HSAを含まない安定なインターフェロン液体製剤
インターフェロン(INF)を含む安定な無HSA液体医薬組成物であって、この組成物が、緩衝液と、界面活性剤と、等張剤と、酸化防止剤とを含む溶液である組成物が記載されている。インターフェロンはヒト組み換えINF-βであることが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、インターフェロンを含む医薬組成物に関するものであり、より詳細には、添加される医薬用賦形剤としてのヒト血清アルブミンを含まない安定なインターフェロンβ製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
インターフェロンはサイトカインである。すなわち、細胞間でメッセージを伝達し、免疫系で極めて重要な役割を果たす可溶性タンパク質である。免疫系での役割は、感染を起こす微生物を破壊するのを助け、その結果として起こるあらゆる損傷を修復するというものである。インターフェロンは、感染した細胞から自然に分泌される物質であり、1957年に初めて同定された。その名称は、インターフェロンがウイルスの複製と産生を“インターフェアする(阻止する)”という事実に由来する。
【0003】
インターフェロンは、抗ウイルス活性と抗増殖活性の両方を示す。天然のヒト・インターフェロンは、生化学特性と免疫特性に基づいて3つの主要なクラスに分類されている。すなわち、インターフェロンα(白血球)、インターフェロンβ(線維芽細胞)、インターフェロンγ(免疫)である。インターフェロンαは、現在アメリカ合衆国その他の国で、毛様細胞性白血病、性病いぼ、カポジ肉腫(後天性免疫不全症候群(エイズ)患者で一般に見られるがん)、慢性非A型肝炎、慢性非B型肝炎の治療に用いることが認められている。
【0004】
さらに、インターフェロン(IFN)は、身体がウイルスの感染に応答して産生する糖タンパク質である。インターフェロンは、防護された細胞内でのウイルスの増殖を抑制する。IFNは低分子量のタンパク質からなり、作用は極めて非特異的である。1つのウイルスによって誘導されるIFNが、広い範囲の他のウイルスにも有効である。しかしIFNは種特異的である。すなわち1つの種が産生するIFNは、同じ種の細胞、または密接な関係のある種の細胞における抗ウイルス活性だけを刺激する。IFNは、その潜在的な抗腫瘍活性と抗ウイルス活性が研究された最初のサイトカイン群である。
【0005】
3つの主要なIFNは、IFN-α、IFN-β、IFN-γと呼ばれる。中心的なこれらのIFNは、最初は、出所となる細胞(白血球、線維芽細胞、T細胞)によって分類された。しかしいくつかのタイプが1つの細胞で産生されているらしいことが明確になってきた。そこで現在では、白血球IFNはIFN-αと呼ばれ、線維芽細胞IFNはIFN-βと呼ばれ、T細胞IFNはIFN-γと呼ばれている。第4のタイプのIFNとして、(バーキット・リンパ腫に由来する)“ナマルワ”細胞系で産生されるリンパ芽球様IFNも存在している。この細胞系は、白血球IFNと線維芽細胞IFNの両方の混合物を産生するように見える。
【0006】
インターフェロン単位、またはインターフェロン国際単位(UまたはIU。IUは国際単位)はIFN活性の指標として知られており、細胞をウイルスの攻撃から50%保護するのに必要な量として定義される。生物活性の測定に利用できるアッセイは、以前に報告されている細胞変性効果抑制アッセイである(Rubinstein S.他、1981年;Familletti, P.C.他、1981年)。インターフェロンに関するこの抗ウイルス・アッセイでは、約1単位/mlのインターフェロンが、50%の細胞変性効果を生み出すのに必要な量である。この単位は、国立衛生研究所から提供されたヒトIFN-βの国際参照基準に対して測定される(Pestka, S、1986年)。
【0007】
どのクラスのIFNも、異なるいくつかのタイプを含んでいる。IFN-βとIFN-γは、それぞれ単一の遺伝子の産物である。
【0008】
IFN-αに分類されるタンパク質は最も多彩なグループであり、約15のタイプを含んでいる。第9染色体上にIFN-α遺伝子のクラスターが存在していて、そこには少なくとも23個のメンバーが含まれており、そのうちの15個は活性であって転写される。成熟したIFN-αはグリコシル化されない。
【0009】
IFN-αとIFN-βはすべて同じ長さであり(アミノ酸が165個または166個)、似た生物活性を持っている。IFN-γは長さがアミノ酸が146個であり、αとβのクラスほどは似ていない。IFN-γだけが、マクロファージを活性化したり、キラーT細胞の成熟を誘導したりできる。新しいタイプのこれら治療薬は、腫瘍に対する生物の応答に効果を及ぼし、免疫調節を通じて認識に影響を与えるため、免疫調節剤(BRM)と呼ばれることがある。
【0010】
ヒト線維芽細胞インターフェロン(IFN-β)は抗ウイルス活性を持っており、ナチュラル・キラー細胞を刺激して腫瘍細胞を攻撃させることもできる。これは約20,000Daのポリペプチドであり、ウイルスと二本鎖RNAによって誘導される。組み換えDNA技術によってクローニングされた維芽細胞インターフェロン遺伝子のヌクレオチド配列(Derynk他、1980年)から、このタンパク質の完全なアミノ酸配列が得られた。長さはアミノ酸166個である。
【0011】
Shepardら(1981年)は、抗ウイルス活性を失った塩基842の突然変異(位置141がシステイン→チロシン)と、ヌクレオチド1119〜1121が欠失したクローン変異体を報告した。
【0012】
Markら(1984年)は、塩基469の(T)を(A)で置換する人工的な突然変異を導入することにより、位置17のアミノ酸をシステインからセリンにした。得られたIFN-βは、“元の”IFN-βと同じくらいの活性があり、長期にわたって保管(-70℃)している間も安定だったと報告されている。
【0013】
多発性硬化症(MS)のためのインターフェロン療法における最新の開発成果であるレビフ(登録商標)(セロノ社、組み換えヒト・インターフェロンβ)は、インターフェロン(IFN)β-1aであり、哺乳動物の細胞系で産生される。推奨されている国際的な非商標名(INN)は、“インターフェロンβ-1a”である。
【0014】
タンパク質をベースとしたあらゆる医薬品と同様、IFN-βを治療薬として使用する際に乗り越えるべき大きな1つの障害は、医薬製剤中での不安定性に起因する可能性のある、医薬としての有効性の喪失である。
【0015】
医薬製剤に含まれるポリペプチドの活性と効果を脅かす物理的な不安定性としては、変性や、可溶性または不溶性の凝集体の形成などがあり、化学的な不安定性としては、加水分解、イミドの形成、酸化、ラセミ化、脱アミノ化などがある。こうした変化のうちのいくつかが起こると、注目のタンパク質の医薬活性が失われたり低下したりする可能性があることが知られている。別のケースでは、こうした変化の結果は明確にはわかっていないが、得られる劣化した生成物は、望ましくない副作用のために医薬として受け入れられないと相変わらず考えられている。
【0016】
医薬組成物に含まれるポリペプチドの安定化では、今でも試行錯誤が主役を演じている(Wang、1999年、Int. J. Pharm.、第185巻、129〜188ページ;WangとHanson、1988年、J. Parenteral Sci. Tech.、第42巻、S3〜S26ページ)。安定性を大きくするためにポリペプチド医薬製剤に添加される賦形剤としては、緩衝液、糖類、界面活性剤、アミノ酸、ポリエチレングリコールポリマーなどがあるが、これら化学添加剤の安定化効果は、タンパク質によって異なる。
【0017】
現在のIFN-β製剤は、IFN-βの可溶性促進剤としてHSAを使用している。しかしHSAを用いることには問題がいくつかある。HSAはヒト血液の生成物であるため、ヒトから回収する必要がある。リスクを小さくする方法が採られているとはいえ、HSAなどのヒト血液の生成物を使用すると、HIVやHCVなどのヒト・ウイルスが導入される可能性がある。
【0018】
そのため、生理学的に適合性のある安定剤のうちで、IFN-βの可溶性を大きくし、IFN-βを安定化して凝集体が形成されないようにするものを含めることで、医薬としての有効性が高まる別のIFN-β医薬組成物が必要とされている。
【発明の開示】
【0019】
本発明は、インターフェロン(IFN)を含む安定な医薬組成物と、その調製方法を目的とする。この組成物は、ヒト血清アルブミン(HSA)の不在下で調製されるため、この医薬用賦形剤を含んでいない。この明細書では、このような組成物を“無HSA”IFN医薬組成物と呼ぶ。この組成物には、インターフェロン(IFN)、そのアイソフォーム、そのムテイン、その融合タンパク質、その機能性誘導体、その活性な断片、その塩のいずれかが含まれる。この組成物は、緩衝液と、界面活性剤と、等張剤と、酸化防止剤を含んでいる。
【0020】
本発明の態様によると、この組成物は静菌剤も含んでいる。
【0021】
本明細書では、“インターフェロン”または“IFN”に、その名称で文献に定義されているあらゆる分子が含まれるものとする。例えば、上記の“背景技術”の項に記載したあらゆるタイプのIFNが含まれる。特にIFN-α、IFN-β、IFN-γが、上記の定義に含まれる。IFN-βが、本発明における好ましいIFNである。本発明に適したIFN-βは市販されており、例えばレビフ(登録商標)(セロノ社)、アボネックス(登録商標)(バイオジェン社)、ベータフェロン(登録商標)(シェリング社)として入手できる。本発明では、ヒト起源のインターフェロンを使用することも好ましい。この明細書では、インターフェロンという用語に、そのアイソフォーム、そのムテイン、その融合タンパク質、その機能性誘導体、その活性な断片、その塩が含まれるものとする。
【0022】
この明細書では、“インターフェロンβ(IFN-ベータまたはIFN-β)”という用語に、特にヒト起源の線維芽細胞インターフェロン(体液から単離することによって、あるいは宿主原核細胞または宿主真核細胞からDNA組み換え技術によって得られる)と、その塩、その機能性誘導体、その変異体、その類似体、その活性な断片が含まれるものとする。IFN-βは、IFN-β-1aを意味することが好ましい。
【0023】
この明細書では、“ムテイン”という用語は、IFNの類似体のうちで、天然のIFNの1個以上のアミノ酸残基が別のアミノ酸残基で置換されていたり、天然のIFNの1個以上のアミノ酸残基が欠失していたり、天然のIFN配列に1個以上のアミノ酸残基が付加されていたりするが、得られる産物の活性は野生型IFNと比べて顕著に変化していないものを意味する。このようなムテインは、公知の合成法および/または部位指定突然変異誘発技術によって、あるいは適切な他の方法によって作られる。好ましいムテインとしては、例えばShepardら(1981年)またはMarkら(1984年)が報告しているものがある。
【0024】
このようなどのムテインもIFNと十分に重複したアミノ酸配列を持っていて、活性がIFNと実質的に同程度かそれ以上であることが好ましい。インターフェロンの生物学的機能は当業者によく知られており、しかも生物学的規格が確立していて例えば国立生物学規格・規制協会(http://immunology.org/links/NIBSC)から入手することができる。
【0025】
IFNの活性を測定するバイオアッセイが知られている。IFNアッセイは、例えばRubinsteinら(1981年)が記載しているようにして実施することができる。例えば定型的な実験により、任意のムテインがIFNの活性と実質的に同程度かそれ以上の活性を持つかどうかを調べることができる。
【0026】
本発明で使用できるIFNのムテイン、またはそれをコードしている核酸としては、それに実質的に対応する有限数の配列として、置換ペプチドまたは置換ポリヌクレオチドがある。それらは、当業者であればこの明細書に記載した教えまたはガイドに基づき、難しい実験を行なうことなく容易に得ることができる。
【0027】
本発明のムテインにおける好ましい変化は、“保守的”置換として知られるものである。本発明のポリペプチドまたはタンパク質の保守的アミノ酸置換としては、1つのグループ内の同義アミノ酸がある。同義アミノ酸は、互いに十分に似た物理化学的性質を持っているため、そのグループのメンバー同士を置換してもその分子の生物機能が保持される。上記配列に対するアミノ酸の挿入や欠失でその配列の機能を変えないものも可能であることは明らかである。それは特に、挿入または欠失がほんのアミノ酸数個(例えば30個未満であり、10個未満が好ましい)であって、しかも機能する立体配座となる上で極めて重要なアミノ酸(例えばシステイン残基)が変化しない場合に当てはまる。このような欠失および/または挿入によって生まれるタンパク質とムテインは、本発明の範囲に含まれる。
【0028】
同義アミノ酸のグループは、表Iに規定したものであることが好ましい。同義アミノ酸のグループは、表IIに規定したものであることがさらに好ましい。同義アミノ酸のグループは、表IIIに規定したものであることが最も好ましい。
【0029】
表I
【表1】
表II
【表2】
【0030】
表III
【表3】
【0031】
本発明で使用するIFNのムテインを得るのに利用できるタンパク質のアミノ酸置換法の具体例は、公知の任意の方法であり、例えば、Markらに付与されたアメリカ合衆国特許第4,959,314号、第4,588,585号、第4,737,462号;Kothsらに付与されたアメリカ合衆国特許第5,116,943号;Namenらに付与されたアメリカ合衆国特許第4,965,195号;Chongらに付与されたアメリカ合衆国特許第4,879,111号;Leeらに付与されたアメリカ合衆国特許第5,017,691号に記載されており;リシン置換されたタンパク質は、アメリカ合衆国特許第4,904,584号(Shaw他)に提示されている。IFN-βの具体的なムテインは、例えばMarksらが1984年に報告している、
【0032】
“融合タンパク質”という用語は、IFNを含むポリペプチド、またはそのムテインで、例えば体液中の滞留時間が長い別のタンパク質と融合したものを意味する。IFNは、例えば別のタンパク質やポリペプチドなど(例えば免疫グロブリンやその断片)と融合させることができる。
【0033】
この明細書では、“機能性誘導体”に、IFNの誘導体、そのムテイン、その融合タンパク質が含まれる。これらは、各残基の上、あるいはN末端またはC末端の基の上に側鎖として存在する官能基から従来技術で知られている手段で作ることができ、薬理学的に許容可能な状態を維持している(すなわちIFNと実質的に同じ活性を壊すことがなく、その機能性誘導体を含む組成物に毒性を与えない)限りは本発明に含まれる。このような誘導体として、例えば、抗原部位を隠して体液中のIFNの滞留時間を延ばすことのできるポリエチレングリコール側鎖がある。他の誘導体としては、カルボキシル基の脂肪族エステル;アンモニア、第一級アミン、第二級アミンのいずれかと反応させることによるカルボキシル基のアミド;アミノ酸残基の自由なアミノ基とアシル部分(例えばアルカノイル基または炭素環式アロイル基)で形成されたN-アシル誘導体;(例えばセリル残基またはトレオニル残基の)自由なヒドロキシル基とアシル部分で形成されたO-アシル誘導体などがある。
【0034】
本発明では、IFN、ムテイン、融合タンパク質の“活性な断片”に、単独のタンパク質分子のポリペプチド鎖のあらゆる断片または前駆体、あるいは関連する分子または残基(例えば糖残基またはリン酸残基)が結合したタンパク質分子のポリペプチド鎖のあらゆる断片または前駆体、あるいはタンパク質分子または糖残基そのものの凝集体のあらゆる断片または前駆体が含まれる。ただしこの断片は、対応するIFNと比べて活性が顕著に低下していてはならない。
【0035】
この明細書では、“塩”という用語は、上記タンパク質またはその類似体のカルボキシル基の塩と、上記タンパク質またはその類似体のアミノ基の酸添加塩の両方を意味する。カルボキシル基の塩は公知の方法で形成することができ、例えば無機塩(ナトリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、鉄塩、亜鉛塩など)と、有機塩基との塩(例えばアミン(トリエタノールアミンなど)、アルギニン、リシン、ピペリジン、プロカインなどとの塩)がある。酸添加塩としては、例えば無機酸(例えば塩酸や硫酸)との塩や、有機酸(例えば酢酸やシュウ酸)との塩がある。もちろん、このようなどの塩も、本発明に関係するタンパク質(IFN)の生物活性(すなわち対応する受容体に結合する能力や、受容体にシグナル伝達を開始させる能力)を保持している必要がある。
【0036】
本発明によれば、組み換えヒトIFN-βと本発明の化合物を利用することが特に好ましい。
【0037】
特別なインターフェロン変異体が最近報告された。いわゆる“コンセンサス・インターフェロン”は、IFNの自然には生じない変異体である(アメリカ合衆国特許第6,013,253号)。本発明の好ましい態様によると、本発明の化合物は、コンセンサス・インターフェロンと組み合わせて使用される。
【0038】
この明細書では、ヒト・インターフェロン・コンセンサス(IFN-con)は、天然には存在しないポリペプチドで、天然に存在するヒト白血球インターフェロンの亜型の配列の過半数を代表するIFN-αのサブセットに共通するアミノ酸残基を主に含んでいて、すべての亜型に共通するアミノ酸が存在することはない1つ以上の位置に、その位置に多く存在するアミノ酸を含むが、天然に存在する少なくとも1つの亜型においてその位置に存在していないそのアミノ酸残基も含まないものを意味する。IFN-conには、例えばIFN-con1、IFN-con2、IFN-con3と表わされるアミノ酸配列が含まれ、これらはアメリカ合衆国特許第4,695,623号、第4,897,471号、第5,541,293号に開示されている。IFN-conをコードしているDNA配列は、これら特許に記載されているようにして作ること、あるいは他の標準的な方法で作ることができる。
【0039】
さらに別の好ましい態様では、融合タンパク質がIg融合体を含んでいる。直接融合させること、あるいは短いリンカー・ペプチドを介して融合させることが可能である。リンカー・ペプチドとしては、長さがアミノ酸1〜3個のものや、より長くて例えばアミノ酸残基が13個のものが可能である。リンカー・ペプチドは、例えば配列E-F-M(グルタミン酸-フェニルアラニン-メチオニン)を持つトリペプチドにすること、またはグルタミン酸-フェニルアラニン-グリシン-アラニン-グリシン-ロイシン-バリン-ロイシン-グリシン-グリシン-グルタミン-フェニルアラニン-メチオニンという13個のアミノ酸を含むリンカー配列にすることが可能であり、それをIFN配列と免疫グロブリン配列の間に導入できる。得られる融合タンパク質は特性が改善され、体液中の滞留時間(半減期)が延びたり、比活性が増大したり、発現レベルが増大したりする。また、融合タンパク質の精製が簡単になる可能性もある。
【0040】
さらに別の好ましい態様では、IFNをIg分子の定常領域と融合させる。IFNは、重鎖領域(例えばヒトのIgG1またはIgG3のCH2ドメインまたはCH3ドメイン)と融合させることが好ましい。Ig分子の他のアイソフォーム(例えばアイソフォームIgG2やIgG4、または他のクラスのIgであるIgMやIgA)も、本発明の融合タンパク質を作るのに適している。融合タンパク質は、単量体でも多量体でもよく、ヘテロ多量体でもホモ多量体でもよい。
【0041】
さらに別の好ましい態様では、機能性誘導体は、アミノ酸残基上の1つ以上の側鎖として存在する1つ以上の官能基に結合した少なくとも1つの部分を備えている。この部分はポリエチレングリコール(PEG)部であることが好ましい。PEG化は、公知の方法で実施することができ、その方法は例えばWO 99/55377に記載されている。
【0042】
個人への投与量は、1回の投与であれ、複数回の投与であれ、多様な因子に依存する。因子としては、薬理動態、投与経路、患者の状態と特性(性別、年齢、体重、健康状態、サイズ)、症状の進み具合、同時に実施している治療、治療の頻度、望む効果などがある。
【0043】
ヒトIFN-βの標準的な投与量は、1日につき80,000IU/kg〜200,000IU/kg、または一人当たり1日に6MIU(100万国際単位)〜12MIU、または一人当たり22〜44μg(マイクログラム)である。本発明によれば、IFNは、一人当たり1日につき約1〜50μgの量を投与することが好ましい。この量は、約10〜30μg、または約10〜20μgであることがより好ましい。
【0044】
本発明による活性成分の投与は、静脈内経路、筋肉内経路、皮下経路で行なうことができる。IFNの好ましい投与経路は、皮下経路である。
【0045】
IFNは、毎日、または2日に1回、またはそれよりも少ない頻度で投与することも可能である。IFNは、1週間に1回、または2回、または3回投与することが好ましい。
【0046】
好ましい投与経路は皮下経路であり、例えば1週間に3回投与する。好ましいさらに別の投与経路は筋肉内投与であり、例えば1週間に1回投与することができる。
【0047】
22〜44μg、または6MIU〜12MIUのIFN-βを、皮下注射で1週間に3回投与することが好ましい。
【0048】
IFN-βは、25〜30μgまたは8MIU〜9.6MIUの量を、2日に1回皮下投与することができる。さらに、30μgまたは6MIUのIFN-βを、1週間に1回筋肉内投与することもできる。
【0049】
“安定性”という用語は、本発明のインターフェロン製剤の物理的安定性、化学的安定性、高次構造上の安定性(生物学的効果の維持も含まれる)を意味する。タンパク質製剤の不安定性は、タンパク質分子が化学的に分解または凝集してより高次のポリマーを作ること、脱グリコシル化すること、グリコシル化後に修飾されること、酸化することによって、あるいは本発明に含まれるインターフェロン・ポリペプチドの少なくとも1つの生物活性を低下させる他のあらゆる構造変化が起こることによって、発生する可能性がある。
【0050】
“安定な”溶液または製剤は、タンパク質の分解、修飾、凝集、生物活性の喪失などの程度が受け入れられる程度に制御されていて、時間経過とともに受け入れられないほど大きくはなることはない溶液または製剤である。製剤は、表示されているインターフェロン活性の少なくとも約60%を12〜24ヶ月の期間にわたって保持することが好ましい。この割合は、少なくとも約70%であることがより好ましく、少なくとも約80%であることが最も好ましい。HSAを含まない安定な本発明のIFN組成物は、2〜8℃で保管したときの保管期間が少なくとも約6ヶ月、12ヶ月、18ヶ月であることが好ましいが、この期間は少なくとも20ヶ月であることがより好ましく、少なくとも22ヶ月であることがさらに好ましく、少なくとも24ヶ月であることが最も好ましい。
【0051】
HSAを含まない本発明のIFN医薬組成物の安定性をモニターする方法として、従来技術の方法(例えば、この明細書に開示した実施例に記載してある方法)を利用できる。例えば本発明の液体医薬組成物を保管している間のIFN凝集体形成は、溶液に含まれる可溶性IFNの時間変化を測定することによって容易に明らかにすることができる。溶液中の可溶性ポリペプチドの量は、IFNの検出に適した多数の分析法で定量することができる。このような方法として、例えば後出の実施例に記載した逆相(RP)-HPLC法、UV吸収分光法などがある。
【0052】
保管している間の液体製剤中の可溶性凝集体と不溶性凝集体の測定は、例えば後出の実施例に記載した超遠心分離分析法を利用し、可溶性凝集体として存在する可溶性ポリペプチドの部分と、生物活性のある非凝集分子形態として存在する部分とを区別することによって実現できる。
【0053】
“複数回用量の使用”という表現には、インターフェロン製剤を含む単一のバイアル、アンプル、カートリッジを2回以上(例えば2、3、4、5、6回またはそれ以上)使用して注射することが含まれる。注射は、少なくとも約12時間、24時間、48時間の期間にわたって繰り返して行なう。この期間は、約12日間までであることが好ましい。次の注射までの時間間隔は、例えば6、12、24、48、72時間のいずれかにするとよい。
【0054】
“緩衝液”または“生理学的に許容可能な緩衝液”という表現は、医薬または獣医学において製剤中で使用しても安全であることがわかっていて、その製剤のpHを望む範囲に維持または制御する効果のある化合物の溶液を意味する。pHをわずかに酸性からわずかに塩基性の範囲の値に調整するための許容可能な緩衝液としては、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、アルギニン、トリス、ヒスチジンなどの化合物がある。“トリス”は、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールと、その薬理学的に許容可能な塩を意味する。好ましい緩衝液は、生理食塩水または許容できる塩を含む酢酸塩緩衝液である。
【0055】
“等張剤”は、生理学的に許容されていて、製剤に適切な張性を与え、製剤と接触している細胞膜を新たな水流が通過することを阻止する化合物である。そのような目的では、一般に、グリシンなどの化合物を濃度がわかった状態で使用する。適切な他の等張剤としては、アミノ酸またはタンパク質(例えばグリシンまたはアルブミン)、塩(例えば塩化ナトリウム)、糖類(例えばデキストロース、マンニトール、スクロース、ラクトース)などが挙げられる。等張剤はマンニトールであることが好ましい。
【0056】
“酸化防止剤”という用語は、酸素または酸素由来のフリーラジカルが他の物質と相互作用するのを阻止する化合物を意味する。酸化防止剤は、物理的安定性と化学的安定性を大きくするために医薬系に一般に添加される多数の賦形剤の1つである。酸化防止剤は、ある種の薬または賦形剤が酸素に曝露されたりフリーラジカルの存在下に置かれたりしたときに起こる酸化プロセスを最少にするため、あるいは遅延させるために添加する。このプロセスは、光、温度、濃縮水素、微量の金属の存在、微量の過酸化物の存在を触媒として起こることがしばしばある。亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ尿素、メチオニン、エチレンジアミン四酢酸の塩(EDTA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)が薬剤中の酸化防止剤としてよく用いられる。EDTAナトリウムは、酸化反応を触媒する金属イオンを封鎖することによって酸化防止剤の活性を大きくすることがわかっている。最も好ましい酸化防止剤はメチオニンである。
【0057】
“静菌”という用語は、製剤に抗菌剤として作用させるために添加する化合物または組成物を意味する。保管状態にある本発明のインターフェロン含有製剤は、保存剤の有効性に関する法定ガイドラインまたは規制ガイドラインに合致していて、市販できる多数回使用の製品となることが好ましい。静菌剤の具体例としては、フェノール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン(メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ジヒドロ酢酸ナトリウム、チメロサールなどがある。静菌剤はベンジルアルコールが好ましい。
【0058】
“界面活性剤”という用語は、液体の表面張力を小さくしたり、2種類の液体間の界面張力を小さくしたり、液体と固体の間の界面張力を小さくしたりする可溶性化合物を意味する。なお表面張力とは、液体の表面に作用して表面積を最小にしようとする力である。界面活性剤は、医薬製剤にときどき使用されてきた。それは、例えば、低分子量の薬剤やポリペプチドを送達したり、薬剤の吸収状態を変化させたり、標的組織への薬剤の送達を変化させたりすることが目的である。よく知られている界面活性剤としては、ポリソルベート(ポリオキシエチレン誘導体;トゥイーン)やプルロニックがある。
【0059】
本発明の好ましい態様によると、インターフェロンを、プルロニック(登録商標)F77、プルロニックF87、プルロニックF88、プルロニック(登録商標)F68の中から選択した界面活性剤(特にプルロニックF68(BASF社、プルロニックF68はポロキサマー188としても知られる)が好ましい)とともに製剤化することにより、バイアルおよび/または送達装置(例えば注射器、ポンプ、カテーテルなど)の表面に吸着されることによって起こる活性成分の損失が最少になった安定な製剤が得られることがわかった。また、インターフェロンを、プルロニック(登録商標)F77、プルロニックF87、プルロニックF88、プルロニック(登録商標)F68の中から選択した界面活性剤(特にプルロニックF68(BASF社、プルロニックF68はポロキサマー188としても知られる)が好ましい)とともに製剤化することにより、酸化とタンパク質凝集体の形成に対する抵抗力がより大きい安定な製剤が得られることがわかった。
【0060】
プルロニックという界面活性剤は、エチレンオキシド(EO)とポリエチレンオキシド(PO)のブロック・コポリマーである。ポリエチレンオキシド(PO)ブロックは、2つのエチレンオキシド(EO)ブロックの間に挟まれる。
【0061】
【化1】
【0062】
界面活性剤プルロニックは、以下に示す2ステップのプロセスで合成される。
1.プロピレンオキシドをプロピレングリコールの2つのヒドロキシル基に制御しながら付加することにより、望む分子量の疎水性部分を作り;
2.エチレンオキシドを添加してその疎水性部分を親水基の間に挟み込む。
【0063】
プルロニック(登録商標)F77では、ポリオキシエチレン(親水性部分)の割合が70%であり、疎水性部分(ポリオキシプロピレン)の分子量は約2,306Daである。
【0064】
プルロニックF87では、ポリオキシエチレン(親水性部分)の割合が70%であり、疎水性部分(ポリオキシプロピレン)の分子量は約2,644Daである。
【0065】
プルロニックF88では、ポリオキシエチレン(親水性部分)の割合が80%であり、疎水性部分(ポリオキシプロピレン)の分子量は約2,644Daである。
【0066】
プルロニックF68では、ポリオキシエチレン(親水性部分)の割合が80%であり、疎水性部分(ポリオキシプロピレン)の分子量は約1,967Daである。
【0067】
プルロニックF77の典型的な性質を以下に示す。
平均分子量:6600;
融点/流動点:48℃;
20℃における物理的形態:固体;
粘性率(ブルックフィールド)cps:480(25℃で液体、60℃でペースト、77℃で固体);
25℃における表面張力、ダイン/cm;
濃度0.1%:47.0
濃度0.01%:49.3
濃度0.001%:52.8
ヌジョールに対する25℃における界面張力、ダイン/cm;
濃度0.1%:17.7
濃度0.01%:20.8
濃度0.001%:25.5
25℃におけるドレーブス湿潤化法、秒
濃度1.0%:>360
濃度0.1%:>360
泡の高さ
50℃におけるロス・マイルス法、0.1%、mm:100
26℃におけるロス・マイルス法、0.1%、mm:47
400ml/分における動態、0.1%、mm:>600
水溶液中の曇点、℃
濃度1%:>100
濃度10%:>100
HLB(親水性-親油性バランス):25。
【0068】
プルロニックF87の典型的な性質を以下に示す。
平均分子量:7700;
融点/流動点:49℃;
20℃における物理的形態:固体;
粘性率(ブルックフィールド)cps:700(25℃で液体、60℃でペースト、77℃で固体);
25℃における表面張力、ダイン/cm;
濃度0.1%:44.0
濃度0.01%:47.0
濃度0.001%:50.2
ヌジョールに対する25℃における界面張力、ダイン/cm;
濃度0.1%:17.4
濃度0.01%:20.3
濃度0.001%:23.3
25℃におけるドレーブス湿潤化法、秒
濃度1.0%:>360
濃度0.1%:>360
泡の高さ
50℃におけるロス・マイルス法、0.1%、mm:80
26℃におけるロス・マイルス法、0.1%、mm:37
400ml/分における動態、0.1%、mm:>600
水溶液中の曇点、℃
濃度1%:>100
濃度10%:>100
HLB(親水性-親油性バランス):24。
【0069】
プルロニックF88の典型的な性質を以下に示す。
平均分子量:11400;
融点/流動点:54℃;
20℃における物理的形態:固体;
粘性率(ブルックフィールド)cps:2300(25℃で液体、60℃でペースト、77℃で固体);
25℃における表面張力、ダイン/cm;
濃度0.1%:48.5
濃度0.01%:52.6
濃度0.001%:55.7
ヌジョールに対する25℃における界面張力、ダイン/cm;
濃度0.1%:20.5
濃度0.01%:23.3
濃度0.001%:27.0
25℃におけるドレーブス湿潤化法、秒
濃度1.0%:>360
濃度0.1%:>360
泡の高さ
50℃におけるロス・マイルス法、0.1%、mm:80
26℃におけるロス・マイルス法、0.1%、mm:37
400ml/分における動態、0.1%、mm:>600
水溶液中の曇点、℃
濃度1%:>100
濃度10%:>100
HLB(親水性-親油性バランス):28。
【0070】
プルロニックF68の典型的な性質を以下に示す。
平均分子量:8400;
融点:52℃;
20℃における物理的形態:固体;
粘性率(ブルックフィールド)cps:1000(25℃で液体、60℃でペースト、77℃で固体);
25℃における表面張力、ダイン/cm;
濃度0.1%:50.3
濃度0.01%:51.2
濃度0.001%:53.6
ヌジョールに対する25℃における界面張力、ダイン/cm;
濃度0.1%:19.8
濃度0.01%:24.0
濃度0.001%:26.0
25℃におけるドレーブス湿潤化法、秒
濃度1.0%:>360
濃度0.1%:>360
泡の高さ
50℃におけるロス・マイルス法、0.1%、mm:35
26℃におけるロス・マイルス法、0.1%、mm:40
400ml/分における動態、0.1%、mm:>600
水溶液中の曇点、℃
濃度1%:>100
濃度10%:>100
HLB(親水性-親油性バランス):29。
【0071】
上記の性質と似た性質を持つ他のポリマーも本発明の製剤で使用できる。好ましい界面活性剤は、プルロニックF68と、それと似た性質を持つ界面活性剤である。
【0072】
プルロニックが、中でもプルロニックF68が、インターフェロンの安定性を望む保管期間(例えば12〜24ヶ月)を通じて維持するのに十分な濃度で、しかも表面(例えばバイアル、アンプル、カートリッジ、注射器)への吸着によるタンパク質の損失を阻止するのに十分な濃度で存在していることが好ましい。
【0073】
液体製剤中のプルロニック(特にプルロニックF68)の濃度は、約0.01mg/ml〜約10mg/mlであることが好ましい。この値は、約0.05mg/ml〜約5mg/mlであることがより好ましく、約0.1mg/ml〜約2mg/mlであることがさらに好ましく、約1mg/mlであることが最も好ましい。
【0074】
製剤中のIFN-βの濃度は、約10μg/ml〜約800μg/mlであることが好ましい。この値は、約20μg/ml〜約500μg/mlであることがより好ましく、約30μg/ml〜約300μg/mlであることがさらに好ましく、約22、44、88、264μg/mlのいずれかであることが最も好ましい。
【0075】
本発明の製剤は、pHが約3.0〜約5.0であることが好ましい。この値は、約3.7または約4.7であることがより好ましい。好ましい緩衝液は、対イオン、好ましくはナトリウム・イオンまたはカリウム・イオンを伴う酢酸塩である。酢酸生理緩衝液は従来技術でよく知られている。全溶液中の緩衝液の濃度は、約5mM、9.5mM、10mM、50mM、100mM、150mM、200mM、250mM、及び500mMにすることができる。緩衝液の濃度は、約10mMであることが好ましい。特に好ましいのは、酢酸塩イオンが10mMで、pHが3.5±0.2または4.5±0.2の緩衝液である。
【0076】
本発明の組成物には、酸化防止剤(例えばメチオニン)が、約0.01〜約5.0mg/mlの濃度で存在していることが好ましい。この値は、約0.05〜約0.3mg/mlであることがより好ましく、約0.1mg/mlであることが最も好ましい。
【0077】
製剤中の等張剤(例えばマンニトール)の濃度は、約0.5mg/ml〜約500mg/mlである。この値は、約1mg/ml〜約250mg/mlであることがより好ましく、約10mg/ml〜約100mg/mlであることがさらに好ましく、約55mg/mlであることが最も好ましい。
【0078】
本発明には液体製剤が含まれる。好ましい溶媒は、注射用の水である。
【0079】
液体製剤は、1回用量、または複数回用量にすることができる。複数回用量を目的とした本発明の液体インターフェロン製剤は、静菌剤として、例えばフェノール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン(メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ジヒドロ酢酸ナトリウム、チメロサールを含んでいることが好ましい。特に好ましいのは、フェノール、ベンジルアルコール、m-クレゾールであり、その中でもベンジルアルコールがより好ましい。静菌剤は、製剤中に実質的に細菌が存在しない(注射に適した)状態を複数回の注射を行なう期間全体にわたって維持するのに有効な濃度となる量を使用する。その期間は、約12時間または24時間〜約12日間、好ましくは約6日間〜約12日間になろう。静菌剤は、約0.1%(静菌剤の重量/溶媒の重量)〜約2.0%の濃度で存在していることが好ましい。この値は、約0.2%〜約1.0%であることがより好ましい。ベンジルアルコールの場合には、0.2%または0.3%の濃度が特に好ましい。しかし保存剤(例えばベンジルアルコール)の使用は複数回用量の製剤に限られることはなく、1回用量の製剤に保存剤を添加することもできる。
【0080】
本発明の製剤に含まれるインターフェロンの範囲は、再構成したときに濃度が約1.0μg/ml〜約50mg/mlとなる量であるが、より大きな濃度やより小さな濃度も可能であり、それは、考えている送達手段が何であるかによって異なる。例えば溶液製剤は、経皮パッチ法、肺送達法、経粘膜法、浸透圧法、マイクロポンプ法のうちのどの方法にするかによって異なる。インターフェロンの濃度は、約5.0μg/ml〜約2mg/mlであることが好ましい。この値は、約10μg/ml〜約1mg/mlであることがより好ましく、約30μg/ml〜約100μg/mlであることが最も好ましい。
【0081】
本発明の製剤は、パッケージングしたときに24ヶ月にわたってインターフェロン活性の少なくとも約60%を維持することが好ましい。この値は、少なくとも約70%であることがより好ましく、少なくとも約80%であることが最も好ましい。
【0082】
本発明のさらに別の好ましい態様により、上に説明した液体医薬製剤の製造方法が提供される。
【0083】
本発明のさらに別の好ましい態様では、パッケージングされた医薬組成物を製造するため、上記の活性成分と賦形剤とを含む溶液を配置する操作を含む方法が提供される。
【0084】
本発明のさらに別の好ましい態様では、ヒトが医薬として使用する製品として、上記の医薬組成物が収容されたバイアルを備えていて、その溶液を最初に使用してから約24時間後まで、またはそれ以上の期間にわたって有効であることを記した書面が添付された製品が提供される。書面には、溶液を約12日後まで有効であると記載されていることが好ましい。
【0085】
複数用量製剤は、最初に使用した後、少なくとも約24時間の期間にわたって保管すること、または使用することができる。この期間は、少なくとも約4、5、6日間であることが好ましく、12日間までであることがさらに好ましい。製剤を最初に使用した後は、室温よりも低い温度(すなわち約25℃以下)で保管することが好ましい。この温度は、約10℃以下であることがより好ましく、約2〜8℃であることがさらに好ましく、約4〜6℃であることが最も好ましい。
【0086】
本発明の製剤は、計算で求めた量の賦形剤を緩衝溶液に添加した後、インターフェロンを添加する操作を含む方法で調製することができる。
【0087】
次に、得られる溶液を、バイアル、アンプル、カートリッジのいずれかに入れる。当業者であれば、この方法のいろいろな変形例を知っているであろう。例えば、成分を添加する順番、添加物を使用するかどうか、製剤を調製するときの温度とpHなどはすべて、濃度と投与法をどのようにするかを決める際に最適化すべき因子であろう。
【0088】
複数用量製剤の場合には、活性成分(インターフェロン)を含む溶液に静菌剤を添加するか、静菌剤を別のバイアルまたはカートリッジに保管し、使用時に活性成分を含む溶液と混合する。
【0089】
本発明の製剤は、認可されている装置を用いて投与することができる。単一バイアル・システムを備える具体例としては、レビジェクト(登録商標)など、溶液を供給するためのオートインジェクタまたはペン式注射器がある。
【0090】
この明細書で権利を主張する製品には、パッケージ材料も含まれる。パッケージ材料により、取り締まり機関が要求する情報に加え、その製品を使用できる条件が提供される。本発明のパッケージ材料により、必要な場合には、2バイアル式の湿潤/乾燥製品に関し、最終溶液を調製し、その最終溶液を24時間またはそれ以上の期間にわたって使用するための指示が患者に与えられる。単一バイアルの場合には、ラベルに、溶液を24時間以上の期間にわたって使用できることを記載する。この明細書で権利を主張する製品は、ヒトの医薬品として有用である。
【0091】
保管された安定な製剤は、透明な溶液として患者に提供することができる。この溶液は、1回だけ使用することや、複数回再利用することができ、しかも患者に対して一連の治療を1回または複数回行なうのに十分であるため、現在よりも便利な治療計画が提供される。
【0092】
この明細書に記載した安定な製剤または溶液としてのインターフェロン、あるいは保管された製剤または溶液としてのインターフェロンは、本発明に従い、さまざまな投与法で患者に投与することができる。投与法としては、従来技術でよく知られているように、皮下注射、筋肉内注射;経皮投与、肺投与、経粘膜投与、インプラント、浸透圧ポンプ、カートリッジ、マイクロポンプ、経口投与や、当業者が評価する従来技術でよく知られた他の手段などがある。
【0093】
“バイアル”という用語は、広く、インターフェロンを固体または液体の形態に維持するのに適した容器を意味する。この明細書で使用するバイアルの具体例としては、アンプル、カートリッジ、ブリスター包装のほか、インターフェロンを注射器、ポンプ(浸透圧ポンプ)、カテーテル、経皮パッチ、肺スプレー、経粘膜スプレーを通じて患者に送達するのに適した他の容器などがある。非経口投与、肺投与、経粘膜投与、経皮投与する製品をパッケージングするのに適したバイアルは従来技術でよく知られており、認可されている。
【0094】
本発明の文脈における“治療”という用語は、疾患の進行に関するあらゆる好ましい効果(例えば、疾患が発症した後の病状の展開が緩和、逆行、軽減、鈍化すること)を意味する。
【0095】
IFN、そのアイソフォーム、そのムテイン、その融合タンパク質、その機能性誘導体、その活性な断片、その塩のいずれかが含まれた本発明の医薬組成物は、このPFNというポリペプチドを用いた治療法に反応する臨床上の徴候を診断、予防、治療(局所または全身)するのに役立つ。このような臨床上の徴候としては、例えば、中枢神経系(CNS)、脳、脊髄の異常や疾患(多発性硬化症など);自己免疫疾患(関節リウマチ、乾癬、クローン病など);がん(乳がん、前立腺がん、膀胱がん、腎臓がん、大腸がんなど)などがある。
【0096】
この明細書に引用したあらゆる参考文献(その中には、学術論文または要約、アメリカ合衆国またはそれ以外の国の特許出願と特許などが含まれる)は、その引用文献に提示されているあらゆるデータ、表、図、文章を含め、その全体が参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。さらに、この明細書で引用した参考文献の中で引用されている参考文献の全内容も、その全体が参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。
【0097】
公知の方法のステップ、従来法のステップ、公知の方法または従来法への言及があるからといって、本発明のあらゆる特徴、説明、実施態様が、関連する従来技術に開示、教示、示唆されていることを意味するものでは決してない。
【0098】
特別な実施態様に関する上記の説明により本発明の一般的な性質が十分に明らかになったはずであるゆえ、第三者は、従来技術での知識(その中にはこの明細書で引用した参考文献の内容が含まれる)を適用することにより、難しい実験を行なったり、本発明の一般的な考え方から逸脱したりすることなく、さまざまな用途のために実施態様を容易に変更および/または改変することができる。したがってそのような改変や変更は、この明細書に示した教えとガイドに基づき、開示した実施態様の等価物の範囲に含まれるものとする。この明細書で用いる表現または用語は説明を目的としたものであって本発明を制限することは意図していないため、当業者は、この明細書の表現または用語を、この明細書に示した教えとガイドに当業者の知識を組み合わせて解釈すべきであることを理解されたい。
【実施例1】
【0099】
注射器にあらかじめ充填した1回用量の無HSAインターフェロンβ-1a液体製剤
【0100】
1.1 適合性の予備調査
【0101】
何種類かの賦形剤(例えば酸化防止剤や界面活性剤)が示す保護効果を確認するため、予備実験を行なった。なぜなら、ヒト血清アルブミン(HSA)を現在の製品から除去したことで、酸化と、凝集体の形成と、表面への吸着に関して製品が影響を受ける可能性のあることが予想されたからである。
【0102】
54.6mg/mlのマンニトールと何種類かの賦形剤を含む酢酸ナトリウム緩衝液の中にインターフェロンβ-1aが44mcg/mlと88mcg/mlの濃度で含まれる製剤を作った。賦形剤は、0.4%のHSA、0.012%のL-メチオニン、トゥイーン20(0.005%、0.007%、0.01%)、ポロキサマー188(0.05%、0.1%、0.5%)である。このいろいろな組み合わせの製剤をストレス条件下(40℃で保管するか、撹拌する)に置き、酸化(RP-HPLCで調べる)と凝集化(SE-HPLCで調べる)を調べた。
【0103】
表DEP-1と表DEP-2に、40℃で2週間保管した後の酸化と凝集化のレベルをまとめてある。インターフェロンβ-1aと調べた両方の界面活性剤(トゥイーン20とポロキサマー188)を組み合わせると、それぞれのタイプの界面活性剤について、濃度に依存して酸化レベルが上昇した(表DEP-1、組み合わせ#4〜6、#7〜9)。ポロキサマー188(プルロニックF68、またはF68とも呼ばれる)が0.5%のレベルだと、薬剤物質が完全に分解する(表DEP-1、#9)。予想通り、合成からの残基として存在する可能性のある酸化種(例えば過酸化物)のため、より大きな分解速度がトゥイーン20に関して観察される。
【0104】
両方の界面活性剤をさまざまな濃度で調べたが、40℃で保管するときには凝集化のレベルに影響を与えない(表DEP-2)。
【0105】
【表4】
【0106】
【表5】
【0107】
表DEP-3は、臨界ミセル濃度(CMC)で使用した両方の界面活性剤(トゥイーン20とポロキサマー188)が、5分間の撹拌によって誘導される凝集化を阻止するのに役立つことを示している。
【0108】
【表6】
【0109】
1.1.1 物理-化学的特性
【0110】
製品としての薬剤の品質にとって極めて重要であることが知られている物理-化学的特性は、酸化の程度と、二量体/凝集体の量である。これらの特性を、上にまとめた適合性の研究を行なう際に考慮した。
【0111】
1.2 賦形剤
【0112】
1.2.1 10mMの酢酸ナトリウム緩衝液、pH3.5
【0113】
等張剤として54.6mg/mlのマンニトールを含む10mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5)は製品を安定化させる、それは、現在市販されている製品(レビフ(登録商標))が以前に開発されたときにわかったことであり、そのことはヨーロッパ特許第759,775号に記載されている。
【0114】
1.2.2 ポロキサマー188
【0115】
ポロキサマー188(またはプルロニックF68)が製剤に0.1%のレベルで含まれているため、製造中に薬剤物質が容器の表面に吸着することが阻止される。濃度をより大きくすると、製品の安定性にマイナスの影響を与える(酸化が増える)可能性があり、濃度をより小さくすると、吸着を制限する効果が小さくなる可能性がある。
【0116】
ポロキサマー188が製造中の薬剤物質の吸着を阻止する効果を、以下の研究によって明らかにした。すなわち、44mcg/mlのインターフェロンβ-1aを含む溶液を異なる3つの濃度の界面活性剤(トゥイーン20とポロキサマー188)またはHSAと組み合わせ、製造プロセスを実施し;いろいろな段階(混合段階、殺菌濾過段階、充填段階)でサンプルを採取して定量的RP-HPLC法で調べた。
【0117】
以下のサンプルを採取した。
- 濾過前(BF)
- 1回目の濾過後(AF1)
- 2回目の濾過後(AF2)
- 充填後(T=0における最終製品)。
【0118】
結果を表DEP-4に記載してあり、初期値(すなわち濾過前の化合物溶液)に対する回収率(%)として表示してある。製造中の薬剤物質の吸着を阻止することに関し、ポロキサマー188はトゥイーン20よりも効果があるが、HSAとは同じ程度である。
【0119】
【表7】
【0120】
いろいろな供給者から入手したグレートの異なるポロキサマー188を用いて加速条件(2週間、40℃)下の酸化生成物について調べ、使用すべき品質を明らかにした。その結果、BASF社からのポロキサマー188が選択された。なぜならポロキサマー188は酸化レベルがより低く、医薬品グレードとして供給されているからである。結果を表DEP-5にまとめてある。
【0121】
【表8】
【0122】
1.2.3 L-メチオニン
【0123】
製剤にL-メチオニン(L-Met)を0.012%のレベルで入れ、酸化を制限した。この濃度の有効性は、L-メチオニンを含まない製剤と比較するとわかる。より高濃度(0.05%、0.1%)のL-メチオニンは、安定性が同程度であった。40℃で保管したときに検出された酸化生成物を表DEP-6に示す。
【0124】
【表9】
【0125】
製剤の開発中に、L-メチオニンを含む製剤にいろいろな界面活性剤を組み合わせた場合に得られた安定性のデータ(2〜8℃と25±2℃で3ヶ月間)から、酸化防止剤としてのL-メチオニンの有効性を確認した。L-メチオニンは、0.012%のレベルで酸化防止剤として有効であり、現在の製品で観察されるのと同程度の安定性を保証することができる(図12と図13を参照のこと)。
【0126】
1.3 薬剤製品
【0127】
1.3.1 製剤の開発
【0128】
HSAを含まない新しいインターフェロンβ-1a製剤を開発する際の焦点は、最終容器の中で予備実験の結果(酸化防止剤としてのL-メチオニンの有効性と、ポロキサマー188を含めることによる製造中の損失阻止)を確認することであった。
【0129】
54.6mg/mlのマンニトールを含む10mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5)にインターフェロンβ-1aが44mcg/mlまたは88mcg/ml含まれた溶液を調製し、以下の賦形剤を添加した。
・トゥイーン20(0.003%、0.007%、0.02%)
・ポロキサマー188(0.05%、0.1%、0.2%)
・L-メチオニン(0%、0.012%)
・HSA(0.4%、現在の製剤であり、“参照基準”と表示する)
【0130】
調べた製剤の組成を表DEP-7に示す。
【0131】
【表10】
【0132】
以下に説明する手続きに従って製剤を作った。
【0133】
殺菌条件下で、WFIに溶かした必要量の賦形剤を薬剤物質(インターフェロンβ-1a)と混合することにより、それぞれの製剤を90ml作った。次にその製剤を0.22μmの膜で濾過し(2つの膜フィルタで2回濾過した)、それぞれの溶液0.5mlを容積が1mlのハイパック・ガラス製注射器に充填した。バッチのサイズは注射器約180本であった。
【0134】
次に、製剤を2〜8℃、25±2℃、40±2℃で保管し、12週間まで(40±2℃で保管したサンプルについては6週間まで)の期間に関して安定性を調べた。
【0135】
開発中は以下の分析試験と分析方法を利用した(これら試験法の詳細については、実施例2を参照のこと)。
- 生物活性(CPEバイオアッセイ)
- アッセイ(RP-HPLC法)
- 酸化生成物(RP-HPLC法)
- 二量体/凝集体(SE-HPLC法とSDS-PAGE)
- pH(電位差法)
- 浸透圧モル濃度(凝固点降下測定)。
【0136】
結果とその評価を表DEP-8〜表DEP-17にまとめてある。
【0137】
【表11】
【0138】
直線回帰分析によって計算して表DEP-9にまとめてある傾斜から、トゥイーン20を含むすべての製剤(#1、#2、#3、#9)を40℃で保管すると、生物活性が低下することがわかる。生物活性の低下は、25℃と2〜8℃で保管した製剤#3と#6(界面活性剤の濃度が最大)でも観察される。
【0139】
【表12】
【0140】
【表13】
【0141】
直線回帰分析によって計算して表DEP-11にまとめてある傾斜から、トゥイーン20を含むすべての製剤(#1、#2、#3、#9)を40℃で保管すると、失われるタンパク質がより多くなることがわかる。同じ傾向が、25℃においてと、製剤#5と#6でも観察される。タンパク質含有量の顕著な減少が、2〜8℃において、製剤#1、#2、#3(トゥイーン20を含む)、#4、#5(ポロキサマー188を含む)、#9(トゥイーン20とL-メチオニンを含む)で起こる。
【0142】
【表14】
【0143】
【表15】
【0144】
直線回帰分析によって計算して表DEP-13にまとめてある傾斜から、トゥイーン20を含む製剤は、ポロキサマー188を含む製剤と比べて酸化速度が大きいことと、酸化レベルはトゥイーン20の濃度に依存することがわかる。
【0145】
調べたさまざまな温度でL-メチオニンが酸化を制限する効果は、製剤#9(トゥイーン20+L-メチオニン)を製剤#3(トゥイーン20)と比較し、製剤#10(ポロキサマー188+L-メチオニン)を製剤#6(ポロキサマー188)と比較することによってもわかる。
【0146】
【表16】
【0147】
【表17】
【0148】
直線回帰分析によって計算して表DEP-15にまとめてある傾斜から、いろいろな温度で保管したときに全凝集体の含有量は顕著には増加しないことがわかる。
【0149】
【表18】
【0150】
【表19】
【0151】
保管してもpHのシフトは観察されない。
【0152】
【表20】
【0153】
調べた製剤の浸透圧モル濃度は適切な値である。
【0154】
製剤開発の結果に基づき、HSAを含まない以下の製剤を選択した。
・44または88mcg/mlのインターフェロンβ-1aが含まれた酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5)。
この酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5)には、
・54.6mg/mlのマンニトール
・1mg/mlのポロキサマー188
・0.12mg/mlのL-メチオニンが含まれている。
【0155】
1.3.2 過剰
【0156】
過剰量にはしなかった。
【0157】
1.3.3 物理化学的特性と生物学的特性
【0158】
すでに述べたように、製剤開発の研究においてこれらの特性を考慮した。
【0159】
1.4 製造法の開発
【0160】
1.4.1 製造法の開発
【0161】
現在の製造方法を変更し、新しい製剤について実験室スケールのバッチを製造できるようにした。薬剤物質を諸成分と直接混合した後、工業スケールの方法と同じようになるよう、二重濾過を実施した。二重濾過では、殺菌濾過を行ない、次いでインライン濾過を行なった後に、注射器に充填する。次に、注射器に手で最終殺菌溶液を充填した。
【0162】
両方の濾過ステップと注射器充填ステップは層流下で実施した。
【0163】
この方法の各ステップについて以下に説明する。
【0164】
1.4.2 事前の計算
【0165】
44mcg/mlの溶液を得るのに必要な薬剤物質インターフェロンβ-1aの量D(mg):
D(mg)= 44mcg/ml×90ml = 3960mcg = 3.96mg。
D(mg)に対応する薬剤物質インターフェロンβ-1aの体積B(ml):
B(ml)= 3.96mg:バルクの滴定量(mg/ml)。
44mcg/mlの溶液を90ml得るのに必要な賦形剤溶液の体積V(ml):
V(ml)= 90ml - B(ml)*。
*(密度は約1g/ml)
【0166】
1.4.3 1Mの水酸化ナトリウム溶液の調製
【0167】
WFIの中に1Mの水酸化ナトリウムが含まれた溶液を調製した。
【0168】
1.4.4 0.01Mの水酸化ナトリウム緩衝液(pH3.5)の調製
【0169】
適量の氷酢酸をWFIに添加し、1MのNaOHまたは希酢酸を用いてpHを3.5±0.2に調節した。この溶液にWFIを補足して最終体積にした。
【0170】
1.4.5 賦形剤溶液の調製
【0171】
計算で求めた賦形剤(マンニトール、トゥイーン20またはポロキサマー188、L-メチオニン)の量を測り、必要量の0.01M酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5)に溶かした。次にpHを調べ、必要な場合には1MのNaOHまたは希酢酸を用いて値を3.5±0.2に調節した。次にこの溶液に0.01M酢酸ナトリウム緩衝液を補足し、最終体積にした。
【0172】
1.4.6 薬剤物質溶液の混合
【0173】
薬剤物質インターフェロンβ-1aの必要量B(g)を必要量の賦形剤溶液V(g)に添加し、穏やかに撹拌して均一にする。
【0174】
1.4.7 薬剤物質溶液の第1回目の濾過
【0175】
次にこの混合溶液を、ステンレス鋼製ホルダの中に取り付けた0.2μmのナイロン膜(アルティポアN660.2μm、φ2.5cm、ポール社)で窒素圧力(最大1バール)下にて濾過し、ガラス製ビーカーの中に回収する。
【0176】
1.4.8 薬剤物質溶液の第2回目の濾過
【0177】
次に、前に濾過した溶液を新しい0.2μmのナイロン膜で同じ条件下にて再び濾過する。
【0178】
1.4.9 注射器への充填
【0179】
容積1mlのガラス製注射器に0.5mlの最終溶液を殺菌充填する。
【0180】
1.4.10 この方法を実施している間の温度
【0181】
冷やしたWFIを用い、そして賦形剤溶液と混合した溶液を2〜8℃で保管することにより、このプロセス全体を通じて温度をできるだけ冷蔵条件に維持する。
【実施例2】
【0182】
オートインジェクタに適したカートリッジ内の無HSAインターフェロンβ-1a複数回用量液体製剤
【0183】
現在市販されている注射器入り製品からHSAを除去することを目的とした新しい無HSA製剤を開発しているとき、カートリッジに入った複数回用量の製品を開発する必要性が出てきた。複数回用量の製剤があれば、オートインジェクタを用いて自分で投与できるために患者の利便性が高まるであろう。
【0184】
最もよく用いられている静菌剤(0.3%のm-クレゾール、0.5%のフェノール、0.9%のベンジルアルコール)を活性物質と組み合わせて調べ、1回用量の製剤を開発している中で選択した注射器入り1回用量製剤と比較した(44または88mcg/mlのインターフェロンβ-1aと、54.6mg/mlのマンニトールと、1mg/mlのポロキサマー188と、0.12mg/mlのL-メチオニンとが10mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5)に含まれたもの)。すると以下のことが観察された。
・細菌による汚染を阻止するため、それぞれの静菌剤が一般に使用されている濃度で含まれるようにすると、酸化形態が増加し、凝集化の劇的な増加が促進された。
・0.3%のm-クレゾールの場合と、0.5%のフェノールと0.1%のポロキサマー188を組み合わせた場合に、凝集化が劇的に増加した。
【0185】
製剤開発の予備段階で得られた情報に基づき、製剤の開発を、まず最初は、ベンジルアルコールとフェノール(ポロキサマー188はなし)、ならびに添加する静菌剤(クロロブタノール、フェニルエタノール)に絞った。EDTAもベンジルアルコールと組み合わせて調べた。活性薬の酸化と凝集化が、観察された主な劣化経路であった。製剤に含まれるベンジルアルコールの量が減少すると製品の貯蔵寿命が延びることがわかった。
【0186】
この段階で調べた他のどの保存剤も、製品の安定性を顕著に向上させることはできなかった。
【0187】
製剤開発の最後に、以下に示す複数回用量の製品が候補となることが明らかになった。
・製剤B:264mcgのインターフェロンβ-1aと、163.8mgのマンニトールと、3mgのポロキサマー188と、0.36mgのL-メチオニンと、6mgのベンジルアルコールとが10mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5)3mlに含まれたもの。
・製剤A:264mcgのインターフェロンβ-1aと、163.8mgのマンニトールと、3mgのポロキサマー188と、0.36mgのL-メチオニンとが11mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5)2.7mlに含まれたものを、3%のベンジルアルコールを含むWFIと混合することにより、最終的な複数回用量の製剤を得る。
【0188】
それぞれの候補製剤について実験室スケールの3つのバッチを作り、6ヶ月までの期間にわたって安定性を上に示した方法で調べた。どちらの候補製剤でも、2〜8℃で保管したときには顕著な劣化は起こらなかった。加速条件(25℃)にしたときに起こる主な劣化は、酸化である。
【0189】
この研究の最後に、2つの複数回用量製剤候補が同程度の安定性プロファイルを持つことが明らかになった。
・製剤Bは、0.2%のベンジルアルコールを含む複数回用量の製剤であり、そのまま使用できる。
・製剤Aは、0.3%のベンジルアルコールを含む複数回用量の製剤であり、2つのカートリッジ(一方は活性成分と賦形剤を含んでおり、もう一方は、最終状態にするのに必要な量のベンジルアルコールを含んでいる)の内容物を混合した後に得られる。
【0190】
2.1 研究の目的
【0191】
この研究の目的は、3mlのカートリッジにインターフェロンβ-1aが264mcg含まれた無HSA複数回用量製剤を開発し、オートインジェクタで投与できるようにすることであった。
【0192】
2.2 実験の部
【0193】
2.2.1 材料
【0194】
インターフェロンβ-1a(セロノ社)
マンニトールDAB、Ph Eur、BP、USP、FCC、E421(メルク社)
氷酢酸100% GR(メルク社)
水酸化ナトリウムのペレット GR(メルク社)
ポロキサマー188(ルトロールF68 DAC、USP/NF、BASF社)
生化学実験用L-メチオニン(メルク社)
合成用m-クレゾール(メルク社)
合成用フェノール(メルク社)
ベンジルアルコール Ph Eur、BP、NF(メルク社)
クロロブタノール(オールドリッチ社)
フェニルエタノール(シグマ社)
メチルパラベンナトリウム BP、USP/NF(フォルメンティ社)
プロピルパラベンナトリウム BP、USP/NF(フォルメンティ社)
EDTA二ナトリウム塩(フルカ社)
1,2-プロパンジオール超高純度 DAB、Ph Eur、BP、USP(メルク社)
アセトニトリル(メルク社)
トリフルオロ酢酸(ベーカー社)
ヘプタフルオロブチル酸(ピアース社)
【0195】
2.2.2 装置
【0196】
HPLCシステム(ウォーターズ社)
ミレニアム32ソフトウエア(ウォーターズ社)
浸透圧計(オスモスタット0.30-D、ゴノテック社)
pH計(モデル654、メトローム社)
較正されたピペット(ジルソン社)
アルティポアN66、0.2μmナイロン膜、FTKNF、φ4.7cm(ポール社)
アルティポアN66、0.2μmナイロン膜、NR14225、φ14.2cm(ポール社)
ステンレス鋼製ホルダ、φ4.7cmとφ10cm(サルトリウス社)
ステンレス鋼製タンク(サルトリウス社)
C4カラム5μm(0.46×25cm)(ベーカー社)
C4カラム、スペルコシルLC-304 5μm(0.46×25cm)(スペルコ社)
TSKカラム、G2000SWXL(0.46×25cm)(トーソーハアス社)
【0197】
2.3 予備製剤の研究
【0198】
まず最初に、最もよく用いられている静菌剤(0.3%のm-クレゾール、0.5%のフェノール、0.9%のベンジルアルコール)を活性物質およびさまざまな賦形剤の混合物と組み合わせ、最終容器(3mlのカートリッジ)の中で調べた。賦形剤の混合物は、酢酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液/マンニトール、酢酸塩緩衝液/マンニトール/L-メチオニン/ポロキサマー188である。さまざまな環境における活性物質の適合性を、40℃で保管したときの酸化(RP-HPLCで調べる)と凝集化(SE-HPLCで調べる)をもとにして調べた。この予備段階の各ステップで調べた製剤のまとめを表1に示してある。
【0199】
それぞれの静菌剤を含めた効果を、1回用量の製剤を開発している中で選択した注射器入り1回用量製剤(基準)と比較した(44または88mcg/mlのインターフェロンβ-1aと、54.6mg/mlのマンニトールと、1mg/mlのポロキサマー188と、0.12mg/mlのL-メチオニンとが10mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5)に含まれたもの)。
【0200】
【表21】
【0201】
2.4 製剤の開発
【0202】
製剤開発の予備段階で得られた情報に基づき、製剤の開発を、まず最初は、ベンジルアルコールとフェノールに絞った。添加する静菌剤(クロロブタノール、フェニルエタノール)とEDTAをベンジルアルコールと組み合わせた場合も調べた。HSAを含まない1回用量インターフェロンβ-1a製剤に対応する比較用製剤(MS-3)もカートリッジ内に調製し、参照基準として用いた。
【0203】
この段階で製造した製剤の組成(単位はmg/ml)を表2〜表5に示してある。
【0204】
【表22】
【0205】
【表23】
【0206】
【表24】
【0207】
【表25】
【0208】
製剤開発の最後に、以下に示す複数回用量の製剤候補が明らかになった。
・製剤B:54.6mgのマンニトールと、1mgのポロキサマー188と、0.12mgのL-メチオニンと、2mgのベンジルアルコール(0.2%のベンジルアルコール)とが10mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5)3mlに含まれた中に264mcgのインターフェロンβ-1aが含まれているもの。
・製剤A:54.6mgのマンニトールと、1mgのポロキサマー188と、0.12mgのL-メチオニンとが10mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5)2.7mlに含まれた中に264mcgのインターフェロンβ-1aが含まれているものを0.3mlの3%ベンジルアルコールと混合し、最終的な複数用量の製剤(ベンジルアルコールが0.3%)を得る。
【0209】
2.5 保管効果のテスト
【0210】
EPとUSPの薬局方に従って保管効果のテストを行ない、さまざまな濃度のベンジルアルコール(0.2%〜0.9%)を含む複数回用量製剤のスクリーニングをした。
【0211】
インジケータとして黄色ブドウ球菌、黒色アスペルギルス、カンジダアルビカンスを選択し、最初のテストを行なった。製剤が酸性pHであること自体が細菌(黄色ブドウ球菌)に対する静菌効果を持っているという証拠と、カンジダアルビカンスのいくつかの菌株が小さなpH値(約2)でさえ生き延びるという事実から、カンジダアルビカンスをテストのための極めて重要なインジケータとして選択した。EPとUSP両方の薬局方に記載されている保存効果テストで認められる基準を適用した。
【0212】
2.6 候補製剤
【0213】
2.6.1 製剤A
【0214】
1バッチ当たり約140本のカートリッジからなる実験スケールのバッチを3つ作った。製剤の組成を表6に示す。
【0215】
【表26】
【0216】
活性成分を賦形剤溶液と混合した後、0.22μmのナイロン膜で濾過した。カートリッジに最終溶液2.7mlを充填した。濾過前、濾過後、充填後にサンプルを採取し、その間の活性成分の損失を調べた。
【0217】
サンプルを2〜8℃(6ヶ月)、25±2℃(3ヶ月)、40±2℃(1ヶ月)で保管し、安定性を調べた。
【0218】
3%のベンジルアルコールが含まれたWFIからなる実験スケールのバッチを6つ作り、活性成分を含むカートリッジと混合した。バッチの組成を表7に示す。
【0219】
【表27】
【0220】
必要量のベンジルアルコールをWFIに添加した後、0.22μmのデュラポア膜で濾過した。次に、カートリッジに0.5mlを充填し、最後にオートクレーブで殺菌した。
【0221】
サンプルを25±2℃で保管し、ベンジルアルコールの含有量とpHを1ヶ月後まで調べた。
【0222】
2.6.2 製剤B
【0223】
1バッチ当たり約500本のカートリッジからなる実験スケールのバッチを3つ作った。製剤の組成を表8に示す。
【0224】
【表28】
【0225】
活性成分を賦形剤溶液と混合した後、0.22μmのナイロン膜で濾過した。カートリッジに最終溶液3mlを充填した。濾過前、濾過後、充填後にサンプルを採取し、その間の活性成分の損失を調べた。
【0226】
サンプルを2〜8℃(6ヶ月)、25±2℃(6ヶ月)、40±2℃(3週間)で保管し、安定性を調べた。
【0227】
2.6.3 保管効果のテスト
【0228】
EPとUSP薬局方に従い、両方の候補製剤の保管効果を調べた。
【0229】
2.7 分析テストと分析法
【0230】
あとで説明する分析テストと分析法を利用し、実験室スケールの製剤の安定性を調べた:pH(電位差測定)。
【0231】
タンパク質定量アッセイ(RP-HPLC)
【0232】
C4、ワイド-ポア・ブチル5μlカラム(ベーカー社)上でタンパク質の定量を行なう。波長は214nmに設定し、溶離は、以下の移動相と勾配を用いて1ml/分にて行なう。
A = 水/トリフルオロ酢酸0.1%;B = アセトニトリル/トリフルオロ酢酸0.1%;C = アセトニトリル
勾配:
0分 70%A 30%B 0%C
5.0分 70%A 30%B 0%C
6.0分 58%A 42%B 0%C
15.0分 57%A 43%B 0%C
30.0分 46%A 54%B 0%C
35.0分 45%A 55%B 0%C
40.0分 40%A 60%B 0%C
40.1分 20%A 80%B 0%C
45.0分 20%A 80%B 0%C
45.0分 0%A 0%B 100%C
50.0分 0%A 0%B 100%C
50.1分 70%A 30%B 0%C
65.0分 70%A 30%B 0%C
保持時間 = 65分
【0233】
サンプルの分析は、そのままのサンプル(44mcg/mlのサンプル)を100μl注入するか、88mcg/mlのサンプルに関しては同等なプラセボの中に希釈(1:1)したもの100μlを注入して行なう。
【0234】
参照基準となる標準材料を用いて得た標準曲線の0.0125mg/ml〜0.2mg/mlの範囲でサンプルの定量を行なう。
【0235】
酸化形態(RP-HPLC)
【0236】
40℃に維持したC4、スペルコシルLC-304カラム(スペルコ社)上で酸化形態の定量を行なう。波長は208nmに設定し、溶離は、以下の移動相と勾配を用いて1ml/分にて行なう。
A = 水60%/アセトニトリル40%/ヘプタフルオロブチル酸0.14%;B = 水20%/アセトニトリル80%/ヘプタフルオロブチル酸0.14%;C = 水20%/アセトニトリル80%/トリフルオロ酢酸0.1%
勾配:
0分 70%A 30%B 0%C
5分 70%A 30%B 0%C
58分 62%A 38%B 0%C 曲線6
63分 0%A 100%B 0%C 曲線1
68分 0%A 0%B 100%C 曲線1
69分 70%A 30%B 0%C 曲線6
実行時間:96分(70分+26分平衡)
【0237】
サンプルの分析を、そのままのサンプルを200μl(88mcg/mlのサンプル)注入するか、400μl(44mcg/mlのサンプル)注入して行なう。
【0238】
全凝集体(SE-HPLC)
【0239】
凝集体の全含有量の検出を、TSK G2000SWXLカラム(トーソーハアス社)上で実施する。溶離は、アセトニトリル:水(30:70)+0.2%トリフルオロ酢酸を用いて0.5ml/分にてアイソクラティック・モードで実施する。波長は214nmに設定する。実行時間は20分である。
【0240】
サンプルの分析を、そのままのサンプルを100μl(88mcg/mlのサンプル)注入するか、200μl(44mcg/mlのサンプル)注入して行なう。
【0241】
生物活性(インビトロ・バイオアッセイ)
【0242】
IFN-βがウイルス(水疱性口内炎ウイルス)の細胞変性効果から細胞(WISH細胞-ヒト羊膜組織)を保護することに基づく抗ウイルス・アッセイを利用し、生物活性を測定する。
【0243】
浸透圧モル濃度(凝固点降下測定)
【0244】
調べる溶液で観察される凝固点の降下を測定することにより、浸透圧モル濃度を明らかにする。
【0245】
ベンジルアルコール・アッセイ(GC法)
【0246】
ベンジルアルコールを検出するGC法では、1点較正を利用する。そのとき、参照基準として、メルク社から供給されたベンジルアルコールを用いる。さらに内標準(フェニルエチルアルコール)を利用し、テストする両方のサンプルと、対照サンプル溶液と、標準溶液のピークの面積を規格化する。この方法は、スペルコポート80/100メッシュ上の10%カーボワックス20Mを用い、6フィート×2mmID鋼カラム上で実施する。検出装置はFID(水素炎イオン化検出器)である。
【0247】
結果は、ベンジルアルコール1ml当たりのmgを単位として表示する。
【0248】
2.7.1 結果
【0249】
2.7.1.1 予備製剤
【0250】
ストレス条件(40℃)下で検出された酸化形態と全凝集体のレベルを表9と表10に示す。
【0251】
【表29】
【0252】
【表30】
【0253】
細菌による汚染を防止するためにそれぞれの静菌剤が一般に使用されている濃度で含まれるようにすると、1回用量の製剤(参照基準)と比較して酸化形態が増加し、凝集化の劇的な増加が促進された。
【0254】
0.5%フェノールと0.1%ポロキサマー188の組み合わせは、製品の安定性にマイナスの効果を及ぼした。なぜなら、凝集体が約40%生成したからである(製剤P、Q、R)。0.3%m-クレゾールを用いると凝集体が増加して製品の安定性にマイナスの効果を及ぼしたため(製剤I)、それ以上開発することは止めた。
【0255】
2.7.1.2 製剤の開発
【0256】
安定性のデータ(生データ)は、すべてこのセクションの表にまとめてある。直線回帰分析を利用してデータを評価した。
【0257】
2.7.1.2.1 ベンジルアルコールを含む製剤
【0258】
高濃度のベンジルアルコール(0.9%)は、酸化形態と凝集体の含有量の両方に関して製品の安定性にマイナスの効果を及ぼした。そのことが図1〜図6からわかる。
・図1からわかるように、ストレス条件(40℃)下では、ベンジルアルコールを0.9%含む製剤(MS-1とMS-2)で酸化の増加がより大きい。
・図2からわかるように、加速条件(25℃)下では、ベンジルアルコールを含むすべての製剤で、ベンジルアルコールを含まない製剤(MS-3、参照基準)と比べて酸化の増加が大きい。
・長期にわたって保管(2〜8℃)すると、ベンジルアルコールを0.9%含む製剤(MS-1とMS-2)でより大きな酸化速度が観察された。それと同等の分解速度が、ベンジルアルコールを0.45%未満含む製剤で検出された(図3)。
【0259】
凝集体のレベルに関しては以下のことが観察された。
・図4からわかるように、ストレス条件(40℃)下では、ベンジルアルコールを0.9%含む製剤(MS-1とMS-2)で凝集体の増加が観察された。図5と図6からわかるように、加速条件かつ長期保管条件(25℃と、2〜8℃)下では、どの製剤でも凝集体の増加は観察されなかった。
・ベンジルアルコールを0.9%含む製剤(MS-1とMS-2)で40℃にて生物活性の低下が観察された。この現象は、同じサンプルを25℃で保管した場合や2〜8℃で保管した場合には観察されない。
・どの温度で保管しても力価の低下は観察されなかった。
・どの温度で保管してもpHのシフトは起こらなかった。
【0260】
2.7.1.2.2 別の静菌剤(フェノール、クロロブタノール、フェニルエタノール)を含む製剤
【0261】
図7と図8からわかるように、フェノール(MS-4とMS-5)は、酸化形態に関して製品の安定性にマイナスの効果を及ぼしたが、クロロブタノール(MS-35)とフェニルエタノール(MS-34とMS-34b)は、参照基準溶液(MS-3、静菌剤なし)と同等の安定性を示した。
【0262】
全凝集体のレベルに関しては、図9に示したように、フェノールを含む製剤(MS-4とMS-5)で凝集体の劇的な増加がストレス条件(40℃)下で観察された。より低い温度(25℃と2〜8℃)では、凝集体の増加は起こらなかった。
【0263】
2.7.1.2.3 EDTAを含む製剤
【0264】
0.1%〜0.2%のベンジルアルコールを含む製剤(MS-32、MS-33、MS-36)にEDTAを添加しても酸化レベルは低下しなかった(図10)。0.1%のEDTAと0.2%のベンジルアルコールを含む製剤(MS-32、MS-33)では、加速条件下で凝集体のレベルの上昇が観察された(図11)。2〜8℃では同等の劣化が観察された。
【0265】
2.7.1.2.4 保管効果に関する結果
【0266】
スクリーニング研究の結果から、(カンジダアルビカンスについては)少なくともベンジルアルコールが0.3%以上の濃度ではUSPとEPの薬局方の基準が満たされていることがわかった。
【0267】
2.8 候補製剤
【0268】
全データを以下のようにして評価した。各バッチについて直線回帰分析を行なった後、共分散分析(P値>0.25)によってバッチ間の差異を評価した。保管によって差異が観察されなかったときには、正式の統計分析は行なわなかった。
【0269】
2.8.1 候補A
【0270】
2.8.1.1 製造中の回収
【0271】
候補Aの製造中に回収したサンプル(濾過前、濾過後、完成した製品)に含まれるインターフェロンβ-1aを表11にまとめてある。活性成分の顕著な損失は記録されなかった。
【0272】
【表31】
【0273】
2.8.1.2 活性薬の安定性
【0274】
異なる温度で保管した3つのバッチにおける酸化形態のレベルに関し、共通の傾斜と切片を計算した。統計分析の結果を表12に示す。
【0275】
【表32】
【0276】
全凝集体のレベルとアッセイに関して有意な差異は観察されなかった。そのため正式の統計分析は行なわなかった。3つのバッチで凝集体のレベルが異なるのは、製造に使用したバルク中でのレベルが異なるためである。
【0277】
2.8.2 候補B
【0278】
2.8.2.1 製造中の回収
【0279】
候補Bの製造中に回収したサンプル(濾過前、濾過後、完成した製品)に含まれるインターフェロンβ-1aを表13にまとめてある。活性成分の顕著な損失は記録されなかった。
【0280】
【表33】
【0281】
2.8.2.2 活性薬の安定性
【0282】
酸化形態のレベルを統計的に分析することによって以下のことがわかった。
・3つのバッチについて、40℃における共通の傾斜と切片を計算した。共通の傾斜は1.42%/週であり、共通の切片は2.72%である。
・3つのバッチについて25℃における共通の傾斜を計算することはできなかった(P値=0.095)。したがって最悪のケース(MS-3)の結果を使用した。1ヶ月保管した後に酸化形態が1.17%増加することが観察された(0.27%/週)。
・3つのバッチについて2〜8℃における共通の傾斜を計算することはできなかった(P値=0.016)。したがって最悪のケース(MS-3)の結果を使用した。1ヶ月保管した後に酸化形態が0.2%増加することが観察された(0.047%/週)。
【0283】
全凝集体のレベルとアッセイに関して安定性のデータから有意な差異は観察されなかった。そのため正式の統計分析は行なわなかった。
【0284】
ストレス条件(40℃)下で保管しても、生物活性の低下は観察されなかった。
【0285】
2.9 結論
【0286】
研究の最後に、2つの複数用量製剤候補が同程度の安定性プロファイルを持つことが明らかになった。
・候補製剤Bは、0.2%のベンジルアルコールを含む複数回用量製剤であり、そのまま使用できる。
・製剤Aは、0.3%のベンジルアルコールを含む複数回用量製剤であり、2つのカートリッジ(一方は活性成分と賦形剤を含んでおり、もう一方は、最終状態にするのに必要な量のベンジルアルコールを含んでいる)の内容物を混合した後に得られる。
・これらの候補溶液をより大きなpH(4.5±0.2)でも調べたが、安定性プロファイルに顕著な変化は見られなかった。出願人は、今や、IFN製剤のこのわずかに大きなpHが、皮下注射の局所的寛容性を増大させることを見いだした。したがってpHが4.5または4.7の上記2つの候補溶液は、患者のコンプライアンスに関して従来よりも大きな利点を提供することができよう。
【実施例3】
【0287】
候補製剤Aの製造方法
【0288】
まず最初に、20gのペレット状水酸化ナトリウムを500gのWFIに溶かして1Nの水酸化ナトリウム溶液を調製した。
【0289】
次に、氷酢酸1.32gを約1,800gのWFIに添加して0.011Mの酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5±0.2)を調製した。この溶液のpHは、1NのNaOHを用いてpH3.5±0.2に調節した。次に、この溶液の最終重量を2000gにした。次に、1NのNaOHまたは50%希酢酸を用い、pHを再び3.5±0.2に調節した。次に、この溶液の最終重量を2000gにした。
【0290】
最終溶液は以下のようにして調製した。
【0291】
賦形剤の計算値を計量し、必要量の11mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5±0.2)に溶かし、この溶液のpHを調べて(必要な場合には)調節した。次に、必要量のr-hインターフェロンβ-1a(CHO細胞が産生した組み換え体)を添加した。11mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5±0.2)を添加して最終重量にした。
【0292】
この最終溶液1mlを採取し、定量RP-HPLCで調べた(サンプルBF=第1回目の濾過前)。
【0293】
次に、この最終溶液を、ステンレス鋼製ホルダの内部に取り付けた0.2μmの膜で濾過し、ガラス製ビーカーに回収した。
【0294】
この最終溶液1mlを採取し、定量RP-HPLCで調べた。
【0295】
上記のようにして濾過した最終溶液を、ステンレス鋼製ホルダの内部に取り付けた0.2μmの第2の膜で濾過した。
【0296】
この最終溶液1mlを採取し、定量RP-HPLCで調べた。
【0297】
3mlのガラス製カートリッジにこの最終溶液2.7mlを充填して漏れないようにした。
【0298】
この溶液は、3%ベンジルアルコール溶液を含むWFIが収容されたカートリッジとそのまま混合することができる。
【実施例4】
【0299】
候補製剤Bの製造方法
【0300】
まず最初に、20gのペレット状水酸化ナトリウムを500gのWFIに溶かして1Nの水酸化ナトリウム溶液を調製した。
【0301】
次に、氷酢酸1.32gを約1,800gのWFIに添加して0.011Mの酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5±0.2)を調製した。この溶液のpHは、1NのNaOHを用いてpH3.5±0.2に調節した。次に、この溶液の最終重量を2000gにした。次に、1NのNaOHまたは50%希酢酸を用い、pHを再び3.5±0.2に調節した。次に、この溶液の最終重量を2000gにした。
【0302】
最終溶液は以下のようにして調製した。
【0303】
賦形剤の計算値を計量し、必要量の10mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5±0.2)に溶かし、この溶液のpHを調べて(必要な場合には)調節した。次に、必要量のr-hインターフェロンβ-1a(CHO細胞が産生した組み換え体)を添加した。10mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5±0.2)を添加して最終重量にした。
【0304】
この最終溶液1mlを採取し、定量RP-HPLCで調べた。
【0305】
次に、この最終溶液を、ステンレス鋼製ホルダの内部に取り付けた0.2μmの膜で濾過し、ガラス製ビーカーに回収した。
【0306】
この最終溶液1mlを採取し、定量RP-HPLCで調べた。
【0307】
上記のようにして濾過した最終溶液を、ステンレス鋼製ホルダの内部に取り付けた0.2μmの第2の膜で濾過した。
【0308】
この最終溶液1mlを採取し、定量RP-HPLCで調べた。
【0309】
3mlのガラス製カートリッジにこの最終溶液2.7mlを充填して漏れないようにした。
【0310】
参考文献
【0311】
1.研究グループ、The Lancet、1998年、第352巻、1498〜1504ページ。
2.CleggとBryant、Exp. Opin. Pharmacother、2001年、第2巻(4)、623〜639ページ。
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5.Hultgren C.、Milich D.R.、Weiland O.、Sallberg M.、1998年、「抗ウイルス化合物リバビリンは、B型肝炎ウイルスとC型肝炎ウイルスによるウイルス特異的免疫応答においてTヘルパー(Th)1/Th2サブセットのバランスを変化させる」、J. Gen. Virol.、1998年、第79巻、2381〜2391ページ。
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8.『酵素学における方法』、第119巻(Pestka, S編、アカデミック・プレス社、ニューヨーク、1986年)の中のPestka, Sによる「インターフェロンの規格と一般的な略号」、14〜23ページ。
9.Rubinstein S.、Familletti, P.C.、Pestka, S、「インターフェロンの簡便なアッセイ」、J. Virol.、1981年、第37巻、755〜758ページ。
10.Shepard H.M.他、Nature、1981年、第294巻、563〜565ページ。
【図面の簡単な説明】
【0312】
【図1】さまざまな濃度のベンジルアルコールを含むインターフェロンβ-1a複数回用量製剤を40℃で保管した後、その中に存在する酸化形態の割合を示すグラフである。
【図2】さまざまな濃度のベンジルアルコールを含むインターフェロンβ-1a複数回用量製剤を25℃で保管した後、その中に存在する酸化形態の割合を示すグラフである。
【図3】さまざまな濃度のベンジルアルコールを含むインターフェロンβ-1a複数回用量製剤を2〜8℃で保管した後、その中に存在する酸化形態の割合を示すグラフである。
【図4】さまざまな濃度のベンジルアルコールを含むインターフェロンβ-1a複数回用量製剤を40℃で保管した後、その中に存在する全凝集体の割合を示すグラフである。
【図5】さまざまな濃度のベンジルアルコールを含むインターフェロンβ-1a複数回用量製剤を25℃で保管した後、その中に存在する全凝集体の割合を示すグラフである。
【図6】さまざまな濃度のベンジルアルコールを含むインターフェロンβ-1a複数回用量製剤を2〜8℃で保管した後、その中に存在する全凝集体の割合を示すグラフである。
【図7】別の静菌剤を含むインターフェロンβ-1a複数回用量製剤を25℃で保管した後、その中に存在する酸化形態の割合を示すグラフである。
【図8】別の静菌剤を含むインターフェロンβ-1a複数回用量製剤を2〜8℃で保管した後、その中に存在する酸化形態の割合を示すグラフである。
【図9】別の静菌剤を含むインターフェロンβ-1a複数回用量製剤を40℃で保管した後、その中に存在する全凝集体の割合を示すグラフである。
【図10】EDTAを含むインターフェロンβ-1a複数回用量製剤を25℃で保管した後、その中に存在する酸化形態の割合を示すグラフである。
【図11】EDTAを含むインターフェロンβ-1a複数回用量製剤を25℃で保管した後、その中に存在する全凝集体の割合を示すグラフである。
【図12】酸化防止剤としての0.012%L-メチオニンの効果を示すグラフである(2〜8℃)。
【図13】酸化防止剤としての0.012%L-メチオニンの効果を示すグラフである(25±2℃)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、インターフェロンを含む医薬組成物に関するものであり、より詳細には、添加される医薬用賦形剤としてのヒト血清アルブミンを含まない安定なインターフェロンβ製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
インターフェロンはサイトカインである。すなわち、細胞間でメッセージを伝達し、免疫系で極めて重要な役割を果たす可溶性タンパク質である。免疫系での役割は、感染を起こす微生物を破壊するのを助け、その結果として起こるあらゆる損傷を修復するというものである。インターフェロンは、感染した細胞から自然に分泌される物質であり、1957年に初めて同定された。その名称は、インターフェロンがウイルスの複製と産生を“インターフェアする(阻止する)”という事実に由来する。
【0003】
インターフェロンは、抗ウイルス活性と抗増殖活性の両方を示す。天然のヒト・インターフェロンは、生化学特性と免疫特性に基づいて3つの主要なクラスに分類されている。すなわち、インターフェロンα(白血球)、インターフェロンβ(線維芽細胞)、インターフェロンγ(免疫)である。インターフェロンαは、現在アメリカ合衆国その他の国で、毛様細胞性白血病、性病いぼ、カポジ肉腫(後天性免疫不全症候群(エイズ)患者で一般に見られるがん)、慢性非A型肝炎、慢性非B型肝炎の治療に用いることが認められている。
【0004】
さらに、インターフェロン(IFN)は、身体がウイルスの感染に応答して産生する糖タンパク質である。インターフェロンは、防護された細胞内でのウイルスの増殖を抑制する。IFNは低分子量のタンパク質からなり、作用は極めて非特異的である。1つのウイルスによって誘導されるIFNが、広い範囲の他のウイルスにも有効である。しかしIFNは種特異的である。すなわち1つの種が産生するIFNは、同じ種の細胞、または密接な関係のある種の細胞における抗ウイルス活性だけを刺激する。IFNは、その潜在的な抗腫瘍活性と抗ウイルス活性が研究された最初のサイトカイン群である。
【0005】
3つの主要なIFNは、IFN-α、IFN-β、IFN-γと呼ばれる。中心的なこれらのIFNは、最初は、出所となる細胞(白血球、線維芽細胞、T細胞)によって分類された。しかしいくつかのタイプが1つの細胞で産生されているらしいことが明確になってきた。そこで現在では、白血球IFNはIFN-αと呼ばれ、線維芽細胞IFNはIFN-βと呼ばれ、T細胞IFNはIFN-γと呼ばれている。第4のタイプのIFNとして、(バーキット・リンパ腫に由来する)“ナマルワ”細胞系で産生されるリンパ芽球様IFNも存在している。この細胞系は、白血球IFNと線維芽細胞IFNの両方の混合物を産生するように見える。
【0006】
インターフェロン単位、またはインターフェロン国際単位(UまたはIU。IUは国際単位)はIFN活性の指標として知られており、細胞をウイルスの攻撃から50%保護するのに必要な量として定義される。生物活性の測定に利用できるアッセイは、以前に報告されている細胞変性効果抑制アッセイである(Rubinstein S.他、1981年;Familletti, P.C.他、1981年)。インターフェロンに関するこの抗ウイルス・アッセイでは、約1単位/mlのインターフェロンが、50%の細胞変性効果を生み出すのに必要な量である。この単位は、国立衛生研究所から提供されたヒトIFN-βの国際参照基準に対して測定される(Pestka, S、1986年)。
【0007】
どのクラスのIFNも、異なるいくつかのタイプを含んでいる。IFN-βとIFN-γは、それぞれ単一の遺伝子の産物である。
【0008】
IFN-αに分類されるタンパク質は最も多彩なグループであり、約15のタイプを含んでいる。第9染色体上にIFN-α遺伝子のクラスターが存在していて、そこには少なくとも23個のメンバーが含まれており、そのうちの15個は活性であって転写される。成熟したIFN-αはグリコシル化されない。
【0009】
IFN-αとIFN-βはすべて同じ長さであり(アミノ酸が165個または166個)、似た生物活性を持っている。IFN-γは長さがアミノ酸が146個であり、αとβのクラスほどは似ていない。IFN-γだけが、マクロファージを活性化したり、キラーT細胞の成熟を誘導したりできる。新しいタイプのこれら治療薬は、腫瘍に対する生物の応答に効果を及ぼし、免疫調節を通じて認識に影響を与えるため、免疫調節剤(BRM)と呼ばれることがある。
【0010】
ヒト線維芽細胞インターフェロン(IFN-β)は抗ウイルス活性を持っており、ナチュラル・キラー細胞を刺激して腫瘍細胞を攻撃させることもできる。これは約20,000Daのポリペプチドであり、ウイルスと二本鎖RNAによって誘導される。組み換えDNA技術によってクローニングされた維芽細胞インターフェロン遺伝子のヌクレオチド配列(Derynk他、1980年)から、このタンパク質の完全なアミノ酸配列が得られた。長さはアミノ酸166個である。
【0011】
Shepardら(1981年)は、抗ウイルス活性を失った塩基842の突然変異(位置141がシステイン→チロシン)と、ヌクレオチド1119〜1121が欠失したクローン変異体を報告した。
【0012】
Markら(1984年)は、塩基469の(T)を(A)で置換する人工的な突然変異を導入することにより、位置17のアミノ酸をシステインからセリンにした。得られたIFN-βは、“元の”IFN-βと同じくらいの活性があり、長期にわたって保管(-70℃)している間も安定だったと報告されている。
【0013】
多発性硬化症(MS)のためのインターフェロン療法における最新の開発成果であるレビフ(登録商標)(セロノ社、組み換えヒト・インターフェロンβ)は、インターフェロン(IFN)β-1aであり、哺乳動物の細胞系で産生される。推奨されている国際的な非商標名(INN)は、“インターフェロンβ-1a”である。
【0014】
タンパク質をベースとしたあらゆる医薬品と同様、IFN-βを治療薬として使用する際に乗り越えるべき大きな1つの障害は、医薬製剤中での不安定性に起因する可能性のある、医薬としての有効性の喪失である。
【0015】
医薬製剤に含まれるポリペプチドの活性と効果を脅かす物理的な不安定性としては、変性や、可溶性または不溶性の凝集体の形成などがあり、化学的な不安定性としては、加水分解、イミドの形成、酸化、ラセミ化、脱アミノ化などがある。こうした変化のうちのいくつかが起こると、注目のタンパク質の医薬活性が失われたり低下したりする可能性があることが知られている。別のケースでは、こうした変化の結果は明確にはわかっていないが、得られる劣化した生成物は、望ましくない副作用のために医薬として受け入れられないと相変わらず考えられている。
【0016】
医薬組成物に含まれるポリペプチドの安定化では、今でも試行錯誤が主役を演じている(Wang、1999年、Int. J. Pharm.、第185巻、129〜188ページ;WangとHanson、1988年、J. Parenteral Sci. Tech.、第42巻、S3〜S26ページ)。安定性を大きくするためにポリペプチド医薬製剤に添加される賦形剤としては、緩衝液、糖類、界面活性剤、アミノ酸、ポリエチレングリコールポリマーなどがあるが、これら化学添加剤の安定化効果は、タンパク質によって異なる。
【0017】
現在のIFN-β製剤は、IFN-βの可溶性促進剤としてHSAを使用している。しかしHSAを用いることには問題がいくつかある。HSAはヒト血液の生成物であるため、ヒトから回収する必要がある。リスクを小さくする方法が採られているとはいえ、HSAなどのヒト血液の生成物を使用すると、HIVやHCVなどのヒト・ウイルスが導入される可能性がある。
【0018】
そのため、生理学的に適合性のある安定剤のうちで、IFN-βの可溶性を大きくし、IFN-βを安定化して凝集体が形成されないようにするものを含めることで、医薬としての有効性が高まる別のIFN-β医薬組成物が必要とされている。
【発明の開示】
【0019】
本発明は、インターフェロン(IFN)を含む安定な医薬組成物と、その調製方法を目的とする。この組成物は、ヒト血清アルブミン(HSA)の不在下で調製されるため、この医薬用賦形剤を含んでいない。この明細書では、このような組成物を“無HSA”IFN医薬組成物と呼ぶ。この組成物には、インターフェロン(IFN)、そのアイソフォーム、そのムテイン、その融合タンパク質、その機能性誘導体、その活性な断片、その塩のいずれかが含まれる。この組成物は、緩衝液と、界面活性剤と、等張剤と、酸化防止剤を含んでいる。
【0020】
本発明の態様によると、この組成物は静菌剤も含んでいる。
【0021】
本明細書では、“インターフェロン”または“IFN”に、その名称で文献に定義されているあらゆる分子が含まれるものとする。例えば、上記の“背景技術”の項に記載したあらゆるタイプのIFNが含まれる。特にIFN-α、IFN-β、IFN-γが、上記の定義に含まれる。IFN-βが、本発明における好ましいIFNである。本発明に適したIFN-βは市販されており、例えばレビフ(登録商標)(セロノ社)、アボネックス(登録商標)(バイオジェン社)、ベータフェロン(登録商標)(シェリング社)として入手できる。本発明では、ヒト起源のインターフェロンを使用することも好ましい。この明細書では、インターフェロンという用語に、そのアイソフォーム、そのムテイン、その融合タンパク質、その機能性誘導体、その活性な断片、その塩が含まれるものとする。
【0022】
この明細書では、“インターフェロンβ(IFN-ベータまたはIFN-β)”という用語に、特にヒト起源の線維芽細胞インターフェロン(体液から単離することによって、あるいは宿主原核細胞または宿主真核細胞からDNA組み換え技術によって得られる)と、その塩、その機能性誘導体、その変異体、その類似体、その活性な断片が含まれるものとする。IFN-βは、IFN-β-1aを意味することが好ましい。
【0023】
この明細書では、“ムテイン”という用語は、IFNの類似体のうちで、天然のIFNの1個以上のアミノ酸残基が別のアミノ酸残基で置換されていたり、天然のIFNの1個以上のアミノ酸残基が欠失していたり、天然のIFN配列に1個以上のアミノ酸残基が付加されていたりするが、得られる産物の活性は野生型IFNと比べて顕著に変化していないものを意味する。このようなムテインは、公知の合成法および/または部位指定突然変異誘発技術によって、あるいは適切な他の方法によって作られる。好ましいムテインとしては、例えばShepardら(1981年)またはMarkら(1984年)が報告しているものがある。
【0024】
このようなどのムテインもIFNと十分に重複したアミノ酸配列を持っていて、活性がIFNと実質的に同程度かそれ以上であることが好ましい。インターフェロンの生物学的機能は当業者によく知られており、しかも生物学的規格が確立していて例えば国立生物学規格・規制協会(http://immunology.org/links/NIBSC)から入手することができる。
【0025】
IFNの活性を測定するバイオアッセイが知られている。IFNアッセイは、例えばRubinsteinら(1981年)が記載しているようにして実施することができる。例えば定型的な実験により、任意のムテインがIFNの活性と実質的に同程度かそれ以上の活性を持つかどうかを調べることができる。
【0026】
本発明で使用できるIFNのムテイン、またはそれをコードしている核酸としては、それに実質的に対応する有限数の配列として、置換ペプチドまたは置換ポリヌクレオチドがある。それらは、当業者であればこの明細書に記載した教えまたはガイドに基づき、難しい実験を行なうことなく容易に得ることができる。
【0027】
本発明のムテインにおける好ましい変化は、“保守的”置換として知られるものである。本発明のポリペプチドまたはタンパク質の保守的アミノ酸置換としては、1つのグループ内の同義アミノ酸がある。同義アミノ酸は、互いに十分に似た物理化学的性質を持っているため、そのグループのメンバー同士を置換してもその分子の生物機能が保持される。上記配列に対するアミノ酸の挿入や欠失でその配列の機能を変えないものも可能であることは明らかである。それは特に、挿入または欠失がほんのアミノ酸数個(例えば30個未満であり、10個未満が好ましい)であって、しかも機能する立体配座となる上で極めて重要なアミノ酸(例えばシステイン残基)が変化しない場合に当てはまる。このような欠失および/または挿入によって生まれるタンパク質とムテインは、本発明の範囲に含まれる。
【0028】
同義アミノ酸のグループは、表Iに規定したものであることが好ましい。同義アミノ酸のグループは、表IIに規定したものであることがさらに好ましい。同義アミノ酸のグループは、表IIIに規定したものであることが最も好ましい。
【0029】
表I
【表1】
表II
【表2】
【0030】
表III
【表3】
【0031】
本発明で使用するIFNのムテインを得るのに利用できるタンパク質のアミノ酸置換法の具体例は、公知の任意の方法であり、例えば、Markらに付与されたアメリカ合衆国特許第4,959,314号、第4,588,585号、第4,737,462号;Kothsらに付与されたアメリカ合衆国特許第5,116,943号;Namenらに付与されたアメリカ合衆国特許第4,965,195号;Chongらに付与されたアメリカ合衆国特許第4,879,111号;Leeらに付与されたアメリカ合衆国特許第5,017,691号に記載されており;リシン置換されたタンパク質は、アメリカ合衆国特許第4,904,584号(Shaw他)に提示されている。IFN-βの具体的なムテインは、例えばMarksらが1984年に報告している、
【0032】
“融合タンパク質”という用語は、IFNを含むポリペプチド、またはそのムテインで、例えば体液中の滞留時間が長い別のタンパク質と融合したものを意味する。IFNは、例えば別のタンパク質やポリペプチドなど(例えば免疫グロブリンやその断片)と融合させることができる。
【0033】
この明細書では、“機能性誘導体”に、IFNの誘導体、そのムテイン、その融合タンパク質が含まれる。これらは、各残基の上、あるいはN末端またはC末端の基の上に側鎖として存在する官能基から従来技術で知られている手段で作ることができ、薬理学的に許容可能な状態を維持している(すなわちIFNと実質的に同じ活性を壊すことがなく、その機能性誘導体を含む組成物に毒性を与えない)限りは本発明に含まれる。このような誘導体として、例えば、抗原部位を隠して体液中のIFNの滞留時間を延ばすことのできるポリエチレングリコール側鎖がある。他の誘導体としては、カルボキシル基の脂肪族エステル;アンモニア、第一級アミン、第二級アミンのいずれかと反応させることによるカルボキシル基のアミド;アミノ酸残基の自由なアミノ基とアシル部分(例えばアルカノイル基または炭素環式アロイル基)で形成されたN-アシル誘導体;(例えばセリル残基またはトレオニル残基の)自由なヒドロキシル基とアシル部分で形成されたO-アシル誘導体などがある。
【0034】
本発明では、IFN、ムテイン、融合タンパク質の“活性な断片”に、単独のタンパク質分子のポリペプチド鎖のあらゆる断片または前駆体、あるいは関連する分子または残基(例えば糖残基またはリン酸残基)が結合したタンパク質分子のポリペプチド鎖のあらゆる断片または前駆体、あるいはタンパク質分子または糖残基そのものの凝集体のあらゆる断片または前駆体が含まれる。ただしこの断片は、対応するIFNと比べて活性が顕著に低下していてはならない。
【0035】
この明細書では、“塩”という用語は、上記タンパク質またはその類似体のカルボキシル基の塩と、上記タンパク質またはその類似体のアミノ基の酸添加塩の両方を意味する。カルボキシル基の塩は公知の方法で形成することができ、例えば無機塩(ナトリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、鉄塩、亜鉛塩など)と、有機塩基との塩(例えばアミン(トリエタノールアミンなど)、アルギニン、リシン、ピペリジン、プロカインなどとの塩)がある。酸添加塩としては、例えば無機酸(例えば塩酸や硫酸)との塩や、有機酸(例えば酢酸やシュウ酸)との塩がある。もちろん、このようなどの塩も、本発明に関係するタンパク質(IFN)の生物活性(すなわち対応する受容体に結合する能力や、受容体にシグナル伝達を開始させる能力)を保持している必要がある。
【0036】
本発明によれば、組み換えヒトIFN-βと本発明の化合物を利用することが特に好ましい。
【0037】
特別なインターフェロン変異体が最近報告された。いわゆる“コンセンサス・インターフェロン”は、IFNの自然には生じない変異体である(アメリカ合衆国特許第6,013,253号)。本発明の好ましい態様によると、本発明の化合物は、コンセンサス・インターフェロンと組み合わせて使用される。
【0038】
この明細書では、ヒト・インターフェロン・コンセンサス(IFN-con)は、天然には存在しないポリペプチドで、天然に存在するヒト白血球インターフェロンの亜型の配列の過半数を代表するIFN-αのサブセットに共通するアミノ酸残基を主に含んでいて、すべての亜型に共通するアミノ酸が存在することはない1つ以上の位置に、その位置に多く存在するアミノ酸を含むが、天然に存在する少なくとも1つの亜型においてその位置に存在していないそのアミノ酸残基も含まないものを意味する。IFN-conには、例えばIFN-con1、IFN-con2、IFN-con3と表わされるアミノ酸配列が含まれ、これらはアメリカ合衆国特許第4,695,623号、第4,897,471号、第5,541,293号に開示されている。IFN-conをコードしているDNA配列は、これら特許に記載されているようにして作ること、あるいは他の標準的な方法で作ることができる。
【0039】
さらに別の好ましい態様では、融合タンパク質がIg融合体を含んでいる。直接融合させること、あるいは短いリンカー・ペプチドを介して融合させることが可能である。リンカー・ペプチドとしては、長さがアミノ酸1〜3個のものや、より長くて例えばアミノ酸残基が13個のものが可能である。リンカー・ペプチドは、例えば配列E-F-M(グルタミン酸-フェニルアラニン-メチオニン)を持つトリペプチドにすること、またはグルタミン酸-フェニルアラニン-グリシン-アラニン-グリシン-ロイシン-バリン-ロイシン-グリシン-グリシン-グルタミン-フェニルアラニン-メチオニンという13個のアミノ酸を含むリンカー配列にすることが可能であり、それをIFN配列と免疫グロブリン配列の間に導入できる。得られる融合タンパク質は特性が改善され、体液中の滞留時間(半減期)が延びたり、比活性が増大したり、発現レベルが増大したりする。また、融合タンパク質の精製が簡単になる可能性もある。
【0040】
さらに別の好ましい態様では、IFNをIg分子の定常領域と融合させる。IFNは、重鎖領域(例えばヒトのIgG1またはIgG3のCH2ドメインまたはCH3ドメイン)と融合させることが好ましい。Ig分子の他のアイソフォーム(例えばアイソフォームIgG2やIgG4、または他のクラスのIgであるIgMやIgA)も、本発明の融合タンパク質を作るのに適している。融合タンパク質は、単量体でも多量体でもよく、ヘテロ多量体でもホモ多量体でもよい。
【0041】
さらに別の好ましい態様では、機能性誘導体は、アミノ酸残基上の1つ以上の側鎖として存在する1つ以上の官能基に結合した少なくとも1つの部分を備えている。この部分はポリエチレングリコール(PEG)部であることが好ましい。PEG化は、公知の方法で実施することができ、その方法は例えばWO 99/55377に記載されている。
【0042】
個人への投与量は、1回の投与であれ、複数回の投与であれ、多様な因子に依存する。因子としては、薬理動態、投与経路、患者の状態と特性(性別、年齢、体重、健康状態、サイズ)、症状の進み具合、同時に実施している治療、治療の頻度、望む効果などがある。
【0043】
ヒトIFN-βの標準的な投与量は、1日につき80,000IU/kg〜200,000IU/kg、または一人当たり1日に6MIU(100万国際単位)〜12MIU、または一人当たり22〜44μg(マイクログラム)である。本発明によれば、IFNは、一人当たり1日につき約1〜50μgの量を投与することが好ましい。この量は、約10〜30μg、または約10〜20μgであることがより好ましい。
【0044】
本発明による活性成分の投与は、静脈内経路、筋肉内経路、皮下経路で行なうことができる。IFNの好ましい投与経路は、皮下経路である。
【0045】
IFNは、毎日、または2日に1回、またはそれよりも少ない頻度で投与することも可能である。IFNは、1週間に1回、または2回、または3回投与することが好ましい。
【0046】
好ましい投与経路は皮下経路であり、例えば1週間に3回投与する。好ましいさらに別の投与経路は筋肉内投与であり、例えば1週間に1回投与することができる。
【0047】
22〜44μg、または6MIU〜12MIUのIFN-βを、皮下注射で1週間に3回投与することが好ましい。
【0048】
IFN-βは、25〜30μgまたは8MIU〜9.6MIUの量を、2日に1回皮下投与することができる。さらに、30μgまたは6MIUのIFN-βを、1週間に1回筋肉内投与することもできる。
【0049】
“安定性”という用語は、本発明のインターフェロン製剤の物理的安定性、化学的安定性、高次構造上の安定性(生物学的効果の維持も含まれる)を意味する。タンパク質製剤の不安定性は、タンパク質分子が化学的に分解または凝集してより高次のポリマーを作ること、脱グリコシル化すること、グリコシル化後に修飾されること、酸化することによって、あるいは本発明に含まれるインターフェロン・ポリペプチドの少なくとも1つの生物活性を低下させる他のあらゆる構造変化が起こることによって、発生する可能性がある。
【0050】
“安定な”溶液または製剤は、タンパク質の分解、修飾、凝集、生物活性の喪失などの程度が受け入れられる程度に制御されていて、時間経過とともに受け入れられないほど大きくはなることはない溶液または製剤である。製剤は、表示されているインターフェロン活性の少なくとも約60%を12〜24ヶ月の期間にわたって保持することが好ましい。この割合は、少なくとも約70%であることがより好ましく、少なくとも約80%であることが最も好ましい。HSAを含まない安定な本発明のIFN組成物は、2〜8℃で保管したときの保管期間が少なくとも約6ヶ月、12ヶ月、18ヶ月であることが好ましいが、この期間は少なくとも20ヶ月であることがより好ましく、少なくとも22ヶ月であることがさらに好ましく、少なくとも24ヶ月であることが最も好ましい。
【0051】
HSAを含まない本発明のIFN医薬組成物の安定性をモニターする方法として、従来技術の方法(例えば、この明細書に開示した実施例に記載してある方法)を利用できる。例えば本発明の液体医薬組成物を保管している間のIFN凝集体形成は、溶液に含まれる可溶性IFNの時間変化を測定することによって容易に明らかにすることができる。溶液中の可溶性ポリペプチドの量は、IFNの検出に適した多数の分析法で定量することができる。このような方法として、例えば後出の実施例に記載した逆相(RP)-HPLC法、UV吸収分光法などがある。
【0052】
保管している間の液体製剤中の可溶性凝集体と不溶性凝集体の測定は、例えば後出の実施例に記載した超遠心分離分析法を利用し、可溶性凝集体として存在する可溶性ポリペプチドの部分と、生物活性のある非凝集分子形態として存在する部分とを区別することによって実現できる。
【0053】
“複数回用量の使用”という表現には、インターフェロン製剤を含む単一のバイアル、アンプル、カートリッジを2回以上(例えば2、3、4、5、6回またはそれ以上)使用して注射することが含まれる。注射は、少なくとも約12時間、24時間、48時間の期間にわたって繰り返して行なう。この期間は、約12日間までであることが好ましい。次の注射までの時間間隔は、例えば6、12、24、48、72時間のいずれかにするとよい。
【0054】
“緩衝液”または“生理学的に許容可能な緩衝液”という表現は、医薬または獣医学において製剤中で使用しても安全であることがわかっていて、その製剤のpHを望む範囲に維持または制御する効果のある化合物の溶液を意味する。pHをわずかに酸性からわずかに塩基性の範囲の値に調整するための許容可能な緩衝液としては、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、アルギニン、トリス、ヒスチジンなどの化合物がある。“トリス”は、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールと、その薬理学的に許容可能な塩を意味する。好ましい緩衝液は、生理食塩水または許容できる塩を含む酢酸塩緩衝液である。
【0055】
“等張剤”は、生理学的に許容されていて、製剤に適切な張性を与え、製剤と接触している細胞膜を新たな水流が通過することを阻止する化合物である。そのような目的では、一般に、グリシンなどの化合物を濃度がわかった状態で使用する。適切な他の等張剤としては、アミノ酸またはタンパク質(例えばグリシンまたはアルブミン)、塩(例えば塩化ナトリウム)、糖類(例えばデキストロース、マンニトール、スクロース、ラクトース)などが挙げられる。等張剤はマンニトールであることが好ましい。
【0056】
“酸化防止剤”という用語は、酸素または酸素由来のフリーラジカルが他の物質と相互作用するのを阻止する化合物を意味する。酸化防止剤は、物理的安定性と化学的安定性を大きくするために医薬系に一般に添加される多数の賦形剤の1つである。酸化防止剤は、ある種の薬または賦形剤が酸素に曝露されたりフリーラジカルの存在下に置かれたりしたときに起こる酸化プロセスを最少にするため、あるいは遅延させるために添加する。このプロセスは、光、温度、濃縮水素、微量の金属の存在、微量の過酸化物の存在を触媒として起こることがしばしばある。亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ尿素、メチオニン、エチレンジアミン四酢酸の塩(EDTA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)が薬剤中の酸化防止剤としてよく用いられる。EDTAナトリウムは、酸化反応を触媒する金属イオンを封鎖することによって酸化防止剤の活性を大きくすることがわかっている。最も好ましい酸化防止剤はメチオニンである。
【0057】
“静菌”という用語は、製剤に抗菌剤として作用させるために添加する化合物または組成物を意味する。保管状態にある本発明のインターフェロン含有製剤は、保存剤の有効性に関する法定ガイドラインまたは規制ガイドラインに合致していて、市販できる多数回使用の製品となることが好ましい。静菌剤の具体例としては、フェノール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン(メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ジヒドロ酢酸ナトリウム、チメロサールなどがある。静菌剤はベンジルアルコールが好ましい。
【0058】
“界面活性剤”という用語は、液体の表面張力を小さくしたり、2種類の液体間の界面張力を小さくしたり、液体と固体の間の界面張力を小さくしたりする可溶性化合物を意味する。なお表面張力とは、液体の表面に作用して表面積を最小にしようとする力である。界面活性剤は、医薬製剤にときどき使用されてきた。それは、例えば、低分子量の薬剤やポリペプチドを送達したり、薬剤の吸収状態を変化させたり、標的組織への薬剤の送達を変化させたりすることが目的である。よく知られている界面活性剤としては、ポリソルベート(ポリオキシエチレン誘導体;トゥイーン)やプルロニックがある。
【0059】
本発明の好ましい態様によると、インターフェロンを、プルロニック(登録商標)F77、プルロニックF87、プルロニックF88、プルロニック(登録商標)F68の中から選択した界面活性剤(特にプルロニックF68(BASF社、プルロニックF68はポロキサマー188としても知られる)が好ましい)とともに製剤化することにより、バイアルおよび/または送達装置(例えば注射器、ポンプ、カテーテルなど)の表面に吸着されることによって起こる活性成分の損失が最少になった安定な製剤が得られることがわかった。また、インターフェロンを、プルロニック(登録商標)F77、プルロニックF87、プルロニックF88、プルロニック(登録商標)F68の中から選択した界面活性剤(特にプルロニックF68(BASF社、プルロニックF68はポロキサマー188としても知られる)が好ましい)とともに製剤化することにより、酸化とタンパク質凝集体の形成に対する抵抗力がより大きい安定な製剤が得られることがわかった。
【0060】
プルロニックという界面活性剤は、エチレンオキシド(EO)とポリエチレンオキシド(PO)のブロック・コポリマーである。ポリエチレンオキシド(PO)ブロックは、2つのエチレンオキシド(EO)ブロックの間に挟まれる。
【0061】
【化1】
【0062】
界面活性剤プルロニックは、以下に示す2ステップのプロセスで合成される。
1.プロピレンオキシドをプロピレングリコールの2つのヒドロキシル基に制御しながら付加することにより、望む分子量の疎水性部分を作り;
2.エチレンオキシドを添加してその疎水性部分を親水基の間に挟み込む。
【0063】
プルロニック(登録商標)F77では、ポリオキシエチレン(親水性部分)の割合が70%であり、疎水性部分(ポリオキシプロピレン)の分子量は約2,306Daである。
【0064】
プルロニックF87では、ポリオキシエチレン(親水性部分)の割合が70%であり、疎水性部分(ポリオキシプロピレン)の分子量は約2,644Daである。
【0065】
プルロニックF88では、ポリオキシエチレン(親水性部分)の割合が80%であり、疎水性部分(ポリオキシプロピレン)の分子量は約2,644Daである。
【0066】
プルロニックF68では、ポリオキシエチレン(親水性部分)の割合が80%であり、疎水性部分(ポリオキシプロピレン)の分子量は約1,967Daである。
【0067】
プルロニックF77の典型的な性質を以下に示す。
平均分子量:6600;
融点/流動点:48℃;
20℃における物理的形態:固体;
粘性率(ブルックフィールド)cps:480(25℃で液体、60℃でペースト、77℃で固体);
25℃における表面張力、ダイン/cm;
濃度0.1%:47.0
濃度0.01%:49.3
濃度0.001%:52.8
ヌジョールに対する25℃における界面張力、ダイン/cm;
濃度0.1%:17.7
濃度0.01%:20.8
濃度0.001%:25.5
25℃におけるドレーブス湿潤化法、秒
濃度1.0%:>360
濃度0.1%:>360
泡の高さ
50℃におけるロス・マイルス法、0.1%、mm:100
26℃におけるロス・マイルス法、0.1%、mm:47
400ml/分における動態、0.1%、mm:>600
水溶液中の曇点、℃
濃度1%:>100
濃度10%:>100
HLB(親水性-親油性バランス):25。
【0068】
プルロニックF87の典型的な性質を以下に示す。
平均分子量:7700;
融点/流動点:49℃;
20℃における物理的形態:固体;
粘性率(ブルックフィールド)cps:700(25℃で液体、60℃でペースト、77℃で固体);
25℃における表面張力、ダイン/cm;
濃度0.1%:44.0
濃度0.01%:47.0
濃度0.001%:50.2
ヌジョールに対する25℃における界面張力、ダイン/cm;
濃度0.1%:17.4
濃度0.01%:20.3
濃度0.001%:23.3
25℃におけるドレーブス湿潤化法、秒
濃度1.0%:>360
濃度0.1%:>360
泡の高さ
50℃におけるロス・マイルス法、0.1%、mm:80
26℃におけるロス・マイルス法、0.1%、mm:37
400ml/分における動態、0.1%、mm:>600
水溶液中の曇点、℃
濃度1%:>100
濃度10%:>100
HLB(親水性-親油性バランス):24。
【0069】
プルロニックF88の典型的な性質を以下に示す。
平均分子量:11400;
融点/流動点:54℃;
20℃における物理的形態:固体;
粘性率(ブルックフィールド)cps:2300(25℃で液体、60℃でペースト、77℃で固体);
25℃における表面張力、ダイン/cm;
濃度0.1%:48.5
濃度0.01%:52.6
濃度0.001%:55.7
ヌジョールに対する25℃における界面張力、ダイン/cm;
濃度0.1%:20.5
濃度0.01%:23.3
濃度0.001%:27.0
25℃におけるドレーブス湿潤化法、秒
濃度1.0%:>360
濃度0.1%:>360
泡の高さ
50℃におけるロス・マイルス法、0.1%、mm:80
26℃におけるロス・マイルス法、0.1%、mm:37
400ml/分における動態、0.1%、mm:>600
水溶液中の曇点、℃
濃度1%:>100
濃度10%:>100
HLB(親水性-親油性バランス):28。
【0070】
プルロニックF68の典型的な性質を以下に示す。
平均分子量:8400;
融点:52℃;
20℃における物理的形態:固体;
粘性率(ブルックフィールド)cps:1000(25℃で液体、60℃でペースト、77℃で固体);
25℃における表面張力、ダイン/cm;
濃度0.1%:50.3
濃度0.01%:51.2
濃度0.001%:53.6
ヌジョールに対する25℃における界面張力、ダイン/cm;
濃度0.1%:19.8
濃度0.01%:24.0
濃度0.001%:26.0
25℃におけるドレーブス湿潤化法、秒
濃度1.0%:>360
濃度0.1%:>360
泡の高さ
50℃におけるロス・マイルス法、0.1%、mm:35
26℃におけるロス・マイルス法、0.1%、mm:40
400ml/分における動態、0.1%、mm:>600
水溶液中の曇点、℃
濃度1%:>100
濃度10%:>100
HLB(親水性-親油性バランス):29。
【0071】
上記の性質と似た性質を持つ他のポリマーも本発明の製剤で使用できる。好ましい界面活性剤は、プルロニックF68と、それと似た性質を持つ界面活性剤である。
【0072】
プルロニックが、中でもプルロニックF68が、インターフェロンの安定性を望む保管期間(例えば12〜24ヶ月)を通じて維持するのに十分な濃度で、しかも表面(例えばバイアル、アンプル、カートリッジ、注射器)への吸着によるタンパク質の損失を阻止するのに十分な濃度で存在していることが好ましい。
【0073】
液体製剤中のプルロニック(特にプルロニックF68)の濃度は、約0.01mg/ml〜約10mg/mlであることが好ましい。この値は、約0.05mg/ml〜約5mg/mlであることがより好ましく、約0.1mg/ml〜約2mg/mlであることがさらに好ましく、約1mg/mlであることが最も好ましい。
【0074】
製剤中のIFN-βの濃度は、約10μg/ml〜約800μg/mlであることが好ましい。この値は、約20μg/ml〜約500μg/mlであることがより好ましく、約30μg/ml〜約300μg/mlであることがさらに好ましく、約22、44、88、264μg/mlのいずれかであることが最も好ましい。
【0075】
本発明の製剤は、pHが約3.0〜約5.0であることが好ましい。この値は、約3.7または約4.7であることがより好ましい。好ましい緩衝液は、対イオン、好ましくはナトリウム・イオンまたはカリウム・イオンを伴う酢酸塩である。酢酸生理緩衝液は従来技術でよく知られている。全溶液中の緩衝液の濃度は、約5mM、9.5mM、10mM、50mM、100mM、150mM、200mM、250mM、及び500mMにすることができる。緩衝液の濃度は、約10mMであることが好ましい。特に好ましいのは、酢酸塩イオンが10mMで、pHが3.5±0.2または4.5±0.2の緩衝液である。
【0076】
本発明の組成物には、酸化防止剤(例えばメチオニン)が、約0.01〜約5.0mg/mlの濃度で存在していることが好ましい。この値は、約0.05〜約0.3mg/mlであることがより好ましく、約0.1mg/mlであることが最も好ましい。
【0077】
製剤中の等張剤(例えばマンニトール)の濃度は、約0.5mg/ml〜約500mg/mlである。この値は、約1mg/ml〜約250mg/mlであることがより好ましく、約10mg/ml〜約100mg/mlであることがさらに好ましく、約55mg/mlであることが最も好ましい。
【0078】
本発明には液体製剤が含まれる。好ましい溶媒は、注射用の水である。
【0079】
液体製剤は、1回用量、または複数回用量にすることができる。複数回用量を目的とした本発明の液体インターフェロン製剤は、静菌剤として、例えばフェノール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン(メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ジヒドロ酢酸ナトリウム、チメロサールを含んでいることが好ましい。特に好ましいのは、フェノール、ベンジルアルコール、m-クレゾールであり、その中でもベンジルアルコールがより好ましい。静菌剤は、製剤中に実質的に細菌が存在しない(注射に適した)状態を複数回の注射を行なう期間全体にわたって維持するのに有効な濃度となる量を使用する。その期間は、約12時間または24時間〜約12日間、好ましくは約6日間〜約12日間になろう。静菌剤は、約0.1%(静菌剤の重量/溶媒の重量)〜約2.0%の濃度で存在していることが好ましい。この値は、約0.2%〜約1.0%であることがより好ましい。ベンジルアルコールの場合には、0.2%または0.3%の濃度が特に好ましい。しかし保存剤(例えばベンジルアルコール)の使用は複数回用量の製剤に限られることはなく、1回用量の製剤に保存剤を添加することもできる。
【0080】
本発明の製剤に含まれるインターフェロンの範囲は、再構成したときに濃度が約1.0μg/ml〜約50mg/mlとなる量であるが、より大きな濃度やより小さな濃度も可能であり、それは、考えている送達手段が何であるかによって異なる。例えば溶液製剤は、経皮パッチ法、肺送達法、経粘膜法、浸透圧法、マイクロポンプ法のうちのどの方法にするかによって異なる。インターフェロンの濃度は、約5.0μg/ml〜約2mg/mlであることが好ましい。この値は、約10μg/ml〜約1mg/mlであることがより好ましく、約30μg/ml〜約100μg/mlであることが最も好ましい。
【0081】
本発明の製剤は、パッケージングしたときに24ヶ月にわたってインターフェロン活性の少なくとも約60%を維持することが好ましい。この値は、少なくとも約70%であることがより好ましく、少なくとも約80%であることが最も好ましい。
【0082】
本発明のさらに別の好ましい態様により、上に説明した液体医薬製剤の製造方法が提供される。
【0083】
本発明のさらに別の好ましい態様では、パッケージングされた医薬組成物を製造するため、上記の活性成分と賦形剤とを含む溶液を配置する操作を含む方法が提供される。
【0084】
本発明のさらに別の好ましい態様では、ヒトが医薬として使用する製品として、上記の医薬組成物が収容されたバイアルを備えていて、その溶液を最初に使用してから約24時間後まで、またはそれ以上の期間にわたって有効であることを記した書面が添付された製品が提供される。書面には、溶液を約12日後まで有効であると記載されていることが好ましい。
【0085】
複数用量製剤は、最初に使用した後、少なくとも約24時間の期間にわたって保管すること、または使用することができる。この期間は、少なくとも約4、5、6日間であることが好ましく、12日間までであることがさらに好ましい。製剤を最初に使用した後は、室温よりも低い温度(すなわち約25℃以下)で保管することが好ましい。この温度は、約10℃以下であることがより好ましく、約2〜8℃であることがさらに好ましく、約4〜6℃であることが最も好ましい。
【0086】
本発明の製剤は、計算で求めた量の賦形剤を緩衝溶液に添加した後、インターフェロンを添加する操作を含む方法で調製することができる。
【0087】
次に、得られる溶液を、バイアル、アンプル、カートリッジのいずれかに入れる。当業者であれば、この方法のいろいろな変形例を知っているであろう。例えば、成分を添加する順番、添加物を使用するかどうか、製剤を調製するときの温度とpHなどはすべて、濃度と投与法をどのようにするかを決める際に最適化すべき因子であろう。
【0088】
複数用量製剤の場合には、活性成分(インターフェロン)を含む溶液に静菌剤を添加するか、静菌剤を別のバイアルまたはカートリッジに保管し、使用時に活性成分を含む溶液と混合する。
【0089】
本発明の製剤は、認可されている装置を用いて投与することができる。単一バイアル・システムを備える具体例としては、レビジェクト(登録商標)など、溶液を供給するためのオートインジェクタまたはペン式注射器がある。
【0090】
この明細書で権利を主張する製品には、パッケージ材料も含まれる。パッケージ材料により、取り締まり機関が要求する情報に加え、その製品を使用できる条件が提供される。本発明のパッケージ材料により、必要な場合には、2バイアル式の湿潤/乾燥製品に関し、最終溶液を調製し、その最終溶液を24時間またはそれ以上の期間にわたって使用するための指示が患者に与えられる。単一バイアルの場合には、ラベルに、溶液を24時間以上の期間にわたって使用できることを記載する。この明細書で権利を主張する製品は、ヒトの医薬品として有用である。
【0091】
保管された安定な製剤は、透明な溶液として患者に提供することができる。この溶液は、1回だけ使用することや、複数回再利用することができ、しかも患者に対して一連の治療を1回または複数回行なうのに十分であるため、現在よりも便利な治療計画が提供される。
【0092】
この明細書に記載した安定な製剤または溶液としてのインターフェロン、あるいは保管された製剤または溶液としてのインターフェロンは、本発明に従い、さまざまな投与法で患者に投与することができる。投与法としては、従来技術でよく知られているように、皮下注射、筋肉内注射;経皮投与、肺投与、経粘膜投与、インプラント、浸透圧ポンプ、カートリッジ、マイクロポンプ、経口投与や、当業者が評価する従来技術でよく知られた他の手段などがある。
【0093】
“バイアル”という用語は、広く、インターフェロンを固体または液体の形態に維持するのに適した容器を意味する。この明細書で使用するバイアルの具体例としては、アンプル、カートリッジ、ブリスター包装のほか、インターフェロンを注射器、ポンプ(浸透圧ポンプ)、カテーテル、経皮パッチ、肺スプレー、経粘膜スプレーを通じて患者に送達するのに適した他の容器などがある。非経口投与、肺投与、経粘膜投与、経皮投与する製品をパッケージングするのに適したバイアルは従来技術でよく知られており、認可されている。
【0094】
本発明の文脈における“治療”という用語は、疾患の進行に関するあらゆる好ましい効果(例えば、疾患が発症した後の病状の展開が緩和、逆行、軽減、鈍化すること)を意味する。
【0095】
IFN、そのアイソフォーム、そのムテイン、その融合タンパク質、その機能性誘導体、その活性な断片、その塩のいずれかが含まれた本発明の医薬組成物は、このPFNというポリペプチドを用いた治療法に反応する臨床上の徴候を診断、予防、治療(局所または全身)するのに役立つ。このような臨床上の徴候としては、例えば、中枢神経系(CNS)、脳、脊髄の異常や疾患(多発性硬化症など);自己免疫疾患(関節リウマチ、乾癬、クローン病など);がん(乳がん、前立腺がん、膀胱がん、腎臓がん、大腸がんなど)などがある。
【0096】
この明細書に引用したあらゆる参考文献(その中には、学術論文または要約、アメリカ合衆国またはそれ以外の国の特許出願と特許などが含まれる)は、その引用文献に提示されているあらゆるデータ、表、図、文章を含め、その全体が参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。さらに、この明細書で引用した参考文献の中で引用されている参考文献の全内容も、その全体が参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。
【0097】
公知の方法のステップ、従来法のステップ、公知の方法または従来法への言及があるからといって、本発明のあらゆる特徴、説明、実施態様が、関連する従来技術に開示、教示、示唆されていることを意味するものでは決してない。
【0098】
特別な実施態様に関する上記の説明により本発明の一般的な性質が十分に明らかになったはずであるゆえ、第三者は、従来技術での知識(その中にはこの明細書で引用した参考文献の内容が含まれる)を適用することにより、難しい実験を行なったり、本発明の一般的な考え方から逸脱したりすることなく、さまざまな用途のために実施態様を容易に変更および/または改変することができる。したがってそのような改変や変更は、この明細書に示した教えとガイドに基づき、開示した実施態様の等価物の範囲に含まれるものとする。この明細書で用いる表現または用語は説明を目的としたものであって本発明を制限することは意図していないため、当業者は、この明細書の表現または用語を、この明細書に示した教えとガイドに当業者の知識を組み合わせて解釈すべきであることを理解されたい。
【実施例1】
【0099】
注射器にあらかじめ充填した1回用量の無HSAインターフェロンβ-1a液体製剤
【0100】
1.1 適合性の予備調査
【0101】
何種類かの賦形剤(例えば酸化防止剤や界面活性剤)が示す保護効果を確認するため、予備実験を行なった。なぜなら、ヒト血清アルブミン(HSA)を現在の製品から除去したことで、酸化と、凝集体の形成と、表面への吸着に関して製品が影響を受ける可能性のあることが予想されたからである。
【0102】
54.6mg/mlのマンニトールと何種類かの賦形剤を含む酢酸ナトリウム緩衝液の中にインターフェロンβ-1aが44mcg/mlと88mcg/mlの濃度で含まれる製剤を作った。賦形剤は、0.4%のHSA、0.012%のL-メチオニン、トゥイーン20(0.005%、0.007%、0.01%)、ポロキサマー188(0.05%、0.1%、0.5%)である。このいろいろな組み合わせの製剤をストレス条件下(40℃で保管するか、撹拌する)に置き、酸化(RP-HPLCで調べる)と凝集化(SE-HPLCで調べる)を調べた。
【0103】
表DEP-1と表DEP-2に、40℃で2週間保管した後の酸化と凝集化のレベルをまとめてある。インターフェロンβ-1aと調べた両方の界面活性剤(トゥイーン20とポロキサマー188)を組み合わせると、それぞれのタイプの界面活性剤について、濃度に依存して酸化レベルが上昇した(表DEP-1、組み合わせ#4〜6、#7〜9)。ポロキサマー188(プルロニックF68、またはF68とも呼ばれる)が0.5%のレベルだと、薬剤物質が完全に分解する(表DEP-1、#9)。予想通り、合成からの残基として存在する可能性のある酸化種(例えば過酸化物)のため、より大きな分解速度がトゥイーン20に関して観察される。
【0104】
両方の界面活性剤をさまざまな濃度で調べたが、40℃で保管するときには凝集化のレベルに影響を与えない(表DEP-2)。
【0105】
【表4】
【0106】
【表5】
【0107】
表DEP-3は、臨界ミセル濃度(CMC)で使用した両方の界面活性剤(トゥイーン20とポロキサマー188)が、5分間の撹拌によって誘導される凝集化を阻止するのに役立つことを示している。
【0108】
【表6】
【0109】
1.1.1 物理-化学的特性
【0110】
製品としての薬剤の品質にとって極めて重要であることが知られている物理-化学的特性は、酸化の程度と、二量体/凝集体の量である。これらの特性を、上にまとめた適合性の研究を行なう際に考慮した。
【0111】
1.2 賦形剤
【0112】
1.2.1 10mMの酢酸ナトリウム緩衝液、pH3.5
【0113】
等張剤として54.6mg/mlのマンニトールを含む10mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5)は製品を安定化させる、それは、現在市販されている製品(レビフ(登録商標))が以前に開発されたときにわかったことであり、そのことはヨーロッパ特許第759,775号に記載されている。
【0114】
1.2.2 ポロキサマー188
【0115】
ポロキサマー188(またはプルロニックF68)が製剤に0.1%のレベルで含まれているため、製造中に薬剤物質が容器の表面に吸着することが阻止される。濃度をより大きくすると、製品の安定性にマイナスの影響を与える(酸化が増える)可能性があり、濃度をより小さくすると、吸着を制限する効果が小さくなる可能性がある。
【0116】
ポロキサマー188が製造中の薬剤物質の吸着を阻止する効果を、以下の研究によって明らかにした。すなわち、44mcg/mlのインターフェロンβ-1aを含む溶液を異なる3つの濃度の界面活性剤(トゥイーン20とポロキサマー188)またはHSAと組み合わせ、製造プロセスを実施し;いろいろな段階(混合段階、殺菌濾過段階、充填段階)でサンプルを採取して定量的RP-HPLC法で調べた。
【0117】
以下のサンプルを採取した。
- 濾過前(BF)
- 1回目の濾過後(AF1)
- 2回目の濾過後(AF2)
- 充填後(T=0における最終製品)。
【0118】
結果を表DEP-4に記載してあり、初期値(すなわち濾過前の化合物溶液)に対する回収率(%)として表示してある。製造中の薬剤物質の吸着を阻止することに関し、ポロキサマー188はトゥイーン20よりも効果があるが、HSAとは同じ程度である。
【0119】
【表7】
【0120】
いろいろな供給者から入手したグレートの異なるポロキサマー188を用いて加速条件(2週間、40℃)下の酸化生成物について調べ、使用すべき品質を明らかにした。その結果、BASF社からのポロキサマー188が選択された。なぜならポロキサマー188は酸化レベルがより低く、医薬品グレードとして供給されているからである。結果を表DEP-5にまとめてある。
【0121】
【表8】
【0122】
1.2.3 L-メチオニン
【0123】
製剤にL-メチオニン(L-Met)を0.012%のレベルで入れ、酸化を制限した。この濃度の有効性は、L-メチオニンを含まない製剤と比較するとわかる。より高濃度(0.05%、0.1%)のL-メチオニンは、安定性が同程度であった。40℃で保管したときに検出された酸化生成物を表DEP-6に示す。
【0124】
【表9】
【0125】
製剤の開発中に、L-メチオニンを含む製剤にいろいろな界面活性剤を組み合わせた場合に得られた安定性のデータ(2〜8℃と25±2℃で3ヶ月間)から、酸化防止剤としてのL-メチオニンの有効性を確認した。L-メチオニンは、0.012%のレベルで酸化防止剤として有効であり、現在の製品で観察されるのと同程度の安定性を保証することができる(図12と図13を参照のこと)。
【0126】
1.3 薬剤製品
【0127】
1.3.1 製剤の開発
【0128】
HSAを含まない新しいインターフェロンβ-1a製剤を開発する際の焦点は、最終容器の中で予備実験の結果(酸化防止剤としてのL-メチオニンの有効性と、ポロキサマー188を含めることによる製造中の損失阻止)を確認することであった。
【0129】
54.6mg/mlのマンニトールを含む10mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5)にインターフェロンβ-1aが44mcg/mlまたは88mcg/ml含まれた溶液を調製し、以下の賦形剤を添加した。
・トゥイーン20(0.003%、0.007%、0.02%)
・ポロキサマー188(0.05%、0.1%、0.2%)
・L-メチオニン(0%、0.012%)
・HSA(0.4%、現在の製剤であり、“参照基準”と表示する)
【0130】
調べた製剤の組成を表DEP-7に示す。
【0131】
【表10】
【0132】
以下に説明する手続きに従って製剤を作った。
【0133】
殺菌条件下で、WFIに溶かした必要量の賦形剤を薬剤物質(インターフェロンβ-1a)と混合することにより、それぞれの製剤を90ml作った。次にその製剤を0.22μmの膜で濾過し(2つの膜フィルタで2回濾過した)、それぞれの溶液0.5mlを容積が1mlのハイパック・ガラス製注射器に充填した。バッチのサイズは注射器約180本であった。
【0134】
次に、製剤を2〜8℃、25±2℃、40±2℃で保管し、12週間まで(40±2℃で保管したサンプルについては6週間まで)の期間に関して安定性を調べた。
【0135】
開発中は以下の分析試験と分析方法を利用した(これら試験法の詳細については、実施例2を参照のこと)。
- 生物活性(CPEバイオアッセイ)
- アッセイ(RP-HPLC法)
- 酸化生成物(RP-HPLC法)
- 二量体/凝集体(SE-HPLC法とSDS-PAGE)
- pH(電位差法)
- 浸透圧モル濃度(凝固点降下測定)。
【0136】
結果とその評価を表DEP-8〜表DEP-17にまとめてある。
【0137】
【表11】
【0138】
直線回帰分析によって計算して表DEP-9にまとめてある傾斜から、トゥイーン20を含むすべての製剤(#1、#2、#3、#9)を40℃で保管すると、生物活性が低下することがわかる。生物活性の低下は、25℃と2〜8℃で保管した製剤#3と#6(界面活性剤の濃度が最大)でも観察される。
【0139】
【表12】
【0140】
【表13】
【0141】
直線回帰分析によって計算して表DEP-11にまとめてある傾斜から、トゥイーン20を含むすべての製剤(#1、#2、#3、#9)を40℃で保管すると、失われるタンパク質がより多くなることがわかる。同じ傾向が、25℃においてと、製剤#5と#6でも観察される。タンパク質含有量の顕著な減少が、2〜8℃において、製剤#1、#2、#3(トゥイーン20を含む)、#4、#5(ポロキサマー188を含む)、#9(トゥイーン20とL-メチオニンを含む)で起こる。
【0142】
【表14】
【0143】
【表15】
【0144】
直線回帰分析によって計算して表DEP-13にまとめてある傾斜から、トゥイーン20を含む製剤は、ポロキサマー188を含む製剤と比べて酸化速度が大きいことと、酸化レベルはトゥイーン20の濃度に依存することがわかる。
【0145】
調べたさまざまな温度でL-メチオニンが酸化を制限する効果は、製剤#9(トゥイーン20+L-メチオニン)を製剤#3(トゥイーン20)と比較し、製剤#10(ポロキサマー188+L-メチオニン)を製剤#6(ポロキサマー188)と比較することによってもわかる。
【0146】
【表16】
【0147】
【表17】
【0148】
直線回帰分析によって計算して表DEP-15にまとめてある傾斜から、いろいろな温度で保管したときに全凝集体の含有量は顕著には増加しないことがわかる。
【0149】
【表18】
【0150】
【表19】
【0151】
保管してもpHのシフトは観察されない。
【0152】
【表20】
【0153】
調べた製剤の浸透圧モル濃度は適切な値である。
【0154】
製剤開発の結果に基づき、HSAを含まない以下の製剤を選択した。
・44または88mcg/mlのインターフェロンβ-1aが含まれた酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5)。
この酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5)には、
・54.6mg/mlのマンニトール
・1mg/mlのポロキサマー188
・0.12mg/mlのL-メチオニンが含まれている。
【0155】
1.3.2 過剰
【0156】
過剰量にはしなかった。
【0157】
1.3.3 物理化学的特性と生物学的特性
【0158】
すでに述べたように、製剤開発の研究においてこれらの特性を考慮した。
【0159】
1.4 製造法の開発
【0160】
1.4.1 製造法の開発
【0161】
現在の製造方法を変更し、新しい製剤について実験室スケールのバッチを製造できるようにした。薬剤物質を諸成分と直接混合した後、工業スケールの方法と同じようになるよう、二重濾過を実施した。二重濾過では、殺菌濾過を行ない、次いでインライン濾過を行なった後に、注射器に充填する。次に、注射器に手で最終殺菌溶液を充填した。
【0162】
両方の濾過ステップと注射器充填ステップは層流下で実施した。
【0163】
この方法の各ステップについて以下に説明する。
【0164】
1.4.2 事前の計算
【0165】
44mcg/mlの溶液を得るのに必要な薬剤物質インターフェロンβ-1aの量D(mg):
D(mg)= 44mcg/ml×90ml = 3960mcg = 3.96mg。
D(mg)に対応する薬剤物質インターフェロンβ-1aの体積B(ml):
B(ml)= 3.96mg:バルクの滴定量(mg/ml)。
44mcg/mlの溶液を90ml得るのに必要な賦形剤溶液の体積V(ml):
V(ml)= 90ml - B(ml)*。
*(密度は約1g/ml)
【0166】
1.4.3 1Mの水酸化ナトリウム溶液の調製
【0167】
WFIの中に1Mの水酸化ナトリウムが含まれた溶液を調製した。
【0168】
1.4.4 0.01Mの水酸化ナトリウム緩衝液(pH3.5)の調製
【0169】
適量の氷酢酸をWFIに添加し、1MのNaOHまたは希酢酸を用いてpHを3.5±0.2に調節した。この溶液にWFIを補足して最終体積にした。
【0170】
1.4.5 賦形剤溶液の調製
【0171】
計算で求めた賦形剤(マンニトール、トゥイーン20またはポロキサマー188、L-メチオニン)の量を測り、必要量の0.01M酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5)に溶かした。次にpHを調べ、必要な場合には1MのNaOHまたは希酢酸を用いて値を3.5±0.2に調節した。次にこの溶液に0.01M酢酸ナトリウム緩衝液を補足し、最終体積にした。
【0172】
1.4.6 薬剤物質溶液の混合
【0173】
薬剤物質インターフェロンβ-1aの必要量B(g)を必要量の賦形剤溶液V(g)に添加し、穏やかに撹拌して均一にする。
【0174】
1.4.7 薬剤物質溶液の第1回目の濾過
【0175】
次にこの混合溶液を、ステンレス鋼製ホルダの中に取り付けた0.2μmのナイロン膜(アルティポアN660.2μm、φ2.5cm、ポール社)で窒素圧力(最大1バール)下にて濾過し、ガラス製ビーカーの中に回収する。
【0176】
1.4.8 薬剤物質溶液の第2回目の濾過
【0177】
次に、前に濾過した溶液を新しい0.2μmのナイロン膜で同じ条件下にて再び濾過する。
【0178】
1.4.9 注射器への充填
【0179】
容積1mlのガラス製注射器に0.5mlの最終溶液を殺菌充填する。
【0180】
1.4.10 この方法を実施している間の温度
【0181】
冷やしたWFIを用い、そして賦形剤溶液と混合した溶液を2〜8℃で保管することにより、このプロセス全体を通じて温度をできるだけ冷蔵条件に維持する。
【実施例2】
【0182】
オートインジェクタに適したカートリッジ内の無HSAインターフェロンβ-1a複数回用量液体製剤
【0183】
現在市販されている注射器入り製品からHSAを除去することを目的とした新しい無HSA製剤を開発しているとき、カートリッジに入った複数回用量の製品を開発する必要性が出てきた。複数回用量の製剤があれば、オートインジェクタを用いて自分で投与できるために患者の利便性が高まるであろう。
【0184】
最もよく用いられている静菌剤(0.3%のm-クレゾール、0.5%のフェノール、0.9%のベンジルアルコール)を活性物質と組み合わせて調べ、1回用量の製剤を開発している中で選択した注射器入り1回用量製剤と比較した(44または88mcg/mlのインターフェロンβ-1aと、54.6mg/mlのマンニトールと、1mg/mlのポロキサマー188と、0.12mg/mlのL-メチオニンとが10mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5)に含まれたもの)。すると以下のことが観察された。
・細菌による汚染を阻止するため、それぞれの静菌剤が一般に使用されている濃度で含まれるようにすると、酸化形態が増加し、凝集化の劇的な増加が促進された。
・0.3%のm-クレゾールの場合と、0.5%のフェノールと0.1%のポロキサマー188を組み合わせた場合に、凝集化が劇的に増加した。
【0185】
製剤開発の予備段階で得られた情報に基づき、製剤の開発を、まず最初は、ベンジルアルコールとフェノール(ポロキサマー188はなし)、ならびに添加する静菌剤(クロロブタノール、フェニルエタノール)に絞った。EDTAもベンジルアルコールと組み合わせて調べた。活性薬の酸化と凝集化が、観察された主な劣化経路であった。製剤に含まれるベンジルアルコールの量が減少すると製品の貯蔵寿命が延びることがわかった。
【0186】
この段階で調べた他のどの保存剤も、製品の安定性を顕著に向上させることはできなかった。
【0187】
製剤開発の最後に、以下に示す複数回用量の製品が候補となることが明らかになった。
・製剤B:264mcgのインターフェロンβ-1aと、163.8mgのマンニトールと、3mgのポロキサマー188と、0.36mgのL-メチオニンと、6mgのベンジルアルコールとが10mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5)3mlに含まれたもの。
・製剤A:264mcgのインターフェロンβ-1aと、163.8mgのマンニトールと、3mgのポロキサマー188と、0.36mgのL-メチオニンとが11mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5)2.7mlに含まれたものを、3%のベンジルアルコールを含むWFIと混合することにより、最終的な複数回用量の製剤を得る。
【0188】
それぞれの候補製剤について実験室スケールの3つのバッチを作り、6ヶ月までの期間にわたって安定性を上に示した方法で調べた。どちらの候補製剤でも、2〜8℃で保管したときには顕著な劣化は起こらなかった。加速条件(25℃)にしたときに起こる主な劣化は、酸化である。
【0189】
この研究の最後に、2つの複数回用量製剤候補が同程度の安定性プロファイルを持つことが明らかになった。
・製剤Bは、0.2%のベンジルアルコールを含む複数回用量の製剤であり、そのまま使用できる。
・製剤Aは、0.3%のベンジルアルコールを含む複数回用量の製剤であり、2つのカートリッジ(一方は活性成分と賦形剤を含んでおり、もう一方は、最終状態にするのに必要な量のベンジルアルコールを含んでいる)の内容物を混合した後に得られる。
【0190】
2.1 研究の目的
【0191】
この研究の目的は、3mlのカートリッジにインターフェロンβ-1aが264mcg含まれた無HSA複数回用量製剤を開発し、オートインジェクタで投与できるようにすることであった。
【0192】
2.2 実験の部
【0193】
2.2.1 材料
【0194】
インターフェロンβ-1a(セロノ社)
マンニトールDAB、Ph Eur、BP、USP、FCC、E421(メルク社)
氷酢酸100% GR(メルク社)
水酸化ナトリウムのペレット GR(メルク社)
ポロキサマー188(ルトロールF68 DAC、USP/NF、BASF社)
生化学実験用L-メチオニン(メルク社)
合成用m-クレゾール(メルク社)
合成用フェノール(メルク社)
ベンジルアルコール Ph Eur、BP、NF(メルク社)
クロロブタノール(オールドリッチ社)
フェニルエタノール(シグマ社)
メチルパラベンナトリウム BP、USP/NF(フォルメンティ社)
プロピルパラベンナトリウム BP、USP/NF(フォルメンティ社)
EDTA二ナトリウム塩(フルカ社)
1,2-プロパンジオール超高純度 DAB、Ph Eur、BP、USP(メルク社)
アセトニトリル(メルク社)
トリフルオロ酢酸(ベーカー社)
ヘプタフルオロブチル酸(ピアース社)
【0195】
2.2.2 装置
【0196】
HPLCシステム(ウォーターズ社)
ミレニアム32ソフトウエア(ウォーターズ社)
浸透圧計(オスモスタット0.30-D、ゴノテック社)
pH計(モデル654、メトローム社)
較正されたピペット(ジルソン社)
アルティポアN66、0.2μmナイロン膜、FTKNF、φ4.7cm(ポール社)
アルティポアN66、0.2μmナイロン膜、NR14225、φ14.2cm(ポール社)
ステンレス鋼製ホルダ、φ4.7cmとφ10cm(サルトリウス社)
ステンレス鋼製タンク(サルトリウス社)
C4カラム5μm(0.46×25cm)(ベーカー社)
C4カラム、スペルコシルLC-304 5μm(0.46×25cm)(スペルコ社)
TSKカラム、G2000SWXL(0.46×25cm)(トーソーハアス社)
【0197】
2.3 予備製剤の研究
【0198】
まず最初に、最もよく用いられている静菌剤(0.3%のm-クレゾール、0.5%のフェノール、0.9%のベンジルアルコール)を活性物質およびさまざまな賦形剤の混合物と組み合わせ、最終容器(3mlのカートリッジ)の中で調べた。賦形剤の混合物は、酢酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液/マンニトール、酢酸塩緩衝液/マンニトール/L-メチオニン/ポロキサマー188である。さまざまな環境における活性物質の適合性を、40℃で保管したときの酸化(RP-HPLCで調べる)と凝集化(SE-HPLCで調べる)をもとにして調べた。この予備段階の各ステップで調べた製剤のまとめを表1に示してある。
【0199】
それぞれの静菌剤を含めた効果を、1回用量の製剤を開発している中で選択した注射器入り1回用量製剤(基準)と比較した(44または88mcg/mlのインターフェロンβ-1aと、54.6mg/mlのマンニトールと、1mg/mlのポロキサマー188と、0.12mg/mlのL-メチオニンとが10mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5)に含まれたもの)。
【0200】
【表21】
【0201】
2.4 製剤の開発
【0202】
製剤開発の予備段階で得られた情報に基づき、製剤の開発を、まず最初は、ベンジルアルコールとフェノールに絞った。添加する静菌剤(クロロブタノール、フェニルエタノール)とEDTAをベンジルアルコールと組み合わせた場合も調べた。HSAを含まない1回用量インターフェロンβ-1a製剤に対応する比較用製剤(MS-3)もカートリッジ内に調製し、参照基準として用いた。
【0203】
この段階で製造した製剤の組成(単位はmg/ml)を表2〜表5に示してある。
【0204】
【表22】
【0205】
【表23】
【0206】
【表24】
【0207】
【表25】
【0208】
製剤開発の最後に、以下に示す複数回用量の製剤候補が明らかになった。
・製剤B:54.6mgのマンニトールと、1mgのポロキサマー188と、0.12mgのL-メチオニンと、2mgのベンジルアルコール(0.2%のベンジルアルコール)とが10mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5)3mlに含まれた中に264mcgのインターフェロンβ-1aが含まれているもの。
・製剤A:54.6mgのマンニトールと、1mgのポロキサマー188と、0.12mgのL-メチオニンとが10mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5)2.7mlに含まれた中に264mcgのインターフェロンβ-1aが含まれているものを0.3mlの3%ベンジルアルコールと混合し、最終的な複数用量の製剤(ベンジルアルコールが0.3%)を得る。
【0209】
2.5 保管効果のテスト
【0210】
EPとUSPの薬局方に従って保管効果のテストを行ない、さまざまな濃度のベンジルアルコール(0.2%〜0.9%)を含む複数回用量製剤のスクリーニングをした。
【0211】
インジケータとして黄色ブドウ球菌、黒色アスペルギルス、カンジダアルビカンスを選択し、最初のテストを行なった。製剤が酸性pHであること自体が細菌(黄色ブドウ球菌)に対する静菌効果を持っているという証拠と、カンジダアルビカンスのいくつかの菌株が小さなpH値(約2)でさえ生き延びるという事実から、カンジダアルビカンスをテストのための極めて重要なインジケータとして選択した。EPとUSP両方の薬局方に記載されている保存効果テストで認められる基準を適用した。
【0212】
2.6 候補製剤
【0213】
2.6.1 製剤A
【0214】
1バッチ当たり約140本のカートリッジからなる実験スケールのバッチを3つ作った。製剤の組成を表6に示す。
【0215】
【表26】
【0216】
活性成分を賦形剤溶液と混合した後、0.22μmのナイロン膜で濾過した。カートリッジに最終溶液2.7mlを充填した。濾過前、濾過後、充填後にサンプルを採取し、その間の活性成分の損失を調べた。
【0217】
サンプルを2〜8℃(6ヶ月)、25±2℃(3ヶ月)、40±2℃(1ヶ月)で保管し、安定性を調べた。
【0218】
3%のベンジルアルコールが含まれたWFIからなる実験スケールのバッチを6つ作り、活性成分を含むカートリッジと混合した。バッチの組成を表7に示す。
【0219】
【表27】
【0220】
必要量のベンジルアルコールをWFIに添加した後、0.22μmのデュラポア膜で濾過した。次に、カートリッジに0.5mlを充填し、最後にオートクレーブで殺菌した。
【0221】
サンプルを25±2℃で保管し、ベンジルアルコールの含有量とpHを1ヶ月後まで調べた。
【0222】
2.6.2 製剤B
【0223】
1バッチ当たり約500本のカートリッジからなる実験スケールのバッチを3つ作った。製剤の組成を表8に示す。
【0224】
【表28】
【0225】
活性成分を賦形剤溶液と混合した後、0.22μmのナイロン膜で濾過した。カートリッジに最終溶液3mlを充填した。濾過前、濾過後、充填後にサンプルを採取し、その間の活性成分の損失を調べた。
【0226】
サンプルを2〜8℃(6ヶ月)、25±2℃(6ヶ月)、40±2℃(3週間)で保管し、安定性を調べた。
【0227】
2.6.3 保管効果のテスト
【0228】
EPとUSP薬局方に従い、両方の候補製剤の保管効果を調べた。
【0229】
2.7 分析テストと分析法
【0230】
あとで説明する分析テストと分析法を利用し、実験室スケールの製剤の安定性を調べた:pH(電位差測定)。
【0231】
タンパク質定量アッセイ(RP-HPLC)
【0232】
C4、ワイド-ポア・ブチル5μlカラム(ベーカー社)上でタンパク質の定量を行なう。波長は214nmに設定し、溶離は、以下の移動相と勾配を用いて1ml/分にて行なう。
A = 水/トリフルオロ酢酸0.1%;B = アセトニトリル/トリフルオロ酢酸0.1%;C = アセトニトリル
勾配:
0分 70%A 30%B 0%C
5.0分 70%A 30%B 0%C
6.0分 58%A 42%B 0%C
15.0分 57%A 43%B 0%C
30.0分 46%A 54%B 0%C
35.0分 45%A 55%B 0%C
40.0分 40%A 60%B 0%C
40.1分 20%A 80%B 0%C
45.0分 20%A 80%B 0%C
45.0分 0%A 0%B 100%C
50.0分 0%A 0%B 100%C
50.1分 70%A 30%B 0%C
65.0分 70%A 30%B 0%C
保持時間 = 65分
【0233】
サンプルの分析は、そのままのサンプル(44mcg/mlのサンプル)を100μl注入するか、88mcg/mlのサンプルに関しては同等なプラセボの中に希釈(1:1)したもの100μlを注入して行なう。
【0234】
参照基準となる標準材料を用いて得た標準曲線の0.0125mg/ml〜0.2mg/mlの範囲でサンプルの定量を行なう。
【0235】
酸化形態(RP-HPLC)
【0236】
40℃に維持したC4、スペルコシルLC-304カラム(スペルコ社)上で酸化形態の定量を行なう。波長は208nmに設定し、溶離は、以下の移動相と勾配を用いて1ml/分にて行なう。
A = 水60%/アセトニトリル40%/ヘプタフルオロブチル酸0.14%;B = 水20%/アセトニトリル80%/ヘプタフルオロブチル酸0.14%;C = 水20%/アセトニトリル80%/トリフルオロ酢酸0.1%
勾配:
0分 70%A 30%B 0%C
5分 70%A 30%B 0%C
58分 62%A 38%B 0%C 曲線6
63分 0%A 100%B 0%C 曲線1
68分 0%A 0%B 100%C 曲線1
69分 70%A 30%B 0%C 曲線6
実行時間:96分(70分+26分平衡)
【0237】
サンプルの分析を、そのままのサンプルを200μl(88mcg/mlのサンプル)注入するか、400μl(44mcg/mlのサンプル)注入して行なう。
【0238】
全凝集体(SE-HPLC)
【0239】
凝集体の全含有量の検出を、TSK G2000SWXLカラム(トーソーハアス社)上で実施する。溶離は、アセトニトリル:水(30:70)+0.2%トリフルオロ酢酸を用いて0.5ml/分にてアイソクラティック・モードで実施する。波長は214nmに設定する。実行時間は20分である。
【0240】
サンプルの分析を、そのままのサンプルを100μl(88mcg/mlのサンプル)注入するか、200μl(44mcg/mlのサンプル)注入して行なう。
【0241】
生物活性(インビトロ・バイオアッセイ)
【0242】
IFN-βがウイルス(水疱性口内炎ウイルス)の細胞変性効果から細胞(WISH細胞-ヒト羊膜組織)を保護することに基づく抗ウイルス・アッセイを利用し、生物活性を測定する。
【0243】
浸透圧モル濃度(凝固点降下測定)
【0244】
調べる溶液で観察される凝固点の降下を測定することにより、浸透圧モル濃度を明らかにする。
【0245】
ベンジルアルコール・アッセイ(GC法)
【0246】
ベンジルアルコールを検出するGC法では、1点較正を利用する。そのとき、参照基準として、メルク社から供給されたベンジルアルコールを用いる。さらに内標準(フェニルエチルアルコール)を利用し、テストする両方のサンプルと、対照サンプル溶液と、標準溶液のピークの面積を規格化する。この方法は、スペルコポート80/100メッシュ上の10%カーボワックス20Mを用い、6フィート×2mmID鋼カラム上で実施する。検出装置はFID(水素炎イオン化検出器)である。
【0247】
結果は、ベンジルアルコール1ml当たりのmgを単位として表示する。
【0248】
2.7.1 結果
【0249】
2.7.1.1 予備製剤
【0250】
ストレス条件(40℃)下で検出された酸化形態と全凝集体のレベルを表9と表10に示す。
【0251】
【表29】
【0252】
【表30】
【0253】
細菌による汚染を防止するためにそれぞれの静菌剤が一般に使用されている濃度で含まれるようにすると、1回用量の製剤(参照基準)と比較して酸化形態が増加し、凝集化の劇的な増加が促進された。
【0254】
0.5%フェノールと0.1%ポロキサマー188の組み合わせは、製品の安定性にマイナスの効果を及ぼした。なぜなら、凝集体が約40%生成したからである(製剤P、Q、R)。0.3%m-クレゾールを用いると凝集体が増加して製品の安定性にマイナスの効果を及ぼしたため(製剤I)、それ以上開発することは止めた。
【0255】
2.7.1.2 製剤の開発
【0256】
安定性のデータ(生データ)は、すべてこのセクションの表にまとめてある。直線回帰分析を利用してデータを評価した。
【0257】
2.7.1.2.1 ベンジルアルコールを含む製剤
【0258】
高濃度のベンジルアルコール(0.9%)は、酸化形態と凝集体の含有量の両方に関して製品の安定性にマイナスの効果を及ぼした。そのことが図1〜図6からわかる。
・図1からわかるように、ストレス条件(40℃)下では、ベンジルアルコールを0.9%含む製剤(MS-1とMS-2)で酸化の増加がより大きい。
・図2からわかるように、加速条件(25℃)下では、ベンジルアルコールを含むすべての製剤で、ベンジルアルコールを含まない製剤(MS-3、参照基準)と比べて酸化の増加が大きい。
・長期にわたって保管(2〜8℃)すると、ベンジルアルコールを0.9%含む製剤(MS-1とMS-2)でより大きな酸化速度が観察された。それと同等の分解速度が、ベンジルアルコールを0.45%未満含む製剤で検出された(図3)。
【0259】
凝集体のレベルに関しては以下のことが観察された。
・図4からわかるように、ストレス条件(40℃)下では、ベンジルアルコールを0.9%含む製剤(MS-1とMS-2)で凝集体の増加が観察された。図5と図6からわかるように、加速条件かつ長期保管条件(25℃と、2〜8℃)下では、どの製剤でも凝集体の増加は観察されなかった。
・ベンジルアルコールを0.9%含む製剤(MS-1とMS-2)で40℃にて生物活性の低下が観察された。この現象は、同じサンプルを25℃で保管した場合や2〜8℃で保管した場合には観察されない。
・どの温度で保管しても力価の低下は観察されなかった。
・どの温度で保管してもpHのシフトは起こらなかった。
【0260】
2.7.1.2.2 別の静菌剤(フェノール、クロロブタノール、フェニルエタノール)を含む製剤
【0261】
図7と図8からわかるように、フェノール(MS-4とMS-5)は、酸化形態に関して製品の安定性にマイナスの効果を及ぼしたが、クロロブタノール(MS-35)とフェニルエタノール(MS-34とMS-34b)は、参照基準溶液(MS-3、静菌剤なし)と同等の安定性を示した。
【0262】
全凝集体のレベルに関しては、図9に示したように、フェノールを含む製剤(MS-4とMS-5)で凝集体の劇的な増加がストレス条件(40℃)下で観察された。より低い温度(25℃と2〜8℃)では、凝集体の増加は起こらなかった。
【0263】
2.7.1.2.3 EDTAを含む製剤
【0264】
0.1%〜0.2%のベンジルアルコールを含む製剤(MS-32、MS-33、MS-36)にEDTAを添加しても酸化レベルは低下しなかった(図10)。0.1%のEDTAと0.2%のベンジルアルコールを含む製剤(MS-32、MS-33)では、加速条件下で凝集体のレベルの上昇が観察された(図11)。2〜8℃では同等の劣化が観察された。
【0265】
2.7.1.2.4 保管効果に関する結果
【0266】
スクリーニング研究の結果から、(カンジダアルビカンスについては)少なくともベンジルアルコールが0.3%以上の濃度ではUSPとEPの薬局方の基準が満たされていることがわかった。
【0267】
2.8 候補製剤
【0268】
全データを以下のようにして評価した。各バッチについて直線回帰分析を行なった後、共分散分析(P値>0.25)によってバッチ間の差異を評価した。保管によって差異が観察されなかったときには、正式の統計分析は行なわなかった。
【0269】
2.8.1 候補A
【0270】
2.8.1.1 製造中の回収
【0271】
候補Aの製造中に回収したサンプル(濾過前、濾過後、完成した製品)に含まれるインターフェロンβ-1aを表11にまとめてある。活性成分の顕著な損失は記録されなかった。
【0272】
【表31】
【0273】
2.8.1.2 活性薬の安定性
【0274】
異なる温度で保管した3つのバッチにおける酸化形態のレベルに関し、共通の傾斜と切片を計算した。統計分析の結果を表12に示す。
【0275】
【表32】
【0276】
全凝集体のレベルとアッセイに関して有意な差異は観察されなかった。そのため正式の統計分析は行なわなかった。3つのバッチで凝集体のレベルが異なるのは、製造に使用したバルク中でのレベルが異なるためである。
【0277】
2.8.2 候補B
【0278】
2.8.2.1 製造中の回収
【0279】
候補Bの製造中に回収したサンプル(濾過前、濾過後、完成した製品)に含まれるインターフェロンβ-1aを表13にまとめてある。活性成分の顕著な損失は記録されなかった。
【0280】
【表33】
【0281】
2.8.2.2 活性薬の安定性
【0282】
酸化形態のレベルを統計的に分析することによって以下のことがわかった。
・3つのバッチについて、40℃における共通の傾斜と切片を計算した。共通の傾斜は1.42%/週であり、共通の切片は2.72%である。
・3つのバッチについて25℃における共通の傾斜を計算することはできなかった(P値=0.095)。したがって最悪のケース(MS-3)の結果を使用した。1ヶ月保管した後に酸化形態が1.17%増加することが観察された(0.27%/週)。
・3つのバッチについて2〜8℃における共通の傾斜を計算することはできなかった(P値=0.016)。したがって最悪のケース(MS-3)の結果を使用した。1ヶ月保管した後に酸化形態が0.2%増加することが観察された(0.047%/週)。
【0283】
全凝集体のレベルとアッセイに関して安定性のデータから有意な差異は観察されなかった。そのため正式の統計分析は行なわなかった。
【0284】
ストレス条件(40℃)下で保管しても、生物活性の低下は観察されなかった。
【0285】
2.9 結論
【0286】
研究の最後に、2つの複数用量製剤候補が同程度の安定性プロファイルを持つことが明らかになった。
・候補製剤Bは、0.2%のベンジルアルコールを含む複数回用量製剤であり、そのまま使用できる。
・製剤Aは、0.3%のベンジルアルコールを含む複数回用量製剤であり、2つのカートリッジ(一方は活性成分と賦形剤を含んでおり、もう一方は、最終状態にするのに必要な量のベンジルアルコールを含んでいる)の内容物を混合した後に得られる。
・これらの候補溶液をより大きなpH(4.5±0.2)でも調べたが、安定性プロファイルに顕著な変化は見られなかった。出願人は、今や、IFN製剤のこのわずかに大きなpHが、皮下注射の局所的寛容性を増大させることを見いだした。したがってpHが4.5または4.7の上記2つの候補溶液は、患者のコンプライアンスに関して従来よりも大きな利点を提供することができよう。
【実施例3】
【0287】
候補製剤Aの製造方法
【0288】
まず最初に、20gのペレット状水酸化ナトリウムを500gのWFIに溶かして1Nの水酸化ナトリウム溶液を調製した。
【0289】
次に、氷酢酸1.32gを約1,800gのWFIに添加して0.011Mの酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5±0.2)を調製した。この溶液のpHは、1NのNaOHを用いてpH3.5±0.2に調節した。次に、この溶液の最終重量を2000gにした。次に、1NのNaOHまたは50%希酢酸を用い、pHを再び3.5±0.2に調節した。次に、この溶液の最終重量を2000gにした。
【0290】
最終溶液は以下のようにして調製した。
【0291】
賦形剤の計算値を計量し、必要量の11mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5±0.2)に溶かし、この溶液のpHを調べて(必要な場合には)調節した。次に、必要量のr-hインターフェロンβ-1a(CHO細胞が産生した組み換え体)を添加した。11mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5±0.2)を添加して最終重量にした。
【0292】
この最終溶液1mlを採取し、定量RP-HPLCで調べた(サンプルBF=第1回目の濾過前)。
【0293】
次に、この最終溶液を、ステンレス鋼製ホルダの内部に取り付けた0.2μmの膜で濾過し、ガラス製ビーカーに回収した。
【0294】
この最終溶液1mlを採取し、定量RP-HPLCで調べた。
【0295】
上記のようにして濾過した最終溶液を、ステンレス鋼製ホルダの内部に取り付けた0.2μmの第2の膜で濾過した。
【0296】
この最終溶液1mlを採取し、定量RP-HPLCで調べた。
【0297】
3mlのガラス製カートリッジにこの最終溶液2.7mlを充填して漏れないようにした。
【0298】
この溶液は、3%ベンジルアルコール溶液を含むWFIが収容されたカートリッジとそのまま混合することができる。
【実施例4】
【0299】
候補製剤Bの製造方法
【0300】
まず最初に、20gのペレット状水酸化ナトリウムを500gのWFIに溶かして1Nの水酸化ナトリウム溶液を調製した。
【0301】
次に、氷酢酸1.32gを約1,800gのWFIに添加して0.011Mの酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5±0.2)を調製した。この溶液のpHは、1NのNaOHを用いてpH3.5±0.2に調節した。次に、この溶液の最終重量を2000gにした。次に、1NのNaOHまたは50%希酢酸を用い、pHを再び3.5±0.2に調節した。次に、この溶液の最終重量を2000gにした。
【0302】
最終溶液は以下のようにして調製した。
【0303】
賦形剤の計算値を計量し、必要量の10mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5±0.2)に溶かし、この溶液のpHを調べて(必要な場合には)調節した。次に、必要量のr-hインターフェロンβ-1a(CHO細胞が産生した組み換え体)を添加した。10mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5±0.2)を添加して最終重量にした。
【0304】
この最終溶液1mlを採取し、定量RP-HPLCで調べた。
【0305】
次に、この最終溶液を、ステンレス鋼製ホルダの内部に取り付けた0.2μmの膜で濾過し、ガラス製ビーカーに回収した。
【0306】
この最終溶液1mlを採取し、定量RP-HPLCで調べた。
【0307】
上記のようにして濾過した最終溶液を、ステンレス鋼製ホルダの内部に取り付けた0.2μmの第2の膜で濾過した。
【0308】
この最終溶液1mlを採取し、定量RP-HPLCで調べた。
【0309】
3mlのガラス製カートリッジにこの最終溶液2.7mlを充填して漏れないようにした。
【0310】
参考文献
【0311】
1.研究グループ、The Lancet、1998年、第352巻、1498〜1504ページ。
2.CleggとBryant、Exp. Opin. Pharmacother、2001年、第2巻(4)、623〜639ページ。
3.Derynk R.他、Nature、1980年、第285巻、542〜547ページ。
4.『酵素学における方法』、第78巻(Pestka, S編、アカデミック・プレス社、ニューヨーク、1981年)の中のFamilletti, P.C.、Rubinstein, S.、Pestka, S.による「インターフェロンのための簡便かつ迅速な細胞変性効果抑制アッセイ」、387〜394ページ。
5.Hultgren C.、Milich D.R.、Weiland O.、Sallberg M.、1998年、「抗ウイルス化合物リバビリンは、B型肝炎ウイルスとC型肝炎ウイルスによるウイルス特異的免疫応答においてTヘルパー(Th)1/Th2サブセットのバランスを変化させる」、J. Gen. Virol.、1998年、第79巻、2381〜2391ページ。
6.McCormick J.B.、King I.J.、Webb P.A.、Scribner C.L.、Craven R.B.、Johnson K.M.、Elliott L.H.、Belmont-Williams R.、「ラッサ熱。リバビリンを用いた効果的な治療法」、N. Engl. J. Med.、1986年1月2日号、第314巻(1)、20〜26ページ。
7.Mark D.F.他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第81巻(18)、5662〜5666ページ、1984年。
8.『酵素学における方法』、第119巻(Pestka, S編、アカデミック・プレス社、ニューヨーク、1986年)の中のPestka, Sによる「インターフェロンの規格と一般的な略号」、14〜23ページ。
9.Rubinstein S.、Familletti, P.C.、Pestka, S、「インターフェロンの簡便なアッセイ」、J. Virol.、1981年、第37巻、755〜758ページ。
10.Shepard H.M.他、Nature、1981年、第294巻、563〜565ページ。
【図面の簡単な説明】
【0312】
【図1】さまざまな濃度のベンジルアルコールを含むインターフェロンβ-1a複数回用量製剤を40℃で保管した後、その中に存在する酸化形態の割合を示すグラフである。
【図2】さまざまな濃度のベンジルアルコールを含むインターフェロンβ-1a複数回用量製剤を25℃で保管した後、その中に存在する酸化形態の割合を示すグラフである。
【図3】さまざまな濃度のベンジルアルコールを含むインターフェロンβ-1a複数回用量製剤を2〜8℃で保管した後、その中に存在する酸化形態の割合を示すグラフである。
【図4】さまざまな濃度のベンジルアルコールを含むインターフェロンβ-1a複数回用量製剤を40℃で保管した後、その中に存在する全凝集体の割合を示すグラフである。
【図5】さまざまな濃度のベンジルアルコールを含むインターフェロンβ-1a複数回用量製剤を25℃で保管した後、その中に存在する全凝集体の割合を示すグラフである。
【図6】さまざまな濃度のベンジルアルコールを含むインターフェロンβ-1a複数回用量製剤を2〜8℃で保管した後、その中に存在する全凝集体の割合を示すグラフである。
【図7】別の静菌剤を含むインターフェロンβ-1a複数回用量製剤を25℃で保管した後、その中に存在する酸化形態の割合を示すグラフである。
【図8】別の静菌剤を含むインターフェロンβ-1a複数回用量製剤を2〜8℃で保管した後、その中に存在する酸化形態の割合を示すグラフである。
【図9】別の静菌剤を含むインターフェロンβ-1a複数回用量製剤を40℃で保管した後、その中に存在する全凝集体の割合を示すグラフである。
【図10】EDTAを含むインターフェロンβ-1a複数回用量製剤を25℃で保管した後、その中に存在する酸化形態の割合を示すグラフである。
【図11】EDTAを含むインターフェロンβ-1a複数回用量製剤を25℃で保管した後、その中に存在する全凝集体の割合を示すグラフである。
【図12】酸化防止剤としての0.012%L-メチオニンの効果を示すグラフである(2〜8℃)。
【図13】酸化防止剤としての0.012%L-メチオニンの効果を示すグラフである(25±2℃)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HSAを含まない安定なインターフェロン(IFN)含有液体医薬組成物であって、この組成物が、緩衝液と、界面活性剤と、等張剤と、酸化防止剤とを含む溶液である組成物。
【請求項2】
上記インターフェロンがIFN-βである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
上記IFN-βがヒト組み換えIFN-βである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
上記緩衝液が、上記組成物のpHを特定のpHの±0.5単位の範囲内に維持するのに十分な量において存在しており、その特定のpHが約3.0〜約5.0である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
上記pHが3.5±0.2である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
上記pHが4.5±0.2である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
上記緩衝液が、約5mM〜500mMの濃度で存在している、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
上記緩衝液が、約10mMの濃度で存在している、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
上記緩衝液が酢酸塩緩衝液である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
上記等張剤がマンニトールである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
上記等張剤が、約0.5mg/ml〜約500mg/mlの濃度で存在している、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
上記等張剤が、約55mg/mlの濃度で存在している、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
上記界面活性剤が、プルロニック(登録商標)F77、プルロニックF87、プルロニックF88、及びプルロニックF68から選択される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
上記界面活性剤がプルロニックF68である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
上記界面活性剤が、約0.01mg/ml〜約10mg/mlの濃度で存在している、請求項1〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
上記界面活性剤が、約1mg/mlの濃度で存在している、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
上記酸化防止剤がメチオニンである、請求項1〜16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
上記酸化防止剤が、約0.01〜約5.0mg/mlの濃度で存在している、請求項1〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
上記酸化防止剤が、約0.1mg/mlの濃度で存在している、請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
上記インターフェロンが、約10μg/ml〜約800μg/mlの濃度で存在している、請求項1〜19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
上記インターフェロンが、約22、44、88、または264μg/mlの濃度で存在している、請求項1〜20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
上記組成物が水溶液である、請求項1〜21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
静菌剤をさらに含む、請求項1〜22のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
上記静菌剤がベンジルアルコールである、請求項1〜23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
上記静菌剤が、約0.1%〜約2.0%の濃度で存在している、請求項1〜24のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
上記静菌剤が、約0.2%または約0.3%の濃度で存在している、請求項1〜25のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
請求項1〜26のいずれか1項に記載の安定な無HSA液体医薬組成物の調製方法であって、算出量の界面活性剤と酸化防止剤と等張剤を緩衝溶液に添加した後、インターフェロン(IFN)を添加する操作を含んで成る方法。
【請求項28】
無菌状態において密封され、且つ使用時まで保管しておくのに適した容器であって、請求項1〜26のいずれか1項に記載の液体医薬組成物を含んで成る容器。
【請求項29】
上記容器が、1回分の用量があらかじめ充填された注射器である、請求項28に記載の容器。
【請求項30】
上記容器がバイアルである、請求項28に記載の容器。
【請求項31】
上記容器が、オートインジェクタ用のカートリッジである、請求項28に記載の容器。
【請求項32】
上記容器が、1回分の用量または複数回分の投与用量を収容する容器である、請求項29または30に記載の容器。
【請求項33】
請求項23〜26のいずれか1項に記載の医薬組成物を複数回投与するためのキットであって、請求項1〜22のいずれか1項に記載の医薬組成物を充填した第1の容器と、静菌剤溶液を充填した第2のカートリッジを含んで成るキット。
【請求項1】
HSAを含まない安定なインターフェロン(IFN)含有液体医薬組成物であって、この組成物が、緩衝液と、界面活性剤と、等張剤と、酸化防止剤とを含む溶液である組成物。
【請求項2】
上記インターフェロンがIFN-βである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
上記IFN-βがヒト組み換えIFN-βである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
上記緩衝液が、上記組成物のpHを特定のpHの±0.5単位の範囲内に維持するのに十分な量において存在しており、その特定のpHが約3.0〜約5.0である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
上記pHが3.5±0.2である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
上記pHが4.5±0.2である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
上記緩衝液が、約5mM〜500mMの濃度で存在している、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
上記緩衝液が、約10mMの濃度で存在している、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
上記緩衝液が酢酸塩緩衝液である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
上記等張剤がマンニトールである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
上記等張剤が、約0.5mg/ml〜約500mg/mlの濃度で存在している、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
上記等張剤が、約55mg/mlの濃度で存在している、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
上記界面活性剤が、プルロニック(登録商標)F77、プルロニックF87、プルロニックF88、及びプルロニックF68から選択される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
上記界面活性剤がプルロニックF68である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
上記界面活性剤が、約0.01mg/ml〜約10mg/mlの濃度で存在している、請求項1〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
上記界面活性剤が、約1mg/mlの濃度で存在している、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
上記酸化防止剤がメチオニンである、請求項1〜16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
上記酸化防止剤が、約0.01〜約5.0mg/mlの濃度で存在している、請求項1〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
上記酸化防止剤が、約0.1mg/mlの濃度で存在している、請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
上記インターフェロンが、約10μg/ml〜約800μg/mlの濃度で存在している、請求項1〜19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
上記インターフェロンが、約22、44、88、または264μg/mlの濃度で存在している、請求項1〜20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
上記組成物が水溶液である、請求項1〜21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
静菌剤をさらに含む、請求項1〜22のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
上記静菌剤がベンジルアルコールである、請求項1〜23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
上記静菌剤が、約0.1%〜約2.0%の濃度で存在している、請求項1〜24のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
上記静菌剤が、約0.2%または約0.3%の濃度で存在している、請求項1〜25のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
請求項1〜26のいずれか1項に記載の安定な無HSA液体医薬組成物の調製方法であって、算出量の界面活性剤と酸化防止剤と等張剤を緩衝溶液に添加した後、インターフェロン(IFN)を添加する操作を含んで成る方法。
【請求項28】
無菌状態において密封され、且つ使用時まで保管しておくのに適した容器であって、請求項1〜26のいずれか1項に記載の液体医薬組成物を含んで成る容器。
【請求項29】
上記容器が、1回分の用量があらかじめ充填された注射器である、請求項28に記載の容器。
【請求項30】
上記容器がバイアルである、請求項28に記載の容器。
【請求項31】
上記容器が、オートインジェクタ用のカートリッジである、請求項28に記載の容器。
【請求項32】
上記容器が、1回分の用量または複数回分の投与用量を収容する容器である、請求項29または30に記載の容器。
【請求項33】
請求項23〜26のいずれか1項に記載の医薬組成物を複数回投与するためのキットであって、請求項1〜22のいずれか1項に記載の医薬組成物を充填した第1の容器と、静菌剤溶液を充填した第2のカートリッジを含んで成るキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2006−525280(P2006−525280A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505383(P2006−505383)
【出願日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【国際出願番号】PCT/EP2004/004806
【国際公開番号】WO2004/096263
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(504104899)アレス トレーディング ソシエテ アノニム (59)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【国際出願番号】PCT/EP2004/004806
【国際公開番号】WO2004/096263
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(504104899)アレス トレーディング ソシエテ アノニム (59)
【Fターム(参考)】
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