説明

LINGO−1構造

本開示は、LINGO−1ポリペプチド、LINGO−1ポリペプチド/リガンド複合体、LINGO−1ポリペプチドの結晶、LINGO−1ポリペプチド/リガンド複合体の結晶、ならびに関連する方法およびソフトウェアシステムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2006年2月3日に出願された米国仮出願第60/765,443号(出典明示により、全体として本明細書の一部とされる)の利益を主張する。
【0002】
技術分野
本開示は、LINGO−1ポリペプチド、LINGO−1ポリペプチド/リガンド複合体、LINGO−1ポリペプチドの結晶、LINGO−1ポリペプチド/リガンド複合体の結晶、ならびに関連する方法およびソフトウェアシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
LINGO−1(RRおよびgドメイン−含有、goレセプター−相互作用タンパク質)はp75との膜貫通型コレセプターである。該コレセプターは、リガンド結合Nogo−66レセプター(NogoR)と共に、Nogoレセプター複合体を形成し、それは一般にニューロンに位置する。LINGO−1が位置するNogoレセプター複合体を無能化すると、ミエリンおよび神経線維成長を誘導することができる。LINGO−1は、オリゴデンドロサイトとして知られるミエリン形成細胞において活性であることが分かっており、LINGO−1の阻害もまた、ミエリン形成を誘導することが示された。かくして、LINGO−1シグナル伝達は、ミエリン産生の負のレギュレーターであると予想される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
一の態様において、本発明は、結晶化LINGO−1ポリペプチドを特徴とする。
別の態様において、本発明は、LINGO−1ポリペプチド、およびLINGO−1ポリペプチドのアゴニストまたはアンタゴニストであるリガンドを含む結晶化ポリペプチド−リガンド複合体を特徴とする。
【0005】
また別の態様において、本発明は、LINGO−1ポリペプチドの三次元モデルを用いてLINGO−1ポリペプチドに結合する薬剤を設計することを含む方法を特徴とする。
さらなる態様において、本発明は、LINGO−1ポリペプチド−リガンド複合体の三次元モデルを用いて、LINGO−1ポリペプチドに結合する薬剤を設計することを含む方法を特徴とする。
【0006】
別の態様において、本発明は、LINGO−1ポリペプチドを含む複合体の三次元モデルを用いて、LINGO−1ポリペプチドに結合する薬剤を設計することを含む方法を特徴とする。
【0007】
別の態様において、本発明は、例えば、LINGO−1ポリペプチド、またはLINGO−1ポリペプチド−リガンド複合体の三次元構造を用いて合理的薬物設計を行うことにより、薬剤を選択し;LINGO−1ポリペプチドと薬剤を接触させ;次いで、薬剤のLINGO−1ポリペプチドに対する結合能を検出することを含む方法を特徴とする。具体例において、該方法は、LINGO−1ポリペプチドおよび薬剤を含む補足的結晶複合体を得る工程、該補足的結晶複合体の三次元構造を決定する工程、例えば、該補足的結晶複合体の三次元構造を用いて合理的薬物設計を行うことにより、第2の薬剤を選択する工程、第2の薬剤をLINGO−1ポリペプチドと接触させる工程、および/または、第2の薬剤のLINGO−1ポリペプチドに対する結合能を検出する工程の1以上を含む。該方法は、さらに、第2の薬剤を合成する工程、第2の薬剤のLINGO−1活性阻害能を検出する工程、および/または第2の薬剤の、イン・ビトロまたはイン・ビボでミエリンレベル増加能を検出する工程の1以上を含む。
【0008】
具体例において、本明細書中に開示される組成物および方法におけるLINGO−1ポリペプチドは、ロイシン−リッチリピート(LRR)ドメイン、免疫グロブリン様(Ig−様)ドメイン、および/またはストーク(stalk)ドメイン、またはその組み合わせを含むか、または、本質的に、ロイシン−リッチリピート(LRR)ドメイン、免疫グロブリン様(Ig−様)ドメイン、および/またはストークドメイン、またはその組み合わせからなる。他の具体例において、LINGO−1ポリペプチドは、哺乳動物(例えば、ヒト)または非哺乳動物起源由来のアミノ酸配列を含むか、または本質的に、哺乳動物(例えば、ヒト)または非哺乳動物起源由来のアミノ酸配列からなり、例えば、LINGO−1ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列、またはその変種(例えば、その保存的置換)を含むことができるか、または配列番号1のアミノ酸配列、またはその変種(例えば、その保存的置換)からなることができる。他の具体例において、LINGO−1ポリペプチドは、結晶化されており、例えば、少なくとも約3.7A(オングストローム)の分解能までX線を回折することができる。具体例において、結晶化LINGO−1ポリペプチドは、空間群P22またはI222を有する。他の具体例において、結晶化LINGO−1ポリペプチドは、a=201.5A、b=149.7A、c=157.5Aおよびα=β=γ=90°、a=148.7A、b=158.6A、c=200.0Aおよびα=β=γ=90°、a=149.6A、b=157.3A、c=200.3Aおよびα=β=γ=90°の1以上から選択される単位格子寸法を有する。また別の具体例において、結晶化LINGO−1ポリペプチドは、表2の構造座標+/−1.5A以下のアルファ炭素原子についての二乗平均平方根を含む三次元構造を有する。別の具体例において、結晶化LINGO−1ポリペプチドは、配列番号1に示されるLINGO−1ポリペプチドのアミノ酸Asp13、Arg20、Arg22、Arg43、Glu60、Glu62、Leu94、Leu120、Met123、His176、Tyr142、His145、His185、His209、His233、Ala238、Trp346、Arg347、Asn349、Asn351、Arg352、Gln353、Phe396、Arg408、Leu420、Leu426、Phe438、Asp440、Arg446、Tyr447および/またはIle459の1以上の原子から選択される原子の構造座標を含む三次元構造を有する。
【0009】
他の具体例において、本明細書中に開示される方法を用いて設計またはスクリーニングされた薬剤は、LINGO−1活性を阻害する。例えば、薬剤は、LINGO−1にリガンド結合部位で結合することができ、および/またはLINGO−1とリガンドとの間の相互作用を干渉することができる。具体例において、リガンド結合部位は、LRRドメインの凹状表面、例えば、配列番号1にしたがって、Trp346およびArg352;His185、His209およびHis233;Asp13;Glu60およびGlu62;またはArg20、Arg22およびArg43の1以上を含むLRRドメインの表面に位置する。他の具体例において、リガンド結合部位は、LRRドメインの凸状表面、例えば、配列番号1にしたがって、Tyr142およびHis145;Leu94、Leu120およびMet123;His176;またはAla238の1以上を含むLRRドメインの表面に位置する。他の具体例において、リガンド結合部位は、Igドメイン、例えば、配列番号1にしたがって、Arg446およびTyr447;Arg408、Phe438およびAsp440;Phe396;またはLeu420、Leu426およびIle459の1以上を含むドメインに位置する。
【0010】
具体例において、本明細書中に開示される方法は、LINGO−1ポリペプチド、またはLINGO−1ポリペプチド−リガンド複合体を含む組成物を提供し、および/または該組成物を結晶化して、LINGO−1ポリペプチド、またはLINGO−1ポリペプチド−リガンド複合体を含む結晶性複合体を形成させることを含む。結晶性複合体は、少なくとも約3.7Aの分解能までX線を回折することができる。本明細書中に開示される方法は、さらに、LINGO−1ポリペプチドの原子と薬剤の原子との間の距離を計算する工程、LINGO−1ポリペプチドと薬剤との相互作用を決定する工程、薬剤とLINGO−1ポリペプチドとの間の相互作用を、第2の薬剤とLINGO−1ポリペプチドとの間の相互作用と比較する工程、コンピューターモデリングによって薬剤を選択する工程、薬剤のLINGO−1活性阻害能を検出する工程、および/または薬剤のイン・ビトロまたはイン・ビボでのミエリン形成増加能を検出する工程の1以上を含むことができる。
【0011】
別の態様において、本発明は、本明細書中に開示される方法を用いて設計または選択される薬剤を特徴とする。
別の態様において、本発明は、コンピューターシステムに、LINGO−1ポリペプチドの構造に関連する情報を受け取らせ、候補薬剤に関連する情報を受け取らせ、次いで、LINGO−1ポリペプチドに対する候補薬剤の結合性を決定させる命令を含むソフトウェアシステムを特徴とする。結合性の決定は、LINGO−1ポリペプチドの構造に関連する情報および候補薬剤に関連する情報に基づくことがきできる。
【0012】
また別の態様において、本発明は、1以上のプロセッサーによって実行された時に、1以上のプロセッサーに、LINGO−1ポリペプチドを含む複合体の構造に関連する情報を受け取らせ、候補薬剤に関連する情報を受け取らせ、次いで、LINGO−1ポリペプチドに対する候補薬剤の結合性を決定させる複数の命令が格納された、コンピューターで読み取り可能な媒体に存在するコンピュータープログラムを特徴とする。結合性の決定は、LINGO−1ポリペプチドの構造に関連する情報および候補薬剤に関連する情報に基づくことができる。
【0013】
別の態様において、本発明は、LINGO−1ポリペプチドの構造に関連する情報を受け取り、次いで、LINGO−1ポリペプチドと候補薬剤との結合性をモデル化することを含む方法を特徴とする。該方法は、ソフトウェアシステムによって実行することができる。
【0014】
また別の態様において、本発明は、1以上のプロセッサーによって実行された時に、1以上のプロセッサーに、LINGO−1ポリペプチドの構造に関連する情報を受け取らせ、次いで、LINGO−1ポリペプチドと候補薬剤との結合性をモデル化させる複数の命令が格納された、コンピューターで読み取り可能な媒体に存在するコンピュータープログラムを特徴とする。
【0015】
別の態様において、本発明は、コンピューターシステムに、LINGO−1ポリペプチドの構造に関連する情報を受け取らせ、次いで、LINGO−1ポリペプチドと候補薬剤との結合性をモデル化させる命令を含むソフトウェアシステムを特徴とする。
【0016】
さらなる態様において、本発明は、例えば、本明細書中に記載される方法(例えば、合理的薬物設計)を用いて、LINGO−1活性を調節することのできる薬剤を選択し、次いで、有効量の薬剤を対象に投与してLINGO−1活性を調節することを含む、対象においてLINGO−1活性を調節する方法を特徴とする。
【0017】
別の態様において、本発明は、例えば、本明細書中に記載される方法(例えば、合理的薬物設計)を用いて、LINGO−1活性に影響を及ぼすことのできる薬剤を選択し、次いで、治療上有効量の薬剤を対象に投与することを含む、LINGO−1活性に関連する病態を有する対象を治療する方法を特徴とする。
【0018】
また別の態様において、本発明は、対象がLINGO−1活性に関連する病態に罹りやすいことを決定し、例えば、本明細書中に記載される方法(例えば、合理的薬物設計)を用いて、LINGO−1活性に影響を及ぼすことのできる薬剤を選択し、次いで、治療上有効量の薬剤を対象に投与することを含む、LINGO−1活性に関連する病態に罹りやすい対象を予防的に治療する方法を特徴とする。
【0019】
具体例において、本明細書中に開示される方法、例えば、本明細書中に開示される治療および予防方法において使用される薬剤は、LINGO−1活性を阻害し、および/またはイン・ビボでミエリンレベルを増加する。具体例において、該病態は、脱髄疾患、例えば、多発性硬化症である。
本発明の他の特徴および利益は、明細書、図面および請求の範囲から明らかであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
詳細な記載
一般に、該開示は、LINGO−1ポリペプチド、LINGO−1ポリペプチド/リガンド複合体、LINGO−1ポリペプチドの結晶、LINGO−1ポリペプチド/リガンド複合体の結晶、ならびに関連する方法およびソフトウェアシステムに関する。理論に捕らわれることは望ましくないが、LINGO−1ポリペプチドの結晶構造およびLINGO−1ポリペプチド/リガンド複合体の結晶は、LINGO−1ポリペプチドと相互作用することのできるリガンドの設計または同定に有用であると考えられる。
【0021】
LINGO−1ポリペプチドと相互作用するリガンドは、LINGO−1活性を阻害または増加することができる。一例として、LINGO−1阻害は、ミエリン形成を誘導することが示された。したがって、LINGO−1阻害剤の同定は、ミエリン欠乏によって特徴付けられる障害、例えば、多発性硬化症、Pelizaeus−Merzbacher病、中枢神経系外傷、Krabbe病またはCanavan病などの大脳白質萎縮症、またはビタミンB12欠乏の治療に有用であると考えられる。
【0022】
図1は、ロイシン−リッチリピート(LRR)ドメイン(アミノ酸1−382)、免疫グロブリン様(Ig−様)ドメイン(残基383−477)、ストーク領域(アミノ酸478−516)、およびストーク領域のC末端に融合したヘキサヒスチジンタグを含むヒトLINGO−1ポリペプチドのフラグメント(LINGO−1K549his6)のアミノ酸配列(配列番号1)である。ヘキサヒスチジンタグは、精製を容易化した。LINGO−1K549his6ポリペプチド中には、全長ヒトLINGO−1のN末端に見出される33アミノ酸シグナル配列が存在しない。野生型配列は、また、タンパク質のC末端に、膜貫通型ドメインおよび短い細胞質尾部を含む(Miら、Nat.Neurosci.7:221−228,2004)。図2は、2.7A分解能まで分解されたLINGO−1K549his6構造の電子密度地図である(表1参照)。図3は、LINGO−1K549his6ポリペプチドの構造を示すリボン図である。LINGO−1K549his6ポリペプチドの結晶構造の座標は、表2に示される。
【0023】
LINGO−1の構造を決定するために、ヒトLINGO−1−ポリペプチドを下記のように調製し、結晶化することができる。一般に、ヒトLINGO−1ポリペプチドを記載のように調製することができる。例えば、いくつかの具体例において、ヒトLINGO−1ポリペプチドをDNAプラスミドから発現させる。発現は、プロモーター、例えば、誘導プロモーターまたは構成的プロモーター、例えば、サイトメガロウイルスプロモーターによって駆動させることができる。ヒトLINGO−1ポリペプチドは、適当なタグ、例えば、ポリヒスチジン(例えば、ヘキサヒスチジン)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、myc、HA、StrepまたはFLAGタグと共に融合タンパク質として発現させることができる。タグは、細胞、例えば、細菌細胞または哺乳動物細胞系統からのヒトLINGO−1ポリペプチドの単離を容易化することができる。例えば、ヒトLINGO−1ポリペプチドは、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞において発現させ、該細胞から単離することができる。例えば、ヒトLINGO−1ポリペプチドは、ヘキサヒスチジンタグに融合させ、細胞抽出物をニッケル樹脂(例えば、ニッケル−ニトリロトリ酢酸(Ni−NTA)樹脂)と接触させて該ヘキサヒスチジンタグを結合させ、次いで、イミダゾールを含有するバッファーで樹脂を洗浄することにより該ポリペプチドを遊離させることによって単離することができる。さらに、融合LINGO−1ポリペプチドは、融合タンパク質に工作されたプロテアーゼ部位、例えば、ポリペプチドとタグとの間の融合部位で、またはその近くで切断することができる。
【0024】
ヒトLINGO−1ポリペプチドは、スペクトルデータ、NMRデータの収集のために、または結晶成長のために、溶液中に置かれることができる。例えば、ヒトLINGO−1ポリペプチドは、塩(例えば、ナトリウム塩および/またはアンモニウム塩)の存在下で結晶化することができる。結晶は、種々の方法によって、例えば、攪拌またはハンギングドロップ(hanging drop)蒸発拡散によって成長させることができる。一般に、結晶化は、約4℃〜約60℃(例えば、約10℃〜約45℃、例えば、約12℃、約15℃、約18℃、約20℃、約25℃、約30℃、約32℃、約35℃、約37℃)で行うことができる。
【0025】
一般に、ヒトLINGO−1ポリペプチドの結晶は、約3.7A以下(例えば、約3.6A以下、約3.5A以下、約3.2A以下、約3.0A以下、約2.7A以下、約2.4A以下、約2.3A以下、約2.2A以下、約2.1A以下、約2.0A以下、約1.9A以下、約1.8A以下、約1.7A以下、約1.6A以下、約1.5A以下、または約1.4A以下)の分解能までX線を回折することができる。いくつかの具体例において、ヒトLINGO−1ポリペプチドの結晶は、約1.7A〜約3.7Aの分解能までX線を回折することができる(例えば、ヒトLINGO−1ポリペプチドの結晶は、約2.7A、約3.5Aまたは約3.6AにX線を回折することができる)。
【0026】
ある具体例において、ヒトLINGO−1ポリペプチドの結晶は、単位格子パラメーターa=148.7A、b=158.6A、c=200.0Aおよびα=β=γ=90°を有する空間群I222に属する。他の具体例において、ヒトLINGO−1ポリペプチドの結晶は、単位格子パラメーターa=149.6A、b=157.3A、c=200.3Aおよびα=β=γ=90°を有する空間群I222に属する。他の具体例において、ヒトLINGO−1ポリペプチドの結晶は、単位格子パラメーターa=201.5A、b=149.7A、c=157.5Aおよびα=β=γ=90°を有する空間群P22に属する。空間群は、結晶の総合的な対称性を示し、点対称性および空間対称性を包含する。ある具体例において、ヒトLINGO−1ポリペプチドの結晶は、空間群I222に属し、非対称単位におけるヒトLINGO−1ポリペプチドの2つの分子を含有する。他の具体例において、ヒトLINGO−1ポリペプチドの結晶は、空間群P22に属し、非対称単位におけるヒトLINGO−1ポリペプチドの4つの分子を含有する。非対称単位は、空間群の対称操作を用いることによって結晶構造を生じることのできる最小単位である。結晶は、一般に、非対称単位における空間群対称操作によって規定されるモチーフ、およびそのモチーフの結晶格子中での並進で構成されている。
【0027】
結晶を示す構造データは、例えば、X線回折によって得ることができる。X線回折データは、種々の線源、X線波長および検出器によって収集することができる。いくつかの具体例において、回転陽極およびシンクロトロン放射源(例えば、Advanced Light Source (ALS)、Berkeley,California;またはAdvanced Photon Source (APS)、Argonne,Illinois)をX線源として用いることができる。ある具体例において、回折データを生じるためのX線は、約0.5A〜約1.6A(例えば、約0.7A、約0.9A、約1.0A、約1.1A、約1.3A、約1.4A、約1.5A、または約1.6A)の波長を有することができる。いくつかの具体例において、面積検出器および/または電荷結合素子(CCDs)を検出器として用いることができる。
【0028】
ヒトLINGO−1ポリペプチドの結晶のX線回折データを用いて、複合体における原子の構造座標を得ることができる。構造座標は、三次元空間における原子の位置を複合体中の他の原子との関連で示すデカルト座標である。例えば、表2に挙げられる構造座標は、結晶性ヒトLINGO−1ポリペプチドの構造座標である。表2の構造座標は、ヒトLINGO−1ポリペプチド(配列番号5)、(配列番号6)、(配列番号7)および(配列番号8)の原子の位置を相互の関連で示す。構造座標は、数学的操作によって、例えば、反転または整数加算もしくは減算によって修飾することができる。したがって、構造座標は相対的な座標である。例えば、ヒトLINGO−1ポリペプチドにおける原子の位置を示す構造座標は、表2の実際のx、yおよびz座標に特に限定されない。
【0029】
ヒトLINGO−1ポリペプチドの構造座標は、ポリペプチドまたはポリペプチドのフラグメントの表示(例えば、二次元表示または三次元表示)を導くために用いることができる。かかる表示は、例えば、ポリペプチドの活性部位の視覚化、同定および特徴付けを包含するいくつかの応用に有用である。ある具体例において、三次元表示は、表2にしたがうヒトLINGO−1ポリペプチドの構造座標±約1.5A以下(例えば、約1.0A以下、約0.5A以下)のアミノ酸のアルファ炭素原子由来の二乗平均平方根(rms)偏差を包含する。
【0030】
RMS偏差は、平均からのずれの二乗の相加平均の平方根であり、構造座標からのずれまたは差異を表現する手段である。アミノ酸の保存的置換(下記参照)は、示されるrms偏差内の構造座標を有する分子表示をもたらすことができる。例えば、保存的アミノ酸置換によって互いに相違するポリペプチドの2つの分子モデルは、示されるrms偏差内、例えば、約1.5A以下(例えば、約1.0A以下、約0.5A以下)の骨格分子の座標を有することができる。ポリペプチドの骨格原子は、アルファ炭素(CαまたはCA)原子、カルボニル炭素(C)原子、およびアミド窒素(N)原子を含む。
【0031】
種々のソフトウェアプログラムは、ヒトLINGO−1ポリペプチドまたは該ポリペプチドのフラグメントの表示を得るために、1セットの構造座標の図画的表示を可能にする。一般に、かかる表示は、構造座標、または構造座標から誘導される情報、例えば、特徴(feature)間の距離または角度を正確に(比較的、および/または絶対的に)反映すべきである。いくつかの具体例において、表示は、二次元図、例えば、立体的二次元図である。ある具体例において、表示は、相互二次元ディスプレー、例えば、相互立体的二次元ディスプレーである。相互二次元ディスプレーは、例えば、ポリペプチドまたはポリペプチドのフラグメントの種々の面を示すために回転することのできるコンピューターディスプレーであることができる。ある具体例において、表示は、三次元表示である。一例として、三次元モデルは、分子構造の物理的モデル(例えば、ボール・アンド・スティックモデル)であることができる。別の例として、三次元表示は、分子構造の図画的表示(例えば、コンピューターディスプレー上に提供された図面または図形)であることができる。二次元図画的表示(例えば、図面)は、例えば、遠近法、描影法、または観察者により近い特徴による観察者からより遠い特徴の妨害によって二次元表示が三次元情報を反映する場合、三次元表示に対応することができる。ある具体例において、表示は1レベル以上でモデル化することができる。一例として、三次元表示がポリペプチド、例えば、ヒトLINGO−1ポリペプチドを包含する場合、該ポリペプチドは、1以上の異なるレベルの構造、例えば、一次(アミノ酸配列)、二次(例えば、α−へリックスおよびβ−シート)、三次(全体の折り畳み)および四次(オリゴマー化状態)構造で表示することができる。表示は、異なるレベルのディティールを含むことができる。例えば、表示は、原子の位置を明示することなく、タンパク質の二次構造特徴の相対的位置を含むことができる。より詳細な表示は、例えば、原子の位置を含むことができた。
【0032】
いくつかの具体例において、表示は、ヒトLINGO−1ポリペプチドにおける原子の構造座標の他に情報を含むことができる。例えば、表示は、溶媒接触可能表面の形状、モデルの原子のファン・デル・ワールス半径、および溶媒(例えば、水)のファン・デル・ワールス半径に関する情報を提供することができる。表示から誘導することができる他の特徴は、例えば、静電ポテンシャル、高分子構造内の空隙またはポケットの位置、および水素結合および塩架橋の位置を包含する。
【0033】
ヒトLINGO−1ポリペプチドと相互作用(例えば、結合)する薬剤は、ポリペプチドまたはポリペプチドのフラグメントの表示の使用を包含する方法によって、同定または設計することができる。表示の典型例は、上記の表示を包含する。いくつかの具体例において、表示は、類似のポリペプチドまたはポリペプチドフラグメントの表示であることができる。該表示と相互作用する候補薬剤は、該表示を用いる候補薬剤のコンピューターフィッティング分析を実施することによって設計または同定することができる。一般に、薬剤は分子である。薬剤の例は、ポリペプチド、核酸(DNAまたはRNAを包含する)、ステロイドおよび非ステロイド性有機化合物を包含する。ポリペプチド(例えば、ヒトLINGO−1ポリペプチド)と相互作用する薬剤は、該ポリペプチドと一時的に、または安定的に相互作用することができる。相互作用は、例えば、水素結合、静電気力、疎水性相互作用およびファン・デル・ワールス相互作用を包含する本明細書中に示されるいずれかの力によって媒介されることができる。
【0034】
上記のように、X線結晶学を用いて、ヒトLINGO−1ポリペプチドの構造座標を得ることができる。しかしながら、かかる構造座標は、NMR技術を包含する他の技術を用いて得ることができる。付加的な構造情報は、スペクトル技術(例えば、旋光分散(ORD)、円偏光二色性(CD))、ホモロジーモデリング、およびコンピューターによる方法(例えば、分子力学由来のデータを含むことができるコンピューター法、動力学アッセイ由来のデータを含むコンピューター法)から得ることができる。
【0035】
いくつかの具体例において、X線回折データを用いて、ヒトLINGO−1ポリペプチドまたは該ポリペプチドのフラグメントの電子密度地図を構築することができ、該電子密度地図を用いて、ヒトLINGO−1ポリペプチドの表示(例えば、二次元表示、三次元表示)を導くことができる。電子密度地図の創作は、典型的に、X線散乱の位相に関する情報を用いることを含む。位相情報は、例えば、回折データから、または電子密度地図の構築を完了するための補助的な回折実験から抽出することができる。X線回折データから位相を計算する方法は、例えば、多波長異常分散(MAD)、多重同型置換(MIR)、異常散乱を用いる多重同型置換(MIRAS)、異常散乱を用いる単一同型置換(SIRAS)、逆格子空間溶媒平坦化(reciprocal space solvent flattening)、分子置換、またはそのいずれかの組み合わせを包含する。これらの方法は、例えば重原子を含むこと、またはすでに存在する重原子の散乱力を変化させることによって、同型構造修飾を天然タンパク質に施し、次いで、天然タンパク質およびその修飾ケースの各々について回折振幅を測定することによって位相情報をもたらす。付加的な重原子の位置または散乱強度における変化が知られている場合、各回折されたX線の位相は、1セットの同時位相方程式を解くことによって決定することができる。重原子部位の位置は、コンピュータープログラム、例えば、SHELXD(Bruker−AXS,Madison,WI)またはSHELXS(Sheldrick,Institut Anorg.Chemie,Goettingen,Germany)およびXPREP(Bruker−AXS,Madison,WI)を用いて同定することができ、回折データは、コンピュータープログラム、例えば、MOSFLM、SCALA、SOLOMONおよびSHARP(”The CCP4 Suite:Programs for Protein Crystallography”,Acta Crystallogr.Sect.D,54:905−921,1997;deLa Fortelle and Brigogne,Meth.Enzym.276:472−494,1997)を用いて加工することができる。結晶性ヒトLINGO−1ポリペプチドに関するX線散乱の位相は、例えば、LINGO−1ポリペプチドの白金誘導体の結晶を用いるSIRASによって決定することができる。結晶性LINGO−1ポリペプチドの白金誘導体を作成するために、結晶性LINGO−1ポリペプチドを白金を含有する溶液中に浸漬することができる。次いで、白金誘導体からSIRASによって得られた位相は、例えば、非結晶学的対称(NCS)平均化、およびDM(Cowtan and Main, Acta Cryst. D49:148−157, 1993)などのコンピュータープログラムにおける位相拡張を用いて精密化することができる。得られたモデルは、さらに、第2のデータセットを用いる分子置換によって誘導されることができる。例えば、空間群I222を有する結晶性LINGO−1ポリペプチドから誘導されたモデルは、空間群P22を有する結晶性LINGO−1ポリペプチド由来のデータセットでの分子置換を用いて精密化することができる。次いで、天然結晶性ポリペプチドおよびその白金誘導体の結晶からSIRASによって得られた位相を用いて、LINGO−1ポリペプチドの電子密度地図を作製することができる。
【0036】
電子密度地図は、電子密度地図を用いてポリペプチドの三次元モデルをアラインメント(align)させることによって、ポリペプチドまたはポリペプチドのフラグメントの表示を導くために用いることができる。例えば、天然結晶性ヒトLINGO−1ポリペプチドに対応する電子密度地図を、同型置換法によって誘導された結晶性ヒトLINGO−1ポリペプチド複合体の白金誘導体に対応する電子密度地図を用いてアラインメントさせることができる。
【0037】
アラインメント(alignment)プロセスは、計算された電子密度地図が以前に知られているポリペプチドまたは以前に知られている複合体のモデルと異なる程度を示す比較モデルをもたらす。次いで、比較モデルを1サイクル以上(例えば、2サイクル、3サイクル、4サイクル、5サイクル、6サイクル、7サイクル、8サイクル、9サイクル、10サイクル)精密化して、電子密度地図によりフィットするようにする。CNS(Brungerら、Acta Crystallogr. D54:905−921,1998)およびREFMAC(Collaborative Computational Project, Number 4. The CCP4 suite: Programs for Protein Crystallography, Acta Crystallogr. D50:760−776,1994)などのソフトウェアプログラムを用いて、モデルを精密化することができる。比較モデルにおけるフィットの質は、例えば、RfactorまたはRfree値によって測定することができる。より小さな値のRfactorまたはRfreeは、一般に、よりフィットしていることを示す。比較モデルにおけるミスアラインメントは、修飾した比較モデルおよびより低いRfactorまたはRfree値を提供するように調整することができる。該調整は、適宜、ヒトLINGO−1ポリペプチドのバリエーションに関連する情報(例えば、配列バリエーション情報、代替構造情報、重原子誘導体情報)に基づくことができる。一例として、結晶性LINGO−1ポリペプチドの重原子誘導体のモデルを用いる具体例において、調整は、天然LINGO−1ポリペプチドの近似モデルを重原子誘導体のモデルにフィットさせることを含むことができる。別の例として、ある具体例において、調整は、以前に知られているLINGO−1ポリペプチド中のアミノ酸を類似構造を有するアミノ酸で置換すること(保存的アミノ酸変化)を含むことができる。修飾された比較モデルへの調整が電子密度地図に対する最も良好なフィットを満足させる場合、得られるモデルは、X線データが由来するポリペプチドまたは複合体を表すことが決定されたものである。かかるプロセスの方法は、例えば、Methods in Enzymology,Vol.277,Part B,New York:Academic Press,1997のCarterおよびSweet編、”Macromolecular Crystallography”およびその引用文献、例えば、JonesおよびKjeldgaard,”Electron−Density Map Interpretation”,p.173、およびKleywegtおよびJones,”Model Building and Refinement Practice”,p.208に開示される。
【0038】
コンピューターなどの機械は、機械に連結されたディスプレー上に構造座標の図画的表示をもたらすことのできるプログラムと一緒に、ヒトLINGO−1ポリペプチドの構造座標をメモリにプログラム化することができる。また、ソフトウェアシステムも、構造座標を受入れ、格納するよう設計、および/または利用することができる。ソフトウェアシステムは、構造座標の図画的表示をもたらすことができる。ソフトウェアシステムは、また、外部のデーターベースにアクセスして、ヒトLINGO−1ポリペプチドと相互作用する可能性のある1以上の候補薬剤を同定することができる。
【0039】
構造データを含有するメモリを有する機械、またはかかるデータを含有するソフトウェアシステムは、ヒトLINGO−1ポリペプチドアゴニストまたはヒトLINGO−1ポリペプチドアンタゴニストの合理的設計または選択を援助することができる。例えば、かかる機械またはソフトウェアシステムは、薬剤のヒトLINGO−1ポリペプチド結合能の評価に役立ち、あるいはヒトLINGO−1ポリペプチドに対する構造または配列ホモロジーによって関連付けられる化合物またはタンパク質のモデリングに役立つことができる。本明細書中で使用される場合、アゴニストとは、ヒトLINGO−1ポリペプチドの少なくとも1つの活性を増強する化合物をいい、アンタゴニストとは、ヒトLINGO−1ポリペプチドの少なくとも1つの活性を阻害または中和する化合物をいう。例えば、神経細胞によるミエリン産生速度を増加することによって、またはヒトLINGO−1ポリペプチドとNogoレセプター複合体との相互作用を阻害することによって、化合物は、ヒトLINGO−1ポリペプチドのアンタゴニストとして機能しうる。
【0040】
機械は、ヒトLINGO−1ポリペプチドまたは該ポリペプチドのフラグメントの表示(例えば、二次元表示、三次元表示)を作成することができる。ソフトウェアシステムは、例えば、機械にかかる情報をもたらすことができる。機械は、機械で読み取り可能なデータでコード化されたデータ保存物質を包含する機械で読み取り可能なデータ保存媒体を含むことができる。機械で読み取り可能なデータは、ヒトLINGO−1ポリペプチドの原子の構造座標を含むことができる。機械で読み取り可能な保存媒体(例えば、データ保存物質)は、例えば、従来のコンピューターハードドライブ、フロッピーディスク、DATテープ、CD−ROM、DVDおよび他の磁気性、磁気光学的、光学的媒体、および機械(例えば、コンピューター)で利用するのに適した他の媒体を包含する。機械は、また、機械で読み取り可能なデータを処理するための命令を保存するための作業メモリ、ならびに機械で読み取り可能なデータを所望の三次元表示中に処理する目的で作業メモリおよび機械読み取り可能データ保存媒体に連結させた中央処理装置(CPU)を有する。ディスプレーは、ユーザーが三次元表示を視覚化できるように、CPUに連結することができる。したがって、データを使用する命令をプログラムに組み込んだ機械(例えば、本明細書に記載の種類の1以上のプログラムをロードしたコンピューター)と共に用いる場合、該機械は、本明細書に記載のポリペプチド、ポリペプチドフラグメント、複合体、または複合体フラグメントのいずれかの図画的表示(例えば、二次元図示、三次元図示)を表示することができる。
【0041】
ディスプレー(例えば、コンピューターディスプレー)は、ヒトLINGO−1ポリペプチドまたはヒトLINGO−1ポリペプチドのフラグメントの表示を示すことができる。ユーザーは、その表示を検査することができ、該表示から得られた情報を用いて、リガンドに結合したヒトLINGO−1ポリペプチドまたはポリペプチドフラグメントのモデルを作成することができる。例えば、ヒトLINGO−1ポリペプチドの以前に存在していた表示を改変することによって、該モデルを作成することができる。所望により、ユーザーは、ヒトLINGO−1ポリペプチドの表示上に三次元モデルを重ねることができる。薬剤は、ヒトLINGO−1ポリペプチドのアゴニスト(例えば、候補アゴニスト)であることができる。いくつかの具体例において、薬剤は、既知化合物または既知化合物のフラグメントであることができる。ある具体例において、薬剤は、以前に知られていない化合物、または以前に知られていない化合物のフラグメントであることができる。
【0042】
薬剤は、活性部位の形状を補足する形状を有することが望ましい。薬剤の原子およびヒトLINGO−1ポリペプチドの原子間に、好ましい距離、または距離範囲が存在することができる。好ましい距離より長い距離は、薬剤および活性部位(例えば、ヒトLINGO−1ポリペプチドの活性部位)の間の弱い相互作用に関連しうる。好ましい距離よりも短い距離は、薬剤および該ポリペプチドの間の相互作用を弱めることのできる斥力に関連しうる。原子間の距離が短すぎる場合、立体衝突が起こる可能性がある。立体衝突は、2つの原子の位置が過度に密接する場合、例えば、2つの原子がそれらのファン・デル・ワールス半径の合計よりも短い距離で引き離されている場合に起こる。立体衝突が存在する場合、ユーザーは、薬剤の、ヒトLINGO−1ポリペプチドに対する位置を立体衝突が軽減されるまで調整することができる(例えば、薬剤の剛体並進または回転)。ユーザーは、薬剤のコンホメーション、または薬剤の近辺のヒトLINGO−1ポリペプチドのコンホメーションを調整して、立体衝突を軽減することができる。立体衝突は、また、薬剤の構造を改変することによって、例えば、芳香環などの「嵩高い基」を小さな基、例えば、メチルまたはヒドロキシル基に変えることによって、または堅い基を、立体衝突を生じないコンホメーションを提供することのできる柔軟な基に変えることによって、除去することができる。また、静電気力も、薬剤およびリガンド結合ドメインの間の相互作用に影響を及ぼすことができる。例えば、静電気性質は、薬剤およびヒトLINGO−1ポリペプチドの間の相互作用を弱めることのできる斥力に関連することができる。静電気斥力は、薬剤の電荷を改変することによって、例えば、正電荷基を中性基に置き換えることによって軽減することができる。
【0043】
候補薬剤およびヒトLINGO−1ポリペプチド間の結合力に影響を及ぼす力は、各々、ポリペプチド/薬剤モデルにおいて評価することができる。これらは、例えば、水素結合、静電気力、疎水性相互作用、ファン・デル・ワールス相互作用、双極子−双極子相互作用、π−スタッキング力、およびカチオン−π相互作用を包含することができる。ユーザーは、これらの力を、例えば、水素結合に適当な距離および角度で配列させた水素結合ドナー/アクセプター対に注目することによって、視覚的に評価することができる。評価に基づいて、ユーザーは、ヒトLINGO−1ポリペプチドおよび薬剤間のより好ましい相互作用を見出すために該モデルを改変することができる。モデルの改変は、例えば、アミノ酸側鎖または骨格二面角のコンホメーションを改変することによって、該ポリペプチドの三次元構造をその化学構造を改変することなく変化させることを包含することができる。モデルの改変は、上記のように、薬剤の位置またはコンホメーションを改変することを包含することができる。モデルの改変は、また、例えば、基を置換、付加または除去することによって、薬剤の化学構造を改変することを包含することができる。例えば、ヒトLINGO−1ポリペプチド上の水素結合ドナーが薬剤上の水素結合ドナーの近くに位置するならば、ユーザーは、薬剤上の水素結合ドナーを水素結合アクセプターと置き換えることができる。
【0044】
薬剤およびヒトLINGO−1ポリペプチドの相対的位置、またはそれらのコンホメーションを、ヒトLINGO−1ポリペプチドに対する特定の薬剤の最適化した結合幾何構造を見出すために調整することができる。最適化した幾何構造は、例えば、好ましい水素結合距離および角度、最大静電気引力、最小静電斥力、水性環境からの疎水性基の隔離、および立体衝突の非存在によって特徴付けられる。最適化された幾何構造は、ヒトLINGO−1ポリペプチド/薬剤複合体について可能な幾何構造の一群の最も低い計算されたエネルギーを有することができる。最適化された幾何構造は、例えば、分子力学または分子動力学計算によって、決定することができる。
【0045】
種々の薬剤を結合したヒトLINGO−1ポリペプチドの一連の表示を作成することができる。各表示についてスコアを計算することができる。スコアは、例えば、ヒトLINGO−1ポリペプチドおよび薬剤間の相互作用の予想される強度を表すことができる。スコアは、結合強度に影響を及ぼす上記の因子の一つを反映することができる。スコアは、1以上の因子を反映する総スコアであることができる。スコアにしたがって種々の薬剤をランク付けすることができる。
【0046】
薬剤設計における工程は、機械による自動様式で実施することができる。例えば、ヒトLINGO−1ポリペプチドの表示は、候補薬剤の表示と共に、機械においてプログラム化されることができる。機械は、活性部位に対する各候補薬剤の最適化した幾何構造を見出すことができ、一連の薬剤のなかでどれがヒトLINGO−1ポリペプチドと最も強く相互作用する見込みがあるかを決定するためのスコアを計算することができる。
【0047】
ソフトウェアシステムは、これらの工程を容易化するように設計および/または実行されることができる。表示を作成するため、またはフィッティング分析を実施するために使用されるソフトウェアシステム(例えば、コンピュータープログラム)は、例えば、Accelrys,Inc.(San Diego,CA)製のMCSS、Ludi、QUANTA(登録商標)(巨大分子X線結晶学ソフトウェア)、Insight II(生物学的化合物モデリングおよびシミュレーションソフトウェア)、Cerius2R(モデリングおよびシミュレーションソフトウェア)、CHARMm(生物学的巨大分子のシミュレーションのためのソフトウェア)、CHARMm(生物学的巨大分子のシミュレーションのためのソフトウェア)、およびModeler;TRIPOS,Inc.(St.Louis,MO)製のSYBYL(分子モデリングソフトウェア)、Unity、FleXX、およびLEAPFROG;AUTODOCK(Scripps Research Institute,La Jolla,CA);GRID(Oxford University,Oxford,UK);DOCK(University of California,San Francisco,CA);およびFloおよびFlo99(Thistlesoft,Morris Township,NJ)を包含する。他の有用なプログラムは、Openeye Scientific Software(Santa Fe,NM)製のROCS、ZAP、FRED、Vida、およびSzybki;Schrodinger,LLC(Portland,OR)製のMaestro、Macromodel、およびGlide;MOE(Chemical Computing Group,Montreal,Quebec)、Allegrow(Boston De Novo,Boston,MA)、CNS(Brungerら、Acta Crystall. Sect. D 54:905−921,1997)およびGOLD(Jonesら、J.Mol.Biol.245:43−53,1995)を包含する。また、MOLSCRIPT、RASTER3DまたはPYMOLを用いてヒトLINGO−1ポリペプチドの三次元構造を視覚化するために、構造座標を用いることができる(Kraulis,J.Appl.Crystallogr.24:946−950,1991;Bacon and Anderson,J.Mol.Graph.:219−220,1998;DeLano,The PYMOL Molecular Graphics System(2002)DeLano Scientific, San Carlos,CA)。
【0048】
薬剤は、例えば、適当なデータベースをスクリーニングすることによって選択することができ、ヒトLINGO−1ポリペプチドの立体配座および帯電電位を適当なソフトウェアシステムで分析することによって新たに設計することができ、および/または既知のリガンド、例えば、ニューロトロフィンレセプターp75およびNogoレセプター(NogoR)の特徴を用いて設計することができる。該方法を用いて、ヒトLINGO−1ポリペプチドのアゴニストまたはアンタゴニストを設計または選択することができる。データベース検索、および/または薬剤選択および設計を容易化するために、ソフトウェアシステムを設計および/または実行することができる。
【0049】
いったん薬剤が設計または同定されたならば、それを入手または合成し、さらに、ヒトLINGO−1ポリペプチドの活性に対するその効果について評価することができる。例えば、薬剤は、ヒトLINGO−1ポリペプチドと接触させ、ポリペプチド活性に対する薬剤の効果を測定することによって、評価することができる。薬剤を評価する方法は、イン・ビトロまたはイン・ビボで実施される活性アッセイを包含することができる。
【0050】
活性アッセイは、例えば、細胞に基づいたアッセイであることができる。細胞に基づいたアッセイは、ミエリン産生に対する候補薬剤の効果をモニターすることを包含することができる。ヒトLINGO−1ポリペプチド阻害剤に関するかかるアッセイは、ヒトLINGO−1ポリペプチドを発現している細胞を候補阻害剤と接触させ、次いで、細胞形態に対する効果についてアッセイすることを含みうる。例えば、神経細胞系統を候補薬剤と接触させ、該細胞を、オリゴデンドロサイト分化に対する影響についてモニターすることができる。LINGO−1活性の減少は、細胞プロセスの長さの増加によって明らかなように、細胞の成熟したオリゴデンドロサイトへの分化を増加させることが示された(Miら、Nat.Neuroscience :745−751,2005)。また、LINGO−1活性は、ミエリン産生に関与するタンパク質、例えば、髄鞘形成の開始時に発現するタンパク質であるミエリン関連糖蛋白(MAG)、ミエリンの主要タンパク質成分であるミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ならびにオリゴデンドロサイト−ミエリン糖蛋白(OMpg)、ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白(MOG)および環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ(CNPase)を包含する他のミエリン成分のレベルを測定することによって、アッセイすることができる。LINGO−1阻害剤は、これらの各タンパク質の発現のアップレギュレーションを促進することが示された(Miら、Nat.Neuroscience :745−751,2005)。タンパク質レベルは、標準的なタンパク質検出技術、例えば、ウェスタンブロット分析による免疫組織化学または培養細胞もしくは全組織切片におけるイン・サイトゥ・ハイブリダイゼーションによってアッセイすることができる。
【0051】
ヒトLINGO−1ポリペプチドに対する薬剤の作用に依存して、薬剤は、ヒトLINGO−1ポリペプチド活性のアゴニストまたはアンタゴニストのいずれかとして作用することができる。例えば、アゴニストは、ミエリン産生速度を減少させうるか、またはヒトLINGO−1ポリペプチドのNogoレセプター複合体に対する結合アフィニティーを増加しうる。逆に、アンタゴニストは、ミエリン産生速度を増加させうるか、またはヒトLINGO−1ポリペプチドのNogoレセプター複合体に対する結合アフィニティーを減少させうる。Nogoレセプター複合体の1以上の成分(例えば、p75またはNogo66)の存在下に薬剤をヒトLINGO−1ポリペプチドと接触させて、薬剤が、ヒトLINGO−1ポリペプチドのNogoレセプター複合体に対する結合を阻害するかどうかを決定することができる。同定された薬剤に結合したヒトLINGO−1ポリペプチドを含有する結晶を成長させることができ、構造はX線結晶学によって決定される。第2の薬剤は、ヒトLINGO−1ポリペプチドと第1の薬剤との相互作用に基づいて設計または同定することができる。
【0052】
種々の分子分析および合理的薬物設計技術は、さらに、例えば、米国特許第5,834,228号、第5,939,528号および第5,856,116号、ならびに、PCT出願第PCT/US98/16879号(WO99/09148として公開される)において開示されている。
【0053】
ある特定の具体例を記載するが、他の具体例も考えられる。
【0054】
一例として、ヒトLINGO−1ポリペプチドに関する具体例を記載するが、本明細書の記載は、より一般的に、いずれのLINGO−1ポリペプチドにも向けられる。
LINGO−1ポリペプチドは、全長の成熟ポリペプチドであることができ、LINGO−1ポリペプチドのいずれのイソ型の全長アミノ酸配列をも包含する。イソ型は、一次構造が異なるタンパク質のいくつかの多様な形態のいずれかである。ヒトLINGO−1の全長アミノ酸およびヌクレオチド配列を図8A−8Bに開示する。
【0055】
LINGO−1ポリペプチドは、ヒトLINGO−1ポリペプチドのフラグメント、例えば、シグナル配列、LRR型ドメイン、Ig−様ドメイン、膜貫通型ドメイン、細胞質ドメイン、またはその組み合わせであることができる。LINGO−1ポリペプチドのフラグメントは、LINGO−1ポリペプチド配列(例えば、配列番号1)の40%、50%、60%、80%、90%またはそれ以上を包含することができる。例えば、LINGO−1ポリペプチドは、下記のドメイン:LRR型ドメイン(例えば、およそ配列番号1のアミノ酸1−382)、またはそのフラグメントもしくは選択された残基(例えば、配列番号1のアミノ酸Asp13、Arg20、Arg22、Arg43、Glu60、Glu62、Leu94、Leu120、Met123、His176、Tyr142、His145、His185、His209、His233、Ala238、Trp346、Arg347、Asn349、Asn351、Arg352、および/またはGln353の1以上);Ig−様ドメイン(例えば、およそ配列番号1のアミノ酸383−477)、またはそのフラグメントもしくは選択された残基(例えば、配列番号1のアミノ酸Phe396、Arg408、Leu420、Leu426、Phe438、Asp440、Arg446、Tyr447および/またはIle459の1以上);および/またはストーク領域(例えば、およそ配列番号1のアミノ酸478−516)、またはそのフラグメントもしくは選択された残基を包含することができる。他の具体例において、LINGO−1ポリペプチドは、本明細書中に記載されるように、1以上の活性部位および/または折り畳み構造を含有することができる。LINGO−1ポリペプチドは、本明細書中に記載されるように、類似の三次元構造を生じる1以上の保存的アミノ酸置換を含有しうる。例えば、いくつかの具体例において、LINGO−1ポリペプチド(またはそのフラグメント)は、予め決定された配列、例えば、ヒトLINGO−1アミノ酸配列(例えば、配列番号1)由来の5、10、20、30、50、75、100、150または200まで、またはそれ以上の保存的置換を包含する。
【0056】
LINGO−1ポリペプチドは、活性部位を有することができる。例えば、LRR−様ドメインは、LINGO−1ポリペプチドのおそらく活性部位を含む。一般に、活性部位は、リガンド結合部位、またはリン酸化、グリコシル化、アルキル化、アシル化または他の共有結合修飾の部位を包含することができる。リガンド結合部位は、Nogoレセプター複合体の成分、またはLINGO−1活性のアゴニストもしくはアンタゴニストの結合部位であることができる。活性部位は、グリコシル化部位を包含することができる。リガンド結合部位は、リガンドとの相互作用時に活性に影響を及ぼしうる実際の結合部位に近接または隣接した補助的な結合部位を包含することができる。ヒトLINGO−1ポリペプチドの候補活性部位は、LINGO−1ポリペプチドの構造を他の既知ポリペプチドの相同構造と比較することによって同定することができる。例えば、ヒトLINGO−1ポリペプチドの1以上の活性部位は、LINGO−1ポリペプチドの構造を血小板膜糖蛋白Gp1bαの構造と比較することによって同定することができる。Trp346およびArg352を包含するLINGO−1上の候補活性部位は、Gp1bα上におけるリガンド結合部位の構造との類似性によって同定された。ヒトLINGO−1ポリペプチドの表面に位置するキャビティーもまた、候補リガンド結合部位を示す。
【0057】
ヒトLINGO−1ポリペプチドの活性部位は、配列番号1のアミノ酸を包含することができる(図1)。例えば、ヒトLINGO−1ポリペプチドの活性部位は、配列番号1のアミノ酸位置において示した場合、アミノ酸Asp13、Arg20、Arg22、Arg43、Glu60、Glu62、Leu94、Leu120、Met123、His176、Tyr142、His145、His185、His209、His233、Ala238、Trp346、Arg347、Asn349、Asn351、Arg352、Gln353、Phe396、Arg408、Leu420、Leu426、Phe438、Asp440、Arg446、Tyr447およびIle459の1以上を包含することができる。活性部位は、ヒトLINGO−1ポリペプチドの特定領域に位置するアミノ酸のサブセットを包含することができる。例えば、活性部位は、LRR−ドメインの凹状表面に位置することができ、配列番号1のTrp346およびArg352;His185、His209およびHis233;Asp13;Glu60およびGlu62;またはArg20、Arg22およびArg43を包含することができる。別の例において、活性部位は、LRR−ドメイン上の凸状表面に位置することができ、配列番号1のTyr142およびHis145;Leu94、Leu120およびMet123;His176;またはAla238を包含することができる。別の例において、活性部位は、Ig−ドメイン上に位置することができ、配列番号1のArg446およびTyr447;Arg408、Phe438およびAsp440;Phe396;またはLeu420、Leu426およびIle459を包含することができる。
【0058】
ヒトLINGO−1ポリペプチドのアミノ酸の番号付けは、本明細書に示されるものと異なっていてもよく、ヒトLINGO−1ポリペプチドの配列は、同じ三次元構造を生じるある特定の保存的アミノ酸置換を含有していてもよい。例えば、ヒトLINGO−1ポリペプチドの番号付けは、図1に示されるものと異なっていてもよく、ヒトLINGO−1ポリペプチドの配列は、保存的アミノ酸置換を含有していてもよいが、表2の座標によって定義され、図2−4および図5A−5Cにおいて図示されるのと同じ構造を生じる。他のイソ型または類似体における対応するアミノ酸および保存的置換は、関連するアミノ酸配列の視覚的検査によって、または市販のホモロジーソフトウェアプログラム(例えば、MODELLAR,MSI Management Simulations,Inc.,San Diego,CA)を用いることによって容易に同定される。表2に示される結晶構造座標は、空間群P22を有する結晶から決定されたが、同じ座標+/−1.5A以下のアルファ炭素原子の二乗平均平方根が、I222などの異なる空間群を有する結晶性LINGO−1ポリペプチドに対応することができる。
【0059】
類似体は、保存的アミノ酸置換を有するポリペプチドである。保存的置換は、1のアミノ酸を、同様の極性、立体配置を有するか、または同じクラス(例えば、疎水性、酸性または塩基性)の別のアミノ酸と交換することを包含することができ、また、ヒトLINGO−1ポリペプチドと相互作用する薬剤の同定および設計に関して、ならびに分子置換分析および/またはホモロジーモデリングにとって、ヒトLINGO−1ポリペプチドの三次元構造に対する取るに足らない影響を有する置換を包含することができる。
【0060】
LINGO−1ポリペプチドの変種または変異体は、本明細書に開示される方法、組成物および三次元モデルにおいて使用することができる。LINGO−1ポリペプチドの変種または変異体、またはそのフラグメントは、該変種が天然タンパク質のアミノ酸配列の少なくとも一部、または天然タンパク質と実質的に同一のアミノ酸配列の少なくとも一部を有する限り、キメラまたは融合タンパク質、標識化タンパク質(例えば、放射能標識タンパク質)、融合タンパク質、変異タンパク質、類似(例えば、実質的に類似)の配列(例えば、アミノ酸置換(例えば、保存されたアミノ酸置換)、欠失、挿入を有するタンパク質)、タンパク質フラグメント、模倣物を包含する。具体例において、変異体LINGO−1は、配列番号1のアミノ酸配列またはそのフラグメントと、5、10、20、30、50、75、100、150または200個までの、またはそれ以上のアミノ酸残基が異なる。他の具体例において、変異体LINGO−1は、LINGO−1ポリペプチド配列、例えば、ヒトLINGO−1ポリペプチド(例えば、配列番号1)に対して少なくとも約70%、80%、90%、95%またはそれ以上同一である。
【0061】
「キメラタンパク質」または「融合タンパク質」は、ポリペプチドをコードしている第1のアミノ酸配列と第2のアミノ酸配列との融合物であって、第1および第2のアミノ酸配列が単一のポリペプチド鎖の一部として天然に存在しないものである。
【0062】
本明細書中で使用される場合、「実質的に類似」(または「実質的に」または「十分に」「相同性」または「同一」)なる語は、第1のアミノ酸またはヌクレオチド配列が第2のアミノ酸またはヌクレオチド配列に対して同一または等価の(例えば、類似の側鎖を有する、例えば、保存されたアミノ酸置換を有する)十分数のアミノ酸残基またはヌクレオチドを含有して、その結果、第1および第2のアミノ酸またはヌクレオチド配列が同様の活性を有することをいう。本明細書中に開示される配列と類似または相同(例えば、少なくとも約85%配列同一性)の配列は、本出願の一部でもある。ある具体例において、配列同一性は、約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上である。
【0063】
2つの配列間の「相同性」または「配列同一性」の計算は、下記のように実施される。最適な比較目的で、配列をアラインメントさせる(例えば、最適なアラインメントのための第1および第2のアミノ酸または核酸配列の1つまたは両方にギャップを導入することができ、比較目的で非相同配列を無視することができる)。典型的には、比較目的でアラインメントさせた参照配列の長さは、該参照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも60%、またさらに好ましくは70%、80%、90%、100%である。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置でのアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列における位置が第2の配列における対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占められる場合、分子はその位置で同一である(本明細書中で使用される場合、アミノ酸または核酸「同一性」なる語は、アミノ酸または核酸「相同性」と等価である)。2つの配列間のパーセント同一性は、2つの配列の最適な整列のために導入する必要のあるギャップの数およびギャップの長さを考慮して、該配列で共通の同一位置の数の関数である。
【0064】
配列の比較および2つの配列間のパーセント同一性の決定は、数学的アルゴリズムを用いて達成することができる。一の具体例において、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、GCGソフトウェアパッケージにおける市販のGAPプログラムに組み込まれているNeedlemanおよびWunsch((1970)J.Mol.Biol.48:444−453)アルゴリズムを用いて、Blossum 62マトリックスまたはPAM250マトリックス、ならびにギャップ・ウェイト(gap weight)16、14、12、10、8、6または4およびレングス・ウェイト(length weight)1、2、3、4、5または6を用いて決定される。また別の具体例において、2つのヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、GCGソフトウェアパッケージにおける市販のGAPを用いて、NWSgapdna.CMPマトリックスならびにギャップ・ウェイト40、50、60、30、70または80およびレングス・ウェイト1、2、3、4、5または6を用いて決定される。パーセント相同性を決定するために典型的に使用されるパラメーターは、ギャップ・ペナルティ12、ギャップ拡張(extend)ペナルティ4、およびフレームシフト・ギャップ・ペナルティ5を有するBlossum 62スコアリング・マトリックスである。2つのアミノ酸またはヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、また、ALIGNプログラム(version 2.0)に組み込まれているE.MeyersおよびW.Miller((1989) CABIOS 4:11−17)のアルゴリズムを用いて、PAM120残基重量表、ギャップ長ペナルティ12およびギャップ・ペナルティ4を用いて決定することができる。
【0065】
LINGO−1ポリペプチドは、非哺乳動物または哺乳動物種に由来することができる。哺乳動物LINGO−1ポリペプチドは、例えば、ヒトに由来することができる。例示的な非ヒト哺乳動物は、非ヒト霊長類(例えば、サルまたは類人猿)、マウス、ラット、ヤギ、雌牛、雄牛、ブタ、ウマ、ヒツジ、イノシシ、ラッコ、ネコおよびイヌを包含する。例示的な非哺乳動物種は、ニワトリ、七面鳥、エビ、ワニおよび魚を包含する。いくつかの哺乳動物および非哺乳動物種(例えば、ヒト、マウス、ラット、イヌ、チンパンジーおよびニワトリを包含する)由来のLINGO−1アミノ酸およびヌクレオチド配列は、当該分野で知られている(例えば、Miら、(2005)Nat.Neuroscience 8:745−751;Carim−Todd,L.ら、(2003)Eur.J.Neurosci.18(12):3167−3182;およびOkafujiら、(2005)Gene Expr.Patterns 6(1):57−62参照)。
【0066】
薬剤は、例えば、化学化合物(例えば、ポリペプチド、核酸、ペプチド模倣物)であることができる。ペプチド模倣物は、ある特定の生理学的分子、例えば、タンパク質および核酸を認識するペプチドの能力を模倣することのできる化学化合物である。ある例において、ペプチド模倣物は、天然の親ペプチドの生物学的作用を模倣または拮抗することのできる非ペプチド性構造エレメントを包含する。例えば、切れやすいペプチド結合を1以上の切れ難いジペプチド等配電子体(isosteres)で置き換えることができる。
【0067】
下記の実施例は例示であって、限定する目的ではない。
【実施例】
【0068】
LINGO−1を結晶化し、その構造を決定した。ヒトLINGO−1は、シグナル配列、ロイシン−リッチリピート様ドメイン、免疫グロブリン様ドメイン、ストークドメイン、膜貫通型ドメインおよび短い細胞質尾部を含有する614アミノ酸タンパク質である(Miら、Nat.Neurosci.:221−228,2004)。ヒトLINGO−1の細胞外領域(LRRモチーフ、Ig−様ドメインおよびストーク領域を含み、シグナル配列を含まない)をそのC末端で、ヘキサヒスチジンタグに融合した(図1)。得られたLINGO−1K549his6構築物は、pSMEGベクター(配列番号2)(図6および7A−1ないし7A−3)中、ネズミサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの後ろにサブクローン化した(K549は、33アミノ酸シグナル配列を含む全長ヒトLINGO−1構築物のアミノ酸位置249にて現れるリジンを示す。シグナル配列は、LINGO−1K549his6ポリペプチドには存在しなかった)。哺乳動物チャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞を培養し、5%COの加湿インキュベーター中、37℃で維持した。Lec3.2.8.1細胞のための細胞培養およびDNAトランスフェクションは、Zhongら(Biochim.Biophys.Acta 1723:143−150,2005)に記載されている。Lec3.2.8.1(1042−5)におけるLINGO−1K549his6構築物の安定なクローンは、抗his4抗体でスクリーニングすることによって確立された。LINGO−1K549his6のための馴化培地の大規模生産法は、以前に記載されたとおりであった(Zhongら、Biochim.Biophys.Acta 1723:143−150,2005)。
【0069】
LINGO−1K549his6を精製するために、融合タンパク質(図1)を発現している馴化CHO培地を50mM Tris pH8.0、100mM NaClのバッファーと交換し、そこに、プロテアーゼ阻害剤のカクテルを加えた(Roche,Nutley,NJの完全阻害剤)。融合タンパク質を獲得するために、Ni−NTA樹脂を50mM Tris,pH8.0、100mM NaClで平衡化し、次いで培養培地に加え、2時間、バッチ結合(回転)させた。培養培地を除去するとすぐに、Ni−NTA樹脂をカラム中にパックした。カラムをAKTA Explorer(HPLC)に連結し、4〜5カラム容量の50mM Tris,pH8.0、100mM NaClで洗浄した。タンパク質は、12カラム容量の0%〜100%50mM Tris,pH8.0、100mM NaCl、300mMイミダゾールの勾配で溶出された。収集したタンパク質フラクションを50mM Tris,pH8.0、500mM NaCl中に透析した。結晶化のために、タンパク質をカルボキシペプチダーゼA(Sigma,St.Louis,MO)と共に、25℃で14〜16時間インキュベートし、次いで、50mM MES,pH6.1、50mM NaCl中に透析した。透析後、タンパク質をSPセファロースカラム(GE Healthcare)上に負荷し、4〜5カラム容量の50mM MES,pH6.1、50mM NaClで洗浄した。タンパク質は、12カラム容量の0%〜100% 50mM MES,pH6.1、75mM NaClで溶出された。タンパク質ピークフラクションを収集し、5〜8mg/mlに濃縮し、次いで、TBSで平衡化したゲル濾過Superdex200カラム上に負荷した。タンパク質ピークフラクションを一緒にプールし、結晶化のために4〜5mg/mlに濃縮した。精製したタンパク質を完全にグリコシル化した。
【0070】
LINGO−1K549his6結晶は、18℃でハンギングドロップ蒸気拡散法を用いて得られた。回折性結晶を4mg/mLのタンパク質を有するタンパク質溶液から成長させ、1.2〜1.4M (NHSO、0.1Mクエン酸Na,pH5.0の溶液で沈澱させた。タンパク質を同一条件下、2つの形態で結晶化させ、両方の形態が同じ結晶滴において見出された。I222は、非対称単位あたり2分子を有し、74%溶媒含量であり、P22は、非対称単位あたり4分子を有し、73%溶媒含量であった。データ収集のために、結晶を母液から、2.9Mマロン酸ナトリウムを含有する安定化−凍結防止溶液(pH5.2)へ徐々に移した(Holyoakら、Biological Crystallography D59:2356−2358,2003)。該溶液中、結晶は数日間、pH範囲5〜7で安定であることが分かっているが、該溶液を結晶誘導体化に用いた。該結晶を50mM KPtClおよび2.9Mマロン酸ナトリウム中、pH7.0で24時間浸すことによって生成した白金誘導体から、異常散乱を用いる単一同形置換(SIRAS)法によって構造決定が可能な単一の誘導体を得た。データ収集の前に、全ての結晶を窒素流下100Kにて、フラッシュ冷却した。
【0071】
空間群I222の結晶から得られた2つのデータセット、3.5Aネイティブ(native)データセットおよび白金誘導体に関する3.6Aデータセット(どちらも、FR−E Cu Kα回転陽極(Rigaku,Japan)上に据え付けたSaturn92 CCDを用いて社内で測定された)を位相決定に用いた。より高い分解能のネイティブデータセットは、P22空間群に属する結晶から、SER−CATのビームライン22−IDを用いる改良型光子源(Advanced Photon Source)(APS)(Argonne,Illinois)にて2.7Aに収集された。全てのデータをHKL2000で積分し、概算した(OtwinowskiおよびMinor,Methods Enzymol.276:307−326,1997)。
【0072】
誘導体結晶における白金(Pt)原子の初期位置を、Cu Kα−エッジにおけるPt原子の異常分散差(anomalous differences)を用いて、SHELXD(2001,Bruker−AXS,XM,Ver.6.12;Bruker−AXS,Madison,WI)で位置決定した。インプットSAS係数は、XPREP(2001 Bruker−AXS,Ver.6.12;Bruker−AXS,Madison,WI)を用いて準備された。SOLOMON(AbrahamsおよびLeslie,Acta Cryst.D52:30−42,1996)による重原子パラメーター、位相計算および密度修正の精密化は、SHARP(de La FortelleおよびBricogne,Methods Enzymol.276:472−494,1997)で20〜3.6A分解能にて、ネイティブおよび誘導体データセット由来の異常分散差および同形差の両方を用いて実施された。SHARPを用いて作製される最終的に3.6Aの異常散乱を用いる単一同形置換(SIRAS)地図は、解釈可能な質であり、非対称単位において2つのLINGO−1分子を示した。SHARP位相は、さらに、2回(two-fold)非結晶学的対称性(NCS)平均化およびDMにおける3.5Aへの位相拡張によって改善された(CowtanおよびMain,Acta Cryst.D49:148−157,1993)。得られた地図により、QUANTA(Accelrys,Inc.,San Diego,CA)を用いて、最初の90%完全(〜855残基)モデルの構築が可能になった。次いで、該モデルをP22データセットでの分子置換に用いて、より高い2.7A分解能データを利用した。非対称単位における4分子の透明溶液をPHASERで同定した(McCoyら、Acta Cryst.D61:458−464,2005)。I222およびP22結晶形態は、同じ四量体パッキングを有し、該四量体は、2回転軸の周りで二量体を折り曲げることによって構築することができる。その後の2.7Aデータセットに対する再構築および精密化のラウンドは、結晶学的物体に向けられたツールキット((Crystallographic Object)-Oriented Toolkit)(COOT)(EmsleyおよびCowtan, Acta Crys. D 60:2126−2132,2004)およびREFMAC(Murshudovら、Acta Crystallogr. D 53:240−255,1997)を用いて行った。
【0073】
最終的なモデルは、4つのタンパク質分子(残基A1−477、B3−475、C2−477およびD3−476)、39個のN−アセチルグルコサミンおよび12個のマンノース残基、および310個の水分子を含有する。B、CおよびDのN末端での残基1−2、BおよびDのC末端での残基476−477、および残基D32−34は、おそらく無秩序化のせいで、十分な電子密度がないために、該構造中にモデル化されなかった。MolProbityで実施した最終的な精密化構造の幾何解析は、全残基の94%を好ましい領域に配置し、アウトライアーとして0.16%を配置する。データ収集、位相整合および精密化のための統計値を表1にまとめる。
【0074】
表2は、空間群P22の結晶から推測される結晶構造座標を挙げる(表1参照)。空間群I222を有するネイティブおよび誘導体構造は、本質的に同じ構造を示し、位相整合を手助けするために用いられた。表2において、「#」カラムは、座標が与えられた各原子の索引を示す。「name」カラムは、どのタイプの原子であるかを示し、「res」カラムは、原子がどのタイプの残基に属するかを示す。「chain」カラムは、原子がどのポリペプチドに属するかを示す。「Res#」カラムは、原子に関する残基番号を示す。例えば、原子番号1(表2における第1列)は、Thr1の窒素(N)である(配列番号1に示される配列にしたがう)。そのx、yおよびz構造座標は、各々、X、YおよびZカラムに示される。頭に「occ」が付いたカラムは、原子に割り当てられた占有率を示し(1.00=最大占有率)、「B」カラムは、(A)の単位におけるB因子(または温度因子)を提供する。「element」と標識されたカラムは、原子の元素記号を挙げる。水は、「HOH」で示される、「NAG」および「MAN」は、各々、N−アセチルグルコサミンおよびマンノース残基を示す。
【0075】
【表1−1】

【0076】
【表1−2】

【0077】
【表1−3】

【0078】
LINGO−1(I222およびP22)の両方の結晶形態は、ゲル濾過データおよび動的光散乱測定値に一致した四量体構造を示し、それにより、LINGO−1が分子量〜240kDaを有する溶液中で四量体として存在することを示した。図2は、精密化した2.7A分解能構造の電子密度のフラグメントを示す。
【0079】
一量体LINGO−1構造の全体図は、図3に示される。各一量体は、2つの別個のドメインから形成され、残基1−382はN末端LRR−ドメインを構成し、残基383−477はC末端Ig−様ドメインを形成する。2つの構成ドメインの相対的配向は、一量体構造に、計り知れない形状を与える。
【0080】
LRR−ドメイン(残基1−382)は、平行した15鎖のβシートをその内部凹面に有し、かつ、非常に不規則な第2構造をその外部凸面に有する長い弧形状を採用する(図3)。全体として、12個のLRRが存在し、23〜25残基毎に一緒に連続的な右巻きのスーパーヘリックス集合を創造する。各LRRは、β鎖で始まり、コンセンサスな24残基配列反復モチーフ:
xLxxLxLxxN10xL12xxL15xxxxF20xxL23x(配列番号9)
[ここに、xは、いずれかのアミノ酸であり、Lは、疎水性残基であり、好ましくはLeuであるが、Ile、Val、Met、PheまたはThrであってもよく、Nは天然ではあまり保存されておらず、主としてAsnを包含するが、Cys、Asp、LeuまたはTrpであってもよく、Fは、疎水性残基PheまたはLeuを示す]
を有する。示される位置のコンセンサスな残基は、LRR−ドメインの内部を形成する。いくつかの他のLRRタンパク質におけるように、LRR疎水性コアのN−およびC−末端は、2つのLRRキャップ、すなわち、「Ncap」および「Ccap」によって溶媒から保護されている(図3)。「Ncap」は、塩基(Cys3−Cys9およびCys7−Cys18)に2つのジスルフィド架橋と共に2つの逆平行β鎖を有し、その配置はNogoRの構造に非常に似ている(Heら、Neuron 38:177−185,2003)。「Ccap」もまた、2つのジスルフィド架橋(Cys334−Cys357およびCys336−Cys382)によって支持されており、NogoRと同様に、1つのα−へリックスおよび3つの短い310−へリックスからなる特徴的なモチーフを有する。しかしながら、NogoRの場合と異なり、LINGO−1における「Ccap」の内部は、ほとんど全て、フェニルアラニンクラスター(Phe342、Phe350、Phe362、Phe368、Phe371、Phe380由来の6個の芳香環、およびTyr379由来の1個の芳香環)で満たされている。さらに、α−へリックスの後の短いループセグメント(残基349−353)は、NogoRとはわずかに異なる方法で、規範的なLRR構造中に組み込まれている。その結果、5残基ループの頂点がβシートから離れて凹面空間へ、少なくとも7.5A突き出ているので、NogoRにおける同じ長さの対応するセグメントよりも、突出性を示す。突出(bulge)ループは、血小板膜糖蛋白Gp1bαにおけるリガンド結合β−スイッチに相当するが(Huizingaら、Science 297:1176−1179,2002)、該突出ループの位置(図3)は、表面が露出した突出性の側鎖(ループの先端におけるTrp346、Arg347、およびAsn349、Asn351、Gln353、およびArg352)の特徴と相俟って、リガンドとの相互作用のための有力な候補物質を示唆する。分子の静電表面(図4)は、N末端凸状側面に見出される1つの比較的大きな疎水性パッチを除き、LRRドメインの全ての側面における陽性および陰性パッチの顕著なセットを示す。
【0081】
四量複合体の構造に基づいて、LRRドメインの凹状表面に位置するアミノ酸の5つのサブセットが候補リガンド結合部位であると決定された。すなわち、(1)Trp346およびArg352;(2)His185、His209、およびHis233;(3)Asp13;(4)Glu60およびGlu62;および(5)Arg20、Arg22、およびArg43である。同様に、LRRドメインの凸状表面に位置するアミノ酸の4つのサブセットが候補リガンド結合部位であると決定された。すなわち、(1)Tyr142およびHis145;(2)Leu94、Leu120、およびMet123;(8)His176;および(9)Ala238である。
【0082】
LRR−ドメインを完成後、該ポリペプチド鎖はコンパクトなIg−様折り畳み(残基383−477)に侵入し、それは、1つのジスルフィド結合(Cys407−Cys458)によって架橋された2つのβ−シートからなる古典的なβ−サンドウィッチを示す。4つのストランド(A、B、DおよびE)が1つのβ−シートを形成し、5つのストランド(A’、C、C’、FおよびG)が第2のβ−シートを形成する。EおよびFストランドを連結する1つの310α−ヘリックスターンが存在する。他のIg−様構造との比較により、LINGO−1 Ig−様ドメインの最も近い構造類似体が神経細胞接着分子NCAMのIg3−分子(Sorokaら、Structure 10:1291−1301,2003)であることが示され、2つの配列間の計算された同一性は〜30%である。驚くべきことではないが、大部分のアミノ酸置換は、側鎖容量および/または表面極性を改変しているIg−ドメイン表面で起こり、保存的アミノ酸のほとんどは構造のコアに位置し、折り畳みを満足させるために同等のコンホメーションを有する。表面静電電位は、ABDE−表面における陰性および陽性パッチの組み合わせである。対照的に、反対側のA’CC’FG−表面は、いくつかの極性正電荷残基によって取り囲まれた疎水性残基(Ala416、Leu418、Leu420、Leu426、Leu457、Ile459、Ala461、Ala463)に非常に富む。
【0083】
Ig−ドメイン配向は、該ドメインが凸状LRR弧から離れて突き出るような向きであり、それにより、LRR−ドメインの裏側に溶媒に露出された幅広い裂け目を作出し、肘角度は〜90度である(図4)。裂け目の壁は、片方の側面がLRRのC末端凸状表面によって形成されており(反復10−12およびCcap)、もう片方の側面がIg−ドメインのA’CC’FGβ−シートによって形成されている。向かい合う表面は、比較的離れており、異なる特性を有する。凸状表面は、主として極性の帯電残基からできており、一方、向かい合うIg−表面は、かなり平らであり、主に疎水性のアミノ酸(上記のような)と並んでいる。小さなドメイン間相互作用が肘の先端で起こり、FG−ループ上(Ala463、Gly464)およびLRRのC末端部位上(Cys336、Arg337およびCys382)の残基間のファン・デル・ワールス接触を含む。注目すべきは、肘の先端でのジスルフィド結合Cys336−Cys382、およびドメイン間リンカーがないこと(Arg383は、最初のβ−ストランドの最初の残基であって、ABDEβ−シートの成分であるから)である。ドメイン間のかかる連結は、互いに相対的な2つの位置付けを束縛する。
【0084】
四量複合体の構造に基づいて、Igドメイン上のアミノ酸の5つのサブセットが候補リガンド結合部位であると決定された。すなわち、(1)Arg446およびTyr447;(2)Arg408、Phe438、およびAsp440;(3)Phe396;および(4)Leu420、Leu426、およびIle459である。
【0085】
CHO制限細胞におけるLINGO−1の糖型は、主としてManGlcNAcなどの高マンノース型グリカンであると予想され、それは、発明者らの質量分光データと一致する。結晶化された糖蛋白は、8個の典型的なN−グリコシル化コンセンサス部位を含有する。それらのうち6個は、LRR−ドメインに位置し(Asn105、Asn163、Asn225、Asn235、Asn254、およびAsn302)、Ig−様ドメインに2つが位置する(Asn466およびAsn453)。これらの部位のうち全てがドメイン表面に配置する。電子密度は、Asn466部位を除くこれらの位置の全てで炭水化物部分に割り当てることができる。Asn466部位の場合、表面に位置するが、下記および図5Bに示すように、対称性に関係するLINGO−1パートナーで密接に包まれている。該蛋白質パッキングは、Asn466でのグリコシル化のための余地を残さないので、Asn466に連結されたN−グリカンは、結晶において観察されるLINGO−1四量体化を妨げるであろう。残りの7つの部位のオリゴ糖は、図4において番号を付けた残基によって示されるように(ここに、#1はAsn105に対応し、#2はAsn163に、#3はAsn225に、#4はAsn235に、#5はAsn254に、#6はAsn302に、#7はAsn453に対応する)、構造中に広がっている。LRR−ドメインの4つの表面のうち、凸状外面だけが完全に炭水化物がなく、かかる知見は自己会合におけるその役割と一致する。凹状表面および2つの側面(各々、2つのN−グリカン結合部位を有する)は、炭水化物で大部分が覆われている。最後の炭水化物部分は、C末端に隣接し、分子間の接触面から離れているIg−フェイスA’CC’FGに位置する(図4)。
【0086】
一般に、糖蛋白表面における広範囲なグリコシル化の存在は、リガンドとの相互作用に関するそれらの接近性を制限し、多くの場合、糖によって被覆されない表面は、リガンドが結合すると予測される場所である(Ruddら、JMB293:351 366,1999)。したがって、弧中心の右に2つの糖部分を有するLINGO−1の凹状LRR表面は、NogoRまたはp75のような大きいタンパク質パートナーを提供するのに主要な役割を果たすことができるとは考えられない。このことは、しばしばリガンドとの相互作用に凹状表面を利用する他のLRR−含有レセプターとは反対である(Bellら、Trends Immunol. 24:528,2003)。Asn−結合型N−グリカンが直接リガンド結合に関与することを示唆する証拠がないので、LINGO−1グリコシル化が、非特異的タンパク質−タンパク質相互作用を防ぐ助けとなるか、またはその後のリガンド結合のための適当な足場を維持する助けとなる可能性もある。
【0087】
結晶化、サイズ排除クロマトグラフィーおよび動的光散乱は全て、LINGO−1が結晶中および溶液中の両方において、四量体形態を採用することを示す。結晶中、LINGO−1の4つの独立したコピーは、相互に作用して、凝縮された四量体構造を構築する。疑似4回転軸は、大きな穴を中心に有する環様構造における4分子に関係する(〜40A直径;外環径〜95A;図5A)。該配置は、各LRR−ドメインのN末端凸状側面を隣接する分子のドメイン間の肘におき(図5B)、サイトカイン/レセプター結合モードを暗示する。後者の場合、2つの分子間の結合点は、3つの表面、すなわち、N末端曲線状反復1−6によって形成された1つ、および上記のように、C末端曲線状反復11−12によって形成された2つの肘表面、各々、「C−cap」およびA’CC’FGβ−ストランドによって提供される。したがって、4つのLRR−ドメインは、頭尾(head-to-tail)様式で環を連結し、対応するIg−様モジュールは、ランディング・ギア(landing gear)様式で環の周囲から伸長する(図5C参照)。細胞表面に相対的な該幾何構造を適用するならば、タンパク質回転軸は、同じ方向を向いている、すなわち、細胞膜に向いている膜近接C末端を有する表面に対しおよそ垂直に位置するであろう。
【0088】
各分子間接触面は、結合表面間のきっちりとした幾何学的対合、および相互作用の正確な立体化学的相補性を示す。各分子間接触面に埋もれた溶媒にアクセス可能な表面積は、比較的大きく、3つの個々の成分の合計で〜2400(A)であり、これは、強い会合を示唆する。上記の証拠は、相互作用の多価性と組み合わせて、四量体における接触が単なる結晶の接触ではないことを示唆する。
【0089】
表2.LINGO−1K549his6ポリペプチドの構造座標(各々、配列番号5〜8)
【表2−1】

【0090】
【表2−2】

【0091】
【表2−3】

【0092】
【表2−4】

【0093】
【表2−5】

【0094】
【表2−6】

【0095】
【表2−7】

【0096】
【表2−8】

【0097】
【表2−9】

【0098】
【表2−10】

【0099】
【表2−11】

【0100】
【表2−12】

【0101】
【表2−13】

【0102】
【表2−14】

【0103】
【表2−15】

【0104】
【表2−16】

【0105】
【表2−17】

【0106】
【表2−18】

【0107】
【表2−19】

【0108】
【表2−20】

【0109】
【表2−21】

【0110】
【表2−22】

【0111】
【表2−23】

【0112】
【表2−24】

【0113】
【表2−25】

【0114】
【表2−26】

【0115】
【表2−27】

【0116】
【表2−28】

【0117】
【表2−29】

【0118】
【表2−30】

【0119】
【表2−31】

【0120】
【表2−32】

【0121】
【表2−33】

【0122】
【表2−34】

【0123】
【表2−35】

【0124】
【表2−36】

【0125】
【表2−37】

【0126】
【表2−38】

【0127】
【表2−39】

【0128】
【表2−40】

【0129】
【表2−41】

【0130】
【表2−42】

【0131】
【表2−43】

【0132】
【表2−44】

【0133】
【表2−45】

【0134】
【表2−46】

【0135】
【表2−47】

【0136】
【表2−48】

【0137】
【表2−49】

【0138】
【表2−50】

【0139】
【表2−51】

【0140】
【表2−52】

【0141】
【表2−53】

【0142】
【表2−54】

【0143】
【表2−55】

【0144】
【表2−56】

【0145】
【表2−57】

【0146】
【表2−58】

【0147】
【表2−59】

【0148】
【表2−60】

【0149】
【表2−61】

【0150】
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【0354】
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【0355】
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【0357】
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【0358】
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【0359】
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【0360】
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【0361】
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【0362】
【表2−274】

【0363】
【表2−275】

【0364】
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【0365】
【表2−277】

【0366】
【表2−278】

【0367】
【表2−279】

【0368】
【表2−280】

【0369】
【表2−281】

【0370】
【表2−282】

【0371】
【表2−283】

【0372】
【表2−284】

【0373】
【表2−285】

【0374】
【表2−286】

【0375】
【表2−287】

【0376】
【表2−288】

【0377】
他の具体例を請求の範囲に示す。
【図面の簡単な説明】
【0378】
【図1】図1は、ヒスチジン−タグ付加されたLINGO−1ポリペプチドのアミノ酸配列(アミノ酸1−516および6−His−tag)(配列番号1)である。結晶化に使用されるフラグメントに下線を付す。
【図2】図2は、精密化した2.7A分解能LINGO−1構造の2fo−fc電子密度地図である(表1も参照)。
【図3】図3は、LINGO−1一量体のリボン図である。
【図4】図4は、LINGO−1一量体の空間を埋めたモデルである。
【図5】図5A−5Cは、LINGO−1結晶構造の四量体組織を示す構造図である。図5Aは、四量体構造の上面図である。図5Bは、2つの一量体間で相互作用している表面を示す。図5Cは、四量体構造の側面図である。
【図6】図6は、pSMEGプラスミドの地図である。
【図7】図7A−1〜7A−3は、pSMEGプラスミドの配列を示す(配列番号2)。
【図8】図8A−8Bは、ヒトLINGO−1の全長アミノ酸およびヌクレオチド配列を示す(各々、配列番号3および4)。該コーディング配列は、配列番号4のヌクレオチド53〜1915によってコード化される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶化LINGO−1ポリペプチド。
【請求項2】
LINGO−1ポリペプチドがロイシン−リッチリピート(LRR)ドメインを含む請求項1または2記載の結晶化LINGO−1ポリペプチド。
【請求項3】
LINGO−1ポリペプチドが免疫グロブリン様(Ig−様)ドメインを含む請求項2記載の結晶化LINGO−1ポリペプチド。
【請求項4】
LINGO−1ポリペプチドが本質的にLRR−様ドメイン、Ig−様ドメインおよびストークドメインを含む請求項1記載の結晶化LINGO−1ポリペプチド。
【請求項5】
LINGO−1ポリペプチドが配列番号1のアミノ酸配列を含む請求項1記載の結晶化LINGO−1ポリペプチド。
【請求項6】
結晶化LINGO−1ポリペプチドが空間群P22を有する請求項1〜5のいずれか1項記載の結晶化LINGO−1ポリペプチド。
【請求項7】
結晶化LINGO−1ポリペプチドが単位格子寸法a=201.5A、b=149.7A、c=157.5Aおよびα=β=γ=90°を有する請求項6記載の結晶化LINGO−1ポリペプチド。
【請求項8】
結晶化LINGO−1ポリペプチドが空間群I222を有する請求項1〜5のいずれか1項記載の結晶化LINGO−1ポリペプチド。
【請求項9】
結晶化LINGO−1ポリペプチドが単位格子寸法a=148.7A、b=158.6A、c=200.0Aおよびα=β=γ=90°を有する請求項8記載の結晶化LINGO−1ポリペプチド。
【請求項10】
結晶化LINGO−1ポリペプチドが単位格子寸法a=149.6A、b=157.3A、c=200.3Aおよびα=β=γ=90°を有する請求項8記載の結晶化LINGO−1ポリペプチド。
【請求項11】
LINGO−1ポリペプチドが哺乳動物種由来である請求項1および6〜10のいずれか1項記載の結晶化LINGO−1ポリペプチド。
【請求項12】
LINGO−1ポリペプチドが非哺乳動物種由来である請求項1および6〜10のいずれか1項記載の結晶化LINGO−1ポリペプチド。
【請求項13】
LINGO−1ポリペプチドがヒト由来である請求項1および6〜10のいずれか1項記載の結晶化LINGO−1ポリペプチド。
【請求項14】
結晶化ポリペプチドが少なくとも約3.7Aの分解能までX線を回折することができる請求項1記載の結晶化LINGO−1ポリペプチド。
【請求項15】
結晶化ポリペプチドが表2の構造座標+/−1.5A以下のアルファ炭素原子についての二乗平均平方根を含む請求項1および6〜10のいずれか1項記載の結晶化LINGO−1ポリペプチド。
【請求項16】
結晶化ポリペプチドが、配列番号1に示されるLINGO−1ポリペプチドのアミノ酸Asp13、Arg20、Arg22、Arg43、Glu60、Glu62、Leu94、Leu120、Met123、His176、Tyr142、His145、His185、His209、His233、Ala238、Trp346、Arg347、Asn349、Asn351、Arg352、Gln353、Phe396、Arg408、Leu420、Leu426、Phe438、Asp440、Arg446、Tyr447およびIle459の原子からなる群から選択される原子の構造座標を含む請求項1および6〜10のいずれか1項記載の結晶化LINGO−1ポリペプチド。
【請求項17】
LINGO−1ポリペプチド、およびLINGO−1ポリペプチドのアゴニストまたはLINGO−1ポリペプチドのアンタゴニストであるリガンドを含む結晶化ポリペプチド−リガンド複合体。
【請求項18】
LINGO−1ポリペプチドがロイシン−リッチリピート(LRR)ドメインを含む請求項17記載の結晶化ポリペプチド−リガンド複合体。
【請求項19】
LINGO−1ポリペプチドが免疫グロブリン様(Ig−様)ドメインを含む請求項17または18記載の結晶化ポリペプチド−リガンド複合体。
【請求項20】
LINGO−1ポリペプチドが本質的にLRR−様ドメイン、Ig−様ドメインおよびストークドメインを含む請求項17記載の結晶化ポリペプチド−リガンド複合体。
【請求項21】
LINGO−1ポリペプチドが配列番号1のアミノ酸配列を含む請求項17記載の結晶化ポリペプチド−リガンド複合体。
【請求項22】
LINGO−1ポリペプチドの三次元モデルを用いてLINGO−1ポリペプチドに結合する薬剤を設計することを特徴とする方法。
【請求項23】
三次元モデルがLINGO−1ポリペプチドのLRRドメインを含む請求項22記載の方法。
【請求項24】
三次元モデルがLINGO−1ポリペプチドのIg−様ドメインを含む請求項22または23記載の方法。
【請求項25】
三次元モデルが本質的にLINGO−1ポリペプチドのLRRドメイン、Ig−様ドメインおよびストークドメインからなる請求項22記載の方法。
【請求項26】
薬剤がLINGO−1活性を阻害する請求項22記載の方法。
【請求項27】
三次元モデルがLINGO−1ポリペプチドの原子の構造座標を含む請求項22〜26のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
構造座標が実験的に決定された座標である請求項27記載の方法。
【請求項29】
構造座標が表2の値+/−1.5A以下のアルファ炭素原子についての二乗平均平方根にしたがう請求項28記載の方法。
【請求項30】
三次元モデルが、配列番号1に示されるLINGO−1ポリペプチドのアミノ酸Asp13、Arg20、Arg22、Arg43、Glu60、Glu62、Leu94、Leu120、Met123、His176、Tyr142、His145、His185、His209、His233、Ala238、Trp346、Arg347、Asn349、Asn351、Arg352、Gln353、Phe396、Arg408、Leu420、Leu426、Phe438、Asp440、Arg446、Tyr447およびIle459の原子からなる群から選択される原子の構造座標を含む請求項22〜29のいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
さらに、LINGO−1ポリペプチドの原子と薬剤の原子との間の距離を計算することを特徴とする請求項22〜29のいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
さらに、LINGO−1ポリペプチドを含む組成物を提供することを特徴とする請求項22〜29のいずれか1項記載の方法。
【請求項33】
組成物がLINGO−1ポリペプチドに結合するように設計された薬剤を含む請求項32記載の方法。
【請求項34】
さらに、薬剤とLINGO−1ポリペプチドとの間の相互作用を実験的に決定することを特徴とする請求項22〜29のいずれか1項記載の方法。
【請求項35】
さらに、薬剤とLINGO−1ポリペプチドとの間の相互作用を、第2の薬剤とLINGO−1ポリペプチドとの間の相互作用と比較することを特徴とする請求項22〜29のいずれか1項記載の方法。
【請求項36】
LINGO−1ポリペプチド−リガンド複合体の三次元モデルを用いて、LINGO−1ポリペプチドに結合する薬剤を設計することを特徴とする方法。
【請求項37】
三次元モデルがLINGO−1ポリペプチドのLRRドメインを含む請求項36記載の方法。
【請求項38】
三次元モデルがLINGO−1ポリペプチドのIg−様ドメインを含む請求項36または37記載の方法。
【請求項39】
三次元モデルが本質的にLINGO−1ポリペプチドのLRRドメイン、Ig−様ドメインおよびストークドメインからなる請求項36記載の方法。
【請求項40】
薬剤がLINGO−1活性を阻害する請求項36記載の方法。
【請求項41】
さらに、薬剤とLINGO−1ポリペプチドとの間の相互作用を実験的に決定することを特徴とする請求項36〜40のいずれか1項記載の方法。
【請求項42】
LINGO−1ポリペプチドを含む複合体の三次元モデルを用いて、LINGO−1ポリペプチドに結合する薬剤を設計することを特徴とする方法。
【請求項43】
三次元モデルがLINGO−1ポリペプチドのLRRドメインを含む請求項42記載の方法。
【請求項44】
三次元モデルがLINGO−1ポリペプチドのIg−様ドメインを含む請求項42記載の方法。
【請求項45】
三次元モデルが本質的にLINGO−1ポリペプチドのLRRドメイン、Ig−様ドメインおよびストークドメインからなる請求項42または43記載の方法。
【請求項46】
薬剤がLINGO−1活性を阻害する請求項42記載の方法。
【請求項47】
三次元モデルがLINGO−1ポリペプチドの原子の構造座標を含む請求項42〜46のいずれか1項記載の方法。
【請求項48】
構造座標が実験的に決定された座標である請求項47記載の方法。
【請求項49】
構造座標が表2の値+/−1.5A以下のアルファ炭素原子についての二乗平均平方根にしたがう48記載の方法。
【請求項50】
三次元モデルが、配列番号1に示されるLINGO−1ポリペプチドのアミノ酸Asp13、Arg20、Arg22、Arg43、Glu60、Glu62、Leu94、Leu120、Met123、His176、Tyr142、His145、His185、His209、His233、Ala238、Trp346、Arg347、Asn349、Asn351、Arg352、Gln353、Phe396、Arg408、Leu420、Leu426、Phe438、Asp440、Arg446、Tyr447およびIle459の原子からなる群から選択される原子の構造座標を含む請求項42〜49のいずれか1項記載の方法。
【請求項51】
さらに、LINGO−1ポリペプチドの原子と薬剤の原子との間の距離を計算することを特徴とする請求項42〜49のいずれか1項記載の方法。
【請求項52】
さらに、LINGO−1ポリペプチドを含む組成物を提供することを特徴とする請求項42〜49のいずれか1項記載の方法。
【請求項53】
組成物がLINGO−1ポリペプチドに結合するように設計された薬剤を含む請求項52記載の方法。
【請求項54】
さらに、薬剤とLINGO−1ポリペプチドとの間の相互作用を実験的に決定することを特徴とする請求項42〜49のいずれか1項記載の方法。
【請求項55】
さらに、薬剤とLINGO−1ポリペプチドとの間の相互作用を、第2の薬剤とLINGO−1ポリペプチドとの間の相互作用と比較することを特徴とする請求項54記載の方法。
【請求項56】
LINGO−1ポリペプチドの三次元構造を用いて合理的薬物設計を行うことにより薬剤を選択し、
LINGO−1ポリペプチドと薬剤を接触させ、次いで、
薬剤のLINGO−1ポリペプチドに対する結合能を検出することを特徴とする方法。
【請求項57】
薬剤がコンピューターモデリングによって選択される請求項56記載の方法。
【請求項58】
さらに、薬剤を合成することを特徴とする請求項56または57記載の方法。
【請求項59】
さらに薬剤のLINGO−1活性阻害能を検出することを特徴とする請求項58記載の方法。
【請求項60】
薬剤の、イン・ビトロまたはイン・ビボでのミエリン形成増加能を検出することを特徴とする請求項58記載の方法。
【請求項61】
さらに、LINGO−1ポリペプチドおよび薬剤を含む補足的結晶複合体を得、
該補足的結晶複合体の三次元構造を決定し、
該補足的結晶複合体の三次元構造を用いて合理的薬物設計を行うことにより第2の薬剤を選択し、
第2の薬剤をLINGO−1ポリペプチドと接触させ、次いで、
第2の薬剤のLINGO−1ポリペプチドに対する結合能を検出することを特徴とする、請求項56〜60のいずれか1項記載の方法。
【請求項62】
第2の薬剤がコンピューターモデリングによって選択される請求項61記載の方法。
【請求項63】
さらに、第2の薬剤を合成することを特徴とする請求項61記載の方法。
【請求項64】
さらに、第2の薬剤のLINGO−1活性阻害能を検出することを特徴とする請求項61記載の方法。
【請求項65】
さらに、第2の薬剤のイン・ビトロまたはイン・ビボでミエリンレベル増加能を検出することを特徴とする請求項61記載の方法。
【請求項66】
LINGO−1ポリペプチド−リガンド複合体の三次元構造を用いて合理的薬物設計を行うことにより薬剤を選択し、
LINGO−1ポリペプチドと薬剤を接触させ、次いで、
薬剤のLINGO−1ポリペプチドに対する結合能を検出することを特徴とする方法。
【請求項67】
薬剤がコンピューターモデリングによって選択される請求項66記載の方法。
【請求項68】
さらに、薬剤を合成することを特徴とする請求項66〜67のいずれか1項記載の方法。
【請求項69】
薬剤のLINGO−1活性阻害能を検出することを特徴とする請求項68記載の方法。
【請求項70】
さらに、薬剤のイン・ビトロまたはイン・ビボでミエリン形成増加能を検出することを特徴とする請求項68記載の方法。
【請求項71】
さらに、LINGO−1ポリペプチドおよび薬剤を含む補足的結晶複合体を得、
該補足的結晶複合体の三次元構造を決定し、
該補足的結晶複合体の三次元構造を用いて合理的薬物設計を行うことにより第2の薬剤を選択し、
第2の薬剤をLINGO−1ポリペプチドと接触させ、次いで、
第2の薬剤の、LINGO−1ポリペプチドに対する結合能を検出することを特徴とする、請求項66〜70のいずれか1項記載の方法。
【請求項72】
薬剤がコンピューターモデリングによって選択される請求項71記載の方法。
【請求項73】
さらに、薬剤を合成することを特徴とする請求項71記載の方法。
【請求項74】
さらに、第2の薬剤のLINGO−1ポリペプチド活性阻害能を検出することを特徴とする請求項71記載の方法。
【請求項75】
さらに、第2の薬剤の、イン・ビトロまたはイン・ビボでミエリンレベル増加能を検出することを特徴とする請求項71記載の方法。
【請求項76】
LINGO−1ポリペプチドを含む組成物を提供し、次いで、
該組成物を結晶化して、LINGO−1ポリペプチドを含む結晶複合体を形成させることを特徴とし、ここに、該結晶複合体が少なくとも約3.7Aの分解能までX線を回折することができる、方法。
【請求項77】
ハンギングドロップ蒸気拡散を用いることを含む請求項76記載の方法。
【請求項78】
LINGO−1ポリペプチド−リガンド複合体を含む組成物を提供し、次いで、
該組成物を結晶化して、LINGO−1ポリペプチド−リガンド複合体を含む結晶を形成させることを特徴とし、ここに、該結晶が少なくとも約3.7Aの分解能までX線を回折することができる、方法。
【請求項79】
ハンギングドロップ蒸気拡散を用いることを含む請求項78記載の方法。
【請求項80】
コンピューターシステムに、LINGO−1ポリペプチドの構造に関連する情報を受け取らせ、
候補薬剤に関連する情報を受け取らせ、次いで、
LINGO−1ポリペプチドに対する候補薬剤の結合性を決定させる命令を含み、ここに、該決定がLINGO−1ポリペプチドの構造に関連する情報および候補薬剤に関連する情報に基づいている、ソフトウェアシステム。
【請求項81】
1以上のプロセッサーによって実行された時に、1以上のプロセッサーに、
LINGO−1ポリペプチドを含む複合体の構造に関連する情報を受け取らせ、
候補薬剤に関連する情報を受け取らせ、次いで
LINGO−1ポリペプチドに対する候補薬剤の結合性を決定させる複数の命令が格納されており、ここに、該決定がLINGO−1ポリペプチドの構造に関連する情報および候補薬剤に関連する情報に基づいている、コンピューターで読み取り可能な媒体に存在するコンピュータープログラム。
【請求項82】
LINGO−1ポリペプチドの構造に関連する情報を受け取らせ、次いで、
LINGO−1ポリペプチドと候補薬剤との結合性をモデル化することを特徴とする方法であって、ソフトウェアシステムによって実行される方法。
【請求項83】
1以上のプロセッサーによって実行された時に、1以上のプロセッサーに、
LINGO−1ポリペプチドの構造に関連する情報を受け取らせ、次いで
LINGO−1ポリペプチドと候補薬剤との結合性をモデル化させる複数の命令が格納された、コンピューターで読み取り可能な媒体に存在するコンピュータープログラム。
【請求項84】
コンピューターシステムに、
LINGO−1ポリペプチドの構造に関連する情報を受け取らせ、次いで
LINGO−1ポリペプチドと候補薬剤との結合性をモデル化させる命令を含むソフトウェアシステム。
【請求項85】
合理的薬物設計を用いてLINGO−1活性を調節することのできる薬剤を選択し、次いで、
治療上有効量の薬剤を対象に投与することを特徴とする、対象においてLINGO−1活性を調節する方法。
【請求項86】
薬剤がミエリンレベルをイン・ビボで増加することができる請求項85記載の方法。
【請求項87】
合理的薬物設計がLINGO−1ポリペプチドを含む結晶複合体の三次元構造を用いることを含む請求項85または86記載の方法。
【請求項88】
結晶複合体がさらにリガンドを含む請求項87記載の方法。
【請求項89】
合理的薬物設計を用いてLINGO−1活性に影響を及ぼすことのできる薬剤を選択し、次いで、
治療上有効量の薬剤を対象に投与することを特徴とする、LINGO−1活性に関連する病態を有する対象を治療する方法。
【請求項90】
薬剤がLINGO−1活性を阻害することができる請求項89記載の方法。
【請求項91】
薬剤がミエリンレベルをイン・ビボで増加することができる請求項89または90記載の方法。
【請求項92】
病態が脱髄疾患である請求項89〜91のいずれか1項記載の方法。
【請求項93】
病態が多発性硬化症である請求項89〜91のいずれか1項記載の方法。
【請求項94】
対象がLINGO−1活性に関連する病態に罹りやすいことを決定し、
合理的薬物設計を用いてLINGO−1活性に影響を及ぼすことのできる薬剤を選択し、次いで、
治療上有効量の薬剤を対象に投与することを特徴とする、LINGO−1活性に関連する病態に罹りやすい対象を予防的に治療する方法。
【請求項95】
薬剤がLINGO−1活性を阻害することができる請求項94または95記載の方法。
【請求項96】
薬剤がミエリンレベルをイン・ビボで増加することができる請求項94または95記載の方法。
【請求項97】
病態が脱髄疾患である請求項94〜96のいずれか1項記載の方法。
【請求項98】
病態が多発性硬化症である請求項94〜97のいずれか1項記載の方法。
【請求項99】
LINGO−1活性に関連する病態の予防または治療のための医薬の製造における請求項22〜75のいずれか1項記載の設計または選択された薬剤の使用。
【請求項100】
薬剤がLINGO−1活性を阻害することができる請求項99記載の使用。
【請求項101】
病態が脱髄疾患である請求項99または100記載の使用。
【請求項102】
病態が多発性硬化症である請求項99〜101のいずれか1項記載の使用。
【請求項103】
薬剤がリガンド結合部位でLINGO−1に結合する請求項99〜102のいずれか1項記載の使用。
【請求項104】
リガンド結合部位がLRRドメインの凹状表面に位置する請求項103記載の使用。
【請求項105】
LRRドメインの凹状表面が、Trp346およびArg352;His185、His209およびHis233;Asp13;Glu60およびGlu62;またはArg20、Arg22およびArg43の1以上を含む請求項104記載の使用。
【請求項106】
リガンド結合部位がLRRドメインの凸状表面に位置する請求項103記載の使用。
【請求項107】
LRRドメインの凸状表面が、Tyr142およびHis145;Leu94、Leu120およびMet123;His176;またはAla238の1以上を含む請求項106記載の使用。
【請求項108】
リガンド結合部位がIgドメインに位置する請求項103記載の使用。
【請求項109】
Igドメインが、Arg446およびTyr447;Arg408、Phe438およびAsp440;Phe396;またはLeu420、Leu426およびIle459の1以上を含む請求項108記載の使用。
【請求項110】
LINGO−1活性に関連する病態の予防または治療において有用な請求項22〜75のいずれか1項記載の設計または選択された薬剤。
【請求項111】
薬剤がLINGO−1活性を阻害することができる請求項110記載の薬剤。
【請求項112】
病態が脱髄疾患である請求項110または111記載の薬剤。
【請求項113】
病態が多発性硬化症である請求項110〜112のいずれか1項記載の薬剤。
【請求項114】
リガンド結合部位でLINGO−1に結合する請求項110〜113のいずれか1項記載の薬剤。
【請求項115】
リガンド結合部位がLRRドメインの凹状表面に位置する請求項114記載の使用。
【請求項116】
LRRドメインの凹状表面が、Trp346およびArg352;His185、His209およびHis233;Asp13;Glu60およびGlu62;またはArg20、Arg22およびArg43の1以上を含む請求項115記載の使用。
【請求項117】
リガンド結合部位がLRRドメインの凸状表面に位置する請求項114記載の使用。
【請求項118】
LRRドメインの凸状表面が、Tyr142およびHis145;Leu94、Leu120およびMet123;His176;またはAla238の1以上を含む請求項117記載の使用。
【請求項119】
リガンド結合部位がIgドメインに位置する請求項114記載の使用。
【請求項120】
Igドメインが、Arg446およびTyr447;Arg408、Phe438およびAsp440;Phe396;またはLeu420、Leu426およびIle459の1以上を含む請求項119記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7A−1】
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【図7A−2】
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【図7A−3】
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【図8A】
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【図8B】
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【公表番号】特表2009−525346(P2009−525346A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553394(P2008−553394)
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際出願番号】PCT/US2007/003015
【国際公開番号】WO2007/092370
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】