説明

ICタグおよびICタグの製造方法

【課題】自己粘着性を有し、再貼付可能であるとともに、緩衝性や耐衝撃性が高められたICタグおよびICタグの製造方法を提供する。
【解決手段】ICタグ10は、インレット基材21と、インレット基材21上に設けられたアンテナ22と、アンテナ22に接合されたICチップ23とを含むインレット20と、インレットを載置する底面31と、底面31の側部から延びる側面32とを有し、一側が開口する支持基材30とを有している。支持基材30内に緩衝材40が充填され、緩衝材40の一部が支持基材30の一側開口から露出している。緩衝材40は自己粘着性を有するゲル材からなり、この緩衝材40によりICタグ10を被着体60に貼着することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICタグおよびこのようなICタグの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触で情報の読み出しおよび書き込みが可能なICタグを製品に付して、市場で必要な様々な情報の管理を可能にすることが行われている。このようなICタグは、例えば、書籍、運送、流通、荷物の取り扱い等の分野で数多く利用されており、様々な種類のICタグが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ICタグに加わる曲げ応力を緩和するとともに、アンテナの断線を防止するため、外装本体とインレットとの間にゲル状の物質を充填したものが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、外部からの機械的衝撃等から内部部品の破壊を防止することのできるICタグパッケージが記載されており、このICタグパッケージにおいて、樹脂製フィルムとゲル樹脂とを封入して加熱および加圧することにより緩衝層を形成している。
【0005】
また、特許文献3には、基材シート16と自己粘着性樹脂又は可洗粘着材17とを積層した再粘着シート15と、インレイ粘着材14と、インレイ13と、表面基材11とを順次積層して貼り合せたRFIDラベルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−250504号公報
【特許文献2】特開平11−102424号公報
【特許文献3】実用新案登録第3120052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1および2記載のICタグは、外部からの衝撃に対する緩衝性はもつが、その全体が外装フィルムで覆われているため、自己粘着性や再粘着性は有していない。この場合、ICタグを被着体に貼付するためには、別途、粘着材が必要となる。
【0008】
一方、特許文献3のICタグは、自己粘着性や再粘着性を有するが、単にインレットの片面に再貼付シートを設けた構成であるため、とりわけ側面からの緩衝性や耐衝撃性に欠けると考えられる。
【0009】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、自己粘着性を有し、再貼付可能であるとともに、緩衝性や耐衝撃性が高められたICタグおよびICタグの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ICタグにおいて、インレット基材と、インレット基材上に設けられたアンテナと、アンテナに接合されたICチップとを含むインレットと、インレットを載置する底面と、底面から延びる側面とを有し、一側が開口する支持基材と、支持基材内に充填され、一部が支持基材の一側開口から露出するとともに自己粘着性を有する緩衝材とを備え、緩衝材は、ゲル材からなることを特徴とするICタグである。
【0011】
本発明は、ゲル材は、ウレタン系樹脂またはアクリル系樹脂からなることを特徴とするICタグである。
【0012】
本発明は、ゲル材の水分量は、0.01重量%〜1.0重量%であることを特徴とするICタグである。
【0013】
本発明は、平面から見て、支持基材の一側の全体が開口していることを特徴とするICタグである。
【0014】
本発明は、平面から見て、支持基材の一側の一部が開口していることを特徴とするICタグである。
【0015】
本発明は、緩衝材のうち一側開口から露出する部分の表面に、剥離シートが貼り付けられていることを特徴とするICタグである。
【0016】
本発明は、支持基材は、硬化性ゲル材からなることを特徴とするICタグである。
【0017】
本発明は、ICタグを製造するICタグの製造方法において、支持基材を準備する工程と、支持基材の底面にインレットを載置する工程と、支持基材内に自己粘着性を有する緩衝材を充填する工程とを備えたことを特徴とするICタグの製造方法である。
【0018】
本発明は、ICタグを製造するICタグの製造方法において、金型内で硬化性ゲル材を硬化させることにより支持基材を作製する工程と、支持基材の底面にインレットを載置する工程と、支持基材内に自己粘着性を有する緩衝材を充填する工程とを備えたことを特徴とするICタグの製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、支持基材は、インレットを載置する底面と、底面から延びる側面とを有し、かつその一側が開口しており、緩衝材は、支持基材内に充填され、一部が支持基材の一側開口から露出するとともに自己粘着性を有している。これにより、ICタグを再貼付することと、緩衝性や耐衝撃性を高めることの両方を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態によるICタグを示す断面図(図2のI−I線断面図)。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態によるICタグを示す平面図。
【図3】図3は、剥離シートが貼り付けられた、本発明の第1の実施の形態によるICタグを示す断面図。
【図4】図4は、本発明の第1の実施の形態によるICタグの製造方法を示す断面図。
【図5】図5は、本発明の第1の実施の形態によるICタグを被着体に貼着した状態を示す断面図。
【図6】図6は、本発明の第1の実施の形態によるICタグを被着体に貼着した状態を示す断面図。
【図7】図7は、本発明の第1の実施の形態によるICタグを被着体に貼着した状態を示す断面図。
【図8】図8は、本発明の第2の実施の形態によるICタグを示す断面図(図9のVIII−VIII線断面図)。
【図9】図9は、本発明の第2の実施の形態によるICタグを示す平面図。
【図10】図10は、剥離シートが貼り付けられた、本発明の第2の実施の形態によるICタグを示す断面図。
【図11】図11は、本発明の第3の実施の形態によるICタグを示す断面図(図9のXI−XI線断面図)。
【図12】図12は、本発明の第3の実施の形態によるICタグを示す平面図。
【図13】図13は、剥離シートが貼り付けられた、本発明の第3の実施の形態によるICタグを示す断面図。
【図14】図14は、本発明の第3の実施の形態によるICタグの製造方法を示す断面図。
【図15】図15は、比較例によるICタグを被着体に貼着した状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
第1の実施の形態
以下、本発明の第1の実施の形態について、図1乃至図7を参照して説明する。図1乃至図7は本発明の第1の実施の形態を示す図である。
【0022】
まず、図1乃至図3により本実施の形態によるICタグの概要について説明する。
【0023】
図1乃至図3に示すように、本実施の形態によるICタグ10は、インレット20と、インレット20を支持する支持基材30と、支持基材30内に充填された緩衝材40とを備えている。
【0024】
このうちインレット20は、細長い平板状のインレット基材21と、インレット基材21上に設けられたアンテナ22と、アンテナ22に接合されたICチップ23とを含んでいる。
【0025】
インレット基材21は、プラスチックフィルムや紙類であればよく、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、PET−G(テレフタル酸−シクロヘキサンジメタノール−エチレングリコール共重合体)、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ポリスチレン系、ABS、ポリアクリル酸エステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、樹脂含浸紙、コート紙等の各種の材料を使用できる。なお、インレット基材21の厚みは、例えば20μm〜100μmとすることができ、典型的には50μmとすることができる。
【0026】
また、アンテナ22は、中央部22aと、中央部22a両側に設けられたジグザグ状の端部22bとを有している。このうち中央部22aの一箇所に、ICチップ23が実装されている。
【0027】
なお、アンテナ22の材料としては、アルミニウム、銅、銅合金、リン青銅、SUS、銀等の金属または合金を挙げることができる。また、アンテナ22は各種の平面形状とすることができ、上述したジグザグ状のほか、ループ状、渦巻きコイル状、パッチ状、その他の形状であってもよい。なお、アンテナ22の厚みは、例えば10μm〜50μmとすることができ、典型的には25μmとすることができる。
【0028】
ICチップ23は、データの記憶領域(メモリ)を有し、入出力機能、制御機能、信号変調、復調、制御機能を備える通常のものを用いることができる。このICチップ23は、アンテナ22から得られた電力および信号を受け、メモリの書き込みおよび読み出しを行うものである。ICチップ23としては、単一部品からなるICチップを実装してもよく、インターポーザにしたものを実装してもよい。なお、ICチップ23の厚みは、例えば150μm〜250μmとすることができる。
【0029】
一方、インレット20を支持する支持基材30は、その断面(図1および図3参照)がコ字状ないしは凹形状からなっており、インレット20を載置する底面31と、底面31の側部から上方に向けて延びる側面32とを有している。このうち底面31は、平面から見て矩形状からなっている。側面32は、底面31の外周全体にわたって設けられており、平面から見て長方形形状からなっている。また支持基材30は、その一側(図1の上側)が全体にわたって開口しており、開口33が形成されている。なお、本明細書において、支持基材30の全体が開口するとは、側面32の内側に位置する領域が全て開口していることをいう。
【0030】
なお、本実施の形態において、支持基材30の底面31は、平面から見て矩形状からなっているが、これに限られるものではなく、例えば円形状、楕円形状、または三角形等の多角形状からなっていても良い。
【0031】
支持基材30の材料としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ABS樹脂等を用いることができる。なお、支持基材30のうち底面31の厚みは、例えば0.5mm〜5.0mmとすることができ、側面32の厚みは、例えば0.5mm〜5.0mmとすることができる。
【0032】
さらに、緩衝材40は、支持基材30内においてインレット20を覆うように充填されており、その一部が支持基材30の一側(図1の上側)の開口33から露出している。この場合、緩衝材40は、側面32の内側全体に充填されている。なお、図1において、緩衝材40が開口33から盛り上がるように示しているが、緩衝材40は側面32の上端32aと面一に設けられていても良い。
【0033】
緩衝材40は、自己粘着性を有するゲル材からなっている(以下、単にゲル材40ともいう)。なお、自己粘着性とは、接着剤や粘着剤を使用することなく、それ自体の粘着力により被着体に容易に貼着できる性質をいう。また、一旦貼着したゲル材40は、被着体に密着しており、水平方向の力が掛かったり、他の物体で擦られたりした場合でも容易には剥離しないが、端部から指等で捲くり剥がせば容易に剥離する性質をもっている。さらに、ゲル材40は、剥がした後再貼付することも可能である(再粘着性を有する)。
【0034】
このような緩衝材40を構成するゲル材は、ポリウレタンゲル等のウレタン系樹脂またはアクリル系樹脂からなることが好ましい。とりわけ、水分をあまり含んでおらず、例えばその水分量が0.01重量%〜1.0重量%のゲル材からなることが好ましい。その理由は、ゲル材40が水分を多く含むと、ゲル材40によってICチップ23の通信距離が短くなってしまい、好ましくないためである。
【0035】
ゲル材40の粘着力としては、傾斜式ボールタック試験(JIS Z 0237準拠の試験)でボールNo.1以上の粘着力を有していることが好ましく、ボールNo.4以上の粘着力を有していれば更に好ましい。粘着力の上限は特に限定されないが、再粘着時の実用性を考慮するとボールNo.20程度となることが好ましい。
【0036】
なお、図3に示すように、緩衝材40のうち一側の開口33から露出する部分の表面に、剥離シート50が貼り付けられていても良い。この場合、剥離シート50を剥離することにより緩衝材40が開口33から露出し、ICタグ10を被着体60(図5参照)に貼着することができるようになる。
【0037】
この剥離シート50は、紙基材に低接触角の薬剤(通常、シリコーン)を塗布した材料を使用することができる。紙基材には、上質紙やクラフト紙、グラシン紙、パーチメント紙、スーパーカレンダード紙、等が使用され、これらに直接シリコーンコートするか、ポリエチレンコート、クレー・バインダーコートした後、シリコーンコートして使用されても良い。PETやOPP(2軸延伸ポリプロピレン)、PEもそのまま、あるいはシリコーンコートして離型紙基材として使用することができる。
【0038】
次に、このようなICタグ10の製造方法について、図4(a)−(e)を参照して説明する。
【0039】
まず、インレット20を載置する底面31と、底面31の側部から上方に延びる側面32とを有する支持基材30を作製する(図4(a))。この場合、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ABS樹脂等を用いて、例えば射出成形法により支持基材30を作製することができる。
【0040】
次に、予めインレット基材21と、アンテナ22と、ICチップ23とを含むインレット20を準備しておき、このインレット20を、支持基材30の底面31に載置する(図4(b))。この場合、インレット基材21の裏面に接着剤を塗布することにより、インレット20を底面31に固定しても良い。
【0041】
続いて、支持基材30内に自己粘着性を有する緩衝材40を充填する(図4(c))。この場合、充填用のノズル45を用いて、開口33から液体状態の緩衝材40を注入する。
【0042】
所定量の緩衝材40を充填した後、支持基材30内で緩衝材40を硬化させる(図4(d))。緩衝材40がポリウレタンゲルからなる場合、例えば緩衝材40を25℃〜85℃の温度に加熱することにより、緩衝材40を硬化させることができる。
【0043】
このようにして、インレット20と、インレット20を支持する支持基材30と、支持基材30内に充填された緩衝材40とを備えたICタグ10が得られる。
【0044】
次いで、緩衝材40のうち一側開口33から露出する部分の表面に、剥離シート50を貼り付ける(図4(e))。
【0045】
なお、上記では緩衝材40を硬化させた後(図4(d))、緩衝材40に剥離シート50を貼り付けているが(図4(e))、これに限らず、緩衝材40に剥離シート50を貼り付けた後、緩衝材40を硬化させても良い。
【0046】
次に、このような構成からなるICタグ10の作用について、図5乃至図7を参照して述べる。
【0047】
図5に示すように、ICタグ10は、剥離シート50を剥離し、緩衝材40を被着体60側に向けた状態で被着体60に貼着される。この際、緩衝材40が被着体60に接着され、支持基材30の底面31が被着体60の反対側(図5の上方)を向く。
【0048】
この場合、緩衝材40は被着体60に貼付可能な自己粘着性を有している。したがって、ICタグ10を被着体60に貼着する際、別途粘着材や接着剤を用いることなく、剥離シート50を剥離するだけでICタグ10を被着体60に容易に貼付することができる。また、ICタグ10を被着体60から剥がしたのち、被着体60に再貼付することもできる(再粘着性を有する)。
【0049】
ここで、ICタグ10の底面31や側面32に衝撃が加わることが考えられる。この場合、ICタグ10の内部に生じる応力は、緩衝材40の柔軟性により分散ないし吸収され、これにより、ICチップ23へ加わる衝撃を緩和することができる(緩衝性が高められている)。
【0050】
具体的には、図6に示すように、底面31に衝撃が加わった場合、この衝撃は支持基材30内に充填された緩衝材40によって分散ないし吸収される(図6の矢印参照)。すなわち、衝撃による応力は特定の箇所に集中しない。このことにより、ICチップ23に加わる応力を緩和することができる。
【0051】
また、本実施の形態において、緩衝材40は支持基材30内部で底面31および側面32に接着されている。このことにより、図7に示すように、側面32に衝撃が加わった場合、この衝撃による応力は、緩衝材40により分散ないし吸収され、応力が特定の箇所に集中することがない。これにより、ICタグ10が被着体60から剥離することが防止される(耐衝撃剥離性が高められている)(図7の矢印参照)。
【0052】
さらに、本実施の形態において、支持基材30内に緩衝材40が充填されているので、緩衝材40と被着体60との接着面積よりも、緩衝材40と支持基材30(底面31および側面32)との接着面積の方が広くなっている。このことにより、ICタグ10を被着体60から剥離する場合、被着体60から緩衝材40を確実に剥離させることができ、緩衝材40が被着体60に付着したまま支持基材30のみが剥離してしまうおそれがない。
【0053】
第2の実施の形態
次に、図面を参照して本発明の第2の実施の形態について説明する。図8乃至図10は本発明の第2の実施の形態を示す図である。図8乃至図10に示す第2の実施の形態は、平面から見て、支持基材30Aの一側の一部が開口している点が異なるものであり、他の構成は上述した第1の実施の形態と略同一である。図8乃至図10において、図1乃至図7に示す第1の実施の形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0054】
図8乃至図10に示すように、本実施の形態によるICタグ10Aは、インレット20と、インレット20を支持する支持基材30Aと、支持基材30A内に充填された緩衝材40とを備えている。
【0055】
本実施の形態において、支持基材30Aは、インレット20を載置する底面31と、底面31の側部から上方に延びる側面32と、側面32上方に設けられ、底面31の一部を覆う天面34とを有している。
【0056】
この場合、支持基材30Aは、その一側(図8の上側)の一部のみが開口しており、天面34の一部に開口33が形成されている。そして緩衝材40は、支持基材30Aの一側に設けられた開口33から露出している。なお、本明細書において、支持基材30Aの一部が開口するとは、側面32の内側に位置する領域の一部が開口していることをいう。
【0057】
支持基材30Aの材料としては、上述した第1の実施の形態における支持基材30の材料と同様、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ABS樹脂等を用いることができる。
【0058】
このほか、インレット20、緩衝材40および剥離シート50の構成については、第1の実施の形態と同様であり、ここでは詳細な説明は省略する。
【0059】
第3の実施の形態
次に、図面を参照して本発明の第3の実施の形態について説明する。図11乃至図14は本発明の第3の実施の形態を示す図である。図11乃至図14に示す第3の実施の形態は、支持基材30Bは硬化性ゲル材からなる点が異なるものであり、他の構成は上述した第1の実施の形態と略同一である。図11乃至図14において、図1乃至図7に示す第1の実施の形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0060】
図11乃至図13に示すように、本実施の形態によるICタグ10Bは、インレット20と、インレット20を支持する支持基材30Bと、支持基材30B内に充填された緩衝材40とを備えている。
【0061】
本実施の形態において、支持基材30Bは、インレット20を載置する底面31と、底面31の側部から上方に延びる側面32とを有している。この場合、支持基材30Bは、その一側(図11の上側)が全体にわたって開口しており、開口33が形成されている。
【0062】
本実施の形態において、支持基材30Bは、硬化性ゲル材からなっている。支持基材30Bの材料は、具体的にはポリウレタンゲル等のウレタン系樹脂またはアクリル系樹脂を挙げることができる。この場合、支持基材30Bと緩衝材40が、同一種類のゲル材からなっていても良く、異なる種類のゲル材からなっていても良い。なお、支持基材30Bの底面31の厚みは、例えば1.0mm〜5.0mmとすることができ、側面32の上端32aにおける厚みは、例えば1.0mm〜5.0mmとすることができる。
【0063】
さらに、緩衝材40は、その一部が支持基材30Bの一側(図11の上側)の開口33から露出している。
【0064】
なお図11に示すように、本実施の形態において、支持基材30Bの側面32は、その内側下端32bが湾曲した断面形状を有しているが、これに限られるものではなく、図1に示す第1の実施の形態と同様、側面32の下端が直線的な断面形状からなっていても良い。
【0065】
このほか、インレット20、緩衝材40および剥離シート50の構成については、第1の実施の形態と同様であり、ここでは詳細な説明は省略する。
【0066】
次に、このような構成からなるICタグ10Bの製造方法について、図14(a)−(f)を参照して説明する。
【0067】
まず、硬化性ゲル材、例えばポリウレタンゲル等のウレタン系樹脂またはアクリル系樹脂を構成する液体成分を金型65内に注入する。この金型65は、支持基材30Bに対応する内部形状を有している。次に、この液体成分を金型65内で硬化させることにより、支持基材30Bが作製される(図14(a))。この場合、硬化性ゲル材を構成する液体成分に対して予め硬化剤を混入しておくことにより、ゲル材の硬化度を高め、ゲル材を硬化させて自己粘着性を有さないようにすることができる。
【0068】
支持基材30Bが硬化した後、支持基材30Bを金型65から取り出す(図14(b))。このようにして得られた支持基材30Bは、インレット20を載置する底面31と、底面31の側部から上方に延びる側面32とを有している。
【0069】
次に、予めインレット基材21と、アンテナ22と、ICチップ23とを含むインレット20を準備しておき、このインレット20を、支持基材30Bの底面31に載置する(図14(c))。この場合、インレット基材21の裏面に接着剤を塗布することにより、インレット20を底面31に固定しても良い。
【0070】
続いて、支持基材30B内に自己粘着性を有する緩衝材40を充填する(図14(d))。この場合、充填用のノズル45を用いて、開口33から液体状態の緩衝材40を注入する。
【0071】
所定量の緩衝材40を充填した後、支持基材30B内で緩衝材40を硬化させる(図14(e))。緩衝材40がポリウレタンゲルからなる場合、例えば緩衝材40を25℃〜80℃の温度に加熱することにより、緩衝材40を硬化させることができる。このようにして、図11に示すICタグ10Bが得られる。
【0072】
次いで、緩衝材40のうち一側開口33から露出する部分の表面に、剥離シート50を貼り付ける(図14(f))。
【0073】
なお、上記では、緩衝材40を硬化させた後(図14(e))、緩衝材40に剥離シート50を貼り付けているが(図14(f))、これに限らず、緩衝材40に剥離シート50を貼り付けた後、緩衝材40を硬化させても良い。
【0074】
ところで、図8乃至図10に示す第2の実施の形態と、図11乃至図14に示す第3の実施の形態とを組合せることも可能である。すなわち、図11乃至図14において、支持基材30Bが天面を有し、平面から見て、支持基材30Bの一側の一部のみを開口させても良い。
【0075】
比較例
ここで比較例によるICタグの一例について説明する。図15は比較例によるICタグが被着体に貼着されている状態を示す断面図である。図15において、図1乃至図7に示す実施の形態と同一部分には同一の符号を付している。
【0076】
図15において、ICタグ100の支持基材130は、底面131と、側面132と、天面134とを有している。このうち天面134には開口が形成されておらず、天面134によって底面131全体が覆われている。この場合、支持基材130は断面ロ字状であり、その内部には空洞135が形成されている。また、天面134の外側全域にゲル材140が貼着され、これによりICタグ100が被着体60に貼着されている。
【0077】
しかしながら、図15に示すICタグ100においては、例えば側面132から衝撃が加わった場合(図15の矢印参照)、衝撃による応力は分散されない。このため、側面132と天面134との間の領域Pに応力が集中しやすく、この結果、ICタグ100が被着体60から剥離しやすい。
【0078】
これに対して本発明によれば、上述のように、側面32に衝撃が加わった場合、衝撃による応力を支持基材30内の緩衝材40が分散ないし吸収するので、ICタグ10が被着体60から剥離することを防止することができる。
【符号の説明】
【0079】
10、10A、10B ICタグ
20 インレット
21 インレット基材
22 アンテナ
23 ICチップ
30、30A、30B 支持基材
31 底面
32 側面
33 開口
34 天面
40 緩衝材
50 剥離シート
60 被着体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICタグにおいて、
インレット基材と、インレット基材上に設けられたアンテナと、アンテナに接合されたICチップとを含むインレットと、
インレットを載置する底面と、底面から延びる側面とを有し、一側が開口する支持基材と、
支持基材内に充填され、一部が支持基材の一側開口から露出するとともに自己粘着性を有する緩衝材とを備え、
緩衝材は、ゲル材からなることを特徴とするICタグ。
【請求項2】
ゲル材は、ウレタン系樹脂またはアクリル系樹脂からなることを特徴とする請求項1記載のICタグ。
【請求項3】
ゲル材の水分量は、0.01重量%〜1.0重量%であることを特徴とする請求項2記載のICタグ。
【請求項4】
平面から見て、支持基材の一側の全体が開口していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載のICタグ。
【請求項5】
平面から見て、支持基材の一側の一部が開口していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載のICタグ。
【請求項6】
緩衝材のうち一側開口から露出する部分の表面に、剥離シートが貼り付けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項記載のICタグ。
【請求項7】
支持基材は、硬化性ゲル材からなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項記載のICタグ。
【請求項8】
請求項1記載のICタグを製造するICタグの製造方法において、
支持基材を準備する工程と、
支持基材の底面にインレットを載置する工程と、
支持基材内に自己粘着性を有する緩衝材を充填する工程とを備えたことを特徴とするICタグの製造方法。
【請求項9】
請求項7記載のICタグを製造するICタグの製造方法において、
金型内で硬化性ゲル材を硬化させることにより支持基材を作製する工程と、
支持基材の底面にインレットを載置する工程と、
支持基材内に自己粘着性を有する緩衝材を充填する工程とを備えたことを特徴とするICタグの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−252448(P2012−252448A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123373(P2011−123373)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】