説明

IH中華レンジ

【課題】 中華レンジ毎に設定されている中華鍋の径の許容範囲を大幅に広げることができるIH中華レンジを提供する。
【解決手段】 IH中華レンジは、釜枠10に取り外し可能に装着されて、異なる径の中華鍋の底とトッププレート20との間隔を最適な距離に維持することのできるアダプタ60を備える。アダプタ60を釜枠10に装着して、中華レンジ毎に設定されている中華鍋P2、P3の径の許容範囲よりも小さい径の中華鍋P1を乗せると、中華鍋P1は、本来釜枠10に支持される位置よりも内周寄り(底に近い)の位置でアダプタ60に支持され、鍋底とトッププレート10との間の間隔を最適な距離に維持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に業務用に使用されるIH中華レンジに関する。特には、異なる径の中華鍋を用いることができ、各々の鍋に対して最適な火加減(加熱力、温度分布)を得ることができるIH中華レンジに関する。
【背景技術】
【0002】
飲食店業界では、近年、厨房環境の改善、衛生管理システムの改善、ランニングコストの低減、厨房面積のコンパクト化などを目的として、加熱調理器の熱源にIH(電磁誘導加熱)を利用した業務用電化厨房の導入が促進されている。このようなIH化は、ラーメンやうどんをゆでるゆで麺機などには既に普及しており、中華レンジにも波及しつつある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
中華レンジでは主に中華鍋が使用されるが、料理の種類や食材の量によって様々なサイズの中華鍋が用意されている。代表的なサイズ(径)は、450mm、540mm、600mm及び700mmである。IH中華レンジの釜枠の寸法は、一般に特定の径の中華鍋に合わせて設計されている。このような中華レンジに、径が大きく異なる中華鍋を乗せると中華鍋の底と中華レンジのトッププレートとの距離が変化する。例えば、特定の径よりも小さい径の中華鍋の場合は、中華鍋が所定の位置よりも外周寄りの(底から遠い)位置で釜枠に支持されることとなり、鍋底がトッププレートに接触してしまう。反対に大きい径の場合は、中華鍋が所定の位置よりも内周寄りの(底に近い)位置で釜枠に支持されるので、鍋底と誘導加熱コイルとの距離が大きくなって十分な加熱性能を得られなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−336983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、中華レンジ毎に設定されている中華鍋の径の許容範囲を大幅に広げることができるIH中華レンジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様のIH中華レンジは、 中華鍋を乗せる釜枠と、 該釜枠の下方に配設された、前記中華鍋の底部を受容する凹部の形成されたトッププレートと、 該トッププレート下面に沿うように配設されたIHコイルと、を備えるIH中華レンジであって、 前記釜枠に取り外し可能に装着されて、異なる径の前記中華鍋の底と前記トッププレートとの間隔を最適な距離に維持することのできるアダプタをさらに備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、アダプタを釜枠に装着することにより、一つの中華レンジで比較的広い範囲の径の中華鍋を使用することができる。特に、中華レンジ毎に設定されている、アダプタのない場合における中華鍋の径の許容範囲よりも小さい径の中華鍋を使用することができる。そして、各中華鍋において、鍋底とトッププレートとの間の間隔を最適な距離に維持できるので、電磁加熱時にIHコイルから発する磁力線を中華鍋の鍋底に作用させることができ、良好な加熱性能を得ることができる。
【0008】
本発明においては、 前記アダプタの内周縁と前記IHコイルの外周縁間の間隔が、電磁加熱時に前記IHコイルから発生する磁力線の影響範囲の寸法よりも広いことが好ましい。
【0009】
電磁加熱時にIHコイルから発生する磁力線の影響がアダプタに作用してしまうと、アダプタも加熱されてしまうこととなり、IHコイルの加熱能力の全てを中華鍋に作用させることができず、加熱効率が低下する。
【0010】
本発明においては、 前記釜枠又はアダプタに乗せられた、異なる径の前記中華鍋の各々の底と前記トッププレートとの間隔が5〜15mmであることが好ましい。
【0011】
トッププレートと中華鍋の底との間隔を、中華鍋の底面のほぼ全域に渡って5〜15mmとすることにより、コイルから発生する磁力線を効率的に中華鍋に作用させることができる。
【0012】
さらに、本発明においては、 前記IHコイルが、略同心円状の渦巻き状に巻かれているとともに、中央部のコイル線が上下2層に重ねて配置されており、 該上下2層のコイル線が、上層と下層とを行き来するように巻かれていることが好ましい。
【0013】
中華鍋は底が凹状に窪んでいる(中央部が低くなっている)ので、調理中水分(野菜から出る水分やダシ)が溜まる。それを十分蒸発させながら食材を炒める必要がある。本発明のIH中華レンジにおいては、中央部のコイル線を上下2層に重ねて配置したので、電磁誘導を中華鍋の中心付近に集中させて、中心付近で活発な発熱作用を得ることができる。したがって、中華鍋の中心付近を強い加熱力で加熱することができ、中華料理に適した加熱効果を得られる。
【0014】
本発明の第2の態様のIH中華レンジは、 大釜枠と小釜枠とを含む複数口を有するIH中華レンジであって、 前記各釜枠が前記に記載のものであり、 前記大釜枠で使用しうる比較的小さい中華鍋の寸法の領域と、前記小釜枠で使用しうる比較的大きい中華鍋の寸法の領域が、オーバーラップしていることを特徴とする。
【0015】
オーバーラップしている寸法領域の中華鍋を通常最も頻繁に使用するサイズ(普通サイズと呼ぶ、例えば径600mm)とすれば、全ての釜枠でその寸法の中華鍋を使える。例えば、大釜枠と小釜枠を1個ずつ備える2口用中華レンジの場合、普段は、大釜枠ではアダプタを装着し、小釜枠では、アダプタを装着しない。すると、普通サイズの中華鍋を2個同時に使用することができる。
そして、大規模な宴会用の料理を提供するなど、調理される食材の量が多量の場合(比較的まれ)には、大釜枠のアダプタを外す、あるいは、取り替えるなどして、大釜枠に載せることのできる最大径の中華鍋を載せて調理する。
つまり、使用可能な中華鍋の寸法範囲が広く、かつ、普段はよく使う普通サイズの中華鍋を複数使用できるIH中華レンジを提供できる。
【発明の効果】
【0016】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、アダプタを釜枠に装着することにより、中華レンジ毎に設定されている中華鍋の径の許容範囲よりも小さい径の中華鍋を使用することができる。つまり、一つの中華レンジで比較的広い範囲の径の中華鍋を使用することができるので、調理可能な料理の種類や量の範囲を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るIH中華レンジに中華鍋を乗せた状態を示す側断面図である。
【図2】図1のIH中華レンジの釜枠及びその周囲を拡大して示す側断面図である。
【図3】図1のIH中華レンジの釜枠及びアダプタの側断面図である。
【図4】図1のIH中華レンジ全体の側面図である。
【図5】図1のIH中華レンジの全体の正面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るIH中華レンジの全体の構造を示す斜視図である。
【図7】図6のIH中華レンジの大出力加熱部に中華鍋を乗せた状態を示す側断面図である。
【図8】釜枠にアダプタを完全に被せる前の状態を示す写真である。
【図9】図9(A)は、アダプタを外して、径が700mmの中華鍋を釜枠に直接乗せて水を沸騰させた状態を示す写真であり、図9(B)は、アダプタを装着して、径が600mmの中華鍋を乗せて水を沸騰させた状態を示す写真である。
【図10】図10(A)は、沸騰時にアダプタに素手で触った状態を示す写真であり、図10(B)は、沸騰中の中華鍋を外した直後にトッププレートに素手で触った状態を示す写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、図1〜図5を参照して本発明の第1の実施の形態に係るIH中華レンジの全体の構造を説明する。図1は、中華レンジに中華鍋を乗せた状態を示す側断面図、図2は、中華レンジの釜枠及びその周囲を拡大して示す側断面図、図3は釜枠及びアダプタの側断面図である。図4は、中華レンジ全体の側面図、図5は、中華レンジ全体の正面図である。
この例では、出力が7kW(径が540mm及び600mmの中華鍋に対応)の加熱部を1個有する一口用の中華レンジについて説明する。
このIH中華レンジ1は、図4、図5に示すように、中華鍋を乗せる釜枠10と、釜枠10の下方に配設された、中華鍋の底部を収容する凹部の形成されたトッププレート20と、トッププレート20の下面に沿うように配設されたIHコイル30と、からなる加熱部を1個備える。加熱部は本体ケーシング40の上板41に配置されている。さらに、釜枠10には、アダプタ60が取り外し可能に装着される。
【0019】
本体ケーシング40は直方体状であり、上板41は、やや手前側に向かって下方に傾斜している。上板41の中央部には、円形の開口42が開けられている。この開口42の周囲から略円筒状のフレーム43が立ち上がっている。この例では、円筒フレーム43の径は520mmである。円筒フレーム43は、例えばステンレス板金製である。図2に示すように、フレーム43の上端には、外から内に向かって階段状に高くなった環状の段部が形成されている。段部は、外側の低段部43aと、内側の高段部43bを有する。高段部43bの内周縁からは、内側に向けて下方に傾斜した環状の傾斜部43cが形成されている。この傾斜部43cは、トッププレート20を支持するためのものである。
【0020】
再度図4、図5を参照して説明する。本体ケーシング40の奥側には、奥壁45が立ち上がっている。奥壁45の前面には、図4に示すように、インバータ55の出力を表示する表示部46と、給水管47が設けられている。給水管47の給水口は、トッププレート20の上方に位置し、調理中の鍋に給水することができる。図5に示すように、奥壁45には、給水管47に接続する給水経路(図示されず)と排気通路48が設けられている。また、上板41には、手前の縁に沿った排水路49が形成されている。
【0021】
本体ケーシング40の上板41の開口42の下方は、仕切り板50で塞がれている。仕切り板50は、非磁性材料(例えばアルミニウム)製であり、コイル30から発する電磁波を遮断する。この仕切り板50の下面には、コイル冷却用のファン51が取り付けられている。ファン51が作動すると、空気が仕切り板50の下方の空間から開口42に入ってコイル30を冷却し、その後、奥壁45の排気通路48を通って排気される。
本体ケーシング40内には、コイル通電用のインバータ55などが配置されている。インバータ55の出力は、本体ケーシング40の前面に取り付けられたハンドル(図示されず)を操作することにより調整できる。
【0022】
次に、トッププレート20について、図1を参照して説明する。
トッププレート20は、絶縁ガラスで作製され、中華鍋Pの底部を収容する凹状に形成されている。トッププレート20は、フレーム43の傾斜部43aに係止されている。この例では、トッププレート20の径は450mmである。絶縁ガラスとしては、セラミック系耐熱ガラスを使用できる。
【0023】
トッププレート20の下面に沿って、IHコイル30が略同心円状の渦巻き状に巻かれて配設されている。IHコイル30が配設された領域は、絶縁コイル線(リッツ線)が上下2層に重ねて環状に巻かれた内周領域A1と、その外側のリッツ線が巻かれていない中間領域A2を挟んで、リッツ線がトッププレート20の下面に沿って1層のみ環状に巻かれた外周領域A3と、からなる。これらの領域は、1本のリッツ線を、中央部から外側に向かって巻くことにより形成される。リッツ線の両端は、インバータ55に接続している。
両領域A1、A3の外面(下側の面)には、リング状のフェライト性のプレート31、32が固定されている。このプレート31、32は、IHコイル30から下方に発せられる電磁波を遮断するためのものである。
【0024】
次に、釜枠10について、図2、図3を参照して説明する。
釜枠10は、リング状の形状であり、フレーム43に載置される外周部11と、外周部11からトッププレート20の上縁に向かって張り出した内周張り出し部12を有する。釜枠10の上面は、断面形状が、円筒フレーム43の外周面から連続するように立ち上がった後、内方向に向かって上に凸に略半円状に湾曲した形状となっている。図3の下側の図に示すように、外周部11の下面には、フレーム43の各段部43a、43bに載置される段部11a、11bが形成されている。図2に示すように、内周張り出し部12は、フレーム43の傾斜部43cとほぼ平行に、内下方向に張り出している。内周張り出し部12の上面の中央付近には、内上方向に突き出た角部12aが形成されている。
【0025】
図2に示すように、釜枠10は、外周部11の段部11a、11bが、フレーム43の低段部43a、高段部43bに各々載置されて、ネジなどによってフレーム43に固定されている。内周張り出し部12は、フレーム43の傾斜部43cの上方を内下方向に斜めに張り出しており、両者間にはある程度のスキマが開いている。トッププレート20の外周縁部はこのスキマに入り込んで、フレーム43の傾斜部43cに係止されている。
【0026】
釜枠10は、鋳鉄で作製されている。釜枠10を鋳鉄製とすることにより、釜枠10が油となじみやすくなって、中華鍋とのなじみがよくなり、中華鍋を扱いやすくなるという利点がある。また、中華鍋が当たった時の音が比較的静かであり、共鳴音もほとんど発生しない。さらには肉厚で熱変形が少ないので耐久性が高い。
【0027】
図1、図2の想像線に示すように、径が540mmの中華鍋P2や径が600mmの中華鍋P3が釜枠10に乗せられた状態においては、中華鍋Pの底面は、釜枠10の内周張り出し部12の上面あるいは角12aに当たって支持されている。そして各々の径の中華鍋P2、P3の下面とトッププレート20の上面との間隔は、中華鍋Pの下面のほぼ全域において5〜15mmとなるように設定されている。なお、下面の外周付近(IHコイル30から離れた釜枠10近くの部分)は、前記間隔が15mm以上でもよい。この距離5〜15mmは、IHコイル30から発生する磁力線が鍋底にまで十分に及ぶ距離であるので、鍋底が加熱される。ただし、鍋底においてIHコイル30から発生する磁力線の影響が強く活発な沸騰が生じるのは、ほぼIHコイル30が配設されている領域の上方の、鍋底の中央付近の部分のみであるが、この沸騰力や鍋自身の熱伝導によって鍋底の全体が加熱される。
【0028】
なお、図2に示すように、釜枠10の内端縁12bと、IHコイル30の外周領域A3の外周縁間の間隔D1は、電磁加熱時にIHコイル30から発生する磁力線の影響範囲よりも広くなるように設定されている。この例では、同間隔D1は80mmである。
また、フレーム43の傾斜部43cの内端縁と、IHコイル30の外周領域A3の外周縁間の間隔D2も、同様に、電磁加熱時にIHコイル30から発生する磁力線の影響範囲よりも広くなるように設定されている。この例では、同間隔D2は70mmである。
このように設定することにより、電磁加熱時にIHコイル30に電流を流して発生する磁力線のほぼ全てを中華鍋に作用させることができるので、熱効率を高めることができる。また、釜枠10やフレーム43の加熱を防止できる。
【0029】
次に、アダプタ60について、図2、図3を参照して説明する。
アダプタ60は、前述の中華レンジ1で、径が450mmの中華鍋P1を使用する際に装着される。前述のように、許容される範囲よりも小さい径の中華鍋を使用すると、その中華鍋は所定の位置よりも外周に近い位置(高い位置)で釜枠に支持されることとなり、鍋底がトッププレートに接触してしまう。そこで、この例では、許容される範囲よりも小さい径の中華鍋(径が450mm)を使用する際にアダプタ60を装着する。アダプタ60も釜枠10と同様に鋳鉄で作製される。
【0030】
アダプタ60は、釜枠10よりも一回り大きいリング状の形状であり、釜枠10の上面11の全体を覆うように上から被せて装着される。アダプタ60は、図3の上側に図に示すように、釜枠10の上面を覆う外周部61と、外周部61から内方向に張り出した内周張り出し部62を有する。外周部61の下面には、釜枠10が嵌り込む環状の凹部61aが形成されている。凹部61aの底面には、環状の突起63が二重に同心円上に形成されている。内周張り出し部62は、断面形状が略方形であり、ほぼ水平方向に内方向に張り出している。なお、アダプタ60は、リング状の全面にわたるものでなく、円周方向に分散されているものでもよい。
【0031】
図2に示すように、アダプタ60を釜枠10に装着した状態では、釜枠10のほぼ全体がアダプタ60の外周部61の凹部61a内に収容される。そして、アダプタ60の内周張り出し部62は、釜枠10の内周張り出し部12からさらに内側に張り出している。
【0032】
図1、図2の実線で示すように、中華鍋P1(径が450mm)をアダプタ60に乗せると、中華鍋P1の底面は、釜枠10に本来支持される位置よりも内周寄り(底に近い)の位置(低い位置)で、アダプタ60の内周張り出し部62の角62aに当たって支持される。このため、中華鍋P1の鍋底がトッププレート20に接触することがなく、鍋底とトッププレート20の上面との間隔は、鍋底のほぼ全域において5〜15mmとなっている。この距離は、IHコイル30から発生する磁力線が鍋底にまで十分に及ぶ距離であるので、鍋底が加熱される。
【0033】
なお、図2に示すように、アダプタ60の内端縁62bは釜枠10の内端縁12bよりもさらに内側に張り出している。ここでも、アダプタ60の内端縁62bと、IHコイル30の外周領域A3の外周縁間の間隔D3は、電磁加熱時にIHコイル30から発生する磁力線の影響範囲よりも広くなるように設定されている。この例では、同間隔D3は70mmである。
このように設定することにより、電磁加熱時にIHコイル30に電流を流して発生する磁力線のほぼ全てを中華鍋に作用させることができるので、熱効率を高めることができるとともに、アダプタ60の加熱を防止できる。
【0034】
なお、アダプタ60の内端縁とIHコイル30の外周領域A3の外周縁間の間隔D3を広くとりたい場合は、図3の想像線で示すように、アダプタ60の内周張り出し部62の形状を、下角を切り欠いた逆三角形状とすることもできる。この場合、アダプタ60の最も内側に張り出した部分は内端面62cとなるので、間隔D3を広くすることができる。
【0035】
また、前述のように、アダプタ60の凹部61aの底面には、同心円状の突起63が形成されている。このため、アダプタ60を釜枠10に装着した際、アダプタ60は釜枠10にぴったりと密着するのではなく、アダプタ60の凹部61aと釜枠10の上面との間には、突起63の高さの分だけスキマが開く。このため、両面間の固着を防ぐことができ、アダプタ60を取り外しやすくなる。
【0036】
なお、図示されていないが、アダプタ60と釜枠10とには、アダプタ60を釜枠10に装着した後のアダプタ60の回り止めが設けられている。
【0037】
次に、図6、図7を参照して、本発明の第2の実施の形態に係るIH中華レンジを説明する。
この例の中華レンジ1Aは、加熱部(円筒フレーム、釜枠、トッププレート及びアダプタ)を2個有する2口用のIH中華レンジを説明する。一方の加熱部H1は、第1の実施の形態と同様の出力が7kWのもの(小出力加熱部)で、もう一方の加熱部H2は出力が10kW(径が700mmの中華鍋に対応)のもの(大出力加熱部)である。小出力加熱部H1は、図1等で説明した加熱部と同じ構成を有するので説明を省略する。
【0038】
大出力加熱部H2(出力10kW対応)は、各部の寸法が出力7kWのものよりも大きい以外、小出力加熱部H1(出力9kW)と同様の構造を有する。代表的な寸法として、円筒フレーム43の径が590mm、トッププレート20の径が520mmである。釜枠10に径が700mmの中華鍋P4を載置した際の鍋底とトッププレート20との間隔は、中華鍋の下面のほぼ全域において5〜15mmである。
【0039】
大出力加熱部H2は、同加熱部に対応可能な径(700mm)よりも小さい、径が600mmの中華鍋P3を使用する際に釜枠10に装着されるアダプタ60Aを備える。このアダプタ60Aも、出力7kW対応の加熱部に使用されるものと、各部の寸法を除き、同様の構造を有する。
【0040】
このアダプタ60Aを装着することにより、径が600mmの中華鍋P3を乗せた場合、中華鍋P3の底面は、本来の釜枠10に支持される位置よりも内周寄りの(底に近い)位置(低い位置)でアダプタ60Aに支持される。このため、中華鍋P3の鍋底がトッププレート20に接触することがなく、鍋底とトッププレート20の上面との間隔は、鍋底のほぼ全域において5〜15mmとなっている。この距離は、IHコイル30から発生する磁力線が鍋底にまで十分に及ぶ距離であるので、鍋底が加熱される。
【0041】
つまり、この中華レンジにおいては、小出力加熱部H1においては、使用可能な中華鍋の径は450mm(アダプタ装着)、540mm及び600mm(アダプタなし)である。一方、大出力加熱部H2においては、使用可能な中華鍋の径は、600mm(アダプタ装着)及び700mm(アダプタなし)である。このように、大出力加熱部H2で使用可能な比較的小径の中華鍋の寸法の領域と、小出力加熱部H1で使用可能な比較的大径の中華鍋の寸法の領域が重なっている。つまり、この例では、径が600mmの中華鍋P3はどちらの加熱部においても使用可能である。
【0042】
この2口用中華レンジにおいては、以下のような使用が可能となる。
両加熱部に共通に使用可能な寸法領域の中華鍋のサイズを、通常最も頻繁に使用するサイズ(この例では径600mm、普通サイズという)とすれば、両方の加熱部でその寸法の中華鍋を使える。例えば、普段は、大出力加熱部H2にアダプタ60Aを装着し、小出力加熱部H1にはアダプタ60を装着しない。すると、両加熱部で径が600mmの中華鍋を使用することができる。
そして、大規模な宴会用の料理を提供するなど、調理される食材の量が多量の場合は、大出力加熱部H2のアダプタ60Aを外すと、同加熱部H2で径が700mmの中華鍋を使用することができる。
【0043】
また、調理の種類によって、小径(径450mm)の中華鍋と普通サイズ(径600mm)の中華鍋を同時に使用する場合は、大出力加熱部H2にアダプタ60Aを装着し、小出力加熱部H1にもアダプタを装着60する。すると、大出力加熱部H2で普通サイズの中華鍋を使用でき、小出力加熱部H2で小径の中華鍋を使用できる。
【0044】
次に、図8〜図10に示す写真を参照して、トッププレートや釜枠の試作品、及び、大出力加熱部で、実際に大径サイズ(径が700mm)の中華鍋と普通サイズ(径が600mm)の中華鍋を使用した際の、両鍋における水の沸騰状態を説明する。
【0045】
図8は、釜枠にアダプタを完全に被せる前の状態を示す写真である。
図9(A)は、アダプタを外して、径が700mmの中華鍋を釜枠に直接乗せて水を沸騰させた状態を示す写真である。鍋底の加熱領域(IHコイルが配設されている領域)のほぼ全域にわたって活発に沸騰している。
図9(B)は、アダプタを装着して、径が600mmの中華鍋を乗せて水を沸騰させた状態を示す写真である。この場合も、鍋底の加熱領域(IHコイルが配設されている領域)のほぼ全域にわたって活発に沸騰している。
【0046】
図10(A)は、沸騰時にアダプタに素手で触った状態を示す写真である。前述のようにIHコイルから発生する磁力線はアダプタに影響を及ぼさないので、加熱中もアダプタは加熱されない。
図10(B)は、沸騰中の中華鍋を外した直後にトッププレートに素手で触った状態を示す写真である。トッププレートはガラス製であってIHコイルの磁力線が通過するので、トッププレートは加熱されない。
【符号の説明】
【0047】
1 IH中華レンジ
10 釜枠 11 外周部
12 内周張り出し部
20 トッププレート
30 IHコイル 31、32 プレート
40 本体ケーシング 41 上板
43 開口 43 フレーム
45 奥壁 46 表示部
47 給水管 48 排気通路
49 排水路 50 仕切り板
51 ファン 55 インバータ
60 アダプタ 61 外周部
62 内周張り出し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中華鍋を乗せる釜枠と、
該釜枠の下方に配設された、前記中華鍋の底部を受容する凹部の形成されたトッププレートと、
該トッププレート下面に沿うように配設されたIHコイルと、
を備えるIH中華レンジであって、
前記釜枠に取り外し可能に装着されて、異なる径の前記中華鍋の底と前記トッププレートとの間隔を最適な距離に維持することのできるアダプタをさらに備えることを特徴とするIH中華レンジ。
【請求項2】
前記アダプタの内周縁と前記IHコイルの外周縁間の間隔が、電磁加熱時に前記IHコイルから発生する磁力線の影響範囲の寸法よりも広いことを特徴とする請求項1に記載のIH中華レンジ。
【請求項3】
前記釜枠又はアダプタに乗せられた、異なる径の前記中華鍋の各々の底と前記トッププレートとの間隔が5〜15mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のIH中華レンジ。
【請求項4】
前記IHコイルが、略同心円状の渦巻き状に巻かれているとともに、中央部のコイル線が上下2層に重ねて配置されており、
該上下2層のコイル線が、上層と下層とを行き来するように巻かれていることを特徴とする請求項1、2又は3の記載のIH中華レンジ。
【請求項5】
大釜枠と小釜枠とを含む複数口を有するIH中華レンジであって、
前記各釜枠が請求項1〜4のいずれか1項に記載のものであり、
前記大釜枠で使用しうる比較的小さい中華鍋の寸法の領域と、前記小釜枠で使用しうる比較的大きい中華鍋の寸法の領域が、オーバーラップしていることを特徴とする中華レンジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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