説明

IL−1ゼータ、IL−1ゼータスプライス変異体およびXrec2のDNAおよびポリペプチド

【課題】本発明は、新規な精製および単離したポリペプチド等を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、新規な精製および単離したIL−1ゼータ、IL−1ゼータスプライス変異体およびXrec2ポリペプチド、ならびにそのフラグメント、それらのポリペプチドをコードする核酸、組換え形のそれらのポリペプチドの製造方法、これらのポリペプチドに対して産生された抗体、これらのポリペプチドに由来するフラグメント化ペプチド、ならびにその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の引照
本出願は、米国仮特許出願S.N.60/112,163(1998年12月14日出願)およびS.N.60/164,675(1999年11月10日出願)の優先権を主張する。それらの開示内容全体をよりどころとし、参考として援用する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
発明の分野
本発明は、新規な精製および単離したIL−1ゼータ、IL−1ゼータスプライス変異体およびXrec2ポリペプチド、ならびにそのフラグメント、それらのポリペプチドをコードする核酸、組換え型のそれらのポリペプチドの製造方法、これらのポリペプチドに対して産生された抗体、これらのポリペプチドに由来するフラグメント化ペプチド、ならびにその使用に関する。
【0003】
関連技術の説明
インターロイキン−1(IL−1)は大きなサイトカイン群のメンバーであり、その主な機能は免疫応答および炎症反応を仲介することである。5つの既知IL−1ファミリーメンバーがあり、それにはIL−1アルファ(IL−1α)、IL−1ベータ(IL−1β)、IL−1受容体アンタゴニスト(IL−1ra)、IL−1デルタ(IL−1δ、WO99/35268に開示)、およびIL−18(以前は、IGIF、時にはIL−1ガンマとして知られていた)が含まれる。マクロファージが分泌するIL−1は、実際には大部分のIL−1βと少量のIL−1αの混合物である(Abbas et al.,1994)。IL−1αおよびIL−1βはまずシグナル配列を欠如する33kDの前駆体として産生され、さらにタンパク質分解開裂によりプロセシングされて、それぞれ約17kDの分泌される活性形を生成する。さらに、IL−1αのこの33kD前駆体も活性である。両方の形のIL−1は、第2染色体上に位置する2つの異なる遺伝子の産物である。これら2つの形は互いに30%未満の相同性であるが、それらは両方とも同じ受容体に結合し、かつ類似の活性をもつ。
【0004】
IL−1ファミリーのリガンドは、リガンド結合鎖であるI型IL−1受容体(IL−1RI)および必要なシグナリング成分であるIL−1Rアクセサリータンパク質(AcP)からなる共通の受容体に結合する(Sims et al.,1988;Greenfeder et al.,1995;Cullinan et al.,1988)。II型IL−1受容体(IL−1RII)はアゴニストIL−1(特にIL−1β)を結合して隔離するが、それ自身ではシグナリング応答を誘導することはない(McMahan et al.,1991;Sims et al.,1993;Colotta et al.,1993;Colotta et al.,1994)。IL−1リガンドはIL−1RIIの可溶性タンパク質分解フラグメント(sIL−1RII)にも結合できる(Colotta et al.,1993)。
【0005】
生物学的に不活性な形のIL−1であるIL−1raは、構造的にはIL−1と相同である。IL−1raは、細胞外領域への効率的な分泌を可能にするシグナル配列をもつ状態で産生される(Abbas et al.,1994)。さらに、IL−1raはI型IL−1受容体に結合するが、その後のAcPとの相互作用をもたらすことができない。したがってIL−1raはIL−1R1を遮断し、アゴニストIL−1の作用を阻止する(Hannum et al.,1990;Eisenberg et al.,1990)。
【0006】
主なIL−1供給源は活性化したマクロファージまたは単核食細胞である。IL−1を産生する他の細胞には、上皮細胞および内皮細胞が含まれる(Abbas et al.,1994)。マクロファージからのIL−1分泌は、マクロファージがグラム陰性細菌に遭遇してそれらを取り込んだ後に起きる。そのような細菌はリポ多糖類(LPS)分子(内毒素としても知られる)を細菌細胞壁に含有する。LPS分子は、マクロファージを刺激して腫瘍壊死因子(TNF)およびIL−1を産生させる活性成分である。この場合、IL−1はLPSおよびTNFの産生に応答して産生される。LPSは低濃度ではマクロファージを刺激し、B細胞を活性化し、かつ細胞感染を排除するのに必要な他の宿主応答を生じる;しかし高濃度では、LPSは著しい組織損傷、ショック、さらには死をも引き起こす可能性がある。
【0007】
IL−1の生物学的機能には、血管内皮細胞およびリンパ球の活性化、局所組織破壊および発熱が含まれる(Janeway et al.,1996)。IL−1は、低濃度ではマクロファージおよび血管内皮細胞を刺激してIL−6を産生させ、血管内皮細胞表面にある分子をアップレギュレートして白血球付着を増加させ、そして単核食細胞その他の細胞を刺激して炎症性白血球を活性化するある種のケモカインを産生させることによって間接的に炎症性白血球を活性化する。さらに、IL−1は他の炎症応答、たとえばプロスタグランジン、酸化窒素合成酵素およびメタロプロテイナーゼの誘導に関与する。IL−1の機能は低レベルの微生物感染症に際しては重要である。しかし微生物感染症がエスカレートすると、IL−1は発熱を誘発し、単核食細胞を刺激してIL−1およびIL−6を産生させ、肝細胞からの血清タンパク質産生を増大させ、かつ凝固系を活性化することにより、全身的に作用する。さらに、IL−1は腫瘍の出血性壊死を起こさず、骨髄幹細胞分裂を抑制し、またIL−1は高濃度ではヒトにとって致死的である。
【0008】
IL−1の重要な機能からみて、IL−1リガンドファミリーおよびIL−1受容体ファミリーの他のメンバーを同定する必要がある。さらに、依然としてタンパク質研究および免疫系に関心がもたれていることからみて、新規タンパク質およびそれらの阻害薬の知見、同定および役割が、近代の分子生物学および生化学の最前線である。多量の知見が得られつつあるにもかかわらず、当技術分野では依然として細胞応答および免疫応答に関与するタンパク質のアイデンティティーおよび機能を見出すことが求められている。
【0009】
他の観点において、未知タンパク質の一次構造または配列の同定は、努力を要する実験プロセスの頂点である。未知タンパク質を同定するために、研究者は当業者既知のさまざまな技術を用いて未知タンパク質を既知ペプチドと比較することに依存できる。たとえば電気泳動、沈降法、クロマトグラフィー、配列決定法および質量分析などの方法でタンパク質がルーティンに分析される。
【0010】
特に、タンパク質の個々のアミノ酸成分に関連したタンパク質組成の独特な性質のため、そのタンパク質内に独特な開裂部位が配置される。化学的または酵素的な開裂によりタンパク質を特異的にフラグメント化すると、独特の”ペプチドフィンガープリント”が得られる(D.W.Cleveland et al.,J.Biol.Chem.,252:1102−1106,1977;M.Brown et al.,J.Gen.Virol.,50:309−316,1980)。その結果、特定部位での開裂により、そのタンパク質が再現性をもって厳密な分子量のペプチドにフラグメント化される。さらに、これらのペプチドは、ペプチドの等電pHを決定する独特な電荷特性をもつ。これらの独特な特性をさまざまな電気泳動その他の方法で利用できる(Brock et al.,Biology of Microorganisms,pp.76−77,Prentice Hall,第6版,1991)。
【0011】
タンパク質のフラグメント化は、アミノ酸組成分析およびタンパク質配列決定(P.Matsudiara,J.Biol.Chem.,262:10035−10038,1987;C.Eckerskorn et al.,Electrophoresis,9:830−838,1988)、特に”遮断した”N−末端をもつタンパク質からのフラグメントの生成に利用される。さらに、フラグメント化タンパク質は、免疫化、アフィニティー選択(R.A.Brown,USP5,151,412)、修飾部位(たとえばリン酸化)の決定、活性な生物学的化合物の生成(Brock et al.,Biology of Microorganisms,pp.300−301,Prentice Hall,第6版,1991)、および相同タンパク質の識別(M.Brown et al.,J.Gen.Virol.,50:309−316,1980)に使用できる。
【0012】
さらに未知タンパク質のペプチドフィンガープリントが得られる場合、それを既知タンパク質のデータベースと比較して、質量分析による未知タンパク質の同定の補助とすることができる(W.J.Henzel et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA,90:5011−5015,1993;D.Fenyo et al.,Electrophoresis,19:998−1005,1998)。これらの比較を容易にするためのさまざまなコンピューターソフトウェアプログラムにインターネットを通じてアクセスできる:たとえばProtein Prospector(インターネットサイト:prospector.uscf.edu)、MultiIdent(インターネットサイト:www.expasy.ch/sprot/multiident.html)、PeptideSearch(インターネットサイト:www.mann.embl−heiedelberg.de...deSearch/FR_PeptideSearchForm.html)、およびProFound(インターネットサイト:www.chait−sgi.rockefeller.edu/cgi−bin/protid−frag.html)。これらのプログラムにより、ユーザーは表示された許容度内で開裂剤およびフラグメント化ペプチドの分子量を特定することができる。これらのプログラムは、これらの分子量をデータベースに蓄積された情報と比較して未知タンパク質のアイデンティティーを決定する補助となる。正確な同定のためには、フラグメント化ペプチドの個数およびそれらのペプチドの厳密な分子量に関する厳密な情報が必要である。したがって、フラグメント化ペプチドの個数およびそれらの分子量を決定する際の精度を高めると、未知タンパク質同定の成功の可能性が高まる。
【0013】
さらに、未知タンパク質のペプチド消化物をタンデム型質量分析(MS/MS)により配列決定し、得られた配列をデータベースと対比して検索することができる(J.K.Eng et al.,J.Am.Soc.Mass Spec.,5:976−989,1994;M.Mann et al.,Anal.Chem.,66:4390−4399,1994;J.A.Taylor et al.,Rapid Comm.Mass Spec.,11:1067−1075,1997)。この方法に利用できる検索プログラムがインターネットにある:たとえばLutefisk97(インターネットサイト:www.lsbc.com.70/Lutefisk97.html)、ならびに前記のProtein Prospector、PeptideSearchおよびProFoundプログラム。したがって、遺伝子およびその推定タンパク質配列ならびにペプチドフラグメントの配列を配列データベースに加えると、タンデム型質量分析による未知タンパク質の同定を補助することができる。
【0014】
したがって当技術分野では、ペプチドフラグメント化研究用、分子量測定用、およびタンデム型質量分析によるタンパク質配列決定用に適したポリペプチドも求められている。
【発明の概要】
【0015】
発明の概要
本発明は、”IL−1ゼータ”と呼ばれるIL−1ファミリーリガンド、ならびにTDZ.1、TDZ.2およびTDZ.3と呼ばれるIL−1ゼータの3つのスプライス変異体に対する単離核酸、ならびにそれらの核酸によりコードされるポリペプチドを提供する。本発明は、”Xrec2”と呼ばれるIL−1ファミリー受容体に対する単離核酸分子、ならびにそれらの核酸分子によりコードされるポリペプチドをも提供する。したがって、1つの側面において本発明は、それぞれ配列番号:1、配列番号:5、配列番号:6、または配列番号:7のDNA配列を含む、IL−1ゼータ、TDZ.1、TDZ.2およびTDZ.3の単離核酸分子、ならびに配列番号:1、5、6および7に相補的な核酸分子に関する。同様に本発明は、配列番号:2の核酸分子および配列番号:2に相補的な核酸分子を含むXrec2の単離核酸分子に関する。他の側面において本発明は、それぞれ配列番号:3、配列番号:8、配列番号:9、または配列番号:10のアミノ酸配列をもつ、単離したIL−1ゼータ、TDZ.1、TDZ.2およびTDZ.3ポリペプチド、ならびに配列番号:3、8、9および10のポリペプチドをコードする核酸分子に関する。さらに本発明には、配列番号:4のアミノ酸配列を含む単離Xrec2ポリペプチド、および配列番号:4のポリペプチドをコードする核酸分子が包含される。
【0016】
一本鎖および二本鎖両方のRNAおよびDNA核酸分子、ならびに配列番号:1、2、5、6および7の全部または一部を含む変性二本鎖DNA、および/または配列番号:3、4、8、9および10に示したアミノ酸配列をコードするDNAにハイブリダイズする核酸分子が本発明に包含される。配列番号:1、2、5、6および7の配列を含む核酸分子のインビトロ変異誘発により誘導される単離核酸分子、配列番号:1、2、5、6および7の配列を含む核酸分子から縮重した単離核酸分子、並びに本発明DNAの対立遺伝子変異体である単離核酸分子も包含される。本発明は、これらの核酸分子の発現を指令する組換えベクター、およびこれらのベクターで形質転換またはトランスフェクションした宿主細胞をも包含する。
【0017】
さらに本発明は、IL−1ファミリーのリガンドおよび受容体に関連する活性をもつタンパク質をコードする核酸を同定するために前記核酸を使用する方法を包含する。たとえば、IL−1ゼータ核酸分子を用いてIL−1ゼータ受容体を同定することができ、一方、Xrec2核酸分子を用いてXrec2リガンドを同定することができる。
【0018】
さらにこれらの核酸を用いて、これらの核酸が関連するヒト染色体を同定できる。たとえばIL−1ゼータ、TDZ.1、TDZ.2およびTDZ.3核酸を用いてヒト第2染色体を同定でき、一方、Xrec2核酸を用いてヒトX染色体を同定できる。したがって、これらの核酸を用いて、それぞれヒト第2およびX染色体上の遺伝子地図を作製し;それぞれヒト第2およびX染色体に関連する特定の疾病、症状、またはヒトの他の状態に関連する遺伝子を同定し;また細胞の信号伝達および免疫系を研究することができる。
【0019】
本発明は、配列番号:1、2、5、6および7の核酸に由来するセンスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドを、本発明の遺伝子がコードする各ポリヌクレオチドの発現阻害に使用することをも包含する。
【0020】
本発明はこれらの核酸分子によりコードされるIL−1ゼータおよびXrec2の単離ポリペプチドおよびフラグメントをも包含し、これにはそれぞれ配列番号:3、4、8、9および10の可溶性ポリペプチド部分が含まれる。本発明はさらに、これらのポリペプチドの製造方法であって、発現を促進する条件下で宿主細胞を培養し、そして培地からポリペプチドを回収することを含む方法を包含する。特に細菌、酵母、植物、昆虫および動物細胞におけるこれらのポリペプチドの発現が本発明に包含される。
【0021】
一般に本発明のポリペプチドは、免疫調節、細胞増殖、細胞死、細胞移動、細胞間相互作用および炎症応答などの細胞プロセスを研究するために使用できる。さらに、これらのポリペプチドを用いて、IL−1ゼータ、TDZ.1、TDZ.2およびTDZ.3リガンド、ならびにXrec2受容体に関連するタンパク質を同定できる。
【0022】
さらに本発明は、これらのポリペプチドを用いてポリペプチド対向構造(counter−structure)分子関連活性の有効な阻害薬をスクリーニングするためのアッセイ法、およびこれらのポリペプチドをポリペプチド対向構造分子により仲介される疾病の処置のための療法薬として使用する方法を包含する。さらに、これらのポリペプチドをその阻害薬(たとえば阻害薬として作用する工学的に作製した受容体)の設計に使用する方法も本発明の1側面である。
【0023】
さらに本発明には、試料核酸および/またはタンパク質の同定を補助するための電子データベース検索における、IL−1ゼータおよびXrec2の核酸配列、ポリペプチドまたはそのフラグメントの推定アミノ酸配列、あるいはポリペプチドおよびそのフラグメントの推定アミノ酸配列の組合わせの使用が包含される。本発明はさらに、本明細書に開示するポリペプチドをタンパク質フラグメント化度の立証のための対照として使用する方法を提供する。
【0024】
これらのポリペプチドに結合する単離したポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体、さらに本発明ポリペプチドの精製を補助するためのこれらの抗体の使用も本発明に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】IL−1ゼータ遺伝子座のゲノム構造を示す。
【図2】IL−1ゼータポリペプチドの二次構造を表す分子モデルを示す。図中、β−鎖を黄色で示し、それらの方向を矢印で示す;β−ターンを青色で示す;コイルを緑で示す。IL−1ゼータ構造を2つの異なる図で提示する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な記述
本発明に包含される核酸分子には、下記の核酸配列が含まれる:
【0027】
【化1】

【0028】
【化2】

【0029】
【化3】

【0030】
【化4】

【0031】
【化5】

【0032】
本発明の核酸配列によってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列は以下のものを含む:
【0033】
【化6】

【0034】
【化7】

【0035】
【化8】

【0036】
【化9】

【0037】
【化10】

【0038】
本発明のIL−1ゼータ、IL−1ゼータスプライス変異体(TDZ.1、TDZ.2およびTDZ.3)およびXrec2核酸が見出されたことにより、各ポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクター、およびこれらの発現ベクターでトランスフェクションまたは形質転換した宿主細胞を構築できる。本発明により、生物学的に活性なIL−1ゼータ、IL−1ゼータスプライス変異体およびXrec2ポリペプチドならびにそのフラグメントの単離および精製も可能になる。さらに他の態様においては、これらの核酸またはそのオリゴヌクレオチドをプローブとして用いて、関連活性をもつタンパク質をコードする核酸を同定することができる。たとえばIL−1ゼータおよびIL−1ゼータスプライス変異体を用いてIL−1ファミリーリガンドに関連する活性を同定でき、Xrec2を用いてIL−1ファミリー受容体に関連する活性を同定できる。さらに、IL−1ゼータ、TDZ.1、TDZ.2およびTDZ.3の核酸またはオリゴヌクレオチドを用いてヒト第2染色体を同定でき、一方、Xrec2を用いてヒトX染色体を同定できる。同様に、これらの核酸またはそのオリゴヌクレオチドを用いて、それぞれヒト第2およびX染色体の遺伝子地図を作製し、またヒト第2およびX染色体に関連する特定の疾病、症状、またはヒトの他の状態に関連する遺伝子を同定することができる。たとえば、IL−1ゼータ、TDZ.1、TDZ.2およびTDZ.3の核酸またはオリゴヌクレオチドを用いて、緑内障、外胚葉性異形成症、インスリン依存性糖尿病、しわ皮膚(wrinkly skin)症候群、T細胞性白血病/リンパ腫、および頚骨筋ジストロフィー症を同定でき、一方、Xrec2の核酸またはオリゴヌクレオチドを用いて、網膜分離症、脳回欠損、皮質下層状ヘテロピア(subcortical laminalheteropia)、精神発達遅滞、cowchock症候群、bazex症候群、多毛症、リンパ滲出性症候群、免疫不全症、ランガー中割球異形成症および白血病を同定できる。最後に、これらの核酸に由来する一本鎖センスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて、それぞれIL−1ゼータおよびXrec2遺伝子がコードする各ポリヌクレオチドの発現を阻害することができる。
【0039】
さらに、IL−1ゼータ、TDZ.1、TDZ.2、TDZ.3およびXrec2ポリペプチドならびにその可溶性フラグメントを用いて、血管内皮細胞およびリンパ球を活性化し、および/または活性化を阻害し、ならびに/あるいは局所組織破壊および発熱を誘発および/または阻害し(Janeway et al.,1996)、マクロファージおよび血管内皮細胞がIL−6を産生するのを阻害および/または刺激し、プロスタグランジン、(一)酸化窒素合成酵素およびメタロプロテイナーゼの誘導を誘発および/または阻害し、並びに、血管内皮細胞表面にある分子をアップレギュレートし、および/またはアップレギュレーションを阻害することができる。さらに、これらのポリペプチドおよびフラグメント化ペプチドを用いて、炎症仲介物質、たとえば転写因子NF−κBおよびAP−1、MAPキナーゼJNKおよびp38、COX−2、iNOSの誘導、ならびにこれらの分子により刺激されるすべての活性を、誘発および/または阻害することもできる。
【0040】
さらに、これらのポリペプチドおよびフラグメント化ペプチドを、ペプチドフラグメント化の対照として使用できる。最後に、これらのポリペプチドおよびそのフラグメントを用いて抗体を産生させることができ、本発明はIL−1ゼータおよびXrec2ポリペプチドの精製のためのそのような抗体の使用を包含する。
【0041】
核酸分子
具体的な態様において、本発明は内因性汚染物質を含まない特定の単離ヌクレオチド配列に関する。”ヌクレオチド配列”とは、分離したフラグメントの形の、またはより大きな核酸構築体の成分としての、ポリヌクレオチド分子を表す。核酸分子は、少なくとも1回は純粋な形で、かつ標準的な生化学的方法(たとえばSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory,ニューヨーク州コールド・スプリング・ハーバー,1989)によりその成分ヌクレオチド配列を同定、操作および回収できる量または濃度で単離された、DNAまたはRNAに由来するものである。そのような配列は、真核細胞遺伝子中に一般に存在する内部非翻訳配列(すなわちイントロン)により中断されないオープンリーディングフレームの形で提供および/または構築されることが好ましい。非翻訳DNAの配列が、オープンリーディングフレームの5’側または3’側に存在してもよい。ここではこれらはコード領域の操作または発現を妨害しないからである。
【0042】
本発明の核酸分子には、一本鎖および二本鎖の両方の形のDNA、ならびにそのRNA相補体が含まれる。DNAには、たとえばcDNA、ゲノムDNA、化学合成したDNA、PCRによって増幅されたDNA、およびそれらの組合わせが含まれる。ゲノムDNAは、常法により、たとえば配列番号:1、2、5、6、7のcDNAまたはその適切なフラグメントをプローブとして用いて単離できる。
【0043】
本発明のDNA分子には、全長遺伝子ならびにそのポリヌクレオチドおよびフラグメントが含まれる。全長遺伝子は、N−末端シグナルペプチドを含んでもよい。他の態様には、可溶性形をコードするDNA、たとえばタンパク質の細胞外ドメインをコードするものであって、シグナルペプチドを含むもの、または含まないものが含まれる。
【0044】
本発明の核酸は優先的にヒト供給源に由来するが、本発明は非ヒト種に由来するものをも包含する。
好ましい配列
本発明の特に好ましい核酸分子は、IL−1ゼータ、TDZ.1、TDZ.2およびTDZ.3についてはそれぞれ配列番号:1、5、6、7に、Xrec2については配列番号:2に示したものである。配列番号:1および2の核酸配列をもつcDNAクローンは、実施例1の記載に従って単離された。配列番号:1および2のDNAによりコードされるIL−1ゼータおよびXrec2のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号:3および4に示す。配列番号:5、6および7の核酸配列をもつcDNAクローンは、実施例8の記載に従って単離された。配列番号:5、6および7のDNAによりコードされるTDZ.1、TDZ.2およびTDZ.3のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号:8、9および10に示す。
【0045】
配列番号:1〜4は、配列番号:3のIL−1ゼータをIL−1ファミリーのメンバーと同定し、配列番号:4のXrec2をIL−1受容体ファミリーのメンバーと同定する。これの基礎となる相同性を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
IL−1ゼータスプライス変異体は、ゲノムDNA配列のストレッチ中に見出された(X22304.gbn)。このゲノム配列は、異なるIL−1ゼータエキソンおよびTango−77として知られる他のスプライス変異体(WO99/06426)をも含む。クローン化したIL−1ゼータ、TDZ.1、TDZ.2、TDZ.3およびTango−77のcDNA配列とゲノム配列を比較すると、スプライシング事象の発生について洞察できる。図1は、IL−1ゼータ遺伝子座のゲノム構造およびオータナティブスプライシングにより生成した(複数の)cDNAを示す。番号をつけたボックスは、個々のエキソン1〜6を示し、介在イントロンのおおまかなサイズを上に示す。星印()は、終止コドンがコード配列の末尾(エキソン6)に、または読み枠内(in−frame)終止コドンとして(エキソン3)存在することを示す。”M”は、エキソン1またはエキソン3に由来する潜在的開始メチオニンを示す。Tango−77はWO99/06426に開示されたcDNA構造である。IL−1ゼータおよびそのスプライス変異体の著しい特色は、エキソン4の存在または不存在である。エキソン4はIL−1ゼータ、TDZ.1およびTDZ.2には存在するが、Tango−77またはTDZ.3には存在しない。エキソン4によりコードされるアミノ酸配列は、成熟ペプチドの数個のベータ鎖において、IL−1ファミリーの他のメンバーのアミノ酸配列と良好にアラインする。これに対し、Tango−77のエキソン1および2、ならびにTDZ.3 cDNAのエキソン1によりコードされるアミノ酸配列(これらはIL−1ゼータ、TDZ.1およびTDZ.2のエキソン4を補足するのではなく、置換する)は、この同じ領域において、IL−1ファミリーの他のメンバーと良好にアラインしない。IL−1ゼータ、Tango−77、TDZ.1、TDZ.2およびTDZ.3はすべて、成熟ペプチドのC−末端2/3(これらのスプライス−イソ形すべてに共通のエキソン5および6によりコードされる領域)において、IL−1ファミリーの他のメンバーのアミノ酸配列と良好にアラインする。したがって、IL−1ゼータ、TDZ.1およびTDZ.2のDNAによりコードされる”成熟ペプチド”は、機能性IL−1様の分子であると思われる。これは、機能性IL−1様の分子である可能性の少ないTango−77またはTDZ.3のDNAによりコードされるポリペプチドと対照的である。
【0048】
TDZ.3以外のすべてのスプライス−イソ形は、cDNAがN−末端方向に成熟IL−1のN−末端をはるかに越えて伸びているので、IL−1様サイトカインのプロ形をコードする可能性がある。この所見から、IL−1ゼータ、TDZ.1およびTDZ.2は同一の成熟ペプチドをコードすると推定される。この所見に関連して、IL−1ゼータ、TDZ.1およびTDZ.2間で異なるのはプロドメイン(5’UTRのほかに)である。
【0049】
IL−1ゼータ、TDZ.1、TDZ.2、TDZ.3およびTango−77の組織分布を詳述した表IIIは、Tango−77の発現がIL−1ゼータの発現より広範囲であることを示す。表IIIは、TDZ.1の発現がTango−77の発現に匹敵し、ほぼ完全にオーバーラップすることも示す。この組織分布データを図1のアラインメント情報と合わせると、TDZ.1は、IL−1ファミリーの他のメンバーと良好にアラインし、かつその発現が広範囲である唯一のスプライス変異体メンバーであることが分かる。これらの所見は、TDZ.1が生物学的応答に関して最も重要なスプライス変異体である可能性を示唆する。
【0050】
さらなる配列
1より多いコドンが同一アミノ酸をコードすることができるという既知の遺伝子コドン縮重のため、DNA配列が配列番号:1、2、5、6、7に示すものと異なってもなお、それぞれ配列番号:3、4、8、9および10のアミノ酸をもつポリペプチドをコードすることができる。そのような変異DNA配列は、意図的でない変異(たとえばPCR増幅中に起きるもの)により生じる可能性があり、あるいは天然配列の意図的な変異誘発の生成物である可能性がある。
【0051】
したがって本発明は、本発明のポリペプチドをコードする単離DNA配列であって、下記より選択される配列を提供する:(a)配列番号:1、2、5、6、7のヌクレオチド配列を含むDNA;(b)配列番号:3、4、8、9および10のポリペプチドをコードするDNA;(c)中等度ストリンジェンシー条件下で(a)または(b)のDNAにハイブリダイズでき、かつ本発明のポリペプチドをコードするDNA;(d)高ストリンジェンシー条件下で(a)または(b)のDNAにハイブリダイズでき、かつ本発明のポリペプチドをコードするDNA;ならびに(e)遺伝暗号の結果として(a)、(b)、(c)または(d)に定めたDNAに対して縮重しており、かつ本発明のポリペプチドをコードするDNA。もちろん、そのようなDNA配列によりコードされるポリペプチドは本発明に包含される。
【0052】
本明細書中で用いる中等度ストリンジェンシー条件は、たとえばDNAの長さに基づいて当業者が容易に判定できる。基本的条件は、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Vol.1,pp.1.101−104,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989に述べられており、下記の採用が含まれる:ニトロセルロースフィルターの予備洗浄溶液:5×SSC,0.5%SDS,1.0mM EDTA(pH8.0)、ハイブリダイゼーション条件:約50%ホルムアミド、6×SSC、42℃(または他の同様なハイブリダイゼーション溶液、たとえばStark溶液、約50%ホルムアミド中、約42℃)、および洗浄条件:約60℃,0.5×SSC,0.1%SDS。高ストリンジェンシー条件も、たとえばDNAの長さに基づいて当業者が容易に判定できる。一般にそのような条件は上記と同様なハイブリダイゼーション条件下で、かつ約68℃,0.2×SSC,0.1%SDSの洗浄条件を用いる。温度および洗浄溶液の塩濃度をプローブの長さなどの要因に従って必要に応じて調整しうることは、当業者に認識されるであろう。
【0053】
同様に本発明の態様に包含されるのは、後記のように、不活性化N−グリコシル化部位(1以上)、不活性化プロテアーゼプロセシング部位(1以上)または保存アミノ酸置換(1以上)を含むポリペプチドフラグメントおよびポリペプチドをコードするDNAである。
【0054】
他の態様において、本発明の核酸分子は天然配列に少なくとも80%同一であるヌクレオチド配列をも含む。
核酸分子が天然配列に少なくとも90%同一である、少なくとも95%同一である、少なくとも98%同一である、少なくとも99%同一である、または少なくとも99.9%同一である配列を含む態様も包含される。
【0055】
同一性パーセントは視覚調査および数学的計算により判定できる。あるいは、2つの核酸配列の同一性パーセントは、Devereux et al.,Nucl.Acids Res.,12:387,1984に記載される、ウィスコンシン遺伝学コンピューターグループ(UWGCG)から入手できるGAPコンピュータープログラム、バージョン6.0を用いて配列情報を比較することにより判定できる。GAPプログラムの好ましいデフォルトパラメーターには下記のものが含まれる:(1)ヌクレオチドに関する単項比較マトリックス(同一については1、非同一については0の数値を含む)、およびSchwartz and Dayhoff編,Atlas of Protein Sequence and Structure,pp.353−358,National Biomedical Research Foundation,1979に記載されたような、Gribskov and Burgess,Nucl.Acids Res.,14:6745,1986の重み付き比較マトリックス;(2)各ギャップにつき3.0のペナルティ、さらに各ギャップ中の各記号につき0.10のペナルティ;ならびに(3)末端ギャップについてはペナルティなし。配列比較の分野の専門家が用いる他のプログラムも使用できる。
【0056】
本発明は、ポリペプチドの製造に有用な単離核酸を提供する。そのようなポリペプチドは、多数の常法により製造できる。本発明のポリペプチドまたはその目的フラグメントをコードするDNA配列を、そのポリペプチドまたはフラグメントの産生のために発現ベクターにサブクローニングすることができる。DNA配列を、有利には適切なリーダーペプチドまたはシグナルペプチドをコードする配列に融合させる。あるいは、目的フラグメントを既知の方法で化学的に合成できる。DNAフラグメントは、全長クローン化DNA配列の制限エンドヌクレアーゼ消化により調製し、アガロースゲル上での電気泳動により単離することもできる。必要ならば、5’または3’末端を目的点まで再構成するオリゴヌクレオチドを、制限酵素消化により作製したDNAフラグメントにライゲートさせることができる。そのようなオリゴヌクレオチドはさらに、目的とするコード配列の上流に制限エンドヌクレアーゼ開裂部位を含むことができ、コード配列のN−末端に開始コドン(ATG)を配置することができる。
【0057】
目的とするタンパク質フラグメントをコードするDNA配列を単離および増幅するために、周知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法も採用できる。DNAフラグメントの目的とする末端を定めるオリゴヌクレオチドを、5’および3’プライマーとして用いる。これらのオリゴヌクレオチドはさらに、発現ベクターへの増幅DNAフラグメントの挿入を容易にするために、制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含んでもよい。PCR法は、Saiki et al.,Science,239:487,1988;Wu et al.編,Recombinant DNA Methodology,pp.189−196,Academic Press社,サンディエゴ,1989;およびInnis et al.編,PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press社,1990に記載されている。
【0058】
ポリペプチドおよびそのフラグメント
本発明は、天然由来のもの、または組換えDNA技術を伴う方法などの各種技術により製造されたものを含めた、種々の形のポリペプチドおよびそのフラグメントを包含する。そのような形には誘導体、変異体およびオリゴマー、ならびにその融合タンパク質またはフラグメントが含まれるが、これらに限定されない。
【0059】
本発明のポリペプチドには、前記核酸配列によりコードされる全長タンパク質が含まれる。特に好ましいIL−1ゼータ、TDZ.1、TDZ.2、TDZ.3およびXrec2のポリペプチドは、それぞれ配列番号:3、4、8、9および10のアミノ酸配列を含む。IL−1ゼータ、TDZ.1、TDZ.2、およびTDZ.3について、N−末端が古典的なシグナルペプチドではなく、IL−1ファミリーの他のメンバーの成熟形に対比して余分な長さをコードすることは、これらのN−末端がプロドメインとして作用する可能性を示唆する。推定開裂部位は、タンパク質の保存構造部分が始まる点である。構造モデリングデータによりこの推定が支持される。IL−1ゼータ、TDZ.1、およびTDZ.2については、この部位はエキソン4によりコードされるアミノ酸配列のN−末端付近のいずれかにある。たとえば配列番号:3に示すIL−1のポリペプチドは、アミノ酸1からxにまで及ぶ推定プロドメインを含み、ここでxは20〜50の整数である。同様に、配列番号:8のTDZ.1は、アミノ酸1からx’にまで及ぶ推定プロドメインを含み、ここでx’は40〜60の整数であり、最も好ましくはx’は約52である。配列番号:9のTDZ.2は、アミノ酸1からx”にまで及ぶ推定プロドメインを含み、ここでx”は20〜40の整数であり、最も好ましくはx”は31である。
【0060】
IL−1ゼータおよびそのスプライス変異体と異なり、配列番号:4に示すXrec2のポリペプチドはシグナルペプチドとして機能するN−末端疎水性領域を含み、アミノ酸19〜359を含む細胞外ドメイン、アミノ酸360〜378を含む膜貫通領域、およびアミノ酸379〜696を含むC−末端細胞質ドメインがそれに続く。コンピューター分析により、シグナルペプチドは配列番号:4の残基1〜19に相当すると推定される(ただし次に最も可能性のあるコンピューター推定シグナルペプチド開裂部位は、配列番号:4のアミノ酸20および16(順位が低下する)の後にある)。したがって、シグナルペプチドの開裂により配列番号:4のアミノ酸19〜696を含む成熟タンパク質が得られる。
【0061】
このようなポリペプチド領域の上記境界はおおまかであることは当業者に認識されるであろう。たとえば膜貫通領域の境界(これはその目的に利用できるコンピュータープログラムを用いて推定できる)が上記と異なる可能性がある。
【0062】
本発明のポリペプチドは膜結合であってもよく、あるいは分泌され、したがって可溶性であってもよい。可溶性ポリペプチドはそれらが発現した細胞から分泌されうる。一般に可溶性ポリペプチドは、目的ポリペプチドを発現する無傷の細胞を、たとえば遠心分離により培養培地から分離し、そして培地(上清)を目的ポリペプチドの存在についてアッセイすることにより同定できる(そして、不溶性の膜結合した同等物と区別できる)。培地中にポリペプチドが存在することは、そのポリペプチドが細胞から分泌され、したがって可溶性形タンパク質であることを示す。
【0063】
1態様において、可溶性ポリペプチドおよびそのフラグメントは細胞外ドメインの全部または一部を含み、ただしポリペプチドを細胞膜上に保持させる膜貫通領域を欠如する。可溶性ポリペプチドは、そのポリペプチドが産生された細胞から分泌される限り、細胞質ドメインまたはその部分を含んでもよい。
【0064】
一般に、ある種の適用には可溶性形の使用が有利である。可溶性ポリペプチドは細胞から分泌されるので、組換え宿主細胞からのポリペプチドの精製は容易になる。さらに、可溶性ポリペプチドの方が一般に静脈内投与に適する。
【0065】
本発明は、目的とする生物学的活性を保持する細胞外ドメインのポリペプチドおよびフラグメントをも提供する。具体的態様は、天然のコグネイト、基質または対向構造体(”結合パートナー”)を結合する能力を保持する配列番号:3、4、8、9および10のポリペプチドフラグメントを目的とする。そのようなフラグメントは前記のように可溶性ポリペプチドであってもよい。他の態様において、ポリペプチドおよびフラグメントは、有利には前記のようにIL−1リガンドおよびIL−1受容体ファミリーにおいて保存されている領域を含む。
【0066】
本発明においては、配列番号:3、4、8、9および10の配列のうち少なくとも20、または少なくとも30の連続アミノ酸を含むポリペプチドフラグメントも提供される。1つの側面において、配列番号:4のXrec2の細胞質ドメインに由来するフラグメントは、シグナル伝達の研究、および生物シグナルの伝達に関連する細胞プロセスの調節に利用される。ポリペプチドフラグメントを、抗体の産生に際して免疫源としても利用できる。
【0067】
変異体
本発明においては、前記ポリペプチドおよびフラグメントの天然変異体および誘導変異体を提供する。
【0068】
変異体は少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を示すものであってよい。ポリペプチドまたはフラグメントが、好ましいポリペプチドまたはそのフラグメントに少なくとも90%同一である、少なくとも95%同一である、少なくとも98%同一である、少なくとも99%同一である、または少なくとも99.9%同一であるアミノ酸配列を含む態様も包含される。同一性パーセントは視覚調査および数学的計算により判定できる。あるいは、2つのタンパク質配列の同一性パーセントは、Needleman and Wunsch(J.Mol.Bio.,48:443,1970)のアルゴリズムに基づく、ウィスコンシン遺伝学コンピューターグループ(UWGCG)から入手できるGAPコンピュータープログラムを用いて配列情報を比較することにより判定できる。GAPプログラムの好ましいデフォルトパラメーターには下記のものが含まれる:(1)スコアリングマトリックス、blosum62、Henikoff et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.,USA,89:10915,1992に記載;(2)ギャップ重み12;(3)ギャップ長さ重み4;ならびに(4)末端ギャップについてはペナルティなし。配列比較の分野の専門家が用いる他のプログラムも使用できる。
【0069】
本発明の変異体には、たとえばオータナティブmRNAスプライシング事象またはタンパク質分解開裂により生じるものが含まれる。mRNAのオータナティブスプライシングにより、トランケートした、ただし生物学的活性をもつタンパク質、たとえば天然の可溶性形タンパク質が得られる可能性がある。タンパク質分解に起因する変異には、たとえば異なるタイプの宿主細胞において発現した際に1またはそれ以上の末端アミノ酸がタンパク質から除かれる(一般に1〜5個の末端アミノ酸)ことによるN−末端またはC−末端の相異が含まれる。アミノ酸配列の相異が遺伝子多型(そのタンパク質を産生する個体間の対立遺伝子の相異)に起因するタンパク質も、本発明に包含される。
【0070】
本発明の範囲に包含される他の変異体には、他の化合物部分、たとえばグリコシル基、脂質、リン酸基、アセチル基などとの共有結合体または凝集結合体を形成することにより修飾してその誘導体を形成しうるポリペプチドが含まれる。共有結合誘導体は、化合物部分をポリペプチドのアミノ酸側鎖またはN−末端もしくはC−末端の官能基に結合させることにより製造できる。後記に詳述するように、それに結合した診断薬(検出薬)または療法薬を含む結合体が本発明に包含される。
【0071】
他の誘導体には、本発明のポリペプチドと他のタンパク質またはポリペプチドとの共有結合体または凝集結合体、たとえば組換え培養における合成によりN−末端またはC−末端融合体として得られるものが含まれる。融合タンパク質の例については、オリゴマーに関連して後記に述べる。さらに、融合タンパク質は精製および同定を容易にするために付加されるペプチドを含むことができる。そのようなペプチドには、たとえばポリ−Hisまたは抗原性の同定用ペプチドが含まれる:USP5,011,912およびHopp et al.,Bio/Technology,6:1204,1988に記載。そのようなペプチドの1つはFLAG(登録商標)ペプチドAsp−Tyr−Lys−Asp−Asp−Asp−Asp−Lys(配列番号:11)であり、これは抗原性が高く、特異的モノクローナル抗体が可逆的に結合するエピトープを供給し、発現した組換えタンパク質を迅速にアッセイし、かつ容易に精製することができる。4E11と表示されるネズミハイブリドーマは、特定の二価金属カチオンの存在下でFLAG(登録商標)ペプチドを結合するモノクローナル抗体を産生する:USP5,011,912に記載:参考として本明細書に援用する。4E11ハイブリドーマ細胞系はAmerican Type Culture Collectionに寄託no.HB9259で寄託されている。FLAG(登録商標)ペプチドを結合するモノクローナル抗体は、Eastman Kodak社、Scientific Imaging Systems Division,コネチカット州ニュー・ヘブンから入手できる。
【0072】
本発明により提供される変異体ポリペプチドには、天然の生物学的活性またはそれと実質的に同等活性を保持する、天然ポリペプチドの変異体が含まれる。一例は、天然形の場合と本質的に同じ結合アフィニティーで結合する変異体である。結合アフィニティーは、常法により、たとえばUSP5,512,457に記載される後記の方法により測定できる。
【0073】
変異体には、実質的に天然形に相同であるが、1以上の欠失、挿入または置換のため天然形のものと異なるアミノ酸配列をもつポリペプチドが含まれる。具体的態様には、天然配列と比較したとき1〜10個のアミノ酸残基の欠失、挿入または置換を含むポリペプチドが含まれるが、これらに限定されない。
【0074】
あるアミノ酸を類似の生理学的特性をもつ残基で交換してもよい。そのような保存置換の例には、1つの脂肪族残基相互、たとえばIle、Val、LeuまたはAla相互の置換;1つの極性残基相互、たとえばLysとArg、GluとAsp、またはGlnとAsn間の置換;あるいは1つの芳香族残基相互、たとえばPhe、TrpまたはTyr相互の置換が含まれる。他の保存置換、たとえば類似の疎水性をもつ領域全体の置換を伴うものは周知である。
【0075】
同様に、本発明のDNAには、1またはそれ以上の欠失、挿入または置換のため天然DNA配列と異なるが、生物学的に活性であるポリペプチドをコードする変異体が含まれる。
【0076】
本発明はさらに、天然様式のグリコシル化を伴うか、または伴わない本発明のポリペプチドを包含する。酵母または哺乳動物発現系(たとえばCOS−1またはCOS−7細胞)で発現したポリペプチドは、発現系の選択に応じて分子量およびグリコシル化パターンが天然ペプチドと類似するか、または有意に異なる可能性がある。本発明のポリペプチドを細菌性発現系、たとえば大腸菌(E coli)で発現させると、グリコシル化されていない分子が得られる。さらに、ある調製物が異なる状態にグリコシル化された多数のタンパク質種を含有することがある。グリコシル基は常法により、特にグリコペプチダーゼを用いる方法で除去できる。一般に本発明のグリコシル化ポリペプチドを過剰モルのグリコペプチダーゼ(Boehringer Manheim)と共にインキュベートしてもよい。
【0077】
これに対応して、アミノ酸残基もしくは配列の種々の付加体もしくは置換体、または末端もしくは内部の残基もしくは配列の欠失体をコードする類似のDNA構築体が本発明に包含される。たとえばポリペプチド細胞外ドメイン中のN−グリコシル化部位を修飾してグリコシル化を妨げ、これにより哺乳動物および酵母発現系において炭水化物を減少させた類似体を発現させることができる。真核細胞ポリペプチドのN−グリコシル化部位は、アミノ酸トリプレットAsn−X−Yにより表され、ここでXはPro以外の任意のアミノ酸、YはSerまたはThrである。これらのトリプレットをコードする核酸配列に対する適宜な置換、付加または欠失により、Asn側鎖における炭水化物残基の結合が阻止されるであろう。たとえばAsnが異なるアミノ酸で交換されるように選択した1ヌクレオチド変更で、N−グリコシル化部位を不活性化するのに十分である。あるいは、SerまたはThrを他のアミノ酸、たとえばAlaで交換することができる。タンパク質中のN−グリコシル化部位を不活性化するための既知方法は、USP5,071,972およびEP276,846に記載されており、これらを本明細書に参考として援用する。
【0078】
変異体の他の例においては、生物学的活性にとって必須でないCys残基をコードする配列を、Cys残基を欠失させるか、または他のアミノ酸と交換して、折りたたみまたは再生に際しての不適正な分子内ジスルフィド橋の形成を阻止することができる。
【0079】
他の変異体は、隣接する二塩基性アミノ酸残基を修飾して、KEX2プロテアーゼが存在する酵母系における発現を高めることにより作製される。EP212,914には、タンパク質中のKEX2プロテアーゼプロセシング部位を不活性化するために部位特異的変異誘発を用いることが開示されている。KEX2プロテアーゼプロセシング部位は、残基の欠失、付加または置換によりArg−Arg、Arg−Lys、およびLys−Arg対を変化させてこれらの隣接塩基性残基の発生を排除することにより、不活性化される。Lys−Lys対はKEX2開裂に対する感受性がかなり低いと考えられ、Arg−LysまたはLys−ArgからLys−Lysへの変換は、KEX2部位を不活性化するための保存的な好ましい方法である。
【0080】
オリゴマー
本発明には、IL−1ゼータ、TDZ.1、TDZ.2、TDZ.3またはXrec2ポリペプチドを含むオリゴマーまたは融合タンパク質が包含される。本発明のポリペプチドがI型膜タンパク質、たとえばXrec2である場合、融合パートナーはこのI型膜タンパク質のC−末端に結合する。そのようなオリゴマーは共有結合または非共有結合多量体の形であってよく、二量体、三量体、またはより高次のオリゴマーが含まれる。前記のように、好ましいポリペプチドは可溶性であり、したがってこれらのオリゴマーは可溶性ポリペプチドを含むことができる。本発明の1側面において、オリゴマーはポリペプチド成分の結合能を維持し、したがって二価、三価などの結合部位を備えている。
【0081】
本発明の1態様は、ポリペプチドに融合したペプチド部分間の共有結合または非共有結合相互作用により結合した複数のポリペプチドを含むオリゴマーに関する。そのようなペプチドは、ペプチドリンカー(スペーサー)、またはオリゴマー化を促進する特性をもつペプチドであってよい。ロイシンジッパー、および抗体由来のある種のポリペプチドは、後記に詳述するように、それに結合したポリペプチドのオリゴマー化を促進しうるペプチドに含まれる。
【0082】
免疫グロブリンベースのオリゴマー
1つの別法として、免疫グロブリン由来のポリペプチドを用いてオリゴマーを調製する。抗体由来のポリペプチドの種々の部分(Fcドメインが含まれる)に融合したある種の異種ポリペプチドを含む融合タンパク質の調製は、たとえばAshkenazi et al.,PNAS USA,88:10535,1991;Byrn et al.,Nature,344:677,1999;およびHollenbaugh and Aruffo,”免疫グロブリン融合タンパク質の構築”,Current Protocols in Immunology,Suppl.4,pp.10.19.1−10.19.11,1992に記載されている。
【0083】
本発明の1態様は、本発明のポリペプチドを抗体由来のFcポリペプチドに融合させることにより作製された2つの融合タンパク質を含む二量体に関する。ポリペプチド/Fc融合タンパク質をコードする遺伝子融合体を適宜な発現ベクターに挿入する。この組換え発現ベクターで形質転換した宿主細胞においてポリペプチド/Fc融合タンパク質が発現し、抗体にかなり類似するものが組み立てられ、その際Fc部分間にジスルフィド結合が形成されて、二価分子が得られる。
【0084】
本明細書中で用いる”Fcポリペプチド”という用語には、Fc領域のCHドメインのいずれか、または全部を含む、抗体のFc領域からなる天然形およびムテイン(変異タンパク質、mutein)形のポリペプチドが含まれる。二量体化を促進するヒンジ部を含む、そのようなポリペプチドの短縮型(truncated form)も含まれる。好ましいポリペプチドは、ヒトIgG1抗体由来のFcポリペプチドを含む。
【0085】
WO93/10151(本明細書に参考として援用する)に記載される適切なあるポリペプチドは、ヒトIgG1抗体のFc領域のN−末端ヒンジ部から天然C−末端にまで及ぶ一本鎖ポリペプチドである。他の有用なFcポリペプチドは、USP5,457,035およびBaum et al.,EMBO J.,13:3992−4001,1994(本明細書に参考として援用する)に記載されるFcムテインである。このムテインのアミノ酸配列は、WO93/10151に提示された天然Fc配列のものと、アミノ酸19がLeuからAlaへ、アミノ酸20がLeuからGluへ、かつアミノ酸22がGlyからAlaへ変化した以外は同一である。このムテインはFc受容体に対するアフィニティー低下を示す。
【0086】
Fc部分を含む上記の融合タンパク質(およびそれから形成したオリゴマー)は、プロテインAまたはプロテインGカラム上でのアフィニティークロマトグラフィーによって容易に精製できるという利点をもつ。
【0087】
他の態様において本発明のポリペプチドは、抗体のH鎖またはL鎖の可変部の代わりに使用できる。融合タンパク質が抗体のH鎖またはL鎖の両方をもつ場合、4つものポリペプチド細胞外領域をもつオリゴマーを形成することができる。
【0088】
ペプチドリンカーベースのオリゴマー
あるいは、オリゴマーはペプチドリンカー(スペーサーペプチド)をもつか、またはもたない、複数のポリペプチドを含む融合タンパク質である。適切なペプチドリンカーには、USP4,751,180および4,935,233(これらを本明細書に参考として援用する)に記載されるものが含まれる。目的とするペプチドリンカーをコードするDNA配列を、いずれか適切な常法により、本発明のDNA配列と同じ読み枠内に挿入することができる。たとえばリンカーをコードする化学合成オリゴヌクレオチドを配列間にライゲートさせることができる。具体的態様において融合タンパク質は、ペプチドリンカーで分離された2〜4つの可溶性ポリペプチドからなる。
【0089】
ロイシンジッパー
本発明のオリゴマーを製造するための他の方法は、ロイシンジッパーを用いるものである。ロイシンジッパードメインは、それらを含むタンパク質のオリゴマー化を促進するペプチドである。ロイシンジッパーは最初は幾つかのDNA結合性タンパク質中に同定され(Landschulz et al.,Science,240:1759,1988)、それ以来さまざまなタンパク質中に見出されるようになった。既知のロイシンジッパーには、二量体化または三量体化する天然ペプチドおよびその誘導体がある。
【0090】
ジッパードメイン(本明細書中ではオリゴマー化ドメイン、又はオリゴマー形成ドメインとも呼ぶ)は、しばしば他のアミノ酸が介在する4または5個のロイシン残基をもつ反復性7残基反復を含む。ジッパードメインの例は、酵母転写因子GCN4中にみられるもの、およびラット肝中にみられる熱安定DNA結合性タンパク質(C/EBP;Landschulz et al.,Science,243:1681,1989)である。2つの核形質転換タンパク質fosおよびjunもジッパードメインを示し、ネズミ原癌遺伝子の遺伝子産物c−mycも同様である(Landschulz et al.,Science,240:1759,1988)。核癌遺伝子fosおよびjunは、優先的にヘテロ二量体を形成するジッパードメインを含む(O’Shea et al.,Science,245:646,1989;Turner et al.,Science,243:1689,1989)。これらのタンパク質において、ジッパードメインは生物学的活性(DNA結合)にとって必要である。
【0091】
パラミクソウイルス、コロナウイルス、麻疹ウイルスおよび多くのレトロウイルスを含めた幾つかの異なるウイルスの融合誘導タンパク質(fusogenic protein)もジッパードメインをもつ(Buckland et al.,Nature,338:547,1989;Britton,Nature,353:394,1991;Delwart and Mosialos,AIDS Research and Human Retroviruses,6:703,1990)。これらの融合誘導ウイルスタンパク質中のジッパードメインは、それらのタンパク質の膜貫通領域付近にある;ジッパードメインは融合誘導タンパク質のオリゴマー構造に寄与する可能性が示唆されている。融合誘導ウイルスタンパク質のオリゴマー化は融合ポア形成に関与する(Spruce et al.,Proc.Natl Acad.Sci.USA,88:3523,1991)。ジッパードメインが熱ショック転写因子のオリゴマー化において役割を果たすことも最近報告された(Rabindran et al.,Science,259:230,1993)。
【0092】
ジッパードメインは、短い平行コイルドコイルとして折りたたまれる(O’Shea et al.,Science,254:539,1991)。この平行コイルドコイルの一般構造は十分に解明されており、1953年にCrickにより提唱された”ノブから穴へ(knobs−into−holes)”充填をもつ(Crick,Acta Crystallogr.,6:689,1953)。ジッパードメインにより形成される二量体は7残基反復により安定化され、これはMcLachlan and Stewart,J.Mol.Biol.,98:293,1975の表記法に従って(abcdefg)と表示される。ここで残基aおよびdは一般に疎水性残基であり、dはロイシンであって、ヘリックスの同一面に並ぶ。一般に逆に荷電した残基が位置gおよびeに生じる。こうして、2つのヘリックス状ジッパードメインから形成される平行コイルドコイルにおいて、第1ヘリックスの疎水性側鎖により形成される”ノブ”が第2ヘリックスの側鎖間に形成される”穴”内へ充填される。
【0093】
位置dの残基(しばしばロイシン)は大きな疎水性安定化エネルギーをもたらし、オリゴマー形成に重要である(Krystek et al.,J.Peptide Res.,38,:229,1991)。最近、Lovejoy et al.,Science,259:1288,1993は、ヘリックスがup−up−downに走行している三本鎖α−ヘリックス束の合成を報告した。彼らの研究で、疎水性安定化エネルギーはヘリックスモノマーからコイルドコイルが形成される主駆動力を与えることが確認された。これらの研究は、静電相互作用がコイルドコイルの化学量論および幾何学に関与することも示された。ロイシンジッパーの構造についての考察は、さらにHarbury et al.,Science,262:1401,1993にみられる。
【0094】
可溶性オリゴマータンパク質を製造するのに適したロイシンジッパードメインの例はWO94/10308に記載され、肺界面活性タンパク質D(SPD)由来のロイシンジッパーはHoppe et al.,FEBS Letters,344:191,1994に記載されており、これらを本明細書に参考として援用する。それに融合した異種タンパク質の安定な三量体形成を可能にする修飾ロイシンジッパーの使用が、Fanslow et al.,Semin.Immunol.,6:267−278,1994に記載されている。ロイシンジッパーペプチドに融合した可溶性ポリペプチドを含む組換え融合タンパク質が適切な宿主細胞において発現し、形成される可溶性オリゴマーを培養上清から回収する。
【0095】
ある種のロイシンジッパー部分は優先的に三量体を形成する。一例は、肺界面活性タンパク質D(SPD)由来のロイシンジッパーである:Hoppe et al.,FEBS Letters,344:191,1994およびUSP5,716,805に記載:それらの全体を本明細書に参考として援用する。この肺SPD由来ロイシンジッパーペプチドは、アミノ酸配列Pro Asp Val Ala Ser Leu Arg Gln Gln Val Glu Ala Leu Gln Gly Gln Val Gln His Leu Gln Ala Ala Phe Ser Gln Tyr(配列番号:12)をもつ。
【0096】
三量体形成を促進する他のロイシンジッパーの例は、アミノ酸配列Arg Met Lys Gln Ile Glu Asp Lys Ile Glu Glu Ile Leu Ser Lys Ile Tyr His Ile Glu Asn Glu Ile Ala Arg Ile Lys Lys Leu Ile Gly Glu Arg(配列番号:13)である:USP5,716,805に記載。他の1態様においては、N−末端Asp残基が付加される;他の態様では、このペプチドがN−末端Arg残基を欠如する。
【0097】
オリゴマー化促進特性を保持する、前記ジッパーペプチドのフラグメントも使用できる。そのようなフラグメントの例には、前記アミノ酸配列中に存在するN−末端またはC−末端残基1または2個を欠如するペプチドが含まれるが、これらに限定されない。ロイシンジッパーは、天然ロイシンジッパーペプチドから、たとえば天然アミノ酸配列における保存置換により誘導でき、その際ペプチドがオリゴマー化を促進する能力は保持される。
【0098】
天然の三量体タンパク質に由来する他のペプチドを三量体オリゴマーの調製に使用できる。あるいは、オリゴマー化を促進する合成ペプチドを使用できる。具体的態様においては、ロイシンジッパー部分のロイシン残基をイソロイシン残基で交換する。イソロイシンを含むそのようなペプチドをイソロイシンジッパーと呼ぶことはできるが、本明細書中で用いる”ロイシンジッパー”という用語に包含する。
【0099】
ポリペプチドおよびそのフラグメントの調製
本発明のポリペプチドおよびそのフラグメントの発現、単離および精製は任意の適切な方法で実施でき、それには下記のものが含まれるが、これらに限定されない:
発現系
本発明は、DNAを含む組換えクローニングおよび発現ベクター、ならびにそれらの発現ベクターを含む宿主細胞も提供する。DNAを含む発現ベクターは、そのDNAがコードする本発明のポリペプチドまたはフラグメントを調製するのに使用できる。ポリペプチドの調製方法は、そのポリペプチドをコードする組換え発現ベクターで形質転換した宿主細胞をそのポリペプチドの発現が促進される条件下で培養し、次いで発現したポリペプチドを培養物から回収することを含む。発現したポリペプチドを精製するための方法が、用いる宿主細胞のタイプ、およびそのポリペプチドが膜結合形または宿主細胞から分泌される可溶性形のいずれであるかなどの要因に従って異なることは、当業者に認識されるであろう。
【0100】
任意の適切な発現系を使用できる。ベクターは本発明のポリペプチドまたはフラグメントをコードするDNAを含み、これは適切な転写または翻訳調節ヌクレオチド配列、たとえば哺乳動物、微生物、ウイルスまたは昆虫遺伝子に由来する配列に、機能可能な状態で結合している。調節配列の例には、転写プロモーター、オペレーターまたはエンハンサー、mRNAリボソーム結合部位、ならびに転写および翻訳の開始および終止を制御する適宜な配列が含まれる。調節配列がDNA配列に対して機能的に関係している場合、ヌクレオチド配列は機能可能な状態で結合している。たとえば、プロモーターヌクレオチド配列がDNA配列の転写を制御するならば、そのプロモーターヌクレオチド配列はDNA配列に機能可能な状態で結合している。目的とする宿主細胞において複製する能力を与える複製起点、および形質転換体を同定する選択遺伝子が、一般に発現ベクターに組み込まれる。
【0101】
さらに、適切なシグナルペプチドをコードする配列(天然または異種)を発現ベクターに組み込むことができる。シグナルペプチド(分泌リーダー)のためのDNA配列を本発明の核酸配列と読み枠が一致するように融合させることができ、これによりそのDNAがまず転写され、そしてmRNAがシグナルペプチドを含む融合タンパク質に翻訳される。目的とする宿主細胞において機能性であるシグナルペプチドは、ポリペプチドの細胞外分泌を促進する。シグナルペプチドは、ポリペプチドが細胞から分泌されるとポリペプチドから開裂する。
【0102】
シグナルペプチドの開裂部位(1以上)がコンピュータープログラムにより推定したものと異なる可能性があり、また組換えポリペプチドの発現に用いた宿主細胞のタイプなどの要因に従って変動する可能性があることも、当業者に認識されるであろう。タンパク質調製物はシグナルペプチドが1より多い部位で開裂したことにより生じる異なるN−末端アミノ酸をもつタンパク質分子の混合物を含むことがある。本発明により得られる成熟タンパク質の具体的態様には、この残基を配列番号:3の位置6、23、25、26、39、41または48に、および配列番号:4の位置または19にN−末端アミノ酸としてもつタンパク質が含まれるが、これらに限定されない。
【0103】
ポリペプチドの発現に適した宿主細胞には、原核細胞、酵母または高等な真核細胞が含まれる。哺乳動物または昆虫の細胞が宿主細胞として用いるのに一般に好ましい。細菌、真菌、酵母および哺乳動物細胞性宿主に用いるのに適したクローニングベクターおよび発現ベクターは、たとえばPouwels et al.,Cloning Vector:A Laboratory Manual,Elsevier,ニューヨーク,1985に記載されている。本明細書に開示するDNA構築体に由来するRNAを用いてポリペプチドを調製するために、無細胞翻訳系も使用できる。
【0104】
原核細胞系
原核細胞には、グラム陰性またはグラム陽性生物が含まれる。形質転換に適した原核宿主細胞には、たとえば大腸菌、Bacillus subtilis,Salmonella typhimurium、ならびにPseudomonas、StreptomycesおよびStaphylococcus属に属する他のさまざまな種が含まれる。大腸菌などの原核宿主細胞では、ポリペプチドは真核宿主細胞において組換えポリペプチドの発現を促進するためにN−末端メチオニン残基を含むことができる。このN−末端メチオニンは発現した組換えポリペプチドから開裂させることができる。
【0105】
原核宿主細胞に用いる発現ベクターは、一般に1又はそれ以上の表現型選択性マーカー遺伝子を含む。表現型選択性マーカー遺伝子は、たとえば抗生物質耐性を与えるタンパク質、または独立栄養要求性を付与するタンパク質をコードする遺伝子である。原核宿主細胞に有用な発現ベクターの例には、市販プラスミド、たとえばクローニングベクターpBR322(ATCC37017)に由来するものが含まれる。pBR322はアンピシリンおよびテトラサイクリン耐性遺伝子を含み、したがって形質転換細胞を同定するための簡単な手段を提供する。適切なプロモーターおよびDNA配列をpBR322ベクターに挿入する。他の市販ベクターには、たとえばpKK223−3(Pharmacia Fine Chemicals,スウェーデン国ウプサラ)およびpGEM1(Promega Biotec,米国ワイオミング州マディソン)が含まれる。
【0106】
組換え原核宿主細胞発現ベクターに一般に用いられるプロモーター配列には、β−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)、ラクトースプロモーター系(Chang et al.,Nature,275:615,1978;およびGoeddel et al.,Nature,281:544,1979)、トリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddel et al.,Nucl.Acids Res.,8:4057,1980;およびEP−A−36776)、およびtacプロモーター(Maniatis,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,p.412,Cold Spring Harbor Laboratory,1982)が含まれる。特に有用な原核宿主細胞発現系は、ファージλPプロモーターおよびcI857ts熱不安定リプレッサー配列を用いる。λPプロモーターの誘導体を組み込んだ、American Type Culture Collectionから入手できるプラスミドベクターには、プラスミドpHUB2(大腸菌JMB9株中に常在、ATCC37092)およびpPLc28(大腸菌RR1中に常在、ATCC53082)が含まれる。
【0107】
酵母系
あるいは、ポリペプチドを酵母宿主細胞、好ましくはSaccharomyces属(たとえばS.cerevisiae)から発現させることができる。他の属の酵母、たとえばPichiaまたはKluyveromycesも使用できる。酵母ベクターは、しばしば2μ酵母プラスミド由来の複製起点配列、自己複製配列(ARS)、プロモーター領域、ポリアデニル化のための配列、転写終止のための配列、および選択性マーカー遺伝子を含む。酵母ベクターに適したプロモーター配列には、特に下記に対するプロモーターが含まれる:メタロチオネイン、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(Hitzeman et al.,J.Biol.Chem.,255:2073,1980)または他の解糖酵素(Hess et al.,J.Adv.Enzyme Reg.,7:149,1968;およびHolland et al.,Biochem.,17:4900,1978)、たとえばエノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホ−グルコースイソメラーゼ、およびグルコキナーゼ。酵母発現系に用いるための他の適切なベクターおよびプロモーターについては、さらにHitzeman、EP−A−73,657に記載されている。他の例は、Russell et al.,J.Biol.Chem.,258:2674,1982;およびBeier et al.,Nature,300:724,1982に記載されるグルコース抑制性ADH2プロモーターである。酵母と大腸菌の両方において複製可能なシャトルベクターは、大腸菌における選択および複製のためのpBR322由来のDNA配列(Amp遺伝子および複製起点)を前記の酵母ベクターに挿入することにより構築できる。
【0108】
酵母α−因子リーダー配列を用いてポリペプチドの分泌を指令することができる。α−因子リーダー配列は、しばしばプロモーター配列と構造遺伝子配列の間に挿入される(Kurjan et al.,Cell,30:933,1982;およびBitter et al.,Proc.Natl Acad.Sci.,USA,81:5330,1984)。酵母宿主からの組換えポリペプチドの分泌を容易にするのに適した他のリーダー配列は当業者に既知である。リーダー配列をその3’末端付近で修飾して、1又はそれ以上の制限部位を含ませてもよい。これは構造遺伝子へのリーダー配列の融合を容易にするであろう。
【0109】
酵母の形質転換プロトコルは当業者に既知である。そのようなプロトコルの1つがHinnen et al.,Proc.Natl Acad.Sci.,USA,75:1929,1978に記載されている。Hinnenらのプロトコルは、Trp形質転換体を選択培地中で選択する。その際、選択培地は0.67%の酵母窒素塩基、0.5%のカザミノ酸、2%のグルコース、10mg/mlのアデニン、および20mg/mlのウラシルを含む。
【0110】
ADH2プロモーター配列を含むベクターで形質転換した酵母宿主細胞を、発現誘発のために”富化”培地中で増殖させてもよい。富化培地の例は、1%の酵母エキス、2%のペプトンおよび1%のグルコースを含み、80mg/mlのアデニンおよび80mg/mlのウラシルを補充したものである。グルコースが培地から枯渇すると、ADH2プロモーターの抑制解除が起きる。
【0111】
哺乳動物系または昆虫系
哺乳動物または昆虫宿主細胞培養系も組換えポリペプチドの発現に使用できる。昆虫細胞における、異種タンパク質産生のためのバキュロウイルス系が、Luckow et al.,Bio/Technology,6:47,1988により概説されている。哺乳動物源の樹立細胞系も使用できる。適切な哺乳動物宿主細胞系の例には、下記のものが含まれる:サル腎細胞のCOS−7系(ATCC CRL 1651)(Gluzman et al.,Cell,23:175,1981)、L細胞、C127細胞、3T3細胞(ATCC CCL 163)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、およびBHK(ATCC CRL 10)細胞系、ならびにアフリカミドリザル腎細胞系CV1由来のCV1/EBNA細胞系(ATCC CCL 70):McMahan et al.,EMBO J.,10:2821,1991に記載。
【0112】
DNAを哺乳動物細胞に導入するための確立された方法が、Kaufman,R.J.,Large Scale Mammalian Cell Culture,pp.15−69,1990により記載されている。市販試薬、たとえばLipofectamine脂質試薬(Gibco/BRL)またはLipofectamine−Plus脂質試薬を用いる他のプロトコルを用いて、細胞をトランスフェクションすることができる(Felgner et al.,Proc.Natl Acad.Sci.,USA,84:7413−7417,1987)。さらにエレクトロポレーションを用いて常法により、たとえばSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Vol−3.1,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989に記載の方法で、哺乳動物細胞をトランスフェクションすることができる。安定な形質転換体の選択は、当技術分野で既知の方法、たとえば細胞毒性薬物に対する耐性により実施できる。Kaufman et al.,Meth.in Enzymology,185:487−511,1990に、幾つかの選択方式、たとえばジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)耐性が記載されている。DHFR選択に適した宿主系統は、DHFRを欠失するCHOのDX−B11系統である(Urlaub et al.,Proc.Natl Acad.Sci.,USA,77:4216−4220,1980)。DHFR cDNAを発現するプラスミドをDX−B11系統に導入すると、このプラスミドを含む細胞のみが適切な選択培地中で増殖できる。発現ベクターに組み込むことができる選択性マーカーの他の例には、抗生物質、たとえばG418およびハイグロマイシンBに対する耐性を付与するcDNAが含まれる。ベクターを宿した細胞を、これらの化合物に対する耐性に基づいて選択できる。
【0113】
哺乳動物宿主細胞発現ベクターのための転写および翻訳制御配列を、ウイルスゲノムから切り取ることができる。慣用されるプロモーター配列およびエンハンサー配列は、ポリオーマウイルス、アデノウイルス2、シミアンウイルス40(SV40)およびヒト サイトメガロウイルスに由来する。SV40ウイルスゲノム由来のDNA配列、たとえばSV40起点、初期および後期プロモーター、エンハンサー、スプライスおよびポリアデニル化部位を用いて、哺乳動物宿主細胞における構造遺伝子配列の発現のための他の遺伝子要素を得ることができる。ウイルス初期および後期プロモーターは特に有用である。これは、両者ともウイルスゲノムからフラグメントとして容易に得られ、そしてウイルス複製起点も含みうるからである(Fiers et al.,Nature,273:113,1978;およびKaufman,Meth.in Enzymology,1990)。これより小さな、または大きなSV40フラグメントも、SV40複製起点に位置するHindIII部位からBglI部位へ向かって伸びる約250bpの配列が含まれるならば使用できる。
【0114】
哺乳動物発現ベクターからの異種遺伝子の発現を改善することが示された他の制御配列には、CHO細胞由来の発現増大配列要素(expression augmenting sequence element,EASE)(Morris et al.,Animal Cell Technology,pp.529−534,1997;およびWO97/25420)、およびアデノウイルス2由来の三部分リーダー(tripartite leader,TRP)およびVA遺伝子RNA(Gingeras et al.,J.Biol.Chem.,257:13475−13491,1982)が含まれる。ウイルス由来の内部リボソームエントリー部位(IRES)配列は、ジシストロン性(dicistronic)mRNAを効率的に翻訳させる(Oh et al.,Current Opinion in Genetics and Development,3:295−300,1993;およびRamesh et al.,Nucleic Acids Research,24:2697−2700,1996)。異種cDNAをジシストロン性mRNAの一部として発現させ、次いで選択性マーカー(たとえばDHFR)の遺伝子を発現させると、宿主のトランスフェクション性および異種cDNAの発現が改善されることが示された(Kaufman,Meth.in Enzymology,1990)。ジシストロン性mRNAを用いる発現ベクターの例は、Mosser et al.,Biotechniques,22:150−161,1997により記載されるpTR−DC/GFP、およびMorris et al.,Animal Cell Technology,pp.529−534,1997により記載されるp2A5Iである。
【0115】
有用な高発現ベクターpCAVNOTが、Mosley et al.,Cell,59:335−348,1989により記載されている。哺乳動物宿主細胞に用いるための他の発現ベクターは、Okayama et al.(Mol.Cell Biol.,3:280,1983)による開示に従って構築できる。C127ネズミ乳上皮細胞における安定な高レベルの哺乳動物cDNA発現に有用な系は、実質的にCosman et al.,Mol.Immunol.,23:935,1986の記載に従って構築できる。Cosman et al.,Nature,312:768,1984に記載された有用な高発現ベクターPMLSV N1/N4は、ATCC39890として寄託されている。他の有用な哺乳動物発現ベクターは、EP−A−0367566およびWO91/18982に記載されており、これらを本明細書に参考として援用する。さらに他の別法では、ベクターはレトロウイルス由来であってもよい。
【0116】
他の有用な発現ベクターpFLAG(登録商標)を使用できる。FLAG(登録商標)法は、低分子量(1kD)の親水性FLAG(登録商標)マーカーペプチドをpFLAG(登録商標)発現ベクターにより発現する組換えタンパク質のN−末端に融合させることを中心とする。pDC311はCHO細胞においてタンパク質を発現させるのに用いる他の特殊なベクターである。pDC311は、目的遺伝子およびジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子を、DHFR翻訳のための内部リボソーム結合部位、発現増大配列要素(EASE)、ヒトCMVプロモーター、三部分リーダー配列、およびポリアデニル化部分と共に含む、ニシストロン配列を特色とする。
【0117】
使用できるシグナルペプチドに関して、天然シグナルペプチドを所望により異種のシグナルペプチドまたはリーダー配列で交換してもよい。シグナルペプチドまたはリーダーの選択は、組換えポリペプチドを産生させる宿主細胞のタイプなどの要因に依存するであろう。たとえば哺乳動物宿主細胞において機能する異種シグナルペプチドの例には、USP4,965,195に記載されるインターロイキン−7(IL−7)のシグナル配列;Cosman et al.,Nature,312:768,1984に記載されるインターロイキン−2受容体のシグナル配列;EP367,566に記載されるインターロイキン−4受容体シグナルペプチド;USP4,968,607に記載されるI型インターロイキン−1受容体シグナルペプチド;およびEP460,846に記載されるII型インターロイキン−1受容体シグナルペプチドが含まれる。
【0118】
精製
本発明は、ポリペプチドおよびそのフラグメントの単離および精製方法をも包含する。
単離および精製
本発明に包含される”単離した”ポリペプチドおよびそのフラグメントは、それまたはそれらが自然界でみられる環境と等しい環境にないポリペプチドまたはそのフラグメントである。本発明に包含される”精製した”ポリペプチドおよびそのフラグメントは、他のタンパク質またはポリペプチドを本質的に含まないもの、たとえば前記のような組換え発現系の精製物、あるいは天然の細胞および/または組織などの非組換え源に由来する精製物である。
【0119】
好ましい1態様において、組換えポリペプチドまたはフラグメントの精製は、本発明のポリペプチドまたはフラグメントの精製を補助するために、他のポリペプチドへの本発明のポリペプチドまたはフラグメントの融合体を用いて達成できる。そのような融合パートナーには、前記のポリ−Hisまたは他の抗原性同定ペプチド、ならびに従来記載されているFc部分を含めることができる。
【0120】
いかなるタイプの宿主細胞についても、当業者に既知のように、組換えポリペプチドまたはフラグメントの精製方法は、用いる宿主細胞のタイプ、並びに組換えポリペプチドまたはフラグメントが培地中へ分泌されるか否かなどの要因に従って異なるであろう。
【0121】
一般に組換えポリペプチドまたはフラグメントは、分泌されない場合は宿主細胞から、または可溶性でありかつ分泌される場合は培地もしくは上清から単離し、次いで1又はそれ以上の濃縮、塩析、イオン交換、疎水性相互作用、アフィニティー精製、またはサイズ排除クロマトグラフィーの工程により単離できる。これらの工程を達成するための具体的方法については、市販のタンパク質濃縮フィルター、たとえばAmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットを用いて培養培地をまず濃縮できる。濃縮工程後、濃縮物を精製マトリックス、たとえばゲル濾過媒体に適用することができる。あるいは、アニオン交換樹脂、たとえばペンダントジエチルアミノエチル(DEAE)基をもつマトリックスまたは支持体を使用できる。マトリックスは、アクリルアミド、アガロース、デキストラン、セルロース、またはタンパク質精製に慣用される他のタイプのものであってよい。あるいは、カチオン交換工程を使用できる。適切なカチオン交換体には、スルホプロピル基またはカルボキシメチル基を含む各種の不溶性マトリックスが含まれる。さらに、クロマトフォーカシング工程を使用できる。あるいは、疎水性相互作用クロマトグラフィー工程を使用できる。適切なマトリックスは樹脂に結合したフェニルまたはオクチル部分であろう。さらに、組換えタンパク質を選択的に結合するマトリックスを用いるアフィニティークロマトグラフィーを使用できる。用いられるそのような樹脂の例は、レクチンカラム、色素カラム、および金属キレートカラムである。最後に、ポリペプチドをさらに精製するために、疎水性の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)媒体(たとえばシリカゲル、またはペンダントメチル、オクチル、オクチルデシルその他の脂肪族基をもつポリマー樹脂)を用いる1以上のRP−HPLC工程を採用できる。さまざまに組み合わせた上記精製工程のうち幾つかまたは全部は周知であり、単離および精製した組換えタンパク質を得るのに採用できる。
【0122】
本発明のポリペプチド結合性タンパク質、たとえば本発明のポリペプチドに対して形成されたモノクローナル抗体を含むアフィニティーカラムを用いて、発現ポリペプチドをアフィニティー精製することもできる。これらのポリペプチドは常法により、たとえば高塩類の溶離緩衝液により、アフィニティーカラムから分離し、次いで用いる低塩類緩衝液中へ透析するか、あるいは用いるアフィニティーマトリックスに応じてpHその他の成分を変化させることにより、あるいはアフィニティー部分の天然基質、たとえば本発明によるポリペプチドを用いて競合分離することができる。
【0123】
本発明のこの側面においては、ポリペプチド結合性タンパク質、たとえば本発明の抗ポリペプチド抗体、または本発明のポリペプチドと相互作用しうる他のタンパク質を、固相支持体、たとえばカラムクロマトグラフィーマトリックスまたはこれに類する基質であって、表面に本発明のポリペプチドを発現する細胞の同定、分離もしくは精製に適したものに結合させることができる。本発明のポリペプチドを結合するタンパク質は、任意の手段で固相接触表面に付着させることができる。たとえば磁性マイクロスフェアをこれらのポリペプチド結合性タンパク質でコーティングし、そして磁界によりインキュベーション容器内に保持する。細胞混合物の懸濁液を、そのようなポリペプチド結合性タンパク質をもつ固相と接触させる。それらの表面に本発明のポリペプチドをもつ細胞はこの固定したポリペプチド結合性タンパク質に結合し、次いで結合していない細胞を洗い去る。このアフィニティー結合法は、そのようなポリペプチド発現細胞を溶液から精製、スクリーニングまたは分離するのに有用である。陽性選択された細胞を固相から離脱させる方法は当技術分野で既知であり、たとえば酵素の使用が含まれる。そのような酵素は好ましくは細胞に対して無毒性かつ無害であり、好ましくは細胞表面結合性パートナーを開裂させる特性をもつ。
【0124】
あるいは、本発明のポリペプチド発現細胞を含有する疑いのある細胞混合物をまず本発明のビオチニル化ポリペプチド結合性タンパク質と共にインキュベートすることができる。インキュベーション期間は、本発明のポリペプチドに確実に十分に結合させるために、典型的には少なくとも1時間である。次いで得られた混合物をアビジンコーテッドビーズ充填カラムに導通すると、アビジンに対するビオチンの高アフィニティーによりポリペプチド結合性細胞がビーズに結合する。アビジンコーテッドビーズは当技術分野で既知である(Berenson et al.,J.Cell.Biochem.,10D:239,1986)。結合していない物質の洗浄および結合細胞の放出は、常法により実施される。
【0125】
目的純度は意図するタンパク質の用途に依存する。たとえばタンパク質をインビボ投与する場合は比較的高い純度が望ましい。そのような場合、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に際して他のタンパク質に相当するタンパク質バンドが検出されないほどポリペプチドを精製する。差別グリコシル化、翻訳後差別プロセシングなどに起因するポリペプチドに対応する多数のバンドをSDS−PAGEにより視覚化しうることは、当業者に認識されるであろう。最も好ましくは、SDS−PAGEによる分析における単一タンパク質バンドに示されるように実質的に均質になるまで、本発明のポリペプチドを精製する。タンパク質バンドは、銀染色、クーマシーブルー染色、または(タンパク質が放射性標識されている場合)オートラジオグラフィーにより視覚化できる。
【0126】
アッセイ法
精製した本発明のポリペプチド(タンパク質、ポリペプチド、フラグメント、変異体、オリゴマー、および他の形を含む)が結合パートナーを結合する能力を、任意の適切なアッセイ法、たとえば一般的な結合アッセイ法により試験することができる。たとえばポリペプチドを検出可能な試薬(たとえば放射性核種、発色団、比色反応または蛍光反応を触媒する酵素など)で標識することができる。結合パートナーを発現する細胞と標識ポリペプチドを接触させる。次いで細胞を洗浄して結合していない標識ポリペプチドを除去し、その標識の性質に従って選択した適切な方法で細胞結合標識の存在を測定する。
【0127】
結合アッセイ法の一例は下記のとおりである。結合パートナーcDNAを含む組換え発現ベクターを当技術分野で周知の方法により構築する。10cmの皿中のCV1−EBNA−1細胞を、この組換え発現ベクターでトランスフェクションする。CV1−/EBNA−1細胞(ATCC CRL 10478)は、CMV極初期エンハンサー/プロモーター駆動によりEBV核抗原−1を構成的に発現する。CV1−EBNA−1はアフリカミドリザル腎細胞系CV−1(ATCC CCL 70)に由来する:McMahan et al.(EMBO J.,10:2821,1991)により記載。
【0128】
トランスフェクションした細胞を24時間培養し、次いで各皿の細胞を24ウェルプレートに分ける。さらに48時間培養した後、トランスフェクションした細胞(約4×10個/ウェル)をBM−NFDM、すなわち50mg/mlの脱脂粉乳を添加した結合用媒質(RPMI 1640;25mg/mlのウシ血清アルブミン、2mg/mlのナトリウムアジド、20mMのHepesを含有、pH7.2)で洗浄する。次いで細胞を37℃で1時間、種々の濃度の、たとえば前記に従って調製した可溶性ポリペプチド/Fc融合タンパク質と共にインキュベートする。次いで細胞を洗浄し、結合用媒質中、定常飽和濃度の125I−マウス抗ヒトIgGと共に37℃で1時間、穏やかに撹拌しながらインキュベートする。十分な洗浄後、細胞をトリプシン処理により離脱させる。
【0129】
上記で用いたマウス抗ヒトIgGはヒトIgGのFc領域に対して形成されたものであり、Jackson Immunoresearch Laboratories社(ペンシルベニア州ウェスト・グローブ)から入手できる。この抗体を標準クロラミン−T法により放射性ヨウ素化する。この抗体は細胞に結合している任意のポリペプチド/Fc融合タンパク質のFc部分に結合するであろう。すべてのアッセイにおいて、125I−抗体の非特異的結合を、融合タンパク質/Fcの不存在下、ならびにFc融合タンパク質および200倍モル過剰の非標識マウス抗ヒトIgG抗体の存在下でアッセイする。
【0130】
細胞結合125I−抗体をPackard Autogamma計数器で定量する。アフィニティー計算値(Scatchard,Ann.N.Y.Acad.Sci.,51:660,1949)を、Microvaxコンピューターで行うRS/I(BBN Software,マサチュセッツ州ボストン)により求める。
【0131】
他のタイプの適切な結合アッセイは競合結合アッセイである。たとえば、変異体の生物学的活性は、結合パートナーへの結合に対して変異体が天然タンパク質と競合する能力をアッセイすることにより判定される。
【0132】
競合結合アッセイは常法により行うことができる。競合結合アッセイに使用できる試薬には、本発明の放射性標識ポリペプチド、および結合パートナー(内因性のものまたは組換え体)を発現する無傷の細胞が含まれる。たとえば放射性標識した可溶性IL−1ゼータフラグメントを、細胞表面IL−1ゼータ受容体への結合に対して可溶性IL−1ゼータ変異体との競合に使用できる。無傷の細胞の代わりに、プロテインAまたはプロテインG(固相上)とFc部分の相互作用により固相に結合した可溶性結合パートナー/Fc融合タンパク質を使用できる。プロテインAまたはプロテインGを含むクロマトグラフィーカラムには、Pharmacia Biotech社(ニュージャージー州ピスカッタウェイ)から入手できるものが含まれる。
【0133】
他のタイプの競合結合アッセイは、放射性標識した可溶性結合パートナー、たとえば可溶性IL−1ゼータ受容体/Fc融合体、またはXrec2リガンド/Fc融合タンパク質、および結合パートナーを発現する無傷の細胞を用いる。定性的結果は競合オートラジオグラフィープレート結合アッセイにより得ることができ、一方、定量的結果を求めるにはScatchardプロット(Scatchard,Ann.N.Y.Acad.Sci.,51:660,1949)を利用してもよい。
【0134】
IL−1ゼータ、TDZ.1、TDZ.2、TDZ.3およびXrec2核酸またはオリゴヌクレオチドの使用
DNA、RNA、mRNA、およびそのオリゴヌクレオチドを含めた本発明の核酸は、前記のポリペプチド発現のほかに下記に使用できる:
− IL−1リガンドおよび受容体ファミリーのタンパク質をコードする核酸を同定するためのプローブとして;
− ヒト第2およびX染色体を同定するために;
− ヒト第2およびX染色体上の遺伝子地図を作製するために;
− ヒト第2およびX染色体に関連する特定の疾病、症状その他の状態に関連する遺伝子を同定するために;
− IL−1ゼータ、TDZ.1、TDZ.2、TDZ.3およびXrec2遺伝子によりコードされるポリペプチドの発現を阻害するための一本鎖センスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドとして;
− 個体において欠陥遺伝子の検出を補助するために;ならびに
− 遺伝子治療のために。
【0135】
プローブ
本発明の核酸の使用には、プローブまたはプライマーとしてのフラグメントの使用が含まれる。そのようなフラグメントは一般にDNA配列の少なくとも約17の連続ヌクレオチドを含む。他の態様においては、DNAフラグメントはDNA配列の少なくとも30、または少なくとも60の連続ヌクレオチドを含む。
【0136】
他の哺乳動物種に由来する配列番号:1、2、5、6および7の相同体も本発明において企図されるので、配列番号:1、2、5、6および7のヒトDNAに基づくプローブを用いて、他の哺乳動物種に由来するcDNAライブラリーを一般的な種間ハイブリダイゼーション法によりスクリーニングできる。
【0137】
遺伝暗号の知識を前記のアミノ酸配列と組み合わせて用いて、縮重オリゴヌクレオチドの組を調製できる。そのようなオリゴヌクレオチドは、たとえばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)においてプライマーとして有用であり、これによりDNAフラグメントを単離および増幅する。
【0138】
染色体地図作成
配列番号:1のIL−1ゼータ、または配列番号:5、6および7のIL−1ゼータスプライス変異体の核酸の全部または一部(オリゴヌクレオチドを含む)を当業者に周知の方法で用いて、ヒト第2染色体、およびIL−1リガンドファミリーメンバーのDNAを含むその特定の遺伝子座を同定できる。さらに、配列番号:2のXrec2の核酸の全部または一部(オリゴヌクレオチドを含む)を用いて、ヒトX染色体、およびIL−1受容体ファミリーメンバーのDNAを含むその特定の遺伝子座を同定できる。有用な方法には、上記配列またはその部分(オリゴヌクレオチドを含む)を種々の周知の方法、たとえば放射線ハイブリッドマッピング(高分解能)、染色体スプレッドへのin situハイブリダイゼーション(中等度分解能)、および個々のヒト染色体を含むハイブリッド細胞系に対するサザンブロットハイブリダイゼーション(低分解能)におけるプローブとしての使用が含まれるが、これらに限定されない。
【0139】
たとえば放射線ハイブリダイゼーションにより染色体地図を作製できる。Whitetehead Institute/MIT Center for Genome Researchの93放射線ハイブリッドのGenebridge4パネルを用いてPCRを行う(http://www−gonome.wi.mit.edu/ftp/distribution/human_STS_releases/july97/rhmap/genebridge4.html)。目的遺伝子の推定エキソン内にあって、ヒトゲノムDNA由来の生成物を増幅するが、ハムスターゲノムDNAを増幅しないプライマーを用いる。PCRの結果をインターネット(http://www−seq.wi.mit.edu)上のWhitetehead/MIT Radiation Mappingサイトに提示するデータベクターに変換する。データの得点を求め、放射線ハイブリッド地図上の既知のSequence Tag Site(STS)マーカーに対比して染色体帰属および配置を提供する。以下のウェブサイトで放射線ハイブリッドマッピングについての情報がさらに得られる:
http://www−gonome.wi.mit.edu/ftp/distribution/human_STS_releases/july97/07−97.INTRO.html
関連疾病の同定
後記のように、配列番号:1のIL−1ゼータ、ならびに配列番号:5、6および7のIL−1ゼータスプライス変異体の核酸は、放射線ハイブリダイゼーションおよびハイスループット−ショットガン配列決定法により、ヒト第2染色体の2q11−12領域にマッピングされた。ヒト第2染色体は、緑内障、外胚葉性異形成症、インスリン依存性糖尿病、しわ皮膚症候群、T細胞性白血病/リンパ腫、および頚骨筋ジストロフィー症を含めた特定の疾病(これらに限定されない)に関連する。配列番号:2のXrec2の核酸は、放射線ハイブリダイゼーションおよびハイスループット−ショットガン配列決定法によりヒトX染色体のXp22領域にマッピングされた。ヒトX染色体は、網膜分離症、脳回欠損、皮質下層状ヘテロピア、精神発達遅滞、cowchock症候群、bazex症候群、多毛症、リンパ滲出性症候群、免疫不全症、ランガー中割球異形成症、および白血病に関連する。したがって当業者は、配列番号:1、5、6、7および2の核酸またはそのフラグメントを周知の方法で用いて、第2およびX染色体にマッピングされる遺伝子に関連する異常を分析できる。これにより、このマーカーが再配列または欠失した状態を識別できる。さらに、配列番号:1、2、5、6および7の核酸分子またはそのフラグメントを、位置が分かっていない他の遺伝子をマッピングするためのポジショナルマーカーとして使用できる。
【0140】
このDNAは、本発明の核酸に対応する遺伝子の欠陥または量の不足により仲介される(直接的または間接的に)障害の治療方法の開発に使用できる。本明細書に開示した天然ヌクレオチド配列により欠陥遺伝子を検出し、正常な遺伝子と交換することができる。欠陥遺伝子は、インビトロ診断アッセイ法において、また本明細書に開示した天然ヌクレオチド配列とこの遺伝子をもつ疑いのある者からの遺伝子のヌクレオチド配列を比較することにより検出できる。
【0141】
センス−アンチセンス
本発明の核酸の他の有用なフラグメントには、ターゲットmRNA(センス)またはDNA(アンチセンス)配列に結合しうる一本鎖核酸配列(RNAまたはDNA)を含むセンスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれる。本発明によるアンチセンスまたはセンスオリゴヌクレオチドは、DNA(配列番号:1、2、5、6および7)のフラグメントを含む。そのようなフラグメントは一般に、少なくとも約14ヌクレオチド、好ましくは約14〜約30ヌクレオチドを含む。あるタンパク質をコードするcDNA配列に基づいてアンチセンスまたはセンスオリゴヌクレオチドを誘導できることは、たとえばStein et al.,Cancer Res.,48:2659,1988;およびvan der Krol et al.,BioTechniques,6:958,1988に記載されている。
【0142】
アンチセンスまたはセンスオリゴヌクレオチドがターゲット核酸配列に結合すると二本鎖が形成され、これがRNAseHによるmRNAの分解増大、スプライシングの阻害、転写または翻訳の早期終止を含めた幾つかの手段の1つにより、あるいは他の手段により、タンパク質発現を遮断または阻害する。したがってアンチセンスオリゴヌクレオチドをタンパク質発現の遮断に使用できる。アンチセンスまたはセンスオリゴヌクレオチドはさらに、修飾した糖−ホスホジエステル主鎖(または他の糖結合、たとえばWO91/06629に記載されたもの)をもつオリゴヌクレオチドを含み、そのような糖結合は内因性エンドヌクレアーゼに耐性である。耐性糖結合をもつこのようなオリゴヌクレオチドはインビボで安定である(すなわち酵素分解に耐えうる)が、ターゲットヌクレオチド配列に結合しうる特異性を保持する。
【0143】
センスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドの他の例には、たとえばWO90/10448に記載された有機部分、あるいは、ターゲット核酸配列に対するオリゴヌクレオチドのアフィニティーを高めるその他の有機部分、たとえばポリ−(L−リシン)、に共有結合したオリゴヌクレオチドが含まれる。さらにまた、インターカレーション剤、たとえばエリプチシン、およびアルキル化剤または金属錯体をセンスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドに結合させて、ターゲットヌクレオチド配列に対するアンチセンスまたはセンスオリゴヌクレオチドの結合特異性を改変することができる。
【0144】
アンチセンスまたはセンスオリゴヌクレオチドは、たとえばリポフェクション、CaPO仲介によるDNAトランスフェクション、エレクトロポレーションを含めた任意の遺伝子伝達法により、またはエプスタインバーウイルスなどの遺伝子伝達ベクターを用いて、ターゲット核酸配列を含む細胞に導入できる。
【0145】
センスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドは、WO91/04753に記載されるように、リガンド結合性分子との結合体の形成により、ターゲット核酸配列を含む細胞に導入することもできる。適切なリガンド結合性分子には、細胞表面受容体、成長因子、他のサイトカイン、または細胞表面受容体に結合する他のリガンドが含まれるが、これらに限定されない。好ましくはリガンド結合性分子の結合は、実質的にリガンド結合性分子がそれの対応分子または受容体に結合するのを妨害せず、あるいはセンスもしくはアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはそれの結合形が細胞に進入するのを実質的に遮断しない。
【0146】
あるいはセンスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドは、WO90/10448に記載されるように、オリゴヌクレオチド−脂質複合体の形成により、ターゲット核酸配列を含む細胞に導入できる。センスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチド複合体は、好ましくは細胞内で内因性リパーゼにより解離する。
【0147】
IL−1ゼータ、TDZ.1、TDZ.2、TDZ.3およびXrec2ポリペプチドおよびフラグメント化ポリペプチドの使用
用途には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:
− タンパク質の精製およびその活性測定
− 運搬剤
− 療法薬および研究用試薬
− ペプチドフラグメント化の対照
− 未知タンパク質の同定
− 抗体の産生
精製試薬
本発明のポリペプチドはそれぞれタンパク質精製試薬として使用できる。これらのポリペプチドを固体支持体材料に結合させ、アフィニティークロマトグラフィーによりパートナータンパク質を精製するのに使用できる。具体的な態様においては、ポリペプチド(本明細書に記載した、結合パートナーを結合しうる任意の形のもの)を、常法により固体支持体に結合させる。一例として、タンパク質のアミノ酸側鎖上の官能基と反応する官能基を含むクロマトグラフィーカラムを利用できる(Pharmacia Biotech社、ニュージャージー州ピスカッタウェイ)。別法では、ポリペプチド/Fcタンパク質(前記)をプロテインA−またはプロテインG−含有クロマトグラフィーカラムにFc部分との相互作用により結合させる。
【0148】
本発明のポリペプチドは、細胞表面に結合パートナーを発現する細胞を精製または同定するのにも使用できる。ポリペプチドを固相、たとえばカラムクロマトグラフィーマトリックスまたは同様な適切な支持体に結合させる。たとえば磁性マイクロスフェアをこれらのポリペプチドでコーティングし、そして磁界によりインキュベーション容器内に保持することができる。結合パートナー発現細胞を含有する細胞混合物の懸濁液を、上記ポリペプチドを保有する固相と接触させる。細胞表面に結合パートナーを発現する細胞はこの固定したポリペプチドに結合し、次いで結合していない細胞を洗い去る。
【0149】
あるいは、前記ポリペプチドを検出可能部分に結合させ、次いで結合パートナー発現について検査すべき細胞と共にインキュベートすることができる。インキュベーション後、結合していない標識物質を除去し、細胞上に検出可能部分が存在するか否かを判定する。
【0150】
さらに他の態様においては、結合パートナー発現細胞を含有する疑いのある細胞混合物をビオチニル化ポリペプチドと共にインキュベートする。インキュベーション期間は、確実に十分に結合させるために一般に少なくとも1時間である。次いで得られた混合物をアビジンコーテッドビーズ充填カラムに導通すると、アビジンに対するビオチンの高アフィニティーにより目的細胞がビーズに結合する。アビジンコーテッドビーズの使用方法は既知である(Berenson et al.,J.Cell.Biochem.,10D:239,1986)。結合していない物質の洗浄および結合細胞の離脱は、常法により実施される。
【0151】
活性測定
ポリペプチドは、結合パートナータンパク質の結合アフィニティーに関してそれらの生物学的活性を測定するのにも使用できる。たとえば、前記ポリペプチドは”品質確認”試験を実施する者が、たとえば種々の条件下でのタンパク質の貯蔵寿命および安定性を監視するために使用できる。たとえば、前記ポリペプチドは、種々の温度で貯蔵した、または種々の細胞タイプにおいて産生した結合パートナータンパク質の生物学的活性を測定するための結合アフィニティー試験に使用できる。これらのタンパク質は、結合パートナータンパク質の修飾(たとえば化学修飾、トランケーション、変異など)後に生物学的活性が保持されているかどうかを判定するためにも使用できる。修飾した結合パートナータンパク質の結合アフィニティーを、修飾していない結合パートナータンパク質のものと比較し、修飾が結合パートナーの生物学的活性に及ぼす不都合な作用を検出する。こうして結合パートナータンパク質をたとえば試験研究に用いる前にその生物学的活性を確認できる。
【0152】
運搬剤
前記ポリペプチドは、それに結合した薬剤を結合パートナー保有細胞へ運搬するためのキャリヤーとしても使用できる。たとえば、前記ポリペプチドはインビトロまたはインビボ法でそのような細胞(または細胞表面に結合パートナーを発現することが認められた他の細胞タイプ)へ診断薬または療法薬を運搬するために使用できる。
【0153】
ポリペプチドに結合させうる検出薬(診断薬)または療法薬には、毒素、他の細胞毒性物質、薬物、放射性核種、発色団、比色反応または蛍光反応を触媒する酵素などが含まれるが、これらに限定されない。個々の薬剤は意図する用途に従って選択される。毒素には、リシン(ricin)、アブリン、ジフテリア毒素、Pseudomonas aeruginosa外毒素A、リボソーム不活性化タンパク質、マイコトキシン、たとえばトリコテセン類、ならびにその誘導体およびフラグメント(たとえば一本鎖)が含まれる。診断用として適した放射性核種、たとえば123I、131I、99mTc、111In、および76Brが含まれるが、これらに限定されない。療法診断用として適した放射性核種の例は、131I、211At、77Br、186Re、188Re、212Pb、212Bi、109Pd、64Cu、および67Cuである。
【0154】
そのような薬剤を、任意の適切な常法により前記ポリペプチドに結合させることができる。ポリペプチドは、たとえば目的薬剤上の官能基と反応して共有結合を形成しうる官能基をアミノ酸側鎖上に含む。あるいは、前記のタンパク質または薬剤を誘導体化して、目的とする反応性官能基を生成または結合させることができる。誘導体化は、タンパク質に種々の分子を結合させるのに使用できる二官能型結合性試薬のひとつを結合させることを伴うものであってもよい(Pierce Chemical Company,イリノイ州ロックフォード)。タンパク質を放射性標識するための多数の方法が知られている。放射性核種金属を、たとえば適切な二官能性キレート化剤の使用によりポリペプチドに結合させてもよい。
【0155】
こうして、ポリペプチド、および適切な診断薬または療法薬を含む結合体(好ましくは共有結合)が調製される。これらの結合体を、個々の用途に適切な量で投与し、または他の方法で使用できる。
【0156】
療法薬
本発明のポリペプチドは、これらのポリペプチドの欠陥または量の不足により仲介される(直接的または間接的に)障害の治療方法の開発に使用できる。これらのポリペプチドは、そのような障害を伴う哺乳動物に投与できる。
【0157】
これらのポリペプチドは、インビトロまたはインビボ法で結合パートナーの生物学的活性を阻害するのにも使用できる。たとえば精製Xrec2受容体ポリペプチドを用いて、内因性の細胞表面Xrec2受容体にXrec2リガンドが結合するのを阻害できる。あるいは、精製IL−1ゼータポリペプチドまたはそのいずれかのスプライス変異体を用いて、内因性IL−1ゼータポリペプチドまたはそのスプライス変異体が細胞表面受容体に結合するのを阻害できる。内因性Xrec2受容体に対するXrec2リガンドの結合により生じる生物学的効果がこうして阻害される。
【0158】
本発明のポリペプチドは、結合パートナー仲介による障害を処置するために哺乳動物に投与できる。そのような結合パートナー仲介による障害には、結合パートナーにより引き起こされる(直接的または間接的に)か、または悪化する状態が含まれる。
【0159】
本発明の組成物は、本明細書に記載する任意の形のポリペプチド、たとえば天然タンパク質、変異体、誘導体、オリゴマー、および生物学的活性フラグメントを含有することができる。具体的な態様においては、組成物は可溶性ポリペプチド、または本発明の可溶性ポリペプチドを含むオリゴマーを含む。
【0160】
IL−1ゼータポリペプチドの特に重要な領域は、分子の二次構造を表す図2に示した分子モデルから誘導できる。このモデルはIL−1βおよびIL−1raの結晶構造に基づく。図中、β−鎖を黄色で示し、それらの方向を矢印で示す。β−ターーンを青色で、コイルを緑で示す。このモデルは、分子のひずみを生じることなく、IL−1ゼータ構造をIL−1βおよびIL−1ra構造に重ねうることを証明する。この分子の信頼度は高いので、IL−1ゼータに由来する療法分子を作製するための合理的な薬物設計に使用できる。
【0161】
有効量の本発明ポリペプチドを他の成分、たとえば生理学的に許容できる希釈剤、キャリヤーまたは賦形剤と組み合わせたものを含む組成物が本発明において提供される。これらのポリペプチドを医薬的に有用な組成物の調製に用いる既知方法に従って配合できる。それらを唯一の有効物質として、またはその適応症に適した他の既知有効物質と共に、医薬的に許容できる希釈剤(たとえば食塩水、トリス−HCl、アセテート、およびリン酸緩衝溶液)、保存剤(たとえばチメロサール、ベンジルアルコール、パラベン)、乳化剤、可溶化剤、アジュバントおよび/またはキャリヤーと混和することができる。医薬組成物に適した配合物には、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第16版,Mack Publishing Company,ペンシルベニア州イーストン,1980に記載のものが含まれる。
【0162】
さらに、そのような組成物をポリエチレングリコール(PEG)、金属イオンと複合体形成するか、あるいは高分子化合物、たとえばポリ酢酸、ポリグリコール酸、ヒドロゲル、デキストランなどに取り込ませるか、あるいはリポソーム、マイクロエマルション、ミセル、単膜もしくは多重膜ベシクル、赤血球ゴーストまたはスフェロプラストに取り込ませることができる。そのような組成物は物理的状態、溶解度、安定性、インビボ放出速度、およびインビボクリアランス速度に影響を及ぼすので、意図する用途に従って選択できる。
【0163】
本発明の組成物は任意の適切な様式で、たとえば局所的に、非経口的に、または吸入により投与できる。”非経口”という用語には、注射、たとえば皮下、静脈内または筋肉内経路によるものが含まれ、局所投与、たとえば疾病または損傷の部位における投与も含まれる。インプラントからの持続放出も企図される。適切な投与量が処置すべき障害の性質、患者の体重、年齢および全般的状態、ならびに投与経路に応じて異なることは、当業者に認識されるであろう。
【0164】
動物試験に従って予め投与量を判定でき、ヒト投与のためのスケーリングは技術分野で受け入れられている方法に従って行われる。
生理学的に許容できる配合物中に核酸を含む組成物も考慮される。DNAをたとえば注射用に配合できる。
【0165】
研究用試薬
本発明ポリペプチドの他の用途は、IL−1ゼータまたはそのスプライス変異体とそれの結合パートナーとの相互作用、およびXrec2とそれの結合パートナーとの相互作用により生じる、あるいはこれらの相互作用を阻害することにより生じる生物学的効果を種々の細胞において調べるための研究道具としてである。ポリペプチドは、IL−1ゼータ、Xrec2、それぞれの結合パートナーまたはその相互作用を検出するためのインビトロアッセイにも使用できる。
【0166】
本発明の他の態様は、細胞のシグナル伝達を調べるための本発明ポリペプチドの使用に関する。IL−1ファミリーのリガンドおよび受容体は、感染症および免疫性炎症応答に対する保護において中心的役割を果たす。これには、細胞のシグナル伝達、血管内皮細胞およびリンパ球の活性化、炎症性サイトカイン、急性期タンパク質、造血、発熱、骨再吸収、フロスタグランジン、メタロプロテイナーゼおよび接着分子の誘導が含まれる。既知IL−1ファミリーメンバー数が連続的に増加していることに関して、適切な分類方式はポリペプチドの構造および機能(活性化および調節特性)の比較に基づくものである。たとえば、IL−1ゼータ、TDZ.1、TDZ.2およびTDZ.3は他のIL−1ファミリーリガンド(IL−1α、IL−1βおよびIL−18)と同様に、そしてXrec2は他のIL−1ファミリー受容体(IL−1RI、IL−1RII、IL−1Rrp1およびAcPL)と同様に、前記の多数の機能に関与し、かつ炎症応答を促進し、したがっておそらく炎症性および/または自己免疫性疾患、たとえば慢性間接リウマチ、炎症性腸疾患および乾癬の原因および持続に関与すると思われる。したがって、本発明ポリペプチドの発現の変更および/または活性化は、細胞特異性応答および増殖の活性化または阻害を含めた(これらに限定されない)多数の細胞プロセスに著しい効果をもつ可能性がある。クローン化したIL−1ゼータ、TDZ.1、TDZ.2、TDZ.3、Xrec2、またはその機能不活性変異体の発現を利用して、そのタンパク質が特定の信号伝達事象の仲介において果たす役割を確認することができる。
【0167】
細胞のシグナル伝達はしばしば分子活性化カスケードを伴い、その間に受容体がターゲット基質をリン酸化する細胞内キナーゼを特異的に活性化することにより、リガンド−受容体仲介によるシグナルを伝搬する。これらの基質は、それ自体がリン酸化に伴って活性化されるキナーゼであってもよい。あるいは、それらはリン酸化に伴うタンパク質−タンパク質相互作用によって下流の信号伝達を促進するアダプター分子であってもよい。基質分子(1またはそれ以上)の性質に関係なく、発現した機能活性形のXrec2、IL−1ゼータ、IL−1ゼータスプライス変異体、およびそれらの結合パートナーを用いて、本発明のポリペプチドにより認識および活性化された基質(1またはそれ以上)が何であるかを同定できる。したがってこれらの新規ポリペプチドは、信号伝達経路に関与する新規分子を同定するための試薬として使用できる。
【0168】
未知タンパク質の同定
質量分析による未知タンパク質の同定を補助するために、ポリペプチドまたはペプチドフィンガープリントを既知タンパク質のデータベースに挿入し、またはそれと比較することができる(W.J.Henzel et al.,Pro.Natl.Acad.Sci.USA,90:5011−5015,1993;Fenyo et al.,Electrophoresis,19:998−1005,1998)。これらの比較を容易にする多様なソフトウェアプログラムにインターネットによりアクセスできる:たとえばProtein Prospector(インターネットサイト:prospector.uscf.edu)、Multildent(インターネットサイト:www.expasy.ch/sprot/multiident.html)、PeptideSearch(インターネットサイト:www.mann.embl−heiedelberg.de...deSearch/FR_PeptideSearch Form.html)、およびProFound(インターネットサイト:www.chait−sgi.rockefeller.edu/cgi−bin/prot−id−frag.html)。これらのプログラムによりユーザーは開裂試薬およびフラグメント化ペプチドの分子量を、表示された許容度内で特定できる。これらのプログラムは、観察した分子量を配列データベースから誘導した推定ペプチド分子量と比較して、未知タンパク質のアイデンティティーを判定するのを補助する。
【0169】
さらに、ポリペプチドまたはペプチド消化物をタンデム型質量分析(MS/MS)により配列決定し、得られた配列をデータベースに対比して検索する(Eng et al.,J.Am.Soc.Spec.,5:976−989,1994;M.Mann et al.,Anal.Chem.,66:4390−4399,1994;およびJ.A.Taylor et al.,Rapid Comm.Mass.Spec.,11:1067−1075,1997)。この方法に使用できる検索プログラムは、Lutefisk97(インターネットサイト:www.lsbc.com:70/Lutefisk97.html)などのインターネット、および前記のProspector、PeptideSearchおよびProFoundプログラムにある。
【0170】
したがって、遺伝子ならびにその推定タンパク質配列およびペプチドフラグメントの配列を配列データベースに加えることにより、質量分析法を用いる未知タンパク質同定を補助できる。
【0171】
抗体
本発明のポリペプチドと免疫反応性である抗体が本発明により提供される。そのような抗体は、抗体の抗原結合部位を介して本発明のポリペプチドに特異的に結合する(非特異的結合ではなく)。したがって前記のポリペプチド、フラグメント、変異体、融合タンパク質などを、それと免疫反応性である抗体の産生に際して”免疫原”として使用できる。より詳細には、前記のポリペプチド、フラグメント、変異体、融合タンパク質などは、抗体形成を誘発する抗原決定基またはエピトープを含む。
【0172】
これらの抗原決定基またはエピトープは、線状またはコンホメーショナル(不連続)のいずれであってもよい。線状エピトープはポリペプチドの1つのアミノ酸セクションからなり、一方、コンホメーショナルまたは不連続エピトープはタンパク質が折りたたまれた際に近接するポリペプチド鎖の異なる領域からの複数のアミノ酸セクションからなる(C.A.Janeway,Jr.and P.Travers,Immuno Biology,3:9,Garland Publishing社,第2版,1996)。折りたたまれたタンパク質は複雑な表面をもつので、利用可能なエピトープの数はきわめて多い;しかしタンパク質のコンホメーションおよび立体障害のため、実際にエピトープに結合する抗体の数は利用可能なエピトープの数より少ない(C.A.Janeway,Jr.and P.Travers,Immuno Biology,3:9,Garland Publishing社,第2版,1996)。エピトープは当技術分野で既知の任意の方法で同定できる。
【0173】
したがって本発明の1態様は、本発明のポリペプチドの抗原性エピトープに関する。そのようなエピトープは、後記に詳述するように、抗体、特にモノクローナル抗体の産生に有用である。さらに本発明のポリペプチドに由来するエピトープを、探索試薬として、アッセイに、およびポリクローナル血清または培養ハイブリドーマからの上清などの物質から特異的結合抗体を精製するために使用できる。そのようなエピトープまたはその変異体は、当技術分野で周知の方法、たとえば固相合成、化学的もしくは酵素によるポリペプチド開裂、または組換えDNA技術を用いて調製できる。
【0174】
本発明のポリペプチドのエピトープにより誘発しうる抗体については、エピトープが単離されたものであっても、ポリペプチドの一部のままであっても、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体のいずれも、常法により調製できる。たとえばKennet et al.(編),Monoclonal Antibodies,Hybridomas:A New Dimension in Biologcal Analyses,Plenum Press,ニューヨーク,1980;およびHarlow and Land(編),Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク,1988参照。
【0175】
本発明のポリペプチドに特異的なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞系も本発明において企図される。そのようなハイブリドーマは常法により作製および同定できる。そのようなハイブリドーマ細胞系を作製するための1方法は、動物をポリペプチドで免疫化し;免疫化した動物から脾細胞を採取し;それらの脾細胞を骨髄腫細胞系に融合させて、これによりハイブリドーマ細胞を作製し;そして前記ポリペプチドを結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞系を同定する。モノクローナル抗体は常法により回収できる。
【0176】
本発明のモノクローナル抗体には、キメラ抗体、たとえばヒト化形ネズミモノクローナル抗体が含まれる。そのようなヒト化抗体は既知の技術で調製でき、抗体をヒトに投与した際に免疫原性が低いという利点をもつ。1態様において、ヒト化モノクローナル抗体はネズミ抗体の可変部(またはその抗原結合部位のみ)およびヒト抗体由来の定常部を含む。あるいは、ヒト化抗体フラグメントはネズミモノクローナル抗体の抗原結合部位およびヒト抗体由来の可変部(抗原結合部位を欠如)を含む。キメラ抗体および他の工学的に作製したモノクローナル抗体の調製方法には、Riechmann et al.,Nature,332:323,1988;Liu et al.,PNAS,84:3439,1987;Larrick et al.,Bio/Technology,7:934,1989;およびWinter et al.,TIPS,14:139,1993に記載される方法が含まれる。抗体をトランスジェニックに産生する方法は、GB2,272,440、USP5,569,825および5,545,806、ならびにそれらに基づく優先権を主張する関連特許にみられる。これらのすべてを本明細書に参考として援用する。
【0177】
常法により調製しうる、抗体の抗原結合性フラグメントも本発明に包含される。そのようなフラグメントの例には、FabおよびF(ab’)フラグメントが含まれるが、それらに限定されない。遺伝子工学的方法で調製した抗体フラグメントおよびその誘導体も提供される。
【0178】
1態様において、抗体は本発明のポリペプチドに特異的であり、他のタンパク質と交差反応しない。そのような抗体を同定するスクリーニング法は周知であり、たとえば免疫アフィニティークロマトグラフィーを用いることができる。
【0179】
その使用
本発明の抗体は、本発明のポリペプチドまたはフラグメントをインビトロまたはインビボで検出するアッセイに使用できる。これらの抗体は、本発明のポリペプチドまたはフラグメントを免疫アフィニティークロマトグラフィーにより精製するのにも使用できる。
【0180】
さらに本発明のポリペプチドが結合パートナーに結合するのを遮断しうる抗体は、そのような結合により生じる生物学的活性を阻害するために使用できる。そのような遮断抗体は、任意の適切なアッセイ法により、たとえばIL−1ゼータ受容体を発現する特定の細胞へのIL−1ゼータ、TDZ.1、TDZ.2またはTDZ.3の結合を抗体が阻害する能力を調べることにより同定できる。あるいは遮断抗体は、本発明のポリペプチドがターゲット細胞上のそれらの結合パートナーに結合することにより生じる生物学的作用を阻害する能力を調べるアッセイ法において同定できる。たとえば、抗体がIL−1ゼータ仲介、Xrec2仲介、または結合パートナー仲介による細胞溶解を阻害する能力をアッセイすることができる。
【0181】
抗体を産生する事象により仲介される生物学的活性を阻害するために、そのような抗体をインビトロ法に使用し、あるいはインビボ投与することができる。したがって、本発明のポリペプチドと結合パートナーの相互作用により引き起こされるか、または悪化する(直接的または間接的に)障害を処置できる。療法は、結合パートナー仲介による生物学的活性の阻害に有効な量の遮断抗体を哺乳動物にインビボ投与することを伴う。そのような療法に使用するにはモノクローナル抗体が一般に好ましい。1態様においては、抗原結合性抗体フラグメントを用いる。
【0182】
抗体をアゴニスト(すなわちリガンド模倣)特性についてスクリーニングできる。そのような抗体は、細胞表面受容体に結合すると、IL−1が細胞表面IL−1受容体に結合した場合に誘導されるのと類似の生物学的作用(たとえば生物学的シグナルの伝達)を誘導する。アゴニスト性抗体は、血管内皮細胞およびリンパ球を活性化し、局所的な組織破壊および発熱を誘導し(Janeway et al.,1996)、マクロファージおよび血管内皮細胞を刺激してIL−6を産生させ、血管内皮細胞表面にある分子をアップレギュレートするのに使用できる。
【0183】
本発明のポリペプチドに対して形成された抗体、および生理学的に許容できる希釈剤、賦形剤またはキャリヤーを含む組成物が本発明において提供される。そのような組成物の適切な成分は、本発明のポリペプチドを含有する組成物に関して前記に述べたものである。
【0184】
本発明においては、抗体に結合した検出薬(たとえば診断薬)または療法薬を含む結合体も提供される。そのような薬剤の例を前記に提示した。これらの結合体はインビボ法またはインビトロ法に使用できる。
【実施例】
【0185】
以下の例は本発明の具体的な態様をさらに説明するために提示され、本発明の範囲を限定するものと解すべきでない。
実施例1:IL−1ゼータおよびXrec2核酸の単離
ヒトIL−1ゼータ核酸配列は、部分オープンリーディングフレーム(ORF)をコードするEST IMAGEクローン1628761、寄託#AI014548の配列決定により求められた。多数のcDNAライブラリーを内部プライマーでスクリーニングして、このポリペプチドの発現パターンを決定した。ヒトIL−1ゼータ配列の2つの内部プライマーを用いてPCRを実施した後、IL−1ゼータ配列について下記のcDNAライブラリーが陽性であった:骨髄ストローマ、ヒト脾臓腫瘍、およびRaji(B細胞系)。IL−1ゼータクローンをヒトゲノムDNA配列、骨髄ストローマおよびヒト膵腫瘍ライブラリーから単離し、配列決定した。
【0186】
ヒトXrec2配列は、ハイスループット配列決定法、PCRおよび5’RACE反応により得られた。染色体領域Xp11のハイスループットショットガン配列決定法により、Xrec2のエキソン4〜6の配列が得られた(GenBank寄託番号AL031466およびAL031575)。同様に、染色体領域Xp22−164〜166(GenBank寄託番号AC005748)の配列により、Xrec2のエキソン10〜12の配列が得られた。
【0187】
エキソン5および11内のプライマー(10ピコモル/反応)ならびにHotstar Taqポリメラーゼ(Quiagen,カリフォルニア州バレンシア)を用い、ヒト脳第1鎖cDNAについてPCR(40サイクル)を実施して、エキソン7〜9の配列を得た。次いで、精巣cDNA、およびエキソン4内の入れ子型プライマーを用いて5’RACE反応を実施し、推定イニシエーターメチオニンを含むエキソン3配列を得た。PCRおよび5’RACEの両反応とも、標準プロトコルにより実施した。
【0188】
実施例2:精製IL−1ゼータおよびXrec2ポリペプチドの使用
ポリペプチド特異的ELISA
IL−1ゼータまたはXrec2を含有する試料の系列希釈液(50mM NaHCO中、NaOHでpH9に調整)を、Linbro/Titertek 96ウェル平底E.I.A.マイクロタイトレーションプレート(ICN Biomedical社、オハイオ州オーローラ)に塗布する(100:1/ウェル)。4℃で16時間のインキュベーション後、0.05%Tween−20を含有する200:1 PBS(PBS−Tween)でウェルを6回洗浄する。次いで、5%ウシ胎仔血清(FCS)を含有するPBS−Tween中1mg/mlのFLAG(登録商標)結合パートナーと共に、ウェルを90分間インキュベートする(100:1/ウェル)。次いで5%FCSを含有するPBS−Tween中1mg/mlの抗−FLAG(登録商標、モノクローナル抗体M2)と共に各ウェルを90分間インキュベートし(100:1/ウェル)、次いで前記に従って洗浄する。続いてウェルをポリクローナルヤギ抗−mIgG1特異性西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗体(5%FCSを含有するPBS−Tween中の市販原液1:5000希釈液)と共に、ウェルを90分間インキュベートする(100:1/ウェル)。HRP結合抗体はSouthern Biotechnology Associates社(アラバマ州バーミンガム)から得られる。ウェルを前記に従って6回洗浄する。
【0189】
ELISAを実施するために、基質ミックス[100:1/ウェルのTMB ペルオキシダーゼ基質とペルオキシダーゼ溶液B(Kirkegaard Perry Laboratories、メリーランド州ガイザースバーグ)の1:1プレミックス]をウェルに添加する。十分な発色反応の後、2N HSO(50:1/ウェル)の添加により酵素反応を停止する。色濃度(リガンド受容体結合を指示する)を、V Maxプレートリーダー(Molecular Devices、カリフォルニア州サニーベール)で450nmにおける吸光を測定することにより判定する。
【0190】
実施例3:アミノ酸配列
IL−1ゼータおよびXrec2のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号:1および2の完全ヌクレオチド配列の翻訳により決定した。
【0191】
実施例4:DNA配列およびアミノ酸配列
IL−1ゼータおよびXrec2の核酸配列を、EST IMAGEクローン(寄託#AI014548(IL−1ゼータ)ならびに#AL031575および#AL005748(Xrec2))の複合配列、ならびにPCRおよび5’RACE反応により得た他の配列の標準二本鎖配列決定法により決定した。
【0192】
単離したIL−1ゼータおよびXrec2 DNAのヌクレオチド配列、ならびにそれによりコードされるアミノ酸配列を、配列番号:1〜4に示す。PCRにより単離したIL−1ゼータ DNAフラグメントの配列は配列番号:1のヌクレオチド1〜579に対応し、これは配列番号:3のアミノ酸1〜192をコードする;同様にPCRにより単離したXrec2 DNAフラグメントの配列は配列番号:2のヌクレオチド1〜2088に対応し、これは配列番号:4のアミノ酸1〜698をコードする。
【0193】
アミノ酸配列:3および4は、それぞれ他の既知IL−1リガンドおよび受容体ファミリーのメンバーと著しい相同性をもつ。
実施例5:本発明のポリペプチドを結合するモノクローナル抗体
この例は、IL−1ゼータポリペプチドを結合するモノクローナル抗体の調製方法を具体的に示す。Xrec2を結合するモノクローナル抗体の調製にも同じプロトコルを使用できる。そのような抗体の形成に使用できる適切な免疫原には、精製IL−1ゼータポリペプチド、もしくはその免疫原フラグメント、たとえば細胞外ドメイン、またはIL−1ゼータを含有する融合タンパク質(たとえば可溶性IL−1ゼータ/Fc融合タンパク質)が含まれるが、これらに限定されない。
【0194】
精製IL−1ゼータポリペプチドを用いて、常法により、たとえばUSP4,411,993に記載の方法により、それと免疫反応性であるモノクローナル抗体を形成することができる。要約すると、IL−1ゼータ免疫原を完全フロイントアジュバントに乳化して10〜100μgの量で皮下または腹腔内注射することにより、マウスを免疫化する。10〜12日後、不完全フロイントアジュバントに乳化した追加IL−1ゼータで免疫化動物を追加免疫化する。次いで毎週または隔週の免疫化計画で、マウスを定期的に追加免疫化する。眼窩後放血または尾先端切除により定期的に血清を採取して、ドットブロットアッセイ、ELISA(酵素結合イムノソルベントアッセイ)またはIL−1ゼータ受容体結合の阻害によりIL−1ゼータ抗体を検査する。適切な抗体力価の検出後、陽性動物に最後の1回の食塩水中IL−1ゼータの静脈内注射を行う。3〜4日後、動物を殺し、脾細胞を採取し、そして脾細胞をネズミ骨髄腫細胞系、たとえばNS1または好ましくはP3×63Ag8.653(ATCC CRL 1580)と融合させる。融合によりハイブリドーマ細胞が形成され、これを多数のマイクロタイタープレートにおいて、非融合細胞、骨髄腫ハイブリッドおよび脾細胞ハイブリッドの増殖を阻害するためにHAT(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジン)選択培地に接種する。
【0195】
ハイブリドーマ細胞を精製IL−1ゼータに対する反応性についてELISAにより、Engvall et al.,Immunochem.,8:871,1971およびUSP4,703,004に開示された方法を応用してスクリーニングする。好ましいスクリーニング方法は、Beckmann et al.,J.Immunol.,144:4212,1990に記載の抗体捕獲法である。陽性ハイブリドーマ細胞を同系BALB/cマウスに腹腔内注射して、高濃度の抗IL−1ゼータモノクローナル抗体を含有する腹水を生成させることができる。あるいは、ハイブリドーマ細胞をインビトロでフラスコまたはローラーボトル内において種々の方法で増殖させることができる。マウス腹水中に産生されたモノクローナル抗体を、硫酸アンモニウム沈殿、次いでゲル排除クロマトグラフィーにより精製することができる。あるいは、プロテインAまたはプロテインGに対する抗体の結合に基づくアフィニティークロマトグラフィーを、IL−1ゼータへの結合に基づくアフィニティークロマトグラフィーと同様に採用できる。
【0196】
実施例6:Xrec2 mRNAの組織分布
Xrec2 mRNAの組織分布を、下記に従ってノーザンブロット分析により調べた。アリコートのXrec2リボプローブを2つの異なる多重ヒト組織ノーザンブロットに添加した(Clontech、カリフォルニア州パロ・アルト;Biochain、カリフォルニア州パロ・アルト)。ブロットを10×デンハート液、50mMトリス,pH7.5、900mM NaCl,0.1%ピロリン酸Na,1%SDS,200μg/mLサケ精子DNA中でハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーションを63℃で一夜、50%ホルムアミド中において、先の記載に従って実施した(March et al.,Nature,315:641−647,1985)。次いでブロットを2×SSC,0.1%SDSにより68℃で30分間洗浄した。β−アクチン特異性プローブを用いる対照プロービングとの比較により、最高レベルのXrec2 mRNAを含む細胞および組織を判定した。
【0197】
Xrec2はヒト脳および心臓組織に検出され、より低い程度で卵巣に検出された。これらの組織に2つのXrec2 mRNAが検出された:1つは7.5kb転写体、1つは10.0kb転写体。8.0kb Xrec2転写体が骨格筋に検出された。ヒトcDNA組織パネルのPCR分析により、Xrec2 mRNAが心臓、脳および卵巣に検出され、より低い程度で扁桃腺、胎児肝臓、前立腺、精巣、小腸および結腸に検出されたが、脾臓、リンパ節、胸腺、骨髄、白血球、胎盤、肺、肝臓、骨格筋、腎臓または膵臓には検出されなかった。
【0198】
前記方法に従って、腫瘍細胞から単離したRNAのノーザンブロットをXrec2で調べた。このプローブに弱くハイブリダイズする8.0kbの転写体が、結腸直腸腺癌細胞系SW480に検出された。Xrec2転写体は、HL−60(前骨髄球性白血病)、S3(HeLa細胞)、K−562(慢性骨髄性白血病)、MOLT−4(リンパ芽球性白血病)、Raji(バーキットリンパ腫)、A5 49(肺癌)、またはG361(黒色腫)細胞には検出されなかった。
【0199】
実施例7:IL−1ゼータに対する結合アッセイ
全長IL−1ゼータを発現させ、IL−1ゼータ受容体を結合する能力を調べることができる。この結合アッセイは下記に従って実施できる:
可溶性IL−1ゼータポリペプチドのN−末端に融合したロイシンジッパーペプチドを含む融合タンパク質(LZ−IL−1ゼータ)をこのアッセイに用いる。本質的に、FLAG(登録商標)(IL−1ゼータ)発現構築体の作製についてWiley et al.,Immunity,3:673−682,1995(本明細書に参考として援用する)に記載されたものに従って発現構築体を作製する。ただしFLAG(登録商標)ペプチドをコードするDNAの代わりに、三量体化可能な修飾ロイシンジッパーをコードする配列を用いる。発現ベクターpDC409におけるこの構築体は、ヒトサイトメガロウイルス由来のリーダー配列、続いて可溶性IL−1ゼータポリペプチドのN−末端に融合したロイシンジッパー部分をコードする。LZ−IL−1ゼータをCHO細胞において発現させ、培養上清から精製する。
【0200】
pDC409と表示される発現ベクターは、McMahan et al.,EMBO J.,10:2821−2832,1991(本明細書に参考として援用する)に記載されたpDC406ベクターに由来する哺乳動物発現ベクターである。pDC409に付加される特色(pDC406と比較して)には、多重クローニング部位(mcs)内の追加のユニーク制限部位;mcsの下流にある3つの終止コドン(各読み枠内に1つ);およびmcsの下流にあり、mcsに挿入されたDNAの配列決定を容易にするT7ポリメラーゼプロモーターが含まれる。
【0201】
全長IL−1ゼータタンパク質の発現のために、全コード領域(すなわち配列番号:1に示すDNA配列)をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅させる。PCRに用いる鋳型は、実施例1に記載した(膵臓腫瘍)cDNAライブラリーから単離されたcDNAクローンである。単離および増幅したDNAを発現ベクターpDC409に挿入すると、pDC409−IL−1ゼータと表示する構築体が得られる。
【0202】
LZ−IL−1ゼータポリペプチドを用いて、前記の組換えまたは内因性IL−1ゼータ受容体を発現する宿主細胞に結合する能力を調べる。IL−1ゼータ受容体を発現する細胞を、10%ウシ胎仔血清、ペニシリン、ストレプトマイシンおよびグルタミンを補充したDMEM中で培養する。細胞をLZ−IL−1ゼータ(5mg/ml)と共に約1時間インキュベートする。インキュベーション後、細胞を洗浄して結合していないLZ−IL−1ゼータを除去し、ビオチニル化抗−LZモノクローナル抗体(5mg/ml)およびフィコエリトリン結合ストレプトアビジン(1:400)と共にインキュベートした後、蛍光活性化細胞走査(FACS)により分析する。FACscan(Beckton Dickinson,カリフォルニア州サンホゼ)により細胞分析を行う。
【0203】
IL−1ゼータ受容体を発現する細胞は、IL−1ゼータ受容体を発現しない細胞と比較して有意に高いIL−1ゼータ結合を示す。
実施例8:IL−1ゼータならびにそのスプライス変異体TDZ.1、TDZ.2およびTDZ.3の同定ならびに組織分布
種々のヒト組織におけるIL−1ゼータの発現を、IL−1ゼータ特異性プライマーを用いるRT PCR、または実施例1に記載したIL−1ゼータEST由来の放射性標識DNAプローブを用いるcDNAライブラリーのスクリーニングにより調べた。結果を表IIに示す。
【0204】
表IIにおいて”−”は、これらの実験で、分析したその組織または細胞中にIL−1ゼータmRNAが検出されなかったことを示す。採用したアッセイ法の限界を考慮すると、”−”はそのIL−1ゼータがその実験においてその組織中に検出されなかったことを示すにすぎず、そのIL−1ゼータがその組織において決して発現しないことを示すのではないことは認められるであろう。さらに、発現パターンが変動するのは、cDNA組織パネルの作製に種々のロットのRNA源材料を用いたことにより説明できる。
【0205】
陽性結果は下記により得られた:”a”,第1鎖cDNAのパネル(Clontech)からのPCR分析による;”b”,cDNAライブラリースクリーニングによる;”c”,ESTの存在による;および”d”,各RNAのPCR分析による。”e”は、細胞へのLPS添加により遺伝子の発現が増大したことを示す。組織源の欄で、”プール”は胎児肺、精巣およびB細胞の混合物であった。ヒト細胞系の欄で、”マクロファージ−1”はTHP−1、”マクロファージ−2”はU937であり;”BMストローマ”はImmunexにおいて誘導した未発表の骨髄ストローマ細胞系IMTLHであり;”初期hemat.”は造血前駆細胞系HL60であり;”膵臓腫瘍”はHPT−4であった。
【0206】
この表に示すように、IL−1ゼータはヒトのリンパ節、胸腺、骨髄ストローマ、肺、精巣および胎盤に検出された。さらに、IL−1ゼータmRNAはヒトのマクロファージ細胞系THP−1およびU937、造血前駆細胞系HL60、ならびに膵臓腫瘍細胞系HPT−4に検出された。
【0207】
【表2】

【0208】
IL−1ゼータの組織分布を、RT PCRにより、IL−1の別のスプライス形であるTango−77(WO99/06426)の組織分布とも比較した。RT PCRに用いたプライマーは、Tango−77の第1エキソン(図1のエキソン(1))またはIL−1ゼータの第1エキソン(図1のエキソン(3))に特異的な5’プライマーを共通の末端エキソン(図1のエキソン(6))に由来する共通の3’プライマーと組み合わせたものであった。Clontech(カリフォルニア州サンホゼ)から購入した多数のヒト組織源からの第1鎖cDNAを用いてPCR反応を行った。推定サイズのPCR生成物および異なるサイズの他の数種類のPCR生成物を検出した。推定サイズと異なる3つのPCR生成物を単離し、多数の組織cDNAからの配列情報を得るのに用いた。これらのPCR生成物の単離および特性解明により、3つの新規IL−1ゼータスプライス変異体が明らかになった。これらのスプライス変異体の核酸配列を配列番号5、6および7に示す。これらはそれぞれ配列番号8、9および10により示されるアミノ酸配列をコードする。これらのスプライス変異体の構成および関係を図1に示す。
【0209】
これらのスプライス変異体はそれぞれ精巣で発現するので、TDZ.1、TDZ.2およびTDZ.3(精巣由来のゼータ変異体、Testis−Derived Zeta variant)と表示された。精巣は共通の発現組織であるが、それが唯一の発現組織ではない。表IIIは、IL−1ゼータ、Tango−77、TDZ.1、TDZ.2およびTDZ.3についての組織発現調査の結果を示す。TDZ.1およびTDZ.2は図1に示すエキソン4、5および6を含む。これらはIL−1ゼータの最後の3つのエキソンに相当し、その分子の保存構造ドメインに相当する。IL−1ファミリーの他のメンバーとアラインさせると、エキソン4、5および6は保存構造モチーフ内の多数の保存残基を含むことが分かる。
【0210】
図1のエキソン(2)中におけるTango−77の多型性が注目される。単離したcDNAにおいて、エキソン(2)の第3残基のグリシンの代わりにバリンがある。Tango−77配列においては、アミノ酸配列はPAGSPLEP(配列番号:14)である。多型の場合、この配列はPAVSPLEP(配列番号:15)である。
【0211】
【表3】

【0212】
実施例9:Xrec2のシグナル伝達活性
全長Xrec2を発現ベクターpDC304中へクローニングした。得られたベクターおよびNFκB−駆動ルシフェラーゼレポータープラスミドを用いて、先にBorn et al.,J.Biol.Chem.,273:29445−29450,1998(本明細書に参考として援用する)に記載されたDEAE−デキストラン法により、COS7細胞をトランスフェクションした。トランスフェクションした細胞をIL−1α(10ng/ml)、IL−1β(10ng/ml)またはhIL−18(40ng/ml)で4時間刺激した際、ルシフェラーゼ活性は検出されなかった。
【0213】
IL−1Rファミリーの既知メンバー数種類は、それについて既知のコグネイトリガンドがまだ同定されていないオーファン受容体である。そのようなオーファン受容体の例には、IL−1Rrp2、T1/ST2およびSIGIRRが含まれる。しかしこれらのオーファン受容体のうちの幾つかは、そのオーファン受容体の細胞質ドメインに融合したIL−1R細胞外ドメインおよび膜貫通ドメイン(IL−1Rextm)を含むキメラ分子として発現した場合、IL−1に応答して転写活性化を仲介することができる。たとえばT1/ST2の細胞質ドメインを含むIL−1Rextmキメラは、IL−1刺激に応答して転写活性化を仲介することができる;Mitcham et al.,J.Biol.Chem.,271:5777−5783,1996に概説:本明細書に参考として援用する。
【0214】
Xrec2がIL−1に応答して転写活性化を仲介する能力を調べるために、Xrec2の細胞質ドメイン(Xrec2cyto)(配列番号:4のアミノ酸382〜696)をIL−1Rextmとのキメラ分子として発現させた。このキメラIL−1Rextm−Xrec2cytoを、COS7細胞において前記に従ってNFκB−駆動ルシフェラーゼレポータープラスミドと共に過剰発現させた。これらの細胞のIL−1刺激後、ルシフェラーゼ活性は検出されなかった。対照として全長IL−1をCOS7細胞において過剰発現させ、これらの細胞においてIL−1刺激に応答した転写活性化の誘導を観察した。
【0215】
トランケートした細胞質テイル(配列番号:4のアミノ酸382〜573)をもつIL−1Rextm−Xrec2cytoキメラ受容体を用いて、実験を繰り返した。この場合も、キメラ受容体はこれらのアッセイにおいてIL−1に対して不応答性であった。これは、IL−1Rファミリーの他の幾つかのメンバーと異なり、Xrec2の細胞質ドメインはNFκBによるシグナル伝達を仲介しないことを示す。
【0216】
IL−1受容体ファミリーの他のメンバーは、I型IL−1Rのシグナル伝達必須成分であるIL−1R AcPと同様にアクセサリーサブユニットとして機能する。Xrec2がIL−1受容体のアクセサリーサブユニットとして機能するか否かを評価するために、一連のキメラ受容体を作製した。同定された始原型IL−1Rファミリーの各メンバーの細胞質ドメインをIL−1RおよびAcPの両者の細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインに融合させると、7つのIL−1Rキメラおよび7つのIAcPキメラのパネルが得られた。これらのIL−1RおよびIAcPキメラを、NFκB−駆動ルシフェラーゼレポータープラスミドと共に、ネズミT細胞リンパ腫細胞系(S49.1)においてエレクトロポレーションにより、あらゆる可能な組合わせで同時発現させた。エレクトロポレーションの2日後、細胞をIL−1α(10ng/ml)またはIL−1β(10ng/ml)で4時間刺激し、先にBorn et al.,J.Biol.Chem.,273:29445−29450,1998に記載されたようにルシフェラーゼ活性を評価した。普通はS49.1細胞はIL−1に不応答性である。しかしIL−1RおよびAcPの両方を一過性過剰発現させると、S49.1細胞はIL−1応答性になる。他のAcP様分子はこの系において他のIL−1R様分子と共同作動してS49.1細胞にIL−1応答性を与えるが、Xrec2はIL−1RキメラまたはAcPキメラのいずれでも応答しなかった。
【0217】
本明細書に引用したすべての刊行物の全体を参考として援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記よりなる群から選択される単離核酸分子:
(a)配列番号:1、配列番号:5、配列番号:6、または配列番号:7のDNA配列;
(b)配列番号:3、配列番号:8、配列番号:9、または配列番号:10の配列を含むアミノ酸配列をコードする単離核酸分子;
(c)(a)または(b)の核酸配列を含む変性二本鎖DNAのいずれかの鎖に、50%ホルムアミドおよび6×SSC中、42℃の中等度ストリンジェンシー条件、60℃、0.5×SSC、0.1%SDSの洗浄条件下でハイブリダイズする単離核酸分子;
(d)配列番号:1、配列番号:5、配列番号:6、または配列番号:7からインビトロ変異誘発により誘導した単離核酸分子;
(e)遺伝暗号の結果、配列番号:1、配列番号:5、配列番号:6、または配列番号:7から縮重した単離核酸分子;
(f)ヒトIL−1ゼータDNA、マウスIL−1ゼータDNA、ヒトIL−1ゼータDNAの対立遺伝子変異体、マウスIL−1ゼータDNAの対立遺伝子変異体、およびIL−1ゼータDNAの種相同体よりなる群から選択される単離核酸分子;ならびに
(g)ヒトIL−1ゼータスプライス変異体、マウスIL−1ゼータスプライス変異体、ヒトIL−1ゼータスプライス変異体の対立遺伝子変異体、マウスIL−1ゼータスプライス変異体の対立遺伝子変異体、およびIL−1ゼータスプライス変異体の種相同体よりなる群から選択される単離核酸分子。
【請求項2】
請求項1に記載の核酸分子の発現を指令する組換えベクター。
【請求項3】
請求項1に記載の核酸分子によりコードされる単離ポリペプチド。
【請求項4】
非グリコシル化形の、請求項3に記載の単離ポリペプチド。
【請求項5】
請求項3に記載のポリペプチドに結合する単離抗体。
【請求項6】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項5に記載の単離抗体。
【請求項7】
請求項2に記載のベクターでトランスフェクションまたはトランスダクションした宿主細胞。
【請求項8】
IL−1ゼータポリペプチドの製造方法であって、請求項7に記載の宿主細胞を発現が促進される条件下で培養し、そして培養培地から該ポリペプチドを回収することを含む方法。
【請求項9】
宿主細胞が細菌細胞、酵母細胞、植物細胞および動物細胞よりなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
配列番号:3、配列番号:8、配列番号:9、または配列番号:10の配列よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含む精製IL−1ゼータポリペプチド。
【請求項11】
請求項3に記載のポリペプチドを含むオリゴマー。
【請求項12】
下記よりなる群から選択される単離核酸分子:
(a)配列番号:2のDNA配列;
(b)配列番号:4の配列を含むアミノ酸配列をコードする単離核酸分子;
(c)(a)または(b)の核酸配列を含む変性二本鎖DNAのいずれかの鎖に、50%ホルムアミドおよび6×SSC中、42℃の中等度ストリンジェンシー条件、60℃、0.5×SSC、0.1%SDSの洗浄条件下でハイブリダイズする単離核酸分子;
(d)配列番号:2からインビトロ変異誘発により誘導した単離核酸分子;
(e)遺伝暗号の結果、配列番号:2から縮重した単離核酸分子;ならびに
(f)ヒトXrec2 DNA、マウスXrec2 DNA、ヒトXrec2 DNAの対立遺伝子変異体、マウスXrec2 DNAの対立遺伝子変異体、およびXrec2 DNAの種相同体よりなる群から選択される単離核酸分子。
【請求項13】
請求項12に記載の核酸分子の発現を指令する組換えベクター。
【請求項14】
請求項12に記載の核酸分子によりコードされる単離ポリペプチド。
【請求項15】
非グリコシル化形の、請求項14に記載の単離ポリペプチド。
【請求項16】
請求項14に記載のポリペプチドに結合する単離抗体。
【請求項17】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項16に記載の単離抗体。
【請求項18】
請求項13に記載のベクターでトランスフェクションまたはトランスダクションした宿主細胞。
【請求項19】
Xrec2ポリペプチドの製造方法であって、請求項18に記載の宿主細胞を発現が促進される条件下で培養し、そして培養培地から該ポリペプチドを回収することを含む方法。
【請求項20】
宿主細胞が細菌細胞、酵母細胞、植物細胞および動物細胞よりなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
下記よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含む精製IL−1ゼータポリペプチド:
(a)配列番号:4のアミノ酸配列;および
(b)配列番号:4のアミノ酸19〜696。
【請求項22】
請求項14に記載のポリペプチドを含むオリゴマー。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−183921(P2010−183921A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127963(P2010−127963)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【分割の表示】特願2000−588357(P2000−588357)の分割
【原出願日】平成11年12月14日(1999.12.14)
【出願人】(591123609)イミュネックス・コーポレーション (24)
【氏名又は名称原語表記】IMMUNEX CORPORATION
【Fターム(参考)】