIで再懸濁し、次いで3% ホルムアルデヒド中で固定した。固定後、細胞をPBSで3回洗浄し、2.5 μg/mlのウサギポリクローナル抗PTH-rP抗体(1:75希釈, H-137; Santa Cruz, CA, USA)と室温で1時間インキュベートした。ウサギ免疫前血清を対照として使用した。PBSで洗浄した後、FITC結合抗ウサギIgG (1:150希釈; Molecular Probes)を室温で1時間処置して細胞を染色した。フローサイトメトリーはEPICSフローサイトメーターにより行い、データはEXPO32解析ソフトウェア(Beckman Coulter)により解析した。
【0032】
患者由来PBMCの調製
本試験開始前に試験に参加した18人の癌患者から書面による同意を得た。これら患者はいずれもヒト免疫不全ウィルス (HIV)には感染していなかった。各被験者から末梢血20mlを採取し、Ficoll-Conray密度勾配遠心法によりPBMCを調製した。癌患者および健常人のPBMC上のHLA-A24分子の発現はフローサイトメトリーにより測定した。
【0033】
ペプチド
ペプチドは全て純度90%を超えるものであり、Biologica Co.(名古屋)より購入した。HLA-A24結合モチーフを有する、PTH-rP由来ペプチド(102-111: RYLTQETNKV および110-119: KVETYKEQPL)、インフルエンザ(Flu)ウィルス由来ペプチド(RFYIQMCYEL)、EBV由来ペプチド(TYGPVFMCL)およびHIV由来ペプチド(RYLRQQLLGI)を使用した。ペプチドは全てDMSOにて用量10 mg/ml に溶解した
【0034】
PBMC中のペプチド反応性CTLの検出
PBMC中のペプチド反応性CTLを検出は、既報の方法に従い行った(非特許文献7)。説明すると、U底96ウェルマイクロカルチャープレート(Nunc, Roskilde, Denmark)にて培養培地200μlの容量でPBMC (1 X 105 細胞/ウェル)を各ペプチド10 μg/mlとともにインキュベートした。培養培地は、45 % RPMI-1640、45 % AIM-V 培地(Gibco BRL) 、10 % FCS、100 U/ml インターロイキン(IL)-2および0.1 mM MEM非必須アミノ酸溶液 (Gibco, BRL)より構成された。3日毎に培養培地の半分を除去し、対応ペプチド(20 μg/ml)を含有する新しい培地と置き換えた。培養15日目に培養細胞を4ウェルに分け、そのうち2ウェルはPTH-rPペプチドをパルスしたC1R-A24細胞 (Dr. M. Takiguchi, Kumamoto University, Japan)に対して、他の2ウェルはHIVペプチドをパルスしたC1R-A24細胞に対して使用した。18時間インキュベートした後、上清を回収し、IFN-γのレベルをELISAにより測定した。
【0035】
細胞傷害性試験
細胞傷害性試験を行うのに充分な数の細胞を得るため、PTH-rPペプチドでin vitro刺激をしたPBMCを、96ウェル丸底ウェルプレートにて100 U/ml IL-2 とともにさらに約10日間培養した。細胞傷害性試験の直前に、CD8 Positive Isolation Kit (Dynal, Oslo, Norway)を用いてCD8陽性T細胞を単離した。そして、6時間51Cr放出試験により、精製CD8陽性T細胞を腫瘍細胞に対する細胞傷害活性について試験した。96丸底ウェルプレートにおいて、各ウェルにつき2000個の51Cr-標識細胞を各種エフェクター細胞/標的細胞の比率で培養した。抗体による阻害実験では、試験開始時に抗HLAクラスI (W6/32: マウス IgG2a)、抗HLAクラスII(HLA-DR) (L243: マウス IgG2a)、または抗CD14 (H14: マウス IgG2a) mAbを 20 μg/mlの用量にて添加した。
【0036】
コールド標的細胞阻害試験
PTH-rPペプチド反応性CTLの特異性は、コールド標的細胞阻害試験により確認した。説明すると、96丸底ウェルプレートにおいて、51Cr-標識標的細胞(2 X 103 細胞/ウェル)とCTL (4 X 104 細胞/ウェル)とを、2 X 104 細胞のコールド標的細胞とともに培養した。HIVペプチドまたは対応PTH-rPペプチドのいずれかを前もってパルスしたC1R-A24細胞をコールド標的細胞として使用した。51Cr-標識標的細胞には、癌タイプを合わせた癌細胞株を使用した。
【0037】
統計
データの統計学的有意差は両側Student's t 検定により検討した。0.05未満のP値(*)を統計学的に有意であると判断した。
【0038】
II.結果
1.各種癌細胞株におけるPTH-rPの発現
はじめに、胃癌、腎癌、大腸癌、子宮頸癌、肺癌および乳癌細胞株におけるPTH-rPのmRNA発現レベルを半定量的RT-PCR解析により調べた(図1)。細胞株によって発現レベルは異なるものの、試験したほとんどの癌細胞株においてPTH-rP mRNAが発現していることがわかった。いくつかの細胞株においては、陽性対照(PC)として使用した前立腺癌細胞株であるLNCaPよりも発現が高かった。
次に、PTH-rPタンパク質の発現を確認するため免疫細胞化学的解析を行った(図2A)。PTH-rPは、SKG-I (子宮頸部扁平上皮癌)(図2A−a)、QG56 (肺扁平上皮癌)(図2A−b)およびMAMIYA (腎細胞癌)(図2A−d)細胞においては細胞質全体に点状に発現していた。一方、RT-PCR解析でPTH-rP mRNAの発現が弱かったR-27 (乳癌)細胞(図1−d)においては発現レベルが非常に低かった(図2A−c)。
さらに、細胞内染色のフローサイトメトリー解析によってPTH-rPタンパク質の発現を調べた(図2B)。PTH-rPタンパク質の発現は、MKN-45 (胃腺癌)(図2B−a)、SKG-I (子宮頸部扁平上皮癌)(図2B−b)、QG56 (肺扁平上皮癌)(図2B−c)、およびKUR-11並びにMAMIYA (腎細胞癌) (図2B−eおよびf)細胞においては高かった。しかしながら、R-27 (乳癌)(図2B−d)およびCOLO201 (大腸腺癌)(図2B−g)細胞は、ほんの低いレベルでしかPTH-rP発現を示さないか、あるいはPTH-rP発現が陰性であった。
これらタンパク質発現解析によって得られた結果は、PT-PCR解析によって得られた結果と一致する。
【0039】
2.各種癌タイプのHLA-A24分子陽性患者に由来するPTH-rPペプチド反応性CTLの誘導
本発明者らは以前、HLA-A24分子陽性前立腺癌患者のPBMCからペプチド特異的な前立腺癌反応性CTLを誘導することができる2種類のPTH-rP由来ペプチド、PTH-rP102-111およびPTH-rP110-119を同定した (非特許文献5)。これらペプチドが各種癌タイプの患者においてPTH-rPペプチド特異的CTLが誘導できるか否かについて検討するため、患者のPBMCをin vitro においていずれかのPTH-rPペプチドで刺激し、次いでそのペプチド刺激PBMCが対応PTH-rPペプチドまたはHIVペプチドを前もってパルスしたC1R-A24細胞に応答してIFN-γを産生するかについて調べた(表1)。本実験では、FluおよびEBV由来ペプチドを対照として使用した。HIVペプチドに応答し産生されたIFN-γをバックグラウンドとして差し引き、最良の応答が見られた結果を示す(表1)。ペプチド特異的CTLの誘導の成功は、有意な値(P<0.05、両側Student's t 検定による)が観察された場合に陽性であると判断した。
【表1】

PTH-rP102-111 ペプチドは、5人の腎癌患者のうち2人、5人の胃癌患者のうち2人、4人の大腸癌患者のうち1人、および4人の子宮頸癌患者のうち2人において、ペプチド反応性CTLを誘導することがわかった。PTH-rP110-119 ペプチドもまた、5人の腎癌患者のうち2人、5人の胃癌患者のうち2人、4人の大腸癌患者のうち2人、4人の子宮頸癌患者のうち3人において、ペプチド反応性CTLを誘導した。
以上の結果は、これらPTH-rPペプチドが、様々な癌タイプの患者のPBMCからペプチド反応性CTLを誘導できることを示している。
【0040】
3.癌患者由来PTH-rPペプチド反応性CTLの癌細胞に対する細胞傷害活性
次に、癌患者から誘導されたPTH-rPペプチド反応性CTLが、癌細胞に対して細胞傷害活性を示し得るかについて検討した。RT-PCRの結果(図1)に基づき、以下の癌細胞株を細胞傷害活性試験の標的細胞として使用した: KUR-11およびRC30-14 (腎細胞癌);MKN-45およびMKN-28 (胃腺癌) ;COLO320およびCOLO205 (大腸腺癌) ; SKG-I並およびOMC-1 (子宮頸部扁平上皮癌)。以下の細胞株はHLA-A24分子の表面発現が陽性であった: KUR-11、MKN-45、COLO320およびSKG-I; 一方以下の細胞株はHLA-A24分子の表面発現は陰性であった: RC30-14、MKN-28、COLO205およびOMC-1 (データ非提示)。上記2で顕著なレベルのIFN-γを産生した5人の患者由来のPBMC (表1、Pt #1(胃癌)、Pt #6(腎癌)、Pt #12(大腸癌)、Pt #13(大腸癌)およびPt #15(子宮頸癌))を、前述の培養プロトコールに従い示したPTH-rPペプチドで繰り返し刺激した。そして、試験の直前にこれら細胞からCD8陽性T細胞を単離した。
PTH-rP102-111 ペプチドまたはPTH-rP110-119 ペプチド刺激CD8陽性T細胞は、PTH-rP陽性/HLA-A24分子陽性癌細胞(KUR-11、MKN-45、COLO320およびSKG-I)に対して、PTH-rP陽性/HLA-A24陰性癌細胞(RC30-14、MKN-28、COLO205およびOMC-1)およびPTH-rP陰性/HLA-A24分子陽性PHA誘導T芽球化細胞に対してよりも、高いレベルの細胞傷害活性を示した(図3)。
PTH-rP陽性/HLA-A24分子陽性癌細胞に対する細胞傷害活性は抗HLAクラスI mAbの添加によって有意に抑制されたが、抗HLAクラスII mAbまたは対照として使用した抗CD14 mAbの添加によっては抑制されなかった(図4A)。
さらに、PTH-rP陽性/HLA-A24分子陽性癌細胞に対する細胞傷害活性は、対応PTH-rPペプチドをパルスしたC1R-A24細胞をコールド標的細胞として添加すると有意に抑制されたが、この抑制はHIVペプチドパルスC1R-A24細胞の添加によっては観察されなかった(図4B)。
以上の結果は、これらPTH-rPペプチドで刺激した各種癌患者由来PBMCが対応する癌細胞を傷害しうることを示す。また、本実験で観察された細胞傷害活性は主にHLAクラスI拘束性PTH-rPペプチド特異的CD8陽性T細胞によることを示す。
4.まとめ
以上より、PTH-rP102-111 ペプチドおよびPTH-rP110-119 ペプチドが、各種癌タイプの癌患者に対するペプチド基盤免疫療法において有用であることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、各種癌細胞株におけるPTH-rP mRNAの発現を示す図面代用写真である。(a)胃癌、(b)子宮頸癌、(c)肺癌、(d)乳癌、(e)腎癌および(f)大腸癌細胞株が示される。PC(陽性対照)はLNCaP(前立腺癌細胞株)、NC(陰性対照)は健常人由来PBMCである。ほとんどの癌細胞株においてPTH-rP mRNAが発現していることがわかった。
【図2A】図2Aは、各種癌細胞株におけるPTH-rPタンパク質の細胞内分布を示す図面代用写真である。(a)SKG-I (子宮頸癌)、(b)QG56 (肺癌)、(c)R-27 (乳癌)および(d)MAMIYA (腎癌) 細胞について示す。白破線で囲まれた部分が細胞の核を表し、その周囲の白抜き部分が抗PTHrP抗体で染色された部分を表す。PTH-rPタンパク質は、細胞質に点状に分布していることがわかった。
【図2B】図2Bは、各種癌細胞株の細胞内PTH-rPタンパク質発現をフローサイトメトリー解析によって調べた結果を示す図である。(a)MKN-45 (胃癌)、(b)SKG-I (子宮頸癌) 、(c)QG56 (肺癌) 、(d)R-27 (乳癌) 、(e)KUR-11 (腎癌) 、(f)MAMIYA (腎癌)、および(g)COLO201 (大腸癌) 細胞について示す。
【図3】図3は、各種癌タイプの癌患者由来PBMCからの癌反応性CTLの誘導を示すグラフである。グラフ中、黒丸はPTH-rP陽性/HLA-A24分子陽性標的細胞を、白丸はPTH-rP陽性/HLA-A24陰性標的細胞を示す。癌患者PBMC由来のCD8陽性T細胞は、PTH-rP陽性/HLA-A24分子陽性癌細胞に対して高いレベルの細胞傷害活性を示した。
【図4A】図4Aは、PTH-rP陽性/HLA-A24分子陽性癌細胞に対するCD8陽性T細胞依存的細胞傷害活性を示すグラフである。PTH-rP陽性/HLA-A24分子陽性癌細胞に対する細胞傷害活性は抗HLAクラスI mAbによって有意に抑制されたが、抗HLAクラスII mAbまたは抗CD14 mAbによっては抑制されなかった。
【図4B】図4Bは、PTH-rP陽性/HLA-A24分子陽性癌細胞に対するPTH-rPペプチド特異的細胞傷害活性を示すグラフである。PTH-rP陽性/HLA-A24分子陽性癌細胞に対する細胞傷害活性は対応PTH-rPペプチドをパルスしたC1R-A24細胞により有意に抑制されたが、HIVペプチドをパルスしたC1R-A24細胞によっては抑制されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HLA-A24分子結合性副甲状腺ホルモン関連蛋白由来ペプチドまたは機能的に同等の性質を有するその誘導体を含む、癌(但し前立腺癌を除く)を処置または予防するための医薬組成物。
【請求項2】
癌が胃癌、腎癌、大腸癌および子宮頸癌よりなる群から選択される、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
癌が骨転移性である、請求項1または2記載の医薬組成物。
【請求項4】
ペプチドが配列番号1または2に示すアミノ酸配列を有する、請求項1から3までのいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
癌の転移性骨病変を処置または予防するためのものである、請求項1から4までのいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
HLA-A24分子結合性副甲状腺ホルモン関連蛋白由来ペプチドまたは機能的に同等の性質を有するその誘導体を発現するベクターを含む、癌(但し前立腺癌を除く)を処置または予防するための医薬組成物。
【請求項7】
HLA-A24分子結合性副甲状腺ホルモン関連蛋白由来ペプチドまたは機能的に同等の性質を有するその誘導体とHLA-A24分子陽性癌患者(但し前立腺癌患者を除く)より採取された末梢血単核細胞とを接触させることを含む、癌反応性細胞傷害性T細胞を誘導する方法。
【請求項8】
HLA-A24分子結合性副甲状腺ホルモン関連蛋白由来ペプチドまたは機能的に同等の性質を有するその誘導体を含む、癌(但し前立腺癌を除く)反応性細胞傷害性T細胞を誘導するためのキット。
【請求項9】
HLA-A24分子結合性副甲状腺ホルモン関連蛋白由来ペプチドまたは機能的に同等の性質を有するその誘導体をHLA-A24分子陽性癌患者(但し前立腺癌患者を除く)に由来する抗原提示能を有する細胞に取り込ませることを含む、癌反応性細胞傷害性T細胞を誘導可能な抗原提示細胞を調製する方法。
【請求項10】
HLA-A24分子結合性副甲状腺ホルモン関連蛋白由来ペプチドもしくは機能的に同等の性質を有するその誘導体または該ペプチドもしくは誘導体を発現するベクターを含む、癌(但し前立腺癌を除く)反応性細胞傷害性T細胞を誘導可能な抗原提示細胞を調製するためのキット。


【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公開番号】特開2008−260689(P2008−260689A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−221399(P2005−221399)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(599045903)学校法人 久留米大学 (72)
【Fターム(参考)】