説明

ICタグの製造方法

【課題】 基板シート上に配列して作製されたICタグを基板シートから切り出すことなく、個々のICタグの通信検査を行うことができるICタグの製造方法を提供すること。
【解決手段】 折り曲げ可能な樹脂製の基板シート12上にアレイ状またはマトリックス状にアンテナを形成する工程と、基板シート12上でアンテナにICチップを接続する工程と、基板シート12上に形成された1つのICタグの外縁となる周上に一辺またはその一部を残して切り込みを設ける工程と、残った一辺またはその一部を中心軸として回転するように、前記基板シート面から略90°折り曲げたられたICタグ13の通信検査を行う工程と、通信検査を終了したICタグを、切り込まれなかった、一辺またはその一部を中心軸として、逆向きに略90°回転させ、基板シート12の面内に収める工程とを備えるICタグの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICタグの製造方法に関し、特にICチップ装着後のICタグの通信検査およびその後の工程を簡略化できるICタグの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板シート上に配列して作製したICタグの各々に非接触の通信検査をするには、隣接するICタグとの干渉を防ぐために個片に切り出してから実施していた。図5は、従来例のICタグの通信検査方法を示し、11はICタグ、12は基板シート、53は個片化されたICタグ、14はスキャナ(リーダ・ライタ)のアンテナ、15はスキャナ本体である。同図のように基板シートからICタグを分離して通信検査を行っていた。
【0003】
しかし、個片化されたICタグは、小型、軽量、薄型のため取り扱いが困難であり、個片でICタグを扱う工程は能率的でなく、さらに出荷の前には、個片化されたICタグを再び両面接着テープなどの上に整列させながら貼り付ける必要があった(たとえば、特許文献1)。
【0004】
そこで、個片に切り出す前の状態のままで通信検査をしようとするときに起こるICタグ間の干渉をなくするために、検査しようとするICタグ以外をマスクで覆う方法もある。しかし、確実な結果を得ようとすると、作業能率が上がらないという問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開2004−54491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の状況にあって、本発明の課題は、基板シート上に配列して作製されたICタグを基板シートから切り出すことなく、個々のICタグの通信検査を行うことができるICタグの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、基板シート面内に形成されたアンテナの指向性を利用し、通信検査対象となる1つのICタグを基板シート面から略90°折り曲げた状態にして、他の基板シート面上にあるICタグとはほとんど送受信感度がない方向にスキャナ(リーダ・ライタ)のアンテナ位置を設定して通信検査を行い、その後、基板シートをローラ間に通すことにより、通信検査を終了したICタグを再び基板シート面内に収める。
【0008】
すなわち、本発明のICタグの製造方法は、折り曲げ可能な樹脂製の基板シート上にアレイ状またはマトリックス状にアンテナを形成する工程と、前記基板シート上で前記アンテナにICチップを接続する工程と、前記基板シート上に形成された1つのICタグの外縁となる周上に一辺またはその一部を残して切り込みを設ける工程と、前記一辺またはその一部を中心軸として回転するように、前記基板シート面から略90°折り曲げた状態で通信検査を行う工程と、前記通信検査を終了したICタグを、前記一辺またはその一部を中心軸として、逆向きに略90°回転させ、前記基板シートの面内に収める工程とを備えることを特徴とする。
【0009】
前記通信検査工程では、前記1つのICタグに押圧力また吸引力を加え、前記ICタグを前記一辺またはその一部を中心軸として略90°折り曲げた状態に保ち通信検査を行うとよい。
【0010】
前記平坦化の工程では、前記押圧力または吸引力を解除し、基板シートの弾性的な復元力を利用して前記ICタグを基板シート面の近傍まで戻すとよい。
【0011】
前記平坦化の工程では、通信検査を終了したICタグ付近の基板シート面をローラ間に通すとよい。
【発明の効果】
【0012】
従来、ICタグ製造工程において通信検査を行うには、ICタグがアレイ状またはマトリックス状に配置された基板シートから各個片に切り出す必要があり、この個片化されたICタグは、小型、軽量、薄型のため取り扱いが困難であった。それに対し、本発明のICタグの製造方法によれば、基板シートからICタグを切り出すことなく、通信検査を行い、工程を簡略化するものである。また、通信検査の終了後、出荷などのためにICタグを整列させる工程を省略することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明では、通信検査前に、ICタグ個片を切り出す際に基板シートから完全に切り離さずに一部を残し、そこを基点に折り曲げ可能な状態とする。通信検査時は検査対象外のICタグに対して、検査対象のICタグを基板シートの面から略90°折り曲げておけば、それらは良品であっても通信しないので隣接するICタグと干渉しない。この現象はICタグのアンテナによる通信指向性を利用したものである。すなわち、基板シートから検査対象のICタグのみ、略直角に折り曲げることで、そのICタグのみスキャナと通信可能にする。
【0014】
次に、通信検査後は折り曲げた箇所は基板シートの両側からローラで押し付けることにより、平坦化しリールに巻き取ることが可能である。そうすることで、次の工程に回し、さらには出荷することが可能になる。
【0015】
引き続き、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
初めに、ICタグを基板シート上に作製する工程を説明する。図3は本発明の一実施の形態でのアレイ状またはマトリックス状に配列したアンテナを示す斜視図である。12は基板シートであり、厚さ50μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)シートからなる。33はアンテナ部であり、アルミニウム箔からなる。31はICチップ接続部であり、ここに、AuバンプなどによりICチップを接続する。こうして、アレイ状またはマトリックス状に配列されたICタグが機能する状態になる。
【0017】
次に個々のICタグの動作状況を検査する。図1は本発明の一実施の形態でのICタグの通信検査方法を示す斜視図であり、11はICタグ、12は折り曲げ可能な樹脂製の基板シート、13は折り曲げられたICタグ、14はスキャナのアンテナ、15はスキャナ本体である。同図のように、スキャナのアンテナ14は、折り曲げられたICタグ13に対しては最大感度の方向にあり、基板シート12の面内にあるICタグ11に対しては、ほとんど送受信感度のない方向にある。その結果、検査対象でないICタグ11と検査対象となった折り曲げられたICタグ13の間で干渉が起こることはなくなる。
【0018】
このように通信検査しようとする1つのICタグを基板シート面から略90°折り曲げる工程を説明する。図4は折り曲げるICタグの周縁部に設けた切り込みを示し、図4(a)は本実施の形態での切り込みを示す斜視図であり、図4(b)は他の実施の形態での切り込みを示す斜視図である。このような切り込み形状の違いは、基板シートの弾性変形と塑性変形の兼ね合いおよび通信検査時に対象となるICタグにどのような外力を付加するかによる。
【0019】
本実施の形態では、まず、図4(a)のように、ICタグ11の外縁となる周上に一辺を残して逆コ字形の切り込み24をトムソン刃を用いて形成した後、切り込みを設けなかった一辺を中心軸として、約90°回転させ、その一辺の付近に塑性変形を起こさせ折り曲げ、その後、通信検査を行う。
【0020】
次に通信検査を終了したICタグを基板シート面内に戻して、基板シートの全体を平坦化する。図2は検査終了後のICタグおよび基板シートを示す斜視図であり、図2(a)は検査終了後、ローラ間に基板シートを通す前の状態を示す斜視図であり、図2(b)はローラで平坦化した基板シートを示す斜視図である。基板シートはローラ23により、図2(b)のように平坦化され、検査終了後のICタグは個片化されることなくシート単位で扱えるので、その後のICチップを樹脂で覆う工程あるいは樹脂シートでラミネート加工する工程で、能率のよいICタグ作製工程が可能になる。また、出荷時にテープ上に整列させることも容易であり、そのままリールに巻いて出荷することも可能である。
【0021】
引き続き、本発明の他の実施の形態でのICタグの通信検査方法について説明する。本実施の形態では、基板シート全体を張り詰めた状態にした後、通信検査対象の1つのICタグを折り曲げるとき、主に弾性変形が起こり塑性変形が起こりにくい状態で、押圧力または吸引力により通信検査対象のICタグに外力をかけたまま、検査対象のICタグを他のICタグとは略垂直に保ち通信検査を行う。このとき、外力をかける治具の材質はICタグを傷つけず、通信を妨害しない絶縁体である樹脂を用いるとよい。なお、押圧力をかけるための治具は矩形断面の樹脂製ブロックが適しており、吸引力をつくる治具には真空吸着による吸引口を持つ吸引治具を用いるとよい。また、ICタグ周縁部には図4(b)のような切り込み44を形成する。この切り込みは矩形状の周縁部の一辺の中央部のみを残して他部に切り込みを設けた形状である。
【0022】
通信検査後、外力を解除したとき、検査ICタグが、切り込みのない部分の弾性力により、ほぼ基板シート面内まで戻る場合には、そのまま次の工程に進みことができる。また、基板シート面内からずれた状態であれば、面内まで戻るような外力を加えて修正してもよく、ローラ間に通してもよい。
【0023】
以上、本発明の実施の形態では検査対象の1つのICタグの周縁部に切り込みを入れると共に、周縁部の一部には切り込みを入れないことにより、その部分の塑性変形または弾性変形を利用して、検査ICタグを基板シート面から略垂直になる状態で通信検査を行ったが、基板シート面に形成するアンテナは基板シートを含む面内にある方向に対して、送受信感度がほぼゼロになるので、その方向にスキャナのアンテナを設置すれば、検査ICタグが基板シートに垂直でない場合にも、非検査対象のICタグとの干渉が起こらないようにすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態でのICタグの通信検査方法を示す斜視図。
【図2】本発明の一実施の形態での検査終了後のICタグおよび基板シートを示し、図2(a)は検査終了後、ローラ間に基板シートを通す前の状態を示す斜視図、図2(b)はローラで平坦化した基板シートを示す斜視図。
【図3】本発明の一実施の形態でのアレイ状またはマトリックス状に配列されたアンテナを示す斜視図。
【図4】折り曲げるICタグの周縁部に設けた切り込みを示し、図4(a)は本発明の一実施の形態での切り込みを示す斜視図、図4(b)は他の実施の形態での切り込みを示す斜視図。
【図5】従来の通信検査方法を示す斜視図。
【符号の説明】
【0025】
11 ICタグ
12 基板シート
13 折り曲げられたICタグ
14 スキャナのアンテナ
15 スキャナ本体
23 ローラ
24,44 切り込み
31 ICチップ接続部
33 アンテナ部
53 個片化されたICタグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り曲げ可能な樹脂製の基板シート上にアレイ状またはマトリックス状にアンテナを形成する工程と、
前記基板シート上で前記アンテナにICチップを接続する工程と、
前記基板シート上に形成された1つのICタグの外縁となる周上に一辺またはその一部を残して切り込みを設ける工程と、
前記一辺またはその一部を中心軸として回転するように、前記基板シート面から略90°折り曲げた状態で通信検査を行う通信検査工程と、
前記通信検査を終了したICタグを、前記一辺またはその一部を中心軸として、逆向きに略90°回転させ、前記基板シートの面内に収める平坦化の工程とを備えることを特徴とするICタグの製造方法。
【請求項2】
前記通信検査工程では、前記1つのICタグに押圧力また吸引力を加え、前記ICタグを前記一辺またはその一部を中心軸として略90°折り曲げた状態に保ち通信検査を行うことを特徴とする請求項1記載のICタグの製造方法。
【請求項3】
前記平坦化の工程では、前記押圧力または吸引力を解除し、基板シートの弾性的な復元力を利用して前記ICタグを基板シート面の近傍まで戻すことを特徴とする請求項2記載のICタグの製造方法。
【請求項4】
前記平坦化の工程では、通信検査を終了したICタグ付近の基板シート面をローラ間に通すことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のICタグの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−18063(P2007−18063A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−196213(P2005−196213)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】