説明

ICカード読み書き装置

【課題】処理未了の発生を低減させ、改札の流れを悪化させることがないICカード読み書き装置を提供する。
【解決手段】ICカード読み書き装置に、ICカード4との間で電波を送受信するアンテナと、該アンテナを覆うアンテナ面3と、前記アンテナが発する電波の側波帯の少なくとも一部を遮蔽する遮蔽部材7とを設けた。前記遮蔽部材7は、前記側波帯のうちのICカード4が接近してくることが想定される側のみを遮蔽していてもよい。前記遮蔽部材7と、前記アンテナ面3のうちの側波帯に対応する部分とは、同じ色とされているのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触でICカード内のデータを読み書きするICカード読み書き装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ICカード読み書き装置は、交通機関の自動改札機に用いられている。図7は、従来の自動改札機101を示す図である。自動改札機101の上部に、ICカード読み書き装置102が組み込まれている。ICカード読み書き装置102の上面には、アンテナ面103が設けられている。交通機関の乗降客は、ICカード104を携帯していて、自動改札機101を通るために、ICカード104をICカード読み書き装置102のアンテナ面103にかざす。すると、ICカード104とICカード読み書き装置102との間で、電波が送受信される。そして、ICカード読み書き装置102は、電波によって送られたデータを処理して、自動改札機101の扉を開閉する。
【0003】
特許文献1に、非接触でデータを送受信するICカードとICカード処理装置との間でのデータ交換に要する時間を短縮するために、周波数帯域を有効に利用して、全二重方式によりデータ交換を行うことが記載されている。
【特許文献1】特開平11−234164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ICカード読み書き装置を自動改札機に用いた場合に、処理未了が起こることがある。処理未了とは、ICカードとICカード読み書き装置との間の通信が、データ処理の途中で中断してしまうことを言う。処理未了が起こると、ICカード読み書き装置は、赤ランプを点滅させる等して、乗降客にICカードの再タッチを促す。乗降客は、立ち止まって、再度ICカードをアンテナ面にかざさなければならないので、改札の流れが悪化する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によるICカード読み書き装置は、ICカードとの間で電波を送受信するアンテナと、該アンテナを覆うアンテナ面と、前記アンテナが発する電波の側波帯の少なくとも一部を遮蔽する遮蔽部材とを備えていることを特徴とする。
【0006】
前記遮蔽部材は、前記側波帯のうちのICカードが接近してくることが想定される側のみを遮蔽していてもよい。
【0007】
前記遮蔽部材と、前記アンテナ面のうちの側波帯に対応する部分とは、同じ色とされているのが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、処理未了の発生を低減させることができるので、改札の流れを悪化させることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明の一実施形態における自動改札機1の全体図である。自動改札機1の上部に、ICカード読み書き装置2が組み込まれている。ICカード読み書き装置2の上面には、アンテナ面3が設けられている。アンテナ面3は、例えばプラスチックで形成されている。アンテナ面3の内部には、電波を送受信するためのアンテナが設けられている。交通機関の乗降客は、ICカードを携帯していて、自動改札機1を通るために、ICカードをICカード読み書き装置2のアンテナ面3にかざす。すると、ICカードとICカード読み書き装置2のアンテナとの間で、電波が送受信される。そして、ICカード読み書き装置2は、電波によって送られたデータを処理して、自動改札機1の扉5を開閉する。
【0010】
図2は、ICカード読み書き装置2の拡大図である。ICカード読み書き装置2の上面のアンテナ面3からは、電波が送信されている。乗降客がアンテナ面3にICカードをかざすと、ICカードは、電波を介して電力を受け取り、自身の電源をオンし、データ通信を開始する。
【0011】
アンテナ面3の中央には、楕円のマーク6があり、ここからは、最も強い電波が送信されている。アンテナ面3のマーク6の手前側、すなわちICカードが接近してくることが想定される側には、電波を遮蔽するための遮蔽部材7が設けられている。遮蔽部材7は、例えばアルミシートである。遮蔽部材7は、アンテナ面3のマーク6以外の部分と同じ色にして、目立たないようにするのが好ましい。
【0012】
図3(a)は、仮に遮蔽部材7を設けなかった場合の、アンテナ面3から送信される電波の通信範囲8を示す図である。通信範囲8は、主波帯8aと側波帯8bから成る。主波帯8aは、アンテナ面3の中央のマーク6の上空に、半球状に形成される。側波帯8bは、主波帯8aの周囲に、ドーナツを半分にスライスしたような形に形成される。
【0013】
ICカード4が図示したような経路で通信範囲8を通過したとする。ICカード4は、地点P1で手前側(ICカード4が接近してくることが想定される側)の側波帯8bに入り、電源がオンし、予め決められた動作シーケンスを先頭から実行し始める。動作シーケンスの先頭では、ICカード4自身の認証のための動作を行う。
【0014】
しかし、ICカード4は、全ての動作シーケンスが完了する前に、地点P2で手前側の側波帯8bから抜けてしまい、電源がオフする。動作シーケンスの途中でICカード4の電源がオフすると、ICカード読み書き装置2側から見ると、ICカード4から所定の応答が帰ってこなくなる。すると、ICカード読み書き装置2は、ICカード4から所定の応答が帰ってくるのを待つ「レス待ち状態」になる。「レス待ち状態」は、所定の応答が帰ってこなければ200ms継続する。
【0015】
その後、ICカード4は、地点P3で主波帯8aに入り、再度電源がオンする。再度電源がオンすると、ICカード4は、再度動作シーケンスを先頭から実行し始める。すなわち、ICカード4自身の認証のための動作を開始する。具体的には、ICカード4は、自身を認証してもらうために、自身のIDコード等をICカード読み書き装置2に送信して、その応答を待つ。
【0016】
しかし、ICカード読み書き装置2側は、動作シーケンスの途中での別の応答を待つ「レス待ち状態」にあり、両者の動作は食い違う。ICカード読み書き装置2は、「レス待ち状態」のタイムアウト後、すなわち200ms後に、はじめて動作シーケンスの先頭に戻り、認証動作に応答する。ここで、ようやくICカード4と動作がかみ合い、認証が行われる。
【0017】
しかし、ICカード4が主波帯8a内を移動している間に、「レス待ち状態」によって時間が消費され、認証動作への応答が遅れるので、再度、全ての動作シーケンスが完了しないうちに、ICカード4は、地点P4で主波帯8aから抜けてしまい、電源がオフする。その後、再度ICカード4の電源がオンすることはなく、処理未了となる。
【0018】
図3(b)は、遮蔽部材7を設けた場合の、アンテナ面3から送信される電波の通信範囲9を示す図である。通信範囲9は、主波帯9aと側波帯9bから成るが、手前側(ICカード4が接近してくることが想定される側)の側波帯は遮蔽部材7によって遮蔽される。従って、側波帯9bは、遮蔽部材7がない部分のみに形成される。
【0019】
この場合には、ICカード4が図示したような経路で通信範囲9を通過したとしても、手前側の側波帯がないので、動作シーケンスの途中でICカード4の電源がオフすることはない。従って、処理未了となることはない。
【0020】
図4は、本発明の一実施形態におけるICカード読み書き装置2の実験結果を示す図である。遮蔽部材7としては、アルミシートを用いた。タッチルートT1のようにICカード4を「タッチ&ゴー」した場合には、遮蔽部材7の有無に関わらず、処理未了は起こらなかった。タッチルートT2のようにICカード4を「低滑空」させた場合には、遮蔽部材7の有無によって、処理未了回数に違いが見られた。
【0021】
図5は、遮蔽部材7の形状のバリエーションを示す図である。図5(a)は、側波帯のうち、手前側(ICカード4が接近してくることが想定される側)のみを遮蔽した例である。遮蔽部材7は、アンテナ面3のマーク6以外の部分と同じ色にして、目立たないようにするのが好ましい。図5(b)は、側波帯の手前側半分を遮蔽した例である。この場合も、遮蔽部材7は、アンテナ面3のマーク6以外の部分と同じ色にして、目立たないようにするのが好ましい。図5(c)は、側波帯の全てを遮蔽した例である。
【0022】
図6は、遮蔽部材7をアンテナ面3の裏側に設けた例を示す図である。このようにすれば、遮蔽部材7は乗降客から完全に見えなくなる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、交通機関の自動改札機に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態における自動改札機1の全体図である。
【図2】ICカード読み書き装置2の拡大図である。
【図3】(a)は、仮に遮蔽部材7を設けなかった場合の、アンテナ面3から送信される電波の通信範囲8を示す図であり、(b)は、遮蔽部材7を設けた場合の、アンテナ面3から送信される電波の通信範囲9を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態におけるICカード読み書き装置2の実験結果を示す図である。
【図5】遮蔽部材7の形状のバリエーションを示す図である。
【図6】遮蔽部材7をアンテナ面3の裏側に設けた例を示す図である。
【図7】従来の自動改札機101を示す図である。
【符号の説明】
【0025】
1,101 自動改札機
2,102 ICカード読み書き装置
3,103 アンテナ面
4,104 ICカード
5 扉
6 マーク
7 遮蔽部材
8,9 通信範囲
8a,9a 主波帯
8b,9b 側波帯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICカードとの間で電波を送受信するアンテナと、
該アンテナを覆うアンテナ面と、
前記アンテナが発する電波の側波帯の少なくとも一部を遮蔽する遮蔽部材と
を備えていることを特徴とするICカード読み書き装置。
【請求項2】
前記遮蔽部材は、前記側波帯のうちのICカードが接近してくることが想定される側のみを遮蔽していることを特徴とする請求項1に記載のICカード読み書き装置。
【請求項3】
前記遮蔽部材と、前記アンテナ面のうちの側波帯に対応する部分とは、同じ色とされていることを特徴とする請求項1に記載のICカード読み書き装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−9367(P2009−9367A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−170294(P2007−170294)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【Fターム(参考)】