説明

ICタグ装着用治具

【課題】構成が簡単であって、安価に提供することができ、通信不良などの発生を防止するICタグ装着用治具を提供すること。
【解決手段】長尺シート21を円筒状紙管22の外周面22cに巻回してなるロール状製品20に対し、当該製品にICタグ1を脱着自在に装着するためのICタグ装着手段11を含むものからなり、前記ICタグ装着手段が、前記ICタグを前記紙管の中空部22e内に支持し、当該ICタグのアンテナ面2aを前記紙管の軸方向に対して交差する面上に位置決めして支持するものからなることを特徴とするICタグ装着用治具10を構成するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種情報を記憶することができるICタグを用いて、円筒状の紙管に巻いてあるロール状製品の使用記録、使用状況並びに在庫管理を行うICタグ管理システムにおいて、特に、該ロール状製品における円筒状紙管に対してICタグを装着するためのICタグ装着用治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、各種産業分野において、各種情報を記録し、伝達するための手段として、より多量の情報を取り扱うことができ、耐環境性に優れており、且つ、遠隔的な読み出しが可能なデータキャリアシステムと呼ばれるICタグ識別システムが開発され提供されてきている。
【0003】
上記するICタグ識別システムに使用されるICタグ1は、図1において拡大して示すように、例えば、コイル状に形成したアンテナ2と、このアンテナ2に電気的に接続されたICチップなどの電子部品3と、これらの内蔵部品を収容封止して、外層を形成する外層樹脂4とにより構成されている。
【0004】
このICタグ1は、アンテナ2および電子部品3とを外層樹脂4により封止したものであり、当該ICタグを、取り付けるべき物品の被取付面に対して、馴染む程度の可撓性並びに柔軟性を有しており、概してシート状に成形されたものからなっている。
【0005】
上記するような構成でなるICタグは、当該ICタグのアンテナ面(ICタグ1の厚さ方向に向いた面)に対して、読み取り側のアンテナが垂直方向にあることが読み取る上で望ましい条件である。例えば、特許文献1に記載のICタグの装着具は、原紙3の芯である円筒状の紙管4の内側に沿った状態になるような弾力のある板2にICタグ1を貼り付けた構成のものである。
【0006】
この特許文献1に記載のものは、上記ICタグのアンテナ面が円筒状紙管の内周面に沿って平行に取り付けられているため、該アンテナ面に対して垂直方向から読み取ろうとすると、その読み取り方向は、紙管並びに紙管に巻かれているロール原紙越しに行わなければならないものである。このように、ICタグのアンテナ面を円筒状紙管の内周面に沿って平行に取り付け、紙管並びに紙管に巻かれているロール原紙越しに読み取りを行う構成のものでは、ロール原紙に対する湿気並びに通信距離などの影響により通信不良などの発生の要因となっていた。
【0007】
【特許文献1】特開2007−145593号公報(要約、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明は、上記する従来の技術にみられる問題点を解消しようとするものであり、構成が極めて簡単であって、安価に提供することができ、上記するような通信不良などの発生を防止しようとするICタグ装着用治具を提供することにある。さらに、この発明は、紙管に長尺シート素材を巻いたり巻きだしたりするときに掛かる回転時の遠心力によりICタグや治具が外れないようにしたICタグ装着用治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上記する目的を達成するにあたって、具体的には、長尺シートを円筒状紙管の外周面に巻回してなるロール状製品に対し、当該製品にICタグを脱着自在に装着するためのICタグ装着手段を含むものからなり、
前記ICタグ装着手段が、前記ICタグを前記紙管の中空部内に支持し、当該ICタグのアンテナ面を前記紙管の軸方向に対して交差する面上に位置決めして支持するものからなることを特徴とするICタグ装着用治具を構成するものである。
【0010】
さらに、この発明において請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のICタグ装着用治具であって、前記ICタグ装着手段が、適度な弾性を有する素材によって成形されるICタグ装着用部材からなり、前記ICタグ装着用部材が、前記円筒状紙管の内周面に嵌り合う外周面と、軸方向に交差する第1および第2の端面とを備えたものからなることを特徴とするものである。
【0011】
さらにまた、この発明において請求項3に記載の発明は、請求項1あるいは請求項2に記載のICタグ装着用治具であって、前記ICタグ装着用部材が、前記第1および第2の端面の中間部に、軸方向に交差する面に沿ってのびるICタグ収容スリットを設けたことを特徴とするものである。
【0012】
さらにまた、この発明において請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のICタグ装着用治具であって、前記ICタグ装着用部材が、横断面多角形形状でなることを特徴とするものである。
【0013】
さらにまた、この発明において請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載のICタグ装着用治具であって、前記ICタグ装着用部材の外周面が、軸方向の一端側から他端側に向けて若干傾斜状に形成されているものからなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
この発明になるICタグ装着用治具は、ロール状製品に対し、当該製品にICタグを脱着自在に装着するためのICタグ装着手段を含むものからなり、該ICタグ装着手段が、ICタグを紙管の中空部内に支持し、該ICタグのアンテナ面を紙管の軸方向に対して交差する面上に位置決めして支持するように構成することにより、紙管の軸方向端部からICタグのアンテナ面を垂直方向に読み取ることができ、従来の紙管並びに紙管に巻かれているロール原紙越しに読み取りを行う構成のものに比べて、ロール原紙に対する湿気並びに通信距離などの影響による通信不良などの発生を防止することができ、より正確な読み取り並びに書き込みを行うことができるという点において、極めて有効に作用するものといえる。
【0015】
さらに、この発明になるICタグ装着用治具は、ICタグ装着手段が、適度な弾性を有する素材によって成形されるICタグ装着用部材からなっており、このICタグ装着用部材が、横断面多角形形状のものである点、さらには、ICタグ装着用部材の外周面が、軸方向の一端側から他端側に向けて若干傾斜状に形成されている点、などにより、円筒状紙管に対する脱着が極めて容易であり、且つ、装着時における位置決め安定性の点においても極めて確実性の高いものといえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明になるICタグ装着用治具について、図面に示す具体的な実施例に基づいて詳細に説明する。図1は、この発明になるICタグ装着用治具の具体的な実施例を示すものであって、紙管の一部を破断し、内部に収容するICタグを拡大して矢印方向に引き出した状態を示す概略的な斜視図である。一方、図2は、ICタグ装着部分の詳細を示すものであって、図2Aは、その概略的な縦断面図であり、図2Bは、図2Aにおける矢印2Bから見た概略的な側面図である。さらに、図3は、この発明になるICタグ装着用治具の好ましい例を示すものであって、図3Aは、その概略的な正面図であり、図3Bは、その概略的な側面図であり、図3Cは、図3Aにおける3C−3C線に沿って断面で示す概略的な3C−3C線断面図である。図4は、この発明になるICタグ装着用治具の他の好ましい例を示すものであって、ICタグ装着用部材に対するICタグ収容スリットが、ICタグ装着用部材を円筒状紙管に装着した状態において、該円筒状紙管の軸線に対して所望の角度に傾斜する構成例を示す概略的な縦断面図である。
【0017】
まず、この発明におけるICタグ1の構造について説明する。このICタグ1は、コイル状に形成したアンテナ2と、このアンテナ2に電気的に接続されたICチップなどの電子部品3と、このアンテナ2および電子部品3を収容封止して外層を形成する外層樹脂4とにより構成されている。このICタグ1は、適度の可撓性並びに柔軟性を有するものからなっている。その厚さ寸法は、約0.1〜2.0mm程度のものであり、平面視形状は、円形あるいは矩形のいずれであっても良く、その平面視寸法は、円形のものにおいて直径約5〜40mm程度のものであり、矩形のものにおいて一辺約5〜40mm程度のものである。
【0018】
このICタグ1には、商取引の対象である多くの物品を管理する目的において、当該物品に関する様々な情報、例えば、物品の名称、重量、内容量、製造者名、販売者名、製造場所、製造年月日、使用期限などの情報を、タグ情報として予め記憶してあり、外部より読み取りあるいは書き込みできるようになっている。電子タグ識別システムは、物品側に取り付けられる電子タグとよばれる応答器と、ホスト側に接続される質問器とで構成され、これら応答器と質問器との間で、磁気、誘導電磁界、マイクロ波、電波などの電送媒体を介して非接触で遠隔で交信を行うことができるものである。
【0019】
図1に示すように、この発明の適用になるロール状製品20とは、原紙などの長尺シート21を円筒状紙管22の外周面22cに連続的に巻回したものであって、その必要量を巻きだしながら使用に供するものである。前記紙管22は、紙材を円筒状に成形してなる軸芯であり、軸方向の一端22aから他端22bにわたって均一にのびる外周面22cおよび内周面22dを有するものからなっている。この発明の最も好ましい適用例は、前記長尺シート21が原紙であり、ロール紙製品に対するものである。しかしながら、この発明は、ロール紙製品にのみ限定されるものではなく、その他のロール状製品に対しても適用が可能である。
【0020】
次いで、この発明になるICタグ装着用治具10の好ましい実施例について、図面に基づいて詳細に説明する。このICタグ装着用治具10は、上記するロール状製品20に対し、当該製品20にICタグ1を脱着自在に装着するためのICタグ装着手段11を含むものからなっている。前記ICタグ装着手段11は、前記ICタグ1を前記紙管22の中空部22e内に支持し、当該ICタグ1のアンテナ面2aを前記紙管22の軸方向に対して交差する面上に位置決めして支持するものからなっている。
【0021】
前記ICタグ装着手段11は、具体的には、適度な弾性を有する素材によって成形されるICタグ装着用部材12により構成されるものである。このICタグ装着用部材12は、適度な弾性を有し、軽量であり、加工性に富み、形状安定性に優れた素材、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、アクリル、ポリプロピレン、ポリスチレン、塩化ビニル、ゴムなどの発泡素材が有効であり、その他に、フローラルフォーム、場合によっては、紙製あるいは木製のものであってもよい。
【0022】
前記ICタグ装着用部材12は、前記円筒状紙管22の内周面22dに嵌り合う外周面12cと、軸方向に交差する第1の端面12aおよび第2の端面12bと、中心を軸方向に貫通する貫通孔12dを備えたものからなっている。前記ICタグ装着用部材12は、その外周面12cの外径が円筒状紙管22の内周面22dよりやや大きめで、弾力性があり、円筒状紙管22に挿入しても、その弾力により、しっかりと固定することができる。前記ICタグ装着用部材12における貫通孔12dは、コルゲータと呼ばれる送り出し装置のセンサーを妨げないためのものである。
【0023】
さらに、前記ICタグ装着用部材12は、前記第1の端面12aおよび第2の端面12bの中間部に、軸方向に交差する面に沿ってのびるICタグ収容スリット13を設けたものからなっている。前記ICタグ収容スリット13には、前記ICタグ1が着脱自在に密着挿入されるようになっている。前記ICタグ装着用部材12に対して、ICタグ1を挿入する位置について、当該ICタグ装着用部材12の軸方向に対し、その中心部に挿入することでバランスを保ち、コルゲータ(送り出し機)の高速回転によって、円筒状紙管22内で左右にずれることを防止する。
【0024】
前記ICタグ装着用部材12に対するICタグ収容スリット13は、図2Aおよび図3Cに示すように、当該ICタグ装着用部材12を円筒状紙管22に装着した状態において、該円筒状紙管22の軸線に対して直交差するように形成したものであってもよいし、あるいは、図4に示すように、円筒状紙管22の軸線に対して所望の角度、例えば、45度に傾斜するように形成したものであってもよい。この傾斜角度は、45度に限定されるものではない。
【0025】
前項において、前者の場合、ICタグ1に対して、ロール状製品20の軸方向から、リーダー・ライター23によって、書き込みないしは読み込みが行えるものである。一方、後者の場合は、ICタグ1に対して、ロール状製品20の軸方向Xあるいは径方向Yの双方から、リーダー・ライター23によって、書き込みないしは読み込みを行うことができるようになっている。
【0026】
さらに好ましい実施例において、前記ICタグ装着用部材12は、横断面多角形形状に形成されている。すなわち、前記ICタグ装着用部材12は、前記外周面12cが多面に形成されていて、隣接する面が交差して形成される稜線14に沿って、前記円筒状紙管22の内周面22dに嵌り合うようになっている。
【0027】
さらに好ましい実施例において、前記ICタグ装着用部材12は、軸方向の一端側12aから他端側12bに向けて若干先細になるよう傾斜状に形成されている。
【0028】
このように、前記ICタグ装着用部材12を、適度な弾性を有する素材によって成形し、横断面多角形形状に形成し、一方向に若干先細になるよう傾斜状に形成することによって、当該ICタグ装着用部材12自体を前記円筒状紙管22に対しての着脱を容易に行うことができ、且つ、装着時における装着安定性を確実に確保するものである。
【0029】
この発明のように、ICタグ1を用いてロール状製品20を管理する運用方法について述べると、次の二通りのパターンがある。第1のパターンは、ICタグ1に予め情報を持たせておき、例えば、図1に示すようなリーダー・ライター23により、ICタグ1に直接情報を書き込んで、リーダー・ライター23で確認する方法である。第2のパターンは、システム側に情報を持たせておき、ICタグ1には固有のコードを持たせて、リーダー・ライター23でICタグ1のコードを読み込んで、システム側にICタグコードを送り、必要な情報を書き込む。情報確認は、その商品に付しているICタグを、読み込みシステムが持つ情報を引き出して確認するものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、この発明になるICタグ装着用治具の具体的な実施例を示すものであって、紙管の一部を破断し、内部に収容するICタグを拡大して矢印方向に引き出した状態を示す概略的な斜視図である。
【図2】図2は、ICタグ装着部分の詳細を示すものであって、図2Aは、その概略的な縦断面図であり、図2Bは、図2Aにおける矢印2Bから見た概略的な側面図である。
【図3】図3は、この発明になるICタグ装着用治具の好ましい例を示すものであって、図3Aは、その概略的な正面図であり、図3Bは、その概略的な側面図であり、図3Cは、図3Aにおける3C−3C線に沿って断面で示す概略的な3C−3C線断面図である。
【図4】図4は、この発明になるICタグ装着用治具の他の好ましい例を示すものであって、ICタグ装着用部材に対するICタグ収容スリットが、ICタグ装着用部材を円筒状紙管に装着した状態において、該円筒状紙管の軸線に対して所望の角度に傾斜する構成例を示す概略的な縦断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 ICタグ
2 アンテナ
2a アンテナ面
3 ICチップなどの電子部品
4 外層樹脂
10 ICタグ装着用治具
11 ICタグ装着手段
12 ICタグ装着用部材
12a ICタグ装着用部材の第1の端面
12b ICタグ装着用部材の第2の端面
12c ICタグ装着用部材の外周面
12d ICタグ装着用部材の貫通孔
13 ICタグ収容スリット
14 稜線
20 ロール状製品
21 長尺シート
22 円筒状紙管
22a 円筒状紙管の一端
22b 円筒状紙管の他端
22c 円筒状紙管の外周面
22d 円筒状紙管の内周面
22e 円筒状紙管の中空部
23 リーダー・ライター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺シートを円筒状紙管の外周面に巻回してなるロール状製品に対し、当該ロール状製品にICタグを脱着自在に装着するためのICタグ装着手段を含むものからなり、
前記ICタグ装着手段が、前記ICタグを前記紙管の中空部内に支持し、当該ICタグのアンテナ面を前記紙管の軸方向に対して交差する面上に位置決めして支持するものからなることを特徴とするICタグ装着用治具。
【請求項2】
前記ICタグ装着手段が、適度な弾性を有する素材によって成形されるICタグ装着用部材からなり、前記ICタグ装着用部材が、前記円筒状紙管の内周面に嵌り合う外周面と、軸方向に交差する第1および第2の端面とを備えたものからなることを特徴とする請求項1に記載のICタグ装着用治具。
【請求項3】
前記ICタグ装着用部材が、前記第1および第2の端面の中間部に、軸方向に交差する面に沿ってのびるICタグ収容スリットを設けたことを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載のICタグ装着用治具。
【請求項4】
前記ICタグ装着用部材が、横断面多角形形状でなることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のICタグ装着用治具。
【請求項5】
前記ICタグ装着用部材の外周面が、軸方向の一端側から他端側に向けて若干傾斜状に形成されているものからなることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のICタグ装着用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−184742(P2009−184742A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−22980(P2008−22980)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(394026758)小林織ネーム株式会社 (3)
【Fターム(参考)】