説明

L−オルニチンフェニル酢酸塩を用いる門脈圧亢進の治療及び肝機能の修復

L−オルニチンフェニル酢酸塩を用いて門脈圧亢進を治療及び/又は予防し、且つ/又は肝機能を修復する方法を本明細書に開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年6月8日に出願した米国仮特許出願第61/185,158号、2009年9月9日に出願した第61/240,748号及び2010年1月19日に出願した第61/296,377号の恩典を主張するものである。これらの関連出願のそれぞれの内容は、参照によりそれらの全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、製薬化学、生化学及び医学の分野に関する。1つの態様は、L−オルニチンをフェニルアセテート及びフェニルブチレートの少なくとも1つと併用して用いる門脈圧亢進症の治療及び/又は予防に関する。他の態様は、L−オルニチンをフェニルアセテート及びフェニルブチレートの少なくとも1つと併用して用いる肝機能の修復に関する。
【背景技術】
【0003】
門脈圧亢進は、門脈及びその分枝の内部の血圧の上昇である。それは、肝硬変及び肝線維症などの肝臓疾患を有する患者において発生し得る状態である。門脈圧亢進は、肝臓の瘢痕化、門脈における血栓症又は血液凝固によっても引き起こされ得る。
【0004】
症状の重症度によって、門脈圧亢進の様々な予防、治療及び管理戦略が現在利用可能である。上の状態を治療するためのさらなる療法の必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
いくつかの実施形態は、フェニルアセテート及びフェニルブチレートの少なくとも1つと併用してL−オルニチンを対象に投与し、それにより門脈圧亢進を低減することを含む、対象における門脈圧亢進を治療する方法を開示する。
【0006】
いくつかの実施形態は、フェニルアセテート及びフェニルブチレートの少なくとも1つと併用してL−オルニチンを対象に投与し、それにより門脈圧亢進の発症を遅延させることを含む、対象における門脈圧亢進の発症を遅延させる、又はその可能性を低減する方法を開示する。
【0007】
いくつかの実施形態は、フェニルアセテート及びフェニルブチレートの少なくとも1つと併用してL−オルニチンを対象に投与し、それにより肝機能を改善することを含む、不良な肝機能を有する対象における肝機能を修復する方法を開示する。
【0008】
いくつかの実施形態は、フェニルアセテート及びフェニルブチレートの少なくとも1つと併用してL−オルニチンを対象に投与し、それにより静脈瘤出血を低減することを含む、門脈圧亢進に罹患している対象における静脈瘤出血を治療する方法を開示する。
【0009】
いくつかの実施形態は、フェニルアセテート及びフェニルブチレートの少なくとも1つと併用してL−オルニチンを対象に投与し、それにより腹水を低減することを含む、門脈圧亢進に罹患している対象における腹水を治療する方法を開示する。
【0010】
いくつかの実施形態は、患者を急性肝不全に罹患していると同定すること、並びにフェニルアセテート及びフェニルブチレートの少なくとも1つと併用してL−オルニチンを患者に投与し、それにより患者が脳損傷を発現する可能性を低減することを含む、急性肝不全を有する患者における脳損傷を防ぐ方法を開示する。いくつかの実施形態において、投与は、前記同定の直後に行われる。いくつかの実施形態は、急性肝不全を治療することをさらに含む。いくつかの実施形態において、治療は、肝臓移植を含む。いくつかの実施形態は、急性肝不全により引き起こされた合併症を治療することをさらに含む。いくつかの実施形態において、合併症は、静脈瘤出血を含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、対象は、門脈圧亢進症に罹患している。いくつかの実施形態において、門脈圧亢進症を有する対象は、肝硬変などの肝臓疾患にも罹患する。いくつかの実施形態において、対象は、肝臓疾患に罹患している。いくつかの実施形態において、肝臓疾患を有する対象は、門脈圧亢進症にも罹患する。いくつかの実施形態において、肝臓疾患は、慢性肝臓疾患(例えば、肝硬変)又は急性肝不全である。いくつかの実施形態において、門脈圧亢進の治療は、対象における前炎症性サイトカインのレベルを低下させることにより達成される。いくつかの実施形態において、門脈圧亢進の治療は、内皮一酸化窒素合成酵素活性を増大させることにより達成される。いくつかの実施形態において、L−オルチニン及びフェニルアセテートをL−オルチンフェニル酢酸塩(L-orthine phenyl acetate)として投与する。いくつかの実施形態において、L−オルチニン並びフェニルアセテート及びフェニルブチレートの少なくとも1つの別個の生理的に許容される塩を対象に投与する。いくつかの実施形態において、L−オルチニンは、遊離単量体アミノ酸又はその生理的に許容される塩として存在し、且つ/又は投与される。いくつかの実施形態において、フェニルアセテート及びフェニルブチレートの少なくとも1つをフェニル酢酸ナトリウム又はフェニル酪酸ナトリウムとして投与する。いくつかの実施形態において、投与は、経口、静脈内、腹腔内、胃内又は血管内投与である。いくつかの実施形態において、肝機能を改善することにより、門脈圧亢進が低下する。いくつかの実施形態において、肝機能を改善することは、肝臓潅流を増加させることを含む。いくつかの実施形態において、投与されるL−オルチニン及びフェニルアセテート又はフェニルブチレートの用量は、20gから40gまでである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】シャム手術対照と比較して、胆管結紮(BDL)ラットにおける血漿TNF−αの有意な増加(p<0.05)があり、これが、リポ多糖(LPS)の投与により著しく増加し(♯♯p<0.01)、L−オルニチンフェニル酢酸塩(OP)治療薬の投与により改善したことを示す図である。
【図1B】シャム手術対照と比較して、BDLラットにおける脳TNF−αの有意な増加(p<0.05)があり、これが、LPSの投与により著しく増大し(p<0.05)、OP治療薬の投与により改善した(p<0.05)ことを示す図である。
【図1C】シャム手術対照と比較して、BDLラットにおける血漿IL−6の有意に近い増加がLPSの投与により増大した(♯♯p<0.01)ことを示す図である。
【図1D】BDLによるIL−6脳濃度の同様の傾向があったが、OPによる治療介入で有意性に達しなかったことを示す図である。
【図2A】シャム手術対照と比較して、BDLラットにおける脳iNOSタンパク質発現の有意な増加(***p<0.01)があり、これがOPの投与により改善した(p<0.01)ことを示す図である。
【図2B】シャム手術対照と比較して、BDLラットにおけるNFκBの有意な増加(***p<0.05)があり、これもOPの投与により改善した($$$p<0.01)ことを示す図である。これらは、OP処置動物における動脈及び脳TNFa、IL1b及びIL−6の有意な低下に関連していた。
【図3A】シャム対照と比較して、BDLラットにおける血漿TNF−αレベルの有意な上昇があり、これがOPの投与により逆転したことを示す図である。
【図3B】シャム対照と比較して、BDLラットにおける血漿TNF−αレベルの有意な上昇があり、これもOPの投与により逆転したことを示す図である。
【図4A】シャム対照と比較して、BDLラットにおけるeNOS活性の有意な低下があり、これがOPの投与により逆転したことを示す図である。
【図4B】シャム対照と比較して、BDLラットにおけるeNOSタンパク質発現の増加を示す図である。
【図4C】シャム対照と比較して、BDLラットにおけるiNOSタンパク質発現の有意な増加を示す図である。
【図5A】シャム対照と比較して、BDLラット血漿中の血漿ADMAの有意な増加があり、これがOPの投与後に非有意に減少したことを示す図である。
【図5B】シャム対照と比較して、BDL脳ホモジネート中の血漿ADMAの有意な増加があり、これがOPの投与により有意に減少したことを示す図である。
【図5C】シャム対照と比較して、BDLラットにおける脳カベオリン1タンパク質発現の有意な増加があり、これがOPの投与により逆転したことを示す図である。
【図6A】シャム対照と比較して、BDLラットにおける脳DDAH−1タンパク質発現の有意な減少があり、これがOPの投与により逆転したことを示す図である。
【図6B】シャム対照と比較して、BDLラットにおける脳DDAH−2タンパク質発現の有意な減少があり、これがOPの投与により逆転したことを示す図である。
【図6C】シャム対照と比較して、BDLラット脳におけるDDAH活性の有意な増加があり、これがOPの投与により逆転したことを示す図である。
【図7A】シャム対照と比較して、BDLラットにおけるeNOS活性の有意な低下があり、これがOPの投与により逆転したことを示す図である。
【図7B】シャム対照と比較して、BDLラットにおけるeNOSタンパク質発現の有意な増加があり、これもOPの投与により逆転したことを示す図である。
【図7C】シャム対照と比較して、BDLラットにおけるDDAH−1タンパク質発現の有意な増加があり、これがOPの投与により逆転したことを示す図である。
【図7D】シャム対照と比較して、BDLラットにおけるNFκ−Bタンパク質発現の有意な増加があり、OPの投与によりその増加が有意に低下したことを示す図である。
【図7E】シャム対照と比較して、BDLラットにおけるカベオリン1タンパク質発現の有意な増加があり、OPの投与によりその増加が有意に低下したことを示す図である。
【図7F】シャム対照と比較して、BDLラットにおける門脈圧の有意な上昇があり、OPの投与が門脈圧の30%の低下をもたらしたことを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
定義
本明細書で用いているように、「対象」は、治療、観察又は実験の対象である動物を意味する。「動物」は、魚、甲殻類、爬虫類及び特に哺乳動物などの冷及び温血脊椎動物並びに無脊椎動物を含む。「哺乳動物」は、制限なしに、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、サル、チンパンジー及び類人猿などの霊長類、並びに特に、ヒトを含む。
【0014】
本明細書で用いているように、「患者」は、特定の疾患若しくは障害の影響を治療若しくは少なくとも改善する又は疾患若しくは障害が最初に起こることを予防することを試みるために、医師(すなわち、逆症療法の医師若しくは整骨療法の医師)又は獣医学の医師などの医療専門家による治療を受けている対象を意味する。
【0015】
本明細書で用いているように、「投与」又は「投与すること」は、ある用量の薬学的に活性な成分を脊椎動物に与える方法を意味する。
【0016】
本明細書で用いているように、「用量」は、患者に投与される治療薬の量を意味する。
【0017】
本明細書で用いているように、「1日量」は、1日に患者に投与される治療薬の総量を意味する。
【0018】
本明細書で用いているように、「治療薬」という用語は、疾患又は状態の治療に有効である物質を意味する。
【0019】
本明細書で用いているように、「治療上有効量」又は「薬学的に有効量」は、治療効果を有する治療薬の量を意味する。治療に有用である薬学的に活性な成分の用量は、治療上有効量である。したがって、本明細書で用いているように、治療上有効量は、臨床試験結果及び/又はモデル動物試験により判断される所望の治療効果をもたらす治療薬の量を意味する。
【0020】
本明細書で用いているように、「治療効果」は、疾患又は障害の1つ又は複数の症状をある程度まで軽減する。例えば、治療効果は、対象によって伝達される主観的な不快感の減少(例えば、自己記入式患者質問票に記入された不快感の減少)により認めることがきる。
【0021】
略語
BDL=胆管結紮
OP=オルニチンフェニル酢酸塩
LPS=リポ多糖
iNOS=誘導型一酸化窒素合成酵素
eNOS=内皮一酸化窒素合成酵素
【0022】
門脈圧亢進
門脈圧亢進は、門脈(消化器官から肝臓に血液を運ぶ静脈)内部の圧力の増加である。門脈圧亢進の主な症状及び合併症は、消化管出血、例えば、黒色、タール状大便若しくは大便中血液、又は静脈瘤の自然破裂及びそれからの出血に起因する血液の嘔吐;腹水、例えば、腹部における液の蓄積;脳症、例えば、不良な肝機能及び肝臓からの血流の分流により引き起こされる錯乱及び健忘症;並びに血小板のレベルの低下又は白血球数の減少を含むが、これらに限定されない。
【0023】
門脈圧亢進は、基礎にある状態(例えば、肝臓障害)の症状又は結果であり得、したがって、対象は、1つ又は複数の状態を伴う門脈圧亢進を有し得る。いくつかの実施形態において、門脈圧亢進は、肝臓疾患に関連する。
【0024】
肝臓疾患の非限定的な例は、肝内胆汁うっ滞(アラジール症候群、胆汁性肝硬変)、脂肪肝(アルコール性脂肪肝、ライ症候群)、肝静脈血栓症、肝レンズ核変性、肝腫、肝膿瘍(アメーバ性肝膿瘍)、肝硬変(アルコール性、胆汁性及び実験的)、アルコール性肝臓疾患(脂肪肝、肝炎、肝硬変)、寄生虫性(肝エキノコックス症、肝蛭症、アメーバ性肝膿瘍)、黄疸(溶血性、肝細胞性及び胆汁うっ滞性)、胆汁うっ滞、門脈圧亢進症、肝腫脹、腹水、肝炎(アルコール性肝炎、動物肝炎、慢性肝炎(自己免疫、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、薬物誘発性)、中毒性肝炎、ウイルス性ヒト肝炎(A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎)、ウィルソン病、肉芽腫性肝炎、二次性胆汁性肝硬変、肝性脳症、静脈瘤、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、肝細胞腺腫、血管腫、胆汁結石、肝不全(肝性脳症、急性肝不全)及び肝臓新生物(血管筋脂肪腫、石灰化肝転移巣、嚢胞性肝転移巣、上皮腫瘍、繊維層板肝細胞癌、限局性結節性過形成、肝腺腫、肝胆管嚢胞腺腫、胚芽腫、肝細胞癌、肝癌、肝臓癌、肝臓血管内皮腫、肝間葉性過誤腫、肝の間葉性腫瘍、結節性再生過形成、良性肝臓腫瘍(肝嚢胞[単純性嚢胞、多嚢胞性肝疾患、肝胆管嚢胞腺腫、総胆管嚢胞]、間葉性腫瘍[間葉性過誤腫、乳児血管内皮腫、血管腫、肝紫斑病、脂肪腫、炎症性偽腫瘍、混合型]、上皮腫瘍[胆管上皮(胆管過誤腫、胆管腺腫)、肝細胞(腺腫、限局性結節性過形成、結節性再生過形成)]、悪性肝臓腫瘍[肝細胞性、胚芽腫、肝細胞癌、胆管細胞性、胆管癌、嚢胞腺癌、血管の腫瘍、血管肉腫、カポシ肉腫、血管内皮腫、他の腫瘍、胚肉腫、線維肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、癌肉腫、奇形腫、類癌腫、扁平細胞癌、原発性リンパ腫])、肝紫斑病、肝骨髄性ポルフィリン症、肝性ポルフィリン症(急性間欠性ポルフィリン症、晩発性皮膚ポルフィリン症)、ツェルヴェーガー症候群)などである。いくつかの実施形態において、肝障害は肝炎、肝硬変、胆汁うっ滞又は肝不全である。いくつかの実施形態において、肝疾患に罹患している患者は、肝性脳症を有する。
【0025】
いくつかの実施形態において、門脈圧亢進は、慢性肝疾患に関連する。いくつかの実施形態において、慢性肝疾患は、肝硬変である。肝硬変において、瘢痕組織が肝臓を経る血液の流れを阻止し、これが結果として門脈圧亢進をもたらす。門脈内の圧力の増加は、閉塞部を迂回するために大きい静脈(静脈瘤)を食道及び胃にわたって発達させる。静脈瘤内の圧力は大きくなり、破裂し得る。いくつかの実施形態において、門脈圧亢進を低減することにより、肝性脳症の発症の可能性が少なくなる。
【0026】
門脈圧亢進はまた、門脈における血栓症又は血液凝固によって引き起こされることがある。ヒト及び実験動物における門脈圧亢進は、運動過多性循環(hyperkinetic circulation)、内臓領域における血管拡張及び脾機能亢進に関連し得る。脾機能亢進は、重要な汎血球減少をもたらし得る。
【0027】
門脈圧亢進の治療
いくつかの実施形態において、門脈圧亢進を治療し且つ/又は予防するために対象にL−オルニチンをフェニルアセテート若しくはフェニルブチレートと併用投与する。いくつかの実施形態において、門脈圧亢進の発症を遅らせる又はその可能性を低減するために対象にL−オルニチンをフェニルアセテート又はフェニルブチレートと併用投与する。いくつかの実施形態において、治療は、肝機能の修復(例えば、肝臓潅流の増加)をもたらし、それにより門脈圧亢進を改善する。いくつかの実施形態において、部分的肝機能が修復される。いくつかの実施形態において、全肝機能が修復される。肝機能の修復(例えば、肝臓潅流の増加)は、1つ又は複数の次の測定により示され得る:アラニントランスアミナーゼ(ALT)試験、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)試験、アルファグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)試験、アルブミン(Alb)試験、プロトロンビン時間試験及び複合スコア(例えば、チャイルドピュースコアのMELDスコア)。さらに、肝臓血行動態は、肝臓血流量及び/又は門脈圧を検出することにより測定することができる。
【0028】
いくつかの実施形態において、L−オルニチンとフェニルアセテート又はフェニルブチレートとの併用投与は、内皮一酸化窒素合成酵素(eNOS)活性の調節をもたらし、それにより、eNOS活性の低下に関連する1つ又は複数の症状を治療又は改善する。いくつかの実施形態において、eNOS活性の低下は、カベオリン1及び非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)を含む内因性一酸化窒素合成酵素阻害物質の増加に関連する。いくつかの実施形態において、eNOS活性の低下は、NFκBの増加に関連する。いくつかの実施形態において、eNOS活性の低下は、アンモニアの増加に関連する。いくつかの実施形態において、eNOS活性の低下は、慢性肝疾患(例えば、肝硬変)及び急性肝不全を含む肝疾患に関連する。いくつかの実施形態において、該併用投与を用いて肝臓炎症を治療する。いくつかの実施形態において、該併用投与を用いて、肝疾患(例えば、肝硬変)における一酸化窒素シグナル伝達の障害を有する器官系の機能を改善する。
【0029】
いくつかの実施形態において、該併用投与は、前炎症性サイトカインを減少させるのに有用であり、これが門脈圧亢進を治療又はその可能性を低減するその能力を助長する。いくつかの実施形態において、門脈圧亢進は、該配合剤の投与により、肝硬変などの既存の慢性肝疾患を有する患者において予防される。したがって、いくつかの実施形態において、該配合剤を門脈圧亢進も有する慢性肝疾患を有する患者に投与する。いくつかの実施形態において、該併用投与を用いて部分的又は全肝機能を修復する。
【0030】
特定の理論に拘束されるものではないが、いくつかの実施形態において、該併用投与は、炎症性経路に対する作用により門脈圧亢進の状態を予防又は軽減する。いくつかの実施形態において、炎症性サイトカイン及び/又はiNOS(誘導型一酸化窒素合成酵素)のレベルを低下させることは、部分的又は完全な肝機能の修復及び門脈圧亢進の治療につながる。
【0031】
L−オルニチンとフェニルアセテート又はフェニルブチレートは、別個に又は単一剤形で投与することができる。一実施形態において、該配合剤をL−オルニチンフェニル酢酸塩として、又はL−オルニチンフェニル酢酸塩の溶液として投与する。
【0032】
フェニルアセテート(又はフェニル酢酸塩)及びフェニルブチレートの少なくとも1つと併用したL−オルニチンの異なる形の組成物が、参照によりそれらの全体として本明細書に組み込まれる、米国特許公開番号US2008/0119554及び2010年4月2日に出願された米国特許出願第12/753763号に記載されている。いくつかの実施形態において、L−オルニチン及びフェニルアセテートは、L−オルニチンフェニル酢酸塩若しくはその生理的に許容される塩として存在し、且つ/又は投与される。いくつかの実施形態において、L−オルニチンは、遊離の単量体アミノ酸若しくはその生理的に許容される塩として存在し、且つ/又は投与される。いくつかの実施形態において、フェニルアセテート及びフェニルブチレートの少なくとも1つは、フェニル酢酸ナトリウム若しくはフェニル酪酸ナトリウムとして存在し、且つ/又は投与される。いくつかの実施形態において、L−オルニチンの生理的に許容される塩並びにフェニルアセテート及びフェニルブチレートの少なくとも1つの生理的に許容される塩を対象に投与する。
【0033】
脳損傷からの保護
他の実施形態において、脳損傷から保護するために慢性肝疾患を有する対象における急性肝不全又は急性肝代償不全を有する対象にL−オルニチンをフェニルアセテート又はフェニルブチレートと併用投与する。いくつかの実施形態において、急性肝不全のリスクがある(例えば、まだ急性肝不全を発現していないタイレノール(Tylenol)の過剰投与を受けている対象)又は急性肝代償不全を伴わない慢性肝疾患を有する対象に該組合せを予防的に投与する。特定の理論に拘束されるものではないが、いくつかの実施形態において、急性肝不全又は急性肝代償不全を有する患者へのL−オルニチンとフェニルアセテート又はフェニルブチレートとの早期投与により、本明細書で述べるように炎症性経路を抑制することについてのその作用により脳損傷が発生することを予防することができる。したがって、いくつかの実施形態において、肝臓移植を含み得る追加的な一連の治療にかかわりなく、急性肝不全又は急性肝代償不全の診断の前又は直後にL−オルニチンをフェニルアセテート又はフェニルブチレートと併用投与する。いくつかの実施形態において、そのような早期投与により、静脈瘤出血、脳症の発症、頭蓋内圧の上昇の発現、昏睡の発症、挿管及びICU治療の必要が防止され、高アンモニア血症が軽減又は逆転され、それにより、そのような合併症によって引き起こされる脳損傷から保護される。
【0034】
医薬組成物
他の態様において、本開示は、生理的に許容される界面活性剤、担体、希釈剤、賦形剤、平滑剤、懸濁剤、膜形成物質及びコーティング助剤又はそれらの組合せ並びに本明細書で開示した化合物を含む医薬組成物に関する。治療上使用するための許容される担体又は賦形剤は、製薬技術分野において周知であり、例えば、参照によりその全体として組み込まれる、Remington's Pharmaceutical Sciences、18版、Mack Publishing Co.、Easton、PA(1990年)に記載されている。保存剤、安定化剤、色素、甘味料、芳香剤、着香料などは、医薬組成物に供することができる。例えば、安息香酸ナトリウム、アスコルビン酸及びp−ヒドロキシ安息香酸のエステルは、保存剤として加えることができる。さらに、抗酸化剤及び懸濁化剤を用いることができる。種々の実施形態において、アルコール、エステル、硫酸化脂肪族アルコールなどは、界面活性剤として用いることができ、ショ糖、ブドウ糖、乳糖、デンプン、微結晶セルロース、マンニトール、軽質無水ケイ酸、アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウムなどは、賦形剤として用いることができ、ステアリン酸マグネシウム、タルク、硬化油などは、平滑剤として用いることができ、ヤシ油、オリーブ油、ゴマ油、落花生油、ダイズは、懸濁剤又は滑沢剤として用いることができ、セルロース若しくは糖などの炭水化物の誘導体としての酢酸フタル酸セルロース、又はポリビニルの誘導体としてのメチル酢酸−メタクリル酸コポリマーは、懸濁剤として用いることができ、フタル酸エステルなどの可塑剤は、懸濁剤として用いることができる。
【0035】
オルニチン並びにフェニルアセテート及び/又はフェニルブチレートは、薬学的に許容される担体又は希釈剤とともに投与するために製剤化することができる。オルニチン並びにフェニルアセテート及び/又はフェニルブチレートは、製薬技術分野で常法であるように薬学的に許容される標準的な担体(単数若しくは複数)及び/又は賦形剤(単数又は複数)を用いて薬剤として製剤化することができる。製剤の正確な性質は、所望の投与経路を含むいくつかの因子に依存する。一般的に、オルニチン並びにフェニルアセテート及び/又はフェニルブチレートは、経口、静脈内、胃内、血管内又は腹腔内投与用に製剤化する。
【0036】
「医薬組成物」という用語は、本明細書で開示した化合物又は複数の化合物と希釈剤又は担体などの他の化学成分との混合物を意味する。医薬組成物は、生物体への化合物(単数又は複数)の投与を促進する。経口、注射、エアゾール、非経口及び局所投与を含むが、これらに限定されない、化合物の複数の投与技術が存在する。医薬組成物は、化合物(単数又は複数)を塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸などの無機又は有機酸と反応させることによっても得ることができる。
【0037】
「担体」という用語は、細胞又は組織への化合物の取込みを促進する化合物を定義する。例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)は、生物体の細胞又は組織への多くの有機化合物の取込みを促進するので、一般的に利用される担体である。
【0038】
「希釈剤」という用語は、化合物の生物学的に活性な形を安定化することに加えて、対象の化合物を溶解する水で希釈された化合物を定義する。緩衝溶液に溶解された塩は、当技術分野で希釈剤として利用されている。一般的に用いられている1つの緩衝溶液は、ヒト血液の塩の状態を模倣しているため、リン酸緩衝生理食塩水である。緩衝塩は低濃度で溶液のpHを制御し得るので、緩衝希釈剤は、化合物の生物学的活性をほとんど変化させない。
【0039】
「生理的に許容される」という用語は、化合物の生物学的活性及び特性を消失させない担体又は希釈剤を定義する。
【0040】
本明細書で述べる医薬組成物は、それ自体で、或いは、それらが、併用療法におけるように他の有効成分又は適切な担体若しくは賦形剤(単数又は複数)と混合されている医薬組成物でヒト患者に投与することができる。本明細書で開示した化合物又は化合物の組合せの製剤及び投与に関する技術は、「Remington's Pharmaceutical Sciences」、Mack Publishing Co.、Easton、PA、18版、1990年に見いだすことができる。
【0041】
いくつかの実施形態は、本明細書で開示した化合物(単数若しくは複数)又は化合物の組合せを錠剤、フィルムコート錠、カプセル剤、カプレット剤、丸剤、ゲルキャップス、ペレット、ビーズ又は糖衣剤形で提供する。好ましくは、本明細書で開示した製剤は、例えば、迅速な錠剤プレス速度、低い圧縮力、低い射出力、混合均一性、内容物均一性、色の均一分散、加速崩壊時間、迅速な溶解、低い破砕性(好ましくは、包装、発送、ピックアンドパック等などの下流処理)及びほとんど変動のない剤形の物理的特性(例えば、重量、硬度、厚さ、破砕性)を含むが、これらに限定されない好ましい薬物処理特性を提供し得る。
【0042】
本明細書で開示した化合物(単数若しくは複数)又は化合物の組合せは、例えば、製剤原料を、例えば、下に示すような結合剤、希釈剤、崩壊剤、滑沢剤、充填剤、担体、コーティング、流動促進剤、芳香剤、着色添加物などに限定されない適切な薬学的に許容される賦形剤(単数又は複数)と混合することにより、容易に製剤化することができる。そのような組成物は、貯蔵及び後の処理のために調製することができる。
【0043】
賦形剤
治療上使用するための許容される賦形剤は、製薬技術分野において周知であり、例えば、それぞれ参照によりその全体として組み込まれる、Handbook of Pharmaceutical Excipients、5版(Raymond C Rowe、Paul J Sheskey及びSian C Owen編、2005年)及びRemington: The Science and Practice of Pharmacy、21版(Lippincott Williams & Wilkins、2005年)。本明細書における「担体」物質又は「賦形剤」は、対象への治療薬の送達のための担体及び/又は希釈剤及び/又は佐剤、又は媒体として用いられる、或いはその取扱い若しくは貯蔵特性を改善するために又はカプセル剤、錠剤、フィルムコーティング錠、カプレット剤、ゲルキャップ剤、丸剤、ペレット剤、ビーズ剤及び経口投与に適する同類のものなどの個別の物品への組成物の用量単位の形成を可能にする若しくは促進するために医薬組成物に添加されるそれ自体は治療薬でない物質を意味し得る。賦形剤は、希釈剤、崩壊剤、結合剤、湿潤剤、ポリマー、滑沢剤、流動促進剤、コーティング剤、甘味料、可溶化剤、不快な味又は臭気を隠す又は防ぐために添加される物質、着香料、着色剤、芳香剤及び組成物の外観を改善するために添加される物質を実例として制限なく含み得る。
【0044】
組成物及び製剤は、改善された輸送、送達、耐容性等をもたらす他の物質を含み得る。これらの組成物及び製剤は、例えば、散剤、ペースト剤、ゼリー剤、ワックス剤、油剤、脂質剤、小胞(Lipofectin(商標)など)を含む脂質(陰イオン又は陽イオン)、DNA結合体、無水吸収ペースト剤、水中油型及び油中水型乳剤、乳剤カーボワックス(種々の分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル剤及びカーボワックスを含む半固体混合物を含み得る。
【0045】
製剤中の有効成分が製剤により不活性化されず、製剤が生理的に適合性があり、投与経路で忍容性があるならば、前述の混合物のいずれかは、本明細書における開示による治療及び療法において適切であり得る。Baldrick P.、「Pharmaceutical excipient development: the need for preclinical guidance」、Regul. Toxicol. Pharmacol.、32巻(2号)、210-8頁(2000年)、Charman WN、「Lipids、lipophilic drugs and oral drug delivery - some emerging concepts」、J. Pharm. Sci.、89巻(8号)、967-78頁(2000年)並びに薬剤師に周知である製剤、賦形剤及び担体に関する追加情報についてのそれらの中の引用も参照のこと。
【0046】
いくつかの実施形態において、列挙した賦形剤の1つ若しくは複数のもの、又はいずれかの組合せは、本明細書で開示した製剤及び/又は方法に具体的に含め又は除外することができる。当業者により認識されるように、賦形剤の量は、薬用量及び剤形サイズによって決定される。
【0047】
滑沢剤
いくつかの実施形態において、滑沢剤は、特定の剤形の製造に用いられる。例えば、滑沢剤は、錠剤を製造する場合にしばしば用いられる。いくつかの実施形態において、滑沢剤は、打錠ステップの直前に加えることができ、良好な分散を得るために最小限の時間にわたり製剤と混合することができる。いくつかの実施形態において、1つ又は複数の滑沢剤を用いることができる。適切な滑沢剤の例は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、タルク、ベヘン酸グリセリル、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシドポリマー(例えば、ポリエチレングリコールについてはCarbowax(登録商標)、ポリエチレンオキシドについてはPolyox(登録商標)の登録商標のもとにDow Chemical Company、Midland、Michから入手可能である)、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、オレイン酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、DL−ロイシン、コロイドシリカ及び当技術分野で公知の他のものを含むが、これらに限定されない。一般的な滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛及びステアリン酸マグネシウムとラウリル硫酸ナトリウムとの混合物である。
【0048】
着色添加物
いくつかの実施形態において、着色添加物も含めることができる。着色剤は、剤形力価を識別するのに十分な量で用いることができる。好ましくは、薬物における使用について承認された着色添加物(参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、21CFR74)を市販用製剤に加えて錠剤の力価を識別する。他の薬学的に許容される着色剤及びそれらの組合せの使用は、本開示により包含される。
【0049】
結合剤
結合剤は、例えば、製剤に凝集性を付与し、それにより、得られる剤形が圧縮後に完全なままであることを保証するために用いることができる。適切な結合剤材料は、微結晶セルロース、ゼラチン、糖(例えば、ショ糖、ブドウ糖、デキストロース及びマルトデキストリンを含む)、ポリエチレングリコール、ワックス、天然及び合成ゴム、ポリビニルピロリドン、アルファデンプン、ポビドン、セルロースポリマー(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどを含む)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)などを含むが、これらに限定されない。したがって、いくつかの実施形態において、本明細書で開示した製剤は、主要な賦形剤(単数又は複数)の圧縮性を向上させるために少なくとも1つの結合剤を含み得る。いくつかの実施形態において、結合剤(単数又は複数)は、結合活性を増加させるために例えば、湿式造粒で溶液から噴霧する。
【0050】
崩壊剤
いくつかの実施形態において、崩壊剤は、例えば、投与後の錠剤の崩壊を促進するために用いられ、一般的にデンプン、粘土、セルロース、アルギン、ゴム又は架橋ポリマーである。適切な崩壊剤は、架橋ポリビニルピロリドン(PVP−XL)、グリコール酸デンプンナトリウム、アルギン酸、メタクリル酸DYB、微結晶セルロース、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、グリコール酸デンプンナトリウム、デンプン、アルファデンプン、クロスカルメローストリウムなどを含むが、これらに限定されない。所望の場合、医薬製剤は、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤等、例えば、酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、トリエタノールアミン、酢酸ナトリウム、オレイン酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等及び同等のものなどの少量の非毒性補助物質も含み得る。
【0051】
コーティング
いくつかの実施形態において、製剤は、コーティング、例えば、フィルムコーティングを含み得る。フィルムコーティングが含まれている場合、コーティング製剤は、例えば、膜形成ポリマー、可塑剤又は同等のものを含み得る。また、コーティングは、顔料及び/又は乳白剤を含み得る。膜形成ポリマーの非限定的な例は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリジン及びデンプンなどを含む。可塑剤の非限定的な例は、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、セバシン酸ジブチル、ヒマシ油及びアセチル化モノグリセリドなどを含む。さらに、顔料及び乳白剤の非限定的な例は、種々の色の酸化鉄、多くの色のレーキ色素、二酸化チタン及び同等のものなどを含む。
【0052】
希釈剤
いくつかの実施形態において、希釈剤が用いられ、ショ糖、果糖、ブドウ糖、ガラクトース、乳糖、麦芽糖、転化糖、炭酸カルシウム、乳糖、デンプン、微結晶セルロース、乳糖一水和物、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、イソマルトース及びグリセロールなどの薬学的に許容されるポリオール、ポリデキストロース、デンプン若しくは同等のものなどの化合物の1つ若しくは複数のもの又はそれらのいずれかの混合物から一般的に選択される。
【0053】
界面活性剤
いくつかの実施形態において、界面活性剤が用いられる。経口薬剤における湿潤剤としての界面活性剤の使用は、文献、例えば、H. Sucker、P. Fuchs、P. Speiser、Pharmazeutische Technologie、2版、Thieme、1989年、260頁に記載されている。とりわけ薬剤活性化合物の浸透性及び生物学的利用能を改善するために界面活性剤を使用することも可能であることがAdvanced Drug Delivery Reviews (1997年)、23巻、163-183頁に公表されているような他の論文から公知である。界面活性剤の例は、陰イオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤及びそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。好ましくは、界面活性剤は、ポリ(オキシエチレン)ソルビタン脂肪酸エステル、ポリ(オキシエチレン)ステアリン酸エステル、ポリ(オキシエチレン)アルキルエーテル、ポリグリコール化グリセリド、ポリ(オキシエチレン)ヒマシ油、ソルビタン脂肪酸エステル、ポロキサマー、脂肪酸塩、胆汁酸塩、硫酸アルキル、レシチン、胆汁酸塩とレシチンとの混合ミセル、グルコースエステル、ビタミンE TPGS(D−α−トコフェリルポリエチレングリコール1000コハク酸)、ラウリル硫酸ナトリウムなど及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0054】
流動促進剤
いくつかの実施形態において、流動促進剤が用いられる。用いることができる流動促進剤の例は、コロイド二酸化ケイ素、三ケイ酸マグネシウム、粉末状セルロース、デンプン、タルク及びリン酸カルシウム又は同等のもの並びにそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0055】
適切な投与経路は、例えば、経口、直腸、経粘膜、局所又は腸投与;筋肉内、皮下、静脈内、骨髄内注射並びに硬膜下腔内、直接脳室内、腹腔内、鼻腔内又は眼内注射を含む非経口送達などを含み得る。本明細書で開示した化合物又は化合物の組合せは、所定の速度での長時間及び/又は時限パルス投与のためのデポ注射剤、浸透圧ポンプ、丸剤、経皮(エレクトロトランスポートを含む)貼付剤などを含む、徐放性又は放出制御剤形で投与することもできる。
【0056】
本開示の医薬組成物は、それ自体公知である方法、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠調製、研和、乳化、カプセル封入、封じ込み又は打錠工程により製造することができる。
【0057】
本開示により使用する医薬組成物は、活性化合物を薬剤として用いることができる製剤に加工することを促進する賦形剤及び助剤を含む1つ又は複数の生理的に許容される担体を用いて従来の方法で製剤化することができる。適切な製剤は、選択される投与経路によって決まる。周知の技術、担体及び賦形剤のいずれかは、適切なものとして、また当技術分野、例えば、上のRemington's Pharmaceutical Sciencesにおいて理解されているように用いることができる。
【0058】
注射剤は、液状の液剤若しくは懸濁剤、注射前の液状の液剤若しくは懸濁剤に適する固形剤形として、又は乳剤として、従来の剤形に調製することができる。適切な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、マンニトール、乳糖、レシチン、アルブミン、グルタミン酸ナトリウム、システイン塩酸塩などである。さらに、所望の場合、注射用医薬組成物は、湿潤剤、pH緩衝剤及び同等のものなどの少量の非毒性補助物質を含んでいてよい。生理的に適合性のある緩衝剤は、ハンクス液、リンゲル液又は生理食塩水緩衝剤を含むが、これらに限定されない。所望の場合、吸収促進製剤(例えば、リポソーム)を利用することができる。
【0059】
経粘膜投与のために、バリアに浸透するのに適する浸透剤を製剤に用いることができる。
【0060】
例えば、ボーラス注射又は持続注入による非経口投与用の医薬製剤は、水溶性型の活性化合物の水性液剤を含む。さらに、活性化合物の懸濁剤は、適切な油性注射懸濁剤として調製することができる。適切な親油性溶媒又は媒体は、ゴマ油などの脂肪油、又はダイズ、グレープフルーツ若しくはアーモンド油などの他の有機油、又はオレイン酸エチル若しくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、又はリポソームを含む。水性注射懸濁剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール又はデキストランなどの懸濁剤の粘度を増加させる物質を含んでいてよい。場合によって、懸濁剤は、適切な安定化剤又は高度に濃縮された溶液の調製を可能にするために化合物の溶解度を増加させる作用物質も含んでいてよい。注射用製剤は、単位剤形で、例えば、アンプル入りで、又は添加保存剤を含む又は複数回用量容器入りで提供することができる。組成物は、油性又は水性媒体中懸濁液、溶液又は乳濁液のような形をとっていてよく、懸濁化、安定化及び/又は分散剤などの製剤助剤を含んでいてよい。或いは、有効成分は、使用前に適切な媒体、例えば、発熱物質不含有水で構成するための粉末の形態であってよい。
【0061】
経口投与のために、本明細書で開示した化合物(単数若しくは複数)又は化合物の組合せは、活性化合物を当技術分野で周知の薬学的に許容される担体と混合することにより容易に製剤化することができる。そのような担体は、本明細書で開示した化合物又は化合物の組合せが、治療を受ける患者による経口摂取用の錠剤、フィルムコート錠、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、ゲットキャップ剤(get caps)、ペレット剤、ビーズ剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などとして製剤化されることを可能にする。経口での使用のための医薬製剤は、活性化合物を固体賦形剤と混合し、得られた混合物を場合によって粉砕し、所望の場合、錠剤又は糖衣錠コアを得るために適切な助剤を添加した後に顆粒剤の混合物を処理することによって得ることができる。適切な賦形剤は、特に、乳糖、ショ糖、マンニトール若しくはソルビトールを含む糖などの充填剤;例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース製剤及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)である。所望の場合、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸若しくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの崩壊剤を加えることができる。糖衣錠コアには適切なコーティングを施す。この目的のために、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、並びに適切な有機溶媒若しくは溶媒混合物を場合によって含んでいてよい、濃縮糖溶液を用いることができる。識別のため又は活性化合物の用量の異なる組合せを特徴づけるために染料又は顔料を錠剤又は糖衣錠コーティングに加えることができる。この目的のために、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、並びに適切な有機溶媒若しくは溶媒混合物を場合によって含んでいてよい、濃縮糖溶液を用いることができる。識別のため又は活性化合物の用量の異なる組合せを特徴づけるために染料又は顔料を錠剤又は糖衣錠コーティングに加えることができる。さらに、安定化剤を加えることができる。経口投与用のすべての製剤は、そのような投与に適する用量であるべきである。いくつかの実施形態において、許容できる即時放出溶解プロファイルを有する本明細書で開示した化合物(単数又は複数)又は化合物の組合せの製剤並びに頑健で、拡張可能な製造方法を開示する。
【0062】
経口で使用することができる医薬調製物は、ゼラチン製のプッシュフィットカプセル剤並びにゼラチン及びグリセロール又はソルビトールなどの可塑剤製の密封軟カプセル剤を含む。プッシュフィットカプセル剤は、乳糖などの充填剤、デンプンなどの結合剤、及び/又はタルク若しくはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤並びに場合による安定化剤との混合物の状態の有効成分を含み得る。軟カプセル剤において、活性化合物を脂肪油、流動パラフィン又は液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解又は懸濁することができる。さらに、安定化剤を加えることができる。経口投与用のすべての製剤は、そのような投与に適する用量であるべきである。
【0063】
口腔内投与のために、組成物は、従来の方法で製剤化された錠剤又はトローチ剤の形をとっていてよい。
【0064】
吸入による投与のために、本明細書で開示した化合物又は化合物の組合せは、適切な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の適切なガスを用いることにより加圧パック又は噴霧器からエアゾール噴霧の形で好都合に送達される。加圧エアゾールの場合、用量単位は、計測量を供給するための弁を備えることにより測定することができる。化合物と乳糖又はデンプンなどの適切な粉末基剤との粉末混合物を含む、吸入器又は吹入器に用いる例えば、ゼラチンのカプセル及びカートリッジを調剤することができる。
【0065】
本明細書でさらに開示するものは、眼内、鼻腔内及び耳介内送達を含む用途のための製薬技術分野で周知の様々な医薬組成物である。これらの用途に適する浸透剤は、当技術分野で一般的に公知である。眼内送達用の医薬組成物は、点眼剤などの水溶性型の又はゲランゴム(Sheddenら、Clin. Ther.、23巻(3号):440-50頁(2001年))若しくはヒドロゲル(Mayerら、Ophthalmologica、210巻(2号):101-3頁(1996年))中活性化合物の水性眼科用液剤;眼科用軟膏剤;微粒子、液体担体媒体に懸濁している薬物含有小ポリマー粒子(Joshi A.、J. Ocul. Pharmacol.、10巻(1号):29-45頁(1994年))、脂溶性製剤(Almら、Prog. Clin. Biol. Res.、312巻:447-58頁(1989年))及びミクロスフェア(Mordenti、Toxicol. Sci.、52巻(1号):101-6頁(1999年))などの眼科用懸濁剤;並びに眼インサートを含む。上記の参考文献のすべては、参照によりそれらの全体として本明細書に組み込まれる。そのような適切な医薬製剤は、安定性及び快適性のために無菌性、等張性であり、緩衝化されているように最もしばしば且つ好ましくは製剤化される。鼻腔内送達用の医薬組成物も、正常な線毛作用の維持を保証するために多くの点で鼻分泌を模擬するようにしばしば調製される滴剤及び噴霧剤を含み得る。参照によりその全体として本明細書に組み込まれ、当業者に周知であるRemington's Pharmaceutical Sciences、18版、Mack Publishing Co.、Easton、PA(1990年)に開示されているように、適切な製剤は、最もしばしば且つ好ましくは等張性で、5.5〜6.5のpHを維持するためにわずかに緩衝化されており、最もしばしば且つ好ましくは抗菌性保存剤及び適切な薬物安定化剤を含む。耳介内送達用の医薬製剤は、耳における局所適用のための懸濁剤及び軟膏剤を含む。そのような耳用製剤用の一般的な溶媒は、グリセリン及び水を含む。
【0066】
本明細書で開示した化合物(単数若しくは複数)又は化合物の組合せは、例えば、ココアバター又は他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含む坐剤又は停留浣腸剤などの直腸用組成物にも製剤化することができる。
【0067】
前述の製剤に加えて、本明細書で開示した化合物又は化合物の組合せは、デポ製剤としても製剤化することができる。そのような長時間作用性製剤は、埋め込み(例えば、皮下又は筋肉内)又は筋肉内注射により投与することができる。したがって、例えば、本明細書で開示した化合物又は化合物の組合せは、適切なポリマー若しくは疎水性物質(例えば、許容できる油中乳濁液として)又はイオン交換樹脂を用いて、或いは難溶性誘導体、例えば、難溶性塩として製剤化することができる。
【0068】
疎水性化合物については、適切な医薬担体は、ベンジルアルコール、非極性界面活性剤、水混和性有機ポリマー及び水相を含む共溶媒系であり得る。用いられる一般的な共溶媒系は、無水エタノールで定容とした、3重量/容積%ベンジルアルコール、8重量/容積%非極性界面活性剤Polysorbate 80(商標)及び65重量/容積%ポリエチレングリコール300の溶液であるVPD共溶媒系である。当然、共溶媒系の割合は、その溶解性及び毒性特性を損なうことなく、かなり変化させることができる。さらに、共溶媒成分の同一性を変化させることができ、例えば、他の低毒性の非極性界面活性剤をPOLYSORBATE 80(商標)の代わりに用いることができ、ポリエチレングリコールの分画サイズ(fraction size)を変化させることができ、他の生体適合性ポリマーをポリエチレングリコールの代わりに用いることができ(例えば、ポリビニルピロリドン)、及び他の糖又は多糖をデキストロースの代わりに用いることができる。
【0069】
或いは、疎水性医薬化合物の他の送達システムを用いることができる。リポソーム及び乳剤は、疎水性薬物の送達媒体又は担体の周知の例である。通常毒性がより高いという犠牲を払うが、ジメチルスルホキシドなどの特定の有機溶媒も用いることができる。さらに、化合物は、治療薬を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスなどの持続放出システムを用いて送達することができる。様々な持続放出材料が確立されており、当業者に周知である。持続放出カプセル剤は、それらの化学的性質によって、数週間から100日間以上まで化合物を放出し得る。治療用薬剤の化学的性質及び生物学的安定性によって、タンパク質の安定化のためのさらなる戦略を用いることができる。
【0070】
細胞内に投与することを意図した薬剤は、当業者に周知の技術を用いて投与することができる。例えば、そのような薬剤は、リポソームに封入することができる。リポソームの形成時に水溶液中に存在するすべての分子が水性の内部に取り込まれる。リポソームの内容物は、外部微小環境から保護され、リポソームが細胞膜と融合するため、細胞質中に効率よく送達される。リポソームは、組織特異的抗体で被覆してもよい。リポソームは、所望の臓器により標的にされ、選択的に取り込まれる。或いは、疎水性小有機分子を細胞内に直接投与してもよい。
【0071】
追加の治療又は診断用薬を医薬組成物に混入することができる。或いは又はさらに、医薬組成物を他の治療又は診断用薬を含む他の組成物と混合することができる。
【0072】
投与の方法
本明細書で開示した化合物(単数若しくは複数)若しくは化合物の組合せ又は医薬組成物は、適切な手段により患者に投与することができる。投与の方法の非限定的な例としては、本明細書で開示した化合物又は化合物の組合せを生組織と接触させるために当業者により適切であると考えられているような、とりわけ、(a)カプセル剤、錠剤、顆粒剤、噴霧剤、シロップ剤又はそのような他の剤形での投与を含む、経口経路による投与;(b)水性懸濁剤、油性製剤若しくは同等のものとしての又は点滴、噴霧剤、坐剤、塗布剤、軟膏剤若しくは同等のものとしての投与を含む、直腸、膣、尿道内、眼内、鼻腔内又は耳介内などの非経口経路による投与;(c)注入ポンプ送達を含む、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、皮内、眼窩内、包内、脊椎内、胸骨内又は同等の注射による投与;(d)腎臓又は心臓領域における直接的注射による、例えば、デポ埋込みによるなどの限局的投与;並びに(e)局所投与などが含まれる。
【0073】
投与に適する医薬組成物は、本明細書で開示した化合物(単数若しくは複数)若しくは化合物の組合せがその意図した目的を達成するのに有効な量で含まれている組成物を含む。用量として要求される本明細書で開示した化合物若しくは化合物の組合せの治療上有効量は、投与経路、治療を受けるヒトを含む動物の種類及び考慮中の特定の動物の身体的特性に依存する。用量は、所望の効果を達成するように調整することができるが、体重、食事、併用薬などの因子及び医療技術分野の技術者が認識する他の因子に依存する。より具体的には、治療上有効量は、疾患の症状を予防、軽減若しくは改善する又は治療を受けている対象の生存を延長させるのに有効な化合物の量を意味する。治療上有効量の決定は、本明細書で示した詳細な開示を特に考慮に入れると、当業者の能力の十分に範囲内である。
【0074】
当業者には容易に明らかなように、投与する有用なin vivo用量及び特定の投与方法は、年齢、体重及び治療する哺乳類種並びに本明細書で開示した化合物又は化合物の組合せが用いられる特定の用途によって異なる。所望の結果を達成するのに必要な用量レベルである有効用量レベルの決定は、当業者により常用の薬理学的方法を用いて遂行することができる。一般的に、製剤のヒト臨床適用は、より低い用量レベルで開始され、所望の効果が達成されるまで用量レベルが増加される。或いは、許容できるin vitro試験を用いて、確立された薬理学的方法を用いて本方法により特定される組成物の有用な用量及び投与経路を確定することができる。
【0075】
本明細書で用いているように、「用量」は、有効成分(例えば、L−オルニチン及びフェニルアセテート又はフェニルブチレート)の総計量を意味する。
【0076】
非ヒト動物試験において、可能性のある製剤の適用は、より高い用量レベルで開始され、所望の効果がもはや達成されなくなる又は有害副作用が消失するまで用量が低下される。用量は、所望の効果及び治療適応症によって広く変化する可能性がある。一般的に、用量は、約0.1mg/kgから4000mg/kg体重まで、好ましくは約80mg/kgから1600mg/kg体重までであり得る。或いは、用量は、当業者により理解されるように、患者の表面積に基づくものであり、表面積に基づいて計算することができる。
【0077】
治療する状態の重症度及び反応性によって、徐放性組成物の単回投与でもあり得、治療の過程が数日から数週間又は治癒が達成されるまで若しくは疾患状態の減衰が達成されるまで続く。投与する組成物の量は、もちろん、治療を受ける対象、苦痛の重症度、投与の方法、処方医師の判断を含む多くの因子に依存する。本明細書で開示した化合物又は化合物の組合せは、1日当たり患者の体重1kg当たり0.1mg/kgから4000mg/kgまでの用量で経口又は注射により投与することができる。ヒト成人の用量範囲は、一般的に1g〜100g/日である。不連続単位で提供される提供物の錠剤又は他の剤形は、好都合なことに、そのような用量で、又は同一のものの倍数として有効である本明細書で開示した化合物又は化合物の組合せの量、例えば、1g〜60g(例えば、約5g〜20g、約10g〜50g、約20g〜40g又は約25g〜35g)を含む単位を含む。患者に投与される化合物の的確な量は、担当医の責任である。しかし、用いられる用量は、患者の年齢及び性、治療する正確な障害及びその重症度を含む多くの因子に依存する。また、投与経路は、状態及びその重症度によって異なり得る。オルニチン又はフェニルアセテート若しくはフェニルブチレートの一般的な用量は、そのようなパラメーターによって、体重1kg当たり0.02g〜1.25g、例えば、体重1kg当たり0.1g〜0.5gである。いくつかの実施形態において、オルニチン又はフェニルアセテート若しくはフェニルブチレートの用量は、1g〜100g、例えば、10g〜80g、15g〜60g、20g〜40g又は25g〜35gであり得る。いくつかの実施形態において、オルニチン及びフェニルアセテート/フェニルブチレートは、10:1〜1:10、例えば、5:1〜1:5、4:1〜1:4、3:1〜1:3、2:1〜1:2又は約1:1の重量比で投与することができる。医師は、特定の対象に対するオルニチン及びフェニルアセテート又はフェニルブチレートの必要な用量を決定することができる。
【0078】
本明細書で開示した化合物又は化合物の組合せの医薬組成物の的確な製剤、投与経路及び用量は、個々の医師により患者の状態を考慮して選択することができる(例えば、特に第1章について参照により本明細書に組み込まれる、Finglら、1975年、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」参照)。一般的に、患者に投与される組成物の用量範囲は、約0.1〜約4000mg/患者の体重kgであり得る。用量は、患者による必要に応じて、1日又は複数日のうちに投与される1回用量又は一連の2回若しくはそれ以上の回数分の用量であり得る。少なくとも一部の状態について化合物のヒト用量が確定された場合、本開示は、同じ用量、又は確定されたヒト用量の約0.1%から約5000%まで、より好ましくは約25%から約1000%までの用量を使用する。ヒト用量が確定されていない場合、新たに発見された医薬化合物の場合と同様に、適切なヒト用量は、動物における毒性試験及び有効性試験により適格とされたin vitro又はin vivo試験から得られたED50若しくはID50値又は他の適切な値から推測することができる。
【0079】
主治医は、毒性又は臓器機能不全のため投与をどのように、またいつ終了し、中断し、又は調節するかを知っていることを注意すべきである。逆に、主治医は、臨床的反応が十分でなかった場合(毒性を除外)、処置をより高いレベルに調節することも知っているであろう。対象の障害の管理における投与量の大きさは、治療する状態の重症度及び投与経路によって異なる。状態の重症度は、例えば、標準的な予後評価方法により一部評価することができる。さらに、用量及びおそらく投与頻度は、個々の患者の年齢、体重及び反応によっても異なる。上で述べたものと同等なプログラムは、獣医薬に用いることができる。
【0080】
薬物ごとに正確な用量が決定されるが、ほとんどの場合に、用量に関するある程度の一般化を行うことができる。薬学的に許容される塩の投与の場合、用量は、遊離塩基として計算することができる。いくつかの実施形態において、組成物は、1日1〜4回投与する。或いは、本明細書で開示した化合物又は化合物の組合せの組成物は、好ましくは1日当たり100gまでの各有効成分の用量で持続静脈内注入により投与することができる。当業者により理解されるように、特定の状況において、特に侵攻性疾患又は感染を効果的且つ攻撃的に治療するために、上述の好ましい用量範囲を超える又ははるかに超える量で本明細書で開示した化合物を投与することが必要であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書で開示した化合物又は化合物の組合せは、持続的療法の期間、例えば、1週間若しくはそれ以上、又は数ヵ月若しくは数年間にわたり投与する。
【0081】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示した化合物(単数若しくは複数)又は化合物の組合せの投与計画は、ある期間にわたり投与することであり、その期間は、例えば、少なくとも約1週間から少なくとも約4週間まで、少なくとも約4週間から少なくとも約8週間まで、少なくとも約4週間から少なくとも約12週間まで、少なくとも約4週間から少なくとも約16週間まで、又はより長い。本明細書で開示した化合物(単数若しくは複数)若しくは化合物の組合せの投与計画は、1日3回、1日2回、毎日、1日おき、週3回、隔週、月3回、月1回、実質的に持続的に又は持続的に投与することができる。
【0082】
いくつかの実施形態は、本明細書で開示した化合物又は化合物の組合せの1回の投与当たり約1gから約100gの量の薬物を含む用量の本明細書で開示した化合物(単数若しくは複数)又は化合物の組合せを所望の治療期間にわたり月3回、月1回、週1回、3日おきに1回、2日おきに1回、1日1回、1日2回又は1日3回実質的に持続的に又は持続的に患者に投与するステップを含む、患者における門脈圧亢進の治療及び/又は肝機能の修復における有効量の本明細書で開示した化合物(単数若しくは複数)又は化合物の組合せを使用する方法を提供する。
【0083】
いくつかの実施形態は、本明細書で開示した化合物又は化合物の組合せの1回の投与当たり体重1kg当たり0.1mgから約4000mgの量の薬物を含む用量の本明細書で開示した化合物又は化合物の組合せを所望の治療期間にわたり月3回、月1回、週1回、3日おきに1回、2日おきに1回、1日1回、1日2回又は1日3回実質的に持続的に又は持続的に患者に投与するステップを含む、患者における門脈圧亢進の治療及び/又は肝機能の修復における有効量の本明細書で開示した化合物(単数若しくは複数)又は化合物の組合せを使用する方法を提供する。
【0084】
投与量及び間隔は、調節効果又は最小有効濃度(MEC)を維持するのに十分である活性部分の血漿レベルをもたらすように個別に調節することができる。MECは、各化合物ごとに異なるが、in vitroデータから推定することができる。MECを達成するのに必要な用量は、個々の特性及び投与経路に依存する。しかし、HPLC分析又は生物検定法を用いて血漿濃度を測定することができる。
【0085】
投与間隔は、MEC値を用いて決定することもできる。いくつかの実施形態において、組成物は、10〜90%、例えば、15〜30%、20〜45%、25〜50%、30〜55%、35〜60%、40〜65%、45〜70%、50〜75%、55〜80%、60〜90%、65〜75%、70〜80%、75〜85%、15〜90%、20〜90%、25〜90%、30〜90%、35〜90%、40〜90%、45〜90%、50〜90%、55〜90%、60〜90%、65〜90%、70〜90%、75〜90%又は80〜90%の時間にわたりMECを上回る血漿レベルを維持する投与計画を用いて投与することができる。いくつかの実施形態において、組成物は、20〜90%の時間にわたりMECを上回る血漿レベルを維持する投与計画を用いて投与することができる。いくつかの実施形態において、組成物は、30〜90%、40〜90%、最も一般的に50〜90%の時間にわたりMECを上回る血漿レベルを維持する投与計画を用いて投与することができる。
【0086】
局所投与又は選択的取込みの場合、薬物の有効局所濃度は、血漿濃度に関連しない可能性がある。
【0087】
投与する組成物の量は、治療を受ける対象、対象の体重、苦痛の重症度、投与方法及び処方医師の判断に依存し得る。
【0088】
本明細書で開示した化合物(単数若しくは複数)又は化合物の組合せは、公知の方法を用いて有効性及び毒性について評価することができる。例えば、本明細書で開示した化合物又は化合物の組合せの毒性学は、哺乳類、好ましくはヒト細胞系などの細胞系に対するin vitro毒性を測定することにより確立することができる。そのような試験の結果は、哺乳動物又はより具体的にはヒトなどの動物における毒性のしばしば予測となるものである。或いは、マウス、ラット、ウサギ又はサルなどの動物モデルにおける本明細書で開示した化合物又は化合物の組合せの毒性は、公知の方法を用いて測定することができる。本明細書で開示した化合物又は化合物の組合せの有効性は、in vitro法、動物モデル又はヒト臨床試験などのいくつかの広く認められている方法を用いて立証することができる。広く認められているin vitroモデルは、癌、心血管疾患及び種々の免疫機能不全を含むが、これらに限定されないほぼすべてのクラスの状態について存在する。同様に、容認できる動物モデルを用いて、そのような状態を治療する化学物質の有効性を立証することができる。有効性を判断するためにモデルを選択する場合、当業者は、適切なモデル、用量及び投与経路並びに計画を選択するのに先端技術により導くことができる。もちろん、ヒトにおける化合物の有効性を判断するためにヒト臨床試験も用いることができる。
【0089】
組成物は、所望の場合、有効成分を含む1つ又は複数の単位剤形を含み得るパック又はディスペンサー装置入りで提供することができる。パックは、例えば、ブリスターパックなどの金属又はプラスチックフォイルを含んでいてよい。パック又はディスペンサー装置には、投与に関する指示書を添付してもよい。パック又はディスペンサーに、医薬品の製造、使用又は販売を規制する政府機関により規定された書式の容器に関連する通知も添付してもよく、当通知は、ヒト又は動物への投与用の薬物の形態の当機関による承認を反映している。そのような通知は、例えば、処方薬に関する米国食品医薬品局により承認されたラベリング又は承認済み添付文書であり得る。適合性医薬担体を用いて製剤化される本明細書で開示した化合物又は化合物の組合せを含む組成物も調製し、適切な容器に入れ、適応となる状態の治療についてラベル表示することができる。
【0090】
本明細書で開示した化合物(単数若しくは複数)又は化合物の組合せの有効量は、当業者により決定され得る。個々の対象における固有の用量レベル及び投与頻度は、異なる可能性があり、用いられる特定の化合物の活性、当化合物の代謝的安定性及び作用持続時間、対象の種、年齢、体重、一般的健康状態、性及び食事、投与の方法及び時間、排泄の速度、薬物の併用並びに特定の状態の重症度を含む様々な因子に依存することは、理解されるであろう。治療の好ましい対象は、門脈圧亢進に罹りやすい、動物、最も好ましくはヒト並びにイヌ、ネコ及び同類のものなどの家畜などの哺乳類種などを含む。
【0091】
したがって有効量の門脈圧亢進を治療することができる本明細書で開示した化合物(単数若しくは複数)又は化合物の組合せ、並びに薬学的に許容される媒体若しくは希釈剤を含む医薬組成物も開示する。本開示の組成物は、下記のような他の治療薬を含んでいてよく、例えば、従来の固体若しくは液体媒体若しくは希釈剤、並びに所望の投与方法に適する種類の医薬品添加物(例えば、賦形剤、結合剤、保存剤、安定化剤、着香料等)を用いることにより、製剤処方の技術分野で周知のような又は一般に認められた薬務により要求されるような技術により製剤化することができる。
【0092】
本明細書で開示した化合物(単数若しくは複数)又は化合物の組合せは、非毒性の薬学的に許容される媒体若しくは希釈剤を含む用量単位製剤で、適切な手段により、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤又は散剤の形におけるような経口;舌下;口腔内;皮下、静脈内、筋肉内又は胸骨内注射若しくは注入技術によるような非経口(例えば、滅菌注射用水性若しくは非水性液剤又は懸濁剤);吸入噴霧によるような鼻;クリーム剤又は軟膏剤の形におけるような局所;或いは坐剤の形におけるような直腸投与することができる。
【0093】
本明細書で開示した化合物(単数若しくは複数)又は化合物の組合せは、例えば、即時放出又は持続放出に適する形で投与することができる。即時放出又は持続放出は、化合物(単数若しくは複数)又は化合物の組合せを含む適切な医薬組成物を用いることにより、或いは特に持続放出の場合に、皮下インプラント又は浸透圧ポンプなどの装置を用いることにより達成することができる。
【0094】
本明細書で開示した化合物(単数若しくは複数)又は化合物の組合せはまた、リポソームにより投与することができる。例えば、活性物質は、本明細書で開示した化合物又は化合物の組合せを含む錠剤、カプセル剤、液剤又は懸濁剤などの組成物に、或いは創傷治癒のための局所剤形(0.01〜5重量%の本明細書で開示した化合物又は化合物の組合せ、1日当たり1〜5回処置)に用いることができる。
【0095】
本明細書で開示した化合物(単数若しくは複数)又は化合物の組合せは、生理的に許容される媒体若しくは担体、賦形剤、結合剤、保存剤、安定化剤、着香料等と、又は局所担体と混合することができる。
【0096】
本明細書で開示した化合物(単数若しくは複数)又は化合物の組合せは、非経口投与用の滅菌液剤又は懸濁剤などの組成物にも製剤化することができる。本明細書で開示した化合物又は化合物の組合せは、一般に認められた薬務により要求されるように単位剤形において生理的に許容される媒体、担体、賦形剤、結合剤、保存剤、安定化剤等と混合することができる。これらの組成物又は製剤中の活性物質の量は、示された範囲内の適切な用量が得られるような量であることが好ましい。
【0097】
経口投与用の具体例としての組成物は、例えば、かさを与えるための微結晶セルロース、懸濁化剤としてのアルギン酸若しくはアルギン酸ナトリウム、増粘剤としてのメチルセルロース、及び当技術分野で公知であるような甘味料又は着香料を含んでいてよい懸濁剤;並びに例えば、微結晶セルロース、リン酸二カルシウム、デンプン、ステアリン酸マグネシウム及び/又は乳糖及び/又は当技術分野で公知であるような他の賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、希釈剤及び滑沢剤を含んでいてよい即時放出錠剤などである。成形錠剤、圧縮錠剤又は凍結乾燥錠剤は、用いることができる具体例としての剤形である。具体例としての組成物としては、本明細書で開示した化合物又は化合物の組合せをマンニトール、乳糖、ショ糖及び/又はシクロデキストリンなどの迅速溶解性希釈剤を用いて製剤化したものが挙げられる。そのような製剤に、セルロース(アビセル)又はポリエチレングリコール(PEG)などの高分子量賦形剤も含めることができる。そのような製剤は、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(SCMC)、無水マレイン酸コポリマー(例えば、Gantrez)などの粘膜付着を促進するための賦形剤及びポリアクリルコポリマー(例えば、Carbopol 934)などの放出を制御するための作用物質も含んでいてよい。滑沢剤、流動促進剤、着香料、着色剤及び安定化剤も製造及び使用の容易さのために加えることができる。
【0098】
鼻エアゾール又は吸入投与用の具体例としての組成物は、例えば、当技術分野で公知であるようなベンジルアルコール若しくは他の適切な保存剤、生物学的利用能を増大させるための吸収促進剤、及び/又は他の可溶化剤若しくは分散剤を含んでいてよい、生理食塩水中溶液などを含む。
【0099】
非経口投与用の具体例としての組成物は、例えば、マンニトール、1,3−ブタンジオール、水、リンゲル液、等張性塩化ナトリウム溶液などの非経口で許容できる適切な非毒性希釈剤若しくは溶媒、又は合成モノ若しくはジグリセリド及びオレイン酸を含む脂肪酸などの他の適切な分散若しくは湿潤及び懸濁化剤を含んでいてよい注射用液剤又は懸濁剤などを含む。
【0100】
直腸投与用の具体例としての組成物としては、例えば、常温で固体であるが、直腸腔内で液化し且つ/又は溶解して、薬物を放出するココアバター、合成グリセリドエステル又はポリエチレングリコールなどの適切な非刺激性賦形剤を含んでいてよい坐剤などが挙げられる。
【0101】
局所投与用の具体例としての組成物は、プラスチベース(ポリエチレンでゲル化した鉱油)などの局所担体を含む。例えば、本明細書で開示した化合物又は化合物の組合せは、末梢血管疾患を治療するために局所的に投与することができ、したがって、クリーム剤又は軟膏剤として製剤化することができる。
【0102】
本明細書で開示した化合物(単数若しくは複数)又は化合物の組合せは、単独又は門脈圧亢進の治療若しくは肝機能の修復に有用な他の適切な治療薬と併用して用いることができる。例えば、本明細書で開示した化合物又は化合物の組合せは、テルリプレシン、オルニプレシン及びバソプレシンなどのバソプレシン類似体;ソマトスタチン及びオクトレオチドなどのその類似体;プロプラノロール及びナドロールなどの非選択的ベータ遮断薬;カルベジロールなどの血管拡張性ベータ遮断薬;一硝酸イソソルビド及び三硝酸グリセリンなどの硝酸エステル;並びにアトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン及びシンバスタチンなどのスタチンと併用して投与することができる。
【0103】
上の他の治療薬は、本明細書で開示した化合物又は化合物の組合せと併用して用いる場合、例えば、医師用卓上参考書(Physicians' Desk Reference)(PDR)に示されている又は当業者により別の方法で決定された量で用いることができる。
(実施例)
【0104】
本出願の実施形態は、本開示の範囲を限定するものでない以下の実施例でさらに詳細に開示する。
【実施例1】
【0105】
この実施例では、実験は、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)などのサイトカインの増加により示される軽度全身性及び脳前炎症性状態並びに軽度脳浮腫の臨床的特性を示す、肝硬変の臨床的に関連性のある胆管結紮(BDL)ラットモデルにおいて行った。BDLラットにおいて、細菌リポ多糖(LPS)の投与は、臨床的ACLFに類似した臨床状況をもたらす。
【0106】
アンモニアと続いて静脈内LPSに曝露した未処置ラットが、LPSのみを投与した動物に発生しなかった炎症反応、脳血管拡張及び頭蓋内高血圧を発現したことが示され、LPSの有害作用に応じる脳の「準備をする」うえでのアンモニアの重要な役割が示唆される。前昏睡/昏睡段階への意識の低下をもたらす細胞毒性脳浮腫の悪化をもたらす全身性及び脳炎症反応の誇張が存在する。
【0107】
動物モデル
体重が200〜250gの34匹の雄Sprague−Dawleyラットを用いた。すべてのラットをユニットに収容し、12時間の明/暗サイクル、19〜23℃の温度及び約50%の湿度のもとで、標準げっ歯類用飼料と水を自由に摂取させた。
【0108】
胆管結紮(BDL):ラットに静脈内(IV)ジアゼパム(1mg/kg)と続く150μl/kgの筋肉内Hypnorm(登録商標)(Janssen Pharmaceutica、Belgium)による麻酔下で胆汁性肝硬変を誘発するために胆管結紮を受けさせた。
【0109】
シャム手術(sham):ラットに麻酔下でシャム手術を受けさせた。BDLラットに高タンパク質/アンモニア生成食を試験に含める前の7日間投与した。食事は、液体げっ歯類飼料(Bioserve、Frenchtown、NJ08825、USA)及び沈降を防ぐために市販のゼラチンと混合したヘモグロビン分子のアミノ酸組成物を模擬した目的に合った混合物(4g/Kg/日Nutriuca、Cujik、The Netherlands)からなっていた。この規制飼育により、慢性高アンモニア血症がもたらされる。
【0110】
試験デザイン
OPを投与することにより、ACLFを示す高アンモニア血症の背景に対する併発炎症(superimposed inflammation)を治療する効果を検討した。手術の4週間後に、BDLラットをOP(0.3g/kg)、マウスキメラ抗TNF−αモノクローナル抗体又は生理食塩水(プラセボ)の3日間の連続腹腔内(IP)注射を受けるように無作為化した。終了の3時間前に、すべてのBDLラットにIP−1mg/kg LPS(Sigma、Poole、UK)を投与した。対照として、シャム手術ラットにIP生理食塩水のみを投与した。試験群は、1)シャム手術(n=6)、2)BDL+生理食塩水(n=6)、3)BDL+LPS(n=6)及び4)BDL+OP+LPS(n=6)であった。
【0111】
純正(just)BDL(非LPC投与)ラットにおける脳炎症反応に対するOPのアンモニア低下効果を究明するために、さらなる試験を行った。手術の4週間後に、BDLラットをOP(0.3g/kg)及び/又は生理食塩水(プラセボ)の3日間の連続腹腔内(IP)注射を受けるように無作為化した。対照として、シャム手術ラットにIP生理食塩水のみを投与した。試験群は、1)シャム手術(n=6)、2)BDL+生理食塩水(n=6)、及び3)BDL+OP(n=6)であった。プロトコールごとに、温度制御された環境において介入後3時間にわたってラットに飼料及び水を自由に摂取させ、次いで、IPジアゼパム(1mg/kg)の20分後のIP Hypnorm(登録商標)(200μL/kg)による麻酔下で放血により屠殺した。血液を下行大動脈から抜き取り、直ちに氷冷ヘパリン/EDTA含有管に入れ(完全な放血まで)、3120xg及び4℃で遠心分離し、血漿を収集し、分析するまで−80℃で保存した。
【0112】
血漿及び脳皮質サイトカイン
血漿及び脳皮質試料を急速凍結し(−80℃)、保存した。分析の前に、100μgの大脳皮質を300μl氷冷細胞溶解緩衝溶液中でホモジナイズし、タンパク質を除去した(ガラス管テフロン乳棒ホモジナイザーを使用)。4℃で12000xgで10分間遠心分離した後、上清を処理のために収集した。平衡化脳タンパク質試料及び血漿上清(50μl)のタンパク質濃度の定量後に、製造業者の指示書により記述されているようにBecton Dickinson(BD(商標)biosciences)ラット炎症細胞計測ビーズアッセイ(CBA)キットを用いてフローサイトメトリによりサイトカインレベル(pg/ml)について分析した。これらは、前炎症性サイトカインTNF−α及びインターロイキン6(IL−6)を含んでいた。FACS Canto(商標)IIフローサイトメトリシステム(BD(商標)Sciences)上のCBAビーズにより発生した蛍光を測定することにより試料を分析し、BD(商標)CTAソフトウエアを用いてデータを解析した。
【0113】
ウエスタンブロット分析
急速凍結し(−80℃)、保存した100μgの脳皮質試料を300μl氷冷細胞溶解緩衝溶液中でホモジナイズし、タンパク質を除去した(ガラス管テフロン乳棒ホモジナイザーを使用)。4℃で12000xgで10分間遠心分離した後、上清を処理のために収集した。試料タンパク質濃度(平衡化50μl前頭皮質脳組織の)の定量後に、NuPAGE(登録商標)プレキャストゲルシステム(Invitrogen Ltd、UK)を用いてタンパク質の分離及び転移について準備した試料についてウエスタンブロットを実施した。特異的タンパク質バンドは、マウスIgGに対するiNOSマウス一次(BD Biosciences、UK)及び二次ヤギポリクローナル抗体(HRP結合(Hycult biotechnology、Netherlands))並びにウサギIgGに対するp65 NFκB−ウサギ一次(cell signalling、UK)と二次ヤギポリクローナル抗体(HRP結合(Hycult biotechnology、Netherlands))を用いて検出した。検出のためにマウスIgGに対する二次ヤギポリクローナル抗体(HRP結合(Hycult biotechnology、Netherlands))を必要とする試料組織間の総タンパク質発現の正確な差を確認するために偏在する細胞の細胞骨格タンパク質であるアルファ−チューブリン(α−チューブリン;Santa Cruz Biotechnology,Inc.、USA)に対する抗体を測定した。すべての抗体を1:1000の希釈度で用いた。Amersham ECL(商標)advanceウエスタンブロッティング検出試薬及びHyperfilm(商標)(GE Healthcarea、UK)を用いてタンパク質バンドを視覚化した。Image−Jソフトウエア(freeware;rsbweb.nih.gov/ij)を用いてデンシトメトリ測定を行った。
【0114】
統計処理
データは、平均値±SEMとして表す。差の有意性は、ニューマン・クール多重比較検定又は二元配置ANOVAを用いて検定し、p<0.05を統計的に有意であるとした。必要に応じて、2群の比較に対応のあるt検定又はウィルコクソン符号付順位検定を用いた。異なる処置群における前昏睡/昏睡までの時間についてカプラン・マイヤー生存解析を行い、生存曲線を比較するデータの統計解析に対数順位検定を用いた。用いたソフトウエアは、Microsoft Excel 2003(Microsoft Corp.、Redmond、WA)及びGraphPad Prism 4.0(GraphPad Software,Inc.、San Diego、CA)などが含まれる。
【0115】
結果
すべてのラットが手術後に体重を増加し続けた。終了直前に測定した最終体重から、BDLラット(平均値±SEM;342g±42)は、シャム手術対照(平均値±SEM;380g±38)と有意に異なっていなかった。BDL動物における全身血行動態は、以前に示されたように十分に維持されていた。
【0116】
血漿及び脳皮質サイトカイン
すべての試験群を通して、平均前頭皮質脳組織のサイトカインレベルは、それらの各循環血漿レベルと比較してほぼ10倍程度高かった(図1A〜D及び表1)。多重比較群解析により、以下のことが明らかになった。
【0117】
血漿サイトカイン:シャム手術ラットと比較した場合、胆管結紮は、前炎症性サイトカインTNF−αの血漿レベルの有意な増加(p<0.05)を伴っていた(図1A)。BDLラットにおいて、LPSチャレンジは、シャム手術対照(それぞれp<0.001)及び生理食塩水処置BDL対照(それぞれp<0.01)と比較した場合、血漿TNF−α及びIL−6を有意に増加させた(図1B〜C)。BDL+LPSラットと比較した場合、OPの投与後に血漿TNF−αの有意な減少(p<0.01)及びIL−6の減少の傾向があった(図1B〜D)。
【0118】
脳皮質サイトイン:シャム手術ラットと比較した場合、胆管結紮は、LPSにより増大した(p<0.001)、TNF−αの脳レベルの有意な増加を伴っていた(p>0.05、表1)。LPS処置BDLラットにおいて、OPの投与は、高い皮質TNF−α脳組織レベルを改善した(p<0.05)。胆管結紮及び治療介入後に脳IL−6レベルについて同様な傾向があった。
【0119】
血漿及び脳皮質サイトカイン
血漿サイトカイン:シャム手術ラット(114.8±40.4pg/ml)と比較した場合、BDLは、TNF−αの血漿レベルの有意な増加(902.2±176.1pg/ml;p<0.001)を伴い、これは、OPの前処置により有意に減少した(270.5±59.4pg/ml;p<0.001)。
【0120】
脳皮質サイトカイン:シャム手術ラット(34.2±4.6pg/ml)と比較した場合、BDLは、TNF−αの脳レベルの有意な増加(178.7±62.9pg/ml;p<0.05)を伴い、これは、OPの前投与により有意に減少した(54.7±15.3pg/ml;p<0.05)。
【0121】
iNOS発現
シャム手術ラット(1.46±0.17;図2A)と比較した場合、BDLによる脳iNOSの有意な増加(2.87±0.14;p<0.001)があり、これは、OPの前投与後に減少した(2.32±0.17;p<0.05)。
NFκB発現
【0122】
【表1】

【0123】
シャム手術ラット(2.65±0.17;図2B)と比較した場合、BDLによる脳NFκBの有意な増加(4.25±0.13;p<0.001)があり、これは、OPの前投与後に著しく減少した(2.52±0.19;p<0.001)。
【0124】
この実施例において、BDLラットは、試験前4週間にわたり動脈及び脳サイトカインの上昇によって示される高アンモニア血症及び前炎症性状態を伴う慢性肝疾患を示している。さらに、このモデルへのLPSの投与は、第二のヒットに反映されており、この状況において、TNF−α及びIL−6の増加によって明らかにされる炎症反応の誇張の証拠を有する感染エピソードを示す。肝硬変脳は、LPS投与群において古典的「細胞毒性浮腫」さえ示している。アンモニアと炎症が同時に(且つ相乗的に)作用して、脳浮腫及び昏睡をもたらす。
【0125】
OPの投与は血漿及び脳前炎症性サイトカインの減少も伴うことが認められた。
【実施例2】
【0126】
脳eNOS活性の調節
非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)は、eNOSの内因性阻害物質であり、そのレベルは、肝不全において増加する。L−オルニチンとフェニルアセテートの併用投与がNO経路に対して影響を及ぼすかどうかを究明するための試験を実施した。この実施例では、次の疑問を検討する:(a)肝硬変脳においてeNOS活性は低下するのか?(b)肝硬変脳においてADMAレベルが増加し、ジヒドロジアミノヒドロラーゼ(DDAH、ADMAを分解する酵素)が減少するのか、(c)肝硬変脳においてeNOS活性の他の調節因子は変化し、これらはL−オルニチンとフェニルアセテートの併用(OP)により回復するかどうか?
【0127】
Sprague−Dawleyラットを胆管結紮(BDL)(n=16)又はシャム手術(n=8)の4週間後に試験し、プラセボ又はOP(0.6gm/kg)i.p.の投与を受けるように無作為化した。動脈血、前頭脳組織及び尿を屠殺時に採取した。血漿中のアンモニア及びアミノ酸をそれぞれCobas−MiraS及びHPLCを用いて測定した。脳水を乾燥重量法を用いて測定した。尿フェニルアセチグルタミン(phenylacetyglutamine)並びに血漿及び脳ADMAをLCMSを用いて測定した。eNOS活性を放射性標識Hアルギニンを用いて測定し、eNOS、DDAH−1及びカベオリンのタンパク質発現をウエスタンブロッティングを用いて測定した。
【0128】
BDLラットへのOPの投与は、動脈アンモニア(p<0.001)、脳水(p<0.001)の正常化及び尿フェニルアセチルグルタミンの増加(p<0.01)をもたらした。BDL動物においてシャム手術対照と比較してeNOS活性が有意に低かったが、eNOSタンパク質発現は大きく、これは、OP投与動物においてsham値に回復した。脳ADMAレベルは、shamと比較してBDLにおいて有意に高く、脳DDAH−1は有意に低く、これは、OPの投与で回復した。脳カベオリンは、BDL動物において有意に低く、これは、OP投与動物においてsham値に回復した。
【0129】
この実施例では、脳一酸化窒素経路が高アンモニア血症による悪影響を受けるが、これは、OPの投与により回復させることができることが示された。これらの結果から、NOシグナル伝達の障害を有することが公知である肝硬変症における器官系の治療にOPを用いることができることが実証された。
【実施例3】
【0130】
シャム手術Sprague−Dawleyラット(n=10)とBDLラット(n=10)をBDL手術の4週間後に、また追加のBDL群(n=6)においては、3g/kgi.p.OPの5日間にわたる1日2回の投与の後に比較した。血漿中のアンモニア及びアミノ酸をそれぞれCobas−Integra及びHPLCを用いて測定した。脳水を乾燥重量法を用いて測定した。TNFαをFACSビーズアレイで測定した。尿フェニルアセチルグルタミン並びに血漿及び脳ADMAをそれぞれLC−MS/MSを用いて測定した。eNOS及びDDAH活性を放射分析により測定した。eNOS、DDAH−1及び−2並びにカベオリン1のタンパク質発現をウエスタンブロッティングを用いて測定した。
【0131】
下に示すように、血漿(図3A)及び脳(図3B)TNF−αレベルは、BDLラットにおいてshamと比較して有意に上昇した(両方についてp<0.01)。OPの投与により、これらの変化がsham近くに戻り、BDL単独と比較したとき有意である(それぞれp<0.05;p<0.01)。
【0132】
図4に示すように、BDLラット脳においてshamと比較して、eNOSタンパク質発現(図4B)が増加したにもかかわらず、eNOS活性(図4A)は有意に低下した。OPの投与後に、eNOS活性は、shamレベルに戻り、eNOSタンパク質発現の同様な正常化が伴っていた。iNOSタンパク質もBDLラットにおいて有意に上昇した(図4C)。OPの投与は、BDL単独と比較してiNOSタンパク質を下方制御した(図4C)。
【0133】
図5に示すように、血漿ADMA(図5A)は、shamと比較してBDLラット血漿(p<0.01)及び脳ホモジネート(図5B)(p<0.05)中で有意に上昇した。OPの投与後に、BDLと比較して血漿ADMAの非有意な減少があったが、脳ADMA濃度の有意な低下があった。さらに、脳カベオリン1タンパク質発現(図5C)は、BDLラットにおいてshamと比較して有意に増加した(p<0.01)。OPの投与により、カベオリン1タンパク質はshamレベルに戻った(p<0.05)。
【0134】
図6に示すように、脳DDAH−1(図6A)タンパク質発現は、BDLラットにおいて有意に減少した(p<0.05)。逆に、脳DDAH−2(図6B)タンパク質発現は、shamと比較して有意に増加した(p<0.05)。OPの投与後に、BDLと比較してDDAH−1は、有意に増加し(p<0.05)、DDAH−2タンパク質発現は、有意に減少した(p<0.05)。さらに、DDAH活性(図6C)は、BDLラット脳においてshamと比較して有意に上昇した。OPの投与により、DDAH活性は、BDL単独と比較して有意に低下した(p<0.01)。
【実施例4】
【0135】
肝臓eNOS活性の調節
肝硬変症において、門脈圧亢進は、内因性NOS阻害物質カベオリン1及び非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)の増加に関連する、肝臓内内皮一酸化窒素合成酵素(eNOS)活性の低下に寄与する肝臓炎症に関連する。この実施例は、L−オルニチンフェニル酢酸塩配合剤(OP)の投与が、内皮NOSのこれらの炎症依存性阻害物質の調節によりNFκBを減少させ、肝臓内NO利用率を増加させ、それにより門脈圧を低下させるかどうかを究明するためのものである。
【0136】
Sprague−DawleyラットをBDL手術(n=16)又はシャム手術(n=8)の4週間後に試験し、試験前の5日間にわたりプラセボ又はOP(0.6gm/kg)i.p.の投与を受けるように無作為化した。ラットについて屠殺時に麻酔下で直接門脈圧測定を行い、後の分析のために血漿及び肝臓組織を採取した。血漿アンモニア及び生化学検査項目をCobas−MiraS分析装置を用いて測定し、eNOS活性を放射分析により測定した。eNOS、DDAH−1、カベオリン1及びNFκBのタンパク質発現をウエスタンブロッティングを用いて測定した。
【0137】
OPの投与は、sham値の方への高アンモニア血症の低下(p<0.001)及びshamレベルの方への肝eNOS活性の増加をもたらした。これは、プラセボ投与群と比較して門脈圧の有意な低下を伴っていた(11±0.4対14±0.7mmHg、p=0.01)。さらにOPの投与は、プラセボ投与動物と比較して、カベオリン1の発現を有意に減少させ(p<0.05)、ジメチルアルギニンジメチルアマイノヒドロラーゼ1(dimethylarginine-dimethylamainohydrolase-1)の発現を増加させ(p<0.05)[DDAH1はADMAの代謝に関与する]、一方、肝リン酸化NFκB発現も有意に減少させた。
【0138】
この実施例では、OPによる高アンモニア血症の治療が、NFκB並びにeNOS調節因子、DDAH1−ADMA及びカベオリン1の発現を調節することによる肝eNOS活性の回復により、肝硬変の臨床的に関連性のあるモデルにおける門脈圧亢進の重症度を低下させることが示された。
【実施例5】
【0139】
Sprague−DawleyラットにおけるBDL及びシャム手術の4週間後に、BDLラットにi.p.OP3g/kg1日2回又は媒体単独(n=14/群)を投与し、5日間投与した。第5投与日の後、すべてのラットについて屠殺前に麻酔下で直接門脈圧測定を行った。後の分析のために血漿及び肝臓組織を採取した。血漿アンモニア及び生化学検査項目をCobas−Integra分析装置を用いて測定した。血漿TNFαをFACSビーズアレイにより測定した。eNOS活性を放射分析により測定した。eNOS、DDAH−1、カベオリン1及びNFκBのタンパク質発現を標準ウエスタンブロッティング法を用いて測定した。
【0140】
BDLラットの動脈アンモニア及び血漿生化学検査項目に対するOPの効果を表2に示す。統計的有意性は、スチューデントt検定マンホイトニー比較試験を用いて計算した。−P<0.01対sham;**−P<0.001対sham;†−P<0.01対BDL;§−P<0.05対BDL;NS−有意性なし
【0141】
【表2】

【0142】
図7A及び7Bに示すように、eNOSタンパク質発現の増加(p<0.01)にもかかわらず、eNOS活性は、BDL動物においてshamと比較して有意に低下した(p<0.05)。OPの投与後に、eNOS活性は、shamレベルに戻り、eNOSタンパク質発現の同様な正常化が伴っていた(p<0.05)。図7Cに示すように、DDAH−1タンパク質発現は、sham動物においてBDLと比較して有意に高かった(p<0.01)。BDLラットへのOPの投与後に、DDAH−1発現は、有意に増加し、shamレベルに戻った(p<0.05)。図7Dに示すように、NFκBのタンパク質発現は、BDLラットにおいてshamと比較して有意に増加した(p<0.01)。OPの投与は、BDLと比較してNFκB発現の顕著な低下をもたらした(p=0.05)。図7Eに示すように、カベオリン1の発現は、BDLラットにおいてshamと比較して有意に増加した(p<0.01)。OPによるインターベンションの後に、カベオリン1の発現は、BDL単独と比較して有意に低下した(p<0.05)。図7Cに示すように、門脈圧は、BDLラットにおいてshamと比較して有意に増加した(p<0.0001)。OPの投与は、BDLと比較して門脈圧の30%の低下をもたらした(p<0.01)。
【実施例6】
【0143】
この実施例は、L−オルニチンフェニル酢酸塩配合剤(OP)の投与が肝機能(例えば、潅流)を改善させるかどうかを究明するためのものである。
【0144】
Sprague−Dawleyラットを胆管結紮(BDL)の4週間後に試験し、プラセボ又はOPの投与に無作為化する。BDLラットの肝機能は、様々な方法により測定される。例えば、肝臓損傷は、アラニントランスアミナーゼ(ALT)検査、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)検査及び/又はアルファグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)検査により検出される。肝機能は、アルブミン(Alb)検査;プロトロンビン時間検査;及び/又はチャイルド−ピュースコアのMELDスコアなどの複合スコアにより測定される。肝臓血行動態は、肝臓血流量及び/又は門脈圧を検出することにより測定される。
【0145】
OPの投与は、BDLラットにおける肝機能を改善し且つ/又は修復する、例えば、肝臓潅流を増加させるのに有効である。OPの投与は、BDLラットにおける門脈圧を低下させるのにも有効である。
【実施例7】
【0146】
この実施例は、L−オルニチンフェニル酢酸塩配合剤(OP)の投与が門脈圧亢進を有するBDLラットにおける静脈瘤出血を減少させるかどうかを究明するためのものである。
【0147】
Sprague−Dawleyラットを胆管結紮(BDL)の4週間後に試験し、プラセボ又はOPの投与に無作為化する。BDLラットの門脈圧を測定する。BDLラットの静脈瘤出血も検出し、BDLラットの静脈瘤出血の程度を測定する。
【0148】
OPの投与は、BDLラットにおける門脈圧を低下させ、静脈瘤出血を減少させるのに有効である。
【実施例8】
【0149】
この実施例は、L−オルニチンフェニル酢酸塩配合剤(OP)の投与が門脈圧亢進を有するBDLラットにおける腹水を減少させるかどうかを究明するためのものである。
【0150】
Sprague−Dawleyラットを胆管結紮(BDL)の4週間後に試験し、プラセボ又はOPの投与に無作為化する。BDLラットの門脈圧を測定する。BDLラットの腹水も検出し、BDLラットの腹水の程度を測定する。
【0151】
OPの投与は、BDLラットにおける門脈圧及び腹水を減少させるのに有効である。
【0152】
本開示を実施形態及び実施例に関して記述したが、本開示の精神から逸脱することなく、多くの様々な修正を行うことができることを理解すべきである。したがって、本開示は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0153】
特許、特許出願、論文、教科書及び同等のものを含む本明細書で引用したすべての参考文献並びにもはや存在しない程度に本明細書で引用した参考文献は、参照によりそれらの全体として本明細書に組み込まれる。組み込まれた文献及び定義された用語、用語の用法、記述された技術又は同等のものを含むが、これらに限定されない、同様の資料の1つ又は複数のものが本出願と異なる又は矛盾する場合、本出願が支配する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェニルアセテート及びフェニルブチレートの少なくとも1つと併用してL−オルニチンを対象に投与し、それにより、門脈圧亢進を低減することを含む、対象における門脈圧亢進を治療する方法。
【請求項2】
前記対象が肝疾患に罹患している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記肝疾患が慢性肝疾患である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記慢性肝疾患が肝硬変である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記肝疾患が急性肝不全である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
門脈圧亢進の治療が、対象における前炎症性サイトカインのレベルを低下させることにより達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
門脈圧亢進の治療が、内皮一酸化窒素合成酵素活性を増大させることにより達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記L−オルニチン及びフェニルアセテートをL−オルチンフェニル酢酸塩として投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記L−オルニチン並びにフェニルアセテート及びフェニルブチレートの少なくとも1つの別個の生理的に許容される塩を対象に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記L−オルニチンが、遊離単量体アミノ酸又はその生理的に許容される塩として存在し、投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
フェニルアセテート及びフェニルブチレートの少なくとも1つをフェニル酢酸ナトリウム又はフェニル酪酸ナトリウムとして投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記投与が経口、静脈内、腹腔内、胃内又は血管内投与である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記投与が静脈内投与である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記投与が経口投与である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
投与されるL−オルニチン及びフェニルアセテート又はフェニルブチレートの用量が20gから40gまでである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
フェニルアセテート及びフェニルブチレートの少なくとも1つと併用してL−オルニチンを対象に投与し、それにより門脈圧亢進の発症を遅延させる、又はその可能性を低減することを含む、対象における門脈圧亢進の発症を遅延させる、又はその可能性を低減する方法。
【請求項17】
前記対象が肝疾患に罹患している、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記肝疾患が慢性肝疾患である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記慢性肝疾患が肝硬変である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記肝疾患が急性肝不全である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
門脈圧亢進の発症の遅れ又はその可能性の低減が、対象における前炎症性サイトカインのレベルを低下させることにより達成される、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
門脈圧亢進の発症の遅れ又はその可能性の低減が、内皮一酸化窒素合成酵素活性を増大させることにより達成される、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記L−オルニチン及びフェニルアセテートをL−オルチンフェニル酢酸塩として投与する、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前記L−オルニチン並びにフェニルアセテート及びフェニルブチレートの少なくとも1つの別個の生理的に許容される塩を対象に投与する、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記L−オルニチンを遊離単量体アミノ酸又はその生理的に許容される塩として投与する、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
フェニルアセテート及びフェニルブチレートの少なくとも1つをフェニル酢酸ナトリウム又はフェニル酪酸ナトリウムとして投与する、請求項16に記載の方法。
【請求項27】
前記投与が経口、静脈内、腹腔内、胃内又は血管内投与である、請求項16に記載の方法。
【請求項28】
前記投与が静脈内投与である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記投与が経口投与である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
投与されるL−オルニチン及びフェニルアセテート又はフェニルブチレートの用量が20gから40gまでである、請求項16に記載の方法。
【請求項31】
対象へのフェニルアセテート及びフェニルブチレートの少なくとも1つと併用してL−オルニチンを対象に投与し、それにより肝機能を改善することを含む、不良な肝機能を有する対象における肝機能を修復する方法。
【請求項32】
前記対象が門脈圧亢進に罹患している、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
肝機能を改善することが門脈圧亢進を低下させる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
肝機能を改善することが肝臓潅流を増加させることを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
肝機能の前記修復が、対象における前炎症性サイトカインのレベルを低下させることにより達成される、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
肝機能の前記修復が、内皮一酸化窒素合成酵素活性を増大させることにより達成される、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記L−オルニチン及びフェニルアセテートをL−オルチンフェニル酢酸塩として投与する、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
前記L−オルニチン並びにフェニルアセテート及びフェニルブチレートの少なくとも1つの別個の生理的に許容される塩を対象に投与する、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
前記L−オルニチンが、遊離単量体アミノ酸又はその生理的に許容される塩として存在し、投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項40】
フェニルアセテート及びフェニルブチレートの少なくとも1つをフェニル酢酸ナトリウム又はフェニル酪酸ナトリウムとして投与する、請求項31に記載の方法。
【請求項41】
前記投与が経口、静脈内、腹腔内、胃内又は血管内投与である、請求項31に記載の方法。
【請求項42】
前記投与が静脈内投与である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記投与が経口投与である、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
投与されるL−オルニチン及びフェニルアセテート又はフェニルブチレートの用量が20gから40gまでである、請求項31に記載の方法。
【請求項45】
フェニルアセテート及びフェニルブチレートの少なくとも1つと併用してL−オルニチンを対象に投与し、それにより静脈瘤出血を低減することを含む、門脈圧亢進に罹患している対象における静脈瘤出血を治療する方法。
【請求項46】
静脈瘤出血の前記治療が、対象における前炎症性サイトカインのレベルを低下させることにより達成される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
静脈瘤出血の前記治療が、内皮一酸化窒素合成酵素活性を増大させることにより達成される、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記L−オルニチン及びフェニルアセテートをL−オルチンフェニル酢酸塩として投与する、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記L−オルニチン並びにフェニルアセテート及びフェニルブチレートの少なくとも1つの別個の生理的に許容される塩を対象に投与する、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
前記L−オルニチンが、遊離単量体アミノ酸又はその生理的に許容される塩として存在し、投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項51】
フェニルアセテート及びフェニルブチレートの少なくとも1つをフェニル酢酸ナトリウム又はフェニル酪酸ナトリウムとして投与する、請求項45に記載の方法。
【請求項52】
前記投与が経口、静脈内、腹腔内、胃内又は血管内投与である、請求項45に記載の方法。
【請求項53】
前記投与が静脈内投与である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記投与が経口投与である、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
投与されるL−オルニチン及びフェニルアセテート又はフェニルブチレートの用量が20gから40gまでである、請求項45に記載の方法。
【請求項56】
フェニルアセテート及びフェニルブチレートの少なくとも1つと併用してL−オルニチンを対象に投与し、それにより腹水を低減することを含む、門脈圧亢進に罹患している対象における腹水を治療する方法。
【請求項57】
腹水の前記治療が、対象における前炎症性サイトカインのレベルを低下させることにより達成される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
腹水の前記治療が、内皮一酸化窒素合成酵素活性を増大させることにより達成される、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記L−オルニチン及びフェニルアセテートをL−オルチンフェニル酢酸塩として投与する、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
前記L−オルニチン並びにフェニルアセテート及びフェニルブチレートの少なくとも1つの別個の生理的に許容される塩を対象に投与する、請求項56に記載の方法。
【請求項61】
前記L−オルニチンが、遊離単量体アミノ酸又はその生理的に許容される塩として存在し、投与される、請求項56に記載の方法。
【請求項62】
フェニルアセテート及びフェニルブチレートの少なくとも1つをフェニル酢酸ナトリウム又はフェニル酪酸ナトリウムとして投与する、請求項56に記載の方法。
【請求項63】
前記投与が経口、静脈内、腹腔内、胃内又は血管内投与である、請求項56に記載の方法。
【請求項64】
前記投与が静脈内投与である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記投与が経口投与である、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
投与されるL−オルニチン及びフェニルアセテート又はフェニルブチレートの用量が20gから40gまでである、請求項56に記載の方法。
【請求項67】
患者を急性肝不全又は急性肝代償不全に罹患していると同定する工程、並びに
フェニルアセテート及びフェニルブチレートの少なくとも1つと併用してL−オルニチンを対象に投与し、それにより患者が脳損傷を発現する可能性を低減する工程
を含む、急性肝不全を有する患者における脳損傷を防ぐ方法。
【請求項68】
前記投与が前記同定する工程の直後に行われる、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
急性肝不全又は急性肝代償不全を治療する工程をさらに含む、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
前記治療する工程が肝臓移植を含む、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
急性肝不全又は急性肝代償不全により引き起こされる合併症を治療する工程をさらに含む、請求項67に記載の方法。
【請求項72】
前記合併症が静脈出血を含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
投与されるL−オルニチン及びフェニルアセテート又はフェニルブチレートの用量が20gから40gまでである、請求項67に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【公表番号】特表2012−529523(P2012−529523A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515079(P2012−515079)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/037838
【国際公開番号】WO2010/144498
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(507153999)ユーシーエル ビジネス ピーエルシー (6)
【出願人】(506164729)オセラ セラピューティクス, インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】