説明

IPアドレス割り当てシステム及びIPアドレス割り当て方法

【課題】複数のDHCPサーバを用いてクライアントにIPアドレスを割り当てるシステムにおいて、同一IPアドレスの重複割り当ての発生を抑制する。
【解決手段】IPアドレス割り当てシステムは、第1のネットワークに所属し得る複数のDHCPサーバ装置を備える。各DHCPサーバ装置は、ネットワーク全体アドレス範囲のうちクライアントに割り当て可能なIPアドレス範囲であって、他のDHCPサーバ装置とは重複しない専用アドレス範囲を記憶するアドレス範囲記憶部と、新たなIPアドレスの割り当て要求を受信すると専用アドレス範囲に含まれるIPアドレスを割り当てるアドレス割り当て制御部と、IPアドレスのリース期間の延長要求を受信すると既設IPアドレスが専用アドレス範囲に含まれているか否かに関わらず、延長許可をクライアントに送信する延長許可制御部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IPアドレスの自動割り当てに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ネットワークに接続されたクライアントに対するIPアドレスの設定を簡略化するために、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)サーバ装置が用いられることがある。同一のサブネット(ブロードキャストドメイン)内にDHCPサーバ装置を複数台配置して、冗長性を向上させる技術が提案されている。例えば、2台のDHCPサーバ装置間でIPアドレスの割り当て数や優先度に関する情報を互いにやりとりし、既に割り当てた数がより少ないサーバ装置または優先度がより高いサーバ装置が、DHCPサーバとしてクライアントからのIPアドレスの割り当て要求に応答する方法が提案されている(特許文献1)。
【0003】
この方法では、2台のDHCPサーバ装置が互いにアドレスプールを共有することにより、2台のDHCPサーバ装置によるIPアドレスの重複割り当て(異なる複数のクライアントへの同一IPアドレスの割り当て)を抑制している。同じ内容のアドレスプールの共有方法として、2台のDHCPサーバ装置がアドレスプールを記憶する同一の記憶装置に接続されることにより、同じ内容のアドレスプールを2台のDHCPサーバで共有する方法と、2台のDHCPサーバ装置がそれぞれアドレスプールを記憶する記憶装置を備えると共に2つの記憶装置間でデータを同期させることにより、同じ内容のアドレスプールを2台のDHCPサーバで共有する方法とが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−356920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した2台のDHCPサーバ装置がアドレスプールを記憶する同一の記憶装置に接続される技術では、一方のDHCPサーバ装置が他のシステム(ネットワーク)に移設され、移設先のシステムにおいてDHCPサーバとしてクライアントにIPアドレスを割り当て、その後、このクライアントと共にDHCPサーバ装置が元のシステム(ネットワーク)に戻った場合には、IPアドレスの重複が発生し得る。これは、2台のDHCPサーバ装置が互いに異なるシステムに所属しているとアドレスプールが共有できないため、各DHCPサーバ装置が、互いに同じIPアドレスを、それぞれのシステムに所属する異なるクライアントに割り当てるおそれがあるからである。
【0006】
また、上述した、2台のDHCPサーバ装置がそれぞれアドレスプールを記憶する記憶装置を備えると共に2つの記憶装置間でデータを同期させる技術では、ネットワークの障害等により、2つの記憶装置間でのデータの同期ができない場合には、2台のDHCPサーバ装置間でアドレスプールの共有ができず、IPアドレスの重複割り当てが発生し得る。
【0007】
本発明は、複数のDHCPサーバを用いてクライアントにIPアドレスを割り当てるシステムにおいて、IPアドレスの重複割り当ての発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]第1のネットワークに所属し得る複数のDHCPサーバ装置を用いてクライアントに対してIPアドレスを割り当てるIPアドレス割り当てシステムであって、
各DHCPサーバ装置は、それぞれ、
前記第1のネットワークのIPアドレスの全範囲であるネットワーク全体アドレス範囲のうち、前記クライアントに割り当て可能なIPアドレスの範囲であって、他のDHCPサーバ装置とは重複しないIPアドレスの範囲である専用アドレス範囲を記憶するアドレス範囲記憶部と、
前記クライアントから新たなIPアドレスの割り当て要求を受信すると、前記専用アドレス範囲に含まれるIPアドレスを、前記IPアドレスの割り当てから解放までの期間であるリース期間を指定して前記クライアントに割り当てるアドレス割り当て制御部と、
前記クライアントから割り当てられているIPアドレスに関する前記リース期間の延長要求を受信すると、前記既設IPアドレスが前記専用アドレス範囲に含まれているか否かに関わらず、延長許可を前記クライアントに送信する延長許可制御部と、
を有する、IPアドレス割り当てシステム。
【0010】
適用例1のIPアドレス割当システムでは、複数のDHCPサーバ装置が、それぞれ互いに重複しない専用アドレス範囲を記憶するアドレス範囲記憶部を有し、専用アドレス範囲に含まれるIPアドレスをクライアントに割り当てるので、IPアドレスの重複割り当ての発生を抑制できる。加えて、各DHCPサーバ装置は、自らの専用アドレス範囲に含まれていない既設IPアドレスを有するクライアントからリース期間の延長要求を受信した場合に、既設IPアドレスがネットワーク全体アドレス範囲に含まれている場合には延長を許可するので、DHCPサーバ装置の故障や撤去などが発生しても、複数のDHCPサーバ装置のうち少なくとも1つのDHCPサーバ装置がクライアントからの延長要求を受信することができれば、クライアントはリース期間を延長することができる。したがって、IPアドレス割り当てシステムにおける、DHCPサーバ機能の冗長性を向上させることができると共に、リース期間切れに伴う新たなIPアドレスの割り当て要求の発生を抑制でき、クライアントやDHCPサーバ装置の処理負荷や、第1のネットワークの負荷(使用帯域など)を軽減することができる。
【0011】
[適用例2]適用例1に記載のIPアドレス割り当てシステムにおいて、
各DHCPサーバ装置は、それぞれ、DHCPサーバ機能を提供するか否かについて他のDHCPサーバ装置との間において調停するDHCPサーバ機能調停部を有し、
前記複数のDHCPサーバ装置が有する複数の前記DHCPサーバ機能調停部同士の調停の結果、前記複数のDHCPサーバ装置のうち、1台のDHCPサーバ装置のみが、DHCPサーバ機能を提供するプライマリサーバとして動作し、前記プライマリサーバであるDHCPサーバ装置を除く他のDHCPサーバ装置は、DHCPサーバ機能を提供しないセカンダリサーバとして動作し、
前記プライマリサーバとして動作する前記DHCPサーバ装置において、前記アドレス割り当て制御部は前記割り当てを実行し、前記延長許可制御部は前記延長許可を送信し、
前記セカンダリサーバとして動作する前記DHCPサーバ装置において、前記アドレス割り当て制御部は前記割り当てを停止し、前記延長許可制御部は前記延長許可の送信を停止する、IPアドレス割り当てシステム。
【0012】
このような構成により、1台のDHCPサーバ装置のみがDHCPサーバ機能を提供するので、クライアントは、複数のDHCPサーバ装置から互いに異なる複数のIPアドレスを割り当てられることを抑制できる。したがって、例えば、クライアントにおいて、割り当てられた複数のIPアドレスから1つのIPアドレスを選択する処理を省略することができ、クライアントにおける処理負荷を軽減できる。加えて、複数のDHCPサーバ装置からクライアントに対してIPアドレスを割り当てるためのデータのやりとりを省略でき、DHCPサーバ装置の負荷や、第1のネットワークの負荷(使用帯域など)を軽減することができる。
【0013】
[適用例3]適用例2に記載のIPアドレス割り当てシステムにおいて、
各DHCPサーバ装置が有する前記DHCPサーバ機能調停部は、いずれも、定期的に、他のDHCPサーバ装置が有する前記DHCPサーバ機能調停部との間においてDHCPサーバ機能を提供するか否かについて調停する、IPアドレス割り当てシステム。
【0014】
このような構成により、セカンダリサーバとして動作するDHCPサーバ装置は、プライマリサーバとして動作するDHCPサーバ装置の故障や撤去により、第1のネットワークにプライマリサーバが存在しなくなったことを短期間のうちに検出することができる。また、セカンダリサーバとして動作していたDHCPサーバ装置は、第1のネットワークにプライマリサーバが存在しなくなった場合に、DHCPサーバ機能を提供するか否かについての調停によってプライマリサーバとして動作することが可能となる。したがって、第1のネットワークにプライマリサーバが存在しない期間を短縮することができる。
【0015】
[適用例4]適用例2または適用例3のいずれかに記載のIPアドレス割り当てシステムにおいて、
前記複数のDHCPサーバ装置は、ルータが有する第1のDHCPサーバ装置と、可搬型ネットワーク接続装置が有する第2のDHCPサーバ装置と、であり、
前記ルータと前記可搬型ネットワーク接続装置がいずれも前記第1のネットワークに所属する際には、各DHCPサーバ装置が有する複数の前記DHCPサーバ機能調停部同士の調停の結果、前記第1のDHCPサーバ装置は前記プライマリサーバとして動作し、前記第2のDHCPサーバ装置は前記セカンダリサーバとして動作し、
前記可搬型ネットワーク接続装置が、前記第1のネットワークとは異なるネットワークである第2のネットワークに所属し、かつ、前記ルータが前記第2のネットワークに所属していない際に、前記第2のDHCPサーバ装置は、前記セカンダリサーバから前記プライマリサーバに切り替わって動作し、
前記プライマリサーバとして動作する前記第2のDHCPサーバ装置において、前記アドレス割り当て制御部は前記割り当てを実行し、前記延長許可制御部は前記延長許可を送信する、IPアドレス割り当てシステム。
【0016】
このような構成により、可搬型ネットワーク接続装置が、ルータの所属する第1のネットワークから持ち出されて第2のネットワークに所属することとなった場合において、第2のDHCPサーバ装置は第2のネットワークにおいてプライマリサーバとして動作することができる。したがって、クライアント及び可搬型ネットワーク接続装置が持ち出されて第2のネットワークに所属することになっても、クライアントは、第1のネットワークに所属している際に割り当てられたIPアドレスについてリース期間の延長を要求した場合に、可搬型ネットワーク接続装置によって延長を許可され得る。加えて、第2のネットワークでは第2のDHCPサーバ装置がプライマリサーバとして動作しているので、新たなクライアントが第2のネットワークに所属して、かかる新たなクライアントから新たなIPアドレスの割り当て要求が送信された場合であっても、かかる新たなクライアントに対してIPアドレスを割り当てることができる。
【0017】
[適用例5]適用例4に記載のIPアドレス割り当てシステムにおいて、
前記第2のDHCPサーバ装置は、さらに、前記セカンダリサーバとして動作する場合に、前記プライマリサーバとして動作する前記第1のDHCPサーバ装置に対して、前記第2のDHCPサーバ装置用の前記専用アドレス範囲の割り当て要求を送信する専用アドレス範囲割当要求送信部を備え、
前記第1のDHCPサーバ装置は、さらに、前記第2のDHCPサーバ装置から前記専用アドレス範囲の割り当て要求を受信すると、前記ネットワーク全体アドレス範囲のうち、前記第1のDHCPサーバ装置用の前記専用アドレス範囲を除いた範囲の少なくとも一部を、前記第2のDHCPサーバ装置用の前記専用アドレス範囲として決定して前記第2のDHCPサーバ装置に通知するアドレス範囲設定部を備える、IPアドレス割り当てシステム。
【0018】
このような構成により、第1のDHCPサーバ装置において、各DHCPサーバ装置の専用アドレス範囲を一元的に管理することができるので、各専用アドレス範囲を重複しないように割り当てることができる。
【0019】
[適用例6]適用例5に記載のIPアドレス割り当てシステムにおいて、
前記第2のDHCPサーバ装置は、前記プライマリサーバとして動作した際に前記アドレス割り当て制御部により実行された前記割り当て動作の履歴に関する情報を記憶する履歴記憶部を有し、
前記第2のDHCPサーバ装置の前記設定要求送信部は、前記履歴記憶部に記憶されている前記割り当て動作の履歴に関する情報に基づき、前記専用アドレス範囲の割り当て要求において、前記第2のDHCPサーバ装置用の前記専用アドレス範囲の最低要求範囲を指定する、IPアドレス割り当てシステム。
【0020】
このような構成により、割り当て動作の履歴に関する情報に基づき最低要求範囲を指定するので、専用アドレス範囲として、必要十分な数のIPアドレスを含む範囲を設定することができる。したがって、各DHCPサーバ装置に設定される専用アドレス範囲において、例えば、広すぎる範囲が設定されてしまい、クライアントに割り当てられない無駄なIPアドレスをいずれかのDHCPサーバ装置が確保することを抑制できる。
【0021】
[適用例7]適用例4ないし適用例6のいずれかに記載のIPアドレス割り当てシステムにおいて、
各DHCPサーバ装置には、それぞれ、予めDHCPサーバ機能の提供に関する優先度が設定されており、
前記第1のDHCPサーバ装置には、前記優先度として、少なくとも前記第2のDHCPサーバ装置に設定されている前記優先度よりも高い値が設定されており、
各DHCPサーバ装置の前記DHCPサーバ機能調停部は、前記優先度を示す情報を他のDHCPサーバ装置に送信すると共に、他のDHCPサーバ装置から受信する優先度を示す情報に基づき、自らの前記優先度が、他のDHCPサーバ装置に設定された優先度よりも高いか否かを判定し、高い場合に各DHCPサーバ装置は前記プライマリサーバとして動作し、低い場合に各DHCPサーバ装置は前記セカンダリサーバとして動作する、IPアドレス割り当てシステム。
【0022】
このような構成により、第1のDHCPサーバ装置と第2のDHCPサーバ装置とがいずれも第1のネットワークに所属する場合において、第1のDHCPサーバ装置をプライマリサーバとして動作させることができる。一般に、可搬型ネットワーク接続装置に比較して、ルータはCPUやメモリなどのハードウェア資源が潤沢であり、プライマリサーバとして動作することによりDHCPサーバ機能を提供してもパケットを中継する機能に影響を与える可能性が低い。これに対して、可搬型ネットワーク接続装置は、ハードウェア資源がより少ないため、プライマリサーバとして動作する場合に、パケットを中継する機能が低下する可能性が高い。加えて、上記構成により、ユーザは、DHCPサーバ装置に設定する優先度を調整することにより、プライマリサーバとして動作させる装置を指定することができる。
【0023】
[適用例8]第1のネットワークに所属し得る複数のDHCPサーバ装置を用いて、クライアントに対してIPアドレスを割り当てるIPアドレス割り当て方法であって、
(a)各DHCPサーバ装置において、それぞれ、前記第1のネットワークにおいて使用可能なIPアドレスの全範囲であるネットワーク全体アドレス範囲のうち、前記クライアントに割り当て可能なIPアドレスの範囲であって、他のDHCPサーバ装置とは重複しないIPアドレスの範囲である専用アドレス範囲を記憶させる工程と、
(b)各DHCPサーバ装置において、前記クライアントから新たなIPアドレスの割り当て要求を受信すると、前記専用アドレス範囲に含まれるIPアドレスを、前記IPアドレスの割り当てから解放までの期間であるリース期間を指定して前記クライアントに割り当てる工程と、
(c)各DHCPサーバ装置において、前記クライアントから割り当てられているIPアドレスに関する前記リース期間の延長要求を受信すると、前記既設IPアドレスが前記専用アドレス範囲に含まれているか否かに関わらず、延長許可を前記クライアントに送信する工程と、
を備える、IPアドレス割り当て方法。
【0024】
適用例8のIPアドレス割り当て方法では、複数のDHCPサーバ装置が、それぞれ互いに重複しない専用アドレス範囲を記憶し、専用アドレス範囲に含まれるIPアドレスをクライアントに割り当てるので、IPアドレスの重複割り当ての発生を抑制できる。加えて、各DHCPサーバ装置は、自らの専用アドレス範囲に含まれていない既設IPアドレスを有するクライアントからリース期間の延長要求を受信した場合に、既設IPアドレスがネットワーク全体アドレス範囲に含まれている場合には延長を許可するので、DHCPサーバ装置の故障や撤去などが発生しても、複数のDHCPサーバ装置のうち少なくとも1つのDHCPサーバ装置がクライアントからの延長要求を受信することができれば、クライアントはリース期間を延長することができる。したがって、IPアドレス割り当てシステムにおける、DHCPサーバ機能の冗長性を向上させることができると共に、リース期間切れに伴う新たなIPアドレスの割り当て要求処理の発生を抑制でき、クライアントやDHCPサーバ装置の処理負荷や、第1のネットワークの負荷(使用帯域など)を軽減することができる。
【0025】
[適用例9]第1のネットワークに所属し得る複数のDHCPサーバ装置を用いて、クライアントに対してIPアドレスを割り当てるためのプログラムであって、
(a)各DHCPサーバ装置において、それぞれ、前記第1のネットワークにおいて使用可能なIPアドレスの全範囲であるネットワーク全体アドレス範囲のうち、前記クライアントに割り当て可能なIPアドレスの範囲であって、他のDHCPサーバ装置とは重複しないIPアドレスの範囲である専用アドレス範囲を記憶させる機能と、
(b)各DHCPサーバ装置において、前記クライアントから新たなIPアドレスの割り当て要求を受信すると、前記専用アドレス範囲に含まれるIPアドレスを、前記IPアドレスの割り当てから解放までの期間であるリース期間を指定して前記クライアントに割り当てる機能と、
(c)各DHCPサーバ装置において、前記クライアントから割り当てられているIPアドレスに関する前記リース期間の延長要求を受信すると、前記既設IPアドレスが前記専用アドレス範囲に含まれているか否かに関わらず、延長許可を前記クライアントに送信する機能と、
を、各DHCPサーバ装置が有するコンピュータに実現させるためのプログラム。
【0026】
適用例9のプログラムでは、複数のDHCPサーバ装置が、それぞれ互いに重複しない専用アドレス範囲を記憶し、専用アドレス範囲に含まれるIPアドレスをクライアントに割り当てるので、IPアドレスの重複割り当ての発生を抑制できる。加えて、各DHCPサーバ装置は、自らの専用アドレス範囲に含まれていない既設IPアドレスを有するクライアントからリース期間の延長要求を受信した場合に、既設IPアドレスがネットワーク全体アドレス範囲に含まれている場合には延長を許可するので、DHCPサーバ装置の故障や撤去などが発生しても、複数のDHCPサーバ装置のうち少なくとも1つのDHCPサーバ装置がクライアントからの延長要求を受信することができれば、クライアントはリース期間を延長することができる。したがって、IPアドレス割り当てシステムにおける、DHCPサーバ機能の冗長性を向上させることができると共に、リース期間切れに伴う新たなIPアドレスの割り当て要求処理の発生を抑制でき、クライアントやDHCPサーバ装置の処理負荷や、第1のネットワークの負荷(使用帯域など)を軽減することができる。
【0027】
[適用例10]適用例9に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【0028】
このような構成により、かかる記録媒体を用いてコンピュータにプログラムを読み取らせ、各機能を実現させることができる。
【0029】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、無線中継装置、無線中継装置を含む無線通信システム、これらの装置またはシステムの制御方法、これらの方法、装置またはシステムの機能を実現するためのコンピュータープログラム、そのコンピュータープログラムを記録した記録媒体、等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施例としてのIPアドレス割り当てシステムの概略構成を示す説明図である。
【図2】IPアドレス割り当てシステムの第2の接続態様を示す説明図である。
【図3】IPアドレス割り当てシステムの第3の接続態様を示す説明図である。
【図4】可搬型ネットワーク接続装置の詳細構成を示す説明図である。
【図5】ルータの詳細構成を示す説明図である。
【図6】第1実施例における動作モード切り替え処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】IPアドレス割り当てシステムにおいて実行されるDHCPサーバ調停処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】IPアドレス割り当てシステムにおいて実行されるアドレス範囲調整処理の手順を示すシーケンス図である。
【図9】図5に示すルータのアドレス管理テーブル格納部に格納されているアドレス管理テーブルの設定内容を模式的に示す説明図である。
【図10】ルータ及び可搬型ネットワーク接続装置(本体)において実行されるDHCPサーバ処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】DHCPサーバ処理の一例を示す第1の説明図である。
【図12】DHCPサーバ処理の一例を示す第2の説明図である。
【図13】第2実施例の可搬型ネットワーク接続装置の詳細構成を示す説明図である。
【図14】第2実施例のルータの詳細構成を示す説明図である。
【図15】第2実施例における第1の接続態様を示す説明図である。
【図16】第2実施例のDHCPサーバ調停処理の手順を示すフローチャートである。
【図17】第2実施例におけるアドレス範囲調整処理の手順を示すシーケンス図である。
【図18】第3実施例の可搬型ネットワーク接続装置の詳細構成を示す説明図である。
【図19】第3実施例のルータの詳細構成を示す説明図である。
【図20】第3実施例におけるDHCPサーバ調停処理の手順を示すフローチャートである。
【図21】第3実施例におけるアドレス範囲調整処理の手順を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
A.第1実施例:
A1.システム構成:
図1は、本発明の一実施例としてのIPアドレス割り当てシステムの概略構成を示す説明図である。第1実施例のIPアドレス割り当てシステム10は、ルータ500と、可搬型ネットワーク接続装置20と、第1クライアントCL1と、第2クライアントCL2とを備えている。クライアントの数は2台に限らず、任意の数を採用することができる。システム10は、例えば、家庭や小規模オフィスにおいて用いられることができる。IPアドレス割り当てシステム10は、システムに所属するクライアント(図1の例では2台のクライアントCL1,CL2)に対してIPアドレスを割り当てると共に、パケット(レイヤ3パケット及びレイヤ2フレーム)を中継することにより、クライアント同士の通信又はインターネットを介した通信を実現させる。
【0032】
ルータ500は、レイヤ3(OSI参照モデルの第3層)においてパケットを中継する装置であり、インターネットと接続されている。また、ルータ500は、ネットワークケーブルCaを介してクレードル200と、ネットワークケーブルCbを介して第1クライアントCL1と、それぞれ接続されている。なお、ルータ500は、据え置き型の装置である。このようなルータ500は、例えば、ホームゲートウェイとしてISP(Internet Services Provider)事業者により提供される。なお、ルータ500の詳細構成は後述する。
【0033】
可搬型ネットワーク接続装置20は、互いに着脱自在に接続可能な本体100とクレードル200とを備えている。本体100は、小型軽量の可搬型装置であり、レイヤ3またはレイヤ2においてパケット(フレーム)を中継する装置である。図1では、本体100は、クレードル200と接続されている。また、図1では、本体100は、ネットワークケーブルCaにより第1クライアントCL1と、無線により第2クライアントCL2と、それぞれ接続されている。本体100は、レイヤ3においてパケットを中継する動作モード(すなわち、ルータとして動作する動作モード)と、レイヤ2においてパケットを中継する動作モード(すなわち、ブリッジとして動作する動作モード)とを有している。なお、図1の例では、本体100はブリッジとして動作している。可搬型ネットワーク接続装置20の詳細構成は、後述する。
【0034】
クレードル200は、本体100と接続されたときに、本体100に各種機能を提供する。また、クレードル200は、本体100を載置するためのスタンド及び充電器としても機能する。クレードル200は、ポート220と、切り替えスイッチ230とを備えている。ポート220は、本体100がクレードル200を介して有線LANと接続するためのポートであり、ネットワークケーブルCaと接続されている。切り替えスイッチ230は、いわゆるスライドスイッチであり、「Internet」の状態と「Lan」の状態とのいずれかに手動で切り換えられる。図1では、切り替えスイッチ230は、「Internet」の状態に設定されている。
【0035】
2台のクライアントCL1,CL2は、いずれも、パーソナルコンピュータである。第1クライアントCL1は、図示しない有線LANインタフェースを有しており、この有線LANインタフェース及びネットワークケーブルCbを介してルータ500に接続されている。第2クライアントCL2は、図示しない無線LANインタフェースを有しており、この無線LANインタフェースを介して本体100と接続されている。図1では、本体100は無線LANのアクセスポイントとして動作し、第2クライアントCL2は無線LANのクライアントとして動作している。
【0036】
IPアドレス割り当てシステム10では、各構成要素間の接続態様として、複数の接続態様を許容している。図1では、IPアドレス割り当てシステム10の第1の接続態様を示している。第1の接続態様では、各構成要素は、いずれも同じロケーションA(例えば、家庭やオフィス)に配置されている。第1の接続態様では、ルータ500よりも下位側(インターネットから離れている側)には、1つのネットワークNW1が構成されている。ここで、第1実施例において「ネットワーク」とは、ブロードキャストフレームが到達可能な範囲であって同じネットワークアドレスのIPアドレスが付与される範囲を意味する。第1の接続態様では、ルータ500がDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)サーバ装置として動作し、各クライアントCL1,CL2にIPアドレスを割り当てる。具体的には、第1実施例では、ルータ500は、第1クライアントCL1に対してIPアドレス「192.168.11.3」を割り当て、第2クライアントCL2に対してIPアドレス「192.168.11.4」を割り当てている。これらのIPアドレスはプライベートIPアドレスであり、各クライアントCL1,CL2がインターネットを介した通信を行う際には、ルータ500において、プライベートIPアドレスとグローバルIPアドレスとの変換が行われる。なお、第1の接続態様では、本体100は、DHCPサーバ装置として動作していない。
【0037】
図2は、IPアドレス割り当てシステムの第2の接続態様を示す説明図である。第2の接続態様では、各構成要素は同一のロケーションに配置されていない。具体的には、図2上段のロケーションAには、ルータ500と、第1クライアントCL1と、ネットワークケーブルCbとが配置されている。図2下段のロケーションBには、本体100と、クレードル200と、第2クライアントCL2と、第3クライアントCL3と、ネットワークケーブルCaとが配置されている。なお、第1実施例において、ロケーションAとロケーションBとは、互いに大きく離れている(例えば、無線LANアクセスポイントと無線LANクライアント間の通信ができない程度に離れている)。
【0038】
ここで、第3クライアントCL3は、2台のクライアントCL1,CL2と同様にパーソナルコンピュータであり、図示しない有線LANインタフェースを有している。第3クライアントCL3は、図示しない有線LANインタフェースと、ネットワークケーブルCaと、クレードル200とを介して本体100と接続されている。第2の接続態様において、切り替えスイッチ230は「Lan」の状態に設定されている。
【0039】
本体100は、図示しない移動体通信インタフェースを備えており、この移動体通信インタフェースを介して移動体通信網の基地局と無線通信を行う。
【0040】
第2の接続態様は、例えば、ロケーションAにおいて図1に示す第1の接続態様が実現されている状態から、ユーザが、ルータ500からネットワークケーブルCaを撤去して、本体100,クレードル200,第2クライアントCL2をロケーションBに持ち出し、ネットワークケーブルCaに新たなクライアントである第3クライアントCL3を接続した場合に実現され得る。ロケーションAからの本体100等の持ち出しは、例えば、ユーザが、第2クライアントCL2を、インターネットを介した通信を維持したままロケーションBに持ち出すような場合に起こり得る。図2に示すように、ロケーションBでは、新たなネットワークNW2が構成されている。このネットワークNW2では、ネットワークNW1と同じネットワークアドレス(プライベートアドレス)が用いられている。しかしながら、これら2つのネットワークNW1,NW2間では、ブロードキャストフレームの送受信は行われない。
【0041】
ロケーションBにおいて、本体100はDHCPサーバ装置として動作している。本体100は、ロケーションBにおいて新たにIPアドレス割り当てシステム10に参加した第3クライアントCL3に対して、IPアドレス「192.168.11.32」を割り当てている。また、ロケーションBにおいて、本体100は、ルータとしても動作している。具体的には、第2クライアントCL2又は第3クライアントCL3が出力するIPパケットを、移動体通信網に中継すると共に、移動体通信網から受信する第2クライアントCL2又は第3クライアントCL3宛のIPパケットを、第2クライアントCL2又は第3クライアントCL3に中継する。
【0042】
ロケーションAでは、本体100,クレードル200,第2クライアントCL2が撤去されたこと以外は、第1の接続態様と同じ状態が実現されている。具体的には、第1クライアントCL1は、ネットワークケーブルCaを介してルータ500と接続されており、ルータ500を通じてインターネットを介した通信を行うことができる。
【0043】
図3は、IPアドレス割り当てシステムの第3の接続態様を示す説明図である。第3の接続態様では、第2の接続態様と同様に、各構成要素は同一のロケーションに配置されていない。具体的には、図3上段のロケーションAには、ルータ500と、クレードル200と、第1クライアントCL1と、ネットワークケーブルCaと、ネットワークケーブルCbとが配置されている。図3下段のロケーションCには、本体100と、第2クライアントCL2と、第4クライアントCL4とが配置されている。なお、第1実施例において、ロケーションAとロケーションCとは、互いに大きく離れている(例えば、無線LANアクセスポイントと無線LANクライアント間の通信ができない程度に離れている)。
【0044】
ここで、第4クライアントCL4は、2台のクライアントCL1,CL2と同様にパーソナルコンピュータであり、図示しない無線LANインタフェースを有している。第4クライアントCL4は、図示しない無線LANインタフェースを介して本体100と接続されている。なお、第2の接続態様において、切り替えスイッチ230は「Internet」の状態に設定されている。
【0045】
第3の接続態様は、例えば、ロケーションAにおいて図1に示す第1の接続態様が実現されている状態から、ユーザが、本体100をクレードル200から切り離し、本体100と第2クライアントCL2とをロケーションBに持ち出し、新たなクライアントである第4クライアントCL4が、無線LANアクセスポイントとして動作する本体100と無線通信により接続された場合に実現し得る。ロケーションAからの本体100及び第2クライアントCL2の持ち出しは、第2の実施例と同様に、例えば、ユーザが、第2クライアントCL2を、インターネットを介した通信を維持したままロケーションCに持ち出すような場合に起こり得る。図3に示すように、ロケーションCでは、新たなネットワークNW3が構成されている。このネットワークNW3では、ネットワークNW1と同じネットワークアドレスが用いられている。しかしながら、これら2つのネットワークNW1,NW3間では、ブロードキャストフレームの送受信は行われない。
【0046】
ロケーションCにおいて、本体100はDHCPサーバ装置として動作している。本体100は、ロケーションCにおいて新たにIPアドレス割り当てシステム10に参加した第4クライアントCL4に対して、IPアドレス「192.168.11.33」を割り当てている。また、ロケーションCにおいて、本体100は、ルータとしても動作している。具体的には、第2クライアントCL2又は第4クライアントCL4が出力するIPパケットを、移動体通信網に中継すると共に、移動体通信網から受信する第2クライアントCL2又は第4クライアントCL4宛のIPパケットを、第2クライアントCL2又は第4クライアントCL4に中継する。
【0047】
図4は、可搬型ネットワーク接続装置の詳細構成を示す説明図である。クレードル200は、上述したポート220及び切り替えスイッチ230に加えて、本体接続インタフェース(I/F)280と、LAN制御回路210とを備えている。ポート220としては、例えば、IEEE802.3/3u/3abに準拠したポートを採用することができる。LAN制御回路210は、所定のネットワークプロトコル(例えばイーサネット(登録商標))に従いポート220を介したデータ伝送を制御する。
【0048】
切り替えスイッチ230は、ポート220の機能を切り替えるためのスイッチであり、ポート220の近傍に配置されている。ポート220の機能は、切り替えスイッチ230の状態が「Lan」である場合に、クライアントと接続するために用いられるポートとしての機能となり、切り替えスイッチ230の状態が「Internet」の場合に、クライアントとは異なる他の装置と接続するためのポートとしての機能となる。ここで、「クライアント」とは、比較的上位のレイヤ(例えば、レイヤ4以上)での通信を終端する装置を意味し、クライアントとは異なる装置とは、例えば、レイヤ2スイッチやレイヤ3スイッチやルータといった、比較的下位のレイヤ(例えば、レイヤ3以下)での通信を終端し、クライアントにデータ(パケット)を中継する装置を意味する。
【0049】
本体接続インタフェース280は、USB(Universal Serial Bus)デバイスコントローラとしての機能を有しており、クレードル200が本体100と接続されているとき、USB規格に則って本体100との間での情報のやり取りや電力供給を行う。
【0050】
本体100は、図4に示すように、CPU120と、ROM171と、RAM172と、USBデバイスを接続するためのUSBデバイスインタフェース(I/F)173と、無線LAN制御回路174と、無線WAN制御回路175と、移動体通信制御回路176と、クレードル200との接続のためのクレードル接続インタフェース(I/F)180と、を含んでいる。
【0051】
無線LAN制御回路(「無線LANインタフェース」とも呼ばれる)174は、変調器やアンプ、アンテナを含み、例えばIEEE802.11b/gに準拠した無線LANのアクセスポイントとして、無線LANのクライアント(例えばパーソナルコンピュータやゲーム機)と無線通信を行う。無線WAN制御回路(「無線WANインタフェース」とも呼ばれる)175は、変調器やアンプ、アンテナを含み、例えばIEEE802.11a/b/gに準拠した無線LANのクライアントとして、無線LANのアクセスポイント(例えば公衆無線LAN)と無線通信を行う。移動体通信制御回路(「移動体通信インタフェース」とも呼ばれる)176は、変調器やアンプ、アンテナを含み、例えば3G/HSPAに準拠した移動体通信の端末として、移動体通信網の基地局と無線通信を行う。このように、第1実施例の本体100は、それぞれが互いに異なる無線通信ネットワークにおける無線通信を行う複数の無線通信インタフェースを含んでいる。
【0052】
クレードル接続インタフェース180は、USBホストコントローラとしての機能を有しており、本体100がクレードル200と接続されているとき、USB規格に則ってクレードル200との間での情報のやり取りを行う。また、クレードル接続インタフェース180は、本体100がクレードル200と接続されているとき、本体接続インタフェース280を介してクレードルから供給される電力を、本体100側の図示しないバッテリに受け渡す。
【0053】
CPU120は、ROM171に格納されているコンピュータープログラムをRAM172に展開して実行することにより、可搬型ネットワーク接続装置20の各部を制御すると共に、転送処理部121と、転送制御部122と、切替監視部123と、接続監視部124と、DHCPサーバ機能部125と、アドレス範囲調整部126の各機能部として動作する。
【0054】
転送処理部121は、ルータ機能部121rと、ブリッジ機能部121bとを有しており、各無線通信インタフェース(無線LAN制御回路174、無線WAN制御回路175、移動体通信制御回路176)及びクレードル200が有するポート220を介して入力されるパケット(レイヤ3パケット及びレイヤ2フレーム)を、宛先アドレスに従って転送する。転送制御部122は、転送処理部121を制御する。かかる制御の1つとして、転送制御部122は、後述する動作モード切り替え処理を実行することにより、転送処理部121の動作モードを設定する(切り替える)。
【0055】
切替監視部123は、切り替えスイッチ230の切り替え状態を監視する。具体的には、例えば、切り替えスイッチ230とCPU120のGPIO(General Purpose Input/Output)ポートとを図示しない制御線により接続し、切替監視部123は、かかる制御線を介してCPU120に入力される割り込み信号により、スイッチ230の切り替え状態を監視することができる。
【0056】
接続監視部124は、本体100がクレードル200に接続されているか否かを監視する機能部である。この監視は、例えば、クレードル接続インタフェース180とクレードル接続インタフェース180との間における給電の有無により監視することができる。また、例えば、USB規格における装置間の接続検出シーケンス(例えば、D+,D−のいずれかが3.3Vとなる場合に接続と検出)に従って、本体100とクレードル200との接続の有無を監視することができる。
【0057】
DHCPサーバ機能部125は、クライアントに対してDHCPサービスを提供する機能部である。具体的には、例えば、DHCPサーバ機能部125は、新たなIPアドレスの割り当てを要求するクライアントに対して、割り当てるIPアドレスを決定して通知し、また、IPアドレスのリース期間の延長を要求するクライアントに対して、延長の可否を判断して通知する。
【0058】
アドレス範囲調整部126は、DHCPサーバ機能部125がクライアントに割り当てることが可能なIPアドレスの範囲(アドレスプール)を、ルータ500との間で調整する。
【0059】
ROM171は、いわゆるフラッシュROMであり、書き込み可能なメモリである。ROM171には、上記各機能部を実現するための図示しないプログラムに加えて、DHCPサーバ優先度格納部17aと、アドレス管理テーブル格納部17bと、ルーティングテーブル格納部17cとを備えている。
【0060】
DHCPサーバ優先度格納部17aは、DHCPサーバ優先度を格納する。第1実施例において、「DHCPサーバ優先度」とは、DHCPサーバとして動作可能な複数の装置間におけるDHCPサーバとして動作する優先度合いを意味する。第1実施例では、本体100のDHCPサーバ優先度格納部17aには、予めDHCPサーバ優先度として「1」が設定(格納)されている。なお、このDHCPサーバ優先度は、後述するDHCPサーバ調停処理において用いられる。アドレス管理テーブル格納部17bは、いわゆるアドレスプールを記録する図示しないテーブルを格納する。この図示しないテーブルには、割り当て済みの各IPアドレスに対して、クライアントのMACアドレスや、IPアドレスを割り当てた時刻や、リース期間などの情報が対応付けて記録されている。ルーティングテーブル格納部17cは、図示しないルーティングテーブルを格納する。
【0061】
図5は、ルータの詳細構成を示す説明図である。ルータ500は、CPU320と、RAM330と、ROM340と、無線LAN制御回路350と、有線LAN制御部360とを備えている。
【0062】
CPU320は、ROM340に格納されているコンピュータープログラムをRAM330に展開して実行することにより、転送処理部321と、転送制御部322と、DHCPサーバ機能部323と、アドレス範囲制御部324の各機能部として動作する。
【0063】
転送処理部321は、有線LAN制御部360や無線LAN制御回路350を介して入力されるIPパケットを、宛先アドレスに従って転送する。転送制御部322は、転送処理部321を制御する。DHCPサーバ機能部323は、図4に示す本体100のDHCPサーバ機能部125と同様に、クライアントに対してDHCPサービスを提供する。アドレス範囲制御部324は、ルータ500(DHCPサーバ機能部323)がクライアントに割り当てることが可能なアドレス範囲、及び本体100(DHCPサーバ機能部125)がクライアントに割り当てることが可能なアドレス範囲を決定する。
【0064】
ROM340は、いわゆるフラッシュROMであり、書き込み可能なメモリである。ROM340には、上記各機能部を実現するための図示しないプログラムに加えて、DHCPサーバ優先度格納部341と、アドレス管理テーブル格納部342と、ルーティングテーブル格納部343とを備えている。
【0065】
DHCPサーバ優先度格納341は、図4に示す本体100のDHCPサーバ優先度格納部17aと同様に、DHCPサーバ優先度を格納する。第1実施例では、ルータ500のDHCPサーバ優先度格納部341には、予めDHCPサーバ優先度として「255」が設定(格納)されている。アドレス管理テーブル格納部17bは、図4に示す本体100のアドレス管理テーブル格納部17bと同様に、いわゆるアドレスプールを記録する図示しないテーブルを格納する。ルーティングテーブル格納部343は、図4に示す本体100のルーティングテーブル格納部17cと同様に、図示しないルーティングテーブルを格納する。
【0066】
無線LAN制御回路350は、図4に示す本体100のルーティングテーブル格納部17cと同様の構成を有する。有線LAN制御部360は、図示しないポートを複数備え、かかるポートに接続されたケーブル(例えば、ネットワークケーブルCaやネットワークケーブルCb)を介して、第1クライアントCL1,第2クライアントCL2,及びインターネットに接続されている。また、有線LAN制御部360は、所定のネットワークプロトコル(例えばイーサネット(登録商標))に従って図示しないポートを介したデータ伝送を制御する。
【0067】
前述のアドレス管理テーブル格納部17b,342は、それぞれ請求項におけるアドレス範囲記憶部に相当する。また、ルータ500及び本体100は請求項における複数のDHCPサーバ装置に、DHCPサーバ機能部125は請求項におけるアドレス割り当て制御部,延長許可制御部,及びDHCPサーバ機能調停部に、DHCPサーバ機能部323は請求項におけるアドレス割り当て制御部,延長許可制御部,及びDHCPサーバ機能調停部に、ネットワークNW1は請求項における第1のネットワークに、ネットワークNW2,NW3は請求項における第2のネットワークに、アドレス範囲調整部126は請求項における専用アドレス範囲割当要求送信部に、アドレス範囲制御部324は請求項におけるアドレス範囲設定部に、それぞれ相当する。また、DHCPサーバ機能部125,323が提供する各種機能のうち、新たなIPアドレスの割り当てを要求するクライアントに対して、割り当てるIPアドレスを決定して通知し、また、IPアドレスのリース期間の延長を要求するクライアントに対して、延長の可否を判断して通知する機能は、請求項におけるDHCPサーバ機能に相当する。
【0068】
A2.動作モード切り替え処理:
図6は、第1実施例における動作モード切り替え処理の手順を示すフローチャートである。第1実施例のIPアドレス割り当てシステム10では、可搬型ネットワーク接続装置20において動作モード切り替え処理を実行することにより、可搬型ネットワーク接続装置20(転送処理部121)の動作モードの決定及び切り替えを実現している。具体的には、可搬型ネットワーク接続装置20において、接続監視部124は、可搬型ネットワーク接続装置20の電源がオンとなった後、本体100とクレードル200との接続の有無を常時監視している。また、切替監視部123は、可搬型ネットワーク接続装置20の電源がオンとなった後、切り替えスイッチ230の切り替え状態の変化(操作の有無)を常時監視している。そして、可搬型ネットワーク接続装置20では、本体100とクレードル200との接続状態に変化が生じた場合、又は、切り替えスイッチ230の切り替え状態に変化が生じた場合に、動作モード切り替え処理が実行される。
【0069】
まず、転送制御部122は、本体100がクレードル200に接続されているか否かを、接続監視部124を制御して判定する(ステップS10)。本体100がクレードル200に接続されている場合(ステップS10:YES)、転送制御部122は、ROM171に格納されている図示しないイーサネットドライバプログラムを、クレードル200が有するLAN制御回路210にロードする(ステップS15)。
【0070】
転送制御部122は、切替監視部123を制御して、切り替えスイッチ230の状態が、「Internet」の状態であるか否かを判定する(ステップS20)。転送制御部122は、切り替えスイッチ230の状態が「Internet」の状態である場合には(ステップS115:YES)、転送処理部121の動作モードを第1動作モードに設定する(切り替える)(ステップS25)。一方、切り替えスイッチ230の状態が「Lan」の状態である場合には(ステップS20:NO)、転送制御部122は、転送処理部121の動作モードを第2動作モードに設定する(ステップS30)。ここで、第1実施例では、第1動作モードは、ブリッジとして機能する動作モードを意味し、第2動作モードは、ルータとして機能する動作モードを意味する。
【0071】
本体100がクレードル200に接続され(ステップS10:YES)、切り替えスイッチ230の状態が「Internet」の状態である場合には、本体100にはクレードル200を介してルータ500が接続されている(すなわち図1に示す第1の接続態様である)と推定される。この場合、ルータ500がIPパケットを中継する装置として機能するので、第1実施例では、可搬型ネットワーク接続装置20をブリッジとして機能する第1の動作モードで動作させるようにしている。これに対して、本体100がクレードル200に接続され(ステップS10:YES)、切り替えスイッチ230の状態が「Lan」の状態である場合には、クレードル200にはクライアントが接続されており、本体100はルータ500と接続されていない(すなわち図2に示す第2の接続態様である)と推定される。この場合、可搬型ネットワーク接続装置20が配置されたロケーション(例えば、図2に示すロケーションB)には、IPパケットを中継する装置(すなわちルータ)が存在しないと推定される。そこで、この場合、第1実施例では、可搬型ネットワーク接続装置20(転送処理部121)をルータとして機能する第2の動作モードで動作させるようにしている。また、本体100とクレードル200とが互いに接続されていない場合(ステップS10:NO)、第3の接続態様が推定されるので、第1実施例では、可搬型ネットワーク接続装置20(本体100)をルータとして機能する第2の動作モードで動作させるようにしている。
【0072】
A3.DHCPサーバ調停処理:
図7は、IPアドレス割り当てシステムにおいて実行されるDHCPサーバ調停処理の手順を示すフローチャートである。第1実施例のIPアドレス割り当てシステム10では、ルータ500及び本体100において、それぞれ電源オンの後、定期的にDHCP調停処理が実行され、同じネットワーク(ブロードキャストドメイン)内においてDHCPサーバとして動作する装置を1台のみ決定する。
【0073】
図4,7を用いて、可搬型ネットワーク接続装置20の本体100においてDHCPサーバ調停処理が実行される例を説明する。なお、ルータ500においても、DHCPサーバ機能部323によって同じ処理が実行される。
【0074】
本体100のDHCPサーバ機能部125は、DHCPサーバ優先度格納部に格納されているDHCPサーバ優先度を読み出し、DHCPサーバ優先度をネットワークにブロードキャストする(ステップS50)。図4に示すように、本体100のDHCPサーバ優先度格納部には「1」が記憶されているので、DHCPサーバ機能部125は、このDHCPサーバ優先度「1」をブロードキャストする。なお、このブロードキャストは、例えば、DHCPメッセージである「DHCPINFORM」のベンダ定義領域を利用して実行することができる。
【0075】
DHCPサーバ機能部125は、自らに設定されたDHCPサーバ優先度よりもより高いDHCPサーバ優先度の設定されたDHCPサーバが存在するか否かを判定する(ステップS55)。図1に示す第1の接続態様においては、本体100は、ルータ500からブロードキャストされるDHCPサーバ優先度「255」を受信することができる。したがって、本体100のDHCPサーバ機能部125は、この受信したDHCPサーバ優先度「255」と、自らに設定されているDHCPサーバ優先度「1」とを比較することにより、より高いDHCPサーバ優先度の設定されたDHCPサーバが存在すると判定することができる。これに対し、図2に示す第2の接続態様及び図3に示す第3の接続態様においては、本体100は、ルータ500の所属するネットワーク(ブロードキャストドメイン)に所属していないため、ルータ500からブロードキャストされるDHCPサーバ優先度「255」を受信することができない。この場合、本体100のDHCPサーバ機能部125は、比較すべきDHCPサーバ優先度を受信しないので、より高いDHCPサーバ優先度の設定されたDHCPサーバが存在しないと判定することができる。
【0076】
自らに設定されたDHCPサーバ優先度よりもより高いDHCPサーバ優先度の設定されたDHCPサーバが存在しないと判定された場合(ステップS55:NO)、本体100のDHCPサーバ機能部125は、DHCPサーバ機能を全て起動する(ステップS65)。具体的には、クライアントから新たなIPアドレスの割り当て要求を受信した場合には、自らに設定されているアドレスプールからIPアドレスを決定してクライアントに割り当てる動作や、既にIPアドレスを割り当てているクライアントからリース期間の延長要求を受信した場合に、延長可否の判断及び判断結果のクライアントへの通知の動作を実行する。なお、本体100起動後において、DHCPサーバ機能部125は動作を開始しており、DHCPサーバ機能は全て起動されている。したがって、この場合には、ステップS65の処理は、DHCPサーバ機能の起動状態を維持する処理を意味する。なお、以下では、IPアドレス割り当てシステム10において、DHCPサーバ機能を全て起動している装置を、「プライマリサーバ」と呼ぶ。
【0077】
前述のステップS55において、自らに設定されたDHCPサーバ優先度よりもより高いDHCPサーバ優先度の設定されたDHCPサーバが存在する(ステップS55:YES)と判定された場合、本体100のDHCPサーバ機能部125は、DHCPサーバ機能のうち、IPアドレスの割り当てに関する一部の機能を停止する(ステップS60)。IPアドレスの割り当てに関する一部の機能とは、クライアントから新たなIPアドレスの割り当て要求を受信した場合には、自らに設定されているアドレスプールからIPアドレスを決定してクライアントに割り当てる機能と、既にIPアドレス割り当て済みのクライアントからのリース期間の延長要求を受信した場合に、延長可否の判断及び判断結果のクライアントへの通知を実行する機能とを意味する。なお、以下では、IPアドレス割り当てシステム10において、DHCPサーバ機能のうちIPアドレスの割り当てに関する一部の機能を停止している装置を、「セカンダリサーバ」と呼ぶ。ステップS60が実行され、セカンダリサーバとして動作する場合であっても、例えば、DHCPサーバ調停処理を実行する機能など、上述したIPアドレスの割り当てに関する一部の機能を除く他の機能については、継続して実行されている。
【0078】
ステップS60又はS65を実行した後、本体100のDHCPサーバ機能部125は、所定期間の経過を待って(ステップS70)、前述のステップS50〜S60(またはS65)を実行する。
【0079】
図1に示す第1の接続態様では、ルータ500及び本体100は、それぞれ相手のDHCPサーバ優先度を知ることができるので、ルータ500はプライマリサーバとして、本体100はセカンダリサーバとして、それぞれ動作することとなる。これに対して、可搬型ネットワーク接続装置20等をロケーションAからロケーションBに持ち出して図1に示す第1の接続態様から図2に示す第2の接続態様に変更した場合、及び、可搬型ネットワーク接続装置20等をロケーションAからロケーションCに持ち出して図1に示す第1の接続態様から図3に示す第3の接続態様に変更した場合には、本体100のDHCPサーバ機能部125は、ルータ500のDHCPサーバ優先度を知ることができない。したがって、これら場合、本体100のDHCPサーバ機能部125はステップS65を実行するので、本体100はプライマリサーバとして動作することとなる。また、これら場合、ロケーションAにおいて、ルータ500のDHCPサーバ機能部323も本体100のDHCPサーバ優先度を知ることができない(本体100からブロードキャストされるDHCPサーバ優先度を受信しない)ため、ルータ500はプライマリサーバとしての動作を維持する。
【0080】
A4.アドレス範囲調整処理:
図8は、IPアドレス割り当てシステムにおいて実行されるアドレス範囲調整処理の手順を示すシーケンス図である。図8において、左はルータ500において実行される処理フローを示し、右は可搬型ネットワーク接続装置20(本体100)において実行される処理フローを示している。第1実施例では、本体100がクライアントに対して割り当てることが可能なIPアドレス範囲は、本体100及びルータ500においてアドレス範囲調整処理が実行されることにより設定される。アドレス範囲調整処理は、可搬型ネットワーク接続装置20及びルータ500が電源オンした場合に実行される。
【0081】
上述したDHCPサーバ調停処理が定期的に実行され、本体100では、前述のステップS50により、ルータ500からDHCPサーバ優先度「255」を受信している。この受信したDHCPサーバ優先度及び自ら(本体100)に設定されているDHCPサーバ優先度「1」に基づき、本体100のアドレス範囲調整部126は、自らに設定されたDHCPサーバ優先度よりもより高いDHCPサーバ優先度の設定されたDHCPサーバが存在するか否かを判定する(ステップS115)。この処理は、前述のDHCPサーバ調停処理のステップS55の処理と同じである。したがって、アドレス範囲調整部126は、ステップS55の処理結果に基づき、より高いDHCPサーバ優先度の設定されたDHCPサーバが存在するか否かを判定することもできる。
【0082】
自らに設定されたDHCPサーバ優先度よりもより高いDHCPサーバ優先度の設定されたDHCPサーバが存在すると判定された場合(ステップS115:YES)、アドレス範囲調整部126は、クライアントに対して割り当てることが可能なアドレス範囲が登録済みであるか否かを判定する(ステップS120)。具体的には、アドレス管理テーブル格納部17bにアドレス範囲が格納済みであるか否かにより、アドレス範囲が登録済みであるか否かを判定することができる。
【0083】
クライアントに対して割り当てることが可能なアドレス範囲が登録済みでないと判定されると(ステップS120:NO)、本体100のアドレス範囲調整部126は、ルータ500に対して、クライアントに対して割り当てることが可能なアドレス範囲の割り当て要求を送信する(ステップS125)。第1実施例では、このアドレス範囲の割り当て要求には、割り当てるIPアドレスの最少要求数が指定されており、図8では、「30」が指定されている。この最少要求数は、例えば、ユーザ(システム管理者)により予め本体100に設定しておくことができる。
【0084】
ルータ500において、アドレス範囲制御部324は、本体100から出力されたアドレス範囲割り当て要求を受信すると(ステップS215)、アドレス範囲割り当て要求において指定された最少要求数に基づき、本体100に対して割り当てるIPアドレスの範囲を決定する(ステップS220)。
【0085】
図9は、図5に示すルータのアドレス管理テーブル格納部に格納されているアドレス管理テーブルの設定内容を模式的に示す説明図である。上段は、ルータ500において前述のステップS220が実行される前のアドレス管理テーブルの内容を示し、下段は、ルータ500において前述のステップS220が実行された後のアドレス管理テーブルの内容を示す。
【0086】
図9上段に示すネットワーク全体アドレス範囲Z(192.168.11.2〜192.168.11.253)は、システム全体としてクライアントに割り当てることが可能なIPアドレスの範囲を意味し、予めユーザ(システム管理者)によって設定されている。また、図9上段に示すアドレス範囲X(192.168.11.2〜192.168.11.31)は、ルータ500がクライアントに対して割り当てることが可能なIPアドレスの範囲であり、予めユーザ(システム管理者)によって設定されている。このアドレス範囲Xは、ルータ500のみが使用できる、すなわち、ルータ500のみがクライアントに対して割り当てることができるIPアドレス群である。以下、いずれかの装置のみがクライアントに対して割り当てることができるIPアドレス群を、「専用アドレス範囲」と呼ぶ。
【0087】
ルータ500のアドレス範囲制御部324は、最少要求数を指定したアドレス範囲割り当て要求を受信すると、ネットワーク全体アドレス範囲Zのうち、アドレス範囲Xを除いた範囲(予備範囲)において、最少要求数を少なくとも満たすアドレス範囲を、本体100の専用アドレス範囲として決定する。図9下段に示すように、例えば、最少要求数「30」を指定したアドレス範囲割り当て要求を受信すると、アドレス範囲制御部324は、アドレス範囲Y(192.168.11.32〜192.168.11.63)を、可搬型ネットワーク接続装置20(本体100)の専用アドレス範囲として決定する。この場合、アドレス範囲Yには、合計32個のIPアドレスが含まれている。
【0088】
なお、ネットワーク全体アドレス範囲Zのうち、アドレス範囲X及びアドレス範囲Yを除く他の範囲(192.168.11.64〜192.168.11.253)は、予備の範囲として、現時点では、いずれの装置にも割り当てられていない。この予備の範囲は、ルータ500の専用アドレス範囲Xや、本体100の専用アドレス範囲Yが一杯になった場合の予備として用いることができる。また、この予備の範囲は、可搬型ネットワーク接続装置20とは異なる他の可搬型ネットワーク接続装置がIPアドレス割り当てシステム10に参加した場合に、かかる新たな可搬型ネットワーク接続装置に割り当てるためのアドレス範囲として用いることができる。
【0089】
専用アドレス範囲を決定すると、ルータ500のアドレス範囲制御部324は、割り当てた専用アドレス範囲とネットワーク全体アドレス範囲とを可搬型ネットワーク接続装置20(本体100)に通知する(ステップS225)。前述のように、本体100に対する専用アドレス範囲としてアドレス範囲Yが決定されると、このアドレス範囲Y及びネットワーク全体アドレス範囲Zが本体100に通知される。
【0090】
本体100において、アドレス範囲調整部126は、専用アドレス範囲及びネットワーク全体アドレス範囲を受信して、専用アドレス範囲を登録(すなわち、アドレス管理テーブルを生成してアドレス管理テーブル格納部342に格納)する(ステップS130)。前述のように、ルータ500からアドレス範囲Y(192.168.11.32〜192.168.11.63)が通知されると、本体100において、かかるアドレス範囲が、クライアントに対して割り当てることが可能なIPアドレスの範囲として登録されることとなる。
【0091】
以上のアドレス範囲調整処理の結果、ルータ500と、本体100とでそれぞれ互いに重複しないアドレス範囲であって、それぞれが専ら使用可能なアドレス範囲が設定されることとなる。
【0092】
A5.DHCPサーバ処理:
図10は、ルータ及び可搬型ネットワーク接続装置(本体)において実行されるDHCPサーバ処理の手順を示すフローチャートである。第1実施例では、ルータ500及び可搬型ネットワーク接続装置20(本体100)では、定期的にDHCPサーバ処理が実行される。なお、前述のDHCPサーバ調停処理も定期的に実行されている。そこで、DHCPサーバ調停処理の最後の処理(ステップS70)が実行された後に、DHCPサーバ処理が開始されることが好ましい。以下、可搬型ネットワーク接続装置20(本体100)において実行されるDHCPサーバ処理を説明するが、ルータ500においても同じ処理が実行される。
【0093】
本体100のDHCPサーバ機能部323は、本体100がプライマリサーバとして動作しているか否かを判定し(ステップS305)、プライマリサーバとして動作していない(すなわち、セカンダリサーバとして動作している)と判定すると(ステップS305:NO)、他の処理を実行せずにステップS305に戻り、再び前述の処理を実行する。これに対して、ステップS305においてプライマリサーバとして動作していると判定すると(ステップS305:YES)、DHCPサーバ機能部323は、クライアントからの新たなIPアドレスの割り当て要求があるか否かを判定する(ステップS310)。プライマリサーバとして動作しているか否かは、前述のDHCPサーバ調停処理のステップS60が実行されて一部機能が停止しているか否かにより判定することができる。クライアントからの新たなIPアドレスの割り当て要求とは、例えば、DHCPDiscoverメッセージ及びDHCPRequestメッセージを採用することができる。
【0094】
クライアントから新たなIPアドレスの割り当て要求があると判定されると(ステップS310:YES)、本体100のDHCPサーバ機能部125は、自らの専用アドレス範囲から、新たにIPアドレスを割り当てて、クライアントに通知する(ステップS315)。
【0095】
ステップS315が実行された場合または前述のステップS310においてクライアントから新たなIPアドレスの割り当て要求がないと判定された場合(ステップS310:NO)には、本体100のDHCPサーバ機能部125は、IPアドレスを割り当て済みのクライアントからIPアドレスのリース期間の延長要求があるか否かを判定する(ステップS320)。
【0096】
リース期間の延長要求としては、例えば、DHCPRequestメッセージを採用することができる。ここで、DHCPRequestメッセージを採用する場合、かかるメッセージは、宛先(IPアドレスを割り当てたサーバ)を指定したユニキャストにより送信される。ここで、例えば、図2に示す第2クライアントCL2のように、ロケーションAにおいてプライマリサーバであるルータ500からIPアドレス(192.168.11.3)を割り当てられた後にロケーションBに移ったクライアントは、ルータ500を宛先としてリース期間の延長要求をユニキャストすることとなる。しかしながら、ロケーションBにはルータ500は存在せず、本体100がプライマリサーバとして動作している。そこで、第1実施例では、本体100のDHCPサーバ機能部125はルータ500のIPアドレス及びMAC(Media Access Control)アドレスを、ルータ500のDHCPサーバ機能部323は本体100のIPアドレス及びMACアドレスを、それぞれ予め学習しておき、学習した他方の装置のアドレスを宛先とするリース期間の延長要求を受信するように構成されている。したがって、例えば、図2のロケーションBでは、第2クライアントCL2からルータ500を宛先として出力されるリース期間の延長要求は、本体100によって受信されることとなる。
【0097】
リース期間の延長要求があると判定された場合(ステップS320:YES)、本体100のDHCPサーバ機能部125は、延長要求の対象となるIPアドレスが、ネットワーク全体アドレス範囲に含まれているか否かを判定し(ステップS325)、ネットワーク全体アドレス範囲に含まれている場合には、図示しないアドレス管理テーブルにおいて、該当IPアドレスについてリース期間の延長を登録すると共に、クライアントに対して延長許可を示すパケット(ACKパケット)を送信する(ステップS330)。ネットワーク全体アドレス範囲に含まれていないIPアドレスについての延長要求については、DHCPサーバ機能部125は許可の可否を判断できないので、かかる延長要求に対してはACKを送信しない。
【0098】
前述のステップS320においてリース期間の延長要求がないと判定された場合(ステップS320:NO),前述のステップS325において延長要求の対象となるIPアドレスがネットワーク全体アドレス範囲に含まれていないと判定された場合(ステップS325:NO),及びステップS330が実行された後には、DHCPサーバ処理は終了する。
【0099】
図11は、DHCPサーバ処理の一例を示す第1の説明図である。図11上段は、図2に示すロケーションBにおいて、本体100がDHCPサーバ処理を実行する場合の例を示している。図11下段は、図11上段の例において、各アドレス範囲X,Y,Zと、第2クライアントCL2及び第3クライアントCL3にそれぞれ割り当てられるIPアドレスを示す説明図である。
【0100】
上述したように、ロケーションBでは、可搬型ネットワーク接続装置20(本体100)は、プライマリサーバとして動作している。したがって、第2クライアントCL2から既に割り当てられているIPアドレス(192.168.11.4)の延長要求があると、このIPアドレス(192.168.11.4)は、本体100の専用アドレス範囲Yに含まれていないが、ネットワーク全体アドレス範囲Zには含まれているので、ステップS330が実行され、本体100は、かかるIPアドレスの延長要求に対して許可を与える。
【0101】
また、ロケーションBで新たにIPアドレス割り当てシステム10に参加する第3クライアントCL3から新たにIPアドレスの割り当て要求があると、ステップS315が実行される。その結果、例えば、図11に示すように、本体100の専用アドレス範囲Yの含まれるIPアドレス(192.168.11.32)が、第3クライアントCL3に割り当てられる。
【0102】
図12は、DHCPサーバ処理の一例を示す第2の説明図である。図12上段は、図3下段に示すロケーションCに配置されていた本体100,第2クライアントCL2及び第4クライアントCL4が、ロケーションAに戻って第1の接続態様となり、ルータ500及び本体100がDHCPサーバ処理を実行する場合の例を示している。図12下段は、図12上段の例において、各アドレス範囲X,Y,Zと、第1クライアントCL1と第2クライアントCL2と第3クライアントCL3にそれぞれ割り当てられるIPアドレスを示す説明図である。
【0103】
本体100が、ロケーションCからロケーションAに戻ると、ロケーションAにはDHCPサーバ優先度のより高いルータ500が存在するので、プライマリサーバとして動作していた本体100は、DHCPサーバ調停処理の結果、セカンダリサーバとして動作することとなる。したがって、3台のクライアントCL1,CL2,CL4が出力するリース期間の延長要求は、いずれもプライマリサーバであるルータ500により受信される。第4クライアントCL4に割り当てられているIPアドレス(192.168.11.33)は、ルータ500の専用アドレス範囲Xに含まれていない。しかしながら、第4クライアントCL4に割り当てられているIPアドレスは、ネットワーク全体アドレス範囲Zには含まれているので、ルータ500は、かかるIPアドレスの延長要求に対して許可を与える。
【0104】
以上説明した第1実施例のIPアドレス割り当てシステム10では、本体100とルータ500とで、ネットワーク全体アドレス範囲Zにおいて、本体100の専用アドレス範囲(Yアドレス範囲Y)と、ルータ500の専用アドレス範囲(アドレス範囲X)とが互いに重複しないように設定される。したがって、本体100とルータ500とが、それぞれ異なるクライアントに対して同一のIPアドレスを割り当てることを抑制できる。これにより、可搬型ネットワーク接続装置20(本体100)とルータ500とが互いに離れて配置されたために、それぞれDHCPサーバとして(プライマリサーバとして)動作してクライアントにIPアドレスを割り当てたとしても、これらクライアントで割り当てられるIPアドレスに重複は生じない。したがって、その後、可搬型ネットワーク接続装置20(本体100)とクライアントが、ルータ500の所属するネットワーク(ブロードキャストドメイン)に戻った場合でも、IPアドレスの重複に起因する通信障害の発生を抑制できる。加えて、本体100とルータ500とで、専用アドレス範囲が互いに重複しないように設定されるので、アドレス範囲調整処理が終了した後には、本体100とルータ500との間において、アドレスプールを同期させるためにデータを送受信することを要しない。したがって、ネットワーク障害等により、本体100とルータ500とが互いに通信できない場合であっても、IPアドレスの重複割り当ての発生を抑制できる。
【0105】
また、本体100及びルータ500は、いずれもプライマリサーバとして動作する場合に、他方の装置がIPアドレスを割り当てたクライアントから、IPアドレスのリース期間の延長要求が送信された場合に、かかる要求を受信して応答する。したがって、本体100とルータ500とが互いに同一のネットワークに属する場合に、いずれか一方をセカンダリサーバとして動作させてDHCPサーバとしての一部機能を停止させた場合でも、クライアントからの延長要求に応答できない状態の発生を抑制できる。
【0106】
また、本体100とルータ500とは、いずれもDHCPサーバ調停処理を実行し、DHCPサーバ優先度を送りあって、より優先度の高い装置がプライマリサーバとして動作するので、ユーザ(システム管理者)は、このDHCPサーバ優先度を調整することにより、より優先してプライマリサーバとして動作させる装置を指定することができる。また、DHCPサーバ調停処理の結果、本体100及びルータ500のうち、いずれか一方のみがIPアドレスに関する機能を提供するので、本体100及びルータ500のいずれもがクライアントに対してIPアドレス(この場合、互いに異なるIPアドレス)を割り当てることを抑制できる。したがって、例えば、クライアントにおいて、割り当てられた複数のIPアドレスから1つのIPアドレスを選択する処理を省略することができ、クライアントにおける処理負荷を軽減できる。加えて、本体100及びルータ500のうち、クライアントによって選択されないIPアドレスを割り当てた側の処理を省略できる。
【0107】
また、ルータ500において、本体100及びルータ500にそれぞれ割り当てるべき専用アドレス範囲を決定して一元的に管理しているので、複数の装置で管理する方法に比べて、各専用アドレス範囲の重複の発生を抑制することができると共に、複数の装置間でアドレス範囲についての情報を同期させるための機能を省略することができる。
【0108】
また、アドレス範囲調整処理において、本体100からルータ500に送信されるアドレス範囲割り当て要求において、割り当てるIPアドレスの最少要求数を指定するので、ルータ500では、必要最小限のアドレス範囲を割り当てることができる。したがって、ネットワーク全体アドレス範囲Zのうち、実際にクライアントに割り当てられない無駄なアドレス範囲の発生を抑制できる。なお、上述した第1実施例では、最少要求数「30」に対して、32個のIPアドレスが割り当てることが可能なアドレス範囲を、アドレス範囲Yとして決定していた。このように、最少要求数よりも若干多い数のIPアドレスを含む範囲を専用アドレス範囲として決定することにより、割り当てを要求する側における見積もり誤りや、クライアント数の若干の増加にも対応することができる。
【0109】
また、アドレス範囲調整処理では、割り当てたアドレス範囲に加えて、ネットワーク全体アドレス範囲も本体100に通知するので、本体100では、クライアントから送信されるリース期間延長要求の対象となるIPアドレスが、IPアドレス割り当てシステム10において割り当てられた正規のIPアドレスであるか否かを判定することができる。
【0110】
また、本体100及びルータ500は、DHCPサーバ調停処理を定期的に実行するので、本体100が、ルータ500が所属するネットワークNW1とは異なるネットワークNW2,NW3に所属することになった場合に、自らの所属するネットワークNW2,NW3にルータ500が存在しなくなったことを短期間のうちに検出することができる。したがって、ネットワークNW2,NW3にプライマリサーバが存在しない期間を短縮することができるので、IPアドレスの割り当てや、リース期間の延長の可否判断ができない期間を短縮することができる。
【0111】
B.第2実施例:
図13は第2実施例の可搬型ネットワーク接続装置の詳細構成を示す説明図である。図14は、第2実施例のルータの詳細構成を示す説明図である。第2実施例のIPアドレス割り当てシステムでは、可搬型ネットワーク接続装置20a及びルータ500aは、VRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)により、1台の仮想ルータを構成している。これに伴い、可搬型ネットワーク接続装置及びルータの詳細構成において第1実施例のIPアドレス割り当てシステム10と異なる。加えて、動作モード切り替え処理を実行しない点と、DHCPサーバ調停処理の手順と、アドレス範囲調整処理の手順とにおいて、第1実施例のIPアドレス割り当てシステム10と異なり、他の構成は第1実施例のIPアドレス割り当てシステム10と同じである。
【0112】
図13に示す第2実施例の可搬型ネットワーク接続装置20aは、本体100aにおいて、DHCPサーバ優先度格納部17aが省略され、かつ、VRRP設定データ格納部17d及びVRRP制御部127を備えている点と、クレードル200aにおいて、切り替えスイッチ230を備えていない点と、において、図4に示す第1実施例の可搬型ネットワーク接続装置20と異なり、他の構成は、第1実施例の可搬型ネットワーク接続装置20と同じである。
【0113】
VRRP設定データ格納部17dは、VRRPを実現するために必要な設定値を格納する。具体的には、VRID(Virtual Router ID)や、優先度や、広告インターバル(VRRP広告を送出する時間間隔)や、仮想ルータとしてのIPアドレス及びMACアドレス等の値を格納する。これらの各設定値は、ユーザ(システム管理者)によって予め設定されている。
【0114】
VRRP制御部127は、VRRPに従った処理を実行する。例えば、VRRP制御部127は、VRRP広告メッセージを送信し、また、他のルータから送信されるVRRP広告メッセージを受信する。また、例えば、VRRP制御部127は、受信したVRRP広告メッセージに基づき、本体100aが、マスタルータ又はバックアップルータのいずれで動作するかを決定する。
【0115】
図14に示す第2実施例のルータ500aは、DHCPサーバ優先度格納部341が省略され、かつ、VRRP設定データ格納部344及びVRRP制御部325を備えている点において、図5に示す第1実施例のルータ500と異なり、他の構成は、第1実施例のルータ500と同じである。
【0116】
VRRP設定データ格納部344は、図13に示すVRRP設定データ格納部17dと同様に、VRRPを実現するために必要な設定値を格納する。なお、設定値は、ユーザ(システム管理者)によって予め設定されている。また、VRRP制御部325は、図13に示すVRRP制御部127と同様な動作を行う。
【0117】
ここで、本体100a及びルータ500aには、互いにVRIDとして同じ値が設定されている。また、本体100a及びルータ500aには、互いに仮想ルータのIPアドレス及びMACアドレスとして同じ値が設定されている。また、ルータ500aのVRRPに関する優先度として、本体100aのVRRPに関する優先度よりも高い値が設定されている。
【0118】
図15は、第2実施例における第1の接続態様を示す説明図である。図15に示すように、ルータ500a及び可搬型ネットワーク接続装置20a(本体100a)により仮想ルータ800が構成されている点と、第2クライアントCL2は、本体100aに代えてルータ500aと無線通信を行い、ルータ500aを介してインターネットを介した通信を実現している点とにおいて、図1に示す第1実施例の第1の接続態様と異なり、他の構成は、第1実施例の第1の接続態様と同じである。
【0119】
図15に示すように、ルータ500aと、可搬型ネットワーク接続装置20a(本体100a)は、互いにVRRP広告メッセージを送受信して、他方の優先度を知ることができる。したがって、第1の接続態様では、優先度のより高いルータ500aが実際にパケットを中継するルータ(マスタルータ)として機能し、優先度のより低い本体100aはパケットの中継を行わないルータ(バックアップルータ)として機能することとなる。したがって、第2クライアントCL2は、インターネット上の宛先にデータを送信する場合には、第1実施例とは異なり、ルータ500aにデータ(パケット)を送信することとなる。
【0120】
図16は、第2実施例のDHCPサーバ調停処理の手順を示すフローチャートである。第2実施例のDHCPサーバ調停処理は、ステップS50を省略する点と、ステップS55に代えてステップS55aを実行する点において、図7に示す第1実施例のDHCPサーバ調停処理と異なり、他の手順は第1実施例と同じである。以下、本体100aにおいてDHCPサーバ調停処理が実行されるケースを説明するが、ルータ500aにおいても同様に実行される。
【0121】
図16に示すように、DHCPサーバ機能部125は、可搬型ネットワーク接続装置20a(本体100a)がVRRPのマスタルータとして動作しているか否かを判定する(ステップS55a)。かかる判定は、VRRP制御部127に問い合わせることにより実現することができる。
【0122】
そして、バックアップルータとして動作していると判定された場合(ステップS55a:YES)には、前述のステップS60が実行される。これに対し、バックアップルータとして動作してない(すなわち、マスタルータとして動作している)と判定された場合(ステップS55a:NO)には、前述のステップS65が実行される。
【0123】
このような処理により、第2実施例のIPアドレス割り当てシステムでは、マスタルータとして機能する装置がDHCPサーバ機能に関する前述のプライマリサーバとして機能し、バックアップルータとして機能する装置がDHCPサーバ機能に関する前述のセカンダリサーバとして機能する。それゆえ、第1の接続態様では、ルータ500aは、マスタルータとして動作するためにDHCPサーバ機能に関するプライマリサーバとして動作し、本体100aは、バックアップルータとして動作するためDHCPサーバ機能に関するセカンダリサーバとして動作することとなる。したがって、第1実施例と同様に、第1の接続態様においては、クライアントに対する新たなIPアドレスの割り当て、及びリース期間の延長要求への許可の判断及び判断結果の通知は、ルータ500aにより実行される。
【0124】
また、図2に示すように本体100aがロケーションBに持ち出された場合や、図3に示すように本体100aがロケーションCに持ち出された場合には、本体100aとルータ500aとの間でVRRP広告メッセージが到達しないため、本体100a及びルータ500aは、いずれもマスタルータとして動作する。したがって、第1実施例と同様に、本体100a及びルータ500aは、いずれもDHCPサーバ機能に関するプライマリサーバとして動作することとなる。
【0125】
図17は、第2実施例におけるアドレス範囲調整処理の手順を示すシーケンス図である。図17において、左はルータ500aにおいて実行される処理フローを示し、右は可搬型ネットワーク接続装置20a(本体100a)において実行される処理フローを示している。第2実施例のアドレス範囲調整処理は、ステップS115に代えて、ステップS115aを実行する点において、図8に示す第1実施例のアドレス範囲調整処理と異なり、他の手順は、第1実施例のアドレス範囲調整処理と同じである。
【0126】
第2実施例では、本体100aは、自らがVRRPにおけるバックアップルータとして動作しているか否かを判定し(ステップS115a)、バックアップルータとして動作していると判定された場合(ステップS115a:YES)、前述のステップS120が実行され、バックアップルータとして動作していない(すなわち、VRRPにおけるマスタルータとして動作している)と判定された場合には、アドレス範囲調整処理は終了する。
【0127】
以上の構成を有する第2実施例のIPアドレス割り当てシステムでは、例えば、図11に示す第2の接続状態において、第2クライアントCL2が延長要求を送信する場合、かかる延長要求の宛先は、第1実施例とは異なり、本体100aに設定されているIPアドレス及びMACアドレスとなる。これは、以下の理由による。本体100a及びルータ500aは、いずれも、同一のIPアドレス及び同一のMACアドレスが割り当てられている。したがって、クライアントに対してIPアドレスを割り当てたのが、本体100a及びルータ500aのいずれであっても、DHCPサーバとしてのIPアドレス及びMACアドレスは同じである。それゆえ、クライアントがIPアドレスのリース期間の延長要求をユニキャストする場合の宛先となるIPアドレス及びMACアドレスは、本体100aのIPアドレス及びMACアドレスと同じになるからである。このような構成により、第2実施例のIPアドレス割り当てシステム10では、第1実施例のように、本体100a及びルータ500aがそれぞれ他方のIPアドレス及びMACアドレスを学習しておき、他方を宛先とするリース期間の延長要求のパケットを受信する処理を省略することができる。それゆえ、かかる処理を実行するための機能の省略が可能となり、本体100a及びルータ500aの製造コストを抑制することができる。
【0128】
以上説明した第2実施例のIPアドレス割り当てシステムは、第1実施例のIPアドレス割り当てシステム10と同様な効果を有する。加えて、ルータ500aと可搬型ネットワーク接続装置20a(本体100a)は仮想ルータとして動作し、互いに同じIPアドレス及びMACアドレスを用いるので、他方の装置(ルータ500a又は本体100a)によってIPアドレスが割り当てられたクライアントからのリース期間の延長要求のパケットであっても、自ら宛のパケットとして受信することができる。したがって、本体100a及びルータ500において、他方のIPアドレス及びMACアドレスを宛先とする他方宛のリース期間の延長要求のパケットを受信する機能を省略でき、製造コストを抑制できる。
【0129】
また、第2実施例では、ルータ500aと可搬型ネットワーク接続装置20a(本体100a)とのうち、VRRPのマスタルータとなった装置がプライマリサーバとなり、バックアップルータとなった装置がセカンダリサーバとなるので、プライマリサーバ及びセカンダリサーバを決定するためのDHCPサーバ優先度の設定及び送受信の処理や、DHCPサーバ調停処理を省略することができる。
【0130】
C.第3実施例:
図18は第3実施例の可搬型ネットワーク接続装置の詳細構成を示す説明図である。図19は、第3実施例のルータの詳細構成を示す説明図である。第2実施例のIPアドレス割り当てシステムでは、本体及びルータにはDHCPサーバ優先度が設定されていない。具体的には、図18に示す本体100bは、DHCPサーバ優先度格納部17aを備えていない。なお、本体100bにおける他の構成は、図4に示す第1実施例の本体100と同じである。また、図19に示すルータ500bは、DHCPサーバ優先度格納部341を備えていない。なお、ルータ500bにおける他の構成は、図5に示す第1実施例のルータ500と同じである。第3実施例のIPアドレス割り当てシステムでは、本体100b及びルータ500bでは、前述のステップS50(DHCPサーバ優先度のブロードキャスト)を実行しない。また、第3実施例のIPアドレス割り当てシステムでは、ルータ500bは、DHCPサーバ調停処理を実行せずに、常にプライマリサーバとして動作する。
【0131】
図20は、第3実施例におけるDHCPサーバ調停処理の手順を示すフローチャートである。図20に示すDHCPサーバ調停処理は、本体100b(可搬型ネットワーク接続装置)においてのみ実行され、ルータ500bでは実行されない。第3実施例のDHCPサーバ調停処理は、ステップS50を省略する点と、ステップS55に代えてステップS55bを実行する点において、図7に示す第1実施例のDHCPサーバ調停処理と異なり、他の手順は第1実施例と同じである。
【0132】
図20に示すように、本体100bのDHCPサーバ機能部は、転送処理部121(可搬型ネットワーク接続装置)の動作モードとして、第1動作モードが設定されているか否かを判定する(ステップS55b)。かかる判定は、転送制御部122に問い合わせることにより実現することができる。
【0133】
そして、第1動作モードが設定されていると判定された場合(ステップS55b:YES)には、前述のステップS60が実行される。これに対し、第1動作モードが設定されていない(すなわち、第2動作モードが設定されている)と判定された場合(ステップS55b:NO)には、前述のステップS65が実行される。
【0134】
このような処理により、第3実施例のIPアドレス割り当てシステムでは、本体100bにルータ500bが接続されていると推定される場合には、本体100b(可搬型ネットワーク接続装置)をセカンダリサーバとして動作させることができる。また、本体100bにルータ500bが接続されていないと推定される場合には、本体100b(可搬型ネットワーク接続装置)をプライマリサーバとして動作させることができる。
【0135】
図21は、第3実施例におけるアドレス範囲調整処理の手順を示すシーケンス図である。図21において、左はルータ500bにおいて実行される処理フローを示し、右は第3実施例の可搬型ネットワーク接続装置(本体100b)において実行される処理フローを示している。第3実施例のアドレス範囲調整処理は、ステップS115に代えて、ステップS115bを実行する点において、図8に示す第1実施例のアドレス範囲調整処理と異なり、他の手順は、第1実施例のアドレス範囲調整処理と同じである。
【0136】
第3実施例では、本体100bは、転送処理部121の動作モードとして第1動作モード(ブリッジ)が設定されているか否かを判定し(ステップS115b)、第1動作モードが設定されていると判定された場合(ステップS115b:YES)、前述のステップS120が実行され、第1動作モードが設定されていない(すなわち、第2動作モードが設定されている)と判定された場合には、アドレス範囲調整処理は終了する。
【0137】
以上の構成を有する第3実施例のIPアドレス割り当てシステムは、第1実施例と同様の効果を有する。加えて、DHCPサーバ優先度の設定及び送受信を省略するので、本体100bのCPU120及びルータ500bのCPU320の処理負荷を軽減させることができる。
【0138】
D.変形例:
この発明は、上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0139】
D1.変形例1:
各実施例では、可搬型ネットワーク接続装置20,20aは、ルータ500,500aの設置されたロケーション(ロケーションA)から容易に持ち出して使用可能な装置であったが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、可搬型ネットワーク接続装置20,20aに代えて、ルータ500,500aと同様に、据え置き型のネットワーク装置を採用することもできる。この場合、第2,3の接続態様は実現できないが、第1の接続態様は実現でき、この第1の接続態様において、ルータ500,500aの故障が発生した場合でも、この据え置き型のネットワーク装置がプライマリサーバとして動作するので、IPアドレスの重複割り当ての発生を抑制できると共に、DHCPサーバの冗長性を向上させることができる。
【0140】
D2.変形例2:
各実施例では、DHCPサーバ調停処理を実行し、同じネットワーク内に存在するプライマリサーバ(DHCPサーバ機能をすべて実行するサーバ)を1台のみに限定するようにしていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1実施例において、本体100及びルータ500のいずれもDHCPサーバ装置として動作し、DHCPサーバ機能をすべて実行する構成を採用することもできる。この構成においては、同じクライアントからの新たなIPアドレスの割り当て要求(DHCPDiscover)に対して、本体100及びルータ500が、それぞれIPアドレスを割り当てるパケット(DHCPOffer)をクライアントに送信することとなる。この構成においても、本体100及びルータ500に設定されている専用アドレス範囲は重複しないので、本体100及びルータ500がクライアントに割り当てるIPアドレスは、互いに異なっている。また、クライアントでは、2つのIPアドレスが通知されることになるが、いずれか一方のみを選択して、選択したIPアドレスを明示してアドレス設定要求(DHCPRequest)を送信する構成を採用することができる。クライアントにおけるIPアドレスの選択方法としては、例えば、より小さい値のIPアドレスを選択する方法を採用することができる。
【0141】
また、例えば、各実施例では、セカンダリサーバは、新たなIPアドレスの割り当てと、リース期間の延長可否の判断及び判断結果の通知とのいずれも実行しない構成であったが、これに代えて、新たなIPアドレスの割り当ては実行しないが、リース期間の延長可否の判断及び判断結果の通知を実行する構成を採用することもできる。このような構成により、例えば、図12に示すように、本体100又は可搬型ネットワーク接続装置200がロケーションAに戻った場合において、ルータ500は、本体100によってIPアドレスが割り当てられたクライアント(第4クライアントCL4)から出力される延長要求を受信して、延長可否の判断及び判断結果の通知を実行することを要しない。
【0142】
D3.変形例3:
各実施例では、ルータ500,500aがDHCPサーバとしても動作可能であったが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ロケーションAにおいて、ルータ500,500aとは別にDHCPサーバ装置を配置し、ルータ500,500aは、主としてレイヤ3パケットの中継処理を行う構成を採用することもできる。この構成においては、ルータ500,500aに代わって、DHCPサーバ装置がDHCPサーバ調整処理や、アドレス範囲調整処理や、DHCPサーバ処理を実行する。
【0143】
D4.変形例4:
第1実施例では、DHCPINFORMメッセージによりDHCPサーバ優先度を送信していたが、他のパケット(例えば、DHCPサーバ優先度を送るための専用のパケット)を用いて送信することもできる。また、このDHCPサーバ優先度を送信するパケットはブロードキャストにより送信していたが、これに代えて、ユニキャストする構成を採用することもできる。この構成では、予め他方のIPアドレス及びMACアドレスを設定しておくことが好ましい。
【0144】
D5.変形例5:
各実施例では、第2の接続態様は、第1の接続態様から、可搬型ネットワーク接続装置20等を持ち出した場合に起こり得るものとしていたが、これに代えて、予め、ロケーションAにはルータ500等を、ロケーションBには可搬型ネットワーク接続装置20等を、それぞれ配置することにより、第2の接続態様を実現することもできる。同様に、各実施例では、第3の接続態様は、第1の接続態様から、本体100等を持ち出した場合に起こり得るものとしていたが、これに代えて、予め、ロケーションAにはルータ500等を、ロケーションCには本体100等を、それぞれ配置することにより、第3の接続態様を実現することもできる。
【0145】
D6.変形例6:
各実施例では、アドレス範囲割り当て要求において指定する最少要求数は「30」であったが、任意の数を採用することもできる。また、各実施例において、最少要求数は、予め本体100,100aに設定されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本体100,100aにおいて、IPアドレスの割り当て履歴をROM171に記憶しておき、この履歴に基づき、前回アドレス範囲を割り当てられた後に新たにクライアントに割り当てたIPアドレスの合計数を算出し、かかる合計数に基づき最少要求数を決定することもできる。例えば、前回アドレス範囲を割り当てられた後に新たにクライアントに割り当てたIPアドレスの合計数が「40」であれば、今回も少なくとも40程度のIPアドレスを割り当てる可能性が高いので、40以上の任意の数(例えば、45)を最少要求数として設定することもできる。このような構成により、履歴に基づいて最少要求数が設定されるので、必要十分な数を最少要求数として設定することができ、本体100,100aにおいて広すぎる専用アドレス範囲が設定され、クライアントに割り当てられない無駄なIPアドレスが発生することを抑制できる。なお、かかる構成においては、ROM171は、請求項における履歴記録部に相当する。また、最少要求数は、請求項における最低要求範囲に相当する。
【0146】
また、例えば、本体100,100aに設定することに代えて、ルータ500,500aに、本体100,100aに割り当てるべきIPアドレスの数を予め設定しておく構成を採用することもできる。
【0147】
また、例えば、本体100,100aからアドレス範囲割り当て要求を受信した場合に、ネットワーク全体アドレス範囲Zのうち、ルータ500,500aの専用アドレス範囲(アドレス範囲X)を除く全ての範囲を、本体100,100aの専用アドレス範囲として設定することもできる。この構成によれば、本体100,100aは、最少要求数をルータ500,500aに通知することを要しない。
【0148】
また、各実施例では、最少要求数よりも若干多い数のIPアドレスを含む範囲を、専用アドレス範囲として決定していたが、これに代えて、最少要求数とちょうど同じ数のIPアドレスを含む範囲を専用アドレス範囲として決定することもできる。
【0149】
D7.変形例7:
各実施例では、プライマリサーバは、各クライアントに対してIPアドレスのみを割り当てるものとしたが、IPアドレスに加えて、デフォルトゲートウェイのIPアドレスや、DNS(Domain Name Service)サーバのIPアドレスを通知することもできる。
【0150】
D8.変形例8:
各実施例では、DHCPサーバ処理において、リース期間の延長要求があった場合に、延長要求の対象となるIPアドレスが、ネットワーク全体アドレス範囲に含まれているか否かを判定していたが(ステップS325)、この処理を省略することもできる。すなわち、システム10,10aにおいて、ルータ500,500a及び本体100以外にIPアドレスを割り当てる装置が追加されない限り、クライアントに対して割り当てられるIPアドレスは、ネットワーク全体アドレス範囲に含まれる。したがって、ステップS325の処理を省略することも可能となる。このように、かかる処理を省略することにより、ルータ500,500a及び本体100の処理負荷を軽減することができる。
【0151】
D9.変形例9:
各実施例における可搬型ネットワーク接続装置20,20aの構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施例では、本体100,100aのクレードル接続インタフェース180とクレードル200,200aの本体接続インタフェース280とが、USB規格に則って情報のやり取りを行うとしているが、本体100,100aとクレードル200,200aとの間の情報のやり取りはUSBとは異なる他の規格に則って行われるとしてもよい。
【0152】
また、上記実施例において、無線LAN制御回路174や無線WAN制御回路175は、IEEE802.11a/b/gに準拠した無線LANに限らず、将来的に利用可能となる無線LAN一般により無線通信を行う無線通信インタフェースであるとしてもよい。また、移動体通信制御回路176は、3G/HSPAに準拠した移動体通信に限らず、例えばLTEや次世代モバイルWiMAX(IEEE802.16m)、次世代PHS(XGP:eXtended Global Platform)といった将来的に利用可能となる移動体通信一般により無線通信を行う無線通信インタフェースであるとしてもよい。
【0153】
また、上記実施例では、本体100,100aが無線LAN制御回路174と無線WAN制御回路175と移動体通信制御回路176との3種類の無線通信インタフェースを含むとしているが、本体100,100aが3種類の無線通信インタフェースの内の1種類あるいは2種類のみを含むとしてもよいし、本体100,100aが4種類以上の無線通信インタフェースを含むとしてもよい。あるいは、本体100,100aが同じ種類の無線通信インタフェースを複数含むとしてもよい。また、本発明は、無線LANや移動体通信に限らず、所定の無線通信ネットワークにおける無線通信一般に適用することができる。また、IPアドレス割り当てシステムを構成する各構成要素の数は、各実施例で示す数に限定されない。例えば、可搬型ネットワーク接続装置は、1台に限らず、任意の台数とすることもできる。
【0154】
また、上記実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。また、本発明の機能の一部または全部がソフトウェアで実現される場合には、そのソフトウェア(コンピュータープログラム)は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納された形で提供することができる。この発明において、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスクやCD−ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種のRAMやROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスク等のコンピュータに固定されている外部記憶装置も含んでいる。すなわち、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、データを一時的ではなく固定可能な任意の記録媒体を含む広い意味を有している。
【符号の説明】
【0155】
10…IPアドレス割り当てシステム
20…可搬型ネットワーク接続装置
100…本体
120…CPU
121…転送処理部
121b…ブリッジ機能部
121r…ルータ機能部
122…転送制御部
123…切替監視部
124…接続監視部
125…DHCPサーバ機能部
126…アドレス範囲調整部
171…ROM
17a…DHCPサーバ優先度格納部
17b…アドレス管理テーブル格納部
17c…ルーティングテーブル格納部
172…RAM
173…USBデバイスインタフェース
174…無線LAN制御回路
175…無線WAN制御回路
176…移動体通信網制御回路
180…クレードル接続インタフェース
200…クレードル
210…LAN制御回路
220…ポート
230…スイッチ
280…本体接続インタフェース
Ca…ネットワークケーブル
500…ルータ
320…CPU
321…転送処理部
322…転送制御部
323…DHCPサーバ機能部
324…アドレス範囲制御部
330…RAM
340…ROM
341…DHCPサーバ優先度格納部
342…アドレス管理テーブル格納部
343…ルーティングテーブル格納部
350…無線LAN制御回路
360…有線LAN制御部
Cb…ネットワークケーブル
CL1…第1クライアント
CL2…第2クライアント
CL3…第3クライアント
CL4…第4クライアント
20a…可搬型ネットワーク接続装置
100a…本体
200a…クレードル
127…VRRP制御部
17d…VRRP設定データ格納部
500a…ルータ
325…VRRP制御部
344…VRRP設定データ格納部
Z…ネットワーク全体アドレス範囲
X…アドレス範囲(専用アドレス範囲)
Y…アドレス範囲(専用アドレス範囲)
100b…本体
500b…ルータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のネットワークに所属し得る複数のDHCPサーバ装置を用いてクライアントに対してIPアドレスを割り当てるIPアドレス割り当てシステムであって、
各DHCPサーバ装置は、それぞれ、
前記第1のネットワークのIPアドレスの全範囲であるネットワーク全体アドレス範囲のうち、前記クライアントに割り当て可能なIPアドレスの範囲であって、他のDHCPサーバ装置とは重複しないIPアドレスの範囲である専用アドレス範囲を記憶するアドレス範囲記憶部と、
前記クライアントから新たなIPアドレスの割り当て要求を受信すると、前記専用アドレス範囲に含まれるIPアドレスを、前記IPアドレスの割り当てから解放までの期間であるリース期間を指定して前記クライアントに割り当てるアドレス割り当て制御部と、
前記クライアントから割り当てられているIPアドレスに関する前記リース期間の延長要求を受信すると、前記既設IPアドレスが前記専用アドレス範囲に含まれているか否かに関わらず、延長許可を前記クライアントに送信する延長許可制御部と、
を有する、IPアドレス割り当てシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のIPアドレス割り当てシステムにおいて、
各DHCPサーバ装置は、それぞれ、DHCPサーバ機能を提供するか否かについて他のDHCPサーバ装置との間において調停するDHCPサーバ機能調停部を有し、
前記複数のDHCPサーバ装置が有する複数の前記DHCPサーバ機能調停部同士の調停の結果、前記複数のDHCPサーバ装置のうち、1台のDHCPサーバ装置のみが、DHCPサーバ機能を提供するプライマリサーバとして動作し、前記プライマリサーバであるDHCPサーバ装置を除く他のDHCPサーバ装置は、DHCPサーバ機能を提供しないセカンダリサーバとして動作し、
前記プライマリサーバとして動作する前記DHCPサーバ装置において、前記アドレス割り当て制御部は前記割り当てを実行し、前記延長許可制御部は前記延長許可を送信し、
前記セカンダリサーバとして動作する前記DHCPサーバ装置において、前記アドレス割り当て制御部は前記割り当てを停止し、前記延長許可制御部は前記延長許可の送信を停止する、IPアドレス割り当てシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のIPアドレス割り当てシステムにおいて、
各DHCPサーバ装置が有する前記DHCPサーバ機能調停部は、いずれも、定期的に、他のDHCPサーバ装置が有する前記DHCPサーバ機能調停部との間においてDHCPサーバ機能を提供するか否かについて調停する、IPアドレス割り当てシステム。
【請求項4】
請求項2または請求項3のいずれかに記載のIPアドレス割り当てシステムにおいて、
前記複数のDHCPサーバ装置は、ルータが有する第1のDHCPサーバ装置と、可搬型ネットワーク接続装置が有する第2のDHCPサーバ装置と、であり、
前記ルータと前記可搬型ネットワーク接続装置がいずれも前記第1のネットワークに所属する際には、各DHCPサーバ装置が有する複数の前記DHCPサーバ機能調停部同士の調停の結果、前記第1のDHCPサーバ装置は前記プライマリサーバとして動作し、前記第2のDHCPサーバ装置は前記セカンダリサーバとして動作し、
前記可搬型ネットワーク接続装置が、前記第1のネットワークとは異なるネットワークである第2のネットワークに所属し、かつ、前記ルータが前記第2のネットワークに所属していない際に、前記第2のDHCPサーバ装置は、前記セカンダリサーバから前記プライマリサーバに切り替わって動作し、
前記プライマリサーバとして動作する前記第2のDHCPサーバ装置において、前記アドレス割り当て制御部は前記割り当てを実行し、前記延長許可制御部は前記延長許可を送信する、IPアドレス割り当てシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のIPアドレス割り当てシステムにおいて、
前記第2のDHCPサーバ装置は、さらに、前記セカンダリサーバとして動作する場合に、前記プライマリサーバとして動作する前記第1のDHCPサーバ装置に対して、前記第2のDHCPサーバ装置用の前記専用アドレス範囲の割り当て要求を送信する専用アドレス範囲割当要求送信部を備え、
前記第1のDHCPサーバ装置は、さらに、前記第2のDHCPサーバ装置から前記専用アドレス範囲の割り当て要求を受信すると、前記ネットワーク全体アドレス範囲のうち、前記第1のDHCPサーバ装置用の前記専用アドレス範囲を除いた範囲の少なくとも一部を、前記第2のDHCPサーバ装置用の前記専用アドレス範囲として決定して前記第2のDHCPサーバ装置に通知するアドレス範囲設定部を備える、IPアドレス割り当てシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のIPアドレス割り当てシステムにおいて、
前記第2のDHCPサーバ装置は、前記プライマリサーバとして動作した際に前記アドレス割り当て制御部により実行された前記割り当て動作の履歴に関する情報を記憶する履歴記憶部を有し、
前記第2のDHCPサーバ装置の前記設定要求送信部は、前記履歴記憶部に記憶されている前記割り当て動作の履歴に関する情報に基づき、前記専用アドレス範囲の割り当て要求において、前記第2のDHCPサーバ装置用の前記専用アドレス範囲の最低要求範囲を指定する、IPアドレス割り当てシステム。
【請求項7】
請求項4ないし請求項6のいずれかに記載のIPアドレス割り当てシステムにおいて、
各DHCPサーバ装置には、それぞれ、予めDHCPサーバ機能の提供に関する優先度が設定されており、
前記第1のDHCPサーバ装置には、前記優先度として、少なくとも前記第2のDHCPサーバ装置に設定されている前記優先度よりも高い値が設定されており、
各DHCPサーバ装置の前記DHCPサーバ機能調停部は、前記優先度を示す情報を他のDHCPサーバ装置に送信すると共に、他のDHCPサーバ装置から受信する優先度を示す情報に基づき、自らの前記優先度が、他のDHCPサーバ装置に設定された優先度よりも高いか否かを判定し、高い場合に各DHCPサーバ装置は前記プライマリサーバとして動作し、低い場合に各DHCPサーバ装置は前記セカンダリサーバとして動作する、IPアドレス割り当てシステム。
【請求項8】
第1のネットワークに所属し得る複数のDHCPサーバ装置を用いて、クライアントに対してIPアドレスを割り当てるIPアドレス割り当て方法であって、
(a)各DHCPサーバ装置において、それぞれ、前記第1のネットワークにおいて使用可能なIPアドレスの全範囲であるネットワーク全体アドレス範囲のうち、前記クライアントに割り当て可能なIPアドレスの範囲であって、他のDHCPサーバ装置とは重複しないIPアドレスの範囲である専用アドレス範囲を記憶させる工程と、
(b)各DHCPサーバ装置において、前記クライアントから新たなIPアドレスの割り当て要求を受信すると、前記専用アドレス範囲に含まれるIPアドレスを、前記IPアドレスの割り当てから解放までの期間であるリース期間を指定して前記クライアントに割り当てる工程と、
(c)各DHCPサーバ装置において、前記クライアントから割り当てられているIPアドレスに関する前記リース期間の延長要求を受信すると、前記既設IPアドレスが前記専用アドレス範囲に含まれているか否かに関わらず、延長許可を前記クライアントに送信する工程と、
を備える、IPアドレス割り当て方法。
【請求項9】
第1のネットワークに所属し得る複数のDHCPサーバ装置を用いて、クライアントに対してIPアドレスを割り当てるためのプログラムであって、
(a)各DHCPサーバ装置において、それぞれ、前記第1のネットワークにおいて使用可能なIPアドレスの全範囲であるネットワーク全体アドレス範囲のうち、前記クライアントに割り当て可能なIPアドレスの範囲であって、他のDHCPサーバ装置とは重複しないIPアドレスの範囲である専用アドレス範囲を記憶させる機能と、
(b)各DHCPサーバ装置において、前記クライアントから新たなIPアドレスの割り当て要求を受信すると、前記専用アドレス範囲に含まれるIPアドレスを、前記IPアドレスの割り当てから解放までの期間であるリース期間を指定して前記クライアントに割り当てる機能と、
(c)各DHCPサーバ装置において、前記クライアントから割り当てられているIPアドレスに関する前記リース期間の延長要求を受信すると、前記既設IPアドレスが前記専用アドレス範囲に含まれているか否かに関わらず、延長許可を前記クライアントに送信する機能と、
を、各DHCPサーバ装置が有するコンピュータに実現させるためのプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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