説明

LDPC符号化符号語の復号を制御する方法および装置

【課題】復号不可能なLDPC符号語に関して、復号処理の初期段階で復号を停止させることである。
【解決手段】本発明は、いくつかのデジタル・データで構成され、チェックノードとバリアブルノードとの間の二部グラフによって表わされるLDPC符号化符号語の復号を制御する方法であり、バリアブルノードとチェックノードとの間で反復的に交換されるメッセージを更新し、更に、各反復処理において、各バリアブルノードごとに、当該バリアブルノードによって受け取られたすべての入射メッセージおよび対応するデジタル・データの第1の総和を計算し、第1の総和の絶対値のすべての第2の総和を計算し、および、第2の総和が連続する2つの反復処理の間に変化しないかあるいは減少する場合で、かつ、所定のしきい条件が満たされる場合に、復号処理を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、データ通信に関し、特に、LDPC(Low-Density Parity-Checkの略称で低密度パリティ検査の意)符号を用いて符号化された符号語の復号に関する。更にまた、本発明は、特にDVB−S2規格(DVBはデジタルビデオ放送の意)を利用するデータ通信システムに関するものである(ただし本発明はこの分野に限定するものではない)。
【背景技術】
【0002】
低密度パリティ検査(LDPC)符号は、1962年にGallagerによって導入され、1996年にMacKayおよびNealによって再発見された。LDPC符号は、計算および実施が複雑であるため、長い間、実用上の影響を持たなかった。マイクロエレクトロニクスの進歩の結果、シミュレーションに利用できるコンピュータ能力が増大し、この様な状況は変わり、今や実施が可能となった。LDPC符号は、すぐれた誤り訂正能力のため、将来の遠隔通信標準とみなされている。
【0003】
LDPC符号は、疎なM×Nパリティ検査行列Hによって定義される線形ブロック符号である。検査行列は、各列j個の"1"および各行k個の"1"を含む。これらjおよびkはそれぞれ行および列の次数と呼ばれる。一定の重みの行および列の次数を持つ符号は規則的(j,k)LDPC符号と呼ばれ、一定でない場合は不規則的符号と呼ばれる。パリティ検査符号は二部グラフによって表されることができる。M個のチェックノード(すなわち検査ノードであり、以下の記述において"CN"と略称する場合がある)がパリティ制約に対応し、N個のバリアブルノード(すなわち可変ノードであり、以下の記述において"VN"と略称する場合がある)が符号語のデータ・シンボルを表わす。グラフにおける1つのエッジはパリティ検査行列における1つの"1"に対応する。
【0004】
LDPC符号化器において、大きさ(N−M)の符号化対象パケットが大きさ(N−M)×Nの生成行列Gによって乗算される。この乗算によって長さNの符号化されたベクトルが生成される。生成行列Gおよびパリティ検査行列HはGHt=0という関係を満たす(ただし0は成分ゼロの行列である)。
【0005】
一般的に、LDPC復号器は、長さNの符号化ベクトルを受け取り、パリティ検査行列Hを使用することによって長さNの中間ベクトルを送り渡す復号モジュールを備える。次に、マップ復元モジュールが中間ベクトルから長さ(N−M)の復号されたベクトルを抽出する。
【0006】
一層正確に述べれば、LDPC符号はハードまたはソフトいずれかの判断形式でメッセージ・パッシング・アルゴリズムを使用して復号することができる。次に、復号が反復プロセスで行われる。この反復プロセスにおいて、バリアブルノードとチェックノードとの間でメッセージが交換される。典型的には、信念伝搬(Belief Propagationを略称してBPと呼ばれる)アルゴリズムが使用される。このアルゴリズムは、バリアブルノードとチェックノードとの間でソフト情報を繰り返し交換する。符号性能は、主に、パリティ検査行列Hのランダム性、符号語サイズNおよび符号化率R=(N−M)/Nに依存する。
【0007】
チャネル符号化部品は、UMTS、WLANおよびWPAのような無線通信システムにおいて非常に重要なコンポーネントである。特にWLANおよびWPANの領域においては、復号の遅延が決定的重要性を持っている。低密度パリティ検査(LDPC)符号は近い将来におけるこの種のシステムのための有望な候補としてみなされることができる。LDPC符号はDVB−S2規格およびいくつかの光ファイバ通信システムに取り入れられつつある。更に多くの適用分野が近い将来出現するであろう。
【0008】
LDPC符号はいくつかの非常に興味深い特性を持っているので、遅延が重要課題である適用分野においてLDPC符号が選択されるのは当然のことである。
【0009】
新しいDVB−S2規格は、強力な前向き誤り訂正システムを特徴とし、理論的な限界に近い伝送を可能にする。DVB−S2は、ターボ符号の性能さえも凌駕できるLDPC符号を使用することによって実現される。柔軟性を持たせるため、64800ビットまでの符号語長を用いて、R=1/4からR=9/10までの範囲の11個の異なる符号率Rが指定される。この膨大な符号長はすぐれた通信性能のための前提であり、そのため64800ビットの符号語長が記述されている。
【0010】
DVB−S2に関して、64800のいわゆるバリアブルノード(VN)および64800×(1−R)のチェックノード(CN)が存在する。これら2つのタイプのノードの接続性が規格において指定されている。バリアブルノードは情報ノードおよびパリティノードを含む。LDPC符号を復号するためには、メッセージがこれら2つのタイプの間で反復して交換されるが、ノード処理の複雑度は低い。一般的には、先ずVNが処理され、次にCNが処理される。
【0011】
LDPC符号の復号は反復処理であり、例えばDVB−S2規格の場合、所望の通信性能を得るには40回までの反復が必要とされる。標準的LDPC符号復号器の実施形態は固定した反復回数を仮定する。A.J. BlanksbyおよびC.J. Howland著の"A 690-mW 1-Gb/s, Rate- 1/2 Low-Density Parity-Check Code decoder"(IEEE Journal of Solid-State Circuits, vol 37, n°3, pp 404-412 of march 2002)においては、64回もの復号反復が実行される。
【0012】
復号可能ブロックあるいは符号語の場合、入射エッジの対数尤度率のチェックノード総和を考慮に入れている停止基準は、非常にすぐれた基準であるが、復号不可能ブロックまたは符号語の場合、最大数の反復が処理され、そのため、多くのエネルギーおよび処理時間が浪費される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
復号不可能な符号語に関して復号処理の初期段階で復号を停止させることが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、いくつかのデジタル・データで構成され、チェックノードとバリアブルノードとの間の二部グラフによって表わされるLDPC符号化符号語の復号を制御する方法を提供する(デジタル・データは、"ソフト・ビット"とも呼ばれ、いくつかのビットの符号化された実際の値で、チャネルから実際に受け取られる伝送された符号である)。該方法は、バリアブルノードとチェックノードとの間で反復的に交換されるメッセージを更新し、更に、各反復処理において、各バリアブルノードに関して当該バリアブルノードによって受け取られたすべての入射メッセージおよび対応するデジタル・データの第1の総和を計算し、次に第1の総和の絶対値のすべての第2の総和を計算する。第2の総和が連続する2つの反復処理の間に変化しないかあるいは減少する場合で、かつ、所定のしきい条件が満たされる場合に、復号処理は停止される。
【0015】
しかしながら、しきい条件が満たされなければ、第2の総和が連続する2つの反復処理の間に変化しないかあるいは減少する場合でも、復号処理は停止されない。
【0016】
このような制御された復号方法が復号処理の早い段階で復号不可能符号語の復号を停止させることを可能にする。復号不可能符号語の復号の試みの間に浪費される多くのエネルギーおよび処理時間が回避される。
【0017】
この発明の1つの側面によれば、前記所定のしきい条件は、現在時第2の総和が所定のしきい値より小さい場合に満たされる。
【0018】
実際、第2の総和の不変または減少は、好ましいことに、符号語が復号処理の開始時点で復号不可能であることを標示する。
【0019】
換言すれば、第2の総和がしきい値を越えると、符号語が実際に復号可能としても、第2の総和の減少が発生する。従って、現在時の第2の総和がしきい値を越える時、停止基準は無効に切り換えられなければならない。
【0020】
望ましくは、前記所定のしきい値がLDPC符号の符号率に依存する。該しきい値は各符号率について1回だけ決定される。
【0021】
更に、符号化された符号語はチャネルから受け取られ、好ましくは、前記所定のしきい値が該チャネルのSN比に依存しない。
【0022】
更にまた、前記所定のしきい値は交換されたメッセージのビット数に依存する。
【0023】
例えば、符号化された符号語がチャネルから受け取られ、VNRoffが前記所定のしきい値であり、Nが当該交換メッセージのビット数であり、Ebが当該チャネルに関するビット情報を伝達する平均エネルギーであり、Nが当該チャネルのノイズ・エネルギーであり、RがLDPC符号の符号率であり、(Eb/N0)WRが当該比率の関数としてフレーム誤り率を表す曲線の急速下降領域の比率Eb/N0の値であるとすれば、前記所定のしきい値がVNRoff = (4/R) × (Eb/N0)WR × Nによって定義される。また、Nが当該交換メッセージのビット数であり、qがメッセージの絶対値を表すために使用されるビットの数であるとすれば、前記しきい値は、例えば、VNRoff = 2(q-1)× Nによって定義される。
【0024】
この発明の別の側面によれば、反復回数が所定の反復回数以下である限り、前記所定のしきい条件が満たされる。実際のところ、復号可能符号語の場合でさえ、第2の総和の下降は20回目と30回目の反復の間に発生する。従って、停止基準は、例えば5および15の間の反復回数の後に無効に切り換えられる。
【0025】
好ましくは、符号語およびメッセージのデジタル・データは対数尤度比率である。
【0026】
前記LDPC符号は、例えば、DVB−S2 LDPC符号である。
【0027】
本発明は、また、いくつかのデジタル・データで構成され、チェックノードおよびバリアブルノードの間の二部グラフによって表わされるLDPC符号化符号語を復号する復号器を提供する。該復号器は、計算手段および制御手段を含み、バリアブルノードとチェックノードとの間で反復して交換されるメッセージを更新するように構成される処理手段を備える。該計算手段が、各反復処理において、各バリアブルノードに関して当該バリアブルノードによって受け取られた入射メッセージのすべてと対応するデジタル・データとの第1の総和を計算し、第1の総和の絶対値のすべての第2の総和を計算し、該制御手段が、第2の総和が2つの連続した反復ステップの間に変化しないかあるいは減少し、かつ、所定のしきい条件が満たされている場合、復号処理を停止させる。
【0028】
この発明の1つの側面によれば、現在時第2の総和が所定のしきい値より小さい場合に前記所定のしきい条件が満たされる。
【0029】
好ましくは、前記所定のしきい値がLDPC符号の符号率に依存する。
【0030】
好ましくは、該復号器は、LDPC符号の符号率および交換されたメッセージのビット数に従ったしきい値を保存するルックアップ・テーブルを含むメモリ手段を更に備える。
【0031】
本発明は、更に、上記の復号器を含む、無線通信システムのエレメントを提供する。このエレメントは、端末または基地局、あるいはアクセス・ポイント装置である。
【0032】
本発明は、更にまた、上記の復号器を含む、例えばXDSLシステム、光ファイバ・システムあるいは電力線システムのような無線通信システムのエレメントを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下の記述においてLDPC符号はDVB-S2規格を定義する"ETSI EN 302 307 vl.1.1 (2004-06)"に定義されているDVB-S2 LDPC符号である。しかしながら、本発明がそのような符号に限定されることはない。
【0034】
LDPC符号のパリティ検査行列Hは疎バイナリ行列である。有効符号語の集合xは、H.tx=0を満たさなければならない。
【0035】
Hの1つの列は符号語の1ビットに関連づけられ、1つの行は1つのパリティ検査に対応する。Hの1つの行における非ゼロ素子は、対応するビットがこのパリティ検査に貢献することを意味する。符号は、タナー・グラフ(図1)と呼ばれる二部グラフによって最も良く記述される。タナー・グラフは、符号ビットとパリティ検査との間の関連性のグラフ表示である。符号ビットがバリアブルノードVN(円)として示され、パリティ検査はチェックノードCN(正方形)として示され、それらはエッジによって連結されている。各ノードに関するエッジの数がノード次数と呼ばれる。すべてのバリアブルノードに関してノード次数が同じであれば、パリティ検査行列Hは、規則的(レギュラー)と呼ばれ、同じでなければ、不規則的(イレギュラー)と呼ばれる。次数分散は一定の次数を持つノードの端数を与える。
【0036】
図1のDVB-S2のタナー・グラフにおいて、N個のバリアブルノードVN(ただしi=1からN)およびM個のチェックノードCN(ただしi=1からM)が示されている。
【0037】
LDPC符号はメッセージ・パッシング・アルゴリズムを使用して復号することができる。これはバリアブルノードとチェックノードとの間でソフト情報を繰り返し交換する。符号性能は、主に、グラフのランダム性、符号語サイズおよび符号率に依存する。
【0038】
交換されるソフト情報は、一般に、対数尤度比率(LLR)である。
【0039】
バリアブルノードVNにおけるメッセージの更新は2つのステップで実施されることができる。
【0040】
第1のステップにおいて、各バリアブルノードは、式(1)の関係に従って、バリアブルノードに対応する復号されるビットの現在時推定Λを計算する。
【数1】

ただし、Λはバリアブルノードに対応する復号されるビットの現在時推定であり、λchはバリアブルノードの対応するチャネルLLR(復号されるべき符号化された符号語のデジタル・データに対応する)であり、λはバリアブルノードの入射エッジのLLRである。
【0041】
換言すれば、Λは、当該バリアブルノードによって受け取られる入射メッセージλのすべてと対応するデジタル・データλchとの第1の総和である。
【0042】
Λの符号は復号されるビットのハード判定(1またはゼロ)を表し、Λの大きさがビットの復号の信頼性を表す。
【0043】
第2のステップにおいて、出力メッセージiの更新が計算される。この更新において、式(2)の関係に従って、対応するバリアブルノードのLLR和Λから入力メッセージLLRが減算される。
【数2】

ただし、
【数3】

は出力メッセージiの更新されたLLRであり、
【数4】

は更新の前の出力メッセージiのLLRの値である。
【0044】
チェックノード・メッセージ更新は、LLR λからなるメッセージkに関する式(3)の関係に従って一般に計算される。
【数5】

ただし、λはチェックノードから更新されたLLRであり、λはチェックノードの発生エッジのLLRである。
【0045】
以下に、復号不可能な符号語の早期検出の詳細を記述する。
【0046】
通常、符号化された符号語のデジタル・データは対数尤度比率(LLR)を表す。
【0047】
本発明は、復号不可能な符号語に関して早い段階での復号処理の停止を可能にさせる。
【0048】
第2の総和VNR(これは"バリアブルノード信頼度"と呼ばれる)が復号処理における各反復ステップにおいて計算される。
【0049】
第2の総和VNRは、式(4)に示されているように、バリアブルノードの第1の総和Λのすべての絶対値の総和である。
【数6】

【0050】
この値VNRは容易に取得される。
【0051】
無限のブロックサイズに関しては、図2のVNR1によって表わされているように、復号可能符号語の場合、反復回数に対するVNRの単調増加が期待される。
【0052】
しかしながら、有限長のブロックが復号される時には、非相関LLRは保証されることができない。このような理由から、対応するブロックが復号されることができるにもかかわらず、図2の曲線VNR2の上で、20番目と25番目の反復の間でVNRの降下が観察される。
【0053】
かくして、本発明の1つの側面によれば、図2の曲線VNR3(復号不可能符号語に対応している)によって例示されているように、2つの連続した復号反復ステップの間にVNRが変化しないかあるいは減少する場合、復号処理が停止される。しかし、VNRがしきい値VNRoffを越える場合、この停止基準は無効に切り換えられなければならない。このような場合には、符号語は実際に復号可能と仮定されるので、復号処理は従来技術の停止基準を使用することによって停止されるであろう。
【0054】
図3は、本発明の1つの側面に従った復号不可能符号語検出の第1の流れ図を示す。
【0055】
復号処理の現在時反復に関して、式(1)に従って、すべてのバリアブルノードに関する第1の総和Λが計算される(ステップST1)。
【0056】
次に、第2の総和すなわちバリアブルノード信頼度VNRnewが式(4)に従って計算される(ステップST2)。
【0057】
次に、検証が実行される(ステップST3)。すなわち、第2の総和の現在値VNRnewが所定のしきい値VNRoffに達していない場合、停止基準は無効とされ、復号処理は続行する(ステップST4)。一方、第2の総和の現在値VNRnewが所定のしきい値VNRoff以上であれば、別の検証が実行される(ステップST5)。すなわち、現在値VNRnewと前回反復に対応する第2の総和の前回値VNRoldとが比較される。
【0058】
第2の総和の現在値VNRnewが前回反復に対応する第2の総和の前回値VNRold以下であれば、復号処理は停止される(ステップST6)。さもなければ、現在値VNRnewが復号処理の次の反復のため前回値VNRoldに代入される(ステップST7)。最初の反復に関しては、VNRoldとして、十分弱い値、例えばゼロを使用することができる。
【0059】
図4は、本発明の1つの側面に従った復号不可能符号語検出の別の流れ図を示す。
【0060】
本例においては、ステップST3で検証が行われる点は図3の実施例と同じであるが、検証の内容が異なる。図3の場合、現在値VNRnewがしきい値VNRoffと比較されたが、本例では、反復回数の現在値が調べられる。すなわち、現在の反復回数が所定の反復回数しきい値IToff以下であるか否かが調べられる。IToffは、例えば、5と15との間である。
【0061】
換言すれば、反復回数がIToffを越えていれば、停止基準は無効とされ、復号処理は続行する。
【0062】
チャネルから受け取られた符号語に関しては、しきい値VNRoffは当該チャネルのSN比に依存しない。しかしながら、しきい値VNRoffは、当該LDPC符号の符号率Rおよび交換されたメッセージのビット数Nに依存している。
【0063】
一層正確には、式(5)の関係を用いて、しきい値VNRoffが符号率ごとに1回だけ計算される。
VNRoff = (4/R) × (Eb/N0)WR × N (5)
ただし、Nは当該交換メッセージのビットの数であり、Ebは当該チャネルに関するビット情報を伝達する平均エネルギーであり、Nは当該チャネルのノイズ・エネルギーであり、Rは符号語の符号率であり、(Eb/N0)WRは当該比率の関数としてフレーム誤り率(FER)を表す曲線のウォーターフォール領域(すなわち急激降下領域)の比率Eb/N0である。ウォーターフォール領域WRは、図5および図6に見られるような当該曲線の大きな減少の領域に対応する。具体的には、図5は、ウォーターフォール領域WRの周辺のSN比ポイントにおいて大まかに設定することができる平均限界MBの異なる値に関してSN比(Eb/N0)の関数としてのフレーム誤り率FERを示す。更に、これらの曲線は、符号率R=0.8、2000ビットの符号語および6ビットのメッセージ量子化(最上位ビットが符号を表し、残りの5ビットがメッセージの絶対値を表す)について取得されている。
【0064】
図6には、符号率R=0.5,3200ビットの符号語および6ビット・メッセージ量子化に関して得られた同様の曲線が示されている(この場合端数部分は4に等しい)。
【0065】
このように、(Eb/N0)WRは、符号率R=0.8の場合、3.5に設定され、一方、符号率R=0.5の場合、1.5に設定される。
【0066】
このような曲線FER = f(Eb/N0)は、"Digital Communications by J. G. PROAKIS (McGraw-Hill), 2001, 4th edition"に記述されている例のように、シミュレーションによって取得される。
【0067】
しきい値VNRoff は、種々の方法で、VNRoff=2(q-1) × Nという関係に従って各符号について1回だけ計算される。ただし、Nは当該交換メッセージのビット数であり、qは、メッセージの絶対値を表すために使用されるビットの数である。
【0068】
本発明に従った復号器DECの1つの実施形態が図7に示される。復号器DECは、例えばソフトウェア・モジュールあるいはASICのような処理モジュールPROCを備える。
【0069】
処理モジュールPROCは計算モジュールCALCおよび制御モジュールCTRLを含む。計算モジュールCALCは、各バリアブルノードに関して、当該バリアブルノードによって受け取られた入射メッセージλのすべてと対応するデジタル・データとの第1の総和Λを計算し、第2の総和すなわち第1の総和Λの絶対値のすべてのバリアブルノード信頼度を計算する。
【0070】
制御モジュールCTRLは、第2の総和VNRが2つの連続した反復ステップの間に変化しないかあるいは減少し、所定のしきい条件が満たされれば、復号処理を停止させる。
【0071】
制御CTRLは、第2の総和の現在値VNRnewが所定のしきい値VNRoffより小さい場合(図3)、しきい条件充足を検出するように構成することも、あるいは、反復回数が所定の反復回数IToff以下である限り、しきい条件充足を検出するように構成することもできる。
【0072】
更に、復号器DECは、LDPC符号の符号率Rおよび交換されたメッセージのビット数Nに従ったしきい値VNRoffを保存するルックアップ・テーブルLUTを含むメモリ・モジュールMEMを備える。
【0073】
復号器DECは、例えば復調器DMDのような他の従来型コンポーネントと共に、衛星チャネルを経由して符号化された符号語を受け取るDVB−S2受信機のような無線通信システム受信機TP(図8)に組み込まれることができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】LDPC符号の二部グラフである。
【図2】復号可能および復号不可能符号語に関するバリアブルノード信頼性の変化を例示するグラフである。
【図3】本発明の第1の実施形態に従った方法の流れ図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に従った方法の流れ図である。
【図5】本発明に従った停止基準に関する通信性能の曲線を示すグラフである。
【図6】本発明に従った停止基準に関する通信性能の曲線を示すグラフである。
【図7】本発明の1つの実施形態に従った復号器のブロック図である。
【図8】本発明に従った無線通信システムの端末の1つの実施形態を示すブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
いくつかのデジタル・データで構成され、チェックノードとバリアブルノードとの間の二部グラフによって表わされるLDPC符号化符号語の復号を制御する方法であって、
バリアブルノードとチェックノードとの間で反復的に交換されるメッセージを更新するステップを含み、更に、
各反復処理において、各バリアブルノードに関して当該バリアブルノードによって受け取られたすべての入射メッセージおよび対応するデジタル・データの第1の総和を計算し、第1の総和のすべての絶対値である第2の総和を計算するステップと、
第2の総和が連続する2つの反復処理の間に変化しないかあるいは減少する場合で、かつ、所定のしきい条件が満たされる場合に、復号処理を停止するステップと、を含む、
方法。
【請求項2】
前記所定のしきい条件が、現在時の第2の総和が所定のしきい値より小さい場合に満たされる、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所定のしきい値がLDPC符号の符号率に依存する、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
符号化された符号語がチャネルから受け取られ、前記所定のしきい値が該チャネルのSN比に依存しない、
請求項2または請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記所定のしきい値が交換されたメッセージのビット数に依存する、
請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
符号化された符号語がチャネルから受け取られ、VNRoffが前記所定のしきい値であり、Nが当該交換メッセージのビット数であり、Ebが当該チャネルに関するビット情報を伝達する平均エネルギーであり、Nが当該チャネルのノイズ・エネルギーであり、RがLDPC符号の符号率であり、(Eb/N0)WRが当該比率の関数としてフレーム誤り率を表す曲線の急速下降領域の比率Eb/N0の値であるとすれば、前記所定のしきい値がVNRoff = (4/R) × (Eb/N0)WR × Nによって定義される、
請求項2乃至請求項5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
VNRoffが前記所定のしきい値であり、Nが当該交換メッセージのビット数であり、qがメッセージの絶対値を表すために使用されるビットの数であるとすれば、前期しきい値はVNRoff = 2(q-1)× Nによって定義される、
請求項2乃至請求項5のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
反復回数が所定の反復回数以下である限り、前期所定のしきい条件が満たされる、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
所定の反復回数が5と15との間である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
符号語およびメッセージのデジタル・データが対数尤度比率である、
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
LDPC符号がDVB−S2 LDPC符号である、
請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
いくつかのデジタル・データで構成され、チェックノードおよびバリアブルノードの間の二部グラフによって表わされるLDPC符号化符号語を復号する復号器であって、
計算手段および制御手段を含み、バリアブルノードとチェックノードとの間で反復して交換されるメッセージを更新するように構成される処理手段を備え、
該計算手段が、各反復処理において、各バリアブルノードに関して当該バリアブルノードによって受け取られた入射メッセージのすべてと対応するデジタル・データとの第1の総和を計算し、第1の総和のすべての絶対値である第2の総和を計算し、
該制御手段が、第2の総和が2つの連続した反復ステップの間に変化しないかあるいは減少し、かつ、所定のしきい条件が満たされている場合、復号処理を停止させる、
復号器。
【請求項13】
現在時第2の総和が所定のしきい値より小さい場合に前記所定のしきい条件が満たされる、
請求項12に記載の復号器。
【請求項14】
前記所定のしきい値がLDPC符号の符号率に依存する、
請求項13に記載の復号器。
【請求項15】
符号化された符号語がチャネルから受け取られ、前記所定のしきい値が該チャネルのSN比に依存しない、
請求項13または請求項14に記載の復号器。
【請求項16】
前記所定のしきい値が交換されたメッセージのビット数に依存する、
請求項13乃至請求項15のいずれかに記載の復号器。
【請求項17】
符号化された符号語がチャネルから受け取られ、VNRoffが前記所定のしきい値であり、Nが当該交換メッセージのビット数であり、Ebが当該チャネルに関するビット情報を伝達する平均エネルギーであり、Nが当該チャネルのノイズ・エネルギーであり、RがLDPC符号の符号率であり、(Eb/N0)WRが当該比率の関数としてフレーム誤り率を表す曲線の急速下降領域の比率Eb/N0の値であるとすれば、前記所定のしきい値がVNRoff = (4/R) × (Eb/N0)WR × Nによって定義される、請求項13乃至請求項16のいずれかに記載の復号器。
【請求項18】
VNRoffが前記所定のしきい値であり、Nが当該交換メッセージのビット数であり、qがメッセージの絶対値を表すために使用されるビットの数であるとすれば、前期しきい値はVNRoff = 2(q-1)× Nによって定義される、
請求項13乃至請求項16のいずれかに記載の復号器。
【請求項19】
反復回数が所定の反復回数以下である限り、前期所定のしきい条件が満たされる、
請求項12に記載の復号器。
【請求項20】
所定の反復回数が5と15との間である、
請求項19に記載の復号器。
【請求項21】
LDPC符号の符号率および交換されたメッセージのビット数に従ったしきい値を保存するルックアップ・テーブルを含むメモリ手段を更に備える、
請求項12乃至請求項20のいずれかに記載の復号器。
【請求項22】
符号語およびメッセージのデジタル・データが対数尤度比率である、
請求項12乃至請求項21のいずれかに記載の復号器。
【請求項23】
LDPC符号がDVB−S2 LDPC符号である、
請求項12乃至請求項22のいずれかに記載の復号器。
【請求項24】
無線通信システムのエレメントであって、
請求項12乃至請求項23のいずれかに記載の復号器からなるエレメント。
【請求項25】
XDSLシステム、光ファイバ・システムあるいは電力線システムのような無線通信システムのエレメントであって、
請求項12乃至請求項23のいずれかに記載の復号器からなるエレメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−539623(P2008−539623A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−508163(P2008−508163)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際出願番号】PCT/EP2006/003942
【国際公開番号】WO2006/117135
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(301040578)エスティマイクロエレクトロニクス エヌヴィ (5)
【Fターム(参考)】