説明

LED照明器具

【課題】車両の信号用灯具の光源をLEDランプとすると、応答性が速く残光性を有さないので、後続車から見たときには点滅が唐突で、ストップからテール移行時には明るさが滑らかに変わらないように感じられ、違和感を生じさせる問題点があった。
【解決手段】本発明により、少なくとも2種類の明るさに調光が行われて成るLED照明器具において、LED照明器具の調光時には、略直線の組み合わせで設定された基本調光曲線に対して、定期的な調光タイミング毎に[今回出力値=現在値+(今回目標値−現在値)×調光ゲイン]なる(式1)により演算を行い出力値を決定した明るさに基づき調光するLED照明器具とすることで違和感を生じさせないものとして課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、典型的には、自動車のストップ/テールライトのように、特に夜間時には、2種類の明るさに切換えて点灯されることが多い照明器具に関するものであり、詳細には、LEDランプなど電源電圧の変動に迅速に応動し残光を生じない光源が採用された照明灯具に対して、調光を行うときに、観視者に対して違和感を与えないようにする構成に係るものである。
【背景技術】
【0002】
旧来、自動車のストップライトなどの照明器具90においては、LEDランプ91の光量不足、価格の高価なことなどの理由により、ハイマウントストップランプなどと称されて一部分にLEDランプ91が採用され、他の部分は白熱電球92が採用されるなど、二種類の光源の併用が行われるケースが多かった。
【0003】
この場合、白熱電球92は、ブレーキスイッチ93が開放されたときにも、前記ブレーキスイッチ93の開放から直ちに消灯することはなく、白熱したフィラメントが冷却するに伴って、徐々に減光して行く傾向を有していた。
【0004】
しかしながら、上記したように残光時間が短いLEDランプ91と併用をしたときには、LEDランプ91側が電源の開放と同時に消灯してしまうので、後続車の運転手などに違和感を与えるものとなっていた。この問題を解決すべく、行われたのが図6に示す対策であり、LEDランプ91側に並列にコンデンサ94を接続しておくことで、点灯時に前記コンデンサ94に充電されていた電流が暫時の間、LEDランプ91を点灯させ、白熱電球92とほぼ消灯時間を一致させて、違和感を生じさせないようにしていた。なお、図中に符号95で示すものはバッテリーである。
【特許文献1】特開昭62−061854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近来に到っては、LEDランプが低コスト化しすると共に、数万時間とも云われる長寿命により、断線に備えた光源用のランプの交換機構を設ける必要がなくなり、ストップ/テールライトの範囲においても、光源の全面的なLEDランプ化が主流となっているのが現状である。
【0006】
ここで、全ての光源用のランプをLEDランプとした場合、上記にも説明したように、前記LEDランプは、電流が印加された瞬間に印加電流に対応する輝度で点灯し、電流の印加が終わった瞬間に、全く残光生じることなく、不点灯状態となるものであるので、特に、テール/ストップライトのように、明、暗の二値に切換えて点灯が行われるものの場合に、人間の目に対しては、ストップライトなど高照度側のライトから、テールライトなど低照度側のライトに切換えられた瞬間に、低照度側が一瞬、輝度が増したような錯覚を生じさせるものとなり、灯具としての表示の信頼性に疑問を感じさせると共に、違和感も生じさせるものとなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記した従来の課題を解決するための具体的手段として、LEDランプを光源とし、少なくとも2種類の明るさに調光が行われて成るLED照明器具において、前記LED照明器具の調光時には、略直線の組み合わせで設定された基本調光曲線に対して、定期的な調光タイミング毎に、
[今回出力値=現在値+(今回目標値−現在値)×調光ゲイン]…(式1)
ここで、
現在値 :現在値(=前回の出力値)(ON duty)
今回目標値 :今回の調光出力目標値 (ON duty)
今回出力値 :今回の調光出力値 (ON duty)
調光ゲイン :1以下の値
上記(式1)により演算を行い出力値(PWMのON duty)を決定して調光することを特徴とするLED照明器具を提供することで課題を解決するものである。
【0008】
なお、現在値とは上記にも記載されているように前回の出力値、即ち、現在LEDランプが点灯されている明るさの値であり、今回目標値とは、次回に点灯するLEDランプの明るさの基準となる明るさの値であり、本発明では今回目標値に演算を行うことで理想的な点灯フィーリングを得ようとするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、直線で設定された基本調光曲線に対して、特に直線と直線とが接する交点近傍で滑らかに輝度を変化させるように調光するようにしたことで、後続車の運転者に違和感を生じさせることなくし、正確な視認を可能とするという優れた効果を奏するものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
つぎに、本発明を図に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。図1に符号1で示すものは本発明に係るLED照明器具であり、ここでは、前記LED照明器具1がテール/ストップライトなど2種以上の明るさが切換えて点灯される灯具であるとして説明を行う。前記LED照明器具1には、昼間時には、運転者のブレーキ操作に伴いS端子から信号が供給され、目標値設定回路1aに入力が行われ、演算回路1bによりストップランプに適する明るさが得られるパルス幅がPWM変調により設定され、出力端子OUTから図2に符号SLの範囲に示すように抵抗3を介してLEDランプ2の点灯が行われストップライトとしての点灯を行うものとなる。
【0011】
また、夜間は、運転者のスイッチ操作などによりT端子から供給される信号により前記LEDランプ2はテールランプに適する明るさ(図2の符号TLの部分)として常時点灯する状態となるが、この場合には演算回路1bにより上記したPWM変調のパルスのデューテイ幅が狭められ、結果的にLEDランプ2は少ない電流で駆動されるものとなる。但し、この状態でも、ストップ端子Tからの入力が検知されると、制御回路1bによりPWM変調のパルス幅は拡げられ、テールランプとしての機能を果たすものとなる。
【0012】
図2はストップライト点灯した場合の曲線SL、パーキングランプを点灯した場合の曲線PL、テールランプを点灯した場合の曲線TLの接続の状態を順不同に示したものであり、ここで、各曲線、例えば曲線SLの立上がり部分、および、立下がり部分に付した符号P1、P2は、例えば、ブレーキペダルの操作、或いは、テールランプスイッチの投入などによる電力の供給状態の形状を示すものである。
【0013】
よって、上記電力の供給は、原則としてはスイッチ(S端子、T端子)の断続により行われるので、いわゆる垂直軸と水平軸とに平行な直線の組合せとなり、前記にも説明した、減光時にテールランプ側の明るさに上昇感を生じるなどの誤認や違和感を生じやすい条件の原因となる。
【0014】
そこで、本発明では、前記LED照明器具1を図1に示すような構成とすることで、LEDランプ2からの光出力が、従来採用されていた白熱電球などに近い形状となるように図るものであり、先ず、PWM変調などのデジタル制御などにより、点灯時の立ち上がり部P1、消灯時の立下がり部P2を予めに適宜な、明るさの傾斜とする目標値設定回路1aを設けている。なお、前記傾斜はy=ax+bのような演算により得ても良い。
【0015】
そして、本発明においては、上記の目標値設定回路1aにより立上がり(及び/又は、立ち下がり)に適宜な、明るさの傾斜を与えることで目標値Pを設定し、この目標値Pに沿うように輝度を制御することで、フィラメントが加熱されて輝度が徐増する白熱電球の点灯状態を模している。更に、本発明では、輝度が最大値に近づくとき、もしくは、消灯が行われたときにも輝度が滑らかに水平に近づくようにして、消灯時のフィーリングにも配慮している。
【0016】
ここで、本発明のLED照明器具1においては、LEDランプ2は、最初に目標値設定回路1aから出力された調光量(PWM値)で点灯されているものとなっている。そして、前記目標値設定回路1aは、所定時間後には、次回のLEDランプ2の点灯電流の基準とすべく次回の目標値Pの調光量(PWM値)を発生させる。
【0017】
よって、本発明のLED照明器具1においては、演算回路1cが設けられており、前回に出力し現在値保持回路1bに保持された現在値P(n+0)と、次回に点灯すべき目標値P(n+1)とから、下記のような演算を行う。
[今回出力値=現在値+(今回目標値−現在値)×調光ゲイン]…(式1)
即ち、次回に出力する調光量(PWM値)は、次回に出力する調光量(PWM値)として演算された調光量(PWM値)から現在出力されている調光量(PWM値)を引き算し、更に、1以下の数値である調光ゲインを乗じた値に現在出力している値を加えたものである。
【0018】
このようにすることで、立上がり部P1と、第一の目標調光量P(80%)との交点に出力値Rが近づくにつれ、立上がり部P1(目標値P)に平行していた出力値Rは、第一の目標調光量P(80%)に暫近する曲線を形成するものとなり、同様に、立下がり部P2と、例えば、第2の目標調光量P(20%)との交点においても立ち下がり部P2と平行していた出力値Rは、第2の目標調光量P(20%)に暫近する曲線を形成するものとなる。
【0019】
即ち、本発明では、前記目標値設定回路1aにより立上がり部P1に適宜な傾斜を与え(または、立ち下がり傾斜)更に次回の点灯出力値を決定するに当たって、今回目標値から現在値Qを減算して、調整数である調光ゲインGを乗じ、この結果に現在値Qを加算することで、現在値Qに変えて出力する次回の出力値Rを得るものとしている。
【0020】
従って、例えばストップランプの輝度が最大値に達したときなど、目標値Pに変化を生じない状態となったときには、現在値Q及び出力値Rは、調光ゲインGが乗算されて、目標値に近づくにつれて暫減し、最終的には目標値Pと同電位となる暫近線形状となり、よって、目標値Pに生じていた急激な勾配変化は緩和されるものとなる。
【0021】
特に、人間の視感度が敏感となる目標値Pの変化が下り勾配から水平に移行する部分(図2中のA部)では、視感度はこれまでの明るさの下り勾配に視感度が追従するために、瞬時の間は、逆に明るさが増加するような誤認を生じるものとなるが、本発明により目標値Pの変化が急激な部分に対しては、変化が滑らかになるように光量を調整するので、このような不具合が生じるのを防止できるものとなる。
【0022】
尚、上記の説明でも明らかなように、目標値Pに対する調光ゲインGの値を変化させることで、前記目標値Pに対しての現在値Q、及び、出力値Rの乖離の度合いを調整できるものとなる。ちなみに図2に示したグラフは、調光ゲインGの値が0.5であり、図3に示したグラフは、調光ゲインGの値が0.2としたときの出力値Rを示したものであり、このように、調光ゲインGを適正化することで、後続車など観視者に対して、違和感を生じさせないものとすることが可能である。
【0023】
尚、本発明によれば、上記に説明したように調光ゲインGの値は、適宜な値として設定することが可能であるので、例えば、車種に合致した値として設定することも可能であり、例えば、敏速な加速、減速が可能である競技用の車両などにおいては、その車両の動作に見合う値とした調光ゲインG、即ち、1ないしは1に極めて近い値の調光ゲインGの値を採用して、後続車に正確に自車の意志を伝達できる点灯状態にする(図4のB部)ようにするなど、目的に応じて調光ゲインGの値を設定することが好ましい。また、このような場合には図1に示す演算回路1c内に設定する調光ゲインGの値を外部から可変可能とするなども有効である。
【0024】
また、図5に示すように、目標値Pに与える傾斜を、例えば、ブレーキペダルのスイッチの動作と同様に、点灯、消灯が急激に行われるようにした場合においても、立上がり部P1から水平部に接続される時点、あるいは、立ち下がり部P2から水平部に接続される時点では、図中にC部、D部に示すように、両直線間は滑らかに接続されるものとなり。少なくともスイッチなどで直接に点滅が行われている場合に比べて違和感の発生は緩和されるものとなる。
【0025】
即ち、従来の照明調光の方法では直線的に明るさを変えていたため、特に減光時の調光終了時付近で、目の錯覚で一瞬明るくなったように感じてしまう現象を生じていたが、調光終了時近傍の明るさ変化を、一方の直線から他方の直線へと、ゆっくりと滑らかに変化させ、目標の調光値に収束させることで、上記の現象をなくする、もしくは著しく低減させることが可能となる。
【0026】
また、本発明のLED照明装置では、例えば、先行車がポンピングブレーキなど、断続する操作を行うときにも、調光ゲインGを適正化しておくことで、点灯が途切れることがなくなり、後続車などに違和感を生じさせることをなくする。
【0027】
更に、本発明においては、調光ゲインGを、例えばスイッチなどによる手動手段、あるいは、車速出力、車間距離などによる自動手段で可変可能としておくことにより、LED灯具を走行状態に最もマッチングする点灯状態が行えるものとして、視認性の向上、違和感の解消などを可能とすることができる。
【0028】
尚、本実施例では、使用時に比較的に頻繁に輝度の切換が行われるテール/ストップライトの例で説明したが、LEDランプを光源として用いた灯具であれば、例えば、コーナリングランプ、AFS用灯具、ルームランプなど車両用灯具は勿論、屋内・屋外用一般照明器具、屋外用一般照明器具、演出用・広告用照明器具など、どのような用途にものであっても同様な作用効果が得られるものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るLED照明装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係るLED照明器による点灯状態を調光ゲインが0.5の状態で示すグラフである。
【図3】同じLED照明器による点灯状態を調光ゲインが0.2の状態で示すグラフである。
【図4】同じく本発明に係るLED照明器をレースなどで頻繁に点滅させたときの点灯光の追従状態を示すグラフである。
【図5】同じく本発明に係るLED照明器の目標値を点灯スイッチのON/OFFとほぼ同等な形状とした特の点灯状態を示すグラフである。
【図6】従来例のLED照明装置の構成を示す配線図である。
【符号の説明】
【0030】
1…LED照明器具
1a…目標値設定回路
1b…現在値保持回路
1c…演算回路
2…LEDランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LEDランプを光源とし、少なくとも2種類の明るさに調光が行われて成るLED照明器具において、前記LED照明器具の調光時には、略直線の組み合わせで設定された基本調光曲線に対して、定期的な調光タイミング毎に、
[今回出力値=現在値+(今回目標値−現在値)×調光ゲイン]…(式1)
ここで、
現在値 :現在値(=前回の出力値)(ON duty)
今回目標値 :今回の調光出力目標値 (ON duty)
今回出力値 :今回の調光出力値 (ON duty)
調光ゲイン :1以下の値
上記(式1)により演算を行い出力値(PWMのON duty)を決定して調光することを特徴とするLED照明器具。
【請求項2】
前記調光ゲインが外部から可変可能としてあることを特徴とする請求項1記載のLED照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−23594(P2009−23594A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190936(P2007−190936)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】