説明

HUB装置の制御方法およびHUB装置

【課題】複数の接続ポートを有するHUB装置において、HUB装置とUSBデバイスとのデータ通信中に別の接続ポートに他のUSBデバイスが接続されると、エニュメレーション処理により、HUB装置とUSBデバイスとの通信速度が一時的に低下する。
【解決手段】制御装置104は、接続ポート102a〜102dへのUSBデバイスの接続状態を確認し、HUB装置101とUSBデバイス120との間でデータ通信要求があったとき、USBデバイス120が接続されていない接続ポート102b〜102dへの電源供給を停止する。そして、データ通信完了後にこれらの接続ポート102b〜102dへの電源供給を再開する。これにより、データ通信中に接続ポート102b〜102dに他のデバイス121が接続されても、エニュメレーション処理が実行されず、HUB装置101とUSBデバイス120との通信速度の低下を防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HUB装置の制御方法およびHUB装置に係り、特に、ユニバーサル・シリアル・バス(以下、USB)を利用した接続において、USBホスト機能とHUB機能を有した組み込みAV(Audio Visual)機器(以下、マルチメディア機器)に代表されるHUB装置の制御方法、HUB装置およびHUB装置の制御プログラムに好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
近年、USBホスト機能を有したインターフェースは、PCだけではなく、マルチメディア機器をはじめとするデジタル機器にも標準のインターフェースとして搭載され、普及が進んでいる。このようなUSBホスト機能を有するマルチメディア機器(デジタル機器)の普及により、これまでPCへの接続用途に使用されていたUSBメモリデバイスなどが、マルチメディア機器(デジタル機器)にも接続されるようになってきている。例えば、ストレージ機能に対応したUSBメモリデバイスをマルチメディア機器に接続し、USBメモリデバイス内の音楽データを再生することなどが行われている。
【0003】
また、これまではマルチメディア機器(デジタル機器)にUSBデバイスが1デバイスだけ接続され、制御されてきた。しかし、マルチメディア機器(デジタル機器)の多機能化により、これらの機器をHUBとしての機能に対応させ、これらの機器に複数のUSBデバイスを接続し、それらを同時に制御することが可能になってきている。
【0004】
例えば、ストレージ機能に対応したUSBメモリを2つ接続することが出来るマルチメディア機器では、USBメモリの音楽データを再生しながら、他のUSBメモリへの音楽データのコピーを行うことが可能である。また、デジタルオーディオプレイヤーと無線ローカルエリアネットワーク(以下、無線LAN)の機能に対応したUSBデバイスを接続することができるデジタル機器では、デジタルオーディオプレーヤー内に格納されている音楽データのストリーム再生を行いながら、無線LAN機能を使いデータ通信を行うことが可能である。
【0005】
このように複数のUSBデバイスが接続されるマルチメディア機器(デジタル機器)では、これらの機器とUSBデバイスとがデータ通信を行っている間に、ユーザにより他のUSBデバイスが接続されることが想定される。この他のUSBデバイスが接続されたとき、接続された他のUSBデバイスに対して機器情報を取得するための接続処理(以下、エニュメレーション処理)が行われる。このエニュメレーション処理は、接続された他のUSBデバイスの機器情報の取得をHUB装置外部からの特別な操作や制御なしに実現する一方、この時にデータ通信を行っているUSBデバイスに対しては、通信帯域を一時的に減少させ、データ通信速度を低下させる可能性がある。これにより、例えば音楽再生を行っている場合には、音切れを発生させる原因となりかねない。また、例えば動画像を再生している場合には、再生中の映像の乱れを発生させる原因となりかねない。
【0006】
上記の問題を解決するために、特許文献1では、デバイスが接続されるポートへの電源供給の有効と無効とを手動(スイッチのオンオフ制御またはPC上での操作)にて切り替えられるHUB装置及びHUB装置の通信方法が開示されている。
【0007】
図5は従来のHUB装置の構成例を示す図である(特許文献1)。HUB装置301は、デバイス320,321を接続する下流ポート302a〜302cと、ユーザの手動によるオンオフ制御によってこれらの下流ポート302a〜302cへの電源供給の有効と無効を切り替えるスイッチ303a〜303cとを備えている。
【0008】
ユーザは、スイッチ303a〜303cを手動で操作することにより、下流ポート302a〜302cへの電源供給を停止または再開することができる。そして、例えばユーザは、下流ポート302aに接続されているデバイス320とホスト330とのデータ通信がHUB装置301を介して行われている間は、デバイス320が接続されていない下流ポート302b,302cへの電源供給をスイッチ303b,303cを使って手動で切断する。これにより、他のデバイス321が下流ポート302b,302cに接続されても、この下流ポート302b,302cへの電源供給が停止されているため、HUB装置301は他のデバイス321に対して機器情報を取得するための接続処理を行わない。したがって、この他のデバイス321に対する接続処理による一時的なデータ通信速度の低下を防ぐことができる。
【0009】
さらに特許文献1には、PC上で動作する制御プログラムとPC上でのユーザによる選択動作とにより、選択した下流ポート302a〜302cへの電源供給を停止または再開するプログラムを格納したPCからの読み出しが可能な記憶媒体が併せて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−177598
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載されたHUB装置301は、下流ポート302a〜302cへの電源供給の状態(停止または再開)をオンオフ制御するスイッチ303a〜303cを設ける必要がある。また、ユーザにより使用していないまたは使用しない下流ポートへの電源供給をあらかじめ停止しておく、例えば図5においてデバイス320が接続されていない下流ポート302b〜302cへの電源供給を停止しておく必要がある。
【0012】
また、PC上で動作する制御プログラムにおいても、ユーザによる切り替え手段(電源供給を停止するか否か)を指示する操作が必要となる。
【0013】
また、マルチメディア機器のように組み込みの制御プログラムを格納する領域(リソース)が限られている環境においては、PC上で動作する制御プログラムの実装は困難である。
【0014】
そこで、HUB装置の接続ポートに係る電源供給の停止または再開の制御に関して、PC環境で動作するHUB装置の接続ポートへの電源供給を制御するための制御プログラムおよび、PC上での操作、手動によるスイッチのオンオフ制御などのユーザの操作を必要としないHUB装置の制御方法およびHUB装置が望まれる。
【0015】
上記の点を鑑み、本発明は、限られたリソースの組み込み環境であっても、ユーザの操作を必要とせずに上述のデータ通信速度の低下を防ぐことが可能なHUB装置の制御方法およびHUB装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様は、複数の接続ポートを有するHUB装置の制御方法であって、前記各接続ポートにUSBデバイスが接続されているか否かを確認する第1のステップと、前記第1のステップにおいて接続が確認された第1の接続ポートを介して、前記HUB装置と前記USBデバイスとの間でデータ通信要求があったか否かを確認する第2のステップと、前記第2のステップにおいてデータ通信要求を確認したとき、前記第1のステップにおいて接続が確認されなかった第2の接続ポートへの電源供給を停止し、前記データ通信要求に係るデータ通信を前記第1の接続ポートを介して開始する第3のステップと、前記第3のステップにおいて開始したデータ通信が完了したとき、前記第3のステップにおいて電源供給を停止した前記第2の接続ポートへの電源供給を再開する第4のステップとを有するものとする。
【0017】
この態様によると、第1のステップにおいて接続が確認された第1の接続ポートを介して、HUB装置とUSBデバイスとの間でデータ通信要求があった場合、第1のステップにおいて接続が確認されなかった第2の接続ポートへの電源供給を停止して、第2のステップにおけるデータ通信要求に係るデータ通信を第1の接続ポートを介して実施する。これにより、仮にこのデータ通信を行っている間に第2の接続ポートに他のUSBデバイスが接続されたとしても、エニュメレーション処理が実施されないため、この処理が行われることによる一時的なデータ通信速度の低下を防ぐことができる。さらに、本態様ではユーザやPC上で動作するプログラムなどからのスイッチのオンオフ制御は実施しないため、オンオフ制御するスイッチのような新たな制御機構およびユーザによる操作を必要としない。
【0018】
また、第3のステップにおいて開始したデータ通信が完了した後に、第4のステップにおいて、第3のステップにおいて電源供給を停止していた第2の接続ポートへの電源供給を再開する。これにより、第2のステップにおけるデータ通信要求に係るデータ通信を第1の接続ポートを介して行っている間に、電源供給を停止していた第2の接続ポートに他のUSBデバイスが接続されていた場合には、電源供給の再開とともに機器情報を取得するための接続処理であるエニュメレーション処理が実施される。
【0019】
そして、前記第3のステップにおける前記第2の接続ポートへの電源供給の停止、および前記第4のステップにおける前記第2の接続ポートへの電源供給の再開を、USB規格に準拠したクラスリクエストにより実施してもよい。
【0020】
これにより、HUB装置の接続ポートへの電源供給を制御する手段(機構)を備えた特殊なHUB装置ではなくても、一般的に普及しているUSB規格のUSB−HUBのデバイスクラスに準拠したHUB装置を使用して、このHUB装置とUSBデバイスとの通信を制御する既存の通信制御プログラムを活用して上述の接続ポートへの電源供給の停止または再開を行うことができる。
【0021】
本発明の他の態様では、複数のUSBデバイスが接続可能なHUB装置であって、前記HUB装置と前記USBデバイスとをUSBを介して接続する複数の接続ポートと、前記複数の接続ポートと接続された、集線回路であるHUB回路と、前記HUB装置および前記複数の接続ポートを制御する制御装置とを備えているものとする。そして、前記制御装置は、前記各接続ポートに前記USBデバイスが接続されているか否かを確認する接続確認手段と、前記接続確認手段によって接続が確認された第1の接続ポートを介して、前記HUB装置と前記USBデバイスとの間でデータ通信要求があったか否かを確認するデータ通信要求確認手段と、前記データ通信要求確認手段において前記データ通信要求が確認されたとき、前記接続確認手段において接続が確認されなかった第2の接続ポートへの電源供給を停止し、前記データ通信要求に係るデータ通信を前記第1の接続ポートを介して開始する第1の通信制御手段と、前記第1の通信制御手段によって開始されたデータ通信が完了したとき、前記第1の通信制御手段によって電源供給を停止した前記第2の接続ポートへの電源供給を再開する第2の通信制御手段とを備えているものとする。
【0022】
そして、前記HUB装置における前記制御装置は、上述の各手段を実現するための制御プログラムを格納した制御プログラム領域と、前記制御プログラムの処理によって一時的に保存されるデータのためのデータ領域とを有するメモリ領域を備えているのが好ましい。
【0023】
また、前記HUB装置における前記制御装置は、上述の各手段を実現するための前記メモリ領域(前記制御プログラム領域および前記データ領域)の代わりに同様の機能(手段)を実現するシーケンス制御を行うハードウェアを備えていてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、HUB装置とUSBデバイスとのデータ通信中に他のUSBデバイスが接続されたことによる一時的な通信速度の低下を、オンオフ制御するスイッチのような新たな制御機構、PC環境で動作するプログラムおよびユーザによる操作(スイッチのオンオフ制御操作、およびPC上での選択および制御操作)を必要とせずに防ぐことができる。
【0025】
また、本発明によると、電源制御機能を有するような特殊なHUB装置を必要としない。しかも、既存のHUB装置とUSBデバイスとの通信を制御する通信制御手段を活用して、上述のエニュメレーション処理に起因する通信速度の低下を防ぐことができる。そのため、ユーザの操作が限定されている環境においても使用可能である。また、リソースが限られた組み込み環境においても実装が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1の実施形態に係るHUB装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態におけるHUB装置の電源制御および通信制御の動作を示すフローチャートである。
【図3】第2の実施形態におけるHUB装置の電源制御および通信制御の動作を示すフローチャートである。
【図4】優先条件の一例を説明するための図である。
【図5】従来のHUB装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の各実施形態の説明において、一度説明した構成要素と同様の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0028】
<第1の実施形態>
図1は第1の実施形態に係るHUB装置の構成例を示す図である。図1のHUB装置101は、接続ポート102a〜102d、HUB回路103、制御装置104、マルチメディア装置111、および入出力装置112を備えている。なお、本実施形態では、4つの接続ポート102a〜102dがあるものとして説明するが、接続ポートの数は4つに限定されない。また、HUB装置101に接続されているUSBデバイス120は1台として説明するが、複数のUSBデバイスが接続されていてもかまわない。
【0029】
HUB回路103は、接続ポート102a〜102dを介して接続されたUSBデバイスからそれぞれ入力されたデータを集線し、制御装置104に出力する一方、制御装置104から出力されたデータを接続ポート102a〜102dを介して接続されたUSBデバイスにそれぞれ出力する。例えば、図1のHUB回路103は、接続ポート102aを介してUSBデバイス120から入力されたデータを制御装置104に出力する一方、制御装置104から出力されたデータを、接続ポート102aを介して接続されたUSBデバイス120に出力する。ここで、HUB回路103は、USB規格にて定められたUSB−HUBのデバイスクラスの規格に準拠した動作を実現することが可能であるものとする。
【0030】
制御装置104は、USBホストコントローラ105,データ制御装置106、演算装置107、およびメモリ領域108を備えている。制御装置104は、HUB回路103を制御することにより、接続ポート102a〜102dにUSBデバイス120が接続されているか否かを確認し、さらに、接続ポート102a〜102dへの電源供給のオンオフを制御する。また、接続ポート102aに接続されたUSBデバイス120とのエニュメレーション処理および双方向のデータ通信を制御する。例えば、全ての接続ポート102a〜102dへの電源供給がオンの場合において、ポート102aにUSBデバイス120が接続されているときでも、接続ポート102bに他のUSBデバイス121が接続されると、接続された各接続ポート102bを介してHUB装置101とUSBデバイス121との間で、制御装置104の制御に基づいてエニュメレーション処理が行われる。また、データ通信要求が発生したときには、その要求に基づいて双方向のデータ通信が行われる。
【0031】
なお、接続されるUSBデバイス120,121のデバイス(機器)の種類は、異なっていてもかまわない。
【0032】
USBホストコントローラ105は、HUB回路103と接続されている。そして、接続ポート102a〜102dを介してUSBデバイス120,121が接続されたとき、例えば接続ポート102aにUSBデバイス120が接続されたとき、HUB回路103を介してUSBデバイス120とのエニュメレーション処理および双方向のデータ通信処理を実施する。また、データ制御装置106へのデータ送受信処理を行う。さらに、演算装置107からの制御を受けたデータ制御装置106から出力される制御信号に従って、HUB回路103を介して接続ポート102a〜102dにUSBデバイス120,121が接続されているか否か確認するとともに、USB規格にて規定されたUSB−HUBのクラスリクエストを使用した通信を用いて接続ポート102a〜102dへの電源供給の停止および再開(オンオフ制御)を行う。
【0033】
データ制御装置106は、USBホストコントローラ105とのデータ送受信処理に係る制御を実施するとともに、演算装置107の制御を受けて、USBホストコントローラ105に制御信号を出力する。また、メモリ領域108へのアクセス(すなわちデータ読み出しおよび書き込み)、マルチメディア装置111のデータ制御、および入出力装置112のデータ制御を行う。
【0034】
演算装置107は、メモリ領域108の制御プログラム領域109に格納されている制御プログラムP109を使用してデータ制御装置106の制御を行う。その際に、必要に応じてメモリ領域108のデータ領域110に対してアクセス処理を行う。
【0035】
メモリ領域108は、後述の図2および図3を用いて説明する制御方法を実現するための制御プログラムP109を格納した制御プログラム領域109と、制御プログラムP109の処理によって一時的にデータを保存するためのデータ領域110とを備えている。
【0036】
マルチメディア装置111は、データ制御装置106から入出力したデータすなわちUSBデバイス120から接続ポート102a、HUB回路103、およびUSBホストコントローラ105を経由して入力されたデータの解析を行い、その解析結果に応じた処理を行う。例えば、USBデバイス120から出力された画像や音声などのデータが接続ポート102aからデータ制御装置106を経由して入力されたとき、そのデータの解析を行い、HUB装置101内で画像や音声などの再生処理などを行う。
【0037】
入出力装置112は、マルチメディア装置111から送られてくるデータをユーザに提示する処理や、マルチメディア装置111の機能をユーザの入力に基づいて選択する処理などを行う。
【0038】
図2は本実施形態に係るHUB装置の制御方法、すなわち図1のHUB装置101の動作を示すフローチャートである。
【0039】
図2に示すように、まず、第1のステップでは、制御装置104はHUB回路103を介してUSBデバイス120,121が接続されていない接続ポート102a〜102dの情報を入手し、メモリ領域108のデータ領域110に保存する(ステップS1)。具体的には、演算装置107は、制御プログラムP109を使用してデータ制御装置106を制御し、USBホストコントローラ105からHUB回路103を介してUSBデバイス120,121が接続されていない接続ポート102a〜102dの情報を入手し、メモリ領域108のデータ領域110に保存する。例えば図1において、演算装置107は、USBデバイス120の接続されていない接続ポート102b〜102d(第2の接続ポート)の情報(状態)をデータ領域110に保存する。また、第2のステップでは、制御装置104は、HUB回路103および接続ポート102aを経由してUSBデバイス120とHUB装置101との間でデータ通信要求があったか否か、すなわちHUB103回路経由のデータ通信を開始するか否かを確認する(ステップS2)。
【0040】
次に、第3のステップにおいて、ステップS2におけるデータ通信要求が無かったとき(ステップS2でNo)、制御装置104は接続ポート102a〜102dへの電力供給の制御(停止)を行わずに処理を終了する。一方、データ通信要求があったとき(ステップS2でYes)、制御装置104は、HUB回路103を介してUSBデバイス120が接続されていなかった接続ポート102b〜102d(第2の接続ポート)への電源供給を停止する(ステップS3)。ステップS3における電源供給の停止を確認して、制御装置104は、HUB回路103および接続ポート102a(第1の接続ポート)を経由したUSBデバイス120とのデータ通信を開始する(ステップS4)。
【0041】
すると、上記のデータ通信が行われている間は、電源供給が停止された接続ポート102b〜102dに、他のUSBデバイス121が接続されたとしても、検知不可能な状態となっているため、他のUSBデバイス121が接続されたときに行われるエニュメレーション処理の通信が行われない。
【0042】
ここで、他のUSBデバイス121が接続されるとは、物理的な接続および電気的な接続の両方の接続を含んでいる。すなわち、例えば他のUSBデバイス121が、既に接続ポート102b〜102dのいずれかに物理的に接続されており、かつ電源が供給されていなかったとき(電気的に接続されていなかったとき)に、他のUSBデバイス121への電源供給(オン制御)が開始されることによって、新たに発生する電気的接続を含んでいる。
【0043】
なお、接続ポート102b〜102dへの電源供給の停止は、USBにおいては、USBホストコントローラ105とHUB回路103との間でUSB規格にて規定されたUSB−HUBのクラスリクエストを使用した通信を行うことで実現できる。
【0044】
HUB装置101とUSBデバイス120とのデータ通信が行われている間は、制御プログラムP109すなわち演算装置107によってデータ通信状態が管理される。具体的には、USBホストコントローラ105、データ制御装置106、マルチメディア装置111、および入出力装置112へのデータ処理が実施される。そして、演算装置107は、HUB回路103および接続ポート102aを経由したHUB装置101とUSBデバイス120とのデータ通信が完了するまで通信状態を確認する。
【0045】
次に、第4のステップにおいて、演算装置107は、HUB回路103および接続ポート102aを経由したHUB装置101とUSBデバイス120とのデータ通信の完了を確認した後(ステップS5)、HUB回路103を経由してステップS3で電源供給を停止した接続ポート102b〜102d(第2の接続ポート)への電源供給を再開する(ステップS6)。このステップS6の処理により、接続ポート102b〜102dを介して他のUSBデバイス121を認識できる状態、すなわちエニュメレーション処理が実施可能な状態となり、処理は終了する。なお、接続ポート102b〜102dへの電源供給の再開は、USBにおいてはUSBホストコントローラ105とHUB回路103との間でUSB規格にて規定されたUSB−HUBのクラスリクエストを使用した通信を行うことで実現できる。
【0046】
以上のように本実施形態によれば、HUB装置101とUSBデバイス120とがデータ通信を行っている間、USBデバイス120が接続されていない接続ポート102b〜102dへの電源供給を停止している。そのため、上記のHUB装置101とUSBデバイス120とがデータ通信を行っている間に接続ポート102b〜102dに他のUSBデバイス121が接続されたとしても、エニュメレーション処理が実施されない。これにより、エニュメレーション処理による一時的なデータ通信速度の低下を防ぐことができる。
【0047】
また、上記のデータ通信が完了した後に、ステップS6において接続ポート102b〜102dへの電源供給を再開させるため、例えば上記のHUB装置101とUSBデバイス120とがデータ通信を行っている間に、電源供給を停止している接続ポート102bに他のUSBデバイス121が接続されていた場合には、このステップS6での電源供給再開とともに、エニュメレーション処理が実施される。すなわち、ユーザの操作や外部のPCなどからの制御がなくても、データ通信中はエニュメレーション処理を実施できないようにするとともに、データ通信中に接続されていた他のUSBデバイス121をデータ通信後に認識することができる。さらに、他のUSBデバイス121以外のUSBデバイスが追加され、例えば接続ポート103cに接続されてもエニュメレーション処理を実施することができる。
【0048】
<第2の実施形態>
図3は、第2の実施形態における他の制御方法例を示すフローチャートである。図3のフローチャートにおいて、第1の実施形態と異なるのは、ステップS2におけるデータ通信要求について、後述の優先条件201を満たすか否かを判断するステップS7が追加されている点である。
【0049】
そして、ステップS3では、ステップS2においてHUB装置101とUSBデバイス120との間でデータ通信要求がなされており(ステップS2でYes)、かつ、そのデータ通信要求がステップS7における優先条件201を満たすものであるとき(ステップS7でYes)、制御装置104はステップS1においてUSBデバイス120との接続が確認されなかった接続ポート102b〜102dへの電源供給を停止する。一方、ステップS2においてUSBデバイス120とHUB装置101との間で接続ポート102aを介したデータ通信要求がなされており(ステップS2でYes)、かつ、そのデータ通信要求がステップS7における優先条件201を満たさないものであるとき(ステップS7でNo)、制御装置104はステップS1においてUSBデバイス120との接続が確認されなかった接続ポート102b〜102dへの電源供給を停止せずに、HUB回路103および接続ポート102aを経由したUSBデバイス120とのデータ通信を開始する(ステップS4A)。そして、ステップS5AではステップS5と同様のデータ処理およびデータ通信が完了するまで通信状態の確認が実施され、通信完了後に処理を終了する。
【0050】
なお、その他のステップに関しては、図2のフローチャートにおける各ステップと同様の動作をするため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0051】
図4は優先条件の判断の一例を示す図である。優先条件201は、転送情報と優先情報とから構成されている。優先条件201の転送情報には、例えば本実施形態では、USB規格に準拠した転送方式の情報として、アイソクロナス転送、インタラプト転送、コントロール転送、およびバルク転送を記載している。また、優先条件201の優先情報には、例えばリアルタイム性を重視する通信か否かなどの転送される情報の優先度が記載される。本実施形態では、リアルタイム性を重視するアイソクロナス転送およびインタラプト転送を優先条件が高い設定であることを示す“高”と記載する一方、リアルタイム性が必要ではないコントロール転送およびバルク転送を優先条件が低い設定であることを示す“低”と記載している。ここで、図4において、優先条件201を満たすとは、優先条件が“高”に属しているものを指すものとする。すなわち、閾値のラインより上段に記載しているアイソクロナス転送およびインタラプト転送が、優先条件201を満たす転送情報となる。
【0052】
そして、例えば、ステップS2においてUSBデバイス120とHUB装置101との間でデータ通信要求があった場合において(ステップS2でYes)、データ転送方式がコントロール転送またはバルク転送だったとき(ステップS7でNo)、制御装置104はステップS1においてUSBデバイス120との接続が確認されなかった接続ポート102b〜102dへの電源供給を停止せずに、HUB回路103および接続ポート102aを経由したUSBデバイス120とのデータ通信を開始する(ステップS4A)。ステップS5AではステップS5と同様のデータ処理およびデータ通信が完了するまで通信状態の確認が実施され、通信完了後処理は終了する。
【0053】
一方、例えば、ステップS2においてUSBデバイス120とHUB装置101との間でデータ通信要求があった場合において(ステップS2でYes)、データ転送方式がアイソクロナス転送またはインタラプト転送だったとき(ステップS7でYes)、制御装置104は、ステップS3からステップS6までの処理を図2の説明と同様に実施する。
【0054】
以上のように本実施形態によると、HUB装置101とUSBデバイス120とのデータ通信を行う際に、優先条件201に基づいて、USBデバイス120の接続が確認されなかった接続ポート102b〜102dへの電源供給を停止するため、優先条件201を満たすデータ通信要求があった場合にのみ、他のUSBデバイス121を認識できない状態にし、エニュメレーション処理に起因する一時的なデータ通信速度の低下を防ぐことができる。
【0055】
また、優先条件201を満たすデータ通信要求に係るデータ通信の場合において、データ通信が行われている間に電源供給を停止している接続ポート102b〜102dに他のUSBデバイス121が接続されていたときには、ステップS6における電源供給の再開とともに、接続されていた他のUSBデバイス121とのエニュメレーション処理が実施される。
【0056】
なお、優先条件201内の情報は、優先情報および転送情報に限らない。例えば、接続ポート102a〜102dの接続ポート番号、HUB装置101に接続されるUSBデバイスの種類、および接続される機器が通信に使用する帯域の大きさなど優先条件として優劣をつけられる情報であれば代用が可能である。
【0057】
また、制御装置104内にシーケンス制御を行うハードウェアを設け、そのハードウェアによって第1および第2の実施形態における各ステップを実施しても同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明では、リソースが限られた組み込み環境やユーザの操作が限られた環境においても、エニュメレーション処理による一時的なデータ通信速度の低下を防ぐことができる。そのため、例えばコンポ、DVDプレーヤー、HDDレコーダー、およびデジタルTVといったマルチメディア機器やカーナビゲーションシステムといったユーザの操作が限られた環境で使用される組み込み機器として有用である。
【符号の説明】
【0059】
101 HUB装置
102a,102b,102c,102d 接続ポート
103 HUB回路
104 制御装置
120,121 USBデバイス
201 優先条件

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の接続ポートを有するHUB装置の制御方法であって、
前記各接続ポートにUSBデバイスが接続されているか否かを確認する第1のステップと、
前記第1のステップにおいて接続が確認された第1の接続ポートを介して、前記HUB装置と前記USBデバイスとの間でデータ通信要求があったか否かを確認する第2のステップと、
前記第2のステップにおいてデータ通信要求を確認したとき、前記第1のステップにおいて接続が確認されなかった第2の接続ポートへの電源供給を停止し、前記データ通信要求に係るデータ通信を前記第1の接続ポートを介して開始する第3のステップと、
前記第3のステップにおいて開始したデータ通信が完了したとき、前記第3のステップにおいて電源供給を停止した前記第2の接続ポートへの電源供給を再開する第4のステップとを有する
ことを特徴とするHUB装置の制御方法。
【請求項2】
請求項1記載のHUB装置の制御方法において、
前記第3のステップは、前記第2のステップにおいて前記データ通信要求を確認した場合において、当該データ通信要求が所定の優先条件を満たすものであるとき、前記第2の接続ポートへの電源供給を停止し、前記データ通信要求に係るデータ通信を前記第1の接続ポートを介して開始する
ことを特徴とするHUB装置の制御方法。
【請求項3】
請求項1記載のHUB装置の制御方法において、
前記第3のステップにおける前記第2の接続ポートへの電源供給の停止、および前記第4のステップにおける前記第2の接続ポートへの電源供給の再開を、USB規格に準拠したクラスリクエストにより実施する
ことを特徴とするHUB装置の制御方法。
【請求項4】
複数のUSBデバイスが接続可能なHUB装置であって、
前記HUB装置と前記USBデバイスとをUSBを介して接続する複数の接続ポートと、
前記複数の接続ポートと接続された、集線回路であるHUB回路と、
前記HUB装置および前記複数の接続ポートを制御する制御装置とを備えており、
前記制御装置は、
前記各接続ポートに前記USBデバイスが接続されているか否かを確認する接続確認手段と、
前記接続確認手段によって接続が確認された第1の接続ポートを介して、前記HUB装置と前記USBデバイスとの間でデータ通信要求があったか否かを確認するデータ通信要求確認手段と、
前記データ通信要求確認手段において前記データ通信要求が確認されたとき、前記接続確認手段において接続が確認されなかった第2の接続ポートへの電源供給を停止し、前記データ通信要求に係るデータ通信を前記第1の接続ポートを介して開始する第1の通信制御手段と、
前記第1の通信制御手段によって開始されたデータ通信が完了したとき、前記第1の通信制御手段によって電源供給を停止した前記第2の接続ポートへの電源供給を再開する第2の通信制御手段とを備えている
ことを特徴とするHUB装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−242942(P2012−242942A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110305(P2011−110305)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】