説明

ICタグ付き書籍および書籍の製造方法

【課題】古紙再生工程において、ICタグを除去しやすく、再生パルプにICチップやアンテナの破片が混入しにくい書籍を提供する。
【解決手段】ICタグ6aを構成するベースフィルム17に孔20を設ける。製本工程において、丁合本4に接着層5aを塗布した後、ICタグ6aを取り付け、さらにその上に接着層5bを塗布する。接着層5aおよび5bは、ベースフィルム17の孔20を貫通し、さらにはICタグ6aのアンテナ15とICチップ13とベースフィルム17とを包埋する。孔20により、ICチップ13、アンテナ15と接着層5aと5bの一体化は確実に行われる。接着層5aと5bと一体化したICタグ6aは、古紙再生工程の除塵工程において除去され、再生パルプにはICチップ13やアンテナ15の破片は含まれない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、古紙リサイクルに適したICタグ付き書籍などに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バーコードに代えて、非接触で情報の読み出しおよび書き込みが可能なICタグ(RFIDタグ、無線タグ、非接触IC,非接触ICタグなどと表現することもあるが、本明細書では総称して、「ICタグ」とする。)を商品に付して市場で必要なさまざまな情報の管理を可能にすることが提案されている。書籍においても、ICタグを取り付け、万引き防止機能を付与するのみならず、それらの流通や在庫・販売時点においても必要なさまざまな情報管理をすることが考えられている。そのため、書籍の販売段階でICタグを取り付ける煩を避け、印刷または製本の工程でICタグを取り付ける(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、資源の有効利用を行うべく、書籍をはじめとする古紙から再生パルプを製造することが行われている。再生パルプの製造方法としては、古紙原料をパルパーで離解して繊維化する離解工程、得られたパルプ懸濁液からスクリーンにて異物を除去する除塵工程、パルプ懸濁液からフローテーターにてインキ成分を除去する脱墨工程を行い、漂白処理を経て再生パルプを得るのが一般的である(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−249492号公報(第3頁)
【特許文献2】特開2006−183210号公報(第2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ICタグのアンテナはアルミニウムなどの金属からなり、ICタグのICチップはシリコンからなるため、ICタグのアンテナやICチップは古紙再生工程においては不純物となる。アンテナやICチップは、離解工程において10〜20μmまで粉砕される。しかし、除塵工程においては、直径50μm以上の不純物が除去され、脱墨工程においては、直径10μm以下の粒子が除去される。そのため、古紙再生工程において、アンテナやICチップの破片は除去されず、再生パルプに混入してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、ICタグのアンテナやICチップが再生パルプに混入しにくいようにICタグを取り付けた書籍などである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、表紙と本が接着層により接着され、ベースフィルムと、前記ベースフィルム上に形成されたアンテナと、前記アンテナに接続するICチップと、を有するICタグを、前記接着層中に設け、前記ICタグが、複数個の孔または切り込みを有することを特徴とする書籍である。
また、前記複数個の孔または切り込みは、前記ICタグのベースフィルムまたはアンテナに設けられることが好ましい。
【0008】
第2の発明は、本の背中部に第1の接着層を形成する工程(a)と、ベースフィルムと、前記ベースフィルム上に形成されたアンテナと、前記アンテナに接続するICチップと、を有し、前記アンテナまたは前記ベースフィルムに孔または切り込みを有するICタグを、前記背中部に取り付ける工程(b)と、前記背中部に第2の接着層を形成する工程(c)と、前記背中部に表紙を固定する工程(d)と、を具備することを特徴とする書籍の製造方法である。
【0009】
前記工程(a)及び前記工程(c)は、接着剤の塗布、熱可塑性樹脂シートの積層によることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ICタグのベースフィルムは、孔を有するため、製本工程において、ICタグのベースフィルムは、接着剤が孔を貫通し、ICタグのアンテナとICチップとベースフィルムは接着剤と絡み合い、一体化する。そのため、古紙再生工程の除塵工程において、ICタグのアンテナとICチップとベースフィルムは、接着剤と一体化した状態で除去され、再生パルプへのアンテナとICチップの破片の混入を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0012】
第1の実施形態に係る書籍1について説明する。
なお、請求項における第1の接着層は接着層5aに、第2の接着層は接着層5bにそれぞれ対応し、本は、丁合本4により構成される。
【0013】
図1(a)は図2(e)のA矢視図であり、丁合本4に表紙9を固定した直後である。丁合本4に接着層5aを介して接着されているICタグ6aが、ICタグ6a取り付け後に形成された接着層5bに覆われている。ICタグ6aは、ベースフィルム17と、その上に形成されたアンテナ15と、それに接続されたICチップ13と、からなる。ベースフィルム17は、孔20を有している。
【0014】
図1(b)は書籍1の図2(f)のB矢視図であり、ベースフィルム17の孔20を、接着層5aが貫通して接着層5bと接触している。接着層5aと5bは、ICタグ6aと一体化しており、ICチップ13とアンテナ15とベースフィルム17を包埋している。
【0015】
接着層5aまたは5bに用いる接着剤としては、古紙再生工程で細裂化しにくく、スクリーンなどの除塵設備を通過しない難細裂性のホットメルト接着剤であれば特に限定されないが、より好ましくは、ポリウレタン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂および、これらを混合した樹脂である。
【0016】
また、接着層5aまたは5bに用いる接着剤として、難細裂性の反応性接着剤を用いることもできる。例えば、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンの共重合体に、ポリアミンや酸無水物などの硬化剤を添加したエポキシ接着剤、イソシアネート基を有する変性ウレタンポリマーといった1液型のウレタン接着剤、ポリエステルポリオールやポリエーテルポリオールといった主剤にポリイソシアネートといった硬化剤を加えた2液型のウレタン接着剤、シアノアクリル酸エステルモノマーといったアクリル瞬間接着剤などを挙げることができる。硬化前の接着剤が、孔20を貫通した状態で硬化することで、接着層5aと5bがICタグ6aを一体化可能である。
【0017】
ベースフィルム17としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PET‐G(テレフタル酸‐シクロヘキサンジメタノール‐エチレングリコール共重合体)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PC(ポリカーボネート)、PA(ポリアミド)、PPS(ポリフェニレンサルフイド)、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合体、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ポリスチレン系、ABS(アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体)、ポリアクリル酸エステル、ポリエチレン、ポリウレタンなどの素材が使用される。
【0018】
アンテナ15は、ベースフィルム17上にパターン形成されたアルミニウムや銅などの金属の膜からなる、平面コイル状またはダイポール型のアンテナである。ICチップ13はアンテナ15に、接続されている。
【0019】
ICタグ6aに粘着層を設ける場合には、粘着層に用いる粘着剤は、水または弱アルカリ性水溶液中で、細かく分散するとともに非粘着化する粘着剤からなり、再生パルプに悪影響を与えない。ポリアクリル酸エステル、二トリルゴム、天然ゴム、シリコーン粘着剤、ポリ塩化ビニルなどの各種材料およびそれらの水性エマルジョン系の接着剤を使用する。
【0020】
孔20は、ベースフィルム17に設けられた貫通孔である。詳細は後述する。
【0021】
図2は、書籍1の製本工程を示す図である。図2(a)に示すように、一冊分のページがそろった丁合本4の背中部に、ロールコーター7により接着層5aに用いる接着剤を丁合本4の背中部に塗布する。なお、丁合本4は、製本工程が完了するまで、クランパー(図示せず)により束ねられている。
【0022】
その後、図2(b)に示すように、ICタグ6aが丁合本4に固定される。この際、丁合本4の背中部には接着層5aが形成されているため、ICタグ6aに粘着層などを設けなくてもよい。また、ICタグ6aの周囲は、接着層5aと5bに完全に覆われるので、ベースフィルム17を丁合本4の外側に向けてもよく、内側に向けてもよい。
【0023】
図2(c)に示すように、ロールコーター7により、再度接着層5bを丁合本4の背中部に塗布する。この際、ICタグ6aの上に接着層5bが塗布され、ICタグ6aは、接着層5aと接着層5bにはさまれる。図1(a)に示すように、接着層5bは、孔20を通って、接着層5aに接触する。
【0024】
図2(d)に示すように折り目11を有する表紙9を丁合本4に接着層5を介して固定する。固定後の表紙9と丁合本4の位置関係は図2(e)に示すようになる。その後、図2(f)に示すように、表紙9を折り目11にしたがって折る。
【0025】
接着層5a,5bにホットメルト接着剤を用いた場合、図2(e)や図2(f)において、表紙9の背表紙部を再加熱し、接着層5a,5bとICタグ6aの一体化をより強固にしてもよい。
【0026】
また、接着層5a、5bの形成は、接着剤の塗布だけでなく、熱可塑性樹脂シートの積層によってもよい。
【0027】
熱可塑性樹脂シートの積層では、表紙9の背表紙部に熱可塑性樹脂シートを置き、更にその上にICタグ6aと熱可塑性樹脂シートを置き、更に丁合本4を置き、背表紙部を加熱することにより、書籍1の製本が行われる。熱可塑性樹脂シートとしては、ポリウレタン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂および、これらを混合した樹脂などの熱可塑性樹脂を用いることができる。また、熱可塑性樹脂シートやICタグ6aを固定するため、粘着剤を用いてもよい。粘着剤としては、ポリアクリル酸エステル、ニトリルゴム、天然ゴム、シリコーン粘着剤、ポリ塩化ビニルなどの各種材料およびそれらの水性エマルジョンを使用する。熱可塑性樹脂を貼着した後、被着物を載せ、加熱により熱可塑性樹脂を軟化させ、被着物の接着物を固定する。
【0028】
図3(a)は、第1の実施の形態に係るICタグ6aの図である。ICタグ6aは、アンテナ15を有するベースフィルム17の周辺部に、四角形の孔20が設けられている。孔20は、ベースフィルム17を貫通しており、孔20を通じて、ICタグ6aをはさむ接着層5aと接着層5bが接触可能になり、ICチップ13とアンテナ15の接着層5aと5bへの一体化が促進される。なお、孔20は、四角形だけでなく、丸状でも三角形状でよい。また、孔20をアンテナ15に設けてもよく、その際にはアンテナ15を断線しないように孔20の配置に注意を払う必要がある。
【0029】
図3(b)は、第2の実施の形態に係るICタグ6bの図である。ICタグ6bには、ベースフィルム17にスプロケットホール21が設けられている。スプロケットホール21は、ベースフィルム17を貫通する四角状の孔であり、スプロケットホール21にスプロケットの歯が噛んでICタグ6を搬送する。スプロケットホール21も、孔20と同様に作用する。通常は、スプロケットホール21の部分は、ICタグ6bの貼付前に切り落とされるが、第2の実施の形態においては、スプロケットホール21を切り落とさずに用い、ICチップ13とアンテナ15の接着層5aと5bへの一体化が促進させる。
【0030】
図3(c)は、第3の実施の形態にかかるICタグ6cの図である。ICタグ6cには、ベースフィルム17およびアンテナ15に切り込み22が設けられている。切り込み22はベースフィルム17を貫通している「−」状のスリットである。切り込み22は、アンテナ15にも設けられているが、アンテナ15は断線していない。なお、切り込み22は、「−」状だけでなく、「+」状や「×」状でもよい。第3の実施の形態においては、切り込み22を介してICタグ6cをはさむ接着層5aと接着層5bが接触可能になり、ICチップ13とアンテナ15の接着層5aと5bへの一体化が促進される。
【0031】
第1の実施の形態における書籍1は、図1(b)に示すように、ICチップ13とアンテナ15とベースフィルム17は、接着層5aと5bによって囲まれている。接着層5aと5bは難細裂性を持つため、古紙再生工程の離解工程において接着層5aと5bは細裂化することはなく、ICチップ13やアンテナ15の破片がパルプ懸濁液中に混入することはない。その後、除塵工程において、接着層5aと5bとICチップ13とアンテナ15とベースフィルム17がまとめて除去される。そのため、再生パルプにICチップ13とアンテナ15の破片が混入することがなくなる。
【0032】
第1の実施の形態において、ICタグ6aのベースフィルム17に孔20を設けることにより、ベースフィルム17の内部を接着層5aと接着層5bが貫通することとなるため、両者の融合が、速やかかつ確実に行われる。第2の実施の形態においても同様の効果が得られる。
【0033】
また、第3の実施の形態において、ICタグ6cのアンテナ15に切り込み22を設けることで、アンテナ15の内部を接着層5aと5bが貫通するため、ICチップ13とアンテナ15と接着層5aと5bの一体化はより確実に行われる。古紙再生工程において、ICチップ13やアンテナ15の除去が確実に行われ、再生パルプ中へのICチップ13とアンテナ15の破片の混入をより防ぐことができる。
【0034】
以上、添付図面を参照しながら、本発明にかかる書籍の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しえることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1の実施の形態に係る書籍1の、(a)図2(e)におけるA矢視図、(b)図2(f)におけるB矢視図。
【図2】第1の実施の形態に係る書籍1の製本工程を示す図。
【図3】ICタグの各種の実施の形態を示す図。
【符号の説明】
【0036】
1………書籍
4………丁合本
5………接着層
6………ICタグ
7………ロールコーター
9………表紙
11………折り目
13………ICチップ
14………粘着層
15………アンテナ
17………ベースフィルム
20………孔
21………スプロケットホール
22………切り込み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表紙と本が、接着層により接着され、
ベースフィルムと、前記ベースフィルム上に形成されたアンテナと、前記アンテナに接続するICチップと、を有するICタグを、前記接着層中に設け、
前記ICタグが、複数個の孔または切り込みを有することを特徴とする書籍。
【請求項2】
前記複数個の孔または切り込みは、前記ICタグのベースフィルムまたはアンテナに設けられることを特徴とする請求項1記載の書籍。
【請求項3】
本の背中部に第1の接着層を形成する工程(a)と、
ベースフィルムと、前記ベースフィルム上に形成されたアンテナと、前記アンテナに接続するICチップと、を有し、前記アンテナまたは前記ベースフィルムに孔または切り込みを有するICタグを、前記背中部に取り付ける工程(b)と、
前記背中部に第2の接着層を形成する工程(c)と、
前記背中部に表紙を固定する工程(d)と、
を具備することを特徴とする書籍の製造方法。
【請求項4】
前記工程(a)及び前記工程(c)は、接着剤の塗布、熱可塑性樹脂シートの積層によることを特徴とする請求項3記載の書籍の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−76046(P2009−76046A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133118(P2008−133118)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】