説明

HLA分子への結合アフィニティーが増加したペプチド

【課題】本発明はHLA-A3スーパーモチーフを含む免疫原性ペプチドを提供する。
【解決手段】細胞障害性T細胞を少なくとも2種のHLA-A3様分子に約500nMよりも小さな解離定数で結合して細胞障害性T細胞応答を誘導する、約9から約15残基の免疫原性ペプチド。前記ペプチドはN末端からC末端までに特定の結合モチーフを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は種々の病気の状態を予防し、治療し、または診断するための組成物と方法に関する。より詳細には、選択した主要組織適合複合体(MHC)分子に結合することができ免疫応答を誘導することができる新規なペプチドを提供する。
【背景技術】
【0002】
MHC分子はクラスI分子あるいはクラスII分子のいずれかに分類される。クラスIIMHC分子はTリンパ球、Bリンパ球、マクロファージその他のような免疫応答の開始と維持に関係する細胞上に主として発現している。クラスII MHC分子はヘルパーTリンパ球に認識されヘルパーTリンパ球の増殖を誘導し提示されている特定の抗原性ペプチドに対する免疫応答の増幅を誘導する。クラスI MHC分子はほとんど全ての有核細胞上で発現しており、細胞障害性Tリンパ球(CTL)によって認識され、次にCTLは抗原を有する細胞を破壊する。CTLは特に腫瘍の拒絶およびウイルス、真菌および寄生虫の感染との戦いのために重要である。
MHCクラスI分子に対する結合アフィニティーと個々のペプチドエピトープの免疫原性との関係は2つの実験手法により解析されてきた(Setteら、J.Immunol. 153:5586-5592(1994))。第1の手法では、MHC結合アフィニティーが10,000倍の範囲にわたる、潜在的なエピトープの免疫原性がHLA-A*0201トランスジェニックマウスで解析された。第2の手法では、異なる約100種のB型肝炎ウイルス(HBV)由来の潜在的なエピトープ、これらは全てA*0201結合モチーフを有しているが、これらの抗原性が急性肝炎の患者のPBLを用いて評価された。両方の場合において、約500nM(好ましくは500nMかそれ以下)の結合閾値がペプチドエピトープのCTL応答を引き起こす能力を決定していることが明らかにされた。これらのデータは、天然にプロセッシングされるペプチドまたは従来記述されていたT細胞エピトープのクラスI結合アフィニティー測定とよく一致する。これらのデータはT細胞応答を引き起こす際の、抗原決定基選択の重要な役割を示すものである。
通常、CTL応答は全ての潜在的なエピトープに向かうわけではない。そうではなく、CTLはいくつかの主要抗原決定基に拘束される(Zinkernagelら、Adv. Immunol. 27, 51-59(1979);Benninkら、J.Exp. Med. 168, 1935-1939(1988);Rawleら、J. Immunol. 146,3977-3984(1991))。かなり前から、免疫優位性(Benacerrafら、Science. 175,273-279(1972))は、与えられたペプチドの、特定のMHC分子への選択的結合能によって説明されるか(決定基選択説)(Vitielloら、J. Immunol. 131:1635(1983)、Rosenthalら、Nature267,156−158(1977))、存在しているTCRの特異性によって選択的に認識されること(レパトワール説)(Klein,J., Immunology, the Science of Self-Nonself Discrimination, John Wiley & Dons, Ney York, pp270-310(1982))で説明できると考えられている。他の補助的な因子も、それらはほとんどプロセッシングに関連しているものだが、厳密な抗原性以外に、多数の潜在的な決定基のどれが主要抗原決定基として提示されるかを決定するのに重要な役割を果たしうることが示されている(Sercarzら、Annu. Rev. Immuinol. 11, 729-766(1993))。
特定の免疫原性ペプチドの1またはそれ以上のHLA分子に対する結合アフィニティーを調節し、それによりそのペプチドによって引き起こされる免疫応答を調節することが可能であれば、ペプチド-ベースのワクチンおよび治療薬の有用性を非常に大きくするであろう。本発明は、これらの、及びその他の利益を提供するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はワクチン及び治療法において使用するペプチドおよびこれをコードする核酸を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は予め選んだ患者の抗原に対する細胞障害性T細胞応答を誘導する方法を提供し、その方法は細胞障害性T細胞を本発明の免疫原性ペプチドと接触させることを含むものである。本発明のペプチドは、ウイルス抗原、腫瘍関連抗原、寄生虫抗原、真菌抗原その他を含む種々の抗原に由来してよい。本発明の方法は、in vitroまたはin vivoで行なうことができる。好ましい実施態様では、このペプチドはこの免疫原性ペプチドをコードする配列を含む核酸分子を患者に投与することにより細胞障害性T細胞と接触させられる。
【0005】
一つの実施態様では、本ペプチドは約9残基と約15残基との間であり少なくとも2つのHLA-A3様分子と約500nMより小さな解離定数で結合し細胞障害性T細胞応答を誘導する。免疫原性ペプチドはN末端からC末端までに以下の結合モチーフを含む9残基の配列を有している。
結合モチーフ:
A、L、I、V、M、S、およびTからなる群より選ばれる、第2位置の第1の主要アンカー残基および、RおよびKからなる群より選ばれる、第9位置の第2の主要アンカー残基;および
第3位置がY、F、またはW、第6位置がY,FまたはW、第7位置がY、F、またはW、第8位置がP、およびこれらのいずれかの組み合わせからなる群より選ばれる、1またはそれ以上の2次的アンカー。
本発明は更に、HLA-A*0301遺伝子産物に結合する免疫原性ペプチドを提供する。これらのペプチドはN末端からC末端に以下の9残基結合モチーフを含んでいる。
結合モチーフ:
A、L、I、V、M、S、およびTからなる群より選ばれる、第2位置の第1の主要アンカー残基およびRおよびKからなる群より選ばれる第9位置の第2の主要アンカー残基;および
第1位置がR、H、またはK、第3位置がY、F、またはW、第4位置がP、R、H、K、Y、FまたはW、第5位置がA、第6位置がY、F、またはW、第8位置がP、およびこれらの何れかの組み合わせからなる群より選ばれる、1またはそれ以上の2次的アンカー残基。
【0006】
本発明はまたHLA-A*1101遺伝子産物に結合する免疫原性ペプチドを提供する。これらの免疫原性ペプチドはN末端からC末端までに以下の9残基結合モチーフを含んでいる。
結合モチーフ:
A、L、I、V、M、S、およびTからなる群より選ばれる、第2位置の第1の主要アンカー残基およびRおよびKからなる群より選ばれる第9位置の第2の主要アンカー残基;および
第1位置がA、第3位置がY、FまたはW、第4位置がY、FまたはW、第5位置がA、第6位置がY、FまたはW、第7位置がY、FまたはW、第8位置がP、およびこれらの何れかの組み合わせからなる群より選ばれる2次的アンカー残基。
本発明はまたHLA-A*3101遺伝子産物に結合する免疫原性ペプチドを提供する。これらの免疫原性ペプチドはN末端からC末端までに以下の9残基結合モチーフを含んでいる。
結合モチーフ:
A、L、I、V、M、S、およびTからなる群より選ばれる、第2位置の第1の主要アンカー残基およびRおよびKからなる群より選ばれる第9位置の第2の主要アンカー残基;および
第1位置がR、HまたはK、第3位置がY、FまたはW、第4位置がP、第6位置がY、FまたはW、第7位置がY、FまたはW、第8位置がAまたはP、およびこれらの何れかの組み合わせからなる群より選ばれる2次的アンカー残基。
【0007】
本発明はまたHLA-A*3301遺伝子産物に結合する免疫原性ペプチドを提供する。これらの免疫原性ペプチドはN末端からC末端までに以下の9残基結合モチーフを含んでいる。
結合モチーフ:
A、L、I、V、M、S、およびTからなる群より選ばれる、第2位置の第1の主要アンカー残基およびRおよびKからなる群より選ばれる第9位置の第2の主要アンカー残基;および
第3位置がY、FまたはW、第7位置がA、Y、FまたはW、およびこれらの何れかの組み合わせからなる群より選ばれる2次的アンカー残基。
本発明はまたHLA-A*6801遺伝子産物に結合する免疫原性ペプチドを提供する。これらの免疫原性ペプチドはN末端からC末端までに以下の9残基結合モチーフを含んでいる。
結合モチーフ:
A、L、I、V、M、S、およびTからなる群より選ばれる、第2位置の第1の主要アンカー残基およびRおよびKからなる群より選ばれる第9位置の第2の主要アンカー残基;および
第1位置がY、F、W、S、TまたはC、第5位置がY、F、W、L、I、VまたはM、第7位置がY、FまたはW、第8位置がP、およびこれらの何れかの組み合わせからなる群より選ばれる2次的アンカー残基。
本発明はまた、HLA-A3様分子と約500nMより小さい解離定数で結合する免疫原性ペプチドを同定する方法を提供する。本方法は、抗原タンパク質のアミノ酸配列を本発明の結合モチーフの存在についてスクリーニングし、結合モチーフを有する抗原タンパク質中の1またはそれ以上の部分配列を選択することを含む。選択した部分配列を含む約8〜約11残基のテストペプチドが調製されテストされる。次に解離定数が500nMより小さいペプチドが同定される。
【0008】
定義
本明細書においては「ペプチド」の語は「オリゴペプチド」と互換性をもって残基の連続、典型的にはL-アミノ酸残基の連続を、それらが互いに結合しており、典型的には隣り合うアミノ酸のアルファ-アミノ基とカルボニル基間のペプチド結合で結合されているものを意味すべく使用される。本発明のオリゴペプチドは約15残基よりも長さが短く、通常約8と約11残基の間であり、好ましくは9または10残基である。
「免疫原性ペプチド」とはアレル特異的モチーフまたはスーパーモチーフを含むペプチドで、そのペプチドがMHC分子に結合しCTL応答を誘導するようなペプチドをいう。本発明の免疫原性ペプチドは適当なHLA-A3様分子と結合することができ、その免疫原性ペプチドが由来する抗原に対する窓外性T細胞応答を誘導することができる。
「主要なアンカー残基」とは、免疫原性ペプチドとMHC分子との接点を与えるかもしれない、ペプチド配列中の特異的な位置にあるアミノ酸をいう。特定の長さの免疫原性ペプチド内の1から3、通常は2つの主要アンカー残基が免疫原性ペプチドのモチーフを規定する。これらの残基は典型的にはペプチド結合溝のすぐ近くにあり、その側鎖は溝自体の特異的なポケットに埋まっている。典型的には、主要なアンカー残基は9残基のペプチドの第2位置および第9位置にある。
【0009】
「2次的アンカー残基」は主要アンカー以外でペプチド中の特定の位置に、ランダム分布で考えられるよりも有意に高頻度に現れるアミノ酸をいう。あるいは、2次的アンカーは高アフィニティー結合ペプチドに高頻度で現れる、または高アフィニティー結合と関連するアンカーとして定義できる。これらの位置に特定の残基が存在すること、または存在しないことは、特定のモチーフを含むペプチドの結合アフィニティーを細かく調節するために利用することができる。
本明細書で使用する「陰性結合残基」とは、特定の(典型的には主要アンカー位置でない)位置に存在すると、標的HLA分子に対する結合アフィニティーの減少をもたらすアミノ酸をいう。
「モチーフ」の語は、特定のMHC分子に認識される、一定の長さ、典型的には約8から約15アミノ酸のペプチド中の残基パターンをいう。ペプチドモチーフは典型的には各ヒトMHCアレルについて異なっており主要な、および2次的なアンカー残基のパターンについて異なっている。
【0010】
「スーパーモチーフ」は、免疫原性ペプチド中に存在する場合に、そのペプチドが1を越えるHLA抗原に結合できるようになるモチーフをいう。スーパーモチーフは少なくとも1つのHLAにより高アフィニティーまたは中アフィニティー(以下に定義する)で認識されることが好ましく、少なくとも2つのアレルにより認識されることが好ましく、少なくとも3つのアレルに認識されることがより好ましく、3つより多くのアレルに認識されることが最も好ましい。
ある程度類似のペプチド結合モチーフを共通とするHLAクラスI分子はHLAスーパータイプにグループ分けされる。本明細書で用いる「HLAスーパータイプあるいはファミリー」とは、共通するペプチド結合特異性を基礎としてグループ分けされた分子集団をいい、共通する抗原決定基に基づく血清学的サブタイプをいうものではない。
【0011】
本明細書で用いる「HLA-A3様」HLA分子(アレルともいう)とは、ここで開示するHLA-A3スーパーモチーフと重なるペプチド結合モチーフを共通にもつHLA-AアレルによってコードされるHLA分子のグループをいう。これらのアレルに共通する9残基のスパーモチーフは以下の主要アンカー残基を含む:第2位置のA、L、I、V、M、SまたはTおよび、第9位置(9merにおいてはC末端)のRおよびKのような正に帯電した残基。このファミリーのメンバーの例としては、血清学的に、あるいはDNAタイピングの何れかにより同定されたもので、以下が含まれる:A3(A*0301)、A11(A*1101)、A31(A*3101)、A*3301、A*6801。このファミリーの他のメンバーには、A34、A66およびA*7401が含まれる。以下に詳細に説明するように、個々のアレルの各々への結合は2次的アンカー位置の置換により細かく調節することができる。
【0012】
「HLA-A2様」スーパータイプは第2位置およびC末端に小さな、または脂肪族アミノ酸(L、I、V、M、A、およびT)をもつペプチドリガンドに対する優先性によって特徴づけられる。このファミリーは少なくとも8つのHLA-Aアレルからなっている(A*0201、A*0202、A*0203、A*0204、A*0205、A*0206、A*6802、A*6901)。
「HLA-B7様」スーパータイプは少なくとも1ダースのHLA-Bアレル産物からなっており(B7、B*3501-3、B51、B*5301、B*5401、B*5501、B*5502、B*5601、BB*6701、およびB*7801)(Sidneyら、J.Immunology 154:247(1995);Barberら、Curr Biol 5:179(1995);Hillら、Nature 360:434(1992);Rammenseeら、Immunogenetics 41:178(1995))、かつ、位置2にプロリンを有しC末端に疎水性または脂肪族アミノ酸(L、I、V、M、A、F、W、およびY)を有するペプチドを認識する分子によって特徴づけられる。
「単離された」あるいは「生物学的に純粋な」とは、天然の状態で見られるときに通常伴っている成分を実質的に、または本質的に含まない物質をいう。従って、本発明のペプチドはin situ の環境で通常関連する物質、例えば抗原提示細胞上のMHC I分子、を含まない。タンパク質が均一に、または主要なバンドに単離される場合でも、求めるタンパク質と共に共精製される天然タンパク質の5〜10%の微量な不純物が存在する。本発明の単離されたペプチドはそのような内在性の共精製タンパク質を含まない。
「残基」の語は、アミド結合またはアミド結合類似(amide bond mimetic)結合によりオリゴペプチド中に取り込まれているアミノ酸またはアミノ酸類似物をいう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、ヒトのクラスI MHC(HLAと称される)アレル、特にHLA-A3様アレルに対するアレル特異的ペプチドおよびスーパーモチーフを決定することに関する。次にこれらのモチーフは、なんらかの必要な抗原についての、特にヒトのウイルス病、寄生虫病、真菌症または癌と関連する抗原のT細胞エピトープを調製し修飾するために使用される。
上述したように、高いHLA結合アフィニティーは高い免疫原性と相関している。高い免疫原性はいくつかの異なる方法で示すことができる。例えば、より強く結合するペプチドはより多くの場合に免疫原性である。強く結合するペプチドの90%近くが免疫原性であり、中アフィニティーで結合するペプチドで約50%であることと対比される。より強く結合性するペプチドはまたより激しい応答を引き起こすであろう。その結果、同様な生物学的効果を現すのにより少ないペプチドしか必要としない。従って、本発明のいくつかの実施態様においては強く結合するエピトープが特に望まれる。
【0014】
本発明のいくつかの実施態様では、優性エピトープ(dominant epitope)と対照的な亜優性(subdominat epitope)エピトープを決定することが望まれる。ここで採用する命名法では(Sercarzら、上述の文献(1993))「優性エピトープ」は天然の抗原全体で免疫したときに応答を誘導する。このような応答はin vitroでペプチドエピトープと交差反応性である。「潜在的(cryptic)エピトープ」はペプチド免疫によって応答を引き起こすが、in vitroでインタクトなタンパク質全体が抗原として使用された場合に交差反応しない。最後に、「亜優性エピトープ」は抗原全体で免疫してもほとんど又は全く応答を起こさないエピトープであるが、ペプチド免疫によってこれに対する応答が得られ、タンパク質全体がin vitroでこの応答を再び起こすために用いられた場合に、この応答が(潜在的エピトープの場合と異なり)検出される。
優性および亜優性の概念はウイルス病および癌の免疫療法に関連するものである。慢性ウイルス病においては、感染をうまく除去するために亜優性のエピトープを補充することが重要となり得、特に優性CTL特異性が機能トレランス、サプレッション、ウイルスの変異およびその他の機構によって不活性化されているときに特に重要である(Francoら、Current Opinion in Immunology, 7:524-531, (1995))。さらに、癌および腫瘍抗原の場合は、少なくともいくつかの最も強く結合するペプチドを認識するCTLはトレランスおよびサプレッションにより機能的に不活化されているようであり、より低い結合アフィニティーのペプチドが優先的に認識されているように見える。
特に、既知の非ウイルス性腫瘍関連抗原(TAA)由来のエピトープのかなりの数のものがHLAクラスIと中アフィニティー(50〜500mMの範囲のIC50%)で結合することが言われている。腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)またはCTLに認識される15の既知のTAAペプチドのうち8種が50〜500mMの範囲で結合する。これらのデータは、ペプチドとして認識される既知のウイルス抗原の90%がHLAとIC50%が50μMかそれ以下で結合する一方僅かに約10%が50〜500mMの範囲で結合するという評価と対照的である(Setteら、J. Immunol., 153:5586-5592(1994))。この現象はおそらく癌の移植において、多分T細胞トレランスによる、最も強く結合するペプチドを認識するCTLの除去、または、機能抑制によるものであろう。
【0015】
本発明は、主要な、および2次的なアンカー位置に、必要な残基を選択することにより免疫原性ペプチドの結合アフィニティーを調節する方法を提供する。以下に詳しく説明するように、A3-様アレルへの結合を増強するスーパーモチーフもここで提供される。結合アフィニティーへの求める影響に依存して、必要なペプチド中のアンカー残基が置換される。本発明を用いて達成されるかもしれない調節の例には、特定のアレルに対するアフィニティーの増加(例えば、そのアレルに対して特異的な2次的アンカー残基の置換による)、種々のアレル間の交差反応性の増大(例えば、1以上のアレルに共通する2次的アンカー残基の置換による)、および亜優性エピトープの作成(例えば、アフィニティーを増大させるが優性エピトープには存在しない残基の置換による)が含まれる。
多数の可能な標的タンパク質のエピトープは本発明で利用することができる。適切な抗原の例には、前立腺特異的抗原(PSA)、B型肝炎コア抗原および表面抗原(HBVc、HBVs)、C型肝炎抗原、エプスタイン-バーウイルス抗原、メラノーマ抗原(例えばMAGE-1)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗原およびヒトパピローマウイルス(HPV)抗原が含まれる。真菌類抗原の例には、カンジダアルビカンス(Candida alibicans)、クリプトコックスネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、コクシドイデス類(Coccidoides spp.)、ヒストプラスマ類(Histoplasma spp)およびアスペルギルスフミガティス(Aspergillus fumigatis)由来の抗原が含まれる。寄生虫抗原には、マラリア原虫類(Plasmodium spp.)、トリパノゾーマ類(Trypanosoma spp.)、住血吸虫類(Schistosoma spp.)、リーシュマニア類(Leishmania spp.)その他に由来する抗原が含まれる。
【0016】
本発明のペプチドの調製と評価はPCT公報WO 94/20127およびWO94/03205に記載されている。簡単にいうと、特定の抗原のエピトープを含むペプチドを合成し、例えば精製したクラスI分子と放射性ヨードラベルしたペプチド及び/又は空のクラスI分子を発現している細胞を用い、例えば免疫蛍光染色とフローミクロフルオリメトリー、ペプチド依存性クラスIアッセンブリアッセイ、およびペプチド競合によるCTL認識阻害などにより、適当なMCH分子に対する結合能をアッセイしてテストした。クラスI分子に結合するペプチドを、感染個体または免疫された個体に由来するCTLの標的として機能しうるかについて更に評価し、また、病気と関連する、選択した標的細胞と反応しうるCTL集団を生じさせることができる一次CTL応答をin vitroまたはin vivoで誘導し得るかについて更に評価する。
この開示を通して、結果はIC50によって表される。アッセイを行なう条件を与えると(すなわち、MHCとラベルしたペプチド濃度を限定する)、これらの値はだいたいKD値となる。IC50値は、アッセイ条件が変わると変動しうるものであり、しばしば劇的に変動しうるものであり、使用する特定の試薬に依存する(例えば、MHC調製物その他)ことを記載しておく必要がある。例えば、MHC濃度が過剰であると与えられたリガンドの、測定される見かけのIC50は増加するであろう。本明細書では、「高アフィニティー」とは50nMより小さなIC50(あるいはKD)で結合することとして定義される。「中アフィニティー」とは約50から約500nMのIC50(あるいはKD)で結合することである。結合を測定するアッセイ法はPCT公報WO94/20127およびWO94/03205に詳しく記載されている。
【0017】
結合データを現すもう一つの方法は、対照ペプチドに対する相対値としてものである。どのアッセイにおいても対照ペプチドが含まれる。特定のアッセイの感度が高くなる、または低くなると、テストされるペプチドのIC50はいくらか変化するかもしれない。しかしながら、対照ペプチドに対する相対的結合は変化しないであろう。例えば、対照ペプチドのIC50が10倍増加するような条件下でアッセイを行なった場合には、すべてのIC50値が約10倍シフトするであろう。従って、不明瞭さを避けるためには、ペプチドが良い結合体であるか、中間的な結合体であるか、弱い結合体であるか、阻害的な結合体であるかの評価は標準ペプチドのIC50に対する相対的IC50に基づいていなければならない。
ペプチド化合物を記載するために使用した命名法は各アミノ酸残基のアミノ基を左に表し(N末端)、カルボキシル基を右に(C末端)表す伝統的な慣習に従った。本発明の選択した特定の実施態様を表す式において、アミノ末端およびカルボキシル末端基は、特に示していないが断りのない限り、生理学的pH値で想定される型である。アミノ酸構造式において、各残基は通常標準的な3文字または1文字表記で表されている。アミノ酸残基のL型は大文字の1文字または3文字記号の最初の1文字が大文字で表わされ、D型を有するそれらのアミノ酸のD型は小文字の1文字または小文字の3文字記号で表わされている。グリシンは不斉炭素原子を持たないため、単にGlyあるいはGと参照される。
【0018】
免疫原性ペプチドは合成的に調製することができ、あるいは組換えDNA技術またはウイルス全体または腫瘍のような天然の供給源から調製することができる。ペプチドは、天然に存在する他の宿主細胞タンパク質およびその断片を実質的に含まないことが望ましいが、いくつかの実施態様ではペプチドは天然の断片又は粒子に合成的に結合される。
ポリペプチド又はペプチドはその長さについて様々でよく、中性(電荷のない)型でも塩の形態でもよく、グリコシル化、側鎖の酸化、リン酸化などの修飾を受けていないくても、また、その修飾が本明細書に記載する生物学的活性を破壊しないのであればこれらの修飾を含んでいてもよい。
【0019】
ペプチドは可能限り小さく、一方、大きなペプチドの生物学的活性の全てを実質的に維持していることが望ましい。可能ならば、本発明のペプチドを約8から約20、典型的には9から15、好ましくは9から10アミノ酸残基に最適化することが望ましいであろう。これは、細胞表面のMHCクラスI分子に結合している、内部プロセッシングされたウイルスペプチドまたは腫瘍細胞ペプチドの大きさと同程度である。長さ約9残基のペプチドに適した好ましいスーパーモチーフがここで開示される。他の長さの(例えば、8、10および11残基)ペプチドに対するスーパーモチーフ、主要アンカーおよび2次的アンカーの同定もここに記載した技法を用いて行なうことができる。
求める活性を有するペプチドは、望まれる性質、例えば、改良された薬理学的性質を与えるために必要により修飾されてもよいが、同時に必要なMHC分子に結合し適切なT細胞を活性化するという未修飾ペプチドの生物学的活性を増大させあるいは少なくとも実質的にその全てを維持する。例えば、本ペプチドは、それが保存的であっても非保存的であっても、置換のような種々の変化を受けることがあり、そのような変化はその使用において、例えばMHC結合の増強のような利点を与えるかもしれない。保存的置換とは、アミノ酸残基を生物学的及び/又は化学的に類似の他のアミノ酸に置き換えること、例えば、疎水性残基を他の残基に、あるいは極性残基を他の残基に置き換えることを意味する。この置換には、Gly、Ala;Val、Ile、Leu、Met;Asp、Glu;Asn、Gln;Ser、Thr;Lys、Arg;およびPhe、Tyrのような組み合わせが含まれる。単一のアミノ酸置換の効果はまたD-アミノ酸を用いて調べてもよい。このような修飾は、例えば、Merrifield, Science 232:341-347(1986)およびStewartおよびYoung,Solid Phase Peptide Synghesis,(Rockford, III.,Pierce)第2版(1984)に記載されているように、よく知られたペプチド合成法を用いておこなってもよい。
【0020】
ペプチドはその化合物のアミノ酸配列を伸長または減少させることにより、例えばアミノ酸を付加または欠失させることにより修飾することもできる。本発明のペプチドおよびアナログは特定の残基の順番又は組成を変えることにより修飾することもできるが、特定のアミノ酸残基、例えば、重要な接触部位の残基または保存残基は生物学的活性に必須であることが容易に分かり、一般に生物学的活性に有害な影響を与えずに変えることができないかもしれない。
重要でないアミノ酸は、L-α-アミノ酸、またはいずれかのD型異性体のような、タンパク質中に天然に見られるアミノ酸に限定する必要は無く、β-γ-δ-アミノ酸のような非天然のアミノ酸、およびL-α-アミノ酸の多くの誘導体を含んでもよい。
典型的には、単一のアミノ酸置換をした一群のペプチドが静電荷、疎水性その他が結合に与える効果を決定するために使用される。例えば、正の電荷をもつアミノ酸(例えば、LysまたはArg)または負の電荷を持つアミノ酸(例えばGlu)置換をペプチドの端から端まで行なうと、種々のMHC分子およびT細胞レセプターに対する異なる感受性パターンが明らかになる。加えて、Ala、Gly、Proまたは類似の残基のような小さく、相対的に中性の成分を用いた多置換を行なってもよい。この置換物は、ホモ-オリゴマーでもヘテロ-オリゴマーであってもよい。置換される、または付加される残基の数とタイプは、必須の接触点と求められる機能的属性(例えば疎水性対親水性)との間の必要な間隔に依存する。元のペプチドのアフィニティーに比較した、MHC分子またはT細胞レセプターに対する結合アフィニティーの増大もこのような置換によって達成されるかもしれない。どの場合でも、このような置換は例えば、結合を破壊するかもしれない立体配置および電荷による干渉を避けるようなアミノ酸残基または他の分子断片を使用しなければならない。
【0021】
アミノ酸残基置換は典型的には単一の残基についてである。置換、欠失、挿入あるいはこれらの何れかの組み合わせ、を組み合わせて最終的なペプチドにたどり着く。置換変異体は、ペプチドの少なくとも1つの残基が取り除かれ異なる残基がその場所に挿入されたものである。そのような置換は、ペプチドの性質を細かく調節することが望まれる場合に、以下の表1に従って行なわれる。
【0022】
表1

【0023】
機能(例えば、MHC分子またはT細胞レセプターに対するアフィニティー)の本質的な変化は表1よりもより保存性の少ない置換を選択することによってなされる。すなわち、(a)置換される領域におけるペプチド骨格の構造、例えばシートまたはらせんコンホメーション、(b)標的部位における分子の電荷又は疎水性、または(c)側鎖の大きさを維持することに対する影響について、より大きく相違する残基を選択することによる。通常、ペプチドの性質について最も大きな変化を生じさせると考えられる置換は、(a)親水性残基、例えば、セリン残基を疎水性残基、例えばロイシン残基、イソロイシン残基、フェニルアラニン残基、バリン残基またはアラニン残基へ置換される;(b)静電的に正の側鎖をもつ残基、例えばリジン残基、アルギニン残基またはヒスチジン残基が静電的に負の残基、例えば、グルタミン酸残基またはアスパラギン酸残基へ置換する(あるいは、逆にそれによって置換される);あるいは(c)大きな側鎖を持つ残基、例えば、フェニルアラニンが側鎖を持たないもの、例えばグリシンへ置換する(または、逆にそれによって置換される)、そうした置換である。
本ペプチドは、免疫原性ペプチド中に1または2つの残基のアイソスターを含んでいてもよい。ここで定義するアイソスターとは、第1の配列の立体配座が第2の配列に特異的な結合部位に適合するために第2の配列によって置換することができる2またはそれ以上の残基の配列である。この用語は特に当業者によく知られたペプチド骨格の修飾を含む。そのような修飾には、アミド窒素、α-炭素、アミドカルボニル、アミド結合の完全な置き換え、伸長、欠失または骨格の架橋が含まれる。一般的には、Spatola, Chemistry and Biochemistry of Amino Acids, Peptides amd Proteins, 第7巻(Weinstein 編集、1983)を参照せよ。
【0024】
種々のアミノ酸類似体(amino acid mimetics)または非天然アミノ酸によるペプチドの修飾はin vivoにおけるペプチドの安定性の増大において特に有用である。安定性は多くの方法でアッセイできる。例えば、ペプチダーゼおよび、ヒトの血漿及び血清のような生物学的媒体が安定性をテストするために使用されている。例えば、Verhoerら、Eur.J. Drug Metab. Pharmacokin 11:291-302(1986)を参照せよ。本発明のペプチドの半減期は25%ヒト血清(v/v)アッセイを用いて簡便に決定できる。そのプロトコルは通常以下のとおりである。ヒトの保存血清(AB型、非−加熱不活化)を使用前に遠心によって脱脂(delipidate)する。この血清をRPMI組織培養培地で25%に希釈しペプチドの安定性をテストするのに用いた。所期の時間間隔で反応液の少量を取り6%トリクロロ酢酸かエタノールの何れかに加えた。曇りの出た反応サンプルを15分間冷却し(4℃)スピンして沈殿した血清タンパク質をペレット化した。ペプチドが存在するかを逆相HPLCによって、安定性-特異的クロマトグラフィー条件を用いて測定した。
CTL刺激活性のある、本発明のペプチドまたはそのアナログを修飾して、改良された血清半減期以外の望みの属性を与えてもよい。例えば、CTL活性を誘導するペプチドの能力は、Tヘルパー細胞応答を誘導することができる少なくとも1つのエピトープを含む配列に結合することによって増強することができる。特に好ましい免疫原性ペプチド/Tヘルパー結合体はスペーサー分子によって結合される。スペーサーは典型的には、アミノ酸またはアミノ酸類似体のような比較的小さな、中性の分子を含み、生理学的条件下で本質的に電荷がないものである。スペーサーは典型的には、例えばAla、Gly、または非極性アミノ酸または極性の中性アミノ酸である他の中性スペーサーから選ばれる。任意的に存在するこのスペーサーは同じ残基からなる必要はなく、従ってヘテロまたはホモオリゴマーであってよいのは言うまでもないであろう。スペーサーが存在する場合には、それは通常少なくとも1または2残基であり、より一般には3から6残基であろう。もう一方では、CTLペプチドはTヘルパーペプチドにスペーサー無しで結合されてもよい。
【0025】
免疫原性ペプチドはTヘルパーペプチドに、CTLペプチドのアミノ末端かカルボキシ末端の何れかにおいても、直接にまたはスペーサにより結合していてもよい。免疫原性ペプチドまたはTヘルパーペプチドの何れのアミノ末端もアシル化されていてもよい。本発明で用いるTヘルパーペプチドはCTLペプチドと同様なやり方で修飾することができる。例えば、それらをD-アミノ酸を含むように修飾しても、または脂質、タンパク質、糖その他のような他の分子に結合させてもよい。Tヘルパーペプチドの例には、破傷風毒素830-843、インフルエンザ307-319、マラリア胞子小体382-398および378-389が含まれる。
また、Tヘルパーペプチドは集団中の主要なTヘルパー細胞に認識されるペプチドである。これは、多くの、ほとんどの、あるいは全てのMHCクラスII分子に結合するアミノ酸配列を選択することにより達成できる。これらは、「ゆるくMHC-拘束された(loosely MHC-restricted)」あるいは「無差別的(promiscuous)」Tヘルパー配列として知られている。無差別的であるアミノ酸配列の例には破傷風毒素の位置830-843(QYIKANSKFIGITE)、マラリア原虫(Plasmodium falciparum)CSタンパク質の位置378-398(DIEKKIAKMEKASSVFNVVNS)および連鎖球菌(Streptococcus)18kDタンパク質の位置1-16(GAVDSILGGVATYGAA)のような抗原の配列が含まれる。
また、天然に見られないアミノ酸配列を用いて、Tヘルパーリンパ球をゆるくMHC-拘束されたやり方で刺激することができる合成ペプチドを調製することができる(例えば、PCT公報WO 95/07707を参照せよ)。汎-DR-結合エピトープ(PADRE)と呼ばれるこれらの合成化合物は、ほとんどのHLA-DR(ヒトMHCクラスII)分子への結合活性に基づいて設計されている。例えば、式:aKXVWANTLKAAa(式中X=シクロヘキシルアラニン、フェニルアラニンまたはチロシンであり、a=D-アラニンまたはL-アラニン)のペプチドはほとんどのHLA-DRアレルと結合し、そのHLAタイプにかかわらずほとんどの個体のTヘルパーリンパ球の応答を刺激することが分かっている。Tヘルパーエピトープはその生物学的効力を増大させるように修飾することもできる。例えば、Tヘルパーエピトープを表現しているペプチドはプロテアーゼに対する耐性を増大させるためD-アミノ酸を含むことができ、それにより血清半減期を延長させることができる。また、Tヘルパーペプチドは脂質、タンパク質または糖あるいは他のなんらかの合成化合物のような他の分子に結合して、その生物学的活性を増大させることもできる。具体的には、Tヘルパーペプチドは1またはそれ以上のパルミチン酸鎖にアミノ末端又はカルボキシル末端の何れでも結合させることができる。
【0026】
いくつかの実施態様においては、本発明の医薬組成物中にCTLをプライミングする少なくとも一つの成分を含むことが望ましいかもしれない。脂質はウイルス抗原に対してin vitroでCTLをプライミングすることができる試薬として明らかにされている。例えば、パルミチン酸残基はLys残基のαおよびεアミノ基に結合させることができ、次に、例えば、Gly、Gly−Gly−、Ser、Ser−Serのような1又はそれ以上の結合性残基によって、免疫原性ペプチドに結合してもよい。こうして脂質結合ペプチド(lipidated peptide)は、リポソームに取り込まれたあるいはアジュバント中、例えば不完全フロイントアジュバント中で乳化されたミセルのかたちで直接に注射することができる。好ましい実施態様において、特に効果的な免疫原は、Lysのαおよびεアミノ基に結合したパルミチン酸を含み、それがリンクにより、例えばSer−Serで免疫原性ペプチドのアミノ端に結合している。
CTL応答をプライミングする脂質の他の例としては、トリパルミトイル-S-グリセリルシステイニルセリル-セリン(P3CSS)Iのような大腸菌(E.coli)リポタンパク質を適切なペプチドに共有結合させれば、ウイルス特異的なCTLをプライミングするために使用することができる。Deresら、Nature 342:561−564(1989)を参照せよ。またこの文献は本明細書に含まれるものとする。本発明のペプチドは例えばP3CSSとカップリングさせることができ、このリポペプチドを標的抗原に対するCTL応答を特異的にプライミングするために個体に投与することができる。さらに、中和抗体の誘導も適当なエピトープを表示しているペプチドに結合したP3CSSでプライミングされるので、この2つの成分を組み合わせて感染に対する液性および細胞媒介応答の両方をより効果的に引き起こすことができる。
【0027】
これに加えて、ペプチドを互いに容易に結合できるように、担体または、より大きなペプチドにカップリングするため、ペプチドまたはオリゴペプチドの物理的または化学的性質を修飾するため、あるいは、その他のため、追加のアミノ酸をペプチドの末端に付加することができる。チロシン、システイン、リジン、グルタミン酸またはアスパラギン酸、その他のようなアミノ酸はペプチドまたはオリゴペプチドのC末端あるいはN末端に導入することができる。ある場合にはC末端における修飾はペプチドの結合特性を変えるかもしれない。加えて、ペプチドまたはオリゴペプチド配列は末端−NH2アシル化、例えばアルカノイル(C1-C20)またはチオグリコリルアセチル化、末端カルボキシルアミド化、例えばアンモニア、メチルアミン、その他、によって修飾されて天然の配列と異なってもよい。いくつかの場合には、これらの修飾は支持体または他の分子への結合部位を提供するかもしれない。
【0028】
本発明のペプチドは様々な方法で調製することができる。これらのペプチドは比較的短いサイズのため、従来技法に従って溶液中または固相支持体上で合成することができる。種々の自動合成機が商業的に入手可能であり既知のプロトコルに従って使用することができる。例えば、StewartとYoung、Solid Phase Peptide Synthesis,第2版、Pierce Chemical Co.(1984)上述の文献、を参照せよ。
また、組換えDNA技術を用いてもよく、注目している免疫原性ペプチドをコードする核酸配列が発現ベクターに挿入され、適当な宿主細胞に形質転換あるいは軽質移入されて発現に適した条件下で培養される。これらの手順は、Sambrookら、Molecular Cloning, a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York(1982)に一般的に記載されているように、技術的に一般に知られている。この文献は本明細書に含まれるものとする。従って、本発明の1またはそれ以上のペプチド配列を含む融合タンパク質は適当なT細胞エピトープを提示するために用いることができる。
ここで考えている長さのペプチドのコーディング配列は化学的技法、例えば、Mattuecciら、J. Am. Chem. Soc. 103:3185(1981)のリン酸トリエステル法により合成できるので、修飾は天然のペプチドをコードしている塩基を適当な塩基に置換するだけで行なえる。次にこのコーディング配列は適当なリンカーをつけて提供され、技術的に一般に入手できる発現ベクター中にライゲーションされて、このベクターは求める融合タンパク質を産生させるために適当な宿主を形質転換するために使用される。そのようなベクターと適切な宿主システムが現在は数多く入手可能である。融合タンパク質の発現のために、コーディング配列は開始及び停止コドン、プロモーターおよびターミネーター領域、および通常は複製システムが機能的に結合されて提供され、望みの細胞宿主中で発現させるための発現ベクターが提供されるであろう。例えば、バクテリア宿主に適合するプロモーター配列が、望みのコーディング配列を挿入するために便利な制限酵素部位をもつプラスミド中で提供されている。得られた発現ベクターは適切なバクテリア宿主へ形質転換される。もちろん、適切なベクターと制御配列を用いて、酵母や哺乳動物細胞宿主を用いてもよい。
【0029】
本発明のペプチドおよび、本発明の医薬組成物およびワクチン組成物は哺乳動物、特にヒトに投与して、ウイルス感染および癌を治療し、かつ/または予防するために有用である。本発明の免疫原性ペプチドを用いて治療することができる病気の例には、前立腺癌、B型肝炎、C型肝炎、AIDS、腎癌、子宮頚癌、リンパ腫、CMVおよび尖圭コンジローマが含まれる。加えて、本ペプチドはウイルス、真菌および寄生虫感染のような感染症のかなり多くのものを治療するために使用することができる。適切な抗原は、例えば、WO94/20127およびWO94/03205に開示されている。
上述したように、本発明のペプチドは、ペプチド上のエピトープに特異的なCTLと接触させるとCTL免疫応答を誘導する。しかながら、本ペプチドがCTLと接触する様式は本発明に重要ではない。例えば、本ペプチドはin viroあるいはin vitoroのいずれでも接触させることができる。接触がin vivoで起こる場合は、ペプチド自体を患者に投与することもできるし、以下に記載するように、他のビヒクル(例えば、1またはそれ以上のペプチドをコードするDNAベクター、ペプチドをコードするウイルスベクター、リポソームその他)を用いることもできる。
【0030】
医薬組成物に関しては、免疫原性ペプチドまたはそれらをコードするDNAは既に癌に苦しんでいる個体、または注目している病原体に感染している個体に投与される。ペプチドまたはそれらをコードするDNAは個々に、または、ここで開示されている1またはそれ以上のペプチド配列の融合体として投与することもできる。
感染の潜伏期にある患者または急性期にある患者は免疫原性ペプチドで別個に治療すること、または他の治療と共に、適切に治療することができる。治療的使用においては、組成物はウイルスまたは腫瘍抗原に対して効果的なCTL応答を引き起こすに充分で、症状および/または合併症を治療あるいは少なくとも部分的に止めるのに充分な量で患者に投与される。これを達成するのに充分な量は「治療効果用量」として定義される。この使用のために効果的な量は、例えば投与される特定の組成物、投与の方法、治療される病気のステージと重篤性、患者の体重と一般的な健康状態、および指示を出す医者の判断に依存するであろうが、一般には初期免疫(すなわち治療または予防的投与のため)には70kgの患者に対して約1.0μgから約5000μgのペプチドであり、続くブースト投与量は、患者の血液中の特異的CTL活性を測定することにより患者の応答と状態に依存して1週間から1か月にわたるブースト療法に従って約1.0μgから約1000μgのペプチドである。本発明のペプチドと組成物は通常、病気の重症な状態、すなわち命に危険があるあるいは命に危険がある可能性がある状態で使用されるかもしれないことは覚えておかなければならない。そのような場合には、外来物質を最小限にすること、およびペプチドが比較的無毒性であるという性質に照らして、これらのペプチド組成物をかなり過剰に投与することが可能であり、治療する医師にとっても望ましく感じられるかもしれない。
【0031】
治療的使用については、ウイルス感染の最初の徴候時に、または腫瘍の検出あるいは外科的切除のときに、または急性感染の場合には診断の直後に投与するべきである。これに続いて、少なくとも症状が実質的に和らぐまで、かつ、その後暫くブースト投与する。慢性感染では、負荷量とそれに続くブースト投与量が必要である。
本発明の組成物で感染個体を治療することは、急性感染した個体における感染除去を早めるであろう。慢性感染になり易い(または、なりつつある)個体については、本組成物は急性感染から慢性感染に発展することを防止する方法において特に有用である。例えばここで記載したように、感染前に、あるいは感染中に、そうなりやすい個体が明らかになった場合には、本組成物はその人たちを標的にすることができ大きな集団に対して投与する必要性を最小限にすることができる。
本ペプチドあるいは他の組成物はまた、慢性感染の治療に用いることができ、保因者の病原体感染細胞を除去するための免疫システムを刺激するために使用することができる。細胞障害性T細胞応答を効果的に刺激するに充分な製剤形で免疫強化ペプチドの一定量、および、そうした投与形態を提供することは重要である。従って、慢性感染の治療のためには、代表的な投与量は70kgの患者への1回の投与量あたり、約1.0μgから約5000μgの範囲であり、好ましくは約5μgから1000μgである。免疫量に続くブースト投与量が特定した個体で必要なことがあり、例えば1から4週間にわたることが必要なことがあり、個体を効果的に免疫するにはおそらく更に長い時間が必要であろう。慢性感染の場合は、少なくとも臨床的症状あるいは試験室での検査によりウイルス感染が除去されるか本質的に和らいだことが示されるまで、かつ、その後しばらく投与されるべきである。
【0032】
治療処置のための医薬組成物は、非経口的、局所的、経口的または局部的投与を予定している。好ましくは、本医薬組成物は非経口的に、例えば、静脈内に、皮下に、皮内に、または筋肉内に投与される。こうして、本発明は許容できる担体、好ましくは水性担体中に溶解したあるいは懸濁した免疫原性ペプチドの溶液を含む、非経口投与のための組成物を提供する。さまざまな水性担体、例えば、水、緩衝化された水、0.8%生理食塩水、0.3%グリシン、ヒアルロン酸その他を用いてもよい。これらの組成物は従来からよく知られた滅菌技術によって滅菌されてもよく、あるいはフィルター滅菌されてもよい。生じた水性溶液はそのまま使用のため包装されてもよく、あるいは凍結乾燥されてもよく、凍結乾燥品は投与の前に滅菌溶液と一緒にされる。本組成物は、pH調整および緩衝剤、張度調整剤、湿潤剤その他、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレート、オレイン酸トリエタノールアミンその他のような、適当な生理学的条件に必要とされる製薬的に許容できる補助物質を含んでいてもよい。
本発明のCTL刺激性ペプチドの医薬製剤中の濃度は幅広く変動しうるものであり、すなわち、重量%にして、約0.1%より低いところから、通常約2%あるいは少なくとも約2%から、20%から50%までかそれ以上であり、選択した特定の投与形態に従い、主として液量、粘度その他によって選ばれるであろう。
【0033】
本発明のペプチドはリポソームによっても投与することができ、リポソームはこのペプチドがリンパ組織のような特定の組織を標的とするように、または、感染細胞を選択的に標的とするように働き、かつペプチド組成物の半減期を増大させるように働く。リポソームにはエマルジョン、フォーム、ミセル、不溶性単分子層、液晶、リン脂質分散体、ラメラ層その他が含まれる。これらの調製物ではデリバリーされるペプチドは、単独で、あるいは、例えばCD45抗原に結合するモノクローナル抗体のようなリンパ細胞で一般的なレセプターと結合する分子に結合して、または治療用あるいは免疫原性組成物と結合して、リポソームの一部として取り込まれる。従って、必要な本発明のペプチドで満たされた、または、修飾されたリポソームはリンパ細胞の部位に向けることができ、そこでそのリポソームは選択した治療用/免疫原性ペプチドをデリバリーする。本発明で使用するためのリポソームは標準的な小胞形成脂質から形成され、これには一般に中性または負電荷を持つリン脂質およびコレステロールのようなステロールが含まれる。脂質の選択は一般に例えばリポソームのサイズ、酸不安定性および血流中でのリポソームの安定性を考慮して定まる。Szokaら、An Rev. Biophys. Bioeng. 9:467(1980),米国特許第4,235,871号、第4,501,728号、第4,837,028号、および第5,019,369号に記載されているように、リポソームを調製するために種々の方法が入手可能である。これらの文献は本明細書中に含まれるものとする。
【0034】
免疫細胞を標的とするために、リポソームに取り込まれるべきリガンドには例えば、望みの免疫系細胞の細胞表面抗原決定基に特異的な抗体あるいはその断片が含まれる。ペプチドを含むリポソーム懸濁液は静脈内、局部的、局所的その他に、投与方法、デリバリーされるペプチドおよび治療される病気のステージに特に従って変動する用量で投与されてもよい。
固体組成物については、通常の非毒性固体担体を用いてもよく、それには例えば医薬品質のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、ショ糖、炭酸マグネシウムその他が含まれる。経口投与のためには、従来列挙されている担体のような通常使用されるなんらかの賦形剤を含むことにより、製薬的に許容できる非毒性の組成物が形成され、その賦形剤は活性成分、すなわち本発明の1またはそれ以上のペプチドの10〜95%であり、より好ましくは25%〜75%の濃度である。
エーロゾル投与のためには、免疫原性ペプチドは界面活性剤および噴霧剤とともに細かく分かれた形で供給されるのが好ましい。ペプチドの典型的なパーセンテージは0.01重量%〜20重量%であり好ましくは1%〜10%である。界面活性剤は、勿論非毒性でなければならず、噴霧剤に可溶であるのが好ましい。このような薬剤の例示としては、カプロン酸、オクタン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、オレステリン酸(olesteric acid)、およびオレイン酸と脂肪族多価アルコールまたはその環状無水物とのような、6から22の炭素原子を含む脂肪酸エステルまたは部分エステルが挙られる。混合または天然グリセリドのような混合エステルを使用してもよい。界面活性剤は重量で組成物の0.1〜20%、好ましくは0.25〜5%を構成するであろう。組成物の残りは通常噴霧剤である。望みであれば、担体を含めることができ、例えば鼻腔内デリバリのためにはレシチンを含めることができる。
【0035】
他の特徴においては、本発明は本明細書に記載する1又はそれ以上の免疫原性ペプチドを免疫原的に効果的な量で活性成分として含むワクチンに関する。このペプチドは、それ自体の担体に結合して、または活性ペプチド単位のホモポリマーあるいはヘテロポリマーとしてヒトを含む宿主に導入される。そのようなポリマーは免疫的反応が増強されるという利点があり、ポリマーを作成するために異なるペプチドが使用されるためウイルスあるいは腫瘍細胞の種々の抗原決定基と反応する抗体及び/又はCTLを誘導することがさらにできるという利点がある。有用な担体は技術的によく知られており、例えば、チログロブリン、ヒト血清アルブミンのようなアルブミン、破傷風毒素、ポリ(リジン:グルタミン酸)のようなポリアミノ酸、インフルエンザ、B型肝炎ウイルスコアタンパク質、B型肝炎ウイルス組換えワクチンその他が含まれる。ワクチンは水、リン酸緩衝生理食塩水、または生理食塩水のような、生理学的に寛容な(許容できる)希釈剤を含めることもでき、更に典型的にはアジュバントを含む。不完全フロイントアジュバント、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、またはミョウバンのようなアジュバントは技術的によく知られた物質である。また、上述したように、CTL応答は、本発明のペプチドをP3CSSのような脂質に結合することによりプライミングできる。本明細書で記載したように、ペプチド組成物で注射、エーロゾル、経口、経皮的、あるいは他の経路により免疫すると、宿主の免疫系は望みの抗原に対して特異的なCTLを多量に作り出すことによってワクチンに応答し、宿主はその後の感染に対して少なくとも部分的に免疫を有し、あるいは慢性感染への発展に対して耐性となる。
本発明のペプチドを含むワクチン組成物は、ウイルス感染しやすいまたは癌になりやすい患者、あるいは投与しなければその危険のある患者に投与され、抗原に対する免疫応答を引き起こし、それにより患者自身の免疫応答能を増強する。そのような量は、「免疫原的効果量」として定義される。こうした使用では、正確な量はやはり患者の健康状態と体重、投与方法、製剤の性質その他に依存するが、一般には70キログラムの患者に対して約1.0μgから約5000μg、より一般には70kgの体重あたり約10μgから約500μgである。
【0036】
ある場合には、本発明のペプチドワクチンを、注目しているウイルスに対する、特にウイルスエンヴェロープ抗原に対する中和抗体応答を誘導するワクチンと組み合わせるのが望ましいかもしれない。
治療または免疫目的のためには、本発明のペプチドはワクチニアや鶏痘のようは弱毒化ウイルス宿主によって発現させることもできる。この手法には、本発明のペプチドをコードする核酸配列を発現させるベクターとしてワクチニアウイルスを使用することが含まれる。急性または慢性感染した宿主あるいは悲感染の宿主に導入すると、組換えワクチニアウイルスは免疫原性ペプチドを発現し、それにより宿主のCTL応答を引き起こす。免疫プロトコルに有用なワクチニアベクターと方法は、例えば米国特許第4,722,848号に記載されており、この文献は本明細書中に含まれるものとする。他のベクターはBCG(カルメット-ゲラン杆菌)である。BCGベクターはStoverら(Nature 351:456-460)に記載されており、これは本明細書中に含まれるものとする。本発明のペプチドの治療用投与または免疫に有用な他の多くの種々のベクター、例えば腸チフス菌(Salmonella Typhi)ベクターその他は本明細書の記載から当業者には明らかであろう。
【0037】
抗原性ペプチドもCTLをex vivoで誘導するために使用してもよい。生じたCTLは、他の通常の治療形態に応答しない患者、あるいはペプチドワクチン療法に応答しないであろう患者において慢性感染(ウイルスまたはバクテリアの)または腫瘍の治療に使用することができる。特定の病原体(感染性因子または腫瘍抗原)に対するex vivo CTL応答は患者のCTL前駆細胞(CTLp)を抗原提示細胞(APC)の供与源および適当な免疫原性ペプチドと一緒に組織培養でインキュベーションすることによって誘導される。適当なインキュベーション期間(典型的には1〜4週間)、CTLpが活性化され成熟してエフェクターCTLに拡張する期間の後、細胞は患者に再注入され、そこで特異的標的細胞(感染細胞または腫瘍細胞)を破壊するであろう。
本発明の1またはそれ以上のペプチドをコードするDNAを患者に投与することができる。この方法は例えばWolffら、Science 247:1465-1468(1990)および米国特許第5,580,859号および第5,589,466号に記載されている。
本発明のペプチドをコードする核酸を投与する好ましい方法は本発明の多エピトープをコードするミニ遺伝子構築物(minigene constructs)を使用するものである。ヒト細胞中で発現させるための、選択したCTLエピトープ(ミニ遺伝子)をコードするDNA配列を作成するために、そのエピトープのアミノ酸配列が逆翻訳(reverse transtate)される。ヒトのコドン頻度表が各アミノ酸のコドン選択を決めるのに使用される。これらのエピトープをコードするDNA配列は直接結合され、連続したポリペプチド配列を作り出す。発現及び/又は免疫原性を最適化するために、ミニ遺伝子設計中に付加的な断片を取り込むこともできる。逆翻訳されてミニ遺伝子配列に取り込まれ得る配列には、ヘルパーTリンパ球エピトープ、リーダー(シグナル)配列、および小胞体滞留シグナルが含まれる。加えて、CTLエピトープのMHC提示はCTLエピトープに隣接する合成配列(例えばポリアラニン)または天然に存在する側方配列を含むことにより改良されるかもしれない。
【0038】
ミニ遺伝子配列は、そのミニ遺伝子のプラス鎖およびマイナス鎖をコードするオリゴヌクレオチドをアッセンブリすることによってDNAに変換される。重複するオリゴヌクレオチド(30〜100塩基の長さ)が合成され、リン酸化され、精製されて、適当な条件下でよく知られた技術を用いてアニーリングされる。オリゴヌクレオチドの末端はT4 DNAリガーゼによって結合される。この合成ミニ遺伝子は、CTLエピトープポリペプチドをコードしており、望みの発現ベクター中にクローニングすることができる。
当業者によく知られた標準的な制御配列が標的細胞中での発現を保証するためにベクターに含まれる。いくつかのベクター素片が必要とされる:ミニ遺伝子挿入のために下流にクローニング部位を有するプロモータ;効率的な転写終結のためのポリアデニル化シグナル;大腸菌での複製開始点;大腸菌用の選択マーカー(例えばアンピシリンまたはカナマイシン耐性)。この目的のためには多くのプロモーターが使用可能であり、例えば、ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)プロモータが使用できる。他の適切なプロモーター配列については米国特許第5,580,859号および第5,589,466号を参照せよ。
【0039】
ミニ遺伝子の発現と免疫原性を最適化するために補助的なベクター修飾が必要なことがある。ある場合には、効率的な遺伝子発現のためにイントロンが必要であり、ミニ遺伝子の転写領域に1またはそれ以上の合成または天然のイントロンを含めることができる。ミニ遺伝子発現を増大させるためにmRNA安定化配列を含めることも考慮される。DNAワクチンの免疫原性に関して免疫刺激配列(ISSまたはCpG)が重要な役割を果たすと最近言われている。免疫原性を増強するということが分かれば、これらの配列はベクター中、ミニ遺伝子コード配列の外側に含めることができる。
いくつかの実施態様ではミニ遺伝子にコードされるエピトープと免疫原性を増強しあるいは減少させるために含められた第2のタンパク質を産生することができるような、2シストロン性発現ベクター(bicistronic expression vector)を用いることができる。共発現された場合に免疫応答を有益に増強することができるタンパク質またはポリぺプチドにはサイトカイン(例えばIL2、IL12、GM-CSF)、サイトカイン誘導分子(例えばLeIF)または共刺激性分子が含まれる。ヘルパー(HTL)エピトープは細胞内標的シグナルに結合することができ、CTLエピトープとは別に発現される。これによりHTLエピトープをCTLエピトープと異なる細胞区画に向かわせることができる。必要であれば、これによりHTLエピトープをMHCクラスII経路に、より効果的に入れることが容易になり、それによりCTL誘導が増強される。CTL誘導とは対照的に、免疫抑制分子(例えばTGF-β)の共発現による免疫応答の特異的減少がある種の病気では有益かもしれない。
【0040】
発現ベクターが選ばれると、ミニ遺伝子はプロモーター下流のポリリンカー領域にクローン化される。このプラスミドは適当な大腸菌株に形質転換され、DNAが標準的な技術を用いて調製される。ミニ遺伝子およびベクター中に含まれる他の全ての要素の方向とDNA配列は制限酵素地図及びDNA配列解析を用いて確認される。正しいプラスミドを有するバクテリア細胞はマスター細胞バンクとしておよび作業用細胞バンクとして保存することができる。
プラスミドDNAの治療的量は大腸菌内での増殖により産生され、続いて精製される。作業用細胞バンクから適当量を使用して(テリフィック培地(Terrific Broth)のような)増殖培地に植え、よく知られた技術により振盪フラスコまたはバイオリアクター中で飽和するまで増殖させる。プラスミドDNAはQuiagenから供給される固相陰イオン交換樹脂のような標準的な分離技術を用いて精製することができる。必要であれば、ゲル電気泳動あるいは他の方法で超らせんDNAを開環状および直線状型から単離することができる。
精製したプラスミドDNAはさまざまな製剤形を用いて注射用に調製することができる。これらの最も簡単なものは、滅菌したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で凍結乾燥DNAを再構成することである。この方法は「裸のDNA」として知られ、現在臨床試験で筋肉内(IM)投与のために使用されている。ミニ遺伝子ワクチンの免疫治療的効果を最大にするために、精製したプラスミドDNAを製剤する別の方法が望まれるかもしれない。種々の方法が述べられており、新しい技術が入手可能になるかもしれない。この製剤には陽イオン脂質も用いることができる(例えば、DebsとZhu(1993)WO93/24640;ManninoとGould-Fogerite(1988)BioTechniques 6(7):682-691;Rose米国特許第5,279,833:Brigham(1991)WO91/06309;およびFelgnerら、(1987)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:7413-7414に記載されているように、これらを参照せよ)。加えて、糖脂質、融合性リポソーム、ペプチドおよび保護的、相互作用的、非-凝集性(PINC)と言われる化合物を精製したプラスミドDNAに混ぜることができ、安定性、筋肉内の分散性、または特定の器官または細胞のタイプへの指向性(trafficking)のような変数に影響を与えることができる。
核酸は例えば、米国特許第5,204,253号に記載されているようにバリスティックデリバリー(ballistic delivery)によって投与することもできる。DNAのみを含む粒子を投与することができる。また、DNAは金粒子のような粒子に接着されうる。
【0041】
ミニ遺伝子にコードされるCTLエピトープの発現およびMHCクラスI提示の機能アッセイとして標的細胞の感作を利用することができる。プラスミドDNAは標準的なCTLクロム放出アッセイの標的として適した哺乳動物細胞株に導入される。使用する形質転換方法は最終的な製剤形に依存するであろう。エレクトロポレーションは「裸の」DNAに使用することができ、一方陽イオン脂質は直接in vitro形質転換を可能とする。緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現しているプラスミドは共形質転換することができ、これにより蛍光標識セルソーター(FACS)を用いて形質転換細胞を濃縮することができるようになる。これらの細胞は次にクロム51ラベルされ、エピトープ特異的CTL株の標的細胞として使用される。51Cr放出によって検出される細胞溶解はミニ遺伝子にコードされるCTLエピトープのMHC提示が起こったことを示す。
In vivo免疫原性はミニ遺伝子DNA製剤の機能テストの第2のアプローチである。適当なヒトMHC分子を発現しているトランスジェニックマウスがこのDNA産物で免疫される。投与量と投与経路は製剤形依存性である(例えば、PBS中のDNAに対してはIM、脂質混合DNAについてはIP)。免疫後21日に、脾細胞が集められ、テストする各エピトープをコードするペプチドの存在下で1週間再刺激される。これらのエフェクター細胞(CTL)は標準的な技術を用いて、ペプチド装荷クロム51ラベル標的細胞の細胞溶解についてアッセイされる。ミニ遺伝子にコードされるエピトープに対応するペプチドを装荷したMHCによって感作された標的細胞が溶解することは、CTLのin vivo誘導に関するDNAワクチン機能を証明するものである。
本発明のペプチドは診断薬として使用できるかもしれない。例えば、本発明のペプチドは、そのペプチドまたは関連するペプチドを用いる治療方式にたいする特定個体の感受性を決定するために使用してもよく、それによって、今の治療プロトコルを修正するのに有用であるかも知れず、病気の個体の予後を決定するのに有用かもしれない。加えて、本ペプチドはどの患者が慢性感染へ発展する本質的危険があるかを予測するために用いてもよい。
以下の実施例は説明のために提供されるものであり、限定するためではない。
【実施例1】
【0042】
A3様スーパータイプ結合
この実施例は各A3様アレルA3、A11、A*3101、A*3301およびA*6801の微細なモチーフを提供するものであり、2次的アンカー結合特異性を概説する。このモチーフは、ペプチド配列に沿った各非-アンカー位置において、個々の化学的類似性に従ってグループ分けした20種の一般的アミノ酸をそれぞれ有するペプチドの、平均相対結合能を計算することによって導かれた。
【0043】
材料と方法
クラスI精製
以下のエプスタイン-バーウイルス(EBV)でトランスフォームされたホモ接合細胞株をクラスI分子の供与源として使用した:GM3107(A3、B7;Human Genetic Mutant Repository);BVR(A11、B35.3、Cw4;Human Genetic Mutant Repository);SPACH(A31、B62、Cw1/3;ASHI Repository Collection)およびLWAGS(A*3301、B41、Cw8;ASHI Repository Coleection)(Bodmerら、Hum Immunol 43:149(1995))。Walter Storkus博士(Pittsburgh大学)によって特性が明らかにされたC1RトランスフェクタントをA*6801の単離に使用した。細胞株は従来記載されているように維持した(Sidneyら、J. Immunol 154:247(1995);Setteら、Mol Immunol 31:813(1994))。
従来記載されているように(Sydenyら、J Immunol 154:247(1995);Setteら、Mol Immunol 31:813(1994)細胞可溶化物を調製し、クラスI分子を精製した。簡単に言えば、1%NP-40(Fluka Biochemika,Buchs,Switzerland)を含む50mMTris-HCl、pH8.5、150mM NaCl、5mM EDTAおよび2mM PMSF中で108細胞/mlの濃度で細胞を溶解した。この可溶化物を0.45μmのフィルターに通し、10,000gで20分間遠心することにより核と細片を除去した。次に主要組織適合複合体(MHC)分子をアフィニティークロマトグラフィーで精製した。不活性化したセファロースCL4BおよびプロテインAセファロースのカラムを前段カラムとして使用した。抗HLA(B、C)抗体B1.23.2(Rebaiら、Tissue Antigens 22:107(1983))を結合したプロテインAセファロースビーズに繰り返し通すことにより細胞可溶化物からHLA-BおよびHLA-Cを取り除いた。典型的には効果的な除去のためには通常2から4回の通過が必要である。続いて、HLA-A分子を捕らえるため抗HLA(A、B、C)抗体W6/32(Barnstableら、Cell 14:9(1978))を用いた。タンパク質の純度、濃度、および除去段階の効率はSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって調べた。
【0044】
結合アッセイおよびスパーモチーフの同定
放射ラベルした標準プローブペプチドの界面活性剤可溶化MHC分子に対する結合の阻害に基づいて、可溶化クラスI分子に対するペプチドの結合能についての定量的アッセイを、以前に記載されている様に行なった(Kuboら、J Immunol 152:3913(1994);Kastら、J Immunol 152:3904(1994);Sidneyら、J Immunol 154:247(1995);Setteら、Mol Immunol 31:813(1994);Ruppertら、Cell 74:929(1993))。簡単に言うと、1〜10nMの放射ラベルしたプローブペプチド、これはクロラミンT法によってヨード化したものだが(Greenwoodら、Biochem J 89:114(1963))、これを1μMヒトβ2-ミクログロブリン(Scripps Laboratories,San Diego,CA,USA)存在下に室温で種々の量のMHCおよびタンパク質阻害剤の混合液と共インキュベーションした。2日間のインキュベーション期間の終了後、TSK2000カラムによるサイズ排除ゲル濾過クロマトグラフィーによってMHC-結合放射活性のパーセンテージを測定した。
【0045】
A3CON1ペプチド(配列KVFPYALINK)(Kuboら、J Immunol 152:3913(1994))はA3、A11、A31およびA*6801アッセイのための放射ラベルプローブとして使用した。HBVc141-151(配列STLPETYVVRR)のT7−Yアナログ(Missaleら、J Exp Med 177:751(1993))をA*3301アッセイのための放射ラベルプローブとして使用した。競合アッセイにおいて、放射ラベルしたプローブペプチドの結合の50%阻害を起こすペプチド濃度(IC50)を計算した。通常、ペプチドは1回又は2回高濃度でテストし、続く実験において必要に応じて更に2から6回希釈して、正の阻害を引き起こすペプチドのIC50を決定した。放射ラベルしたプローブペプチドのほぼ15%の結合を起こすMHC濃度を全ての競合阻害アッセイにおいて使用した。こうした条件下では、(ラベル)<(MHC)でありIC50>(MHC)であるため、測定したIC50は真のkD値の合理的な近似値である。各競合ペプチドは、完全に独立した2から4回の実験でテストした。正の対照としては、各実験において、放射ラベルプローブに関連する未ラベル版をテストし、そのIC50を測定した。A3、A11、A31およびA*6801アッセイについてのA3CON1の平均IC50は各々、11、6、18および8nMであった。A*3301アッセイにおけるHBVc141-151ペプチドは29nMであった。
【0046】
HLA-A特異的2次アンカーモチーフの明確化
A*0201の2次的アンカーモチーフを明らかにするためにRuppertらによって用いられた方法(Ruppertら、Cell 74:929(1993))を修正した。簡単に言うと、9mer配列の各非アンカー位置における20種の一般的に存在するアミノ酸の、HLA結合に与える効果を評価することによって、アレル特異的2次アンカーモチーフを決定した。評価は、各位置のアミノ酸の組み合わせ(例えば、位置1、アラニン;位置2、アラニンなど)について平均相対結合値を計算することによって行なった。あるアミノ酸が低頻度であるという問題を克服するため、いくつかの残基を、以前に記載されているように(Ruppertら、Cell 74:929(1993))他の類似の性質を持つものと共にグループ分けした。200のペプチド集合全体の平均結合能よりも4倍高い(あるいは低い)平均結合能を有する、特定の位置に関する残基のタイプは、高(低)結合能に関するものと考えられる。
【0047】
ペプチド合成
ペプチドは以前に記載されているように(Ruppertら、Cell 74:929(1993))合成したかまたはChiron Mimotopes(Chiron Corp.、Australia)から粗精製物として購入した。合成したペプチドは逆相高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によって >95%の均一性にまで精製した。これらのペプチドの純度は分析用逆相カラムでアッセイしその構成成分はアミノ酸解析、シーケンシング、及び/又は質量分析解析によって確かめた。
【0048】
いろいろな民族的背景におけるHLAスーパータイプの表現型頻度の計算および推定される人口割合(projected population coverage)
各HLAアレルの遺伝子頻度は抗原又はアレル頻度(Imanishiら、Proceedings of the Eleventh International Histocompatibility Workshop and Conference,第1巻、Tokyo,Oxford University Press(1992);Fernandez-Vinaら、Hum Immunol 33:163(1992))から、2項分布式 gf=1-(SQRT(1-af))を用いて計算した(Tiwariら、The HLA complex, In: HLA and Disease Associates, NY, Springer-Verlag(1985))。全体の表現型頻度を得るために、累積遺伝子頻度を計算し、逆関数式(af=1-(1-Cgf)2)を用いて抗原頻度を導いた。以下で議論するように、頻度データはDNAタイピングレベルで得たものではなく、血清学的に明らかにした抗原頻度との一致が仮定されている。推定される全体の人口割合を得るために、連鎖不平衡は仮定せず各スーパータイプに属すると確認されるアレルのみを含めた(最小評価値)。遺伝子座間組換えによって起こる、推定される全体の割合の評価は、Bアレルによってカバーされると考え得る非A範囲の集団の割合をAの割合に加えることによっておこなった(例えば、全体=A+B*(1-A))。A3系列スーパータイプの確認されているメンバーはA3、A11、A31、A*3301およびA*6801である。A3様スーパータイプはA32、A66およびA*7401を含む可能性があるが、これらのアレルは全体の頻度計算には含めなかった。同様に、A2様スーパータイプファミリ−の確立したメンバーは、A*0201、A*0202、A*0203、A*0204、A*0205、A*0206、A*6802、およびA*6901(またA*3001もありうる)。最後に、確認されているB7様スーパータイプアレルは、B7、B*3501-3、B51、B*5301、B*5401、B*5501-2、B*5601、B*6701、およびB*7801(またB*1401、B*3504-06、B*4201およびB*5602もありえる)。
【0049】
結果
種々のHLAアレルのペプチド結合ポケットの構造解析
上述したように、HLA分子A3、A11およびA*6801は、位置2に小さなまたは疎水性残基と正電荷のC末端を持つリガンドに対する特異性と関連していることが従来の研究で示されている(Kuboら、J Immunol 152:3913(1994);Guoら、Nature 360:364(1994);Falkら、Immunogenetics 40:238(1994);Dibrinoら、J Immunol 151:5930(1993);DiBrinoら、Proc Natl Acad Sci USA 90:1508(1993);Zhangら、Proc Natl Acad Sci USA 90:2217(1993);Setteら、Mol Immunol 31:813(1994))。我々は、これらのリガンド特異性に関する一見した類似性に対して推定される構造的基礎をより詳細に評価することにした。この目的のため、免疫原性ペプチドの位置2およびC末端の残基の側鎖が種々のHLAクラスI分子のBおよびFポケットを構成する残基と接触することが知られているので(Maddenら、Cell 75:693(1993);Saperら、J Mol Biol 219:277(1991))、これらの多様なポケットを構成する残基を種々のHLAクラスI分子について表にした。ペプチドリガンドの位置2の小さいまたは疎水性残基を認識することが知られているHLAタイプ(例えば、A*0101、A*0201、A*0301、A*1101、A*6801およびA*6802)およびC末端に正電荷を持つ残基を認識することが知られているHLAタイプ(例えば、A*0301、A*1101、A*6801およびB*2705)はある種の鍵となる構造的性質を共通にしている。より詳しくは、HLA分子の位置2の小さいまたは疎水性残基を結合するHLA分子は位置45および67に脂肪族残基(MまたはV)を有し、NおよびK、あるいはHおよびQのような水素結合形成性残基をそれぞれ位置67および70に有している。これらの分子は全て位置99にY残基を有している。これに対して異なる結合特異性を示すクラスI分子はこれらの位置の1またはそれ以上が異なっている。同様に、正電荷を持つC末端に優先的であるクラスI分子のみがD、T、LおよびDをそれぞれ位置77、80、81および116に有している。結論として、この解析により、HLAクラスI分子の組(A3、A11およびA*6801)はそのBおよびFポケットにおいてある種の鍵となる構造的性質を共通にしており、位置2の小さい、または疎水性残基とC末端の正電荷の残基によって特徴づけられる共通のペプチドリガンドモチーフを有していることが示された。ここで、我々はこれらのHLAクラスI分子を仮にA3様スーパータイプの一部と称し、対応するモチーフをA3様スーパーモチーフと称することにする。
モチーフが不明なクラスI分子の解析の結果、A*3101、A*3301、A*3401、A*6601およびA*7401もBおよびFポケットにこれらの同じ保存配列を共通に持つことが明らかになった。従ってこれらの分子はA3様スーパータイプの一部であることが予測された。最近のデータ(Falkら、Immunogenetics 40:238(1994))はA31およびA33が実際A3様ペプチドモチーフによって特徴づけられることを独立に示している。
【0050】
A3-様分子分子はオーバーラップする主要アンカー特異性およびペプチド結合レパトワールを示す
最も頻度の高いA3様分子のいくつか(A3、A11、A31、A*3301およびA*6801)によって認識されるモチーフの範囲を比較するために、これらの分子の主要アンカー(位置2およびC末端)結合特異性についてのより詳細な分子的解析を行なった。放射ラベルプローブペプチドのアフィニティー精製HLAクラスI分子に対する結合を阻害する、未ラベルの合成ペプチドの能力を測定したA3-およびA11-特異的ペプチド結合アッセイが、以前に記載されている(Kuboら、J Immunol 152:3913(1994);Kastら、J Immunol 152:3904(1994);Setteら、Mol Immunol 31:813(1994))。A31、A*3301およびA*6801に特異的な結合アッセイは同様な手法を用いて開発された(Kuboら、J Immunol 152:3913(1994);Kastら、J Immunol 152:3904(1994);del Guercioら、J Immunol 154:685(1995);Sidneyら、J Immunol 154:247(1995);Setteら、Mol Immunol 31:813(1994);Ruppertら、Cell 74:929(1993))。
続いてA3様分子の主要アンカー特異性を、プロトタイプポリ-AペプチドAXAAAAAAXの位置2または位置9における置換を含むペプチドの一団を、A3、A11、A31、A*3301およびA*6801に対する阻害能についてテストすることによって調べた。各分子はそれぞれ特有の優先性を示したが、考慮した例の大部分において、位置2がA、I、L、M、S、TまたはVのいずれかで占められ、C末端がRまたはKの何れかである場合に顕著な結合性が得られた。これらのデータは、我々(Kuboら、J Immunol 152:3913(1994))および他の者(Falkら、Immunogenetics 40:238(1994);Dibrinoら、J Immunol 151:5930(1993) ;DiBrinoら、Proc Natl Acad Sci USA 90:1508(1993))によって得られたプールシーケンシングデータとよく一致し、A31、A*3301、およびA*6801の場合に主要アンカーモチーフの定義を拡張する。結論として、これらのデータはA3様主要アンカースーパーモチーフは位置2のA,I、L、M、S、T、またはVおよびC末端のRあるいはKによって定義できることを示唆している。
【0051】
A3様分子はオーバーラップするペプチド結合レパトワールを共有する
次にA3様スーパータイプ主要アンカーモチーフがA3様スーパータイプ分子の中で許される縮退結合の程度を調べた。第2位置にA、I、L、M、S、TまたはVの残基を有し第9位置にKまたはRを有する200種類の天然に存在する9merペプチド配列の組を集めた。それぞれの潜在的なアンカーの組み合わせは個々のアミノ酸の天然の頻度に比例して表されるべきだという制約とは別に、この組を含むペプチドはウイルスおよび腫瘍抗原配列からランダムに選んだ。各ペプチドを精製したA3、A11、A31、A*3301およびA*6801分子への結合能についてテストすると、各アレル型に関連する特有の結合パターンが明らかになった(データは示していない)。例えば、ある種のペプチドは選択的で唯ひとつのクラスIタイプにしか結合しないが、一方ある種の他のペプチドはかなり広範囲に交差反応し、調べた分子の4または5種に結合した。
【0052】
一般に、任意の与えられたアレルに対して、ペプチド-HLAの組み合わせの約10%(5%〜16%)は強い結合(IC50≦50nM)と関連し約17%(11%〜24%)が中間的結合(IC50 50〜500nM)と関連していることが分かった。これらの高結合および中間的結合の頻度はA*0201モチーフ含有ペプチドプールシーケンシングについて以前に述べられていたことと似ている(Ruppertら、Cell 74:929(1993))。しかしながら最も注目に値するのは観察されたかなり高い交差反応性である。少なくとも1つのA3様分子に結合しうる127のペプチドのうち、その43(34%)がA3様スーパータイプ分子の3種かそれ以上と結合した。4種のペプチドはテストした5種のA3様分子の全てに結合した。これに比較して、関連のない5種のクラスI分子(A*0101、A3、A24およびB7)に対する結合を調べた39のペプチドからなる集団では僅かに3種(8%)が2種の分子に結合し、3種又はそれ以上の分子に結合するものはなかった。テストした5種のA3様分子のうち少なくとも4種に対して高結合体または中間的結合体として同定されたペプチドを表2に列挙した。表中、強い結合能または中間的結合能はIC50≦500nMとして定義され、下線を引いて強調した。まとめると、これらのデータはA3様スーパータイプ分子の結合レパトワールにはかなりの重なりがあることを示し、A3様スーパータイプ主要アンカーモチーフの確認となるものである。
【0053】
A3様スーパーモチーフは潜在的なペプチドリガンドに対する縮退性を与える2次アンカー残基を明らかにする
上に述べたように、A3様スーパータイプ分子の結合レパトワールの重なりはかなりなものであるが、完全には程遠い;各A3様分子はまたかなりの程度の特異性を維持していもいる。観察される交差反応性の基礎を理解するため、A3様スーパータイプの縮退と関連し、A3様縮退結合体を予測するのに有用であり得るペプチドリガンドの性質を説明するであろうA3様スーパーモチーフを明らかにすることを試みた。
まず、ここで解析したA3様アレル(A3、A11、A31、A*3301およびA*6801)の微細な各モチーフを、2次的アンカー結合特異性の概略とともに、材料と方法で説明したように導いた。この方法はA*0201の微細なモチーフを明らかにするために以前に用いられたものと似ている(Ruppertら、Cell 74:929(1993))。このモチーフは、ペプチド配列に沿った各非アンカー位置において、個々の化学的類似性に従ってグループ分けした20種の一般的なアミノ酸の各々を有するペプチドの平均相対結合能を計算することによって導いた。この手順によって得られたデータの代表例として、A3についての計算値を表3Aに示した。これを例として、続いて、その配列の第3位置に芳香族残基(F,W、Y)を有する異なる21種のペプチドをテストした。これらのペプチドはA3に対して、200種のペプチドの組の全体平均よりも31.7倍高い相対結合能を有していた。A*0201の場合に以前に記載されたことと同様に、優先的及び阻害的残基を、それぞれ全体平均よりも4倍強い、あるいは4倍低い結合能と関連する残基として定義した。これに従って、位置3における芳香族残基はA3結合について「優先的」残基であると考えられた。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
表3 相対結合値によって決定したアレル特異的2次アンカー優先性
【0057】

【0058】
表3.つづき

【0059】
同様な解析を各アレル(A3、A11、A31、A*3301)について行い、各位置に対するアレル特異的2次アンカー要求性の地図を作るのに使用した(表3B−E)。調べたA3様スーパータイプの各アレルについて得られた修正モチーフの概略を図1に示した。各分子は自身の特有の2次アンカー要求性を示した。例えば位置4の正電荷を持つ残基(R、H、K)はA3で優先的であったが、他のいずれのA3様分子ではそうではなかった。同様に位置8ではグリシン(G)はA11についてのみ低い結合能と関連しており、一方、負電荷を持つもの(D、E)はA31についてのみ阻害的であった。これらの固有のアレル特異的性質を別にして、ある種の残基はA3スーパータイプの分子の大部分において低い結合性あるいは強い結合性のいずれかに関連していた。例えば、位置1のプロリン(P)はテストした5種全てのA3様分子に阻害的であった。位置7の芳香族残基(F,W、Y)および位置8のプロリンはテストした5種の分子の4種に優先的であった(図1)。
個々のいろいろな微細モチーフに基づいて、A3様スーパーモチーフを構築した。考慮した5種のアレルのうち少なくとも3種に阻害的である残基はそのスーパーモチーフおいて阻害的な残基であると定義した。これに対して、考慮した5種のアレルの少なくとも3種に優先的であって、かつどのアレルについても阻害的でない残基は優先的残基として定義した。この手法に従って導かれたA3様スーパーモチーフは図2に示した。
【0060】
高交差反応性ペプチドの予測におけるA3スーパーモチーフの効力テスト
上で定義したA3様スーパーモチーフの妥当性をテストするために、前のスーパーモチーフの解析には含まれていない108種のペプチドからなる追加の組をA3、A11、A31、A*3301およびA*6801への結合についてテストした。この組は少なくとも1つの優先的スーパーモチーフ残基を有し、かつ阻害的残基をもたない(スーパーモチーフ陽性の)30種のペプチド、少なくとも1種の阻害的残基を有する(スーパーモチーフ陰性)43種のペプチド、優先的残基も阻害的残基も有しない35種のペプチド(スーパーモチーフ中立)を含んでいた。30種のスーパーモチーフ陽性ペプチドのうち27種(90%)が2種またはそれ以上のA3様分子に結合し16種(53%)が3種またはそれ以上の分子に結合した。これに対して、35種のスーパーモチーフ中立ペプチドのうち18種(51%)が2種又はそれ以上のA3タイプと結合し8種(23%)が3種又はそれ以上の分子と結合した。最後に、スーパーモチーフ陰性ペプチドは多アレル結合に関して、より能力が低く、6種(14%)が2種のA3様分子に結合し、3種またはそれ以上の分子に結合するペプチドはなかった。これらの結果は、スーパーモチーフの定義するのに用いた元のペプチドに対して同じタイプの解析を行った場合と定性的に類似しており、元の拘束されている素片以外のアレルには少数のペプチド(8%)のみが結合するという、無関係のHLAアレルへ結合させた、前に述べた対照ペプチドの組の場合に観察された交差反応レベルと非常に対照的である。A3様スーパーモチーフの有効性を示すために用いたペプチドの組から、テストした5種のA3様分子のうち少なくとも4種に高アフィニティーまたは中間的アフィニティーで結合するペプチドをさらに10種同定した(表2B)。
【0061】
全ての主要な民族集団においてHLAスーパータイプの高い表現型頻度が保存されている
一般のHLAスーパータイプ、特にA3様スーパータイプの潜在的適切性を評価するために、種々のHLAクラスIアレル又は抗原の発生率を調べた。これまで、HLA-AおよびHLA-Bの手に入る人口データの大部分は血清学的タイピングに基づいていた。これらのデータはDNA配列によって定義されるアレルのレベルでの解答を与えるものでなく、従って、サブタイプ間の区別が出来ない。しかしながら、ペプチドの結合の検討(del Guercioら、J Immunol 154:685(1995);Tanigakiら、Hum Immunol 39:155(1994))、プールシーケンシング(pool sequencing)解析(Fleishcerら、Tissue Antigens 44:311(1994);Rotzschkeら、Eur J Immunol 22:2453(1992))あるいは1次配列に基づくポケット構造の解析を通してサブタイプのペプチド結合特異性を比較すると、ほとんどの場合にサブタイプは、同一ではないにしろ、類似のペプチド主要アンカー特異性を有しているであろうことが示唆される。従って、以後の解析においては、DNAサブタイプレベルの人口データが入手できなくても、結合データ、公表されたモチーフあるいは配列解析によりサブタイプはオーバーラップするペプチド結合特異性を有するであろうことが示唆されるので、サブタイプアレルと血清学的に定義された抗原との間に1対1の相関があると仮定した。
異なる民族的背景における種々のA3様アレルまたは抗原の発生率を調べると、個々のそれぞれのアレルまたは抗原の頻度は民族間で大きく変動し得る一方(Imanishiら、Proceedings of the Eleventh International Histocompatibility Workshop and Conference第1巻、Tokyo, Oxford University Press(1992))、5種のA3様アレルの累積頻度は驚くほど一定である(37%から53%の範囲)ことが明らかになった。例えば、A3は白人、北米黒人、スペイン人では一般的だが、日本人にはほとんど存在しない。これに対してA31は日本人ではよく見られが、白人と北米黒人では希である。対照的に、調べた5つの民族集団のそれぞれにおいてA3様スーパータイプはそれぞれの少なくとも37%、かつ53%程度まで存在した。
このような情況で、我々が最近A2様スーパータイプ(del Guercioら、J Immunol 154:685(1995)およびB7様スーパータイプ(Sidneyら、J Immunol 154:247(1995))の存在を報告したように、A3様スーパータイプの存在は孤立した事象ではない。これらの更なるスーパータイプのそれぞれも顕著で、異なる民族的背景間でかなり保存された累積頻度(40%から60%の範囲)を示す。実際、現在存在しているHLA-Aまたは-B遺伝子の全コピーの少なくとも半分は遺伝子レベルでこれらの3つのスーパータイプの1つに属するように思えることが容易に計算できる。
【0062】
考察
ここに提示したデータは少なくとも5種の異なるHLAアレル(A3、A11、A31、A*3301およびA*6801)の産物および、おそらくポケット解析に基づいて予測される少なくとも3種の他のもの(A*3401、A*6601、およびA*7401)の産物は単一の機能的A3様スーパータイプにグループ分けされ得ることを示すものである。これは多くの観察から決定されたものである。一つのグループとして、これらの分子は(a)ペプチドの結合領域内に、ある種の鍵となる構造を共通にし、(b)その主要アンカー残基について類似の優先性を有し、かつ(c)大きくオーバーラップする結合レパトワールを共通にもつ。ペプチドの大集団の結合活性をそれらのアレル分子に優先的であるアンカー残基をたたきつぶしながら調べることにより、A3様スーパーモチーフも同定した。このスーパーモチーフは、A3様スーパータイプ分子の2次アンカー要求性の詳細な地図に基づくものであり、このモチーフによりA3様縮退結合ペプチドを効率的に予測できる。最後に、A3様スーパータイプ、およびスーパータイプ一般、は全ての主な民族集団において驚くほど高い表現型頻度で現れていることが示された。このように、ペプチドの結合特異性に基づくHLAクラスIスーパータイプはHLAクラスI分子間の関係を理解するための、血清学的および系統学的分類に役に立つもう一つの方法を示すものである。
A3様スーパーモチーフを作る用途以外に、本研究において開示した個々の2次的アンカー地図はそれ自体クラスI分子に対するペプチドの結合の理解に大きく貢献するものである。これらの地図は均一なサイズのペプチドを用いて導かれているため、各2次的位置における優先性の決定は、天然にプロセッシングされたペプチドプールの配列から導かれるものよりも正確かもしれない。また、ここで明らかにしたモチーフによりペプチドの結合に阻害的な効果を有する残基を決定できる。
【0063】
Barberとその共同研究者(Barberら、Curr Biol 5:179(1995))は、我々がHLA-B7様スーパータイプに含めた2つの分子と関連してペプチドが認識され得ることを示し、かつ、2つの他のペプチドが1より多くのA3様アレルとの関連で認識されることが報告されている(Missaleら、J Exp Med 177:751(1993);Koenigら、J Immunol 145:127(1990);Culmannら、J Immunol 146:1560(1991))(表4を参照せよ)。1次CTLをin vitroで誘導する方法(Wentworthら、Mol Immunol 32:603(1995))を用いて、我々はペプチドがA3およびA11の双方との関連で認識されうる場合をいくつか観察した。我々はA3様スーパータイプに拘束されたエピトープのA3様スーパータイプ分子に対する結合能を調べ、かなり高度の縮退に気がついた。表4に掲げた7種のエピトープの中で、一つだけが図2Aで提唱されているスーパーモチーフについて解析できるノナマーである(9merより長いペプチドにスーパーモチーフを拡張する将来の研究が予定されている)。このペプチドはスーパーモチーフ陽性であり、5種のA3様分子のうちの3種に結合した。それでもなお各エピトープがA3様スーパータイプ主要アンカー特異性に従ったということは重要である。
我々がペプチド結合性に基づいて提唱したスーパータイプ分類をDNA配列(および血清学的反応性)に基づく分類(Ishikawaら、Hum Immunol 39:220(1994);Firgairaら、Immunogenetics 40:445(1994);Karoら、J Immunol 143:3371(1989))と比較すると、類似点および相違点が明らかになる。例えば、HLA-A3およびA11は密接に関係し共通の祖先遺伝子に由来するように見える(48-50)。しかしながら、A31およびA33はA2/A10/A19グループを含む祖先系統に由来し、それはA3およびA11の系統と異なる。最後に、LHA-A*6901はA28 HLA進化系統グループに属する[Fernandez-Vinaら、Hum Immunol 33:163(1992);Ishikawaら、Hum Immunol 39:220(1994);Lawlorら、Annu rev Immunol 8:23(1990)]、このグループはHLA-A*6802およびHLA-A*6901アレルも含んでいる。さらに、そのペプチドの結合特異性に基づけばHLA A*6801はA3様スーパータイプのメンバーだが、一方A*6802およびA*6901はA2様スーパータイプに属することが示されている[del Guercioら、J Immunol 154:685(1995)]。従って、入手できるHLA遺伝子の系統樹[Ishikawaら、Hum Immunol 39:220(1994);Figairaら、Immunogenetics 40:445(1994);Karoら、J Immunol 143:3371(1989)]に基づくと、A3様アレルは両方のHLA祖先系統に見られる:A3およびA11を含むA1/A9、およびA31、A33およびA*6801を含むA2/A10/A19である。HLA-A3様スーパータイプの存在が共通の祖先を反映するものであるなら、A3様モチーフは事実上原始的なヒトHLAクラスIペプチドの結合特異性を示すものかもしれず、他の特異性は変化する病原体環境への適応を表すものかもしれない。
【0064】
【表3】

【0065】
しかしながら、これらの観察により、集団レベルで、共通の祖先あるいは収斂性の進化によって作り出される種々のHLAクラスIスーパータイプアレルを高頻度に維持することには選択的な利点が存在するかもしれないという興味深い可能性がでてくる。この利点というのは集団レベルで効果的なペプチド結合レパトワールを作り出すことに関係しているかもしれない。この所見は同じ系統ファミリーの異なる分子が異なる結合スーパーファミリーに属しうるという事実から明らかである。これらの現象は一部には、疎水性、芳香族性、あるいは正電荷を持つC末端のようなある種の配列上の特徴を有するペプチドを優先的に輸送することで知られているヒトの抗原プロセッシング分子と関連するトランスポーター(TAP)(Androlewiczら、Proc Natl Acad Sci USA 90:9130(1993);Androlewicazら、Immunity 1:7(1994);van Endertら、Immunity 1:491(1994);Heemelsら、Immunity 1:775(1994);Momburgら,Curr Opin Immunol 6:32(1994);Neefjesら、Science 261:769(1993))のペプチド特異性の最適利用と関係するものかも知れない。我々のグループとの共同によるvan Endertとその同僚によって行われた最近の研究では、広範囲のペプチドコレクションについてTAPに対する相対アフィニティーが評価され、拡張されたTAP結合モチーフが記述されている。驚くべきことに、このモチーフは、ノナマーペプチドの位置3および7における芳香族残基に対する優先性および位置1および3における負の電荷を持つ残基が存在しないこと、および位置1のPのような、A3様スーパーモチーフと関連する構造的特徴の多くを含んでいる。
【0066】
本明細書で示した実験的証拠に基づくと、血清学的または系統発生論的関連性に基づく分類に加えて、HLAクラスIアレルはまたそのリガンド特異性に基づいてスーパータイプに(再)分類することができる。3つのスーパータイプ、A2様、A3様およびB7様スーパータイプが現在同定されており、B44様スーパータイプのような他のスーパータイプが文献から示唆されている(Fleischerら、Tissue Antigen 44:311(1994);Harrisら、J Immunol 151:5966(1993);Thorpeら、Immunogenetics 40:303(1994);Falkら、Immunogenetics 41:162(1994);Falkら、Immunogenetics 41:165(1994))。いくつのスーパータイプが同定されるのか、およびそれらがどの程度包括的なのかは未知のままだが、入手できるデータは、HLAクラスIIに限られると以前は考えられていた(Panina-Bordignonら、Eur J Immunol 19:2237(1989) ;O'Sullivanら、J Immunol 145:1799(1990);Buschら、Int Immunol 2:443(1990))ペプチドの結合特異性の縮退という現象はHLAクラスIに対するペプチドの結合の特徴でもあるということを証明している。HLA Iスーパータイプが生ずる理由がなんであれ、それらの潜在的実用的適切さは強調されるべきである。定量的結合アッセイができること、および詳しいスーパーモチーフにより高交差反応性ペプチドの同定が可能になるに違いない。次には、これにより少数のCTLエピトープ混合物で広範囲の集団をカバーすることができ、これはワクチン開発のためのペプチドベースの研究の利用性について非常に重要になりうる(Vitielloら、J Clin Invest 95:341(1995))。
【実施例2】
【0067】
B7様スーパータイプ結合性
従来の研究において(Sidneyら、J. Immunol., 154, 247-259(1995) ;Hillら、Nature 360, 434-439(1992) ;Falkら、Immunogenetics 38, 161-162(1993b) ;Barberら、Curr. Biol. 5:179(1995) ;Schonbachら、J. Immunol. 154:5951-5958(1995))HLA B特異性のかなり大きなファミリーが、B7様結合スーパータイプとして集合的に定義され、共通のペプチド結合モチーフ(位置2のPおよびC末端の疎水性および芳香族残基)によって特徴づけられることが示された。この実施例では、最も頻度の高い5種のB7様アレル(B*0702、B*3501、B51、B*5301およびB*5401)の主要アンカー(位置2およびC末端)を詳しく調べるために上述した分子結合アッセイを用いる。
これを行うために、FHV nef 84-92ペプチド(配列FPVRPQVPL)の単一置換アナログの一団を合成し結合についてテストした。HIV nef 84-92はB*0702、B*3501、B51、B*5301およびB*5401と高アフィニティー(IC50≦50nM)または中間的アフィニティー(IC50 50-500nM)で結合する。B7様スーパータイプ分子は位置2特異性を共通とし、かなり厳密であることが分かった。5つのアレル全てについて、プロリンは優先的残基であった。唯一つの例外を除いて(B*3501の場合のA)、位置に2についてテストした置換の全ては、親ペプチドのC末端アンカープロリン含有物に比較した結合アフィニティーの10倍以上の減少と結びついていた。これに対して、結合特異性を解析すると、各HLA-BタイプはC末端についてかなり特有の特異性パターンを示した。例えば、B*0702はM,FおよびLに優先的であり、一方B*5101はL、IおよびVに優先的であった。こうした相違にもかかわらず、全体的なC末端特異性パターンはかなりの程度の重なり合いを示した。脂肪族残基IおよびVは5種の分子のうち少なくとも4種で優先的であり、A、L、M、F、およびWはこれらの例の大部分で優先的または許容的であった。YまたはTのような他の残基は僅かな例でのみ許容的であり、一方、いくつか(例えばKまたはD)は全然許容的ではなかった。
【0068】
主要アンカー特異性に関するこのデータはSideneyら 、J. Immunol.,154,247-259(1995)に開示されていることとよく一致する。縮退B7様スーパータイプ結合し得るペプチドは位置2にプロリンを有しC末端に疎水性あるいは芳香族残基(V,I、L、M、F、W、A)を有していなければならない。B7様スーパータイプ主要アンカーモチーフの形式上の定義において、われわれは、あまり縮退していないが、Yも消極的ながら含めることとする。なぜなら、YはB*3501のプールシーケンシング解析(Hillら、Nature 360,434-439(1992);Falkら、Immunogenetics 38, 161-162(1993b)、Schonbachら、J. Immunol. 154:5951-5958(1995))において主要なシグナルを構成するからである。要約すると、B7様スーパータイプの主要アンカーモチーフは位置2のP、およびC末端のA、I、L、M、V、F、WおよびYで定義される。
【0069】
B7様スーパータイプリガンドに優先的なサイズ
クラスI分子は、長いペプチドも結合することが知られているものの(Masaleら、J. Exp. Med. 177:751(1993);Chenら、J. Immunol. 152:2874(1994);Collinsら、Nature 371:626(1994))長さが8から10残基のペプチドに通常優先的である(Falkら、Nature 351, 290-296(1991))。B7様スーパータイプに最適なペプチド長を決定するために、天然に存在するウイルス、腫瘍あるいはバクテリアの配列、かつ、それぞれが上述したB7様スーパータイプ主要アンカー特異性を表す8mer、9mer、10mer、および11merのペプチドの集団を合成し、B7様の6タイプについて結合能をアッセイした。調べたB7様分子の全てに対して9残基が最適なペプチド長を表すと結論づけられた。この評価はどの分子にも結合する各サイズのペプチドの割合という点でも、観察される交差反応性という点でも(データは示していない)正しい。
【0070】
B7様アレルの2次的アンカーモチーフおよびB7様スーパーモチーフ
他の残基は2次的アンカーとして働くことができ、従ってペプチドに補助的な結合エネルギーを与える(Ruppertら、Cell 74:929-937(1993) ;Maddenら、Cell 75, 693-708(1993);Saitoら、J. Biol. Chem. 268,21309(1993);Sidneyら、Hu. Immunol. 45,79-93(1996);Kondoら、J. Immunol. 155:4307-4312(1995);Parkerら、J. Immunol. 152,163-175(1994))。ある種の残基はクラスI分子へのペプチドの結合に負の影響を与えうることも示されている(Ruppertら、Cell 74:929-937(1993);Sidneyら、Hu. Immunol.,45,79-93(1996);Kondoら、Immunol. 155:4307-4312(1995)、Boehnckeら、J. Immunol. 150, 331-341(1993))。
縮退したB7様結合能を有するペプチドを効果的に選択できるようなB7様スーパーモチーフを開発するために、本明細書で記載した方法を用いてB7様分子へのペプチドの結合に関係する2次的アンカー及び2次的効果を明らかにしようと我々は試みた。最も一般的な5種のB7様分子、B*0702、B*3501、B51、B*5301およびB*5401に対する、B7様スーパータイプ主要アンカー(位置2にプロリン、およびC末端にA、V、I、L、M、FおよびW)を含む天然に存在するウイルス配列を表す199種のノナマーペプチドの大集団の結合能を測定し、そのデータを解析した。各位置について20種のアミノ酸の各々を有するペプチドの平均相対結合能(ARBC)を計算し、ペプチドの組全体のARBCと比較した。ある種のアミノ酸は希にしか出現しないため、以前に記載されたように個々の化学的類似性に従って残基をグループ分けした(Ruppertら、Cell 74:929-937(1993))。この解析はB*0702、B*3501、B51、B*3501およびB*5401について別々に行った。
【0071】
各分子によって示される2次的アンカーに関する優先性および忌避性のパターンは、かなり特有のものであることが明らかになった。例えば、テストした集団のうち、18種のペプチドが位置1に正の電荷を持つ残基(R、HまたはK)を有していた。これらのペプチドは、グループとして、ARBCが21というB*0702の強い結合体であった。しかしながら、B51に対しては、同じペプチドはARBCが0.25というかなり弱い結合体であった。しかしながら、優先性における深い類似性もまた注目される。例えば、芳香族残基(F、WおよびY)を位置1に有するペプチドは、グループとして、B7様スーパータイプ分子の組にわたって強い結合体であり、B*0702、B*3501、B51、B*5301、およびB*5401に対してARBCはそれぞれ4.2、17、16、20および70であった。
次に上で議論した値を各位置に対するアレル特異的な2次的アンカー要求性地図を導くために用いた。これを行うため優先的および阻害的残基を、全体の平均よりも3倍高い、あるいは3倍低いARBCと関連する残基として、それぞれ定義した。これらの優先的および阻害的効果は図3にまとめた。これらの2次的アンカー地図は、各分子はその固有の2次的アンカー要求性を示す一方、ある種の特徴はB7様分子間で高度に保存されていることをより明瞭にする。例えば、上に示したように、位置1の芳香族残基(F,WおよびY)はB7様分子5種の全てで優先された。逆に、位置8における酸性残基(D,E)は5種の全ての分子に対する低い結合能と関連していた。
【0072】
考慮した5種のアレルのうち3種又はそれ以上で優先的であるがどの分子に対しても阻害的でない2次効果、また一方、5種の分子のうち3種またはそれ以上で阻害的である2次効果を、共通のものとして定義した。この共通の性質を、B7様スーパータイプ分子の大部分において弱い、あるいは強い結合に関連する残基を定める、拡張されたB7様スーパーモチーフに取り込んだ。
この論理に従うと、スーパーモチーフ優先的2次残基を有するペプチドはその残基を含まない、あるいは阻害的残基を含むものよりも大きな程度のB7様スーパータイプ縮退を示すことが期待されるであろう。この仮説をB7様主要アンカー特異性を有するペプチドの独立した組の結合交差性を測定することによってテストした。予想されるように、スーパーモチーフ陽性のペプチド(すなわち、少なくとも一つのスーパーモチーフ優先的2次残基を含み、阻害的残基を含まないペプチド)はスーパーモチーフ陰性ペプチド(少なくとも1つのスーパーモチーフ阻害的残基を含む)よりも、B7様スーパータイプ内で本質的により大きな程度の交差反応性をを示した(データは示していない)。
【0073】
結合能を増強するためのスーパーモチーフの使用
HLAスーパーモチーフは本明細書で示したように、高度に縮退したペプチドを予測する点で価値がある。しかしながら、もっとも興味深いのは、HLAスーパーモチーフを明らかにすることにより、ペプチド配列内でどの残基がアナログされ(analoged)、あるいは「調整」され得るかを明らかにすることにより高度に交差反応性のエピトープを操作して、スーパータイプ内でより大きな縮退をペプチドに与えることができるようになる。
この可能性を評価するため、B7様スーパータイプ内で高度に縮退していることが示されている6種のペプチドを選んだ(表5)。各ペプチドは5種の一般的なB7様分子のうち少なくとも3種に高アフィニティー(IC50<50nM)または中間的なアフィニティー(IC50 50-500nM)ですでに結合するものである。これらのペプチドをB7様スーパーモチーフおよび上述したアレル特異的な2次アンカーモチーフの両方との関係で解析してそれらの配列内の特定の残基がB7様スーパータイプ分子に対する結合をさらに増強するために「調整」できるかどうかを決定した。この評価により、考えた特定のペプチドのどの一つもスーパーモチーフ陰性残基を含まないことが分かった。3種のペプチド(HCVコア168、MAGE 2 170、およびMAGE 3 169)の各々は1種のB7様分子に対して阻害的な残基を1つ有していた(表5)。
【0074】
次に、単一置換アナログの集団を合成した。スーパーモチーフ陽性あるいは、他のいかなる置換についても阻害的でなく特定のアレルとの関係において陽性である2次アンカー置換を含むいくつかのアナログを、本明細書に開示した値に基づいて選んだ。C末端の主要アンカーに対する優先性は各アレルに固有のものであるため、この位置の置換も考慮した。こうして、たとえば、縮退度が増加し得るかをテストするため、位置1の天然の残基に対してスーパーモチーフ陽性のFで置換することにより多数のペプチドを作成した。B*0702およびB*5401に対する親ペプチドの結合性の低さに向けてHBV pol541のC末端のYをLにするような他の置換を行った。
この集団をB7様スーパータイプ分子への結合能についてテストして、表5に示したデータが作られた。どの場合にも、位置1におけるF置換は親配列に比べて増加した結合性及び/又は縮退度を示した。例えば、MAGE 2 170はB*0702に対して高アフィニティーで結合し、B*3501、B51、およびB*5301には中間のアフィニティーで結合したが、B*5401には弱くしか結合しなかった。このペプチドのF1アナログはこれらの分子の5種全てに高アフィニティーで結合した。
【0075】
特定の分子に向けた置換を成功させるのはより困難であった。例えば、HBV pol541のC末端において天然のYをLに置換することはB*0702へ結合されることに関しては成功するが、一方、他の分子に対する結合アフィニティーを増大させる(B51およびB*5401の場合にはかなり)。他の例では、HBV env 313の場合に示されるように、観察される効果は期待されるものではない。このペプチドはB*0702、B*3501、B51およびB*5301に高アフィニティーで結合するがB*5401には弱くしか結合しなかった。位置5の脂肪族残基(L、I、V、およびM)がB*5401に対して陽性であり、他の分子に対しては比較的中立であることに基づいて5つのアナログにMをいれた。しかしながら表5に示したようにM5アナログによって得られた著しく増大したB*5401結合はB*0702、B51およびB*5301に対して結合が弱くなることを代償とするものであった。
個々のアナログについての成功性はいろいろであったが、各場合について少なくとも1つのアナログが結合アフィニーティーを改善することができたか、または、親ペプチドの縮退度を拡張することができた。こうして、すでに縮退していたペプチドを別々に「調整」してその結合能を強化し縮退度を拡張することができる。
【0076】
表5
慎重な置換はペプチドリガンドのB7様スーパータイプ結合能および縮退度を増大させる

【0077】
表5.つづき

【0078】
結論として、本明細書で示したデータから、高アフィニティー結合ペプチドはその配列の「陰性」あるいは中立の残基を、中立あるいは優先的な残基に置換することによって作り出せることが明らかである。これらのペプチドは固有の免疫学的特性を有するかもしれない、すなわち、野生型の配列となお交差反応する一方、野生型配列に対して反応するCTLを不活性化するトレランス、欠失または抑制的機構を受けず、その結果として癌または慢性感染を起こさないかもしれない。同じ知見は高度の交差反応性を持ち、それにより集団をカバーするのにより適したペプチドを作り出すために利用することができる。
【実施例3】
【0079】
A2様スーパータイプ結合
A2.1結合の構造的要求に関するさらなる情報も引き出した。これを行うために、アンカー位置2および9の許容程度をまず決定しようと試みた。この目的のために以前に報告されている、A2.1のモチーフ位置2のLおよび位置9のV(Ruppertら、Cell 74:929-937(1993))を含むモデルポリ(A)9merペプチドの位置2あるいは位置9における単一置換を有するアナログ集団を合成し、その結合能を測定した。アンカー位置2および9の双方について、異なる13種のアナログを合成した。
以前に報告されているA2.1モチーフと良く一致し、位置2にLまたはメチオニン(M)を有するペプチドは最良の結合体であった。イソロイシン(I)、V、アラニン(A)、およびスレオニン(T)のような比較的保存性の置換であっても結合能の著しい減少(10倍から100倍)が明らかとなった。より根本的な変異(すなわち、D、K、F、C、P,G、NおよびS残基)は結合能を完全に失わせた。位置9についても同様な結果が得られ、LおよびIのような保存的置換体のみが未置換のポリA A2.1ペプチド結合体の10倍の範囲で結合した。AまたはM置換を有するアナログも結合したが、強度は低かった(10倍〜100倍減少した)。最後に、テストした他の全ての置換(T、C、N、F、S、G、PおよびR)はA2.1結合能の完全な喪失と関連していた。従って、これらのデータに基づき、かつ、以前の研究(19-20)とよく一致して、「模範的」なA2.1モチーフは位置2のLまたはMおよび位置9のL、VまたはIとして定義することができる。
【0080】
これらの結果から、位置2または位置9(または10)の残基に「模範的でない」(しかし許容される)残基(例えば位置2にI、V、AまたはT、または位置9若しくは10にMまたはT)を有するどのペプチドのA2結合能も、より「模範的」なアンカーでこれを置き換えることにより増強されることを導いた。これを実際にどのように行うかのいくつかの例を以下に示す。
例えば、配列(LWVTVYYGV)のFHV Env 2181ペプチドはA2.1と12,500nMのIC50%で結合するが、位置2アンカー置換アナログLMVTVYYGVは3.3nMのIC50%で結合する。HBVc 18-27の天然の配列FLPSDFFPSIはIC50% 22nMでA2.1に結合するが、そのC末端アンカー置換V10変異体はA2.1と2.5nMのKdで結合する。最後に、HBV pol538ペプチド(YMDDVVLGA)はA2.1に200nMのIC50%で結合するが、一方、V9変異体は5.1nMのIC50%で結合する。調整されたアンカーペプチドの他の例は表6に示した。調整したペプチドのいくつかをCTL応答を誘導する能力についてテストした。例えば、HIV Env 2181ペプチドおよびHBV pol721ペプチドを1次CTLアッセイ(21)でテストし、陽性であることが分かった。陽性のCTL認識データはHBVc18-27およびHBV pol538ペプチドについても存在する。
【0081】
更なる実験により、結合能の決定において非アンカー残基の重要な役割が明らかになった。これらの解析の結果もRuppertらの上述の文献に記載されている。我々の解析では、A2.1結合体の与えられたアミノ酸グループの頻度を非結合体の頻度で割って、度数比を得た。この比は残基のあるグループが特定の位置に結合体(比>1)においてまたは非結合体(比<1)において優先的に現れるかどうかを示すものである。解析を簡単にするために、この比に対する閾値レベルを定め、非結合体に比較して結合体において4倍より高い頻度を有する残基を、好まれる、あるいは優先的な残基と考え、結合体において非結合体よりも1/4より低い頻度を有する残基を、好まれない、あるいは阻害的残基と考えた。この手法に従い、A2.1結合能またはその欠如に顕著に関連する残基群を明らかにした。一般には、最も有害な効果は電荷を持つアミノ酸で見られた。位置1においてPおよび酸性残基(EおよびD)残基はA2.1結合性ペプチドではいずれも希であった。位置6においては塩基性残基(H、RおよびK)は非結合性ペプチドと関連しており、一方酸性残基及び塩基性残基は、強い結合体における位置3および7ではどちらも希であった。その逆に、芳香族残基は位置1、3および5において高アフィニティー結合と関連していた。さらに、例えばS,TまたはCのようなOH-またはSH-を含む側鎖をもつ残基は位置4に好まれ、一方Aは位置7に好まれ、Pは位置8に好まれた。結論として、種々のアミノ酸グループの頻度解析により、アンカー位置2および9以外の位置のA2.1結合アフィニティーに与える影響が考慮された、より正確なA2.1モチーフを明らかにすることができるようになった。
【0082】
10mer A2.1リガンドの解析
9merペプチドについて上述した同じ手法を10merペプチドの組で得られたデータを解析するのに用いた。このペプチドのN-およびC-末端において、観察されたパターンは9merについて見られたものとかなり似ていた。たとえば、10merの組において、9merペプチドの場合のように、結合体の組では芳香族残基の頻度が増加しているということで位置1は特徴づけられ、ここでも負電荷およびPは結合性の低さと関連していた。位置3においてもまた、負電荷は低い結合性と関連していた。興味深いことに、この位置において(芳香族残基でなく)脂肪族残基が高アフィニティー結合と関連していた。このペプチドのC末端で、ある程度の類似性も観察された。10merにおいて、末端から2番目の位置9の残基(9merの位置8に対応する)は非常に寛容で、非結合体で塩基性残基がより高頻度に見られただけである。9merにおける位置7の状況と同様に、10merの末端から3番目の位置8において正電荷も負電荷も許容的でなかった。また、9merにおいて位置6について前に観察されたように、位置7は10merにおいては正電荷の残基は好まれなかった。しかしながら、位置3において観察されたことと同様に、強い結合体と関連する残基は異なっていた。芳香族残基および疎水性残基は(9merでは位置7においてAのみが頻度が高いということと対照的に)高アフィニティー結合体の位置8において頻度が高かった。
【0083】
最後に、ペプチドの中央部においてかなり特徴的なパターンが観察された。位置4において、Gが高結合体で好まれ、一方Aおよび正電荷が非結合体において非常に頻度が高かった。位置5においてPはA2.1結合体には全く存在しなかった。10merの組の位置4および5においてみられたは傾向のいずれも、9merの組についての位置4または5におけるいかなるカウンターパートをもたないことは注目すべきである。
要約するとA2.1 9merペプチドについて上述したのと同様なストラテジーに従って、10merペプチドについて詳細なモチーフを作成することができる。9merおよび10merの組をこれらの非アンカー位置で比較すると重要な相違及び驚くべき類似性の両方に注目することができる。
結論として、ここで示したデータから、その配列の「陰性」または中立残基を中立または優先的残基で置換することにより、より高アフィニティー結合性のペプチドを作り出せることが明らかである。これらのペプチドは特有の免疫学的性質、すなわち、それらは、野生型配列となお交差反応性であるが、野生型配列に対して応答するCTLを不活性化するトレランス、欠失または抑制的機構を受けず、その結果として癌または慢性感染を起こさないかもしれない。
【0084】
複数のHLAアレルへのペプチド抗原の結合性はA2様スーパータイプの同定を可能にする
放射ラベルペプチドと、EBV―形質転換B細胞株のような、HLAクラスI発現哺乳動物細胞と、PHA活性化幼若細胞を用いた直接MHC結合アッセイ法が開発されている。標的細胞をβ2-ミクログロブリン存在下26℃で一晩プレインキュベーションすると放射ラベルしたプローブの有意な結合が得られるであろう。この条件下では、いずれかの細胞タイプによって発現されているHLA分子の数パーセントまでがラベルされたペプチドに結合され得るだろう。これらのアッセイにより、A*0201拘束性B型肝炎ウイルスコア18-27ペプチドと他のA2サブタイプとの交差反応性を調べた。このペプチドエピトープはA*0202、A*0205およびA*0206サブタイプにも結合するがA*0207サブタイプには結合しないことがはっきりした。合成ペプチドアナログ集団での阻害実験により、HLA-A*0201、A*0202およびA*0205アレルの類似したリガンド特異性が強調された。種々のHLAアレルのBおよびFポケットの形成を助ける多様な残基を解析することにより他の2種のHLAアレル(HLA-A*6802およびA*6901)に対するB型肝炎ウイルスコア18-27エピトープの結合を予測できた。このように、少なくとも6種の異なるHLA-A分子ファミリーが集合的にA2スーパータイプとして定義され、重なり合うリガンド特異性(位置2およびC末端の脂肪族残基)を共通にするかもしれないように見える。これらの結果は、広範囲に交差反応性のペプチドエピトープを同定することができ、ペプチドベースのワクチン接種アプローチの将来の可能性を非常に大きくし得ることを示唆する。
【0085】
更に、これらのデータは置換アナログのさらなる使用法について示唆するものである。具体的には、A2スーパータイプのいくつかのメンバーの結合アフィニティーを同時に増大させることである。
どのようにしてこれを達成するかの例はペプチドHPV16、EF.86-93、TLGIVCPIおよびそのアナログTLGIVXPI(Xはαアミノブチル酸を表す)によって与えられる。これらの2つのペプチドのA2様アレルに対する結合パターンを次にテストした。X置換は全てのA2様アレルに対する結合アフィニティーを大きく増加させ、元の親配列より強い結合能と広い交差反応性によって特徴づけられる、より有用なペプチドを生じることは明らかであった。A2/Kbトランスジェニックマウスを用いた続いての実験により、X置換ペプチドによって誘導されるCTLは野生型配列と完全な交差反応をし、Xペプチドはより高いその結合アフィニティーの結果として、より強い免疫原であることが示された。
【実施例4】
【0086】
A24およびA1結合性
2次効果およびA24結合性
われわれは位置2にYおよび位置9にFというA24特異的モチーフを含むモデルポリ(A)9merペプチドを利用した。位置2においてはYだけでなくF,Mも、そしておそらくはWも許容されることが分かった。9あるいは10残基のリガンドのC末端ではFおよびWが最も優先的であるがLおよびIも許容的であった。Mもこの位置で許容的であると予測されるであろう(Kuboら、J Immunol 152:3913(1994))。これらの結果からわれわれは位置2または9(あるいは10)に非模範的であるがなお許容的である残基を有するどんなペプチドの(例えば、位置2にF、M、Wまたは位置9(あるいは10)にL、I、M)A24結合性も、その残基をより模範的なアンカーに置き換えることによって増強しうるということを結論した。
A24結合能を決定している非アンカー残基の重要な役割を説明するさらなる実験の結果が、Kondoら、J. Immunol. 155:4307-4312(1995)によって記載されている。全体的なA24結合データベースを編集し、各位置に対して特定の残基を有するペプチドの相対平均結合アフィニティーを計算した。
【0087】
9merペプチドの場合、例えば、位置1にGまたは負の電荷を持つ残基(D,E)を有するペプチドは、解析した141種の9merペプチドの組全体の平均アフィニティーよりも平均アフィニティーが10倍低く、結合が弱い傾向がある。これに対して、位置1に芳香族残基(F,Y、W)を有するペプチドは平均アフィニティーが全体の平均よりも11.8倍高く、非常によく結合した。位置1に正の電荷をもつ残基(R,K、M)を有するペプチドもよく結合する傾向があり、全体の平均よりも4.6倍高い平均アフィニティーを有する。
A24結合能への負の2次的効果も他のいくつかの位置において検出された:位置3および6におけるDまたはE、位置4および7におけるG、位置6の正電荷(KR、H)、位置8のA、位置5のP、位置5および8のアミド(QおよびN)である。逆に、位置7および8に芳香族残基(Y、F、W)が見られる場合はA24結合に都合よく、位置4には(S,T,C)のような小さな、水素結合性残基があるときは正の効果を有することが分かった。
【0088】
9mer配列に沿うそれぞれの単一位置がA24結合性に影響を与えるということは明らかである。疎水性残基(F,W,Y、L、I、VおよびM)が結合性の低さと全く関連しないことも興味深い。
同様な解析を10merペプチドから得たデータについて行なった。前の節で示したことと同様に、いくつかの2次効果が10merの場合にも認められた。
9merペプチドの場合のように、位置3および6の負電荷残基(D、E)は結合の低さと関連していた。しかしながら、一般には、10merについての2次効果の地図は9merについてのものとはっきり区別された。例えば、9merペプチドの場合にPはどの位置においても顕著な結合性の増加と関連しておらず位置5においては結合性の減少にまで関連していた。10merについては、Pは10merペプチドリガンドの位置4,5または7に見られるときは結合能の増大と関連していた。
10merペプチドにおいては位置5は2次効果の点で最も重要であるように見え、(既に述べたPを別にして)Y、FおよびWはA24の強い結合性と関連し、かつ、R、HおよびKは低い結合能と関連している。位置7および位置9におけるAの、および位置4および8のアミド残基(Q、N)の存在も低い結合能と関連していた。
【0089】
2次効果およびA1結合性
A24について上述したのと同様な解析をHLA-A*0101分子について記載した。簡単に言うと、先の研究においてHLA-A*0101に特異的な異なる2種のペプチド結合モチーフが明らかにされている。9merおよび10mer 2次的相互作用の地図は両方のA*0101サブモチーフから導かれた。このような2次的相互作用の地図を導くため、2種の各々のサブモチーフに対応するペプチド集合の適切なA*0101結合データを集めた。各位置についてそれぞれの特定の残基を有するペプチドの相対平均結合アフィニティーを計算した。ある特定の残基の出現頻度が低いことを補償するため、および、より意味のある資料標本を得るため、化学的に類似した側鎖をもつアミノ酸をRuppertらの上述の文献のように、一緒にした。9merペプチドに関するこうした種類の解析により得られた結果を図4aおよび図4bに、それぞれ2-9および3-9サブモチーフについて示した。この解析によって検出された2次効果を説明した図式を図4cおよび4dに(それぞれ2-9および3-9サブモチーフに関して)示した。4倍より大きな平均アフィニティーの増加または減少を、上述のように有意であると考えた。
【0090】
一般に、大部分の位置に関して、特定の残基タイプの存在により、結合能は負または正の何れかの影響を受けた。例えば、2-9サブモチーフの場合には、位置1のDまたはEを有するペプチドはA*0101分子にはあまり結合せず、平均相対結合能(ARBC)は0.20であった。逆に、同じ位置(位置1)に芳香族残基(Y、FまたはW)を有するペプチドは、平均として、ペプチド集合全体の全体的平均結合能よりも4倍高い(ARBC 4.0)アフィニティーで結合した。
図表をよく見ると、A*0101に結合するペプチドのいくつかの興味深い特徴が明らかになる。第1に、上に記載したように位置2および3における2つのアンカーが互いに相乗的に働く。位置2にM、SまたはTアンカーを有するペプチドのアフィニティーは位置3にDまたはE(かつ、それより程度は低いがA)が存在することにより劇的に増加した。逆に、位置3にDまたはEアンカーを有するペプチドのアフィニティーはS、T、およびM(但しL,V,I、CおよびAのような疎水性または短い鎖の分子も)の存在により劇的に増加した。
【0091】
A*0101分子との相互作用においてこの2つのモチーフを有するペプチドが相違する程度は、他の位置を調べることによって明らかになった。図4aおよび4bの値を比較すると、ひとつのモチーフとの関係で中立の残基が他のモチーフとの関係では正の効果または負の効果を有する例が沢山あることが明らかである。例えば、2-9モチーフの位置1においてGおよび芳香族残基(Y、FおよびW)が優先的(ARBC>4.0)であり、Aおよび正電荷を持つ残基(R、HおよびK)は比較的中立であり(ARBCは4.0と0.25の間)、負の電荷を持つ残基(DおよびE)は阻害的である(ARBC<0.25)。3-9サブモチーフを有するペプチドの場合は異なるパターンが注目され、ここでも優先的であるGを除いて優先性はばらばらであった。位置1の正電荷をもつ残基はペプチドの結合性に有意な正の影響を有しており(ARBCが8.3)、負電荷を持つ残基および芳香族残基は中立(ARBCは、それぞれ1.3および0.61)であり、かつAは阻害的である(ARBCが0.15)。同様な型の調節がモチーフに沿った各位置において観察される。全体として、サブモチーフからサブモチーフへの2次アンカー優先性におけるシフトは図3に示した要約図式に最もよく表されている。この点について、位置1におけるGに対する共通の優先性という唯一つの例外、および位置2と3の共-アンカーを除いて、2つのA*0101 9merサブモチーフの2次モチーフは実際完全に異なっていることがわかる。このように、定量的に理解すると、2つの9merモチーフは27のうちたった1つの2次効果(3.7%)を共通にする。これらのA*0101モチーフが相違する程度は、どの2つの拡張モチーフ間でも3から5(13〜26%)の2次効果が共通であることが観察されたという、A24、A*0201およびA3様分子の拡張されたモチーフ間で記述された多くの類似性と驚くほど対照的である(20)。
【0092】
10merリガンドに関する2次アンカー残基の定義
9merリガンドについて上記の節で説明したことと同様に、2次アンカー残基および2次効果を2-10および3-10サブモチーフについて明らかにした。これらの解析結果を図5a〜dに示した。ここでもまた、位置2および3に存在するアンカーが互いに相乗的に働くように見えた。2-10サブモチーフについて、位置3にD、E(および、より程度が低いがA、Q、N)が存在すること、および、3-10サブモチーフについて位置2の疎水性残基(L、I、V、M)または短い鎖の残基は平均結合能の著しい増大と関連していた。
2つの10merモチーフを2,3およびC末端以外の位置で比較すると、9merペプチドの場合のように、2次アンカー特異性の調節は主要アンカー残基に依存して起こっていることが示された。例えば、位置7においては、AおよびS,TおよびCが2-10モチーフでは好まれるが、3-10モチーフでは中立である。逆に、Gは3-10モチーフでは優先的であるが、2-10モチーフでは中立である。しかしながら、9merサブモチーフとは対照的に10merで見られたこれらの相違はそれほど著しいものでないこともはっきりしている。実際2つの10merサブモチーフは多くの優先性を共通にしている。位置1および5のY、FおよびW、位置4のA、位置7のP、および位置8のGはどちらのサブモチーフに対しても正の効果を有していた。同様に、位置8のR,HおよびKは両方の10merサブモチーフおいて阻害的であった(図5cおよび5d)。まとめると、2つの10merモチーフは25のうち6つの2次効果(24%)を共通にしていた。
【0093】
上述の実施例は本発明を説明するために提供したものであり、発明の範囲を限定するためではない。本発明の他の変形は当業者には容易に理解し得るであろうし、それらは添付の請求の範囲に含まれる。本明細書で引用した全ての文献、特許および特許出願はあらゆる目的のため本明細書に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1A】図1Aは、A3様アレル、A*0301の微細なアレル特異的モチーフを示すものである。各非-アンカー位置に関連して、各個別のアレルに対して良く結合し得る、あるいはあまり結合できない個々の残基または類似の化学的性質の残基群を示した。
【図1B】図1Bは、A3様アレル、A*1101の微細なアレル特異的モチーフを示すものである。各非-アンカー位置に関連して、各個別のアレルに対して良く結合し得る、あるいはあまり結合できない個々の残基または類似の化学的性質の残基群を示した。
【図1C】図1Cは、A3様アレル、A*3101の微細なアレル特異的モチーフを示すものである。各非-アンカー位置に関連して、各個別のアレルに対して良く結合し得る、あるいはあまり結合できない個々の残基または類似の化学的性質の残基群を示した。
【図1D】図1Dは、A3様アレル、A*3301の微細なアレル特異的モチーフを示すものである。各非-アンカー位置に関連して、各個別のアレルに対して良く結合し得る、あるいはあまり結合できない個々の残基または類似の化学的性質の残基群を示した。
【図1E】図1Eは、A3様アレル、A*6801の微細なアレル特異的モチーフを示すものである。各非-アンカー位置に関連して、各個別のアレルに対して良く結合し得る、あるいはあまり結合できない個々の残基または類似の化学的性質の残基群を示した。
【図2】図2はA3様スーパーモチーフを示したものである。カッコ内の数字はその残基または残基群が優先的または阻害的である分子数を示す。
【図3A】図3Aはペプチドの結合能に影響を与える2次的効果を要約したものである。B*0702に対するものである。これらのマップはB7様スーパーモチーフ図3Fを明らかにするために続いて用いられた。カッコ内の値は、残基又は残基群が優先的または阻害的である頻度を示す。
【図3B】図3Bはペプチドの結合能に影響を与える2次的効果を要約したものである。B*3501に対するものである。これらのマップはB7様スーパーモチーフ図3Fを明らかにするために続いて用いられた。カッコ内の値は、残基又は残基群が優先的または阻害的である頻度を示す。
【図3C】図3Cはペプチドの結合能に影響を与える2次的効果を要約したものである。B51に対するものである。これらのマップはB7様スーパーモチーフ図3Fを明らかにするために続いて用いられた。カッコ内の値は、残基又は残基群が優先的または阻害的である頻度を示す。
【図3D】図3Dはペプチドの結合能に影響を与える2次的効果を要約したものである。B*5301に対するものである。これらのマップはB7様スーパーモチーフ図3Fを明らかにするために続いて用いられた。カッコ内の値は、残基又は残基群が優先的または阻害的である頻度を示す。
【図3E】図3Eはペプチドの結合能に影響を与える2次的効果を要約したものである。B*5401に対するものである。これらのマップはB7様スーパーモチーフ図3Fを明らかにするために続いて用いられた。カッコ内の値は、残基又は残基群が優先的または阻害的である頻度を示す。
【図3F】図3Fはペプチドの結合能に影響を与える2次的効果を要約したものである。a)B*0702、b)B*3501、c)B51、d)B*5301およびe)B*5401に対するものはB7様スーパーモチーフを明らかにする。カッコ内の値は、残基又は残基群が優先的または阻害的である頻度を示す。
【図4A】図4Aは、A*0101サブモチーフ9merペプチドの相対結合能の平均を、各非-アンカー位置に現れる種々の残基の関数として示したものである。材料と方法に記載したように、2-9mer(a)、3-9mer(b)サブモチーフペプチド集団からのデータ群を解析し、表にした。2-9および3-9の集団は各々101および85種の異なるペプチドを含んでいた。2-9mer(c)および3-9mer(d)A*0101サブモチーフを有する9merペプチドの結合能に影響を与える2次的効果のマップも示した。
【図4B】図4Bは、A*0101サブモチーフ9merペプチドの相対結合能の平均を、各非-アンカー位置に現れる種々の残基の関数として示したものである。材料と方法に記載したように、2-9mer(a)、3-9mer(b)サブモチーフペプチド集団からのデータ群を解析し、表にした。2-9および3-9の集団は各々101および85種の異なるペプチドを含んでいた。2-9mer(c)および3-9mer(d)A*0101サブモチーフを有する9merペプチドの結合能に影響を与える2次的効果のマップも示した。
【図4C】図4Cは、A*0101サブモチーフ9merペプチドの相対結合能の平均を、各非-アンカー位置に現れる種々の残基の関数として示したものである。材料と方法に記載したように、2-9mer(a)、3-9mer(b)サブモチーフペプチド集団からのデータ群を解析し、表にした。2-9および3-9の集団は各々101および85種の異なるペプチドを含んでいた。2-9mer(c)および3-9mer(d)A*0101サブモチーフを有する9merペプチドの結合能に影響を与える2次的効果のマップも示した。
【図4D】図4Dは、A*0101サブモチーフ9merペプチドの相対結合能の平均を、各非-アンカー位置に現れる種々の残基の関数として示したものである。材料と方法に記載したように、2-9mer(a)、3-9mer(b)サブモチーフペプチド集団からのデータ群を解析し、表にした。2-9および3-9の集団は各々101および85種の異なるペプチドを含んでいた。2-9mer(c)および3-9mer(d)A*0101サブモチーフを有する9merペプチドの結合能に影響を与える2次的効果のマップも示した。
【図5A】図5Aは、A*0101サブモチーフ10merペプチドの相対結合能の平均を、各非-アンカー位置に現れる種々の残基の関数として示したものである。2-10mer(a)あるいは3-10mer(b)サブモチーフペプチド集団からのデータ群を解析し、表にした。2-10および3-10の群は各々91および89種の異なるペプチドを含んでいた。2-10(c)merおよび(l)および3-10mer(d)A1サブモチーフを有する10merペプチドの結合能に影響を与える2次的効果のマップも示した。
【図5B】図5Bは、A*0101サブモチーフ10merペプチドの相対結合能の平均を、各非-アンカー位置に現れる種々の残基の関数として示したものである。2-10mer(a)あるいは3-10mer(b)サブモチーフペプチド集団からのデータ群を解析し、表にした。2-10および3-10の群は各々91および89種の異なるペプチドを含んでいた。2-10(c)merおよび(l)および3-10mer(d)A1サブモチーフを有する10merペプチドの結合能に影響を与える2次的効果のマップも示した。
【図5C】図5Cは、A*0101サブモチーフ10merペプチドの相対結合能の平均を、各非-アンカー位置に現れる種々の残基の関数として示したものである。2-10mer(a)あるいは3-10mer(b)サブモチーフペプチド集団からのデータ群を解析し、表にした。2-10および3-10の群は各々91および89種の異なるペプチドを含んでいた。2-10(c)merおよび(l)および3-10mer(d)A1サブモチーフを有する10merペプチドの結合能に影響を与える2次的効果のマップも示した。
【図5D】図5Dは、A*0101サブモチーフ10merペプチドの相対結合能の平均を、各非-アンカー位置に現れる種々の残基の関数として示したものである。2-10mer(a)あるいは3-10mer(b)サブモチーフペプチド集団からのデータ群を解析し、表にした。2-10および3-10の群は各々91および89種の異なるペプチドを含んでいた。2-10(c)merおよび(l)および3-10mer(d)A1サブモチーフを有する10merペプチドの結合能に影響を与える2次的効果のマップも示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
あらかじめ選択した抗原に対する細胞障害性T細胞応答を患者において誘導する方法であって、細胞障害性T細胞を、少なくとも2種のHLA-A3様分子に約500nMよりも小さな解離定数で結合して細胞障害性T細胞応答を誘導する、約9から約15残基の免疫原性ペプチドに接触させることを含み、その免疫原性ペプチドがN末端からC末端までに以下の結合モチーフを含む9残基の配列を有するものである方法:A、L、I、V、M、SおよびTからなる群より選ばれる、第2位置における第1の主要アンカー残基、およびRおよびKからなる群より選ばれる第9位置の第2主要アンカー残基;および第3位置がY、FまたはW、第6位置がY、FまたはW、第7位置がY、FまたはW、第8位置がP、およびこれらのいずれかの組み合わせからなる群より選ばれる1またはそれ以上の2次的アンカー残基。
【請求項2】
ペプチドが9から10残基からなる、請求項1の方法。
【請求項3】
ペプチドがウイルス抗原、腫瘍関連抗原、寄生虫抗原または真菌抗原に由来する、請求項1の方法。
【請求項4】
接触させるステップがin vitroで行なわれる、請求項1の方法。
【請求項5】
接触させるステップが、免疫原性ペプチドをコードする配列を含む核酸分子を患者に投与することによって行なわれる、請求項1の方法。
【請求項6】
予め選択した抗原に対する細胞障害性T細胞応答を患者において誘導する方法であって、細胞障害性T細胞を、HLA-A*0301遺伝子産物に約500nMよりも小さな解離定数で結合して細胞障害性T細胞応答を誘導する、約9から約15残基の免疫原性ペプチドに接触させることを含み、その免疫原性ペプチドがN末端からC末端までに以下の結合モチーフを含む9残基の配列を有するものである方法:A、L、I、V、M、SおよびTからなる群より選ばれる、第2位置における第1の主要アンカー残基、およびRおよびKからなる群より選ばれる第9位置の第2主要アンカー残基;および第1位置がR、HまたはK、第3位置がY、FまたはW、第4位置がP、R、H、K、Y、FまたはW、第5位置がA、第6位置がY、FまたはW、第8位置がP、およびこれらのいずれかの組み合わせからなる群より選ばれる1またはそれ以上の2次アンカー残基。
【請求項7】
ペプチドが9から10残基からなる、請求項6の方法。
【請求項8】
ペプチドがウイルス抗原、腫瘍関連抗原、寄生虫抗原または真菌抗原に由来する、請求項6の方法。
【請求項9】
接触させるステップがin vitroで行なわれる、請求項6の方法。
【請求項10】
接触させるステップが、免疫原性ペプチドをコードする配列を含む核酸分子を患者に投与することによって行なわれる、請求項6の方法。
【請求項11】
予め選択した抗原に対する細胞障害性T細胞応答を患者において誘導する方法であって、細胞障害性T細胞を、HLA-A*1101遺伝子産物に約500nMよりも小さな解離定数で結合して細胞障害性T細胞応答を誘導する、約9から約15残基の免疫原性ペプチドに接触させることを含み、その免疫原性ペプチドがN末端からC末端までに以下の結合モチーフを含む9残基の配列を有するものである方法:A、L、I、V、M、SおよびTからなる群より選ばれる、第2位置における第1の主要アンカー残基、およびRおよびKからなる群より選ばれる第9位置の第2主要アンカー残基;および第1位置がA、第3位置がY、F、またはW、第4位置がY、FまたはW、第5位置がA、第6位置がY、FまたはW、第7位置がY、FまたはW、第8位置がP、およびこれらのいずれかの組み合わせからなる群より選ばれる2次アンカー残基。
【請求項12】
ペプチドが9から10残基からなる、請求項11の方法。
【請求項13】
ペプチドがウイルス抗原、腫瘍関連抗原、寄生虫抗原、または真菌抗原に由来する、請求項11の方法。
【請求項14】
接触させるステップがin vitroで行なわれる請求項11の方法。
【請求項15】
接触させるステップが、免疫原性ペプチドをコードする配列を含む核酸分子を患者に投与することによって行なわれる、請求項11の方法。
【請求項16】
予め選択した抗原に対する細胞障害性T細胞応答を患者において誘導する方法であって、細胞障害性T細胞を、HLA-A*3101遺伝子産物に約500nMよりも小さな解離定数で結合して細胞障害性T細胞応答を誘導する、約9から約15残基の免疫原性ペプチドに接触させることを含み、その免疫原性ペプチドがN末端からC末端までに以下の結合モチーフを含む9残基の配列を有するものである方法:A、L、I、V、M、SおよびTからなる群より選ばれる、第2位置における第1の主要アンカー残基、およびRおよびKからなる群より選ばれる第9位置の第2主要アンカー残基;および第1位置がR、H、またはK、第3位置がY、FまたはW、第4位置がP、第6位置がY、F,またはW、第7位置がY、F、またはW、第8位置がAまたはPおよびこれらのいずれかの組み合わせからなる群より選ばれる2次的アンカー残基。
【請求項17】
ペプチドが9から10残基からなる、請求項16の方法。
【請求項18】
ペプチドがウイルス抗原、腫瘍関連抗原、寄生虫抗原、または真菌抗原に由来する、請求項16の方法。
【請求項19】
接触させるステップが、in vitroで行なわれる、請求項16の方法。
【請求項20】
接触させるステップが、免疫原性ペプチドをコードする配列を含む核酸分子を患者に投与することによって行なわれる、請求項16の方法。
【請求項21】
予め選択した抗原に対する細胞障害性T細胞応答を患者において誘導する方法であって、細胞障害性T細胞を、HLA-A*3301遺伝子産物に約500nMよりも小さな解離定数で結合して細胞障害性T細胞応答を誘導する、約9から約15残基の免疫原性ペプチドに接触させることを含み、その免疫原性ペプチドがN末端からC末端までに以下の結合モチーフを含む9残基の配列を有するものである方法:A、L、I、V、M、SおよびTからなる群より選ばれる、第2位置における第1の主要アンカー残基、およびRおよびKからなる群より選ばれる第9位置の第2主要アンカー残基;および第3位置がY、F、またはW、第7位置がA、Y、FまたはW、およびこれらのいずれかの組み合わせからなる群より選ばれる2次的アンカー残基。
【請求項22】
ペプチドが9から10残基からなる、請求項21の方法。
【請求項23】
ペプチドがウイルス抗原、腫瘍関連抗原、寄生虫抗原、または真菌抗原に由来する、請求項21の方法。
【請求項24】
接触させるステップが、in vitroで行なわれる、請求項21の方法。
【請求項25】
接触させるステップが、免疫原性ペプチドをコードする配列を含む核酸分子を患者に投与することによって行なわれる、請求項21の方法。
【請求項26】
予め選択した抗原に対する細胞障害性T細胞応答を患者において誘導する方法であって、細胞障害性T細胞を、HLA-A*6801遺伝子産物に約500nMよりも小さな解離定数で結合して細胞障害性T細胞応答を誘導する、約9から約15残基の免疫原性ペプチドに接触させることを含み、その免疫原性ペプチドがN末端からC末端までに以下の結合モチーフを含む9残基の配列を有するものである方法:A、L、I、V、M、SおよびTからなる群より選ばれる、第2位置における第1の主要アンカー残基、およびRおよびKからなる群より選ばれる第9位置の第2主要アンカー残基;および第1位置がY、F、W、S、TまたはC、第5位置がY、F、W、L、I、VまたはM、第7位置がY、FまたはW、第8位置がP、およびこれらのいずれかの組み合わせからなる群より選ばれる、2次的アンカー残基。
【請求項27】
ペプチドが9から10残基からなる、請求項26の方法。
【請求項28】
ペプチドがウイルス抗原、腫瘍関連抗原、寄生虫抗原、または真菌抗原に由来する、請求項26の方法。
【請求項29】
接触させるステップが、in vitroで行なわれる、請求項26の方法。
【請求項30】
接触させるステップが、免疫原性ペプチドをコードする配列を含む核酸分子を患者に投与することによって行なわれる、請求項26の方法。
【請求項31】
少なくとも2種のHLA-A3様分子に約500nMより小さな解離定数で結合し、細胞障害性T細胞応答を誘導する、約9から約15残基の免疫原性ぺプチドを含む組成物であって、その免疫原性ペプチドがN末端からC末端までに以下の結合モチーフを含む9残基の配列を有している組成物:A、L、I、V、M、SおよびTからなる群より選ばれる、第2位置における第1の主要アンカー残基、およびRおよびKからなる群より選ばれる第9位置の第2主要アンカー残基;および第3位置がY、FまたはW、第6位置がY、FまたはW、第7位置がY、FまたはW、第8位置がP、およびこれらのいずれかの組み合わせからなる群より選ばれる1またはそれ以上の2次的アンカー残基。
【請求項32】
HLA-A*0301遺伝子産物に約500nMより小さな解離定数で結合し、細胞障害性T細胞応答を誘導する約9から約15残基の免疫原性ペプチドを含む組成物であって、その免疫原性ペプチドがN末端からC末端までに以下の結合モチーフを含む9残基の配列を有している組成物:A、L、I、V、M、SおよびTからなる群より選ばれる、第2位置における第1の主要アンカー残基、およびRおよびKからなる群より選ばれる第9位置の第2主要アンカー残基;および第1位置がR、HまたはK、第3位置がY、FまたはW、第4位置がP、R、H、K、Y、FまたはW、第5位置がA、第6位置がY、FまたはW、第8位置がP、およびこれらのいずれかの組み合わせからなる群より選ばれる1またはそれ以上の2次アンカー残基。
【請求項33】
HLA-A*1101遺伝子産物に約500nMより小さな解離定数で結合し、細胞障害性T細胞応答を誘導する約9から約15残基の免疫原性ペプチドを含む組成物であって、その免疫原性ペプチドがN末端からC末端までに以下の結合モチーフを含む9残基の配列を有している組成物:A、L、I、V、M、SおよびTからなる群より選ばれる、第2位置における第1の主要アンカー残基、およびRおよびKからなる群より選ばれる第9位置の第2主要アンカー残基;および第1位置がA、第3位置がY、F、またはW、第4位置がY、FまたはW、第5位置がA、第6位置がY、FまたはW、第7位置がY、FまたはW、第8位置がP、およびこれらのいずれかの組み合わせからなる群より選ばれる2次アンカー残基。
【請求項34】
HLA-A*3101遺伝子産物に約500nMより小さな解離定数で結合し、細胞障害性T細胞応答を誘導する約9から約15残基の免疫原性ペプチドを含む組成物であって、その免疫原性ペプチドがN末端からC末端までに以下の結合モチーフを含む9残基の配列を有している組成物:A、L、I、V、M、SおよびTからなる群より選ばれる、第2位置における第1の主要アンカー残基、およびRおよびKからなる群より選ばれる第9位置の第2主要アンカー残基;および第1位置がR、H、またはK、第3位置がY、FまたはW、第4位置がP、第6位置がY、F、またはW、第7位置がY、F、またはW、第8位置がAまたはP、およびこれらのいずれかの組み合わせからなる群より選ばれる2次的アンカー残基。
【請求項35】
HLA-A*3301遺伝子産物に約500nMより小さな解離定数で結合し、細胞障害性T細胞応答を誘導する約9から約15残基の免疫原性ペプチドを含む組成物であって、その免疫原性ペプチドがN末端からC末端までに以下の結合モチーフを含む9残基の配列を有している組成物:A、L、I、V、M、SおよびTからなる群より選ばれる、第2番位置における第1の主要アンカー残基、およびRおよびKからなる群より選ばれる第9位置の第2主要アンカー残基;および第3位置がY、F、またはW、第7位置がA、Y、FまたはW、およびこれらのいずれかの組み合わせからなる群より選ばれる2次的アンカー残基。
【請求項36】
HLA-A*6801遺伝子産物に約500nMより小さな解離定数で結合し、細胞障害性T細胞応答を誘導する約9から約15残基の免疫原性ペプチドを含む組成物であって、その免疫原性ペプチドがN末端からC末端までに以下の結合モチーフを含む9残基の配列を有している組成物:A、L、I、V、M、SおよびTからなる群より選ばれる、第2番位置における第1の主要アンカー残基、およびRおよびKからなる群より選ばれる第9位置の第2主要アンカー残基;および第1位置がY、F,W、S、TまたはC、第5位置がY、F,W,L,I、VまたはM、第7位置がY、F,またはW、第8位置がP、およびこれらのいずれかの組み合わせからなる群より選ばれる、2次的アンカー残基。
【請求項37】
HLA-A3様分子と約500nMよりも小さい解離定数で結合する免疫原性ペプチドを同定する方法であって、請求項31、32、33、34、35および36に記載の結合モチーフが存在するかについて抗原性タンパク質のアミノ酸配列をスクリーニングし;
結合モチーフを有する前記抗原タンパク質中の、1またはそれ以上の部分配列を選択し;
選択した部分配列を含む約8から約11残基のテストペプチドを調製し;
テストペプチドの、遺伝子産物に対する結合能を測定し;
解離定数が500nMよりも小さいペプチドを同定するステップを含む方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【公開番号】特開2009−108097(P2009−108097A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327605(P2008−327605)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【分割の表示】特願平9−532759の分割
【原出願日】平成9年3月10日(1997.3.10)
【出願人】(508377495)エピミューン インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】