説明

ICタグを巻芯の内壁に設けたフィルム・シート用巻芯、ロール及びその管理方法

【課題】導電性を有する巻芯を管理するために有用な巻芯および管理方法を提供する。
【解決手段】導電性を有する円筒状の巻芯1であって、ICタグアンテナ回路と巻芯1間にスペーサ層を有し、ICタグアンテナ回路と巻芯1とを直接接触させることがないICタグ2を巻芯1の内壁に設けたフィルム・シート用巻芯である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムやシート状物品を巻きつけるための導電性を有する巻芯を管理するために有用な巻芯および巻芯の管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
巻芯は、フィルムやシート状の物品を巻きつけ、加工や輸送などの取り回しを容易にするために使用され、紙材や合成樹脂材など各材料を円筒状に加工したものが用いられる。
【0003】
近年では、材料に繊維強化プラスチックを使用して強度や耐久性を向上させた巻芯や、繊維強化プラスチックに炭素繊維を配合しさらに強度や耐久性を向上させた巻芯が用いられる。また、巻きつける物品の帯電を防止するために、巻芯表面に導電性を付与した巻芯などが用いられる。
【0004】
いずれにおいても、巻芯は高価でありそのコストは無視できないため、使い捨てで使用されることなく、顧客にフィルムやシート状物品を納入後、ほとんどの巻芯は回収される。このような回収を行うために、巻芯の出荷先、出荷量、在庫状況を把握し管理を行う必要がある。巻芯の再利用管理のために巻芯にICタグを貼付し出荷履歴等の情報を記録することで巻芯の管理が容易になる。また、ICタグは情報が豊富であるため、巻芯の情報だけに留まらず、フィルム等の巻芯に巻きつける製品の情報も記録可能でありICタグを用いることは有用な管理手段である。
【0005】
このような巻芯管理及び巻芯に巻きつける製品の管理方法としては、巻芯内壁又は壁中にICタグを設けて管理する方法(特許文献1)(特許文献2)(特許文献3)、巻芯内に常設した第1のICタグと巻芯内に設けた取り外し可能な第2のICタグの情報を紐付けし、第1のICタグが読み取り不能な場合、第2のICタグで情報を読み取り管理する方法がある(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−373316号公報
【特許文献2】特開2004−268350号公報
【特許文献3】特開2009−1348号公報
【特許文献4】特開2008−242575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記巻芯内壁や壁中にICタグを設ける管理方法では、巻芯が導電性を有する場合や炭素繊維を用いた巻芯である場合、電波が巻芯内部に侵入しない、巻芯の導電性の影響でICタグが通信不可能になるなどICチップ内の情報読取が不可能になる。また、複数のICタグによる管理では、ICタグのコストが倍になるだけでなく、ICタグ間の情報の紐付けを間違える可能性がある。特に、炭素繊維を用いた巻芯は戦略物資に該当するため、通常の巻芯に比較し、より厳しい管理が求められるため通信不能や情報の間違いによる管理ミスが起らないよう配慮が必要となる。
【0008】
本発明は、このような従来技術を鑑みて、導電性を有する巻芯を管理するために有用なICタグを巻芯の内壁に設けたフィルム・シート用巻芯および管理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の巻芯は以下の形態を取る。
すなわち、
(1) 導電性を有する円筒状の巻芯であって、ICタグアンテナ回路と巻芯間にスペーサ層を有し、ICタグアンテナ回路と巻芯とが直接接触していない、ICタグを巻芯の内壁に設けたフィルム・シート用巻芯、
(2) 前記巻芯が炭素繊維を用いてなる(1)に記載のICタグを巻芯の内壁に設けたフィルム・シート用巻芯、
(3) 前記スペーサ層が磁性シートを含む積層体である(1)または(2)に記載のICタグを巻芯の内壁に設けたフィルム・シート用巻芯、
(4) 前記ICタグアンテナ回路の巻芯側と逆の面に、無給電アンテナを備える(1)から(3)のいずれかに記載のICタグを巻芯の内壁に設けたフィルム・シート用巻芯、
(5) (1)〜(4)のいずれかに記載のフィルム・シート用巻芯を用いてなるフィルム・シートロール、
(6) (1)に記載のフィルム・シート用巻芯の管理方法であって、ICタグのICチップに巻芯の製造情報、入出荷情報、固有IDのうち少なくとも1つの情報が記録されているICタグを巻芯の内壁に設けたフィルム・シート用巻芯の管理方法、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、導電性を有する巻芯であってもICタグを貼り付けた際ICタグが通信不能になることがなく管理を容易に行うことが可能となるICタグを巻芯の内壁に設けたフィルム・シート用巻芯を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明である巻芯の一実施例の概略斜視図。
【図2】本発明である巻芯の一実施例の断面図。
【図3】本発明である巻芯に設けるICタグの一実施形態の断面図。
【図4】本発明である巻芯の管理方法の一実施例。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
本発明の巻芯は、導電性を有する円筒状の巻芯であって、ICタグアンテナ回路と巻芯間にスペーサ層を有し、ICタグアンテナ回路と巻芯とを直接接触させることがないICタグを巻芯の内壁に設けたフィルム・シート用巻芯である。
【0014】
本発明の巻芯とは、フィルムやシート状の物品を巻きつけ、加工や輸送などの取り回しを容易にするために使用され、紙材や合成樹脂材など各材料を円筒状に加工したものであり、特に導電性を有する巻芯とは、表面抵抗が10−13Ω以下の帯電防止処理を施した巻芯、また、強度向上を目的とし、炭素繊維などの導電性物質を用いる巻芯が挙げられる。
本発明におけるフィルム・シートとは、高分子材料、金属材料などを用いた薄い膜状のものをいう。フィルム及びシートは慣用的に厚みで区別されているが、本発明のフィルム・シートはこれらを包括するものである。
【0015】
本発明におけるICタグとは、情報を記録したICチップと該ICチップが接続されたアンテナ回路からなり、市販のICタグを使用することが可能である。ICタグアンテナ回路とは、ICチップに電気的に接続され、リーダライタからの電波を受信またICチップ内の情報を送信するために電気伝導体により形成されるアンテナ回路である。
【0016】
本発明におけるスペーサ層は厚さ0.25mm以上が好ましく、ICタグアンテナ回路と巻芯を接触させることがない層であれば良い。このような層としては樹脂フィルムが強度、重量の面から良い。樹脂フィルムとは、ポリエステル、発泡性ポリエステル、ポリオレフィン、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテル、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル等の溶融押し出し成型が可能な素材を加工して得られるフィルムで、未延伸フィルム、1軸延伸フィルム、2軸延伸フィルム、発泡フィルムの何れであっても良い。特に発泡フィルムは柔軟性、クッション性の点から優れており円筒状の巻芯へICタグの貼付を容易にする。
【0017】
また、スペーサ層が磁性シートを含む積層体であると、巻芯が導電性を有していても巻芯の影響がより小さくなるため、良好な通信特性を維持することが可能となり好ましい。磁性シートとしては、軟磁性材料、軟磁性酸化金属、磁性金属及び磁性酸化金属のうちの少なくともいずれか1つからなる磁性体に、樹脂、TPE、ゴムなどの結合材を配合させて形成したシート、フィルムなど公知のものが使用できる。
【0018】
さらに、ICタグアンテナ回路の巻芯側と逆の面に無給電アンテナを備えることで、導電性を有する巻芯にICタグを貼り付けた際も、ICチップが駆動するために充分な電力を供給することが出来、リーダライタとの通信がより良好となる。
【0019】
本発明の無給電アンテナは、絶縁基板上に電気伝導体をパターニングして得られるアンテナであり、電気伝導体としては、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、錫などの少なくとも1種の金属を含む金属、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリパラフェニレンビニレンなど導電性高分子、金、銀、銅、アルミニウム、白金、鉄、ニッケル、錫、亜鉛、ハンダ、ステンレス、ITO、フェライトなどの金属、合金類、金属酸化物などの金属系粒子や、導電性カーボン(グラファイトを含む)粒子、あるいは前記粒子をメッキした樹脂粒子などの導電性粒子を含有させたポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂などを主成分とする熱硬化性樹脂や、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、シリコーンアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂などを主成分とする、UV硬化性樹脂などの光硬化性樹脂からなる導電性インクなど公知のものを使用できる。
【0020】
また、無給電アンテナの形成方法としては、金属箔、金属蒸着層をエッチングし形成するエッチング法、金属箔を回路上に切り出し基板に貼り付ける転写法、導電性インクを用いて印刷により形成する印刷法など公知のものが使用できる。
【0021】
また、前記絶縁基板とは、ICタグアンテナ回路と無給電アンテナとを電気的に絶縁できる基板であれば良い。このような基板としては好ましくは樹脂フィルムが強度、重量の面から良い。樹脂フィルムとは、ポリエステル、発泡性ポリエステル、ポリオレフィン、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテル、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル等の溶融押し出し成型が可能な素材を加工して得られるフィルムで、未延伸フィルム、1軸延伸フィルム、2軸延伸フィルムの何れであっても良い。この中でも、価格と機械的特性の点からポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルムが好ましく、特に、2軸延伸ポリエステルフィルムが価格、耐熱性、機械的特性のバランスに優れており好ましい。
【0022】
絶縁基板は電気的に絶縁できる厚みであれば良い。屈曲性と強度の面から、好ましくは0.001〜0.25mm、より好ましくは0.01〜0.125mm、更に好ましくは、0.02〜0.075mmである。
【0023】
巻芯へのICタグ取り付け方法は、スペーサ層を有し、ICタグアンテナ回路と巻芯が直接接触することがなければ粘着剤により貼付、巻芯内壁にくぼみを設け埋没させるなど公知の方法が可能である。また、ICタグをコアに取り付けた後、ICタグ上に保護フィルムを設けることにより、ICタグの剥離を防止できるため好ましい。保護フィルムとしては、ポリエステル、発泡性ポリエステル、ポリオレフィン、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテル、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル等の溶融押し出し成型が可能な素材を加工して得られるフィルムで、未延伸フィルム、1軸延伸フィルム、2軸延伸フィルムの何れであっても良いフィルムに粘着剤を設けた公知のものを用いることが出来る。
【0024】
以下に本発明の巻芯の管理方法について説明する。
【0025】
本発明の巻芯管理方法とは、ICタグが設けられた巻芯のICチップ内に巻芯の管理情報をリーダライタ(例えば、Panasonics製UHF帯リーダライタ 型式:KU-U1610JB)により読み書きを行い巻芯の使用状況を管理することである。ICチップ内に巻芯の情報を直接書き込む方法、また、ICチップ内の固有IDによりデータベースの情報と紐付けする方法の一方もしくは両方法を用いて巻芯を管理することが出来る。好ましくは、ICチップ内の書き込み可能領域が512ビット以上あれば巻芯の情報を充分に書き込みが可能となる。
【0026】
本発明の巻芯の製造情報とは、巻芯メーカ、巻芯の製造年月日、巻芯使用期限、使用回数、使用限界回数など巻芯の製造時の情報である。入出荷情報とは、巻芯自体の出荷履歴、回収履歴、出荷先、出荷元等の情報、また、巻芯に巻かれたフィルム・シートの出荷履歴、回収履歴、出荷先、出荷元等の情報である。また、固有IDとは、各巻芯の識別番号、管理番号もしくはICタグ内の識別番号である。
前記情報のうち少なくとも1つの情報が記録されていることで、直接もしくはデータベースの情報と紐付けし巻芯の状態を把握できるため巻芯の管理が容易になる。
【0027】
巻芯は、主に、巻芯製造メーカ、フィルム・シート製造メーカ、フィルム・シートユーザの3社間を行き来する。巻芯製造メーカにて巻芯製造後に巻芯の製造情報を、入出荷時に入出荷情報をICタグに書き込むもしくはICタグの固有IDに紐付けしたデータベース内に入力する。フィルム・シート製造メーカにて巻芯の入出荷時入出荷情報をICタグに書き込むもしくはICタグの固有IDに紐付けしたデータベース内に入力し、また、フィルム・シートの入出荷情報もICタグに書き込むもしくはICタグの固有IDに紐付けしたデータベース内に入力する。フィルム・シートユーザにて巻芯の入出荷時入出荷情報をICタグに書き込むもしくはICタグの固有IDに紐付けしたデータベース内に入力し、また、フィルム・シートの入出荷情報もICタグに書き込むもしくはICタグの固有IDに紐付けしたデータベース内に入力する。前記情報を確認することで、巻芯の保有量、出荷量を詳細に管理することが可能となる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例を挙げて本発明を説明する。
[評価方法]
1.巻芯の通信距離
測定器としては、オムロン株式会社製リーダライタ(形式:V750-BA50CO4-JP 出力28.5dbm)とオムロン社製アンテナ(型式:V750-HS01CA-JP)を用いる。3m法電波暗室内で、アンテナを床より90cmの位置に固定、同高さで巻芯端部を正対するように固定し、巻芯内壁にICタグを設け、リーダライタを巻芯に対して前後させることで測定を行い、リーダライタとICタグとの通信をエラーなく出来るアンテナと巻芯端部の距離を通信距離とする。
測定は5サンプルで行い、平均値を通信距離とする。
【0029】
(実施例1)
UHF帯金属対応ICタグ(東レ株式会社製 東レICタグ タイプ“SKM-200A”)を、導電性を有する巻芯(千代田工業株式会社製 FWP-022)の内壁に巻芯端部より50mmの位置に貼付し、通信距離を測定した。
作成した巻芯は、通信距離300mmであった。
【0030】
作成した巻芯に固有IDをリーダライタにて記録し、別途PCデータベース内に製造情報及び出荷情報を入力し、巻芯にポリエステルフィルムを巻き付け出荷した。出荷した巻芯を回収した後、固有IDをリーダライタにて確認し、PCデータベース内の出荷情報を返却済みに変更した。
【0031】
(比較例1)
通常のUHF帯ICタグ(Alien社製ALN-9440)を、導電性を有する巻芯(千代田工業株式会社製 FWP-022)の内壁に巻芯端部より50mmの位置に貼付し、通信距離を測定した。
作成した巻芯は、通信しなかった。
【0032】
実施例1と比較例より、本発明の巻芯を用いれば無線通信を用いて導電性の巻芯が管理可能であることがわかる。貼付したICタグのICチップ内に巻芯の製造情報、入出荷情報、固有IDのうち少なくとも1つの情報が記録されていれば容易に巻芯管理が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の巻芯を用いれば、導電性を有する巻芯を効率的に管理することが可能になる。
【符号の説明】
【0034】
1 ICタグを設けた巻芯
2 ICタグ
3 ICチップ
4 ICタグアンテナ回路
5 スペーサ層
6 絶縁基板
7 無給電アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する円筒状の巻芯であって、ICタグアンテナ回路と巻芯間にスペーサ層を有し、ICタグアンテナ回路と巻芯とが直接接触していない、ICタグを巻芯の内壁に設けたフィルム・シート用巻芯。
【請求項2】
前記巻芯が炭素繊維を用いてなる請求項1に記載のICタグを巻芯の内壁に設けたフィルム・シート用巻芯。
【請求項3】
前記スペーサ層が磁性シートを含む積層体である請求項1または2に記載のICタグを巻芯の内壁に設けたフィルム・シート用巻芯。
【請求項4】
前記ICタグアンテナ回路の巻芯側と逆の面に、無給電アンテナを備える請求項1から3のいずれかに記載のICタグを巻芯の内壁に設けたフィルム・シート用巻芯。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のフィルム・シート用巻芯を用いてなるフィルム・シートロール。
【請求項6】
請求項1に記載のフィルム・シート用巻芯の管理方法であって、ICタグのICチップに巻芯の製造情報、入出荷情報、固有IDのうち少なくとも1つの情報が記録されているICタグを巻芯の内壁に設けたフィルム・シート用巻芯の管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−123789(P2011−123789A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282620(P2009−282620)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】