説明

ICカードチャージ装置

【課題】ICカードチャージ機能を有する組込み用装置または専用装置であって、ICカードにチャージを行う場合に放出された釣り札等の紙幣の取り忘れを確実に防止することができるICカードチャージ装置を提供する。
【解決手段】 このICカードチャージ装置は、電子マネー用ICカード52と紙幣53が挿入され、その後、ICカードと紙幣の一部または全部とを放出して返却するものであって、最初に紙幣(釣り札54)を放出し、次に当該紙幣が抜き取られたことを条件にICカード52を放出する放出制御手段を備えるように構成される。利用者は必ずICカードが放出されるまで待つので、利用者の紙幣(釣り札等)の取り忘れを確実に防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はICカードチャージ装置に関し、特に、自動券売機等に組み込まれたICカードチャージ機能部等のごとく電子マネーとして機能するICカードに対し増額のチャージを行う際に釣り札の抜き取り忘れを確実に防止し得る仕組みを有したICカードチャージ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の自動改札機では乗車券として電子マネー用ICカードが主流として利用されている。当該ICカードの利用では、事前に実際の金銭を残高ポイント(電子マネー)として電気的に変換しチャージしておくことが必要となる。ICカードに対して増額のチャージを行う場合には、自動券売機に組み込まれたICカードチャージ機能部、あるいは専用のICカードチャージ装置が利用される。例えば自動券売機等のICカードチャージ機能部によれば、利用者は、自動券売機の表示・操作部でチャージ機能を選択し、機械側の指示に従って、所持するICカードをICカード用挿入口に挿入し、次いで選択指示した金額に係る必要な紙幣を紙幣用挿入口に挿入する。機械側でチャージ処理が終了すると、チャージが完了したICカードと釣り札が別々に設けられた各挿入口から同時に放出される。通常的には、利用者は、ICカードと釣り札を抜き取り、自動券売機の場所から離れることになる。
【0003】
ICカード返却の際の紙幣等の取り忘れ防止技術に類似または関連する従来技術として特許文献1〜3に開示される技術が存在する。特許文献1に開示される自動券売機では、機械本体に挿入されたクレジットカードに基づいて乗車券を発行する構成を有し、さらにカード挿入口に返却されたクレジットカードが抜き取られたことを条件にして機械内部で保留された乗車券および利用明細書を発券口に排出するという構成を有している。これによりクレジットカードの取り忘れを確実に防止するようにしている。特許文献2に開示される硬貨処理装置では、自動券売機等において返却口に返却された硬貨が所定時間存在することを検出した場合には、取り忘れとして回収機構により機械本体内に回収するように構成している。これにより自動券売機等での取り忘れのつり銭が次客によって持ち去られるのを防止する。特許文献3に開示されるカード処理装置では、自動券売機等においてカード挿入口に排出されたカードの存在が所定時間検出されたときには、カードの取り忘れとして当該カードを回収する構成を有している。これによりカードの取り忘れによる機器の異常停止を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−334284号公報
【特許文献2】特開平07−320109号公報
【特許文献3】特開平07−320004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の構造を有した自動券売機のICカードチャージ機能部によれば、ICカードと釣り札の抜き取りに関して、従来、次のような問題が提起されていた。
(1)旅客が例えば5000円札を挿入しかつ3000円のチャージ金額ボタンを選択すると、自動券売機からは、チャージを完了したICカードと2000円の釣り札とが同時に放出される。すると、旅客は目的物であるICカードのみを抜き取り、釣り札の抜き取りを忘れ、当該釣り札が自動券売機に放置される。
(2)旅客は、5000円札を挿入して5000円分のチャージを行おうしたが、誤って3000円のチャージ金額ボタンを選択したため、自動券売機は3000円分のチャージが行われたICカードと2000円の釣り札とを同時に放出する。旅客は、自分の操作誤りに気づかず、5000円分のチャージが行われたと思い込み、ICカードのみを抜き取り、釣り札の抜き取りを忘れ、当該釣り札が自動券売機に放置される。
(3)旅客がICカードと紙幣の挿入を行い所定の画面操作処理を行ったが、自動券売機の挿入媒体判定処理では、旅客の画面操作と媒体挿入との間の不整合を検知して旅客からの再挿入を促す自動返却処理を行う場合がある。この際に、旅客はICカードへのチャージが完了したものと勘違いしてICカードのみを抜き取り、返却された紙幣を取り忘れることが発生する。
【0006】
上記の通り、従来の自動券売機によるICカードチャージ機能部の構造および動作特性によれば、ICカード用と紙幣用の2つの挿入・放出口を有し、返却時には各放出口からICカードと紙幣が同時に放出されるという動作特性となっているため、利用者は目的物であるICカードの取得のみに関心を持ち、紙幣を取り忘れるという問題が生じた。問題の発生原因は主に利用者自身の不注意に基づくものであるが、公共機関であるサービス提供者側に対してはICカードチャージ機能を有する端末機械側の構造および放出動作特性に関して改善が強く望まれている。この点は、一般的に専用のICカードチャージ装置であっても同様に求められている。前述した特許文献2,3に開示される従来技術では、発明の課題が異なるので上記の問題を改善することができない。また特許文献1によれば、基本的に返却されたクレジットカードの取り忘れを防止することであり、チャージ時のICカードとチャージの際の釣り札との関係を取り扱っているものではない。
【0007】
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、ICカードチャージ機能を有する組込み用装置または専用装置であって、ICカードにチャージを行う場合に放出された釣り札等の紙幣の取り忘れを確実に防止することができるICカードチャージ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るICカードチャージ装置は、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
【0009】
第1のICカードチャージ装置(請求項1に対応)は、電子マネー用ICカードと紙幣とが挿入され、その後、ICカードと紙幣の一部または全部とを放出して返却するICカードチャージ装置において、最初に紙幣を放出し、次に紙幣が抜き取られたことを条件にICカードを放出する放出制御手段を備えることによって構成される。
【0010】
上記のICカードチャージ装置では、例えばICカードにチャージを完了した後、チャージ済みのICカードと釣り札等とを放出して利用者に返却する場合に、必ず先に紙幣をを放出し、当該紙幣が利用者に抜き取られたことを条件にして次にICカードを放出するようにしたため、利用者は必ずICカードが放出されるまで待つことになるので、利用者の紙幣(釣り札等)の取り忘れを確実に防止することができる。
【0011】
第2のICカードチャージ装置(請求項2に対応)は、上記の構成において、好ましくは、挿入されたICカードに対して、挿入された紙幣および選択された金額情報に基づいて当該金額に対応するチャージを行い、その後、チャージ済みのICカードと釣り紙幣を放出して返却するように構成され、放出制御手段は、最初に釣り紙幣を放出し、次に釣り紙幣が抜き取られたことを条件にチャージ済みICカードを放出するように構成される。この構成によれば、特に、ICカードのチャージの際、釣り札の取り忘れが頻発するので、このような釣り札の取り忘れを確実に防止することが可能となる。
【0012】
第3のICカードチャージ装置(請求項3に対応)は、上記の構成において、好ましくは、ICカード用挿入・放出口と紙幣用挿入・放出口とを別々に備えることを特徴としている。ICカードと紙幣とで、その挿入・放出口が別々に作られている場合には、利用者はICカードの放出に注意を向けやすいので、本発明における放出手順によれば、確実に紙幣の取り忘れを防止することが可能になる。
【0013】
第4のICカードチャージ装置(請求項4に対応)は、上記の構成において、好ましくは、ICカードの挿入・放出口と紙幣の挿入・放出口を、共通化した1つの挿入・放出口として形成し、共通化された挿入・放出口は、挿入または放出されたICカードと紙幣の各々をその寸法の違いを識別して検知するICカード・紙幣検知手段を備えることを特徴としている。本発明によるICカードチャージ装置の構成では、1つの共通の挿入・放出口でICカードと紙幣の放出する場合であっても、先に紙幣の放出を優先するので、紙幣の取り忘れを防ぐことができる。
【0014】
第5のICカードチャージ装置(請求項5に対応)は、上記の構成において、好ましくは、自動券売機に組み込まれてICカードチャージ機能部として構成されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によるICカードチャージ装置によれば、例えばICカードチャージ装置が組み込まれた自動券売機等において、ICカード用の挿入・放出口、紙幣用の挿入・放出口が別々に設けられている場合でも、あるいは1つの共通の挿入・放出口が設けられている場合であっても、ICカードと紙幣を放出する場合には先ず最初に紙幣を放出し、当該紙幣が利用者に抜き取られたことを条件にして次にICカードを放出するようにしたため、確実に紙幣の抜き取りを利用者に行わせることができ、紙幣の取り忘れを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るICカードチャージ装置の第1の実施形態を示し、当該ICカードチャージ装置の機能を組み込んだ自動券売機の全体の外観を示す正面図である。
【図2】自動券売機の接客部と各種挿入・放出部の外観を示す正面図である。
【図3】自動券売機の内部構造を示す当該自動券売機の背面図である。
【図4】自動券売機の内部構造を示す当該自動券売機の側面図である。
【図5】自動券売機内の各種機能部を示すブロック図である。
【図6】自動券売機内に組み込まれたICカードチャージ装置の部分の構成を示すブロック図である。
【図7】自動券売機内に組み込まれたICカードチャージ装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【図8】本発明に係るICカードチャージ装置の第2の実施形態を示し、自動券売機に組み込まれたICカードチャージ装置であって、ICカードと紙幣を1つの共通の挿入・放出口で順次に挿入・放出する構造を有したICカードチャージ装置の構成を示すブロック図である。
【図9】第2の実施形態に係るICカードチャージ装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【図10】本発明に係るICカードチャージ装置の第3の実施形態を示し、自動券売機に組み込まれたICカードチャージ装置であって、ICカードと紙幣を1つの共通の挿入・放出口で重ね合わせてまとめて同時に挿入・放出する構造を有したICカードチャージ装置の構成を示すブロック図である。
【図11】第3の実施形態に係るICカードチャージ装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0018】
図1〜図7を参照して、本発明に係るICカードチャージ装置の第1の実施形態を説明する。図1〜図7に示された装置は、駅の改札口の周辺に設置され、乗車券等を発券する機能を有すると共にICカードにチャージを行う機能を有した自動券売機10である。自動券売機10の外部および内部の構造としてICカードチャージ装置の構造部および機能部が組み込まれている。この自動券売機10は、従来から使用されている装置であり、ICカード用の挿入・放出口と、紙幣用の挿入・放出口とをそれぞれ別々に備えている。以下に、図を参照して詳述する。
【0019】
図1において、自動券売機10の正面部の主に上半分には接客部11が設けられている。接客部11には、上側の表示・タッチ操作部12と、下側の各種の挿入・放出口および返却部を備えた領域13とが設けられている。上側の表示・タッチ操作部12は主にカラー液晶ディスプレイパネルとタッチパネルとを重ね合わせたパネル部材により形成されている。下側の領域13には、ICカード用挿入・放出口14と、紙幣用挿入・放出口15と、硬貨投入口16と、硬貨返却部17と、乗車券および領収書の受取り口18とが設けられている。
【0020】
なお、上記の紙幣のための挿入・放出口15については、説明の便宜上、挿入口と放出口として同じ口部を用いることで説明するが、挿入口と放出口を別々にすることも可能である。挿入口と放出口が別の場所にある場合には、紙幣用挿入・放出口15は2箇所の口部を有することになる。この場合、釣り札の紙幣はお釣り用の口部から放出される。
【0021】
図2に接客部11を拡大して示す。接客部11の表示・タッチ操作部12は、カラー液晶ディスプレイパネルパネルとタッチパネルを重ね合わせて形成されている。表示・タッチ操作部11では、カラー液晶ディスプレイパネル上にボタン画像として表示された複数の選択ボタンのいずれかを指先でタッチすることにより、選択した対象に係る機能を確定する処理が実行される。この選択ボタンの中に、電子マネーとして機能するICカードの「チャージ」のサービスを選択するための選択ボタン21が含まれている。旅客がICカードのチャージサービスの選択ボタン21を選択すると、自動券売機10内に組み込まれたICカードチャージ装置の機能部分の動作が開始する。さらにこの実施形態では、表示・タッチ操作部12の左辺部に沿って、物理的構造を有した複数の各種の選択ボタン22が配置されている。選択ボタン22は、購入する切符の枚数、大人、子供等を選択するための選択ボタンである。
【0022】
また図2において、接客部11の領域13では、前述した通り、ICカード用挿入・放出口14、紙幣用挿入・放出口15、硬貨投入口16、硬貨返却部17、乗車券と領収書の受取り口18等が設けられている。ICカードはいわゆる電子マネーとして利用される無線ICチップを内蔵したカードである。ICカード用挿入・放出口14では、通常の乗車券機能を有するICカード、定期券としてのICカード、その他のカード(磁気カード等)が挿入され、所定の処理の後に放出される。紙幣用挿入・放出口15は、旅客が、例えば電子マネーであるICカードの残高を増額するためにチャージ処理を試みる時に、必要な現金紙幣が投入され、チャージ処理が終了した後、釣り札(釣り紙幣)がある場合にはその紙幣を放出する。硬貨投入口16は、個別の乗車券等を購入する等の場合であって硬貨が必要なときに硬貨が投入される。硬貨に関して釣銭が発生する場合には硬貨返部17に釣銭の硬貨が放出される。受取り口18では、購入した乗車券、または受取りを希望した領収書が排出される。
【0023】
上記の接客部11において、利用者(旅客または乗客等)が、特に、ICカードに上記のチャージ処理を行う時には、表示・タッチ操作部12の表示画面上に表示された前述のチャージサービスに係る選択ボタン21を選択する。その際に、さらに表示・タッチ操作部12では、チャージ希望料金の選択ボタン(1000円、2000円等)が表示され、利用者はチャージ希望料金についていずれかの選択ボタンを選択する。その後、利用者は自身の所持するICカードをICカード用挿入・放出口14に挿入すると共に、当該ICカードへチャージを行うために必要な現金紙幣を紙幣用挿入・放出口15に挿入する。自動券売機10に内蔵されたICカードチャージの機能部では、ICカードチャージの指定指令、チャージ希望料金の指定指令、ICカードの挿入確認、および現金紙幣の挿入確認に基づいて、当該ICカードのメモリにチャージ希望料金に対応するデータ量を記録すると共に、決済処理を行い、釣り札がある場合には釣り札を用意する。チャージが完了したICカードはICカード用挿入・放出口14から放出され、釣り札は紙幣用挿入・放出口15から放出され、これによりICカード等が利用者に戻される。また領収書が必要であるとの要求指定を受けた場合には、領収書が作成され、受取り口18から排出される。
【0024】
図3と図4に示されるように、自動券売機10の内部には、各種の機能部または部品要素として、カード処理部31、発券部32、紙幣処理部33、硬貨処理部34、警報部35、硬貨金庫36、電源装置37が備えられている。また自動券売機10の外付けの装置として、プリンタ38と回線接続部39が設けられている。図4に示すように、硬貨金庫36は、硬貨処理部34の下側に配置され、硬貨の種類別に金庫容器を有している。さらに自動券売機10の背面部には、管理用の係員表示・操作部40が設けられている。上記のICカードチャージ装置に係る機能部は、カード処理部31によって実現されている。ただし、このカード処理部31は、ICカードを処理すると共に、通常の磁気カードの処理に対応する構成を有しているものとする。カード処理部31、発券部32、紙幣処理部33、硬貨処理部34等の各々にはマイコンによる制御処理手段が備えられている。
【0025】
図5に、自動券売機10の内部に設けられた各種の機能部のシステム構成を示す。
【0026】
自動券売機10の全体の動作を管理・統括する制御処理手段として演算処理部51が設けられている。表示・タッチ操作部12で入力された各種の選択指令に係る信号は演算処理部51に入力される。演算処理部51は、入力された各種の選択指令に対応する所定の指示信号を作成し、出力する。当該指示信号は、必要に応じて、カード処理部31、発券部32、紙幣処理部33、硬貨処理部34の各々に内蔵される制御処理手段に供給される。またICカード用挿入・放出口14、紙幣用挿入・放出口15、硬貨投入口16、受取り口18等の各々には、それらの所定の箇所においてその対象物(ICカード、紙幣、釣り札、硬貨等)の存在の有無を検知するためのよく知られたセンサが設けられている。それらのセンサから出力される検知信号は例えば演算処理部51に提供される。
【0027】
利用者によってICカード用挿入・放出口14に挿入されたICカード52は、カード搬送機構によってカード処理部31に搬送される。カード処理部31では、内蔵されたリーダ・ライタによって、搬送されたICカード52の内蔵メモリに対して無線等を介して必要な情報の読み書きが行われる。ICカードチャージ装置の機能を実行する場合には、ICカード52の内蔵メモリに対して、指定されたチャージ希望金額に従って、対応するチャージ量を残額チャージ量に加算した状態で書き込む。カード処理部31でチャージ処理が完了すると、ICカード52は、カード搬送機構により戻され、ICカード用挿入・放出口14から放出される。
【0028】
利用者によって紙幣用挿入・放出口15に挿入された入金用の少なくとも1枚の紙幣53は、紙幣搬送機構によって紙幣処理部33に搬送される。紙幣処理部33では、搬送された紙幣53を判別し、当該紙幣53に基づく金額量を計数し、指定されたチャージ希望金額と計数した金額量とを比較し、条件の満足の有無を判断し、釣り札が必要であると判断した場合には釣り札の金額を計算し、返却するための必要な釣り札を用意する。用意された少なくとも1枚の釣り札54は、紙幣搬送機構によって戻され、紙幣用挿入・放出口15から放出される。
【0029】
さらに発券部32は、領収書の要求信号に基づき、領収書を作成し、搬送機構によって受取り口18へ領収書を搬送し、受取り口18から排出する。
【0030】
なお演算処理部51にはメモリ55が付設され、このメモリ55には、演算処理部51で実行させる各種の処理プログラムが保存されると共に、演算処理部51において所定期間の間に実行された各種の処理内容に係るデータ(操作ログや動作ログ等)が記録され保存される。
【0031】
次に、図6および図7を参照して、自動券売機10に組み込まれたICカードチャージ装置の部分の構成とその動作を説明する。
【0032】
図6に示すように、自動券売機10に組み込まれたICカードチャージ装置の部分は、ICカード処理部31Aと紙幣処理部33と発券部32の各要素と、さらにこれらの要素の動作を制御し管理する演算処理部51とから構成されている。ICカード処理部31Aは、上記のカード処理部31においてICカードの処理に対応する機能部である。演算処理部51は、利用者が、表示・タッチ操作部12において「チャージ」のボタン21およびチャージ希望金額のボタンを選択操作し、ICカード用挿入・放出口14にICカード52を挿入し、かつ紙幣用挿入・放出口15に入金用の紙幣53を挿入すると、ICカード処理部31Aと紙幣処理部33の各々を動作を制御して、ICカード52への「チャージ」のサービスを開始する。そして、ICカード52へのチャージが完了すると、ICカード52をICカード用挿入・放出口14から放出すると共に、紙幣処理部33において釣り札があると判断された場合には紙幣用挿入・放出口15から当該釣り札54を放出する。この放出動作の際において、ICカード52の放出動作と釣り札54の放出動作が下記の通りの順序に従うように制御される。
【0033】
図7を参照してICカードチャージの全体の動作を説明する。最初の判断ステップS11では、表示・タッチ操作部12においてボタン21が選択されたか否かが判断される。判断ステップS11でNOである場合には待機状態に保持される。判断ステップS11でYESの場合には、次の判断ステップS12でICカード52の挿入および紙幣53の挿入があったか否かが判断される。なお判断ステップS11でYESの場合には、チャージ希望金額に関する選択ボタンもいずれかの金額のボタンが操作されているものとする。判断ステップS12でNOである場合には待機状態が維持され、YESの場合には次の判断ステップS13に移行する。
【0034】
判断ステップS13では、挿入された紙幣53に基づく総金額がチャージ希望金額以上であるか否かが判断される。判断ステップS13でNOである場合には、紙幣(金額)の追加が要求される(処理ステップS14)。判断ステップS13でYESになった場合には、次の処理ステップS15でICカード52へのチャージが実行される。その後の処理ステップS16ではお釣りの計算が実行される。判断ステップS17では釣り札の要否が判断される。判断ステップS17でNOである場合には、チャージが完了したICカード52をICカード用挿入・放出口14から放出する(処理ステップS18)。その後、後述の判断ステップS23に移行する。判断ステップS17でYESの場合には、釣り札54が用意される(処理ステップS19)。
【0035】
その後、最初に釣り札54が紙幣用挿入・放出口15から放出される(処理ステップS20)。そして、放出された釣り札54が利用者によって抜き取られた否かが判断される(判断ステップS21)。判断ステップS21でNOである場合には、待機状態が継続され、YESである場合にはチャージが完了したICカード52をICカード用挿入・放出口14から放出する(処理ステップS22)。なお、この際において、領収書の受取希望が出されている場合には、併せて、発券部32が動作してその受取り口18から領収書を排出する。その後、判断ステップS23でICカード52が利用者によって抜き取られた否かが判断される。判断ステップS23でNOである場合には待機状態に保持され、YESの場合にはチャージ完了として処理を終了する。
【0036】
以上の通り、本実施形態に係るICカードチャージ装置の動作によれば、最初に紙幣用挿入・放出口15から釣り札54の放出動作を行い、当該釣り札54が抜き取られたことを条件にチャージが完了したICカード52をICカード用挿入・放出口14から放出するようにしたことに特徴を有している。これによって、釣り札54がある場合にその取り忘れを確実に防止することができる。
【0037】
次に、図8と図9を参照して、本発明に係るICカードチャージ装置の第2の実施形態を説明する。この実施形態でも、乗車券等を発券する機能を有する共にICカードにチャージを行う機能を有した自動券売機を想定しており、当該自動券売機にICカードチャージ装置の構造部および機能部が組み込まれている。但し、前述した自動券売機10と異なる点は、ICカード用の挿入・放出口と紙幣用の挿入・放出口とが1つの共通な挿入・放出口として備えられている点である。図8は前述した実施形態の図6に対応する図であり、図9は前述した実施形態の図7に対応した図である。この第2の実施形態では、1つの共通な挿入・放出口61に対してICカード52と少なくとも1枚の紙幣53を順次に挿入し、かつ当該挿入・放出口61からICカード52と釣り札54を上記の順序で順次に放出するように制御される。その他の構成は図6に示された構成と実質的に同じである。
【0038】
図8に示されるように、1つの挿入・放出口61が設けられており、この挿入・放出口61と、ICカード処理部31Aおよび紙幣処理部33との間には、ICカード/紙幣弁別部62が設けられている。ICカード/紙幣弁別部62は、挿入・放出口61にICカード52が挿入されたときにはICカードであることを識別して当該ICカード52をICカード処理部31Aに搬送し、紙幣53が挿入されたときには紙幣であることを識別して当該紙幣53を紙幣処理部33に搬送する。ICカード/紙幣弁別部62におけるICカードと紙幣の識別では、寸法(サイズまたは大きさ、厚み等)、固さ(柔軟性)、接触感、または色合い等を検知するセンサを設け、これの検知対象を識別条件として両者を識別する手段を設け、これにより弁別している。また前述した放出順序に従えば、最初に紙幣処理部33が釣り札54を排出するので、ICカード/紙幣弁別部62は当該釣り札54を挿入・放出口62から放出し、次いで、釣り札54の抜き取りを条件にしてICカード処理部31Aがチャージ済みのICカード52を排出するので、ICカード/紙幣放出部62は当該ICカード52を挿入・放出口61から放出する。
【0039】
図9のフローチャートでは、ICカード52へチャージを実行した以降のステップが示されている。それよりもステップの内容(ステップS11〜S13)は図7で説明した動作の流れと実質的に同じである。
【0040】
処理ステップS15でICカード52へのチャージが実行された後、処理ステップS16ではお釣りの計算が実行される。その後の判断ステップS17では釣り札の要否が判断される。判断ステップS17でNOである場合には、チャージが完了したICカード52を挿入・放出口61から放出し(処理ステップS18)、その後、判断ステップS23に移行する。判断ステップS17でYESの場合には、釣り札54が用意される(処理ステップS19)。
【0041】
その後、最初に釣り札54が挿入・放出口61から放出される(処理ステップS31)。そして、放出された釣り札54が利用者によって抜き取られた否かが判断される(判断ステップS21)。判断ステップS21でNOである場合には、待機状態が継続され、YESである場合にはチャージが完了したICカード52を同じ挿入・放出口61から放出する(処理ステップS32)。なお、この際において、領収書の受取希望が出されている場合には、併せて、発券部32が動作してその受取り口18から領収書を排出する。その後、判断ステップS23でICカード52が利用者によって抜き取られた否かが判断される。判断ステップS23でNOである場合には待機状態に保持され、YESの場合にはチャージ完了として処理を終了する。
【0042】
以上の通り、第2の実施形態に係るICカードチャージ装置の動作によれば、1つの共通の挿入・放出口61により、最初に釣り札54の放出動作を行い、当該釣り札54が抜き取られたことを条件にチャージ済みのICカード52を放出するようにしたことに特徴を有している。これによって、釣り札54がある場合にその取り忘れを確実に防止することができる。
【0043】
次に、図10と図11を参照して、本発明に係るICカードチャージ装置の第3の実施形態を説明する。この実施形態についても、乗車券等を発券する機能を有すると共にICカードにチャージを行う機能を有した自動券売機を想定しており、当該自動券売機にICカードチャージ装置の構造部および機能部が組み込まれている。この実施形態では、ICカード用の挿入・放出口と紙幣用の挿入・放出口とが1つの共通な挿入・放出口として備えられ、かつこの共通な挿入・放出口からICカードと紙幣(入金用紙幣または釣り札)が重ね合わせて同時に挿入され、または重ね合わせてまとめて同時に同時に放出される、という構成を有している。図10は前述した各実施形態の図6、図8に対応する図であり、図11は前述した各実施形態の図7、図9に対応した図である。この第3の実施形態では、1つの共通な挿入・放出口61に対してICカード52と紙幣53を重ね合わせて同時に挿入し、かつ当該挿入・放出口61からICカード52と釣り札54を重ね合わせてまとめて同時に放出するように制御される。その他の構成は図8に示された構成と実質的に同じである。
【0044】
図10に示されるように、1つの挿入・放出口61が設けられており、この挿入・放出口61と、ICカード処理部31Aおよび紙幣処理部33との間には、ICカード/紙幣弁別・重合せ部63が設けられている。ICカード/紙幣弁別・重合せ部63は、挿入・放出口61にICカード52と紙幣53が重ね合わせて同時に挿入されたときには、ICカードと紙幣を識別して弁別し、それぞれ、ICカード処理部31Aと紙幣処理部33に搬送する。そして放出時には、ICカード/紙幣弁別・重合せ部63は、ICカード処理部31Aから排出されたICカード52と、紙幣処理部33から排出された釣り札54とを重ね合わせ、挿入・放出口61から同時に放出する。
【0045】
図11のフローチャートでは、ICカード52へのチャージが完了した以降のステップが示されている。それ前のステップの内容は図7等で説明した動作の流れと実質的に同じである。
【0046】
処理ステップS15でICカード52へのチャージが実行された後、処理ステップS16ではお釣りの計算が実行される。その後の判断ステップS17では釣り札の要否が判断される。判断ステップS17でNOである場合には、チャージが完了したICカード52のみを挿入・放出口61から放出し(処理ステップS18)、その後、判断ステップS23に移行する。判断ステップS17でYESの場合には、釣り札54が用意される(処理ステップS19)。
【0047】
その後、ICカード処理部31Aからチャージ済みICカード52が排出され、かつ紙幣処理部33から釣り札54が排出される(処理ステップS41)。そして、排出されたICカード52と釣り札54とがICカード/紙幣弁別・重合せ部63により重ね合わされる(処理ステップS42)。その後、ICカード52と釣り札54は同時に挿入・放出口61から放出される(処理ステップS43)。なお、この際において、領収書の受取希望が出されている場合には、併せて、発券部32が動作してその受取り口18から領収書を排出する。その後、判断ステップS44でICカード52および釣り札54等(ICカード52のみの場合もある。)が利用者によって同時にまとめて抜き取られた否かが判断される。判断ステップS44でNOである場合には待機状態に保持され、YESの場合にはチャージ完了として処理を終了する。
【0048】
以上の通り、第3の実施形態に係るICカードチャージ装置の動作によれば、1つの共通の挿入・放出口61により、ICカード52と釣り札54とが重ねて合わされて同時にまとめて放出されることに特徴を有している。これによって、釣り札54がある場合にその取り忘れを確実に防止することができる。
【0049】
なお上記の各実施形態では、自動券売機10に組み込まれたICカードチャージ装置の例で説明したが、専用装置として構成されたICカードチャージ装置の場合にも同様に構成することができる。
【0050】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係るICカードチャージ装置は、例えば自動券売機に組み込まれ、あるいは専用装置として構成され、電子マネーであるICカードの残高を充填するための装置として利用され、特にICカードのチャージの際に釣り札等の紙幣がICカードの放出と共に放出される場合において優先的に先に紙幣が放出され、その後にICカードを放出させることにより紙幣の取り忘れを確実に防止することに利用される。
【符号の説明】
【0052】
10 自動券売機
11 接客部
12 表示・タッチ操作部
13 領域
14 ICカード用挿入・放出口
15 紙幣用挿入・放出口
16 硬貨投入部
17 硬貨返却部
18 受取り口
21 選択ボタン
22 選択ボタン
31 カード処理部
31A ICカード処理部
32 発券部
33 紙幣処理部
34 硬貨処理部
35 警報部
36 硬貨金庫
37 電源装置
38 プリンタ
39 回線接続部
40 係員表示・操作部
51 演算処理部
52 ICカード
53 紙幣
54 釣り札
55 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子マネー用ICカードと紙幣とが挿入され、その後、前記ICカードと前記紙幣の一部または全部とを放出して返却するICカードチャージ装置において、
最初に前記紙幣を放出し、次に前記紙幣が抜き取られたことを条件に前記ICカードを放出する放出制御手段を備えることを特徴とするICカードチャージ装置。
【請求項2】
挿入された前記ICカードに対して、挿入された前記紙幣および選択された金額情報に基づいて当該金額に対応するチャージを行い、その後、チャージ済みの前記ICカードと釣り紙幣を放出して返却するように構成され、
前記放出制御手段は、最初に前記釣り紙幣を放出し、次に前記釣り紙幣が抜き取られたことを条件に前記チャージ済みICカードを放出するように構成されることを特徴とする請求項1記載のICカードチャージ装置。
【請求項3】
ICカード用挿入・放出口と紙幣用挿入・放出口とを別々に備えることを特徴とする請求項1または2記載のICカードチャージ装置。
【請求項4】
前記ICカードの挿入・放出口と前記紙幣の挿入・放出口を、共通化した1つの挿入・放出口として形成し、
共通化された前記挿入・放出口は、挿入または放出された前記ICカードと前記紙幣の各々をその寸法の違いを識別して検知するICカード・紙幣検知手段を備えることを特徴とする請求項1または2記載のICカードチャージ装置。
【請求項5】
自動券売機に組み込まれてICカードチャージ機能部として構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のICカードチャージ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−20418(P2013−20418A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152804(P2011−152804)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】