説明

IL−6とIL−6Rαの複合体のgp130への結合を阻害する抗IL−6抗体

本発明は、IL-6のgp130への結合を阻害する抗体可変領域を含む抗IL-6抗体を提供する。本発明はまた、本発明のIL-6アンタゴニストに基づく、IL-6関連疾患の治療のための組成物および方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IL-6シグナル伝達経路の抑制およびIL-6関連疾患の治療に有用なインターロイキン-6(IL-6)アンタゴニストに関する。特に、本発明は、IL-6とgp130との相互作用を遮断し、IL6により引き起こされる疾患、好ましくは癌および自己免疫疾患の治療に有効に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン-6(IL-6)は、多くの癌および自己免疫疾患を含む種々の疾患に関与している。インターロイキン-6は多くの進行癌、例えばホルモン不応性前立腺癌などにより分泌され、このような癌の増殖因子であると考えられている。加えて、癌細胞によるIL-6の分泌は、進行癌の特徴である消耗症候群の悪液質の原因となると考えられている。従って、IL-6作用の阻害は、このような癌の治療に有用であると考えられる。
IL-6はまた、B細胞分化に重要な役割を果たしている。顕著な抗体成分を含む自己免疫疾患、例えば関節リウマチなどはIL-6の抑制により治療できると考えられる。B細胞の増殖を伴う疾患、例えば多発性骨髄腫およびB細胞リンパ腫などもまたIL-6作用の阻害により治療できると考えられる。
加えて、IL-6は、骨吸収を促進することにより骨再形成に重要な役割を果たしている。IL-6作用の阻害剤は、骨吸収抑制効果を有し、骨粗鬆症の治療に使用できると考えられる。
疾患または障害の一部としてIL-6が産生されるとき、IL-6は多くの場合可溶性IL-6Rαサブユニットと複合体を形成しており、多くの場合このような複合体の形で細胞から分泌される。結果的に、IL-6とIL-6Rαとの相互作用を遮断する抗体または他の阻害剤で患者を治療することは多くの場合有効ではないが、これはこのような抗体または阻害剤は既に形成された複合体には効果を発揮できないからである。従って、当該技術分野において、IL-6により仲介される疾患の改善された治療が求められている。
【発明の開示】
【0003】
発明の概要
本発明は、IL-6により仲介される疾患、特に活性化にIL-6が関与する癌および自己免疫疾患の治療のための改善された組成物および方法を提供する。特に、本発明は、IL-6とgp130との相互作用を効果的に遮断する新規IL-6アンタゴニスト、特に、既に形成されたIL-6とIL-6Rαとの複合体がgp130へ結合するのを阻害するIL-6アンタゴニストを提供する。加えて、本発明は、IL-6とgp130との相互作用を遮断する新規IL-6アンタゴニストの作製方法を提供する。
従って、一側面において、本発明は、IL-6Rαと複合体を形成したIIL-6のgp130への結合を阻害する、単離されたIL-6アンタゴニストを提供する。一実施形態において、この単離されたIL-6アンタゴニストはヒト抗体由来の抗体可変領域およびFc領域を含む。別の実施形態において、本発明に適したFc領域は、マウス、ラット、ウシ、イヌ、ニワトリ、ウマ、魚、サルまたは他の非ヒト種から得られる抗体に由来することができる。好ましい実施形態において、該抗体可変領域は、IL-6とgp130との相互作用を立体的に遮断するようにIL-6上の領域に結合する。
【0004】
一部の実施形態において、本発明は、アミノ酸配列FX1FSX2X3WMX4(配列番号1)を含む重鎖CDR1を含む抗体可変領域を含む単離されたIL-6アンタゴニストを提供する。X1、X2、X3またはX4は任意のアミノ酸であることができる。好ましくは、X1はThr、Ser、AlaまたはCysであり;X2はAsnまたはAspであり;X3はTyrまたはAlaであり;X4はAsnまたはAspである。特に、重鎖CDR1は、アミノ酸配列:FTFSNYWMN(配列番号2)、FSFSNYWMN(配列番号3)またはFTFSDAWMD(配列番号4)の1つを含むことができる。
【0005】
一部の実施形態において、本発明は、アミノ酸配列EIRX1X2X3NX4X5AX6X7YAESVKG(配列番号5)を含む重鎖CDR2を含む抗体可変領域を含む単離されたIL-6アンタゴニストを提供する。X1、X2、X3、X4、X5、X6またはX7は任意のアミノ酸であることができる。好ましくは、X1はLeuまたはSerであり;X2はLysまたはThrであり;X3はSerまたはAlaであり;X4はAsnまたはLysであり;X5はTyr、Gly、GlnまたはHisであり;X6はThrまたはIleであり;X7はHisまたはTyrである。特に、該抗体可変領域は、アミノ酸配列:EIRLKSNNYATHYAESVKG(配列番号6)、EIRLKSNKGATHYAESVKG(配列番号7)、EIRLTSNKQAIYYAESVKG(配列番号8)またはEIRSKANNHATYYAESVKG(配列番号9)の1つを含む重鎖CDR2を含む。
【0006】
一部の実施形態において、本発明は、アミノ酸配列X1X2X3X4GX5X6X7X8(配列番号10)を含む重鎖CDR3を含む抗体可変領域を含む単離されたIL-6アンタゴニストを提供する。X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7またはX8は任意のアミノ酸またはペプチド結合であることができる。好ましくは、X1はGlu、LeuまたはProであり;X2はAsp、Leu、PheまたはThrであり;X3はTyrまたはLeuであり;X4はTyrまたはAspであり;X5はTyrまたはAlaであり;X6はPro、Metまたはペプチド結合であり;X7はAspまたはLeuであり;X8はTyrまたはHisである。特に、該抗体可変領域は、アミノ酸配列:EDYYGYPDY(配列番号11)、LLYDGYLH(配列番号12)、LFYDGYLH(配列番号13)またはPTLYGAMDY(配列番号14)の1つを含む重鎖CDR3を含む。
【0007】
一部の実施形態において、本発明は、アミノ酸配列RASESVX1NX2GISFM(配列番号15)を含む軽鎖CDR1を含む抗体可変領域を含む単離されたIL-6アンタゴニストを提供する。X1またはX2は任意のアミノ酸であることができる。好ましくは、X1はAsp、GlyまたはHisであり;X2はPheまたはTyrである。特に、該抗体可変領域は、アミノ酸配列:RASESVDNFGISFM(配列番号16)、RASESVGNFGISFM(配列番号17)、RASESVHNFGISFM(配列番号18)またはRASESVDNYGISFM(配列番号19)の1つを含む軽鎖CDR1を含む。
【0008】
一部の実施形態において、本発明は、アミノ酸配列XASNQGS(配列番号20)を含む軽鎖CDR2を含む抗体可変領域を含む単離されたIL-6アンタゴニストを提供する。Xは任意のアミノ酸であることができる。好ましくは、XはAla、ValまたはThrである。特に、該抗体可変領域は、アミノ酸配列:TASNQGS(配列番号21)、VASNQGS(配列番号22)またはAASNQGS(配列番号23)の1つを含む軽鎖CDR2を含む。
【0009】
一部の実施形態において、本発明は、アミノ酸配列QQX1KEX2PX3T(配列番号24)を含む軽鎖CDR3を含む抗体可変領域を含む単離されたIL-6アンタゴニストを提供する。X1、X2またはX3は任意のアミノ酸であることができる。好ましくは、X1はSerまたはGlyであり;X2はValまたはIleであり;X3はTrpまたはTyrである。特に、該抗体可変領域は、アミノ酸配列:QQSKEVPWT(配列番号25)、QQSKEVPYT(配列番号26)、QQSKEIPWT(配列番号27)またはQQGKEVPWT(配列番号28)の1つを含む軽鎖CDR3を含む。
【0010】
好ましい実施形態において、本発明のIL-6アンタゴニストは抗体またはそのフラグメントである。
一部の実施形態において、該抗体は、以下のアミノ酸配列:配列番号29、配列番号30、配列番号31または配列番号32の1つを含む軽鎖を含む。あるいは、該抗体は、上記の配列のいずれか1つ、例えば、配列番号31(Mab#471)と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
他の実施形態において、該抗体は、以下のアミノ酸配列:配列番号33、配列番号34、配列番号35または配列番号36の1つを含む重鎖を含む。あるいは、該抗体は、上記の配列のいずれか1つ、例えば、配列番号35(Mab#471)と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
本発明はまた、上記の種々の実施形態に記載されているようにIL-6アンタゴニストをコードする核酸を提供する。特に、本発明は、前述の抗IL-6抗体の軽鎖および/または重鎖をコードする核酸を提供する。
他の側面において、本発明は、Leu19、Arg24、Lys27、Arg30、Tyr31、Asp34およびTrp157からなる群から選択されるアミノ酸を含むIL-6上のエピトープに、IL-6とgp130との相互作用を立体的に遮断するように結合する抗体可変領域を含む単離されたIL-6アンタゴニストを提供する。
【0011】
典型的には、本IL-6アンタゴニストはFc部分を含む。好ましくは、このFc部分はヒト抗体由来である。より好ましい実施形態において、本発明のIL-6アンタゴニストにおけるすべての定常領域はヒト抗体由来である。別の実施形態において、本発明に適したFc領域は、マウス、ラット、ウシ、イヌ、ニワトリ、ウマ、魚、サルまたは他の非ヒト種から得られる抗体に由来することができる。
他の側面において、本発明は、前述のとおり単離された本発明のIL-6アンタゴニストを被験者に投与することによる、被験者の疾患を治療するための方法を提供する。特に、本発明は、IL-6に結合し、gp130とその相互作用を立体的に遮断する抗体V領域を含むタンパク質を投与することによる、被験者の疾患または症状を治療するための方法を提供する。このようなタンパク質は、限定するものではないが、抗体、種々の定常領域を欠く抗体フラグメント、ミニ抗体、scFvタンパク質、抗体融合タンパク質を含む。好ましくは、IL-6に結合し、gp130とのその相互作用を立体的に遮断する抗体V領域は、IL-6とIL-6受容体αサブユニットとの相互作用を立体的に遮断しない。本発明の方法は、IL-6が関与する疾患、障害および副作用、例えば、限定するものではないが、関節リウマチ、シェーグレン症候群、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、グレーヴズ病、橋本病およびキャッスルマン病を含む自己免疫疾患、急性および慢性炎症、骨量減少を含む骨粗鬆症および他の障害ならびに、限定するものではないが、ホルモン不応性前立腺癌、B細胞性非ホジキンリンパ腫などのB細胞増殖性疾患ならびに腎臓、乳房、結腸、肺、脳および他の組織の進行癌を含む癌などの治療に特に有用である。
さらに他の側面において、本発明は、上記の種々の実施形態に記載のIL-6アンタゴニストの作製方法を提供する。特に、本発明は、(a)最初に、IL-6およびIL-6Rαを含む組成物で動物を免疫することによりIL-6とIL-6Rαとの複合体に対する抗体を作製し、(b)gp130とIL-6との相互作用を阻害する抗体を同定する、ことによる、IL-6アンタゴニストの作製方法を提供する。IL-6およびIL-6Rαは、IL-6/IL-6Rα複合体の形成を促進するために、融合タンパク質形態であることができる。好ましい実施形態において、組成物はまた、Fc部分などの、抗原提示を促進する追加の部分を含む。
さらに他の側面において、本発明は、IL-6とIL-6Rαとの複合体に特異的であり、IL-6のgp130への結合を阻害することができる抗体を提供する。
本発明の他の特徴、目的および利点は、以下の詳細な説明により明らかとなる。しかしながら、以下の詳細な説明は、本発明の実施形態を示すものではあるが限定するものではなく、例示目的のみで与えられる。本発明の範囲内の種々の変更および修飾は、以下の詳細な説明から当業者には明らかとなるであろう。
【0012】
要約すれば、本発明は以下に関する:
・抗体可変領域を含む対応する抗IL6抗体またはそのフラグメントであって、前記抗体可変領域が、罹患細胞の表面において、IL-6とgp130との相互作用を立体的に遮断するようにIL-6上のエピトープに結合する、前記抗IL6抗体またはそのフラグメント。
・前記結合がIL-6Rαと複合体を形成したIL-6のgp130への結合を阻害するが、IL-6とIL-6Rαとの相互作用を立体的に遮断しない、対応する抗IL6抗体。
・前記IL-6上のエピトープがLeu19、Arg24、Lys27、Arg30、Tyr31、Asp34およびTrp157からなる群から選択されるアミノ酸を含む、対応する抗IL6抗体。
・抗体可変領域が、
FTFSNYWMN(配列番号2)、
FSFSNYWMN(配列番号3)および
FTFSDAWMD(配列番号4)
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1を含む、対応する抗IL6抗体。
・抗体可変領域が、
EIRLKSNNYATHYAESVKG(配列番号6)、
EIRLKSNKGATHYAESVKG(配列番号7)、
EIRLTSNKQAIYYAESVKG(配列番号8)および
EIRSKANNHATYYAESVKG(配列番号9)
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2を含む、対応する抗IL6抗体。
・抗体可変領域が、
EDYYGYPDY(配列番号11)、
LLYDGYLH(配列番号12)、
LFYDGYLH(配列番号13)および
PTLYGAMDY(配列番号14)
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を含む、対応する抗IL6抗体。
・抗体可変領域が、
RASESVDNFGISFM(配列番号16)、
RASESVGNFGISFM(配列番号17)、
RASESVHNFGISFM(配列番号18)および
RASESVDNYGISFM(配列番号19)
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1を含む、対応する抗IL6抗体。
・抗体可変領域が、
TASNQGS(配列番号21)、
VASNQGS(配列番号22)および
AASNQGS(配列番号23)
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2を含む、対応するIL6抗体。
・抗体可変領域が、
QQSKEVPWT(配列番号25)、
QQSKEVPYT(配列番号26)、
QQSKEIPWT(配列番号27)および
QQGKEVPWT(配列番号28)
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む、対応する抗IL6抗体。
・配列番号2、配列番号3または配列番号4の重鎖CDR1および
配列番号6;配列番号7;配列番号8;または配列番号9の重鎖CDR2および
配列番号11;配列番号12;配列番号13または配列番号14の重鎖CDR3
を含む、対応する抗IL6抗体。
・配列番号16、配列番号17、配列番号18または配列番号19の軽鎖CDR1および
配列番号21、配列番号22、または配列番号23の軽鎖CDR2および
配列番号25、配列番号26、配列番号27または配列番号28の軽鎖CDR3
を含む、対応する抗IL6抗体。
・配列番号2、配列番号3または配列番号4の重鎖CDR1および
配列番号6;配列番号7;配列番号8;または配列番号9の重鎖CDR2および
配列番号11;配列番号12;配列番号13または配列番号14の重鎖CDR3および
配列番号16、配列番号17、配列番号18または配列番号19の軽鎖CDR1および
配列番号21、配列番号22または配列番号23の軽鎖CDR2および
配列番号25、配列番号26、配列番号27または配列番号28の軽鎖CDR3
を含む、対応する抗IL6抗体。
・抗体定常領域をさらに含む、対応する抗IL6抗体。
・Fc部分を含む、対応する抗IL6抗体。
・Fc部分がヒト由来である、対応する抗IL6抗体。
・配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、対応する抗IL6抗体。
・配列番号31の軽鎖アミノ酸配列または配列番号31と少なくとも90%同一である配列を含む、対応する抗IL6抗体。
・配列番号33、配列番号34、配列番号35および配列番号36からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖を含む、対応する抗IL6抗体。
・配列番号35のアミノ酸配列または配列番号35と少なくとも90%同一である配列を含む重鎖を含む、対応する抗IL6抗体。
・配列番号35のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号31のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、対応する抗IL6抗体。
・配列番号34のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号30のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、対応する抗IL6抗体。
・配列番号36のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号32のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、対応する記載の抗IL6抗体。
・配列番号33のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号29のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、対応する抗IL6抗体。
・本明細書に記載の抗体をコードする核酸分子。
・本明細書に記載の抗IL6抗体の薬理学的有効量を、場合により薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と共に含む、IL6により引き起こされる疾患の治療に適した医薬組成物。
・癌または自己免疫疾患の治療薬の製造のための、本明細書に記載の抗IL6抗体の使用。
・疾患がIL6またはIL-6Rαと複合体を形成したIL-6により引き起こされる、対応する使用。
・抗体のFc部分、IL6RαおよびIL6を含む融合タンパク質であって、好ましくは、Fcが非ヒト哺乳動物、例えばマウスに由来し、IL-6RαおよびIL6がヒト由来である前記融合タンパク質。
・IL6RαがFc部分のC末端に融合し、IL6がIL6RαのC末端に融合した、対応する融合タンパク質。
・哺乳動物を前記融合タンパク質で免疫することにより得られる抗IL6抗体の作製のための、本明細書に記載の融合タンパク質の使用であって、選別された抗体が以下の特性:
(i)前記抗体の可変領域がIL-6上のエピトープに結合し、
(ii)罹患細胞の表面でIL-6とgp130との相互作用を立体的に遮断し、および
(ii)IL-6/IL-6Rα複合体のgp130への結合を阻害するが、IL-6とIL-6Rαとの相互作用を立体的に遮断しないこと
を有する前記使用。
・選別された抗体が、上記または下記に記載の抗体である、対応する使用。
【0013】
発明の詳細な説明
本発明は、IL-6とgp130との相互作用を効果的に遮断し、それにより既に形成されたIL-6/IL-6Rα複合体の存在下でIL-6シグナル伝達を抑制する新規IL-6アンタゴニストを提供する。上記のように、疾患または状態の一部として産生されるとき、IL-6は通常IL-6Rαと複合体を形成しているので、本発明は、IL-6とIL-6Rαとの相互作用を遮断する現存する抗体と比較して優れた治療効果を達成する(van Zaanen et al., (1996) J. Clin. Invest., 98(6):1441-8)。
【0014】
特別な実施形態の1つにおいて、本発明は、IL-6とgp130との相互作用を立体的に遮断するようにIL-6上の領域に結合する抗体可変領域を含むIL-6アンタゴニストを提供する。“立体的に遮断する”とは、第1のタンパク質と第2のタンパク質との相互作用を、第1のタンパク質への第3のタンパク質の結合によって遮断する手段を意味する。第1のタンパク質と第3のタンパク質との結合は、第2のタンパク質と第3のタンパク質との不利なファンデルワールス相互作用または静電相互作用により、第2のタンパク質が第1のタンパク質に結合することを阻害する。
本発明はまた、本発明のIL-6アンタゴニストに基づく、IL-6が関与する疾患、障害および副作用の治療のための組成物および方法を提供する。
以下のサブセクションにおいて、本発明の種々の側面をさらに詳細に説明する。サブセクションの使用は、本発明を限定することを意図するものではない。各サブセクションは、本発明の任意の側面に適用できる。本願において、特記しない限り、“または”の使用は、“および/または”を意味する。本開示において、用語“含む(comprise)”ならびにこの用語の語尾変化、例えば“含む(comprising)”および“含む(comprises)”などは、他の添加剤、成分、整数またはステップを除外しないものとする。
【0015】
IL-6ならびにそのIL-6Rαおよびgp130との相互作用
IL-6シグナル伝達は、IL-6受容体α(IL-6Rα)サブユニットおよび、IL-6からSTAT3へシグナルを伝達し、ついでそれにより種々の遺伝子の転写が活性化される、膜貫通受容体タンパク質であるgp130とIL-6との相互作用により起こると考えられている。シグナル伝達複合体の細胞外部分の構造は決定されている(Boulanger et al., (2003), Science, 300:2101 その教示は参照により本願に組み込まれる)。この構造は、シグナル伝達複合体が2コピーのIL-6、2コピーのIL-6Rαサブユニットおよび2コピーのgp130を含有していることを示している。この構造解析はまた、部位I、IIおよびIIIとして知られる3つの保存されたエピトープを介してIL-6がgp130受容体に結合することを示している。IL-6は、最初に部位Iを介してIL-6Rαと複合体を形成しなければならない。部位IIは、gp130のサイトカイン結合領域CHRおよびD2D3と相互作用する、IL-6とIL-6Rαとの二元複合体により形成される複合エピトープである。続いて、部位IIIは、gp130の免疫グロブリン様活性化ドメイン(D1またはIGD)と相互作用してコンピテントシグナル伝達ヘキサマー複合体を形成する(Boulanger et al., (2003) Science, 300:2101 その教示は参照により本願に組み込まれる)。IL-6の部位I結合エピトープは、へリックスAおよびDに局在し、IL-6Rαと相互作用する。ヘキサマーにおける残りの4つの固有のタンパク質-タンパク質界面は、2つの複合部位、部位IIおよびIIIに分けることができる。ヘキサマー複合体の3次元構造の研究により、IL-6の多くの残基がIL-6とgp130との相互作用に関与し、該相互作用に重要であることが明らかとなった。このような残基は、限定するものではないが、Leu19、Arg24、Lys27、Arg30、Tyr31、Asp34およびTrp157を含む。
【0016】
このように、ヘキサマー複合体の形成の効果は、gp130を2量体化させ、その細胞内ドメインを並置させることにより、細胞内レベルでシグナル伝達を持続させることである。IL-6Rαサブユニットは細胞内ドメインを有さず、複合体を安定化させるためにのみ役立つ。哺乳動物のIL-6は、IL-6Rαの存在なくしてgp130へ結合できない。正統的L-6Rαサブユニットは、細胞外ドメイン3つおよび、発現細胞の膜にIL-6Rαサブユニットをつなぎとめる膜貫通領域を有する。“可溶性IL-6Rα”または“sIL-6Rα”は、IL-6Rαサブユニットの細胞外部分を有するが、膜貫通セグメントを欠くタンパク質を意味する。膜貫通セグメントを欠くsIL-6Rα変異タンパク質は、IL-6Rαをコードする選択的スプライシングされたmRNAの翻訳または膜結合型IL-6Rαのタンパク質分解により作製できる。
【0017】
sIL-6Rαは血清中に存在し、IL-6を発現する同じ細胞により分泌され得る。IL-6はsIL-6Rαとの複合体を形成する。ひとたびIL-6/sIL-6Rα複合体が形成されると、この複合体はかなり安定であり、IL-6/sIL-6Rα相互作用と競合する抗体は結合できない。IL-6/sIL-6Rα複合体はIL-6単独と比較してかなり長い血清半減期を有する。B細胞などの、体内における特定の細胞のみがIL-6Rαおよびgp130の両方を有するが、多くの他の細胞はgp130のみを有する。IL-6/sIL-6Rα複合体は、gp130のみを有する細胞に結合し、シグナル伝達を刺激することができる。その結果として、多くの細胞上のgp130の望ましくない活性化は、IL-6の過剰産生により引き起こされうる(図1A)。従って、IL-6とgp130との相互作用を立体的に遮断する抗体または他の分子は、望ましくないIL-6シグナル伝達の抑制に特に有用な可能性がある(図1B参照)。
【0018】
gp130との相互作用を立体的に遮断するIL-6アンタゴニスト
従って、図1Bに示すように、本発明は、gp130との相互作用を立体的に遮断し、そのIL-6への結合が事前に結合したsIL-6Rαに影響されないIL-6アンタゴニストを考慮する。本発明の“IL-6アンタゴニスト”は、抗体またはそのフラグメント;抗体の機能的等価物;改変抗体、例えば一本鎖抗体、キメラ抗体;または、IL-6もしくはIL-6/IL-6Rα複合体と結合もしくは会合してgp130への結合を立体的に阻害することができる他のタンパク質もしくは分子を含む。
好ましい実施形態において、本発明のIL-6アンタゴニストは、IL-6とgp130との相互作用を立体的に遮断するようにIL-6上の領域もしくはエピトープまたはIL-6/IL-6Rα複合体と結合する抗体可変領域含む。より好ましくは、本発明のIL-6アンタゴニストは抗体である。例えば、IL-6/IL-6Rα複合体とgp130との相互作用に直接的に関与する任意の領域またはエピトープへの抗体可変領域の結合は、gp130への結合を立体的に阻害するのに十分である。加えて、該相互作用に直接的に関与する任意の領域またはエピトープに隣接した任意の領域またはエピトープへの結合もまた、IL-6/IL-6Rαとgp130との相互作用を立体的に遮断するのに十分であることができる。このような領域またはエピトープは、IL-6、IL-6Rαまたは、IL-6とIL-6Rαとの複合体によってのみ形成される複合部位上に存在することができる。特に、そのエピトープへの結合がIL-6とgp130との相互作用を立体的に遮断することができる適切なエピトープは、限定するものではないが、ヒトIL-6の以下のアミノ酸:Leu19、Arg24、Lys27、Arg30、Tyr31、Asp34およびTrp157の少なくとも1つを含む任意のエピトープを含む。
【0019】
IL-6とgp130との相互作用を立体的に遮断する抗体の作製
従って、本発明の重要な特徴の1つは、IL-6/IL-6Rα複合体に結合し、IL-6/gp130相互作用を立体的に遮断する抗体の単離である。このような抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり得る。本発明によれば、このような抗体は以下の方法により作製できる。第1のステップにおいて、マウス、ラット、ウサギまたは他の哺乳動物は、IL-6およびIL-6Rαを含むタンパク質構成物で免疫される。複合体を形成するIL-6およびIL-6Rαを含むことが好ましい。複合体の形成を促進するために、IL-6およびIL-6Rαは、例えば、化学架橋またはポリペプチドリンカーを介する結合により共有結合されていてよい。理論に拘束されるものではないが、このような免疫感作の目的は、露出されたIL-6の表面がgp130により結合される面または非中和面のいずれかのみであることである。IL-6Rαにより立体的に遮断される抗体は生じないはずである。例えばPetersら(J. Immunol., (1998) 161:3575-81、その教示は参照により本願に組み込まれる)により記載されているように、特に好ましい免疫原は、in vitroでIL-6とIL-6Rαとを結合させ、ついで標準手順に従って化学架橋剤で処理するか、またはIL-6および可溶性IL-6Rαを融合タンパク質、好ましくはリンカーにより結合された融合タンパク質を発現させることにより作製できる、共有結合されたIL-6および可溶性IL-6Rαを含む。本発明によれば、通常、IL-6およびIL-6Rαを含む免疫原の融合タンパク質はまた、Fc領域などの、抗原提示を促進する追加の部分を含む。このタンパク質構成物は、任意の種々の標準法に従って、アジュバントの有り無しで、哺乳動物に投与することができる。この組成物は、1回のみ投与することもできるが、好ましくは標準的な追加免疫スケジュールに従って2回以上投与される。
【0020】
第2のステップとして、免疫感作した哺乳動物からポリクローナル抗血清を採取する。このポリクローナル血清は直接に用いることもできるが、標準法に従って、アフィニティ精製することもできる。あるいは、モノクローナル抗体の作製プロセスが開始される。抗体産生細胞は、例えば脾臓の外科的切除またはPBMCの回収とそれに続くソーティングにより免疫感作動物から取り出される。ついで潜在的抗体産生細胞を標準手順に従って不死化細胞株と融合させることにより不死化し、マイクロタイターウェルにクローン化し、免疫原に結合する抗体の産生をスクリーニングする。
他の実施形態において、第2のステップとして、非免疫感作または免疫感作動物からの適切な細胞の単離によりディスプレイライブラリーを作製し、ついで抗体V領域をコードする核酸を単離し、V領域をコードする核酸をファージ、酵母、細菌または他の複製し得る遺伝子ディスプレイ系に挿入する。ついでライブラリーメンバーを、IL-6/IL-6Rα複合体に結合するその能力に関してスクリーニングする。
【0021】
一部の実施形態において、第3のステップとして、モノクローナル細胞株により産生される抗体または該ライブラリーから選択される抗体V領域は、場合により、以下のように二次スクリーニングにかけられる。具体的には、抗体クローンまたは抗体V領域は、IL-6単独、IL-6Rα単独、IL-6/IL-6Rα複合体に結合する能力およびIL-6/IL-6Rα複合体とgp130との相互作用を抑制する能力に関して試験される。これらの試験の結果から、抗体または抗体V領域はいくつかの群:IL-6に結合し、gp130との相互作用を遮断する中和抗体、IL-6Rαに結合する抗体、IL-6に結合する非中和抗体、IL-6/IL-6Rα複合体に結合するがIL-6またはIL-6Rα単独には結合せず、gp130との相互作用を遮断する中和抗体、およびIL-6に結合し、IL-6Rαとの相互作用を遮断する中和抗体、に分類することができる。最後のクラスを除いて、各クラスの抗体が考えられる。このような結合およびシグナル伝達アッセイはタンパク質生化学およびシグナル伝達の分野で公知であり、特定の実施形態は、実施例においてさらに詳細に説明される。
【0022】
IL-6の血清半減期を顕著には増加させない抗体の同定
抗IL-6抗体の望ましくない効果の1つは、IL-6の血清半減期をしばしば長くさせることである。IL-6の分子量は約25,000ダルトンであり、腎クリアランス閾値50,000ダルトンよりもかなり低く、一方で抗体-IL-6複合体の分子量は150,000ダルトンより大きい。複合体の分子量は腎クリアランス閾値を超えるので、抗IL-6抗体/抗原複合体の形成は、一般に、IL-6の血清半減期を長くさせる効果を有する。従って、本発明はまた、IL-6またはIL-6/IL-6Rα複合体に結合するが、IL-6の血清半減期を顕著には増加させない抗体を同定する方法を提供する。
本方法は、第1のステップとして、一団の抗IL-6抗体の単離を含む。第2のステップとして、続いて、抗体をIL-6血清半減期に対するその効果に関して例えば以下のように試験する。IL-6を、げっ歯類などの動物に投与する。IL-6の標識体、例えば放射性IL-6を使用するのが便利である。試験抗体もまた、同じ動物に、好ましくは異なる投与経路で投与する。陰性対照として、抗体またはIL-6のいずれかの代わりにPBSを投与する。タンパク質の投与後、種々の時間における血清試料を得、標準法に従って、IL-6および抗体の濃度を試験する。例えば、放射性標識されたヨウ素化IL-6は放射線計数器を用いて定量でき、抗体はIL-6捕捉に基づくELISA法により検出できる。
他の抗体と比較して増加した薬物動態学的プロフィールを有する抗体もあれば、IL-6の薬物動態学の促進をもたらす抗体もあり、一方で中程度の増加のみをもたらすか、または本質的に何ももたらさない他の抗体もあると考えられる。特定の応用に応じて、本発明の好ましい抗体のクラスの1つは、それ自身は好ましい薬物動態学的プロフィールを有するが、IL-6の薬物動態学的プロフィールを顕著には増加させないものである。
【0023】
抗体可変領域の配列
前述の方法に従って同定される抗体V領域の配列は、当該技術分野で公知の標準的な配列決定方法を用いて解析される。例示的な方法は、実施例4に詳細に記載されている。IL-6に結合し、gp130とのその相互作用を遮断する例示的な抗体重鎖および軽鎖のV領域配列を図2に示す。図2はまた、本発明に従って同定される抗体V領域配列のアラインメントを示す。配列中の変異位置は矢印で示されている。CDR領域は箱で囲んである。
発明のV領域をヒト定常領域と共に構成してキメラ抗体を作成することができる。例示的なキメラ抗体は、図2に記載のVHおよびVL領域ならびにIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgDまたはIgM由来の定常領域を含むことができる。あるいは、本発明の抗体は、国際特許出願公開WO02/072605(その開示は参照により本願に組み込まれる)に記載されているように、ハイブリッドイソタイプ定常領域と共に発現できる。Fab部分(CH2ドメインを欠く“ミニ抗体”)または一本鎖Fv部分として、本発明のV領域を作成することもできる。後者の形状は全長抗体よりも小さく、拡散特性が亢進されているため、効率的な組織浸透性を必要とする場合、例えばIL-6を分泌する腫瘍の治療において有用な可能性がある。
【0024】
発現
本発明の抗体可変領域を含む抗体およびタンパク質は、好ましくは、哺乳動物細胞内、例えばNS/0細胞、CHO細胞、SP2/0細胞、BHK細胞または他の哺乳動物細胞内で発現される。哺乳動物細胞における抗体の発現は、タンパク質工学の分野で公知である。本抗体はまた、トウモロコシまたはタバコなどの植物細胞内で、バキュロウイルスベクターなどにより昆虫細胞内で、S. cerevisiaeまたはPichia pastorisなどの真菌細胞内で、または細菌細胞内で(これは、一本鎖Fv分子などのより小さな形状を発現するのに最も有用である)発現させることもできる。
【0025】
投与
本発明のIL-6アンタゴニストは、IL-6の発現を伴う種々の疾病・疾患に治療に用いられる。このような疾病・疾患は、限定するものではないが、癌、例えば、ホルモン不応性前立腺癌、B細胞増殖性疾患(B細胞性非ホジキンリンパ腫など)ならびに腎臓、乳房、結腸、肺、脳および他の組織の進行癌;抗体による自己免疫疾患、例えば、関節リウマチ、重症筋無力症、全身性エリテマトーデスおよび他の自己免疫疾患;または骨粗鬆症を含む。本発明の分子は、しばしば腫瘍によるIL-6およびIL-6Rαの過剰産生によってもたらされる、癌患者における悪液質を治療するために用いることもできる。
本発明のアンタゴニストは、標的に関連した副作用である免疫抑制、特に抗体産生抑制を引き起こす恐れがある。本発明の抗体を患者に投与する場合、治療に感染予防薬を追加することがしばしば有用である。このような予防的処置は、免疫低下患者の治療の分野で公知である。
本発明のアンタゴニストは、通常、注入により投与されるが、皮下、皮内、筋肉内もしくは腹腔内注射、吸入または経口投与により投与することもできる。70キログラムの成人のヒトに関しては、約50〜2000ミリグラムの投与量が好ましく、100〜800ミリグラムの投与量がより好ましく、約300〜600ミリグラムの投与量が最も好ましい。
正確な投与量は、個々の患者に応じて調節できる。例えば、患者における固形腫瘍を治療する場合、所定の投与量の効果は以下のように評価できる。本発明の抗体の投与後、種々の時点において腫瘍の生検材料を採取し、例えば適切な抗ホスホチロシン抗体を用いる免疫染色によりgp130の活性化に関して試験する。目標は、腫瘍において、gp130の活性化の継続的で本質的に完全な抑制をもたらすことである。gp130の活性化の抑制が不十分な場合、投与量を増量することもできるし、投与頻度をあげることもできる。
上記の実施形態および以下の実施例は、例示に過ぎず、限定するものと解釈してはならない。本発明の範囲内の種々の変更および修飾は、本明細書から当業者に明らかであろう。
【0026】
実施例
実施例1
抗原として使用するIL-6/IL-6Rα複合体の発現
IL-6のgp130への結合に干渉し、IL-6/IL-6Rα複合体中で接近しうるIL-6表面に結合し得る抗体を作製するために、Fcドメイン、IL-6Rαの細胞外ドメインおよびIL-6を含む融合タンパク質をpdCs-Fc-IL6Rα-IL6と呼ぶプラスミドから発現させた。本明細書において、この融合タンパク質をFc-IL6Rα-IL6と呼ぶ。このFcドメインは、マウスIgGγ2a由来であり、IL-6RαおよびIL-6はヒト配列に基づくものを用いた。このタンパク質およびこのタンパク質をコードするDNAの配列を以下に示す。
【0027】

下線を引いた配列:マウスFc IgGγ
小文字の配列:エンテロキナーゼの切断部位を含むリンカー
太字の配列:ヒトIL6Rα
下線を引いた小文字の配列:リンカー
イタリック体配列:ヒトIL6
【0028】
成熟Fc-IL6Rα-IL6をコードするDNA配列(配列番号38):
GAGCCCAGAGGGCCCACAATCAAGCCCTGTCCTCCATGCAAATGCCCAGCACCTAACCTCTTGGGTGGACCATCCGTCTTCATCTTCCCTCCAAAGATCAAGGATGTACTCATGATCTCCCTGAGCCCCATAGTCACATGTGTGGTGGTGGATGTGAGCGAGGATGACCCAGATGTCCAGATCAGCTGGTTTGTGAACAACGTGGAAGTACACACAGCTCAGACACAAACCCATAGAGAGGATTACAACAGTACTCTCCGGGTGGTCAGTGCCCTCCCCATCCAGCACCAGGACTGGATGAGTGGCAAGGAGTTCAAATGCAAGGTCAACAACAAAGACCTCCCAGCGCCCATCGAGAGAACCATCTCAAAACCCAAAGGGTCAGTAAGAGCTCCACAGGTATATGTCTTGCCTCCACCAGAAGAAGAGATGACTAAGAAACAGGTCACTCTGACCTGCATGGTCACAGACTTCATGCCTGAAGACATTTACGTGGAGTGGACCAACAACGGGAAAACAGAGCTAAACTACAAGAACACTGAACCAGTCCTGGACTCTGATGGTTCTTACTTCATGTACAGCAAGCTGAGAGTGGAAAAGAAGAACTGGGTGGAAAGAAATAGCTACTCCTGTTCAGTGGTCCACGAGGGTCTGCACAATCACCACACGACTAAGAGCTTCTCCCGGACCCCGGGTTCAGGGGATGACGATGACGATAAGCTTCCCCCCGAGGAGCCCCAGCTCTCCTGCTTCCGGAAGAGCCCCCTCAGCAATGTTGTTTGTGAGTGGGGTCCTCGGAGCACCCCATCCCTGACGACAAAGGCTGTGCTCTTGGTGAGGAAGTTTCAGAACAGTCCGGCCGAAGACTTCCAGGAGCCGTGCCAGTATTCCCAGGAGTCCCAGAAGTTCTCCTGCCAGTTAGCAGTCCCGGAGGGAGACAGCTCTTTCTACATAGTGTCCATGTGCGTCGCCAGTAGTGTCGGGAGCAAGTTCAGCAAAACTCAAACCTTTCAGGGTTGTGGAATCTTGCAGCCTGATCCGCCTGCCAACATCACAGTCACTGCCGTGGCCAGAAACCCCCGCTGGCTCAGTGTCACCTGGCAAGACCCCCACTCCTGGAACTCATCTTTCTACAGACTACGGTTTGAGCTCAGATATCGGGCTGAACGGTCAAAGACATTCACAACATGGATGGTCAAGGACCTCCAGCATCACTGTGTCATCCACGACGCCTGGAGCGGCCTGAGGCACGTGGTGCAGCTTCGTGCCCAGGAGGAGTTCGGGCAAGGCGAGTGGAGCGAGTGGAGCCCGGAGGCCATGGGCACGCCTTGGACAGAATCCAGGAGTCCTCCAGCTAGAGGGGGCGGGGGCAGTGGGGGCGGGGGCAGTGTAGAACCGGTACCCCCAGGAGAAGATTCCAAAGATGTAGCTGCCCCACACAGACAGCCACTCACCTCTTCAGAACGAATTGACAAACAAATTCGGTACATCCTCGACGGCATCTCAGCCCTGAGAAAGGAGACATGTAACAAGAGTAACATGTGTGAAAGCAGCAAAGAGGCACTGGCAGAAAACAACCTGAACCTTCCAAAGATGGCTGAAAAAGATGGATGCTTCCAATCTGGATTCAATGAGGAGACTTGCCTGGTGAAAATCATCACTGGTCTTTTGGAGTTTGAGGTATACCTAGAGTACCTCCAGAACAGATTTGAGAGTAGTGAGGAACAAGCCAGAGCTGTGCAGATGAGTACAAAAGTCCTGATCCAGTTCCTGCAGAAAAAGGCAAAGAATCTAGATGCAATAACCACCCCTGACCCAACCACAAATGCCAGCCTGCTGACGAAGCTGCAGGCACAGAACCAGTGGCTGCAGGACATGACAACTCATCTCATTCTGCGCAGCTTTAAGGAGTTCCTGCAGTCCAGCCTGAGGGCTCTTCGGCAAATGTAG
【0029】
融合タンパク質産物Fc-IL6Rα-IL6を解析するためのタンパク質発現の迅速分析のために、リポフェクタミン(Invitrogen)を用いる一過性トランスフェクションにより、ヒト胎児腎臓HEK293細胞(ATCC# CRL-1573)にプラスミドpdCs-Fc-IL6Rα-IL6を導入した。
Fc-IL6Rα-IL6を発現する安定的にトランスフェクトされたクローンを得るために、エレクトロポレーションでマウス骨髄腫NS/0細胞に適切なプラスミドDNAを導入した。10%熱不活性化ウシ胎児血清、2mMグルタミンおよびペニシリン/ストレプトマイシンを加えたダルベッコ改変イーグル培地でNS/0細胞を増殖させた。約5x106細胞をPBSで1回洗浄し、PBS0.5mlに再懸濁した。ついで線状化されたプラスミドDNA10μgを、氷で冷やしながら10分間Gene Pulser(登録商標)キュベット(電極ギャップ0.4cm,BioRad)中で細胞とインキュベートした。Gene Pulser(登録商標)(BioRad,Hercules,CA)を用い、0.25Vおよび500μFの設定でエレクトロポレーションを行った。氷で冷やしながら細胞を10分間回復させ、ついで増殖培地中に細胞を再懸濁させ、次に2つの96ウェルプレート上にプレーティングした。トランスフェクション2日後に増殖培地に添加された100nMメトトレキサート(MTX)の存在下で増殖させることにより安定的にトランスフェクトされたクローンを選択した。3日おきにさらに2〜3回細胞の培地を交換すると、MTX耐性クローンは2〜3週間後に現れた。高産生クローンを同定するために抗ヒトFc ELISAによりクローンの上清をアッセイした。高産生クローンを単離し、100nM MTXを含有する増殖培地中で増殖させた。増殖培地には、通常、H-SFMまたはCD培地(Life Technologies)を用いた。
続いて、さらなる分析のために、Fc-IL6Rα-IL6融合タンパク質を培地から捕捉した。ゲル電気泳動によるルーチン解析のために、培地中に分泌されたFc-IL6Rα-IL6融合タンパク質をプロテインAセファロース(Protein A Sepharose(登録商標))ビーズ(Repligen, Cambridge, MA)に捕捉し、ついでβ-メルカプトエタノールなどの還元剤の有り無しでprotein sample buffer中で試料を煮沸することにより溶出した。SDS-PAGEにより試料を分析し、クマシー染色によりタンパク質バンドを可視化した。
【0030】
前述のFc-IL6Rα-IL6タンパク質の代わりとして任意の種々のタンパク質が使用できることは、当業者には明らかであろう。例えば、IL-6RαおよびIL-6の他の形態、例えばIL-6Rα-IL-6-Fc、アルブミン-IL-6Rα-IL-6、サイトカイン-IL-6Rα-IL-6(このサイトカインは、IL-6/IL-6Rα複合体に対する免疫反応を刺激するものを選択する)を使用できる。例えば、Gilliesらの方法(WO01/07081、その開示は引用により本願に組み込まれる)に従ってサイトカイン、Fc部分およびIL-6Rα/IL-6複合体を含むタンパク質を使用することもできる。最後に、IL-6およびIL-6Rαを別々に産生させ、化学架橋し、抗原として使用してもよい。Fc部分および/または二次サイトカイン部分が用いられる場合、一般に、これらの部分はマウスなどの免疫感作される動物由来であることが有利である。
【0031】
下記の抗体の解析に備えて、Fc-IL6およびFc-IL6RαをコードするDNAを上記と同様に構築した。対応するタンパク質を上記と同様に精製した。加えて、以下の特定の実験に使用するために、R&D Systems,Inc.からヒトIL-6、ヒトIL-6Rαおよびヒトgp130-Fcを購入した。この実験に使用したこれらのタンパク質の概略図を図3に示す。関連する構築物のタンパク質およびDNA配列を以下に示す。
【0032】
成熟Fc-IL6Rα(配列番号39)
EPRGPTIKPCPPCKCPAPNLLGGPSVFIFPPKIKDVLMISLSPIVTCVVVDVSEDDPDVQISWFVNNVEVHTAQTQTHREDYNSTLRVVSALPIQHQDWMSGKEFKCKVNNKDLPAPIERTISKPKGSVRAPQVYVLPPPEEEMTKKQVTLTCMVTDFMPEDIYVEWTNNGKTELNYKNTEPVLDSDGSYFMYSKLRVEKKNWVERNSYSCSVVHEGLHNHHTTKSFSRTPGSGDDDDDKLPPEEPQLSCFRKSPLSNVVCEWGPRSTPSLTTKAVLLVRKFQNSPAEDFQEPCQYSQESQKFSCQLAVPEGDSSFYIVSMCVASSVGSKFSKTQTFQGCGILQPDPPANITVTAVARNPRWLSVTWQDPHSWNSSFYRLRFELRYRAERSKTFTTWMVKDLQHHCVIHDAWSGLRHVVQLRAQEEFGQGEWSEWSPEAMGTPWTESRSPPA
【0033】
成熟Fc-IL6RαをコードするDNA(配列番号40)
GAGCCCAGAGGGCCCACAATCAAGCCCTGTCCTCCATGCAAATGCCCAGCACCTAACCTCTTGGGTGGACCATCCGTCTTCATCTTCCCTCCAAAGATCAAGGATGTACTCATGATCTCCCTGAGCCCCATAGTCACATGTGTGGTGGTGGATGTGAGCGAGGATGACCCAGATGTCCAGATCAGCTGGTTTGTGAACAACGTGGAAGTACACACAGCTCAGACACAAACCCATAGAGAGGATTACAACAGTACTCTCCGGGTGGTCAGTGCCCTCCCCATCCAGCACCAGGACTGGATGAGTGGCAAGGAGTTCAAATGCAAGGTCAACAACAAAGACCTCCCAGCGCCCATCGAGAGAACCATCTCAAAACCCAAAGGGTCAGTAAGAGCTCCACAGGTATATGTCTTGCCTCCACCAGAAGAAGAGATGACTAAGAAACAGGTCACTCTGACCTGCATGGTCACAGACTTCATGCCTGAAGACATTTACGTGGAGTGGACCAACAACGGGAAAACAGAGCTAAACTACAAGAACACTGAACCAGTCCTGGACTCTGATGGTTCTTACTTCATGTACAGCAAGCTGAGAGTGGAAAAGAAGAACTGGGTGGAAAGAAATAGCTACTCCTGTTCAGTGGTCCACGAGGGTCTGCACAATCACCACACGACTAAGAGCTTCTCCCGGACCCCGGGTTCAGGGGATGACGATGACGATAAGCTTCCCCCCGAGGAGCCCCAGCTCTCCTGCTTCCGGAAGAGCCCCCTCAGCAATGTTGTTTGTGAGTGGGGTCCTCGGAGCACCCCATCCCTGACGACAAAGGCTGTGCTCTTGGTGAGGAAGTTTCAGAACAGTCCGGCCGAAGACTTCCAGGAGCCGTGCCAGTATTCCCAGGAGTCCCAGAAGTTCTCCTGCCAGTTAGCAGTCCCGGAGGGAGACAGCTCTTTCTACATAGTGTCCATGTGCGTCGCCAGTAGTGTCGGGAGCAAGTTCAGCAAAACTCAAACCTTTCAGGGTTGTGGAATCTTGCAGCCTGATCCGCCTGCCAACATCACAGTCACTGCCGTGGCCAGAAACCCCCGCTGGCTCAGTGTCACCTGGCAAGACCCCCACTCCTGGAACTCATCTTTCTACAGACTACGGTTTGAGCTCAGATATCGGGCTGAACGGTCAAAGACATTCACAACATGGATGGTCAAGGACCTCCAGCATCACTGTGTCATCCACGACGCCTGGAGCGGCCTGAGGCACGTGGTGCAGCTTCGTGCCCAGGAGGAGTTCGGGCAAGGCGAGTGGAGCGAGTGGAGCCCGGAGGCCATGGGCACGCCTTGGACAGAATCCAGGAGTCCTCCAGCTTAG
【0034】
成熟Fc-IL6(配列番号41)
EPRGPTIKPCPPCKCPAPNLLGGPSVFIFPPKIKDVLMISLSPIVTCVVVDVSEDDPDVQISWFVNNVEVHTAQTQTHREDYNSTLRVVSALPIQHQDWMSGKEFKCKVNNKDLPAPIERTISKPKGSVRAPQVYVLPPPEEEMTKKQVTLTCMVTDFMPEDIYVEWTNNGKTELNYKNTEPVLDSDGSYFMYSKLRVEKKNWVERNSYSCSVVHEGLHNHHTTKSFSRTPGKEDSKDVAAPHRQPLTSSERIDKQIRYILDGISALRKETCNKSNMCESSKEALAENNLNLPKMAEKDGCFQSGFNEETCLVKIITGLLEFEVYLEYLQNRFESSEEQARAVQMSTKVLIQFLQKKAKNLDAITTPDPTTNASLLTKLQAQNQWLQDMTTHLILRSFKEFLQSSLRALRQM
【0035】
成熟Fc-IL6をコードするDNA(配列番号42)
GAGCCCAGAGGGCCCACAATCAAGCCCTGTCCTCCATGCAAATGCCCAGCACCTAACCTCTTGGGTGGACCATCCGTCTTCATCTTCCCTCCAAAGATCAAGGATGTACTCATGATCTCCCTGAGCCCCATAGTCACATGTGTGGTGGTGGATGTGAGCGAGGATGACCCAGATGTCCAGATCAGCTGGTTTGTGAACAACGTGGAAGTACACACAGCTCAGACACAAACCCATAGAGAGGATTACAACAGTACTCTCCGGGTGGTCAGTGCCCTCCCCATCCAGCACCAGGACTGGATGAGTGGCAAGGAGTTCAAATGCAAGGTCAACAACAAAGACCTCCCAGCGCCCATCGAGAGAACCATCTCAAAACCCAAAGGGTCAGTAAGAGCTCCACAGGTATATGTCTTGCCTCCACCAGAAGAAGAGATGACTAAGAAACAGGTCACTCTGACCTGCATGGTCACAGACTTCATGCCTGAAGACATTTACGTGGAGTGGACCAACAACGGGAAAACAGAGCTAAACTACAAGAACACTGAACCAGTCCTGGACTCTGATGGTTCTTACTTCATGTACAGCAAGCTGAGAGTGGAAAAGAAGAACTGGGTGGAAAGAAATAGCTACTCCTGTTCAGTGGTCCACGAGGGTCTGCACAATCACCACACGACTAAGAGCTTCTCCCGGACCCCGGGTAAAGAAGATTCCAAAGATGTAGCTGCCCCACACAGACAGCCACTCACCTCTTCAGAACGAATTGACAAACAAATTCGGTACATCCTCGACGGCATCTCAGCCCTGAGAAAGGAGACATGTAACAAGAGTAACATGTGTGAAAGCAGCAAAGAGGCACTGGCAGAAAACAACCTGAACCTTCCAAAGATGGCTGAAAAAGATGGATGCTTCCAATCTGGATTCAATGAGGAGACTTGCCTGGTGAAAATCATCACTGGTCTTTTGGAGTTTGAGGTATACCTAGAGTACCTCCAGAACAGATTTGAGAGTAGTGAGGAACAAGCCAGAGCTGTGCAGATGAGTACAAAAGTCCTGATCCAGTTCCTGCAGAAAAAGGCAAAGAATCTAGATGCAATAACCACCCCTGACCCAACCACAAATGCCAGCCTGCTGACGAAGCTGCAGGCACAGAACCAGTGGCTGCAGGACATGACAACTCATCTCATTCTGCGCAGCTTTAAGGAGTTCCTGCAGTCCAGCCTGAGGGCTCTTCGGCAAATGTAG
【0036】
実施例2
IL-6/IL-6Rα複合体による免疫感作
実施例1に記載されているように産生されたFc-IL6Rα-IL6タンパク質によりマウス(Balb/C)20匹を免疫感作し、KohlerおよびMilstein(1975)(Nature, 256:495-7)の方法の変法により、このタンパク質に対するモノクローナル抗体を産生させた。具体的には、完全フロイントアジュバント100マイクロリットルと共にFc-IL6Rα-IL61マイクログラムを皮下注した。14日後に、不完全フロイントアジュバント100マイクロリットルと共にタンパク質1マイクログラムを用いる腹腔内注射により再度注射を繰り返した。最初の注射の24日後に、PBS100マイクロリットルに溶解したFc-IL6Rα-IL6タンパク質1マイクログラムを用い、静注によりマウスを追加免疫した。3日後、マウスを犠牲にし、脾臓を切除し、標準手順に従って脾臓細胞を培養した。強いポリクローナル抗IL6Rα/IL6応答を示す、マウス2匹からの4億3千5百万脾臓細胞を2.4脾臓細胞対1NS/0細胞の比率で1億7千5百万NS/0細胞に融合させた。標準手順に従って、不死化B細胞/NS/0細胞ハイブリッドを作成し、ついでELISA Technologyを用いて、Fc-IL6Rα-IL6融合タンパク質に対する抗体の産生に関してハイブリドーマをスクリーニングした。
【0037】
実施例3
IL-6/IL-6Rα複合体とgp130との相互作用を遮断する抗体のスクリーニング
結合
実施例2の陽性クローンを、さらに以下のように試験した。抗体のイソタイプを決定し、IgMベースのクローンはさらに解析しなかった。IgGベースのモノクローナル抗体に関して、標準手順に従って、固定化されたFc-IL6およびFc-IL6Rαを用い、IL-6またはIL-6Rαのいずれかに結合する能力を試験した。IL-6に結合するクローンもあり、IL-6Rαに結合するクローンもあり、どちらのタンパク質にも結合しないクローンもあったが、このことは、これらのモノクローナル抗体がリンカーの一部分を認識するか、またはIL-6部分およびIL-6Rα部分の両方からなる複合エピトープを認識する可能性があることを示唆している。
本発明の典型的な抗体の結合性の例示的な結果を図4(Fc-IL6Rα-IL6への結合)、図5(IL-6への結合)、図6(IL-6とIL-6Rαとの非共有結合性複合体への結合)および図7(IL-6Rα単独)に示す。この一連の抗体に関して、IL-6および共有結合したIL-6とIL-6Rαへの結合は同様であり、非共有結合性IL-6/IL-6Rα複合体への結合は、強度のより低いシグナル(洗浄ステップ中のIL-6とIL-6Rとの解離によるものと考えられる)を与え、IL-6Rα単独への結合は検出できなかった。
【0038】
競合試験
IL-6を認識する抗体をさらに解析するために、以下の競合試験を行った。第1に、Fc-IL6Rα-IL6とgp130-Fcとの相互作用を阻害するモノクローナル抗体の能力を試験した。Scheller et al. J. Immuno. Methods, 291:93-100 (2004)(その教示は参照により本願に組み込まれる)に記載されている方法に基づいて、阻害アッセイを行った。この相互作用を遮断する、Mab#195,Mab#309,Mab#471およびMab#476と名付けた4つの抗体を同定した。第2に、該抗体によるFc-IL6とFc-IL6Rαとの相互作用の抑制を試験した。どの抗体もこの相互作用を阻害することが見いだされなかったが、これは抗体がFc-IL6Rα-IL6による免疫感作に由来し、Fc-IL6Rα-IL6への結合に関する最初のスクリーニングを受けている事実に基づいて予期されることであった。
Fc-IL6Rα-IL6とgp130-Fcとの相互作用の阻害を例示する典型的な結果を図8に示す。
【0039】
細胞系アッセイ
Fc-IL6Rα-IL6複合体により刺激されるHepG2細胞からのハプトグロビン放出を遮断する能力について、抗体Mab#195、Mab#309、Mab#471およびMab#476を試験した。ハプトグロビンは、炎症状態にある肝細胞により分泌されるタンパク質である。HepG2細胞は肝細胞株である。HepG2細胞からのハプトグロビン放出は、IL-6Rα/IL-6複合体の作用についての便利なバイオアッセイを提供する。
アッセイは以下のように行った。HepG2細胞を96ウェルプレートに0.1x106細胞/ウェルでプレーティングし、10%ウシ胎児血清(FBS)を加えたDMEM培地で終夜増殖させた。ついで細胞をPBSで洗浄し、飢餓培地であるFBSを含まないDMEM中、37℃で1時間インキュベートした。ついで刺激培地である8ng/mlのFc-IL6Rα-IL6複合体の存在下のDMEM(FBSを含まない)中で細胞をインキュベートし、種々の濃度の試験抗体を22時間添加した。上清を採取し、ハプトグロビン検出用ELISAによりハプトグロビン濃度を測定した。捕捉用ヤギ抗ヒトハプトグロビン抗体(Sigma#H5015)を用いる標準的なELISA手順にならって、マウス抗ヒトハプトグロビン抗体(US Biological#H1820-05)を一次抗体として用い、抗マウスIgG-HRP抗体(Promega#W402B)を二次抗体として用いた。典型的な結果を図9に示す。
【0040】
バイアコア(Biacore)分析
抗体Mab#195、Mab#309、Mab#471およびMab#476のIL-6への結合をBiacore装置を用いて定量的に解析した。抗体をチップ上に固定化し、IL-6タンパク質をチップ上に通過させ、結合速度および解離速度を測定した。以下の結果が得られた。
【0041】

【0042】
癌細胞株の増殖阻害
A431細胞およびLP-1細胞の増殖を阻害する能力について本発明の抗体を試験した。LP-1細胞の増殖阻害については、実施例8で説明する。A431の増殖阻害を以下のように測定した。1日目に、10%FBSを含有するDMEM中の細胞を、25,000細胞/ウェル、200マイクロリットル/ウェルで、96ウェルプレートにプレーティングした。3日目に、PBS200マイクロリットルで細胞を1回洗浄した。細胞を、DMEM100マイクロリットル中、37℃で1時間飢餓状態においた。
3日目に、96U字型底プレート中でIL6Rα-IL6-His6(33ng/ml)を含有するDMEM中に抗IL-6抗体希釈液を作成した。後に細胞を含むプレートに移されるので、すべてのタンパク質を2X希釈で調製した。対照には、DMEM、DMEM-1%FBSおよびIL6Rα-IL6-His6/0%FBSを含めた。タンパク質の希釈液を用いて、37℃で1時間プレートをインキュベートし、ついで、タンパク質混合物100マイクロリットルを飢餓細胞に移した。
5日目に、各ウェルの細胞をPBS200マイクロリットルで2回洗浄し、ついで酸性ホスファターゼを測定するための溶液100マイクロリットルを加えた。溶液は、0.1M酢酸ナトリウム(pH5.5)、0.1%トリトンX-100、2.5mg/mlパラニトロフェニルリン酸であった。37℃で1時間プレートをインキュベートし、0.1N NaOH100マイクロリットルで反応を停止し、プレートを410nmで読み取った。
典型的な結果を図10A、10B-1および10B-2に示す。図10B-1および10B-2に示すように、本発明の抗体は、IL-6/IL-6Rα融合タンパク質による刺激により観察されるA431ヒト上皮癌細胞の増殖を阻害する。IL-6/IL-6Rα融合タンパク質により刺激されるA431細胞のvの典型的な結果を図10Aに示す。
【0043】
実施例4
IL-6に結合し、gp130との相互作用を遮断する抗体のV領域配列
モノクローナル抗体Mab#195、Mab#309、Mab#471およびMab#476のV領域配列を標準手順に従って決定した。製造業者の使用説明書に従って、Dynabeads Direct mRNAキット(Dynal)を用い、各ハイブリドーマクローンのmRNAを精製した。製造業者マニュアルに従って、BD SMART(登録商標)cDNA合成キット(BD Clontech)を用い、逆転写PCR(RT-PCR)を行ってcDNAを得た。製造業者による指示に従って、テンプレートとしてのcDNA、ネステッドオリゴヌクレオチドおよびKODポリメラーゼ(EMD Biosciences)を用いて2回連続PCRを行った。3’オリゴヌクレオチドは、マウスIgGγ1抗体のVHおよびVkを増幅するのに特異的であり、一方で5’オリゴヌクレオチドは、BD SMART(登録商標)cDNA合成キット(RT-PCR中に5’に配列を付加する)からのネステッドオリゴヌクレオチドであった。
例えば、定常領域プライマーならびに、下記のオリゴヌクレオチド配列および条件を有するV領域プライマーを用いるPCR増幅により重鎖および軽鎖V領域を得た。
【0044】
VH増幅:
PCR#1
5’オリゴヌクレオチド#1:5’ ACAACGCAGAGTACGCGG 3’(配列番号43)
3’オリゴヌクレオチド#1:5’ AGGAGAGCTGGGAAGGTGTG 3’(配列番号44)
PCR#2
5’オリゴヌクレオチド#2:5’ ACAACGCAGAGTACGCGG 3’(配列番号45)
3’オリゴヌクレオチド#2:5’ TAGCCCTTGACCAGGCATCCC 3’(配列番号46)
【0045】
Vk増幅:
PCR#1
5’オリゴヌクレオチド#1:5’ ACAACGCAGAGTACGCGG 3’(配列番号47)
3’オリゴヌクレオチド#1:5’ CTGCCATCAATCTTCCACTTGAC 3’(配列番号48)
PCR#2
5’オリゴヌクレオチド#2:5’ CATCCTCTCTTCCAGCTCTC 3’(配列番号49)
3’オリゴヌクレオチド#2:5’ CTGAGGCACCTCCAGATG 3’(配列番号50)
【0046】



【0047】
QIAquickゲル抽出キット(QIAGEN)を用い、アガロースゲルからPCR産物を精製し、配列決定のためにTOPO blunt pCR4ベクター(Invitrogen)にサブクローニングした。プライマーT7およびT3ならびに標準的配列決定手順を用いて配列を得た。
Mab#195、Mab#309、Mab#471およびMab#476のV領域配列を含む軽鎖および重鎖配列を以下に示す。
【0048】
MAb#195 VH成熟領域(配列番号33)
EVKLEESGGGLVQPGGSMKLSCVASGFTFSNYWMNWVRQSPEKGLEWVAEIRLKSNNYAT
HYAESVKGRFTISRDDSKSSVYLQMNNLRAEDTGIYYCTREDYYGYPDYWGQGTTLTVSS
【0049】
MAb#195 VK成熟領域(配列番号29)
DIVLTQSPASLAVSLGQRATISCRASESVDNFGISFMNWFQQKPGQPPKLLIYVASNQGS
GVPARFSGSGSGTDFSLNIHPMEEDDTAMYFCQQSKEVPWTFGGGTKLEIK
【0050】
MAb#309 VH成熟領域(配列番号34)
EVKLEESGGGLVQPGGSMKLSCVASGFTFSNYWMNWVRQSPEKGLEWVAEIRLKSNKGAT
HYAESVKGRFTISRDDSKSSVYLQMNNLRAEDTGIYYCASLLYDGYLHWGQGTLVTVSA
【0051】
MAb#309 VK成熟領域(配列番号30)
DIVLTQSPASLAVSLGQRATISCRASESVGNFGISFMNWFQQKPGQPPKLLIYTASNQGS
GVPARFSGSGSGTDFSLNIHPMEEDDSAMYFCQQSKEVPWTFGGGTKLEIK
【0052】
MAb#471 VH成熟領域(配列番号35)
EVKFEESGGGLVQPGGSMKLSCVASGFSFSNYWMNWVRQSPEKGLEWVAEIRLTSNKQAI
YYAESVKGRFTISRDDSKSSVYLQMNNLRAEDTGIYYCASLFYDGYLHWGQGTLVTVSA
【0053】
MAb#471 VK成熟領域(配列番号31)
DIVLTQSPASLAVSLGQRATISCRASESVGNFGISFMNWFQQKPGQPPKLLIYTASNQGS
GVPARFSGSGSGTDFSLNIHPMEEDDSAMYFCQQSKEIPWTFGGGTKLEIK
【0054】
MAb#476 VH成熟領域(配列番号36)
EVKLEESGGGLVQPGGSMKLSCAASGFTFSDAWMDWVRQSPEKGLEWVAEIRSKANNHAT
YYAESVKGRFTISRDDSKSSVYLQMNSLRAEDTGIYYCTTPTLYGAMDYWGQGTSVTVSA
【0055】
MAb#476 VK成熟領域(配列番号32)
DIVLTQSPASLAVSLGQRATISCRASESVHNFGISFMNWFQQKPGQPPKLLIYTASNQGS
GVPARFSGSGSGTDFSLNIHPVEEDDTAMYFCQQGKEVPWTFGGGTKLEIK
【0056】
mAb#195 VH成熟領域をコードするDNA(配列番号51)
GAAGTGAAGCTTGAGGAGTCTGGAGGAGGCTTGGTGCAACCTGGAGGATCCATGAAACTCTCCTGTGTTGCCTCTGGATTCACTTTCAGTAACTACTGGATGAACTGGGTCCGCCAGTCTCCAGAGAAGGGGCTTGAGTGGGTTGCTGAAATTAGATTGAAATCTAATAATTATGCAACACATTATGCGGAGTCTGTGAAAGGGAGGTTCACCATCTCAAGAGATGATTCCAAAAGTAGTGTCTACCTGCAAATGAACAACTTAAGAGCTGAAGACACTGGCATTTATTACTGTACCAGGGAGGACTACTACGGCTACCCTGACTACTGGGGCCAAGGCACCACTCTCACAGTCTCCTCA
【0057】
mAb#195 VK成熟領域をコードするDNA(配列番号52)
GACATTGTGCTGACCCAGTCTCCAGCTTCTTTGGCTGTGTCTCTAGGTCAGAGGGCCACCATCTCCTGCAGAGCCAGCGAAAGTGTTGATAATTTTGGCATTAGTTTTATGAACTGGTTCCAACAGAAACCTGGACAGCCACCCAAACTCCTCATCTATGTTGCATCCAACCAAGGATCCGGGGTCCCTGCCAGGTTTAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCAGCCTCAACATCCATCCTATGGAGGAGGATGATACTGCAATGTATTTCTGTCAGCAAAGTAAGGAGGTTCCGTGGACGTTCGGTGGAGGCACCAAGCTGGAAATCAAA
【0058】
mAb#309 VH成熟領域をコードするDNA(配列番号53)
GAAGTGAAACTTGAGGAGTCTGGAGGAGGCTTGGTTCAACCTGGAGGATCCATGAAACTCTCCTGTGTTGCCTCTGGATTCACTTTCAGTAACTACTGGATGAACTGGGTCCGCCAGTCTCCAGAGAAGGGGCTTGAGTGGGTTGCTGAAATTAGACTGAAATCTAATAAGGGTGCAACACATTATGCGGAGTCTGTGAAAGGGAGGTTCACCATCTCAAGGGATGATTCCAAAAGTAGTGTCTACCTGCAAATGAACAACTTAAGAGCTGAAGACACTGGCATTTATTACTGTGCCAGCCTTTTGTATGATGGTTACTTACATTGGGGCCAAGGGACTCTGGTCACTGTCTCTGCA
【0059】
mAb#309 VK成熟領域をコードするDNA(配列番号54)
GACATTGTGCTGACCCAATCTCCAGCTTCTTTGGCTGTGTCTCTAGGGCAGAGGGCCACCATCTCCTGCAGAGCCAGCGAAAGTGTTGGTAATTTTGGCATTAGTTTTATGAATTGGTTCCAACAGAAACCAGGACAGCCACCCAAACTCCTCATCTATACTGCATCCAACCAAGGATCCGGGGTCCCTGCCAGGTTTAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCAGCCTCAACATCCATCCTATGGAGGAGGATGATTCTGCAATGTATTTCTGTCAGCAAAGTAAGGAGGTTCCGTGGACGTTCGGTGGAGGCACCAAACTGGAAATCAAA
【0060】
mAb#471 VH成熟領域をコードするDNA(配列番号55)
GAAGTGAAGTTTGAGGAGTCTGGAGGAGGCTTGGTGCAACCGGGAGGATCCATGAAACTCTCCTGTGTTGCCTCTGGATTCAGTTTCAGTAACTACTGGATGAACTGGGTCCGCCAGTCTCCAGAGAAGGGGCTTGAGTGGGTTGCTGAAATTAGATTGACATCTAATAAGCAGGCAATATATTATGCGGAGTCTGTGAAAGGGAGATTCACCATCTCAAGAGATGATTCCAAAAGTAGTGTCTACCTGCAAATGAACAACCTAAGAGCTGAAGACACTGGCATTTATTACTGTGCCAGCCTTTTCTATGATGGTTACTTACATTGGGGCCAAGGGACTCTGGTCACTGTCTCTGCA
【0061】
mAb#471 VK成熟領域をコードするDNA(配列番号56)
GACATTGTGCTGACCCAATCTCCAGCTTCTTTGGCTGTGTCTCTAGGGCAGAGGGCCACCATCTCCTGCAGAGCCAGCGAAAGTGTTGGTAATTTTGGCATTAGTTTTATGAACTGGTTCCAACAGAAACCAGGACAGCCACCCAAACTCCTCATCTATACTGCATCCAACCAAGGATCCGGGGTCCCTGCCAGGTTTAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCAGCCTCAACATCCATCCTATGGAGGAGGATGATTCTGCAATGTATTTCTGTCAGCAAAGTAAGGAGATTCCGTGGACGTTCGGTGGAGGCACCAAACTGGAAATCAAA
【0062】
mAb#476 VH成熟領域をコードするDNA(配列番号57)
GAAGTGAAGCTTGAGGAGTCTGGAGGAGGCTTGGTGCAACCTGGAGGATCCATGAAACTCTCTTGTGCTGCCTCTGGATTCACTTTTAGTGACGCCTGGATGGACTGGGTCCGCCAGTCTCCAGAGAAGGGGCTTGAGTGGGTTGCTGAAATTAGAAGTAAAGCTAATAATCATGCAACATACTATGCTGAGTCTGTGAAAGGGAGGTTCACCATCTCAAGAGATGATTCCAAAAGTAGTGTCTACCTGCAAATGAACAGCCTAAGAGCTGAAGACACTGGCATTTATTACTGTACGACCCCTACTCTCTATGGCGCTATGGACTACTGGGGTCAAGGAACCTCAGTCACCGTCTCTGCA
【0063】
mAb#476 VK成熟領域をコードするDNA(配列番号58)
GACATTGTGCTGACCCAATCTCCAGCTTCTTTGGCTGTGTCTCTTGGGCAGAGGGCCACCATCTCCTGCAGAGCCAGCGAAAGTGTTCATAATTTTGGCATTAGCTTTATGAACTGGTTCCAACAGAAACCAGGACAGCCACCCAAACTCCTCATCTATACTGCATCCAACCAAGGATCCGGGGTCCCTGCCAGGTTTAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCAGCCTCAACATCCATCCTGTGGAAGAGGATGATACTGCAATGTATTTCTGTCAACAAGGTAAGGAGGTTCCGTGGACGTTCGGTGGAGGCACCAAGCTGGAAATCAAAC
【0064】
図2に示すように、V領域の配列をアラインメントした。配列中の変異位置は矢印で示されている。CDR領域は箱で囲んである。アラインメントに基づいて、各抗体は独立した単離株を表し、抗体は互いに類似していることが明らかである。抗体309および471は密接に関連しており、軽鎖においては1つの置換(位置98におけるIle/Val置換)しか存在せず、重鎖においては6つの置換しか存在しない。これらの抗体は、体細胞変異により多様化された元のIgMクローン由来の可能性があり、従って完全に独立しているとはいえないかもしれない。
抗体195および476は、抗体309および471に対するよりも、より互いに類似している。抗体195と476とは軽鎖において5つの位置で異なり、重鎖において18の位置で異なる。抗体195および476の重鎖におけるCDR3の解析により、これらの鎖は独立したV-D-J結合事象により形成され、従って、独立した親IgM由来の抗体を表していることが示唆された。従って、図2における抗体配列は、ヒトIL-6に結合し、gp130との相互作用を遮断する、少なくとも3つの独立した選抜された抗体を示している。
【0065】
実施例5
IL-6に結合し、gp130との相互作用を遮断する抗体の薬物動態学的性質
マウスにおける抗体195および476の血清半減期を測定した。標準手順に従って、抗体195および476を125Iで標識した。標識抗体タンパク質約25マイクログラムをBalb/Cマウスに静注し、注射後12、24、48および72時間を含む種々の時間における血液サンプルを採取した。全血液サンプルにおける放射能濃度を測定した。この分析に基づき、各抗体の消失半減期は約5日であった。例示的なデータを図11に示す。
【0066】
実施例6
ハプトグロビン放出のin vivo阻害
IL-6の受容体サブユニットgp130への結合を阻害する能力に関して、本発明の抗体を具体的に選択した。この実験において、可溶性IL-6Rα/IL-6複合体の投与により誘導されるハプトグロビン放出を測定するアッセイを用い、in vivoでの、gp130依存性経路の活性化を遮断する抗体Mab#471および市販抗IL-6抗体の能力を比較した。
0日目に、9週齢の雌Balb/Cマウス(処理群当たりn=3)に、抗体Mab#471またはR&D Systems(R&D Systems MAb#206)から入手した抗IL-6市販抗体のいずれか100μgを容量200μlで腹腔内投与した。陽性および陰性対照群のマウスにはPBS200μlを投与した。24時間後、ハプトグロビン放出を誘導するために、実験群および陽性対照群のマウスには、200μlの容量のmuFc-IL6Rα-IL64μgを腹腔内投与し、陰性対照群のマウスにはPBS 200μlを投与した。処理後0、8および24時間において、後眼窩採血により各マウスからおおよそ100μlの血液を採取し、血漿画分を分離した。マウスハプトグロビンELISAキット(Immunology Consultants Laboratory, Inc., Newberg, OR, Cat # E90HPT)を用い、製造業者の使用説明書に従って血漿画分におけるハプトグロビン濃度を測定した。
【0067】
図12に示すように、抗体Mab#471処置マウスにおけるハプトグロビン濃度は顕著に低く、24時間で陽性対照群において観察される濃度の約30%であり、また、市販抗体MAb#206で処理されたマウスにおけるよりも顕著に低かった。陰性対照群のマウスにおいて観察されるハプトグロビンの濃度増加は、繰り返しの後眼窩採血手順によりもたらされる刺激によるものと考えられる。従って、対照マウスにおいて観察されるハプトグロビン放出のバックグラウンドを差し引くと、Fc-IL6Rα-IL6により具体的にもたらされるハプトグロビン放出の実際の阻害は70%を超えるものとなる。IL-6に結合し、gp130受容体サブユニットとのその相互作用を遮断する本発明の抗体、例えば抗体#471は、あらかじめ形成されたIL-6Rα/IL-6複合体により活性化されうるgp130依存性シグナル伝達経路を阻害する効果を有するということをこれらの結果は示している。
【0068】
実施例7
in vivo抗腫瘍作用
in vivo抗腫瘍作用に関して、抗体Mab#195、Mab#309、Mab#471およびMab#476を試験した。IL-6を分泌し、IL-6が増殖因子であるPC3-MM2細胞を用い、SCIDマウスにおいて、肺転移モデルを作成した。各マウスに約2.0x106PC3-MM2細胞を静注した。11日後、1日量のモノクローナル抗体Mab#195、Mab#309、Mab#471およびMab#476の5μg/mlでマウスを5回処置した。典型的な結果を図13に示す。図13に示すように、抗体Mab#195、Mab#309、Mab#471およびMab#476はマウスにおける肺転移を阻害する。
通常の10日の変わりに、細胞注射後単に5日後に抗体処理を用いて他の実験を行った。同様な結果が得られた。
【0069】
実施例8
ヒト定常領域を含む抗IL-6抗体の構築
抗体Mab#471のV領域およびヒト定常領域を含む、IL-6に対するキメラ抗体を、Gilliesらへの米国特許第6,969,517号(その教示は参照により本願に組み込まれる)に記載されている技術により構築した。以下のオリゴヌクレオチドを用いるPCR増幅により、Mab#471のV領域をコードするDNA配列を得た。小文字の領域は、アダプターに対応し、大文字の領域はV領域に特有である。
【0070】
VLフォワード(Afl II部位を含む):cttaagcGACATTGTGCTGACCCAATC (配列番号59)
VLリバース(Bgl II部位を含む):agatctacttacgTTTGATTTCCAGTTTGGTGCC (配列番号60)
VHフォワード(Afl II部位を含む):cttaagcGAAGTGAAGTTTGAGGAGTC (配列番号61)
VHリバース(Hind III部位を含む):aagcttacttaccTGCAGAGACAGTGACCAG (配列番号62)
【0071】
米国特許第6,969,517号の実施例3に記載されているように、得られたマウス由来の配列を抗体発現ベクターに挿入し、ヒトκ-軽鎖およびヒトIgG1重鎖を含むキメラ抗体をコードする発現プラスミドを作成した。
安定的にトランスフェクトされたヒト細胞クローンを得るために、下記のように、エレクトロポレーションによりマウス骨髄腫NS/0細胞にプラスミドDNAを導入した。10%ウシ胎児血清を加えたダルベッコ改変イーグル培地でNS/0細胞を増殖させた。約5x106細胞をPBSで1回洗浄し、リン酸緩衝液(PBS)0.5mlに再懸濁した。ついで線状化されたプラスミドDNA10μgを、氷で冷やしながら10分間Gene Pulser(登録商標)キュベット(電極ギャップ0.4cm,BioRad)中で細胞とインキュベートした。Gene Pulser(登録商標)(BioRad, Hercules, CA)を用い、0.25Vおよび500μFの設定でエレクトロポレーションを行い、氷で冷やしながら細胞を10分間回復させ、ついで増殖培地中に細胞を再懸濁させ、次に2つの96ウェルプレート上にプレーティングした。トランスフェクション2日後に増殖培地に添加された100nMメトトレキサート(MTX)の存在下で増殖させることにより安定的にトランスフェクトされたクローンを選択した。3日おきにさらに2〜3回細胞の培地を交換すると、MTX耐性クローンは2〜3週間後に現れた。抗ヒトFc ELISAによりクローンの上清をアッセイして(Gillies et al. (1989) J. Immunol. Methods, 125:191) 高産生クローンを同定した。高産生クローンを単離し、100nM MTXを含有する増殖培地中で増殖させた。
【0072】
キメラ471抗体が望ましい特性を保持していることを確認するために、上記の実施例6に記載されているような、in vitroでのハプトグロビン産生阻害;LP-1骨髄腫細胞の増殖阻害;および、上記の実施例6に記載されているような、in vivoでのハプトグロビン産生阻害、に関してこの分子を試験した。対照として、抗IL-6抗体Mab206(R&D Systems; Minneapolis, Minnesota)およびCNTO-328(Zaki M.H. et al., Int. J. Cancer, (2004) 111:592-5)を試験した。
安定的にトランスフェクトされた細胞株から産生されるキメラ471抗体(Ch抗IL-6#471)のハプトグロビン放出に関する効果を以下の表に示す。一過性にトランスフェクトした細胞から産生されるキメラ471抗体から同様な結果が得られた。
【0073】

【0074】
キメラ抗体471はIL-6およびIL-6/IL-6Rα融合タンパク質の両方の機能を阻害するのに有用であることをこの結果は示している。対照的に、Mab#206は、IL-6またはIL-6/IL-6Rα融合タンパク質のいずれかに刺激されるハプトグロビン放出の阻害には比較的効果が弱く、CNTO-328はIL-6/IL-6Rα融合タンパク質により刺激されるハプトグロビン放出阻害には大きな欠陥がある。
【0075】
LP-1骨髄腫細胞の増殖を抑制する能力に関してもキメラ抗体471を試験した。LP-1は、IL-6によりその増殖が刺激されうるヒト骨髄腫細胞株である。
以下のようにLP-1細胞増殖アッセイを行った。LP-1細胞は、DSMZ(cat # ACC 41) (Georgii-Hemming P. et al. Blood (1996) 88:2250)から購入した。細胞を20%FBSで培養し、ついで増殖アッセイの前に、1%FBS培地で3日間飢餓状態においた。飢餓後、細胞を3回洗浄し、0.5%FBS含有培地に稀釈した。抗IL-6抗体を稀釈し、0.005ng/ml IL-6または0.05ng/ml Fc-IL6Rα-IL6融合タンパク質刺激薬のいずれかを含むプレート中、37℃、5%CO2でインキュベートした。ついで100μlの稀釈タンパク質および刺激薬を含む96ウェルプレートのウェルに100μlの約100,000細胞を加え、56時間インキュベートし、ついで終わりの16時間3Hチミジンを加えた。ついで水を用いてウェルから細胞をガラスマイクロファイバーフィルタープレート上に採取し、液体シンチレーション計数により放射能を測定した。
以下の表に、安定的にトランスフェクトされた細胞株から産生されるキメラ471抗体を用いた典型的な結果を示す。同様な結果が、一過性にトランスフェクトした細胞から産生されるキメラ471抗体から得られた。
【0076】

【0077】
この結果は、IL-6およびIL-6/IL-6Rα融合タンパク質の両方により刺激されるLP-1増殖を阻害するのにキメラ471抗体が有効であることを示している。対照的に、Mab#206は、IL-6に刺激される増殖の阻害には比較的効果が弱く、CNTO-328はIL-6/IL-6Rα融合タンパク質により刺激されるLP-1増殖の阻害には著しい欠陥がある。
in vivoにおける、キメラ471抗体および種々の対照抗体のハプトグロビン放出に対する阻害作用もまた、実施例6に記載されているように試験した。
以下の結果が得られた。
【0078】

【0079】
これらの結果は、キメラ471抗体(上記の表では、Ch471と記載)はIL-6/IL-Rα複合体により刺激されるハプトグロビン放出を強く遮断するが、Mab#206およびCNTO-328などの対照抗体は、ハプトグロビン放出の阻害に対して効果が弱いかまたは無効であることを示している。
【0080】
実施例9
本発明の抗体および方法を用いるヒト患者の治療
本発明の抗IL-6抗体は、以下のようにヒトの疾病・疾患の治療に用いられる。一般に、好ましい投与方法は静脈内注入または静脈内注射によるものであるが、皮下注射、吸入、経口送達および他の方法もまた可能である。2、3または4週間ごとに約1回の投与が用いられるが、患者の必要性に応じて投与頻度を変えることができる。典型的な投与量は、成人のヒトについて約100〜800mgである。投与される患者は免疫抑制に起因する感染の徴候をモニターされる。
例えば、キャッスルマン病患者は、点滴静注による投与により、約8mg/kgの投与量で2週間ごとに約1回本発明のキメラ471抗体で処置される。
関節リウマチ患者は、点滴静注による投与により、約8mg/kgの投与量で4週間ごとに約1回キメラ471抗体で処置される。疾患修飾性抗リウマチ薬と比べても、単独療法により関節破壊の進行が有意に抑制されたことが見いだされる。
クローン病患者は、点滴静注による投与により、約8mg/kgの投与量で4週間ごとに約1回キメラ471抗体で処置される。
多発性骨髄腫患者には、点滴静注による投与により、約8mg/kgの投与量で3週間ごとに約1回キメラ471抗体で処置される。キメラ471抗体による処置は、患者の必要に応じて医師により決定される多発性骨髄腫の標準的治療と組み合わされる。
【0081】
通常の化学療法による治療歴を有する進行性転移性前立腺癌患者は、点滴静注による投与により、約8mg/kgの投与量で3週間ごとにキメラ471抗体で約1回処置される。キメラ471抗体による治療は、患者の必要に応じて医師により決定される前立腺癌の標準的治療と組み合わされる。非ステロイド系抗炎症薬、例えばナプロキセン(登録商標)もまた処方される。前化学療法の結果として、患者は白血球の減少とナイーブT細胞の減少をきたす。免疫抑制に起因する感染に関して患者は特に綿密にモニターされ、予防的抗生物質が投与される。この治療は、骨量減少などの悪液質症状に対してプラス効果を有することが見いだされる。
ホルモン不応性乳癌患者は、点滴静注により、約8mg/kgの投与量で3週間ごとに約1回キメラ471抗体で処置される。キメラ471抗体による処置は、患者の必要に応じて医師により決定される進行乳癌の標準的治療と組み合わされる。非ステロイド系抗炎症薬、例えばナプロキセン(登録商標)もまた処方される。
【0082】
代替治療戦略において、進行性ホルモン不応性前立腺癌または進行性ホルモン不応性乳癌の患者は、KS-IL2などの免疫サイトカインと組み合わせて、約8mg/kgの投与量で3週間ごとに約1回キメラ471抗体で処置される。これら2つの薬剤は、点滴静注により同時投与することができる。この投与の前に、患者には免疫刺激量のシクロホスファミドが投与される。非ステロイド系抗炎症薬、例えばナプロキセン(Naproxen(登録商標))もまた処方される。理論に拘束されるものではないが、本発明の抗IL6抗体と、KS-IL2などの免疫サイトカインとの組み合わせは特に有効であり、これは1つには、IL-6はIL-12シグナル伝達およびTH1応答の抑制を引き起こし、本発明の抗体はこの抑制を解除するからである。
B細胞リンパ腫患者は、場合により、体表面積1m2あたり約375mgで毎週投与されるRituxan(登録商標)などの抗体と組み合わせて、約8mg/kgの投与量で3週間ごとに約1回キメラ471抗体で処置される。あるいはまた、難治性リンパ腫患者の場合、キメラ471抗体の投与は、ベクザー(Bexxar(登録商標))またはゼバリン(Zevalin(登録商標))などの放射免疫コンジュゲートと組み合わされる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1A】IL-6過剰産生に起因する罹患細胞または他の標的細胞上のgp130の望ましくない活性化を示す図である。
【図1B】IL-6とgp130との相互作用を立体的に遮断し、そのIL-6への結合が既に結合したsIL-6Rαに影響されないIL-6アンタゴニストを示す図である。
【図2】本発明の例示的な抗体V領域配列のアラインメントを示す図である。配列中の変異位置は矢印で示されている。CDRは箱で囲んである。
【図3】本発明に用いられる例示的なタンパク質の実施形態の概略図である。
【図4】本発明の例示的な抗体のFc-IL6Rα-IL6への結合を表す実験結果を示す図である。
【図5】本発明の例示的な抗体のIL-6への結合を表す実験結果を示す図である。
【図6】本発明の例示的な抗体の、IL-6とIL-6Rαとの非共有結合性複合体への結合を表す実験結果を示す図である。
【図7】本発明の例示的な抗体のIL-6Rα単独への結合を表す実験結果を示す図である。
【図8】本発明の例示的な抗体が、Fc-IL6Rα-IL6とgp130との相互作用を阻害することを例示する実験結果を示す図である。
【図9】本発明の例示的な抗体による、Fc-IL6Rα-IL6複合体により刺激されるHepG2細胞からのハプトグロビン放出を遮断する能力を例示する実験結果を示す図である。
【図10A】Fc-IL6Rα-IL6融合タンパク質がA431ヒト上皮癌細胞の増殖を刺激することを表す実験結果を示す図である。
【図10B−1】本発明の例示的な抗体が、Fc-IL6Rα-IL6融合タンパク質により刺激されるA431ヒト上皮癌細胞の増殖を阻害することを表す実験結果を示す図である。
【図10B−2】本発明の例示的な抗体が、Fc-IL6Rα-IL6融合タンパク質により刺激されるA431ヒト上皮癌細胞の増殖を阻害することを表す実験結果を示す図である。
【図11】本発明の例示的な抗体の薬物動態学的性質を示す図である。
【図12】実施例6に記載の手順を用いる、本発明の例示的な抗体によるハプトグロビン放出のin vivo阻害を表す実験結果を示す図である。
【図13】本発明の例示的な抗体による肺転移の阻害を表す実験結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体可変領域を含む抗IL6抗体またはそのフラグメントであって、前記抗体可変領域が、罹患細胞の表面においてIL-6とgp130との相互作用を立体的に遮断するように、IL-6上のエピトープに結合する、前記抗IL6抗体またはそのフラグメント。
【請求項2】
結合がIL-6Rαと複合体を形成したIL-6のgp130への結合を阻害するが、IL-6とIL-6Rαとの相互作用を立体的に遮断しない、請求項1記載の抗IL6抗体。
【請求項3】
IL-6上のエピトープがLeu19、Arg24、Lys27、Arg30、Tyr31、Asp34およびTrp157からなる群から選択されるアミノ酸を含む、請求項1または2記載の抗IL6抗体。
【請求項4】
抗体可変領域が、
FTFSNYWMN(配列番号2)、
FSFSNYWMN(配列番号3)および
FTFSDAWMD(配列番号4)
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗IL6抗体。
【請求項5】
抗体可変領域が、
EIRLKSNNYATHYAESVKG(配列番号6)、
EIRLKSNKGATHYAESVKG(配列番号7)、
EIRLTSNKQAIYYAESVKG(配列番号8)および
EIRSKANNHATYYAESVKG(配列番号9)
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗IL6抗体。
【請求項6】
抗体可変領域が、
EDYYGYPDY(配列番号11)、
LLYDGYLH(配列番号12)、
LFYDGYLH(配列番号13)および
PTLYGAMDY(配列番号14)
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗IL6抗体。
【請求項7】
抗体可変領域が、
RASESVDNFGISFM(配列番号16)、
RASESVGNFGISFM(配列番号17)、
RASESVHNFGISFM(配列番号18)および
RASESVDNYGISFM(配列番号19)
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗IL6抗体。
【請求項8】
抗体可変領域が、
TASNQGS(配列番号21)、
VASNQGS(配列番号22)および
AASNQGS(配列番号23)
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗IL6抗体。
【請求項9】
抗体可変領域が、
QQSKEVPWT(配列番号25)、
QQSKEVPYT(配列番号26)、
QQSKEIPWT(配列番号27)および
QQGKEVPWT(配列番号28)
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗IL6抗体。
【請求項10】
配列番号2、配列番号3または配列番号4の重鎖CDR1および
配列番号6;配列番号7;配列番号8;または配列番号9の重鎖CDR2および
配列番号11;配列番号12;配列番号13または配列番号14の重鎖CDR3
を含む、請求項4〜6のいずれか1項に記載の抗IL6抗体。
【請求項11】
配列番号16、配列番号17、配列番号18または配列番号19の軽鎖CDR1および
配列番号21、配列番号22、または配列番号23の軽鎖CDR2および
配列番号25、配列番号26、配列番号27または配列番号28の軽鎖CDR3
を含む請求項7〜9のいずれか1項に記載の抗IL6抗体。
【請求項12】
配列番号2、配列番号3または配列番号4の重鎖CDR1および
配列番号6;配列番号7;配列番号8;または配列番号9の重鎖CDR2および
配列番号11;配列番号12;配列番号13または配列番号14の重鎖CDR3および
配列番号16、配列番号17、配列番号18または配列番号19の軽鎖CDR1および
配列番号21、配列番号22または配列番号23の軽鎖CDR2および
配列番号25、配列番号26、配列番号27または配列番号28の軽鎖CDR3
を含む請求項10または11記載の抗IL6抗体。
【請求項13】
抗体定常領域をさらに含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の抗IL6抗体。
【請求項14】
Fc部分を含む、請求項13記載の抗IL6抗体。
【請求項15】
Fc部分がヒト由来である、請求項14記載の抗IL6抗体。
【請求項16】
配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項13〜15のいずれか1項に記載の抗IL6抗体。
【請求項17】
配列番号31の軽鎖アミノ酸配列または配列番号31と少なくとも90%同一である配列を含む、請求項16記載の抗IL6抗体。
【請求項18】
配列番号33、配列番号34、配列番号35および配列番号36からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項13〜15のいずれか1項に記載の抗IL6抗体。
【請求項19】
配列番号35のアミノ酸配列または配列番号35と少なくとも90%同一である配列を含む重鎖を含む、請求項18記載の抗IL6抗体。
【請求項20】
配列番号35のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号31のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項16〜19のいずれか1項に記載の抗IL6抗体。
【請求項21】
配列番号34のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号30のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項16〜19のいずれか1項に記載の抗IL6抗体。
【請求項22】
配列番号36のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号32のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項16〜19のいずれか1項に記載の抗IL6抗体。
【請求項23】
配列番号33のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号29のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項16〜19のいずれか1項に記載の抗IL6抗体。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか1項に記載の抗体をコードする核酸分子。
【請求項25】
請求項1〜23のいずれか1項に記載の抗IL6抗体の薬理学的有効量を含み、場合により薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を共に含む、IL6により引き起こされる疾患の治療に適した医薬組成物。
【請求項26】
癌または自己免疫疾患の治療薬の製造のための、請求項1〜23のいずれか1項に記載の抗IL6抗体の使用。
【請求項27】
疾患がIL6またはIL-6Rαと複合を形成したIL-6により引き起こされる、請求項26記載の使用。
【請求項28】
(i)抗体のFc部分
(ii)IL6Rαおよび
(iii)IL6
を含む融合タンパク質。
【請求項29】
IL6RαがFc部分のC末端に融合し、IL6がIL6RαのC末端に融合した、請求項28記載の融合タンパク質。
【請求項30】
Fc部分がマウス由来であり、IL6RαおよびIL6がヒト由来である、請求項28または29記載の融合タンパク質。
【請求項31】
哺乳動物を前記融合タンパク質で免疫することにより得られる抗IL6抗体の作製のための請求項28〜30のいずれか1項に記載の融合タンパク質の使用であって、選別された抗体が以下の特性:
(i)前記抗体の可変領域がIL-6上のエピトープに結合し、
(ii)罹患細胞の表面でIL-6とgp130との相互作用を立体的に遮断し、
(ii)IL-6Rαと複合体を形成したIL-6のgp130への結合を阻害するが、IL-6とIL-6Rαとの相互作用を立体的に遮断しないこと、
を有する前記使用。
【請求項32】
選別された抗体が、請求項1〜23のいずれか1項に記載の抗体である、請求項31記載の使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B−1】
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【図10B−2】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2009−521909(P2009−521909A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547875(P2008−547875)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【国際出願番号】PCT/EP2006/012236
【国際公開番号】WO2007/076927
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】