説明

IDカード、及びICカード、並びにIDカードの製造方法、及びICカードの製造方法

【課題】基材の端部から生ずる基材屑等のゴミにより影響を受けず、高い印字品質を有するIDカード及びICカード並びにその製造方法を提供すること。
【解決手段】第一の基材の一面側に、識別対象及び/又は当該識別対象に関連する物の外観を写し撮った写真画像、及び識別対象を特定するための記号情報が印字されているIDカードであって、当該第一の基材の一面側に受像層が設けられており、当該受像層に、当該写真画像が印字されており、当該受像層上に、印字改善層が設けられており、当該印字改善層上に、当該記号情報が印字されていることを特徴とするIDカード。IDカードの第一の基材の受像層とは反対側の面に、第二の基材が設けられ、第一の基材と第二の基材の間に、ICチップ、補強板、及びアンテナを含むインレット並びに接着剤層を備えていることを特徴とするICカード。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IDカード、及びICカード並びにその製造方法に関し、特に、記号情報の印字品質に優れたIDカード、及びICカード並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
運転免許証やパスポート等の印刷には、通常、一般的な書籍や雑誌と異なり、住所や氏名、顔写真等の表示内容が個々に異なるため、グラビア印刷等の版を用いる印刷ではなく、版を用いない溶融型熱転写方式や昇華型熱転写方式のカードプリンターによるデジタル印刷(デジタル印刷は、版を用いず、要求に応じてデジタルデータから即時に印刷するためオンデマンド印刷とも言われることがある。)が用いられている。
運転免許証やパスポートは、IDカード(身分証明書)としての役割もあり、住所や氏名等の印字、及び顔写真等の印字をかすれやゆがみ等により読み取れないことがないように、これらのIDカードには高い印字品質が求められている。
【0003】
一般にIDカードには識別対象となる人物の顔写真等が印字され、さらに、運転免許証やパスポートの場合には、当該識別対象となる人物の氏名や住所等の情報も印字される。
【0004】
一般に人物ごとに異なる顔写真等の画像は、頭髪、目、頬、及び口等の各部位ごとに色彩や濃淡が異なるため当該色彩や濃淡の表現に適した昇華型熱転写方式により印字される。そして、一般に人物の氏名や住所等の記号情報は、読み取り易さの点から当該記号情報部分とそれ以外の背景(台紙)部分とのコントラストが高いインクジェット方式や溶融型熱転写方式により印字される。
【0005】
このように、IDカードにおいて写真画像部分及び記号情報部分の印字は、一般に異なるデジタル印刷方式により複数の段階を経て行われる。
【0006】
そして写真画像をカード基材等の被形成体に鮮明且つ自然な色合いで印字する際に、一般的には特許文献1のように当該写真画像を定着させるための受像層が必要となり、当該受像層を当該基材の一面側に設けたものを用いて、写真画像及び記号情報の印字を行うため、写真画像の印字が一般に記号情報の印字よりも先に行われる。
【0007】
しかし、写真画像を印字した後に記号情報を溶融型熱転写方式により印字する際に、受像層を有する基材の端部から生ずる基材屑や、ローラ等のプリンター内部の部品の駆動により生じてプリンター内部に蓄積した部品屑等の微細なゴミが、記号情報の印字面に散在し、当該ゴミ上に印字が行われると文字欠けや文字抜け等の文字欠陥が生じ、IDカードの記号情報の印字品質が低下するという問題があった。
記号情報をインクジェット方式により印字する場合では、特許文献1のように、印字した個人識別情報の擦れにより欠陥を防ぐ保護層を当該ゴミ上に印字された個人識別情報上に設けると、当該保護層が浮き上がったり、ゴミが移動して印字された記号情報に文字欠陥が生ずる問題があった。
【0008】
また、一般にICカードを製造する場合、2枚の基材の間にICチップやアンテナを有するインレットを接着剤層を介して封入し積層体とした後、当該積層体を打ち抜いて所望の形状、大きさを有する未印画カードとする工程を行い、次いで、当該未印画カードに写真画像や記号情報を印字する工程を行う。ICカードを製造する場合では、その打ち抜きにより、非ICカードを製造する場合に比べて、未印画カードの基材や接着剤層の側面も含めて端部から生ずるゴミが多くなり、上記の文字欠陥が多くなる問題もある。
【0009】
一般に、IDカードやICカードのカード表面や端部から生じるゴミの捕集方法としては、ゴムによるクリーニングローラーや粘着ローラー、を用いた方法が知られている。
しかしながら、これらの方法ははじめの数回は効果があるが、ローラー上にゴミが多数付着することによりゴミの捕集効果が徐々に減少してくる、といった問題がある。捕集効果を回復させるためのローラーの定期的な交換も面倒である。
また、クリーニングローラーの上に粘着シートを取り付けて、捕集したゴミを自動的に減らす方法もあるが、粘着シートの粘着力が強いとクリーニングローラーの回転を妨げてしまい、一方、粘着シートの粘着力が弱いとクリーニングローラーのゴミを捕集しきれなくなり十分な捕集効果が得られない、といった問題がある。
【0010】
このため、基材の端部から生ずる基材屑やプリンター内部に蓄積した部品屑等の微細なゴミにより影響を受けず、高い印字品質を有するIDカード、及びICカードの製造方法、並びに高い印字品質を有するIDカード、及びICカードが要求されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−269134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記問題点を解消するためになされたものであり、基材の端部から生ずる基材屑やプリンター内部に蓄積した部品屑等の微細なゴミによる影響を受けず、高い印字品質を有するIDカード及びICカード、並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らが鋭意検討した結果、昇華型熱転写方式を用いて写真画像を、非昇華型熱転写方式を用いて記号情報を印字する場合、受像層の同一面上に写真画像と記号情報を印字すると、写真画像の印字よりも後工程となる記号情報の印字工程では、カード基材の端部から生じた微細なゴミや写真画像の印字工程におけるローラ等のプリンターの部品の駆動により生じた微細なゴミが受像層上の記号情報を印字する部分に散在しているため、文字欠陥が生じてしまうことに着目し、写真画像を印字した後、当該写真画像を有する受像層の面上に樹脂層を設け、受像層上に散在していた微細なゴミを当該樹脂層により閉じ込め、きれいな当該樹脂層上に記号情報を印字することによりIDカード及びICカードの印字品質を高められることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
すなわち、本発明に係るIDカードは、第一の基材の一面側に、識別対象及び/又は当該識別対象に関連する物の外観を写し撮った写真画像、及び識別対象を特定するための記号情報が印字されているIDカードであって、
当該第一の基材の一面側に受像層が設けられており、
当該受像層に、当該写真画像が印字されており、
当該受像層上に、印字改善層が設けられており、
当該印字改善層上に、当該記号情報が印字されていることを特徴とする。
【0015】
受像層上に、印字改善層が設けられていることにより、当該面に散在している微細なゴミが印字改善層により閉じ込められ、記号情報はきれいな印字改善層上に印字されているため、文字欠陥が抑えられ、印字品質の高いIDカードとなる。
【0016】
本発明に係るIDカードは、前記印字改善層上に保護層が設けられていることが、記号情報の耐久性及び耐熱性を高められる点から好ましい。
【0017】
本発明に係るIDカードは、前記写真画像が昇華型熱転写方式により形成された写真画像であり、且つ、前記記号情報が非昇華型熱転写方式により形成された記号情報である場合においても、高い印字品質を得ることができる。
【0018】
本発明に係るIDカードは、前記第一の基材と前記受像層の間にクッション層を有することが、写真画像の印字品質を高められる点から好ましい。
【0019】
本発明に係るICカードは、前記IDカードの第一の基材の受像層とは反対側の面に、第二の基材が設けられ、
当該第一の基材と第二の基材の間に、ICチップ、補強板、及びアンテナを含むインレット並びに接着剤層を備えていることを特徴とする。
【0020】
上記第一の基材の受像層とは反対側の面に、第二の基材と接着剤層を用いてICチップを含むインレットが設けられているICカードであっても、受像層の写真画像が印字されている面に散在している微細なゴミが印字改善層により閉じ込められ、記号情報はきれいな印字改善層上に印字されているため、文字欠陥が抑えられ、印字品質の高いICカードとなる。
【0021】
本発明に係るIDカードの製造方法は、第一の基材の一面側に、識別対象及び/又は当該識別対象に関連する物の外観を写し撮った写真画像、及び識別対象を特定するための記号情報が印字されているIDカードの製造方法であって、
(A)当該第一の基材の一面側に受像層を備えてなる未印画カードを準備する工程、
(B)当該未印画カードの受像層上に、当該写真画像を昇華型熱転写方式により印字する工程、
(C)当該受像層上に、印字改善層を形成する工程、
(D)当該印字改善層上に、非昇華型熱転写方式により当該記号情報を印字する工程、を含むことを特徴とする。
【0022】
(C)工程において当該受像層上に、印字改善層を形成することにより、当該面に散在している微細なゴミが印字改善層により閉じ込められる。そして、(D)工程においてそのきれいな印字改善層上に、記号情報を印字することにより、文字欠陥が抑えられ、印字品質の高いIDカードが得られる。
【0023】
本発明に係るIDカードの製造方法では、前記(D)工程の後に、(E)前記印字改善層上に、保護層を形成する工程、を含むことが、記号情報の耐久性及び耐熱性を高められる点から好ましい。
【0024】
本発明に係るIDカードの製造方法では、前記未印画カードが前記第一の基材と前記受像層の間にクッション層を備えていることが、写真画像の印字品質を高められる点から好ましい。
【0025】
本発明に係るIDカードの製造方法の好適な実施形態では、前記(C)工程において、支持体の一面側に転写性印字改善層が設けられている転写体を用いて、当該転写体の当該転写性印字改善層を受像層上に転写して、前記印字改善層を形成することも可能である。
【0026】
本発明に係るIDカードの製造方法の好適な実施形態では、前記(E)工程において、支持体の一面側に転写性保護層が設けられている転写体を用いて、当該転写体の当該転写性保護層を印字改善層上に転写して、前記保護層を形成することも可能である。
【0027】
本発明に係るICカードの製造方法では、前記IDカードの製造方法における未印画カードが、前記第一の基材の受像層とは反対側の面に、第二の基材が設けられ、
当該第一の基材と第二の基材の間に、ICチップ、補強板、及びアンテナを含むインレット並びに接着剤層を備えている未印画カードであることを特徴とする。
【0028】
本発明に係るICカードの製造方法では、第一の基材、第二の基材、及び接着剤層の端部から微細なゴミが生じやすくても、上記(C)工程において当該受像層上に、印字改善層を形成することにより、当該面に散在している微細なゴミが印字改善層により閉じ込められる。そして、(D)工程においてそのきれいな印字改善層上に、記号情報を印字することにより、文字欠陥が抑えられ、印字品質の高いICカードが得られる。
【発明の効果】
【0029】
受像層の一面側の同一面に写真画像及び記号情報が印字されておらず、写真画像を形成した受像層上に、印字改善層が形成されていることにより、当該面に散在している微細なゴミが印字改善層により閉じ込められる。そして、そのきれいな印字改善層の表面に、記号情報が印字されていることにより、文字欠陥が抑えられ、高い印字品質を有するIDカード、及びICカードとなる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、本発明に係るIDカードの層構成の一例を模式的に示した図である。
【図2】図2は、本発明に係るIDカードの層構成の他の一例を模式的に示した図である。
【図3】図3は、本発明に係るICカードの層構成の一例を模式的に示した図である。
【図4】図4は、本発明に係るIDカードの製造方法の工程の一例を模式的に示した図である。
【図5】図5は、受像層上に印字改善層が無い場合の溶融型熱転写方式の印字性の一例を模式的に示した図である。
【図6】図6は、受像層上に印字改善層がある場合の溶融型熱転写方式の印字性の一例を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、まず本発明に係るIDカード、及びICカードについて説明し、次いで、本発明に係るIDカードの製造方法、及びICカードの製造方法について説明する。
【0032】
なお、フィルムとシートのJIS−K6900での定義では、シートとは薄く一般にその厚さが長さと幅の割りには小さい平らな製品をいい、フィルムとは長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通例、ロールの形で供給されるものをいう。従って、シートの中でも厚さの特に薄いものがフィルムであるといえるが、シートとフィルムの境界は定かではなく、明確に区別しにくいので、本発明では、厚みの厚いもの、および薄いものの両方の意味を含めて、「シート」と定義する。
本発明の光には、可視及び非可視領域の波長の電磁波だけでなく、電子線のような粒子線、及び、電磁波と粒子線を総称する放射線又は電離放射線が含まれる。
本発明において硬化性樹脂とは、ポリマーの他、モノマー、オリゴマー等の硬化性前駆体を特別な記載がない限り包含する概念である。
本発明において、分子量とは、分子量分布を有する場合には、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算値である重量平均分子量を意味し、分子量分布を有しない場合には、化合物そのものの分子量を意味する。
本発明において、(メタ)アクリレートは、アクリレート及び/又はメタクリレートを表す。
【0033】
(IDカード)
本発明に係るIDカードは、第一の基材の一面側に、識別対象及び/又は当該識別対象に関連する物の外観を写し撮った写真画像、及び識別対象を特定するための記号情報が印字されているIDカードであって、
当該第一の基材の一面側に受像層が設けられており、
当該受像層に、当該写真画像が印字されており、
当該受像層上に、印字改善層が設けられており、
当該印字改善層上に、当該記号情報が印字されていることを特徴とする。
【0034】
受像層上に、印字改善層が設けられていることにより、当該面に散在している微細なゴミが印字改善層により閉じ込められ、記号情報はきれいな印字改善層上に印字されているため、文字欠陥が抑えられ、印字品質の高いIDカードとなる。
【0035】
図1は、本発明に係るIDカードの層構成の一例を模式的に示した図である。
IDカード1において、第一の基材10の一面側に受像層20を有する未印画カード30の、受像層20の第一の基材10とは反対側の面の少なくとも一部に、IDカードの識別対象及び/又は当該識別対象に関連する物の外観を写し撮った写真画像40が印字されており、受像層20上に、印字改善層50が設けられており、印字改善層50上に、記号情報60が印字されている。
【0036】
図2は、本発明に係るIDカードの層構成の他の一例を模式的に示した図である。
図2のIDカード1は、図1のIDカードの印字改善層50上に、保護層70が設けられている。また、未印画カード30が第一の基材10と受像層20の間にクッション層80を備え、第一の基材10の受像層20とは反対側の面に筆記層90を備えている。
【0037】
印字改善層上に保護層を設けることにより、本発明に係るIDカードの取り扱い時の擦れに対する記号情報の耐久性や、カード処理装置における処理時に生ずる熱に対する耐熱性を高められるという利点がある。
【0038】
基材と受像層の間にクッション層を設けることにより、写真画像の元となるデジタルデータを、ノイズを抑えて再現性良く受像層上に印字し、印字品質を高められるという利点がある。
【0039】
第一の基材の受像層とは反対側の面に筆記層を設けることにより、当該筆記層に記号情報を筆記することが可能となる。
【0040】
以下、本発明に係るIDカードにおいて必須の第一の基材、及び受像層を含む未印画カード、並びに写真画像、印字改善層、及び記号情報について説明し、次いで、必要に応じて適宜設けることができる保護層、クッション層、及び筆記層について説明する。
【0041】
(IDカードの未印画カード)
本発明に係るIDカードの未印画カードは、第一の基材の一面側に受像層を備えてなり、後述する写真画像や記号情報を印字するための台紙や白紙を意味するものである。
本発明に係るIDカードにおける未印画カードは、基本的には第一の基材と受像層より構成されるが、上記図2で示したように第一の基材の受像層と反対側の面に筆記層を設けたものや、第一の基材と受像層の間にクッション層を設けたものも未印画カードとすることができる。
【0042】
(第一の基材)
第一の基材としては、ポリエチレンテレフタレート等の従来公知のIDカードの基材、ICカードの基材を用いることができる。
【0043】
(受像層)
受像層は、IDカードの識別対象及び/又は当該識別対象に関連する物の外観を写し撮った写真画像(以下、単に写真画像という。)の昇華型熱転写方式による印字の際に、当該写真画像を受像するはたらきを有する層である。
受像層は、バインダーを含む受像層用組成物の塗膜を乾燥させたものからなる。
受像層のバインダーは、塩化ビニル系樹脂等従来公知のIDカード及びICカードの受像層のバインダーを適宜選択して用いることができる。
【0044】
受像層の第一の基材とは反対側の面には、フォーマットが形成されていても良い。
ここでフォーマットとは、IDカードの罫線、発行元、所属会社、及び注意事項等の他のIDカードと共通の記載情報を意味する。
【0045】
また、後述するICカードとして用いる場合を除き、第一の基材の両面に受像層を設けて、一面側の受像層に写真画像を印字され、もう一面側の受像層にフォーマットが形成されていても良い。
【0046】
(印字改善層)
印字改善層は、受像層上に設けられる層であり、写真画像を形成する工程までに生じた受像層上に散在している、基材の端部からの屑やカードプリンター内部に存在する部品屑等の微細なゴミを閉じ込め、記号情報の印字品質を改善することを目的として設けられる層である。当該微細なゴミが印字改善層により閉じ込められ、きれいな印字改善層上に記号情報が印字されているため、当該微細なゴミにより文字欠け等の文字欠陥が生ずることなく、高品質な記号情報が得られる。
【0047】
本発明の印字改善層を設け、印字改善層上に記号情報を印字する方式は、上述のクリーニングローラー方式や粘着ローラー方式に比べてローラーの交換の手間が不要で、高い品質のIDカードやICカードを安定的に供給できる利点がある。
【0048】
印字改善層は樹脂によって形成され、当該樹脂としては、受像層上の微細なゴミを閉じ込め、記号情報を印字するための下地層としての機能を有するものであればよく、従来公知の透明保護層を形成する樹脂から適宜選択して用いることができる。なかでも、印字改善層の材料としては、生産性が高く下地層としての硬度を有する点から、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂を用いることが好ましく、当該硬化性樹脂が硬化した硬化樹脂により印字改善層が形成されることが好ましい。
光硬化性樹脂は、IDカードやICカードの保護層の材料として用いられている従来公知の(メタ)アクリレート樹脂等のラジカル重合性や、ノボラック型エポキシ樹脂等のカチオン重合性の光硬化性樹脂を用いることができる。光硬化性樹脂は、2種以上を組み合わせて用いても良い。
熱硬化性樹脂は、IDカードやICカードの保護層の材料として用いられている従来公知の熱硬化性樹脂を用いることができる。熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂は、2種以上を組み合わせて用いても良い。
上記光硬化性樹脂と熱硬化性樹脂は、組み合わせて用いても良い。
【0049】
印字改善層は、貼り合わせにより、すなわち印字改善層用の上記光硬化性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂の硬化した転写性を有する樹脂膜(以下、転写性印字改善層ということがある。)を支持体の一面側に有する転写体を用いて、当該転写体の当該転写性印字改善層を写真画像を印字した受像層上に熱転写して形成してもよい。
また、印字改善層を塗設により、すなわち印字改善層用の上記光硬化性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂を含む組成物を写真画像を印字した受像層上に塗布して、塗膜とし、光及び/又は熱により硬化させて形成しても良い。その他、熱可塑性樹脂を含む組成物を写真画像を印字した受像層上に塗布して、乾燥させることにより形成しても良い。
また、転写により設けた印字改善層上にさらに塗設により印字改善層を設け、熱転写により設けた層と塗設により設けた層を合わせて印字改善層としても良い。
【0050】
熱転写により印字改善層を形成する場合、転写前の支持体上の転写性印字改善層には、転写性を付与するための離型剤が含まれていることが、転写性向上の点から好ましい。また、転写性印字改善層の一部として、上記転写体の支持体と接する部分に、離型層を設けても良い。
離型剤としては、従来公知の熱転写材のシリコーン樹脂等の離型剤を用いることができる。離型剤を用いる場合は、好ましくは、上記光硬化性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂100質量%に対して、0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%の割合で用いる。
転写性印字改善層の一部としての上記離型層は、従来公知の熱転写材のシリコーンワックス等の材料からなる離型層を用いることができる。
【0051】
光硬化性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂を含む組成物を受像層上に塗布して、塗膜とし、光及び/又は熱により硬化させて印字改善層を形成する場合、当該組成物には、光重合開始剤や溶剤等のその他の成分が含まれていても良い。
光重合開始剤は、印字改善層を形成する光硬化性樹脂の種類に合わせ、適宜、公知のイミダゾール誘導体等の光ラジカル重合開始剤や、スルホン酸エステル等の光カチオン重合開始剤を選択して用いればよい。
光重合開始剤を用いる場合、上記光硬化性樹脂100質量%に対して、0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%の割合で用いることが好ましい。
【0052】
上記組成物には光硬化性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂を分散、又は溶解させ、当該組成物の塗布性を確保するために溶剤が含まれていても良く、トルエン、アセトン等の有機溶剤を用いることが好ましい。
なお、上記光硬化性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂自体が十分な流動性を有する場合、溶剤を用いなくともよい。
【0053】
また、印字改善層上には、後述する記号情報の印字改善層上への定着性や、定着した記号情報の耐久性を高めるためにエンボス加工等の微細凹凸を設ける表面処理が行われていても良い。
【0054】
(写真画像)
本発明における写真画像は、IDカードの識別対象及び/又は当該識別対象に関連する物の外観を写し撮った写真画像であり、デジタル印刷方式により受像層上の少なくとも一部に印字される。
写真画像は、一般に運転免許証、パスポート、社員証等においては識別対象となる人物の顔写真や上半身の写真である。
その他、識別対象としては、個人を特定するための指紋や歯型、ほくろ等が挙げられる。
識別対象に関連する物としては、アクセサリー等の一品制作物、サイン(筆跡)等が挙げられる。
【0055】
本発明における写真画像は、後述するIDカードの製造方法において説明されるように、昇華型熱転写方式で印字されたものである。
【0056】
(記号情報)
本発明における記号情報は、IDカードの識別対象を特定するための情報であり、非昇華型熱転写方式により印字改善層上の少なくとも一部に印字される。
上記受像層上に印字改善層を設けているため、本発明に係るIDカードは、写真画像が昇華型熱転写方式により印字された写真画像であり、且つ、記号情報が非昇華型熱転写方式により印字された記号情報であっても、高い印字品質を得ることができる。
【0057】
記号情報は、一般に運転免許証、パスポート、社員証等においては識別対象となる人物の氏名、住所、国籍、及び所属等である。
【0058】
記号情報は、印字改善層上に印字されているが、IDカードや後述するICカードの写真画像及び記号情報の印字されている面側から観察した際に、当該写真画像と記号情報が重ならない位置に印字されていることが好ましい。
【0059】
記号情報を印字する非昇華型熱転写方式としては、例えば、インクジェット方式、及び溶融型熱転写方式が挙げられ、印字面である印字改善層の種類によって適宜選択することができる。
【0060】
上記写真画像又は記号情報は、インクジェット方式で形成されたものである場合、公知の光硬化性を有するインクジェットインク(以下、UVインクジェットインクということがある。)により形成されたものであっても良い。
UVインクジェットインクは、顔料や分散剤の他、光硬化性樹脂を含む。分散剤としては、従来公知のインクジェットインクに用いられている分散剤を用いることができ、例えば、Avecia社製のソルスパース24000が挙げられる。光硬化性樹脂としては、従来公知の光硬化性樹脂を用いることができ、例えば、東亞合成(株)製のアロンオキセンタンOXT−221が挙げられる。
【0061】
(保護層)
本発明における保護層は、印字改善層上に必要に応じて設けられ、当該記号情報の耐久性や耐熱性を高めるはたらきを有する層である。
保護層の材料には、上記印字改善層で挙げた光硬化性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂、添加剤や溶剤を用いることができる。保護層も印字改善層と同じく、貼り合わせ(転写)や塗設により形成しても良い。
【0062】
(クッション層)
クッション層は、第一の基材と受像層の間に、写真画像の元となるデジタルデータを、ノイズを抑えて再現性良く受像層上に印字し、印字品質を高めるために必要に応じて設けられる層である。
クッション層を形成する材料としては、従来公知のポリエチレン等の熱可塑性樹脂を用いることができる。
クッション層の形成方法は特に限定されず、従来公知のクッション層の形成方法を用いることができ、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂をロールコータ法等の従来公知の塗布方法で塗布し、塗膜とし、乾燥させればよい。
【0063】
(筆記層)
筆記層は、IDカードの第一の基材の受像層とは反対側の面や、後述するICカードの第二の基材の接着剤層とは反対側の面、すなわち、IDカードやICカードの裏面に上記記号情報とは異なる記号情報を筆記できるように設ける層である。
筆記層を形成する材料としては、従来公知の筆記層の材料を用いればよく、例えば、炭酸カルシウム等の無機微細粉末をポリエチレン等の熱可塑性樹脂のシートに含有させて形成することができる。
【0064】
(ICカード)
本発明に係るICカードは、前記IDカードの第一の基材の受像層とは反対側の面に、第二の基材が設けられ、
当該第一の基材と第二の基材の間に、ICチップ、補強板、及びアンテナを含むインレット並びに接着剤層を備えていることを特徴とする。
【0065】
ICカードの未印画カードは、IDカードの未印画カードよりも、第二の基材、接着剤層、及びインレットを有するためその構成や製造工程が複雑となる。そのため、一般にICカードを製造する場合、非ICカードを製造する場合に比べて、基材や接着剤層の端部から生ずるゴミやプリンター内部に存在する微細なゴミの影響を受けやすくなり、記号情報の文字欠陥が多くなる問題がある。
【0066】
これに対して、本発明に係るICカードは、上記IDカードで述べたように、印字改善層を有し、当該印字改善層上に記号情報を有する。これにより、微細なゴミが印字改善層により閉じ込められ、きれいな印字改善層上に記号情報が設けられていることにより、非ICカードよりも構成や工程が複雑なICカードにおいても、文字欠陥が抑えられ、印字品質の高いICカードとなる。
【0067】
図3は、本発明に係るICカードの層構成の一例を模式的に示した図である。
第一の基材10の受像層20側は、図1の構成と同じであり、未印画カード30は、第一の基材10の受像層20とは反対側の面に第二の基材11が設けられており、第一の基材10と第二の基材11の間に、ICチップ、補強板、及びアンテナを含むインレット100並びに接着剤層110を備えている。
【0068】
本発明に係るICカードにおける第一の基材、受像層、印字改善層、保護層、クッション層、及び筆記層、並びに写真画像、及び記号情報は、上記IDカードで説明したものと同様である。
【0069】
以下、本発明に係るICカードにおける未印画カード、第二の基材、インレット、及び接着剤層について説明する。
【0070】
(ICカードの未印画カード)
本発明に係るICカードの未印画カードは、図3の未印画カード30として示すように、第一の基材の一面側に受像層を備え、当該第一の基材の受像層とは反対側の面に第二の基材が設けられ、当該第一の基材と第二の基材の間に、ICチップ、補強板、及びアンテナを含むインレット並びに接着剤層を備えている。ICカードの未印画カードは上記IDカードの未印画カードと同様に、上記写真画像や記号情報を印字するための台紙や白紙を意味するものである。
【0071】
(第二の基材)
第二の基材は、上記第一の基材と同様の材料を用いることができる。
第二の基材の接着剤層とは反対側の面には、上記IDカードで説明した筆記層や受像層を設けても良い。当該筆記層があることにより、ICカードの第二の基材の接着剤層とは反対側の面、すなわちICカードの裏面に筆記が可能となる。また、第二の基材の接着剤層とは反対側に受像層が設けられている場合は、当該受像層に、第一の基材上に設けられた受像層に印字される写真画像と異なる写真画像や記号情報を印字することも可能となる。
【0072】
(インレット)
本発明において用いるインレットは、少なくともICチップ、補強板、及びアンテナを含む電子部品であり、従来公知のICカード用のICチップ、補強板、及びアンテナを含むインレットを用いることができる。
【0073】
ICチップは、当該ICカードの利用者の情報を電気的に記憶するものであり、メモリのみやメモリに加えてマイクロコンピュータを有するものであっても良い。
【0074】
補強板は、ICチップにかかる荷重や衝撃からICチップを保護するために設ける金属製の板である。当該金属としては、従来公知の補強板用の金属を用いることができ、例えば、ステンレスが挙げられる。
【0075】
アンテナは、ICチップに接続されたコイル状のアンテナである。アンテナは、導電性ペースト印刷加工、銅箔エッチング加工、又は巻線溶着加工等のいずれの方法を用いて形成されたものでもよい。
【0076】
ICチップとアンテナとの接合は従来公知の接合方法を用いればよく、例えば、銀ペースト、銅ペースト等の導電性接着剤を用いる方法が挙げられる。
【0077】
本発明に係るICカードにおいて用いるインレットは、第一の基材と第二の基材の間に後述する接着剤層を介して設けられる際に、硬化又は固化する前の接着剤の流動による剪断力で接合部が外れたり、接着剤の流動や硬化等に起因して第一の基材と第二の基材の間における配置位置が移動することを防ぐため、上記ICチップ、アンテナ、及び補強板を、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂基材の一面側若しくは両面側に配置し固定した樹脂基材インレットを用いることが好ましい。当該樹脂基材は従来公知のインレットの樹脂基材を用いて良く、例えば、多孔質樹脂基材でもよく、可撓性を有していても良い。
【0078】
また、当該樹脂基材インレットの他、上記ICチップ、アンテナ、及び補強板を、2枚の不織布の間に配置し固定した不織布インレットも好ましく用いることができる。
【0079】
(接着剤層)
接着剤層は、第一の基材と第二の基材の間において、インレットを固定するための層であり、硬化又は固化した接着剤により形成される。
接着剤層を形成する接着剤としては、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)ホットメルト接着剤や、イソシアネート末端を有するウレタン樹脂等の反応性ホットメルト接着剤等の従来公知のICカードにおいてインレットを固定するのに用いられている接着剤を用いることができる。
【0080】
(IDカードの製造方法)
本発明に係るIDカードの製造方法は、第一の基材の一面側に、識別対象及び/又は当該識別対象に関連する物の外観を写し撮った写真画像、及び識別対象を特定するための記号情報が印字されているIDカードの製造方法であって、
(A)当該第一の基材の一面側に受像層を備えてなる未印画カードを準備する工程、
(B)当該未印画カードの受像層上に、当該写真画像を昇華型熱転写方式により印字する工程、
(C)当該受像層上に、印字改善層を形成する工程、
(D)当該印字改善層上に、非昇華型熱転写方式により当該記号情報を印字する工程、を含むことを特徴とする。
【0081】
一般にIDカードの写真画像は昇華型熱転写方式により印字され、そして記号情報は非昇華型熱転写方式により印字され、微妙な濃度階調を表現する必要のある写真画像の受像層上への印字が一般に記号情報の印字よりも先に行われる。そのため、写真画像を印字した後に記号情報を印字する際に、受像層を有する基材の端部から生ずる微細な基材屑や、ローラ等のプリンター内部の部品の駆動により生じてプリンター内部に蓄積した微細な部品屑等のゴミが、記号情報の印字面に散在し、当該ゴミ上に印字が行われると文字欠けや文字抜け等の文字欠陥が生じ、IDカードの印字品質が低下するという問題があった。
【0082】
これに対して、本発明に係るIDカードの製造方法では、写真画像が昇華型熱転写方式により印字され、記号情報が非昇華型熱転写方式により印字される場合であっても、(C)工程において当該受像層上に、印字改善層を形成することにより、当該面に散在している微細なゴミが印字改善層により閉じ込められる。そして、(D)工程においてそのきれいな印字改善層の表面に、記号情報を印字することにより、文字欠陥が抑えられ、印字品質の高いIDカードを製造することができる。
【0083】
以下、図4を用いながら(A)〜(D)の各工程について説明する。
【0084】
図4の(A)に示すように(A)工程では、上記IDカードで述べた第一の基材10の一面側に受像層20を備えてなる未印画カード30を準備する。
なお、後述するICカードを製造する場合を除き、(A)工程では第一の基材の両面に受像層を備えた未印画カードを準備しても良い。
【0085】
第一の基材に受像層を形成する場合は、上記IDカードの受像層で挙げた受像層の成分をバーコート法等の従来公知の塗布方法で第一の基材の一面側又は必要に応じて両面側に塗布し、受像層を形成すればよい。
【0086】
図4の(B)に示すように(B)工程では、未印画カード30の受像層20上に、写真画像40をデジタル印刷により印字する。
写真画像は濃度階調の表現に優れる昇華型熱転写方式により印字され、従来公知の昇華型熱転写方式を用いることができる。
【0087】
図4の(C)に示すように(C)工程では、受像層20上に印字改善層50を形成する。この印字改善層を形成することにより、写真画像を形成する工程までに生じた受像層上に散在している、基材の端部から生じた基材屑やカードプリンター内部に存在する部品屑等の微細なゴミが閉じ込められ、後の(D)工程において、きれいな印字改善層上に記号情報を印字する際に、当該微細なゴミによる文字欠け等の文字欠陥を抑え、記号情報の印字品質を高めることができる。
仮に、印字改善層形成時に抜けが発生したとしても、インクジェット方式、好ましくは光硬化性樹脂を含む組成物を用いたインクジェット方式による塗布を行えば、印字改善層に発生した凹凸を埋めることができるため問題ない。溶融型熱転写印字の場合は凹凸により生じる段差の影響を多少受ける可能性があるが、それを防止するために、ヘッドの出力設定を上げる、具体的には通電時間を延ばす、等の対策をとって調整できる。好ましくは印字改善層の下の基材の表面にオーバープリント用のニスを予め形成しておくと欠陥を生じた場合に有効である。
【0088】
印字改善層の形成方法は、上記IDカードの印字改善層において述べたように、転写性印字改善層を受像層上に熱転写することにより形成しても良いし、光硬化性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂を含む組成物を受像層上に塗布し、塗膜とし、光及び/又は熱により当該塗膜を硬化させて印字改善層を形成しても良い。その他、熱可塑性樹脂を含む組成物を塗布し、乾燥させて形成しても良い。
熱転写により形成する方法は、液(有機溶剤)を用いず、省スペースで装置を設置でき、簡便である。ゴミによる影響に対してはカード全面に印字改善層を熱転写することでゴミ全体を印字改善層が覆うことでカード表面の凹凸の傾斜を小さくし、ゴミによる表面の凹凸が印字性に与える影響を減少させることができる。
図5及び図6は印字改善層の有無による溶融型熱転写方式による印字性の違いを示した一例の模式図である。
図5では印字改善層が無く、受像層20上のゴミ120により印字ヘッドが印字対象面に接触しにくく印字性の低い領域130が存在する。このため、印字改善層が無い場合ではゴミにより文字欠けが起きやすい。これに対して、図6では、印字改善層50が設けられており、表面の凹凸の傾斜が印字改善層50の無い場合に比べて小さいため、印字ヘッドが印字改善層に接触しやすくなり領域140の印字性が向上する。
光硬化性樹脂を含む組成物をインクジェット方式で塗布し、光照射して硬化させ形成する方法では、印字対象となる面に大きめのゴミがあってもインクジェット方式によりゴミを液滴で覆うことができ、きれいな印字改善層を形成できる。
乾燥により形成する方法では、ゴミがあってもワイヤーバー等を用いて塗布厚みを制御でき、平らな塗布面が得られる。
印字改善層を形成するに際してこれらのいずれの方法を用いても良く、熱転写により形成する方法が簡便な点から好ましい。
【0089】
転写性印字改善層の受像層上への転写は、ヒートローラによる熱圧着等の従来公知の転写方法を用いて良い。
【0090】
光硬化性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂を含む組成物を受像層上に塗布する方法は、従来公知の塗布方法を用いてよく、上記受像層の塗布方法を用いることができる。
光硬化性樹脂を含む組成物の硬化方法は、従来公知の光硬化性樹脂組成物の硬化方法を用いてよく、例えば、高圧水銀灯による紫外線照射で行うことができる。
【0091】
熱硬化性樹脂を含む組成物の塗布後に行う加熱は、適宜調節して良く、例えば、50〜250℃で0.5〜300秒行えば良く、生産性の点から好ましくは1〜10秒である。
【0092】
上記IDカードの印字改善層で述べたように、印字改善層上には、後述する記号情報の印字改善層上への定着性や、定着した記号情報の耐久性を高めるためにエンボス加工等の微細凹凸を設ける表面処理を行っても良い。また、転写後に受像層とは反対側となる面にあらかじめ当該表面処理が行われた転写性印字改善層を用いて転写を行い、表面処理された面を有する印字改善層を設けても良い。
印字改善層上へ上記表面処理を行う方法としては、特に限定されず、従来公知のエンボス加工法等を用いればよく、例えば、微細凹凸を有するヒートローラを印字改善層上に接触させる方法が挙げられる。
【0093】
図4の(D)に示すように(D)工程では、印字改善層50上に、非昇華型熱転写方式により記号情報60を印字する。
非昇華型熱転写方式としては、具体的にはインクジェット方式又は溶融型熱転写方式を挙げることができる。
図5及び図6で説明したような受像層上にゴミが存在する場合、インクジェット方式では溶融型熱転写方式に比べて印字ヘッドの印字対象面への接触しやすさによる印字性の影響がないため、溶融型熱転写方式に比べて印字品質が良い。
【0094】
(C)工程において受像層上に印字改善層を設けているため、本発明に係るIDカードの製造方法は、写真画像が昇華型熱転写方式により印字され、且つ、記号情報が非昇華型熱転写方式により印字される方法であっても高い印字品質を得ることができる。
【0095】
(D)工程の記号情報の印字をインクジェット方式により行う場合、当該インクジェットインクがUVインクジェットインクであることが、印字改善層上へ記号情報の印字を行い易い点から好ましい。
UVインクジェットインクに用いる成分としては、上記IDカードのUVインクジェットインクで挙げたものを用いることができる。
【0096】
本発明に係るIDカードの製造方法においては、図示しないが前記(D)工程の後に、(E)前記印字改善層上に、保護層を形成する工程、を含むことが、記号情報の耐久性及び耐熱性を高められる点から好ましい。
保護層も印字改善層と同じく、貼り合わせ(転写)や塗設により形成しても良い。ただし、転写により形成する場合に比べて塗設により保護層を形成する場合は硬化時に収縮し、剥離が生じることがあり、IDカードやICカードとしての使用時に熱がかかることにより保護層の剥離の原因となるおそれがある。また、塗設により保護層を形成する場合は塗布ムラにより耐熱強度や耐摩擦性にムラが生じるおそれもある。その他、カード断面(端部)に余分な塗布液が付着し、その部分から劣化が始まり保護層全体の劣化の引き金となるおそれもある。これに対して、転写により形成する場合はこれらのおそれが少なく、耐熱性の良好な保護層が得られやすい。
【0097】
(ICカードの製造方法)
本発明に係るICカードの製造方法は、上記IDカードの製造方法における未印画カードが、上記構成を有するものであればよく、上記(A)工程において当該構成を有する未印画カードを準備しても良いし、その製造工程の途中において、第一の基材の受像層とは反対側の面に、当該構成となるように接着剤層、インレット、及び第二の基材を設けても良い。一般に写真画像や記号情報をICカードの所定位置に位置合わせすることから製造工程の途中において当該構成を有する未印画カードとするよりも、上記IDカードの製造方法で述べた(A)工程において当該構成を有する未印画カードを準備することが好ましい。
【0098】
(ICカードの未印画カードの準備)
ICカードの未印画カードは、従来公知の方法により準備すればよく、ICカードの用途、ICカードに設ける情報の種類に応じて適宜選択して準備すればい。
例えば、受像層を一面側に有する第一の基材を準備し、当該第一の基材の受像層とは反対側の面に接着剤を塗布し、次いで塗布した接着剤上の所望の位置にインレットを配置し、さらに第一の基材の受像層とは反対側の面に接着剤を塗布し、次いで第二の基材を貼り合わせ積層体として、次いで当該積層体を所望のカード形状に打ち抜いて準備しても良い。
【0099】
この他、例えば、受像層を一面側に有する第一の基材を準備し、当該第一の基材の受像層とは反対側の面に接着剤を塗布し、次いで塗布した接着剤上の所望の位置にインレットを配置し、第二の基材の第一の基材と貼り合わせる面に接着剤を塗布し、当該インレットを配置した第一の基材と当該接着剤を塗布した第二の基材を貼り合わせ積層体として、次いで当該積層体を所望のカード形状に打ち抜いて準備しても良い。
【0100】
また、上記方法における第一の基材と第二の基材を入れ替え、第二の基材の一面側に接着剤を塗布し、次いで塗布した接着剤上の所望の位置にインレットを配置し、第一の基材の受像層とは反対側の面に接着剤を塗布し、当該インレットを配置した第二の基材と当該接着剤を塗布した第一の基材を貼り合わせ積層体として、次いで当該積層体を所望のカード形状に打ち抜いて準備しても良い。
【0101】
(接着剤層の形成)
接着剤層の接着剤は上記IDカードの接着剤層で挙げた接着剤を用いることができる。
接着剤の塗布方法は、特に制限されず、スクリーン印刷法等の従来公知の塗布方法を用いることができる。
【0102】
(第一の基材と第二の基材の貼り合わせ)
第一の基材と第二の基材の貼り合わせ時には、未印画カードの平滑性、第一の基材、及び第二の基材と接着剤層の密着性、並びにインレットと接着剤層の密着性を高めるために、加熱及び加圧を行うことが好ましい。このような加熱及び加圧方法としては、ラミネート方式等の従来公知の方法を用いることができる。
【0103】
本発明に係るICカードの製造方法では、ICカードの未印画カードにフォーマットを形成する工程を設けても良い。未印画カードを準備した後にフォーマットを形成しても良いし、未印画カードとなる前の基材に受像層を設け、当該受像層上にフォーマットを形成しても良い。
【0104】
フォーマットを形成する方法としては、特に限定されず、オフセット印刷や溶融型熱転写方式等から、対象となるフォーマットの種類に応じて適宜選択すればよい。
【0105】
(カードの打ち抜き)
カードの打ち抜きは、特に限定されず、パンチダイ方式等の従来公知の方法で行うことができる。
【実施例】
【0106】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。なお、特に記載がない限り、部は重量部を表す。
【0107】
第一の基材として枚葉シート状の帝人デュポンフィルム(株)製U2L98W低熱収グレード(厚さ188μm)を使用した。
第二の基材として長尺ウェブ状の帝人デュポンフィルム(株)製U2L98W低熱収グレード(厚さ188μm)を使用した。
【0108】
(クッション層の形成)
第一の基材の一面側に下記クッション層用組成物を塗布し、90℃/30secで乾燥を行い、次いで水銀灯(300mJ/cm)で光硬化を行い、膜厚10μmのクッション層を形成した。
(クッション層用組成物)
ウレタンアクリレートオリゴマー(新中村化学工業(株)製:NKオリゴUA512):55部
ポリエステルアクリレート(東亞合成(株)製:アロニックスM6200):15部
ウレタンアクリレートオリゴマー(新中村化学工業(株)製:NKオリゴUA4000):25部
ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・ジャパン(株):イルガキュア184):5部
メチルエチルケトン:100部
【0109】
(受像層の形成)
上記クッション層上に下記組成の第1〜第3の受像層用組成物をこの順に塗布乾燥して、それぞれの厚みが0.2μm、2.5μm、及び0.5μmの第1〜第3の受像層を形成した。
(第1受像層用組成物)
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業(株)製:エスレックBL−1):9部
イソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製:コロネートHX):1部
メチルエチルケトン:80部
酢酸ブチル:10部
(第2受像層用組成物)
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業(株)製:エスレックBX−1):6部
金属イオン含有化合物(下記化学式1で表わされる化合物MS):4部
メチルエチルケトン:80部
酢酸ブチル:10部
(第3受像層用組成物)
ポリエチレンワックス(東邦化学工業(株)製:ハイテックE1000):2部
ウレタン変性エチレンアクリル酸共重合体(東邦化学工業(株)製:ハイテックS6254):8部
メチルセルロース(信越化学工業(株)製:SM15):0.1部
水:90部
【0110】
【化1】

【0111】
(受像層へのフォーマットの印刷)
上記第3の受像層上にオフセット印刷法により、フォーマット(従業員証及び氏名)を印刷した。印刷はUV墨インキを用いて、高圧水銀灯で200mJ/cmで光照射した。
【0112】
(筆記層の形成)
第二の基材の一面側に下記組成の第1〜第3の筆記層用組成物をこの順に塗布乾燥して、それぞれの厚みが5μm、15μm、及び0.2μmの第1〜第3の筆記層を形成した。
(第1筆記層用組成物)
ポリエステル樹脂(東洋紡績(株)製:バイロン200):8部
イソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製:コロネートHX):1部
二酸化チタン粒子(石原産業(株)製:CR80):1部
メチルエチルケトン:80部
酢酸ブチル:10部
(第2筆記層用組成物)
ポリエステル樹脂(東洋紡績(株)製:バイロナールMD1200):4部
シリカ:5部
二酸化チタン粒子(石原産業(株)製:CR80):1部
水:90部
(第3筆記層用組成物)
ポリアミド樹脂(三和化学工業(株)製:サンマイド55):5部
メタノール:95部
【0113】
(筆記層へのフォーマットの印刷)
上記第3の筆記層上にオフセット印刷法により、フォーマット(罫線、発行者名、発行者電話番号)を印刷した。印刷はUV墨インキを用いて、高圧水銀灯で200mJ/cmで光照射した。
【0114】
(インレットの作製)
帝人デュポンフィルム(株)製Sシリーズテトロンフィルム上に厚さ10μmのアルミニウム箔を蒸着させた後、アンテナ線の形態のようにエッチング処理をした。こうして得られたベースシートの上にICチップ、補強板を設置し、ICカード用インレットとした。
【0115】
(未印画カードの作製)
第二の基材の筆記層とは反対側の面、及び第一の基材の受像層とは反対側の面にTダイ塗布方式により接着剤として積水化学工業(株)製エスダイン2013MKを塗布し、第一の基材の接着剤上にインレットを配置し、第一の基材のインレットを配置した面と第二の基材の接着剤を塗布した面を向かい合わせて、加熱加圧ロール、(圧力3kgf/cm、ロール表面温度70℃)により貼り合わせ、膜厚740μmの積層体とした。
【0116】
上記貼り合わせた積層体をローターリカッターにより寸法55mm×85mmのブランクカードに打ち抜いた。
【0117】
(昇華型熱転写記録用のインクシートの作製)
一面側に融着防止加工した厚さ6μmのポリエチレンテレフタレートシートの当該加工とは反対側の面に下記組成のイエローインク層用組成物、マゼンタインク層用組成物、シアンインク層用組成物をそれぞれ厚みが1μmになる様に設け、イエロー、マゼンタ、シアンの3色のインクシートを得た。
【0118】
(イエローインク層用組成物)
イエロー染料(三井東圧染料(株)製:MS Yellow):3部
ポリビニルアセタール(電気化学工業(株)製:デンカブチラールKY−24):5.5部
ポリメチルメタアクリレート変性ポリスチレン(東亞合成(株)製:レデダGP−200):1部
ウレタン変性シリコンオイル(大日精化工業(株)製:ダイアロマーSP−2105):0.5部
メチルエチルケトン:70部
トルエン:20部
(マゼンタインク層用組成物)
マゼンタ染料(三井東圧染料(株)製:MS Magenta):2部
ポリビニルアセタール(電気化学工業(株)製:デンカブチラールKY−24):5.5部
ポリメチルメタアクリレート変性ポリスチレン(東亞合成化学工業(株)製:レデダGP−200):2部
ウレタン変性シリコンオイル(大日精化工業(株)製:ダイアロマーSP−2105):0.5部
メチルエチルケトン:70部
トルエン:20部
(シアンインク層用組成物)
シアン染料(日本化薬(株)製 カヤセットブルー136):3部
ポリビニルアセタール(電気化学工業(株)製:デンカブチラールKY−24):5.6部
ポリメチルメタアクリレート変性ポリスチレン(東亞合成(株)製:レデダGP−200):1部
ウレタン変性シリコンオイル(大日精化工業(株)製:ダイアロマーSP−2105):0.5部
メチルエチルケトン:20部
【0119】
(溶融型熱転写記録用のインクシートの作製)
一面側に融着防止加工した厚さ6μmのポリエチレンテレフタレートシートの当該加工とは反対側の面に下記組成のインク層用組成物を塗布乾燥して厚み2μmのインクシートを得た。
(インク層形成用塗工液)
カルナバワックス:1部
エチレン酢酸ビニル共重合体(三井デュポンケミカル社製:EV40Y):1部
カーボンブラック:3部
フェノール樹脂(荒川化学工業(株)製:タマノル521):5部
メチルエチルケトン:90部
【0120】
(UVインクジェットインクの調製)
下記イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、及びブラックインクを調製し、UVインクジェットインクとした。
(イエローインクの調製)
下記組成からなるイエロー顔料分散物を調製した。
C.I.Pigment Yellow−180:15部
分散剤(Avecia製、ソルスパース24000):2部
アロンオキセタンOXT−221(東亞合成(株)製):83部
次いで、得られたイエロー顔料分散物を含めて以下の配合を行い、0.8μmのメンブレンフィルターにて濾過し、50℃に加熱しながら減圧によって脱水し、イエローインクを得た。
イエロー顔料分散物:17部
アロンオキセタンOXT−221(東亞合成(株)製):70部
セロキサイド2021P(ダイセルUCB製):30部
UVI−6990(ダウケミカル製、光酸発生剤):5部
【0121】
(マゼンタインクの調製)
上記イエローインクの調製において、C.I.Pigment Yellow−180に代えて、C.I.Pigment Red−146を用いた以外は同様にしてマゼンタインクを調製した。
【0122】
(シアンインクの調製)
下記組成からなるシアン顔料分散物を調製し、シアン顔料分散物の配合量を12部とした以外はイエローインクと同様に調製した。
C.I.Pigment blue15:4 :20部
分散剤(Avecia製、ソルスパース24000):3部
アロンオキセタンOXT−221(東亞合成(株)製):77部
【0123】
(ブラックインクの調製)
上記シアンインクの調製において、C.I.Pigment blue15:4に代えて、C.I.Pigment Black7を用いて、ブラック顔料分散物の配合量を15部とした以外は同様にしてブラックインクを調製した。
【0124】
(転写性印字改善層、転写性保護層、及び転写体の作製)
厚さ0.1μmのフッ素樹脂層の離型層を一面側に設けた厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを2つ用意し、それぞれの当該離型層上に、下記活性光線硬化層と中間層と接着層順に積層し、そのうちの一つを実施例において転写性印字改善層として用いた。また、一つを実施例と比較例において転写性保護層として用いた。
(活性光線硬化層形成塗工液)
光硬化性樹脂(新中村化学社製:A−9300(エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート)35部/新中村化学社製:EA−1020(ビスフェノールAタイプエポキシアクリレート系化合物)11.75部):46.75部
イルガキュア184(チバ・ジャパン(株)製):5部
添加剤不飽和基含有樹脂(新中村化学工業(株)製:NKポリマー MK100WL−5):48部
界面活性剤(DIC(株)製:F−179):0.25部
(中間層形成塗工液) 膜厚1.0μm
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学(株)製:エスレックBX−1):3.5部
タフテックスM−1913(旭化成(株)製):5部
ポリイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製:コロネートHX):1.5部
メチルエチルケトン:90部
(接着層形成塗工液) 膜厚0.5μm
ウレタン変性エチレンエチルアクリレート共重合体(東邦化学工業(株)製:ハイテックS6254B):8部
ポリアクリル酸エステル共重合体(日本純薬(株)製:ジュリマーAT510):2部
水:45部
エタノール:45部
【0125】
(塗布用組成物の調製)
下記組成を有する組成物を調製し、得られた溶液をフィルターで濾過した。
脂環式エポキシ化合物(ダイセル化学社製:CEL2021P):22部
オキセタン(東亞合成(株)製:OXT221):73部
ヨードニウム塩((株)三和ケミカル製:IBPF):2.6部
チオキサントン(日本化薬(株)製:DETX):2.4部
次いで上記濾液を含めて以下の配合を行い、組成物を調製し、実施例2、5、7及び比較例5では塗布用保護層用組成物として用い、実施例8では塗布用保護層用組成物及び塗布用印字改善層用組成物として用いた。
上記濾液:100部
フッ素系活性剤(DIC(株)製:メガファックF−142D):4部
フェノキシエチルアクリレート(共栄社化学製:POA):0.1部
【0126】
(実施例1)
上記未印画カードの受像層と、上記昇華型感熱転写記録用のインクシートのインク側を重ね合わせ、インクシート側からサーマルヘッドを用いて出力0.23W/ドット、パルス幅0.3〜4.5m秒、ドット密度16ドット/mmの条件で加熱することにより画像に階調性のある人物の写真画像を受像層に印字した。
写真画像の印字された受像層上に上記転写性印字改善層を重ね合わせ、表面温度200℃に加熱した、直径5cmゴム硬度85のヒートローラーを用いて圧力150kgf/cmで1.2秒間熱をかけて、転写性印字改善層を転写した。
次いで、転写した後の印字改善層に調製した上記UVインクジェットインクを用いて、液滴サイズ7pl、ノズルピッチ360dpiとなるように記録ヘッドから吐出させ、光照射(光照射源60W/cm、照射距離10cm、照射方法3cm/分で光走査)により硬化させ、カード上に記号情報を印字した。
次いで、記号情報の印字された印字改善層上に、上記転写性保護層を重ね合わせ、表面温度200℃に加熱した、直径5cmゴム硬度85のヒートローラーを用いて圧力150kgf/cmで1.2秒間熱をかけて、転写性保護層を転写して保護層を形成し、実施例1のICカードを作製した。
【0127】
(実施例2)
実施例1と同様に記号情報の印字までを行い、次いで、上記塗布用保護層用組成物をワイヤーバー法により塗布し、光照射(光照射源60W/cm、照射距離10cm、照射方法3cm/分で光走査)により硬化させ、保護層を形成し、実施例2のICカードを作製した。
【0128】
(実施例3)
実施例1と同様に転写性印字改善層の転写までを行い、次いで、その印字改善層上にキャノン製インクジェットプリンタPIXUS6500iのヘッド部、インク供給部、等の印字ユニットをカードプリンタに組み込みインクジェット方式で記号情報を印字した。
次いで、記号情報の印字された印字改善層上に、実施例1と同様に転写性保護層を転写して保護層を形成し、実施例3のICカードを作製した。
【0129】
(実施例4)
実施例1と同様に転写性印字改善層の転写までを行い、次いで、その印字改善層に直径3μm、高さ5μmのエンボスが全面についた金属製エンボスロールを圧力150kgf/cmで接触させることによりエンボス加工処理し、次いで、エンボス加工処理した後の印字改善層上に実施例3と同様のインクジェット方式で記号情報を印字した。
次いで、記号情報の印字された印字改善層上に、実施例1と同様に転写性保護層を転写して保護層を形成し、実施例4のICカードを作製した。
【0130】
(実施例5)
実施例4と同様にエンボス加工、及び記号情報の印字までを行い、次いで実施例2と同様に塗布用保護層用組成物を塗布し、光照射により硬化させ保護層を形成し、実施例5のICカードを作製した。
【0131】
(実施例6)
実施例1と同様に転写性印字改善層の転写までを行い、次いで、溶融型熱転写記録用のインクシートのインク側を重ね合わせインクシート側からサーマルヘッドを用いて出力0.5W/ドット、パルス幅1.0m秒、ドット密度16ドット/mmの条件で加熱することにより記号情報を印字改善層上に印字した。次いで、実施例1と同様に転写性保護層を転写し、実施例6のICカードを作製した。
【0132】
(実施例7)
実施例6と同様に記号情報の印字までを行い、次いで実施例2と同様に塗布用保護層用組成物を塗布し、光照射により硬化させ保護層を形成し、実施例7のICカードを作製した。
【0133】
(実施例8)
実施例1と同様に写真画像の印時までを行い、次いで塗布用印字改善層用組成物として調製した上記塗布用組成物を液滴サイズ7pl、ノズルピッチ360dpiとなるように記録ヘッドから吐出させ、光照射(光照射源60W/cm、照射距離10cm、照射方法3cm/分で光走査)により硬化させ、カード上に印字改善層を形成した。そして印字改善層上に実施例1と同様に記号情報を印字した。次いで、塗布用保護層用組成物として調製した上記塗布用組成物を液滴サイズ7pl、ノズルピッチ360dpiとなるように記録ヘッドから吐出させ、光照射(光照射源60W/cm、照射距離10cm、照射方法3cm/分で光走査)により硬化させ、保護層を形成し、実施例8のICカードを作製した。
【0134】
(比較例1)
実施例1と同様に写真画像の印字までを行い、次いで、実施例1と同様に記号情報を印字した。
そして、写真画像及び記号情報の印字された受像層上に、実施例1と同様に転写性保護層を転写して保護層を形成し、比較例1のICカードを作製した。
【0135】
(比較例2)
実施例1と同様に写真画像の印字までを行い、次いで、実施例3と同様に記号情報を印字した。
そして、写真画像及び記号情報の印字された受像層上に、実施例1と同様に転写性保護層を転写して保護層を形成し、比較例2のICカードを作製した。
【0136】
(比較例3)
実施例1と同様に写真画像の印字までを行い、次いで、実施例6と同様に記号情報を印字した。
そして、写真画像及び記号情報の印字された受像層上に、実施例1と同様に転写性保護層を転写して保護層を形成し、比較例3のICカードを作製した。
【0137】
(比較例4)
比較例2と同様に転写性保護層の転写による保護層の形成までを行い、次いでその一つ目の保護層上にさらに二つ目の転写性保護層を転写し二つ目の保護層を形成し、比較例4のICカードを作製した。
【0138】
(比較例5)
比較例4と同様に転写性保護層の転写による保護層の形成までを行い、次いでその一つ目の保護層上にさらに実施例2と同様の保護層用組成物を塗布し、光照射により硬化させ、二つ目の保護層を形成し、比較例5のICカードを作製した。
【0139】
実施例1〜8、及び比較例1〜5のICカードの構成をまとめたものを表1に示す。なお、各実施例において印字改善層の厚さを5μmとし、各実施例及び比較例において保護層の厚さ(比較例4及び5においては各保護層の厚さ)を10μmとした。
【0140】
【表1】

【0141】
(ICカードの特性)
得られた実施例1〜8、及び比較例1〜5のICカードについて、文字欠け、券面耐久性(耐水性)、及び耐熱性を以下のように評価し、その結果を表2にまとめた。
【0142】
(文字欠け評価)
文字欠けを以下のA〜E段階で評価した。なお、AとBが合格、C〜Eは不合格である。
A:文字欠けがなく文字品質が鮮明である。
B:文字欠けがなく、文字品質が判読可能なレベルである。
C:文字欠けが一部発生している部分がある。
D:文字欠けが文字部分の約半数に発生している。
E:文字欠けが文字部分全体に発生している。
【0143】
(耐水性評価)
得られたICカードを水温25℃の水道水に3日浸積し、カード表面を観察した。評価は目視で下記基準で評価した。なお、◎と○が合格、△と×は不合格である。
◎:初期のカードと変化がない。
○:カード端部に若干水泡があるがカード表面には水泡がない。
△:カード表面に水泡がでている。
×:保護層が剥がれている。
【0144】
(耐熱性評価)
得られたICカードを、90℃、80%環境下で2週間保管し、耐熱性を評価した。評価は下記基準で評価した。なお、○と△が合格、×は不合格である。
○:初期のカードと変化がない。
△:保護層に浮きが発生した箇所があるが、文字を全て判読可能である。
×:保護層に浮きが発生し、文字を判読不可能な箇所がある。
【0145】
【表2】

【0146】
(結果のまとめ)
表2より、実施例1〜8では文字欠け、耐水性及び耐熱性の評価で合格基準の結果が得られた。
文字欠けについては、実施例1、2、3及び8はインクジェット方式により印字されているため、溶融型熱転写による印字やエンボス加工処理上への印字に比べて印字対象となる面の微細な凹凸の影響を受けず文字欠け評価がAと特に優れた結果になった。
実施例1は実施例3に比べて記号情報を耐久性の高いUVインクジェットインクを用いて印字を行っているため耐水性が優れた結果となった。実施例4及び5は実施例3に比べてエンボス加工を施しているため、印字品質は評価Bとなったが、印字改善層と保護層との密着性が向上し、耐水性が向上した。
実施例1〜8の耐熱性については、ワイヤーバー法による塗布よりも転写性保護層やインクジェット方式による保護層が塗布ムラやカード端部への余分な保護層用組成物の付着がないため良好な結果となった。
比較例1〜5は印字改善層が無いため、それぞれ同様の記号情報の印字方法を採用している実施例に比べて文字欠けが生じ、印字品質が不良となった。これらを比較すると、UVインクジェットインクを用いてインクジェット方式により印字を行った比較例1が評価Cとなった。次いでインクジェット方式により印字を行った比較例2、4及び5が評価Dとなり、溶融型熱転写方式の比較例3は受像層上のゴミの影響を最も受け、評価Eとなった。
比較例の耐水性を比較すると、耐水性(耐久性)の良いUVインクジェットインクを用いた比較例1や保護層を2層設けた比較例4及び5はカード表面に水泡が出てしまい、インクの耐水性が低い比較例2と文字欠け評価がEで印字品質が悪く、印字不良による微細なゴミや空隙の多い比較例3では保護層が剥がれてしまった。
比較例1〜5の耐熱性の評価は、耐水性と同様に、カード表面部分の保護層に浮きが発生したため文字の判読が不可能な箇所があった。
【符号の説明】
【0147】
1 IDカード
2 ICカード
10 第一の基材
11 第二の基材
20 受像層
30 未印画カード
40 写真画像
50 印字改善層
60 記号情報
70 保護層
80 クッション層
90 筆記層
100 インレット
110 接着剤層
120 ゴミ
130 印字ヘッドが当りにくく印字性が低い領域
140 印字性が向上した領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の基材の一面側に、識別対象及び/又は当該識別対象に関連する物の外観を写し撮った写真画像、及び識別対象を特定するための記号情報が印字されているIDカードであって、
当該第一の基材の一面側に受像層が設けられており、
当該受像層に、当該写真画像が印字されており、
当該受像層上に、印字改善層が設けられており、
当該印字改善層上に、当該記号情報が印字されていることを特徴とする、IDカード。
【請求項2】
前記印字改善層上に保護層が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のIDカード。
【請求項3】
前記写真画像が昇華型熱転写方式により形成された写真画像であり、且つ、前記記号情報が非昇華型熱転写方式により形成された記号情報であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のIDカード。
【請求項4】
前記第一の基材と前記受像層の間にクッション層を有することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のIDカード。
【請求項5】
前記請求項1乃至4のいずれか一項に記載のIDカードの第一の基材の受像層とは反対側の面に、第二の基材が設けられ、
当該第一の基材と第二の基材の間に、ICチップ、補強板、及びアンテナを含むインレット並びに接着剤層を備えていることを特徴とする、ICカード。
【請求項6】
第一の基材の一面側に、識別対象及び/又は当該識別対象に関連する物の外観を写し撮った写真画像、及び識別対象を特定するための記号情報が印字されているIDカードの製造方法であって、
(A)当該第一の基材の一面側に受像層を備えてなる未印画カードを準備する工程、
(B)当該未印画カードの受像層上に、当該写真画像を昇華型熱転写方式により印字する工程、
(C)当該受像層上に、印字改善層を形成する工程、
(D)当該印字改善層上に、非昇華型熱転写方式により当該記号情報を印字する工程、を含むことを特徴とする、IDカードの製造方法。
【請求項7】
前記(D)工程の後に、(E)前記印字改善層上に、保護層を形成する工程、を含むことを特徴とする、請求項6に記載のIDカードの製造方法。
【請求項8】
前記未印画カードが前記第一の基材と前記受像層の間にクッション層を備えていることを特徴とする、請求項6又は7に記載のIDカードの製造方法。
【請求項9】
前記(C)工程において、支持体の一面側に転写性印字改善層が設けられている転写体を用いて、当該転写体の当該転写性印字改善層を転写して、前記印字改善層を形成することを特徴とする、請求項6乃至8のいずれか一項に記載のIDカードの製造方法。
【請求項10】
前記(E)工程において、支持体の一面側に転写性保護層が設けられている転写体を用いて、当該転写体の当該転写性保護層を転写して、前記保護層を形成することを特徴とする、請求項7乃至9のいずれか一項に記載のIDカードの製造方法。
【請求項11】
前記請求項6乃至10のいずれか一項に記載の未印画カードが、前記第一の基材の受像層とは反対側の面に、第二の基材が設けられ、
当該第一の基材と第二の基材の間に、ICチップ、補強板、及びアンテナを含むインレット並びに接着剤層を備えている未印画カードであることを特徴とする、ICカードの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−287041(P2010−287041A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−140277(P2009−140277)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】