説明

HLAクラスII結合WT1ペプチド及びその組成物、並びにその作成方法

【課題】WT1発現癌細胞を治療する方法、WT1発現癌細胞の発生率を減少させる方法、及びWT1発現癌細胞に対する免疫応答を誘導する組成物及び方法を提供する。
【解決手段】本発明は、WT1ペプチド、並びに前記WT1ペプチドを含む組成物及びワクチンを提供する。本発明に係るWT1ペプチドによって、(a)炎症サイトカインを生成し、且つ(b)WT1を提示する細胞を溶解するT細胞が生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、WT1ペプチド、並びにWT1ペプチドを用いて、WT1発現癌細胞を治療する方法、WT1発現癌細胞の発生率を減少させる方法、及びWT1発現癌細胞に対する免疫応答を誘導する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
新生児10000人当たり1人に発生する小児腎芽細胞腫であるウィルムス腫瘍(Wilms tumor:WT)は、ここ数年間、緻密な臨床及び基礎研究の対象となってきた。この腫瘍は、胎児に発生し、通常は、出生後最初の5年間に検出される。この腫瘍は、一側性である場合もあれば、両側性である場合もある。WTは、発生中の腎臓の凝縮した後腎間葉細胞が適切に分化しなかったときに発生する。WTの病因にウィルムス腫瘍1(WT1)の腫瘍抑制遺伝子が関わっていることから、遺伝子変化が腫瘍発生及び腫瘍形成に対して大きく影響することが示された。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、WT1ペプチド、並びにWT1ペプチドを用いて、WT1発現癌細胞を治療する方法、WT1発現細胞の発生率を減少させる方法、及びWT1発現癌細胞に対する免疫応答を誘導する方法を提供する。
【0004】
ある実施形態では、本発明は、RSDELVRHHNMHQRNMTKL(配列認識番号(以下、SEQ ID No:と呼ぶ)2)の配列を含むアミノ酸(amino acid:AA)配列を有する単離されたWT1ペプチドを提供する。他の実施形態では、単離されたWT1ペプチドのAA配列は、SEQ ID No:2の配列から成る。他の実施形態では、単離されたWT1ペプチドのAA配列は、SEQ ID No:2の配列の一断片から成る。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0005】
他の実施形態では、本発明は、PGCNKRYFKLSHLQMHSRKHTG(SEQ ID No:4)の配列を含むAA配列を有する単離されたWT1ペプチドを提供する。他の実施形態では、単離されたWT1ペプチドのAA配列は、SEQ ID No:4の配列から成る。他の実施形態では、単離されたWT1ペプチドのAA配列は、SEQ ID No:4の配列の一断片から成る。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0006】
他の実施形態では、本発明は、(a)抗原提示細胞と、(b)RSDELVRHHNMHQRNMTKL(SEQ ID No:2)及びPGCNKRYFKLSHLQMHSRKHTG(SEQ ID No:4)の内から選択されたペプチドとを含む組成物を提供する。
【0007】
他の実施形態では、本発明は、WT1を発現する癌細胞を有する対象を治療する方法であって、本発明に係るWT1ワクチンを前記対象に投与するステップを含み、それによって、WT1を発現する癌細胞を有する対象を治療する方法を提供する。
【0008】
他の実施形態では、本発明は、対象においてWT1を発現する癌細胞の発生率又はその再発率を減少させる方法であって、本発明に係るWT1ワクチンを前記対象に投与するステップを含み、それによって、対象においてWT1を発現する癌細胞の発生率又はその再発率を減少させる方法を提供する。
【0009】
他の実施形態では、本発明は、対象において抗中皮腫免疫応答を誘導する方法であって、(a)WT1タンパク質、(b)WTタンパク質の一断片、(c)WT1タンパク質をコードするヌクレオチド分子、又は(d)WT1タンパク質の一断片をコードするヌクレオチド分子を含む免疫原性組成物を前記対象に接触させるステップを含み、それによって、対象において抗中皮腫免疫応答を誘起する方法を提供する。
【0010】
他の実施形態では、本発明は、中皮腫を有する対象を治療する方法であって、(a)WT1タンパク質、(b)WTタンパク質の一断片、(c)WT1タンパク質をコードするヌクレオチド分子、又は(d)WT1タンパク質の一断片をコードするヌクレオチド分子を含む免疫原性組成物を前記対象に接触させるステップを含み、それによって、中皮腫を有する対象を治療する方法を提供する。
【0011】
他の実施形態では、本発明は、対象において中皮腫の発生率又はその再発率を減少させる方法であって、(a)WT1タンパク質、(b)WTタンパク質の一断片、(c)WT1タンパク質をコードするヌクレオチド分子、又は(d)WT1タンパク質の一断片をコードするヌクレオチド分子を含む免疫原性組成物を前記対象に接触させるステップを含み、それによって、対象において中皮腫の発生率又はその再発率を減少させる方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、WT1ペプチド、並びにWT1ペプチドを用いて、WT1発現癌細胞を治療する方法、WT1発現細胞の発生率を減少させる方法、及びWT1発現癌細胞に対する免疫応答を誘導する方法を提供する。
【0013】
本明細書に記載したように、本発明に係るペプチドは、CD4T細胞応答を誘導する(実施例3及び4)。
【0014】
ある実施形態では、本発明は、RSDELVRHHNMHQRNMTKL(SEQ ID No:2)の配列を含むアミノ酸(AA)配列を有する単離されたWT1ペプチドを提供する。他の実施形態では、単離されたWT1ペプチドのAA配列は、SEQ ID No:2の配列から成る。他の実施形態では、単離されたWT1ペプチドのAA配列は、SEQ ID No:2の配列の一断片から成る。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0015】
他の実施形態では、本発明は、PGCNKRYFKLSHLQMHSRKHTG(SEQ ID No:4)の配列を含むAA配列を有する単離されたWT1ペプチドを提供する。他の実施形態では、単離されたWT1ペプチドのAA配列は、SEQ ID No:4の配列から成る。他の実施形態では、単離されたWT1ペプチドのAA配列は、SEQ ID No:4の配列の一断片から成る。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0016】
他の実施形態では、本発明は、SEQ ID No:1の配列を含むAA配列若しくは前記配列から成るAA配列を有する、又はSEQ ID No:1の一断片から成るAA配列を有する単離されたWT1ペプチドを提供する。他の実施形態では、本発明は、SEQ ID No:3の配列を含むAA配列若しくは前記配列から成るAA配列を有する、又はSEQ ID No:3の一断片から成るAA配列を有する単離されたWT1ペプチドを提供する。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0017】
他の実施形態では、本発明に係る単離されたWT1ペプチドは、改変されていない(例えば、その配列は、WT1タンパク質の一断片と一致し、インビトロで変異が導入されていない)。
【0018】
他の実施形態では、本発明は、(a)抗原提示細胞と、(b)RSDELVRHHNMHQRNMTKL(SEQ ID No:2)及びPGCNKRYFKLSHLQMHSRKHTG(SEQ ID No:4)の内から選択されたペプチドを含む組成物を提供する。他の実施形態では、前記組成物は、HLAクラスII分子に結合する他のペプチドをさらに含む。他の実施形態では、前記組成物は、HLAクラスI分子に結合するWT1ペプチドをさらに含む。他の実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA−A分子である。他の実施形態では、HLAクラスI分子に結合するWT1ペプチドのAA配列は、SEQ ID No:5乃至38から選択される配列を含む。他の実施形態では、HLAクラスI分子に結合するWT1ペプチドのAA配列は、SEQ ID No:5乃至38からである。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0019】
本発明に係る方法及び組成物のWT1タンパク質は、当該技術分野で公知の任意のWT1タンパク質である。
【0020】
本発明に係るペプチドが由来するWT1分子は、他の実施形態では、下記の配列を有する。
MGSDVRDLNALLPAVPSLGGGGGCALPVSGAAQWAPVLDFAPPGASAYGSLGGPAPPPAPPPPPPPPPHSFIKQEPSWGGAEPHEEQCLSAFTVHFSGQFTGTAGACRYGPFGPPPPSQASSGQARMFPNAPYLPSCLESQPAIRNQGYSTVTFDGTPSYGHTPSHHAAQFPNHSFKHEDPMGQQGSLGEQQYSVPPPVYGCHTPTDSCTGSQALLLRTPYSSDNLYQMTSQLECMTWNQMNLGATLKGVAAGSSSSVKWTEGQSNHSTGYESDNHTTPILCGAQYRIHTHGVFRGIQDVRRVPGVAPTLVRSASETSEKRPFMCAYPGCNKRYFKLSHLQMHSRKHTGEKPYQCDFKDCERRFSRSDQLKRIIQRRHTGVKPFQCKTCQRKFSRSDHLKTHTRTHTGKTSEKPFSCRWPSCQKKFARSDELVRHHNMHQRNMTKLQLAL(GenBankアクセス番号:AY245105、SEQ ID No:50)
【0021】
他の実施形態では、WT1分子は、下記の配列を有する。
AAEASABRLQGRRSRGASGSEPQQMGSDVRDLNALLPAVPSLGGGGGCALPVSGAAQWAPVLDFAPPGASAYGSLGGPAPPPAPPPPPPPPPHSFIKQEPSWGGAEPHEEQCLSAFTVHFSGQFTGTAGACRYGPFGPPPPSQASSGQARMFPNAPYLPSCLESQPAPJQGYSTVTFDGTPSYGPSHHAAQFPNHSFKHEDPMGQQGSLGEQQYSVPPPVYGCHTPTDSCTGSQALLLRTPYSSDNLYQMTSQLECMTWNQMNLGATLKGHSTGYESDNHTTPILCGAQYRIHTHGVFRGIQDVRRVDELVRHHNMHQRNMTKLQLAL(GenBankアクセス番号:NM_000378、SEQ ID No:51)
【0022】
他の実施形態では、WT1分子は、下記の配列を有する。
MQDPASTCVPEPASQHTLRSGPGCLQQPEQQGVRDPGGIWAGAAEASAERLQGPJSRGASGSEPQQMGSDVRDLNLPASLGGGGGCALPVSGAAQWJVLDFYPGASAYGSLGGPAPPPAPPPPPPPPPHSFIKQEPSWGGAEPHEEQCLSAFTVHFSGQFTGTAGACRYGPFGPPPPSQASSGQARMFPNAPPSCLESQPAIRNQGYSTVTFDGTPSYGHTPSHHJQFPNHSFYJTEDPMGQQGSLGEQQYSVPPPVYGCHTPTDSCTGSQALLLRTPYSSDNLYQMTSQLECMTQMNLGATLKGVAAGSSSSVKWTEGQSNHSTGYESDNHTTPILCGAQYRIHTHGVFRGIQDVRRVSRSDQLKRHQRRHTGVKPFQCKTCQRKFSRSDHLKTHTRTHTGEKPFSCRWPSCQKKJJSDELVRHHNMHQRNMTKLQLAL(GenBankアクセス番号:NP_077742、SEQ ID No:52)
【0023】
他の実施形態では、WT1分子は、下記の配列を有する。
MGHHHHHHHHHHSSGHIEGRHMRRVPGVAPTLVRSASETSEKRPFMCAYPGCNKRYFKLSHLQMHSRKHTGEKPYQCDFKDCERRFFRSDQLKRHQRRHTGVKPFQCKTCQRKFSRSDHLKTHTRTHTGEKPFSCRWPSCQKKFARSDELVRHHNMHQRNMTKLQLAL(SEQ ID No:53)
【0024】
他の実施形態では、WT1タンパク質は、GenBankアクセス番号:NM_024426に記載の配列を有する。他の実施形態では、WT1タンパク質は、GenBankアクセス番号:NM_024425、NM_024424、NM_000378、S95530、Dl3624、D12496、D12497、又はX77549の内の1つに記載されている配列を有する又は含む。他の実施形態では、WT1タンパク質は、当該技術分野で公知の他の任意のWT1配列を有する。
【0025】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態における「ペプチド」は、AAサブユニットがペプチド結合によって連結した化合物を意味する。他の実施形態では、ペプチドは、AAアナログを含む。他の実施形態では、ペプチドは、ペプチド模倣物質(peptidomimetric)を含む。本発明に係る方法及び組成物のペプチドに含まれ得る様々なAAアナログ及びペプチド模倣物質は、下記に列挙した。前記サブユニットは、他の実施形態では、ペプチド結合によって連結している。他の実施形態では、前記サブユニットは、他の種類の結合(エステル結合、エーテル結合など)によって連結している。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0026】
本発明に係る未改変及びヘテロクリティック(heteroclitic)WT1ペプチド(上記及び下記記載のもの)は、以下まとめて「WT1ペプチド」と呼ぶことにする。「WT1ペプチド」に関して以下に列挙する各実施例は、本発明に係る未改変WT1ペプチド、並びにHLAクラスI及びクラスIIヘテロクリティックペプチドに適用される。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0027】
他の実施形態では、本発明に係るWT1ペプチドは、HLAクラスII分子に結合する。他の実施形態では、HLAクラスII分子は、HLA−DRB分子である。他の実施形態では、HLAクラスII分子は、HLA−DRA分子である。他の実施形態では、HLA分子は、HLA−DQA1分子である。他の実施形態では、HLA分子は、HLA−DQB1分子である。他の実施形態では、HLA分子は、HLA−DPA1分子である。他の実施形態では、HLA分子は、HLA−DPB1分子である。他の実施形態では、HLA分子は、HLA−DMA分子である。他の実施形態では、HLA分子は、HLA−DMB分子である。他の実施形態では、HLA分子は、HLA−DOA分子である。他の実施形態では、HLA分子は、HLA−DOB分子である。他の実施形態では、HLA分子は、当該技術分野で公知の他の任意のHLAクラスII分子である。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0028】
他の実施形態では、本発明に係る方法及び組成物のWT1ペプチドは、HLA分子に対して親和力を示すように設計されている。他の実施形態では、前記親和力は、本明細書に記載したように高親和力である。
【0029】
他の実施形態で主要組織適合複合体(major histocompatibility complex:MHC)として知られるHLA分子は、ペプチドと結合してそれらを免疫細胞に提示する。したがって、他の実施形態では、ペプチドの免疫原性は、部分的には、HLA分子に対する親和力によって決定される。HLAクラスI分子は、CD8分子(一般的には、細胞傷害性Tリンパ球(cytotoxic T lymphocyte:CTL)に存在する)と相互作用する。HLAクラスII分子は、CD4分子(一般的には、ヘルパーTリンパ球に存在する)と相互作用する。
【0030】
他の実施形態では、本発明に係るペプチドは、免疫原性を有する。他の実施形態では、「免疫原性」は、免疫応答を促進若しくは誘発する能力、又は免疫応答に加わる能力を意味する。他の実施形態では、誘発される免疫応答は、細胞性免疫応答である。他の実施形態では、前記免疫応答は、細胞性応答及び体液性応答の組み合わせである。
【0031】
他の実施形態では、T細胞は、MHC分子−ペプチド複合体と結合すると、活性化し、増殖し、且つそのペプチドを含むタンパク質を発現する細胞を溶解するように誘導される。T細胞は、通常、最初は「プロフェッショナルな」抗原提示細胞(antigen presenting cell:APC、例えば樹枝細胞、単球、及びマクロファージ)によって活性化される。APCは、T細胞の活性化(アネルギー又はアポトーシスとは対照的)を促進する副刺激分子を提示する。他の実施形態では、前記応答は、本明細書に記載したようにヘテロクリティックであるため、CTLは、本発明に係るペプチドと相同的なAA配列を有するタンパク質を発現する腫瘍細胞、又は最初にT細胞を刺激するのに使用されたペプチドと異なるペプチドを発現する腫瘍細胞を溶解するようにする。
【0032】
他の実施形態では、T細胞は、本発明に係るペプチドと接触すると、エフェクター及び/又は記憶T細胞に分化するようになる。次に、エフェクター又はT細胞が同じペプチドと接触すると、又は他の実施形態において本発明に係るペプチドと関連するペプチドと接触すると、さらに速い及び強力な免疫応答が誘導される。このような応答は、他の実施形態では、ペプチドに晒されたT細胞集団の増殖の程度を測定することによって評価することができる。他の実施形態では、そのような応答は、以下に列挙する方法の任意のもので測定することができる。
【0033】
他の実施形態では、本発明に係る方法及び組成物のペプチドは、高い親和力でHLAクラスII分子と結合する。他の実施形態では、HLAクラスII分子は、本明細書で記載したHLAクラスII分子の任意のものである。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0034】
他の実施形態では、本発明に係る方法及び組成物のペプチドの誘導体は、高親和力でHLAクラスI分子と結合する。他の実施形態では、HLAクラスI分子は、本明細書に列挙したHLAクラスI分子の任意のものである。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0035】
他の実施形態では、本発明に係る方法及び組成物のペプチドが高親和力でHLAクラスII分子と結合するのに対して、本来のペプチドに由来するペプチドは、顕著な親和力でHLAクラスI分子と結合する。
【0036】
他の実施形態では、「親和力」は、MHCタンパク質への標準ペプチドの結合を50%阻害するのに必要なペプチドの濃度を意味する。他の実施形態では、「高親和力」は、標準ペプチドの結合を50%阻害するのに約500ナノモラー(nM)以下の濃度のペプチドが必要である親和力を意味する。他の実施形態では、約400nM以下のペプチドが必要である。他の実施形態では、結合親和力は、300nMである。他の実施形態では、結合親和力は、200nMである。他の実施形態では、結合親和力は、150nMである。他の実施形態では、結合親和力は、100nMである。他の実施形態では、結合親和力は、80nMである。他の実施形態では、結合親和力は、60nMである。他の実施形態では、結合親和力は、40nMである。他の実施形態では、結合親和力は、30nMである。他の実施形態では、結合親和力は、20nMである。他の実施形態では、結合親和力は、15nMである。他の実施形態では、結合親和力は、10nMである。他の実施形態では、結合親和力は、8nMである。他の実施形態では、結合親和力は、6nMである。他の実施形態では、結合親和力は、4nMである。他の実施形態では、結合親和力は、3nMである。他の実施形態では、結合親和力は、2nMである。他の実施形態では、結合親和力は、1.5nMである。他の実施形態では、結合親和力は、1nMである。他の実施形態では、結合親和力は、0.8nMである。他の実施形態では、結合親和力は、0.6nMである。他の実施形態では、結合親和力は、0.5nMである。他の実施形態では、結合親和力は、0.4nMである。他の実施形態では、結合親和力は、0.3nMである。他の実施形態では、結合親和力は、0.3nM未満である。
【0037】
他の実施形態では、「親和力」は、MHC分子への結合力の測定値を意味する。他の実施形態では、親和力は、競合的結合親和力を測定する、当該技術分野で公知の方法によって測定される。他の実施形態では、当該技術分野で相対的な結合親和力を測定する公知の方法によって、測定される。他の実施形態では、前記方法は、競合的結合アッセイである。他の実施形態では、前記方法は、ラジオイムノアッセイ(radioimmunoassay:RIA)である。他の実施形態では、前記方法は、BiaCore分析である。他の実施形態では、前記方法は、当該技術分野で公知の他の任意の方法である。他の実施形態では、前記方法は、公知の親和力を有する標準タンパク質のIC50値に対するIC50値を算出する。
【0038】
それぞれの親和力及び親和力の測定方法は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0039】
他の実施形態では、「高親和力」は、0.5〜500nMのIC50値を意味する。他の実施形態では、IC50値は、1〜300nMである。他の実施形態では、IC50値は、1.5〜200nMである。他の実施形態では、IC50値は、2〜100nMである。他の実施形態では、IC50値は、3〜100nMである。他の実施形態では、IC50値は、4〜100nMである。他の実施形態では、IC50値は、6〜100nMである。他の実施形態では、IC50値は、10〜100nMである。他の実施形態では、IC50値は、30〜100nMである。他の実施形態では、IC50値は、3〜80nMである。他の実施形態では、IC50値は、4〜60nMである。他の実施形態では、IC50値は、5〜50nMである。他の実施形態では、IC50値は、6〜50nMである。他の実施形態では、IC50値は、8〜50nMである。他の実施形態では、IC50値は、10〜50nMである。他の実施形態では、IC50値は、20〜50nMである。他の実施形態では、IC50値は、6〜40nMである。他の実施形態では、IC50値は、8〜30nMである。他の実施形態では、IC50値は、10〜25nMである。他の実施形態では、IC50値は、15〜25nMである。それぞれの親和力及び親和力の範囲は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0040】
他の実施形態では、本発明に係る方法及び組成物のペプチドは、HLA分子のスーパーファミリーに結合する。HLA分子のスーパーファミリーは、非常に類似する又は同一の結合モチーフを有する。他の実施形態では、前記スーパーファミリーは、HLAクラスIスーパーファミリーである。他の実施形態では、前記スーパーファミリーは、HLAクラスIIスーパーファミリーである。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0041】
「HLA結合ペプチド」、「HLAクラスI分子結合ペプチド」、及び「HLAクラスII分子結合ペプチド」という用語は、他の実施形態では、測定可能な親和力でHLA分子と結合するペプチドを意味する。他の実施形態では、前記用語は、高親和力でHLA分子と結合するペプチドを意味する。他の実施形態では、前記用語は、T前駆細胞を活性化するのに十分な親和力でHLA分子に結合するペプチドを意味する。他の実施形態では、前記用語は、T細胞が認識するのに十分な親和力でHLA分子と結合するペプチドを意味する。HLA分子は、他の実施形態では、本明細書で列挙したHLA分子の任意のものである。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0042】
「ヘテロクリティック・ペプチド」は、他の実施形態では、そのヘテロクリティック・ペプチドが由来する本来のペプチド(例えば、アンカー残基に変異を含まないペプチド)を認識する免疫応答を発生させるペプチドを意味する。他の実施形態では、「本来のペプチド」は、本発明に係るペプチドを意味する。例えば、YMFPNAPYL(SEQ ID No:6)は、RMFPNAPYL(SEQ ID No:5)の1番目の残基をチロシンに変異することによって作成した(実施例)。他の実施形態では、「ヘテロクリティック・ペプチド」は、そのワクチン投与によって、ヘテロクリティック・ペプチドが由来する本来のペプチドを認識し、且つ本来のペプチドのワクチン投与によって発生する免疫応答よりも大きい免疫応答を発生させるペプチドを意味する。他の実施形態では、「ヘテロクリティック」免疫応答は、改良されたペプチドが由来する本来のペプチド(例えば、アンカー残基に変異を含まないペプチド)を認識する免疫応答を意味する。他の実施形態では、「ヘテロクリティック」免疫応答は、ヘテロクリティック・ペプチドのワクチンの投与によってヘテロクリティック・ペプチドが由来する本来のペプチドを認識し、且つその強度が本来のペプチドのワクチン投与によって発生する免疫応答よりも大きい免疫応答を意味する。他の実施形態では、ヘテロクリティック・ペプチドのワクチンの投与によって発生する免疫応答は、本来のペプチドのワクチン投与によって発生する免疫応答に実質的に等しい。他の実施形態では、ヘテロクリティック・ペプチドのワクチンの投与によって発生する免疫応答は、本来のペプチドのワクチン投与によって発生する免疫応答よりも小さい。他の実施形態では、本発明に係るヘテロクリティック・ペプチドは、HLAクラスIへテロクリティック・ペプチドである。HLAクラスI及びクラスII残基を同定する方法、残基を変異することによってHLA結合を向上する方法は、当該技術分野で公知であり、下記に列挙した。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0043】
他の実施形態は、本発明に係るヘテロクリティック・ペプチドが誘導する免疫応答の程度は、そのヘテロクリティック・ペプチドが由来するWT1ペプチド(「天然ペプチド」)による免疫応答と比較して少なくとも2倍である。他の実施形態では、前記程度は、天然ペプチドによる免疫応答と比較して3倍である。他の実施形態では、前記程度は、天然ペプチドによる免疫応答と比較して5倍である。他の実施形態では、前記程度は、天然ペプチドによる免疫応答と比較して7倍である。他の実施形態では、前記程度は、天然ペプチドによる免疫応答と比較して10倍である。他の実施形態では、前記程度は、天然ペプチドによる免疫応答と比較して15倍である。他の実施形態では、前記程度は、天然ペプチドによる免疫応答と比較して20倍である。他の実施形態では、前記程度は、天然ペプチドによる免疫応答と比較して30倍である。他の実施形態では、前記程度は、天然ペプチドによる免疫応答と比較して50倍である。他の実施形態では、前記程度は、天然ペプチドによる免疫応答と比較して100倍である。他の実施形態では、前記程度は、天然ペプチドによる免疫応答と比較して150倍である。他の実施形態では、前記程度は、天然ペプチドによる免疫応答と比較して200倍である。他の実施形態では、前記程度は、天然ペプチドによる免疫応答と比較して300倍である。他の実施形態では、前記程度は、天然ペプチドによる免疫応答と比較して500倍である。他の実施形態では、前記程度は、天然ペプチドによる免疫応答と比較して1000倍である。他の実施形態では、前記程度は、天然ペプチドによる免疫応答と比較して1000倍以上である。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0044】
他の実施形態では、本発明は、本発明に係る単離されたWT1ペプチドから由来するHLAクラスIIヘテロクリチック・ペプチドを提供する。他の実施形態では、WT1ペプチドに由来するヘテロクリティック・ペプチドの作成は、HLAクラスII分子へのペプチドの結合を高める変異を導入するステップを含む。他の実施形態では、WT1ペプチドに由来するヘテロクリティック・ペプチドの作成は、HLAクラスI分子へのペプチドの結合を高める変異を導入するステップを含む。他の実施形態では、変異は、HLAクラスIIアンカー残基に存在する。他の実施形態では、本発明に係るヘテロクリティック・クラスIIペプチドは、HLAクラスIヘテロクリティック・ペプチドの同定及び検査に使用される方法と同じ方法(本明細書で例示されている)で同定及び検査される。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0045】
他の実施形態では、本発明に係るペプチドにおけるHLAクラスII分子結合部位は、HLAクラスIIモチーフアンカー残基に変異を導入することで形成される又は向上する。他の実施形態では、改変されるアンカー残基は、P1部位にある。他の実施形態では、前記アンカー残基は、P2部位にある。他の実施形態では、前記アンカー残基は、P6部位にある。他の実施形態では、前記アンカー残基は、P9部位にある。他の実施形態では、前記アンカー残基は、P1、P2、P6、及びP9部位から選択される。他の実施形態では、前記アンカー残基は、P3部位にある。他の実施形態では、前記アンカー残基は、P4部位にある。他の実施形態では、前記アンカー残基は、P5部位にある。他の実施形態では、前記アンカー残基は、P6部位にある。他の実施形態では、前記アンカー残基は、P8部位にある。他の実施形態では、前記アンカー残基は、P10部位にある。他の実施形態では、前記アンカー残基は、P11部位にある。他の実施形態では、前記アンカー残基は、P12部位にある。他の実施形態では、前記アンカー残基は、P13部位にある。他の実施形態では、前記アンカー残基は、HLAクラスII分子結合ペプチドにおける公知の他の任意のアンカー残基である。他の実施形態では、P1、P2、P6、及びP9以外の残基は、第2のアンカー残基として機能する。したがって、それらに変異を導入すると、HLAクラスII分子結合を向上することができる。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0046】
他の実施形態では、ヘテロクリティック・ペプチドは、アンカー・モチーフを形成する変異を導入することによって作成される。「アンカー・モチーフ」又は「アンカー残基」は、他の実施形態では、HLA分子に結合する配列における特定の部位の好ましい1つの残基又は残基のセットを意味する。他の実施形態では、HLA分子に結合する配列は、HLAクラスII分子に結合する配列である。他の実施形態では、HLA分子に結合する配列は、HLAクラスI分子に結合する配列である。他の実施形態では、アンカー・モチーフに相当する部位は、HLA分子に結合する際に重要な役割を担う部位である。他の実施形態では、アンカー残基は、第1のアンカー・モチーフである。他の実施形態では、アンカー残基は、第2のアンカー・モチーフである。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0047】
MHCクラスIIのエピトープを予測する方法は、当該技術分野で公知である。他の実施形態では、MHCクラスIIエピトープは、TEPITOPE((Meister GE, Roberts CG et al., Vaccine 1995 13: 581-91)を使用することで予測される。他の実施形態では、MHCクラスIIエピトープは、EpiMatrix(De Groot AS, Jesdale BM et al., AIDS Res Hum Retroviruses 1997 13: 529-3 1)を使用することで予測される。他の実施形態では、MHCクラスIIエピトープは、予測手法(Predict Method)(Yu K, Petrovsky Net al., Mol Med. 2002 8: 137- 48)を使用することで予測される。他の実施形態では、MHCクラスIIエピトープは、SYFPEITHIエピトープ予測アルゴリズム(実施例)を使用することで予測される。他の実施形態では、MHCクラスIIエピトープは、Rankpepを使用することで予測される。他の実施形態では、MHCクラスIIエピトープは、当該技術分野で公知の他の任意の方法を使用することで予測される。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0048】
他の実施形態では、HLAクラスII結合ペプチド(例えば、HLA−DR結合ペプチド)に関しては、改変されるアンカー残基は、P1位(例えば、CII(259〜273)ペプチド(HLA−DRの一部のアンカー残基を明らかにするために使用された非関連ペプチド)のF263に相当する位置)に存在する。他の実施形態では、前記アンカー残基は、P2位(例えば、CII(259〜273)ペプチドのK264に相当する位置)に存在する。他の実施形態では、前記アンカー残基は、P6位に存在する。他の実施形態では、前記アンカー残基は、P9位に存在する。他の実施形態では、前記アンカー残基は、P3位、P4位、P5位、P6位、P8位、P10位、P11位、P12位、又はP13位に存在する。他の実施形態では、アンカー残基は、HLAクラスII分子結合ペプチドの当該技術分野で公知の他のアンカー残基である。他の実施形態では、P1、P2、P6、及びP9以外の残基は、第2のアンカー残基として機能する。したがって、それらに変異を導入すると、HLAクラスII分子との結合を向上することができる。他の実施形態では、上記の残基の任意の組み合わせに変異が導入される。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0049】
他の実施形態では、本発明に係るWT1ペプチドは、2つの異なるHLAクラスII分子と結合する。他の実施形態では、前記ペプチドは、3つの異なるHLAクラスII分子と結合する。他の実施形態では、前記ペプチドは、4つの異なるHLAクラスII分子と結合する。他の実施形態では、前記ペプチドは、5つの異なるHLAクラスII分子と結合する。他の実施形態では、前記ペプチドは、6つの異なるHLAクラスII分子と結合する。他の実施形態では、前記ペプチドは、6つ以上の異なるHLAクラスII分子と結合する。
【0050】
他の実施形態では、本発明に係るWT1ペプチドが結合するHLAクラスII分子は、所定の1つのHLAクラスII遺伝子座にある2つ以上の異なる対立遺伝子にコードされる。他の実施形態では、HLAクラスII分子は、1つの遺伝子座にある3つの異なる対立遺伝子にコードされる。他の実施形態では、HLAクラスII分子は、1つの遺伝子座にある4つの異なる対立遺伝子にコードされる。他の実施形態では、HLAクラスII分子は、1つの遺伝子座にある5つの異なる対立遺伝子にコードされる。他の実施形態では、HLAクラスII分子は、1つの遺伝子座にある6つの異なる対立遺伝子にコードされる。他の実施形態では、HLAクラスII分子は、1つの遺伝子座にある6つ以上の異なる対立遺伝子にコードされる。
【0051】
他の実施形態では、WT1ペプチドが結合するHLAクラスII分子は、2つの異なる遺伝子座にあるHLAクラスII遺伝子によってコードされる。他の実施形態では、WT1ペプチドが結合するHLAクラスII分子は、2つ以上の異なる遺伝子座にあるHLAクラスII遺伝子によってコードされる。他の実施形態では、WT1ペプチドが結合するHLAクラスII分子は、3つの異なる遺伝子座にあるHLAクラスII遺伝子によってコードされる。他の実施形態では、WT1ペプチドが結合するHLAクラスII分子は、3つ以上の異なる遺伝子座にあるHLAクラスII遺伝子によってコードされる。他の実施形態では、WT1ペプチドが結合するHLAクラスII分子は、4つの異なる遺伝子座にあるHLAクラスII遺伝子によってコードされる。他の実施形態では、WT1ペプチドが結合するHLAクラスII分子は、4つ以上の異なる遺伝子座にあるHLAクラスII遺伝子によってコードされる。他の実施形態では、前記遺伝子座は、HLA−DRBの遺伝子座から選択される。他の実施形態では、HLAクラスII結合ペプチドは、HLA−DRA結合ペプチドである。他の実施形態では、HLAクラスII結合ペプチドは、HLA−DQA1結合ペプチドである。他の実施形態では、HLAクラスII結合ペプチドは、HLA−DQB1結合ペプチドである。他の実施形態では、HLAクラスII結合ペプチドは、HLA−DPA1結合ペプチドである。他の実施形態では、HLAクラスII結合ペプチドは、HLA−DPB1結合ペプチドである。他の実施形態では、HLAクラスII結合ペプチドは、HLA−DMA結合ペプチドである。他の実施形態では、HLAクラスII結合ペプチドは、HLA−DMB結合ペプチドである。他の実施形態では、HLAクラスII結合ペプチドは、HLA−DOA結合ペプチドである。他の実施形態では、HLAクラスII結合ペプチドは、HLA−DOB結合ペプチドである。他の実施形態では、HLAクラスII結合ペプチドは、当該技術分野で公知の他の任意のHLAクラスII分子と結合する。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0052】
他の実施形態では、本発明に係るWT1ペプチドは、2つの異なるHLA−DRB分子に結合する。他の実施形態では、前記ペプチドは、3つの異なるHLA−DRB分子に結合する。他の実施形態では、前記ペプチドは、4つの異なるHLA−DRB分子に結合する。他の実施形態では、前記ペプチドは、5つの異なるHLA−DRB分子に結合する。他の実施形態では、前記ペプチドは、6つの異なるHLA−DRB分子に結合する。他の実施形態では、前記ペプチドは、6つ以上の異なるHLA−DRB分子に結合する。
【0053】
他の実施形態では、本発明に係るWT1ペプチドは、2つの異なるHLA−DRB対立遺伝子にコードされるHLA−DRB分子に結合する。他の実施形態では、HLA−DRB分子は、3つの異なるHLA−DRB対立遺伝子にコードされる。他の実施形態では、HLA−DRB分子は、4つの異なるHLA−DRB対立遺伝子にコードされる。他の実施形態では、HLA−DRB分子は、5つの異なるHLA−DRB対立遺伝子にコードされる。他の実施形態では、HLA−DRB分子は、6つの異なるHLA−DRB対立遺伝子にコードされる。他の実施形態では、HLA−DRB分子は、6つ以上の異なるHLA−DRB対立遺伝子にコードされる。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0054】
他の実施形態では、本発明に係るWT1ペプチドは、DRB101、DRB301、DRB401,DRB701,DRB1101、及びDRB1501から選択される2つの異なるHLA−DRB対立遺伝子にコードされるHLA−DRB分子に結合する。他の実施形態では、WT1ペプチドは、DRB101、DRB301、DRB401,DRB701,DRB1101、及びDRB1501から選択される3つの異なるHLA−DRB対立遺伝子にコードされるHLA−DRB分子に結合する。他の実施形態では、WT1ペプチドは、DRB101、DRB301、DRB401,DRB701,DRB1101、及びDRB1501から選択される4つの異なるHLA−DRB対立遺伝子にコードされるHLA−DRB分子に結合する。他の実施形態では、WT1ペプチドは、DRB101、DRB301、DRB401,DRB701,DRB1101、及びDRB1501から選択される5つの異なるHLA−DRB対立遺伝子にコードされるHLA−DRB分子に結合する。他の実施形態では、WT1ペプチドは、DRB101、DRB301、DRB401,DRB701,DRB1101、及びDRB1501のそれぞれのHLA−DRB対立遺伝子にコードされるHLA−DRB分子に結合する。各可能な形態は、本発明のことなる実施形態に相当する。
【0055】
他の実施形態では、本発明は、本発明に係る2つの異なるWT1ペプチドを含む組成物を提供する。他の実施形態では、2つの異なるWT1ペプチドは、改変されていない。他の実施形態では、一方のWT1ペプチドは改変されておらず、他方のWT1ペプチドはヘテロクリティックである。他の実施形態では、両方のWT1ペプチドは、ヘテロクリティックである。
【0056】
他の実施形態では、前記組成物は、本発明に係る3つの異なるWT1ペプチドを含む。他の実施形態では、前記組成物は、本発明に係る4つの異なるWT1ペプチドを含む。他の実施形態では、前記組成物は、本発明に係る5つの異なるWT1ペプチドを含む。他の実施形態では、前記組成物は、本発明に係る5つ以上の異なるWT1ペプチドを含む。
【0057】
他の実施形態では、前記組成物における2つのWT1ペプチドは、改変されていない。他の実施形態では、前記組成物における2つのWT1ペプチドは、ヘテロクリティックである。他の実施形態では、前記組成物における2つのWT1ペプチドは、改変されておらず、他の2つのWT1ペプチドは、ヘテロクリティックである。他の実施形態では、前記組成物における2つ以上のWT1ペプチドは、改変されていない。他の実施形態では、前記組成物における2つ以上のWT1ペプチドは、ヘテロクリティックである。他の実施形態では、前記組成物における2つ以上のWT1ペプチドは、改変されておらず、他の2つ以上のWT1ペプチドは、ヘテロクリティックである。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0058】
他の実施形態では、本発明に係る組成物における別のWT1ペプチドの1つは、SEQ ID No:1〜3に記載の配列のセットから選択された配列を有する。他の実施形態では、前記別のWT1ペプチドの2つは、SEQ ID No:1〜3に記載の配列のセットから選択された配列を有する。他の実施形態では、前記別のWT1ペプチドの3つは、SEQ ID No:1〜3に記載の配列のセットから選択された配列を有する。
【0059】
他の実施形態では、当該技術分野で公知の他の任意の免疫原性WT1ペプチドが、別のWT1ペプチドとして使用される。他の実施形態では、当該技術分野で公知の免疫原性WT1ペプチドの任意の組み合わせが使用される。
【0060】
それぞれの別のWT1ペプチド、及びそれらの組み合わせは、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0061】
他の実施形態では、本発明に係る組成物は、本発明に係る単離された同じWT1ペプチドから由来する2つのHLAクラスIIヘテロクリティック・ペプチドを含む。他の実施形態では、2つのHLAクラスIIヘテロクリティック・ペプチドは、HLAクラスII分子に結合する異なるアンカー残基に変異を有する。他の実施形態では、2つのHLAクラスIIヘテロクリティック・ペプチドは、HLAクラスII分子に結合する同じアンカー残基に異なる変異を有する。他の実施形態では、2つのHLAクラスIIヘテロクリティック・ペプチドは、本発明に係る単離された異なるWT1ペプチドから由来する。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0062】
他の実施形態では、本発明に係る2つのWT1ペプチド、又は本発明に係る2つのHLAクラスIIヘテロクリティック・ペプチドに相当するWT1ペプチドは、互いに重複する。他の実施形態では、前記ペプチドの重複部分は、少なくとも7アミノ酸(AA)である。他の実施形態では、前記重複部分は、8AAである。他の実施形態では、前記重複部分は、9AAである。他の実施形態では、前記重複部分は、10AAである。他の実施形態では、前記重複部分は、11AAである。他の実施形態では、前記重複部分は、12AAである。他の実施形態では、前記重複部分は、13AAである。他の実施形態では、前記重複部分は、14AAである。他の実施形態では、前記重複部分は、15AAである。他の実施形態では、前記重複部分は、16AAである。他の実施形態では、前記重複部分は、16以上のAAである。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0063】
他の実施形態では、本発明に係る組成物におけるペプチドは、2つの異なるHLAクラスII分子に結合する。他の実施形態では、前記ペプチドは、3つの異なるHLAクラスII分子に結合する。他の実施形態では、前記ペプチドは、4つの異なるHLAクラスII分子に結合する。他の実施形態では、前記ペプチドは、5つの異なるHLAクラスII分子に結合する。他の実施形態では、前記ペプチドは、5つ以上の異なるHLAクラスII分子に結合する。他の実施形態では、前記組成物におけるペプチドは、同じHLAクラスII分子に結合する。
【0064】
他の実施形態では、本発明に係る組成物におけるそれぞれのWT1ペプチドは、HLAクラスII分子セットに結合する。他の実施形態は、それぞれのWT1ペプチドは、異なるHLAクラスII分子セットに結合する。他の実施形態は、前記組成物におけるWT1ペプチドは、同じHLAクラスII分子セットに結合する。他の実施形態では、2つのWT1ペプチドは、重複する異なるHLAクラスII分子セットに結合する。他の実施形態では、2つ以上のWT1ペプチドが同じHLAクラスII分子セットに結合するのに対して、別のWT1ペプチドは、異なるHLAクラスII分子セットに結合する。他の実施形態では、2つ以上のWT1ペプチドが重複するHLAクラスII分子セットに結合するのに対して、別のWT1ペプチドは、異なるHLAクラスII分子セットに結合する。
【0065】
他の実施形態では、本発明に係る組成物における2つ以上のWT1ペプチドのそれぞれは、1つ以上のHLA−DRB分子に結合する。他の実施形態では、組成物におけるペプチドが結合する4つ以上のHLA−DRBは、互いに異なる。他の実施形態では、HLA−DRB分子は、異なるHLA−DRB対立遺伝子にコードされている。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0066】
他の実施形態では、本発明に係る組成物におけるWT1ペプチドが結合する2つ以上のHLAクラスII分子は、HLA−DRB分子である。他の実施形態では、WT1ペプチドが結合する3つ以上のHLAクラスII分子は、HLA−DRB分子である。他の実施形態では、WT1ペプチドが結合するHLAクラスII分子は、本明細書に記載の任意のHLAクラスII分子であり得る。他の実施形態では、WT1ペプチドが結合するHLAクラスII分子は、所定の1つの遺伝子座にある2つ以上の異なるHLAクラスII対立遺伝子にコードされている。他の実施形態では、WT1ペプチドが結合するHLAクラスII分子は、2つ以上の異なる遺伝子座にあるHLAクラスII遺伝子にコードされている。
【0067】
上記の各組成物は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0068】
他の実施形態では、「HLAクラスII分子セット」は、特定の遺伝子座にある異なる対立遺伝子にコードされた複数のHLAクラスII分子を意味する。他の実施形態では、この用語は、特定の結合特異性を有する複数のHLAクラスII分子を意味する。他の実施形態では、この用語は、特定のペプチド共通配列を有する複数のHLAクラスII分子を意味する。他の実施形態では、この用語は、複数のHLAクラスII分子のスーパーファミリーを意味する。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0069】
他の実施形態では、本発明は、HLAクラスII分子に結合する本発明に係る未改変のWT1ペプチドと、HLAクラスI分子に結合する第2のWT1ペプチドとを含む組成物を提供する。他の実施形態では、前記組成物は、HLAクラスI分子に結合するWT1ペプチドに加えて、HLAクラスII分子に結合する1つ以上の本発明に係るWT1ペプチドを含む。他の実施形態では、前記組成物は、HLAクラスII分子に結合するWT1ペプチドに加えて、HLAクラスI分子に結合する1つ以上のWT1ペプチドを含む。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0070】
他の実施形態では、HLAクラスI分子に結合するWT1ペプチドのAA配列は、SEQ ID No:5〜38から選択された配列を含む。他の実施形態では、HLAクラスI分子に結合するWT1ペプチドのAA配列は、SEQ ID No:5〜38から選択されたものである。各可能な実施形態は、本発明の異なる実施形態である。
【0071】
他の実施形態では、HLAクラスI分子結合WT1ペプチドが結合するHLAクラスI分子は、任意のHLA−A遺伝子にコードされている。他の実施形態では、HLAクラスI分子は、任意のHLA−B遺伝子にコードされている。他の実施形態では、HLAクラスI分子は、任意のHLA−C遺伝子にコードされている。他の実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA−0201分子である。他の実施形態では、前記分子は、HLA A1である。他の実施形態では、前記分子は、HLA A3.2、HLA A11、HLA A24、HLA B7、HLA B8、HLA B27、又はHLA A2、HLA
A3、HLA A4、HLA A5、若しくはHLA B8、又はHLA A1、HLA A2.1、若しくはHLA A3.2である。他の実施形態では、HLAAクラスII分子は、HLA−DP、−DQ、又は−DRの任意のHLA遺伝子にコードされている。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0072】
他の実施形態では、本発明に係る方法及び組成物のHLAクラスI分子結合WT1ペプチドは、HLAクラスI分子のスーパーファミリーに結合する。他の実施形態では、前記スーパーファミリーは、A2スーパーファミリーである。他の実施形態では、前記スーパーファミリーは、A3スーパーファミリーである。他の実施形態では、前記スーパーファミリーは、A24スーパーファミリーである。他の実施形態では、前記スーパーファミリーは、B7スーパーファミリーである。他の実施形態では、前記スーパーファミリーは、B27スーパーファミリーである。他の実施形態では、前記スーパーファミリーは、B44スーパーファミリーである。他の実施形態では、前記スーパーファミリーは、C1スーパーファミリーである。他の実施形態では、前記スーパーファミリーは、C4スーパーファミリーである。他の実施形態では前記スーパーファミリーは、当該技術分野で公知の他の任意のスーパーファミリーである。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。他の実施形態では、HLA分子は、HLA−A0201である。
【0073】
他の実施形態では、HLAクラスI分子に結合するWT1ペプチドは、HLAクラス1ヘテロクリティックペプチドである。他の実施形態では、HLAクラスI分子に結合するWT1ペプチドは、下記で説明するように、HLAクラスI分子に結合するアンカー残基に変異を有する。HLA−A0201及びHLA−A0301との結合が増大すると予測されるヘテロクリティック・ペプチドを作成するために、本明細書に記載したように、WT1由来のペプチドのHLA分子に結合するアンカー残基を改変した。結合が増大すると予測されるペプチドは、実際にHLAクラスI分子との結合が増大し、且つ免疫原性が高まることを示した。
【0074】
他の実施形態では、MHCとの結合を高める変異は、HLAクラス1ヘテロクリティック・ペプチドの1位の残基に導入される。他の実施形態では、前記残基は、チロシンに変換される。他の実施形態では、前記残基は、グリシンに変換される。他の実施形態では、前記残基は、スレオニンに変換される。他の実施形態では、前記残基は、フェニルアラニンに変換される。他の実施形態では、前記残基は、当該技術分野で公知の他の任意の残基に変換される。他の実施形態では、1位の残基を置換(例えば、チロシンへ)すると、2位のアンカー残基の結合が安定化する。
【0075】
他の実施形態では、変異は、HLAクラスIヘテロクリティックペプチドの2位の残基に導入される。他の実施形態では、前記残基は、ロイシンに変換される。他の実施形態では、前記残基は、バリンに変換される。他の実施形態では、前記残基は、イソロイシンに変換される。他の実施形態では、前記残基は、メチオニンに変換される。他の実施形態では、前記残基は、当該技術分野で公知の他の任意の残基に変換される。
【0076】
他の実施形態では、変異は、HLAクラスIヘテロクリティックペプチドの6位の残基に導入される。他の実施形態では、前記残基は、バリンに変換される。他の実施形態では、前記残基は、システインに変換される。他の実施形態では、前記残基は、グルタミンに変換される。他の実施形態では、前記残基は、ヒスチジンに変換される。他の実施形態では、前記残基は、当該技術分野で公知の他の任意の残基に変換される。
【0077】
他の実施形態では、変異は、HLAクラスIヘテロクリティックペプチドの9位の残基に導入される。他の実施形態では、前記変異により、前記ペプチドのC末端の残基が変換される。他の実施形態では、前記残基は、バリンに変換される。他の実施形態では、前記残基は、スレオニンに変換される。他の実施形態では、前記残基は、イソロイシンに変換される。他の実施形態では、前記残基は、ロイシンに変換される。他の実施形態では、前記残基は、アラニンに変換される。他の実施形態では、前記残基は、システインに変換される。他の実施形態では、当該技術分野で公知の他の任意の残基に変換される。
【0078】
他の実施形態では、点変異は、第1のアンカー残基に存在する。他の実施形態では、HLAクラスI分子に結合する第1のアンカー残基は、2位及び9位にある。他の実施形態では、点変異は、第2のアンカー残基にある。他の実施形態では、HLAクラスI分子に結合する第2のアンカー残基は、1位及び8位にある。他の実施形態では、HLAクラスI分子に結合する第2のアンカー残基は、1位、3位、6位、7位、及び8位にある。他の実施形態では、点変異は、4位、5位、及び8位から選択された位置にある。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0079】
他の実施形態では、点変異は、HLAクラスIに結合するモチーフの1位、2位、8位、及び9位から選択された位置にある1つ以上の残基に存在する。他の実施形態では、点変異は、1位、3位、6位、及び9位から選択された位置にある1つ以上の残基に存在する。他の実施形態では、点変異は、1位、2位、6位、及び9位から選択された位置にある1つ以上の残基に存在する。他の実施形態では、点変異は、1位、6位、及び9位から選択された位置にある1つ以上の残基に存在する。他の実施形態では、点変異は、1位、2位、及び9位から選択された位置にある1つ以上の残基に存在する。他の実施形態では、点変異は、1位、3位、及び9位から選択された位置にある1つ以上の残基に存在する。他の実施形態では、点変異は、2位及び9位から選択された位置にある1つ以上の残基に存在する。他の実施形態では、点変異は、6位及び9位から選択された位置にある1つ以上の残基に存在する。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する
【0080】
それぞれの上記のアンカー残基及び置換は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0081】
他の実施形態では、HLAクラスI分子に結合するWT1ペプチドは、SEQ ID No:6、8、10、12、14、16、18、20、22、24〜26、28〜30、32〜34、及び36〜38に記載の配列から選択された配列を含む。 他の実施形態では、HLAクラスI分子に結合するWT1ペプチドは、SEQ ID No:6、8、10、12、14、16、18、20、22、24〜26、28〜30、32〜34、及び36〜38に記載の配列から選択された配列を有する。
【0082】
他の実施形態では、HLAクラスI分子に結合するWT1ペプチドの長さは、9〜13AAである。他の実施形態では、前記長さは、8〜13AAである。他の実施形態では、前記ペプチドは、本発明に係るペプチドに関して本明細書に記載した任意の長さを有する。
【0083】
他の実施形態では、HLAクラスI分子に結合するWT1ペプチドの長さは、9AAである。他の実施形態では、HLAクラスI分子に結合するWT1ペプチドの長さは、10AAである。本明細書に記載したように、9〜10AAの天然及びヘテロクリティック・ペプチドは、HLAクラスI分子に実質的に結合し、サイトカイン分泌及びCTLによる細胞溶解を引き起こす。
【0084】
他の実施形態では、HLAクラスI分子結合WT1ペプチドが結合するHLAクラスI分子は、HLA−A分子である。他の実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA−A2分子である。他の実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA−A3分子である。他の実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA−A11分子である。他の実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA−B8分子である。他の実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA−0201分子である。他の実施形態では、HLAクラスI分子は、当該技術分野で公知の他の任意のHLAクラスI分子である。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0085】
他の実施形態では、本発明に係る方法及び組成物のWT1ペプチドの長さは、8〜30AAである。他の実施形態では、前記ペプチドの長さは、9〜11AAである。他の実施形態では、前記ペプチドの長さは、7〜25AAである、又は他の実施形態では8〜11AAである、又は他の実施形態では8〜15AAである、又は他の実施形態では9〜20AAである、又は他の実施形態では9〜18AAである、又は他の実施形態では9〜15AAである、又は他の実施形態では8〜12AAである、又は他の実施形態では9〜11である。他の実施形態では、前記ペプチドの長さは、8AAである、又は他の実施形態では9AAである、又は他の実施形態では10AAである、又は他の実施形態では12AAである、又は他の実施形態では25AAである、又は他の実施形態ではそれらの間の任意の長さである。他の実施形態では、前記ペプチドの長さは、さらに長く、例えば50AA又は100AA以上である。この実施形態では、細胞は、長さが7〜25AAになるようにペプチドを処理する。この実施形態では、細胞は、長さが9〜11AAになるようにペプチドを処理する。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0086】
他の実施形態では、前記ペプチドの長さは、15〜23AAである。他の実施形態では、前記長さは、15〜24AAである。他の実施形態では、前記長さは、15〜25AAである。他の実施形態では、前記長さは、15〜26AAである。他の実施形態では、前記長さは、15〜27AAである。他の実施形態では、前記長さは、15〜28AAである。他の実施形態では、前記長さは、14〜30AAである。他の実施形態では、前記長さは、14〜29AAである。他の実施形態では、前記長さは、14〜28AAである。他の実施形態では、前記長さは、14〜26AAである。他の実施形態では、前記長さは、14〜24AAである。他の実施形態では、前記長さは、14〜22AAである。他の実施形態では、前記長さは、14〜20AAである。他の実施形態では、前記長さは、16〜30AAである。他の実施形態では、前記長さは、16〜28AAである。他の実施形態では、前記長さは、16〜26AAである。他の実施形態では、前記長さは、16〜24AAである。他の実施形態では、前記長さは、16〜22AAである。他の実施形態では、前記長さは、18〜30AAである。他の実施形態では、前記長さは、18〜28AAである。他の実施形態では、前記長さは、18〜26AAである。他の実施形態では、前記長さは、18〜24AAである。他の実施形態では、前記長さは、18〜22AAである。他の実施形態では、前記長さは、18〜20AAである。他の実施形態では、前記長さは、20〜30AAである。他の実施形態では、前記長さは、20〜28AAである。他の実施形態では、前記長さは、20〜26AAである。他の実施形態では、前記長さは、20〜24AAである。他の実施形態では、前記長さは、22〜30AAである。他の実施形態では、前記長さは、22〜28AAである。他の実施形態では、前記長さは、22〜26AAである。他の実施形態では、前記長さは、24〜30AAである。他の実施形態では、前記長さは、24〜28AAである。他の実施形態では、前記長さは、24〜26AAである。
【0087】
上記のそれぞれのペプチド、ペプチドの長さ、及びペプチドの種類は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0088】
他の実施形態では、本発明に係るペプチドには、HLA分子に対する親和力及びTCR特異性を変化させることなく、当該技術分野で公知の方法で小さな改変が加えられる。HLAクラスI結合ペプチドの場合、「小さな改変」は、他の実施形態では、例えば、1つのAAの挿入、欠失、若しくは置換、又は2位〜9位の残基間における1つ〜3つのAAの欠失若しくは付加を意味する。本明細書に記載のコンピュータ・アルゴリズムがペプチドのMHCクラスI分子への結合能を予測するのに有用である場合、それらのアルゴリズムの予測精度は60〜80%である。したがって、MHCクラスI分子に対する結合親和力に関して最終評価をする前に、ペプチドを実験的に評価する必要がある。したがって、本発明に係るペプチドは、アルゴリズムによってMHCクラスI分子に対する結合親和力が強いと予測されるペプチドに制限されない。それぞれの改変は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0089】
他の実施形態では、実施例に記載されている本発明に係るペプチドは、アンカー残基をMHCクラス1分子への結合のための好ましいアンカー残基に変える変異を導入することによって改変される。他の実施形態では、MHCクラス1分子への結合のための好ましいアンカー残基を有する本発明に係るペプチドは、その残基の位置において、MHCクラス1分子への結合のための好ましい他のアンカー残基にさらに変異することで改変される。前記好ましい他の残基は、他の実施形態では、本明細書に記載の任意の好ましい残基であり得る。
【0090】
他の実施形態では、さらに改変されるアンカー残基は、1位にある。他の実施形態では、前記アンカー残基は、2位にある。他の実施形態では、前記アンカー残基は、3位にある。他の実施形態では、前記アンカー残基は、4位にある。他の実施形態では、前記アンカー残基は、5位にある。他の実施形態では、前記アンカー残基は、6位にある。他の実施形態では、前記アンカー残基は、7位にある。他の実施形態では、前記アンカー残基は、8位にある。他の実施形態では、前記アンカー残基は、9位にある。HLAクラスI結合ペプチドの場合、2及び9位の残基以外の残が第2のアンカー残基として機能することができるので、それらに変異を導入することで、MHCクラスI分子への結合を向上することができる。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0091】
他の実施形態では、本発明に係る方法及び組成物のペプチドは、実施例に記載のペプチドに対して、長さが異なる変異体である。他の実施形態では、前記長さが異なる変異体は、実施例に記載のペプチドよりも1アミノ酸(AA)分短い。他の実施形態では、前記長さが異なる変異体は、実施例に記載のペプチドよりも2AA分短い。他の実施形態では、実施例に記載のペプチドよりも2AA以上短い。他の実施形態では、これらの短いペプチドは、N末端で短縮している。他の実施形態では、この短いペプチドは、C末端で短縮している。他の実施形態では、この短縮ペプチドは、N末端及びC末端の両方で短縮している。他の実施形態では、当該技術分野で公知のように、HLA分子に対する親和力を変えることなく、ペプチドを短縮することができる。
【0092】
上記のそれぞれの短縮ペプチドは、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0093】
他の実施形態では、前記長さが異なる変異体は、実施例に記載の本発明に係るペプチドよりも長い。他の実施形態では、このより長いペプチドは、N末端で延長している。他の実施形態では、当該技術分野で公知のように、HLA分子に対する親和力を変えることなく、ペプチドをこのように延長することができる。そのようなペプチドは、したがって、実施例に記載のペプチドと同等である。他の実施形態では、このN末端で延長しているペプチドは、1残基分延長している。他の実施形態では、このN末端で延長しているペプチドは、2残基分延長している。他の実施形態では、このN末端で延長しているペプチドは、3残基分延長している。他の実施形態では、このN末端で延長しているペプチドは、3残基分以上延長している。
【0094】
他の実施形態では、前記のより長いペプチドは、C末端で延長している。他の実施形態では、当該技術分野で公知のように、HLA分子に対する親和力を変えることなく、ペプチドをこのように延長することができる。そのようなペプチドは、したがって、実施例に記載のペプチドと同等である。他の実施形態では、このC末端で延長しているペプチドは、1残基分延長している。他の実施形態では、このC末端で延長しているペプチドは、2残基分延長している。他の実施形態では、このC末端で延長しているペプチドは、3残基分延長している。他の実施形態では、このC末端で延長しているペプチドは、3残基分以上延長している。
【0095】
他の実施形態では、延長しているペプチドは、N末端及びC末端の両方で延長している。
【0096】
上記のそれぞれの延長しているペプチドは、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0097】
他の実施形態では、本発明に係る短縮ペプチドは、第2の残基及びC末端残基において、HLA分子に結合するアンカー残基(例えば、HLAクラスI分子に結合するアンカー残基)を保持し、実施例に記載の本発明に係るペプチドよりも介在残基の数が小さい(例えば、5)。HLA分子に対する親和力を変えることなく、ペプチドにこのような変異を導入することができる。他の実施形態では、そのような短縮ペプチドは、上記の1つの配列の介在残基の1つを欠失させるように設計される。他の実施形態では、HLA分子に結合するアンカー残基は、第2及び第8の残基で保持されている。他の実施形態では、HLA分子に結合するアンカー残基は、第1及び第8の残基で保持されている。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0098】
他の実施形態では、本発明に係る延長ペプチドは、第2の残基及びC末端残基において、HLA分子に結合するアンカー残基(例えば、HLAクラスI分子に結合するアンカー残基)を保持し、実施例に記載の本発明に係るペプチドよりも介在残基の数が大きい(例えば、7又は8)。他の実施形態では、そのような延長ペプチドは、上記の1つの配列の2つの介在残基の間に1つ以上の残基を加えることによって設計される。HLAに結合するペプチドのHLAに対する親和力を変えることなく、そのペプチドの介在配列において残基を除去する又は付加できることは、当該技術分野で公知である。このようなペプチドは、したがって、実施例に記載のペプチドに同等である。他の実施形態では、HLA分子に結合するアンカー残基は、第2及び第9の残基で保持されている。他の実施形態では、HLA分子に結合するアンカー残基は、第1及び第8の残基で保持されている。他の実施形態では、HLA分子に結合するアンカー残基は、6つの介在残基で分離される2つの残基で保持されている。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0099】
「断片」は、他の実施形態では、11AA以上の長さを有するペプチドを意味する。他の実施形態では、本発明に係るペプチド断片は、12AA以上の長さを有する。他の実施形態では、本発明に係るペプチド断片は、13AA以上の長さを有する。他の実施形態では、本発明に係るペプチド断片は、14AA以上の長さを有する。他の実施形態では、本発明に係るペプチド断片は、15AA以上の長さを有する。他の実施形態では、本発明に係るペプチド断片は、17AA以上の長さを有する。他の実施形態では、本発明に係るペプチド断片は、18AA以上の長さを有する。他の実施形態では、本発明に係るペプチド断片は、19AA以上の長さを有する。他の実施形態では、本発明に係るペプチド断片は、22AA以上の長さを有する。他の実施形態では、本発明に係るペプチド断片は、8〜12AAの長さを有する。他の実施形態では、本発明に係るペプチド断片は、約8〜12AAの長さを有する。他の実施形態では、本発明に係るペプチド断片は、16〜19AAの長さを有する。他の実施形態では、本発明に係るペプチド断片は、約16〜19AAの長さを有する。他の実施形態では、本発明に係るペプチド断片は、10〜25AAの長さを有する。他の実施形態では、本発明に係るペプチド断片は、約10〜25AAの長さを有する。他の実施形態では、本発明に係るペプチド断片は、任意の長さを有する。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0100】
「WT1タンパク質の断片」は、他の実施形態では、本明細書に記載の任意の定義の「断片」を意味する。各可能な定義は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0101】
本明細書に記載されているように、中皮種細胞は、WT1を発現する(実施例7)。また、中皮種細胞は、本発明に係るペプチド又はそれに対応する天然ペプチドを処理し、提示する(実施例5)。さらに、この提示は、抗WT1特異的免疫を誘発するほど、十分に強い。したがって、抗WT1免疫治療で中皮種細胞を治療することができる。
【0102】
他の実施形態では、本発明に係るペプチドは、実施例に記載のペプチドに対して相同である。「相同性」、「相同」等の用語は、任意のタンパク質又はペプチドを言及する際には、他の実施形態では、候補配列において、対応する天然型ペプチドのアミノ酸残基配列と同一のアミノ酸残基配列のパーセンテージ(アライメントを行ってギャップを導入した後の)を意味する。尚、同類置換は、配列同一性の一部としては見なされない。アライメントのための方法及びプログラムは、当該技術分野で公知である。
【0103】
他の実施形態では、「相同性」という用語は、任意の核酸配列を言及する際には、同様に、候補配列において、対応する天然型核酸配列のヌクレオチドと同一のヌクレオチドのパーセンテージを意味する。
【0104】
相同性は、他の実施形態では、配列アライメントのためのコンピュータ・アルゴリズムや当該技術分野で公知の方法によって評価することができる。他の実施形態では、核酸配列の相同性に関するコンピュータ・アルゴリズム分析には、例えば、BLAST、DOMAIN、BEAUTY(BLAST Enhanced Alignment Utility)、GENPEPT、及びTREMLパッケージが使用される。
【0105】
他の実施形態では、「相同性」は、SEQ ID No:1〜38から選択された1つの配列に対して70%を越える同一性を意味する。他の実施形態では、「相同性」は、SEQ ID No:1〜38から選択された1つの配列に対して72%を越える同一性を意味する。他の実施形態では、「相同性」は、SEQ ID No:1〜38から選択された1つの配列に対して75%を越える同一性を意味する。他の実施形態では、「相同性」は、SEQ ID No:1〜38から選択された1つの配列に対して78%を越える同一性を意味する。他の実施形態では、「相同性」は、SEQ ID No:1〜38から選択された1つの配列に対して80%を越える同一性を意味する。他の実施形態では、「相同性」は、SEQ ID No:1〜38から選択された1つの配列に対して82%を越える同一性を意味する。他の実施形態では、「相同性」は、SEQ ID No:1〜38から選択された1つの配列に対して83%を越える同一性を意味する。他の実施形態では、「相同性」は、SEQ ID No:1〜38から選択された1つの配列に対して85%を越える同一性を意味する。他の実施形態では、「相同性」は、SEQ ID No:1〜38から選択された1つの配列に対して87%を越える同一性を意味する。他の実施形態では、「相同性」は、SEQ ID No:1〜38から選択された1つの配列に対して88%を越える同一性を意味する。他の実施形態では、「相同性」は、SEQ ID No:1〜38から選択された1つの配列に対して90%を越える同一性を意味する。他の実施形態では、「相同性」は、SEQ ID No:1〜38から選択された1つの配列に対して92%を越える同一性を意味する。他の実施形態では、「相同性」は、SEQ ID No:1〜38から選択された1つの配列に対して93%を越える同一性を意味する。他の実施形態では、「相同性」は、SEQ ID No:1〜38から選択された1つの配列に対して95%を越える同一性を意味する。他の実施形態では、「相同性」は、SEQ ID No:1〜38から選択された1つの配列に対して96%を越える同一性を意味する。他の実施形態では、「相同性」は、SEQ ID No:1〜38から選択された1つの配列に対して97%を越える同一性を意味する。他の実施形態では、「相同性」は、SEQ ID No:1〜38から選択された1つの配列に対して98%を越える同一性を意味する。他の実施形態では、「相同性」は、SEQ ID No:1〜38から選択された1つの配列に対して99%を越える同一性を意味する。他の実施形態では、「相同性」は、SEQ ID No:1〜38から選択された1つの配列に対して100%である同一性を意味する。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態を意味する。
【0106】
他の実施形態では、相同性は、候補配列のハイブリダイゼーションで評価される。ハイブリダイゼーションの方法は、当該技術分野で公知である(例えば、「"Nucleic Acid Hybridization" Hames, B. D., and Higgins S. J., Eds. (1985)」、「Sambrook et al., 2001, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, N.Y.」、及び「Ausubel et al., 1989, Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y」を参照)。他の実施形態では、適度(moderate)又はストリンジェント(stringent)な条件下で、天然型のカスパーゼ・ペプチドをコードするDNAの相補配列に対して行われる。ハイブリダイゼーションの条件の例として、例えば、10〜20%のホルムアミドと、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)と、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)と、5×Denhardt緩衝液と、10%の硫酸デキストランと、20μg/mlの変性剪断サケ精子DNAとを含む水溶液にて42℃で一晩インキュベートする。
【0107】
上記のペプチドの相同物及び実施例に記載の変異体は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0108】
他の実施形態では、本発明は、本発明に係るペプチドを含む組成物を提供する。他の実施形態では、前記組成物は、医薬的に許容される担体をさらに含む。他の実施形態では、前記組成物は、アジュバントをさらに含む。他の実施形態では、前記組成物は、本発明に係る2つ以上のペプチドを含む。他の実施形態では、前記組成物は、下記に記載の任意の添加剤、化合物、又は賦形剤を含む。他の実施形態では、アジュバントは、KLH、QS21、完全フロイント・アジュバント、不完全フロイント・アジュバント、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、BCG、又はミョウバンである。他の実施形態では、担体は、本明細書に記載の任意の担体である。他の実施形態では、アジュバントは、本明細書に記載のアジュバントである。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0109】
他の実施形態では、本発明は、本発明に係るペプチドを含むワクチンを提供する。他の実施形態では、本発明は、抗原提示細胞(antigen-presenting cell:APC)と本発明に係るペプチドとを含むワクチンを提供する。他の実施形態では、前記ワクチンは、担体をさらに含む。他の実施形態では、前記ワクチンは、アジュバントをさらに含む。他の実施形態では、前記ワクチンは、APCをさらに含む。他の実施形態では、前記ワクチンは、抗原、担体、及び/又はAPCの1つ以上の組み合わせを含む。他の実施形態では、前記ワクチンは、細胞に基づく組成物である。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0110】
他の実施形態では、「ワクチン」という用語は、対象に導入される際に特定の病気、疾患、又はそれらの症状に対して予防効果又は治療効果を提供する物質又は組成物を意味する。他の実施形態では、本発明は、免疫調節化合物(サイトカイン、アジュバントなど)などの本明細書に記載の任意の物質を含むペプチドに基づくワクチンを提供する。
【0111】
他の実施形態では、本発明に係る方法及び組成物のワクチンは、アジュバントをさらに含む。他の実施形態では、アジュバントは、モンタニドISA51(Montanide ISA 51)である。モンタニドISA51は、代謝可能な天然油及び精製乳化剤を含む。他の実施形態では、アジュバントは、GM−CSFである。組み換え型GM−CSFは、他の実施形態では、イースト(S. cerevisiae)ベクターから生成されるヒトのタンパク質である。GM−CSFは、造血前駆細胞、APC、樹状細胞、及びT細胞のクローン性増殖及び分化を促進する。
【0112】
他の実施形態では、アジュバントは、サイトカインである。他の実施形態では、アジュバントは、成長因子である。他の実施形態では、アジュバントは、細胞集団である。他の実施形態では、アジュバントは、QS21である。他の実施形態では、アジュバントは、不完全フロイント・アジュバントである。他の実施形態では、アジュバントは、リン酸アルミニウムである。他の実施形態では、アジュバントは、水酸化アルミニウムである。他の実施形態では、アジュバントは、BCGである。他の実施形態では、アジュバントは、ミョウバンである。他の実施形態では、アジュバントは、インターロイキンである。他の実施形態では、アジュバントは、ケモカインである。他の実施形態では、アジュバントは、当該技術分野で公知の任意の種類のアジュバントである。他の実施形態では、WT1ワクチンは、上記のアジュバントの内の2つのものを含む。他の実施形態では、WT1ワクチンは、上記のアジュバントの内の2つ以上のものを含む。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0113】
他の実施形態では、本発明に係るワクチン又は組成物は、本発明に係るWT1ペプチドの任意の実施形態及びその組み合わせを含み得る。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0114】
本発明に係るペプチド、ワクチン、及び組成物に関して本明細書に記載した、あらゆる実施形態が本発明に係る任意の方法に使用できることを理解されたい。ペプチド、ワクチン、又は組成物と方法との組み合わせは、実施形態に相当する。
【0115】
他の実施形態では、本発明は、WT1を発現する癌を有する対象を治療する方法であって、前記対象に本発明に係るWT1ワクチンを投与するステップを含み、それによって、WT1を発現する癌を有する対象を治療する方法を提供する。
【0116】
他の実施形態では、本発明は、MDSを有する対象を治療する方法であって、前記対象に本発明に係るWT1ワクチンを投与するステップを含み、それによって、MDSを有する対象を治療する方法を提供する。
【0117】
他の実施形態では、本発明は、対象においてWT1を発現する癌の進行を抑制又は停止する方法であって、前記対象に本発明に係るWT1ワクチンを投与するステップを含み、それによって、対象においてWT1を発現する癌の進行を抑制又は停止する方法を提供する。
【0118】
他の実施形態では、本発明は、対象においてWT1を発現する癌の発生率を減少させる方法であって、前記対象に本発明に係るWT1ワクチンを投与するステップを含み、それによって、対象においてWT1を発現する癌の発生率を減少させる方法を提供する。
【0119】
他の実施形態では、本発明は、対象において急性骨髄性白血病(AML)の発生率を減少させる方法であって、前記対象に本発明に係るWT1ワクチンを投与するステップを含み、それによって、対象においてAMLの発生率を減少させる方法を提供する。
【0120】
他の実施形態では、本発明は、対象においてWT1を発現する癌の再発率を減少させる方法であって、前記対象に本発明に係るWT1ワクチンを投与するステップを含み、それによって、対象においてWT1を発現する癌の再発率を減少させる方法を提供する。
【0121】
他の実施形態では、本発明は、対象においてAMLの再発率を減少させる方法であって、前記対象に本発明に係るWT1ワクチンを投与するステップを含み、それによって、対象においてAMLの再発率を減少させる方法を提供する。
【0122】
他の実施形態では、本発明は、WT1を発現する癌に対する対象のT細胞寛容を破壊する方法であって、前記対象に本発明に係るWT1ワクチンを投与するステップを含み、それによって、WT1を発現する癌に対する対象のT細胞寛容を破壊する方法を提供する。
【0123】
他の実施形態では、本発明は、WT1を発現する癌を有する対象を治療する方法であって、(a)発明に係る方法によって、ドナーにおいて、悪性癌細胞を認識するヒト細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の形成及び増殖を誘導するステップと、(b)前記対象に前記ヒトCTLを注入するステップとを含み、それによって、癌を有する対象を治療する方法を提供する。
【0124】
他の実施形態では、本発明は、WT1を発現する癌を有する対象を治療する方法であって、(a)本発明に係る方法によって、エクスビボで、悪性癌細胞を認識するヒト細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の形成及び増殖を誘導するステップと、(b)前記対象に前記ヒトCTLを注入するステップとを含み、それによって、癌を有する対象を治療する方法を提供する。尚、ヒトに免疫細胞は、ドナーから取得される。
【0125】
エクスビボの免疫療法は、当該技術分野で公知であり、例えば、米国特許出願番号第2006/0057130号、第2005/0221481号、第2005/0214268号、第2003/0175272号、第200に/0127718号、及び米国特許第5,229,115号(本明細書に組み込まれるものとする)に記載されている。他の方法も当該技術分野で公知であり、例えば、「Blood dendritic cells generated with Flt3 ligand and CD40 ligand prime CD8+ T cells efficiently in cancer patients. J Immunother. 2006 Sep-Oct;29(5) :499-5 11」(Davis ID et al.)及び「The cytotoxic T cell response to peptide analogs of the HLA-A*0201-restricted MUC1 signal sequence epitope, Ml.2. Cancer Immunol Immunother. 2006 Jul 28」(Mitchell MS et al.)に記載されている。各方法は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0126】
他の実施形態では、本発明は、WT1を発現する癌細胞に特異的なCTLの形成及び増殖を誘導する方法であって、リンパ球の集団を本発明に係るワクチンに接触させるステップを含む。他の実施形態では、ワクチンは、本発明に係るペプチドに結合したAPCである。他の実施形態では、ワクチンは、本発明に係るペプチドの混合物に結合したAPCである。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0127】
他の実施形態では、本発明は、対象において、WT1を発現する癌細胞に対するヘテロクリティック免疫応答を発生させる方法であって、前記対象に本発明に係るワクチンを投与するステップを含み、それによって、ヘテロクリティック免疫応答を発生させる方法を提供する。
【0128】
他の実施形態では、本発明は、対象において抗中皮腫免疫応答を誘導する方法であって、(a)WT1タンパク質又は(b)WT1タンパク質の断片を含む免疫原性組成物を前記対象に接触させるステップを含み、それによって、対象において抗中皮腫免疫応答を誘導する方法提供する。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0129】
他の実施形態では、本発明は、対象において抗中皮腫免疫応答を誘導する方法であって、(a)WT1タンパク質をコードするヌクレオチド分子又は(b)WT1タンパク質の断片をコードするヌクレオチド分子を含む免疫原性組成物を前記対象に接触させるステップを含み、それによって、対象において抗中皮腫免疫応答を誘導する方法提供する。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0130】
他の実施形態では、本発明は、中皮腫を有する対象を治療する方法であって、(a)WT1タンパク質又は(b)WT1タンパク質の断片を含む免疫原性組成物を前記対象に投与するステップを含み、それによって、中皮腫を有する対象を治療する方法を提供する。他の実施形態では、中皮腫は、悪性中皮腫である。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0131】
他の実施形態では、中皮腫を有する対象を治療する方法であって、(a)WT1タンパク質をコードするヌクレオチド分子又は(b)WT1タンパク質の断片をコードするヌクレオチド分子を含む免疫原性組成物を前記対象に投与するステップを含み、それによって、中皮腫を有する対象を治療する方法提供する。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0132】
他の実施形態では、対象において中皮腫の発生率又はその再発率を減少させる方法であって、(a)WT1タンパク質又は(b)WT1タンパク質の断片を含む免疫原性組成物を前記対象に投与するステップを含み、それによって、対象において中皮腫の発生率又はその再発率を減少させる方法を提供する。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0133】
他の実施形態では、対象において中皮腫の発生率又はその再発率を減少させる方法であって、(a)WT1タンパク質をコードするヌクレオチド分子又は(b)WT1タンパク質の断片をコードするヌクレオチド分子を含む免疫原性組成物を前記対象に投与するステップを含み、それによって、対象において中皮腫の発生率又はその再発率を減少させる方法を提供する。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0134】
他の実施形態では、本発明に係る方法によって誘起される免疫応答の標的細胞は、本発明に係るWT1ペプチド又は対応するWT1断片をHLA分子で提示する。他の実施形態では、HLA分子は、HLAクラスI分子である。他の実施形態では、HLA分子は、HLAクラス1サブタイプ又は当該技術分野で公知の任意のHLAクラスI分子である。他の実施形態では、WT1ペプチド又はその断片に対する免疫応答は、ヘテロクリティック免疫応答である。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0135】
他の実施形態では、WT1を発現する癌は、急性骨髄性白血病(acute myelogenous leukemia:AML)である。他の実施形態では、WT1を発現する癌は、骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome:MDS)に関連する。他の実施形態では、WT1を発現する癌は、MDSである。他の実施形態では、WT1を発現する癌は、非小細胞肺癌(non-small cell lung cancer:NSCLC)である。他の実施形態では、WT1を発現する癌は、ウィルムス腫瘍である。他の実施形態では、WT1を発現する癌は、白血病である。他の実施形態では、WT1を発現する癌は、血液癌である。他の実施形態では、WT1を発現する癌は、リンパ腫である。他の実施形態では、WT1を発現する癌は、線維形成性小円形細胞腫瘍である。他の実施形態では、WT1を発現する癌は、中皮腫である。他の実施形態では、WT1を発現する癌は、悪性中皮腫である。他の実施形態では、WT1を発現する癌は、胃癌である。他の実施形態では、WT1を発現する癌は、結腸癌である。他の実施形態では、WT1を発現する癌は、肺癌である。他の実施形態では、WT1を発現する癌は、乳癌である。他の実施形態では、WT1を発現する癌は、胚細胞腫瘍である。他の実施形態では、WT1を発現する癌は、卵巣癌である。他の実施形態では、WT1を発現する癌は、子宮癌である。他の実施形態では、WT1を発現する癌は、甲状腺癌である。他の実施形態では、WT1を発現する癌は、肝細胞癌である。他の実施形態では、WT1を発現する癌は、肝臓癌である。他の実施形態では、WT1を発現する癌は、腎臓癌である。他の実施形態では、WT1を発現する癌は、カポジ肉腫である。他の実施形態では、WT1を発現する癌は、肉腫である。他の実施形態では、WT1を発現する癌は、他の任意の癌腫又は肉腫である。
【0136】
他の実施形態では、WT1を発現する癌は、固形癌である。他の実施形態では、固形癌は、WT1を発現する癌に関連する。他の実施形態では、固形癌は、骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome:MDS)に関連する。他の実施形態では、固形癌は、非小細胞肺癌(non-small cell lung cancer:NSCLC)に関連する。他の実施形態では、固形癌は、肺癌に関連する。他の実施形態では、固形癌は、乳癌に関連する。他の実施形態では、固形癌は、結腸直腸癌に関連する。他の実施形態では、固形癌は、前立腺癌に関連する。他の実施形態では、固形癌は、卵巣癌に関連する。他の実施形態では、固形癌は、腎臓癌に関連する。他の実施形態では、固形癌は、膵臓癌に関連する。他の実施形態では、固形癌は、脳腫瘍に関連する。他の実施形態では、固形癌は、消化管癌に関連する。他の実施形態では、固形癌は、皮膚癌に関連する。他の実施形態では、固形癌は、メラノーマに関連する。
【0137】
他の実施形態では、本発明に係る方法で治療される癌又は腫瘍は、WT1を発現すると考えられる。他の実施形態では、WT1の発現は、実際の腫瘍サンプルの検査で確認されていていない。他の実施形態では、癌又は腫瘍は、多くの場合にWT1を発現すると知られている種類のものである。他の実施形態では、前記の種類のものは、大抵の場合にWT1を発現する。
【0138】
WT1を発現する各種類の癌又は腫瘍、及びWT1を発現すると推定される各種類の癌又は腫瘍は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0139】
本発明に係るペプチド、ワクチン、及び組成物に関して本明細書に記載したあらゆる実施形態は、本発明に係る任意の方法に使用することができ、それぞれの方法は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0140】
他の実施形態では、本発明に係る複数のペプチドは、本発明に係る方法において免疫応答を促進する。
【0141】
本明細書に記載したように、本発明に係るペプチドは、抗原特異的CD8T細胞応答、及びCD4T細胞応答を誘起する(それぞれ実施例1〜2及び実施例3〜4)。CD4T細胞は、APC上のHLAクラスII分子に結合しているペプチドを認識する。他の実施形態では、抗原特異的CD4T細胞応答は、CD8細胞傷害性T細胞(CTL)応答の誘導及び維持を促進する。他の実施形態では、活性化したCD4T細胞を刺激することで、免疫を高め、それによって、細胞傷害性T細胞の活性及び生存を維持する。他の実施形態では、活性化したCD4T細胞は、腫瘍細胞に直接接触する、又はアポトーシス経路を活性化することで腫瘍細胞の死を誘起する。中皮腫細胞は、例えば、抗原を処理してHLAクラスI及びクラスII分子で提示することができる。
【0142】
他の実施形態では、本発明に係るワクチンには、WT1抗原を認識するCD4T細胞及びCD8T細胞の両方を活性化又は誘起する利点がある。他の実施形態では、CD4T細胞及びCD8T細胞の両方の活性化又は誘起は、それらの細胞の何れかの活性化と比較すると、相乗的な抗WT1免疫応答をもたらす。
【0143】
本明細書に開示した方法によって、当業者は、WT1由来の他のペプチドを設計することができる。また、本発明に係る方法によって、他のHLA分子に結合するペプチドの設計が可能となる。本発明に係る方法によって、さらに、本発明に係る複数のWT1由来ペプチドを組み合わせたワクチンの設計が可能となる。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0144】
他の実施形態では、本発明に係るワクチンには、異なる様々なHLAクラスII対立遺伝子を有するWT1特異的CD4T細胞を活性化又は誘起する利点がある。他の実施形態では、ワクチンには、かなり大きな割合の人においてWT1特異的CD4T細胞を活性化又は誘起する利点がある(例えば、異なる実施形態では、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は95%よりも大きい)。他の実施形態では、ワクチンには、かなり大きな割合の特定の人(例えば、米国の白人)においてWT1特異的CD4T細胞を活性化又は誘起する利点がある。
【0145】
他の実施形態では、本発明に係る方法は、対象がすでに有する免疫効果を向上させる。他の実施形態では、本発明に係る方法は、ペプチド、組成物、又はワクチンを2回以上投与するステップを含む。他の実施形態では、ペプチドは、その組成、濃度、又はそれらの組み合わせに関して様々である。他の実施形態では、ペプチドは、関心のある抗原に対する免疫応答を未だ開始していない対象においてその抗原に対する免疫応答を開始する。他の実施形態では、誘起されたCTLは、APC又は癌細胞上のペプチドの提示に応じて増殖する。他の実施形態では、免疫応答の調節は、免疫機構の体液性部分及び細胞性部分(それぞれ、Th2及びTh1Tヘルパー細胞が関与する)の何れか又はその両方を伴う。
【0146】
他の実施形態では、腫瘍の成育に影響する方法によって、(1)腫瘍細胞の分裂が直接抑制される、又は(2)免疫細胞が腫瘍細胞を溶解する、又はその両方が起き、腫瘍細胞の拡張が抑制される。
【0147】
当業者は、公知の様々な方法に基づいて、これらの2つの機構の何れかによる腫瘍の生育抑制を容易に評価することができる。他の実施形態では、腫瘍抑制は、腫瘍の実際の大きさを期間にわたって計測することで評価される。他の実施形態では、腫瘍の抑制は、当該技術分野で公知の方法を用いて腫瘍の大きさを(期間にわたって)推定することで評価される。さらに具体的には、腫瘍の大きさは、様々な放射線画像撮像方法(例えば、単光子陽電子放出コンピュータ断層撮影(「"Nuclear Medicine in Clinical Oncology," Winkler, C. (ed.) Springer-Verlag, New York, 1986」を参照))を使用することで推定される。このような方法には、様々な造影剤(例えば、従来の造影剤(例えばクエン酸ガリウム−67(67Ga))、並びに代謝画像、リセプター画像、又は免疫画像用の特別な試薬(例えば、腫瘍マーカーに特異的な放射性標識モノクローナル抗体))が使用される。また、超音波法などの非放射性方法(「"Ultrasonic Differential Diagnosis of Tumors", Kossoff and Fukuda, (eds.), Igaku-Shoin, New York, 1984」を参照)をも、腫瘍の大きさを推定するのに使用することができる。
【0148】
腫瘍抑制の評価のための上記のインビボの方法に加えて、インビボにおける腫瘍抑制を推定するのに様々なインビトロの方法を使用することができる。代表的な例として、例えば51Cr放出アッセイ(実施例)、腫瘍依存性リンパ球増殖(loannides, et aL, J. Immunol. 146(5):1700- 1707, 1991)、腫瘍特異的な抗体のインビトロでの生成(Herlyn, et al., J. Immunol. Meth. 73:157- 167, 1984)、インビトロでの細胞性(例えば、CTL、ヘルパーT細胞)又は体液性(例えば、抗体)細胞増殖抑制(Gazit, et al., Cancer Immunol Irnn-iunother 35:135-144, 1992)、細胞前駆体の頻度の評価(Vose, mt. J. Cancer 30:135-142 (1982)などでリンパ球媒介性腫瘍細胞溶解活性を評価する。
【0149】
他の実施形態では、腫瘍成育を抑制する方法を腫瘍に使用すると、本発明に係るペプチドに接触させなかった、又は晒さなかった腫瘍の生育と比べると、腫瘍の生育は抑制される。腫瘍細胞の成育は、当該技術分野で公知の任意の方法で評価することができる。前記方法の例として、それらに限定されるものではないが、例えば、腫瘍の大きさの計測、腫瘍細胞の増殖の評価(Hチミジン組み込みアッセイを使用して)、又は腫瘍細胞の数の計算がある。腫瘍細胞の生育を「抑制する」は、他の実施形態では、腫瘍の育成を遅らせる、遅延させる、若しくは停止する、又は腫瘍を縮小させることを意味する。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0150】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、WT1発現が測定される。他の実施形態では、WT1の転写産物発現が測定される。他の実施形態では、腫瘍におけるWT1タンパク質のレベルが測定される。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0151】
免疫応答の存在及び程度を評価する方法は、当該技術分野で公知である。他の実施形態では、リンパ球の増殖アッセイとして、T細胞による放射性物質(例えば、Hチミジン)の取り込みが測定されることで、細胞の増殖が評価される。他の実施形態では、インターロイキン−2(IL−2)生成、Ca2+流出、又は染料(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニル−テトラゾリウムなど)の取り込みを測定することによって、T細胞の増殖が評価される。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0152】
他の実施形態では、CTLの活性化は、当該技術分野で公知の方法(例えば、細胞増殖、サイトカイン生成の検出など)によって評価される。リガンドでパルスされた標的細胞にT細胞が接触する際に分泌するサイトカインの種類及び量を分析することで、T細胞の機能活性を評価することができる。ELISA又はELISPOTアッセイ(Fujihashi K. et al. (1993) J. Immunol. Meth. 160:181; Tanguay S. and Killion J. J. (1994) Lymphokine Cytokine Res. 13:259)でサイトカインの生成速度及び全量を測定することができる。
【0153】
他の実施形態では、CTL活性は、51Cr放出アッセイで評価することができる。ペプチドでパルスした51Cr標識標的細胞の抗原特異的T細胞による溶解を、対照ペプチドでパルスした標的細胞のものと比較することができる。他の実施形態では、本発明に係るペプチドによってT細胞が刺激され、MHCで天然ペプチドを発現する標的細胞の溶解を評価することができる。他の実施形態では、溶解の挙動、並びに定時点(例えば、4時間)における標的細胞の溶解でリガンドの性能を評価する(Ware C. F. et al. (1983) J Immunol 131: 1312)。
【0154】
HLA分子に対するペプチドの親和力を評価する方法は、当該技術分野で公知である。他の実施形態では、親和力は、TAP安定性アッセイ(TAP stabilization)(実施例)で評価される。
【0155】
他の実施形態では、親和力は、競合型ラジオイムノアッセイによって評価される。他の実施形態では、次のプロトコールが使用される。標的細胞を1%のウシ血清アルブミン(BSA、Fisher Chemicals, Fairlawn, NJ)含有のPBSで2回洗浄する。細胞を10/mlになるように氷上で再懸濁する。3mg/mlのベータ2マイクログロブリンを含むリン酸クエン酸塩緩衝液で細胞表面に結合している天然のペプチドを2分間、0℃で取り除く。沈殿物を、3mg/mlのベータ2マイクログロブリン及び30mg/mlのデオキシリボヌクレアーゼを含有するPBS/1%BSAで5×10細胞/mlになるように再懸濁する。次に、200mlのアリコートをHLAに特異的なペプチドの存在下及び非存在下で10分間、20℃インキュベートし、その後に125I標識のペプチと共に30分間、20℃でインキュベートする。PBS/2%BSAで2回洗浄し、PBSで1回洗浄した後に、結合した全125I量を測定する。相対的親和力は、検査するペプチドの濃度を公知の結合ペプチドの濃度と比較することによって評価する。
【0156】
他の実施形態では、生細胞(例えば、SKLY−16細胞)表面上のHLAに対するペプチドの結合の特異性分析は、ペプチドが適切なHLA分子に結合することを確認し、さらにその結合の特異性の特徴を確かめるために行われる。この分析には、他の実施形態では、同じ又は異種のHLA分子に結合すると知られている過剰な非標識ペプチドとの競合分析が含まれ、同じ又は異種のHLAを発現する標的細胞が使用される。このアッセイは、他の実施形態では、生きた新鮮な、又は0.25%のパラホルムアルデヒドで固定されたヒトPBMC、リンパ球細胞株、及びEBVで形質転換された、特定のHLA型を有するT細胞系に対して行われる。特定の細胞のMHC分子に結合すると知られているペプチドの相対的な親和力は、上記に記載したように、関連するHLA分子に対して高親和力を示すと知られている125I標識のペプチド(例えば、チロシナーゼ、又はHBVペプチド配列)に対して競合アセイを行うことによって分析される。
【0157】
他の実施形態では、本発明に係る方法及び組成物のHLAクラスII結合ペプチドは、HLAクラスII分子の結合に必要な最低の長さ(他の実施形態では、12AA)よりも長い。他の実施形態では、HLAクラスII結合ペプチドの長さが増すと、ペプチドは1つ以上のHLAクラスII分子と結合できるようになる。他の実施形態では、前記長さが増すと、ペプチドは結合モチーフが未知のHLAクラスII分子と結合できるようになる。他の実施形態では、前記長さが増すと、ペプチドはHLAクラスI分子と結合できるようになる。他の実施形態では、HLAクラスI分子の結合モチーフは、周知されている。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0158】
他の実施形態では、本発明に係る方法及び組成物に使用されるペプチドは、非古典的なアミノ酸を含む。この非古典的アミノ酸の例として、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸塩(Kazmierski et al. (1991) J. Am Chem. Soc. 113:2275-2283)、(2S,3S)−メチル−フェニルアラニン、(2S,3R)−メチルフェニルアラニン、(2R,3S)−メチルフェニルアラニン、及び(2R,3R)−メチルフェニルアラニン(Kazmierski and Hruby (1991) Tetrahedron Lett. 32(41): 5769- 5772)、2−アミノテトラヒドロナフタレン−2−カルボキシル酸(Landis (1989) Ph.D. Thesis, University of Arizona)、ヒドロキシ1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボキシル酸塩(Miyake et al. (1984) J. TakedaRes. Labs. 43:53-76)、ヒスチジンイソキノリンカルボキシル酸(Zechel et al. (1991) Tnt. J. Pep. Protein Res. 38(2):131-138)、並びにHIC(ヒツジン環状尿素)((Dharanipragada et al.(1993) Tnt. J. Pep. Protein Res. 42(1):68-77))及び((1992) Acta. Crst., Crystal Struc. Conmi. 48(IV):1239-124))がある。
【0159】
他の実施形態では、本発明に係るペプチドは、AA類似体又はペプチド模倣体(他の実施形態では、特定の二次構造を誘導又は促進する)を含む。そのようなペプチドとして、ジペプチド類似体を誘導するβターンであるLL−Acp(LL−3−アミノ−2−ピペリドン−6−カルボキシル酸)、(Kemp et al. (1985) J. Org. Chem. 50:5834-5838)、類似体を誘導するβシート(Kemp et al. (1988) Tetrahedron Lett. 29:5081-5082)、類似体を誘導するβターン(Kemp et al. (1988) Tetrahedron Left. 29:5057-5060)、類似体を誘導するアルファへリックス(Kemp et al. (1988) Tetrahedron Left. 29:5057-5060)、類似体を誘導するガンマターン(Kemp et al. (1989) J. Org. Chem. 54:109:115)、参照文献「Nagai and Sato (1985) Tetrahedron Left. 26:647-650」及び「DiMaio et al. (1989) J. Chem. Soc. Perkin Trans. p. 1687」に記載の類似体、Gly−Alaターン類似体(Kahn et al. (1989) Tetrahedron Lett. 30:2317)、アミド結合アイソスター(amide bond isostere)(Jones et al. (1988) Tetrahedron Left. 29(3 1):3853-3856)、テトラゾール(Zabrocki et al. (1988) J. Am. Chem. Soc. 110:5875-5880)、DTC(Samanen et al. (1990) Tnt. J. Protein Pep. Res. 35:501:509)、及び「Olson et al.(1990) J. Am. Chem. Sci. 112:323-333 and Garveyet al. (1990) J. Org. Chem. 55(3) :936-940」に記載の類似体がある。ベータターン及びベータバルジ(beta bulge)の配座固定された模倣体、並びにそのそれらを含むペプチドは、1995年8月8日にKahnに付与された米国特許第5,440,013号に記載されている。
【0160】
他の実施形態では、本発明に係るペプチドは、下記に記載の他の様々な分子に結合する(共有結合又は非共有結合である)。他の実施形態では、前記分子の種類は、目的に応じて異なる。他の実施形態では、ペプチドは、高分子担体(例えば、免疫原性担体)に共有結合している、又は非共有結合している。前記高分子担体として、それらに限定されるわけではないが、例えば、天然及び合成ポリマー、タンパク質、多糖類、ポリペプチド(アミノ酸)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、及び脂質がある。他の実施形態では、本発明に係るペプチドは、基質に結合している。他の実施形態では、リポソームへ導入されるように、脂肪酸と結合している(米国特許第5,837,249号)。他の実施形態では、本発明に係るペプチドは、固体担体(solid support)(当該技術分野では、様々な種類のものが知られている)と結合している。他の実施形態では、担体、基質、脂肪酸、又は固体担体へのペプチドの結合は、免疫応答を増大させるためである。
【0161】
他の実施形態では、前記担体は、チログロブリン、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)、破傷風トキソイド、ポリアミノ酸(ポリリシン、ポリグルタミン酸など)、インフルエンザタンパク質、B型肝炎ウイルスのコアタンパク質、キーホールリンペットヘモシアニン、又は他の担体タンパク質若しくは担体ペプチド、B型肝炎ウイルスの遺伝子組み換え型ワクチン、又はAPCである。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0162】
他の実施形態では、「アミノ酸」(AA)という用語は、天然型、又は他の実施形態では、非天然型若しくは合成AAを意味し、他の実施形態では、グリシン、D−若しくはL光学異性体、AA類似体、ペプチド模倣体、及びそれらの組み合わせを含み得る。
【0163】
他の実施形態では、「癌」又は「腫瘍」は、同じ意味で使用され、悪性形質転換を経て宿主の生物に対して病的細胞となった細胞を意味する。原発性癌細胞(悪性形質転換部位の付近から得られた細胞)は、確立された技術(とりわけ、組織学的検査)で容易に非ガン性細胞から区別することができる。本明細書に使用される癌細胞の定義は、原発性癌細胞だけでなく、癌原細胞から由来するあらゆる細胞をも含む。これには、転位癌細胞、並びに癌細胞由来のインビトロ培養細胞及び細胞株が含まれる。他の実施形態では、腫瘍は、腫瘍塊に基づいて検出することができ(例えば、CATスキャン、磁気共鳴映像法(magnetic resonance imaging:MRI)、X線検査、超音波検査、又は触診法などの手順で)、他の実施形態では、生化学的又は免疫学的検査で同定される(後者は、他の実施形態と同様に癌細胞を検出するのに使用される)。
【0164】
ペプチドを合成する方法は、当該技術分野で公知である。他の実施形態では、本発明に係るペプチドは、適切な固相合成法(solid-state synthetic procedure)で合成される(例えば、「Steward and Young, Solid Phase Peptide Synthesis, Freemantle, San Francisco, Calif. (1968)」、「Merrifield (1967) Recent Progress in Hormone Res 23: 451」を参照)。これらのペプチドの活性は、他の実施形態では、本明細書に記載のアセイで検査される。
【0165】
他の実施形態では、本発明に係るペプチドは、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、親和力クロマトグラフィー、及びサイジングカラム(sizing column)クロマトグラフィー)、遠心分離法、溶解度の差を利用した方法、又はタンパク質精製のための他の任意の標準的な方法で精製される。他の実施形態では、イムノアフィニティー・クロマトグラフィーが使用される。イムノアフィニティー・クロマトグラフィーでは、目的のペプチド又は本発明に係る関連ペプチドに対する抗体が固相担体で固定されたアフィニティー・カラムにエピトープを結合することで精製する。
【0166】
他の実施形態では、ペプチドを適切なアフィニティー・カラムに通過させるだけで容易に精製できるようにするために、ヘキサHis(Invitrogen)、マルトース結合ドメイン(New England Biolabs)、インフルエンザコート配列(Kolodziej et al. (1991) Meth. Enzymol. 194:508-509)、グラチオン−S−トランスフェラーゼなどのアフィニティー・タグを本発明に係るペプチドに結合する。他の実施形態では、タンパク質分解、磁気共鳴、及びX線結晶学的技法を使用することで精製したペプチドの物理的な特徴を確認することができる。
【0167】
他の実施形態では、本発明に係るペプチドは、公知の方法(当業者ならば、理解できるであろう)を介してインビトロ翻訳で作成される。他の実施形態では、ペプチドは、翻訳の間に又は翻訳後に特異的に修飾される(例えば、リン酸化、グリコシル化、架橋結合、アシル化、タンパク質分解的切断、又は抗体分子、膜分子、若しくは他のリガンドへの結合(Ferguson et al. (1988) Ann. Rev. Biochem. 57:285-320)で)。
【0168】
他の実施形態では、本発明に係るペプチドは、検出可能な標識をさらに有する。前記標識は、他の実施形態では蛍光性であり、他の実施形態では発光性であり、他の実施形態では放射能性であり、他の実施形態では高電子密度性である。他の実施形態では、検出可能な標識には、例えば、緑色蛍光タンパク質(green fluorescent protein:GFP)、DSレッド(赤色蛍光タンパク質)、分泌型アルカリホスファターゼ(secreted alkaline phosphatase:SEAP)、ベータガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、32P、125I及び14C、フルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル及びウンベリフェロン、ルシフェリン、又は当業者に周知な他の標識がある。使用される特定の標識は、使用されるイムノアッセイに種類による。
【0169】
他の実施形態では、本発明に係るペプチドは、基質に結合しており、前記基質は、他の実施形態では、担体として働く。他の実施形態では、ペプチドを基質に結合させると、免疫応答を増大させる。
【0170】
他の実施形態では、本発明に係るペプチドは、本明細書に記載されているように、カルボジイミド等の架橋剤によって他の分子と結合している。カルボジイミドの例として、1−シクロヘキシル−3−(2モルフォリニル−(4−エチル)カルボジイミド(CMC)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、及び1−エチル−3−(4−アゾニア−44−ジメチルペンチル)カルボジイミドがある。
【0171】
他の実施形態では、架橋剤として、臭化シアン、グルタルアルデヒド、及び無水コハク酸がある。一般的には、ホモ二官能性アルデヒド、ホモ二官能性エポキシド、ホモ二官能性イミドエステル、ホモ二官能性イミドエステル、ホモ二官能性ヒドロキシスクシンイミドエステル、ホモ二官能性マレイミド、ホモ二官能性ハロゲン化アルキル、ホモ二官能性ピリジルジスルフィド、ホモ二官能性ハロゲン化アリル、ホモ二官能性ヒドラジド、ホモ二官能性ジアゾニウム誘導体、及びホモ二官能性光反応性化合物などのホモ二官能性物質を使用することができる。他の実施形態では、例えばアミン反応性基と反応性基とを有する化合物、アミン反応性基と光反応性基とを有する化合物、及びカルボニル反応性機とスルフヒドリル反応性基とを有する化合物などのヘテロ二官能性化合物の使用も考えられる。
【0172】
他の実施形態では、ホモ二官能性架橋剤として、二官能性N−ヒドロキシイミドエステル(ジチオビス(スクシンイミジルプロパネート)、ジスクシンイミジルスベレート、及び酒石酸ジスクシンイミジル)、二官能性イミドエステル(ジメチルアジピイミデート、ジメチルピメリミデート、及びジメチルスベリミデート)、二官能性スルフヒドリル反応性架橋剤(1,4−ジ−[3´−(2´−ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ブタン、ビスマレイミドヘキサン、及びビス−Nマレイミド1,8−オクタン)、ハロゲン化アリール(1,5ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン、及び4、4´ジフルオロ−3,3´ジニトロフェニルスルホン)、二官能性アルデヒド(ホルムアルデヒド、マロンジアルデヒド、グルタルアルデヒド、及びアジパルデヒド)、二官能性エポキシド(1,4ブタンジオールジグリシジルエーテルなど)、二官能性ヒドラジド(アジピン酸ヒドラジド、カルボヒドラジド、及びコハク酸ジヒドラジド)、二官能性ジアゾニウム(o−トリジン、ジアゾ化及びビスジアゾ化ベンジジン)、二官能性ハロゲン化アルキル(N1N´エチレン−ヘキサメチレン−ビス(ヨードアセトアミド)、ウンデカメチレン−ビス(ヨードアセトアミド)、並びにハロゲン化ベンジル及びハロゲン化マスタード(halomustard)(それぞれa1a´−ジヨード−p−キシレンスルホン酸、及びトリス(2−クロロエチル)アミンなど)がある。
【0173】
他の実施形態では、ペプチドを他の分子に連結するのに使用されるヘテロ二官能性架橋剤として、それらに限定されるものではないが、例えば、SMCC(スクシンイミジル−4−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート)、MBS(m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)、SIAB(N−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート、SMPB(スクシンイミジル−4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート、GMBS(N−(ガンマ−マレイミドブチリルオキシ)スクシンイミドエステル)、MPBH(4−(4−N−マレイミドフェニル)酪酸ヒドラジド)、M2C2H(4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシル−ヒドラジド)、SMPT(スクシンイミジルオキシカルボニル−α−メチル−α−(2−ピリジルジチオ)トルエン)、及びSPDP(N−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネートがある。
【0174】
他の実施形態では、本発明に係るペプチドには、イオン相互作用、吸着的な相互作用、又は生体特異性相互作用で単量体が非共有結合で結合している。大きな正電荷又は負電荷で荷電した分子を有するペプチドの複合体は、他の実施形態では、低イオン強度の環境下(脱イオン水など)で塩橋を形成することで得られる。他の実施形態では、ポリ−(L−グルタミン酸)又はポリ(L−リシン)(それぞれ大きな負電荷及び正電荷を有する)などの荷電したポリマーを使用することで大きい複合体を作成することができる。他の実施形態では、微粒子ラテックスビーズなどの表面又は他の疎水性ポリマーに吸着されており、架橋したタンパク質又は他の実施形態では化学的に重合したタンパク質を効果的に模倣する非共的に結合したペプチド−超抗原複合体を形成する。他の実施形態では、他の分子間の生体特異的な相互作用を使用することで、ペプチドは、非共有的に結合している。例えば、アビジン又はストレプトアビジン又はその誘導体などのタンパク質に対するビオチンの強力な親和力を使用することでペプチド複合体を形成することができる。この態様によれば、且つ他の実施形態では、一般的なビオチン化剤(D−ビオチン(NHS−ビオチン)のN−ヒドロキシスクシンイミジルエステルなど(アミン基と反応する))を使用することでビオチン基を有するようにペプチドを修飾することができる。
【0175】
他の実施形態では、本発明に係るペプチドは、担体と結合している。他の実施形態では、担体は、KLHである。他の実施形態では、担体は、当該技術分野で公知の他の任意の担体であり、その例として、例えばチログロブリン、ヒト血清アルブミンなどのアルブミン、破傷風トキソイド、ポリリシン及びポリグルタミン酸などのポリアミノ酸、インフルエンザ、B型肝炎ウイルスのコアタンパク質、B型肝炎の遺伝子組換え型ワクチンなどがある。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0176】
他の実施形態では、本発明に係るペプチドは、P3CSSなどの脂質に結合している。他の実施形態では、本発明に係るペプチドは、ビーズに結合している。
【0177】
他の実施形態では、本発明に係る組成物は、免疫調節化合物をさらに含む。他の実施形態では、免疫調節化合物は、サイトカイン、ケモカイン、免疫機構の補助要素若しくは接着分子の発現を促進する補完的な要素、それらの受容体、又はそれらの組み合わせである。幾つかの実施形態では、免疫調節化合物は、インターロイキン(例えば、インターロイキン1〜15)、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、腫瘍壊死因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(granulocyte-macrophage colony stimulating factor:GM−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(macrophage colony stimulating factor:M−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(granulocyte colony stimulating factor:G−CSF)、好中球活性化タンパク質(neutrophil activating protein:NAP)などのケモカイン、マクロファージ化学誘因物質及び活性化因子(macrophage chemoattractant and activating factor:MCAF)、RANTES、マクロファージ炎症性ペプチドMIP−1a及びMIP−1b、補体、又はそれらの組み合わせである。他の実施形態では、免疫調節化合物は、OX40、OX40L(gp34)、リンフォタクチン、CD40、CD40L、B7.1、B7.2、TRAP、ICAM−1、2若しくは3、サイトカイン受容体、又はそれらの組み合わせの発現を促進する。
【0178】
他の実施形態では、免疫調節化合物は、免疫応答に関わる副刺激物質の発現を誘導又は促進する。前記副刺激物質には、幾つかの実施形態では、CD40若しくはそのリガンド、CD28、CTLA−4若しくはB7分子が含まれる。他の実施形態では、免疫調節化合物は、熱安定抗原(heat stable antigen:HSA)(Liu Y. et al. (1992) J. Exp. Med. 175:437-445), chondroitin sulfate-modified MHC invariant chain (Ti- CS) (Naujokas M. F. et al. (1993) Cell 74:257-26)、コンドロイチン硫酸で修飾されたMHC不変鎖(Ii−CS)(Naujokas M. F. et al. (1993) Cell 74:257-268)、又は細胞内接着分子1(ICAM−1)(Van R. H. (1992) Cell 71:1065-1068)(他の実施形態では、T細胞にある同種リガンドと相互作用することで副刺激を補助する)の発現を誘導又は促進する。
【0179】
他の実施形態では、組成物は、水、分散媒、細胞培養液、等張剤などの溶媒を含む。他の実施形態では、溶媒は、約7.0のpHを有する等張緩衝水溶液である。他の実施形態では、組成物は、水、リン酸緩衝生理食塩水、又は生理食塩水などの希釈剤を含む。他の実施形態では、組成物は、プロピルエチレングリコール、ポリエチレングリコール、及び植物油などの非水性溶媒を含む。
【0180】
他の実施形態では、組成物は、当業者に公知の様々な方法で投与できるように調整されている。例えば、本発明に係る組成物は、非経口投与、静脈投与、皮下投与、皮内投与、粘膜内投与、局所投与、経口投与、又は吸入投与される。
【0181】
他の実施形態では、本発明に係るペプチドを含むワクチンは、細胞集団をさらに含む。他の実施形態では、前記細胞集団は、リンパ球、単球、マクロファージ、樹枝状細胞、内皮細胞、幹細胞、又はそれらの組み合わせを含む。前記細胞は、他の実施形態では、互いに対して自己細胞、同系細胞、又は同種異系細胞である。他の実施形態では、前記細胞集団は、本発明に係るペプチドを含む。他の実施形態では、前記細胞集団は、ペプチドを取り込む。各可能な形態は、本発明に係る実施形態に相当する。
【0182】
他の実施形態では、本発明に係る細胞集団は、例えば、末梢血、白血球血液製剤、アフェレーシス血液製剤、末梢リンパ節、腸管関連リンパ系組織、脾臓、胸腺、臍帯血、腸間膜リンパ節、肝臓、免疫傷害部位(sites of immunologic lesions)、関節液、膵臓、脳脊髄液、腫瘍標本、肉芽腫組織、又はそのような細胞が得られる他の細胞源などのインビボの細胞源から得られる。他の実施形態では、細胞集団は、ヒトから得られる。前記ヒトは、胎児、新生児、子供、又は成人である。他の実施形態では、本発明に係る細胞集団は、例えば、ブタ若しくはサル、又は関心のある他の動物などから得られる。他の実施形態では、本発明に係る細胞集団は、正常の対象から得られる。他の実施形態では、本発明に係る細胞集団は、疾患を有する対象から得られる。他の実施形態では、本発明に係る細胞集団は、関心のある疾患を患う傾向のある対象から得られる。
【0183】
他の実施形態では、本発明に係る細胞集団は、アフィニティーに基づく分離方法によって分離される。アフィニティー分離方法として、他の実施形態では、磁気分離(抗体で被覆された磁性ビーズを使用して)、アフィニティー・クロマトグラフィー、モノクローナル抗体に結合した若しくはモノクローナル抗体と共に使用される細胞毒性剤(例えば、補体及び細胞毒素)、プレートなどの固体マトリックスに結合した抗体による「パニング」(panning)、又は従来の他の方法がある。他の実施形態では、分離方法には、蛍光活性化細胞分類の利用が含まれる。他の実施形態では、本発明に係る細胞集団の分離を可能にする如何なる方法を使用することができ、その方法は本発明の一部と見なされる。
【0184】
他の実施形態では、樹枝状細胞は、様々なリンパ系組織及び非リンパ系組織で見られる形態的に同様の様々な細胞集団から得られる(Steinman (1991) Ann. Rev. Immunol. 9:271-296)。他の実施形態では、本発明に使用される樹枝状細胞は、骨髄から単離される。他の実施形態では、前記樹枝状細胞は、骨髄から単離される。他の実施形態では、前記樹枝状細胞は、骨髄前駆細胞から由来する。他の実施形態では、前記樹枝状細胞は、末梢血から単離される/由来する。他の実施形態では、前記樹枝状細胞は、細胞株から由来する、又は細胞株である。
【0185】
他の実施形態では、本明細書に記載されている細胞集団は、哺乳動物(マウス、サル、又はヒトなど)の白血球画分から単離される(例えば、国際公開第96/23060を参照)。白血球の画分は、他の実施形態では、哺乳動物の末梢血から単離される。
【0186】
樹枝状細胞の単離方法は、当該技術分野で公知である。他の実施形態では、樹枝状細胞を単離する方法は、(a)ロイコフォレーシス(leukophoresis)などの当該技術分野で公知の方法で哺乳動物から白血球画分を得るステップと、(b)対流遠心エルトリエーションによって、ステップ(a)の白血球画分を4つ以上の副画分に分離するステップと、(c)ステップ(b)の1つ以上の画分の単球をカルシウムイオノフォア、GM−CSF、及びIL−13、又はGM−CSF、及びIL−4に接触させることで前記単球が樹枝状細胞に変換するのを促進するステップと、(d)ステップ(c)の樹枝状細胞の濃縮画分を同定するステップと、(e)ステップ(d)の濃縮画分を回収する(好ましくは、4℃で)ステップとを含む。
【0187】
他の実施形態では、樹枝状細胞の濃縮画分は、蛍光活性化細胞分類によって同定される。蛍光活性化細胞分類によって、HLA−DR、HLA−DQ、又はB7.2の内の少なくとも1つのマーカーが同定される。また、蛍光活性化細胞分類によって、CD3、CD14、CD16、56、57、及びCD19、20が同時に欠失しているのが確認される。
【0188】
他の実施形態では、細胞集団は、リンパ球(他の実施形態では、T細胞であり、他の実施形態では、B細胞である)を含む。T細胞には、他の実施形態では、NK細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性細胞(CTL)、TIL、ナイーブT細胞、又はそれらの組み合わせが含まれる。初代細胞、細胞株、クローン等であるT細胞は、本発明の一部であると見なされることを理解されたい。他の実施形態では、T細胞は、CTL若しくはCTL細胞株、CTLクローン、又は腫瘍、炎症、若しくは他の浸潤物から単離されたCTLである。
【0189】
他の実施形態では、造血幹細胞又は初期前駆細胞は、本発明に使用される細胞集団を含む。他の実施形態では、そのような細胞集団は、ロイコフォレーシスによって単離される。他の実施形態では、ロイコフォレーシスは、サイトカイン投与後に、骨髄、末梢血(PB)、又は新生児の臍帯血に対して行われる。他の実施形態では、幹細胞又は前駆細胞は、CD34として知られる表面抗原マーカーが発現すること、及び表面抗原マーカーであるLinの発現が見られないこと特徴付けられる。
【0190】
他の実施形態では、対象には、骨髄細胞と共に本発明に係るペプチド、組成物、又はワクチンが投与される。他の実施形態では、骨髄細胞との投与は、対象における癌を抑制及び治療するための治療の一部分として、対象に行われる放射線照射の後に実施される。
【0191】
他の実施形態では、「細胞を接触させる」又は「細胞集団を接触させる」という文は、晒すことを意味し、これは他の実施形態では、直接的又は間接的に行われる。他の実施形態では、そのような接触には、当該技術分野で公知の任意の方法による細胞の直接注入(マイクロインジェクション等)が含まれる。また、他の実施形態では、細胞への供給は、間接的であり、例えば、細胞周囲の培養液へ供給することで行われる、又は当該技術分野で公知の任意の経路で対象に投与することで行われる。
【0192】
他の実施形態では、本発明に係る方法におけるCTLは、インビボで発生させられ、インビトロで本発明に係るペプチドに接触させた抗原提示細胞を対象に導入することで誘発される(例えば、「Paglia et al. (1996) J. Exp. Med. 183:317- 322」を参照)。
【0193】
他の実施形態では、本発明に係る方法及び組成物のペプチドは、APCに送達される。他の実施形態では、免疫応答を誘発する、又は腫瘍を治療する、又は腫瘍の成長若しくは再発を抑制するために、ペプチドでパルスしたAPCが対象に投与される。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態を表す。
【0194】
他の実施形態では、ペプチドは、そのペプチドをコードするcDNAの形態でAPCに送達される。他の実施形態では、「抗原提示細胞」(APC)という用語は、必要なMHC/副刺激分子(T細胞に提示抗原を効果的に認識させる)を発現する樹枝状細胞(DC)、単球/マクロファージ、Bリンパ球、又は他の種類の細胞を意味する。他の実施形態では、APCは、癌細胞である。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態を表す。
【0195】
他の実施形態では、CTLは、2つ以上のAPC集団に接触させられる。他の実施形態では、2つ以上のAPC集団は、異なるペプチドを提示する。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態を表す。
【0196】
他の実施形態では、APC(例えば、DC)のサイトゾルで抗原を発現させる方法によって、APCにペプチドを送達する。APCで抗原を発現させる方法は、当該技術分野で公知である。他の実施形態では、この方法には、(1)本発明に係るペプチドをコードする裸のDNAをAPCに導入する方法、(2)本発明に係るペプチドを発現する組み換え型ベクターをAPCに感染させる方法、(3)リポソームを用いて本発明に係るペプチドをAPCのサイトゾルに導入する方法が含まれる(「Boczkowski D. et al. (1996) J. Exp. Med. 184:465-472」、「Rouse et al. (1994) J. Virol. 68:5685-5689; and Nair et al. (1992) J. Bxp. Med. 175:609-612」を参照)。
【0197】
他の実施形態では、本明細書に例示されているように、ヒト細胞株174×CEM.T2(以下、T2と呼ぶ)から由来し、且つ抗原処理経路において、内因性ペプチドが細胞表面のMHCクラスI分子と結合するのを制限する変異を有する育成APC(Zweerink et al. (1993) J. Immunol. 150:1763-1771)が使用される。
【0198】
他の実施形態では、本明細書に記載されているように、対象は、発現される天然型のタンパク質とは異なる本発明に係るペプチドに、又は前記ペプチドを含む組成物/細胞集団に晒される。その後、宿主において天然型のタンパク質/抗原との免疫交差反応が発達する。
【0199】
他の実施形態では、本発明に係る方法及び実施形態で言及される対象は、ヒトである。他の実施形態では、対象は、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、モルモット、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ネコ、イヌ、サル、又はエープ等の動物である。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0200】
他の実施形態では、本発明に係るペプチド、ワクチン、及び組成物は免疫応答を促進し、その免疫応答によって、腫瘍細胞は溶解する。
【0201】
他の実施形態では、本明細書に記載の任意の方法が、インビトロでCTLを誘起するのに使用される。他の実施形態では、CTLは、エクスビボで誘起される。他の実施形態では、CTLは、インビトロで誘起される。誘起されたCTLは、他の実施形態では、対象に投与され、それによって、本発明に係るペプチド、ペプチドを含む発現産物、又はその相同体に関連する疾患が治療される。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0202】
他の実施形態では、本発明に係る方法は、本発明に係るペプチドをコードする遺伝子配列の導入を含み、それには、例えば1つ以上の核酸送達方法が使用される。本発明に係る核酸は、他の実施形態では、DNA、RNA、及びDNAとRNAとの混合物を含む、又はDNA、RNA、及びDNAを非核酸要素と共に含む。他の実施形態では、本発明に係る方法は、本発明に係るペプチドをコードする核酸を含むベクターを対象に投与するステップを含む(Tindle, R. W. et al. Virology (1994) 200:54)。他の実施形態では、本発明に係る方法は、ペプチドをコードする裸のDNAを対象に投与するステップ、又は他の実施形態では、本発明に係る2つ以上のペプチドを対象に投与するステップを含む(Nabel, et al. PNAS-USA (1990) 90: 11307)。他の実施形態では、複数のエピトープ、アナログに基づく癌ワクチンが使用される(Fikes et al., Design of multi- epitope, analogue-based cancer vaccines. Expert Opin Biol Ther. 2003 Sep;3(6):985-93)。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0203】
核酸は、当該技術分野で公知の任意の方法で対象に投与することができる。この投与方法には、非経口投与若しくは静脈内投与、又は他の実施形態では、遺伝子銃による投与が含まれる。他の実施形態では、核酸は、組成物に含まれた状態で投与される。他の実施形態では、前記組成物は、本明細書に記載の任意の実施形態に相当する。
【0204】
本発明に係る方法で使用されるベクターは、本発明に係るペプチドの発現を促進する、又は可能にする任意のベクターである。ベクターとして、幾つかの実施形態では、ワクシニア若しくは鶏痘などの弱毒化ウイルス(米国特許第4,722,848号に記載(参照により、本明細書に含まれる))がある。他の実施形態では、ベクターとしてBCG(Bacille Calmette Guerin)(「Nature 351:456-460 (1991)」(Stover et al.)に記載されている)がある。本明細書の記載内容から、本発明に係るペプチドの治療用投与及び予防接種に有用な他の様々なベクター(例えば、チフス菌(Salmonella typhi)のベクターなど)が当業者に明白となるであろう。
【0205】
他の実施形態では、ベクターは、本明細書に記載のように、免疫調節因子をさらにコードする。他の実施形態では、本発明に係るペプチドをコードするベクターを対象に投与すると同時に、又はその前に、又はその後に、免疫調節因子をコードする他のベクターが対象に投与される。
【0206】
他の実施形態では、本発明に係るペプチド、組成物、及びワクチンは、他の抗癌化合物及び化学療法薬(癌の代替抗原(alternate cancer antigen)標的にするモノクローナル抗体、又は他の実施形態では、本発明に係るペプチドが由来するペプチド若しくはその一部分に相当するAA配列から成るエピトープを標的にするモノクローナル抗体など)と共に対象に投与される、又は本発明に係る方法で使用される。
【0207】
本発明では、投与量の様々な範囲が考えられる。他の実施形態では、投与量は20μgペプチド/日である。他の実施形態では、投与量は10μgペプチド/日である。他の実施形態では、投与量は30μgペプチド/日である。他の実施形態では、投与量は40μgペプチド/日である。他の実施形態では、投与量は60μgペプチド/日である。他の実施形態では、投与量は80μgペプチド/日である。他の実施形態では、投与量は100μgペプチド/日である。他の実施形態では、投与量は150μgペプチド/日である。他の実施形態では、投与量は200μgペプチド/日である。他の実施形態では、投与量は300μgペプチド/日である。他の実施形態では、投与量は400μgペプチド/日である。他の実施形態では、投与量は600μgペプチド/日である。他の実施形態では、投与量は800μgペプチド/日である。他の実施形態では、投与量は1000μgペプチド/日である。他の実施形態では、投与量は1500μgペプチド/日である。他の実施形態では、投与量は2000μgペプチド/日である。
【0208】
他の実施形態では、投与量は、10μgペプチド/投与である。他の実施形態では、投与量は、30μgペプチド/投与である。他の実施形態では、投与量は、40μgペプチド/投与である。他の実施形態では、投与量は、60μgペプチド/投与である。他の実施形態では、投与量は、80μgペプチド/投与である。他の実施形態では、投与量は、100μgペプチド/投与である。他の実施形態では、投与量は、150μgペプチド/投与である。他の実施形態では、投与量は、200μgペプチド/投与である。他の実施形態では、投与量は、300μgペプチド/投与である。他の実施形態では、投与量は、400μgペプチド/投与である。他の実施形態では、投与量は、600μgペプチド/投与である。他の実施形態では、投与量は、800μgペプチド/投与である。他の実施形態では、投与量は、1000μgペプチド/投与である。他の実施形態では、投与量は、1500μgペプチド/投与である。他の実施形態では、投与量は、2000μgペプチド/投与である。
【0209】
他の実施形態では、投与量は、10〜20μgペプチド/投与である。他の実施形態では、投与量は、20〜30μgペプチド/投与である。他の実施形態では、投与量は、30〜60μgペプチド/投与である。他の実施形態では、投与量は、40〜80μgペプチド/投与である。他の実施形態では、投与量は、50〜100μgペプチド/投与である。他の実施形態では、投与量は、50〜150μgペプチド/投与である。他の実施形態では、投与量は、100〜200μgペプチド/投与である。他の実施形態では、投与量は、200〜300μgペプチド/投与である。他の実施形態では、投与量は、300〜400μgペプチド/投与である。他の実施形態では、投与量は、400〜600μgペプチド/投与である。他の実施形態では、投与量は、500〜800μgペプチド/投与である。他の実施形態では、投与量は、800〜1000μgペプチド/投与である。他の実施形態では、投与量は、1000〜1500μgペプチド/投与である。他の実施形態では、投与量は、1500〜2000μgペプチド/投与である。
【0210】
他の実施形態では、1回の投与当たり又は1日当たりのペプチドの全量は、上記の量の1つである。他の実施形態では、1回の投与当たりの全ペプチド投与量は、上記の量の1つである。
【0211】
各可能な形態は、本発明の異なる実施形態を示す。
【実施例】
【0212】
≪実施例1:HLA−A0201及び−A0301へのWT1由来の合成ペプチドアナログの結合≫
【0213】
<材料及び方法>
【0214】
ペプチド:
【0215】
ペプチドは、Genemed Synthesis Inc, CAによって、フルオレニルメチルオキシカルボニル基による化学反応及び固相合成で合成され、高圧液体クロマトグラフィー(high pressure liquid chromatography:HPLC)で精製された。HPLC分析でペプチドの性質を評価し、マトリックス支援レーザー脱離質量分析法で分子量を測定した。ペプチドは無菌状態にあり、その純度は>90%であった。濃度が5mg/mlになるように、ペプチドをDMSOに溶解してpH7.4のPBS又は生理食塩水で希釈した。このペプチド溶液を−80℃で保存した。インビトロの実験には、無関係の対照ペプチドであるHLA A24コンセンサスを使用した。
【0216】
ペプチド配列の分析:
【0217】
ペプチドの配列分析には、2つのデータベースを使用した。第1のものは、Bioinformatics & Molecular Analysis Section(National Institutes of Health, Washington, DC)(「Parker KC et al., Scheme for ranking potential HLA-A2 binding peptides based on independent binding of individual peptide side-chains. J Immunol 152: 163-175, 1994」を参照)のソフトウエアである。このソフトウエアは、HLAクラスI分子からの解離の予想ハーフタイムに基づいて9〜10アミノ酸残基のペプチドにランク付けをする。第2のデータベースは、SYFPEITHI予想ソフトウエアであり、「SYFPEITHI: database for MHC ligands and peptide motifs. Immunogenetics 50: 213-219, 1999」(Rammensee HG et al.)に記載されている。インビトロの実験のために使用された無関係の対照ペプチドは、クラスIIに対しては、RAS(TEYKLVVVGAPGVGKSALTIQ、SEQ ID No:46)又はCML b2a2(VHSIPLTINKEEALQRPVASDFE、SEQ ID No:47)であり、クラスIに対しては、HIV p01 (ILKEPVHGV、SEQ ID No:48)又はCML F (YLKALQRPY、SEQ ID No:49)であった。
【0218】
細胞株:
【0219】
細胞株は、5%のウシ胎仔血清(FCS)とペニシリンとストレプトマイシンと2mMのグルタミンと2−メルカプトエタノールを含有するRPMI1640にて、37℃、5%のCOを含む加湿空気下で培養した。T2は、TAP1及びTAP2を欠失するヒトの細胞株なので、サイトゾルタンパク質由来のペプチドを提示することができない。Raji細胞は、高レベルのTAP発現を示すバーキットリンパ腫である。
【0220】
実験に使用したヒトの中皮腫細胞株には、肉腫細胞(VAMT、H2373、H28)、類上皮細胞(H2452)、及び2相型中皮腫細胞(JMN、MSTO及びH−MesolA)が含まれる。細胞株は、次のソースから取得した。H−MesolAは国立癌研究所(NCI)(Bethesda, MD)から、JMN及びVAMTは、メモリアル・スローン・ケタリング癌センター(Memorial Sloan Kettering Cancer Center:MSKCC)のSirotnak博士から、H−2452及びH2373はウェイン州立大学のKarmanos Cancer Institute(Detroit, MI)のPass博士から、H28及びMSTOはアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)(Manassas, VA)から取得した。細胞株は、提供者が推薦した培地にて、5%のCOを含む加湿インキュベータで培養した。
【0221】
中皮腫細胞株であるMeso11、Meso24、Meso37、Meso47、及びMeso56は、M Gregoire博士(Institute of Biology, Nantes, France)から取得し、10%のウシ胎仔血清(FCS)と1%のペニシリン−ストレプトマイシンと1%のL−グルタミンとを含有するRPMI1640(Life Technologies)で培養した。全ての細胞には、MSKCCの細胞免疫部門(Department of Cellular Immunology)にてHLAがタイプされた。メラノーマの細胞株であるMewo(WT1、A201)は、ATCCから取得した。SKRC−52腎細胞癌は、Ludwig InstituteのL. Oldから取得した。白血病細胞株は、10%のFCS1と1%のペニシリン−ストレプトマイシンと2mMのグルタミンと2−メルカプトエタノールとを含有するRPMI1640にて、37℃、5%のCO下で培養した。Ph白血病であるLAMA81、BV173及び697は、全てWT1及びA0201であり、ロンドン大学のユニバーシティ・カレッジのHJ Stauss博士から提供された。ヒトB細胞リンパ腫であるSKLY−16(WT1、A0201)、並びにWT1であるK562、RwLeu4、及びHL60は、ATCCから取得した。
【0222】
ペプチド結合及びHLA−A0201分子の安定性に関するT2アッセイ:
【0223】
T2細胞(TAP、HLA−A0201)は、5μg/mlのヒトβm(Sigma, St Louis, MO)を含むFCS欠失RPMI培地にて、1×10個の細胞/mlの濃度、27℃、様々な最終濃度(50、10、1、及び0.1μg/ml)の陽性基準チロシナーゼペプチド又はテストしようとするペプチドの存在下又は非存在下(陰性対照)で1晩インキュベートした。T2細胞を、5μg/mlのブレフェルジンA(Sigma)と共に4時間インキュベートした後に、飽和濃度の抗HLA−A2.1(BB7.2)のモノクローナル抗体で、30分間、4℃で標識した。次に細胞を、飽和濃度のFITC融合抗マウスIgヤギIgGF(ab´)2(Caltag, San Francisco, CA)と共に、30分間、4℃でインキュベートした。次に、細胞を2回洗浄し、1%のパラホルムアルデヒド含有のPBSで固定し、FACS Calibur(登録商標)サイトフルオロメータ(cytofluorometer)(Becton Dickinson, Immunocytometry Systems, San Jose, CA)で分析した。
【0224】
それぞれのペプチドの濃度に関して観察された平均蛍光強度(mean intensity of fluorescence:MIF)は、ペプチド結合の指標として使用し、「蛍光インデックス」して表した。安定アッセイは、同様に行った。時間0においてペプチド結合に関する最初の評価を行った後に、ペプチドを除去するために細胞をRPMI完全培地で洗浄し、0.5μg/mlのブレフェルジンAが常に存在する状態で2、4、6、又は8時間インキュベータした。
【0225】
安定なペプチド−HLA−A2.1複合体の数は、上記の免疫蛍光法で推定した。複合体のハーフタイムは、時間0におけるMIF値が50%減少するのに必要な推定時間である。
【0226】
<結果>
【0227】
WT1配列から、HLA−A0201及びHLA−A0301分子に対して親和力を有すると予想されるペプチドを同定した。HLA−A0201及びHLA−A0301分子に対する結合が増大すると予想されるヘテロクリティックペプチドが得られるように、表1及び2に示されているように、これらのWT1天然型ペプチドを改変した。TAP1/2陰性細胞株(T2)及びHLA−0301を有するRaji細胞を使用して熱安定化アッセイ行ったところ、HLA−A0201及びHLA−0301分子を著しく安定させたヘテロクリティックペプチドが幾つか確認された。とりわけ、WT1−A1、B1、及びC1は、対応する天然型のペプチドWT−1A、B、及びCと比較して同様な又はより増大した結合度を示した。WT1−D1は、対応する天然型のペプチドWT1−Dと比較して同様な又は増大した結合度を示した(図1A)。WT1−A、−B、及び−DのHLA−A0301への結合度を、それぞれの3つのアナログのものと比較すると、同様な結果が確認された(図1B〜5E)。
【0228】
したがって、本発明に係るヘテロクリティックWT1ペプチドの、HLAクラスI分子に対する結合度は大きい。
表1.HLA−A0201に結合する、WT1由来の天然型ペプチド及びそれらの合成アナログ

表2.HLA−A0201に結合する、WT1由来の天然型ペプチド及びそれらの合成アナログ

【0229】
≪実施例2:WT1由来の合成ペプチドアナログに対する免疫応答の誘導≫
【0230】
<材料及び方法>
【0231】
ペプチド刺激:
【0232】
遠心分離によって、HLA−A0201陽性の健康なドナー及びCML患者からPBMCをFicoll-Paque遠心培地(Amersham Biosciences)で精製した。末梢血の樹枝状細胞(DC)を下記のように発生させた。プラスチック付着法で、単球が濃縮したPBMC画分を全PBMCから単離した。プラスチックに付着した細胞を、1〜5%の自己血漿と1000U(ユニット)/mLの組換え型ヒトインターロイキン(IL)−4(Schering-Plough, N.J.)と1000U/mLの組換え型ヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)とを含有するRPMI1640培地(Invitrogen)でさらに培養した。
【0233】
インキュベーションの2日目及び4日目に、IL−4及びGM−CSFを含有する新鮮な培地を加えた。6日目には、培地の半分を、IL−4とGM−SFと10ng/mLの組換え型ヒト腫瘍壊死因子(TNF)−アルファ(R&D system)と500ng/ml三量体型溶解性CD40L(Immunex, Seattle)とを含有する培地と交換した。9日目には、細胞を回収して抗原刺激のためのAPCとして使用した。細胞は、DC関連の抗原(CD80、CD83、CD86など)、並びにHLAクラスI及びクラスIIを細胞表面に発現していた。
【0234】
抗CD11b、抗CD56、及び抗CD19モノクローナル抗体(Miltenyi, CA)で陰性選択することによって同じドナーからTリンパ球を単離した。1×10個のTリンパ球を、1×10個の自己DCと共に、10μg/mLのペプチド及び2μg/mlβマイクログロブリン含有の加熱不活性化された5%のヒト自己血漿と5ng/mLの組換え型ヒトIL−7(Genzyme)と0.1ng/mlのIL12を含むRPMI1640培地にて、24個のウエルで培養した。
【0235】
3日間培養した後、20U/mlの組換え型IL−2(Sandoz Pharmaceutical)を加えた。10日後、磁気的に単離したCD14自己単球を、10ng/mlのIL−7、20U/mlのIL−2、及び10μg/mLのペプチドと共に加えることによって、1×10個の細胞を再び刺激した。場合によっては、さらに7日間培養した後に、同様に細胞を刺激した(3回目)。最後の刺激の後に、CD8T細胞を磁気的に単離し、細胞傷害性及びガンマIFN分泌を評価した。
【0236】
<結果>
【0237】
ヘテロクリティックWT1ペプチドが天然型及びヘテロクリティックWTペプチドに対する免疫応答を発生させるかどうかを確認するために、健康なドナーのCD3PBMCのサブ集団を単離し、ペプチドでパルスした自己単球由来DCで刺激し、次にペプチドでパルスしたCD14単球で再刺激した。次に、パルスしたHLA適合白血病細胞を使用して、活性化した抗原特異的なT細胞が存在するかどうかを確認した。IFNガンマELISPOT(図2A)及びクロム放出アッセイ(図2B)を行ったところ、幾つかのアナログペプチドがより大きな免疫応答を発生させた(すなわち、天然型のペプチドと比較して、T細胞前駆体の頻度が増加した)ことが確認された。ドナーCD3のサブ集団(図3のB〜D)及びCD8のサブ集団(図3A)を使用したところ、同様な結果が観察された。さらに、ヘテロクリティックWT1ペプチドで刺激されたCD8細胞は、天然型のWT1ペプチドと交差反応し、HLA適合CML(慢性骨髄性白血病)芽球を溶解することができた(図4A〜B)。
【0238】
したがって、本発明に係るヘテロクリティックWT1ペプチドは、(a)炎症性サイトカインを分泌すること、及び(b)WT1ペプチドを提示する細胞を溶解することができる。また、ヘテロクリティックWT1ペプチドによって発生したT細胞は、天然型及びヘテロクリティックのWT1ペプチドを認識する。
【0239】
≪実施例3:HLAクラスII分子と結合する合成WT1ペプチドの選択≫
【0240】
様々なHLAクラスII分子と、比較的高い親和力で結合するWT1ペプチドを同定するために、NCBI(全米バイオテクノロジー情報センター)のMHCデータベースを使用して、米国の白人人口におけるHLA−DRBの対立遺伝子の頻度が得られた(Wheeler DL et al., Database resources of the National Center for Biotechnology Information. Nucleic Acids Res. 2005 Jan 1;33:D39-45; Wheeler DL et al, Database resources of the National Center for Biotechnology Information. Nucleic Acids Res. 2006 Jan 1;34:D 173-80)。SYFPEITHIエピトープ予測アルゴリズムを使用したところ、WT1から、比較的高い親和力でHLA−DRBと結合すると予想される2つのペプチドが同定された(表3)。
表3.SYFPEITHIアルゴリズムに基づいて、HLA−DR対立遺伝子産物と結合すると予想されるWT1の天然型ペプチド(0(低)〜28(高))

【0241】
表3のペプチドのAA配列は、LVRHHNMHQRNMTKL(427)、RSDELVRHHNMHQRNMTKL(423)、NKRYFKLSHLQMHSR(331)、及びPGCNKRYFKLSHLQMHSRKHTG(328)である。
【0242】
したがって、本発明に係るHLAクラスII分子結合WT1ペプチドは、多くのHLAクラスII分子と結合する。
【0243】
≪実施例4:HLAクラスII分子と結合するWT1ペプチドはCD4T細胞を刺激する≫
【0244】
<材料及び実験方法(この実施例及び後続の実施例)>
【0245】
血液からPBMCをファイコール(Ficoll)で精製し、1%の自己血漿含有のEx-Vivo-15(登録商標)培地で5×10個/mlになるように再懸濁した。37℃で2時間インキュベーションした後に、非付着画分を回収し、PBSで繰り返し洗浄し、次に1×10IU/mlのGM−CSFと0.0032IU/mlのIL−4とを含有する培地に再懸濁した。2日目及び4日目に、再供給のために同じ培地を加えた(すなわち、皿全体に対して十分なサイトカインを含む1/2量の培地を加えた)。5日目に10μg/mlのペプチドを加えた。
【0246】
6日目に、サイトカインの成熟カクテルを加え、細胞をさらに48時間培養した。成熟カクテルは、4×10IU/mlのIL−1ベータ、0.0032IU/mlのIL−4、1×10IU/mlのIL−6、1×10IU/mlのGMCSF、10μg/mlのTNF−アルファ、及び1μg/mlのPGE2から構成されていた。
【0247】
7日目に、DCを回収し、RPMIで2回洗浄し、その数を数えた。DCを分割して1×10個/mlになるようにX-vivo 15(登録商標)(血清なし)で再懸濁した。最終濃度が10μg/mlになるようにペプチドを加え、2時間、37℃、5%のCO2下でインキュベートした(15分ごとに穏やかに懸濁した)。次に、細胞をHBSSで2回洗浄し、適切な濃度になるように(次のステップで単離されるエフェクターの数に応じて)5%の自己血漿含有のRPMIに再懸濁した。
【0248】
また、7日目に、別のPBMCを使用して別のDC及びCD3細胞を発生させた。付着画分からDCを単離し、14日目にエフェクター細胞に第2の刺激を行うために上記のような処理をした。CD3細胞を、陰性選択で非付着画分から単離し、2×10個の細胞/mlになるように5%の自己血漿含有のRPMIで再懸濁し、予め処理をしたDC及び10ng/mlのIL−15を加えて刺激した(エフェクター:DC=20:1の比で)。次に細胞を、2mlの培養液に懸濁し、37℃、5%のCO下で1週間インキュベートした。
【0249】
14日目に、第2バッチのDCでCD3細胞に第2の刺激を同様に行った(但し、エフェクター:DCが50:1になるようにDCを1×10個の細胞/mlのCD3細胞と混合した)。18日目には、再供給のために同じ培地を加えた。20日目には、前世代のDCを解糖し、成熟サイトカイン含有のX-vivo 15(登録商標)培地でインキュベートした。21日目にはmELISPOTアッセイを行った。
【0250】
ELISPOTアッセイ:
【0251】
プレートを70%アルコール(30μl/ウエル)で湿らせ(アルコールが表面全体を覆うようにプレートを揺らす)、滅菌PBS(150μl/ウエル)で3回洗浄した。次に10μg/mlのコーティング抗体(抗INFクローン)含有のPBSをプレートに加えて(100μl/ウエル)、プレートをアルミニウムホイルで包み、4℃で1晩インキュベートした。次に、プレートをPBS(150μl/ウエル)で2回洗浄し、10%の自己血漿(AP)含有のRPMIで1回洗浄し、5%のAP含有RPMI(150μl/ウエル)で2時間、37℃でブロックした。1×10個の細胞/mlになるようにPBMCを5%のAP含有のRPMIに懸濁した。各ウエルに1×10個の細胞及び2μgの適切なペプチド加え、容量が200μl/ウエルになるように培地を加えた。対照用のウエルには、2.5mg/mlのPHAを加えた(1μl/ウエル)。プレートをアルミニウムホイルで包み、20時間、37℃でインキュベートした。
【0252】
次に、プレートを、0.05%のTween2含有のPBSで3回洗浄し、さらに、PBSで3回洗浄した。0.5%BSA含有のPBSで500倍希釈した抗INF−ガンマ−ビオチン(クローン7−B6−1)を加え(100μl/ウエル)、プレートを2時間、37℃でインキュベートした。1時間30分後、アビジン−ペルオキシダーゼ複合体(Avidin-peroxidase Complex:ABC)(Vectastain Elite Kit, Vector)を、1滴の試薬A及び1滴の試薬Bを10mlの0.1%Tween20含有PBSに加えることで作成し、アルミニウムホイルで覆って室温で保存した。プレートを0.05%Tween含有のPBSで3回洗浄し、さらに、PBSで3回洗浄した。プレートにアビジン−ペルオキシダーゼ複合体を加えた(100μl/ウエル)。プレートをアルミニウムホイルで覆って室温で1時間インキュベートした。次に、プレートを0.05%のTween20含有のPBSで3回洗浄し、さらに、PBSで3回洗浄した。基質を加え(100μl/ウエル)、プレートを4分間、暗下でインキュベートし、水で反応を停止した。ウエルを乾燥させ、1晩、暗下、室温で保存した。スポット数は、コンピュータ及びビデオ画像分析器をKS ELISPOT 4.0ソフトウエア(Carl Zeiss Vision, Germany)と共に使用することで自動的に得られた。
【0253】
基質の用意:
【0254】
23.4mlの脱イオン水と、2.3mlの0.1N酢酸と、5.5mlの0.1N酢酸ナトリウムとを混合して水溶液#1(緩衝酢酸溶液)を作成した。1錠のAEC(Sigma)を2.5mlのジメチルホルムアミドに溶解して溶液#2を作成した。次に、1.25mlの溶液#2を23.7mlの溶液#1と混合し、13μlの30%のHを加えてよく混合し、0.45μmのフィルターに通した。
【0255】
クロスプライミング実験:
【0256】
上記のように、CD3細胞をインビトロで刺激した。3回の凍結溶解サイクルで2×10個の腫瘍細胞から作成した細胞ライゼートと共に2×10個の未熟DCをインキュベートした。18時間のインキュベーションの後に、上記にしたがって成熟サイトカインをDCに加えた。これらの自己成熟DCでCD3細胞を3回刺激した。その後、未熟期においてCD4ペプチドでパルスした自己成熟DCに対する反応性に関して、T細胞をIFN−ガンマELISPOTアッセイで分析した。上記のように、ELISPOTアッセイの際にDCを再びペプチドに晒した。
【0257】
クロム51細胞傷害性アッセイ:
【0258】
4時間の標準的クロム放出アッセイで特異的なCTLが存在するかどうかを確認した。標的細胞を、10μg/mlの合成ペプチドで、1晩、37℃でパルスし、300μCiのNa51CrO(NEN Life Science Products, Inc., Boston, MA)で標識した。よく洗浄した後に、標的細胞をT細胞と共にインキュベートした(E:T=100:1〜10:1の比で)。これらの条件全てを3通り行った。プレートを4時間、37℃、5%のCO下でインキュベートした。上澄みを回収し、ガンマカウンターで放射能を測定した。特異的溶解のパーセンテージは、100×[(実験的放出−自発的放出)/(最大放出−自発的放出)]として算出した。最大放出は、2.5%のTritonX−100における放射能標識標的細胞の溶解で求めた。
【0259】
統計:
【0260】
統計分析は、対応のない両側t−検定を用いてStatviewソフトウエア(SAS Institute, Cary, NC)で行った(統計的有意水準は0.05)。
【0261】
<結果>
【0262】
本発明に係るHLAクラスII結合WT1ペプチドがCD4T細胞を刺激できるかを確認するために、健康なドナーのCD4PBMCサブ集団を単離し、ペプチドでパルスした自己単球由来DCで刺激し、CD14単球で再刺激した。IFN−γELISPOTで示されたように、ペプチド328、及びより低い強度ではあるが、ペプチド423は、異なるHLA−DRB1型の様々なドナーにおいてペプチド特異的CD4T細胞の応答を著しく刺激した(図5)。予想通り、RAS(無関係な対照ペプチド)又はAPCのみで刺激した細胞は、バックグラウンドのレベルに対してより大きなレベルのIFN−γを生じさせなかった。
【0263】
したがって、本発明に係るHLAクラスII結合WT1ペプチドは、WT1ペプチドを提示する細胞を認識するようにT細胞を刺激することができる。
【0264】
≪実施例5:WT1発現細胞は、本発明に係るペプチドを処理して提示する。≫
【0265】
WT1発現細胞が本発明に係るペプチド又は対応する天然型ペプチドを処理して提示するかどうかを確認するために、クロスプライミング試験を行った。3つの異なる細胞株(e1a2白血病細胞株である697(WT1、HLA−A0201)、2相型中皮腫細胞株であるJMN(WT1、HLA−A0201)、及び悪性メラノーマ細胞株であるMeWo(WT1、HLA−A0201))から腫瘍ライゼートを作成した。健康なA0201ドナーからのDCを、腫瘍のラーゼートと共に18時間インキュベートし、自己CD3T細胞を刺激するのに使用した。T細胞を3回刺激した後に、WT1ペプチドでパルスした自己DCに対する反応性に関して調べた。WT1腫瘍ラーゼートで刺激されたT細胞は、HLAクラスII分子結合ペプチドを認識したのに対して(図6A及びB)、MeWoライゼートでパルスされたDCによって刺激されたT細胞はWT1特異的T細胞を刺激しなかった。陽性対照として697ライゼートをELISPOTに使用したところ、423及び328とほぼ同じスポット数を示した。これらの実験を5人の異なる患者に対して繰り返し行った。刺激されたT細胞は、3/5の実験においてWT1DRペプチド328を認識し、全ての実験においてWT1DR427を認識した。したがって、中皮腫細胞株においてWT1の転写産物の発現が低いにも関わらず(下記参照)、本発明に係るWT1は、処理され、中皮腫細胞のHLAクラスII分子によって提示される。
【0266】
これらの結果は、(a)本発明に係るペプチドがAPCによって取り込まれて抗原という形で提示されること、(b)本発明に係るペプチドがWT1発現腫瘍細胞に晒されたAPCに提示されること、及び(c)WT1 122及び122A1ペプチドに晒されたAPCがWT1発現腫瘍細胞を認識するT細胞の形成を誘起することを示す。したがって、中皮腫及び白血病細胞などのWT1発現細胞は、本発明に係るペプチド又は対応する天然型のペプチドを処理して提示する。
【0267】
≪実施例6:本発明に係るペプチドによって発生した抗原特異的CD4T細胞は、WT1を発現する腫瘍細胞を認識する。≫
【0268】
本発明に係るペプチドによって発生した抗原特異的CD4T細胞がWT1を発現する腫瘍細胞を認識するかどうかを確認するために、ペプチドで刺激したT細胞をIFN−γElISPOTにおいてWT1及びWT1陰性細胞でチャレンジさせた。対照のWT1陰性中皮腫細胞と比較して、WT1DRペプチドで刺激されたT細胞が中皮腫細胞を認識するのに十分な量のWT1ペプチドがWT1中皮腫細胞の表面上に提示されていた(図7)。したがって、本発明に係るペプチドでワクチン投与をすると、WT1を発現する腫瘍に対して活性を示す抗原特異的T細胞が発生する。
【0269】
≪実施例7:ヒト中皮細胞株におけるWT1発現≫
【0270】
<材料及び実験方法>
【0271】
WT1転写産物に対する定量RT−PCR:
【0272】
フェノール/クロロホルム抽出法で細胞株から全RNAを単離した。RNAの純度は、260nmにおける吸光度で確認した。RT反応は、Appled Biosystems(Foster City, CA)から提供されたプロトコールにしたがって行った。1mcgの全RNAと共にランダムなヘキサマー(random hexamers)及び逆転写酵素を使用してcDNAを単離した。PCR反応を行うために、cDNAをWT1プライマー及びプローブと混合した。尚、WT1のフォワード・プライマー(エキソン7に位置する)は5´−CAGGCTGCAATAAGAGATATTTTAAGCT−3´(SEQ ID No:39)であり、リバース・プライマー(エキソン8に位置する)は5´−GAAGTCACACTGGTATGGTTTCTCA−3´(SEQ ID No:40)である。プローブには、Taqmanプローブ(エキソン7に位置する)を使用し、その配列は、5´−CTTACAGATGCACAGCAGGAAGCACACTG−3´(SEQ ID No:41)であった。蛍光WT1プローブ5´−56−FAM/CTTACAGATGCACAGCAGGAAGCACACTG/3BHQ_1/−3´(SEQ ID No:42)は、5´末端でレポーターダイとしての6-カルボキシ-フルオレセイン(FAM)で標識し、3´末端で消光ダイであるカルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)で標識した(Integrated DNA Technologies, Coralville, IA)。PCR反応のパラメータに関しては、2分間50℃、10分間95℃になるように設定し、その後に15秒間95℃及び60秒間62℃のサイクルを50回行った。1つのウエルにおいて>1Ctの不一致(discrepancies1> Ct)を除外した。Q−RT−PCR及び蛍光測定は、Applied Biosystems 7500 Real Time(登録商標)のPCRシステムで行った。対照ABLのフォワード・プライマーは5´−TGGAGATAACACTCTAAGCATAACTAAAGGT−3´(SEQ ID No:43、EnF−10030に位置する)であり、リバース・プライマーは5´−GATGTAGTTGCTTGGGACCCA−3´(SEQ ID No:44、ENR−1063に位置する)であった。蛍光プローブは、5´−/56FAM/CCATTTTTGGTTTGGGCTTCACACCATT/3BHQ_l/−3´(SEQ ID No:45、ENPr−1043に位置する)であった。
【0273】
<結果>
中皮腫細胞におけるWT1発現レベルを確認するために、ヒトの中皮腫細胞株(肉腫様、類上皮、二相型)におけるWT1の転写物をRT−PCRで定量し、WT1を発現すると知られる様々な白血病細胞株と比較した。12/12の中皮腫細胞株はWT1メッセージRNAを発現し、多くの場合、そのレベルは白血病細胞株よりも低かった(図8)。対照的に、メラノーマ(MeWo)及びリンパ腫(SKLY16)細胞株はWT1陰性であった。成熟有足腎細胞が低レベルのWT1発現を示すにも関わらず、ヒト腎細胞癌の細胞株であるSK−RC−52は、WT1を発現しなかった。フローサイトメトリー分析により、全ての中皮腫細胞がクラスII分子を発現し、その一部(JMN及びH−2452)がクラスI分子を発現したことが確認された。
【0274】
したがって、本発明に係る方法は、中皮腫細胞に対する免疫応答の誘導及びワクチン投与に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0275】
【図1A】HLA−A0201細胞における天然型及び合成WT1ペプチドのT2安定アッセイを示す図。X軸は、テストしたペプチドのウエル当たりの濃度である。
【図1B−C】HLA−A0301細胞における天然型及び合成WT1ペプチドのT2安定アッセイを示す図。蛍光インデックスは、ペプチドをテストした際の平均蛍光度:ペプチドが無い場合の平均蛍光度の比である。X軸は、テストしたペプチドのウエル当たりの濃度である。
【図1D−E】HLA−A0301細胞における天然型及び合成WT1ペプチドのT2安定アッセイを示す図。蛍光インデックスは、ペプチドをテストした際の平均蛍光度:ペプチドが無い場合の平均蛍光度の比である。X軸は、テストしたペプチドのウエル当たりの濃度である。
【図2】健康なHLA−A0201ドナーのCD3を、ペプチドでパルスしたT2細胞と反応させたときのガンマインターフェロン(INF)ELISPOT(A)及び細胞傷害性(B)の結果を示す図である。尚、それぞれのバーはT2細胞のパルスに使用したペプチドを示す。第1のバーはペプチド無し、第2のバーは刺激に使用されたペプチドと同じペプチド、第3のバーは対応する天然型のペプチド、第4のバーは陰性対照のペプチドである。X軸は、刺激に使用されたペプチドである。実験は、3回行われ、3〜5回確認された。
【図3A−B】図2と同様に、健康なHLA−A0201ドナーからのCD8(A)及びCD3(B)のガンマIFNに対するELISPOTを示す図である。各バーが示すペプチドの種類は、図2と同様である。
【図3C−D】図2と同様に、健康なHLA−A0201ドナーからのCD3のガンマIFNに対するELISPOTの結果を示す図である。各バーが示すペプチドの種類は、図2と同様である。尚、図3のB、C、及びDは、同じ実験を繰返して行った際の結果を示す。
【図4】合成WT1−A1ペプチドで刺激したHLA−A0201ドナー由来のCD8T細胞の、天然型ペプチド配列を提示するCML芽球に対する細胞傷害性アッセイの結果を示す図である。Aは結果のバーグラフである。各シリーズにおける第1のバーは、SKLY−16(WT1)、第2のバーはBV173(WT1+)、第3のバーはLAM81(WT1+)、第4のバーはCMLA(陰性対照)である。Bは死滅曲線である。四角印はSKLY−16である。ダイヤモンド印は697細胞である。G3、F4、C5、及びG5は、インビトロでの複数の刺激の後に発生した健康なHLA−A0201ドナー由来のT細胞クローンである。Y軸は、細胞傷害性のパーセンテージである。X軸は、T細胞:標的細胞の比である。
【図5(1)】異なる種類のHLA−DRB1を有する健康なドナー由来のCD3T細胞をWT1ペプチドで刺激した後にガンマIFNに対してELISPOTを行ったときの結果を示す図である。Y軸は、細胞傷害性のパーセンテージである。X軸はエフェクター細胞:標的細胞の比である。
【図5(2)】異なる種類のHLA−DRB1を有する健康なドナー由来のCD3T細胞をWT1ペプチドで刺激した後にガンマIFNに対してELISPOTを行ったときの結果を示す図である。CD3T細胞(A:HLA−DRB11001/1501、B:HLA−DRB10701/1202、C:HLA−DRB10301/901、D:HLA−DRB10407/1302)をペプチドWT1DR328又はWT1DR423で2回刺激した。刺激したT細胞を、IFNガンマに対するELISPOTアッセイにおいて次の細胞でチャレンジさせた。灰色のバー:未チャレンジ対照、黒色のバー:刺激ペプチド(WT1DR328又はWT1DR423)でパルスしたCD14細胞、白色のバー:無関係のCD4ペプチドエピトープ(RAS)でパルスしたCD14細胞、斜線模様のバー:パルスしていないCD14細胞。対照と比較して、p<0.05である。Y軸は、1×10個のCD3T細胞当たりのスポット数である。X軸は、T細胞の刺激に使用したペプチドである。
【図6】本発明に係るペプチドが処理され、提示され、ヒトのT細胞によって認識されることを示す図である。A:予め697腫瘍ライゼートと共にインキュベートした自己DCで、HLA−A0201/301、DRB11301/1302の健康なドナーからのCD3T細胞を刺激した。IFNガンマに対するELISPOTにおいて、予め697腫瘍ライゼート、WT1ペプチド、又は対照ペプチドと共にインキュベートした自己DC又は未パルスのDC(x軸)でCD3T細胞をチャレンジした。B:予めJMN(黒のバー)又はMeWo(白のバー)のライゼートと共にインキュベートした自己DCで、HLA−A0201/101、DRB10301/1601の健康なドナーからのCD3T細胞を刺激した。IFNガンマに対するELISPOTにおいて、予めJMN若しくはMeWo腫瘍ライゼート、WT1DRペプチド、又は対照クラスIIペプチド(x軸)と共にインキュベートした自己DCでT細胞をチャレンジした。斜線模様のバーは、T細胞の非存在下でインキュベートした自己DCからのスポットのバックグラウンド・レベルである。対照ペプチドに対してP<0.05である。Y軸は、1×10個のCD3細胞当たりのスポット数である。
【図7】中皮腫細胞株でチャレンジさせたCD3細胞のガンマインターフェロンに対して行ったELISPOTアッセイの結果を示す図である。HLA−A0201ドナー由来の全PBMCを、異なるWT1DRペプチドで2回刺激し、IFN−ガンマに対するELISPOTアッセイにおいて中皮腫H−Meso1A細胞株(黒のバー:WT1、A0201)又は対照メラノーマMeWo細胞株(灰色のバー:WT1、A0201)でチャレンジした。対照細胞株MeWoに対してP≦0.01である。Y軸は、2×10個のPBMC当たりのスポット数である。X軸は、細胞の刺激に使用されたペプチドを示す。
【図8】中皮腫細胞株でチャレンジさせたCD3細胞のガンマインターフェロンに対して行ったELISPOTアッセイの結果を示す図である。HLA−A0201ドナー由来の全PBMCを、異なるWT1DRペプチドで2回刺激し、IFN−ガンマに対するELISPOTアッセイにおいて中皮腫H−Meso1A細胞株(黒のバー:WT1、A0201)又は対照メラノーマMeWo細胞株(灰色のバー:WT1、A0201)でチャレンジした。対照細胞株MeWoに対してP≦0.01である。Y軸は、2×10個のPBMC当たりのスポット数である。X軸は、細胞の刺激に使用されたペプチドである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離されたWT1ペプチドであって、
RSDELVRHHNMHQRNMTKL(SEQ ID No:2)のアミノ酸配列を有することを特徴とするペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載の単離されたWT1ペプチドであって、
HLAクラスII分子に結合することを特徴とするペプチド。
【請求項3】
請求項2に記載の単離されたWT1ペプチドであって、
前記HLAクラスII分子は、HLA−DRB分子であることを特徴とするペプチド。
【請求項4】
請求項3に記載の単離されたWT1ペプチドであって、
前記単離されたWT1ペプチドは第2のHLA−DRB分子と結合し、
請求項3に記載のHLA−DRB分子及び前記第2のHLA−DRB分子は、異なるHLA−DRB対立遺伝子によってコードされることを特徴とするペプチド。
【請求項5】
請求項2に記載の単離されたWT1ペプチドと、他の単離されたWT1ペプチドとを含む組成物であって、
前記他の単離されたWT1ペプチドは、他のHLAクラスII分子と結合することを特徴とする組成物。
【請求項6】
請求項4に記載の単離されたWT1ペプチドと、他の単離されたWT1ペプチドとを含む組成物であって、
前記他のHLAクラスII分子は、請求項3に記載のHLA−DRB分子及び請求項4に記載の第2のHLA−DRB分子とは異なる第3のHLA−DRB分子であることを特徴とする組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の組成物であって、
前記他の単離されたWT1ペプチドは、第4のHLA−DRB分子と結合し、
請求項6に記載の第3のHLA−DRB分子及び前記第4のHLADRB分子は、異なるHLA−DRB対立遺伝子によってコードされることを特徴とする組成物。
【請求項8】
.
組成物であって、
請求項1に記載の単離されたWT1ペプチドと、HLAクラスI分子に結合するWT1ペプチドとを含むことを特徴とする組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の組成物であって、
前記HLAクラスI分子は、HLA−A分子であることを特徴とする組成物。
【請求項10】
請求項8に記載の組成物であって、
前記HLAクラスI分子に結合するWT1ペプチドのアミノ酸配列は、SEQ ID No:5乃至38から選択された配列を含むことを特徴とする組成物。
【請求項11】
ワクチンであって、
(a)請求項1に記載の単離されたWT1ペプチドと、(b)アジュバント又は担体とを含むことを特徴とするワクチン。
【請求項12】
請求項11に記載のワクチンであって、
前記アジュバントは、QS21、フロインド不完全アジュバント、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、BCG、ミョウバン、成長因子、サイトカイン、ケモカイン、インターロイキン、Montanide ISA 51、又はGM−SFであることを特徴とするワクチン。
【請求項13】
単離されたWT1ペプチドであって、
PGCNKRYFKLSHLQMHSRKHTG(SEQ ID No:4)のアミノ酸配列を有することを特徴とするペプチド。
【請求項14】
請求項13に記載の単離されたWT1ペプチドであって、
HLAクラスII分子に結合することを特徴とするペプチド。
【請求項15】
請求項14に記載の単離されたWT1ペプチドであって、
前記HLAクラスII分子は、HLA−DRB分子であることを特徴とするペプチド。
【請求項16】
請求項15に記載の単離されたWT1ペプチドであって、
前記単離されたWT1ペプチドは第2のHLA−DRB分子と結合し、
請求項15に記載のHLA−DRB分子及び前記第2のHLA−DRB分子は、異なるHLA−DRB対立遺伝子によってコードされることを特徴とするペプチド。
【請求項17】
請求項14に記載の単離されたWT1ペプチドと、他の単離されたWT1ペプチドとを含む組成物であって、
前記他の単離されたWT1ペプチドは、他のHLAクラスII分子と結合することを特徴とする組成物。
【請求項18】
請求項16に記載の単離されたWT1ペプチドと、他の単離されたWT1ペプチドとを含む組成物であって、
前記他のHLAクラスII分子は、請求項15に記載のHLA−DRB分子及び請求項16に記載の第2のHLA−DRB分子とは異なる第3のHLA−DRB分子であることを特徴とする組成物。
【請求項19】
請求項18に記載の組成物であって、
前記他の単離されたWT1ペプチドは、第4のHLA−DRB分子と結合し、
請求項18に記載の第3のHLA−DRB分子及び前記第4のHLA−DRB分子は、異なるHLA−DRB対立遺伝子によってコードされることを特徴とする組成物。
【請求項20】
請求項17に記載の組成物であって、
前記他の単離されたWT1ペプチドのアミノ酸配列は、SEQ ID No:1乃至3から選択されることを特徴とする組成物。
【請求項21】
組成物であって、
請求項13に記載の単離されたWT1ペプチドと、HLAクラスI分子に結合するWT1ペプチドとを含むことを特徴とする組成物。
【請求項22】
請求項21に記載の組成物であって、
前記HLAクラスI分子は、HLA−A分子であることを特徴とする組成物。
【請求項23】
請求項21に記載の組成物であって、
前記HLAクラスI分子に結合するWT1ペプチドのアミノ酸配列は、SEQ ID No:5乃至38から選択された配列を含むことを特徴とする組成物。
【請求項24】
ワクチンであって、
(a)請求項13に記載の単離されたWT1ペプチドと、(b)アジュバント又は担体とを含むことを特徴とするワクチン。
【請求項25】
請求項24に記載のワクチンであって、
前記アジュバントは、QS21、フロインド不完全アジュバント、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、BCG、ミョウバン、成長因子、サイトカイン、ケモカイン、インターロイキン、Montanide ISA 51、又はGM−SFであることを特徴とするワクチン。
【請求項26】
WT1を発現する癌を有する対象を治療する方法であって、
請求項11に記載のワクチンを前記対象に投与するステップを含み、それよって、WT1を発現する癌を有する対象を治療することを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法であって、
前記WT1を発現する癌は、白血病、線維形成性小円形細胞腫瘍、胃癌、結腸癌、肺癌、乳がん、胚細胞腫瘍、卵巣癌、子宮癌、甲状腺癌、肝臓癌、腎臓癌、カポジ肉腫、肉腫、又は肝細胞癌であることを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項26に記載の方法であって、
前記WT1を発現する癌は、ウィルムス腫瘍、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群(MDS)、非小細胞肺癌(NSCLC)であることを特徴とする方法。
【請求項29】
対象において、WT1を発現する癌の発生率又は再発率を減少させる方法であって、
請求項11に記載のワクチンを前記対象に投与するステップを含み、それよって、対象において、WT1を発現する癌の発生率又は再発率を減少させることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法であって、
前記WT1を発現する癌は、白血病、線維形成性小円形細胞腫瘍、胃癌、結腸癌、肺癌、乳がん、胚細胞腫瘍、卵巣癌、子宮癌、甲状腺癌、肝臓癌、腎臓癌、カポジ肉腫、肉腫、又は肝細胞癌であることを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項29に記載の方法であって、
前記WT1を発現する癌は、ウィルムス腫瘍、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群(MDS)、非小細胞肺癌(NSCLC)であることを特徴とする方法。
【請求項32】
WT1を発現する癌細胞に特異的なCTLの形成及び増殖を誘導する方法であって、
請求項11に記載のワクチンを前記対象に投与するステップを含み、それよって、WT1を発現する癌細胞に特異的なCTLの形成及び増殖を誘導することを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法であって、
前記WT1を発現する癌は、白血病、線維形成性小円形細胞腫瘍、胃癌、結腸癌、肺癌、乳がん、胚細胞腫瘍、卵巣癌、子宮癌、甲状腺癌、肝臓癌、腎臓癌、カポジ肉腫、肉腫、又は肝細胞癌であることを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項32に記載の方法であって、
前記WT1を発現する癌は、ウィルムス腫瘍、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群(MDS)、非小細胞肺癌(NSCLC)であることを特徴とする方法。
【請求項35】
WT1を発現する癌を有する対象を治療する方法であって、
請求項24に記載のワクチンを前記対象に投与するステップを含み、それよって、WT1を発現する癌を有する対象を治療することを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項35に記載の方法であって、
前記WT1を発現する癌は、白血病、線維形成性小円形細胞腫瘍、胃癌、結腸癌、肺癌、乳がん、胚細胞腫瘍、卵巣癌、子宮癌、甲状腺癌、肝臓癌、腎臓癌、カポジ肉腫、肉腫、又は肝細胞癌であることを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項35に記載の方法であって、
前記WT1を発現する癌は、ウィルムス腫瘍、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群(MDS)、非小細胞肺癌(NSCLC)であることを特徴とする方法。
【請求項38】
対象において、WT1を発現する癌の発生率又は再発率を減少させる方法であって、
請求項24に記載のワクチンを前記対象に投与するステップを含み、それよって、対象において、WT1を発現する癌の発生率又は再発率を減少させることを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項38に記載の方法であって、
前記WT1を発現する癌は、白血病、線維形成性小円形細胞腫瘍、胃癌、結腸癌、肺癌、乳がん、胚細胞腫瘍、卵巣癌、子宮癌、甲状腺癌、肝臓癌、腎臓癌、カポジ肉腫、肉腫、又は肝細胞癌であることを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項38に記載の方法であって、
前記WT1を発現する癌は、ウィルムス腫瘍、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群(MDS)、非小細胞肺癌(NSCLC)であることを特徴とする方法。
【請求項41】
WT1を発現する癌細胞に特異的なCTLの形成及び増殖を誘導する方法であって、
請求項24に記載のワクチンを前記対象に投与するステップを含み、それよって、WT1を発現する癌細胞に特異的なCTLの形成及び増殖を誘導することを特徴とする方法。
【請求項42】
請求項41に記載の方法であって、
前記WT1を発現する癌は、白血病、線維形成性小円形細胞腫瘍、胃癌、結腸癌、肺癌、乳がん、胚細胞腫瘍、卵巣癌、子宮癌、甲状腺癌、肝臓癌、腎臓癌、カポジ肉腫、肉腫、又は肝細胞癌であることを特徴とする方法。
【請求項43】
請求項41に記載の方法であって、
前記WT1を発現する癌は、ウィルムス腫瘍、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群(MDS)、非小細胞肺癌(NSCLC)であることを特徴とする方法。
【請求項44】
組成物であって、
(a)抗原提示細胞と、(b)RSDELVRHHNMHQRNMTKL(SEQ ID No:2)とPGCNKRYFKLSHLQMHSRKHTG(SEQ ID No:4)とから選択されたペプチドとを含むことを特徴とする組成物。
【請求項45】
請求項44に記載の組成物であって、
HLAクラスII分子に結合する他のペプチドをさらに含むことを特徴とする組成物。
【請求項46】
請求項44に記載の組成物であって、
HLAクラスI分子に結合するWT1ペプチドをさらに含むことを特徴とする組成物。
【請求項47】
請求項46に記載の組成物であって、
前記HLAクラスI分子は、HLA−A分子であることを特徴とする組成物。
【請求項48】
請求項46に記載の組成物であって、
前記HLAクラスI分子に結合するWT1ペプチドのアミノ酸配列は、SEQ ID No:5乃至38から選択された配列を含むことを特徴とする組成物。
【請求項49】
請求項44に記載の組成物であって、
前記抗原提示細胞は、前記細胞のHLAクラスII分子で前記ペプチドを提示することを特徴とする組成物。
【請求項50】
ワクチンであって
(a)請求項44に記載の組成物と、(b)アジュバント又は担体とを含むことを特徴とするワクチン。
【請求項51】
請求項50に記載のワクチンであって、
前記アジュバントは、QS21、フロインド不完全アジュバント、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、BCG、ミョウバン、成長因子、サイトカイン、ケモカイン、インターロイキン、Montanide ISA 51、又はGM−SFであることを特徴とするワクチン。
【請求項52】
WT1を発現する癌を有する対象を治療する方法であって、
請求項44に記載の組成物を前記対象に投与するステップを含み、それよって、WT1を発現する癌を有する対象を治療することを特徴とする方法。
【請求項53】
請求項52に記載の方法であって、
前記WT1を発現する癌は、白血病、線維形成性小円形細胞腫瘍、胃癌、結腸癌、肺癌、乳がん、胚細胞腫瘍、卵巣癌、子宮癌、甲状腺癌、肝臓癌、腎臓癌、カポジ肉腫、肉腫、又は肝細胞癌であることを特徴とする方法。
【請求項54】
請求項52に記載の方法であって、
前記WT1を発現する癌は、ウィルムス腫瘍、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群(MDS)、非小細胞肺癌(NSCLC)であることを特徴とする方法。
【請求項55】
対象において、WT1を発現する癌の発生率又は再発率を減少させる方法であって、
請求項44に記載の組成物を前記対象に投与するステップを含み、それよって、対象において、WT1を発現する癌の発生率又は再発率を減少させることを特徴とする方法。
【請求項56】
請求項55に記載の方法であって、
前記WT1を発現する癌は、白血病、線維形成性小円形細胞腫瘍、胃癌、結腸癌、肺癌、乳がん、胚細胞腫瘍、卵巣癌、子宮癌、甲状腺癌、肝臓癌、腎臓癌、カポジ肉腫、肉腫、又は肝細胞癌であることを特徴とする方法。
【請求項57】
請求項55に記載の方法であって、
前記WT1を発現する癌は、ウィルムス腫瘍、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群(MDS)、非小細胞肺癌(NSCLC)であることを特徴とする方法。
【請求項58】
WT1を発現する癌細胞に特異的なCTLの形成及び増殖を誘導する方法であって、
請求項44に記載の組成物を前記対象に投与するステップを含み、それよって、WT1を発現する癌細胞に特異的なCTLの形成及び増殖を誘導することを特徴とする方法。
【請求項59】
請求項58に記載の方法であって、
前記WT1を発現する癌は、白血病、線維形成性小円形細胞腫瘍、胃癌、結腸癌、肺癌、乳がん、胚細胞腫瘍、卵巣癌、子宮癌、甲状腺癌、肝臓癌、腎臓癌、カポジ肉腫、肉腫、又は肝細胞癌であることを特徴とする方法。
【請求項60】
請求項58に記載の方法であって、
前記WT1を発現する癌は、ウィルムス腫瘍、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群(MDS)、非小細胞肺癌(NSCLC)であることを特徴とする方法。
【請求項61】
対象において抗中皮腫免疫応答を誘導する方法であって、
(a)WT1タンパク質、(b)WT1タンパク質の断片、(c)WT1タンパク質をコードするヌクレオチド分子、又は(d)WT1タンパク質の断片をコードするヌクレオチド分子を含む免疫原性組成物を前記対象に接触させるステップを含み、それによって、対象において抗中皮腫免疫応答を誘導すること特徴とする方法。
【請求項62】
中皮腫を有する対象を治療する方法であって、
(a)WT1タンパク質、(b)WT1タンパク質の断片、(c)WT1タンパク質をコードするヌクレオチド分子、又は(d)WT1タンパク質の断片をコードするヌクレオチド分子を含む免疫原性組成物を前記対象に接触させるステップを含み、それによって、中皮腫を有する対象を治療すること特徴とする方法。
【請求項63】
対象において、中皮腫の発生率又は再発率を減少させる方法であって、
(a)WT1タンパク質、(b)WT1タンパク質の断片、(c)WT1タンパク質をコードするヌクレオチド分子、又は(d)WT1タンパク質の断片をコードするヌクレオチド分子を含む免疫原性組成物を前記対象に接触させるステップを含み、それによって、中皮腫の発生率又は再発率を減少させること特徴とする方法。

【図1A】
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【図1B−C】
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【図1D−E】
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【図2】
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【図3A−B】
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【図3C−D】
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【図4】
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【図5(1)】
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【図5(2)】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−511637(P2009−511637A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536772(P2008−536772)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/040719
【国際公開番号】WO2007/047764
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(599158890)スローン−ケターリング インスティチュート フォー キャンサー リサーチ (5)
【Fターム(参考)】