説明

IV投与セットを編成し、プライミングするシステムおよび方法

その上で静脈内投与セット(10)が、セットの準備中の望ましくないもつれを防ぐ所望の構成に編成され、一時的に保持される表面を有する装置。この装置はさらに、静脈内投与セットの各種構成要素を、それらの構成要素のプライミングを改善する所望の向きに保持する複数のクリップ(40)を含む。装置から離れる方向にセットの終端を引くことによって、静脈内投与セットは装置から解放される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療分野および輸液療法分野で一般的に使用されている静脈内(intravenous)(IV)投与セットを編成(organizing)し、プライミング(priming)するシステムおよび方法に関する。IV投与セットは、血液、薬剤、栄養補助剤、溶液などの流体を患者に送達し、または患者から採取するために使用される。
【背景技術】
【0002】
IVセットは一般に、流体リザーバ(reservoir)にアクセスする第1の端部と、患者に挿入されるように適合された第2の端部ないし終端とを有する1本の静脈内投与管(intravenous tubing)(以下、静脈管)を含む。IVセットはさらに、その1本の静脈管に沿って配置された各種構成要素を含むことがある。これらの構成要素は、輸液工程中にIVセット内の流体の流れを制御し、またはIVセット内の流体を処理するように設計されている。IV構成要素には例えば、クランプ(clamp)、濾過器(filter)、チャンバ(chamber)、アクセスポート(access port)、ストップコック(stopcock)、弁、ポンプ、監視装置、遠心機などが含まれる。さらに、IVセットが、数本または数ラインの静脈管を含むこともある。これらの構成要素はそれぞれ、所望の機能をIVセットに提供し、最適に使用するためには、これらの構成要素の正確な編成およびプライミングが必要である。
【0003】
IV投与セットの長さは通常40インチ(101.6cm)から110インチ(279.4cm)であり、IV投与セットは、巻かれた状態で包装材料に入れて提供される。IVセットを使用するための準備工程では、臨床家または使用者が、最初に包装を開き、セットの両端を見つけ出す必要がある。現行の包装技法は一般に、この工程の間に、巻かれていたIVセットを伸ばし、IVセットのもつれをほどくことを使用者に要求する。IVセットのこのような全長に加え、IV構成要素のさまざまな幾何学的配列および形状によって、一般的に互いにもつれ、絡み合う複数の表面が生じる。一般的に、IVセットのもつれをほどく工程では、IVセットの部分が地面または他の非衛生的な表面に触れてしまう。
【0004】
IVセットを編成し、IVセットの両端を見つけ出した後、使用者は、IVセットの静脈管および構成要素をプライミングしなければならない。このプライミング工程は、IVセットを患者に接続する前に、IVシステム内の全ての空気が追い出され、プライミング溶液で置き換えられていることを保証する。IVセットを最適に作動させるためには、IVセットの徹底したプライミングが必要である。IVセットのプライミング工程では、最初に、使用者が、セットの終端を、任意の延長セット、ストップコックまたは他の所望の追加の構成要素に取り付ける必要がある。使用者は次いで、クランプ、例えばローラクランプ(roller clamp)、スライドクランプ(slide clamp)またはピンチクランプ(pinch clamp)を締めて、セット内の流体の流れを遮断する。使用者は次いで、第1の端部またはスパイク(spike)をIVバッグ(bag)または流体リザーバ内へ挿入する。この時点で、使用者は、IVセットのドリップチャンバ(drip chamber)をプライミングし、クランプを緩めて、IVセットを通過する流れを開始させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
流体がIVセット内を流れると、一般的に、IVセットのある種の領域が気泡を捕捉する。IVセット内の捕捉された空気は、多くの理由から望ましくない。例えば、いくつかのIV構成要素では、空気が存在しないことが、適正に作動する条件である。さらに、空気が存在すると、IVセットを通過する流体の適正な流れが遮断され、または他の方法で妨げられることがある。また、予期せぬことに、捕捉された空気が、輸液工程の間に放出され、患者の循環系に入り、脳卒中を含む望ましくない合併症または死を引き起こすこともある。
【0006】
プライミング工程の際、IVセットを通して廃棄物缶または流しへ流体を流し続けながら、IVセットの部分を軽くたたくことによって、捕捉された空気を取り除くことができる。このように軽くたたくと、気泡は流体の流れに入り、終端から外へ出る。流体が無駄になることに加え、一般的に、終端が、廃棄物缶または流しの非衛生的な表面と接触し、IVセットの汚染につながる。
【0007】
このように、IV投与セットを編成し、プライミングするために使用する技法は現在でもあるが、課題は依然として存在する。したがって、現行の技法を強化し、または他の技法に置き換えることは、当技術分野における改良と言えるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、医療分野および輸液療法分野で一般的に使用されている静脈内(IV)投与セットを編成し、プライミングするシステムおよび方法に関する。IV投与セットは、血液、薬剤、栄養補助剤、溶液などの流体を患者に送達し、または患者から採取するために使用される。
【0009】
具体的には、本発明は、所望の構成のIVセットを包装し、またはIVセットを所望の構成に編成するさまざまな構造および方法を含む。本発明のある実施態様では、所望の構成のIVセットを装置にクリップで留め、または他の方法で装置に取り付けることを可能にする装置が提供される。この所望の構成は、先行技術にはない少なくとも2つの利点を提供する。
【0010】
例えば、所望の構成は、各種構成要素および管を編成して、IVセットがもつれることを防ぐ。編成されていると、IVセットのさまざまな部分が容易に見つかり、IVセットのさまざまな部分に容易にアクセスすることができ、さらに、使用するために臨床家がIVセットを準備するのを助ける。さらに、所望の構成は、IVセットの各種IV構成要素の最適な向きを提供する。各種IV構成要素の幾何学的配列および構造はさまざまに異なるため、それぞれの構成要素は、構成要素をプライミングすることを助ける好ましい空間的向きを含むことがある。例えば、本発明のある実施形態において、IVセットの第1のIV構成要素は、水平軸に沿って配置されたときに最適にプライミングされ、IVセットの第2のIV構成要素は、垂直軸に沿って配置されたときに最適にプライミングされる。
【0011】
本発明のある実施態様は、所望の構成のIVセットを受け取り、保持する平らな表面を有する装置を含む。IVセットの構成は、IVセットの個々の構成要素の向きの必要性に基づいて決定され、実行される。ある実施形態では、IVセットが、複数のクリップによって装置上に保持される。他の実施形態では、IVセットの各種構成要素の所望の向きを維持するのを助けるために、プライミング工程の全体を通じてIVセットが装置上に保持される。他の実施形態では、IVセットの終端を下方向へ引いてクリップからIVセットを解放し、それによって装置の平らな表面からIVセットを取り外す。他の実施形態ではこの平らな表面が、分離した複数の部分を含み、これらの部分はそれぞれ、IVセットの一部分を保持するように設計されている。他の実施形態では、IV構成要素の表面部分が、クリップを含むように変更されている、それにより、IVセットの一部分がIV構成要素のクリップによって所望の構成に保持される。最後に、他の実施形態では、プラスチックバッグ、紙バッグなどの包装が、IVセットの端部の配置を所望の位置に維持する複数のクリップを含むように変更されている。
【0012】
本発明のある実施態様では、編成装置の利用により、患者に対して使用するためにIVセットを準備する改良された方法が提供される。ある実施形態は、包装材料の強調された部分または印が付けられた部分を開いてIVセットのクランプを見つけ出すステップと、クランプを締めて、IVセットを通過する流れを遮断するステップと、包装材料の強調された部分または印が付けられた部分を開いてIVセットのスパイク構成要素を見つけ出すステップと、スパイク構成要素を流体リザーバに取り付け、IVセットを保持している装置を流体リザーバから吊り下げるステップと、包装材料の強調された部分または印が付けられた部分を開いてIVセットの終端を見つけ出すステップと、終端を、任意の延長セット、ストップコック、またはIVセットに対する他の追加物に取り付けるステップと、ドリップチャンバをプライミングするステップと、クランプを開いて、IVセットを通過する流れを開始させて、IVセットをプライミングするステップと、装置から終端を引き離すステップであり、クリップが解放したときにIVセットが装置から外れるステップと、終端の塵除け蓋を取り外し、終端を患者に接続するステップとを含む。ある実施形態では、終端の塵除け蓋がさらに、空気は通すが、液体の通過は妨げる自動プライミング(auto−prime)濾過器を含む。このように、自動プライミング濾過器は、IVセット内の空気は全て排出するが、液体は終端から流出させないことで、IVシステムが最適にプライミングすることを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の上記の特徴および利点ならびにその他の特徴および利点が得られる方法を容易に理解できるように、添付図面に示された本発明の特定の実施形態を参照することによって、上で簡単に説明した本発明をより詳細に説明する。これらの図面は、本発明の代表的な実施形態だけを示しており、したがって、それらの図面が本発明の範囲を限定すると考えるべきではない。
【0014】
【図1】IVセットを所望の構成に保持するIVセット編成装置(organizer)の一実施態様の透視図である。
【図2A】本発明のクリップの一実施態様の透視図である。
【図2B】本発明のクリップの一実施態様の側断面図である。
【図2C】本発明のクリップの一実施態様の側断面図である。
【図3A】流体リザーバに取り付けられたプライミング工程中のIVセット編成装置の一実施態様の透視図である。
【図3B】IVセット編成装置からIVセットを取り外している最中のIVセット編成装置の一実施態様の透視図である。
【図3C】IVセット編成装置からIVセットを取り外した後のIVセット編成装置の一実施態様の透視図である。
【図4】IV投与セットを所望の構成に保持する細片編成装置(strip organizer)の一実施態様の透視図である。
【図5】IV投与セットを螺旋構成に保持する螺旋編成装置(spiral organizer)の一実施態様の透視図である。
【図6】枠形編成装置(framed organizer)の一実施態様の透視図である。
【図7】IV投与セットを所望の構成に保持する多片編成装置(multi−sectional organizer)の一実施態様の透視図である。
【図8】IV投与セットを所望の構成に保持するために複数のクリップを含むように変更されたIV構成要素の一実施態様の透視図である。
【図9】IV投与セットを内包し、所望の構成に保持する包装編成装置(package organizer)の一実施態様の透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
現時点における本発明の好ましい実施形態は、図面を参照することによって最もよく理解される。図面では、同様の参照符号が、同一の要素または機能的に類似の要素を指す。本明細書に広く記載され、本明細書の図に広く示された本発明の構成要素を、異なるさまざまな構成に配置し、設計することができることは容易に理解される。したがって、図に示されている以下のより詳細な説明が、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定することは意図されておらず、以下のより詳細な説明は単に、現時点における本発明の好ましい実施形態を表しているに過ぎない。
【0016】
次に図1を参照すると、IVセット編成装置30の編成面(organizing surface)20上の編成された構成のIV投与セット10の一実施態様が示されている。IV投与セット10の一部の実施形態は一般に、技術者が患者に溶液または薬剤を投与するのを助ける各種構成要素および特徴(feature)を有する1本の静脈管12を含む。例えば、ある実施形態では、IV投与セット10が、IVボトル、IVバッグなどの流体リザーバとの流体連通を確立するためのスパイク14を含む。他の実施形態では、IV投与セット10が、IVセット10を通過する流体の流れを制御し、または制限するためのローラクランプ16を含む。IVセット10の実施形態はさらに、延長セット、ストップコックまたは他の追加物(図示せず)をIVセット10に取り付けるための雄型ルアー(luer)18を含むことができる。最後に、IVセット10の追加の構成要素には例えば、血液透析構成要素、濾過器、無針注入サイト(needle free injection site)、精密濾過器、注入サイト、ルアーロック(luer lock)、およびビュレット(burette)チャンバ、血液チャンバ、ノンベンテット(non−vented)チャンバなどの各種チャンバが含まれる。IV構成要素の選択および組合せは、IV投与セット10の用途によって大きく異なる。
【0017】
上で論じたように、IV投与セット10を効果的に準備し、使用する際の重要な手順ステップは、静脈管12および各種IV構成要素をプライミングすることである。IVセット10をプライミングする工程は、セット10を使用して患者に薬剤を投与する前に、空気がセット10から追い出されていることを保証する。IVセット10内の空気は、患者にとって危険であるだけでなく、セット10を通過する薬剤または液体の流れを乱す可能性もある。したがって、患者に対して使用するためにセット10を準備する第1のステップとして、IVセット10を徹底的にプライミングすることが望ましく、重要である。
【0018】
IVセット10をプライミングする前、IV管12および各種IV構成要素は空気で満たされている。この空気は、液体を一端10から導入し、セット10内を通して反対端18まで移動させると、セット10から押し出される。IV構成要素の内部構造を貫く流体経路は一般的に、構成要素内の空気を完全に追い出すことを妨げる。効率的なプライミングはしばしば、IV構成要素を貫く固有の流体経路に依存する。構成要素の向きによって、流体経路の向きが、その経路内の空気の効率的な追い出しを促進し、またはその経路内の空気の効率的な追い出しを妨げることがある。
【0019】
技術者は一般的に、個々の構成要素をさまざまな所望の向きに手で回転させ、構成要素をたたいて空気を物理的に取り除き、それによって流体が構成要素をプライミングするのを助ける必要がある。この工程は、時間のかかる非能率的な工程である。図1をさらに参照すると、本発明のある実施形態は、IVセット編成装置30によって所望の構成に維持されたIV投与セット10を提供する。
【0020】
所望の構成のIVセット10を支持するため、IVセット編成装置30は一般に、複数のクリップ40および編成面20を含む。編成面は、IVセット10および各種構成要素を所望の向きに維持することができる任意の材料および構成を含むことができる。編成面およびクリップのさまざまな実施態様の例を、図2および4〜9に示し、それらの図に関して後に論じる。ある実施形態では、編成面20が、全体に平らな板紙またはボール紙材料を含む。他の実施形態では、編成面20が、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなどのポリマー材料を含む。編成面20の全体寸法は当業者によって決定され、その上にIVセット10を所望の構成で保持するのに十分な表面を提供するように選択される。ある実施形態では、図8に示すように、編成面20が、IV構成要素の外面部分を含む。
【0021】
次に図2Aを参照すると、クリップの一実施態様40の詳細図が示されている。本発明のある実施形態では、クリップ40が、編成面20から切り抜かれた部分または編成面20から形成された部分を含む。そのため、IVセット10の一部分を編成面20に効果的に固定するために、クリップ40の一部分が編成面20に接続されている。クリップ40の形成は、編成面20を打ち抜くことによって、または接着剤もしくはプラスチック溶接により編成面に材料を接合することによって達成することができ、あるいは、当技術分野で知られているさまざまなプラスチック成形技法によって編成面を成形することを含むことができる。
【0022】
ある実施形態では、図2Bに示すように、クリップ40が、静脈管12の一部分を整合して受け取るように構成されたフック形の表面42を含む。クリップ40はさらに、それによって静脈管12がクリップ40に出入りする開口部44を含む。したがって、クリップ40を使用して、IVセット10の部分を所望の構成に一時的に保持することができる。他の実施形態(図示せず)では、クリップ40が、IVセット10の構成要素を保持するように、例えばローラクランプ、濾過器、チャンバまたは他の構成要素の一部分を保持するように構成される。
【0023】
次に図2Cを参照すると、クリップ140の他の実施形態が示されている。この実施形態では、静脈管12の一部を保持するための部分的に開いた表面を提供するため、クリップ140が、対向する2本のアーム142および144を含む。所望の構成のIVセット10を編成面20に対して保持する目的には、他のさまざまな手段および技法を使用することができることを当業者は理解するであろう。例えば、ある実施形態では、一時的な接着剤を使用して、IVセット10を編成面20に一時的に取り付ける。他の実施形態では、所望の構成のIVセット10を編成面20に恒久的に取り付ける。
【0024】
次に図1および3Aを参照すると、IVセット編成装置30の編成面20上の編成された構成のIV投与セット10が示されている。編成面20は、IVセット10を所望の構成に保持するだけでなく、セット10の終端14および18を正確に配置することを可能にする。終端14および18の制御された配置は、終端14および18への容易で分かりやすいアクセスを提供し、それにより、プライミング工程の間に一般的に遭遇する混乱およびもつれを排除する。さらに、終端14および18を所望の位置に選択的に配置することによって、技術者は、IVセット10が編成面20に固定されている間に、IVセット10をプライミングすることができる。この特徴は、いくつかの理由から望ましい。例えば、IVセット10が編成面20に固定されている間、静脈管12および各種構成要素は、もつれのない編成された状態を維持する。さらに、管12および各種構成要素は、互いに物理的および視覚的に近接し、それによって、技術者が、プライミング工程を観察し、監視するのを助ける。最後に、IVセット10が編成面20に固定されている間、クリップは、管12および各種構成要素の所望の向きを維持し、それにより、セット10の完全なプライミングを保証する。
【0025】
管12およびIV構成要素から空気を完全に追い出すことができるかどうかは、IVセット10の適正な向きだけでなく、プライミング速度にも依存する。プライミング速度は、プライミング工程中にプライミング流体がIVセット10内を移動する速度である。プライミング流体がIVセット10内を下方向へ移動するときには、自然の法則に従って重力が流体を加速させる。プライミング流体が上方へ移動するときには、やはり重力の影響によってプライミング速度は低下する。プライミング速度が増大すると、管12の内面に対するプライミング流体の接触角が大きくなり、それにより、プライミング溶液の表面張力が低減する。この接触角の増大は、プライミング流体の前縁に顕著な凸形のメニスカス(meniscus)を与え、このことはIVセット内の空気を置き換えるのには役立たない。
【0026】
ある実施形態では、プライミング流体が下方向へ移動する距離を制御することでプライミング速度を低下させ、標準化(normalizing)することによって、プライミング工程を改良する。例えば、図1および3Aでは、IVセット10の構成が、IVセット10の全体を通じたプライミング流体の全体速度を標準化する相補的な一連の下方向32および上方向34の流れを提供する。さらに、IVセット10のこの構成は、各種IV構成要素16、60、62および64に対して所望の向きを与える役目を果たす。例えば、本発明のある実施態様では、上向きの流れ方向34においてyポート62が適切にプライミングされる。他の実施態様では、下向きの流れ方向32において三方弁64が適切にプライミングされる。本発明の他の実施態様では、上向きの流れ方向34において濾過器60が最適にプライミングされる。IVセット10の所望のプライミングを達成するために、各種IV構成要素が異なる向きを必要とすることがあることを当業者は理解するであろう。
【0027】
次に図3Aを参照すると、IVセット編成装置30の編成面20上の編成された構成のIV投与セット10であって、流体リザーバ70に結合されたIV投与セット10が示されている。本発明のある実施形態では、IVセット10のスパイク14が流体リザーバ70内へ挿入され、IVセットが流体リザーバ70から吊り下がっている間にIVセットがプライミングされる。そのため、静脈管12および各種IV構成要素は、適正な向きに向けられた整然とした規則的な構成に維持される。さらに、IVセット10がIVセット編成装置30に拘束されていることは、終端14および18を迅速に見つけ出し、終端14および18に迅速にアクセスすることを可能にする。これは、IVセット10が特に長い場合、または容易にもつれたり、または絡まったりすることがある多くのIV構成要素をIVセット10が含む場合に特に有用である。ある実施形態では、編成面20上のIVセット10の特定の構成が、プライミング工程中のIVセット10の最終的な空間的向きに基づいて選択され、計画される。
【0028】
次に図3Bを参照すると、接続されていない終端18を下方向32へ引くことによって、プライミングされたIVセット10をIVセット編成装置30から取り外す。終端18を下方向32へ引くと、クリップ40によって保持されていた静脈管12の部分が、クリップ40の開口部44を通して解放される。本発明のある実施形態では、図3Cに示すように、IVセット10が、IVセット編成装置30から完全に取り外される。IVセットが取り外されたIVセット編成装置30は、希望に応じて再使用し、リサイクルし、または廃棄することができる。
【0029】
次に図4を参照すると、IVセット細片編成装置130を含む本発明の一実施態様が示されている。IVセット細片編成装置130は、IVセット10の各種IV構成要素を所望の構成に固定するのに十分な幅132および高さ134を有する単一の細片を備える。細片編成装置130の幅132は、静脈管12の全幅よりも小さいことに留意されたい。そのため、静脈管12は、編成装置130の縁を過ぎてから垂れ下がることができる。IVセットは、複数のクリップ40および50によって細片編成装置130上に保持される。
【0030】
ある実施形態では、それぞれのIV構成要素の第1の側に第1のクリップ40が置かれ、それぞれのIV構成要素の第2の側に反対側のクリップ50が置かれる。そのため、IV構成要素は、細片編成装置30の編成面20上に、所望の順序および構成で保持される。それぞれのIV構成要素の具体的な向きは、個々のIV構成要素が必要とする最適な流れの向きに基づいて選択され、セットされる。プライミング工程の後、終端18を下方向32へ引いて、IVセットを細片編成装置30から解放する。IVセットが取り外された細片編成装置130は、希望に応じて再使用し、リサイクルし、または廃棄することができる。
【0031】
次に図5を参照すると、螺旋編成装置230を含む本発明の実施態様が示されている。螺旋編成装置230は、螺旋構成のIVセット10がその上に配置された編成面20を提供する。螺旋編成装置230は、非常に長いIVセット10、またはさまざまな流れの向きおよび速度を必要とする各種IV構成要素を含むIVセット10に対して特に有用である。例えば、この螺旋構成は、さまざまな流体流特性を有する静脈管12の複数の流れ領域232、234および236を提供する。静脈管12の水平領域232は、水平流れ方向の中程度の流量を提供する。静脈管12の下向き領域234は、下向き流れ方向32の大きな流量を提供し、上向き領域236は、上向き流れ方向34の小さな流量を提供する。
【0032】
螺旋構成はさらに、その上に任意の数のIV構成要素を所望の向きに配置する、360°の使用可能な管12を提供する。管12の重なり部分は、終端18を下方向32へ引くことによってIVセット10が螺旋編成装置230から容易に取り外されるように配置される。管12が重なり合うこの配列は、IVセット10を螺旋編成装置230から取り外した後にIVセット10がもつれることを防ぐ。ある実施形態では、IVセット10を螺旋構成に保持するために、クリップ40がランダムに配置される。他の実施形態では、IVセット10を固定するために、クリップ40と一時的な接着剤46の組合せが使用される。最後に、ある実施形態では、IVセット10が、一時的な接着剤46で螺旋構成に固定される。
【0033】
次に図6を参照すると、枠形編成装置330が示されている。枠形編成装置330は、構造的にIV投与セット10を所望の構成に固定し、維持することができる任意の材料を含むことができる。例えば、ある実施形態では、枠形編成装置330がポリマー材料からなる。他の実施形態では、枠形編成装置330がボール紙または板紙材料からなる。最後に、ある実施形態では、枠形編成装置330が、アルミニウム、アルミニウム合金などの金属材料からなる。枠形編成装置330は、剛性または半剛性材料を含むこともできる。
【0034】
枠形編成装置330は一般に、複数の窓336または空間を特徴とする外枠332および内マトリックス(matrix)334を有する格子構造を含む。本発明のある実施形態では、枠形編成装置330が、編成装置の枠部分332および内マトリックス部分334にランダムに配置された複数のクリップ40を含む。ある実施形態では、所望の構成のIVセット10を枠形編成装置330に固定するのに、一部のクリップ40だけが使用される。他の実施形態では、所望の構成のIVセット10を枠形編成装置330に固定するのに、全てのクリップ40が使用される。最後に、ある実施形態では、第1のIVセット10を枠形編成装置330に固定するためにクリップ40の第1のグループが使用され、第2のIVセット10を枠形編成装置330に固定するためにクリップ40の第2のグループが使用される。
【0035】
次に図7を参照すると、多片編成装置430が示されている。多片編成装置430は、第1の編成片432および第2の編成片434を備え、片432および434はそれぞれ互いから分離されており、互いに別個である。第1の編成片432は、IVセット10の一部分が所望の構成に保持された第1の編成面22を含む。同様に、第2の編成片434は、IVセット10の一部分が所望の構成に保持された第2の編成面24を含む。多片編成装置430に関連した利点には、製品材料が少なくてすむこと、および包装、可搬性、保管および出荷に役立つように、保持されたIVセット10および編成装置430を操作し、折り畳み、圧縮することができることが含まれる。IVセット10のプライミング手順の後、終端18を下方向へ引いて、静脈管12をクリップ40から手作業で引く。ある実施形態では、プライミング手順の後も、輸液手技のためのIVセット10の残りの使用の全体を通じて、IVセット10を編成装置430上に留め置く。
【0036】
次に図8を参照すると、IVセット10を所望の構成に保持するための複数のクリップ40を含むように、IV投与セット10のIV構成要素16が変更されている。ある実施形態では、これらのクリップが、接着剤または機械的な接続によって構成要素16の外面に直接に取り付けられている。他の実施形態では、構成要素16の外面の一部分が、クリップ40を提供するように成形され、または他の方法で製造されている。このようにすると、構成要素16は、IVセット10を所望の構成に編成すること、静脈管12を通過する流れを監視すること、およびIVセット10のIV構成要素の適正な向きを保証することを含む、複数の機能を実行する。他の実施形態は、追加の選択肢および構成を提供するために、IVセット10の別の構成要素上に追加のクリップを含む。そのため、これらの追加のクリップは、使用者が、システムを効率的にプライミングするために必要な静脈管12および各種IV構成要素の所望の向きを達成するのを可能にする。
【0037】
本発明の編成面20は一般に、IV投与セット10またはIV投与セット10の一部分の所望の構成を編成し、または維持する任意の表面を含む。例えば、ある実施形態では、編成面20が、ボード(board)、プラットホーム(platform)などの平らな1次元表面を含む。他の実施形態では、編成面20が、クリップ40または140などの2次元表面を含む。他の実施形態では、編成面20が、バッグまたは管構造の内面または外面などの3次元表面を含む。本発明の編成面20は本質的に、IV投与セット10および各種IV構成要素の所望の向きまたは構成を維持するためにそれらを能動的または受動的に支持する任意の表面またはその変形物を含む。
【0038】
次に図9を参照すると、包装編成装置530が示されている。包装編成装置530は、ポリマーバッグ、紙バッグまたはポリマーで裏打ちされた紙バッグなどの外側包装材料532を含む。ある実施形態では、包装材料532の上縁534と下縁536の両方が密封されている。ある実施形態では、上縁534および下縁536が、プラスチック溶接または接着剤によって密封されている。他の実施形態では、上縁534および下縁536が、インタロッキングジッパ(interlocking zipper)またはクロージャ(closure)によって密封されている。ある実施形態では、包装編成装置530が、成形されたプラスチックシェル(shell)(図示せず)と、紙シート、ポリマーシート、ポリマーで裏打ちされた紙シート(図示せず)などの取外し可能な裏当て材とを含む。これらの実施形態では、裏当て材の周縁がプラスチックシェルに接着され、裏当て材とプラスチックシェルの間の空間にIVセット10が配置される。
【0039】
本発明のある実施形態では、包装の内容物を保護するために、密封された包装編成装置530の内部が無菌または防水である。包装編成装置530は一般に、IV投与セット10を適切に収容する大きさに形成され、IV投与セット10を適切に収容するように構成される。IVセットの第1の端部14および終端18を包装材料532内の所望の位置に固定するため、包装編成装置530はさらに、少なくとも2つのクリップ40を含む。これらの2つのクリップ40は、IVセットの第1の端部14および終端18が包装編成装置530内の所望の位置に配置されるように包装材料532に取り付けられる。例えば、ある実施形態では、IVセット10の第1の端部14の位置を、包装編成装置530の左上隅に制御することが望ましい。そのため、クリップ40は、包装材料532の左上隅に近い位置に取り付けられる。次いで、このクリップによって第1の端部14を包装材料532に固定して、第1の端部14が包装編成装置530の左上隅に配置されるようにする。他の実施形態では、同様の工程によって、終端18の位置が、包装編成装置530の右上隅に制御される。
【0040】
第1の端部14および終端18をクリップ40によって制御した後、包装編成装置530内において、IVセットの静脈管12および残りの構成要素を所望の構成に維持する。ある実施形態では、包装編成装置530内においてIVセット10を所望の構成に固定するために、IVセット10に沿った別の位置に追加のクリップ(図示せず)が配置される。それにより、包装編成装置530内のIVセット10の構成は、IVセット10の各種構成要素に対する所望の向きを達成する。
【0041】
ある実施形態では、包装材料532がさらに、使用者が、IV投与セット10の所望の部分を見つけ出し、その部分にアクセスすることを助ける印540および特徴542を含む。例えば、ある実施形態では、終端18の固定された位置(以下、固定位置)に近い包装材料532の一部分に、構成または色540によって印が付けられる。この印540は、包装編成装置530内の終端18の位置を指示する視覚インジケータ(indicator)となる。印540は、使用者が、終端18の制御された位置を迅速に見つけ出し、包装編成装置530を所望の向きに正確に向けるのを可能にする。
【0042】
他の実施形態では、包装材料532がさらに、使用者がIVセット10の第1の端部14にアクセスするのを助ける特徴542を含む。例えば、ある実施形態では、第1の端部14の固定位置に近い包装材料532の一部分にミシン目542があけられている。ミシン目542は、使用者が、包装編成装置530を容易に裂開して第1の端部14にアクセスすることを可能にする。ミシン目542はさらに、包装編成装置530内の第1の端部14の固定位置を指示する視覚/触覚インジケータとなる。ある実施形態では、第1の端部14の固定位置の近くに、包装材料532の切れ込みまたは部分的な裂け目544が提供される。そのため、使用者は、IVセット10の第1の端部14にアクセスするために包装編成装置530を裂開するための始点として切れ込み544を使用することができる。密封された無菌環境にIVセット10を維持することが望ましいある実施形態では、ミシン目542特徴よりも切れ込み544の方が好ましい。最後に、ある実施形態では、包装編成装置530の使用者向けの視覚/触覚インジケータとするために、印540と特徴542および544との組合せが使用される。
【0043】
本発明のこれらの特徴は、患者に対して使用するためにIV投与セットを準備し、プライミングする改良された方法を提供する。本発明のある実施形態では、IVセットを準備する改良された方法が、包装材料の強調された部分または印が付けられた部分を開いてIVセットのクランプを見つけ出すステップと、クランプを締めて、IVセットを通過する流れを遮断するステップと、包装材料の強調された部分または印が付けられた部分を開いてIVセットのスパイク構成要素を見つけ出すステップと、スパイク構成要素を流体リザーバに取り付け、IVセットを保持している装置を流体リザーバから吊り下げるステップと、包装材料の強調された部分または印が付けられた部分を開いてIVセットの終端を見つけ出すステップと、終端を、任意の延長セット、ストップコック、またはIVセットに対する他の追加物に取り付けるステップと、ドリップチャンバをプライミングするステップと、クランプを開いて、IVセットを通過する流れを開始させて、IVセットをプライミングするステップと、装置から終端を引き離すステップであり、クリップが解放したときにIVセットが装置から外れるステップと、終端の塵除け蓋を取り外し、終端を患者に接続するステップとを含む。ある実施形態では、終端の塵除け蓋がさらに、空気は通すが、液体の通過は妨げる自動プライミング濾過器を含む。このように、自動プライミング濾過器は、IVセット内の空気は全て排出するが、液体は終端から流出させないことで、IVシステムが最適にプライミングすることを可能にする。
【0044】
本発明は、本明細書に広く説明し、以下の特許請求の範囲に記載した本発明の構造、方法または他の必須の特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具体化することができる。記載した実施形態は、あらゆる点で単なる例であり、それらの実施形態が本発明を限定すると考えるべきではない。したがって、本発明の範囲は、以上の説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって指示される。特許請求項の等価物の意味および範囲に含まれる全ての変更は、特許請求項の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IV投与セットを編成する装置であって、
その上に、前記IV投与セットの一部分が所望の構成で支持された編成面と、
前記編成面の一部分に結合された保持機構であり、前記IV投与セットの前記一部分を前記所望の構成に拘束する、保持機構と
を備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記IV投与セットの管部分に一体化された形で結合されたIV構成要素をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記編成面を有し、前記保持機構を支持するボード構造物をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記装置がその中に含まれる包装をさらに備え、前記編成面は前記包装の一部分を形成することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記保持機構は、クリップ、クランプ、接着剤、留め具およびフックからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
複数の保持機構をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記IV構成要素の外面は、前記編成面および前記保持機構を備えることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項8】
前記IV構成要素はさらに所望の向きを含み、前記所望の構成は前記所望の向きを維持することを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項9】
複数のボード構造物を備えることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項10】
前記ボード構造物の一部分は前記保持機構であることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項11】
自己プライミングIV投与セットを製造する方法であって、
前記自己プライミングIV投与セットの第1の部分をその上に支持する編成面を提供するステップと、
前記自己プライミングIV投与セットを所望の構成に編成するステップと、
前記所望の構成の前記自己プライミングIV投与セットの第2の部分を、保持機構によって前記編成面に一時的に結合させるステップと、
前記自己プライミングIV投与セットの第3の部分を所望の向きに向けて、前記自己プライミングIV投与セットのプライミングを可能にするステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記第3の部分はIV構成要素であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記自己プライミングIV投与セットがその中に含まれる包装を提供するステップをさらに含み、前記編成面は前記包装の一部分を形成することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
複数の保持機構を提供するステップをさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記IV構成要素の表面に前記保持機構を結合させるステップをさらに含み、前記IV構成要素の前記表面が前記編成面の一部分であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記自己プライミングIV投与セットの構成要素の位置を指示するために前記包装の外面に印を付けるステップをさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項17】
自己プライミングを可能にする所望の構成のIV投与セットを包装する装置であって、
前記IV投与セットの一部分を整合して受け取って、前記IV投与セットの構成要素を所望の向きに一時的に拘束する保持面を有する保持機構と、
前記所望の構成の前記IV投与セットを実質的に含む包装材料と
を備え、前記所望の構成および所望の向きが、前記IV投与セットの位置を最適化して、前記IV投与セットの自己プライミングを可能にする
ことを特徴とする装置。
【請求項18】
複数の保持機構をさらに備えることを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記包装材料の一部分は前記保持機構であることを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項20】
前記構成要素の一部分は前記保持機構であることを特徴とする請求項17に記載の装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−517329(P2012−517329A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550233(P2011−550233)
【出願日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/023906
【国際公開番号】WO2010/093798
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】