説明

ICカード処理装置及びICカード処理方法

【課題】調整時のコスト低減を図ることが可能なICカード処理装置を提供することにある。
【解決手段】ICカード処理装置は、キー情報を読み取る読取手段(101)と、ICカードに情報を印刷する印刷手段(1041)と、ICカードのICチップに情報を書き込む書込手段(1042)と、前記印刷手段による印刷及び前記書込手段による書き込みの両方を実行する第1のモード、又は前記印刷手段による印刷を実行する第2のモードのいずれかを選択するモード選択手段(102)と、前記読取手段により読み取られたキー情報の正当性を確認し、前記モード選択手段により選択されたモードに基づき、前記印刷手段による印刷及び前記書込手段による書き込みを制御する制御手段(103)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップを搭載したICカード(無線ICカード)に対して必要な情報を印刷し、またICチップに必要な情報を書き込み、ICカードを作成するICカード処理装置及びICカード処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野でICカード(無線ICカード)が利用されている。このようなICカードを作成するICカード作成装置に関する各種技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
ICカード作成装置は、ICカード上に必要な情報を印刷し、ICチップに必要な情報を書き込んで、ICカードを作成する。このICカード作成装置は、ICチップに情報を書き込むことなく、ICカード作成処理を完了することはない。
【特許文献1】特開2004−102610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように、ICカード作成において、券面への必要情報の印刷とICチップへの必要情報の書き込みを一体的に行うのは、券面の情報とICチップの情報の不一致を避けるために重要である。
【0005】
しかしながら、ICカード作成装置の調整時には、ICチップへの情報の書き込み動作が必ずしも必要でないことがある。従来のICカード作成装置は、券面への必要情報の印刷とICチップへの必要情報の書き込みを切り離すことができず、調整時にも高価なICカードを利用するしかなかった。その結果、調整時のコストがかさむという問題が生じている。
【0006】
本発明の目的は、上記課題を解決するためになされたものであり、調整時のコスト低減を図ることが可能なICカード処理装置及びICカード処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のICカード処理装置及びICカード処理方法は、以下のように構成されている。
【0008】
(1)この発明は、キー情報を読み取る読取手段と、ICカードに情報を印刷する印刷手段と、ICカードのICチップに情報を書き込む書込手段と、前記印刷手段による印刷及び前記書込手段による書き込みの両方を実行する第1のモード、又は前記印刷手段による印刷を実行する第2のモードのいずれかを選択するモード選択手段と、前記読取手段により読み取られたキー情報の正当性を確認し、前記モード選択手段により選択されたモードに基づき、前記印刷手段による印刷及び前記書込手段による書き込みを制御する制御手段とを備えたことを特徴とするICカード処理装置である。
【0009】
(2)この発明は、キー情報を読み取り、前記読取手段により読み取られたキー情報の正当性を確認し、正当性が確認されたキー情報の種類と、ICカードへの情報の印刷及びICカードのICチップへの情報の書き込みの両方を実行する第1のモード又はICカードへの情報の印刷を実行する第2のモードのいずれかの選択されたモードの種類との組み合わせに基づき、選択されたモードの実行の可否を判定し、印刷及び書き込みを制御することを特徴とするICカード処理方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、調整時のコスト低減を図ることが可能なICカード処理装置及びICカード処理方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
【0012】
図1は、本発明の一例のICカード処理装置の概略を説明するための図である。図1に示すように、ICカード処理装置は、キー読取部101、制御部102、モード切替部103、記録部104などを備えている。また、記録部104は、ICカードの券面に必要な情報(顔画像や文字データ)を印画・印刷・コートする券面印刷部1041、及びICカードのICチップに必要な情報を書き込むIC書込部1042を備えている。
【0013】
キー読取装置101は、稼動種別情報であるキー情報を読み取り、読み取ったキー情報を制御部102に通知する。例えば、キー情報はICカード(接触式ICカード又は非接触式ICカード)に記憶されており、このキー読取装置101はこのキー情報が記憶されたICカードを読み取る。つまり、キー読取装置101には、ICカードリーダなどが相当する。
【0014】
キー情報には、調整キーK1及び運用キーK2がある。調整キーK1は、機器調整時等の実運用時以外に用いられるキーである。調整キーK1は、調整用という情報をもつ。一方の運用キーK2は、実運用時に用いられるキーである。運用キーK2は、運用先の情報が記述されており、調整キーK1として用いることは出来ない。
【0015】
モード切替部103は、ユーザからのモード(調整モード又は運用モード)の指定(選択)を受け付け、制御部102に通知する。例えば、ユーザは、保守・調整時において、このモード切替部103に対して、調整モードを指定する。言い換えると、通常、保守・調整時以外は、このモード切替部103は利用されない。
【0016】
制御部102は、キー読取部101により読み取られたキー情報の正当性を確認し(正規の調整キーK1又は正規の運用キーK2か否かを確認し)、モード切替部103から通知されるモード(調整モード又は運用モード)に基づき、記録部104による券面印刷及びIC書き込みを制御する。
【0017】
図2を参照して、読み取られたキー情報の種類(調整キーK1/運用キーK2)と、指定(選択)されたモード(調整モード/運用モード)の種類の組み合わせに基づく、券面印刷及びIC書き込みの動作制御を説明する。
【0018】
ICカード処理装置に対して電源が投入されると(ST201)、キー読取部101によるキー読取待ち状態となる。キー読取部101によりキー情報が読み取られると、読み取られたキー情報は、制御部102へ通知される。制御部102は、キー情報の正当性を確認し、キー情報の種類を判別する(ST202)。例えば、調整キーK1をCと定義し、運用キーK2をDと定義する。
【0019】
制御部102によるキー情報の正当性が確認されれば、記録部104の券面印刷部1041によりICカードに対して必要情報が印刷される(ST204)。制御部102は、モード切替部103から通知されたモードの指定(選択)を確認する(ST205)。例えば、運用モード(IC書き込み有り)をAと定義し、調整モード(IC書き込み無し)をBと定義する。
【0020】
制御部102は、キー情報の種類(調整キーK1/運用キーK2)と、指定(選択)されたモードの種類の組み合わせ(調整モード/運用モード)に基づき、指定(選択)されたモードの実行の可否を判定し、券面印刷部1041による券面印刷及びIC書き込み部1042によるIC書き込みの動作を制御する。
【0021】
具体的には、キー情報が調整キーK1に該当し、指定されたモードが調整モードであることを条件として(BかつCであることを条件として)(ST206、YES)、調整モードを実行する。つまり、上記した券面印刷部1041による券面印刷だけを実行し、IC書き込み部1042によるIC書き込みは実行しない(ST207)。
【0022】
キー情報が調整キーK1に該当し、指定されたモードが運用モードであることを条件として(BかつCでないことを条件として)(ST206、NO)、運用モードを実行する。つまり、上記した券面印刷部1041による券面印刷を実行した上で、さらにIC書き込み部1042によるIC書き込みも実行する(ST208)。
【0023】
キー情報が運用キーK2に該当し、指定されたモードが調整モードであることを条件として(BかつCでないことを条件として)(ST206、NO)、運用モードを実行する。つまり、上記した券面印刷部1041による券面印刷を実行した上で、さらにIC書き込み部1042によるIC書き込みも実行する(ST208)。
【0024】
キー情報が運用キーK2に該当し、指定されたモードが運用モードであることを条件として(BかつCでないことを条件として)(ST206、NO)、運用モードを実行する。つまり、上記した券面印刷部1041による券面印刷を実行した上で、さらにIC書き込み部1042によるIC書き込みも実行する(ST208)。
【0025】
その後、キー排出要求をチェックし、キー排出要求が無ければ(ST209、NO)、印刷処理(ST204)へ戻る。キー排出要求が有れば(ST209、YES)再度キーが挿入されるのを待つ(ST202)。
【0026】
上記以外に、例えば次のように、読み取られたキー情報の種類(調整キーK1/運用キーK2)と、指定(選択)されたモードの種類(調整モード/運用モード)に基づき、券面印刷及びIC書き込みの動作を制御するようにしてもよい。
【0027】
キー情報が調整キーK1に該当し、指定されたモードが調整モードである場合には、上記と同様に、調整モードを実行する。つまり、上記した券面印刷部1041による券面印刷だけを実行し、IC書き込み部1042によるIC書き込みは実行しない。また、キー情報が運用キーK2に該当し、指定されたモードが運用モードである場合にも、上記と同様に、運用モードを実行する。つまり、上記した券面印刷部1041による券面印刷を実行し、さらにIC書き込み部1042によるIC書き込みも実行する。これ以外の組み合わせ、つまり、調整キーK1と運用モード、運用キーK2と調整モードの場合には、エラーとして動作しない。言い換えると、キー情報の種類と指定されたモードの種類とが一致した場合に限り、指定されたモードを実行し、キー情報の種類と指定されたモードの種類とが一致しない場合は、券面印刷もIC書き込みも行わない。
【0028】
以上により、保守・調整時においては、モード切替部103を介して調整モードを選択し、キー読取部101に対して調整キーK1を読み取らせることにより、券面印刷だけが実行され、各種情報を行うことができる。よって、保守・調整時においては、コストの高い無線ICカードを用いることなく、IC書き込み部以外の機器の調整が可能になる。
【0029】
保守・調整終了後(或いは実運用時に)、モード切替部103を介して運用モードへ戻される。万一、運用モードへの戻し忘れが生じても、運用時に利用される運用キーK2の情報がキー読取部101から制御部102へ通知されると、制御部102の制御によりモード切替装置102の設定に関わらず、券面印刷に加えてIC書き込みが実行される。或いは、キー情報とモードが一致しない場合は、エラーとして動作しない。よって、実運用時に、券面印刷だけがなされて、IC書き込みがなされていないICカード(券面印刷とIC書き込み情報が一致しないICカード)が作成されるのを防止することができる。
【0030】
なお、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一例のICカード処理装置の概略を説明するための図である。
【図2】読み取られたキー情報の種類(調整キーK1/運用キーK2)と指定(選択)されたモード(調整モード/運用モード)の種類の組み合わせに基づく、券面印刷及びIC書き込みの動作制御を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0032】
101…キー読取部、102…制御部、103…モード切替部、104…記録部、1041…券面印刷部、1042…IC書込部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キー情報を読み取る読取手段と、
ICカードに情報を印刷する印刷手段と、
ICカードのICチップに情報を書き込む書込手段と、
前記印刷手段による印刷及び前記書込手段による書き込みの両方の実行する第1のモード、又は前記印刷手段による印刷を実行する第2のモードのいずれかを選択するモード選択手段と、
前記読取手段により読み取られたキー情報の正当性を確認し、前記モード選択手段により選択されたモードに基づき、前記印刷手段による印刷及び前記書込手段による書き込みを制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とするICカード処理装置。
【請求項2】
キー情報を読み取る読取手段と、
ICカードに情報を印刷する印刷手段と、
ICカードのICチップに情報を書き込む書込手段と、
前記印刷手段による印刷及び前記書込手段による書き込みの両方を実行する第1のモード、又は前記印刷手段による印刷を実行する第2のモードのいずれかを選択するモード選択手段と、
前記読取手段により読み取られたキー情報の正当性を確認し、正当性が確認されたキー情報の種類と前記モード選択手段により選択されたモードの種類の組み合わせに基づき、選択されたモードの実行の可否を判定し、前記印刷手段による印刷及び前記書込手段による書き込みを制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とするICカード処理装置。
【請求項3】
キー情報を読み取る読取手段と、
ICカードに情報を印刷する印刷手段と、
ICカードのICチップに情報を書き込む書込手段と、
前記印刷手段による印刷及び前記書込手段による書き込みの両方を実行する運用モード、又は前記印刷手段による印刷だけを実行する調整モードのいずれかを選択するモード選択手段と、
前記読取手段により読み取られたキー情報が調整用キーに該当し、且つ前記選択手段により選択されたモードが調整モードであることを条件として、前記調整モードを実行し、前記読取手段により読み取られたキー情報が運用キーに該当し、且つ前記選択手段により選択されたモードが運用モードであることを条件として、前記運用モードを実行する、
を備えたことを特徴とするICカード処理装置。
【請求項4】
キー情報を読み取る読取手段と、
ICカードに情報を印刷する印刷手段と、
ICカードのICチップに情報を書き込む書込手段と、
前記印刷手段による印刷及び前記書込手段による書き込みの両方を実行する運用モード、又は前記印刷手段による印刷だけを実行する調整モードのいずれかを選択するモード選択手段と、
前記読取手段により読み取られたキー情報が調整用キーに該当し、且つ前記選択手段により選択されたモードが調整モードであることを条件として、前記調整モードの実行を制御し、前記読取手段により読み取られたキー情報が調整キーに該当し、且つ前記選択手段により選択されたモードが運用モードである、又は前記読取手段により読み取られたキー情報が運用キーに該当し、且つ前記選択手段により選択されたモードが運用モードである、又は前記読取手段により読み取られたキー情報が運用キーに該当し、且つ前記選択手段により選択されたモードが調整モードであることを条件として、前記運用モードの実行を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とするICカード処理装置。
【請求項5】
キー情報を読み取り、
前記読取手段により読み取られたキー情報の正当性を確認し、
正当性が確認されたキー情報の種類と、ICカードへの情報の印刷及びICカードのICチップへの情報の書き込みの両方を実行する第1のモード又はICカードへの情報の印刷を実行する第2のモードのいずれかの選択されたモードの種類との組み合わせに基づき、選択されたモードの実行の可否を判定し、印刷及び書き込みを制御する、
ことを特徴とするICカード処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−99684(P2006−99684A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−288016(P2004−288016)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】