説明

ICタグ

【課題】厚さを厚くしても、ICチップ22の耐久性を落とすことなくICタグTGの接着性(剥がれ難さ)を向上させることを目的とする。
【解決手段】本発明のICタグTGは、板状の軟質部材1を、層間滑りを許容した状態で複数積層すると共に、ICチップ22及びアンテナ23を有するインレット2を、上記積層されている軟質部材1間又は上記積層された軟質部材1の上側に配置し、更に上記積層した軟質部材1及びインレット2を内部に収容する外装材3を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスボンベやフレキシブルコンテナバッグなどの曲面や凹凸のある物品、軟質性の物品等に取り付けられて使用されるICタグであって、例えば製造現場での工程管理、流通業界での物流管理、販売店での棚卸しの管理、クリーニング店での衣服管理などに利用されるICタグに関する。
【背景技術】
【0002】
衣服類等のような柔軟な取付け対象に取り付けるICタグとしては、例えば特許文献1に記載のICタグがある。
このICタグは、樹脂フィルムなどからなるベース基材上にICチップ及びアンテナが配設されてインレットが形成される。そして、そのインレットのベース基材の上(ICチップとは反対面側)に保護構造体を、貼り付けて固定する。このとき、ベース基材と保護構造体の間に表面層を設ける場合もある。
【0003】
さらに、上記インレット及び保護構造体等の周囲を外装材で包むことで、防水効果を得ている。この特許文献1の技術では、インレットを外装材内面に全面貼り合わせると共に、保護構造体を外装材内面に全面貼り合わせて、両者の間の滑りが生じないようにしている。なお、特許文献1では、保護構造体の材料を、外装材と同一の物質若しくは外装材よりも剛性の低い物質で形成する。
上記構成によって、特許文献1では、ICタグを屈曲させても、保護構造体によってICチップ周辺は屈曲せず、ICチップ周辺に過剰な力が掛からないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−67116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載のICタグは、保護構造体を貼り付けた部分の曲げ剛性が、曲げ変形し難いほど高くなっている。このため、例えば、ICタグを曲率が大きな円弧面などの曲面(タグ取付け面)に貼り付けた場合、中央部と左右両側部分だけが接着するなど、部分的な接着になってしまうばかりか、保護構造体を設けた位置の曲げ剛性が高いために、ICタグが元の形状に復元する方向の力が大きくなって、その分、剥がれやすくなる。このことは、ビニール素材などの可撓性のある物品に貼り付けた場合にも同様である。
【0006】
また、タグを取り付ける部分が金属製の場合には、ICタグの通信性能低下を防止するために、インレットの取付け面側に所定厚さの誘電体を設ける必要がある。ICタグに可撓性を確保する関係からは、上記誘電体は、ゴム材になると思われる。しかし、インレットが目的の通信性能を得るだけの厚さのゴム材を、上記保護構造体と同様に貼り付けると、ICタグの曲げ剛性が高くなってしまう。このことは、上述のように、ICタグが元の形状に戻る方向の力が強くなる原因になると共に、曲げた際に、ICチップ周辺への曲げ応力が大きくなる可能性がある。このことは、上述のような問題の原因となる。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、厚さを厚くしても、ICチップの耐久性を落とすことなくICタグの接着性(剥がれ難さ)を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載した発明は、板状の軟質部材を、層間滑りを許容した状態で複数積層すると共に、ICチップ及びアンテナを有するインレットを、上記積層されている軟質部材間又は上記積層された軟質部材の上側に配置し、更に上記積層した軟質部材及びインレットを内部に収容する外装材を備えることを特徴とするICタグを提供するものである。
【0008】
次に、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した構成に対し、ICタグの取付け面側と上記インレットとの間に少なくとも上記軟質部材が1又は2以上介在され、その介在される軟質部材は、可撓性を有する誘電体からなることを特徴とする。
次に、請求項3に記載した発明は、請求項1又は請求項2に記載した構成に対し、積層される軟質部材同士の変位を規制する変位規制手段を備えることを特徴とする。
【0009】
次に、請求項4に記載した発明は、請求項3に記載した構成に対し、上記変位規制手段は、重なり合う軟質部材の一部を固定することを特徴とする。
次に、請求項5に記載した発明は、請求項4に記載した構成に対し、上記固定は、長手方向において上記ICチップの位置と幅方向で重なる位置でだけ実施することを特徴とする。
【0010】
次に、請求項6に記載した発明は、請求項4又は請求項5に記載した構成に対し、上記固定は、固定する部分を接着剤、粘着剤、熱着のいずれかによる固定であることを特徴とする。
次に、請求項7に記載した発明は、請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載した構成に対し、上記固定は、固定する部分に形成した嵌合構造からなることを特徴とする。
【0011】
次に、請求項8に記載した発明は、請求項4〜請求項7のいずれか1項に記載した構成に対し、上記固定は、固定する部分で、積層した軟質部材全体を封止材で押さえることで実現することを特徴とする。
次に、請求項9に記載した発明は、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載した構成に対し、上記積層された軟質部材の最上層及び最下層の少なくとも一方の軟質部材が、上記外装材を構成することを特徴とする。
【0012】
次に、請求項10に記載した発明は、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載した構成に対し、上記外装材は、軟質部材よりも面積が大きな一対の外装部材を備え、その一対の外装部材の外周部を接合することで形成され、その形成された袋状の外装材内に上記構成のインレット及び軟質部材を収容することを特徴とする。
次に、請求項11に記載した発明は、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載した構成に対し、上記外装材は、軟質部材を構成する材質の弾性率以下の材料から構成されることを特徴とする。
次に、請求項12に記載した発明は、請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載した構成に対し、上記外装材の外表面の一部に取付け用の粘着層が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、インレットと共に配置する軟質部材を、複数の層にして配置すると共に、各層を形成する板状の軟質部材間を層間滑りを許容した状態で積層する。このため、ICタグの厚さが厚くなっても、ICタグ全体の曲げ剛性を低減することができる。この結果、タグ取付け面が曲面の取付け面や可撓性の取付け面であっても、ICタグが剥がれ難くなる。
【0014】
また、本発明によれば、曲げ剛性が小さくなることで、例えば、ICタグを曲げても、ICチップ位置に発生する曲げ応力を小さく出来る。この結果、その分、ICチップが破損し難くなり、ICタグの耐久性が向上する。
また、請求項2に係る発明によれば、取付け面が金属製であっても、誘電体としての軟質部材の厚さを目的の通信性能を確保出来るだけ厚くしても、上述のように曲げ剛性を下げることが出来るので、タグ取付け面からICタグが剥がれ難くなる。また耐久性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に基づく実施形態に係るICタグの断面構造を説明する模式的構成図である。
【図2】本発明に基づく実施形態に係る軟質部材の固定位置を示す平面図である。
【図3】本発明に基づく実施形態に係る軟質部材の固定例を説明する斜視図である。
【図4】本発明に基づく実施形態に係る軟質部材の封止材を使用した固定例を説明する斜視図である。
【図5】本発明に基づく実施形態に係る軟質部材の固定位置の別例を示す平面図である。
【図6】軟質部材が円形形状の場合を示す平面図である。
【図7】本発明に基づく実施形態に係るインレットの構成を示す平面図である。
【図8】本発明に基づく実施形態に係る軟質部材の嵌合構造による固定例を説明する側面図である。
【図9】本発明に基づく実施形態に係る軟質部材の固定例を示す側面図である。
【図10】図9の最下層の軟質部材の立上り部を説明する平面図である。
【図11】図9の最下層の軟質部材の立上り部の別例を説明する平面図である。
【図12】本発明に基づく実施形態に係る軟質部材を曲げたときの状態を示す図である。
【図13】軟質部材を一体構成とした場合における曲げたときの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態のICタグTGを示す模式的断面図である。
(構成)
本実施形態のICタグTGは、図1に示すように、複数層(図1では3層)の軟質部材1、その複数層の軟質部材1の上に配置されたインレット2、及びその複数層の軟質部材1及びインレット2を内部に収容する外装材3を備える。符号5は、上側からの負荷に対してICチップ22を保護するためのフィルムである。このフィルム5は無くても良い。
【0017】
上記各軟質部材1は、図2に示すように、平面視、長方形形状の平板状の形状をしている。この軟質部材1の材料としては、可撓性のある誘電体を採用する。例えばエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)などのゴム材を使用する。本実施形態では、硬度80のEPDMを使用して、各軟質部材1の厚さをそれぞれ1mmに設定した。本実施形態では、軟質部材1を3層積層しているので、誘電体の層の総厚が3mmとなっているが、軟質部材1の材質(誘電率)に応じて、取付け面の金属からの影響を抑制できる厚さを確保するように、積層した軟質部材1の合計の厚さを設定する。ここで、本実施形態では、3層の場合を例示しているが、2層、若しくは4層以上の軟質部材1で構成しても良い。同じ厚さであれば、層の数を増やすほどICタグTG全体の曲げ剛性を小さく設定できる。
【0018】
上記積層された軟質部材1の厚さ方向で隣接する軟質部材1間は、長手方向中央部位置が、接着剤で固定されている(図2符号X部分が固定位置)。固定位置は図2の符号X1のように、幅方向両側だけでも良い。また接着剤での固定は、図3に示すように、積層した状態で、長手方向中央部の幅方向端部位置を厚さ方向に接着剤を付着することで実施しても良い(図3符号X部分が固定位置)。このとき使用する接着剤としては、例えばシアノアクリレート系接着剤などの瞬間接着剤を使用する。固定位置は、長手方向における一箇所とする。
【0019】
上記積層された軟質部材1同士を固定する方法は、上記固定に限定されない。例えば、軟質部材1間は、長手方向中央部位置が、粘着剤で固定されていても良い(図2符号X部分が固定位置)。固定位置は図2の符号X1のように、幅方向両側だけでも良い。このとき使用する粘着剤としては、例えば、フィルム基材や不織布基材で両面粘着を持つ両面テープを使用する。このときの固定位置も、接着剤のときと同様に長手方向における一箇所とする。
【0020】
ここで、積層する軟質部材1同士を固定する方法の他の例としては、軟質部材1を積層する度毎に、若しくは全ての軟質部材1を積層した後に、上側から熱を加えて熱溶着によって、長手方向中央部だけを接合することで、固定しても良い。なお、溶着位置は一点に限定しない。長手方向中央部に対して2箇所以上(図2符号X1部分)で熱溶着等を実施しても良い。
【0021】
また、積層する軟質部材1同士を固定する方法として、図4に示すように、長手方向中央部を帯止めによる封止によって固定しても良い。すなわち、紙やビニールなどからなる帯状の部材(封止材)30を、積層した軟質部材1を幅方向で全周を囲繞するように巻き付けて、長手方向中央部を固定する。ここで、帯止めで固定する場合には、各軟質部材1の上下両面における長手方向中央部位置の面の粗さを他の位置よりも粗くして、ずれにくくしておくことが好ましい。図4では、封止材30で、インレット2も一緒に封止した場合を例示している。
【0022】
このように、積層した軟質部材1を長手方向中央部だけで固定すると、長手方向に沿って撓むように曲げた場合、固定した中央部では層間滑りが発生しないが、その他の左右両側では層間滑りを発生しながら曲がる事となる。なお、ICタグは、短手方向よりも長手方向で曲がり易くなっている。
ここで、積層した軟質部材1の固定位置は、長手方向中央部に限定されず、長手方向中央部から長手方向に偏心した位置(図5符号X位置)を固定するようにしても良い。この場合でも、曲げた場合に、固定した部分(図5符号X位置)では層間滑りが発生しないが、それ以外の部分では、層間滑りをしながら曲がることとなる。
【0023】
また、上記軟質部材1の形状は、長方形形状である必要はなく、楕円形形状や矩形形状、円形形状などであっても良い。円形形状などでは、長手方向という概念がないが、この場合には、図6に示すように、円の中心部位置(X2位置)や円周方向の一箇所(X3位置)で上記固定方法で固定すればよい。この場合であっても、ICチップ位置及びその近傍で固定することが好ましい。
【0024】
また、上記インレット2は、図7に示すように、ベース基材21の上にICチップ22及びそのICチップ22に電気的に接続するアンテナ23が設けられて構成される。ベース基材21は、例えばPETから構成されている。本実施形態のペース基材は50μmの厚さとなっている。このように、インレット2は、上記軟質部材1の厚さに比べて大幅に薄い部材である。またアンテナ23はエッチングなどによって形成されている。そして、上記ベース基材21上に、例えばACP(Anisotropic Conductive Paste:異方向導電ペースト)によって実装する。実装方式は、ACPに限定されない。公知の実装方式を適宜採用すればよい。
【0025】
そして、上記構成のインレット2が、本実施形態では、最上層の軟質部材1の上に固定されている。インレット2の固定は、フィルム系両面テープなどの粘着剤4で実施する(図1参照)。
ここで、通常ICチップ22は長手方向中央部に位置するため、上面視で、上記軟質部材部材の固定位置は、少なくともその一部がICチップ22の配置位置と幅方向で重なる位置となる。
また、上記軟質部材1の面積は、インレット2の大きさ以上に設定される。
また、上記外装材3は、軟質部材1よりも面積が大きな2枚の外装部材3a、3bから構成される。各外装部材3a、3bの材料は、上記軟質部材1の材料よりも弾性率が低い(軟らかい)材料が好ましい。本実施形態では、外装部材3a、3bを、厚さ1mmのウレタンエラストマーにて形成した。
【0026】
また本実施形態の外装材3は、長方形形状であって、短辺の一方だけを開放した状態で、2枚の外装部材3a、3bの外周全周(2辺の長辺び1辺の短辺)を、接着剤や熱溶着で接合しておく。そして、開放されている短辺から、上記積層した軟質部材1及びインレット2の組を差し入れた後に、その開放されている短辺を接合して密封状態として、外装部材3a、3b内に上記積層した軟質部材1及びインレット2を封止する。
若しくは、一枚の外装部材3aの上に、上記軟質部材1を積層し且つインレット2を設置した後に、上側から他の外装部材3bを載せ、その2枚の外装部材3a、3bの外周全周を接着剤や熱溶着で接合することで封止する。この場合、下側の外装部材3aの下面が平らになる。
【0027】
また、下側の外装部材3aの外面(下面)に対して物品貼付け用の両面テープ6を取り付ける(図1参照)。
ここで、上記実施形態では、積層した軟質部材1同士を接着剤、熱溶着、帯止めでの封止方式で固定する場合を例示したが、固定の仕方(積層した軟質部材1同士の変位を規制する変位規制手段)はこれに限定しない。
【0028】
例えば、長手方向中央部で固定する場合、図8に示すように、各軟質部材1における上面及び下面の一方の面の長手方向中央部に複数の凸部7aを形成すると共に、各軟質部材1の上面及び下面の他方の面の長手方向中央部に上記凸部7aを嵌め込み可能な複数の凹部7bを形成しておく。そして、凸部7aと凹部7bとを嵌め込めながら、軟質部材1を積層する。凸部7aと凹部7bによって嵌合構造が構成される。これによって、長手方向中央部で層間滑りが阻止(変位が規制)されるが、その左右両側では層間滑りが許容された状態となる。止め方はこれに限定されず、固定位置に対し全層を同軸に貫通する貫通穴を形成しておき、その貫通穴に接着剤を流し込んだり、溶着用の針を差し込んで溶融したり、その同軸の複数の貫通穴を貫通する貫通部材を嵌め込んだりして固定しても良い。
また、積層した軟質部材1同士の変位を規制する変位規制手段は、上記構成に限定されない。
【0029】
例えば、図9及び図10に示すように、最下層(例えば取付け面側)の軟質部材1Aを、その上に積層する軟質部材1Bよりも面積が大きな形状とする。そして、最下層の軟質部材1Aの外周部全周に上方に立ち上がる立上り部8を設ける。これによって、上記立上り部8は、最下層の軟質部材1の外周に沿って矩形の枠形状に形成されている。その矩形の枠形状の立上り部8によって、最下層の軟質部材1Aの上面には、当該最下層の軟質部材1Aの上に積層する軟質部材1Bを、予め設定した隙間をもって遊挿可能な大きさの空間が形成される。この遊挿可能な空間は、特に、上記積層する軟質部材1Bの長手方向端部(短辺)と少なくとも長手方向に隙間を持つように設定されている。また、立上り部8の高さは、上記積層する軟質部材1Bの総厚相当の高さに形成されて、当該立上り部8で画成された矩形の空間内に上記積層する軟質部材1Bを全て収容可能となっている。
【0030】
この場合には、最下層の軟質部材1を含め積層した軟質部材1間に層間滑りを許容した状態として、ICタグTGを曲げることで、積層した軟質部材1間で滑りが生じても、滑り方向の変位が上記立上り部8で規制されて、滑りによる変位量を小さくすることが可能となる。
なお、この場合には、図9に示すように、上記立上り部8を含めた最下層の軟質部材1Aを外装材3の一部として使用することが出来る。このように最下層の軟質部材1Aを外装材3の一部として使用する場合には、積層した軟質部材1Bの上にインレット2を配設した後に、上側の外装部材3bを重ねて、当該上側の外装部材3bの外周全周を上記立上り部8の上端面や立上り部8の上部外周部などに接着などによって接合して内部を封止すればよい。
【0031】
ここで、上記立上り部8が、外装材3の一部を形成する必要がなければ、必ずしも外周部全周に形成する必要はない。立上り部8は、図11に示すように、外周部のうち、少なくとも長手方向左右両側(左右の短辺位置)に形成されば良い。この場合、立上り部8は、短辺に沿って延びる一又は2以上の壁部構造で形成する必要はなく、例えば短辺に沿って並ぶ複数の柱状の形状によって構成するようにしても良い。
また、この立上り部8で滑り時の変位を規制する場合には、上述のような一部の固定を実施する必要は無いが、立上り部8と併せて上述のような固定手段を併用しても良い。
また、積層した軟質部材1の一部を上述の固定方法で固定する場合に、1種類の固定方法だけでなく、複数の固定方法を組合せて固定しても良い。
【0032】
(作用その他)
ICタグTGの取付け面が曲面の場合や、クリーニングした洋服をビニールシート材などの可撓性の素材で形成されている場合には、ICタグTGは、そのタグ取付け面の形状に沿うように曲げて貼り付けることとなる。また、可撓性の素材に貼り付けた場合には、貼り付け時は平坦な状態であっても、貼り付け後に可撓性の素材の変形によって繰り返しの曲げ力が入力される可能性がある。
【0033】
このとき、本実施形態のICタグTGは、複数の軟質部材1は、層間滑りが許容された状態で積層されて目的とする厚さを確保している。このため、ICタグTGを曲げた場合、図12に示すように、各軟質部材1は、中央部以外では、層間滑りを生じながら、つまり各層の軟質部材1は、その上下に位置する他の軟質部材1の伸縮によるせん断力の伝達が無いか小さい。つまり滑りに自由度がある状態で、各層毎に曲がる事となる。このため、複数の軟質部材1の総厚さが厚くなっても、ICタグTGの曲げに対する曲げ力が小さくなり、ICタグTGは、取付け面の形状に沿った形状になりやすくなると共に、取付け面が変化しても、それに容易に追従する。このため、本実施形態のICタグTGは剥がれにくくなる。
【0034】
ここで、上記複数層の軟質部材1間を、従来と同様に、層間滑りが無いように全面接着して一体化したり、複数層の厚さ分を一枚の軟質部材50で構成したりした場合に、その軟質部材50を上述のように曲げると、本実施形態のICタグTGに比べて、曲げるために要する力が大きくなる。また、この場合には、曲げた際に、図13のように、曲げの内面(最下面)50aの線長と外面(最上面)50bの線長とが、軟質部材50が総厚が厚くなるほど大きく異なるようにして当該軟質部材50が伸縮する結果、インレット2を貼り付ける最上面にそれ相当の引っ張りが入力される(なお、最下面にインレット2を貼り付けた場合には圧縮力が入力される)。これに対し、本実施形態では、各層間の層間滑りを許容されていると共に、インレット2を貼り付けた軟質部材1の厚さが小さいため、上記曲げによってインレット2に入力される引っ張り力(又は圧縮力)を、上記一体物50の場合に比べて小さくすることが出来る。この結果、その分、ICチップ22の断線などが低減して、ICタグTGの耐久性が向上する。
【0035】
また、本実施形態のICタグTGでは、長手方向中央部で固定しているので、中央部での層間滑り(変位)は無いものの、その左右両側では、上述のように層間滑りが許容されて、上述の作用効果を阻害することがない。また、このように一部を固定することで、積層した軟質部材1同士が上述のように層間滑りを起こしても、インレット2の下側に確実に複数層の軟質部材1が配置されるようになる。このため、取付け面が金属製であっても、誘電体で且つ総厚さが目的の厚さとなる軟質部材1が、インレット2と取付け面の金属との間に介在した状態が維持される。この結果、インレット2の通信性能として目的の性能を確保することが出来る。また、上述のように剥がれがたくなる。
【0036】
なお、上記インレット2及び積層した軟質部材1を収容する外装材3は、軟質部材1と同じ若しくは軟質部材1よりも軟らかい材料(弾性率が低い材料)で構成することが好ましい。外装部材3a、3bは、インレット2を保護する役割が確保できれば、軟らかい方が上記曲げを阻害することを抑えることが可能となる。軟質部材1と外装材3の内面とは固定しなくても良いし、一部だけ固定していても良い。
【0037】
ここで、本実施形態では、ICタグTGが長方形形状の場合を想定している。このため、ICタグTGの曲げは長手方向に沿った曲げ(短手方向を軸とした曲げ)が優勢となる。このため、長手方向での曲げで説明している。ただし、本発明は、長方形形状や楕円形状などの長手方向が特定出来る形状に限定されるものではない。ICタグTGの形状は、平面視円形形状であって適用出来る。この場合には、上述のように(図6参照)、例えば円の中心や円周方向の一部に固定位置を設定すればよい。
また、上記実施形態では、積層した軟質部材1の最上面にインレット2を設ける場合で説明している。インレット2は、積層した軟質部材1の間に配置しても良い。なお、本発明のICタグTGは、取付け面が金属製の場合でなくても適用可能である。
【0038】
また、本実施形態では、インレット2を軟質部材1の面に全面接着によって固定する場合を例示した。これに代えて、インレット2を軟質部材1に部分的に、例えばICチップ22近傍でだけ固定するようにしても良い。なお、ICチップ22の保護を考えると、上述のようにICチップ22を貼り付けた軟質部材1での上下面の線長差ができるだけ小さい方が良いので、積層する軟質部材1のうち、インレット2を固定する軟質部材1の厚さを一番薄くすることが好ましい。
また、積層する軟質部材1は、全て同じ素材からなっていても良いし、他の素材でそれぞれ構成されていても良い。また、インレット2の上部からの物理的負荷を軽減する目的で、ICチップ22周辺に補強部材を配置しても良い。
【0039】
(本実施形態の効果)
(1)ICタグTGは、板状の軟質部材1を、層間滑りを許容した状態で複数積層すると共に、ICチップ22及びアンテナ23を有するインレット2を、上記積層されている軟質部材1間又は上記積層された軟質部材1の上側に配置する。更に上記積層した軟質部材1及びインレット2を内部に収容する外装材3を備える。
軟質部材1を、層間滑りを許容した状態で複数積層することで、タグ取付け面への追従性が向上して剥がれがたくなると共に、ICチップ22への曲げ応力を小さくすることが可能となる。また、外装材3に収容することで、層間滑りを許容した状態で複数積層しても、相対変位を小さくすることが出来る。
【0040】
(2)ICタグTGの取付け面側と上記インレット2との間に介在される1又は2以上の軟質部材1は、可撓性を有する誘電体からなる。
これによって、タグ取付け面が金属製であっても、その金属による通信性能の影響を抑える事が出来る。介在する誘電体からなる軟質部材1の厚さは、材料の誘電率などを考慮して設定する。そして、必要な厚さに応じて介在する軟質部材1の層数を決定すれば良い。本構成では、インレット2下の軟質部材が厚くなっても、曲げ剛性を下げることが出来るので、剥がれにくくなる。
【0041】
(3)積層される軟質部材1同士の変位を規制する変位規制手段を備える。
変位規制手段を備えることで、ICタグTGに曲げが発生しても、インレット2のICタグTG及びアンテナ23を積層した軟質部材1と厚さ方向で対向した状態を維持可能となる。
(4)上記変位規制手段は、重なり合う軟質部材1の一部を固定する。
これによって、層間滑りを許容した状態で、軟質部材1間の固定(変位の規制)が可能となる。
【0042】
(5)上記固定は、長手方向において上記ICチップ22の位置と幅方向で重なる位置でだけ実施する。
固定した位置は相対的に曲げ剛性が高い。その高い位置にICチップ22が配置されることで、上述のような曲げ易さとICチップ22の保護とを両立可能となる。なお、通常、ICチップ22は長手方向中央部に配置される傾向にある。
(6)上記固定は、固定する部分を接着剤、粘着剤、熱着のいずれかによる固定である。
これによって、簡易に固定可能となり、量産に対応し易くなる。
【0043】
(7)上記固定は、固定する部分に形成した嵌合構造からなる。
凹凸など組からなる嵌合構造で軟質部材1間を固定することで、固定のために、接着剤や熱の負荷が必ずしも必要なくなる。
(8)上記固定は、固定する部分で、積層した軟質部材1全体を封止材で押さえることで実現する。
封止材で帯止めすることで、積層した軟質部材1を一度に固定可能となる。
(9)上記積層された軟質部材1の最上層及び最下層の少なくとも一方の軟質部材1が、上記外装材3を構成する。
これによって、外装材3分の厚みを減らすことが可能となる。
【0044】
(10)上記外装材3は、軟質部材1よりも面積が大きな一対の外装部材3a、3bを備え、その一対の外装部材3a、3bの外周部を接合することで形成され、その形成された袋状の外装材3内に上記構成のインレット2及び軟質部材1を収容する。
これによって、外装部材3a、3bで収容可能となる。
(11)上記外装材3は、軟質部材1を構成する材質の弾性率以下の材料から構成される。
これによって、外装材3による曲げ力の増加を低減することが可能となる。
(12)上記外装材3の外表面の一部に取付け用の粘着層が形成されている。
これによってICタグTGをタグ取付け面に貼り付けることが可能となる。
【符号の説明】
【0045】
1 軟質部材
2 インレット
21 ベース基材
22 ICチップ
23 アンテナ
3 外装材
3a 外装部材
3b 外装部材
4 粘着剤
5 フィルム
6 両面テープ
7a 凸部
7b 凹部
8 立上り部
TG タグ
X、X1,X2、X3 固定位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の軟質部材を、層間滑りを許容した状態で複数積層すると共に、ICチップ及びアンテナを有するインレットを、上記積層されている軟質部材間又は上記積層された軟質部材の上側に配置し、更に上記積層した軟質部材及びインレットを内部に収容する外装材を備えることを特徴とするICタグ。
【請求項2】
ICタグの取付け面側と上記インレットとの間に少なくとも上記軟質部材が1又は2以上介在され、その介在される軟質部材は、可撓性を有する誘電体からなることを特徴とする請求項1に記載したICタグ。
【請求項3】
積層される軟質部材同士の変位を規制する変位規制手段を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載したICタグ。
【請求項4】
上記変位規制手段は、重なり合う軟質部材の一部を固定することを特徴とする請求項3に記載したICタグ。
【請求項5】
上記固定は、長手方向において上記ICチップの位置と幅方向で重なる位置でだけ実施することを特徴とする請求項4に記載したICタグ。
【請求項6】
上記固定は、固定する部分を接着剤、粘着剤、熱着のいずれかによる固定であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載したICタグ。
【請求項7】
上記固定は、固定する部分に形成した嵌合構造からなることを特徴とする請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載したICタグ。
【請求項8】
上記固定は、固定する部分で、積層した軟質部材全体を封止材で押さえることで実現することを特徴とする請求項4〜請求項7のいずれか1項に記載したICタグ。
【請求項9】
上記積層された軟質部材の最上層及び最下層の少なくとも一方の軟質部材が、上記外装材を構成することを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載したICタグ。
【請求項10】
上記外装材は、軟質部材よりも面積が大きな一対の外装部材を備え、その一対の外装部材の外周部を接合することで形成され、その形成された袋状の外装材内に上記構成のインレット及び軟質部材を収容することを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載したICタグ。
【請求項11】
上記外装材は、軟質部材を構成する材質の弾性率以下の材料から構成されることを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載したICタグ。
【請求項12】
上記外装材の外表面の一部に取付け用の粘着層が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載したICタグ。








【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−221421(P2012−221421A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89426(P2011−89426)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】