説明

IL−5介在障害を治療および診断するための改良方法

【課題】ヒトインターロイキン5(IL−5)に関する中和モノクローナル抗体などの、好酸球分化および増殖(すなわち、好酸球の蓄積)を減少させ、そして好酸球炎症を減少させる、治療をするため改良方法を提供する。
【解決手段】IL−5介在疾患および好酸球産生過多介在疾患の治療および診断に、さらに詳細には、ヒトIL−5のヒトIL−5レセプターのα−鎖への結合を遮断しない、モノクローナル抗体およびFab、キメラ、ヒトおよびヒト化抗体などの他の変性抗体を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、1994年12月23日出願の米国特許出願番号08/363131の一部継続出願である、1995年6月6日出願の米国特許出願番号08/470110および08/467420の一部継続出願である、1995年12月22日出願のPCT/US95/17082の一部継続出願である。
【0002】
本発明は、一般に、IL−5介在の、好酸球の産生過多の症状の治療および診断に、さらに詳細には、mAbおよびFab、キメラ、ヒトおよびヒト化抗体などの他の抗体に関する。
【背景技術】
【0003】
好酸球は、肺組織における過敏性反応に伴うアレルギー障害を含む、多種の炎症病態の病因に関与している(Butterfieldら、In:Immunopharmacology of Eosinophils, H.Smith およびR.Cook, Eds., 151−192頁、Academic Press, London(1993))。顕著な例として、非特異的気管支過反応に至る、気道の可逆性障害により特徴付けられる疾患である、喘息が挙げられる。次に、この疾患は、慢性炎症反応の気管支粘膜のレベルでの発生ならびにマクロファージ、リンパ球および好酸球によって特徴的な浸潤が発生することに依存する。該疾患に典型的な粘膜損傷の始まりにおいて好酸球が中心的役割を果たすことは明らかである(Corriganら、Immunol. Today、13:501−507(1992))。慢性喘息患者の循環組織、気管支分泌組織および肺実質組織において、多数の活性化好酸球が報告されており、種々の肺機能試験により測定されるように、疾患の重度は血中好酸球数と相関関係にある(Griffenら、J. Aller. Clin. Immunol.、 67:548−557(1991))。脱顆粒の工程においてもしばしば、多数の好酸球が、遅発性気管支反応を患っている患者の気管支肺胞洗浄(BAL)流体にて回収されており、通常、ステロイド療法の結果として好酸球数の減少が臨床的徴候の改良と関連している(Bousquetら、N. Eng. J. Med.、323:1033−1039(1990))。
【0004】
インターロイキン5(IL−5)は、活性化CD4+Tリンパ球により優勢的に産生されるホモダイマー糖タンパク質である。ヒトにおいて、IL−5は好酸球の成長および分化を調整することに大きく関与している。高レベルのIL−5が、喘息患者の気管支肺胞洗浄液にて検出される(Motojumaら、Allergy、48:98(1993))。IL−5についてトランスジェニックなマウスは、抗原刺激のない末梢血液および組織中にて著しい好酸球増加症を示し(Dentら、J. Exp. Med.、172:1425(1990))、抗−ネズミIL−5モノクローナル抗体がマウスの血液および組織における好酸球増加症の減少(Hitoshiら、Int. Immunol. 3:135(1991))ならびに実験動物における寄生虫感染およびアレルゲン攻撃に伴う好中球増加症の減少(Coffmanら、Science、245:308−310(1989)、Sherら、Proc. Natl. Acad. Sci.、83:61−65(1990)、Chandら、Eur. J. Pharmacol.、211:121−123(1992))において効果を有することが明らかにされた。
【0005】
コルチコステロイドは好酸球の数および喘息の他の炎症性成分を抑制することにおいて極めて効果的であるが、重度の喘息患者および最近では軽いないしは中程度の喘息患者における副作用と関連がある。他の主たる抗炎症薬療法−クロモグリケート(cromoglycate)(クロモリンナトリウム(cromolyn sodium)およびネドクロミル(nedocromil))だけではコルチコステロイドよりもかなり効能が小さく、その正確な作用機序は依然として不明である。
【非特許文献1】Butterfieldら、In:Immunopharmacology of Eosinophils,H.SmithおよびR.Cook,Eds.,151−192頁、Academic Press,London(1993)
【非特許文献2】Corriganら、Immunol.Today、13:501−507(1992)
【非特許文献3】Griffenら、J.Aller.Clin.Immunol.、67:548−557(1991)
【非特許文献4】Bousquetら、N.Eng.J.Med.、323:1033−1039(1990)
【非特許文献5】Motojumaら、Allergy、48:98(1993)
【非特許文献6】Dentら、J.Exp.Med.、172:1425(1990)
【非特許文献7】Hitoshiら、Int.Immunol.3:135(1991)
【非特許文献8】Coffmanら、Science、245:308−310(1989)
【非特許文献9】Sherら、Proc.Natl.Acad.Sci.、83:61−65(1990)
【非特許文献10】Chandら、Eur.J.Pharmacol.、211:121−123(1992)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
最近の開発は、新規な吸入性ステロイド、長期作用性気管支拡張剤および新規な生化学または薬理学標的に作用する薬剤(例えば、カリウムチャネル活性化剤、ロイコトリエンアンタゴニスト、5−リポオキシゲナーゼ(5−LO)阻害剤など)に焦点が当てられている。理想的な薬物は、ステロイドの効能とクロモリンナトリウムに伴う安全性を併せて有し、さらには選択性が増加し、加えて迅速に作用を開始するものである。中和IL−5抗体は、ヒトの好酸球関連徴候を緩和するにおいて有用であるかもしれない。
【0007】
したがって、当該分野においては、ヒトインターロイキン5に関する中和モノクローナル抗体などの、好酸球分化および増殖(すなわち、好酸球の蓄積)を減少させ、そして好酸球炎症を減少させる、高親和性IL−5アンタゴニストに対する要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様において、本発明は、好酸球の産生過多に伴う症状を治療するための改良方法であって、その改良がヒトIL−5がヒトIL−5レセプターα鎖に結合することを遮断しない、ヒトIL−5に関する中和モノクローナル抗体を投与する工程からなる改良方法を提供する。そのようなモノクローナル抗体の一例がラットモノクローナル抗体4A6である。
【0009】
さらにもう一つ別の態様において、本発明は、ヒトにおけるヒトIL−5可溶性レセプターα鎖/ヒトIL−5複合体の有無を評価する方法であって、患者の生体液試料を得、ヒトIL−5がヒトIL−5レセプターα鎖に結合することを遮断しないヒトIL−5に関するモノクローナル抗体を、ヒトIL−5可溶性レセプターα鎖/ヒトIL−5/モノクローナル抗体複合体を形成しうるような条件下でかかる試料と接触させ、そのヒトIL−5可溶性レセプターα鎖/ヒトIL−5/モノクローナル抗体複合体の有無を検出することからなる方法を提供する。この方法を用いてヒトにおける好酸球の産生過多に伴う症状を診断することができ、さらにそのような障害の進行および処理を探知することができる。
【0010】
さらなる態様において、本発明は、IL−5、IL−5/IL−5レセプターα鎖複合体またはIL−5/IL−5レセプターα鎖/mAb複合体がヒトIL−5レセプターβ鎖に結合することを拮抗する化合物をスクリーニングし、そのような化合物を同定する方法であって、ヒトIL−5レセプターβ鎖を複数の候補化合物とIL−5レセプターβ鎖への結合を可能とする条件下で接触させ、そのIL−5、IL−5/IL−5レセプターα鎖複合体またはIL−5/IL−5レセプターα鎖/mAb複合体がそのIL−5レセプターβ鎖に結合することを拮抗する候補化合物を同定することからなる方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
詳細な記載およびその好ましい具体例において、本発明の他の態様および利点を記載する。
【0012】
本発明は、ネズミモノクローナル抗体2B6またはラット抗体4A6にて示されるようなヒトIL−5結合特異性、中和活性およびヒトIL−5に対する高親和性により特徴付けられる、種々の抗体、変性抗体およびそのフラグメントを提供する。本発明の抗体を、通常のハイブリドーマ技法、ファージディスプレイコンビナトリアルライブラリー、免疫グロブリン鎖シャフリングおよびヒト化技法により調製し、新規な中和抗体を生成した。これらの産物は、IL−5介在障害、例えば喘息の治療およびその障害の治療用医薬組成物において有用である。これらの産物はまた、ヒトの内因性IL−5レベルまたは活性化細胞よりエクスビボにて放出されたIL−5を測定すること(例えば、酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA))でIL−5介在症状を診断するにおいても有用である。
【0013】
好ましくは、本発明の抗体は、ヒトIL−5に結合するが、ヒトIL−5とIL−5レセプターα鎖の間の相互作用を遮断しない。すなわち、好ましい抗体はヒトIL−5についてのIL−5レセプターα鎖と非競合的である。本発明の好ましい抗体はまた、IL−5/IL−5レセプターα鎖の複合体と結合する。天然に存する可溶形態のIL−5レセプターα鎖はインビトロにて観察されている(例えば、Tavernierら、Cell、66:1175−1184(1991)を参照のこと)が、本願の前には、可溶形態のIL−5レセプターα鎖がインビボにて産生されるかどうか、知られていなかった。出願人らはインビボにて可溶形態のIL−5レセプターα鎖を同定した。かくして、複合したIL−5/IL−5レセプターα鎖に結合する抗体は、それが「フリーな」または複合していないIL−5ならびに複合したIL−5に結合するために、より効果的な治療剤であろう。加えて、可溶形態のIL−5レセプターα鎖はヒトIL−5の天然のアンタゴニストであろう。かくして、可溶性レセプターと競合しない抗体がさらに望ましく、IL−5の効果的なアンタゴニストであり、よって、好酸球の産生過多などのIL−5介在症状を治療するための(IL−5への結合についてIL−5レセプターα鎖と競合するmAbとの関係にて)改良された治療剤である。
【0014】
1.定義
「変性抗体」とは、選択された宿主細胞にて発現させることにより得ることのできる、変性免疫グロブリンのコーディング領域によりコードされるタンパク質をいう。かかる変性抗体は、改変抗体(例えば、キメラまたはヒト化抗体)または免疫グロブリン定常領域のすべてもしくは一部、例えば、Fv、FabもしくはF(ab)などを欠いている抗体フラグメントである。
【0015】
「変性免疫グロブリンのコーディング領域」とは、本発明の変性抗体をコードする核酸配列をいう。変性抗体がCDRグラフト化またはヒト化抗体である場合、非ヒト免疫グロブリンの相補性決定領域(CDR)をコードする配列をヒト可変フレームワーク配列を有する第1免疫グロブリンパートナーに挿入する。所望により、第1免疫グロブリンパートナーは第2免疫グロブリンパートナーに作動的に連結されていてもよい。
【0016】
「第1免疫グロブリンパートナー」とは、自然の(または天然に存する)CDRコード化領域がドナー抗体のCDR−コード化領域と置換されている、ヒトフレームワークまたはヒト免疫グロブリン可変領域をコードする核酸配列をいう。ヒト可変領域は免疫グロブリンの重鎖、軽鎖(または両鎖)、アナログまたはその機能的フラグメントとすることができる。抗体(免疫グロブリン)の可変領域中に位置する、そのようなCDR領域は、当該分野における公知方法により決定することができる。例えば、Kabatら(Sequences of Proteinns of Immunological Interest,第4版、U.S.Department of Health and Human Services,National Institutes of Health(1987))はCDRを位置付けるための規則を開示する。加えて、CDR領域/構造を同定するのに有用なコンピュータープログラムも知られている。
【0017】
「中和抗体」とは、結合が起こると、ヒトIL−5のその特異的レセプターへの結合を阻害することにより、またはIL−5のそのレセプターを介するシグナル化を阻害することによりIL−5活性を阻害する抗体をいう。B13細胞バイオアッセイ(IL−5中和抗体アッセイ、実施例2Cを参照のこと)にて測定した場合にIL−5活性の阻害において90%有効、好ましくは95%有効、最も好ましくは100%有効であるならば、mAbは中和抗体である。
【0018】
「高親和性抗体」なる語は、光学バイオセンサー分析(実施例2Dを参照のこと)により測定した場合にヒトIL−5について3.5x10−11以下のK値により特徴付けられる結合親和性を有する抗体をいう。
【0019】
「ヒトIL−5に対する結合特異性」とは、ネズミではなく、ヒトのIL−5に対する高親和性を意味する。
【0020】
「第2免疫グロブリンパートナー」とは、第1免疫グロブリンパートナーがフレームにてまたは任意の慣用的リンカー配列の手段(すなわち、機能的連結手段)により融合するタンパク質またはペプチドをコードする別のヌクレオチド配列をいう。好ましくは、それは免疫グロブリン遺伝子である。第2免疫グロブリンパートナーは、目的とする同一(すなわち、相同的−第1および第2変性抗体が同一起源から由来する)または付加的(すなわち、異種的)抗体についての定常領域全体をコードする核酸配列を含んでいてもよい。そのパートナーは免疫グロブリンの重鎖または軽鎖(もしくは単一ポリペプチドの一部としての両鎖)であってもよい。第2免疫グロブリンパートナーは特定の免疫グロブリン種またはイソタイプに限定されない。加えて、第2免疫グロブリンパートナーは、FabまたはF(ab)に見られるような、免疫グロブリン定常領域の一部(すなわち、適当なヒト定常部またはフレームワーク領域の別個の部分)を有していてもよい。このような第2免疫グロブリンパートナーはまた、例えば、ファージディスプレイライブラリーの一部として、宿主細胞の外面に暴露された内在性膜タンパク質をコードする配列、あるいは分析または診断検出のためのタンパク質、例えばホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ等をコードする配列を有してもよい。
【0021】
Fv、Fc、Fd、FabまたはF(ab)なる語は、その標準的な意味で用いられる(例えば、Harlowら、Antibodies A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory (1988)を参照のこと)。
【0022】
本明細書にて用いる場合、「改変抗体」は一の型の変性抗体、すなわち、選択されたアクセプター抗体の軽鎖および/または重鎖可変ドメインが選択されたエピトープに対して特異性を有する1またはそれ以上のドナー抗体から由来の類似する部分により置換されている完全長の合成抗体(例えば、抗体フラグメントに対立するキメラまたはヒト化抗体)として記載する。例えば、そのような分子は修飾されていない軽鎖(またはキメラ軽鎖)と関連するヒト化重鎖あるいはその逆により特徴付けられる抗体を包含する。改変抗体はまた、ドナー抗体結合特異性を保持するためにアクセプター抗体の軽鎖および/または重鎖可変ドメインのフレームワーク領域をコードする核酸配列が変形されていることにより特徴付けることもできる。これらの抗体はアクセプター抗体から由来の1またはそれ以上のCDR(好ましくはすべてのCDR)が本明細書に記載のドナー抗体から由来のCDRで置換されていてもよい。
【0023】
「キメラ抗体」とは、アクセプター抗体から由来の軽鎖および重鎖定常部と共にドナー抗体から由来の天然に存在する可変領域(軽鎖および重鎖)を有する一の型の改変抗体をいう。
【0024】
「ヒト化抗体」とは、ヒト以外のドナーの免疫グロブリンから由来のCDRを有する一の型の改変抗体であって、その分子の残りの免疫グロブリン誘導部が一の(またはそれ以上の)ヒト免疫グロブリン(複数でも可)から由来する改変抗体をいう。加えて、フレームワーク支持残基を結合親和性を保持するように改変してもよい(例えば、Queenら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、86:10029−10032(1989);Hodgsonら、Bio/Technology、9:421(1991)を参照のこと)。
【0025】
「ドナー抗体」なる語は、変性免疫グロブリンのコーディング領域を提供し、ドナー抗体の特徴である抗原特異性および中和活性を有する変性抗体を発現するように、可変領域、CDRまたは他の機能性領域あるいはそのアナログを第1免疫グロブリンパートナーに付与する抗体(モノクローナルまたは組換え体)をいう。本発明にて用いるのに適当な一のドナー抗体は、2B6と称されるヒト以外のドナー(すなわち、ネズミ)中和モノクローナル抗体である。その2B6抗体は、高親和性の、ヒト−IL−5特異的な(すなわち、ネズミIL−5を認識しない)、適当なネズミIgG定常領域に、各々、配列番号2および16の可変軽鎖DNAおよびアミノ酸配列を、および各々、配列番号1および15の可変重鎖DNAおよびアミノ酸配列を有するイソタイプIgGの中和抗体と定義される。
【0026】
「アクセプター抗体」なる語は、その重鎖および/または軽鎖フレームワーク領域ならびにその重鎖および/または軽鎖定常領域をコードする核酸配列のすべて(またはいずれかの部分であるが、好ましくはすべて)を第1免疫グロブリンパートナーに付与する、ドナー抗体に対して異種の抗体(モノクローナルまたは組換え体)をいう。ヒト抗体がアクセプター抗体であることが好ましい。
【0027】
「CDR」は、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖超可変領域である、抗体の相補性決定領域のアミノ酸配列と定義される。例えば、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第4版、U.S.Department of Health and Human Services,National Institutes of Health(1987)を参照のこと。免疫グロブリンの可変部には、3つの重鎖および3つの軽鎖CDR(またはCDR領域)がある。かくして、本明細書にて用いる「CDR」は3つのすべての重鎖CDRまたは3つのすべての軽鎖CDR(あるいは適当ならば、すべての重鎖とすべての軽鎖の両方のCDR)をいう。
【0028】
CDRは抗体が抗原またはエピトープに結合するための多数の接触残基を提供する。本発明の目的とするCDRはドナー抗体の可変重鎖および軽鎖配列より誘導され、天然に存在するCDRのアナログを包含し、そのアナログもまた、それらを誘導するドナー抗体と同じ抗原結合特異性および/または中和能を共有あるいは保持している。
【0029】
「抗原結合特異性または中和能を共有する」とは、例えば、mAb 2B6はあるレベルの抗原親和性により特徴付けることができるが、適当な構造環境下にある2B6の核酸配列によりコードされるCDRはより低いまたは高い親和性を有してもよいことを意味する。にもかかわらず、そのような環境下にある2B6のCDRは2B6と同じエピトープを認識すると考えられる。2B6の代表的な重鎖CDRは、配列番号7;配列番号8;配列番号9を包含し、2B6の代表的な軽鎖CDRは、配列番号10;配列番号11;配列番号12を包含する。
【0030】
「機能的フラグメント」は、そのフラグメントを誘導する抗体と同じ抗原結合特異性および/または中和能を保持している部分的重鎖または軽鎖可変配列(免疫グロブリン可変領域のアミノまたはカルボキシ末端が僅かに欠失している配列)である。
【0031】
「アナログ」は、少なくとも1個のアミノ酸により修飾されているアミノ酸配列であって、その修飾はアミノ酸が生物学的特性、例えば、非修飾配列の抗原特異性および高親和性を保持できるように、化学的に、あるいは2ないし3個(すなわち、10個以下)のアミノ酸を置換または再配列することができるものである。例えば、特定のエンドヌクレアーゼ制限部位がCDRコード領域内またはその周囲で形成される場合、置換を介して(サイレント)変異を行うことができる。
【0032】
アナログはまた対立遺伝子変異として生じてもよい。「対立遺伝子変異または修飾」は、本発明のアミノ酸またはペプチド配列をコードする核酸配列の変化である。かかる変異または修飾は遺伝コードの縮重によるものであっても、または所望の特性を得るために故意に改変されたものであってもよい。これらの変異または修飾が、コードされたいずれかのアミノ酸配列において変化をもたらしてもよくまたはもたらさなくてもよい。
【0033】
「エフェクター物質」なる語は、変性抗体および/または天然または合成の軽鎖または重鎖のドナー抗体あるいはドナー抗体の他のフラグメントが常套手段により結合していてもよい非タンパク質キャリア分子をいう。かかる非タンパク質キャリアは診断分野にて用いられる通常のキャリア、例えば、ポリスチレンまたは他のプラスチックビーズ、例えばBIAcore[Pharmacia]系において用いられるようなポリサッカリド、または医薬分野にて有用で、ヒトおよび動物への投与が安全な他の非タンパク質物質を包含することができる。他のエフェクター物質として、重金属原子を封鎖するためのマクロサイクルまたは放射性アイソトープが挙げられる。かかるエフェクター物質、例えばポリエチレングリコールは、変性抗体の半減期を増加させるのに有用であるかもしれない。
【0034】
「好酸球の産生過多に伴う症状」とは、アレルギーおよび/またはアトピー応答、または限定されるものではないが、アレルギー鼻炎および喘息などの好酸球増加症に付随する応答をいう。
【0035】
II.高親和性IL−5モノクローナル抗体
本発明の抗体、変性抗体およびフラグメントの構築において用いる場合、ヒト以外の種(例えば、ウシ、ヒツジ、サル、ニワトリ、齧歯動物(例えば、ネズミおよびラット)など)を用い、天然のIL−5またはそのペプチドエピトープを付与して所望の免疫グロブリンを得ることができる。従来のハイブリドーマ技法を用いてヒト以外の種のmAbをIL−5に分泌するハイブリドーマ細胞系を得る。そのようなハイブリドーマを、実施例のセクションにおいて記載されるように、96−ウェルプレートに被覆したIL−5、あるいは別法としてストレプタビジン被覆プレートに結合したビオチニル化IL−5を一緒に用いて結合についてスクリーニングする。
【0036】
一の具体的な本発明の高親和性中和mAbは、以下の実施例1においてさらに詳細に記載される、キメラまたはヒト化抗体の開発のために用いることのできるmAb 2B6、ネズミ抗体である。2B6 mAbは、IL−5について3.5x10−11Mよりも小さなK(約2.2x10−11M)を有する、ヒトIL−5との抗原結合特異性により特徴付けられる。2B6から由来のFabフラグメントのIL−5についてのK(実施例3Hを参照のこと)を光学バイオセンサーにより測定した場合、約9x10−11Mであると評価された。mAb 2B6がヒトIL−5とヒトIL−5レセプターのα鎖の間の結合相互作用を遮断することは明らかである。
【0037】
もう一つ別の望ましいドナー抗体はネズミmAb 2E3である。このmAbはイソタイプIgG2aであること、3.5x10−11M(約2.0x10−11M)以下のhIL−5に対する解離定数を有することにより特徴付けられる。
【0038】
さらに、もう一つ別の所望のドナーはラットmAb 4A6である。このmAbはhIL−5に対して3.5x10−11M(約1.8x10−11M)以下の解離定数を有することにより特徴付けられる。加えて、mAb 4A6がヒトIL−5とIL−5レセプターのβ−鎖の間の結合相互作用を遮断するのは明らかである。mAb 4A6はヒトIL−5がIL−5レセプターのα鎖に結合することを遮断しない。かくして、mAb 4A6はヒトIL−5およびIL−5/IL−5レセプターα鎖の複合体を結合する。
【0039】
本発明は、2B6 mAb、2E3 mAbまたはその超可変(すなわち、CDR)配列の使用に限定されるものではない。ヒトIL−5および対応する抗−IL−5 CDRに対して3.5x10−11M以下の解離定数により特徴付けられる他の適当な高親和性IL−5抗体をその代わりに用いてもよい。以下の記載においては常に、ドナー抗体は2B6または2E3と同定されるが、この称呼は単に記載を明瞭かつ簡潔にするにすぎない。
【0040】
III.抗体フラグメント
本発明はまたヒトIL−5と対抗して方向づけられるmAbより由来のFabフラグメントまたはF(ab’)フラグメントの使用を包含する。これらのフラグメントはIL−5および好酸球介在症状に対するインビボにおける保護剤として、あるいはIL−5診断剤として有用である。Fabフラグメントは軽鎖全体および重鎖のアミノ末端部を含有し;F(ab’)フラグメントはジスルフィド結合により結合した2つのFabフラグメントにより形成されるフラグメントである。mAb 2B6、2E3および他の同様の高親和性のIL−5結合抗体は、FabフラグメントおよびF(ab’)フラグメントの供給源を提供し、常套手段、例えば、mAbを適当なタンパク質分解酵素、パパインおよび/またはペプシンで切断することにより、または組換え技法により得ることができる。これらのFabおよびF(ab’)フラグメントは、それ自体が治療剤、保護剤または診断剤として、および本明細書に記載の組換え体またはヒト化抗体の形成において有用な可変領域およびCDR配列を含む配列のドナーとして有用である。
【0041】
FabおよびF(ab’)フラグメントは、コンビナトリアルファージライブラリー(例えば、Winterら、Ann. Rev. Immunol.、12:433−455(1994)を参照のこと)を介するか、または免疫グロブリンチェインシャフリング(例えば、Marksら、Bio/Technology、10:779−783(1992)を参照のこと)(共に出典明示により本明細書の一部とする)を介して構築することができ、ここで選択された抗体(例えば、2B6)からのFdまたはV免疫グロブリンを軽鎖免疫グロブリンのレパートリー、V(またはV)と結合させ、新規なFabを形成することができる。反対に、選択された抗体からの軽鎖免疫グロブリンを重鎖免疫グロブリンのレパートリー、V(またはFd)と結合させて新規なFabを形成することもできる。実施例においてさらに詳細に記載されるように、mAb 2B6のFbを軽鎖免疫グロブリンのレパートリーと結合させると中和IL−5Fabが得られた。すなわち、チェインシャフリング法により独特な配列(ヌクレオチドおよびアミノ酸)を有する中和Fabを回収することができる。
【0042】
IV..目的とする抗−IL−5アミノ酸およびヌクレオチド配列
mAb 2B6または前記の他の抗体は、ドナー抗体の抗原結合特異性により特徴付けられる種々の変性抗体を設計して得るのに有用な、可変重鎖および/または軽鎖ペプチド配列、フレームワーク配列、CDR配列、その機能的フラグメントおよびアナログ、ならびにそれらをコードする核酸配列などの配列を付与する。
【0043】
一例として、本発明は、IL−5ネズミ抗体2B6からの可変軽鎖および可変重鎖配列およびそれに由来する配列を提供する。2B6の重鎖可変領域を図1に示す。CDRコード化領域はボックス部で示されており、配列番号7;配列番号8および配列番号9にて提供される。2B6の軽鎖クローン可変領域を図2に示す。CDRコード化領域は配列番号10;配列番号11および配列番号12で提供される。
【0044】
ヒト化重鎖可変領域を図8(配列番号18および19)で示す。シグナル配列もまた、配列番号17で示す。他の適当なシグナル配列は当業者に公知であり、本明細書に列挙されているシグナル配列と置き換えてもよい。この構築体のCDRアミノ酸配列は元のネズミのおよびキメラ重鎖CDRと同じであり、配列番号7;配列番号8および配列番号9で提供される。具体的な(合成)ヒト化軽鎖可変配列を図9(配列番号20および21)に示す。
【0045】
可変軽鎖および重鎖ペプチド配列をコードする、本発明の核酸配列またはそのフラグメントはまた、CDRをコードする核酸配列またはフレームワーク領域内にて特異的変化を変異誘発発生導入するのに、および得られた修飾または融合核酸配列を発現用プラスミドに組み込むのに有用である。例えば、フレームワークおよびCDRコード化領域のヌクレオチド配列におけるサイレント置換を用い、変異誘発発生CDR(および/またはフレームワーク)領域の挿入を容易にする制限酵素部位を構成した。これらのCDRコード化領域は本発明のヒト化抗体の構築に用いた。
【0046】
遺伝暗号の縮重性を考慮すれば、本発明の可変重鎖および軽鎖アミノ酸配列およびCDR配列、ならびにドナー抗体の抗原特異性を共有するその機能的フラグメントおよびアナログをコードする種々のコーディング配列を構築することができる。可変鎖ペプチド配列またはCDRをコードする、本発明の単離された核酸配列またはそのフラグメントを用いて変性抗体、例えば、キメラまたはヒト化抗体、または別の免疫グロブリンパートナーと機能的に結合させた本発明の他の改変抗体を産生することができる。
【0047】
本明細書に記載の変性抗体の一部をコードする単離された核酸配列に加えて、元のCDRコード化配列に相補的な配列またはそのCDRコード化領域の周りの修飾されたヒトフレームワーク領域に相補的な配列などの、別のそのような核酸配列も本発明に含まれる。有用なDNA配列は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下(T. Maniatisら、Molecular Cloning(A Laboratory Manual)、Cold Spring Harbor Laboratory (1982)、387−389頁を参照のこと)でDNA配列とハイブリダイズする配列を包含する。そのようなストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の一例は、4xSSC、65℃でハイブリダイゼーションし、つづいて0.1xSSC中で1時間洗浄するものである。また、代表的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、50%ホルムアミド中、4xSSC、42℃での条件である。好ましくは、これらのハイブリダイゼーションするDNA配列は、その長さが少なくとも18個のヌクレオチドであり、すなわち略CDRの大きさである。
【0048】
V.変性免疫グロブリン分子および変性抗体
変性免疫グロブリン分子は、キメラ抗体およびヒト化抗体などの改変抗体を含む変性抗体をコードすることができる。所望の変性免疫グロブリンのコーディング領域は、第1免疫グロブリンパートナー(ヒトフレームワークまたはヒト免疫グロブリン可変領域)に挿入されるIL−5抗体、好ましくは本発明により得られるような高親和性抗体の抗原特異性を有するペプチドをコードするCDRコード化領域を含有する。
【0049】
好ましくは、第1免疫グロブリンパートナーは、第2免疫グロブリンパートナーに作動可能に連結している。第2免疫グロブリンパートナーは前記に定義されているとおりであり、目的とする第2抗体領域、例えばFc領域をコードする配列を有していてもよい。第2免疫グロブリンパートナーはまた、軽鎖または重鎖の定常領域がフレームにてまたはリンカー配列により融合する別の免疫グロブリンをコードする配列を含んでいてもよい。IL−5の機能的フラグメントまたはアナログに拮抗するように指向された改変抗体を、同一抗体との結合の強化を惹起するように設計してもよい。
【0050】
第2免疫グロブリンパートナーをまた、非タンパク質キャリアー分子を含む、第2免疫グロブリンパートナーが常套手段により作動可能に連結することのできる、前記したエフェクター物質と結合させてもよい。
【0051】
第2免疫グロブリンパートナー、例えば、抗体配列と、エフェクター物質との融合または連結は、いずれか適当な手段、例えば、通常の共有結合またはイオン結合、タンパク質融合、またはヘテロ−二機能的架橋剤、例えば、カルボジイミド、グルタルアルデヒドなどによるものである。かかる技法は当該分野にて知られており、汎用的な化学および生化学テキストに記載されている。
【0052】
加えて、第2免疫グロブリンパートナーとエフェクター物質との間に所望の間隔を付与するにすぎない通常のリンカー配列をまた、変性免疫グロブリンのコーディング領域に構築することもできる。そのようなリンカーの設計は当業者に周知である。
【0053】
加えて、本発明の分子についてのシグナル配列を修飾し、発現を向上させることもできる。一例として、ネズミ重鎖配列から由来のシグナル配列およびCDRを有する2B6ヒト化抗体は、最初のシグナルペプチドがもう一つ別のシグナル配列(配列番号17)で置換されている。
【0054】
一の典型的な変性抗体は、mAb 2B6の抗原特異性を有する可変重鎖および/または軽鎖のペプチドまたはタンパク質配列、例えばVおよびV鎖を有する。
【0055】
本発明のさらに別の望ましい変性抗体は、ネズミ抗体分子2B6の重鎖および/または軽鎖の可変領域のCDRの少なくとも1つ、好ましくは全てを、ヒト起源から由来の残りの配列、あるいはその機能的フラグメントまたはアナログと共に含有するアミノ酸配列により特徴付けられる。例えば、ヒト化VおよびV領域(図8および9)を参照のこと。
【0056】
別のさらなる具体例において、本発明の改変抗体を別の物質と結合させてもよい。例えば、組換えDNA技法の操作を用いて、完全な抗体分子のFcフラグメントまたはCH2 CH3ドメインが酵素または他の検出可能な分子(すなわち、ポリペプチドのエフェクターまたはレポーター分子)により置換されている、本発明の改変抗体を産生することができる。
【0057】
第2免疫グロブリンパートナーもまた、ネズミ2B6の抗原特異性を有するCDR含有配列に異種的な非免疫グロブリンペプチド、タンパク質またはそのフラグメントに作動可能に連結させることができる。得られたタンパク質は、抗−IL−5抗原特異性と、発現して非免疫グロブリンの特性の両方を示すかもしれない。その融合パートナーの特性は、例えば、別の結合またはレセプタードメインなどの機能的特性であってもよく、あるいは融合パートナーその物が治療タンパク質である場合の治療特性または付加的な抗原特性であってもよい。
【0058】
本発明の別の望ましいタンパク質は、完全な長さの重鎖および軽鎖またはその別個のフラグメント、例えばFabまたはF(ab’)フラグメント、重鎖ダイマー、またはFVまたは単鎖抗体(SCA)などのその最小組換えフラグメント、あるいは選択されたドナーmAb、例えばmAb 2B6または2E3と同様の特異性を有する他の分子を有する完全な抗体分子を含んでいてもよい。かかるタンパク質は変性抗体の形態にて用いてもよく、あるいはその非融合形態にて用いてもよい。
【0059】
第2免疫グロブリンパートナーがドナー抗体と異なる抗体、例えばイソタイプまたは種の免疫グロブリンのフレームワークまたは定常領域より誘導される場合はいつでも、改変抗体が結果として生じる。改変抗体は、一の起源、例えば、アクセプター抗原からの免疫グロブリン(Ig)定常領域と可変フレームワーク領域、およびドナー抗体、例えば、本明細書に記載の抗−IL−5抗体からの1またはそれ以上の(好ましくはすべての)CDRを有し得る。加えて、アクセプターmAbの軽鎖および/または重鎖の可変ドメインフレームワーク領域の核酸またはアミノ酸レベルでの、またはドナーCDR領域の改変、例えば、欠失、置換または付加を、ドナー抗体の抗原結合特異性を保持するために行ってもよい。
【0060】
そのような改変抗体を、(前記したように修飾されていてもよい)IL−5mAbの一方(または両方)の可変重鎖および/または軽鎖あるいは1またはそれ以上の以下に示す重鎖または軽鎖CDR(図7を参照のこと)を用いるように設計する。本発明の改変抗体は中和作用を示し、すなわち、該抗体は、望ましくは、IL−5タンパク質のレセプターへの結合を遮断し、IL−5依存性細胞の増殖を遮断または妨げる。
【0061】
かかる改変抗体は、選択されたヒト免疫グロブリンまたはサブタイプのフレームワーク領域を含有するヒト化抗体、またはIL−5抗体の機能的フラグメントに融合したヒト重鎖および軽鎖の定常領域を含有するキメラ抗体を有していてもよい。適当なヒト(または他の動物)アクセプター抗体は、ドナー抗体のヌクレオチドまたはアミノ酸配列との相同性により、慣用的データベース、例えば、KABAT(登録商標)データベース、Los Alamos データベースおよびSwiss Protein データベースより選択されるものであってもよい。(アミノ酸を基礎として)ドナー抗体のフレームワーク領域との相同性により特徴付けられるヒト抗体は、ドナーCDRを挿入するための重鎖の定常領域および/または重鎖の可変フレームワーク領域を供給するのに適しているかもしれない。軽鎖の定常または可変フレームワーク領域を供与することのできる適当なアクセプター抗体は同様の方法により選択することができる。アクセプター抗体の重鎖および軽鎖は同一のアクセプター抗体より得ることを要しないことに留意すべきである。
【0062】
異種フレームワークおよび定常領域は、IgG(サブタイプ1ないし4)、IgM、IgAおよびIgEなどのヒト免疫グロブリン種およびイソタイプより選択されることが望ましい。しかしながら、アクセプター抗体はヒト免疫グロブリンのタンパク質配列だけを有している必要はない。例えば、ヒト免疫グロブリン鎖の一部をコードするDNA配列が非免疫グロブリンアミノ酸配列、例えばポリペプチドのエフェクターまたはレポーター分子をコードするDNA配列に融合するように遺伝子を構築してもよい。
【0063】
特に望ましいヒト化抗体は、一例として、選択されたヒト抗体配列のフレームワーク領域上に挿入された2B6のCDRを有する。ヒト化中和抗体では、IL−5抗体の重鎖および/または軽鎖の可変領域からの1、2または好ましくは3個のCDRを、選択されたヒト抗体配列のフレームワーク領域に挿入し、ヒト抗体の本来のCDRと置き換える。
【0064】
好ましくは、ヒト化抗体中の、ヒト重鎖および軽鎖の可変ドメインを1またはそれ以上のCDR置換により改変する。6個すべてのCDRをまたは6個より少ないCDRを種々組み合わせて用いることが可能である。6個すべてのCDRを置換することが好ましい。軽鎖としてヒトアクセプター抗体から由来の非修飾軽鎖を用い、ヒト重鎖においてのみCDRを置換することも可能である。さらに別法として、通常の抗体データベースに依存して、別のヒト抗体から適合可能な軽鎖を選択することができる。改変抗体の残りは、いずれか適当なヒト免疫グロブリンより誘導することができる。
【0065】
かくして、改変されたヒト化抗体は、天然のヒト抗体またはそのフラグメントの構造を有し、効果的な治療用途、例えば、ヒトにおけるIL−5介在炎症疾患の治療、あるいは診断用途に必要な特性を組み合わせて有することが好ましい。
【0066】
もう一つ別の例として、改変抗体は、2E3の軽鎖の可変領域の3つのCDR(配列番号10、11および13)および2B6の重鎖の可変領域の3つのCDR(配列番号7,8および9)を有していてもよい。得られたヒト化抗体はmAb 2B6の同じ抗原結合特異性および高親和性により特徴付けられるはずである。
【0067】
当業者であれば、必然的にドナー抗体の特異性および高アフィニティーに影響を及ぼすことなく、可変ドメインのアミノ酸を変化させることにより、改変抗体(すなわち、アナログ)をさらに修飾してもよいことが理解されるであろう。重鎖および軽鎖のアミノ酸が可変ドメインフレームワークまたはCDRのいずれかでもしくはその両方にて他のアミノ酸で置換されていてもよいと考えられる。
【0068】
加えて、定常領域を改変し、本発明の分子の選択性を強化または減少させてもよい。例えば、二量体化、Fcレセプターとの結合、または補体と結合して活性化することができる(例えば、Angalら、Mol. Immunol.、30:105−108(1993)、Xuら、J. Biol. Chem.、269:3469−3474(1994)、Winterら、EP307434−Bを参照のこと)。
【0069】
キメラ抗体である変性抗体は、フレームワーク領域を含む、完全なヒト以外のドナー抗体の重鎖および軽鎖の可変領域を、ヒト免疫グロブリンの両鎖の定常領域と一緒に提供することで、前記したヒト化抗体と区別される。本発明のヒト化抗体に関連して付加的な非ヒト配列を保持するキメラ抗体はヒトにて有意な免疫応答を惹起させると考えられる。
【0070】
そのような抗体は、以下に示すようなIL−5介在疾患の予防および治療にて有用である。
【0071】
VI.変性および改変抗体の産生
好ましくは、mAb 2B6または他の適当なドナーmAb(例えば、2E3、2F2,4A6など)の可変軽鎖および/または重鎖配列およびCDRおよびそのコード化核酸配列を、以下の方法により、本発明の変性抗体、好ましくはヒト化抗体の構築に利用する。同一または類似する技法を用いて、本発明の他の具体例を実施してもよい。
【0072】
選択されたドナーmAb、例えば、ネズミ抗体2B6を産生するハイブリドーマを慣用的にクローンし、その重鎖および軽鎖の可変領域のDNAを当業者に公知の方法、例えば、Sambrookら、(Molecular Cloning(A Laboratory Manual)、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory(1989))に記載の方法により得る。少なくともCDRをコードする領域およびドナーmAb結合特異性を保持するために必要とされるアクセプターmAbの軽鎖および/または重鎖の可変ドメインフレームワーク領域の部分、ならびにヒト免疫グロブリンより由来の抗体鎖の残りの免疫グロブリン誘導部を含有する2B6の重鎖および軽鎖の可変領域は、ポリヌクレオチドのプライマーおよび逆転写酵素を用いて得られる。そのCDRをコードする領域は既知のデータベースを用いて他の抗体と比較することにより同定される。
【0073】
ついで、マウス/ヒトのキメラ抗体を調製し、結合能についてアッセイする。かかるキメラ抗体は完全なヒト以外のドナー抗体VおよびV領域を、両鎖のヒトIg定常領域と共に含有する。
【0074】
ヒト抗体からの重鎖の可変領域の同種フレームワーク領域をコンピューターデーターベース、例えば、KABAT(登録商標)を用いて同定し、2B6と相同性を有するヒト抗体をアクセプター抗体として選択した。2B6 CDRをコードする領域をヒト抗体フレームワーク内に含有する合成した重鎖の可変領域の配列を、フレームワーク領域にて任意のヌクレオチド置換で制限部位が組み込まれるように設計した。ついで、この設計された配列を長鎖合成オリゴマーを用いて合成した。別法として、その設計された配列をオリゴヌクレオチドを重ね、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅し、誤りを正すことにより合成することもできる。
【0075】
適当な軽鎖の可変フレームワーク領域を同様にして設計した。
【0076】
ヒト化抗体はキメラ抗体から誘導してもよく、あるいは好ましくは、重鎖および軽鎖からのドナーmAbのCDRをコードする領域を、適宜、選択された重鎖および軽鎖フレームワーク内に挿入することにより製造することもできる。別法として、本発明のヒト化抗体を標準的な突然変異誘発法を用いて調製してもよい。かくして、得られたヒト化抗体はヒトフレームワーク領域およびドナーmAb CDRをコードする領域を含有する。つづいてフレームワークの残基を製造してもよい。得られたヒト化抗体を組換え宿主細胞、例えば、COS、CHOまたは骨髄腫細胞にて発現させることができる。この技法を用いて、他のヒト化抗体を他の適当なIL−5特異的、中和、高親和性、非ヒト抗体について調製してもよい。
【0077】
変性抗体についてのこれらのコーディング配列を宿主細胞における複製ならびに発現および/または宿主細胞からの分泌を調節する能力を有する通常の調節対照配列と機能的に組み合わせて配置することにより、通常の発現ベクターまたは組換えプラスミドを産生する。調節配列は、プロモーター配列、例えば、CMVプロモーターおよびシグナル配列を包含し、他の既知の抗体より誘導することができる。同様に、相補的抗体の軽鎖または重鎖をコードするDNA配列を有する第2発現ベクターを産生することができる。この第2発現ベクターは、できる限り各ポリペプチド鎖が機能的に発現されるように、コーディング配列および選択可能なマーカーが関係する範囲を除いて第1発現ベクターと同一であることが好ましい。また、変性抗体の重鎖および軽鎖のコーディング配列がシグナルベクター上に存していてもよい。
【0078】
選択された宿主細胞は、一般的技法により、第1および第2の両方のベクターで共トランスフェクション(または、単一のベクターで単一トランスフェクション)され、組換えまたは合成の軽鎖および重鎖の両方を有してなる本発明のトランスフェクションされた宿主細胞を形成する。ついで、このトランスフェクションされた細胞を一般的技法により培養し、本発明の改変抗体を産生する。組換え重鎖および/または軽鎖の両方の結合体を含むヒト化抗体を、適当なアッセイ、例えば、ELISAまたはRIAにより培養体よりスクリーンする。同様の一般的技法を用いて本発明の他の変性抗体および分子を構築してもよい。
【0079】
当業者は、本発明の方法および組成物の構築に用いられるクローニングおよびサブクローニング工程のための適当なベクターを選択する。例えば、通常のpUCシリーズのクローニングベクターを用いてもよい。使用されるベクターの一つがpUC19であり、例えば、Amersham(Buckinghamshire、United Kingdom)またはPharmacia(Uppsala、Sweden)より入手可能である。加えて、容易に複製することのできるいずれのベクターも多くのクローニング部位および選択可能な遺伝子(例えば、抗生物質耐性)を有しており、操作が簡単であり、クローニングに用いることができる。かくして、クローニングベクターの選択は本発明を限定するファクターではない。
【0080】
同様に、本発明に係る改変抗体の発現に用いられるベクターは、当業者であれば一般的ないずれのベクターからも選択することができる。ベクターはまた、選択された宿主細胞における異種DNA配列の複製および発現を指向する選択された調節配列(例えば、CMVプロモーター)を有する。これらのベクターは、改変抗体または変性免疫グロブリンのコーディング領域をコードする前記したDNA配列を有する。加えて、ベクターは取り扱いを容易にするために所望の制限部位を挿入することで修飾された選択免疫グロブリン配列が組み込まれていてもよい。
【0081】
発現ベクターはまた、異種DNA配列の発現を増幅するのに適した遺伝子、例えば、哺乳動物のジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子(DHFR)により特徴付けることもできる。他の好ましいベクター配列は、ウシ成長ホルモン(BGH)からのようなポリAシグナル配列およびベータグロビンプロモーター配列(ベータグロプロ)を包含する。本明細書中において有用な発現ベクターは、当業者に周知の方法により合成してもよい。
【0082】
かかるベクターの成分、例えば、レプリコン、選択遺伝子、エンハンサー、プロモーター、シグナル配列などは市販または天然源より入手してもよく、あるいは選択宿主における組換えDNAの産物の発現および/または分泌を方向づけるのに用いる公知操作により合成してもよい。哺乳動物、細菌、昆虫、酵母および真菌の発現の分野において多くの種類が知られている他の適当な発現ベクターもまたこの目的のために選択することができる。
【0083】
本発明はまた、改変抗体またはその変性免疫グロブリン分子のコーディング配列を含有する組換えプラスミドでトランスフェクションされた細胞系も包含する。これらのクローニングベクターのクローニングおよび他の操作に関して有用な宿主細胞もまた一般的なものである。しかし、最も望ましくは、イー・コリ(E.coli)の種々の株からの細胞をクローニングベクターの複製および本発明の変性抗体の構築における他の工程に用いる。
【0084】
本発明の改変抗体または変性抗体を発現させるのに適当な宿主細胞または細胞系は、CHO、COS、繊維芽細胞(例えば、3T3)および骨髄細胞などの哺乳動物細胞であることが好ましく、より好ましくはCHOまたは骨髄細胞である。分子をヒト糖鎖形成パターンで修飾されるようにする、ヒト細胞を用いてもよい。また他の真核生物細胞系を用いてもよい。適当な哺乳動物の宿主細胞ならびに形質転換、培養、増幅、スクリーニング、および産物の産生および精製の方法の選択は当該分野にて知られている。例えば、Sambrookら、前掲を参照のこと。
【0085】
細菌細胞が本発明の組換えFabを発現するのに適した宿主細胞として有用であることが明らかにされた(例えば、Plukthun,A.、Immunol. Rev.、130:151−188(1992)を参照のこと)。しかしながら、細菌細胞にて発現されたタンパク質は、折りたたまれていないか、不当に折りたたまれた形態にあるか、または糖鎖形成されていない形態にあるという傾向のため、細菌細胞にて産生されるいずれの組換えFabも抗原結合能を保持するためにスクリーニングされなければならないであろう。細菌細胞により発現される分子が適宜折りたたまれた形態にて産生されたならば、その細菌細胞は望ましい宿主であろう。例えば、発現のために用いられるイー・コリの種々の菌株が生物工学の分野にて宿主細胞としてよく知られている。バチルス・サチリス(B. subtilis)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、他のバチルス属などの種々の菌株もまたこの方法にて利用することができる。
【0086】
所望により、当該分野の当業者に知られている酵母細胞の菌株を、ならびに昆虫細胞、例えば、DrosophilaおよびLepidoptera、およびウイルス発現系の菌株を宿主細胞として利用してもよい。例えば、Millerら、Genetic Engineering、8:277−298、Plenum Press(1986)およびその中の引用文献を参照のこと。
【0087】
本発明のベクターを構築することのできる一般的方法、本発明の宿主細胞を産生するのに必要なトランスフェクション法、および本発明の変性抗体をかかる宿主細胞から産生するのに必要な培養方法はすべて慣用的技法である。同様に、一度産生した、本発明の変性抗体を、硫酸アンモニウム沈降、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などを含む、当該分野における標準技法に従って、細胞培養物より精製することができる。かかる方法は当該分野の範囲内であり、本発明を限定するものではない。
ヒト化抗体のさらに別の発現法として、米国特許第4873316号に記載されるように、トランスジェニック動物における発現を利用することができる。この特許はトランスジェニック的に哺乳動物に組み込まれた場合に雌がミルク中に所望の組換えタンパク質を産生させるような動物のカゼインプロモーターを用いる発現系に関するものである。
改変抗体を所望の方法により発現させて、ついでその抗体を適当なアッセイを用いてインビトロ活性について試験する。近年一般的なELISAアッセイフォーマットを利用して改変抗体とIL−5の結合を定性的かつ定量的に評価する。加えて、さらにその後にヒト臨床実験を行う前に他のインビトロアッセイを用いて中和効能を明確にし、通常のクリアランス機構にもかかわらず、体内における改変抗体の永続性を評価することができる。
2B6より調製されるヒト化抗体について記載されている操作に従って、当業者であれば他のドナーIL−5抗体、可変領域配列および本明細書に記載のCDRペプチドからヒト化抗体を構築することもできる。改変抗体は、改変抗体の受容体により潜在的に「自己」と認識される可変領域フレームワークで産生することもできる。可変領域のフレームワークを少し修飾し、受容体に対して免疫原性が顕著に増加することなく、抗原結合を大きく増加させることができる。そのような改変抗体は、IL−5介在症状に対してヒトを効果的に治療するかもしれない。かかる抗体はまたそのような症状の診断に有用であるかもしれない。
【0088】
VII.治療/予防/診断的使用
本発明はまた、好酸球関連徴候、すなわち、好酸球産生過多に伴う症状、例えば喘息を患っているヒトの治療法であって、1またはそれ以上の本明細書に記載の改変抗体または変性抗体、またはそのフラグメントを含む、有効量の抗体を投与することからなる方法に関する。
【0089】
本発明の分子を用いて誘発される治療応答は、分子がヒトIL−5に結合し、つづいて好酸球刺激を遮断することにより誘起される。好ましくは、本発明の分子は、ヒトIL−5との結合についてIL−5レセプターアルファ−鎖と競合しない。すなわち、本発明の好ましい分子は、ヒトIL−5がヒトIL−5レセプターのα鎖に結合することを遮断しない。かくして、治療に用いるのに適する製剤および処方において、本発明の分子は、アレルギーおよび/またはアトピー応答、または好酸球増加症に付随する応答、例えば、限定されるものではないが、アレルギー性鼻炎、喘息、慢性好酸球性肺炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、小児脂肪便症、好酸球性胃腸炎、チャーグ−ストラウス症候群(結節性動脈周囲炎+アトピー)、好酸球性筋痛症候群、過好酸球性症候群、偶発性血管性浮腫を含む浮腫性反応、ぜん虫感染(好酸球が予防機能を有するかもしれない)、オンコセルカ皮膚炎およびアトピー性皮膚炎を経験している人々には極めて望ましいものである。
【0090】
本発明の変性抗体、抗体およびそのフラグメントはまた、他の抗体、特に本発明の改変抗体が対向して関与する症状の原因である他のマーカー(エピトープ)と反応的なヒトmAbと一緒に用いてもよい。
【0091】
本発明の治療薬は、約2日から約3週間の、または必要に応じて、アレルギー症状の治療に望ましいと考えられる。例えば、より長期の治療は季節性鼻炎などを治療する場合に望ましい場合もある。これはIL−5介在障害の従来の治療で現在使用されている注入プロトコルよりもかなり優れている。投与量および治療期間は本発明の分子のヒト循環にある相対的な期間と関連しており、治療すべき症状および患者の健康に応じて当業者であれば調節することができる。
【0092】
本発明の治療薬の投与方法は、該治療薬を宿主にデリバリーする適当な経路とすることができる。本発明の変性抗体、抗体、改変抗体およびそのフラグメント、ならびに医薬組成物は、非経口投与、すなわち、皮下、筋肉内、静脈内または経鼻内投与に特に有用である。
【0093】
本発明の治療薬は、医薬上許容される担体中に、有効成分として本発明の改変(例えば、ヒト化)抗体を有効量含有してなる医薬組成物として調製できる。本発明の予防薬において、注射の準備の整った形態の、好ましくは生理学的pHに緩衝処理した、改変抗体を含有する水性懸濁液または水溶液が好ましい。非経口投与用組成物は、一般に、医薬上許容される担体、好ましくは水性担体に溶かした本発明の改変抗体の溶液またはそのカクテルを含む。種々の水性担体、例えば、0.4%セイライン、0.3%グリシンなどを用いてもよい。これらの溶液は滅菌されており、一般に粒状物を含まない。これらの溶液は、慣用的な周知滅菌技法(例えば、濾過)により滅菌処理できる。組成物は要すれば医薬上許容される補助物質を含有していてもよく、pH調節剤および緩衝剤などの生理学的条件に近づけることができる。かかる医薬処方中の本発明の抗体の濃度は、広範囲に、すなわち、約0.5重量%未満から、一般には約1重量%でまたは少なくとも1重量%から、15または20重量%程度まで変化させることができ、選択される特定の投与法に従って、流状体積、粘度等に基づいて主に選択されるであろう。
【0094】
このように、筋肉内注射用の本発明の医薬組成物は、1mlの滅菌緩衝水と、約1ngないし約100mg、例えば、約50ngないし約30mg、さらに好ましくは約5mgないし約25mgの本発明の改変抗体を含有するように調製される。同様に、静脈内注入用の本発明の医薬組成物は、約250mlのRinger滅菌溶液と、約1mgないし約30mg、好ましくは5mgないし約25mgの本発明の改変抗体を含有するように調製される。非経口投与可能な組成物の製法は周知であるかまたは当業者に明らかであり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Science、第15版、Mack Publishing Company、Easton、Pennsylvaniaにおいてより詳細に記載されている。
【0095】
本発明の治療薬は、医薬製剤において、単位投与形にて投与されることが好ましい。適当な治療上有効な量は当業者であれば容易に決定することができる。ヒトまたは他の動物における炎症障害を効果的に治療するために、一回の用量が体重70kg当たり約0.1mgないし約20mgの本発明のタンパク質または抗体を、非経口的に、好ましくは静脈内または筋肉内投与すべきである。必要ならば、かかる投与を、炎症応答の間、顧問医によって適宜選択された適当な間隔で繰り返し行ってもよい。
【0096】
本発明の抗体、変性抗体および改変抗体はまた、診断方法、例えばIL−5介在障害を測定するために、またはかかる障害の治療の進行状況を追跡するために用いることができる。診断薬として、これらの抗体は、血清、血漿または他の適当な組織中のIL−5および/またはIL−5/IL−5レセプターα鎖複合体のレベル、または培養基中のヒト細胞による放出を測定するための、ELISAおよび他の慣用的アッセイフォーマットに使用するために慣用的に標識化することができる。変性抗体を使用するアッセイの特性は慣用的なものであり、本発明の開示を限定するものではない。
【0097】
かくして、本発明の一の具体例は、患者におけるアレルギーおよび好酸球産生過多に付随する他の症状の診断を補助する方法であって、その患者から得られた試料(血漿または組織)中のヒトIL−5および/またはIL−5/IL−5レセプターα鎖複合体の量を測定し、その測定量を正常な個体群におけるヒトIL−5の平均量と比較して、それで患者の試料中に有意に多量のIL−5および/またはIL−5/IL−5レセプターα鎖複合体が存在することが、アレルギーおよび好酸球の産生過多に付随する他の症状の徴候を示す方法に関する。
【0098】
本発明の化合物をスクリーニングする具体例として、ヒトIL−5レセプターβ鎖を膜フラクションにてまたは細胞結合形にて単離し、複数の候補分子と接触させ、その中からレセプターと結合し、相互作用するレセプターを選択する。候補化合物は競合性スクリーニングアッセイに付すことができる。そのアッセイにおいては、既知リガンド、すなわち、好ましくは検出可能な分析用試薬、最も好ましくは放射活性で標識した、ヒトIL−5またはIL−5/IL−5レセプターα鎖複合体を試験すべき薬物と共に導入し、標識化リガンドの結合を阻害または亢進する化合物の能力を測定する。別法として、目的とする放射活性標識した候補化合物を用いることで、または候補化合物の相互作用または結合に由来する第2メッセンジャー効果により、結合または相互作用を直接測定することができる。化合物をそのアフィニティーの増加および目的とするレセプターに対する選択性についてスクリーニングする。無償で、すなわち、ヒトIL−5レセプターβ鎖に対する効果を誘発することなく結合する分子は、おそらく、優れたアンタゴニストであろう。潜在的なアンタゴニストは、IL−5レセプターβ−鎖に特異的であり、それによりその活性を阻害または無効にする、小型有機分子、ペプチド、ポリペプチドおよび抗体を包含する。
【0099】
本明細書に記載の抗体、変性抗体またはそのフラグメントは、貯蔵のために凍結乾燥し、使用前に適当な担体で復元することができる。この技法は一般的な免疫グロブリンで効果的であることがわかっており、当該分野にて公知の凍結乾燥法および復元操作を利用することができる。
【0100】
以下の実施例は、典型的な改変抗体の構築ならびに適当なベクターおよび宿主細胞におけるその発現を含む、本発明の種々の態様を示すが、本発明の範囲を限定すると解釈すべきではない。アミノ酸はすべて慣用的な三文字または一文字コードで同定されている。必要な制限酵素、プラスミドおよび他の試薬および材料はすべて、特に限定しない限り、市販源より入手した。一般的クローニングライゲーションおよび他の組換えDNA法はすべて、T. Maniatisら(前掲)またはその第2版(1989)、Sambrookら編、同一出版社(「Sambrookら」)にあるようにしておこなった。
【実施例】
【0101】
実施例1−hIL−5に対するmAbの産生
ヒトIL−5をDrosophila Schneider2(S)細胞にて発現させて均質に精製した。ネズミIL−5をSpodoptera frugiperda 21(Sf21)細胞を用いてバキュロウイルスにて発現させて均質に精製した。モノクローナル抗体、TRFK−5(中和ラット抗−マウスIL−5抗体)をGenzyme Corp.(MA、Cambridge)より入手した。
【0102】
A.免疫化操作:
組換えヒトIL−5(IL−5)を一群7匹のCAF1雌マウス(Charles River、Wilmington、MA)の免疫原として用いた。動物に、1対1の割合のTiter MAXTM(CytoRx Corp.、Norcross、GA)で乳化させたリン酸緩衝セイライン(PBS)中のIL−5を4ヶ月にわたって3回皮下注射した。初回抗原投与量は50μg(マイクログラム)であり、追加抗原刺激量は25および10μg(マイクログラム)であった。追加抗原刺激接種を行った後、血清試料を採集し、レセプター結合阻害アッセイおよびB13増殖アッセイ(またはIL−5中和アッセイ(実施例2C))により、IL−5への結合について、および中和活性について検定した。マウスはすべて、IL−5に結合する血清試料を産生した。脾臓ドナーとして選択された動物に、殺す3日前に10μg(マイクログラム)の組換えヒトIL−5を静脈内に追加抗原投与した。
【0103】
B.ハイブリドーマ開発:
最初にKohlerら(Nature、256:495(1975))により報告された融合操作を、細胞単層を用いる技法(Kennetら編、”Hybridomas:A new dimension in biological analysis”、368−377頁、Plenum Press、New York)を行うために修飾して用いた。2匹のドナーマウスからの脾臓細胞をプールし、1000万個のSP2/0/Ag14骨髄腫細胞に対して5000万個の割合の脾臓細胞を用いて融合を行った。融合陽性ウェルの上清をELISAを用いてIL−5との結合についてアッセイした。IL−5に対する抗体を産生する細胞を含むウェルを広げ、上清をIL−5レセプター結合阻害アッセイおよびB13(中和)増幅アッセイ(以下に記載)にてスクリーンした。
【0104】
IL−5との反応性を有するmAbを分泌する16種のハイブリドーマを単離した。そのハイブリドーマ上清をヨウ素処理したIL−5と混合し、IL−5レセプター(IL−5R)のα鎖を発現するDrosophila細胞より調製した膜抽出物に加え、レセプター結合の阻害についてアッセイした。11種のハイブリドーマ上清は、ヨウ素処理したIL−5のIL−5レセプターα鎖への結合を60%以上阻害した。3種のmAb、すなわち、2B6、2E3および2F2もまた、ネズミIL−5ではなくヒトIL−5に対する応答にてネズミB13の増殖を70%以上阻害した。5種のハイブリドーマ(そのうちの4種(1C6、2B6、2E3および2F2)は結合および/または増殖を遮断し、1種(24G9)は非中和抗体である)を軟寒天中で繰り返しサブクローンし、安定したクローン細胞系を生成した。クローン系からの上清をELISAにより交差−反応性についてスクリーンしたが、ヒトIL−1α、IL−1β、IL−4、IL−8、M−CSFまたはTGFαと結合しなかった。mAbを精製し、結合親和性を10から100pMで変化させる光学生物センサー(BIAcore)分析より評価した。クローン系から由来の上清をネズミイソ型試薬(PharMingen、San Diego、CA)を用いてイソ型に付した。mAbの中和活性に関する親和性およびIC50を表I(実施例2)に要約して示す。
【0105】
マウスについて前記したように比較免疫化プロトコルおよび融合のためのラット骨髄腫を用い、ラットハイブリドーマを同様の方法により免疫化ラットより誘導させた。IL−5に結合するmAbを産生する2種のラットハイブリドーマ、4A6および5D3を同定した。mAb 2B6、2E3および2F2と同様、mAb 4A6および5D3も、以下に記載のB13アッセイにおいて中和抗体であることが判明した。
【0106】
C.ハイブリドーマ寄託
モノクローナル抗体2B6を産生するハイブリドーマ細胞系SK119−2B6.206.75(1)を、American Type Culture Collection(ATCC)、Rockville、MD、USAに寄託し、それは特許手続き上の微生物寄託の基準となるブタペスト条約(1977年)に従って、特許寄託菌として受入れ番号HB11783で受け入れられた。
【0107】
モノクローナル抗体2E3を産生するハイブリドーマ細胞系SK119−2E3.39.40.2をAmerican Type Culture Collection(ATCC)、Rockville、MD、USAに寄託し、それは特許手続き上の微生物寄託の基準となるブタペスト条約(1977年)に従って、特許寄託菌として受入れ番号HB11782で受け入れられた。
【0108】
モノクローナル抗体2F2を産生するハイブリドーマ細胞系SK119−2F2.37.80.12をAmerican Type Culture Collection(ATCC)、Rockville、MD、USAに寄託し、それは特許手続き上の微生物寄託の基準となるブタペスト条約(1977年)に従って、特許寄託菌として受入れ番号HB11781で受け入れられた。
【0109】
モノクローナル抗体24G9を産生するハイブリドーマ細胞系SK119−24G9.8.20.5をAmerican Type Culture Collection(ATCC)、Rockville、MD、USAに寄託し、それは特許手続き上の微生物寄託の基準となるブタペスト条約(1977年)に従って、特許寄託菌として受入れ番号HB11780で受け入れられた。
【0110】
モノクローナル抗体4A6を産生するハイブリドーマ細胞系4A6(1)G1F7をAmerican Type Culture Collection(ATCC)、Rockville、MD、USAに寄託し、それは特許手続き上の微生物寄託の基準となるブタペスト条約(1977年)に従って、特許寄託菌として受入れ番号HB11943で受け入れられた。
【0111】
モノクローナル抗体5D3を産生するハイブリドーマ細胞系5D3(1)F5D6をAmerican Type Culture Collection(ATCC)、Rockville、MD、USAに寄託し、それは特許手続き上の微生物寄託の基準となるブタペスト条約(1977年)に従って、特許寄託菌として受入れ番号HB11942で受け入れられた。
【0112】
実施例2−アッセイ
A.ELISA
MaxiSorbTMイムノプレート(Nubc、Naperville、IL)の各ウェルを0.05M炭酸塩緩衝液(pH9.6)中のIL−5(0.2μg)で被覆した。4℃で一夜インキュベートした後、プレートをPBS(0.025%Tween(登録商標)20含有)ですすぎ、PBS(0.025%Tween(登録商標)20含有)中の1%BSAを用いて室温で2時間遮断した。非希釈ハイブリッド上清をIL−5被覆のウェルに加え、室温で2時間インキュベートした。該プレートを注ぎ、ペルオキシダーゼ標識化ヤギ抗−マウスIgG&IgM(Boehringer Mannheim、Indianapolis、IN)を1%BSAおよび0.025%Tween(登録商標)20を含有するPBSに1/7500の希釈度で加えた。2時間後にプレートを洗浄し、0.1%尿素ペルオキシドおよび1mg/mlのオルトフェニレンジアミンを含有する、0.2mlの0.1Mクエン酸緩衝液(pH4.75)を添加した。15分経過後、プレートをVMaxTMマイクロプレートリーダー(Molecular Devices、Menlo Park、CA)上、450nmで読み取った。
【0113】
B.レセプター結合阻害アッセイ
ヒトIL−5レセプター(IL−5R)のα鎖を発現するDrosophilaS2細胞の膜抽出物を用いてレセプターに結合するIL−5についての抗体の作用を測定した。10個の細胞を1000xg、4℃で10分間遠心してペレット状にした。その細胞ペレットをドライアイス/エタノール浴中で15分間凍結させた。該ペレットを解凍し、PBS(10ml)に4℃で再び懸濁させ、1000xgで10分間遠心してペレット状にした。その細胞ペレットをPBS中に2回洗浄し、低張緩衝液(10mM Tris(pH7.5)、3mM MgCl、1mM ジチオスレイトール、1mM フェニルメチルスルホニルフルオリド、1μM ロイペプシン、1μM ペプスタチンA)(13.5ml)に再び懸濁させ、5分間氷上でインキュベーションした。その細胞懸濁液を15mlのDounceホモジナイザー中で均一にし、2.5Mシュークロース溶液を用いてシュークロースの最終濃度を0.25Mとした。1000xgで15分間遠心分離に付すことで細胞残骸を除去した。細胞膜を100000xg、4℃で90分間遠心してペレット状にし、50mlの10mM Tris(pH7.5)、3mM MgCl、250mMシュークロースに再び懸濁させ、−70℃で貯蔵した。
【0114】
レセプターを含むDrosophila膜を用いるアッセイは、25mM HEPES緩衝液(pH7.2)および0.1%BSA(結合緩衝液)を含有するDrosophila組織培地M3(Lindquistら、Drosophila Inf. Serv.、58:163(1982))を用い、MultiscreenGVTMプレート(Millipore Corp.、Bedford、MA)にて行った。ウェルを結合緩衝液(0.1ml)で予め遮断した。50μlの試験サンプルを三重試験にてウェルに加え、つづいてヨウ素化(125I)IL−5(25μl)を加えた。室温で20分間インキュベーションした後、ヒトIL−5Rのα鎖を発現するDrosophilaS2細胞の膜抽出物(25μl)を該ウェルに加えた。さらに1時間インキュベーションした後、膜を真空濾過により集め、結合緩衝液で3回洗浄した。フィルターを乾燥させて計数した。
【0115】
C.IL−5中和アッセイ
ネズミIL−5/IL−3依存性細胞系、LyH7.B13(B13)をR.Palacios(Basel Institute of immunology、Switzerland)の好意により入手した。L−グルタミン、非必須アミノ酸、ピリビン酸ナトリウム、ペニシリン−ストレプトマイシン(すべて、GibcoBRL)、加えて2−メルカプトエタノール(5x10−5M、Sigma)、10%ウシ胎児血清(Globepharm、Surrey、UK)および1−10単位のネズミIL−5を補足した、RPMI1640培地(GibcoBRL、Renfrewshire、UK)で週に2回、細胞を継代培養した。アッセイ用の細胞を適宜希釈した試験試料の存在下、96−ウェルの丸底プレートで三重(5000個の細胞/ウェル)にて48時間培養し、0.5μCi−H−チミジン(Amersham、Bucks、UK)で最終4時間パルス処理した。その細胞を1205ベータプレート(LKB Wallac、Beds、UK)にてシンチレーションカウントするのに処理した。
【0116】
D.光学バイオセンサー
固定されたhIL−5および抗体の動力学的および平衡結合特性はBIAcore光学バイオセンサー(Pharmacia Biosensor、Uppsala、Sweden)を用いて測定した。動力学的データは以前に開示されている関係(Karlssonら、J. Immunol. Meth.、145:229−240(1991))を用いて評価した。
【0117】
3種の中和抗体、すなわち、2B6、2E3および2F2は、125I−IL−5の膜レセプターへの結合の阻害およびB細胞増殖の中和にて極めて類似する能力を有し、さらにIL−5に対して極めて類似する親和性を有した(表1を参照のこと)。これら3種のmAb、2IgG1および1IgG2aからのVおよびVのヌクレオチド配列を各々測定した。得られた配列は極めて類似しており、2、3の残基が異なるだけである。
【表1】

【0118】
実施例3−コンビナトリアルライブラリーからのIL−5Fabの単離および特徴化
A.PCRおよびコンビナトリアルライブラリー構築
3匹のマウスの脾臓より精製したRNAを、以前にHuseら(Science 246:1275(1989))およびKang、S.A.(Methods:Companion Methods Enzymol.、2:111(1991))に記載されているように、次のキットで供給されるプライマー(dT)15または3’Fd(IgG1、IgG2a&IgG3)およびカッパ軽鎖プライマーのいずれかを用いてcDNAキット(Boehringer Mannheim、Indianapolis、IN)で逆転写した。免疫グロブリンcDNAをプライマーおよび記載(Huseら、前掲)の熱循環条件を用いてPCRにより増幅させた。すべての反応に対して、AmpliWaxTM PCR Gem100(Perkin Elmer Cetus、Norwalk、CT)ビーズを用い、製造主プロトコルに従ってHot Start技法を利用した。PCR産物をゲル精製し、消化し、pMKFabGene3ベクター(Amesら、J. Immunol.、152:4572(1994))にライゲーションした。FdcDNAとライゲーションさせた後のライブラリータイターは5.1x10CFUであり、カッパcDNAとライゲーションさせた後では1.5x10CFUであった。ファージミドライブラリーで形質転換したXL1−Blue細胞(Stratagene、La Jolla、CA)をヘルパーファージVCSM13(Stratagene)で感染させ、ファージをBarbasおよびLerner(Methods:Companion Methods Enzymol.、2:119(1991))に記載されているように調製した。
【0119】
B.バイオパンニング
4個のマイクロタイターウェル(Immulon II Removawell Strips、Dynatech Laboratories Inc.、Chantilly、VA)を、0.1M重炭酸塩(pH8.6)中のIL−5(1μg/ウェル)で4℃で一夜被覆した。そのウェルを水で洗浄し、3%BSAを含有するPBSで37℃で1時間遮断した。遮断溶液を除去し、ライブラリーをマイクロタイターウェルに加え(50μl/ウェル)、37℃で2時間インキュベーションした。pHをグリシンで2.2に調整し、1mg/mlのBSAを含有する、0.1M HClで付着ファージを溶出する前に、ウェルをTBS/Tween(登録商標)(50mM Tris−HCl、pH7.5、150mM NaCl、0.5%Tween(登録商標)20)で10回洗浄し、HOで1回洗浄した。
【0120】
C.コロニーリフト
第3および第4ラウンドのバイオパンニングより単離したクローンのコロニーリフトを記載(BarbasおよびLerner、前掲)に従い処理した。フィルターを、Bolton−Hunter試薬(NEN、Billerica、MA)を用い、製造主推奨の操作に従ってヨウ素化した、0.5−1.0μCiの125I−IL−5と共に、1%BSA含有PBS中、室温で1時間インキュベーションし、0.25%Tween含有のPBSで洗浄し、Kodak XARフィルムに暴露した。IL−5反応性Fabを発現するコロニーをオートラジオグラフィーで検出した。
【0121】
D.可溶性Fabの調製
ファージミドDNAをNheIおよびSpeIで消化し、遺伝子IIIを除去し、自己ライゲーションに付した。XL1−Blue細胞を形質転換させて、単離されたクローンを1%グルコースおよび50μg/mlカルベニシリン(carbenicillin)含有のスーパーブロス(SB)培地(30gトリプトン、20g酵母抽出物、10gの3−[N−モルホリノ]プロパンスルホン酸(MOPS)、pHを7に調整)(5.0ml)中に37℃で一夜増殖させた。この培養物1mlからの細胞を、3500rpmで10分間、Beckman GS−6R遠心機にてペレット状とし、50μg/mlカルベニシリン含有のSB(5ml)に植え付けるのに用いた。培養物を37℃で1時間振盪し、イソプロピル−b−D−チオガラクトピラノシド(IPTG;1mM)を加え、培養物を一夜28℃に移した。細胞ペレットを4℃で20分間30mM Tris(pH8.0)に懸濁させた20%シュークロースに溶かし、つづいてMicrofugeで10分間遠心分離に付すことにより可溶性Fabをペリプラズム抽出物より調製した。既知量のネズミFabを含有する試料と比較することによりウェスタンブロットによりFab濃度を評価した。異なる細菌ペリプラズム抽出物は、ウェスタンブロット分析により評価した場合、1ないし20μg/mlの範囲の、同様の濃度のFabを含有した。
【0122】
E.Fabの精製
タンパク質の精製を助成するのにキレート化ペプチドを重鎖のカルボキシ末端で改変した。NheIおよびSpeIで消化してM13遺伝子IIIコーディング領域を除去した後、6個のヒスチジン残基をコードする、一対の重複オリゴヌクレオチド:
[配列番号43]5’−CTAGCCACCACCACCACCACCACTAA−3’;
[配列番号44]3’−GGTGGTGGTGGTGGTGGTGATTGATC−5’
をFab発現ベクターにサブクローニングした。Fab発現の誘発は前記のように行った。28℃で一夜誘発させた後、20%シュークロース、30mM TRIS(pH8.0)中、4℃で30分間インキュベーションさせることで、細胞ペレットのペリプラズム溶菌液を調製した。尿素およびBrij−35デタージェントを浄化した上清に、各々、2Mおよび1%の最終濃度まで添加した。室温で1時間攪拌した後、その処理かつ浄化した上清を、緩衝液A(100mM Na−Phosphate、10mM Tris、0.3M NaCl、2M尿素、pH8.0)で平衡にした5mlニッケル−NTA金属封鎖カラム(1.5x3cm)に直接0.5ml/分で充填した。カラム容量の4倍(20ml)で洗浄した後、前記したのと同じ緩衝液をpH8からpH4の逆pH勾配でカラム容量の6倍(30ml)を用いて結合物質を溶出した。精製されたFabがpH5.5でシャープな対称ピークにてカラムより溶出された。それは>90%純度であり、DNAがなかった。
【0123】
F.Fab ELISA:
イムロン(Immulon)IIプレート(Dynatech)を0.1M重炭酸塩緩衝液(pH8.6)に懸濁させたタンパク質で一夜4℃で被覆した。希釈および洗浄を0.05%TweenTM20含有のPBSにて行った。プレートを洗浄し、1%BSA含有のPBSで1時間室温で遮断した。可溶性Fabまたは精製されたFabを含有する種々の希釈度の細菌性上清をプレートに加えた。1時間インキュベーションした後、プレートを洗浄し、ビオチニル化ヤギ抗−マウスκ(Southern Biotechnology Associates, Inc.、Birmingham、AL)を1時間にわたって加えた(1:2000希釈度;50μl/ウェル)。プレートを洗浄し、ストレプタビジン標識ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼを1時間で加えた(1:2000希釈度;50μl/ウェル)。プレ−トを洗浄し、ABTSペルオキシダーゼ基質を加え(100μl/ウェル;Kirkegaard&Perry Laboratories、Gaithersburg、MD)、405nmでの光学密度をUVmaxTM(Molecular Devices)マイクロプレートリーダー上で読み取った。
【0124】
G.Fabのコンビナトリアルライブラリーからの単離および特徴化
IL−5で被覆したマイクロタイターウェルに対する複数回のラウンドのバイオパンニングに付すことで、ライブラリーからFabをIL−5に運ぶファージを選択した。4ラウンドの選択操作の後、IL−5反応性Fabを125I−IL−5を用いるコロニーリフトアッセイにより同定した。第3ラウンドから34個の、第4ラウンドから4個の標識されたIL−5と結合したコロニーが同定された。IL−5との結合を、Fab−遺伝子III融合タンパク質を発現する培養上清を用い、直接結合性ELISAにより確認した。DNAをこれらコロニーより単離し、M13遺伝子IIIのコーディング領域を除去した後、可溶性Fab発現を誘発した。ペリプラズムフラクションを調製し、IL−5との結合についてELISAでアッセイした。Fabは他のタンパク質、rC5aと明確に結合することなく、IL−5に特異的に結合した。
【0125】
希釈されていないペリプラズム抽出物(1ないし2μg/mlのFabを含有する)をIL−5R結合阻害アッセイ(実施例2)にて検定した。いずれのFabもヨウ素化IL−5のIL−5Rαへの結合を35%以上まで阻害しなかった。
【0126】
H.中和mAbのFabへの変換
mAb(2B6)のFdおよびκcDNAを前記の条件を用いてPCRにより単離した。ゲル精製されたフラグメントを遺伝子IIIcDNAのヘキサ−His配列3’を含むように修飾されたpMKFabGene3ベクターにサブクローンし、プラスミドpMKFabGene3Hを得た。2B6重鎖および軽鎖を含有する機能的なIL−5結合Fabクローンをコロニーリフトアッセイにより同定した。遺伝子IIIをNheI/SpeII消化および自己ライゲーションを介して除去し、重鎖をフレームにてヘキサ−Hisに融合させ、前記のように精製した。用量依存法において、このFabはペアレントmAb、ネズミ2B6の値と同様の、約7.5μg/mlのIC50でレセプター結合を阻害した。
【0127】
I.チェーン−シャッフルされたライブラリーの構築およびスクリーニング
中和mAb 2B6のFdをコードするcDNAをXhoI/SpeIフラグメントとして軽鎖cDNAの代わりにSstI/XbaIフラグメントを含有するpMKFabGene3Hにサブクローンした。このファージミドをSstIおよびXbaIで消化し、IL−5免疫化マウス(前記)より由来のSstI/XbaI消化された軽鎖PCR産物とライゲーションした。ライゲーション後のライブラリータイターは4x10CFUであった。バイオパンニングおよびコロニーリフロアッセイをコンビナトリアルライブラリーについて前記したように行った。
【0128】
中和mAb 2B6のFdをコードするcDNAを同じ軽鎖レパートリーと対合させることによりライブラリーを構築し、IL−5免疫化マウスより回収し、コンビナトリアルライブラリーを形成するのに用いた。このチェーンシャッフルされたライブラリーを免疫化IL−5に対する4ラウンドのバイオパンニングに付し、得られたコロニーをコロニーリフトアッセイを用いてIL−5反応性についてアッセイした。ヨウ素化されたIL−5と結合した、陽性コロニーをELISAおよびIL−5Rα結合アッセイによりさらに検定した。チェーンシャッフルされたライブラリーより回収された2つのFab、2&15は、IL−5のIL−5Rαとの結合を遮断し、B13アッセイにおけるIL−5依存性増殖を阻害した。これら2Vkの配列は、2B6 Vについての原軽鎖パートナーである、2B6 Vkの配列に類似している。Fab2&15の軽鎖配列は、各々、配列番号45および46である。Fab2の場合、CDR1−3は、各々、配列番号10、11および47である。Fab15の場合、CDR1−3は、各々、配列番号10、11および48である。
【0129】
実施例4および5にておいて以下に列挙されるすべての抗体のアミノ酸配列には、CDRおよびフレームワークの長さを変えることのできる、KABAT番号付けシステムを利用する。すなわち、キーとなるアミノ酸はその前にある実際の数と無関係に常に同じ番号が付されている。例えば、すべての軽鎖のCDR1の前にあるシステインは常にKABAT位置23であり、CDR1の後にあるトリプトファン残基は、たとえ、CDR1が17個までのアミノ酸を含んでいるとしても、常にKABAT位置35である。
【0130】
実施例4−ヒト化抗体
1種のヒト化抗体をそのヒト抗体フレームワーク内にネズミCDRを含むように設計した。次の操作を行うことで、IL−5特異的マウス抗体2B6のこのヒト化バージョンを調製した。
【0131】
A.遺伝子クローニング
Boehringer Mannheim(Indianapolis、IN)より入手したキットを用いて2B6、2F2および2E3の各々のハイブリドーマ細胞系(実施例1を参照のこと)より、mRNAを単離し、cDNAキット(Boehringer Mannheim)で得られたプライマー(dT)15を用いて逆転写してcDNAを調製した。マウス免疫グロブリンに特異的なPCRプライマーを用い、重鎖可変領域のアミノ酸番号9(KABAT 番号表示システム)からヒンジ領域に、および軽鎖可変領域のアミノ酸番号9(KABAT 番号表示システム)から定常領域の末端にまで広がっているドメインをコードするDNAを増幅した。各々の抗体鎖のいくつかのクローンを独立PCR反応により得た。
【0132】
使用したマウスガンマ1ヒンジ領域プライマーは、[配列番号22]:
5’ GTACATATGCAAGGCTTACAACCACAATC 3’である。
【0133】
使用したマウスガンマ2aヒンジ領域プライマーは、[配列番号23]:
5’ GGACAGGGCTTACTAGTGGGCCCTCTGGGCTC 3’である。
【0134】
使用したマウス重鎖可変領域プライマーは、[配列番号24]:
5’ AGGT(CまたはG)(CまたはA)A(GまたはA)CT(GまたはT)TCTCGAGTC(TまたはA)GG 3’である。
【0135】
使用したマウスカッパ鎖定常領域プライマーは、[配列番号25]:
5’ CTAACACTCATTCCTGTTGAAGCTCTTGACAATGGG 3’である。
【0136】
使用したマウス軽鎖可変領域プライマーは、[配列番号26]:
5’ CCAGATGTGAGCTCGTGATGACCCAGACTCCA 3’である。
【0137】
PCRフラグメントをプラスミドpGEM7f+(Promega)にクローンし、ついでE. coli DH5a(Bethesda Research Labs)に形質転換した。
【0138】
B.DNA配列決定
上記パートAの重鎖および軽鎖ネズミcDNAクローンを配列決定した。これらクローンの可変領域の配列決定の結果を配列番号1−6(図1−6)に示す。クローンは、各々、マウス重鎖可変領域または軽鎖可変領域の間に保存されていることが知られているアミノ酸を含有した。そのCDRアミノ酸配列を以下に列挙する。
【0139】
2B6重鎖のCDR領域は配列番号7、8および9である。図7を参照のこと。これらの配列は配列番号1によりコードされる。その軽鎖のCDR領域は配列番号10、11および12である。図7を参照のこと。これらの配列は配列番号2によりコードされる。
【0140】
2F2重鎖のCDR領域は配列番号7、8および9である。図7を参照のこと。これらの配列は配列番号3によりコードされる。その軽鎖のCDR領域は配列番号10、11および13である。図7を参照のこと。これらの配列は配列番号4によりコードされる。
【0141】
2E3重鎖のCDR領域は配列番号7、8および14である。図7を参照のこと。これらの配列は配列番号5によりコードされる。その軽鎖のCDR領域は配列番号10、11および13である。図7を参照のこと。これらの配列は配列番号6によりコードされる。
C.ヒトフレームワークの選択
【0142】
2B6のクローニングの後、アミノ酸をN−末端残基に帰属させるために、可変領域の重鎖および軽鎖のアミノ酸配列(図1および2)(各々、配列番号15および16)をKABATおよびSWISS−PROT(Nuc. Acids Res.、20:2019−2022(1992))タンパク質配列データベースにある既知ネズミ免疫グロブリン配列と比較した。ついで、ヒトフレームワークをネズミ配列と最も密接に対合するであろう重鎖および軽鎖の両方について同定するために、2B6重鎖および軽鎖可変領域推定アミノ酸配列をヒト免疫グロブリンタンパク質配列データベースと比較した。加えて、重鎖および軽鎖をFabドメインの構造モデルより得られる位置データベースを用いて評価し、CDR提示に影響を及ぼすかもしれないアミノ酸によるコンフリクトの可能性を評価した。コンフリクトは対応するマウスアミノ酸をその位置で置換することによりヒト化可変領域フレームワークを合成する間に決定された。
【0143】
ヒトメラノーマ免疫グロブリン(COR)より得られた抗体の重鎖フレームワーク領域を用いた(E. M. PressおよびN. M. Hogg、Biochem. J.、117:641−660(1970))。ヒト重鎖フレームワークアミノ酸配列は2B6フレームワークと略66%の相同性を有することが判明した。
【0144】
適当な軽鎖可変領域フレームワークでは、Bence−Jonesタンパク質(LEN)(Schneiderら、Hoppe−Seyler’s Z. Physiol. Chem.、356:507−557(1975))の軽鎖可変フレームワーク配列を用いた。ヒト軽鎖フレームワーク領域は、アミノ酸レベルでネズミ2B6軽鎖フレームワーク領域と略82%相同的であった。
【0145】
選択されたヒトフレームワークを逆翻訳し、DNA配列を得た。
【0146】
D.ヒト化mAb遺伝子の構築
2B6重鎖CDR[図7および配列番号1−2]およびヒト抗体のフレームワーク配列を得る場合、合成重鎖可変領域を調製した[配列番号18]。これは、つなぎ合わされると、アミノ酸番号21−106(KABAT番号付け)をコードする4種の合成オリゴヌクレオチド[配列番号27および28][配列番号29および30]を用いて調製した。オリゴヌクレオチドを、CORフレームワーク(前掲)を基礎とするもう一つ別のヒト化重鎖より由来の配列を含むpUC18プラスミドを基礎とするpUC18のHpaI−KpnI制限部位にライゲーションした。このプラスミドはシグナル配列[配列番号17]および残りの可変領域の配列を提供するものである。マッピングされた配列中の誤りは、変異原性プライマーとのPCRによるか、または現存する制限部位への合成リンカーの付加により訂正した。
【0147】
シグナル配列およびヒト化重鎖可変領域をEcoRI−ApaIフラグメントとしてpUCを基礎とするプラスミドから切除し、IgGヒト定常領域を含む発現ベクターpCDにライゲーションした。合成重鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を図8[配列番号18および19]に示す。ヒトフレームワーク残基は配列番号19のアミノ酸1−30、36−49、66−97および109−119である。CDRのアミノ酸配列はネズミ2B6 CDRと同じである。得られた発現ベクター、pCDIL5HZHC1.0を図10に示す。
【0148】
2B6軽鎖CDR[図7および配列番号10、11および12]およびヒト抗体のフレームワーク配列を得る場合、合成軽鎖可変領域[配列番号20]を調製した。各々、SacI−KpnIおよびPstI−HindIII末端を有するヒト化Vのアミノ酸番号27−58(KABAT番号付け)[配列番号31および32]およびアミノ酸番号80−109[配列番号33および34]をコードする4種の合成オリゴヌクレオチド[配列番号27および28][配列番号29および30]を、LENフレームワークと高度の相同性を共有するもう一つ別のヒト軽鎖フレームワーク(B17)(Marshら、Nuc. Acids Res.、13:6531−6544(1985))より由来の配列を含むpUC18を基礎とするプラスミドに挿入した。このプラスミドは残りの可変領域配列を提供する。マッピングされた配列中のいずれの誤りおよびLENとB17フレームワークの間の違いも、変異原性プライマーを用いてPCRに付すか、または合成リンカーを現存する制限部位に付加することにより訂正された。
【0149】
ヒト化軽鎖可変領域をEcoRV−NarIフラグメントとしてpUC−プラスミドより単離し、κヒト定常領域と一緒にシグナル配列[配列番号17]を含有する発現ベクターpCNにライゲーションした。合成軽鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を図9[配列番号20および21]に示す。ヒトフレームワーク残基は配列番号21のアミノ酸1−23、41−55、63−94および104−113である。CDRのアミノ酸配列はネズミ2B6 CDRと同じである。しかし、これらCDRのコーディング配列はネズミ2B6コーディング配列と異なっており、制限酵素部位を形成することができる。得られた発現ベクターの一つ、pCNIL5HZLC1.0を図11に示す。これらの合成可変軽鎖および/または重鎖配列をヒト化抗体の構築に利用する。
【0150】
E.ヒト化MAbの発現
IgGイソ型から由来のヒト化重鎖は、配列番号19に示されるような合成重鎖可変領域を利用している。2B6重鎖CDRを含有するこの合成Vを前記したように設計して合成した。
【0151】
ヒト化軽鎖である、ヒトκ鎖は、配列番号21に示されるような合成軽鎖可変領域を利用している。2B6軽鎖CDRを含有するこの合成Vを前記したように設計して合成した。ヒト化可変領域をコードするDNAフラグメントを、シグナル配列を利用し、CMVプロモーターおよび後記する実施例5にて産生されるキメラのヒト重鎖またはヒト軽鎖定常領域を含む、pUC19を基礎とする哺乳動物細胞発現プラスミドに、慣用的方法(Maniatisら、前掲)により挿入し、プラスミドpCDIL5HZLC1.0(重鎖)[配列番号49、図10もまた参照のこと]およびpCNIL5HZLC1.0(軽鎖)[配列番号50、図11も参照のこと]を得た。該プラスミドをCOS細胞に同時トランスフェクションし、上清を、各々、3および5日後に、実施例5に記載されるようにELISAによりヒト抗体の存在についてアッセイした。
【0152】
上記実施例は具体例として改変抗体の調製を記載する。他の改変抗体を開発するために、常套手段により開発された他の抗−IL−5抗体(例えば、2F2、2E3、4A6、5D3、24G9など)を用いて同様の操作を行った。
【0153】
F.精製
キメラおよびヒト化2B6を発現するCHOの精製は、通常のタンパク質A(またはG)アフィニティークロマトグラフィーに付し、つづいてイオン交換およびモレキュラーシーブクロマトグラフィーに付すことにより行うことができる。幸運にも同様の方法を他のmAb(例えば、呼吸シンシチウムウイルス、インターロイキン−4およびマラリアサーカムスポロゾイト抗原に対するmAb)を>95%の純度で精製するのに用いた。
【0154】
G.付加的なヒト化mAbおよび発現プラスミド
プラスミドpCDIL5HZHC1.0[配列番号49]を得る場合、フレームワーク位置73のトレオニンの代わりにアスパラギンを用いる発現プラスミドpCDIL5HZHC1.1を調製した。これは、EcoRVおよびXhoI末端[配列番号51および配列番号52]を有する合成リンカーを同様に消化されたpCDIL5HZHC1.0にライゲーションすることにより行った。同様に、発現プラスミドpCDIL5HZHC1.2はフレームワーク37のバリンの代わりにイソロイシンを用いる。これはHpaIおよびXbaI末端[配列番号53および配列番号54]を有する合成リンカーを同様に消化されたpCDIL5HZHC1.0にライゲーションすることにより行った。発現プラスミドpCDIL5HDHC1.3もまた、HpaIおよびXbaI末端[配列番号53および配列番号54]を有する合成リンカーを同様に消化されたpCDIL5HZHC1.1にライゲーションすることにより調製された。
【0155】
4種の合成オリゴヌクレオチド[配列番号31、32、33および34]のDNA配列を含有する前記されているpUC18を基礎とするプラスミドを得る場合、フレームワーク番号15がロイシンからアラニンに変わっているヒト化軽鎖可変領域を調製した。このプラスミドをNheIおよびSacI制限エンドヌクレアーゼで消化し、合成リンカー[配列番号55および56]を挿入した。ついで、EcoRV−NarIフラグメントを単離し、同様に消化された発現ベクターpCNIL5HZLC1.0にライゲーションし、pCNIL5HZLC1.1を形成した。
【0156】
合成可変領域を免疫グロブリンより得られた重鎖フレームワーク領域(NEW)(Saulら、J. Biol. Chem. 253:585−597(1978))および2B6重鎖CDR[図7および配列番号1−2]を用いて調製した。CDR提示に影響を及ぼすかもしれないフレームワークアミノ酸を同定し、前記した方法を用いて置換を行った。アニールし、伸長させた場合、シグナル配列[配列番号17]および重鎖可変領域を示すアミノ酸をコードする、4種の重複している合成オリゴヌクレオチド[配列番号57,58,59および60]を得た。ついで、この合成遺伝子をPCRプライマー[配列番号63および64]を用いて増幅させ、BstXI−HindIII制限フラグメントとして、pUC18を基礎とするCORフレームワークをベースとする別のヒト化重鎖より由来の配列を含むプラスミドにライゲーションした。合成オリゴヌクレオチドリンカー[配列番号75および76]をSacIIおよびKpnI制限部位に挿入することにより、フェニルアラニンのチロシンへのフレームワーク置換をアミノ酸位置91(Kabat番号表示システム)(図12の位置94に対応する)で行った。得られた重鎖可変領域(図12および配列番号61、62)をNEWMヒト化重鎖という。
【0157】
マッピングされた配列中のいずれの誤りも、変異原性プライマーを用いるPCRに付すか、または合成リンカーを現存する制限部位に付加することにより訂正した。シグナル配列およびヒト化重鎖可変領域をEcoRI−ApaIフラグメントとしてpUCを基礎とするプラスミドより切除し、ヒトIgG定常領域を含有する発現ベクターpCDにライゲーションし、プラスミドpCDIL55NEWMを調製した。CDRのアミノ酸配列はネズミ2B6重鎖CDRと同一である。
【0158】
合成可変領域は、免疫グロブリン(REI)(Palmら、Hoppe−Seyler’s Z. Physiol. Chem. 356:167−191(1975))より得られた軽鎖フレームワーク領域および2B6軽鎖CDR[図7および配列番号10、11および12]を用いて作成した。CDR提示に影響を及ぼすかもしれないフレームワークアミノ酸を同定し、置換を前に記載されている方法を用いて行った。アニールし、拡張すると、REIヒト化軽鎖と称される軽鎖可変領域[図13および配列番号69、70]を発現するアミノ酸をコードする、4個の重複合成オリゴヌクレオチド[配列番号65、66、67および68]を得た。ついで、この合成遺伝子をPCRプライマーを用いて増幅し、EcoRI−HindIII制限フラグメントとしてpGEM−7Zf(+)(Promega Corporation、Madison、WI)にライゲーションした。
【0159】
マッピングされた配列中の誤りは、変異原性プライマーを用いてPCRに付すか、または合成リンカーを現存する制限部位に付加することにより訂正された。ヒト化軽鎖可変領域をEcoRV−NarIフラグメントとしてpGEM−7Zf(+)を基礎とするプラスミドより切除し、ヒトκ定常領域と共にシグナル配列[配列番号17]を含有する発現ベクターpCNにライゲーションし、プラスミドpCNIL5REIを形成した。CDRのアミノ酸配列はネズミ2B6軽鎖CDRと同じである。しかしながら、これらCDRについてのコーディング配列はネズミ2B6のコーディング配列と異なり、制限酵素部位の形成を可能とする。これらの合成可変軽鎖および/または重鎖配列をヒト化抗体の構築に用いる。
【0160】
前記したpGEM−7Zf(+)を基礎とするプラスミドを得る場合、フレームワーク位置15番がバリンからアラニンに変えられている、ヒト化軽鎖可変領域を調製することができる。このプラスミドをNheIおよびSacI制限エンドヌクレアーゼで消化し、合成リンカー[配列番号73および74]を挿入してもよい。ついで、EcoRV−NarIフラグメントを単離し、同様に消化された発現ベクターpCNIL5HZREIに挿入し、プラスミドpCNIL5REIV15Aを形成してもよい。
【0161】
実施例5−キメラ抗体の構築
ネズミmAb2B6重鎖可変領域のアミノ酸番号9−104(KABAT番号表示)をコードするDNAを、2B6ハイブリドーマ細胞系より得られたcDNA(実施例4を参照のこと)のpGEM7Zf+を基礎とするPCRクローン由来のAvaII−StyI制限フラグメントとして単離した。このフラグメントを4つの小型合成オリゴマーリンカー[配列番号35および36][配列番号37および38]と一緒にBstX1−HindIIIで消化したpUC18を基礎とするプラスミドに組み合わせることにより、フランキング重鎖可変領域の配列およびシグナル配列[配列番号17]を得た。、密接に関連したネズミ重鎖より推定したN−末端アミノ酸のコンセンサスを最初の8個のV残基に帰属させ、配列番号35および36内でコードした。2B6重鎖の最初の15個のN−末端アミノ酸を配列決定することにより、重鎖の推定アミノ酸配列を確認した。
【0162】
シグナルおよびV領域に関する配列を含有するEcoRI−ApaIフラグメントを単離し、既にヒトIgG定常領域をコードするプラスミドpCDにライゲーションした。
【0163】
ネズミmAb2B6軽鎖可変領域のアミノ酸番号12−99(KABAT番号表示)をコードするDNAを、2B6ハイブリドーマ細胞系より得られたcDNA(実施例4を参照のこと)のpGEM7Zf+を基礎とするPCRクローン由来のDdeI−AvalI制限フラグメントとして単離した。このフラグメントを4つの小型合成オリゴマーリンカー[配列番号39および40][配列番号41および42]と一緒にEcoRV−HindIIIで消化したpUC18を基礎とするプラスミドに組み合わせることにより、フランキング軽鎖可変領域の配列を得た。、密接に関連したネズミ軽鎖より推定されるN−末端アミノ酸のコンセンサスを最初の8個のV残基に帰属させ、配列番号39および40の範囲内でコードした。2B6軽鎖の最初の15個のN−末端アミノ酸を配列決定することにより、軽鎖の推定アミノ酸配列を確認した。ついで、この可変領域をEcoRV−NarIフラグメントとして単離し、既にヒトκ領域およびシグナル配列を含有する発現ベクターpCNにライゲーションした。
【0164】
pCDおよびpCNを基礎とするプラスミドをCOS細胞に同時形質導入することによりキメラ抗体の発現を行った。3日および5日後に培養上清を集め、次のようにELISAにより免疫グロブリン発現についてアッセイを行った:最終工程を除く各工程でPBS洗浄を行った。マイクロタイタープレートを100ng/50μl/ウェルのヒト抗体のFc領域に特異的なヤギ抗体を用いて一夜被覆した。培養上清を加え、1時間インキュベーションした。ついで、ヤギ抗ヒトIgG抗体を共有するホースラディッシュ・ペルオキシダーゼを加え、1時間インキュベーションした。ついで、ABTSペルオキシダーゼ基質(Kirkegaard&Perry Laboratories Inc.、Gaithersburg、MD)を添加した。1時間インキュベーションした後、405nmでの吸光度をマイクロタイタープレートリーダー(Molecular Devices Corporation、Menlo Park、CA)で読み取った。キメラ抗体の発現が検出された。類似するELISAにおいて、キメラ抗体を含有するCOS細胞上清は、ヒトIL−5タンパク質で被覆したマイクロタイターウェルに特異的に結合した。この結果、IL−5に対する抗体をコードする遺伝子が合成され、かつ発現されたことが確認された。
【0165】
上記実施例は代表的な改変抗体の製法を記載するものである。常套手段により発現される他の抗IL−5ドナー抗体(例えば、2F2、2E3、4A6、5D3、24G9など)を用い、同様の操作を他の改変抗体の発現について行うこともできる。
【0166】
実施例6−ヒトIL−5/hIL−5レセプターα鎖/MAb複合体
A.ELISA
以下の抗体:24G9(非中和)、4A6(中和)および2B6(中和)を、2ng/ml−32ng/mlの間の濃度で評価した。
【0167】
平坦な底のELISAプレートウェル(Wallac)を100μlのタンパク質−A(5μg/ml)で4℃で一夜被覆した。吸引後、ウェルを1%BSA含有の200μl遮断緩衝液で遮断し、37℃で60分間インキュベーションした。プレートを4回洗浄し、100μlの可溶性IL−5RαFc(Johnsonら、(1995) J Biol Chem、270:9459−9471)(2.25μg/ml)を各ウェルに加え、37℃で30分間インキュベーションした。プレートを1回洗浄し、増加する濃度の組換えヒトIL−5を各ウェルに加えた。37℃で30分間インキュベーションした後、ウェルを1回洗浄し、100μlの抗体(2μg/ml)を加え、37℃で60分間インキュベーションした。プレートを4回洗浄し、100μlのビオチン標識したヤギ抗マウスIgまたはヤギ抗ラットIg(Sigma)を各ウェルに加えた。プレートを37℃で60分間インキュベーションし、4回洗浄した。ユーロピウム標識したストレプタビジン(streptavidin)(Wallac)をユーロピウム緩衝液(Wallac)中で1:1000に希釈し、100μl容量を各ウェルに加えた。プレートを37℃で30分間インキュベーションし、6回洗浄した。エンハンサー溶液(Wallac)を各ウェルに加え、1234デルフィア(Delphia)・リサーチ・フルオロメーターを用いてプレートを読み取った。
【0168】
mAb 24G9および4A6のIL−5/IL−5レセプター複合体への結合が用量依存的に増加した。そのような増加はmAb 2B6を用いて観察されなかった。mAb 2B6はIL−5のIL−5Rα鎖への結合を阻害する。対照的に、24G9または4A6のいずれもIL−5のIL−5Rα鎖への結合を阻害しなかった。表IIを参照のこと。
【表2】

【0169】
B.光学バイオセンサー
(1)mAbをBIAcoreチップに固定した(実施例2Dを参照のこと)。5μl/分の流速でhIL−5(25μl)を4A6表面上に通した。ついで、IL−5レセプターα鎖(25μl中15、30、60、120nM)を注入した。4A6/IL−5複合体への結合におけるIL−5レセプターα鎖(Ra)の動態は、Kon=6.3x10(/M/s);Koff=2.3x10−3(/s)として計算することができる。IL−5−IL−5Pαの相互作用についての動態はKon=7.5x10(/M/s);Koff=2.8x10−3(/s)である。かくして、mAb 4A6はIL−5とIL−5レセプターα鎖の間の相互作用に対して有意な作用を付与しない。
【0170】
(2)hIL−5をBIAcoreチップに固定した。mAb 4A6(25μl、32μg/ml)をその表面に注入し、つづいてIL−5レセプターα鎖(20μl、90nM)を注入した。対照として、同じ量のIL−5レセプターα鎖をIL−5表面に直接注入した。mAb 4A6のhIL−5への前結合はIL−5レセプターα鎖のhIL−5への結合を遮断しなかった。
【0171】
(3)ProteinAをBIAcoreチップ上に固定した。IL−5Ra−Fc(30μl、20μg/ml)をProteinA表面に注入した。ついで、IL−5(25μl、80nM)をIL−5Ra−Fcで捕獲し、つづいてmAb 24G9(25μl、32μg/ml)と結合させた。mAb 24G9はhIL−5/IL−5Rα複合体に結合した。
【0172】
(4)mAb 24G9をBIAcoreチップに固定した。IL−5を24G9表面に捕獲し、つづいて異なるmAbを注入した。mAb 2B6、TRFK5およびCMX5−2をIL−5/24G9複合体に結合させたが、mAb 4A6のIL−5への結合は遮断された。このことは4A6および24G9が結合エピトープを共有していることを示す。
【0173】
C.沈降速度
14時間経過後(20℃)、沈降速度によりhIL−5、mAb 4A6および可溶性IL−5レセプターα鎖の3成分混合物を分析した。可溶性IL−5レセプターα鎖/hIL−5/mAb複合体と同じ大きさに相当する複合体が観察された。
【図面の簡単な説明】
【0174】
【図1】〔配列番号1および15〕は、ネズミ抗体2B6およびネズミ/ヒト2B6キメラ抗体についての重鎖可変領域を示す。ボックス領域はCDRを示す。
【図2】〔配列番号2および16〕は、ネズミ抗体2B6およびネズミ/ヒト2B6キメラ抗体についての軽鎖可変領域を示す。ボックス領域はCDRを示す。
【図3】〔配列番号3〕は、ネズミ抗体2F2についての重鎖可変領域を示す。ボックス領域はCDRを示す。
【図4】〔配列番号4〕は、ネズミ抗体2F2についての軽鎖可変領域を示す。ボックス領域はCDRを示す。
【図5】〔配列番号5〕は、ネズミ抗体2E3についての重鎖可変領域を示す。ボックス領域はCDRを示す。
【図6】〔配列番号6〕は、ネズミ抗体2E3についての軽鎖可変領域を示す。ボックス領域はCDRを示す。
【図7】〔配列番号7−14〕は、ネズミ抗体2B6、2F2および2E3からの重鎖および軽鎖CDRを示す。
【図8】〔配列番号18および19〕は、ヒト化抗体2B6についての重鎖可変領域を示す。ボックス領域はCDRを示す。
【図9】〔配列番号20および21〕は、ヒト化抗体2B6についての軽鎖可変領域を示す。ボックス領域はCDRを示す。
【図10】哺乳動物細胞にてヒト化重鎖遺伝子を発現させるのに用いられるプラスミドpCDIL5HZHC1.0の模式図である。該プラスミドは、pUC19バックグラウンド中に、ベータラクタマーゼ遺伝子(BETA LAC)、SV−40の複製起点(SV40)、サイトメガロウイルスプロモーター配列(CMV)、シグナル配列、ヒト化重鎖、ウシ成長ホルモン(BGH)のポリAシグナル、ベータグロビンプロモーター(ベータグロプロ)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子(DHFR)およびもう一つ別のBGH配列ポリAシグナルを含有する。
【図11】哺乳動物細胞にてヒト化軽鎖遺伝子を発現させるのに用いられるプラスミドpCNIL5HZLC1.0の模式図である。
【図12】〔配列番号61および62〕は、ヒト化抗体2B6についてのNew M重鎖可変領域を示す。ボックス領域はCDRを示す。
【図13】〔配列番号69および70〕は、ヒト化抗体2B6についてのREI軽鎖可変領域を示す。ボックス領域はCDRを示す。
【0175】
【表3−1】

【表3−2】

【表3−3】

【表3−4】

【表3−5】

【表3−6】

【表3−7】

【表3−8】

【表3−9】

【表3−10】

【表3−11】

【表3−12】

【表3−13】

【表3−14】

【表3−15】

【表3−16】

【表3−17】

【表3−18】

【表3−19】

【表3−20】

【表3−21】

【表3−22】

【表3−23】

【表3−24】

【表3−25】

【表3−26】

【表3−27】

【表3−28】

【表3−29】

【表3−30】

【表3−31】

【表3−32】

【表3−33】

【表3−34】

【表3−35】

【表3−36】

【表3−37】

【表3−38】

【表3−39】

【表3−40】

【表3−41】

【表3−42】

【表3−43】

【表3−44】

【表3−45】

【表3−46】

【表3−47】

【表3−48】

【表3−49】

【表3−50】

【表3−51】

【表3−52】

【表3−53】

【表3−54】

【表3−55】

【表3−56】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトIL−5可溶性レセプターα鎖/ヒトIL−5複合体のヒトIL−5レセプターβ鎖への結合を拮抗する化合物をスクリーニングし、そのような化合物を同定する方法であって、ヒトIL−5レセプターβ鎖を複数の候補化合物と該レセプターとの結合を可能とする条件下で接触させ、ヒトIL−5可溶性レセプターα鎖/ヒトIL−5複合体の結合を拮抗する候補化合物を同定することからなる方法。
【請求項2】
以下の複合体(ヒトIL−5可溶性レセプターα鎖/ヒトIL−5/ヒトIL−5のヒトIL−5レセプターα鎖への結合を遮断しないヒトIL−5についてのモノクローナル抗体)のヒトIL−5レセプターβ鎖への結合を拮抗する化合物をスクリーニングし、そのような化合物を同定する方法であって;
ヒトIL−5レセプターβ鎖を複数の候補化合物とIL−5レセプターβ鎖との結合を可能とする条件下で接触させ、該レセプター/IL−5/抗体複合体のIL−5レセプターβ鎖への結合を拮抗する候補化合物を同定することからなる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−189666(P2008−189666A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10472(P2008−10472)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【分割の表示】特願平10−503401の分割
【原出願日】平成9年6月20日(1997.6.20)
【出願人】(591002957)スミスクライン・ビーチャム・コーポレイション (341)
【氏名又は名称原語表記】SMITHKLINE BEECHAM CORPORATION
【Fターム(参考)】