説明

LED点灯装置

【課題】整流回路の出力端に接続する平滑コンデンサとして電解コンデンサを使用することなく、LEDを安定的に点灯させる。
【解決手段】LED点灯装置10は、交流電源11を全波整流する整流回路13と、巻線Np及びスイッチング素子Q1を含み整流回路13から出力される全波整流波形を降圧する降圧チョッパ回路14と、降圧チョッパ回路14の出力端に接続されたLEDモジュール15と、巻線Npに磁気結合する巻線Ndを含み降圧チョッパ回路14を駆動する自励式駆動信号発生回路17とを備える。自励式駆動信号発生回路17は、スイッチング素子Q1のオン時間を規定すると共に、降圧チョッパ回路14の出力電圧が相対的に大きいときにオン時間が短くなり、出力電圧が相対的に小さいときにオン時間が長くなるように制御するオン時間補正回路22を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED(発光ダイオード)を光源とするLED点灯装置に関し、特に、LEDランプを安定的に点灯させるLED点灯装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電力消費量が少なく長寿命であるという理由からLEDを用いた照明装置が一般に広く普及しつつある。LEDは直流駆動素子であるため、通常は商用交流電源を全波整流した脈流電圧源を平滑コンデンサによって平滑し、平滑コンデンサからの直流電圧を電源として用いて駆動することが一般的である(特許文献1、2参照)。その際、平滑コンデンサには大容量の電解コンデンサが用いられる場合が多い。
【0003】
また、LED素子の輝度は電流量によって制御することができるが、直流電流の電流量を正確に制御することは必ずしも容易でない。そのため、LED素子に高周波のスイッチングパルスを供給し、そのデューティ比を制御することによってLED素子の輝度を制御する方法が好ましく採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−321914号公報
【特許文献2】特開2009−302017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
LED素子は発熱性が高い部品であるが、電解コンデンサは熱に弱いため、高温下での長時間の使用によって特性が劣化し、寿命が短くなるという問題がある。上記のようにLED素子の特長の一つは長寿命であるにもかかわらず、LED素子を駆動する部品の一つである電解コンデンサの寿命が短いとなると、せっかくのLED素子の特長を生かすことができない。そのため、LED駆動回路は電解コンデンサを使用せずLED素子と共に長寿命であることが求められている。
【0006】
電解コンデンサではなく既存の他のコンデンサを使用した場合、全波整流波の脈流を整流するほど十分な容量ではなく、スイッチングによる高周波成分を平滑できる程度の容量しか確保することができない。このため、LED駆動回路の入力端子には全波整流波が加わることになる。全波整流波は毎周期0V付近まで落ちるため、0V付近の谷の期間では動作することができない。よって、谷の期間以外でできるだけ安定したLED電流を供給する必要があり、LEDの点灯期間中の輝度を一定にする必要がある。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、整流回路の出力端に接続する平滑コンデンサとして電解コンデンサを使用することなく、LEDを安定的に点灯させることが可能なLED点灯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明によるLED点灯装置は、交流電源を整流する整流回路と、第1の巻線及びスイッチング素子を含み前記整流回路から出力される整流波形を変圧するチョッパ回路と、前記チョッパ回路の出力端に接続されたLED素子と、前記第1の巻線に磁気結合する第2の巻線を含み前記チョッパ回路を駆動する自励式駆動信号発生回路とを備え、前記自励式駆動信号発生回路は、前記スイッチング素子のオン時間を規定すると共に、前記整流回路の出力電圧が相対的に大きいときに前記オン時間が短くなり、前記出力電圧が相対的に小さいときに前記オン時間が長くなるように制御するオン時間補正回路と含むことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、LEDのオン時間中の電流レベルを安定化させることができる。したがって、平滑コンデンサとして電解コンデンサを使用することなく、LEDの点灯期間中の輝度を一定にすることができ、LEDを安定的に点灯させることができる。
【0010】
前記オン時間補正回路は、キャパシタと、第1の抵抗を含む第1の抵抗回路と、第2の抵抗と第1のツェナーダイオードとの直列回路を含む第2の抵抗回路を含み、前記第1及び第2の抵抗回路の一端は共に前記キャパシタに接続されており、前記第1のツェナーダイオードは第1のツェナー電圧を有し、入力電圧が前記第1のツェナー電圧未満であるとき、入力電流は前記第1の抵抗回路を通って前記キャパシタに流れ、前記入力電圧が前記第1のツェナー電圧以上であるとき、前記入力電流は前記第1の抵抗回路と前記第2の抵抗回路の両方を通って前記キャパシタに流れることが好ましい。この構成によれば、オン時間補正回路を簡単な構成により実現することができる。
【0011】
前記オン時間補正回路は、第3の抵抗と第2のツェナーダイオードとの直列回路を含む第3の抵抗回路を含み、前記第3の抵抗回路の一端は前記第1及び第2の抵抗回路と共に前記キャパシタに接続されており、前記第2のツェナーダイオードは前記第1のツェナー電圧よりも高い第2のツェナー電圧を有し、前記入力電圧が前記第1のツェナー電圧以上且つ第2のツェナー電圧未満であるとき、前記入力電流は前記第1の抵抗回路と前記第2の抵抗回路の両方を通って前記キャパシタに流れ、前記入力電圧が前記第2のツェナー電圧以上であるとき、前記入力電流は前記第1乃至第3の抵抗回路のすべてを通って前記キャパシタに流れることがさらに好ましい。この構成によれば、オン時間補正回路による補正精度をさらに高めることができる。
【0012】
本発明によるLED点灯装置は、前記整流回路から出力される整流波形が所定の閾値レベルよりも低い期間において前記チョッパ回路の動作を強制的に停止させるゼロクロス停止回路をさらに備えることが好ましい。大容量の平滑コンデンサを用いて整流回路からの整流波を平滑しない場合には、チョッパ回路に脈流の大きな整流波が入力され、チョッパ回路がランダムに動作し、LEDの発光が不安定になる。しかし、チョッパ回路の動作を強制的に停止させることにより、LEDの点灯期間中の輝度を一定にすることができる。
【0013】
本発明によるLED点灯装置は、前記チョッパ回路の前記出力端がオープンとなったときに前記チョッパ回路の動作を強制的に停止させるオープン保護回路をさらに備えることが好ましい。LED素子が破損することによってチョッパ回路の出力端がオープンになると、チョッパ回路の端子間電圧が上昇し、LED点灯装置内の素子や回路が損傷を受けるおそれがあるが、オープン保護回路を設けた場合にはこのような損傷を防止することができる。
【0014】
本発明によるLED点灯装置は、前記自励式駆動信号発生回路は、前記第2の巻線の出力電圧のピーク値を制限するスライサをさらに備え、前記第2の巻線の出力電圧は前記スライサを介して前記スイッチング素子に供給されることが好ましい。第2の巻線の出力電圧をスライサによって制限した後、スイッチング素子に供給することにより、スイッチング素子のゲート耐圧を確保することができると共に、第2の巻線の電圧をできるだけ高くすることができ、これによりチョッパ回路を長期間動作させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、平滑コンデンサとして電解コンデンサを使用することなく、LEDを安定的に点灯させることが可能なLED点灯装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の好ましい実施の形態によるLED点灯装置の構成を示すブロック図であり、
【図2】図1に示すLED点灯装置の回路図である。
【図3】降圧チョッパ回路14の動作説明図であって、(a)は型スイッチング素子Q1がオン状態、(b)はスイッチング素子Q1がオフ状態の動作をそれぞれ示している。
【図4】オン時間補正回路22の構成及び動作を説明するための回路図である。
【図5】シミュレーションによるキャパシタC5の端子間電圧・電流波形を示すグラフであって、(a)は電流波形、(b)は電圧波形をそれぞれ示している。
【図6】シミュレーションによる整流回路の電源電圧波形及びLED電流波形を示すグラフであって、(a)はオン時間補正回路を用いない場合の電源電圧波形、(b)はオン時間補正回路を用いない場合のLED電流波形、(c)はオン時間補正回路を用いた場合の電源電圧波形、(d)はオン時間補正回路を用いた場合のLED電流波形をそれぞれ示している。
【図7】実際の回路による整流回路の電源電圧波形及びLED電流波形を示すグラフであって、(a)はオン時間補正回路を用いない場合の電源電圧波形、(b)はオン時間補正回路を用いない場合のLED電流波形、(c)はオン時間補正回路を用いた場合の電源電圧波形、(d)はオン時間補正回路を用いた場合のLED電流波形をそれぞれ示している。
【図8】ゼロクロス停止回路の構成を示す回路図である。
【図9】ゼロクロス停止回路の入出力信号波形図である。
【図10】オープン保護回路の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の好ましい実施の形態によるLED点灯装置の構成を示すブロック図である。また、図2は、図1に示すLED点灯装置の回路図である。
【0019】
図1に示すように、LED点灯装置10は、商用電源(AC100V、50/60Hz)11の高周波ノイズを除去するフィルタ回路12と、整流回路13と、降圧チョッパ回路14と、LEDモジュール15と、過電流保護回路16と、自励式駆動信号発生回路17と、ゼロクロス停止回路18と、オープン保護回路19とを備えている。
【0020】
フィルタ回路12は、商用電源11に接続されたキャパシタC1、インダクタL1及び抵抗R1を含むLCフィルタである。フィルタ回路12の出力端は整流回路13の入力端に接続されている。
【0021】
整流回路13は、4つのダイオードからなるブリッジ型全波整流回路であり、その出力端にはダイオードD1及び平滑コンデンサC2が接続されている。この平滑コンデンサC2は電解コンデンサではないため耐熱性は高いが、全波整流波形を平滑できる程度の容量は有しておらず、スイッチングノイズを平滑できる程度である。
【0022】
降圧チョッパ回路14は、電圧制御型スイッチング素子Q1と、巻線Npと、フライホイールダイオードD2と、キャパシタC3とを備えている。本実施形態によるスイッチング素子Q1はN型MOSFETである。巻線Np、フライホイールダイオードD2及びキャパシタC3はループ回路を構成しており、巻線Npの一端にキャパシタC3の一端が接続されており、キャパシタC3の他端にダイオードD2のカソードが接続されており、ダイオードD2のアノードに巻線Npの他端が接続されている。
【0023】
また、巻線Npの一端には、ダイオードD1を介して整流回路13のプラス側出力端子が接続されており、巻線Npの他端には、スイッチング素子Q1のドレインが接続されている。スイッチング素子Q1のソースは、過電流保護回路16の電流検出抵抗R2を介して整流回路13のマイナス側出力端子(グランド)に接続されている。
【0024】
キャパシタC3の両端は降圧チョッパ回路14の一対の出力端子を構成しており、この出力端子にLED素子の直列回路からなるLEDモジュール15が接続されている。LEDモジュール15のカソード側はキャパシタC3の一端に接続されており、アノード側はキャパシタC3の他端に接続されている。
【0025】
図3は、降圧チョッパ回路14の動作説明図であって、(a)はスイッチング素子Q1がオン状態、(b)はスイッチング素子Q1がオフ状態をそれぞれ示している。
【0026】
図3(a)に示すように、スイッチング素子Q1がオンのとき、電源VCC(整流回路13)からの電流は巻線Np及びスイッチング素子Q1からなるループ回路を流れ、巻線Npには励磁エネルギーが蓄積される。
【0027】
そして図3(b)に示すように、スイッチング素子Q1がオフになると、巻線Npの励磁エネルギーがLEDモジュール15に供給されるので、スイッチング素子Q1がオフのときでもLEDモジュールは点灯することができる。またこのときキャパシタC3には静電エネルギーが蓄積される。
【0028】
スイッチング素子Q1が再びオンになると、図3(a)に示すように、電源VCCからの電流は再び巻線Np及びスイッチング素子Q1からなるループ回路を流れるが、キャパシタC3の静電エネルギーがLEDモジュール15を通じて放電されるので、スイッチング素子Q1がオンのときでもLEDモジュール15は点灯することができる。
【0029】
本実施形態による降圧チョッパ回路14では、励磁エネルギーのみがLEDモジュール15に供給されるため、励磁電流のピークと周期のみを制限すればよく、定電流動作は比較的容易である。また、この降圧チョッパ回路14は自動的に臨界モードで動作するので、ある程度のコアボリュームが必要であるが、スイッチング素子Q1のオン時間のみを制限すればよく、LEDモジュール15の輝度の制御は容易である。
【0030】
図1及び図2に示すように、降圧チョッパ回路14には起動抵抗Rstが接続されている。起動抵抗Rstは、整流回路13のプラス側出力端子とスイッチング素子Q1のゲートとの間に設けられている。さらにスイッチング素子Q1のゲートと整流回路13のマイナス側出力端子の間には抵抗R3が設けられている。起動抵抗Rstは、整流回路13側の電圧をスイッチング素子Q1のゲートに印加して、スイッチング素子Q1が動作可能な順バイアスを与えるので、スイッチング素子Q1をオンさせることができる。
【0031】
過電流保護回路16は、降圧チョッパ回路14のスイッチング素子Q1に流れる電流が過大になったときに当該スイッチング素子Q1をオフにする回路であり、トランジスタQ2及び電流検出抵抗R2とを備えている。トランジスタQ2のコレクタはスイッチング素子Q1のゲートに接続されており、トランジスタQ2のエミッタはスイッチング素子Q1のソース(整流回路13のマイナス側出力端子)に接続されている。電流検出抵抗R2に所定のピーク電流が流れると、トランジスタQ2がオンになり、スイッチング素子Q1のゲート・ソース間が短絡され、スイッチング素子Q1はオフとなる。したがって、降圧チョッパ回路14の過電流を防止することができる。
【0032】
自励式駆動信号発生回路17は、インダクタ(ドライブ巻線)Nd、スライサ20、ゲート駆動回路21、オン時間補正回路22を含み、巻線Ndは降圧チョッパ回路14の巻線Npと磁気結合している。すなわち、巻線Np及び巻線NdはトランスT1の一次巻線及び二次巻線をそれぞれ構成している。スイッチング素子Q1がオンになると、降圧チョッパ回路14の巻線Npに電流が流れ、巻線Ndにも誘起電圧が発生する。
【0033】
スライサ20は、トランジスタQ3と、トランジスタQ3のベース・コレクタ間に接続された抵抗R4と、トランジスタQ3のベースに接続されたツェナーダイオードDZ1及びダイオードD3の直列回路と、トランジスタQ3のコレクタ・エミッタ間に接続されたダイオードD4を含み、巻線Ndの出力電圧はスライサ20によって約10Vに制限された後、ダイオードD5、キャパシタC4及び抵抗R5を含むゲート駆動回路21を通ってスイッチング素子Q1のゲートに入力され、これによりスイッチング素子Q1のオン状態が保持される。降圧チョッパ回路14をなるべく長い期間動作させるためには巻線Ndの電圧をできるだけ高くする必要があるが、そのままではスイッチング素子Q1のゲート耐圧を超えるため、スイッチング素子Q1のゲートに印加される電圧を制限する必要があり、スライサ20はそのために用いられる。
【0034】
過電流によって過電流保護回路16のトランジスタQ2がオンとなり、スイッチング素子Q1のゲート・ソース間が短絡されると、順バイアスがなくなるので、スイッチング素子Q1はオフになる。スイッチング素子Q1がオフになると、図3(b)に示すように、逆起電力によって巻線Npに蓄積されていた励磁エネルギーが放出されてLEDモジュール15に放電電流が流れる。

このとき、巻線Ndの端子間電圧の極性は反転するため、スイッチング素子Q1のゲート電圧は引き抜かれて直ちにオフになる。この極性反転は巻線Npが励磁エネルギーを放出し終わるまで続き、この期間においてキャパシタC4は充電される。巻線Npが励磁エネルギーを放出し終わると、キャパシタC4から放電される静電エネルギーがスイッチング素子Q1のゲートに順バイアスを与えるので、スイッチング素子Q1は急速にオン状態となる。以降は、上述の回路動作が繰り返されるので、LEDモジュールが充電電流及び放電電流によって常に点灯する。
【0035】
スイッチング素子Q1がオンのとき、巻線Npと電磁結合された巻線Ndに誘導電流が流れるが、この電流はオン時間補正回路22のキャパシタC5を充電する。キャパシタC5が充電されてその端子間電圧がトランジスタQ4のゲート電圧を超えると、トランジスタQ4がオンとなり、スイッチング素子Q1のゲート・ソース間が短絡され、スイッチング素子Q1はオフとなる。
【0036】
次に、オン時間補正回路22について説明する。
【0037】
図4は、オン時間補正回路22の構成及び動作を説明するための回路図である。
【0038】
図4に示すように、オン時間補正回路22は、トランジスタQ4と、トランジスタQ4のベース・エミッタ間に接続されたキャパシタC5と、抵抗R6からなる第1の抵抗回路と、ツェナーダイオードDZ2及び第2の抵抗R7の直列接続からなる第2の抵抗回路と、ツェナーダイオードDZ3及び抵抗R8の直列接続からなる第3の抵抗回路と、キャパシタC5に並列接続された抵抗R9とを備えている。第1〜第3の抵抗回路の一端はいずれも巻線Ndの一端に接続され、第1乃至第3の抵抗回路の他端はいずれもキャパシタC5の一端に接続されている。キャパシタC5の他端は整流回路13のマイナス側出力端子に接続されている。
【0039】
また、トランジスタQ4のベース・エミッタ間には過電圧保護回路としてのダイオードD6、D7の直列回路が挿入されている。さらに、トランジスタQ4のベースはキャパシタのC5の一端に接続されている。
【0040】
過電流保護回路16のトランジスタQ2と同様、トランジスタQ4のコレクタはスイッチング素子Q1のゲートに接続されており、トランジスタQ4のエミッタはスイッチング素子Q1のソース(整流回路13のマイナス側出力端子)に接続されている。そのため、トランジスタQ4がオンになると、スイッチング素子Q1のゲート・ソース間が短絡され、スイッチング素子Q1がオフになる。
【0041】
本実施形態においては、第2の抵抗回路のツェナーダイオードDZ2は10Vでオンとなり、第3の抵抗回路のツェナーダイオードDZ3は20Vでオンとなるように設定されている。そのため、巻線Ndの端子間電圧が0〜10Vの範囲では、第2及び第3の抵抗回路に電流は流れず、第1の抵抗回路にのみ電流が流れる。したがって、キャパシタC5に入力される電流はR6を通る電流IR6のみとなり、キャパシタC5はゆっくり充電される。
【0042】
巻線Ndの端子間電圧が10〜20Vの範囲では、第3の抵抗回路に電流は流れず、第1及び第2の抵抗回路にのみ電流が流れる。したがって、キャパシタC5に入力される電流はIR6+IR7となり、0〜10Vのときよりも電流量が多くなり、キャパシタC5は素早く充電される。
【0043】
巻線Ndの端子間電圧が20〜30Vの範囲では、第1〜第3の抵抗回路のすべてに電流が流れる。したがって、キャパシタC5に入力される電流はIR6+IR7+IR8となり、10〜20Vのときよりもさらに電流量が多くなり、キャパシタC5はさらに素早く充電される。
【0044】
このように、キャパシタC5の充電速度は、巻線Ndの端子間電圧が低いときに遅く、また巻線Ndの端子間電圧が高いときに早いことから、スイッチング素子Q1の動作は次のようになる。
【0045】
すなわち、巻線Ndの端子間電圧が高いときには、キャパシタC5が急速に充電される結果、トランジスタQ4が直ちにオンとなり、スイッチング素子Q1は直ちにオフになる。よって、スイッチング素子Q1のオン時間は短くなり、LEDモジュール15への供給電流は少なくなる。
【0046】
一方、巻線Ndの端子間電圧が低いときには、キャパシタC5がゆっくりと充電される結果、トランジスタQ4が遅めにオンとなり、スイッチング素子Q1は遅めにオフになる。よって、スイッチング素子Q1のオン時間は長くなり、LEDモジュール15への供給電流は多くなる。
【0047】
図5は、シミュレーションによるキャパシタC5の端子間電圧・電流波形を示すグラフであって、(a)は電流波形、(b)は電圧波形をそれぞれ示している。
【0048】
図5(a)及び(b)に示すように、スイッチング素子Q1がオンのとき、キャパシタC5にはプラスの電流が流れ、これによりキャパシタC5は充電され、充電期間においてはキャパシタC5の端子間電圧は徐々に高くなる。そして、キャパシタC5の端子間電圧が0.65Vに達すると、トランジスタQ4がオンとなり、スイッチング素子Q1がオフとなる。そしてスイッチング素子Q1がオフとなった瞬間からキャパシタC5は放電状態に反転し、抵抗R9によって定まる時定数により放電される。
【0049】
このように、LEDモジュール15へ供給される電流量は巻線Ndの端子間電圧が高いときに少なく、低いときに多くなるように補正されるので、ハイレベル期間が平坦な電流波形を得ることができる。
【0050】
図6は、シミュレーションによる整流回路の電源電圧波形及びLED電流波形を示すグラフであって、(a)及び(b)はオン時間補正回路を用いない場合、(c)及び(d)はオン時間補正回路を用いた場合をそれぞれ示している。また、(a)及び(c)は電源電圧波形、(b)及び(d)はLED電流波形をそれぞれ示している。
【0051】
図6(a)及び(b)に示すように、オン時間補正回路を用いない場合、すなわちキャパシタC5に第1の抵抗回路のみ(抵抗R6のみ)が接続されている場合、LEDモジュール15への供給電流は、立ち上がり及び立ち下がりの鈍った波形となる。これに対し、図6(c)及び(d)に示すように、抵抗R7及びツェナーダイオードDZ2からなる第2の抵抗回路と抵抗R8及びツェナーダイオードDZ3からなる第3の抵抗回路が追加されたオン時間補正回路を用いた場合には、ハイレベル期間が平坦な波形となる。
【0052】
図7は、実際の回路による整流回路の電源電圧波形及びLED電流波形を示すグラフであって、(a)及び(b)はオン時間補正回路を用いない場合、(c)及び(d)はオン時間補正回路を用いた場合をそれぞれ示している。また、(a)及び(c)は電源電圧波形、(b)及び(d)はLED電流波形をそれぞれ示している。
【0053】
図7(a)〜(d)に示すように、実際の回路においても、シミュレーションと同様の結果が得られることが分かる。すなわち、図7(a)及び(b)に示すように、オン時間補正回路を用いない場合、LEDモジュール15への供給電流は、立ち上がり及び立ち下がりの鈍った波形となるが、図7(c)及び(d)に示すように、オン時間補正回路を用いた場合には、ハイレベル期間が平坦な波形となる。
【0054】
次に、ゼロクロス停止回路18について説明する。
【0055】
図8は、ゼロクロス停止回路18の構成を示す回路図である。
【0056】
図8に示すように、ゼロクロス停止回路18は、整流回路13から出力される全波整流波形のゼロクロス付近での発振動作を強制的に停止させる回路である。降圧チョッパ回路14がランダムに動作するとLEDの発光輝度が安定しないことから、降圧チョッパ回路14の動作を強制的に停止させることにより、LEDの輝度の不安定さを防止することができる。
【0057】
ゼロクロス停止回路18は、トランジスタQ5と、トランジスタQ5のベース・エミッタ間に接続されたキャパシタC6及び抵抗R10の並列回路と、停止パルスを生成する停止パルス発生回路23とを備えている。
【0058】
過電流保護回路16のトランジスタQ2と同様、トランジスタQ5のコレクタはスイッチング素子Q1のゲートに接続され、トランジスタQ5のエミッタはスイッチング素子Q1のソース(整流回路13のマイナス側出力端子)に接続されている。そのため、トランジスタQ5がオンになると、スイッチング素子Q1のゲート・ソース間が短絡され、スイッチング素子Q1がオフになる。
【0059】
停止パルス発生回路23は、整流回路13の全波整流波形を監視し、全波整流波形が所定の閾値電圧以下のときに停止パルスを発生させる。停止パルスによってキャパシタC6が充電されるとトランジスタQ5がオンとなり、スイッチング素子Q1のゲート・ソース間を短絡させてその動作を停止させる。停止パルスの供給が終了すると、キャパシタC6は抵抗R10を通じて放電され、トランジスタQ5はオフとなる。
【0060】
本実施形態による停止パルス発生回路23は、差動増幅回路を構成する一対のPNP型トランジスタQ6、Q7と、トランジスタQ6、Q7のエミッタに接続された抵抗R11、ダイオードD8及び抵抗R14の直列回路と、抵抗R14を介してトランジスタQ6、Q7のエミッタに接続されたキャパシタC7とを備えている。キャパシタC7の一端は抵抗R14を介してトランジスタQ6、Q7のエミッタに接続されており、他端は整流回路13のマイナス側出力端子に接続されている。
【0061】
また、停止パルス発生回路23は、トランジスタQ6のベース・コレクタ間に接続されたツェナーダイオードDZ4と、トランジスタQ6のベース・エミッタ間に接続された抵抗R15と、トランジスタQ7のベースに接続された抵抗R12と、トランジスタQ7のベースとトランジスタQ6のコレクタとの間に接続された抵抗R13、キャパシタC8及びツェナーダイオードDZ5の並列回路とを備えている。トランジスタQ7のコレクタはトランジスタQ5のベースに接続されており、トランジスタQ7の出力信号が停止パルスとしてトランジスタQ5に供給される。
【0062】
巻線Ndの端子間電圧は、抵抗R11、ダイオードD8及び抵抗R14を介してトランジスタQ6、Q7のエミッタに供給される。一方、整流回路13の出力電圧は、抵抗R12及びR13によって分圧された後、トランジスタQ7のベースに供給される。巻線Ndの端子間電圧が最大でも30〜40Vであるのに対し、整流回路13の出力電圧の最大値は約140Vであるため、トランジスタQのエミッタ・ベース間には大きな逆バイアス電圧が印加される場合があるが、トランジスタQ7のエミッタ・ベース間の逆バイアス耐圧は数ボルトしかないことから、トランジスタQ7のベースにツェナーダイオードDZ5のカソードを接続して逆バイアス電圧に対する保護が図られている。
【0063】
さらに、巻線Ndの端子間電圧は、抵抗R11、ダイオードD8及び抵抗R15を介してトランジスタQ6のベースにも供給される。トランジスタQ6のベース電圧はツェナーダイオードDZ4によって一定に保持されている。巻線Ndの端子間電圧は全波整流波形であり、そのゼロクロス付近でも停止パルス発生回路23が安定的に動作する必要があるため、できるだけ容量の大きなキャパシタC7を用いてトランジスタQ6、Q7の動作電圧を保持する必要がある。キャパシタC7は、スイッチング素子Q1がオンの時に充電される。つまり巻線Npに電圧がかかると巻線Ndに電圧が発生してキャパシタC7を充電する。キャパシタC7は、巻線の電圧が上昇している期間に充電され、それ以外の期間にて放電される。ダイオードD8があることにより、キャパシタC7の放電電流は抵抗R14を介して常にトランジスタQ6、Q7のエミッタに供給される。
【0064】
図9は、ゼロクロス停止回路18の入出力信号波形図である。
【0065】
図9に示すように、トランジスタQ6,Q7の差動増幅回路によるコンパレータは、ツェナーダイオードDZ4によって規定される一定の基準電圧と、整流回路13からの全波整流波形である参照電圧とを比較する。基準電圧よりも参照電圧のほうが大きい期間では停止パルスは発生せず、基準電圧よりも低い期間で停止パルスが発生し、停止パルスがキャパシタC6に供給され、キャパシタC6が充電される。これにより、トランジスタQ5がオンになり、スイッチング素子Q1がオフになるので、ゼロクロス付近での動作を停止させることができる。
【0066】
次に、オープン保護回路19について説明する。
【0067】
図10は、オープン保護回路19の構成を示す回路図である。
【0068】
図10に示すように、オープン保護回路19は、例えばLEDモジュール15内の少なくとも一つのLED素子が破損することによって降圧チョッパ回路14の出力端がオープンになり、降圧チョッパ回路14の端子間電圧が上昇し、LED点灯装置10内の素子の一部が損傷を受けることを防止するための回路である。
【0069】
オープン保護回路19は、キャパシタC9と、ツェナーダイオードDZ6と、ダイオードD9とを備えている。ダイオードD9のカソードは抵抗R11を介して巻線Ndの一端に接続されており、ダイオードD9のアノードはキャパシタC9を介して整流回路13のマイナス側出力端子に接続されている。また、ツェナーダイオードDZ6のカソードはトランジスタQ7のゲートに接続されており、ツェナーダイオードDZ6のアノードはダイオードD9のアノードに接続されている。
【0070】
巻線Ndの端子間電圧のうちマイナス側の電圧のみをダイオードD9で取り出し、キャパシタC9で平滑し、ツェナーダイオードDZ6を介してコンパレータの参照電圧入力端子、つまりトランジスタQ7のゲートに接続する。
【0071】
降圧チョッパ回路14の出力端がオープンになり、降圧チョッパ回路14の端子間電圧が上昇することにより、ツェナーダイオードDZ6に印加される電圧がツェナー電圧以上になると、トランジスタQ7がオンとなり、停止パルスがキャパシタC6に供給され、キャパシタC6が充電される。これにより、トランジスタQ5がオンとなり、スイッチング素子Q1のゲート・ソース間が短絡され、スイッチング素子Q1はオフとなる。
【0072】
降圧チョッパ回路14の出力端がオープンのときには巻線Ndの励磁エネルギーが余り、ゲート駆動回路21のキャパシタC4に多くのエネルギーがチャージされ、ゲート駆動電圧が上昇する。このため、スイッチング素子Q1のゲート・ソース間を接続するクランパとしてのツェナーダイオードDZ7が必要である。ツェナーダイオードDZ7で余分な励磁エネルギーを消費させることで間欠動作させて、各素子の破壊を防止することができる。この閾値はクランパの電圧よりも高く設定し、通常動作時は導通しないようにする必要がある。
【0073】
以上説明したように、本実施形態によるLED点灯装置10は、オン時間補正回路22を備えているので、LEDに供給される電流の立ち上がり及び立ち下がりを急峻にすると共にゼロクロス期間以外を平坦に近づけることができる。したがって、平滑コンデンサに電解コンデンサを使用することなくLEDの点灯期間中の輝度を一定にすることができる。
【0074】
また、本実施形態によるLED点灯装置10は、整流回路13から出力される全波整流波形のゼロクロス期間において降圧チョッパ回路14の発振動作を強制的に停止させるゼロクロス停止回路18を備えているので、LED輝度の不安定さをさらに抑制することができる。
【0075】
さらに、本実施形態によるLED点灯装置10は、LEDの破壊等によって降圧チョッパ回路14の出力端子間がオープンになったことを検出するオープン保護回路19を備えているので、スイッチング素子Q1を強制的にオフにすることができ、安全な回路を実現することができる。
【0076】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能であり、それらも本発明に包含されるものであることは言うまでもない。
【0077】
例えば、上記実施形態においては、オン時間補正回路22は、3つの抵抗の並列接続条件をツェナーダイオードで切り替えることによって制御しているが、電流経路は3つに限定されるものではなく、2つであってもよく、4つ以上であってもよい。また切り替え方法も特に限定されない。また、本発明においては、半波整流回路等の他の整流回路を用いてもよく、昇圧チョッパ回路等の他の変圧回路を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0078】
10 LED点灯装置
11 商用電源
12 フィルタ回路
13 整流回路
14 降圧チョッパ回路
15 モジュール
16 過電流保護回路
17 自励式駆動信号発生回路
18 ゼロクロス停止回路
19 オープン保護回路
20 スライサ
21 ゲート駆動回路
22 オン時間補正回路
23 停止パルス発生回路
C1〜C9 キャパシタ
D1〜D9 ダイオード
DZ1〜DZ7 ツェナーダイオード
L1 インダクタ
Nd,Np 巻線
Q1 電圧制御型スイッチング素子
Q2〜Q7 トランジスタ
R1〜R15 抵抗
Rst 起動抵抗
T1 トランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源を整流する整流回路と、
第1の巻線及びスイッチング素子を含み前記整流回路から出力される整流波形を変圧するチョッパ回路と、
前記チョッパ回路の出力端に接続されたLED素子と、
前記第1の巻線に磁気結合する第2の巻線を含み前記チョッパ回路を駆動する自励式駆動信号発生回路とを備え、
前記自励式駆動信号発生回路は、
前記スイッチング素子のオン時間を規定すると共に、前記整流回路の出力電圧が相対的に大きいときに前記オン時間が短くなり、前記出力電圧が相対的に小さいときに前記オン時間が長くなるように制御するオン時間補正回路と含むことを特徴とするLED点灯装置。
【請求項2】
前記オン時間補正回路は、
キャパシタと、
第1の抵抗を含む第1の抵抗回路と、
第2の抵抗と第1のツェナーダイオードとの直列回路を含む第2の抵抗回路を含み、
前記第1及び第2の抵抗回路の一端は共に前記キャパシタに接続されており、
前記第1のツェナーダイオードは第1のツェナー電圧を有し、
入力電圧が前記第1のツェナー電圧未満であるとき、入力電流は前記第1の抵抗回路を通って前記キャパシタに流れ、
前記入力電圧が前記第1のツェナー電圧以上であるとき、前記入力電流は前記第1の抵抗回路と前記第2の抵抗回路の両方を通って前記キャパシタに流れることを特徴とする請求項1に記載のLED点灯装置。
【請求項3】
前記オン時間補正回路は、
第3の抵抗と第2のツェナーダイオードとの直列回路を含む第3の抵抗回路を含み、
前記第3の抵抗回路の一端は前記第1及び第2の抵抗回路と共に前記キャパシタに接続されており、
前記第2のツェナーダイオードは前記第1のツェナー電圧よりも高い第2のツェナー電圧を有し、
前記入力電圧が前記第1のツェナー電圧以上且つ第2のツェナー電圧未満であるとき、前記入力電流は前記第1の抵抗回路と前記第2の抵抗回路の両方を通って前記キャパシタに流れ、
前記入力電圧が前記第2のツェナー電圧以上であるとき、前記入力電流は前記第1乃至第3の抵抗回路のすべてを通って前記キャパシタに流れることを特徴とする請求項2に記載のLED点灯装置。
【請求項4】
前記整流回路から出力される整流波形が所定の閾値レベルよりも低い期間において前記チョッパ回路の動作を強制的に停止させるゼロクロス停止回路をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のLED点灯装置。
【請求項5】
前記チョッパ回路の前記出力端がオープンとなったときに前記チョッパ回路の動作を強制的に停止させるオープン保護回路をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のLED点灯装置。
【請求項6】
前記自励式駆動信号発生回路は、前記第2の巻線の出力電圧のピーク値を制限するスライサをさらに備え、前記第2の巻線の出力電圧は前記スライサを介して前記スイッチング素子に供給されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のLED点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−182231(P2012−182231A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42916(P2011−42916)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】