説明

ICタグ付包装袋

【課題】 ICタグと袋本体とを容易に分別処理することが可能なICタグ付包装袋を提供する。
【解決手段】 最内層にヒートシール性樹脂層を有する積層体を2枚重ね合わせ、それらの上端部、下端部、左側端部、右側端部からなる外周端部に上端シール部10、下端シール部20、左側端シール部30、右側端シール部40からなる周辺シール部を設けて小室Sを有する袋体を構成する。この際、ICタグ60を上端シール部10に封入する。さらに、上端シール部10に、開封用切り欠き51および引き裂き用切れ目52からなる開封用カット部50を刻設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICタグを有する包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触で情報を記録し、かつ読み取りできる「非接触ICタグ」(「非接触データキャリア」、「無線ICタグ」、「非接触IC」、「非接触ICラベル」等と表現される場合もある。)が、物品や商品情報の管理、物流管理等に広く利用されるようになってきている。最近では、食品等の包装体の分野でも非接触ICタグ(以下、「ICタグ」という)を装着して、流通や品質管理、使用期限管理等に利用することが行われている(特許文献1〜5参照)。
【特許文献1】特開2003−155062号公報
【特許文献2】特開2003−158414号公報
【特許文献3】特許第3789827号公報
【特許文献4】特開2003−242471号公報
【特許文献5】特開2003−242472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
最近では、環境意識の高まりもあり、使用済みの包装体のリサイクルが行われるようになってきているが、上記従来の技術では、包装体を使用し終わった後、ICタグと包装体の分離に手間がかかるという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、ICタグと袋本体とを容易に分別処理することが可能なICタグ付包装袋を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明では、最内層にヒートシール性樹脂層を有する積層体からなり、上端部、下端部、左側端部、右側端部からなる外周端部に上端シール部、下端シール部、左側端シール部、右側端シール部からなる周辺シール部を設けて袋体を構成し、前記上端シール部には、上端シール部を分断するための引き裂き開始起点となる開封用カット部が設けられているとともに、当該開封用カット部よりも上端側にICタグがラミネートされてなるICタグ付包装袋を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ヒートシール性樹脂層を有する積層体を、上端部、下端部、左側端部、右側端部からなる外周端部において接着して袋体を構成するとともに、上端部の開封カット部よりも上端側にICタグを挟み込むようにしたので、ICタグと袋本体とを容易に分別処理することが可能となるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係るICタグ付包装袋の一実施形態を示す断面図である。図1において、10は上端シール部、20は下端シール部、30は左側端シール部、40は右側端シール部、50は開封用カット部、60はICタグである。
【0008】
本発明に係るICタグ付包装袋は、最内層にヒートシール性樹脂層を有する積層体からなるものであり、同一サイズの矩形の積層体のヒートシール性樹脂層同士を対向させ、上端シール部10、下端シール部20、左側端シール部30、右側端シール部40において、接着を行うことにより、小室Sを形成したものである。
【0009】
開封用カット部50は、包装袋の上端シール部10を分断するための手段であって、開封用切り欠き51と引き裂き用切れ目52の組み合わせからなる。開封用切り欠き51は、上端シール部10の左右両端の対応箇所に少なくとも、1箇所、V型ノッチ、U型ノッチまたはI型ノッチからなる分離のきっかけとなるものであり、このV型ノッチ、U型ノッチまたはI型ノッチからなる開封用切り欠き51は、左側端シール部30のみ、右側端シール部40のみ、左側端シール部30及び右側端シール部40の両方(同じ高さ位置)に設けることができる。
【0010】
さらに、右側端シール部40のみ開封用切り欠き51を設け更にこの開封用切り欠き51に連続して上端シールと平行に左側端シール部40まで引き裂き用切れ目52を設けてもよく、左側端シール部40のみ開封用切り欠き51を設け更にこの開封用切り欠き51に連続して上端と平行に右側端シール部40まで引き裂き用切れ目52を設けてもよく、左側端シール部30及び右側端シール部40の両方(同じ高さ位置)に開封用切り欠き51を設け更にこの左右一対の開封用切り欠き51をつなぐ線上に連続して上端シールと平行に引き裂き用切れ目52を設けてもよい。図1の例では、左側端シール部30及び右側端シール部40の両方に開封用切り欠き51を設け、この左右一対の開封用切り欠き51をつなぐ線上に連続して上端と平行に引き裂き用切れ目52を設けたものとなっている。なお、開封用切り欠き51は必須ではなく、上端シール部10の左右両端の対応箇所をつなぐ直線上に、上端と平行に引き裂き用切れ目52のみを設けるようにしても良い。
【0011】
引き裂き切れ目52は、切れ目部分が弱体化して包装袋の小室Sが、ICタグ60と分断可能とするように形成されればよい。したがって、引き裂き切れ目52の形状としては、直線状、曲線状、ミシン目線状、破線状等の任意の形状でよく、その本数は、一本、二本乃至それ以上でよく、また、連続状であっても、不連続状等のいずれでもよい。さらに、引き裂き切れ目52の構造は、貫通孔(三層とも)、ハーフカット(外層のみ)の状態あるいはそれらが混在する状態のいずれの状態でもよく、引き裂き切れ目52を刻設する方法としては、たとえば、加熱した針を押しつけるニードルパンチ法、エンボスロール法、研磨ロール、砥石、研磨テープ等を用いてフィルムを溶融し、穿孔する熱溶融穿孔法、ナイフ、カッター等を用いる物理的穿孔法、レーザービーム加工、コロナ放電、プラズマ放電等の加工法等の方法によって行うことができる。
【0012】
ICタグ60は、合成樹脂フィルム上に形成されたアンテナにICチップを装着して構成される。さらに、上端シール部10において、両積層体を接着することにより、ICタグ60は、上端シール部10に封入される。
【0013】
次に、本発明に係るICタグ付包装袋を構成する積層体について説明する。図2は、積層体の層構造を示す断面図である。図2に示すように、積層体は、外層、中間層、最内層からなる。このうち、中間層は、最内層と外層だけでは包装袋としての機能を十分に果たすことができない場合等に設けられる。
【0014】
続いて、積層体を構成する各層について説明する。最内層は、ヒートシール性樹脂層であるが、このヒートシール性樹脂は、熱によって溶融し相互に融着し得るものであればよく、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン共重合体等の樹脂の一種ないしそれ以上からなる樹脂ないしはこれらをフィルム化したシートを使用することができ、その厚さとしては18〜200μm、好ましくは30〜150μmが適当である。
【0015】
外層は、合成樹脂製のフィルムであり、この合成樹脂製のフィルムとしては、包装袋を構成する基本素材となることから、機械的、物理的、化学的等において優れた性質を有する合成樹脂を用いることができ、例えば、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリプロピレン系、ポリカーボネート系、ポリアセタール系等の樹脂を用いることができる。また、これらの樹脂を用いたフィルムとしては、未延伸フィルムあるいは1軸方向または2軸方向に延伸した延伸フィルム等のいずれのものでも使用することができ、フィルムの厚さとしては基本素材としての強度、剛性などについて必要最低限に保持され得る厚さであればよく、コストを考慮すると12〜25μm程度が適当である。また、前記合成樹脂製のフィルムは、必要に応じてポリ塩化ビニリデンが塗工されたフィルムやアルミニウムや酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化錫、酸化ジルコニウム等の無機物の蒸着層が形成されたフィルムとしてバリアー性を有する構成としてもよい。また、前記外層として使用する合成樹脂製のフィルムは、前記合成樹脂製フィルムの内層側に一般的には印刷が施されることが多い。そのために、前記外層として使用する合成樹脂製フィルムは印刷適性が求められ、1軸方向または2軸方向に延伸した延伸フィルムが好適である。また、必要に応じて合成紙、不織布、紙、セロハン等も適宜使用できる。
【0016】
本発明においては、前記最内層と前記外層の間に中間層を設けてもよく、前記中間層は通常前記最内層と前記外層だけでは包装袋としての機能を十分に果たすことができない場合等に設けられる。前記機能としては、気体遮断性、機械的強靱性、耐屈曲性、耐突き刺し性、耐衝撃性、耐磨耗性、耐寒性、耐熱性、耐薬品性等であり、包装袋として要求されるこれらの最終的な機能を中間層を設けることで達成するものである。該中間層として用いられる基材としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫等の金属箔、あるいは、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物等のフィルムあるいはこれらにポリ塩化ビニリデンを塗工したフィルムないしはアルミニウムや酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化錫、酸化ジルコニウム等の無機物の蒸着を施したフィルムあるいはポリ塩化ビニリデン等のフィルム、あるいは、紙、合成紙、セロハンなどを用いることができる。また、これら基材の一種ないしそれ以上を組み合わせて使用することができる。尚、上記基材の厚さとしては、包装袋として要求される機能を満たすことができればよいのであって、必要に応じて適宜に選ぶことができる。
【0017】
次に、本発明に係るICタグ付包装袋の製造方法について説明する。まず、上記のような積層体を、同一サイズの矩形状のものを2枚用意し、上端部のヒートシール性樹脂層同士の対向する部分に、ICタグを挟み込む。この際、ICタグを構成するICチップの位置固定が必要な場合には、接着剤で仮固定を行う。その後、上端シール部10を形成することにより、上端シール部10にICタグ60をラミネートする。
【0018】
次に、左側端部、右側端部において、最内層であるヒートシール性樹脂層同士を対向させ、左側端シール部30、右側端シール部40を形成する。このときの状態を図3(a)に示す。この左側端シール部30、右側端シール部40は、上記上端シール部10と同時に形成するようにしても良い。
【0019】
次に、上端シール部10に、開封用切り欠き51および引き裂き用切れ目52からなる開封用カット部50を刻設する。このときの状態を図3(b)に示す。なお、上述のように、開封用カット部50は、引き裂き用切れ目52のみで形成しても良い。
【0020】
最後に、充填機で、開放された下端部から内容物を充填し、下端部をシールバーでヒートシールすることで、下端シール部20を形成する。このときの状態を図3(c)に示す。これにより、小室Sにのみ内容物が収納された状態の本発明に係るICタグ付包装袋が完成する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るICタグ付包装袋の一実施形態を示す断面図である。
【図2】積層体の層構造を示す断面図である。
【図3】本発明に係るICタグ付包装袋の製造工程を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
10・・・上端シール部
20・・・下端シール部
30・・・左側端シール部
40・・・右側端シール部
50・・・開封用カット部
51・・・開封用切り欠き
52・・・引き裂き用切れ目
60・・・ICタグ
S・・・小室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最内層にヒートシール性樹脂層を有する積層体からなり、上端部、下端部、左側端部、右側端部からなる外周端部に上端シール部、下端シール部、左側端シール部、右側端シール部からなる周辺シール部を設けて袋体を構成し、前記上端シール部には、上端シール部を分断するための引き裂き開始起点となる開封用カット部が設けられているとともに、当該開封用カット部よりも上端側にICタグがラミネートされてなることを特徴とするICタグ付包装袋。
【請求項2】
前記積層体は、外層、中間層、最内層の三層構造であることを特徴とする請求項1に記載のICタグ付包装袋。
【請求項3】
前記最内層の厚みが18μm〜200μmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のICタグ付包装袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−247421(P2008−247421A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−90551(P2007−90551)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】