説明

ICタグを用いたコンテナ取違え防止システム

【課題】誤ったコンテナが開封装置にセットされても、コンテナの取違えを防止することが可能な、コンテナ取違え防止システムを提供する。
【解決手段】少なくとも1箇所以上の入出口を保有する形状を保つ密封型コンテナに、前記密封型コンテナの内容物についての固有識別情報を記憶したICタグが取付けられ、前記密封型コンテナ開封時において密封型コンテナの入出口開封装置は予め中央演算装置を有した装置に登録された内容物の固有識別情報が一致している場合にのみ密封型コンテナの開封動作を行ない、不一致の場合は密封型コンテナの開封動作を行なわず異常警報を発する、コンテナ取違え防止システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFID(Radio Frequency IDentification「電波による個体識別」)を利用し、ICタグが取付けられた密封型コンテナの取違えを防止するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品などに用いられる化学製品の多くは粉体、液体、個体状と様々であるが、一般的にはその現品のみでは個体識別や移送を行なうことは不可能である。そのため保管や製造工程間の移送にはコンテナなどの密封型容器を用いることが一般的である。
コンテナ内容物の識別方法としては、内容物の名称やロット番号など内容物の固有識別情報を明示したラベルをコンテナに貼付けたり、コンテナ側に専用の識別番号を持たせその番号と内容物の関連付けを別システムで保有し、この別システムでの情報を用いる識別を行なっている。
【0003】
このようなコンテナ、容器はバッチ単位で繰り返し利用されるのが一般的であるが、万一、製造工程内でコンテナの取違えを発生させた場合、生産者や購入者が期待する品質とは異なる中間品や完成品を次に流出させることになり、商品として使用不可能、中間品として使用不能となることで大きな損失の原因となる。さらに想定外の化学反応などを発生させる恐れもあり安全上においても大きな危険性が生じる可能性もある。
【0004】
しかし、電子機器の多様化、細分化によりこれら化学製品においては多品種少量生産化が進展し、コンテナの移送や内容物の入替えなどの工数が増加し、これらの取違えを発生させるリスクが高まっている。
【0005】
従来までの識別手法として用いられるラベルの貼付けもしくは添付による識別では、このラベルの読み間違えやラベル自体の貼り間違えなどにより、取違えを発生させる問題があった。
【0006】
工程間のコンテナの移動にはロットNo.など固有の識別情報を文字やバーコードで明示したラベルなどを貼り付け識別をしていた。文字情報による目視確認では類似名称の見誤りや、バーコードを用いてもラベル自体の貼り間違えによって取違えの原因となる可能性があった。
また、コンテナ側に専用の識別番号を付加し、これを文字情報やバーコードにより明示を行ない、そのコンテナごとに内容物の情報をデータベース化し、この情報を各工程で共有することで確認を行なう仕組みではデータベースやサーバーなどが大規模なハードやソフトウェアの導入が必要だった(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−330020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
すなわち本発明は、誤ったコンテナが開封装置にセットされても、コンテナの取違えを防止することが可能な、コンテナ取違え防止システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下のことに関する。
(1) 少なくとも1箇所以上の入出口を保有する形状を保つ密封型コンテナに、前記密封型コンテナの内容物についての固有識別情報を記憶したICタグが取付けられ、前記密封型コンテナ開封時において密封型コンテナの入出口開封装置は、予め中央演算装置を有した装置に登録された内容物の固有識別情報が一致している場合にのみ密封型コンテナの開封動作を行ない、不一致の場合は密封型コンテナの開封動作を行なわず異常警報を発する、コンテナ取違え防止システム。
(2) ICタグに記憶された密封型コンテナの内容物についての固有識別情報は、消去又は再記憶が可能であり、密封型コンテナと、密封型コンテナに取付けられたICタグの繰り返し利用を可能とする、(1)に記載のコンテナ取違え防止システム。
(3) 密封型コンテナに内容物を投入する際に、ICタグへ内容物についての固有識別情報を書込み記憶させ、密封型コンテナを内容物の投入場所から他のエリアに移送しても内容物の取違えを防止することを可能とする、(1)又は(2)に記載のコンテナ取違え防止システム。
(4) 密封型コンテナに取付けられたICタグの内容物についての固有識別情報は、密封型コンテナに内容物の投入する際に、固有識別情報を示したバーコード情報を用いてICタグへ書込みを行ない記憶させる、(1)〜(3)いずれかに記載のコンテナ取違え防止システム。
(5) 密封型コンテナ開封時、予め中央演算装置を有した装置に登録された内容物についての情報は、開封後の工程で使用する帳票に印刷された固有識別情報を示したバーコードにより照合を行なう、(1)〜(4)いずれかに記載のコンテナ取違え防止システム。
(6) 密封型コンテナが金属製であり、ICタグを密封型コンテナと10mm以上の距離を開けることでICタグの通信を可能とする、(1)〜(5)いずれかに記載のコンテナ取違え防止システム。
(7) 密封型コンテナに取付けられたICタグの通信距離は、前記密封型コンテナの長辺以下として、他の密封型コンテナに取付けられたICタグへの誤通信を防止する、(1)〜(6)いずれかに記載のコンテナ取違え防止システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、誤ったコンテナが開封装置にセットされても、開封動作前にICタグが記憶している固有識別情報と製造工程で使用する帳票に印刷されたバーコードの情報の照合を行ない不一致の場合は開封動作を行なわないことでコンテナの取違えを防止することが可能となる。
照合用のデータとしてICタグが記憶している固有識別情報と製造工程で使用する帳票に印刷されたバーコードの情報を用いることで、照合用のデータベースやサーバーなど別系統のシステムを必要とすることなく、取違えを防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)〜(c)は、本発明による前工程でのICタグへ固有式識別情報の書込み記憶方法の一例を示す模式図である。
【図2】(a)〜(b)は、本発明による後工程でのコンテナ開封動作前の照合方法の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のコンテナ取違え防止システムの実施形態を図1及び図2を例にして詳細に説明する。コンテナ取違え防止システムは、通常、ICタグが取付けられた密封型コンテナ5と、生産工程内のコンテナ自動開閉装置8からなる。本発明では、コンテナの自動開閉装置8の形状については特に限定しない。本発明で述べるコンテナとは、自動開閉機器の動作によって入出口の開閉を行ない、人手によっては容易に開閉できない密閉型のコンテナ(密封型コンテナ)である。以下、コンテナとは、密封型コンテナ(密閉型のコンテナ)のことである。
【0013】
前工程と後工程で生産指示や仕様指示などに使用する帳票にロットNoなどコンテナの内容物の固有識別情報は、バーコードで印刷されている。この帳票は、1コンテナを1回使用するたびに1枚ずつ発行される。この帳票が、前工程と後工程で同一とするか工程ごとに別に発行されるかは、問わないものとする。更に、本システムと無関係なバーコードを認識しないためにバーコードには、専用のヘッダー情報などの識別子が含まれていることが好ましい。
【0014】
前工程では、バーコードのスキャンとICタグへの書込みが行なえるハンディターミナル3により帳票1に印刷された固有識別情報のバーコード2をスキャンし、コンテナ内容物の固有識別情報をICタグ7へ書込み記憶させる。ハンディターミナルにより書込みを行なう場合は、異なるコンテナへの誤登録を防止するためバーコードスキャンからICタグへの書込みまで他のコンテナに書込みを行なえない程度の制限時間を設けることが好ましい。
コンテナが、人の近付けない位置に設置されている場合や、人が作業する位置から離れている場合など、コンテナが手元になく、ハンディターミナル3で書込みを行なえない場合には、コンテナ5の固定位置に固定型のICタグのリーダライタ装置4を設置し、作業場に設置したバーコードスキャナ10でバーコートをスキャンし固有識別情報を、中央演算装置経由して固定型のリーダライタ装置4を使用しICタグへ書込み記憶させる。
【0015】
後工程では、コンテナ開封装置8の開封動作を行なう前に、ICタグ7が記憶している内容物固有識別情報と帳票11に印刷されたバーコード12の内容物固有識別番号の比較動作を行なう。
【0016】
この2つの内容物固有識別番号が一致していれば、コンテナ開閉装置は開封動作を行ない内容物の後工程での利用を可能とする。
【0017】
一致していない場合、コンテナの開閉装置は開閉動作を行なわない。この場合は、警報装置により、異常警報を発する。
【0018】
ICタグとしては、ユーザメモリを保有しコンテナ内容物の固有識別情報をリードライト可能なICタグを用いる。さらに、RFIDの通信規格は、UHF帯などコンテナの大きさ以上の遠距離通信が可能な規格では遠隔地に保管、設置された他のコンテナに取付けられたICタグへリードライトする可能性があるため、通信距離が30cm以内程度に限定される周波数帯13.56MHz、ISO15693などの通信規格であることが好ましく、通信距離をコンテナの大きさ以下にすることが更に好ましい。よって、例えば、密封型コンテナが立方体で、その長辺の長さが、30cm以下であれば、ICタグの通信距離は、30cm以下であればよい。
【0019】
コンテナが金属製である場合、もしくは内容物が金属である場合など、ICタグをコンテナに密着させた状態で固定すると通信が不可能になるか、通信距離が非常に短くなる可能性がある。このような場合でも、コンテナの金属面とICタグにウレタン性クッション材などを挟み込み、コンテナ面とICタグ間に距離をあけて固定することでリーダライタとの通信を行なうことが可能となる。なお、ICタグと、密封型コンテナとは、10mm以上の距離を開けることが好ましい。
【0020】
更に次工程への移送が必要となる場合は、次工程への移送前に同様の繰り返しの手続きによりコンテナの取違えを防ぐことが可能である。
【実施例】
【0021】
(前工程でのICタグへの書込み記録方法)
作業に用いる帳票に印刷された内容物固有情報を示すバーコードをスキャンし、バーコード情報を元にICタグへの内容物固有識別情報を書込み記憶させる(ハンディターミナルもしくは固定リーダライタ)。
【0022】
(後工程でのコンテナ開封前動作)
コンテナを開封位置にセットし、開封前に固定アンテナからICタグが記憶している固有識別情報を読取り、工程で用いる帳票にバーコードで印刷された固有識別情報をスキャンし中央演算装置などで比較照合する。OKなら、開封動作を行なう。NGなら、警報を発生し、停止する。
【産業上の利用可能性】
【0023】
化学製品以外の用途においても、密封型コンテナや密封型容器を用いて液体、個体、粉体の形状のものを取り扱う分野においては利用可能性である。
【符号の説明】
【0024】
1 工程で使用する帳票、2 コンテナの内容物固有の識別番号バーコード、3 ハンディターミナル、4 固定型リーダライタ装置、5 密封型コンテナ、6 コンテナ開口部、7 ICタグ、8 コンテナ開封装置(コンテナ自動開閉装置)、9 固定型リーダライタ装置、10 バーコードスキャナ、11 工程で使用する帳票、12 コンテナの内容物固有の識別番号バーコード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1箇所以上の入出口を保有する形状を保つ密封型コンテナに、前記密封型コンテナの内容物についての固有識別情報を記憶したICタグが取付けられ、前記密封型コンテナ開封時において密封型コンテナの入出口開封装置は、予め中央演算装置を有した装置に登録された内容物の固有識別情報が一致している場合にのみ密封型コンテナの開封動作を行ない、不一致の場合は密封型コンテナの開封動作を行なわず異常警報を発する、コンテナ取違え防止システム。
【請求項2】
ICタグに記憶された密封型コンテナの内容物についての固有識別情報は、消去又は再記憶が可能であり、密封型コンテナと、密封型コンテナに取付けられたICタグの繰り返し利用を可能とする、請求項1に記載のコンテナ取違え防止システム。
【請求項3】
密封型コンテナに内容物を投入する際に、ICタグへ内容物についての固有識別情報を書込み記憶させ、密封型コンテナを内容物の投入場所から他のエリアに移送しても内容物の取違えを防止することを可能とする、請求項1又は2に記載のコンテナ取違え防止システム。
【請求項4】
密封型コンテナに取付けられたICタグの内容物についての固有識別情報は、密封型コンテナに内容物の投入する際に、固有識別情報を示したバーコード情報を用いてICタグへ書込みを行ない記憶させる、請求項1〜3いずれかに記載のコンテナ取違え防止システム。
【請求項5】
密封型コンテナ開封時、予め中央演算装置を有した装置に登録された内容物についての情報は、開封後の工程で使用する帳票に印刷された固有識別情報を示したバーコードにより照合を行なう、請求項1〜4いずれかに記載のコンテナ取違え防止システム。
【請求項6】
密封型コンテナが金属製であり、ICタグを密封型コンテナと10mm以上の距離を開けることでICタグの通信を可能とする、請求項1〜5いずれかに記載のコンテナ取違え防止システム。
【請求項7】
密封型コンテナに取付けられたICタグの通信距離は、前記密封型コンテナの長辺以下として、他の密封型コンテナに取付けられたICタグへの誤通信を防止する、請求項1〜6いずれかに記載のコンテナ取違え防止システム。

【図1】
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【図2】
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