説明

LED照明装置用筐体およびLED照明装置

【課題】優れた放熱性および絶縁性を有し、且つ質量が軽いLED照明装置用筐体を提供すること。
【解決手段】本発明のLED照明装置用筐体は、LEDチップと、前記LEDチップを備えるLEDパッケージとのうちの少なくともいずれか一方の発光素子20を搭載するLED照明装置用筐体10であって、荷重たわみ温度が100℃以上であり、体積固有抵抗が10Ω・cm以上であり、且つ、前記発光素子における接合温度が150℃以下となる熱伝導性を有する熱可塑性樹脂成形体11と、前記熱可塑性樹脂成形体11に設けられた導電性部材12とを備えることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED照明装置用筐体およびLED照明装置に関し、より詳しくは、屋内用照明、屋外用照明、車載用照明などに好適に用いることができるLED照明装置用筐体およびLED照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
照明装置として、従来から白熱電球、蛍光ランプ、高圧放電ランプなどが使用されている。これらの照明装置に変わる新しい照明装置として、発光ダイオード(LED)を用いたLED照明装置の研究が進められている。このようなLED照明装置は、LEDパッケージと、そのLEDパッケージを搭載するための基板と、その基板や電源回路などを収納する筐体とを備えている。そして、このようなLED照明装置においては、LEDの輝度向上や寿命の観点から、LEDの発光により生じた熱を放熱することが要求されており、基板の筐体としては放熱性に優れる金属からなるものが用いられている。
また、基板における放熱性を向上させる技術として、例えば、金属をベース材料とする基板を用いたLED照明装置(特許文献1参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−124528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、金属からなる筐体を用いる場合には、放熱性の点では優れるものの、筐体の質量が比較的に重くなるという不都合や、感電のおそれがあるという不都合がある。また、特許文献1に記載のLED照明装置は、基板に絶縁処理を施すことが必要となると共に、絶縁性維持の点から金属からなる筐体に固定する方法に制約がある点で未だ十分なものではない。また、基板の質量が比較的に重くなるという不都合もある。
そこで、本発明は、優れた放熱性および絶縁性を有し、且つ質量が軽いLED照明装置用筐体、およびそれを用いたLED照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決すべく、本発明は、以下のようなLED照明装置用筐体およびLED照明装置を提供するものである。
すなわち、本発明のLED照明装置用筐体は、LEDチップと、前記LEDチップを備えるLEDパッケージとのうちの少なくともいずれか一方の発光素子を搭載するLED照明装置用筐体であって、荷重たわみ温度が100℃以上であり、体積固有抵抗が10Ω・cm以上であり、且つ、前記発光素子における接合温度(ジャンクション温度)が150℃以下となる熱伝導性を有する熱可塑性樹脂成形体と、前記熱可塑性樹脂成形体に設けられた導電性部材とを備えることを特徴とするものである。
【0006】
本発明のLED照明装置用筐体においては、前記熱可塑性樹脂成形体は、熱伝導率が0.9W/mk以上であることが好ましい。
本発明のLED照明装置用筐体においては、前記熱可塑性樹脂成形体は、一体成形により前記導電性部材が設けられたものであることが好ましい。
本発明のLED照明装置用筐体においては、前記導電性部材は、LEDチップまたはLEDパッケージのための電極であることが好ましい。
本発明のLED照明装置用筐体においては、前記熱可塑性樹脂成形体は、前記発光素子が配設され、前記発光素子からの光を反射する光反射面を有する発光素子配設空間が形成されているものであることが好ましい。
本発明のLED照明装置用筐体においては、前記熱可塑性樹脂成形体は、放熱用フィンが一体に形成されているものであることが好ましい。
【0007】
本発明のLED照明装置用筐体においては、前記熱可塑性樹脂成形体が、下記成分(A)、下記成分(B)および下記成分(C)を下記の範囲内で含有する熱可塑性樹脂組成物からなることが好ましい。
(A)ポリブチレンテレフタレート、ポリアリーレンサルファイド、液晶ポリマー、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフタルアミドおよびポリカーボネートからなる群から選択される少なくとも一つの熱可塑性樹脂:20質量%以上65質量%以下
(B)酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭化ケイ素、タルク、窒化アルミニウムおよび窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも一つの無機系フィラー:15質量%以上60質量%以下
(C)ガラス繊維および炭素繊維からなる群から選択される少なくとも一つの無機系繊維:5質量%以上45質量%以下
(前記各成分の配合量は、成分(A)から成分(C)までの合計量に対する質量分率である)
【0008】
本発明のLED照明装置用筐体においては、前記熱可塑性樹脂がポリアリーレンサルファイドであることが好ましい。また、このような場合、前記ポリアリーレンサルファイドがポリフェニレンサルファイドであることがより好ましい。
本発明のLED照明装置用筐体においては、前記熱可塑性樹脂がポリカーボネートであることが好ましい。
本発明のLED照明装置用筐体においては、無機系フィラーが、タルク、窒化アルミニウムおよび窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
ことを特徴とするLED照明装置用筐体。
【0009】
本発明のLED照明装置は、前記LED照明装置用筐体、並びに前記LED照明装置用筐体に搭載された、LEDチップと、前記LEDチップを備えるLEDパッケージとのうちの少なくともいずれか一方の発光素子を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れた放熱性および絶縁性を有し、且つ質量が軽いLED照明装置用筐体、およびそれを用いたLED照明装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第一実施形態にかかるLED照明装置を示す斜視図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[実施形態]
図1は第一実施形態にかかるLED照明装置を示す斜視図である。図2は図1のII−II断面図である。
【0013】
(LED照明装置およびLED照明装置用筐体の構成)
図1に示すLED照明装置100は、LED照明装置用筐体10と、発光素子20と、電源回路30とを備えている。また、図1に示すように、LED照明装置用筐体10は、熱可塑性樹脂成形体11と、熱可塑性樹脂成形体11に設けられた導電性部材12とを備えている。そして、LED照明装置用筐体10には、内部に例えば円筒状の空間が設けられており、その空間に電源回路30が収納され、蓋40がされているかまたはエポキシ、シリコーンなどの封止剤にて封止されている。また、導電性部材12は、発光素子20と電源回路30とを電気的に接続している。
【0014】
発光素子20としては、LEDチップ、LEDパッケージを挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、LEDパッケージは、LEDチップを少なくとも一つ備えるものである。
電源回路30としては、例えば、AC−DCコンバーター(家庭用交流をLEDが駆動する直流に変換するコンバーター)、変圧器などが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
蓋40は、電源回路30が収納される空間を覆うものである。蓋40の材質は特に限定されないが、以下説明する熱可塑性樹脂成形体11と同一の材質からなるものを用いることが好ましい。なお、蓋40の代わりに、エポキシ、シリコーンなどの封止剤にて封止されていてもよい。このように封止剤により封止(ポッティング)することにより、電源回路30のより確実な防水を図ることができる。
導電性部材12は、LED照明装置100に用いられる部材を電気的に接続するためのものであり、例えば、LEDチップまたはLEDパッケージのための電極である。このような導電性部材12は、熱可塑性樹脂成形体11に設けられている。また、導電性部材12は、回路パターンであってもよい。
【0015】
熱可塑性樹脂成形体11は、荷重たわみ温度が100℃以上であり、体積固有抵抗が10Ω・cm以上であり、且つ、発光素子20における接合温度が150℃以下となる熱伝導性を有するものである。
熱可塑性樹脂成形体11の荷重たわみ温度が100℃未満の場合には、製造時にかかる熱やLEDの発光により生じた熱により変形するおそれがある。また、熱可塑性樹脂成形体11の荷重たわみ温度は、実装工程でのハンダ適用の観点から、180℃以上であることがより好ましい。なお、荷重たわみ温度は、ASTM D648に記載の方法に準拠して測定することができる。
熱可塑性樹脂成形体11の体積固有抵抗が10Ω・cm未満の場合には、LED照明装置用筐体における絶縁性が不十分となる。また、熱可塑性樹脂成形体11の体積固有抵抗は、絶縁性の観点から、1015Ω・cm以上であることがより好ましい。なお、体積固有抵抗は、ASTM D257に記載の方法に準拠して測定することができる。
発光素子20における接合温度が150℃を超える熱伝導性を熱可塑性樹脂成形体11が有する場合には、発光素子20が発熱により熱破壊すると共に、熱可塑性樹脂成形体11が発光素子20との接合部の熱により変形するおそれがある。なお、発光素子20における接合温度は、発光素子20としてLEDパッケージが実装された電極(−)の直下に熱電対を挿入し、LEDパッケージに200mAの電流を流したときの接合部の温度を測定する方法により測定することができる。
【0016】
また、熱可塑性樹脂成形体11の熱伝導率は、放熱性の観点から、0.9W/mk以上であることが好ましく、1.5W/mk以上であることがより好ましい。なお、熱伝導率は、熱可塑性樹脂成形体11の熱伝導性を示すパラメータであり、ホットディスク法により測定することができる。
【0017】
本発明においては、図1に示すように、熱可塑性樹脂成形体11は、発光素子20が配設され、発光素子20からの光を反射する光反射面13を有する発光素子配設空間14(図1において発光素子20が配置されている空間)が形成されているものであることが好ましい。このような発光素子配設空間14に発光素子20が配置されることにより、LED照明装置100において発光素子20からの光をより効率よく利用することができる。
また、図1に示すように、熱可塑性樹脂成形体11は、放熱用フィンが一体に形成されているものであることが好ましい。このような放熱用フィンが一体に形成されていることにより、LED照明装置100における放熱性を向上させることができる。
【0018】
(LED照明装置用筐体の製造方法)
熱可塑性樹脂成形体11および導電性部材12を備えるLED照明装置用筐体10は、熱可塑性樹脂成形体11が以下説明するように成形性の優れる熱可塑性樹脂組成物からなるものであるため、例えば、下記方法(i)から方法(v)までに示すような方法により作製することができる。
方法(i):熱可塑性樹脂組成物の射出成形時に導電性部材12をインサート成形する一体成形により、熱可塑性樹脂成形体11に導電性部材12を設けてLED照明装置用筐体10を作製する方法。
方法(ii):熱可塑性樹脂組成物の射出成形時に金型内に金属箔を配置しておくインモールド成形により、熱可塑性樹脂成形体11に金属箔を設け、その後、エッチングによるパターン形成により導電性部材12を形成してLED照明装置用筐体10を作製する方法。
方法(iii):成形後の熱可塑性樹脂成形体11に、導電性部材12を圧入してLED照明装置用筐体10を作製する方法。
方法(iv):熱プレスにより、成形後の熱可塑性樹脂成形体11に金属箔を設け、その後、エッチングによるパターン形成により導電性部材12を形成してLED照明装置用筐体10を作製する方法。
方法(v):成形後の熱可塑性樹脂成形体11にメッキ法または印刷法により導電性部材12を形成してLED照明装置用筐体10を作製する方法。
【0019】
これらの方法の中でも、製造工程の簡略化という観点から、方法(i)および方法(ii)のような一体成形による方法を採用することが好ましく、方法(i)を採用することがより好ましい。
【0020】
(熱可塑性樹脂成形体の構成材料)
熱可塑性樹脂成形体11が、下記成分(A)、下記成分(B)および下記成分(C)を下記の範囲内で含有する熱可塑性樹脂組成物(以下、単に本樹脂組成物という場合がある)からなることが好ましい。
(A)ポリブチレンテレフタレート、ポリアリーレンサルファイド、液晶ポリマー、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフタルアミドおよびポリカーボネートからなる群から選択される少なくとも一つの熱可塑性樹脂:20質量%以上65質量%以下
(B)酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭化ケイ素、タルク、窒化アルミニウムおよび窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも一つの無機系フィラー:15質量%以上60質量%以下
(C)ガラス繊維および炭素繊維からなる群から選択される少なくとも一つの無機系繊維:5質量%以上45質量%以下
(前記各成分の配合量は、前記成分(A)から前記成分(C)までの合計量に対する質量分率である)
【0021】
前記成分(A)において、液晶ポリマーとしては、例えば、ザイダー(商品名)やベクトラ(商品名)などに代表される全芳香族ポリエステルが挙げられる。
前記成分(A)の中でも、成形性(流動性、耐熱性、成形品のウエルド強度)の観点からは、ポリアリーレンサルファイドを用いることが好ましい。このようなポリアリーレンサルファイドは、繰り返し単位が下記一般式(1):
−(Ar−S)− ・・・(1)
で示される重合体である。なお、前記一般式(1)中、Arはアリーレン基、Sは硫黄を示す。
また、前記ポリアリーレンサルファイドの中でも、アリーレン基がフェニレン基であるポリフェニレンサルファイドを用いることが好ましい。このようなポリフェニレンサルファイドとしては、前記アリーレン基が例えば下記構造式で表されるポリフェニレンサルファイドが挙げられる。
【0022】
【化1】

【0023】
これらのフェニレン基からなるポリフェニレンサルファイドは、同一の繰り返し単位からなるホモポリマー、2種以上の異なるフェニレン基からなるコポリマーおよびこれらの混合物のいずれでもよい。
【0024】
また、前記ポリアリーレンサルファイドは、本発明の効果を損なわない範囲で、そのポリマー鎖の一部が他のポリマーで置換されていてもよい。このように置換するポリマーとしては、例えば、ポリアミド系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリアリーレンエーテル系ポリマー、ポリスチレン系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー、含フッ素ポリマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、シリコーン系エラストマーなどが挙げられる。
このようなポリアリーレンサルファイドは、例えば、特公昭45−3368号公報、特公昭52−12240号公報などに記載の方法により製造することができる。なお、前記ポリアリーレンサルファイドは、空気中で加熱して高分子量化してもよく、また、酸無水物等の化合物を用いて化学修飾してもよい。
【0025】
一方、前記成分(A)の中でも、製品落下強度(耐衝撃性)および塗装性の観点からは、ポリカーボネートを用いることが好ましい。
【0026】
前記成分(A)の配合量は前記成分(A)から前記成分(C)までの合計量に対して20質量%以上65質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上55質量%以下、特に好ましくは20質量%以上45質量%以下である。前記成分(A)の配合量が20質量%未満の場合、本樹脂組成物の成形性が著しく低下し、所望の形状が得られないおそれがある。一方、成分(A)の配合量が65質量%を超える場合、本樹脂組成物からなる熱可塑性樹脂成形体11の熱伝導率が向上しないおそれがある。
【0027】
前記成分(B)は、熱伝導率が5W/mk以上であるものであることが好ましい。前記成分(B)の中でも、電気特性の観点からは、窒化アルミニウムまたは窒化ホウ素を用いることが好ましい。また、コストなどの観点からは、タルクを用いることが好ましい。
【0028】
前記成分(B)の配合量は前記成分(A)から前記成分(C)までの合計量に対して15質量%以上60質量%以下であり、好ましくは20質量%以上60質量%以下である。成分(B)の配合量が15質量%未満の場合、本樹脂組成物からなる熱可塑性樹脂成形体11の熱伝導率が向上しないおそれがある。一方、成分(B)の配合量が60質量%を超える場合、本樹脂組成物の成形性が著しく低下するおそれがある。
【0029】
本発明で用いるガラス繊維(成分(C))は、その断面について特に制限はなく、その断面は扁平形状でもよく、円形状でもよい。また、その繊維長についても特に制限はないが、製造上の利便性の観点から、繊維長が1mm以上5mm以下であることが好ましい。
本発明で用いる炭素繊維(成分(C))としては、例えばチョップストランドを用いることができる。また、このようなチョップストランドとしては、製造上およびハンドリング上の利便性の観点から、直径が1μm以上10μm以下で繊維長が1mm以上5mm以下のものを用いることが好ましい。
これらのガラス繊維および炭素繊維は、前記熱可塑性樹脂との接着強度を高める目的などで、その表面を有機化合物でコーティングしてもよい。また、多数のガラス繊維および炭素繊維を有機化合物で収束するなどの処理を施してもよい。
【0030】
前記成分(C)の配合量は前記成分(A)から前記成分(C)までの合計量に対して5質量%以上45質量%以下であり、好ましくは5質量%以上40質量%以下である。成分(C)の配合量が5質量%未満の場合、本樹脂組成物からなる熱可塑性樹脂成形体11のハンダ耐熱性(荷重たわみ温度)が低くなるおそれがある。一方、成分(C)の配合量が45質量%を超える場合、本樹脂組成物からなる熱可塑性樹脂成形体11の熱伝導率が向上しないおそれがある。
【0031】
本樹脂組成物は、前記成分(A)、前記成分(B)および前記成分(C)のみからなっていてもよい。また、本樹脂組成物は、これら成分の他に以下の樹脂添加剤を含んでいてもよい。
【0032】
本樹脂組成物は、本発明の効果を損ねない範囲で、例えば顔料(着色剤)、離型剤、可塑剤、難燃剤、酸化防止剤、赤外輻射向上剤、金属不活性化剤および相容化剤などの樹脂添加剤を含むことができる。
【0033】
本樹脂組成物は、放熱部材として金属を含まない。従って、本樹脂組成物は成形性に優れ、安価に製造することができ、質量が軽いという利点がある。また、本樹脂組成物は金属と比べて高い体積固有抵抗を有するため、発光素子20を極性の異なる電極双方に同時に接触することができる。
【0034】
(熱可塑性樹脂成形体の成形方法)
熱可塑性樹脂成形体11の成形方法は特に限定されないが、例えば公知の溶融混練法によって混練したペレットを、射出成形などにより成形することができる。また、このようなペレットを作製する方法としては、例えば、原料をヘンシェルミキサー、スーパーフローターなどの混合機で均一に混合した後、単軸あるいは2軸混練押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロールなどの公知の溶融混合機に供給して、例えばPPS樹脂の場合には、280℃以上380℃以下の温度で混練することにより作製する方法を採用することができる。
【0035】
このようにペレットを作製する場合において、原料の混合順については特に限定はない。例えば、全ての原材料を一緒に配合してもよく、一部の原材料を配合して混練し、その後、残りの原材料を配合し混練してもよい。さらには、一部の原材料を配合後、単軸あるいは2軸押出機により混練し、混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合してもよい。また、例えば樹脂添加剤などの少量添加成分については、射出成形などにより成形体を製造する際に添加してもよい。
【0036】
[実施形態の変形例]
なお、以上説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を備え、目的および効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造および形状などは、本発明の目的および効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状などとしても問題はない。
【0037】
例えば、前記した実施形態では、発光素子20としてLEDパッケージを一つ備えるLED照明装置100を示したが、本発明にあっては、発光素子20を複数備える場合や、LEDチップおよびLEDパッケージをそれぞれ備える場合も含む。さらには、LED照明装置100は、必要に応じて、発光素子20以外の半導体部材を備えていてもよく、その場合、このような半導体部材を電気的に接続するための導電性部材12をさらに設けてもよい。
【実施例】
【0038】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、各例におけるLED照明装置用筐体(試料)の性能(熱伝導率、荷重たわみ温度、発光素子における接合温度、ハンダリフロー性、体積固有抵抗)は以下に示す方法で求めた。また、実施例においては、以下に示す熱可塑性樹脂、無機系フィラーおよび無機系繊維を用いた。
【0039】
(I)評価方法
(i)熱伝導率
熱伝導率測定装置TPA−501(京都電子工業株式会社製)を用いてホットディスク法スラブシートモードにて試料の熱伝導率を測定した。
(ii)荷重たわみ温度
ASTM D648に記載の方法に準拠し、荷重0.45MPa下での試料の荷重たわみ温度を測定した。
(iii)発光素子における接合温度
LED照明装置用筐体にLEDパッケージ(日亜化学工業社製、白色チップタイプLED NS6W083T)を実装し、その電極(−)の直下に熱電対を挿入したものを試料とした。そして、LEDパッケージに200mAの電流を流したときの温度を測定し、以下に示すようなLEDパッケージメーカーで行われている方法により、発光素子における接合温度Tを推定した。すなわち、電極(−)の直下のカソード電極温度Tを測定し、その測定値、ダイスからカソード電極までの熱抵抗値Rjs、および投入電力値Wから、下記数式(F1):
=T+Rjs・W ・・・(F1)
を用いて、接合温度Tを算出することにより推定できる。
(iv)ハンダリフロー性
下記熱処理条件にてハンダリフロー炉内(株式会社タムラ製作所製、TAS20−15N)に通して、熱処理後の試料の外形寸法を顕微鏡で観察した。試料の幅、高さおよび奥行の全ての寸法変化が0.05%以内であったときは「○」と判定し、それ以外の場合は「×」と判定した。
ハンダリフロー炉内の熱処理条件:
150℃で120秒熱処理→(昇温速度:15℃/分)→
180℃で60秒熱処理→(昇温速度:30℃/分)→
210℃で60秒熱処理→(降温速度:30℃/分)→室温
(v)体積固有抵抗
ASTM D257に記載の方法に準拠し、試料の体積固有抵抗を測定した。
【0040】
(II)実施例で用いた熱可塑性樹脂、無機系フィラーおよび無機系繊維
ポリブチレンテレフタレート(PBT):N1300(三菱レーヨン株式会社製)
ポリフェニレンサルファイド(PPS):H1G(大日本インキ化学工業株式会社製)
液晶ポリマー(LCP):NX101(ガラス繊維含有量30重量%、新日本石油株式会社製)
シンジオタクチックポリスチレン(SPS):300ZC(出光興産株式会社製)
ポリフタルアミド(PPA):ET1001(ソルベー社製)
ポリカーボネート(PC):A1900(出光興産株式会社製)
窒化アルミニウム:グレードH(株式会社トクヤマ製)
窒化ホウ素:グレードHGP(電気化学工業株式会社製)
酸化アルミニウム:H−32I(昭和電工社製)
酸化マグネシウム:グレードクールフィラーTM CF(タテホ化学工業株式会社製)
タルク:SW−AC(浅田製粉社製)
ガラス繊維:CSG3PA−830S(扁平ガラス繊維、日東紡株式会社製)
炭素繊維:TR06UB4E(三菱レーヨン株式会社製)
【0041】
[実施例1から実施例8まで、および比較例1から比較例3まで]
実施例1から実施例8まで、および比較例2から比較例3までにおいては、以下のようにしてLED照明装置用筐体を得た。すなわち、先ず、成分(A)の熱可塑性樹脂、成分(B)の無機系フィラーおよび成分(C)の無機系繊維を、表1に示す配合比となるようにそれぞれ量りとった。この原料をドライブレンドして混合原料を調製し、二軸混練押出機TEM37BS(東芝機械株式会社製)を用いて、所定の樹脂温度(PPS樹脂ベース(実施例2から実施例4、比較例1、および比較例2)の場合の温度は320℃)で溶融混練して熱可塑性樹脂組成物を得た。その後、射出成形機IS80EPN(東芝機械社製)を用い、所定の条件(PPS樹脂ベース(実施例2から実施例4、比較例1、および比較例2)の場合は樹脂温度330℃および金型温度135℃の条件)にて、熱可塑性樹脂成形体11が図1に示すような形状となり、且つ、導電性部材12(電極)が熱可塑性樹脂成形体11と一体となるように、得られた熱可塑性樹脂組成物を成形してLED照明装置用筐体を得た。
比較例1においては、図1に示すような形状の金属成形体(材質:アルミニウム)と、前記金属成形体に設けられ、LEDパッケージを搭載するための基板(材質:ガラスエポキシ基板、グレード:FR−4)とを備えるLED照明装置用筐体を作製した。
実施例および比較例で得られたLED照明装置用筐体について、前記した方法で各性能(熱伝導率、荷重たわみ温度、発光素子における接合温度、ハンダリフロー性、体積固有抵抗)を評価し、結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
表1に示した結果から明らかなように、本発明のLED照明装置用筐体(実施例1から実施例8まで)は、優れた放熱性および絶縁性を有することが確認された。また、本発明のLED照明装置用筐体は、金属と比較して密度が低い熱可塑性樹脂組成物からなる成形体を備えているので、比較的に質量が軽いものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のLED照明装置用筐体およびLED照明装置は、屋内用照明、屋外用照明、車載用照明などに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0045】
10…LED照明装置用筐体
11…熱可塑性樹脂成形体
12…導電性部材
13…光反射面
14…発光素子配設空間
20…発光素子
30…電源回路
40…蓋
100…LED照明装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LEDチップと、前記LEDチップを備えるLEDパッケージとのうちの少なくともいずれか一方の発光素子を搭載するLED照明装置用筐体であって、
荷重たわみ温度が100℃以上であり、体積固有抵抗が10Ω・cm以上であり、且つ、前記発光素子における接合温度が150℃以下となる熱伝導性を有する熱可塑性樹脂成形体と、前記熱可塑性樹脂成形体に設けられた導電性部材とを備えることを特徴とするLED照明装置用筐体。
【請求項2】
請求項1に記載のLED照明装置用筐体であって、
前記熱可塑性樹脂成形体は、熱伝導率が0.9W/mk以上である
ことを特徴とするLED照明装置用筐体。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のLED照明装置用筐体であって、
前記熱可塑性樹脂成形体は、一体成形により前記導電性部材が設けられたものである
ことを特徴とするLED照明装置用筐体。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のLED照明装置用筐体であって、
前記導電性部材は、LEDチップまたはLEDパッケージのための電極である
ことを特徴とするLED照明装置用筐体。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のLED照明装置用筐体であって、
前記熱可塑性樹脂成形体は、前記発光素子が配設され、前記発光素子からの光を反射する光反射面を有する発光素子配設空間が形成されているものである
ことを特徴とするLED照明装置用筐体。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のLED照明装置用筐体であって、
前記熱可塑性樹脂成形体は、放熱用フィンが一体に形成されているものである
ことを特徴とするLED照明装置用筐体。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のLED照明装置用筐体であって、
前記熱可塑性樹脂成形体が、下記成分(A)、下記成分(B)および下記成分(C)を下記の範囲内で含有する熱可塑性樹脂組成物からなる
ことを特徴とするLED照明装置用筐体。
(A)ポリブチレンテレフタレート、ポリアリーレンサルファイド、液晶ポリマー、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフタルアミドおよびポリカーボネートからなる群から選択される少なくとも一つの熱可塑性樹脂:20質量%以上65質量%以下
(B)酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭化ケイ素、タルク、窒化アルミニウムおよび窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも一つの無機系フィラー:15質量%以上60質量%以下
(C)ガラス繊維および炭素繊維からなる群から選択される少なくとも一つの無機系繊維:5質量%以上45質量%以下
(前記各成分の配合量は、成分(A)から成分(C)までの合計量に対する質量分率である)
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載のLED照明装置用筐体であって、
前記熱可塑性樹脂がポリアリーレンサルファイドである
ことを特徴とするLED照明装置用筐体。
【請求項9】
請求項8に記載のLED照明装置用筐体であって、
前記ポリアリーレンサルファイドがポリフェニレンサルファイドである
ことを特徴とするLED照明装置用筐体。
【請求項10】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載のLED照明装置用筐体であって、
前記熱可塑性樹脂がポリカーボネートである
ことを特徴とするLED照明装置用筐体。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載のLED照明装置用筐体であって、
無機系フィラーが、タルク、窒化アルミニウムおよび窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも一つである
ことを特徴とするLED照明装置用筐体。
【請求項12】
請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載のLED照明装置用筐体、並びに前記LED照明装置用筐体に搭載された、LEDチップと、前記LEDチップを備えるLEDパッケージとのうちの少なくともいずれか一方の発光素子を備えることを特徴とするLED照明装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−216437(P2011−216437A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86031(P2010−86031)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】