説明

ICF情報処理装置及びこれを用いたICF情報利用システム

各個人のICF情報が記憶されたデータセンター11と、このデータセンター11に通信ネットワーク12を介して接続され、データセンター11に対してICF情報の入出力等を行うICF情報処理装置13と、データセンター11から出力されたICF情報に基づいて制御される所定の設備機器15とを備えてICF情報利用システム10が構成されている。ICF情報処理装置13は、個人の症状や状況等からICFコードCに変換するコード化手段29と、ICFコードCを個人の症状や状況等を示す自然言語に変換する言語化手段30と、データセンター11に記憶されたICF情報から一部のICF情報のみを抽出するデータ抽出手段31とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ICF情報処理装置及びこれを用いたICF情報利用システムに係り、更に詳しくは、ICF情報を有効活用し、特に、所定の建築空間内に配置された設備機器、及び建物の設計図面や設計情報を作成する建築設計装置に対し、ICF情報を有効活用させることのできるICF情報処理装置及びこれを用いたICF情報利用システムに関する。
【背景技術】
近時において、世界保健機関(WHO)で国際生活機能分類(ICF)が制定された(障害者福祉研究会編「ICF国際生活機能分類 国際障害分類改定版」中央法規出版株式会社、2002年8月15日発行)。このICFは、個人のあらゆる健康状態に関係した生活機能状態やその個人を取り巻く社会制度、社会資源等をアルファベットと数字を組み合わせてコード化したものである。このICFに基づいて制定されたICFコードは、所定の分類項目を表す項目コードと、各項目コードに付加されるとともに、当該項目コードに対する評価を表す評価コードとにより構成されている。
このICFによれば、身体及び生活全般の個人情報、すなわち、保健、医療、福祉サービス、ひいては社会システムのあり方の方向性を示す個人情報が、共通化されたルールに基づいて構築される。従って、このICFに基づく個人情報(ICF情報)がデータベース化されると、工学分野、保健分野、医療分野、福祉分野を始めとする各種分野で有用となることが期待できる。
しかしながら、前記ICFの具体的な用途については、現在、検討段階であり、ICFに基づいてコード化されたICF情報を利用するシステムについては、未だ確立されていない。
ところで、所定のコントローラや端末等の操作手段を用いて、住宅等の建築空間内に配置された家電製品、空調機器等の設備機器を集中制御するシステムが知られている(特開平10−276483号公報、特開平11−298478号公報、特開2002−130772号公報参照)。この制御システムは、前記操作手段を用いて、前記設備機器の作動及びその制御を遠隔操作できるようになっている。
しかしながら、前記制御システムにあっては、前記設備機器が自分の身体状態に直接リンクして制御されものではなく、当該身体状態に合わせて設備機器を作動させるには、前記操作手段によるマニュアル的な操作が必要となり面倒である。特に、何等かの身体的障害を持つ者に対しては、健常者に比べて、居住空間内の状態をシビアに管理しなければならない場合があり、これが、身体的障害を持つ者に対し、生活し易い建築環境の形成を困難にする要因になっている。
【発明の開示】
本発明は、以上の背景を踏まえて案出されたものであり、その目的は、ICF情報を利用し易くするICF情報処理装置及びこれを用いたICF情報利用システムを提供することにある。
また、ICF情報を用いることで、建築空間の使用者に対して好適な環境を提供することができるICF情報利用システムを提供することにある。
前記目的を達成するため、本発明は、個人別のICF情報に関するデータ処理を行うICF情報処理装置であって、
所定のデータベースを用いて、個人の症状、状況及び/又は病名からICFコードに変換するコード化手段を備え、
前記コード化手段は、前記症状、状況及び/又は病名を表す自然言語を入力することにより、対応するICFコードを決定する言語入力モードを備える、という構成を採っている。このような構成によれば、コード入力者が、入力対象者の症状、状況や病名を自然言語で入力するだけで、多数のICFコードの中から最適となるICFコードを選ぶことができる。このため、コード入力者が、ICFについて記載された書面を見ながら、入力対象者の症状、状況や病名を当てはめてICFコードを決定する作業が不要となり、ICFコードの入力作業を大幅に短縮することができるとともに、ICFコードの入力ミスを効果的に防ぐことができ、この点により、ICF情報を利用し易くなる。
ここにおいて、前記データベースは、各自然言語の本質的意味を理解するための各種データが記憶された辞書翻訳データベースと、ICFコードが各自然言語の本質的意味に関連付けられて記憶された応用変換データベースとを含み、
前記言語入力モードは、前記辞書翻訳データベースに基づき、入力された自然言語の本質的意味を理解する理解部と、前記応用変換データベースに基づき、前記理解部で理解された本質的意味から対応するICFコードを選択するコード選択部とを備える、という構成を採っている。
更に、前記目的を達成するため、本発明は、個人別のICF情報に関するデータ処理を行うICF情報処理装置であって、
所定のデータベースを用いて、個人の症状、状況及び/又は病名からICFコードに変換するコード化手段を備え、
前記コード化手段は、身体の画像データから対応するICFコードを決定する撮像入力モードを備える、という構成を採っている。このような構成によっても、前述の効果を得ることができる他、入力対象者の症状、状況、病名等の状態を自覚していない場合、又は、適当な自然言語が見つからない場合でも、適切なICFコードを簡単に見つけることができる。また、個人の身長データ等の画像から把握できる各種データを個人のICF情報と関連して記憶させることも可能となる。
ここにおいて、前記撮像入力モードは、身体の外部及び/又は内部を撮像する撮像装置により得られた画像データに基づき、所定の身体データを検出する身体データ検出部と、この身体データ検出部からの身体データに基づき、ICFコードを決定するコード選択部とを備え、
前記身体データ検出部は、前記撮像データを所定の基本状態と対比することで前記身体データを自然言語に変換可能に設けられ、
前記コード選択部は、前記自然言語とICFコードとが対応付けられて記憶されたデータベースを用いることで、前記身体データに対応するICFコードを決定する、という構成を採っている。
また、前記目的を達成するため、本発明は、個人別のICF情報に関するデータ処理を行うICF情報処理装置であって、
所定のデータベースを用いて、ICFコードを個人の症状、状況及び/又は病名を示す自然言語に変換する言語化手段を備える、という構成を採っている。このように構成することで、所定のICFコードに対し、そのコードが表す個人の症状、状況、病名等の状態が何であるか知りたい場合に、当該状態をICFについて記載された書面を見ながら探し出す手間を省くことができ、ICFコードの内容を素早く理解することができる。
ここにおいて、前記データベースは、ICFコードを構成する各項目コード及び各評価コードの意味を表す語句が、当該各項目コード及び各評価コードに関連付けられて記憶された基本変換データベースと、自然言語の意味、同義語、文法等をデータベース化した辞書翻訳データベースとを含み、
前記言語化手段は、前記基本変換データベースを用いて、入力されたICFコードの項目コード及び評価コード毎に、それぞれの意味を表す語句に変換する第1変換部と、前記辞書翻訳データベースに基づき、前記第1変換部で変換された各語句を繋いで自然言語を作成する第2変換部とを備える、という構成を採っている。
更に、前記目的を達成するため、本発明は、個人別のICF情報に関するデータ処理を行うICF情報処理装置であって、
ICFコードがICF情報の用途に関連付けられて記憶された用途別データベースを用い、所定の場所に記憶されたICF情報から、前記用途に対応した一部のICF情報のみを抽出するデータ抽出手段を備える、という構成を採っている。このような構成によれば、膨大なICFコードの中から、ICF情報の用途に応じて必要なICFコードを簡単に抽出することができ、この点においても、ICF情報を利用し易くすることができる。
ここにおいて、前記データ抽出手段は、ICF情報の用途を入力したときに、前記用途別データベースに基づき、前記用途に対応したICFコードを特定するコード特定部と、このコード特定部で特定されたICFコードに関するICF情報の抽出を要求するコマンド作成部とを備える、という構成を採っている。
また、前記目的を達成するため、本発明に係るICF情報利用システムは、前記ICF情報処理装置と、各個人のICF情報が記憶されたICFデータベースを有するデータセンターとを備え、
前記データセンターは、前記ICF情報処理装置で入力されたICF情報を受信して、前記ICFデータベース内のICF情報を記録及び/又は更新可能に設けられるとともに、前記ICF情報処理装置からの要求に応じて、前記ICFデータベースに記憶されたICF情報の一部若しくは全部を前記ICF情報処理装置に送信する、という構成を採っている。このような構成によれば、膨大なICF情報をデータセンターで一括管理することで、種々の場所や端末からICF情報を簡単に抽出することが可能となる。また、ICF情報の処理は、データセンターとは別のICF情報処理装置で行われるため、データセンターの処理能力の低下を効果的に防止することができる。従って、以上の構成においても、ICF情報を利用し易くすることができる。
更に、前記目的を達成するため、本発明は、個人別のICF情報に関するデータ処理を行うICF情報処理装置を用いたICF情報利用システムであって、
所定の建築空間内に配置された設備機器の制御を前記ICF情報処理装置でデータ処理されたICF情報に基づいて行う、という構成を採っている。このような構成によれば、個人のあらゆる健康状態や環境状況等に関するICF情報に基づいて設備機器が制御されるため、前記設備機器が自分の状態に合わせて自動的に制御され、当該状態に適用させるために、設備機器をマニュアル的に操作することが不要となり、建築空間の使用者に対して好適な環境を提供することができる。特に、何等かの身体的障害を持つ者に対しても、居住空間内の状態を簡単にシビアに管理することができ、生活し易い建築環境の形成を簡単に行うことができる。
ここで、前記ICF情報は、前記建築空間内に設けられた読み取り部で読み取られ、前記設備機器は、その一部分若しくは全体に対して所定の動作や変化を付与する作動手段と、前記読み取り部で読み取られた前記ICF情報を受信し、当該ICF情報の内容に応じて前記作動手段を制御する制御手段とを備える、という構成を採ることができる。このようにすることで、ICF情報が記憶されたICカードをデータ媒体として、設備機器を制御できることになる。このようにすると、種々の建築空間に対し、訪問する建築空間にICカードを持ち運ぶことで、各建築空間で相違する設備機器の制御を簡単に行うことができる。
また、前記目的を達成するため、本発明は、個人別のICF情報に関するデータ処理を行うICF情報処理装置を用いたICF情報利用システムであって、
前記ICF情報処理装置でデータ処理されたICF情報が採り込まれる建築設計装置を備え、この建築設計装置は、前記ICF情報に基づき、使用者の状況に適合した設計図面及び/又は設計情報を作成可能に設けられる、という構成を採っている。このような構成によれば、ICF情報から、使用者の身体的状況等に適合する建築物の設計図面や設計情報を形成することができ、これによっても、建築空間の使用者に対して好適な環境を提供することに寄与できる。
ここにおいて、前記建築設計装置は、ICF情報が建築的対応に関する情報に関連付けられて記憶された記憶手段と、この記憶手段に基づき、採り込まれたICF情報から建築的対応を決定する対応決定手段と、この対応決定手段で決定された建築的対応を設計図面及び/又は設計情報に反映させる反映手段とを備える、という構成を採ることが好ましい。これにより、建築空間の使用者の状態に合った建築的対応を設計図面や設計情報に自動的に反映させることができ、設計者が使用者の身体の状況を把握して、その建築的対応を考える作業が省略でき、使用者の状態に合った建物の設計を迅速且つ正確に行うことができる。
また、各個人のICF情報が記憶されたICFデータベースを有するデータセンターと、このデータセンターに記憶されているICF情報から、前記ICF情報を抽出し、当該ICF情報を前記設備機器又は建築設計装置に提供するICF情報処理装置とを備える、という構成も併せて採用することができる。これにより、所定の個人のICF情報をデータセンターで一元管理することができ、多くの建築空間や建築設計装置に簡単に対応させることができる。また、ICF情報の処理は、データセンターとは別のICF情報処理装置で行われるため、データセンターの処理能力の低下を効果的に防止することができる。
なお、本明細書において、「ICF」とは、世界保健機関(WHO)において採択された国際生活機能分類を意味し、「ICFコード」とは、ICFで規定されたコードを意味する。また、「ICF情報」とは、ICFコードによって構成される個人情報を意味する。
【図面の簡単な説明】
図1は第1実施例に係るICF情報利用システムの概略構成図、図2はICFコードの概念を説明するための図、図3はICFデータベースに記憶された内容を説明するための模式図、図4はコード化手段の構成を説明するための構成図、図5は言語入力モードの構成を説明するための構成図、図6は応用変換データベースに記憶された内容を説明するための図表、図7は中間入力モードの構成を説明するための構成図、図8は項目用テーブルを示す図表、図9は評価用テーブルを示す図表、図10は分解入力モードの構成を説明するための構成図、図11は撮像入力モードの構成を説明するための構成図、図12は言語化手段の構成を説明するための構成図、図13はデータ抽出手段の構成を説明するための構成図、図14は住宅とその内部に存在する設備機器との関連を模式的に示す断面図、図15は第2実施例に係るICF情報利用システムの概略構成図、図16は第3実施例に係るICF情報利用システムの概略構成図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1には、第1実施例に係るICF情報利用システムの概略構成図が示されている。この図において、ICF情報利用システム10は、各個人のICF情報が記憶されたデータセンター11と、このデータセンター11に通信ネットワーク12を介して接続され、データセンター11に対してICF情報の入出力等を行うICF情報処理装置13と、データセンター11から出力されたICF情報に基づいて制御される所定の設備機器15とを備えて構成されている。
前記データセンター11は、前記ICF情報を個人単位で記憶するICFデータベース17と、このICFデータベース17のICF情報を前記ICF情報処理装置13に対して送受信する公知の通信部18とを備えている。
ここで、本発明の適用に関して特に限定されるものではないが、ICF情報を構成するICFコードについて説明する。
図2に示されるように、ICFコードCは、所定の分類項目を表す項目コードTと、各項目コードTの後に付加され、当該項目コードTに対する評価を表す評価コードVとにより構成されている。
項目コードTは、アルファベット及び数字の組み合わせによる四桁〜六桁のコードであり、現在約1500種類設定されている。項目コードTのうち図2中最も左側の1桁目は、全評価対象を構成要素毎に四種類に大別してアルファベットで表した構成要素コードT1である。この構成要素コードT1は、「b」、「s」、「d」、「e」の四種類の文字の何れかが適用される。具体的に、「b」は、心身機能つまり身体系の生理的機能(心理的機能を含む)に関する構成要素を意味し、「s」は、身体構造つまり器官、肢体及びその構成部分等の身体の解剖学的部分に関する構成要素を意味する。また、「d」は、人間の活動や社会への参加に関する構成要素を意味し、「e」は、環境因子つまり人間の外部の物的環境や社会的環境等を構成する因子に関する構成要素を意味する。
このような構成要素コードT1の図2中右側に位置する2〜6桁目は、全て数字で表され、2桁目は、各構成要素コードT1の内容を細分化した第1レベルコードT2であり、同3,4桁目の二桁は、第1レベルコードT2の内容を細分化した第2レベルコードT3である。また、同5桁目は、各第2レベルコードT3の内容を細分化した第3レベルコードT4であり、同6桁目は、各第3レベルコードT4の内容を細分化した第4レベルコードT5である。なお、これら下2桁のレベルコードT4,T5は、第2レベルコードT3に応じて適宜設定されるものであり、必須ではない。
前記評価コードVは、項目コードTで特定される各種項目に対する評価を、1〜5の視点から評価した結果を数字(「+」等の記号も含む)で表したコードである。ここで、各視点に対する評価は、一定の評価基準に従って、1桁の数字(「+」等の記号が付加される場合もあり)が付され、前記視点の数は、前記構成要素コードT1毎に異なるが、少なくとも一つは存在する。
以上から、評価コードVは、図2中左側から順に、第1の視点による評価内容(第1評価)を示す第1評価コードV1、第2の視点による評価内容(第2評価)を示す第2評価コードV2、第3の視点による評価内容(第3評価)を示す第3評価コードV3、第4の視点による評価内容(第4評価)を示す第4評価コードV4、第5の視点による評価内容(第5評価)を示す第5評価コードV5となっている。
前記ICFデータベース17は、図3に示されるように、各個人別に、ICFの各項目コードTと、当該各項目コードTに対応した各評価コードVとが記憶されている。
前記通信ネットワーク12は、図1に示されるように、インターネット通信網により構成されているが、これに限定されず、その他の有線通信網、無線通信網、衛星通信網等、データセンター11とICF情報処理装置13との間で、双方向にデータ通信を可能とする形態であれば何でもよい。
前記ICF情報処理装置13は、データセンター11のICFデータベース17に対し、SQL(Structured Query Language)言語等を用いたICF情報の照会や変更、及び、ICF情報の解析等の各種処理をコンピュータで行えるようになっている。
このICF情報処理装置13は、個人別のICF情報に関するデータ処理を行うものであって、図1に示されるように、ICF情報の処理を行う処理部20と、この処理部20の実行に際して用いられる各種データベースが記憶された記憶部21と、処理部20に対して指令を行うキーボード、マウス等の入力部22と、処理部20の実行に際して所定の表示がなされる液晶ディスプレイやCRTディスプレイ等の表示部23と、データセンター11と処理部20との間で各種データ通信を行う公知の通信部25とを備えて構成されている。
前記処理部20は、個人の症状や状況等からICFコードCに変換するコード化手段29と、ICFコードCを個人の症状や状況等を示す自然言語に変換する言語化手段30と、データセンター11に記憶されたICF情報から一部のICF情報のみを抽出するデータ抽出手段31と、これら各手段29〜31によるICF情報の処理を行う際に、所定の認証を行う認証手段27とを備えて構成されている。
前記コード化手段29は、ICF情報を入力する際に対象となる個人(以下、「入力対象者」と称する)の現在の症状や状況から、的確なICFコードCを選択して、当該ICFコードCを通信部25からデータセンター11に送信するようになっている。すなわち、図4に示されるように、コード化手段29は、入力対象者の症状、状況等を表す自然言語を入力することにより、対応するICFコードCを決定する言語入力モード34と、入力対象者の症状、状況等を表す所定数の自然言語の中から人為的に選択することで、ICFコードCを決定する中間入力モード35と、ICFコードCを構成する項目コードT及び評価コードV(図2参照)の意味を表す語句を順次選択していくことで、ICFコードCを決定する分解入力モード36と、入力対象者の身体の写真や映像等の画像データから対応するICFコードCを決定する撮像入力モード37とを備えて構成されている。
前記言語入力モード34は、図5に示されるように、入力された自然言語の本質的意味を理解する理解部39と、当該理解部39で理解された本質的意味から対応するICFコードCを選択するコード選択部40とを備えて構成されている。
前記理解部39は、記憶部21内に記憶された辞書翻訳データベース42により、入力された自然言語の本質的意味を類推若しくは決定できるようになっている。ここで用いられる辞書翻訳データベース42は、本質的意味を類推若しくは決定するための各種データ、例えば、各自然言語(単語、語句)の意味や同義語、及び文法等をデータベース化したものである。
前記コード選択部40は、記憶部21内に記憶された応用変換データベース43により、理解部39で類推等された自然言語の本質的意味に対応する前記項目コードT及び評価コードV(図2参照)を決定できるようになっている。ここで用いられる応用変換データベース43は、図6に示されるように、各自然言語の本質的意味がICFコードに関連付けて記憶されている。すなわち、ここでは、各種の本質的意味と、各種の項目を表す項目用語句と、当該項目用語句に対する評価を表す評価用語句と、項目コードT及び評価コードVとが相互に対応付けられて記憶されている。
次に、図5の言語入力モード34によるICFコードCの決定手順について、次の一事例を用いて説明する。
例えば、入力対象者であるA氏が、交通事故によって両側大腿を切断したとする。これにより、データセンター11(図1参照)内のA氏のICF情報を更新しなければならない。ところが、この事象に対応したICFコードCをデータセンター11に送信する際、データ入力者が膨大な種類のICFコードCの中からマニュアル的に特定することは困難である。このときに、データ入力者は、言語入力モード34を用いると、ICFコードCの特定を簡単に行える。すなわち、この場合、A氏の症状に着目し、入力部22で「自分で歩くことができず、車椅子が必要である」旨の文章を入力する。このように自然言語の文章を入力すると、当該入力された文章の本質的意味が理解部39で理解される。つまり、理解部39では、辞書翻訳データベース42により、入力された文章が「起立での自立歩行困難」という本質的意味を有すると認識する。そして、コード選択部40では、図6の応用変換データベース43により、項目用語句が「大腿の構造」で、評価用語句が「重度の構造障害」、「全欠損」、「両側」である旨特定され、その項目用語句に対応する項目コード「s7500」と、その評価用語句に対応する評価コード「3.1.3」とが決定される。これによって、この場合のA氏の症状に対応するICFコードCは、「s7500.3.1.3」であると特定される。この結果は、表示部23に表示され、データ入力者が確認して問題なければ、入力部22の操作によって、特定されたICFコードC「s7500.3.1.3」がデータセンター11(図1参照)に送信される。そして、このICFコードCが、前記ICFデータベース17内のA氏のデータ内に新たに記憶され若しくは更新される。
なお、言語入力モード34を対話型とすることもできる。すなわち、表示部23で質問文を表示させ、当該質問文に沿ってデータ入力者が文章や単語を入力可能に設け、又は、回答を選択可能に設け、これを繰り返し行うことで、前記本質的意味が特定され易くなる。
前記中間入力モード35は、データ入力者が、図6の応用変換データベース43に記憶された本質的意味から該当するもの選択し、これによって、ICFコードCを決定できるように設定されている。すなわち、図7に示されるように、中間入力モード35は、入力部22の入力操作によって候補となる前記本質的意味を複数提示する候補提示部46と、言語入力モード34(図5参照)と共用される前記コード選択部40とを備えて構成されている。
前記候補選択部46は、入力対象者の症状や状況等に応じて設定された所定項目をキーとして、候補となる本質的意味が絞込まれるようになっている。
例えば、A氏が交通事故で両側大腿を切断したという前述のケースでは、データ入力者が、身体構造に障害が生じたと判断し、当該判断に基づいて、当該身体構造の障害に該当する本質的意味を表示部23に全て表示させる。そして、その中から、データ入力者が、該当する本質的意味「起立での自力歩行困難」を見つけて特定する。
なお、候補選択部46で特定された本質的意味は、前述した言語入力モード34の場合と同様に、前記コード選択部40で対応するICFコードCに変換される。
前記分解入力モード36は、記憶部21に記憶された基本変換データベース44を用いて、データ入力者がICFコードCを決定できるように設定されている。
ここでの基本変換データベース44は、ICFに従い、項目用コードTとその内容とを対応させた図8の項目用テーブル49と、評価用コードVと評価視点の内容とを対応させた図9の評価用テーブル50とにより構成されている。項目用テーブル49には、項目コードTの1桁目となる構成要素コードT1(図2参照)に対応した大区分と、当該大区分を細分化して前記第1レベルコードT2に対応した中区分と、当該中区分を細分化して前記第2レベルコードT3に対応した小区分と、当該小区分を細分化して前記第3レベルコードT4に対応した補助区分と、この補助区分を細分化した前記項目用語句と、この項目用語句に一対一で対応する項目コードTとが記憶されている。また、評価用テーブル50には、前記大区分と、各評価コードV1〜V5とがそれぞれ対応付けられて記憶されている。
この分解入力モード36は、データ入力者が、基本変換データベース44に記憶された項目用語句と評価用語句から該当するものをマニュアル的に選択することで、ICFコードCを決定できるようになっている。すなわち、分解入力モード36は、図10に示されるように、候補となる項目用語句及び評価用語句を表示部23に提示する語句提示部51と、基本変換データベース44に基づいてICFコードCを決定するコード選択部52とにより構成されている。
前記語句提示部51は、前記項目用テーブル49(図8参照)の各区分をキーとして、データ入力者自身により項目用語句を絞り込め、且つ、前記評価用テーブル50(図9参照)により、絞り込んだ項目用語句に対応する評価用語句をデータ入力者に提示することで、データ入力者自身により評価用語句を絞り込めるようになっている。
例えば、A氏が交通事故で両側大腿を切断したという前述のケースでは、図8の項目用テーブル49に基づき、データ入力者が、「身体構造」という大区分に絞り込み、次いで、その中から「運動に関連した構造」という中区分に絞り込み、最後に、「下肢の構造」という小区分に絞り込む。そして、その中から、データ入力者がマニュアル的に、今回のケースに該当する「大腿の構造」という項目用語句を選択する。このようにすると、図9の評価用テーブル50に基づき、「身体構造」という大区分のときに用いられる各種評価用語句が表示部23に表示される。そして、その中から、データ入力者は、障害の程度に関する評価となる第1評価として、「重度の構造障害」を選択し、構造に関する評価となる第2評価として、「全欠損」を選択し、障害の部位に関する評価となる第3評価として「両側」を選択し、それらを入力部22により入力する。
前記コード選択部52では、基本変換データベース44により、データ入力者によって選択された項目用語句及び評価用語句から、対応するICFコードCを特定するようになっている。すなわち、前述のケースでは、項目用語句が「大腿の構造」、評価用語句が、「重度の構造障害」、「全欠損」、「両側」とそれぞれ選択されて入力されている。すると、コード選択部52では、図8及び図9の項目用テーブル49、評価用テーブル50に基づき、対応するICFコードC「s7500.3.1.3」が特定される。ここで特定されたICFコードCは、前述した言語入力モード34及び中間入力モード35の場合と同様に、データセンター11(図1参照)に送信され、そのICFデータベース17内のA氏のICF情報に記憶される。
前記撮像入力モード37は、図11に示されるように、入力対象者の身体を撮像する撮像装置55により得られた画像データに基づき、入力対象者の身体データを検出する身体データ検出部57と、この身体データ検出部57からの身体データに基づき、ICFコードCを決定するとともに、前記分解入力モード36(図10参照)と共用される前記コード選択部52とを備えて構成されている。
前記身体データ検出部57は、撮像装置55からの撮像データにより、撮像された人物の身長データ等の他に、所定の基本状態と対比することで各種の身体データを検出し、当該身体データを自然言語化できるようになっている。ここでの基本状態としては、ICFコードの入力前にデータセンター11で記憶された入力対象者の画像や各種数値等が例示できる。この身体データ検出部57では、撮像データと基本状態と対比し、記憶部21に記憶された画像−言語変換データベース45を用いて、生じた画像上の差異から前記項目用語句及び評価用語句を決定する。
前記コード選択部52は、前記分解入力モード36と同様に、身体データ検出部57で決定された項目用語句及び評価用語句から、基本変換データベース44の項目用テーブル49(図8)及び評価用テーブル50(図9)を利用して、ICFコードCに変換するようになっている。
例えば、両側大腿のない先程のA氏を撮像装置55で撮像したときに、身体データ検出部57では、その画像データが、前記基本状態となる交通事故前のA氏のデータと対比され、今回、両側大腿が欠損した状態となったと判断される。すると、その状態により、画像−言語変換データベース45から、項目用語句が「大腿の構造」、評価用語句が、「重度の構造障害」、「全欠損」、「両側」とそれぞれ選択される。そして、コード選択部52で、基本変換データベース44に基づき、対応するICFコード「s7500.3.1.3」が特定される。このように特定されたICFコードCは、身体データ検出部で検出された身長データや画像データ等とともに、前述したようにデータセンター11に送信される。
ここで、前記撮像装置55としては、身体の外部を撮像するCCDカメラ等のカメラ類の他に、X線撮像装置、超音波撮像装置、光ファイバー撮像装置等の身体の内部を撮像可能な装置を用いることもできる。
なお、本実施例では、コード化手段29を、言語入力モード34、中間入力モード35、分解入力モード36、及び撮像入力モード37により構成したが、それらの何れか一つ〜三つのモードで構成することもできる。
また、コード化手段29を国際疾病分類第10版(ICD−10)が記憶されたデータベースとリンクさせることも可能である。この場合は、ICFコードCに病名を付加して表示部23で表示できるようにし、また、入力部22で病名を入力することにより、当該病名から該当するICFコードCを決定できるようにするとよい。
前記言語化手段30は、所定のICFコードCの内容を自然言語で認知したいとき等に用いられるものである。この言語化手段30は、図12に示されるように、前記基本変換データベース44を用いて各項目コード及び各評価コードから項目用語句及び評価用語句に変換する第1変換部60と、前記辞書翻訳データベース42を用い、第1変換部60で変換された項目用語句及び評価用語句を繋いで所定の文章を形成する第2変換部61とを備えて構成されている。
前記第1変換部60は、データセンター11(図1参照)から送信され若しくは入力部22で入力された所定のICFコードCから、基本変換データベース44の項目用テーブル49(図8参照)及び評価用テーブル50(図9参照)を用いて、対応する前記項目用語句及び評価用語句を抽出できるようになっている。例えば、ICFコードが「s7500.3.1.3」の場合に、第1変換部60では、「s7500」の部分から、項目用テーブル49により項目用語句が「大腿の構造」であると特定される一方、「3.1.3」の部分から、評価用テーブル50により評価用語句が「重度の構造障害」、「全欠損」、「両側」であることが特定される。そして、前記第2変換部61では、第1変換部60で特定された各語句「大腿の構造」、「重度の構造障害」、「全欠損」、「両側」が所定の助詞等を用いて順番を適宜変えながら繋ぎ合わされ、「大腿の構造が、両側全欠損となる重度の構造障害となっている。」旨の文章に変換し、当該文章が表示部23に表示される。
なお、第2変換部61で変換された文章を、更に細かく症状、状況、病名等に変換して表示部23に表示させることも可能であり、この場合、例えば、前述の「大腿の構造が、両側全欠損となる重度の構造障害となっている。」という文章から、「起立での自力歩行が困難」という症状に更に変換される。なお、病名に変換する場合には、国際疾病分類第10版(ICD−10)が記憶された前述のデータベース(図示省略)が用いられる。
この言語化手段30は、前記コード化手段29で用いた応用変換データベース43(図6参照)により、ICFコードCから対応する前記本質的意味を抽出し、当該本質的意味を表示部23に表示させるようにしてもよい。
前述のコード化手段29及び言語化手段30は、ICFコードCと日本語との間の変換としたが、本発明はこれに限らず、ICFコードCと他の外国語との間の変換とすることもできるし、ICFコードCと複数種類の自然言語の間の変換とすることもできる。
前記データ抽出手段31は、ICF情報の用途に応じ、データセンター11から必要なICF情報を抽出できるように設定されている。すなわち、データ抽出手段31は、図13に示されるように、入力部22で入力されたICF情報の用途に応じて、前記項目コードT(図2参照)を特定するコード特定部63と、コード特定部63で特定された項目コードTに関するICF情報の送信をデータセンター11(図1参照)に要求するコマンド作成部64と、データセンター11から送信されたICF情報を記憶するバッファ部65と、このバッファ部65のICF情報を外部に伝送する伝送部66とを備えて構成されている。
前記コード特定部63は、記憶部21内に記憶された用途別ICFデータベース68を使って前記項目コードTを決定する。すなわち、用途別ICFデータベース68には、ICFコードCのうち項目コードTが、ICF情報の用途に関連付けられて記憶されており、入力部22で所定の用途を入力すると、コード特定部63で、入力された用途に対応する項目コードTを決定できるようになっている。例えば、ある個人B氏が、レストランに行く場合、入力部22で、ICF情報の用途を「レストラン」と入力すると、コード特定部63で、用途別ICFデータベース68から、用途「レストラン」に対応する項目コードTを複数種選択する。ここで、選択された項目コードTは、B氏がレストランに行ったときに、当該レストランが必要とする情報、例えば、食物アレルギーや身体障害等の情報に関連するコードである。
前記コマンド作成部64は、データセンター11に記憶されたICF情報のうち、所定の個人のICF情報から、コード特定部63で特定された項目コードTに対する評価コードVが付加されたICFコードCを抽出できるように、コマンドの作成を行う。例えば、前述の場合、データセンター11に記憶されたB氏のICF情報のうち、食物アレルギーや身体障害等の情報に関連する項目コードTと、当該項目コードTに対する評価を示す評価コードVとからなるICFコードCを抽出するコマンドを作成する。
コマンド作成部64で作成されたコマンドは、前記認証手段27を経て、通信部25からデータセンター11(図1参照)に送信される。そして、データセンター11では、前記コマンドに従い、前記ICFデータベース17に記憶されたICF情報の中から所望のICF情報を抽出し、ICF情報処理装置13に送信する。そして、ICF情報処理装置13の通信部25で受信されたICF情報は、バッファ部65で一旦記憶されてから伝送部66に送られる。
この伝送部66は、データセンター11から送信されたICF情報を所定の装置に伝送するように設定されており、本実施例では、ICF情報を所定のメディアに記憶させる記録装置70に伝送するようになっている。この記録装置70としては、特に限定されるものではないが、バッファ部65からのICF情報をICカード72に記憶させる公知のリーダーライターを例示できる。ここで、ICカード72に記憶されたICF情報は、後述するように、そのICF情報の用途先となる設備機器15(図1参照)を制御するための情報となる。
この際、前記ICカード72に、所定の生体情報を読み取り可能な読み取り装置(図示省略)を内蔵し、読み取られた生体情報が予めICカード72に記憶された生体情報と一致したときに、ICカード72に対するICF情報の書き込み及び読み取りを可能にする個人認証機能を付与するとよい。このようにすると、ICカード72を紛失したときでも、他人に悪用される虞を大幅に低減することができる。なお、前記生体情報としては、指紋情報、網膜情報、虹彩情報、声紋情報、筆跡情報を例示できる。
また、伝送部66からのICF情報は、所定の転送センターに転送されるようにしてもよく、この場合は、そこから、ICF情報が各用途に関連する場所にそれぞれ配信されて当該各場所にある設備機器15を制御するようにしてもよい。また、携帯電話やPDA等の携帯端末(図示省略)に対し、伝送部66からICF情報を転送することも可能である。この場合には、転送されたICF情報を前記携帯端末に記憶させておき、当該携帯端末からのICF情報を前記転送センター経由で設備機器15に送信し、これによって、設備機器15を制御するようにしてもよい。
なお、前述したコード化手段29、言語化手段30、データ抽出手段31は、入力部22からの入力を音声入力とし、所定の音声認識装置を介して前述した各種処理を行うようにしてもよい。
前記認証手段27は、個人認証機能が付与された前述のICカード72を用いて、個人認証を行えるようになっている。すなわち、ICF情報の処理を行う前に、ICカード72に内蔵された生体情報の読み取り装置(図示省略)に、生体情報を読み取らせ、当該生体情報が予めICカード72に記憶された生体情報と一致したときに、ICF情報処理装置13の使用が許可されるようになっている。このような許可は、ICカード72に記憶された個人が使用する場合のように、当該個人のICF情報の処理のみ許可するように制限してもよいし、医師等が使用する場合のように、無制限としてもよい。
なお、認証手段27は、ICF情報処理装置13に入力されたユーザIDやパスワードに基づいて認証を行うタイプとしてもよい。すなわち、この場合は、ICF情報処理装置13に入力されたユーザIDやパスワードが、当該ICF情報処理装置13に予め記憶されたユーザIDやパスワードと一致すれば、ICF情報処理装置13の使用が許可されるようになっている。
なお、前記ICF情報処理装置13は、コード化手段29、言語化手段30、及びデータ抽出手段31を全て備えたが、それら各手段のうち一手段若しくは何れか二手段のみ備えた構成とすることもできる。
また、前記記憶部21をICF情報処理装置13に設けずに、ICF情報処理装置13の外部である所定のセンター内(図示省略)に設けてデータの共有化を図ることも可能である。
前記設備機器15は、図1に示されるように、その一部分若しくは全体に対して所定の動作や変化を付与する作動手段74(モータ、シリンダー、電気回路等)と、前記ICカード72に記憶されたICF情報の内容に応じて、作動手段74を制御する制御手段75とを備えて構成されている。この設備機器15としては、所定の建築空間内に配置された機器や設備等が例示できる。具体的には、照明設備、空調設備、ブラインド、扉、家具、洗面化粧台、キッチン、洗濯機、便器、システムバス、公共施設等のスピーカーや誘導灯等がある。
次に、制御手段75による制御について、図14に示される住宅80を具体例として説明する。
前記住宅80は、天井80Aに吊り下げられた照明装置81と、壁面80Bの上部に保持された空調装置82と、室内80Cに設けられたテーブル装置83と、壁面80Bに形成された窓Wの室内側に設けられたブラインド装置84とを備えており、これら各装置81〜84が前記設備機器15に該当する。ここでの各装置81〜84は、ICカード72に記憶されたICF情報を読み取る読み取り部87と電気的に接続されており、当該読み取り部87で読み取られたICF情報が各制御手段74に伝送されるようになっている。ここで、各装置81〜84と読み取り部87との接続は、特に限定されるものではなく、電灯線、赤外線、ブルートゥース等による有線若しくは無線接続が採用可能である。
前記照明装置81は、受信したICF情報に応じて照明光の強度、質、色彩のコントラストを調整可能となっている。例えば、視覚障害に関連するICF情報が制御手段75に付与されると、健常者に対する照明光の供給と異なり、視覚障害者に悪影響のある光やコントラストの付与等を極力避けるような照明光が室内に供給されるようになっている。
前記空調装置82は、受信したICF情報に応じて、室内の温度、湿度、風向、粉塵の調整が可能となっている。例えば、高血圧症に関連するICF情報が制御手段75に付与されると、急激な血圧上昇は血管破裂をもたらすことになるため、室外に対する温度変化が急激にならないように室内温度を制御するようになっている。
前記テーブル装置83は、電動シリンダー74(作動手段)によって、天板83Aを昇降可能に設けられており、当該天板83Aの高さは、受信したICF情報に応じて調整される。例えば、自立歩行困難というICF情報が制御手段75に付与されると、テーブル装置83を使用するICカード72の保持者は、車椅子での使用が前提となるため、当該使用が可能な天板83Aの高さとなるように、作動手段74が制御されるようになっている。他に、図示省略しているが、洗面ボウルの高さが電動で可変となる洗面化粧台、カウンターの高さが電動で可変となるキッチン等にも同様な制御が適用できる。
前記ブラインド装置84は、電動アクチュエータ74(作動手段)によって、フラップ84Aの開放面積を可変に設けられており、当該開放面積は、受信したICF情報に応じて調整される。例えば、視覚障害に関連するICF情報が制御手段75に付与されると、視覚障害者に対する悪影響を極力避けるように、外部からの自然光等の採り入れを調整するように作用するようになっている。
なお、前記制御は、一般住宅の設備の他に、老人保健施設、介護保険適用施設、ケアハウス、グループホーム、特別養護老人ホーム、高齢者向け優良賃貸住宅、ショートステイ施設、療養型医療施設、民間有料老人ホーム、特別養護老人ホーム、学校、職場空間等に例示される特定多数が利用する建築空間に適用することもできる。また、前記制御は、市役所、公民館、公会堂、劇場等の公的施設、ホテル、レストラン等の飲食店、空港、病院、美術館等に例示される不特定多数が利用するパブリックスペースに利用することもできる。これら各ケースでは、異なるICF情報を有する多数の利用者に対応させなければならないため、各利用者のICF情報を統計処理し、利用者全員の利用に好適となる環境を提供できるように、室内の設備や機器を制御するとよい。例えば、空港等では、利用者のICF情報を統計処理した結果、目の不自由な人が多く利用することが判明すれば、空港内での誘導を行い易くする音声案内設備が稼動するとよい。
従って、このような第1実施例によれば、ICF情報処理装置13の存在により、各種の分野でICF情報を簡単に利用することが可能となる。また、建築空間内に存在する設備や機器の制御がICF情報に基づいて行われるため、所定の建築空間内を、使用者の人的情報が細かく反映された状態に簡単にすることができるという効果を得る。
次に、本発明の前記以外の実施例について説明する。なお、以下の説明において、前記第1実施例と同一若しくは同等の構成部分については同一符号を用いるものとし、説明を省略若しくは簡略にする。
先ず、第2実施例につき説明する。
第2実施例に係るICF情報利用システム90は、図15に示されるように、前記第1実施例に対し、設備機器15の代わりにCAD等の建築設計装置92を設けたものであり、その他の構成は第1実施例と実質的に同一となっている。このICF情報利用システム90は、ICF情報処理装置13からのICF情報が建築設計装置92に採り込まれ、当該建築設計装置92で、ICF情報を利用してユーザの状況に適合した建物の設計を行えるようになっている。
前記建築設計装置92は、ICカード72等のメディアに記録されたICF情報を読み取り、当該ICF情報に基づいて建物の設計図面や設計情報等を作成するようになっている。すなわち、この建築設計装置92は、ICF情報が建築的対応に関連付けられて記憶された記憶手段94と、この記憶手段94に基づき、ICカード72に記憶されたICF情報から建築的対応を決定する対応決定手段95と、この対応決定手段95で決定された建築的対応を設計図面や設計情報に反映させる反映手段96と、この設計図面や設計情報を表示する液晶ディスプレイやCRTディスプレイ等の表示部97とを備えて構成されている。
前記記憶手段94での記憶の態様を以下に幾つか例示する。
不完全片麻痺を意味する「b7302.2」というICFコードCに対しては、「手摺付加」、「床の段差の解消、滑り難い床材等の転倒予防構造の採用」、「引き戸や折れ戸の採用」、「水洗金具の位置に注意」等の建築的対応が記憶される。
また、強度の視力障害を意味する「b21002.3」というICFコードCに対しては、「表示の大きさやコントラストの工夫が必要」、「表示物を目の高さに配置する」等の建築的対応が記憶される。
更に、高血圧症を意味する「b4200.3」というICFコードCに対しては、「急激な温度変化の生じる可能性のある部屋や空間を作らない」、「過度に体に力が入る姿勢の空間を作らない」等の建築的対応が記憶される。
また、起立での自力歩行困難を意味する「s7500.3.1.3」というICFコードCに対しては、「車椅子が通過できる幅を居室及び玄関の出入口や廊下に確保する」、「車椅子が入るトイレの面積」、「車椅子で利用できる洗面化粧台、キッチン等の高さ」、「床面等の段差の回避」、「車椅子の衝突に耐える壁の構造」等の建築的対応が記憶される。
更に、腰椎疾患を意味する「s76002.3.6.5」というICFコードCに対しては、「洗面化粧台の高さやバスタブのまたぎ高さの考慮」、「手摺付加」、ベッドの硬さの考慮」、「棚の高さや位置」等の建築的対応が記憶される。
また、短距離歩行に問題ありという「d4500.3.2.1」というICFコードCに対しては、「歩行に障害のない環境が必要」、「介添人が動き易く作業し易いスペースの確保」、「介添人が必要な設備の確保」等の建築的対応が記憶される。
更に、相互に相違するICFコードCが組で検出されたときに、所定の症状の可能性があると判断されるような場合には、当該症状を構成するICFコードCの集合体に対して、所定の建築的対応が記憶される。例えば、自己免疫疾患である全身性エリトマドーデス(SLE)の可能性を示す「b1300.2」、「b1340.2」等のICFコードの集合体に対しては、過労、直射日光、寒冷が症状を悪化させることから、「室内における紫外線のカット」、「室内温度を過度に低下させないようにコントロールされた環境」、「室内移動に無駄なエネルギーを使わずに済む導線構造」、「設備のバリアフリー化」等の建築的対応が記憶される。
また、シィーグレン症候群の可能性を示す「b2153.3」、「b220.3」等のICFコードCの集合体に対しては、「最適湿度、最適温度、粉塵の少ない空間等の室内空気環境を提供する設備」、「ビデの装備」、「給水設備の強化」等の建築的対応が記憶される。
前記対応決定手段95は、ICカード72に記憶されたICF情報から、記憶手段94を用いて、関係のある建築的対応を抽出するようになっている。
前記反映手段96は、例えば、対応決定手段95で抽出された建築的対応を表示部97に表示する対応表示機能と、当該建築的対応を建築図面に反映させて表示部97に表示する対応反映機能と、設計者が作成した設計図面が対応決定手段で抽出された建築的対応に沿っていない場合に図面の修正を求めるアラーム機能とを備えて構成されている。
従って、このような第2実施例によれば、前述した第1実施例と同様な効果が得られるばかりか、高齢者や障害者等に適応した建築空間を設計する際に、必要な建築的対応を確実に反映させることができるという効果を得る。
次に、第3実施例につき説明する。
第3実施例に係るICF情報利用システム100は、図16に示されるように、前記第1実施例のICF情報装置13の各種機能を携帯電話102に持たせたところに特徴を有する。
本実施例における前記処理部20及び記憶部21の機能は、携帯電話102に内蔵されているCPU(中央演算処理装置)やメモリによって実行されるようになっている。
前記入力部22は、図示しないダイヤルボタンによって構成され、前記表示部23は、電話番号や文字等を表示するディスプレイ(図示省略)によって構成されている。
通信部25は、携帯電話102の通信機能を実現するための公知の部分が対応する。
前記認証手段27は、携帯電話102に内蔵されている公知の各種認証機能が対応する。
前記撮像装置55は、携帯電話102に内蔵されているCCDカメラ及びその制御部(図示省略)等を例示できる。
また、本実施例では、前記データ抽出手段31を構成する前記伝送部66(図13参照)の機能は、赤外線通信(IrDA通信)を可能とするデータ通信部104が担う。すなわち、データ抽出手段31で抽出された前述のICF情報は、データ通信部104から、赤外線通信によって、設備機器15の制御手段75に直接送信され、これによって、設備機器15の動作が前述のように制御されることになる。従って、本実施例では、リーダーライター等の記録装置70やICカード72(図1参照)が不要になり、図14に示されているカードの読み取り部87も不要となる。
なお、データ通信部104による通信手段としては、所定の電波を送受信により前述したデータ通信を行える限りにおいて、Bluetooth等の他の通信手段に代替することも可能である。
また、その他の構成は第1実施例と実質的に同一となっており、ここでは、詳細な説明を省略する。
従って、このような第3実施例によれば、前述した第1実施例の効果の他に、ICカード72が不要になり、近時、多くの人が常時携行する携帯電話102に自己のICF情報が記憶されたICカード72の機能を持たせることができ、ICF情報を多くの分野や場所でより有効活用することが期待できる。
なお、第3実施例では、携帯電話102を使ったが、同様の作用、効果を奏する限りにおいて、その他の携帯端末にも適用可能である。
また、第2実施例についても、第3実施例のように、携帯電話102にICF情報装置13の各種機能を持たせた態様に代えることができる。
更に、前記各実施例の他の利用態様としては、医療施設でのICF情報処理装置13の利用が例示できる。
また、本発明における装置各部の構成は図示構成例に限定されるものではなく、実質的に同様の作用を奏する限りにおいて、種々の変更が可能である。
以上説明したように、本発明によれば、マニュアル的に対応するのが困難となる膨大なICFコードに対し、簡単に入出力や変換等を行うことができ、各種分野におけるICF情報の利用を促進することができる。
【産業上の利用可能性】
本発明は、工学分野、保健分野、医療分野、福祉分野を始めとする各種分野に適用される個人情報対応システムとして利用することができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人別のICF情報に関するデータ処理を行うICF情報処理装置であって、
所定のデータベースを用いて、個人の症状、状況及び/又は病名からICFコードに変換するコード化手段を備え、
前記コード化手段は、前記症状、状況及び/又は病名を表す自然言語を入力することにより、対応するICFコードを決定する言語入力モードを備えたことを特徴とするICF情報処理装置。
【請求項2】
前記データベースは、各自然言語の本質的意味を理解するための各種データが記憶された辞書翻訳データベースと、ICFコードが各自然言語の本質的意味に関連付けられて記憶された応用変換データベースとを含み、
前記言語入力モードは、前記辞書翻訳データベースに基づき、入力された自然言語の本質的意味を理解する理解部と、前記応用変換データベースに基づき、前記理解部で理解された本質的意味から対応するICFコードを選択するコード選択部とを備えたことを特徴とするクレーム1記載のICF情報処理装置。
【請求項3】
個人別のICF情報に関するデータ処理を行うICF情報処理装置であって、
所定のデータベースを用いて、個人の症状、状況及び/又は病名からICFコードに変換するコード化手段を備え、
前記コード化手段は、身体の画像データから対応するICFコードを決定する撮像入力モードを備えたことを特徴とするICF情報処理装置。
【請求項4】
前記撮像入力モードは、身体の外部及び/又は内部を撮像する撮像装置により得られた画像データに基づき、所定の身体データを検出する身体データ検出部と、この身体データ検出部からの身体データに基づき、ICFコードを決定するコード選択部とを備え、
前記身体データ検出部は、前記撮像データを所定の基本状態と対比することで前記身体データを自然言語に変換可能に設けられ、
前記コード選択部は、前記自然言語とICFコードとが対応付けられて記憶されたデータベースを用いることで、前記身体データに対応するICFコードを決定することを特徴とするクレーム3記載のICF情報処理装置。
【請求項5】
個人別のICF情報に関するデータ処理を行うICF情報処理装置であって、
所定のデータベースを用いて、ICFコードを個人の症状、状況及び/又は病名を示す自然言語に変換する言語化手段を備えたことを特徴とするICF情報処理装置。
【請求項6】
前記データベースは、ICFコードを構成する各項目コード及び各評価コードの意味を表す語句が、当該各項目コード及び各評価コードに関連付けられて記憶された基本変換データベースと、自然言語の意味、同義語、文法等をデータベース化した辞書翻訳データベースとを含み、
前記言語化手段は、前記基本変換データベースを用いて、入力されたICFコードの項目コード及び評価コード毎に、それぞれの意味を表す語句に変換する第1変換部と、前記辞書翻訳データベースに基づき、前記第1変換部で変換された各語句を繋いで自然言語を作成する第2変換部とを備えたことを特徴とするクレーム5記載のICF情報処理装置。
【請求項7】
個人別のICF情報に関するデータ処理を行うICF情報処理装置であって、
ICFコードがICF情報の用途に関連付けられて記憶された用途別データベースを用い、所定の場所に記憶されたICF情報から、前記用途に対応した一部のICF情報のみを抽出するデータ抽出手段を備えたことを特徴とするICF情報処理装置。
【請求項8】
前記データ抽出手段は、ICF情報の用途を入力したときに、前記用途別データベースに基づき、前記用途に対応したICFコードを特定するコード特定部と、このコード特定部で特定されたICFコードに関するICF情報の抽出を要求するコマンド作成部とを備えたことを特徴とするクレーム7記載のICF情報処理装置。
【請求項9】
クレーム1〜8の何れかのICF情報処理装置を用いたICF情報利用システムであって、
各個人のICF情報が記憶されたICFデータベースを有するデータセンターを備え、
前記データセンターは、前記ICF情報処理装置で入力されたICF情報を受信して、前記ICFデータベース内のICF情報を記録及び/又は更新可能に設けられるとともに、前記ICF情報処理装置からの要求に応じて、前記ICFデータベースに記憶されたICF情報の一部若しくは全部を前記ICF情報処理装置に送信することを特徴とするICF情報利用システム。
【請求項10】
個人別のICF情報に関するデータ処理を行うICF情報処理装置を用いたICF情報利用システムであって、
所定の建築空間内に配置された設備機器の制御を前記ICF情報処理装置でデータ処理されたICF情報に基づいて行うことを特徴とするICF情報利用システム。
【請求項11】
前記ICF情報は、前記建築空間内に設けられた読み取り部で読み取られ、前記設備機器は、その一部分若しくは全体に対して所定の動作や変化を付与する作動手段と、前記読み取り部で読み取られた前記ICF情報を受信し、当該ICF情報の内容に応じて前記作動手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とするクレーム10記載のICF情報利用システム。
【請求項12】
個人別のICF情報に関するデータ処理を行うICF情報処理装置を用いたICF情報利用システムであって、
前記ICF情報処理装置でデータ処理されたICF情報が採り込まれる建築設計装置を備え、この建築設計装置は、前記ICF情報に基づき、使用者の状況に適合した設計図面及び/又は設計情報を作成可能に設けられていることを特徴とするICF情報利用システム。
【請求項13】
前記建築設計装置は、ICF情報が建築的対応に関する情報に関連付けられて記憶された記憶手段と、この記憶手段に基づき、採り込まれたICF情報から建築的対応を決定する対応決定手段と、この対応決定手段で決定された建築的対応を設計図面及び/又は設計情報に反映させる反映手段とを備えたことを特徴とするクレーム12記載のICF情報利用システム。
【請求項14】
各個人のICF情報が記憶されたICFデータベースを有するデータセンターを備え、
前記ICF情報処理装置は、前記データセンターに記憶されているICF情報から、前記ICF情報を抽出し、当該ICF情報を前記設備機器又は建築設計装置に提供することを特徴とするクレーム10〜13の何れかに記載のICF情報利用システム。

【国際公開番号】WO2004/046966
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【発行日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−553199(P2004−553199)
【国際出願番号】PCT/JP2003/014701
【国際出願日】平成15年11月19日(2003.11.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
Bluetooth
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【Fターム(参考)】